(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(54)【発明の名称】通気式注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20220406BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
A61M5/31 510
A61M5/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549921
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 US2020019950
(87)【国際公開番号】W WO2020176657
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521377188
【氏名又は名称】ベクトン、ディキンソン アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェイス、レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ゾリンガー、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】マンスール、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、エドモンド
(72)【発明者】
【氏名】フラウスト、トマス
(72)【発明者】
【氏名】キャラハン、ライアン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066EE14
4C066FF05
4C066HH17
4C066MM03
(57)【要約】
本明細書では、通気式注射器について説明される。通気式注射器は、注射器本体及びプランジャ本体を備えている。注射器本体が、注射器キャビティを画定する。プランジャ本体は、注射器キャビティ内に、少なくとも部分的に配置されている。プランジャ本体は、プランジャ本体内に画定された吸気チャネルを備えている。通気式注射器は、注射器キャビティに密封係合されて、注射器ボリュームを共同で画定する、プランジャ・シールをさらに備えている。通気式注射器は、吸気チャネル及び注射器ボリュームと流体連通する一方向弁をさらに備え、一方向弁は、注射器ボリュームから吸気チャネルへの流体の流れを抑制し、吸気チャネルから注射器ボリュームへの流体の流れを可能にするよう構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器キャビティを画定する注射器本体と、
少なくとも部分的に前記注射器キャビティ内に配置されるプランジャ本体であって、前記プランジャ本体内に画定され、前記プランジャ本体の第1の端部と第2の端部との間に延びる吸気チャネルを有するプランジャ本体と、
前記プランジャ本体の前記第2の端部に配置されてるプランジャ・シールであって、前記注射器キャビティと密封的に係合し、それにより前記注射器キャビティ内に注射器ボリュームを協働して画定するプランジャ・シールと、
前記吸気チャネル及び前記注射器ボリュームと流体連通する一方向弁であって、前記注射器ボリュームから前記吸気チャネルへの流体の流れを妨げ、且つ前記吸気チャネルから前記注射器ボリュームへの流体の流れを可能にするように構成された一方向弁と
を有する、通気式注射器。
【請求項2】
前記注射器本体が、前記注射器ボリュームと流体連通する開口部をさらに有する、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項3】
前記プランジャ本体が、前記注射器本体に対して摺動可能である、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項4】
前記プランジャ本体が、前記プランジャ本体の前記第1の端部に配置された親指パッドをさらに有する、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項5】
前記プランジャ本体が、前記プランジャ本体の前記第1の端部に、前記吸気チャネルに取外し可能に係合するキャップをさらに有する、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項6】
前記キャップが、前記吸気チャネルに係合しているときに、前記吸気チャネルへの流体の流れを妨げるように構成されている、請求項5に記載の通気式注射器。
【請求項7】
前記キャップを前記プランジャ本体に連結するテザーをさらに有する、請求項5に記載の通気式注射器。
【請求項8】
前記プランジャ本体が、前記キャップと解放可能に係合するキャップ受部をさらに有する、請求項5に記載の通気式注射器。
【請求項9】
前記一方向弁が、前記注射器ボリュームから前記吸気チャネルへの流体の流れを妨げるために萎むように構成されている、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項10】
前記一方向弁がダックビル弁を有する、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項11】
前記一方向弁が、前記プランジャ本体の前記第2の端部に配置される、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項12】
前記一方向弁が、前記プランジャ・シールと一体的に形成される、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項13】
前記吸気チャネルと流体連通するフィルタをさらに有する、請求項1に記載の通気式注射器。
【請求項14】
注射器キャビティを画定する注射器本体と、
少なくとも部分的に前記注射器キャビティ内に配置されるプランジャ本体であって、前記プランジャ本体内に画定され、前記プランジャ本体の第1の端部と第2の端部との間に延びる吸気チャネルを有するプランジャ本体と、
前記プランジャ本体の前記第2の端部に配置されるプランジャ・シールであって、前記プランジャ・シールは前記注射器キャビティと密封的に係合し、それにより前記注射器キャビティ内に注射器ボリュームを協働して画定し、また前記注射器ボリュームの拡張により前記注射器ボリューム内に真空がもたらされる、プランジャ・シールと、
前記吸気チャネル及び前記注射器ボリュームと流体連通する一方向弁であって、前記注射器ボリュームの拡張中に前記吸気チャネルへの流体の流れを妨げるように、且つ前記注射器ボリューム内の前記真空を解除するため前記吸気チャネルから前記注射器ボリュームへの流体の流れを可能にするように構成された一方向弁と
を有する、通気式注射器。
【請求項15】
前記プランジャ本体が、前記注射器本体に対して摺動可能である、請求項14に記載の通気式注射器。
【請求項16】
前記プランジャ本体が、前記プランジャ本体の前記第1の端部に、前記吸気チャネルに取外し可能に係合するキャップをさらに有する、請求項14に記載の通気式注射器。
【請求項17】
前記キャップが、前記吸気チャネルに係合しているときに、前記吸気チャネルへの流体の流れを妨げるように構成されている、請求項16に記載の通気式注射器。
【請求項18】
前記キャップを前記プランジャ本体に連結するテザーをさらに有する、請求項16に記載の通気式注射器。
【請求項19】
医療用流体を取り込む方法であって、
注射器ボリュームと流体連通する開口部を通して前記医療用流体を取り込むために前記注射器ボリュームを拡張させるステップと、
前記注射器ボリュームの拡張中に吸気チャネルを前記注射器ボリュームから密閉するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記注射器ボリュームを、前記吸気チャネルを介して流体の流れに曝すステップと、
前記開口部を通して前記医療用流体を放出するステップと
をさらに有する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に注射器に関し、特に通気式注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療処置には、多くの場合、一般に「IVセット」と呼ばれる柔軟なチューブ及び連結部品の配置を介して流体の供給源、例えばIVバッグに連結された静脈内(IV:intravenous)カテーテルを使用して、患者に医療用流体(例えば生理食塩水又は薬液)を注入することが含まれる。特定の医療用流体は、バイアル、又はIVバッグ以外の他のベッセルで搬送される場合がある。バイアル又は他のベッセルで搬送された医療用流体は、中間注射器(intermediate syringe)を使って取り出され、IVセットに入れられる場合がある。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの用途では、バイアル又はIVバッグ以外の他のベッセルで搬送される医療用流体を使用する際に、簡略化された医療手順が望まれる。
【0004】
開示される主題は、通気式注射器(通気シリンジ)に関する。特定の実施例では、注射器キャビティを画定する注射器本体と、注射器キャビティ内に少なくとも部分的に配置されるプランジャ本体であって、このプランジャ本体内に画定され、プランジャ本体の第1の端部と第2の端部との間に延在する吸気チャネルを有するプランジャ本体と、プランジャ本体の第2の端部に配置され、注射器キャビティと密封的に係合して、注射器キャビティ内の注射器ボリュームを協働して画定するプランジャ・シールと、吸気チャネル及び注射器ボリュームと流体連通する一方向弁であって、注射器ボリュームから吸気チャネルへの流体の流れを抑制し、吸気チャネルから注射器ボリュームへの流体の流れを可能にするよう構成された一方向弁とを有する、通気式注射器が開示されている。
【0005】
特定の実施例では、注射器キャビティを画定する注射器本体と、注射器キャビティ内に少なくとも部分的に配置されるプランジャ本体であって、このプランジャ本体が、プランジャ本体内に画定され、プランジャ本体の第1の端部と第2の端部との間に延在する吸気チャネルを有する、プランジャ本体と、プランジャ本体の第2の端部に配置され、注射器キャビティと密封係合されて、注射器キャビティ内の注射器ボリュームを共同で画定するプランジャ・シールであって、注射器ボリュームの拡大が、注射器ボリューム内に真空(vacuum;減圧)をもたらすプランジャ・シールと、吸気チャネル及び注射器ボリュームと流体連通する一方向弁であって、この一方向弁が、注射器ボリュームが拡大する間、吸気チャネルへの流体の流れを抑制し、吸気チャネルから注射器ボリュームへの流体の流れを可能にして、注射器ボリューム内の真空状態を解除するよう構成される、一方向弁とを有する、通気式注射器が開示されている。
【0006】
特定の実施例では、医療用流体を取り込む方法が開示されており、この方法は、医療用流体を、注射器ボリュームと流体連通する開口部を通して取り込むために、注射器ボリュームを拡大するステップと、注射器ボリュームを拡大している間、注射器ボリュームから吸気チャネルを密封するステップとを有する。
【0007】
本技術の様々な構成は、本開示によって当業者に容易に明らかとなり、本技術の様々な構成が例として示され、説明されていることを理解されたい。理解されるように、本技術は他の相異なる構成が可能であり、本技術のいくつかの詳細は、すべて本技術の範囲から逸脱することなく、様々な他の点で修正が可能である。したがって、要約、図面、及び詳細な説明は、本質的に、限定的ではなく例示と見なされるべきである。
【0008】
さらなる理解を可能にするために含まれ、この明細書の一部に組み入れられ、この明細書の一部を構成する添付図面は、開示される実施例を示し、説明と共に、開示される実施例の原理を説明するよう機能する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の様々な態様による、注射器の斜視図である。
【
図2】本開示の様々な態様による、
図1の注射器の断面図である。
【
図3】本開示の様々な態様による、図面の構成での注射器の断面図である。
【
図4】本開示の様々な態様による、通気式構成での注射器の断面図である。
【
図5】本開示の様々な態様による、通気式構成での
図4の注射器の断面図である。
【
図6】本開示の様々な態様による、通気式構成での
図4の注射器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示されている通気式注射器は、一方向弁を備えた吸気チャネルを組み込んでいる。吸気チャネルがプランジャ本体内に配置され、医療用流体を通気式注射器から直接IVに送出可能であり得る。通気式注射器から直接医療用流体を送出することにより、IVセットを簡略化及び削減することができ、コストを下げることができる。さらに、通気式注射器は、必要に応じて、医療用流体のプランジャによる送出に利用され得る。
【0011】
以下に示されている詳細な説明は、本技術の様々な構成の説明として意図しており、本技術が実施され得る唯一の構成を表すことは意図していない。詳細な説明には、本技術の完全な理解を可能にするための具体的な詳細が含まれている。しかし、本技術がこうした具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。場合によっては、本技術の概念を不明瞭にしないために、よく知られた構造体及び構成要素が、構成図の形式で示されている。理解を容易にするために、同じ構成要素には、同一の要素番号が付けられている。共通の要素の別個の例を示すために、参照番号に接尾辞の文字が付加されている場合があるが、包括的に添字のない同じ番号によって参照される。
【0012】
以下の説明は、開示されている通気式注射器を使用する、医療施術者による患者への医療用流体の投与に関するものであるが、この説明は使用法の実例にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。開示されている通気式注射器の様々な態様は、必要に応じて医療用流体のプランジャによる送出を可能にしながら、通気式注射器からの医療用流体の直接投与を実現することが望ましい、任意の用途で使用され得る。
【0013】
開示されている通気式注射器は、従来の特定の注射器について発見された、いくつかの課題を克服するものである。従来の特定の注射器の課題の1つは、中間ステップ又は構成要素がないと、従来の特定の注射器を使ったIV送出による医療用流体の投与ができないことである。追加のステップ及び/又は構成要素を使用すると複雑さが増すので、IV送出での従来の注射器の使用は望ましくない。
【0014】
したがって、本開示による、医療用流体の投与に必要な中間ステップ又は構成要素を不要にするか又は実質的に削減する、本明細書に記載の通気式注射器を提供することが有益である。開示されている通気式注射器は、医療用流体のプランジャによる送出を依然として可能にしながら、通気式注射器からの医療用流体のIV直接投与を可能にする、吸気チャネルを備えている。
【0015】
ここで、医療用流体のIV直接投与を可能にする、通気式注射器の実例を説明する。
【0016】
図1は、本開示の様々な態様による、注射器100の斜視図である。図示の実例では、通気式注射器100は、注射器本体110に対してプランジャ本体120を作動させることによって、又はIV点滴装置として機能することによって、医療用流体を投薬することができる。
【0017】
図示のように、プランジャ本体120は、注射器本体110に対して摺動可能である。いくつかの実施例では、注射器本体110は、注射器本体110に対するプランジャ本体120の回転する動きを抑制又は制限するために、プランジャ本体120の機構に係止され得る。いくつかの実施例では、プランジャ本体120は、注射器本体110に対して引き戻され、開口部又はコネクタ114を介して医療用流体を引き込むことができる。任意選択で、コネクタ114は、ルアー・コネクタを含む任意の好適な医療用コネクタであり得る。いくつかの実施例では、大気に対する注射器本体110内の圧力差又は真空状態が、引き込まれた医療用流体を通気式注射器100内に保持する。
【0018】
いくつかの用途では、注射器100内の医療用流体を排出するか、さもなければ投薬するために、プランジャ本体120は、注射器本体110に対して押し下げられ得る。プランジャ本体120は、注射器本体110内を摺動するか、さもなければ移動して、コネクタ114を介して医療用流体を投与することができる。
【0019】
いくつかの実施例では、プランジャ本体120は、プランジャ本体120の端部に親指パッド(サムパッド)122を備え、通気式注射器100の人間工学的操作を可能にする。さらに、注射器本体110は、臨床医が、プランジャ本体120を引き抜く動き、及びプランジャ本体120を圧縮する動きの両方の際に、注射器本体110に対してプランジャ本体120を動かすことを可能にする、注射器本体延在部112を備えることができる。
【0020】
いくつかの用途では、医療用流体が通気式注射器100に引き込まれた後、通気式注射器100は、IV点滴装置として医療用流体を投薬するか、さもなければプランジャ本体120を注射器本体110に対して作動させることなく、医療用流体を投薬するよう構成され得る。
【0021】
図示の実例では、プランジャ本体120の端部に配置されたキャップ124を取り外して、注射器本体110内の医療用流体を大気圧に曝すことができる。注射器本体110内の医療用流体を大気圧に曝すことにより、注射器本体110内の大気に対するどんな圧力差又は真空状態も均等化又は排することができ、コネクタ114を通る医療用流体のIV点滴又は流れを可能にする。
【0022】
有利なことには、キャップ124を閉位置にして通気式注射器100を操作することで、通気式注射器100は、注射器本体110に対してプランジャ本体120を作動させることによって、医療用流体を投与するよう利用され得る。さらに、プランジャ本体120からキャップ124を取り外すことにより、通気式注射器100は、IV点滴によって、医療用流体を投与するよう利用され得る。いくつかの実施例では、キャップ124は、親指パッド122内に配置されるか、又は親指パッド122の一部を形成する。任意選択で、キャップ124は、プランジャ本体120に圧入され得る。
【0023】
図2は、本開示の様々な態様による、
図1の注射器100の断面図である。図示のように、
図2は、組み立てられた位置における通気式注射器100を示している。
図3は、本開示の様々な態様による、図面の構成での注射器100の断面図である。
図2及び
図3を参照すると、通気式注射器100は、医療用流体140を注射器本体110内の注射器キャビティ115に引き込むために利用され得る。
【0024】
いくつかの用途では、流体を通気式注射器100に引き込むために、プランジャ本体120は、注射器本体110に対して引き戻される。プランジャ本体120を引き戻すことにより、プランジャ本体120の端部に連結されたプランジャ・シール126は、注射器本体110の注射器キャビティ115内を移動して、注射器ボリューム116を拡大する。いくつかの実施例では、プランジャ・シール126は、注射器キャビティ115の内壁と密封係合して、注射器キャビティ115内の注射器ボリューム116を共同で画定する。プランジャ・シール126は、伸縮性且つ/又は弾性のシールであり得る。引き込むプロセスで、プランジャ本体120及びプランジャ・シール126を引き戻すことにより、注射器ボリューム116が拡大する。
【0025】
注射器ボリューム116が拡大すると、注射器ボリューム116内が、負の圧力差又は真空状態になる。コネクタ114と比較した注射器ボリューム116内の圧力差のために、医療用流体140が、コネクタ114から注射器ボリューム116に引き込まれる。医療用流体140が、バイアル又は他の任意の好適な容器からコネクタを介して引き込まれ得る。いくつかの用途では、通気式注射器100は、医療用流体140を事前に充填され得る。
【0026】
流体を引き込むプロセスで、一方向弁128は、医療用流体140が吸気チャネル130に入り、フィルタ132に接触するのを防止することができる。図示のように、吸気チャネル130は、プランジャ・シール126に隣接するプランジャ本体120の一方の端部から、親指パッド122に隣接するプランジャ本体120の反対側の端部まで延在する。
【0027】
吸気チャネル130は、IV点滴機能が望まれる場合、注射器ボリューム116への空気の流れ又は圧力の均等化を円滑にすることができるが、吸気チャネル130への医療用流体140の流入は望ましくない場合がある。いくつかの用途では、フィルタ132の汚染又は目詰まり、医療流体140の汚染を防止するために、且つ/又は医療用流体140の通気式注射器の100の外への移動を抑制するために、医療用流体140が吸気チャネル130に入るのを抑制又は止めることが望ましい。
【0028】
図示の実例では、一方向弁128は、医療用流体140が注射器ボリューム116から吸気チャネル130に引き込まれるのを抑制することができる。操作中、一方向弁128は、プランジャ・シール126が注射器本体110内に引き戻されるとき、吸気チャネル130への流入を抑制するために、閉じること又は萎む(collapse;潰れる)ことができる。いくつかの実施例では、一方向弁128は、注射器ボリューム116から吸気チャネル130への逆流を防止するダックビル弁であり得る。任意選択で、一方向弁128は、プランジャ・シール126と一体的に形成され得る。
【0029】
引き込むプロセスの後、注射器ボリューム116からコネクタ114までの圧力差が、医療用流体140が注射器ボリューム116内に留まることを可能にする。図示のように、キャップ124は、空気流が吸気チャネル130に入り、注射器ボリューム116内の圧力差を均等化するのを、それが必要になるまで防止することができる。
【0030】
図4~
図6は、本開示の様々な態様による、通気式構成での注射器100の断面図である。
図4~
図6に示されているように、通気式注射器100は、注射器ボリューム116に保持又は貯留された医療用流体のIV投与を可能にし得る。
【0031】
操作中、キャップ124が、吸気チャネル130の端部から取り外され、吸気チャネル130は、空気流及び/又は大気圧を受容することができる。図示されているように、キャップ124は、プランジャ本体120の親指パッド122から取り外され得る。キャップ124は、親指パッド122に形成された受部123と解放可能に係合され得る。任意選択で、キャップ124は、キャップ124が吸気チャネル130から外れているとき、テザー(繋ぎ部)125によって保持され得る。
【0032】
キャップ124を取り外すと、吸気チャネル130は、通気式注射器100の周囲の大気と、医療用流体140を収める注射器ボリューム116との間の流体連通を可能にし得る。吸気チャネル130を介して取り込まれる大気圧は、注射器ボリューム116内の圧力を均等化するか、さもなければ真空状態を解除し、医療用流体140がコネクタ114を通って出るか又は滴り落ちることを可能にし得る。いくつかの実施例では、通気式注射器100は、患者への流れを可能にするために、注入ポンプに連結されるか又は患者より上に配置され得る。
図6に示されているように、流れは、医療用流体140がすべて投与されるまで、継続することができる。
【0033】
いくつかの実施例では、吸気チャネル130は、プランジャ本体120と一体的に形成される。任意選択で、吸気チャネル130は、プランジャ本体120とは別個に形成されてもよい。吸気チャネル130は、概して円形の断面プロファイルを持つことができる。任意選択で、吸気チャネル130は、一様でない断面プロファイルを持っていてもよい。
【0034】
いくつかの実施例では、注射器ボリューム116に取り込まれる空気流は、一方向弁128を通過することができる。一方向弁128は、大気から吸気チャネル130を通って注射器ボリューム116に空気が流れるのを可能にするよう構成され得る。いくつかの実施例では、一方向弁128は、弁の平坦な部分を通って流れるのを可能にし得るダックビル弁である。
【0035】
いくつかの実施例では、吸気チャネル130は、吸気チャネル130を通過する空気流を濾過するフィルタ132を備えることができる。フィルタ132は、汚染物質が医療用流体140に入るのを防止しながら、空気が吸気チャネルを通って流れるのを可能にする、任意の好適なフィルタであり得る。
【0036】
本開示は、いかなる当業者も、本明細書で説明されている様々な態様を実施できるようにするために提示されている。本開示は、本技術の様々な実例を提示し、本技術は、こうした実例に限定されるものではない。こうした態様に対する様々な修正が、当業者には容易に明らかとなろう。そして本明細書で定義された概括的な原理は、他の態様にも適用され得る。
【0037】
単数形の要素への言及は、特にそのように明記されていない限り、「1つだけ」ではなく、むしろ「1つ又は複数」を意味することを意図している。特に明記されていない限り、「いくつかの」という用語は、1つ又は複数を指す。男性の代名詞(例えば、彼の)には、女性及び中性(例えば、彼女の、及びその)が含まれ、逆も同様である。見出し及び小見出しは、もしあれば、便宜上でしか使用されておらず、本発明を限定するものではない。
【0038】
「例示的な」という単語は、本明細書では、「実例又は例示として機能する」ことを意味するように使用されている。「例示的な」として本明細書で説明されているどの態様又は設計も、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。一態様では、本明細書に記載の様々な代替構成及び動作は、少なくとも同等であると見なされ得る。
【0039】
「態様(aspect;観点)」などの句は、かかる態様が本技術に不可欠であること、又はかかる態様が本技術のすべての構成に適用されることを示唆するものではない。一態様に関する開示は、すべての構成、又は1つ若しくは複数の構成に適用され得る。一態様が、1つ又は複数の実例を提示することがある。態様などの句は、1つ又は複数の態様を指す場合があり、その逆もある。「実施例」などの句は、かかる実施例が本技術に不可欠であること、又はかかる実施例が本技術のすべての構成に適用されることを示唆するものではない。一実施例に関する開示は、すべての実施例、又は1つ若しくは複数の実施例に適用され得る。一実施例が、1つ又は複数の実例を提示することがある。かかる実施例という句は、1つ又は複数の実施例を指す場合があり、その逆もある。「構成」などの句は、かかる構成が本技術に不可欠であること、又はかかる構成が本技術のすべての構成に適用されることを示唆するものではない。一構成に関する開示は、すべての構成、又は1つ若しくは複数の構成に適用され得る。一構成が、1つ又は複数の実例を提示することがある。かかる構成という句は、1つ又は複数の構成を指す場合があり、その逆もある。
【0040】
一態様において、特に明記しない限り、この明細書に記載されているすべての測定値、値、定格、位置、大きさ、サイズ、及び他の仕様は、以下の特許請求の範囲にあるものを含め、概算であり、正確ではない。一態様では、それらは、それらが関連する機能、及びそれらが関連する当該分野において慣習的であるものと一致する、合理的な範囲を持つことを意図している。
【0041】
一態様では、「連結される」などの用語は、直接連結されていることを指し得る。別の態様では、「連結される」などの用語は、間接的に連結されていることを指す場合がある。
【0042】
「上部」、「底部」、「前部」、「後部」などの用語は、この開示で使用されている場合、通常の重力による座標系ではなく、任意の座標系を指すものと理解されたい。したがって、上面、底面、前面、及び後面は、重力による座標系における上方へ、下方へ、斜めに、又は水平に広がることができる。
【0043】
様々なものが、本技術の範囲から逸脱することなく、すべて様々に配置され得る(例えば、様々な順序で配置される、又は様々なやり方で分割される)。当業者に知られている、又は後に当業者に知られるようになる、この開示全体にわたって説明されている様々な態様の要素に対する、すべての構造的同等物及び機能的同等物は、参照により明示的に本明細書に組み入れられ、特許請求の範囲に包含されることを意図している。さらに、本明細書で開示されているものは、かかる開示が特許請求の範囲に明示的に列挙されているかどうかにかかわらず、公共に捧げられることを意図しない。クレーム要素は、「~する手段」という句を使用して要素が明示的に列挙されていない限り、又は方法クレームの場合、「~するステップ」という句を使用して要素が列挙されていない限り、米国特許法第112条6項の条項に基づいて解釈されるべきではない。さらに、「含む」、「持つ」などの用語が使用される範囲内において、かかる用語は、「有する」という用語が、「有する」がクレームの中で転換語として使用されるときに解釈されるのと同様の形で、包括的であることを意図している。
【0044】
本開示の発明の名称、背景技術、発明の概要、図面の簡単な説明、及び要約は、ここで本開示に組み入れられ、限定的な説明としてではなく、本開示の例示的な実例として提示されている。これらは、特許請求の範囲又は意味を制限するために使用されないという理解の許に提示されている。加えて、課題を解決するための手段では、説明は例示的な実例を提示し、様々な特徴は、様々な実施例において、本開示を合理化するために一体にグループ化されていることが理解されよう。開示のこの方法は、請求された主題が、各クレームに明示的に列挙されているものよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の主題は、開示されている単一の構成又は動作のすべての特徴にあるわけではない。以下の特許請求の範囲は、ここで課題を解決するための手段に組み入れられ、各クレームは、別個に請求される主題として独自に成り立つ。
【0045】
特許請求の範囲は、本明細書に記載の態様に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の言語と一致する全範囲を与えられ、すべての法的同等物を包含するべきである。それにもかかわらず、特許請求の範囲のいずれも、米国特許法第101条、102条、又は103条の要件を満たさない主題を包含することを意図するものではなく、そのように解釈されるべきではない。
【国際調査報告】