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特表2022-522001遺伝子編集用細胞膜透過性コンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(54)【発明の名称】遺伝子編集用細胞膜透過性コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220406BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20220406BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20220406BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220406BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220406BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220406BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220406BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220406BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220406BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C07K14/00 ZNA
A61K38/46
A61K38/16
A61P43/00 105
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/42
A61K47/02
A61K47/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550111
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2020055201
(87)【国際公開番号】W WO2020174070
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】1902648.3
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521378196
【氏名又は名称】サイカ・オンコソリューションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CYCA ONCOSOLUTIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】THE RUBICON CENTRE, CIT CAMPUS, BISHOPSTOWN, CORK, T12 Y275, IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】サンガミトラ,ヌスラット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076DD21
4C076DD49
4C076DD63
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA20
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA23
4C084DC22
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB211
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
ゲノム編集システムの1つ以上の分子またはゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードするプラスミドのいずれかに連結された組換えβらせんタンパク質を含む標的ポリヌクレオチドを改変するためのゲノム編集複合体であって、βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、ゲノム編集複合体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム編集システムの1つ以上の分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む標的ポリヌクレオチドを改変するためのゲノム編集複合体であって、前記βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、ゲノム編集複合体。
【請求項2】
ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードするプラスミドに連結された組換えβらせんタンパク質を含む標的ポリヌクレオチドを改変するためのゲノム編集複合体であって、前記βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、ゲノム編集複合体。
【請求項3】
前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子が、
a.RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、
b.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、
c.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、
d.DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、
e.ホーミングエンドヌクレアーゼ、
f.インテグラーゼ、からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載のゲノム編集複合体。
【請求項4】
前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子が、RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)である、請求項3に記載のゲノム編集複合体。
【請求項5】
前記RNAガイド型エンドヌクレアーゼが、Cas9である、請求項3または請求項4に記載のゲノム編集複合体。
【請求項6】
前記gRNAが、前記標的ポリヌクレオチド中の標的配列に相補的な配列を有する、請求項3または請求項4に記載のゲノム編集複合体。
【請求項7】
前記改変が、前記標的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換である、請求項1~6のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項8】
前記βらせんタンパク質が、5nm~25nmの範囲の長さ、および1nm~5nmの範囲の幅を有する概ね四角形の先端形状を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項9】
前記βらせんタンパク質が、アルギニンラダー、リジンラダー、アスパラギンラダー、アスパラギン酸ラダー、およびグルタミン酸ラダーからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸ラダー構造を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項10】
存在する場合、前記アルギニンラダーが、10~20個のアルギニン残基を含み、前記リジンラダーが、10~30個のリジン残基を含み、前記アスパラギンラダーが、10~40個のアスパラギン残基を含み、前記アスパラギン酸ラダーが、10~40個のアスパラギン酸残基を含み、前記グルタミン酸ラダーが、10~40個のグルタミン酸残基を含む、請求項9に記載のゲノム編集複合体。
【請求項11】
前記βらせんタンパク質が、ゼロ未満である総電荷を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項12】
前記βらせんタンパク質が、-20~-60の総電荷を有する、請求項11に記載のゲノム編集複合体。
【請求項13】
前記βらせんタンパク質が、原子間力顕微鏡法によって測定された場合、0.2~12N/mの硬さパラメータKを有するβらせん構造(ベータヘリックス)を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項14】
前記βらせんタンパク質が、ペンタペプチドリピートタンパク質である、請求項1~13のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項15】
前記βらせんタンパク質が、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む、請求項14に記載のゲノム編集複合体。
【請求項16】
前記βらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される、請求項1~13のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項17】
前記組換えβらせんタンパク質が、非共有相互作用によって、前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子または前記プラスミドに連結されている、請求項1~16のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項18】
前記非共有相互作用が、水素結合、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項17に記載のゲノム編集複合体。
【請求項19】
前記組換えβらせんタンパク質が、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンジアミン、ペプチド、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子を介して、前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子または前記プラスミドに連結される、請求項1~17のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項20】
前記リンカー分子がペプチドである場合、前記ペプチドが、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を含む、請求項19に記載のゲノム編集複合体。
【請求項21】
前記リンカーが、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって前記組換えβらせんタンパク質に連結されている、請求項1~20のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項22】
前記組換えβらせんタンパク質が、エステル結合またはアミド結合を介して、前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子、または前記プラスミドに連結されている、請求項1~21のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項23】
前記ゲノム編集複合体が、シグナル配列をさらに含み、前記シグナル配列が、特定の細胞または細胞の一部に前記ゲノム編集複合体を向ける、請求項1~22のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項24】
前記シグナル配列が、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17からなる群から選択される、請求項23に記載のゲノム編集複合体。
【請求項25】
前記ゲノム編集複合体が、ホスファチジルコリン分子をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項26】
前記ゲノム編集複合体が、前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子または前記プラスミドを、細胞小器官、核、およびP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞からなる群から選択される位置へ移入させる、請求項23~25のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項27】
前記ゲノム編集複合体が、ゲノム編集に使用される、請求項1~26のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
【請求項28】
請求項1に記載のゲノム編集複合体を調製する方法であって、組換えβらせんタンパク質を、1つ以上のゲノム編集システム分子と組み合わせることを含み、前記βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、方法。
【請求項29】
前記1つ以上のゲノム編集システム分子が、前記組換えβらせんタンパク質と1つ以上のゲノム編集システム分子との間の複合体形成を安定化する分子を含有する反応緩衝液中にある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項2に記載のゲノム編集複合体を調製する方法であって、組換えβらせんタンパク質を、プラスミドと組み合わせることを含み、前記βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、方法。
【請求項31】
ゲノム編集システムの1つ以上の分子を細胞に移入させるためのプロセスであって、前記プロセスが、
a)前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子を組換えβらせんタンパク質に連結して、ゲノム編集複合体を得ることと、
b)前記ゲノム編集複合体を、少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、
工程(b)の前記ゲノム編集複合体を接触させることが、前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子を細胞に移入させ、前記βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、プロセス。
【請求項32】
前記プロセスが、工程(b)の後に、
c)前記細胞内の前記ゲノム編集複合体の前記移入を検出することを含む、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードするプラスミドを細胞に移入させるためのプロセスであって、前記プロセスが、
d)前記プラスミドを組換えβらせんタンパク質に連結して、ゲノム編集複合体を得ることと、
e)前記ゲノム編集複合体を、少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、
工程(b)の前記ゲノム編集複合体を接触させることが、前記プラスミドを前記細胞に移入させ、前記βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、プロセス。
【請求項34】
前記プロセスが、工程(e)の後に、
f)前記細胞内の前記ゲノム編集複合体の前記移入を検出することを含む、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子が、
a.RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、
b.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、
c.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、
d.DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、
e.ホーミングエンドヌクレアーゼ、
f.インテグラーゼからなる群から選択される、請求項31~34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子が、RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)である、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記RNAガイド型エンドヌクレアーゼが、Cas9である、請求項35または36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記gRNAが、標的ポリヌクレオチド中の標的配列に相補的な配列を有する、請求項35~37のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記改変が、前記標的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換である、請求項29~34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項40】
工程a)においてゲノム編集複合体を得るために、前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子を組換えβらせんタンパク質に連結することが、前記組換えβらせんタンパク質と前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子との間の複合体形成を安定化する分子を含有する反応緩衝液中で行われ、かつ/または前記ゲノム編集システムの1つ以上の分子の前記細胞への前記移入が、無血清培地中で行われる、請求項31または請求項32に記載のプロセス。
【請求項41】
前記βらせんタンパク質が、5nm~25nmの範囲の長さ、および1nm~5nmの範囲の幅を有する概ね四角形の先端形状を有する、請求項31~40のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記βらせんタンパク質が、アルギニンラダー、リジンラダー、アスパラギンラダー、アスパラギン酸ラダー、およびグルタミン酸ラダーからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸ラダー構造を含む、請求項31~41のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項43】
存在する場合、前記アルギニンラダーが、10~20個のアルギニン残基を含み、前記リジンラダーが、10~30個のリジン残基を含み、前記アスパラギンラダーが、10~40個のアスパラギン残基を含み、前記アスパラギン酸ラダーが、10~40個のアスパラギン酸残基を含み、前記グルタミン酸ラダーが、10~40個のグルタミン酸残基を含む、請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記βらせんタンパク質が、ゼロ未満である総電荷を有する、請求項31~43のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項45】
前記βらせんタンパク質が、-20~-60の総電荷を有する、請求項43に記載のプロセス。
【請求項46】
前記βらせんタンパク質が、原子間力顕微鏡法によって測定された場合、0.2~12N/mの硬さパラメータKを有するβらせん構造(ベータヘリックス)を有する、請求項31~45のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項47】
前記βらせんタンパク質が、ペンタペプチドリピートタンパク質である、請求項31~46のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項48】
前記βらせんタンパク質が、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む、請求項47に記載のプロセス。
【請求項49】
前記βらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される、請求項31~46のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項50】
前記ゲノム編集複合体が、請求項1~27のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体である、請求項31~49のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項51】
前記細胞が、真核細胞、原核細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項31~50のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項52】
前記真核細胞が、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、または魚類細胞である、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
細胞中の標的ポリヌクレオチドを改変する方法であって、前記細胞を請求項1~27のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体と接触させることを含み、前記ゲノム編集複合体が、前記標的ポリヌクレオチド中の配列を標的とする、方法。
【請求項54】
請求項1~27のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体を含む医薬組成物。
【請求項55】
個体における疾患を治療する方法であって、前記個体に、有効量の、請求項54に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項56】
遺伝子編集のための、請求項1~27のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体の使用。
【請求項57】
遺伝子治療のための、請求項1~27のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞の細胞質への1つ以上の遺伝子編集分子の送達の分野に広く関係し、特に、細胞膜を透過するための1つ以上の遺伝子編集分子に連結された組換えタンパク質を含むコンジュゲート、該コンジュゲートを調製する方法、およびその使用を開示する。本開示はまた、細胞膜を透過するための1つ以上の遺伝子編集分子をコードする核酸またはプラスミドに連結された組換えタンパク質を含むコンジュゲート、該コンジュゲートを調製する方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞膜は、細胞の内部環境をその外部環境から分離する半透膜である。原核細胞および真核細胞の膜は、いくつかの特性および組成が異なるが、どちらもリン脂質の半透性二重層構造を構成している。細胞膜の半透性の性質が、細胞膜を透過することができる分子の種類に対して細胞膜を選択的にする。細胞膜を透過することができるこれらの分子は、細胞標識、細胞透過、細胞送達、薬物取り込み、遺伝子治療、および細胞膜の透過を伴う他の多くの用途での使用に有望である。
【0003】
細胞膜を透過して細胞質ゾルに転位することができる特定のペプチドがあり、このようなペプチドは細胞透過性ペプチド(CPP)と呼ばれている。CPPが1つ以上の機能性分子に結合しているCPPコンジュゲートは、膜を横切って様々な生物学的に活性な分子を輸送する手段として研究されてきた。例えば、インスリンの吸収は、CPPコンジュゲートであるCPP-インスリンで処置した場合、Caco-2細胞で劇的に増加した(6~8倍)(Liang et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.;2005;335(3):734-738)。Tatペプチドを含むコンジュゲートについても同様の結果が見られた(同上)。別の研究では、膜を透過していくつかの細胞株に様々なペプチドおよびタンパク質を送達できる短い両親媒性ペプチド担体Pep-1の使用が報告されている(Morris et al.,Nature Biotechnol.,2001,1173-1176)。
【0004】
CPPは、CPPの特性により、薬物単独よりも効率的に細胞膜を透過できる薬物-CPPコンジュゲートとして様々な抗癌剤の効率的な送達を研究するためにも使用されている。1つのこのような研究は、固形腫瘍を治療するための、CK2阻害剤(P15)とコンジュゲートしたTatタンパク質の使用を報告している(Perea et al.,Cancer Res.2004,7127-7129)。
【0005】
細胞膜を横切って分子を送達できるいくつかの分子輸送体もある。ペプチド剤および非ペプチド剤を含むグアニジニウムリッチの分子輸送体(GR-MoTrs)は、グアニジニウム基の数および空間配列により、細胞膜に浸透することが示されている。GR-MoTrsは、哺乳動物細胞内の小分子、金属、造影剤、鉄粒子、およびタンパク質など、様々なカーゴの送達を増強することができる(Wender et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.2008,452-472;Wender et al.,Drug Discov.Today Technol.2012,e49-e55)。
【0006】
US2013/0137644は、細胞透過性ペプチドと、核酸と、細胞膜をより効率的に透過することができる親水性ポリマーと、から構成されるコンジュゲートを開示している。コンジュゲートで使用される核酸は、親水性ポリマーとしてポリエチレングリコール(PEG)を有する、好ましくはsiRNAであると記載されている。
【0007】
US2004/0176282は、核酸、ポリペプチド、フルオロフォア、分子複合体の細胞送達のための組成物の方法および使用を開示している。細胞透過後の生物学的に活性な分子の細胞内放出は、複合体の光活性化分散によって刺激される。このシステムは、複合体の一部でありながら分子の生物学的機能を抑制するのに役立つが、細胞内に入り、光が活性化されると、分散して生物学的活性を回復することができる。
【0008】
すべての機能性分子の細胞への送達に加えて、かつそれに一般的なのは、細胞送達のために開発されたメカニズムのほとんどが、細胞内への侵入を得るためのエンドサイトーシス依存性メカニズムに依存しているということである。転位の効率は、例えば、薬物がエンドソームに閉じ込められたり、リソソームで分解されたりする可能性があるため、エンドサイトーシス依存性経路における主要な懸念分野である。したがって、より信頼性が高く、効果的であり得る、細胞膜を透過するための新規なメカニズムを考案する差し迫った必要性がある。
【0009】
細胞膜バリアを横切る機能性分子を伴う有望で広く使用されている技術の一例は、生体のゲノムでDNAを編集する(すなわち、1つ以上のヌクレオチドを挿入、欠失、改変、または置換する)ゲノム工学である。
【0010】
ゲノム工学の1つのタイプは、遺伝子治療である。遺伝子治療は、遺伝子の異常な活性を補うため、または有益なタンパク質を提供するために、目的の遺伝子を細胞に送達することを伴う。遺伝子治療は、数ある中でも、慢性リンパ性白血病、X連鎖SCID、多発性骨髄腫、血友病などの疾患の治療に有益であることが証明されている。多くの生命を脅かす疾患は、根底にある遺伝的原因を有しており、すなわち、疾患は、1つ以上の関連遺伝子によって示される機能不全または適切な機能の欠如によるものである。遺伝子治療は、このような病状の治療に有望であることが示されている。しかしながら、遺伝子治療は、細胞膜を横切って必要な遺伝子を送達するという点で依然として課題に直面している。現在まで、遺伝子を送達するための2つのアプローチが使用されており、これはウイルスベースおよび非ウイルスベースである。
【0011】
遺伝子治療のためのウイルスベースのアプローチは、所望の遺伝子がクローン化され、形質導入として知られるプロセスを介して必要な細胞に移入されるベクターとして弱毒化ウイルスを利用する。このアプローチには、送達された遺伝子が細胞のゲノムに適切に組み込まれるという利点があるが、他の欠点もあり、その1つは、不適切なゲノム組み込みの場合に癌を誘発する傾向である。非ウイルスベースのアプローチには、単離されたDNAの細胞への注入の使用、およびプラスミドDNAを取り囲むためのカチオン性脂質の使用(リポフェクション)が含まれる。非ウイルスアプローチは、遺伝子をゲノムに組み込む必要がなく、必要な遺伝子を組織内の他の細胞に移入するのに非効率的である。したがって、遺伝子治療は、多くの生命を脅かす障害を治療するための有望で優れた技術であるが、細胞への遺伝子の送達の問題に悩まされている。
【0012】
嚢胞性線維症または筋ジストロフィーなどの最も一般的な遺伝性疾患の場合、遺伝物質を細胞に送達することが難しいため、効果的な遺伝子治療は依然として課題である可能性がある。肺上皮または骨格筋などの組織の細胞のかなりの割合に遺伝子を送達する簡単な方法はまだない(Collins et al.,Proc.R.Soc.B.Vol.282.No.1821.The Royal Society,2015)。したがって、遺伝子治療の利点を大幅に増強し、多くの生命を脅かす疾患に有望な治療を提供するための道を広げることができる細胞送達の効果的なメカニズムが必要である。
【0013】
機能性分子が細胞膜バリアを横切る必要があるさらなるタイプのゲノム工学は、遺伝子またはゲノム編集である。ゲノム編集により、典型的には操作されたヌクレアーゼを使用して、ゲノム内の目的の位置に部位特異的な二本鎖切断を作成することができる。次に、これらの切断は、非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え(HR)または相同組換え修復(HDR)によって修復され、ゲノムの部位特異的変異または「編集」をもたらす。既知の操作されたヌクレアーゼには、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、ホーミングエンドヌクレアーゼ(ARCヌクレアーゼ(商標)など)、またはDNAガイド型エンドヌクレアーゼなどの核酸ガイド型エンドヌクレアーゼ、および限定されないが、エンドヌクレアーゼCas9に主に基づく、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)システムなどのRNAガイド型エンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0014】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ユーザーが指定した場所でDNAに二本鎖切断を作成することにより、ゲノムの標的を絞った編集を容易にする、操作されたDNA結合タンパク質の部類である。各ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、2つの機能ドメインからなり、1つ目はa)2本のフィンガーモジュールの鎖で構成されるDNA結合ドメインであり、それぞれがDNAの固有の六量体(6bp)配列を認識する。2本のフィンガーモジュールをつなぎ合わせて、それぞれが≧24bpの特異性を有する、ジンクフィンガータンパク質を形成する。2つ目はb)FokIのヌクレアーゼドメインから構成されるDNA切断ドメインである。DNA結合ドメインとDNA切断ドメインが一緒に融合すると、特異性の高い「ゲノムはさみ」の対が作成される。
【0015】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))技術は、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生成された人工制限酵素を活用する。制限酵素は、特定の配列においてDNA鎖を切断する酵素である。転写活性化因子様エフェクター(TALEN(登録商標))は、実質的に任意の所望のDNA配列に結合するように迅速に操作することができる。このように操作されたTALEN(登録商標)をDNA切断ドメイン(DNA鎖を切断する)と組み合わせることにより、任意の所望のDNA配列を特異的に切断する制限酵素を操作することができる。これらの制限酵素が細胞に導入されると、遺伝子編集またはその場でのゲノム編集に使用することができる。
【0016】
CRISPR遺伝子編集は、エンドヌクレアーゼ、典型的にはCasまたはCpf1エンドヌクレアーゼ、および該ヌクレアーゼを特定のゲノム配列に向ける能力を有する1つ以上のガイドRNA(gRNA)分子を含む多成分分子システムを利用する。gRNAがゲノム配列をハイブリダイズする場合、エンドヌクレアーゼはDNA鎖を切断するように作用する。合成gRNAと複合体を形成したCas9ヌクレアーゼを細胞に送達することにより、細胞のゲノムを所望の位置で切断し、既存の遺伝子を除去し、かつ/または新しい遺伝子を追加することができる(Ledford,H.,Nature,2015,522,7554;Zetsche et al.,Cell,2015,163(3),759-771)。
【0017】
CRISPR技術の重要な工程は、gRNAおよびエンドヌクレアーゼ(Cas9など)を標的細胞の細胞質および/または核に送達させることである。核酸の細胞への送達はトランスフェクションと呼ばれる。gRNAおよびCas9が、DNA、RNA、または事前に複合体化されたRNAおよびリボ核タンパク質(RNP)と呼ばれるタンパク質のいずれかとして導入することができる。複数の細胞バリア(例えば、原形質膜、核膜)を横切って異物を輸送することは課題である。
【0018】
トランスフェクション法は、物理的、化学的、およびウイルス媒介のカテゴリーに大まかに分類することができる。それぞれの方法には、効率、スループット、機器、スキル、およびコストに関して、様々な長所および短所がある。トランスフェクション法の選択は、CRISPR構成要素のフォーマットにも依存する。
【0019】
RNAを有するCas9酵素を含む事前に形成されたリボ核タンパク質(CRISPR-RNP)としてのCRISPR遺伝子編集機構の転位は、遺伝子編集の前にさらなる転写または翻訳が必要ないことを意味する。これにより、必要な手順が少なくなるため、編集を迅速に行うことができる。これは、CRISPR構成要素が細胞に導入されているが、ガイドRNAまたはCas9をコードするDNAが細胞のゲノムに組み込まれていない一過性トランスフェクションなど、いくつかの状況で役立つ場合がある。CRISPR-Cas9は、限られた期間だけ細胞のゲノムDNAを切断することができる。しかしながら、細胞膜を横切るこのような大きく多様な高分子のセットの転位は、細胞膜を横切る移入の効率に関して特有の課題を提示する。
【0020】
アデノ随伴ウイルス粒子は一般に遺伝子送達剤として使用されてきたが、安全性の問題および積載容量の制限により、ウイルス担体は理想的ではない送達媒体である(Swiech et al.,Nat.Biotechnol.,2015,33,102-106)。ゲノム編集システム分子を送達する非ウイルス性手段には、いくつか例を挙げると、脂質ベースのベクター、脂質ナノ粒子、ポリマーベクター、ポリエチレンイミン、およびポリ(L-リジン)が含まれるが、インビボでのゲノム編集の適用(CRISPRツールを使用することによるなど)は、現在使用されている送達アプローチの制限のため、依然として課題である(Li et al.,Human Gene Therapy,2015,26(7),452-462、Wang et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences,2016,113(11),2868-2873)。
【0021】
細胞透過性ペプチドは、CRISPR遺伝子編集機構を細胞に輸送することも知られている。WO2017/205846は、CRISPR-RNPのトランスフェクションを促進するための細胞透過性ペプチドVEPEP-3a/bおよびADGN-100a/bの使用について記載している。しかしながら、細胞透過性ペプチドVEPEP-9およびCADYは中程度の結合剤にすぎず、細胞透過性ペプチドVEPEP-6は標識Cas9および標識Cas9-gRNA複合体との相互作用が不十分であることが明らかになっている。したがって、CPPの選択が、遺伝子編集機構のトランスフェクションの効率にとって不可欠な決定要因であることは明らかである。遺伝子編集のために文献で使用されている細胞透過性ペプチドは、正に帯電したCPPと負に帯電したCas9-gRNA複合体との間の強い静電相互作用によるCas9の免疫反応性および反応性の破壊により、インビボでは限られた使用の可能性を有する(Analytical Biochemistry 345(2005)55-65,Int.J.Mol.Sci.2016,17,626;doi:10.3390/ijms17050626)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0137644号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0176282号
【特許文献3】国際公開第2017/205846号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Liang et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.;2005;335(3):734-738
【非特許文献2】Morris et al.,Nature Biotechnol.,2001,1173-1176
【非特許文献3】Perea et al.,Cancer Res.2004,7127-7129
【非特許文献4】Wender et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.2008,452-472
【非特許文献5】Wender et al.,Drug Discov.Today Technol.2012,e49-e55
【非特許文献6】Collins et al.,Proc.R.Soc.B.Vol.282.No.1821.The Royal Society,2015
【非特許文献7】Ledford,H.,Nature,2015,522,7554;Zetsche et al.,Cell,2015,163(3),759-771
【非特許文献8】Swiech et al.,Nat.Biotechnol.,2015,33,102-106
【非特許文献9】Li et al.,Human Gene Therapy,2015,26(7),452-462
【非特許文献10】Wang et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences,2016,113(11),2868-2873
【非特許文献11】Analytical Biochemistry 345(2005)55-65
【非特許文献12】Int.J.Mol.Sci.2016,17,626;doi:10.3390/ijms17050626
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
当該技術分野において、様々な細胞膜を介した遺伝子編集機構の移入を容易にするための改善されたまたは代替の効率的な手段が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
(発明の概要)
本主題のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することにより、よりよく理解されるであろう。この概要は、簡略化された形式で概念の選択を紹介するために提供されている。この概要は、主張された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、主張された主題の範囲を制限するために使用されることも意図されていない。
【0026】
第1の態様では、本発明は、ゲノム編集システムの1つ以上の分子に連結された組換えβらせん(helical)タンパク質の部類を含む標的ポリヌクレオチドを改変するためのゲノム編集複合体を提供し、βらせんタンパク質の長さは、5nm~25nmの範囲であり、幅は、1nm~5nmの範囲である。
【0027】
第2の態様では、本発明は、ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードするプラスミドに連結された組換えβらせんタンパク質を含む標的ポリヌクレオチドを改変するためのゲノム編集複合体を提供し、βらせんタンパク質の長さは、5nm~25nmの範囲であり、幅は、1nm~5nmの範囲である。
【0028】
実施形態では、ゲノム編集システムの1つ以上の分子は、以下からなる群から選択される。
a.RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、
b.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、
c.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、
d.DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、
e.ホーミングエンドヌクレアーゼ、
f.インテグラーゼ。
【0029】
好適には、ゲノム編集システムはCRISPR-Cas9である。
【0030】
実施形態では、gRNAは、標的ポリヌクレオチド中の標的配列に相補的な配列を有する。
【0031】
実施形態では、ゲノム編集から生じる改変は、標的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換である。
【0032】
実施形態では、βらせんタンパク質は、5nm~25nmの範囲の長さ、および1nm~5nmの範囲の幅を有する概ね四角形の先端形状を有する。
【0033】
実施形態では、βらせんタンパク質は、アルギニンラダー、リジンラダー、アスパラギンラダー、アスパラギン酸ラダー、およびグルタミン酸ラダーからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸ラダー構造を含む。
【0034】
実施形態では、アルギニンラダーは、10~20個のアルギニン残基を含み、リジンラダーは、10~30個のリジン残基を含み、アスパラギンラダーは、10~40個のアスパラギン残基を含み、アスパラギン酸ラダーは、10~40個のアスパラギン酸残基を含み、グルタミン酸ラダーは、10~40個のグルタミン酸残基を含む。
【0035】
実施形態では、βらせんタンパク質は、ゼロ未満の総電荷を有する。
【0036】
実施形態では、βらせんタンパク質は、-20~-60の総電荷を有する。
【0037】
実施形態では、βらせんタンパク質は、原子間力顕微鏡法によって測定された場合、硬さパラメータK(ベータヘリックス)0.2~12N/mを有するβらせん構造を有する。
【0038】
実施形態では、βらせんタンパク質は、ペンタペプチドリピートタンパク質である。
【0039】
実施形態では、βらせんタンパク質は、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む。
【0040】
実施形態では、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される。
【0041】
実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、非共有相互作用によって、ゲノム編集システムの1つ以上の分子またはプラスミドに連結されている。
【0042】
実施形態では、非共有相互作用は、水素結合、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0043】
実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンジアミン、ペプチド、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子を介して、ゲノム編集システムの1つ以上の分子またはプラスミドに連結される。
【0044】
実施形態では、リンカー分子がペプチドである場合、ペプチドは、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を含む。
【0045】
実施形態では、リンカーは、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0046】
実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、エステル結合またはアミド結合を介して、ゲノム編集システムの1つ以上の分子またはプラスミドに連結されている。
【0047】
実施形態では、ゲノム編集複合体は、シグナル配列をさらに含み、シグナル配列は、ゲノム編集複合体を特定の細胞または細胞の一部に向ける。
【0048】
実施形態では、シグナル配列は、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17からなる群から選択される。
【0049】
実施形態では、ゲノム編集複合体は、ホスファチジルコリン分子をさらに含む。
【0050】
実施形態では、ゲノム編集複合体は、ゲノム編集システムの1つ以上の分子またはプラスミドを、細胞小器官、核、およびP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞からなる群から選択される位置へ移入させる。
【0051】
実施形態では、ゲノム編集複合体は、ゲノム編集のために使用される。
【0052】
第3の態様では、本発明は、細胞透過性タンパク質を1つ以上のゲノム編集システム分子と組み合わせ、それによってゲノム編集複合体を形成することを含む、本発明の第1の態様のゲノム編集複合体を調製する方法を提供する。
【0053】
本発明の第3の態様の実施形態では、1つ以上のゲノム編集システム分子は、細胞透過性タンパク質とゲノム編集システムとの間の複合体形成を安定化する分子を含有する反応緩衝液中にある。反応緩衝液は、複合体の様々な成分間の静電相互作用を最適化するために、イオン強度に基づいて選択することができる。イオン強度は、緩衝液中の成分、例えば塩化ナトリウム(NaCl)の選択によって変化させてもよい。
【0054】
あるいは、第4の態様では、本発明は、細胞透過性タンパク質をプラスミドと組み合わせ、それによってゲノム編集複合体を形成することを含む、本発明の第2の態様のゲノム編集複合体を調製する方法を提供する。
【0055】
第5の態様では、本発明は、ゲノム編集システムの1つ以上の分子を細胞に移入させるためのプロセスを提供し、該プロセスは、
a)ゲノム編集システムの1つ以上の分子を組換えβらせんタンパク質に連結して、コンジュゲートまたはゲノム編集複合体を得ることと、
b)コンジュゲートまたはゲノム編集複合体を少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、
工程(b)のコンジュゲートまたはゲノム編集複合体を接触させることが、ゲノム編集システムの1つ以上の分子を細胞に移入させ、βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である。好適には、このプロセスは、工程(b)の後、細胞内のゲノム編集複合体の移入を検出することを含む。
【0056】
第6の態様では、本発明は、ゲノム編集システムの1つ以上の分子を細胞に移入させるためのプロセスを提供し、該プロセスは、
d)プラスミドを組換えβらせんタンパク質に連結して、コンジュゲートまたはゲノム編集複合体を得ることと、
e)コンジュゲートまたはゲノム編集複合体を少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、
工程(d)のコンジュゲートまたはゲノム編集複合体を接触させることが、プラスミドを細胞に移入させ、βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である。好適には、このプロセスは、工程(d)の後、細胞内のゲノム編集複合体の移入を検出することを含む。
【0057】
第5および第6の態様の実施形態では、ゲノム編集システムの1つ以上の分子は、以下からなる群から選択される。
a.RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、
b.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、
c.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、
d.DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、
e.ホーミングエンドヌクレアーゼ、
f.インテグラーゼ。
【0058】
実施形態では、ゲノム編集システムはCRISPR-Cas9である。
【0059】
実施形態では、gRNAは、標的ポリヌクレオチド中の標的配列に相補的な配列を有する。
【0060】
実施形態では、ゲノム編集から生じる改変は、標的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換である。
【0061】
実施形態では、工程a)においてゲノム編集複合体を得るために、ゲノム編集システムの1つ以上の分子を組換えβらせんタンパク質に連結することが、組換えβらせんタンパク質とゲノム編集システムの1つ以上の分子との間の複合体形成を安定化する分子を含有する反応緩衝液中で行われ、かつ/またはゲノム編集システムの1つ以上の分子の細胞への移入が、無血清培地中で行われる。
【0062】
実施形態では、βらせんタンパク質は、5nm~25nmの範囲の長さ、および1nm~5nmの範囲の幅を有する概ね四角形の先端形状を有する。
【0063】
実施形態では、βらせんタンパク質は、アルギニンラダー、リジンラダー、アスパラギンラダー、アスパラギン酸ラダー、およびグルタミン酸ラダーからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸ラダー構造を含む。
【0064】
実施形態では、存在する場合、アルギニンラダーは、10~20個のアルギニン残基を含み、リジンラダーは、10~30個のリジン残基を含み、アスパラギンラダーは、10~40個のアスパラギン残基を含み、アスパラギン酸ラダーは、10~40個のアスパラギン酸残基を含み、グルタミン酸ラダーは、10~40個のグルタミン酸残基を含む。
【0065】
実施形態では、βらせんタンパク質は、ゼロ未満の総電荷を有する。
【0066】
実施形態では、βらせんタンパク質は、-20~-60の総電荷を有する。
【0067】
実施形態では、βらせんタンパク質は、原子間力顕微鏡法によって測定された場合、0.2~12N/mの硬さパラメータKを有するβらせん構造(ベータヘリックス)を有する。
【0068】
実施形態では、βらせんタンパク質は、ペンタペプチドリピートタンパク質である。
【0069】
実施形態では、βらせんタンパク質は、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む。
【0070】
実施形態では、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される。
【0071】
実施形態では、ゲノム編集複合体は、本発明の第1または第2の態様のゲノム編集複合体である。
【0072】
実施形態では、細胞は、真核細胞、原核細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0073】
実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、または魚類細胞である。
【0074】
第7の態様では、本発明は、細胞を第1または第2の態様のゲノム編集複合体と接触させることを含む、細胞中の標的ポリヌクレオチドを改変する方法を提供し、ゲノム編集複合体は、標的ポリヌクレオチド中の配列を標的とする。
【0075】
第8の態様では、本発明は、本発明の第1または第2の態様のゲノム編集複合体を含む医薬組成物を提供する。
【0076】
第9の態様では、本発明は、有効量の本発明の第7の態様の医薬組成物を個体に投与することを含む、個体の疾患を治療する方法を提供する。
【0077】
第10の態様では、本発明は、遺伝子編集のための本発明の第1または第2の態様のゲノム編集複合体の使用を提供する。
【0078】
第11の態様では、本発明は、遺伝子治療のための本発明の第1または第2の態様のゲノム編集複合体の使用を提供する。
【0079】
また、機能性分子に連結された少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質分子を含む細胞透過性コンジュゲートが本明細書に開示され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。
【0080】
機能性分子を細胞に移入するためのプロセスがさらに開示され、該プロセスは、
(a)機能性分子を組換えβらせんタンパク質に連結させてコンジュゲートを得ることと、
(b)細胞透過性コンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、コンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることが、核酸分子を細胞に移入させ、βらせんタンパク質の長さが5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅が1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。
【0081】
また、機能性分子を細胞に送達するための本発明の第1の態様の細胞透過性コンジュゲートの使用が本明細書に開示され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0082】
細胞透過のための本発明の第1の態様の細胞透過性コンジュゲートの使用が、本明細書にさらに開示される。
【0083】
さらに、細胞標識のための本発明の第1の態様の細胞透過性コンジュゲートの使用が、本明細書に開示される。
【0084】
また、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが、本明細書に開示され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。
【0085】
核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが、本明細書にさらに開示され、該プロセスは、(i)核酸分子を、少なくとも1つのリンカーを介して、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質に連結してコンジュゲートを得ることと、(ii)コンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、コンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることが、核酸分子を細胞に移入させ、組換えβらせんタンパク質の長さが5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅が1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。
【0086】
さらに、トランスフェクション剤としての本発明の第6の態様の細胞透過性コンジュゲートの使用が、本明細書に開示される。
【0087】
遺伝子治療のための本発明の第6の態様の細胞透過性コンジュゲートの使用が、本明細書にさらに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の態様をさらに説明するために含まれている。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて図面を参照することによってよりよく理解され得る。
図1】本開示による、単離されたAlbGタンパク質のCD(円偏光二色性)スペクトルを示す。
図2】本開示による、精製プラスミド(AlbGおよびEfsQNR遺伝子を含有する)を含有するアガロースゲルを示す。
図3】本開示による、精製タンパク質(AlbGおよびEfsQNR)を含有するポリアクリルアミドゲルを示す。
図4】EfsQNRおよびAlbGタンパク質のMALDI-TOF質量スペクトル分析を示す。
図5】本開示の一実施形態による、UV-可視分光光度法による標識タンパク質(AlbG-NHSCおよびEfsQNR-NHSC)の特性評価のグラフ表示を示す。
図6】本開示の実施形態による、標識タンパク質(コンジュゲート)AlbG-NHSC、EfsQNR-NHSCおよびTtCuA-NHSCによるHela細胞の差次標識を示す。
図7】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたEfsQNRによるHela細胞の標識を示す。
図8】本開示の一実施形態による、ATTO-390(市販の青色蛍光染料)で標識されたEfsQNRによるHela細胞の標識を示す。
図9】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたEfsQNRによるミクログリア細胞の標識を示し(パネルA)、かつATTO-520で標識されたEfsQNRによるミクログリア細胞の差次標識を示す(パネルB)。
図10】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたEfsQNRによるケラチノサイト細胞の標識を示し(パネルA)、かつATTO-520で標識されたEfsQNRによるケラチノサイト細胞の差次標識を示す(パネルB)。
図11】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたEfsQNRによるSH-SY5Y細胞の標識を示す。
図12】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたEfsQNRによるマウスES細胞の標識を示す。
図13】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたEfsQNRによるE.coli細胞の標識を示す。
図14】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたEfsQNRによる酵母(Kluveromyces)細胞の標識を示す。
図15A】コンジュゲートEfsQNR-ATTO-647Nで標識したコンジュゲートで10分間(パネルB)、1時間(パネルC)、3時間(パネルD)処理したHeLa細胞の標準FACSソーティングの結果を未処理細胞(パネルA)と比較して示す。
図15B】コンジュゲートEfsQNR-ATTO-647Nで標識したコンジュゲートで10分間(パネルB)、1時間(パネルC)、3時間(パネルD)処理したHeLa細胞の標準FACSソーティングの結果を未処理細胞(パネルA)と比較して示す。
図15C】コンジュゲートEfsQNR-ATTO-647Nで標識したコンジュゲートで10分間(パネルB)、1時間(パネルC)、3時間(パネルD)処理したHeLa細胞の標準FACSソーティングの結果を未処理細胞(パネルA)と比較して示す。
図15D】コンジュゲートEfsQNR-ATTO-647Nで標識したコンジュゲートで10分間(パネルB)、1時間(パネルC)、3時間(パネルD)処理したHeLa細胞の標準FACSソーティングの結果を未処理細胞(パネルA)と比較して示す。
図16】非コンジュゲート薬物と比較した、本開示の一実施形態によるコンジュゲートの一部としての薬物の細胞取り込み率を示す。
図17】非コンジュゲート薬物と比較した、本開示の一実施形態による、タンパク質EfsQNRとのコンジュゲートの一部としてのシスプラチン(登録商標)化学療法薬(標識CYDD)での処理後の細胞(HelaおよびHepG2)の生存率を示す。
図18】本開示の一実施形態による、mcherry遺伝子を保有するプラスミドベクターを示す。
図19】本開示の一実施形態による、コンジュゲートを調製するためのプロセスを示す。
図20】本開示の一実施形態による、コンジュゲートを使用するトランスフェクションの表現を示す。
図21】本発明によるコンジュゲートでトランスフェクションした後のHeLa細胞の共焦点顕微鏡画像を示し、このコンジュゲートは、銅[II]フェナントロリンを介してEfsQNRタンパク質に連結したRFP(赤色蛍光タンパク質)をコードするmcherry遺伝子を含む。
図22】本発明による、EfsQNR-ATTO520コンジュゲートによる細胞膜のリアルタイムの直接透過を示す。
図23】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたCPPによる植物シロイヌナズナ(Arabidopsis)細胞の標識を示す。
図23】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたCPPによる植物シロイヌナズナ細胞の標識を示す。
図24】本開示の一実施形態による、A)ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたCPP、B)ATTO-594(市販の赤色蛍光染料)で標識されたCPP、およびC)ATTO-390(市販の青色蛍光染料)で標識されたCPPによる植物シロイヌナズナ細胞の標識を示す。
図25】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたCPPによる酵母細胞の標識を示す。
図26】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたCPPによる細菌細胞の標識を示す。
図27】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたCPPによるショウジョウバエ胚細胞の標識を示す。
図28】本開示の一実施形態による、ATTO-520(市販の緑色蛍光染料)で標識されたCPPによるゼブラフィッシュ胚細胞の標識を示す。
図29】eGFPによる蛍光強度の低下(蛍光プレートリーダーで測定)により観察された、CRISPR-Cas9およびeGFP特異的gRNAのCPP支援送達後にeGFPを発現するHEK293細胞の遺伝子編集の結果を示す。
図30】実施例1で得られたコンジュゲート(EfsQNR)(配列番号2)およびMirus Bioから市販されている2.7kbの赤色標識環状プラスミドDNA(製品コードMIR 7904)、および(B)コンジュゲートの非存在下で上記で使用した対照の赤色標識プラスミドを使用したMCF7細胞におけるトランスフェクションの結果は、(i)はインキュベーション後の細胞の最大投射を示し、(ii)はインキュベーション後の細胞の強度プロットに対応する画像であり、(iii)はインキュベーション後の細胞の強度プロットを示す。
図31】実施例1で得られたコンジュゲート(EfsQNR)および(i)赤色蛍光タンパク質または(ii)緑色蛍光染料Atto520のいずれかでタグ付けされたエンドヌクレアーゼCas9を使用したMCF-7細胞におけるトランスフェクション実験の結果を示す。(A)はインキュベーション後の細胞の最大投射を示し、(B)はインキュベーション後の細胞の強度プロットを示し、(C)は細胞の3D深度画像を示している。
図32】(A)実施例1で得られたコンジュゲート(EfsQNR)および緑色蛍光染料MFP488でタグ付けされたgRNA、および(B)緑色蛍光染料MFP488でタグ付けされた対照gRNAを使用したMCF-7細胞におけるトランスフェクション実験の結果を示す。(i)はインキュベーション後の細胞の最大投射を示し、(ii)は細胞の3D深度画像を示し、(iii)はインキュベーション後の細胞の強度プロットに対応する画像であり、(iv)はインキュベーション後の細胞の強度プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
当業者は、本開示が、具体的に記載されたもの以外の変更および修正の対象となることに気付くであろう。本開示は、このようなすべての変更および修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において個別にまたは集合的に言及または示されるこのようなすべての工程、特徴、組成物、および化合物、ならびにこのような工程または特徴のいずれかまたは複数の任意およびすべての組み合わせを含む。
【0090】
定義
便宜上、本開示のさらなる説明の前に、本明細書で使用される特定の用語、および例がここに描かれている。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読み、当業者によって理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、当技術分野の当業者に認識され、知られている意味を有するが、便宜上および完全を期すために、特定の用語およびそれらの意味を以下に示す。
【0091】
別段の指示のない限り、本発明の実施は、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、および化学的方法の従来技術を使用するものであり、これらは当業者の能力の範囲内である。そのような技術は、例えば、M.R.Green,J.Sambrook,2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Fourth Edition,Books 1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,ch.9,13,and 16,John Wiley & Sons,New York,N.Y.)、B.Roe,J.Crabtree,and A.Kahn,1996,DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee,1990,In Situ Hybridisation:Principles and Practice,Oxford University Press;M.J.Gait(Editor),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press、およびD.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Pressなどの文献においても説明されている。これらの一般的なテキストの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
冠詞「a」、「an」、および「the」は、冠詞の文法目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0093】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、規定される要素のうちのいずれかが必ず含まれ、他の要素も同様に任意に含まれ得ることを意味する。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、任意の規定される要素が必ず含まれ、列挙される要素の基本的および新規の特性に実質的に影響を及ぼす要素が除外され、他の要素が任意に含まれ得ることを意味する。「からなる(consisting of)」は、列挙される要素以外のすべての要素が除外されることを意味する。これらの用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0094】
「含む(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない」を意味するために使用される。「含む」と「含むがこれに限定されない」は同じ意味で使用される。
【0095】
本明細書で使用される場合、「細胞膜」という用語は、原核細胞および真核細胞の両方に存在し、細胞の内部環境と外部環境とを分離する生体膜である。これは、細胞内外への物質の輸送をチェックする半透性バリアとして機能し、典型的には、リン脂質二重層から形成されている。膜は支持体として機能し、細胞の形状および構造を維持するのに役立つ。
【0096】
本明細書で使用される場合、「βらせん(helical)タンパク質」という用語は、βらせん二次構造を形成するタンパク質を意味する。βらせんタンパク質は、ペプチド鎖の隣接するβストランド間の一般的に平行対合から形成される。βらせんタンパク質は、ヘリックス構造のコイリングの方向に応じて、右巻きのβらせんまたは左巻きのβらせんになり得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ペンタペプチドリピートタンパク質(PRP)」という用語は、タンデムリピートペンタペプチドからなるβらせんタンパク質を意味する。実施形態では、タンデムリピートペンタペプチドは、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有する。PRPファミリーには、原核生物および真核生物界に500をはるかに超えるメンバーを有する。
【0098】
本明細書で使用される場合、「機能性分子」という用語は、細胞内で有用性を有する任意の分子である。本発明での使用に適した機能性分子の例には、染料、薬物分子、タンパク質、酵素、抗体、および核酸が挙げられる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「細胞透過性ペプチド」または「CPP」という用語は、様々な機能性分子の細胞摂取/取り込みを促進するペプチド配列に関するものである。細胞透過性ペプチドは、一般に、細胞膜を介して機能性分子を直接送達し、細胞侵入のためのエンドサイトーシス媒介経路の必要性を回避する。
【0100】
本明細書で使用される場合、「P-カドヘリン」という用語は、正常組織において恒常性機能を有する細胞間接着分子を指す。この分子の過剰発現は、乳房、卵巣、前立腺、子宮内膜、皮膚、胃、膵臓、および結腸の新生物における重要な腫瘍促進効果に関連している。
【0101】
本明細書で使用される場合、「NHS-クマリン」または「NHSC」という用語は、細胞生物学技術で広く使用されている蛍光染料を指す。これは、分子量358.35g/molの7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸N-スクシンイミジルエステルの通称である。NHS-クマリン(NHSC)は、445nmの励起波長、および482nmの発光波長を有する。蛍光顕微鏡下で観察すると、緑色の蛍光を発し、この染料とコンジュゲートした分子の位置および定量を示す。
【0102】
本明細書で使用される場合、「ホスファチジルコリン」という用語は、コリンをヘッド基として組み込むリン脂質分子の部類を定義する。ホスファチジルコリンは、細胞膜との選択的結合および付着を促進するシグナル伝達分子として使用することができる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「ヘキスト(Hoechst)33342」という用語は、細胞撮像技術におけるDNAおよび核の固定と生細胞染色との両方に使用される蛍光染料の溶液を指す。ヘキスト33342は、460nmの励起波長、490nmの発光波長を有する細胞透過性DNA染色剤であり、DNAのアデニン(A)-チミン(T)領域に優先的に結合する。
【0104】
本明細書で使用される場合、「ATTO 520」または「A-520」、「ATTO 390」または「A-390」および「ATTO 647N」または「A-647N」という用語は、それぞれ、ATTO-Tec GmbHにより開発され、Sigma Aldrichから市販されている蛍光染料を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「ルテニウム金属錯体」という用語は、抗癌活性を有することが知られているルテニウム金属の配位錯体を指す。八面体型ルテニウム(III)およびルテニウム(II)錯体は、多くの実験的腫瘍に対して抗新生物活性を示す。ルテニウム金属錯体は、白金ベースの化合物の副作用を回避するための優れた代替物とみなされている。本発明での使用が実証されているルテニウム金属錯体の非限定的な例は、トリカルボニルジクロロルテニウム(II)(例えば、Sigma Aldrich)である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、各ヌクレオチドの3’および5’末端がホスホジエステル結合によって接合された、ヌクレオチドの一本鎖または二本鎖の共有結合配列である。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基で構成され得る。核酸には、DNAおよびRNAを挙げることができ、典型的には合成的に製造されるが、天然の供給源から単離される場合もある。核酸は、改変されたDNAもしくはRNA、例えば、メチル化されたDNAもしくはRNA、または化学改変、例えば、7-メチルグアノシンによる5’キャッピング、切断およびポリアデニル化などの3’プロセシング、ならびにスプライシング、またはフルオロフォアもしくは他の化合物による標識を受けたDNAもしくはRNAをさらに含み得る。核酸はまた、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トレオース核酸(TNA)、グリセロール核酸(GNA)、ロックド核酸(LNA)、およびペプチド核酸(PNA)などの合成核酸(XNA)も含み得る。したがって、「DNA」および「RNA」という用語が本明細書で使用される場合、これらの用語は、天然に存在するヌクレオチドのみを含むことに限定されないことを理解されたい。本明細書で「ポリヌクレオチド」とも呼ばれる核酸のサイズは、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチドの場合は、塩基対の数(bp)として、または一本鎖ポリヌクレオチドの場合は、ヌクレオチドの数(nt)として表される。1000bpまたはntは、1キロベース(kb)に等しい。約100ヌクレオチド長未満のポリヌクレオチドは、典型的には「オリゴヌクレオチド」と称される。
【0107】
本明細書で使用される場合、「3」(「3プライム」)および「5」(「5プライム」)という用語は、当該技術分野においてそれらの通常の意味をとり、すなわち、ポリヌクレオチドの末端を区別するためである。ポリヌクレオチドは5’および3’末端を有し、ポリヌクレオチド配列は通常5’から3’方向に書かれている。
【0108】
本発明の文脈における「アミノ酸」という用語は、その最も広い意味で使用され、天然に存在するLα-アミノ酸または残基を含むことを意味する。本明細書では、天然に存在するアミノ酸に対して一般的に使用される1文字および3文字の略語を使用する。A=Ala、C=Cys、D=Asp、E=Glu、F=Phe、G=Gly、H=His、I=Ile、K=Lys、L=Leu、M=Met、N=Asn、P=Pro、Q=Gln、R=Arg、S=Ser、T=Thr、V=Val、W=Trp、およびY=Tyr(Lehninger,A.L.,(1975)Biochemistry,2d ed.,pp.71-92,Worth Publishers,New York)。一般的な用語である「アミノ酸」には、D-アミノ酸、レトロインベルソアミノ酸、ならびにアミノ酸類似体などの化学的に改変されたアミノ酸、ノルロイシンなどのタンパク質には通常組み込まれない天然に存在するアミノ酸、およびβ-アミノ酸などのアミノ酸に特徴的な特性を有する化学的に合成された化合物がさらに含まれる。例えば、フェニルアラニンまたはプロリンの類似体または模倣体は、天然のPheまたはProと同じペプチド化合物のコンホメーション制限を可能にし、アミノ酸の定義に含まれる。このような類似体および模倣物は、本明細書では、それぞれのアミノ酸の「機能的等価物」と呼ばれる。アミノ酸の他の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Roberts and Vellaccio,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Gross and Meiehofer,eds.,Vol.5p.341,Academic Press,Inc.,N.Y.1983によって列挙されている。
【0109】
「ポリペプチド」は、天然に、または合成手段によってインビトロで生成されるかどうかにかかわらず、ペプチド結合によって接合されたアミノ酸残基のポリマーである。約12個のアミノ酸残基長未満のポリペプチドは、典型的には、「ペプチド」と称され、約12~約30個のアミノ酸残基長のポリペプチドは、「オリゴペプチド」と称され得る。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、天然に存在するポリペプチド、前駆体形態、またはプロタンパク質の産物を示す。また、ポリペプチドは、グリコシル化、タンパク質分解切断、脂質化、シグナルペプチド切断、プロペプチド切断、リン酸化などを含み得るが、これらに限定されない、成熟または翻訳後改変プロセスを受ける可能性がある。「タンパク質」という用語は、1つ以上のポリペプチド鎖を含む高分子を指すために本明細書で使用される。
【0110】
「単離された」という用語は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列に適用される場合、配列がその起源である天然生物から除去され、したがって、外来のまたは望ましくないコード配列または調節配列を含まないことを意味する。単離された配列は、本発明の組成物およびナノ構造の組み立てに使用するのに好適である。そのような単離された配列は、cDNAおよびRNAを含み得る。
【0111】
本発明によれば、本明細書に記載の核酸またはタンパク質配列に対する相同性は、単に100%の配列同一性に限定されない。機能的および/または生化学的同等性を示す、本明細書で特定されたものに密接に関連する核酸またはタンパク質配列は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であるとみなされる。
【0112】
本発明の文脈における「シグナル配列」という用語は、異なる細胞小器官またはジンクフィンガー結合タンパク質などの核酸結合ドメインの核局在化配列または認識配列を意味する。
【0113】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、薬物の送達および有効性を改善するためのメカニズムとして役立つ物質を意味する。
【0114】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」(充填剤、希釈剤、またはシンナーとも呼ばれる)という用語は、希釈剤を意味する。
【0115】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、薬物または他の活性物質のためのビヒクルまたは媒体として機能する不活性物質を指す。賦形剤には、着色剤、保湿剤、防腐剤、皮膚軟化剤、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「RNAガイド型エンドヌクレアーゼ」という用語は、エンドヌクレアーゼ活性および特異性が、少なくとも1つのガイドRNA分子との結合に依存するポリペプチドを意味する。RNAガイド型エンドヌクレアーゼの例は、Cas9/CRISPRシステムの一部としてのCas9である。
【0117】
本明細書で使用される場合、「CRISPR」(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)という用語は、細菌などの原核生物のゲノム内に見られるDNA配列のファミリーを指す。この用語は、CRISPR関連タンパク質の使用、例えば、CRISPR配列に相補的であるDNAの特異的鎖を認識して切断するために、CRISPR配列と結合して、CRISPR配列をガイドとして使用することができるCas-9(CRISPR関連タンパク質9)の使用に依存する遺伝子編集の技術を指すために使用されてもよい。Cas9ヌクレアーゼはCRISPR配列とともに、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術の基礎を形成する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「Cas9」という用語は、Cas9エンドヌクレアーゼタンパク質を指す。Csn1(COG3513)とも呼ばれるCas9は、crRNAの生合成および侵入するDNAの破壊の両方に関与する大きなタンパク質である。「Cas9」という用語はまた、標的核酸配列を処理することができる操作されたエンドヌクレアーゼまたはCas9の相同体を包含することを意味する。Cas9は、二本鎖切断または一本鎖切断のいずれかに対応することができる核酸標的配列の切断を誘導することができる。Cas9という用語は、自然界には自然に存在しないCas9エンドヌクレアーゼであり、タンパク質工学またはランダム変異誘発によって得られるバリアントを含むことを意図しているが、ただし、このようなCas9バリアントは機能し続け、すなわち、標的核酸配列を処理する能力を保持する。
【0119】
本明細書で使用される場合、「CRISPR-RNP」という用語は、CRISPRエンドヌクレアーゼタンパク質および1つ以上のガイドRNAを含むCRISPRリボヌクレオチドに関するものである。本明細書で使用される「CRISPR-RNP-CPP」という用語は、本発明の実施形態の細胞透過性ペプチドとのCRISPR-RNP複合体のコンジュゲートに関するものである。
【0120】
本明細書で使用される場合、「ガイドRNA」または「gRNA」という用語は、ガイド配列を含むRNAポリヌクレオチド配列を指す。使用中、ガイドRNAは、gRNAによって決定された部位で二本鎖DNAを切断するように作用するエンドヌクレアーゼと関連付けることができる。「ガイド配列」という用語は、好ましくは8個の核酸塩基より長く、より好ましくは10個の核酸塩基より長く、さらにより好ましくは12個の核酸塩基より長い、ゲノム中の標的配列を特定する能力を有する配列を指す。一般に、このRNA分子は、該標的配列をハイブリダイズし、該エンドヌクレアーゼのエンドヌクレアーゼ活性を媒介する能力を有する。
【0121】
本明細書で使用される場合、「野生型」という用語は、「変異体」または「バリアント」形態とは区別される、生物、株、遺伝子または総合特性の典型的または自然発生形態を指す。
【0122】
本明細書で使用される場合、「天然に存在しない」または「操作された」という用語は交換可能に使用される。核酸分子またはポリペプチドを指す場合、この用語は、核酸分子またはポリペプチドが自然界に見られるものとは異なり、かつ/またはそれらが自然界に自然に関連する少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する。
【0123】
本明細書で使用される場合、「相補性」という用語は、例えば、水素結合を介した非共有相互作用と、従来のワトソン-クリック型塩基対または他の非従来のタイプのいずれかによる別の核酸配列と結合する核酸の能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(ワトソン-クリック型塩基対)を形成することができる核酸分子中の残基の比率を示す(例えば、10個のうち5、6、7、8、9、10個が、50%、60%、70%、80%/、90%、および100%の相補的)。
【0124】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドがDNAテンプレートから転写されるプロセス(例えば、mRNAまたは他のRNA転写物)および/または転写されたmRNAがその後ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。
【0125】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書に記載されているすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
配列
配列番号1は、AlbGタンパク質のアミノ酸配列を示す。
MPAKTLESKDYCGESFVSEDRSGQSLESIRFEDCTFRQCNFTEAELNRCKFRECEFVDCNLSLISIPQTSFMEVRFVDCKMLGVNWTSAQWPSVKMEGALSFERCILNDSLFYGLYLAGVKMVECRIHDANFTEADCEDADFTQSDLKGSTFHNTKLTGASFIDAVNYHIDIFHNDIKRARFSLPEAASLLNSLDIELSD
【0127】
配列番号2は、EfsQNRタンパク質のアミノ酸配列を示す。
GSHMKITYPLPPNLPEQLPLLTNCQLEDEAILENHLYQQIDLPNQEVRNLVFRDAVFDHLSLANGQFASFDCSNVRFEACDFSNVEWLSGSFHRVTFLRCNLTGTNFADSYLKDCLFEDCKADYASFRFANFNLVHFNQTRLVESEFFEVTWKKLLLEACDLTESNWLNTSLKGLDFSQNTFERLTFSPNYLSGLKVTPEQAIYLASALGLVIT
【0128】
配列番号3は、Tenebrio molitorからの不凍タンパク質のアミノ酸配列を示す。
QCTGGADCTSCTGACTGCGNCPNAVTCTNSQHCVKANTCTGSTDCNTAQTCTNSKDCFEANTCTDSTNCYKATACTNSSGCPGH
【0129】
配列番号4は、 Rhagium inquisitorからの不凍タンパク質のアミノ酸配列を示す。
GYSCRAVGVDGRAVTDIQGTCHAKATGAGAMASGTSEPGSTSTATATGRGATARSTSTGRGTATTTATGTASATSNAIGQGTATTTATGSAGGRATGSATTSSSASQPTQTQTITGPGFQTAKSFARNTATTTVTASHHHHHH
【0130】
配列番号5は、Spruce Budworm(Choristoneura fumiferana)からの不凍タンパク質のアミノ酸配列を示す。
DGSCTNTNSQLSANSKCEKSTLTNCYVDKSEVYGTTCTGSRFDGVTITTSTSTGSRISGPGCKISTCIITGGVPAPSAACKISGCTFSAN
【0131】
配列番号6は、QNRB1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
GSHMALALVGEKIDRNRFTGEKIENSTFFNCDFSGADLSGTEFIGCQFYDRESQKGCNFSRAMLKDAIFKSCDLSMADFRNSSALGIEIRHCRAQGADFRGASFMNMITTRTWFCSAYITNTNLSYANFSKVVLEKCELWENRWIGAQVLGATFSGSDLSGGEFSTFDWRAANFTHCDLTNSELGDLDIRGVDLQGVKLDNYQASLLMERLGIAVIG
【0132】
配列番号7は、UDP-N-アセチルグルコサミンアシルトランスフェラーゼタンパク質のアミノ酸配列を示す。
MIDKSAFVHPTAIVEEGASIGANAHIGPFCIVGPHVEIGEGTVLKSHVVVNGHTKIGRDNEIYQFASIGEVNQDLKYAGEPTRVEIGDRNRIRESVTIHRGTVQGGGLTKVGSDNLLMINAHIAHDCTVGNRCILANNATLAGHVSVDDFAIIGGMTAVHQFCIIGAHVMVGGCSGVAQDVPPYVIAQGNHATPFGVNIEGLKRRGFSREAITAIRNAYKLIYRSGKTLDEVKPEIAELA ETYPEVKAFTDFFARSTRGLIR
【0133】
配列番号8は、Nostoc punctiforme由来のNP275タンパク質のアミノ酸配列を示す。
MGSSHHHHHHSSGLVPRGSHMDVEKLRQLYAAGERDFSIVDLRGAVLENINLSGAILHGAMLDEANLQQANLSRADLSGATLNGADLRGANLSKADLSDAILDNAILEGAILDEAVLNQANLKAANLEQAILSHANIREADLSEANLEAADLSGADLAIA DLHQANLHQAALERANLTGANLEDANLEGTILEGGNNNLAT
【0134】
配列番号9は、ペクチン酸リアーゼCのアミノ酸配列を示す。
ATDTGGYAATAGGNVTGAVSKTATSMQDIVNIIDAARLDANGKKVKGGAYPLVITYTGNEDSLINAAAANICGQWSKDPRGVEIKEFTKGITIIGANGSSANFGIWIKKSSDVVVQNMRIGYLPGGAKDGDMIRVDDSPNVWVDHNELFAANHECDGTPDNDTTFESAVDIKGASNTVTVSYNYIHGVKKVGLDGSSSSDTGRNITYHHNYYNDVNARLPLQRGGLVHAYNNLYTNITGSGLNVRQNGQALIENNWFEKAINPVTSRYDGKNFGTWVLKGNNITKPADFSTYSITWTADTKPYVNADSWTSTGTFPTVAY NYSPVSAQCVKDKLPGYAGVGKNLATLTSTACK
【0135】
配列番号10は、Caldicellulosiruptor bescii由来のペクチン酸リアーゼのアミノ酸配列を示す。
VGTNTGGVLVITDTIIVKSGQTYDGKGIKIIAQGMGDGSQSENQKPIFKLEKGANLKNVIIGAPGCDGIHCYGDNVVENVVWEDVGEDALTVKSEGVVEVIGGSAKEAADKVFQLNAPCTFKVKNFTATNIGKLVRQNGNTTFKVVIYLEDVTLNNVKSC VAKSDSPVSELWYHNLNVNNCKTLFEFPSQSQIHQY
【0136】
配列番号11は、Methanosarcina thermophila由来の炭酸脱水酵素のアミノ酸配列を示す。
QEITVDEFSNIRENPVTPWNPEPSAPVIDPTAYIDPQASVIGEVTIGANVMVSPMASIRSDEGMPIFVGDRSNVQDGVVLHALETINEEGEPIEDNIVEVDGKEYAVYIGNNVSLAHQSQVHGPAAVGDDTFIGMQAFVFKSKVGNNCVLEPRSAAIGVTIPDGRYIPAGMVVTSQAEADKLPEVTDDYAYSHTNEAVVYVNVHLAEGYKETS
【0137】
配列番号12は、Aspergillus niger由来のペクチンリアーゼAタンパク質のアミノ酸配列を示す。
VGVSGSAEGFAKGVTGGGSATPVYPDTIDELVSYLGDDEARVIVLTKTFDFTDSEGTTTGTGCAPWGTASACQVAIDQDDWCENYEPDAPSVSVEYYNAGTLGITVTSNKSLIGEGSSGAIKGKGLRIVSGAENIIIQNIAVTDINPKYVWGGDAITLDDCDLVWIDHVTTARIGRQHYVLGTSADNRVSLTNNYIDGVSDYSATCDGYHYWAIYLDGDADLVTMKGNYIYHTSGRSPKVQDNTLLHAVNNYWYDISGHAFEIGEGGYVLAEGNVFQNVDTVLETYEGEAFTVPSSTAGEVCSTYLGRDCVINGFGSSGT FSEDSTSFLSDFEGKNIASASAYTSVASRVVANAGQGNL
【0138】
配列番号13は、TtCuAタンパク質のアミノ酸配列を示す。
AYTLATHTAGVIPAGKLERVDPTTVRQEGPWADPAQAVVQTGPNQYTVYVLAFAFGYQPNPIEVPQGAEIVFKITSPDVIHGFHVEGTNINVEVLPGEVSTVRYTFKRPGEYRIICNQYCGLGHQNMFGTIVVKE
【0139】
配列番号14は、細胞の核を標的とするためのシグナル配列を示す。
PAAKRVKCD
【0140】
配列番号15は、細胞の小胞体を標的とするためのシグナル配列を示す。
YPYDVPDYAKDEL
【0141】
配列番号16は、細胞のミトコンドリアを標的とするためのシグナル配列を示す。
MLSLRQSIRFFKPATRTLCSSRYLL
【0142】
配列番号17は、P-カドヘリン過剰発現乳癌細胞を標的とするためのシグナル配列を示す。
LSTAADMQGVVTDGMASGLDKDYLKPDD
【0143】
配列番号18は、ペンタペプチドリピートタンパク質のコンセンサス配列を示す。
(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)
【0144】
配列番号19は、AlbG遺伝子の核酸配列を示す。
ATGCCGGCGAAAACCCTGGAAAGCAAAGATTATTGCGGCGAAAGCTTTGTGAGCGAAGATCGCAGCGGCCAGAGCCTGGAAAGCATTCGCTTTGAAGATTGCACCTTTCGCCAGTGCAACTTTACCGAAGCGGAACTGAACCGCTGCAAATTTCGCGAATGCGAATTTGTGGATTGCAACCTGAGCCTGATTAGCATTCCGCAGACCAGCTTTATGGAAGTGCGCTTTGTGGATTGCAAAATGCTGGGCGTGAACTGGACCAGCGCGCAGGCGGGCGCGCTGAGCTTTGAACGCTGCATT CTGAACGATAGCCTGTTTTATGGCCTGTATCTGGCGGGCGTGAAAATGGTGGAATGCCGCATTCATGATGCGAACTTTACCGAAGCGGATTGCGAAGATGCGGATTTTACCCAGAGCGATCTGAAAGGCAGCACCTTTCATAACACCAAACTGACCGGCGCGAGCTTTATTGATGCGGTGAACTATCATATTGATATTTTTCATAACGATATTAAACGCGCGCGCTTTAGCCTGCCGGAAGCGGCGAGCCTGCTGAACAGCCTGGATATTGAACTGAGCGAT
【0145】
配列番号20は、EfsQNR遺伝子の核酸配列を示す。
GGCAGCCATATGAAAATTACCTATCCGCTGCCGCCGAACCTGCCGGAACAGCTGCCGCTGCTGACCAACTGCCAGCTGGAAGATGAAGCGATTCTGGAAAACCATCTGTATCAGCAGATTGATCTGCCGAACCAGGAAGTGCGCAACCTGGTGTTTCGCGATGCGGTGTTTGATCATCTGAGCCTGGCGAACGGCCAGTTTGCGAGCTTTGATTGCAGCAACGTGCGCTTTGAAGCGTGCGATTTTAGCAACGTGGAATGGCTGAGCGGCAGCTTTCATCGCGTGACCTTTCTGCGCTGCAACCTGACCGGCACCAACTTTGCGGATAGCTATCTGAAAGATTGCCTGTTTGAAGATTGCAAAGCGGATTATGCGAGCTTTCGCTTTGCGAACTTTAACCTGGTGCATTTTAACCAGACCCGCCTGGTGGAAAGCGAATTTTTTGAAGTGACCTGGAAAAAACTGCTGCTGGAAGCGTGCGATCTGACCGAAAGCAACTGGCTGAACACCAGCCTGAAAGGCCTGGATTTTAGCCAGAACACCTTTGAACGCCTGACCTTTAGCCCGAACTATCTGAGCGGCCTGAAAGTGACCCCGGAACAGGCGATTTATCTGGCGAGCGCGCTGGGCCTGGTGATTACC
【0146】
配列番号21は、TtCuA遺伝子の核酸配列を示す。
GCGTATACCCTGGCGACCCATACCGCGGGCGTGATTCCGGCGGGCAAACTGGAACGCGTGGATCCGACCACCGTGCGCCAGGAAGGCCCGTGGGCGGATCCGGCGCAGGCGGTGGTGCAGACCGGCCCGAACCAGTATACCGTGTATGTGCTGGCGTTTGCGTTTGGCTATCAGCCGAACCCGATTGAAGTGCCGCAGGGCGCGGAAATTGTGTTTAAAATTACCAGCCCGGATGTGATTCATGGCTTTCATGTGGAAGGCACCAACATTAACGTGGAAGTGCTGCCGGGCGAAGTGAGCACCGTGCGCTATACCTTTAAACGCCCGGGCGAATATCGCATTATTTGCAACCAGTATTGCGGCCTGGGCCATCAGAACATGTTTGGCACCATTGTGGTGAAAGAA
【0147】
配列番号22は、細胞内のアクチンを標的とするためのシグナル配列を示す。
GDVQKKRWLFETKPLD
【0148】
配列番号23は、細胞内のチューブリンを標的とするためのシグナル配列を示す。
VQSKCGSKDNIKHVPGGG
【0149】
配列番号24:ジンクフィンガータンパク質のアミノ酸配列を示す
MERPYACPVESCDRRFSDSSNLTRHIRIHTGQKPFQCRICMRNFSRSDHLTTHIRTHTGEKPFACDICGRKFARSDERKR HTKIHLRQKD
【0150】
配列番号25:mcherry遺伝子の核酸配列を示す。GTGAGCAAGGGCGAGGAGGATAACATGGCCATCATCAAGGAGTTCATGCGCTTCAAGGTGCACATGGAGGGCTCCGTGAACGGCCACGAGTTCGAGATCGAGGGCGAGGGCGAGGGCCGCCCCTACGAGGGCACCCAGACCGCCAAGCTGAAGGTGACCAAGGGTGGCCCCCTGCCCTTCGCCTGGGACATCCTGTCCCCTCAGTTCATGTACGGCTCCAAGGCCTACGTGAAGCACCCCGCCGACATCCCCGACTACTTGAAGCTGTCCTTCCCCGAGGGCTTCAAGTGGGAGCGCGTGATGAACTTCGAGGACGGCGGCGTGGTGACCGTGACCCAGGACTCCTCCCTCCAGGACGGCGAGTTCATCTACAAGGTGAAGCTGCGCGGCACCAACTTCCCCTCCGACGGCCCCGTAATGCAGAAGAAGACCATGGGCTGGGAGGCCTCCTCCGAGCGGATGTACCCCGAGGACGGCGCCCTGAAGGGCGAGATCAAGCAGAGGCTGAAGCTGAAGGACGGCGGCCACTACGACGCTGAGGTCAAGACCACCTACAAGGCCAAGAAGCCCGTGCAGCTGCCCGGCGCCTACAACGTCAACATCAAGTTGGACATCACCTCCCACAACGAGGACTACACCATCGTGGAACAGTACGAACGCGCCGAGGGCCGCCACTCCACCGGCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAGTAATCTAGAGGGCCCTATTCTATAGTGTCACC.
【0151】
配列番号26:AlbG遺伝子のPCR増幅のためのプライマーの核酸配列を示す。
ATCCCGCTCATATGCCGGCCAAGACCCTTG
【0152】
配列番号27:AlbG遺伝子のPCR増幅のためのプライマーの核酸配列を示す。
ATCCCGCTCTCGAGTCAATCGGACAGCTCGATATC
【0153】
配列番号28:EfsQNR遺伝子のPCR増幅のためのプライマーの核酸配列を示す。
ATCCCGCTCATATGAAAATAACTTATCCCTTGCCA
【0154】
配列番号29:EfsQNR遺伝子のPCR増幅のためのプライマーの核酸配列を示す。
ATCCCGCTCTCGAGTTAGGTAATCACCAAACCAAGT
【0155】
本発明はまた、細胞膜を透過するための組換えタンパク質および機能性分子を含むコンジュゲート、ならびに配列番号1~12のものと実質的に類似の配列同一性または相同性を有するそれらの使用を提供する。「実質的に類似の配列同一性」という用語は、本明細書では、約50%、60%、70%、80%、90%、95%~約99%の同一性の配列類似性のレベルを示すために使用される。配列同一性パーセントは、従来の方法、例えば、核酸については、Henikoff and Henikoff Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992;89:10915、およびAltschul et al.Nucleic Acids Res.1997;25:3389-3402に記載されるものを使用して、タンパク質については、BLAST(登録商標)などのシステムを使用するアライメント後の比較を介して決定することができる。
【0156】
機能性分子を有する細胞透過性コンジュゲート
生命を脅かす疾患を治癒または予防するための新規薬物を特定することは、依然として非常に活発な研究分野である。そのような薬物のほとんどは、細胞内に標的を有する傾向があり、標的に到達するために、それらは、多くの場合、簡単でも効率的でもない半透膜を横切らなければならないであろう。したがって、細胞膜を透過するための新規メカニズムを開発することは依然として望ましい。一方、様々な細胞メカニズムを解明することを目的とした科学的調査および研究は、細胞およびその様々な細胞小器官の標識に役立ち得る細胞膜を透過する新規の方法を見出すことも求めている。また、これは、科学実験のために細胞内に必要な材料を供給するのに非常に役立つであろう。最近の報告に記載されている細胞透過性分子のほとんどは、細胞侵入のエンドサイトーシスメカニズムに関係している。
【0157】
エンドサイトーシスによる分子の摂取の不利な点、例えば、最終的にリソソームなどの細胞の分解性区画と融合する異なるタイプのエンドソーム区画における薬物の捕捉および分解を回避するために、細胞膜透過性コンジュゲートが本明細書に開示され、これは、細胞膜を透過して細胞内へのアクセスを獲得することができ、細胞内の染料、薬物、タンパク質、酵素、抗体、および核酸を含む様々なカーゴを送達するためにも使用することができる。
【0158】
本開示は、例示のみを目的とする、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。機能的に同等の産物、組成物、および方法は、本明細書に記載されているように、明らかに本開示の範囲内にある。
【0159】
本発明は、細胞膜を透過することができるコンジュゲートを開示する。コンジュゲートは、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質、または組換えβらせんタンパク質部分を含み、タンパク質は、5nm~25nmの範囲でその長さとして定義される最長の寸法および1nm~5nmの範囲の、その長さに対して実質的に垂直なタンパク質構造の寸法として定義される幅または直径を有する。タンパク質の寸法は、固体状態(X線結晶構造解析または原子間力顕微鏡法で特徴付けられる)または溶液状態(動的光散乱測定)で測定されたものとして定義される。
【0160】
本発明の実施形態では、コンジュゲートのタンパク質構造は、5nm、7.5nm、10nm、11nm、12nm、13nm、または14nmを超える最長の寸法または長さを有し得る。実施形態では、コンジュゲートのタンパク質構造は、25nm、20nm、17.5nm、15nm、14nm、13nm、12nmまたは11nm未満の最長の寸法または長さを有し得る。好適には、長さは5nm~25nmの範囲であり、より好適には10nm~15nmであり、さらにより好適には11nm~14nmまたは12nm~13nmの範囲である。実施形態では、コンジュゲートのタンパク質構造は、少なくとも1nm、1.1nm、1.2nm、1.3nm、1.4nm、1.5nm、1.6nm、1.7nm、1.8nm、1.9nmまたは2.0nmの、その長さに対して実質的に垂直な寸法の、幅または直径を有し得る。実施形態では、コンジュゲートのタンパク質構造は、5.0mm、4.5nm、4.0nm、3.5nm、3.0nm、2.9nm、2.8nm、2.7nm、2.6nm、2.5nm、2.4nm、2.3nm、2.2nm、2.1nmまたは2.0nm未満の最長寸法または長さを有し得る。好適には、長さは1nm~5nmの範囲であり、より好適には1nm~3nmであり、さらにより好適には1.5nm~2.5nmの範囲である。一実施形態では、本発明のコンジュゲートのタンパク質構造は、長手方向軸に沿った断面において概ね四角形(4つの辺)である先端形状を有し得る。好適には、形状は矩形である。好適には、四角形であるのはタンパク質構造の先端または末端である。先端は一般に矩形であり得、すなわち、正確な直角の角部がないか、角部がいくらか丸みを帯びている場合がある。好適には、先端は、5nm~25nmの範囲の長さ、および1nm~5nmの範囲の幅を有する。実施形態では、先端は、上記のタンパク質コンジュゲートについて定義された寸法を有し得る。
【0161】
本発明のコンジュゲートのタンパク質部分の物理的サイズの代用または代替の定義は、そのβ-らせん構造とその分子量との組み合わせである。その物理的寸法またはその分子量に基づくタンパク質のサイズの定義は、互換的に使用され得る。本発明の実施形態では、タンパク質部分の分子量は、少なくとも30kDaであり得る。好適には、タンパク質部分の分子量は、少なくとも35kDa、40kDa、45kDaまたは50kDaであり得る。本発明の実施形態では、タンパク質部分の分子量は最大で100kDaであり得る。好適には、タンパク質部分の分子量は、最大で90kDa、80kDa、70kDa、60kDa、55kDaまたは50kDaであり得る。好適には、本発明のコンジュゲートのタンパク質部分の分子量範囲は、30~100kDa、より好適には40~60kDa、さらにより好適には48~55kDaの範囲である。
【0162】
理論に束縛されるものではないが、本発明のコンジュゲートによって示される細胞透過における有益な特性は、上で概説した寸法または分子量によって定義されるタンパク質部分の物理的サイズによるものであると想定される。タンパク質のさらなる特徴は、主に珍しいβ-らせん二次構造に由来する剛性である。好適には、タンパク質は、透過される膜よりも剛性であってもよい。典型的な細胞膜は、細胞の種類に応じて、0.005~0.02N/mの剛性を有している(原子間力顕微鏡法で測定、Hayashi,「Tensile Properties and Local Stiffness of Cells」;Mechanics of Biological Tissue,pp 137-152)。好適には、本発明のタンパク質は、0.7~12N/mのβらせんに典型的な剛性、または高硬さパラメータ(K)を有する(Keten et al.,Cell Mol.Bioeng.2009;2;66-74、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0163】
本発明のコンジュゲートの細胞透過の効率に影響を与えると考えられるさらなる特徴は、タンパク質のβらせん構造におけるアミノ酸の電荷プロファイルおよび配置である。具体的には、β-らせんタンパク質構造における帯電したリジン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸の「ラダー」の存在は、細胞膜の透過、およびタンパク質配列の総負電荷を促進する。
【0164】
βらせんタンパク質構造のアミノ酸残基に関する「ラダー」という用語は、タンパク質の表面の長さに沿って正に帯電した(リジン、アルギニンおよび/またはアスパラギン)および負に帯電した残基(アスパラギン酸および/またはグルタミン酸)の存在として定義される。
【0165】
理論に束縛されるものではないが、本発明によるタンパク質のβらせん構造における帯電した「ラダー」構造の存在は、タンパク質と細胞膜の脂質分子との相互作用(例えば、脂質分子のヒドロキシル基との水素結合の形成)、および/または負に帯電した細胞膜へのタンパク質の最初の付着を促進することができる。
【0166】
負に帯電した残基による本発明によるタンパク質の全負電荷は、タンパク質の角運動につながる反発を促進して、タンパク質を膜上に真っ直ぐに立たせ、膜に穴を開けることができる。
【0167】
本発明の実施形態では、コンジュゲートのタンパク質は、正および負に帯電したアミノ酸残基が露出した交互に配置された表面のラダーを含む。実施形態では、タンパク質は、アルギニンラダー(10~30個のArg残基)、リジンラダー(10~30個のLys残基)、アスパラギンラダー(10~40個のAsn残基)、アスパラギン酸(10~40個のAsp残基)およびグルタミン酸(10~40個のGlu残基)のうちの少なくとも1つを含む。
【0168】
本発明の実施形態では、タンパク質の総形式電荷はゼロであり得るか、またはそれはゼロ以外であり得る。好適には、総形式電荷はゼロ以外であり、より好適には、総形式電荷はゼロ未満(負)である。実施形態では、タンパク質の総形式電荷は、-10を下回る(すなわち、-10より負である)。好適には、タンパク質の総形式電荷は、-20、-25、-30、-35、-40、-45、または-50を下回る。より好適には、総形式電荷は、-20を下回る。実施形態では、タンパク質の総形式電荷は、-80を上回る(すなわち、-80より負ではない)。好適には、タンパク質の総形式電荷は、-70、-65、-60、-55、-50、-45、-40、-35、または-30を上回る。より好適には、総形式電荷は、-60を上回る。実施形態では、タンパク質の総形式電荷は、-10~-80の範囲であり、より好適には、-20~-60の範囲である。
【0169】
細胞透過の効率および細胞透過のメカニズムは、タンパク質の表面に沿って正に帯電した残基(例えば、アルギニン)の数を増やすことによってコンジュゲートの総形式電荷を最適化することによって調節することができ、配列は、細胞小器官の特異性または特定の癌細胞の特異性を達成するためのシグナル伝達配列(配列番号14、15、16もしくは17および/またはホスファチジルコリン)を用いてN末端で変異させることができる。
【0170】
一実施形態では、直接的な細胞透過(すなわち非エンドサイトーシス)に好適な本発明のコンジュゲートのタンパク質は、以下の構造パラメータのうちの1つ以上を有し得る。
-0.2~12N/mの硬さパラメータを有するベータらせん構造(ベータヘリックス)、
-5nm~25nmの長さ、
-1nm~5nmの直径
-25KDa~100KDaの分子量、
-アルギニンラダー(10~30個のArg残基)、リジンラダー(10~30個のLys残基)、アスパラギンラダー(10~40個のAsn残基)、アスパラギン酸(10~40個のAsp残基)およびグルタミン酸(10~40個のGlu残基)の長さに沿ったタンパク質の表面上の表面露出した正および負の電荷の残基の交互に配置されたラダー、
-総形式電荷(-20~-60)。
【0171】
本発明の実施形態では、βらせんタンパク質と機能性分子との間のリンカーは、例えば、アミド(もしくはペプチド)、またはエステル共有結合を介した、または金属配位を介したβらせんタンパク質と機能性分子との間の直接リンクによって形成され得るか、あるいは、リンカーはリンカー分子の形態をとることができる。好適には、連結は共有結合もしくは非共有結合または相互作用によるものである。リンカーがリンカー分子である場合、リンカー分子は、β-らせんタンパク質と機能性分子とを可逆的に接続する任意の適切な形態をとることができる。いくつかの実施形態では、リンカー分子は、ペプチドまたはタンパク質、PEG(ポリエチレングリコール)リンカー、有機分子、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、核酸結合ドメイン、および核酸挿入分子からなる群から選択され得る。
【0172】
一実施形態では、本発明は、5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲の長さ、および1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲の幅の組換えβらせんタンパク質を有するコンジュゲートを開示し、βらせんタンパク質は、機能性分子に連結された特定の配列を有している。好適には、特定の配列はペンタペプチドリピートである。実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質のコンセンサス配列は、(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)である。ペンタペプチドリピートタンパク質の例は、配列番号1、2、6および8である。
【0173】
本開示の実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群から選択される。
【0174】
本発明の実施形態では、機能性分子は、任意の有機分子(抗癌剤、抗生物質、NSAID、鎮痛剤または任意の他の薬物分子、蛍光染料、殺虫剤(insecticides)、駆除剤(pesticides)など)、薬物-金属錯体、金属、抗体、タンパク質、多糖類、核酸、ペプチド、核局在化シグナル、量子ドットおよびナノ粒子であり得る。
【0175】
コンジュゲートは、コンジュゲートが細胞膜を透過する能力によって促進される機能性分子を細胞内に移入させるために使用することができる。コンジュゲートまたは機能性分子、あるいはその両方に関連する、またはそれらと統合される適切な局在化シグナルを用いて、本発明のコンジュゲートを使用して、機能性分子を細胞内部の特定の部分、例えば、細胞内部に存在する細胞小器官に標的化することができる。
【0176】
一実施形態では、本発明はまた、本発明の細胞透過性コンジュゲートを使用して、機能性分子を細胞内に移入させるためのプロセスを開示する。開示されたプロセスは、細胞標識、細胞透過、および任意の機能性分子の細胞小器官への標的化にさらに使用することができる。
【0177】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。
【0178】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、ペンタペプチドリピートタンパク質である。
【0179】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む。
【0180】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される。
【0181】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1に記載の配列を有するAlbGである。
【0182】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号2に記載の配列を有するEfsQNRである。
【0183】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号3に記載の配列を有する不凍タンパク質である。
【0184】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号4に記載の配列を有する不凍タンパク質である。
【0185】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号5に記載の配列を有する不凍タンパク質である。
【0186】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号6に記載の配列を有するQNRB1である。
【0187】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号7に記載の配列を有するUDP N-アセチルグルコサミンアシルトランスフェラーゼである。
【0188】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号8に記載の配列を有するNP275である。
【0189】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号9に記載の配列を有するペクチン酸リアーゼCである。
【0190】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号10に記載の配列を有するペクチン酸リアーゼである。
【0191】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号11に記載の配列を有する炭酸脱水酵素である。
【0192】
本開示の一実施形態では、機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号12に記載の配列を有するペクチンリアーゼAである。
【0193】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0194】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、染料である。
【0195】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、薬物である。
【0196】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、金属である。
【0197】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、薬物-金属錯体である。
【0198】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、タンパク質である。
【0199】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、酵素である。
【0200】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、抗体である。
【0201】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、核酸である。
【0202】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、多糖類である。
【0203】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、核局在化シグナルである。
【0204】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、ナノ粒子である。
【0205】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0206】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、共有結合によって組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0207】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、非共有結合によって組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0208】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、複合体は、シグナル配列をさらに含む。
【0209】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、コンジュゲートは、リン脂質分子をさらに含む。
【0210】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、コンジュゲートは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17からなる群から選択されるシグナル配列をさらに含む。
【0211】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、コンジュゲートは、ホスファチジルコリン分子をさらに含む。
【0212】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、コンジュゲートは、配列番号14に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0213】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、コンジュゲートは、配列番号15に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0214】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、コンジュゲートは、配列番号16に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0215】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載の機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、コンジュゲートは、配列番号17に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0216】
本開示の一実施形態では、機能性分子を細胞の核に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、コンジュゲートは、配列番号14に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0217】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞の核に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、コンジュゲートは、配列番号14に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0218】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞の核に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0219】
本開示の一実施形態では、機能性分子を細胞の小胞体に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、コンジュゲートは、配列番号15に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0220】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞の小胞体に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、コンジュゲートは、配列番号15に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0221】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞の小胞体に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0222】
本開示の一実施形態では、機能性分子を細胞のミトコンドリアに移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、コンジュゲートは、配列番号16に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0223】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞のミトコンドリアに移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、コンジュゲートは、配列番号16に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0224】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞のミトコンドリアに移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0225】
本開示の一実施形態では、機能性分子をP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、コンジュゲートは、配列番号17に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0226】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子をP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、コンジュゲートは、配列番号17に記載のシグナル配列をさらに含む。
【0227】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子をP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0228】
本開示の一実施形態では、機能性分子を細胞の膜に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、コンジュゲートは、ホスファチジルコリン分子をさらに含む。
【0229】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞の膜に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、コンジュゲートは、ホスファチジルコリン分子をさらに含む。
【0230】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞の膜に移入させるための機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0231】
本開示の一実施形態では、機能性分子を細胞に移入するためのプロセスが提供され、該プロセスは、(a)機能性分子を組換えβらせんタンパク質に連結させてコンジュゲートを得ることと、(b)コンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、コンジュゲートを接触させることが、機能性分子を細胞に移入させ、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。一実施形態では、プロセスは、工程(c)の後、工程(d)の細胞内のコンジュゲートの移入を検出することをさらに含む。
【0232】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、ペンタペプチドリピートタンパク質である。
【0233】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む。
【0234】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される。
【0235】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1に記載の配列を有するAlbGである。
【0236】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号2に記載の配列を有するEfsQNRである。
【0237】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号3に記載の配列を有する不凍タンパク質である。
【0238】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号4に記載の配列を有する不凍タンパク質である。
【0239】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号5に記載の配列を有する不凍タンパク質である。
【0240】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号6に記載の配列を有するQNRB1である。
【0241】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号7に記載の配列を有するUDP Nアセチルグルコサミンアシルトランスフェラーゼである。
【0242】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号8に記載の配列を有するNP275である。
【0243】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号9に記載の配列を有するペクチン酸リアーゼCである。
【0244】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号10に記載の配列を有するペクチン酸リアーゼである。
【0245】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号11に記載の配列を有する炭酸脱水酵素である。
【0246】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号12に記載の配列を有する。
【0247】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0248】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、染料である。
【0249】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、薬物である。
【0250】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、金属である。
【0251】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、薬物-金属錯体である。
【0252】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、タンパク質である。
【0253】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、酵素である。
【0254】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、抗体である。
【0255】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、核酸である。
【0256】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、多糖類である。
【0257】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、核局在化シグナルである。
【0258】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、ナノ粒子である。
【0259】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0260】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、細胞は、真核細胞、原核細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0261】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、細胞は、原核細胞である。
【0262】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、細胞は、真核細胞である。
【0263】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1に記載の配列によって表され、機能性分子は、NHS-クマリン染料である。
【0264】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号2に記載の配列によって表され、機能性分子は、NHS-クマリン染料である。
【0265】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号2に記載の配列によって表され、機能性分子は、ルテニウム金属錯体である。
【0266】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、このプロセスは、細胞標識のために使用される。
【0267】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、このプロセスは、機能性分子を細胞に送達させるために使用される。
【0268】
本開示の一実施形態では、機能性分子を細胞小器官に移入させるためのプロセスが提供され、該プロセスは、(a)機能性分子を組換えβらせんタンパク質に連結させてコンジュゲートを得ることと、(b)配列番号14、配列番号15、および配列番号16からなる群から選択される任意の1つのシグナル配列をコンジュゲートにさらに組み込むことと、(c)工程(b)のコンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、工程(b)のコンジュゲートを接触させることが、細胞内の細胞小器官に機能性分子を移入させ、細胞小器官が、核、小胞体、およびミトコンドリアからなる群から選択され、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。一実施形態では、プロセスは、工程(c)の後、工程(d)の細胞内のコンジュゲートの移入を検出することをさらに含む。
【0269】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞小器官に移入させるためのプロセスが提供され、組換えβらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される。
【0270】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞の核に移入させるためのプロセスが提供され、シグナル配列は、配列番号14に記載される通りである。
【0271】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞の小胞体に移入させるためのプロセスが提供され、シグナル配列は、配列番号15に記載される通りである。
【0272】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞のミトコンドリアに移入させるためのプロセスが提供され、シグナル配列は、配列番号16に記載される通りである。
【0273】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子を細胞小器官に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0274】
本開示の一実施形態では、機能性分子をP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞に移入させるためのプロセスが提供され、該プロセスは、(a)機能性分子を組換えβらせんタンパク質に連結させて複合体を得ることと、(b)配列番号17に記載のシグナル配列を複合体にさらに組み込むことと、(c)工程(b)の複合体を少なくとも1つのP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞と接触させることと、を含み、工程(b)の複合体を接触させることが、機能性分子をP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞に移入させ、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。一実施形態では、プロセスは、工程(c)の後、工程(d)の細胞内の複合体の移入を検出することをさらに含む。
【0275】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子をP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞に移入させるためのプロセスが提供され、配列を有する組換えβらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群から選択される。
【0276】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される機能性分子をP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞に移入させるためのプロセスが提供され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属錯体、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0277】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載されるプロセスが提供され、このプロセスは、機能性分子の細胞への標的化送達のために使用される。
【0278】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載されるプロセスが提供され、このプロセスは、細胞の標識のために使用される。
【0279】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載されるプロセスが提供され、このプロセスは、細胞中の薬物の標的化送達のために使用される。
【0280】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性複合体が提供され、組換えβらせんタンパク質は、機能性分子を細胞に送達させるために使用され、機能性分子は、染料、薬物、金属、薬物-金属コンジュゲート、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0281】
本開示の一実施形態では、機能性分子を細胞内に存在するアクチンタンパク質に移入させるためのプロセスが提供され、該プロセスは、(a)機能性分子を組換えβらせんタンパク質に連結させてコンジュゲートを得ることと、(b)配列番号22に記載のシグナル配列を複合体にさらに組み込むことと、(c)工程(b)のコンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、工程(b)のコンジュゲートを接触させることが、機能性分子を細胞に移入させ、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。一実施形態では、プロセスは、工程(c)の後、工程(d)の細胞内のコンジュゲートの移入を検出することをさらに含む。
【0282】
本開示の一実施形態では、機能性分子を細胞内に存在するチューブリンタンパク質に移入させるためのプロセスが提供され、該プロセスは、(a)機能性分子を組換えβらせんタンパク質に連結させてコンジュゲートを得ることと、(b)配列番号23に記載のシグナル配列をコンジュゲートにさらに組み込むことと、(c)工程(b)のコンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、工程(b)のコンジュゲートを接触させることが、機能性分子をP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞に移入させ、βらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。一実施形態では、プロセスは、工程(c)の後、工程(d)の細胞内のコンジュゲートの移入を検出することをさらに含む。
【0283】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、組換えβらせんタンパク質は、細胞透過のために使用される。
【0284】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートが提供され、組換えβらせんタンパク質は、細胞標識のために使用される。
【0285】
核酸を含む細胞透過性分子
一実施形態では、本発明は、遺伝子治療または遺伝子編集治療が直面する、機能性分子としての核酸フラグメントの送達の問題に対する解決策を提供する。本明細書は、核酸分子に連結された組換えβらせんタンパク質、例えば、細胞膜を透過することができる、RNA-またはDNA-プラスミドなどのプラスミドを含むコンジュゲートを開示している。一実施形態では、連結された組換えβらせんタンパク質は、好適な相互作用力(静電力または疎水性力など)によって、またはリンカー要素、分子、一部分(portion)または部分(moiety)を介して、1つ以上の核酸分子、好適には単一の核酸分子またはプラスミドに連結され得る。
【0286】
組換えβらせんタンパク質、リンカー、およびプラスミドを含むコンジュゲートは、細胞膜を首尾よく透過して、プラスミドの一部を形成する遺伝子の発現を確立することが示されている。コンジュゲートはエンドサイトーシスの経路を回避し、細胞膜を直接透過することによって細胞膜を横切る。したがって、コンジュゲートは、エンドサイトーシスを介した侵入が直面する問題を克服し、同時に細胞膜を効果的に透過する。
【0287】
一実施形態では、本発明は、細胞膜を透過することができるコンジュゲートを開示する。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、リンカーを介して核酸分子に連結された、5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲の長さ、および1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲の幅の組換えβらせんタンパク質を含む。一実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するペンタペプチドリピートタンパク質であり得る。本開示の別の実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群から選択される。
【0288】
本開示によれば、一実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、リンカー要素、分子、一部分または部分によって核酸分子に連結されている。実施形態では、リンカー要素は、共有結合または非共有結合による直接連結であり得る。リンカーがリンカー分子である場合、それは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、および核酸挿入分子からなる群から選択され得る。一実施形態では、コンジュゲートの一部を含む核酸分子は、少なくとも1つの目的の遺伝子を含む。一実施形態では、核酸分子は、組換えβらせんタンパク質およびリンカーを含む複合体に連結されて、本発明に開示されるようなコンジュゲートを形成する。一実施形態では、コンジュゲートは、細胞膜を透過することによって細胞に入ることができ、核酸分子の一部を形成する遺伝子は、細胞内で発現することができる。
【0289】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートを使用して、核酸分子を細胞内に移入させるためのプロセスを開示する。一実施形態では、開示されるプロセスは、細胞内で目的の遺伝子を送達させるための非ウイルスアプローチを容易にするための遺伝子治療技術または遺伝子編集技術にさらに使用することができ、それにより、欠陥遺伝子の編集を効果的に可能にするか、または細胞内部の欠陥遺伝子もしくはタンパク質を補う。
【0290】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。
【0291】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される。
【0292】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、ペンタペプチドリピートタンパク質である。
【0293】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む。
【0294】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、リンカーは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子である。
【0295】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、リンカーは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子である。
【0296】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、リンカーは、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって、組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0297】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、リンカーは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子であり、リンカーは、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって、組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0298】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、核酸分子は、少なくとも1つの目的の遺伝子を含む。
【0299】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、核酸分子は、少なくとも1つの目的の遺伝子を含む。
【0300】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、リンカーは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子であり、核酸分子は、少なくとも1つの目的の遺伝子を含む。
【0301】
一実施形態では、本発明は、細胞膜を横切って、細胞および/またはその区画への遺伝子編集分子機構の送達の問題に対する解決策を、ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードするプラスミドまたは核酸を細胞にトランスフェクトする手段を提供することによって提供する。プラスミドまたは核酸が細胞内に入ると、細胞内のゲノム編集システムの1つ以上の分子を、細胞プロセスを使用して調製し、任意にゲノム編集システムの他の必要な構成要素と組み合わせて、細胞内に完全な遺伝子編集システムを提供することができる。
【0302】
本開示の一実施形態では、核酸またはプラスミド中の目的の遺伝子は、ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードする。好適には、ゲノム編集システムの1つ以上の分子は、RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、例えば、Cas9、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、ホーミングエンドヌクレアーゼ、インテグラーゼ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0303】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号1に記載の配列を有するAlbGである。
【0304】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号2に記載の配列を有するEfsQNRである。
【0305】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号3に記載される配列を有する不凍タンパク質である。
【0306】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号4に記載される配列を有する不凍タンパク質である。
【0307】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号5に記載される配列を有する不凍タンパク質である。
【0308】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号6に記載の配列を有するQNRB1である。
【0309】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号7に記載の配列を有するUDP Nアセチルグルコサミンアシルトランスフェラーゼである。
【0310】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号8に記載の配列を有するNP275である。
【0311】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号9に記載の配列を有するペクチン酸リアーゼCである。
【0312】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号10に記載の配列を有するペクチン酸リアーゼである。
【0313】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号11に記載の配列を有する炭酸脱水酵素である。
【0314】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートが提供され、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さは5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅は1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲であり、βらせんタンパク質は、配列番号12に記載の配列を有するペクチンリアーゼAである。
【0315】
本開示の一実施形態では、核酸分子、またはプラスミドを細胞に移入させるためのプロセスが提供され、該プロセスは、(i)核酸分子を、(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、を含む複合体に連結してコンジュゲートを得ることと、(ii)コンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、コンジュゲートを接触させることが、核酸分子を細胞に移入させ、組換えβらせんタンパク質の長さが5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅が1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である。
【0316】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子、またはプラスミドを細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される。
【0317】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、ペンタペプチドリピートタンパク質である。
【0318】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む。
【0319】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、リンカーは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子である。
【0320】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、βらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表され、リンカーは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子である。
【0321】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、リンカーは、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0322】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、リンカーは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子であり、リンカーは、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている。
【0323】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれかである。
【0324】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載される核酸分子を細胞に移入させるためのプロセスが提供され、核酸、またはプラスミド中の目的の遺伝子は、ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードする。好適には、ゲノム編集システムの1つ以上の分子は、RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、例えば、Cas9、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、ホーミングエンドヌクレアーゼ、インテグラーゼ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0325】
細胞膜を横切って遺伝子編集分子を効率的に移入させるための細胞透過性ペプチド
本発明は、細胞膜を横切って、細胞および/またはその区画への遺伝子編集分子機構の送達の問題に対する解決策を提供する。本明細書は、細胞膜を効率的に透過することができる、少なくとも1つの遺伝子編集分子または遺伝子編集複合体に連結された組換えβらせんタンパク質を含むコンジュゲートを開示している。一実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、非共有相互作用によってエンドヌクレアーゼおよび1つ以上のgRNA分子に連結され得る。一実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、非共有相互作用によって、CRISPR遺伝子編集分子、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはgRNA、および/またはCas9と1つ以上のgRNA分子との複合体に連結され得る。
【0326】
組換えβらせんタンパク質およびCRISPR遺伝子編集分子を含むコンジュゲートは、細胞膜を首尾よく透過して、ゲノムの部位特異的編集を可能にすることが示されている。理論に束縛されるものではないが、コンジュゲートはエンドサイトーシスの経路を回避し、膜を直接透過することによって細胞膜を横切ると仮定されている。したがって、コンジュゲートは、エンドサイトーシスを介した侵入が直面する問題を克服し、同時に細胞膜を効果的に透過する。
【0327】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、リンカーを介して核酸分子に連結された、5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲の長さ、および1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲の幅の組換えβらせんタンパク質を含む。一実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するペンタペプチドリピートタンパク質であり得る。本開示の別の実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群から選択される。
【0328】
本開示によれば、一実施形態では、組換えβらせんタンパク質は、リンカー要素、分子、一部分または部分によって核酸分子に連結されている。実施形態では、リンカー要素は、共有結合または非共有結合による直接連結であり得る。リンカーがリンカー分子である場合、それは、タンパク質、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、および核酸挿入分子からなる群から選択され得る。
【0329】
一実施形態では、コンジュゲートは、細胞膜を透過することによって細胞に入り、部位特異的編集を行うことができる関連するゲノムに移動することができる。
【0330】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートを使用して細胞内にCRISPR-RNPを移入させるためのプロセスを開示する。一実施形態では、開示されるプロセスは、既存の遺伝子を編集、除去、および/または新しい遺伝子を付加することを可能にするための非ウイルスアプローチを容易にするための遺伝子編集技術にさらに使用することができる。
【0331】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載されるCRISPR-RNPを細胞に移入させるためのプロセスが提供され、細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれかである。
【0332】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のコンジュゲートが提供され、コンジュゲートはトランスフェクション剤として使用される。
【0333】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のコンジュゲートが提供され、コンジュゲートは遺伝子治療に使用される。
【実施例
【0334】
実施例-機能性分子を含む細胞透過性分子
ここで、本開示は、本開示の働きを例示することを意図し、本開示の範囲に対する制限を暗示することを限定的にとることを意図しない、実際の実施例で例示される。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、開示されるプロセスおよび組成物の実施に使用することができるが、例示的なプロセス、デバイスおよび材料は、本明細書に記載される。この開示は、特定の方法、および記載された実験条件に限定されず、このようなプロセスおよび条件は変化し得ることを理解されたい。
【0335】
以下の実施例では、プラスミドおよびタンパク質の研究を実施するための方法およびプロトコルが提供されている。コンジュゲートを得るためのプロトコル、タンパク質の標識、ならびにタンパク質-薬物コンジュゲートおよびタンパク質-標識コンジュゲートを使用して細胞透過研究を実施する方法も提供される。結果のセクションは、本発明に開示されるコンジュゲートの細胞透過能力の概念実証を具体的に説明する。異なる細胞株のインビトロ標識は、開示された方法に従って、本発明のコンジュゲートを使用して実施した。細胞透過による薬物取り込みを増強するコンジュゲートの能力を研究するために、薬物-タンパク質コンジュゲートを用いたアッセイも実施した。
【0336】
材料および方法
染料ヘキスト33342は、Invitrogenから調達し、NHS-クマリン、ならびにATTO520-NHS、ATTO390-NHS、およびATTO647N-NHSはSigmaから調達した。UV-可視分光光度法およびCDスペクトルに使用される有機溶媒ならびに試薬は、SigmaおよびMerckから調達した。プラスミドの発現およびタンパク質の精製を研究するための試薬は、Sigma AldrichおよびMerckから調達した。MTTアッセイに必要な試薬は、MP Biomedicalsから調達した。ルテニウム金属錯体は、Sigmaから調達した。
【0337】
実施例1
プラスミド/タンパク質の研究-配列番号19に示されるAlbG遺伝子を含有するプラスミドは、以前に公開された方法により得た(Vetting et al.Acta Crystallogr.Sect.F Struct.Biol.Cryst.Commun.2011:67(3):296-302、その内容は参照により本明細書に組み込まれ、特定の詳細は以下に提供される)。
【0338】
AlbGのオープンリーディングフレームは、Xアルビリネアン(ATCC29184;Pieretti et al.,BMC Genomics,2009,10:616,1-15)染色体DNAをテンプレートとして使用する標準的なPCR技術によって増幅された。NdeIおよびXhoI制限部位をそれぞれ含有するオリゴヌクレオチドAlbGF(5’-ATCCCGCTCATATGCCGGCCAAGACCCTTG-3’)およびAlbGR(5’-ATCCCGCTCTCGAGTCAATCGGACAGCTCGATATC-3’)を使用した。PCRフラグメントをpET-28a(+)にクローニングし、トロンビン切断可能なN-末端His6タグを担持する組換えAlbGをE.coli株BL21(DE3)中で発現させた。振とうフラスコ増殖のために、カナマイシン(35μg/ml)を補充した1リットルのルリアブロス培地に10mlの一晩培養物を接種し、37℃でインキュベートした。培養物を対数増殖期中期(約0.8のA600)まで増殖させ、20℃に冷却し、0.5mMのIPTGで誘導し、さらに20℃で一晩インキュベートした。すべての精製手順は、4℃で実施した。細胞を3000gでの遠心分離によって採集し、緩衝液A[300mMのNaCl、プロテアーゼ阻害剤、リゾチーム(5μg/ml)およびDNase I(0.1μg/ml)を含有する50mMのTris-HCl、pH7.8]に再懸濁し、20分間撹拌した。次いで、細胞を超音波処理によって溶解し、細胞破片を10000gで30分間の遠心分離によって除去した。上清を緩衝液Aで事前に平衡化したニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)カラムに充填し、10カラム容量の同じ緩衝液で洗浄した。結合したタンパク質を0~0.3Mの直線的なイミダゾール勾配で溶出し、ピーク画分をプールして濃縮した。
【0339】
配列番号2に示されるようなEfsQNR遺伝子を含有するプラスミドは、以前に公開された方法により得た(Hegde et al.,Antimicrob.Agents Chemother.2011 Jan;55(1):110-117であって、その内容は参照により本明細書に組み込まれ、詳細は以下に提供される)。
【0340】
EfsQNRのオープンリーディングフレームは、E.faecalis V583(ATCC700802;ENTFA226185)染色体DNAをテンプレートとして使用する標準的なPCR技術によって増幅された。NdeIおよびXhoI制限部位をそれぞれ含有するオリゴヌクレオチド(5’-ATCCCGCTCATATGAAAATAACTTATCCCTTGCCA-3’)および(5’-ATCCCGCTCTCGAGTTAGGTAATCACCAAACCAAGT-3’)を使用した。PCRフラグメントをpET-28a(+)にクローニングし、トロンビン切断可能なN-末端His6タグを担持する組換えEfsQNRをE.coli株BL21(DE3)中で発現させた。振とうフラスコ増殖のために、カナマイシン(35μg/ml)を補充した1リットルのルリアブロス培地に10mlの一晩培養物を接種し、37℃でインキュベートした。培養物を対数増殖期中期(約0.8のA600)まで増殖させ、20℃に冷却し、0.5mMのイソプロピル-β-d-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導し、さらに20℃で一晩インキュベートした。
【0341】
細胞を1,200gでの遠心分離によって採集し、プロテアーゼ阻害剤、リゾチーム(5μg/ml)、およびDNase I(0.1μg/ml)を含有する緩衝液A(50mMのTris-HCl[pH7.8]、300mMのNaCl)に再懸濁し、混合物を20分間撹拌した。次いで、細胞を超音波処理によって溶解し、細胞破片を10,000gで30分間の遠心分離によって除去した。上清を緩衝液Aで事前に平衡化したNi-NTAカラムに充填し、10カラム容量の同じ緩衝液で洗浄した。結合したタンパク質を0~0.3Mの直線的なイミダゾール勾配で溶出し、画分をプールして濃縮した。
【0342】
比較例として、配列番号13に示されるようなTtCuA遺伝子を含有するプラスミドを、参照により本明細書に組み込まれるBiochemistry,2008,47,1309~1318の方法によって得た。
【0343】
実施例2
毒性アッセイ-業界標準のMTTアッセイ(例えば、Sigma Aldrich)を実行して、哺乳動物細胞、例えば、HeLa細胞に対するβ-らせんタンパク質-細胞毒性薬物コンジュゲートの毒性を分析した。標準的なプロトコルを使用して細胞を培養した。100万個の細胞を共焦点プレート(1cmの皿)に播種し、6~8時間増殖させた。細胞毒性薬物とEfsQNRタンパク質との混合物(2:1の比率で混合)を細胞に添加し、室温で15分から24時間~72時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、MTTで処理し、さらに24時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、570nmでの吸光度値を分析した。活発な代謝を有する生細胞は、MTTを570nm付近で最大吸光度を有する紫色のホルマザン産物に変換する。死細胞はMTTをホルマザンに変換できないため、570nmでの吸光度値を分析することにより、所与のタンパク質または任意の他の分子の生細胞の比率を計算することができる。
【0344】
実施例3
蛍光染料によるタンパク質の標識-蛍光染料は、コンジュゲートの細胞膜透過能力を調査するための機能性分子の一例とみなされた。組換えタンパク質の染料による標識は、暗条件で一連の反応を実行することによって実施した。標識されるタンパク質をPBS緩衝液(1XおよびpH7.3)に採集し、染料をタンパク質の2~3倍の濃度で採集した。タンパク質を0.1Mの炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)に添加し、続いて染料を添加した。時々振とうしながら氷上に保持されたタンパク質を含有する緩衝液に染料を非常にゆっくりと(毎回3μl)添加した。得られた溶液をアルミホイルで包み、光を避けた。溶液を室温で1時間撹拌し、次いでゲル濾過によって精製し、すなわち、脱塩カラムまたは1XPBS緩衝液を用いてPD10カラムを通過させた。得られた標識タンパク質を、染料:タンパク質比を決定するために、UV-可視分光光度法を使用して特性評価した。
【0345】
実施例4
標識タンパク質の細胞取り込み-哺乳動物細胞をAlbG(配列番号1)、EfsQNR(配列番号2)、および比較例としてTtCuA(配列番号13)などの異なる標識タンパク質で処理することによって、標識タンパク質の取り込みをチェックした。TtCuAは、Thermus thermophilusという生物からのチトクロームオキシダーゼcタンパク質である。それは、配列番号13に記載のアミノ酸配列によって表される。細胞を共焦点プレート(1cmの皿)に100万の濃度で播種し、6~8時間増殖させた。その後、標識タンパク質を、種々の濃度で細胞に添加し、5%のCOおよび37℃の標準的条件下でインキュベートした。次いで、細胞をHBSS(ハンクスブランク塩溶液)またはPBSを用いて3時間および24時間後に2回洗浄し、蛍光顕微鏡および/または共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察した。
【0346】
標識タンパク質の取り込みは、E-Coliおよび酵母(Kluveromyces)細胞を、AlbG(配列番号1)、EfsQNR(配列番号2)などの異なる標識タンパク質で処理することによってチェックした。E coliまたはKluveromyces細胞に接種し、ODが0.6に達するまで一晩増殖させた。細胞を50倍に希釈し、3マイクロモルの標識タンパク質(コンジュゲート)を添加した。細胞をさらに、標準的増殖条件(37℃の振とう条件)下で増殖させた。次いで、処理した細胞を遠心分離し、PBSで3~4回洗浄した。次いで、細胞を100マイクロリットルのPBS中に分散させ、蛍光/共焦点顕微鏡で撮像した。
【0347】
さらに、緑色蛍光染料(A-520)で標識されたAlbG(配列番号1)、EfsQNR(配列番号2)などの異なるタンパク質が、共焦点レーザー走査顕微鏡法で観察されたような、細菌のいくつかの薬物耐性株(Pseudovibrio種、Ad37/5/13/14およびEnterobacterであり、Enterobacter株は、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ナリジクス酸、カナマイシン、およびペニシリンなどの抗生物質に耐性である)、酵母細胞(Saccharomyces cerevisiae、Kluveromyces marxianus、およびcandida albicans)、植物細胞(Arabidopsis)、ゼブラフィッシュ胚およびショウジョウバエ胚に取り込まれることが分かった。
【0348】
細菌および酵母細胞中の取り込みについてのプロトコル
・実験の前日にそれぞれの細菌株および酵母株を接種し、一晩増殖させ、
・細胞を遠心分離し、2mlの新鮮な培地を添加し、
・100~200μLの細胞を混合物に添加し、
・10μMの緑色標識CPPを添加し、
・新鮮な培地を添加して、容量を1mLにもっていき、
・24時間後、処理した細胞を遠心分離し、PBSで3~4回洗浄し、
・細胞を100マイクロリットルのPBS中に分散させ、蛍光/共焦点顕微鏡で撮像した(図25および26)。
【0349】
植物細胞(Arabidopsis)への取り込みについてのプロトコル
・植物は実験前に7日間成長させ、
・緑色蛍光染料(A-520)で標識されたAlbG(配列番号1)、EfsQNR(配列番号2)などの20μMの異なる細胞透過性タンパク質を、500μLのPBS中で緩衝液中の植物[7日間成長させた3つの植物]に添加し、
・混合物を標準的増殖条件下で、成長室に24時間置き(連続光の供給および23℃の温度で成長室を静的に保った)、
・植物をPBSで3回洗浄した後、新鮮なPBSを添加し、顕微鏡で細胞を可視化した。干渉を避けるために、根および茎の細胞などの着色されていない細胞を視覚化のために選択した(図23および24)。
【0350】
ゼブラフィッシュ胚およびショウジョウバエ胚への取り込みについてのプロトコル
・ゼブラフィッシュおよびショウジョウバエの胚を採取し、PBSで洗浄し、
・緑色蛍光染料(A-520)で標識されたAlbG(配列番号1)、EfsQNR(配列番号2)などの10μMの異なる細胞透過性タンパク質を、胚を含有するバイアルに添加して、2時間インキュベートし、
・胚を採集し、PBSで3回洗浄し、PBS中に分散させ、ガラスカバースリップ上に置き、顕微鏡下で可視化する(図27、28)。
【0351】
これらの結果は、本発明のCPPが、細胞膜および/または細胞壁を横切ることによって、多種多様な細胞型の細胞質にカーゴを移入させることができることを示している。これが、活性化酸カップリングケミストリー(EDC/NHS)を使用して、薬物のカルボン酸(-COOH)基とCPPのアミン基(リジン残基から)とをコンジュゲートすることにより、CPPをシプロフロキサンおよびペニシリンなどの抗生物質または任意の他の抗生物質とコンジュゲートする可能性を開く。これらの反応は、文献および教科書で周知である(参考文献:Greg T HermansenによるBioconjugate Techniques、264-265ページ)。アジピン酸ジヒドラジド、スクシンイミジル6-ヒドラジノニコチネートアセトンヒドラジン、C6-スクシンイミジル6-ヒドラジノニコチネートアセトンヒドラジン、スクシンイミジルヒドラジニウムニコチネート塩酸塩などのリンカーの、CPPを抗生物質とコンジュゲートするための使用。これらのリンカーは、細胞内条件下で加水分解されて、細胞内に抗生物質を放出することが知られている。
【0352】
抗生物質-CPPコンジュゲートは、コンジュゲートされていない抗生物質と比較した場合、細胞取り込みの効率を改善し、糖タンパク質などの細胞メカニズムによる薬物排出を低減または排除する。糖タンパク質の結合部位は<1kDaの領域にあるが、CPP-薬物コンジュゲートは、48KDaのサイズのものである。このことは、古い抗生物質の改善に役立ち、抗菌薬耐性の問題への対処に貢献することができる。同様に、この技術を使用して、魚および植物への抗生物質/駆除剤/栄養素の供給効率を向上させることができる。
【0353】
実施例5
薬物の細胞取り込み-HeLa細胞を、本発明の細胞透過性コンジュゲートを使用して、薬物の増強された取り込みを決定するために使用した。HeLa細胞を96ウェルプレートに10,000の濃度で播種し、6~8時間増殖させた。ルテニウム金属錯体とEfsQNRとを1:1、1:2、1:3の異なる比率で混合してコンジュゲートを形成し、その後細胞に添加した。ルテニウムとEfsQNRとを1:2の比率で形成したコンジュゲートは、向上した結果をもたらした。24時間後の細胞死を、前述のようにMTTアッセイによって監視し、HeLa細胞によるルテニウム-EfsQNRコンジュゲートの取り込み率と相関していた。
【0354】
実施例1~5の結果
タンパク質およびコンジュゲートの特性評価
構造特異性-AlbGタンパク質のサイズを、公開されている結晶構造pdb id:2xt2.pdbから決定した。Pymol(登録商標)で二量体構造の端から端までの原子距離を測定することによって、長さを10.7nm、幅(直径)を2.6nmと決定した。総形式電荷は、-27であった。正および負の電荷の残基が交互に配置されている:アルギニンラダー(合計20個のArg残基)、リジン(14個の残基)およびアスパラギン酸(30個のAsp残基)およびグルタミン酸(31個のGlu残基)の存在。タンパク質の表面に沿ったアスパラギン(20個のAsn残基)ラダー。
【0355】
EfsQNRタンパク質のサイズを、公開されている結晶構造pdb id:2w7z.pdbから決定した。Pymol(登録商標)で二量体構造の端から端までの原子距離を測定することによって、タンパク質の長さを10.9nm、幅(直径)を2.8nmと決定した。総形式電荷-41。交互に配置された正および負の電荷の残基:アルギニンラダー(合計16個のArg残基)、リジン(12個の残基)およびアスパラギン酸(25個のAsp残基)およびグルタミン酸(33個のGlu残基)の存在。タンパク質の表面に沿ったアスパラギン(33個のAsn残基)ラダー。
【0356】
比較のために、TtCuAタンパク質のサイズを、公開されている結晶構造pdb id:2CuA.pdbから決定した。Pymol(登録商標)で構造の端から端までの原子距離を測定することによって、長さを3.3nm、幅(直径)を1.9nmと決定した。本構造は、5個のアルギニン残基、4個のリジン残基、9個のグルタミン酸残基、および6個のアスパラギン残基を含み、総電荷は-3である。
【0357】
図1は、研究に使用した精製AlbGタンパク質(配列番号1)のCDスペクトルを示している。タンパク質をPBSで透析し、1~5マイクロモル濃度を使用して200~300nm領域のCD分光法を行った。必要に応じて、PBSでさらに希釈した。このタンパク質の220nmでのCDの負の値は、βシート(βバレルまたはβらせん構造)の配置を示す。
【0358】
図2は、βらせんタンパク質AlbGおよびEfsQNRの発現に使用される精製プラスミドを示しており、それぞれ3回(AlbG-1からAlbG-3まで、およびEfsQNR-1からEfsQNR-3まで)で同じ結果を示している。
【0359】
図3は、ポリアクリルアミドゲルでのAlbGおよびEfsQNRタンパク質の精製タンパク質バンドを示している。SDS-ゲル電気泳動を実行した後、単量体形態の両方のタンパク質の分子量が約30kDaであることが注目された。AlbGおよびEfsQNRの二量体形態のおおよその分子量は約48kDaである。タンパク質、AlbGおよびEfsQNRを使用して機能性分子とコンジュゲートを形成し、次いでこれを使用して細胞透過性効果を研究した。研究過程を決定するためにHeLa細胞を使用して、タンパク質をなんらかの細胞障害性についてさらにテストした(以下の「細胞障害性試験」を参照)。
【0360】
図4は、EfsQNRタンパク質およびAlbGタンパク質のMALDI TOF質量分析の結果を示している。この実験では、タンパク質を水中で透析し、0.1%TFAおよびアセトニトリルを含むマトリックスとしてシナピン酸を使用してサンプルを調製した。1~10マイクロモルのタンパク質を使用した。結果は、約26.5kDaの分子量を有するEfsQNRタンパク質、および約23kDaの分子量を有するAlbGタンパク質を示している。
【0361】
細胞毒性試験
前述のMTTアッセイを使用して、HeLa細胞に対するAlbGおよびEfsQNRタンパク質の毒性を試験した。毒性アッセイでは、プラセボ、対照、AlbG(30μM)およびEfsQNR(30μM)のサンプルを3通りで使用した。表1は、MTT処理後の各サンプルの570nmでの吸光度値を示している。値を観察すると、30μMのAlbGおよび30μMのEfsQNRで処理された細胞は、対照細胞と比較して95%の生存率を示すことが理解できる。これは、テストされた濃度でテストされたタンパク質がHeLa細胞に対して毒性がなく、したがって、さらなる実験で使用するのに安全な濃度であることを明確に示唆している。
【0362】
ここに示す表1は、タンパク質の毒性を評価するためのMTTアッセイにおける570nmでの吸光度値を表示している。
【0363】
【表1】
【0364】
この実験のプラセボは、pH8.0の20mMのTris緩衝液であったが、検討した対照は、いずれのタンパク質またはその他の基質も添加していないHeLa細胞のみであった。
【0365】
標識試験
図4は、前述の手順による、標識されたAlbGおよびEfsQNRコンジュゲートのUV-可視分光光度法を示している(上記の「蛍光染料によるタンパク質の標識」を参照)。UV-可視スペクトルを分析して、両方のコンジュゲートの標識比を計算した。標識比は、タンパク質分子当たりに付着した染料の数を意味する。これは、染料の吸光度値(標識に使用される染料に応じた波長で)と280nmでのタンパク質の吸光度との間の比率を測定することによって計算する。この実験で標識に使用した染料は、NHS-クマリンであった。AlbGタンパク質の場合、染料:タンパク質分子比は1.95であることが観察される。EfsQNRの場合、染料:タンパク質分子比は5.5であることがわかる。UV-visスペクトルにより、AlbGタンパク質とEfsQNRタンパク質との両方が、NHS-クマリン染料で標識されていることが確認された。この試験では、標識タンパク質をさらに使用して細胞透過を確立した。
【0366】
細胞透過試験
図5は、NHS-Cで標識されたAlbG、EfsQNR、およびTtCuAタンパク質(コンジュゲート)で処理されたHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像を示している。標識タンパク質(コンジュゲート)の摂取量を、この試験の対照セットとみなされた未処理のHeLa細胞と比較した。ヘキストブルーは、タンパク質の標識に使用されるNHS-C染料とともに使用される核標識染料である。タンパク質AlbGおよびEfsQNRは、5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲の長さ、および1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲の幅のβらせんタンパク質であり、本発明の組換えβらせんタンパク質を表す。しかしながら、TtCuAは、約4nmの長さのタンパク質であり、βバレルを形成するβストランドから構成され、それにより、本発明の組換えβらせんタンパク質の比較例を表す。これらの2つの異なるカテゴリーのタンパク質は、異なるタイプのβらせんタンパク質と比較して、本発明のコンジュゲートの優れた細胞透過能力を確立するために、この試験のために考慮された。
【0367】
図5では、パネルAは、より明るい染料がないことを意味する核標識染料(ヘキストブルー)のみで処理された対照細胞を表し、パネルBは、ヘキストブルー染料およびTtCuA-NHSC標識タンパク質(コンジュゲート)で処理された細胞を表し、パネルCはヘキストブルー染料およびAlbG-NHSC標識タンパク質(コンジュゲート)で処理された細胞を表し、パネルDはヘキストブルー染料およびEfsQNR-NHSC標識タンパク質(コンジュゲート)で処理された細胞を表す。図を観察すると、パネルBに示すように、細胞内に見られる蛍光が大幅に少なく、これらの細胞内にTtCuA-NHSCコンジュゲートがより少なく存在することを示しているが、パネルCおよびパネルDは、細胞内にAlbG-NHSCコンジュゲートおよびEfsQNR-NHSCコンジュゲートがより多く存在することを示している。したがって、TtCuA-NHSCコンジュゲートは、AlbG-NHSCコンジュゲートおよびEfsQNR-NHSCコンジュゲートと比較して、細胞膜を効果的に透過して細胞内に侵入することができないことが理解できる。
【0368】
パネルCおよびDを比較すると、EfsQNR-NHSCコンジュゲートはAlbG-NHSCコンジュゲートと比較してより効率的に膜を透過することができることを観察できる。したがって、3つのコンジュゲートの細胞透過能力は、TtCuA-NHSC<AlbG-NHSC<EfsQNR-NHSCのように細胞取り込みが増加する順で要約することができる。これはさらに、縦長さおよび横長さが5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲であり、幅がそれぞれ1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲である組換えβらせんタンパク質を含むコンジュゲートの細胞透過能力を証明する。AlbGおよびEfsQNRを独立して含むコンジュゲートは、TtCuAを含むコンジュゲートと比較して細胞透過性の向上を示すことができる。
【0369】
EfsQNRタンパク質を含むコンジュゲートは細胞膜を透過する最高の能力を示したため、EfsQNRタンパク質を、哺乳動物細胞の標識を増強するために様々な染料でさらに試験した。
【0370】
図22は、コンジュゲートと細胞膜との直接相互作用を介して進行するリアルタイムの細胞侵入を示している。蛍光顕微鏡下で細胞を可視化するために、核に結合する染料ヘキスト33342(青、図22では暗く表示)および原形質膜に結合する染料Alexa 594-WGA(赤、図22では明るく表示)で細胞を処理し、これは、EfsQNR-ATTO-520NHS(緑色、図22で明るい円として表示)が、エンドサイトーシスメカニズムを回避する直接メカニズムによって細胞内に効率的に透過することを示している。
【0371】
哺乳動物細胞の標識
図7は、HeLa細胞の標識において染料とコンジュゲートしたEfsQNRを含むコンジュゲートの能力を示している。図6は、上記の標識方法に従って調製されたEfsQNR-ATTO-520NHSで標識された細胞を示している。染料ヘキスト33342(青、図7で暗く表示)は核に結合し、染料Alexa 594-WGA(赤、図7で明るく表示)は原形質膜に結合する。コンジュゲートは、EfsQNRタンパク質を緑色蛍光染料ATTO-520NHS(図7で最も明るい染料として表示)と連結することによって形成される。EfsQNR-ATTO-520NHSコンジュゲートがHeLa細胞を透過し、コンジュゲートで処理されていないHeLa細胞を示す対照パネルAと比較した場合、細胞の効率的な標識(パネルB)につながることがはっきりと観察できる。
【0372】
図8は、EfsQNRタンパク質を青色蛍光染料ATTO-390NHS(図8で明るく表示)と連結することによって形成されたコンジュゲートで処理されたHeLa細胞の同様の結果を示している。
【0373】
図9は、上記の標識方法に従って調製されたEfsQNR-ATTO-520NHSで標識されたミクログリア細胞についての同様の結果を示している。パネルAは、細胞内部からの染料の有意な蛍光を示している。パネルBは、核に結合する染料ヘキスト33342(青、図9では暗く表示)および原形質膜に結合する染料Alexa 594-WGA(赤、図9では明るく表示)でさらに処理されたミクログリア細胞を示しており、これは、EfsQNR-ATTO-520NHSが細胞内に効率的に透過したことを示している。
【0374】
図10は、上記の標識方法に従って調製されたコンジュゲートEfsQNR-ATTO-520NHSで標識されたケラチノサイト細胞についての同様の結果を示している。パネルAは、細胞内部からの染料の有意な蛍光を示している。パネルBは、核に結合する染料ヘキスト33342(青色、図10では暗く表示)でさらに処理されたケラチノサイト細胞を示しており、これは、EfsQNR-ATTO-520NHSが細胞内に効率的に透過して核の近くに存在することを示している。
【0375】
図11は、上記の標識方法に従って調製されたコンジュゲートEfsQNR-ATTO-520NHSで標識されたSH-SY5Y細胞についての同様の結果を示している。
【0376】
図12は、上記の標識方法に従って調製されたEfsQNR-ATTO-520NHSで標識されたマウスES細胞についての同様の結果を示している。図12は、核に結合する染料ヘキスト33342(青、図12では暗く表示)および原形質膜に結合する染料Alexa 594-WGA(赤、図12では明るく表示)で処理されたマウスES細胞を示しており、これは、EfsQNR-ATTO-520NHSが細胞内に効率的に透過したことを示している。
【0377】
非哺乳動物細胞の標識
図13~14および21~28は、細菌細胞(E coliおよびPseudovibrio AD37)、酵母細胞(kluveromycesおよびSachromyces種)、植物細胞(Arabidopsis種)、昆虫細胞(ショウジョウバエ胚)および魚類細胞(ゼブラフィッシュ胚)の標識において染料とコンジュゲートしたEfsQNRを含むコンジュゲートの能力を示している。図13~14および21~28は、それぞれ、上記の標識方法に従って調製したEfsQNR-ATTO-520NHSで標識したE coli、Pseudovibrio AD37、kluveromyces、Sachromyces種、Arabidopsis種、ショウジョウバエ胚およびゼブラフィッシュ胚をそれぞれ示している。
【0378】
コンジュゲートで処理されたHeLa細胞のFACSソーティング
図15は、コンジュゲートEfsQNR-ATTO-647Nで標識されたコンジュゲートで処理されたHeLa細胞の標準的なFACSソーティングの結果を示している。細胞をわずか10分間処理するだけで、(パネルB)は、対照(パネルA)と比較して染料の有意な取り込みをもたらし、これは1時間(パネルC)から測定された3時間の最大値(パネルD)まで増加し続ける。
【0379】
薬物取り込み試験
図16は、HeLa細胞におけるルテニウム金属錯体Ru(CO)Clグリシネートの細胞取り込みを示している。ルテニウム金属錯体は、EfsQNRタンパク質とコンジュゲートして、ルテニウム金属錯体-EfsQNRからなるコンジュゲートを形成した。HeLa細胞を上記のようにルテニウム金属錯体-EfsQNRコンジュゲートで処理し(上記の「細胞透過試験」を参照)、前述のようにMTTアッセイを実行して細胞の生存率をチェックすることにより、錯体の取り込みを検出した。グラフ(図14)を観察すると、ルテニウム金属錯体のみで処理した場合、細胞取り込みはわずか0.5%であるのに対し、ルテニウム金属錯体-EfsQNRタンパク質コンジュゲートで処理した場合、錯体の細胞取り込みは24.4%に増加することがわかった。したがって、EfsQNRタンパク質を含むコンジュゲートは、ルテニウム金属錯体単独と比較して、50倍高い細胞取り込みを促進したことを確認することができる。この増強された取り込みは、本発明のコンジュゲートを使用して多くの命を救う薬物を標的に送達し、それによって薬物の用量を低減させ、続いて副作用を減少させることによってさらに活用することができる。
【0380】
図17は、図17に「CYDD」と表示された、化学療法薬であるシスプラチン(登録商標)(シスプラチンまたはシス-ジアンミンジクロロ白金(II)(CDDP))に連結したEfsQNRタンパク質を含むコンジュゲートで培養した哺乳動物細胞(HeLaおよびHepG2)の生存率試験の結果を示している。哺乳動物細胞(HeLa:パネルA、またはHepG2:パネルB)を、標準的なプロトコルを使用して培養した。100万個の細胞を共焦点プレート(1cmの皿)に播種し、8時間増殖させた。次に、シスプラチン(登録商標)およびEfsQNR(2:1のモル比で上記の方法に従って調製)を含むコンジュゲートを添加し、培養物を室温で15分間維持した。細胞を標準的増殖条件下で24時間および72時間維持した。次に、細胞をPBSで洗浄し、MTT溶液を添加した。ホルマザン染料が形成された後、DMSO中に溶解し、550nmでの吸光度を測定した。テストした両方の細胞型において、本発明に従って薬物がコンジュゲートとして送達される場合、シスプラチン(登録商標)の同様の細胞毒性効果がより低い用量で示されることが結果から明らかである。
【0381】
テストしたすべての実験で、EfsQNRタンパク質をAlbGタンパク質に置き換えたときに同様の結果が得られたことが留意される。
【0382】
利点
全体として、特定の長さおよび幅の組換えβらせんタンパク質と、機能性分子とを含むコンジュゲートが、非常に効率的な細胞膜透過性コンジュゲートとして作用することができると結論付けることができる。コンジュゲートが細胞膜を直接透過する能力は、エンドサイトーシスの侵入メカニズムと比較して利点を提供する。AlbG-NHSCおよびEfsQNR-NHSCコンジュゲートの実用的な例は、細胞膜を透過するそれらの能力を実証する本開示において提供される。EfsQNR-染料コンジュゲートは、細胞膜を効果的に透過する能力があるため、様々な哺乳動物および非哺乳動物細胞の標識能力を向上させることが示されている。EfsQNRおよび/またはAlbGを含むコンジュゲートは、HeLaおよびHepG2細胞におけるルテニウム金属錯体およびシスプラチン(登録商標)を含む薬物の細胞取り込みを増加させることが示されている。この能力をさらに活用して、癌細胞による様々な抗癌剤の取り込みを高めることができ、これは、効率的な方法で、同時に薬物の必要量を低減して癌細胞を選択的に標的化することにより、治療を容易にすることができる。抗癌剤の用量を低減することで、このような薬物の投与に伴う副作用を回避することもできる。
【0383】
実施例-核酸を含む細胞透過性分子
以下の段落では、細胞膜を透過することにより、細胞内に目的の遺伝子を有するプラスミドなどの核酸を送達するための実用的な例が提供されている。核酸分子またはプラスミドをさらに含むコンジュゲート(本明細書に記載の細胞透過性ペプチド)を使用することにより、送達が可能になる。実施例はまた、細胞膜を透過して細胞内に入る後の目的の遺伝子の発現を描写している。
【0384】
第1の実施例は、本発明のコンジュゲートの実施形態を使用する、目的の遺伝子の細胞へのトランスフェクションを記載し、ここで、目的の遺伝子は、RFP(赤色蛍光タンパク質)をコードするmcherryである。mcherry遺伝子を含有するプラスミドはタンパク質に連結してコンジュゲートを形成し、コンジュゲートはEfsQNRタンパク質および銅[II]フェナントロリンを含む。コンジュゲートは、HeLa細胞をトランスフェクトするために使用される。HeLa細胞でのmcherry遺伝子の発現の成功は、コンジュゲートが細胞膜を透過して細胞をトランスフェクトする能力を確立するための概念実証として示されている。
【0385】
材料および方法
銅フェナントロリン錯体は、商業的に調達した。
【0386】
実施例6
タンパク質試験-EfsQNRプラスミドの発現、インキュベーション条件、および精製を管理する試験は、以前に公開されたものに従い(Hegde et al.Antimicrob.Agents and Chemother.2011:55(1):110-7、これは参照により本明細書に組み込まれる)、EfsQNRタンパク質を得た。SDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)はBio-Radキットを使用して行い、タンパク質バンドは12%ポリアクリルアミドゲルを使用して視覚化した。
【0387】
実施例7
プラスミドコンジュゲートの調製-銅[II]フェナントロリン結合
本発明に開示されるように、コンジュゲートは、細胞をトランスフェクトするために調製され、コンジュゲートは、EfsQNR(配列番号2)、銅[II]フェナントロリン、および目的の遺伝子を有するプラスミドを含む。
【0388】
図18は、本実施例においてコンジュゲートの調製に使用される、mcherry遺伝子(配列番号25)を保有するプラスミドのベクターマップを示す。EfsQNRタンパク質(配列番号2)は、5nm~25nm、好適には10nm~15nmの範囲の長さおよび1nm~5nm、好適には1nm~3nmの幅を有するペンタペプチドリピート(配列番号18で表示されるような)を有するβらせんタンパク質である。銅[II]フェナントロリンは、本実施例においてリンカーとして使用される核酸挿入剤である。
【0389】
EfsQNRプラスミドの発現を支配することによって得られたEfsQNRタンパク質を、銅[II]フェナントロリン錯体と複合体化して、EfsQNRおよび銅[II]フェナントロリンを含む複合体を得た。得られた複合体を、mcherry遺伝子を有するプラスミドとさらに反応させて、本発明の実施形態によるコンジュゲートを得た。得られたコンジュゲートを使用して、HeLa細胞をトランスフェクトした。
【0390】
図19は、トランスフェクションに使用できるコンジュゲートを調製するための2つのスキームを示している。スキーム1は、タンパク質と複合体を形成するリンカーとして銅[II]フェナントロリンを使用することを示唆している。得られた複合体を、目的の遺伝子を有するプラスミドとさらに反応させて、トランスフェクションに使用されるコンジュゲートを得る。
【0391】
スキーム2は、タンパク質と複合体を形成するリンカーとしてDNA結合タンパク質を使用することを示唆している。得られた複合体を、目的の遺伝子を有するプラスミドとさらに反応させて、トランスフェクションに使用されるコンジュゲートを得る。
【0392】
この実施例では、銅[II]フェナントロリンをリンカーとして使用して複合体を形成し、組換えβらせんタンパク質-EfsQNR(配列番号2)をmcherry遺伝子を含有するプラスミドとともに使用する。複合体およびコンジュゲートの調製には、次のプロトコルを使用した。
【0393】
タンパク質EfsQNRを銅[II]フェナントロリンと1:2のモル比で混合し、室温で30分間インキュベートして、複合体を得た。mcherry遺伝子を含有するプラスミドを前の工程で得られた複合体と混合し、4℃で30分間インキュベートしてコンジュゲートを得た。このようにして得られたコンジュゲートを使用して、HeLa細胞をトランスフェクトした。
【0394】
実施例8
実施例7のコンジュゲートを使用したHeLa細胞のトランスフェクション
図20は、実施例7で得られたコンジュゲートを使用したトランスフェクション実験のスキームを示している。この実施例では、トランスフェクション実験を実行するために以下の条件を使用した。
【0395】
実施例7(A)で得られたmcherryプラスミドを含むコンジュゲートをHeLa細胞に添加した(播種後8時間)。37℃および5%のCO条件で48時間インキュベートすることにより、細胞を増殖させた。インキュベーション後、細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0396】
図21は、トランスフェクション実験後のHeLa細胞の共焦点顕微鏡画像を示している。RFPの発現は、HeLa細胞内の明るい(赤)ドットとして観察でき、これにより、本書に開示されているコンジュゲートの細胞透過性およびトランスフェクション能力が証明される。
【0397】
実施例9
プラスミドコンジュゲートの調製-エチレンジアミン結合
本発明でさらに開示されるように、コンジュゲートを、1つ以上の遺伝子編集分子をコードするのに典型的なプラスミドで細胞をトランスフェクトするために調製した。コンジュゲートは、EfsQNR(配列番号2)、エチレンジアミンリンカー、およびプラスミドを含んでいた。コンジュゲートは、既知のプロトコル(参照:Bioconjugate Techniques;Greg T.Hermansen;Academic Press;3rdedition;2013;pp264-265、これは参照により本明細書に組み込まれる)に従って調製した。使用したプラスミドは、2.7kbの赤色標識環状プラスミドDNA(Mirus Bioから得られたLabel IT(登録商標)Plasmid Delivery Control Cy(登録商標)3(製品コードMIR 7904))であった。
【0398】
実施例10
実施例9のコンジュゲートを使用したMCF7細胞のトランスフェクション
実施例9で得られたプラスミド[Label IT(登録商標)Plasmid Delivery Control Cy(登録商標)3(製品コードMIR 7904)]を含むコンジュゲートをMCF-7細胞に添加した(播種後8時間)。37℃および5%のCO条件で12~16時間インキュベートすることにより、細胞を増殖させた。インキュベーション後、細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0399】
図30は、(A)実施例1で得られたコンジュゲート(EfsQNR)(配列番号2)およびMirus Bioから市販されている2.7kbの赤色標識環状プラスミドDNA(製品コードMIR 7904)を使用したMCF7細胞でのトランスフェクション実験の結果、および(B)コンジュゲートの非存在下での上記で使用した赤色標識プラスミドの対照を使用したMCF7細胞でのトランスフェクション実験の結果を示す。(i)はインキュベーション後の細胞の最大投射を示し、(ii)はインキュベーション後の細胞の強度プロットに対応する画像であり、(iii)はインキュベーション後の細胞の強度プロットを示す。
【0400】
最大投射画像(i)では、EfsQNRタンパク質にコンジュゲートされると、プラスミドが細胞全体にはるかによく広がることがはっきりと見ることができる。これは、プラスミドなどの標的核酸を細胞内に運び、局在化させるコンジュゲートの効率を示している。
【0401】
強度プロット(iii)から、プラスミドがタンパク質の助けを借りて細胞に入ることができ、広がりが均一かつ広範囲に及んでいることが明らかである。
【0402】
本明細書に提示される実施例は、トランスフェクションのためのコンジュゲートの調製におけるタンパク質EfsQNR(配列番号2)の使用を示すが、配列番号1および配列番号3から配列番号12までに示されるようなアミノ酸配列を有するタンパク質もまた、コンジュゲートを形成するために効果的に使用することができる。また、配列番号18に示されるようなペンタペプチドリピート配列を有し、5nm~25nmの範囲、好適には10nm~15nmの範囲の長さ、および1nm~5nm、好適には1nm~3nmの範囲の幅を有する組換えβらせんタンパク質は、本開示に記載されるコンジュゲートを調製するために使用することができる。同様に、本実施例は、リンカーとしての銅[II]フェナントロリンまたはエチレンジアミンの使用を示しているが、DNA結合タンパク質、金属コンジュゲート、薬物金属コンジュゲート、および他の核酸挿入分子のような他の分子もまた、トランスフェクション剤として効果的に使用されるコンジュゲートの形成において使用され得る。1つの部類のDNA結合タンパク質、すなわち、12kDa未満の分子量を有するジンクフィンガータンパク質もまた、コンジュゲートを形成するために使用され得る。リンカーとして使用することができるそのようなジンクフィンガータンパク質の1つは、配列番号24に示されている。本開示では、mcherry遺伝子を保有するプラスミド(図18)、および2.7kbの赤色標識環状プラスミドDNAをトランスフェクション用のコンジュゲートの調製に使用し、mcherry遺伝子の発現を概念証明として示した。トランスフェクションの目的で、目的の遺伝子を含む本質的に任意の核酸またはプラスミドを、本明細書に開示される複合体と複合体化して、遺伝子治療または遺伝子編集で使用するためのコンジュゲートを形成し得ることが企図される。
【0403】
利点
本開示は、細胞膜を透過し、目的の遺伝子を発現する能力を有する目的の遺伝子を含む核酸またはプラスミドを含むコンジュゲートを提供する。したがって、コンジュゲートはトランスフェクションに使用することができ、遺伝子治療および遺伝子編集に使用できる非常に大きな可能性がある。遺伝子を構成する核酸およびプラスミドの細胞への送達が遺伝子治療および遺伝子編集の分野における主要な課題であることが知られているため、開示されたコンジュゲートはこの分野に新たな道を開く。開示されたコンジュゲートは、調製が容易であり、遺伝子治療および遺伝子編集に使用される遺伝子を構成する多種多様な核酸およびプラスミドと複合体化することができる。
【0404】
実施例11
本発明のCPPによる遺伝子編集分子機構のトランスフェクション
トランスフェクション実験を、実施例1で得られたコンジュゲート(EfsQNR:配列番号2)およびエンドヌクレアーゼCas9に基づく遺伝子編集複合体、CRISPR-RNPを使用して哺乳動物細胞で実施した。表2に示されている結果を、図29に示す。上記の実施例4の結果に基づいて、この技術の適用は、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞および魚類細胞を含む多種多様な細胞に適用可能であることが企図される。
【0405】
【表2】
【0406】
本発明の一実施形態では、トランスフェクション実験を行うために以下の条件を使用した。
【0407】
ストラテジー:
細胞内の遺伝子編集は、様々な方法で報告された。特に関連性のある実施例の1つは、Cas9などのエンドヌクレアーゼのリボ核タンパク質(RNP)複合体およびgRNAを細胞に送達する。この方法論は、遺伝子編集機構の中間的な細胞内合成を必要としないため、特に魅力的である。
【0408】
現在、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ナノ粒子、およびカチオン性脂質を介した送達などのいくつかの方法が、遺伝子編集機構を細胞の細胞質に導入し、そこからゲノムに移動できるようにするために使用されている。
【0409】
一実施形態では、本発明は、Cas9、gRNA、およびCPP間の静電相互作用を使用して、Cas9-gRNA RNP(CRISPR-RNP)を細胞に運ぶ。様々な成分が共有および/または非共有相互作用によって連結されているコンジュゲートの使用も企図されている。
【0410】
eGFPを発現する細胞(HEK293)は、eGFPに特異的なgRNAを有するCRISPR-RNPでトランスフェクトされる。CRISPR-RNPの取り込みは、本発明のCPPによって媒介され、これは、カーゴを効率的に細胞に輸送することができる(実施例4)。CPPから解離するか、CPPによって阻害されない細胞への取り込みに続いて、Cas9はgRNAによってその標的DNA配列eGFPに向けられる。この遺伝子のノックアウト、したがって細胞内の蛍光の喪失は、遺伝子編集複合体の効率的かつ効果的な送達方法の証拠である。
【0411】
安定したeGFP発現細胞株を得るために、G418抗生物質を使用した選択プロセスが使用される。eGFPを発現し、したがってeGFPプラスミドを取り込んだ細胞も、G418抗生物質耐性を付与することになる。eGFPプラスミドを取り込んでいない細胞は、G418に対する耐性がないため、選択培地に保存すると、一定期間で死滅するであろう。
【0412】
実験:eGFP(高感度緑色蛍光タンパク質)を発現する細胞(HEK293)は、リポフェクタミンベースの市販試薬を使用してHEK293細胞をeGFPでトランスフェクトすることにより得られる。細胞を48時間増殖させて、eGFPでトランスフェクトされた70~80%の細胞を得る。細胞を二次培養し、G418抗生物質を含む選択培地で増殖させて、HEK293細胞がeGFPを安定して発現するようにしてから遺伝子編集実験に使用する。
【0413】
約5000個の細胞を96ウェルプレートに播種し、1日目に一晩増殖させる。
【0414】
2日目に、Cas9-gRNA-CPP(CRISPR-RNP-CPP)複合体を、二工程で形成した。
【0415】
工程1:Cas9は、gRNAとi)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中またはii)市販のCas9を供給した反応緩衝液中(Genaxxon Biosciences:Cas9-NLS-tagRFP Streptococcus(S.)pyogenes Cas9タンパク質NLS、続いてC-末端赤色蛍光タンパク質(tagRFP)タグ配列;製品番号:S5306.0010、HS-No.:35040090)で混合した。反応緩衝液は、Cas9とRNPとの複合体を安定化させるように作用する。次いで、混合物を室温で25分間インキュベートして、CRISPR-RNP複合体を形成した。
【0416】
工程2:工程1で得られたCas9-gRNA混合物にPBS中の1マイクロMのCPPを添加し、室温でさらに30分間インキュベートして、CRISPR-RNP-CPP複合体を形成した。
【0417】
工程3:工程2で得られたCRISPR-RNP-CPP複合体を培地(血清ありまたはなしのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、例えば、Sigma)中の細胞に添加し、細胞を4時間培養する。4時間後、培地(血清を含むDMEM)を細胞に添加し、48時間の標準的な細胞増殖条件(温度37℃および5%のCO下で増殖させたままにした。48時間後、細胞をPBSで洗浄し、新鮮な培地(血清を含むDMEM)を添加し、eGFPによる蛍光強度を蛍光プレートリーダーで測定した。
【0418】
哺乳動物の腎臓HEK293細胞での結果
本発明のCPPは、細胞へのCRISPR-RNPの効率的な送達を支援する。細胞への取り込みに続いて、Cas9はgRNAによってeGFPのその標的DNA配列に向けられる。Cas9によるこの遺伝子のノックアウトは、細胞内の蛍光の喪失につながる。
【0419】
工程3で無血清培地を使用し、工程1で反応緩衝液(Genaxxon Cas9およびgRNAを溶解するための商用供給源で提供されている、製品番号S5306.0010)を使用すると、蛍光が30%低減し、細胞内部へのCRISPR-RNPの効率的な移入を示している。
【0420】
PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を使用してCRISPR-RNP複合体を溶解した場合、蛍光強度に有意な変化は観察されなかった。
【0421】
理論に束縛されるものではないが、PBSはCRISPR-RNPとCPPとの間の複合体形成を安定化させることができないと仮定される。
【0422】
実施例12
本発明の組換えβ-らせんタンパク質による蛍光標識エンドヌクレアーゼCas9のトランスフェクション
図31は、実施例1で得られたコンジュゲート(EfsQNR:配列番号2)および(i)赤色蛍光タンパク質、または(ii)緑色蛍光染料Atto520のいずれかでタグ付けされたエンドヌクレアーゼcas9を使用したMCF-7細胞におけるトランスフェクション実験の結果を示す。
【0423】
実施例1で得られたコンジュゲート(EfsQNR:配列番号2)を、赤色蛍光タンパク質または緑色蛍光染料ATTO520(Sigma製品77810)のいずれかとコンジュゲートしたcas9(例えば、Eupheria Biotech)と1:1の比率で混合し、室温で30分間インキュベートした。
【0424】
得られた溶液を細胞に添加し、細胞とともに12~16時間インキュベートした。
【0425】
図31は、(A)インキュベーション後の細胞の最大投射、(B)インキュベーション後の細胞の強度プロット、および(C)インキュベーション後の細胞の3D深度画像を示している。
【0426】
両方の最大投射画像(A)で、cas9が成功裏にトランスフェクトされ、標識染料に関係なく細胞全体に広がることができることをはっきりと見ることができる。これは、標的タンパク質を運び、細胞内で局在化させるための本発明のコンジュゲートの効率を示している。
【0427】
強度プロット(B)から、コンパニオン染料に関係なく、cas9がコンジュゲートを使用して細胞に入ることができたことが明らかである。広がりは細胞全体にあり、かつ均一である。
【0428】
3D深度画像(C)は、Cas9カーゴが細胞全体に広がっていることを示している。深度分析および3D表現は、それがすべての平面に存在することを示している。
【0429】
実施例13
本発明の組換えβ-らせんタンパク質による蛍光標識gRNAのトランスフェクション
本発明でさらに開示されるように、コンジュゲートを、CRISPR-cas9遺伝子編集システムを用いる遺伝子編集で使用するのに典型的なgRNAで細胞をトランスフェクトするために調製した。コンジュゲートは、EfsQNR(配列番号2)、エチレンジアミンリンカー、および緑色蛍光染料MFP488でタグ付けされたgRNA(例えば、Eupheria Biotech:esiCRISPR Kit-wt)で構成されていた。コンジュゲートは、既知のプロトコル(参照:Bioconjugate Techniques;Greg T.Hermansen;Academic Press;3rdedition;2013;pp264-265、これは参照により本明細書に組み込まれる)に従って調製した。
【0430】
図32は、(A)実施例1で得られたコンジュゲート(EfsQNR)および緑色蛍光染料MFP488でタグ付けされたgRNA、および(B)コンジュゲートの非存在下で緑色蛍光染料MFP488でタグ付けされた対照gRNAを使用したMCF-7細胞におけるトランスフェクション実験の結果を示す。(i)はインキュベーション後の細胞の最大投射を示し、(ii)は細胞の3D深度画像を示し、(iii)はインキュベーション後の細胞の強度プロットに対応する画像であり、(iv)はインキュベーション後の細胞の強度プロットを示す。
【0431】
画像は、細胞内のgRNAの強度および均一性が、gRNAおよびコンジュゲートとインキュベートした細胞と比較して、対照の方が有意に低いことを明確に示している。これは、コンジュゲートがgRNAを細胞に運ぶことができることを示唆している。対照についての最大投射画像、強度プロット、および3D深度画像は、gRNAのほとんどが細胞膜に局在しているのに対し、コンジュゲートでは、分布が主に細胞質にはっきりと観察されていることを示している。
【0432】
CRISPR構成要素は、Eupheria BiotechおよびGenaxxonという2つの異なる商用供給源から入手した。
【0433】
Genaxxon Biosciences:CRISPR用のGFP標的化ガイドRNA;製品番号:P2008.0010、精製されたgRNAは高感度GFPをコードする配列を標的とする、HS-No.:29349990)。
【0434】
Genaxxon Biosciences:Cas9-NLS-tagRFP Streptococcus(S.)pyogenes Cas9タンパク質NLS、続いてC-末端赤色蛍光タンパク質(tagRFP)タグ配列;製品番号:S5306.0010、HS-No.:35040090)。
【0435】
Eupheria Biotech:esiCRISPR Kit-wt、以下を含むキット
・20μgのStreptococcus pyogenes Cas9-NLS(650ng/μl)
・15μgのカスタムガイド(g)RNA(400ng/μl)
・35μlのCRISPRfection(商標)トランスフェクション試薬(一本鎖ガイド(g)RNAをロードしたCas9タンパク質をほとんどの接着細胞に送達するのに好適な独自の脂質ベースのトランスフェクション試薬)
・1mlのCRISPRfection緩衝液(CRISPRfection用希釈剤)
・陰性対照としての、5μgのNoTarget gRNA(ヒト、マウス、ラット)
・トランスフェクトされた細胞から単離されたDNAに由来するPCR産物のインデル分析を実行するための反応緩衝液
・Cas9-NLSタンパク質およびgRNAの性能を確認するための陽性対照試薬:対照標的DNA、対照gRNA、反応緩衝液
・トランスフェクション、インデル分析、Cas9活性アッセイについてのプロトコルが記載された応用マニュアル
[https://www.eupheria.com/products/crisprcas9/esicrispr-kits/;2019年2月25日にアクセス]
【0436】
細胞がまだプラスミドを保持しているが、編集された非蛍光eGFPを使用していることを確認するためのストラテジー
eGFPおよびRFP-緑色および赤色蛍光の両方を発現する「m-cherry」構築物。このプラスミドによる哺乳動物細胞のトランスフェクションにより、細胞がeGFPを発現しており、正常に送達されたかどうかを判定することができる。緑色ではなく赤色蛍光を発する細胞は、CRISPR-RNP-CPP送達後の遺伝子編集によって付与されたeGFP欠失を示す。
【0437】
細胞の取り込みおよび遺伝子編集を改善するためのストラテジー(欠失、置換、または変異誘発)
CPP-Cas9-gRNA複合体の送達を成功させるための条件の最適化は、いくつかのストラテジーによって達成することができる。
【0438】
ストラテジー1:
特定の調整された緩衝液がCPPとCRISPR-RNPとの間の相互作用を増強する可能性があると仮定される。以下のバリエーションは、細胞内送達の効率を高めるために企図されている。
i)CRISPR-RNP-CPPの複合体形成を促進するための密集剤(crowding agents)(PEG 4000、コレステロール)の添加、
ii)疎水性相互作用を促進することによりCRISPR-RNP-CPPの複合体形成を促進するための特定の小さな脂質(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)の添加、
iii)ホルボール12-ミリステート13-アセテートのような小分子(細胞内のマイクロピノサイトーシス(micropinocytosis)プロセスを増強するため)
iv)pHおよびイオン強度の変化(CPP-Cas9-gRNA間の静電相互作用を促進するため)
【0439】
ストラテジー2:
CPPは、3-(N-スクシンイミジルオキシグルタリル)アミノプロピル、ポリエチレングリコール-カルバミルジステアロイルホスファチジル-エタノールアミンおよび/またはN-(アミノプロピルポリエチレングリコール)カルバミル-ジステアロイルホスファチジル-エタノールアミンで官能化できる。この官能化は、CPPと細胞膜の脂質分子との相互作用を増強し、本発明の実施形態のCRISPR-RNP-CPP複合体の細胞侵入を容易にし得る。
【0440】
ストラテジー3:
CRISPRエンドヌクレアーゼで使用されているのと同じアプローチが、ZFNおよびTALEN(登録商標)などの他の遺伝子編集エンドヌクレアーゼシステムでも使用できると仮定される。
【0441】
本明細書に記載の本発明の異なる実施形態は、適切な場合に組み合わせることができ、本発明の実施形態の特徴は、適切な場合に、他の実施形態と互換的に使用できることを理解されたい。
【0442】
本発明の特定の実施形態を本明細書において詳細に開示してきたが、これは例として、かつ例示のみを目的として行われたものである。前述の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範疇を制限することを意図するものではない。本発明者は、特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な置換、変更、および修正が行われてもよいことを企図する。
【0443】
【表3】
本発明の概念の代替表現は、以下の項目に記載されている。
1.機能性分子に連結された組換えβらせんタンパク質を含む細胞透過性コンジュゲートであって、βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、コンジュゲート。
2.βらせんタンパク質の長さが、10nm~15nmの範囲であり、幅が、1nm~3nmの範囲である、第1項に記載のコンジュゲート。
3.βらせんタンパク質が、アルギニンラダー、リジンラダー、アスパラギンラダー、アスパラギン酸ラダー、およびグルタミン酸ラダーからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸ラダー構造を含む、第1項または第2項に記載のコンジュゲート。
4.存在する場合、アルギニンラダーが、10~20個のアルギニン残基を含み、リジンラダーが、10~30個のリジン残基を含み、アスパラギンラダーが、10~40個のアスパラギン残基を含み、アスパラギン酸ラダーが、10~40個のアスパラギン酸残基を含み、グルタミン酸ラダーが、10~40個のグルタミン酸残基を含む、第3項に記載のコンジュゲート。
5.βらせんタンパク質が、ゼロ未満である総電荷を有する、第1項1~第4項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
6.βらせんタンパク質が、-20~-60の総電荷を有する、第5項に記載のコンジュゲート。
7.βらせんタンパク質が、原子間力顕微鏡法によって測定された場合、0.2~12N/mの硬さパラメータKを有するβらせん構造(ベータヘリックス)を有する、第1項~第6項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
8.βらせんタンパク質が、ペンタペプチドリピートタンパク質である、第1項~第7項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
9.βらせんタンパク質が、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む、第8項に記載のコンジュゲート。
10.βらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される、第1項~第7項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
11.組換えβらせんタンパク質が、ポリエチレングリコール(PEG)、ペプチド、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子を介して機能性分子に連結されている、第1項~第10項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
12.リンカー分子がペプチドである場合、ペプチドが、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を含む、第11項に記載のコンジュゲート。
13.リンカーが、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている、第1項~第12項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
14.組換えβらせんタンパク質が、エステル結合またはアミド結合を介して機能性分子に連結されている、第1項~第13項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
15.機能性分子が、染料、薬物、金属、薬物-金属コンジュゲート、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、第1項~第14項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
16.コンジュゲートが、シグナル配列をさらに含み、このシグナル配列が、特定の細胞または細胞の一部にコンジュゲートを向ける、第1項~第15項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
17.シグナル配列が、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17からなる群から選択される、第16項に記載のコンジュゲート。
18.コンジュゲートが、ホスファチジルコリン分子をさらに含む、第1項~第17項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
19.コンジュゲートが、細胞小器官、核、小胞体、ミトコンドリア、細胞膜、およびP-カドヘリン過剰発現乳癌細胞からなる群から選択される位置に機能性分子を移入させる、第16項~第18項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
20.細胞小器官が、アクチンフィラメント、ゴルジ体、細胞膜、微小管を含む群から選択される、第19項に記載のコンジュゲート。
21.コンジュゲートが、細胞標識剤として使用される、第1項~第20項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
22.コンジュゲートが、機能性分子を細胞に移入させるために使用される、第1項~第20項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
23.機能性分子を細胞に移入させるプロセスであって、該プロセスが、
a)機能性分子を組換えβらせんタンパク質に連結させてコンジュゲートを得ることと、
b)コンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、
工程(b)のコンジュゲートを接触させることが、機能性分子を細胞に移入させ、βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、プロセス。
24.プロセスが、工程(b)の後に、
c)細胞内のコンジュゲートの移入を検出することを含む、第23項に記載のプロセス。
25.βらせんタンパク質の長さが、10nm~15nmの範囲であり、幅が、1nm~3nmの範囲である、第23項または第24項に記載のプロセス。
26.βらせんタンパク質が、アルギニンラダー、リジンラダー、アスパラギンラダー、アスパラギン酸ラダー、およびグルタミン酸ラダーからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸ラダー構造を含む、第23項~第25項のいずれか一項に記載のプロセス。
27.存在する場合、アルギニンラダーが、10~20個のアルギニン残基を含み、リジンラダーが、10~30個のリジン残基を含み、アスパラギンラダーが、10~40個のアスパラギン残基を含み、アスパラギン酸ラダーが、10~40個のアスパラギン酸残基を含み、グルタミン酸ラダーが、10~40個のグルタミン酸残基を含む、第26項に記載のプロセス。
28.βらせんタンパク質が、ゼロ未満である総電荷を有する、第23項~第27項のいずれか一項に記載のプロセス。
29.βらせんタンパク質が、-20~-60の総電荷を有する、第28項に記載のプロセス。
30.βらせんタンパク質が、原子間力顕微鏡法によって測定された場合、0.2~12N/mの硬さパラメータKを有するβらせん構造(ベータヘリックス)を有する、第23項~第29項のいずれか一項に記載のプロセス。
31.βらせんタンパク質が、ペンタペプチドリピートタンパク質である、第23項~第30項のいずれか一項に記載のプロセス。
32.βらせんタンパク質が、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む、第31項に記載のプロセス。
33.βらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される、第23項~第30項のいずれか一項に記載のプロセス。
34.機能性分子が、染料、薬物、金属、薬物-金属、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、第23項~第33項のいずれか一項に記載のプロセス。
35.機能性分子が、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている、第23項~第34項のいずれか一項に記載のプロセス。
36.細胞が、真核細胞、原核細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、第23項~第35項のいずれか一項に記載のプロセス。
37.該プロセスが、細胞標識のために使用される、第23項~第36項のいずれか一項に記載のプロセス。
38.機能性分子を細胞に送達するための第1項~第20項のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲートの使用であって、機能性分子が、染料、薬物、金属、薬物-金属、タンパク質、酵素、抗体、核酸、多糖類、核局在化シグナル、ナノ粒子およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、使用。
39.細胞透過のための第1項~第20項のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲートの使用。
40.細胞標識のための第1項~第20項のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲートの使用。
41.(a)少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質と、(b)少なくとも1つのリンカーと、(c)少なくとも1つの核酸分子と、を含むコンジュゲートであって、少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、コンジュゲート。
42.少なくとも1つの組換えβらせんタンパク質の長さが、10nm~15nmの範囲であり、幅が、1nm~3nmの範囲である、第41項に記載のコンジュゲート。
43.βらせんタンパク質が、アルギニンラダー、リジンラダー、アスパラギンラダー、アスパラギン酸ラダー、およびグルタミン酸ラダーからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸ラダー構造を含む、第41項または第42項に記載のコンジュゲート。
44.存在する場合、アルギニンラダーが、10~20個のアルギニン残基を含み、リジンラダーが、10~30個のリジン残基を含み、アスパラギンラダーが、10~40個のアスパラギン残基を含み、アスパラギン酸ラダーが、10~40個のアスパラギン酸残基を含み、グルタミン酸ラダーが、10~40個のグルタミン酸残基を含む、第43項に記載のコンジュゲート。
45.βらせんタンパク質が、ゼロ未満である総電荷を有する、第41項~第44項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
46.βらせんタンパク質が、-20~-60の総電荷を有する、第45項に記載のコンジュゲート。
47.βらせんタンパク質が、原子間力顕微鏡法によって測定された場合、0.2~12N/mの硬さパラメータKを有するβらせん構造(ベータヘリックス)を有する、第41項~第46項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
48.βらせんタンパク質が、ペンタペプチドリピートタンパク質である、第41項~第47項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
49.βらせんタンパク質が、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む、第48項に記載のコンジュゲート。
50.βらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される、第41項~第47項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
51.リンカーが、ポリエチレングリコール(PEG)、ペプチド、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー分子である、第41項~第50項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
52.リンカー分子がペプチドである場合、ペプチドが、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を含む、第51項に記載のコンジュゲート。
53.リンカーが、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている、第41項~第52項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
54.リンカーが、エステル結合またはアミド結合によって組換えβらせんタンパク質に連結されている、第53項に記載のコンジュゲート。
55.核酸分子が、少なくとも1つの目的の遺伝子を含む、第41項~第54項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
56.核酸分子が、プラスミドである、第55項に記載のコンジュゲート。
57.プラスミドが、DNAプラスミドまたはRNAプラスミドである、第56項に記載のコンジュゲート。
58.目的の遺伝子が、ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードする、第55項~第57項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
59.ゲノム編集システムが、
a.RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、
b.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、
c.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、
d.DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、
e.ホーミングエンドヌクレアーゼ、
f.インテグラーゼからなる群から選択される、第58項に記載のコンジュゲート。
60.目的の遺伝子が、RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)をコードする、第55項~第59項のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
61.RNAガイド型エンドヌクレアーゼが、Cas9である、第60項に記載のコンジュゲート。
62.核酸分子を細胞に移入させるプロセスであって、該プロセスが、
a)核酸分子を、少なくとも1つのリンカーを介して、少なくとも1つの 組換えβらせんタンパク質に連結させて、コンジュゲートを得ることと、
b)コンジュゲートを少なくとも1つの細胞と接触させることと、を含み、
コンジュゲートを接触させることが、核酸分子を細胞に移入させ、組換えβらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、プロセス。
63.プロセスが、工程(b)の後に、
c)細胞内のコンジュゲートの移入を検出することを含む、第62項に記載のプロセス。
64.組換えβらせんタンパク質の長さが、10nm~15nmの範囲であり、幅が、1nm~3nmの範囲である、第62項または第63項に記載のプロセス。
65.βらせんタンパク質が、アルギニンラダー、リジンラダー、アスパラギンラダー、アスパラギン酸ラダー、およびグルタミン酸ラダーからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸ラダー構造を含む、第62項~第64項のいずれか一項に記載のプロセス。
66.存在する場合、アルギニンラダーが、10~20個のアルギニン残基を含み、リジンラダーが、10~30個のリジン残基を含み、アスパラギンラダーが、10~40個のアスパラギン残基を含み、アスパラギン酸ラダーが、10~40個のアスパラギン酸残基を含み、グルタミン酸ラダーが、10~40個のグルタミン酸残基を含む、第65項に記載のプロセス。
67.βらせんタンパク質が、ゼロ未満である総電荷を有する、第62項~第66項のいずれか一項に記載のプロセス。
68.βらせんタンパク質が、-20~-60の総電荷を有する、第67項に記載のプロセス。
69.βらせんタンパク質が、原子間力顕微鏡法によって測定された場合、0.2~12N/mの硬さパラメータKを有するβらせん構造(ベータヘリックス)を有する、第62項~第68項のいずれか一項に記載のプロセス。
70.βらせんタンパク質が、ペンタペプチドリピートタンパク質である、第62項~第69項のいずれか一項に記載のプロセス。
71.βらせんタンパク質が、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む、第70項に記載のプロセス。
72.βらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される、第62項~第70項のいずれか一項に記載のプロセス。
73.リンカーが、ポリエチレングリコール(PEG)、ペプチド、金属コンジュゲート、薬物-金属コンジュゲート、DNA結合ドメイン、核酸挿入分子およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、第62項~第72項のいずれか一項に記載のプロセス。
74.リンカー分子がペプチドである場合、ペプチドが、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を含む、第73項に記載のプロセス。
75.リンカーが、共有結合、非共有結合、およびこれらの組み合わせによって組換えβらせんタンパク質に連結されている、第62項~第74項のいずれか一項に記載のプロセス。
76.リンカーが、エステル結合またはアミド結合によって組換えβらせんタンパク質に連結されている、第75項に記載のプロセス。
77.細胞が、真核細胞または原核細胞からなる群から選択される、第62項~第76項のいずれか一項に記載のプロセス。
78.核酸分子が、少なくとも1つの目的の遺伝子を含む、第62項~第77項のいずれか一項に記載のプロセス。
79.核酸分子が、プラスミドである、第78項に記載のプロセス。
80.プラスミドが、DNAプラスミドまたはRNAプラスミドである、第79項に記載のプロセス。
81.目的の遺伝子が、ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードする、第78項~第80項のいずれか一項に記載のプロセス。
82.ゲノム編集システムが、
a.RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、
b.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、
c.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、
d.DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、
e.ホーミングエンドヌクレアーゼ、
f.インテグラーゼからなる群から選択される、第81項に記載のプロセス。
83.目的の遺伝子が、RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)をコードする、第78項~第82項のいずれか一項に記載のプロセス。
84.RNAガイド型エンドヌクレアーゼが、Cas9である、第83項に記載のプロセス。
85.ゲノム編集システムの1つ以上の分子をコードするプラスミドに連結された組換えβらせんタンパク質を含む標的ポリヌクレオチドを改変するためのゲノム編集複合体であって、βらせんタンパク質の長さが、5nm~25nmの範囲であり、幅が、1nm~5nmの範囲である、ゲノム編集複合体。
86.組換えβらせんタンパク質が、コンセンサス配列(STAV)(DN)(LF)(STR)(G)を有するタンデムリピートペンタペプチドを含む、第85項に記載のゲノム編集複合体。
87.組換えβらせんタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列によって表される、第85項に記載のゲノム編集複合体。
88.プラスミドが、少なくとも1つの目的の遺伝子を含む、第85項~第87項のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
89.プラスミドが、DNAプラスミドまたはRNAプラスミドである、第85項~第88項のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
90.ゲノム編集システムが、
a.RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)、
b.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、
c.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、
d.DNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドDNA、
e.ホーミングエンドヌクレアーゼ、
f.インテグラーゼからなる群から選択される、第85項~第89項のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
91.ゲノム編集システムの1つ以上の分子が、RNAガイド型エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNA(gRNA)である、第85項~第90項のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体。
92.RNAガイド型エンドヌクレアーゼが、Cas9である、第91項に記載のゲノム編集複合体。
93.トランスフェクション剤としての、第41項~第61項のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは第85項~約92項のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体の使用。
94.遺伝子治療のための、第41項~第61項のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは第85項~約92項のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体の使用。
95.遺伝子編集のための、第41項~第61項のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは第85項~約92項のいずれか一項に記載のゲノム編集複合体の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30-1】
図30-2】
図31A)】
図31B)】
図31C)】
図32-1】
図32-2】
【配列表】
2022522001000001.app
【国際調査報告】