(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(54)【発明の名称】単一塩基編集による非標的な単一ヌクレオチド変異及び当該変異を避ける高特異性オフターゲットのない単一塩基遺伝子編集ツール
(51)【国際特許分類】
C12N 15/90 20060101AFI20220406BHJP
C12N 9/78 20060101ALI20220406BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220406BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20220406BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220406BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
C12N15/90 Z ZNA
C12N9/78
C12N15/55
C12Q1/68 100Z
C12Q1/02
C12N15/09 100
C12N15/09 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550263
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2019119842
(87)【国際公開番号】W WO2020173150
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】201910153546.3
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910494323.3
(32)【優先日】2019-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521339278
【氏名又は名称】中国科学院脳科学与智能技術卓越創新中心
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 輝
(72)【発明者】
【氏名】左 二偉
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD11
4B050KK11
4B050LL05
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【要約】
本発明は、高い特異性、オフターゲットがない単一塩基遺伝子編集ツールに関する。単一塩基エディターのオフターゲット効果を低減する方法を開示した。本発明は、遺伝子編集ツールまたは遺伝子編集操作のターゲティング効果を分析する方法(GOTI)も開示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一塩基エディターのオフターゲット効果を低減する方法であって、単一塩基エディターシステムでは、シチジンデアミナーゼ酵素を修飾し、そのDNAと結合する能力を弱化させることを含む方法。
【請求項2】
上記の修飾は、シトシンデアミナーゼのDNA結合領域に対する修飾である;好ましくに、上記のDNA結合領域は、そのDNAと結合するドメインであることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
上記の修飾は、遺伝子変異、標的的なブロッキング、干渉を含むことを特徴とする請求項2に記載された方法。
【請求項4】
上記の単一塩基エディターは、BE3ゲノムエディターである;または
上記のDNAは一本鎖DNAまたは二本鎖DNAである
ことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項5】
上記のシトシンデアミナーゼは、AID、APOBEC3G、APOBEC1、APOBECA3A、CDA1から選べられる酵素を含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項6】
上記のシトシンデアミナーゼは、APOBEC1である;好ましくは、上記の修飾は、当該酵素の126のアミノ酸を修飾することである;より好ましくは、上記の修飾は、位置126のRをEに変異させることであることを特徴とする請求項5に記載された方法。
【請求項7】
APOBEC1の修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸を修飾することを含む;好ましくに、上記の修飾は、その90位をFに突然変異させることであることを特徴とする請求項6に記載された方法。
【請求項8】
上記のシトシンデアミナーゼは、APOBECA3Aである;上記の修飾は、当該酵素の130のアミノ酸を修飾することである;好ましくは、上記の修飾は、その130位のYをFに突然変異させることであることを特徴とする請求項5に記載された方法。
【請求項9】
そのDNA結合領域に修飾が起こり、当該修飾より、それとDNAとの結合を弱化し、上記のDNAは、例えば一本鎖DNAである;好ましくに、上記のシトシンデアミナーゼは、AID、APOBEC3G、APOBEC1、APOBECA3A、CDA1から選べられる酵素を含むが、これらに限定されないシトシンデアミナーゼの突然変異体。
【請求項10】
上記の酵素は、APOBEC1である;好ましくに、上記の修飾が、当該ドメインの126位またはそれと隣接する位置に起こる;より好ましくに、上記の修飾は、その126位のRをEに突然変異することであることを特徴とする請求項9に記載された突然変異体。
【請求項11】
上記の修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸にある;好ましくに、上記の修飾は、その90位をYに突然変異することであることを特徴とする請求項9に記載された突然変異体。
【請求項12】
上記の酵素は、APOBECA3Aである;好ましくに、上記の修飾が、当該酵素の130位またはそれと隣接する位置に起こる;より好ましくに、上記の修飾は、その130位のYをFに突然変異することであることを特徴とする請求項9に記載された突然変異体。
【請求項13】
請求項9-12のいずれか一つに記載された突然変異体をコードすることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項9-12のいずれか一つに記載されたシトシンデアミナーゼの突然変異体を含む;好ましくはBE3単一塩基エディターであることを特徴とする単一塩基エディター。
【請求項15】
ゲノムエディターのオフターゲット効果を低減する為に、単一塩基エディターシステムに基づく遺伝子編集に関与することを特徴とする請求項9-13のいずれか一つに記載されたシトシンデアミナーゼ突然変異体の用途。
【請求項16】
(1)候補物質でシトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメイン、及びDNA相互作用(結合)システムを処理すること;及び
(2)上記のシステムにおけるシトシンデアミナーゼDNA結合ドメインとDNAとの相互作用状況を検測すること;ただし、上記の候補物質が、シトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメインとDNAとの相互作用を抑制、ブロッキングまたはダウンレギュレーションすると、当該候補物質は、BE3ゲノムエディターのオフターゲット効果の低減に有用な物質であることを示す;
を含むことを特徴とする単一塩基エディターのオフターゲット効果の低減に有用な物質をスクリーニングする方法。
【請求項17】
(1)n細胞期の胚を取得し、1からn-1個の細胞で遺伝子編集操作を行うこと;ただし、上記のnは、2~10の正の整数である;
(2)胚発生の下流段階での遺伝子編集の発生を観察すること;
を含むことを特徴とする単一塩基遺伝子編集ツールまたは遺伝子編集操作のターゲティング効果を分析する方法。
【請求項18】
ステップ(1)には、上記のnは、2~8、2~6または2~4の正の整数である;好ましくに、上記のnは、2であることを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項19】
上記の方法は、インビトロ培養法またはインビボ培養法であることを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項20】
ステップ(2)には、上記の胚発生の下流段階は、胚発生の原腸陥入段階から出生前段階まで、またはインビボで子宮内での胚着床から出生前段階までであることを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項21】
上記の胚は、マウスの胚であり、上記の胚発生の下流段階は、胚発生の8~20目日(E8-E20段階)であり、好ましくに、胚発生の9.5~18.5目日(E9.5-E18.5段階)であり、より好ましくに、胚発生の12~16目日(E11-E16段階、例えばE14.5)であることを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項22】
胚発育の卵割段階において、胚に遺伝子編集された割球と遺伝子編集されていない割球は分けられ、レシピエントに移植し、成体に成長することを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項23】
遺伝子編集された割球と編集されない割球を、別々の胚を形成し、異なるレシピエントまたは同じレシピエントに移植し、またはインビトロで胚性幹細胞株を確立することを特徴とする請求項22に記載された方法。
【請求項24】
上記の遺伝子編集操作は、CRISPRを介した遺伝子編集、Base Editor(塩基エディター)を介した遺伝子編集、Cre/loxPを介した遺伝子編集、Prime editorを含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項25】
上記のCRISPRを介した遺伝子編集は、CRISPR/Cas9を介した遺伝子編集、CRISPR/Cas9nを介した遺伝子編集、CRISPR/Cas13(例えばCRISPR/Cas13a、CRISPR/Cas13d)を介した遺伝子編集、CRISPR/CasRxを介した遺伝子編集を含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項24に記載された方法。
【請求項26】
上記のBase Editorは、BE1、BE2、BE3、BE4、BE4-Maxを含むことを特徴とする請求項24に記載された方法。
【請求項27】
上記のアデニン塩基エディターは、ABE7.10、ABE 6.3、ABE 7.8、ABE 7.9、Prime Editingを含むことを特徴とする請求項24に記載された方法。
【請求項28】
ステップ(1)には、遺伝子編集のために、核酸(DNAなど)の標的サイトを切断するために使用される酵素(Cas mRNA、Cre mRNAなど)および対応するガイド配列(sgRNAなど)を、1つの上記の細胞に導入することが含まれることを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項29】
上記の核酸(例えばDNA)の標的サイトを切断するために使用される酵素は、Cas9、Cas9n、Cas13a、CasRx、BE1、BE2、BE3、BE4、ABE7.10、ABE 6.3、ABE 7.8、ABE 7.9から選べられるが、これらに限定されないことを特徴とする請求項29に記載された方法。
【請求項30】
ステップ(1)には、検出可能なマーカーで、上記の遺伝子編集操作をマークし、1からn-1細胞に遺伝子編集操作を実行し、検出可能なマーカーを設置することを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項31】
上記の検出可能なマーカーは、染色マーカー、蛍光シグナル分子、レポーター遺伝子を含むが、これらに限定されない;より好ましくに、上記の検出可能なマーカーは、tdTomato、EGFP、mCherry、GFP、dsredであることを特徴とする請求項30に記載された方法。
【請求項32】
ステップ(2)には、遺伝子編集の発生状況の観察は、以下のことを含む:
遺伝子編集を発生した細胞及び遺伝子編集を発生しない細胞を選別する;
シーケンシング分析を実行する;
単一ヌクレオチド変異分析ツールおよび/またはインデル分析ツールで分析を行う;
編集を発生した細胞と編集を発生しない細胞を比較し、ターゲティング効果またはオフターゲット効果を鑑定し、当該鑑定には、SNVとインデルの検出を含む;
ことを特徴とする請求項17に記載された方法。
【請求項33】
上記の単一ヌクレオチド変異分析ツールは、Mutect2、LofreqとStrelkaまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されない;または、上記のインデル分析ツールは、Mutect2、Scalpel、Strelkaまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項32に記載された方法。
【請求項34】
上記の胚は、非ヒト哺乳類を含む哺乳類から由来することを特徴とする請求項17に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子編集分野に属し、より具体的に、本発明は、単一塩基編集による非標的な単一ヌクレオチド変異の現象に関し、さらに当該変異を避ける高特異性オフターゲットない単一塩基遺伝子編集ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム編集技術を世に問ったから、高く評価された。CRISPRはクラスター化され、規則的に間隔が空いている短い回文の反復配列の略語であり、CasはCRISPR関連タンパク質の略語である。CRISPR / Casはもともとバクテリアで発見され、バクテリアの、バクテリオファージやその他の病原体の侵入を認識・破壊するための防御システムである。CRISPR / Cas9システムでは、酵素Cas9がDNA標的サイトに切断する。Cas9とsgRNAを合わせてCas9-sgRNAシステムと呼ぶ。CRISPR/Cas9技術は、疾患モデルの確立、創薬ターゲットのスクリーニングに適用され、新世代の遺伝子治療法になる。
【0003】
しかし、CRISPR / Cas9とベースエディター(base editors)を介した遺伝子編集法が開発され、病原性変異によって引き起こされる遺伝病の治療に大きな期待が寄せられている。CRISPR/Cas9遺伝子編集または塩基編集に基づく臨床アプリケーションでは、有害な変異のリスクを低減するために、オフターゲット効果の総合的な分析が必要である。ゲノム全体の遺伝子編集細胞のオフターゲット活性を検出するために、この分野でさまざまな方法が開発され、high-throughput genome-wide translocation sequencing(HTGTS)、genome-wide, unbiased identification of DSBs enabled by sequencing(GUIDE-seq)、およびcircularization for in vitro reporting of cleavage effects by sequencing(CIRCLE-seq)を含む。ただし、これらの方法のいずれも、単一ヌクレオチド変異(SNV)を効果的に検出することはできない。これまでのところ、この分野でSNVを検出する効果的な方法がない。
【0004】
さらに、CRISPR / Cas9が適用される場合、相同性を介した修復の編集効率が低いという欠陥がある。当業者は、16塩基長のXTENリンカー(XTEN linker)を使用し、シチジンデアミナーゼAPOBEC1およびdCas9を連結して、第1世代の塩基エディター(BE1)を構築した。インビボでの編集の効率を高めるために、塩基エディター(BE2)システムは、シチジンデアミナーゼをdCas9と連結することに加えて、塩基除去修復阻害剤とするUGIをdCas9と融合することにより、編集効率を3倍、最大約20%にも向上させた。
【0005】
塩基編集の効率を改善するために、当業者は、ミスマッチ修復をシミュレートするためにdCas9をCas9nに置き換え、それにより、第3世代の塩基エディター(BE3)を構築した。BE3は非相補的DNA鎖にニックを作成し、細胞はウラシル(U)を含むDNA鎖をテンプレートとして使用して修復することで、こんな塩基編集を複製した。ヒト細胞株のさまざまな標的遺伝子の中で、こんなBE3システムは塩基編集効率を大幅に改善し、その平均インデル(indel、insertion-deletion、挿入-削除)発生率はわずか1.1%である。これらのテストされたの標的遺伝子にとって、これらの数値はCas9を介したHDRの大幅な改善を表している;HDRを介した平均編集頻度はわずか0.5%であり、以前の単一塩基編集と比較して、より多くのインデルが観察された。複数の細胞分裂において、CRISPR塩基編集は引き続き存在し、この方法が安定した塩基編集を生み出すことを示している。ただし、こんなBE3システムは、オフターゲット編集にも悩まされている。
【0006】
ゲノム編集は、病原性変異によって引き起こされる遺伝病を治療する大きな可能性があり、そしてその実用性のために、遺伝子編集のオフターゲット効果の総合分析が非常に必要である。同時に、当分野には、オフターゲット問題を解決する方法をさらに見つける必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G.J.Knott, J.A.Doudna, CRISPR-Cas guides the future of genetic engineering. Science 361, 866-869(2018).
【非特許文献2】S.Q.Tsai, J.K.Joung, Definition and improving the genom-wide specificities of CRISPR-Cas9 nucleases. Nat REv Genet 17, 300 (2016).
【非特許文献3】C.R.Lazzarotto et al., Defining CRISPR-Cas9 genome-wide nuclease acitivities with CIRCLE-seq. Nat Protoc 13 2615-2642(2018).
【非特許文献4】K.R.Anderson et al., CRISPR off-target analysis in genetically engineered rats and mice. Nat Methods 15, 512-514(2018).
【非特許文献5】D.Kim et al, Genome-wide target specificities of CRISPR RNA-guided programmable deaminases. Nat Biotechnol 35, 475-480(2017).
【非特許文献6】T.I.Cornu, C.Mussolino, T.Cathomen, Refining strategies to translate genome editing to the clinic. Nature Medicine 23, 415-423(2017).
【非特許文献7】H.A.Rees, D.R. Liu,Base editing: precision chemistry on the genome and transcriptome of living cells. Nat Rev Genet, (2018).
【非特許文献8】N.M.Gaudelli etal., Programmable base editing of A*T to G*C in genomic DNA without DNA Cleavage. Nature 551, 464-471(2017).
【非特許文献9】L.Madisen et al., A robust and high-throughput Cre reporting and characterization system for the whole mouse brain. Nat Neurosci 13, 133-140(2010).
【非特許文献10】L.Wang et al., CRISPR-Cas9-mediated genome editing in one blastomere of two-cell embryos reveals a novel Tet3 function in regulating reocortical development. Cell Res 27, 815-829(2017).
【非特許文献11】K.Kim et al., Highly efficint RNA-guided base editing in mouse embryos. Nat Biotechnol 35, 435-437(2017).
【非特許文献12】J.W.Drake, B.Charlesworth, D.Charlesworth, J.F.Crow, Rates of spontaneous mutation. Genetics 148, 1667-1686(1998).
【非特許文献13】A.C.Komor, Y.B.Kim, M.S.Packer, J.A.Zuris, D.R.Liu, Programmable editing of a target base in genomic DNA without doubl-stranded DNA cleavage. Nature 533, 420-424(2016).
【非特許文献14】R.S.Harris, S.K.Petersen-Mahrt, M.S.Neuberger, RNA editing enzyme APOBEC1 and some of its homologs can act as DNA mutators. Mol Cell 10, 1247-1253(2002).
【非特許文献15】S.Rebhandl, M.Huemer, R.Greil, R.Geisberger, AID/APOBEC deaminases and cancer. Oncoscience 2, 320-333(2015).
【非特許文献16】L.B.Alexandrov et al., Signatures of mutational processes in human cancer. Nature 500, 415-421(2013).
【非特許文献17】H.C.Losey, A.J.Ruthenburg, G.L.Verdine, Crystal structure of Staphylococcus aureus tRNA adenosine deaminase TadA in complex with RNA. Nat Struct Mol Biol 13, 153-159(2006).
【非特許文献18】S.Jin et al., Cytosine, but not adenine, base editors induce genome-wide off-target mutations in rice. Science, in press (2019).
【非特許文献19】Y.B.Kim et al., Increasing the genome-targeting scope and precision of base editing with engineered Cas9-cytidine deaminase fusions. Nat Biotechnol 35, 371-376(2017).
【非特許文献20】X.Wang et al., Efficient base editing in methylated regions with ahuman APOBEC3A-cas9 fusion. Nat Biotechnol 36, 946-949(2018).
【非特許文献21】J.M.Gehrke et al., An APOBEC3A-Cas9 base editor with minimized bystander and off-target activities.Nat Biotechnol 36, 977-982(2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的としては、単一塩基編集による非標的な単一ヌクレオチド変異の現象を研究し、高特異性オフターゲットない単一塩基遺伝子編集ツールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の様態では、単一塩基エディターのオフターゲット効果を低減する方法を提供し、単一塩基エディターシステムでは、シチジンデアミナーゼ酵素(cytidine deaminase enzyme(s))を修飾し、そのDNAと結合する能力を弱化させることを含む。
【0010】
一つの好ましい例では、上記の修飾は、シトシンデアミナーゼのDNA結合領域に対する修飾である;好ましくに、上記のDNA結合領域は、そのDNA(例えばssDNA)と結合するドメインである。
【0011】
別の好ましい例では、上記の修飾は、遺伝子変異、標的的なブロッキング(例えば、結合タンパク質または抗体によるブロッキング、または競合結合分子によるブロッキング)、干渉を含むが、これらに限定されない。
【0012】
別の好ましい例では、上記の単一塩基エディターシステムは、BE3ゲノムエディターシステムである。
【0013】
別の好ましい例では、上記のDNAは一本鎖DNA(ssDNA)または二本鎖DNA(dsDNA)である。
【0014】
別の好ましい例では、上記のシトシンデアミナーゼは、AID (例えば、ヒトAID)、APOBEC3G (例えば、ヒトAPOBEC3G)、APOBEC1、APOBECA3A、CDA1 (例えば、lamprey CDA1)から選べられる酵素を含むが、これらに限定されない。
【0015】
別の好ましい例では、上記の弱化は、著しい弱化であり、例えば、当該弱化により、シトシンデアミナーゼとDNA(好ましくに、ssDNA)との結合能力が10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、または100%低下する。
【0016】
別の好ましい例では、上記のシトシンデアミナーゼは、APOBEC1である;好ましくに、上記の修飾は、当該酵素の126位のアミノ酸を修飾することである;より好ましくに、上記の修飾は、その126位のRを、Eに突然変異することである。
【0017】
別の好ましい例では、上記の修飾は、さらに、APOBEC1酵素の132位のアミノ酸を修飾することを含む;好ましくに、上記の修飾は、その132位をEに突然変異することである。
【0018】
別の好ましい例では、上記の修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸を修飾することを含む;好ましくに、上記の修飾は、その90位をYに突然変異することである。
【0019】
別の好ましい例では、上記の修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸を修飾することを含む;好ましくに、上記の修飾は、その90位をFに突然変異することである。
【0020】
別の好ましい例では、上記の修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸と126位のアミノ酸を合わせて、W90YとR126Eに修飾することを含む。
【0021】
別の好ましい例では、上記の修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸と126位のアミノ酸を合わせて、W90FとR126Eに修飾することを含む。
【0022】
別の好ましい例では、上記のシトシンデアミナーゼは、APOBECA3Aである;好ましくは、上記の修飾は、当該酵素の130位のアミノ酸を修飾することである;より好ましくは、上記の修飾は、その130位のYを、Fに突然変異することである。
【0023】
本発明のもう一つの様態では、シトシンデアミナーゼの突然変異体を提供し、そのDNA結合領域に修飾が起こり、当該修飾より、それとDNAとの結合を弱化し、上記のDNAは、例えば、一本鎖DNAである。
【0024】
一つの好ましい例では、上記のシトシンデアミナーゼは、AID、APOBEC3G、APOBEC1、APOBECA3A、CDA1から選べられる酵素を含むが、これらに限定されない。
【0025】
別の好ましい例では、上記の酵素は、APOBEC1である;好ましくに、上記の修飾が、当該ドメインの126位またはそれと隣接する位置に起こる;より好ましくに、上記の修飾は、その126位のRをEに突然変異することである。
【0026】
別の好ましい例では、上記の酵素は、APOBEC1である;好ましくに、上記の修飾が、当該ドメインの132位またはそれと隣接する位置に起こる;より好ましくに、上記の修飾は、その132位のRをEに突然変異することである。
【0027】
別の好ましい例では、上記の修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸に起こる;好ましくに、上記の修飾は、その90位をYに突然変異することである。
【0028】
別の好ましい例では、上記の酵素は、APOBECA3Aであり、上記の修飾が、当該酵素の130位のアミノ酸またはそれと隣接する位置に起こる;好ましくに、上記の修飾は、その130位のYをFに突然変異することである。
【0029】
本発明のもう一つの様態では、単離されたポリヌクレオチドを提供し、上記のポリヌクレオチドが、上記の突然変異体をコードする。
【0030】
本発明のもう一つの様態では、上記のポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。
【0031】
本発明のもう一つの様態では、遺伝子操作された宿主細胞を提供し、その宿主細胞が、上記のベクターを含有し、またはその宿主細胞のゲノムに上記のポリヌクレオチドが組み込まれた。
【0032】
本発明のもう一つの様態では、上記のシトシンデアミナーゼの突然変異体を含む単一塩基エディターを提供する;好ましくに、上記のエディターは、BE3単一塩基エディターである。
【0033】
本発明のもう一つの様態では、上記のシトシンデアミナーゼの突然変異体を生産する方法を提供し、それが、以下のステップを含む:(1)上記の宿主細胞を培養し、培養物を得る;及び(2)培養物から上記のシトシンデアミナーゼ突然変異体を単離する。
【0034】
本発明のもう一つの様態では、ゲノムエディターのオフターゲット効果を低減する為に、単一塩基エディターシステムに基づく遺伝子編集に関与する、上記のシトシンデアミナーゼ突然変異体の用途を提供する。
【0035】
一つの好ましい例では、上記のシトシンデアミナーゼ突然変異体の用途は、非治療性の用途であっても良い。
【0036】
本発明のもう一つの様態では、単一塩基エディターのオフターゲット効果の低減に有用な物質をスクリーニングする方法を提供し、当該方法が、以下を含む:(1)候補物質でシトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメイン、及びDNA(例えばssDNA)相互作用(結合)システムを処理すること;及び(2)上記のシステムにおけるシトシンデアミナーゼDNA結合ドメインとDNAとの相互作用状況を検測すること;ただし、上記の候補物質が、シトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメインとDNAとの相互作用を抑制、ブロッキングまたはダウンレギュレーションすると、当該候補物質は、ゲノムエディターのオフターゲット効果の低減に有用な物質であることを示す。
【0037】
一つの好ましい例では、上記の候補物質は、小分子化合物、シトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメインまたはそのコード化核酸用に設計された結合分子(例えば抗体またはリガンド)、ブロッキング分子(例えば、アミノ酸の修飾の基づくブロッキング剤)、干渉分子、遺伝子編集試薬、核酸阻害物を含むが、これらに限定されない。
【0038】
別の好ましい例では、上記のシステムは、細胞システム(例えば、シトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメインを発現し、DNA(例えばssDNA)を含む細胞)(または細胞培養物システム)、細胞下システム、溶液システム、組織システム、臓器システムまたは動物システムを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本発明のもう一つの様態では、単一塩基遺伝子編集ツールのターゲティング効果を分析する方法(GOTI)を提供し、上記の方法は、以下を含む:(1)n細胞期の胚を取得し、1からn-1個の細胞で遺伝子編集操作を行う;遺伝子編集なしで少なくとも1つまたはいくつかの細胞を保持する;ただし、上記のnは、2~10の正の整数である;(2)胚発生の下流段階での遺伝子編集の発生状況を観察する。
【0040】
一つの好ましい例では、ステップ(1)には、上記のnは、2~8、2~6または2~4の正の整数である;好ましくに、上記のnは、2である。
【0041】
別の好ましい例では、上記の方法は、インビトロ培養法またはインビボ培養法である。
【0042】
別の好ましい例では、発育の卵割段階において、同じ胚における遺伝子編集された割球と遺伝子編集されていない割球は分けられ、その後、レシピエント(マウスなど)に移植し、別々に成体に成長する。
【0043】
別の好ましい例では、ステップ(2)には、上記の胚発生の下流段階は、胚発生の原腸陥入段階から出生前段階まで、またはインビボで子宮内での胚着床から出生前段階までである。
【0044】
別の好ましい例では、上記の胚は、マウスの胚であり、上記の胚発生の下流段階は、胚発生の8~20目日(E8-E20段階)であり、好ましくに、胚発生の9.5~18.5目日(E9.5-E18.5段階)であり、より好ましくに、胚発生の12~16目日(E11-E16段階、例えばE14.5)である。
【0045】
別の好ましい例では、上記の遺伝子編集操作は、CRISPRを介した遺伝子編集、Base Editor(塩基エディター)を介した遺伝子編集、Cre/loxPを介した遺伝子編集、アデニン塩基エディターを介した遺伝子編集を含むが、これらに限定されない。
【0046】
別の好ましい例では、上記のCRISPRを介した遺伝子編集は、CRISPR/Cas9を介した遺伝子編集、CRISPR/Cas9nを介した遺伝子編集、CRISPR/Cas13(例えばCRISPR/Cas13a、CRISPR/Cas13d)を介した遺伝子編集、CRISPR/CasRxを介した遺伝子編集を含むが、これらに限定されない。
【0047】
別の好ましい例では、上記のBase Editorは、BE1、BE2、BE3、BE4、BE4-Maxを含む。
【0048】
別の好ましい例では、上記のアデニン塩基エディターは、ABE7.10、ABE 6.3、ABE 7.8、ABE 7.9、Prime Editingを含む。
【0049】
一つの好ましい例では、ステップ(1)には、遺伝子編集のために、核酸(例えばDNA)の標的サイトを切断するために使用される酵素(Cas mRNA、Cre mRNAなど)および対応するガイド配列(例えばsgRNA)を、1つの上記の細胞に導入することが含まれる。
【0050】
別の好ましい例では、上記の核酸(例えばDNA)の標的サイトを切断するために使用される酵素は、Cas9、Cas9n、Cas13a、CasRx、BE1、BE2、BE3、BE4、BE4-Max、ABE7.10、ABE 6.3、ABE 7.8、ABE 7.9、Prime Editingから選べられるが、これらに限定されない。
【0051】
別の好ましい例では、ステップ(1)には、検出可能なマーカーで、上記の遺伝子編集操作をマークし、1からn-1細胞に遺伝子編集操作を実行し、検出可能なマーカーを設置する。
【0052】
別の好ましい例では、上記の検出可能なマーカーは、染色マーカー、蛍光シグナル分子、レポーター遺伝子を含むが、これらに限定されない;より好ましくに、上記の検出可能なマーカーは、tdTomato、EGFP、mCherry、GFP、dsredであるが、これらに限定されない。
【0053】
別の好ましい例では、ステップ(2)中、遺伝子編集の発生状況の観察は、以下のことを含む:
遺伝子編集を発生した細胞(例えばtdTomato陽性細胞)及び遺伝子編集を発生しない細胞(例えばtdTomato陰性細胞)を選別する;
【0054】
別の好ましい例では、発育の卵割段階において、同じ胚における遺伝子編集された割球と遺伝子編集されていない割球は分けられ、その後、レシピエント(マウスなど)に移植し、別々に成体に成長し、フローサイトメトリーでの選別を行わない。
【0055】
シーケンシング分析(例えばWGS分析)を実行する;
単一ヌクレオチド変異(SNV)分析ツールおよび/またはインデル分析ツールで分析を行う;
編集を発生した細胞と編集を発生しない細胞を比較し、ターゲティング効果またはオフターゲット効果を鑑定し、当該鑑定には、SNVとインデルの検出を含む。
【0056】
別の好ましい例では、上記のSNV分析ツールは、Mutect2、LofreqとStrelkaまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されない;または、上記のインデル分析ツールは、Mutect2、Scalpel、Strelkaまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0057】
別の好ましい例では、フローサイトメトリーで遺伝子編集を発生した細胞(例えばtdTomato陽性細胞)及び遺伝子編集を発生しない細胞(例えばtdTomato陰性細胞)を選別する。
【0058】
別の好ましい例では、上記の単一塩基遺伝子編集ツールのターゲティング効果を分析する方法(GOTI)は、非治療性の方法であっても良い。
【0059】
別の好ましい例では、上記の単一塩基遺伝子編集ツールのターゲティング効果を分析する方法は、インビトロ方法であっても良い。
【0060】
別の好ましい例では、上記の胚は、哺乳類から由来し、非ヒト哺乳類、例えばマウス、ウサギ、ヒツジ、ウシ、サルなどを含むが、これらに限定されない。
【0061】
本文に開示された内容に基づき、当業者にとって、本発明の他の面は自明なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】CRISPR-Cas9、BE3またはABE7.10を介した遺伝子編集を、2-cell段階胚の一つの割球へ注入した。(A)実験計画:Cre、Cas9/BE3、およびsgRNAの混合物を2-cell胚の一つの割球に注入し、当該胚は、Ai9オスマウスと野生型メスマウスの交配から由来したものである。Creの作用は、キメラ胚を生成する見込みがあり、その半分の細胞はtdTomato(赤)とマークされた。フローサイトメトリーは、tdTomato +とtdTomato-細胞をE14.5キメラ胚から単離し、それらを全ゲノムシーケンスに使用した。tdTomato +細胞とtdTomato-細胞を比較することにより、3つの異なる呼び出しアルゴリズムを使用し、オフターゲットのSNVとインデルを認識した(SNVはMutect2、Lofreq、Strelkaを使用し、インデルはMutect2、Scalpel、Strelkaを使用した)。SNVとインデルは色付きの点と十字でマークされた。(B)指定された胚におけるFACS分析。(C)WGSに基づくtdTomato +とtdTomato-細胞のターゲティング効率。tdTomato +細胞におけるCas9、BE3、とABE7.10のターゲティング効率は、66%+ /-12%の挿入または削除(SEM、n = 5)、83%+ /-10%(SEM、n = 4)、47%以上のそれぞれ約18%(SEM、n = 2)の単一塩基編集である。(D)Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B、BE3-Tyr-C、およびBE3-Tyr-Dで処理されたE14.5胚のフローサイトメトリー分析;注入されていない胚のフローサイトメトリー分析を
図S1bに示した。(E)全ゲノムシーケンスに基づくtdTomato +細胞(左)とtdTomato-細胞(右)のターゲティング効率;同じ方法で処理された細胞は同じ色で示された。(F)Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B、BE3-Tyr-C、およびBE3-Tyr-Dで処理されたE14.5胚のTAクローンシーケンシングオンターゲット分析;各列の数字は、分析されたクローンの総数を表す。
【
図2】BE3で処理されたマウス胚で生成された多数のオフターゲットSNV。(A)検出されたオフターゲットSNVの総数の比較。 Cre-、Cas9-、BE3-およびABE7.10で処理された胚のSNVの数は14 +/- 12(SEM、n=2)、12 +/- 4(SEM、n = 11)、283 +/それぞれに-32(SEM、n = 6)と10 +/- 5SNV(SEM、n = 4)である。(B)突然変異タイプの分布。各細胞における数字は、すべての突然変異の中で特定の突然変異の割合を示す。(C)C>TとGの比>Cre、Cas9とBE3のA変異、およびABE7.10のT> CとA> G突然変異。2つのCre、11つのCas9、6つのBE3、および4つのABE7.10サンプルが分析された。(A)と(B)のP値は、two-sided Wilcoxonで処理された。
【
図3】BE3によって誘導されたオフターゲットSNVの特性。(A)ランダムな並べと比較して、オフターゲット遺伝子SNVはゲノムの転写領域に集中している。(B)オフターゲットSNVを含む遺伝子の発現は、4細胞胚におけるランダム模倣遺伝子の発現よりも有意に高かった。(C)各胚から同定されたSNVはオーバーラップしていない。(D)GOTIによって検出されたSNVと、Cas-OFFinderおよびCRISPORによって予測されたオフターゲットとの間のオーバーラップ。(A)と(B)のP値は、two-sided Wilcoxonで処理された。
【
図4】BE3オフターゲット評価によって構築されたBE2システム。(a)プラスミドマップ。(b)WGSデータからのR126E突然変異のBE3のターゲティング効率。(c)検出されたオフターゲットSNVの総数の比較。
【
図5】Apobec1の点突然変異は、BE3のDNAおよびRNAのオフターゲットを除去できる。(a)BE3システムにおけるAPOBEC1;(b)BE3の使用量(BE3マイクロインジェクション濃度)とターゲティング効率の相関関係;(c)シーケンシングでターゲティング効率を確認する;(d)異なる突然変異体のオフターゲット状況を比較する。BE3
R126E、BE3
R126E+W90YDNAのオフターゲットが、著しくに低減された;(e)突然変異体とオフターゲット効果の間の相関分析。
【
図6】さまざまな混合処理を行ったE14.5胚のフローサイトメトリー分析。(a)Cas9-Tyr-A遺伝子ターゲティング胚の代表的な図。上部:4細胞胚、下部:散在する8細胞胚。赤い矢印はtdTomato+割球を示す。スケールバー:100μm。(b)左から右へ、上から下へ:注入されない、Cre-#1, Cre-#2、Cre+Cas9-#1、Cre+Cas9-#2、Cre+Cas9+LacZ-#1、Cre+Cas9+LacZ-#2, Cre+Cas9+Pde6b-#1とCre+Cas9+Pde6b-#2。(c)Tyr遺伝子をターゲティングとする8細胞胚の遺伝子型。単一のtdTomato +およびtdTomato-細胞は、4つのCas9-Tyr-Aおよび4つのCas9-Tyr-B遺伝子ターゲティング胚盤胞から単離された。数:分析された胚盤胞の総数。WT:野生型対立遺伝子。Mutant:Tyr対立遺伝子突然変異。
【
図7】sgRNAの切断効率は、DNAインビトロ切断法によって測定された。左から右へのアガロースゲル電気泳動は、それぞれCas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B、Cas9-LacZ、Cas9-Pde6bを示す。各遺伝子のsgRNA標的サイトの両側のゲノム領域または構造に対して、PCR増幅を行い、PCR産物をCas9リボヌクレオプロテインおよびsgRNAと3時間インキュベートした。
【
図8】CRISPR/Cas9とBE3で処理されたキメラ胚の発生と遺伝子型。(a)異なるmixを注入した後のtdTomato +胚盤胞のパーセンテージ。数:胚盤胞または胚の総数。(b)異なるmixを注入した後のE14.5胚の生存率。数:計算された胚の総数または移植の総数。(c)tdTomato +胚盤胞のパーセンテージ及びE14.5胚におけるTyr突然変異のパーセンテージ。数:分析された胚盤胞または胚の総数。
【
図9】tdTomato +およびtdTomato-細胞の全ゲノムをシーケンシングすることによって得られたオンターゲット配列。WTおよび突然変異配列の全遺伝子シーケンシング結果は、WTおよびMUTを示し、スラッシュの前の数字はWTまたは突然変異配列を示し、合計数はスラッシュの後に表示される。突然変異配列は下線でハイライトされ、最後の3位であるTGG、CGG、GGGはPAMである。
【
図10】指定されたソフトウェアツールを使用し、各胚にWGSデータで検出されたSNVのベン図。(a)CreまたはCRISPR/Cas9で処理されたサンプルで検出されたSNV。(b)BE3で処理された胚において同定されたSNV。これからの分析から、対立遺伝子頻度が10%未満の反復SNVは排除された。
【
図11】代表的なサンガーシーケンシングピークマップが、全ゲノムシーケンシングよりCreまたはCRISPR/Cas9で処理された胚の突然変異を検出する状況を示す。(a)示されたサンプルにPCR増幅を行い、サンガーシーケンシングを実行した。緑の矢印:野生型;赤の矢印:ヌクレオチドが挿入されている。赤い点線:ヌクレオチドが欠落している。(b)示されるサンプルのSNVは、サンガーシーケンシングによって検証された。緑の矢印:野生型ヌクレオチド;赤の矢印:突然変異ヌクレオチド。プライマーを表S16に示す。
【
図12】CreおよびCRISPR/Cas9で処理された胚において、WGSデータから検出されたSNVの数。同じグループの胚は同じ色で表される。右側のヒストグラムシミュレーション-自然突然変異の数の分布。
【
図13】CreおよびCRISPR/Cas9で処理された胚から同定されたオフターゲットSNVおよびインデル。(a)CreまたはCRISPR/Cas9を注入した各胚から同定されたsnvは、相互に排他的である。(b)CRISPR/cas9で処理された胚から検出されたSNVは、Cas-OFFinderとCRISPORによって予測されたオフターゲットサイトと一致する。(c)上位10の予測されたCas9-Tyr-AおよびCas9-Tyr-Bオフターゲット配列アラインメント、およびWGSデータから検出されたCas9-Tyr-AおよびCas9-Tyr-B突然変異。
【
図14】同じ胚から由来のtdTomato-細胞とtdTomato +細胞を比較することにより、WGSデータからのリバースコールの変数をまとめる。(a)Cre-およびCRISPR/Cas9で処理されたサンプルから、逆の変数を呼び出す。(b)BE3で処理されたサンプルから、逆の結果を呼び出す。
【
図15】この研究で同定された各胚の突然変異タイプ。各セルの数は、特定の突然変異タイプの割合を示し、色が濃いほど突然変異タイプの割合が高いことを示す。
【
図16】4つのCistromeデータセットから、認識されたoff-targetピークの有無を比較する。各バーの上部にある数字は、アプリケーションデータセットのGEOアクセッションを表す。P値は、Wilcoxon rank sum testによって計算される。
【発明を実施するための形態】
【0063】
ゲノム編集は、病気の原因となる突然変異を修正することが期待されている。ただし、異なる個体の単一ヌクレオチド多型のため、遺伝子編集のオフターゲット効果を確定することは困難である。そのようなオフターゲット効果を研究するために、本発明者らは、GOTIと名付けられた、2細胞または複数細胞(好ましくは2細胞)の胚注入による全ゲノムオフターゲットを分析する方法を開発した。本発明の方法は、CRISPRを介した遺伝子編集、Base Editor(塩基エディター)を介した遺伝子編集、Cre/loxPを介した遺伝子編集、アデニン塩基エディターを介した遺伝子編集後の追跡分析に適し、ターゲティング効果/効率を検測する。
【0064】
本発明が、単一塩基遺伝子編集ツールのターゲティング効果を分析する方法(GOTI)を提供し、上記の方法は、以下を含む:(1)n細胞期の胚を取得し、1からn-1個の細胞で遺伝子編集操作を行う;ただし、上記のnは、2~10の正の整数である;(2)胚発生の下流段階での遺伝子編集の発生を観察する。一部の好ましい実施形態において、上記のnは、2~8、2~6または2~4の正の整数である。本発明の好ましい実施形態では、好ましくに、上記のnは、2である。
【0065】
本発明の方法は、インビトロ状態での胚培養、例えば、試験管または他の胚培養容器での胚培養に適している。本発明の方法はまた、インビボでの胚培養にも適している;例えば、本発明の方法の処理がインビトロで行われた後、発生中の細胞を、体内に移植し、例えば、動物の卵管に移植し、胚はそれ自体で子宮へ泳ぐ;或いは、動物の子宮に移植する。
【0066】
本発明の方法は、インビトロ状態での胚培養、例えば、試験管または他の胚培養容器での胚培養に適している。
【0067】
本発明の方法は、インビトロ状態での胚培養に適し、胚培養を、胚培養容器内で行い、胚性幹細胞株を確立する。
【0068】
本発明の方法は、インビトロ状態での胚培養に適し、胚培養を、胚培養容器内で行い、編集された割球と編集されない割球が、それぞれに、胚性幹細胞株を確立する。
【0069】
本発明の方法は、同じ胚において編集された割球および編集されない割球を分けて、2つの胚を形成し、これらはそれぞれ異なるレシピエントマウスに移植するか、またはインビトロで胚性幹細胞株を確立することに適する。
【0070】
本発明の方法は、同じ胚において編集された割球および編集されない割球を分けて、2つの胚を形成し、これらはそれぞれ同じレシピエントマウスに移植するか、またはインビトロで胚性幹細胞株を確立することに適する。
【0071】
本発明の方法はまた、インビボでの胚培養にも適している;例えば、本発明の方法の処理がインビトロで行われた後、発生中の細胞を、体内に移植し、例えば、動物の卵管に移植し、胚はそれ自体で子宮へ泳ぐ;或いは、動物の子宮に移植する。
【0072】
本発明の好ましい形態では、上記の胚発生の下流段階は、胚発生の原腸陥入段階から出生前段階まで、またはインビボで子宮内での胚着床から出生前段階までである。発明者は、胚発生中の「適切な時期」に、細胞を選別し、及び遺伝子編集の効果を測定することが理想的であることを発見した。一般に、上記の「適切な時間」とは、胚が、酵素によって単一の細胞に分解されるのに適した段階に成長する段階である。例えば、上記のn-細胞段階の胚は、マウスの胚であり、上記の胚発生の下流段階は、胚発生の8~20目日(E8-E20段階)であり、好ましくに、胚発生の9.5~18.5目日(E9.5-E18.5段階)であり、より好ましくに、胚発生の12~16目日(E11-E16段階、例えばE14.5)である。
【0073】
本発明の方法は、様々な単一塩基遺伝子編集方法に適用可能である。本発明の方法は、DNA標的部位を切断する様々な酵素が関与する遺伝子編集に採用することができる。上記のDNA標的サイトを切断する酵素は、当業者によく知られているこの過程に関与する様々な酵素であっても良く、例えば、Cas9、Cas9n、Cas13a、CasRx、BE1、BE2、BE3、BE4、ABE7.10、ABE 6.3、ABE 7.8、ABE 7.9、Prime Editingであっても良いが、これらに限定されない。
【0074】
上記のGOTI法では、検出可能なマーカーを使用して上記の遺伝子編集操作をマークすることができ、検出可能なマーカーは、色素マーカー、蛍光シグナル分子、レポーター遺伝子を含むが、これらに限定されない。本発明の実施形態では、好ましい実施形態として、tdTomatoを使用するが、他のマーカーも本発明に適用することができる。
【0075】
本発明の好ましい形態として、遺伝子編集の発生状況の観察は、以下のことを含む:遺伝子編集を発生した細胞(例えばtdTomato陽性細胞)及び遺伝子編集を発生しない細胞(例えばtdTomato陰性細胞)を選別する;シーケンシング分析(例えばWGS分析)を実行する;SNV分析ツールおよび/またはインデル分析ツールで分析を行う;編集を発生した細胞と編集を発生しない細胞を比較し、オフターゲットSNVとインデルを同定する。シーケンシングツール及び分析ツールは、上記および本発明の実施形態に列挙されたものに限定されず、他のいくつかのシーケンシングツール及び分析ツールも本発明に適用できることを理解される。細胞選別には、当技術分野で公知される様々な方法(例えば磁気ビーズ法、フローサイトメトリーなどを含むが、これらに限定されない)を使用することができる。
【0076】
本発明において、上記の「動物」とは、ヒト、非ヒト霊長類(サル、オランウータン)、家畜および農業動物(例えば豚、羊、牛)、ネズミ(マウス)、およびげっ歯類(たとえば、マウス、ラット、ウサギ)を含む哺乳動物を指す。上記の動物は人間を含まない動物である;限られた状況または特別な状況では、上記の動物はヒトであっても良いが、これは「ヒトの胚の商業的応用」を含まないカテゴリーにのみ適用される。
【0077】
本発明の特定の実施形態において、編集された割球子孫細胞と編集されていない割球子孫細胞の間のE14.5の全ゲノム配列の比較は、CRISPR-Cas9またはアデニン単一塩基編集の胚では、単一ヌクレオチド変異(SNV)のオフターゲットがまれであり、頻度は自然突然変異率に近いことを示す。これに対して、シトシンの単一塩基編集は、20倍を超えるオフターゲット単一ヌクレオチド変異を誘導した。
【0078】
臨床応用の前に、哺乳類細胞に全ゲノムオフターゲットがないことが必要があるが、個人のヌクレオチド多型のために、オフターゲット効果の程度を決定することは困難である。本発明に開発されたGOTI(2細胞胚注入の全ゲノムオフターゲット分析)法は、この現状を変化させ、SNPに干渉することなくオフターゲット突然変異を検出し、そしてターゲティング効果の分析を正確かつ効果的に実現することができる。
【0079】
本発明者らは、単一塩基編集におけるオフターゲット効果(単一ヌクレオチドオフターゲット突然変異など)の原因をさらに研究した。単一塩基編集ツールBE3が多数の単一ヌクレオチドオフターゲット突然変異(SNV)を引き起こすことを観察した後、本発明者らは、多くの研究を行い、最終的に、これらのオフターゲット突然変異が、APOBEC1の過剰発現およびそのDNA(例えばssDNA)への結合によって引き起こされることを確認した。特定の実施形態において、本発明は、R126E、R132E、W90F、W90Y、W90F/R126E、W90Y/R126E突然変異などの突然変異を、APOBEC1上で実行することによって、BE3によって誘導されたオフターゲット効果を解決する実施形態を開示した。
【0080】
上記に基づいて、本発明は、単一塩基エディターのオフターゲット効果を低減することに有用な方法を確定し、それが、単一塩基エディターシステムでは、シチジンデアミナーゼ酵素を修飾し、そのDNAと結合する能力を弱化させることを含む。好ましくに、上記の修飾は、シトシンデアミナーゼのDNA結合領域に対する修飾である;より好ましくに、上記のDNA結合領域は、そのDNAと結合するドメインである。上記の単一塩基エディターは、例えば、BE3ゲノムエディターである。
【0081】
弱化する作用が発揮できる限り、シトシンデアミナーゼに対する様々な修飾方法が利用可能である。いくつかの代替形態として、上記の修飾は、遺伝子変異、標的的なブロッキング(例えば、結合タンパク質または抗体によるブロッキング、または競合結合分子によるブロッキング)、干渉などであっても良い。
【0082】
単一塩基エディターシステムに適用可能な様々なシトシンデアミナーおよびそれと同じ機能を有する酵素はいずれも、本発明の方法によって修飾して、それらが存在する単一塩基エディターシステムのオフターゲット効果を低減することができる。例えば、上記のシトシンデアミナーゼは、AID (例えば、ヒトAID)、APOBEC3G (例えば、ヒトAPOBEC3G)、APOBEC1、CDA1 (例えば、lamprey CDA1)から選べられる酵素を含むが、これらに限定されない。
【0083】
本発明において、上記の「弱化」とは、シトシンデアミナーゼとDNAとの相互作用(結合)能力が、ダウンレギュレーションまたは排除されることを意味する。例えば、該弱化は、シトシンデアミナーゼとDNAの結合能力を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、または100%低下させる。
【0084】
本発明の好ましい形態として、一つの具体的なシトシンデアミナーゼAPOBEC1(野生型の配列はSEQ ID NO:1に示し、その一つの変異体はSEQ ID NO:4に示す)を提供し、そのDNA結合領域を修飾した後に、それが関与する単一塩基エディターシステムの編集結果も非常に大幅に変更され、オフターゲット効果は大幅に減少した。好ましくは、この修飾は、酵素の126のアミノ酸を修飾することである;より好ましくは、修飾は、位置126のRをEに変異させることである。
【0085】
より好ましい形態では、APOBEC1の対するするの修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸にある;好ましくに、上記の修飾は、その90位をYに突然変異することである。
【0086】
より好ましい形態では、APOBEC1の対するするの修飾は、さらに、APOBEC1酵素の90位のアミノ酸にある;好ましくに、上記の修飾は、その90位をYに突然変異することである。
【0087】
本発明のもう一つの好ましい形態として、具体的なシトシンデアミナーゼAPOBECA3A(SEQ ID NO: 37)を提供し、APOBECA3Aに対する修飾が、当該酵素の130位のアミノ酸にまたはそれと隣接する位置に起こる;好ましくに、上記の修飾は、その(SEQ ID NO: 37)130位をYに突然変異する。
【0088】
発明者の新しい発現によって、さらに、BE3ゲノムエディターのオフターゲット効果の低減に有用な物質をスクリーニングする方法を提供し、当該方法が、以下を含む:(1)候補物質でシトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメイン、及びDNA相互作用(結合)システムを処理すること;及び(2)上記のシステムにおけるシトシンデアミナーゼDNA結合ドメインとDNAとの相互作用状況を検測すること;ただし、上記の候補物質が、シトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメインとDNAとの相互作用を抑制、ブロッキングまたはダウンレギュレーションすると、当該候補物質は、BE3ゲノムエディターのオフターゲット効果の低減に有用な物質であることを示す。
【0089】
本発明の好ましい形態では,スクリーニングを行う際に、シトシンデアミナーゼまたはそのDNA結合ドメインの変化とDNA相互作用(結合)をより簡単に観察するために、コントロールグループを設定することもできる;コントロールグループは、候補物質を添加しないシトシンデアミナーゼ、またはそのDNA結合ドメインおよびDNA相互作用(結合)システムであっても良い。
【0090】
本発明の好ましい形態として、上記の方法は、さらに、得られた潜在物質に対してさらなる細胞実験および/または動物実験を実施して、2つの間の相互作用(組み合わせ)を調節するのに本当に有用な物質をさらに選択および確定することを含む。
【0091】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示であることが理解されるべく。以下の実施例における特定の条件を特定しない実験方法は、通常に、J.Sambrookら、Guide to Molecular Cloning、Third Edition、Science Press、2002に記載された通常条件に従って実施され、或いはメーカーが推奨する条件に従って実施される。
【実施例】
【0092】
材料と方法
【0093】
1.GOTI方法を含む実験計画
Cre、Cas9 / BE3 / ABE7.10 mRNAおよびsgRNAの混合物をそれぞれ、野生型雌マウスXAi9雄マウスから由来する2細胞期胚の割球に注入した。Creの作用により、キメラ胚が生成され、ただし、注入された細胞は、tdTomato(赤)でマークされ、tdTomato陽性は編集されたことを示し、tdTomato陰性は、編集されないことを示す。FACSによってE14.5でキメラ胚から、TdTomato陽性細胞とtdTomato陰性細胞を単離し、それぞれWGS分析に使用された。オフターゲットSNVとインデルは、3つのアルゴリズム(SNVはMutect2、Lofreq、Strelkaを使用し、インデルはMutect2、Scalpel、Strelkaを使用した)を使用し、tdTomato +細胞とtdTomato-細胞を比較することによって同定された。SNVとインデルは、
図1Aでは色付きの点と十字で表される。Cre タンパク質配列は、SEQ ID NO: 2に示され、Cas9タンパク質配列は、SEQ ID NO: 3に示される。
【0094】
2.動物と看護
雌のC57BL/6マウス(4週齢)とヘテロ接合体のAi9(B6.Cg-Gt(ROSA)26Sortm9 (CAG-td-Tomato)Hze/J;JAX strain 007909)雄マウスを胚の収集に使用した。ICR雌マウスをレシピエントとして使用した。動物の使用と世話は、中国科学アカデミーの上海生物科学研究所の生物医学研究倫理委員会のガイドラインに準拠する。
【0095】
3.Cas9 mRNA、BE3 mRNA、ABE7.10 mRNA、Cre mRNAとsgRNA
プライマーCas9FおよびRを使用し、px260プラスミドから、Cas9タンパク質コード領域を増幅した。T7-Cas9 PCR産物を精製し、mMESSAGE mMACHINE T7ULTRAを使用し、mRNAを転写した。px330プラスミドからT7-sgRNA PCRを増幅し、MEGA Shortcript T7キット(Life Technologies)を使用し、インビトロでRNAに転写した。PCR増幅によって、T7プロモーターをCreテンプレートに追加し、T7-Cre PCR産物を精製し、mMESSAGE mMACHINE T7 ULTRAキット(Life Technologies)を使用し、インビトロでmRNAに転写した。MEGA clearキット(Life Technologies)を使用し、Cas9 mRNA、Cre mRNA、およびsgRNAを精製し、RNaseフリー水で溶出した。
sgRNA配列(上から下への配列番号:SEQ ID NO:5-11)
【表9】
プライマー配列(上から下への配列番号:SEQ ID NO:12-26)
【表10】
【0096】
4. 2細胞注入、胚培養および胚移植
過剰排卵したC57BL/6雌(4週齢)をヘテロ接合体のAi9(B6.Cg-Gt(ROSA)26Sortm9(CAG-td-Tomato)Hze/J;JAX strain 007909)雄と交配させ、hCG注射の23時間後に、卵管から受精卵を採取した。2細胞編集の場合、5μg/ mlサイトカラシンB(CB)を含むHEPES-CZB培地の液滴におけるCas9 mRNA(50 ng/μl),BE3 mRNA(50 ng/μl)或ABE7.10 mRNA(50 ng /μl),sgRNA(50 ng/μl)とCre mRNA(2 ng/μl)の混合物を、定常流量のFemtoJetマイクロシリンジ(Eppendorf)を使用し、hCG注入した後の48時間後、2細胞胚の一つの割球の細胞質に注入した。 注入された胚を、アミノ酸を含むKSOM培地に、37℃、5%CO2の空気で2時間培養した後、偽妊娠したICR雌の卵管に移植した。
【0097】
5.単一細胞PCR分析
解剖顕微鏡下で、自製のガラスキャピラリーを使用し、8-cell段階のマウス胚を酸性タイロード溶液で消化し、透明帯を除去し、次に胚を0.25%トリプシンに移し、穏やかにピペッティングし、個々の割球を分離した。最後に、割球をKSOMで7から10回洗浄し、PCRチューブに移した。次に、0.1%Tween 20、0.1%TritonX-100および4μg/ mlプロテイナーゼKを含む1.5μlの溶解バッファーをチューブへピペッティングした。混合を促進するために、各チューブを遠心した。溶解液を56℃で30分間インキュベートし、次に95℃で5分間インキュベートした。溶解プロセスの産物を、ネストPCR分析のテンプレートとして使用した。すべての操作には、サンプルの汚染を避けた。
Nest PCRプライマー(上から下への配列番号:SEQ ID NO:27-30)
【表11】
【0098】
6.Tベクターのクローニングと遺伝子型の検出
PCR産物を精製し、pMD18-Tベクターにライゲートし、コンピテントな大腸菌株DH5αに形質転換した。37℃で一晩培養した後、ランダムに選択したクローンをサンガー法でシーケンシングした。突然変異体E14.5胚の遺伝子型を、細胞から抽出されたゲノムDNAのPCRによって確定した。ExTaqは95℃で3分間活性化され、PCRは34サイクルで実行された:95℃で30秒間、62℃で30秒間、72℃で1分間、最後に72℃で5分間延長した。胚に対して、KSOMで6回洗浄した後、単一の胚を、1.5μlの胚溶解バッファー(0.1%Tween 20、0.1%TritonX-100および4μg/ mlプロテイナーゼK)を含むPCRチューブに直接移し、30分間インキュベートした。56℃である際に、95℃で10分間不活性化した。PCR増幅に、ネストプライマーセットを使用した。 ExTaqは95℃で3分間活性化され、PCRは34サイクルで実行された:95℃で30秒間、62℃で30秒間、72℃で1分間、最後に72℃で5分間延長した。0.5μgの1回目のPCR産物と内部プライマーを使用し、2回目のPCRを行った。 PCRは同じ反応混合物で実行された。pMD-19tクローニングキット(Takara)を使用し、製造元の指示に従って、PCR産物をゲル精製し、クローニングした。各回の形質転換からコロニーを選択し、そしてサンガーシーケンシングを行って変異を検出した。
プライマー配列(上から下への配列番号:SEQ ID NO:31-36)
【表12】
【0099】
7.フローサイトメトリー選別(FACS)
細胞を単離するために、シュレッドされた組織を5 mLのトリプシン-EDTA(0.05%)溶液中で、37℃で30分間酵素的に加水分解した。10%ウシ胎児血清(FBS)を含む5mlのDMEM培地を加えることにより消化を停止させた。次に、1mlのピペットチップを使用し、30~40回繰り返し吹き、胎児組織をホモジェナイズした。細胞懸濁液を6分間(800rpm)遠心分離し、沈殿物を10%FBSを含むDMEM培地に再懸濁した。最後に、細胞懸濁液を40μmセルストレーナーでろ過し、tdtomato + / tdtomato-細胞をFACSで単離した。二回目のフローサイトメトリーと蛍光顕微鏡で分析・評価し、サンプル純度が95%を超えると、合格と判断した。
【0100】
8.全ゲノムシーケンシングとデータ分析
製造元の指示に従って、DNeasy血液および組織キット(カタログ番号69504、Qiagen)を使用し、細胞からゲノムDNAを抽出した。イルミナHiSeq X Tenによって、50倍の平均カバレッジ率で、WGSを実行した。 BWA(v0.7.12)は、合格したシーケンシングリードを参照ゲノム(mm10)にマッピングするために使用された。次に、Picardツール(v2.3.0)を使用し、マッピングされたBAMファイルの重複項を並べ替え、マークした。高い信頼性でdenovoゲノムワイド変異を同定するために、発明者らは3つのアルゴリズム(Mutect2(v3.5)、Lofreq(v2.1.2)、およびStrelka(v2.7.1))を使用し、単一ヌクレオチド変異(25-27)分析を行った。同時に、それぞれに、Mutect2(v3.5)、Scalpel(v0.5.3)、Strelka(v2.7.1)を実行し、全ゲノム配列を検出した。3つのSNVまたはインデルアルゴリズムのオーバーラップは、真のバリアントと見なされた。tdTomato +サンプルのロケーションBAMファイルでバリアントを同定し、ただし、tdTomato-サンプルは、コントロールと同じ胚にあり、tdTomato+サンプルの突然変異バリアントのみを同定できる。たとえば、WT対立遺伝子が、特定の座標でGである場合に、tdTomato +細胞はAを持ち、tdTomato-細胞はGを持ち、突然変異体Aはdenovo突然変異と呼ばれた。ただし、tdTomato-細胞がAを持っている場合、突然変異体を同定することはできない。オフターゲットSNVがtdTomato +サンプルでのみ同定されたことをさらに確認するには、発明者はまた、tdTomato-サンプルの突然変異体と、同じ胚におけるtdTomato +サンプルとを対照として使用し、ただし、バリアントのみが、tdTomato-細胞で変異するが、WTでは、tdTomato +細胞を認識できる。
【0101】
WGS分析は、Cas9-Tyr-AおよびCas9-Tyr-BグループのtdTomato-細胞の低レベルのターゲット編集範囲が0から6.3%であることを示し、これは、偽陰性のFACS選別が原因である可能性がある(低レベルで発生することが知られた)。したがって、本発明者らは、対立遺伝子頻度が10%を超えるバリアントは、その後の分析において信頼できると考えている。本発明者らはまた、dbSNP(v138)およびMGP(v3)データベースに存在する可能性があるUCSCリピート領域およびマイクロサテライト配列とオーバーラップするバリアントをマークした。すべてのシーケンシングデータはNCBI(SRA)に保存された。
【0102】
標的効率を検証するために、発明者らは、BAMファイルを、e値が0.0001に設定されたオンターゲットと比較した。既存の2つのアルゴリズムを使用し、オンターゲットの潜在的なオフターゲットを予測した(Cas-OFFinder (http://www.rgenome.net/cas-offinder/)とCRISPOR (http://crispor.tefor.net/) )。
【0103】
RefSeqデータベースを使用し、annovar(バージョン2016-02-01)で、SNVとインデルに注釈を付けた。癌原遺伝子と腫瘍抑制遺伝子を、UniprotKB/Swiss-Protデータベース(2018-09)から検索した。発明者らは、CistromeDBデータベースから5つのATAC-seqファイルをダウンロードし、生物学的ソースは胚であり、かつすべての品質管理に合格している。得られた5つのデータセットは、CistromeDB ID「79877」(GSM2551659)、「79976」(GSM2551677)、「80493」(GSM2535470)、「81049」(GSM2551664)、および「81052」(GSM2551667)を含む。染色体の位置に基づいて、オフターゲットサイトが、各ファイルのピーク領域に配置され、オフターゲットの有るピーク領域とオフターゲットの無いピーク領域は、両側ウィルコクソン順位和検定によって相互に比較された。
【0104】
9.胚発生中の自然突然変異のシミュレート
2細胞期からE14.5期までの自然突然変異の数を推定するために、平均シーケンスカバレッジが40で、対立遺伝子頻度のしきい値が10%であることを考慮し、コンピューターシミュレーションで単一ヌクレオチド突然変異が見つかった。各ラウンドのシミュレーションには、1.8x10-10の突然変異率とマウスの核ゲノムのサイズ(2,785,490,220bp)に基づき、本発明者らは、2細胞段階から16細胞段階までの複製過程を検討し、対立遺伝子頻度を考慮すると、16段階細胞以降に発生した突然変異は検出できない。各複製の間に、各細胞は突然変異しても良く、突然変異しなくても良いが、突然変異が発生すると、分裂した細胞が変異を継承する。そして、累積変異とその野生型対立遺伝子をランダムに選択し、深さ40で、選択された変異を、各ラウンドの自然突然変異の数に合計し、同じプロセスを10,000回繰り返した。
【0105】
10.Digenome-seq分析
上記のように(32)、Cas9-LacZ、Cas9-Pde6b、Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-Bを含む複数のDigenome-seqを実行した。具体的には、製造元の指示に従って、TIANamp Genomic DNA キット(Tiangen)を使用し、マウスの尾からゲノムDNAを精製した。各遺伝子のsgRNA標的サイト(隣接するゲノム領域を含む)を、PCRによって増幅し、PCR増幅産物を、Universal DNA Purification キット(Tiangen)を使用し、製造元の指示に従って精製した。Cas9タンパク質(1μg)とsgRNA(1μg)を、室温で10分間プレインキュベートし、RNP複合体を形成した。DNA(4μg)とRNP複合体を、反応バッファー中で37℃で3時間インキュベートした。次にRNase A(100μg/ ml)を加え、sgRNAを除去した後に、消化したDNAをUniversal DNA Purification キット(Tiangen)で再度精製した。
【0106】
イルミナHiSeqX Tenシーケンサーを使用し、ライブラリーに対してWGSを実行し、30倍から40倍のシーケンス深さで、WGSを実行した。Digenome-seq2(https://github.com/chizksh/digenome-toolkit2)を使用し、DNA切断サイトを計算・同定した。距離を編集することにより、Rパッケージの「Biostrings」によって、同定されたインビトロでの切断サイトを分類し、リストした。
【0107】
11.統計分析
本研究には、Rバージョン3.5.1(http://www.R-proiect.org/)を使用し、すべての統計分析を行った。すべての検定は両側検定であり、P<0.05であると、差が統計的に有意であることを示す。
【0108】
実施例1.3つの遺伝子編集ツールの評価
【0109】
GOTI法を使用し、一般的に使用される3つの遺伝子編集ツールであるCRISPR-Cas9、シトシン塩基エディター3(BE3、rAPOBEC1-nCas9-UGI)、およびアデニン塩基エディター7.10(ABE7.10、TadA-TadA * -nCas9)によって誘発されるオフターゲット効果を評価した(参考文献6~8)。
【0110】
本発明者らは、CRISPR-Cas9、BE3またはABE7.10を、Cre mRNA及び対応するsgRNAとともに、Ai9マウスから由来の2細胞胚の一つの割球に注入し(参考文献9-10)(
図1A)、CRISPR/Cas9またはBE3遺伝子編集を使用し、Cre mRNAと組み合わせて編集を行った。遺伝子編集細胞におけるtdTomatoの発現に従って、娘細胞群内における編集された細胞と編集されない細胞を、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって選別した。tdTomato+とtdTomato-に対して、それぞれに、全ゲノムシーケンシングを行った。
【0111】
フローサイトメトリーソーティング(FACS)を使用し、E14.5日の胚を分離し、細胞内のtdTomatoに従って選別し、この時点で、胚全体を簡単に消化し、十分な単一細胞を得られた(
図1B)。Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B、BE3-Tyr-C、およびBE3-Tyr-Dで処理されたE14.5胚のフローサイトメトリー分析は、
図1Dに示された;注入されていない胚のフローサイトメトリー分析を
図6bに示した。Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B、BE3-Tyr-C、およびBE3-Tyr-Dで処理されたE14.5胚の場合、TAクローンシーケンシングのオンターゲット分析を
図1Eに示した。本発明における全ゲノムシーケンシングに基づくtdTomato +細胞(左)およびtdTomato-細胞(右)のターゲティング効率を
図1Fに示す。
【0112】
本発明者らはさらに、CreおよびCas9/BE3システムで処理された編集された細胞が、編集されない細胞から効果的に分離され得ることを実証した。Creを介した組換えプロセスでは、胚細胞の約50%がtdTomatoを発現した。
図6a-bに示すように、蛍光顕微鏡下での4細胞期または8細胞期の観察、またはE14.5日細胞のフローサイトメトリー分析により、この点が確認された。なお、本発明者らはまた、CRISPR / Cas9を使用して髪の色の遺伝子チロシナーゼを編集することにより(方法は、2細胞胚の一つの割球にいずれかのsgRNA(Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B)を注入する)、高効率のターゲティング編集が達成されることを発見した。Tyr遺伝子のシーケンシングにより、13個(Cas9-Tyr-A)および15個(Cas9-Tyr-B)のtdTomato +細胞を、4つの散在する8細胞胚から収集し、細胞の85%および80%には、Tyr対立遺伝子変異が含まれることを示した。逆に、収集された16個(Cas9-Tyr-A)および15個(Cas9-Tyr-B)のtdTomato-細胞には、
図6cに示すようにTyr対立遺伝子変異がなかった。
【0113】
単離されたtdTomato +およびtdTomato-細胞に対して、全ゲノムシーケンシング(WGS)を行い、3つのアルゴリズムを使用し、tdTomato+サンプルに対して、SNVとインデルを同定し、同じ胚から由来のtdTomato-サンプルを参照として使用した。
【0114】
本発明者らはまた、Tyr遺伝子をターゲティングする際の、本方法の編集効率を検証した。全ゲノムシーケンシングにより胚注入の方法を探求するために、CRISPR/Cas9編集用に4つのsgRNAが設計された:TyrをターゲティングするCas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B;C57マウスのゲノムに切断サイトのないLacZをターゲティングするコントロールsgRNA;Pde6bをターゲティングするsgRNA、それは、C57マウスゲノムとのミスマッチがあり、かつ以前の報告では大量のSNVが生成される可能性がある。DNA切断実験を通じて、本発明者らは、これらのsgRNAの切断効率をインビトロで検証した。結果を
図7に示し、これは、効果的な切断が行われたことを示した。
【0115】
本発明者らはまた、BE3を介して、Tyr遺伝子をターゲティングする2つのsgRNAを試験した。コントロールグループとして、3つのグループの胚にCre only、CreとCas9、およびCreとBE3を注入した。CRISPR/Cas9またはBE3、Cre mRNAおよびsgRNAの混合物を一つの割球に注入し、正常な胚盤胞率(
図8a)および生存率(
図8b)で示されるように、胚発生は損傷を受けていないことがわかった。サンガーシーケンシングは、Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B、BE3-Tyr-C、およびBE3-Tyr-Dから検出されたすべての胚盤胞およびE14.5胎児にTyr変異があることを示した(
図8c)。Tyr遺伝子をターゲティングする編集効率を検証するために、本発明者は、Cas9-Tyr-AまたはCas9-Tyr-Bで処理されたE14.5胎児に対してFACS選別を実行し、約400k tdTomato +および400ktdTomato-細胞を収集し、TAクローニングおよびシーケンシングを実行した。実験結果は、Cas9-Tyr-AおよびCas9-Tyr-Bで編集されたtdTomato +細胞に50%および100%の対立遺伝子突然変異があることを示した。2回目の繰り返し実験では、Cas9-Tyr-AおよびCas9-Tyr-Bで編集されたtdTomato +細胞には、58%および50%の対立遺伝子変異がある(31および14個のクローン)。逆に、E14.5日の胚から収集されたtdTomato-細胞が、Tyr対立遺伝子突然変異を持っていなかった。同様に、BE3は編集効率が高く、BE3-Tyr-Cには71%の対立遺伝子変異と、BE3-Tyr-Dには100%の対立遺伝子変異があったが、対応するtdTomato-細胞では約3%のTyr変異しかなかった。これらの結果は、CRISPR/Cas9およびBE3編集がtdTomato+には高効率のターゲット編集効率を得るが、基本的に、tdTomato-細胞では標的編集効率がないことを証明した。
【0116】
編集効率と潜在的な全ゲノムオフターゲット効果をさらに調査するために、本発明者らは、18個のE14.5胚および9個の処理から由来の36個のサンプルに対して、平均深さ47(47x)で全ゲノムシーケンシングを行った:Cre only、CreとCas9、CreとCas9-LacZ、CreとCas9-Pde6b、CreとCas9-Tyr-A、CreとCas9-Tyr-B、CreとBE3、CreとBE3-Tyr-C、CreとBE3 -Tyr-D、ただし、Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B、BE3-Tyr-CおよびBE3-Tyr-DのみがC57ゲノムに再編集サイトを持っている。Cas9-Tyr-AおよびCas9-Tyr-Bのオンターゲット分析は、tdTomato +細胞にそれぞれ56%および72%のTyr対立遺伝子変異があることを示し、Tyr遺伝子で高効率のオンターゲット効率を持つことを表す;同様に、BE3-Tyr-CとBE3-Tyr-Dはどちらも、
図9に示すように、tdTomato +細胞で効率的な編集を示した(Tyr対立遺伝子突然変異は、それぞれ平均75%と92%である)。発明者はまた、他のtdTomato+胚のオンターゲット効率を分析したところ、すべての対照胚はオンターゲット効率を持っていなかった。ただし、全ゲノムシーケンシング分析では、Cas9-Tyr-AおよびCas9-Tyr-Bで処理されたtdTomato-細胞が、0から6.3%の低レベルのターゲット編集を持ち、これは、偽陰性のフローサイトメトリー選別が原因である可能性がある(低レベルで発生することが知られた)。したがって、以下の分析では、対立遺伝子頻度が10%を超える突然変異のみが信頼できると認める。
【0117】
オフターゲット効果を評価するために、各胚で3つの異なる突然変異呼び出しアルゴリズムを同時に使用し、tdTomato +細胞とtdTomato-細胞を比較し、発明者らは、全ゲノムのdenovo突然変異を分析しており、3つのアルゴリズムによって定義された変数はすべて本当の変数である。合計9つのグループで0から4個のインデルのみが見つかり(
図10)、この結果は、サンガーシーケンシングによってさらに検証された(
図11)。同時に、Cre onlyの胚の中で、平均14個のSNVが観察され、CRISPR/Cas9で処理された胚(Cas9、Cas9-LacZ、Cas9-Pde6b、Cas9-Tyr-AとCas9-Tyr-B)では、各グループのSNVがそれぞれ12.5、5、0、16、19であり、「Cre-only」グループと比較して、差は統計的に有意ではなかった。さらに、Cas9-Pde6bで編集された胚ではSNVが増加しないことが観察され、これは、以前の多くの研究と一致している(
図12)。CRISPR / Cas9で編集された胚で検出されたすべてのオフターゲットSNVは、サンガーシーケンシングによって確認された。Cre-またはCRISPR / Cas9で処理されたサンプルでのSNVの検出は、遺伝子複製の過程には、自然突然変異によって引き起こされるものである可能性があるが、突然変異の数は自然突然変異の範囲内にある。さらに、発明者らの研究には、同じ突然変異が出現することがなく(
図13a)、Cas-OFFinder、CRISPORおよびDigenome-seqに推測されたオフターゲットサイトとのオーバーラップがない(
図13b)。本発明者らはまた、認識されたSNV隣接配列が、標的サイト配列と類似性を有さないことを観察した(
図13c)。
【0118】
さらに、逆の変数を呼び出すことにより、各胚のtdTomato-サンプルとtdTomato +サンプルを比較して、SNVの数が類似していることがわかり、これは、CRISPR/Cas9編集が、オフターゲットを生成しなかったことを示し、本発明者らに観察されたSNVは、自発突然変異から由来する(
図14)。
【0119】
本発明者らは、さらに、合計12のグループを設計した:1つのCreグループ(Creのみ)、sgRNAを伴うまたは伴わない6つのCas9グループ(Cas9、Cas9-LacZ、Cas9-Pde6b、Cas9-Tyr-A、Cas9-Tyr-B、Cas9-Tyr-C)、sgRNAを伴うまたは伴わない3つのBE3グループ(BE3、BE3-Tyr-C、BE3-Tyr-D)(参照文献11)、およびsgRNAを伴うまたは伴わない2つのABEグループ(ABE7.10、ABE7.10-Tyr-E)。
【0120】
本発明者らは、サンガーシーケンシングにより、8細胞およびE14.5段階での胚のターゲティン効率を検証した。標的サイトの編集効率および潜在的な全ゲノムのオフターゲット効果をさらに調査するために、本発明者らは、23個のE14.5胚から由来の46個のサンプルに対して、平均深さ47倍であるWGSを実施した(表1)。
【表1】
【0121】
tdTomato +細胞におけるCas9、BE3、およびABE7.10の活性は、標的サイトの高いインデルおよび高いSNV比によって、確認された(
図1C;表2-3)。
【表2】
【表3】
【0122】
オフターゲット効果について、本発明者らは、すべての12個のグループから由来の胚には、0から4個のインデルしかなく(表2および4)、かつそれらがいずれも予測されたオフターゲット部位とオーバーラップがないことを発見した(表5)。
【表4】
【表5】
【0123】
すべてのCas9に編集された胚について、異なるCas9グループの間に、SNVに有意差はなく(平均12個SNV/胚)、「Cre」グループと比較しても、有意差がない(平均14 個SNV/胚)(表2)。
【0124】
CreまたはCas9で処理されたサンプルで検出されたSNVは、発生中のゲノム複製の間に自然突然変異によって引き起こされた可能性があり、その理由としては、本発明者らによって検出されたSNVの数は、シミュレートされた自然突然変異の範囲内にあり、且つ隣接配列と標的部位との間にも配列類似性はなかった(参考文献12)。
【0125】
驚くべきことに、本発明者らは、BE3に編集された胚において、平均283個のSNV /胚を発見し、これは、CreまたはCas9で処理された胚で観察されたレベルより、少なくとも20倍高かった(
図2Aおよび表2)。対照的に、ABE7.10は平均に10個のSNV/胚しか生成せず、この頻度は自然突然変異率に近かった(
図2Aおよび表2)。本発明者らはさらに、「BE3only」グループで同定されたオフターゲットサイトをBE3-Tyr-CまたはBE3-Tyr-Dのオフターゲットサイトと比較し、sgRNAの存在がより高いSNVを誘導しないことを見出した(P = 0.21、Kruskal-Wallis検定)。なお、これらの変異は、tdTomato-細胞ではなくtdTomato +細胞で、特異的に同定された(方法、表6を参照)。
【表6】
【0126】
E3サンプルで検出されたオフターゲットは、各グループで重複しておらず、かつゲノム全体にランダムに分布している。そして、本発明者らは、これらのオフターゲット突然変異を、Cas-OFFinderとCRISPRORソフトウェアによって予測されたすべての潜在的なオフターゲットサイトと比較した。予想外ではなく、これらの2つの予測ツールは、多数のオフターゲットサイトを予測したが、それらのサイトが、本発明者らに検出されたSNVには現れなかった。さらに、同定されたSNV隣接配列とBE3 sgRNA標的サイトとの間に、配列類似性はなく、最もオフターゲットサイトを持つ予測サイトは、標的サイトBE3配列と類似している。BE3編集によって生成されたSNVは独特であるが、その突然変異タイプは、APOBEC1の突然変異タイプと一致していることも、注目すべきである。
【0127】
BE3に編集された細胞で同定されたSNVの90%以上が、GからAまたはCからTへの突然変異であり、Cre、Cas9、またはABE7.10に処理された細胞では、突然変異の傾向が観察されなかったことを、注目すべきである(
図2BおよびC、
図15)。こんな突然変異の傾向は、APOBEC1自体の傾向と同じ(参考文献13)、これらの突然変異は自発的ではなく、BE3編集によって誘発されるものであることを示した。以前の研究では、APOBECファミリーのいくつかのメンバー(APOBEC1を含む)が作用する際に、一本鎖DNAの存在を必要とすることが示された(参考文献14-16)。発明者の分析はまた、BE3に誘発されたSNVが転写領域(
図3A)、特に高発現の遺伝子(
図3B)で有意に偏在していることを示した。興味深いことに、オフターゲットサイトのいずれも、異なるBE3に編集された胚の間で共有されておらず、或いは予測されたオフターゲットサイトと一致していない(
図3CおよびD)。
【0128】
報告によると、DNAの結合可能性が、遺伝子編集の効率に関連している。したがって、本発明者らは、Cistromeデータベース内のマウス胚細胞から由来のATAC-seqデータセットを評価して、オフターゲットサイトが、オープンクロマチン領域に偏在しているかどうかを判定した。実際に、C57BL6/DBA2を混合するバックグラウンドを有するE8.5胚と、Cistromeデータベースの4つの高品質データセットでは、オフターゲットサイトが著しく、結合性がより高い領域で大幅に偏在している(
図16)。
【0129】
さらに、オフターゲットサイトとターゲットサイトの間に配列類似性は観察されなかったが、コンピューターによって予測されたオフターゲットサイトは、BE3のターゲットサイトと高い配列類似性を示した。したがって、BE3オフターゲットSNVは、sgRNAに依存せず、APOBEC1の過剰発現によって引き起こされる可能性がある。
【0130】
BE3に誘導された1698個のSNVのうち、26個はエクソンに位置し、そのうちの14個は非同義の変化を引き起こした。本発明者らは、PCRによって20個を増幅し、サンガーシーケンシングによってそれらの存在を確認した(表7)。
【表7】
【0131】
26個のSNVのうち、14個が、コードされたタンパク質に非同義の変化を引き起こし、2個が、Trim23およびAim2遺伝子における早期終了を引き起こした。Trim23は、E3ユビキチンリガーゼをコードし、その機能不全が、筋ジストロフィーにつながる可能性がある。以前の研究では、Aim2遺伝子が自然免疫において重要な役割を果たし、ウイルス感染に抵抗する基礎であることが報告された。本発明者らは、また、1つのSNVが癌原遺伝子上にあり、13個のSNVが腫瘍抑制遺伝子上にあることを発見し、これが、BE3編集の発癌リスクについて深刻な懸念を引き起こしている(
図16)。本発明者らは、また、1つのSNVが癌原遺伝子上にあり、13個のSNVが腫瘍抑制遺伝子上にあることを発見し、これが、BE3編集の発癌リスクについて深刻な懸念を引き起こしている。本発明者らは、より少ない量のBE3を発現させることによって、このリスクを低減できるかどうかを推測したが、より少量のBE3を使用すると、標的サイトの編集効率が徐々に低下する(表8)。
【表8】
【0132】
本発明の方法の主な利点は、1匹の動物において、編集された細胞と編集されていない細胞を比較することができ、遺伝的背景の違いを排除できる。以前の研究で編集された動物と編集されていない動物を比較すると、遺伝的背景の違いにより混乱が生じた。実際、本発明者らは、公開されたデータセットにも本方法を使用し、CRISPR/Cas9に編集されたマウスと編集されていないマウスに、平均で約1000個のSNVと約100個のインデルがあることを発見した。この発見に基づいて、発明者らは、兄弟間の違いは、CRISPR/Cas9編集の結果ではなく、遺伝的突然変異によるものであると考える。さらに、任意の2つの異なる胚の間の配列を比較すると、使用した胚が同じ親から由来のものではなかったため、SNV(3706±5232)とインデル(583±762)(n = 18ペア)がより多く見つかった。これらの結果は、同じ親を持っていても、マウスの間に遺伝的変異が大量に存在するため、編集されたマウスと編集されないマウスを比較するためのオフターゲット分析には、完全なブランクコントロールを見つけることは困難であることを示した。
【0133】
つまり、本発明は、GOTIが、遺伝子編集によって引き起こされるオフターゲット効果の研究(すなわち、同じ胚の娘細胞を使用し、全ゲノムシーケンシングを行うこと)における利点を証明した。本発明者らはまた、CRISPR/cas9を介した遺伝子編集によって引き起こされる望ましくないオフターゲット突然変異が、マウス胚ではまれであることを発見し、これは、CRISPR/Cas9に基づくインビボ編集が、顕著なSNVおよびインデルをもたらさないという以前の発見をサポートする。しかし、他の研究で報告されたほとんどの欠失、またはほとんどの染色体転座を除外することはできない。対照的に、本発明は、BE3編集によって引き起こされる多くの新しいSNVを発見し、治療用途における基本的な編集方法の安全性を改善した。
【0134】
本発明者らは、BE3が多くの新しいSNVを誘導することを発見したが、これは以前の研究では報告されていなかった。仮説の一つとしては、本発明のGOTIが、単一の遺伝子編集を有する割球から細胞群を検出できるのに対し、以前の研究では、多数の細胞プールを使用したが、その中で編集は同じではなく、母集団の平均により、ランダムなオフターゲットの信号が失われる。BE3とは異なり、ABE7.10に誘導されたSNVが増加しなく、これは、TadAがDNA結合能力を欠如するという原因からである可能性がある(参照文献17)。BE3のオフターゲット効果は、APOBEC1のDNA結合能力を低下させることや、さまざまな形態のシトシンデアミナーゼを使用することで解決できるかもしれない。要するに、GOTIは異なる個体の間のSNP干渉がないように、さまざまな遺伝子編集ツールのオフターゲット効果を調べるために使用される。
【0135】
実施例2.オフターゲット効果に対するAPOBEC1酵素の効果
【0136】
上記のように、単一塩基編集ツールBE3は、多数の単一ヌクレオチドオフターゲット突然変異(SNV)を引き起こす。本発明者らは、これらのオフターゲット突然変異が、APOBEC1の過剰発現および一本鎖DNA(ssDNA)へのその結合によって引き起こされることを予想する。ただし、単一塩基遺伝子編集ツール(BE)は、単一塩基突然変異の研究で、広く使用されており、病原性変異を修正する可能性がある。本実施例では、本発明者らは、BE3のオフターゲット問題を解決する可能性を試験し、それにより、疾患に関連する標的Csを特異的に修正することができる。野生型APOBEC1タンパク質配列はSEQ ID NO:1に示される。
【0137】
BE3のオフターゲット評価用に構築されたBE2システムを、
図4aに示し、これには、16AA(配列はSGSETPGTSESATPES(SEQ ID NO:38))と4AA(配列はSGGS(SEQ ID NO:39))の2つのペプチドで接続されたApobec1、Sp nCas9酵素、およびUGI酵素を含む。
【0138】
本発明者らは、最初に、胚に注入されたBE3 mRNAの量を減らし、GOTIを適用してオフターゲットバリアントを検出した。BE3の注入の減少につれて、標的サイトでの遺伝子編集の効率が相応に低下している(
図4b)。しかし、オフターゲットSNVの数は大幅に減少しなかった(
図4c)。
【0139】
代わりの方法として、本発明者らは、Apobec1タンパク質上のssDNA結合ドメインを突然変異させ、それがAPOBEC1のオフターゲット活性を低下させることができるかどうかを観察した。本発明者らは、以前の研究に基づいて、対応するBE3の対応するアミノ酸位置を突然変異させ、GOTI法を使用して、ターゲティン効率およびオフターゲット効果に対するそれらの効果を評価した(
図4a)。
【0140】
本発明者らは、異なる突然変異についてのTyr-CおよびTyr-D標的サイトの遺伝子編集の効率を評価した。まず、sgRNA-CおよびDを使用し、変異体BE3、BE3-W90A(Apobec1タンパク質のアミノ酸配列の90位で発生する)、BE3-W90F、BE3-R132E(Apobec1タンパク質のアミノ酸配列の132位で発生する)、BE3-R126E(Apobec1タンパク質のアミノ酸配列の126位で発生する)、およびBE3-E63A(Apobec1タンパク質のアミノ酸配列の63位で発生する)の編集活性を評価した。結果は、2つの標的サイトでのBE3-R126E突然変異の編集効率が、BE3のそれと類似していることを示した。変異体BE3-R126Eの活性は、WGSの高いターゲティング効率によっても確認された(
図4b)。ただし、BE3と比較して、R126E突然変異胚におけるオフターゲットSNVの数が、著しく減少し、「Creのみ」と比較して、有意差は見られなかったことは注目すべきである(
図4c)。さらに、R126Eで処理された2つの胚の間に大きな違いがない。検出されたSNVの数は自然突然変異率に近く、予測された潜在的なオフターゲットサイトとオーバーラップするSNVがなく、これは、Apobec1126アルギニンをグルタミン酸への突然変異が、BE3に誘導されたオフターゲットSNVを、著しく低減できることを示した。
【0141】
上記に基づいて、本発明者らは、APOBEC1に突然変異を行う(例えばR126E突然変異を行う)ことにより、BE3に誘発されたオフターゲット効果を解決する技術案を初めて開示した。
【0142】
本発明で確立されたモジュール性は、GOTIが、APOBEC1の他の突然変異バージョン、またはシチジンデアミナーゼの新たにエンジニアリングされたバージョンの更なる技術案に適用することを示している。
【0143】
実施例3、突然変異の最適化研究
【0144】
まず、本発明者らは、異なる量のBE3 mRNA(50ng/μlと10ng/μl)を、sgRNA-Tyr-CまたはsgRNA-Tyr-Dと一緒に胚に注入し、単一細胞サンガーシーケンシングによってターゲティング効率を評価した。
【0145】
本発明者らは、より少量のBE3を使用すると、ターゲティング効率を著しく低下させる可能性があることを見出した(72.6±5.3%、50ng/μl;12.6±2.9%、10ng/μl)。
【0146】
次に、発明者らは、全ゲノムオフターゲット評価にGOTI法を適用し、2細胞胚注入(GOTI)の実行で、全ゲノムオフターゲット分析を行い、BE3-Tyr-Dで処理された胚のオフターゲットバリアントを検出し、結果としては、2つの異なるレベル(それぞれ50ng/nlと10ng/nlを注入した)のBE3mRNAによるオフターゲットSNVの数は変化しないことがわかった。
【0147】
次に、本発明者らは、APOBEC1のDNA結合ドメインでの点突然変異が、BE3のオフターゲット率を低下させるかどうかを確認した。以前の研究で提出されたDNA結合ドメインに基づいて、本発明者らは、さまざまな点突然変異を、BE3システムのAPOBEC1の推定DNA結合ドメインに導入し、ターゲティング効率およびオフターゲット率に対するそれらの影響を評価した(
図5a)。点突然変異E63A、R126E、およびR132Eに対して、BE3の塩基編集効率は、Tyr遺伝子の2つの部位での標的塩基編集で評価され、ただし、2細胞のマウス胚には、対応するsgRNA Tyr-CおよびTyr-Dがある(
図5b)。本発明者らは、野生型BE3と比較して、TyrでのBE3-E63AまたはBE3-R132Eの編集効率が著しく低下したが、BE3-R126Eが両方の標的サイトには、高い編集効率を維持することを見出した。本発明者らはさらに、BE3-R126EのDNAターゲティング活性が、HEK293T細胞の他の3つのサイトにおけるBE3と類似していることを確認した。興味深いことは、BE3-R126Eの編集ウィンドウが縮小された。
【0148】
次に、本発明者らは、GOTIを実施して、sgRNAを伴うまたは伴わない3つのグループ(BE3-R126E、BE3-R126E-Tyr-CおよびBE3-R126E-Tyr-D)、BE3-W90Y + R126E(YE1)-Tyr-CおよびBE3-W90F + R126E(FE1)-Tyr-CにおけるBE3-R126Eのターゲット効率とオフターゲット頻度を評価した。ターゲティング効率は、全ゲノムシーケンシングによって確認された(
図5c)。BE3-R126EおよびBE3-W90Y+R126E(YE1)で処理された胚におけるオフターゲットSNVの数は、野生型BE3で処理された胚の283±2(n = 6)から24±8に大幅に減少し、自然突然変異に近くなったことを注目すべきである(
図5d)。なお、本発明者らは、突然変異の逸脱を観察せず、予測されたオフターゲットサイトとオーバーラップするSNVを観察せず、BE3R126Eに誘導されたオフターゲットSNVが存在しないことを示している。
【0149】
本発明者らは、さらに、293T細胞上でBE3-W90Y+R126E(YE1)、BE3-R126Eのトランスクリプトームレベルでのオフターゲット状況を検出した。その結果、BE3-R126Eは、RNAのオフターゲットを著しく減らすことができることがわかった。BE3-W90Y+R126E(YE1)は、RNAのオフターゲットを完全に排除できる(
図5e)。
【0150】
図5d-eでは、BE3(hA3A)は、BE3のapobec1の代わりに、ヒトのAPOBECA3A(ヒトAPOBECA3A)を使用して、構築された新しいBE3編集ツールである。BE3(hA3AY130F)は、ヒトAPOBECA3AのY130がFに変異して変換されたものであり、この突然変異により、オフターゲットSNVの数が著しく減少することが観測された。
【0151】
つまり、GOTI法の適用で、オフターゲットSNVの量を評価することにより、基本エディターのデアミナーゼの推定ssDNA結合ドメインを突然変異させることで、シトシンベースエディターのDNAとRNAのレベルのオフターゲット効果を除去できることが証明できる。
【0152】
この結果は、基本エディターが、遺伝子編集と治療応用のために効果的で安全なツールとして設計されることを示した。
【0153】
本出願に言及されている全ての参考文献は、参照として単独に引用されるように、本出願に引用されて、参照になる。理解すべきは、本発明の上記の開示に基づき、当業者は、本発明を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれる。
【0154】
【配列表】
【国際調査報告】