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特表2022-522072自動車用途のための低密度エポキシシンタクチック構造接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】自動車用途のための低密度エポキシシンタクチック構造接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20220407BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020543558
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(85)【翻訳文提出日】2020-08-14
(86)【国際出願番号】 US2019017938
(87)【国際公開番号】W WO2020167308
(87)【国際公開日】2020-08-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509282365
【氏名又は名称】ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ・アメリカズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クアン,ウェンフェン
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】トレビノ・ザサード,ジョゼ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC001
4J040HA006
4J040HB22
4J040HC01
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA16
4J040KA36
4J040KA42
4J040NA16
(57)【要約】
本開示はエポキシ樹脂、低密度粒子状充填剤及び硬化剤を含むシンタクチック構造接着剤を提供し、それは硬化すると少なくとも以下の良く均衡がとれた性質を示す:(i)1g/cm3未満の密度;(ii)500MPaより高い圧縮弾性率;及び(iii)750psiより高い重ねせん断強度。シンタクチック構造接着剤は自動車用途におけるような多様な用途において金属、プラスチック及び複合材料部品の接着及び/又は密封のために用いられる場合がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ樹脂;
(b)低密度粒子状充填剤;及び
(c)硬化剤
を含むシンタクチック構造接着剤であって、ここでシンタクチック構造接着剤は、硬化すると、少なくとも以下の性質:(i)1g/cm3未満の密度;(ii)500MPaより高い圧縮弾性率;及び(iii)750psiより高い重ねせん断強度を示すシンタクチック構造接着剤。
【請求項2】
エポキシ樹脂が少なくとも1種の多官能基性エポキシ樹脂を含む請求項1に記載のシンタクチック構造接着剤。
【請求項3】
多官能基性エポキシ樹脂が三官能基性エポキシ樹脂である請求項2に記載のシンタクチック構造接着剤。
【請求項4】
硬化剤が多官能基性アミン又は酸無水物を含む請求項1に記載のシンタクチック構造接着剤。
【請求項5】
低密度粒子状充填剤が無機微小球を含む請求項1に記載のシンタクチック構造接着剤。
【請求項6】
さらに多官能基性アクリレートを含む請求項1に記載のシンタクチック構造接着剤。
【請求項7】
さらにアルカリ土類金属ヒドロキシド又はアルミニウム族ヒドロキシドから選ばれる化合物及び少なくとも1種のリン含有材料の混合物からなる難燃剤を含む請求項1に記載のシンタクチック構造接着剤。
【請求項8】
請求項1に記載のシンタクチック構造接着剤を準備し、シンタクチック構造接着剤を2つの基材の少なくとも1つの表面上に適用し、2つの基材を接合させてシンタクチック構造接着剤が2つの基材の間に挟まれるようにし、そしてシンタクチック構造接着剤を硬化して2つの基材の間に接着された接合部を形成することを含む2つの基材の間に接着された接合部を形成する方法。
【請求項9】
2つの基材の少なくとも1つが金属である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
他の基材が金属である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
他の基材が金属でない請求項9に記載の方法。
【請求項12】
2つの基材が金属でない請求項8に記載の方法。
【請求項13】
約10重量%から約70重量%までのエポキシ樹脂、約2重量%から約50重量%までの低密度粒子状充填剤及び最高で約45重量%の硬化剤を含む一成分シンタクチック構造接着剤であって、ここで重量%はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づき、且つここで一成分シンタクチック構造接着剤は、硬化すると、少なくとも以下の性質:(i)1g/cm3未満の密度;(ii)500MPaより高い圧縮弾性率;及び(iii)750psiより高い重ねせん断強度を示す一成分シンタクチック構造接着剤。
【請求項14】
最高で約40重量%の難燃剤をさらに含み、ここで重量%はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づく請求項13に記載の一成分シンタクチック構造接着剤。
【請求項15】
(a)約10重量%から約90重量%までのエポキシ樹脂、約5重量%から約80重量%までの低密度粒子状充填剤及び約5重量%から約60重量%までの難燃剤を含み、ここで重量%はパートAの合計重量に基づく、パートA;ならびに
(b)約10重量%から約90重量%までの硬化剤、約5重量%から約80重量%までの低密度粒子状充填剤及び約5重量%から約60重量%までの難燃剤を含み、ここで重量%はパートBの合計重量に基づく、パートB
を含み;
ここでパートAとパートBを混合してシンタクチック構造接着剤を形成し、硬化すると、シンタクチック構造接着剤は少なくとも以下の性質:(i)1g/cm3未満の密度;(ii)500MPaより高い圧縮弾性率;及び(iii)750psiより高い重ねせん断強度、を示す硬化材料を与える二成分シンタクチック構造接着剤。
【請求項16】
パートAがさらに約0.5重量%から約25重量%までの多官能基性アクリレートを含み、ここで重量%はパートAの合計重量に基づく請求項15に記載の二成分シンタクチック構造接着剤。
【請求項17】
パートA及びパートBを約0.2:1ないし約2:1の重量比で混合する請求項15に記載の二成分シンタクチック構造接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2018年2月15日に出願された米国仮特許出願第62/630,944号明細書への優先権を主張し、その記載事項全体は明らかに引用することにより本明細書の内容となる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
適用なし。
【0003】
発明の分野
本開示は、一般的にエポキシ樹脂、低密度粒子状充填剤及び硬化剤を含むシンタクチック(syntactic)構造接着剤に関する。シンタクチック構造接着剤は自動車用途において、金属、プラスチック及び複合材料部品の接着及び/又は密封のために特に有用である。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
燃料効率(fuel efficiency)は次世代の自動車の設計において重要になってきた。燃料経済性(fuel economy)を向上させるために、自動車製造者らは車及びトラックの製造で用いられる比較的重量の重い金属を比較的重量の軽い金属、プラスチック及び複合材料部品で置き換え始めた。通常比較的重い金属の組み立てにおいて用いられる機械的留め具(fasteners)(ナット、ボルト、ネジ、リベットなど)は必ずしもこれらの比較的軽い重量の部品の組み立てに実用的ではないので、組み立て過程における構造接着剤の使用がますます広まってきた。構造接着剤は車両重量を軽くすることができるのみでなく(これらの接着剤は金属の留め具に対して最高で20重量%の節約を与える場合があると見積もられた)、もう部品はドリル又はパンチであけられた穴を必要とせず、組み立て者は適切な接着を保証するためにトルクを測定するか又は留め操作をダブルチェックする必要がない。
【0005】
自動車組み立ての間に金属留め具及び/又は溶接と置き換えられたか又はそれに付け足された(augmented)構造接着剤は一般にエポキシ樹脂、ポリウレタン及びアクリル樹脂に基づく。例えば:
特許文献1は、エポキシ樹脂、ポリウレタンに基づく強化剤、少なくとも1種の両親媒性ブロックコポリマー及び1種以上の硬化剤を含む一成分構造接着剤を開示している。この構造接着剤は向上した低温における耐衝撃性を示すと記載されている;
特許文献2は、三量化触媒の存在下における有機ポリイソシアナートとイソシアナート-反応性水素原子を含む化合物の反応から製造される構造接着剤を開示している。この構造接着剤は、高められた温度又は塩を含んだ条件におけるような比較的厳しい気候条件において優れた接着を示すと記載されている;
特許文献3は、アクリレートポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリチオール及びポリアミンを含む二成分構造接着剤を開示している。この構造接着剤は低下したリードスルー(read-through)を示すと記載されている;
特許文献4は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、ここで硬化剤はエポキシ樹脂に対する化学量論量に大体等しい又はそれ未満の量で存在する構造接着剤を開示している。この構造接着剤は優れた耐湿性、硬化後の破損モード(failure mode after
curing)、衝突安定性及び耐蝕性を有すると記載されている;
特許文献5及び特許文献6は、一般的にエポキシ樹脂、硬化剤及び反応性液体改変剤(
reactive liquid modifier)又は油置換剤(oil displacing agent)を含む一成分及び二成分構造接着剤を開示している。これらの構造接着剤は、清浄な表面ならびに炭化水素含有材料で汚染された表面への優れた接着を示すと記載されている;
特許文献7は、エポキシ樹脂、ポリエステル、発泡剤及び硬化剤を含む構造接着剤を開示している。構造接着剤は、ポリエステルの存在の故に優れた耐蝕性を示すと記載されている;そして
特許文献8は、ビニルモノマー、可溶性ポリマー及びアセチレン性ジオール接着促進剤を含む二成分構造接着剤を開示している。この構造接着剤は多様な金属に接着する能力における向上を示すと記載されている。
【0006】
自動車製造者らが用いる商業的に入手可能な構造接着剤は、典型的に1.2g/cm3より高い密度を有する。この密度を低下させることができると車両重量も低下し、車両に関する燃料経済性及び走行距離範囲(travel range)における向上に導く。例えば今日製造される電気自動車は一般にチャージ当たりに約70-230マイルの走行距離範囲を有し、それは通常のガソリン又はジーゼル車に関するそれより有意に短い。チャージ当たりのバッテリーの電力は限られるので、電気自動車の全体的な重量を減少させることにより得られるべき有意な利点がある。しかしながら、自動車製造において用いられる構造接着剤の密度を低下させる試みは、対応するそれらの機械的性質における低下を生じた。従って、機械的性能を低下させずに密度が低下した自動車構造接着剤を開発することができたら、それは電気自動車がチャージ当たりに例えば400マイル以上の走行距離範囲に達することを可能にし、それはガソリン車の場合のそれに類似である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2016/108958号パンフレット
【特許文献2】米国特許第9,534,072号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/164031号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願第2014/0147677号明細書
【特許文献5】米国特許出願第2011/0024039号明細書
【特許文献6】米国特許第8,618,204号明細書
【特許文献7】国際公開第2007/143646号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願第2007/0155879号明細書
【発明の概要】
【0008】
発明の概略
本開示は一般的に(a)エポキシ樹脂、(b)低密度粒子状充填剤及び(c)硬化剤を含むシンタクチック構造接着剤を提供し、ここでシンタクチック構造接着剤は硬化すると少なくとも以下の良く均衡がとれた性質を示す:(i)1g/cm3未満の密度;(ii)500MPaより高い圧縮弾性率;及び(iii)750psiより高い重ねせん断強度(lap shear strength)。
【0009】
本開示は、シンタクチック構造接着剤を準備し、シンタクチック構造接着剤を2つの基材の少なくとも1つの表面に適用し、2つの基材を接合させてシンタクチック構造接着剤が2つの基材の間に挟まれるようにし、そしてシンタクチック構造接着剤を硬化させて2つの基材の間に接着された接合部を形成することにより、2つの基材の間に接着された接合部を形成する方法も提供する。
【0010】
シンタクチック構造接着剤は:船(watercraft vehicles);航空機(aircraft vehicles);鉄道車両;車及びオートバイのようなモーター車(motorcraft vehicles);ならびに自転車の組み立てを含むがこれらに限られない車両組み立てにおけるような多様な用途において構造接着剤として用いられる場合がある。
【0011】
発明の詳細な説明
本開示は一般的に(a)エポキシ樹脂、(b)低密度粒子状充填剤及び(c)硬化剤を含むシンタクチック構造接着剤を提供する。驚くべきことに、特定の低密度粒子状充填剤をエポキシ樹脂及び硬化剤と組み合わせ、硬化させると、硬化した本開示のシンタクチック構造接着剤は現在自動車接着用途において用いられている通常の構造接着剤より30-60%低い密度を示しながら、向上していないとしても類似の圧縮弾性率、重ねせん断強度、複数の基材への接着、耐熱性及び防炎のような機械的性質及び化学的性質も示すことが見いだされた。従って、本開示のシンタクチック構造接着剤は予期に反して最高水準の構造接着剤に関する性質と比較して優れた物理的、機械的及び熱的性質の均衡を示す。
【0012】
以下の用語は以下の意味を有するものとする:
【0013】
本明細書で用いられる場合、「構造接着剤」という用語は、表面付着(attachment)により基材を接着することができる(すなわち硬化した状態の接着剤は接着された基材の支持構造(bearing structures)の一部を形成する)接着剤を指す。本開示の構造接着剤は一成分接着剤及び多成分接着剤、例えば二成分接着剤を包含する。
【0014】
「低密度粒子状充填剤」という用語は、約0.6g/cm3未満、例えば0.01g/cm3-0.5g/cm3又は0.1g/cm3-0.4g/cm3の平均嵩密度を有する粒子状充填剤を意味する。
【0015】
「高密度粒子状充填剤」という用語は、少なくとも1.5g/cm3又は少なくとも2.0g/cm3又はさらに少なくとも2.5g/cm3の平均嵩密度を有する粒子状充填剤を意味する。
【0016】
「硬化する」、「硬化した」という用語又は類似の用語は、シンタクチック構造接着剤を形成する重合可能及び/又は架橋可能な成分の少なくとも一部が重合及び/又は架橋したことを意味する。さらに「硬化」は、シンタクチック構造接着剤をこれに限られないが熱的硬化のような硬化条件に供し、接着剤の反応性官能基の反応に導き、重合及び重合物の形成を生ずることを指す。シンタクチック構造接着剤を硬化条件に供する場合、そして重合に続き且つ反応性基のほとんどの反応が起こってしまった後、残る未反応の反応性基の反応速度は徐々に遅くなるであろう。シンタクチック構造接着剤を、それが少なくとも部分的に硬化するまで硬化条件に供することができる。「少なくとも部分的に硬化する」という用語はシンタクチック構造接着剤を硬化条件に供し、ここで接着剤の反応性基の少なくとも一部の反応が起こって重合物を形成することを意味する。シンタクチック構造接着剤を硬化条件に供して実質的に完全な硬化が得られるようにすることもでき、且つここでさらなる硬化は圧縮強さのようなポリマーの性質における有意なさらなる向上を生じな
い。
【0017】
「反応性」という用語は、自然に又は熱を適用すると又は当業者に既知の他の手段により他の官能基との化学反応を経ることができる官能基を指す。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「上」、「上に」、「上に適用される(applied on)」、「上に適用される(applied onto)」、「上に形成される」、「上に堆積する(deposited on)」、「上に堆積する(deposited onto)」という用語は、表面上に形成される、重ねられる、堆積する又は与えられるが必ずしもそれと接触していないことを意味する。例えば基材「上に適用される」シンタクチック構造接着剤は、シンタクチック構造接着剤と基材の間に位置する同じ又は異なる組成の1つ以上の他の介在コーティング層の存在を排除しない。
【0019】
「実質的に含まない」という用語は、接着剤調製物中におけるある材料の実質的な不在に関連して用いられる場合、そのような材料が存在しないか又は存在しても偶発的な不純物又は副生成物であることを意味する。言い換えると、その材料は接着剤調製物の性質に影響を与えない。
【0020】
「含む」という用語及びその派生語は、追加の成分、段階又は方法が本明細書に開示されていてもいなくても、それらの存在を排除することを意図していない。いずれの疑問をも避けるために、「含む」という用語の使用を介して本明細書で特許請求されるすべての組成物は、そうではないと記載されなければ、いずれかの追加の添加物又は化合物を含む場合がある。対照的に「本質的に~からなる」という用語は、本明細書に現れる場合、操作性に必須でないものを除いていずれの他の成分、段階又は方法も後続の言及の範囲から排除し、「~からなる」という用語は、用いられる場合、特定的に述べられない又は挙げられないいずれの成分、段階又は方法も排除する。「又は」という用語は、他のように記載されなければ、挙げられるメンバーを個別に又はいずれかの組み合わせにおいて指す。
【0021】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的目的語の1つ又は1つ以上(すなわち少なくとも1つ)を指すために本明細書で用いられる。例えば「エポキシ樹脂(an epoxy resin)」は1種のエポキシ樹脂又は1種より多いエポキシ樹脂を意味する。
【0022】
「1つの側面において」、「1つの側面に従うと」などの句は一般に、句に続く特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの側面に含まれ、且つ本開示の1つより多い側面に含まれる場合があることを意味する。重要なことに、そのような句は必ずしも同じ側面を指していない。
【0023】
明細書に成分又は特徴が含まれる又は特性を有する「場合がある」、「ことができる」、「ことができた」又は「場合があった」と記載される場合、その特定の成分又は特徴が含まれる又はその特性を有する必要はない。
【0024】
1つの側面に従うと、本開示は(a)エポキシ樹脂、(b)低密度粒子状充填剤及び(c)硬化剤を含むシンタクチック構造接着剤を提供し、ここでシンタクチック構造接着剤を硬化させることにより形成される得られる硬化生成物は、少なくとも以下の良く均衡がとれた性質を含む:(1)1.0g/cm3未満の密度;(2)1000psiより高い重ねせん断強度;及び(3)750MPaより高い圧縮弾性率。
【0025】
一般に引用することにより記載事項が本明細書の内容となる米国特許第5,476,748号明細書;米国特許第6,506,494号明細書;米国特許第6,632,893号明細書;米国特許第6,376,564号明細書;米国特許第6,348,513号明細書;米国特許第8,742,018号明細書;及び米国特許第8,440,746号明細書に開示されているエポキシ含有化合物のようないずれのエポキシ含有化合物も本開示におけるエポキシ樹脂としての使用に適している。エポキシ樹脂は固体又は液体の場合があり、開環により重合可能な少なくとも1つのオキシラン環、すなわち1より大きい、そしていくつかの側面において少なくとも2の平均エポキシ官能価を有する。エポキシ樹脂はモノマー性又はポリマー性、且つ脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族、水素化又はそれらの混合物であることができる。いくつかの側面において、エポキシ樹脂は分子当たりに1.5個より多いエポキシ基そして好ましくは分子当たりに少なくとも2個のエポキシ基を含む。
【0026】
1つの側面に従うと、エポキシ樹脂は約150ないし約10,000又は約180ないし約1,000の重量平均分子量を有する場合がある。エポキシ樹脂の分子量は、硬化した接着剤の所望の性質を与えるように選ばれる場合もある。
【0027】
1つの側面において、エポキシ樹脂はポリグリシジルエポキシ化合物の場合がある。ポリグリシジルエポキシ化合物はポリグリシジルエーテル、ポリ(β-メチルグリシジル)エーテル、ポリグリシジルエステル又はポリ(β-メチルグリシジル)エステルの場合がある。ポリグリシジルエーテル、ポリ(β-メチルグリシジル)エーテル、ポリグリシジルエステル及びポリ(β-メチルグリシジル)エステルの合成及び例は米国特許第5,972,563号明細書に開示されており、その記載事項は引用することにより本明細書の内容となる。例えばエーテルは少なくとも1つの遊離のアルコール性ヒドロキシル基及び/又はフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を適切に置換されたエピクロロヒドリンと、アルカリ性条件下又はアルカリ処理が続く酸性触媒の存在下で反応させることにより得られる場合がある。アルコールは例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール及び高級ポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン-1,2-ジオール又はポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,4,6-トリオール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトールのような非環式アルコールの場合がある。しかしながら適したグリシジルエーテルは1,3-又は1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシシクロ-ヘキシル)メタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン又は1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ-3-エンのような脂環式アルコールから得られる場合もあるか、あるいはそれらはN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリン又はp,p’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンのように芳香環を有する場合がある。
【0028】
ポリグリシジルエーテル又はポリ(β-メチルグリシジル)エーテルの特に重要な代表的な例は単環式フェノールに、例えばレゾルシノール又はヒドロキノンに、多環式フェノールに、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、アルコキシル化ビスフェノールA、F又はS、トリオール拡張(triol extended)ビスフェノールA、F又はS、臭素化ビスフェノールA、F又はS、水素化ビスフェノールA、F又はS、フェノール及びペンダント基又は鎖を有するフェノールのグリシジルエーテルに、ビスフェノールAノボラック及びクレゾールノボラックのような酸性条件下で得られるフェノール又はクレゾールのホルムアルデヒドとの縮合生成物に或いはシロキサンジグリシジルに基づく。
【0029】
ポリグリシジルエステル及びポリ(β-メチルグリシジル)エステルは、エピクロロヒドリン又はグリセロールジクロロヒドリン又はβ-メチルエピクロロヒドリンをポリカルボン酸化合物と反応させることにより製造される場合がある。反応は便宜上塩基の存在下
で行われる。ポリカルボン酸化合物は、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸又は二量化若しくは三量化リノール酸の場合がある。しかしながら同様に脂環式ポリカルボン酸、例えばテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸又は4-メチルヘキサヒドロフタル酸を用いることも可能である。例えばフタル酸、イソフタル酸、トリメリト酸又はピロメリト酸のような芳香族ポリカルボン酸を用いることも可能であり、あるいは他に例えばトリメリト酸とポリオール、例えばグリセロール又は2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのカルボキシル末端付加物が用いられる場合がある。
【0030】
別の側面において、エポキシ樹脂は非グリシジルエポキシ化合物の場合がある。非グリシジルエポキシ化合物は、構造において直鎖状、分枝鎖状又は環状の場合がある。例えばエポキシド基が非環式又は複素環式環系の一部を形成する1種以上のエポキシド化合物が含まれる場合がある。他には少なくとも1つのケイ素原子を含む基に直接又は間接的に結合している少なくとも1つのエポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ含有化合物が含まれる。例は米国特許第5,639,413号明細書に開示されており、その記載事項は引用することにより本明細書の内容となる。さらに他には1つ以上のシクロヘキセンオキシド基を含むエポキシド及び1つ以上のシクロペンテンオキシド基を含むエポキシドが含まれる。
【0031】
非グリシジルエポキシ化合物の特定の例には以下が含まれる:エポキシド基が非環式又は複素環式環系の一部を形成する二官能基性非グリシジルエポキシド化合物:ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)エタン、3,4-エポキシシクロヘキシル-メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、ジ(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)及びエタンジオールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル。
【0032】
いくつかの特定の側面において、二官能基性非グリシジルエポキシ化合物には3,4-エポキシシクロヘキシル-メチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及び2,2’-ビス-(3,4-エポキシ-シクロヘキシル)-プロパンのような脂環式二官能基性非グリシジルエポキシが含まれ、前者が最も好ましい。
【0033】
さらに別の側面において、エポキシ樹脂はポリ(N-グリシジル)化合物又はポリ(S-グリシジル)化合物の場合がある。ポリ(N-グリシジル)化合物は例えばエピクロロヒドリンと少なくとも2つのアミン水素原子を含むアミンとの反応生成物の脱塩化水素により得られ得る。これらのアミンは例えばn-ブチルアミン、アニリン、トルイジン、m-キシリレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン又はビス(4-メチルアミノフェニル)メタンの場合がある。ポリ(N-グリシジル)化合物の他の例には、エチレンウレア又は1,3-プピレンウレアのようなシクロアルキレンウレアのN,N’-ジグリシジル誘導体及び5,5-ジメチルヒダントインのようなヒダントインのN,N’-ジグリシジル誘導体が含まれる。ポリ(S-グリシジル)化合物の例はジチオール、例えばエタン-1,2-ジチオール又はビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテルに由来するジ-S-グリシジル誘導体である。
【0034】
1,2-エポキシド基が異なるヘテロ原子又は官能基に結合しているエポキシ樹脂を用いることも可能である。例には4-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、サリチル酸のグリシジルエーテル/グリシジルエステル、N-グリシジル-N’-(2-グリシジルオキシプロピル)-5,5-ジメチルヒダントイン又は2-グリシジルオ
キシ-1,3-ビス(5,5-ジメチル-1-グリシジルヒダントイン-3-イル)プロパンが含まれる。
【0035】
ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、リモネンモノオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル9,10-エポキシステアレート及び1,2-ビス(2,3-エポキシ-2-メチルプロポキシ)エタンのような他のエポキシド誘導体が用いられる場合もある。
【0036】
さらに、エポキシ樹脂は上記のもののようなエポキシ樹脂とエポキシ基と反応性である遊離の水素を有する化合物との予備反応付加物の場合がある。典型的に、そのような反応性水素はカルボン酸基、芳香族ヒドロキシル基、アミノ基及びスルフヒドリル基において見いだされる。
【0037】
1つの特定の側面において、シンタクチック構造接着剤は1種のみのエポキシ樹脂を含む場合があるが、他の側面において、シンタクチック構造接着剤はエポキシ樹脂の混合物を含む場合がある。
【0038】
別の側面に従うと、エポキシ樹脂は少なくとも1つの多官能基性エポキシ樹脂を含む。多官能基性エポキシ樹脂は二官能基性エポキシ樹脂、三官能基性エポキシ樹脂、四官能基性エポキシ樹脂又はそれらの混合物の場合がある。
【0039】
二官能基性エポキシ樹脂の例にはビスフェノールAのジグリシジルエーテルに基づく材料(例えばEpon(商標) 828エポキシ樹脂、D.E.R.(商標) 331及びD.E.R.(商標) 661エポキシ樹脂、Tactix(登録商標) 123エポキシ樹脂及びAraldite(登録商標) 184エポキシ樹脂)が含まれるがこれらに限られない。
【0040】
三官能基性エポキシ樹脂の例にはアミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばAraldite(登録商標) MY 0510、MY 0500、MY 0600及びMY 0610エポキシ樹脂)が含まれるがこれらに限られない。
【0041】
四官能基性エポキシ樹脂の例にはメチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテル(例えばAraldite(登録商標) MY 9655エポキシ樹脂)、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えばAraldite(登録商標) MY-721、MY-720、725、MY 9663,9634及び9655エポキシ樹脂)ならびにソルビトールポリグリシジルエーテル(例えばEJ-190エポキシ樹脂及びERISYS(登録商標) GE-60エポキシ樹脂)が含まれるがこれらに限られない。
【0042】
さらに別の側面において、エポキシ樹脂は少なくとも1種の多官能基性エポキシ樹脂を少なくとも1種の一官能基性エポキシ樹脂と一緒に含む場合がある。そのような一官能基性エポキシ樹脂の例にはフェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、パラ-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、C6-C28アルキルグリシジルエーテル、C6-C28脂肪酸グリシジルエステル及びC6-C28アルキルフェノールグリシジルエーテルが含まれるがこれらに限られない。
【0043】
シンタクチック構造接着剤中で用いられるエポキシ樹脂の量は、目的とされる分子量及びエポキシ官能価に依存する場合がある。いくつかの側面に従うと、シンタクチック構造接着剤はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づいて約10重量%から約90重量%までの量でエポキシ樹脂を含む場合がある。他の側面において、シンタクチック構造接着
剤は、約12.5重量%から約75重量%まで又は約15重量%から約60重量%まで又は約17.5重量%から約50重量%まで又はさらに約20重量%から約40重量%までの量でエポキシ樹脂を含む場合があり、ここで重量%はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づく。
【0044】
シンタクチック構造接着剤は、低密度粒子状充填剤も含む。いくつかの側面において、低密度粒子状充填剤には天然に存在する鉱物、人工材料、シリカ粒子、軽量廃棄物及びそれらの混合物が含まれるがこれらに限られない。そのような充填剤の例には一般にパーライト、バーミキュライト、ガラス、セラミックス、炭素、金属又は合成樹脂から作られる中空微小球及びマイクロバルーン、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、沈降シリカ、シリカゲル、粉砕された(ground up)タイヤ、粉砕された木材繊維、粉砕されたセルロース繊維ならびにポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリウレタン及びポリイソシアヌレートを含む多様な異なるポリマーから作られる粉砕されたポリマーフォームが含まれるがこれらに限られない。
【0045】
他の側面において、低密度粒子状充填剤は不規則な形の粒子又は球形の粒子又はそれらの混合物を含む場合がある。
【0046】
不規則な形の粒子には一様な球形又は平板形(platelet shape)を欠いた粒子が含まれる。不規則な形の粒子は典型的に沈降、磨砕又は微粉砕を介して得るかあるいは融合又は凝集した一次粒子で構成され、不規則な形又は表面性状(surface
texture)を有する粒子を与える。不規則な形の粒子は一般に約300μm未満そしてさらに約100μm未満の粒度を有する。
【0047】
球形の粒子は球の形を有するか又は実質的に球の形を有し、中空又は充実固体(solid)の場合がある。球形の粒子は一般に約300μm未満そしてさらに約100μm未満の粒度を有する。
【0048】
1つの特定の側面に従うと、低密度粒子状充填剤には例えば中空無機粒子又は中空有機粒子のような球形の中空粒子、例えば無機微小球又は有機微小球あるいはそれらの組み合わせが含まれる。粒子の中空部分は気体若しくは気体の混合物、液体若しくは液体の混合物又は1種以上の気体と1種以上の液体の混合物で満たされている場合があるか、あるいは真空の場合がある。
【0049】
無機微小球は、例えばガラス、シリカ、セラミック(ゾル-ゲル由来を含む)、ジルコニア及びそれらの組み合わせを含む多様な材料から選ばれる場合がある。いくつかの側面において、無機粒子はシリカ、ソーダ-ライムボロシリケートガラス、シリカ-アルミナセラミック、アルカリアルミノシリケートセラミックタイプ(alkali alumino silicate ceramic type)、酸化アルミニウム又はそれらの組み合わせを含む場合がある。無機微小球は硬化したシンタクチック構造接着剤が圧縮強さを損なわずに低い密度を示すことをそれらが可能にするように選ばれる場合がある。かくして1つの特定の側面において、無機微小球は0.5g/cm3未満の密度を有し、無機微小球の少なくとも85重量%そして少なくとも90重量%さえもが少なくとも2500psi又は少なくとも4000psiの圧潰強度を有し、ここで重量%は無機微小球の合計重量に基づく。無機微小球に関する平均粒度は約1μmから約300μmまで又は約10μmから約100μmまでの範囲の場合がある。
【0050】
別の側面において、無機微小球は、記載事項が引用することにより本明細書の内容となる米国特許第3,365,315号明細書に記載されているもののようなガラス微小球又はマイクロバブルである。これらの微小球の壁は固体ガラス粒子を1000℃より高い温度で発泡させ、約0.14ないし約0.38g/cm3の範囲内の見かけ密度、約0.5ないし2.0ミクロンの壁厚及び約60ミクロンの平均粒度を有する小さい中空回転楕円体を形成することにより作られる。用いられる場合がある合成融合水-不溶性アルカリ金属シリケートに基づくガラスの他のガラス状又は無機微小球は米国特許第3,230,184号明細書に記載されており、本開示において有用なケイ酸ナトリウムから作られる微小球は米国特許第3,030,215号明細書に記載されており、それらの記載事項は引用することにより本明細書の内容となる。パーライト、火山灰、フライアッシュ及びバーミキュライトのような熱発泡天然鉱物から製造される微小球も用いられる場合がある。商業的に入手可能な無機微小球にはScotchlite(商標) ガラスバブル、Q-CEL(登録商標) 無機微小球及びEXTENDOSPHERES(登録商標) セラミック微小球の商品名の下のものが含まれる。
【0051】
有機微小球には有機ポリマー、すなわち少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含むモノマーに由来する繰り返し単位を含む材料で作られる高分子微小球が含まれる。そのようなポリマーの典型的な例にはアクリロニトリルポリマー又はコポリマー、アクリレートポリマー又はコポリマー、ビニリデンポリマー又はコポリマー、ポリアセテートポリマー又はコポリマー、ポリエステルポリマー又はコポリマー、塩化ビニリデン/アクリロニトリルコポリマー、アクリレート/アクリロニトリルコポリマー及びそれらの組み合わせが含まれるがこれらに限られない。
【0052】
さらに有機微小球は非発泡又は予備発泡有機中空微小球の場合がある。発泡性有機マイクロバルーンと呼ばれることもある非発泡有機中空微小球は、例えばEXPANCEL(登録商標)及びMICROPEARL(登録商標)微小球の商品名の下に入手可能である。そのような微小球は炭化水素(例えばエタン、エチレン、プロパン、プロペン、ブタン、イソブタン、ネオペンタン、アセチレン、ヘキサン、ヘプタン及びイソペンタン)、クロロフルオロカーボン、テトラアルキルシラン(例えばテトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン及びトリメチルn-プロピルシラン)ならびにペルフルオロカーボンのような揮発性液体を閉じ込めている熱可塑性シェルを含む。熱又は類似の活性化エネルギーに供されると、微小球はそれらの最初の寸法の多数倍に劇的に発泡し、且つ活性化エネルギーが取り除かれた後この寸法を保持する。熱可塑性のシェルにはポリビニリデン-ポリアクリロニトリル、ポリビニリデン-ポリアクリロニトリル-ポリメチルメタクリレート及びポリスチレン-ポリアクリロニトリルコポリマーが含まれるがこれらに限られない。
【0053】
予備発泡有機微小球は、有機発泡剤(例えばペンタン、イソペンタン、ブタン又はこれらの混合物を含む上記のような炭化水素)或いは無機発泡剤(例えば空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン又はこれらの混合物)の使用を介してあらかじめ発泡し、より大きい寸法であるがより低い密度を有する粒子を与える。例えば予備発泡有機微小球は体積により1%ないし99%、25%ないし95%又は50%ないし90%の空気を含むことができる。予備発泡微小球は部分的に発泡しているか(すなわちさらなる発泡が可能である)又は完全に発泡していることができる。例えば微小球は微小球の密度に基づいて決定される時に50%より大きく(greater)発泡している、60%より大きく発泡している、70%より大きく発泡している、80%より大きく発泡している、90%より大きく発泡している又は100%(すなわち完全に)発泡していることができる。
【0054】
本明細書に記載される予備発泡有機微小球は例えば熱可塑性ポリマーを含む発泡性ポリマーに由来することができる。例にはポリスチレン(例えばフリーラジカル重合ガラスクリアポリスチレン(glass-clear polystyrene)(GPPA)又はアニオン重合ポリスチレン(APS))、スチレンに基づくコポリマー(例えばスチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-α-メチ
ルスチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、スチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマー、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)コポリマー、メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)コポリマー又はメチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)コポリマー)、ポリエチレン(例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、熱可塑性ポリウレタン及びポリアミドならびにこれらの混合物が含まれる。適した予備発泡微小球のさらなる例には、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン-ポリフェニレンオキシドブレンド、ポリオキシメチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、メチルメタクリレートコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー(例えばランダム及びブロック)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル/ポリエーテルグリコールブロックコポリマー、ポリエチレン及び重合ビニル芳香族樹脂に由来するものが含まれる。ビニル芳香族樹脂の例にはスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルビニルベンゼン、イソプロピルスチレン、t-ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、フルオロスチレン、ブロモスチレンの固体ホモポリマー;2種以上のモノビニル芳香族化合物の固体コポリマー及び1種以上のモノビニル芳香族化合物と共重合可能なオレフィン性化合物(例えばアクリロニトリル、メチルメタクリレート又はエチルアクリレート)の固体コポリマーが含まれる。
【0055】
そのような予備発泡有機微小球は、例えばDUALITE(登録商標) 微小球、GRAFGUARD(登録商標) 発泡性グラファイト粒子及びSTYROPOR(登録商標) 微小球の商品名の下に商業的に入手可能である。
【0056】
1つの側面において、上記の無機微小球のみがシンタクチック構造接着剤中に含まれるが、他の側面において、上記の無機微小球と有機微小球の組み合わせがシンタクチック構造接着剤中に含まれる。
【0057】
シンタクチック構造接着剤における使用ための低密度粒子状充填剤の濃度及び性質は、シンタクチック構造接着剤の密度が1g/cm3未満又は0.8g/cm3未満又はさらに約0.5g/cm3と0.75g/cm3の間又はさらに約0.55g/cm3と0.65g/cm3の間であるように選ばれる場合がある。
【0058】
かくして1つの側面において、本開示のシンタクチック構造接着剤は、シンタクチック構造接着剤の合計重量に基づいて約1重量%から約80重量%まで又は約2重量%から約60重量%まで又は約5重量%から約50重量%まで又は約7.5重量%から約45重量%まで又は約10重量%から約40重量%まで又はさらに約15重量%から約30重量%までの低密度粒子状充填剤を含む場合がある。
【0059】
別の側面に従うと、シンタクチック構造接着剤の硬化は、そのような接着剤の硬化に関して当該技術分野において既知の化学材料の添加により行われる場合がある。そのような材料は、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応することができる反応性部分を有する化合物であり、本明細書で「硬化剤(hardeners)」と呼ばれるが、硬化剤(curing agents)、加硫剤(curatives)、活性化剤、触媒又は加速剤として当業者に既知の材料も含まれる。ある硬化剤は触媒作用により硬化を促進するが、他は樹脂の反応に直接関与し、樹脂の縮合、鎖延長及び/又は架橋により形成される熱可塑性高分子ネットワーク中に導入される。硬化剤に依存して、有意な反応を起こすために熱が必要な場合があるか又は必要でない場合がある。エポキシ樹脂のための硬化剤には芳香族アミン、環状アミン、脂肪族アミン、アルキルアミン、ポリプロピレンオキシド及び/又は
ポリエチレンオキシドに由来することかができるポリエーテルアミンを含むポリエーテルアミン、酸無水物、カルボン酸アミド、ポリアミド、ポリフェノール、クレゾール及びフェノールノボラック樹脂、イミダゾール、グアニジン、置換グアニジン、置換ウレア、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、第3級アミン、三フッ化ホウ素及び三塩化ホウ素のようなルイス酸錯体ならびにポリメルカプタンが含まれるがこれらに限られない。上記の硬化剤のいずれのエポキシ-修飾アミン生成物、Mannich修飾生成物及びMichael修飾付加生成物も用いられる場合がある。上記で挙げた加硫剤のすべては単独で又はいずれかの組み合わせにおいて用いられる場合がある。
【0060】
1つの特定の側面において、硬化剤は多官能基性アミンである。本明細書で用いられる「多官能基性アミン」という用語は、分子中に少なくとも2つの第1級及び/又は第2級アミノ基を有するアミンを指す。例えば多官能基性アミンは、フェニレンジアミン、キシレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン及び3,5-ジアミノ安息香酸のようなオルト、メタ及びパラ位(positional relations)のいずれか1つにおいてベンゼンに結合した2つのアミノ基を有する芳香族多官能基性アミン、エチレンジアミン及びプロピレンジアミンのような脂肪族多官能基性アミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、1,3-ビスピペリジルプロパン及び4-アミノメチルピペラジンのような非環式多官能基性アミンなどの場合がある。これらの多官能基性アミンは単独で又はそれらの混合物において用いられる場合がある。
【0061】
代表的な芳香族アミンには1,8-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、ジエチレントルエンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチル-エチルインデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチルインデン)]ビスアニリン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが含まれるがこれらに限られない。さらに、芳香族アミンには米国特許第4,427,802号明細書及び米国特許第4,599,413号明細書に開示されているような複素環式多官能基性アミン付加物が含まれる場合があり、それらは両方とも記載事項全体が引用することにより本明細書の内容となる。
【0062】
環状アミンの例にはビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、m-キシレンジアミン、イソホロンジアミン、メンテンジアミン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8,-ジアゾビシクロ[5,4.0]-7-ウンデセン、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)-フェノール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールが含まれるがこれらに限られない。
【0063】
代表的な脂肪族アミンにはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)-プロピルアミン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン及びテトラメチ
ル-エチレンジアミン、エチレンジアミン、3,3’-イミノビス(プロピルアミン)、N-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルアミン)、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ポリオキシプロピレンジアミン及びポリオキシプロピレントリアミンが含まれるがこれらに限られない。
【0064】
代表的なアルキルアミンにはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジ-n-オクチルアミン及びジ-2-エチルヘキシルアミンが含まれるがこれらに限られない。
【0065】
代表的な酸無水物にはシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、2-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-メチル-2-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水コハク酸、4-メチル-1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジックメチル無水物(nadic methyl anhydride)、ドデセニルコハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水マレイン酸、ピロメリト酸二無水物、トリメリト酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、クロレン酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物及びそれらの誘導体又は付加物が含まれるがこれらに限られない。
【0066】
代表的なイミダゾールにはイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-イソプロピル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1,2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチルイミダゾール及び1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾールが含まれるがこれらに限られない。
【0067】
代表的な置換グアニジンはメチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン及びシアノグアニジン(ジシアンジアミド)である。挙げられる場合があるグアナミン誘導体の代表的な例はアルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂又はメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミンである。置換ウレアにはp-クロロフェニル-N,N-ジメチルウレア(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア
(フェヌロン)又は3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチルウレア(ジウロン)が含まれる場合がある。
【0068】
代表的な第3級アミンにはトリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-ベンジルアミン、ピリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ビス(2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノ)エチル)-(2-(4-モルホリノ)エチル)アミン、ビス(2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノ)エチル)-(2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2-(4-モルホリノ)エチル)アミン及びトリス(2-(4-モルホリノ)プロピル)アミンのようなモルホリンの誘導体、ジアザビシクロオクタン(DABCO)ならびにジアザビシクロノ(diazabicyclono)のようなアミジン結合を有する複素環式化合物が含まれるがこれらに限られない。
【0069】
アミン-エポキシ付加物は当該技術分野において周知であり、例えば米国特許第3,756,984号明細書、米国特許第4,066,625号明細書、米国特許第4,268,656号明細書、米国特許第4,360,649号明細書、米国特許第4,542,202号明細書、米国特許第4,546,155号明細書、米国特許第5,134,239号明細書、米国特許第5,407,978号明細書、米国特許第5,543,486号明細書、米国特許第5,548,058号明細書、米国特許第5,430,112号明細書、米国特許第5,464,910号明細書、米国特許第5,439,977号明細書、米国特許第5,717,011号明細書、米国特許第5,733,954号明細書、米国特許第5,789,498号明細書、米国特許第5,798,399号明細書及び米国特許第5,801,218号明細書に記載されており、それらのそれぞれの記載事項全体は引用することにより本明細書の内容となる。そのようなアミン-エポキシ付加物は1種以上のアミン化合物と1種以上のエポキシ化合物の間の反応の生成物である。好ましくは、付加物は室温でエポキシ樹脂中に不溶性であるが、加熱されると可溶性になり、硬化速度を上昇させるための加速剤として機能する固体である。いずれの型のアミンを用いることもできるが(複素環式アミン及び/又は少なくとも1つの第2級窒素原子を含むアミンが好ましい)、イミダゾール化合物が特に好ましい。例となるイミダゾールには2-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどが含まれる。他の適したアミンにはピペラジン、ピペリジン、ピラゾール、プリン及びトリアゾールが含まれるがこれらに限られない。付加物のための他の出発材料として、エポキシ樹脂成分に関して前に記載したもののような一官能基性及び多官能基性エポキシ化合物を含むいずれの種類のエポキシ化合物も用いることができる。
【0070】
1つの側面において、本開示のシンタクチック構造接着剤はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づいて最高で約90重量%の硬化剤を含む場合がある。他の側面において、シンタクチック構造接着剤はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づいて最高で約80重量%又は最高で約70重量%又は最高で約60重量%又は最高で約50重量%又は最高で約40重量%又は最高で約30重量%又は最高で約20重量%又はさらに最高で約10重量%の硬化剤を含む場合がある。
【0071】
さらなる側面において、シンタクチック構造接着剤は任意的に難燃剤を含む場合がある。本開示のシンタクチック構造接着剤は約5重量%から約60重量%までの難燃剤を含む場合があり、それは(i)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム族水酸化物の群から選ばれる化合物ならびに(ii)少なくとも1種のリン含有材料の混合物からなる。
【0072】
アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム族水酸化物から選ばれる化合物の群は多くの場合に防煙剤と呼ばれる。そのような防煙剤の例にはアルミニウム三水和物、酸化アルミニウム三水和物(水酸化アルミニウムと呼ばれることもある)及び水酸化マグネシウムが含まれるがこれらに限られない。
【0073】
リン含有材料は赤リン元素、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート及び例えばアルミニウムホスフィネートのような無機ホスフィネートから選ばれる場合がある。
【0074】
いくつかの側面に従うと、シンタクチック構造接着剤中に多官能基性アクリレート加速剤が含まれるのが有利な場合がある。本明細書で用いられる場合、「多官能基性アクリレート」という用語は、シンタクチック構造接着剤の硬化に用いられる条件下で反応性である少なくとも2つのアクリレート官能基を有する化合物を指し、化合物の少なくとも1つは硬化反応に含まれるか又は硬化反応により形成される。本明細書で用いられる場合、「アクリレート官能基」という用語は、一般的な構造
【化1】
を有する官能基を指し、式中、Rは多官能基性アクリレート化合物とエポキシ樹脂の反応を実質的に邪魔したり妨げたりしないいずれかの基の場合がある。いくつかの側面において、Rは独立してH又は置換若しくは非置換アルキル、アリール、オキシアルキル、アリールアルキル若しくはオキシアルキルアリールである。非常に好ましい側面において、各RはHである。
【0075】
多官能基性アクリレートには脂肪族ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、メタクリレートならびにエチレン性不飽和モノマー及び樹脂が含まれる場合がある。特定の例にはトリメチロールプロパントリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、6官能基性ウレタンアクリレート、6官能基性エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート及びそれらの混合物が含まれるがこれらに限られない。
【0076】
シンタクチック構造接着剤は任意的な多官能基性アクリレート加速剤をシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づいて約0.5重量%ないし約25重量%の量で含む場合がある。他の側面において、シンタクチック構造接着剤はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づいて約1重量%ないし約20重量%又は約2重量%から約17.5重量%まで又はさらに約3重量%から約15重量%までの量で任意的な多官能基性アクリレート加速剤を含む場合がある。
【0077】
さらに別の側面において、シンタクチック構造接着剤はそれらの意図される用途に有用な1種以上の他の添加物を含む場合もある。例えばシンタクチック構造接着剤中で有用な任意的な添加物には、希釈剤、安定剤、界面活性剤、流れ調整剤、剥離剤、つや消し剤、脱泡剤、強化剤(例えばカルボキシル末端液体ブタジエンアクリロニトリルゴム(CTBN)、アクリル末端液体ブタジエンアクリロニトリルゴム(ATBN)、エポキシ末端液体ブタジエンアクリロニトリルゴム(ETBN)、エラストマーの液体エポキシ樹脂(LER)付加物及び予備生成コアシェルゴム)、硬化開始剤、硬化阻害剤、湿潤剤、加工助
剤、蛍光化合物、UV安定剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤、腐食防止剤、接着促進剤、高密度粒子状充填剤(例えばカオリン、ベントナイト、モントモリロナイト又は改変モントモリロナイト、アタパルジャイト及びBuckminsterfuller’s earthのような種々の天然に存在するクレー;雲母、炭酸カルシウム及び炭酸アルミニウムのような他の天然に存在するか又は天然由来の材料;酸化第二鉄、二酸化チタン、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素(例えば砂)のような種々の酸化物;レンガ粉(brick
dust);沈降炭酸カルシウムのような種々の人工材料;及び粉砕高炉スラグ(crushed blast furnace slag)のような種々の廃棄材料)ならびにそれらの混合物が含まれる場合があるがこれらに限られない。1つの特定の側面において、シンタクチック構造接着剤は発泡剤又は強化剤又は第3級アミン又はジシアンジアミド又はポリエステル又はそれらの組み合わせを実質的に含まない。
【0078】
存在する場合、シンタクチック構造接着剤中に含まれる添加物の量は、シンタクチック構造接着剤の合計重量に基づいて少なくとも約0.5重量%又は少なくとも2重量%又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%の場合がある。他の側面において、シンタクチック構造接着剤中に含まれる添加物の量は、シンタクチック構造接着剤の合計重量に基づいて約30重量%以下又は25重量%以下又は20重量%以下又は15重量%以下の場合がある。
【0079】
シンタクチック構造接着剤は、特別な制限なく、必要なら材料が加熱される状態で材料を攪拌且つ混合することにより調製される場合がある。いくつかの側面において、本開示のシンタクチック構造接着剤は、シンタクチック構造接着剤の少なくとも2つの成分が個別に調製され、個別の容器(containers)(又は容器(vessels)中に包装される多成分型(例えば二成分型)接着剤の場合があり、2種以上の個別に調製された成分を、いくつかの側面においては使用の直前に混合することによりシンタクチック構造接着剤が得られる。例えば1つの側面に従うと、二成分はエポキシ樹脂であるパートA(Part A)及び硬化剤であるパートB(Part B)を含み、低密度粒子状充填剤及び任意的な材料はパートA、パートB又はパートAとパートBに加えられる。混合されるパートA及びパートBの量は、シンタクチック構造剤中の所望のエポキシ対硬化剤反応性水素モル比に依存するであろう。いくつかの側面において、パートAとパートBは約0.1:1ないし約3:1又は約0.2:1ないし約2:1又は約0.5:1ないし約1.5:1又はさらに約1:1の重量比で混合される場合がある。他の側面において、硬化剤中の反応性水素の当量数対シンタクチック構造接着剤中に存在するエポキシドの当量数の比が約0.2から約2まで又は約0.3から約1.5まで又はさらに約0.4から約1まで又はさらに約0.5から約0.85まで、そしていくつかの場合には約0.6から約0.8まで、そしてさらなる場合には約0.65から約0.75までの範囲であるようにエポキシ樹脂と硬化剤を合わせる。
【0080】
1つの特定の側面に従うと、シンタクチック構造接着剤は二成分接着剤であり、ここで:パートAは約10重量%から約90重量%までのエポキシ樹脂、約5重量%から約80重量%までの低密度粒子状充填剤及び約5重量%から約60重量%までの難燃剤を含み、ここで重量%はパートAの合計重量に基づき;そしてパートBは約10重量%から約90重量%までの硬化剤、約5重量%から約80重量%までの低密度粒子状充填剤及び約5重量%から約60重量%までの難燃剤を含み、ここで重量%はパートBの合計重量に基づき、且つここでパートAとパートBを混合してシンタクチック構造接着剤を形成し、硬化させると、少なくとも以下の良く均衡がとれた性質を示す硬化材料を与える:(i)1g/cm3未満の密度;(ii)500MPaより高い圧縮弾性率;及び(iii)750psiより高い重ねせん断強度。さらに別の特定の側面に従うと、パートAは約15重量%から約70重量%までのエポキシ樹脂、約10重量%から約30重量%までの低密度粒子状充填剤、約3重量%から約20重量%までの多官能基性アクリレート及び約5重量%か
ら約40重量%までの難燃剤を含むことができ、ここで重量%はパートAの合計重量に基づき;そしてパートBは約15重量%から約80重量%までの硬化剤、約10重量%から約30重量%までの低密度粒子状充填剤及び約5重量%から約40重量%までの難燃剤を含み、ここで重量%はパートBの合計重量に基づく。
【0081】
さらに別の側面において、シンタクチック構造接着剤の調製に適した部品のキットを提供する。そのようなキットは、少なくとも2つの部品、エポキシ樹脂を含むパートA及び硬化剤を含むパートBを含み、且つここでキットのパートA及びBの少なくとも1つは低密度粒子状充填剤をさらに含む。いくつかの側面において、低密度粒子状充填剤はパートA中及びパートB中に含まれることができる。キットの部品は、コークガンに類似のデュアルカートリッジのようなカートリッジ中に包装され且つ販売されるか、又はドラム若しくは大きな容器中に包装され且つ販売され、次いで計量混合装置を用いて分散されるか、又はガラスもしくはフィルムカプセル中で包装され且つ販売される場合がある。
【0082】
さらなる側面において、シンタクチック構造接着剤は、材料のすべてが容器中で予備混合され且つ保存される「一成分」シンタクチック構造接着剤であり、且つここで反応性成分は周囲条件又は約-18℃のような低温条件において容易に反応せず、外部エネルギー源によって活性化された時のみに反応する場合がある。すべての材料を合わせ、混合した後、混合物を脱泡し、次いで密閉容器中に密閉することができる。混合の順序に重要性はなく、すなわち材料はいずれの順序で混合される場合もある。外部エネルギー源からの活性化がないと、シンタクチック構造接着剤は使用まで長時間、大部分未反応のままであろう。驚くべきことに、本開示の一成分シンタクチック構造接着剤は約-18℃のような低温条件において保存される場合に少なくとも18ヵ月間安定である(すなわち大部分未反応のままである)ことが見いだされた。硬化反応を促進するために用いられる場合がある外部エネルギー源には、例えば放射線(すなわち紫外線のような化学線)及び/又は熱が含まれる。本明細書でさらに定義される通り、「周囲条件」は一般に約10℃ないし約25℃の温度を指し、一方低温条件は0℃より低く且つ-40℃より高い温度である。
【0083】
1つの特定の側面に従うと、シンタクチック構造接着剤は約10重量%から約70重量%までのエポキシ樹脂、約2重量%から約50重量%までの低密度粒子状充填剤及び最高で約45重量%の硬化剤を含む一成分シンタクチック構造接着剤であり、ここで重量%はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づき、且つここで一成分シンタクチック構造接着剤は硬化すると少なくとも以下の良く均衡がとれた性質を示す:(i)1g/cm3未満の密度;(ii)500MPaより高い圧縮弾性率;及び(iii)750psiより高い重ねせん断強度。さらに別の特定の側面において、一成分シンタクチック構造接着剤は約20重量%から約40重量%までのエポキシ樹脂、約10重量%から約30重量%までの低密度粒子状充填剤及び最高で約30重量%の硬化剤及び任意的に最高で約40重量%の難燃剤を含み、ここで重量%はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づく。
【0084】
シンタクチック構造接着剤の調製のための攪拌/混合法は特に制限されない。例えばミキサー(例えば溶解機、ホモジナイザー又はスタティックミキサー)、混練機、ロール、ビーズミル又は遊星型攪拌装置のような既知の又は通常の攪拌/混合装置を用いることができるか、あるいは手動で混合することさえできる。必要なら、攪拌及び混合の後に混合物を真空中で脱泡に供する場合がある。
【0085】
本開示のシンタクチック構造接着剤は、接合されるべき2つ以上の基材の間にシンタクチック構造接着剤を適用し、シンタクチック構造接着剤を硬化させて接着した接合部を形成することにより、溶接及び/又は機械的留め具を補足するか又は完全に取り除くために用いられる場合がある。シンタクチック構造接着剤はいずれの基材に適用される場合もある。基材には金属、炭素繊維、ガラス、硬質プラスチックのような高分子材料、セルロー
ス含有材料(cellulosic-containing material)、エポキシ繊維複合材料及びそれらの混合物が含まれるがこれらに限られない。金属にはチタン、鉄金属(ferrous metals)、アルミニウム、アルミニウム合金、銅ならびに他の金属及び合金基材が含まれるがこれらに限られない。鋼の制限ではない例には冷間圧延鋼、亜鉛メッキ(亜鉛コーティングされた)鋼、電気亜鉛メッキ鋼、ステンレススチール、酸洗鋼(pickled steel)、GALVANNEAL(登録商標)鋼のような亜鉛-鉄合金及びそれらの組み合わせが含まれる。セルロース含有材料の例には紙、板紙、ボール紙、合板及びプレス繊維板(pressed fiber boards)、硬材、軟材、ベニヤ板、パーティクルボード、チップボード、配向性ストランドボード及び繊維板が含まれる。そのような材料は全体的に松、オーク、カエデ、マホガニー、サクラなどのような木材で作られている場合がある。しかしながらいくつかの場合、材料は樹脂性材料のような別の材料と組み合わされた木材、すなわちフェノール性複合材料、木材繊維と熱可塑性ポリマーの複合材料のような木材/樹脂複合材料及びセメント、繊維又はプラスチッククラッディングで強化された木材複合材料を含む場合がある。
【0086】
1つの特定の側面に従うと、基材の少なくとも1つは金属である。別の側面において、基材は同じであるか又は異なる場合がある。
【0087】
シンタクチック構造接着剤は液体、ペースト及び加熱されると液化することができる半固体又は固体として適用される場合がある。いくつかの特定の側面において、シンタクチック構造接着剤は液体又はペースト形態にある。シンタクチック構造接着剤は連続ビーズとして、中間点(intermediate dots)、縞(stripes)、対角線又は他の幾何学的形態において基材の表面上に適用される場合がある。
【0088】
シンタクチック構造接着剤は浸漬、刷毛塗り、噴霧コーティング、ダイコーティング、ロールコーティング、押出し、射出ならびに手動による及び/又は自動機械混合と分配(dispensing)を介するシンタクチック構造接着剤を含む浴と基材の接触によるようないずれかの既知の方法により適用される場合がある。
【0089】
基材の表面上へのシンタクチック構造接着剤の適用処理又はコーティングの前に、表面を徹底的に清浄化し、脱脂することにより、基材の表面から異物を除去するのは必要でないとしても普通のやり方である。そのような清浄化は、典型的に基材を最終的な使用形に成形した後に行われる。表面を機械的に摩耗させるか又はメタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムのような当業者に周知の商業的に入手可能なアルカリ性又は酸性清浄化剤を用いて清浄化/脱脂するような物理的又は化学的手段により基材の表面を清浄化することができる。
【0090】
清浄化段階に続き、残留物を除去するために基材を脱イオン水又は濯ぎ剤の水溶液を用いて濯ぐ場合がある。例えばエアナイフの使用により、高温への基材の短時間の暴露による水の蒸発分離により、又はスキージーロールの間に基材を通過させることにより、基材を空気乾燥することができる。
【0091】
本開示の接着剤が適用される基材の表面はむき出しの清浄化された表面の場合があり;それは油性で1種以上の予備処理組成物で予備処理されている場合があり、及び/又は電着、噴霧、浸漬コーティング、ロールコーティング、カーテンコーティングなどを含むがこれらに限られないいずれかの方法により適用される1種以上のコーティング組成物、プライマーなどで予備塗装されている場合がある。
【0092】
いくつかの側面においては必要でないが、シンタクチック構造接着剤配置選択肢(placement options)は溶接又は機械的留め具により増強される場合がある
。溶接を点溶接として、連続シーム溶接として又はシンタクチック構造接着剤と協働して機械的に健全な接合部を形成することができる他のいずれかの溶接として行うことができる。
【0093】
1つの側面に従うと、シンタクチック構造接着剤は、船、航空機、鉄道車両又はモーター車,例えば車及びオートバイ又は自転車の組み立てにおけるような車両組み立てにおける構造接着剤として用いられる場合がある。他の側面において、シンタクチック構造接着剤は、建築又は家庭及び工業的用途において構造接着剤として用いられる場合がある。
【0094】
さらに別の側面において、シンタクチック構造接着剤は溶接添加物(welding additive)として用いられる場合がある。
【0095】
本開示は、本開示のシンタクチック構造接着剤を基材の表面に適用し、接着剤を硬化させて複合品を形成することを含む複合品の製造方法も提供する。
【0096】
さらに別の側面において、本開示のシンタクチック構造接着剤を2つ以上の基材の少なくとも1つの表面に適用し、2つ以上の基材を接合させてシンタクチック構造接着剤が2つ以上の基材の少なくとも2つの間に挟まれるようにし、そしてシンタクチック構造接着剤を硬化させて2つ以上の基材の間に接着された接合部を形成することを含む少なくとも2つ以上の基材の間に接着された接合部を形成する方法も提供する。
【0097】
本開示のシンタクチック構造接着剤は、下記の実施例の節に従って測定される場合、硬化すると少なくとも以下の性質を有する場合がある:1g/cm3未満の密度、少なくとも500MPaの圧縮弾性率及び750psiより高い重ねせん断強度。
【0098】
いくつかの側面において、シンタクチック構造接着剤の密度は硬化すると0.95g/cm3未満又は0.9g/cm3未満又は0.85g/cm3未満又は0.8g/cm3未満又は0.75g/cm3未満又はさらに0.7g/cm3未満の場合がある。さらに別の側面において、シンタクチック構造接着剤の密度は硬化すると、約0.50g/cm3から約0.95g/cm3まで又は約0.6g/cm3から約0.85g/cm3まで又は約0.65g/cm3から約0.75g/cm3までのような少なくとも0.4g/cm3から1g/cm3未満までの範囲の場合がある。
【0099】
いくつかの側面に従うと、シンタクチック構造接着剤の圧縮弾性率は硬化すると、750MPaより高いか又は1000MPaより高いか又は1500MPaより高いか又は2000MPaより高いか又はさらに2250MPaより高い場合がある。
【0100】
さらに別の側面において、シンタクチック構造接着剤の重ねせん断強度は硬化すると、800psiより高いか又は1000psiより高いか又は1250psiより高いか又は1500psiより高いか又は1750psiより高いか又はさらに2000psiより高い場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0101】
実施例
試験法
重ねせん断強度-ASTM D1002
記載事項全体が引用することにより本明細書の内容となるASTM D1002を用いて重ねせん断強度を測定した。規定される通りに試料を用いて2つの金属板を接着し、硬化させた。次いでアセンブリを均一な幅の重ねせん断試料に切断した。次いで試験試料を
万能試験機のグリップ(grips)に置き、破裂が起こるまで1.3mm/分(0.05インチ/分)において引っ張った。
【0102】
圧縮強さ及び圧縮弾性率-ASTM D695
記載事項全体が引用することにより本明細書の内容となるASTM D695を用いて圧縮強さ及び圧縮弾性率を測定した。試料を圧縮板の上に表面に平行に置いた。次いで試料を均一な速度で圧縮した。応力-ひずみデータとともに最大負荷(load)を記録した。取り付け具(fixture)の前に取り付けられた伸縮計を用いて圧縮弾性率を決定した。
【0103】
密度-ASTM D792及びASTM D1622
記載事項全体が引用することにより本明細書の内容となるASTM D792及びASTM D1622を用いて密度を測定した。試料を空気中で秤量し、次いで必要なら試料を完全に水没させて保つために重りとワイアを用いて23℃における蒸留水中に沈めた時に秤量した。また、試料を秤量し次いでノギスを用いて寸法を測定した。これらの値から密度を計算した。
【0104】
ゲル化時間及び可使時間
(a)二成分系に関し、可使時間又はゲル化時間を以下の通りに決定した:
50.0グラム又は100.0グラムのエポキシ樹脂成分を適量の硬化剤成分と合わせた。次いで混合物を2ないし3分間ブレンドし、(77o±2o)Fにおいて放置した。ゲル化時間又は可使時間を、ブレンドの開始から非流体塊(nonfluid mass)の初期形成までに経過した時間の量として報告した。
【0105】
(b)一成分系に関し、可使時間を以下の通りに決定する。
試料を6オンス(150mL)のカートリッジ(Semco No.250-C6又は同等物(equivalent)に入れた。カートリッジはノズルを有していなかった。75psigないし85psigの空気圧を用いて2ないし3インチの試料を清浄な閉じ込められた空気中に押出した。押出された材料を、次いで全速力で(at full rate)運転されるシーラーガンを用いて約10秒間、風袋が量られた紙のシート(tared sheet of paper)上に置いた。いかに速くチューブが空になるかに依存して時間を調整することができるが、それは秒単位まで測定された。押出された化合物を次いで秤量し、以下の通りに押出し性を計算した:
押出し性(g/分)=[押出された重量(g)×60(秒/分)]/流動時間(flow time)(秒)
【0106】
煙濃度及び垂直燃焼(vertical burn)試験-FAA Title 14
CFR/JAR/CS Part 25,Appendix F
記載事項全体が引用することにより本明細書の内容となるFAA Title 14 CFR/JAR/CS Part 25,Appendix Fを用いて煙濃度及び垂直燃焼を測定した。試料をチャンバー(chamber)中に垂直に入れ、輻射熱(非炎上モード)又は炎(炎上モード)に暴露し、煙が堆積した時の光の透過の減少を分析することにより、煙濃度を光学濃度に関して測定した。
【0107】
試料を垂直に並べ、小さいブンゼンバーナーの炎にその下部末端において暴露した。炎を12秒間又は60秒間適用し、次いで試料から引き離した。試料が燃え続けたら、この炎上時間を、起こる場合がある炎上滴(flaming drips)と一緒に記録した。試験が終わった後、燃焼長(burn length)を測定した。
【0108】
実施例1ないし4
それぞれの場合に表1及び2に挙げられる材料を、2.5インチのコウルズブレード(Cowles blade)を有する高せん断ミキサーが供えられた半ガロン容器中で合わせ、続いて遊星型ミキサーを用いて混合することにより、実施例1ないし4のシンタクチック構造接着剤を調製した。表1において、量はシンタクチック構造接着剤の合計重量に基づく重量パーセントで与えられるが、表2において量はパートA又はパートBのいずれかの合計重量に基づく重量パーセントで与えられる。
【0109】
高せん断ミキサーを用い、最高で2000rpmの速度で低密度粒子状充填剤以外のすべての成分を約2時間混合した。次いで混合物を遊星型ミキサーに移し、低密度粒子状充填剤と約2時間混合し、続いて真空下で約10-15分間混合した。
【0110】
実施例1のシンタクチック構造接着剤を177℃で1時間硬化させてから、硬化試料を関連する試験に供した。実施例2、3及び4のシンタクチック構造接着剤を室温で3-5日間硬化させてから、硬化試料を関連する試験に供した。
【表1】
【表2】
【0111】
加工特性、機械的強度及び物理的性質を下記の表3にまとめる。炎、煙及び毒性の性能も表3に含まれる。
【0112】
比較実施例1-3
比較の目的で、自動車用途で用いられる3つの最高水準の構造接着剤の実施例も与える。これらの接着剤は市場から直接購入し、製造者が指示する通りに適用した。Betamate(商標) 1776LWR接着剤(比較実施例1)はエポキシに基づく一成分組成物であり、Betamate(商標) 73326/73327(比較実施例2)及びBetamate(商標) 73312/73312(比較実施例3)接着剤はエポキシに
基づく二成分組成物である。製造者により報告される典型的な加工特性、機械的強度及び物理的性質を表3にまとめる。
【表3】
【0113】
表3から、本発明の実施例1-4が最高水準の接着剤に関するものに類似の硬化条件及び取り扱い時間のような加工特性を示したことが明らかである。本発明の実施例1-3は有意により低い密度において向上した重ねせん断強度を示した。密度を基準化(normalized)すると、本発明の実施例1-4は比較実施例1-3より向上した重ねせん断強度を示す。密度における低下は典型的に対応する機械的性質における低下を生むので、これは予測されなかった。さらに、本発明の実施例は向上した耐燃性も示し、本発明の実施例2-4は米国連邦炎-煙-毒性基準(U.S.Federal flame-smoke-toxicity requirements)を満たす。従って本開示のシンタクチック構造接着剤は、機械的性質における損失なく自動車アセンブリにおける重量を管理し、かくして燃料効率を向上させ、それがさらに電気自動車の走行距離範囲における向上に導く場合がある有効な方法を提供する。
【0114】
上記に本発明の種々の態様の作製及び使用を詳細に記載してきたが、本発明は多くの応用可能な本発明の概念を与え、それは多様な特別な状況において具体化され得ることが認識されるべきである。本明細書で議論される特別な態様は単に本発明の作製及び使用のための特別な方法の例であり、本発明の範囲を区切らない。
【国際調査報告】