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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】分布型ハイブリッド減衰システム
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/16 20060101AFI20220407BHJP
   F01D 25/06 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
F01D5/16
F01D25/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531310
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 US2018065051
(87)【国際公開番号】W WO2020122885
(87)【国際公開日】2020-06-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】チャクラバルティ、スルヤーギア
(72)【発明者】
【氏名】エルタス、バグラ、ハン
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202BB03
(57)【要約】
減衰システム24において使用するための単位セル26が、衝突構造34と、衝突構造34が封入された空洞32であって、第1の半球32Aおよび第2の半球32Bを備え、基材28内に配置され、基材28は空洞32の外側ケーシングを形成している空洞32と、衝突構造34と外側ケーシング28との間の第1および第2の半球32A、32Bの各々に配置された少なくとも1つの流体36とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減衰システム(24)において使用するための単位セル(26)であって、
衝突構造(34)と、
前記衝突構造(34)が封入された空洞(32)であって、第1の半球および第2の半球(32A、32B)を備え、基材(28)内に配置され、前記基材(28)は該空洞(32)の外側ケーシング(28)を形成している空洞(32)と、
前記衝突構造(34)と前記外側ケーシング(28)との間の前記第1および第2の半球(32A、32B)の各々に配置された少なくとも1つの流体(36)と
を備える単位セル(26)。
【請求項2】
前記衝突構造(34)の外面から前記外側ケーシング(28)まで延びており、かつ前記第1および第2の半球(32A、32B)を流体に関して分離する少なくとも1つのダイアフラム(30)
をさらに備える、請求項1に記載の単位セル(26)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流体(36)は、液体ガリウム、液体ケイ素、水銀、空気、蒸気、および空気-蒸気混合物のうちの少なくとも1つを少なくとも部分的に含む、請求項1に記載の単位セル(26)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのダイアフラム(30)は、少なくとも1つのニッケル系超合金を少なくとも部分的に含み、前記衝突構造(34)は、実質的に球状である、請求項2に記載の単位セル(26)。
【請求項5】
前記衝突構造(34)内に配置された少なくとも1つの流体通路(38)をさらに備え、前記少なくとも1つの流体通路(38)は、前記第1および第2の半球(32A、32B)を流体連通させる、請求項1に記載の単位セル(26)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの流体通路(38)を通る前記少なくとも1つの流体(36)の移動が、前記基材(28)内の少なくとも1つの振動モードの粘性減衰を生じさせる、請求項5に記載の単位セル(26)。
【請求項7】
前記外側ケーシング(28)に対する前記衝突構造(34)の衝突が、前記基材(28)内の少なくとも1つの振動モードの衝突減衰を生じさせる、請求項1に記載の単位セル(26)。
【請求項8】
前記第1および第2の半球(32A、32B)の少なくとも一方の内部に配置された少なくとも1つのストッパ(40、42)をさらに備え、
前記少なくとも1つのストッパ(40、42)は、前記外側ケーシング(28)に結合しており、
前記少なくとも1つのストッパ(40、42)は、前記空洞(32)内の前記衝突構造(34)の移動の範囲を制限する、請求項7に記載の単位セル(26)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの流体通路(38)は、複数の通路をさらに含み、前記複数の通路のうちの少なくとも1つの通路は、前記複数の通路のうちの少なくとも1つの他の通路と比べ、前記衝突構造(34)の中心軸線(44)から異なる距離に配置されている、請求項5に記載の単位セル(26)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの流体通路(38)は、複数の通路をさらに含み、前記複数の通路のうちの少なくとも1つの通路は、内部の流れの領域が、前記複数の通路のうちの少なくとも1つの他の通路とは異なる、請求項5に記載の単位セル(26)。
【請求項11】
前記空洞(32)内の前記少なくとも1つの流体(36)の移動が、前記基材(28)内の少なくとも1つの振動モードの粘性減衰を生じさせる、請求項1に記載の単位セル(26)。
【請求項12】
前記外側ケーシング(28)に対する前記衝突構造(34)の衝突が、前記基材(28)内の少なくとも1つの振動モードの衝突減衰を生じさせ、
前記空洞(32)は、実質的に球状である、請求項11に記載の単位セル(26)。
【請求項13】
前記粘性減衰は、前記基材(28)の第1の振動モードに一致する少なくとも1つの振動モードを減衰させ、
前記衝突減衰は、前記基材(28)の第2の振動モードに一致する少なくとも1つの振動モードを減衰させる、請求項12に記載の単位セル(26)。
【請求項14】
前記衝突構造(34)は、実質的に球状であり、当該単位セル(26)は、
前記実質的に球状の衝突構造(34)の外面から前記外側ケーシング(28)まで延びており、かつ前記第1および第2の半球(32A、32B)を流体に関して分離する少なくとも1つのダイアフラム(30)と、
前記実質的に球状の衝突構造(34)内に配置され、かつ前記第1および第2の半球(32A、32B)を流体連通させる少なくとも1つの流体通路(38)と
をさらに備え、
前記少なくとも1つの流体(36)は、液体ガリウム、液体ケイ素、水銀、空気、蒸気、および空気-蒸気混合物のうちの少なくとも1つを少なくとも部分的に含み、
前記少なくとも1つのダイアフラム(30)は、インコネル625およびインコネル738の少なくとも一方を含む、請求項13に記載の単位セル(26)。
【請求項15】
複数の単位セル(26)
を備える振動減衰システム(24)であって、前記複数の単位セル(26)の各単位セル(26)は、
実質的に球状の衝突構造(34)と、
前記実質的に球状の衝突構造(34)が封入された空洞(32)であって、第1の半球および第2の半球(32A、32B)を備え、基材(28)内に配置され、前記基材(28)は該空洞(32)の外側ケーシング(28)を形成している空洞(32)と、
前記実質的に球状の衝突構造(34)と前記外側ケーシング(28)との間の前記第1および第2の半球(32A、32B)の各々に配置された少なくとも1つの流体(36)と
を備え、
当該振動減衰システム(24)は、前記基材(28)における少なくとも1つの振動モードを減衰させる、振動減衰システム(24)。
【請求項16】
前記複数の単位セル(26)の各単位セル(26)は、
前記実質的に球状の衝突構造(34)の外面から前記外側ケーシング(28)まで延びており、かつ前記第1および第2の半球(32A、32B)を流体に関して分離する少なくとも1つのダイアフラム(30)をさらに備え、
当該振動減衰システム(24)は、格子構造をさらに備え、前記格子構造は、少なくとも1つの構造部材を備え、前記少なくとも1つの構造部材は、第1の単位セル(26)の少なくとも1つのダイアフラム(30)を第2の単位セル(26)の少なくとも1つのダイアフラム(30)に結合させる、請求項15に記載の振動減衰システム(24)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの構造部材は、少なくとも1つのダイアフラム(30)に対して実質的に直角に向けられている、請求項16に記載の振動減衰システム(24)。
【請求項18】
内部振動減衰システム(24)が内部に配置されたタービンブレード(10)であって、前記内部振動減衰システム(24)は、
複数の単位セル(26)
を備え、
前記複数の単位セル(26)の各単位セル(26)は、
衝突構造(34)と、
前記衝突構造(34)が封入された空洞(32)であって、第1の半球(32A)および第2の半球(32B)を備え、当該タービンブレード(10)の基材(28)内に配置され、前記基材(28)は該空洞(32)の外側ケーシング(28)を形成している空洞(32)と、
前記衝突構造(34)と前記外側ケーシング(28)との間の前記第1および第2の半球(32A、32B)の各々に配置された少なくとも1つの流体(36)と
を備え、
前記振動減衰システム(24)は、当該タービンブレード(10)における少なくとも1つの振動モードを減衰させる、タービンブレード(10)。
【請求項19】
前記内部振動減衰システム(24)は、
当該タービンブレード(10)の第1の領域(50)内に配置された第1の部分と、
当該タービンブレード(10)の第2の領域(52)内に配置された第2の部分と
をさらに含み、
前記第1および第2の部分は、当該タービンブレード(10)の異なる振動モードを減衰させる、請求項18に記載のタービンブレード(10)。
【請求項20】
前記内部振動減衰システム(24)は、
当該タービンブレード(10)の第3の領域(54)内に配置された第3の部分をさらに含み、
前記第1の部分は、当該タービンブレード(10)の先端部分(14)に隣接して配置され、
前記衝突構造(34)は、実質的に球状であり、
前記第1の部分は、先端振動モードを減衰させ、
前記第2の部分は、当該タービンブレード(10)のスパン途中領域に配置され、
前記第2の部分は、当該タービンブレード(10)の第2の振動モードを減衰させ、
前記第3の部分は、当該タービンブレード(10)の根元部分(12)に隣接して配置され、
前記第3の部分は、当該タービンブレード(10)の第3の振動モードを減衰させ、
前記第3の振動モードは、前記第2の振動モードおよび前記先端振動モードの各々よりも高い周波数である、請求項18に記載のタービンブレード(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、広くには、振動の減衰のためのシステムおよび機構に関し、より具体的には、デュアルモード振動減衰システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型の産業用ガスタービン(IGT)のブレードは、ブレードの振動を引き起こす変動する空気力学的荷重に曝される。これらの振動を適切に減衰させないと、高サイクル疲労および早期のブレードの不具合につながる可能性がある。最終段ブレード(LSB)が、最も背が高く、したがってタービンの最も振動が問題となる構成要素である。タービンブレードの従来からの振動減衰方法として、プラットフォームダンパ、減衰ワイヤ、およびシュラウドが挙げられる。
【0003】
プラットフォームダンパは、ブレードプラットフォームの下方に据えられ、ブレードプラットフォームに運動が存在する中型および長尺のシャンクのブレードに効果的である。IGTの後段のブレードは、ブレードの重量を減らし、したがってロータへの引張加重を小さくするためにシャンクが短く、したがってプラットフォームダンパが役立たない。
【0004】
IGT LSBの減衰は、多くの場合、主にシュラウドによってもたらされる。シュラウドは、ブレード先端に位置することができ(先端シュラウド)、あるいはハブと先端との間のスパンの途中に位置することができる(スパン途中シュラウド)。スパン途中シュラウドおよび先端シュラウドは、隣接するブレードに接触し、それらが互いに擦れ合うときに減衰をもたらす。さらに、シュラウドは、ブレードの固有周波数を調節または調整するための効率的なやり方を提供する。
【0005】
シュラウドは、翼形部に減衰および剛性をもたらす一方で、ブレードの重量を増やし、結果として、ロータへの引張荷重が大きくなることで、ロータの重量およびコストが増加する。したがって、後段のブレードのための軽量な解決策が魅力的であり、機械の全体的な出力の増加を推進することができる。また、シュラウドは、空気力学的性能を犠牲にする可能性がある。先端シュラウドは、応力集中を低減するために大きな先端フィレットを必要とし、これが先端部損失を生じさせる。スパン途中シュラウドは、流路に追加の妨害物を作り出し、空気力学的効率を低下させる。最後に、先端シュラウドは、ブレードの振動モード形状に大きなねじれを誘発し、空力弾性フラッタ不安定性を高めることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-135803号公報
【発明の概要】
【0007】
現時点の実施形態の態様を、以下に要約する。これらの実施形態は、現時点の特許請求される実施形態の技術的範囲を限定しようとするものではなく、むしろ、これらの実施形態は、実施形態について考えられる形態の概要を提供しようとするものにすぎない。さらに、実施形態は、以下で説明される実施形態と同様であっても、異なってもよい特許請求の範囲の技術的範囲と同等のさまざまな形態を包含することができる。
【0008】
一態様において、減衰システム24において使用するための単位セル26が、衝突構造34と、衝突構造34が封入された空洞32であって、第1の半球32Aおよび第2の半球32Bを備え、基材28内に配置され、基材28は空洞32の外側ケーシングを形成している空洞32と、衝突構造34と外側ケーシング28との間の第1および第2の半球32A、32Bの各々に配置された少なくとも1つの流体36とを含む。
【0009】
別の態様において、振動減衰システム24が、複数の単位セル26を含み、複数の単位セル26の各単位セル26は、実質的に球状の衝突構造34と、実質的に球状の衝突構造34が封入された空洞32であって、第1の半球32Aおよび第2の半球32Bを備え、基材28内に配置され、基材28は空洞の外側ケーシングを形成している空洞32と、実質的に球状の衝突構造34と外側ケーシングとの間の第1および第2の半球32A、32Bの各々に配置された少なくとも1つの流体36とを含む。この振動減衰システム24は、基材28内の少なくとも1つの振動モードを減衰させる。
【0010】
別の態様において、タービンブレードが、タービンブレード10内に配置された内部振動減衰システム24を含み、内部振動減衰システム24は、複数の単位セル26を含み、各単位セル26は、衝突構造34と、衝突構造34が封入された空洞32であって、第1の半球32Aおよび第2の半球32Bを備え、タービンブレード10の基材28内に配置され、基材28は空洞の外側ケーシングを形成している空洞32と、衝突構造34と外側ケーシングとの間の第1および第2の半球32A、32Bの各々に配置された少なくとも1つの流体36とを含む。振動減衰システム24は、タービンブレード10内の少なくとも1つの振動モードを減衰させる。
【0011】
本開示のこれらの特徴、態様、および利点、ならびに他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面を参照しつつ検討することで、よりよく理解されるであろう。添付の図面においては、図面の全体を通して、類似する符号は類似する部分を表している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】スパン途中シュラウドおよび先端シュラウドを有するタービンブレードの側面概略図である。
図2】内部減衰システムを有するタービンブレードの側面概略図である。
図3】内部減衰システムの単位セルの側面概略図である。
図4】内部減衰システムの単位セルの側面概略図である。
図5】内部減衰システムの単位セルの側面概略図である。
図6】内部減衰システムの単位セルの側面概略図である。
図7】内部減衰システムの単位セルの側面概略図である。
図8】内部減衰システムの単位セルの側面概略図である。
図9】内部減衰システムの単位セルの上面概略図である。
図10】内部減衰システムの単位セルの上面概略図である。
図11】内部減衰システムの単位セルの上面概略図である。
図12】内部減衰システムの側面概略図である。
図13】内部減衰システムの側面概略図である。
図14】本明細書に開示される実施形態の態様による少なくとも1つの内部減衰システムを有するタービンブレードの側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別段の指示がない限り、本明細書において提示される図面は、本開示の実施形態の特徴を説明することを意図している。これらの特徴は、本開示の1つ以上の実施形態を含む多種多様なシステムにおいて適用可能であると考えられる。したがって、図面は、本明細書に開示の実施形態の実践に必要となる当業者にとって既知の従来からの特徴をすべて含むことを意図していない。
【0014】
以下の明細書および特許請求の範囲において、いくつかの用語が参照されるが、これらの用語は、以下の意味を有するように定義されるものとする。
【0015】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「前記(the)」は、文脈からそのようでないことが明らかでない限り、言及対象の数量が複数である場合を含む。
【0016】
「随意による(optional)」または「随意により(optionally)」は、この後に続いて述べられる事象または状況が生じても、生じなくてもよいことを意味し、本明細書は、その事象が生じる事例および生じない事例を含む。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲を通してここで使用されるとき、近似を表す文言は、関連する基本的機能に変化をもたらすことなく許容範囲で変動することができる任意の量的表現を修飾するために適用することができる。したがって、「約」および「実質的に」などの用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例において、近似を表す文言は、値を測定するための計測器の精度に対応することができる。ここで、本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、範囲の限定は、文脈または文言がそのようでないことを示していない限り、そのような範囲がそこに含まれるすべての部分的範囲と同一視され、そのような部分的範囲を含むように、組み合わせおよび/または入れ替えが可能である。
【0018】
本明細書において使用されるとき、「軸方向」という用語は、ガスタービンエンジンの中心軸またはシャフトに整列した方向を指す。
【0019】
本明細書において使用されるとき、「円周方向」という用語は、ガスタービンエンジンの外周(または、例えばガスタービンエンジンのロータの通過領域によって定められる円)を巡る方向(さらには、そのような外周または円に対する接線方向)を指す。本明細書において使用されるとき、用語「円周方向」および「接線方向」は、同義語であってよい。
【0020】
本明細書において使用されるとき、「半径方向」という用語は、ガスタービンエンジンの中心軸から離れて外向きに移動する方向を指す。「半径方向内向き」の方向は、中心軸に向かって整列し、半径が減少する方に移動する。「半径方向外向き」の方向は、中心軸から遠ざかるように整列し、半径が増加する方に移動する。
【0021】
本明細書に記載の実施形態は、他の適用可能な構成要素の中でも、とりわけ産業用ガスタービンの大型の後段ブレードの内部の分布型振動減衰構造を含む。これらのダンパ構造は、小さな振動レベルに関して粘性減衰の原理にて働き、より大きな振動に関して衝突減衰の原理にて働く。適切に設計されると、これらのダンパは、タービンブレードシュラウドの必要性を排除することができ、得られる後段のANエンタイトルメントならびに大型産業用ガスタービンの出力を大幅に増加させる(ANは、流路の環状の面積にロータ速度(RPM)の2乗を乗じたものである)。
【0022】
図1が、根元部分12から先端部分14まで延び、かつ前縁16から後縁18まで延びる例示的なタービンブレード10を示している。さらに、図1に示されるタービンブレードは、スパン途中シュラウド20および先端シュラウド22を含む。
【0023】
図2が、複数の単位セル26を含む内部減衰システム24を含んでいる本明細書に開示の実施形態によるタービンブレード10を示している。図2の実施形態は、図1のスパン途中シュラウド20および/または先端シュラウド22ではなく、内部減衰システム24を利用する。この減衰システム24の単位セル26を、隣接する単位セル26がタービンブレード10の全体にわたって半径方向、円周方向、および/または軸方向に延びるように、マトリックス状および/またはアレイ状に接続することができる。減衰システム24を構成する単位セル26のマトリックスおよび/またはアレイは、タービンブレード10の全体にわたって均一であってよく、あるいはマトリックスおよび/または単位セル26をタービンブレード10の異なる部分における異なる振動特性に対処すべく必要に応じて調整できるように、不均一であってよい。
【0024】
図3が、流体36で満たされた空洞32を有する外側ケーシング28と、ボール状、実質的に球状、および/または例えば楕円体などの他の適切な形状であってよい衝突構造34に結合したダイアフラム30とを含むことができる個々の単位セル26を示している。ダイアフラム30および衝突構造34は、どちらも、所望の質量および/または材料特性を有する金属および/または他の適切な材料であってよい。空洞32は、実質的に球状であってよい。ダイアフラム30および衝突構造34を、衝突構造-ダイアフラムのアセンブリの固有振動数が、減衰させるべき構成要素(すなわち、例えばタービンブレード10)の固有振動数と一致するように、設計することができる。小さな振動の下では、衝突構造34が流体36内で流体を跳ね飛ばしながら動き、衝突構造34に粘性抗力が生じる。より大きな振動の下では、衝突構造34が外側ケーシング28(すなわち、ダイアフラム30との境界において)に衝突し、衝突減衰を生じさせることができる。これらの単位セルダンパ26のアレイを、構造または構成要素(すなわち、例えばタービンブレード10)に分布型減衰をもたらすために使用することができる。複数の振動モードが減衰を必要とし得る構造の場合、単位セル26の異なるグループを含む減衰システム24を、各々のモードを別個に標的として配置することができる。
【0025】
さらに、単位セル26は、外側ケーシング28の内部に配置された嚢33を含むことができる。嚢33を、流体36を保持するために使用することができる。嚢33を、充分に耐熱性であり、所望の材料特性を提供する金属材料および/または他の材料で構成することができる。嚢33を、外側ケーシング28の内面に溶接、ろう付け、エポキシ、接着、および/または他の方法で取り付けることができる。さらに、嚢33は、ダイアフラム30に(溶接、ろう付け、エポキシ、および/または他の取り付け手段によって)取り付けられてもよい。さらに、嚢33は、嚢33を通ってダイアフラム30を配置することができるように、1つ以上の孔および/またはスロットを含むことができる。嚢33に配置された孔および/またはスロットを含む実施形態においては、流体36が嚢33から出ることがないように、シール材および/またはシール機構を嚢33とダイアフラム30との間の任意の界面に配置することができる。さらに、シール機構を、嚢33に流体36を充てんするために使用することもできる。例えば、嚢33とダイアフラム30との間の界面に、ねじ山付きのプラグを配置することができる。ダイアフラム30が嚢33内の孔またはスロットの間に配置された後に、嚢33に流体36を充てんし、その後にプラグをダイアフラム30との界面において嚢33へと固定することができる。他の実施形態においては、単位セル26が配置される外側ケーシング28内の空隙を、流体36が空洞32内に留まることを保証するための充分な封止を提供するような寸法とすることができるため、嚢33は必要でないかもしれない。
【0026】
図4が、ダイアフラム30、空洞32、衝突構造34、および外側ケーシング28によって囲まれた流体36を含む個々の単位セル26を示している。図4の実施形態は、ダイアフラム30および他の特徴が図3の対応する特徴に対して直交するように配向されている。上述および後述のように、単位セル26およびそのアレイの各々を、特定の構成要素(すなわち、タービンブレード10)および/または構成要素の特定の場所の振動要件に対処するような配置および/または配向とすることができる。
【0027】
図5が、ダイアフラム30、空洞32、衝突構造34、および外側ケーシング28によって囲まれた流体36を含む個々の単位セル26を示している。図5の実施形態は、空洞32を集合的に形成する第1および第2の半球32A、32Bを含む。換言すると、単位セル26は、2つの別々の部分、すなわち第1の半球32Aおよび第2の半球32Bに分割された空洞32を含む。第1および第2の半球32A、32Bの各々は、流体36で満たされた別個のチャンバである。ダイアフラム30および衝突構造34は、集合的に、第1および第2の半球32A、32Bの間の境界を形成する。したがって、ダイアフラム30は、衝突構造34の表面から半径方向外向きにケーシング28まで延びる衝突構造34の周りの周状リングを形成する。
【0028】
さらに図5を参照すると、第1および第2の半球32A、32Bは、別個ではあるが、衝突構造34を通って配置された複数の流体通路38を介して流体連通している。第1の半球32Aからの流体が、複数の流体通路38のうちの少なくとも1つに進入し、第2の半球32Bへと流れ込むことができる。程度の小さい振動を被るとき、衝突構造34が空洞32の一方側から他方側に移動し、流体36を、複数の流体通路38のうちの1つ以上を通って、第1の半球32Aから第2の半球32Bへと押し流し、あるいは第2の半球32Bから第1の半球32Aへと押し流す。この流体の運動は、流体36に粘性抗力を生じさせ、粘性によるエネルギの散逸および減衰を生じさせる。流体36は、ガリウムおよび/または他の適切な流体を少なくとも部分的に含むことができる。複数の流体通路38の各々は、実質的に管状および/または円筒形の形状であってよく、構成要素が被る可能性がある予想される振動に少なくとも部分的に基づいて、流体通路を通る流体の所望の粘度を達成するように特に選択された外径を有することができる。複数の流体通路38の各々は、約2~約200ミルの間の内径(あるいは、流体通路の断面が円形でない実施形態の場合は、最小寸法)を含むことができる。他の実施形態において、複数の流体通路38の各々は、約3~約100ミルの間の内径または最小寸法を含むことができる。他の実施形態において、複数の流体通路38の各々は、約4~約50ミルの間の内径または最小寸法を含むことができる。他の実施形態において、複数の流体通路38の各々は、約5~約30ミルの間の内径または最小寸法を含むことができる。他の実施形態において、複数の流体通路38の各々は、約6~約20ミルの間の内径または最小寸法を含むことができる。他の実施形態において、複数の流体通路38の各々は、約8~約16ミルの間の内径または最小寸法を含むことができる。他の実施形態において、複数の流体通路38の各々は、約10~約14ミルの間の内径または最小寸法を含むことができる。
【0029】
図6が、ダイアフラム30、空洞32、衝突構造34、および外側ケーシング28によって囲まれた流体36を含む個々の単位セル26を示している。図6の実施形態は、振動によって衝突構造34(衝突構造34内に配置された複数の流体通路38を含む)が空洞内で第1の半球32Aに向かって並進運動する大きな振動における動作状態を示している。衝突構造34は、空洞32および/または外側ケーシング28の縁部に接触する。図6の実施形態において、ダイアフラム30は、大きい振動に起因し、したがって第1の半球32Aに向かう衝突構造34の移動に起因して、撓むことができる。衝突構造34が第1の半球32Aに向かって移動し、さらには/あるいは第1の半球32A内に移動するとき、流体36は複数の流体通路38のうちの1つ以上を通って移動し、粘性減衰を引き起こす。衝突構造34が外側ケーシング28に接触すると、衝突減衰が生じ、内部減衰システム24による構成要素または構造の振動の吸収および/または軽減をさらに生じさせる。
【0030】
図7が、図6の実施形態と同様の個々の単位セル26を示している。図7の実施形態において、大きな振動が、第2の半球32Bに向かい、さらには/あるいは第2の半球32Bへと入る衝突構造34の移動を生じさせ、衝突構造34が外側ケーシング28に接触する。図7の実施形態において、ダイアフラムは、大きな振動および衝突構造34の移動に起因して、第2の半球32Bに向かって撓むことができる。
【0031】
図8が、ダイアフラム30、空洞32、衝突構造34、および外側ケーシング28によって囲まれた流体36を含む個々の単位セル26を示している。図8の実施形態は、第1の半球32A内に配置された第1のストッパ40と、第2の半球32B内に配置された第2のストッパ42とを含む。第1および第2のストッパ40、42の各々は、衝突構造34の可動範囲を制限するように機能することができる。本明細書に開示される実施形態によれば、衝突構造34、ダイアフラム30、複数の流体通路38、および/または単位セル26の他の特徴の損傷を防止し、さらには/あるいは損傷の可能性を減らすために、衝突構造34の移動の範囲を制限することが望ましい場合がある。少なくとも1つのストッパ40、42を含む単位セル26の実施形態において、衝突構造34は、外側ケーシング28よりもむしろ第1および/または第2のストッパ40、42に接触することができる。先の実施形態と同様に、図8の減衰システム24は、構造または構成要素(すなわち、タービンブレード10)における振動の吸収および/または減衰のための手段として、粘性減衰および衝突減衰の両方を含む。より程度の大きい振動を被る場合、第1および/または第2のストッパ40、42は、より良好なクリアランスの画定および耐久性の向上を可能にすることができる。衝突構造34と第1および/または第2のストッパ40、42との間の接触は、流体の運動からの粘性減衰を補う第2の減衰モード(衝突振動減衰)を可能にする。衝突構造34およびストッパ40、42の別の使用は、ダイアフラム30が大きな振動応力によって損傷することがないように、衝突構造34の変位を許容限界未満に保つことである。
【0032】
図9が、ダイアフラム30、空洞32、および衝突構造34を含む個々の単位セル26を示している。図5図8の実施形態を、単位セル26の側面図として説明することができる一方で、図9の実施形態を、上面図として説明することができる。図9は、衝突構造34内に配置された複数の流体通路38を示している。図9の実施形態において、複数の流体通路38の各々の流体通路は、衝突構造34の中心軸線44からほぼ等しい距離に配置されている。図9の実施形態は、衝突構造34内に配置された6つの流体通路38を含む。本明細書に開示される実施形態の他の構成において、衝突構造34は、衝突構造34内に配置された単一の流体通路38、ならびに例えば2つ、3つ、4つ、5つ、7つ、または8つ以上の流体通路38など、他の数の流体通路38を含むことができる。
【0033】
図10が、ダイアフラム30、空洞32、および衝突構造34を含む個々の単位セル26の上面図を示している。図10の実施形態において、単位セル26は、衝突構造の中心軸線44から第1の半径(または、距離)に配置された第1の複数の流体通路38Aと、衝突構造の中心軸線44から第2の半径(または、距離)に配置された第2の複数の流体通路38Bとを含む。第1の半径(または、距離)は、第2の半径(または、距離)よりも大きくてよい。
【0034】
図11が、ダイアフラム30、空洞32、および衝突構造34を含む個々の単位セル26の上面図を示している。図11の実施形態において、単位セル26は、第1の通路直径を含む第3の複数の流体通路38Cと、第2の通路直径を含む第4の複数の流体通路38Dとを含む。第1の通路直径は、第2の通路直径よりも小さくてよい。さらに、第3および第4の複数の流体通路38C、38Dは、衝突構造34の中心軸線44から異なる半径(または、距離)に配置されてもよい。
【0035】
図9図11に示される実施形態の各々は、図3図8の側面図と同様に、衝突構造34の周りを外側ケーシング28(図示せず)まで延びるダイアフラム30(図示せず)を含む。本明細書に開示される実施形態の各々は、複数の流体通路38の各々が、屈曲部、湾曲部、傾斜部分(および/または、全体が斜めまたは非平行な通路)、ならびに流れの領域および/または断面が不均一な通路を含むことができる構成を含むことができる。さらに、複数の流体通路38の各々は、例えばより広い入口(すなわち、ベルマウス)および/または収束/発散部分を含むことができるさまざまな流体通路入口および出口構成を含むことができる。衝突構造34および衝突構造34を通る複数の流体通路38を、付加製造およびインベストメント鋳造を含む任意の適切な製造プロセスによって製造することができる。いくつかの実施形態において、衝突構造34および衝突構造34を通る複数の流体通路38は、付加製造によって直接3D印刷されてよい。他の実施形態においては、衝突構造34を鋳造することができ、衝突構造34を通る複数の流体通路38も、1つ以上のインベストメント鋳造プロセスにおいて鋳造されてよい。他の実施形態においては、衝突構造34を、インベストメント鋳造によって鋳造および/または付加製造によって3D印刷できる一方で、複数の流体通路38を、衝突構造34の形成後に衝突構造34に穿孔することができる。他の実施形態において、減衰システム24は、付加製造によって個別に形成され、その後にタービンブレード10および/またはタービンブレード10内に取り付けられてよい。例えば、減衰システム24を別個に形成し、その後に先端部分14においてタービンブレード10に挿入することができる。他の実施形態においては、減衰システム24を、付加製造によってタービンブレード10上に直接印刷することができる。
【0036】
図12が、各々の単位セル26のダイアフラムを第1の方向46に沿って隣接する単位セル26のダイアフラムに結合させるように整列した複数の単位セル26を含む減衰システム24を示している。図13が、各々の単位セル26のダイアフラムを第2の方向48に沿って隣接する単位セル26のダイアフラムに結合させるように整列した複数の単位セル26を含む減衰システム24を示している。図12および図13の減衰システム24の各々を、別個の構成要素において使用することができ、あるいは単一の構成要素もしくは構造の異なる部分において使用することができる。
【0037】
図14が、タービンブレードの異なる領域に配置された1つ以上の減衰システム24を含むタービンブレード10を示している。タービンブレードは、先端部分14に隣接または近接する第1の領域50に配置された第1の減衰システム58を含むことができる。第1の減衰システム58を、先端曲げモードから生じる振動を減衰させるように構成することができる。タービンブレード10は、根元部分12と先端部分14との間のブレードのスパン途中部分の第2の領域52内に配置された第2の減衰システム60を含むことができる。第2の減衰システム60を、先端曲げモードとは異なる第2の曲げモードから生じる振動を減衰させるように構成することができる。さらに、タービンブレード10は、根元部分12に隣接または近接する第3の領域54に配置された第3の減衰システム62を含むことができる。第3の減衰システム62を、第3の曲げモードから生じる振動を減衰させるように構成することができる。第3の曲げモードは、第1および第2の曲げモードの各々よりも高次の曲げモード(すなわち、より高い周波数の振動に対応するモード)であってよい。さらに、減衰システム24は、支持格子64を含むことができ、支持格子64の個々の構造部材が、減衰システム24を一体に保持する助けとなるように、ダイアフラム30に構造的に結合する。一実施形態において、減衰システム24は、第1の方向に整列した支持格子64の構造部材と、第1の方向に実質的に直交する第2の方向に整列したダイアフラム30とを含むことができる。
【0038】
本明細書に開示の実施形態は、さまざまなプロセスによって形成可能である。嚢33を含む実施形態において、ダイアフラム30、衝突構造34、および嚢33を含む減衰システム24を別個に形成し、その後に(例えば、溶接、エポキシ、ろう付け、接着剤、および/または他の適切なプロセスによって)タービンブレード10の第1の半分の内面に取り付けることができる。次いで、タービンブレードの第2の半分をタービンブレード10の第1の半分に固定することにより、減衰システム24をタービンブレード内に封入することができる。次いで、空洞32および/または嚢33を、ダイアフラム30内に配置され、空洞32に流体連通する充てん通路を介して、流体36で満たすことができる。充てん通路を、一端において流体入口に流体連通させ、他端において流体出口に流体連通させることができる。流体出口を、流体充てんプロセスの際に充てん通路から空気または他の気体を除去するために使用することができる。他の実施形態においては、減衰システムをタービンブレード10の内部に配置する前に、空洞32および/または嚢33の各々を(上述した)1つ以上のプラグを介して充てんしてもよい。空洞を、1つ以上のコアの形態でブレード内に鋳造してもよい。次いで、事前に組み立てられたダンパセル(流体を含む)を、適切なロック機構によってこれらの空洞に挿入することができる。他の実施形態においては、付加製造を使用して、接続された流体チャンバを有する鋳造ブレードの空洞の内側にこれらのダンパを直接印刷し、次いで印刷後に流体を充てんすることができる。
【0039】
本開示は、主にタービンブレードの用途を対象としているが、本明細書に開示の減衰技術および実施形態は、従来からの外部ダンパが実現不可能である(あるいは、好ましくない)ガスタービンまたは他の機械の他の振動部品に適用することが可能である。
【0040】
単位セル26は、振動構造の第1の固有振動数が、減衰させるべきタービンブレード10の特定の固有振動数を標的とするように設計することができる。このようにして、関心の対象のすべてのモードを標的とするように、異なるサイズのダンパ単位セル26が減衰システム24に含まれてよい。さらに、単位セル26を、すべてのモードについて所望の減衰が得られるように最適に配置することができる。例えば、先端曲げモードを標的とするセルを、タービンブレード10の先端部分14の近くに配置することができ、第2の曲げモードを標的とするセルを、タービンブレード10のスパン途中に配置することができ、より高次のモードを標的とするセルを、根元部分12に隣接して配置でき、さらには/あるいは他の場所に配置することができる。ダイアフラム30の各々は、インコネル738、インコネル625、ならびに/あるいは1000°Fの温度性能および同等の熱膨張係数を有する他の適切なニッケル系超合金で少なくとも部分的に構成することができる。一実施形態において、ダイアフラムの材料は、基材(すなわち、外側ケーシング28および/またはタービンブレード10の材料)の熱膨張係数に実質的に一致するように選択される。ストッパ40、42の各々は、ダイアフラムと同じ材料で構成されてよく、各々が耐衝撃性コーティングおよび/または耐摩耗性コーティングを含むことができる。さらに、衝突面(すなわち、衝突構造34、ストッパ40、42、嚢33の一部分、および/または外側ケーシング28の衝突部分)は、物質的に硬化させた表面を含むことができる。
【0041】
本明細書に開示される実施形態の一態様においては、流体および/または液体ガリウムの代わりに、粉末を使用することができる。液体ガリウムは、耐熱性が望まれる用途(例えば、タービンブレード10および/または他の高温部品を含む用途)において、他の流体と比べて高い温度性能をもたらすことができる。他の可能な流体36として、液体ケイ素、水銀、空気、蒸気、空気-蒸気混合物、および/または他の適切な流体を挙げることができる。他の実施形態においては、粘性減衰の代わりに、1つ以上の摩擦ダンパ機構を使用することができる。衝突構造34のサイズ、1つ以上の流体通路38の数、サイズ、および形状、減衰システム24の向き、構成要素または構造における減衰システム24の配置、ならびにストッパ40、42の使用、寸法、および/または配置を調整することにより、本明細書に開示の実施形態の減衰システム24を使用して、1つ以上のタービンブレード10などの構造または構成要素の複数の位置における複数の振動モードに対処することが可能である。各々の衝突構造34および/または単位セル26の固有振動数を、タービンブレード10の固有振動数と一致するように選択することにより(すなわち、その直径および/または他の寸法を調整することによって)、振動減衰の向上をもたらすことができる。
【0042】
本実施形態の例示的な用途として、蒸気タービンブレード、ガスタービンブレード、ロータリエンジンブレードおよび構成要素、圧縮機ブレードおよびインペラ、燃焼器モジュール、燃焼器ライナ、排気ノズルパネル、航空機制御面、レシプロエンジン構成要素、空冷コンデンサファンブレード、ブリッジ、航空機エンジンファンブレード、航空機の構造および表面、自動車の構造および表面、機関車の構造および表面、機械の構造、構成要素、および表面、ならびに/あるいは振動の減衰が望まれる他の構成要素を挙げることができる。
【0043】
本開示の種々の実施形態の特定の特徴は、一部の図に示され、他の図には示されていないかもしれないが、これは単に便宜上にすぎない。本開示の原理によれば、図面の任意の特徴を、任意の他の図面の任意の特徴と組み合わせて参照および/または特許請求することが可能である。
【0044】
本明細書は、いくつかの例を使用して、本開示の実施形態を最良の態様を含めて開示するとともに、あらゆる装置またはシステムの製作および使用ならびにあらゆる統合された方法の実行を含む本開示の実施を当業者にとって可能にする。本明細書に記載の実施形態の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者であれば想到できる他の例を含むことができる。このような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない均等な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0045】
10 タービンブレード
12 根元部分
14 先端部分
16 前縁
18 後縁
20 スパン途中シュラウド
22 先端シュラウド
24 内部振動減衰システム
26 単位セル、単位セルダンパ
28 基材、外側ケーシング
30 ダイアフラム
32 空洞
32A 第1の半球
32B 第2の半球
33 嚢
34 衝突構造
36 流体
38 複数の流体通路
38A 第1の複数の流体通路
38B 第2の複数の流体通路
38C 第3の複数の流体通路
38D 第4の複数の流体通路
40 第1のストッパ
42 第2のストッパ
44 中心軸線
46 第1の方向
48 第2の方向
50 第1の領域
52 第2の領域
54 第3の領域
58 第1の減衰システム
60 第2の減衰システム
62 第3の減衰システム
64 支持格子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】