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特表2022-522090速度変化を使用したLVAD患者の高血圧の検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】速度変化を使用したLVAD患者の高血圧の検出
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/178 20210101AFI20220407BHJP
   A61M 60/232 20210101ALI20220407BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20220407BHJP
   A61M 60/422 20210101ALI20220407BHJP
   A61M 60/814 20210101ALI20220407BHJP
   A61M 60/82 20210101ALI20220407BHJP
   A61M 60/585 20210101ALI20220407BHJP
   A61B 5/0215 20060101ALI20220407BHJP
   A61M 60/30 20210101ALI20220407BHJP
【FI】
A61M60/178
A61M60/232
A61M60/237
A61M60/422
A61M60/814
A61M60/82
A61M60/585
A61B5/0215 Z
A61M60/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532019
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(85)【翻訳文提出日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 US2020017587
(87)【国際公開番号】W WO2020176242
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】62/811,625
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/775,982
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】クドリック,ダンネ・イー
(72)【発明者】
【氏名】スタッドラー,ロバート・ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4C017
4C077
【Fターム(参考)】
4C017AA01
4C017AB04
4C017AC21
4C077AA04
4C077DD08
4C077DD10
4C077FF04
4C077HH03
4C077HH09
4C077HH15
4C077HH20
4C077HH30
(57)【要約】
埋め込み型血液ポンプを有する患者の高血圧を検出する方法であり、この方法は、埋め込み型血液ポンプを、第1の期間中に第1のポンプ設定速度で動作させることを含む。患者の心周期中の第1の流量の最小値は、第1の期間中に測定される。第1のポンプ設定速度は、第1の期間の後の第2の期間中に少なくとも200rpmだけ第2のポンプ設定速度まで下げられ、第2の期間は第1の期間よりも短い。第2の流量の最小値は、第2の期間中、心周期中に測定される。第2のポンプ設定速度で第2の期間中に第2の流量の最小値が所定の量を超えて減少すると、高血圧の存在を示すアラートが生成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心室補助装置を有する患者の高血圧を検出する方法であって、前記心室補助装置が埋め込み型血液ポンプを含み、前記方法が、
第1の期間中に第1のポンプ設定速度で前記埋め込み型血液ポンプを動作させることと、
前記第1の期間中、第1の流量脈動性および第1の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つを測定することと、
前記第1の期間の後の第2の期間中に前記第1のポンプ設定速度を第2のポンプ設定速度に下げることと、
前記第2の期間中、第2の流量脈動性および第2の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つを測定することと、
前記第1の期間中の前記第1のポンプ設定速度での前記第1の流量脈動性および前記第1の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つと比較して、前記第2のポンプ設定速度での前記第2の期間中に前記第2の流量脈動性および前記第2の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つが増加する場合、前記患者が高血圧を示していることを識別することと、を備える方法。
【請求項2】
前記第1の期間中の前記第1のポンプ設定速度での前記第1の流量脈動性および前記第1の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つと比較して、前記第2のポンプ設定速度での前記第2の期間中に前記第2の流量脈動性および前記第2の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つが増加する場合、高血圧の存在を示すアラートを生成することをさらに備え、
高血圧の存在を示す前記アラートが生成される場合、前記第1の期間中に前記第1のポンプ設定速度での第1の流量脈動性および第1の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つを非吸引波形として識別することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のポンプ設定速度は、前記第1のポンプ設定速度より少なくとも200rpm低い、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の期間は前記第1の期間よりも短い、請求項1~3のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記埋め込み型血液ポンプの連続動作中、前記第1の期間および前記第2の期間は連続している、請求項1~4のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の期間および前記第2の期間は、所定の間隔で周期的である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記埋め込み型血液ポンプは遠心流血液ポンプである、請求項1~5のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記埋め込み型血液ポンプは軸流血液ポンプである、請求項1~5のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
第1の流量脈動性および第2の流量脈動性が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電流脈動性および前記第2の電流脈動性が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
心室補助装置を有する患者の高血圧を検出するためのシステムであって、前記心室補助装置が埋め込み型血液ポンプを含み、前記システムが、
前記埋め込み型血液ポンプと通信するコントローラであって、処理回路を含むプロセッサを有するコントローラを備え、前記処理回路が、
前記埋め込み型血液ポンプを第1の期間中に第1のポンプ設定速度で動作させ、
前記第1の期間中、第1の流量の最小値および第1の電流の最小値からなる群からの少なくとも1つを測定し、
前記第1のポンプ設定速度を前記第1の期間の後の第2の期間中に第2のポンプ設定速度に下げ、
第2の期間中、第2の流量の最小値および第2の電流の最小値からなる群からの少なくとも1つを測定し、
前記第2の流量の最小値および前記第2の電流の最小値からなる群からの少なくとも1つが、前記第2のポンプ設定速度で第2の期間中に所定量を超えて減少する場合、前記群からの少なくとも1つが
前記第2のポンプ設定速度を前記第1のポンプ設定速度に上げ、
高血圧を示す患者を識別するように構成された、システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記第2の流量の最小値および前記第2の電流の最小値からなる群からの前記少なくとも1つが、所定の量を超えて、前記第2のポンプ設定速度で前記第2の期間中に減少した場合に、高血圧の存在を示すアラートを生成するように構成され、
高血圧の存在を示す前記アラートが生成される場合、前記処理回路は、前記第1の期間中に前記第1のポンプ設定速度での第1の流量の最小値および第1の電流の最小値からなる群からの少なくとも1つを非吸引波形として識別するようにさらに構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のポンプ設定速度は、
前記第1のポンプ設定速度よりも少なくとも200rpm低い、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2の期間は、
前記第1の期間よりも短い、請求項11~13のうちいずれか1つに記載のシステム。
【請求項15】
前記埋め込み型血液ポンプの連続動作中、
前記第1の期間および前記第2の期間は連続している、請求項11~14のうちいずれか1つに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、一般に、心室補助装置および患者の高血圧の検出に関わる。
【背景技術】
【0002】
心室補助装置(VAD)を使用している患者は、そのような装置から得られる利益を最大化し、高血圧に関連する有害事象のリスクを減らすために、定期的に血圧を監視する必要がある。埋め込み型血液ポンプでの吸引などのいくつかの有害事象とは異なり、高血圧はポンプの速度を下げることによって解決することはできない。しかしながら、通常のポンプ動作状態下では、ポンプ速度を下げることで解決することができる吸引状態と、解決できない高血圧とを区別することが困難である。
【発明の概要】
【0003】
本開示の技術は、一般に、心室補助装置、特に埋め込み型血液ポンプを有する患者の高血圧を検出する方法に関わる。この方法は、第1の期間中に第1のポンプ設定速度で埋め込み型血液ポンプを動作させることを含む。第1の期間中、第1の流量脈動性および第1の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つが測定される。第1のポンプ設定速度は、第1の期間後の第2の期間中に第2のポンプ設定速度に下げられる。第2の期間中、第2の流量脈動性および第2の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つが測定される。第1の期間中の第1のポンプ設定速度での第1の流量脈動性および第1の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つと比較して、第2のポンプ設定速度での第2の期間中に第2の流量脈動性および第2の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つが増加すると、高血圧の存在を示すアラートが生成される。
【0004】
別の態様では、高血圧の存在を示すアラートが生成される場合、この方法は、第1の期間中に第1のポンプ設定速度での第1の流量脈動性および第1の電流脈動性からなる群からの少なくとも1つを非吸引波形として識別することをさらに含む。
【0005】
別の態様では、第2のポンプ設定速度は、第1のポンプ設定速度よりも少なくとも200rpm低い。
【0006】
別の態様では、第2の期間は第1の期間よりも短い。
【0007】
別の態様では、埋め込み型血液ポンプの連続動作中、第1の期間と第2の期間は連続している。
【0008】
別の態様では、第1の期間および第2の期間は、所定の間隔で周期的である。
【0009】
別の態様では、埋め込み型血液ポンプは遠心流血液ポンプである。
【0010】
別の態様では、埋め込み型血液ポンプは、軸流血液ポンプである。
【0011】
別の態様では、第1の流量の脈動性および第2の流量の脈動性が測定される。
【0012】
別の態様では、第1の電流脈動性および第2の電流脈動性が測定される。
【0013】
別の態様では、第1の流量脈動性および第2の流量脈動性は、第1の期間および第2の期間のそれぞれの間の複数の心周期からの平均および中央値からなる群からの少なくとも1つから決定される。
【0014】
別の態様では、第1の電流脈動性および第2の電流脈動性は、第1の期間および第2の期間のそれぞれの間の複数の心周期からの平均および中央値からなる群からの少なくとも1つから決定される。
【0015】
一態様では、心室補助装置を有する患者の高血圧を検出する、心室補助装置が埋め込み型血液ポンプを含むシステムは、埋め込み型血液ポンプと通信するコントローラであって、処理回路を含むプロセッサを有するコントローラを備え、処理回路が第1の期間中に第1のポンプ設定速度で埋め込み型血液ポンプを動作させるように構成されている。第1の期間中、第1の流量の最小値および第1の電流の最小値からなる群からの少なくとも1つが測定される。第1のポンプ設定速度は、第1の期間の後の第2の期間中に第2のポンプ設定速度に下げられる。第2の期間中、第2の流量の最小値および第2の電流の最小値からなる群からの少なくとも1つが測定される。第2の流量の最小値および第2の電流の最小値からなる群からの少なくとも1つが、第2のポンプ設定速度で第2の期間中に所定量を超えて減少する場合、コントローラは、第2のポンプ設定速度を第1のポンプ設定速度を上げる、および高血圧の存在を示すアラートを生成するからなる群からの少なくとも1つを行うように構成される。
【0016】
別の態様では、高血圧の存在を示すアラートが生成される場合、処理回路はさらに、第1の期間中に第1のポンプ設定速度で第1の流量の最小値および第1の電流の最小値からなる群からの少なくとも1つを非吸引波形として識別するように構成される。
【0017】
別の態様では、第2のポンプ設定速度は、第1のポンプ設定速度よりも少なくとも200rpm低い。
【0018】
別の態様では、第2の期間は第1の期間よりも短い。
【0019】
別の態様では、埋め込み型血液ポンプの連続動作中、第1の期間と第2の期間は連続している。
【0020】
別の態様では、第1の期間および第2の期間は、所定の間隔で周期的である。
【0021】
別の態様では、埋め込み型血液ポンプは、遠心流血液ポンプである。
【0022】
別の態様では、埋め込み型血液ポンプは、軸流血液ポンプである。
【0023】
別の態様では、第1の流量の最小値および第2の流量の最小値は、第1の期間および第2の期間のそれぞれの間の複数の心周期からの平均および中央値からなる群からの少なくとも1つから決定される。
【0024】
別の態様では、第1の電流の最小値および第2の電流の最小値は、第1の期間および第2の期間のそれぞれの間の複数の心周期からの平均および中央値からなる群からの少なくとも1つから決定される。
【0025】
一態様では、心室補助装置を有する患者の高血圧を検出する、心室補助装置が埋め込み型血液ポンプを含む、方法は、この方法は、第1の期間中に第1のポンプ設定速度で埋め込み型血液ポンプを動作させることを含む。患者の心周期中の第1の流量の最小値は、第1の期間中に測定される。第1のポンプ設定速度は、第1の期間の後の第2の期間中に少なくとも200rpmだけ第2のポンプ設定速度まで下げられ、第2の期間は第1の期間よりも短い。第2の流量の最小値は、第2の期間中、心周期中に測定される。第2のポンプ設定速度で第2の期間中に第2の流量の最小値が所定の量を超えて減少すると、高血圧の存在を示すアラートが生成される。
【0026】
本開示の1つ以上の態様の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本開示に記載される技術の他の特徴、目的、および利点は、本明細書および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のより完全な理解、ならびにそれに付随する利点および特徴は、添付の図面と併せて検討される場合、以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されるであろう。
図1】本願の原理に従って構築された埋め込み型血液ポンプの分解図。
図2】本願のコントローラの様々な構成要素を示すブロック図。
図3】本願の一態様による、埋め込み型血液ポンプを有する患者の高血圧を検出する方法を示すフローチャート。
図4】様々な所定のポンプ設定速度での例示的な心室補助装置のHQ曲線を示すグラフ。
図5】正常な血圧および対応する脈動性を有する患者における第1および第2の所定のポンプ設定速度での例示的な流量および電流波形を示すグラフ。
図6】正常な高血圧および対応する脈動性を有する患者における第1および第2の所定のポンプ設定速度での例示的な流量および電流波形を示すグラフ。
図7】第1の設定速度での流量脈動性と減速した速度の関係が、長期間にわたる高血圧の発症を識別できることを示すグラフ、および
図8】インペラを減速したときの吸引状態の解決を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に開示される様々な態様が、説明および添付の図面に具体的に提示される組み合わせとは異なる組み合わせで組み合わされてもよいことが理解されるであろう。本明細書に記載する処理または方法のいずれかのある特定の行為または事象が、実施例に応じて、異なるシーケンスで実施されてもよく、追加、併合、または完全に省略されてもよいことを理解されたい(例えば、全ての記載された行為または事象は、本技術を行うために必要でない場合もある)。加えて、本開示のある特定の態様が明瞭性の目的のために単一のモジュールまたはユニットによって実施されると説明されるが、本開示の技術が例えば、医療デバイスと関連付けられるユニットまたはモジュールの組み合わせによって実施されてもよいことは理解されたい。
【0029】
1つ以上の実施例では、説明される技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装されることができる。ソフトウェアで実装される場合、機能はコンピュータ可読媒体上に1つ以上の命令またはコードとして記憶され、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されてもよい。コンピュータ可読媒体は、データ記憶媒体(例えば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、または命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、かつコンピュータによってアクセスされることができる任意の他の媒体)などの、有形媒体に対応する非一時的コンピュータ可読媒体を含んでもよい。
【0030】
命令は、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、または他の同等の集積もしくは離散論理回路などの、1つ以上のプロセッサによって実行されてもよい。したがって、本明細書で使用される「プロセッサ」といった用語は、前述の構造のいずれか、または説明された技術の実装に好適な任意の他の物理的構造を指してもよい。さらに、技術は、1つ以上の回路または論理的要素内に完全に実装されてもよい。
【0031】
ここで、同様の参照指定子が同様の要素を参照する図面を参照すると、図1に、例示的な心室補助装置、特に、本願の原理に従って構築され、一般に「10」と指定される埋め込み型血液ポンプが示される。本開示の一実施形態によると、血液ポンプ10は、血液ポンプ10の構成要素を収容する静的構造またはハウジング12を含む。一構成では、ハウジング12は、下部ハウジングまたは第1の部分14、上部ハウジングまたは第2の部分16、および外側チューブ18aおよび内側チューブ18bを含む入口要素18または流入カニューレ18を含む。第1の部分14および第2の部分16は、第1の部分14および流入カニューレ18を通って延在する主長手方向軸22を有する渦巻き形状のチャンバ20を協調的に画定する。チャンバ20は、軸22の周りでチャンバ20の周辺の出口場所まで漸進的に増加する半径を定める。第1の部分14および第2の部分16は、チャンバ20と連通する出口24を画定する。第1の部分14および第2の部分16は、磁気的に透過可能な壁によって渦巻きチャンバ20から分離された隔離チャンバ(図示せず)もまた画定する。流入カニューレ18は、一般に円筒形であり、軸22に沿って第1の部分14から一般に延在する。流入カニューレ18は、第2の部分16から離れた上流端または近位端26と、チャンバ20に近接する下流端または遠位端28とを有する。
【0032】
上記のハウジング12の部分は、ハウジング12が全体として連続的な閉じられた流路を画定するように、互いと固定的に接続されている。流路は、流路の上流端にある上流端26から流路の下流端にある出口24まで延在する。流路に沿った上流方向と下流方向は、それぞれ矢印UとDで示される。軸22に沿って第1の部分14上にはポスト30が取り付けられる。中央穴34を有する一般にディスク形状の強磁性ロータ32は、軸22の周りを回転するためにチャンバ20内に取り付けられる。ロータ32は、ロータ32の中心の隣からロータ32の周辺に血液を運ぶための永久磁石およびフローチャネルを含む。組み立てられた状態では、ポスト30は、ロータ32の中心穴に受容される。
【0033】
複数のコイルを有する第1のステータまたはモーター36は、ロータ32の下流にある第1の部分14内に配置されてもよい。第1のステータ36は、電流が第1のステータ36のコイルに印加されると、第1のステータ36によって生成される電磁力がロータ32を回転させて血液を送出するように、軸22に沿ってロータと軸方向に整列されてもよい。第2のステータまたはモーター38が、ロータ32の上流にある第2の部分16内に配置されてもよい。第2のステータ38は、第1のステータ36と連動して、または独立して動作して、ロータ32を回転させるように構成されてもよい。
【0034】
電気コネクタ41および43(図1)は、コントローラ(図示せず)などの電力源にコイルを接続するためにそれぞれ第1の部分14および第2の部分16に設けられる。コントローラは、ポンプのコイルに電力を与え、流入カニューレ18の上流端からみた場合に反時計回りの矢印によって示される方向Rなどの所定の第1の回転方向において軸22の周りでロータ32をスピンさせる回転磁場を作り出すように配置される。血液ポンプ10の他の構成では、第1の方向は時計回りでもよい。ロータ32の回転は、血液を流路に沿って下流に押し出し、その結果、血液は、流路に沿って下流方向Dに移動し、出口24を通って出る。回転中、流体力学的および磁気的ベアリング(図示せず)は、ロータ32を支持し、動作中、ロータ32を第1の部分14および第2の部分16の要素の表面と接触しないように維持する。
【0035】
第1の非強磁性ディスク40は、第1のステータ36とロータ32との間でロータ32の上流にある第1の部分14内に配置されてもよく、第2の非強磁性ディスク42は、第2のステータ38とロータ32との間で第2の部分16内のロータ32の下流に配置されてもよい。ロータ32は、第1のディスク40と第2のディスク42との間で、いずれのディスクとも接触せずに回転するように構成される。上記の構成要素の一般的な配置は、本出願の譲受人であるハートウェア社によってHVAD(登録商標)の名称で販売されているMCSDで使用される血液ポンプ10と同様であり得る。このようなポンプで使用される磁石、電磁コイル、流体力学的ベアリングなどの構成要素の配置、および同じ一般的な設計の変形例は、米国特許第6,688,861号、第7,575,423号、第7,976,271号、および第8,419,609号に記載される。
【0036】
本開示によって企図される他の埋め込み型血液ポンプ10は、米国特許第8,007,254号および第9,561,313号に開示されているものであり、軸流血液ポンプであり、MVAD(商標)ポンプは現在販売されていない。
【0037】
ここで図2を参照するに、埋め込み型血液ポンプ10は、埋め込み型血液ポンプ10の1つ以上のモーターの起動およびその後の動作を監視および制御するための制御回路を含む制御回路46を有するコントローラ44と通信することができる。コントローラ44はまた、処理回路を有するプロセッサ48、メモリ50、およびインターフェース52を含んでもよい。メモリ50は、命令54,例えば、プロセッサ20によって実行可能なモーター制御モジュール55およびモーター監視モジュール57を含む、プロセッサ48および処理回路によってアクセス可能な情報、および/または1つ以上の相のモーターにおける1つ以上のモーターに供給される電流58を含むがこれに限定されないデータ56およびプロセッサ20によって検索され、操作され、および/または記憶されてもよい流量日を含んでもよいポンプデータ60を記憶する。コントローラ44は、患者の外部にある電源58、例えば、電池62でもよいと通信してもよい。
【0038】
ここで図3を参照するに、ポンプ10の動作中、コントローラ44は、第1の期間中にインペラ32の第1のポンプ設定速度Sで埋め込み型血液ポンプ10動作させてもよい(ステップS100)。第1のポンプ設定速度Sは、例えば、1800rpmと4000rpmの間の範囲であってもよく、遠心流ポンプまたは軸流ポンプでもよい特定のポンプの関数であってもよい。例えば、図4に示されるように、各第1のポンプ設定速度Sについて、ポンプ10は、通常の使用中、設定速度に関わらず圧力ヘッドが減少するにつれてポンプを通る流体の流出が増加することを一般的に示すHQ曲線を示す。流体の流れもまた、患者の心周期の関数であり、拡張期の間、圧力ヘッドはより高く、流体の流れはポンプ10を通って減少し、収縮期の間、圧力ヘッドは減少し、流体の流れはポンプ10を通って増加する。第1のポンプ設定速度Sでの通常動作中、電流波形および流量波形はコントローラ44によってリアルタイムで測定され、監視されてもよい(ステップS102)。本明細書で使用されるように、「高血圧」または「高血圧の」は、HQ曲線の平坦な領域における高血圧または動作を指している。
【0039】
一構成では、図5に示されるように、正常な血圧を有する患者は、第1のポンプ設定速度Sが2600RPMでの第1の期間T中、約3.9L/分の第1の流量脈動性および約0.25Aの第1の電流脈動性を示す。一構成では、図6に示されるように、高血圧の患者は、第1のポンプ設定速度Sが2400RPMでの第1の期間T中、約5.7L/分の第1の流量脈動性および約0.35Aの第1の電流脈動性を示す。そのため、高血圧の患者は、正常な血圧の患者よりも、流量および電流の脈動性が大きくなる。例えば、図5および図6の両方に示されるように、コントローラ44は、第2の期間T中、インペラ32の速度をインペラ32の第2のポンプ設定速度Sまで所定の量だけ下げてもよい(ステップS104)。例えば、図5および図6に示されるように、第1のポンプ設定速度Sは、それぞれ2200RPMおよび2400RPMの第2のポンプ設定速度Sまで200RPMだけ下げられる。第2の期間Tは、第1の期間Tよりも短い、同じ、または長くてもよい。任意選択的に、設定速度が正常な期間T、および設定速度が下げられるTは、血液ポンプの通常動作の一部としてまたは、インペラ32上での血栓の形成を防止するためにインペラ32の速度が低減され、その後、増加される通常のインペラ32の洗浄サイクルの一部として定期的および/または継続的に行われてもよい。
【0040】
下げられた設定速度Sでの第2の期間T中、流量および電流が測定される(ステップS106)。第1の期間T中Sの第1のポンプ設定速度での第1の流量脈動性または第1の電流脈動性のそれぞれと比較して、第2のポンプ設定速度Sでの第2の期間T中に第2の流量脈動性および第2の電流脈動性が増加すると、コントローラ44は、患者が高血圧を示していると決定し得る(ステップ108)。例えば、図5に示されるように、第2のポンプ設定速度Sでの第2の期間T中の第2の流量脈動性は、3.9L/分から3.1L/分に減少し、第2のポンプ設定速度Sでの第2の期間T中の第2の電流脈動性は0.25Aから0.24Aに減少する。この電流および/または流量の脈動性における減少は、正常な血圧の患者を示している。しかしながら、図6に示されるように、第2のポンプ設定速度Sでの第2の期間T中の第2の流量脈動性は、既に通常よりも高い5.7L/分から7.1L/分に増加し、第2のポンプ設定速度Sでの第2の期間T中の第2の電流脈動性は既に通常よりも高い0.35Aから0.38Aに増加する。この電流および/または流量の脈動性における増加は、高血圧を示しており、これは、コントローラ44によって決定され得る。測定された流量脈動性または電流脈動性は、Tおよび/またはTにわたるそれぞれの脈動性の測定された平均または中央値にさらに基づいてもよい。
【0041】
検出高血圧の別の方法では、血液ポンプ10の動作中、第1のポンプ設定速度SでのT中の流量または電流の最小値が測定されてもよい。流量または電流の最小値は、T中の単一の心周期中に測定されてもよく、T中のいくつかの心周期のそれぞれから検出された最小流量または電流の平均でもよく、またはT中のいくつかの心周期のそれぞれから検出された最小流量または電流の中央値でもよい。コントローラ44は、次に、T中にインペラ32の速度をSに下げてもよく、流量また電流の最小値はT中に測定されてもよく、T中の単一の心周期中に測定されてもよく、T中のいくつかの心周期のそれぞれから検出された最小流量または電流の平均でもよく、またはT中のいくつかの心周期のそれぞれから検出された最小流量または電流の中央値でもよく、これはT中に最小流量または電流の最小値がどのようにして測定されたかに応じる。測定された最小流量また電流の最小値が所定量を超えてSでT中に減少した場合、コントローラ44は、上述のようにアラートを生成することによって高血圧の存在を示してもよく、および/またはコントローラは、インペラ32の設定速度をSで留めるか、S以上の設定速度に戻るかのいずれかを指示してもよい。電流における所定の減少は、正常な血圧を有する患者の経験値に基づいてもよい。例えば、図5に示されるように、正常な血圧を有する患者におけるSでのT中の測定されたフローまたは電流の最小値は、高血圧の患者におけるSでのT中の測定されたフローまたは電流の最小値未満だけ減少される。例えば、図5では、SでのT中の最低での流量の最小値は約1L/分であるが、図6では、高血圧の患者では0L/分に近づく。
【0042】
ここで図7および図8を参照するに、吸引状態が存在する場合、フローよび/または電流の増加された脈動性、および/またはフローおよび/または電流の最小値の減少はコントローラ44によって測定され、インペラ32の設定速度を下げることは、状態を解決するか、または悪化させないはずである。例えば、図8に示されるように、インペラ32の速度が下げられると、測定された流量脈動性および電流の脈動性が減少する。しかしながら、下げられた設定速度でT中に脈動性が増加するか、フローまたは電流の最小値が減少すると、コントローラ44は、ログファイルにフラグを立てる、および/または、視覚的、触覚的、または音声的でもよいが、電流または流量波形と関連する吸引ではなく高血圧の存在を示すアラートをリアルタイムで生成し、高血圧が存在することを他の吸引に関連するアルゴリズムに通知してもよい。したがって、この決定により、その後、吸引検出基準が変更される可能性がある。
【0043】
本発明は、本明細書において上で具体的に図示および説明されたものに限定されないことが当業者には理解されるであろう。さらに、上記とは反対の言及がない限り、添付の図面のすべてが原寸に比例していないことに注意する必要がある。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、上記の教示に照らして様々な修正および変形が可能であり、これは、以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】