IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エムダブリュ マトリックス インク.の特許一覧

特表2022-522098マイクロ波発振器及びそれに基づくマトリクス型マイクロ波発振器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】マイクロ波発振器及びそれに基づくマトリクス型マイクロ波発振器
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/20 20060101AFI20220407BHJP
   H01J 23/22 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
H01J23/20
H01J23/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541727
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(85)【翻訳文提出日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 US2019020260
(87)【国際公開番号】W WO2020180281
(87)【国際公開日】2020-09-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521318882
【氏名又は名称】エムダブリュ マトリックス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】タラソフ、 マーク
(57)【要約】
本発明は、マイクロ波放射線装置、特に、マイクロ波発振器の分野に関する。提案された発振器及びマトリクス型マイクロ波発振器の変形は、1つ以上のマイクロ波源からのマイクロ波放射線を効率的に誘導して、マイクロ波放射線を加重することを可能にし、したがって、高い効率及び出力の値、装置の優れた機能性、上述のマイクロ波源によって放射される放射線の高度な同期を保証する。マイクロ波発振器は、マイクロ波源と、その中にマイクロ波チャネルが形成された共振器とを備える。共振器は、互いに電気的に接続されたボックス及びベースを備え、マイクロ波チャネルは、逆行波を抑制するための抑制手段を収容する。マトリクス型発振器は、互いに電気的に接続された上述の複数のマイクロ波発振器を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波源と、
前記マイクロ波源からの放射線を誘導するマイクロ波チャネルを有する共振器と
を備えるマイクロ波発振器であって、
前記共振器は、
第1のチャネルを有するボックスであって、前記マイクロ波源が設置されているボックス、及び
第2のチャネルを有するベースであって、前記ボックスに電気的に接続されているベース
を備えており、
前記第2のチャネルは、前記第1のチャネルの延長部であり、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルは、マイクロ波放射線が放射される出口を有するマイクロ波チャネルを形成し、
前記マイクロ波チャネルは、少なくとも部分的に、逆行波を抑制する抑制手段を収容する、マイクロ波発振器。
【請求項2】
前記出口における前記マイクロ波チャネルの最小断面積は、前記抑制手段の最大断面積の8倍から12倍の大きさである、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項3】
前記マイクロ波源と前記ボックスとを接続する導波管をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項4】
前記共振器は、単一の部品として作られる、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項5】
前記マイクロ波チャネルは、可変断面を有する、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項6】
前記第2のチャネルは、前記第1のチャネルから前記マイクロ波チャネルの前記出口への方向に拡張する、請求項5に記載のマイクロ波発振器。
【請求項7】
前記マイクロ波チャネルの表面は、導電性材料の層で被覆される、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項8】
前記共振器内に作られた少なくとも1つの冷却チャネルをさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項9】
少なくとも2つの請求項1に記載のマイクロ波発振器を備え、
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器の共振器は、互いに電気的に接続されている、マトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項10】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器のベースに配置されたフレアをさらに備える、請求項9に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項11】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器の全てのフレアが、単一の部品として作られる、請求項10に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項12】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器の全てのベースが、単一の部品として作られる、請求項9に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項13】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器のマイクロ波チャネルを接続する同期チャネルをさらに備える、請求項9に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項14】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器のボックス及び/又はベース内に配置された同期インサートをさらに備える、請求項9に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項15】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器のうちの少なくともいくつかは、コネクタによって互いに電気的に接続される、請求項9に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波周波数機器、特に、マイクロ波放射線発振器又はマイクロ波発振器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
強力なマイクロ波放射波源はコストが高いため、有望なマイクロ波技術の開発とその工業規模の実装が著しく妨げられている。同時に、中電力マイクロ波放射波源、又はマイクロ波源の生成は、商用電子レンジ用のマグネトロンのように、世界的に開発されており、電力ユニットのコストが高電力マイクロ波源のコストよりも著しく低い。したがって、累積的に強力なマイクロ波放射線を生成するための装置のコストを低減し、それらの重量及び寸法を低減し、熱除去のための解決策を見出すという点から、複数の中電力マイクロ波源から放射されるマイクロ波放射線の効率的な加重は実際のタスクである。しかしながら、マイクロ波放射線の総電力を増加させる目的で複数のマイクロ波源によって放射される放射線を加重することは、このような波源が共同で動作する場合に、そのような装置の全体効率を著しく低下させることなく、マイクロ波源の相互同期化の要件に適合する複雑さのために、深刻な問題に直面する可能性がある。
【0003】
本発明の最も近い類似物は、複数のマイクロ波源、すなわちマグネトロンの電力を加重するための装置であるマイクロ波発振器であり、RU2394357に開示されている(10.07.2010に公開。IPC Н03В9/10)。公知の装置は、その端部で短絡され、その上にマグネトロンが設置された1つの矩形導波管の形の共振器を備えている。マグネトロンのエネルギー出力が幅広い壁の中央を通って共振器に入るように、マグネトロンは共振器の幅広い壁上に互いに近接して配置される。短絡選択インサートは、共振器内部においてマグネトロンのエネルギー出力間に対称的に設置される。周囲の空間にエネルギーを出力するための放射スロットは、各マグネトロンに対向する共振器の他方の幅広い壁に配置される。共振器の幅広い壁の大きさはマグネトロンの動作周波数に対応する半波長に等しい。当技術分野で知られているこの装置は、相互同期及びコヒーレント放射のモードにおいてマイクロ波放射線のより高い総電力を生成するために、それぞれが既定の電力を有する複数のマグネトロンの電力の加重を可能にする。
【0004】
本質的に、RU2394357に記載された装置は、マトリクス型マイクロ波発振器、すなわち、複数のマイクロ波源(マグネトロン)を組み合わせた装置である。
【0005】
複数のマイクロ波源から放射されるマイクロ波放射線の加重は、上述のマイクロ波放射線が同期しているときに発生し、その目的のために、そのようなマイクロ波源は、生成されたマイクロ波の振動が、隣接するマイクロ波源の逆位相励起に相応する位相で加重されるように空間内に配置されるべきである。
【0006】
一般に、複数のマイクロ波源によって放射される放射線を同期させるための条件は次の通りである。
|sinφ|<1/(n-1)、
ここで、φは、マイクロ波源の振動と同期信号との間の瞬時的な位相差であり、nは、マイクロ波源の数である。しかしながら、上述の条件は、マイクロ波源の間の結合方法を考慮していない。
【0007】
通常、複数のマイクロ波源の動作を同期させるために、上述のRU2394357に記載されているように、その両端が短絡された細長い矩形導波管である安定化共振器が使用される。このような安定化共振器では、共振時に形成されるH波(101-104)のうちの1つを振動の主体と見なすことができる。この種類の振動を選択するために、極の形態の短絡選択インサートが共振器に等間隔で幅広い壁の間に設置される。
【0008】
最も近い類似では、4つのマグネトロンのみが一列に配置され、それらのマイクロ波放射周波数が互いに近い場合であっても、マグネトロンによって放射されるマイクロ波放射線の高度な同期を達成すること、その結果、RU2394357の表1から明示的に得られる高い装置効率値を達成することは相当に困難である。しかしながら、この類似のより大きな欠点は、マイクロ波放射線の複数のこのような線形発振器が互いに平行に、すなわち互いに隣接して(しかし交互ではなく)配置されて、マグネトロンの2次元マトリクスを形成する場合、装置効率の許容値を実際に達成することが不可能な点である。この事実は、小さな領域に配置され得る多数のマイクロ波源に制限を与え、その結果、マイクロ波放射線を加重するためのこの公知の装置によって放射されるマイクロ波放射線の総電力を制限する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、高い効率値と高いマイクロ波放射電力を確保しつつ、複数のマイクロ波源を一列のみならず二次元マトリクスでも組み合わせることができるマイクロ波発振器を提供することにある。
【0010】
本発明の技術的効果は、マイクロ波発振器の機能的能力の拡張、複数のマイクロ波発振器によって放射される放射線の高度な同期、装置の高効率化及び大容量化である。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、マイクロ波発振器は、マイクロ波源と共振器とを備える。マイクロ波源からの放射線を誘導するために、マイクロ波チャネルが共振器内に形成される。共振器は、マイクロ波源が設置されたボックスであって、第1のチャネルが形成されたボックスと、第2のチャネルがその中に形成されたベースとを備える。ボックスとベースは互いに電気的に接続されている。第2のチャネルは、第1のチャネルの延長部であり、それにより第1のチャネル及び第2のチャネルは、マイクロ波チャネルを形成する。マイクロ波チャネルは、逆行波を抑制する抑制手段を収容し得る。マイクロ波チャネルは、実質的に直線的に、すなわち、当技術分野で公知の装置に典型的な十分な屈曲を伴わずに作られ得る。
【0012】
マイクロ波発振器において、共振器はボックスとベースの2つの要素とそれらを通過するマイクロ波チャネルとから成る。マイクロ波源によって放射されたマイクロ波放射線は、ボックス内に形成された第1のチャネルを通ってマイクロ波チャネルに沿って通過し、そのマイクロ波放射線を事前に案内する役割を果たす。次に、そのマイクロ波放射線が第2のチャネルを通過するときに、最終的にマイクロ波放射線が形成される。
【0013】
ボックス及びベースは互いに電気的に接続されているので、マイクロ波放射線がマイクロ波チャネルを通過するときに生じる電流は、第1のチャネル及び第2のチャネルを通過するときのマイクロ波放射線に影響を与える。
【0014】
また、抑制手段もマイクロ波放射線に影響を与え得る。一方で、抑制手段は、抑制手段の形状、大きさ及び位置が正しく選択されていれば、大きな損失なくマイクロ波発振器からマイクロ波放射線を放出することを可能にする。他方で、抑制手段は、マイクロ波発振器の総出力容量の著しい減少、マイクロ波発振器の加熱、及び当業者には周知の他の望ましくない効果を引き起こす外部物体(例えば、マイクロ波発振器によって放射される放射線によって加熱される物体)から反射されたマイクロ波放射線がマイクロ波チャネルに逆に戻ることを許容しない。
【0015】
その結果、第2のチャネルの出口、すなわちマイクロ波チャネルの出口に高電力の放射線が形成され、マイクロ波発振器は、2次元及び3次元空間におけるマイクロ波放射線の高効率かつ狭い空間分布により特徴付けられる。
【0016】
マイクロ波発振器にはフレア(導波管)を用いてもよく、ボックスに接触する側とは反対のベースの別の側に配置してもよい。フレアは、マイクロ波放射線の効率及び出力電力を維持しながら、最小の損失で外向きマイクロ波放射線を集束することを可能にする。
【0017】
より良好な熱除去を確実にするために、マイクロ波源は、ボックスから離れて設置されてもよい。このような場合、マイクロ波源は、好ましくは、放射損失を最小化し、かつ均一な場の分布を確保するために、導波管を介してボックス上に設置される。
【0018】
マイクロ波源によって放射されたマイクロ波放射線を効率的に伝達し、その結果、マイクロ波発振器の効率を高めるために、マイクロ波チャネルは、可変断面を有し得る。
【0019】
マイクロ波チャネルの表面は、導電性材料の層で被覆されてもよい。これは、様々な方法によって、例えば、導電性材料のベース及びボックスを作ることによって、又は第1のチャネル及び第2のチャネルの表面にフィルム、箔等の形態で導電性被覆(厚さ、導電性、熱機械的挙動等の特性が類似する又は異なる)を適用することによって、又は導電性シールドをチャネルの上述の表面に取り付けることによって、又は当業者に公知の任意の他の方法によって達成することができる。
【0020】
ボックスとベースは、個別の部品又は単一の部品として作られてもよい。ボックスとベースを個別の部品とすること、すなわち、複合共振器とすることにより、装置の要求効率と良好な熱除去を確保するようなボックスとベースの形状を選択することが可能になる。ボックスとベースを単一の部品とする場合、すなわち、共振器が一体に作られる場合、これはマイクロ波発振器の効率と出力電力を増加させる。
【0021】
また、マイクロ波発振器は、装置を冷却するための少なくとも1つの冷却チャネルを含んでもよい。これにより、マイクロ波発振器の動作安定性を維持することが可能になる。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、共振器同士が電気的に接続された少なくとも2つの上述のマイクロ波発振器を備えたマトリクス型マイクロ波発振器が提案される。
【0023】
既に述べたように、マイクロ波装置に含まれる複数のマイクロ波源によって放射される放射線の効率的な同期に関する問題は、当技術分野で知られている従来の装置の効率が比較的低い直接の理由である。さらに、このような従来の装置は、放射線及び放射電力の周波数が類似しているか又はむしろ近接しているマイクロ波源の使用を必要とする。
【0024】
本発明では、マイクロ波発振器の共振器が互いに電気的に接続されているため、マイクロ波放射線がマトリクス型発振器の全てのマイクロ波チャネルを通過するときに生じる電流が相互作用し、その結果、マイクロ波チャネル内のマイクロ波放射線に影響を与える。これにより、このようなマトリクス型発振器に含まれる全てのマイクロ波源から放射されるマイクロ波放射線の高度な同期が確保され、その結果、高効率が確保される。
【0025】
マトリクス型発振器が、マイクロ波発振器の間に形成されかつ隣接するマイクロ波チャネルを接続する同期チャネルをさらに備える場合には、複数のマイクロ波源によって放射された放射線のより高度な同期を達成することができる。代替的に、マトリクス型発振器は、隣接するマイクロ波チャネル間のベース及び/又はボックス内に配置された同期インサートを含んでもよい。このインサートは、RU2394357の装置で使用されるものと同様であり得る。
【0026】
マトリクス型発振器は、ベース上に設置された共通フレア(導波管)を含むことが好ましく、これにより、放射電力を失うことなく、より効率的に外向きマイクロ波放射線を集束することが可能になる。
【0027】
マトリクス型発振器に含まれるマイクロ波発振器のボックス及びベースの様々な実装が可能である。すなわち、マトリクス型発振器において、マイクロ波発振器の少なくともいくつかのベース、マイクロ波発振器の少なくともいくつかのボックス、又はマイクロ波発振器の少なくともいくつかの共振器を単一の部品としてもよい。
【0028】
上述の同期の程度は、マトリクス型発振器の効率に直接影響を与え、マトリクス型発振器に(すなわち、マトリクス型発振器に含まれる全てのマイクロ波源に対して)供給される電気エネルギー量と、マトリクス型発振器によって生成される有効仕事量とを比較することによって決定されてもよい。生成されたこのような有効仕事量を決定するために、例えば、マトリクス型発振器によって加熱される物質の温度がどの程度上昇するかを測定してもよい。温度上昇が大きいほど同期度が高くなるため、マトリクス型発振器の効率が高くなる。
【0029】
以下、請求項に記載のマイクロ波発振器について、本発明のいくつかの可能な実施形態を示す添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1a】マイクロ波発振器の一実施形態の概略図を示す。
図1b】導波管を有するマイクロ波発振器の別の実施形態の概略図である。
図2a】可変断面の第1のチャネル及び一定断面の第2のチャネルを有するマイクロ波発振器の一実施形態の断面図を示す。
図2b】可変断面の第2のチャネルを有するマイクロ波発振器の別の実施形態の断面図を示す。
図2c】逆行波を抑制する抑制手段を備えたマイクロ波発振器のさらに別の実施形態の断面図を示す。
図2d】冷却チャネルを有するマイクロ波発振器のさらに別の実施形態の断面図を示す。
図2e】第1のチャネル及び第2のチャネルの表面上に導電層を有するマイクロ波発振器の実施形態の一部の拡大断面図を示す。
図3a】円筒形状のボックスを有するマイクロ波発振器の実施形態を示す。
図3b】球面形状のボックスを有するマイクロ波発振器の実施形態を示す。
図4a】マイクロ波発振器が直線に沿って配置されたマトリクス型マイクロ波発振器の実施形態の概略図を示す。
図4b】マイクロ波発振器が曲線に沿って配置されたマトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図4c】マイクロ波発振器が直線に沿って配置されている、共通フレアを有するマトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図4d】マイクロ波発振器が曲線に沿って配置されている、共通フレアを有するマトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図5a】4つの独立したマイクロ波発振器によって放射されるマイクロ波放射線の場の分布を概略的に示す。
図5b】本発明の4つのマイクロ波発振器を備える本発明のマトリクス型マイクロ波発振器によって放射されるマイクロ波放射線の場の分布を概略的に示す。
図6a】複数のマイクロ波源に対する(図5aに示したものと同様である)いくつかの独立したマイクロ波発振器を備える装置の効率の依存性を示す。
図6b】複数のマイクロ波源に対する(図5bに示したものと同様である)本発明によるマトリクス型マイクロ波発振器の効率の依存性を示す。
図7a】マトリクス型マイクロ波発振器の実施形態の断面図を示す。
図7b】同期チャネルを示す図7aの拡大図を示す。
図8a】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図8b】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図8c】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図8d】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図8e】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図8f】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図8g】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図8h】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図8i】マトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図9】マイクロ波放射線の異なる電力及び異なる周波数を有するマイクロ波源を有するマトリクス型マイクロ波発振器のさらに別の実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一般に、マイクロ波発振器1は、ボックス3上に設置されるマイクロ波源2と、ボックス3に隣接するベース4とを備える。波源2は、ボックス3上に直接設置してもよく(図1a)、又は波源2とボックス3とを接続する導波管5を介して設置してもよい(図1b)。
【0032】
ボックス3及びベース4は、発振器1の共振器を構成する。共振器は、単一の部品としてもよく、又はボックス3とベース4とを分離して電気的に互いに接続してもよい。
【0033】
図2a-2eは、発振器1の内部構成を示す断面図である。
【0034】
ボックス3には、波源2から放射されたマイクロ波がベース4に通過する第1のチャネル6が形成されている。ボックス3は中空であってもよく、第1のチャネル6はボックス3の内部空洞であってもよい(図2a-2c)。代替的に、ボックス3は、塊状の、すなわち、中実(図2d)であってもよく、第1のチャネル6は、ボックス3を通る貫通チャネルである。図2b、2c、2dに示されているように、第1のチャネル6は一定の断面を有してもよく、又は、例えば、図2aに示されているように、狭まる又は広がる円錐形の貫通チャネルの形態での可変断面を有してもよい。第1のチャネル6の他の形状も可能である。
【0035】
ベース4には、第1のチャネル6からのマイクロ波放射線がベース4を通過する第2のチャネル7が形成されている。このようにして、第1のチャネル6及び第2のチャネル7は共に、共振器を通って延びるマイクロ波チャネル8を形成する。波源2から放射されたマイクロ波放射線は、マイクロ波チャネル8の出口を通過して発振器1から出る。
【0036】
ベース4は、中空(図2a)にすることができるが、好ましくは、塊状、すなわち中実(図2b、2c、2d)であってもよい。第1のチャネル6と同様に、第2のチャネル7は、ベース4の内部空洞(図2a)であってもよく、又はベース4を通過する貫通チャネル(図2b、2c、2d)であってもよい。第2のチャネル7は、図2a、2c、2dに示すように、一定の断面を有してもよく、又は例えば図2bに示すように可変断面を有してもよい。第1のチャネル6と第2のチャネル7の断面形状は、使用する波源2、発振器1の具体的な適用条件、要求効率等に応じて様々な形状を選択することができる。しかしながら、第2のチャネル7は、第1のチャネル6からマイクロ波チャネル8の出口まで拡張することが好ましい。
【0037】
発振器1は、逆行波を抑制するための抑制手段9をさらに備えており、これは、図2cに示すように、マイクロ波チャネル8に、例えば、第2のチャネル7に少なくとも部分的に位置する。抑制手段9は、発振器1から放射される放射線に照射される際に、外部物体(その表面)によって反射されるマイクロ波を抑制するためのものである。
【0038】
反射されたマイクロ波が発振器1に戻ってくると、多くの望ましくない効果が生じる。第1に、反射したマイクロ波により、ベース4及びボックス5がさらに加熱され、発振器1を冷却するための対策が必要となる。第2に、発振器1の総出力電力を低下させる。第3に、反射されたマイクロ波が第1のチャネル6に沿ってマイクロ波チャネル8を通って波源2まで通り抜けて戻ってくると、波源2への負荷が増大し、その故障を招く。
【0039】
本発明者らが見出したように、マイクロ波チャネル8に少なくとも部分的に配置されるべき抑制手段9を用いることにより、上記の望ましくない効果を低減することができる。他の利点は別として、これは、本発明の好ましい態様において、マイクロ波チャネル8を実質的に直線的で比較的短くすることを可能にする。これに対して、当該技術分野で公知の装置は、逆行波を退けるために長く曲がった(すなわち、互いに垂直に配置された複数の部分から成る)チャネルを必要とするが、これはそのような公知の装置の効率及び総出力電力を著しく低下させる。
【0040】
好ましくは、抑制手段9は、図2cに示すように、少なくとも部分的に第2のチャネル7内に配置される。このような場合、反射されたマイクロ波が発振器1の出口で抑制され、実質的に第2のチャネル7に入射しない。抑制手段9の形状(例えば、細長い、円筒状、円錐状、球状)、取り付け方法(例えば、1つ以上のブリッジ、ブラケット、サスペンションによる、マイクロ波チャネル8と一体とする)、物理パラメータ(例えば、使用される材料、そのコンダクタンス)は、マイクロ波チャネル8を通過して発振器1から出るマイクロ波放射線への影響を可能な限り確実にして、反射されたマイクロ波が第2のチャネル7に入射するのを可能な限り防止するように選択されるべきである。しかしながら、当業者には、抑制手段9を第1のチャネル6内に、又は部分的に第1のチャネル6内に、及び部分的に第2のチャネル7内に、又は部分的に第2のチャネル7の外側に配置することが可能であることが理解されよう。
【0041】
実験が示したように、マイクロ波チャネル8と抑制手段9の断面の最適な比率が存在する。このように、マイクロ波放射線が放射される部分において、すなわち、マイクロ波チャネル8の出口において、マイクロ波チャネル8の断面の最小面積が抑制手段9の断面の最大面積の約8倍-12倍であるときに、最良の結果が得られた。この比率の値が小さいほど、すなわち、抑制手段9がマイクロ波チャネル8の断面を占める面積がより大きい場合、発振器1の効率が低下する。この比率の値が大きいほど、すなわち、抑制手段9がマイクロ波チャネル8の断面を占める面積がより小さい場合、マイクロ波チャネル8への逆行マイクロ波の入射が増大し、それにより発振器1の加熱が増大し、その効率が低下する。
【0042】
共振器内に冷却チャネル10を形成してもよい。冷却チャネル10は、発振器1の加熱温度を、波源2の動作が中断されるか又は望ましくない場合がある臨界値まで上昇させないように監視することを可能にする。当業者には理解されるように、冷却チャネル10は、ボックス3内にのみ、又はベース4内にのみ、又はボックス3内及びベース4内にも作られ得る(この実施形態のみを図2dに示す)。
【0043】
発振器1を機能させて、当技術分野で知られている類似の解決策に対して上記の利点を達成するためには、ボックス3とベース4とを電気的に接続する必要がある。次に、マイクロ波放射線が波源2から通過するときに共振器内に発生する電流は、ベース4及びボックス5の両方に流れ、その結果、第1のチャネル6及び第2のチャネル7を通過するマイクロ波放射線に影響を与える。ボックス3とベース4とを電気的に接続するには、少なくともマイクロ波チャネル8の表面、すなわち第1のチャネル6及び第2のチャネル7の表面を導電性にする必要がある。これは、当業者にとって理解可能な種々の方法によって、すなわち、導電性材料のみのボックス3及びベース4を製造することによって、又は、図2eに示されるように、導電層11をマイクロ波チャネル8の表面に適用することによって(この場合、ボックス3の表面とベース4の表面とでは、被覆の材質、厚さ及び他の特性が異なっていてもよい)、又は、追加の導電性シールドをマイクロ波チャネル8の表面上又は表面に隣接して設置することによって、又はその他の方法によって行うことができる。
【0044】
ボックス3及びベース4の形状及びデザインは様々であり得る。前述したように、ベース4を塊状(中実状)に形成し、ボックス3を中空に形成してもよいが、好ましくは、ボックス3とベース4の両方が塊状に形成される。ボックス3の形状は、長方形又は円筒形(図3a)、球形(図3b)、円錐形等とすることができる。
【0045】
複数の発振器1を組み合わせて共振器同士を電気的に接続すれば、後述するマトリクス型マイクロ波発振器をより詳細に構成することができる。
【0046】
本発明の本質をより良く理解するために、マイクロ波放射線のマトリクス型発振器は、互いに接続された2つ以上のマイクロ波発振器1として理解することができる。これらの2つ以上の発振器1は、直列に接続されてもよく、すなわち、従来の線に沿って順に配置されてもよい。この従来の線は、直線でも曲線でもよい。このようなマトリクス型発振器の例を図4a-4dに示す。いくつかの発振器1を接続する別の可能な変形例は、複数の発振器1のマトリクスであってもよく、これらは平面又は曲げられ得る従来の表面上に配置される。そのようなマトリクス型発振器の例を図8a-8i、図9に示す。2つ以上の発振器1を接続する他の変形も可能なことは明らかであり、それらのうちのいくつかについては後述する。
【0047】
図4a-4dは、マトリクス型発振器12の実施形態を示し、ここで、マトリクス型発振器12は、図4aに示される直線バンドの形状、図4bに示される屈曲バンドの形状、又は任意の他の形状で作られてもよい。
【0048】
発振器1の共振器の電気接続は、例えば、特に隣接する発振器1を接続するコネクタ13によって(図4a、4b)、又は共通フレア14によって(図4c、4d)、又は共通のボックス及び/又はベース(図7a、7b)によって行われてもよい。当業者は、図に示されたものとは別に、隣接する発振器1を電気的に接続する他の変形も可能であることを理解するであろう。
【0049】
マトリクス型発振器12内の発振器1は、外向きマイクロ波放射線の必要な空間分布を形成するのに役立つ共通フレア14を有し得る。ここで、発振器1は、1本の直線に沿って(図4c)配置されてもよく、又は互いに傾斜して(図4d)配置されてもよい。
【0050】
図5aは、互いに隣接して配置された4つのマイクロ波源(例えば、波源2)からのマイクロ波放射線の場の分布を概略的に示す。暗い領域は高い比電力のマイクロ波放射線(すなわち、単位面積当たりのマイクロ波放射線電力)に対応し、明るい領域は低い比電力のマイクロ波放射線に対応する。全マイクロ波放射線は非常に不均一であることが明らかに見て取れる。
【0051】
本発明者らが実験で明らかにしたように、RU2394357による共振器を使用しても、全マイクロ波放射線の分布の均一性を十分に高めることはできない。その代わり、マイクロ波放射線の総出力電力の値は著しく減少しており、すなわち、公知の装置は低効率を特徴としており、RU2394357の表1によれば、4つのマグネトロンによって提供される電力の合計は3036Wであるが、RU2394357によれば、加重装置の出力電力はわずか2200Wであり、すなわちその効率は約72%である。
【0052】
比較のために、図5bは、本発明によるマトリクス型マイクロ波発振器12によって放射されるマイクロ波放射線の場の分布を概略的に示しており、使用される波源2の数は図5aのものと等しい。マトリクス型発振器12によって放射される全マイクロ波放射線の場は、電力分布の緊密さ及び高い空間的均一性によって特徴付けられ、これは、当技術分野で公知の類似の解決策に対する本発明の重要な利点である。
【0053】
しかしながら、当技術分野で公知の類似の解決策に対する本発明のもう1つの利点がある。これは図6a、6bにおいて曲線で示されている。これらの図は、互いに近接して配置された複数のマイクロ波源を含む装置(以下では「公知のマイクロ波装置」と呼ぶ)の効率(図6a)及び多数のマイクロ波源2に対する本発明によるマトリクス型マイクロ波発振器12の効率(図6b)の依存性を表す。図6a、6bでは、横軸に波源2の数をプロットし、縦軸に効率値をプロットしている。
【0054】
RU2394357による最も近い類似を含む当技術分野で公知の装置では、もう1つの波源2の追加は、公知のマイクロ波装置の効率の低下をもたらす(図6aを参照)。これに対して、本発明によるマトリクス型発振器12の効率は、波源2を追加した場合でも低下することなく、向上する(図6b参照)。また、マトリクス型発振器12の絶対効率値は、公知のマイクロ波装置の値よりも高い。
【0055】
したがって、当業者であれば、複数のマイクロ波源を含む公知のマイクロ波装置に対するマトリクス型装置12の利点を理解するであろう。
【0056】
本発明者の見解によれば、上述の利点は、まず、マイクロ波放射線がマイクロ波チャネル8(すなわち、第1のチャネル6及び第2のチャネル7)を介して波源2から通過するときにマトリクス型装置12の各共振器に生じる電流が前述のマイクロ波放射線に影響を与えることにより達成される。発振器1の共振器が互いに電気的に接続されていることを考慮すると、前述の電流は「自分自身の」共振器だけでなく、隣接する共振器にも流れ、その結果、マトリクス型装置12の全てのマイクロ波チャネル8におけるマイクロ波放射線の同期がもたらされる。
【0057】
第二に、これらの利点の達成は、マイクロ波チャネル8内に抑制手段9が存在することによって容易になる。これは、逆行マイクロ波の直接的な抑制とは別に、全マイクロ波放射線の場を均等化し、場合によっては、マトリクス型装置12の全てのマイクロ波チャネル8内のマイクロ波放射線を同期させることも可能にする。
【0058】
多くの実験では、マトリクス型発振器12が、図7aに及び図7bに拡大されたスケールで示されているように、隣接するマイクロ波チャネル8を接続する同期チャネル15を備えている場合、全マイクロ波放射線の場のさらにより高い効率及びより良い均一性が達成され得ることが示された。このような場合、同期チャネル15の表面及びマイクロ波チャネル8の表面は、導電性であるべきであり、これは、様々な方法によって、例えば、第1のチャネル6及び第2のチャネル7の表面の導電性を確保することに関連して上述した方法によって達成され得る。同期チャネル15の表面を導電性にすることの代わりに又は加えて、同期チャネル15は、導電性液体、金属、導電性粉末、又は任意の他の導電性物質で充填されてもよい。
【0059】
同期チャネル15は、第1のチャネル6を接続するボックス3、又は第2のチャネル7を接続するベース4、又は第1のチャネル6と第2のチャネル7を接続するボックス3及びベース4、又はコネクタ13のいずれかに設けることができる。
【0060】
別の可能な実施形態では、同期チャネル15は、RU2394357による共振器内で行われるように、ボックス3及び/又はベース4内の同期インサートの形態で実装されてもよい。
【0061】
マトリクス型発振器12のボックス3及びベース4の様々な実施形態が可能である。したがって、マトリクス型発振器12を形成する全て又はいくつかの発振器1のボックス3は、一体(単一)部品であってもよく、ここで第1のチャネル6は穿孔、フライス加工、レーザー又はプラズマ燃焼、又は任意の他の適切な方法によって作られる。代替的又は追加的に、マトリクス型発振器12を形成する全て又はいくつかの発振器1のベース4は、一体(単一)部品であってもよく、ここで第2のチャネル7及び、該当する場合には、同期チャネル15及び/又は冷却チャネル10は、穿孔、フライス加工、レーザー又はプラズマ燃焼、又は任意の他の適切な方法によって作られる。
【0062】
マトリクス型発振器12のボックス3及びベース4の少なくとも一方を一体部品とすることにより、ボックス3及びベース4に誘導される電流のより最適な分布、並びに良好な熱除去により、マイクロ波放射線の高度な同期を確保することが可能となり、これは、マトリクス型発振器12において比較的少数の発振器1を使用する場合でも重要な利点である。
【0063】
さらに、ボックス3とベース4とを共に一体(単一)部品として形成してもよく、これは、上記の利点とは別に、マトリクス型発振器12の生産性をさらに高めることができる。
【0064】
上述したように、本発明に係るマトリクス型マイクロ波発振器12は、互いに電気的に接続された複数の発振器1を備えている。上述の接続は、図4a-4dに示すように、直列であってもよく、又は図8,9を参照して後述するように、任意のタイプのものであり得る。
【0065】
すなわち、図8a-8iは、マトリクス型発振器12のいくつかの他の実施形態を示す。重要なことは、全ての発振器1が、例えば、隣接するベース4(図8a、8f、8h)又は隣接するボックス3(図示せず)を接続するコネクタ13、或いは、隣接するベース4及び隣接するボックス3をそれぞれ接続するコネクタ13a、13b(図8b)によって、互いに電気的に接続されていることである。
【0066】
また、発振器1の電気接続は、共通フレア(導波管)(図8c)、共通ベース(図8d、8e、8i)、又は共通ボックス(図示せず)によって行うこともできる。また、図8gに示すように、いくつかの発振器1が、例えば、ベース4によって電気的に接続され、かつ他の発振器1が、コネクタ13によって接続されるように組み合わせた変形も可能である。当業者であれば、発振器1の電気接続の他の変形も可能であることを理解するであろう。
【0067】
コネクタ13、13a、13bは、剛性、弾性、可動性、可撓性を有してもよく、これにより、全マイクロ波放射線の必要な場を形成するようにマトリクス型発振器12を成形することが可能になることに留意されたい。
【0068】
なお、マトリクス型発振器12を構成する発振器1の共振器は、互いに電気的に接続されていることが必須である。これは、既に述べたように、全てのマイクロ波チャネル8におけるマイクロ波放射線の同期を保証し、その結果、全マイクロ波放射線の場の均一性が高く、装置の効率が高いことを保証する。
【0069】
提案されたマトリクス型発振器12における高度なマイクロ波放射線同期は、全マイクロ波放射線の均一な場及び装置の高い効率を得ることを可能にするだけでなく、その電力及び/又は波長が著しく異なる波源2を使用することも可能にする。したがって、本発明者らは、図9に概略的に示すマトリクス型発振器12の安定した動作を達成することに成功しており、ここでは、915MHzの動作周波数を有する1つの発振器1aと、2400MHzに近い動作周波数を有する12個の発振器1bが使用されている。ここでは約80%の効率が達成された。しかしながら、マトリクス型発振器12の最良の効率値は、発振器1の動作周波数の拡散が25%を超えない場合に達成され得る。そして、効率の増加は、上述の動作周波数の拡散に反比例する。
【0070】
さらに、実験で示されたように、複数の発振器1の放射線を同期させると共に、マトリクス型発振器12の効率を向上させる最良の結果は、マイクロ波チャネル8の表面が十分に円滑である場合に達成され得る。表面粗さが小さいほど、マイクロ波チャネル8を通過するより少ないマイクロ波放射線が、マイクロ波チャネル8の表面から散乱し、当該表面によって吸収される。特に、マイクロ波チャネル8の表面の粗さに関するパラメータRzが2ミクロン以下であり、効率の向上が粗さの値に反比例する場合に、最良の結果が達成された。
【0071】
したがって、マイクロ波放射線装置の提案された変形例、すなわちマイクロ波発振器1及びマトリクス型マイクロ波発振器12は、1つ以上のマイクロ波源2によって放射されたマイクロ波放射線を効率的に誘導し、上述のマイクロ波放射線を加重することを可能にし、高効率及び総出力電力を確保し、装置の拡張された機能容量及びマイクロ波源2によって放射されたマイクロ波放射線の高度な同期を可能にする。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a-3b】
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図8f
図8g
図8h
図8i
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波源と、
前記マイクロ波源からの放射線を誘導するマイクロ波チャネルを有する共振器と
を備えるマイクロ波発振器であって、
前記共振器は、
第1のチャネルを有するボックスであって、前記マイクロ波源が設置されているボックス、及び
第2のチャネルを有するベースであって、前記ボックスに電気的に接続されているベース
を備えており、
前記第2のチャネルは、前記第1のチャネルの延長部であり、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルは、マイクロ波放射線が放射される出口を有するマイクロ波チャネルを形成し、
前記マイクロ波チャネルは、少なくとも部分的に、逆行波を抑制する抑制手段を収容し、
前記出口における前記マイクロ波チャネルの最小断面積は、前記抑制手段の最大断面積の8倍から12倍の大きさである、マイクロ波発振器。
【請求項2】
前記マイクロ波源と前記ボックスとを接続する導波管をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項3】
前記共振器は、単一の部品として作られる、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項4】
前記マイクロ波チャネルは、可変断面を有する、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項5】
前記第2のチャネルは、前記第1のチャネルから前記マイクロ波チャネルの前記出口への方向に拡張する、請求項に記載のマイクロ波発振器。
【請求項6】
前記マイクロ波チャネルの表面は、導電性材料の層で被覆される、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項7】
前記共振器内に作られた少なくとも1つの冷却チャネルをさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波発振器。
【請求項8】
少なくとも2つのイクロ波発振器を備えるマトリクス型マイクロ波発振器であって
各マイクロ波発振器は、
マイクロ波源と、
前記マイクロ波源からの放射線を誘導するマイクロ波チャネルを有する共振器と
を備え、
前記共振器は、
第1のチャネルを有するボックスであって、前記マイクロ波源が設置されているボックス、及び
第2のチャネルを有するベースであって、前記ボックスに電気的に接続されているベース
を備え、
前記第2のチャネルは、前記第1のチャネルの延長部であり、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルは、マイクロ波放射線が放射される出口を有するマイクロ波チャネルを形成し、
前記マイクロ波チャネルは、少なくとも部分的に、逆行波を抑制する抑制手段を収容し、
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器の共振器は、互いに電気的に接続されている、マトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項9】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器のベースに配置されたフレアをさらに備える、請求項に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項10】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器の全てのフレアが、単一の部品として作られる、請求項に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項11】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器の全てのベースが、単一の部品として作られる、請求項に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項12】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器のマイクロ波チャネルを接続する同期チャネルをさらに備える、請求項に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項13】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器のボックス及び/又はベース内に配置された同期インサートをさらに備える、請求項に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【請求項14】
前記少なくとも2つのマイクロ波発振器のうちの少なくともいくつかは、コネクタによって互いに電気的に接続される、請求項に記載のマトリクス型マイクロ波発振器。
【国際調査報告】