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特表2022-522120義歯作成アセンブリ、方法、及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】義歯作成アセンブリ、方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/007 20060101AFI20220407BHJP
   A61C 9/00 20060101ALI20220407BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20220407BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
A61C13/007
A61C9/00 Z
A61C13/00 Z
A61C19/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547840
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 AU2020050215
(87)【国際公開番号】W WO2020176949
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】2019900752
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521148887
【氏名又は名称】インプラント ソリューションズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】タックマン,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA20
4C052NN02
4C052NN03
4C052NN15
(57)【要約】
本発明は、義歯作成アセンブリ用の装置であって、患者の口腔内に挿入し、印象材料を受け入れるための印象トレー部品と、印象トレー部品に取り付け可能な歯科用模型ジグであって、前記歯科用模型ジグは模型歯を含む、歯科用模型ジグと、を含み、印象トレー部品と歯科用模型ジグとの間の取り付けは、歯科用模型ジグを患者の口腔内で印象トレー部品に対し所望の位置に移動させるために調整可能であり、前記相対位置は、印象材料及び歯科用模型ジグのスキャンを可能にするために維持可能である、装置に関する。本発明は、義歯のデジタル設計/製造のための3Dスキャンを支援し、患者の口腔内の印象トレー部品内の印象材料に対して患者の口腔内で模型歯を配置し、及び方向付けることを可能にし、装置が取り出されるときに位置及び向きは維持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯作成アセンブリ用の装置であって、患者の義歯のデジタル設計及び/又は製造を容易にするためにスキャンを行うように構成されている、装置であり、
前記患者の口腔内に挿入し、印象材料を受け入れるための印象トレー部品と、
前記印象トレー部品に取り付け可能な歯科用模型ジグであって、前記歯科用模型ジグは模型歯を含む、歯科用模型ジグと、
を含み、
前記印象トレー部品と前記歯科用模型ジグとの間の前記取り付けは、前記歯科用模型ジグを前記患者の前記口腔内で前記印象トレー部品に対し所望の位置に移動させるために調整可能であり、前記相対位置は、前記印象材料及び前記歯科用模型ジグのスキャンを可能にするために維持可能である、
装置。
【請求項2】
前記印象トレー部品と前記歯科用模型ジグとの間の前記取り付けは、前記印象トレー部品と前記歯科用模型ジグとの間の前記相対位置を固定するために、選択的にロック可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記歯科用模型ジグは、前記歯科用模型ジグの前後方向の移動を可能にするために、前記印象トレー部品に摺動可能に取り付けられる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記印象トレー部品に対する前記歯科用模型ジグの前記前後方向の移動を選択的に阻止するための機械的なロック要素を更に含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記歯科用模型ジグは接続部を更に含み、前記接続部は、前記患者の前記口腔内で前記印象トレー部品に対する前記歯科用模型ジグの所望の位置への調整を提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記接続部は、可塑的に変形可能な材料である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記接続部は延性ワイヤである、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記印象トレー部品によって受け入れ可能であり、前記接続部によって前記模型歯に接続される支持部を更に含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記支持部は、前記印象トレー部品に対する所定の位置に前記歯科用模型ジグをロックするために、ねじ付き要素と係合可能なねじ要素を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記模型歯は、外観が実際の歯を模すように前記歯科用模型ジグ上に設けられた複数の模型歯を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記印象トレー部品は、着脱式前方トレー部を有する複数部品印象トレーの一部であり、前記前方トレー部の取り外しにより、前記印象トレー部品への前記歯科用模型ジグの前記取り付けを可能にする、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
以下、即ち、
上顎印象トレー、
下顎印象トレー、及び
顎のサイズに従って複数の異なるサイズの歯科用模型ジグから前記歯科用模型ジグを選択することができる、請求項1~11のいずれか一項に記載の義歯作成アセンブリ用の装置
のうちの1つ以上を含む義歯作成キット。
【請求項13】
患者の義歯作成で使用する方法であって、
印象材料を第1の下部印象トレーに装填して、前記下部印象トレーを前記患者の口腔内に挿入し、下歯肉の印象を採得することと、
前記第1の下部印象トレーを前記患者の口腔から取り出すことと、
印象材料を第2の上部印象トレーに装填して、前記第2の上部印象トレーを前記患者の口腔内に挿入し、上歯肉の印象を採得することと、
前記第2の上部印象トレーを前記患者の口腔から取り出すことと、
歯科用模型ジグを前記第2の上部印象トレーに取り付けることであって、前記歯科用模型ジグは模型歯を含む、ことと、
前記第2の上部印象トレーを前記患者の口腔内の前記上歯肉上に再挿入することと、
前記歯科用模型ジグを前記第2の上部印象トレーに対して所望の位置に調整することと、
前記第2の上部印象トレー及び前記歯科用模型ジグを取り出すことと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記下部印象トレーが前記患者の口腔から取り出された後、印象材料を第2の下部印象トレーに装填する工程であって、前記第2の下部印象トレーは、上向きに突出する調整可能な顎内スペーサを含む、工程と、前記第2の下部印象トレーを前記患者の口腔に挿入する工程と、前記顎内スペーサを調整する工程とを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の上部印象トレーが前記患者の口腔内に挿入される前に、印象材料を第1の上部印象トレーに装填する工程と、前記第1の下部印象トレーを前記患者の口腔内に挿入して上歯肉の印象を採得する工程と、前記第1の上部印象トレーを取り出す工程とを更に含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の上部印象トレーは、前記第2の上部印象トレーと取り外し可能な前方トレー部とを含み、前記第1の上部印象トレーが前記患者の口腔から取り出されると、前記印象材料は切断され、前記歯科用模型ジグの取り付けを可能にするために、前記取り外し可能な前方トレー部は前記第2の上部印象トレーから取り外され、その後前記印象トレーは前記患者の口腔に戻される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の上部印象トレーは、前記顎内スペーサが載る下向きの座面を含む、請求項14又は15~16に従属する、請求項14又は15~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の下部印象トレーと前記第2の上部印象トレーとの間に咬合歯型材料を導入する工程と、咬合歯型印象を採得する工程であって、前記咬合歯型印象は、前記顎内スペーサによって設定された間隔により一部画定される、工程とを更に含む、請求項14又は15~17に従属する、請求項14又は15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
義歯セットのデジタル設計及び/又は製造で使用するために、前記上部印象トレー及び前記下部印象トレー並びに前記取り付けられた歯科用模型ジグによって提供される前記印象をスキャンする工程を更に含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項13~19のいずれか一項に記載の方法を実施することから得られた前記上部印象トレー及び前記下部印象トレー並びに前記取り付けられた歯科用模型ジグによって提供される前記印象をスキャンすることによって提供されるデジタルデータを受け取ることと、前記デジタルデータに従い義歯セットを製造することとを含む、
義歯製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義歯作成アセンブリ、方法、及び装置に関する。特に、本発明は、患者から採得した印象をスキャンすることによる義歯のデジタル設計及び/又は製造に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯は、部分的に又は完全に無歯の患者の失われた歯を置換するために構築される。患者の口腔内に挿入したときに快適な一連の義歯の設計及び製造は複雑な作業である。無歯の患者の印象は、患者の口腔組織及び口の細部を全て捉えることができるほど十分に正確でなければならない。印象に起因する不完全性は、義歯自体を正確に設計する難しさを高め、後に、義歯の製造及び適合に影響を及ぼす。
【0003】
現在の業界における傾向は、患者から採得した印象をスキャンし、CADなどのコンピュータソフトウェアで一連の義歯を設計し、その後、CAMソフトウェア及び機械加工を使用してCADから義歯を製造することによるデジタル製作義歯へと向かっている。製造された最初の義歯セットから、これらの義歯の複製物を患者に対して試し、その後、最終的な所望の一連の義歯が製作されるまで適合セッションで義歯を繰り返し修正することが一般的である。
【0004】
したがって、従来の方法及びデバイスを使用した義歯構築のプロセス全体では、一般に、歯科医と患者との間で予約が多数回必要となり、相当の時間量及び技能を要する。一般に、患者は歯科専門医を何度も訪れなければならず、通院は4回又は5回にもなる。このような通院は、歯科医が患者の歯肉の印象を採得し、適合をチェックし、歯部を設計し、その後、患者の口腔の咬合採得などの特徴を確認して調整するために必要である。
【0005】
患者の義歯を製作するための既知の方法及び装置の1つは、Dentca,Inc.に付与された米国特許第8,998,615号明細書に開示されている。しかしながら、その全般的な技術水準は、義歯の設計及び/又は製造で使用される代替的な義歯作成アセンブリ、方法、及び装置にすぐに受け入れられるものであろう。
【0006】
本明細書における従来技術の参照は、この従来技術が任意の法域における共通一般知識の一部を成すことを認識若しくは示唆するものではない、又はこの従来技術が当業者によって理解される、関連するものとみなされる、及び/若しくは他の従来技術と組み合わせられることが合理的に予想されることを認識若しくは示唆するものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明は、義歯作成アセンブリ用の装置であって、患者の義歯のデジタル設計及び/又は製造を容易にするためにスキャンを行うように構成されている、装置であり、患者の口腔内に挿入し、印象材料を受け入れるための印象トレー部品と、印象トレー部品に取り付け可能な歯科用模型ジグであって、前記歯科用模型ジグは模型歯を含む、歯科用模型ジグと、を含み、印象トレー部品と歯科用模型ジグとの間の取り付けは、歯科用模型ジグを患者の口腔内で印象トレー部品に対し所望の位置に移動させるために調整可能であり、前記相対位置は、印象材料及び歯科用模型ジグのスキャンを可能にするために維持可能である、装置を提供する。
【0008】
好ましくは、印象トレー部品と歯科用模型ジグとの間の取り付けは、印象トレー部品と歯科用模型ジグとの間の相対位置を固定するために、選択的にロックされ得る。
【0009】
好ましい形態では、歯科用模型ジグは、前後方向の移動を可能にするために、印象トレー部品に摺動可能に取り付けられ、当該装置は、前記移動を選択的に阻止するための機械的なロック要素を含む。
【0010】
更に、印象トレー部品への歯科用模型ジグの取り付けは、他の方向における調整用に構成されてもよい。これは、ある長さの延性ワイヤなどの可塑的に変形可能な材料の接続部を含むことにより達成され得る。好ましくは、接続部は、印象トレー部品によって受け入れ可能な支持部に歯科用模型ジグを接続する。支持部は、固定位置において、印象トレー部品に選択的に取り外し可能に取り付け可能であってもよい。支持部は、印象トレー部品に対する位置に歯科用模型ジグをロックするために、ねじ付き要素と係合可能なねじ要素を含んでもよい。
【0011】
したがって、本発明は、印象材料が患者の歯肉上に係合している間に、患者の口腔内で、印象トレー部品内の印象材料に対して模型歯を配置し、方向付けることを可能にする。この位置及び向きは、装置が患者の口腔から取り出されるときに維持される。その後、印象材料及び歯科用模型ジグの3Dスキャンにより、義歯の設計及び/又は製造用の正確なデジタルモデルを提供する。
【0012】
前記模型歯は、外観が実際の歯を模すように歯科用模型ジグ上に設けられた複数の模型歯を含んでもよく、又は一連の歯の1つ以上の構造的若しくは機能的特徴をモデル化するための単一の若しくは複雑な形態を含んでもよい。好ましくは、装置は、上顎義歯用に使用され、前記模型歯は、6本の中央上前歯などの中央上前歯を模倣する。
【0013】
好ましくは、印象トレー部品は、着脱式前方トレー部を有する複数部品印象トレーの一部であり、前方トレー部の取り外しにより、歯科用模型ジグの前記取り付けを可能にする。
【0014】
このようにして、歯科用模型ジグの位置決めのために、前方トレー部が取り外され、印象トレーが患者の口腔に戻されて患者の歯肉上に位置付けられる前に、印象トレーに、前歯肉部を含む歯肉の印象を採得するための印象材料が装填され得る。
【0015】
第2の態様において、本発明は、以下、即ち、上顎印象トレー、下顎印象トレー、及び患者の口腔のサイズに従って複数の異なるサイズの歯科用模型ジグから歯科用模型ジグを選択することができる、第1の態様による義歯作成アセンブリ用の装置、のうちの1つ以上を含む義歯作成キットを提供する。
【0016】
前記キットは、上義歯及び下義歯の顎内間隔の記録に使用するための調整可能な顎内スペーサを含むことが好ましい。
【0017】
前記キットは、上顎印象トレー及び下顎印象トレーのうちの1つ以上と係合するように構成されているハンドルを更に含んでもよい。
【0018】
第3の態様において、本発明は、患者の義歯作成で使用する方法であって、印象材料を第1の下部印象トレーに装填して、前記下部印象トレーを患者の口腔内に挿入し、下歯肉の印象を採得することと、第1の下部印象トレーを患者の口腔から取り出すことと、印象材料を第2の上部印象トレーに装填して、前記第2の上部印象トレーを患者の口腔内に挿入し、上歯肉の印象を採得することと、第2の上部印象トレーを患者の口腔から取り出すことと、歯科用模型ジグを第2の上部印象トレーに取り付けることであって、前記歯科用模型ジグは模型歯を含む、ことと、第2の上部印象トレーを患者の口腔内の上歯肉上に再挿入することと、歯科用模型ジグを第2の上部印象トレーに対して所望の位置に調整することと、第2の上部印象トレー及び歯科用模型ジグを取り出すことと、を含む、方法を提供する。
【0019】
取り付けられた歯科用模型ジグを備える第1の下部印象トレー及び第2の上部印象トレーは、義歯セットの設計及び/又は製造のために、下歯肉の印象、上歯肉の印象、及び歯科用模型ジグをスキャンする(模型歯のスキャンなど)ために提供される。
【0020】
有利には、当該方法は、歯科医院への1回の通院で義歯セットの全ての要素のモデル化を可能にし、義歯の歯肉部が確立された後に歯の位置を確立するためにそれ以上の通院は必要ない。
【0021】
好ましくは、当該方法は、下部印象トレーが患者の口腔から取り出された後、印象材料を第2の下部印象トレーに装填する工程であって、第2の下部印象トレーは、上向きに突出する調整可能な顎内スペーサを含む、工程と、第2の下部印象トレーを患者の口腔に挿入する工程と、顎内スペーサを調整する工程と、を含む。
【0022】
好ましくは、当該方法は、第2の上部印象トレーが患者の口腔内に挿入される前に、印象材料を第1の上部印象トレーに装填する工程と、第1の下部印象トレーを患者の口腔内に挿入して上歯肉の印象を採得する工程と、第1の上部印象トレーを取り出す工程と、を更に含む。
【0023】
第1の上部印象トレーと第2の上部印象トレーは、別個の印象トレーであってもよい、又は第1の上部印象トレーは、第2の上部印象トレーと取り外し可能な前方トレー部とを含む複数の部品を含んでもよい。この場合、第1の上部印象トレーが患者の口腔から取り出されると、印象材料は切断され、前記歯科用模型ジグの取り付けを可能にするために、取り外し可能な前方トレー部は取り外される。その後、これは、第2の上部印象トレーとして患者の口腔に戻される。
【0024】
第2の上部印象トレーと第2の下部印象トレーとの間の所望の間隔を設定する際に顎内スペーサを前記座面に載せる工程を含む方法において、第2の上部印象トレーは、顎内スペーサが載る下向きの座面を含んでもよい。
【0025】
当該方法は、第2の下部印象トレーと第2の上部印象トレーとの間に咬合歯型材料を導入する工程と、咬合歯型印象を採得する工程であって、咬合歯型印象は、顎内スペーサによって設定された間隔により一部画定される、工程と、を含んでもよい。
【0026】
当該方法は、義歯セットのデジタル設計及び/又は製造で使用するために、上部印象トレー及び下部印象トレー並びに取り付けられた歯科用模型ジグによって提供される印象をスキャンする工程を含んでもよい。
【0027】
本発明は、上で定義された方法を実施することにより得られた、上部印象トレー及び下部印象トレー並びに取り付けられた歯科用模型ジグによって提供される印象をスキャンすることによって提供されるデジタルデータを受け取ることと、デジタルデータに従い義歯セットを製造することとを含む、義歯製造方法に適用される。
【0028】
製造は、例えば、デジタルフライス盤又はデジタル3Dプリンタによって実施され得る。
【0029】
本明細書で使用する場合、文脈で別段の要求がある場合を除いて、「含む(comprise)」という用語及びこの用語の変化形、例えば、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」は、更なる付加物、構成要素、整数又は工程の除外を意図するものではない。
【0030】
本発明の更なる態様及び先行する段落に記載した態様の更なる実施形態は、例として記載され、添付の図面を参照する以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態による装置の反転分解斜視図を提供する。
図2A】本発明の一実施形態による上顎印象トレーの上部斜視図を提供する。
図2B図2Aの反転斜視図を提供する。
図3A】本発明の一実施形態による歯科用模型レシーバの反転斜視図を提供する。
図3B】本発明の一実施形態による固定ディスクを備える図3Aの歯科用模型レシーバの上部斜視図を提供する。
図4A】本発明の一実施形態によるピンパッド及びピンパッドレシーバの上部斜視図を提供する。
図4B】本発明の一実施形態による図1の上顎印象トレーの後方部分に接続された図4Aのピンパッド及びピンパッドレシーバの反転斜視図を提供する。
図5】本発明の一実施形態による歯科用模型ジグの反転斜視図を提供する。
図6】本発明の一実施形態による方法を示す。
図7】本発明の一実施形態による下顎印象トレーの上部斜視図を提供する。
図8】本発明の一実施形態によるバイトトレーの後方上部斜視図を提供する。
図9A】本発明の一実施形態による上顎印象トレーの後方部分の上部斜視図を提供する。
図9B】本発明の一実施形態による上顎印象トレーの前方部分の反転斜視図を提供する。
図10A図1の組み立て後の装置の上部斜視図を提供する。
図10B図10Aの反転斜視図を提供する。
図11】本発明の別の実施形態による上顎印象トレーの後方部分の下部斜視図を提供する。
図12図11の後方部分の上部斜視図を提供する。
図13】本発明の別の実施形態による上顎印象トレーの前方部分の上部斜視図を提供する。
図14図13の前方部分の背面図を提供する。
図15】本発明の別の実施形態による歯科用模型ジグの上部斜視図を提供する。
図16】本発明の一実施形態によるバイトトレーの上部斜視図を提供する。
図17】本発明の一実施形態によるハンドルの斜視図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで、装置100の構成要素を示す図1を参照する。装置100は、印象トレー10と、歯科用模型ジグレシーバ20と、歯科用模型ジグ30と、固定ねじディスク40とを含む。印象トレー10は、部分上部印象トレー(上顎トレー)を提供する。部分上部印象トレーは、患者の口腔内に挿入され、患者の上顎弓に配置される。したがって、図1に示される装置100は反転図であることは理解されるであろう。本明細書において横断方向に言及する場合、解剖学的肢位(即ち患者は立位)で一般的に理解されている水平面に平行な方向に言及するものと解釈される。垂直方向に言及する場合、解剖学的肢位で一般的に理解されている垂直方向を指す。したがって、上部及び下部への言及は、一般に、患者が立位にある状態の装置100(又は任意の他の構成要素)の位置に基づいて解釈される。
【0033】
図2A及び図2Bは、2部品上顎印象トレー10を示す。2部品上顎印象トレー10は、適切な印象材料、例えば、アルギン酸塩印象材料、PVS印象材料などで充填され、患者の口腔内に挿入されて上顎弓に装着されると、患者の口腔の軟組織及び上顎弓のネガティブ印象を提供する。上顎印象トレー10は、前方部分12及び後方部分14を含む。前方部分12は、スナップフィット接続などによる任意の適切な取り外し可能な手法で、後方部分14にしっかりと、しかし着脱可能に接続されている。前方部分12は、その下面から突出したブラケット13を含む。ブラケット13は、患者の口腔から上顎トレー10を簡単に取り外すための適切な歯科器具によって上顎印象トレー10を掴むことを可能にする。後方部分14はその下面に結合部18を含む。結合部18は一対の隆起した壁15を含む。一対の隆起した壁15は、後方部分14の下面から垂直下向きに突出し、実質的に後方部分14の後端部から前端部まで延びる。隆起した壁15は、複数の離隔した指部16と、歯科用模型ジグレシーバ20又はピンパッドコネクタ52(図3A図4A)(これらは両方とも、後方部分14としっかりと嵌合接続するための対応形状を含む)をしっかりと受け入れるように構成された凹部17とを含む。歯科用模型ジグレシーバ20又はピンパッドコネクタ52が後方部分14に結合されると、歯科用模型ジグレシーバ20又はピンパッドコネクタ52は固定位置にある、即ち、後方部分14に対して並進又は回転することはできない。また、図2Bに示されるような一対の位置決め突起19が後方部分14の下面から突出している。位置決め突起19の機能については後述する。
【0034】
図3A及び図3Bは、結合部18の中央面に据え付けるための丸みのある上部面を有する実質的に直方体の形態の本体23を有する歯科用模型レシーバ20を示す。本体23の前端部は貫通空洞22を含み、貫通空洞22を通して、歯科用模型ジグ30のスライダ支持体32(図5)を前後方向に受け入れることができる。本体23の平らな底面は、ねじ付きアパーチャ24を含む。ねじ付きアパーチャ24は、締結要素、即ち、固定ねじディスク40の上面の中央から突出するグラブねじ(図示せず)を受け入れるように構成されている。したがって、グラブねじは固定ねじディスク40の一部であり、使用時に、固定ねじディスク40を時計回り方向に手で回転させると、グラブねじは、組み立て時に、空洞22内にある歯科用模型ジグ30のスライダ支持体32上に載るまでアパーチャ24にねじ込まれ、それにより、歯科用模型ジグ30を前後方向に沿った所定の位置に固定する。換言すると、歯科用模型ジグ30は、前後方向に沿って前後に移動しないよう拘束される。本体23は一対の側方ウイング部25を更に含む。一対の側方ウイング部25は、本体23から、本体23の前後壁に沿って横断方向に延びる。ウイング指部26が後方部分14の隆起した壁15の対応する凹部17に嵌合するように構成され、それにより噛み合い段状縁部プロファイル又は指部接合構成を提供するように、ウイング部25は複数の離隔した凹部27を含む。固定ねじディスク40は、複数の均等に離隔した短いスポーク42を含む。複数の均等に離隔した短いスポーク42は、固定ねじディスク40から半径方向外向きに延び、使用者がグラブねじを歯科用模型ジグ30に対して緩める又は締める際にディスク40の把持を支持する。
【0035】
ここで、ピンパッドコネクタ52及びピンパッド50を示す図4A及び図4Bを参照する。ピンパッド50とピンパッドコネクタ52は、任意の適切な手法で互いに接続される別個の構成要素であり得る、又は好ましくは、一体的に形成された構成要素によって提供され得る。ピンパッドコネクタ52は、歯科用模型ジグレシーバ20と同様に、ピンパッド50が後方部分14の結合部18にしっかりと受け入れられることを可能にする。ピンパッドコネクタ52は、本体23と概ね同様の形状の本体53を含む。本体53の前端部は空洞51を含み、空洞51を通して、歯科用模型ジグ30のスライダ支持体32(図5)を前後方向に受け入れることができる。本体53は一対の側方ウイング部55を更に含む。一対の側方ウイング部55は、本体53から、本体53の前後壁に沿って横断方向に延びる。ウイング部55は、複数の交互に配されるウイング指部56及び凹部57を含む。複数の交互に配されるウイング指部56及び凹部57は、後方部分14の隆起した壁15の対応する指部16及び凹部17に嵌合するように構成され、それにより噛み合い段状縁部プロファイル又は指部接合構成を提供する。ピンパッド50は、後述される方法において、上顎と下顎との間の垂直寸法を記録するために使用される垂直ピン86(図8)のための座面58を提供するように構成されている。延在するテーパ状の前方部分54によって示されるように、ピンパッド50の座面の周囲には丸みが付けられている。その代わりとして、他の実施形態では、後述される方法において、ピン86のための座面を提供するためにディスク40が使用されてもよい。
【0036】
図5は、示されるように凸状下部面を有する直方体の一般的形態のスライダ支持体32を含む歯科用模型ジグ30を示す。スライダ支持体32は、貫通空洞22内を前後方向に沿って摺動するために、貫通空洞22内にぴったりと収まるような形状及びサイズにされている。したがって、歯科用模型ジグ30が上顎印象トレー10の後方部分14によって受け入れられたとき、スライダ支持体32の移動により、後方部分14に対する模型歯36の第1自由度の位置調整を可能にする。本実施形態では、模型歯36は、患者の6本の上顎前歯を表す一連の6本の歯の形態をとる。しかしながら、より好ましくない形態では、模型歯36は、模型歯の表現の提供だけを必要とする。換言すると、模型歯36は、所望の義歯用の歯の設計及び/又は製造を案内することができる位置若しくは向き関係の提供だけを必要とする。模型歯36は実際の歯を必ずしも模す必要はなく、その代わりとして、2本以上の歯の特定の寸法又は向きを模すために使用され得るバー又は他の構成要素の形態である。
【0037】
模型歯36は、患者の6本の上顎前歯を表す一連の6本の歯の形態であることが好ましい。なぜなら、それにより、臨床医が模型歯36を前後方向において適切に位置決めすることが可能になり、それによって、患者が一連の製作された義歯の6本の上顎前歯で十分な唇の支持を受けることが確実になるからである。
【0038】
ワイヤ要素34が、スライダ支持体32の最前壁から軸方向に延び、スライダ支持体32を模型歯36に接続している。ワイヤ要素34は可塑的に変形可能なワイヤであり、物理的操作によって、模型歯36と上顎印象トレー10の後方部分14との間に更なる5自由度の調整を提供することを可能にする。したがって、図5に示されるように、装置100は、模型歯36と上顎印象トレー10の後方部分14との間に合計6自由度の調整を提供する。上述の複数の調整を提供するのみならず、ワイヤ要素34の材料は、変形することなくある程度の荷重に耐えることができる。即ち、所望の位置に維持可能であり得る。したがって、処置中に設定された模型歯36の位置及び向きは、模型歯36と上部分14との取り外しプロセス中及び後の取り扱い中に変わらないままである。ワイヤ要素34は、その機能を達成するための任意の適切な形態のものであり得る。例えば、ワイヤ要素は、陽極酸化処理アルミニウム、アニール銅などであってもよい。
【0039】
ここで、装置100を用いた本発明の一実施形態による方法600について、図6を参照して説明する。工程610において、下顎印象トレー70(図7)に印象材料が提供され、患者の口腔内に挿入されて下顎弓に装着される。工程620において、前述の、図2Aに示される上顎印象トレー10に印象材料が提供され、患者の口腔内に挿入されて上顎弓に装着される。この段階で、前方部分12と後方部分14とが接続され、完全な上顎印象トレー10を形成する。上顎印象トレー10の下面には、ピンパッドコネクタ52及びピンパッド50が挿入されている。
【0040】
工程630において、印象材料がセットされた後、下顎印象トレー70が患者の口腔から慎重に取り出され、バイトトレー80(図8)と交換される。代替的な実施形態では、標準的な上顎印象トレーを最初に使用し、その後、下顎印象トレー70と共に取り外してもよい。そのような実施形態では、その後、臨床医は、上顎印象トレー10をバイトトレー80と共に挿入する。バイトトレー80には、患者の口腔内に挿入前に印象材料が提供される。バイトトレー80は、全体的な形状が下顎印象トレー70に類似しているが、上顎印象トレー10の後端部とバイトトレー80とがぶつからないようにするために、後方向がはるかに短い。別の実施形態では、下顎印象トレー70は、取り外し時にバイトトレー80に応じた印象トレーを提供する取り外し可能な後方部分を有してもよい。バイトトレー80は、バイトトレー80の後方ウイング部85間に横断方向に延びるブリッジ構造体82を更に含む。ブリッジ構造体82は、垂直ねじ付きピン86を受け入れるためのねじ付きアパーチャ84を含む。垂直ねじ付きピン86は、ねじを提供し、このねじの端部はピンパッド50の下部座面58に載ることになっている。バイトトレー80はまた、図8に示されるように後方ウイング部85の上面から突出した複数の横断方向に延びる位置決めリブ88を含む。リブ88の機能については後述する。ピン86の調整は、バイトトレー80と上顎印象トレー10との間の所望の垂直間隔、即ち、患者の口が閉じられているときの上弓と下弓との間の間隔の設定及び記録を支援するために使用される。ピン86は、所望の顎間隔でピンパッド50の座面58に載るまで、刻み付きの下端部の回転によって調整される。したがって、ピンパッド50は、バイトトレー80及び上顎印象トレー10に対するねじ付き垂直ピン86の固定基準点を提供する。代替的形態では、別個のバイトトレー80は必要なく、下顎印象トレー70は、咬合歯型印象が採得されると取り外すことができる着脱式後方部分を備える。このような構成においては、下顎印象トレー70はまた、適切な手法でピンを提供する。
【0041】
工程640において、ここで、バイトトレー80と上顎印象トレー10との間の空間に充填材料が挿入される。これにより、患者が咬合歯型印象を提供することを可能にし、咬合歯型印象は、垂直ピン86によって設定された間隔により一部画定される。咬合歯型は、患者の下顎弓と上顎弓との間の間隔の完全な3D印象を提供する。
【0042】
工程650において、バイトトレー80、咬合歯型材料、及び上顎印象トレー10が患者の口腔から慎重に取り出される。工程660において、上顎印象トレー10の前方部分12は後方部分14から分離される。分離された後方部分と前方部分は、それぞれ図9A及び図9Bに示される。この分離は、セットされた印象材料を、前方部分12と後方部分14との間の境界に沿って切断することによって達成され得る。前方部分12と後方部分14のこの分離により、記載されるように、ここで、歯科用模型ジグ30が後方部分に接続されることを可能にする。工程670において、ピンパッド50及びピンパッドコネクタ52が後方部分14の結合部18から取り外される。これらの代わりに、図10A及び図10Bに示されるように、歯科用模型レシーバ20、固定ディスク40、及び適切な歯科用模型ジグ30が結合部18に挿入される。しかしながら、臨床医は、この置換を行わないことを選択する場合があり、その代わりに、スライダ支持体32をピンパッドコネクタ52の貫通空洞51内に挿入する場合がある。その後、スライダ支持体32は歯科用模型ジグレシーバ20と同じ機能を実施する。これは、臨床医が模型歯36の位置を確立するときに垂直ピン86を所定の位置に維持したい場合に好ましい場合がある。適切な歯科用模型30は、当該方法で使用される上顎印象トレー10のサイズに一部基づいて選択され、例えば、小、中、大、及び特大トレーはそれぞれ、対応する歯科用模型ジグ30を有する。それにより、歯科用模型ジグ30は、特定の患者の口腔に適した適切なサイズの表現の模型歯36を提供する。歯科用模型ジグ30のスライダ支持体32は、歯科用模型ジグレシーバ20の空洞22内に挿入される。歯科用模型ジグレシーバ20と固定ねじディスク40と歯科用模型ジグ30とを備えた後方部分14は、患者の口腔内の以前と同じ場所に再度挿入される。
【0043】
工程680において、模型歯36は6自由度で調整され得る。好ましくは、前後調整は、最初に、模型歯36が正しい位置に置かれるまでスライダ支持体32を後方及び前方に移動させることにより実現され、これには、患者に十分な唇の支持を提供することが含まれる。この位置が決定されると、ディスク40のグラブねじがスライダ支持体32に係合し、支持体32、ゆえに模型歯36の更なる前後移動を阻止するように、ディスク40を回転させる。その後、模型歯36は、模型歯36の所望の位置に到達するまで他の5自由度の一部又は全部に関して物理的に操作される。この所望の位置から、臨床医は、患者の口腔の組織印象、顎の関係性、前歯の位置、正中線、過蓋咬合、傾斜角、前傾(傾斜)及び笑線などの情報を正確に記録することができる。患者はまた、完成した義歯が提供されたときに自身の笑みがどのように見えるかについての表示を受け取ることができる。
【0044】
工程690において、模型歯36の所望の位置が特定されると、模型歯36がセットされた所望の相対位置及び向きから移動しないようにして、後方部分14はそれに接続された構成要素と共に、患者の口腔から慎重に取り出される。
【0045】
工程700において、以下の構成要素は個々に5軸で3Dスキャンされ、360度の印象、即ち、a)互いに接続された後方部分14と前方部分12とを備える上顎印象トレー10、b)歯科用模型ジグ30が接続された上顎印象トレー10の後方部分14、c)下顎印象トレー70、d)バイトトレー80、及びe)バイトトレー80と咬合歯型材料と上顎トレー10の後方部分14とのアセンブリ(即ち、連結された印象)を取得する。項目e)のスキャンされるアセンブリの場合、咬合歯型材料はその下面に溝を含み、この溝は、位置決めリブ88と、咬合歯型印象が採得されるときに位置決め突起19によって形成された、咬合歯型材料の上面に形成された切欠部とによって形成されたものである。したがって、位置決めリブ88及び位置決め突起19は、咬合歯型材料中に位置決め特徴部を提供し、位置決め特徴部は、項目e)の組み立て後のスキャンのためにバイトトレー80、咬合歯型材料、及び上顎トレー10の後方部分14の正確な組み立てを可能にする。
【0046】
その後、スキャンは、適切な歯科用ソフトウェアで用いられ、このソフトウェアで、別々のスキャンを1つの大域的な座標系にマージして、患者の義歯の設計に使用される完全な3Dデータセットを提供する。記載されている方法の一実施形態では、更に、臨床医は、患者の口腔内の組み立て済みの歯科用模型ジグ30の写真を、模型歯36が所望の位置にある状態で撮影することができる。その後、この写真は、3Dモデル(1つの向き、即ち、患者の正面図のみ)上に重ね合わせることができ、設計の部品を案内することができる及び/又はその後の歯の設計を確認するための手段を提供することができる。これは、写真が、患者の傾斜角及び正中線を相当に正確に反映するからである。これらの設計から、一連の義歯を製造することができる。例えば、一連の義歯は、5軸フライス盤、成形、3Dプリントなどを用いて製造してもよい。
【0047】
したがって、装置100を使用すると、(歯科医院への1回の通院で)患者の軟組織の幾何学的構造だけでなく最終的な歯の位置も取得することが可能になる。これらの記録が取得された後、これらは、その後、バーチャル義歯設計ソフトウェアによってデジタル化される。バーチャル義歯設計ソフトウェアは、義歯の設計を組織の位置及び歯の位置の両方に基づいて案内するために印象システムを使用する。特に、一連の6つの模型前歯36を備えた歯科用模型ジグ30を使用すると、主な「笑ったときに見える歯(smile teeth)」の位置付け具としての役割を果たし、「笑ったときに見える歯」の周りに残りの義歯を作成することができる。この理由から、下歯列用の下顎印象トレー上に同じ手法で模型歯を設ける必要はない。正中線などのキーパラメータによって主な6つの模型前歯36から残りの歯を補間することが可能になるため、一般に、患者の咬合の設計には上前歯一式を設定すれば十分である。
【0048】
したがって、装置100及び方法600は、患者の1回の予約で以下の測定値、即ち、患者の口腔の組織印象、顎の関係性、前歯の位置、正中線、過蓋咬合、傾斜角、前傾(傾斜)及び笑線を記録することを可能にする。これにより、患者に正確に合うような義歯を設計及び製造することができ、それによって、義歯の適合を2度目且つ最後の予約で行うことを可能にする。これにより、患者の費用の大幅な削減、患者の治療時間の削減を可能にし、臨床医にとってより収益性が高く且つ効率的な解決策を提供することができる。
【0049】
スキャンから生成されるCADモデルは、義歯の様々な構成要素のデジタル記録を提供する。したがって、義歯の様々な構成要素のデジタル記録は、義歯の構成要素を機械加工するための操作をプログラムするために用いられる適切なCAMソフトウェアを使用することにより生成される。
【0050】
義歯のデジタル記録を有することは、より簡単な後処理、例えば、損傷し、交換が必要となり得る任意の構成要素の製造も可能にする。構成要素は、その各々のデジタル記録から簡便に再現することができる。当業者には理解されるように、義歯の任意の構成要素は容易にアップグレードすることができる。例えば、より耐久性のある材料を用いて、以前使用中に破損した構成要素を作成することができる。
【0051】
図11図16は、本発明の第2の実施形態の装置の構成要素を示す。この第2の実施形態の構成要素は、第1の実施形態(該当する場合)に対して使用したものと同様の参照番号にアポストロフィを付加したものを使用して参照する。別段の記載のない限り、第2の実施形態に示される特徴は、第1の実施形態の対応する特徴と同じ機能を有することは理解されるであろう。第2の実施形態の装置に伴う手法は、第1の実施形態の装置100の使用に伴う手法と実質的に同じであることも理解されるであろう。
【0052】
図11及び図12は、第2の実施形態の上顎印象トレーの後方部分14’を示す。後方部分14は、後方部分14の下面から結合部18’の両側で突出した複数の横断方向に延びる位置決めリブ19’を含む。第1の実施形態の突起19と同様に、リブ19’は、咬合歯型印象が採得されるときに、対応する溝を咬合歯型材料中に作成する。したがって、位置決めリブ19’は、咬合歯型材料中に位置決め特徴部を提供し、位置決め特徴部は、組み立て後のスキャンのために後方部分14’の正確な組み立てを可能にする。リブ19’はまた、所望の領域へのバイト材料の流れを促進する一方で、他の領域へのバイト材料の流れを制限する。
【0053】
結合形成部18’は一対の成形壁15’を含む。一対の成形壁15’は、後方部分14’の下面から垂直下向きに突出し、示されるように、後方部分14’の後端部から前端部までの距離のほとんどにわたって長手方向に延びる。2つの壁15’及び部分14’の表面の形状によってそれらの間に細長いチャネル92’が画定され、細長いチャネル92’は、図11及び図12に示されるように、丸い頂点を持つ実質的に三角形の断面を有する。後方部分14’の各側の位置決めリブ19’と隆起した壁15’との間にハンドリング用溝94’が配置されている。2つのハンドリング用溝94’は、後方部分14’の取り扱い、即ち、後方部分14’の患者の口腔からの出し入れ操作を容易にするために使用されるハンドリング器具98’(図17)の相補形グリップ部96’を受け入れるように構成されている。
【0054】
ここで、完全な上顎印象トレーを形成するために後方部分14’と係合するように構成されている第2の実施形態の上顎印象トレーの前方部分12’を示す図13及び図14を参照する。前方部分12’は、結合形成部18’と係合するように構成されている、前方から後方に延びる舌部122’を含む。舌部122’はベース部124’を含み、ベース部124’は、その上部がベース部124’の下部に対して内側に凹設されている階段状の構成を有する。後方部分14’の成形壁15’は、ベース部124’を受け入れるための相補的な凹部を形成することは理解されるであろう(図14に示されるように)。舌部122’はまた、後方部分14’のチャネル92’に係合するように成形された上部保持部126’を含む。特に、保持部126’は、丸みのある上部部分及び側部部分を備えた概ね細長い形態を有する。これら部分の形状は、チャネル92’の断面の頂点に対して相補的であり、後方部分14’が前方部分12’に接続されたときに舌部122’を受け入れ、チャネル92’と嵌合的に係合することを可能にする。前方部分12’はまた、(後方部分14’のハンドリング用溝94’のように)ハンドル98’の相補形グリップ部96’を受け入れるように構成されたハンドリング用溝13’を両側に含む。
【0055】
ここで、後方部分14’と係合するように構成されている歯科用模型ジグ30’を示す図15を参照する。図面から理解されるように、本発明のこの実施形態は、第1の実施形態の歯科用模型ジグレシーバ20などの別々且つ別個の構成要素の必要性を排除している。これは、摺動支持体32’が後方部分14’の結合形成部18’の形状と相補的形状を有し、これら2つが直接係合することを可能にするからである。この目的のために、摺動支持体32’は、細長い両凸角柱の一般的形態である。細長い両凸角柱の断面は、対向する丸みのある側縁部と、細長い両凸角柱の上面(図15に見られるように)にある、歯科用模型ジグ30’が後方部分14’に接続されたときにチャネル92’の丸い頂点に嵌合的に係合するための丸みのある細長い中央形成部とを有する。このぴったりと合った係合は、所望の位置を選択するために歯科用模型ジグ30’を結合形成部18’に沿って摺動させることにより前後方向に調整することを可能にする。
【0056】
ここで、バイトトレー80’を示す図16を参照する。バイトトレー80’は、全体的な形状及び構成が第1の実施形態のバイトトレー80に類似している。しかしながら、バイトトレー80は、ウイング部85’の間に隆起したブリッジ構造体82’を含む。隆起したブリッジ構造体82’は、示されるように、ブリッジ構造体82’の両端部にハンドリング用溝89’を含む。ハンドリング用溝94’と同様に、ハンドリング用溝89’は、ハンドル98’の相補形グリップ部96’を受け入れるように構成されている。バイトトレー80’のウイング部85’はまた、成形された後端部を含み、バイトトレー80’が患者の口腔内にある際の後方部分14’とバイトトレー80’との間のあらゆる干渉を防ぐのに役立つ。成形された後端部はまた、トレー位置の目視検査を可能にするために、患者の口腔の後方組織領域の間隔をあけることを支援する。
【0057】
図17は、細長い舌状のハンドル部99’と頭部97’とを含むハンドル98’を示す。頭部97’は、一対の離隔した側方の細長いグリップ部96’を含む。グリップ部96’は、上述のように各トレーの相補的な溝と係合し、溝を掴む機能を果たす。
【0058】
前述のように、第2の実施形態の装置を使用する手法は第1の実施形態のものと実質的に同じであり、第2の実施形態により生じる違いは当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0059】
本明細書に開示及び定義される発明は、文章又は図面で言及した若しくは明らかとなる個々の特徴の2つ以上の代替的な全ての組み合わせに適用されることは理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代替的態様を構成する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】