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特表2022-522165蛍光の時間衰退を感知する装置、及びその装置を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】蛍光の時間衰退を感知する装置、及びその装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/58 20220101AFI20220407BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/82 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/84 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20220407BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
G01J5/58
C09K11/79
C09K11/78
C09K11/82
C09K11/80
C09K11/84
C09K11/67
C09K11/66
C09K11/61
C09K11/08 B
C09K11/08 H
C09K11/00 Z
C09K11/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549900
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(85)【翻訳文提出日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 CA2020000004
(87)【国際公開番号】W WO2020176964
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/812,843
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521375069
【氏名又は名称】ジェイムス,ダリル
(71)【出願人】
【識別番号】521375070
【氏名又は名称】バラジ,シャラダ
(71)【出願人】
【識別番号】521375081
【氏名又は名称】リーヴス,ニコラス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムス,ダリル
(72)【発明者】
【氏名】バラジ,シャラダ
(72)【発明者】
【氏名】リーヴス,ニコラス
【テーマコード(参考)】
2G066
4H001
【Fターム(参考)】
2G066AC20
2G066BA11
2G066BA38
4H001CA04
4H001CC15
4H001CF02
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA16
4H001XA19
4H001XA22
4H001XA31
4H001XA32
4H001XA39
4H001XA40
4H001XA57
4H001XA64
4H001YA22
4H001YA24
4H001YA25
4H001YA58
4H001YA59
4H001YA60
4H001YA62
4H001YA63
4H001YA64
4H001YA65
4H001YA66
4H001YA67
4H001YA68
4H001YA70
(57)【要約】
蛍光体温度計測に使用する蛍光センサが提供される。このセンサは、遠位端を含んだ光学光導体と、センサ素子とを備える。このセンサ素子は、光学光導体の遠位端または遠位端に近接して装着され、かつこの遠位端と整合される。センサ素子は、多結晶ナノコンポジットを含む。多結晶ナノコンポジットは、少なくとも1つの母体、少なくとも1つのドーパント、及び少なくとも1つの充填材を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体温度計測に使用する蛍光センサであって、遠位端を含んだ光学光導体と、近位端及び外面を含んだセンサ素子を備え、前記センサ素子の前記近位端は、前記遠位端に装着されるか、または前記遠位端に隣接して位置され、前記センサ素子は、単結晶固体、多結晶固体、または多結晶ナノコンポジットのうち1つを備える、蛍光センサ。
【請求項2】
前記センサ素子は、約90%よりも大きい固相密度を伴う多結晶ナノコンポジットか、または約90%よりも大きい固相密度を伴う多結晶固体である、請求項1に記載の蛍光センサ。
【請求項3】
前記多結晶ナノコンポジットは、少なくとも1つの母体、少なくとも1つのドーパント、及び少なくとも1つの充填材を含む、請求項2に記載の蛍光センサ。
【請求項4】
前記母体は、YSO、YSZ、Y、YVO、YAG、YAP、YAM、YGG、Al、LaS、GdS、MgTiO、3.5MgO0.5MgFGeO、MgFGeO、及びKSiF、のうち少なくとも1つである、請求項3に記載の蛍光センサ。
【請求項5】
前記ドーパントは、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つである、請求項3または4に記載の蛍光センサ。
【請求項6】
前記充填材は、SiO、ガラス、ホウケイ酸ガラス、ダイアモンド、及びドープされていない母体、のうち少なくとも1つである、請求項3~5のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項7】
前記ドープされていない母体は、YSO、YSZ、Y、YVO4、YAG、YGG、YAP、YAM、Al、LaS、GdS、MgO、GeO、TiO、SiO、及びMgF、のうち少なくとも1つである、請求項6に記載の蛍光センサ。
【請求項8】
前記充填材は二酸化ケイ素である、請求項3~7のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項9】
前記二酸化ケイ素の濃度は、約0.1~10重量%である、請求項8に記載の蛍光センサ。
【請求項10】
前記二酸化ケイ素は、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つを用いてドープされる、請求項8または9に記載の蛍光センサ。
【請求項11】
前記光学光導体は、光ファイバの束を備える、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項12】
前記センサ素子の前記近位端は研磨される、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項13】
前記センサ素子の前記外面は研がれる、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項14】
前記外面は反射面である、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項15】
前記センサ素子を収容するセンサキャップをさらに備える、請求項1~14のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項16】
前記センサ素子は、前記センサキャップ内に形成されるか、または前記センサキャップに接合される、請求項15に記載の蛍光センサ。
【請求項17】
前記光学光導体に装着され、前記遠位端に近接して位置された前記センサ素子を取り囲みかつ保持する、シースをさらに備える、請求項1~14のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項18】
前記シース及び前記センサ素子は、空洞を画定する、請求項17に記載の蛍光センサ。
【請求項19】
前記空洞は、不活性ガスまたは真空を保持する、請求項18に記載の蛍光センサ。
【請求項20】
前記シースは、光学光導体と同様の熱膨張係数を有する、請求項17~19のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項21】
前記光学光導体の前記遠位端と、前記センサ素子との間に接合層をさらに備える、請求項1~14のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項22】
前記接合層は、シリカ、ガラス、ケイ酸塩のうち少なくとも1つを備える、請求項21に記載の蛍光センサ。
【請求項23】
前記センサ素子は、ガラスもしくはシリカのコーティング、またはケイ酸塩コーティングを伴いカプセル化される、請求項1~14のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項24】
前記光学光導体は、1つまたは複数の高開口数の光ファイバを備える、請求項1~23のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項25】
前記光ファイバは、ゲルマニウムでドープされたシリカコア、及びフルオロケイ酸塩でドープされたシリカクラッドを備える、請求項24に記載の蛍光センサ。
【請求項26】
前記光学光導体は、1つまたは複数の湾曲を伴う形状に形成される、請求項1~25のうちいずれか一項に記載の蛍光センサ。
【請求項27】
蛍光時間衰退感知に使用する多結晶ナノコンポジットであって、少なくとも1つの母体、少なくとも1つのドーパント、及び少なくとも1つの充填材の混合物を備える、多結晶ナノコンポジット。
【請求項28】
蛍光時間衰退感知に使用する多結晶のナノコンポジットであって、少なくとも1つの母体、少なくとも1つのドーパント、及び少なくとも1つの充填材の混合物を備え、前記混合物は、少なくとも約5トン/インチの高圧化で圧縮される、多結晶ナノコンポジット。
【請求項29】
前記多結晶ナノコンポジットは焼結される、請求項28に記載の多結晶ナノコンポジット。
【請求項30】
前記母体は、YSO、YSZ、Y、YVO、YAG、YAP、YAM、YGG、Al、LaS、GdS、MgTio、3.5MgO0.5MgFGeO、MgFGeO、及びKSiF、のうち少なくとも1つである、請求項29に記載の多結晶ナノコンポジット。
【請求項31】
前記ドーパントは、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つである、請求項28または29に記載の多結晶ナノコンポジット。
【請求項32】
前記充填材は、SiO、ホウケイ酸ガラス、ダイアモンド、及びドープされていない母体、のうち少なくとも1つである、請求項28~31のうちいずれか一項に記載の多結晶ナノコンポジット。
【請求項33】
前記ドープされていない母体は、YSO、YSZ、Y、YVO、YAG、YGG、YAP、YAM、Al、LaS、GdS、MgO、GeO、TiO、SiO、及びMgF、のうち少なくとも1つである、請求項32に記載の多結晶ナノコンポジット。
【請求項34】
前記充填材は二酸化ケイ素である、請求項28~33のうちいずれか一項に記載の多結晶ナノコンポジット。
【請求項35】
前記二酸化ケイ素の濃度は、約0.1~20重量%である、請求項34に記載の多結晶ナノコンポジット。
【請求項36】
前記二酸化ケイ素は、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つを用いてドープされる、請求項34または35に記載の多結晶ナノコンポジット。
【請求項37】
多結晶ナノコンポジットの蛍光固体が製造される方法であって、
少なくとも1つの母体を少なくとも1つのドーパントでドープすることによって、蛍光体粉末を提供することと、
少なくとも1つの充填材を、前記蛍光体粉末と混合して、蛍光体及び充填材の混合物を提供することと、
前記混合物を、少なくとも5トン/インチの圧力下で圧縮し、固体またはほぼ固体のマトリクスを提供すること、及び前記固体またはほぼ固体のマトリクスを制御された雰囲気で焼結して、多結晶ナノコンポジットの蛍光固体を提供することと
を含む、方法。
【請求項38】
少なくとも1つの充填材はSiOナノ粒子である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記多結晶ナノコンポジットの蛍光固体を、実質的に均一の粒子サイズに粉砕することをさらに含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記多結晶ナノコンポジットの蛍光固体を、センサ素子に加工することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
蛍光温度センサ材料のバッチにおける温度応答に対する時間衰退を、細かく調節することによって、複数の装置を製造する方法であって、
所定の精度のビン値を提供することと、
前記蛍光温度センサ材料のバッチを混合することと、
前記バッチからサンプルを得ることと、
前記サンプルを凝固させることと、
前記サンプルの各々のビン値を判断するために、前記サンプルを試験して、試験結果を得ることと、
前記サンプルの各々の試験結果を、所定の精度のビン値と比較することと、
前記サンプルの大部分が、所定の精度のビン値内に収まるかを判断することと、
前記サンプルの大部分が所定の精度のビン値内に収まらない場合、さらなる材料を前記バッチに加えて混合し、新しいバッチを提供することによって、前記試験結果に基づいてバッチ材料を調整することと、
前記新しいバッチから新しいサンプルを得ることと、
前記新しいサンプルを凝固させることと、
前記新しいサンプルの各々のビン値を判断するために、前記新しいサンプルを試験することと、
前記新しいサンプルの各々のビン値を、所定の精度のビン値と比較することと、
前記新しいサンプルの大部分が、所定の精度のビン値内に収まるかを判断することと、
前記新しいサンプルの大部分が所定の精度のビン値内に収まらない場合、さらなる材料を前記バッチに加えて混合することによって、前記試験結果に基づいて前記バッチ材料をさらに調整することと、
前記新しいサンプルの大部分が、所定の精度のビン値内に収まるまで、前記ステップを繰り返すことと、
前記試験サンプルの大部分が、所定の精度のビン値内に収まったとき、全てのバッチを凝固させることと
を含む、方法。
【請求項42】
バッチ材料を調整する前記ステップは、
充填材料を蛍光体粉末に加えること、
異なるドーパント濃度を有する蛍光体粉末の第2のバッチを加えること、
または、当初の蛍光体粉末とは異なる粒子サイズの蛍光体粉末の、第2のバッチを加えること
のうち1つまたは複数を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記バッチ材料を調整する前記ステップは、以下の材料、
より大きい粒子サイズを有する、同じ化学組成の蛍光体粉末と、
より小さい粒子サイズを有する、同じ化学組成の蛍光体粉末と、
充填材と、
同じ量の化学組成だが、より高いドーパント濃度を有する蛍光体粉末と、
同じ化学組成だが、より低いドーパント濃度を有する蛍光体粉末と
のうち1つまたは複数をバッチに加えることを含む、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、蛍光体温度計測に使用するための、ナノコンポジット蛍光材料を使用して、精確に温度を感知できる、温度プローブに関する。より詳細には、本技術は、多結晶センサ要素、及び多結晶センサ要素を含んだ蛍光温度センサをもたらす、ナノコンポジット材料を製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
蛍光温度センサ
材料が電磁放射に露出されたとき、蛍光は、非常に容易に光の放出を定めることができる。この放出は、当初の励起後に一定期間続き得る。材料が放出する時間の長さは、原子レベルで発生するいくつかの相互反応と、吸収されたエネルギー量との結果である。励起及び放出の強度の両方は、時間に対して指数関数的な挙動をする。この二重の経時的な挙動は、固有の特性であり、蛍光材料の温度を示すために使用することができる。
【0003】
蛍光温度センサは、蛍光体の発光の時間衰退と、保持された温度との間の比例関係を利用する。光ファイバの温度センサのために、励起光パルスは、一方の端部において光ファイバと結合され、ファイバを移動して、他方の端部において蛍光材料を励起する。励起された光は、同じファイバの中に結合して戻り、光源に向けて移動して戻って、分析できる電気信号を生成するフォトディテクタに分離する。蛍光体の光度は、それによって一定期間にわたって分析され、その時間衰退率が判断される。この時間衰退率は、次にルックアップテーブルで、異なる基準温度の公知の時間衰退値と比較される。このように、時間衰退は温度に変換され、ファイバの端部における蛍光体は、センサ素子として作用する。
【0004】
蛍光感知材料
光ファイバの端部に取り付けられるか、または目標の基体に装着されたとき、蛍光体粉末は、温度を感知するために使用され得る。しかし、緩い形態の蛍光体粉末は不安定で、精確な温度の読み取りを提供することはできない。この粉末は、光ファイバの端部に適用して固化させる前に、エポキシなどの液体バインダと混合することによって、強化かつ安定され得る。
【0005】
蛍光体粉末を固体マトリックスに結合することは、熱循環からのヒステリシス効果に対してその安定性を向上させ、さらには、蛍光体粉末と相互作用してその時間衰退特性に影響を与える周囲雰囲気において、湿気の存在及び様々なガス濃度などを経時的に変化させ得る外部の影響から、蛍光体を保護する。
【0006】
様々なバッチの蛍光体粉末の生成における処理の変動は、同じ化学組成を有するが、同じ制御温度の異なる時間衰退値に応答することになる。この変動のうちのいくつかは、粒子サイズの違い、微細なドーパント濃度の違い、焼結及び粉砕処理の変動、不純物の存在、蛍光体粒子密度、ならびに微細構造吸収及び散乱特性の結果である。
【0007】
より高温の蛍光センサ
バインダ材料を蛍光体粉末に追加することで、より低い温度状況(250℃未満)において良好に作用する。なぜなら、エポキシ樹脂、シリコーン、及び熱可撓性物質などから選択する、多くの光学的に透明な有機バインダが存在するからである。しかし、より高い温度において、これらの有機バインダは酸化し、蛍光体の品質を落として、より低い信号レベル及び時間衰退応答の変化をもたらす。したがって、無機バインダを使用することが望ましい。テネシー州オークリッジのZyp Coatings社で製造された、ケイ酸ナトリウム、HPC、LK、及びZAPを含む、様々な液体無機バインダが提案されている。これらの材料は、高い温度に耐えることができるが、これらの全ては以下の欠点のうち1つまたは複数を被る。
a)化学的不活性-それらは、湿気、酸素、または環境中の他のガスに反応し、蛍光体マトリクスの時間衰退挙動を変え得る。
b)機械的弱点-それらは弱い接合剤であり、容易にひび割れて基体に良好に接着しない蛍光体マトリクスをもたらす。
c)相転移-例えばケイ酸ナトリウムは、ガラスから結晶構造への相転移を受け、それは湿気の存在で部分的に可逆であり、それによって大きいヒステリシスを時間衰退挙動に導入する。
d)有機添加剤-多くの高温バインダ溶液は、高温で消散するが汚染物質を残す有機溶剤または他の有機添加物を包含し、それは光信号を低下させ、ヒステリシス挙動の一因となる。
e)脱水-多くのバインダ溶液は、固化するためにゆっくりと除去しなければならない水を包含する。その結果は、密度の変動を伴う多孔質の物理構造であり、それはより弱い光信号及び様々な時間衰退応答を生成する。
f)湿気の再吸収-特に、ケイ酸塩バインダの水吸収特性は、ヒステリシスの一因となり、100℃未満の温度で、蛍光体マトリクスの時間衰退応答を大幅に変える。
【0008】
様々な固体結晶の蛍光材料が、350℃を超えた高温で時間衰退温度を感知するために提案されてきた。このような結晶として、Y(イットリア)、YAl12(イットリアアルミニウムガーネットすなわちYAG)、YAlO(イットリアアルミニウムペロブスカイトすなわちYAP)、及び1つまたは複数のレアアース元素を用いてドープされたAl(サファイア)、が挙げられる。例えば、センサは、端部で成長したYAG-Er(エルビウム)を伴うYAG光導体から組み立てられてよい(米国特許第6,045,259号明細書)。このタイプのセンサの、1つの利点は、700℃を超過する極端な温度適用のための使用である。
【0009】
しかしこのタイプのセンサは、以下の欠点を被る。
1.YAG光導体を成長させるための、時間の浪費及び高いコスト。
2.YAG-Er結晶を成長させるための、時間の浪費及び高いコスト。
3.イオン電荷移動及びヒステリシスを被ることにより、結晶が色中心を発展させる場合がある。
【0010】
米国特許第8,123,403号明細書は、安定した計測を実施できる温度センサプローブ、及びその製造方法を開示している。この温度センサプローブは:蛍光物質及び透明材料の混合である、蛍光材料;蛍光材料が配置された凹部を有する感熱性部;蛍光材料に照射される励起光と、蛍光物質によって生成される蛍光とを伝番させる、導波管ルートロッド;及び導波管ルートロッドの側面を覆う防護管、を提供する。次に、蛍光材料は、透明材料を使用して導波管ルートロッドの先端に取り付けられ、導波管ルートロッドは蛍光材料の中に食い込む。蛍光センサは、多結晶ではなく、凝固した焼結センサでもない。この方法は、多結晶センサ素子を生成するステップを含まない。開示されたセンサは、蛍光材料及び透明材料の混合物を収容するための凹部と、センサ材料の中に食い込む導波管ルート部材と、「焼結」して導波管を蛍光材料に取り付ける、記載されていない処理と、に依拠する。
【0011】
米国特許第9,599,518号明細書は、微小球体の形状の蛍光体を利用した温度プローブを組み込んだ、光ファイバ温度センサシステムを開示している。この微小球体は、ファイバによって微小球体に送達された励起光を結合することと、ファイバの中に戻される蛍光体微小球体によって生成された蛍光を結合することとの両方において、レンズ効果を生成するよう、空気中に位置付けられる。温度プローブは、柔軟性または剛質性形態のいずれかで実装させることができる。蛍光体微小球体のための材料として、限定ではないが、レアアースでドープされた単結晶、レアアースでドープされたセラミック、及びルビーが挙げられる。好適な制御器に連結されたとき、これら温度プローブは、強い電気ノイズまたは電磁妨害によって特徴付けられた環境においても、信頼を置ける温度計測を提供できる。蛍光センサは、焼結されず、多結晶でもなく、凝固した焼結センサでもない。
【0012】
米国特許第9,599,518号明細書の技術は、大量のYAG結晶材料の成長を可能にし、組み立てのコストを幾分減少させる。その光信号は弱く、分解能及び精度は劣る。それは以下による。
1.微小球体は小さく、ファイバと一致する。
2.励起光は微小球体を通って移動し、ほとんどの励起光は逃げて、非常に少ない励起光がファイバの中に戻って結合するので、微小球体によっては多く吸収されない。
3.周りにシフトしないように、微小球体を光ファイバの端部に取り付ける、機械的困難。小さいシフトでさえ、蛍光信号の変化をもたらし、時間衰退特性に影響を与える場合がある。
【0013】
米国特許第6,045,259号明細書は、光導波管領域、結晶蛍光温度センサ領域、及び光導波管領域と結晶蛍光温度センサ領域との間の結晶接合部、を備えた、結晶構造を開示している。その発明の実施形態は、高温条件下で機能する新規の光ファイバ温度センサである。この光ファイバ温度センサは、第1及び第2の端部を伴う結晶光導波管領域と、一方の端部に結晶蛍光温度センサ先端部とを有する、連続結晶の光ファイバ高温センサプローブを備える。結晶光導波管領域及び結晶蛍光温度センサ先端部は、好ましくは結晶学的かつ熱機械学的に、互いに適合性がある。蛍光温度センサ先端部は、蛍光イオンを包含し、それは蛍光を発するよう励起され、蛍光を生成することができる。光ファイバの高温センサプローブは、好ましくは連続結晶構造を全体に有する、結晶接合部も包含する。この結晶接合部は、結晶蛍光温度センサ先端部と、結晶光導波管領域の第1の端部との間に位置され、かつ装着され、それによって、好ましくは連続結晶の光ファイバ高温センサプローブが形成される。蛍光センサは、焼結されず、多結晶でもなく、凝固した焼結センサでもない。
【0014】
米国特許第9,537,047号明細書は、青色発光ダイオード(LED)ダイの列がサブマウントウェハに取り付けられた、LED/蛍光体構造を組み立てるための方法を開示している。蛍光体粉末は、アクリレートまたはニトロセルロースなどの有機ポリマー充填材と混合される。次に液体またはペーストの混合物は、LEDダイまたは他の基体の上に、実質的に均一な層として堆積される。次に有機充填材は、空気中で焼き取ることによって、もしくはO.sub.2プラズマ処理を受けることによって除去されるか、または分解され、共に焼結された蛍光体粒子の多孔質層を残す。多孔質蛍光体層は、(例えばTEOSまたはMTMSのゾルゲルなどの)ゾルゲル、または多孔質構造を飽和状態にする水ガラスとしても知られている、(例えばケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムなどの)液体ガラスを用いて含浸される。次にこの構造は、無機ガラス充填材を固化するために加熱され、望ましい特性の中でも、黄染に抵抗する堅牢なガラス充填材を残す。蛍光素子は、LED蛍光体コーティングである。それは、多結晶ではなく、凝固した焼結センサでもない。この方法は、多結晶または凝固した焼結センサを生成するステップを含まない。
【0015】
米国特許第9,434,876号明細書は、蛍光体分散ガラスを開示しており、それは、ガラス材料と、ガラス材料において分散した蛍光体とを含む。このガラス材料は、実質的にNbを含まず、15~40質量%のSiOと、10~30質量%のBと、1~35質量%のZnOと、0~20質量%のAlと、2~30質量%の、BaO、CaO、及びSrOから成るグループから選択された少なくとも1つの合計と、0~1質量%のMgOと、5~35質量%の(LiO、NaO、及びKOから成るグループから選択された少なくとも1つの)ROの合計と、0~15質量%の酸化アンチモン及び酸化錫のうち少なくとも一つの合計と、を包含する。蛍光センサは、多結晶ではなく、凝固した焼結センサでもない。この方法は、多結晶または凝固した焼結センサを生成するステップを含まない。
【0016】
米国特許第4,652,143号明細書は、発光物質から構成されたセンサの、発光強度を衰退させる特性を利用した、光温度計測技術を開示している。この発光物質は、光パルスまたは他の周期的もしくは他の断続的な放射源によって発光するよう、励起される。好ましいセンサの発光は、概ね指数関数的な時間衰退を呈し、それは化学的に再現可能な結晶の分布の平均であり、センサの励起レベルまたは前の温度履歴に関わらず、高い程度の精度を伴い繰り返し可能である。蛍光センサは、焼結されず、多結晶でもなく、凝固した焼結センサでもない。
【0017】
米国特許第7,374,335号明細書は、(i)凹部を有する対象物、(ii)この凹部に配設された発光材料層であって、この発光材料は、対象物の温度に依拠して機能的である検出可能な光特性を有する電磁放射を放出する、発光材料層、(iii)発光材料層と光連通した光導波管、を備える発光温度センサを開示している。(i)表面を有し、この表面に凹部を有する対象物、(ii)この凹部に配設された発光材料層であって、この発光材料は、励起放射源に対応した対象物の温度に機能的に依拠した、検出可能な光特性を有する電磁放射を放出する、発光材料層、(iii)対象物の表面の凹部における上記の発光材料層を封止する、光学窓、を備えた処理ステップにおいて、温度を計測するための試験デバイスが提供される。蛍光センサは、焼結されず、多結晶でもなく、凝固した焼結センサでもない。
【0018】
Ogiらによる(ECS Journal of Solid State Science and Technology,2(5) R91-R95 (2013) Optical Materials Vo.75、pp814-820)は、レアアースでドープされたイットリアアルミニウムガーネット(YAG:RE)の蛍光体が、良好な光ルミネッセンス(PL)特性を有すること、及び発光ダイオードに広く使用されることを開示している。しかし、これらの蛍光体に使用されるRE素子は、高価かつ不足している。したがって、より少ない量のRE材料を包含した蛍光体を開発することが重要である。1つの方策は、RE酸化物のマトリクスとして、より安価で容易に入手可能な材料が使用される、ナノコンポジット蛍光体を生成することである。この研究において、彼らは、ゾルゲル法を使用してYAG:Ce/SiOナノコンポジットを生成した。ポリ(エチレングリコール)及び尿素が加えられ、ミセル形成及び凝集作用をそれぞれ向上させた。ナノコンポジットは、X線回析、走査及び透過側電子顕微鏡(TEM)、及びエネルギー分散型X線分光法を使用することを特徴とする。彼らは、最大のPL強化を提供したSiOの濃度を判断して、幾何学的なモデルならびに特徴結果を使用して、この強化の説明を提案した。それらの結果は、10体積%のSiO濃度を示し、純粋YAG:Ceの強度の、120%のPL強度を提供した。TEM分析は、SiOナノ粒子が、YAG:Ce結晶の単一の粒子境界同士間の空洞を網羅し、それによって光の分散を抑制して、強化されたPLをもたらすことを示した。この方法は、低RE、高PLの蛍光体の大規模な合成のために有用となる。ゾルゲル処理が、蛍光体を合成するために使用された。蛍光体は焼結されず、多結晶でもない。
【0019】
必要なのは、より高い温度に適用するためのナノコンポジット蛍光材料を製造する方法、実質的に同じ精度である複数のセンサ素子を生成する方法、及び蛍光材料の時間衰退応答を調整するための方法である。ナノコンポジット蛍光材料が高温蛍光センサに使用され得ること、及び高温蛍光センサの光信号を改善することが好ましい。さらに、ナノコンポジット蛍光材料が高密度で、温度応答に対する時間衰退において最小のヒステリシスを伴い、経時的に安定かつ精確であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,045,259号明細書
【特許文献2】米国特許第8,123,403号明細書
【特許文献3】米国特許第9,599,518号明細書
【特許文献4】米国特許第9,537,047号明細書
【特許文献5】米国特許第9,434,876号明細書
【特許文献6】米国特許第4,652,143号明細書
【特許文献7】米国特許第7,374,335号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Ogi et al.(ECS Journal of Solid State Science and Technology,2(5) R91-R95 (2013) Optical Materials Vo.75,pp814-820)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本技術は、より高い温度に適用するためのナノコンポジット蛍光材料を製造する方法、実質的に同じ精度の複数センサ素子を生成する方法、及び蛍光材料の時間衰退応答を調整するための方法を提供する。方法は、多結晶のセンサ素子を生成するために、高温焼結の前に高圧を利用する。多結晶ナノコンポジット蛍光材料を、高温蛍光センサに使用することができ、高温蛍光センサの光信号を改善する。多結晶ナノコンポジット蛍光材料は高密度で、温度応答に対する時間衰退において最小のヒステリシスを伴い、経時的に安定かつ精確である。さらには、高温における時間衰退に対して、より明るくより安定しており、したがって蛍光体温度計測のセンサ材料として好適である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
実施形態において、蛍光体温度計測に使用する蛍光センサが提供される。このセンサは、遠位端を含んだ光学光導体と、近位端及び外面を含んだセンサ素子とを備える。センサ素子の近位端は、光学光導体の遠位端に装着されるか、または遠位端に隣接して位置され、センサ素子は、単結晶固体、多結晶固体、または多結晶ナノコンポジットのうち1つを備える。
【0024】
実施形態において、蛍光センサのセンサ素子は、約90%よりも大きい固相密度を伴うナノコンポジットか、または約90%よりも大きい固相密度を伴う多結晶固体であってよい。
【0025】
蛍光センサにおいて多結晶ナノコンポジットは、少なくとも1つの母体、少なくとも1つのドーパント、及び少なくとも1つの充填材を含み得る。
【0026】
蛍光センサにおいて、センサ素子は、光学光導体の遠位端に装着され得る。
【0027】
蛍光センサは、光学光導体の遠位端とセンサ素子との間に、ガラス接合材をさらに備え得る。
【0028】
蛍光センサにおいて、光学光導体は光ファイバであってよい。
【0029】
蛍光センサにおいて、母体は、YSO、YSZ、Y、YVO、YAG、YAP、YAM、YGG、Al、LaS、GdS、MgTiO、3.5MgO0.5MgFGeO、MgFGeO、及びKSiF、のうち少なくとも1つであってよい。
【0030】
蛍光センサにおいて、ドーパントは、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つであってよい。
【0031】
蛍光センサにおいて、充填材は、シリカ、ガラス、ホウケイ酸ガラス、ダイアモンド、及びドープされていない母体、のうち少なくとも1つであってよい。
【0032】
蛍光センサにおいて、ドープされていない母体は、YSO、YSZ、YO3、YVO4、YAG、YGG、YAP、YAM、Al、LaS、GdS、MgO、GeO、TiO、SiO、及びMgF、のうちの少なくとも1つであってよい。
【0033】
蛍光センサにおいて、充填材は二酸化ケイ素であってよい。
【0034】
蛍光センサにおいて、二酸化ケイ素濃度は、約0.1~10重量%であってよい。
【0035】
蛍光センサにおいて、二酸化ケイ素は、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つでドープされ得る。
【0036】
蛍光センサは、少なくともセンサ素子が収容される防護シースをさらに備え得る。
【0037】
別の実施形態において、蛍光時間衰退感知に使用するための多結晶ナノコンポジットが提供される。この多結晶ナノコンポジットは、少なくとも1つの母体、少なくとも1つのドーパント、及び少なくとも1つの充填材の混合物を備える。
【0038】
別の実施形態において、蛍光時間衰退感知に使用するための多結晶ナノコンポジットが提供される。この多結晶ナノコンポジットは、少なくとも1つの母体、少なくとも1つのドーパント、及び少なくとも1つの充填材の混合物を備える。この混合物は、少なくとも約5トン/インチの高圧化で圧縮される。
【0039】
多結晶ナノコンポジットにおいて、多結晶ナノコンポジットは焼結され得る。
【0040】
多結晶ナノコンポジットにおいて、母体は、YSO、YSZ、Y、YVO、YAG、YAP、YAM、YGG、Al、LaS、GdS、MgTiO、3.5MgO0.5MgFGeO、MgFGeO、及びKSiF、のうち少なくとも1つであってよい。
【0041】
多結晶ナノコンポジットにおいて、ドーパントは、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つであってよい。
【0042】
多結晶ナノコンポジットにおいて、充填材は、シリカ、ガラス、ホウケイ酸ガラス、ダイアモンド、及びドープされていない母体、のうち少なくとも1つであってよい。
【0043】
多結晶ナノコンポジットにおいて、ドープされていない母体は、YSO、YSZ、YO3、YVO4、YAG、YGG、YAP、YAM、Al、LaS、GdS、MgO、GeO、TiO、SiO、及びMgF、のうち少なくとも1つであってよい。
【0044】
多結晶ナノコンポジットにおいて、充填材は二酸化ケイ素であってよい。
【0045】
多結晶ナノコンポジットにおいて、二酸化ケイ素濃度は、約0.01~10重量%であってよい。
【0046】
多結晶ナノコンポジットにおいて、二酸化ケイ素は、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つでドープされ得る。
【0047】
別の実施形態において、多結晶ナノコンポジットの蛍光固体が製造される方法が提供され、方法は、
少なくとも1つの母体を少なくとも1つのドーパントでドープすることによって、蛍光体粉末を提供することと、
少なくとも1つの充填材を、蛍光体粉末と混合して、蛍光体及び充填材の混合物を提供することと、
この混合物を、少なくとも約5トン/インチの圧力下で圧縮し、固体またはほぼ固体のマトリクスを提供すること、及びこの固体またはほぼ固体のマトリクスを、制御された雰囲気で焼結して、多結晶ナノコンポジットの蛍光固体を提供することとを含む。
【0048】
この方法において、少なくとも1つの充填材は、SiOナノ粒子であってよい。
【0049】
この方法は、多結晶ナノコンポジットの蛍光固体を、実質的に均一の粒子サイズに粉砕することを、さらに含み得る。
【0050】
この方法は、多結晶ナノコンポジットの蛍光固体を、センサ素子に加工することを、さらに含み得る。
【0051】
別の実施形態において、蛍光温度センサ材料のバッチにおける温度応答に対する時間衰退を、細かく調整することによって、複数の装置を製造する方法が提供され、この方法は、
所定の精度のビン値を提供することと、
蛍光温度センサ材料のバッチを混合することと、
このバッチからサンプルを得ることと、
これらのサンプルを凝固させることと、
基準温度において時間衰退応答を記録することによって、サンプルを試験することと、
サンプルの各々について、この時間衰退応答を、所定の精度のビン値と比較することと、
サンプルの大部分が、所定の精度のビン値内に収まるかを判断することと、
サンプルの大部分が所定の精度のビン値内に収まらない場合、さらなる材料をバッチに加えて混合し、新しいバッチを提供することによって、試験結果に基づいてバッチ材料を調整することと、
この新しいバッチから新しいサンプルを得ることと、
新しいサンプルを凝固させることと、
新しいサンプルの各々のビン値を判断するために、新しいサンプルを試験することと、
新しいサンプルの各々のビン値を、所定の精度のビン値と比較することと、
新しいサンプルの大部分が、所定の精度のビン値内に収まるかを判断することと、
新しいサンプルの大部分が所定の精度のビン値内に収まらない場合、さらなる材料をバッチに加えて混合することによって、試験結果に基づいてバッチ材料をさらに調整することと、
新しいサンプルの大部分が、所定の精度のビン値内に収まるまで、上記のステップを繰り返すことと、
試験サンプルの大部分が、所定の精度のビン値内に収まったとき、全てのバッチを凝固させることとを含む。
【0052】
方法において、バッチ材料を調整するステップは、充填材料を蛍光体粉末に1回または複数回加えること、
または、異なるドーパント濃度を有する蛍光体粉末の、第2のバッチ加えること、
または、当初の蛍光体粉末とは異なる粒子サイズの蛍光体粉末の、第2のバッチを加えること、のうち1つまたは複数を含み得る。
【0053】
方法において、バッチ材料を調整するステップは、以下の材料すなわち、
より大きい粒子サイズを有する、同じ化学組成の蛍光体粉末と、
より小さい粒子サイズを有する、同じ化学組成の蛍光体粉末と、
充填材と、
より高いドーパント濃度を有する、同じ量の化学組成の蛍光体粉末と、
より低いドーパント濃度を有する、同じ化学組成の蛍光体粉末と
のうち1つまたは複数を加えることを含み得る。
【0054】
蛍光センサにおいて、光学光導体は光ファイバの束を備え得る。
【0055】
蛍光センサにおいて、センサ素子の近位端は研磨され得る。
【0056】
蛍光センサにおいて、センサ素子の外面は研がれ得る。
【0057】
蛍光センサにおいて、外面は反射面であってよい。
【0058】
蛍光センサは、センサ素子を収容するセンサキャップをさらに含み得る。
【0059】
蛍光センサにおいて、センサ素子はセンサキャップ内に形成され得るか、またはセンサキャップに接合され得る。
【0060】
蛍光センサは、光学光導体の遠位端と、センサ素子の近位端との間に、空間をさらに備え得る。この光学光導体は、センサキャップに接合される。
【0061】
蛍光センサは、光学光導体の遠位端と、センサ素子の近位端との間に、接合層をさらに備え得る。この接合層は、シリカ、ガラス、またはリチウムかカリウムかナトリウムを包含したケイ酸塩、のうち少なくとも1つを備える。
【0062】
蛍光センサにおいて、防護シースは、光学光導体と同様の熱膨張係数を有し得る。
【0063】
蛍光センサにおいて、防護シースは、空洞を画定するために光学光導体に接合され得る。
【0064】
蛍光センサにおいて、この空洞は、不活性ガスまたは真空を保持し得る。
【0065】
蛍光センサにおいて、センサ素子は、ガラスもしくはシリカコーティング、またはケイ酸塩コーティングを用いてコーティングされ得る。
【0066】
蛍光センサにおいて、光学光導体は、1つまたは複数の高開口数の光ファイバを備え得る。
【0067】
蛍光センサにおいて、光ファイバは、ゲルマニウムでドープされたシリカコア、及びフルオロケイ酸塩でドープされたシリカクラッドを備え得る。
【0068】
蛍光センサにおいて、光ファイバは、1箇所または複数個所の屈曲を伴う、応力を受けない形状に熱形成され得る。
【0069】
本技術は、
・蛍光時間衰退センサ装置、より詳細には、温度センサ装置、
・蛍光センサ素子を合成する方法、及び
・結晶または多結晶蛍光センサ素子を、光ファイバの端部に接合することによって、装置を製造する方法
に向けられる。
【0070】
蛍光センサ素子のバッチにおける温度応答に対して、時間衰退を細かく調節することによって、複数の装置を作る方法は、以下のステップすなわち、
・蛍光材料のバッチを混合するステップと、
・このバッチからサンプルを得るステップと、
・このサンプルを凝固させるステップと、
・サンプルの大部分が所定の精度のビン値におけるパラメータ内に収まるかを判断するために、サンプルを試験するステップと、
・さらなる材料をバッチに加えて混合することによって、前試験の結果に基づいてバッチ材料を調整するステップと、
・このバッチから新しいサンプルを得るステップと、
・新しいサンプルを凝固させるステップと、
・新しいサンプルの大部分が所定の精度のビン値におけるパラメータ内に収まるかを判断するために、新しいサンプルを試験するステップと、
・試験サンプルの大部分が、所定の精度のビン値におけるパラメータ内に収まるまで、上記のステップを繰り返すステップと、
・全バッチを凝固させるステップと
を介する。
【0071】
この方法の目的は、上記のステップに従い、蛍光センサ素子のバッチにおける温度応答に対する時間衰退を、細かく調節することである。
【0072】
本技術は、焼結された蛍光体ディスクまたは結晶を、光ファイバの端部に接合して緊密に接触させ続け、化学的環境から防護することによって、装置を作る方法にも向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本技術の温度センサの実施形態を示す図である。
図2】本技術の温度センサの別の実施形態を示す図である。
図3】本技術の温度センサの別の実施形態を示す図である。
図4】本技術の温度センサの別の実施形態を示す図である。
図5】本技術の温度センサの別の実施形態を示す図である。
図6】本技術の温度センサの別の実施形態を示す図である。
図7】本技術の温度センサの別の実施形態を示す図である。
図8】本技術の温度センサの別の実施形態を示す図である。
図9】製造中及び試験中の、センサキャップにおけるセンサ素子を示す図である。
図10】透明シリカ、ケイ酸塩、またはガラスコーティングを用いてコーティングされた、センサ素子を示す図である。
図11】センサ材料のシート及びディスクの概略図である。
図12】グループ分けされたビンのヒストグラムである。
図13】本技術の装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
別様に明記しない限り、以下の解釈ルールは、本明細書(記載の説明及び特許請求の範囲)に適用される:(a)本明細書で使用される単語は、状況に応じた性別または数(単数または複数)として解釈するものとする;(b)文脈で別途明確に支持しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数用語の「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「(その)the」は、複数を含むものとする;(c)列挙された範囲または値に適用される推定用語「約(about)」は、計測方法から当技術分野で公知または予測される、範囲または値における偏差内の近似値を表わす;(d)単語「本明細書で(herein)」、「本明細書による(hereby)」、「本明細書の(hereof)」、「本明細書に(hereto)」「上文に(hereinbefore)」、「これ以降(hereinafter)」、及び同様の意味の単語は、本明細書の全体を指し、別途明記しない限り、いかなる特定の段落、請求項、または他の一部分を言及するものではない;(e)詳述した詳細は便宜上のためだけのものであり、本明細書の任意の部分の意味または構成を制御、または影響を及ぼすものではない;(f)「または(or)」、及び「任意の(any)」は排他的ではなく、「含む(include)」及び「含んでいる(including)」は、限定ではない。さらに、用語「備えている(comprising)」、「有している(having)」、「含んでいる(including)」、及び「包含している(containing)」は、別途言及しない限り、オープンエンド用語として解釈するべきである(すなわち、「含んでいるが限定ではない」と意味する)。
【0075】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別途指摘しない限り、範囲内に収まる各別個の値について、個々に言及する簡潔な方法としての役割のみが意図される。各個別の値は、本明細書で個々に列挙されるかのように、本明細書の中に組み込まれる。値の特定の範囲が提供された場合、文脈で明確に指示しない限り、その範囲の上下限値と、その記載された範囲内で任意の他の記載された値、または介在する値との間で、下限値の単位の1/10まで、各介在する値は含まれる。より小さい全ての下位範囲も含まれる。より小さいこれらの範囲の上下限も、この中に含まれ、記載された範囲内で任意の特別に除外された制限を受ける。
【0076】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、関連の技術分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似または同等である、任意の方法及び材料も使用することができるが、次に、容認できる方法及び材料を説明する。
【0077】
定義
蛍光体粉末-本技術に関して、蛍光体粉末は、少なくとも1つの母体及び少なくとも1つのドーパントの組み合わせである。換言すると、特定の波長の入射光からエネルギーを吸収し、他の波長で光を放出する、ドープされた母体である。
【0078】
蛍光材料-本技術に関して、蛍光材料は、蛍光体粉末及び充填材から構成される。
【0079】
蛍光センサ素子-本技術に関して、蛍光センサ素子は、単結晶固体、多結晶固体、または、蛍光体粉末とガラスとの混合物、もしくは蛍光体粉末のいずれかの一方の多結晶ナノコンポジット、のうち1つである。
【0080】
単結晶固体-本技術に関して、単結晶固体は、蛍光体粉末の焼結された蛍光結晶である。約100ミクロンより大きい粒子サイズを有するが、一般的にいかなる結晶粒界もないものと理解されている。単結晶固体は、理想的には、約90%より大きい固相密度を有するものとする。
【0081】
多結晶固体-本技術に関して、多結晶固体は、約10ナノメートル~約100ミクロンの範囲の粒子サイズを有する多結晶構造をもたらす、焼結された蛍光体粉末である。多結晶固体は、理想的には、約90%より大きい固相密度を有するものとする。
【0082】
多結晶ナノコンポジット-本技術に関して、多結晶ナノコンポジットは、約10ナノメートル~約100ミクロンの範囲の粒子サイズを有する多結晶構造をもたらす、焼結された蛍光材料(蛍光体粉末及び少なくとも1つの充填材)である。多結晶固体ナノコンポジットは、理想的には、約90%より大きい固相密度を有するものとする。
【0083】
高圧-本技術に関して、高圧は、少なくとも約5トン/インチ、好ましくは約100トン/インチである。
【0084】
制御された雰囲気-本技術に関して、制御された雰囲気は、不活性ガス雰囲気、酸素雰囲気、または真空のうちの1つである。
【0085】
装置
図1は、高温に適用するための蛍光温度センサの実施形態を示し、全体的に10で指す。蛍光温度センサは、シリカ光ファイバであり得る光学光導体12、センサ素子14、及び好ましくは不透明で、透明である必要のない防護シース16、を含む。防護シース16は、好ましくは光学光導体12と同じまたは同様の熱膨張係数を有する、端部を封止された、溶解シリカ管である。防護シースは、融解接合部18において光導体12に融解接合され、空洞15を画定する。空洞15は、少なくともセンサ素子14を収容する。空洞15は、不活性ガスまたは真空を保持する。センサ素子14は、限定ではないが、センサ素子14の近位端22において、光学光導体12の遠位端20に適合するようサイズが決められた小さいディスクなど、任意の形状を有し得る。理論に縛られることなく、このディスクは、ディスク全体で熱伝導率を最大にし、ディスクにわたって熱勾配を最小にし、かつ蛍光信号の吸収及び放出を最大にするために、約50~約1000ミクロンの厚さを有する。1つの実施形態において、センサ素子14は多結晶固体である。別の実施形態において、センサ素子14は多結晶ナノコンポジットである。全ての実施形態において、センサ素子14は、摂氏350度を上回る温度に耐えることができ、その一方で好適な温度範囲を超えた温度に対して単調な時間衰退応答を生成する。理論に縛られることなく、空洞15は、センサ素子のための制御された環境を作り出す。高温において酸化が生じ、それがドーパントイオンの電荷移動及びヒステリシスをもたらす場合があるので、制御された環境は望ましい。空洞15は非常に小さい(数ミクロンのレベル)ので、センサ素子14を光学光導体12に接合、または装着する必要はない。これは、蛍光温度センサ10を製造するステップ数を減少させる。
【0086】
図2に示されるように、蛍光温度センサ10の別の実施形態において、光学光導体12の遠位端20と、センサ素子14の近位端22との間に、ガラス接合層24が存在する。ガラス接合材料は、光導体12もしくはセンサ素子14と同様、または低い融解温度を有し、光学光導体12の遠位端20をセンサ素子14の近位端22に融合するのに役立つ。この層24は、多結晶ナノコンポジットのセンサ素子14を作り出すために使用されるものと同じ充填材を包含し得るが、任意の固体で、センサ素子14と光学光導体12との間の機械的接合を形成する、実質的に透明なガラス材料とすることもできる。ガラス接合層22の材料の例として、限定ではないが、ホウケイ酸ガラス、特殊シリカを包含するガラス組成物、または、ケイ酸カリウムか、ケイ酸リチウムか、ケイ酸ナトリウムなどの液体ガラス、もしくはそれらの組み合わせ、が挙げられ得る。
【0087】
図3に示されるように、センサ素子14は、光学光導体12よりも大きい径を有する。この実施形態において、光学光導体12の遠位端20とセンサ素子14との間に空間26が存在する。光学光導体12の遠位端とセンサ素子14との間の距離、及びセンサ素子14の径は、好ましくは、光学光導体12から放出される光のコーンがセンサ素子14において合焦されるよう、光学光導体12の開口数と適合するように計算される。この実施形態の1つの利点は、光信号を最大にしながら、中間接合層の必要性をなくすことである。
【0088】
図4に示されるように、蛍光温度センサ10の別の実施形態において、センサ素子14は単結晶固体の結晶であり、ガラス接合層24を伴い、または伴わず、光学光導体12の遠位端20に取り付けられる。センサ素子14は、示されるように半球形状か、または図2に示されるようにディスク形状を有し、センサ素子14の外面32は研磨されるか、または研がれるかのいずれかであってよい。理論に縛られることなく、外面を研ぐことは、センサ素子14内の励起光の後方散乱を促進し、それによってその吸収及び放出の強度を改善する。反射面コーティング34も、外面32に適用され、センサ素子14内に光を捕らえる助けとなり、その吸収及び放出の強度をさらに改善する。光学光導体12の遠位端20は、研磨された表面36を有する。センサ素子22の近位端38も研磨された端部を有する。防護シース16は、より速い応答時間のために、より薄い端壁40を有するが、脆い光学光導体12を防護するのに役立つ、後方に延びた、より厚い側壁42を有する場合がある。高温適用のために、防護シース16は、溶解シリカ、アルミナなどのセラミック、またはインコネル(登録商標)などの金属、であってよい。低温適用のため、防護シースは、テフロン(登録商標)などのポリマーコーティングであってよい。
【0089】
図5に示されるように、より柔軟なプローブ構造が必要であるとき、より小さい径を有する光ファイバの束60が使用される。個々の光ファイバ62は、一般的に約40~約200ミクロンの範囲の径を有する。この場合、ホウケイ酸塩またはシリカ系光ファイバ62の束60は、約1000ミクロンの径を有し、上述のように取り付けられた、溶解した遠位端64及びセンサ素子14を有する。
【0090】
理論に縛られることなく、光ファイバの束は、より小さい曲げ半径に順応する一方で、同じ最小曲げ半径を有する単一の光ファイバよりも、より多くの光をセンサ素子14に届ける、という利点を有する。
【0091】
光信号をさらに増加させるために、実施形態において、より大きい1000ミクロンの径を有する光ファイバが、適用可能な湾曲を伴い最終形状に形成され得る。熱が光ファイバに加えられ、湾曲を介した光損失を避けるために十分大きい半径で、湾曲が作られる。事前に形成するステップは、経時的または急激な温度変化を受けて破壊をもたらし得る、光ファイバにおける曲げ応力を、低減させるために成される。この場合、より高い開口数の光ファイバも、信号損失なく、より小さい曲げ半径に順応させるために望ましい。
【0092】
図6に示されるように、光導体12は、高い開口数(NA)を伴う、熱形成された光ファイバである。高温適用のための、標準的な市販グレードのシリカ系光ファイバは、一般的に0.22の開口数を有し、それは光受容角度を制限し、かつ最小曲げ半径を制限する。NAが約0.37またはそれより高く増加された、ゲルマニウムドープされたシリカコアファイバを使用して、改善された光信号及びより小さい曲げ半径をもたらすことが、望ましい。光ファイバの径は、約200~1000ミクロンであり、ゲルマニウムドープされたシリカコアは、一般的に蛍光ドープされたシリカクラッド17を用いて被覆される。光導体を熱形成した後の、焼きなましステップは、複雑な湾曲を形成するのを可能にし、一方で高温適用において破壊をもたらし得る曲げ応力を、排除する。
【0093】
図7に示されるように、代替の実施形態において、センサ素子14は、感知されることになるセンサ目標物50に装着され、この目標物50からある距離だけ離された光導体12によって照射される。センサ目標物50は、製造処理の一部として、計測されることになる表面66に設置する前に、個々に精度試験され得る。図8に示される別の実施形態において、レンズシステム68が、光学光導体12と、対象物66に接合されたセンサ素子14との間に位置される。1つまたは複数の光学レンズ68も、光学光導体12の遠位端とセンサ素子14との間に利用され、遠隔感知用途において、光導体12とセンサ素子14との間の距離をさらに延長させ得る。このように、対象物66の温度は非常に高い場合があるが、レンズ及び光導体12は、それらが離れて位置されるために、より低い温度を保持し得る。
【0094】
図9に示されるように、実施形態において、センサ素子14は、蛍光体粉末及び少なくとも1つの充填材で作られ、それはキャップ72内で多結晶固体または多結晶ナノコンポジットの中に圧縮及び焼結される。この方法で製造されると、キャップ72は、蛍光温度センサ10に組み立てられる前に、精度のために個々に試験することができる。遠位領域70は光学光導体12を収容することができ、それはセンサキャップの試験中に、一時的に挿入される。
【0095】
実施形態において、センサ素子14は、蛍光多結晶固体または多結晶ナノコンポジット材料を備える。多結晶固体または多結晶ナノコンポジットは、母体結晶材料、ドーパント、及び充填材料を包含する。表1は、母体結晶、ドーパント、及び充填材料の例を示す。多結晶固体または多結晶ナノコンポジット材料は、表1に列挙したように、母体結晶、ドーパント、及び充填材料の任意の組み合わせを包含し得る。
【0096】
例えば、実施形態において、多結晶固体または多結晶ナノコンポジット材料の、蛍光体粉末部分は、表1に列挙した任意の母体結晶(または当技術分野で公知である、任意の他の母体結晶材料)と、表1に列挙した1つまたは複数のドーパント(または当技術分野で公知である、任意の他のドーパント)との、例えばYAG:Er及びYAG:Ndなど、任意の組み合わせを包含し得る。さらに例えば、実施形態において、多結晶固体または多結晶ナノコンポジットの、充填材料部分は、表1に列挙した任意の充填材料(または当技術分野で公知である、任意の充填材料)を包含し得る。
【0097】
実施形態において、他の材料に対する充填材料の相対量は、材料の総量の約0.1~約10重量%であってよい。
【0098】
実施形態において、充填材料の粒子形状は、微小球体またはランダムに研がれた粉末の形態であってよい。粒子サイズは、約10ナノメートル~約10ミクロンであってよい。
【0099】
実施形態において、充填材料は、表1に記載のドープされていない母体結晶であってよい。別の実施形態において、充填材料は、表1に記載のドープされた母体結晶であってよい。
【0100】
実施形態において、特殊ガラスは、母体結晶よりも低い融解点で、カスタム組成されたガラスである。
【0101】
熱伝導率、ドープされた母体結晶との化学的融和性、酸化及びイオン電荷移動に対する影響の受けやすさ、時間衰退応答における影響、及び有用な動作温度範囲など、様々な要因が、充填材料を選択する際に考慮される。加えて、光信号を最大にするために、充填材料は理想的に、ドープされた母体結晶の励起波長及び吸収波長において、光学的に透明であるよう選択される。
【0102】
別の検討は、充填材料の、センサが展開され得る動作環境との化学的融和性である。不活性は重要である。なぜなら高温において、母体結晶はガス分子を雰囲気からその結晶格子の中に吸収し、それによってその時間衰退応答を変化させ得るからである。ナノ粒子の充填材料を、高い密度で組み合わせて追加することで、この影響を大幅に軽減させることができる。
【0103】
加えて、特定の波長の入射光エネルギーに、高温または長時間のいずれかで露出された結果、イオン電荷移動が結晶格子内に生じ得る。例えば、Er2+のイオン電荷に対するEr3+の量は、YAG結晶格子内の入射光強度を伴い、温度にわたり変化する。これは、母体結晶の蛍光時間衰退応答を変化させ、不可逆的ドリフト及び経時的なヒステリシスをもたらす。この挙動を安定させるために、酸素を包含する充填材料が選択され、追加の酸素イオンを結晶格子に提供し、エルビウムをEr3+状態に保つ。
【0104】
【表1】
【0105】
好ましい実施形態において、二酸化ケイ素が、約0.1~約10%の濃度で加えられる(表2参照)。粒子サイズは、約10ナノメートル~約10ミクロンである。理論に縛られることなく、少量の二酸化ケイ素を様々な蛍光体粉末の結晶格子または結晶に加えることは、結晶格子内のイオン電荷移動を防止するのに役立ち、したがって、その吸収波長及び放出波長を安定させ、温度応答に対する時間衰退をより精確かつ繰り返し可能にする。二酸化ケイ素は、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、Mn、Nd、Pr、Sm、Tb、Ti、及びYb、のうち少なくとも1つでドープされ、蛍光効率をさらに向上させ得る。
【0106】
【表2】
【0107】
多結晶ナノコンポジットの蛍光センサ素子を生成する方法は、以下のとおりである。
a)均一の粒子サイズの蛍光体粉末が、まず生成される。
b)粉末化された充填材料は、蛍光体粉末と均一に混合される。
c)この混合物は、ほぼ固体密度まで高圧下(少なくとも約5トン/インチ)で圧縮され、多結晶ナノコンポジットのグリーンボディを生成する。
d)このグリーンボディは、制御された雰囲気で高温において焼結され、焼結された多結晶ナノコンポジットの対象物を生成する。
e)任意で、焼結された多結晶ナノコンポジットの対象物は、次に通常の雰囲気でわずかに低い温度で、ある時間焼きなまされ、焼きなまされ焼結された多結晶ナノコンポジットの対象物を生成する。
f)多数のセンサ素子は、焼きなまされ焼結された多結晶ナノコンポジットの対象物から加工される。
g)任意で、ナノコンポジット結晶の対象物は、実質的に均一の粒子サイズの粉末に研がれ、ステップa)からステップf)を繰り返して、より均等な多結晶ナノコンポジットの対象物を生成する。好ましい粒子サイズは、約1~約25μmある。このナノコンポジット粉末は、当技術分野で公知である他の方法を使用して、蛍光センサを製造するためにも使用され得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、センサ素子14は半透明の多結晶固体である。理論に縛られることなく、単結晶固体に対する多結晶固体の利点は、多結晶構造における結晶粒界が、センサ内の光を捕らえるのに役立ち、それは吸収及び放出の強度を増加させる。複数の結晶粒界は、内部応力を分散させること、イオン電荷移動を減少させること、及びより安定したセンサ素子を小さいヒステリシスで生成すること、にも役立ち得る。多結晶センサ素子を生成する方法は、以下のとおりである。
a)均一の粒子サイズの蛍光体粉末が、まず生成される。
b)この粉末は、ほぼ固体密度まで、高圧下(少なくとも約5トン/インチ)で圧縮され、グリーンボディを生成する。
c)このグリーンボディは、制御された雰囲気で高温で焼結され、焼結された多結晶固体を生成する(個々の結晶粒が経時的に大きく成長するため、長時間焼結することは単結晶固体をもたらすことに留意されたい)。
d)任意で、焼結された多結晶固体は、次に通常の雰囲気でわずかに低い温度で焼きなまされ、焼きなまされて焼結された多結晶固体を生成する。
e)多数のセンサ素子は、焼きなまされて焼結された多結晶固体から加工される。
【0109】
図10は、外部の雰囲気から防護するために、ガラスコーティング90を用いてカプセル化された蛍光センサ素子14を示す。ガラスコーティング90は、例えば溶解シリカ、ホウケイ酸ガラス、またはケイ酸塩を含んだ任意のガラスであってよい。このようなコーティングは、化学侵食、酸化、及び湿気が蛍光センサ素子14に影響を与えることを防ぐために適用され、センサ素子がより多孔質で小さい密度である場合に、特に重要である。
【0110】
別の実施形態において、蛍光センサ素子14は、蛍光時間衰退が、限定ではないが例えば、圧力、酸素、pH、または湿気を感知するよう計測される、任意の用途において使用され得る。
【0111】
複数装置を作る方法
本技術は、蛍光センサ素子のバッチにおける温度応答に対する時間衰退を、細かく調節することによって、複数の装置を作る方法に向けられ、以下のステップすなわち、
a)蛍光材料(例えば母体結晶、ドーパント、及び充填材)のバッチを混合するステップと、
b)このバッチからサンプルを得るステップと、
c)これらのサンプルを凝固させるステップと、
d)サンプルの大部分が所定の精度のビン値におけるパラメータ内に収まるかを判断するために、サンプルを試験するステップと、
e)さらなる材料をバッチに加えて混合することによって、最初の試験の結果に基づいてバッチ材料を調整するステップと、
f)このバッチから新しいサンプルを得るステップと、
g)これら新しいサンプルを凝固させるステップと、
h)サンプルの大部分が所定の精度のビン値におけるパラメータ内に収まるかを判断するために、新しいサンプルを試験するステップと、
i)試験サンプルの大部分が、所定の精度のビン値におけるパラメータ内に収まるまで、上記のステップを繰り返すステップと、
j)全バッチを凝固させるステップと
を介する。
【0112】
この方法の目標は、所定の精度のビン値に収まる、生成されるセンサ素子の数を最大にすることである。
【0113】
大きいバッチが生成され、完全に混合され得る。このバッチからの小さいサンプルは、次に処理及び試験され、このバッチは、試験サンプルの大部分が特定の精度のビンにおけるパラメータ内に収まるまで、上述の方法で調整される。
【0114】
センサ素子は、様々な方法で製造され得る。図11は、シート80を打抜くか、または焼結された材料のロッド81から切断された、ディスク形状のセンサ素子14を示す。これらシートは、例えば約50~約1000ミクロンの、任意の所望の厚さを有し得る。ロッド81は、例えば約200~約1000ミクロンの、任意の所望の径を有し得る。
【0115】
実施形態において、サンプルを凝固させるステップは、例えば焼き固めるか、固化させるか、乾燥させるか、または焼結させることによって実施され得る。
【0116】
蛍光センサ素子は、図12に示されるように、それらの温度に対する時間衰退応答に従い、分類されてビンに入れられる。収率を上げて廃品材料のコストを最小に抑えるために、光学光導体を用いて完全に組み立てる前に、得られたセンサ素子14を分類してビンに入れることができることが望ましい。
【0117】
別の実施形態において、蛍光材料の最終的なバッチは、センサキャップの中に堆積されるか、または目標の基体の上に堆積され、次に凝固される。それによってセンサ素子14は、センサキャップ内に形成される。
【0118】
バッチごとの変動の補正
実施形態において、方法は、当初のバッチの後に、センサ素子の当初のバッチと同じ較正精度を有するセンサ素子を生成する。
【0119】
製造中における処理の変動のため、大量の蛍光体粉末の各バッチは、温度特徴に対して必然的にわずかに異なる時間衰退を有する。これは、各々新しいバッチを用いて生成された蛍光センサ素子が、別様に挙動することを意味するので、望ましくない。例えば、所与の温度において、前のバッチとは異なる時間衰退を有する場合があり、それによって別様に較正しなければならない。個々のセンサを較正することは、非効率的で実用的ではない。したがって方法は、大量の蛍光材料の各々新しいバッチを調整して、前に生成されたバッチから性能特性を一致させる必要がある。
【0120】
実施形態において、蛍光材料のバッチを細かく調節するための、以下で説明する方法は、大量の蛍光体粉末を生成する際のバッチごとの変動を補正するために使用される。異なる粒子サイズ及びドーパント濃度を用いて蛍光体粉末の2つ以上のバッチを生成することによって、かつバッチのサンプリング及び調整をすることによって、前に生成したバッチと同じ、温度特性に対する蛍光時間衰退を伴って挙動するよう、新しいバッチを細かく調節することができる。この方法において、センサ素子は、当初バッチと同じ較正精度を伴い、経時的に生成される。
【0121】
方法例
図12を参照すると、実施形態において、ビンDの中に収まる、生成されるセンサ素子の数を最大にすることを目的として、センサ素子は以下のステップの繰り返しによって製造される:
蛍光材料のバッチを提供して混合するステップ;及び
予め規定された許容誤差で、温度応答に対する所望の時間衰退を表わす、所定の精度のビン値を選択するステップ。
サンプル試験1
バッチから第1のサンプルを得るステップ;
第1のサンプルを凝固させ、センサ素子の第1のセットを生成するステップ;
センサ素子の第1のセットを試験して、第1の試験結果を形成するステップ;
第1の試験結果の統計的分布を記録するステップ;
第1の試験結果を所定の精度のビン値と比較するステップ;及び
さらなる材料をバッチに加えて混合することによって、前試験の結果に基づいて蛍光材料のバッチを調整するステップ。
サンプル試験2
調整されたバッチから(第2の)サンプルを得るステップ;
サンプルを凝固させ、センサ素子の第2のセットを生成するステップ;
センサ素子の第2のセットを試験して、第2の試験結果を形成するステップ;
試験結果の統計的分布を記録するステップ;
第2の試験結果を所定の精度のビン値と比較するステップ;
センサ素子の大部分が所望のビン(例えば図12におけるビンD)に収まるかを判断するステップ;及び
センサ素子の大部分が所望のビンの中に収まる場合、蛍光材料の全てのバッチを凝固させるステップ。
【0122】
バッチの調整は、オフセット誤差及び勾配誤差の両方を補正するために成される。オフセット調整は、時間応答に対する時間衰退が、1つの方向で補正する必要があるとき、及び全体の温度感知範囲にわたって適用される均一なオフセットであるときに、生じる。
【0123】
勾配誤差は、温度範囲にわたる温度挙動に対する時間衰退の変化を補正するために必要であり、低温におけるオフセットが高温におけるオフセットと異なる。
【0124】
バッチオフセット調整の実施
オフセット誤差を補正するためのバッチ調整は、以下の方法の任意の組み合わせによって実現される:
同じ化学組成であるが、より大きい粒子サイズを伴う蛍光体粉末をさらに加えて、温度応答を下げるようシフトすること;
同じ化学組成であるが、より小さい粒子サイズを伴う蛍光体粉末をさらに加えて、温度応答を上げるようシフトすること;
より少ない充填材料を加え、温度応答を下げるようシフトすること;及び
より多くの充填材料を加え、温度応答を上げるようシフトすること。
【0125】
充填材料は、蛍光体粉末と同様の粒子サイズ、またはより小さい粒子サイズのガラスまたは結晶材料など、一般に無機質の透明粉末である。
【0126】
バッチ勾配セット調整の実施
勾配誤差を補正するためのバッチ調整は、異なるドーパント濃度の材料をさらに加えることが必要である。例えば:
同じ量だが、より高いドーパント濃度を有する蛍光体粉末をさらに加えることによって、高い温度でより高く読み取るように、勾配をよりポジティブにシフトすること;及び
同じ化学組成だが、より低いドーパント濃度を有する蛍光体粉末をさらに加えることによって、高い温度でより低く読み取るように、勾配をよりネガティブにシフトすること、である。
【0127】
このように、バッチの比率を調整することによって、温度特性に対する現在のバッチの時間衰退を、温度特性に対する当初バッチの時間衰退に一致させるために、オフセット及び勾配の両方を補正することができる。
【0128】
方法の目標は、ビンDに収まる、製造されるセンサ素子14の数を最大にすることである。例えば、サンプル試験1の後、第1の試験結果を所定の精度のビン値と比較し、センサ素子の大部分はビンB及びビンCに収まり得る。調整及びサンプル試験2の後、センサ素子の大部分はビンC及びビンDに収まり得る。最終調整及びサンプル試験3の後、センサ素子の大部分はビンDに収まる。
【0129】
実施形態において、センサ素子はディスクである。試験ステップの間、いくつかのディスクがバッチから選択され、バッチの統計的分布を判断するために試験される。
【0130】
実施形態において、方法は、サンプルの大部分が所定の精度のビン値におけるパラメータ内に収まるかを判断するために、サンプルを試験することを含む。例えば、精確なビン値は、摂氏49.95度~摂氏50.05度であってよい。サンプルは、それらを精確なドライウェル較正器に設置して、基準温度を摂氏50.00度に設定することによって、試験され得る。光ファイバの光導体は、各サンプルと接触して設置され、その温度が計測されて集計表に記録される。統計的に意味のあるサンプルの数、例えば20のセンサ素子が試験される。ヒストグラムが、サンプルの温度分布を示す集計表に生成される。この分布は、通常は本質的にガウス分布であり、ピークを有し、その周りでサンプルのほとんどが読み取られる。次にピーク値は、摂氏50.00度の較正基準温度と比較される。ガウス分布のピークから基準温度を減算することによって、オフセット誤差値が判断される。このオフセット誤差値は、バッチ調整処理を介して補正される必要があるオフセットである。
【0131】
以下の例は、オフセット調節を介したバッチ調整、及び勾配調節を介したバッチ調整の例を示す。
【0132】
オフセット例:例えば基準温度が摂氏50.00度である実施形態において、ガウス分布ピークの時間減衰は、摂氏49.50度の温度に相当する場合、そのときバッチは、摂氏0.5度高い温度にシフトするよう調整される必要がある。この調整は、例えば、同じタイプであるがより小さい粒子サイズ分布の蛍光体材料をさらに加えることによって、または充填材料を加えることによってなど、様々な方法で実現され得る。異なる粒子サイズの蛍光体粉末をさらに加える場合、次に加える材料の量は、2つのバッチにおける温度応答の差に比例して判断される。充填材が加えられた場合、その量は、繰り返し及び経験を通して判断される。2回以上の繰り返しを行なってバッチを調整して、ガウス分布ピーク温度を得て基準温度に一致させ得る。
【0133】
勾配例:例えば、基準温度が摂氏50.00度である実施形態において、勾配誤差を補正するために、第2の較正ポイントが、摂氏200.00度などのより高温で、同様に試験され得る。ガウス分布ピークが摂氏200.00度近くであることが、摂氏50.00度において判断されたオフセット誤差とは異なるオフセット誤差を示す場合、勾配調整も行なわなければならない。これは、同じタイプであるが異なるドーパント濃度の蛍光体粉末を加えることによって実現され得る。加える材料の量は、2つのバッチにおける勾配特性の差に比例して判断される。
【0134】
分類されたセンサ素子の各ビンは、同じ精度特性を有することになる。この方法は、同じビンから複数のセンサ素子を製造する。実施形態において、センサ素子は、繰り返し可能な蛍光時間衰退特性、及び所望の精度のビン内で最大収率を伴い、大量生産され得る。これは、所望の精度を伴う温度プローブの大量生産を可能にする。
【0135】
図12は、グループ分けされたビンのヒストグラムを示す。高い精度のプローブが望まれる場合、ビンDからのセンサ素子が選択される。低い精度が許容される場合、他のビンからのセンサ素子が選択され得る。
【0136】
バッチ材料の調整
方法は、蛍光材料マトリクスの挙動を調整するために、バッチ材料の組成を調整するステップを含む。そのステップは、2つの任意選択の方法で、バッチからバッチへの(例えばサンプル試験1からサンプル試験2への)時間衰退の読み取りを調整及び補正する。第1の選択肢は、充填材料を蛍光体粉末に加えて、蛍光体粉末の密度及び濃度を変更することによるものである。第2の選択肢は、異なるバッチだが同様の化学組成である第2の蛍光体粉末を導入すること、及び第1の蛍光体粉末に対するその混合比を調整することによるものである。
【0137】
第1の選択肢:充填材料を蛍光体粉末に加える
【0138】
実施形態において、バッチ材料の組成は、例えば蛍光体粉末と同様、または小さい粒子サイズの無機充填材料を導入することで、粉末の密度及び濃度を変更することによって、調整される。
【0139】
この選択肢は、大量のマトリクス材料の時間衰退特性をシフトさせる。一般的に、密度を高くするほど、時間衰退を長くし、かつ温度読み取りを低くする。例えば10%の充填材料を加えることで、蛍光体粉末に依拠して摂氏0.2度~摂氏2.0度だけ高く、温度応答をシフトし得る。
【0140】
実施形態において、無機充填材は、ガラス粉末または結晶粉末であってよい。ガラス粉末は、低温動作に許容可能であり、一方で結晶粉末は、高温動作に好ましい。このような材料の例は、ホウケイ酸ガラス、溶解シリカ、ダイアモンド、YAG、及び他のものである。
【0141】
第2の選択肢:当初の蛍光体粉末とは異なるドーパント濃度または粒子サイズの、蛍光体粉末の第2のバッチを加える。
【0142】
実施形態において、バッチ材料の組成は、異なるバッチだが同様の化学組成である第2の蛍光体粉末を導入すること、及び第1のバッチの蛍光体粉末に対するその混合比を調整することで、調整される。
【0143】
第2のバッチの材料は、第1のバッチよりも大きいか、または小さい平均粒子サイズを用いて作られ得る。より大きい粒子サイズは、一般により明るく、より効果的な蛍光、ならびにより長い時間衰退値及びより低い温度読み取りをもたらす。
【0144】
第2の材料も、異なるドーパント濃度でドープされ得る。例えば、蛍光材料がYAG-Erである場合、Erの濃度を0.1~20重量%で調整して、時間衰退応答をシフトさせることができる。
【0145】
サンプル及びバッチを凝固させる
【0146】
実施形態において、方法は、所定の期間及び所定の温度範囲内において制御された雰囲気環境で、圧縮して粉末化したバッチ材料を焼結することによって、サンプル及び実質的に全てのバッチを凝固させる。
【0147】
圧縮して焼結された蛍光体固体は、以下の利点を有する:
任意の所望の形状に加工可能な、固体構造であること;
高温環境における劣化ガスに対して、安定性を増加させる高密度であること;
切断された個々のセンサディスクは、大量の固体全体の、より均一で制御された密度のために、より調和した時間衰退応答を有すること;及び、
粉末バッチを、様々な粒子サイズ分布または様々なドーパント濃度を有する、大量の粉末材料の様々な比率で混合することによって、温度応答に対する時間衰退を細かく調節することができること。
【0148】
実施形態において、蛍光センサ素子は、蛍光体粉末ベースのセンサ素子であり、それは充填材を加えずに焼結される。
【0149】
別の実施形態において、充填材が蛍光体粉末に加えられて混合され、蛍光材料を提供して、それは次に高圧下で、固体で堅固な形状を有するグリーンオブジェクトに圧縮される。次にこのグリーンオブジェクトは、高温で焼結される。圧縮された蛍光材料は、制御された雰囲気環境で焼結され得る。例えば、ドープされたYAGの焼結は、不活性窒素環境または真空で実施され得る。代替として、酸素が存在する空気中の焼成は、結晶の中への酸素拡散を最大にして、焼きなましに必要な時間を減少させる。
【0150】
例えば、ドープされたYAGから作られた蛍光センサ対象物は、摂氏約1500度~摂氏約1900度の範囲の温度で約2~約24時間焼結され、その後、摂氏約800度~摂氏約1400度の範囲のより低い温度で約2~約48時間焼きなまし得る。センサが大気環境で動作する場合、焼きなましは、理想的には酸素が存在する空気中で実施される。ドープされたYAGの場合、摂氏約800度~摂氏約1400度で多くの時間または多くの日数にわたり循環させることで焼きなますことで、酸素飽和度を改善し、イオン電荷移動を安定させるのに役立ち、それは時間衰退ヒステリシスの影響を減少させる。
【0151】
二酸化ケイ素など、酸素を包含した充填材が加えられ、焼結が空気中で実施されたとき、焼結時間は、さらなる焼きなましを必要とせずに、約2時間の短時間で完了され得る。したがって、充填材の追加も、製造処理時間を減少させる。
【0152】
最終的に押圧され、かつ焼結されて得られた製品は、理想的には全単結晶固体密度の90%よりも大きい。
【0153】
圧縮された粉末の対象物は、所定の温度範囲及び期間で焼結されるが、それは粉末材料によって変化し得る。焼結時間を長くすると、粒子構造は最終的に単結晶固体を形成することになる。いくつかの実施形態において、これは望ましい。なぜなら、固体結晶は機械的に非常に安定しているからである。しかし、レアアースでドープされたYAGなどの材料である場合、光学的に透明な単結晶固体のポイントまで焼結させることによって、蛍光効率が小さくなる。励起光は、小さい断片のみが結晶格子に吸収され、結晶材料を通過して移動する傾向がある。多結晶粒子構造のみのポイントまで焼結させることで、励起光のより良好な拡散及び吸収を提供することによって、蛍光効率を向上させ、より薄いセンサ素子構造をもたらす。
【0154】
実施形態において、充填材料は、以下の有益な特徴を生成するために、押圧及び焼結の前に、蛍光体粉末に加えられる。
a.材料を結合するために必要な全体的に低い焼結温度において、大量の材料の改善された高密度化。これは、多くの蛍光材料が高い温度に露出されたときに、不可逆的に劣化するので重要である。これには、コスト及び処理時間の利点も存在する。
b.より強い、得られる材料マトリクスが形成され、それは基本的にセラミックである。したがって、より強い材料は、割れる恐れがなく、加工、研磨、及びダイスカット後の作業が、より容易である。
c.充填材料がコーティングし、蛍光材料を化学環境から隔絶することによる、改善された化学的不活性。
d.光ファイバの端部を溶解及び接合する、改善された機能。例えば、SiO添加剤を伴うYAG蛍光粉末は、溶解シリカ光ファイバの端部まで、プラズマ溶解することができる。
e.添加剤のパーセンテージを調整することで、時間衰退応答をシフトでき、上述のようにバッチごとの応答の細かい調節を可能にする(またはダイアモンド粉末など、第2の不活性添加剤も存在して、この取り組みを補助し得る)。
f.いくつかの固体結晶構造の時間衰退挙動は、蛍光モードに影響するイオン電荷移動(及び可逆的色中心の発展)のため、温度に対して繰り返されず、その一方で添加剤の存在は、蛍光応答の安定化に役立つ。
g.最後に、追加の添加剤は、焼結され形状付けられたセンサ素子の表面上に、容易に融解、及び接合され、周囲の化学的環境からさらに防護し、及び/または図10のように、基体もしくは光ファイバに接合するのを補助する。
【0155】
実施形態において、レアアースでドープされたYAG蛍光体粉末(充填材なし)は、固体構造に焼結され、ディスク形状にダイスカットされ得る。
【0156】
固体構造の押圧された形状は、プレートまたはロッドである場合がある。焼結は、固体構造における、部分的な多結晶組成または完全な単一結晶組成に成すことができる。次に固体構造は、所望のセンサ素子形状(例えばディスク)に加工、またはダイスカットされる。
【0157】
実施形態において、ガラス蛍光体粉末マトリクスは混合され、蛍光材料を提供し、それは高圧下(少なくとも5トン/インチ)で(圧縮され)、キャップの中または目標の基体上に堆積及び/または押圧される。次に高温焼結及び焼きなまし処理は、キャップまたは目標のアセンブリで実施される。このように、焼結された材料も、キャップまたは目標の基体と、機械的接合を形成する。実施形態において、充填材料は、混合物の焼結温度を下げるために加えられる。例えば、融解点が約700℃である、低い融解温度のガラス粉末は、マグネシウムフルオロゲルマネート系蛍光体と共に使用され、動作温度が600℃までの蛍光センサ素子を生成し得る。
【0158】
実施形態において、充填材粉末の粒子サイズは、蛍光体粒子サイズと同様のサイズか、または小さいサイズである。ナノ粒子の充填材、またはナノ粒子の蛍光体が、使用され得る。
【0159】
図13に示されるように、蛍光温度センサ10は、蛍光体温度計測装置の一部であり、装置は全体的に100で指す。装置100は、光源102、例えば限定ではないがフォトディテクタなどの光検出器104、アナログからデジタルへの変換器106、マイクロプロセッサ110及びメモリ112を有する印刷回路基板108を含む。メモリ112は、蛍光センサ素子からの光信号に基づいて温度を判断するよう、プロセッサに命令するための命令を有し、それは次に、電子デジタル信号として印刷回路基板108から送信される。
【0160】
実施形態の例を、可能な最も実用的及び/または好適な実施形態の例であると現在考えられることと共に説明した一方で、説明は開示した実施形態に限定されず、反対に、実施形態の例の趣旨及び範囲内に含まれる、様々な変更及び同等の装置を網羅するよう意図されることを、理解されたい。当業者は、一般的な実験以上のものを使用せずに、本明細書で詳細に説明した特定の実施形態における例の多くの同等物を理解、または確認できるであろう。このような同等物は、添付されるか、または後に出願される場合、特許請求の範囲に包含されるよう意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】