(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】運動量伝達法を用いた付加製造
(51)【国際特許分類】
B22F 10/25 20210101AFI20220407BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220407BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220407BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20220407BHJP
B22F 12/58 20210101ALI20220407BHJP
【FI】
B22F10/25
B33Y30/00
B33Y10/00
B22F12/50
B22F12/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550076
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 US2020020082
(87)【国際公開番号】W WO2020176721
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】デーン,グレン
(72)【発明者】
【氏名】ビベク,アヌパム
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018CA44
(57)【要約】
付加製造方法によって金属製品が製造される。それを実施する装置は、金属製品の製造を実施するために、記憶された一連の指示を備えたコントローラを有する。金属製品は、コントローラと相互通信するプリントヘッドによって、ターゲットプラットフォーム上で、一片ごとに又は層ごとに製造される。プリントヘッドは、運動量伝達技術に基づいて動作し、そこでは、ターゲットプラットフォームに向けて金属片を発射するためにインパルスソースからのパルスエネルギが使用される。その金属片が、ターゲットプラットフォームに接着されて金属製品が製造される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製品の付加製造装置であって、前記付加製造装置は、
前記金属製品を製造するための一連の指示を記憶したコントローラと、
その上で前記金属製品が一片ごとに又は層ごとに製造されるターゲットプラットフォームと、
前記コントローラと双方向通信するプリントヘッドとを含み、
前記プリントヘッドは、インパルスソースからパルスエネルギを受け、運動量伝達技術を用いて金属片を前記ターゲットプラットフォームに向けて発射し、
前記金属片を前記ターゲットプラットフォームに接着して、前記金属製品を製造する、付加製造装置。
【請求項2】
前記運動量伝達技術は、レーザ衝撃溶接である、請求項1の装置。
【請求項3】
前記プリントヘッドは、
所定の開口と形状を有する開口を備えたバッキングプレートと、
所定の厚さと組成を有し、前記バッキングプレートと前記インパルスソースとの間に配置された飛翔金属のウェブとを有し、
前記パルスエネルギが前記開口を介して前記飛翔金属片を加速し、前記ターゲットプラットフォームに向けて前記飛翔金属片を発射する、請求項2の装置。
【請求項4】
前記一連の指示は、前記インパルスソースからの所定量の前記パルスエネルギを用いて、予め決められた量を有する前記飛翔金属を前記ターゲットプラットフォームの予め決められた位置に向けて順次発射することで前記金属製品の三次元モデルを具体化する、請求項1から3のいずれか一つの装置。
【請求項5】
前記金属製品は、前記ターゲットプラットフォーム上で造形される前記飛翔金属の製品である、請求項4の装置。
【請求項6】
前記飛翔金属片は、前記金属製品を製造するために、既存の金属体に存在する割れ又は裂け目を充填する、請求項4の装置。
【請求項7】
前記飛翔金属片は、前記金属製品を製造するために、既存金属体に特徴を付加する、請求項4の装置。
【請求項8】
前記飛翔金属片は、二つ以上の既存片の同種溶接又は異種溶接を生み出す、請求項4の装置。
【請求項9】
前記飛翔金属片は、既存金属体に表面塗装を提供する、請求項4の装置。
【請求項10】
金属製品の付加製造方法であって、前記方法は、
前記金属製品の三次元モデルと、プリントヘッドを用いて前記三次元モデルを具体化するための一連の指示を取得する工程と、
前記一連の指示を、少なくとも前記プリントヘッドとインパルスソースの動作を制御するコントローラに提供する工程と、
前記コントローラから前記プリントヘッドと前記インパルスソースに前記一連の指示を順次送信する工程とを有し、
前記一連の指示のそれぞれが前記インパルスソースを指令して、開口を有するバッキングプレート上の飛翔金属のウェブに向けて予め決められたパルスエネルギを送り、これにより、前記飛翔金属片が前記ウェブからせん断され、前記ターゲットプラットフォームの予め決められた位置に向けて十分な速度で発射され、前記三次元モデルに従って前記ターゲットプラットフォーム上で製造されている前記金属製品の上に、発射された飛翔金属片が接着され、
前記方法はさらに、前記一連の指示の終了まで、前記コントローラから前記プリントヘッドと前記インパルスソースに前記一連の指示を順次送信する工程を繰り返して、前記金属製品を製造する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された実施形態は、運動量伝達技術の使用に基づいて、金属片を層状に接着する、付加製造(アディティブ・マニュファクチャリング)方法に関する。このような技術は、熱入力に固有の微細構造の断裂を生じることなく、金属片を正確に堆積できる。
【背景技術】
【0002】
付加製造は、製品の三次元モデルに基づく、コントローラに対する一連の指示によって三次元プリンタのプリントヘッドを制御して、予め決められた材料を一片ごとに又は層ごとに配置することによって製品を製造するものである。一つの公知の方法では、電子ビーム等の源を利用して、ワイヤが選択的に溶融されて、製造中の製品の一部の上に置かれる。この技術はプロセッサ片として知られており、金属を層状に積層する一公知方法は、加熱されたワイヤの溶融金属をプリントヘッドで成形位置に付加するものである。別の技術は、いわゆる「コールド・スプレー」と呼ばれる技術で、そこではミクロンサイズの粒子が高速で表面に衝突する。コールド・スプレー技術の一例が、米国特許第10,315,218号である。コールド・スプレーの一つの限界は、それが通常はコーティング技術として使用され、ニヤネット形状の一部を作る方法として利用されないことである。別の公知の付加製造技術は、粉末金属を用いた焼結金属技術である。
【0003】
したがって、従来の満たされない利点は、運動量伝達技術を採用した付加製造方法を提供することである。
【発明の概要】
【0004】
この利点及びその他の利点は、以下に詳細に記載し示された装置と方法によって提供される。
【0005】
いくつかの実施形態において、金属製品の付加製造装置は、
コントローラであって、該コントローラに格納された前記金属製品の製造を行うための一連の指示を備えたコントローラと、
その上で前記金属製品が一片ごとに又は層状に製造されるターゲットプラットフォームと、
前記コントローラと相互に通信するプリントヘッドを有する。
この装置は、プリントヘッドがインパルスソースからパルスエネルギを受けて、運動伝達技術を用いて、金属片をターゲットプラットフォームに向けて発射することを特徴としており、その金属片はターゲットプラットフォームに接着して金属製品を製造する。
【0006】
幾つかの実施形態において、運動量伝達技術はレーザ衝撃溶接である。この実施形態では、プリントヘッドは、予め決められた面積と形状の開口を備えたバッキングプレートと、バッキングプレートとインパルスソースの間に配置されて所定の厚さと組成を有する飛翔金属のウェブを有し、前記パルスエネルギが開口を介して飛翔金属片を加速し、前記飛翔金属片をターゲットプラットフォームに向けて発射する。
【0007】
幾つかの実施形態において、一連の指示は、インパルスソースからの所定量のパルスエネルギを用いて、プラットフォームの予め決められた位置に向けて、所定量の飛翔金属片を順次発射することによって、金属製品の三次元モデルを具体化する。これらの実施形態において、金属製品は、ターゲットプラットフォーム上の、飛翔金属の造形体である。
【0008】
幾つかの実施形態において、飛翔金属片は、既存の金属体の割れや裂け目を充填して金属製品を製造する。
【0009】
幾つかの実施形態において、飛翔金属片は、既存の金属体に特徴を付加して、金属製品を製造する。
【0010】
他の実施形態において、飛翔金属片は、二つ以上の既存部材の同種溶接又は異種溶接を行う。
【0011】
他の実施形態において、飛翔金属片は、既存の金属体の表面塗装を行う。
【0012】
金属製品の付加製造方法は、
前記金属製品の三次元モデルと一連の指示を取得し、プリントヘッドを用いて前記三次元モデルを具体化する工程と、
少なくとも前記プリントヘッドとインパルスソースを動作制御するコントローラに前記一連の指示を提供する工程と、
前記コントローラから前記プリントヘッドと前記インパルスソースに前記一連の指示を順次送信する工程とを有し、
前記一連の指示は、それぞれが前記インパルスソースを命令して、予め決められたエネルギパルスを、開口を有するバッキングプレート上の飛翔金属のウェブに向けて送り、これにより、前記飛翔金属片が前記ウェブからせん断されて前記ターゲットプラットフォームの予め決められた位置に向けて発射され、その速度は、発射された前記飛翔金属片が、ターゲットプラットフォーム上に前記三次元モデルに従って製造されている前記金属製品に付着するために十分なものであり、
前記方法はさらに、前記一連の指示の終わりに到達するまで、前記コントローラから前記プリントヘッドと前記インパルスソースに、前記一連の指示を順次送信する工程を繰り返して、前記金属製品を得る工程を有する。
Brief Description of the Drawings
【図面の簡単な説明】
【0013】
開示された実施形態は、添付図面を参照することによって、より良い理解が得られる。添付図面において、同じ部分は同じ参照番号で示されている。
【
図2】
図2は、付加製造装置用のプリントヘッドとターゲットの第1実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、付加製造装置用のプリントヘッドとターゲットの第2実施形態の概略図である。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0014】
少量の金属は、適当な衝撃速度と角度でもって順次加えられることにより、互いに接着する。この技術は、ニアネットシェイプ製造で物を製造したり、割れ目を充填したり、特徴を付加したり、さらには同種金属又は異種金属の溶接を行ったり、表面塗装を行うために利用される。
【0015】
本件出願の方法と装置は、非常に大きさサイズの粒子を使用する。コールドスプレーから生じるインターフェイスと空隙率は、性能が良くない。本願で提案する発明概念では、ソリッドステート溶接は、ミリメートル又はセンチメートルの大きさの金属単位で行われる。そのため、非常に大きな堆積速度が得られるともに、堆積物に優れた機械特性が得られる。
【0016】
ターゲットに向けて飛翔体を加速して運動量伝達効果を得るために使用される複数の方法がある。それらのうちの3つは、以下のものである。
【0017】
第1の方法は、アブレーションレーザ発射である。この方法の一般的概念は、発明者ディーン(Daehn)とリッポルド(Lippold)の米国特許第8,084,710号に記載されている。この方法の変形例は、付加製造に必要とされる高処理能力のアプリケーションに適合可能である。
【0018】
第2の方法は、気化ホイルアクチュエータである。この方法の一般的概念は、発明者ビベック(Vivek)の米国特許第9,021,845号に記載されている。この方法は、高速で且つ適当な接触角で連続するスラグ(小さな塊)の高生産性発射のために自動供給と共に使用できる。
【0019】
第3の方法は、伝統的な弾道ガンである。この装置は、必要とされる衝撃速度(典型的には500m/s)に達するように使用される。ガンは、ターゲット面に対して、適当な衝撃角度を与えるように配置される。その角度は、通常、約20度で、連続的な溶接が行える。
【0020】
潜在的に複数の特許を受けることができる発明が含まれる。これらの発明は、一連の飛翔体を用いて物を製造し、補修し、成形し、又は連結することを含む。それらはまた、この発明を形状を作るための概念に適用することを含む。それは、冷間修理又は現場修理に適用可能である。それはまた、長周期(すなわち、50-500ns)で高強度(すなわち、~10GW/cm2)のレーザインパルスの使用を含む。
【0021】
図面に戻ると、
図1は付加製造装置10の概略図を示す。付加製造では、製造すべき製品に対する三次元モデルが取得される。このモデルは、専用のコントローラ12に保存される、又は汎用コンピュータによってコントローラに送信される一連の指示に変換される。コントローラ12は、プラットフォーム14とプリントヘッド16に関連付けられている。製品はプラットフォーム上で製造される。プリントヘッドは、一連の指示からの指示を実行するために使用される。したがって、プリントヘッド16は、少なくともコントローラ12と通信を行って一連の指示を受信する。好ましくは、プリントヘッド16は、特にターゲットプラットフォーム(目標台)14に対するプリントヘッドの位置と方向に関する情報を送信するために、双方向通信を行うことが好ましい。
【0022】
ここで説明するように、運動量の伝達を用いてプリントヘッド16の動作を活性化する付加製造装置10の場合、特に、コントローラ12と通信して指示を受信するともにその動作状態をコントローラに通知するインパルスソース(衝撃源)も必要である。
【0023】
図2に注目すると、ターゲットプラットフォームの第1実施形態114と組み合わせたプリントヘッドの第1実施形態116が概略示されている。この場合、プリントヘッド116は、開口122を備えたバッキングプレート120を有する。側面図に示されるように、開口122は、円形、四角形、多角形等を含む種々の形状に構成することができるものと理解すべきである。バッキングプレート120は、ターゲットプラットフォーム114と飛翔金属のウェブ124の間に配置される。インパルスソースで生じるレーザインパルス119が飛翔金属のウェブ124に当たると、開口122に向けられたレーザインパルスの衝撃が飛翔金属を加速する。開口12の上に配置されたウェブ124の飛翔金属が解放され、ウェブからせん断されてターゲットプラットフォーム114に向けて加速される。これら飛翔金属のせん断片126は、十分な速度で所定の角度(α)をもってターゲットプラットフォームに衝突して接着する。飛翔金属のウェブの厚さは公知で、開口122の面積と形状はバッキングプレートの選択によって変わるので、せん断片126の体積と三次元プロファイルは予め決まる。飛翔金属のウェブの組成を変えることにより、せん断片126の材料と密度が決まる。レーザインパルス119のパワーと持続時間も、予め決められる。
【0024】
この技術は、ターゲットとして使用される金属の割れや裂け目を充填するために使用される。また、この技術は、ターゲットに表面塗装を施したり、ターゲット表面に特徴を造形するためにも使用される。これらの技術の違いは、コントローラで使用される三次元モデルの相違に過ぎない。
【0025】
図3に注目すると、ターゲットプラットフォームの第2実施形態214と組み合わされたプリントヘッドの第2実施形態216が概略示されている。この実施形態において、プリントヘッド216は、開口222を備えたバッキングプレート220を有する。側面図に示されるように、開口222は、円形、四角形、多角形等を含む種々の形状に構成できるものと理解すべきである。バッキングプレート220は、ターゲットプラットフォーム214と飛翔金属のウェブ224との間に配置される。インパルスソースで発生したレーザインパルス219が飛翔金属のウェブ4に当たると、開口222に向けられたレーザインパルスの衝撃が飛翔金属を加速する。開口222上に配置されたウェブ224の飛翔金属が解放され、ウェブからせん断されてターゲットプラットフォーム214に向けて加速される。この場合、ターゲットプラットフォーム214は、結合される二つの金属片228,229を有する。これらの飛翔金属のせん断片226は、金属片228,229又は先に衝撃が与えられて充填領域230に充填されたせん断片に衝撃を与える。せん断片226の衝突は、接着するために十分な速度で運動量を伝達する。飛翔金属のウェブ224の厚さは知られており、開口222の面積と形状はバッキングプレートを選択することによって変えられるので、せん断片226の体積と三次元プロファイルは予め決められる。飛翔金属ウェブの組成を変えることにより、せん断片226の材料と密度が予め決められる。レーザインパルス219のパワーと持続時間もまた予め決められる。金属片228,229の金属と組成は同じであってもよいし違ってもよいし、充填領域230は異なる金属であってもよい。
【国際調査報告】