(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】患者の骨盤領域の神経の術中神経モニタリングのための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0538 20210101AFI20220407BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
A61B5/0538
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550100
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 IB2020051196
(87)【国際公開番号】W WO2020174304
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】102019104947.4
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521377672
【氏名又は名称】ドクトル ランガー メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランガー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シューラー、ラモーナ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ25
4C127AA06
4C127DD03
4C127GG11
4C127GG15
(57)【要約】
本発明は、患者の骨盤領域の神経の術中モニタリングのための装置に関し、手術中に手術領域に導入することができる少なくとも1つの神経刺激装置(16)と、患者(13)の少なくとも1つの骨盤臓器(14、15)に取り付けることができるセンサ装置(20)とを備える。この種の装置を提供するために、本発明によれば、患者の骨盤領域での動作中に、1つまたは複数の骨盤臓器、すなわち、特に膀胱および/または直腸に作用する神経の完全性/適切な機能を、有意な遅延なしに確実にモニタリングすることができる手段によって、センサ装置(20)は、骨盤臓器(14、15)に適用することができる少なくとも2つの感知電極(23)と、感知電極に適用することができ、かつ感知電極(23)間の骨盤臓器(14、15)のインピーダンス変化を示すディスプレイ(22)を有するインピーダンス測定装置(21)と、を備える。膀胱または直腸のような骨盤臓器に接続されている神経の刺激は、関係する器官組織における複雑な電気抵抗(インピーダンス)の変化を導き、これは、神経刺激器によって刺激された神経の完全性の指標として作用し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の骨盤領域の神経を術中神経モニタリングするための装置であって、
手術中に手術領域に挿入可能な少なくとも1つの神経刺激装置(16)と、
患者(13)の少なくとも1つの骨盤臓器(14、15)に接続可能なセンサ装置(20)と、を備え、
前記センサ装置(20)が、骨盤臓器(14、15)に装着可能な少なくとも2つの測定電極(23)と、前記測定電極に接続され、または接続可能なインピーダンス測定装置(21)と、前記測定電極(23)間の骨盤臓器(14、15)でのインピーダンス変化を示すディスプレイ(22)と、を有することを特徴とする
装置。
【請求項2】
前記センサ装置(20)は、前記骨盤臓器(14、15)に装着可能な少なくとも2つのテスト電流電極(25)を有するテスト電流供給装置(24)を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記テスト電流電極(25a、25b)の一方と前記測定電極(23a、23b)の一方とがそれぞれ電極ユニット(26a、26b)内で組み合わされることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記テスト電流供給装置(24)は、固定または調整可能なテスト電流周波数を用いて、前記テスト電流電極(25)に印加される交流テスト電流を提供することを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記テスト電流供給装置(24)は、複数の、特に2つのテスト電流電極対を含み、それぞれが2つのテスト電流電極(25a、25b)を有し、異なるテスト電流電極対で異なるテスト電流周波数を有するテスト交流電流を生成する手段を含むことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記センサ装置(20)は、測定信号増幅器(31)、好ましくはロックイン増幅器、特に好ましくは二重位相ロックイン増幅器を有し、前記測定電極(23)で測定可能な測定信号を処理することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の機器。
【請求項7】
前記インピーダンス測定装置(21)は、実質的にインピーダンス分光器からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の機器。
【請求項8】
1つの測定電極(23a、23b)および1つのテスト電流電極(25a、25b)をそれぞれ備える少なくとも1つの電極ユニットが、電極カテーテル(26a)および/または直腸プローブ(26b)の形態で設計されることを特徴とする請求項3~7のいずれか1項に記載の機器。
【請求項9】
前記神経刺激装置(16)は、好ましくは刺激電流を通電可能な双極性刺激電極(17)であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の機器。
【請求項10】
前記センサ装置(20)は、前記患者の膀胱(14)および直腸(15)に装着するために、それぞれ少なくとも2つの測定電極(23a、23b)および2つのテスト電極(25a、25b)を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の骨盤領域の神経を術中モニタリングするための装置であって、手術中に外科領域に挿入可能である少なくとも1つの神経刺激装置と、患者の骨盤臓器に接続可能である少なくとも1つのセンサ装置と、を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの骨盤領域には、運動、感覚、自律神経線維を含む非常に網目細工状の(filigree)神経叢が走っている。この神経叢の損傷のリスクは、骨盤内手術(例えば、直腸、膀胱、前立腺または子宮について)中、非常に高く、その結果、神経叢が損傷した患者の生活の質は極めて厳しく制限される結果となる。
【0003】
骨盤神経損傷の結果は、術後の骨盤臓器の機能障害である。最大38%の患者が骨盤内手術後に尿失禁を患い、約46%の患者が便失禁を患い、18~76%の患者が性機能障害を患う。このような生活の質の著しい制限は、年間手術件数が多いこと(2015年の直腸、膀胱、尿道、内性器の手術件数は、連邦統計局によると約437200件)を考えると、かなりの数の患者に影響を与えている。
【0004】
骨盤神経叢は非常に複雑で、その表情は極めて微細であり、多くの異なる神経の位置は個々に異なる。確立された神経モニタリングの方法、例えば、甲状腺外科から知られている方法は、骨盤領域での適用に容易に移すことができない。特に直腸手術では、神経温存手術手技を適用するために数年間努力が払われてきたが、骨盤領域における標準化されたルーチンの術中神経モニタリングのためのシステムはまだ一律には確立されていない。外科医にとって、神経を周囲の組織から区別して骨盤神経を温存することは非常に困難であり、神経解剖学および神経生理学の適切な知識を必要とする。更に骨盤腔内における筋膜および脂肪組織の形態は患者ごとに異なること、腫瘍浸潤の可能性もあることから、骨盤神経の同定が妨げられる。
【0005】
自律神経系によって制御される骨盤領域における機能の刺激可能性を実質的に同時に制御するための一般的な装置がEP 2 589 410 B1から知られており、この装置は、手術中に骨盤領域に挿入するための少なくとも1つの刺激電極を有し、前記装置におけるセンサ装置が、センサとして、膀胱圧を測定するための少なくとも1つのセンサと、肛門内括約筋の活動を測定するための少なくとも1つのセンサと、を有し、括約筋の活動を測定するためのセンサが、EMG測定のための1つのセンサであるものである。
【0006】
刺激電極によって膀胱が通電されたときの応答信号を検出するための圧力センサの使用は、少なくとも、手術中に本質的に望ましくない、流体による膀胱の部分的な充填を必要とするから不利であることが示されている。したがって、神経叢の完全性をチェックする前に、まず、手術前に配置された膀胱カテーテルを介してある量の流体(リンゲル液など)を膀胱に導入し、神経をチェックした後、再度排水しなければならないから、一般的に、膀胱の上/内部において圧力センサを用いることにより、操作時間は無視できない程度に長くなり得る。肛門内括約筋の術中EMG測定で得られた測定値は非特異的に過ぎることが証明されており、前記方法の望ましい信頼性が欠如しているため、肛門内括約筋の術中EMG測定も臨床ルーチンで自ら確立することができていない。その主な理由は、骨盤部の神経叢には自律神経線維の割合が多く、標的筋は平滑筋であるからである。平滑筋には平滑筋活動を制御するペースメーカ細胞(カハール細胞)があり、自律神経線維によって調節されている。このように、平滑筋収縮は、通常のEMGによって検出することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、患者の骨盤領域での操作中に、1つまたは複数の骨盤臓器、すなわち、特に膀胱および/または直腸に作用する神経の完全性/機能性を確実かつ認識可能な遅延なしにチェックすることが可能な、最初に述べたタイプの装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、センサ装置が、骨盤臓器に適用できる少なくとも2つの測定電極と、測定電極に接続され、または接続可能なインピーダンス測定装置と、を有し、測定電極の間の骨盤臓器におけるインピーダンス変化を示すディスプレイを備える本発明によって解決される。この文脈において、「骨盤臓器に適用可能」という表現は、直接的な適用だけでなく、間接的な適用、すなわち膀胱からの出口を形成している尿道のような骨盤臓器に接続された身体部分への適用をも網羅することを意図している。
【0010】
驚くべきことに、膀胱または直腸のような骨盤臓器に関連する神経の刺激は、関係する器官組織において複雑な電気抵抗(インピーダンス)の変化をもたらし、これは、神経刺激器の手段によって刺激される神経の完全性の指標として役立ち得ることが示されている。本発明の援用により、発生するインピーダンスの変化を測定し、それらを外科医にディスプレイ上に表示することが可能であり、それにより、刺激された神経がまだ完全に機能しているか、すなわち無傷であるか、または動作中に傷害を受けた可能性があるかどうかについてのフィードバックを提供することが可能である。
【0011】
前記神経刺激装置は、好ましくは刺激電流で通電可能な二極刺激電極であり、これにより、自律神経および体性骨盤神経に電気刺激を直接与えることが容易に可能である。これは、骨盤臓器に再現可能な刺激誘導収縮を誘導する簡単で信頼できる手段を提供する。膀胱および直腸の平滑筋の収縮は、本発明による組織インピーダンスの変化を測定することによって測定することができる。本発明で実施できる方法は、膀胱が空である、すなわち流体を含まない場合においても膀胱におけるインピーダンスの変化の測定が可能である故に特に有利である。従って、本発明は、チェック刺激を行うために例えばリンゲル液等で充填するなどの時間のかかる方法で準備をする必要なく、モニタリングされる骨盤臓器に接続された骨盤神経叢の術中における位置特定および機能制御を可能にする。
【0012】
本発明の有利な実施形態では、センサ装置は、骨盤臓器に適用できる少なくとも2つのテスト電流電極を備えたテスト電流供給装置を備え得る。この場合、例えば、1つのテスト電流電極および1つの測定電極をそれぞれ1つの電極ユニット内で組み合わせるような方法で、好都合に構成できる。このような構成により、インピーダンス測定のための測定技術は、4電極技術を用いて特に有利に実施することができる。好ましくは、既知の定電流が、2つのテスト電流電極を介して、関係する骨盤臓器において体内にテスト電流として導入される。組織インピーダンスの結果生じる測定部位の間の電圧は、2つの測定電極を介して測定される(tapped)。臓器に関連した神経の刺激による組織インピーダンスの変化は、測定電極で測定された電圧の変化をもたらし、これは、ディスプレイ上で見ることができる。
【0013】
直流電流を印加すると組織中の流体により電極間で電解が起こる可能性があるので、骨盤臓器(膀胱、直腸)上の測定のために導入される定電流(以下、テスト電流と称す)は、いかなる直流成分も有すべきではない。したがって、導入された一定テスト電流は、好ましくは、特定の周波数、例えば50kHzの周波数で変調される。この目的のために、本発明の有利なさらなる発展形態においては、テスト電流供給装置は、固定または調整可能なテスト電流周波数でテスト電流電極に印加される交流テスト電流を提供する。
【0014】
動作中に異なる臓器でのインピーダンス変化をモニタリングすることができるように、テスト電流供給装置は、いくつか、特に、それぞれが2つのテスト電流電極を備えた2つのテスト電流電極対と、異なるテスト電流電極対で異なるテスト電流周波数を有するテスト交流電流を発生させる手段とを備えることができる。次いで、異なるテスト電流電極対を異なる臓器に適用することができ、例えば、一方では尿道ブラダ、他方では操作される患者の直流を、適切な位置でそれぞれの場合において、第1のテスト電流周波数を有する第1のテスト電流を一方の臓器に印加し、第1のテスト電流周波数と異なる第2の周波数を有する第2のテスト電流を他方の臓器に印加することができる。このようにして、測定電極によって器官で測定された電圧を、関係する臓器に明確に関連付けることができる。
【0015】
センサ装置は、測定電極によって測定された測定信号を処理する測定信号増幅器、好ましくはロックイン増幅器、特に好ましくは二重位相ロックイン増幅器を有する。
【0016】
インピーダンス測定装置が実質的にインピーダンス分光器からなる場合には、特に有利であることが証明されている。インピーダンスは実数部と虚数部から成り、実数部は純粋なオーム抵抗に対応する。虚数部は容量性成分と誘導性成分によって決まり、周波数に依存する。モニタリングされた骨盤臓器の平滑筋の収縮は、測定電極間のオーム抵抗の変化を引き起こすだけでなく、インピーダンスの容量性成分の変化を引き起こす可能性があり、これは、インピーダンススペクトロスコープを使用することによって特に明瞭に検出することができる。インピーダンス分光法では、テスト電流の変調周波数は、特定の定義された周波数スペクトルにわたって変化させる。組織インピーダンスは、変調周波数の関数として決定することができる。したがって、インピーダンスの変化は、非常に確実かつ明確に決定することができる。
【0017】
モニタリングされる骨盤臓器への電極の特に単純で信頼性の高い適用のために、測定電極およびテスト電流電極を含む少なくとも1つの電極ユニットが、電極カテーテルおよび/または直腸プローブの形成で設計される場合に有利であることが証明されている。本設計の電極カテーテルは、その上に設けられた2つの電極が、手術の期間、膀胱括約筋と確実に直接接触し続けるように、尿道を通して挿入することができる。同様に、プローブが意図した通りに患者に挿入されたとき、直腸モニタリングするように設計された直腸プローブの電極は、肛門括約筋に取り付けられる。他の測定電極およびテスト電流電極は、壁内に適用することができ、例えば、共通の針状電極ホルダー上に一対の針として構成し得る針状電極であってもよい。このようなホルダーを用いて、その後、これらの電極は、外科医がカテーテルまたは直腸プローブ上の電極対に対して適切な遠隔位置でそれぞれの骨盤臓器内に挿入することができる。
【0018】
既に示したように、センサ装置は、患者の膀胱および直腸への適用のために、各々少なくとも2つの測定電極および2つのテスト電極を有することが好ましい。
【0019】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の説明および図面から明らかであり、ここで、本発明の好ましい実施形態は、一例によってより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】骨盤臓器でのインピーダンス測定中に骨盤神経の刺激に対して得られた応答信号の例示的なグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、全体が10と称される、患者の骨盤領域の神経の術中モニタリングのための装置を概略的に示す図である。装置10は、手術中、患者13の骨盤部12に位置し、骨盤内臓器の1つ、特に膀胱14と直腸15に作用する神経11を位置特定および/またはモニタリングするため、すなわち、それらの完全性および/または機能性をチェックするために使用される。
【0022】
装置10は、術中神経モニタリングを行うために、外科医によって手で保持される刺激電流発生器18およびバイポーラ刺激電極17の形態の神経刺激器16を有する。刺激電流は、刺激電流発生器18によってリード19を介して刺激電極17に印加され得る。装置10は、更に全体が20で示され、ディスプレイ22と、2つの骨盤臓器である膀胱14及と直腸15とに接続または接続可能な複数の測定電極23とを有するインピーダンス測定装置21を主要コンポーネントとして有するセンサ装置20を含む。センサ装置20は、更に、2つの骨盤臓器である膀胱14および直腸15に装着可能なテスト電流電極25を備えたテスト電流供給装置24を備える。
【0023】
図示の好ましい実施例では、本発明による構成は、2つのテスト電流電極25a、25bおよび2つの測定電極23a、23bが、2つの骨盤臓器のそれぞれに設けられるようになっている。この構成は、1つのテスト電流電極25a(または25b)と1つの測定電極23a(または23b)とが1つの電極ユニット内で組み合わされるようになっている。合計4つの電極ユニットのうちの1つは、膀胱14に装着するために患者の尿道27に挿入することができる電極カテーテル26aの形成で設計され、それにより、カテーテルの外周に位置する電極は、尿道の内側に適用され、したがって、膀胱と電気的に接触する。他の電極ユニットは、直腸プローブ26bとして設計され、従って患者の肛門28に挿入される。他の2つの電極ユニットにおいては、テスト電流電極および測定電極は針電極として設計され、それぞれ電極カテーテル26aおよび直腸プローブ26bから離れた位置で2つの骨盤器官14、15の壁内に装着され得る。
【0024】
テスト電流電極25は、テスト電流線29を介してテスト電流供給装置24に接続される。測定電極23からインピーダンス測定装置22への接続線30が対応する形態で存在し、これに従来の二重位相ロックイン増幅器の形態の集積測定信号増幅器31が関連付けられ、この集積測定信号増幅器31によって測定電極23で測定された信号が増幅され、スクリーン22上に意味のある表示をするために処理される。ロックイン増幅器によって測定信号を処理する方法は、当業者には公知であり、ここではさらに詳しく論じることはしない。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、インピーダンス測定装置は、テスト電流電極25と測定電極23との間の骨盤臓器14、15内の交流抵抗(インピーダンス)の変化が、オペレータへのディスプレイ22上で決定され、視覚化され得るインピーダンス分光器であり、この変化は、刺激電極17と、関連する骨盤臓器の筋肉組織のその後の収縮とによって、モニタされた神経(複数可)11の刺激の結果として生じる。
【0026】
このための手順は以下の通りである。
【0027】
既知で一定のテスト電流(交流)が、テスト電流供給装置24によって、骨盤臓器14または15にそれぞれ装着された2つのテスト電流電極25a、25bを介して、膀胱または直腸の平滑筋組織に導入される。組織インピーダンスから生じた測定部位を横切る電圧は、2つの測定電極23a、23bを介して測定される。ここで、組織内の流体により直流が印加されると電極間で電気分解が起こり得るので、導入されるテスト電流は、いかなる直流成分も有してはならない。
【0028】
導入された定テスト電流は、好ましくは、特定の周波数(50kHz)で変調することができる。組織インピーダンスは、純粋なオーム抵抗ではなく、複雑であるため、組織内の仮想インピーダンス成分(容量性成分および誘導性成分)のために、テスト電流と測定された電圧との間に位相シフトが生じる。したがって、インピーダンスは、実効値/二乗平均平方根の式(二乗平均平方根の式)によって決定されることが好ましい。
【0029】
記載される方法で決定される測定部位を横切る臓器組織のインピーダンスに含まれる実部は、純粋にオーム抵抗に対応するが、虚部は、容量性成分および誘導性成分によって決定され、周波数依存性である。インピーダンスの変化は、例えば、インピーダンス分光法の助けを借りて明確に検出することができる。インピーダンス分光法では、テスト電流の変調周波数は、特定の定義された周波数スペクトルにわたって変化させる。組織インピーダンスは、変調周波数の関数として決定することができる。このようにインピーダンス変化を特に確実に検出することができる。
【0030】
前記刺激電極17によってモニタリングされる神経11内に間隔をおいて導入された幾つかの刺激電流パルス位相に応答する2つの骨盤臓器の各々に4つの電極を用いた
図1に示すような本発明による装置によるインピーダンス測定の結果を、
図2にグラフで示す。例えば、1msのパルスの固定パルス持続時間と、30Hzのシーケンスの定義された周波数とを有する方形波パルスのシーケンスである刺激電流パルス位相32の結果として、影響を受けた骨盤臓器14および/または15の平滑筋組織への信号の伝達が、完全性/機能についてモニタリングされる神経11において生じ、その結果、刺激誘発筋収縮および臓器に装着された測定電極23a、23b間の測定距離にわたるインピーダンスの関連する変化がもたらされる。従って、測定電極間で測定された電圧は、刺激電流パルス位相の時間に関して短い時間的遅れを伴って変化し、これは、ディスプレイ22上のオペレータに表示され、例えば、
図2によるディスプレイにおいて、これを示すインピーダンスの変化または電圧上昇は、電圧曲線において歪み33として明確に認識可能である。神経11の更新された刺激は、120秒未満の休止期34を維持しながら可能であり、その間、平滑筋の収縮は鎮静し、従って、測定距離にわたって再びインピーダンスが増加する。
【0031】
トリガー刺激電流パルスにもかかわらず、当の骨盤臓器におけるインピーダンスの変化がないことは、観察される神経と骨盤臓器との間の刺激部位が例えばメスで切断されたために、損傷または完全に中断されていることを示す指標であるため、本発明による装置の助けにより、患者の骨盤領域、特に小骨盤の神経の完全性または機能的能力を確実にチェックすることが可能である。外科医はまた、神経に損傷を与えるリスクがなく計画的な切開を行うことができるかどうかを決定するために、調査がかなり困難なことが多い手術領域の神経の位置を同定するために、この装置を使用することができる。
【国際調査報告】