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特表2022-522221腫瘍を特性決定し、腫瘍の不均質性を識別するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】腫瘍を特性決定し、腫瘍の不均質性を識別するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20220407BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20220407BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20220407BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20220407BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20220407BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220407BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20220407BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20220407BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/37
C12Q1/48 Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6876 Z
C40B40/06
C40B40/10
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559078
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2020026482
(87)【国際公開番号】W WO2020206186
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/828,386
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/828,416
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/828,420
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/829,291
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/829,358
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325444
【氏名又は名称】ミッション バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】メンデス ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】ディングラ ダリア
(72)【発明者】
【氏名】ラフ デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】オーイ アイク
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR16
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR72
4B063QR77
4B063QR82
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
シングルセル由来の標的核酸を検出及び特性決定するための方法を、本明細書で提供する。いくつかの実施形態は、診断時における、生物学的に関連するバリアントを識別する能力だけでなく、変異シグネチャに基づき、治療が耐性細胞クローンをどのように正に選択するかを強調する。これは、本明細書に記載するTapestri(商標)プラットフォームを、遺伝子のバリアントがどのように共存し、どの組み合わせが特定の治療に対して感度を有する及び耐性を持つのかを研究するのに利用可能な唯一のツールと位置付ける。したがって、これは、診断の正確性、治療のフォローアップ、ならびに新しい標的識別及び薬剤開発において役立つ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞のクローンサブ集団を識別及び特性決定する方法であって、
a)PCRプライミング部位に隣接したバーコード配列を抗体にコンジュゲートする工程であって、バーコード配列が抗体に対して特異的である、前記工程と、
b)前記バーコードがコンジュゲートした抗体を使用して細胞染色工程を行う工程と、
c)個別の細胞または細胞核を分画または分離して、プロテアーゼ及び/または逆転写酵素を含む反応混合物に、1つ以上の個別の細胞(複数可)または細胞核を封入する工程と、
d)前記封入した細胞を前記プロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、クロマチンが放出された細胞溶解液においてcDNAを作製する工程と、
e)1つ以上の核酸増幅プライマーセットを供給する工程であって、プライマーセットのうちの1つ以上のプライマーが、抗体と関係するバーコード識別配列を含む、前記工程と、
f)1つ以上のアンプリコンを作製するために、核酸増幅反応を行う工程と、
g)プライマーセットの1つ以上の核酸プライマーの識別バーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給する工程であって、前記識別バーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード識別配列を含む核酸増幅プライマーセットに結合できる、前記工程と、
h)親和性試薬が標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、前記親和性試薬と、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む増幅産物とを接触させる工程と、
i)アンプリコンのバーコードをシーケンシングすることで、1つ以上のタンパク質の同一性を測定し、特性決定する工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
シグネチャ変異が、シングルセルレベルで識別される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シングルセル由来の核酸試料内で遺伝子発現を検出するための方法であって、
a.個別の細胞で、1つ以上の標的核酸配列を選択することであって、前記標的核酸配列がDNAまたはRNAに含有されている、前記選択することと、1つ以上の個別のシングルセルを有する試料を提供することと、
b.液滴内に個別の細胞を封入することと、
c.前記液滴内で、プロテアーゼ及び/または逆転写酵素の存在下で、前記封入された細胞をインキュベートして、cDNA及び細胞溶解液を生成することと、
d.標的核酸に相補的な核酸増幅プライマーセットを供給することであって、前記核酸増幅プライマーセットの少なくとも1つのプライマーが、バーコード識別配列を含む、前記供給することと、
e.シングルセルの前記核酸から増幅産物を形成するために、逆転写及び核酸増幅反応を行うことと、
f.前記標的核酸が転写物を含む場合に前記標的核酸が発現されるか否かを判定することと
を含む、前記方法。
【請求項4】
a)1つ以上の核酸プライマーのバーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給することであって、前記バーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード配列を含む核酸増幅プライマーに結合できる、前記供給することと、
b)親和性試薬が標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、前記親和性試薬と、アンプリコンを含む増幅産物とを接触させることと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標的核酸が存在するか否かを判定するための、増幅産物またはアンプリコンの核酸シーケンシングを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
逆転写酵素を含み、逆転写生成物を作製するために逆転写を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
逆転写酵素を含み、核酸増幅工程の前に、逆転写生成物を作製するために逆転写を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
逆転写酵素を含み、逆転写生成物を作製するために、RNA上で逆転写を行うこと、及び
前記逆転写生成物を増幅すること
を含み、逆転写を行うこと及び増幅することが単一の工程で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記増幅産物の核酸シーケンシング反応を行うことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記親和性試薬がビーズなどを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の細胞表面タンパク質の発現を測定及び特性決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
細胞バーコードに基づき対形成可能な抗体ライブラリー及びDNAライブラリーを調製することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
細胞バーコードに基づき対形成可能な抗体ライブラリー及びRNAライブラリーを調製することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
細胞バーコードに基づき対形成可能な抗体ライブラリー、DNAライブラリー、及びRNAライブラリーを調製することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記親和性試薬がビーズ、固体支持体などを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
図1に従った方法。
【請求項17】
図2に従った方法。
【請求項18】
図3に従った方法。
【請求項19】
図6に従った方法。
【請求項20】
図1、2、3、4、5、または6のいずれか1つのみ、またはこれらの組み合わせの説明に従った方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は概して、標的核酸の検出及び識別、ならびに、標的核酸内での変異及びアレリックバリアントの検出及び識別、より具体的には、シングルセル内での標的核酸の検出及び識別、ならびに、シングルセル内の標的核酸内での変異及びアレリックバリアントの検出及び識別に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、以下の米国仮特許出願である、米国特許出願番号第62/828,416号(2019年4月2日、表題「Analytical Methods To Identify Tumor Heteregeneity」);米国特許出願番号第62/829,291号(2019年4月4日出願、表題「Method, System And Apparatus For Antibody Tag Priming And Genomic Dna Bridge」);米国特許出願番号第62/828,386号(2019年4月2日、表題「A Complete Solution For Hight Throughput Single Cell Sequencing」);米国特許出願番号第62/828,420号(2019年4月2日、表題「Method and Apparatus for Universal base library preparation」);及び、米国特許出願番号第62/829,358号(2019年4月4日出願、表題「Method and Apparatus for Fusion in DNA and RNA」)の優先権を主張し、これら全てが本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
ハイスループットのシングルセル核酸検出及び特性決定をもたらすための方法、システム、及び装置が必要とされている。ハイスループットのシングルセル検体検出及び分析をもたらし、標的核酸の検出及び識別、ならびに、標的核酸内での変異及びアレリック多様体の検出及び識別を含む方法、システム、及び装置もまた、必要とされている。
【0004】
シングルセルシーケンシング技術の進歩により、今や、1回の実験で数千もの細胞を調査することが可能である。シングルセルRNA-Seqは数年間の間利用可能となっているが、ハイスループットのシングルセルDNA分析は初期の状態である。次世代のプロテオミクス及びゲノム分析及びマッピングを行うために、希少細胞に存在する遺伝変化を評価するための新しい可能性を開発し、これらの細胞が腫瘍進行の進展において果たす役割をよりよく理解することが不可欠である。これらの課題に取り組む場合、細胞集団で遺伝子の多様性をマッピングして識別するための新規のアプローチを開発する新たな機会が存在する。これにより、がん及び他の疾患を監視して治療するための新たな機会もまた可能となる。
【0005】
タンパク質は、細胞代謝、構造ダイナミクス、及び情報処理を含む、細胞機能の主たるエフェクターである。タンパク質は、細胞構造ダイナミクス、代謝、及び情報処理を含む、細胞集団の大部分を含み、大部分の細胞機能を担う、細胞の物理的構成単位である。タンパク質は、熱力学的ポテンシャルを生物系のエネルギーに変換する分子マシンである。タンパク質の発現及び修飾を測定することはそれ故、細胞の状態及び機能の正確な速写を得るために重要である。シングルセルレベルでタンパク質を測定する際の一般的な課題は、大部分の細胞が、分子的に個別の多数の細胞を含有する、不均質なものであるということである。センチメートルサイズの組織容積は例えば、数十億個の細胞を含有することができ、各細胞はタンパク質の発現及び修飾の固有のスペクトルを有し、更に、この根底にある細胞の不均質性は、成長、免疫系の制御、がんの進行、及び治療応答などにおける、全体としての系における重要な影響を有する可能性がある。これらのような不均質な系に対しては、シングルセル内でハイスループットのタンパク質プロファイリング方法が必要である。
【0006】
ハイスループットでの、シングルセルでのタンパク質のプロファイリングは感度が高く迅速な方法を必要とする。蛍光標識した抗体によるフローサイトメトリーは、数百万個のシングルセルにおいて、感度を備えてタンパク質をプロファイルすることが可能であるため、数十年間にわたり生物学での基本原則であり続けている。異なった色の染料で抗体を標識することにより、プロファイリングは、数十個のタンパク質に多重化することができる。染料を、質量タグで交換し、読出しのために質量分析計を用いることで、多重化は、百個の抗体を超えて増加させることができる。にもかかわらず、これらの方法は、感度及び多重化を改善し続けているものの、これらは、ヒトにおいては、2万個を超えるタンパク質、及び10万個を超えるエピトープを含むシングルセルで全てのプロテオームの特性決定を可能にするにはほど遠いままである。プロテオーム内の全てのエピトープを、感度を伴ってプロファイリング可能なシステムは、どのタンパク質を標的にするかを選択する必要性を取り除くため、極めて貴重である。しかし、染料及び質量タグを用いる既存の方法は、全プロテオーム分析のレベルまで拡張可能ではなく、マスサイトメトリーの場合、分析中にトランスクリプトームを破壊し、同一のシングルセルから、プロテオーム及びトランスクリプトームの同時の測定値を得ることを困難にしている(Shahi,P.,Kim,S.,Haliburton,J.et al.Abseq: Ultrahigh-throughput single cell protein profiling with droplet microfluidic barcoding.Sci Rep 7,44447(2017).https://doi.org/10.1038/srep44447(非特許文献1)を参照されたい)。
【0007】
本明細書に記載されている発明は、解決されていないこれらの課題及びニーズに対応するものである。これらの課題に取り組み、がん細胞集団でのゲノムの多様性の特性決定を可能にするために、我々は、腫瘍集団に存在するサブクローンを画定する変異シグネチャを識別するための新規のアプローチを開発した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Shahi,P.,Kim,S.,Haliburton,J.et al.Abseq: Ultrahigh-throughput single cell protein profiling with droplet microfluidic barcoding.Sci Rep 7,44447(2017).https://doi.org/10.1038/srep44447
【発明の概要】
【0009】
概要
本書で説明及び特許請求されている発明には、多くの特質及び実施形態があり、その特質及び実施形態としては、この発明の概要で規定、説明または言及されているものが挙げられるが、これらに限らない。本書で説明及び特許請求されている発明は、この発明の概要で特定されている特徴または実施形態に限定されたり、またはこの発明の概要で特定されている特徴または実施形態によって限定されたりはせず、この発明の概要は、例示目的で含まれているに過ぎず、制限を課すものではない。
【0010】
第1の態様では、本発明の実施形態は、細胞のクローンサブ集団を識別及び特性決定する方法であって、本発明の例示的な非限定的方法が、順序に関係なく、PCRプライミング部位に隣接したバーコード配列を抗体にコンジュゲートする工程であって、バーコード配列が抗体に対して特異的である前記工程と、バーコードがコンジュゲートした抗体を使用して細胞染色工程を行う工程と、個別の細胞または細胞核を分画または分離して、プロテアーゼ及び/または逆転写酵素を含む反応混合物に、1つ以上の個別の細胞(複数可)または細胞核を封入する工程と、前記封入した細胞を前記プロテアーゼとともに、ドロップレットでインキュベートして、クロマチンが放出された細胞溶解液においてcDNAを作製する工程と、1つ以上の核酸増幅プライマーセットを供給する工程であって、プライマーセットのうちの1つ以上のプライマーが、抗体と関係するバーコード識別配列を有する工程と、1つ以上のアンプリコンを作製するために核酸増幅反応を行う前記工程と、プライマーセットの核酸プライマーのうちの1つ以上の識別バーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給する工程であって、その識別バーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬が、バーコード識別配列を有する核酸増幅プライマーセットに結合できる前記工程と、親和性試薬が標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む増幅産物とを接触させる工程と、アンプリコンのバーコードをシーケンシングすることで、1つ以上のタンパク質の同一性を測定し、特性決定する工程と、を含む、上記方法に関する。
【0011】
本実施形態及び他の実施形態のいくつかの実施態様では、シグネチャ変異は、シングルセルレベルで識別される。
【0012】
本発明の別の例示的な非限定的方法は、順序に関係なく、個別の細胞で、1つ以上の標的核酸配列を選択する工程であって、標的核酸配列がDNAまたはRNAに含有されている前記工程と、1つ以上の個別のシングルセルを有する試料を提供する工程と、液滴内に個別の細胞を封入する工程と、液滴内で、プロテアーゼ及び/または逆転写酵素の存在下で、封入された細胞をインキュベートして、cDNA及び細胞溶解液を生成する工程と、標的核酸に相補的な核酸増幅プライマーセットを供給する工程であって、核酸増幅プライマーセットの少なくとも1つのプライマーが、バーコード識別配列を含む前記工程と、シングルセルの核酸から増幅産物を形成するために、逆転写及び核酸増幅反応を行う工程と、標的核酸が転写物を含む場合に標的核酸が発現されるか否かを判定する工程と、を含む。
【0013】
本実施形態及び他の実施形態のいくつかの実施態様は、1つ以上の核酸プライマーのバーコード配列と相補的な核酸配列を有する親和性試薬を供給することであって、バーコード配列と相補的な核酸配列を有する親和性試薬が、バーコード配列を有する核酸増幅プライマーに結合できる、供給することと、その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、アンプリコンを含む増幅産物とを接触させることと、を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】シングルセル試料から核酸またはタンパク質を分析することに関する実施形態の使用を示す概略図である。この図解は、シングルセルのゲノム及びプロテオミクス分析が、腫瘍突然変異誘発の及びがん進行の複雑さを研究するのに重要である理由を示す。図示するMission Bio Tapestri(商標)ワークフローは、腫瘍及びがんを、シングルセルレベルで分析可能とするために、いくつかの実施形態での好ましいシステムである。
図2】一次分析及びサブクローン識別のための実施形態を示す概略図である。A.前処理し、シーケンシングリードをアラインし、シーケンシングデータから細胞をコールするための、Tapestri(商標)Pipelineの工程。B.Tapestri Insights(商標)ソフトウェアによる、Tapestri(商標)プラットフォームを用いて生成したシングルセルデータにフィルターを適用して、完全かつ高品質のデータのみが、腫瘍の不均質性分析のために確実に分析されるようにする。C.3つの標的化DNAパネル、それぞれ、AML、CLL、及び骨髄のデータの完全性の例。
図3】有益なバリアントの選択に関するデータを示す。A.Tapestri Insights(登録商標)ユーザーインターフェースに示す、選択したバリアントの属性。U2AF1遺伝子(p.Q157P)での、病原性の可能性があるミスセンスバリアントをハイライトする。バイオリンプロットが、検出された3つの細胞サブ集団にまたがるバリアントの、シングルセルバリアント対立遺伝子頻度の分布を顕わす。左のバイオリンプロットは、scVAF(%)の中央値が45%である細胞の集団を示し、ヘテロ接合遺伝子型の特徴である。中央線はWT遺伝子型の細胞群を示す一方で、右のバイオリンプロットは、ホモ接合遺伝子型の細胞の別のサブ集団を示す。B.遺伝子型IDを含有する試料マトリックス。各バリアントを異なる縦列で構成する一方、各細胞を独立した横列に配置する。下の表は、2つのバリアントの選択結果としての、異なる細胞クローン(C1、WT、C3、及びC4)を可視化するスクリーンショットである。遺伝子型の接合生殖性を縦列で構成する。本実施例では、クローンC1は、EZH2:chr7:148543621:G/Aに対してホモ接合性であり、U2AF1:chr21:44514777:T/Gに対してヘテロ接合性であり、パイプラインによりコールされる全細胞の46.32%を表す。
図4】既知の遺伝子型の検出における、プラットフォームの感度を示す。3つの独立した実験のデータを示す。A.98.4%のPC3、1%のDU145、1%のHCT15、及び0.5%のSKEMEL28細胞株を含有する細胞株の混合物をTapestri(商標)にロードし、AMLパネルのライブラリーを調製してシーケンシングした。パイプラインの後、既知のバリアント(表に示す)を使用して、異なる細胞型を識別し、PCA次元低下法を使用して可視化した。B.パネルAと同一の細胞混合物を使用して、骨髄パネルを用いるシングルセルライブラリーを調製した。C.それぞれ、99/1%、99.5/0.5%、及び99.9/0.1%での、Raji及びK562細胞株の混合物を用いる、検出(LOD)実験の制限。PCAにより選択される既知の遺伝子型に基づく細胞集団の、次元低下による可視化。
図5】治療過程の間の、AML患者の異なる試料のクローン進化に関係する、縦断解析のデータを示す。A.Fishplot、及びB.全細胞サブクローンのダイナミズムを示すドットプロット。3重のFLT3クローンをFLT3阻害剤により取り除くが、2つの治療耐性クローンは、治療の間に拡大する。治療の失敗をもたらす、二重変異体クローン(IDH2/SF3B1)(緑色でハイライト)。シングルセル技術のみが、FLT3阻害剤での治療を開始した後、28日目及び112日目において二重変異体クローンの増加を正確に検出することができている。
図6】希少なサブクローン及び腫瘍純度を検出するために使用した、クローン分布及び系統分析の概略図である。転移性の黒色腫患者の剖検の間に入手した、4つの転移性、及び1つの「正常」な凍結組織を使用して、系統樹を再構築した。まず、Tapestri(商標)及びTumor Hot-Spotパネルを使用して、細胞核を凍結した各組織から単離した。合計で6個の臨床関連バリアントが、分析した5つの組織にまたがり検出された。入手した体節バリアントの数が時間と共に増加するということを推定する理論を用いて、我々は、患者(パネルA)、加えて、分析した各組織(パネルB)当たりでの、完全な系統樹を再構築した。C.クローン当たり(縦列)当たりの、共存するバリアント(横列)の接合生殖性。D及びE.各組織型にまたがる各細胞クローンの割合を含むバープロット。図4に示すシングルセル技術の感度は、本実施例でも披露され、「正常」の肝組織からシーケンシングした6400個の細胞のうちの0.15%が、それぞれ胸壁1及び肝転移性組織の特徴を有する、3つの体細胞突然変異のキャリアであった。剖検を行った医者は、「正常」な肝臓にオリゴ転移性疾患が存在することを確認した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
以下では、下記の節を参照しながら、本発明の様々な態様を説明するが、その説明は、例示として示されるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない旨を理解されたい。
【0016】
「相補性」とは、核酸が、従来のワトソン・クリック形式または従来型とは異なる他の形式のいずれかによって、別の核酸配列と水素結合(複数可)を形成する能力、すなわち、別の核酸配列とハイブリダイズする能力を指す。本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」とは、分子が、特定のヌクレオチド配列のみと、低ストリンジェント、中ストリンジェントまたは高ストリンジェントな条件で結合、二本鎖形成またはハイブリダイズすることを指す(その配列が、複合混合物(例えば全細胞)のDNAまたはRNAに存在する場合を含む)。例えば、Ausubel,et al.,Current Protocols In Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,1993を参照されたい。ポリヌクレオチドのある特定の位置におけるヌクレオチドが、アンチパラレルなDNA鎖またはRNA鎖の同じ位置におけるヌクレオチドとワトソン・クリック対を形成できる場合には、そのポリヌクレオチドと、そのDNA分子またはRNA分子は、その位置において、互いに相補的である。そのポリヌクレオチドと、そのDNA分子またはRNA分子は、所望のプロセスに影響が及ぶように、各分子における対応する位置が十分な数、互いにハイブリダイズまたはアニーリングできるヌクレオチドで占められている場合には、互いに「実質的に相補的」である。相補的な配列は、ストリンジェントな条件下でアニーリングして、相補鎖合成起点として機能する3’末端をもたらすことのできる配列である。
【0017】
「同一性」とは、当該技術分野において知られているように、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係であって、それらの配列を比較することによって求めたものである。当該技術分野においては、「同一性」とは、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列間の関連度であって、それらの配列からなる鎖間の一致率を求めたものも意味する。「同一性」及び「類似性」は、既知の方法によって容易に算出でき、その方法としては、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991及びCarillo,H.,and Lipman,D.,Siam J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されているものが挙げられるが、これらに限らない。加えて、同一性パーセントの値は、Vector NTI Suite 8.0(Informax、Frederick,Md.)のAlignXというコンポーネントのデフォルト設定を用いて生成したアミノ酸配列アラインメント及びヌクレオチド配列アラインメントから得ることができる。同一性を求める好ましい方法は、試験する配列間の一致率が最も大きくなるように設計する。同一性及び類似性を求める方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性及び類似性を求めるための好ましいコンピュータープログラムの方法としては、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Atschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.215:403-410(1990))が挙げられるが、これらに限らない。BLAST Xというプログラムは、NCBI及びその他の供給源から公的に入手可能である(BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBINLM NIH Bethesda,Md.20894、Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990))。周知であるSmith Watermanアルゴリズムを用いて、同一性を求めてもよい。
【0018】
「増幅する」、「増幅すること」、「増幅反応」という用語、及びそれらの類似表現は概して、核酸分子の少なくとも一部(鋳型核酸分子という)を複製またはコピーして、追加の核酸分子を少なくとも1つもたらすいずれかの作用またはプロセスを指す。その追加の核酸分子は任意に、その鋳型核酸分子の少なくとも相当な部分と実質的に同一であるかまたは実質的に相補的である配列を含む。その鋳型核酸分子は、一本鎖であることも、二本鎖であることもでき、その追加の核酸分子は独立して、一本鎖であることも、二本鎖であることもできる。いくつかの実施形態では、増幅には、核酸分子の少なくとも相当な部分を少なくとも1コピー作製するか、または核酸分子の少なくとも相当な部分と相補的である核酸配列を少なくとも1コピー作製するための、酵素を触媒とする鋳型依存性のin vitro反応が含まれる。増幅には任意に、核酸分子の線形的または指数関数的な複製が含まれる。いくつかの実施形態では、このような増幅は、等温条件を用いて行い、別の実施形態では、このような増幅には、熱サイクリングを含めることができる。いくつかの実施形態では、増幅は、1回の増幅反応で複数の標的配列を同時に増幅することを含むマルチプレックス増幅である。その標的配列の少なくともいくつかは、1回の増幅反応に含まれる同じ核酸分子または異なる標的核酸分子に位置することができる。いくつかの実施形態では、「増幅」には、DNAベース及びRNAベースの核酸の少なくとも相当部分を単独で、または組み合わせて増幅することが含まれる。その増幅反応は、一本鎖または二本鎖の核酸基質を含むことができ、さらに、当業者に知られている増幅プロセスのいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、その増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含むことができる。本発明では、核酸の「合成」及び「増幅」という用語を使用する。本発明では、核酸の合成とは、合成起点として機能するオリゴヌクレオチドから、核酸を延長または伸長させることを意味する。この合成のみならず、他の核酸の形成と、この形成された核酸の延長反応または伸長反応も連続的に行う場合、これらの一連の反応は、包括して増幅という。採用した増幅技術によって作製されたポリ核酸は一般に、「アンプリコン」または「増幅産物」という。
【0019】
本明細書に示されているある特定の実施形態で用いられる増幅反応では、多くの核酸ポリメラーゼを使用することができ、そのポリメラーゼには、ヌクレオチド(そのアナログを含む)が重合して核酸鎖となるのを触媒できるいずれの酵素も含まれる。ヌクレオチドのこのような重合は、鋳型依存的に行うことができる。このようなポリメラーゼとしては、天然のポリメラーゼ、そのサブユニット及びトランケート体のいずれか、変異ポリメラーゼ、バリアントポリメラーゼ、組み換えポリメラーゼ、融合ポリメラーゼ、または別段に操作したポリメラーゼ、化学的に改変したポリメラーゼ、合成の分子またはアセンブリー、ならびに上記のような重合を触媒する能力を保持するこれらのアナログ、誘導体または断片のいずれかを挙げることができるが、これらに限らない。任意に、そのポリメラーゼは、1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているか、そのポリメラーゼから1つ以上のアミノ酸が挿入もしくは欠失されているか、または2つ以上のポリメラーゼの一部分が連結されていることを伴う変異を1つ以上含む変異ポリメラーゼであることができる。典型的には、そのポリメラーゼは、ヌクレオチドの結合及び/またはヌクレオチドの重合の触媒を行うことができる活性部位を1つ以上含む。いくつかの例示的なポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼ及びRNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限らない。本明細書で使用する場合、「ポリメラーゼ」という用語及びその類似表現には、連結し合った少なくとも2つの部分を含む融合タンパク質も含まれ、その第1の部分は、ヌクレオチドが重合して核酸鎖となるのを触媒できるペプチドを含むとともに、第2のポリペプチドを含む第2の部分に連結されている。いくつかの実施形態では、その第2のポリペプチドは、レポーター酵素またはプロセッシビティ向上ドメインを含むことができる。任意に、そのポリメラーゼは、5’エキソヌクレアーゼ活性またはターミナルトランスフェラーゼ活性を有することができる。いくつかの実施形態では、そのポリメラーゼは任意に、例えば、熱を利用するか、化学物質によるか、または新たな量のポリメラーゼを反応混合物に再度加えることによって再活性化させることができる。いくつかの実施形態では、そのポリメラーゼとしては、任意に再活性化させることができるホットスタートポリメラーゼまたはアプタマーベースのポリメラーゼを挙げることができる。
【0020】
「標的プライマー」または「標的特異的プライマー」という用語、及びそれらの類似表現は、結合部位の配列と相補的であるプライマーを指す。標的プライマーは概して、標的核酸配列と少なくとも部分的に相補的である配列を少なくとも1つ含む一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチド、典型的にはオリゴヌクレオチドである。
【0021】
「フォワードプライマー結合部位」及び「リバースプライマー結合部位」とは、鋳型DNA及び/またはアンプリコンの領域のうち、フォワードプライマー及びリバースプライマーが結合する領域を指す。これらのプライマーは、元の鋳型ポリヌクレオチドの領域のうち、増幅の際に指数関数的に増幅される領域を定める働きをする。いくつかの実施形態では、追加のプライマーは、フォワードプライマー及び/またはリバースプライマーの5’領域に結合することができる。このような追加のプライマーを用いる場合、フォワードプライマー結合部位及び/またはリバースプライマー結合部位は、これらの追加のプライマーの結合領域と、そのプライマー自体の結合領域を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法では、フォワードプライマー結合領域及び/またはリバースプライマー結合領域の5’側に位置する領域に結合する追加のプライマーを1つ以上使用してよい。このような方法は例えば、「置換プライマー」または「アウタープライマー」の使用について開示しているWO0028082に開示されている。
【0022】
「バーコード」核酸識別配列は、核酸に組み込むか、またはプライマーに連結して、独立したシーケンシング及び識別が、同一の試料に存在する分子に由来する情報及び識別に関係するバーコードを介して互いに関連することを可能にすることができる。個別の構成要素の中で核酸にバーコードを取り付けるために使用可能な、多数の技術が存在する。例えば、標的核酸をまず増幅して、より短い片に断片化してもよいし、しなくてもよい。分子を個別の構成要素、例えば、バーコードを含有するドロップレットと組み合わせることができる。バーコードを次に、例えば、オーバーラップ伸長によるスプライシングを使用して、分子に取り付けることができる。本アプローチにおいて、最初の標的分子は「アダプター」配列が追加されていることができ、これは、プライマーが合成可能な既知の配列の分子である。バーコードと組み合わせたときに、アダプター配列及びバーコード配列に相補的なプライマーを使用することができ、標的核酸とバーコードの両方の生成物であるアンプリコンが互いにアニールし、かつ、DNA重合などの伸長反応により、互いに伸長することができ、バーコード配列に取り付けられた標的核酸を含む二本鎖生成物を生成する。あるいは、当該標的を増幅するプライマーは、それ自身がバーコード化されることができるため、標的へのアニーリング及び伸長の際に、生成されたアンプリコンは、アンプリコンに組み込まれたバーコード配列を有する。これは、PCRによる特異的増幅、または、例えばMDAによる非特異的増幅を含む多数の増幅法により応用することができる。バーコードを核酸に取り付けるために使用可能な代替の酵素反応、平滑末端または付着末端ライゲーションを含むライゲーションである。本アプローチにおいて、DNAバーコードは、核酸標的及びリガーゼ酵素でインキュベートされ、バーコードの、標的へのライゲーションがもたらされる。核酸の末端は、分子末端に取り付けられるバーコードの数よりも大きな制御が可能なリガーゼまたは断片と共に導入されるアダプターを使用することを含む多数の技術により、必要に応じてライゲーションのために修飾することができる。
【0023】
バーコード配列をマイクロフルイディクスビーズに組み込んで、同一の配列タグでビーズを標識することができる。このようなタグ付きのビーズをマイクロフルイディックドロップレットに挿入でき、ドロップレットPCRによる増幅を介して、それぞれの標的アンプリコンを、固有のビーズバーコードによってタグ付けできる。このようなバーコードを用いて、鋳型に由来するアンプリコン集団において所定のドロップレットを特定できる。個別の細胞を1つ含むマイクロフルイディックドロップレットと、タグ付きのビーズを含む別のマイクロフルイディックドロップレットを組み合わせる場合に、このスキームを使用できる。多数のマイクロフルイディックドロップレットを回収して合わせたら、アンプリコンシーケンシングの結果によって、各産物に、固有のマイクロフルイディックドロップレットを割り当てられるようになる。典型的な実施態様では、我々は、Mission BioのTapestri(商標)ビーズ上のバーコードを用いて、各ドロップレットのアンプリコン内容物にタグ付けを行ったうえで、そのアンプリコン内容物を特定する。バーコードの使用については、2018年3月29日にAbate,A.らが「Sequencing of Nucleic Acids via Barcoding in Discrete Entities」という標題で出願した米国特許出願第15/940,850号に記載されており、この特許出願は、参照により、本明細書に援用される。
【0024】
いくつかの実施形態では、固体ポリマービーズまたはハイドロゲルビーズなどのビーズの表面で、バーコードを個別の構成要素、例えばマイクロドロップレットに導入するのが有利であり得る。これらのビーズは、様々な技術を用いて合成することができる。例えば、混合分離技術を使用すると、同一な無作為のバーコード配列の多くのコピーを伴うビーズを合成することができる。これは例えば、DNAを合成可能な部位を含む複数のビーズを作製することにより達成することができる。ビーズは4つの集まりに分けることができ、それぞれに、A、T、G、またはCなどの塩基をビーズに添加する、緩衝液と混合することができる。母集団を4つの亜集団に分けることで、各部分母集団は、その表面に添加された塩基のうちの1つを有することができる。本反応は、単一の塩基のみが添加され、更なる塩基が添加されない方法で達成することができる。4つの亜集団全てに由来するビーズを合わせて互いに混合し、2回目の4つの集団への分割を行うことができる。この分割工程において、以前の4つの集団に由来するビーズを、無作為に互いに混合してもよい。これらを次に、4つの異なる溶液に添加し、各ビーズの表面上の、別の無作為な塩基を添加することができる。本プロセスを繰り返し、ビーズ表面に、母集団が分離及び混合される時間数におよそ等しい長さの配列を生成することができる。これを10回行ったら、例えば、結果は、各ビーズが、その表面に同一の無作為の10個の塩基配列が合成された多数のコピーを有する、ビーズの母集団となろう。各ビーズ上の配列は、各分離混合サイクルを通して終了した、反応器の特定の配列により測定される。
【0025】
バーコードは、「固有識別配列」(UMI)をさらに含んでよい。UMIは、そのUMIがコンジュゲートされている1つ以上の第1の分子を、1つ以上の第2の分子から識別及び/または区別するのに利用できる配列を有する核酸である。UMIは典型的には、長さが短く、例えば、約5~20塩基長であり、対象とする1つ以上の標的分子またはその増幅産物にコンジュゲートしてよい。UMIは、一本鎖であっても、二本鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、核酸バーコード配列及びUMIの両方を核酸標的分子またはその増幅産物に組み込む。概して、UMIは、1つの集団または群における似た種類の分子を区別する目的で用いるのに対して、核酸バーコード配列は、複数の分子集団または分子群を区別するのに用いる。いくつかの実施形態では、UMI及び核酸バーコード配列の両方を使用する場合、そのUMIは、その核酸バーコード配列よりも配列の長さが短い。
【0026】
本明細書で使用する場合、「同一性」及び「同一な」という用語、ならびにそれらの類似表現は、2つ以上の核酸配列に関して使用する時には、その2つ以上の配列(例えば、ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列)の配列類似性を指す。2つ以上の相同配列に関しては、配列またはその部分配列の同一性パーセントまたは相同性パーセントは、同じであるすべてのモノマー単位(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)のパーセンテージを示す(すなわち、約70%の同一性、好ましくは、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性)。その同一性パーセントは、BLASTまたはBLAST2.0という配列比較アルゴリズムを下記のデフォルトパラメーターで用いるか、またはマニュアルアラインメント及び目視確認によって測定した場合において、比較ウィンドウまたは指定領域にわたって最大限一致するように比較及びアラインメントを行った時の所定の領域に対するものであることができる。配列は、アミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルの同一性が少なくとも85%である時に、「実質的に同一」であるとする。好ましくは、その同一性は、少なくとも約25残基長、約50残基長もしくは約100残基長である領域、または少なくとも1つの比較配列の全長に対して存在する。配列同一性パーセント及び配列類似性パーセントを求めるための典型的なアルゴリズムは、BLAST及びBLAST2.0のアルゴリズムであり、これらは、Altschul et al,Nuc.Acids Res.25:3389-3402(1977)に記載されている。他の方法としては、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)及びNeedleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)などのアルゴリズムが挙げられる。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、その2つの分子またはそれらの相補体が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、互いにハイブリダイズすることである。
【0027】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのバイオポリマーを指し、文脈上別段に示されている場合を除き、改変ヌクレオチド及び非改変ヌクレオチド、DNA及びRNAの両方、ならびに改変核酸主鎖を含む。例えば、ある特定の実施形態では、その核酸は、ペプチド核酸(PNA)またはロックト核酸(LNA)である。典型的には、本明細書に記載されているような方法は、DNAを増幅用の核酸鋳型として用いて行う。しかしながら、ヌクレオチドが、天然のDNAまたはRNAに由来する人工の誘導体または改変核酸に置き換えられている核酸も、相補鎖合成用の鋳型として機能する限りは、本発明の核酸に含めてよい。本発明の核酸は概して、生体試料に含まれている。その生体試料には、動物、植物または微生物の組織、細胞、培養液、及び排泄物または抽出物が含まれる。ある特定の態様では、その生体試料には、ウイルスまたはマイコプラズマのような細胞内寄生体のゲノムDNAまたはRNAが含まれる。本発明の核酸は、前記生体試料に含まれる核酸に由来してよい。例えば、好ましくは、記載されている方法では、ゲノムDNA、mRNAから合成したcDNA、または生体試料に由来する核酸に基づいて増幅した核酸を使用する。別段に示されていない限り、オリゴヌクレオチド配列が示されている場合、そのヌクレオチドは、左から右に向かって、5’から3’の順であり、「A」はデオキシアデノシンを示し、「C」はデオキシシチジンを示し、「G」はデオキシグアノシンを示し、「T」はチミジンを示し、「U」はデオキシウリジンを示すと理解されたい。オリゴヌクレオチドは、「5’末端」及び「3’末端」を有するという。典型的には、モノヌクレオチドが反応して、ある1つのヌクレオチドの5’リン酸基または同等の基が、任意にホスホジエステル結合またはその他の好適な結合を介して、その隣接ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基または同等の基に結合することによって、オリゴヌクレオチドを形成するからである。
【0028】
鋳型核酸は、核酸増幅法において相補鎖を合成する際の鋳型として機能する核酸である。その鋳型と相補的なヌクレオチド配列を有する相補鎖は、その鋳型に対応する鎖としての意味を持つが、これらの2つの関係は、相対的なものに過ぎない。すなわち、本明細書に記載されている方法によれば、相補鎖として合成された鎖は、再び鋳型として機能できる。換言すると、相補鎖は、鋳型となることができる。ある特定の実施形態では、鋳型は、生体試料、例えば、植物、動物、ウイルス、微生物、細菌、真菌などに由来する。ある特定の実施形態では、その動物は、哺乳動物、例えばヒト患者である。鋳型核酸は典型的には、標的核酸を1つ以上含む。例示的な実施形態における標的核酸は、試料中に存在する疑いがあるか、または試料中に存在すると予測されるいずれの核酸配列も含め、本開示に従って増幅または合成できる一本鎖または二本鎖のいずれの核酸配列も含んでよい。
【0029】
本発明における実施形態で用いるプライマー及びオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、ポリメラーゼに選択的に結合できるか、またはポリメラーゼによって重合化できるいずれの化合物も含み、いずれの天然ヌクレオチドまたはそのアナログも含まれるが、これらに限らない。必然ではないが、典型的には、ヌクレオチドがポリメラーゼに選択的に結合した後には、そのヌクレオチドは、ポリメラーゼによって重合して核酸鎖となるが、時折、ヌクレオチドが、核酸鎖に組み込まれずに、ポリメラーゼから解離することがあり、この事象は、本明細書では、「非生成」事象という。このようなヌクレオチドには、その構造にかかわらず、ポリメラーゼに選択的に結合できるか、またはポリメラーゼによって重合化できる天然のヌクレオチドのみならず、いずれのアナログも含まれる。天然のヌクレオチドは典型的には、塩基部分、糖部分及びリン酸部分を含むが、本開示のヌクレオチドは、このような部分のいずれか1つ、一部またはすべてが欠損している化合物を含むことができる。例えば、そのヌクレオチドは任意に、リン原子を3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれを上回る数含むリン原子鎖を含むことができる。いくつかの実施形態では、そのリン鎖は、糖環のいずれかの炭素(5’炭素など)に結合できる。そのリン鎖は、介在するOまたはSとともに、糖に連結できる。一実施形態では、その鎖のリン原子の1つ以上は、P及びOを有するリン酸基の一部であることができる。別の実施形態では、その鎖のリン原子は、介在するO、NH、S、メチレン、置換メチレン、エチレン、置換エチレン、CNH、C(O)、C(CH)、CHCHまたはC(OH)CHR(式中、Rは、4-ピリジンまたは1-イミダゾールであることができる)とともに連結できる。一実施形態では、鎖中のリン原子は、O、BH3、またはSを有する側基を有することができる。そのリン鎖では、O以外の側鎖基を持つリン原子は、置換リン酸基であることができる。そのリン鎖では、O以外の介在する原子を持つリン原子は、置換リン酸基であることができる。ヌクレオチドアナログの例のいくつかは、Xuによる米国特許第7,405,281号に記載されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは標識を含み、そのヌクレオチドは、本明細書では、「標識ヌクレオチド」といい、標識ヌクレオチドの標識は、本明細書では、「ヌクレオチド標識」という。いくつかの実施形態では、その標識は、末端リン酸基、すなわち、糖から最も遠いリン酸基に結合した蛍光部分(例えば色素)、発光部分などの形態であることができる。本開示の方法及び組成物で使用できるヌクレオチドの例のいくつかとしては、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、改変リボヌクレオチド、改変デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドポリホスフェート、デオキシリボヌクレオチドポリホスフェート、改変リボヌクレオチドポリホスフェート、改変デオキシリボヌクレオチドポリホスフェート、ペプチドヌクレオチド、改変ペプチドヌクレオチド、メタロヌクレオシド、ホスホネートヌクレオシド、及び改変リン酸-糖という主鎖のヌクレオチド、上記化合物のアナログ、誘導体またはバリアントなどが挙げられるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチドは、そのヌクレオチドのαリン酸と糖、そのヌクレオチドのαリン酸とβリン酸、そのヌクレオチドのβリン酸とγリン酸、そのヌクレオチドのいずれかの他の2つのリン酸、またはこれらをいずれかに組み合わせたものを架橋する酸素部分の代わりに、例えばチオ部分またはボラノ部分のような非酸素部分を含むことができる。「ヌクレオチド5’-三リン酸」とは、5’位に三リン酸エステル基を有するヌクレオチドを指し、「NTP」、または特にリボース糖の構造的特徴を示す目的で、「dNTP」及び「ddNTP」と称する場合がある。三リン酸エステル基は、様々な酸素に対する硫黄置換基を含むことができる(例えばα-チオ-ヌクレオチド5’-三リン酸)。核酸化学の論評については、Shabarova,Z.and Bogdanov,A.Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,VCH,New York,1994を参照されたい。
【0031】
PCRベースのアッセイ、例えば定量PCR(qPCR)、または等温増幅のようないずれかの核酸増幅法を用いて、別個の物体、またはその構成成分の1つ以上、例えば、その物体に封入された細胞に存在するある特定の核酸、例えば、対象とする遺伝子の存在を検出してよい。このようなアッセイは、マイクロフルイディクスデバイスもしくはその一部、またはいずれかの他の好適な位置にある別個の物体に適用できる。このような増幅またはPCRベースのアッセイの条件は、経時的に核酸の増幅を検出することを含んでよく、1つ以上の方法が異なっていてよい。
【0032】
マイクロドロップレットに加えてよい増幅/PCRプライマーの数は、様々であってよい。マイクロドロップレットに加えてよい増幅またはPCRプライマーの数は、約1~約500個以上の範囲、例えば、約2~100個のプライマー、約2~10個のプライマー、約10~20個のプライマー、約20~30個のプライマー、約30~40個のプライマー、約40~50個のプライマー、約50~60個のプライマー、約60~70個のプライマー、約70~80個のプライマー、約80~90個のプライマー、約90~100個のプライマー、約100~150個のプライマー、約150~200個のプライマー、約200~250個のプライマー、約250~300個のプライマー、約300~350個のプライマー、約350~400個のプライマー、約400~450個のプライマー、約450~500個のプライマーまたは約500個以上のプライマーであってよい。
【0033】
プライマーセットの一方または両方のプライマーが、バーコード配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、一方または両方のプライマーが、バーコード配列及び固有分子識別子(UMI)を含む。いくつかの実施形態では、UMI及び核酸バーコード配列の両方を用いる場合には、そのUMIを標的核酸またはその増幅産物に組み込んでから、その核酸バーコード配列を組み込む。いくつかの実施形態では、UMI及び核酸バーコード配列の両方を用いる場合には、そのUMIを標的核酸またはその増幅産物に組み込んだ後に、その核酸バーコード配列をそのUMIまたはその増幅産物に組み込む。
【0034】
プライマーセットのうちの1つまたは両方のプライマーもまた、親和性試薬に付着またはコンジュゲートすることができる。いくつかの実施形態では、例えば個別の細胞を、個別の構成要素、例えばドロップレット内で単離する。これらの細胞を溶解することができ、それらの核酸をバーコード化することができる。本プロセスは、個別の構成要素内の多数のシングルセル上で行うことができ、独自のバーコード配列が、バーコードにより、混合された配列リードのその後のデコンボリューションを行い、シングルセル情報を得ることができる。本アプローチは、多数のシングルセルに由来する核酸と合わせてグループ分けする方法を提供する。加えて、抗体などの親和性試薬を、核酸ラベル、例えば、抗体の種類、例えば抗体の標的特異性を識別するために使用可能なバーコードを含むオリゴヌクレオチドとコンジュゲートすることができる。これらの試薬を次に使用して、細胞内または細胞上にタンパク質を結合することができ、これにより、親和性試薬によって、タンパク質が結合する細胞に送達される核酸が会合する。次に、これらの細胞を、本明細書に記載するバーコード化ワークフローにより処理し、親和性試薬上で、バーコードを核酸ラベルに取り付けることができる。次に、ライブラリー調製、シーケンシング、及びバイオインフォマティクスの技術を使用して、細胞/個別の構成要素バーコードに従い、配列をグループ分けすることができる。タンパク質、分子、またはその複合体などの、生体試料またはタンパク質またはそれらの構成成分に結合する、またはこれらを認識することができる、任意の好適な親和性試薬を、これらの方法と合わせて利用することができる。親和性試薬を、その同一性、例えば抗体の標的特異性を関連付ける核酸配列により標識することができ、これにより、本明細書に記載するバーコード化及び方法を用いて、それらの検出及び定量化が可能になる。例示的な親和性試薬としては例えば、抗体、抗体断片、Fab、scFv、ペプチド、薬物など、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。親和性試薬、例えば抗体は、1つ以上の生体により発現することができるか、または、生物学的合成技術、例えばファージ、mRNA、もしくはリボソームディスプレイを使用して提供することができる。親和性試薬は、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NETS)を用いる化学結合、クリックケミストリー、またはストレプトアビジン-ビオチン相互作用などの化学的または生化学的手段によってもまた、生成することができる。オリゴ親和性試薬コンジュゲートは、オリゴを親和性試薬に付着させ、ポリメラーゼなどによって、追加のオリゴを、以前にコンジュゲートしたオリゴに、ハイブリダイズ、ライゲーション、及び/または伸長することによってもまた生成することができる。核酸による親和性試薬標識の利点は、生体試料の大きく多重化した分析が可能になる点である。例えば、試料内で多数の標的を認識する、それぞれが自身の核酸配列で標識された、抗体または結合試薬の多量の混合物を、一緒に混合することができる。このカクテルを次に試料と反応させて、本明細書に記載するバーコード化ワークフローに供し、どの試料が結合したのか、量、及び、試料中の異なる構成要素間で、例えばシングルセル間で、量がどのように変化するかについての情報を回収することができる。上記アプローチを、1つ以上の細胞、ペプチド、タンパク質、巨大分子、巨大分子複合体などを含む試料を含む多様な分子標的に適用することができる。試料を、固定及び易透化、親和性試薬の結合の補助といった、分析のための従来の処理に供することができる。非常に正確な定量化を行うために、本明細書に記載する、固有分子識別子(UMI)技術もまた使用して、親和性試薬分子を正確に計数することができる。これは、UMIを、コンジュゲーションの前、間、もしくは後に各親和性試薬に付着した標識に合成すること、または、試薬の使用時にUMIをマイクロ流体的に付着させることを含む多数の方法によって成し遂げることができる。バーコードを生成する類似の方法、例えば、シングルセルシーケンシングに適用され、本明細書に記載するコンビナトリアルバーコード技術が、親和性試薬技術に適用可能である。これらの技術は、様々な生体試料でのタンパク質及び/またはエピトープを分析して、例えば、エピトープのマッピング、または、タンパク質及び他の構成要素での翻訳後修飾、またはシングルセルプロテオミクスの実施を行うことを可能にする。例えば、本明細書に記載の方法を使用すると、生体のプロテオーム内の全てのタンパク質でエピトープを検出する、標識済親和性試薬のライブラリーを生成し、これらのエピトープを試薬で標識し、本明細書に記載するバーコード化及びシーケンシング技術を適用し、これらのエピトープと関連する標識を検出し、正確に定量することが可能になる。
【0035】
プライマーは、対象とする1つ以上の核酸、例えば、対象とする1つ以上の遺伝子に対するプライマーを含んでよい。対象とする遺伝子用プライマーの添加数は、約1~500個の範囲、例えば、約1~10個のプライマー、約10~20個のプライマー、約20~30個のプライマー、約30~40個のプライマー、約40~50個のプライマー、約50~60個のプライマー、約60~70個のプライマー、約70~80個のプライマー、約80~90個のプライマー、約90~100個のプライマー、約100~150個のプライマー、約150~200個のプライマー、約200~250個のプライマー、約250~300個のプライマー、約300~350個のプライマー、約350~400個のプライマー、約400~450個のプライマー、約450~500個のプライマーまたは約500個以上のプライマーであってよい。プライマー及び/または試薬は、別個の物体、例えばマイクロドロップレットに、1工程または2工程以上で加えてよい。例えば、プライマーは、2工程以上、3工程以上、4工程以上または5工程以上で加えてよい。プライマーを1工程で加えるか、2工程以上で加えるかにかかわらず、プライマーは、溶解剤を加えた後、溶解剤を加える前、または溶解剤を加えるのと同時に加えてよい。溶解剤を加える前または加えた後にPCRプライマーを加える場合、そのプライマーは、溶解剤を加えるのとは別の工程で加えてよい。いくつかの実施形態では、PCR試薬を加える前に、その別個の物体、例えばマイクロドロップレットに対して、希釈工程及び/または酵素不活化工程を行ってよい。このような方法の例示的な実施形態は、PCT公開第2014/028378号に記載されており、その開示内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的で本明細書に援用される。
【0036】
標的核酸を増幅するためのプライマーセットは典型的には、標的核酸またはその相補体と相補的であるフォワードプライマー及びリバースプライマーを含む。いくつかの実施形態では、増幅は、1回の増幅反応において、複数の標的特異的プライマー対を用いて行うことができ、この場合、各プライマー対は、標的特異的なフォワードプライマー及び標的特異的なリバースプライマーを含み、それぞれ、試料中の対応する標的配列と実質的に相補的であるかまたは実質的に同一である配列を少なくとも1つ含み、各プライマー対は、対応する標的配列が異なる。したがって、本発明におけるある特定の方法を用いて、シングルセルの試料に由来する複数の標的配列を検出または識別する。
【0037】
例示的実施形態は、シングルセルから標的核酸を検出するためのシステム及び方法であって、当該方法が、提示された順序とは独立して、個別の細胞で、対象となる1つ以上の標的核酸配列を選択する工程であって、標的核酸配列が細胞内の核酸に相補的である前記工程と、個別のシングルセルを複数有する試料を準備する工程と、プロテアーゼを含む反応混合物に、1つ以上の個別細胞を封入すると工程と、封入した細胞をプロテアーゼとともに、ドロップレットでインキュベートして、細胞溶解液を作製する工程と、1つ以上の核酸増幅プライマーセットを供給する工程であって、各プライマーセットが、標的核酸と相補的であり、核酸増幅プライマーセットのプライマーの少なくとも1つが、バーコード配列を含む前記工程と、核酸増幅反応混合物中で1つ以上のユニバーサル塩基を準備する工程と、シングルセルの核酸から増幅産物を形成するために、ユニバーサル塩基を含む反応混合物を使用して核酸増幅反応を行う工程であって、その増幅産物が、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む前記工程と、及び任意に、プライマーセットの核酸プライマーのうちの1つ以上のバーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給する工程であって、そのバーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード配列を含む核酸増幅プライマーセットに結合できる前記工程と、その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む増幅産物とを接触させる工程と、第1のバーコード及び第2のバーコードのシーケンシングによって、標的核酸の同一性を求める工程と、を含む、上記システム及び方法である。
【0038】
精密医療における根本的な課題は、がんの不均質性及びクローン進化の理解を改善することであり、これは、標的療法の選択及び疾患の監視において主たる示唆を有する。しかし、現在のバルクシーケンシング法は、希少な病原性または薬剤耐性細胞集団を明確に識別すること、そして、変異が同一細胞内で同時発生することを測定するのが不可能である。シングルセルシーケンシングには、感度を比較しない状態での、細胞及び遺伝子組成、ドライバー、及びがんの特徴に独自の視点をもたらす可能性がある。以前に、我々は、ドロップレットマイクロ流体及び多重PCRベースの標的化DNAシーケンシングアプローチを高める、ハイスループットのシングルセルDNA分析プラットフォーム(Tapestri(商標),Mission Bio,South San Francisco CA)を開発し、急性骨髄性白血病(AML)主要から、クローンアーキテクチャの高解像マップを生成したものを示した。
【0039】
例示的実施形態は、シングルセルから標的核酸を検出するためのシステム及び方法であって、当該方法が、提示された順序とは独立して、1つ以上の標的核酸配列を選択する工程であって、任意に、標的核酸配列が対象となる細胞内の核酸に相補的である前記工程と、個別のシングルセルを複数有する試料を準備する工程と、プロテアーゼを含む反応混合物に、1つ以上の個別細胞を封入すると工程と、封入した細胞をプロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製する工程と、1つ以上の核酸増幅プライマーセットを供給する工程であって、各プライマーセットが、標的核酸と相補的であり、核酸増幅プライマーセットのプライマーの少なくとも1つが、バーコード識別配列を含む前記工程と、シングルセルの核酸から、増幅産物を形成するために、核酸増幅反応を行う工程であって、その増幅産物が、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む前記工程と、プライマーセットの核酸プライマーのうちの1つ以上のバーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給する工程であって、そのバーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード配列を含む核酸増幅プライマーセットに結合できる前記工程と、その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む増幅産物とを接触させる工程と、核酸シーケンシングにより、標的核酸と関連する変異または転座を特性決定する工程と、を含む、上記システム及び方法である。
【0040】
別の態様では、本明細書に記載する特定の親和性試薬バーコード化技術を使用して、タンパク質-タンパク質相互作用を検出及び定量化することができる。例えば、相互作用するタンパク質を、核酸配列で標識して互いに反応させることができる。タンパク質が例えば、互いに結合によって相互作用する場合、それらの会合した標識は結合した複合体に局在化するが、相互作用しないタンパク質は、互いに結合しないままであろう。次いで、サンプルを、マイクロフルイディックドロップレットなどの個別の構成要素に分離し、核酸標識の融合増幅/PCR、またはバーコード化に供することができる。タンパク質が相互作用する場合において、所与のバーコード群は、相互作用する両方のタンパク質の標識を含む核酸を、これらの核酸が、同一区画内に収まり、同一のバーコード配列によりバーコード化されているため、含有する。対照的に、相互作用しないタンパク質は統計的に、異なる区画に収まるため、シーケンシング後に同一バーコード群にクラスター化しない。これによって、バーコードに従い、データをクラスター化し、群内での全ての親和性試薬標識を検出することにより、どのタンパク質が相互作用するかの識別が可能となる。精製工程を実装して、個別の構成要素での単離の前に、未結合の親和性試薬を取り除くこともまた可能であり、これにより、相互作用データが得られない配列を廃棄する。あるいは、対ごとの封入後融合などの融合アプローチを用いて、増幅を使用して、融合した生成物を選択的に増幅可能であり、これにより、未融合分子の希釈及び融合物の濃縮を効果的に行い、相互作用するタンパク質を検出するためのシーケンシングを、より効率的にする。
【0041】
したがって、本発明の特定の実施形態は、タンパク質(例えば抗体)にコンジュゲートした核酸の結合及び増幅方法を提供する。例示的な方法は、(a)複数のタンパク質が相互作用するのに十分な条件下で、核酸バーコード配列にコンジュゲートしたタンパク質の集団をインキュベートして、相互作用タンパク質上で核酸バーコード配列を互いに近接させることと、(b)存在する場合、相互作用タンパク質が同時封入されるように、複数の個別の構成要素内に、核酸バーコード配列にコンジュゲートしたタンパク質の集団を封入することと、(c)存在する場合、相互作用タンパク質上で、核酸バーコード配列の増幅及び結合に十分な、複数の第1の個別の構成要素及び試薬のうちの一方の、個別の構成要素内容物内で組み合わせるマイクロフルイディクスデバイスを使用することと、(d)存在する場合、個別の構成要素を、相互作用タンパク質上で、核酸バーコード配列の増幅及び結合に十分な条件に供することと、を含む。
【0042】
プロテオミクス
本明細書のいくつかの実施形態の別の目的は、多数のシングルセル内での、感度が高く正確で包括的な、タンパク質の特性決定を提供することである。
【0043】
本明細書において提供する特定の方法は、特異的な抗体を利用して、対象となるエピトープを検出する。いくつかの実施形態では、抗体は、マイクロフルイディックバーコード化及びDNAシーケンシングにより読み取り可能な配列タグで標識される。この実施形態、及び関連する実施形態を本明細書で使用し、シングルセルレベルにおいて、異なる細胞型の細胞表面タンパク質を特性決定する。
【0044】
いくつかの実施形態では、バーコード同一性は、その完全なヌクレオ塩基配列によりコードされ、故に、蛍光を用いる従来のアプローチにより可能なものをはるかに凌駕する、コンビナトリアルタグ空間を付与する。10塩基という多くはないタグの長さにより、100万個を超える固有配列がもたらされ、これは、ヒトプロテオーム内での各エピトープに対して抗体を標識するのに十分である。実際、本アプローチにより、多重化への制限は、固有タグ配列の利用可能性ではなく、多重化反応において、対象となるエピトープを検出可能な特異的抗体の利用可能性となる。
【0045】
いくつかの実施態様において、抗体がバーコードにより標識されることを除いて、細胞は、従来の免疫染色におけるような、異なる標的エピトープに対する抗体と結合される。
【0046】
実際に、抗体がその標的に結合する場合、DNAバーコードタグは、抗体と共に運搬され、故に、標的の存在が、バーコードの存在に基づき推定可能となる。いくつかの実施態様においてバーコードタグを係数することにより、細胞内に存在する異なるエピトープが推定される。
【0047】
他の実施形態・実施態様を使用して、そのタンパク質発現プロファイルにより特定の細胞を区別する。本明細書において提供するDNAタグ抗体のいくつかの実施形態は、シングルセル内でタンパク質をプロファイリングするための、複数の利点を有する。
【0048】
これらの実施態様の主たる利点は、低量タグを増幅して、低量タグをシーケンシングにより検出可能とする能力である。いくつかの実施態様における別の利点は、定量的結果のために、分子インデックスを用いることができることである。いくつかの実施態様は、本質的に無制限の多重化能力もまた有する。
【0049】
いくつかの実施形態は、使用するプライマーが溶液中にあり、プライマーへのハイブリダイゼーションを可能にする、埋め込まれたPCRアニーリング配列、即ち「ハンドル」を含有する、代替の化学作用を有する固体ビーズを利用する。いくつかの実施態様において、ハンドルは、標的配列の5’上流の特異的尾部であり、このハンドルは、ビーズバーコード化オリゴに対して相補的であり、PCR伸長ブリッジとしての役割を果たし、標的アンプリコンをビーズバーコードライブラリープライマー配列に結合させる。固体ビーズは、プライマー上でPCRハンドルにアニーリング可能なプライマーを含有することができる。
【0050】
一実施形態は、抗体に結合したバーコード識別配列を添加する方法であって、当該方法が、i)標的gDNAの、a)第1の細胞バーコードに隣接する第1のリード配列を含み、第1の細胞バーコードが定常領域1に隣接し、定常領域1が第2の細胞バーコードに隣接し、第2の細胞バーコードが定常領域2に隣接するフォワードプライマー、及びb)標的ゲノムDNAに相補的な配列を含み、標的ゲノムDNAに相補的な配列が固有分子識別子に隣接し、固有分子識別子が抗体タグ配列に隣接し、抗体タグ配列が第2の固有分子識別子に隣接し、第2の固有分子識別子が第2のリード配列に隣接するリバースプライマーへの初期ハイブリダイゼーション工程と、バーコード化PCR反応を行う工程と、を含む、上記方法。に関するものである。得られるアンプリコンは、第1の細胞バーコードに隣接する第1のリード配列を含み、第1の細胞バーコードは定常領域1に隣接し、定常領域1は第2の細胞バーコードに隣接し、第2の細胞バーコードは定常領域2に隣接し、定常領域2はフォワードプライマー配列に隣接し、フォワードプライマー配列は長さ「n」の挿入配列に隣接し、長さ「n」の挿入配列は標的ゲノムDNAに相補的な配列を含むリバースプライマーに隣接し、当該リバースプライマーは固有分子識別子に隣接し、固有分子識別子は抗体タグ配列に隣接し、抗体識別タグは第2の固有分子識別子に隣接し、第2の固有分子識別子は第2のリード配列に隣接する。追加のライブラリー作成PCR工程は典型的に、いくつかの実施形態において使用され、インデックス化及び識別配列を更に結合する(例えば、図1を参照されたい)。
【0051】
抗体ライブラリーは抗体染色細胞から作製することができ、これらはシーケンシングにより識別及び特性決定することができる。
【0052】
別の態様では、本明細書において提供するいくつかの実施態様を使用して、シングルセル内のmRNA及びタンパク質発現パターンを検出及び特性決定することができる。
【0053】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載する特定の親和性試薬バーコード化技術を使用して、タンパク質-タンパク質相互作用を検出及び定量化することができる。例えば、相互作用するタンパク質を、核酸配列で標識して互いに反応させることができる。タンパク質が例えば、互いに結合によって相互作用する場合、それらの会合した標識は結合した複合体に局在化するが、相互作用しないタンパク質は、互いに結合しないままであろう。
【0054】
次いで、サンプルを、マイクロフルイディックドロップレットなどの個別の構成要素に分離し、核酸標識の融合増幅/PCR、またはバーコード化に供することができる。タンパク質が相互作用する場合において、所与のバーコード群は、相互作用する両方のタンパク質の標識を含む核酸を、これらの核酸が、同一区画内に収まり、同一のバーコード配列によりバーコード化されているため、含有する。対照的に、相互作用しないタンパク質は統計的に、異なる区画に収まるため、シーケンシング後に同一バーコード群にクラスター化しない。これによって、バーコードに従い、データをクラスター化し、群内での全ての親和性試薬標識を検出することにより、どのタンパク質が相互作用するかの識別が可能となる。精製工程を実装して、個別の構成要素での単離の前に、未結合の親和性試薬を取り除くこともまた可能であり、これにより、相互作用データが得られない配列を廃棄する。あるいは、対ごとの封入後融合などの融合アプローチを用いて、増幅を使用して、融合した生成物を選択的に増幅可能であり、これにより、未融合分子の希釈及び融合物の濃縮を効果的に行い、相互作用するタンパク質を検出するためのシーケンシングを、より効率的にする。
【0055】
本発明の特定の実施形態は、タンパク質、例えば抗体、酵素、受容体などにコンジュゲートした核酸を結合し、増幅する方法を提供する。例示的な方法は、(a)複数のタンパク質が相互作用するのに十分な条件下で、核酸バーコード配列にコンジュゲートしたタンパク質の集団をインキュベートして、相互作用タンパク質上で核酸バーコード配列を互いに近接させることと、(b)存在する場合、相互作用タンパク質が同時封入されるように、複数の個別の構成要素内に、核酸バーコード配列にコンジュゲートしたタンパク質の集団を封入することと、(c)存在する場合、相互作用タンパク質上で、核酸バーコード配列の増幅及び結合に十分な、複数の第1の個別の構成要素及び試薬のうちの一方の、個別の構成要素内容物内で組み合わせるマイクロフルイディクスデバイスを使用することと、(d)存在する場合、個別の構成要素を、相互作用タンパク質上で、核酸バーコード配列の増幅及び結合に十分な条件に供することと、を含む。
【0056】
いくつかの実施形態は、使用するプライマーが溶液中にあり、プライマーへのハイブリダイゼーションを可能にする、埋め込まれたPCRアニーリング配列、即ち「ハンドル」を含有する、代替の化学作用を有する固体ビーズを利用する。いくつかの実施態様において、ハンドルは、標的配列の5’上流の特異的尾部であり、このハンドルは、ビーズバーコード化オリゴに対して相補的であり、PCR伸長ブリッジとしての役割を果たし、標的アンプリコンをビーズバーコードライブラリープライマー配列に結合させる。固体ビーズは、プライマー上でPCRハンドルにアニーリング可能なプライマーを含有することができる。
【0057】
本発明の他の態様は、下記の実施形態で説明し得る。
【0058】
1.本明細書に記載されている方法を行うための装置またはシステム。
【0059】
2.本明細書に記載されている方法を行うための組成物または反応混合物。
【0060】
3.本明細書に記載されている方法に従って生成したトランスクリプトームライブラリー。
【0061】
5.本明細書に記載されている方法に従って作製したゲノムライブラリー及びトランスクリプトームライブラリー。
【0062】
6.本明細書に記載されている抗体ライブラリー。
【0063】
7.本明細書に記載されている方法を行うためのキット。
【0064】
8.本明細書に記載されている方法により選択した細胞集団。
【0065】
9.細胞バーコードに基づいて対形成可能な、抗体ライブラリー及びDNAライブラリーを調製するための方法。
【0066】
10.細胞バーコードに基づいて対形成可能な、抗体ライブラリー及びRNAライブラリーを調製するための方法。
【0067】
11.細胞バーコードに基づいて対形成可能な抗体ライブラリー、DNAライブラリー、及びRNAライブラリーを調製するための方法。
【0068】
12.本明細書において提供する1つ以上の図面または説明に従った方法。
【0069】
下記の実施例は、例示目的で含まれており、限定するものではない。
【実施例
【0070】
実施例I
腫瘍の不均質性を識別する方法
本実施例では、我々は、Tapestri(商標)シングルセルDNAプラットフォームで生成し、Tapestri(商標)分析ワークフローで分析したデータを使用するサブクローン識別法を提示する。パイプライン工程は、シーケンサーからそのままのリードを得ることと、アダプターを取り除くことと、リードをアラインしてマッピングすることと、個別の細胞をコールすることと、各細胞内の遺伝バリアントを識別することと、を伴う。高品質バリアントをフィルタリングした後、データ完全性でフィルターにかけ、高品質データのみが後続処理で確実に使用されるようにした。バリアント-細胞マトリックスを次に、サブクローンの識別に供する。各サブクローンのシグネチャを確定するトップバリアントもまた識別する。我々の方法論を検証するために、既知の正しい変異を含むモデルシステムで、異なる2つの標的化シーケンシングパネルを用いた。パイプラインは、滴定及び細胞株比率と相関する異なるクラスターを示す。クラスターと関連するシグネチャ変異もまた識別した。パイプラインを、診断から再発までの、または、主要部位から転移までの時系列データを用いる複数試料分析に使用して、クローンの多様性を理解することができる。これらのデータは、Tapestri(商標)プラットフォーム、分析パイプライン、及び関連するデータ可視化能力の実用性を示す。我々のアプローチは、細胞の希少な亜集団の識別を0. 1 0 0まで下げる鍵となる問題に取り組み、主要試料内でのクローン不均質性を正確に特性決定する能力を変換する。このハイスループット法は、研究努力を前進させ、患者の層別化、及び様々ながん指標に対する治療法の選択を改善する。どの変異が、AMLと、単にパッセンジャーまたは誘因であるものとの実際のドライバーであるかを理解するために、AMLパネルを用いる縦列分析を行い、治療法に耐性のあるクローンを明らかにした。治療前の白血病試料、治療中及び再発BM試料を、シングルセルシーケンシングにより分析した。分析により、4つの変異の組み合わせに基づく3つのサブクローンの進化が解明され、治療での動的変化を行うための、がんのクローン組成物の理解に役立つ。上述した分析法により、滴定及び細胞株比率と相関する異なるクラスターを示す。シグネチャ変異と関連するクラスターの識別を行うこともまた可能であった。これらのデータは、Tapestri(商標)プラットフォーム、及び分析パイプライン、及び関連するデータ可視化能力の実用性を示す。我々のアプローチは、細胞の希少な亜集団を識別する鍵となる課題に取り組み、主要試料内でのクローン不均質性を正確に特性決定する能力を変換する能力を有する。クローン集団を正確に特性決定するこのハイスループット法は、患者の層別化、及び様々ながん指標に対する治療法の選択を改善するはずである。
【0071】
以前の実施形態に記載したデータは、診断時における、生物学的に関連するバリアントを識別する能力、しかしまた、変異シグネチャに基づき、治療が耐性細胞クローンをどのように正に選択するかを強調する。これは、Tapestri(商標)プラットフォームを、遺伝バリアントがどのように共存し、どの組み合わせが特定の治療に対して感度を有し、耐性を持つのかを研究するのに利用可能な唯一のツールと位置付ける。したがって、これは、診断の正確性、治療のフォローアップ、ならびに新しい標的識別及び薬剤開発において役立つ。
【0072】
本明細書で参照または言及されているいずれの特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、ならびにその他の文書及び資料も、本発明が属する技術分野の当業者の知識レベルを表すものであり、このような参照文書及び参照資料はそれぞれ、参照により、個々にその全体が援用される場合、またはその全体が本明細書に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。出願人は、このようないずれの特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報及びその他の参照資料または文書に由来するあらゆる資料及び情報を本明細書に物理的に援用する権利を留保する。
【0073】
本明細書に記載されている具体的な方法及び組成物は、好ましい実施形態の代表的なもので、例示的であり、本発明の範囲を限定するものとしては意図されていない。他の目的、態様及び実施形態は、本明細書を考察すれば、当業者には明らかとなるであろうし、特許請求の範囲によって定義されているような、本発明の趣旨に含まれる。本明細書に開示されている本発明に対して、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに、様々な置換及び改変を行ってよいことは、当業者には容易にわかるであろう。本明細書に例示的に記載されている本発明は好適には、いずれかの1つの要素もしくは複数の要素、または1つの制限事項または複数の制限事項であって、本明細書に必須事項として具体的に開示されてはいない要素または制限事項が欠けた状態で実施してもよい。すなわち、例えば、本明細書の各ケース、または本発明の実施形態もしくは実施例では、「含む」、「~から本質的になる」及び「~からなる」という用語のいずれも、本明細書において、他の2つの用語のうちのいずれかと置き換えてよい。また、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などの用語は、広範囲に、かつ限定なしに解釈すべきである。本明細書に例示的に記載されている方法及びプロセスは好適には、工程を異なる順序で実施してよく、必ずしも、本明細書または請求項に示されている順序の工程に制限されるわけではない。また、本明細書及び添付の請求項で使用する場合、「a」、「an」及び「the」という単数形には、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、複数の言及物が含まれる。本特許は、本明細書に具体的に開示されている具体例もしくは実施形態、または方法に限定されるとは、いずれの状況でも解釈できない。いずれの審査官もしくはいずれの他の当局者、またはPatent and Trademark Officeの被用者によるいずれの陳述も、具体的かつ無制限または無条件に、本出願人による返答書で明示的に作用される場合を除き、本特許を限定するものとは、いずれの状況でも解釈できない。
【0074】
採用されている用語及び表現は、説明のための用語として用いられており、限定のための用語ではなく、このような用語及び表現の使用によって、表示及び記載されている特徴またはその一部の均等物のいずれかを除外する意図はなく、特許請求する本発明の範囲内で、様々な改変が可能であることが認識される。すなわち、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって、具体的に開示されているが、本明細書に開示されている概念の改変形態及び変形形態を、当業者は用いてよく、そのような改変形態及び変形形態は、添付の請求項によって定義されるような、本発明の範囲内とみなされることを理解されたい。
【0075】
本発明は、本明細書に広範かつ概括的に説明されている。属の開示に含まれる、より狭い種及び亜属の群もそれぞれ、本発明の一部を形成する。これには、本発明の属の記載であって、その属からいずれかの主題を除去する但し書きまたは否定的な限定を伴う属の記載が含まれ、その削除物が、本明細書に具体的に示されているか否かは問わない。
【0076】
他の実施形態は、下記の請求項の範囲内である。加えて、本発明の特徴または態様が、マーカッシュグループの観点で説明されている場合、本発明が、そのマーカッシュグループの個々の構成要素、または構成要素からなるサブグループのいずれの観点でも説明されることを当業者は認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】