(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】呼吸器疾患における肺機能を改善するための気管支拡張剤としての吸入スタチン
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20220407BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220407BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220407BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220407BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220407BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220407BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20220407BHJP
A61K 31/366 20060101ALI20220407BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20220407BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20220407BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20220407BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20220407BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220407BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220407BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20220407BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220407BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220407BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220407BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220407BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220407BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220407BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P11/00
A61K9/72
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/573
A61K31/137
A61K31/366
A61K31/505
A61K31/22
A61K31/47
A61K31/40
A61P11/06
A61P37/06
A61P7/10
A61P1/00
A61P35/00
A61P37/08
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/18
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560194
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020025543
(87)【国際公開番号】W WO2020205663
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(71)【出願人】
【識別番号】308042481
【氏名又は名称】ベス イスラエル ディーコネス メディカル センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】アミール エー.ゼキ
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラ シー.ゴーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラマスワミー クリシュナン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076DD23
4C076DD25
4C076DD38
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4C076DD67
4C076EE30
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4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)を肺組織に直接、吸入によって投与することにより、気道平滑筋組織を弛緩させ、気管支痙攣を緩和又は予防し、及び肺疾患を治療する方法に関する。本開示はまた、本開示の方法の実施に有用な製剤及び組成物に関する。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の気道平滑筋収縮を低下させる方法であって、
肺疾患を有する被験体に製剤を吸入によって投与することと、
1種、2種、又は3種の追加の治療薬を投与することを含み、前記製剤は、
治療有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体と、
医薬的に許容し得る担体とを含む、上記方法。
【請求項2】
前記1種、2種、又は3種の追加の治療薬が、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体;抗IgE抗体;抗IL5受容体抗体;抗IL13/4受容体抗体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記追加の治療薬が、β作動薬、コルチコステロイド、ムスカリン拮抗薬、又はこれらの任意の組合せである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記追加の治療薬が、アルブテロール、アフォルモテロール、フォルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、レバルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、ジルパテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、及びカルモテロール、ブフェニン、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロからなる群から選択されるβ作動薬である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記追加の治療薬が、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、フルニソリド、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン、フルルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタゾール、アムシノニド、シクレソニド、デフラザコート、デソニド、フォルモコルタール、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、及びトリアムシノロンアセトニドからなる群から選択されるコルチコステロイドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記追加の治療薬が、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、グリコピロレート、臭化グリコピロニウム、レベフェナシン、臭化ウメクリジニウム、アクリジニウム、塩化トロスピウム、臭化オキシトロピウム、オキシブチニン、トルテロジン、ソリフェナシン、フェソテロジン、及びダリフェナシンからなる群から選択されるムスカリン拮抗薬である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記追加の治療薬が、ファスジル、リパスジル、ネタルスジル、RKI-1447、Y-27632、Y-30141、及びGSK429286Aからなる群から選択されるROCK阻害剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記追加の治療薬がRhoA阻害剤ロシンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1種、2種、又は3種の追加の治療薬がスタチンによって増強される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
1種、2種、又は3種の追加の治療薬が治療量未満の用量で投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記スタチンが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記スタチンが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記スタチンが、ピタバスタチン及びシンバスタチンからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療有効量が約0.005μg~約40mgである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療有効量が約0.5μg~約15mgである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療有効量が約1.0μg~約10mgである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記治療有効量が約1.0μg~約5mgである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記肺気道疾患が気道平滑筋収縮を特徴とする、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記肺気道疾患が気管支痙攣を特徴とする、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記肺疾患が、喘息;運動誘発性気管支収縮;COPD;肺気腫;慢性気管支炎;アルファ1抗トリプシン欠乏症(AATD);ACOS;嚢胞性線維症;気管支拡張症;運動誘発性気管支痙攣;運動誘発性喘息;アスピリン悪化呼吸器疾患;NSAID悪化呼吸器疾患、顆粒球寡少型喘息、肥満関連気道反応性亢進、ウイルス感染後気道反応性亢進;ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症;気道外傷;手術;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;及び腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣からなる群から選択される肺気道疾患である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記投与が機械式吸入器によるものである、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記機械式吸入器が定量式粉末吸入器である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記定量式粉末吸入器が加圧噴霧式エアロゾル吸入器である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記定量式粉末吸入器が乾燥粉末吸入器である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記機械式吸入器がネブライザーである、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記機械式吸入器が、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、 及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体の気道平滑筋収縮を低下させる方法であって、
非炎症性肺疾患を有する被験体に製剤を吸入によって投与することを含み、前記製剤は、
治療有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体と、
医薬的に許容し得る担体とを含む、上記方法。
【請求項28】
前記スタチンが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記スタチンが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記スタチンが、ピタバスタチン及びシンバスタチンからなる群から選択される、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療有効量が約0.005μg~約40mgである、請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記治療有効量が約0.5μg~約15mgである、請求項27~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療有効量が約1.0μg~約10mgである、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記治療有効量が約1.0μg~約5mgである、請求項27~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記被験体が肺気道疾患又は間質性肺疾患を有すると診断されている、請求項27~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記肺疾患が、運動誘発性気管支痙攣、運動誘発性喘息、アスピリン悪化呼吸器疾患、NSAID悪化呼吸器疾患、顆粒球寡少型喘息、肥満関連気道反応性亢進、及びウイルス感染後気道反応性亢進からなる群から選択される、請求項27~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記肺気道疾患が気道平滑筋収縮を特徴とする、請求項27~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記肺気道疾患が気管支痙攣を特徴とする、請求項27~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記肺疾患が、ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症(これは気管支痙攣による喘鳴を引き起こす局所的因子を放出する可能性がある);手術を含む気道外傷;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;及び腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣からなる群から選択される、請求項27~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記投与が機械式吸入器によるものである、請求項27~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
1種、2種、又は3種の追加の治療薬を投与することをさらに含む、請求項27~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
1種、2種、又は3種の追加の治療薬が、スタチンと同じ製剤で投与される、請求項27~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
1種、2種、又は3種の追加の治療薬が、スタチンと同じ製剤では投与されない、請求項27~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記追加の治療薬が、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体;抗IgE抗体;抗IL5受容体抗体;抗IL13/4受容体抗体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、からなる群から選択される、請求項27~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記追加の治療薬が、アルブテロール、アフォルモテロール、フォルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、レバルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、ジルパテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、及びカルモテロール、ブフェニン、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロからなる群から選択されるβ作動薬である、請求項27~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記追加の治療薬が、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、フルニソリド、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン、フルルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタゾール、アムシノニド、シクレソニド、デフラザコート、デソニド、フォルモコルタール、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、及びトリアムシノロンアセトニドからなる群から選択されるコルチコステロイドである、請求項27~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記追加の治療薬が、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、グリコピロレート、臭化グリコピロニウム、レベフェナシン、臭化ウメクリジニウム、アクリジニウム、塩化トロスピウム、臭化オキシトロピウム、オキシブチニン、トルテロジン、ソリフェナシン、フェソテロジン、及びダリフェナシンからなる群から選択されるムスカリン拮抗薬である、請求項27~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記追加の治療薬が、ファスジル、リパスジル、ネタルスジル、RKI-1447、Y-27632、Y-30141、及びGSK429286Aからなる群から選択されるROCK阻害剤である、請求項27~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記追加の治療薬がRhoA阻害剤ロシンである、請求項27~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
1種、2種、又は3種の追加の治療薬がスタチンによって増強される、請求項27~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
1種、2種、又は3種の追加の治療薬が治療量未満の用量で投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記医薬的に許容し得る担体が、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖、多価アルコール、シクロデキストリン、アミノ酸、塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択される成分を含む、請求項27~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記成分が、グルコース、フルクトース、及びアラビノースからなる群から選択される単糖を含む、請求項27~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記成分が、ラクトース、サッカロース、マルトース、及びトレハロースからなる群から選択される二糖を含む、請求項27~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記成分が、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、及びセルロースからなる群から選択されるオリゴ糖又は多糖を含む、請求項27~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記成分が、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトールからなる群から選択されるポリアルコールを含む、請求項27~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記成分が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、カプチゾール、及びスルホブチル-β-シクロデキストリン、又はDexSolからなる群から選択されるシクロデキストリンを含む、請求項27~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記成分がアルギニンまたはアルギニン塩酸塩を含む、請求項27~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記成分が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、および炭酸カルシウムからなる群から選択される塩を含む、請求項27~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
被験体の気管支痙攣を治療する方法であって、
気管支痙攣を特徴とする非炎症性肺気道疾患を有する被験体に製剤を吸入によって投与することを含み、前記製剤は、
治療有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体と、
医薬的に許容し得る担体とを含む、上記方法。
【請求項61】
前記スタチンが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記スタチンが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記スタチンが、ピタバスタチン及びシンバスタチンからなる群から選択される、請求項60~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記被験体が肺気道疾患又は間質性肺疾患を有すると診断されている、請求項60~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記肺気道疾患が、運動誘発性気管支痙攣;運動誘発性喘息;アスピリン悪化呼吸器疾患;NSAID悪化呼吸器疾患、顆粒球寡少型喘息、肥満関連気道反応性亢進、ウイルス感染後気道反応性亢進;ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症(これは気管支痙攣による喘鳴を引き起こす局所的因子を放出する可能性がある);手術を含む気道外傷;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;及び腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣からなる群から選択される、請求項60~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記肺気道疾患が気道平滑筋収縮を特徴とする、請求項60~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記肺気道疾患が気管支痙攣を特徴とする、請求項60~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記投与が機械式吸入器を使用して行われる、請求項60~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記機械式吸入器が定量吸入器である、請求項60~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記定量吸入器が加圧噴霧式エアロゾル吸入器である、請求項60~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記定量吸入器が乾燥粉末吸入器である、請求項60~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記機械式吸入器がネブライザーである、請求項60~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記機械式吸入器が、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、PulmoSphereキャリアー吸入器、及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される、請求項60~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記製剤が、1種、2種、又は3種の追加の治療薬をさらに含む、請求項60~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記追加の治療薬が、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体;抗IgE抗体;抗IL5受容体抗体;抗IL13/4受容体抗体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、からなる群から選択される、請求項60~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記追加の治療薬が、アルフォルモテロール、ブフェニン、クレンブテロール、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボサルブタモール、レバルブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、イソクスプリン、マブテロール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロールからなる群から選択されるβ作動薬である、請求項60~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記追加の治療薬が、ファスジル、リパスジル、ネタルスジル、RKI-1447、Y-27632、Y-30141、及びGSK429286Aからなる群から選択されるROCK阻害剤である、請求項60~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記追加の治療薬がRhoA阻害剤ロシンである、請求項60~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記医薬的に許容し得る担体が、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖、DexSol、ポリアルコール、シクロデキストリン、アミノ酸、塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択される成分を含む、請求項60~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記成分が、グルコース、フルクトース、及びアラビノースからなる群から選択される単糖を含む、請求項60~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記成分が、ラクトース、サッカロース、マルトース、及びトレハロースからなる群から選択される二糖を含む、請求項60~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記成分が、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、及びセルロースからなる群から選択されるオリゴ糖又は多糖を含む、請求項60~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記成分が、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトールからなる群から選択されるポリアルコールを含む、請求項60~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記成分が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、カプチゾール、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンを含む、請求項60~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記成分がアルギニン又はアルギニン塩酸塩を含む、請求項60~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記成分が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される塩を含む、請求項60~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
治療有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体と
吸入による投与に適した医薬的に許容し得る担体とを含む、肺気道疾患の治療のための医薬製剤。
【請求項88】
前記スタチンが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される、請求項87に記載の製剤。
【請求項89】
前記スタチンが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される、請求項87又は88に記載の製剤。
【請求項90】
前記スタチンが、ピタバスタチン及びシンバスタチンからなる群から選択される、請求項87~89のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項91】
前記有効量が約0.005mg~約80mgである、請求項87~90のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項92】
前記有効量が約0.5mg~約15mgである、請求項87~91のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項93】
前記有効量が約1.0mg~約10mgである、請求項87~92のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項94】
前記有効量が約1.0mg~約5mgである、請求項87~93のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項95】
前記製剤が1種、2種、又は3種の追加の治療薬をさらに含む、請求項87~94のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項96】
前記製剤が治療量未満の量の1種、2種、又は3種の追加の治療薬を含む、請求項87~95のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項97】
前記追加の治療薬が、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体;抗IgE抗体;抗IL5受容体抗体;抗IL13/4受容体抗体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、からなる群から選択される、請求項87~96のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項98】
前記追加の治療薬が、アルフォルモテロール、ブフェニン、クレンブテロール、レバルブテロール、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、イソクスプリン、マブテロール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロールからなる群から選択されるβ作動薬である、請求項87~97のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項99】
前記追加の治療薬が、ファスジル、リパスジル、ネタルスジル、RKI-1447、Y-27632、Y-30141、及びGSK429286Aからなる群から選択されるROCK阻害剤である、請求項87~98のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項100】
前記追加の治療薬がRhoA阻害剤ロシンである、請求項87~99のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項101】
前記医薬的に許容し得る担体が、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖、多価アルコール、DexSol、シクロデキストリン、アミノ酸、塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択される成分を含む、請求項87~100のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項102】
前記成分が、グルコース、フルクトース、及びアラビノースからなる群から選択される単糖を含む、請求項87~101のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項103】
前記成分が、ラクトース、サッカロース、マルトース、及びトレハロースからなる群から選択される二糖を含む、請求項87~102のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項104】
前記成分が、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、及びセルロースからなる群から選択されるオリゴ糖又は多糖を含む、請求項87~103のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項105】
前記成分が、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトールからなる群から選択されるポリアルコールを含む、請求項87~104のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項106】
前記成分が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、カプチゾール、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンを含む、請求項87~105のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項107】
前記成分がアルギニン又はアルギニン塩酸塩を含む、請求項87~106のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項108】
前記成分が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される塩を含む、請求項87~107のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項109】
治療用量の製剤を、それを必要とする被験体の肺気道に送達するための送達装置と、
請求項87~108のいずれか1項に記載の医薬的に許容し得る製剤とを含む、被験体の肺気道疾患を治療するための予備充填された吸入装置。
【請求項110】
前記装置が、加圧吸入器、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、又はネブライザーを含む、請求項109に記載の吸入装置。
【請求項111】
前記装置が複数の治療用量を含む、請求項109又は110に記載の吸入装置。
【請求項112】
前記送達装置が定量吸入器である、請求項109~111のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項113】
前記定量吸入器が加圧噴霧式エアロゾル吸入器である、請求項109~112のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項114】
前記定量吸入器が乾燥粉末吸入器である、請求項109~112のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項115】
前記送達装置がネブライザーである、請求項109~112のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項116】
前記送達装置が、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、PulmoSphereキャリアー吸入器、及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される、請求項109~115のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項117】
容器を吸入器装置に取り付けるための連結手段を含む容器と、
請求項87~108のいずれか1項に記載の医薬的に許容し得る製剤とを含む、吸入器で使用するための予備充填されたカートリッジ。
【請求項118】
医薬的に許容し得る噴射剤をさらに含む、請求項117に記載の予備充填されたカートリッジ。
【請求項119】
前記治療有効量が、肺機能の維持に;喘息悪化の低下に;被験体の気管支収縮及び粘液蓄積の低下に;又は呼吸誘発性気管支拡張の増強に、有効である、請求項27~86のいずれかに記載の方法。
【請求項120】
請求項87~108のいずれか1項に記載の製剤を、それを必要とする被験体に吸入によって投与することを含む、被験体の気道反応性亢進(AHR)を低下させる方法であって、前記治療有効量が被験体のAHRを低下させるのに有効である、上記方法。
【請求項121】
請求項87~108のいずれか1項に記載の製剤を、それを必要とする被験体に吸入によって投与することを含む、被験体の気道平滑筋(ASM)の過収縮を低下させる方法であって、前記治療有効量が被験体のASM過収縮を低下させるのに有効である、上記方法。
【請求項122】
請求項87~108のいずれか1項に記載の製剤を、それを必要とする被験体に吸入によって投与することを含む、被験体の伸展誘発気道平滑筋(ASM)弛緩を増加させる方法であって、前記治療有効量が、被験体の伸展誘発気道平滑筋弛緩を増加させるのに有効である、上記方法。
【請求項123】
前記投与が機械式吸入器を使用して行われる、請求項119~122のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前記機械式吸入器が定量吸入器である、請求項119~123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
前記定量吸入器が加圧噴霧式エアロゾル吸入器である、請求項119~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記定量吸入器が乾燥粉末吸入器である、請求項119~125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
前記機械式吸入器がネブライザーである、請求項119~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
前記機械式吸入器が、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される、請求項119~127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
請求項87~108のいずれか1項に記載の製剤をそれを必要とする被験体に吸入によって投与することを含む、間質性肺疾患の症状を治療する方法であって、
前記間質性肺疾患は、ASM収縮、ASM過剰増殖又は肥厚、気管支痙攣、気管支収縮、気道粘液蓄積、又は炎症性メディエーターのASM放出からなる群から選択される気道症状を引き起こし、
治療有効量は、前記症状の重症度を少なくとも10%低下させるのに有効である、上記方法。
【請求項130】
すでに発生したか又は将来経験されると予想される事象によって引き起こされる将来の症状を低下させる方法であって、将来の症状を経験するリスクのある被験体に請求項87~108のいずれか1項に記載の製剤を投与することを含む、上記方法。
【請求項131】
前記将来の症状が、ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣によって引き起こされる気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症;気道外傷;手術;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;又は腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣である、請求項130に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この国際出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2019年3月29日に提出された米国仮特許出願第62/826,620号、及び2019年9月26日に提出された米国仮特許出願第62/906,427号の利益を主張し、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の支援による研究と開発下で行われた発明の権利に関する声明
本発明は、助成金番号NIH/NHLBI K08 HL114882-01A1及びカリフォルニア地域霊長類センターパイロット助成金(P51 OD011107)の下での政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
(背景)
喘息は、米国では約2000万人、世界中で3億3900万人以上が罹患し、過度の気道狭窄による喘鳴及び息切れの症状を伴う。例えば、S.S. An et al., Eur Respir J (2007) 29(5):834-60; Y. Amrani et al., Int J Biochem Cell Biol (2003) 35:272-76(http:// www.globalasthmareport.org/、2019年3月29日にアクセスした)を参照されたい。長時間作用型β2作動薬と高用量の吸入コルチコステロイドの広範な使用にもかかわらず、喘息患者の55%は症状のコントロールが不十分であり、入院の増加、労働日数の減少、障害、及び死亡につながり、2013年の推定年間費用は約820億ドルである(K.R. Chapman et al., Eur Respir J (2008) 31(2):320-25; S.P. Peters et al., J Allergy Clin Imunol (2007) 119:1454-61; S. Webb, Nat Publ Gr (2011) 29(10):860-63; T. Nurmagambetov et al., Ann Am Thorac Soc (2018) 15(3):348-56)。この厳しい現実は、喘息において持続している満たされていない治療上の必要性を浮き彫りにしている。
【0004】
ステロイドは、炎症性サイトカイン及びケモカインを抑制し、気道への免疫細胞動員と、気道を収縮促進性作動薬に感作させて、気道反応性亢進(airway hyperresponsiveness)をもたらし得る局所炎症とを遮断するように作用する。しかし、COPDと重度の喘息の多くの患者では、高用量を使用した場合でもステロイド低感受性が観察され、このため、肺機能を維持し疾患をコントロールするための重要なメカニズムとしての気道平滑筋への直接の気管支拡張作用がなくなる。実際、COPDでは、標準治療はステロイドを省略することが多く、疾患のコントロールを維持するために抗ムスカリン又はβ作動薬気管支拡張薬のみに依存している。疾患コントロールを維持するための気管支拡張性の気道平滑筋の重要性は、嚢胞性線維症を含む他のさまざまな呼吸障害でも認識されている(D.P. Cook et al., Am J Respir Crit Care Med (2016) 193(4):417-26); C.D. Pascoe et al., Am J Respir Cell Mol Biol (2018) doi: 10.1165/rcmb.2018-0378ED)。しかし多くの患者は、これらの既存の気管支拡張薬を定期的に使用しているにもかかわらず、コントロールが不十分なままであり、頻繁に悪化を示し、新しい薬の必要性を示す。
【0005】
気道平滑筋細胞は、表現型の可塑性を示し、増殖状態又は収縮状態を示す。気管支拡張薬は収縮状態を標的にして気道を弛緩させ、患者に、息切れの急性緩和、肺機能の改善、及び疾患コントロールを提供する。気道平滑筋量の増加は呼吸器疾患でも観察されており、気道平滑筋の増殖と量を減らすための可能な治療法の研究も前臨床試験中である。しかし、ヒトでの臨床研究に進んだ薬剤はなく、気道平滑筋の増殖を低下させるだけで患者の肺機能と疾患コントロールを改善するのに十分であるかどうかは不明のままである。
【0006】
喘息の悪化の間、気道平滑筋(ASM)収縮は、急性気管支収縮の主要な原因である(S.S. An et al., supra; R.K. Lambert et al., J Appl Physiol (1997) 83(11):140-47; P.T. Macklem, Am J Respir Crit Care Med (1996) 153:83-89)。またASMの質量は、重度で致命的な喘息でも大幅に増加する(L. Benayoun et al., Am J Respir Crit Care Med (2003) 167(10):1360-68; N. Carroll et al., Am Rev Respir Dis (1993) 147(2):405-10)。従って、ASMを標的とする薬剤の治療薬としての可能性は、原則としてこれらの亜集団ではさらに大きくなる。ただし、β2作動薬、ムスカリン拮抗薬、システイニルロイコトリエン受容体拮抗薬などのASM収縮を克服することを目的とした現在の治療法では、症状を完全にコントロールすることはできない。これらの治療法は、複雑、間接的、及び脱感作の影響を受けやすい受容体介在経路を標的としている(E.J. Whalen et al., Cell (2007) 129(3):511-22)。ASM細胞骨格系を標的とすることは、ASM弛緩を達成するための代替手段であり、アクチン、ミオシン、ザイキシン、コフィリン、及びRhoキナーゼ(ROCK)を介したシグナル伝達などの特定の経路を標的とすることを支持する強力な前臨床データが蓄積されている(S. Chen et al., Am J Respir Cell Mol Biol (2014) 50:1076-83; W.T. Gerthoffer et al., Curr Opin Pharmacol (2013) 13:324-30; T.L. Lavoie et al., Proc Am Thor Soc (2009) 6:295-300; S.R. Rosner et al., PLoS One (2017) 12:e0171728; B. Lan et al., Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol (2018) 314(5):L799-807; W. Zhang et al., J Physiol (2018) 596:3617-35)。しかし、これらの細胞骨格系標的のさらなる開発は、喘息患者のASMにおけるこれらの安全性、特異性、及び有効性に関する懸念によって妨げられてきた。
【0007】
スタチンは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A還元酵素(HMG-CoA還元酵素)阻害剤であり、メバロン酸塩(MA)及び下流のイソプレノイド脂質であるファルネシル-ピロリン酸(FPP)及びゲラニルゲラニル-ピロリン酸(GGPP)の生合成を遮断する。現在、米国では、これらは脂質低下剤として経口投与のみが承認されている。喘息モデルでは、スタチンは、抗炎症、抗線維化、抗増殖、及び免疫調節などの多面的効果を有する。実験室の及び疫学的に明確なデータにもかかわらず、喘息の症状を改善するために経口スタチンを使用する臨床試験は、相反する結果及び/又は陰性の結果をもたらしてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スタチンは炎症を低下させることができると認識されているが、これらの抗炎症作用が、ステロイドを含むすでに広く使用されている他の抗炎症治療を超えて、肺機能を改善するために、患者に有益であるかどうかは不明である。しかし、過度の平滑筋気管支収縮は、呼吸器疾患に苦しむ患者にとって日常的な問題であり、気道の狭窄と肺機能の低下に直接つながる。既存の治療法では疾患がうまくコントロールされていない患者にとって、新しい気管支拡張薬の必要性がいまだに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の簡単な要約)
1つの実施態様において、本開示は、被験体における気道平滑筋収縮を低下させるための方法を提供し、この方法は、非炎症性肺気道疾患を有する被験体に製剤を吸入によって投与することを含み、ここで製剤は、治療有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体、及び医薬的に許容し得る担体を含む。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは疎水性スタチンである。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、ピタバスタチン及びその異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、ピタバスタチン及びシンバスタチンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンはピタバスタチンである。いくつかの実施態様において、スタチンはシンバスタチンである。
【0010】
いくつかの実施態様において、治療有効量は、約0.005μg~約40mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、約0.5μg~約15mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、約1.0μg~約10mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、約1.0μg~約5mgである。
【0011】
いくつかの実施態様において、被験体は肺気道疾患を有すると診断されている。いくつかの実施態様において、肺気道疾患は、運動誘発性気管支痙攣、運動誘発性喘息、アスピリン悪化呼吸器疾患(aspirin-exacerbated respiratory disease)、NSAID悪化呼吸器疾患(NSAID-exacerbated respiratory disease)、顆粒球寡少型喘息、肥満関連気道反応性亢進、及びウイルス感染後気道反応性亢進からなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施態様において、肺気道疾患は気管支痙攣を特徴とする。いくつかの実施態様において、肺疾患は、ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症(これは気管支痙攣による喘鳴を引き起こす局所的因子を放出する可能性がある);手術を含む気道外傷;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;及び腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣からなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施態様において、投与は機械式吸入器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、機械式吸入器は定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は加圧噴霧式エアロゾル定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は加圧噴霧式定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は乾燥粉末吸入器である。いくつかの実施態様において、機械式吸入器はネブライザーである。いくつかの実施態様において、機械式吸入器は、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施態様において、この方法は、1種、2種、又は3種の追加の治療薬を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、スタチンと同じ製剤で投与される。いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、スタチンと同じ製剤では投与されない。いくつかの実施態様において、追加の治療薬の少なくとも1つは、スタチンとは別の製剤で投与される。いくつかの実施態様において、スタチンと1種、2種、又は3種の追加の治療薬が同時に投与される。いくつかの実施態様において、スタチンと1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、異なる時間に投与される。
【0015】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体;抗IgE抗体;抗IL5受容体抗体;抗IL13/4受容体抗体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、アルブテロール、アフォルモテロール、フォルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、レバルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、ジルパテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、及びカルモテロール、ブフェニン、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロからなる群から選択されるβ作動薬である。
【0016】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、フルニソリド、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン、フルルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタゾール、アムシノニド、シクレソニド、デフラザコート、デソニド、フォルモコルタール、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、及びトリアムシノロンアセトニドからなる群から選択されるコルチコステロイドである。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、グリコピロレート、臭化グリコピロニウム、レベフェナシン、臭化ウメクリジニウム、アクリジニウム、塩化トロスピウム、臭化オキシトロピウム、オキシブチニン、トルテロジン、ソリフェナシン、フェソテロジン、及びダリフェナシンからなる群から選択されるムスカリン拮抗薬である。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、ファスジル、リパスジル、ネタルスジル、RKI-1447、Y-27632、Y-30141、及びGSK429286Aからなる群から選択されるROCK阻害剤である。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、RhoA阻害剤ロシンである。
【0017】
いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、スタチンによって増強される。いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、治療量未満の用量で投与される。
【0018】
いくつかの実施態様において、医薬的に許容し得る担体は、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖、ポリアルコール、シクロデキストリン、DexSol、アミノ酸、塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択される成分を含む。いくつかの実施態様において、成分は、グルコース、フルクトース、及びアラビノースからなる群から選択される単糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、ラクトース、サッカロース、マルトース、及びトレハロースからなる群から選択される二糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、及びセルロースからなる群から選択されるオリゴ糖又は多糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトールからなる群から選択されるポリアルコールを含む。いくつかの実施態様において、成分は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、カプチゾール、及びスルホブチル-β-シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンを含む。いくつかの実施態様において、成分は、アルギニン又はアルギニン塩酸塩を含む。いくつかの実施態様において、成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される塩を含む。
【0019】
別の実施態様において、本開示は、それを必要とする被験体に製剤を吸入によって投与することにより、被験体における気管支痙攣を治療する方法を提供し、ここで、製剤は、有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体、及び医薬的に許容し得る担体を含有する。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン及びピタバスタチンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、ピタバスタチン並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、ピタバスタチンを含む。
【0020】
いくつかの実施態様において、被験体は肺気道疾患を有すると診断されている。いくつかの実施態様において、肺気道疾患は、喘息;運動誘発性気管支収縮(又は運動誘発性喘息);肺気腫、慢性気管支炎、及び/又はアルファ-1抗トリプシン欠乏症(AATD)を含む可能性のあるCOPD;ACOS;嚢胞性線維症;及び気管支拡張症からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、肺気道疾患は非炎症性肺気道疾患である。いくつかの実施態様において、肺気道疾患は、運動誘発性気管支痙攣、運動誘発性喘息、アスピリン悪化呼吸器疾患、NSAID悪化呼吸器疾患、顆粒球寡少型喘息、肥満関連気道反応性亢進、及びウイルス感染後気道反応性亢進からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、肺気道疾患は、気道平滑筋収縮を特徴とする。いくつかの実施態様において、肺疾患は、ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症(これは気管支痙攣による喘鳴を引き起こす局所的因子を放出する可能性がある);手術を含む気道外傷;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;及び腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣からなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施態様において、肺気道疾患は気管支痙攣を特徴とする。いくつかの実施態様において、投与は機械式吸入器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、機械式吸入器は定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は加圧噴霧式エアロゾル定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は乾燥粉末吸入器である。いくつかの実施態様において、機械式吸入器はネブライザーである。いくつかの実施態様において、機械式吸入器は、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、PulmoSphereキャリアー吸入器、 及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施態様において、製剤は、1種、2種、又は3種の追加の治療薬をさらに含む。いくつかの実施態様において、追加の治療薬の少なくとも1つは、スタチンによって増強される。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、治療量未満の用量で投与される。いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、治療量未満の用量で投与される。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体;抗IgE抗体;抗IL5受容体抗体;抗IL13/4受容体抗体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、アルフォルモテロール、ブフェニン、クレンブテロール、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、レバルブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、イソクスプリン、マブテロール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロールからなる群から選択されるβ作動薬である。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、ファスジル、リパスジル、ネタルスジル、RKI-1447、Y-27632、Y-30141、及びGSK429286Aからなる群から選択されるROCK阻害剤である。いくつかの実施態様において、第2の治療薬は、RhoA阻害剤ロシンである。
【0024】
いくつかの実施態様において、医薬的に許容し得る担体は、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖、ポリアルコール、シクロデキストリン、アミノ酸、塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択される成分を含む。いくつかの実施態様において、成分は、グルコース、フルクトース、及びアラビノースからなる群から選択される単糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、ラクトース、サッカロース、マルトース、及びトレハロースからなる群から選択される二糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、及びセルロースからなる群から選択されるオリゴ糖又は多糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトールからなる群から選択されるポリアルコールを含む。いくつかの実施態様において、成分は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンを含む。いくつかの実施態様において、成分は、アルギニン又はアルギニン塩酸塩を含む。いくつかの実施態様において、成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される塩を含む。
【0025】
別の実施態様において、本開示は、肺気道疾患の治療のための医薬製剤を提供し、前記組成物は、治療有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体、及び吸入による投与に用適した医薬的に許容し得る担体を含む。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、ピタバスタチン及びシンバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンはピタバスタチンである。いくつかの実施態様において、スタチンはシンバスタチンである。
【0026】
いくつかの実施態様において、有効量は約0.005mg~約80mgである。いくつかの実施態様において、有効量は約0.5mg~約15mgである。いくつかの実施態様において、有効量は約1.0mg~約10mgである。いくつかの実施態様において、有効量は約1.0mg~約5mgである。
【0027】
いくつかの実施態様において、製剤は、1種、2種、又は3種の追加の治療薬をさらに含む。いくつかの実施態様において、追加の治療薬の少なくとも1つは、スタチンによって増強される。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、治療量未満の用量で投与される。いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、治療量未満の用量で投与される。いくつかの実施態様において、製剤は、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体;抗IgE抗体;抗IL5受容体抗体;抗IL13/4受容体抗体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、からなる群から選択される追加の治療薬をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、アルフォルムテロール、ブフェニン、クレンブテロール、レバルブテロール、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドドリン、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、イソクスプリン、マブテロール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロールからなる群から選択されるβ作動薬である。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、ファスジル、リパスジル、ネタルスジル、RKI-1447、Y-27632、Y-30141、及びGSK429286Aからなる群から選択されるROCK阻害剤である。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、RhoA阻害剤ロシンである。
【0029】
いくつかの実施態様において、医薬的に許容し得る担体は、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖、ポリアルコール、シクロデキストリン、アミノ酸、塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択される成分を含む。いくつかの実施態様において、成分は、グルコース、フルクトース、及びアラビノースからなる群から選択される単糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、ラクトース、サッカロース、マルトース、及びトレハロースからなる群から選択される二糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、及びセルロースからなる群から選択されるオリゴ糖又は多糖を含む。いくつかの実施態様において、成分は、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトールからなる群から選択されるポリアルコールを含む。いくつかの実施態様において、成分は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンを含む。いくつかの実施態様において、成分は、アルギニン又はアルギニン塩酸塩を含む。いくつかの実施態様において、成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される塩を含む。
【0030】
別の実施態様において、本開示は、被験体の肺気道疾患を治療するための予備充填された吸入装置を提供し、この装置は、治療用量の製剤をそれが必要な被験体の肺気道に送達するための送達装置;及び本明細書に記載の医薬的に許容し得る製剤を含む。いくつかの実施態様において、装置は、加圧吸入器、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、又はネブライザーを含む。
【0031】
いくつかの実施態様において、装置は、複数の治療用量を含む。いくつかの実施態様において、送達装置は、定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は、加圧噴霧式エアロゾル吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は、乾燥粉末吸入器である。いくつかの実施態様において、送達装置はネブライザーである。いくつかの実施態様において、送達装置は、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、PulmoSphereキャリア吸入器、及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される。
【0032】
別の実施態様において、本開示は、吸入器と共に使用するための予備充填されたカートリッジを提供し、このカートリッジは、容器を吸入装置に取り付けるための連結手段を含む容器;及び本明細書に記載の医薬的に許容し得る製剤を含む。いくつかの実施態様において、吸入装置は、医薬的に許容し得る推進薬をさらに含む。
【0033】
別の実施態様において、本開示は、上記の方法のいずれかを提供し、ここで、治療有効量は、肺機能の維持に;喘息悪化の低下に;被験体のコルチコステロイドの必要性の低下に;被験体の気管支収縮及び粘液蓄積の低下に;又は呼吸誘発性気管支拡張(breathing-induced bronchodilation)の増強に、有効である。いくつかの実施態様において、治療有効量は、肺機能の維持に;喘息悪化の低下に;被験体の気管支収縮及び粘液蓄積の低下に;又は呼吸誘発性気管支拡張の増強に、有効である。
【0034】
別の実施態様において、本開示は、被験体における気道反応性亢進(AHR)又はASM過収縮を低下させるための方法を提供し、この方法は、本開示の製剤をそれを必要とする被験体に吸入によって投与することを含み、ここで、治療有効量は、被験体のAHR又はASM過収縮を低下させるのに有効である。
【0035】
別の実施態様において、本開示は、被験体における伸展誘発気道平滑筋(ASM)弛緩を増加させるための方法を提供し、この方法は、本開示の製剤をそれを必要とする被験体に吸入によって投与することを含み、ここで、治療有効量は、被験体の伸展誘発ASM弛緩を増加させるのに有効である。
【0036】
別の実施態様において、本開示は、ASMに対するβ2作動薬の気管支拡張効果を増強するための方法を提供し、この方法は、ASMに増強量のスタチンを接触させ、そしてASMに増強量のβ2作動薬を接触させることを含み、ここで、結果として生じる増強された効果はASM弛緩を含む。いくつかの実施態様において、ASMは、スタチンとの接触後約2時間~約24時間、β2作動薬と接触される。いくつかの実施態様において、ASMは、ASM弛緩を必要とするヒト被験体にある。いくつかの実施態様において、スタチン及びβ2作動薬は、吸入によって投与される。いくつかの実施態様において、増強された効果は、β2作動薬単独によるASM収縮の低下率とスタチン単独によるASM収縮の低下率との合計よりも、少なくとも約10%多くASM収縮を低下させる。いくつかの実施態様において、増強された効果は、スタチンの非存在下でのASM収縮の低下率よりも約10%~約30%多くASM収縮を低下させる。
【0037】
いくつかの実施態様において、投与は、機械式吸入器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、機械式吸入器は、定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は、加圧噴霧式エアロゾル吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は、乾燥粉末吸入器である。いくつかの実施態様において、機械式吸入器はネブライザーである。いくつかの実施態様において、機械式吸入器は、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される。
【0038】
別の実施態様において、本開示は、間質性肺疾患の症状を治療するための方法を提供し、この方法は、本開示の製剤をそれを必要とする被験体に吸入によって投与することを含み、ここで、間質性肺疾患は、ASM収縮、ASM過剰増殖又は肥厚、気管支痙攣、気管支収縮、気道粘液蓄積、又は炎症性メディエーターのASM放出からなる群から選択される気道症状を引き起こし、ここで、治療有効量は症状の重症度を少なくとも10%低下させるのに有効である。
【0039】
別の実施態様において、本開示は、肺疾患を有する被験体に製剤を吸入によって投与し、そして1種、2種、又は3種の追加の治療薬を投与することにより、被験体における肺気道疾患を治療するための方法を提供し、ここで、製剤は、医薬的に許容し得る担体と、治療有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体を含む。いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体又は抗体誘導体;抗IgE抗体又は抗体誘導体;抗IL5受容体抗体又は抗体誘導体;抗IL13/4受容体抗体又は抗体誘導体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、から選択される。
【0040】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、アルブテロール、アフォルモテロール、フォルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、レバルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、ジルパテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、及びカルモテロール、ブフェニン、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロからなる群から選択されるβ作動薬である。
【0041】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、フルニソリド、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン、フルルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタゾール、アムシノニド、シクレソニド、デフラザコート、デソニド、フォルモコルタール、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、及びトリアムシノロンアセトニドからなる群から選択されるコルチコステロイドである。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、グリコピロレート、臭化グリコピロニウム、レベフェナシン、臭化ウメクリジニウム、アクリジニウム、塩化トロスピウム、臭化オキシトロピウム、オキシブチニン、トルテロジン、ソリフェナシン、フェソテロジン、及びダリフェナシンからなる群から選択されるムスカリン拮抗薬である。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、ファスジル、リパスジル、ネタルスジル、RKI-1447、Y-27632、Y-30141、及びGSK429286Aからなる群から選択されるROCK阻害剤である。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、RhoA阻害剤ロシンである。
【0042】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、β作動薬、コルチコステロイド、ムスカリン拮抗薬、又はこれらの任意の組合せである。いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、スタチンによって増強される。いくつかの実施態様において、1種、2種、又は3種の追加の治療薬は、治療量未満の用量で投与される。
【0043】
いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは疎水性スタチンである。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、ピタバスタチン並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、ピタバスタチン及びシンバスタチンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンはピタバスタチンである。いくつかの実施態様において、スタチンはシンバスタチンである。
【0044】
いくつかの実施態様において、治療有効量は、約0.005μg~約40mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、約0.5μg~約15mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、約1.0μg~約10mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、約1.0μg~約5mgである。
【0045】
いくつかの実施態様において、被験体は肺気道疾患を有すると診断されている。いくつかの実施態様において、肺気道疾患は、喘息;運動誘発性気管支収縮;COPD;肺気腫;慢性気管支炎;アルファ1抗トリプシン欠乏症(AATD);ACOS;嚢胞性線維症;気管支拡張症;運動誘発性気管支痙攣、運動誘発性喘息、アスピリン悪化呼吸器疾患、NSAID悪化呼吸器疾患、顆粒球寡少型喘息、肥満関連気道反応性亢進、ウイルス感染後気道反応性亢進;ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症;気道外傷;手術;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;及び腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣である。いくつかの実施態様において、肺疾患は、運動誘発性気管支痙攣、運動誘発性喘息、アスピリン悪化呼吸器疾患、NSAID悪化呼吸器疾患、顆粒球寡少型喘息、肥満関連気道反応性亢進、及びウイルス感染後気道反応性亢進からなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実施態様において、肺気道疾患は気管支痙攣を特徴とする。いくつかの実施態様において、肺疾患は、ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症(これは気管支痙攣による喘鳴を引き起こす局所的因子を放出する可能性がある);手術を含む気道外傷;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;及び腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣からなる群から選択される。
【0047】
いくつかの実施態様において、投与は機械式吸入器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、機械式吸入器は定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は加圧噴霧式エアロゾル定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は加圧噴霧式定量吸入器である。いくつかの実施態様において、定量吸入器は乾燥粉末吸入器である。いくつかの実施態様において、機械式吸入器はネブライザーである。いくつかの実施態様において、機械式吸入器は、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、及びEllipta(登録商標)吸入器からなる群から選択される。
【0048】
1つの実施態様において、本開示は、すでに発生したか又は将来経験されると予想される事象によって引き起こされる将来の症状を軽減させるための方法を提供し、この方法は、将来の症状を経験するリスクのある被験体に本開示の製剤を投与することを含む。いくつかの実施態様において、この方法は、将来の症状が、ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣によって引き起こされる気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症;気道外傷;手術;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;又は腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣である場合である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1A-1D】
図1A-1Dは、基底ASM細胞収縮の阻害に対するスタチンの示差的効果が、メバロン酸塩(MA)依存性メカニズムによって発生することを示す。ASMは1μMのスタチンで24時間処理された。P値:**p<0.01、***p<0.001。NT:未処理。Pra:プラバスタチン;Ros:ロスバスタチン;Sim:シンバスタチン(生物学的に活性な形態で、β-ヒドロキシ酸、「SA」);Pit:ピタバスタチン。ピタバスタチンとシンバスタチンは、使用した濃度でより強力であった。
図1Aは、メバロン酸塩がない場合の効果を示す。
図1Bは、100μMのメバロン酸塩の存在下での効果を示し、これは、ASM弛緩に対するスタチンの有益な効果を無効にする。これは、スタチン効果がメバロン酸塩経路の阻害を介して発生することを示す。注目すべきことに、シンバスタチンはプロドラッグ(ラクトン型)である。これは、吸収されると、活性代謝物であるβ-ヒドロキシシンバスタチン酸に生体内変換される。血液循環流中では、ラクトンとヒドロキシ酸の間に絶えず平衡がある。
【0050】
図1Cは、薬物の親油性の範囲にわたるスタチンの用量応答を示す。シンバスタチンとピタバスタチンは親油性が高く、アトルバスタチンは中程度の親油性であり、プラバスタチンは最も親油性が低い(最も親水性の)スタチンである。0.4μMの用量で24時間処理すると、シンバスタチンとピタバスタチンは、ASM弛緩の増加に相当するひずみエネルギー(収縮する細胞によって基質に与えられるエネルギー=収縮)の有意な減少を示したが、これと比較して、プラバスタチンはこれらの濃度で効果を示さなかった。2及び10μMでは、シンバスタチン、ピタバスタチン、及びアトルバスタチンは、プラバスタチンと比較して、ひずみエネルギーを大幅に(さらに)低下させる。未処理(0μM)と比較して、ひずみエネルギーの統計的に有意な減少は次のように発生した:0.4及び10μMのシンバスタチン、2及び10μMのピタバスタチン、及び2及び10μMのアトルバスタチン。P値:***p<0.001、****p<0.0001。
【0051】
図1Dは、ピタバスタチンが他のスタチンよりも、ASM細胞収縮のより強力な阻害剤であることを示す。ピタバスタチンによる前処理(1μM、24時間)は、基礎ASM収縮(別名ひずみエネルギー)を強力かつ有意に阻害し、ピタバスタチンはまた、同じ用量のシンバスタチンよりも強力であり、より親油性のシンバスタチンと比較して、ピタバスタチンの増強された効力をさらに確認した。P値:NTと比較して**p<0.01、***p<0.001。
【0052】
【
図2A-2E】
図2A-2Eは、アポトーシスを誘発することが知られている陽性対照と比較して、スタチンを使用したアポトーシス及び壊死の試験の結果を示す(
図2A)。
図2B~Eには、個々のスタチンが示されている:(2B)シンバスタチン(SA)、(2C)ピタバスタチン、(2D)ロスバスタチン、及び(2E)プラバスタチン。スタチンがASM細胞に対して弛緩効果を示した用量を含めて、試験した用量のスタチンでは、アポトーシスや細胞死の証拠はなかった。略語:Sim(シンバスタチン)、Pra(プラバスタチン)、Pit(ピタバスタチン)、Ros(ロスバスタチン)。
【0053】
【
図3】
図3は、3人の異なるヒトドナーから得られた初代ASM細胞に対する、シンバスタチン酸(SA)及びピタバスタチンの用量依存性効果を示す。
【0054】
【
図4A-4C】
図4A-4Cは、スタチンが、ヒスタミン誘発性ASM収縮を阻害することを示す。
図4A:ピタバスタチンによる前処理(24時間)が、基礎ASM収縮とヒスタミン誘発(10μMヒスタミンで30分間)ASM収縮の両方を強力かつ有意に阻害し、これはピタバスタチンが、作動薬誘発収縮を防ぎ、気道狭窄を防ぐことができることを示す。0.4μM用量のピタバスタチンは、ヒスタミンによるASM収縮の誘発を無効にし(基礎対ヒスタミン後、p=NS)、より高い用量(2、100、50μM)でも同様の効果をもたらす。同様のパターンがシンバスタチン(
図4B)とアトルバスタチンで観察され、ピタバスタチンが3つの薬剤の中で最も強力であった。略語:NT-未処理、NS-有意ではない。P値:*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001、####p<0.0001。
図4Cは、時間の経過に伴うASM弛緩を示す。ピタバスタチンは、培地欠乏の有無にかかわらず、24時間を含むすべての時点で、1μMのシンバスタチンよりも大きなASM弛緩を引き起こした。H=適用されたヒスタミン。I=適用されたイソプロテレノール(β2作動薬)。ヒスタミンはASM収縮を引き起こし、一方イソプロテレノールはASM弛緩を引き起こす。SE=ひずみエネルギー(ASM収縮)。
【0055】
【
図5A-5B】
図5A-5Bは、スタチンがASM細胞における収縮機能を阻害することを示す。
図5Aは、ピタバスタチンが、ヒトASM細胞において、メバロン酸塩依存的にRhoキナーゼ(ROCK-1)のリン酸化を阻害することを示す。ヒスタミン(10μM、5分)はROCK-1リン酸化を誘発し、これはピタバスタチン(Pit、1μM)による前処理(24時間)により阻害される。メバロン酸塩との同時処理(MA、200μM、24時間)は、ROCK-1リン酸化に対するPitの阻害効果を排除する。これにより、MA経路がROCK-1の活性化を仲介することが確認された。
図5Bは、ピタバスタチンが、ヒトASM細胞におけるミオシン軽鎖-2(MLC-2)リン酸化を阻害することを示す。トロンビン(2単位、30分)はMCL-2リン酸化を誘発し、ピタバスタチンによる前処理(24時間、1又は10μM)により阻害された。P値:**p<0.01、***p<0.001。このデータは、スタチンがASM収縮機構を遮断することを示す。MLCタンパク質は、平滑筋収縮を直接コントロールする。
【0056】
【
図6】
図6は、気管内に注入されたピタバスタチンの気管支拡張効果が、いかなる抗炎症作用にも依存しないことを示す。メタコリン(MCh)誘発性過収縮の非炎症性マウスモデルを使用すると、各MCh噴霧の前に、気管内ピタバスタチン(5mg/kgで5日間)で1時間前処理すると、気道の収縮%が大幅に低下した(対照22.3%対スタチン7.3%、*p=0.0361)。精密に切断された肺切片を使用して、500nM(0.5μM)MChに応答する気道収縮を測定した(1群あたりn=2のマウス、1群あたり13個の気道)。
【0057】
【
図7】
図7は、非ヒト霊長類の吸入スタチン試験の実験計画を示す。
【0058】
【
図8】
図8は、吸入された(噴霧された)シンバスタチンが、気管支収縮を引き起こすエイコサノイド脂質(LTB4及びTXB2)の基礎レベルを阻害することを示す。
【0059】
【
図9】
図9は、吸入されたシンバスタチンの組織分布を示す。質量分析とメタボロミクスを使用して、吸入(噴霧)シンバスタチン(1mg/kg)の組織分布と、主幹気管支と下肺葉(約0.8~1μg/100,000上皮細胞)における、肺脂質、シンバスタチン、及びその活性代謝物であるシンバスタチン酸(SA)濃縮物の効果を試験した。最大405ng/gのSAが肝臓で検出され、一方25ng/gと7ng/gのSAがそれぞれ大腸と筋肉中に検出された。
【0060】
【
図10A-10F】
図10A-10Fは、ピタバスタチンが、基礎-、ヒスタミン-、及びMCh誘発性-ASM収縮を阻害することを示す。
図10Aは、未処理(0μM)と比較して、収縮の統計的に有意な低下が次のように発生したことを示す:0.4、2、及び10μMのピタバスタチン(Pit)、そして0.4及び10μMのシンバスタチン(Sim)。プラバスタチンは、ASM細胞の弛緩に有効な効果をもたらさなかった。
図10Bは、1μMのSimと1μMのPitの両方が、対照と比較して時間依存的にASM収縮を低下させたが、Pitは、24時間でSimよりも有意に有効であったことを示す(#で示されている)。実験は、血清欠乏培地条件下で実施された。
図10Cは、0.4μMのPitがヒスタミン誘発性のASM収縮を阻害するのに対し、0.4μMのSimは阻害しないことを示す。統計的比較は、スチューデントのt検定を使用して行なった。
図10Dは、Pitを含まない培地をウェルに再懸濁すると、1μMのPitの力抑制効果が逆転したことを示す。
図10Eは、スタチン処理が細胞アポトーシスを誘発しなかったことを示す。ジギトニン(50μg/ml)を陽性対照として使用した。
図10Fは、未処理(0μM)と比較して、マウスPCLSで生存率の低下が観察されなかったことを示す。陽性対照として、2時間の0.01%Triton(登録商標)処理が含まれている。すべての細胞実験は、特に明記しない限り、血清(10%FBS)を含む培地条件で実施された。1つの非喘息性初代ヒトASMドナー株を10A~Dで使用した;
図10Eは、1つの非喘息性hTERT ASM細胞株を使用した。すべてのグラフで、ASM収縮は、0時間での処理前のベースライン値に対する変化倍率としてプロットされている。p値:*、#p<0.05;**、##p<0。01;###p<0.001。各群について、条件ごとにn=4~8個の個別のウェル。すべてのデータは、平均及び平均の標準誤差(SEM)として報告される。
【0061】
【
図11A-11C】
図11A-11Cは、ピタバスタチンが、ヒト細胞、ヒトPCLS、及びマウスにおけるASM収縮を阻害することを示す。
図11Aは、喘息患者のASM細胞が、非喘息患者のASM細胞よりも(追加の作動薬がない場合に)基底収縮が大きかったことを示す。これらの基礎力の違いにもかかわらず、喘息及び非喘息の両方のドナー細胞にわたって、ピタバスタチンはASM収縮を用量依存的に阻害した(0μM処理と比較してp<0.0001)。各ドナーについて、条件ごとにn=4~8の別々のウェル。
図11Bは、MCh誘発ASM過収縮の非炎症性マウスモデルにおいて、各MCh噴霧の前に1時間、気管内ピタバスタチン(5mg/kgで5日間)で前処理すると、気道収縮%が大幅に低下したことを示す(対照=24.9%、ビヒクル=27.2%、ピタバスタチン=14.2%、*p<0.05)。
図11Cは、5μMのPit(n=5)又はビヒクル(n=3)で24時間前処理し、0、0.1、及び1μMのヒスタミン(hist)で15分間後処理したヒトPCLSの気道が、それぞれ狭窄を低下させたことを示す。ビヒクルと比較して、Pitは1μMのhist誘発性気管支収縮を有意に低下させた。管腔狭窄の変化は、0μMのhistと比較した管腔面積の変化%として報告される。管腔面積の絶対値は、0μMヒスタミンでPit群とビヒクル群の間に統計的に差はなかった。すべてのデータは、平均及び平均の標準誤差(SEM)として報告される。
【0062】
【
図12A-12B】
図12A-12Bは、ピタバスタチンが、シミュレートされた深呼吸のASM弛緩効果を増強することを示し、これは、特にイソプロテレノールには存在しないピタバスタチンの有益な効果である。
図12Aは、未処理の対照(n=7)と比較して、1μMのPit(24時間)(n=7)又は10μMのイソプロテレノール(30分)(n=6)による前処理が、基礎ASM収縮を有意に阻害したことを示す。未処理の対照群に対して標準化された収縮値が示されている。
図12Bは、深呼吸を模倣する後続の単一の伸展-非伸展操作(10%の大きさ、4秒間の持続)に応答して、ASM細胞がその収縮を迅速かつ劇的に除去したことを示す。その後、力は180秒かけて回復した。力の除去は3つの群すべてで同様であったが、その後の力の回復はピタバスタチン処理によって有意に阻害された(*p<0.05;****p<0.0001)。nは、ASM単層の個別のウェルの数を示す。すべてのデータは、平均及び平均の標準誤差(SEM)として報告される。
【0063】
【
図13】
図13は、ピタバスタチン(Pit)、イソプロテレノール(Iso)、及びPitとIsoの組合せが、ヒスタミン(Hist)誘発性の気管支収縮を低下させたことを示す(*p=0.0298)。これはまた、組合せが少なくとも相加的であり、ピタバスタチンはイソプロテレノールの作用を妨害しないこと、及びその逆も真であることを示す。1人のヒトドナーの肺の精密に切断されたヒト肺切片を、5μMピタバスタチン(Pita)又はビヒクル(対照)で24時間前処理し、ヒスタミン(hist、10μMで15分間)、続いてイソプロテレノール(iso、30μMでさらに30分間)で後処理した。管腔狭窄の変化は、前処理状態の変化%(±SEM)として報告される。管腔気道面積の絶対値は、処理前の状態でピタ群と対照群間で統計的に差はなかった。実験は、血清欠乏培地条件下で実施された。1群あたりn=3~7の気道。
【0064】
【
図14A-14B】
図14A-14Bは、ピタバスタチンが、GGPP依存的に炎症促進性サイトカインのASM細胞分泌を阻害することを示す。非喘息の初代ヒトASM細胞をコンフルエンスまで増殖させ、処理しなかった(Con.(NT))か、又は2mMピタバスタチン(Pit又はPIT)及びGGPP(10mM)で合計72時間前処理した。細胞を、IL17とTNFα、又はIL13とTNFαのいずれかで10ng/mLで18時間処理した。
図14A:PITは、GGPP依存性メカニズムによるIL13/TNFα誘発性エオタキシン-3ペプチド分泌を阻害した。
図14B:Pitは、GGPP依存性メカニズムによるIL17/TNFα誘発IL6ペプチド分泌を阻害した。IL13/IL17/TNFαカクテルは、図では「CytoMix(CM)」と表記されている。すべての実験は、血清含有培地条件下(10%FBS)で実施された。P値:*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。
【0065】
【
図15A-15C】
図15A-15Cは、ピタバスタチンが、MA及びGGPP依存性メカニズムを介してASM細胞骨格を阻害することを示す。非喘息患者の初代ヒトASM細胞を、ビヒクル中の1μMピタバスタチン(Pit)又はビヒクルのみで24時間処理した。次に、ウェルをF-アクチン発現のために免疫染色した。Pitは基礎F-アクチン発現を有意に低下させた(
図15A)。非喘息患者の初代ヒトASM細胞を、1μMのピタバスタチン(Pit)、10μMのGGPPを含むPit、又は10μMのGGPPと100μMのMAを含むPitで24時間共処理した。PitはF-アクチンの発現とASMの収縮を低下させた:これらの低下はGGPPとMAによって排除された(
図15B)。細胞溶解物を、総ROCK-1及び総ROCK-2についてウエスタンブロットにより分析した。PitはROCK-1とROCK-2の両方の基礎発現を低下させた(
図15C)。
【0066】
【
図16】
図16は、シンバスタチン及びデキサメタゾンが、HBE1細胞からのエオタキシン-3分泌を相乗的に阻害することを示す。HBE1細胞をシンバスタチン(Sim、5μM)及び/又はデキサメタゾン(DEX、10
-7M)で72時間前処理すると、IL13誘発性のエオタキシン-3の細胞外分泌がそれぞれ独立して阻害され、シンバスタチンとデキサメタゾンが一緒になってエオタキシン-3分泌に相乗的な阻害効果を示した。
【0067】
【
図17A-17B】
図17Aは、適切な濃度のスタチンによる前処理が、関連する濃度のイソプロテレノールの弛緩効果を増強することを示す。
図17Bは、
図17Aの四角で囲まれた部分に示されているデータの詳細を示す。
【0068】
【
図18】
図18は、適切な濃度のスタチンによる前処理が、デキサメタゾンの弛緩効果を増強することを示す。初代ヒト気道平滑筋細胞を血清含有培地(10%FBS)でコンフルエントになるまで培養し、次に0.1、1、又は5μMのデキサメタゾン(「Dex」)で、0.1、0.5、又は1μMの濃度のピタバスタチン(「Pit」)有り又は無しで60時間前処理した。次に、ASM細胞をサイトカインの混合物(10ng/mLのIL-13、IL-17、及びTNFα、「CM」)に15時間曝露し、エオタキシン-3の発現を測定した。「NT」は未処理を意味する。ピタバスタチンを任意の濃度のデキサメタゾンに添加した場合、エオタキシン-3発現の有意な低下が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0069】
(詳細な説明)
総論:
新規の気管支拡張剤の必要性は、スタチンを使用する新しい方法によって満たされ、これは、新しいメカニズムを提供して、吸入によって気道に直接送達された場合に、気道を気管支拡張して肺機能を改善し、症状を軽減させる。本開示は、吸入されたスタチンが、抗炎症活性とは別のそしてそれとは異なる治療効果を有することを示す。気道へのスタチン直接投与は、経口投与では達成されない有効量のスタチンを気道平滑筋(ASM)に送達する。しかし、吸入されると、スタチンはASM弛緩を誘発し、気管支収縮と気道粘液の蓄積を減らし、気管支痙攣を減らし、反応性亢進と過収縮を減らし、深呼吸によって誘発されるASM弛緩と気管支拡張を増強し、β2作動薬や吸入コルチコステロイドなどの薬剤の気管支拡張作用を増強し、吸入コルチコステロイドを使用する必要性を減らし、肺機能を維持し、肺機能を改善する。従って、本開示は、肺気道の疾患及び障害を治療するための新しい方法及び製剤を含む。吸入されたスタチンは、ASMによって及ぼされる収縮力を直接低下させ、ASM細胞骨格を阻害し、ASMによる炎症性サイトカイン及びメディエーターの放出を阻害する。吸入されたスタチンは、追加の治療薬と組合せて、追加の治療薬の治療効果を高めることができ、これにより、用量の低下及び/又は有効性の上昇が可能になる。
【0070】
定義:
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。例えば「細胞」という用語は、これらの混合物を含む1つ以上の細胞を含む。「A及び/又はB」は、本明細書では「A」、「B」、「A又はB」、及び「A及びB」のすべての選択肢を含むために使用される。
【0071】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、各介在値は、その範囲の上限及び下限の間の下限の単位の10分の1まで規定し、他の記載又はその記載された範囲内の介在値は本開示内に含まれる。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立してより小さな範囲に含まれ得、また、記載された範囲において特定の限界が除外されて、本開示に含まれる。記載された範囲が一方又は両方の限界を含む場合、これらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0072】
本明細書に開示されるすべての範囲はまた、任意及びすべての可能な副範囲(sub-ranges)及びこれらの副範囲の組合せを包含する。任意のリストされた範囲は、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解される同じ範囲を十分に記述し可能にするものと認識することができる。非限定的な例として、ここで説明する各範囲は簡単に、下3分の1、中3分の1、上3分の1などのように分類することができる。当業者によっても理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などのすべての用語は記載されている数を含み、上記のように後で副範囲に分割することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は個々のメンバーを含む。従って、例えば1~3の物品を有する群は、1、2、又は3の物品を有する群を指す。同様に1~5の物品を有する群は、1、2、3、4、又は5の物品を有する群などを指す。
【0073】
明確にするために、別個の実施態様の文脈で説明される本開示の特定の特徴もまた、単一の実施態様において組合せて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施態様の文脈で説明される本開示の様々な特徴はまた、別個に又は任意の適切なサブコンビネーションで提供され得る。本開示に関連する実施態様のすべての組合せは、本開示によって具体的に包含され、あたかもすべての組合せが個別にかつ明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施態様及びその要素のすべてのサブコンビネーションもまた、あたかも各及び全てのそのような小さい組合せが個別にかつ明示的に本明細書に開示されたかのように、本開示によって具体的に包含され本明細書に開示される。
【0074】
「スタチン」は、小分子HMG-CoA還元酵素阻害剤である。スタチンは、メバロン酸塩代謝経路を遮断し、それによって体内でのコレステロールの生成を低下させるように設計された。本開示の適切なスタチンには、特に限定されるものではないが、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体が含まれる。疎水性スタチンには、シンバスタチン、ピタバスタチン、及び同様の疎水性を有する他のスタチンが含まれる。親水性スタチンには、プラバスタチン、及び同様の親水性を有する他のスタチンが含まれる。
【0075】
「気道平滑筋」(「ASM」)という用語は、気管支及び細気管支を裏打ちする平滑な不随意の筋組織を指す。ASMの収縮により気道の直径が縮小し、一方ASMの弛緩により気道が拡張する。
【0076】
「治療有効量」という用語は、吸入によって投与されたときに、測定可能な有益な効果を達成するのに十分な、スタチン(又は異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体)又はこれらの混合物の量を指す。有益な効果は、気道平滑筋収縮の低下、気管支痙攣又は気管支収縮の低下、肺機能の予防的維持、粘液蓄積の低下、症状をコントロールするために必要なコルチコステロイドの低下、喘息の悪化の重症度及び/又は頻度の低下、呼吸により誘発される気管支拡張の改善などであり得る。
【0077】
「治療量未満の用量(sub-therapeutic dose)」は、相乗的又は増強された組合せの製剤、方法、又はシステムにおける1種以上の薬剤の用量を指し、ここで、薬剤の用量は、単独で又は非相乗的組合せの製剤、方法、又はシステムの一部として投与されると、不充分または治療量未満であるが、相乗的組合せの製剤、方法、又はシステムの一部として投与されると、治療的使用には十分であるレベルに低下される。薬剤の治療量未満の用量は、薬剤が本開示による非相乗的製剤、方法、又はシステムの一部として吸入によって投与されるときの薬剤の有効用量の、約90%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%であり得る。
【0078】
「医薬的に許容し得る担体」という用語は、それが投与される量及び濃度で被験体に対して非毒性であり、その中にスタチンが溶解及び/又は懸濁され得る賦形剤を指す。本開示の実施において、医薬的に許容し得る担体は、吸入による投与に適している。
【0079】
「肺気道疾患」という用語は、肺の閉塞、又は肺に出入りする気流の制限又は妨害が実質的な症状である疾患又は障害を指す。この閉塞は、ASMの収縮(気管支収縮)及び/又は粘液の過剰分泌に起因する可能性がある。肺気道疾患には、特に限定されるものではないが、喘息;運動誘発性気管支収縮(又は運動誘発性喘息);肺気腫、慢性気管支炎、及び/又はアルファ-1抗トリプシン欠乏症(AATD)を含む可能性のある慢性閉塞性肺疾患(COPD);喘息-COPD重複症候群(ACOS)(喘息-COPD重複又はACOとしても知られている);嚢胞性線維症;急性気管支炎;好酸球性気管支炎;収縮性細気管支炎;及び気管支拡張症が含まれ得る。吸入されたスタチンの使用は、圧縮力を減らすことができ、それによって気道リモデリング、粘液分泌過多、及び粘液栓形成を減らすことができる。「非炎症性」と見なされる肺気道疾患には、運動誘発性気管支痙攣、運動誘発性喘息、アスピリン悪化呼吸器疾患、NSAID悪化呼吸器疾患、顆粒球寡少型喘息、肥満関連気道反応性亢進、ウイルス感染後気道反応性亢進、及び炎症によって開始又は維持されない他の肺気道疾患が含まれ得る。
【0080】
「気管支保護」は、将来の症状、又はすでに発生したか又は将来経験されると予想される作用からの害を低下させるための、本開示の方法、製剤、又はシステムを使用する肺の「防御」活性又は投与であり、ここで、前記方法、製剤、又はシステムを受ける被験体は、将来の症状を経験するリスクがある。これらの将来の症状には、ウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症(これは気管支痙攣による喘鳴を引き起こす局所的因子を放出する可能性がある);手術を含む気道外傷;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;及び腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣;及び気管支痙攣を引き起こす可能性のあるその他の事象を含み得る。被験体、健康、体調、遺伝、職業、年齢、又は予想される将来の症状に因果関係があるその他の要因により、被験体が1種以上の症状を経験する鹿瀬が、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は約100%ある場合、被験体は将来の症状を経験することが「予想される」。
【0081】
肺気道疾患は、所定の因子が疾患の特徴である場合、すなわち、その因子が、他の疾患にも見られるかどうかに関係なく、通常その因子に関連している場合、その所定の因子によって「特徴付けられる」。例えば、気管支収縮は肺気腫の特徴でもあるという事実にもかかわらず、気管支収縮は喘息の症例の大部分に現れるため、喘息は気管支収縮の特徴であり得る。
【0082】
「間質性肺疾患」は、肺組織及び肺気道間の空間、例えば基底膜、血管周囲、及びリンパ周囲組織で発生するものである。これらの疾患は、肺気道に直接影響は与えないという事実にもかかわらず、これは、気道と肺機能に影響を与える間接的な影響と症状を有する可能性がある。
【0083】
製剤:
開示される組成物は、組成物が肺に吸入又は噴霧される吸入に適するように製剤化される。理想的には組成物は、気道全体に均一に分布して、有効量のスタチンをASMに直接提供するように投与される。これは一般に、空気又はガスに懸濁された小さな粒子の集団として製剤を投与することによって達成され、ここで粒子サイズの分布は、粒子が気管の遠位に浸透する距離に影響を与える。組成物は、溶液、懸濁液、粉末、又は肺投与に適した他の形態の形態であり得る。例えば、H.M. Mansour et al., Int J Nanomed (2009) 4:299-319を参照されたい。これらの組成物は、例えば、エアロゾル、粉砕、噴霧、又は気化された形態で、当技術分野で知られている適切な装置を介して肺に投与される。投与される組成物の量は、装置の各作動でスプレーで固定用量を送達する定量吸入器(MDI)のように、計測された量を送達するためのバルブを提供することによって制御することができる。このようにして、適切な用量(例えば、治療有効量)の組成物を、複数の用量を含む装置から確実に送達することができる。
【0084】
送達に使用される製剤は、典型的には、エアロゾル製剤、ネブライザー製剤、又は乾燥粉末製剤などの特定の投与様式で機能するように設計されるであろう。
【0085】
本開示の製剤は、治療有効量のスタチンを含む。いくつかの実施態様において、治療有効量は、少なくとも約0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、12、14、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100μgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、12、14、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、約100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、or 0.005mg以下であろう。
【0086】
製剤は、任意の医薬的に活性なスタチン又はこれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、及びプラバスタチンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン及びピタバスタチンからなる群から選択される。
【0087】
本開示の製剤は、追加の治療薬をさらに含むことができ、これは、β作動薬;コルチコステロイド;ムスカリン拮抗薬;RhoA阻害剤;GGTase-I又は-II阻害剤;ROCK1及び/又はROCK2阻害剤;可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤;脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体拮抗薬;ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、例えばロフルミラスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン;肥満細胞安定剤、例えばネドクロミル;テオフィリン;抗IL5抗体又は抗体誘導体;抗IgE抗体又は抗体誘導体;抗IL5受容体抗体又は抗体誘導体;抗IL13/4受容体抗体又は抗体誘導体;生物学的製剤、例えばメポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、及びデュピルマブ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とムスカリン拮抗薬の組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬とコルチコステロイドの組合せ;長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、コルチコステロイドとムスカリン拮抗薬の組合せ;並びに長時間作用型と短時間作用型製剤の両方を含む、β作動薬、コルチコステロイド、及びムスカリン拮抗薬の組合せ、から選択され得る。
【0088】
抗体誘導体は、抗体に類似しているか、又はそれに基づいている抗原に結合することができるタンパク質である。抗体誘導体の例には、ナノボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ、F(ab’)2断片、F(ab)v断片、単鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、及びこれらの機能断片が含まれる。
【0089】
追加の治療薬もまた、肝臓の初回通過代謝を受けないため、それもまた、一般に経口又は非経口投与において有効な用量よりも低い用量で投与され得る。いくつかの実施態様において、吸入によって投与される場合の有効用量は、経口投与に通常推奨される用量の約90%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%未満である。
【0090】
追加の治療薬として使用するのに適したコルチコステロイドには、特に限定されるものではないが、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、フルニソリド、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン、フルルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタゾール、アムシノニド、シクレソニド、デフラザコート、デソニド、フォルモコルタール、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、及びトリアムシノロンアセトニドが含まれ得る。
【0091】
ムスカリン拮抗薬は、ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断する抗コリン作動薬であり、従って、気管支収縮を遮断することができる。追加の治療薬として使用するのに適したムスカリン拮抗薬には、特に限定されるものではないが、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、グリコピロレート、臭化グリコピロニウム、レベフェナシン、臭化ウメクリジニウム、アクリジニウム、塩化トロスピウム、臭化オキシトロピウム、オキシブチニン、トルテロジン、ソリフェナシン、フェソテロジン、及びダリフェナシンが含まれる。
【0092】
ベータ作動薬は、β2アドレナリン作動性受容体を活性化する化合物であり、ASMを弛緩させるために使用される。追加の治療薬として使用するのに適したベータ作動薬(β作動薬)には、特に限定されるものではないが、アルブテロール、アルフォルモテロール、ブフェニン、クレンブテロール、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、レバルブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、イソクスプリン、マブテロール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロが含まれる。
【0093】
ROCK阻害剤は、酵素Rhoキナーゼ(ROCK1及び/又はROCK2)を阻害する。適切なROCK阻害剤には、例えば、1-メチル-5-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-1H-インダゾール(「TS-f22」、M. Shen et al., Sci Rep (2015) 5:16749)、(1S)-2-アミノ-1-(4-クロロフェニル)-1-[4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェニル]エタノール(「AT13148」、T.A. Yap et al., Clin Cancer Res (2012) 18(14):3912-23)、N-(6-フルオロ-1H-インダゾール-5-イル)-6-メチル-2-オキソ-4-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-3,4-ジヒドロ-1H-ピリジン-5-カルボキサミド(「GSK429286A」、E. Ahler et al., Mol Cell (2019) 74(2):393-408e20)、1-[(3-ヒドロキシフェニル)メチル]-3-(4-ピリジン-4-イル-1,3-チアゾール-2-イル)尿素(「RKI-1447」、H. Wang et al., Cancer Res (2017) 77(8):2148-60)、及び4-[(1R)-1-アミノエチル]-N-ピリジン-4-イルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(「Y-27632」、Y-C. Liao et al., Cell (2019) 179(1):147-64.e20)が含まれる。適切なRhoA阻害剤には、N-[1-(4-クロロアニリノ)-1-オキソプロパン-2-イル]オキシ-3,5-ビス-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(「CCG-1423」、D.A. Lionarons et al., Cancer Cell (2019) 36(1):68-83.e9)などの化合物が含まれる。適切なGGTI阻害剤には、N-(1-アミノ-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-4-[2-(3,4-ジクロロフェニル)-4-(2-メチルスルファニルエチル)-5-ピリジン-3-イル-ピラゾール-3-イル]オキシブタンアミド(「GGTI-DU40」、Y.K. Peterson et al., J Biol Chem (2006) 281:12445-50)、及び(2S)-2-[[4-[[(2R)-2-アミノ-3-スルファニルプロピル]アミノ]-2-ナフタレン-1-イルベンゾイル]アミノ]-4-メチルペンタン酸2,2,2-トリフルオロ酢酸(「GGTI-297」、P.A. Subramani et al., Bioinformation (2015) 11(5):248-53)などの化合物が含まれる。適切な可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤には、例えば1-(1-アセチルピペリジン-4-イル)-3-(1-アダマンチル)尿素(「AR9281」、R.H. Ingraham et al., Curr Med Chem (2011) 18(4):587-603)、1-(1-プロパノイル-ピペリジン-4-イル)-3-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]尿素(「TPPU」、Y-M. Kuo et al., Mol Neurobiol (2019) 56:8451-74)などの化合物が含まれる。
【0094】
適切な脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害剤には、特に限定されるものではないが、4-ヒドロキシ-N-[(5Z,8Z,11Z,14Z)-イコサ-5,8,11,14-テトラエニル]ベンズアミド(「AM-1172」、C.J. Hillard et al., J Mol Neurosci (2007) 33:18-24)、N-フェニル-4-(3-フェニル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-1-ピペラジンカルボキサミド(「JNJ1661010」、T. Lowin et al., Arth Res Ther (2015) 17:321)、及びN-3-ピリジニル-4-[[3-[[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル]オキシ]フェニル]メチル]-1-ピペリジンカルボキサミド(「PF-3845」、S. Ghosh et al., J Pharmacol Exp (2015) 354(2):111-20)などの化合物が含まれる。適切なロイコトリエン受容体拮抗薬には、特に限定されるものではないが、ザフィルルカスト、モンテルカスト、及びジレウトンなどの化合物が含まれる。
【0095】
(a)エアロゾル製剤
エアロゾルは、空気又は別のガスに懸濁された、典型的には平均直径が10μm未満の小さな固体粒子又は液滴の懸濁液である。呼吸器官に薬物を送達するためのエアロゾル製剤は当技術分野で知られている。例えば、A. Adjei et al., J Pharm Res (1990) 1:565-69; P. Zanen et al., J Int J Pharm (1995) 114:111-15; I. Gonda, Crit Rev Ther Drug Carrier Syst (1990) 6:273-313; Anderson et al., Am Rev Respir Dis, (1989)140:1317-24(これらすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0096】
加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)を介したエアロゾル投与用の組成物は、溶液又は懸濁液として配合することができる。溶液組成物は、活性物質が推進薬ビヒクルに完全に溶解し、懸濁液組成物に時々関連する物理的安定性の問題(粒子凝集など)を回避するため、製造がより便利になり得る。薬剤が推進薬に十分に溶解しない場合は、エタノールなどの共溶媒を使用して、pMDIによる投与用の医薬組成物への溶解性を高めることができる。いくつかの実施態様において、製剤は、推進薬及び共溶媒に溶解されたスタチンを含む。
【0097】
懸濁液製剤は、典型的には平均直径が約10μm未満である薬剤の小さな固体粒子を含むことができる。このような製剤は、結晶形態の薬剤を粉砕又は摩砕することによって、又は薬剤を含む溶液を噴霧乾燥することによって調製することができる。いくつかの実施態様において、製剤は、粉末化されたスタチン、推進薬、及び懸濁ビヒクルを含む。いくつかの実施態様において、懸濁ビヒクルは、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは、ピタバスタチンを含む。
【0098】
医薬組成物は、1種以上の適切な推進薬、例えばヒドロフルオロアルカン、CO2、又は他の適切なガスなどを配合することができる。いくつかの実施態様において、界面活性剤を添加して、組成物、推進薬、及び存在する場合は共溶媒の間の表面張力及び界面張力を低下させることができる。界面活性剤は、他の医薬組成物成分と非反応性であり、組成物、推進薬、及び共溶媒の間の表面張力及び/又は界面張力を所望の程度まで低下させる任意の適切な非毒性化合物であり得る。いくつかの実施態様において、製剤は、通常の操作条件下で安定な医薬組成物溶液を生成及び/又は維持するのに界面活性剤を必要とせず、界面活性剤を含まなくてもよい。
【0099】
(b)ネブライザー配合物
「噴霧化」は、液体を微細なスプレー又はミストに縮小することを指す。均一なサイズの小さな液滴は、液体製剤のより大きな本体から制御された方法で生成され、通常平均粒子サイズは約0.5μm~約10μmである。噴霧化は、機械式ネブライザーを含む任意の適切な手段によって達成することができ、ここで、機械式ネブライザーには、製剤がばね圧下でノズルを通して搾り出されるRespimat(登録商標)Soft Mistネブライザー;コンプレッサーが空気又は酸素を圧縮して液体中を高速で流してミストを生成するジェットネブライザー;超音波周波数で振動する圧電変換器が液体製剤と接触して配置され、振動がミスト又はエアロゾルを生成する超音波ネブライザー;又は、小さな穴のあるメッシュ又は膜が液体リザーバーの表面で振動して、細かいミストを生成する振動メッシュネブライザーが含まれる。これらの技術のいずれかを使用するネブライザーは市販されている。有効成分がネブライザーを介して一緒に又は個別に投与されるように適合されている場合、これらは、適切なpH又は張度調整の有無にかかわらず、単回用量又は複数回用量装置として、噴霧された水性懸濁液又は溶液の形態であり得る。
【0100】
ネブライザー投与に使用される製剤は、必ずではないが、通常は主に水溶液である。投与される薬剤が水にわずかにしか溶けない場合、エタノールなどの医薬的に許容し得る共溶媒を添加して、薬剤を溶解するか又は溶解するのを助けることができる。あるいは、製剤は、主に水性担体に懸濁された適切なサイズの粒子の懸濁液であり得る。薬剤はまた、固体脂質微粒子(SLM)、固体脂質ナノ粒子(SLN)、又はリポソームとして配合することもでき、及び噴霧又はエアロゾル化のために液体担体に懸濁することもできる。例えば、M. Paranjpe et al., Int J Mol Sci (2014) 15:5852-73; M.J. de Jesus Valle et al., J Antibiot (Tokyo) (2013) 66(8):447-51を参照されたい(これらは、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。噴霧された液滴の粒子サイズは、当技術分野で教示されているように、例えば、製剤の粘度及び表面張力、並びにネブライザーの特性を含む、いくつかのパラメータによって調整することができる。
【0101】
(c)乾燥粉末製剤:
乾燥粉末製剤は、その名前が示すように、液体担体を有さない。代わりに、活性物質と賦形剤が粉砕又は摩砕されて、吸入に適した粒子サイズを有する微粉末になる。製剤は、鋭い吸入及び/又は圧縮された空気若しくはガスのひと吹きによって肺に運ばれるように設計される。乾燥粉末製剤は、従来の液体担体に溶解又は懸濁することが困難な薬剤を投与する場合に、特に便利である。
【0102】
乾燥粉末製剤は、1種以上の活性物質に加えて、しばしば賦形剤を含む。これらの賦形剤はしばしば、分散や吸収などの製品の流動特性を改善するため、及び保管中の化学的安定性のために含まれる。製剤は、例えば、噴霧乾燥(A.A. Ambike et al., Pharm Res (2005) 22(6):990-98)、粉砕又は摩砕、押し出し、沈殿、及び/又は当技術分野で既知の方法を使用するスクリーニングによって、吸入可能な粉末を得ることにより調製できる。使用される賦形剤はまた、異なる平均粒子サイズの賦形剤画分を混合することによって得られる粉砕された賦形剤の混合物であり得る。
【0103】
吸入器(又はそのカートリッジ)で使用するための吸入可能な粉末を調製するために使用できる生理学的に許容される賦形剤の例には、単糖(例えば、グルコース、フルクトース、又はアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース)、オリゴ糖、及び多糖(例えば、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、セルロース)、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、シクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチル-β-シクロデキストリン(Captisol(登録商標)、Dexolve(登録商標))、アミノ酸(例えば、アルギニン塩酸塩)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、又はこれらの混合物が含まれる。ラクトース、グルコース、及びその他の化合物は、それらの水和物の形で使用することができる。賦形剤は、粉末化プロセスの前、最中、又は後にスタチンと組合せることができる。
【0104】
吸入可能な粉末の範囲内で、賦形剤は、最大約250μm、10~150μm、又は15~80μmの最大平均粒子サイズを有することができる。上記の賦形剤には、平均粒子サイズが1~9μmのより微細な賦形剤画分を加えることもできる。平均粒子サイズは、当技術分野で知られている方法(例えば、WO02/30389)を使用して決定することができる。最後に、吸入可能な粉末を調製するために、約0.5~約10μm、又は約1~約5μmの平均粒子サイズを特徴とすることができる微粉化された結晶性スタチンが、賦形剤混合物に添加される(例えば、WO02/30389を参照)。活性物質を粉砕及び微粉化するためのプロセスは、当技術分野で知られている。賦形剤として使用される特別に調製された賦形剤混合物がない場合、10~50μmの平均粒子サイズ及び0.5~6μmの10%微細含有量を有する賦形剤を使用することができる。いくつかの実施態様において、最大平均粒子サイズは、約250、225、200、190、180、170、160、150、140、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1μm未満である。いくつかの実施態様において、平均粒子サイズは、少なくとも約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、19、20、25、30、35、40、45、又は50μmである。いくつかの実施態様において、平均粒子サイズは、約250、225、200、190、180、170、160、150、140、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1μm未満である。
【0105】
乾燥粉末製剤を調製するための1つの方法において、賦形剤及び活性物質は、適切な混合容器に入れられる。いくつかの実施態様において、活性物質は、0.5~10μm、1~6μm、又は2~5μmの平均粒子サイズを有する。賦形剤及び活性物質は、0.1~2mm、0.3~1mm、又は0.3~0.6mmのメッシュサイズのふるい又は造粒ふるいを使用して添加される。賦形剤を最初に添加し、次に活性物質を混合容器に添加することができる。この混合プロセス中に、2つの成分をバッチで追加し、2つの成分を交互の層でふるいにかけることができる。賦形剤と活性物質との混合は、2つの成分がまだ添加されている間に起こり得る。
【0106】
吸入可能な粉末はまた、PulmoSpheres(例えば、J.G. Weers et al., Ther Deliv (2014) 5(3):277-95; J.G. Weers et al., AAPS PharSciTech (2019) 20(3):103; 及び米国特許第9452139号を参照されたい、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)として配合することができ、微粉化された薬物粒子の懸濁液が噴霧乾燥されて粉末を形成する。あるいは、粉末及び懸濁液は、自己組織化ナノ粒子から配合することができる(例えば、N.J. Kenyon et al., PLOS One (2013) https: //doi.org/10.1371/ journal.pone.0077730を参照)。
【0107】
吸入器
吸入器の3つの主要なタイプは、ネブライザー、加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)、及び乾燥粉末吸入器(DPI)である。ネブライザーは、薬物の液体溶液又は懸濁液を液滴の細かいミストに変換し、それが次に肺に吸入される。ネブライザーは通常、pMDIやDPIよりも薬剤の投与に時間がかかり、装置内及び周囲の空気への薬剤の損失により、吸収される薬剤の正確な用量に関しては精度が低くなる。ただし、これらは通常最も使いやすく、若すぎてpMDI又はDPIを操作できない被験体、又は無意識の被験体に使用できる。ネブライザーは、通常、薬物製剤を含むリザーバー、噴霧チャンバー、フェイスマスク、及び製剤を噴霧するための機構を含む。ジェットネブライザーでは、このメカニズムは、空気が高速で通過するノズルを備えており、これは液体製剤を毛細管を通して引き上げる。製剤の液滴はエアジェットに同伴され、バッフルに衝突して液滴サイズを縮小したり、過度に大きな液滴はふるいにかけられ除去される。バッフルは空気速度も低下させるため、結果として生じるミストはネブライザーを低速で離れ、下気道に到達する可能性が高くなる。これらの装置における噴霧プロセスは、通常、液滴の蒸発により製剤の温度も低下させる。ジェットネブライザーは通常、空気の流れを生成するためにコンプレッサーを必要とし、これにより、他の吸入器よりも騒音が大きく、持ち運びにくくなる。
【0108】
超音波ネブライザーは、超音波周波数で振動する要素を使用して、液体製剤を液滴に分解する。振動要素は、多くの場合、硬いメッシュ又は穴あき膜である。これらのネブライザーは一般にジェットネブライザーよりも静かで、電源は必要であるが、コンプレッサーは必要ない。超音波振動はしばしば製剤の温度を上昇させる。
【0109】
pMDIは、加圧下の推進薬中の薬物の溶液又は懸濁液を含み、作動されたときに正確に測定された量の製剤を送達するバルブを含む。推進薬は、多くの場合、ヒドロフルオロアルカン推進薬などのガスであり、これは、薬物及び任意選択的にエタノール及び/又は界面活性剤などの共溶媒と組み合わされる。製剤は圧縮されて液体状態になり、pMDI又はpMDIカートリッジにロードされる。典型的なpMDIは、液体の形態の製剤を計量チャンバーに放出し、これが投与量を決定する。装置が作動すると、測定された製剤は膨張チャンバーに放出され、そこで推進薬が揮発する。薬剤を効率的かつ一貫して送達するために、pMDIを使用する被験体は、呼吸を装置の作動と同調させて、可能な限り最大量のエアロゾルが下気道に到達させる必要がある。最新のpMDIには、被験体が吸入しているときにのみエアロゾルを放出するバルブ又は検知機構がさらに含まれる場合がある。ほとんどのpMDIはスペーサーも採用しており、これは、本質的にpMDIと被験体の間のチューブであり、エアロゾル送達の効率を改善し、推進薬が蒸発するまでの時間を長くする(液滴が小さくなる)。
【0110】
一般にDPIは、測定された量の薬物を乾燥粉末として含み、任意選択的に、粉末ラクトースなどの乾燥粉末担体を有する。DPIは、ミストやエアロゾルの生成ではなく、粉末製剤を分配する被験体による鋭い吸入に依存する。これらは一般にpMDIよりも使いやすいが、送達の効率は、被験体が生成できる空気速度に部分的に依存する。息により起動されるが電力支援される新しいDPIが開発中である。
【0111】
本開示の製剤は、例えば、特に限定されるものではないが、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)吸入器、RespiClick(登録商標)吸入器、Breezhaler(登録商標)吸入器、Genuair(登録商標)吸入器、及びEllipta(登録商標)吸入器などのネブライザーのような市販の吸入装置を使用して投与することができる。吸入器は、本開示の製剤の1つ又は複数の治療用量を含む予備充填された状態で提供され得るか、又は本開示の製剤の1つ又は複数の治療用量を予備充填されたカートリッジを受け入れるように構成され得る。
【0112】
吸入可能な粉末及びエアロゾルは、例えば、測定チャンバー(例えば、米国特許第4,570,630号を参照)又は他の手段(例えば、DE3625685を参照)によって、貯蔵器から単回投与量を計量する吸入器を使用して投与することができる。いくつかの実施態様において、吸入可能な粉末は、カプセル又はカートリッジに詰められ、これは、WO94/28958に記載されているような吸入器で使用される。
【0113】
吸入器で使用するためのカプセル及びカートリッジは、開示された化合物又は医薬組成物と、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末ベースとを含む粉末混合物に調製することができる。
【0114】
システム
本開示の方法はまた、スタチン又はスタチン製剤、並びに1種以上の追加の治療薬又は1種以上の追加の治療薬を含む製剤を含む、本開示のシステムを使用して実施することができる。本開示のシステムにおいて、スタチン及び追加の治療薬は、同じ製剤中に存在する必要はなく、異なる時間に投与することができる。いくつかの実施態様において、システムは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、テニバスタチン、及びプラバスタチン、並びにこれらの異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体からなる群から選択されるスタチンを含む。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、及びテニバスタチンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、スタチンは疎水性スタチンである。いくつかの実施態様において、スタチンは、シンバスタチン又はピタバスタチンである。いくつかの実施態様において、スタチンはピタバスタチンである。いくつかの実施態様において、スタチンはシンバスタチンである。
【0115】
いくつかの実施態様において、製剤は乾燥粉末製剤である。いくつかの実施態様において、製剤はエアロゾル製剤である。いくつかの実施態様において、製剤は噴霧可能な製剤である。いくつかの実施態様において、噴霧可能な製剤はスタチンの水溶液を含む。いくつかの実施態様において、噴霧可能な製剤は医薬的に許容し得るアルコールをさらに含む。いくつかの実施態様において、医薬的に許容し得るアルコールはエタノールを含む。
【0116】
追加の治療薬は、本開示に記載されている任意の追加の治療薬のいずれかであり得る。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、ベクロメタゾン、フルチカソン、ブデソニド、モメタゾン、フルニソリド、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロベタソン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラソン、ジフルオコルトロン、フルルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタソル、アムシノニド、シクレソニド、デフラザコート、デソニド、フォルモコルタール、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、若しくはトリアムシノロンアセトニド、又はこれらの組合せである。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、アルブテロール、アルフォルモテロール、ブフェニン、クレンブテロール、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、レバルブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、イソクスプリン、マブテロール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、若しくはジンテロ、又はこれらの組合せである。いくつかの実施態様において、追加の治療薬はアルブテロールである。
【0117】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、グリコピロレート、臭化グリコピロニウム、レベフェナシン、臭化ウメクリジニウム、アクリジニウム、塩化トロスピウム、臭化オキシトロピウム、オキシブチニン、トルテロジン、ソリフェナシン、フェソテロジン、ダリフェナシン、又はこれらの組合せである。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、ロフルミラスト、ジレウトン、ネドクロミル、テオフィリン、抗IL5抗体又は抗体誘導体、抗IgE抗体又は抗体誘導体、抗IL5受容体抗体又は抗体誘導体、抗IL13/4受容体抗体又は抗体誘導体、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、オマリズマブ、デュピルマブ、又はこれらの組合せである。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、TS-f22、AT13148、GSK429286A、RKI-1447、Y-27632、CCG-1423、GGTI-DU40、GGTI-297、AR9281、TPPU、AM-1172、JNJ1661010、PF-3845、ザフィルルカスト、モンテルカスト、ジレウトン、又はこれらの組合せである。
【0118】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、追加の治療薬と医薬的に許容し得る担体又はビヒクルを含む製剤で提供される。いくつかの実施態様において、製剤は、吸入による投与に適している。いくつかの実施態様において、製剤は、経口投与又は注射による投与に適している。
【0119】
追加の治療薬は、スタチンと同じ疾患、障害、又は症状を治療することができるか、又は同じ疾患又は障害の異なる症状を治療することができる。1種以上のスタチンと1種以上の追加の治療薬との組合せは、場合によっては相加効果を示し、この組合せ製剤による反応の程度は、単独で投与した場合の各薬剤からの応答の程度の合計と実質的に同じである。組合せはまた副相加効果(sub-additive effects)を生成し、この組合せは、単独で投与された場合の各薬剤からの応答の程度の合計よりも小さい(ただし、いずれかの薬剤単独によって生成される応答よりも大きい)応答の程度を生成するか、又は組合せは相乗効果を生成し、この組合せは、単独で投与した場合の各薬剤からの反応の程度の合計よりも大きい反応の程度を生成することができる。従って、1種以上のスタチンと1種以上の追加の治療薬の組合せを使用して、所定の用量を投与しながらより大きな応答を達成し、一方、より少ない量を投与しながら同じ応答を達成するか、又はこれらの任意の組合せを使用することができる。
【0120】
組合せによって生じる効果の程度が、所望の又は必要な程度よりも大きい場合、所望の効果の程度に達するまで、一方又は両方の薬剤の用量を減らすことができる。用量低下の量は、必ずしも各薬剤について同じ量又はパーセントである必要はない。これを使用して、副作用を減らしたり、副作用が発生する可能性を最小限に抑えることができる。従って、相乗的併用製剤中の1種以上の薬剤の用量は、単独で又は非相乗的併用製剤の一部として投与された場合に不十分又は治療量未満であるが、相乗的併用製剤の一部として投与された場合の治療的使用には十分であるレベルに低下され得る。相乗的併用製剤中の薬剤の治療量未満の用量は、本開示による非相乗的製剤の一部として吸入によって投与される場合の薬剤の有効量の約90%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30 %、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%であり得る。
【0121】
いくつかのシステムにおいて、吸入スタチンの投与は、その後の所定の期間に投与される追加の治療薬の効果を増強し、スタチン単独又は追加の治療薬単独のいずれよりも大きな治療効果を提供する。いくつかのシステムにおいて、吸入スタチンの投与は、ASMの弛緩以外の、追加の治療薬の効果を増強する。いくつかのシステムにおいて、追加の治療薬はスタチンよりも後に投与される。いくつかの実施態様において、期間は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24時間であるか、又は約1、2、又は3日間である。いくつかの実施態様において、期間は、約72、48、36、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、又は6時間以下である。
【0122】
いくつかのシステムにおいて、吸入されたスタチンは、追加の治療薬の抗炎症効果を増強又は増加させる。いくつかの実施態様において、増強の程度は、投与された用量での追加の治療薬の効果の、約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、75、又は100倍である。いくつかの実施態様において、相乗的治療効果は、これらの薬剤が組合せで存在するのと同じ用量で単独で投与される場合の、組合せの薬剤の合計により生成される効果よりも、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、125%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、225%、250%、275%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1,000%大きい。
【0123】
いくつかの実施態様において、効果は抗炎症効果である。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、β2作動薬又は抗炎症性コルチコステロイドである。いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、β2作動薬である。いくつかの実施態様において、β2作動薬は、アルブテロール、アルフォルモテロール、ブフェニン、クレンブテロール、ボペキサミン、エピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、レボアルブタモール、レバルブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、イソクスプリン、マブテロール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、若しくはジンテロ、又はこれらの組合せである。いくつかの実施態様において、β2作動薬は、アルブテロール又はイソプロテレノールである。
【0124】
いくつかの実施態様において、追加の治療薬は、コルチコステロイドである。いくつかの実施態様において、コルチコステロイドは、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、フルニソリド、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン、フルルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタゾール、アムシノニド、シクレソニド、デフラザコート、デソニド、フォルモコルタール、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、若しくはトリアムシノロンアセトニド、又はこれらの組合せである。
【0125】
治療方法
(a)吸入による投与
本開示の治療方法は、吸入による適切なスタチンの投与に基づく。本開示の方法、製剤、及びシステムは、直接炎症によっては引き起こされない肺疾患を治療し、従って、既存の治療薬では効果的又は完全に治療されない疾患の治療法を提供する。さらに、本開示の方法、製剤、及びシステムは、β2作動薬及びコルチコステロイドなどの他の治療薬の活性を増強し、他の治療薬の活性(これは抗炎症活性を含み得る)を増加させる。吸入による投与には、(a)呼吸気道との直接接触、(b)初回通過肝代謝の回避、及び(c)注射の回避という利点がある(J.L. Rau, Resp Care (2005) 50(3):367-82; M. Ibrahim et al., Med Dev Evidence Res (2015) 8:131-39)。薬物は初回通過代謝を受けず、全身ではなく局所的に肺に投与されるため、吸入薬物の投与量は経口投与される量よりも少ないことがよくある。さらに、他の治療薬の活性を増強する本開示の方法、製剤、及びシステムは、より大きな活性を有する治療を提供するか、又はより低用量の他の治療薬を用いて、又はこれらの組合せを用いて、既存の治療に匹敵することができる。
【0126】
本明細書に記載されるように、本開示の製剤は、ネブライザー、pMDI、DPI、又は製剤を下気道に運ぶことができる他の装置であり得る吸入装置(「吸入器」)の助けを借りて投与される。投与の頻度は、被験体の肺からのスタチン及び/又は追加の治療薬のクリアランス速度に依存する。いくつかの実施態様において、スタチン製剤は、1日に8、7、6、5、4、3、2、又は1回以下、又は2、3、4、5、6、又は7日毎に1回以下で投与される。いくつかの実施態様において、スタチン製剤は、少なくとも4、3、又は2日ごとに1回、又は1日に少なくとも1、2、3、4、5、又は6回投与される。
【0127】
本開示の方法において、治療用組成物は肺に直接投与され、従って、肝臓において初回通過代謝を受けない。その結果、製剤中の活性物質は被験体の全身で希釈されず、肝臓によって代謝されないため、従来の経口投与で必要とされるよりも少量で、被験体の気道で治療濃度に達する。治療有効量は、治療される症状、症状の重症度、被験体の全身の健康及び状態、並びに選択された特定のスタチン(及び/又は異性体、鏡像異性体、及び/又はジアステレオ異性体)に依存するであろう。従って、本開示の実施におけるスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。本開示の実施におけるスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0128】
いくつかの実施態様において、スタチンの治療有効量は、少なくとも約0.005μg/kg、約0.008μg/kg、約0.01μg/kg、約0.05μg/kg、約0.08μg/kg、約0.1μg/kg、約0.5μg/kg、約0.8μg/kg、約1μg/kg、約2μg/kg、約3μg/kg、約4μg/kg、約5μg/kg、約6μg/kg、約7μg/kg、約8μg/kg、約9μg/kg、約10μg/kg、約11μg/kg、約12μg/kg、約14μg/kg、約15μg/kg、約16μg/kg、約18μg/kg、又は約20μg/kgである。いくつかの実施態様において、スタチンの治療有効量は、約40mg/kg、20mg/kg、18mg/kg、15mg/kg、12mg/kg、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、又は1mg/kg以下である。
【0129】
(b)気道平滑筋収縮の低下
哺乳動物の肺の気道は、気道上皮細胞(AEC)の薄層で覆われた気道平滑筋(ASM)で裏打ちされている。ASMは、収縮と弛緩によって肺機能の調節に寄与する不随意の筋肉組織であり、気道(気管支及び細気管支)の直径をコントロールする。一部の障害では、ASMが不適切に収縮し、気道が狭くなり、呼吸に必要な労力が増加する。従来の治療法は、炎症性刺激を遮断又は低下させることによって収縮を抑制しようとする。本開示の方法において、ASMは、本開示の製剤を気道に直接投与することによって弛緩させる。特定の理論に拘束されることを意図しないが、本開示の方法は収縮応答を低下させ、ASMによって及ぼされる力を低下させ、ASMの過剰増殖(これも気道の狭窄を引き起こす)を阻害する。いくつかの実施態様において、本開示は、本開示の製剤の有効量を吸入によって投与することにより、ASM収縮を低下させる方法を提供する。
【0130】
いくつかの実施態様において、本開示は、治療有効量のスタチン(又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体)を医薬的に許容し得る担体とともに、被験体に吸入によって投与することにより、被験体における気道平滑筋(ASM)収縮を低下させる方法を提供する。ASMの弛緩は呼吸の妨害を減らし、安静時の肺の能力を高めることができる。従って、本開示の方法は、喘息、COPD、ACOS、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、アルファ-1抗トリプシン欠乏症(AATD)などに固有の気管支収縮又は気管支痙攣などの、被験体の気道の閉塞を特徴とするか又はそうでなければそれを含む肺疾患の治療に有用である。肺気道に直接的又は間接的な影響を及ぼし得る(従って、本開示の方法で改善することができる)追加の肺疾患及び障害には、特に限定されるものではないが、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、剥離性間質性肺炎(DIP)、急性間質性肺炎(AIP)、非特異的間質性肺炎(NSIP)、呼吸性気管支炎関連間質性肺疾患(RB-ILD)、潜在性組織化肺炎(COP)、リンパ性間質性肺炎(LIP)などの間質性肺疾患(ILD)が含まれる。肺が関与する可能性があり、本開示の方法から利益を得ることができる追加の疾患及び障害には、サルコイドーシス、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、抗シンテターゼ症候群、肺感染症、過敏性肺炎、及びアスベスト、ベリリウム、シリカ、工業用化学物質、刺激性粒子などの異物への急性又は慢性暴露に対する反応が含まれる。このような追加の肺疾患及び障害では、気道壁の厚さの増加などの症状(例えば、J.M. Oldham, Ann Am Thorac Soc (2019) 16(4):432-33; E.R. Miller et al., Ann Am Thorac Soc (2019) 16(4):447-54参照)は、吸入によるスタチンの投与によって改善される可能性がある。
【0131】
ASM弛緩は、例えば、特に限定されるものではないが、細胞力を測定するための方法によって、及び肺組織試料における気道管腔変化の測定によって、インビトロで決定することができる。例えば、ASM収縮力は、R. Rokhzan et al., Lab Invest (2019) 99(1):138-45に記載されている手法を使用して測定でき、この手法では、既知の剛性の基質上の蛍光ビーズの変位が測定される。肺組織試料の気道管腔変化の測定は、K.R. Patel et al., FASEB J (2017) 31(10):4335-46に記載された方法を使用して行うことができ、この方法では、精密に切断された肺切片で気道径が測定される。
【0132】
ASM弛緩は、標準的な肺機能試験、例えば、特に限定されるものではないが、肺活量測定及び肺容量測定によってインビボで測定することができる。肺活量測定は、吸入又は吐き出される空気の量及び/又は速度を含む、呼吸の測定である。典型的な測定には、被験体が可能な限り深呼吸をし、それを可能な限り激しくそして長く肺活量計に吐き出す努力性肺活量(FCV);被験体が1秒以内に吐き出すことができる空気の量の測定値である、1秒努力呼気肺活量(FEV1);最大換気量(MVV);努力性呼気流量(FEF)などが含まれる。その他のパラメータには、肺容量、肺気量、肺活量などがあり、これらは一般に肺活量測定によっても測定される。前述のいずれかの値の増加は、ASM弛緩が閉塞を低下させ、肺活量を増加させる可能性があるという点で、ASM弛緩を示す。これらの値のいずれかの増加は、治療前の被験体の測定値に対して、及び/又は同様の身長、体重、性別の被験体の標準的な予測値に対して測定することができる。本開示の方法は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、又は150%のASM弛緩を誘発する。ASM弛緩の上限は、約1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、又は50%である。
【0133】
ASM弛緩を誘発するためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。ASM弛緩を誘発するためのスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0134】
(c)気管支痙攣の低下
気管支痙攣は、通常、炎症性刺激、例えばアレルゲンへの曝露、肥満細胞の脱顆粒、及び特定の薬物の投与に応答した、気管支の突然の収縮(contraction)又は収縮(constriction)である。これは、喘息、慢性気管支炎、アナフィラキシーで発生し、生命を脅かすことがある。気管支痙攣は喘息増悪(「喘息発作」)の特徴である。本開示の製剤の吸入による投与は、気道活動過多及び反応性亢進を低下させ、気管支痙攣を発生しにくくし、及びASM収縮力を低下させて、気管支痙攣が発生してもその重症度を低下させることにより、気管支痙攣(及び喘息増悪)を治療する。いくつかの実施態様において、本開示は、本開示の製剤の有効量を吸入によって投与することにより、気管支痙攣を低下させる方法を提供する。
【0135】
気管支痙攣は、例えばウイルス、細菌、真菌、及び/又はマイコバクテリア感染による感染後の気管支痙攣;鬱血性心不全による気道浮腫;肺水腫による気道浮腫;心原性肺水腫による気道浮腫;非心原性肺水腫による気道浮腫;気道浮腫による細気管支炎;炎症ではなく解剖学的歪みによる気管支拡張症;異物吸引;食物、液体、及び/又は胃内容物の吸引;胃食道逆流症;局所浮腫及び気管支痙攣を引き起こす肺癌又は肺への転移性癌;肺塞栓症(これは気管支痙攣による喘鳴を引き起こす局所的因子を放出する可能性がある);手術を含む気道外傷;アナフィラキシー及びアナフィラキシー様反応;神経介在性の咳及び/又は気管支痙攣;吸入傷害に関連する気管支痙攣;内分泌機能障害に関連する気管支痙攣;腫瘍随伴性症候群に関連する気管支痙攣を含み得る。
【0136】
気管支痙攣を低下させるためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。スタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0137】
気管支痙攣の減少は、ある期間にわたる気管支痙攣事象(例えば、喘息の悪化)の数を数え、この頻度を治療前に観察された頻度と比較することによって測定することができる。気管支痙攣の減少はまた、チャレンジ前の被験体の肺機能(例えば、FEV1)を測定し、次に噴霧メタコリン又はヒスタミン用量(又は一連の増加用量)を投与し、次に被験体の肺機能を再度測定することによって測定することもできる。ベースライン値を取得した後、被験体は本開示の製剤の吸入によって治療され、適切な時間が経過した後、再びチャレンジを受ける。チャレンジは、本開示の製剤の吸入後、約1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、又は24時間以上後に行うことができる。気管支収縮の低下は、例えば、投与とチャレンジ後のFEV1を、投与前であるがチャレンジ後のFEV1に対して比較することにより、チャレンジ後の肺機能の改善によって決定される。本開示の方法は、気管支痙攣を少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、又は150%低下させる。気管支痙攣の減少の上限は、約1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、又は50%である。
【0138】
(d)気管支収縮及び粘液蓄積の低下
一部の気道疾患は、慢性的に収縮又は閉塞した気管支及び細気管支をもたらし、これはさらに粘液の蓄積を引き起こす。これは、肺気腫、喘息、COPD、嚢胞性線維症、アレルゲン誘発性気管支収縮、及び運動誘発性気管支収縮(運動誘発性喘息としても知られる)などの疾患の特徴である。本開示の製剤を吸入によって投与することは、ASMを弛緩させ、気道を拡張することにより、気管支収縮及び粘液蓄積を治療する。いくつかの実施態様において、本開示は、本開示の製剤の有効量を吸入によって投与することにより、気管支収縮及び/又は粘液蓄積を低下させる方法を提供する。
【0139】
気管支収縮、気管支痙攣、及びASM弛緩は明確な兆候であるが、それぞれの改善は、上記のように、肺活量測定などの肺機能の検査によって測定することができる。本開示の方法は、気管支収縮を少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、又は150%低下させる。気管支収縮の低下の上限は、約1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、又は50%である。気管支収縮を低下させるためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。気管支収縮を低下させるためのスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0140】
(e)気管支反応性亢進の低下
気管支反応性亢進(BH、気道反応性亢進、AHR、又は気道活動過多とも呼ばれる)は、気管支痙攣が容易に引き起こされるか又は誘発される状態である。本開示の製剤を吸入によって投与する本開示の方法は、ASMを弛緩させ、ASMの感度を低下させることによってBHを低下させる。いくつかの実施態様において本開示は、本開示の製剤の有効量を吸入によって投与することにより、気管支反応性亢進を低下させる方法を提供する。
【0141】
BHは気道障害であるため、一般に、肺活量測定及び肺機能の他の測定によっても測定される。例えば、製剤の投与後、及び噴霧メタコリンやヒスタミンなどの誘発物質でチャレンジ後に被験体のFEFを測定し、これを、本開示の製剤の投与は無しで同量の誘発物質で刺激した後のFEFと比較して、被験体のFEFを測定することができる。チャレンジは、本開示の製剤の吸入後、約1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、又は24時間以上後に投与することができる。本開示の方法は、BHを少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、又は150%低下させる。BH低下の上限は、約1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、又は50%である。BHを低下させるためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。BHを低下させるためのスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0142】
(f)伸展により誘発されるASM弛緩の増加
ASMは、深く呼吸(「深吸気」)することによってASMが弛緩するように誘発され、これがASMを引き伸ばす。本開示の方法は、この呼吸誘発性ASM弛緩(呼吸誘発性気管支拡張、又は深吸気気管支拡張、DIBとも呼ばれる)を増強、増加、及び/又は延長する。いくつかの実施態様において、本開示は、本開示の製剤の有効量を吸入によって投与することにより、深呼吸によって誘発されるASM弛緩を増強する方法を提供する。
【0143】
DIBは気道の機能であるため、これはまた、一般に肺活量測定及び肺機能の他の尺度によっても測定される。例えば、製剤の投与後に被験体の肺活量(VC)を測定し、これを、本開示の製剤の投与無しの場合のVCと比較することができ、VCの増加は、呼吸誘発性のASM弛緩の増強と相関する。VCは、本開示の製剤の吸入後、約1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、又は24時間以上後に測定することができる。本開示の方法は、DIBを少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、又は150%増加させる。DIB増加の上限は、約1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、又は50%である。DIBを増強するためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。DIBを増強するためのスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0144】
(g)コルチコステロイド使用の低下
吸入コルチコステロイド(ICS)は、重度の喘息の治療に一般的に使用される。ただし、ICSの慢性的な使用は、発声障害、骨密度の低下、皮膚の菲薄化とあざ、白内障などの重大な副作用も引き起こす可能性がある。本開示の方法は、喘息及び他の気道疾患を低下及び治療し、被験体がICSを服用する必要性を低下させる。いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の製剤の有効量を吸入によって投与することによって、ICSの必要性を低下させる方法を提供する。
【0145】
ICSを使用しながら、被験体を本開示の製剤の吸入による定期的な投与の治療レジメンに置き、そして肺機能が、吸入スタチン治療を始める前の被験体の肺機能になるまで(その時点に到達できる場合)ICS使用の投与量又は頻度を徐々に低下させることにより、被験体の肺機能を例えば肺活量測定によって測定して、ICSの必要性の低下を決定することができる。本開示の方法は、ICSの必要性を、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%低下させる(すなわち、その時点でスタチンは完全にICSに取って代わる)。ICSの必要性の低下の上限は、約100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、又は25%である。ICSの必要性を低下させるためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。ICSの必要性を低下させるためのスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0146】
(h)肺機能を維持又は改善する方法
肺機能は、被験体ごとに異なり、一般に、運動選手、登山家、及び高高度に住む被験体において高い(平均よりも高い)。肺機能の改善は肺活量測定で測定でき、VC又は肺容量(LC)の増加として現れることがよくある。本開示の方法はまた、健康な被験体、並びに気道障害を有する被験体の肺機能を改善するために有用である。例えば、運動選手、登山家、兵士、管楽器奏者、演説者などの肺機能を高めることは有利である。さらに、被験体は、例えば傷害のために運動が不可能である期間中、本開示の方法によって所定の程度の肺機能を維持することができる。改善された(又は維持された)肺機能は、肺活量測定によって、例えば、特に限定されるものではないが、VC又は肺容量(LC)の増加として測定することができる。いくつかの実施態様において、本開示は、本開示の製剤の有効量を吸入によって投与することにより、肺機能を維持又は改善する方法を提供する。
【0147】
本開示の方法は、肺機能を少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、又は150%増加させる。肺機能の増加の上限は、約500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、又は20%である。肺機能を増加させるためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。肺機能を増加させるためのスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0148】
場合によっては、肺機能を維持することは、肺機能を増加させることよりも少ないスタチンしか必要ではなく、例えば用量は、約0.001、0.005、0.008、0.01、0.05、0.08、0.1、0.5、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、18、又は20μgと低くてもよい。肺機能を高めるためのスタチンの治療有効量は、約20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0149】
(i)ASMの増殖を低下させる方法
COPD、ACOS、嚢胞性線維症、及び慢性喘息はすべて、気管支収縮を除いて、病的気道リモデリングに関連するASMの過剰増殖及び肥厚のために、気道の狭窄を示す可能性がある。本開示の方法はまた、ASMの増殖を低下させ、従ってそのような障害を治療する。ASM増殖の阻害は、維持されたVC又は肺容量(LC)としての肺活量測定、又はX線やMRIなどの画像化方法によって測定することができる。いくつかの実施態様において、本開示は、本開示の製剤の有効量を吸入によって投与することにより、ASM増殖を低下させる方法を提供する。
【0150】
本開示の方法は、ASM増殖を少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%(つまり、その時点でASM増殖は観察されない)低下させる。ASM増殖の低下の上限は、約100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、又は25%である。ASM増殖を低下させるためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。ASM増殖を低下させるためのスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0151】
(j)間質性肺疾患の治療方法
間質性肺疾患(ILD)は、気道の外側の肺組織に直接影響を与える。ただし、ILDは気道及びASMに影響を与えて、本開示の方法で治療できる1種以上の症状を引き起こす可能性がある。これらの症状には、例えば、ASM収縮、ASM過剰増殖、及び肺容量の喪失が含まれる。いくつかの実施態様において、本開示は、1種以上の症状を軽減させるのに十分な量の本開示の製剤を吸入によって投与することにより、被験体の気道に影響を与えるILDの治療を助けるための方法を提供する。具体的なILDの例は上記のとおりである。
【0152】
1種以上のILD症状の軽減は、FEV1及びLCなどの肺活量測定、並びにX線及びMRIなどの画像化技術を使用して測定することができる。本開示の方法は、少なくとも1種のILD症状を少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%(つまり、その時点で症状は観察されなくなる)軽減する。ILD症状の軽減の上限は、約100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、又は25%である。1種以上のILD症状を軽減させるためのスタチンの治療有効量は、約0.005μg、約0.008μg、約0.01μg、約0.05μg、約0.08μg、約0.1μg、約0.5μg、約0.8μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約14μg、約15μg、約16μg、約18μg、又は約20μgと低くてもよい。1種以上のILD症状を軽減させるためのスタチンの治療有効量は、約40mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mg、又は1mgと高くてもよい。
【0153】
いくつかの実施態様において、本開示は、被験体のCOPDを治療する方法を提供する。COPDは、肺機能の進行性障害をもたらす小さな気道と実質の両方の破壊として特徴付けることができる。この疾患は、慢性気管支炎と肺気腫の2つのサブグループに分けられる。慢性気管支炎は、誘導気道からの粘液分泌過多、炎症、及び最終的な気管支(気道管)の瘢痕化を特徴とする。COPDを有する多くの人は、これらの両方の状態の構成要素を有する。
【0154】
実質疾患と血管系との相互作用は、重度のCOPDを有する患者が安静時に軽度又は中等度の肺高血圧症を有するという観察によってしばしば臨床的に明らかである。組織病理学的及び顕微鏡的に、COPDの肺血管系は、通常、平滑筋沈着を伴う初期の肥厚、並びに肺胞中隔構造と微小血管系の両方の喪失を特徴とする。またCOPDでは肺胞中隔細胞と内皮細胞の両方がアポトーシスを起こすことも観察されている。
【0155】
COPDが提示する症状は、典型的にはFEV1(すなわち、1秒努力呼気肺活量)及び/又は努力性肺活量(FVC)の低下を伴う息切れである。COPD患者は、より小さい炎症を起こした気道を発達させ、肺胞が部分的に破壊されているため、呼吸が困難になる。慢性気管支炎はまた、患者に、「生産的な咳」、つまり痰を生じる咳があるかどうかを尋ねることによって診断することもできる。患者の症状は咳と痰の排出である。慢性気管支炎は、より頻繁で重度の呼吸器感染症、気管支の狭窄と閉塞、呼吸困難、及び障害につながる可能性がある。
【0156】
いくつかの実施態様において、本開示は、被験体の肺気腫を治療する方法を提供する。肺気腫は慢性肺疾患であり、肺胞及び/又は最小の気管支の末端に影響を及ぼす。この状態は、肺内の肺胞(空気嚢)の破壊的な変化と拡大を特徴としている。肺は弾力性を失い、従って肺のこれらの領域は拡大する。これらの拡大された領域は古い空気を閉じ込め、新鮮な空気と効果的に交換されない。これにより呼吸が困難になり、血液に供給される酸素が不十分になる可能性がある。肺気腫患者の主な症状は息切れである。
【0157】
いくつかの実施態様において、本開示は、被験体の現在の薬物療法の代わりに、又はそれと組合せて、本開示の製剤を投与することにより、現在の薬物療法によって十分にコントロールされていない被験体を治療する方法を提供する。
【0158】
本開示の方法の実施において、肺疾患は、それを必要とする被験体に製剤を吸入によって投与することにより、被験体の気道平滑筋収縮を低下させることによって治療され、ここで、製剤は、治療有効量のスタチン、又はその異性体、鏡像異性体、若しくはジアステレオ異性体と、医薬的に許容し得る担体とを含む。
【実施例】
【0159】
以下の例は指針として提供されており、本明細書の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0160】
非喘息及ドナーび喘息ドナーの両方に由来する初代ヒト気道平滑筋(ASM)細胞は、Gift of Hope Organ and Tissue Donor Networkから得られた。これらの細胞はすでに十分に特性解析されている(例えば、H. Yoshie et al., Biophys J (2018) 114(9):2194-99を参照)。すべての測定は、3人の非喘息ドナーからの継代5~8の細胞を使用して実施された。細胞は、10%血清含有F12完全培地、又はインスリン、トランスフェリン、及びセレンを補足した血清欠乏培地(Corning, Tewksbury, MA)のいずれかで増殖させた。
【0161】
細胞取り込み及び予測可能な細胞弛緩特性を増強するために、シンバスタチンをアルカリ加水分解によって活性化して、シンバスタチンラクトンをシンバスタチン酸(SA)に化学的に変換した。インビボでは、ラクトナーゼ、パラオキソナーゼ、アルカリ性ヒドロラーゼ、及びカルボキシルエステラーゼを介して、加水分解も細胞内で自然に起こり得る。シンバスタチンは、Merckが提供するプロトコールを使用して、ラクトン環を開くことによって活性化された。簡単に説明すると、8mgのシンバスタチン(0.019mM)を0.2mLの100%エタノールに溶解し、続いて0.3mLの0.1N NaOHを添加する。次に、この溶液を砂浴中で50℃で2時間加熱し、次にHClで中和してpH7.2にする(C.C. Ghosh et al., Crit Care Med (2015) 43(7):e230-40)。
【0162】
実施例1:ASM収縮力の緩和
以下の実験は、スタチンが、休止中の刺激されていない細胞においてASMの弛緩を引き起こし得ることを証明している。
【0163】
収縮力スクリーニング:ヒトASM細胞を、96ウェルプレート中でカスタムNuSil(登録商標)8100弾性基質(Avantor, Inc., Radnor, PA)上でコンフルエントになるまで成長させた(R. Rokhzan et al., Lab Invest (2019) 99(1):138-45)。蛍光ビーズ(直径約400nm)を基質表面に埋め込んで、それらの変位に基づく牽引力の計算を可能にした。牽引力を測定するために、加熱チャンバー(37℃)、モノクロカメラ(Leica DFC365 FX)、及び電動ステージを備えた倒立落射蛍光顕微鏡(DMI 6000B, Leica Inc., Germany)を使用した。基質に埋め込まれた蛍光ビーズの空間画像を10倍の倍率で記録した。無細胞モデルと比較したビーズの変位(分解能、約15μm)に基づいて、基質の剛性と厚さの知識とともに、フーリエ変換トラクションサイトメトリー(B. Yeganeh et al., Pharmacol Ther (2014) 143(1):87-110)のアプローチを使用し、細胞単層のケースに変更して牽引力を計算した(E.J. Whalen et al., Cell (2007) 129(3):511-22)。各牽引力地図から、二乗平均平方根牽引力(RMST)値とひずみエネルギーが計算され、単層中の通常の収縮の尺度として報告された。ウェルごとに、処理後対処理前のひずみエネルギーの比率を計算し、特定の処理群のすべての値を各処理群の平均に対して標準化した。
【0164】
スタチンの比較:炎症とは無関係に収縮機構に対するスタチンの効果を決定するために、初代ASM細胞をビーズ包埋NuSil(商標)(3kPa硬度)上で増殖させ、シンバスタチン酸(SA)、ロスバスタチン、プラバスタチン、及びピタバスタチン(各1μM)を用いて、メバロン酸塩(MA、100μM)有り又は無しで処理した。MAはHMB-CoAに対するHMGCRの作用の直接の産物であるため、MAを添加すると、HMGCRのスタチン阻害の効果が逆転するであろう。収縮力スクリーニング(CFS)は、スタチンが基底状態でヒトASMを直接弛緩させることを示した(
図1A)。親油性スタチンが最も強力である(シンバスタチン<ピタバスタチン)。逆に、ロスバスタチンやプラバスタチンなどの他の親水性スタチンは、ASM細胞の弛緩にほとんど又はまったく影響を与えず、おそらくは親油性の違いによる、スタチン薬の示差的な効果を確認した。MAとスタチンの同時投与は、ASMに対するスタチンの弛緩効果を排除し、これは、ASMトーンがMA又はMA経路に依存することを示唆し、ASM細胞におけるスタチン誘発性弛緩のMA依存性メカニズムを確認している(
図1B)。
【0165】
シンバスタチン酸(SA)、アトルバスタチン、プラバスタチン、及びピタバスタチンをCFSで調べて、ASM弛緩効果の用量応答を決定した。シンバスタチン酸(SA)、アトルバスタチン、プラバスタチン、及びピタバスタチンをそれぞれ、上記のように0、0.08、0.4、2、及び10μMで初代ASM細胞に添加した。2番目の実験では、シンバスタチン酸(SA)、ロスバスタチン、プラバスタチン、及びピタバスタチンをそれぞれ、上記のように0、1、及び10μMで初代ASM細胞に添加した。これらの用量応答実験は、ASM収縮に対するスタチンの阻害効力が親油性(シンバスタチン≒ピタバスタチン>アトルバスタチン>>プラバスタチン)に応じて変化することをさらに証明し、ここで、あまり親油性ではないアトルバスタチンや親水性のプラバスタチンと比較して、最も親油性のスタチンであるアトルバスタチンびピタバスタチンが最も顕著な効果を有した(
図1C、1D)。
【0166】
次に、3人の異なるヒトドナーから得られた初代ASM細胞に対するSAとピタバスタチンの用量依存性効果を比較し、SAとピタバスタチンの両方が用量依存的にASMを弛緩させることを示した(
図3)。
【0167】
細胞力測定は、調製されたカスタム96ウェルプレート(基質剛性=3kPa)で、倒立蛍光顕微鏡(10倍の顕微鏡対物レンズ、Leica DMI6000V、Leica Microsystems, Buffalo Grove, IL)を使用して実施される収縮力スクリーニング法を使用して実施された。各ASM駆動力地図から、ひずみエネルギー(つまり、収縮性細胞によって基質に与えられるエネルギー、pJ単位)を計算し、平均細胞収縮とした。
【0168】
細胞マッピングレオメトリー法を使用して、明確に定義された二軸伸長(持続時間4秒、大きさ10%)を課した。各ASM駆動力地図からのひずみエネルギーを、平均細胞収縮の計量値として計算し、伸展前のベースライン値の変化倍率として報告した。
【0169】
収縮力スクリーニング法を使用して、親油性スタチンであるピタバスタチンとシンバスタチンはASM収縮を阻害するが、親水性スタチンであるプラバスタチンは阻害しないことが確定された(
図10A)。さらに、シンバスタチンと比較した場合、ピタバスタチンの弛緩効果は、24時間でより顕著であった(
図10B)。ピタバスタチンの駆動力抑制効果は、処理の中止後に可逆的であった(
図10D)。
【0170】
ピタバスタチンは、細胞毒性(
図10E)も肺組織毒性(
図10F)も示さなかった。臨床的関連性を確立するために、非喘息及び喘息の両方のヒトドナーの肺から得られた複数のASM細胞株におけるピタバスタチンの効果を評価した。さらに、喘息のASMは、非喘息のASMよりも収縮性が高かった(
図11A)。ドナー(喘息のドナー:D1~D3;非喘息のドナー:D4~D6)又は病状(非喘息対喘息)に関係なく、ピタバスタチンは用量依存的にASM収縮を阻害した(
図11A)。
【0171】
アポトーシスの欠如:いくつかの研究は、十分に高用量のスタチンが、血管平滑筋細胞、上皮細胞、及び内皮細胞の生存率を低下させ得ることを示している(S. Ghavami et al., Biochim Biophys Acta (2014) 1843(7):1259-71; T.P. Miettinen et al., Cell Rep (2015) 13(11):2610-20)。スタチンを介した細胞弛緩がアポトーシス又は細胞生存率の喪失とは無関係であることを確認するために、製造業者のプロトコールに従って、ASMをシンバスタチン(SA)、ピタバスタチン、ロスバスタチン、及びプラバスタチンで用量依存的に処理した後、細胞ベースのアポトーシス/壊死アッセイを24時間実施した(
図2)。
【0172】
RealTime-Glo(登録商標)アネキシンVアポトーシス及び壊死アッセイは、製造業者の説明書(Promega Inc)に従って、96ウェル白色細胞培養プレート上でASM細胞を増殖させることによって実施された。細胞は、シンバスタチン酸、ロスバスタチン、ピタバスタチン、及びプラバスタチンで、0.08μM~100μMの範囲の用量で処理された。このリアルタイムのアネキシンV結合アッセイでは、SpectraMax(登録商標)プレートリーダーを使用して、発光シグナルを用いてアポトーシスが検出され、蛍光シグナルによって壊死が検出された。ジゴキシゲニン(20μg/mL)が陽性対照として使用された(
図2)。
【0173】
最大30μMのシンバスタチン(SAとして処理される)、ピタバスタチン、プラバスタチン、又は最大100μMのロスバスタチンで処理された細胞では、アポトーシスは観察されなかった(
図2)。これは、親油性スタチンがASMで十分に許容されることを示唆している。これはさらに、スタチン誘発性のASM弛緩で観察された正の効果が、細胞毒性又は細胞死によるものではなかったことを示す。
【0174】
実施例2:ヒスタミン誘発性収縮
これらの実験は、ヒスタミンとの接触によって誘発されるASM収縮を低下させるスタチンの能力を決定するために実施された。
【0175】
細胞を、0、0.08、0.4、2、10、又は50μMのピタバスタチン及びシンバスタチン酸で24時間前処理し、次にヒスタミン(10μM)でチャレンジした。ピタバスタチン(
図4A)とシンバスタチン(
図4B)の両方が、完全培地と血清飢餓培地の両方で、ヒスタミン誘発性のASM収縮を有意に低下させた(
図4C)。完全培地では、0.08μMのピタバスタチンがヒスタミンを介したASM収縮を阻害するのに十分である(
図4A)。ただし、同様の防御を実現するには、5倍モル過剰のシンバスタチン(SA)が必要であった(
図4B)。血清飢餓培地では、0.4μMのピタバスタチンと10μMのシンバスタチンが、ヒスタミン誘発性収縮から同程度の防御を提供する。
【0176】
SAとピタバスタチンの両方の時間依存性効果は、ASM弛緩効果が早くも4時間で始まることを示す(
図4C)。従ってこの実験は、a)ピタバスタチンが、ヒスタミン誘発性ASM収縮の予防においてSAより少なくとも5倍強力であり、b)肺におけるスタチンのナノモル濃度での利用可能性が、ヒスタミン介在気管支収縮を阻害するのに十分であり得ることを示す。
【0177】
移植不可能な非喘息のヒトドナーの肺を、イリノイ州のGift of Hope/Regional Organ Bankを通じて入手し、公開されたプロトコールに従ってスライスした。簡単に説明すると、肺葉を、ハンクス平衡塩溶液(pH=7.4;Invitrogen, Carlsbad, CA)中の1.5%低融点アガロース(タイプIX;Sigma, St. Louis, MO)で満たし、VT1200S振動ブレードミクロトーム(Leica Microsystems, Bannockburn, IL)を使用してスライスして、厚さ250μmの切片を作成した。切片は実験当日まで凍結保存された。
【0178】
切片をピタバスタチン(2μM)で24時間処理した後、ヒスタミン(1μM)でチャレンジした。気道収縮は、ヒスタミンの投与量の増加に応じた管腔面積の変化として測定された。PCLS試料の両方のセットで、気道管腔面積は、明視野画像からFiji画像分析ソフトウェアを使用して定量化された。
【0179】
ヒトPCLSの気管支気道において、ピタバスタチンは、1μMのヒスタミン誘発性気道収縮を有意に阻害した(
図11C)。ピタバスタチンは、伸展誘発性のASMの力弛緩を増強した(
図12B)。驚くべきことに、この気管支拡張機能はイソプロテレノールによってはASMに付与されなかった。すなわちピタバスタチンは、既存のβ2作動薬気管支拡張薬を超えた新規かつ相加的な治療効果を提供する。
【0180】
実施例3:深呼吸による緩和
この実験は、ピタバスタチンが、β2作動薬イソプロテレノールとは対照的に、シミュレートされた深呼吸のASM弛緩効果を増強することを証明する。
【0181】
正常なASMを、ピタバスタチン(1μM、24時間、n=7)、イソプロテレノール(10μM、30分、n=6)、又はビヒクル(n=7)で処理し、上記のようにCFSによって検査した。
図12Aは、未処理の対照と比較して、ピタバスタチンによる前処理が基礎ASM収縮を有意に阻害したことを示す。示されているのは、未処理の対照群に対して標準化された収縮値である。
図12Bは、深呼吸(10%の大きさ、4秒の持続時間)を模倣する後続の単一の伸展-非伸展操作に応答して、ASM細胞が迅速かつ劇的にその収縮を除去したことを示す。収縮力は180秒かけて徐々に回復した。力の除去は3つの群すべてで同様であったが、その後の力の回復はピタバスタチン治療によって有意に抑制された(*p<0.05;****p<0.0001)。すべてのデータは、平均及び平均の標準誤差(SEM)として報告される。
【0182】
実施例4:RHOキナーゼ阻害
スタチンは、動物におけるRhoキナーゼ(ROCK)の活性化を阻害する(A. Nohria et al., Atherosclerosis (2009) 205(2):517-21)。アクチン-ミオシン収縮の調節におけるROCKの主要な基質の1つは、ミオシン軽鎖2(MLC2)である(Y. Kureishi et al., J Biol Chem (1997) 272(19):12257-60)。これらの実験は、スタチンがヒスタミン又はトロンビンによるROCKの活性化を有意に低下させ、それが次にASM収縮力を低下させることを証明するために実施された。
【0183】
総及びホスホMLC2に対するウエスタンブロット分析のための抗体は、それぞれ、Santa Cruz Biotechnology 及び Cell Signaling Technologyから入手した。pROCK1、総ROCK1、及びGAPDHの抗体は、Abcamから入手した。ピタバスタチンはSanta Cruz Biotechnologyから入手した。
【0184】
ヒトASM細胞を、メバロン酸塩(MA、200μM)有り又は無しでピタバスタチン(1μM)で24時間処理し、次にヒスタミン(10μM)で5分間処理した。
図5に示されるように、ピタバスタチンで処理されたASMは、ヒスタミン誘発性のROCK1リン酸化を有意に低下させ(
図5A)、この効果はMAによって排除された。
【0185】
ヒトASM細胞をピタバスタチン(1又は10μM)で24時間処理し、次にトロンビンで処理した(2U、30分)で処理した。
図5Bに示すように、ピタバスタチン(1又は10μM)は、トロンビンによって誘発されるMLC2リン酸化を阻害した。
【0186】
実施例5:細胞骨格の阻害
ASMにおける収縮力は、細胞骨格によって仲介される。これらの実験は、スタチンが細胞骨格成分であるF-アクチンの発現を阻害することを証明するために実施された。
【0187】
非喘息の初代ヒトASM細胞を、ビヒクル又はピタバスタチン(1μM)のいずれかで24時間処理した。次に、細胞をF-アクチン発現について免疫染色した。
図15Aに示すように、ピタバスタチンは基礎F-アクチン発現を有意に低下させた。細胞溶解物を、ウエスタンブロットによって総ROCK-1、総ROCK-2、総MLC-2、及びリン酸化MLC-2について分析した。
図15C及び15Dに示すように。ピタバスタチンは、ROCK-1、ROCK-2、及びMLC-2(総及びリン酸化)の総発現を低下させた。
【0188】
非喘息の初代ヒトASM細胞を、1μMのピタバスタチン(Pit)と10μMのGGPP、又はPitと10μMのGGPP+100μMのMAで、24時間同時処理した。PitはF-アクチン発現とASM収縮を低下させた:これらの低下はGGPPとMAによって排除された(
図15B)。
【0189】
実施例6:ASMの過収縮の低下/防止
この実験は、スタチンが、抗炎症効果とは無関係に、気道過収縮の発生を低下又は防止することを証明するために実施された。このモデルでは、出生後のASM成熟中にマウスに噴霧メタコリン(MCh)を投与すると、炎症反応を誘発することなく過収縮表現型が引き起こされる。
【0190】
すべてのマウス実験は、ハーバード大学医学部のブリガム&ウィメンズ病院の施設内動物管理使用委員会(the Institutional Animal Care and Use Committee at Brigham & Women’s Hospital, Harvard Medical School.)によって承認された。メタコリン誘発性の過収縮マウスモデルは、K.R. Patel et al., FASEB J (2017) 31(10):4335-46に記載されている。簡単に説明すると、マウス(C57BL/6)に噴霧MCh(30mg/mL)を、P15と-20(5日間)の間に毎日10分間曝露した。対照マウスには、通常の生理食塩水が噴霧された。これにより、喘息性気道反応性亢進AHRの非炎症モデルであるMCh過収縮性喘息表現型が確立される。各MCh噴霧の前に、マウスに気管内(i.t.)ピタバスタチン(5mg/kgを5日間)又はビヒクル対照を1時間投与した。気道収縮%アッセイでは、MCh濃度(0.1~100μM)を上げることにより、マウスの精密切断肺切片(PCLS)を刺激して収縮させた。各測定では、2回の独立した実験から少なくともn=4匹のマウスを使用し、1つの肺あたり合計20~30個の気道を使用した。
【0191】
各MCh噴霧の前の気管内(i.t.)ピタバスタチンによる前処理は、気道の収縮(%)の統計的に有意な低下を引き起こした(ビヒクル対照22.3%対ピタバスタチン7.3%、p=0.0361、
図6)。これは、ピタバスタチンが抗炎症作用とは無関係に気道収縮を低下させることを示唆している。これにより、無傷のASM収縮装置への直接的な影響がさらに確認される。分子レベルでは、ピタバスタチンは、気道過収縮の調節における重要な収縮分岐点であるMLC-2リン酸化を低下させた(
図5B)。
【0192】
ASM過収縮の非炎症性マウスモデルは、吸入されたスタチンが、ASMを標的にしてMCh誘発性の過収縮表現型を防止できることを証明した(
図11B)。これらの効果は、気道損傷又は毒性の証拠なしに達成された(
図10F)。従って、吸入を介してピタバスタチンを気道に直接送達すると、喘息の特徴である気道炎症とASM収縮の両方が同時に弱められた。
【0193】
実施例7:併用療法
この実験は、ASMへのスタチンの直接投与がβ2作動薬の活性を妨害しないことを証明するために実施された。
【0194】
1つのヒトドナー肺からの精密に切断されたヒト肺切片を5μMのピタバスタチン又はビヒクル(対照)で24時間前処理し、ヒスタミン(10μMで15分)、続いてイソプロテレノール(30μMでさらに30分)で後処理した。実験は、血清欠乏培地条件下で実施され、1群あたりn=3~7気道であった。管腔狭窄の変化は、治療前の状態の変化率(±SEM)として報告された(
図13を参照)。管腔気道面積の絶対値は、治療前の状態でピタバスタチン群と対照群で統計的に差はなかった。これは、ピタバスタチンがイソプロテレノールのβ2作動薬効果を妨害しなかったことを示した。
【0195】
この実験は、ASMにスタチンを接触させることが、IL13、IL17、及びTNFαに応答するエオタキシン及びIL6などの炎症性サイトカインの放出を阻害することを、証明するために実施された。
【0196】
非喘息の初代ヒトASM細胞をコンフルエントになるまで増殖させ、処理しなかったか又は2mMピタバスタチンとGGPP(10mM)で合計72時間前処理した。総サイトカイン刺激は、10ng/mLで18時間であった。
図14Aに示されるように、ピタバスタチンは、GGPP依存性メカニズムによってIL13/TNFα誘導性エオタキシン-3ペプチド分泌を阻害した。
図14Bに示されるように、ピタバスタチンはまた、GGPP依存性メカニズムによってIL17/TNFα誘導性IL6ペプチド分泌を阻害した。すべての実験は、血清含有培地条件下(10%FBS)で実施された。
【0197】
正常なヒト気管支上皮細胞(細胞株HBE1)をコンフルエントになるまで増殖させ、シンバスタチン(5μM)及び/又はデキサメタゾン(10
-7M)で72時間前処理した。次に、細胞をIL-13(10ng/mL)で処理した。
図16に示されるように、各処理はIL13誘導性のエオタキシン-3細胞外分泌を独立して阻害し、シンバスタチンとデキサメタゾンの組合せは、エオタキシン-3分泌に対して相乗的な阻害効果を示した。
【0198】
図18は、適切な濃度のスタチンによる前処理が、デキサメタゾンの弛緩効果を増強することを示す。初代ヒト気道平滑筋細胞を血清含有培地(10%FBS)でコンフルエントになるまで培養し、次に、0.1、1、又は5μMのデキサメタゾン(「Dex」)で、0.1、0.5、又は1μM濃度のピタバスタチン(「Pit」)有り又は無しで、60時間前処理した。次に、ASM細胞をサイトカインの混合物(10n/mLのIL-13、IL-17、及びTNFα、「CM」)に15時間曝露し、エオタキシン-3の発現を測定した。「NT」は未処理を意味する。各濃度のデキサメタゾンにピタバスタチンを添加した場合、エオタキシン-3発現の有意な低下が観察された。これは、ピタバスタチンなどのスタチンがデキサメタゾンの治療効果を増強することを示しており、吸入されたスタチンが、吸入コルチコステロイドの治療効果を増強できることを示している。
【0199】
この実験は、ヒスタミン誘発性ASM収縮のβ2作動薬弛緩に対するスタチンの増強効果を証明するために実施された。
【0200】
非喘息ドナーからの初代ASM細胞を組織培養フラスコ中で2日間血清を欠乏させ、次に96ウェル牽引力測定プレート(3kPa硬度)中の無血清培地でさらに24時間、コンフルエントになるまで培養した。処理前の収縮力は上記のように測定された。次に細胞を、ビヒクル(PEG400)、対照(無血清培地)、又は10
-5M、10
-6M、10
-7M、及び10
-8M濃度のピタバスタチンのいずれかで24時間処理し、ベースライン収縮力を測定した。次に、ASM細胞をヒスタミン(10μM)で30分間激しく処理し、ヒスタミン誘発収縮力を測定した。次に、細胞をイソプロテレノール(10
-6M、10
-7M、10
-8M、10
-9、及び10
-11M)で30分間処理し、イソプロテレノール緩和ASM収縮力を測定した。「ヒスタミン収縮」%は、イソプロテレノール緩和ASM収縮力とヒスタミン誘発収縮力の比率として計算された。結果は
図17に示され、適切な濃度のスタチンによる前処理が、関連する濃度のイソプロテレノールの弛緩効果を増強することを示す。
図17Aは、10
-11Mのイソプロテレノールにおいて、すべての濃度のスタチンが、ビヒクルと実質的に異ならない本質的に同程度の弛緩を提供したことを示す。ただし、10
-7M、10
-6M、及び10
-5Mのピタバスタチンは、10
-9M及び10
-8Mのイソプロテレノールの効果をビヒクルよりも大幅に増強した。
図17Bは、
図17Aの四角で囲った部分のデータの詳細を示す。
【0201】
実施例8:
エイコサノイドメディエーターの阻害
実験動物管理の評価及び認定協会(AAALAC:the Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)に認定されたカリフォルニア国立霊長類研究センター(CNPRC:California National Primate Research Center)からの、6匹の雌のアカゲザルをこの試験で使用した。すべてのプロトコールは、カリフォルニア大学デービス校の施設内動物管理使用委員会(the University of California-Davis Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認され、動物福祉法及び実験動物の人道的管理と使用に関する公衆衛生サービス(the Animal Welfare Act and Public Health Service Policy on Humane Care and Use of Laboratory Animals)ポリシーに準拠していた。動物は人道的に扱われ、痛みや不快感を最小限に抑え及び/又は緩和するように注意が払われた。その試験計画を
図7に示す。この試験で使用したアカゲザル(n=6)は、試験開始時に9歳1か月で年齢を一致させ、対照と薬物治療の2つのコホートに分けた。1mg/kgのシンバスタチン又はシンバスタチンビヒクル、10%エタノール(PBS中)を、40~45分間のエアロゾルマスク噴霧により7日間連続して、動物に投与した。血漿、気道上皮細胞、及び気管支肺胞洗浄液(BALF)を、各フェーズの最後の曝露処理の1日後(8日目)にサンプリングした。スタチン曝露の終了後5日目(12日目)の殺処分後に、気管及び左右の肺組織を得た(
図8)。
【0202】
麻酔した(10mg/kgケタミン+プロポフォール0.1mg/kg/分)成体雌アカゲザルに10%エタノールを吸入投与しながら、H.C. Yeh et al., Environ Health Perspect (1976) 15:147-56に記載されたシステムから改変された同時フロースパイロメトリーエアロゾル吸入システムを用いて換気量を測定した。
【0203】
粒子MMAD=2.5μm及びσg=2のジェットネブライザー(MiniHEART(登録商標), Westmed, Inc., Tucson, AZ)を用いて、エアロゾルを生成した。柔軟なゴム製ダイアフラムとラテックスデンタルダムの二次シールにより各動物の鼻と口を効果的に密封する円錐形の透明なプラスチックフェイスマスクを通して、エアロゾルを送った。圧力変換器(モデルMP45-14、Validyne Engineering Corp., Northridge, CA)及びコンピューターベースの肺生理学プラットフォーム(Ponemah, DSI, Inc., St. Paul, MN)に接続された加熱空気圧グラフ(モデル8300A、Hans Rudolph, Inc., Kansas City, MO)を使用して換気量の変動を測定し、吸入曝露期間中の呼吸流、平均分時換気量、及び総換気量のリアルタイム測定値を得た。投与量は、エアロゾル濃度、空気力学的サイズから推定された沈着率、及び吸入された総量を使用して推定された。
【0204】
アカゲザルをケタミン(10mg/kg)で麻酔し、プロポフォール(0.1mg/kg/分)で麻酔を維持した。既に記載されたように(E.S. Schelegle et al., Am J Pathol (2001) 158(1):333-41)、10mLのエンドトキシン不含PBS(Sigma, St. Louis, MO)を気管支鏡から注入した。気管支鏡を各試料の前にPBSで3回フラッシュして、チャンネルを空にし、相互汚染を回避した。気管支鏡とサイトブラシ(cytobrush )を1つのユニットとして、気道に挿入し及び取り外した。サイトブラッシングが収集された後に、気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集した。24mLまたは32mLのPBS液のアリコートを滴加し、次に回収して、大部分の試料についてBALFの約30~50%を回収した。
【0205】
BALF試料は、収集直後に氷上に保存され、6,000rpmで5分間遠心分離して洗浄液上清を得て、次に-80℃で保存した。BALFは、最初に右中葉から収集され、次に左上葉から収集された。
【0206】
アカゲザルNHPを噴霧シンバスタチン(1mg/kg)で処理すると、強力な気道気管支収縮薬として知られている2つのエイコサノイドであるロイコトリエンB4(LTB4)とトロンボキサンB2(TXB2)が阻害される。シンバスタチンは、12日目(最後のスタチン投与から5日後)にBAL液中のLTB4を有意に低下させた(*p=0.0143)が、肺組織に有意な変化はなかった(
図9A~B)。シンバスタチンは肺組織のTXB2を有意に阻害し(*p=0.0358)、12日目にBAL液のTXB2レベルが低下するという正の傾向(p=0.051)があった(
図9C~D)。これらの結果は、炎症を起こしていないアカゲザルの肺の気道で、気管支収縮促進脂質作動薬の基礎レベルでさえ低下することを示しており、吸入されたスタチンのインビボでの気管支防御効果を示唆している。
【0207】
12日目に、アカゲザルを安楽死させ、続いて肺を含む器官を収集した。質量分析に基づく方法を利用して、シンバスタチン(ラクトン)とその活性代謝物SAの分布を決定した。どちらの形態も主に主幹気管支と下葉に存在し、腸、肝臓、又は筋肉組織では比較的低レベルであった(
図9)。従って、吸入によるスタチンの投与は、高い気道分布を達成するための安全で実行可能な方法であるように思われる(
図10)。
【0208】
本開示で言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用されたいかなる参考文献も先行技術を構成すると認めるものではない。参考文献の考察は、著者が主張することを述べており、本発明者は、引用された文書の正確性と適切性に異議を唱える権利を留保する。科学雑誌の記事、特許文書、教科書などの多くの情報源がここで参照されていることは明確に理解されるが。この参照は、これらの文書のいずれかが当技術分野の一般的な知識の一部を形成していると認めるものではない。
【0209】
本開示の具体的な代替案が開示されているが、添付の特許請求の範囲の真の精神及び範囲内で、様々な修正及び組合せが可能でありかつ企図されることが理解されるべきである。従って、ここに提示されている正確な要約及び開示に限定される意図はない。
【国際調査報告】