(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】皮膚治療システム
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560289
(86)(22)【出願日】2020-04-05
(85)【翻訳文提出日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2020026788
(87)【国際公開番号】W WO2020206404
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440091
【氏名又は名称】パラフィンユーエスエー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モントローズ,ディアナ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA71
4C267AA72
4C267BB01
4C267BB23
4C267BB62
4C267CC01
4C267GG02
4C267HH08
(57)【要約】
エンケーサ、1つ以上の治療用組成物、シール手段、および任意の付属品を含む、便利で衛生的な皮膚治療システムが提供される。このような皮膚治療システムを用いる方法も提供される。前記皮膚治療システムおよびその使用によって、効果的、効率的、かつ安全な治療アプローチが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体部位の皮膚を調整または治療するための皮膚治療システム用のエンケーサであって、
前記エンケーサは、身体部位の形状のエンケーサからなり、
前記身体部位の形状のエンケーサは、
前記身体部位の形状のエンケーサの上部を形成する第1のフィルム基質と、前記身体部位の形状のエンケーサの底部を形成する第2のフィルム基質と、
前記第1のフィルム基質と前記第2のフィルム基質との間に配置され、その外周縁が前記第1のフィルム基質および第2のフィルム基質の外周縁との間で密封されて、気密シールを形成するエンケーサライナーであって、
前記第1のフィルム基質と該エンケーサライナーの第1層との間に第1の充填可能な空間を、
前記第2のフィルム基質と該エンケーサライナーの第2層との間に第2の充填可能な空間を、および、
該エンケーサライナーの第1層および第2層によって画定され、前記第1の充填可能な空間と前記第2の充填可能な空間との間に配され、前記身体部位を収容するよう構成された内部容積部を、
形成するエンケーサライナーと、および、
前記第1の充填可能な空間および第2の充填可能な空間の内部に収容された治療用組成物と、
を備える、エンケーサ。
【請求項2】
前記第1のフィルム基質と前記エンケーサライナーの第1層との間に備えられ、前記第1の充填可能な空間をシールする第2の気密シールと、
前記第2のフィルム基質と前記エンケーサライナーの第2層との間に備えられ、前記第2の充填可能な空間をシールする第3の気密シールと、
をさらに備える、請求項1に記載のエンケーサ。
【請求項3】
前記第2の気密シールおよび前記第3の気密シールと、アクセス開口部との間に配置されたクロージャ要素をさらに備え、前記アクセス開口部は、前記身体部位が前記エンケーサライナーの前記内部容積部に挿入されることを可能にするよう構成されている、請求項2に記載のエンケーサ。
【請求項4】
前記エンケーサライナーは、ポリプロピレン繊維からなる、請求項1に記載のエンケーサ。
【請求項5】
前記エンケーサライナーは、紙製のシートからなる、請求項1に記載のエンケーサ。
【請求項6】
前記第1のフィルム基質上に配置され、該第1のフィルム基質上において見ることが可能なサーモクロミクインジケータをさらに備える、請求項2に記載のエンケーサ。
【請求項7】
前記第1のフィルム基質上において、前記サーモクロミクインジケータの位置とは異なる第2の位置に配置された第2のサーモクロミクインジケータをさらに備える、請求項6に記載のエンケーサ。
【請求項8】
前記エンケーサライナーは、前記身体部位の形状のエンケーサの形状と同一の形状である、請求項2に記載のエンケーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書に参照として組み込まれる2019年4月5日に出願された米国特許仮出願第62/830,196号に基づく優先権を主張する。また、本出願は、2017年5月12日に出願された米国特許仮出願第62/505,700号に基づく優先権を主張する、2018年5月14日に出願された米国特許出願第15/979,459号(発明の名称:「皮膚治療システム」)の一部継続出願である。また、本出願は、2015年12月17日に出願され、既に放棄された米国特許出願第14/972,811号(発明の名称:「皮膚治療システム」)の一部継続出願である。これらすべての出願の内容は、本明細書中に参照により組み込まれる。しかしながら、本明細書に記載された内容がこれらの参照される出願と矛盾する場合には、本明細書の内容が優先される。
【背景技術】
【0002】
皮膚に塗布されたワックスベースの治療用組成物は、皮膚の調子を整え、かつ、皮膚を柔軟にする、関節痛を緩和する、および、さまざまな皮膚の状態を改善するために用いられる。ワックスベースの治療用組成物は、加熱によりそのワックスを溶融してから、鎮痛のために皮膚や体の一部に塗布される。現行のやり方では、大量のワックスベースの治療用組成物を溶融するために約2時間~3時間かかるため、患者への治療が遅延する原因となっている。また、皮膚治療のためのワックスベースの治療用組成物を繰り返し加熱および冷却することにより、時間の経過とともに組成物の有効性が低下する可能性がある。さらに、ワックスベースの治療用組成物の過熱、不均一加熱、冷却によって、患者の皮膚を火傷させる危険性がある。
【発明の概要】
【0003】
エンケーサと、1つ以上の治療用組成物と、シール手段と、任意の付属品とを備える、利便性が高く衛生的な皮膚治療システムが開示される。かかる皮膚治療システムを用いる方法も開示される。前記皮膚治療システムおよびその使用によって、効果的で、効率的かつ安全な治療方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
以下の図面とともに詳細な説明を参照することにより、本発明を十分に理解することが可能となる。添付の図面では、全体を通して、同様の要素および工程について同様の参照番号が用いられている。
【0005】
図面は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲を限定することはない。本発明のさまざまな態様が、詳細な説明および添付の図面から十分に理解される。
【0006】
【
図1】
図1は、グローブを備える治療システムの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、ブーツを備える治療システムの一例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、前記治療システムを保持し加熱するための容器を示す斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、前記治療システムを保持し加熱するための容器を示す平面図である。
【
図6A】
図6Aは、前記治療システムを保持し加熱するための容器を示す平面図である。
【
図6B】
図6Bは、予めパッケージ化されたキットとしての前記治療システムの斜視図である。
【
図7】
図7は、グローブを備える前記治療システムの斜視図である。
【
図8】
図8は、治療用組成物の加熱を示す概略図である。
【
図9】
図9は、前記治療システムの使用方法を示す図である。
【
図10】
図10は、前記治療システムの加熱方法を示すフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、グローブを備える前記治療システムの追加的な寸法および詳細を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、ブーツを備える前記治療システムの追加的な寸法および詳細を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、治療システムのエンケーサに適用される例示的なサーモクロミックインクを示す図である。
【
図12B】
図12Bは、治療システムのエンケーサに適用される例示的なサーモクロミックインクを示す図である。
【
図13】
図13は、治療用組成物が不均一に加熱されたことを示す、サーモクロミックインクを備える治療システムの図である。
【
図14】
図14は、縁が熱融着された例示的な治療システムを示す図である。
【
図15】
図15は、さまざまな皮膚治療方法を示す皮膚治療システムの例示的な断面図である。
【
図16】
図16は、さまざまな経皮薬物送達方法を示す皮膚治療システムの例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明について、機能的なブロック部品および種々の処理過程を用いて説明する。機能的なブロック部品は、特定の機能を実行し、種々の結果を達成するよう構成された任意の数の部品によって実現される。たとえば、本発明の種々の態様による方法およびシステムは、関節および身体の他の部位の痛みや炎症を治療するための任意の数の組成物および手順と組み合わせて使用される熱安定性治療用組成物を含むための種々の材料を使用することができ、本明細書に記載されたシステムは、本発明へ適用可能な例として示されているにすぎない。本発明の種々の代表的な実施形態は、皮膚、痛み、創傷、および/または、炎症性の病状の治療のために人体の任意の部位に適用される。
【0008】
特定の実施形態について記述されるが、これらの実施形態は、本発明およびその最良の形態を例示するにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。説明を簡潔にするため、従来の製造、接続、調剤、殺菌、およびシステムの他の機能的な形態については、詳述しない。さらに、複数の図面に示した接続線は、種々の要素間の例示的な機能的関係および/または工程を示す。実際のシステムでは、多くの代替または追加の機能的関係または物理的接続が存在する。
【0009】
例示的な実施形態の種々の形態は、皮膚治療システム100を構築し使用するための方法、装置、およびシステムを提供し、1つ以上のエンケーサ120、エンケーサライナー116、治療用組成物106、および/または温度インジケータ118を備える。エンケーサ120は、患者の手、足、肘などの部位を収容するための内部容積部を備える。エンケーサ120は、エンケーサ120を身体の所望の部位に取り付けるか保持するよう構成されるファスナを備えていてもよい。エンケーサライナー116は、身体の部位を収容するための第2の内部容積部を形成し、エンケーサ120の内部容積部内に配置され、エンケーサ120の内面とエンケーサライナー116の外面との間に形成される空間において、エンケーサ120の全体に治療用組成物106が実質的に均一に分布されるよう補助する。治療用組成物106は、皮膚トラブルおよび/または痛み、創傷、および/または身体の炎症を治療することができる任意の数の化粧品組成物および/または医薬用組成物を含むワックスを含む。温度インジケータ118は、治療システムの安全な使用を確立するために、エンケーサ120、エンケーサライナー116、および/または、治療用組成物106に適用される、熱活性型装置、インク、またはその他のインジケータを備える。さまざまな実施形態の詳細な説明は、特定の有効な開示として提供されるが、これは、開示されたシステムおよび方法を任意の用途に一般化することを可能とするものである。
【0010】
皮膚治療システム100の種々の実施形態は、エンケーサ120内に配置された治療用組成物106のためのシールされた再利用可能な容器として構成される。たとえば、エンケーサライナー116の外周縁は、エンケーサ120の外周縁に沿ってエンケーサ120の内面に連結されており、エンケーサライナー116は、エンケーサ120の内面とエンケーサライナー116の外面との間に充填可能な空間または領域を創出しつつ、エンケーサ120の全体形状を保持する。治療用組成物106は、使用に先立って充填可能な空間内に配置される。エンケーサライナー116は、治療用組成物106の組成および/または温度に関係なく、エンケーサ120の縁まで伸長した状態を保持する。この構成は、エンケーサ120から身体部位を取り外す場合および/または治療用組成物106が使用後に冷却した場合に、エンケーサライナー116が収縮またはその形状を崩すことを防止する。
【0011】
皮膚治療システム100のシール構造により、封入されたエンケーサライナー116および治療用組成物106の汚染を防ぎつつ、皮膚治療システム100を種々の装置で加熱することが可能となる。病院、スパ、美容サロンなどの今日の臨床環境および/または美容環境においては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染は、患者および顧客にとって致命的となる可能性がある。従来のワックストリートメントシステムとは異なり、エンケーサライナー116が、流動パラフィンの共用容器(パラフィンポット)に浸漬されず、充填可能な空間には治療用組成物106が充填され、所定の位置にシールされる。
【0012】
エンケーサ120は、手、足、肘、膝などの所望の身体部位の形状、あるいは、胴体または頭部および/またはその他の部位に装着可能なパッチまたはストリップの形状に形成される。あるいは、エンケーサ120は、グローブ、ミトン、マフ、指サック、靴下、上履き、靴、ブーツ、ボンネット、ストリップ、膝サポータ、スカルキャップ、および/または、顔または頭部の全部または一部の形状のマスク、あるいは、その他の好適な形状とすることができる。一実施形態においては、エンケーサ120は手の形状であり、別の実施形態においては、エンケーサ120は足の形状である。
【0013】
エンケーサ120は、設計要件および加熱源に応じて、炭素繊維、プラスチック、ポリエチレンなどの透明/半透明ポリマー、プラスチックフィルム、金属箔などの治療用組成物106を包含できる任意の適切なエンケーサ材料からなる。エンケーサ120は、拡張または伸長可能な弾性材料により構成することもできる。エンケーサ120の形成には、耐熱性で、加熱によって有毒な化学物質を放出しない材料が使用される。
【0014】
エンケーサ120は、エンケーサ材料の少なくとも2つの層から形成される。たとえば、エンケーサ材料は、単一の層となるように互いに接着される。いくつかの実施形態では、サーモクロミク材料などの温度インジケータ118は、インクおよび/または、商標などの模様を備え、エンケーサ材料の1つの層に印刷、スタンプ、および/または接着される。その後、このエンケーサ材料は、エンケーサ材料の別の層に接着されるため、サーモクロミク材料またはその他の模様は、エンケーサ材料の2つの層の間に密封される。
【0015】
エンケーサ120は、負傷した身体部位または動作が制限される身体部位を収容するよう構成される。たとえば、エンケーサ120は、使用者の指が正常の範囲で動かせない場合や、指の動きが制限されているため、通常の手袋の形状では指を快適に通すことができない状態の手に対しても、使用可能に形成される。この実施形態において、エンケーサ120は、1つのセクションに2本以上の指を収容しつつ、その他の指をそれぞれの部位用のセクション内に配置することができる。また、エンケーサ120は、治療中に指や身体部位の配置を補助するよう構成されるストラップなどの要素を備えることもできる。
【0016】
いくつかの実施形態では、身体部位の形状のエンケーサ120は、この業界で受け入れられている平均的な身体部位のサイズを参照したうえで、単一サイズに形成される。一実施形態では、エンケーサ120は、女性の手または足に合うよう単一サイズに形成される。一実施形態では、エンケーサ120は、男性の手または足に合うよう単一サイズに形成される。一実施形態では、エンケーサ120は、男性および/または女性の身体部位のいかなるサイズにもフィットするよう伸縮可能である。また、エンケーサ120は、手袋、靴、その他の類似の製品の標準的なサイズなど、業界で標準的な一連のサイズで製造することもできる。エンケーサ120は、折り目が設けられており、使用時に身体部位の形状および寸法をより快適に収容する三次元構造を形成することが可能である。一実施形態では、エンケーサ120は、足の形状をしており、展開すると、スリッパ、ブーツ、靴などのソールを形成する折り目を備えることができる。
【0017】
図1は、皮膚治療システム100を例示するための、身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120の複数の実施形態を示す模式図である。身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120は、少なくとも1つの使い捨て手袋102、あるいは、少なくとも1つの使い捨てブーツ104を構成する。このような使い捨て手袋102または使い捨てブーツ104は、人間の少なくとも1つの手または足を収容する手または足エンケーサ120を備える。それぞれの使い捨て手袋102または使い捨てブーツ104は、少なくとも1つの治療用組成物106を備える。かかる治療用組成物106は、電子レンジなどの種々の加熱源によって、約1分~4分で急速に加熱することが可能である。
【0018】
いくつかの実施形態では、それぞれの使い捨て手袋102または使い捨てブーツ104は、本明細書でさらに記載するように、衛生的な使い捨て製品となるよう設計および配置される。本明細書に基づいて当業者には理解されるように、適切な状況下では、アームラップ、レッグラップなどのその他の構成で十分である。本明細書に記載したように、皮膚治療システム100の種々の実施形態は、皮膚を温めることにより、壊死した皮膚を柔らかくして、その除去を促進するよう機能する。さらに、皮膚治療システム100の種々の実施形態は、関節を温め、かつ、血液循環を促進するよう機能する。
【0019】
図2は、皮膚治療システム100の使い捨て手袋102の一例を示す平面図である。図示のように、使い捨て手袋102は、各指部111、親指部115、および手掌領域123のそれぞれに配置された治療用組成物106を備える。一実施形態では、使い捨て手袋102の手掌領域123は、少なくとも1つの第1の量の治療用組成物106を備える。
図2に示すように、治療用組成物106は、手掌領域123における使い捨て手袋102の内部に配置される。別の実施形態では、それぞれの使い捨て手袋102は、図示のように、それぞれの指部111および親指部115において、手袋の内部に配置される少なくとも1つの第2の量の治療用組成物106を備える。手掌領域123および指部111および115における治療用組成物106は、同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
図2に示すように、使い捨て手袋102は、少なくとも1つの手掌用組成物130、指用組成物132、および親指用組成物134を含むよう構成および配置された内側部113を有する、実質的に可撓性な1つの密閉壁107を備える。密閉壁107は、使い捨て手袋102の実施形態においては手用の開口140であるアクセス開口部をさらに備える。手用の開口140によって、使用者は、使用中に使い捨て手袋102に手を挿入することができる。手用の開口140は、平置きの状態で約7インチ(約180mm)の幅を有する。使い捨て手袋102は、さらに、指先部、親指先部、手掌領域、あるいは、使い捨て手袋102に封入された治療用組成物106の温度を感知できる任意の位置に配置された、少なくとも1つの温度インジケータ118を備える。
【0021】
図3は、皮膚治療システム100の使い捨てブーツ104を示す平面図である。一実施形態では、使い捨てブーツ104は、使い捨てブーツ104の足首領域145および/または足指先領域に配置された治療用組成物106を備える。使い捨てブーツ104の足首領域145に配置された治療用組成物106は、少なくとも1つの足首用組成物136を備える。さらに、使い捨てブーツ104は、少なくとも1つの足用の開口142を備える。足用の開口142によって、使用者は、使用中に 使い捨てブーツ104に足を挿入することができる。足用の開口142は、平置きの状態で約10インチ(約250mm)の幅を有する。
【0022】
図11Aおよび
図11Bは、皮膚治療システム100の使い捨て手袋102および使い捨てブーツ104の実施形態の例示的な寸法および詳細を示す図である。本明細書に基づいて当業者には理解されるように、適切な状況下では、設計上の選択、使用者の嗜好、マーケティング上の選択、コスト、構造上の要件、入手可能な材料、技術的な進歩などを考慮し、本明細書に記載された基準を満たすあるいは超える他の手袋およびブーツの材料の配置も採りうる。使い捨て手袋102および使い捨てブーツ104のエンケーサにカスタマイズされた製造のほかにも、治療用組成物を含まない使い捨てブーツ104、たとえば、キーストーン(KEYSTONE)社製のサニブーツ、または、ウィスコンシン州ミルウォーキーのプロセーフティー(Pro-Safety)社による同様の製品を入手することも可能である。
【0023】
皮膚治療システム100に適用可能な治療用組成物106は、ワックスベース、液体ベース、またはゲルベースであり、皮膚への塗布の前に、所定の量がエンケーサ内に均等に広がる。ワックスベースの組成物の場合、固形化した組成物が、身体部位の形状のエンケーサ120内を、エンケーサ120と実質的に同様の形状の薄層として広がる。液体ベースの組成物の場合、標的とする皮膚領域をカバーするのに十分な所定量の組成物が、身体部位の形状のエンケーサに収容される。治療用組成物106は、漏出、こぼれ、蒸発、または、相互汚染のリスクなしにエンケーサ120内に収容され、治療中に皮膚にほぼ均一かつ直接に接触しながら、組成物をさらに広げる必要なく皮膚領域に容易に塗布することができる。皮膚治療システム100に適用可能な治療用組成物106は、皮膚治療システム100および治療ターゲットに適した物理的、化学的、または薬学的特性に基づいて選択された種々の成分を含む。ワックスベース、液体ベース、またはゲルベースの治療用組成物106は、皮膚治療システム100のエンケーサに予め封入される。治療用組成物106としては、皮膚に塗布する前に加熱を必要としてもよいが、加熱を必要としないようにすることもできる。他の実施形態においては、ワックスベース、液体ベース、またはゲルベースの治療用組成物は、通常は治療セッション前にエンケーサ120に取り付けられる。以下の説明では、治療用組成物106についてさらに詳しく説明する。
【0024】
皮膚治療システム100のそれぞれのエンケーサ120は、1つ以上の治療用組成物106を備える。いくつかの実施形態では、治療用組成物106は、製造時に身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120内に配置される。いくつかの実施形態では、治療用組成物106は身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120内に均一に配置され、治療用組成物106は、エンケーサ120全体に薄層としてほぼ均一に広がる。いくつかの実施形態では、身体部位の形状のエンケーサ120内の治療用組成物106は、エンケーサ120のそれぞれの内側部113または領域に均等に伸長する固化またはゲル状の連続的な薄層である。治療用組成物106が固体であるか、ゲル状であるか、ワックスベース、泥ベース、あるいは粘土ベースの混合物であるかに応じて、組成物の連続的な薄層の厚さは、約0.1~1.5インチ(約2mm~38mm)である。いくつかの実施形態では、所定量の固体状の治療用組成物106は、身体部位の形状のエンケーサ120に配置される前に、特定のサイズの特定の形状に形成される。他の実施形態において、治療用組成物106が液状である場合には、所定量の治療用組成物106は、身体部位の形状のエンケーサ120に付着され、その後、冷却または取付の際に、組成物を押圧または成形してエンケーサ120の形状にするか否かにかかわらず固化またはゲル化される。本明細書に基づいて当業者には理解されるように、適切な状況下では、アームラップ、レッグラップなどの他の構成も採りうる。。本明細書に基づいて当業者には理解されるように、適切な状況下では、設計上の選択、使用者の嗜好、マーケティング上の選択、コスト、構造上の要件、入手可能な材料、技術的な進歩などを考慮して、たとえば、手袋内部のプレコーティングや、手袋に挿入可能なリンク部など、治療物質を挿入する他の構成も採りうる。
【0025】
いくつかの実施形態では、所定量の第1の治療用組成物106が、手の形状のエンケーサ120の指部111および親指部115のそれぞれに配置され、所定量の第2の治療用組成物106が、身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120の手掌領域123に配置される。第1の治療用組成物106は、手掌領域123に配置された第2の治療用組成物106よりもわずかに遅い速度で加熱されるため、加熱により、手の形状のエンケーサ120に配置された治療用組成物106のすべてがほぼ均等に加熱または溶融し、ほぼ同時に所定の温度に達する。治療用組成物106の一部を過熱させることなく、その全体を均一に加熱することは、固体状の治療用組成物106を均一に液化するために重要であるとともに、皮膚治療において皮膚と組成物とが直接接触している間に、過熱や不均一な温度に起因して皮膚が創傷を負うことを防ぐことが可能となる。
【0026】
図2に例示するように、それぞれの指部111に配置された治療用組成物106は、少なくとも1つの指用組成物132を備える、あるいは、親指部115に、少なくとも1つの親指用組成物134を備える。指用組成物132は、溶融または加熱された場合に、使い捨て手袋102の各指部111を実質的にコーティングするのに十分な治療用組成物106をからなる。一実施形態では、指用組成物132は、約0.5オンス(約14g)の治療用組成物106からなる。親指用組成物134は、溶融または加熱された場合に、使い捨て手袋102の親指部115を実質的にコーティングするのに十分な治療用組成物106からなる。一実施形態では、親指用組成物134は、約1オンス(約28g)の治療用組成物106からなる。一実施形態では、指用組成物132および親指用組成物134は、図示したように棒状に構成されるほか、ペレット状、あるいは固体状またはゲル状の治療用組成物106の薄層により構成される、少なくとも1つのインサート135を備える。一実施形態では、指用組成物132は、長さ約3インチ(約76mm)、幅約0.5インチ(約12mm)、厚さ約0.5インチ(約12mm)である棒状のインサート135により構成される。一実施形態では、親指用組成物134は、長さ約2.5インチ(約63mm)、幅約1インチ(約25mm)、厚さ約0.5インチ(約12mm)である棒状のインサート135により構成される。
【0027】
手掌領域123における治療用組成物106は、少なくとも1つの手掌用組成物130を備える。手掌用組成物130は、溶融または加熱した場合に、使い捨て手袋102の手掌領域123を実質的にコーティングするのに十分な治療用組成物106からなる。一実施形態では、手掌用組成物130は、図示したように円盤状に構成されるほか、棒状、ペレット状、あるいは均一に広げられた固体状またはゲル状の薄層に構成された、治療用組成物106を少なくとも1つ備える。一実施形態では、手掌用組成物130は、直径約4インチ(約100mm)、厚さ約0.5インチ(約12mm)の円盤形状に構成される。
【0028】
図3に例示するように、使い捨てブーツ104の足首領域145に配置される治療用組成物106は、少なくとも1つの足首用組成物136を備える。一実施形態では、足首用組成物136は、溶融した場合に、使い捨てブーツ104を実質的にコーティングするのに十分な治療用組成物106からなる。足首用組成物136は、約6オンス(約170g)の治療用組成物106を備える。一実施形態では、足首用組成物136は、図示したような円盤状に構成されるほか、棒状、ペレット状、あるいは均一に広げられた固体状またはゲル状の薄層に構成される、少なくとも1つのインサートを備える。足首用組成物136は、直径約8インチ(約200mm)、厚さ約0.25インチ(約6mm)の円盤形状に構成される。いくつかの実施形態では、治療用組成物106は、足首領域145、エンケーサ120のつま先部分から足用の開口142付近の上部125の底部まで全体に均一に広がる固体状またはゲル状の連続的な薄層として挿入される。
【0029】
手用の開口140または足用の開口142は、加熱時および使用中に治療用組成物106が身体部位形状のエンケーサ120の外部に漏出することを防ぐために、全体シールまたは部分的にシールすることが可能である。いくつかの実施形態では、開口140、142は、折り畳み、凹凸係止機構、取外し可能なテープまたは接着ストリップ、再剥離型粘着剤、裁縫、アイロンまたは熱シールによってシールされ、エンケーサ内の空気または蒸気は、シールが取り外され、エンケーサ120が加熱される場合に放出される。いくつかの実施形態では、開口140、142は、治療用組成物106の加熱に伴って蓄積されたガスの排出を可能にするため、部分的にシールされる。たとえば、一方向ベント、スリット、再シール可能なポータルなどの通気構成を適用することも可能である。いくつかの実施形態では、開口140、142は真空シールされており、エンケーサ120の加熱中に内部に空気は存在しないため、エンケーサ内の熱および水分は保持されつつ、加熱中にエンケーサ120が爆発または膨張することを回避することができる。身体部位の形状のエンケーサ120のシールは、加熱後、皮膚に適用する前に、切断、トリミング、または破ることによって取り外すことができる。
【0030】
他の実施形態においては、
図4A~
図6Aに示すように、密封ボックス114のクロージャ150を使用して、
図6Aに示すように手用の開口140および足用の開口142を保持してシールすることができる。手袋102およびブーツ104の上部125は、
図2および
図3に示すように、手袋の手首およびブーツの足首に沿って伸長する長さを有する。治療用組成物106が使い捨てのワックスベースのエンケーサ120内に配置されると、手袋およびブーツの開口端(開口部)において折り返され、
図4A、
図4B、および
図5に示すように、開口140、142が密封ボックス114のクロージャ150のフラップと整合した状態で密封ボックス114内に配置される。
図5に示すように、クロージャ150が閉じられた状態では、クロージャ150のフラップは、使い捨ての身体部位の形状の装置120の残部よりも上方に位置する。密封ボックス114が閉じられた状態では、クロージャ150のフラップの位置に応じて、手用の開口140または足用の開口142も上方に位置して開口140、142がシールされるため、重力の作用も相まって、加熱の際に、治療用組成物106が使い捨ての身体部位の形状の装置120の外部に漏出することが防止される。また、クロージャ150は、治療用組成物106の加熱に伴い蓄積したガスの排出を可能にする。
【0031】
密封ボックス114は、
図4Aに示すように、少なくとも1つのクロージャ150に、少なくとも1つの窓152をさらに備える。窓152は、加熱中に、後述する温度インジケータ118の目視を可能にし、適切な温度を視覚的に判断することを可能にする。また、窓152は、加熱中に、治療用組成物106の目視を可能にし、治療用組成物106が完全に溶融していることを視覚的に判断することを可能にする。本明細書に基づき当業者には理解されるように、適切な状況下では、設計上の選択、使用者の嗜好、マーケティング上の選択、コスト、構造上の要件、入手可能な材料、技術的な進歩などを考慮して、たとえば、複数の小さなポータル、複数の窓、スリット、ポップアップ通知、サウンド通知など、他の目視可能な構造も採りうる。
【0032】
いくつかの実施形態では、1つ以上の使い捨ての治療用エンケーサ120は、1つの密封ボックス114内に配置される。他の実施形態においては、それぞれの使い捨てエンケーサ120が、1つの密封ボックス114内に配置される。密封ボックス114は、使い捨てでもよく、繰り返し使用可能とすることもできる。外部密封ボックス114は、電子レンジで使用することができる。いくつかの実施形態では、電子レンジで使用可能な密封ボックス114は、段ボール、木材パルプ材料、炭素繊維、電子レンジで使用可能なプラスチック、セラミック、木材派生材料、およびこれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの電子レンジで使用可能な材料を含む。
【0033】
エンケーサライナー116は、治療中に治療用組成物106を使用者の皮膚に適用するのを補助するために使用される。たとえば、エンケーサライナー116は、治療用組成物106の少なくとも一部が、充填可能な空間からエンケーサライナー116を通って使用者の皮膚に移動可能なよう構成される。エンケーサライナー116をエンケーサ120に容易に挿入できるよう、エンケーサライナー116は、エンケーサ120と同一の形状および寸法を有するか、僅かに小さく作られている。
【0034】
エンケーサライナー116は、紙、織物、不織布、プラスチック布地、ポリプロピレン不織布、およびこれらの任意の組み合わせから選択される材料からなる。エンケーサライナー116は、不透明でもよく、任意の透明度を有していてもよく、任意の色合いを有していてもよい。エンケーサライナー116を追加することにより、断熱、均一な加熱、部分的な過熱の防止、保湿、配分、吸収性、弾力性、伸縮性、柔軟性、強度、緩衝性、パディング、フィルタリング、無菌性などの機能が提供される。さらに、エンケーサライナー116は、泥ベース、粘土ベース、ワックスベース、液体ベース、ゲルベースなどの組成物を含む、任意の形態の治療用組成物106のための媒体支持体または保持剤として機能し、エンケーサ120の充填可能な空間内における治療用組成物106の流動性を低下させる。一実施形態では、エンケーサライナー116は、紙製のシートからなる。他の実施形態では、エンケーサライナー116は、使用中に治療用組成物106の1つ以上の成分が充填可能な空間から使用者の皮膚に移動することを可能なように構成されたポリプロピレン不織布からなる。
【0035】
身体部位形状の使い捨てエンケーサ120は、加熱中および加熱後に治療用組成物106の温度範囲を視覚的に示すための温度インジケータ118をさらに備える。この特徴は、治療用組成物106の過熱を防止し、治療中に皮膚治療システム100の温度を監視するために提供される。たとえば、華氏126度(約52℃)は、当該分野においては安全な温度の上限値とされている。治療用組成物106が華氏126度(約52℃)以上である場合には、皮膚に直接適用するには適していない。温度インジケータ118は、コーティング、ストリップ、ステッカー、ラベル、テープ、または適用可能な他の任意の形態である。温度インジケータ118は、所望される表示に応じて、可逆的あるいは不可逆的である。身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120は、少なくとも1つの温度インジケータ118を備える。いくつかの実施形態では、温度インジケータ118は、治療用組成物106を備えるそれぞれの身体部位形状のエンケーサ120の内部の治療用組成物の温度を視覚的に示すよう構成され配置された、少なくとも1つのサーモクロミクコーティングを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の温度インジケータ118は、エンケーサ120の内側面に配置される。いくつかの実施形態では、温度インジケータ118は、エンケーサ120の外側面にサーモクロミクパッチまたはステッカーとして配置される。温度インジケータ118は、治療用組成物106のおおよその温度を視覚的に示すよう機能し、温度が所望の温度範囲を上回るまたは下回る場合には、使用者に警告することが可能である。種々の実施形態においては、視覚的表示は、色の変化、色の消失、色の出現、温度を示す数字の表示、温度レベル、温度範囲、および/またはユーザに温度情報を伝える他の数字またはテキストによって行われる。他の温度インジケータとしては、従来のポップアップ通知またはサウンド通知を含む。
【0036】
図2に示すように、種々の実施形態においては、使い捨て手袋102は、少なくとも1つの温度インジケータ118を備える。1つ以上の温度インジケータ118は、使い捨て手袋102のそれぞれの指先部、親指先部、および手掌領域を含む、エンケーサの表面の任意の場所に配置することができる。同様に、
図3に示すように、使い捨てブーツ104も、使い捨てブーツ104の足首領域および指先領域を含む任意の場所に配置された少なくとも1つの温度インジケータ118を備える。一例では、サーモクロミクコーティング110およびサーモクロミクステッカー112のいずれも、治療用組成物106が少なくとも1つの理想的な温度範囲を超えると、少なくとも1つの警告温度の色に変化する。本明細書に基づいて当業者が理解できるように、適切な状況下では、設計上の選択、使用者の嗜好、マーケティング上の選択、コスト、構造上の要件、入手可能な材料、技術的な進歩など考慮して、たとえば、より高いまたはより低い温度、温度範囲の変更、温度インジケータの個数の変更など、他の温度配置を採りうる。
【0037】
図12A、
図12B、および
図13に示す種々の実施形態においては、温度インジケータ118は熱活性型インクからなる。種々の実施形態において、熱活性型インクは、エンケーサ120を構成する2つのフィルム基材の間にスプレー、印刷、スタンプ、および/または他の方法で塗布される。その後、2つのフィルム基材はラミネートされて、エンケーサ120用の材料を構成する。エンケーサ120を構成する2層のラミネートされたフィルム間に埋め込まれた熱活性型インクからなる温度インジケータ118の使用によって、皮膚治療システム100を、病院または他の臨床環境において、湯せんで加熱することができるとともに、熱活性型インクの流出や退色を防止することができる。
【0038】
図12Aに示すように、いくつかの実施形態では、熱活性型インクからなる温度インジケータ118は、治療システム100全体において、模様および/または商標などの分離した複数のパッチとしてフィルムに適用される。
図12Bは、熱活性型インクが均一にフィルムに塗布された他の実施形態を示す。温度インジケータ118の色の変化は、エンケーサ120内の治療用組成物106が安全に使用するには熱すぎ、皮膚に火傷を引き起こす可能性があることを示す。この場合、使用者は、皮膚治療システム100を皮膚に適用する前に、温度インジケータ118が元の色に戻るまで治療用組成物106を安全な温度まで冷却することができる。
図13に示すように、治療用組成物106が不均一に加熱されていことは、皮膚治療システム100のいくつかの領域で特定の色が示され、他の領域では無色を含む異なる色1300が示されるため、使用者に明確に理解される。このような安全機能は、神経障害、糖尿病性神経障害、および、使用者が直ちに皮膚の火傷を感知することができないその他の状態によって指先の感覚が鈍くなっている使用者にとって、有用である。
【0039】
治療用組成物106を備える身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120が標的とする皮膚領域に適用されると、ファスナによって、治療時間の間、エンケーサは皮膚領域に取り付けられ安定する。ファスナは、粘着テープ、ストラップ、紐、弾性材料、布テープ、チューブ、または他の機能的手段から選択される。ファスナは、皮膚治療システムに含まれていても、含まれていなくてもよい。一実施形態では、身体部位の形状のエンケーサ120は、ファスナを備える。
【0040】
図7は、皮膚治療システム100の例示的な使い捨て手袋102を示す斜視図であり、
図9は、少なくとも1つの開口シール144を備える使い捨て手袋102の使用方法を示す図である。一実施形態では、開口シール144は、少なくとも1つの粘着ストリップ148を含む、少なくとも1つのストラップ146をさらに備える。使用の際には、使用者が手または足を身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120に挿入した後、治療中に皮膚治療システム100の取り付けおよび安定性を確実にするために、粘着ストリップ148を用いてストラップ146を手首または足首に巻き付けて取り付けることができる。ストラップ146およびストリップ148の幅および長さは異なっていてもよい。一実施形態では、ストラップ146は、長さ約7インチ(約177mm)および幅約0.5インチ(約12mm)である。いくつかの実施形態では、ストラップ146は、少なくとも1つの縫い目によって身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120に取り付けられる。あるいは、ストラップ146は、熱融着またはメカニカルファスナによって身体部位の形状の使い捨てエンケーサ120に取り付けられる。一実施形態では、粘着ストリップ148の長さは約0.5インチ(約12mm)~約4インチ(約100mm)である。
【0041】
本明細書に記載したように、皮膚治療システム100は、1つ以上の外部パッド、外部ポーチ、カバー、ハーネス、加熱または保温要素、独立した取扱説明書、または使い捨て身体部位の形状のエンケーサに取り付けられた取扱説明書をさらに備えることができる。取扱説明書は、印刷されたもの、書面、ディスク、または他の適切な媒体である。一実施形態では、1つ以上の加熱または保温要素は、皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサの外面に取り付けられる。
【0042】
図14に示すように、エンケーサライナー116は、エンケーサ120を構成する第1のフィルム基材1410と第2のフィルム基材1415との間に配置される。エンケーサライナー116は、第1のフィルム基材1410および第2のフィルム基材1415の縁まで伸長する。エンケーサライナー116、第1のフィルム基材1410、および第2のフィルム基材1415の外周縁は互いに接着され、皮膚治療システム100の外縁に沿って第1の気密シール1400を形成する。これにより、第1のフィルム基材1410および第2のフィルム基材1415の内面と、エンケーサライナー116との間に充填可能な空間が形成される。充填可能な空間は、治療用組成物106で充填され、その後、エンケーサ120の手首部付近に配置された少なくとも1つの追加の気密シール1402によってシールされる。気密シール1400、1402は、使用中および使用と使用の間において治療用組成物106を充填可能な空間内およびエンケーサライナー116の周囲に保持するために使用される。
【0043】
エンケーサ120の内側容積部へのアクセスは、使用者の手をエンケーサライナー116に挿入することを可能にする手用の開口140を介して達成される。手用の開口140は、通常の手袋と同様に、エンケーサ120の内側容積部に使用者の手を挿入あるいは抜き取ることを可能にするよう、エンケーサ120の最端部に配置される。
【0044】
クロージャ要素1425は、手用の開口140と追加の気密シール1402との間に配置され、エンケーサ120の内側容積部を一時的にシールする。たとえば、クロージャ要素1425は、使用と使用の間にエンケーサ120を再シールするために使用することができる凹凸クロージャおよび/または他の適切なクロージャを備える。この一時的なシールは、湿気の進入、細菌汚染、および内側容積部内への微粒子の蓄積を防止するために使用される。
【0045】
皮膚治療システム100の治療用組成物106は、室温で固体、半固体、または液体である。いくつかの実施形態では、治療用組成物106は泥ベースである。いくつかの実施形態では、治療用組成物106は粘土ベースである。いくつかの実施形態では、治療用組成物106はワックスベースであり、該ワックスは、固体、半固体、または液体状態である。いくつかの実施形態では、治療用組成物106はワックスを含まず、ほとんど液体状態である。本明細書に記載したように、治療用組成物106は、皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサ120に封入されるように、予め封入済みであるか、治療セッションの開始前に封入される。使用時には、標的の皮膚領域は、治療用組成物106と直接接触する。治療用組成物106の配合は、治療対象の皮膚状態、治療目的、指であるか手掌であるか、あるいは、足指であるか足首であるかという、皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサ120が適用される部位に応じて変化する。
【0046】
種々の実施形態では、皮膚治療システム100の治療用組成物106は、ホットローションおよび/またはコールドローションを含む。たとえば、治療用組成物106は、シアバターおよび/または皮膚の状態を改善するのに適した他の任意の保湿剤、皮膚軟化剤、および/または湿潤剤を含む。他の実施形態では、治療用組成物106は、皮膚のケミカルピーリング用のグリコール酸を含む。
【0047】
種々の実施形態において、皮膚治療システム100の治療用組成物106は、ワックスベースの組成物を含む。ワックスは、パラフィンワックス、ソイワックス、蜜蝋、およびパームワックスから選択される。一実施形態では、治療用組成物106 はパラフィンベースである。本実施形態で使用されるパラフィンは、皮膚を柔軟にし、潤いを与え、保護するとともに、いくつかの皮膚障害に対する治療に用いることもできる。パラフィンは、パラフィンワックス、流動パラフィンオイル(ミネラルオイル、ヌジョール、アデプシンオイル、アルボリン、グリモール、薬用パラフィン、またはサクソールとも呼ばれる)、半固体パラフィン(ワセリン、ペトロラタム、ホワイトペトロラタム、またはソフトパラフィンとも呼ばれる)、およびこれらの派生物から選択される。パラフィンワックスベースの治療用組成物106の融点温度は、約46℃~約68℃、約44℃~約60℃、約42℃~約55℃、または約39℃~約50℃の範囲である。
【0048】
皮膚治療の従来の業務用の設定では、業務用でない750W~100Wの電子レンジを用いた標準的なパラフィンの通常の溶融時間は、加熱される量に応じて、約10分~15分またはそれ以上である。このような加熱時間は長すぎるため、理想的ではない。さらに、
図8に示すように、マイクロ波加熱の場合であっても、治療用組成物106が手袋やブーツなどの身体部位の形状のエンケーサ120に封入されている場合、治療用組成物106は不均一に加熱されることが観察されている。このように不均一に加熱された場合、すべての領域において同一の治療用組成物106が使用されている場合には、手袋内の指部および親指部は手掌領域に比べて実質的に温度が高くなる。理論的に確認したものではないが、マイクロ波発生器200からのマイクロ波202の誘電加熱効果によって、使い捨て手袋102の領域ごとに、治療用組成物106の体積および表面積に変動が生じるため、マイクロ波の吸収に変動が引き起こされると考えられる。指用組成物132、親指用組成物134、および手掌用組成物130の間におけるマイクロ波の吸収変動、つまり吸収される特定の熱量を補償するために、治療用組成物106の配合を変更することで、身体部位の形状のエンケーサ120内における治療用組成物106を均一に溶融することが可能となる。
【0049】
パラフィンベースの治療用組成物106の溶融時間を短縮するために、サフラワーオイル、ビタミンEオイル、ココナッツオイルを含む種々のナッツオイルまたは種子オイルを用いて、パラフィンワックスと混合した後のパラフィンワックスの溶融時間への影響について試験した。理論的には、オイルを使用することにより、パラフィン組成物の初期粘度を低下させ、溶融工程を加速させることになる。しかしながら、試験したすべてのオイルがその目的を達成するわけではない。本明細書に記載される皮膚治療システム100の治療用組成物106の理想的な溶融時間は、熱源に応じて約1分~約2分である。
【0050】
試験中に、多くの異なる種類のオイルとパラフィンワックスとを混合すると、溶融したパラフィンワックスが流動化し、ワックスは再度固化または凝固することができなくなった。また、いくつかの種子オイルまたはナッツオイルは、パラフィンとうまく混合しない。再凝固またはゲル化が生じことによって、治療中および治療後に皮膚治療システム100を適用したり取り外したりすることが容易となる。ココナッツオイルとパラフィンとの混合は均質化され、比較的短い溶融時間とした場合に、特定の範囲の比率で、混合物によってパラフィンベースの治療用組成物106の再凝固またはゲル化が可能となった。治療用組成物106のこの特性は、ココナッツオイルが一般的な室温である約華氏80度未満(約26.7℃未満)において他のオイルと比較してより固体状態になりやすいために達成される。本明細書に記載したように、溶融時間および再凝固またはゲル化に要する時間を短縮することは、準備に要する時間を短縮し、治療中あるいは治療用組成物106が皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサ120に封入される前後において、治療用組成物106を身体部位の形状に形成および成形することを容易かつ迅速に行うことを可能にするため、望ましい。一実施形態では、本明細書に記載した皮膚治療システム100のパラフィンベースの治療用組成物106は、パラフィンと、ココナッツオイルを含む1つ以上のナッツオイルとを含む。一実施形態では、皮膚治療システム100のパラフィンベースの治療用組成物106は、パラフィンとココナッツオイルとを含む。
【0051】
パラフィンとココナッツオイルの組み合わせを追加および変更することによる製剤の継続的な実験によって明らかになったことは、2分以内に溶融しつつ、身体部位の形状で皮膚の上に保持されるシェルのような効果を得るための治療用組成物の最良の組み合わせは、パラフィンとココナッツオイルとを、治療用組成物106の重量に関して、約1:3から約3:1の比率での混合である。本明細書に記載されたエンケーサライナー116の有無にかかわらず、手袋、ブーツ、または他の身体部位の形状のエンケーサ120内においてこのような混合物が均一に溶融することを補助するために、いくつかのバリエーションが用いられる。
【0052】
一実施形態では、皮膚治療システム100の治療用組成物106は、パラフィンと、種子オイルおよびナッツオイルの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、パラフィンの濃度は、約25重量%から約75重量%である。いくつかの実施形態では、治療用組成物106中の種子オイルおよびナッツオイルの少なくとも1つは、ココナッツオイルを含む。種々の実施形態においては、ココナッツオイルの濃度は、約25重量%から約75重量%である。いくつかの実施形態では、皮膚治療システム100の治療用組成物106は、ココナッツオイルを約30重量%から約60重量%含み、パラフィンを約40重量%から約70重量%含む。一実施形態では、皮膚治療システム100の治療用組成物106は、ココナッツオイルを約35重量%から約55重量%含み、パラフィンを約45重量%から約65重量%含む。一実施形態では、皮膚治療システム100の治療用組成物106は、ココナッツオイルを約50重量%含み、パラフィンを約50重量%含む。
【0053】
身体部位の形状のエンケーサ120内のすべての組成物を同時に完全に溶融するために、たとえば、身体部位の形状のエンケーサ120の異なる部位で2つ以上の治療用組成物106を用いることにより、エンケーサ120の指、足指、手掌およびアンカー部分における組成物の融解潜熱を変化させるための他の改良を試した。理論的に確認したものではないが、物質の状態を固体から液体に変化させるためには、以前に過熱された領域ではより多くの熱吸収が必要であり、以前熱不足であった領域では熱吸収を抑える必要がある。したがって、さまざまな潜熱を有することにより、それぞれの治療用組成物106は、マイクロ波などの熱源に同じ時間曝露された後、溶融し、理想的な温度範囲内の温度に到達することができる。一実施形態では、手の形状のエンケーサ用の手掌用組成物130は、少なくとも約25重量%から約75重量%のパラフィンと、約25重量%から約75重量%のココナッツオイルとを含み、手の形状のエンケーサ用の指用組成物132および親指用組成物134は、少なくとも50重量%から70重量%のパラフィンと、少なくとも約30重量%から約50重量%のココナッツオイルとを含む。
【0054】
治療用組成物106の種々の実施形態は、カンナビノイドの経皮送達用のカンナビス(カンナビス・インディカおよび/またはカンナビス・サティビア)の種々のカンナビノイド含有抽出物を含む。いくつかの実施形態では、カンナビノイドは、非向精神性アルカロイドカンナビジオール(CBD)を含む。他の実施形態においては、カンナビノイドは、非向精神性カンナビジオール酸(CBDA)を含む。CBDAは、CBDAの脱炭酸を引き起こす加熱によってCBDに変換される。
【0055】
したがって、治療用組成物106は、薬効範囲の広いCBD、全薬効範囲CBD、CBDの単離物、CBDA、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、治療用組成物106は、薬効範囲の広いCBDオイルを含む。薬効範囲の広いCBDは、THC(テトラヒドロカンナビノール)を含む。薬効範囲の広いCBDの融点は70℃以上であるため、治療用組成物106が約35℃~約55℃の間で加熱された場合、THCはパラフィンワックスに残留する。単離したCBDを使用することの利点は、単離したCBDにはTHCが含まれないため、特定のカンナビノイドが求められる条件を標的にできることにある。
【0056】
CBD含有治療用組成物106を通じて経皮移動されたCBDによって、創傷関連の痛みの軽減、創傷治癒の促進、皮膚状態の痛みをコントロールするためのオピオイド鎮痛薬の必要性の低減など、局所投与されたCBDの利点が提供される。また、CBD含有治療用組成物106は、末梢神経障害性疼痛、線維筋痛症、変形性関節症、および筋骨格痛など、より深い組織の状態を改善する。また、CBDは、皮膚にアンチエイジング効果と抗酸化効果を提供する。また、CBDは、にきび、乾癬、および/または湿疹などの皮膚の状態を改善する抗炎症作用を有しており、CBDの抗炎症作用は、治療用組成物106中のパラフィン自体が有する抗炎症作用を補完する。局所CBDの利点は、全身性の副作用がないこと、消費者による自己投与の容易さ、および迅速な鎮痛作用によってさらに明らかである。
【0057】
以下に説明するように、CBDを治療用組成物106に添加することにより、治療用組成物106は、約45℃(華氏113度)~約55℃(華氏131度)の所望の溶融温度を維持することができる。種々の実施形態においては、CBDは、治療用組成物106の均質な混合物内で安定であるため、CBDは、ココナッツオイルなどの種子オイルおよび/またはナッツオイルと良好に結合する。たとえば、ココナッツオイル、パラフィン、およびCBDを含む治療用組成物106は混合することができ、相分離を回避して効率的な分散を維持することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、治療用組成物106は、ココナッツオイルとパラフィンを、50℃を超えて80℃未満の温度で、均質化するまで混合することによって製造することができる。CBDオイルには、20mg/mlから100mg/mlの濃度のCBDが含まれる。CBDオイルは、CBDの融点である65℃より高い温度に加熱される。加熱されたCBDオイルは、その後、ココナッツオイルおよびパラフィンの均質化した混合物に添加され、65℃より高い温度に加熱される。この温度で、混合物は均質化され、CBDオイルはココナッツオイルにブレンドされる。従来の香料、着色料、皮膚軟化剤、エッセンシャルオイル、油溶性ビタミン、および/または、抗酸化剤などの任意の添加剤を、CBD、ココナッツオイル、およびパラフィンの均質化された混合物に添加して、治療用組成物106を作製することができる。エンケーサ120とエンケーサライナー116との間の容積部に、60℃より高い温度で治療用組成物106が充填される。
【0059】
CBD含有治療用組成物106は、治療的に有効な成分量のCBDを含む。いくつかの実施形態では、CBDは、市販のCBDオイルおよび/またはCBDワックスを含む。例示的な一実施形態では、CBD含有治療用組成物106は、1kgのCBD含有治療用組成物106あたり、少なくとも約2mgのCBDを含む。他の例示的な実施形態では、CBD含有治療用組成物106中のCBD量は、1kgあたり約2mg~約100mgである。他の例示的な実施形態では、CBD含有治療用組成物106中のCBD量は、それぞれの皮膚治療システム100内で約50mgである。
【0060】
いくつかの実施形態では、治療用組成物106は、パラフィン、ココナッツオイル、およびCBDを含む。たとえば、治療用組成物106は、4:1から2:1の範囲の比率のパラフィンおよびココナッツオイルと、パラフィンおよびココナッツオイルの組み合わせに対して5mg/kg~100mg/kgの範囲となるCBDを含むことができる。いくつかの実施例では、単一のエンケーサ120におけるCBDの量は5mgであり、一対のエンケーサ120においては合計10mgである。
【0061】
いくつかの実施形態では、皮膚治療システム100のパラフィンベースの治療用組成物106は、パラフィン、ココナッツオイル、およびCBDを含むことができる。
【0062】
いくつかの実施例では、単一のエンケーサ120におけるCBDの量は5mgであり、一対のエンケーサ120においては合計10mgである。いくつかの実施例では、単一のエンケーサ120におけるCBDの量は25mgであり、一対のエンケーサ120においては合計50mgである。いくつかの実施例では、単一のエンケーサ120におけるCBDの量は50mgであり、一対のエンケーサ120においては合計100mgである。一実施例においては、単一のエンケーサ120におけるCBDの量は100mgであり、一対のエンケーサ120においては合計200mgである。
【0063】
理論的に確認したものではないが、治療用組成物106の温度が約48℃~約51℃の間である場合に、ココナッツオイル中のCBDは、エンケーサライナー116を通って移動する。熱は、CBDを治療用組成物106から使用者の皮膚の表面に移動させるための輸送機構となる。
【0064】
CBD含有治療用組成物106の種々の実施形態は、ステロイドなどの種々の添加剤を含む。たとえば、ステロイドは、1%ヒドロコルチゾンである。
【0065】
本明細書に記載された治療用組成物106は、少なくとも1つのエッセンシャルオイルをさらに含む。医療目的のために、約6滴~約12滴の医療グレードエッセンシャルオイルが治療用組成物106に添加される。エッセンシャルオイルの定量化のためのAFNOR-ISO規格を用いて本明細書で定義されるエッセンシャルオイルの1滴は、エッセンシャルオイル1mlあたり20滴の標準に基づけば、1mlの約20分の1となる。特定のエッセンシャルオイルの標準が粘度のために異なる場合には、それに応じて1滴の量が調整される。一実施形態では、エッセンシャルオイルは、治療用組成物106が皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサ120に封入される前に、治療用組成物106に添加され混合される。一実施形態では、エッセンシャルオイルは、皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサ120を標的の皮膚領域に適用する際に、身体部位の形状のエンケーサ120に予め封入された治療用組成物106に添加されるため、治療中の特定の個人の特定の状態に対して、異なるエッセンシャルオイルを使用することが可能となる。治療用組成物106のエッセンシャルオイルおよびアロマオイルは、ペパーミントオイル、シナモンリーフオイル、レモングラスオイル、クローブオイル、ヒマシ油、オレンジオイル、ユーカリオイル、ティーツリーオイル、ウィンターグリーンオイル、パッチーリオイル、ラベンダー、ベルガモット、サンダルウッド、カモミール、アルデヒドC16、α-テルピネオール、アミル桂皮アルデヒド、サリチル酸アミル、アニシックアルデヒド、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、シンナムアルデヒド、桂皮アルコール、カルバクロル、カルベオール、シトラル、シトロネラル、シトロネロール、p-シメン、フタル酸ジエチル、サリチル酸ジメチル、ジプロピレングリコール、ユーカリプトール、オイゲノール、イソオイゲノール、ガラキソリド、ゲラニオール、グアヤコール、イオノン、メントール、サリチル酸メチル、アントラニル酸メチル、メチルイオノン、α-フェランドレン、ペニーロイヤルオイル、ペリルアルデヒド、1-または2-フェニルエチルアルコール、1-または2-フェニルエチルプロピオネート、ピペロナール、ピペロニルアセテート、ピペロニルアルコール、D-プレゴン、テルピネン-4-オール、テルピニルアセテート、4―tert―ブチルシクロヘキシルアセテート、タイムオイル、チモール、トランスアネトールの代謝物、バニリン、エチルバニリン、およびこれらの組み合わせから選択することができる。
【0066】
一実施形態では、痛みを和らげるためのエッセンシャルオイルの混合物は、ペパーミントオイル、シナモンリーフオイル、クラリセージ、およびオレンジオイルからなる。一実施形態では、抗真菌効果と抗菌効果のためのエッセンシャルオイルの混合物は、ティーツリーオイル、クローブオイル、レモンオイル、ユーカリオイル、およびパチョリオイルからなる。一実施形態では、リラクゼーションのためのエッセンシャルオイルの混合物は、ラベンダー、ベルガモット、サンダルウッド、およびカモミールからなる。また、さらなる治療効果を追加するために、アロマセラピーオイルを用いることもできる。一実施形態では、パラフィンおよびココナッツオイルからなる治療用組成物106は、少なくとも1つのアロマオイルをさらに含む。
【0067】
パラフィンベースの治療用組成物106は、公知の芳香剤、着色剤、皮膚軟化剤、抗酸化剤などの任意の添加剤をさらに含む。抗酸化剤は、天然のものでも合成のものでもよい。適切な抗酸化剤は、アスコルビン酸およびその塩、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アノキソマー、N-アセチルシステイン、イソチオシアン酸ベンジル、マミノ安息香酸、o-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸(PABA)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、カフェイン酸、カンタキサンチン、α―カロテン、β―カロテン、βーアポーカロテン酸、カモソル、カルバクロル、カテキン、ガレートセチル、クロロゲン酸、クエン酸およびその塩、クローブ抽出物、コーヒー豆抽出物、p-クマン酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ドデシルガレート、エデチン酸、エラグ酸、エリソルビン酸、エリトルビン酸ナトリウム、エスクレチン、エスキュリン、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ガレートエチル、エチルマルトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ユーカリ抽出物、オイゲノール、フェルラ酸、フラボノイド(たとえば、カテキン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ポリフェノールエピガロカテキン-3-ガレート)、フラボン(たとえば、アピゲニン、クリシン、ルテオリン)、フラボノール(たとえば、ダチセチン、ミリセチン、デエンフェロ)、フラバノン、フラキセチン、フマリック酸、没食子酸、ゲンチアナ抽出物、グルコン酸、グリシン、グアヤクムガム、ヘスペレチン、α-ヒドロキシベンジルホスフィン酸、ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキノン、N-ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシトリロソル、ヒドロキシ尿素、米ぬか抽出物、乳酸およびその塩、レシチン、クエン酸レシチン、R―α―リポ酸、ルテイン、リコピン、リンゴ酸、マルトール、5-メトキシトリプタミン、没食子酸メチル、クエン酸モノグリセリド、クエン酸モノイソプロピル、モリン、β―ナフトフラボン、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、ガレートオクチル、シュウ酸、クエン酸パルミチル、フェノチアジン、ホスファチジルコリン、リン酸、ホスフェート、フィチン酸、フィチルユビクロメル、ピメント抽出物、ガレートプロピル、ポリホスフェート、ケルセチン、トランスレスベラトロール、ローズマリー抽出物、ロスマリン酸、セージ抽出物、セサモール、シリマリン、シナピン酸、コハク酸、クエン酸ステアリル、シリンギン酸、酒石酸、チモール、トコフェロール(すなわち、α―、βー、γ―、およびδ―トコフェロール)、トコトリエノール(すなわち、α―、βー、γ―、およびδ―トコトリエノール)、チロソル、バニル酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール(すなわち、Ionox 100)、2,4-(トリス-3’、5’-ビ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-メシチレン(すなわち、Ionox 330)、2,4,5-トリヒドロキシブチロフェノン、ユビキノン、ターシャリーブチルヒドロキノン(TBHQ)、チオジプロピオン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、トリプタミン、チラミン、尿酸、ビタミンKおよび誘導体、ビタミンQ10、小麦胚芽油、ゼアキサンチン、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。当業者であれば理解できるように、本明細書に記載されたものを含む組成物に組み込まれる抗酸化剤は、化合物の純粋な形態に加えて、抗酸化剤のすべての潜在的な塩およびエステル形態を包含することができる。いくつかの実施形態では、抗酸化剤は、酢酸トコフェリル、リノール酸トコフェリル、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェリル、リン酸アスコルビルトコフェリル、ジオレイルトコフェリルメチルシラノール、トコフェルソラン、およびリノール酸トコフェリル/オレイン酸などのビタミンE化合物を含む。一実施形態では、ビタミンEオイルには、微量のサフラワーオイルやその他のオイルが含まれる。他の実施形態では、ビタミンE化合物は、サフラワー種子オイルを最大量として、酢酸トコフェリル、米ぬか油、アーモンド油、アプリコット油、小麦胚芽油、およびレシチンをさらに含有する。一実施形態では、治療用組成物106は、約25重量%から約75重量%の範囲の濃度のパラフィンと、約25重量%から約75重量%の範囲の濃度のココナッツオイルとを含み、約2重量%から7重量%の抗酸化剤の混合物をさらに含む。
【0068】
皮膚治療システム100の治療用組成物106が液体ベースの組成物である場合、固体から液体へ、そして再度固相に戻る変化は生じない。いくつかの実施形態では、使用前に予熱または予冷工程が必要になるが、他のいくつかの実施形態では、使用前の予熱または予冷工程は不要である。一実施形態では、液体ベースの組成物は、乳酸およびグリコール酸を含むアルファヒドロキシ酸を含み、および/または、サリチル酸を含むベータヒドロキシ酸、およびこれらの任意の組み合わせを含む治療用組成物106からなる。乳酸およびグリコール酸を含むアルファヒドロキシ酸、および/または、サリチル酸を含むベータヒドロキシ酸を含む液体ベースの組成物は、エッセンシャルオイル、香料、着色料、皮膚軟化剤、抗酸化剤のほか、吸収剤、吸着剤、pHコントローラ、公知の再水和物質を含む他の添加剤をさらに含むことができる。一実施形態では、皮膚治療システム100用の液体ベースの治療用組成物106は、乳酸、グリコール酸、サリチル酸、レモン油、ポリクアテルニウム-10、PEG-40硬化ヒマシ油、水酸化ナトリウム、および、ビタミンEを含む1つ以上の抗酸化剤を含む。液体ベースの治療用組成物106に好適な種々のエッセンシャルオイルおよび抗酸化剤については、詳細に上述した。
【0069】
本発明は、皮膚に火傷を負わせることなく使用前に液化させるために種々の発熱体により処理できる、身体部位の形状のエンケーサ120に含まれる治療用組成物106を利用した皮膚治療方法を提供する。本明細書に記載される皮膚治療のための皮膚治療システム100の使用方法は、通常は1つ以上の発熱体を用いて治療用組成物106を含むエンケーサ120を加熱し、開封したエンケーサ120を身体部位に取り付けることによって標的とする皮膚領域にエンケーサ120を適用し、治療の最後には標的とする皮膚領域からエンケーサ120を取り外す工程からなる。
【0070】
パラフィンベースの治療用組成物106のいくつかは、適用前に溶融するために加熱する必要がある。パラフィンワックスの融点温度は、通常は約46℃(華氏114.8度)~約68℃(華氏154.4度)の範囲である。黄色ワセリンベースの治療用組成物106の融点は、通常は人体の体温の数度以内であり、約37℃(華氏98.6度)である。流動パラフィンベースの治療用組成物106および他の液体ベースの組成物は、皮膚への適用時に快適な感触を与えるため、体温まで予熱するようにしてもよい。保管状態、室温、および特定の治療温度要件によっては、本明細書に記載した皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサ120に封入した治療用組成物106は、発熱体による加熱工程を必要とする。好適な発熱体は、電子レンジ、コンロ、ホットタオルキャビネット、加熱コイル、加熱パッド、ヒーター、加熱ランプ、ウォーマー、ラジエータ、ボイラー、タオルスチーマーなどのスチーマー、温水槽、ハイドロコレーター、および他の公知の任意の装置または機器から選択される。一実施形態では、発熱体は持ち運び可能である。
【0071】
いくつかの実施形態では、発熱体は、皮膚治療システム100に備えられる。加熱温度は、皮膚治療システム100に含まれる発熱体によって提供され、治療用組成物106の温度は、接触または皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサ106に取り付けられた温度インジケータによって示される。治療用組成物106の加熱時間が1分間~5分間、好ましくは1分間~2分間である場合、治療用組成物106の溶融温度は約45℃(華氏113度)~約55℃(華氏131度)の範囲である。治療用組成物106の加熱時間が1分間~2分間である場合、治療用組成物106の溶融温度は、約48℃(華氏119度)~約51℃(華氏124度)の範囲である。一実施形態では、治療用組成物106は、組成物の約25重量%~75重量%の濃度のパラフィンと、組成物の約25重量%~75重量%の濃度のココナッツオイルとからなり、約48℃~約51℃の間の溶融温度を有し、約1分~5分で組成物が均一に溶融する。
【0072】
皮膚治療システム100の治療用組成物106が所定の温度範囲に達した後、治療用組成物106を含むシールされたエンケーサ120は、切断、ファスナを開く、またはエンケーサ120のクロージャ1425を裂くことによって、開封される。身体部位がエンケーサ120内に挿入されると、標的となる皮膚領域は、治療用組成物106に接触する、浸す、または覆われることによって、治療用組成物106と直接接触する。その後、エンケーサ120は、治療中の安定化を図るため、粘着テープ、ストラップ、紐、弾性バンド、またはチューブを用いて身体部位に取り付けられる。皮膚への適用は、10分、20分、30分、60分、120分以上、またはその間の任意の期間で継続する。ある時点で治療が終了すると、エンケーサ120は、治療用組成物106を備えるエンケーサ120から身体部位を取り外すことによって身体部位から解放される。
【0073】
皮膚治療のために本明細書に記載した皮膚治療システム100を使用する方法は、身体部位の形状のエンケーサ120を組み立てることをさらに含む。発熱体として電子レンジを使用する例として、方法300として
図10に示したフローチャートを参照すると、以下の工程が実施される。方法300の初期工程302において、第1のワックスベースの組成物は、マイクロ波エネルギー発生器によって加熱可能となるように調製される。次に、工程304に示すように、マイクロ波エネルギー発生器によって加熱可能である第2のワックスベースの組成物が調製される。次に、工程306に示すように、人体の身体部位を収容するよう構成され配置された、少なくとも1つの身体部位の形状のエンケーサが提供される。工程308に示すように、1つ以上のマイクロ波で加熱可能なワックスベースの組成物は、該組成物をエンケーサ内の薄層に広げることによって収容される。工程310に示すように、マイクロ波で加熱可能なワックスベースの組成物のそれぞれは、ワックス要素を含む少なくとも1つの第1物質と、オイル要素を含む少なくとも1つの第2物質を含むよう調製される。工程312に示すように、マイクロ波で加熱可能な第1のワックスベースの組成物は、オイル要素に対して第1の比率Xのワックス要素を含むよう調製され、マイクロ波で加熱可能な第2のワックスベースの組成物は、オイル要素に対して第2の比率Yのワックス要素を含むよう調製される。得られたマイクロ波で加熱可能な第1のワックスベースの組成物の溶融潜熱は、マイクロ波で加熱可能な第2のワックスベースの組成物の溶融潜熱とは実質的に異なる。最後に、工程314に示すように、マイクロ波による加熱が施され、使用前に液化されるワックスベースの組成物を用いて、皮膚に火傷を負わせることなく施される皮膚治療は、身体部位の形状のエンケーサ内のマイクロ波で加熱可能な第1のワックスベースの組成物と、マイクロ波で加熱可能な第2のワックスベースの組成物との配置および量を調整し、ワックスベースの組成物の溶融を均一化して、治療対象の身体部位の皮膚組織の損傷を防ぐよう補助することによって、提供される。
【0074】
追加例として、
図6Bは、本発明の一実施形態による、予めパッケージ化されたキットまたは装置を使用するための例示的な取扱説明書を示す。使用方法の一実施形態では、ワックスベースの使い捨てエンケーサ120は、
図4A、
図4B、
図6Aおよび
図6Bに示したように、1つ以上の治療用組成物106と少なくとも1つの取扱説明書410とを備えた少なくとも1つの使い捨て手袋102または使い捨てブーツ104を備える電子レンジで使用可能な密封ボックス114からなる包装済キット400として提供される。
【0075】
例示的な製造方法においては、熱活性型インクなどの温度インジケータ118は、エンケーサ120を形成する第1のフィルム基材1410および第2のフィルム基材1415の少なくとも1つに噴霧、印刷、スタンプ、および/または塗布される。エンケーサライナー116は、第1のフィルム基材1410および第2のフィルム基材1415の間に積層される。所望の身体部位の形状の輪郭を有するホットコンプレスを、第1のフィルム基材1410および第2のフィルム基材1415の積層に適用することができる。ホットコンプレスは、第1の気密シール1400を構成し、エンケーサ102の内側容積部におけるエンケーサライナー116の位置を固定すると同時に、第1のフィルム基材1410とエンケーサライナー116の第1層(上層)との間の第1の充填可能な空間と、第2のフィルム基材1415とエンケーサライナー116の第2層(底層)との間の第2の充填可能な空間を形成する。
【0076】
治療用組成物106は、2つの充填可能な空間(上層および底層)に注入されるか、あるいは配置される。完了すると、第1のフィルム基材1410とエンケーサライナー116の第1層との間に第2の気密シールが形成され、治療用組成物106は、第1の充填可能な空間(上層)において所定の位置にシールされる。同様に、第2のフィルム基材1415とエンケーサライナー116の第2層との間に第3の気密シールが形成され、治療用組成物106は、第2の充填可能な空間(底層)にシールされる。最後に、手用の開口140と追加の気密シール1402との間にクロージャ要素1425が備えられ、エンケーサ120の内側容積部全体およびエンケーサライナー116の内側容積部が、周囲の環境から封止される。
【0077】
図15は、皮膚治療の種々の方法を示す皮膚治療システム100の例示的な断面図である。種々の実施形態では、エンケーサ120、エンケーサライナー116、エンケーサ120とエンケーサライナー116との間の充填可能な空間に配置された治療用組成物106を備える皮膚治療システム100を提供される。充填可能な空間は、エンケーサ120の袖口で接続されたエンケーサ120の内面およびエンケーサライナー116の外面によって形成される容積部である。いくつかの実施形態では、充填可能な空間は、エンケーサ120の袖口およびエンケーサ120の指先(および親指先)で接続されたエンケーサ120の内面およびエンケーサライナー116の外面によって形成される容積部である。これらの実施形態では、充填可能な空間は、エンケーサライナー116の両方の外面上に配置され、かつ、エンケーサライナー116は、使用者が手などの身体部位を皮膚治療システム100から引き抜いた際にも、その指先部がエンケーサ120に結合されているため、所定の位置に保持される。
【0078】
治療用組成物106は、エンケーサライナー116によって充填可能な空間に保持され、治療用組成物106は、使用者の皮膚1450と接触していない。エンケーサライナー116は、45℃(華氏113度)~55℃(華氏131度)の範囲まで昇温させると、治療用組成物106の1つ以上の成分に対して透過性となる、ポリプロピレン不織布または同等の材料により構成されている。
【0079】
たとえば、本明細書に記載したパラフィンおよびココナッツオイルからなる治療用組成物106が45℃(華氏113度)~55℃(華氏131度)の範囲の温度である場合、ココナッツオイルの一部は、エンケーサライナー116を通って、身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1140される。他の実施例においては、本明細書に記載したように、パラフィン、ココナッツオイル、およびビタミンEからなる治療用組成物106が45℃~55℃の範囲の温度である場合、ココナッツオイルおよびビタミンEの一部は、エンケーサライナー116を通って、身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1140される。他の実施例においては、本明細書に記載したように、パラフィン、ココナッツオイル、およびエッセンシャルオイルからなる治療用組成物106が45℃~55℃の範囲の温度である場合、ココナッツオイルおよびエッセンシャルオイルの一部は、エンケーサライナー116を通って、身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1140される。これらの実施例では、パラフィンはエンケーサライナー116によって遮断され、パラフィンは皮膚1450と接触しない。
【0080】
図15に示すように、身体部位1460は、身体部位1460の内部構造1455のいずれかの側の皮膚1450によって定義される。たとえば、身体部位は、指、親指、手、足指、足、脚の一部、または腕の一部である。
【0081】
種々の実施形態によって、皮膚の治療方法が提供される。たとえば、治療方法は、エンケーサ120、エンケーサライナー116、エンケーサ120およびエンケーサライナー116の間の充填可能な空間に配置された治療用組成物106を備えた皮膚治療システム100を準備し、治療用組成物106を35℃~55℃の範囲の高温に加熱することを含むことができる。当該方法は、身体部位1460をエンケーサ120の開口部に挿入し、身体部位1460を取り囲む皮膚表面1450にエンケーサライナー116を接触させることを含むことができる。当該方法は、治療用組成物106を昇温された温度に保ちながら皮膚表面1450とエンケーサライナー116との接触を維持し、治療用組成物106からの少なくとも1つの成分が皮膚1450に熱輸送1440されることを含むことができる。当該方法は、パラフィンの皮膚1450への到達を阻止することを含むことができる。前記少なくとも1つの成分は、ココナッツオイルでもよい。前記少なくとも1つの成分は、ビタミンEでもよい。前記少なくとも1つの成分は、ラノリンでもよい。皮膚治療により、乾燥した皮膚1450に水分を付加することができる。皮膚治療により、皮膚1450におけるひび割れを低減させることができる。皮膚治療により、関節炎による痛みを和らげることができる。皮膚治療は、皮膚療法とすることができる。
【0082】
図16は、薬剤の経皮移動の種々の方法を示す、皮膚治療システム100の例示的な断面図である。いくつかの実施形態は、関節および他の身体部位の痛みおよび炎症を治療するための任意の数の組成物および手順と併せて実施される、熱安定性治療用組成物106を含むための種々の材料が使用される。本明細書に記載されるシステムは、本発明の単なる例示的な適用を示す。これら実施形態の種々の代表的な適用例としては、皮膚、痛み、創傷、および/または炎症性の病状の治療のために人体の任意の部位への適用が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、皮膚を治療することにより、身体部位1460の内部構造1455における炎症を軽減することもできる。内部構造1455の例としては、筋肉、腱、靭帯、または結合組織を挙げることができる。いくつかの実施形態では、治療用組成物から皮膚1450への少なくとも1つの成分の熱輸送1444には、皮膚1450を通じた身体部位1460の内部構造1455への少なくとも1つの成分の輸送も含まれる。いくつかの実施形態では、身体部位1460の内部構造1455における捻挫の治療を含むことができ、これは、治療用組成物から身体部位1460の内部構造1455への少なくとも1つの成分の熱輸送1444を含むことができる。これらの実施形態のいくつかの実施例では、治療用組成物106は医療用有効成分を含むことができ、該医療用有効成分は、身体部位1460の内部構造1445へ熱輸送1444され、筋肉、腱、靭帯、または結合組織の少なくとも1つを治療することができる。医療用有効成分としては、少なくとも1つの抗炎症剤、抗酸化剤、ステロイド、エッセンシャルオイル、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0084】
たとえば、本明細書に記載したように、パラフィン、ココナッツオイル、および医療用有効成分からなる治療用組成物106が45℃(華氏113度)~55℃(華氏131度)の範囲の温度である場合、ココナッツオイルの一部は、エンケーサライナー116を通って身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1140され、医療用有効成分は皮膚1450に熱輸送1444され、身体部位1460の内部構造1455に熱輸送1444される。他の実施例では、本明細書に記載したように、パラフィン、ココナッツオイル、ビタミンE、および医療用有効成分からなる治療用組成物106が45℃~55℃の範囲の温度である場合、ココナッツオイルおよびビタミンEの一部は、エンケーサライナー116を通って身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1140され、医療用有効成分は、皮膚1450に熱輸送1444され、身体部位1460の内部構造1455に熱輸送1444される。他の実施例では、本明細書に記載したように、パラフィン、ココナッツオイル、エッセンシャルオイル、および医療用有効成分からなる治療用組成物106が45℃~55℃の範囲の温度である場合、ココナッツオイルおよびエッセンシャルオイルの一部は、エンケーサライナー116を通って身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1140され、医療用有効成分は、皮膚1450に熱輸送1444され、身体部位1460の内部構造1455に熱輸送1444される。これらの実施例では、パラフィンはエンケーサライナー116によって遮断され、パラフィンは皮膚1450と接触しない。
【0085】
いくつかの実施形態では、医療用有効成分はCBDである。理論的に確認したものではないが、CBDは、治療用組成物106の温度が48℃(華氏119度)~約51℃(華氏124度)の間である場合に、エンケーサライナー116を通ってココナッツオイルによって輸送され、皮膚に輸送される。熱は、治療用組成物106からのCBDを使用者の皮膚表面に運ぶための輸送機構となる。加熱された治療用組成物106によって皮膚1450に提供される熱は、皮膚1450の透過性を増大させるため、CBDは皮膚1450(場合によっては、内部構造1455)により深く浸透し、組織内でより長く持続する。これにより、同一濃度のCBDオイルを室温で皮膚に擦り込む場合と比較して、より大量のCBDを治療に使用することができる。
【0086】
炎症の治療方法は、パラフィン、ココナッツオイル、およびCBDからなる治療用組成物106を有するエンケーサ120を提供することを含み、治療用組成物106は、エンケーサ120とエンケーサライナー122との間に配置される。当該方法は、治療用組成物106を48℃(華氏119度)~約51℃(華氏124度)の間の温度に加熱し、エンケーサライナー122を皮膚の表面に接触させることを含むことができる。当該方法は、皮膚の表面に熱を加えて皮膚の透過性を増大させることと、CBDを含むオイルを治療用組成物106から皮膚に輸送することを含むことができる。治療用組成物106中のCBDの量は、5mg~100mgである。また、当該オイルは、ココナッツオイルを含むことができる。治療用組成物106中のココナッツオイルとCBDとの比率は、重量比で40:1から5:1の範囲である。
【0087】
いくつかの実施形態では、炎症および/または痛みを軽減する方法は、エンケーサ120、エンケーサライナー116、エンケーサ120およびエンケーサライナー116の間の充填可能な空間に配置された治療上有効量のCBDを含む治療用組成物106からなる皮膚治療システム100を提供し、身体部位1460の内部構造1455において標的とする炎症部位に治療上有効量のCBDを熱輸送することを含む。
【0088】
いくつかの実施形態においては、ストレス、不安、および/またはPSDを緩和する方法は、エンケーサ120、エンケーサライナー116、エンケーサ120およびエンケーサライナー116の間の充填可能な空間に配置された治療上有効量のCBDを含む治療用組成物106からなる皮膚治療システム100を提供し、身体部位1460の内部構造1455における少なくとも1つの血管に治療上有効量のCBDを熱輸送することを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では抗酸化剤を移動させる方法は、エンケーサ120、エンケーサライナー116、エンケーサ120およびエンケーサライナー116の間の充填可能な空間に配置された治療上有効量のCBDを含む治療用組成物106からなる皮膚治療システム100を提供し、身体部位1460の内部構造1455に治療上有効量のCBDを熱輸送することを含む。
【0090】
前述の説明では、本発明について、特定の例示的な実施形態を参照して説明した。しかしながら、記載された本発明の範囲から離れることなく、さまざまな改変や変更をすることができる。本明細書は、限定的なものではなく、例示的なものであり、すべての改変は、本発明の範囲に含まれるものとする。したがって、本発明の範囲は、上述した特定の実施例だけではなく、記載されている一般的な実施形態とそれらの法的な均等物によって画定される。たとえば、任意の方法または工程の実施形態に記載されている工程は、任意の適切な順序で実行することができ、特定の実施例において示した明示的な順序に限定されない。さらに、任意のシステムの実施形態で記載した部品および/または要素は、本発明と実質的に同一の結果を得るために様々な順列で組み合わせてもよい。したがって、本発明は、特定の実施例に記載された特定の構成に限定されることはない。
【0091】
利点、その他の有利な効果、および課題の解決策について、特定の実施形態に関して上述されている。ただし、いかなる利点、有利な効果、および課題の解決策も、これらが、特定の利点、特定の有利な効果、または特定の解決策をもたらしたり、より顕著となる場合であっても、これらが、必須の要件、本質的な特徴、あるいは、本質的な要素として、解釈されるべきではない。
【0092】
「からなる」、「備える」、またはこれらの他の変化形は、非排他的な包含を指すことを意図しており、工程、方法、物品、組成物、または要素のリストを備えた装置は、記載されたこれらの要素のみを含むものではなく、このような工程、方法、物品、組成物または装置に明示的に記載されていない、あるいは固有ではない他の要素も含みうる。本明細書に具体的に記載されていないものに加えて、本発明を実施するために使用される、上記の構造、配置、用途、比率、要素、材料、または部品の他の組み合わせおよび/または改変についても、これらの一般的な原理から逸脱することなく、特定の環境、製造仕様、設計パラメータ、その他の操作要件に応じて変更、あるいは、これらに特に適合させることが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体部位の皮膚を調整または治療するための皮膚治療システ
ムであって、
該システムは、
身体部位の形状のエンケーサ
であって、
該身体部位の形状のエンケーサの上部を形成する第1のフィルム基質と、
該身体部位の形状のエンケーサの底部を形成する第2のフィルム基質と、
を備えるエンケーサと、
前記第1のフィルム基質と前記第2のフィルム基質との間に配置され、その外周縁が前記第1のフィルム基質および第2のフィルム基質の外周縁との間で密封されて、気密シールを形成するエンケーサライナーであって、
前記第1のフィルム基質と該エンケーサライナーの第1層との間に第1の充填可能な空間を、
前記第2のフィルム基質と該エンケーサライナーの第2層との間に第2の充填可能な空間を、および、
該エンケーサライナーの第1層および第2層によって画定され、前記第1の充填可能な空間と前記第2の充填可能な空間との間に配され、前記身体部位を収容するよう構成された内部容積部を、
形成するエンケーサライナーと、および、
前記第1の充填可能な空間および第2の充填可能な空間の内部に収容された治療用組成物と、
を備える、
皮膚治療システム。
【請求項2】
前記第1のフィルム基質と前記エンケーサライナーの第1層との間に備えられ、前記第1の充填可能な空間をシールする第2の気密シールと、
前記第2のフィルム基質と前記エンケーサライナーの第2層との間に備えられ、前記第2の充填可能な空間をシールする第3の気密シールと、
をさらに備える、請求項1に記載の
皮膚治療システム。
【請求項3】
前記第2の気密シールおよび前記第3の気密シールと、アクセス開口部との間に配置されたクロージャ要素をさらに備え、前記アクセス開口部は、前記身体部位が前記エンケーサライナーの前記内部容積部に挿入されることを可能にするよう構成されている、請求項2に記載の
皮膚治療システム。
【請求項4】
前記エンケーサライナーは、ポリプロピレン繊維からなる、請求項1に記載の
皮膚治療システム。
【請求項5】
前記エンケーサライナーは、紙製のシートからなる、請求項1に記載の
皮膚治療システム。
【請求項6】
前記第1のフィルム基質上に配置され、該第1のフィルム基質上において見ることが可能なサーモクロミクインジケータをさらに備える、請求項2に記載の
皮膚治療システム。
【請求項7】
前記第1のフィルム基質上に
配置された前記サーモクロミクインジケータの位置とは異なる第2の位置に配置された第2のサーモクロミクインジケータをさらに備える、請求項6に記載の
皮膚治療システム。
【請求項8】
前記エンケーサライナーは、前記身体部位の形状のエンケーサの形状と同一の形状である、請求項2に記載の
皮膚治療システム。
【請求項9】
前記エンケーサライナーの第1層および第2層は、前記治療用組成物のうちの1以上の成分を浸透させることが可能である、請求項1に記載の皮膚治療システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
いくつかの実施形態では、発熱体は、皮膚治療システム100に備えられる。加熱温度は、皮膚治療システム100に含まれる発熱体によって提供され、治療用組成物106の温度は、接触または皮膚治療システム100の身体部位の形状のエンケーサ120に取り付けられた温度インジケータによって示される。治療用組成物106の加熱時間が1分間~5分間、好ましくは1分間~2分間である場合、治療用組成物106の溶融温度は約45℃(華氏113度)~約55℃(華氏131度)の範囲である。治療用組成物106の加熱時間が1分間~2分間である場合、治療用組成物106の溶融温度は、約48℃(華氏119度)~約51℃(華氏124度)の範囲である。一実施形態では、治療用組成物106は、組成物の約25重量%~75重量%の濃度のパラフィンと、組成物の約25重量%~75重量%の濃度のココナッツオイルとからなり、約48℃~約51℃の間の溶融温度を有し、約1分~5分で組成物が均一に溶融する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
例示的な製造方法においては、熱活性型インクなどの温度インジケータ118は、エンケーサ120を形成する第1のフィルム基材1410および第2のフィルム基材1415の少なくとも1つに噴霧、印刷、スタンプ、および/または塗布される。エンケーサライナー116は、第1のフィルム基材1410および第2のフィルム基材1415の間に積層される。所望の身体部位の形状の輪郭を有するホットコンプレスを、第1のフィルム基材1410および第2のフィルム基材1415の積層に適用することができる。ホットコンプレスは、第1の気密シール1400を構成し、エンケーサ120の内側容積部におけるエンケーサライナー116の位置を固定すると同時に、第1のフィルム基材1410とエンケーサライナー116の第1層(上層)との間の第1の充填可能な空間と、第2のフィルム基材1415とエンケーサライナー116の第2層(底層)との間の第2の充填可能な空間を形成する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
たとえば、本明細書に記載したパラフィンおよびココナッツオイルからなる治療用組成物106が45℃(華氏113度)~55℃(華氏131度)の範囲の温度である場合、ココナッツオイルの一部は、エンケーサライナー116を通って、身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1440される。他の実施例においては、本明細書に記載したように、パラフィン、ココナッツオイル、およびビタミンEからなる治療用組成物106が45℃~55℃の範囲の温度である場合、ココナッツオイルおよびビタミンEの一部は、エンケーサライナー116を通って、身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1440される。他の実施例においては、本明細書に記載したように、治療用組成物106は、パラフィン、ココナッツオイル、およびエッセンシャルオイルからなる。治療用組成物106が45℃~55℃の範囲の温度である場合、ココナッツオイルおよびエッセンシャルオイルの一部は、エンケーサライナー116を通って、身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1440される。これらの実施例では、パラフィンはエンケーサライナー116によって遮断され、パラフィンは皮膚1450と接触しない。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
たとえば、本明細書に記載したように、治療用組成物106は、パラフィン、ココナッツオイル、および医療用有効成分からなる。治療用組成物106が45℃(華氏113度)~55℃(華氏131度)の範囲の温度である場合、ココナッツオイルの一部は、エンケーサライナー116を通って身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1440され、医療用有効成分は皮膚1450に熱輸送1444され、身体部位1460の内部構造1455に熱輸送1444される。他の実施例では、本明細書に記載したように、治療用組成物106は、パラフィン、ココナッツオイル、ビタミンE、および医療用有効成分からなる。治療用組成物106が45℃~55℃の範囲の温度である場合、ココナッツオイルおよびビタミンEの一部は、エンケーサライナー116を通って身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1440され、医療用有効成分は、皮膚1450に熱輸送1444され、身体部位1460の内部構造1455に熱輸送1444される。他の実施例では、本明細書に記載したように、治療用組成物106は、パラフィン、ココナッツオイル、エッセンシャルオイル、および医療用有効成分からなる。治療用組成物106が45℃~55℃の範囲の温度である場合、ココナッツオイルおよびエッセンシャルオイルの一部は、エンケーサライナー116を通って身体部位1460の皮膚1450に熱輸送1440され、医療用有効成分は、皮膚1450に熱輸送1444され、身体部位1460の内部構造1455に熱輸送1444される。これらの実施例では、パラフィンはエンケーサライナー116によって遮断され、パラフィンは皮膚1450と接触しない。
【国際調査報告】