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特表2022-522248ポリシロキサン粉末フィラーの調製方法、これによって得られたポリシロキサン粉末フィラーおよびその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】ポリシロキサン粉末フィラーの調製方法、これによって得られたポリシロキサン粉末フィラーおよびその応用
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/06 20060101AFI20220407BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220407BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C08G77/06
C08L101/00
C08L83/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572692
(86)(22)【出願日】2019-09-29
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 CN2019109108
(87)【国際公開番号】W WO2020168719
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/075831
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521377155
【氏名又は名称】浙江三時紀新材科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】陳 樹真
(72)【発明者】
【氏名】李 鋭
【テーマコード(参考)】
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
4J002AA00W
4J002CP03X
4J002FD01X
4J002GQ05
4J246AA03
4J246BA12X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA24X
4J246FA151
4J246FA421
4J246FE06
4J246FE40
4J246GB32
4J246GC53
4J246HA59
(57)【要約】
ポリシロキサン粉末フィラーの調製方法であって、少なくとも60wt%のT単位を含むポリシロキサンを提供し、ここで、T単位=RSiO-であり、Rは、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な有機基でり、および不活性ガス雰囲気下または真空条件下で、当該ポリシロキサンに対して熱処理し、熱処理温度は、250度以上乃至750度以下であることにより、ポリシロキサン中のシラノール基が縮合されて、真密度が1.33g/cm以上のポリシロキサン粉末フィラー、より好ましくは、1.34g/cm以上のポリシロキサン粉末フィラーを得るようにする。上記調製方法によって得られたポリシロキサン粉末フィラーは、低誘電率、低誘電損失および低放射能を有し、半導体パッケージング材料、回路基板およびその中間半製品、高周波および高速回路基板のプリプレグまたは銅張積層板に適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン粉末フィラーの調製方法であって:
少なくとも60wt%のT単位を含むポリシロキサンを提供し、ここで、T単位=RSiO-であり、Rは、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な有機基である段階S1と;および
不活性ガス雰囲気下または真空条件下で、当該ポリシロキサンに対して熱処理し、熱処理温度は、300度以上700度以下であることにより、ポリシロキサン中のシラノール基が縮合されて、真密度が1.33g/cm以上のポリシロキサン粉末フィラーを得るようにする段階S2と
を含むことを特徴とする、前記調製方法。
【請求項2】
前記段階S2において、不活性ガス雰囲気下または真空条件下で、当該ポリシロキサンに対して熱処理し、熱処理温度は、300度以上乃至700度以下であることにより、ポリシロキサン中のシラノール基が縮合されて、真密度が1.34g/cm以上のポリシロキサン粉末フィラーを得るようにすることを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記段階S1において、メチルトリクロロシラン(methyltrichlorosilane)と水とを反応させてポリシロキサンを提供することを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ポリシロキサンは、99%~100%のT単位を含むことを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
当該Rは、メチル基(methyl group)であることを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
当該調製方法は、処理剤を加えてポリシロキサン粉末フィラーに対して表面処理を実行する段階をさらに含み、当該処理剤は、シランカップリング剤および/またはジシラザン(Disilazane)を含み、当該シランカップリング剤は、(R(RSi(M)4-a-bであり、RおよびRは、炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基、水素原子、または官能基によって置換された炭素原子が1乃至18である炭化水素基であり、当該官能基は、ビニル基(Vinyl group)、アリル基(allyl group)、スチリル基(styryl group)、エポキシ基(epoxy group)、脂肪族アミノ基(aliphatic amino group)、芳香族アミノ基(aromatic amino group)、メタクリロキシプロピル基(methacryloxypropyl group)、アクリロキシプロピル基(acryloxypropyl group)、ウレイドプロピル基(ureidopropyl group)、クロロプロピル基(chloropropyl group)、メルカプトプロピル基(mercaptopropyl group)、ポリスルフィド基(Polysulfide group)およびイソシアナートプロピル基(isocyanate propyl group)のような有機官能基からなる群から少なくとも一つが選択され、Mは、炭素原子が1乃至18であるヒドロカルビルオキシ基またはハロゲン原子であり、a=0、1、2または3であり、b=0、1、2または3であり、a+b=1、2または3であり、当該ジシラザンは、(R1011)SiNHSi(R121314)であり、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基または水素原子であることを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
当該調製方法は、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級を使用して、ポリシロキサン粉末フィラー中の1、3、5、10、20、45、55、または75μm以上の粗い粒子を除去する段階を含むことを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の調製方法によって得られたポリシロキサン粉末フィラーであって、
当該ポリシロキサン粉末フィラーの粒子径は、0.1~50μmであることを特徴とする、前記ポリシロキサン粉末フィラー。
【請求項9】
請求項8に記載のポリシロキサン粉末フィラーの応用であって、
異なる粒子径のポリシロキサン粉末フィラーが樹脂に緊密に充填およびグラデーション(gradation)されて複合材料を形成することを特徴とする、前記応用。
【請求項10】
当該複合材料は、半導体パッケージング材料、回路基板およびその中間半製品、高周波および高速回路基板のプリプレグまたは銅張積層板(copper clad laminate)に適用されることを特徴とする
請求項9に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体のパッケージングに関し、より具体的には、ポリシロキサン粉末フィラーの調製方法、これによって得られたポリシロキサン粉末フィラーおよびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体バックエンドプロセスのパッケージング工程に,プラスチックパッケージング材料、チップ接着剤、アンダーフィル材料およびチップキャリア等のパッケージング材料が必要となる。さらに、受動部品、半導体部品、電気音響装置、表示装置、光学装置および高周波装置等を機器に組み込む際には、高密度インターコネクト基板(high density inerconnect、HDI)、高周波および高速基板およびマザーボードなどの回路基板も使用する必要がある。これらのパッケージング材料や回路基板は、一般にエポキシ樹脂、芳香族ポリエーテル,フッ素樹脂等の有機高分子とフィラーとで構成され、ここで、フィラーは、主にシリカであり、その機能は、熱膨張係数および誘電損失等を低減することである。既存のフィラーは、シリカを選択して緊密に充填およびグラデーション(gradation)し、当該シリカの化学構造は、SiのQ単位、即ち、SiO-である。
【0003】
一方、技術の進歩に伴い、半導体に使用されるシグナル周波数は、ますます高周波化しており、シグナル伝送速度の高速化および低損失化に伴い、フィラーには低誘電率および低誘電損失が求められる。もう一方、材料の誘電率(誘電率とも呼ばれる)および誘電損失(誘電損失とも呼ばれる)は、基本的に材料の化学組成と構造とに依存し、シリカは、その固有の誘電率および誘電損失の値を有するため、既存のシリカフィラーは、より低誘電率および低誘電損失の要件を満たすことができない。
【0004】
半導体メモリーの場合、フィラーは、低放射能を要求する。しかし、既存の球状シリカの純度は、天然鉱物自体の純度に大きく依存する。従って、既存のシリカフィラーは、低放射能の要件を完全に満たすことができない。
【0005】
ポリシロキサンは、より低い誘電率を有し、工業用絶縁材料として広く使用されていることが知られている。しかし、既存のポリシロキサンフィラー粉末の内部には、通常より大きい吸水空間を有し、水分を吸収しやすく(即ち、大気条件下での吸水によって重量増加)、誘電損失が増加するため、低誘電損失が要求される半導体パッケージングまたは回路基板等の用途には不向きである。例えば、モメンティブ社(Momentive)で生産されたトスパール120は、平均粒子径が2μmであるポリメチルシロキサンであり、200度で2時間加熱した後の重量損失は、約1%であり、吸水の問題が深刻である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリシロキサン粉末フィラーの調製方法、これによって得られたポリシロキサン粉末フィラーおよびその応用を提供し、これによって提供されたフィラーが低誘電率、低誘電損失および低放射能を有するようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリシロキサン粉末フィラーの調製方法であって:少なくとも60wt%のT単位を含むポリシロキサンを提供し、ここで、T単位=RSiO-であり、Rは、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な有機基である段階S1と; 不活性ガス雰囲気下または真空条件下で、当該ポリシロキサンに対して熱処理し、熱処理温度は、300度以上乃至700度以下であることにより、ポリシロキサン中のシラノール基が縮合されて、真密度が1.33g/cm以上のポリシロキサン粉末フィラーを得るようにする段階S2とを含む、調製方法を提供する。
【0008】
既存のポリシロキサンフィラー粉末とは異なり、本発明の上記調製方法によって得られたポリシロキサン粉末フィラーは、200度で2時間加熱した後の水分重量損失が0.1%未満であり、500MHzの場合の誘電損失は、0.005未満であり、低誘電損失が要求される半導体パッケージングまたは回路基板等の用途に適合する。既存のQ単位のみを含むシリカフィラーとは異なり、本発明のポリシロキサン粉末フィラーは、T単位を含み、有機基Rを導入することにより誘電率を大幅に低下させると同時に、真空または不活性ガス雰囲気下で粉末に対して熱処理することにより、真密度を向上させ、粉末内の吸水空間を減少させ、吸水を減少させ、最終的に誘電損失を大幅に低減させる。具体的には、不活性ガス雰囲気または真空条件下で熱処理を行うことにより、空気雰囲気下での処理によって有機基が分解されて極性基を形成するという問題が回避される。本発明において、熱処理温度を具体的に300度以上に限定して、シラノール基の縮合反応を促進する。温度が高いほど縮合が速くて十分であるが、本発明ではカルボシラン自体の熱分解を回避するために、熱処理温度を具体的に700度以下に限定する。
【0009】
本発明において、前記真密度とは、粒子群のかさ密度に対する相対的なものであり、絶対的に密封された状態下で材料の単位体積当たりの固体物質の実際質量、即ち、内部の気孔や粒子間の隙間を除去した後の密度を示す。真密度の測定方法としては、主にガス体積法および浸漬法(ピクノメータ法)等の二つの方法がよく使用される。本発明の真密度は、ガス体積法によって測定され、ガスは、ヘリウムガスであり、ISO12154-2014を参照して測定される。
【0010】
好ましくは、前記段階S2において、不活性ガス雰囲気下または真空条件下で、当該ポリシロキサンに対して熱処理し、熱処理温度は、300度以上700度以下であることにより、ポリシロキサン中のシラノール基が縮合されて、真密度が1.34g/cm以上のポリシロキサン粉末フィラーを得るようにする。好ましい実施例において、当該ポリシロキサン粉末フィラーの真密度は、1.33~1.38g/cmの間、特に1.34~1.35g/cmの間にある。
【0011】
好ましくは、前記段階S1において、メチルトリクロロシランと水とを反応させてポリシロキサンを提供する。これは、塩素原子置換基の高い化学的活性、速い加水分解および縮合反応速度、ならびに安いメチルトリクロロシランの価格によるものである。
【0012】
好ましくは、ポリシロキサンは、90wt%~100wt%のT単位を含む。より好ましくは、ポリシロキサンは、99wt%~100wt%のT単位を含む。当該T単位の含有量(即ち、wt%、重量%)は、有機基を導入することを前提として、ポリシロキサン粉末フィラーの真密度を可能な限り増加させて、ポリシロキサン粉末フィラー内部の吸水空間を減少させることにより吸水を減少させることを理解すべきである。もちろん、ポリシロキサンは、D単位および/またはM単位を適切に含有することにより、硬度を減少させて処理中の摩耗を減少させることができ、Q単位を適切に含有することにより、熱膨張係数を減少させることもできる。ここで、Q単位=SiO-であり、D単位=RSiO-であり、M単位=RSiO-であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基である。
【0013】
好ましくは、T単位のRは、メチル基(methyl group)である。好ましい実施例において、当該ポリシロキサンは、ポリメチルシロキサンである。
【0014】
好ましくは、段階S2における熱処理温度は、350~650度である。温度が高いほど所要時間は短く、温度が低いほど所要時間は長くなることを理解すべきである。好ましい実施例において、当該熱処理時間は、1~20時間である。
【0015】
好ましくは、当該調製方法は、処理剤を加えてポリシロキサン粉末フィラーに対して表面処理を実行することにより、ポリシロキサン粉末フィラーと有機高分子との親和性を促進する段階をさらに含む。
【0016】
好ましくは、当該処理剤は、シランカップリング剤を含み、当該シランカップリング剤は、(R(RSi(M)4-a-bであり、RおよびRは、炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基、水素原子、または官能基によって置換された炭素原子が1乃至18である炭化水素基であり、当該官能基は、ビニル基(Vinyl group)、アリル基(allyl group)、スチリル基(styryl group)、エポキシ基(epoxy group)、脂肪族アミノ基(aliphatic amino group)、芳香族アミノ基(aromatic amino group)、メタクリロキシプロピル基(methacryloxypropyl group)、アクリロキシプロピル基(acryloxypropyl group)、ウレイドプロピル基(ureidopropyl group)、クロロプロピル基(chloropropyl group)、メルカプトプロピル基(mercaptopropyl group)、ポリスルフィド基(Polysulfide group)およびイソシアナートプロピル基(isocyanate propyl group)のような有機官能基からなる群から少なくとも一つが選択され、Mは、炭素原子が1乃至18であるヒドロカルビルオキシ基またはハロゲン原子であり、a=0、1、2または3であり、b=0、1、2または3であり、a+b=1、2または3である。
【0017】
好ましくは、当該シランカップリング剤は、ビニルシランカップリング剤等のフリーラジカル縮合反応を伴うシランカップリング剤と;エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤等のエポキシ樹脂と反応するシランカップリング剤と;ジメチルジメトキシシラン(Dimethyl dimethoxy silane)、ジフェニルジメトキシシラン(diphenyl dimethoxy silane)、フェニルシラン(phenyl silane)カップリング剤および長鎖アルキルシランカップリング剤等の疎水性樹脂と高い親和性を有する炭化水素シランカップリング剤等を選択する。より好ましくは、当該シランカップリング剤は、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシランのようなカップリング剤の少なくとも一つから選択される。
【0018】
好ましくは、当該処理剤は、ジシラザンを含み、当該ジシラザンは、(R1011)SiNHSi(R121314)であり、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基または水素原子である。より好ましくは、当該ジシラザンは、ヘキサメチルジシラザンである。
【0019】
好ましくは、当該処理剤の重量百分率添加量は、0.5~10wt%である。好ましい実施例において、処理剤の重量百分率添加量は、0.5~5wt%である。好ましい実施例において、処理剤の重量百分率添加量は、2wt%である。好ましい実施例において、シラノール縮合は、130度で6時間加熱する条件下で行われる。
【0020】
好ましくは、当該調製方法は、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級を使用して、ポリシロキサン粉末フィラー中の75μm以上の粗い粒子を除去する段階を含む。好ましくは、ポリシロキサン粉末フィラー中の55μm以上の粗い粒子を除去する。好ましくは、ポリシロキサン粉末フィラー中の45μm以上の粗い粒子を除去する。好ましくは、ポリシロキサン粉末フィラー中の20μm以上の粗い粒子を除去する。好ましくは、ポリシロキサン粉末フィラー中の10μm以上の粗い粒子を除去する。好ましくは、ポリシロキサン粉末フィラー中の5μm以上の粗い粒子を除去する。好ましくは、ポリシロキサン粉末フィラー中の3μm以上の粗い粒子を除去する。好ましくは、ポリシロキサン粉末フィラー中の1μm以上の粗い粒子を除去する。
【0021】
本発明は、上記調製方法によって得られたポリシロキサン粉末フィラーをさらに提供し、当該ポリシロキサン粉末フィラーの粒子径は、0.1~50μmである。好ましくは、当該粒子径は、0.5~30μmである。
【0022】
測定結果によると、500MHzの場合の本発明のポリシロキサン粉末フィラーの誘電率は、2.5~2.8に過ぎず、3未満であり、既存のQ単位のシリカフィラーの誘電率は、約3.8~4.5であることを示す。従って、本発明のポリシロキサン粉末フィラーは、大幅に低下された誘電率を有し、5G時代のシグナル高周波の材料要求を満たすことができる。
【0023】
本発明は、上記ポリシロキサン粉末フィラーの応用をさらに提供し、ここで、異なる粒子径のポリシロキサン粉末フィラーが樹脂に緊密に充填およびグラデーションされて複合材料を形成する。好ましくは、当該複合材料は、半導体パッケージング材料、回路基板およびその中間半製品、高周波および高速回路基板のプリプレグまたは銅張積層板(CCL)に適用される。好ましくは、当該パッケージング材料は、プラスチックパッケージング材料、チップ接着剤、アンダーフィル材料、またはチップキャリアである。当該プラスチックパッケージング材料は、DIPパッケージング形態のプラスチックパッケージング材料、SMTパッケージング形態のプラスチックパッケージング材料、MUF、FO-WLPおよびFCBGAのプラスチックパッケージング材料である。好ましくは、当該回路基板は、HDI、高周波および高速基板、またはマザーボードである。
【0024】
知られているように、複合材料の誘電率は、次の式1によって近似的に計算することができる。
式1:logε=V×logε+V×logε
ε:複合材料の誘電率、V:樹脂の体積分率、ε:樹脂の誘電率、V:フィラーの体積分率、ε:フィラーの誘電率。
【0025】
従って、樹脂およびポリシロキサン粉末フィラーの体積分率を調節することにより、必要に応じて複合材料の必要な誘電率を設計して、パッケージング材料、回路基板および中間半製品を形成することができる。
【0026】
さらに、複合材料の誘電損失は、樹脂とフィラーとの誘電損失、およびフィラー表面の極性基の量によって決定される。本発明に係るポリシロキサン粉末フィラーが低い誘電率を有するほど、フィラー表面に有する極性基が少ないため、複合材料は、低い誘電損失を有する。
【0027】
応用の必要に応じて、本発明のポリシロキサン粉末フィラーは、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウムおよびタルク等の他のフィラーと併用することができる。
【発明の効果】
【0028】
要約すると、本発明に係るポリシロキサン粉末フィラーの調製方法で得られたフィラーは、低誘電率および低誘電損失を有する。調製方法のすべての原料は、有機物であるため、従来に使用される角形粉砕石英等を使用せず、蒸留等の工業的方法で生成することができ、これによって形成されたポリシロキサン粉末フィラーにはウランおよびトリウム等のような放射性元素を含まないため、導電性異物ゼロおよび低放射能の要求を満たすことができる。さらに、本発明の調製方法は、合成パラメーターを適切に調整することによって、粒子径が0.1~50μmであるポリシロキサン粉末フィラーを調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施例を示し、詳細に説明する。
【0030】
実施例に関する検出方法は、以下の内容を含む。
平均粒子径は、HORIBA社のレーザー粒度分析機器LA-700によって測定される。溶媒は、イソプロパノールである。
比表面積は、SHIMADZU社のFlowSorbIII2305によって測定される。
真密度は、MicrotracBEL社のBELPycnoによって測定され、測定に使用されるガスは、ヘリウムカスである。
200度で2時間加熱した後の重量損失は、分析天秤で秤量され、加熱した後のサンプルを乾燥空気容器で冷却した後秤量する。加熱した後のサンプルは、大気中に置くと水分を吸収して重量が増し、これは、加熱重量損失は、ポリシロキサンによって吸収された水分であることを示す。試験前のサンプルを大気雰囲気下で1時間以上置き、サンプルが大気中の水分を吸収して飽和状態になる。ここで言われる大気雰囲気は、亜熱帯地域の自然大気の雰囲気である。
ウランおよびトリウムの含有量は、Agilent社の7700X型ICP-MSによって測定される。サンプル作成方法は、800度で焼成した後、フッ化水素酸でサンプルを全部溶解させる。
Q、T、DおよびM単位の含有量は、固体28Si-NMR核磁気共鳴スペクトルにより、-80~-120ppm範囲のピーク積分面積(Q単位)、-30~-80ppm範囲のピーク積分面積(T単位)、-10~-30ppm範囲のピーク積分面積(D単位)および+20~-10ppm範囲のピーク積分面積(M単位)で計算される。使用される核磁気共鳴機器は、JEOL社のECS-400であり、参照文献は、分離精製技術第25巻、第1号~第3号、2001年10月1日、391~397ページ、「29Si NMR and Si2p XPS correlation in polysiloxane membranes prepared by plasma enhanced chemical vapor deposition」である。
誘電率および誘電損失は、KEYCOM社の摂動法およびサンプルのホールブロック型空洞共振法、誘電率および誘電損失測定装置Model No.DPS18によって測定される。
【0031】
本明細書において、「度」とは、「摂氏度」、即ち、℃を指す。
【0032】
「球状ケイ素樹脂マイクロ粉末」、黄文潤、有機ケイ素材料、2007、21(5)294-299(メチルトリメトキシシランを原料として使用する)およびPCT/CN2018/124685の方法(メチルトリクロロシランを原料として使用する)を参照して、後続の熱処理のために、実施例および比較例に使用するための異なる組成の球状シロキサンを調製する。
【0033】
メチルトリクロロシランを水に加えて、白い沈殿を得る。沈殿物を脱イオン水で洗浄した後、サンドミルを用いて2μmのマイクロ粉末に粉砕し、後続の熱処理のために、実施例および比較例に使用する。電子顕微鏡で観察した結果、これによって得られた粉末には球状ポリシロキサンが含まれる。
【0034】
例1
T単位(Rは、メチル基である)が100%であり、平均粒子径が2μmであるポリシロキサンを空気または窒素ガス雰囲気下で様々な温度で熱処理する。粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例および比較例のサンプルを得る。サンプルの分析結果は、表1に示される。
【0035】
【表1】
【0036】
明らかに、実施例1~実施例3によって得られた実施例サンプルの誘電率は、すべて3未満であり、誘電損失は、すべて0.005未満であり、従って、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)および低誘電損失(シグナル損失が少ない)の要件を満たす。空気雰囲気下で熱処理した比較例1~3のサンプルの誘電率は、3より大きくかつ誘電損失は、0.005より大きく、比較例4のサンプルの誘電損失は、0.005より大きく、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)および低誘電損失(シグナル損失が少ない)の要件を満たすことができない。
【0037】
例2
T単位(Rは、メチル基である)が100%であり、平均粒子径が2μmであるポリシロキサンを窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を0.5%のビニルトリメトキシシランで処理し、次に130℃で6時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例4を得る。サンプルの分析結果は、表2に示される。
【0038】
T単位(Rは、ビニル基である)が100%であり、平均粒子径が2μmであるポリシロキサンを窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を1%のフェニルトリメトキシシランおよび1%のヘキサメチルジシラザンの混合液で処理し(処理剤の重量は、2%に等しい)、次に130度で6時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例5を得、サンプルの分析結果は、表2に示される。
【0039】
【表2】
【0040】
明らかに、実施例4~5によって得られた実施例サンプルの誘電率は、すべて3未満であり、誘電損失は、すべて0.005未満であり、従って、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)および低誘電損失(シグナル損失が少ない)の要件を満たす。
【0041】
例3
メチルトリクロロシランを水に加えて、白い沈殿を得る。沈殿物を脱イオン水で洗浄した後、サンドミルを用いて2μmのマイクロ粉末に粉砕する。電子顕微鏡で粉末に球状ポリシロキサンが含まれることを観測する。ろ過し、乾燥した後、窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を5%のビニルシランカップリング剤で混合処理し、次に、130度で6時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例サンプルを得る。サンプルの分析結果は、表3に示される。
【0042】
【表3】
【0043】
明らかに、実施例6によって得られた実施例サンプルの誘電率は、3未満であり、誘電損失は、0.005未満であり、従って、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)および低誘電損失(シグナル損失が少ない)の要件を満たす。
【0044】
例4
T単位(Rは、メチル基である)が100%であり、平均粒子径が異なるポリシロキサンを真空または窒素ガス雰囲気下で異なる温度で熱処理する。粉末を振動スクリーンで分離し、45μm以上の大きい粒子を除去して、実施例サンプルを得る。サンプルの分析結果は、表4に示される。
【0045】
【表4】
【0046】
明らかに、実施例7~実施例10によって得られた実施例サンプルの誘電率は、すべて3未満であり、誘電損失は、すべて0.005未満であり、従って、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)および低誘電損失(シグナル損失が少ない)の要件を満たす。空気雰囲気下で熱処理した比較例1~4のサンプルの誘電率は、3より大きく、誘電損失は、0.005より大きく、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)および低誘電損失(シグナル損失が少ない)の要件を満たすことができない。
【0047】
上記実施例1~実施例10で得られた実施例サンプルは、粗い粒子を除去するために、頂点カット工程を行うことができることを理解すべきである。具体的には、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級等の方法を使用して、半導体チップのサイズの需要に応じて、ポリシロキサン粉末フィラー中の75、55、45、20、10、5、3または1μm以上の粗い粒子を除去する。さらに、上記実施例1~実施例10で得られた実施例試料をフッ化水素酸に溶解し、ICP-MS検出によりウランおよびトリウムの含有量がすべて0.5ppb以下であることが分かった。
【0048】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の上記実施例に様々な変更を加えることができる。即ち、本発明の特許請求の範囲および明細書の内容に従ってなされたすべての単純、同等の変更および修正は、本発明の特許の保護範囲に含まれる。本発明で詳述しない内容は、従来の技術内容である。
【国際調査報告】