(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(54)【発明の名称】球状または角状の粉末フィラーの製造方法、これによって得られた球状または角状の粉末フィラーおよびその応用
(51)【国際特許分類】
C08G 77/06 20060101AFI20220407BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220407BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220407BHJP
C08G 77/38 20060101ALI20220407BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220407BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C08G77/06
C08L101/00
C08L83/04
C08G77/38
H01L23/30 R
C01B33/18 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572694
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 CN2019123337
(87)【国際公開番号】W WO2020168784
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/075831
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/109108
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521377155
【氏名又は名称】浙江三時紀新材科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】陳 樹真
(72)【発明者】
【氏名】李 鋭
(72)【発明者】
【氏名】唐 成
(72)【発明者】
【氏名】丁 烈平
(72)【発明者】
【氏名】陳 晨
【テーマコード(参考)】
4G072
4J002
4J246
4M109
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA38
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4J246GC60
4J246HA66
4M109AA01
4M109EB11
4M109EC07
(57)【要約】
球状または角状の粉末フィラーの製造方法であって、T単位を含む球状または角状のシロキサンを提供し、ここで、T単位=R1SiO3-であり、R1は、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な有機基である工程と;および、不活性ガス雰囲気または大気雰囲気条件下で、当該球状または角状のシロキサンに対して250度以上乃至650度以下の温度で熱処理して、球状または角状のシロキサン中のシラノール基を縮合させて球状または角状の粉末のフィラーを得、当該球状または角状の粉末フィラーのT単位において、水酸基を含まない単位の総単位中の含有量は、≧95%であり、一つの水酸基を含む単位の総単位中の含有量は、≦5%である工程とを含む。前記製造方法に従って得られた球状または角状の粉末フィラーおよびその応用であって、前記球状または角状の粉末フィラーは、低誘電率、低吸水率および低放射能を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状または角状の粉末フィラーの製造方法であって:
工程S1、T単位を含む球状または角状のシロキサン(Siloxane)を提供し、ここで、T単位=R
1SiO
3-であり、R
1は、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な有機基である、工程S1と;および
工程S2、不活性ガス雰囲気または大気雰囲気条件下で、当該球状または角状のシロキサンに対して250度以上乃至650度以下の温度で熱処理して、球状または角状のシロキサン中のシラノール基を縮合させて球状または角状の粉末のフィラーを得、当該球状または角状の粉末フィラーのT単位において、水酸基を含まない単位の総単位中の含有量は、≧95%であり、一つの水酸基を含む単位の総単位中の含有量は、≦5%である、工程S2と
を含むことを特徴とする、前記球状または角状の粉末フィラーの製造方法。
【請求項2】
当該球状または角状のシロキサンは、Q単位、D単位、および/またはM単位をさらに含み、ここで、Q単位=SiO
4-であり、D単位=R
2R
3SiO
2-であり、M単位=R
4R
5R
6SiO
2-であり、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
当該球状または角状のシロキサンは、シリカ(silica)粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
当該製造方法は、処理剤を加えて粉末フィラーに表面処理を行う工程をさらに含み、当該処理剤は、シランカップリング剤(Silane coupling agent)および/またはジシラザン(Disilazane)を含み、当該シランカップリング剤は、(R
7)
a(R
8)
bSi(M)
4-a-bであり、R
7およびR
8は、炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基、水素原子、または官能基によって置換される1乃至18の炭素原子を有する炭化水素基であり、当該官能基は、有機官能基であるビニル基(vinyl group)、アリル基(Allyl group)、スチリル基(Styryl group)、エポキシ基(Epoxy group)、脂肪族アミノ基(Aliphatic amino group)、芳香族アミノ基(Aromatic amino group)、メタクリロキシプロピル基(Methacryloxypropyl group)、アクリロキシプロピル基(Acryloyloxypropyl group)、ウレイドプロピル基(Ureidopropyl group)、クロロプロピル基(Chloropropyl group)、メルカプトプロピル基(Mercaptopropyl group)、ポリスルフィド基(Polysulfide group)およびイソシアネートプロピル基(Isocyanatepropyl group)からなる群のうちの少なくとも一つから選択され、Mは、1乃至18の炭素原子を有するアルコキシド基(alkoxide group)またはハロゲン(halogen)原子であり、a=0、1、2または3であり、b=0、1、2または3であり、a+b=1、2または3であり、当該ジシラザンは、(R
9R
10R
11)SiNHSi(R
12R
13R
14)であり、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14は、炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基または水素原子であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
当該製造方法は、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級を使用して、球状または角状の粉末フィラー中の1、3、5、10、20、45、55、または75μm以上の粗大粒子を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた球状または角状の粉末フィラーであって、
当該球状または角状の粉末フィラーの粒子径は、0.1-50μmであることを特徴とする、前記球状または角状の粉末フィラー。
【請求項7】
請求項6に記載の球状または角状の粉末フィラーの応用であって、
異なる粒子径の球状または角状の粉末フィラーは、最密充填になるように配合され、複合材料を形成することを特徴とする前述の応用。
【請求項8】
当該複合材料は、半導体パッケージング材料、回路基板およびその中間半製品、高周波および高速回路基板のプリプレグ(prepreg)または銅張積層板(copper clad laminate)に適用されることを特徴とする請求項7に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体のパッケージングに関し、より具体的には、球状または角状の粉末フィラーの製造方法、これによって得られた球状または角状の粉末フィラーおよびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体バックエンドプロセスのパッケージング工法において、プラスチックパッケージング材料、チップ接着剤、アンダーフィル材料およびチップキャリア等のパッケージング材料を必要とする。また、受動部品、半導体部品、電気音響機器、ディスプレイ機器、光学機器および高周波機器等で機器を組み立てる場合、高密度相互接続基板(high density inerconnect、HDI)、高周波および高速基板ならびにマザーボード等の回路基板も使用する必要がある。これらのパッケージング材料および回路基板は、一般にエポキシ樹脂(epoxy resin)、芳香族ポリエーテル(aromatic polyether)およびフルオロ樹脂(fluororesin)等の有機ポリマーおよびフィラーで構成され、ここで、フィラーは、主に角状または球状のシリカであり、その主な機能は、有機ポリマーの熱膨張係数を下げることである。既存のフィラーは、球状または角状のシリカを選択して、緊密に充填およびグラデーション(gradation)され、当該シリカの化学的構造は、SiのQ単位、即ち、SiO4-である。
【0003】
一方、技術の進歩に伴い、半導体で使用されるシグナル周波数は、ますます高くなり、シグナル伝送速度の高速化かつ低損失化は、低誘電率を有するフィラーを必要とする。もう一方、材料の誘電率(誘電率とも呼ばれる)は、基本的に材料の化学組成および構造に依存し、シリカは、固有の誘電率を有するため、既存のフィラーは、より低誘電率の要件を満たすことができない。
【0004】
同様に、技術の進歩に伴い、半導体の集積度は、ますます高くなり、サイズは、ますます小さくなっているため、導電性の異物および粗大粒子がない高純度のフィラーを必要とする。しかし、現在球状または角状のシリカは、粗大粒子および導電性異物の混合を回避することは困難である。また、粗大粒子および導電性異物が混入されると、基本的に乾式で除去することができない。従って、既存のフィラーは、導電性異物および粗大粒子がない要件を満たすことができない。
【0005】
半導体メモリの場合、放射能が低いフィラーを必要とする。しかし、現在の球状または角状のシリカの純度は、天然鉱物自体の純度に大きく依存している。従って、既存のフィラーは、低放射能の要件を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、球状または角状の粉末フィラーの製造方法、これによって得られた球状または角状の粉末フィラーおよびその応用を提供し、これによって提供されるフィラーは低誘電率を有し、導電性異物及び粗大粒子がなく、低放射能を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、球状または角状の粉末フィラーの製造方法であって: T単位を含む球状または角状のシロキサンを提供し、ここで、T単位=R1SiO3-であり、R1は、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な有機基である、工程S1と;および、不活性ガス雰囲気または大気雰囲気条件下で、当該球状または角状のシロキサンに対して250度以上乃至650度以下の温度で熱処理して、球状または角状のシロキサン中のシラノール基を縮合させて球状または角状の粉末のフィラーを得、当該球状または角状の粉末フィラーのT単位において、水酸基を含まない単位の総単位中の含有量は、≧95%であり、一つの水酸基を含む単位の総単位中の含有量は、≦5%である、工程S2とを含む、球状または角状の粉末フィラーの製造方法を提供する。
【0008】
Q単位のみを含む既存のシリカフィラーとは異なり、本発明の球状または角状の粉末フィラーのシリカはT単位を含み、有機基R1を導入することにより誘電率を大幅に低下させる。不活性ガス雰囲気または大気雰囲気条件下で熱処理する。有機基の酸化を回避するために、大気雰囲気条件下での加熱温度は、好ましくは、300度より低く、加熱時間は、好ましくは、20時間より長い。窒素ガス雰囲気のような不活性ガス条件下での加熱温度は、650度までに昇温することができ、温度が高いと、加熱時間は、短くなることができる。本発明において、熱処理温度は、シラノール基の縮合反応を促進するために、具体的に250度以上に制限される。温度が高いほど、縮合はより速く、より十分であるが、本発明は、カルボシラン(carbosilane)自体の熱分解を回避するために、熱処理温度を具体的に650度以下に制限する。熱処理後に得られた粉末フィラーは、29Si NMRによって次のように特徴づけられる。-30~-80ppm範囲のピークは、T単位に対応し、当該範囲内の面積は、総面積Sであり、-42~-52ppm範囲(-52ppmを含まない)のピークは、二つの水酸基、即ちT1を含む、T単位に対応し、当該範囲内の面積は、S1であり、-52~-62ppm範囲(-62ppmを含まない)のピークは、一つの水酸基、即ちT2を含むT単位であり、当該範囲内の面積は、S2であり、-62~-75ppm範囲のピークは、水酸基を含まないT単位、即ちT3に対応し、当該範囲内の面積は、S3である。本発明の球状または角状の粉末フィラーのS3/S≧95%であり、S2/S≦5%であり、S1は、実質的に0に等しい。
【0009】
好ましくは、工程S1で提供される当該球状または角状のシロキサンは、Q単位、D単位、および/またはM単位をさらに含み、ここで、Q単位=SiO4-であり、D単位=R2R3SiO2-であり、M単位=R4R5R6SiO2-であり、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基(hydrocarbyl group)である。Q単位の導入は、熱膨張係数を低下させることができるが、誘電率および誘電損失が大きくなるため、必要に応じて導入量を調整する必要があることを理解されたい。さらに、D単位またはM単位の導入は、誘電率および誘電損失を低下させることができるが、熱膨張係数が高くなるため、必要に応じて導入量を調整する必要がある。好ましくは、当該球状または角状のシロキサン中のQ単位、D単位、および/またはM単位の総含有量は、≦20重量%である。
【0010】
好ましくは、工程S1で提供される当該球状または角状のシロキサンは、シリカ粒子をさらに含む。シリカ粒子(シリカマイクロ粉末とも呼ばれる)の導入は、熱膨張係数を低下させることができるが、誘電率および誘電損失が大きくなるため、必要に応じて導入量を調整する必要があることを理解されたい。好ましくは、当該球状または角状のシロキサン中のシリカ粒子の総含有量は、70重量%以下である。
【0011】
好ましくは、前記工程S2において、熱処理は、電気加熱またはマイクロ波加熱によって実現され、これにより、球状または角状のシロキサン中のSi-OHを縮合させて、SiOSi構造が生成され、当該縮合反応の式は、次のとおりである。
【0012】
【0013】
ここで、R’、R’’およびR’’’は、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な有機基R1(炭化水素基とも呼ばれる)である。
【0014】
好ましくは、工程S2の熱処理温度は、250~650度である。温度が高いほど、必要な時間は短くなり、温度が低いほど、必要な時間は長くなることを理解されたい。好ましい実施例において、当該熱処理の時間は、1~72時間の間である。
【0015】
好ましくは、当該製造方法は、フィラーおよび樹脂の親和性を高めるために、処理剤を加えてポリシロキサンに表面処理を行う工程をさらに含む。
【0016】
好ましくは、当該処理剤は、シランカップリング剤(Silane coupling agent)を含み、当該シランカップリング剤は、(R7)a(R8)bSi(M)4-a-bであり、R7およびR8は、炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基、水素原子、または官能基によって置換される1乃至18の炭素原子を有する炭化水素基であり、当該官能基は、有機官能基であるビニル基(vinyl group)、アリル基(Allyl group)、スチリル基(Styryl group)、エポキシ基(Epoxy group)、脂肪族アミノ基(Aliphatic amino group)、芳香族アミノ基(Aromatic amino group)、メタクリロキシプロピル基(Methacryloxypropyl group)、アクリロキシプロピル基(Acryloyloxypropyl group)、ウレイドプロピル基(Ureidopropyl group)、クロロプロピル基(Chloropropyl group)、メルカプトプロピル基(Mercaptopropyl group)、ポリスルフィド基(Polysulfide group)およびイソシアネートプロピル基(Isocyanatepropyl group)からなる群のうちの少なくとも一つから選択され、Mは、1乃至18の炭素原子を有するアルコキシド基(alkoxide group)またはハロゲン(halogen)原子であり、a=0、1、2または3であり、b=0、1、2または3であり、a+b=1、2または3である。
【0017】
好ましくは、当該シランカップリング剤は、ビニルシランカップリング剤等のフリーラジカル縮合反応を伴うシランカップリング剤と、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤等のエポキシ樹脂と反応するシランカップリング剤と、ジメチルジメトキシシラン(Dimethyl dimethoxy silane)、ジフェニルジメトキシシラン(diphenyl dimethoxy silane)、フェニルシラン(phenyl silane)カップリング剤および長鎖アルキルシランカップリング剤等の疎水性樹脂と高い親和性を有する炭化水素シランカップリング剤等を選択する。より好ましくは、当該シランカップリング剤は、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン(methyl trimethoxy silane)およびビニルトリメトキシシラン(vinyl trimethoxy silane)のようなカップリング剤の少なくとも一つから選択される。
【0018】
好ましくは、当該処理剤は、ジシラザンを含み、当該ジシラザンは、(R9R10R11)SiNHSi(R12R13R14)であり、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、炭素原子が1乃至18である独立に選択可能な炭化水素基または水素原子である。より好ましくは、当該ジシラザンは、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)である。
【0019】
好ましくは、当該製造方法は、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級を使用して、球状または角状の粉末フィラー中の75μm以上の粗大粒子を除去する工程含む。好ましくは、球状または角状の粉末フィラー中の55μm以上の粗大粒子を除去する。好ましくは、球状または角状の粉末フィラー中の45μm以上の粗大粒子を除去する。好ましくは、球状または角状の粉末フィラー中の20μm以上の粗大粒子を除去する。好ましくは、球状または角状の粉末フィラー中の10μm以上の粗大粒子を除去する。好ましくは、球状または角状の粉末フィラー中の5μm以上の粗大粒子を除去する。好ましくは、球状または角状の粉末フィラー中の3μm以上の粗大粒子を除去する。好ましくは、球状または角状の粉末フィラー中の1μm以上の粗大粒子を除去する。
【0020】
本発明は、上記製造方法に従って得られた球状または角状の粉末フィラーをさらに提供し、当該球状または角状の粉末フィラーの粒子径は、0.1-50μmである。好ましくは、当該粒子径は、0.5-30μmである。さらに、200度での当該球状または角状の粉末フィラーの揮発性含水率は、≦0.1%である。具体的には、本発明の粉末の含水量は、200度で2時間加熱した後の水分の減少によって特徴づけることができる。よく知られているように、フィラーの吸水率は、誘電損失に関係し、吸水率が高いほど誘電損失が大きくなる。本発明の球状または角状の粉末フィラーによると、含まれる水酸基の極性基が少なく、吸水率が低く、200度で2時間加熱した後の水分の減少は、0.1%以下であり、低誘電損失を必要とする半導体パッケージングまたは回路基板等の用途に適用される。
【0021】
測定結果によると、500MHzの場合の本発明の球状または角状の粉末フィラーの誘電率は、2.5~2.9に過ぎず、3未満であり、既存のQ単位のシリカフィラーの誘電率は、約3.8~4.5であることを示す。従って、本発明の球状または角状の粉末フィラーは、大幅に低下された誘電率を有し、5G時代のシグナル高周波の材料要件を満たすことができる。
【0022】
本発明は、上記球状または角状の粉末フィラーの応用をさらに提供し、ここで、異なる粒子径の球状または角状の粉末フィラーは、樹脂に緊密に充填およびグラデーションされて、複合材料を形成する。好ましくは、当該複合材料は、半導体パッケージング材料、回路基板およびその中間半製品に適用される。好ましくは、当該パッケージング材料は、プラスチックパッケージング材料、チップ接着剤、アンダーフィル材料、またはチップキャリアである。当該プラスチックパッケージング材料は、DIPパッケージング形態のプラスチックパッケージング材料、SMTパッケージング形態のプラスチックパッケージング材料、MUF、FO-WLPおよびFCBGAのプラスチックパッケージング材料である。好ましくは、当該回路基板は、HDI、高周波および高速基板、またはマザーボードである。
【0023】
知られているように、複合材料の誘電率は、次の式1によって近似的に計算されることができる。
式1:logε=V1×logε1+V2×logε2
ε:複合材料の誘電率、V1:樹脂の体積分率、ε1:樹脂の誘電率、V2:フィラーの体積分率、ε2:フィラーの誘電率。
【0024】
従って、樹脂および球状または角状の粉末フィラーの体積分率を調節することにより、必要に応じて複合材料の必要な誘電率を設計して、パッケージング材料、回路基板およびその中間半製品を形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
要約すると、本発明の球状または角状の粉末フィラーの製造方法で得られたフィラーは、低誘電率を有する。製造方法のすべての原料は、有機物であるため、従来に使用される角形粉砕石英等を使用せず、蒸留等の工業的方法で精製することができ、これによって形成された球状または角状の粉末フィラーにはウランおよびトリウム等の放射性元素を含まないため、導電性異物がなく、粗大粒子がなく、放射能が低い要件を満たすことができる。さらに、本発明の製造方法は、合成パラメーターを適切に調整することによって、粒子径が0.1~50μmである球状または角状の粉末フィラーを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施例を示し、詳細に説明する。
【0027】
実施例に関する検出方法は、以下の内容を含む。
平均粒子径は、HORIBA社のレーザー粒度分析機器LA-700によって測定される。溶媒は、イソプロパノールである。
ウランおよびトリウムの含有量は、Agilent社の7700X型ICP-MSによって測定される。サンプル作成方法は、800度で燃焼した後にフッ化水素酸(hydrofluoric acid)でサンプルを完全溶解させる。
200度で2時間加熱した後の重量損失は、分析天秤で秤量され、加熱した後のサンプルを乾燥空気の容器で冷却した後秤量する。加熱した後のサンプルは、大気中に置くと水分を吸収して重量が増し、これは、加熱重量損失がポリシロキサンによって吸収された水分であることを示す。試験前のサンプルを大気雰囲気下で1時間以上置き、サンプルが大気中の水分を吸収して飽和状態になる。ここで言われる大気雰囲気とは、亜熱帯地域の自然大気の雰囲気であることを指す。
Q、T、DおよびM単位の含有量は、固体28Si-NMR核磁気共鳴スペクトルにより、-80~-120ppm範囲のピーク積分面積(Q単位)、-30~-80ppm範囲のピーク積分面積(T単位)、-10~-30ppm範囲のピーク積分面積(D単位)および+20~-10ppm範囲のピーク積分面積(M単位)で計算される。使用される核磁気共鳴装置は、JEOL社のECS-400であり、参照文献は、分離精製技術第25巻、第1号~第3号、2001年10月1日、391~397ページ、「29Si NMR and Si2p XPS correlation in polysiloxane membranes prepared by plasma enhanced chemical vapor deposition」である。T1、T2およびT3のパーセンテージ含有量は、次のとおりである。-42~-52ppm範囲(-52ppmを含まない)の面積は、T1に属し、-52~-62ppm範囲(-62ppmを含まない)の面積は、T2に属し、-62~-75ppm範囲の面積は、T3に属し、-30~-80ppm範囲のピーク積分面積は、分母に計算され得る。
誘電率は、KEYCOM社の摂動法およびサンプルのホールブロック型空洞共振法ならびに誘電率および誘電損失測定装置Model No.DPS18によって測定される。
【0028】
本明細書において、「度」とは、「摂氏度」、即ち℃を指す。
【0029】
「球状ケイ素樹脂マイクロ粉末」、黄文潤、有機ケイ素材料、2007、21(5)294-299およびPCT/CN2018/124685の方法を参照して、後続の熱処理のために、実施例および比較例に使用するための異なる組成の球状シロキサンを製造する。
【0030】
メチルトリクロロシラン(methyl trichloro silane)またはメチルトリメトキシシランを水に加えて、白い沈殿を得る。沈殿物を脱イオン水で洗浄した後、サンドミルを用いて2μmのマイクロ粉末に粉砕し、後続の熱処理のために、実施例および比較例に使用する。
【0031】
さらに、メチルトリクロロシランまたはメチルトリメトキシシランおよびシリカを混合した後、水に加えて白い沈殿を得る。沈殿物を脱イオン水で洗浄した後、サンドミルを用いて2μmのマイクロ粉末に粉砕し、後続の熱処理のために、実施例および比較例に使用する。
【0032】
例1
T単位(R1は、メチル基である)が100%であり、平均粒子径が2μmであるポリシロキサンを空気または窒素ガス雰囲気下で様々な温度で熱処理する。処理した後の粉末を1%ビニルトリメトキシシランで混合処理し、次に130度で3時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例および比較例のサンプルを得る。サンプルの分析結果は、表1に示される。
【0033】
【0034】
明らかに、実施例1~実施例3によって得られた実施例サンプルの誘電率は、すべて3未満であり、200度での蒸発水分量は、0.1%未満であることにより、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)の要件を満たす。比較例1および比較例2のT2含有量が高すぎ、吸水率および誘電率が高すぎ、比較例3のT単位は、すべてQ単位(即ち、シリカになる)に酸化され、誘電率が高すぎるため、これらは本発明の範囲に属さない。
【0035】
例2
T単位(R1はメチル基である)が97%であり、Q単位が3%であり、平均粒子径が2μmである、球状シロキサンを窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を処理剤使用せずに表面処理し、直接サイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例および比較例のサンプルを得る。サンプルの分析結果は、表2に示される。
【0036】
【0037】
明らかに、実施例4によって得られた実施例サンプルの誘電率は、3未満であり、200度での蒸発水分量は、0.1%未満であることにより、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)の要件を満たす。
【0038】
例3
T単位(R1はメチル基である)が97%であり、D単位(R2およびR3は、すべてメチル基である)が3%であり、平均粒子径が2μmである球状シロキサンを空気または窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を2%のヘキサメチルジシラザンで混合処理し、次に、130度で3時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例を得る。サンプルの分析結果は、表3に示される。
【0039】
【0040】
明らかに、実施例5によって得られた実施例サンプルの誘電率は、3未満であり、200度での蒸発水分量は、0.1%未満であることにより、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)の要件を満たす。
【0041】
例4
メチルトリメトキシシランおよびシリカを混合した後、水に加えて白い沈殿を得る。沈殿物を脱イオン水で洗浄した後、サンドミルを用いて2μmのマイクロ粉末に粉砕する。
【0042】
T単位(R1はメチル基である)が70%であり、シリカマイクロ粉末(ヒュームドホワイトカーボンブラック)が30%であり、平均粒子径が2μmである角状のシロキサンを空気または窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を5%のジメチルジメトキシシランと混合処理し、次に、130度で3時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例を得る。サンプルの分析結果は、表4に示される。
【0043】
【0044】
明らかに、実施例6によって得られた実施例サンプルの誘電率は、3未満であり、200度での蒸発水分量は、0.1%未満であることにより、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)の要件を満たす。
【0045】
例5
T単位(R1はメチル基である)が100%であり、平均粒子径が2μmである球状シロキサンを窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を2%のビニルトリメトキシシランで処理した後、1%のヘキサメチルジシラザンと混合処理し、次に、130度で3時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例7を得、分析結果は、表5に示される。T単位(R1はメチル基である)が100%であり、平均粒子径が2μmである球状シロキサンを窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を2%のメチルトリメトキシシランと1%のヘキサメチルジシラザンとの混合液で処理し、次に、130度で3時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例8を得、分析結果は、表5に示される。
【0046】
【0047】
明らかに、実施例7~8によって得られた実施例サンプルの誘電率は、3未満であり、200度での蒸発水分量は、0.1%未満であることにより、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)の要件を満たす。
【0048】
例6
T単位(R1はメチル基である)100%であり、平均粒子径が異なる球状シロキサンを窒素ガス雰囲気下で異なる時間熱処理して、実施例サンプルを得る。サンプルの分析結果は、表6に示される。
【0049】
【0050】
明らかに、実施例9~13によって得られた実施例サンプルの誘電率は、3未満であり、200度での蒸発水分量は、0.1%未満であることにより、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)の要件を満たす。さらに、実施例9~13の粉末をグラデーションした後、低粘度で緊密に充填された粉末を得ることができる。
【0051】
例7
メチルトリクロロシランを水に加えて、白い沈殿を得る。沈殿物を脱イオン水で洗浄した後、サンドミルを用いて2μmのマイクロ粉末に粉砕する。ろ過し、乾燥した後、窒素ガス雰囲気下で熱処理する。処理した後の粉末を4%のヘキサメチルジシラザンと混合処理し、次に、130度で3時間加熱した後、粉末をサイクロンで分離し、10μm以上の大きい粒子を除去して、実施例サンプルを得る。サンプルの分析結果は、表7に示される。
【0052】
【0053】
明らかに、実施例14によって得られた実施例サンプルの誘電率は、3未満であり、200度での蒸発水分量は、0.1%未満であることにより、5G時代のフィラーの低誘電率(シグナル遅延が小さい)の要件を満たす。
【0054】
上記実施例1~実施例14で得られた実施例サンプルは、粗大粒子を除去するために、頂点カット工程を行うことができることを理解すべきである。具体的には、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級等の方法を使用して、半導体チップのサイズの需要に応じて、球状の粉末フィラー中の75、55、45、20、10、5、3または1μm以上の粗大粒子を除去する。さらに、上記実施例1~実施例14で得られた実施例試料をフッ化水素酸に溶解し、ICP-MS検出によりウランおよびトリウムの含有量がすべて0.5ppb以下であることが分かった。
【0055】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の上記実施例に様々な変更を加えることができる。即ち、本発明の特許請求の範囲および明細書の内容に従ってなされたすべての単純、同等の変更および修正は、すべて本発明の特許の保護範囲に含まれる。本発明で詳述しない内容は、従来の技術内容である。
【国際調査報告】