(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-15
(54)【発明の名称】組成物およびその使用法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/891 20060101AFI20220408BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20220408BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220408BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220408BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20220408BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220408BHJP
【FI】
A61K8/891
A61F13/00 305
A61Q19/00
A61Q17/04
A61K8/27
A61K8/9789
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021549156
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(85)【翻訳文提出日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2020053870
(87)【国際公開番号】W WO2020178005
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521364856
【氏名又は名称】ワッサーマン メディック アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ワッサーマン ピーター
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB211
4C083AB212
4C083AD151
4C083AD152
4C083CC02
4C083DD11
4C083EE13
(57)【要約】
本発明は、ステアリルジメチコン、C30~45アルキルメチコン、およびカプリリルメチコンという3種類のシリコーン化合物を含むシリコーン組成物に関する。この組み合わせは、角質層の水和を増大させることにより瘢痕の処置において独特の効果を提供し、それによって、線維芽細胞産生の調節およびコラーゲン産生の低減を促進し、このため皮膚損傷の処置が達成される。該組成物は、薄い透明なシリコーンフィルムとして所望の皮膚領域上に適用することができ、乾燥時間を全く必要とせず、かつ患者の皮膚に対する改善した接着性を有し、それによって、処置中の患者のコンプライアンスを改善する。さらに、該シリコーン組成物は、SPF 50および比較的高いシリコーン濃度を備えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ステアリルジメチコンと、
- C30~45アルキルメチコンと、
- カプリリルメチコンと
を含む組成物。
【請求項2】
スティック形態の前記組成物を提供するのに十分な粘度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
約10Pa・s(パスカル秒)~約100Pa・sの範囲内の粘度(ずり速度200s-1および20℃においてRheomat RM 80によって測定した場合)を有する、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記ステアリルジメチコンが約32℃の融点を有する、請求項1、2、または3記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%のステアリルジメチコン、好ましくは少なくとも35重量%のステアリルジメチコン、さらにより好ましくは少なくとも40重量%のステアリルジメチコンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記C30~45アルキルメチコンが、50℃超、好ましくは60℃超、さらにより好ましくは70℃超または約70℃の融点を有する、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも13重量%のC30~45アルキルメチコン、好ましくは少なくとも15重量%のC30~45アルキルメチコン、さらにより好ましくは約17重量%または17重量%超のC30~45アルキルメチコンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%のカプリリルメチコン、好ましくは少なくとも20重量%のカプリリルメチコン、さらにより好ましくは少なくとも30重量%のカプリリルメチコンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の1.0重量%を超えない量、好ましくは該組成物の0.5重量%を超えない量の、1種類または複数種類の抗酸化剤および保湿剤をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の紫外線防御指数(SPF)が少なくとも30、さらにより好ましくは約50となるような濃度の1種類または複数種類の日焼け防止剤をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記日焼け防止剤の濃度が、前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも21重量%、さらにより好ましくは約22重量%または22重量%超である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記日焼け防止剤が、二酸化チタンまたは酸化亜鉛などのミネラル成分を含有する物理的な日焼け防止剤である、請求項10または11記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の総重量に基づいて、47.5重量%のステアリルジメチコンと、17.5重量%のC30~45アルキルメチコンと、34.5重量%のカプリリルメチコンと、0.5重量%のツバキ油とを含有する、請求項1~9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の総重量に基づいて、21重量%の酸化亜鉛と、11重量%の(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキルと、40重量%のステアリルジメチコンと、16.9重量%のC30~45アルキルメチコンと、11重量%のカプリリルメチコンと、0.1重量%のツバキ油とを含有する、請求項10~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項記載の組成物を含むかまたは請求項13もしくは14記載の組成物からなる、スティック。
【請求項16】
薄い透明なシリコーンフィルムを所望の皮膚領域上、例えば不規則な皮膚表面上または瘢痕表面上に適用するための、請求項1~14のいずれか一項記載の組成物または請求項15記載のスティックの使用。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項記載の組成物を、瘢痕形成が生じやすい皮膚領域に適用する工程を含む、瘢痕形成を減少させるかまたは防止するための方法。
【請求項18】
請求項10~12または14のいずれか一項記載の組成物を、炎症後色素沈着が生じやすい皮膚領域に適用する工程を含む、炎症後色素沈着を減少させるかまたは防止するための方法。
【請求項19】
前記組成物を1日に少なくとも1回適用する、請求項17または18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として参照により本明細書に組み入れられるスウェーデン国特許出願第1950265-7号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、少なくとも3種類のシリコーン化合物の組み合わせを含むシリコーン組成物に関する。前記シリコーン組成物は、皮膚創傷の治癒の促進および/または瘢痕化の防止に適している。
【背景技術】
【0003】
例えば負傷または手術によって生じる重大な皮膚創傷は、しばしば瘢痕化をまねき、これは、場合によっては触覚の低下、柔軟性の減少、および関節可動域の減少(瘢痕が関節を横切って延びている場合)をもたらし得る。瘢痕化はまた、特に、瘢痕が見える領域、例えば顔や手に位置する場合に、明らかな美容上の問題をもたらす。
【0004】
瘢痕管理のためのシリコーンベースの製品は過去30年にわたって利用可能であり、従来から、肥厚性瘢痕およびケロイドの予防および処置のための「ゴールドスタンダード」の選択肢として推奨されている。シリコーンは、シリコーンシート、およびより最近ではシリコーンゲルなどの様々な形態で製造されている。
【0005】
シリコーンシートは、3~6ヶ月にわたり、または場合によっては最長1年にわたり、毎日12~24時間瘢痕の上に付けていなければならない。シートは分解し始めるまで使用することができるが、ほとんどのシートは、発疹や感染症などの副作用を防ぐために低刺激の石鹸および水で毎日洗浄することが製造元によって推奨されている。シリコーンシートによって組成は大きく異なり、医療用シリコーンのみを含有するものもあれば、一方で、シリコーンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせを含有するものもあり、この組み合わせは、薄く耐久性のあるシーティングを形成するためならびに柔軟性および通気性を高めるための内部補強を提供する。しかしながら、シリコーンシートは、広い皮膚領域への使用には適しておらず、関節などの体の可動部への使用にも適していない。さらに、患者は、顔などの見える領域にはシートを使用したがらず、したがって、この処置のコンプライアンスはしばしば問題になる。
【0006】
シリコーンシートに関する明らかな問題点のために、多くの患者は、特に、見える領域、例えば顔および/または手には、シリコーンゲルを使用することを好む。ゲルは薄い層として皮膚に適用され、そこで乾燥して、流体不透過性である接着性かつ柔軟性のシリコーン層/シリコーンシートを形成する。しかしながら、ゲルが皮膚上で乾燥するには少なくとも4~5分かかり、患者が処置の恩恵を得るためには、60~90日の推奨最短処置期間中、1日に少なくとも2回ゲルを適用しなければならない。さらに、患者は自分の指を用いてゲルを適用しなければならず、それによって、適用手順が面倒なものになるだけでなく、適用部位、例えば創傷を汚染する明らかな危険性もある。さらに、シリコーンゲルに関する問題点は、シリコーンゲルが、乾燥期間中に衣服に貼り付き変色させる可能性があるということ、および、シリコーンゲルは、ゲルが適用された領域に光沢のある外観を残すため、皮膚上で目に見える傾向があるということである。このように、シリコーンゲルは使用するには不便であり、したがって多くの患者は、適用を1回もしくは複数回省略し、かつ/または推奨されているよりも早く処置をやめる傾向があり、それによって所望の結果が達成されない。
【0007】
したがって、近年では、患者のより高いコンプライアンスに対する需要を満たすために、シリコーンを含むスティックが利用可能になっている。そのようなスティックの一例は、例えば米国特許第8,557,287号(特許文献1)に開示されており、他にも、Prosil(登録商標)およびRemescar(商標)Scar stickの商品名で市販されているものもある。しかしながら、これらの公知の製品は、いくつかの非シリコーン構成要素を含有しており、したがって比較的低いシリコーン含有率を有するため、瘢痕処置に対するシリコーンの十分有益な効果は達成されない。これらはまた、通常の使用中に低い耐久性を示し、スティックの最適な恩恵を得るためには、例えば運動後、洗浄後、または雨の中を外出した後に、再適用する必要がある。
【0008】
従来のシリコーンスティックに関するさらなる問題点は、高いシリコーン濃度と高い紫外線防御指数(SPF)の両方を有するシリコーンスティックを製造できていないということである。瘢痕が紫外光の影響を非常に受けやすいということ、ならびに、治癒中の組織における炎症と日光曝露の組み合わせは炎症後色素沈着(PIH)をまねき、瘢痕および周囲の皮膚を暗褐色にする可能性があるということは周知である。この変色は数ヶ月または数年も続く可能性がある。しかしながら、瘢痕を紫外線照射から保護するのに十分ではないと皮膚科医が考えるSPF 15を有する従来のシリコーンスティック、例えばProsil(登録商標)sportおよびRemescar(商標)を製造することしかできていない。
【0009】
したがって、先行技術の欠点を改善する新規なシリコーン組成物を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の第一の局面は、皮膚損傷を処置し、かつ/または瘢痕形成を最小限に抑えるかもしくは無くすために使用することができる組成物を提供することである。
【0012】
本発明の第二の局面は、皮膚に容易に適用することができ、乾燥時間を全く必要とせず、かつ水および/または汗と接触した後でも皮膚上にとどまる組成物を提供することである。
【0013】
本発明の第三の局面は、シリコーンスティックについて従来知られているよりも高いSPFを有するスティックを提供することである。
【0014】
本発明はまた、瘢痕形成を減少させるかまたは防止するための方法を提供し、該方法は、本発明による組成物を、瘢痕形成が生じやすい皮膚領域に適用する工程を含む。一態様において、組成物は、少なくとも1ヶ月、例えば少なくとも2ヶ月、より好ましくは3~12ヶ月の継続期間にわたり、皮膚領域に適用される。一態様において、組成物は、最長3ヶ月、例えば最長6ヶ月、より好ましくは最長12ヶ月の継続期間にわたり、皮膚領域に適用される。一態様において、組成物は、本方法の全継続期間にわたり、毎日少なくとも1回、皮膚領域に適用される。本発明はまた、そのような方法において使用するための、本発明による組成物を提供する。本発明はまた、そのような方法において使用するための美容組成物または薬学的組成物を製造するための、本発明による組成物の使用を提供する。
【0015】
本発明はまた、炎症後色素沈着を減少させるかまたは防止するための方法を提供し、該方法は、本発明による日焼け防止剤を含む組成物を、炎症後色素沈着が生じやすい皮膚領域に適用する工程を含む。一態様において、組成物は、少なくとも1ヶ月、例えば少なくとも2ヶ月、より好ましくは3~12ヶ月の継続期間にわたり、皮膚領域に適用される。一態様において、組成物は、最長3ヶ月、例えば最長6ヶ月、より好ましくは最長12ヶ月の継続期間にわたり、皮膚領域に適用される。一態様において、組成物は、本方法の全継続期間にわたり、毎日少なくとも1回、皮膚領域に適用される。本発明はまた、そのような方法において使用するための、本発明による日焼け防止剤を含む組成物を提供する。本発明はまた、そのような方法において使用するための美容組成物または薬学的組成物を製造するための、本発明による日焼け防止剤を含む組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
これらの局面およびさらなる局面は、
- ステアリルジメチコンと、
- C30~45アルキルメチコンと、
- カプリリルメチコンと
を含む組成物を提供することによって、本発明により実現される。
【0017】
これら3種類のシリコーン化合物の組み合わせは、角質層の水和を増大させることにより独特の効果を提供し、それによって、線維芽細胞産生の調節およびコラーゲン産生の低減を促進し、このため皮膚損傷の処置が達成され、例えばより柔らかくより平坦な瘢痕がもたらされることが明らかになった。
【0018】
前記シリコーン組成物はさらに、瘢痕化した組織を細菌の侵入から保護し、したがって、瘢痕組織における細菌誘導性のコラーゲンの過剰産生を防止するだけでなく、瘢痕にしばしば付随する掻痒および不快感を低減する。加えて、提供されるシリコーン組成物は、適用後、実質的に目に見えず、これは患者のコンプライアンスを著しく向上させる。
【0019】
前記シリコーン組成物は、好ましくは、スティック形態の組成物を提供するのに十分な粘度を有し、すなわち、シリコーン組成物は、例えばリップバーム/リップグロスまたはスティック糊によって知られているように、ディスペンサから押し出された時にその形状を実質的に保持する堅い半固体の組成物として提供される。したがって、シリコーン組成物は、約10Pa・s(パスカル秒)~約100Pa・sの範囲内の粘度(ずり速度200s-1および20℃においてRheomat RM 80によって測定した場合)を有することが好ましい。というのは、これによって、シリコーン組成物の化合物が均一な懸濁物または分散物の状態で保持され、シリコーン組成物のディスペンサからの漏洩が防止されることが明らかになっており、また、組成物を皮膚上に容易に分布させる/塗布することができることも保証されるからである。
【0020】
本組成物によるシリコーン組成物を塗布するためのディスペンサは、好ましくは、例えばリップバーム/リップグロスなどにより知られている、従来のディスペンサであり、好ましくは、ディスペンサ内に残っているシリコーン組成物の量を表示するための視覚手段を提供するインジケータを有する。この視覚表示は、例えば、部分的または全体的に透明なディスペンサを提供することによって得られてもよい。
【0021】
前記シリコーン組成物がスティックとして提供されるような粘度を有する態様において、これは、患者が(ディスペンサによって)薄い透明なシリコーンフィルムを所望の領域上に容易に適用することができ、それによって、皮膚の水分バランスを維持しながら、瘢痕が治癒するのに最適な保護バリアが形成されるという利点をもたらす。さらに、シリコーン組成物の高い粘度のために、組成物は乾燥時間を全く必要とせず、こすれ落ちて、例えば患者の衣服に付着することもなく、それによって患者のコンプライアンスを著しく改善する。
【0022】
ステアリルジメチコンおよびC30~45アルキルメチコンはいずれも、様々な数のメチル基が長鎖(C16またはC16超)アルキル基で置換されている、ジメチルシリコーンをベースとしたアルキル変性シリコーンワックスである。それぞれのアルキル変性シリコーンワックスの融点は、アルキル置換度および炭化水素鎖長に依存する。
【0023】
ステアリルジメチコンは、好ましくは、約32℃の融点を有し、これは皮膚のおおよその温度である。したがって、本発明によるシリコーン組成物が皮膚に接触した時、ステアリルジメチコンは融解して保湿効果を提供する。十分な保湿効果が得られることを保証するためには、シリコーン組成物は、ステアリルジメチコンを、本発明によるシリコーン組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%含むことが好ましい。
【0024】
ステアリルジメチコンは当技術分野において公知であるが、本発明によるシリコーン組成物において使用するための好ましいステアリルジメチコンは、以下の一般化学式:
を有するDow Corning(登録商標)2503 Cosmetic Waxである。
【0025】
好ましくは、C30~45アルキルメチコンは、50℃超、好ましくは60℃超、さらにより好ましくは70℃超または約70℃の融点を有し、それによって、室温すなわち18~25℃でのシリコーン組成物の十分な完全性および皮膚への接着性を提供する。シリコーン組成物が実質的に固体の形態、例えばスティック形態で提供される場合、全シリコーン組成物中のC30~45アルキルメチコンの濃度は、少なくとも13重量%、好ましくは少なくとも15重量%、さらにより好ましくは約17重量%またはさらにそれ以上であることが好ましい。
【0026】
適切なC30~45アルキルメチコンの一例は、
の一般化学式を有するDow Corning(登録商標)AMS-C30 Cosmetic Waxである。
【0027】
3つ目の成分のカプリリルメチコンは、(室温で)シリコーン流体であり、その閉塞特性および皮膚表面上に水分を保持するその能力のためにシリコーン組成物に添加される。カプリリルメチコンは、好ましくは、少なくとも10重量%、好ましくは20重量%超の量で全シリコーン組成物に添加されるが、30重量%超の濃度も本発明により企図される。
【0028】
適切なカプリリルメチコンの一例は、以下の化学式:
を有するDow Corning(登録商標)TI-2021 AMS Specialty Fluidである。
【0029】
本発明による組成物は、皮膚のバリア機能が損なわれている可能性のある皮膚、例えば瘢痕および創傷を含む最近損傷した皮膚に適用することを意図しており、したがって、組成物は、微生物の炭素源もしくはエネルギー源またはその他の栄養素となり得る化合物または作用物質を含まないことが望ましい。したがって、一態様において、組成物は、糖質、例えば糖およびデンプン、ヌクレオチド、ビタミンおよびプロビタミン、例えばビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンKを含まない。
【0030】
いくつかの態様において、本発明による組成物は、環状ポリシロキサン、例えばシクロメチコンまたはシクロペンタシロキサンを含まない。
【0031】
あるいは、カプリリルメチコンの代わりにシクロメチコンが用いられ、すなわち、シクロメチコンが、カプリリルメチコンと同じ濃度で本発明によるシリコーン組成物に添加される。シクロメチコンは、透明で無臭のシリコーンであり、表皮の最上層内に油分を導入することを補助し得る。しかしながら、シクロメチコンは、皮膚に適用すると比較的急速に揮発し、したがって、シクロメチコンの使用は、適用後にすべすべして滑らかでドライな感触を伴うシリコーン組成物をもたらす。
【0032】
適切なシクロメチコンの一例は、以下の化学式:
を有するDow Corning(登録商標)ST-20シクロメチコン5-NFである。
【0033】
瘢痕は紫外線の影響を非常に受けやすいので、好ましい態様において、本発明によるシリコーン組成物は、シリコーン組成物のSPFが少なくとも30、さらにより好ましくは約50となるような濃度の1種類または複数種類の日焼け防止剤を含んでもよく、この約50のSPFは、例えば皮膚科医によって、瘢痕を紫外光から保護するために推奨されているSPFである。
【0034】
前記1種類または複数種類の日焼け防止剤は、所望の効果を提供することができる任意の適切な剤であってもよい。しかしながら、物理的な日焼け防止剤、すなわち、皮膚の上に配置されて有害な紫外線を皮膚から遠ざけるように屈折および散乱させることによって作用する、二酸化チタンまたは酸化亜鉛などのミネラル成分を含有する剤を使用することが好ましい。少なくとも30(好ましくは50)のSPFを得るために、最終シリコーン組成物中の日焼け防止剤の濃度は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも21重量%、さらにより好ましくは少なくとも22重量%である。しかしながら、組成物は、25重量%超の物理的な日焼け防止剤を含まないことが好ましい。
【0035】
酸化亜鉛を含有する適切な物理的な日焼け防止剤の一例は、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル中65重量%の酸化亜鉛分散液である、ZinClear(登録商標)XP65COCOである。この製品は、所望の紫外線防御を提供するが非常に優れた透明度も有し、それによって、物理的な日焼け防止剤にしばしば付随する、皮膚上での許容し難い白さが効果的に抑えられる。
【0036】
一態様において、シリコーン組成物はまた、最終シリコーン組成物の1.0重量%未満という少量の1種類または複数種類の抗酸化剤および保湿剤も含む。この点において、1つの好ましい追加の構成要素はツバキ油、例えばツバキ種子油である。ツバキ油は、優れた保湿剤であることで知られているだけでなく、その抗酸化特性により、フリーラジカルによる損傷から皮膚を保護することも知られている。しかしながら、他の同様の化合物もまた、本発明によるシリコーン組成物に組み込まれてもよい。しかしながら、そのような1種類または複数種類の抗酸化剤および保湿剤の濃度はシリコーン組成物の0.5重量%を超えないこと、好ましくは、該1種類または複数種類の抗酸化剤および保湿剤の濃度はシリコーン組成物の0.1重量%を超えないことが好ましい。
【0037】
好ましい一態様において、組成物の3つの構成要素、すなわち、ステアリルジメチコン、C30~45アルキルメチコン、およびカプリリルメチコン(またはシクロメチコン)は、組成物全体の少なくとも95重量%、好ましくは組成物全体の少なくとも99.5重量%、さらにより好ましくは組成物全部を構成する。
【0038】
本発明による組成物は、シリコーン組成物の化合物のペーストの混合物を、ワックスの最も高い融点よりも高い温度で加熱し、次いで、溶融した混合物を鋳型に流し込むことによって、従来の方法で製造することができる。このプロセスによって、固体形態、すなわちスティック形態または小型の皿の形態の組成物を得ることが可能になる。
【0039】
第一の好ましい組成物(紫外線防御なし)の一例を表1に提供する。
【0040】
【0041】
第一の好ましい組成物は、約60Pa・s(パスカル秒)の粘度(ずり速度200s-1および20℃においてRheomat RM 80によって測定した場合)を有し、それによって、例えば適切なディスペンサ内に、スティックとして配置することができる、半固体であるが堅い組成物を提供する。
【0042】
SPF 50を有する第二の好ましいシリコーン組成物の一例を表2に提供する。
【0043】
【0044】
表2のシリコーン組成物は、約58Pa・s(パスカル秒)の粘度(ずり速度200s-1および20℃においてRheomat RM 80によって測定した場合)を有し、それによって、例えば適切なディスペンサ内に、スティックとして配置することができる、半固体であるが堅い組成物を提供する。
【0045】
例えば表1および表2に開示したような組成を有するシリコーンスティックの利点としては、投与が容易であることが挙げられる。というのは、これらは、薄い透明なシリコーンフィルムとして、所望の皮膚領域上、例えば不規則な皮膚表面または瘢痕表面、顔、手、可動部(関節および屈曲部)の上に適用することができ、かつ、あらゆる瘢痕サイズに適用することができるからである。
【0046】
さらに、前記シリコーン組成物は乾燥時間を全く必要とせず、患者の皮膚に対する改善された接着性を有し、すなわち、組成物がこすれ落ちて、例えば患者の衣服に付着することはない。また組成物は、従来知られているよりも水/汗に対してより耐性があることが明らかになった。例えば、試験によって、市販のシリコーンスティックとは対照的に、表1および表2の組成物は水をはじいて、シリコーンフィルム上に小さな水滴を形成し、水滴はその後滑り落ちると考えられることが示された。これは、患者が、例えば運動中に汗をかいているかもしくは暑い気候の中にいる場合に、および/または、患者が自分の手を洗っている時に、適用されたシリコーンフィルムが侵食される/はがれることはないことを事実上意味している。
【0047】
加えて、本発明のシリコーン組成物は、瘢痕が治癒するのに最適な保護バリアを提供しながら、均質であり、容易かつ均一に伸び、かつ実質的に目に見えないフィルムを得ることを可能にする。得られたフィルムはまた、軽い触感を有し、快適なままであり、一日中装用することができる。
【0048】
このように、例えば表1および2に開示された、本発明によるシリコーン組成物の使用は、改善された装用性、持続性、および耐久性を示し、したがって患者のコンプライアンスを著しく改善する。患者は、皮膚の水分バランスを維持しながら瘢痕のための最適な治癒環境を作るために、1日に数回、例えば朝と晩に、保護シリコーンフィルムを瘢痕上に適用するだけでよい。
【0049】
上記の原理および化合物の改変および組み合わせは本発明の範囲内で予想される。各実施例は本発明の例示のために提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲である。
【0050】
本開示で使用されている単語および用語はすべて、当業者によってこれらの単語および用語に一般的に与えられている意味を有すると解釈されるべきである。「シリコーン組成物」なる用語は、シリコーン化合物、すなわち、シロキサンの繰り返し単位から構成される合成化合物を、少なくとも1種類含む組成物を指す。本開示の文脈において、「シリコーン組成物」とは、少なくとも1種類のシリコーン化合物を含む任意の組成物である。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ステアリルジメチコンと、
- C30~45アルキルメチコンと、
-
少なくとも10重量%のカプリリルメチコンと
- 少なくとも20重量%の1種類または複数種類の日焼け防止剤と
を含む組成物
であって
スティック形態の該組成物を提供するのに十分な粘度を有し、かつ1種類または複数種類の日焼け防止剤の濃度が、該組成物の紫外線防御指数(SPF)が少なくとも30となるような濃度である、組成物。
【請求項2】
前記組成物の紫外線防御指数(SPF)が少なくとも50となるような濃度の1種類または複数種類の日焼け防止剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
約10Pa・s(パスカル秒)~約100Pa・sの範囲内の粘度(ずり速度200s-1および20℃においてRheomat RM 80によって測定した場合)を有する、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記ステアリルジメチコンが約32℃の融点を有する、請求項1、2、または3記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%のステアリルジメチコン
を含む、請求項
1~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記C30~45アルキルメチコンが、50℃超
の融点を有する、請求項
1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも13重量%のC30~45アルキルメチコン
を含む、請求項
1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%のカプリリルメチコン
を含む、請求項
1~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の1.0重量%を超えない量
の、1種類または複数種類の抗酸化剤および保湿剤をさらに含む、請求項
1~8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記日焼け防止剤の濃度が、前記組成物の総重量に基づいて、
少なくとも21重量%
である、請求項
1~9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記日焼け防止剤が、二酸化チタンまたは酸化亜鉛などのミネラル成分を含有する物理的な日焼け防止剤である、請求項
1~10
のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の総重量に基づいて、21重量%の酸化亜鉛と、11重量%の(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキルと、40
.5重量%の
Dow Corning(登録商標)2503 Cosmetic Waxと、16.9重量%の
Dow Corning(登録商標)AMS-C30 Cosmetic Wax と、11重量%の
Dow Corning(登録商標)TI-2021 AMS Specialty Fluidと、
任意で0.1重量%のツバキ油とを含有する、請求項
1~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~
11のいずれか一項記載の組成物を含むかまたは請求項
12記載の組成物からなる、スティック。
【請求項14】
薄い透明なシリコーンフィルムを所望の皮膚領域上
に適用するための、請求項1~
12のいずれか一項記載の組成物または請求項
13記載のスティック。
【請求項15】
瘢痕形成を減少させるかまたは防止するための
請求項1~12のいずれか一項記載の組成物であって、瘢痕形成が生じやすい皮膚領域に適用される組成物。
【請求項16】
炎症後色素沈着を減少させるかまたは防止するための
請求項10~12のいずれか一項記載の組成物であって、炎症後色素沈着が生じやすい皮膚領域に適用される、組成物。
【請求項17】
1日に少なくとも1回適用
される、請求項
15または
16記載の
組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明はまた、炎症後色素沈着を減少させるかまたは防止するための方法を提供し、該方法は、本発明による日焼け防止剤を含む組成物を、炎症後色素沈着が生じやすい皮膚領域に適用する工程を含む。一態様において、組成物は、少なくとも1ヶ月、例えば少なくとも2ヶ月、より好ましくは3~12ヶ月の継続期間にわたり、皮膚領域に適用される。一態様において、組成物は、最長3ヶ月、例えば最長6ヶ月、より好ましくは最長12ヶ月の継続期間にわたり、皮膚領域に適用される。一態様において、組成物は、本方法の全継続期間にわたり、毎日少なくとも1回、皮膚領域に適用される。本発明はまた、そのような方法において使用するための、本発明による日焼け防止剤を含む組成物を提供する。本発明はまた、そのような方法において使用するための美容組成物または薬学的組成物を製造するための、本発明による日焼け防止剤を含む組成物の使用を提供する。
[本発明1001]
- ステアリルジメチコンと、
- C30~45アルキルメチコンと、
- カプリリルメチコンと
を含む組成物。
[本発明1002]
スティック形態の前記組成物を提供するのに十分な粘度を有する、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
約10Pa・s(パスカル秒)~約100Pa・sの範囲内の粘度(ずり速度200s-1および20℃においてRheomat RM 80によって測定した場合)を有する、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1004]
前記ステアリルジメチコンが約32℃の融点を有する、本発明1001、1002、または1003の組成物。
[本発明1005]
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%のステアリルジメチコン、好ましくは少なくとも35重量%のステアリルジメチコン、さらにより好ましくは少なくとも40重量%のステアリルジメチコンを含む、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1006]
前記C30~45アルキルメチコンが、50℃超、好ましくは60℃超、さらにより好ましくは70℃超または約70℃の融点を有する、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1007]
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも13重量%のC30~45アルキルメチコン、好ましくは少なくとも15重量%のC30~45アルキルメチコン、さらにより好ましくは約17重量%または17重量%超のC30~45アルキルメチコンを含む、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1008]
前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%のカプリリルメチコン、好ましくは少なくとも20重量%のカプリリルメチコン、さらにより好ましくは少なくとも30重量%のカプリリルメチコンを含む、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1009]
前記組成物の1.0重量%を超えない量、好ましくは該組成物の0.5重量%を超えない量の、1種類または複数種類の抗酸化剤および保湿剤をさらに含む、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1010]
前記組成物の紫外線防御指数(SPF)が少なくとも30、さらにより好ましくは約50となるような濃度の1種類または複数種類の日焼け防止剤をさらに含む、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1011]
前記日焼け防止剤の濃度が、前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも21重量%、さらにより好ましくは約22重量%または22重量%超である、本発明1010の組成物。
[本発明1012]
前記日焼け防止剤が、二酸化チタンまたは酸化亜鉛などのミネラル成分を含有する物理的な日焼け防止剤である、本発明1010または1011の組成物。
[本発明1013]
前記組成物の総重量に基づいて、47.5重量%のステアリルジメチコンと、17.5重量%のC30~45アルキルメチコンと、34.5重量%のカプリリルメチコンと、0.5重量%のツバキ油とを含有する、本発明1001~1009のいずれかの組成物。
[本発明1014]
前記組成物の総重量に基づいて、21重量%の酸化亜鉛と、11重量%の(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキルと、40重量%のステアリルジメチコンと、16.9重量%のC30~45アルキルメチコンと、11重量%のカプリリルメチコンと、0.1重量%のツバキ油とを含有する、本発明1010~1012のいずれかの組成物。
[本発明1015]
本発明1001~1012のいずれかの組成物を含むかまたは本発明1013もしくは1014の組成物からなる、スティック。
[本発明1016]
薄い透明なシリコーンフィルムを所望の皮膚領域上、例えば不規則な皮膚表面上または瘢痕表面上に適用するための、本発明1001~1014のいずれかの組成物または本発明1015のスティックの使用。
[本発明1017]
本発明1001~1014のいずれかの組成物を、瘢痕形成が生じやすい皮膚領域に適用する工程を含む、瘢痕形成を減少させるかまたは防止するための方法。
[本発明1018]
本発明1010~1012または1014のいずれかの組成物を、炎症後色素沈着が生じやすい皮膚領域に適用する工程を含む、炎症後色素沈着を減少させるかまたは防止するための方法。
[本発明1019]
前記組成物を1日に少なくとも1回適用する、本発明1017または1018の方法。
【国際調査報告】