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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-18
(54)【発明の名称】細胞分離装置および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20220411BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220411BHJP
   C12M 3/08 20060101ALI20220411BHJP
   B04B 13/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C12N5/07
C12M1/00 Z
C12M3/08
B04B13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534340
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 US2018065405
(87)【国際公開番号】W WO2020122916
(87)【国際公開日】2020-06-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259356
【氏名又は名称】コリゴ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ、ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティ、ジュールズ
(72)【発明者】
【氏名】グルスキ、トム
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4D057
【Fターム(参考)】
4B029AA15
4B029AA27
4B029DG08
4B029GB01
4B065AA90X
4B065BD15
4B065BD50
4D057AA03
4D057AB01
4D057AC01
4D057AD01
4D057AE02
4D057AF05
4D057CB08
(57)【要約】
細胞分離システムおよび細胞を分離する方法が開示されている。一実施形態では、細胞分離システムは、遠心分離プログラムに関連付けられた複数のロジックを含む非一時的な記憶装置であって、遠心分離プログラムの実行により、生体由来材料から細胞を分離する装置と、電源に電気的に接続された加熱機構と、閉じ込め機構と、閉じ込め機構に着脱可能に結合されたアセンブリとを含み、アセンブリは、生成物リザーバと、生成物リザーバ内に収容された複数の細胞濃縮領域と、消化領域と、廃棄物リザーバと、生成物リザーバに着脱可能に結合されたアクセスチューブを含むセンターコラムとを含む単層ボウルと、取付プレートと、ボウルに結合され、第1のアセンブリが閉じ込め機構に結合されたときに取付プレートの動きを制限するアライメント機構とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を分離する方法であって、
(a)細胞分離システムの消化領域において、所定量の生体由来材料および所定量の消化培地を攪拌することにより、所定量の消化済生体由来材料を形成するステップと、
(b)前記消化済生体由来材料を、約500G~約1000Gの力で約5分~約10分間遠心分離することにより、前記消化済生体由来材料を複数成分の濃縮細胞および複数成分の廃棄物に分離するステップと、
(c)フィルタの目よりも小さい直径を有することにより、細胞濃縮領域に到達できる前記濃縮細胞の成分を生成物リザーバに集めるステップと、
(d)ボウル内で前記消化領域から仕切られた廃棄物リザーバにおいて、前記フィルタの目よりも大きな直径を有し、かつ前記濃縮細胞と接触しない前記廃棄物の成分を分離するステップと、
(e)前記生成物リザーバから前記濃縮細胞を取り出すステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、単層ボウルを、中心軸を中心として各方向に交互に所定の時間回転させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)において、前記消化済生体由来材料と複数の前記消化培地をリザーバに投入する前に、前記単層ボウルを約30℃~約40℃に加熱するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)の間に、前記単層ボウルを約30℃~約40℃に加熱するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)、(c)、(d)、および(e)が、約20℃~約25℃で発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
プロセッサを介して遠心分離プログラムを実行することにより、前記ステップ(a)を開始するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遠心分離プログラムが、前記ステップ(e)の後に完了する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数の遠心分離プログラムが、前記細胞分離システムの非一時的な記憶装置に記憶される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
細胞分離システムであって、
遠心分離プログラムに関連する複数のロジックを含み、前記遠心分離プログラムの実行により、所定量の生体由来材料から所定量の細胞を分離する非一時的な記憶装置と、
電源に電気的に接続された加熱機構と、
前記加熱機構に近接して設けられた閉じ込め機構と、
前記閉じ込め機構に着脱可能に結合されたアセンブリと、
を含み、
前記アセンブリは、
生成物リザーバと、複数の細胞濃縮領域と、消化領域と、廃棄物リザーバと、前記生成物リザーバとに着脱可能に結合されたアクセスチューブを含むセンターコラムを含む単層ボウルと、前記単層ボウルが着脱可能に結合されている取付プレートと、前記閉じ込め機構に結合されたときに前記アクセスチューブの移動を制限する前記センターコラムに結合されたアライメント機構と、
を含み、
前記遠心分離プログラムの第1の状態では、前記アセンブリが中心軸の周りを第1の方向および第2の方向に交互に回転するように構成されて前記加熱機構が作動し、
前記遠心分離プログラムの第2の状態では、前記加熱機構が作動せず、前記単層ボウルが前記中心軸の周りを単一方向に回転して、複数成分の前記細胞から複数成分の廃棄物を分離するように構成されているシステム。
【請求項10】
分離された前記細胞が、前記遠心分離プログラムの前記第2の状態で、前記単層ボウルの前記生成物リザーバ内の複数の前記細胞濃縮領域に分離される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムが第3の状態をさらに含み、前記第3の状態に設定されたとき、前記単層ボウルに形成された前記廃棄物リザーバに前記廃棄物を集めるように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記生成物リザーバが、直径200ミクロン未満の材料のみを前記細胞濃縮領域に通過させる1つ以上のフィルタを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
第4の状態に設定されたとき、前記単層ボウルが静止する、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記アクセスチューブが、遠心分離中に前記生成物リザーバからの濃縮細胞生成物の取り出しを可能にする、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
複数の異なる遠心分離プログラムに関連する複数のロジックを含む非一時的な記憶装置を含む細胞分離システムであって、
前記非一時的な記憶装置はプロセッサによって実行された時に、
消化領域において所定量の生体由来材料と所定量の消化培地を攪拌して消化済生体由来材料を形成し、
前記消化済生体由来材料を、約500G~約1000Gの力で約5分~約10分間遠心分離することにより、前記消化済生体由来材料を複数成分の濃縮細胞と複数成分の前記廃棄物に分離し、
フィルタの目よりも小さい直径を有することにより、細胞濃縮領域に到達できる前記濃縮細胞の成分を生成物リザーバに集め、
ボウル内で前記消化領域から仕切られた廃棄物リザーバにおいて、前記フィルタの目よりも大きな直径を有し、かつ前記濃縮細胞と接触しない廃棄物の成分を分離し、
前記生成物リザーバから前記濃縮細胞を取り出すように構成されているシステム。
【請求項16】
少なくとも攪拌および遠心分離を行う間に、第1のアセンブリの閉じ込め機構に対する回転を可能にするために、取付プレートに着脱可能に結合されている単層ボウルを含む前記第1のアセンブリを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1のアセンブリが前記閉じ込め機構に着脱可能に結合されており、加熱機構が前記閉じ込め機構に近接して配置されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
少なくとも1つの前記遠心分離プログラムが実行されたときに、攪拌前または攪拌中の少なくとも一方の前記ボウルを約30℃~約40℃で加熱するようにさらに構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
細胞生成物が、前記単層ボウルの複数の前記細胞濃縮領域内の複数成分の前記濃縮細胞から前記生成物リザーバへの移送によって集められる、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1のアセンブリが使い捨てである、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分離装置およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞療法と組織工学は、損傷したり病気になったりした組織や臓器の修復や回復のための臨床応用に向けて発展している。特に、組織移植片の開発は、心臓および末梢血管の手術、四肢組織修復、歯科用途、および獣医手術を含む手術の発展を促進する。移植片および他の細胞ベースの生成物は、ヒトまたは動物の組織から細胞を単離および/または培養することによって形成することができる。
【0003】
内皮細胞播種の潜在的な供給源は、微小血管内皮細胞(MVEC)である。ウィリアムズらは研究室において、細胞機能を研究するために、ヒト、イヌ、ウサギ、ネズミ、ウシ、ブタの内皮細胞、特に生きたままのMVECの単離と培養の両方の先駆的な研究を行った。ヒトMVECは元々、美容脂肪吸引によって吸引された組織である。ヒト脂肪MVECの分離には、細胞の最終用途に応じて2つの異なるプロトコルを使用した。これらのプロトコルは、ヒトや動物の移植片をすぐに播種するための簡単な手術室対応の手順から、MVECを後から培養する場合のより手の込んだ手順まで、分離には様々な手順がある。
【0004】
内皮細胞は、非血栓形成細胞株を樹立する上で非常に重要である。手術室での人工移植片上の内皮細胞株を生成するための効率的かつ信頼できる方法が依然として必要である。手術室の環境に適合し、無菌バリアを維持し、使いやすく、安定した結果が得られ、かつ安価な機器を用いて、数分から数時間のうちに、透過性マトリックス、スキャフォールド、その他の透過性細胞基材への迅速な細胞接着を実現することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、以下の方法を含む細胞を分離する方法を開示している。消化領域において、所定量の生体由来材料および所定量の消化培地を攪拌して、消化済生体由来材料を形成するステップ。消化済生体由来材料を、約500G~約1000Gの力で約5分~約10分間遠心分離することにより、複数成分の濃縮細胞と複数成分の廃棄物とに分離するステップ。フィルタの目よりも小さい直径を有することにより、細胞濃縮領域に到達できる濃縮細胞の成分を生成物リザーバに集めるステップ。ボウル内で消化領域から仕切られた廃棄物リザーバにおいて、フィルタの目よりも大きな直径を有し、かつ濃縮細胞と接触しない廃棄物の成分を分離するステップ。および、生成物リザーバから濃縮細胞を取り出すステップ。
【0006】
本開示の一実施形態は、以下を含む細胞分離システムを開示している。遠心分離プログラムに関連する複数のロジックを含み、遠心分離プログラムの実行により、所定量の生体由来材料から所定量の細胞を分離する非一時的な記憶装置。電源に電気的に結合された加熱機構。加熱機構に近接して設けられた閉じ込め機構。閉じ込め機構に着脱可能に結合されたアセンブリであって、生成物リザーバ、生成物リザーバ内の複数の細胞濃縮領域、消化領域、廃棄物リザーバ、および生成物リザーバに着脱可能に結合されたアクセスチューブを含むセンターコラムを含む単層ボウルと、単層ボウルが着脱可能に結合されている取付プレートと、センターコラムに結合された移動を制限するアライメント機構とを含むアセンブリ。さらに、細胞分離システムは、遠心分離プログラムの第1の状態において、アセンブリが中心軸の周りを第1の方向および第2の方向に交互に回転するように構成され、かつ加熱機構が作動し、遠心分離プログラムの第2の状態において、加熱機構が作動せず、単層ボウルが中心軸の周りを単一方向に回転して、複数の細胞から複数の廃棄物を分離するように構成されている。
【0007】
本開示の一実施形態は、以下を含む細胞分離システムを開示する。複数の異なる遠心分離プログラムに関連付けられた複数のロジックを含む非一時的な記憶装置。非一時的な記憶装置はプロセッサによって実行された時に、消化領域において所定量の生体由来材料と所定量の消化培地を攪拌して消化済生体由来材料を形成し、消化済生体由来材料を、約500G~約1000Gの力で約5分~約10分間遠心分離することにより、消化済生体由来材料を複数成分の濃縮細胞と複数成分の廃棄物とに分離し、フィルタの目よりも小さい直径を有することにより、細胞濃縮領域に到達できる濃縮細胞の成分を生成物リザーバに集め、ボウル内で消化領域から仕切られた廃棄物リザーバにおいて、フィルタの目よりも大きな直径を有し、かつ濃縮細胞と接触しない廃棄物の成分を分離することで、生成物リザーバから濃縮細胞を取り出す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の特定の実施形態による細胞分離システム100の部分等角図である。
図2】本開示の特定の実施形態による単層ボウルの部分分解図である。
図3A】本開示の特定の実施形態による単層ボウルの部分上面図である。
図3B】本開示の特定の実施形態による単層ボウルの正面図である。
図3C】本開示の特定の実施形態による単層ボウルの部分側面図である。
図4A】本開示の特定の実施形態による、ボウルを横切ってペレット濃縮領域を通過した単層ボウルの部分断面図である。
図4B】本開示の特定の実施形態による、ペレット濃縮領域を通してボウルを垂直に横切った単層ボウルの部分断面図である。
図5A】本開示の特定の実施形態による単層ボウルのアセンブリ102の部分分解図である。
図5B】本開示の特定の実施形態による単層ボウルのアセンブリ102の部分等角図である。
図6】本開示の特定の実施形態による取付プレート504および遠心分離機アセンブリ132の部分分解図である。
図7】本開示の特定の実施形態による、脂肪組織などの生体由来材料から内皮細胞を分離する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
内皮細胞は、合成移植片内に非血栓形成細胞株を樹立するために使用される。したがって、手術室の環境に適合し、無菌バリアを維持することができ、使いやすく、安定した移植の結果が得られ、数分から数時間のうちに透過性マトリックス、スキャフォールド、その他の透過性細胞基材への迅速な細胞接着を実現することが望ましい。
【0010】
現在、これらの要件を満たすための様々なアプローチがあるが、成功例は限られている。(i)脱細胞化組織材料の使用。(ii)細胞外マトリックス(ECM)の合成を誘導する培地を用いて組織培養用プラスチック上で細胞を培養する、自己組織化メカニズムの使用。(iii)生分解性の合成ポリマーを使用し、その上に細胞を播種し、生理学的環境を模擬して培養する。(iv)生理的環境を再現するために、機械的な力を加えて組織細胞を形成し、圧縮する再構成I型コラーゲンゲルなどのバイオポリマーを使用する。
【0011】
本開示の実施形態は、脂肪組織からの大量の内皮細胞の分離と、迅速な合成移植片の細胞植え付け(cell sodding)を可能にし、移植片の迅速な植え付け(sodding)のために、手術室対応機器ですぐに利用できる細胞の自動化および接着を可能にするシステムおよび方法を開示している。本開示の実施形態は、移植のための移植片株に加えて、他の用途を有すると考えられる。
【0012】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、単一の部品(継ぎ目や溶接がない)として形成されていてもよいし、複数の部品として形成されていてもよい単層ボウル(ボウル)を含む細胞分離システムに関するものである。単層ボウルは、生成物リザーバに接続された単一アクセスチューブを収容するセンターコラムを含むさまざまな領域を含み、目的の最終生成物を含む細胞濃縮領域へ直接アクセスできるようにする。ボウルはさらに、ボウルと一体的に形成されるか、または分離可能な構成要素であってもよい複数の内壁によって分離された消化領域および廃棄物リザーバを含む。内壁により、消化領域と廃棄領域の分離が可能になり、ボウルが遠心分離されると、細胞分離プロセスがより迅速に行われ、より純粋な最終生成物が得られる。消化領域と廃棄領域の物理的な分離により、さらに消化領域を直接加熱することができ、細胞分離プロセスをさらにサポートする。単層ボウルは、遠心分離中に重力が細胞を生体由来原料から分離するために、ボウルの中心軸の周りに円周方向に配置された複数の細胞濃縮領域をさらに含む。廃棄物は廃棄物リザーバに集められ、細胞は細胞濃縮領域に収集される。
【0013】
ボウルは、ボウルの一端から他端まで、ある細胞濃縮領域から他の領域まで延在する生成物リザーバに接続された1以上のフィルタまたはスクリーンを含む。生成物リザーバはセンターコラム内のアクセスチューブに接続されており、濃縮細胞へアクセスできるようにしている。生成物リザーバはさらに、濃縮細胞生成物が廃棄物によって汚染されるのを防ぐスクリーンまたはフィルタを収容する1つ以上のスクリーンホルダを含む。ボウルは、ばねロック機構を介して閉じ込め機構に結合する取付プレートに結合している。アライメント機構は、アセンブリが配置されている取付プレートと係合するようにボウルに結合されている。
【0014】
本明細書で論じる細胞分離システムを使用する細胞分離の一例では、複数のロジックが非一時的な記憶装置(メモリ)に記憶されており、それは、複数の遠心分離プログラムを含んでいる。複数のプログラムのうちの各プログラムは、培地の種類や生体由来材料の量および/または目標細胞量や目標細胞濃度などの複数の要素に基づいて、命令を出す。プロセッサによって実行されると、各プログラムは、本明細書で説明する複数の状態を経て細胞分離を開始し、分離された細胞の自動の取り出しおよび廃棄物の捕捉および/または除去を行う。プログラムは、温度、時間、力、および所定量の生体由来材料および培地の廃棄物から分離された所定量細胞の取り出しまでのプログラム全体の長さ(時間)を含む、さまざまな面で異なっていてもおよび/または重複してもよい。
【0015】
細胞分離システムの一例では、複数成分の消化培地および複数成分の生体由来材料が、ボウル、特にボウルの混合および消化領域に配置される。次に、ボウルを攪拌し、中心軸を中心に各方向に回転させて、生体由来材料を分解することで、遠心分離中に細胞を分離できるようにする。ボウルは、加熱機構を通じて攪拌の前および/または攪拌中に加熱されてもよく、加熱機構によって生成された熱により、ボウルと取付プレートおよび/または閉じ込め機構との間のギャップ内の空気が加熱され、循環する。ボウルは約25℃~約45℃に加熱されてもよく、攪拌の完了後に加熱機構を停止して、残りの細胞分離が室温(約20℃~約25℃)で行われるようにしてもよい。
【0016】
攪拌後、遠心分離を行う。遠心分離中、ボウルは閉じ込め機構に対して自由に回転し、アライメント機構はボウルと取り付けプレートに結合され、実施形態によってはさらに閉じ込め機構に結合され、ボウルの一部が回転するのを防止する。
【0017】
遠心分離は、様々な実施形態において、約500G~約1000Gの力で、5分~20分、または1分~10分、または他の時間間隔に亘って実施されてもよい。細胞は、混合および消化領域で混合物から分離され、重力によってボウルの複数の細胞濃縮領域に押し込まれる。遠心分離後、ボウルの速度が低下し、廃棄物が廃棄物リザーバに集まる。ボウルの速度が低下すると、アクセスチューブを通じて生成物リザーバに真空が生成されることにより、操作中に分離された細胞が収集される。フィルタ/スクリーンの穴よりも直径の小さい細胞と培地はスクリーンを通過して細胞濃縮領域に入るが、フィルタ/スクリーンの穴よりも直径が大きい廃棄物やその他の材料はスクリーンを通過しないようになっている。この廃棄物は廃棄物リザーバに保持されているため、分離された細胞と接触しない。ある実施形態では、遠心分離後、回転を停止してもよく、収集された細胞は生成物リザーバに残される。細胞は、真空を使用してアクセスチューブを通じて取り出される。単層ボウルを使用することにより、熱伝達がより効果的に行われ、システムの効率が向上する。単層ボウルシステムは、細胞分離に関連するコストを削減する。細胞濃縮領域に直接アクセスすることで、より純粋でより濃縮された細胞生成物の捕捉が可能になる。生成物リザーバへのアクセスにより、アセンブリがまだ回転している間に細胞生成物をさらに捕捉することができる。
【0018】
図1は、本開示の特定の実施形態による細胞分離システム100の部分等角図である。細胞分離システム100は、遠心分離機アセンブリ132と、ばねロック機構を介して取付プレート106に結合された単層ボウル104のアセンブリ102とを含む。取付プレート106は、遠心分離機(図示せず)の駆動軸に連結されている。アライメントロッド110(および単一アクセスチューブ108)が静止している間、アセンブリ102は自由に回転する。攪拌および遠心分離の間、アセンブリ102は、図1の座標系に示されており、全体から参照可能な中心軸124を中心に、方向130Aまたは方向130Bのいずれかの方向に回転する。座標系はさらに、中心軸124に垂直な第2軸126と、中心軸124と第2軸126の両方に垂直な第3軸128を備えている。
【0019】
一実施形態では、アセンブリ102は、中心軸124の周りでそれぞれ方向130Aおよび方向130Bに360度未満回転することによって攪拌される。攪拌中および/または遠心分離中にボウル104を加熱してもよい。攪拌および遠心分離中に、生体由来材料が分離され、その結果として細胞が生成物リザーバ206に濃縮され、廃棄物は廃棄物リザーバ202に収集される。一実施形態では、取付プレート106は、閉じ込め機構112に据え付けられ、着脱可能に結合されており、閉じ込め機構112は、加熱ユニット114の作動によって生成される熱および熱風を導くように働く。閉じ込め機構112はまた、アセンブリ102を回転させるように動作する遠心分離機に着脱可能に結合される。閉じ込め機構112のアセンブリ102への結合により、両者の間に空隙が生じる。この空隙を通り、取付プレート106の底部に設けられた複数の開口部(図示せず)を通って熱風が循環してもよい。一実施形態では、単層ボウルのアセンブリ102および関連するチューブ類は使い捨て式である。
【0020】
一実施形態では、加熱ユニット114は、少なくとも攪拌中に細胞分離システム100の温度を上昇させるために使用される。加熱ユニット114は、複数の遠心分離プログラムの実行中にベース118および細胞分離システム100が動くのを防止するように構成された複数の脚部116を含むベース118に結合されている。加熱ユニット114は、122を介した直接の有線接続によって電力を供給されてもよいし、充電式バッテリー(または電池)のようなポータブル電源で構成されてもよい。加熱ユニット114は、閉じ込め機構112、ひいては閉じ込め機構112に結合されたアセンブリ102の温度を上昇させるように構成された複数の加熱要素をさらに含む。閉じ込め機構112もまた、ベース118に連結されるか、または着脱可能に結合されてもよい。
【0021】
一実施形態では、アライメントロッド110がセンターコラム402に結合され、ボウル104がばねロック機構によって取付プレート106に固定されるため、細胞分離のためのアセンブリ102は、閉じ込め機構112に対して回転することができる。アセンブリは、閉じ込め機構112に着脱可能に結合され、アセンブリ102が自由に回転できるようにしている。一実施形態では、細胞分離システム100は、複数の遠心分離プログラムおよびプロセッサを含む少なくとも1つの記憶装置(図示せず)、ならびにプロセッサを通じた遠心分離プログラムの実行によって起動される複数の制御装置(図示せず)を含んでいてもよい。記憶装置および/または複数の制御装置で、細胞分離システム100上に配置されていてもよいし、遠隔地に配置され、タブレット、携帯電話、ウェアラブル技術、キオスク、ラップトップコンピュータ、またはデスクトップコンピュータを介してアクセスされてもよい。各遠心分離プログラムは、遠心分離サイクルで使用される複数のパラメータで構成されており、使用する生体由来材料の量や使用する消化酵素の量や種類などの入力に基づいて、手動または動的に自動化された方法で選択することができる。
【0022】
図2は、本開示の特定の実施形態による単層ボウル104の部分分解図200である。単層ボウル104は、単一の継ぎ目のない部品として形成されてもよく、またはボウル104内に組み立てられた複数の部品から形成されてもよい。ボウルの「単層」は、少なくとも2つの入れ子式の層があるボウルとは対照的である。
【0023】
一実施形態では、ボウル104は、生成物リザーバ206に着脱可能に結合された1以上の細胞濃縮領域212を含む。細胞濃縮領域212は、滑らかな内部形状で構成されており、遠心分離中に分離された細胞を、流体や固体の除去によって分離および濃縮させる役割を果たしている。ボウル104の中央部分は、アライメントロッド110および単一アクセスチューブ108を収容する。アライメントロッド110は、回転シール214を介してボウル104に結合され、さらに生成物リザーバ206に結合される。ボウル104は、ボウル104と一体的に形成されるか、または分離可能な構成要素である複数の内壁によって混合および消化領域204から分離された廃棄物リザーバ202をさらに含む。一実施形態では、ボウル104は、生成物リザーバ206に着脱可能に結合されており、1つ以上のフィルタ210を支持する1つ以上のフィルタホルダ208をさらに含む。1つ以上のフィルタ210は、未消化材料を含む廃棄物が生成物リザーバ206に入り、これにより、濃縮された細胞生成物を汚染することを防止する。1つ以上のフィルタ210は、500ミクロンのフィルタサイズと同じ大きさであってもよい。1つ以上のフィルタは、250ミクロン~500ミクロンの範囲のサイズであってもよい。1つ以上のフィルタは、100ミクロン~250ミクロンの範囲のサイズであってもよい。1つまたは複数のフィルタ201は、100ミクロン未満の範囲のサイズであってもよい。1つ以上のフィルタ201は、より大きなフィルタサイズからより小さなフィルタサイズまでの範囲の連続したアセンブリで構成されてもよい。一実施形態では、ボウル104は、ばね付きロック機構(図示せず)に結合しており、動作中にボウル104を取付プレート106に固定するように働く1つ以上の脚部216をさらに含む。一旦固定されると、ボウル104は閉じ込め機構112に対して自由に回転することができるが、閉じ込め機構112は回転せず、生体由来材料の攪拌(および分解)中に加熱された空気をボウル104に向けて誘導および循環させるように少なくとも部分的に働く。
【0024】
図3A~3Cは、本開示の特定の実施形態による単層ボウル104の様々な図である。図3Aは、単層ボウル104の部分上面図300である。ボウル104は、ボウル104の中心線に沿った少なくとも1つのシーム306を含んでいてもよい。細胞濃縮領域212および単一アクセスチューブ108も示されている。図3Bは、本開示の特定の実施形態による単層ボウル104の部分正面図302である。シーム306、細胞濃縮領域212、単一アクセスチューブ108、およびアライメントロッド110も示されている。図3Cは、本開示の特定の実施形態による単層ボウル104の部分側面図304である。細胞濃縮領域212、単一アクセスチューブ108、および脚部216が示されている。
【0025】
図4Aは、本開示の特定の実施形態による単層ボウルの部分断面図400である。ボウル104の部分断面図400は、ペレット濃縮領域212を通り、ボウルを横切るようにして図示したものである。生成物リザーバ206は、ボウル104を横切るようにして、1つのペレット濃縮領域212から正反対のペレット濃縮領域212まで延びている。フィルタホルダ208内のフィルタ210は、生成物リザーバ206に着脱可能に結合して示されている。
【0026】
図4Aは、単一アクセスチューブ108を含むセンターコラム(またはキャビティ)402をさらに開示する。単一アクセスチューブ108は、無菌培地の導入を可能にし、濃縮細胞生成物へのアクセスを可能にするため、操作中でも濃縮細胞生成物の取り出しができるように構成される。単一アクセスチューブ108は、回転中に静止したままであり、したがって、アセンブリ102の回転中に濃縮細胞生成物へアクセスできるようにする。この構成は、分離された細胞生成物の汚染も低減する。図4Aは、ボウルの内部のみへアクセスできるように構成され、静止中にボウル104の混合および消化領域204への原料を導入できるように構成されたアクセスポート404をさらに含む。材料は、生体由来材料、培地、消化酵素、または細胞分離をサポートするために必要な他の材料であってもよい。
【0027】
図4Bは、本開示の特定の実施形態による単層ボウル104の部分断面図406である。部分断面図406は、細胞濃縮領域212を通り、単層ボウル104を垂直に横切って図示したものである。図4Bは、廃棄物リザーバ202および混合および消化領域204を含む図2~3に示される特徴を示す。図4Bは、混合および消化領域204と廃棄物リザーバ202との間に部分的な障壁を形成する内壁408である。消化および混合プロセスの間、アセンブリ102は、中心軸124を中心に方向130Aおよび方向130Bに回転する。遠心分離中、アセンブリ102は、中心軸124を中心に方向130Aまたは方向130Bのいずれかの方向に回転する。細胞は分離され、生成物リザーバ206に集められる。ボウルが攪拌または遠心分離されると、廃棄物は内壁408上で回転し、廃棄物リザーバ202に集められる。
【0028】
一実施形態では、廃棄物リザーバ202は、使用済みの培地および他の液体と同様に、大きくて望ましくない固形物を保持および分離するように構成される。廃棄物リザーバに収集することにより、これらの粒子によるシステムの詰まりを防止する。詰まりを防止するための他の手段は、生成物リザーバ206(図4Aに見られる)の外縁に着脱可能に結合されるフィルタ210(フィルタホルダ208に保持される)である。図5Aは、本開示の特定の実施形態による単層ボウルのアセンブリ102の部分分解図である。図5Aは、開口部506に挿入されて所定の位置にロックされる脚部216によって、単層のボウル104を取付プレート504のばね付きロック機構にはめ込む様子を示す。図5Bは、ロック機構が係合しており、ボウル104が取付プレート504に結合されたときのアセンブリ508を示す。
【0029】
図6は、本開示の特定の実施形態による取付プレート504および遠心分離機アセンブリ132の部分分解図600である。図6は、取付プレート504が遠心分離機アセンブリ132の閉じ込め機構112内に位置しており、そこに取付プレート504が着脱可能に結合される場所を示している。図7は、本開示の特定の実施形態による生体由来材料から内皮細胞を分離する方法を示す図である。方法700は、生細胞の洗浄、分離、濃縮、および除去/採取のための自動化されたメカニズムである。採取された細胞は、移植片に採用されるか、ヘルスケア(例えば、FDAが承認した移植またはそれ以降の処理)および/またはヘルスケア研究(細胞分離法および細胞誘導体製品の使用を承認するための試験)で使用するために採用される。一実施形態では、方法700の処理702において、生体由来材料が、図1の細胞分離システム100などの細胞分離システムの単層ボウル104の混合および消化領域204(図2)に投入される。処理704において、複数の培地およびコラゲナーゼ酵素または複数の酵素が、アクセスポート404を介してボウル104、特に混合および消化領域204に投入されてもよい。培地の例では、乳酸加リンゲル液(LR)、Flartmans、注射用水(WFI)、またはその他の同様の培地が挙げられる。例によっては、混合および消化領域204は、その領域内の生体由来材料および/または培地を投入する前に、約30℃~約40℃に予熱されてもよい。例によっては、処理702は処理704の前に発生してもよく、他の例では、処理704は処理702の前に発生してもよい。さらに他の例では、処理702および処理704は、ほぼ同時に行われてもよく、生体由来材料および培地がほぼ同時に混合および消化領域204に投入されてもよい。
【0030】
混合および消化領域204が加熱される例では、処理702、処理704の前、または生体由来材料および/または培地のいずれかまたは両方が混合および消化領域に投入された後に、約30℃~約40℃の温度に加熱および維持されてもよい。この加熱は、予熱と呼ばれることがあり、目標温度または温度範囲に応じて、約10分~約45分、または10分未満かかる場合がある。
【0031】
さらに、処理706の方法700では、処理702で投入された生体由来材料は、処理704で投入された酵素培地を通じて完全にまたは部分的に消化される。処理702に配置された生体由来材料の処理706における消化は、混合および消化領域204の加熱を通じて、または単層ボウル104の攪拌を通じて、またはその両方の組み合わせによって生じてもよい。この消化は、処理704で使用される酵素の種類、使用される酵素の数、および/または使用される各酵素の量、および処理702で配置された生体由来材料の量に応じて、5分~1時間、15分~45分、またはその他の期間にわたって行われてもよい。
【0032】
さらに処理706の方法700では、処理706での攪拌は、中心軸を中心に交互方向にボウルを部分的または完全に回転させることで発生してもよいが、本明細書において説明する遠心分離と同じではなく、また、その力を発生させるものでもない。処理706で消化を促進するために採用される攪拌は、中心軸124(図1)を中心として異なる方向への全体的または部分的な回転を含んでいてもよく、所定の時間をおいた間隔で発生してもよい。処理706での消化は、遠心力が適用されず、培地および生体由来材料が所定の時間または所定数の攪拌サイクルの間、チャンバ内で攪拌される、装置の第1の状態を指してもよい。一例では、混合および消化領域204の温度は、処理706での消化の間、約37℃に維持されており、この第1の状態は、使用される酵素の種類、使用された酵素の量、および/または処理704で使用された各酵素の量、および処理702で配置された生体由来材料の量に基づく所定の期間維持される。本明細書で論じられるシステムは、処理706における消化のためのパラメータ、ならびに本明細書で論じられる他の状態、処理、およびフェーズのためのパラメータを含む複数の記憶されたプログラムを含んでいてもよい。
【0033】
さらに、処理708の方法700では、処理706での消化の完了に応じて、それに続き、遠心分離が行われる。本明細書で論じるように、処理706での消化の「完了」とは、細胞がまだ生存しているが、処理708で遠心分離できるくらいまで生体由来材料が分解されたことにより、消化が進んだ時期を指す。処理708でのこの遠心分離は、処理606で形成された消化済生体由来材料からの細胞の分離によって特徴付けられる。一実施形態では、処理708の構成は、約5分~約10分の時間の間の、600G~1000Gのg力を含む。本明細書で言及されているg力または「G」は、体に加えられる重力であり、ここでは、液体が除去され続ける細胞濃縮領域(したがって、流体/廃棄物が減少し、より濃縮された細胞となる)に集められた細胞に加えられる力を生成し、少なくとも処理708での遠心分離の間、混合および消化領域204から分離されたままになる。
【0034】
処理708での遠心分離は、細胞分離システムの第2の状態を指していてもよい。処理708での遠心分離は、さまざまなRPM速度およびサイクル時間のプログラムを含んでいてもよい。これらのサイクルは、以下で説明するように、RPMおよび/または処理712で停止するまでの期間を増加させることができる。一実施形態では、約5分~約10分の間、500G~1000Gで単一の遠心分離サイクルを採用してもよく、さらに他の例では、最初に付加されるG力を増加させ、次に付加される力を減少させる複数の遠心分離サイクルを採用して、以下の処理710で詳細に説明する低速回転に導いてもよい。
【0035】
一実施形態において、処理706における消化は、脂肪組織および液体から複数の細胞を分離するため、処理708における遠心分離サイクルは、細胞の分離およびそれらの分離された細胞の細胞濃縮領域212への移動を強制するように働く。
【0036】
一実施形態では、処理706での消化中に混合および消化領域204を予熱するために使用される加熱機構は、処理706に続いて処理708の開始前に停止され、処理708での遠心分離が、室温(約20℃~約25℃)および処理706で採用される温度との間で進行してもよい。さらに処理708において、生成物リザーバ206および細胞濃縮領域212への細胞の分離中に、処理708での所定の時間の遠心分離の後、単一アクセスチューブ108(処理716)を介して単層ボウル104のチャンバに清浄培地を導入してもよい。この培地は、脂肪および他の組織および液体を含む複数の材料を混合および消化領域204からさらに移動させ、その後、それらの材料は、量が増加するにつれて混合および消化領域204から除去され、廃棄物リザーバ202に捕捉される。
【0037】
例によっては、細胞濃縮領域212内の細胞を分離するために、500G~800Gの速度が処理708で採用されてもよく、他の例では、700G~900Gの速度が処理708の遠心分離に採用されてもよい。処理716の清浄培地は、処理708で追加され、ボウル104内の総量を増加させて、廃棄物リザーバ202への廃棄物の排出を促進してもよい。処理716における培地の導入は、回転速度、遠心分離プログラム(サイクル)、およびシステムおよび収集領域の形状に応じて起こってもよい。洗浄媒体が処理716で導入される実施形態では、採用される量は、これまでにボウル104に導入されたすべての流体の総量の2倍または3倍であってもよい。
【0038】
処理710は、低速回転段階であり、細胞分離装置の第3の状態を指していてもよい。3分~45分程度のこの段階では、処理710においてより小さな遠心力が適用される。一例では、処理710で、単層ボウル104の回転が所定の速度または速度範囲まで減速され、ボウルの温度は、室温から処理706で採用される最高温度の範囲であってよい。処理710において、速度(発生する力)や温度などのパラメータを採用して、分離された細胞が細胞濃縮領域212に留まる一方で、培地および生体由来材料からの残留液がボウルの内壁を下って廃棄物リザーバ202に排出されるようにしてもよい。
【0039】
処理710で付加される遠心力によって細胞が細胞濃縮領域212に保持されている間、廃棄物は、廃棄物リザーバ202内に全体的または部分的に収集されてもよい。一部の廃棄物は、混合および消化領域204に閉じ込められたままになることがあり、そこで分離された細胞から分離される。例によっては、処理710の低速回転は反復的であってもよく、例えば、処理710における第1の低速回転は処理708の平均速度の90%であってもよく、その後の処理710における第2の低速回転は処理708の平均速度の80%であってもよく、その後の低速回転は、所定の期間が終了するまで、または所定の量の流体および/または固体が量および/または光学センサによって決定される廃棄物リザーバ202に除去されるまでは、より遅い速度であってもよい。処理710の間、大きすぎてフィルタ210を通過することができない材料は、分離された細胞がこの材料と接触しないように、廃棄物リザーバ202内に保持および分離される。
【0040】
細胞濃縮領域212から生成物リザーバ206の中心に細胞を引き込むために真空が採用される。したがって、細胞濃縮領域212へ収集された細胞は、それらの収集領域から生成物リザーバ206の領域に移動し、処理714において、濃縮細胞(分離された細胞)は、真空を利用して、単一アクセスチューブ108を通って取り出されてもよい。実施形態によっては、この取り出しは自動化され、処理710および処理712の完了に応じて行われる。また、実施形態によっては、この取り出しは自動化され、処理712の前に行われる。処理712および処理714は、ボウルが閉じ込め機構112に対してもはや回転していないときの細胞分離装置の第4の状態と総称してもよい。
【0041】
方法700で説明された処理は、細胞の分離および収集の自動化された動的な方法に関連しており、処理702および処理704でのボウル104の装填は、手動的な介入なしに処理712での取り出しおよび収集を通じて進行する。一例では、記憶装置に記憶され、細胞分離装置に結合された非一時的な記憶は、プロセッサによって実行可能な複数のコードを含む。この複数のコードは、さまざまな特性のサンプル用の遠心分離プログラムを含み、各プログラムは、処理702および/または処理704の流量、ならびに各処理で発生するアクションに応じて、処理706、処理708、処理710、処理714、および処理716で発生する細胞および/または濃度目標、流量、時間、および力の範囲(回転速度/RPM)を含んでいてもよい。各プログラムは、培地および生体由来材料から分離された細胞の取り出しまでの完了までの全体的な時間に関連付けられてもよい。
【0042】
他の例では、複数のコードには、システムが詰まったのを自動的に検出して分離プロセスをシャットダウンするプログラムが含まれている。次に、プログラムは、システムの培地洗浄を開始するか、アセンブリ102を揺り動かして、詰まりが分散し、分離手順が再開されるようにする。
【0043】
好ましい実施形態を示して説明してきたが、当業者は、本明細書の範囲または教示から逸脱することなく、その変更を行うことができる。本明細書に記載された実施形態は、単なる例示であり、限定的なものではない。本明細書に記載のシステム、装置、およびプロセスの多くの変形および修正が可能であり、それらも本発明の範囲内である。たとえば、さまざまな部品の相対的な寸法、さまざまな部品を構成する材料、およびその他のパラメータを変更することができる。したがって、保護の範囲は本明細書に記載された実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の主題のすべての均等物を含むものとする。特に明記しない限り、方法クレームのステップは任意の順序で実行することができる。方法クレームのステップの前に(a)、(b)、(c)または(1)、(2)、(3)などの識別子を記載することは、ステップの特定の順序を意図するものではなく、また指定するものでもないが、むしろそのようなステップへの後続の参照を簡略化するために使用される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
【国際調査報告】