(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-18
(54)【発明の名称】cDNAディスプレイを用いた新規イムノPCR法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20220411BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220411BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549578
(86)(22)【出願日】2020-02-22
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020007271
(87)【国際公開番号】W WO2020171236
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2019030509
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(71)【出願人】
【識別番号】516255448
【氏名又は名称】株式会社Epsilon Molecular Engineering
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 直人
(72)【発明者】
【氏名】安斎 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 武尊
(72)【発明者】
【氏名】熊地 重文
(72)【発明者】
【氏名】寺井 琢也
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR48
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】 1つのタンパク/ペプチド及び1つのDNAで構成されるcDNAディスプレイを使用するため、標的分子をスクリーニングして定量的に得ることができるイムノPCR法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、結合部位を有する第1抗体を固相に結合させる固相化工程と;試料溶液を前記第1抗体と接触させ、前記試料溶液中の標的分子に結合させる接触工程と;前記標的分子を、1)増幅されるDNA配列を含む主鎖である核酸鎖と、2)共有結合された、ポリペプチド結合部位を有する側鎖であって、前記ポリペプチド結合部位に標的分子に結合する第2抗体が結合する側鎖で構成されるcDNAディスプレイとする接触工程と;前記DNAを増幅し、定量的に検出するポリメラーゼ連鎖反応を行う工程と;を備える、cDNAディスプレイを用いる、改良されたイムノPCR方法を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合部位を有する第1抗体を固相に結合させる固相化工程と;
試料溶液を前記第1抗体と接触させ、前記試料溶液中の標的分子に結合させる接触工程と;
前記標的分子を、1)増幅されるDNA配列を含む主鎖である核酸鎖と、2)共有結合された、ポリペプチド結合部位を有する側鎖であって、前記ポリペプチド結合部位に標的分子に結合する第2抗体が結合する側鎖で構成されるcDNAディスプレイとする接触工程と;
前記DNAを増幅し、定量的に検出するポリメラーゼ連鎖反応を行う工程と;
を備える、cDNAディスプレイを用いる、改良されたイムノPCR方法。
【請求項2】
前記第1の抗体は、前記固相に直接結合されることを特徴とする、請求項1に記載のcDNAディスプレイを使用する改良されたイムノPCR法。
【請求項3】
前記第1の抗体は、前記固相にビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して結合されることを特徴とする、請求項1に記載のcDNAを使用する改良されたイムノPCR法。
【請求項4】
前記第1の抗体は、IgG、それらの断片、シングルドメイン抗体、及び前記標的タンパクのエピトープに結合するアプタマーからなる群から選ばれるいずれかのものであることを特徴とする、請求項3に記載のcDNAを使用する改良されたイムノPCR法。
【請求項5】
前記第2の抗体は、前記標的分子に対する結合能を有する単一のポリペプチドで構成されるタンパクであることを特徴とする、請求項4に記載のcDNAを使用する改良されたイムノPCR法。
【請求項6】
前記第2の抗体は、IgGの単鎖可変断片、シングルドメイン抗体及び前記第1の抗体とは異なるエピトープに結合するペプチドアプタマーからなる群から選ばれるいずれかのものである、ことを特徴とする請求項5に記載のcDNAを使用する改良されたイムノPCR法。
【請求項7】
前記主鎖は、前記標的分子に結合する前記第2の抗体のDNA配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のcDNAを使用する改良されたイムノPCR法。
【請求項8】
前記ポリペプチド結合部位は、ピューロマイシン及びその類縁体からなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項1に記載のcDNAディスプレイ法を使用する改良されたイムノPCR法。
【請求項9】
前記PCRは定量PCRであることを特徴とする、請求項1に記載のcDNAを使用する改良されたイムノPCR法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規イムノPCR法に関する。より詳細には、cDNAディスプレイを用いた新規イムノPCR法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料中(例えば血清、尿など)に存在するバイオマーカーを低濃度で検出することは、基礎生物学および診断において非常に重要である。最初に佐野らによって開発されたイムノPCR法(以下、「IPCR」という。)(非特許文献1、先行技術1参照)は感度が良く、定量的な解析技術である(非特許文献2参照)。
【0003】
一般的なIPCRのアプローチでは、表面にコーティングされた抗体を用いて、まず、標的の抗原を補足し、引き続きDNAレポーターに付着された検出用抗体を用いて検出する。このDNAは、適切なプライマーでPCRにより増幅され、リアルタイムPCR装置によって蛍光を介して定量される。この方法はイムノアッセイとPCRとの利点を組み合わせているため、非常に多機能性であり、指数関数的なシグナル増幅性を併せ持つ。近年、IPCRは癌のバイオマーカーやウイルスなどを含む多様な抗原の検出に応用されている。
【0004】
IPCRの開発や応用において、どのようにして抗体をDNAレポーターに結合させるかが重要な課題となる。従来、ストレプトアビジンがビオチン化DNA及びビオチン化抗体を結合させるためのリンカーとして使われてきた(
図1A参照)。
図1Aでは、ストレプトアビジンが、ビオチン標識された抗体とビオチン標識されたDNAレポーターとを結合させるために使われている。しかし、四量体を形成するというストレプトアビジンの性質は、不均一なDNA-抗体結合体形成を招き、IPCRの再現性を低下させる可能性がある。
【0005】
他の方法では、DNAを抗体に直接結合させるために化学架橋用リンカーを用いる(
図1B)。
図1Bでは、共有結合で架橋された抗体-DNAが使われている。これは抗体-DNAの複雑さを低下させることができる簡便な方法であるが、従来の化学架橋リンカーは、抗体中の全てのシステイン/リシン残基と反応してしまうため、この修飾は、抗体の結合親和性を低下させることがある。また、一つの抗体に結合するDNA分子の数は均一ではなく、その制御は困難である。これらの問題を克服するために、Zhangらは革新的な技術を開発した:イムノPCRを用いたファージディスプレイ(PD-IPCR、
図1C)である。
図1Cでは抗体の単一鎖可変断片及びVHHを含む異なるペプチドが、M13またはT7ファージの表面に提示されている。ファージDNAは、DNAマーカーとして利用される。
【0006】
ファージディスプレイは1985年にSmithによって報告され[非特許文献3参照]、抗体を含むポリペプチドの指向性進化に広く使われている。PD-IPCRでは、改変バクテリアファージM13(またはT7)が使われており、このファージは、抗体とDNAとの超分子複合体として、ウイルス表面に存在する分析物に対する単一鎖抗体を発現している。このファージと固定化された抗体とをインキュベートした後、バクテリアDNAを定量のために増幅する。IPCRにおいてファージ粒子を使用することで、面倒な抗体-DNA複合体の調製が不要となり、タンパク質や毒素、ウイルスの低コストかつ高感度の分析が可能となる[特許文献4、5参照]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Sano, et al., Science, 258 (1992) 120-122.
【非特許文献2】L. Chang, et al., Anal. Chim. Acta., 910 (2016) 12-24.
【非特許文献3】G. P. Smith, Filamentous fusion phage: novel expression vectors that display cloned antigens on the virion surface, Science, 228 (1985) 1315-1317.
【0008】
【非特許文献4】R. Monjezi, et al., J. Virol. Methods, 187 (2013) 121-126.
【非特許文献5】J. Lei, et al., Anal. Chem., 86 (2014) 10841-10846.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それにもかかわらず、PD-IPCRにはまだいくつかの問題がある。露出された改変コートタンパク質の数を厳密に制御することが難しいため、DNA-タンパク質架橋の不均一性を完全には解決されていない。さらに、これらのバクテリアファージは遺伝子操作されたウイルスであるため、実験は厳格な法規制の下で行われなければならず、これが実際の使用の障害になることもある。したがって、1)厳密に均質なDNA-抗体結合に基づき、2)非ウイルス性で、3)有機合成の知識を持たない生物学者でも実行しやすい、新しいIPCRシステムを構築することが重要である。
【0010】
この問題を解決しようと鋭意研究を重ねた結果、我々は、上記要件を充足するシステムとして「cDNAディスプレイ」を用いた新しいIPCR法を発明した。上記cDNAディスプレイ分子は、cDNAとそれがコードするポリペプチドとの単一分子複合体であり(
図2A)、上記ポリペプチドはmRNAとピューロマイシンDNAリンカーとのライゲーション、in vitro翻訳、逆転写を経て生化学的に合成される(
図3)。ファージディスプレイと比較すると、cDNAディスプレイには、ライブラリのサイズが10
13/mLと大きく、有機溶媒、強酸/強塩基、熱などの過酷な条件でも安定しているという利点がある。さらに、この結合機構のおかげでDNAとペプチドの結合比率は常に1:1である。これまでに我々は、cDNAディスプレイをペプチドのin vitroセレクションに応用しており、このペプチドは、タンパク質、RNA、脂質膜及び小さな分子に対して親和性を有していた。
【0011】
PD-IPCRに刺激を受け、我々は,cDNAディスプレイ分子がIPCRに用いられる抗体-DNA結合体としても利用できるのではないかと考え、このアイディアを以下のように実装した。新たに開発した方法を、cDNAディスプレイ媒介イムノPCR(cD-IPCR、
図2B)と名付け、血清中にスパイクしたモデル標的タンパク質(GFP)に応用し、その検出に成功した。リボソームディスプレイやmRNAディスプレイなど、1分子レベルでのタンパク質-DNA結合体システムはわずかに報告されているが、これらの結合体は血清中のような生理的条件下では安定ではない。それゆえに、cD-IPCRがcDNAディスプレイの安定性をうまく利用できるものと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような状況の下、本発明者らは本発明を完成させた。すなわち、本願発明の一の態様は、以下の工程を含むcDNAディスプレイ法を用いた改良されたイムノPCR法である:結合部位を有する第1抗体を固相に結合させる固相化工程と;試料溶液を前記第1抗体と接触させ、前記試料溶液中の標的分子に結合させる接触工程と;前記標的分子を、1)増幅されるDNA配列を含む主鎖である核酸鎖と、2)共有結合された、ポリペプチド結合部位を有する側鎖であって、前記ポリペプチド結合部位に標的分子に結合する第2抗体が結合する側鎖で構成されるcDNAディスプレイとする接触工程と;前記DNAを増幅し、定量的に検出するポリメラーゼ連鎖反応を行う工程と;を備える、cDNAディスプレイを用いる、改良されたイムノPCR方法である。
【0013】
ここで、前記第1の抗体は、前記固相に直接結合されるか、又は、例えば、小分子、タンパク質、ペプチドまたは人工ポリマー等を介して固相に結合される。好ましくは、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して固相に結合させる。
【0014】
前記第1の抗体は、IgG、シングルドメイン抗体、その断片、および標的分子に含まれる標的分子のエピトープに結合するアプタマーからなる群から選択されるいずれかのものである。前記第2の抗体は、前記標的分子に対する結合能を有する単一のポリペプチドで構成されるタンパクである。すなわち、前記第2の抗体は、IgGの単鎖可変断片、シングルドメイン抗体、および前記第1の抗体とは異なる標的分子のエピトープに結合するペプチドアプタマーからなる群から選択されるいずれかのものである。
【0015】
前記主鎖は、前記標的分子に結合する前記第2の抗体のDNA配列を含む。前記ポリペプチド結合部位は、ピューロマイシンまたはその類縁体で構成されている。前記PCRは、定量PCRであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の改良型イムノPCR法によれば、1つのタンパク質/ペプチドと1つのDNAで構成されるcDNAディスプレイを用いることで、試料液中の標的分子を、定量的に検出し測定する。また、本発明の方法によれば、cDNAディスプレイ技術を用いることにより、ある標的分子に対する適切な第2の抗体を選択することができ;その後、特定された前記第2の抗体を手間のかかる最適化を行うことなく、cD-IPCRに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、cDNAディスプレイ媒介イムノPCR(cD-IPCR)の模式図である。
図1(A)から(C)は、以前に開発されたイムノPCRの様式を示したものである。
図1(A)は、ストレプトアビジンを用いたイムノPCRのユニバーサルシステムの原型である。
図1(B)は、化学架橋された抗体-DNA結合体を示す。
図1(C)は、ファージディスプレイ媒介イムノPCR(PD-IPCR)を示す。「Ag」は抗原を示す。
【0018】
【
図2】
図2は、cDNAディスプレイ、検出方法、感度、およびcDNAディスプレイを用いた検出の模式図である。
図2(A)は、cDNAディスプレイの概略構造を示し、ピューロマイシンリンカーを介して結合されたペプチド-DNAの共有結合体である。前記ピューロマイシンリンカーは、リボソーム翻訳反応の過程において、新生ペプチドのC末端とアミド結合を形成する。本研究では、光架橋塩基(3-シアノビニルカルバゾール、以下、「cnvK」という。)を用いて、mRNAとcDNAとをハイブリダイズさせている。拡大図はピューロマイシンのリンカー部の詳細な化学構造を示す。
【0019】
図2Bは、cD-IPCR(サンドイッチ型検出)の模式図である。生体試料中の標的タンパク質を、捕捉抗体(又は第1の抗体)を用いて、固相(ビーズまたはプレート)上に捕捉する。洗浄後、前記標的に親和性のあるポリペプチドのcDNAディスプレイを加える。未反応のディスプレイ分子を洗浄し、得られたcDNAをqPCRによって定量する。ここで、cDNAディスプレイは標的に対する抗体としてだけでなく、今回の研究の主目的である定量PCRのDNAマーカーとしても利用することができる。
【
図3】
図3は、cDNAディスプレイの調製を模式的に示す。各ステップの詳細なプロトコルは、実施例に記載する。
【0020】
【
図4】
図4は、cDNAディスプレイ分子のqPCRの感度と直線性とを示すグラフ(
図4A)、及びcD-IPCRによるIgG検出の結果(
図4B)である。
図4Aでは、BDA(IgGに結合するペプチド)を提示しているcDNAディスプレイ分子をPCRチューブ中で段階的に希釈し、適切なプライマーセットを用いてqPCRを行った。サンプルとコントロール(鋳型なし)の間の閾値サイクルの差(ΔCt)を算出した。データは平均値±S.D.で示す(n=3)。
図4Bでは、固相に固定化したIgGを段階的に希釈し、BDAを提示しているcDNAディスプレイと反応させ、適切なプライマーセットを用いてqPCRを行った。ΔCtは前記サンプルと前記コントロール(標的なし)との差として算出した。
【0021】
【
図5】
図5は、GFP-VHHモデルにおけるcD-IPCRの模式図、及びcD-IPCR法によるGFPの検出を示す模式図である。
図5(A)から(D)はいずれもcD-IPCRの模式図である。第1の抗体として抗GFP IgGを用い、検出剤として抗GFP VHHを提示しているcDNAディスプレイを用いた。
図5(E)は、緩衝液中のGFPの検出を示すグラフであり、
図5(F)は、血清中にスパイクされたGFPの検出を示すグラフである。ΔCtは、前記サンプルと前記コントロール(標的なし)との差として算出した。
【0022】
【
図6】
図6はブロッキング剤の比較を示す。各ブロッキング剤をIgG固定化磁性ビーズ(Magnosphere MS300/ストレプトアビジン)に使用し、BDAのcDNAディスプレイをビーズとインキュベートした。回収したDNAをqPCRで評価した。ΔCtはサンプルと標的を含まないコントロールとの差として算出した。スキムミルク(SM)とBSAとを用いて、定量的な増幅を観察した。ゼラチン(冷水魚由来)およびコントロール(ブロッキング剤なし)では、得られたデータは濃度に依存しなかった。
【0023】
【
図7B】
図7Bは、抗GFP VHH全長コンストラクトである。
【
図8】
図8は、ゲル電気泳動を用いてBDAのcDNAディスプレイ形成を確認したものである。
【0024】
【
図9】
図9は、ゲル泳動を用いた抗GFP VHHをコードしているcDNAディスプレイ形成を確認したものである。
【
図10】
図10は、直接cD-IPCRの概念実証実験である。BDAのcDNAディスプレイを、異なる量の標的タンパク質(IgG)(ストレプトアビジンビーズ(Dynabeads MyOne streptavidin C1)上に固定化した)とインキュベートした。qPCRを実施し、Ct値を測定した。
図10A:ブロッキング剤の比較(左から右へ順に、スキムミルク、酵母由来tRNA、スキムミルクとtRNAとの混合物、BSA、及びブロッキング剤なし)。鋳型なし(プライマーのみ)のコントロールに対するΔCtを算出し、データを平均値±S.D.で示した(n = 3)。
図10B:直接cD-IPCRにおけるIgGの定量。ブロッキング剤としてスキムミルク(5%、w/v)を用いた。IgGなしのコントロールに対するΔCtを算出し、データを平均±S.D.で示した(n = 3)。**はp<0.01を示す(対0 ng/mL、t-検定)。その他の全ての列のペアでは、統計的有意差(p<0.001)が確認された。詳細なプロトコルについては実施例を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照にしつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
1.DNAの構築
初めに、Aタンパク質のBドメインをコードする塩基配列からなるDNAコンストラクト(BDA全体、
図7A)を作製した。BDA全体は、BDAをコードする配列(BDA遺伝子)、T7プロモーター、翻訳促進配列(W)、スペーサー領域、ヒスチジンタグ(Hisタグ)、およびピューロマイシンリンカーの一部と相補的な鎖を持つ配列を含む。これらのうち,BDA遺伝子の5'側上流には、T7プロモーター配列と翻訳促進配列とからなるDNA断片が付加されている。BDA遺伝子の3'側下流には、ヒスチジンタグ(Hisタグ)と、ピューロマイシンリンカーの一部と相補的な鎖を持つ配列とが付加されている。
【0026】
BDA全体は、PCRを用いた標準的な分子生物学的手法を用いて合成され、その後、従来の方法で精製される。その後、T7 RiboMAX Express Large Scale RNA Production System(Promega社製)を用いて、キットに添付されているプロトコルに従ってRNAに転写すると、約5~30 pmol/μLのmRNA(配列番号1)が得られる。
【0027】
抗GFP VHHコンストラクト(
図7B)は、以下のようにして調製する:まず、GenScript社が化学合成した抗GFP VHHをコードする遺伝子(LaG-16 in P.C. Fridy, et al., Nat. Methods 11 (2014) 1253-1260.)を、プライマーとして1st Fw VHHと1st Rv VHHとを用い、PCR(25サイクル、50 μLスケール)で増幅する(プライマー配列は、SEQ ID No.8 & 9、表2参照)。5'-UTRを結合するための2回目のPCRを、その後、上述のDNAを鋳型、T7ΩおよびcnvK-NewYtagをプライマーとして行う(25サイクル、50 μLスケール)(配列番号7と配列番号6、表2参照)。生成物を、分取PAGE(4%、変性条件)で精製する。
【0028】
本発明で使用するピューロマイシンリンカー(以下、「cnvKリンカー」と呼ぶことがある。)の合成は、以下のようにして準備する。修飾オリゴヌクレオチドPuro-F-S2およびビオチン-rG-cnvKフラグメントは、DNA合成会社(例えば、つくばオリゴサービス)に発注することができる。ピューロ-F-S2断片は、5'-(S)-TC-(F)-CTC-(スペーサー18)-CC-(ピューロ)-3'を表し、Sは5'-チオールModifier C6、Fはフルオレセイン-dT、ピューロはピューロマイシンCPG、及びスペーサー18はスペーサーホスホロアミダイト18である。ビオチン-rG-cnvKフラグメントとは、5'-(B)-AA-(rG)-AATTTCCA-(K)-GCCGCCCCG-(T)-CCT-3'を表し、Bは5'-ビオチンTEG、KはcnvK、Tはamino-modifier C6 dTである。ピューロF-S2フラグメントとビオチン-rG-cnvKフラグメントのN-(6-マレイミドデカプロイルオキシ)スクシンイミド(EMCS、同仁堂研究所、熊本県、日本)を介した架橋反応は,以前に報告されている手法(山口ら,Nucleic Acids Res. 37 (2009) e108; 望月ら ACS Comb. Sci. 13 (2011) 478-485)に従って行う。
【0029】
所定の量のPuro-F-S2フラグメントを、所定の濃度のジチオスレイトールを含む所定の濃度のリン酸水素二ナトリウム中で、所定の時間、所定の温度で還元し、使用直前にNAP-5カラム(GE Health care, Waukeshu, WI USA)で脱塩する。例えば、30 nmolのPuro-F-S2フラグメントを、50 mMジチオスレイトールを含む1 Mリン酸水素二ナトリウム中で、室温で1時間かけて還元する。その後、使用する直前にNAP-5カラム(GE Health care, Waukeshu, WI USA)を用いて、還元された断片を脱塩する。
【0030】
所定量のビオチン-rG-cnvKフラグメントとEMCSとを、所定量のリン酸ナトリウム緩衝液中で混合する。例えば、約50~150μLの約0.1~0.3 Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH約7.0~7.5)に、合計約5~15 nmolのビオチン-rG-cnvKフラグメントと約1~3 mmolのEMCSとを混合する。
【0031】
引き続き、この混合物を所定の時間および温度でインキュベートし、過剰なEMCSをエタノール沈殿により除去する。例えば、上記混合物を、引き続き37℃で30分間インキュベートし、Quick-Precip Plus Solution(Edge BioSystems, Gaithersburg, MD USA)などの共沈剤を用いてエタノール沈殿させ、過剰なEMCSを除去する。この沈殿物に、還元されたPuro-F-S2フラグメントを直ちに加え、低温で所定の時間、例えば、4℃で終夜インキュベートする。
【0032】
反応を停止させるために、ジチオスレイトール(DTT)を所定の濃度で上記試料に加え、所定の時間及び温度でインキュベートする。例えば、DTTの終濃度は約40~60 mM、インキュベートの時間及び温度は、約20~40分、35~40 ℃前後である。未反応のPuro-P-S2フラグメントを除去するために、上述した共沈剤を用いてエタノール沈殿を行ってもよい。沈殿物をヌクレアーゼフリーの水で溶解し、C18 HPLCカラムを用いて所定の条件で精製する。表1参照されたい。
【0033】
【0034】
UVモニターで最後のピークを形成した画分(510~530nm付近の発光で単一の蛍光ピークに相当)を回収して、cnvK-Pu-リンカーを得る。フラクションを乾燥させた後、cnvK-Pu-リンカーをヌクレアーゼフリーの水に再懸濁させる。各DNAコンストラクト(およびその転写されたmRNA)について、8 M尿素を含む変性PAGEにより純度とサイズとを確認する。
【0035】
2. cDNAディスプレイの作製
BDA(SEQ ID NO.1、
図7A)および抗GFP VHH(配列番号12、
図7B)のDNAコンストラクトを、若干の修正を加えた従来の方法に従って、cDNAディスプレイに変換する(
図2)。その後、このようなタンパク質-DNA結合体形成を確認するための標準的な方法である尿素SDS-PAGEを用いて、cDNAディスプレイの形成を確認する(
図8および9)。
【0036】
3.溶液中のcDNAディスプレイのqPCRによる定量化
まず、cDNAディスプレイ分子が本当にリアルタイムPCR(以下、「qPCR」という。)で定量できるのか、またその検出感度について確認する必要がある。BDAをコードするcDNAディスプレイ分子を超高度純粋(UPDW)によって10倍希釈系列(約103~109コピー/約2 μL)と、約3.3倍希釈系列(約101~103コピー/約2 μL)とを作製する。そして、これらの溶液約2 μLをqPCR用の鋳型DNAとして使用する。例えば、StepOne Real-Time PCRシステム(Thermo Fisher Scientific, USA)を用いて、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡((株))、日本)でqPCRを行う。
【0037】
PCR混合液は、例えば約1xTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix、約250~350 nM濃度の各プライマー(フォワードプライマー:BDA_qPCR(+)、リバースプライマー:BDA_qPCR(-)、(表2、配列番号3および4を参照されたい。))、約0.2~0.6μLの約40~60xROX参照色素(reference dye)、約1~約3μLのcDNAディスプレイ希釈物およびUPDWを、最終的容量約15~25μL中に含む。PCR用ステッププログラムは、約94~約96℃で約0.5~1.5分、その後、約94~96℃で約10~20秒、約60~65℃で約25~35秒のサイクルを約35~45サイクル行う。
【0038】
増幅の質を担保するために,鋳型DNAを除くすべてのqPCR試薬を含むネガティブコントロールを含めてqPCRを行い,サンプル及びコントロールのCt値の差を算出した。LOD(検出限界)は、検出可能な鋳型分子の最小数として決定し、t-検定を用いて解析した。
【0039】
4.直接cD-IPCRでは、IgGを固定化した磁性ビーズ(Dynabeads MyOne streptavidin C1、実施例に記載した通りに調製)を、IgGを固定していない磁性ビーズと、10倍希釈系列中で混合する。チューブ内のIgGの終濃度は、例えば、約1.6~約1600 ng/mL、及び0 ng/mLのように設定する。適切な結合緩衝液中に含まれる所定のブロッキング剤で、ビーズをブロッキングする;例えば、約5 %(w/v)のスキムミルクを約1xSA結合緩衝液(約40~60 μL、約8~15 mM Tris-HCl、pH約7.2~7.6、約0.5~1.5 mM EDTA、約0.5~1.5 M NaCl、及び約0.05~約0.15 %(v/v)Tween 20を含む)中に分散させる。
【0040】
ブロッキング後、ビーズを結合緩衝液で所定の時間洗浄する。例えば、約50から150μLの約1xSA結合緩衝液で2回洗浄する。その後、約10~30μLの約1xSA結合緩衝液で5倍前後に希釈したBDAをコードするcDNAディスプレイと、約23~27℃で約50~70分間反応させる。このバッファーでは、cDNAディスプレイの量は約70~90 fmol/サンプルである。
【0041】
ビーズを洗浄後、結合したcDNAディスプレイを適切な緩衝液、例えば、約50~約150μLのSDS/DTT緩衝液(約0.5~1.5%(v/v)のSDS、約25~75 mM DTT、約25~75 mM Tris-HCl、約0.4~0.6 M NaCl、約0.5~1.5 mM EDTA、及び約0.04~0.06%(v/v)のTween 20を含む、pH約7.2~7.6)で、40~60℃前後で約25~35分かけて溶出する。DNA精製後、それらサンプルを鋳型としてqPCRに供する。qPCRの条件は上述の通りである。サンプルと抗原を含まないネガティブコントロール(0 ng/mL IgG)とのCt値の差を算出する。
【0042】
5. サンドイッチcD-IPCRによる緩衝液中GFPの検出
ポリスチレン製マイクロタイタープレート、例えばMICROLON(商標、96Well Single-Break Strip Plate, PS, Greiner)を、PBSで約1,000倍に希釈した抗GFPポリクローナル抗体(MBL, #598)その他の所定の抗体100μLを用いて、約4℃で一晩コーティングする。上記PBSは、約130~145 mMのNaCl、約2.5~3.0 mMのKCl、約5~15 mMのリン酸ナトリウム緩衝液を含む(pH約7.2~7.6)。
【0043】
プレートをPBSで洗浄後、上記ブロッキング剤、例えば、0.5~1.5%(w/v)スキムミルクを含むPBSを用いて、約22~27℃にて約1~3時間インキュベートし、ブロッキングを行う。その後、PBSを用いてプレートを洗浄する(例えば、約150~250μLで2~4回)。PBS
中のGFPの10倍希釈系列(約100 μg/mLから約1 ng/mLまで)、およびネガティブコントロール(GFP不含)を各ウェルに入れ、約22~27℃にて約1~3時間インキュベートし、その後、PBSで洗浄(約150~250μLで6~10回)する。
【0044】
抗GFP VHHをコードしたcDNAディスプレイをPBS-Tを用いて所定の倍率、例えば、60~70倍に上記のようにして希釈する。これは、約1.5 fmol/サンプルまでに相当し、約22~27℃にて約1~3時間インキュベートする。上記同様PBS-Tで洗浄し、その後、結合したcDNAディスプレイを、例えば、グリシン/HCl緩衝液(約0.1~0.3 M、pH約2.0~2.4、約100μL)を用いて溶出する。
【0045】
この溶出液を約0.5~1.5 Mのトリス塩基溶液で中和し、例えば、Favorprepキットを用いてcDNAディスプレイを精製し、qPCRの鋳型DNAとして使用する。qPCRとしては、前記と同様のキットを使用し、上記同様に実験を行えばよい。PCRプログラムは、例えば、約94~96℃で0.5~1.5分、その後、約94~96℃で約10~20秒及び約64~68℃で25~35秒のサイクルを約30~50回繰り返すようにするなど、変更してもよい。また、増幅の質を担保するために、プライマーのみを含有するネガティブコントロールも含まれる。サンプルとネガティブコントロールとのCt値の差を算出する。
【0046】
6.サンドイッチcD-IPCRによる血清中GFPの検出
サンドイッチcD-IPCRによる血清中GFPの検出手順は,GFPをPBSの代わりに市販の健常人血清(コージンバイオ,日本)に溶解して反応に用いたこと以外は、前述の手順と同様である。
【0047】
この研究では、Thunderbird SYBR qPCR mix(東洋紡)試薬と適切なプライマーとを用いる系(StepOne,ThermoFisher)でqPCRを行った。以下の表1を参照されたい。
【0048】
【表2】
*1: 表1中、”cnvK”は3-シアノビニルカルバゾールを意味する。
*2: ”Fw”はフォワードを意味する。
*3: ”Rv”はリバースを意味する。
【0049】
増幅データの曲線(相対蛍光単位)を付属のソフトウェアで解析し、蛍光シグナルが閾値を超えるのに必要なサイクル数をCt値とした。
【0050】
図4Aに示すように、ΔCt(鋳型なしのコントロールに対するCt値の差)は、10
3~10
9コピーの範囲でcDNAディスプレイの分子数と直線的に相関しており、標準偏差も非常に小さかった。低濃度では、直線性は維持されなかったものの、100分子という低濃度の分子を含むサンプルでは、統計的に有意なΔCtが観察された。低い検出限界(LOD)と広い検出範囲(10
2~10
9)の両方がIPCR独自の利点である。
【0051】
次に、固相に直接固定化された標的タンパク質のcD-IPCR検出(直接cD-IPCR)を行った。ブロッキング剤(
図6)や使用する磁性ビーズなどいくつかの条件を最適化した後、BDAとIgGの結合をモデル系として使用した(
図4B)。
【0052】
異なる量のウサギIgGを磁性ビーズ上に固定化し、BDAのcDNAディスプレイ分子をビーズとインキュベートした。未結合の分子を洗浄した後、Gly-HCl処理によりBDA-IgG間の相互作用を解除し、溶出液中のcDNAを上記と同様にqPCRで定量した。その結果、直接cD-IPCRでは1.6μg/mLから160 pg/mLまでのIgGを検出できることがわかった。
【0053】
次に、cD-IPCRが単一ドメイン抗体を用いたサンドイッチ型の検出系に応用できることを示した(
図5A-D)。単一ドメイン抗体(重鎖抗体の可変ドメイン;VHH、またはナノボディとも呼ばれる。)は、その安定性、費用対効果の高い生産性、改変の容易さから、治療や診断のための有望な試薬である。
【0054】
VHHはサイズが小さく(約15kDa)一本鎖であることから、ファージディスプレイやcDNAディスプレイを用いた指向性進化に適している。特に、このようなin vitroセレクションは、その毒性のために動物では免疫を持たせることができない抗原に対するスクリーニングを可能にする。ここでは、抗GFP VHHをコードするcDNAディスプレイを、GFPのcD-IPCR検出に応用した(P. C. Fridy, et al., Nat. Methods., 11 (2014) 1253-1260.)。まず、GFPに対するポリクローナル抗体(pAb)を物理吸着によりELISAプレートに固定化し、PBSで希釈した様々な量のGFPをプレートに捕捉させた。
【0055】
その後、抗GFP VHHを提示しているcDNAディスプレイと反応させた。酸性条件下での溶出後、DNAをqPCRで定量した。
図5Eに示すように、ΔCt値はGFP濃度(10~10
5 ng/mL)の上昇につれて徐々に増加し、10 ng/mLが最も低い検出濃度となった。最後に,VHHを用いたcD-IPCRシステムの頑健性と潜在的な実用性とを、ヒト血清中にスパイクしたGFPの検出で評価した(GFPの最終濃度:1~100 ng/mL)。検出感度は緩衝液の場合とほぼ同じであり、cD-IPCRが生体試料に適用できることが示された(
図5F)。
【0056】
最後に、PCRを用いた新しい抗原検出法であるcD-IPCRの概念実証試験を行った。ELISAとは対照的に、cD-IPCRのシグナル増幅は指数関数的であり,その結果,非常に高い感度(~100分子/サンプル)と広い検出ダイナミックレンジ(>107倍)が得られた。従来のIPCRやPD-IPCRと比較して、この手法はcDNAとそれをコードするタンパク質の結合比が1対1であるという点により、定量性や再現性の面で優れている。
【0057】
今回開発した方法は幅広い応用性があり、多種多様な抗原の免疫解析に実用的であると考える。また、PD-IPCRと同様に、今回開発した方法は膨大なライブラリから最適なポリペプチドをin vitroでセレクションする方法と組み合わせることができる。このため、ある標的物質に対する新しい結合ペプチド(または、一本鎖抗体)をcDNAディスプレイで迅速にスクリーニングし、同定された結合ペプチドをcD-IPCRに使用できるはずである。無論、他のIPCRと同様に、このアッセイの感度は捕捉抗体/検出抗体の親和性、DNA-抗体結合体の非特異的結合の程度、プライマーペアの選択など、多くの要因に大きく依存する。
以下の実施例は本発明の特徴の一つを説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
(1)材料と一般器具
一般化学品は、東京化成工業(株)および和光純薬工業(株)から入手可能な最高グレードのものを使用した。分子生物学実験用の薬品は、SIGMAおよび和光純薬工業から入手し、さらに精製することなく使用した。DNAオリゴは、Eurofins Genomics社、つくばオリゴサービス社(日本)、北海道システムサイエンス社(日本)により合成された。
【0059】
PCRはBiometra TRIO48サーマルサイクラーを用いて行った。リアルタイム定量PCR(qPCR)は,StepOne Real-Time PCRシステムとTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡)とを用いて行った。特に記載のない限り、PCRには、PrimeSTAR HS DNA polymerase(Takara)をメーカー推奨の条件で使用し、DNAは、FavorPrep PCR Clean-Up Mini Kit(Favorgen)で精製した。プライマーについては前出の表2を参照されたい。
【0060】
ゲルの画像はTyphoon FLA9500イメージャー(GEヘルスケア)で撮影した。特に断りのない限り、DNAおよびRNAのPAGE分析は、8 M尿素を含むゲルを用い、0.5xTBEをランニング緩衝液として60℃で行った。cDNAディスプレイ分子およびペプチド-リンカー複合体のSDS-PAGE分析は、8 M尿素を含むトリス-HClゲルを用いて室温(r.t.)で行った。配列決定のためのDNAサンプルの調製は、製造元の指示に従って行った。
【0061】
(2) cnvK-rGリンカーの合成
cnvK-rGリンカーは、puro-F-S2フラグメント(5'-STCFCTC-(Spacer18)2-CCP-3')とビオチン-rG-cnvKフラグメント(5'-BA-(rG) -AATTTCCAKGCCGCCCCCCG-(T-NH2) -CCT-3')という2つの修飾オリゴヌクレオチドから、我々の過去の論文(Y. Mochizuki, T. Suzuki, K. Fujimoto and N. Nemoto, J. Biotechnol., 2015, 212, 174-180.)に記載されているcnvK-Puリンカー用プロトコロルと同様にして合成した。ここで、Sは5'-thiol-Modifier C6、Fはフルオレセイン-dT、PはピューロマイシンCPG、スペーサーはスペーサーホスホロアミダイト18、Bは5'-ビオチン-TEG、rGはグアニンリボヌクレオチド、KはcnvK(Y. Yoshimura and K. Fujimoto, Org. Lett, 2008, 10, 3227-3230)、及びT-NH2はamino-modifierC6 dTである(用語はつくばオリゴサービスによる)。
【0062】
(3)DNAの構築
BDAをコードするコンストラクト(
図7A)を、従来の方法に従って調製した。抗GFP VHHコンストラクト(
図7B)は、以下のようにして調製した。まず、GenScript社で化学合成された抗GFP VHHをコードする遺伝子(LaG-16)を、1st Fw VHHと1st Rv VHHとをプライマーとしてPCR(25サイクル、50 μLスケール)で増幅した。続いて、5'-UTRを結合させる2回目のPCRを、上記DNAを鋳型とし、T7ΩおよびcnvK-NewYtagをプライマーとして用いて行った(25サイクル、50 μLスケール)。その産物を分取PAGE(4%、変性条件)で精製した。
【0063】
(4)cDNAディスプレイの作製
DNAの転写は、T7 RiboMAX Large Scale RNA Production System(Promega)を用いて製品の指示に従って行い、続いてmRNAをAgencourt RNA Clean XP(Beckman Coulter)で精製した。mRNA(1μM)は、100 mM NaClを含む25 mM Tris-HCl(pH7. 5)で、その3’末端の領域に、以下のアニーリング条件でハイブリダイズさせた:90℃1分間加熱後、0.4℃/秒の速度で70℃まで降温させ、1分間インキュベートし、その後、0.08℃/秒の速度で25℃まで冷却させた。
【0064】
CL-1000 UV Crosslinker(UVP, Upland, USA)を用いて365 nmのUVを、サンプルに30秒間照射した。次に、得られたmRNA-リンカー複合体をウサギ網状赤血球溶解物系(Promega、50 μLの反応量中に6 pmolのmRNA-リンカーを添加)を用いて、30℃で20分間in vitro翻訳した。mRNA-リンカー-タンパク質の融合体(すなわち、mRNAディスプレイ又はIVV)を合成するために、KClとMgCl2とを混合液に加え(終濃度は、それぞれ900 mMと75 mM)、37℃で60分間インキュベートした。
【0065】
EDTA(終濃度70 mM)及び等容の2xSA結合緩衝液(20 mM Tris-HCl, pH7.4, 2 mM EDTA, 2 M NaCl, 0.2% (v/v)のTween 20)を加えた後、mRNAディスプレイライブラリをストレプトアビジン(SA)コートした磁性ビーズ(Dynabeads MyOne streptavidin C1 streptavidin magnetic beads, Invitrogen, 60μL)上に、25℃で30分間固定化した。このビーズを1xSA結合緩衝液(100μL、10 mM Tris-HCl, pH7.4, 1 mM EDTA, 1 M NaCl, 0.1%(v/v) Tween 20)で3回洗浄した。
【0066】
その後、固定化したライブラリをReverTra Ace逆転写酵素(東洋紡、日本、50 μLの反応量中200 U)により、42℃で30分間逆転写した。このビーズをHisタグ結合緩衝液(100 μL、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、0.5 M NaCl、5 mMイミダゾール、pH7.4)で洗浄し、RNase T1(Thermo Fischer Scientific)を上記ビーズに加えた(50μLのHisタグ結合緩衝液中250 U)。この混合物を37℃にて30分間インキュベートし、ビーズからmRNA/cDNA-タンパク質融合分子(すなわちcDNAディスプレイ)を遊離させた。
【0067】
cDNAディスプレイ分子を含む上清を回収し、His6peptide tagを用いた精製を以下のように行って混入したcDNA-リンカー複合体を除去した。His Mag Sepharose Niビーズ(20μL、GEヘルスケア)に上記上清を加え、25℃で2時間インキュベートした。このビーズをHisタグ洗浄バッファー(100 μL、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、0.5 M NaCl、20 mMイミダゾール、pH 7.4)で洗浄し、Hisタグ溶出緩衝液(20 μL、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、0.5 M NaCl、250 mMイミダゾール、pH7.4)で25℃、15分間インキュベートした。溶出した溶液は適切に希釈した後、免疫測定に使用した。
【0068】
(5) SDS-PAGEによるBDAのcDNAディスプレイ形成の確認(抗GFP VHH、(
図8))
BDAをコードしているcDNAディスプレイは、上述のように6 pmolのmRNA-リンカー複合体から調製した。mRNA-リンカーのアリコート(レーン1)、インプットのアリコート(=IVV、レーン2)、SAビーズ固定化上清のアリコート(レーン3)、RNase T1処理の溶出液のアリコート(レーン4、即ち粗製cDNAディスプレイ)、Niビーズ上清のアリコート(レーン5)、及び最後に回収したHisタグの溶出液のアリコート(レーン6、すなわち精製cDNAディスプレイ)を採取し、8 M尿素含有SDS-PAGE(4%スタッキングゲル-6%分離ゲル、20 mA、120分)で分析した。
【0069】
全てのステップが完璧な収率で進行したと仮定すると、全てのサンプルは0.5 pmolの分子に相当する。上記ゲルをFITCフィルターセットで蛍光可視化し(cnvK-rGリンカーに結合したフルオレセインの蛍光を可視化)、バンド強度を計算してcDNAディスプレイ形成効率を推定するとともに、最終的なcDNAディスプレイ溶液の絶対濃度を求めた。最後の3つのサンプルに関してはRNA/cDNA二重鎖を消化するために、RNase H(Takara, 10 U)と10xNE buffer 2(1/10量、NEB)をサンプルに加え、ゲルへのローディング前に、この混合物を37℃で30分間インキュベートした。
【0070】
図8のバンド強度の定量の結果、cDNAディスプレイ形成の全効率(mRNA-リンカーからHisタグ溶出まで)はおおよそ7.7%であった。
【0071】
さらにNi-NTAビーズで精製すると(上清をレーン5で分析)、純粋なcDNAディスプレイ分子が得られた(レーン6)。レーン4~6については、RNase H処理後にサンプルをロードした。サンプルを8 M尿素含有SDS-PAGEで分析し、cnvK-rGリンカーに結合したフルオレセインの蛍光をゲルイメージャーで可視化した。バンド強度の定量の結果、cDNAディスプレイ形成の全効率(mRNA-リンカーからHisタグ溶出まで)は約7.7%であった。
【0072】
(6) SDS-PAGEによるcDNAディスプレイ形成の確認(抗GFP VHHの場合)
抗GFP VHHをコードしているcDNAディスプレイは、上述のように6 pmolのmRNA-linker複合体から調製した。cDNAディスプレイ形成中に、以下のアリコートを回収した:mRNA-リンカーのアリコート;インプット、すなわちIVVのアリコート;SA-ビーズ固定化上清のアリコート;RNase T1処理の溶出液、すなわち粗製cDNAディスプレイのアリコート;Niビーズの上清のアリコート;回収したHisタグの溶出液、すなわち精製cDNAディスプレイのアリコート;Micro Bio-Spin 6カラムで精製した最終サンプル、すなわち緩衝液交換のアリコート。その後、8 M尿素含有SDS-PAGE(4%スタッキングゲル-6%分離ゲル、20 mA、120分)で分析した。全てのステップが完璧な収率で進行したと仮定すると、Bio-Spin 6の溶出液(1.7 pmol)を除く全てのサンプルは0.5 pmolの分子に相当する。このゲルを、FITCフィルターセットを用いて蛍光で可視化し、バンド強度を算出してcDNAディスプレイ形成効率を推定した。最後の4つのサンプルについては、RNA/cDNA二重鎖を消化するために、RNase H (Takara, 10 U)と10xNE buffer 2 (1/10量、NEB)の双方をサンプルに加え、ゲルへのロード前に、37℃で30分間インキュベートした。
【0073】
図9のレーンは以下に対応する。レーン1:mRNA-リンカー。レーン2: IVV。レーン3:磁性ビーズの上清液。レーン4:粗製cDNAディスプレイ。レーン5:Niビーズの上清液。レーン6:精製cDNAディスプレイ分子。レーン7:Micro Bio-Spin 6カラムで精製した最終サンプル。
図9のバンド強度を定量すると、cDNAディスプレイ形成の全効率(mRNA-linkerからBio-Spin 6の溶出まで)は約0.3%であった。
【0074】
(実施例2)
(1) cD-IPCRの感度評価(
図4A)
BDAをコードするcDNAディスプレイ分子を、超純水(UPDW)で10倍希釈系列(10
3-10
9コピー/2 μL)および3.3倍希釈系列(10
1-10
3コピー/2 μL)とし、これらの溶液2 μLをqPCRの鋳型DNAとした。qPCRはTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡、日本)と、StepOne Real-Time PCRシステムとを用いて行った。
【0075】
PCR混合液は1xTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix、300 nM濃度の各プライマー(フォワードプライマー:BDA_qPCR(+)、リバースプライマー:BDA_qPCR(-))、0.4μLの50xROX参照色素、2μLの上記cDNAディスプレイ希釈液およびUPDWを含み(最終容量は20 μL)、PCRのステッププログラムは以下の通りであった:95℃で1分、続いて95℃で15秒、62℃で30秒のサイクルを40回。増幅の質を担保するために、鋳型DNAを除く全てのqPCR試薬を含むネガティブコントロールを含め、サンプルとコントロールのCt値の差を算出した。
図4Aに示すように、ΔCt(鋳型不含のコントロールに対するCt値の差)は10
3~10
9コピーの範囲でcDNAディスプレイ分子の数と直線的に相関し、標準偏差も非常に小さかった。低濃度では直線性が維持されなかったものの、100分子という低濃度の分子を含むサンプルでは、統計的に有意なΔCtが観察された。検出限界(LOD)の低さと検出範囲の広さ(10
2~10
9)はいずれもIPCR独自の利点である。
【0076】
(2)磁性ビーズへのIgG固定化(
図4B、
図6、
図10)
反応緩衝液(0.1 M Na
2HPO
4, 0.3 M NaCl)中のウサギ血清由来のIgG(Sigma, 1.5 nmol)を、EZ-Link Sulfo-NHS-SS-Biotin(Thermo, 30 nmol)と上記反応緩衝液中、25℃で30分間反応させた、その後、上記緩衝液を1xSA結合緩衝液(10 mM Tris-HCl, pH8.0, 1 mM EDTA, 1 M NaCl, 0.1%(v/v) Tween 20)に交換した。IgGの吸光度から、採取物の収量を測定した。
【0077】
Magnosphere MS300/ストレプトアビジン(JSR、20μL、
図6の場合)、またはDynabeads MyOne streptavidin C1(Invitrogen、20μL、
図4Bおよび
図10の場合)を、1xSA結合緩衝液(100μL)で洗浄し、回収したIgG(60 pmol)と25℃で30分間反応させ、その後、1xSA結合緩衝液(100μL、3回)で洗い流した。固定化反応の収率は、上記インプット中のIgGの吸光度からフロースルーのIgGの吸光度を差し引くことによって推定し、それぞれ約10%(Magnosphere MS300/ストレプトアビジン)、約40%(Dynabeads MyOne streptavidin C1)であった。
【0078】
(3)ブロッキング剤との比較(
図6、10A)
上述のようにして調製したIgG固定化磁性ビーズに各ブロッキング剤を用いて、BDAのcDNAディスプレイを上記ビーズとインキュベートした。まず、各ブロッキング剤(5%(w/v)スキムミルク、3%(w/v)BSA、0.02%(w/v)酵母tRNA、1%(w/v)冷水魚由来ゼラチン、2.5%/0.01%(w/v)BSA/tRNA混合物)を1xSA結合緩衝液(50μL)中で分散させ、異なる濃度のIgG固定化ビーズ(10μL)と25℃で60分間反応させた。
【0079】
ブロッキングしたビーズを1xSA結合緩衝液(100μL、3回)で洗浄した後、1xSA結合緩衝液で5倍に希釈したBDAをコードするcDNAディスプレイ(20μL、つまりcDNAディスプレイの量は0.08 pmol以下)と25℃で60分間反応させた。ビーズを1xSA結合緩衝液(100μL)で2回洗浄し、ビーズ懸濁液(2μL)を直接qPCRの鋳型として使用した。qPCRの条件は上記と同じであった(cD-IPCRの感度評価を参照)。
【0080】
回収したDNAをqPCRで評価した。その結果から、Dynabeads MyOne streptavidin C1との組み合わせにおいては、スキムミルクが最も優れたブロッキング剤であると結論付けた。
【0081】
(実施例3)
(1)直接cD-IPCRによるIgGの検出(
図4Bおよび10B)
直接cD-IPCRではIgGを固定化したDynabeads MyOne streptavidin C1(上記で調製)を、抗体を固定化していないインタクトなDynabeads MyOne streptavidin C1(IgGの終濃度は0.16~1600 ng/mL)の10倍貴社飼う系列と混合した。1xSA結合緩衝液(50μL、10 mM Tris-HCl, pH 7.4, 1 mM EDTA, 1 M NaCl, 0.1%(v/v) Tween 20)と混合した5%(w/v)スキムミルクでビーズをブロッキングした。ブロッキングしたビーズを1xSA結合緩衝液(100 μL)で2回洗浄し、その後、1xSA結合緩衝液で5倍に希釈したBDAをコードするcDNAディスプレイ(20 μL、すなわちcDNAディスプレイの量は~80 fmol/サンプル)と25℃で60分間反応させた。ビーズを1xSA結合緩衝液(100 μL)で2回洗浄した後、結合したcDNAディスプレイをSDS/DTT緩衝液(100 μL、1%(v/v)SDS、50 mM DTT、50 mM Tris-HCl、0.5 M NaCl、1 mM EDTA、0.05%(v/v)Tween 20、pH 7.4)を用いて、50℃で、30分間溶出させた。DNAの精製(スピンカラムからの溶出は30 μLの水で行った)後、サンプルを鋳型としてqPCRに使用した(8μL)。上記qPCRの条件は上述した通りとした(cD-IPCRの感度評価を参照)。上記サンプルと上記抗原なしのネガティブコントロール(0 ng/mL IgG)とのCt値の差を算出した。
【0082】
検出の結果を
図4B及び10Bに示す。直接cD-IPCRは1.6μg/mLから1.6 ng/mLの範囲でIgGを検出することができたことが示された。
【0083】
(2)サンドイッチcD-IPCRによる緩衝液中GFPの検出(
図4B)
ポリスチレン製マイクロタイタープレート(MICROLON, 96 Well Single-Break Strip Plate, PS, Greiner)に、PBS(137 mM NaClおよび2.68 mM KClを含む10 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.4、100μL)で1000倍に希釈した抗GFP pAb(MBL, #598)を4℃で一晩コーティングした。PBS(200μL)で洗浄した後に、このプレートを1%(w/v)スキムミルクを含むPBSを用いて25℃で2時間インキュベートしてブロッキングし、その後PBS(200μL、3回)で洗い流した。GFPの10倍希釈系列(PBS中、100 μg/mLから1 ng/mLまで)をウェルに入れて、25℃で2時間インキュベートし、PBSで洗い流した(200μL、8回)。
【0084】
抗GFP VHHをコードするcDNAディスプレイをPBS-T(137 mM NaCl及び2.68 mM KCl、0.05%(v/v) Tween 20を含む10 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.4、100μL)で65倍希釈し、その後、25℃で2時間インキュベートした。PBS-T(200μL、8回)で洗浄した後、結合したcDNAディスプレイをグリシン/HCl緩衝液(0.2 M、pH 2.2、100μL)で溶出させた。溶出液を1 MのTris-base溶液で中和し、FavorprepキットでcDNAディスプレイを精製し、qPCRの鋳型DNAとして使用した。qPCRはTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡、日本)を用いて、StepOne Real-Time PCRシステムで行った。
【0085】
PCR混合液は、1xTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix、300 nM濃度の各プライマー(フォワードプライマー:GFPVHHqPCRFw,リバースプライマー:GFPVHHqPCRRv)、0.4μLの50xROX参照色素,2 μLの溶出された精製cDNAディスプレイおよびUPDWを含み,最終容量を20μLとした。PCRのステッププログラムは以下の通りである:95℃で1分、続いて95℃で15秒、66℃で30秒のサイクルを40回行った。増幅の質を担保するために、鋳型DNA以外のすべてのqPCR試薬を含むネガティブコントロールを含めて実施した。
【0086】
図5Eは、cD-IPCR法による緩衝液中のGFP検出結果を示す(** p<0.01; *** p<0.001, 対0 ng/mL, Student t-検定)。データは平均値±S.D.で示した(n = 3)。ΔCt値は、GFP濃度(10~10
5 ng/mL)に応じて徐々に増加し、10 ng/mLが最も低い検出濃度であった。
【0087】
(3)サンドイッチcD-IPCRによる血清中GFPの検出(
図5F)
サンドイッチcD-IPCRによる血清中GFPの検出は、PBSの代わりに市販の健常人血清(コージンバイオ、日本)に抗GFP pAbを溶解させて反応に用いた以外は、「サンドイッチcD-IPCRによる緩衝液中GFPの検出」と同様の手順で行った。
【0088】
図5Fは、血清中に混入したGFPをcD-IPCRで検出した結果である(*p<0.05; ***p<0.001、対 0 ng/mL, Student t-検定)。データは平均値±S.D.で示した(n = 3)。検出感度は緩衝液の場合と基本的に同じであることから、cD-IPCRが生体試料に応用できることが示された。
【0089】
ELISAとは対照的に、cD-IPCRのシグナル増幅は指数関数的であるため、非常に高い感度(~100分子/サンプル)と広い検出ダイナミックレンジ(107倍以上)が得られる。また、従来のIPCRやPD-IPCRと比較して、cDNAとそれがコードするタンパク質の結合比が1対1であることから、定量性や再現性の面でも優れた効果を有すると考えられる。このため、今回開発した方法は幅広い抗原の免疫測定法に応用可能であり、実用的である。
【0090】
また、PD-IPCRと同様に、今回開発した方法は膨大なライブラリから最適なポリペプチドをin vitroで選別することと組み合わせることができる。無論、他のIPCRと同様に、このアッセイの感度は捕捉抗体/検出抗体の親和性、DNA-抗体結合体の非特異的結合の程度、プライマーのペアの選択など、多くの要因に大きく依存する。
【0091】
結論として、我々、cD-IPCRと呼ばれる、PCRに基づいた新規抗原検出法を確立した。cD-IPCRはcDNAディスプレイ(ポリペプチドをインビトロで進化させるために開発されたペプチドとcDNAとの結合体)の構造的な特徴を利用したものであり、標的タンパク質の直接検出及びサンドイッチ型検出の両方で機能することが証明された。さらに、血清中の標的の検出も可能である。ELISAとは対照的に、cD-IPCRのシグナル増幅は指数関数的であり、その結果高い潜在的感度(~100分子/サンプル)と広い検出範囲(>107倍)とが得られた。広範な最適化の結果、この手法はcDNAとそれがコードするタンパク質の結合比が本質的に1対1であるという利点により、従来のIPCRやPD-IPCRと比較して定量性と再現性の面で優位性を持つに至った。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、医療、製薬、及び診断分野において有用である。
【配列表】
【国際調査報告】