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特表2022-522338バチルス・ハロサッカロボランス株、それを含む組成物、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-18
(54)【発明の名称】バチルス・ハロサッカロボランス株、それを含む組成物、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220411BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220411BHJP
   A01N 63/22 20200101ALI20220411BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220411BHJP
   A01P 5/00 20060101ALI20220411BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20220411BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220411BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/21
A01N63/22
A01P7/04
A01P5/00
A01N25/04 102
C12N15/31 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549602
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020055801
(87)【国際公開番号】W WO2020178368
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】19382164.2
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519345852
【氏名又は名称】フツレコ バイオサイエンス,エセ.ア.
【氏名又は名称原語表記】FUTURECO BIOSCIENCE,S.A.
【住所又は居所原語表記】Poligono Industrial Sant Pere Molanta,Avda.del Cadi 19-23,08799 OLERDOLA(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ララ サンチェス,ホセ マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス カスティリョ,カロリナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA15X
4B065AC20
4B065BA16
4B065BD21
4B065CA48
4H011AC01
4H011BA01
4H011BA06
4H011BB21
4H011BC03
4H011DA15
4H011DC05
(57)【要約】
本発明は、殺線虫効果および殺虫効果を有する微生物バチルス・ハロサッカロボランス(Bacillus halosaccharovorans)の新規単離株、それを含む細菌培養物および組成物、ならびに植物における線虫および/またはアブラムシ感染の防除におけるそれらの使用に関する。本発明の変異株を得る方法にも言及する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号CECT9165で「Coleccion Espanola de Cultivos Tipo」(CECT)に寄託されたバチルス・ハロサッカロボランス(Bacillus halosaccharovorans)の菌株、または出発材料としてバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165を使用して得られ、CECT9165の殺線虫効果および殺アブラムシ効果を維持するその変異体。
【請求項2】
前記変異体が、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株と少なくとも99.8%のゲノム配列同一性を有する、請求項1に記載のバチルス・ハロサッカロボランスCECT9165株の変異体。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の菌株またはその変異体を含み、好ましくは接種製品である細菌培養物。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか一項に記載のバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株、または請求項3に記載の細菌培養物の有効量と、1または複数の農業的に許容される化合物とを含む組成物。
【請求項5】
前記菌株が10CFU/ml~1012CFU/mlの濃度で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
油性懸濁(oil dispersion)製剤として製剤化され、好ましくは油性成分、有機エステルおよびシリカを含む、請求項4または5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の追加の農薬を含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
CECT9165の殺線虫効果および殺虫効果を維持するB.ハロサッカロボランス(B.halosaccharovorans)のCECT9165の菌株の変異体を得る方法であって、CECT9165株をDNA組換え技術、好ましくは突然変異誘発に供する工程を含む方法。
【請求項9】
前記変異体が、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株と少なくとも99.8%のゲノム配列同一性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1または2のいずれか一項に定義されるバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株またはその変異体に由来する生細胞懸濁液を得るための方法であって、(i)前記菌株を培地に接種すること、(ii)工程(i)の接種された培地を前記菌株の増殖に適した条件に供すること、および(iii)場合により、工程(ii)から得られた前記培地を濃縮工程に供すること、を含む方法。
【請求項11】
植物における線虫および/またはアブラムシ感染を防除するための、殺線虫効果および殺虫効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの単離株の使用。
【請求項12】
植物において線虫および/またはアブラムシによって引き起こされる感染を防除する方法であって、殺線虫効果および殺虫効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの単離株を、植物の一部または前記植物を成長させるために使用される基質に施用することを含む方法。
【請求項13】
前記単離株が細菌培養物の形態または組成物の形態で施用され、前記組成物が1または複数の農業的に許容される化合物をさらに含む、請求項11に記載の使用または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
線虫が、メロイドギン(Meloidogyne)属およびグロボデラ(Globodera)属から選択される;あるいは、メロイドギン・インコグニタ(Meloidogyne incognita)、メロイドギン・ヤバニカ(Meloidogyne javanica)、グロボデラ・ロストキエンシス(Globodera rostochiensis)およびグロボデラ・パリダ(Globodera pallida)からなる群から選択される;あるいは、アブラムシがアフィス(Aphis)属のものである;あるいは、アブラムシがアフィス・ゴシピイ(Aphis gossypir)である;あるいは、線虫がメロイドギン属から選択され、アブラムシがアフィス属のものである;あるいは、線虫がグロボデラ属から選択され、アブラムシがアフィス属のものである;あるいは、線虫がメロイドギン属から選択され、アブラムシがアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫がグロボデラ属から選択され、アブラムシがアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫がメロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダからなる群から選択され、アブラムシがアフィス属のものである;あるいは、線虫がメロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダからなる群から選択され、アブラムシがアフィス・ゴシピイである、請求項11または13のいずれか一項に記載の使用、または請求項12または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記単離株が、請求項1に定義される菌株である、請求項11、13もしくは14のいずれか一項に記載の使用、または請求項12、13もしくは14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1または2のいずれか一項に定義される菌株、請求項3に定義される細菌培養物または請求項4から7のいずれか一項に定義される組成物の有効量を含むキット。
【請求項17】
植物において線虫および/またはアブラムシによって引き起こされる感染を防除するための、請求項16に記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月5日に出願の欧州特許出願第19382164.2号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、植物衛生製品の分野に関する。本発明は、微生物バチルス・ハロサッカロボランス(Bacillus halosaccharovorans)の新規な単離株、それを含む組成物、ならびに植物において寄生性線虫およびアブラムシによって引き起こされる疾患の生物学的防除におけるそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
植物寄生性線虫および昆虫は、作物および園芸作物に経済的に重大な損傷を引き起こし、それらが根絶されない場合、農業収量を著しく減少させ、収穫量を減少させる。
【0004】
植物寄生性線虫は、ジャガイモ、テンサイおよびトマト作物などの作物植物の根系に感染する。寄生性線虫には、ネコブセンチュウ、例えばメロイドギン(Meloidogyne)属;グロボデラ(Globodera)属などのシストセンチュウ;およびプラチレンクス(Pratylenchus)属などのネグサレセンチュウが含まれる。
【0005】
穿刺吸引性の昆虫であるアブラムシは、その口部を内部に(柄、葉または根に)挿入することによって植物の樹液を摂取する。これらは、ほとんどすべての植物種を攻撃する。損傷は、通常、葉の下側に現れる黄色がかった斑点状の変色の形態で見ることができ、これがその後乾燥して死滅する。いくつかのアブラムシ種は、虫こぶを形成するか、葉を巻き取るかまたは変形させる。茎または枝などの植物の他の部分に定着したアブラムシは、成長を遅らせ、急速な葉の喪失または枝の死を引き起こし得る。アブラムシはまた、多数のウイルス性疾患のキャリアである。
【0006】
最も一般的に使用される線虫およびアブラムシの管理戦略は化学的防除であるが、それは効果的ではあるが、土壌汚染の問題につながり、生物多様性に影響を及ぼし、ヒトの健康に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
過去数十年にわたって、研究者らは、非化学的かつ環境に優しいアプローチの開発を試みてきた。植物線虫の防除に関連して、メロイドギン・インコグニタ(Meloidogyne incognita)に対する特定の細菌株の殺線虫活性が報告されている(例えば、非特許文献1)。バチルス属の細菌を含む植物線虫を防除するための市販製品、例えば、BioNem-WP/BioSafe(B.フィルムス(B.firmus))、BioYield(B.ベレゼンシス(B.velezensis)およびB.スブチリス(B.subtilis)、Nemix(バチルス属菌種)、VOTiVO(登録商標)(B.フィルムス)およびPathway Consortia(登録商標)(B.スブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、ストレプトマイセス属菌種(Streptomyces spp.)およびトリコデルマ属菌種(Trichoderma spp.))が開発されている。残念なことに、細菌株を使用して先行技術で報告された殺線虫効果は、特定の作物植物および特定の寄生性線虫に限定される。
【0008】
特定の細菌はまた、例えばバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)殺ダニ毒素またはこの毒素を含むトランスジェニック植物を使用することによって、アブラムシ科のメンバーに対して使用されている(特許文献1)。
【0009】
環境条件および宿主条件が細菌株の生物学的活性に影響を及ぼし、その有効性を一般的に変動させ、参照化学製品よりも有意に低くすることを指摘することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開WO94/04684号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Xiang N et al.‘Biological control of Meloidogyne incognita by Spore-forming Plant Growth-promoting Rhizobacteria on Cotton’ Plant Disease 2017(101)774-784
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、努力にもかかわらず、線虫およびアブラムシに対して広い作用スペクトルを有する細菌株が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明者らは、活性を有する農薬であるバチルス・ハロサッカロボランス(Bacillus halosaccharovorans)種の1つの菌株(以下、「細菌株B410」とも称される)が、ネコブセンチュウおよびシストセンチュウなどの植物寄生性線虫に対して、さらにアブラムシ昆虫に対しても活性を有することを見出した。
【0014】
以下に示すように、本発明の菌株は、増殖チャンバおよび温室試験で試験されており、トマト植物におけるネコブセンチュウ(RKN)のメロイドギン・インコグニタ(Meloidogyne incognita)およびメロイドギン・ジャバニカス(Meloidogyne javanicus)ならびにジャガイモシストセンチュウ(PCN)のグロボデラ・ロストキエンシス(Globodera rostochiensis)およびグロボデラ・パリダ(Globodera pallida)に対して、線虫防除の点で効率的であることが実証されている。RKN卵孵化阻害に関して、試験した線虫に対する本発明の株のインビトロ有効性が、参照殺線虫化学物質オキサミルを用いて達成されたもの(図2)よりも良好であったこと、または別の参照殺線虫化学物質フェナミホスを用いて達成されたもの(図1)と同様であったことは注目に値する。RKNの幼虫では、生存に関するインビトロ有効性は、フェナミホスによって示された有効性と同様であった(図3)。
【0015】
この抗線虫効果は、植物あたりの卵の最終個体数およびRKNの繁殖を測定する線虫防除に関して、インビボでも検出された。これは、いくつかの形態:ペレット(実施例5.1)として、農薬原体(Technical Grade Active Ingredient)(TGAI)(実施例5.2)として、およびプロトタイプ製剤(formulated prototype)(油性懸濁剤(oil dispersion))(実施例5.3)として、本発明の細菌を使用して達成された。
【0016】
ジャガイモシストセンチュウに関連して、本発明の細菌株はまた、処理終了時に卵孵化の阻害パーセントがほぼ100%であることを示した(図4および図5)。
【0017】
抗線虫効果に加えて、本発明の菌株は、アブラムシのアフィス・ゴシピイ(Aphis gossypii)に対する殺虫剤としても有効であることが示されている。以下に示すように、B410株は、TGAIとして作用して、アブラムシのアフィス・ゴシピイの有意な死亡率を達成した(図6および図7)。
【0018】
これらの実験データから、本発明の細菌株は、線虫およびアブラムシを防除する二重の効果を有すると結論付けることができた。このような特定の二重効果を有するB.ハロサッカロボランスの菌株が報告されたのはこれが初めてである。さらに、それがインビトロで参照化学物質と比較してより良い効果を有することは驚くべきことである。
【0019】
さらに、このような顕著な活性プロファイルに対して、本発明の菌株は、マウスにおいてインビボで急性経口毒性を示さないことも見出された。結果は、動物が目に見える臨床的有害作用を有さず、病原性の感染性が見られないことを示した。
【0020】
本発明者らはさらに、同定された菌株が中温性(mesophyll)、好中性性(neutrophil)、耐塩性および強いバイオフィルム産生性であることを見出した。耐塩性微生物は、乾燥地帯の農業地域などの地域に施用可能であり、土壌塩分の影響を受ける、または塩水のみが利用可能な地域の農業生産性を高めることができるため、農業上かなり重要である。さらに、多くの環境ストレス要因は浸透圧変化を伴うかまたは誘発する。したがって、耐塩性は有利な特徴である。B410は強力なバイオフィルム産生株であり、これは好ましくない環境下での微生物のコロニー形成および生存に際して重要な特徴である。
【0021】
したがって、本発明の菌株は、細菌の影響を受けやすい植物の成長に有益である。
【0022】
線虫および/または昆虫感染を防除するための本発明の菌株の使用は、環境に優しい。
【0023】
全体として、本発明の菌株は、バイオ農薬の分野における大きな進歩を意味する。
【0024】
したがって、本発明の第1の態様は、受託番号CECT9165で「Coleccion Espanola de Cultivos Tipo」(CECT)に寄託されたバチルス・ハロサッカロボランスの菌株、または出発材料としてバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165を使用して得られ、CECT9165の殺線虫効果および殺アブラムシ効果を維持するその変異体を指す。
【0025】
本発明では、本発明の菌株を指す「B410」と「CECT9165」という用語は同義に使用される。
【0026】
本発明の菌株はアルメリア(スペイン)の農業土壌から単離され、ブダペスト条約に従って、受託番号CECT 9165で、Edificio 3 CUE,Parc Cientific Universidad de Valencia C.P 46980 Catedratico Agustin Escardino N°9 Paterna,Valencia(Spain)のCECTに寄託された。これは、寄託者Futureco Bioscience S.A.,Av.Del Cadi 19-23 P.l.Sant Pere Molanta 08799 Olerdola Barcelonaによって、2016年7月13日に寄託された。この菌株は寄託者によって参照番号B410として同定され、受託番号CECT9165を与えられた。さらに、それは生存可能であると宣言された。
【0027】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様で定義される菌株を含む細菌培養物を指す。
【0028】
本発明の菌株の農薬効果により、これは植物衛生製品として使用することができる。以下の実施例に例示するように、本発明の第1の態様の菌株は、国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations)によって発行されたガイドラインであるFAOガイドラインに従って植物衛生製品として使用することができる。本発明の第1の態様で定義される単離細菌は、植物衛生組成物の成分として使用することができる。
【0029】
したがって、本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様で定義される菌株または本発明の第2の態様で定義される細菌培養物の有効量と、1または複数の農業的に許容される化合物とを含む組成物を指す。
【0030】
本発明の第4の態様は、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株の変異体を得る方法であって、寄託された菌株を出発材料として使用すること、および突然変異誘発を適用することを含み、得られた変異体が、植物における線虫およびアブラムシ感染を防除する親寄託株の活性を維持する方法を指す。
【0031】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様のB.ハロサッカロボランスのCECT9165株またはその変異体に由来する生細胞懸濁液を得るための方法であって、(i)菌株を培地に接種すること、(ii)工程(i)の接種された培地を菌株の増殖に適した条件に供すること、および(iii)場合により、工程(ii)から得られた培地を濃縮工程に供すること、を含む方法を指す。
【0032】
B.ハロサッカロボランスB410株によって示された植物寄生性線虫およびアブラムシに対する二重活性を、B.ハロサッカロボランスの他の株に外挿することができた。
【0033】
したがって、本発明の第6の態様は、植物における線虫および/または昆虫感染を防除するための、殺線虫効果および殺虫効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの単離株の使用を指す。
【0034】
本発明の第7の態様は、植物において線虫および/または昆虫によって引き起こされる感染を防除する方法であって、殺線虫効果および殺虫効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの菌株を、植物の一部またはこの植物の栽培に使用される基質に施用することを含む方法を指す。
【0035】
本発明の第8の態様は、本発明の第1の態様の菌株、または本発明の第2の態様の細菌培養物、または本発明の第3の態様の組成物の有効量を含むキットに関する。
【0036】
本発明の第9の態様は、植物における線虫感染および/またはアブラムシ感染を防除するための、本発明の第8の態様のキットの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】メロイドギン・ヤバニカ(Meloidogyne javanica)およびM.インコグニタ(M.incognita)の卵に対する、B.ハロサッカロボランス(B.halosacarovorans)B410株およびNemacur(登録商標)(「化学物質」)のインビトロ殺線虫活性の比較を示す図である。
図2】M.ヤバニカ(M.javanica)およびM.インコグニタの卵に対する、B.ハロサッカロボランスB410株およびVydate(登録商標)(「化学物質」)のインビトロ殺線虫活性の比較を示す図である。
図3】M.ヤバニカおよびM.インコグニタの幼虫(J2)に対する、B.ハロサッカロボランスB410株およびVydate(登録商標)(「化学物質」)のインビトロ殺線虫活性の比較を示す図である。
図4】グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダの卵に対する、B.ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫活性を示す図である。
図5】参照化学物質(Vydate(登録商標))と比較した、グロボデラ・ロストキエンシスの卵に対するB.ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫活性を示す図である。
図6】他の細菌株による処理と比較した、実験室条件で記録されたアブラムシ生存パーセントを示す図である。
図7】実験室条件下での処理後48時間および96時間のアブラムシ防除についての、他の細菌株の有効性と比較したB410の有効性のパーセントを示す図である。 すべての図において、異なる文字(「a」または「b」)で表されたデータは、それらの間に統計学的有意差があったことを示す(データを、Rプログラムを使用して分散分析(ANOVA)に供した;P=0.05でフィッシャーの制約付最小有意差検定(protected least significant difference test)(LSD)を用いて処置手段を比較した)。「対照」:陰性対照。「卵孵化率(%)」:卵孵化のパーセント。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
本出願において本明細書で使用されるすべての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で公知の通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は以下に示すとおりであり、特に明示的に述べた定義がより広い定義を提供しない限り、本明細書および特許請求の範囲全体を通して一律に適用されることを意図している。本明細書で与えられる定義は、理解の目的のために含まれ、説明、特許請求の範囲および図面を通して適用されることが期待される。
【0039】
本発明の第1の態様は、受託番号CECT9165で「Coleccion Espanola de Cultivos Tipo」(CECT)に寄託されたバチルス・ハロサッカロボランスの単離株、またはバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165を使用して得られ、CECT9165の殺線虫効果および殺アブラムシ効果の両方を維持するその変異体。
【0040】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、任意選択で下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、バチルス・ハロサッカロボランスの単離株は、受託番号CECT9165で「Coleccion Espanola de Cultivos Tipo(CECT)」に寄託されたB.ハロサッカロボランスB410株である。
【0041】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、この菌株は、出発株の殺線虫効果および殺アブラムシ効果を維持する、CECT9165株の変異体である。
【0042】
CECT9165株の「変異体」という用語は、また、CECT9165株の「変種」としても本発明により理解される。
【0043】
寄託株を出発材料として使用することにより、当業者は、突然変異誘発または細菌組換え技術などの遺伝子工学技術によって、本発明の菌株の本明細書に記載の関連する特徴および利点を維持する変異体を日常的に得ることができる。本発明の一実施形態では、変異体は、ランダム突然変異誘発(すなわち、化学的または物理的な薬剤を使用すること)によって、または部位特異的突然変異誘発、コンビナトリアル突然変異誘発もしくは挿入突然変異誘発によって得られた遺伝子改変突然変異体である。本発明の第1の態様の別の実施形態では、変異体は、組換え技術、例えば形質転換(例えば、エレクトロポレーション、ヒートショックによって、または塩化カルシウムなどの二価カチオン溶液を使用することによって)、形質導入または接合技術を使用することによって得られる。組換え技術を使用することにより、プラスミドを細菌株に含めることができる。プラスミドは、抗生物質耐性遺伝子または変異体の選択に役立つ遺伝子を含み得る。遺伝子工学技術の例は、Sambrook,J.and Russell,D.W.“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,Chapter13,“Mutagenesis”,Cold Spring Harbor,3rd Ed,2001に見出すことができる。
【0044】
上述のように、本発明によって提供される変異体は、CECT9165株によって示される二重効果、すなわち抗線虫活性および抗アブラムシ活性を維持しなければならない。本発明において、用語「維持する」は、変異体に言及する場合、抗線虫活性および抗アブラムシ活性の両方を示さなければならないことを意味する。当然のことながら、菌株における突然変異の結果として、本発明によって包含される得られた変異体は、CECT9165株よりも効率的に両方の活性を示すことができる。
【0045】
変異体が抗線虫および抗アブラムシとして二重プロファイルを維持するかどうかを決定するために、いくつかの周知のプロトコルに従うことができる。これらの方法は、一般に、菌株と接触している病原体の増殖能力の分析、または該菌株への曝露後の病原体感染によって引き起こされる疾患の重症度の評価に基づく。活性を決定するための本明細書の実施例に含まれるプロトコルは、例示的かつ非限定的な例である。手短に言えば、それらは、インビトロでの線虫の卵孵化および線虫の生存、ならびにインビボでの線虫の繁殖分析に基づく。
【0046】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株の変異体は、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株と少なくとも99.8%(99.8%または99.9%)のゲノム配列同一性を有する。
【0047】
本発明において、「同一性」という用語は、配列が最適にアラインメントされたときに2つの配列において同一である残基のパーセンテージを指す。最適なアラインメントにおいて、第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基によって占められている場合、配列は、その位置に関して同一性を示す。2つの配列間の同一性のレベル(または「配列同一性パーセント」)は、配列のサイズに対して配列が共有する同一の位置の数の比として測定される(すなわち、配列同一性パーセント=(同一の位置の数/位置の総数)×100)。
【0048】
最適なアラインメントを迅速に得て、2つ以上の配列間の同一性を計算するためのいくつかの数学的アルゴリズムが公知であり、いくつかの利用可能なソフトウェアプログラムに組み込まれている。そのようなプログラムの例としては、とりわけ、アミノ酸配列分析のためのMATCH-BOX、MULTAIN、GCG、FASTAおよびROBUSTプログラムが挙げられる。好ましいソフトウェア分析プログラムには、ALIGN、CLUSTAL W、およびBLASTプログラム(例えば、BLAST2.1、BL2SEQおよびそれらの後期バージョン)が含まれる。
【0049】
アミノ酸配列分析のために、BLOSUM行列(例えば、BLOSUM45、BLOSUM50、BLOSUM62およびBLOSUM80行列)、Gonnet行列、またはPAM行列(例えば、PAM30、PAM70、PAM120、PAM160、PAM250、およびPAM350行列)などの重み行列を同一性の判定に使用することができる。
【0050】
BLASTプログラムは、選択された配列をデータベース(例えば、GenSeq)内の複数の配列に対して、またはBL2SEQを用いて2つの選択された配列間でアラインメントすることによって、少なくとも2つの配列の分析を提供する。BLASTプログラムは、好ましくはBLASTプログラム動作に統合される、DUSTまたはSEGプログラムなどの低複雑度フィルタリングプログラムによって改変されることが好ましい。ギャップ存在コスト(またはギャップスコア)が使用される場合、ギャップ存在コストは、好ましくは約-5~-15の間に設定される。同様のギャップパラメータは、必要に応じて他のプログラムと共に使用することができる。BLASTプログラムおよびその基礎となる原理は、例えば、Altschul et al.,“Basic local alignment search tool”,1990,J.Mol.Biol,v.215,pages403-410にさらに記載されている。
【0051】
多重配列分析には、CLUSTAL Wプログラムを用いることができる。CLUSTAL Wプログラムは、「動的」(「fast」に対して)設定を使用して実行されることが望ましい。配列は、配列間の同一性のレベルに応じてBLOSUM行列の可変セットを使用して評価される。CLUSTAL Wプログラムおよび基本的な動作原理は、例えば、Higgins et al.,“CLUSTAL V:improved software for multiple sequence alignment”,1992,CABIOS,8(2),pages189-191にさらに記載されている。
【0052】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株の変異体は、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株と少なくとも99.8%(99.8%または99.9%)の平均ヌクレオチド同一性(ANI)を有する。
【0053】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の変異体のANIを決定する方法は、Richter M,et al.2015 JSpeciesWS:a web server for prokaryotic species circumscription based on pairwise genome comparison.Bioinformatics.2015 Nov16.pii:btv681に記載されている方法「ANIm」である。
【0054】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の菌株の変異体、例えばバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株と少なくとも99.8%のゲノム配列同一性を有する変異体を得る方法は、Aubert et al.,“A Markerless Deletion Method for Genetic Manipulation of Burkholderia cenocepacia and Other Multidrug-Resistant Gram-Negative Bacteria” Methods Mol Biol 2014;1197:311-27に記載されている突然変異誘発方法である。
【0055】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、殺線虫効果は、少なくともメロイドギン属およびグロボデラ属の線虫に対するものである。別の実施形態では、殺線虫効果は、メロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダの1つまたは複数に対するものである。別の実施形態では、本発明の第1の態様で定義される菌株は、メロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダに対して殺線虫効果を有する。
【0056】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の第1の態様で定義される菌株は、少なくともアブラムシ上科に対して殺虫効果を有する。別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の第1の態様で定義される菌株は、少なくともアブラムシ科に対して殺虫効果を有する。別の実施形態では、本発明の第1の態様で定義される株は、アフィス・ゴシピイに対して殺虫効果を有する。
【0057】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の第1の態様で定義される菌株は、メロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダに対して殺線虫効果を有し、殺アブラムシ効果はアフィス・ゴシピイに対するものである。
【0058】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様で定義される菌株を含む細菌培養物を指す。
【0059】
本発明の第2の態様の一実施形態では、細菌培養物は、本発明の第1の態様で定義される生存可能な菌株を含む。
【0060】
本発明の第2の態様の別の実施形態では、細菌培養物は、不活性化された本発明の菌株を含む。
【0061】
「不活性化」という用語は、微生物がコロニーを形成することができないことを意味する。一実施形態では、不活性化微生物は、細胞膜が無傷であるか、または破壊されている。
【0062】
本発明の第2の態様の一実施形態では、細菌培養物は接種製品である。
【0063】
「接種製品」とは、菌株を適切な培地に接種し、接種した培地を適切な増殖条件に供した後に得られる製品と理解される。
【0064】
本発明の第2の態様の別の実施形態では、本発明の菌株を含む接種製品が不活性化される。
【0065】
「不活化された本発明の菌株を含む接種製品」とは、該菌株を適切な培地に接種し、接種した培地を適切な増殖条件に供し、次いでこの菌株を不活化した後に得られる製品を指す。
【0066】
有害生物防除における実用的な使用を目的として、農薬剤は通常、農業的に許容される化合物も含む組成物に製剤化される。したがって、本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様で定義される菌株または本発明の第2の態様で定義される細菌培養物の有効量と、1つまたは複数の農業的に許容される化合物とを含む組成物を指す。
【0067】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、所望の利益、線虫およびアブラムシの防除をもたらすのに十分高いが、重篤な副作用を回避するのに十分低い活性薬剤(成分;すなわち、細菌株、本発明においては、B.ハロサッカロボランスCECT9165株またはその変異体である)の量を意味する。
【0068】
本発明の第3の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、菌株は10cfu/ml~1012cfu/mlの濃度で存在する。本発明の第3の態様の別の実施形態では、菌株は、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、1010cfu/mL、1011cfu/mLまたは1012cfu/mLの濃度で存在する。
【0069】
本発明の目的のために、任意の所与の範囲は、その範囲の下限および上限の両方の終点を含む。
【0070】
cfu/用量として示される量は、用量あたりの本発明の菌株のコロニー形成単位(CFU)に関する。cfu/mLとして示される量は、ミリリットルあたりの本発明の菌株のコロニー形成単位に関する。
【0071】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、植物疾患の治療または予防のいずれかの所望の利益を提供するのに十分高いが、重篤な副作用を回避するのに十分低い、本発明の第1の態様で定義されるB.ハロサッカロボランスCECT9165株の量を意味する。本発明に従って投与される化合物の特定の用量は、当然のことながら、投与される化合物、投与経路、治療される特定の状態、および同様の考慮事項を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。
【0072】
本発明の第3の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、組成物は植物衛生組成物である。
【0073】
本発明の第3の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、農業的に許容される化合物は、植物強化剤、栄養素、湿潤剤、付着性を改善する化合物、緩衝化合物、安定剤、酸化防止剤、浸透圧保護剤および日焼け止め剤からなる群から選択される。
【0074】
本発明の第3の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、組成物は、少なくとも1種の追加の農薬を含む。
【0075】
本発明の第3の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、追加の農薬は、農薬特性を有する別の細菌株、殺真菌剤、殺菌剤、除草剤、化学殺虫剤または化学殺線虫剤からなる群から選択される。追加の農薬は、組成物に含まれる本発明の菌株の活性/生存率に悪影響を及ぼしてはならない。
【0076】
本発明において、「農薬」という用語は、有害生物と見なされる生物の殺滅、忌避、調節または成長の妨害を意図した製品としての、農学の分野におけるその通常の意味によって理解される。明らかに、B.ハロサッカロボランスのCECT9165株またはその変異体の性質のために、本明細書では、「農薬」は生物農薬とも呼ばれる生物学的または生態学的(有機)農薬であると理解される。本発明の範囲において、「農薬」という用語は、「植物衛生」という用語と同じ意味を有する。
【0077】
本発明の第3の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、溶液、ペレット、懸濁液、凍結乾燥組成物または他の乾燥組成物(例えば、フリーズドライ組成物)の形態であり得る。凍結乾燥または乾燥された組成物は、その使用前に液体担体で再構成するか、または直接使用することができる。組成物は、植物衛生用途に適した様々な製剤に従って調製することができ、例えば、以下のタイプの製剤からなる群から選択される:希釈なしでの使用を意図とした液体(AL)、希釈なしでの使用を意図とした粉末(AP)、カプセル化粒剤(CG)、接触性の液体またはゲル(CL)、接触性粉末(CP)、散粉性粉末(powdering powder)(DP)、乳剤(EC)、乳化性粒剤(EG)、油型エマルジョン(EO)、水型エマルジョン(EW)、細粒剤(FG)、大型粒剤(GG)、乳化性ゲル剤(GL)、噴霧用粉末(GP)、粒剤(GR)、グリース(GS)、水溶性ゲル(GW)、マイクロエマルジョン剤(ME)、微粒剤(MG)、水希釈用濃縮懸濁液(OF)、油性懸濁剤(oil dispersion)(OD)、水混和性懸濁剤(OL)、油に分散させるための粉末(OP)、ゲルまたはペースト状の濃縮物(PC)、スティック(農業用医薬用途)(PR)、濃縮懸濁剤(SC)、サスポエマルジョン製剤(SE)、水溶性粒剤(DG)、液剤(soluble concentrate)(SL)、フィルム形成油(SO)、水溶剤(water-soluble powder)(SP)、水溶性錠剤(ST)、錠剤(TB)、顆粒水和剤(water-dispersible granules)(WG)、水和剤(wettable powder)(WP)、水分散性錠剤(WT)(2つの大文字からなるコードは植物衛生製剤の国際コードに対応している)。
【0078】
本発明の第3の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、組成物は油性懸濁(OD)組成物である。
【0079】
本発明の第3の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、組成物はOD製剤であり、本発明の第1の態様で定義される菌株を10~1012CFU/mL(10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、1010cfu/mL、1011cfu/mLまたは1012cfu/mL)の範囲の濃度で含む。
【0080】
本発明の第3の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、組成物はOD製剤であり、本発明の第1の態様で定義される菌株を10CFU/mLの濃度で含む。
【0081】
本発明の第3の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、組成物はOD製剤であり、本発明の第1の態様で定義される菌株を1.0×10~1.0×1012CFU/mLの範囲の濃度で含み、油性成分をさらに含み、該油性成分は、一実施形態では植物油であり、別の実施形態ではダイズ油または大豆油(soy oilまたはsoybean oil)である。
【0082】
本発明の第3の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、組成物はOD製剤であり、本発明の第1の態様で定義される菌株を1.0×10~1.0×1012CFU/mLの範囲の濃度含み、油性成分、有機エステルおよびシリカをさらに含む。別の実施形態では、油性成分は植物油であり、別の実施形態では、ダイズ油である。別の実施形態では、大豆油が69%であり、有機エステル(例えば、エトキシル化脂肪酸のエステル)が20%であり、シリカが1%であり、菌株がTGAIとして10%である。
【0083】
「農業的に許容される化合物」とは、農業での使用に適した化合物および/または材料を指す。一般に、この化合物はヒトに対して非毒性であるべきであり、好ましくは環境に優しくあるべきである。
【0084】
本発明の第3の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の組成物は、処理される植物における菌株の付着を改善するための化合物、ならびに植物強化剤化合物、栄養素、湿潤剤、安定剤、浸透圧保護剤、酸化防止剤、日焼け止め剤、緩衝化合物またはそれらの組み合わせを含有し得る。
【0085】
付着製品の例は、ゼラチン、デンプン、ペクチン、アルギネートおよびキサンタンなどの様々な種類のガムである。これらの化合物の多くは湿潤剤でもある。日焼け止め剤の場合、コンゴーレッド、炭酸カルシウムおよびワックスエマルジョンを使用することができる。植物強化剤は、作物に病原体または有害な環境条件に対する堅牢性または耐性を発達させるのを容易にすることができる化合物であり、例えば、ジャスモン酸類似体およびいくつかの植物防御刺激剤、例えば、ハルピン、キトサンおよびラミナリンである。さらに、浸透圧保護剤の例は、トレハロース、ベタインおよびアミノ酸である。最後に、アスコルビン酸およびグルタチオンが酸化防止剤の中に含まれる。
【0086】
本発明の第3の態様の組成物は、通常のプロトコルによって、例えばさまざまな成分を混合することによって調製することができる。
【0087】
本発明の第4の態様は、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株の、CECT9165の殺線虫効果および殺虫効果を維持する変異体を得る方法であって、CECT9165株を遺伝子工学技術に供する工程を含む方法に関する。
【0088】
本発明の第4の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、遺伝子工学技術は、部位特異的突然変異誘発、コンビナトリアル突然変異誘発もしくは挿入突然変異誘発によるランダム突然変異誘発(すなわち、化学的または物理的な薬剤を使用すること)などの突然変異誘発であるか、または組換え技術、例えば形質転換(例えば、エレクトロポレーション、ヒートショックによって、または塩化カルシウムなどの二価カチオン溶液を使用することによって)、形質導入もしくはコンジュゲーション技術である。本発明の第4の態様の別の実施形態では、遺伝子工学技術は突然変異誘発である。
【0089】
本発明の第4の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、この菌株の変異体は、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT 9165株と少なくとも99.8%(99.8%または99.9%)のゲノム配列同一性を有する。
【0090】
本発明の第4の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株の変異体は、バチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株と少なくとも99.8%(99.8%または99.9%)の平均ヌクレオチド同一性(ANI)を有する。
【0091】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様のB.ハロサッカロボランスのCECT9165株またはその変異体に由来する生細胞懸濁液を得るための方法であって、(i)菌株を培地に接種すること、(ii)工程(i)の接種された培地をこの菌株の増殖に適した条件に供すること、および(iii)場合により、工程(ii)から得られた培地を濃縮工程に供すること、を含む方法を指す。
【0092】
「CECT9165株に由来する」という用語は、懸濁液が本発明の第1の態様で定義される菌株から得られることを意味する。
【0093】
本発明の菌株は、5~7v/v%を含む最終濃度で培地に接種することができる。好ましくは、接種された培養物は指数増殖期にある。本発明の菌株の増殖に適した培地は、合成培地、例えばLB(溶原性ブロス)およびPM(生理食塩生成生培地)、または植物起源の培地、例えば糖蜜(例えばサトウキビ、ビートなどに由来)である。菌株の増殖に適した条件は、温度4~45℃、pH6~9、および酸素濃度50~100%である。本発明の菌株の増殖は、撹拌によって行われる。
【0094】
本発明の第5の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、菌株の増殖のための条件は、温度28~30℃、pH7~8.5、および酸素濃度85~100%である。
【0095】
懸濁液を得るための方法の別の実施形態では、細胞を培地から分離して濃縮懸濁液を得る。適切な分離技術としては、培養物の遠心分離または濾過が挙げられる。培養物の遠心分離を、例えば、最低5000rpmで行うとペレット中に細胞が得られ、これを培地の一部または適切な緩衝培地に、菌株濃度がおよそ1×10~1×1012CFU/mL(10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、1010cfu/mL、1011cfu/mLまたは1012cfu/ml)になるように再懸濁する。
【0096】
懸濁液が得られたら、それを脱水工程に供することができる。脱水は、凍結乾燥方法によって行うことができる。あるいは、懸濁液を流動床乾燥によって脱水することができる。別の選択肢は、噴霧乾燥または真空下のオーブン中での乾燥によって懸濁液を脱水することである。これに関して、本発明の菌株の別の有利な特徴は、該菌株が工業規模で微生物を得る際に日常的である脱水方法に対して高い耐性を示すことである。細胞生存率を改善するために、脱水方法を実施する前に不活性浸透圧保護剤成分を懸濁液に添加することができる。
【0097】
本発明の第5の態様の別の特定の実施形態では、本方法は、分離工程から得られた細胞を適切な緩衝液に再懸濁して、細胞濃縮懸濁液を得ることを含む。
【0098】
本発明の別の態様は、本発明の第1の態様で定義されるB.ハロサッカロボランスCECT9165株またはその変異体に由来する無細胞抽出物を提供し、この抽出物は、(i)菌株を適切な培地に接種すること、(ii)接種された培地を適切な増殖条件に供すること、(iii)工程(ii)の培地から細胞を分離すること、(iv)無細胞抽出物を回収すること、および(v)場合により、この無細胞抽出物を濃縮工程に供すること、を含む方法によって得ることができる。
【0099】
上記の分離方法によって得られた無細胞培地は、適切な製剤に直接使用および/または含めることができ、またはより適切な組成物に到達するための濃縮工程に供することができる。したがって、本発明の第4の態様の一実施形態では、脱水、濾過、限外濾過、遠心分離、超遠心分離、沈殿またはクロマトグラフィーによって実施することができる無細胞抽出物の濃縮工程に関する。
【0100】
本発明の第6の態様は、植物における線虫および/または昆虫感染を防除するための、殺線虫効果および殺虫効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの単離株の使用を指す。
【0101】
本発明の第6の態様の一実施形態では、植物における線虫および/またはアブラムシ感染を防除するための、殺線虫効果および殺アブラムシ効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの単離株の使用を指す。
【0102】
本発明の第7の態様は、植物において線虫および/またはアブラムシによって引き起こされる感染を防除する方法であって、殺線虫効果および殺虫効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの菌株を、植物の一部またはこの植物を成長させるために使用される基質に施用することを含む方法を指す。
【0103】
本発明の第7の態様の一実施形態では、それは、植物において線虫および/またはアブラムシによって引き起こされる感染を防除する方法であって、殺線虫効果および殺アブラムシ効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの菌株を、植物の一部またはこの植物を成長させるために使用される基質に施用することを含む方法を指す。
【0104】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、単離株は、本発明の第1の態様で定義されるB.ハロサッカロボランスのCECT9165株またはその変異体である。
【0105】
本発明の第6および第7の態様の菌株は、細菌培養物または組成物として使用することができる。したがって、菌株は本発明の第1の態様で定義されるものであり、細菌培養物は本発明の第2の態様で定義される細菌培養物であり、この組成物は本発明の第3の態様で定義される組成物である。
【0106】
本発明の第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の第1の態様で定義されるB.ハロサッカロボランス株またはその変異体は、数週間に1回、1日当たり10~1012CFU/mL(10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、10cfu/mL、1010cfu/mL、1011cfu/mLまたは1012cfu/ml)の投与計画で植物に投与される。本発明の第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の第1の態様で定義されるB.ハロサッカロボランスの菌株またはその変異体は、数週間に1回、1日当たり10cfu/mLの投与計画で植物に投与される。
【0107】
用量は、本発明の第3の態様の組成物および使用される組成物の製剤に従って、また気象条件、任意の抵抗現象または他の自然因子、処理の性質または外寄生の程度に従って、および処理される植物または部位に従って適合させることができる。
【0108】
本発明の第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、菌株、細菌培養物または組成物は、植物育苗箱に、種子処理、種子粉衣、種子消毒、苗根浸漬処理、植え穴処理、株元処理、作条処理、表面噴霧、土壌混和の間に、または水耕栽培における水培養培地への施用によって、施用される。
【0109】
本発明の第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、処理される植物の部分は種子である。この処理は、通常の方法、例えば、種子を本発明の第3の態様の組成物に浸漬する方法によって達成することができる。
【0110】
植物、すなわち根および/または種子の処理は、根-線虫に対する本発明の菌株の殺線虫作用を可能にする。
【0111】
「植物」という用語は、ヒトによって栽培される全ての植物種、特に穀類、飼料、野菜、果実作物、蔓植物などの食品または動物飼料を目的とした、および/または全ての目的(暖房、住宅建築用家具、および/または装飾品など)のための木材の供給を目的とした、全ての植物種を含む。植物の例としては、穀類(例えば、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、エンバクおよびトウモロコシ)、マメ類(例えば、大豆、アズキ、そらまめ、エンドウ豆およびピーナッツ)、果樹・果実類(例えば、リンゴ、ナシ、柑橘類、ブドウ、モモ、アンズ、サクランボ、オリーブ、ナッツ、アーモンド、バナナ、ベリーおよびイチゴ)、野菜類(例えば、トマト、キャベツ、ホウレンソウ、ブロッコリー、レタス、タマネギ、ニンニク、ニラおよびペッパー)、根菜類(例えば、ジャガイモ、ニンジン、サツマイモ、ダイコン、レンコンおよびカブ)、工業作物(例えば、綿、麻、カジノキ、三ツ又、アブラナ、ビート、ホップ、サトウキビ、テンサイ、ゴム、コーヒー、タバコ、茶)、ウリ状果(例えば、カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン)、牧草類(例えば、オーチャードグラス、モロコシ、オオアワガエリ、クローバー、アルファルファ)、芝草(例えば、マスカレーングラス、ベントグラス)、香味料作物(例えば、ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、バシリカ(basilica)、ミント、コリアンダー、ペッパー、ショウガ)、および観花植物(例えば、キク、バラ、ラン)が挙げられる。
【0112】
用語「植物の一部」は、根、茎、葉および種子などの植物の任意の部分を含む。
【0113】
「種子」という用語は、いわゆる種子の他、球根、塊茎、種芋等の栄養繁殖用の植物体を含む。
【0114】
本発明の第6または第7の態様の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、植物はトマト、キュウリまたはジャガイモ植物である。
【0115】
「基質」という用語は、植物を栽培するための任意の支持体を含み、その材料は、植物がその中で成長することができる限り、特に限定されない。例えば、苗床マット、水、砂、土壌、バーミキュライト、綿、紙、珪藻土、寒天、ゲル物質、高分子物質、ロックウール、グラスウール、ウッドチップ、樹皮および軽石である。
【0116】
本発明の第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、施用方法は、植物または苗を育成するための苗床の近傍で実施される。
【0117】
本発明の第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、施用方法は植物に直接実施される。
【0118】
以下の実施例は、線虫およびアブラムシ感染の防除における、生物農薬としてのB.ハロサッカロボランスの菌株の使用を実証する。
【0119】
B.ハロサッカロボランスB410株によって示されたアブラムシに対する殺虫活性を、半翅目の他の昆虫に外挿することができた。
【0120】
本発明の第6および第7の態様の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、昆虫は半翅目昆虫である。
【0121】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、昆虫は、アブラムシ科(Aphididae)、カサアブラムシ科(Adelgidae)、ネアブラムシ科(Phylloxeridae)および/またはコナジラミ科(Aleyrodidae)の半翅目昆虫である。
【0122】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、コナジラミ科の半翅目昆虫は、トリアレウロデス・バポラリオルム(Trialeurodes vaporariorum)(コナジラミ)である。
【0123】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、昆虫はアブラムシ科のものである。
【0124】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、第6の態様の使用および第7の態様の方法は、有害な線虫および/またはアブラムシのコロニー形成を予防するため、または外寄生された植物を治療するためのものである。特に、本発明は、これらの植物有害生物を防除するための使用に関する。
【0125】
したがって、「治療する」という用語は、外寄生された植物に対することを指す。防除という用語は、有害生物による植物の外寄生を予防すること、有害生物を忌避または排除することを含む。
【0126】
本発明の第6および第7の態様の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、第6の態様の使用および第7の態様の方法は、有害な線虫またはアブラムシに感染した植物を治療するためのものである。
【0127】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、線虫はネコブセンチュウまたはシストセンチュウである。
【0128】
本発明の第6および第7の態様の実施形態において、任意選択で上または下に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、線虫は、メロイドギン属の線虫、例えば、メロイドギン・インコグニタ(Meloidogyne incognita)(ミナミネコブセンチュウ)、メロイドギン・ヤバニカ(Meloidogyne javanica)(ジャワネコブセンチュウ)、メロイドギン・ハプラ(Meloidogyne hapla)(キタネコブセンチュウ)、およびメロイドギン・アレナリア(Meloidogyne arenaria)(ピーナッツネコブセンチュウ);グロボデラ属の線虫、例えば、グロボデラ・ロストキエンシス(Globodera rostochiensis)(ゴールデンネマトーデ)およびグロボデラ・パリダ(Globodera pallida)(ジャガイモシストセンチュウ);ジチレレンクス(Ditylelenchus)属の線虫、例えば、ジチレレンクス・デストラクタ(Ditylelenchus destructor)(イモクサレセンチュウ)およびジチレレンクス・ジプサシ(Ditylelenchus dipsaci)(ナミクキセンチュウ(bulb and stem nematode));プラチレンクス(Pratylenchus)属の線虫、例えば、プラチレンクス・ペネトランス(Pratylenchus penetrans)(キタネグサレセンチュウ(cobb root-lesion nematode))プラチレンクス・ファラックス(Pratylenchus fallax)(キクネグサレセンチュウ)、プラチレンクス・コフェアエ(Pratylenchus coffeae)(ミナミネグサレセンチュウ(coffee root-lesion nematode))、プラチレンクス・ロオシ(Pratylenchus loosi)(チャネグサレセンチュウ)およびプラチレンクス・ブルヌス(Pratylenchus vulnus)(クルミネグサレセンチュウ);ヘテロデラ(Heterodera)属の線虫、例えば、ヘテロデラ・グリシンズ(Heterodera glycines)(大豆シストセンチュウ)およびヘテロデラ・シャクチイ(Heterodera shachtoii)(テンサイシストセンチュウ);アフェレンコイデス(Aphelenchoides)属の線虫、例えば、アフェレンコイデス・ベッセイ(Aphelenchoides besseyi)(イネシンガレセンチュウ)、アフェレンコイデス・リッツェマボッシ(Aphelenchoides ritzemabosi)(ハガレセンチュウ(chrysanthemum foliar nematode))、およびアフェレンコイデス・フラガリエアエ(Aphelenchoides fragarieae)(イチゴセンチュウ);アフェレンクス(Aphelenchus)属の線虫、例えば、アフェレンクス・アベネ(Aphelenchus avenae)(ニセネグサレセンチュウ(mycophagous nematode);ラドホルス(Radopholus)属の線虫、例えば、ラドホルス・シミリス(Radopholus similis)(ネモグリセンチュウ);チレンクルス(Tylenchulus)属の線虫、例えば、チレンクルス・セミペネトランス(Tylenchulus semipenetrans)(ミカンセンチュウ);ロチレンクルス(Rotylenchulus)属の線虫、例えば、ロチレンクルス・レニフォルミス(Rotylenchulus reniformis)(腎形センチュウ);または、樹木に発生する線虫、例えばブルサフェレンクス・キシロフィルス(Bursaphelenchus xylophilus)(マツノザイセンチュウ)である。
【0129】
本発明の第6および第7の態様の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、線虫は、メロイドギン属およびグロボデラ属から選択される。
【0130】
本発明の第6および第7の態様の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、線虫は、メロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシス(Globodera rostiochiensis)およびグロボデラ・パリダからなる群から選択される。
【0131】
「アブラムシ」という用語は、アブラムシ上科、アブラムシ科の昆虫を指す。
【0132】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アブラムシは、アフィス・ゴシピイ(Aphis gossypii)(ワタアブラムシおよびメロンアブラムシ)、ミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)(モモアカアブラムシ(green peach aphid))、ミズス・バリアンス(Myzus varians)(モアカアブラムシ(peach-clematis aphid))、ミズス・セラシ(Myzus cerasi)(ブラックチェリーアブラムシ)、ブラキカウダス・ペルシカエ(Brachycaudus persicae)(ブラックピーチアブラムシ(black peach aphid))、アフィス・ポミ(Aphis pomi)(ヨーロッパリンゴアブラムシ(green apple aphid))、ブラキカウダス・ヘリクリシ(Brachycaudus helichrysi)(ムギワラギクオマルアブラムシ(leaf-curling plum aphid))、ヒアロプテルス・プルニ(Hyalopterus pruni)(モモコフキアブラムシ(mealy-plum aphid))、ジサフィス・プランタギネア(Dysaphis plantaginea)(オオバコアブラムシ(rosy apple aphid))、ジサフィス・ピリ(Dysaphis pyri)(pear bedstraw aphid)、アクリトシフォン・ピスム(Acyrthosiphon pisum)(エンドウヒゲナガアブラムシ(pea aphid))、マクロシフム・ユーホルビアエ(Macrosiphvm euphorbiae)(チューリップヒゲナガアブラムシ(pink and green potato aphid))、アフィス・スピラエコラ(Aphis spiraecola)(アフィス・シトリコラ(A.citricola)(ユキヤナギアブラムシ(green citrus aphid))、アフィス・ファバエ(Aphis fabae)(マメクロアブラムシ(black bean aphid))、ロパロシフム・マイディス(Rhopalosiphum maidis)(トウモロコシアブラムシ(corn aphid))、ロパロシフム・パジ(Rhopalosiphum padi)(ムギクビレアブラムシ(bird cherry-oat aphid))、シトビオン・アベナエ(Sitobion avenae)(英国穀物アブラムシ(English grain aphid))、ジウラフィス・ノキシア(Diuraphis noxia)(ロシアコムギアブラムシ(Russian wheat aphid))、ブレビリコネ・ブラシカエ(Brevicoryne brassicae)(キャベツアブラムシ)、エリオソマ・ラニゲルム(Eriosoma lanigerum)(リンゴワタムシ(woolly apple aphid))、ナソノビア・リビスニグリ(Nasonovia ribisnigri)(レタスヒゲナガアブラムシ)、アンフォロフォラ・イダエイ(Amphorophora idaei)(ラージラズベリーアブラムシ(large raspberry aphid))、トキソプテラ・アウランチイ(Toxoptera aurantii)(コミカンアブラムシ(black citrus aphid)およびコーヒーアブラムシ(coffee aphid))、エラトビウム・アビエチヌム(Elatobium abietinum)(グリーンスプルスアブラムシ(green spruce aphid)、およびペムフィガス・ブルサリウス(Pemphigus bursarius)(レタスルートアブラムシ(lettuce aphid))からなる群から選択される。
【0133】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アブラムシはアフィス属のものである。
【0134】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アブラムシはアフィス・ゴシピイである。
【0135】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、線虫は、メロイドギン属およびグロボデラ属から選択され、アブラムシはアフィス属のものである。
【0136】
本発明の第6および第7の態様の実施形態では、任意選択で、上または下に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、線虫は、メロイドギン属およびグロボデラ属から選択される;あるいは、メロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダからなる群から選択される;あるいは、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、アブラムシはアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫はメロイドギン属から選択され、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はグロボデラ属から選択され、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はメロイドギン・インコグニタまたはメロイドギン・ヤバニカであり、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はグロボデラ・ロストキエンシスまたはグロボデラ・パリダであり、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はメロイドギン属から選択され、アブラムシはアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫はグロボデラ属から選択され、アブラムシはアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫はメロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダからなる群から選択され、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はメロイドギン・インコグニタであり、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はメロイドギン・ヤバニカであり、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はグロボデラ・ロストキエンシスであり、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はグロボデラ・パリダであり、アブラムシはアフィス属のものである;あるいは、線虫はメロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダからなる群から選択され、アブラムシはアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫はメロイドギン・インコグニタであり、アブラムシはアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫はメロイドギン・ヤバニカであり、アブラムシはアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫はグロボデラ・ロストキエンシスであり、アブラムシはアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫はグロボデラ・パリダであり、アブラムシはアフィス・ゴシピイである。
【0137】
本発明において、「感染」という用語は、線虫によって引き起こされる植物の無症候性感染または症候性感染を含む。
【0138】
本発明の第6および第7の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、防除は任意の植物において実行することができる。
【0139】
本発明の第8の態様は、本発明の第1の態様で定義される菌株もしくはその変異体、または本発明の第2の態様の細菌培養物、または本発明の第3の態様の組成物の有効量を含むキットに関する。
【0140】
菌株、細菌培養物および組成物について上記に提供される全ての実施形態は、本発明の第8の態様のキットの実施形態でもある。
【0141】
本発明の第8の態様の一実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、キットは、本発明の第1の態様の菌株の毎週、毎月、または他の周期の用量を含み得る。例示的な例として、毎週の用量を含むキットは、菌株を含む7つの個別の組成物(7つの1日用量)を含み得る。別の例として、毎月用量を含むキットは、本発明の第1の態様の菌株を含む30の組成物を含み得る。
【0142】
本発明の第1の態様の菌株が凍結乾燥される場合、本発明の第8の態様のキットは、水などの食用再懸濁剤を含有することができる。
【0143】
本発明の第8の態様の別の実施形態では、任意選択で上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、キットは服薬コンプライアンスを容易にする手段を含む。例えば、キットは、それを使用した人が適切に規定されたスケジュールで有効量の本発明の菌株の植物への正しい投与を行うことを確実にする目的で特に有利であり得る。ブリスターカードまたは適切に構成された他の収容装置は、様々な構成要素の投与の順序またはタイミングを明確に示すのに特に適し得る。キットは、1枚のカードとして、または4枚、6枚、7枚(例えば、毎週の供給)、または8枚のカードが一緒に同梱されたケースとして入手することができる。さらに、毎月または他の種類のキットを入手することができる。
【0144】
本発明の第1の態様の単離株または変異体を含むキットは、本発明の菌株の正しい培養を可能にする任意の手段、例えば培地、サプリメントまたは抗生物質、ならびに正しい調製および/または植物への施用のための説明書を含むことができる。
【0145】
本発明の第9の態様は、植物における線虫感染および/またはアブラムシ感染を防除するための、本発明の第8の態様のキットの使用に関する。
【0146】
とりわけ、特定の感染および植物に関して、本発明の第7および第8の態様の下で上記に提供された全ての実施形態は、第9の態様の実施形態でもある。
【0147】
説明および特許請求の範囲を通して、「含む」という単語およびその単語の変形は、他の技術的特徴、添加物、成分または工程を除外することを意図するものではない。さらに、「含む」という言葉は、「からなる」という場合も包含する。本発明の追加の目的、利点および特徴は、説明を検討することにより当業者に明らかになるか、または本発明の実施により習得することができる。以下の実施例および図面は例示のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。図面に関連し、特許請求の範囲の中で括弧内に配置された参照符号は、特許請求の範囲の明瞭度を高めるための試みであり、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、本発明は、本明細書に記載された特定の好ましい実施形態のすべての可能な組み合わせを網羅する。
【実施例
【0148】
実施例1.ハロサッカロボランスB410株の特性評価
【0149】
実施例1.1.
本発明の菌株を配列決定し、その温度範囲、pH範囲、および塩分範囲ならびにバイオフィルム産生に関して特性評価した。
【0150】
材料および方法
B.ハロサッカロボランスB410株は、アルメリア(スペイン南部)から有機農業体制の農業土壌において単離された。細菌単離株の同定は、16S rRNA遺伝子配列分析を使用して達成した。
【0151】
Futureco Bioscienceコレクション由来の他の菌株およびDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)コレクションから購入した菌株を含む、他のバチルス単離株を比較として使用した。Futureco Bioscience由来の他の菌株は以下の通りであった:B2399、バチルス・リトラリス(Bacillus litoralis);B2309、バチルス・リトラリス/ナイアベンシス(niabensis)/シンプレックス(simplex);B2525、バチルス・ナイアベンシス;B145、バチルス・ナイアベンシス;B149、バチルス・ナイアベンシス/リトラリス/バチルス属菌種(Bacillus sp.);およびB1203、バチルス・ナイアベンシス。DSMZコレクション由来の菌株は、参照として含まれており、以下の通りであった:DSM17723(バチルス・ナイアベンシス)、DSM25387(バチルス・ハロサッカロボランス)およびDSM16303(バチルス・リトラリス)であった。
【0152】
細菌単離株の同定は、16S rRNA遺伝子配列分析を使用して達成した。培養物を、Marine Broth培地中28℃において、回転シェーカー上200rpmで日常的に増殖させた。製造者の説明書(Zymo Research)に従って、Quick DNA Fungal/Bacterial Kitを用いて鋳型DNAを単離した。16S rRNA遺伝子配列決定を次に記載のように行った。2.5μLの10×NH緩衝液(Bioline)、0.75μLの50mM MgCl2、0.625μLのdNTPミックス10mM、0.5μLのプライマー8f 10μM(配列番号1:5’-AGAGTTT GAT CCT GGCT CAG-3’)、0.8μLのプライマー1492r 10μM(配列番号2:5’-ACCTT GTT ACGACTT-3’)、0.25μLのBiotaq Taqポリメラーゼ(5U/μL;Bioline)、17.875μLのナノ純水および2μLの鋳型DNAからなるPCR反応ミックスを以下のプログラムに従って増幅させた:95℃ 5分;95℃30秒、54℃30秒および72℃60秒を35サイクル、ならびに72℃5分。PCR産物を、EZNA Cycle Pure Kit(Omega Bio-Tek)を使用して、製造者の説明書に従って精製した。精製されたPCR産物を、製造者の説明書に従って、外部配列決定サービス(Secugen)によって、プライマー1492r(配列番号2)およびBigDye(登録商標)Terminator v 3.1(Applied Biosystems)を用いたSanger法を使用して、配列決定した。
【0153】
選択したバチルス単離株の増殖の至適温度を決定するために、各菌株をニュートリエント寒天プレートの表面に画線接種し、次いで4℃、40℃、42℃、45℃および50℃の温度でインキュベートした。細菌増殖を6日間のインキュベーション中に毎日評価した。
【0154】
菌株の28℃における増殖のpH範囲を滅菌96ウェルプレートで決定した。実験用に、細菌を最初にMarine Brothで一晩増殖させた。その後、600nmでの最終光学密度(OD600)が0.01の細菌懸濁液100μLを、以下のpH:6.48、7.03、9.33、10.04および10.98でLB培地に添加した。次いで、200μLの各バチルス単離株をpHに対して接種した(pHあたり2ウェル)。
【0155】
プレートを28℃で24時間インキュベートした後に読み取った。エンドポイントを決定するために、いくつかのアプローチを考慮に入れた。細菌増殖は、620nmにおける光学密度(OD620)によって評価した。30μLの0.01%レサズリンを添加することによって、細胞生存率を確認した。青紫色からピンク色へのあらゆる色の変化を陽性として記録した。
【0156】
28℃におけるコレクション菌株の増殖速度に対する塩分の影響を、NaClを含まない100μLのLB中のNaClの二倍連続希釈によって滅菌96ウェルプレートで決定した。実験用に、細菌を最初にMarine Brothで一晩増殖させた。その後、600nmでの最終光学密度(OD600)が0.01の細菌懸濁液100mlを、以下のNaCl希釈液:15、10、7.5、5、3.75、2.5、1.875、1.25、0.93、0.65、0.465および0%を含むウェルに添加した。プレートを28℃で48時間インキュベートした後に読み取った。MICエンドポイントを決定するために、いくつかのアプローチを考慮に入れた。目視検査で細菌増殖を示さない最低濃度を最初にMIC値とし、30μLの0.01%レサズリンを添加して細胞生存率を確認した。青紫色からピンク色へのあらゆる色の変化を陽性として記録し、この場合、MICを、この色の変化を欠く最も低いNaCl濃度として定義した。視覚的MIC評価に加えて、レサズリンを添加する前に、各ウェルでOD620を決定した。
【0157】
コレクション菌株の28℃におけるバイオフィルム産生を、滅菌96ウェルプレートで21ウェルの複製によって測定した。実験用に、細菌を最初にMarine Brothで一晩増殖させた。その後、Marine Broth中の600nmでの最終光学密度(OD600)が0.1の細菌懸濁液200μLをウェルに添加した。プレートを28℃で72時間インキュベートした後に読み取った。バイオフィルムの産生を、相対バイオフィルムとして報告した。インキュベーション後、プレートの光学密度を620nmで読み取り、その後、バイオフィルムをクリスタルバイオレット0.1%で染色し、エタノールで希釈して620nmでの光学密度を得た。相対バイオフィルムは、クリスタルバイオレットによるバイオフィルム染色の620nmでのODを、初期細胞増殖の620nmでのODで割った比率であった。
【0158】
結果:
配列決定により、B.ハロサッカロボランスE33株(NCBI受託番号NR_109116.1;データベース受託日2018年10月1日)の配列と98%同一の配列(配列番号3)が明らかになった(Stoddard SF,et al.Nucleic Acids Res.2015Jan;43:D593-8)。
【0159】
すべてのバチルス単離株の増殖温度範囲は、50℃で増殖することができたDSM17723を除いて、それらのほとんどが4℃~45℃で増殖し、同様であった。それらはすべて中温菌(mesophyll bacteria)と見なされた。
【0160】
B410の増殖pH範囲は6.48~9.33であったため、B2525株およびDSM253887株と同じ好中性株と見なされた。B145、B149、B1203、DSM17723は6.48~7.03で増殖し、これらの菌株も好中性細菌と見なされた。B2399およびB2309は、これらのアッセイ条件で増殖しなかった。このアッセイでは、DSM160303は9.33でのみ増殖し、好アルカリ菌と見なされた。
【0161】
B410は、NaCl0%~10%で増殖できる唯一の試験菌株であり、耐塩性株と見なされた。増殖の至適塩分範囲は1.25%~3.75%であった。B2399、B145、B149、B1203およびDSM17723の増殖塩分濃度範囲はより限定されており、0%~3.75%であり、それらの全てが非耐塩性細菌であった。B145、B149およびDSM17723は、NaCl0%で増殖しなかったため、増殖にいくらかのNaClを必要としたことは言及する価値がある。B2309、B2525、DSM25387およびDSM16303は、このアッセイ条件では増殖しなかった。
【0162】
B410は、B2309、B2525、B149、DSM17723、DSM25387およびDSM16303株と同じバイオフィルム産生株であった。B2525およびDSM25387は、非常に高いバイオフィルム産生株であった。
【0163】
この研究のバチルス単離株は近い種由来のものであったにもかかわらず、評価された全ての株は互いに異なるものであるという結果となり、このことによりそれらの増殖条件が異なることが説明された。結果を全体的に見ると、一方では、B410、B145、B149、B1203およびDSM17723がすべてのアッセイ条件で増殖しており、したがって、これらの菌株について本研究のすべてのパラメータを評価することができたことが分かる。しかしながら、他方では、B2309、B2525、DSM25387およびDSM16303は、いくつかのアッセイ条件において増殖の問題を示した。菌株の全体の結果はいずれも他のいずれとも一致しなかったため、すべての菌株は互いに異なっていた。
【0164】
B410は、中温性(mesophyll)、好中性性(neutrophil)、耐塩性およびバイオフィルム形成性の菌株として評された。実施したアッセイにより、B410株が、NaClに対するその高い耐性のため、および全てのアッセイ条件で増殖することができたため、試験した他の株とは異なることが実証された。
【0165】
【表1-1】
【0166】
実施例1.2.
本発明の菌株を、その生化学的特性に関して特性評価した。
【0167】
材料および方法
使用した菌株は、Futureco Bioscienceコレクション由来のバチルス・ハロサッカロボランス単離株(B410)であり、参照としてのDSM25387株は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)コレクション由来であった。
【0168】
酵素活性を、API-50CH(登録商標)(bioMerieux、Madrid、Spain)を使用して、製造者の説明書に従って決定した。手短に言えば、細菌をAPI(登録商標)-50CHL培地またはAPI(登録商標)50CHB/E培地に再懸濁した。この懸濁液を使用して、API(登録商標)ストリップ上のチューブ(杯状体)を満たした。API(登録商標)ストリップのインキュベーション中、発酵が、酸の生成によって引き起こされ、培地中に存在するpH指示薬によって検出されるチューブの色の変化によって明らかにされた。
【0169】
オキシダーゼ活性を、Bactident(登録商標)Oxidaseストリップ(Merk-chemicals)を使用して、製造者の説明書に従って測定した。カタラーゼ活性を、Vashist Hemraj et al.2013 “A review on commonly used biochemical test for bacteria” Innovare Journal of Life Science 1(1):1-7に記載のプロトコルに従って測定した。
【0170】
結果:
API-50CH(登録商標)によれば、B410は、以下の基質を炭水化物源として利用した:グリセロール、L-アラビノース、D-キシロース、メチル-D-キシロピラノシド、D-ガラトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、L-ラムノース、イノシトール、D-マンニトール、メチル-aD-マンノピラノシド、メチル-aD-グルコピラノシド、N-アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、D-セロビオース、D-マルトース、D-ラクトース、D-メリビオース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレチトース、D-ラフィノース、デンプン、グリコーゲン、ゲンチオビオース、D-ツラノースおよびD-アラビトール。一方、B410は、エリスリトール、D-アラビノース、D-リボース、L-キシロース、D-アドニトール、L-ソルボース、ズルシトール、D-ソルビトール、イヌリン、キシリトール、D-リキソース、D-タガトース、D-フコース、L-フコース、L-アラビトール、グルコン酸カリウム、2-ケトグルコン酸カリウムおよび5-ケトグルコン酸カリウムを利用しなかった(表1b)。
【0171】
B410およびDSM25387は、カタラーゼおよびオキシダーゼを産生した。これらの試験では、B410とDSM25387型株との間に、具体的にはメチル-αD-マンノピラノシド資化において、ただ1つの相違が見出された。
【0172】
【表1-2】
【0173】
実施例2.「ネコブセンチュウ」の卵に対するバチルス・ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫活性
【0174】
ネコブセンチュウ(RKN)の卵であるM.ヤバニカおよびM.インコグニタの卵に対するバチルス・ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫活性を性能評価し、2つの参照化学物質:Nemacur(登録商標)(実施例2.1.)またはVydate(登録商標)(実施例2.2.)と比較した。
【0175】
材料および方法
試験は、インキュベータ(INCUBIG288L2000237、JP Selecta、Spain)において、土壌条件を模倣するために暗所で行った。インキュベーション温度は26℃であった。
【0176】
RKNの卵(M.ヤバニカおよびM.インコグニタ)の混合物(トマト植物培養物から得られたもの)に対する細菌B.ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫能力を、予め滅菌した砂2gを入れた孵化チャンバ(Nunclon(商標)Surfaceマルチウェルプレート、Nunc、Denmark)において評価した。次いで、基質に、前述のRKNの卵120個(各線虫種60個の卵)を含有する水性懸濁液を接種した。直後に、200mlの生物学的防除剤B.ハロサッカロボランスB410株を、実施例2.1では7.0×10CFU/mL、実施例2.2では4.5×10CFU/mLで施用した。
【0177】
商業的に推奨される用量の参照化学物質を含む対照(実施例2.1では0.0125%で施用されたNemacur(登録商標)、有効成分:フェナミホス24%、Bayer、および実施例2.2では0.2%で施用されたVydate(登録商標)、有効成分:オキサミル24%、DuPont)および滅菌蒸留水を含む対照(結果を通常の孵化パーセントと比較するための参照を確立するため)を含めた。
【0178】
孵化チャンバを26℃で3週間インキュベートし、生物学的防除剤を施用した後7、14および21日目に定期的な読み取りを行い、孵化パーセントを決定した(カウントは、Hawksley(登録商標)チャンバ、顕微鏡OPTECFI BIOSTAR B4、Optech Optical Technology、Germany)を用いて行った)。各処理を6回繰り返した。
【0179】
結果:
【0180】
実施例2.1:フェナミホスとの比較:
B.ハロサッカロボランスB410株で処理したM.ヤバニカおよびM.インコグニタの卵は、対照と比較して卵孵化の有意な減少を示した(図1)。
【0181】
異なる処理を適用した3週間後、未処理卵(対照)の27.38%が孵化したが、B.ハロサッカロボランスB410株で処理したものの5.68%が孵化し、Nemacur(登録商標)(参照化学物質)で処理したものの2.50%が孵化した。処置後21日目に、B.ハロサッカロボランスB410株は、インビトロ条件下で対照と比較して孵化を減少させる有効性が79.25%に達した。孵化を減少させる有効性は、孵化を減少させる有効性が90.86%である参照化学物質と類似していた(統計学的に有意差はなかった)。
【0182】
実施例2.2:オキサミルとの比較:
B.ハロサッカロボランスB410株で処理したM.ヤバニカおよびM.インコグニタの卵は、対照と比較して孵化の有意な減少を示した(図2)。
【0183】
異なる処理を適用した3週間後、未処理卵(対照)の34.74%が孵化したが、B.ハロサッカロボランスB410株で処理したものの3.43%が孵化し、Vydate(登録商標)(参照化学物質)で処理したものの21.84%が孵化した。したがって、B.ハロサッカロボランスB410株は、インビトロ条件下で対照と比較して孵化を減少させる有効性が90.13%に達したが、参照化学物質では、孵化を減少させる有効性は有意に大きく低かった(37.13%)。
【0184】
実施例3.RKNの幼虫(J2)に対するバチルス・ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫活性
【0185】
細菌B.ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫能力を、RKNのM.ヤバニカおよびM.インコグニタの幼虫(感染態幼虫期 J2)の混合物に対して評価した。
【0186】
材料および方法:
試験は、インキュベータ(INCUBIG288L2000237、JP Selecta、Spain)において、土壌条件を模倣するために暗所で行った。インキュベーション温度は26℃であった。RKNのM.ヤバニカおよびM.インコグニタの幼虫(感染態幼虫期、J2)の混合物をトマト植物中で培養し、それらを、2gの予め殺菌された土壌を添加した孵化チャンバ(Nunclon(商標)Surfaceマルチウェルプレート、Nunc、Denmark)に入れた。
【0187】
M.ヤバニカ+M.インコグニタの幼虫200匹(各種100匹の線虫)の混合物を含む水性懸濁液を加え、次いで、200μLの生物学的防除剤B.ハロサッカロボランスB410株を4.5×10CFU/mLで施用した。各処理を4回繰り返した。
【0188】
孵化チャンバを26℃で14日間インキュベートし、7日後および14日後にHawksley(登録商標)チャンバによってカウントを行い、生存幼虫の数(生存%)を決定した(顕微鏡OPTECH BIOSTAR B4、Optech Optical Technology、Germany)。滅菌蒸留水を用いた陰性対照および市販用量の参照化学物質(Vydate(登録商標)を0.2%で施用、有効成分:オキサミル24%、DuPont)を含めた。
【0189】
結果:
【0190】
B.ハロサッカロボランスB410株で処理したRKNの幼虫は、4.5×10cfu/mL用量で施用した場合、対照と比較して幼虫の生存率の有意な低下を示した(図3)。
【0191】
異なる処理を適用した2週間後、幼虫(陰性対照)の87.45%が生存したが、4.5×10CFU/mLで施用したB.ハロサッカロボランスB410株で処理したものの0%が生存し、参照化学物質で処理したものの3.55%が生存した。したがって、B.ハロサッカロボランスB410株は、インビトロ条件下で対照と比較して幼虫の生存を減少させる有効性が100%に達したが、化学処理の有効性は約97.45%であった。本発明の微生物対象によって達成される有効性と参照化学物質によるものとの間に統計的差異はなかった。
【0192】
実施例4.「ジャガイモシストセンチュウ」のグロボデラ・ロストキエンシスおよびG.パリダの卵に対するバチルス・ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫活性
【0193】
ジャガイモシストセンチュウ(PCN)グロボデラ・ロストキエンシスおよびクロボデラ・パリダの卵に対する細菌B.ハロサッカロボランスB410株のインビトロ殺線虫活性を評価した。
【0194】
材料および方法
試験は、インキュベータ(INCUBIG 288L2000237、JP Selecta、Spain)において、土壌条件を模倣するために暗所で行った。インキュベーション温度は26℃であった。2gの予め滅菌した砂を加えた孵化チャンバ(Nunclon(商標)Surfaceマルチウェルプレート、Nunc、Denmark)を用いた。
【0195】
シストセンチュウのグロボデラは、Fenwick Can(浮選法)を使用して外寄生土壌から得た。シストセンチュウを2%漂白剤で2分間消毒し、滅菌蒸留水ですすいだ。次いで、内部からグロボデラの卵を放出するために、シストセンチュウを機械的に破砕した。実施例4.1では、インビトロ試験は、それぞれ4回の反復による2つの処理でからなっていた:1)対照卵;2)B.ハロサッカロボランスB410株(6.2×10CFU/mLで施用)で処理した卵。実施例4.2では、インビトロ試験は、それぞれ4回の反復による3つの処理からなっていた:1)対照卵;2)TGAIとして施用したB.ハロサッカロボランスB410株(7.0×10CFU/mL)で処理した卵、および3)市販の用量0.2%で施用した化学物質防除剤(Vydate(登録商標)、オキサミル24%、DuPont)。
【0196】
PCNの混合物の300個の卵(スペインのガルシアにおけるジャガイモ商業地から単離されたGGAL-1701と呼ばれる集団由来の150匹のG.パリダおよび150匹のG.ロストキエンシス)を実施例4.1の各ウェルに入れた。一方、実施例4.2では、G.ロストキエンシス(スペイン、カタロニア州のジャガイモ商業地から単離された、GPRA-1803と命名された集団)の250個の卵を各ウェルに注いだ。次いで、卵を孵化させるために、両方の実施例において、4.5mL/ウェルの10%ジャガイモ根拡散液(PRD)溶液を添加した。
【0197】
PRDを調製するために、Kennebec品種のジャガイモの芽を、滅菌基質(泥炭/バーミキュライト;1/1、v/v)を含むトレイに播種した。発芽したジャガイモを気候室に3週間放置した。次いで、3週齢の植物の根を25℃で24時間、滅菌蒸留水に浸した。24時間後、根に接触させた蒸留水を遠心分離し(4000rpm、15分)、濾過し(22μm)、必要になるまで冷凍庫で保存した。
【0198】
PRDを添加したら、6.2×10CFU/mL(実施例4.1)または7.0×10CFU/mL(実施例4.2)の濃度のB.ハロサッカロボランスB410株の溶液を添加した(200μL/ウェル)。孵化チャンバは、評価期間を通して26℃に維持した。試験測定は14、28および35日目(Hawksley(登録商標)チャンバを使用)に行い、新しい10% PRD 1mLを毎週添加した。
【0199】
結果:
【0200】
B.ハロサッカロボランスB410株で処理したPCNの卵は、施用した場合、対照(図4、実施例4.1;および図5、実施例4.2)および参照化学物質(図5)と比較して、孵化の有意な減少を示した。
【0201】
実施例5.ネコブセンチュウ(メロイドギン・ヤバニカおよびM.インコグニタ)に対するバチルス・ハロサッカロボランスB410株のインビボ殺線虫活性
【0202】
B.ハロサッカロボランスB410株を使用して、「ペレット(実施例5.1)として、TGAI(実施例5.2)として、およびプロトタイプ製剤(実施例5.3)として、3つの実施例を行った。すべての結果をこのセクションの最後に示す。
【0203】
材料および方法
5.1 B.ハロサッカロボランスB410株の「ペレット」のインビボ殺線虫活性
細菌B.ハロサッカロボランスB410株のインビボ殺線虫能力を、温室内での2つの実験:実施例5.1.1(M.ヤバニカ+M.インコグニタに対して)および実施例5.1.2(M.ヤバニカに対して)で評価した。両方の実験において、植物を、細菌B.ハロサッカロボランスB410株の最初の施用から39日間、温室(温度22+2℃、相対湿度RH:50+10)に置いた。
【0204】
実験計画は、2つの異なる処理によって構成された:1)未処理植物による対照;2)B.ハロサッカロボランスB410株の懸濁液を「ペレット」として施用して処理した植物。各処理は、1回の反復実験につき3つの植物を用いる3回の反復実験からなっていた。
【0205】
ペレットを以下のようにして得た:B410株のクライオバイアルの凍結試料1mL(-80℃)を解凍し、100mLフラスコ中のTryptic soy broth(TSB)中で30℃でおよそ3日間増殖させた。これを遠心分離し、残った「ペレット」(微生物自体)をこのアッセイで試験した。
【0206】
砂とパーライトとの混合物からなる基質(3:1;体積:体積)を充填した3000cmのポットに、3~4週齢の27個のトマト苗(「Durinta」品種)を移植した。移植の3日前に、1/3の植物を、1.04×10CFU/mL(例5.1.1.)または7.1×10CFU/mL(実施例5.1.2)の用量でB.ハロサッカロボランスB410株を含有する10mLの水溶液で処理した(予防処理)。移植の1日後、全てのトマト植物に、ネコブセンチュウを含む水懸濁液、実施例5.1.1ではM.ヤバニカ+M.インコグニタ(感染態幼虫100匹/基質100cmの用量で、トマト植物から得られた各種50%の混合物)、実施例5.1.2ではM.ヤバニカ(感染態幼虫100匹/基質100cmの用量で)を接種した。次いで、B.ハロサッカロボランスB410株を含有する20mLの水溶液を植物の同じ3分の1に、線虫の接種から7日後(7DAI)には、1.16×10CFU/mL(実施例5.1.1)または8.9×10CFU/mL(実施例5.1.2)の用量で、および35DAIには1.89×10CFU/mL(実施例5.1.1)または4.1×10CFU/mL(実施例5.1.2)の用量で施用した(実施例5.1.1および5.1.2の概要については表2を参照されたい)。
【0207】
【表2】
【0208】
5.2:バチルス・ハロサッカロボランスB410株のTGAIのインビボ殺線虫活性
【0209】
細菌B.ハロサッカロボランスB410株のインビボ殺線虫能力を、2つの実験:実施例5.2.1および実施例5.2.2(以下に説明する)で評価した。
【0210】
実験計画は、3つの異なる処理によって構成された:1)未処理植物による対照;2)「農薬原体(Technical Grade Active Ingredient)」(「TGAI」は30%の細胞および70%のスクロースからなった)として施用された、(平均で)約10CFU/mL(TGAI-10)の用量でB.ハロサッカロボランスB410株の懸濁液を用いて処理された植物。3)TGAIとして施用された、(平均で)約10CFU/mL(TGAI-10)の用量でB.ハロサッカロボランスB410株の懸濁液を用いて処理された植物。各処理は、1回の反復実験につき3つの植物を用いる3回の反復実験からなっていた。
【0211】
砂との混合物からなる基質(3:1;体積:体積)を充填した3000cmのポットに、3~4週齢の27個のトマト苗(「Durinta」品種)を移植した。移植の1日後、全てのトマト植物に、ネコブセンチュウのM.ヤバニカ+M.インコグニタの混合物を含む水懸濁液を接種した(感染態幼虫100匹/基質100cmの用量)。これは、M.ヤバニカ(集団AL05)50%+M.インコグニタ(集団AL09)50%のこの線虫の混合物であった。2つの集団は(IFAPAによって)スペインのアルメリアから単離された。植物には3つの異なるセットがあった:
【0212】
実施例5.2.1
植物の1/3は未処理であった(B410株を用いない対照植物)。
【0213】
移植の3日前に、別の1/3の植物を、B.ハロサッカロボランスB410株を1.30×10CFU/mLの用量で含有する水溶液10mLで1回処理した(予防処理)。次いで、B.ハロサッカロボランスB410株を、線虫の接種から7日後(7DAI)には4.90×10CFU/mL、21DAIには1.57×10CFU/mL、および35DAIには6.00×10CFU/mLの用量で含有する水溶液20mLを、植物の同じ3分の1に施用した。
【0214】
また、移植の3日前に、植物の最後の3分の1を、B.ハロサッカロボランスB410株を2.16×10CFU/mLの用量で含有する水溶液10mLで1回処理した(予防処理)。次いで、B.ハロサッカロボランスB410株を、線虫の接種から7日後(7DAI)には4.40×10CFU/mL、21DAIには1.75×10CFU/mL、および35DAIには4.30×10CFU/mLの用量で含有する水溶液20mLを、植物の同じ3分の1に施用した。
【0215】
実施例5.2.2:
植物の1/3は未処理であった(B410株を用いない対照植物)。
【0216】
移植の3日前に、別の1/3の植物を、B.ハロサッカロボランスB410株を1.36×10CFU/mLの用量で含有する水溶液10mLで1回処理した(予防処理)。次いで、B.ハロサッカロボランスB410株を、線虫の接種から7日後(7DAI)には3.36×10CFU/mL、21DAIには5.40×10CFU/mL、および35DAIには6.60×10CFU/mLの用量で含有する水溶液20mLを、植物の同じ3分の1に施用した。
【0217】
また、移植の3日前に、植物の最後の3分の1を、B.ハロサッカロボランスB410株を1.76×10CFU/mLの用量で含有する水溶液10mLで1回処理した(予防処理)。次いで、B.ハロサッカロボランスB410株を、線虫の接種から7日後(7DAI)には2.60×10CFU/mL、21DAIには4.10×10CFU/mL、および35DAIには7.60×10CFU/mLの用量で含有する水溶液20mLを、植物の同じ3分の1に施用した。
【0218】
【表3】
【0219】
5.3:バチルス・ハロサッカロボランスB410株の「プロトタイプ製剤」のインビボ殺線虫活性
【0220】
細菌B.ハロサッカロボランスB410株に基づく殺線虫製剤のインビボ殺線虫能力を、2つの実験、実施例5.3.1および実施例5.3.2で評価し、これらの実験は両方ともM.ヤバニカとM.インコグニタとの混合物(トマト植物から得らた)に対するものであった。
【0221】
材料および方法
実験計画は、2つの異なる処理によって構成された:1)未処理植物による対照;2)「製剤」(OD)として施用された、(平均で)実施例5.3.1では3.36×10cfu/mL(製剤-10)または実施例5.3.2では2.61×10cfu/mL(製剤-10)の用量でB.ハロサッカロボランスB410株の懸濁液を用いて処理された植物。両方の処理は、1回の反復実験につき3つの植物を用いる3回の反復実験からなっていた。
【0222】
砂とパーライトとの混合物からなる基質(3:1;体積:体積)を充填した3000cmのポットに、3~4週齢の18個のトマト苗(「Durinta」品種)を移植した。移植の1日後、全てのトマト植物に、ネコブセンチュウを含む水懸濁液、実施例5.3.1ではM.ヤバニカ+M.インコグニタ(感染態幼虫100匹/基質100cmの用量で)、または実施例5.3.2ではM.ヤバニカ(感染態幼虫およそ100匹/基質100cmの用量)を接種した。植物には2つの異なるセットがあった:
【0223】
植物の半分を未処理(対照植物)とした。植物の他の半分を、B.ハロサッカロボランスB410株に基づく製剤を1%含有する20mLの水溶液で、2.92×10CFU/mL(実施例5.3.1)または2.64×10(実施例5.3.2)の用量で移植日に1回処理した(予防処理)。次いで、B.ハロサッカロボランスB410株に基づく製剤を1%を含有する水溶液20mLを植物の同じ半分に、線虫の接種から7日後(7DAI)には3.60×10CFU/mL(実施例5.3.1)または4.20×10(実施例5.3.2)の用量で、21DAIには3.30×10CFU/mL(実施例5.3.1)または1.80×10CFU/mL(実施例5.3.2);および35 DAIには3.60×10CFU/mL(実施例5.3.1)または1.80×10CFU/mL(実施例5.3.2)の用量で施用した。実施例5.3.1および5.3.2の概要については表4を参照されたい。
【0224】
製剤は、ダイズ植物油(Gustave Hess、Germany)690g/L+シリカ(Silysiamont、Italy)(10g/L)+エトキシル化脂肪酸エステル(Lamberti-Chemical Specialist、Italy)(200g/L)+TGAI(本発明の株)(100g/L)の混合物からなっていた。材料を、油用に設計された高速撹拌機を使用して実験用反応器内で混合した。
【0225】
【表4】
【0226】
全ての事例において、植物は温室内に置いた。実施例5.1では、苗を移植してから10週間の間温度(T):22±2℃-相対湿度(HR):50±10;実施例5.2および5.3では、苗を移植してから9週間の間T:25±2-HR:50±10)であった。
【0227】
すべての実験(実験5.1、5.2および5.3)について、バイオアッセイの最後に、植物当たりの卵の総数および根当たりの卵のグラム数を各処理で決定した:卵を機械的破壊によって根系から抽出し、200メッシュ(75μm)~500メッシュ(25μm)の異なるふるいに通した(カウントは、Hawksley(登録商標)チャンバを用い、顕微鏡Optech biostar B4、Optech Optical Technology、Germany)を用いて行った。
【0228】
移植後10または9週間(「ペレット」の場合は10週間、TGAIおよびOD製剤の場合は9週間)のすべての処理において、卵/植物の数の平均Pfおよび線虫の繁殖(卵/新鮮な根のグラム)を評価した。
【0229】
処理を行った後の全ての事例において、データを、Rソフトウェア(R Core Team、2013年、Austria)を使用して分散分析(ANOVA)に供した。処理間の有意差を、P<0.05での最小有意差(LSD)検定によって決定した。
【0230】
ペレット、TGAIおよびOD製剤を使用したインビボ実験の結果:
【0231】
インビボアッセイで得られた結果は、ペレットとして、TGAIとして、または1% OD製剤として施用されたB.ハロサッカロボランスB410株がRKNに対して殺線虫活性を有することを示し、それらはすべての場合において対照と比較して両方のパラメータで有意な減少を示した(以下の表5を参照された)。
【0232】
【表5】
【0233】
TGAIの場合、B.ハロサッカロボランスB410-株TGAI 10で処理した植物では、低用量(B.ハロサッカロボランスB410株-TGAI 10)で処理した植物と比較して、有効性の%が有意に高かった(最終個体数および繁殖)。
【0234】
実施例6.アブラムシに対するバチルス・ハロサッカロボランスB410株の殺虫有効性の実験室研究
【0235】
ワタアブラムシ、メロンアブラムシ(アフィス・ゴシピイ)に対するB.ハロサッカロボランスB410株の殺虫有効性を決定するために、実験室研究を行った。
【0236】
材料および方法:
実験はi2LResearch Ltd.(Newcastle、UK)の試験施設で、制御された実験室条件下で行った。
【0237】
B.ハロサッカロボランスB410株の殺虫活性を、Futureco Bioscience Microorganisms Collection由来の他の細菌株における同じ活性と比較した。これらの微生物は、B1325(バチルス・サフェンシス(Bacillus safensis))、B788(カウロバクター属菌種(Caulobacter sp)/カウロバクター・セグニス(Caulobacter segnis))、B96(リシニバチルス・スフェリカス(Lysinibacillus sphaericus)/リシニバチルス・フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis))およびB1001(バチルス・フミ(Bacillus humi))であり、これらは潜在的な殺虫効果によって選択された。4種の微生物(TGAI)を標準的な比率(5E+07CFU/mL、施用量2mL)で試験した。試験した生成物を試験開始前に水で希釈し、溶液を十分に撹拌してそれらの均一性を確保した。陰性対照(水のみ)も比較目的のために含めた。処理を、以下の表によって指定される比率で植物材料上の昆虫に直接施した。各処理は3回の反復実験で構成された。
【0238】
昆虫(ワタアブラムシ、メロンアブラムシであるアフィス・ゴシピイ)は、社内の実験室培養物から供給された。性別および年齢が混合された成虫を実験に使用した。
【0239】
ペトリ皿に、レタス(ラクトゥカ・サティバ(Lactuca sativa))から切りとって、湿った綿毛パッドに載せた葉のディスク/断片を敷いた。10匹のアブラムシを各ペトリ皿内に数えた(そして植物材料上に直接置いた)。次いで、植物材料およびアブラムシに処理剤を噴霧した。小型アトマイザーを用いて処理を施した。すべての噴霧機器は、使用前に完全に較正された。
【0240】
アブラムシを処理の48、96および144時間後に評価した。各観察期間において、以下の基準に従って昆虫を採点した:
1.影響なし/健康-個体は影響を受けておらず正常な行動を示した。
2.ノックダウン-個人は指向性運動および/または飛行することができないが、付属器官はプロービングの有無にかかわらず激しく動いている。
3.死亡-触覚刺激に対する応答がない。
【0241】
処理適用時の条件は、温度15.0℃;湿度(%)、該当なし;および葉の水分、乾燥であった。
【0242】
すべての統計分析を、Minitab(バージョン16)を使用して行った。各評価からのデータを、処理を因子として分散分析に供した。続いて、テューキーHSD比較検定を用いて平均を区別した。分析前に、統計モデルの仮定が保持されていることを確認するためにデータをチェックした。データが正常に分布していない場合、変換されたデータセットに対してANOVAを実施した。
【0243】
全ての分析において、処理間に有意差が生じない確率を確率値F(p(F))として計算した。全ての試験を95%信頼区間で行った。
【0244】
結果:
【0245】
B410は最も速く作用するTGAIであり、曝露48時間後に有意なアブラムシ死亡率をもたらした。ANOVAからの結果は、試験生成物への曝露の48時間後、B410が、水対照と比較した場合に有意な死亡率を与える唯一の処理であることを示した。96時間曝露後、全ての生成物は、水対照と比較して有意なアブラムシ死亡率を示した(図6および図7参照)。この傾向は144時間での最終評価まで継続した。
【0246】
試験期間を通して植物毒性効果は記録されなかった。
【0247】
実施例7.マウスにおけるバチルス・ハロサッカロボランスの急性経口毒性の評価
【0248】
材料および方法:
B.ハロサッカロボランスB410株が安全であるかどうかを決定するために、マウスにおけるその経口毒性を試験した。
【0249】
材料および方法:
4~5週齢の3匹の雄および3匹の雌のBalb/Cマウス(QC’dアルビノ病原体フリーマウス;Envigo)を使用した。動物は、投与前に一晩絶食させた。実験の前日に、動物の体重を記録し、個々の動物から糞便試料を採取した。各動物は、B.ハロサッカロボランスB410株:10CFU B410TGAI(ビヒクル200μLの滅菌HO)(前述のように調製)の経口単回投与を受けた。滅菌水(ビヒクル対照)を投与したマウスも試験全体を通して維持した。マウスを制御された環境下に収容し、21日間モニタリングし、観察を記録した。毎日、1回、各動物について以下を観察した:皮膚および毛皮、目および粘膜、呼吸系、循環系、自律神経系および中枢神経系、体動活動、行動パターン、振戦、痙攣、下痢、嗜眠、唾液分泌およびもしあれば昏睡の観察。個々の動物の体重を、週に1回、経管栄養の前および後に調べた。組織中の細菌株の有無を評価するために、経口経管栄養後21日目の最後に剖検を行った。交差汚染を避けるために、組織採取および血液培養を無菌的に行った。
【0250】
剖検:腎臓、脳、肝臓、肺、脾臓、血液および腸リンパ節を各動物から採取し、直ちにドライアイス中に保持し、さらなる処理まで-20℃で保存した。RNAを上記組織から抽出し、特異的プライマーを使用してRT-PCRを行い、B410 TGAIの存在を決定した:「B neoben F1、F1」5’-CGGAATCGCTAGTAATCGCG-3’(配列番号4);「B neoben R1」、5’-CCCAATCATCTGTCCCACCT-3’(配列番号5);「B neoben F2」、5’-TCGGGTCGTAAAGCTCTGTT-3’(配列番号6);および「B neoben R2」、5’-TTCTGCACTCAAGTTCCCCA-3’(配列番号7)。増幅産物がB.ハロサッカロボランスの16Sであることを確実にするために、これらの2対のプライマーを使用した。
【0251】
血液処理:剖検時に、無菌全血試料を各動物から採取した。
【0252】
採取直後に、各血液試料100μLを寒天プレート上に置き、広げ、28℃で120時間維持した。プレートを定期的に分析して、細菌増殖を評価した。
【0253】
微生物有害生物防除剤(MPCA)のクリアランス:投与時ならびに7、14および21日目の糞便採取物を、さらなるRNA抽出およびRT-PCR分析のために4℃に維持した。
【0254】
血液/細菌培養培地:肉エキス1g、酵母エキス2g、ペプトン5g、NaCl5gおよび寒天15gを添加し(1000ml中)、121℃で20分間滅菌し、その後、プレートに注ぎ、血液培養およびB410TGAI CFU/gの測定に使用した。RNA抽出プロトコル:50mgの組織を、製造者の説明書(RNA単離キットZymo Research、カタログ番号R1050)に従ってRNA抽出に使用した。
【0255】
スパイク対照:100μLの10CFUのTGAIを50mgの脳および肝臓組織にスパイクし、全RNAを、製造業者の説明書(Zymo Research)に従ってQuick RNA 全RNA抽出キットを使用して、細菌RNAを含む全RNAを単離するための、上記キットに含まれるプロテイナーゼKの添加およびリゾチーム消化工程によって抽出した。
【0256】
陽性対照:0.2gのB410 TGAIを滅菌水中で7回連続希釈し、プレーティングし(100μL)、試料1gあたりのCFUを再確認した。寒天プレート上で増殖させた細菌コロニーを収集し、全RNA抽出および試験の陽性対照として直接使用した。
【0257】
cDNA合成:組織および糞便由来の全RNAをマイクロプレートリーダー(Biotek)で測定した。Superscript IV 1st strand合成キット(Life technologies、カタログ番号18091050)を使用することによって、2μgの全RNA(糞便試料の場合は1μg)をcDNA合成のために使用した。適切な陽性対照(B410 TGAI)および陰性対照(HO)も維持した。
【0258】
RT-PCRアッセイ:cDNA混合物の合計20μLを1:10倍(組織試料)および1:5倍(糞便試料cDNA)に希釈し、PowerUp SYBR(商標)Green Master Mixを製造者の説明書(Life Technologies、カタログ番号A25776)に従って使用して、Applied Biosystems StepOne(商標)リアルタイムPCR装置を用いてRT-PCRを行った。PCR反応は、5μLのPowerUp(商標)SYBR(商標)Green Master Mix、0.5μLの各特異的プライマー(F1およびR1、またはF2およびR2)、および鋳型として10ngのcDNAからなり、総反応体積は20μLであった。熱サイクル条件は以下の通りであった:50℃で2分、95℃で2分、ならびに95℃で15秒、60℃で15秒、および72℃で1分を40サイクル。
【0259】
結果:
【0260】
対照動物およびB.ハロサッカロボランスB410経管栄養動物の体重は有意に異ならなかった。28℃で120時間インキュベートした血液培養プレートは目に見える増殖を示さず、陰性と結論付けられた。モニターされた臨床症状は有害な変化を示さなかった。RT-PCRデータにより、16srDNA特異的プライマーが、B.ハロサッカロボランスB410経管栄養動物由来の組織または糞便試料のいずれにおいても増幅されなかったことが明らかになった(平均Ct値33)。B.ハロサッカロボランスB410TGAIをスパイクした組織試料を、B.ハロサッカロボランス特異的プライマーを陽性対照(脳については平均スパイクCt値20および肝臓については25)と共に使用して増幅させた。陰性対照(水を経管栄養)は、RT-PCRで増幅を有していなかった(平均Ct値32)。陽性対照の16s rDNAプライマーは、6サイクルで増幅した(Ct値12)。データは、特異的RT-PCRプライマーを使用してスクリーニングした試料のいずれにおいても、B.ハロサッカロボランスB410が存在しないことを明らかにしている。
【0261】
動物は目に見える臨床的有害作用を有さず、感染性または病原性は見られなかった。菌株を経管栄養された動物には目に見える臨床的有害作用はなく、細菌株は、検査した血液、糞便または他の器官で検出されなかった。
【0262】
本願で引用された参照文献
WO9404684
Xiang N et al. "Biological control of Meloidogyne incognita by Spore-forming Plant Growth-promoting Rhizobacteria on Cotton” Plant Disease 2017(101)774-784.
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Aubert et al., "A Markerless Deletion Method for Genetic Manipulation of Burkholderia cenocepacia and Other Multidrug-Resistant Gram-Negative Bacteria” Methods Mol Biol 2014;1197:311-27.
【0263】
完全を期すために、本願発明の種々の面を以下の番号の項に提示する。
第1項.受託番号CECT9165で「Coleccion Espanola de Cultivos Tipo」(CECT)に寄託されたバチルス・ハロサッカロボランス(Bacillus halosaccharovorans)の菌株、または出発材料としてバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165を使用して得られ、CECT9165の殺線虫効果および殺アブラムシ効果を維持するその変異体。

第2項.第1項に記載の菌株またはその変異体を含み、好ましくは接種製品である細菌培養物。
第3項.第1項に記載のバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株、または第2項に記載の細菌培養物の有効量と、1または複数の農業的に許容される化合物とを含む組成物。
第4項.前記菌株が10CFU/ml~1012CFU/mlの濃度で存在する、第3項に記載の組成物。
第5項.油性懸濁(oil dispersion)製剤として製剤化され、好ましくは油性成分、有機エステルおよびシリカを含む、第3項または第4項に記載の組成物。
第6項.少なくとも1種の追加の農薬を含む、第3項~第5項のいずれか一項に記載の組成物。
第7項.CECT9165の殺線虫効果および殺虫効果を維持するB.ハロサッカロボランス(B.halosaccharovorans)のCECT9165の菌株の変異体を得る方法であって、CECT9165株をDNA組換え技術、好ましくは突然変異誘発に供する工程を含む方法。
第8項.第1項に定義されるバチルス・ハロサッカロボランスのCECT9165株またはその変異体に由来する生細胞懸濁液を得るための方法であって、(i)前記菌株を培地に接種すること、(ii)工程(i)の接種された培地を前記菌株の増殖に適した条件に供すること、および(iii)場合により、工程(ii)から得られた前記培地を濃縮工程に供すること、を含む方法。
第9項.植物における線虫および/またはアブラムシ感染を防除するための、殺線虫効果および殺虫効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの単離株の使用。
第10項.植物において線虫および/またはアブラムシによって引き起こされる感染を防除する方法であって、殺線虫効果および殺虫効果を有するバチルス・ハロサッカロボランスの単離株を、植物の一部または前記植物を成長させるために使用される基質に施用することを含む方法。
第11項.前記単離株が細菌培養物の形態または組成物の形態で施用され、前記組成物が1または複数の農業的に許容される化合物をさらに含む、第9項に記載の使用または第10項に記載の方法。
第12項.線虫が、メロイドギン(Meloidogyne)属およびグロボデラ(Globodera)属から選択される;あるいは、メロイドギン・インコグニタ(Meloidogyne incognita)、メロイドギン・ヤバニカ(Meloidogyne javanica)、グロボデラ・ロストキエンシス(Globodera rostochiensis)およびグロボデラ・パリダ(Globodera pallida)からなる群から選択される;あるいは、アブラムシがアフィス(Aphis)属のものである;あるいは、アブラムシがアフィス・ゴシピイ(Aphis gossypir)である;あるいは、線虫がメロイドギン属から選択され、アブラムシがアフィス属のものである;あるいは、線虫がグロボデラ属から選択され、アブラムシがアフィス属のものである;あるいは、線虫がメロイドギン属から選択され、アブラムシがアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫がグロボデラ属から選択され、アブラムシがアフィス・ゴシピイである;あるいは、線虫がメロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダからなる群から選択され、アブラムシがアフィス属のものである;あるいは、線虫がメロイドギン・インコグニタ、メロイドギン・ヤバニカ、グロボデラ・ロストキエンシスおよびグロボデラ・パリダからなる群から選択され、アブラムシがアフィス・ゴシピイである、第9項もしくは第11項のいずれか一項に記載の使用、または第10項もしくは第11項のいずれか一項に記載の方法。
第13項.前記単離株が、第1項に定義される菌株である、第9項、第11項、もしくは第12項のいずれか一項に記載の使用、または第10項、第11項もしくは第12項のいずれか一項に記載の方法。
第14項.第1項の菌株、第2項の細菌培養物または第3項~第6項のいずれか一項に定義される組成物の有効量を含むキット。
第15項.植物において線虫および/またはアブラムシによって引き起こされる感染を防除するための、第14項に記載のキットの使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022522338000001.app
【国際調査報告】