(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(54)【発明の名称】腫瘍の治療のためのオリゴヌクレオチドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20220412BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220412BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220412BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220412BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220412BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220412BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220412BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220412BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220412BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220412BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220412BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220412BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220412BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220412BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220412BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220412BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P35/00
A61P35/04
A61P13/12
A61P15/00
A61P25/00
A61P17/00
A61K45/00
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/127
A61K9/70
A61K47/42
A61K47/36
A61K48/00
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543505
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2020051338
(87)【国際公開番号】W WO2020152128
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019000490.6
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329419
【氏名又は名称】ハエメス フェアヴァルトゥングスゲゼルシャフト エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ, ハインリヒ マリア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA19
4C076AA72
4C076BB21
4C076CC27
4C076EE37
4C076EE42
4C076EE43
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4C084AA19
4C084MA17
4C084MA27
4C084MA28
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4C084ZA011
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4C086MA03
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4C086MA05
4C086MA17
4C086MA27
4C086MA32
4C086MA41
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、腫瘍床と手術又はアブレーションからその環境に残っている腫瘍細胞又は転移と戦うために、かつこの領域での再発又は新しい転移の形成に対抗するために、切除又はアブレーションにおいて形成された体腔にオリゴヌクレオチドを適用することによる、腫瘍患者の固形腫瘍の完全又は部分切除又はアブレーション後の、腫瘍患者における腫瘍に対して有効であるオリゴヌクレオチドの使用に関する。対処される課題は、手術腔に局所的に適用でき、腫瘍切除後に残り、切除後に腫瘍床内及びその近くに発達し、又は原発腫瘍の近く又はその環境内に転移を落とす腫瘍細胞を破壊する、単純なアジュバント治療形態を提供することであった。本発明によれば、オリゴヌクレオチドは、アジュバントとして、手術腔に高濃度で使用される。オリゴヌクレオチドを担体に含有させることで、長期間にわたる溶出が可能になり、従って、手術腔近くの腫瘍細胞に対する長期にわたる継続的な効果が可能になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍患者の固形腫瘍の完全若しくは部分切除又はアブレーション後の腫瘍患者における腫瘍有効オリゴヌクレオチドの使用において、オリゴヌクレオチドが、手術又はアブレーション後に腫瘍床とその近傍に残っている腫瘍細胞と戦うために又は転移と戦うために、かつこの領域での再発又は新しい転移の形成に対抗するために、切除又はアブレーション中に形成された体腔に適用されることを特徴とする、使用。
【請求項2】
使用されるオリゴヌクレオチドが、少なくとも一のタイプの腫瘍細胞において多面発現効果を有することを特徴とする、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項3】
オリゴヌクレオチドがゲル、液体又は弾性材料で適用されることを特徴とする、請求項1又は2の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項4】
担体が、好ましくは1ミリリットル当たり15若しくは70マイクログラムの濃度、特に好ましくは1ミリリットル当たり250若しくは1000マイクログラムを超え、又は5、25若しくは100ミリグラムの濃度でオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、ゲル、液体又は弾性材料の形態の担体の充填物としての、請求項1、2又は3の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項5】
担体が吸収性弾性又はゲル様材料からなり、切除された器官の形状を少なくとも部分的に再現することを特徴とする、請求項4に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項6】
充填密度が1平方センチメートル当たり少なくとも10マイクログラム、特に好ましくは1平方センチメートル当たり50若しくは200マイクログラム、又は1、5若しくは20ミリグラムのオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、オリゴヌクレオチドが、直接運ばれ、リポソームなどの粒子にパッケージされ、ゲルとしてコンジュゲート又は製剤化される、膜、ホイル又はガーゼなどの平坦な担体の充填物としての、請求項1、2又は3の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項7】
担体が、低免疫原性の材料、特にコラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、キトサン又はヒアルロン酸を含むことを特徴とする、請求項4から6の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項8】
担体が、特異的検出のためのマーカー、特に吸収性又は蛍光性色素を更に有することを特徴とする、請求項6又は7に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項9】
担体の架橋又は他の安定化が、担体材料が患者の体内で好ましい速度、特に1週間を超えるインビボ半減期、特に好ましくは2週間、4週間、及び3ヶ月を超える半減期で、分解されるように、停止されることを特徴とする、請求項4から8の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドに加えて、他の腫瘍有効分子、特に細胞増殖抑制剤が、治療的に適切な投与量で担体に適用されることを特徴とする、請求項4から9の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項11】
担体が、特に、創傷縁から離れた位置にある腫瘍細胞に最適に到達するように、液体製剤と組み合わせたゲル又はガーゼで、互いに組み合わされることを特徴とする、請求項4から10の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項12】
診断素子、特に心拍数、LDL又はHDL濃度のセンサーが担体に組み込まれていることを特徴とする、請求項4から11の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項13】
手術、アフターケア及びアジュバント化学療法などの標準的な治療が、本発明に係る方法と並行して又はほぼ同時に行われることを特徴とする、請求項1から12の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項14】
腫瘍、特に副腎皮質癌腫、卵巣がん、中皮腫及び神経膠芽腫のアジュバント療法のための、請求項1から13の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科的処置の直接の様々な段階での腫瘍疾患の特定の治療法のためのオリゴヌクレオチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドと呼ばれる短い一本鎖又は二本鎖オリゴヌクレオチドは、先行技術において確立された化学的方法によって合成することができる(Herdewijn,2005;Surhone等,2010)。現在、約200塩基又は塩基対の長さまでのDNAオリゴヌクレオチドは効率的に合成することができ、多くの技術的理由のために、DNAは、RNAと比較してより容易にかつより長い断片で合成することができる。技術的には、より長い合成は可能であるが、酵素的又はインビボでの調製が、より簡単でより効率的である。しかし、将来的には、増加した長さのオリゴヌクレオチドもまた合成されることが期待される。現在のところ、合成プロセスには、合成の反復ステップを自動的に実施する合成機が使用される。
【0003】
化学的に合成されたオリゴヌクレオチドの一つの利点は、その修飾性にある。そのような修飾は、例えば、イノシンなどの非天然ヌクレオチド構成ブロック又はシトシンメチル化などの天然修飾を含みうる。更に、ヌクレオチドは、本発明の実施態様に存在するように、塩基残基、糖残基、又はリン酸残基で修飾されうる。修飾には、例えば、アルキル、アルコキシ、アミノ、デアザ、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール基又はそれらの組み合わせによる置換が含まれる。ヌクレオチドはまた、より高い安定性のあるアナログで置き換えることができ、例えば、リボヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドで置き換えることができ、又はその糖部分の2’OH基を2’アミノ基、2’O-メチル基、2’メトキシエチル基、又は2’-O,4’-Cメチレン架橋で置き換えることができる。ヌクレオチドのプリン又はピリミジンアナログの例には、キサンチン、ヒポキサンチン、アザプリン、メチルンチオアデニン、7-デアザ-アデノシン、及びO-又はN-修飾ヌクレオチドが含まれる。ヌクレオチドのリン酸残基は、リン酸基の一又は複数の酸素原子を窒素又は硫黄(ホスホロチオエート)で置き換えることによって修飾することができる。更なる修飾には、ロック核酸LNA(W09914226A2)、アンロック核酸UNA、2’OMe-メトキシ及び2’Fフルオロ修飾が含まれる。一本鎖の3’及び5’末端には、単純又はグリコシル化ペプチド及びタンパク質、並びに脂質、キトサン及び他のキトサン誘導体、ポリマー又は色素などの更なる分子残基の付加がまた可能になる。この種類の修飾は、オリゴヌクレオチドに直接的に又はスペーサー、例えば一又は複数のグリシン残基を介して連結されうる。これらの修飾は、例えばオリゴヌクレオチドの安定性又は二本鎖の融解温度に影響を与えるため、他の分子又は表面への親和性又は生物学的利用可能性又はインビボでの活性を変化させるためなど、様々な目的で開発される。修飾はまた、例えば、オリゴヌクレオチドの機能、それらの安定性又はそれらの転移特性を改善するために、又はそれらの局在化又は標的化を制御するために使用される。以下では、オリゴヌクレオチドという用語には、これらの修飾の全てが含まれる。
【0004】
多くの種類のオリゴヌクレオチドは、ヒトや動物、又は一般的には生物又はウイルスにおいて天然に生じるか、あるいはそれらに由来する。それらは、タンパク質発現の調節、前記発現への干渉、又は細胞間の情報交換など、非常に異なる機能を有している。それらは、二本鎖、一本鎖オーバーハングを有する二本鎖、ヘアピン、周期的又は一本鎖などの様々な形態で存在しうる。天然に生じるオリゴヌクレオチドの例は、マイクロRNA(miRNA)又は長鎖ノンコーディングRNA(lnRNA)であり;天然由来又は人工オリゴヌクレオチドの例は、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子活性化RNA(saRNA)、CRISPR-Casオリゴヌクレオチド、又はアンチセンスDNAであり、これらの幾つかは治療活性物質とするのに適している。最初の適用が承認された物質は、ホモ接合性の遺伝性高コレステロール血症の治療に使用されるアンチセンスDNA(MipomersenTM,Kastle Theraputics,Inc.,Chicago,II.,USA)と遺伝性のトランスサイレチン媒介性アミロイドーシスにおける多発性ニューロパチーの治療のためsiRNA(PatisaranTM,Alnylam,Inc.,Cambridge,MA.,USA)である。両方の薬剤は全身的に注射される。
【0005】
狭義の「腫瘍」という用語は、細胞増殖の調節不全に起因する体組織の良性又は悪性新生物(腫瘍症)を指すと理解される(DocCheck,https://flexikon.doccheck.com/de/Tumor)。口語的に、悪性腫瘍はがんと呼ばれる。今日まで、多くの形態の悪性腫瘍、特に固形腫瘍に対して治療法はない。例えば、診断後の生存期間が非常に短い腫瘍には、膵臓、副腎、中皮、脳、及び肺の腫瘍があるが、これらの腫瘍の診断、個別療法及び治療法を改善し又は開発するために多大な努力がここ数十年で払われてきた。これらの努力の例には、腫瘍の外科的除去、薬物治療又は放射線療法、及びそれらの様々な組み合わせが含まれる。より新しい又は実験的な治療法には、特にキメラ抗原受容体を有するT細胞(CAR-T)を含む特定の遺伝子又は細胞療法が含まれる。
【0006】
より優れた診断技術にもかかわらず、また腫瘍の治療と早期発見に関する多大な努力にもかかわらず、治療と生存に関してこれまでに達成された改善は非常に限られている。これらの腫瘍の多くでは、患者は例外的な症例においてのみ治癒される。しかし、多くの治療法は、少なくとも疾患進行を遅らせ、患者の平均余命を延ばす。腫瘍の種類にもよるが、得られる平均生存期間は数年から僅か数ヶ月である。特に、これまで治療中の患者が追加の平均余命をほとんど獲得していない腫瘍については、新しい治療法がかなり必要とされている。
【0007】
多くの固形腫瘍は、手術を使用して早期に最初の段階で治療される。しかし、原発腫瘍の完全な除去がいつも可能であるとは限らない。腫瘍塊が完全に除去されたように見えても、腫瘍床又は手術腔の端に腫瘍細胞が残っている可能性が非常に高く、そこから再発が生じる可能性がある。高感度の病理学的処置を使用した場合でも、これらの腫瘍細胞は検出されない場合がある。原発腫瘍から短い距離で発生する転移もありそうである(口語的には直接播種転移)。一部の種類の腫瘍、例えば進行性神経膠芽腫では、完全な除去はほとんど不可能である。神経膠芽腫は浸潤性増殖を示し、その後、しばしば不可欠な脳領域を侵す。一部の種類の腫瘍では、副腎皮質がんの副腎など、患部臓器全体でさえ外科的に切除される。この場合、臓器機能の薬物置換が必要であり、また可能である。全摘出を行っても、再発が一般的であり、ほとんどの場合、この腫瘍では致命的である。これらの制約にもかかわらず、腫瘍の外科的除去は、多くの場合、代替手段がない効率的な腫瘍治療の不可欠な要素である。腫瘍切除は、しばしばアジュバント療法又はネオアジュバント療法と関連している。例えば、大きな腫瘍や到達するのが難しい腫瘍の場合など、原発腫瘍の腫瘍塊と手術のリスクの両方が低減されるべきである場合、薬物治療と放射線療法がついでネオアジュバント的に、つまり手術前に使用される。
【0008】
アジュバントとして、すなわち手術後に適用される場合、薬物治療と放射線療法は、再発の発生を防ぎ、手術ができないか、又はその存在が疑われるだけの遠隔転移に作用することが目的とされる。術後放射線療法は、現在のところほとんど局所的にのみ適用されているため、主に再発を予防するため、又は既知の局所転移を治療するために使用される。ほとんどの場合、特に転移が疑われるが検出を逃れる場合、薬物は全身的に適用される。
【0009】
上記の適用において、薬物は、主に増殖細胞に対して細胞毒性効果を発揮する化学療法剤、又は腫瘍特異的受容体を介して腫瘍細胞を攻撃するための抗体又は細胞毒が含められた抗体などの標的治療薬の何れかでありうる。転移に関しては、受容体組成が知られていないことが多いため、標的治療薬がアジュバントとして使用されることは滅多にない。
【0010】
手術に適さない腫瘍の場合、放射線療法と薬物療法のみが利用可能である。薬物治療の望ましくない影響を減らすために、現在、薬物は局所的に適用されている。これは、直接の注射中に腫瘍細胞の想定される広がりが回避される必要がある場合、腫瘍又は周囲の組織への直接の注射によって達成されることがよくある。
【0011】
頻度は低いが、手術中に薬物が局所的に投与される。この投与経路を使用することにより、アジュバント全身適用と比較して、遠隔転移の標的化は良好には達成されないと想定される。部分的にしか切除できないことが多い神経膠芽腫の場合、切除不能な腫瘍塊を攻撃することを目的として、そのような治療戦略がより頻繁に追求される。
【0012】
この目的のために、化学療法薬が使用され、これは手術後に手術腔に挿入される。神経膠芽腫に関しては、たとえ神経膠芽腫において血液脳関門が完全には無傷ではない場合でも、多くの薬剤が血液脳関門を通過しないため、局所投与がまた考慮される。更に、毒性の全身的影響を発生させることなく有意に高い薬物投与量を可能にすることに加えて、デポ内に保存された医薬の徐放によってより簡単な適用及びより長い利用可能性を可能にすることを意図して、ポリマー担体がまた使用される。
【0013】
1999年に米国において承認されたGliadelTMは、直径14mm、厚さ1mmの生分解性の円盤状担体の例であり、該担体には7.7mgの細胞増殖抑制性カルムスチン(また:ビス-クロロエチル-ニトロソ-尿素、略してBCNU)が含まれている;腫瘍組織を除去した後、手術の終わり近くで、外科医によって最大8つの標本が患者の手術腔に挿入される。臨床研究では、初めて診断された患者と再発した患者の両方で、寿命の中央値が約2ヶ月延長されることが証明された(Hart等 2008);しかし、研究の重要性は疑問視されている(Chowdhary等 2015)。ウエハーは、手術後232日まで検出され得、よって腫瘍細胞の想定される増殖サイクルよりも長く存在する。
【0014】
しかし、GliadelTM担体は大きく脆いため、担体と手術腔との接触が制限される。しかし、適用の説明書では、手術のリスクが高まるという問題があるため、担体を小さい断片に分割することは規定されていない。従って、再発性卵巣がんにおける腹腔内投与用のパクリタキセル(タキソール)が提供されている、直径53μmのマイクロビーズ(PaclimerTM,Guildford Pharmaceuticals)を含む、他の一連の担体原理が開発され、臨床開発の様々な段階に達している。それらはまた神経膠腫の治療のために改変された形で使用されている(Li等 2003)。
【0015】
酸性pH(<5)で膨張可能な別の形態のナノ粒子が開発されている。おそらく、これらのナノ粒子は、エンドソームの酸性環境でその物質を放出する。これらの膨張粒子には、肺がん(Griset等,2009)、中皮腫(Schulz等,2011)及び腹膜癌腫症(Colson等,2011)の治療に使用するためにパクリタキセルがまた提供された。マウスモデルにおける原発腫瘍の切除後、粒子は静脈内又は腹腔内投与された。どうやら、これらの粒子はまだ臨床的には試験されていない。
【0016】
キトサンベースのヒドロゲル:キトサンは、昆虫や甲殻類の殻が本質的に作られている材料であるキチンを脱アセチル化することによって得られる。キトサンには、その優れた生分解性により、例えば創傷治癒材料として、しばらくの間、生物医学的応用への道が見出されてきた(Kim等,2008)。パクリタキセルを含有させたキトサンベースのヒドロゲルは、腫瘍切除後の創傷治癒縁の治療のために提案されている。従って、この状況をシミュレートするために、腫瘍接種の数日後にその組み合わせがインビボで注入された(Ruel-Gariaepy等,2004)。カンプトテシンが別の研究で使用されたが、切除中の適用を目的としていなかった(Berrada等,2005)。
【0017】
高周波又は熱アブレーションの場合、ドキソルビシンを含むマイクロロッドがアジュバントとして注入された。アブレーションの場合、再発は処置ゾーンの縁部と血管の周りに最も頻繁に見出される。動物実験では、肝臓のアブレーション後(Qian等,2003)にロッドが、事前に穿刺された異種移植肝腫瘍中に注入された(Weinberg等,2007)。ロッドの周りの線維性カプセルの形成は、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンと複合体を形成したデキソメタゾン(dexomethasone)の同時投与によって減少した(Blanco等,2006)。別の実験では、5-FUがロッドに適用された(Haaga等,2005)。
【0018】
更に可能な担体は、硬質担体よりも創傷縁の表面によりよく適応する軟質フィルムであり、物質は、より広い領域から組織中に拡散する可能性がある。パクリタキセルを含むポリ(モノステアリン酸グリセロール-co-イプシロン-カプロラクトン)フィルムが、肺がんモデルにおいて切除後に移植され(Liu等,2010);同様のモデルにおいて、フィルムにはヒドロキシカンプトテシンが含められ(Wolinski等,-2,2010)、肉腫モデルにおいてまた再びパクリタキセルが含められた(Liu等,2012)。
【0019】
これらの戦略のしばしば限られた成功は、例えば、細胞増殖抑制剤を適用するためにリポソームを使用し(Yang等,2016)、又は標的分子をナノ粒子にカップリングさせ、又は磁場又は光のような様々な外部刺激を介して薬剤の徐放を誘導する(Rosenblum等,2018)、局所投与の更なる緻密化に至った。
【0020】
新規の術中適用形態は、温熱腹腔内化学療法(HIPEC)と呼ばれ(Glehen等,2008)、全身毒性を低下させるために腹膜における細胞増殖抑制剤の高い局所濃度と上部細胞層における物質の吸収を達成することを目的とする。追加の温熱療法は、組織浸透を改善することにより、適用された細胞増殖抑制剤の治療可能性を高めると考えられている。しかし、温熱療法はそれ自体の直接的な細胞傷害性効果をまた生み出す(Ceelen等,2010)。
【0021】
HIPECの適用では、手術の最後に腹部の様々な領域に幾つかのドレナージラインが配される。熱交換器を備えたローラーポンプシステムが使用され、温度曲線がチェックされる。目標温度は42~43℃で、灌流時間は使用されるプロトコルに応じて30分から120分の間である。これまでのところ、マイトマイシンCが最も頻繁に使用される細胞増殖抑制剤である。標準的な全身療法で使用される薬剤オキサリプラチン及びイリノテカンは、HIPECで益々使用されている(Piso等,2011)。
【0022】
圧力エアロゾル化学療法(加圧腹腔内エアロゾル化学療法、PIPAC)は別の適用形態である。圧力下でエアロゾルを適用すると、腹部又は胸部などの体腔内に特に効果的な薬剤の分配が生じる。PIPACでは、シスプラチン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、パクリタキセルなどの薬剤が使用される。腫瘍部位に直接局所投与することは、体腔内の分布不良や組織中への拡散低下など、腹腔内化学療法のその他既存の薬理学的制約が排除されることを意味する。細胞増殖抑制剤の局所用量は、腫瘍組織に対する有効性を失うことなく、10分の1に減らすことができる。従って、腹腔内化学療法の用量依存的な局所毒性がよりよく制御され、臓器毒性並びに治療の全身性副作用が大幅に減少する。
【0023】
PIPACでは、12mmHgのCO2気腹(capnoperitoneum)、つまり過圧が加えられ、2つのバルーントロカールが腹壁から挿入される。次に、マイクロポンプが腹部に挿入され、高圧造影剤注射器に連結される。典型的なプロトコルでは、ドキソルビシン(50mlの0.9%NaCl溶液中に1.5mg/m2体表面積(BSA))とシスプラチン(150mlの0.9%NaCl溶液中に7.5mg/m2BSA)が、圧力化学療法エアロゾルとしてマイクロポンプと注射器によって継続的に適用される。注入パラメーターは、30ml/分の流量と200psiの最大入口圧に設定される。マイクロポンプは、6から11pmの液滴径の多分散エアロゾルを生成する。液滴径が小さいため、分散した液滴がガス内に長期間、例えば30分以上留まる。治療用気腹は37℃の温度で30分間保たれる。次に、化学療法エアロゾルは、閉じたラインを介して空気処理システム中に排出される。最後に、トロカールが抜かれる(Reymond等,2014)。
【0024】
アジュバント遺伝子療法戦略のシチマジーンセラデノベック(Cerepro)が公開されている(EP1135513B2)。腫瘍切除後、アデノウイルスが手術腔に隣接する組織中に注入され、ウイルスが、例えば単純ヘルペスウイルスの、機能的チミジンキナーゼ遺伝子を運ぶ。トランスフェクトされた細胞において、遺伝子がチミジンキナーゼの発現を引き起こす。ガンシクロビルが手術後に適用され、トランスフェクトされた細胞によって取り込まれると、ガンシクロビルは好ましくはこれらの細胞においてリン酸化され、それによって遺伝子合成を妨害することができる活性物質を形成する。この処置を使用することにより、ガンシクロビルの効果が、手術腔の周囲の領域に局所的に限定される。しかし、臨床試験の結果は、この治療法の承認には至らなかった;欧州医薬品庁(EMA)の先端医療委員会(CAT)による評価に基づく、欧州医薬品委員会(CHMP)の否定的勧告において、観察された低い有効性と重篤な副作用の重大なリスクが議論された(取り下げられた承認申請のEMAウェブサイト:Cerepro)。その後、このアプローチは、観察された相乗効果のため、神経膠芽腫の標準治療の一部である細胞増殖抑制性テメゾロミドを追加投与することによって更に進展させられた(EP2665489B1)。
【0025】
更に、中皮腫及び卵巣がんに対して遺伝子療法が提案されており(WO2015/002861A1)、ヒトインターフェロンアルファ2bの遺伝子がロードされたアデノウイルスが使用されている。アジュバントとしての適用は明示的には意図されていない。
【0026】
最近、手術中に腫瘍陽性切除縁を可視化するために、腫瘍切除中に色素、特に蛍光色素で標識された抗体を使用する試みがなされている。乳がんモデルにおいて、色素IRDye800CWを抗体ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ、トシリズマブに結合させ、それらの局所分布が調査された(Korb等,2014)。別の研究では、PD-1に対するモノクローナル抗体が同じ色素で標識され、手術後に色素を含まないアジュバントとして腹腔内注射された(Du等,2017)。更に、残っている腫瘍細胞を可視化し同時に戦うために、腫瘍床の腫瘍切除中に術中に光免疫療法、すなわち抗体ベースの光線力学療法を使用することが提案されている(de Boer,2016)。
【0027】
しかし、他の試験では、腫瘍の切除後に複数回の全身注射を適用することにより、抗体が腫瘍治療においてアジュバントとしてまた使用された。例えば、結腸がんの治療では、手術後のアジュバント化学療法が最先端となり、医療現場でしばしば使用される。5-FUとオキサリプラチンが使用される。他の試験では、血管新生阻害モノクローナル抗体アバスチンTM(ベバシズマブ)が代わりに術後に全身投与された。この抗体は血管内皮増殖因子(VEGF)に結合し、それによって血管新生シグナル伝達を防ぐ。しかし、36ヶ月後、試験のアジュバント抗体治療群では再発リスクの改善は見られなかった。別の試験では、乳がん治療に使用されるEGFR結合抗体であるセツキシマブがアジュバント化学療法の標準に追加された。その結果、抗体治療群の再発リスクはほとんど変化しなかった;それどころか、一部の患者群では再発リスクが増加した(De Gramont等,2011;Oyan,2012)。抗体は化学療法への耐性を加速すると考えられている。前臨床試験から、アジュバントとしてのそれらの使用が転移の形成を促進することもまた知られている。更に、新しい生存促進性経路が刺激され、耐性のエンハンサーとして機能することを排除することはできない。また、治療法を組み合わせることにより、異なる作用機序が互いに干渉する場合があるようである(Huang等,2017)。
【0028】
免疫チェックポイントを標的としたモノクローナル抗体(ICT mAb)、例えばPD-1抗体が、最初の臨床試験において腫瘍内投与された。全身使用と比較して、ICT mAbに対する耐性が低下しているようである(Maraballe等,2017)。
【0029】
幾つかのオリゴヌクレオチドが腫瘍の治療のために既に開発されている。通常、それらは特定の細胞標的、例えば、キネシンスピンドルタンパク質(KSP)、ポロ様キナーゼ1(PLK)、プロテインキナーゼN3(PKN3)、リボヌクレオチドレダクターゼ(RRM2)、又はテナシオン(tenasion)-2などの細胞周期タンパク質に対して向けられている。また含まれるのはWO2010/102615のプロドラッグであり、共役プロテアーゼ基質が、基質がプロテアーゼによって切断されるまでsiRNAの有効性を阻害する。
【0030】
しかしながら、オリゴヌクレオチドの場合、現在の開発は、主に、ナノ粒子又はゲルとしての製剤及び送達に焦点が合わされており(Kim等,2012)、これらは両方とも、注射による全身又は腹腔内適用が意図されている。siRNAがまた、例えば、生理食塩水中で「ネイキッド」で、又は規定の分子コンジュゲート(例えば、コレステロール修飾siRNA、TAT-DRBD/siRNA複合体)の成分として、又はリポソームの成分として、ポリカチオン、カチオン性脂質/脂質トランスフェクション試薬又はカチオン性ペプチドと複合体化されて、適用されうる。再生医療への応用では、多孔質ポリエステルウレタン製のマトリックスの使用が、ジブロック共重合体からsiRNA結合ナノ粒子を放出し(Nelson等,2013)、よって二担体系を必要とする皮下インプラントとして試験され、これは更なる複雑さを意味する。アルギン酸塩又はコラーゲンへの細胞及びsiRNAの同時封入もまた記載されており(Krebs等,2009)、ヒドロゲルとして存在するロードされたアルギン酸塩又はコラーゲンが注入されうる用途に提案されている。
【0031】
オリゴヌクレオチドの局所適用は、腫瘍に対する様々な治療アプローチのための腫瘍内注射として開発されており、また開発中である。Han等は、乳がん及びメラノーマにおけるトランスグルタミナーゼのインビボ発現を低下させるためにsiRNAを配合したキトサン粒子を使用している(Han等,2011)。金含有ナノシェルと組み合わせたゲル化温度40℃のヒドロゲルが腫瘍内に注入され、光学的放射を使用してsiRNAの局所効果が誘導されている(Strang等,2014)。ポリエチレンイミド結合有機ホスファゼンもまた熱反応を示し、VEGF及びサイクリンB1に対するsiRNAと共に腫瘍内に注射された(Kim等,2012)。これらのアプローチは、手術前後に又はアジュバントとして使用されなかった;焦点は、単に原発腫瘍に対して高い局所濃度、よって高効率を達成することと、小分子と比較して作用部位からのオリゴヌクレオチドの拡散速度を低下させることにあった。同じことが、キルステンラット肉腫ウイルス(KRAS)遺伝子の変異型の発現が低下されるべきであった膵管腺がん(PDA)の研究にも当てはまる(Khvalevsky等,2013)。このアプローチでは、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)マトリックスがまた使用される。広範囲の接触による原発腫瘍に対する効率を最適化するために、マトリックス要素を腫瘍に縫合することさえされた。免疫刺激性RNA(CPG1826、Coley Pharmaceuticals)は、動物実験においてアジュバントとして腫瘍内投与された;ここでは、マウスがOX40、CTLA4、GITR及びFR4に対する抗体で治療されたが、手術はされなかった。改善された効果が著者によって報告されているが、このアプローチは臨床的には探求されなかった(Houot等,2009)。
【0032】
プラスミドとオリゴヌクレオチドはまた、創傷治癒を促進するために既に局所的に適用されており、例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)PLGAナノ粒子中の血小板由来増殖因子(pPDGF)又は血管内皮増殖因子(pVEGF)のプラスミド(Tokatiian等,2014)又はインプラントとしての無細胞皮膚マトリックス中のプロリルヒドロキシラーゼドメイン2(PHD2)-siRNA(Vandegrift等,2015)、又はp53(Nguyen等,2010)である。しかし、これらの適用では、腫瘍とは関係のない損傷後の創傷治癒に焦点が当てられている。これらのアプローチの潜在的なリスクは、創傷治癒に向けられた標的遺伝子が腫瘍形成リスクの増加を構成する可能性があるという事実にある。この状況が、腫瘍治療におけるこれらの局所的アプローチの使用を妨げている。
【0033】
最新技術によれば、特に細胞増殖抑制剤は、腫瘍切除後のアジュバントとして使用される。実際、局所的に適用された細胞増殖抑制剤は、それらの全身的適用に対して多くの利点を示すことが期待される:
- しばしば疎水性である物質が、切除された腫瘍塊の近くの意図された作用部位にかなり直接的に到達する
- 小分子細胞増殖抑制剤の他の急速な分解が、分子が長期間にわたって溶出される担体を介したそれらの適用によって打ち消される。その結果、増殖細胞のより多くの細胞周期が医薬によってカバーされる可能性がある。
- 多くの細胞増殖抑制剤の用量を制限する腫瘍外への有害作用が、手術腔周辺の領域に限定され、大幅に低くなる。
【0034】
これまでのところ、このようなアジュバント系の限られた成功の理由は知られていない。現在まで、細胞増殖抑制剤としての巨視的担体とカルムスチンの組み合わせであるGliadelTMが、合衆国と欧州において承認された唯一の系である。承認は、神経膠芽腫におけるアジュバントの使用にまで及ぶ。
【0035】
小分子に期待される局所的なアジュバント適用の利点は、高分子には期待されない。高分子は通常容易に溶解し、小分子よりもゆっくりと排泄される。加えて、達成可能な濃度増加は、小分子よりも高分子の局所適用の方が低くなる。高分子の拡散経路はまた小分子の拡散経路と比較して短く、すなわち、それらは腫瘍床とその周囲に遠くまで浸透しない。手術腔の治癒過程中に線維性カプセルが担体の周りに形成される場合、浸透の深さは特に小さくなる。
【0036】
従って、腫瘍切除では、高分子は他の目的に使用される。シチマジーンセラデノベックを用いて精巧なアプローチが進められ、そのアプローチは、手術後に順に小分子になる、全身的に注射されたプロドラッグの転換を含む。しかし、転換は、数百ヌクレオチドの長さを示す単純ヘルペスチミジンキナーゼをコードする遺伝子で以前に手術中にトランスフェクトされた細胞でのみ局所的に生じる。遺伝子は、細胞に感染するための複製能力のないアデノウイルスにパッケージされる。この遺伝子は、細胞のトランスフェクション後に発現され、単純ヘルペスチミジンキナーゼの発現を引き起こし、これにより、ガンシクロビルTMプロドラッグが活性型に転換される。小分子ガンシクロビルTMを使用することにより、高局所濃度を達成することができる。
【0037】
抗体は外科手術において使用されるが、主に手術中に蛍光標識マーカーとして使用される可能性があるためである。そのような抗体はしばしば使用され、これはその他、全身性腫瘍治療薬となる。腫瘍特異的受容体に結合するそれらの能力により、それらが腫瘍細胞特異的マーカーとなることが可能になる。蛍光の励起後、このようにマークされた腫瘍細胞が明るくなり、腫瘍の広がりに関する情報を外科医に提供する。抗体は、治療のために、すなわち腫瘍切除なしで、腫瘍に局所的に注射されうる。腫瘍切除の過程でのアジュバントとして、それらは全身的にのみ適用される。
【0038】
アジュバント局所腫瘍治療に対しては、これまで限られた治療の成功しか示さなかった、主に利用可能な小分子がある。従って、腫瘍切除後の治癒の可能性を改善するために、改善されたアジュバント療法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0039】
[発明の目的]
従って、本発明の目的は、手術腔内で局所的に適用される単純なアジュバント療法を提供することであり、その療法により、少なくとも部分的な腫瘍切除後に残り、腫瘍床とその周辺内に切除後に出現する腫瘍細胞が破壊され、又は原発腫瘍の近く又は周辺の播種転移が破壊される。
【0040】
[発明による解決手段]
本発明の目的は、驚くべきことに、腫瘍の切除後に腫瘍床に直接適用される腫瘍有効オリゴヌクレオチドの使用によって達成される。オリゴヌクレオチドは、好ましくは、吸収性、ゲル様又は弾性担体、又はガーゼ材料又は粒子などの固体担体と一緒に適用される。また、手術腔が他の適用形態では複雑すぎる場合、腫瘍細胞が位置しうる全ての潜在的な場所に到達するために、液体製剤が好ましい場合がある。次に、液体形態は、粒子状又はゲル状の粒子状担体を含みうる。液体製剤を使用する場合、適用される容積は、好ましくは、それが手術腔を半分以上、又は特に完全に満たすように選択される。手術後にドレナージが必要とされる場合は、液体適用形態を灌流として数回又は長期間連続して適用することもできる。更に、製剤化された又は非製剤化オリゴヌクレオチドが液体溶液からエアロゾル化され、手術腔に導入されるエアロゾル適用形態もまた好ましい場合がある。
【0041】
オリゴヌクレオチドは、その電荷、サイズ、不安定性、細胞へのその取り込み速度の低さ、及びその急速な分解のために、他のクラスの分子、特に小分子と比較して、この適用にはあまり適さないことが予想されるため、前記効果は驚くべきものである。製剤化されたオリゴヌクレオチドは、時には著しく大きく、更によりゆっくりと拡散し、期待されるこの用途には更に適さなくなる。
【0042】
一方、小分子は、局所適用後、細胞層の上部だけでなく、隣接する組織のより深い層にも到達すると予想される。腫瘍細胞がまたそこに予想されるので、この深く到達する効果は好ましい。
【0043】
本発明の意味での単純な治療形態は、既に個別に抗腫瘍効果を達成する、活性成分要素として少なくとも一タイプのオリゴヌクレオチドを使用することを特徴とする。この単純な治療形態は、望ましくない影響のリスクを低く維持するために好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[好ましい実施態様]
腫瘍手術に使用される腹腔鏡手術手技の急速な発展を考慮すると、手術腔へのアクセスが時間的に制限され、理想的には現在は30分を超えないため、一回の適用のみを使用する治療が好ましい。その後の手術腔の開放のたびに、腫瘍細胞が播種するリスクが高まる。
【0045】
本発明によれば、特に単一の適用の場合、細胞が現在位置している細胞周期の段階に関係なく、可能な限り多くの腫瘍細胞に作用するために、多面発現性オリゴヌクレオチドが好ましく使用される。本発明によれば、多面発現性オリゴヌクレオチドは、細胞内で少なくとも二つの標的、例えば、異なるタンパク質をコードする同じ標的配列を持つ二つのmRNAに同時に影響を与えるオリゴヌクレオチドである。多面発現性オリゴヌクレオチドの例は、WO2010/102615によるプロドラッグであり、好ましい実施態様は、並行して幾つかの生理学的標的に対して腫瘍細胞において有効である(WO2012/098234)。
【0046】
本発明によれば、ヒドロゲル様又は弾性特性を特徴とし、拡散によって又はインビボ分解中又はpHなどの環境パラメーターの変化によってオリゴヌクレオチドが溶出する、低い免疫原性を示す生分解性担体材料が好ましい。コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、フィブリン、キトサン又はヒアルロン酸、それらの合成又は組換え変異体、及びそれらの合成修飾体などの医学的に証明された材料を含む担体が、特に優先して使用される。
【0047】
本発明に係るオリゴヌクレオチドの使用が、多量のオリゴヌクレオチドが局所的かつ長期間にわたって利用可能であるように、一時的に結合された担体内でなされるのが特に好ましい。本発明によれば、「一時的に結合された」とは、担体が堅く、弾性があり、又は変形可能でさえありうるが、数時間又は数日にわたって単位を構成することを意味する。生分解性担体はまた一時的に結合されていると考えられ、ここで、該担体は体内での分解過程の結果として小さくなり、数時間又は数日後に小さな単位に崩壊し、ガーゼのような担体から取り除かれるか、又は液相への転換を受ける。
【0048】
本発明に係るオリゴヌクレオチドの使用が一適用当たり多量である場合、特に好ましい。使用されるオリゴヌクレオチドの全量は、手術腔と周囲の組織の構造に依存する。結合された担体の場合、この関係は充填密度として記述される。1ミリリットルの担体容積当たり3マイクログラムを超え、特に好ましくはそれぞれ1ミリリットル当たり12、50、250、1000又は5000マイクログラムを超えるオリゴヌクレオチドの充填密度で担体中にオリゴヌクレオチドを使用することが好ましい。
【0049】
オリゴヌクレオチドが長期間にわたって、特に数日間にわたって溶出する担体を使用することもまた有利である場合がある。体によって吸収される担体は特に有利である。柔軟なホイル又はロッドなど、単純な腹腔鏡下での取り扱いを可能にする担体は特に有利である。オリゴヌクレオチド及びより小さな粒子状担体は、ガーゼ材料製のネットなどのネット、又はヒドロゲルで適用されうる。1マイクログラム/平方センチメートル・日を超え、特にそれぞれ2、5、10、25又は100マイクログラム/平方センチメートル・日を超える初期溶出速度を有する担体を使用することが好ましい。
【0050】
本発明によれば、オリゴヌクレオチドは、再発又は転移を防ぐために、腫瘍切除後に局所的に使用される。従って、それらは、原発腫瘍及び周囲の組織の完全な又は部分的な除去後に、生じる手術縁に手術中に適用される。これにはまた周囲の結合及び脂肪組織が含まれる。オリゴヌクレオチドの機械的適用には、ゲル様製剤が有利であり、これは、ブラシ又は類似のツールを用いて組織に分配又は噴霧されうる。
【0051】
オリゴヌクレオチドの使用に適した担体材料はコラーゲンであり、これはゲル様又は弾性特性を備えていてもよい。コラーゲンは体によって吸収され、低い免疫原性を示す。
【0052】
本発明に係る液体製剤におけるオリゴヌクレオチドの使用は、オリゴヌクレオチドが注射器を使用して手術腔内に分配されうる場合に有利である。この適用形態は、製剤がそれ自体を手術腔内に分布させ、播種転移と同じようにその開口から流れ出す可能性があるため、複雑な形態の手術腔に対して有利である。本発明の意味での「複雑な」とは、手術腔が腹膜などの窩洞に対して開いており、腹膜の遠隔縁への腫瘍細胞の拡散を可能にすることを意味する。
【0053】
特に適切な分布は、類似のサイズ、特に好ましくは同じサイズ、又は手術腔のみ又はそれに結合する腔を含む容積の1、2、5倍でさえある液体容積の使用によって確保される。例えば、副腎の除去後、約25mlの手術腔が形成されるが、これは更に大きい後腹膜腔に繋がっている。腫瘍に有効なオリゴヌクレオチドが手術腔に継続的に供給されるように、多量の液体が灌流の実施を可能にし、オリゴヌクレオチドの高い局所濃度が腔内の至る所で達成されうる。
【0054】
エアロゾルとしての本発明に係るオリゴヌクレオチドの使用もまた好ましい。この目的では、過圧が手術腔又はそれに隣接する腔に生じる。エアロゾルは、トロカール、チューブ、又は同様のツールによって生じた腔に導入されるか、又は挿入されたエアロゾル発生器ででも生成される。エアロゾルは腔内にほぼ均一に分布するため、腔の遠隔領域にさえも到達しうる。腔は2時間を超えて、特に1時間又は30分を超えて開いたままに維持される。エアロゾル形態の本発明に係るオリゴヌクレオチドの使用はまた、腔へのアクセスが継続的であるか、又は迅速かつ容易に再確立されうる場合、数回繰り返されうる。
【0055】
1マイクログラム/平方センチメートル腔容積を超え、特に好ましくは2.5、10、25、100マイクログラムを超える量のオリゴヌクレオチドをエアロゾルに使用することが好ましい。
【0056】
本発明に係るオリゴヌクレオチドの使用は、先行技術から知られている方法及び治療法との組み合わせを含む。これには、例えば、薬剤、例えば細胞増殖抑制剤及びオリゴヌクレオチドとまた、例えば、並行して実施される放射線療法の同時適用が含まれる。
【0057】
[実施態様:副腎皮質がん]
副腎皮質の癌腫は稀にしか発生せず、今日では通常、腹腔鏡下副腎摘出術、つまり完全な副腎の低侵襲外科的切除によって治療されている。それにもかかわらず、このようにして治療された患者の予後は不良であり、特に後期に同定された原発腫瘍の場合、再発又は転移が発生する可能性が非常に高く、通常、数ヶ月以内で患者の死に至る。腹腔鏡下副腎摘出術は、腹部/経腹膜又は後腹膜アクセスの何れかを使用して実施される。腎筋膜に穴が開けられ、手術腔が形成され、これは、安定化のために20~30mmHgの陽圧で加圧される。陽圧はまた、血管損傷後の手術腔への出血を減少させ又は防止する。続いて、周囲の臓器を動かし、副腎に供給する動脈と静脈を切断し、副腎を露出させるために、更に切開がなされる。理想的には、副腎全体が周囲の脂肪組織と一緒に解剖され、回収袋に移され、回収袋はトロカールの一つを介して患者から引き出される。加えて、リンパ節郭清術が実施される場合がある。手術腔は蒸留水と抗生物質ですすがれ、単純な場合にはドレナージなしで閉じられる。この外科手術手技は、腫瘍カプセルを損傷することと患者に何らかの腫瘍組織を残すことを注意深く回避する。それにもかかわらず、起源不明の局所再発が一般に発生する。腫瘍細胞は、手術前に副腎から環境内に輸送される場合がある。これには、重力により剥離した腫瘍細胞の尾側への移動によって引き起こされる、他の臓器又は臓器の一部の体腔に生じる播種転移が含まれる。これらのプロセスは、腎臓を取り巻く腎筋膜が後腹膜腔内に内側及び尾側に開くという事実によって促進される。
【0058】
本発明によれば、オリゴヌクレオチドは、再発又は転移を防止し、残りの腫瘍細胞又は転移と戦うために、腫瘍切除後に局所的に使用される。この目的のために、例えば、オリゴヌクレオチドは、副腎の除去後の手術中に、発達中の手術縁と周囲の組織に適用される。これには、周囲の結合及び脂肪組織、特に腎筋膜がまた含まれる。この目的に特に適しているのは、ブラシなどの器具を使用して腹腔鏡下で創傷縁に適用されうるゲル様製剤である。副腎皮質癌腫の手術腔では、約50平方センチメートルの表面積の創傷縁が発達する。ゲルは0.2から1mmの層厚で適用され、これは、1から5mlのゲル容積に相当する。このゲル容積は、好ましくは70マイクログラムのオリゴヌクレオチド、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムを含む。ゲルは数週間以内に分解され、オリゴヌクレオチドは継続的に放出される。
更なる例示的な実施態様では、例えば、手術腔中に導入される、コラーゲン製の弾性担体が使用される。高弾性の担体として、それらはカプセルとしてトロカールの開口を介して手術腔に導入される。カプセルが除去された後、担体は、25ml未満の容積又は分容積を有する約4×3×2cmの切除された臓器に対応するサイズと形状を取る。担体は、好ましくは70マイクログラムを超え、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムの量のオリゴヌクレオチドを収容する。担体は数週間以内に分解され、オリゴヌクレオチドは継続的に放出される。
【0059】
ゲル及び弾性担体の分解速度は、コラーゲンの場合、例えば、コラーゲンの架橋度など、製造パラメーターによって制御されうる。1週間を超えるインビボ半減期が好ましく、2週間、4週間及び3ヶ月の半減期が特に好ましい。
【0060】
本発明に係る更なる実施態様では、オリゴヌクレオチドの液体製剤が使用される。ここで、例えば、オリゴヌクレオチドは、注射器によって手術腔内に分配される。この適用形態の利点は、製剤がそれ自体を手術腔内に分布させ、播種転移と同じようにその開口から流出しうることである。前述の腎筋膜の拡張を伴う副腎皮質癌腫では、液体適用形態は、固体適用形態よりもかなり良好にその拡張部に到達する。この例における注入容量は20mlであり、これは、好ましくは70マイクログラムを超え、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムのオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、担体が分解され又は細胞によって吸収された場合にのみゆっくりと放出されるように、粒子又はリポソームに充填されうる。粒子の分解速度は、架橋度などの製造パラメーターによって影響を受ける場合がある。1週間を超えるインビボ半減期が好ましく、2週間、4週間及び3ヶ月の半減期が特に好ましい。
【0061】
オリゴヌクレオチドが長期間にわたって、特に数日間にわたって溶出する、より単純な形状を示す担体を使用することがまた有利である場合がある。体に吸収されうる担体は特に有利である。柔軟なホイル又はロッドなど、単純な腹腔鏡下での取り扱いを可能にする担体が特に有利である。より小さな粒子状担体は、ガーゼネットなどのネット、又はヒドロゲルで適用されうる。
【0062】
副腎皮質癌腫の場合、エアロゾル中のオリゴヌクレオチドの使用は、特に70マイクログラムの量で好ましく、特に250又は1000マイクログラムを超える量、又は5、25又は100ミリグラムのオリゴヌクレオチドで好ましい場合がある。
【0063】
ミトタンなどのアジュバント療法とのアジュバントとしてのオリゴヌクレオチドの使用の組み合わせと、放射線療法との組み合わせが好ましい場合がある。
【0064】
[実施態様:卵巣がん]
現在、卵巣がんは女性で6番目に多い悪性疾患である(ガイドライン卵巣がん2013)。卵巣の外科的切除が治療の本質的な部分を構成する。卵巣がんの場合、診断の結果は組織除去の程度に強く影響する。卵巣自体に加えて、卵管とリンパ節、そして後期ステージでは、他の臓器、特に腹膜内に延び又は腹膜に隣接する臓器もまた罹患する場合がある。腫瘍切除が可能な限り実施されるが、これらの場合、周囲の組織が既に罹患しているため、完全な除去が不可能なことがしばしばある。副腎皮質癌腫とは対照的に、腹腔鏡手術は推奨されない。
【0065】
ほとんどの場合、アジュバント化学療法が推奨される;この推奨の例外は、手術時の非常に初期の段階の症例に関連する。低分子量細胞増殖抑制剤であるカルボプラチンの全身適用が推奨され、これには、血球数の変化、肝臓と神経の機能障害、並びに心血管機能障害などの重大な副作用を伴うことがしばしばある。ステージ分類レベルが高い場合は、パクリタキセルとVEGFに対するモノクローナル抗体であるベバシズマブを使用する全身療法がまた推奨される。それにもかかわらず、再発が頻繁に発生する。
【0066】
本発明によれば、オリゴヌクレオチドは、再発又は転移を防止し、残りの腫瘍細胞又は転移と戦うために、腫瘍切除後に局所的に使用される。この目的のために、それらは、例えば、卵巣及び他の組織を除去した後の手術中に、生じた手術縁と周囲組織に適用される。これには、周囲の結合及び脂肪組織、特に腹膜の一部がまた含まれる。
【0067】
成人の卵巣サイズは約3.5×2×1cmで、その体積は約3~6mlになる。副腎皮質癌腫と同様に、ゲル様製剤を含む様々な製剤が適している。副腎皮質に比べて臓器の容積が小さいにもかかわらず、卵巣の周囲の組織もまた多くコーティングされるべきであるため、1~5mlの容積が好ましくは使用される。ゲル容積は、好ましくは70マイクログラムを含み、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムを含む。ゲルは数週間以内に分解され、オリゴヌクレオチドの継続的な放出をもたらす。オリゴヌクレオチドは、担体が分解し又は細胞によって吸収される場合にのみゆっくりと放出されるように、粒子又はリポソームに充填されうる。粒子の分解速度は、架橋度などの製造パラメーターによって影響を受ける場合がある。1週間を超えるインビボ半減期が好ましく、2週間、4週間及び3ヶ月の半減期が特に好ましい。
【0068】
更なる例示的な実施態様では、例えば、コラーゲン製の弾性担体が使用され、これは、手術腔中に導入され、完全に又は部分的に卵巣の容積まで拡張する。担体は、好ましくは70マイクログラムを超え、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムの量でオリゴヌクレオチドを収容する。担体は数週間以内に体によって分解され、オリゴヌクレオチドの継続的な放出が可能になる。
【0069】
ゲル及び弾性担体の分解速度は、製造パラメーターによって、例えばコラーゲンの場合、コラーゲンの架橋度によって、制御されうる。1週間を超えるインビボ半減期が好ましく、2週間、4週間及び3ヶ月の半減期が特に好ましい。
【0070】
卵巣がんの場合、卵巣を取り巻く腹膜は大きな拡張を特徴とするため、オリゴヌクレオチドの液体製剤がまた有利である場合がある。この例における卵巣がんの注入容積は20mlであり、好ましくは70マイクログラムを超え、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムのオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、担体が分解され又は細胞によって吸収される場合にのみゆっくりと放出されるように、粒子又はリポソームに充填することができる。粒子の分解速度は、架橋度などの製造パラメーターによって影響を受ける場合がある。1週間を超えるインビボ半減期が好ましく、2週間、4週間及び3ヶ月の半減期が特に好ましい。
【0071】
オリゴヌクレオチドが長期間にわたって、特に数日間にわたって溶出する、より単純な形状を示す担体を使用することがまた有利である場合がある。柔軟なホイル又はロッドなど、体によって吸収されうる担体が特に有利である。より小さな粒子状担体は、ガーゼネットなどのネット、又はヒドロゲルで適用されうる。
【0072】
卵巣がんの場合、エアロゾル中のオリゴヌクレオチドの使用は、特に70マイクログラムの量、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムの量のオリゴヌクレオチドで好ましい場合がある。
【0073】
カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル及びベバシズマブなどのアジュバント細胞増殖抑制剤とのアジュバントとしてのオリゴヌクレオチドの使用の組み合わせと、放射線療法との組み合わせが好ましい場合がある。
【0074】
[例示的な実施態様:中皮腫]
悪性びまん性中皮腫は、胸膜、腹膜又は心膜の中皮細胞又は中皮下細胞に由来する腫瘍である。悪性胸膜中皮腫の患者の予後は不良であり、生存期間の中央値は4から12ヶ月である。根治的治療は現在利用できない。
【0075】
中皮腫の大部分(>80%)は胸膜に由来する。悪性中皮腫は比較的稀である。最も一般的には、それらはアスベストへの以前の曝露を示唆する(Neumann等,2013)。また、例えば2001年9月11日のニューヨークの世界貿易センターへの攻撃後の中皮腫の症例数は、その時に曝露された人において、今後15年間で大幅に増加することが予想される(Povtak,2016)。中皮腫のサブタイプに応じて、胸膜中皮腫の50%以上で、腫瘍細胞が付随する胸水中に放出される。
【0076】
中皮腫を治療するための標準治療法はない。推奨される治療概念は、単独の対症療法から、手術、化学療法及び放射線療法を含む積極的な集学的療法まで多岐にわたる。現在、肉眼で見える腫瘍の除去を可能な限り完全に達成するために、二通りの手術戦略、すなわち胸膜切除術/剥皮術又は胸膜外胸膜肺切除術が存在する。これらの切除は腹腔鏡下では実施されない。しかしながら、中皮腫のびまん性増殖のために、完全な腫瘍除去は一般に可能ではない。腫瘍の残存部分が残り、これを顕微鏡でしか検出できないことが多く、その場合はアジュバント放射線療法及び化学療法が推奨される(Rice,2011)。従来技術によれば、腹腔内カルボプラチン及びペメトレキセドの組み合わせが推奨される。患者の生存に関しては、チェックポイント阻害剤のアジュバント使用による成功が見られた(Scherpereel等 2017)。副腎皮質と卵巣の癌腫とは対照的に、手術腔のサイズは大きく異なる;胸膜中皮腫で肺を切除した後、それは数百平方センチメートルの面積で数リットルのサイズになる場合がある。これらの容積の場合、ゲルをまた有利に使用し、ブラシなどのツールで適用することができる;ゲル1ミリリットル当たり15又は70マイクログラムを超える濃度が好ましく、特に、ゲル1ミリリットル当たり250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムが好ましい。
【0077】
罹患した肺を保存する場合、好ましくは1ミリリットル当たり15又は70マイクログラムを超え、特に好ましくは1ミリリットル当たり250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムの濃度の液体製剤が適切である。
【0078】
大容量の切除の場合、切除された臓器の全容積に対応する全容積を有する弾性担体はもはや有用ではない。代わりに、オリゴヌクレオチドを直接収容し、リポソームなどの粒子に封入され、ゲルとしてコンジュゲートされ又は製剤化される、膜、ホイル又はガーゼなどの平らな担体が好ましく使用される。1平方センチメートル当たり10マイクログラムの充填密度が好ましく、特に好ましいのは、1平方センチメートル当たり50又は200マイクログラム又は1、5又は20ミリグラムのオリゴヌクレオチドの密度である。横隔膜の切除後に使用されるものなどの、インプラントに同じオリゴヌクレオチド密度でオリゴヌクレオチドを適用することが好ましい。
【0079】
また中皮腫の場合、特にオリゴヌクレオチドがこれらの支持体からより長い期間、特に数日にわたって溶出する場合、より単純な形状の支持体の使用が好ましい場合がある。柔軟なホイル又はロッドなど、体に吸収される担体が特に有利である。より小さな粒子状担体は、ガーゼネットなどのネット、又はヒドロゲルで適用されうる。
【0080】
中皮腫では、エアロゾル中のオリゴヌクレオチドの使用は、特に70マイクログラムの量で好ましく、特に250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムのオリゴヌクレオチドの量で好ましい場合がある。
【0081】
カルボプラチン及びペメトレキセドなどのアジュバント療法とのアジュバントとしてのオリゴヌクレオチドの使用の組み合わせと、放射線療法との組み合わせが好ましい場合がある。
【0082】
[実施態様:神経膠芽腫]
神経膠芽腫は、びまん性浸潤性の高度に悪性の神経膠腫に属し、16%の割合を持つ最も一般的な脳腫瘍である。WHOの分類によれば、これらは予後不良を伴うグレードIVの腫瘍として分類される。神経膠芽腫は著しく浸潤性の増殖を示したため、腫瘍の外科的切除による治癒は可能ではない。腫瘍量を外科的に可能な限り完全に減らすことが目標である。従って、放射線療法と化学療法を組み合わせたアジュバント療法が、欧州がん研究治療機構及びカナダ国立がん研究所臨床試験グループ(EORTC-NCIC)プロトコル(Javamanne等,2018)に従って推奨される。しかし、それは、外科的創傷治癒プロセスが進行したとき最も早くは手術後4週間で始まる。現在の治療基準は、遺伝子毒性と催奇形性を示す経口アルキル化化学療法薬であるテモゾロミド(Davis,2016)である。上記のようなアジュバントとしてのGliadelTMウエハーの術中沈着は、治療の標準の一部ではないが、テモゾロミド治療と一緒に実施される治療変形態様を構成する。対照的に、テモゾロミドとベバビズマブの同時使用は推奨されない(Holdhoff等,2011)。治療の新しい実験的選択肢には、単球を患者から取り出し、体外で腫瘍抗原を運ぶ樹状細胞に分化させ、その後患者に戻される手順であるDCVaxが含まれる。しかし、神経膠芽腫では、手術腔のサイズと形状が個別に異なる。しかし、手術腔のサイズはまた数ミリリットルの量に達し、副腎皮質及び卵巣癌腫のサイズに匹敵する。しかし、形状は異なり、サイズと同じくらい個性的である。加えて、神経膠芽腫の場合、ほぼ専ら部分切除が実施される。
【0083】
神経膠芽腫の場合の本発明に係る使用では、ブラシなどの器具を用いて創傷縁に適用されるゲル様製剤もまた特に適している。1から5ミリリットルのゲル容積は、70マイクログラムを含むことが好ましく、特に、250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムを含むことが好ましい。ゲルは数週間以内に分解され、オリゴヌクレオチドの継続的な放出が可能になる。オリゴヌクレオチドは、担体が分解され又は細胞によって吸収された場合にのみゆっくりと放出されるように、粒子又はリポソームに充填されうる。粒子の分解速度は、架橋度などの製造パラメーターによって影響を受ける場合がある。1週間を超えるインビボ半減期が好ましく、2週間、4週間、3ヶ月又は1年の半減期が特に好ましい。
【0084】
更なる例示的な実施態様では、例えば、コラーゲン製の弾性担体が使用され、これが、手術腔に導入され、完全に又は部分的に手術腔の容積まで拡張される。一又は複数の担体は、好ましくは70マイクログラムを超え、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムの量のオリゴヌクレオチドを収容する。一又は複数の担体は、数週間以内に体によって分解され、オリゴヌクレオチドの継続的な放出が可能になる。
【0085】
ゲル又は弾性担体の分解速度は、製造パラメーターによって、例えばコラーゲンの場合、コラーゲンの架橋度によって、制御されうる。1週間を超えるインビボ半減期が好ましく、2週間、4週間及び3ヶ月の半減期が特に好ましい。
【0086】
神経膠芽腫の場合、神経膠芽腫が浸潤以外の方法でも広がるかどうかが不明であるため、オリゴヌクレオチドの液体製剤がまた有利である場合がある。神経膠芽腫の場合、注入容量は、例えば、20mlに達し、好ましくは70マイクログラムを超え、特に好ましくは250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムのオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、担体が分解され又は細胞によって吸収された場合にのみゆっくりと放出されるように、粒子又はリポソームに充填されうる。粒子の分解速度は、架橋度などの製造パラメーターによって影響を受ける場合がある。1週間を超えるインビボ半減期が好ましく、2週間、4週間及び3ヶ月の半減期が特に好ましい。
【0087】
神経膠芽腫の場合、エアロゾル中のオリゴヌクレオチドの使用が、特に70マイクログラムの量で好ましく、特に250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムのオリゴヌクレオチドの量で好ましい場合がある。
【0088】
オリゴヌクレオチドが長期間にわたって、特に数日間にわたって溶出される、より単純な形状を示す担体を使用することがまた有利である場合がある。柔軟なホイル又はロッドなど、体によって吸収されうる担体が特に有利である。より小さな粒子状担体は、ガーゼネットなどのネット、又はヒドロゲルで適用されうる。別の例は、Gliadelで使用されるウエハーである。
【0089】
DCVaxなどの細胞療法との、テモゾロミドなどのアジュバント細胞増殖抑制剤とのアジュバントとしてのオリゴヌクレオチドの使用の組み合わせと、放射線との組み合わせが好ましい場合がある。
【0090】
[実施態様:腹膜癌腫症]
腹膜癌腫症は、複数の悪性腫瘍細胞による腹膜の侵襲を指す。腹膜がんの原因は通常、腹膜自体の腫瘍ではなく、別の腹部臓器の悪性腫瘍である。最も一般的には、これは、上記のように、胃腸管、膵臓又は卵巣の進行した転移性腫瘍である。場合によっては、原発腫瘍の特定は可能ではない(https://flexikon.doccheck.com/de/Peritonealkarzinose)。
【0091】
10万人当たり15~20症例で、腹膜癌腫症は希にしか発生しないが、増加傾向にある;ドイツでは、年間約35000件の新規症例がある(Glockzin等,2007)。腹膜がんの生涯予後は、診断後平均して約6ヶ月である。
【0092】
進行性でない限り、腹膜癌腫症は、外科的細胞切除と術中の温度腹腔内化学療法を組み合わせた集学的療法を益々使用して治療されている(Piso等,2011)。上記のように、PIPACもまた使用される。
【0093】
副腎皮質及び卵巣癌腫とは対照的に、罹患臓器の数が様々なため、手術腔のサイズは大きく異なる。それにもかかわらず、ゲルの使用は、これらの容積には有利であり、ゲルは、ブラシなどのツールで適用される;ゲル1ミリリットル当たり15又は70マイクログラムを超える濃度が好ましく、特に好ましいのは、ゲル1ミリリットル当たり250又は1000マイクログラムを超える濃度、又は5、25又は100ミリグラムである。
【0094】
大容量切除の場合、切除された臓器の全容積に対応する全容積を有する弾性担体はもはや有用ではない。代わりに、オリゴヌクレオチドを直接収容し、リポソームなどの粒子に封入され、ゲルとしてコンジュゲートされ又は製剤化される、膜、ホイル又はガーゼなどの平らな担体が好ましく使用される。1平方センチメートル当たり10マイクログラムの充填密度が好ましく、特に好ましいのは、1平方センチメートル当たり50又は200マイクログラム又は1、5又は20ミリグラムのオリゴヌクレオチドの密度である。横隔膜の切除後に使用されるものなどの、インプラントに同じオリゴヌクレオチド密度でオリゴヌクレオチドを適用することが好ましい。
【0095】
また、腹膜癌腫症の場合、特にオリゴヌクレオチドがこれらの支持体からより長い期間、特に数日にわたって溶出する場合、より単純な形状の支持体の使用が好ましい場合がある。柔軟なホイル又はロッドなど、体により吸収される担体が特に有利である。より小さな粒子状担体は、ガーゼネットなどのネット、又はヒドロゲルで適用されうる。
【0096】
腹膜癌腫症では、エアロゾル中のオリゴヌクレオチドの使用は、特に70マイクログラムの量で好ましく、特に250又は1000マイクログラムを超え、又は5、25又は100ミリグラムのオリゴヌクレオチドの量で好ましい場合がある。
【0097】
カルボプラチン及びペメトレキセドなどのアジュバント療法とのアジュバントとしてのオリゴヌクレオチドの使用の組み合わせと、放射線療法との組み合わせが好ましい場合がある。
【0098】
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