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特表2022-522435流体送達用マルチヘッド型カテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(54)【発明の名称】流体送達用マルチヘッド型カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/14 20060101AFI20220412BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61M25/14
A61M25/00 600
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549833
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(85)【翻訳文提出日】2021-09-20
(86)【国際出願番号】 US2020017588
(87)【国際公開番号】W WO2020176243
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】16/286,755
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハラージュ、スティーブ・エス
(72)【発明者】
【氏名】シェピス、エリック・エー
(72)【発明者】
【氏名】ミナ、トーマス・ディー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA14
4C267BB02
4C267BB09
4C267BB11
4C267BB40
4C267CC06
(57)【要約】
本開示は、流体送達用のマルチヘッド型カテーテルを提供する。本開示のマルチヘッド型カテーテルは、軸に沿って延びる第1のチューブであって、該第1のチューブの灌流部分を画定するべく該第1のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第1のチューブと、軸に沿って延びる第2のチューブであって、その少なくとも一部が第1のチューブ内に配置され、かつ、該第2のチューブの灌流部分を画定するべく該第2のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第2のチューブと、を含む。第2のチューブの遠位端部は、第1のチューブの壁部に沿って設けられた開口部から第1のチューブの外部に延出するように構成されている。第1のチューブの灌流部分及び第2のチューブの灌流部分は、外科的創傷部位内の互いに異なる解剖学的領域に流体を送達するように、互いに独立して配置することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチヘッド型カテーテルであって、
軸に沿って延びる第1のチューブであって、該第1のチューブの灌流部分を画定するべく該第1のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第1のチューブと、
前記軸に沿って延びる第2のチューブであって、その少なくとも一部が前記第1のチューブ内に配置され、かつ、該第2のチューブの灌流部分を画定するべく該第2のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第2のチューブと、を含み、
前記第2のチューブの前記遠位端部は、前記第1のチューブの壁部に沿って設けられた開口部から前記第1のチューブの外部に延出するように構成されている、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第2のチューブの近位端部は、前記第1のチューブの近位端部内に配置される、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項3】
請求項1に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第1のチューブの前記開口部は、前記第1のチューブの前記潅流部分の近位に設けられている、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項4】
請求項1に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第1のチューブの前記少なくとも1つの出口孔、及び/または、前記第2のチューブの前記少なくとも1つの出口孔は、複数の出口孔を含む、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項5】
請求項1に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第1のチューブ及び前記第2のチューブは、前記第1のチューブ及び前記第2のチューブを介して流体を互いに独立して送達するために、マルチアクション式流体注入ポンプに接続されるように構成されている、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項6】
請求項1に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第2のチューブの前記灌流部分は、前記開口部から前記第1のチューブの外部に延出するように構成されている、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項7】
請求項1に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第1のチューブは、前記第1のチューブの近位端部に配置された第1の硬質ポートを有し、
前記第1の硬質ポートは、ポンプに接続されるように構成されており、
前記第2のチューブは、前記第2のチューブの近位端部に配置された第2の硬質ポートを有し、
前記第2の硬質ポートは、前記ポンプに接続されるように構成されている、
マルチヘッド型カテーテル。
【請求項8】
請求項7に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第1の硬質ポート及び前記第2の硬質ポートは、互いに結合してハブを形成するように構成されている、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項9】
請求項8に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第1の硬質ポートの近位端部は、結合タブを有し、
前記第2の硬質ポートの遠位端部は、前記結合タブと結合することができるように構成された結合ナットを有する、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項10】
請求項7に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第1の硬質ポートは、前記軸に沿って延びる本体部と、前記軸に対して或る角度をなして延びるコネクタとを含み、
前記コネクタは、前記ポンプに接続されるように構成されている、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項11】
請求項1に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第1のチューブの前記開口部は、自己封止端部を有する、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項12】
請求項1に記載のマルチヘッド型カテーテルであって、
前記第2のチューブは、前記第1のチューブよりも硬い、マルチヘッド型カテーテル。
【請求項13】
流体送達システムであって、
マルチヘッド型カテーテルと、
マルチアクション式流体注入ポンプと、を備え、
前記マルチヘッド型カテーテルは、
軸に沿って延びる第1のチューブであって、該第1のチューブの灌流部分を画定するべく該第1のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第1のチューブと、
前記軸に沿って延びる第2のチューブであって、その少なくとも一部が前記第1のチューブ内に配置され、かつ、該第2のチューブの灌流部分を画定するべく該第2のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第2のチューブと、を含み、
前記第2のチューブの前記遠位端部は、前記第1のチューブの壁部に沿って設けられた開口部から前記第1のチューブの外部に延出するように構成されており、
前記マルチアクション式流体注入ポンプは、前記第1のチューブ及び前記第2のチューブを介して、流体を互いに独立して送達するように構成されている、流体送達システム。
【請求項14】
請求項13に記載の流体送達システムであって、
前記第1のチューブは、患者の解剖学的領域内に挿入されるように構成されている、流体送達システム。
【請求項15】
請求項13に記載の流体送達システムであって、
前記第2のチューブは、前記第1のチューブの近位端部を通して患者の解剖学的領域内に挿入されるように構成されている、流体送達システム。
【請求項16】
請求項13に記載の流体送達システムであって、
前記第2のチューブの前記遠位端部は、前記第1のチューブを患者の解剖学的領域に挿入する間、前記第1のチューブ内に位置するように構成されている、流体送達システム。
【請求項17】
請求項13に記載の流体送達システムであって、
前記第2のチューブの前記遠位端部は、前記第1のチューブを患者の解剖学的領域に挿入した後に前記第1のチューブの前記開口部から引き出され、前記患者の解剖学的領域に手動で配置されるように構成されている、流体送達システム。
【請求項18】
請求項13に記載の流体送達システムであって、
前記マルチヘッド型カテーテルの前記第1のチューブを挿通させることができるように構成されたチューブを含むイントロデューサをさらに備える、流体送達システム。
【請求項19】
請求項13に記載の流体送達システムであって、
前記マルチアクション式流体注入ポンプは、第1の流量で前記第1のチューブを介して流体を送達し、かつ、第2の流量で前記第2のチューブを介して流体を送達することができるように構成されている、流体送達システム。
【請求項20】
請求項19に記載の流体送達システムであって、
前記第1の流量及び前記第2の流量は、互いに等しくない、流体送達システム。
【請求項21】
神経ブロックを行う方法であって、
マルチヘッド型カテーテルを提供するステップであって、前記マルチヘッド型カテーテルは、軸に沿って延びる第1のチューブであって、該第1のチューブの灌流部分を画定するべく該第1のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第1のチューブと、前記軸に沿って延びる第2のチューブであって、その少なくとも一部が前記第1のチューブ内に配置され、かつ、該第2のチューブの灌流部分を画定するべく該第2のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第2のチューブと、を含み、前記第2のチューブの前記遠位端部は、前記第1のチューブの壁部に沿って設けられた開口部から前記第1のチューブの外部に延出するように構成されている、該ステップと、
第1のポンプチューブ及び第2のポンプチューブを含むマルチアクション式流体注入ポンプを提供するステップと、
患者の開いた外科的創傷部位に隣接する前記患者の皮膚を通じてイントロデューサを挿入するステップと、
前記イントロデューサを前記外科的創傷部位に向けて前進させるステップと、
前記マルチヘッド型カテーテルの前記第1のチューブを、前記イントロデューサを通じて前記患者の前記外科的創傷部位に挿入するステップと、
前記マルチヘッド型カテーテルの前記第1のチューブの前記開口部から、前記マルチヘッド型カテーテルの前記第2のチューブを引き出すステップと、
前記第2のチューブの前記灌流部分を、前記外科的創傷部位からアクセスされる前記患者の体内の第2の位置に配置するステップと、
前記第1のチューブの前記灌流部分を、前記外科的創傷部位からアクセスされる前記患者の体内の第1の位置に配置するステップと、
前記患者から前記イントロデューサを抜去し、次いで、前記第1のチューブから前記イントロデューサを除去するステップと、
前記マルチアクション式流体注入ポンプの前記第1のポンプチューブを前記マルチヘッド型カテーテルの前記第1のチューブに接続し、前記マルチアクション式流体注入ポンプの前記第2のポンプチューブを前記マルチヘッド型カテーテルの前記第2のチューブに接続するステップと、
前記第1のチューブ及び前記第2のチューブを介して、前記マルチアクション式流体注入ポンプから前記第1の位置及び前記第2の位置に流体を互いに独立して送達するステップと、を含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
前記第1のチューブは、前記第1のチューブの近位端部に配置された第1の硬質ポートを有し、
前記第1の硬質ポートは、ポンプに接続されるように構成されており、
前記第2のチューブは、前記第2のチューブの近位端部に配置された第2の硬質ポートを有し、
前記第2の硬質ポートは、前記マルチアクション式流体注入ポンプに接続されるように構成されており、
当該方法は、
前記第1の硬質ポートを前記第2の硬質ポートと結合させて、流体密封シールを有する一体型ハブを形成するステップをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年2月27日出願の米国特許出願第16/286、755号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明の主題は、概して、流体送達用のカテーテルに関し、より詳細には、外科的創傷部位内の解剖学的組織に流体を互いに独立して送達するように構成された少なくとも2つのチューブを有するマルチヘッド型カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
手術または他の処置の結果として生じる患者の外傷、疼痛、及び不快感は、通常、麻薬性薬剤または非麻薬性薬剤の投与によって管理される。麻薬は、身体の局所的な対象領域だけでなく、患者の身体的及び精神的な健康全体に影響を及ぼすため、一般的に、疼痛管理システムとしては好ましくない。また、麻薬には、吐き気、嘔吐、腸閉塞、呼吸抑制、認知過程の阻害、食欲の変化、及び、中毒を引き起こす可能性などの様々な望ましくない副作用がある。麻薬を使用する場合、麻薬は、筋肉内注射、硬膜外注射、静脈内注射、または経口投与などの様々な既知の方法を用いて投与することができる。
【0004】
術後の疼痛管理は、一般的に、非麻薬性薬剤を患者に投与することによって対処される。一般的に、薬剤は、手術後数日間にわたって、患者の硬膜外腔に直接投与される。しかしながら、麻薬性薬剤または非麻薬性薬剤を患者に投与すると、薬剤の副作用のため、または、薬剤を投与するのに必要な機器を持たせて患者を帰宅させることができないため、多くの場合は、病院スタッフによるモニタリングが必要となったり、入院期間が長くなったりする。
【0005】
現場での薬剤投与方法は、1日に数回、注射器と針を使用して、外科医が患者の皮膚の切開部位またはその近傍に薬剤を注射する。薬剤を注射するたびに、患者の皮膚への針の穿刺が何度も行われる。敏感な切開部位またはその近傍に針を何度も穿刺するので、この薬剤投与方法は、患者の外傷、疼痛、及び不快感をさらに悪化させる。
【0006】
創傷部位への別の直接的な薬剤投与方法は、外科医が創傷部位を閉じる前に、創傷部位に薬剤を直接配置することを含む。しかしながら、この方法は、通常は約4~6時間しか持続しない。患者の創傷部位の疼痛管理は、多くの場合、この時間をはるかに超える期間にわたって行う必要がある。
【0007】
創傷部位へのさらに別の直接的な薬剤投与方法は、創傷部位内の神経束を麻酔するべく一定期間(例えば、手術後2~5日間)にわたって麻酔薬を低流量で送達するために、外科医が創傷部位を閉じる前に、創傷部位内にカテーテルを配置することを伴う。この方法は、流体ポンプと組み合わせることによって、他の既存の方法よりも長期的な疼痛管理を可能にする。しかしながら、この方法は、創傷部位における単一の位置にしか薬剤を投与することができない。手術部位の疼痛管理は、例えば、疼痛や不快感を引き起こす複数の神経を遮断するために、多くの場合、複数の位置において行う必要がある。
【0008】
このため、手術または他の処置の結果として生じる患者の外傷、疼痛、及び不快感を軽減することができる疼痛管理システムが求められている。とりわけ、敏感な切開部位またはその近傍への針の穿刺を何度も繰り返すことなく、外科的創傷またはその近傍の複数の領域に疼痛管理薬剤を送達することができる疼痛管理システムがあれば有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、マルチヘッド型カテーテルを提供する。本開示のマルチヘッド型カテーテルは、軸に沿って延びる第1のチューブであって、該第1のチューブの灌流部分を画定するべく該第1のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第1のチューブと、軸に沿って延びる第2のチューブであって、その少なくとも一部が第1のチューブ内に配置され、かつ、該第2のチューブの灌流部分を画定するべく該第2のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第2のチューブと、を含む。第2のチューブの遠位端部は、第1のチューブの壁部に沿って設けられた開口部から第1のチューブの外部に延出するように構成されている。
【0010】
特定の一実施形態では、第2のチューブの近位端部は、第1のチューブの近位端部内に配置される。
【0011】
別の実施形態では、第1のチューブの開口部は、第1のチューブの潅流部分の近位に設けられている。
【0012】
別の実施形態では、第1のチューブの少なくとも1つの出口孔、及び/または、第2のチューブの少なくとも1つの出口孔は、複数の出口孔を含む。
【0013】
さらに別の実施形態では、第1のチューブ及び第2のチューブは、第1のチューブ及び第2のチューブを介して流体を互いに独立して送達するために、マルチアクション式流体注入ポンプに接続されるように構成されている。
【0014】
さらに別の実施形態では、第2のチューブの灌流部分は、開口部から第1のチューブの外部に延出するように構成されている。
【0015】
別の実施形態では、第1のチューブは、第1のチューブの近位端部に配置された第1の硬質ポートを有し、第1の硬質ポートは、ポンプに接続されるように構成されており、第2のチューブは、第2のチューブの近位端部に配置された第2の硬質ポートを有し、第2の硬質ポートは、上記ポンプに接続されるように構成されている、さらに、第1の硬質ポート及び第2の硬質ポートは、互いに結合してハブを形成するように構成されている。また、第1のチューブの硬質ポートの近位端部は、結合タブを有し、第2のチューブの硬質ポートの遠位端部は、結合タブと結合することができるように構成された結合ナットを有する。加えて、第1のチューブの硬質ポートは、軸に沿って延びる本体部と、軸に対して或る角度をなして延びるコネクタとを含み、コネクタは、上記ポンプに接続されるように構成されている。
【0016】
別の実施形態では、第1のチューブの開口部は、自己封止端部を有する。
【0017】
1以上の一実施形態では、第2のチューブは、第1のチューブよりも硬い。
【0018】
また、本開示は、流体送達システムを提供する。本開示の流体送達システムは、マルチヘッド型カテーテルを備える。マルチヘッド型カテーテルは、軸に沿って延びる第1のチューブであって、該第1のチューブの灌流部分を画定するべく該第1のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第1のチューブと、軸に沿って延びる第2のチューブであって、その少なくとも一部が第1のチューブ内に配置され、かつ、該第2のチューブの灌流部分を画定するべく該第2のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第2のチューブと、を含み、第2のチューブの遠位端部は、第1のチューブの壁部に沿って設けられた開口部から第1のチューブの外部に延出するように構成されている。また、本開示の流体送達システムは、マルチアクション式流体注入ポンプを備える。マルチアクション式流体注入ポンプは、第1のチューブ及び第2のチューブを介して、流体を互いに独立して送達するように構成されている。
【0019】
特定の一実施形態では、第1のチューブは、患者の解剖学的領域内に挿入されるように構成されている。
【0020】
別の実施形態では、第2のチューブは、第1のチューブの近位端部を通して患者の解剖学的領域内に挿入されるように構成されている。
【0021】
別の実施形態では、第2のチューブの遠位端部は、第1のチューブを患者の解剖学的領域に挿入する間、第1のチューブ内に位置するように構成されている。
【0022】
さらに別の実施形態では、第2のチューブの遠位端部は、第1のチューブを患者の解剖学的領域に挿入した後に第1のチューブの開口部から引き出され、患者の解剖学的領域に手動で配置されるように構成されている。
【0023】
さらに別の実施形態では、本開示の流体送達システムは、マルチヘッド型カテーテルの第1のチューブを挿通させることができるように構成されたチューブを含むイントロデューサをさらに備える。
【0024】
さらに別の実施形態では、マルチアクション式流体注入ポンプは、第1の流量で第1のチューブを介して流体を送達し、かつ、第2の流量で第2のチューブを介して流体を送達することができるように構成されている。さらに、第1の流量及び第2の流量は、互いに等しくなくてもよい。
【0025】
また、本開示は、神経ブロックを行う方法を提供する。本開示の方法は、マルチヘッド型カテーテルを提供するステップであって、マルチヘッド型カテーテルは、軸に沿って延びる第1のチューブであって、該第1のチューブの灌流部分を画定するべく該第1のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第1のチューブと、軸に沿って延びる第2のチューブであって、その少なくとも一部が第1のチューブ内に配置され、かつ、該第2のチューブの灌流部分を画定するべく該第2のチューブの遠位端部に設けられた少なくとも1つの出口孔を有する、該第2のチューブと、を含み、第2のチューブの遠位端部は、第1のチューブの壁部に沿って設けられた開口部から第1のチューブの外部に延出するように構成されている、該ステップと、第1のポンプチューブ及び第2のポンプチューブを含むマルチアクション式流体注入ポンプを提供するステップと、患者の開いた外科的創傷部位に隣接する患者の皮膚を通じてイントロデューサを挿入するステップと、イントロデューサを外科的創傷部位に向けて前進させるステップと、マルチヘッド型カテーテルの第1のチューブを、イントロデューサを通じて患者の外科的創傷部位に挿入するステップと、マルチヘッド型カテーテルの第1のチューブの開口部から、マルチヘッド型カテーテルの第2のチューブを引き出すステップと、第2のチューブの灌流部分を、外科的創傷部位からアクセスされる患者の体内の第2の位置に配置するステップと、第1のチューブの灌流部分を、外科的創傷部位からアクセスされる患者の体内の第1の位置に配置するステップと、患者からイントロデューサを抜去し、次いで、第1のチューブからイントロデューサを除去するステップと、マルチアクション式流体注入ポンプの第1のポンプチューブをマルチヘッド型カテーテルの第1のチューブに接続し、マルチアクション式流体注入ポンプの第2のポンプチューブをマルチヘッド型カテーテルの第2のチューブに接続するステップと、第1のチューブ及び第2のチューブを介して、マルチアクション式流体注入ポンプから第1の位置及び第2の位置に流体を互いに独立して送達するステップと、を含む。
【0026】
本開示の方法の特定の一実施形態では、第1のチューブは、第1のチューブの近位端部に配置された第1の硬質ポートを有し、第1の硬質ポートは、ポンプに接続されるように構成されており、第2のチューブは、第2のチューブの近位端部に配置された第2の硬質ポートを有し、第2の硬質ポートは、マルチアクション式流体注入ポンプに接続されるように構成されており、本開示の方法は、第1の硬質ポートを第2の硬質ポートと結合させて、流体密封シールを有する一体型ハブを形成するステップをさらに含む。
【0027】
本発明の上記及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付された特許請求の範囲を参照することによって、より良く理解できるであろう。添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の実施形態を図示し、本明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0028】
当業者を対象にした本発明の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)が、添付図面を参照して、本明細書に説明されている。
【0029】
図1】本発明のマルチヘッド型カテーテルの斜視図である。
図2A図1のマルチヘッド型カテーテルの側面図であり、第2のチューブの遠位端部が第1のチューブ内に配置されている状態を示す。
図2B図1のマルチヘッド型カテーテルの側面図であり、第2のチューブの遠位端部を第1のチューブの開口部から第1のチューブの外部に引き出した状態を示す。
図2C図1のマルチヘッド型カテーテルの側面図であり、第2のチューブの遠位端部を第1のチューブの開口部から第1のチューブの外部にさらに引き出した状態を示す。
図3図1のマルチヘッド型カテーテルの近位端を示す斜視図である。
図4図2Aの4-4線に沿って切断したマルチヘッド型カテーテルの断面図である。
図5A】本発明のマルチヘッド型カテーテルの出口孔の別の実施形態を示す図である。
図5B】本発明のマルチヘッド型カテーテルの出口孔のさらに別の実施形態を示す図である。
図6A】本発明のマルチヘッド型カテーテルのカテーテルチューブの別の実施形態を示す図である。
図6B】本発明のマルチヘッド型カテーテルのカテーテルチューブの別の実施形態を示す図である。
図7】本発明のマルチヘッド型カテーテルのカテーテルチューブのさらに別の実施形態を示す図である。
図8図1のマルチヘッド型カテーテルの分解図である。
図9】一体型一ハブを形成するべく互いに結合された第1の硬質ポート及び第2の硬質ポートを有する、図1のマルチヘッド型カテーテルを示す図である。
図10】本発明のマルチヘッド型カテーテルを挿入するための例示的なイントロデューサ・ニードルアセンブリを示す図である。
図11】患者組織への流体送達のために、図1のマルチヘッド型カテーテルを配置する方法を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の様々な実施形態及びその1以上の実施例について詳細に説明する。各実施例は、本発明を説明するために提示されたものであり、本発明を限定するものではない。実際、本発明において、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な変更形態及び変形形態が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、或る実施形態の一部として例示または説明された特徴を、別の実施形態と共に用いて、さらなる別の実施形態を創出することもできる。したがって、本発明は、添付された特許請求の範囲及びその均等物の範囲に含まれる限り、そのような変更形態及び変形形態を包含することを意図している。
【0031】
本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、「約」、または「一般的に」という用語は、或る値を修飾するために使用する場合、その値の±5%の値も、開示された実施形態の範囲内に含まれることを示す。
【0032】
本明細書に開示されるシステム及びその使用方法の説明を補助するために、以下の用語が使用される。「創傷部位」とは、患者の身体における、外科的処置が施された領域である。「切開部位」とは、創傷部位に到達するために、外科医が患者の皮膚から入る領域である。切開部位は、外科医によって形成される必要はなく、例えば、患者が開いた創傷を有する場合には、外科医は、その開いた創傷を通って、創傷部位に到達することができる。「穿孔部位」とは、患者の皮膚を穿孔した部位であり、その穿孔部位を通してカテーテルを創傷部位に到達させて、薬剤を投与することができる。
【0033】
「遠位」という用語は、指定された部位から離れた部位を指す。「近位」という用語は、指定された部位に近い部位を指す。別の言い方をすると、「近位」と称される部位は、「遠位」と称される部位よりも、指定された基準点に明らかに近い。「下流」という用語は、注入ポンプから創傷部位へ液体薬剤が移動する方向を指す。別の物体または部位に対して「下流」と称される物体または部位は、その「下流」の物体または部位が、他の物体または部位と比べて、創傷部位の近位にあることを指す。同様に、別の物体または部位に対して「上流」と称される物体または部位は、その「上流」物体または部位が、他の物体または部位と比べて、注入ポンプ部位の近位にあることを意味する。別の言い方をすると、「下流」の物体は創傷部位の近位にあり、「上流」の物体は創傷部位の遠位にある。
【0034】
概して言えば、本発明は、軸に沿って延在する第1のチューブと、軸に沿って延在する第2のチューブとを含むマルチヘッド型カテーテルに関する。第2のチューブの少なくとも一部は、第1のチューブ内に配置されている。第1のチューブ及び第2のチューブの各々は、第1のチューブの灌流部分及び第2のチューブの灌流部分を画定するために、第1のチューブの遠位端部及び第2のチューブの遠位端部にそれぞれ設けられた少なくとも1つの出口孔を含む。第2のチューブの遠位端部は、第1のチューブの壁部に沿って設けられた開口部から第1のチューブの外部に延出するように構成されている。第1のチューブは、流体を第1のチューブに送達するように構成された第1の硬質ポートに接続されている。また、第2のチューブは、流体を第2のチューブに送達するように構成された第2の硬質ポートに接続されている。第1の硬質ポート及び第2の硬質ポートは、互いに結合して一体型ハブを形成するように構成され得る。本発明のマルチヘッド型カテーテルの具体的な特徴は、図1図7を参照することによって、より良く理解することができるであろう。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態のマルチヘッド型カテーテル100を示す。本発明のマルチヘッド型カテーテル100は、第1のチューブ110と第2のチューブ120とを含む。第1のチューブ110及び第2のチューブ120は両方とも、X軸方向に沿って、互いに同軸的に延びている。図1図2A図2C、及び図4参照に示すように、第2のチューブ120は、第1のチューブ110の内腔111内に配置することができるように、第1のチューブ110の内径よりも小さい外径を有する。
【0036】
図1に示すように、第1のチューブ110は、軸Xに沿って近位端112から遠位端114まで延びている。図4に示すように、第1のチューブ110は、その内腔111を取り囲む壁部117を有する。第1のチューブ110の壁部117は、遠位端114の近くに、少なくとも1つの出口孔118を有する。例えば、図1に示す実施形態では、第1のチューブ110は、複数の出口孔118を有する。出口孔118を有する部分の長さにより、第1のチューブ110の灌流部分119が画定される。出口孔118は、第1のチューブ110の壁部117に沿って半径方向に設けてもよいし、あるいは、第1のチューブ110の遠位端114の近くに軸方向に沿って設けてもよい。第1のチューブ110は、壁部117に、第2のチューブ120を通過させることができる開口部116をさらに有する。開口部116は、開口部116をシールして開口部116からの流体の漏出を防止する自己封止端部115を有する。
【0037】
マルチヘッド型カテーテル100の第1のチューブ110は、柔軟性、軽量性、強度、平滑度、及び患者の解剖学的系に対する非反応性、すなわち安全性という目的を十分に考慮して、様々な材料から形成することができる。第1のチューブ110の形成に適した材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエステル、ポリウレタン、それらの任意のコポリマー、及び当技術分野で知られている他の材料が挙げられる。第1のチューブ110の形成に適した製造プロセスの非限定的な例は、外側チューブと、外側チューブよりも薄くて硬い内側チューブとの2つのチューブの共押出し成形である(共押出し成形は、押出チューブの製造分野の当業者に知られており、理解されているプロセスである)。追加の非限定的な例としては、第1のチューブ110の壁部117の内側に配置されるワイヤなどの補強インサートを使用すること、螺旋状に巻かれた補強材料を使用すること、または第1のチューブ110の壁部117に組み込まれる安定化メッシュを使用することなどが挙げられる。このような補強材料は、第1のチューブ110の近位端112と遠位端114との間、またはその任意の部分(ただし開口部116を除く)に延在する壁部117内に、第1のチューブ110の長さ方向に沿って延びるように配置される。それに加えてまたはその代わりに、第1のチューブ110の遠位端114は、補強材料、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルエラストマー、テトロフルオロエチレン、または、置換もしくは未置換のポリアミドポリマーなどのポリアミドから形成してもよい。また、第1のチューブ110の遠位端114は、ポリアミドを硬化させること、ポリアミドのデュロメータを増加させること、または、金属もしくは金属合金を埋め込むことなどにより、さらに補強することができる。補強材料を使用することにより、第1のチューブ110の遠位端114は、患者の体内への挿入時に第1のチューブ110に加わる圧力に耐えることができる。
【0038】
第1のチューブ110の開口部116に設けられた自己封止端部115は、軟質ポリマー材料、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリバルカナート、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、架橋エラストマー、または他の軟質デュロメータ材料から形成することができる。一実施形態では、開口部116を含む第1のチューブ110の軸方向部分150は、自己封止端部115を形成する軟質ポリマー材料から形成してもよい。また、第1のチューブ110の残りの部分152は、X軸方向に概ね延びる第1のチューブ110の形状を維持するために、より硬い材料から形成してもよい。
【0039】
第1のチューブ110の壁部117の材料及び厚さは、カテーテルの標的位置、ニードルの除去後にカテーテル100の第1のチューブ110を患者の体内に再配置する必要性、及び追加の考慮事項に基づいて選択することができる。例えば、ニードルの除去後に第1のチューブ110を患者の体内に再配置する必要がある場合には、より厚い本体またはより頑丈な材料を選択するとよい。一方、第1のチューブ110を患者の体内に再配置する必要性が低い領域では、嵩を減らして快適性を潜在的に高めるため、より薄いまたはより脆弱な材料を選択するとよい。また、ニードル、トンネラ、またはガイドワイヤを必要としない状況では、補強材料を単独で、または、より厚いもしくはより頑丈な材料と組み合わせて使用してもよい。この場合、第1のチューブ110は、トンネラ、ニードル、またはガイドワイヤなしで使用できることに留意されたい。また、第1のチューブ110に使用される補強材料またはより厚いもしくはより強い本体部により、患者の体内への配置中に加えられる力に耐えるためにスリーブまたは追加の被覆材料の使用を必要とする従来のカテーテルと比較して、本開示の第1のチューブ110を独立して使用することが可能になる。
【0040】
ある可能な構成では、第1のチューブ110は、約1.27~1.65mm(約0.050~0.065インチ)の範囲の外径を有する16~18ゲージ(1.65~1.27mm)のカテーテルチューブであり得る。第1のチューブ110の近位端112から遠位端114までの全長は、約30~91cm(約12~36インチ)の範囲、例えば約45~90cm(約18~35インチ)の範囲、または例えば約61~76cm(約24~30インチ)の範囲であり得る。
【0041】
第1のチューブ110の出口孔118の直径は、約0.025~0.76mm(約0.001~0.03インチ)の範囲であり得る。さらなる実施形態では、出口孔118のいくつかは、かなり大きな直径を有していてもよいし、または、かなり小さな直径を有していてもよい。第1のチューブ110が様々な直径サイズの出口孔118を有する実施形態では、各直径サイズの出口孔の数の比率は、厳密に均等であってもよい。または、他の実施形態では、直径サイズが大きい出口孔の数は、直径サイズが小さい出口孔の数よりも多くてもよく、例えば、直径サイズが大きい出口孔の数は、直径サイズが小さい出口孔の2~5倍の数であってもよい。あるいは、直径サイズが小さい出口孔の数は、直径サイズが大きい出口孔の数よりも多くてもよく、例えば、直径サイズが小さい出口孔の数は、直径サイズが大きい出口孔の2~5倍の数であってもよい。第1のチューブ110の出口孔118の配置、数、または直径は、標的部位、投与する薬剤や麻酔の種類、または投与速度などに基づいて選択することができる。例えば、より大きな送達量が所望される場合、より多くの出口孔、より大きな直径を有する出口孔、またはその両方が選択され得る。あるいは、出口孔の配置は、標的領域の位置や向きに基づいて選択され得る。例えば、小さな標的領域への薬剤の投与が所望される場合、すべての出口孔は、半径方向及び/または軸方向において、互いにかなり近接して配置され得る。追加の実施形態では、例えば、標的領域が第1のチューブ110の片側に位置する場合、すべての出口孔118が概ね同じ側、同じ領域、または同じ半径上に位置するように、出口孔118は、主に第1のチューブ110の片側に位置するように設けられる。あるいは、第1のチューブ110が標的領域のより中心的な位置に配置される場合、出口孔118は、第1のチューブ110の半径方向に沿った複数の位置に設けられ得る。
【0042】
第1のチューブ110が複数の出口孔118を有する実施形態では、出口孔118は、第1のチューブ110の軸方向に沿った複数の位置に等間隔で設けられ得る。特定の実施形態では、出口孔118は、すべての出口孔118が第1のチューブ110の長手方向(X)軸に対して約120度の角度をなすように設けられ得る。軸方向に互いに隣接する出口孔118間の間隔は、約3.175~6.35mm(約0.125~0.25インチ)の範囲であり得る。第1のチューブ110の灌流部分119は、任意の所望の長さを有し得る。この構成により、創傷部位の略直線的な部分の全体に、流体を十分かつ均一に送達することができる。当然ながら、出口孔118は、任意の様々な代替的な構成で設けてもよい。
【0043】
第1のチューブ110の灌流部分119は、任意の所望の長さ、例えば、約1.27~51cm(約0.5~20インチ)の範囲(この範囲のすべての値及びサブ範囲を含む)の長さを有し得る。例えば、灌流部分119の長さは、約2.5~38cm(約1~15インチ)の範囲、例えば約3~30.5cm(約2~12インチ)の範囲、または例えば約6.3~12.5cm(約2.5~5インチ)の範囲であり得る。ある特定の実施形態では、灌流部分119の長さは、約25~30.5cm(約10~12インチ)の範囲であり得る。灌流部分119をより長くすることにより、出口孔118のいずれかが閉塞した場合に、灌流部分119の出口孔118を通る流体の流れへの影響を低減させることができる。灌流部分119は、開口部116と第1のチューブ110の遠位端114との間に位置している。第1のチューブ110が単一の出口孔118を有する実施形態では、灌流部分119の直径は、出口孔118の直径と等しくてもよい。一実施形態では、出口孔118は、第1のチューブ110の遠位端114に近い位置では小さい直径を有し、第1のチューブ110の遠位端114から遠い位置では大きい直径を有し得る。他の実施形態では、流体が実質的にすべての出口孔118を通って実質的に等しい速度で分配されるように、出口孔118はすべて同じサイズであり得る。非常に小さな孔径を実現するために、出口孔118は、レーザー穿孔または他の適切な方法によって形成され得る。
【0044】
図1及び図3に示すように、第1のチューブ110の近位端112は、第1の硬質ポート130に接続されている。第1の硬質ポート130は、第1のチューブ110の近位端112に隣接する本体部遠位端130aから本体部近位端130bまでX軸方向に沿って延在する本体部164を含む。第1のチューブ110は、シールを形成するポート接続部139で、第1の硬質ポートの本体部遠位端130aに接続されている。第1の硬質ポート130の内腔160は、X軸方向に沿って本体部遠位端130aから本体部近位端130bまで、本体部164を貫通して延びている。また、第1の硬質ポート130は、本体部164に対して斜めに延びるチューブコネクタ132を含む。チューブコネクタ132は、第1のチューブ110によって送達される流体を受け取るための流体開口部133と、流体開口部133から第1の硬質ポート130の本体部164の内腔160まで延在する流体コネクタ内腔162とを含む。チューブコネクタ132は、支持部131によって、第1の硬質ポート130の本体部164に接続されている。図1に示すように、一実施形態では、支持部131は、略三角形の形状を有し得る。第1の硬質ポート130の本体部近位端130bは、本体部164の内腔160と連通するポートコネクタ開口部134を含む。
【0045】
次に、第2のチューブ120に目を向けると、図1に示すように、第2のチューブ120は、X軸方向に沿って近位端122から遠位端124まで延びている。第2のチューブ120は、図4にも示すように、その内腔121を取り囲む壁部127を有する。第2のチューブ120の壁部127は、遠位端124の近くに、少なくとも1つの出口孔128を含む。例えば、図2A図2Cに示す実施形態では、第2のチューブ120は、複数の出口孔128を有する。出口孔128を有する部分の長さにより、第2のチューブ120の灌流部分129が画定される。出口孔128は、第2のチューブ120の壁部127に沿って半径方向に設けてもよいし、あるいは、第2のチューブ120の遠位端124に軸方向に沿って設けてもよい。
【0046】
マルチヘッド型カテーテル100の第2のチューブ120は、柔軟性、軽量性、強度、平滑度、及び患者の解剖学的系に対する非反応性、すなわち安全性という目的を十分に考慮して、様々な材料から形成することができる。第2のチューブ120の形成に適した材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエステル、ポリウレタン、それらの任意のコポリマー、及び当技術分野で知られている他の材料が挙げられる。第2のチューブ120の形成に適した製造プロセスの非限定的な例は、外側チューブと、外側チューブよりも薄くて硬い内側チューブとの2つのチューブの共押出し成形である(共押出し成形は、押出チューブの製造分野の当業者に知られ、理解されているプロセスである)。追加の非限定的な例としては、第2のチューブ120の壁部127の内側に配置したワイヤなどの補強インサートを使用すること、螺旋状に巻かれた補強材料を使用すること、または、第2のチューブ120の壁部127に組み込んだ安定化メッシュを使用することなどが挙げられる。このような補強材料は、第2のチューブ120の近位端122と遠位端124との間、またはその任意の部分に延在する壁部127内に、第2のチューブ120の長さ方向に沿って延びるように配置される。それに加えてまたはその代わりに、第2のチューブ120の遠位端124は、補強材料、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン、ポリエステルエラストマー、テトロフルオロエチレン、または、置換もしくは未置換のポリアミドポリマーなどのポリアミドから形成してもよい。また、第2のチューブ120の遠位端124は、ポリアミドを硬化させること、ポリアミドのデュロメータを増加させること、または、金属もしくは金属合金を埋め込むことなどにより、さらに補強することができる。補強材料を使用することにより、第2のチューブ120の遠位端124は、患者の体内への挿入時に第2のチューブ120に加わる圧力に耐えることができる。いくつかの実施形態では、第2のチューブ120は、第1のチューブ110の内腔111内を容易に前進させることができるように、第1のチューブ110の材料よりも硬い材料から形成され得る。
【0047】
ある可能な構成では、第2のチューブ120は、約0.022インチ(0.56mm)~0.036インチ(0.91mm)の範囲の外径を有する20~24ゲージ(0.91~0.56mm)のカテーテルチューブであり得る。あるいは、第2のチューブ120は、第1のチューブ110内に配置され、患者の組織に適切な流量の流体を送達することができる任意の適切な内径及び外径を有し得る。第2のチューブ120の近位端122から遠位端124までの全長は、約30.5~102cm(約12~40インチ)の範囲、例えば約45~97cm(約18~38インチ)の範囲、または例えば約60~76cm(約24~30インチ)の範囲であり得る。
【0048】
第2のチューブ120の出口孔128の直径は、約0.025~0.76mm(約0.001~0.03インチ)の範囲であり得る。さらなる実施形態では、出口孔128のいくつかは、かなり大きな直径を有していてもよいし、または、かなり小さな直径を有していてもよい。第2のチューブ120が様々な直径サイズの出口孔128を有する実施形態では、各直径サイズの出口孔の数の比率は、厳密に均等であってもよい。または、他の実施形態では、直径サイズが大きい出口孔の数は、直径サイズが小さい出口孔の数よりも多くてもよく、例えば、直径サイズが大きい出口孔の数は、直径サイズが小さい出口孔の2~5倍の数であってもよい。あるいは、直径サイズが小さい出口孔の数は、直径サイズが大きい出口孔の数よりも多くてもよく、例えば、直径サイズが小さい出口孔の数は、直径サイズが大きい出口孔の2~5倍の数であってもよい。第2のチューブ120の出口孔128の配置、数、または直径は、標的部位、投与する薬剤や麻酔の種類、または投与速度などに基づいて選択することができる。例えば、より大きな送達量が所望される場合、より多くの出口孔、より大きな直径を有する出口孔、またはその両方が選択され得る。あるいは、出口孔の配置は、標的領域の位置や向きに基づいて選択され得る。例えば、小さな標的領域への薬剤の投与が所望される場合、すべての出口孔は、半径方向及び/または軸方向において、互いにかなり近接して配置され得る。追加の実施形態では、例えば、標的領域が第2のチューブ120の片側に位置する場合、すべての出口孔128が概ね同じ側、同じ領域、または同じ半径上に位置するように、出口孔128は、主に第1のチューブ110の片側に位置するように設けられる。あるいは、第2のチューブ120が標的領域のより中心的な位置に配置される場合、出口孔128は、第2のチューブ120の半径方向に沿った複数の位置に設けられ得る。
【0049】
第2のチューブ120が複数の出口孔128を有する実施形態では、図2A図2Cに示すように、出口孔128は、第2のチューブ120の軸方向に沿った複数の位置に等間隔で設けられ得る。ある特定の実施形態では、出口孔128は、すべての出口孔128が第2のチューブ120の長手方向(X)軸に対して約120度の角度をなすように設けられ得る。軸方向に互いに隣接する出口孔128間の間隔は、約3.175~6.35mm(約0.125~0.25インチ)の範囲であり得る。第2のチューブ120の灌流部分129は、任意の所望の長さを有し得る。この構成により、創傷部位の略直線的な部分の全体に、流体を十分かつ均一に送達することができる。当然ながら、出口孔128は、任意の様々な代替的な構成で設けてもよい。
【0050】
第2のチューブ120の灌流部分129は、任意の所望の長さ、例えば、約1.27~51cm(約0.5~20インチ)の範囲(この範囲のすべての値及びサブ範囲を含む)の長さを有し得る。例えば、灌流部分129の長さは、約2.5~38cm(約1~15インチ)の範囲、例えば約3~30.5cm(約2~12インチ)の範囲、または例えば約6.3~12.5cm(約2.5~5インチ)の範囲であり得る。ある特定の実施形態では、灌流部分129の長さは、約25~30.5cm(約10~12インチ)の範囲であり得る。灌流部分129をより長くすることにより、出口孔128のいずれかが閉塞した場合に、灌流部分129の出口孔128を通る流体の流れへの影響を低減させることができる。灌流部分129は、第2のチューブ120の遠位端124の近傍に設けられている。第2のチューブ120が単一の出口孔128を有する実施形態では、灌流部分129の直径は、出口孔128の直径と等しくてもよい。一実施形態では、出口孔128は、第2のチューブ120の遠位端124に近い位置では小さい直径を有し、第2のチューブ120の遠位端124から遠い位置では大きい直径を有し得る。他の実施形態では、流体が実質的にすべての出口孔128を通って実質的に等しい速度で分配されるように、出口孔128はすべて同じサイズであり得る。非常に小さな孔径を実現するために、出口孔128は、レーザー穿孔または他の適切な方法によって形成され得る。有利なことに、第2のチューブ120の出口孔128は、患者の体内の解剖学的領域全体に流体をより均一に送達するために、第2のチューブ120の灌流部分129の周囲全体に設けられている。
【0051】
本開示のマルチヘッド型カテーテルの別の実施形態では、マルチヘッド型カテーテル100は、3つ以上のカテーテルチューブを含むことができる。例えば、マルチヘッド型カテーテルは、第1の外側チューブ内にそれぞれ配置される複数の内側チューブ、例えば、2つの内側チューブ、3つの内側チューブ、4つの内側チューブ、5つの内側チューブ、または6つ以上の内側チューブを含み得る。外側チューブは、複数の内側チューブのそれぞれのための自己封止端部開口を有し得る。さらに、詳細については繰り返し説明しないが、図1図4及びマルチヘッド型カテーテル100に関して上述した様々な特徴のいずれかは、その特徴が3つ以上のカテーテルチューブを含むマルチヘッド型カテーテルで要求される特徴と矛盾しない範囲で、3つ以上のカテーテルチューブを有するマルチヘッド型カテーテルに組み込むことができることを理解されたい。
【0052】
図5A図5Bは、細長い出口孔またはスロットを有する本開示の別の実施形態のカテーテルチューブを示す。これらのカテーテルチューブは、上述した第1のカテーテルチューブ及び第2のカテーテルチューブの代わりに使用することができる。図5Aに示すカテーテルチューブ230は、その長手方向に延在する細長い出口孔またはスロット232を有する。スロット232は、カテーテルチューブ230の灌流部分に沿って、カテーテルチューブ230の径方向全体に設けることが好ましい。より短い出口孔と比較すると、細長いスロット232は、流体が受ける流れインピーダンスを減少させることによって、カテーテルから排出される流体の流量を増加させる傾向がある。スロット232は、当業者によって容易に理解されるように、カテーテルチューブ230の構造的完全性を損なわないように、カテーテル本体部の長手方向に配向することが好ましい。
【0053】
図5Bに示すカテーテルチューブ234は、遠位方向に向かうにしたがって、長さが長くなる出口孔またはスロット236を有する。図示した実施形態では、カテーテルチューブ234の灌流部分の近位端に近い位置に設けられたスロット236は、灌流部分の遠位端に近い位置に設けられたスロット236よりも長さが短い。有利なことに、カテーテルチューブ234は、比較的高流量の条件下では、実質的にすべてのスロット236を介して実質的に均一な流体送達を行う。これは、より遠位のスロット236のサイズが大きいことにより、流れの抵抗や圧力損失の増加を補うことができるからである。言い換えれば、より遠位のスロット236は、より近位のスロット236よりもサイズが大きいので、より遠位のスロット236がより近位のスロット236と同じサイズである場合よりも、より遠位のスロット236を通る流量が多くなる。有利なことに、スロット236は、その長さが徐々に長くなるように設けられており、これにより、実質的に均一な流体供給が提供される。さらに、細長いスロット236は、図5Bに示す実施形態のように、一般に、より多い出口流量をもたらすことができる。
【0054】
当然ながら、本願発明者らは、より大きなまたはより小さな出口孔を提供することや、様々な出口孔間の様々な距離を調整することによっても、本開示の結果を得ることができると考えている。したがって、そのような変更は、本開示の範囲内であると考えられる。
【0055】
図6A図6Bは、多孔性材料から形成され、カテーテルチューブ306の遠位端304の近傍に配置された細長い部材310を有する、本開示のさらに別の実施形態のマルチヘッド型カテーテル300を示す。これらのマルチヘッド型カテーテル300は、上述したマルチヘッド型カテーテルのいずれかの代わりに、またはそれらと組み合わせて使用することができる。カテーテルチューブ306の遠位端304は、その近傍に、カテーテルチューブ306の灌流部分に沿って設けられた複数の出口孔308を有し得る。また、カテーテルチューブ306内には、細長い部材310が封入されている。細長い部材310は、円筒形の形状を有し、硬質であり、かつ、多孔性材料から形成されることが好ましい。また、細長い部材310は、その外面とカテーテルチューブ306の内面との間に環状の空間312が形成されるように、カテーテルチューブ306内に配置されている。カテーテルチューブ306内に封入された細長い部材310は、カテーテルチューブ306の遠位端304から近位方向に向かって、カテーテルチューブ306の灌流部分に隣接する位置に沿って延在している。あるいは、細長い部材310は、灌流部分の一部のみに沿って延在していてもよい。カテーテルチューブ306内に封入された細長い部材310は、カテーテルチューブ306内に該チューブと略同心的に配置することが好ましい。なお、非同心的な設計でも、本開示の利点を達成することができる。一実施形態では、細長い部材310は、患者の体内へのカテーテルチューブ306の配置を容易にするために、可撓性材料から形成するとよい。
【0056】
動作中、カテーテルチューブ306内を流れる流体は、多孔性の細長い部材310を飽和させ、カテーテルチューブ306の環状領域312(環状の空間312)に流入する。多孔性の細長い部材310が飽和すると、多孔性の細長い部材310内の流体は、環状領域312に流入し、出口孔308を通ってカテーテルチューブ306からその外部に流出する。有利なことに、流体圧力は環状領域312の全体にわたって均一であるため、流体はすべての出口孔308を通って実質的に均一に流出する。環状領域312にはいくつかの利点がある。利点の1つは、出口孔308を通る流れの均一性を最適化する傾向があることである。また、細長い部材310は、液体により飽和すると、膨張する傾向のある多孔性材料から形成され得る。この場合、細長い部材310は、カテーテルチューブ306に押し付けられることなく、環状領域312内に膨張することが好ましい。これにより、カテーテルチューブ306の内面に高圧領域が発生する可能性が制限される。カテーテルチューブ306の内面に高圧領域が発生すると、創傷部位内で、出口孔308からの薬剤の不均一な流出が生じる恐れがある。なお、細長い部材310が膨張してカテーテルチューブ306と接触しても、本開示の目的を達成することができる。
【0057】
細長い部材310は、0.1~50μmの範囲、例えば約0.45μmの平均孔径を有する多孔性材料から形成され得る。環状領域312の半径方向幅Wは、0~約0.005μmの範囲、例えば約0.003μmであり得る。細長い部材310は、多孔性、柔軟性、強度、及び耐久性などの目的を十分に考慮して、様々な任意の材料から形成され得る。細長い部材310の形成に使用される材料の一例は、Mentekである。
【0058】
細長い部材310は、接着剤を使用してカテーテルチューブ306内に固定することができる。一実施形態では、図6Aに示すように、接着剤を、細長い部材310の遠位端に塗布して、カテーテルチューブ306の遠位端304の内面との結合部320を形成する。例えば、接着剤は、カテーテルチューブ306の灌流部分の近位端またはその近傍に塗布してもよい。さらに、接着剤を、細長い部材310の外面に、その長手方向の任意の位置に塗布して、カテーテルチューブ306の内面との環状の結合部320を形成してもよい。例えば、図6Aの実施形態では、環状の結合部320が、カテーテルチューブ306の灌流部分の近位端付近に形成されている。他の構成も可能である。当業者であれば、本明細書の教示から、接着剤を任意の様々な構成で塗布してもよいことを理解するであろう。したがって、例えば、カテーテルチューブ306の遠位端304に接着剤を塗布することは必須ではない。結合部320は、後述するような接着剤で形成することができる。
【0059】
環状の結合部320は、細長い部材310がカテーテルチューブ306内に配置されているときに、出口孔308の1つを通じて液体の接着剤をチューブ外部から注入することによって形成することができる。一般に高粘度を有する接着剤は、細長い部材310の本体内に向かってではなく、細長い部材310の外面に沿って流れる傾向がある。したがって、接着剤は、当業者であれば理解されるように、カテーテルチューブ306と環状の結合部320を形成する。また、接着剤は、それが注入される出口孔308を塞ぐ。様々な種類の接着剤を使用することができるが、好ましい接着剤はLoctiteである。
【0060】
上述したように、細長い部材310は、チューブに対して同心的に配置され得る。図6Bは、細長い部材310がカテーテルチューブ306内に同心的に封入されているカテーテルチューブ306の断面図を示している。あるいは、細長い部材310は、カテーテルチューブ306(図示せず)に隣接して配置してもよい。この場合、細長い部材310をカテーテルチューブ306内の中心に配置する必要がないため、図6Bの構成よりも製造が容易になる。
【0061】
当業者であれば、本明細書の教示から、細長い部材310は、任意の所望の長さであってもよく、また、カテーテルチューブ306の灌流部分に沿って任意の所望の長さで延在するように配置してもよいことを理解するであろう。例えば、細長い部材310は、カテーテルチューブ306の遠位端304まで延びている必要はない。さらに、細長い部材310の近位端は、カテーテルチューブ306の灌流部分の近位端に対して、遠位または近位であってもよい。
【0062】
図7は、多孔性材料から形成され、カテーテルチューブ406の遠位端404に配置された内側チューブ状膜410を有する、本開示のさらに別の実施形態のマルチヘッド型カテーテル400を示す。このマルチヘッド型カテーテル400は、上述したマルチヘッド型カテーテルのいずれかの代わりに、またはそれらと組み合わせて使用することができる。カテーテルチューブ406の遠位端404は、カテーテルチューブ406の灌流部分に沿って設けられた複数の出口孔308を有し得る。また、カテーテルチューブ406内には、内側チューブ状膜410が封入されている。例えば、カテーテルチューブ406は、カテーテルチューブ406の内寸(内面)と、内側チューブ状膜410の外寸(外面)との間で比較的緊密な係合が実現されるように、内側チューブ状膜410を緊密に取り囲んで支持することができる。内側チューブ状膜410は、カテーテルチューブ406の灌流部分の長さに沿って配置されていればよく、灌流部分の長さよりも長くてもよい。
【0063】
チューブ状多孔性膜である内側チューブ状膜410は、スポンジ状の材料、フォーム状の材料、または中空繊維であり得る。内側チューブ状膜410は、細菌を濾過するために、0.23μm未満の平均孔径または孔径を有し得る。内側チューブ状膜410の孔径は、約0.3~1μmの範囲内、例えば約0.8μm、または約0.1~1.2μmの範囲内であり得る。内側チューブ状膜410は、患者の解剖学的系に対する非反応性、柔軟性の維持、カテーテルチューブ406のサイズ制限内への適合、及び、多孔性を有することによってカテーテルチューブ406のすべての出口孔を通じて流体を実質的に均一に分配する、という目的を十分に考慮して、様々な適切な材料から形成され得る。内側チューブ状膜410の形成に適した材料は、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリカーボネート、ナイロン、または高密度ポリエチレンなどである。内側チューブ状膜410の内径及び外径は、それぞれ0.254mm(0.010インチ)及び0.4572mm(0.018インチ)である。なお、当業者であれば、内側チューブ状膜410の内径及び外径がカテーテルチューブ406の内径に依存することを理解できるであろう。カテーテルチューブ406は、エポキシまたは当業者に知られている他の手段によって、内側チューブ状膜410に固定され得る。あるいは、内側チューブ状膜410は、カテーテルチューブ406に締りばめで固定してもよい。この場合、内側チューブ状膜410をカテーテルチューブ406に固定するために、他の材料を使用しなくてもよい。
【0064】
動作中、カテーテルチューブ406は、カテーテルチューブ406の灌流部分に隣接する患者の解剖学的系の領域に流体を送達することができる。流体が灌流部分に流入すると、流体は、まず、内側チューブ状膜410に浸透する。より多くの流体が灌流部分に流入すると、流体は、内側チューブ状膜410の壁内で長手方向に拡散する。内側チューブ状膜410及びその内部のチューブ状空間が飽和すると、流体は、内側チューブ状膜410を通過し、次いで、カテーテルチューブ406の出口孔408から流れ出ることによりカテーテルチューブ406から排出される。さらに、有利なことに、流体は、内側チューブ状膜410の表面領域全体にわたって実質的に均一に内側チューブ状膜410を通過し、その結果、実質的にすべてのカテーテルチューブ406の出口孔408を通る実質的に均一な流れが得られる。したがって、流体は、患者の解剖学的構造の創傷領域全体にわたって実質的に等しい速度で送達される。さらに、この利点は、低圧の流体供給と高圧の流体供給との両方で得ることができる。
【0065】
本実施形態のカテーテルチューブの別の実施形態(図示せず)では、カテーテルチューブは、灌流部分の上流で、カテーテルチューブの近位端付近に、圧縮性リザーバを含み得る。圧縮性リザーバは、例えば、カテーテルチューブと連通する圧縮性バルーン、拡大された直径を有するカテーテルチューブの一部、または他の適切な圧縮性リザーバ構造であり得る。この圧縮性リザーバは、カテーテルチューブの先端部の閉塞、例えばカテーテルチューブの灌流部分の出口孔の閉塞を克服するのに有益である。閉塞が発生した場合、医師などの医療従事者が圧縮性リザーバを圧縮して、カテーテルチューブを通じて追加の流体を高圧で押し出すことによって、カテーテルチューブの先端部の閉塞を吹き飛ばす。
【0066】
図1及び図3に戻り、第2のチューブ120の近位端122は、第2の硬質ポート140に接続されている。第2の硬質ポート140は、第2のチューブ120の近位端122に隣接する遠位端140aから近位端140bまで、X軸方向に沿って延在している。第2のチューブ120は、シールを形成するポート接続部149で、第2の硬質ポート140の遠位端140aに接続されている。第2の硬質ポート140の内腔166は、X軸方向に沿って近位端140bから第2のチューブ120に接続するポート接続部149まで、第2の硬質ポート140を貫通して延びている。第2の硬質ポート140の近位端140bは、第2の硬質ポート140の内腔166と連通する流体コネクタ開口部144を有する。
【0067】
図1及び図2A図2Cに示すように、第2のチューブ120は、第1の硬質ポート130のポートコネクタ開口部134に挿入し、第1の硬質ポート130の本体部164の内腔160を挿通させ、次いで、第1のチューブ110を挿通させ、最終的に、第1のチューブ110の開口部116から第1のチューブ110の外部に延出させることができるように構成されている。図2Aに示すように、第2のチューブ120の遠位端124は、第1のチューブ110内に配置することができる。図2Bは、第2のチューブ120の遠位端124を、第1のチューブ110の開口部116から延出させた状態を示す。図2Cは、第1のチューブ110と第2のチューブ120とがX方向にほぼ同じ距離だけ延びるように、第2のチューブ120の灌流部分129の全体を、第1のチューブ110の開口部116からさらに延出させた状態を示す。図2Cは、第2のチューブ120に沿って設けられたマーキング170をさらに示す。マーキング170は、例えば、第2のチューブ120が開口部116から延出する距離を示す。また、マーキング170は、例えば、マーキング170の特定の個数または特定のパターンを確認することによって、第2のチューブ120全体が患者の身体から除去されたことを確実にするために使用することができる。他の実施形態では、第1のチューブ110は、距離の測定、または第1のチューブ110全体が患者の身体から除去されたことを確認するためのマーキング170を有し得る。第1のチューブ110のマーキング170と第2のチューブ120のマーキング170は、互いに同一のパターンであってもよいし、または互いに異なるパターンであってもよい。
【0068】
使用時には、マルチヘッド型カテーテル100は、患者の身体の解剖学的系に挿入され、解剖学的系内の創傷部位に流体薬物を直接送達する。特に、マルチヘッド型カテーテル100は、マルチヘッド型カテーテル100の第1のチューブ110の灌流部分119と第2のチューブ120の灌流部分129とにそれぞれ対応する創傷部位の2つの別個の領域の全体にわたって薬剤を送達するように設計されている。したがって、マルチヘッド型カテーテル100は、灌流部分119及び灌流部分129が、創傷部位、または創傷部位に痛みを引き起こす神経をブロックすることが知られている解剖学的領域に配置されるように、解剖学的系に挿入することが好ましい。
【0069】
動作中、マルチヘッド型カテーテル100は、灌流部分119及び灌流部分129に隣接する解剖学的領域に、流体を直接送達する。流体源から供給された流体は、チューブコネクタ142を介して第1のチューブ110の内腔111に導入され、また、チューブコネクタ142を介して第2のチューブ120の内腔121に導入される。チューブは、まず、第1のチューブ110の近位端112を通って第1のチューブ110の非灌流部分を流れ、また、第2のチューブ120の近位端122を通って第2のチューブ120の非灌流部分を流れる。流体が第1のチューブ110の灌流部分119及び第2のチューブ120の灌流部分129に到達すると、流体は、第1のチューブ110の出口孔118及び第2のチューブ120の出口孔128からそれぞれ排出される。
【0070】
第1のチューブ110及び第2のチューブ120を創傷部位内に配置した後、図7に示すように、第1の硬質ポート130と第2の硬質ポート140とを接続してシールし、一体型ハブ170を形成することができる。第1の硬質ポート130の本体部近位端130bに設けられた結合タブ136は、第2の硬質ポート140の流体コネクタ開口部144内に嵌合して、対応する結合タブ146と結合することができ、その後、第1の硬質ポート130の結合ナット138によって固定することができる。結合タブ136は、第1の硬質ポート130の本体部164の内腔160からの流体の漏出を防止するべく、第1の硬質ポート130と第2の硬質ポート140との接合部に液体密封シールを形成するために、該タブの周縁部にシール材料135を有する(図8参照)。
【0071】
マルチヘッド型カテーテル100を使用する場合、カテーテル100、すなわち第1のチューブ110及び第2のチューブ120は、最初はチューブ内に空気が含まれていてもよい。第1のチューブ110及び第2のチューブ120に液体薬剤を導入することにより、チューブ内の空気を出口孔から強制的に押し出す。しかしながら、これには数時間かかる場合がある。もし、チューブ内に空気が含まれている状態の第1のチューブ110または第2のチューブ120を患者の体内に挿入し、その後、チューブに液体薬剤を導入すると、チューブから空気が排出されるまで、患者の創傷部位は薬剤をほとんどまたは全く受け取ることができない。したがって、マルチヘッド型カテーテル100の第1のチューブ110及び第2のチューブ120を患者の体内に挿入する前に、カテーテルまたはチューブに液体を導入することにより、マルチヘッド型カテーテル100の使用前に第1のチューブ110及び第2のチューブ120から空気を確実に排出することが好ましい。
【0072】
いくつかの実施形態では、マルチヘッド型カテーテル100の第1のチューブ110及び/または第2のチューブ120は、カテーテルの表面またはカテーテル内での微生物の成長を阻害するために、また、好ましくは、カテーテルに隣接する解剖学的領域での微生物の成長を阻害するために、抗菌特性を含み得る。以下により詳細に説明するように、図示したカテーテルは、抗菌層、カテーテルの構成要素を構成する材料内に埋め込まれた抗菌材料、または、抗菌層と埋め込まれた抗菌材料との組み合わせを含み得る。
【0073】
好ましい構成では、抗菌層または抗菌材料は、抗菌物質の持続的放出を提供するように構成されている。ある構成では、抗菌層または抗菌材料は、金、白金、銀、亜鉛、または銅などの重金属を含む。これらの重金属はすべて抗菌特性を有することが知られている。重金属は、金属イオンの形態であることがより好ましい。特に好ましい実施形態では、抗菌層または抗菌材料は銀であり、より好ましくは銀イオンである。なお、抗生物質または殺菌化学物質などの他の抗菌物質を、カテーテルの表面またはカテーテル内に使用するか、または組み込んでもよい。
【0074】
いくつかの構成では、金属イオンは、天然ポリマーまたは合成ポリマーなどの担体材料内に含まれていてもよい。天然ポリマーまたは合成ポリマーは、好ましいことに、金属イオンの持続的放出を助け、かつ金属イオンの分解を阻害する。なお、抗菌物質の持続的放出を提供するための他の適切な方法を使用してもよい。
【0075】
上述したように、特定の構成では、抗菌材料は、例えばチューブ状のカテーテル本体部や流量制御部材などのカテーテル構成要素の一部を構成する材料の層の形態をとることができる。このような抗菌層を形成するために、抗菌材料は、例えば、蒸着、浸漬、噴霧、共押出し、または多層の物品を作製するのに適した他の技術やプロセスによって、カテーテルの構成要素にコーティングとして適用され得る。
【0076】
別の構成では、抗菌材料は、カテーテルの構成要素を構成するベース材料が抗菌層を形成するように、ベース材料中に分散させてもよい。例えば、抗菌材料は、カテーテル本体部を形成するポリマー材料中に配合してもよいし、または、その他の方法で埋め込んだり分散させたりしてもよい。なお、抗菌材料は、以下でより詳細に説明するように、カテーテルの他の構成要素内に埋め込んでもよい。抗菌材料は、カテーテルの構成要素の製造工程の前に、カテーテルの構成要素を構成するベース材料に含めてもよい。例えば、抗菌材料は、押出プロセスまたは他の成形プロセスによってカテーテル本体部を作製するために使用されるポリマー樹脂に含めてもよい。
【0077】
抗菌物質は、カテーテルチューブまたは他のカテーテル構成要素のベース材料内に埋め込まれ、カテーテルチューブまたは他のカテーテル構成要素に抗菌層を形成することが好ましい。ある特に好ましい構成では、抗菌物質は、溶液中で好ましくは約50nm未満のサイズを有し、より好ましくは約5~15nmのサイズを有する安定化されたイオン性銀ナノ粒子を含む。
【0078】
カテーテル(またはカテーテル構成要素)は、ある構成では還元剤と共に塩化銀を含む溶液に、浸漬させることが好ましい。カテーテルは、該カテーテルに銀粒子が付着するのに十分な時間、溶液中に浸漬させることが好ましい。ある構成では、カテーテルは、室温よりも高温の溶液に約16時間浸漬される。例えば、溶液の温度は、約35℃であり得る。複数のカテーテルを、溶液の容器に、同時に浸漬させることが望ましい。カテーテルの長さ全体に、そして望ましくはカテーテルの内側と外側の両方の表面に、銀粒子を均一に分布させるのを助けるために、溶液及び/またはカテーテルを撹拌することが好ましい。ある好ましい方法では、カテーテル本体部(またはカテーテルアセンブリのチューブ状部分)は、上述のような流量制御部材とは別に、抗菌物質によって処理される。所望に応じて、中空繊維部材または膜などの流量制御部材は、個別に、抗菌物質で処理してもよい。その後、カテーテル本体部と流量制御部材とを組み合わせるとよい。
【0079】
カテーテルを銀溶液に所望の期間浸漬させた後、カテーテルを溶液から取り出し、好ましくは洗浄する。カテーテルを洗浄する洗浄剤は、ある好ましい製造方法では、アルコールである。洗浄後、カテーテルを乾燥させる。所望に応じて、カテーテルの乾燥を補助する手段が提供され得る。例えば、乾燥させるときに、カテーテルを回転させるとよい。ある構成では、乾燥させるときに、カテーテルを、約80~100rpm(80~100min-1)で約2分間回転させるとよい。回転後、カテーテルを一晩かけて完全に乾燥させることが好ましい。
【0080】
その後、乾燥したカテーテルを、光に曝すことが好ましい。銀溶液に浸漬させたカテーテルを光に曝すと、カテーテルの色が変化したり、着色したりする。たとえば、一般的なナイロン製のカテーテルは通常、透明または不透明であり、銀粒子溶液に浸漬させると着色する。本明細書に開示されているような特定の銀溶液に浸漬させたカテーテルは、金色または琥珀色を呈する。このようなカテーテルの着色は、未処理のカテーテルと比較した、銀溶液による処理がなされたカテーテルの識別を容易にする。本明細書に開示されている銀溶液による処理がなされたカテーテルは、創傷部位、末梢神経ブロック、または硬膜外に使用される唯一の非透明または着色されたカテーテルであり、したがって、着色により、カテーテルが抗菌特性を有していることを簡単に識別できるという利点が提供されると考えられる。
【0081】
カテーテルの浸漬中、銀ナノ粒子が、カテーテルチューブの表面欠陥、または、流体流量制御膜(中空繊維部材)などの他の部材に付着することがある。さらに、銀ナノ粒子は、サイズ及び電荷が小さいため、カテーテルチューブなどの処理対象部品の表面に付着する傾向がある。このため、この好ましい構成では、抗菌物質を、カテーテルに含浸させ、かつ、カテーテルにコーティングする。その後、カテーテルを乾燥させる。銀イオンは、カテーテルが患者の体内に配置されたときなどに、カテーテルが水分と接触すると、経時的に放出される。
【0082】
銀ナノ粒子は、任意の適切なプロセスによって作製され得る。ある好ましい構成では、銀ナノ粒子は、塩化銀に還元剤を加えることによって調製される。このような組成物は、本明細書で開示されるカテーテルなどの医療機器の商業規模での製造に使用するのによく適している。なお、銀ナノ粒子を作製する他の適切な方法を使用してもよい。好ましい構成では、カテーテル本体部はナイロン材料から構成され、抗菌材料はナイロン材料に塗布及び/または含浸される。
【0083】
抗菌物質は、カテーテルから持続的に放出されるように構成されることが好ましい。流体送達カテーテルでは、抗菌物質は流体中に放出され、流体によってカテーテルに隣接する解剖学的領域に送達される。このような構成は、有利なことに、カテーテル内と、カテーテルに隣接する解剖学的領域との両方で、微生物の増殖を抑制する。なぜならば、抗菌物質がカテーテル本体部から組織に放出されるだけの場合よりも、抗菌物質が、カテーテルから排出される流体とともに解剖学的領域内でより長い距離を移動する可能性が高いからである。したがって、カテーテルの内面(内腔を画定する部分)や上述の流量制御部材を銀溶液などで処理することによって、カテーテルから排出される流体中に抗菌物質を放出するように構成することが好ましい。創傷部位の疼痛管理の場合、有利なことに、このようなカテーテルは、疼痛管理物質を提供するだけでなく、創傷部位における微生物の成長や感染を阻害することができる。
【0084】
カテーテルは、カテーテルの少なくとも灌漑部分において、好ましくは、患者の体内に位置するカテーテルの少なくとも全ての部分において、約0.8~3.0μg/cmの溶出速度で、抗菌物質を放出するように構成されることが好ましい。カテーテルは、そのカテーテルの予想される使用期間にわたって、上記のような抗菌物質の放出を維持するように構成されることが好ましい。ある構成では、カテーテルは、抗菌物質の有意な放出を最低10日間維持するように構成される。
【0085】
さらに、いくつかの好ましい構成では、カテーテルは、最初に多量の抗菌物質を放出し(ボーラス投与)、その後は少量の投与量を維持するように構成される。例えば、ある好ましい構成では、カテーテルは、配置後の最初の5日間は多量の抗菌物質を放出し、その後の少なくとも約5日間は実質的に一定の少量の放出を維持するように構成される。なお、他の構成では、抗菌物質の放出は、比較的一定であってもよいし、または、経時的に略直線的に減少してもよい。20ゲージ(0.810ミリ)のカテーテルの場合、好ましくは、銀粒子含有量の約15%が約10日以内に放出されることが好ましい。なお、他の用途では、より少ない量またはより多い量の抗菌物質または抗菌剤の放出が望まれる場合がある。
【0086】
カテーテルは、所望の溶出速度を得るために十分な量の抗菌物質を含有するように処理されているか、または、そのような量の抗菌物質を含むことが好ましい。銀ナノ粒子を含む20ゲージ(0.810ミリ)のカテーテルでは、カテーテルのベース材料(または処理されたカテーテル構成要素)に対する銀ナノ粒子の比率が約600~2000ppmになるように、カテーテルに銀ナノ粒子が含まれることが好ましい。ある好ましい構成では、カテーテルのベース材料に対する銀ナノ粒子の比率が約1000ppmになるように、カテーテルに銀ナノ粒子が含まれる。銀ナノ粒子のこのような含有量は、上記の範囲を包含する十分な溶出速度が得られるように決定される。例えば、銀ナノ粒子の含有量が約600ppmであるカテーテルの場合、溶出速度は、最初の5日間は平均約1.8μg/cm、次の5日間は平均約0.8μg/cmであることが分かった。銀ナノ粒子の含有量が約1000ppmであるカテーテルの場合、溶出速度は、最初の5日間は約3.0μg/cm、次の5日間は約1.4μg/cmの溶出速度であった。さらに、カテーテルの銀ナノ粒子の含有量を変更することによって、他の所望の溶出速度を得ることができる。
【0087】
当業者であれば容易に理解できるように、本明細書に記載されているカテーテルの実施形態はいずれも、様々な用途に使用することができる。そのような用途としては、これに限定しないが、例えば、末梢神経ブロック、髄腔内注入、硬膜外注入、血管内注入、動脈内注入、関節内注入、及び、創傷部位の疼痛管理などが挙げられる。さらに、本開示のマルチヘッド型カテーテルは、吸引カテーテルとしての使用にも適している。
【0088】
さらに、本開示のマルチヘッド型カテーテルはいずれも、注入ポンプに接続または固定されるように設計された独立型カテーテルとは対照的に、注入ポンプから延びている流体ラインと一体化させることができる。本開示のマルチヘッド型カテーテル100は、少なくとも2つの流体コネクタと少なくとも2つの流体セレクタとをそれぞれ有するマルチアクション式流体注入ポンプ500に接続または固定することができる。この構成により、流体を第1のチューブ110と第2のチューブ120とを介して独立した流量、例えば不均一な流量で送達することができる。
【0089】
ある例示的な外科的方法では、本開示のマルチヘッド型カテーテル100は、人工膝関節全置換術(TKA)の術後の疼痛治療のための多神経ブロックに使用することができる。手術中に、カテーテル100を患者の内側筋間中隔に挿入することにより、内転筋管と関節周囲との神経ブロックを連続的に行うことができる。マルチヘッド型カテーテルを穿孔部位から患者の体内に挿入するための好ましい手順を、以下に説明する。
【0090】
マルチヘッド型カテーテル100は、TKAへのメディアル・パラパテラ・アプローチ(medial parapatellar approach)、ミッドバスタス・アプローチ(midvastus approach)、またはサブバスタス・アプローチ(subvastus approach)のときに、患者の体内に挿入することができる。メディアル・パラパテラ・アプローチは、閉鎖時の修復のために膝蓋骨に被膜組織のカフを残して、膝蓋骨の真上の内側から内側広筋斜走繊維を切開し、脛骨結節まで切開する手術である。ミッドバスタス・アプローチは、膝蓋骨の上極部で内側広筋斜走繊維を筋線維に沿って分割した後、遠位で脛骨結節まで切開する手術である。サブバスタス・アプローチは、内側広筋斜走繊維の下方を切開し、脛骨結節まで切開する手術である。
【0091】
上述した膝への外科的アプローチの後、大腿骨上顆の内転筋結節を識別する。次に、ブラント・リトラクタで内側広筋斜走繊維を持ち上げて、その深部表面と内側筋間中隔の前面を露出させる。内側筋間中隔は、マルチヘッド型カテーテル100を配置するための床としての役割を果たす。大内転筋腱は、内転筋結節のすぐ頭側(患者の頭部方向)に位置する内側筋間中隔の真下で触知することができる。内側広筋斜走繊維と大内転筋とは、内転筋管の境界を形成している。上記で定義したように、開放手術部位は、マルチヘッド型カテーテル100を配置するための創傷部位であると考えられる。
【0092】
図10に示すように、イントロデューサニードル300は、マルチヘッド型カテーテル100を患者の体内に挿入するために提供される。イントロデューサニードル300は、患者の皮膚を穿刺して貫通するのに十分な鋭さの先端部302を有する従来の医療用ニードルまたはロッドを含む。イントロデューサニードル300は、中空であってもよいし、または、その内部に内腔を有しない中実であってもよい。イントロデューサニードル300は、先端部302の反対側の端部にストッパ310を含み得る。T字型ピールシースなどのイントロデューサチューブまたはシース350は、その内部にイントロデューサニードル300を配置するのを可能にするのに十分な直径を有する。イントロデューサチューブまたはシース350は、患者の皮膚を貫通するときに大きく曲がってイントロデューサニードル300から離れることなく、穿孔部位を通って患者の体内に延びることができるように十分な剛性を有している。また、シース350は、シース350を径方向に分割してカテーテルから除去するために、シース350を分割部分352及び分割部分354に分割するための低強度のパターンが予め形成されている。例えば、T字型ピールシースは、互いに対向するハンドグリップ部分360及びハンドグリップ部分362と、シース350の他の部分よりも厚さが薄い1または複数の分割線または分割部分とを有するT字型ハンドル364を含む。イントロデューサニードル300のストッパ310は、イントロデューサニードル300がシース350に挿入されたときにストッパ310がシース350のT字型ハンドル364を越えて移動するのを防ぐのに十分な幅を有し得る。
【0093】
イントロデューサニードル300の少なくとも一部は、イントロデューサシース350の少なくとも一部の内部に配置されて、ニードル/シースアセンブリ370を形成する。ニードル/シースアセンブリ370が形成されたとき、イントロデューサニードル300の先端部302が最初に穿孔部位で患者の皮膚を穿刺し、次いで、イントロデューサシース350の端部が穿孔部位を通って延びるように、イントロデューサニードル300の端部302がイントロデューサシース350の先端部を越えて延びていることが好ましい。
【0094】
ニードル/シースアセンブリ370は、イントロデューサニードル300及びイントロデューサシース350が皮膚を貫通して、患者の体内に進んで通路を形成するときに、イントロデューサニードル300及びイントロデューサシース350はどちらも互いに対してほとんど変位せず、かつ、イントロデューサニードル300を患者の体内から抜去するときに、イントロデューサニードル300がイントロデューサシース350から分離して、イントロデューサシース350の少なくとも一部が患者の体内に残るように協働する。
【0095】
図11に示すように、連続神経ブロックのためにマルチヘッド型カテーテル100を配置する方法1100は、イントロデューサニードル300及びシース350(例えばT字型ピールシース)を、膝蓋骨の上極の関節のすぐ上の、膝の上側面の穿孔部位から挿入することによって行われる(ステップ1102)。穿孔部位は、創傷部位の近くに位置するが、創傷部位には位置しない。穿孔部位は、イントロデューサシースを穿孔部位から創傷部位に向けて前進させるときに、創傷部位に引っかかったり、妨げられたり、または他の方法で阻害されたりしないように、創傷部位に十分に近接している。また一方、穿孔部位は、創傷部位での感染の可能性を低減させるために、創傷部位から十分に離れている。穿孔部位と創傷部位との間の距離は、使用される薬剤の種類、ニードル/シースアセンブリ370のサイズ、及び、創傷のサイズや種類などの様々な要因に依存する。
【0096】
イントロデューサニードル/T字型ピールシースアセンブリ370は、大腿直筋腱の下を通って、創傷部位(手術用開口部)に挿入される。続いて、ステップ1104では、T字型ピールシース350を適所に残して、イントロデューサニードルを除去する。T字型ピールシース350は、マルチヘッド型カテーテル100を創傷部位に安全に導入するための通路を形成する。
【0097】
T字型ピールシース350を通じてマルチヘッド型カテーテル100を挿入する前に、第1のチューブ110及び第2のチューブ120の両方を生理食塩水で洗浄すると、第1のチューブ110または第2のチューブ120の内部に空気が存在することを防止することができる。図2Aに示すように、第2のチューブ120の遠位端124が第1のチューブ110内に位置するように、第2のチューブ120を第1のチューブ110内に挿入する。次に、ステップ1106において、第1のチューブ110を、T字型ピールシース350を通して創傷部位に挿入し、第1のチューブ110の遠位端114を把持して、マルチヘッド型カテーテル100を、T字型ピールシース350を通して前進させることによってシース350から引き出す。よく知られた方法を用いて、第1のチューブ110は、その内部に配置された軸方向ガイドワイヤまたはスタイレット(図示せず)の助けを借りて挿入することができる。これにより、第1のチューブ110の剛性を高めて、第1のチューブ110の挿入を容易にすることができる。あるいは、第1のチューブ110は、ガイドワイヤやスタイレットを使用せずに挿入してもよい。
【0098】
次いで、ステップ1108において、第2のチューブ120の遠位端124が第1のチューブ110の開口部116から出るまで、第2のチューブ120を第1のチューブ110を通して前進させる。第2のチューブ120の遠位端124は、手動で把持することによって、直線状の下垂体骨鉗子によって、または他の任意の適切なカテーテル配置ツールによって引き出すことができ、灌流部分129全体を含む第2のチューブ120の所望の長さが開口部116から延出するまで、開口部116から引き出される。続いて、ステップ1110では、第2のチューブ120の遠位端124を前進させ、灌流部分129が神経ブロックのための所望の領域に配置されるように位置決めする。灌流部分129は、開創領域内に手動で配置してもよいし、または、鈍的切開によって深い解剖学的位置に盲目的に配置してもよく、例えば、遠位端124を内側筋間中隔の前面に沿って頭側に前進させ、内転筋管内で上部膝蓋骨から頭側に約15~20cmの距離に位置する内側広筋斜頭筋の深部に配置してもよい。
【0099】
続いて、ステップ1112において、第1のチューブ110の灌流部分119を、第2のチューブ120の灌流部分129と同様に配置する。あるいは、第1のチューブ110の灌流部分119を配置するステップ1112は、第2のチューブ120の灌流部分129を配置するステップ1110の前に行ってもよい。第1のチューブ110の灌流部分119及び第2のチューブの灌流部分129は、術後疼痛をより軽減するべく、TKA処置の影響を受ける神経のより多数を神経ブロックすることができるように、互いに遠位の位置に配置され得る。例えば、第1のチューブ110の灌流部分119を前方位置に配置し、第2のチューブ120の灌流部分129を後方位置に配置することができる(また、その逆も可能である)。灌流部分119及び灌流部分129は、外科医によって決定された適切な神経ブロックを提供するように、創傷部位に対する任意の可能な位置に配置することができる。
【0100】
第1のチューブ110と第2のチューブ120との両方を配置した後、第1のチューブ110を、開口部116の近位の適所に保持し、T字型ピールシース350を引き出す。T字型ピールシース350は、その遠位端が穿孔部位から完全に引き出されるまで、第1のチューブ110に沿って引き出される。その後、T字型ピールシース350は、ハンドグリップ部分360とハンドグリップ部分362との2つに分割するか、または第1のチューブ110から剥がすことによって、廃棄される。
【0101】
次に、ステップ1114において、第1の硬質ポート130と第2の硬質ポート140とを係合タブを使用して互いに結合させて一体型ハブを形成する。そして、一体型ハブから流体が漏出することを防止するために、シール材料135(シールポリマー)によって流体密封シールを形成する。第1の硬質ポート130に隣接する第1のチューブ110の短い長さの部分をコイル状にして、そのコイル及びハブを患者の身体に固定する。例えば、接着ストリップを患者の皮膚に接着させることにより、コイル及びハブを適所に維持することができる。ある可能な実施形態では、接着ストリップは、患者の皮膚に接着せさるための自己接着面と、自己接着面とは反対側に面する、コイル及びハブを所定の位置に固定するための面ファスナーとを含む。あるいは、コイル及びハブは、STERI-STRIPS及び/またはTEGADERM接着性スキンクロージャで固定してもよい。最後に、ステップ1116において、第1のチューブ110のチューブコネクタ132及び第2のチューブ120のチューブコネクタ142を、ポンプチューブを介してマルチアクション式流体注入ポンプ500にそれぞれ連通させ、第1のチューブ110及び第2のチューブ120を介して神経ブロック薬を送達する。
【0102】
上記の方法は、本開示のマルチヘッド型カテーテル100の例示的な使用方法であるが、本開示のマルチヘッド型カテーテル100は、任意の適切な使用のために、例えば、外科医が、2つの別々の灌流部分の使用、2つの異なる薬剤の単一の場所への送達、または任意の他の適切な使用を望む場合に、使用できることを理解されたい。例えば、本開示のマルチヘッド型カテーテル100は、脊椎、肋骨、肘などの主要な関節、または他の領域などの、身体の他の解剖学的領域で使用することができる。
【0103】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ本発明を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに組み込まれた任意の方法の実施を含む)することを可能にしている。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、当業者が想到可能な別の実施形態も含まれ得る。そのような別の実施形態は、各請求項の文言と相違しない構成要素を含む場合、または、各請求項の文言とは実質的に相違しない均等な構成要素を含む場合、その請求項の範囲内に含まれるものとする。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】