(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(54)【発明の名称】スラリーウォールカッター用の駆動装置
(51)【国際特許分類】
E02D 17/13 20060101AFI20220412BHJP
E21B 4/00 20060101ALI20220412BHJP
E02F 5/02 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
E02D17/13
E21B4/00
E02F5/02 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550177
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2020054358
(87)【国際公開番号】W WO2020173788
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】202019101110.6
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】202019102477.1
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512197434
【氏名又は名称】リープヘル-コンポーネンツ ビーベラッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ウィッドマン,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ハルダー,ヨハネス
【テーマコード(参考)】
2D044
2D129
【Fターム(参考)】
2D044BA15
2D129AA04
2D129AB22
2D129BA02
2D129BB11
2D129CA04
2D129CA16
2D129CB03
2D129DA11
2D129EB31
2D129EB32
(57)【要約】
本発明は、駆動及び/又は変速要素を収容する内部(16)を囲み、相対回転可能かつ密閉装置(15)により相互に密閉された2つのハウジング部(13,14)を備えた駆動ケース及び/又は変速ケース(11)と内部と環境との間の圧力均等化のための圧力均等化装置(19)とを有するスラリーウォールカッター(1)用の駆動装置及び駆動装置を有するスラリーウォールカッターに関する。ケース内部全体を加圧せず、環境上流の内部空間(20)のみ加圧し、内部空間を内部及び環境に対して密閉することを提案する。本発明によれば、圧力均等化装置は、中間チャンバ(20)が圧力源により加圧され内側シール(21)及び外側シール(22)により内部及び環境に対して密閉される。ケース内部と環境との間で密閉された中間チャンバは、内部よりも著しく容積を小さくできる為、圧力均等化のための加圧が非常に容易になる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動及び/又は変速要素を収容する内部空間(16)を囲むとともに、相対回転可能かつ密閉装置(15)により相互に密閉される2つのケース部(13,14)を備える駆動ケース及び/又は変速ケース(11)を有し、さらに前記内部空間(16)と環境との間の圧力均等化のための圧力均等化装置(19)を備えるスラリーウォールカッター用の駆動装置(8)であって、
前記圧力均等化装置(19)は、少なくとも1つの中間チャンバ(20)を有し、当該中間チャンバ(20)は、圧力源(24)によって加圧されるとともに、前記内部空間(16)に対する内側シール(21)及び前記環境(27)に対する外側シール(22)により密閉されることを特徴とする、駆動装置。
【請求項2】
前記内側シール(21)及び前記外側シール(22)が、相互に異なるシールタイプの形状で構成された、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記外側シール(22)は、比較的低い圧力差用に構成された防塵シールであり、前記内側シールは、気密及び/又は液密に密閉する高圧シールである、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記外側シール(22)は、金属製の端面シールを有し、前記金属製のシールは、好ましくは、相互に摺動し、回転又は非回転のケース部において各弾性及び/又はエラストマーのシールリングにより支持される2つの硬質材料製のシールリングを有する、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記内側シール(21)は、前記ケース部(13,14)の一方のシール溝に配置されたエラストマー及び/又は弾性のシールリングを有する、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの中間チャンバ(20)は、前記2つのケース部(13,14)が相対回転可能な回転軸(17)を中心に同心円状に延びる環状チャンバとして構成された、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記中間チャンバ(20)は、前記ケース部の一方(13)の外周面の周りに延びている、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの中間チャンバ(20)は、前記駆動ケース及び/又は変速ケース(11)の前記内部空間(16)の容積の10%未満又は5%未満の容積を有する、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの中間チャンバ(20)は、前記2つのケース部(13及び14)が相対回転可能に支持されるピボットベアリング(18)と、前記駆動ケース及び/又は変速ケース(11)が固定されるベアリングシェル(10)との間を延びている、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記中間チャンバ(20)は、前記内側シール(21)により前記ピボットベアリング(18)に対して密閉される、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記2つのケース部の一方(14)は、前記スラリーウォールカッター(1)の掘削ホイール(3)を固定するための取り外し可能な固定手段を有する回転駆動可能な出力要素を形成する、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項12】
1つ以上の遊星歯車機構が、前記内部空間(16)に収容され、前記2つのケース部の一方(13)は、前記遊星歯車機構の内歯車に回転固定に連絡され、前記他方のケース部(14)は、前記少なくとも1つの遊星歯車機構の太陽歯車又は遊星キャリヤに回転固定に連絡される、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記ケース部の一方(13)は、好ましくは円筒形のケーススリーブを形成し、前記他方のケース部(14)は、その端面で前記ケーススリーブを囲み、円周上でその周りを係合するか、又は円周上でそれを覆うボウル状のケースカバーを形成する、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの中間チャンバ(20)は、前記ケースカバーと前記ケーススリーブとの円周方向で重なる領域に設けられた、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項15】
制御装置(28)が、前記圧力源(24)により前記中間チャンバ(20)内に供給される前記チャンバ圧力を前記環境の圧力及び/又は掘削深さに応じて自動制御するために設けられた、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項16】
フラッシング装置(29)が、前記少なくとも1つの中間チャンバ(20)をフラッシング剤、特に、フラッシングオイルでフラッシングするために設けられ、前記フラッシング装置(29)は、好ましくは、前記フラッシング剤を供給及び排出するために、前記中間チャンバ(20)と連通する流入部と、前記中間チャンバ(20)と連通する流出部とを備えている、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項17】
圧力監視装置(26)が、前記中間チャンバ(20)内に存在する前記チャンバ圧力を監視するため設けられた、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項18】
前記圧力監視装置(26)は、所定の圧力低下及び/又は時間経過に伴う圧力推移を判断するための圧力低下判断手段と、所定の圧力低下又は所定の圧力推移時にメンテナンス信号を表示するための表示装置とを備える、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項19】
前記内部空間(60)は、潤滑剤が充填され、当該潤滑剤のレベルは、前記内部空間の容量の10%~65%、25%~50%又は35%~45%である、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項20】
レベル監視装置が、前記内部空間(16)内における前記潤滑剤レベルを監視するために設けられ、メンテナンス信号を表示するための前記表示装置は、前記中間チャンバ(20)内のチャンバ圧力の所定の圧力低下又は前記内部空間(16)の潤滑剤レベルの上昇を伴う所定の圧力推移があったとき、前記内側シール(21)の摩耗に対する摩耗信号を出力するように構成された、先行する2つの請求項に記載の駆動装置。
【請求項21】
複数の中間チャンバ(20)が、特に、2つの前記ケース部(13)と前記ケース部(14)との間の同一のシールギャップに関連して設けられた、先行する請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項22】
前記複数の中間チャンバ(20a)及び(20b)に、相互に別々に加圧される、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項23】
前記複数の中間チャンバ(20a)及び(20b)が直列に接続された、先行する2つの請求項の一項に記載の駆動装置。
【請求項24】
掘削フレーム(2)において回転可能に支持され、駆動装置により回転駆動可能である少なくとも1つの掘削ホイール(3)を有する前記駆動装置が先行する請求項の一項によって構成された、スラリーウォールカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動及び/又は変速要素を収容するための内部空間を囲み、相対回転可能な2つのケース部を含み、密閉装置により相互に密閉された駆動ケース及び/又は変速ケースと、内部空間と環境との間の圧力を均等化するための圧力均等化装置とを有するスラリーウォールカッター用の駆動装置に関するものである。本発明は、さらに、このような駆動装置を有するスラリーウォールカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
スラリーウォールカッターは、一般的に特殊な土木工事において、地面、岩盤又は下層土にトレンチを掘削し、例えばコンクリートを含む懸濁液を充填してスラリーウォールを形成することに使用されるものである。このようなスラリーウォールは、本明細書では、一般に、例えば、コンクリート、鉄筋コンクリート及び同類のものからなる下層土中の壁建造物であって、下層土を密閉したり、支持したり又は一般に特定の方法で影響を与える。このようなスラリーウォールを作り出すために、上部が開いた実質的に垂直なトレンチが、スラリーウォールカッターを使用して、掘削ツールを上方から土の中へ下降させ、地面に支持され、好ましくは移動可能なクローラーショベル等の支持装置によりガイドされることで掘削される。スラリーウォールカッターは、本明細書では、通常、細長く直立した掘削フレームを含み、当該掘削フレームは、支持装置で垂直に移動可能に吊り下げられるとともに、通常、水平な各軸の周りを反対方向に駆動可能な複数の掘削ホイールを下端で支持する。掘削ホイールを回転駆動させるための駆動部は、同様に、掘削フレームの下部で支持され、例えば、変速機構を介して掘削ホイールを駆動できる1つ以上の油圧モーターを含み得る。
【0003】
掘削された土砂は、除去ポンプにより地面に汲み出され、その一方で、トレンチ又はトレンチの壁が倒壊しないように支持用懸濁液により常に安定化されている。所望の深さに達した後、トレンチは、通常、コンクリートで固められる。その深さが、一部の例では相当深くなり、100m又は150mを超えるものとなる場合があることから、支持用懸濁液には、10バール又は10バールの倍数、例えば20バールの大きさになり得る相当な圧力が生じる。支持用懸濁液に頻繁に使用されるベントナイトは、密度が、例えば、1.0~1.3t/m3の範囲であり、そのことが、前記の相当な圧力につながる。
【0004】
駆動装置を密閉することは、汚染された環境及びそこに含まれる摩耗媒質に対してのみならず、さらに深さゆえ外圧が相当高くなることに対しても密閉しなければならないことから、本明細書では大きな課題である。一定の圧力レベルを超えると、この外圧によって駆動部の密閉性に問題が生じ、特に、塵及び水が駆動ケース及び/又は変速ケースの内部へ入り込むことを許してしまうことになる。
【0005】
この問題に対処するために、ケースの内部空間と環境との間に圧力均等化を図ることがすでに提案されている。独国特許出願公開第2162314号明細書は、例えば、駆動ケースの内圧と外圧に対して内圧を均等化するように回転可能な膜又は変位可能なピストンの形態の圧力均等化装置を有する回転掘削機を提案している。これにより達成できる圧力均等化は限界があり、又はこの圧力均等化装置は、スラリーウォールが掘削し得る現在の掘削深さにおける非常に大きな圧力には適していない。
【0006】
欧州特許第1529924号明細書は、変速ケース内の内部空間の圧力を環境の圧力に対して均等化するように、変速ケースの内部空間の全体を加圧するスラリーウォールカッターを提案している。しかしながら、当該明細書では、変速機において損失が発生し、すなわち、所望の圧力量を提供可能とするためには、複雑でかさ高い蓄圧器もしくは圧力ポンプが必要である。圧縮空気又は圧縮ガスをかけることにより、内部空間の圧力を発生させた場合、通常、変速ケースの半分程度まで潤滑油で満たされているので、変速ケースの残りの半分を圧縮空気で満たす必要に迫られることから、大量の圧縮空気又は圧縮ガスが必要である。例えば、2バールの内部空間の圧力を圧縮空気により発生させた場合、充填する圧縮空気のおよそ20倍の量が必要である。この圧縮空気又は圧縮ガスは、スラリーウォールカッターの一種のバルーン又は圧力容器内に蓄えておく必要があるか、又はその代わりに圧力ラインを介してコンプレッサにより変速機内に導入する必要がある。いずれも、複雑で、容量を必要とするため、かさ高くなる。
【0007】
潤滑油で変速機の内部空間をほぼ完全に満たして、残りの空気の空間容量をできる限り少なくすることが、すでに検討されている。圧力媒質の必要量は、潤滑油が非圧縮性であるため、最小限とされる。しかしながら、このように潤滑油がほぼ完全に充填されると、完全に充填された変速ケース内で回転する歯車、ベアリング及びシールにより著しく増大する撹拌損失が大幅に増加して、効率が低下し、これにより、高温となる問題につながるという少なからぬ欠点を生じさせる。
【0008】
さらに、欧州特許第1666671号明細書は、掘削ホイールキャリヤの転がり軸受が、2つの密閉要素により密閉されるスラリーウォールカッターを記載している。密閉要素に潤滑剤を供給し流すために、いわば、潤滑剤を、流入開口部を介してシールに供給し、流出開口部を介して再度流出させることができる。これにより耐用年数をある程度延長することができても、既述の圧力差が大きいことによる問題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第2162314号明細書
【特許文献2】欧州特許第1529924号明細書
【特許文献3】欧州特許第1666671号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の基本的な目的は、先行技術の欠点を回避しさらに後者を有利なやり方で発展させた、上述の種類の改良型駆動装置と、改良型スラリーウォールカッターとを提供することである。特に、掘削深さが非常に深くスラリーウォールにおいて非常に大きな圧力差が生じても、大きな撹拌損失やかさばる圧縮ガス装置なしで、ケースの内部空間の確実な密閉が達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、前記目的は、請求項1に係る駆動装置と、請求項24に係るスラリーウォールカッターとにより達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属項の対象である。
【0012】
そこで、ケースの内部空間の全体を加圧するのではなく、環境の上流にある中間の空間のみ加圧し、一方で内部空間に対してかつ他方で環境に対して密閉することを提案する。本発明によれば、圧力均等化装置は、圧力源から加圧され、内側シールにより内部空間に対して密閉され、かつ外側シールにより環境に対して密閉される少なくとも1つの中間チャンバを備える。内部空間と環境との間に密閉された中間チャンバがあると、容量が内部空間よりも非常に小さくなることから、内部空間と環境との間で圧力を均等化するための加圧が非常に容易である。特に、大容量の蓄圧器もしくは圧力ポンプは、圧力を均等化する容量が内部空間全体を加圧する際よりも著しく少ないことから、不要となる。同時に、外側及び内側のシールは、圧力を均等化することによりその目的に適合させることができる。
【0013】
一方で駆動ケース及び/又は変速ケースの内部空間に対して中間チャンバを密閉するとともに、他方で環境に対して中間の空間を密閉する前記内側シール及び外側シールは、中間チャンバの外側と内側とにおいて異なる要求を満たすように、特に、異なるシールタイプの形態に構成可能である。本明細書において環境とは、スラリーウォールカッターを取り巻く外部空間、特に懸濁液で満たされたスラリートレンチを意味する。
【0014】
中間チャンバを環境に対して密閉するための外側シールは、特に、塵及び摩耗媒質による大きな機械的歪みにも耐えるように適合させることができるので、環境に対して圧力が均等化されることにより、限定的な圧力差しか発生しないことから、シールは、限定的な圧力に耐えるだけでよい。他方では、中間チャンバをケースの内部空間に対して密閉するための内側シールは、高圧をシールするように適合させることができるので、シールは、本明細書では、摩耗媒質及び塵に限定的に耐えるだけ済む。
【0015】
外側シールは、特に、外部の粗い摩耗媒質への耐摩耗性が高い金属製の端面シールを備えることができる。このような金属製の端面シールは、特に、相互に摺動し、少なくとも1つの弾性及び/又はエラストマーシールにより密閉ケースにおいて支持され得る硬質材料の2つのシールリングを含み得る。硬質材料のシールリングは、特に、2つの個別のケース部に装着され、相互に押し付けられる金属製の2つのシールリングとすることができ、例えば、硬質材料のシールリングのラップ研磨された又はそうでなければ精巧に加工された摺動面が、張力下で相互に摺動することができる。弾性及び/又はエラストマーシールリングは、例えば、硬質材料のシールリングをシールケースの中央に配置するOリングであってよく、又は断面が円形とは異なるエラストマーリングであってもよい。この点において、2つのOリング又はエラストマーリングはまた、硬質材料の2つのシールリングをケース部に対して密閉することに使用可能である。
【0016】
中間チャンバをケースの内部空間に対して密閉する内側シールは、有利には、シール溝に収容されて大きな圧力差に耐え得るエラストマーシールリングとしてよい。
【0017】
内側及び/又は外側シールは、有利には、好ましくは数バールもしくは数10バールの圧力もしくは圧力差でも、塵密及び/又は液密及び/又は気密なものとして、形成される。
【0018】
有利には、2つ又はそれ以上の中間チャンバを設けることができ、これらの中間チャンバは、駆動ケース及び/又は変速ケースの内部空間と環境との間に配置されて、本明細書では、相互に回転可能な2つのケース部の間の境界面は、複数の中間チャンバを通過するか、又は密閉されるように、相互に連絡させることができる。環境からケースの内部空間へ到達するには、複数の中間チャンバそれぞれを順番に通過する必要がある。
【0019】
この点において、前記中間チャンバのそれぞれは、内部空間に対する内側シールと、環境に対する外側シールとによりそれぞれ密閉することができ、各中間チャンバの内側シール及び外側シールの少なくとも一方は、前述の方法で異なるように形成することができる。前記中間チャンバが直列に配置される場合、さらに外側に配置された中間チャンバ又はさらに内側に配置された中間チャンバをそれぞれ介在させることができることから、前記外側シールを直接環境に対して密閉する必要がなく、内側シールを直接内部空間に対して密閉する必要がない。外側の中間チャンバの内側シールを、例えば、内側の中間チャンバに対して密閉し、一方で、内側の中間チャンバの外側シールを、さらに外側に配置された中間チャンバに対して密閉する。外側シールは、それにもかかわらず、少なくとも間接的に環境に対する密閉をし、内側シールは、少なくとも間接的に内部空間に対する密閉をする。
【0020】
本発明をさらに有利に発展させたものでは、少なくとも1つの中間チャンバは、2つのケース部が相対回転可能な回転軸周りを同心円状に延びる環状チャンバとして構成することができる。
【0021】
2つの回転可能なケース部の間の境界面の構成及び配置に応じて、少なくとも1つの中間チャンバは、駆動ケース及び/又は変速ケースの端面又は円周面において配置され得る。中間チャンバは、特に、ケース部の一方の外周面の周りに延ばすことができ、中間チャンバは、外周の周りに延びる環状チャンバを形成することができる。
【0022】
2つのケース部が、ローラーベアリング又は普通のベアリングにより相対回転可能に支持された場合、前記中間チャンバは、有利には、特に、ローラーベアリング又は普通のベアリングに隣接して、前記ローラーベアリング又は普通のベアリングに対して回転軸方向にオフセットして配設することができる。
【0023】
本発明をさらに発展させたものでは、駆動ケース及び/又は変速ケースは、例えば、スラリーウォールカッターの掘削フレームに固定させることができ、かつ/又は、駆動モーターを支持することができるベアリングシェルに固定させることができ、また、駆動ケース及び/又は変速ケースは、結合支持部を含むことができ、当該結合支持部は、ベアリングシェルから回転軸方向に突出し、スリーブ状に形成可能であり、前記結合支持部に対して回転可能に支持されたボウル状の変速カバーにより閉じられ、特にその周りに係合され得る。ローラーベアリング及び/又は普通のベアリングが、例えば、特に、ケースカバーの周縁ウェブと回転支持用のスリーブ状結合支持部との間の円周上に配置させて設けることができかつ/又はラジアルベアリングとして構成可能である。
【0024】
少なくとも1つの中間チャンバは、本明細書では、スリーブ状の結合支持部とボウル状のケースカバーの周縁ウェブとの間の円周かつ/又はベアリングシェルに隣接して配置することができる。
【0025】
複数の中間チャンバを設ける場合、中間チャンバは、種々の直径の環状チャンバとして構成可能であり、また、中間チャンバは、径方向に見て、少なくとも部分的に相互に入れ子状になっているか、かつ/又は相互に重なり合うようにして配置することができる。中間チャンバは、特に、ケース部の回転軸に直角に延びる共通の面に配置可能である。
【0026】
少なくとも1つの中間チャンバは、有利には、圧力源から圧縮流体チャネルを介して加圧されることができ、当該圧縮流体チャネルは、少なくとも部分的に上述のベアリングシェル及び/又は上述の結合支持部を通って延ばすことができる。
【0027】
複数の中間チャンバを設ける場合、各種中間チャンバが、中間チャンバに個々にかつ/又は相互に別々に加圧することができるように、個別の圧力接続部を設けることが有利となり得る。複数の中間チャンバに圧力をこのように別々にかけることには、1つのチャンバのシールが摩耗したり、又は中間チャンバの漏出時に、他方の中間チャンバを介して圧力均等化を行うことができ、システムの機能を維持できる、という利点がある。
【0028】
いかなる高圧或いは大型の蓄圧器や大容量の圧力ポンプを設けずに済むように、少なくとも1つの中間チャンバは、ケースの内部空間と比較して非常に小さな容積を有することができる。本発明をさらに発展させたものでは、中間チャンバは、内部空間の容積の10%未満又は5%未満の容積とすることができる。
【0029】
少なくとも1つの中間チャンバの圧力レベルは、有利には、可変的に制御可能である。圧力源から供給されるチャンバ圧力を制御するための制御装置が、本明細書では、環境の圧力及び/又は掘削深さに応じて、例えば、外側又は環境の圧力が増すとかつ/又は掘削深さが増すと、中間チャンバ内のチャンバ圧力が増加するように作動して、外側シールにおけるもしくは環境と中間チャンバとの間の圧力差が制限された状態を保つことができる。
【0030】
本発明をさらに有利に発展させたものでは、少なくとも1つの中間チャンバ内のチャンバ圧力を圧力監視装置で監視することにより、中間チャンバの漏出及び/又は望ましくない圧力低下によって正常でない圧力均等化となるのを検出することができる。有利には、圧力監視装置の信号に応じて、チャンバの圧力が所定の範囲外になると、表示装置に表示することができる。その代わりに又はさらに、チャンバ圧力の時間経過を測定することで、例えば、漸進的な圧力低下又はシールの摩耗による劣化故障を判断することができる。例えば、わずかな圧力低下が継続している場合、メンテナンス信号又は圧力低下信号を出力することで、摩耗が早期に発見されるようになる。
【0031】
監視装置はまた、有利には、駆動ケース及び/又は変速ケース内の潤滑剤レベルを検出してケースの内部空間内の潤滑剤レベルの増加を検出できるように、潤滑剤レベルセンサシステムを備え得る。潤滑剤レベルのこのような増加を、特に中間チャンバ内の圧力低下を示す圧力低下信号と関連させて用いて、漏出がケース内部で起きて中間チャンバの内側シールが封止しているか否かを判断することができる。
【0032】
本発明を有利にさらに発展させたものでは、少なくとも1つの中間チャンバを、フラッシング流体、特にフラッシングオイルを中間チャンバに流すことができるフラッシング回路に接続させることができる。中間チャンバは、この目的のために、フラッシング流体入口とフラッシング流体出口とに接続させることができ、また、当該入口及び出口は、有利には、中間チャンバの同じ部分と隣接させて又は対向配置されたチャンバ部分において、例えば、円周環状チャネルの上側又は対向配置された中央部分の両方において、接続させることができ、フラッシング流体が中間チャンバ全体に流れることが保証される。中間チャンバは、フラッシングにより洗浄可能であり、摩耗粒子を、外側シール上を移動させて中間チャンバ内へ流出させることができる。前記フラッシングシステムは、本明細書では、フラッシング流体又はそこに含まれる粒子をろ過するフィルターを備え得る。
【0033】
本発明をさらに有利に発展させたものでは、少なくとも1つの中間チャンバを、所定の時間間隔でかつ/又は作動時間及び/又はケースの回転に応じて周期的にフラッシングすることができるフラッシング制御を提供することができる。
【0034】
ケース部は、駆動装置及び/又はドライブトレインの構成に応じて各種の機能を備え得る。本発明をさらに有利に発展させたものでは、ケース部に囲まれた内部空間が、少なくとも1つの遊星歯車機構を収容することができる。このような遊星歯車機構がケースの内部空間に設けられた場合、2つのケース部の一方は、回転固定に太陽歯車及び/又は遊星キャリヤに連絡させることができ、また、他方のケース部は、内歯車として機能させることができるか又は内歯車に回転固定に連絡させることができる。
【0035】
変速機の構成とは別に、ケース部の1つは、回転駆動可能な出力要素を形成し、当該出力要素に、スラリーウォールカッターの掘削ホイールを回転駆動させるように固定可能である。
【0036】
以下、好ましい実施形態及び関連の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面に示すのは以下のものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の有利な実施形態に係るスラリーウォールカッターの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のスラリーウォールカッターの掘削ホイールの駆動装置であって、駆動モーターが、駆動モーターのベアリングシェルの上部で支持され、
図1のスラリーウォールカッターの掘削ホイールが固定された変速ケースが、ベアリングシェルの下部に配置された、駆動装置の概略図である。
【
図3】
図3は、相対回転可能である変速ケースの2つのケース部と、圧力均等化用の中間チャンバとを示す、
図2の駆動装置の断面である。
【
図4】
図4は、中間チャンバへの加圧用の圧力チャネルを示す
図2及び
図3の駆動装置の部分断面側面図である。
【
図5】
図5は、ケース部の間の中間チャンバの配置と、圧力チャネルを介した加圧とを示す、
図4のE-E線に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、
図5と同様に表現した本発明の有利な実施形態に係る駆動装置の側面図であり、複数の中間チャンバに対して別々の加圧をするための別個の圧力チャネルを示している。
【
図7】
図7は、相互にかつ個別の圧力供給部に接続された複数の中間チャンバの構成を示す、
図6の線A-Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示すように、スラリーウォールカッター1は、格子状キャリヤとして構成可能かつ/又は側面に配置された2つの長手方向のガイド部分を含み得る、直立して配置された細長い掘削フレーム2を備え得る。掘削フレーム2は、少なくとも2つの掘削ホイール3を下端部分に備えることができ、前記掘削ホイール3は、相互に隣接して配置され、それぞれの水平な回転軸周りを回転駆動することができ、掘削ホイール3の回転軸は、相互に平行に延びかつ/又は掘削フレーム2の平坦な側面に対して直角に延び得る。
【0039】
2つの掘削ホイール3は、本明細書では、相互に反対方向に駆動させることができる。掘削駆動部4が、掘削ホイール3の上方、掘削フレーム2の下端部分に配置され、例えば、前記掘削ホイール3を1つ以上の変速機構9を介して駆動させることができる1つ以上の駆動モーター8を含み得る。
【0040】
図1に示すように、掘削ホイール3を有する掘削フレーム2は、支持装置5により昇降可能に保持されることが可能であり又は支持装置5において吊り下げられることが可能である。前記キャリヤ支持装置5は、各トレンチを掘削する地面に立てられ、有利には移動可能である。特に、支持装置5は、例えば、トラックシャーシ(tracked chassis)の形態のシャーシ6を有するケーブル掘削機とすることができ、支持装置5のブーム7により掘削フレーム2を昇降させることができる。
【0041】
図2~
図5に示すように、駆動装置4は、ベアリングシェル10上に配置されてもよいし、ベアリングシェル10で構成されてもよく、すなわち、駆動装置が前記掘削フレーム2に固定可能であってもよい。前記ベアリングシェル10は、T字状の支持体であってもよく、この支持体は、例えば、その上部で掘削フレーム2に固定されてもよく、その下部で前記変速機構9が少なくとも部分的に収容される駆動ケース及び/又は変速ケース11を支持してもよい。
【0042】
駆動モーター8は、例えば、ベアリングシェル10の上端に固定することができ、ベアリングシェル10の内部に延び得る駆動シャフト12を介して変速機構9を駆動可能に連結させることができる。前記変速機構9は、本明細書では、前記掘削ホイール3の1つを駆動させるように1つ以上の遊星変速機構を備え得る。
【0043】
変速機ケース11は、本明細書では、密閉装置15により環境に対して密閉されるとともに変速機構9が収容される内部空間16を囲む、相対回転可能な2つのケース部13及び14を備える。前記内部空間16は、少なくとも略円筒形として構成することができ、2つのケース部13及び14の回転軸17に沿って延びることができる(
図3を参照)。
【0044】
一方のケース部13は、有利には、ベアリングシェル10に強固に固定可能でありかつベアリングシェル10から回転軸17の方向に反対側へ突出して延びるスリーブ状結合支持部として構成することができる(
図3を参照)。他方のケース部14は、ボウル状のケースカバーとして構成可能であり、当該ケースカバーは、端面で結合支持部13を閉じ、その周りに周縁ウェブが係合する。例えば、一列又は複数列のローラーベアリングの形態のピボットベアリング18が、第2のケース部14を第1のケース部13に回転可能に支持する(
図3及び
図5を参照)。
【0045】
2つのケース部13とケース部14との間の境界面又はシールギャップは、前記ピボットベアリング18を介して、スリーブ状結合支持部の円周方向に沿って、2つのケース部13とケース部14との間の端面において延びるようにできる(
図3を参照)。
【0046】
圧力均等化装置19が、中間チャンバ20を備え、当該中間チャンバ20は、加圧可能であって、内部空間16と環境との間に配置され、2つのケース部13とケース部14との間のシールギャップ又は境界面の一部分を形成し、外側の環境に対して内部空間16を密閉する。
【0047】
図2~
図5に示すように、スリーブ状のケース部13は、各ケースカバー14により対向配置された端面で閉じられて、その結果、2つのシールギャップと、これに対応して2つの中間チャンバ20とが得られる。2つの中間チャンバ20は非常に類似するので、2つの一方のみを以下に説明する。
【0048】
図5に示すように、前記中間チャンバ20は、回転軸17に対して同心円状に延び、2つのケース部13とケース部14との間の円周方向に延びる環状チャンバの形態で構成される。中間チャンバ20は、特に、結合支持部として構成されたケース部13の外周に沿ってかつ/又はベアリングシェル10に沿って延びているが、中間チャンバ20を、ピボットベアリング18とベアリングシェル10との間に配置することもできる。
【0049】
図5にさらに示すように、中間チャンバ20は、内側シール21により内部空間16に対してかつ外側シール22により環境に対して密閉される。内側シール21と外側シール22とは、相互に異なるように構成することができ、外側シール22は、有利には、金属製の端面シールの形態で構成することができる。これとは別に、内側シール21は、エラストマーシールの形態に、例えば、2つのケース部13とケース部14との間の境界面を密閉するように溝状のシール用切り欠きに収容され得るシールリングの形態に構成することができる。エラストマー製の内側シール21が収容される前記シール用の溝は、内側シール21が2つのケース部13とケース部14との間の円周方向の境界面を密閉するように円周方向に延びるか又は前記ケース部14の内周及び/もしくは前記ケース部13の外周に形成することができる。
【0050】
金属製の端面シールとして構成された外側シール22は、特に、ラップ研磨された又はそうでなければ精巧に加工された摺動面、特に軸側の端面が、例えば相互に押し付け合い、相互に離れるようにできる2つの金属製又は硬質材料のシールリングを含むことができる。2つの金属製のシールリングは、それぞれOリング又はエラストマーリングによりシールケースにおいて支持されるようにでき、かつ/又は一方の金属製のシールリングが固定されたシールケース部に配置され、他方のシールリングが回転するシールケース部に配置されるように、相互に密閉されるようにできる(
図5を参照)。
【0051】
中間チャンバ20は、圧力源24から圧力媒質チャネル23を介して圧力流体、例えば、圧油を供給することができ、また、前記圧力媒質チャネル23は、有利には、非回転とされたケース部12を通って延びることができる。前記圧力媒質チャネル23は、特に、ベアリングシェル10を通って延び、結合支持部として構成されて中間チャンバ20と連通するケース部13を通って延びることができる。圧力媒質チャネル23のベアリングシェル10における開口部は、圧力流体接続部として構成し得る。
【0052】
中間チャンバ20を圧力媒質でフラッシングすることができるように、2つの圧力媒質チャネル23を中間チャンバ20と連通させることができ、有利には反対側に配置され、又は中間チャンバ20の反対側の区域と連通させることができる。圧力媒質チャネル23の一方はここでは流入部として機能し、他方は流出部として機能して、圧力媒質を中間チャンバ20に流し、これにより不純物を流出させることができる。
【0053】
図4において分かる追加の横方向の圧力媒質チャネル25が、例えば、フラッシング中にフラッシング媒質を供給及び流出させることのできる供給接続部として機能し得る。この点において、圧力監視装置26も、すでに最初に説明したように、中間チャンバ20内のチャンバ圧力を監視することができるように、このような圧力媒質チャネル25を介して接続させることができる。
【0054】
しかしながら、圧力監視装置を、有利には、その代わりに又はさらに、前記圧力媒質チャネル23を介して接続させることができ、これにより、組立が簡単になる。
【0055】
図6及び
図7に示すように、2つのケース部13とケース部14との間の境界面又はシールボールは、それに関連する2つ又は任意に2つ以上の中間チャンバ20a及び20bを有することができ、前記中間チャンバ20a及び20bは、直列に接続されているので、内部空間16から外側に流れ出ようとする潤滑剤は、中間チャンバ20a及び20bを通過しなければならず、すなわち、逆に言えば、塵が内部空間16に移動するには環境から中間チャンバ20a及び20b両方を通る必要がある。
【0056】
図7に示すように、2つの中間チャンバ20a及び20bは、それぞれ環状チャンバとして構成することができ、2つの中間チャンバ20が有利には相互に入れ子状に配置可能となるように直径を相違させることができる。2つの中間チャンバ20a及び20bは、特に、回転軸17に直角に延びる共通の平面に配置可能でありかつ/又は径方向に見て重なり合うことができる。
【0057】
複数の中間チャンバ20a及び20bには、有利には、相互に別々に加圧し得る。この目的のために、各中間チャンバ20a及び20bは、それぞれが圧力媒質チャネル23a及び23bと連通することができ、この圧力媒質チャネル23a及び23bは、2つの個別の圧力接続を形成することができる(
図6を参照)。一方の中間チャンバ内の圧力が低下すると、圧力均等化がなお、圧力が別々にかけられることから他方のチャンバを介して保証され得る。
【国際調査報告】