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特表2022-522461代謝性障害の処置のための組換えタンパク質の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(54)【発明の名称】代謝性障害の処置のための組換えタンパク質の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20220412BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220412BHJP
   C07K 14/50 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P3/00
A61P3/10
C07K14/50 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550690
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 CN2020076730
(87)【国際公開番号】W WO2020173456
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】62/811,616
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521381875
【氏名又は名称】ユーソル・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eusol Biotech Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ジン-ディン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ワン-ヤ
(72)【発明者】
【氏名】イェー,チェ-ミン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA23
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZC21
4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA01
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を使用することによる、代謝性障害を予防または治療するための方法および組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における代謝性障害の予防または治療用医薬の製造における、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質の使用。
【請求項2】
代謝性障害が、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、I型糖尿病、II型糖尿病、難治性糖尿病、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
医薬が、皮下、局所、神経内、腹腔内、静脈内、筋肉内、脳室内または髄腔内投与用に製剤化される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を処置有効量で、必要とする対象に投与することを含む、代謝性障害を予防または治療する方法。
【請求項5】
タンパク質が、皮下、局所、神経内、腹腔内、静脈内、筋肉内、脳室内または髄腔内投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
タンパク質が皮下投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
代謝性障害が、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、I型糖尿病、II型糖尿病、難治性糖尿病、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
タンパク質が0.01~1mg/kgの用量で1日1回または2回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
対象において代謝性障害の予防または治療に使用するための、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
2型糖尿病(T2DM)といった代謝性障害および他の関連する合併症は、死因の上位を占めている。このような障害は、世界中で増加している西洋式ライフスタイルによる過剰な栄養摂取および運動不足に関連する。T2DM(およびインスリン抵抗性状態)は、主に高血糖(血中グルコースレベルが長期にわたり高い状態)によって特徴付けられる慢性で進行性の代謝性障害で、十分には解明されていない。インスリン分泌障害、インスリンの組織作用に対する抵抗性、または両者の組み合わせが、T2DMや、組織インスリン抵抗性によって起こり膵臓β細胞の分泌活性の完全な喪失によって特徴付けられる状態へと徐々に進行するさまざまな疾患の病態生理学に寄与する、最も一般的な要因であると考えられている。長期にわたる高血糖状態は、血管および神経の損傷を引き起こしうる。世界的に2型糖尿病の発病率は高く、さらに高まりつつあり、死因、罹患率、およびヘルスケア支出の上位を占めるようになっている。
【0002】
T2DMの処置のために、さまざまな薬理学的アプローチが利用可能である。抗糖尿病経口医薬の主な種類には、ビグアニド類、スルホニル尿素類、メグリチニド、チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤、ナトリウム-グルコースコトランスポーター(SGLT2)阻害剤、およびα-グルコシダーゼ阻害剤がある。しかしながら、上記アプローチは、低血糖および体重増加といったいくつかの副作用を有する。
【0003】
したがって、副作用が低減された、代謝性障害に対する改善された処置アプローチが依然必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明において予想外にも、配列番号1のアミノ酸配列を有する組換えタンパク質(以下「ES135」と称する)が代謝性障害の処置に有効であることがわかった。例えば、代謝性障害である高血糖症に罹っている対象にES135を投与すると、血中グルコースレベルが顕著に低下した。
【0005】
したがって、本発明の一側面は、代謝性障害を予防または治療するための、ES135を含む組成物に関する。本発明においてはまた、ES135を有効量で投与することを含む、代謝性障害を予防または治療する方法が提供される。
【0006】
前記の全般的な説明、および以下の詳細な説明はいずれも、単に例示的および説明的なものであって、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、C57BL/6およびdb/dbマウスにおける、さまざまな投与量のES135によるグルコース低下効果を示す。
図2図2は、C57BL/6およびob/obマウスにおける、さまざまな投与量のES135によるグルコース低下効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.序論
本発明において、ES135の使用による、代謝性障害の予防または治療に有用な方法および組成物が提供される。本書に記載される糖尿病マウスモデルにおける試験に基づいて、本発明者は、ベヒクル群との比較として、ES135が血中グルコースレベルの低下に効果的であることを示した。
【0009】
II.定義
本書において以下略号が使用される:
IM(i.m.):筋肉内注射
IV(i.v.):静脈内注射
IP(i.p.):腹腔内注射
SC(s.c.):皮下注射
PO(p.o.):経口投与
ICV(i.c.v.):脳室内注射
IT(i.t.):髄腔内注射
Bid:bis in die(1日2回)
【0010】
別に定義しない限り、本書において用いられる技術用語および科学用語は、当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本書に記載されるのと同様または等価な方法、デバイスおよび材料はどれも、本発明の実施に使用することができる。以下の定義は、本書において何度か用いられるいくつかの用語の理解を助けるために提供されるものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0011】
本書において用いられる冠詞「a」または「an」は、該冠詞の特定の使用において単数であることのみを意味することが別途明らかにされない限り、文法的に該冠詞の係る対象が1つまたは1つより多いこと(すなわち、少なくとも1つであること)を意味する。
【0012】
本書において用いられる用語「ES135」は、その内容全体が引用により本書に組み込まれるものとする米国特許第7656033号に開示された配列番号1のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質をさす。配列番号1のアミノ酸配列は次のとおりである:Ala Asn Tyr Lys Lys Pro Lys Leu Leu Tyr Cys Ser Asn Gly Gly His Phe Leu Arg Ile Leu Pro Asp Gly Thr Val Asp Gly Thr Arg Asp Arg Ser Asp Gln His Ile Gln Leu Gln Leu Ser Ala Glu Ser Val Gly Glu Val Tyr Ile Lys Ser Thr Glu Thr Gly Gln Tyr Leu Ala Met Asp Thr Asp Gly Leu Leu Tyr Gly Ser Gln Thr Pro Asn Glu Glu Cys Leu Phe Leu Glu Arg Leu Glu Glu Asn His Tyr Asn Thr Tyr Ile Ser Lys Lys His Ala Glu Lys Asn Trp Phe Val Gly Leu Lys Lys Asn Gly Ser Cys Lys Arg Gly Pro Arg Thr His Tyr Gly Gln Lys Ala Ile Leu Phe Leu Pro Leu Pro Val Ser Ser Asp。いくつかの態様において、ES135の配列は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または100%である。いくつかの態様において、配列番号1のアミノ酸配列は1つ以上の改変を有する。例えば、配列番号1のアミノ酸配列は、その内容全体が引用により本書に組み込まれるものとする米国特許第9567385号に開示されるようなN末端ホスホグルコノイル化またはグルコノイル化を有する。
【0013】
本発明の一態様において、ES135のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0014】
本書において用いられる用語「予防する」または「予防」とは、ものごとが起こるのを、防ぐこと、避けること、回避すること、制すること、止めること、または妨げることであって、特に事前の対処によるものをいう。
【0015】
本書において用いられる用語「処置する」または「処置」とは、治療処置および予防または防止手段の両方であって、望ましくない生理学的状態、障害もしくは疾患を予防するもしくはその進行を抑制する(それを軽減する)こと、または有益なもしくは所望の臨床的結果を得ることを目的とするものをさす。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床的結果とは、症状の軽減;状態、障害または疾患の程度の軽減;状態、障害または疾患状態の安定化(すなわち悪化しないこと);状態、障害または疾患の発症遅延または進行速度低下;状態、障害または疾患状態の改善;状態、障害または疾患の、検出可能もしくは検出不可能な寛解(部分または完全)、または向上もしくは改善を包含するが、それに限定されない。処置は、過度のレベルの副作用を伴わずに臨床的に有意な反応を引き起こすことを包含する。処置はまた、処置をしないとして期待される生存と比較して、生存を延長することを包含する。
【0016】
本書において用いられる用語「処置有効量」または「有効量」とは、本明細書に記載される疾患もしくは状態に伴う症状を予防、改善もしくは治療する、または望ましい処置効果をもたらす、本発明において用いられるES135の量をいう。ES135の処置効果および毒性は、細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的方法、例えばED50(集団の50%において処置に有効な用量)およびLD50(集団の50%に対する致死用量)によって決定することができる。処置および毒性効果の間の用量比は処置指数であり、LD50/ED50の比で表すことができる。
【0017】
本書において用いられる用語「投与する」とは、治療薬に関して用いられるとき、治療薬を標的組織中もしくは標的組織上に直接に投与する、または治療薬を患者に投与し、それによって治療薬が標的とされる組織に正の影響を及ぼすことを意味する。したがって、本書において用いられる用語「投与する」とは、化合物、ペプチドまたはタンパク質に関して用いられるとき、治療薬を標的組織中または標的組織上に提供すること;治療薬を対象に全身的に、例えば静脈内注射によって提供し、それによって治療薬を標的組織に至らしめることを包含しうるが、それに限定されない。化合物を「投与する」ことは、経口、注射、局所投与によって、または他の既知の技術と組み合わせた方法によって、達成されうる。
【0018】
本書において用いられる用語「動物」、「対象」または「患者」とは、ヒトおよびヒト以外の脊椎動物、例えば野生動物および家畜、好ましくはヒトを包含するがそれに限定されない。
【0019】
III.本発明の態様
本発明は一側面において、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む、対象において代謝性障害を予防または治療するための医薬組成物に関する。
【0020】
本発明は他の一側面において、対象における代謝性障害の予防または治療に使用するための、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を提供する。
【0021】
本発明は他の一側面において、対象における代謝性障害の予防または治療用医薬の製造における、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質の使用を提供する。
【0022】
代謝性障害は、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、I型糖尿病、II型糖尿病、難治性糖尿病、およびその組み合わせを包含するが、それに限定されない。いくつかの態様において、代謝性障害はインスリン抵抗性である。好ましくは、代謝障害はII型糖尿病である。
【0023】
高血糖は、空腹時血中グルコースレベルが約7、約10、約15または約20mmol/Lを超えるものとして定義することができる。特に、高血糖は、対象において空腹時血中グルコース濃度が正常範囲を上回る100mg/dL(6.11mmol/L)を超える状態として定義される。
【0024】
空腹時血糖異常(IFG)は、対象において空腹時血中グルコース濃度または空腹時血清グルコース濃度が100~125mg/dL(すなわち5.6~6.9mmol/L)の範囲にある状態、特に110mg/dLを超え126mg/dL(7.00mmol/L)未満である状態として定義される。「正常空腹時血糖」の対象は、空腹時グルコース濃度が100mg/dL未満、すなわち5.6mmol/L未満である。
【0025】
前糖尿病状態の高血糖である耐糖能異常(IGT)は、75g経口グルコース負荷試験(WHOおよびADAにしたがう)において、2時間後グルコースレベル(血糖)が約140~約199mg/dL(7.8~11.0mmol)であるものとして定義される。
【0026】
インスリン抵抗性とは、正常量のインスリンによってもたらされる生物学的反応が正常以下である状態として定義される。インスリン抵抗性は、高インスリン正常血糖クランプ法、ホメオスタシスモデルアセスメント(HOMA)、または量的インスリン感受性チェック指数(QUICKI)によって測定することができる。
【0027】
高インスリン血症は、正常血糖であるかまたは正常血糖でない、インスリン抵抗性の対象において、空腹時または食後血清または血漿インスリン濃度が、インスリン抵抗性でない正常で痩せた個体におけるよりも高い状態であり、ウエスト/ヒップ比が<1.0(男性)または<0.8(女性)であるものとして定義される。空腹時血清インスリンレベルが25mU/Lまたは174pmol/Lを上回るものは、高インスリン血症と見なされる。用語「正常血糖」とは、対象において空腹時血中グルコース濃度が70mg/dL(3.89mmol/L)を超え110mg/dL(6.11mmol/L)未満である正常範囲にある状態として定義される。
【0028】
I型糖尿病は、体のインスリン産生不全によって起こり、「インスリン依存性糖尿病」(IDDM)または「若年型糖尿病」とも称されている。II型糖尿病は、しばしば絶対的なインスリン欠乏と組み合わさった、細胞がインスリンを適正に利用できない状態であるインスリン抵抗性の結果として起こる。これは、「インスリン非依存性糖尿病」(NIDDM)または「成人発症糖尿病」とも称される。インスリンに対する体組織の反応不全には、インスリン受容体が関与すると考えられる。糖尿病は、再発または持続する高血糖によって特徴付けられ、いくつかの例においては、以下のものの任意の1つを示すことによって診断される:a.空腹時血漿グルコースレベルが≧7.0mmol/L(126mg/dL);b.グルコース負荷試験において75g経口グルコース負荷の2時間後の血漿グルコースが≧11.1mmol/L(200mg/dL);c.高血糖の症状があり、かつ、随時血漿グルコースが≧11.1mmol/L(200mg/dL);d.糖化ヘモグロビン(Hb A1C)が≧6.5%。
【0029】
難治性糖尿病は、十分な治療がなされているにもかかわらず血糖コントロールが悪いことによって特徴付けられる。この状態においては、速やかに症状を軽減し目標の血糖値を達成するために調整された最良の治療レジメンさえ効果がないことがありうる。多くの仮説がこの状態の理由として提唱されており、それには、患者側のヘルスケア追及態度の欠如およびアドヒアランスの欠如、臨床的惰性、および医師側の不適当な治療レジメン選択、ならびに家族または糖尿病ケア提供者による心理社会的支援の乏しさ、といったものがある。文献において説明されるように(J Diabetes. 2016 Jan;8(1):76-85)、低年齢での発症、糖尿病が長期にわたること、治療法が複雑かつ多いこと、インスリンの使用、ならびに細小血管合併症の存在はいずれも、難治性糖尿病の予測因子である。
【0030】
本発明は、他の一側面において、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を処置有効量で対象に投与することを含む、対象において代謝性障害を予防または治療する方法に関する。前記タンパク質の処置効果は、本書に記載されるように糖尿病動物モデルにおいて証明されている。
【0031】
いくつかの態様において、ES135が、グルコース低下効果の評価のために、db/dbおよびob/ob糖尿病動物モデルに投与される。好ましくは、ES135は、皮下(s.c.)投与される。いくつかの態様において、ES135は、1日当たり1回、2回、3回、またはより少なく、例えば2日毎、3日毎、1週間毎、2週間毎、もしくはより少なく投与される。本発明において示されるように、ES135は1回皮下投与される。詳細な試験手順は、後述の実施例に示す。
【0032】
いくつかの態様において、ES135の投与は、対象において血中グルコースレベルを正常化することができる。db/dbマウスにおいて、ES135の0.5mg/kg SC投与はベヒクル群と比較して、処置の6時間後および30時間後の時点で血中グルコースレベルを顕著に低下した(p<0.05)。ES135の1mg/kg SC投与も、処置の6時間後、18時間後、30時間後および42時間後の時点で血中グルコースレベルを統計学的に顕著に低下した(p<0.05)。しかしながら、ES135 0.2mg/kgとヘパリン500U/kgを併用したdb/dbマウス群におけるグルコース低下効果は、試験期間にわたりそれほど大きくはなかった(図1)。
【0033】
ob/obマウスにおいて、ES135を0.5mg/kgで1回皮下投与すると、ベヒクル群と比較して、処置の6時間後の時点で血中グルコースレベルは顕著に低下した(p<0.05)。ES135の1mg/kg SC投与も、ベヒクル群と比較して、処置の6時間後、18時間後および30時間後の時点で血中グルコースレベルを統計学的に顕著に低下した。しかしながら、ES135 0.2mg/kgとヘパリン500U/kgを併用したob/obマウス群におけるグルコース低下効果は、試験期間にわたりそれほど大きくはなかった(図2)。
【0034】
C57BL/6マウスにおいて、1mg/kgのES135を1回皮下投与した場合、試験期間にわたり血中グルコースレベルに影響はなかった(図1および2)。
【0035】
いくつかの態様において、投与されるES135の量は、対象の体重1kg当たり0.001~1mg(すなわち0.001~1mg/kg)のES135に等しく、例えば体重1kg当たり0.001~0.01mg、0.01~0.05mg、0.05~0.1mg、0.1~0.2mg、0.1~0.4mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mgまたはそれ以上のES135に等しい。図1および2に示されるように、ES135の糖尿病動物モデルにおけるグルコース低下効果は、用量依存的である。用量依存的グルコース低下効果は、db/dbおよびob/ob動物モデルの両方において見られた。
【0036】
結論として、ES135処置は、評価された血中グルコースレベルを顕著に低下した。
【0037】
本発明によると、ES135は、選択される投与方法のために適当な任意の形態に組み込まれうる。好ましくは、ES135は、皮下、局所、神経内、静脈内、筋肉内、脳室内または髄腔内に投与される。より好ましくは、ES135は皮下投与される。
【実施例
【0038】
本発明を以下の実施例によってより詳細に説明する。しかしながら、本発明は実施例に限定されないことに注意すべきである。
【0039】
db/dbおよびob/obマウスにおけるES135投与によるグルコース低下効果
8匹の正常C57BL/6マウス、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)雄マウス(ob/ob, B6.Cg-Lep <ob>/J およびdb/db, C57BLKS/J Iar- +Leprdb/+Leprdb)の群において、ES135を皮下に1回投与した(0.2、0.5および1mg/kg)。すべての動物に、正常実験飼料および水を自由に摂取させた。正常C57BL/6マウスを除くob/obおよびdb/dbマウスは、投与前3~5日の平均血中グルコースレベルが300mg/dL以上のものを用いた。
【0040】
ES135処置の0時間(投与前)、6時間後、18時間後、30時間後、42時間後、54時間後および66時間後の時点で、絶食していない動物の尾採血によって、血中グルコース値を血糖測定器(OptiumTM XceedTM Diabetes Monitoring System, Abbott)を用いて測定した。血清グルコース、および得られた処置前に対する処置後の群の値のパーセンテージを計算し、処置およびベヒクル群間の比較のために二元ANOVAとその後のボンフェローニ検定を適用した。ベヒクル対照に対してP<0.05、**P<0.01および***P<0.001で差が有意であると見なした。
【0041】
上記の本発明の説明は、本発明の最良の形態であると現在考えられるものを当業者が作り使用するのを可能にするが、本書に記載される特定の実施形態、方法および例の変化形、組み合わせおよび等価物が存在することを当業者は理解および認識しうる。したがって、本発明は、前記実施形態、方法および例によってではなく、本発明の範囲および精神に含まれるすべての実施形態および方法によって限定されるべきものである。
図1
図2
【配列表】
2022522461000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を処置有効量で含む、代謝性障害を予防または治療するための医薬組成物
【請求項2】
下、局所、神経内、腹腔内、静脈内、筋肉内、脳室内または髄腔内投与される、請求項に記載の医薬組成物
【請求項3】
下投与される、請求項に記載の医薬組成物
【請求項4】
代謝性障害が、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、I型糖尿病、II型糖尿病、難治性糖尿病、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物
【請求項5】
タンパク質0.01~1mg/kgの用量で1日1回または2回投与される、請求項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
本発明によると、ES135は、選択される投与方法のために適当な任意の形態に組み込まれうる。好ましくは、ES135は、皮下、局所、神経内、静脈内、筋肉内、脳室内または髄腔内に投与される。より好ましくは、ES135は皮下投与される。
本発明のいくつかの側面を下記項に記載する:
[項1]
対象における代謝性障害の予防または治療用医薬の製造における、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質の使用。
[項2]
代謝性障害が、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、I型糖尿病、II型糖尿病、難治性糖尿病、およびその組み合わせからなる群から選択される、上記項1に記載の使用。
[項3]
医薬が、皮下、局所、神経内、腹腔内、静脈内、筋肉内、脳室内または髄腔内投与用に製剤化される、上記項1に記載の使用。
[項4]
配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を処置有効量で、必要とする対象に投与することを含む、代謝性障害を予防または治療する方法。
[項5]
タンパク質が、皮下、局所、神経内、腹腔内、静脈内、筋肉内、脳室内または髄腔内投与される、上記項4に記載の方法。
[項6]
タンパク質が皮下投与される、上記項5に記載の方法。
[項7]
代謝性障害が、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、I型糖尿病、II型糖尿病、難治性糖尿病、およびその組み合わせからなる群から選択される、上記項4に記載の方法。
[項8]
タンパク質が0.01~1mg/kgの用量で1日1回または2回投与される、上記項4に記載の方法。
[項9]
対象において代謝性障害の予防または治療に使用するための、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質。
【国際調査報告】