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  • 特表-IGBTデバイス 図1
  • 特表-IGBTデバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(54)【発明の名称】IGBTデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
H01L29/78 655A
H01L29/78 655D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551601
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 CN2019123760
(87)【国際公開番号】W WO2021103114
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201911204531.1
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519152663
【氏名又は名称】蘇州東微半導体股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】▲ごーん▼ ▲軼▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 磊
(72)【発明者】
【氏名】毛 振▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲しん▼
(57)【要約】
本発明の実施例に係るIGBTデバイスは、MOSFETセルアレイを含み、各MOSFETセルは、n型ドリフト領域の頂部に位置するp型ボディ領域と、p型ボディ領域内に位置するn型エミッタ領域と、p型ボディ領域の上に位置するゲート誘電体層、ゲート及びn型フローティングゲートを含むゲート構造とを含み、ゲートはゲート誘電体層の上に位置し、かつn型エミッタ領域側に近接し、n型フローティングゲートはゲート誘電体層の上に位置し、かつn型エミッタ領域に近い側に位置し、ゲートは容量結合によって、n型フローティングゲートに作用し、少なくとも1つのMOSFETセルのn型フローティングゲートはゲート誘電体層によって、p型ボディ領域と隔離され、かつ少なくとも1つのMOSFETセルのn型フローティングゲートは1つの当該n型フローティングゲートの下方に位置するゲート誘電体層における開口によってp型ボディ領域に接触してpn接合ダイオードを形成する。本願はIGBTデバイスの逆回復速度を容易に調整することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型コレクタ領域及びp型コレクタ領域と、前記n型コレクタ領域及び前記p型コレクタ領域の上に位置するn型ドリフト領域と、複数のMOSFETセルからなるMOSFETセルアレイとを含むIGBTデバイスであって、前記MOSFETセルは、
前記n型ドリフト領域の頂部に位置するp型ボディ領域と、
前記p型ボディ領域内に位置するn型エミッタ領域と、
前記p型ボディ領域の上に位置し、ゲート誘電体層、ゲート及びn型フローティングゲートを含むゲート構造とを含み、
前記ゲート及び前記n型フローティングゲートは前記ゲート誘電体層の上に位置し、かつ前記ゲートは前記n型エミッタ領域に近い側に位置し、前記n型フローティングゲートは前記n型ドリフト領域に近い側に位置し、前記ゲートは容量結合によって、前記n型フローティングゲートに作用し、
前記MOSFETセルアレイにおいて、少なくとも1つの前記MOSFETセルの前記n型フローティングゲートは前記ゲート誘電体層によって、前記p型ボディ領域と隔離され、かつ少なくとも1つの前記MOSFETセルの前記n型フローティングゲートは1つの当該n型フローティングゲートの下方に位置するゲート誘電体層における開口によって前記p型ボディ領域に接触してpn接合ダイオードを形成する、
IGBTデバイス。
【請求項2】
前記IGBTデバイスは、前記n型コレクタ領域、前記p型コレクタ領域の上に位置するn型フィールドストップ領域をさらに含み、前記n型フィールドストップ領域は前記n型ドリフト領域の下方に位置する、
請求項1に記載のIGBTデバイス。
【請求項3】
前記ゲートは前記n型フローティングゲートの上まで延伸する、
請求項1に記載のIGBTデバイス。
【請求項4】
前記ゲートは前記n型フローティングゲートの上まで延伸して前記n型フローティングゲートの前記n型ドリフト領域に近い側の側壁を被覆する、
請求項1に記載のIGBTデバイス。
【請求項5】
前記開口は前記n型フローティングゲートの下方に位置し、かつ前記n型ドリフト領域側に近接する、
請求項1に記載のIGBTパワーデバイス。
【請求項6】
少なくとも1つの前記MOSFETセルのゲートが前記n型エミッタ領域と電気的に接続される、
請求項1に記載のIGBTパワーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は2019年11月29日に中国国家知識産権局に出願され、出願番号が201911204531.1の中国特許出願の優先権を主張し、上述の出願の全ての内容は引用により本願に援用される。
【0002】
本願はIGBTデバイスの技術分野に属し、例えば逆回復速度が調整可能なIGBTデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)デバイスはMOSトランジスタとバイポーラトランジスタで複合されたデバイスであり、その入力段はMOSトランジスタであり、出力段はPNPトランジスタである。関連技術のIGBTデバイスのオン及びオフはゲート-エミッタ電圧によって制御され、ゲート-エミッタ電圧がMOSトランジスタの閾値電圧Vthよりも大きい場合、MOSトランジスタの内部に電流チャネルが形成されて、バイポーラトランジスタにベース電流を提供することにより、IGBTデバイスをオンにさせる。ゲート-エミッタ電圧がMOSトランジスタの閾値電圧Vthよりも小さい場合、MOSトランジスタ内の電流チャネルがオフされ、バイポーラトランジスタのベース電流が遮断され、これによりIGBTデバイスがオフにされる。関連技術に係るIGBTデバイスがオフの時に、コレクタ-エミッタ電圧が0Vよりも小さい場合、IGBTデバイスに寄生されたボディダイオードが順バイアス状態にあり、逆方向電流がエミッタからボディダイオードを介してコレクタに流れ、この時にボディダイオードの電流はマイノリティキャリアが注入される現象が存在するが、これらのマイノリティキャリアはIGBTデバイスが再びオンになった時に逆回復を行い、大きな逆回復電流をもたらし、逆回復時間が長い。
【発明の概要】
【0004】
本願は、関連技術におけるIGBTデバイスがマイノリティキャリア注入問題によって逆回復時間が長いという技術的問題を解決するために、逆回復速度が調整可能なIGBTデバイスを提供する。
【0005】
本発明の実施例は、
n型コレクタ領域及びp型コレクタ領域と、前記n型コレクタ領域及び前記p型コレクタ領域の上に位置するn型ドリフト領域と、複数のMOSFETセルからなるMOSFETセルアレイを含むIGBTデバイスであって、前記MOSFETセルは、
前記n型ドリフト領域の頂部に位置するp型ボディ領域と、
前記p型ボディ領域内に位置するn型エミッタ領域と、
前記p型ボディ領域の上に位置し、ゲート誘電体層、ゲート及びn型フローティングゲートを含むゲート構造とを含み、
前記ゲート及び前記n型フローティングゲートは前記ゲート誘電体層の上に位置し、かつ前記ゲートは前記n型エミッタ領域に近い側に位置し、前記n型フローティングゲートは前記n型ドリフト領域に近い側に位置し、前記ゲートは容量結合によって、前記n型フローティングゲートに作用し、
前記MOSFETセルアレイにおいて、少なくとも1つの前記MOSFETセルの前記n型フローティングゲートは前記ゲート誘電体層によって、前記p型ボディ領域と隔離され、かつ少なくとも1つの前記MOSFETセルの前記n型フローティングゲートは1つの当該n型フローティングゲートの下方に位置するゲート誘電体層における開口によって前記p型ボディ領域に接触してpn接合ダイオードを形成する、
IGBTデバイスを提供する。
【0006】
好ましくは、本願のIGBTデバイスは、前記n型コレクタ領域及び前記p型コレクタ領域の上に位置するn型フィールドストップ領域をさらに含み、前記n型フィールドストップ領域は前記n型ドリフト領域の下方に位置する。
【0007】
好ましくは、本願のIGBTデバイスにおいて、前記ゲートは前記n型フローティングゲートの上まで延伸する。
【0008】
好ましくは、本願のIGBTデバイスにおいて、前記ゲートは前記n型フローティングゲートの上まで延伸して前記n型フローティングゲートの前記n型ドリフト領域に近い側の側壁を被覆する。
【0009】
好ましくは、本願のIGBTデバイスにおいて、前記開口は前記n型フローティングゲートの下方に位置し、かつ前記n型ドリフト領域側に近接する。
【0010】
好ましくは、本願のIGBTデバイスにおいて、少なくとも1つの前記MOSFETセルのゲートが前記n型エミッタ領域と電気的に接続される。
【0011】
本発明の実施例に係るIGBTデバイスは、pn接合ダイオードが形成されたMOSFETセルの数を制御することにより、IGBTデバイスの逆回復速度を便利かつ正確に調整することができ、これによりIGBTデバイスにより広い応用を有させる。同時に、pn接合ダイオードが形成されたMOSFETセルの数を調整する場合、ゲート誘電体層における開口を形成するための1枚のレチクルを修正すればよく、これによりIGBTデバイスの製造コストを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下実施例を説明するために必要な図面を簡単に紹介する。
図1】本願に係るIGBTデバイスの第1実施例の断面構造模式図である。
図2】本願に係るIGBTデバイスの第2実施例の断面構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施例における図面を参照し、具体的な実施形態によって、本願の技術案を完全に説明する。同時に、明細書の図面に列挙された模式図は、本願に記載の前記層及び領域のサイズを拡大したものであり、列挙された図形の大きさは実際の寸法を表すものではない。明細書に列挙された実施例は明細書の図面に示された領域の特定の形状に限定されるものではなく、得られた形状例えば製造によるずれ等を含む。
【0014】
図1は本願に係るIGBTデバイスの第1実施例の断面構造模式図であり、図1に示すように、本発明の実施例に係るIGBTデバイスは、n型コレクタ領域20及びp型コレクタ領域30と、n型コレクタ領域20及びp型コレクタ領域30の上に位置するn型フィールドストップ領域29と、n型フィールドストップ領域29の上に位置するn型ドリフト領域21と、複数のMOSFETセルからなるMOSFETセルアレイとを含み、図1に2つのMOSFETセル(MOSFETセル200及びMOSFETセル201)が例示的に示されている。
【0015】
本発明の実施例のMOSFETセルは、n型ドリフト領域21の頂部に位置するp型ボディ領域22と、p型ボディ領域22内に位置するn型エミッタ領域23と、p型ボディ領域22の上に位置し、ゲート誘電体層24、n型フローティングゲート25及びゲート26を含むゲート構造とを含み、ゲート26はゲート誘電体層24の上に位置し、かつn型エミッタ領域23側に近接し、かつゲート26はn型ドリフト領域21側に向かってn型フローティングゲート25の上まで延伸し、n型フローティングゲート25はゲート誘電体層24の上に位置し、かつn型ドリフト領域21側に近接し、ゲート26及びn型フローティングゲート25は絶縁誘電体層27によって隔離され、ゲート26は容量結合によって、n型フローティングゲート25に作用する。絶縁誘電体層27は、一般的にシリカである。
【0016】
本発明の実施例のMOSFETセルアレイにおいて、少なくとも1つのMOSFETセルのn型フローティングゲート25はゲート誘電体層によって、p型ボディ領域22と隔離され(図1におけるMOSFETセル201のように)、かつ少なくとも1つのMOSFETセルのn型フローティングゲート25は1つの当該n型フローティングゲート25の下方に位置するゲート誘電体層24における開口28によってp型ボディ領域22に接触してpn接合ダイオードを形成する(図1におけるMOSFETセル200のように)。
【0017】
本発明の実施例におけるMOSFETセルのゲート26は、n型エミッタ領域23に近い側のみに位置し、つまり横方向において、ゲート26及びn型フローティングゲート25が左右に設置されてもよく、ゲート26がn型エミッタ領域23に近い側に位置してn型ドリフト領域21側に向かってn型フローティングゲート25の上まで延伸してもよく(図2に示すように)、ゲート26がn型フローティングゲート25の上まで延伸し、ゲート26がn型フローティングゲート25を被覆する面積を増大させ、ゲート26のn型フローティングゲート25に対する容量結合率を増大させることができる。
【0018】
本発明の実施例のIGBTデバイスは、順方向遮断状態の時に、n型コレクタ領域20とp型コレクタ領域30に高電圧が印加され、MOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25及びp型ボディ領域22によって形成されたpn接合ダイオードが順方向にバイアスされ、MOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25は正電荷がチャージされることで、MOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25の下の電流チャネルの閾値電圧Vht1が低減される。MOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25の電圧はゲート誘電体層24における開口28の位置に関連し、好ましくは、ゲート誘電体層24に位置する開口28はn型フローティングゲート25の下方に位置し、かつn型ドリフト領域21側に近接し、これによりn型フローティングゲート25はより容易に正電荷にチャージされることができる。
【0019】
本発明の実施例のIGBTデバイスは順方向遮断状態及び順方向オン状態にある時に、コレクタ-エミッタ電圧Vceが0Vよりも大きく、MOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25の下の電流チャネルの閾値電圧Vht1がMOSFETセル200全体の閾値電圧Vthに与える影響が低く、MOSFETセル200は依然として高閾値電圧Vthを有する。本発明の実施例のIGBTデバイスがオフの時に、エミッタ‐コレクタ電圧Vecが0Vよりも大きい場合、MOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25の下の電流チャネルの閾値電圧Vht1がMOSFETセル200全体の閾値電圧Vthに与える影響が非常に大きく、MOSFETセル200に低閾値電圧Vthを有させることで、MOSFETセル200の電流チャネルが低ゲート電圧(又は0V電圧)でオンになり、これによりMOSFETセル200に流れる逆方向電流を増加させ、IGBTデバイスに寄生されたボディダイオードに流れる電流を減少させ、IGBTデバイス全体の逆回復速度を向上させることができる。
【0020】
本発明の実施例に係るIGBTデバイスは、MOSFETセルアレイにおけるpn接合ダイオードが形成されたMOSFETセルの数を制御することにより、IGBTデバイスの逆回復速度を容易かつ正確に調整することができ、これによりIGBTデバイスにより広い応用を有させる。同時に、pn接合ダイオードが形成されたMOSFETセルの数を調整する場合、ゲート誘電体層における開口を形成するための1枚のレチクルを修正すればよく、これによりIGBTデバイスの製造コストを効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明の実施例のIGBTデバイスのMOSFETセルアレイにおいて、少なくとも1つのMOSFETセルのゲート26をn型エミッタ領域23と電気的に接続させることができ、つまり当該部分ゲート26がエミッタ電圧と接続され、これによりIGBTデバイスのゲート電荷を低減することができる。
【0022】
図2は本願に係るIGBTデバイスの第2実施例の断面構造模式図であり、図1に示された本発明の実施例のIGBTデバイス構造と異なるのは、本実施例におけるIGBTデバイスにおいては、MOSFETセルのゲート26はn型ドリフト領域21側にn型フローティングゲート25の上まで延伸し、かつn型フローティングゲート25のn型ドリフト領域21に近い側の側壁を被覆し、これによりゲート26がn型フローティングゲート25を被覆する面積を増大させることができ、ゲート26のn型フローティングゲート25に対する容量結合率を増大させることができる。
図1
図2
【国際調査報告】