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特表2022-522488アルロースを生産するブドウ球菌属微生物及びそれを用いたアルロース製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(54)【発明の名称】アルロースを生産するブドウ球菌属微生物及びそれを用いたアルロース製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220412BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C12N1/20 Z ZNA
C12P19/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551795
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(85)【翻訳文提出日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 KR2020003061
(87)【国際公開番号】W WO2020184889
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0026633
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514158497
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】キム,スジン
(72)【発明者】
【氏名】チ,ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ウンス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,テクボム
(72)【発明者】
【氏名】カク,ジュンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンボ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウンジョン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF02
4B064CA02
4B064CD09
4B064DA16
4B065AA53X
4B065BB15
4B065BD36
4B065CA20
4B065CA60
(57)【要約】
本出願は、アルロースを生産する微生物、及びそれを用いてアルロースを製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ球菌(Staphylococcus)属微生物、又は前記ブドウ球菌属微生物の培養物を含むアルロース生産用組成物。
【請求項2】
前記ブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・アグネティス(Staphylococcus agnetis)、スタフィロコッカス・アルゲンシス(Staphylococcus argensis)、スタフィロコッカス・アルゲンテウス(Staphylococcus argenteus)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・コンディメンティ(Staphylococcus condiment)、スタフィロコッカス・コルヌビエンシス(Staphylococcus cornubiensis)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)、スタフィロコッカス・デブリエセイ(Staphylococcus devriesei)、スタフィロコッカス・エダフィカス(Staphylococcus edaphicus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・フェカリス(Staphylococcus faecalis)、スタフィロコッカス・フェリス(Staphylococcus felis)、スタフィロコッカス・フレウレッティイ(Staphylococcus fleurettii)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ハイカス(Staphylococcus hyicus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・レーイ(Staphylococcus leei)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ルトラエ(Staphylococcus lutrae)、スタフィロコッカス・リティカンス(Staphylococcus lyticans)、スタフィロコッカス・マッシリエンシス(Staphylococcus massiliensis)、スタフィロコッカス・ミクロティ(Staphylococcus microti)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・ネパレンシス(Staphylococcus nepalensis)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・ペトラシイ(Staphylococcus petrasii)、スタフィロコッカス・ペッテンコフェリ(Staphylococcus pettenkoferi)、スタフィロコッカス・ピスシフェルメンタンス(Staphylococcus piscifermentans)、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)、スタフィロコッカス・シュードルグドゥネンシス(Staphylococcus pseudolugdunensis)、スタフィロコッカス・ロストリ(Staphylococcus rostri)、スタフィロコッカス・サッカロリティカス(Staphylococcus saccharolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・シェレイフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シュバイツェリ(Staphylococcus schweitzeri)、スタフィロコッカス・シウリ(Staphylococcus sciuri)、スタフィロコッカス・シミアエ(Staphylococcus simiae)、スタフィロコッカス・シムランス(Staphylococcus simulans)、スタフィロコッカス・ステパノビシイ(Staphylococcus stepanovicii)、スタフィロコッカス・サクシヌス(Staphylococcus succinus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)及びスタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)からなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)及びスタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)からなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ブドウ球菌属微生物は非病原性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ブドウ球菌(Staphylococcus)属微生物、又は前記ブドウ球菌属微生物の培養物とフルクトースを接触させてフルクトースをアルロースに変換するステップを含むアルロース製造方法。
【請求項6】
前記ブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・アグネティス(Staphylococcus agnetis)、スタフィロコッカス・アルゲンシス(Staphylococcus argensis)、スタフィロコッカス・アルゲンテウス(Staphylococcus argenteus)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・コンディメンティ(Staphylococcus condiment)、スタフィロコッカス・コルヌビエンシス(Staphylococcus cornubiensis)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)、スタフィロコッカス・デブリエセイ(Staphylococcus devriesei)、スタフィロコッカス・エダフィカス(Staphylococcus edaphicus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・フェカリス(Staphylococcus faecalis)、スタフィロコッカス・フェリス(Staphylococcus felis)、スタフィロコッカス・フレウレッティイ(Staphylococcus fleurettii)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ハイカス(Staphylococcus hyicus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・レーイ(Staphylococcus leei)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ルトラエ(Staphylococcus lutrae)、スタフィロコッカス・リティカンス(Staphylococcus lyticans)、スタフィロコッカス・マッシリエンシス(Staphylococcus massiliensis)、スタフィロコッカス・ミクロティ(Staphylococcus microti)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・ネパレンシス(Staphylococcus nepalensis)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・ペトラシイ(Staphylococcus petrasii)、スタフィロコッカス・ペッテンコフェリ(Staphylococcus pettenkoferi)、スタフィロコッカス・ピスシフェルメンタンス(Staphylococcus piscifermentans)、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)、スタフィロコッカス・シュードルグドゥネンシス(Staphylococcus pseudolugdunensis)、スタフィロコッカス・ロストリ(Staphylococcus rostri)、スタフィロコッカス・サッカロリティカス(Staphylococcus saccharolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・シェレイフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シュバイツェリ(Staphylococcus schweitzeri)、スタフィロコッカス・シウリ(Staphylococcus sciuri)、スタフィロコッカス・シミアエ(Staphylococcus simiae)、スタフィロコッカス・シムランス(Staphylococcus simulans)、スタフィロコッカス・ステパノビシイ(Staphylococcus stepanovicii)、スタフィロコッカス・サクシヌス(Staphylococcus succinus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)及びスタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)からなる群から選択されるいずれかである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)及びスタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)からなる群から選択されるいずれかである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記製造方法は、変換されたアルロースを回収するステップをさらに含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記フルクトースをアルロースに変換するステップは、40℃~70℃の温度で行われるものである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
ブドウ球菌(Staphylococcus)属微生物、又は前記ブドウ球菌属微生物の培養物のアルロース生産における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アルロースを生産する微生物、及びそれを用いてアルロースを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
D-アルロースは、フルクトース(D-fructose)の3位の炭素のエピマーであり、自然界に極少量存在する希少糖(rare sugar)として知られる単糖類である。甘味度は砂糖の約70%であるが、ほとんどゼロカロリーであり、血糖上昇抑制や脂肪合成抑制などの機能により、機能性食品に用いられる新たな食品原料として多くの関心を集めている。
【0003】
これらの特徴により、アルロースは砂糖代替甘味料として様々な食品への使用が考慮されているが、自然界に極めて少量しか存在しないので、アルロースを効率的に製造する方法の必要性が高まっている。
【0004】
従来技術によるアルロースの生産方法としては、モリブデン酸イオンの触媒作用を用いるか、エタノールとトリエチルアミン(triethyamine)と共に加熱してD-フルクトースからアルロースを生産する化学的方法が知られているが、これらの化学的方法は、アルロース生成収率が低い、製造コストが高いなどという欠点がある。
【0005】
前記問題を解決するために、微生物由来のエピマー化酵素を用いてフルクトースからアルロースを生産する生物学的方法が研究されている。Agrobacterium tumefaciens由来のD-アルロース3-エピマー化遺伝子を保有する遺伝子組換え微生物を用いてアルロースを生産する技術をはじめとして、最近は自然環境又は食品から微生物菌株を分離し、それを用いてD-フルクトースからアルロースを生産する方法も報告されている(特許文献1,2,3,4)。しかし、アルロースを生産するための生物学的技術が開発されているものの、生触媒として用いられる微生物は熱安全性が低く、生産コストが高いので、アルロースを生産することのできる新規な微生物資源を見出すことが切実に求められている。
【0006】
こうした背景の下、アルロースを高温の環境でも生産することのできる微生物を開発すべく鋭意研究した結果、ブドウ球菌属微生物がアルロースを生産することができることを確認し、本出願を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2011-0035805号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-1804778号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10-2017-0067070号公報
【特許文献4】韓国公開特許第10-2016-0081722号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444
【非特許文献2】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【非特許文献3】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【非特許文献4】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【非特許文献5】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【非特許文献6】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【非特許文献7】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【非特許文献8】https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo
【非特許文献9】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【非特許文献10】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)
【非特許文献11】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願は、ブドウ球菌属微生物を含むアルロース生産用組成物を提供する。
【0010】
本出願は、前記組成物を用いてアルロースを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0012】
本出願の一態様は、ブドウ球菌(Staphylococcus)属微生物、又は前記ブドウ球菌属微生物の培養物を含むアルロース生産用組成物を提供する。
【0013】
具体的には、前記ブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・アグネティス(Staphylococcus agnetis)、スタフィロコッカス・アルゲンシス(Staphylococcus argensis)、スタフィロコッカス・アルゲンテウス(Staphylococcus argenteus)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・コンディメンティ(Staphylococcus condiment)、スタフィロコッカス・コルヌビエンシス(Staphylococcus cornubiensis)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)、スタフィロコッカス・デブリエセイ(Staphylococcus devriesei)、スタフィロコッカス・エダフィカス(Staphylococcus edaphicus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・フェカリス(Staphylococcus faecalis)、スタフィロコッカス・フェリス(Staphylococcus felis)、スタフィロコッカス・フレウレッティイ(Staphylococcus fleurettii)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ハイカス(Staphylococcus hyicus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・レーイ(Staphylococcus leei)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ルトラエ(Staphylococcus lutrae)、スタフィロコッカス・リティカンス(Staphylococcus lyticans)、スタフィロコッカス・マッシリエンシス(Staphylococcus massiliensis)、スタフィロコッカス・ミクロティ(Staphylococcus microti)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・ネパレンシス(Staphylococcus nepalensis)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・ペトラシイ(Staphylococcus petrasii)、スタフィロコッカス・ペッテンコフェリ(Staphylococcus pettenkoferi)、スタフィロコッカス・ピスシフェルメンタンス(Staphylococcus piscifermentans)、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)、スタフィロコッカス・シュードルグドゥネンシス(Staphylococcus pseudolugdunensis)、スタフィロコッカス・ロストリ(Staphylococcus rostri)、スタフィロコッカス・サッカロリティカス(Staphylococcus saccharolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・シェレイフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シュバイツェリ(Staphylococcus schweitzeri)、スタフィロコッカス・シウリ(Staphylococcus sciuri)、スタフィロコッカス・シミアエ(Staphylococcus simiae)、スタフィロコッカス・シムランス(Staphylococcus simulans)、スタフィロコッカス・ステパノビシイ(Staphylococcus stepanovicii)、スタフィロコッカス・サクシヌス(Staphylococcus succinus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)及びスタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)からなる群から選択されるいずれかであるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
具体的には、前記ブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)及びスタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)からなる群から選択されるいずれかであり、より具体的には、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)又はスタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)であるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本出願におけるD-アルロース(D-allulose;以下、アルロース)とは、D-フルクトースのエピマーであり、エピマー化酵素によりフルクトース(果糖)から製造される。本出願においては、プシコース(psicose)と混用される。
【0016】
本出願において基質として用いられるフルクトースは、変換酵素により分解された砂糖から得たものであるか、液体フルクトースから得たものであるか、又は市販のものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本出願のブドウ球菌属微生物は、D-フルクトースをD-アルロースに変換する活性を有する。前記ブドウ球菌属微生物は、保有する代謝システムを用いてD-フルクトースからD-アルロースを生産するが、その変換反応は菌体内で行われてもよく、菌体外に分泌されて行われてもよく、フルクトースからアルロースを生産することができるブドウ球菌属微生物であれば、いかなるアルロース生産過程であってもよい。
【0018】
なお、本出願のブドウ球菌属微生物には、野生型微生物だけでなく、自然発生又は非自然発生の変異を有する変異微生物が含まれる。具体的には、非自然発生の変異は、野生型微生物又は自然発生の変異微生物にUV照射、放射線(ガンマ線,X線)を照射して変異させるものであってもよく、化学的変異剤を用いて変異させるものであってもよい。野生型ブドウ球菌属微生物とは異なる遺伝形質を有するものであっても、フルクトースからアルロースを生産することのできるブドウ球菌属微生物の特性を有するものであれば、本出願に含まれる。
【0019】
また、本出願のブドウ球菌属微生物は、高温の環境、例えば50℃以上の温度でもアルロースを生産することのできる耐熱性を有するので、アルロース生産収率が高くなるという利点を有する。
【0020】
本出願のブドウ球菌属微生物は、フルクトースからアルロースに変換する活性を示すが、産業的に利用可能なアルロース変換率を示すものであれば、本出願に含まれる。
【0021】
本出願における前記変換率は、12時間反応させて生成されたアルロースの濃度/初期のフルクトースの濃度(1wt%)で表され、本出願のブドウ球菌属微生物は、0.1%以上、具体的には0.3%以上、0.5%以上、0.9%以上、1.6%以上、2.3%以上、3.4%以上、5.3%以上、10.4%以上、24.5%以上の変換率を示すが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本出願における変換率の測定は、当該技術分野で公知の方法で行うことができ、特定方法に限定されるものではない。例えば、本出願における変換率は、12時間、pH7.5、55℃の条件で行われたアルロースへの変換反応の結果を測定したものであるが、反応条件(例えば、pH、温度、時間など)は当業者が適宜選択して変換率を測定することができる。
【0023】
特に、前記ブドウ球菌属微生物は、病原性を有さないことが知られており、様々な食品に活用できるという利点を有する。
【0024】
よって、本出願のブドウ球菌属微生物は非病原性であるが、これに限定されるものではない。具体的には、非病原性微生物として知られるブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・アルゲンシス(Staphylococcus argensis)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・デブリエセイ(Staphylococcus devriesei)、スタフィロコッカス・フェカリス(Staphylococcus faecalis)、スタフィロコッカス・シウリ(Staphylococcus sciuri)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ミクロティ(Staphylococcus microti)、スタフィロコッカス・ピスシフェルメンタンス(Staphylococcus piscifermentans)、スタフィロコッカス・シュバイツェリ(Staphylococcus schweitzeri)、スタフィロコッカス・シムランス(Staphylococcus simulans)、スタフィロコッカス・サクシヌス(Staphylococcus succinus)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)又はスタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)であるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本出願における非病原性微生物とは、ヒトをはじめとする個体において病害症状を引き起こさない微生物を意味し、国際的に通用するバイオセーフティーレベル(Biosafety level)のリスクグループ1に該当する安全な菌株を意味する。具体的には、ブドウ球菌属微生物のうちバイオセーフティーレベル(Biosafety level)のリスクグループ2以上に該当するスタフィロコッカス・アグネティス(Staphylococcus agnetis)、スタフィロコッカス・アルゲンテウス(Staphylococcus argenteus)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・コルヌビエンシス(Staphylococcus cornubiensis)、スタフィロコッカス・フェリス(Staphylococcus felis)、スタフィロコッカス・フレウレッティイ(Staphylococcus fleurettii)、スタフィロコッカス・ハイカス(Staphylococcus hyicus)、スタフィロコッカス・ルトラエ(Staphylococcus lutrae)、スタフィロコッカス・マッシリエンシス(Staphylococcus massiliensis)、スタフィロコッカス・ネパレンシス(Staphylococcus nepalensis)、スタフィロコッカス・ペトラシイ(Staphylococcus petrasii)、スタフィロコッカス・ペッテンコフェリ(Staphylococcus pettenkoferi)、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)、スタフィロコッカス・ロストリ(Staphylococcus rostri)、スタフィロコッカス・シェレイフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シミアエ(Staphylococcus simiae)、スタフィロコッカス・ステパノビシイ(Staphylococcus stepanovicii)菌株を除く全ての菌株を意味する。
【0026】
本出願の非病原性ブドウ球菌属微生物は、アルロース生産能を有すると共に、ヒトをはじめとする個体に有害な影響を及ぼさないことを特徴とする。
【0027】
本出願における前記ブドウ球菌属に属する様々な微生物、特に非病原性微生物がフルクトースをアルロースに変換する活性を有することが確認されただけでなく、前記微生物の16S rRNAを分析したところ、遺伝的近縁性を有することが確認された。
【0028】
本出願における「16S rRNA」とは、16SリボソームRNA(16S ribosomal RNA)を意味し、原核生物リボソームの30Sサブユニットを構成するrRNAであり、1,500ヌクレオチド程度の長さを有する。前記16S rRNA配列は、ほとんどが高度に保存されているものの、一部の区間では塩基配列の多様性が高く、特に同種間では多様性をほとんど示さないのに対して、他種間では多様性を示すことから、原核生物を同定する際に一般に用いられる配列として知られている。すなわち、16S rRNA配列の相同性を比較することにより遺伝的近縁性を判断することができ、16S rRNA配列の相同性(類似性)が高いほど類似した遺伝的形質を有するものと解される。本出願における「相同性(homology)」又は「同一性(identity)」とは、2つの与えられた塩基配列が互いに関連する程度を意味し、百分率で表される。
【0029】
相同性及び同一性は、しばしば相互交換的に用いられる。
【0030】
保存されている(conserved)ポリヌクレオチド配列の相同性又は同一性は標準的な配列アルゴリズムにより決定され、用いられるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に用いられてもよい。実質的には、相同性を有するか(homologous)又は同じ(identical)配列は、中程度又は高いストリンジェントな条件(stringent conditions)下において、一般に配列全体又は全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%又は90%以上ハイブリダイズする。そのハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドがコドンの代わりに縮退コドンを含有するものも考慮される。
【0031】
任意の2つのポリヌクレオチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、例えば非特許文献1のようなデフォルトパラメーターと「FASTA」プログラムなどの公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。あるいは、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, 非特許文献2)(バージョン5.0.0又はそれ以降のバージョン)で行われるように、ニードルマン=ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献3)を用いて決定することができる(GCGプログラムパッケージ(非特許文献4)、BLASTP、BLASTN、FASTA(非特許文献5,6,7)を含む)。例えば、国立生物工学情報センターのBLAST、Clustal omegaプログラム(非特許文献8)又はClustal Wを用いて相同性、類似性又は同一性を決定することができる。
【0032】
ポリヌクレオチドの相同性、類似性又は同一性は、例えば非特許文献9に開示されているように、非特許文献3などのGAPコンピュータプログラムを用いて、配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち短いものにおける記号の総数で、類似する配列記号(すなわち、ヌクレオチド又はアミノ酸)の数を割った値と定義している。GAPプログラムのためのデフォルトパラメーターは、(1)二進法比較マトリクス(同一性は1、非同一性は0の値をとる)及び非特許文献10に開示されているように、非特許文献11の加重比較マトリクス(又はEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリクス)と、(2)各ギャップに3.0のペナルティ、及び各ギャップの各記号に追加の0.10ペナルティ(又はギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)と、(3)末端ギャップのための無ペナルティとを含む。よって、本出願における「相同性」又は「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0033】
本出願のアルロース生産用組成物は、1種、2種又はそれ以上のブドウ球菌属微生物又はその培養物を含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本出願のアルロース生産用組成物は、フルクトースをアルロースに変換する活性を有するブドウ球菌属微生物又はその培養物を含むことにより、アルロースを生産することができる。
【0035】
本出願における「培養」とは、微生物を人工的に適宜調節した環境条件で生育させることを意味し、「培養物」とは、微生物を培養して得られた産物を意味し、微生物及び前記微生物から分泌された物質が全て含まれるものである。
【0036】
本出願におけるブドウ球菌属微生物を培養する方法は、当該技術分野で周知の方法を用いることができる。具体的には、前記培養は、バッチプロセス、流加又は反復流加プロセスを用いる回分、連続又は流加培養であるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
培養に用いられる培地は、好適な方法で特定菌株の条件を満たさなければならず、ブドウ球菌属微生物を培養するための培地条件は公知である。
【0038】
具体的には、培地に用いることのできる糖源としては、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デンプン、セルロースなどの糖及び炭水化物、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ココナッツ油などの油脂、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸などの脂肪酸、グリセリン、エタノールなどのアルコール、酢酸などの有機酸が挙げられる。これらの物質は、単独で用いることもでき、混合物として用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
用いることのできる炭素源としては、原糖又はグルコース、原糖を多量に含む糖蜜が挙げられ、具体的には精製グルコースであってもよいが、これらに限定されるものではなく、それ以外の炭素源が多様に用いられる。
【0040】
用いることのできる窒素源としては、ペプトン、酵母抽出物、肉汁、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、大豆粕及び尿素、又は無機化合物、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムが挙げられる。窒素源も、単独で用いることもでき、混合物として用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
用いることのできるリン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、又はそれらに相当するナトリウム含有塩が挙げられる。
【0042】
また、培養培地は、成長に必要な硫酸マグネシウム、硫酸鉄などの金属塩を含有してもよい。前記物質以外に、アミノ酸、ビタミンなどの必須成長物質が用いられてもよい。また、培養培地に好適な前駆体が用いられてもよい。前述した原料は、培養過程において培養物に好適な方法でバッチ毎に又は連続して添加されてもよい。
【0043】
また、前記微生物の培養中に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの基礎化合物、又はリン酸、硫酸などの酸化合物を好適な方法で用いて培養物のpHを調整してもよい。さらに、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡生成を抑制してもよい。好気状態を維持するために、培養物中に酸素又は酸素含有気体(例えば、空気)を注入してもよい。
【0044】
また、本出願のアルロース生産用組成物は、前記ブドウ球菌属微生物又は前記微生物の培養物以外に、基質であるフルクトース、及び/又はアルロース生産に関与する酵素をさらに含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0045】
さらに、本出願のアルロース生産用組成物は、当該アルロース生産用組成物に通常用いられる任意の好適な賦形剤をさらに含んでもよい。このような賦形剤としては、例えば保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本出願のアルロース生産用組成物は、金属イオン又は金属塩をさらに含んでもよい。本出願のアルロース生産用組成物は、前記金属イオン又は金属塩を組成物中に含むことにより、フルクトースからアルロースに変換する活性を有する。前記金属イオン又は金属塩は、ブドウ球菌属微生物がフルクトースからアルロースを生産する過程に必要なものであり、例えば前記変換過程を媒介する酵素の作用に必要なものであるが、これらに限定されるものではない。本出願のアルロース生産用組成物に含まれる金属イオン又は金属塩は、前記組成物がフルクトースをアルロースに変換する活性を示すものであれば、当業者に公知の金属イオン又は金属塩を適宜選択することができる。一実施例において、前記金属イオンは、2価の陽イオンであり、具体的には、Ni、Mg、Ni、Co、Mn、Fe及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンである。より具体的には、本出願のアルロース生産用組成物は、金属塩をさらに含み、さらに具体的には、前記金属塩は、NiSO、MgSO、MgCl、NiCl、CoSO、CoCl、MnCl、MnSO、FeSO及びZnSOからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0047】
本出願の他の態様は、ブドウ球菌(Staphylococcus)属微生物又は前記ブドウ球菌属微生物の培養物のアルロース生産における使用を提供する。
【0048】
前記「ブドウ球菌(Staphylococcus)属微生物」及び「ブドウ球菌属微生物の培養物」については前述した通りである。
【0049】
本出願のさらに他の態様は、前記組成物とフルクトースを接触させてフルクトースをアルロースに変換するステップを含むアルロース製造方法を提供する。
【0050】
具体的には、前記ブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・アグネティス(Staphylococcus agnetis)、スタフィロコッカス・アルゲンシス(Staphylococcus argensis)、スタフィロコッカス・アルゲンテウス(Staphylococcus argenteus)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・コンディメンティ(Staphylococcus condiment)、スタフィロコッカス・コルヌビエンシス(Staphylococcus cornubiensis)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)、スタフィロコッカス・デブリエセイ(Staphylococcus devriesei)、スタフィロコッカス・エダフィカス(Staphylococcus edaphicus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・フェカリス(Staphylococcus faecalis)、スタフィロコッカス・フェリス(Staphylococcus felis)、スタフィロコッカス・フレウレッティイ(Staphylococcus fleurettii)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ハイカス(Staphylococcus hyicus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・レーイ(Staphylococcus leei)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ルトラエ(Staphylococcus lutrae)、スタフィロコッカス・リティカンス(Staphylococcus lyticans)、スタフィロコッカス・マッシリエンシス(Staphylococcus massiliensis)、スタフィロコッカス・ミクロティ(Staphylococcus microti)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・ネパレンシス(Staphylococcus nepalensis)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・ペトラシイ(Staphylococcus petrasii)、スタフィロコッカス・ペッテンコフェリ(Staphylococcus pettenkoferi)、スタフィロコッカス・ピスシフェルメンタンス(Staphylococcus piscifermentans)、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)、スタフィロコッカス・シュードルグドゥネンシス(Staphylococcus pseudolugdunensis)、スタフィロコッカス・ロストリ(Staphylococcus rostri)、スタフィロコッカス・サッカロリティカス(Staphylococcus saccharolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・シェレイフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シュバイツェリ(Staphylococcus schweitzeri)、スタフィロコッカス・シウリ(Staphylococcus sciuri)、スタフィロコッカス・シミアエ(Staphylococcus simiae)、スタフィロコッカス・シムランス(Staphylococcus simulans)、スタフィロコッカス・ステパノビシイ(Staphylococcus stepanovicii)、スタフィロコッカス・サクシヌス(Staphylococcus succinus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)及びスタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)からなる群から選択されるいずれかであるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
より具体的には、前記ブドウ球菌属微生物は、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・ムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカス・レンタス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・ガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカス・アルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカス・エクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカス・デルフィニ(Staphylococcus delphini)及びスタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)からなる群から選択されるいずれかであり、より具体的には、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)又はスタフィロコッカス・ビツリヌス(Staphylococcus vitulinus)であるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本出願の製造方法は、砂糖、グルコースからフルクトースを得るステップをさらに含んでもよいが、これに限定されるものではない。前記砂糖、グルコースからフルクトースを得る方法、特に酵素を用いる生産方法は、当該技術分野で公知である。
【0053】
本出願の製造方法は、高温の環境でもフルクトースをアルロースに変換することができるので、汚染源が少なく、収率が高くなるという利点を有する。
【0054】
具体的には、フルクトースをアルロースに変換するステップの温度は、40℃~70℃、より具体的には50℃~70℃である。また、培養時間は、所望のアルロース生成量が得られるまで続けられ、具体的には5~120時間、より具体的には10~30時間であるが、これらに限定されるものではない。さらに、本出願の製造方法において、フルクトースからアルロースへの変換は、pH5.0~9.0、具体的にはpH6.0~8.0で行われる。
【0055】
本出願の製造方法は、ブドウ球菌属微生物により変換されたアルロースを回収するステップをさらに含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0056】
具体的には、ブドウ球菌属微生物を破砕してアルロースを回収するものであってもよく、ブドウ球菌属微生物の培養物からアルロースを分離するものであってもよく、ブドウ球菌属微生物により変換されたアルロースを回収できるものであれば、特定方法に限定されるものではない。
【0057】
アルロースの分離は、当該技術分野で公知の通常の方法により行うことができる。その分離方法には、遠心分離、濾過、イオン交換クロマトグラフィー、結晶化などの方法を用いることができる。例えば、培養物を低速で遠心分離することによりバイオマスを除去し、得られた上清をイオン交換クロマトグラフィーにより分離することができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
また、本出願の製造方法は、アルロースを精製するステップをさらに含んでもよいが、これに限定されるものではない。前記精製には、通常用いられる方法を用いることができる。例えば、透析、沈殿、吸着、電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、分別結晶などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記精製は、1つの方法のみ用いてもよく、2つ以上の方法を共に用いてもよい。例えば、クロマトグラフィーによりアルロース生成反応物を精製してもよい。前記クロマトグラフィーによる糖の分離は、分離しようとする糖とイオン樹脂に付着した金属イオン間の小さな結合力の差を用いて行うことができる。
【0059】
また、本出願は、本出願の精製するステップの前又は後に、脱色及び/又は脱塩を行うステップをさらに含んでもよい。前記脱色及び/又は脱塩を行うことにより、不純物のない、より精製されたアルロース反応物が得られる。
【発明の効果】
【0060】
本出願のブドウ球菌属微生物は、高温の環境でもアルロースを生産することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】スタフィロコッカス・デルフィニKCTC3592のアルロース生成を示す図である。
図2】非病原性ブドウ球菌株の系統樹を示す図である。
図3】20種の非病原性ブドウ球菌株の系統樹を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願の範囲が限定されるものではない。
【0063】
前記目的を達成するために、本出願は、ブドウ球菌(Staphylococcus)属微生物又は前記ブドウ球菌属微生物の培養物を含むアルロース生産用組成物を提供する。
【実施例
【0064】
以下、実施例を挙げて本出願を詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本出願を例示するものにすぎず、本出願がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
ブドウ球菌属微生物によるアルロース生産の確認
ブドウ球菌属微生物のアルロース生産能を確認するために、非病原性ブドウ球菌属微生物を32種選択し、それらのうち20種のブドウ球菌属微生物について、D-フルクトースからアルロースを生産するか否かを確認した。
【0066】
具体的には、スタフィロコッカス・カルノサス2種(KCTC3580,KACC13250)、スタフィロコッカス・キシロサス2種(KCTC3342,KACC16180)、スタフィロコッカス・ビツリヌス4種(KACC15803,KACC15804,KACC15805,KACC13211)、スタフィロコッカス・デルフィニ(KCTC3592)、スタフィロコッカス・エクオルム(KCTC3589)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(KCTC1917)、スタフィロコッカス・コーニイ(KCTC3574)、スタフィロコッカス・クロモゲネス(KCTC3579)、スタフィロコッカス・カプラエ(KCTC3583)、スタフィロコッカス・ワルネリ(KCTC3340)、スタフィロコッカス・レンタス(KCTC3577)、スタフィロコッカス・ムスカエ(KCTC3576)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(KCTC3345)、スタフィロコッカス・パステウリ(KCTC13167)、スタフィロコッカス・インターメディウス(KCTC3344)、スタフィロコッカス・アルレッテ(KCTC3588)、スタフィロコッカス・クルーシイ(KCTC3590)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(KCTC3341)、スタフィロコッカス・ガリナルム(KCTC3585)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(KCTC3584)が生物資源センター(Korean Collection for Type Cultures, KCTC)と国立農業科学院(Korean Agricultural Culture Collection, KACC)から分譲された。
【0067】
1%アルロースを添加したTryptic soy broth(Pepton 17g/L,Soytone 3g/L,Psicose 10g/L,NaCl 5g/L,K2HPO4 2.5g/L,agar 15g/L)に前記微生物をそれぞれ接種し、30又は37℃で18時間培養した。その後、培養した菌体を回収し、0.85%(w/v)NaClで洗浄してから、それを用いてプレ細胞変換反応を行った。
【0068】
菌体濃度が20%(w/w)に、1%(w/w)D-フルクトースを添加した50mM potassium phosphate緩衝液(pH7.5)を入れて浮遊させ、55℃で12時間変換反応を行った。
【0069】
前記変換反応の結果物の上清をHPLC分析してアルロース生産を確認した。HPLC分析は、Aminex HPX-87Cカラム(BI0-RAD)を装着したHPLC(Agi lent, USA)のRefractive Index Detector(Agilent 1260 RID)を用い、移動相溶媒は水、温度は80℃、流速は0.6ml/minとした。アルロース変換率は、反応前の基質(D-フルクトース)の重量に対する、反応後に生成されたアルロースの重量の比(アルロース濃度(12h反応)/初期フルクトース濃度(1wt%))で計算した。
【0070】
その結果、前記20種のブドウ球菌属微生物は全てD-フルクトースからアルロースを生産することが確認された(表1及び図1)。
【0071】
【表1】
【実施例2】
【0072】
ブドウ球菌属微生物の16S rRNA類似性の確認
実施例2-1.非病原性ブドウ球菌属微生物の16S rRNA類似性の確認
本実施例において、非病原性(バイオセーフティーレベルのリスクグループ1)ブドウ球菌属微生物に分類される微生物は、Staphylococcus argensis、Staphylococcus capitis、Staphylococcus devriesei、Staphylococcus faecalis、Staphylococcus sciuri、Staphylococcus hominis、Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus microti、Staphylococcus piscifermentans、Staphylococcus schweitzeri、Staphylococcus simulans、Staphylococcus succinus、Staphylococcus arlettae、Staphylococcus auricularis、Staphylococcus caprae、Staphylococcus carnosus、Staphylococcus chromogenes、Staphylococcus cohnii、Staphylococcus delphini、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus equorum、Staphylococcus gallinarum、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus intermedius、Staphylococcus kloosii、Staphylococcus lentus、Staphylococcus muscae、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus vitulinus、Staphylococcus warneri、Staphylococcus xylosusである。
【0073】
前記非病原性ブドウ球菌属微生物のうち、16s rRNA配列を確認することができないスタフィロコッカス・フェカリス1種を除く31種の16s rRNA配列において、Clustal omegaプログラム(非特許文献8)を用いて菌株間の配列上の相同性を分析した。各菌株の代表16s rRNA配列はNCBI databaseで確認した。
【0074】
その結果、非病原性として知られるブドウ球菌属微生物の16s rRNA配列の菌株間の相同性は全て92.78%以上であることが確認された(図2)。31種のブドウ球菌属微生物のほとんどが95%以上の相同性を示し、Staphylococcus argensisは92.78%~95.21%の相同性を示した。
【0075】
これは、非病原性に分類される31種のブドウ球菌属微生物の全てが高い遺伝的近縁性を有することを裏付ける結果である。
【0076】
実施例2-2.20種の非病原性ブドウ球菌属微生物の16S rRNA類似性の確認
実施例1でアルロース変換能が確認された20種のブドウ球菌属微生物の16s rRNA配列において、Clustal omegaプログラム(非特許文献8)を用いて配列上の相同性を分析した。各菌株の代表16s rRNA配列はNCBI databaseで確認した。
【0077】
その結果、アルロース生産能が確認された20種のブドウ球菌属微生物の16s rRNA配列の相同性は95.97%以上であることが確認された。
【0078】
前記実施例から、非病原性ブドウ球菌属微生物は全て種間の遺伝的近縁性が高く、その遺伝的近縁性が高いブドウ球菌属微生物はフルクトースからアルロースを生産する活性を有することが確認された。
【0079】
以上の説明から、本願の属する技術分野の当業者であれば、本願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
【配列表】
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【国際調査報告】