(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(54)【発明の名称】リーンNOxトラップ触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20220412BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220412BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220412BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01J35/04 301E
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/28 301C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551899
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 GB2020050533
(87)【国際公開番号】W WO2020178596
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリ、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】プリッツヴァルト-ステッグマン、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】レイド、スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ストレーロフ、 ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
3G091
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【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【解決手段】 リーンNO
xトラップ触媒及び内燃機関のための排出物処理システムにおけるその使用を開示する。リーンNO
xトラップ触媒は、リーンな排気ガス条件下で窒素酸化物(NO
x)を貯蔵し、リッチな排気ガス条件の際に貯蔵したNO
xを放出及び/又は還元する第1層と、第2層とを含み、当該第2層は、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)を酸化する第1ゾーンと、一酸化窒素(NO)を酸化する第2ゾーンと、入口端部及び出口端部を有する基材と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンNO
xトラップ触媒であって、
リーンな排気ガス条件下で窒素酸化物(NO
x)を貯蔵し、リッチな排気ガス条件の際に貯蔵したNO
xを放出及び/又は還元する第1層であって、1つ以上の白金族金属、NO
x貯蔵材、及び第1の無機酸化物を含む、第1層と、
前記第1層上に配置された第2層であって、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)を酸化する第1ゾーンと、一酸化窒素(NO)を酸化する第2ゾーンと、を含む、第2層と、
入口端部と出口端部とを有する基材であって、前記第1層が前記基材と直接接触している、基材と、を含み、
前記第1ゾーンが、1つ以上の貴金属、第2の無機酸化物、及びゼオライトを含み、
前記第2ゾーンが、ゼオライトを実質的に含まず、担体材料及び白金、パラジウム、又は白金とパラジウムとの混合物若しくは合金を含み、
前記NO
x貯蔵材が、ランタン、ネオジム、又はそれらの金属酸化物から選択される少なくとも1つのドーパントでドープされたセリアを含む、リーンNO
xトラップ触媒。
【請求項2】
前記NO
x貯蔵材が、ネオジム又はその金属酸化物でドープされたセリアを含む、請求項1に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項3】
前記1つ以上の白金族金属が、白金とパラジウムとの混合物又は合金である、請求項1又は2に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項4】
前記第1の無機酸化物が、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びそれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される耐熱性金属酸化物である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項5】
前記第1層中の前記1つ以上の白金族金属が、約10~約110g/ft
3の担持量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項6】
前記第1層中の前記1つ以上の白金族金属が、約35~約90g/ft
3、好ましくは約40~約75g/ft
3、より好ましくは約50~約70g/ft
3の担持量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項7】
前記第2の無機酸化物が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、及びそれらの2つ以上の混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される耐熱性金属酸化物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項8】
前記第1ゾーンが、アルカリ土類金属、好ましくはバリウムを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項9】
前記ゼオライトが、小細孔ゼオライト、中細孔ゼオライト、及び大細孔ゼオライトから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項10】
前記ゼオライトが、BEAの骨格型を有する大細孔ゼオライトである、請求項9に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項11】
前記第1ゾーン中の前記1つ以上の貴金属のg/ft
3での担持量の、前記第1層中の前記1つ以上の白金族金属のg/ft
3での担持量に対する比が、約1:15~約4:1である、請求項1~10のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項12】
前記第1ゾーン中の前記1つ以上の貴金属のg/ft
3での担持量の、前記第1層中の前記1つ以上の白金族金属のg/ft
3での担持量に対する比が、約1.5:1~約1:0.8、好ましくは約1.33:1~約1:1である、請求項1~11のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項13】
前記第2ゾーンが白金を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項14】
前記担体材料が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、及びそれらの2つ以上の混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される耐熱性金属酸化物を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項15】
入口端部と出口端部とを有する前記基材上に前記第1層が堆積され、前記第1ゾーンが前記第1層上に堆積され、前記第2ゾーンが前記第1層上に堆積された、請求項1~14のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項16】
前記第2ゾーンが、前記排気ガスが前記第1ゾーン及び/又は前記第1層と接触した後に、前記基材の前記出口端部で前記排気ガスと接触するように配置された、請求項1~15のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項17】
前記基材が、フロースルーモノリス又はフィルタモノリスである、請求項1~16のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項18】
前記第1層及び/又は前記第2層を押し出してフロースルー又はフィルタ基材を形成した、請求項1~17のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項19】
請求項1~19のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒と内燃機関とを含む、燃焼排気ガス流を処理するための排出物処理システム。
【請求項20】
前記内燃機関がディーゼルエンジンである、請求項19に記載の排出物処理システム。
【請求項21】
選択的接触還元触媒システム、微粒子フィルタ、選択的接触還元フィルタシステム、受動的NO
x吸蔵材、三元触媒システム、又はそれらの組合せを更に含む、請求項19又は20に記載の排出物処理システム。
【請求項22】
前記排気ガスを請求項1~18のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒、又は請求項19~21のいずれか一項に記載の排出物処理システムと接触させることを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンNOxトラップ触媒、内燃機関からの排気ガスを処理する方法、及びリーンNOxトラップ触媒を含む内燃機関用の排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、政府の法規制対象である窒素酸化物(「NOx」)、一酸化炭素、及び未燃焼炭化水素を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスを生成する。ますます厳格になる国家及び地域の法規制によって、そのようなディーゼル又はガソリンエンジンから排出できる汚染物質の量は減少してきている。排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されており、典型的には、それらがその動作温度(典型的には、200℃以上)に達すると非常に高い効率を発揮する。
【0003】
排気ガスを浄化するために利用される1つの排気ガス処理の構成要素は、当該分野でNOx吸蔵触媒(NAC)とも呼ばれるリーンNOxトラップ触媒(LNT)である。NOx吸蔵触媒は、NOxをリーンな排気条件下で吸蔵し、吸蔵したNOxをリッチな条件下で放出して、放出されたNOxを還元してN2を形成するデバイスである。NOx吸蔵触媒は、典型的には、NOxを貯蔵するためのNOx吸蔵剤と酸化/還元触媒と、を含む。
【0004】
NOx吸蔵剤成分は、典型的には、アルカリ土類金属、アルカリ金属、希土類金属、又はそれらの組合せである。これらの金属は、典型的には、酸化物の形態で見られる。酸化/還元触媒は、典型的には、1つ以上の貴金属、好ましくは白金、パラジウム、及び/又はロジウムである。典型的には、白金は酸化機能を発揮するために含まれ、ロジウムは還元機能を発揮するために含まれる。典型的には、酸化/還元触媒及びNOx吸蔵剤は、排気システムに使用するために無機酸化物などの担体材料上に担持される。
【0005】
NOx吸蔵触媒は以下の3つの機能を発揮する。先ず、酸化触媒の存在下で、一酸化窒素を酸素と反応させてNO2を生成する。次に、NO2を、NOx吸蔵剤によって無機硝酸塩の形態で吸蔵する(例えば、BaO又はBaCO3が、NOx吸蔵剤上でBa(NO3)2に変換される)。最後に、エンジンがリッチな条件下で運転されると、吸蔵した無機硝酸塩が分解してNO又はNO2を形成し、それらは次いで還元触媒の存在下で一酸化炭素、水素、及び/又は炭化水素と反応して(又はNHx又はNCO中間体を経由して)還元され、N2を形成する。典型的には、窒素酸化物は、排気流中で、熱、一酸化炭素、水素及び炭化水素の存在下で、窒素、二酸化炭素、及び水に変換される。
【0006】
国際公開第2004/076829号に、SCR触媒の上流に配置されたNOx貯蔵触媒を含む排気ガス浄化システムが開示されている。NOx貯蔵触媒は、少なくとも1つの白金族金属(Pt、Pd、Rh、又はIr)でコーティング又は活性化された少なくとも1つのアルカリ、アルカリ土類、又は希土類金属を含む。特に好ましいNOx貯蔵触媒は、白金でコーティングされた酸化セリウム及び酸化アルミニウムをベースとした担体上の酸化触媒としての白金を更に含むことが教示されている。欧州特許第1027919号には、アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、チタニア、及び/又はランタニアなどの多孔質担体材料と、少なくとも0.1重量%の貴金属(Pt、Pd、及び/又はRh)とを含む、NOx吸蔵材が開示されている。アルミナ上に担持された白金が例示されている。
【0007】
米国特許出願公開第2015/0336085号には、担体上の少なくとも2つの触媒活性を有するコーティングで構成された窒素酸化物貯蔵触媒が記載されている。下層のコーティングは、酸化セリウムと白金及び/又はパラジウムとを含有する。下層のコーティングの上に配置された上層のコーティングは、アルカリ土類金属化合物、混合酸化物、及び白金とパラジウムとを含有する。窒素酸化物貯蔵触媒は、200~500℃の温度で、リーンバーンエンジン、例えば、ディーゼルエンジンからの排気ガス中のNOxの変換に特に適していると言われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リーンNOxトラップ触媒の主要な機能は、NOxの排出を制御することであるが、貴金属又は白金族金属の存在は、炭化水素及び一酸化炭素などの他の排気ガス成分を酸化するという更なる機能も有し得ることを意味している。この種の多機能触媒が、別々の排気ガス触媒の数を減らすことが有益なシステムには望ましい。更に、リーンNOxトラップ触媒に使用される貴金属又は白金族金属は高価であり、したがって、これらの材料を排気ガスの排出物の処理において可能な限り効果的に利用することが望ましい。あるいは、これらの高価な材料の量を減らすこと(「節約」として知られる)は、これらの触媒に関連するコストを低減する手段として望ましい。
【0009】
あらゆる自動車のシステム及びプロセスと同様に、排気ガス処理システムの更なる改善の実現が望まれている。本発明者らは、CO酸化活性が改善された新規なNOx吸蔵触媒組成物を発見した。驚くべきことに、必要とされる貴金属又は白金族金属の量を増加させることなくこれらの改善された触媒特性を実現できることを見出した。
【0010】
本発明の第1の態様では、リーンNOxトラップ触媒を提供し、それは、
リーンな排気ガス条件下で窒素酸化物(NOx)を貯蔵し、リッチな排気ガス条件の際に貯蔵したNOxを放出及び/又は還元する第1層であって、1つ以上の白金族金属、NOx貯蔵材、及び第1の無機酸化物を含む、第1層と、
第1層上に配置された第2層であって、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)を酸化する第1ゾーンと、一酸化窒素(NO)を酸化する第2ゾーンと、を含む、第2層と、
入口端部と出口端部とを有する基材であって、第1層が当該基材と直接接触している、基材と、を含み、
第1ゾーンは、1つ以上の貴金属、第2の無機酸化物、及びゼオライトを含み、
第2ゾーンは、ゼオライトを実質的に含まず、担体材料及び白金、パラジウム、又は白金とパラジウムとの混合物若しくは合金を含み、
NOx貯蔵材は、ランタン、ネオジム、又はそれらの金属酸化物から選択される少なくとも1つのドーパントでドープされたセリアを含む。
【0011】
本発明の第2の態様では、上で定義されたリーンNOxトラップ触媒と内燃機関とを含む、燃焼排気ガス流を処理するための排出物処理システムを提供する。
【0012】
本発明の第3の態様では、排気ガスを上で定義されたリーンNOxトラップ触媒と接触させることを含む内燃機関からの排気ガスを処理する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、 第1層(3)を有するリーンNOxトラップ触媒を示す。第1層はNO
x貯蔵層として機能する。第1層(3)は、入口端部と出口端部とを有する基材(4)上に配置される。触媒は、第1ゾーン(1)と第2ゾーン(2)とを有する、第2層を更に含む。第1ゾーン(1)は、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)を酸化する酸化ゾーンとして機能する。第2ゾーン(2)は、一酸化窒素(NO)を酸化するゾーンとして機能する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常は触媒の製造中に基材に塗布される接着性コーティングを指す。
【0015】
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金からなる群から選択される金属、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム及び白金からなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、ロジウム、白金、及びパラジウムからなる群から選択される金属を指す。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「貴金属(noble metal)」は、概ね、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び金からなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「貴金属」は、好ましくは、ロジウム、白金、パラジウム、及び金からなる群から選択される金属を指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用するとき、用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「ドーパント」は、希土類が材料の格子構造内に存在し得ることを意味し、それは材料の表面上に、材料中の細孔中に、又は上記の任意の組合せで存在してもよい。
【0019】
材料に関して本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」という表現は、材料が少量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下で存在し得ることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「担持量」は、金属重量基準でのg/ft3の単位の測定値を指す。
【0021】
発明の詳細
本発明のリーンNOxトラップ触媒は、
リーンな排気ガス条件下で窒素酸化物(NOx)を貯蔵し、リッチな排気ガス条件の際に貯蔵したNOxを放出及び/又は還元する第1層であって、1つ以上の白金族金属、NOx貯蔵材、及び第1の無機酸化物を含む、第1層と、
第1層上に配置された第2層であって、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)を酸化する第1ゾーンと、一酸化窒素(NO)を酸化する第2ゾーンと、を含む、第2層と、
入口端部と出口端部とを有する基材であって、第1層が基材と直接接触している、基材と、を含み、
第1ゾーンは、1つ以上の貴金属、第2の無機酸化物、及びゼオライトを含み、
第2ゾーンは、ゼオライトを実質的に含まず、担体材料及び白金、パラジウム、又は白金とパラジウムとの混合物若しくは合金を含み、
NOx貯蔵材は、ランタン、ネオジム、又はそれらの金属酸化物から選択される少なくとも1つのドーパントでドープされたセリアを含む。
【0022】
好ましくは、NOx貯蔵材は、ネオジム又はその金属酸化物でドープされたセリアを含む。ネオジム成分は、ネオジムを含有する任意の塩、酸化物、錯体、又は他の化合物であってもよく、例えば酸化ネオジム(III)であってもよい。これはまた、金属ネオジムであってもよい。誤解を避けるために、使用可能なネオジム含有成分はここに列記したものに限定されない。
【0023】
ドーパント(例えば、ネオジム)は、セリアの表面上に存在してもよい。ドーパント(例えば、ネオジム)は更に、又は代替的に、NOx貯蔵材に組み込まれてもよい。NOx貯蔵材に組み込まれるドーパント(例えば、ネオジム)の1つの例として、例えば、セリアの格子構造におけるNOx貯蔵材の原子のネオジムによる置換がある。
【0024】
本発明の触媒中に存在するランタン、ネオジム、又はそれらの金属酸化物から選択される少なくとも1つのドーパントでドープされたセリアを含むNOx貯蔵材は、180℃超、200℃超、250℃超、又は300℃超の温度、好ましくは約300℃超などの所与の温度より高い温度で、NOxを貯蔵しない、又は実質的に貯蔵しないという点で有益である。したがって、このことは、「ハイウェイ」条件下ではNOxの放出及び/又は変換にリッチな排気流を必要としないため有益である。このことは、NOx吸蔵触媒組成物がSCR又はSCRF(商標)触媒の上流に存在するときに、そのような条件下で、SCR又はSCRF(商標)触媒が定量的にNOxを変換することから特に好ましい。加えて、この180℃超、200℃超、250℃超又は300℃超の温度、好ましくは約300℃超の温度でNOxの貯蔵が少ない又はないということは、その後、車両が比較的低温条件下、例えば、「市街地」条件下で使用されるときにNOxが貯蔵されないことを意味し、このことは、このような低温条件下におけるNOxの残留を低減するという更なる利点を有する。
【0025】
ドーパント(例えば、ネオジム)は、任意の量でセリア中に存在することができるが、NOx貯蔵材中のドーパント(例えば、Nd)のモル%として、好ましくは約0.5~18モル%、より好ましくは約1~16モル%、更により好ましくは約2~12モル%の量で存在する。例えば、ドーパント成分は、約0.5、1、2、4、6、8、10、11、12、14、16又は18モル%で存在してもよい。
【0026】
NOx貯蔵材は、NOx貯蔵材中のドーパントの重量%として、好ましくは約0.5~20重量%、より好ましくは約2.5~18.5重量%のドーパント(例えば、ネオジム)を含む。この重量%は第1層中に存在するドーパントの量のみを指す。
【0027】
第1層中の1つ以上の白金族金属は、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、1つ以上の白金族金属は、白金とパラジウムとの混合物又は合金であり、白金対パラジウムの比は、好ましくは重量/重量基準で2:1~12:1であり、特に好ましくは重量/重量基準で約5:1である。
【0028】
好ましくは、リーンNOxトラップ触媒は、第1層中に1つ以上の白金族金属を、約10~約110g/ft3の担持量で含む。好ましくは、第1層中の1つ以上の白金族金属は、約35~約90g/ft3、好ましくは約40~約75g/ft3、より好ましくは約50~約70g/ft3の担持量で存在する。
【0029】
驚くべきことに、本発明のリーンNOxトラップ触媒の触媒性能は、第1層中の1つ以上の白金族金属の担持量(すなわち、量)を増加させても必ずしも向上しないことを見出した。むしろ、本発明の触媒は、白金族金属を「節約」することができ、それにより、使用する白金族金属の量がより少ないにもかかわらず、許容できる触媒活性を依然として維持し、場合によっては改善しながら、第1(すなわち、NOx貯蔵)層中の白金族金属の担持量をより少なくできることを見出した。このことは、存在する白金族金属の量を増加させることにより、触媒活性を向上させる必要があり、コストが上昇するという欠点を伴うという、当該分野における技術的先入観とは相反する。したがって、本発明の触媒は、高価な白金族金属の使用をより少なくしながら、依然として許容できる触媒性能を維持することができる点で特に有益である。本発明の触媒はまた、触媒中の一定量の白金族金属を全体としてより効率的に使用し、したがって、従来の触媒と比較して、固定した白金族金属の担持量で向上した性能が実現されるという点で有益である。
【0030】
好ましくは、1つ以上の白金族金属は、ロジウムを含まないか、又はロジウムからはならない。言い換えると、好ましくは、第1層はロジウムを実質的に含まない。
【0031】
1つ以上の白金族金属は、概ね、第1の無機酸化物と接触する。好ましくは、1つ以上の白金族金属は、第1の無機酸化物上に担持される。したがって、好ましくは、第1の無機酸化物は、1つ以上の白金族金属のための担体材料である。
【0032】
第1の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第1の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びそれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される耐熱性金属酸化物である。特に好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナの複合酸化物である。1つの特に好ましい無機酸化物は、マグネシア/アルミナの複合酸化物であり、それは更に、任意選択でセリウム含有成分、例えば、セリアを含む。このような場合、セリアは、例えばコーティングとして、マグネシア/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
【0033】
好ましい第1の無機酸化物は、好ましくは、10~1500m2/gの範囲の表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積、及び約10~1000Åの細孔直径を有する。80m2/g超の表面積を有する高表面積無機酸化物、例えば高表面積のセリア又はアルミナが特に好ましい。
【0034】
1つ以上の白金族金属は、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、銀、金及びそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、1つ以上の白金族金属は、白金とパラジウムとの混合物又は合金であり、白金対パラジウムの比は、好ましくは重量/重量基準で2:1~10:1、特に好ましくは重量/重量基準で約5:1である。
【0035】
好ましくは、1つ以上の白金族金属は、ロジウムを含まないか、又はロジウムからはならない。好ましくは、第1層はロジウムを実質的に含まない。したがって、いくつかの実施形態では、好ましくは、第1層はロジウムを実質的に含まない。このことは、ロジウムが、白金、パラジウム、又はそれらの混合物及び/又は合金などの他の触媒金属の触媒活性に悪影響を及ぼし得るため有益である。
【0036】
本発明の好ましい触媒において、第1層はバリウムを実質的に含まない。特に好ましい第1層及びリーンNOxトラップ触媒はまた、アルカリ金属、例えばカリウム(K)及びナトリウム(Na)を実質的に含まない。
【0037】
NOx貯蔵材としてバリウムを含まない本発明の触媒は、180℃超、200℃超、250℃超又は300℃超の温度、好ましくは約300℃超の温度で、対応するバリウム含有触媒と比べてNOxの貯蔵がより少ないため、特に有益である。言い換えると、NOx貯蔵材としてバリウムを含まない本発明の触媒は、180℃超、200℃超、250℃超又は300℃超の温度、好ましくは約300℃超の温度で、対応するバリウム含有触媒と比べて改善されたNOx放出特性を有する。このような触媒はまた、相当するバリウム含有触媒と比べて改善された硫黄耐性を有する。この文脈において、「改善された硫黄耐性」とは、NOx貯蔵材としてバリウムが存在しない触媒が、相当するバリウム含有NOx貯蔵材と比べて、硫酸化されにくいか、より低い温度で熱的に脱硫酸化され得るかのいずれか、又はその両方であることを意味する。
【0038】
入口端部と出口端部とを有する基材は、フロースルーモノリス又はウォールフローフィルタモノリスであり、好ましくはフロースルーモノリスである。基材は、間に長手方向を画定する第1の面と第2の面とを有する。基材は、第1の面と第2の面との間に延びる複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に伸びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。
【0039】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0040】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0041】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、基材は、1平方インチ当たり100~500のチャネル、好ましくは200~400のチャネルを有する。例えば、第1の面上において、開いている第1のチャネルと閉じている第2のチャネルとの密度は、1平方インチ当たり200~400チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0042】
基材は、触媒材料を保持する担体として機能する。基材を形成するための好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐熱性金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0043】
本明細書に記載の基材、例えばフロースルーモノリス基材は、単一の構成要素(すなわち、単一のれんが状の塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出物処理システムを形成する場合、使用される基材は、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さい基材を一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出物処理システムの好適なケーシング及び構成と共に、当該技術分野において公知である。
【0044】
リーンNOxトラップ触媒がセラミック基材を含む実施形態において、セラミック基材は、任意の好適な耐熱性材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンなど)、又はそれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製される。コーディエライト、アルミノケイ酸マグネシウム、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0045】
リーンNOxトラップ触媒が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼、また鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金などの耐熱性の金属及び金属合金で作製され得る。
【0046】
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びそれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される耐熱性金属酸化物である。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナの複合酸化物である。1つの特に好ましい第2の無機酸化物は、ドーパントでドープされたアルミナ、例えば、ランタンでドープされたアルミナ又はシリカでドープされたアルミナであり、特に好ましくはシリカでドープされたアルミナである。
【0047】
第2の無機酸化物は、1つ以上の貴金属のための担体材料であってもよい。
【0048】
好ましい第2の無機酸化物は、好ましくは、10~1500m2/gの範囲の表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積、及び約10~1000Åの細孔径を有する。80m2/g超の表面積を有する高表面積無機酸化物、例えば高表面積のセリア又はアルミナが特に好ましい。
【0049】
1つ以上の貴金属は、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、銀、金及びそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、1つ以上の貴金属は、白金とパラジウムとの混合物又は合金であり、白金対パラジウムの比は、好ましくは重量/重量基準で1:10~10:1であり、より好ましくは重量/重量基準で約1:1~約5:1、特に好ましくは重量/重量基準で約2:1である。
【0050】
好ましくは、1つ以上の貴金属は、ロジウムを含まないか、又はロジウムからはならない。好ましくは、第1ゾーンはロジウムを実質的に含まない。したがって、いくつかの実施形態では、好ましくは、第2層はロジウムを実質的に含まない。このことは、ロジウムが、白金、パラジウム、又はそれらの混合物及び/若しくは合金などの他の触媒金属の触媒活性に悪影響を及ぼし得るため有益である。
【0051】
好ましくは、リーンNOxトラップ触媒は、第1ゾーン(すなわち、第2層の第1ゾーン)中に1つ以上の貴金属を約10~約110g/ft3の担持量で含む。第1層中の1つ以上の白金族金属は、好ましくは約35~約90g/ft3、より好ましくは約40~約75g/ft3、更により好ましくは約50~約70g/ft3、特に好ましくは約70g/ft3の担持量で存在する。
【0052】
第1ゾーンはゼオライトを更に含む。ゼオライトは、炭化水素吸蔵材として機能し得る。
【0053】
典型的には、ゼオライトは、アルミノケイ酸塩ゼオライト、アルミノリン酸塩ゼオライト、及びシリコアルミノリン酸塩ゼオライトから選択される。例えば、典型的には、ゼオライトは、アルミノケイ酸塩ゼオライト及びアルミノリン酸塩ゼオライトから選択される。ゼオライトは、アルミノケイ酸塩ゼオライト及びシリコアルミノリン酸塩ゼオライトから選択されることが好ましい。より好ましくは、ゼオライトはアルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0054】
典型的には、ゼオライトは、アルミニウム、ケイ素、及び/又はリンから構成される。概ね、ゼオライトは、酸素原子を共有することによって結合したSiO4、AlO4及び/又はPO4の三次元配列を有する。ゼオライトは、アニオン性骨格を有する。アニオン性骨格の電荷は、アルカリ元素及び/又はアルカリ土類元素(例えば、Na、K、Mg、Ca、Sr、及びBa)のカチオン、アンモニウムカチオン及び/又はプロトンなどのカチオンによって相殺され得る。
【0055】
典型的には、ゼオライトは、10~100、より好ましくは15~80(例えば15~30)などの10~200(例えば10~40)のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。概ね、SARは、アルミノケイ酸塩ゼオライト又はシリコアルミノリン酸塩ゼオライトについてのものである。
【0056】
ゼオライトは、中細孔ゼオライト(例えば、最大で10個の四面体原子の環サイズを有するゼオライト)又は大細孔ゼオライト(例えば、最大で12個の四面体原子の環サイズを有するゼオライト)が好ましく、大細孔ゼオライトが特に好ましい。ゼオライトは、小細孔ゼオライト(例えば、最大で8個の四面体原子の環サイズを有するゼオライト)でないことが好ましいことがある。
【0057】
好適なゼオライト又はゼオライトの型の例としては、フォージャサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、フェリエライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、AEIゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ZSM-12ゼオライト、ZSM-20ゼオライト、ZSM-34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ-3ゼオライト、SAPO-5ゼオライト、オフレタイト、ベータ型ゼオライト、又は銅CHAゼオライトが挙げられる。ゼオライトは、好ましくは、ZSM-5、ベータ型ゼオライト又はY型ゼオライトであり、特に好ましくはベータ型ゼオライトである。
【0058】
前述の3文字のコードのそれぞれは、「IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature」及び/又は「Structure Commission of the International Zeolite Association」に準拠した骨格型を表す。
【0059】
ゼオライトは卑金属を更に含んでもよい。卑金属は、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びスズ(Sn)、並びにそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され得る。卑金属は、鉄、銅及びコバルト、より好ましくは鉄及び銅からなる群から選択されることが好ましい。更により好ましくは、卑金属は鉄である。
【0060】
あるいは、ゼオライト触媒は卑金属を実質的に含まなくてもよい。したがって、ゼオライト触媒は卑金属を含まなくてもよい。概ね、ゼオライト触媒は卑金属を含まないことが好ましい。
【0061】
ゼオライトは、好ましくは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される白金族金属などの白金族金属を実質的に含まない。
【0062】
第1ゾーン中のゼオライトの総量は、0.05~3.00g・in-3、特に0.10~2.00g・in-3、より具体的には0.2~1.0g・in-3である。例えば、炭化水素吸蔵剤の総量は、0.8~1.75g・in-3、例えば1.0~1.5g・in-3であってもよい。
【0063】
第1ゾーンは、アルカリ土類金属を更に含んでもよい。典型的には、第1ゾーンは、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)の酸化を促進するための有効量のアルカリ土類金属を含む。典型的には、第1ゾーンは、アルカリ土類金属、例えばバリウム(Ba)を含む。
【0064】
アルカリ土類金属は、特に(i)アルカリ土類金属が、ドーパントでドープされたアルミナ、特にシリカでドープされたアルミナなどの特定の第2の無機酸化物(担体材料として機能する)と組み合わされたとき、及び/又は(ii)ウォッシュコート領域が、パラジウムの総重量以上の白金の総重量(すなわち、Pt:Pdの重量比が1:1以上)を含むときに、CO及び/又はHCの酸化を促進することができる(すなわち、低温時のCO及び/又はHCの酸化活性が改善される)。
【0065】
アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びそれらの2つ以上の組合せから選択され得る。アルカリ土類金属は、好ましくはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、又はバリウム(Ba)であり、より好ましくはストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)であり、最も好ましくは、アルカリ土類金属はバリウム(Ba)である。
【0066】
概ね、アルカリ土類金属が第2の無機酸化物上に配置されるか、又は担持されることが好ましい。
【0067】
典型的には、第1ゾーンは、アルカリ土類金属を総量で、0.3~2.25mol・ft-3、特には0.35~1.85mol・ft-3、好ましくは0.4~1.5mol・ft-3、更により好ましくは0.5~1.25mol・ft-3のように、0.07~3.75mol・ft-3、特に0.1~3.0mol・ft-3、より具体的には0.2~2.5mol・ft-3(例えば、0.25~1.0mol・ft-3)含む。
【0068】
概ね、第1ゾーンは、アルカリ土類金属を総量で、10~500mol・ft-3(例えば、60~400g・ft-3又は10~450g・ft-3)、特に20~400g・ft-3、より具体的には35~350g・ft-3、例えば、50~300g・ft-3、特には75~250g・ft-3含む。
【0069】
概ね、第1ゾーンは、0.1~20重量%、好ましくは0.5~17.5重量%、より好ましくは1~15重量%、更により好ましくは1.5~12.5重量%のアルカリ土類金属を含む。アルカリ土類金属の量は、1.0~8.0重量%、例えば1.5~7.5重量%、特に2.0~7.0重量%(例えば、2.5~6.5重量%又は2.0~5.0重量%)であってもよい。アルカリ土類金属の量は、5.0~17.5重量%、例えば7.5~15重量%、特に8.0~14重量%(例えば、8.5~12.5重量%又は9.0~13.5重量%)であってもよい。
【0070】
典型的には、第1ゾーンは、アルカリ土類金属と貴金属とを、0.25:1~20:1(例えば、0.3:1~20:1)の重量比で含む。アルカリ土類金属の総質量対貴金属の総質量の比は、0.5:1~17:1であることが好ましく、より好ましくは1:1~15:1、特には1.5:1~10:1、更により好ましくは2:1~7.5:1、なおもより好ましくは2.5:1~5:1である。
【0071】
第1ゾーンはマンガン(Mn)を更に含んでもよい。マンガンは、元素の形態又は酸化物として存在してもよい。
【0072】
白金は高価であり、その酸化活性のために比較的大量で酸化触媒に含まれる場合が多い。白金(Pt)及び/又はパラジウム(Pd)と組み合わせてマンガン(Mn)を含めることにより、NOの酸化活性を改善することができ、又は所与のレベルの酸化活性を得るために使用する貴金属の量を減らすことができる。
【0073】
典型的には、マンガン(Mn)は第2の無機酸化物上に配置又は担持される。マンガン(Mn)は、第2の無機酸化物上に直接配置されてもよく、又は直接担持されてもよい(すなわち、Mnと第2の無機酸化物との間に介在する担体材料は存在しない)。
【0074】
典型的には、第1ゾーンのマンガン(Mn)の総担持量は、5~500g・ft-3である。第1ゾーンのマンガン(Mn)の総担持量は、10~250g・ft-3(例えば、75~175g・ft-3)であることが好ましく、より好ましくは15~200g・ft-3(例えば、50~150g・ft-3)であり、更により好ましくは20~150g・ft-3である。
【0075】
典型的には、第1ゾーンはMnとPtを、Mn:Ptの重量比5:1以下、より好ましくは5:1未満で含む。
【0076】
概ね、第1ゾーンはMnとPtを、Mn:Ptの重量比0.2:1以上(例えば、0.5:1以上)、より好ましくは0.2:1超(例えば、0.5:1超)で含む。
【0077】
第1ゾーンはマンガン(Mn)と白金(Pt)を、マンガン(Mn)の白金(Pt)に対する総重量比で、5:1~0.2:1(例えば、5:1~1:2)、好ましくは4.5:1~1:1(例えば4:1~1.1:1)、より好ましくは4:1~1.5:1で含んでもよい。
【0078】
第1ゾーンがマンガンを含む場合、好ましくは第2の無機酸化物は、任意選択で、ドーパントでドープされたアルミナ(例えば、シリカでドープされたアルミナ)を含むか、又はそれから本質的になる。マンガン(Mn)、白金(Pt)、及びドープされたアルミナ担体材料、特にシリカでドープされたアルミナ担体材料の組合せが、優れた酸化活性をもたらし、酸化触媒の酸化活性をその寿命にわたって安定化できることを見出した。
【0079】
概ね、第1ゾーンはアルカリ土類金属とマンガンとの両方は含まないことが好ましい。したがって、第1ゾーンがマンガンを含む場合、第1ゾーンはアルカリ土類金属を含まないことが好ましい。第1ゾーンがアルカリ土類金属を含む場合、第1ゾーンはマンガンを含まないことが好ましい。
【0080】
第1ゾーンがマンガンを含む場合、第1ゾーンは、典型的にはインジウム及び/又はイリジウムを含まず、好ましくは、第1ゾーンは、インジウム、イリジウム及び/又はマグネシウムを含まない。
【0081】
第2ゾーン(すなわち、第2層の第2ゾーン)は、担体材料と、白金、パラジウム、又は白金とパラジウムとの混合物若しくは合金と、を含む。第2ゾーンは、一酸化窒素(NO)を酸化するためにある。
【0082】
好ましくは、第2ゾーンは唯一の触媒金属として白金を含む。すなわち、第2ゾーンは、好ましくはパラジウムを含まず、好ましくはロジウムを含まない。
【0083】
第2ゾーンが含む白金の担持量は、好ましくは約10~約110g/ft-3、好ましくは約20~約80g/ft-3、特に好ましくは約40g/ft-3又は約70g/ft-3である。
【0084】
好ましくは、担体材料は、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。好ましくは、担体材料は、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びそれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される耐熱性金属酸化物である。特に好ましくは、担体材料は、アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナの複合酸化物である。1つの特に好ましい担体材料は、アルミナ、例えば、γ-アルミナである。
【0085】
担体材料は、白金、パラジウム、又は白金とパラジウムとの混合物又は合金のための担体材料である。
【0086】
好ましい担体材料は、好ましくは、10~1500m2/gの範囲の表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積、及び約10~1000Åの細孔径を有する。80m2/g超の表面積を有する高表面積無機酸化物、例えば高表面積のセリア又はアルミナが特に好ましい。
【0087】
本発明のリーンNOxトラップ触媒は、当業者に知られている更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つのバインダー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。バインダーが存在する場合、分散性アルミナバインダーが好ましい。
【0088】
第1層及び/又は第2層(すなわち、第1ゾーンと第2ゾーンとを有する第2層)は、入口端部と出口端部とを有する基材上に配置又は担持される。
【0089】
概ね、第1層は、基材の全長(例えば、実質的に全長)、特に基材モノリスのチャネルの全長にわたって延びることが好ましい。典型的には、第1層の長さは、基材の長さの10~90%(例えば、10~45%)であり、好ましくは基材の長さの15~75%(例えば15~40%)であり、より好ましくは基材の長さの20~70%(例えば、30~65%、例えば25~45%)、更により好ましくは25~65%(例えば、35~50%)である。
【0090】
第1ゾーンは、基材の入口端部又は近くで排気ガスと接触するように配置される。したがって、第1ゾーンは、好ましくは第2ゾーンの上流に配置又は担持される。好ましくは、第1ゾーンは基材の入口端部又は近くに配置され、第2ゾーンは基材の出口端部又は近くに配置される。
【0091】
好ましい配置では、第1層が基材上に堆積され、第1ゾーンが第1層上に堆積され、第2ゾーンが第1層上に堆積される。好ましくは、第2ゾーンは、排気ガスが第1ゾーンと接触した後に、排気ガスと基材の出口端部で接触するように配置される。
【0092】
第1ゾーンの一部又は部分は第2ゾーンと接触していてもよく、又は、第1ゾーンと第2ゾーンとは(例えば、間隙によって)分離されていてもよい。しかしながら、好ましくは、第1ゾーンと第2ゾーンとの間の間隙は存在しないか、実質的に存在しない(すなわち、第1層の軸方向長さの10%未満、より好ましくは5%未満)。特に好ましくは、第1ゾーンは第2ゾーンと接触する。
【0093】
第1ゾーンは第2ゾーンと重なっていてもよい。したがって、第1ゾーンの端部又は部分は、第2ゾーン上に配置又は担持されていてもよい。第1ゾーンは第2ゾーンに完全に又は部分的に重なっていてもよい。第1ゾーンが第2ゾーンと重なっている場合、第1ゾーンは第2ゾーンに部分的にのみ重なっていることが好ましい(すなわち、第2ゾーンの上部、最も外側の表面は第1ゾーンによって完全には覆われない)。
【0094】
あるいは、第2ゾーンが第1ゾーンと重なっていてもよい。したがって、第2ゾーンの端部又は部分は、第1ゾーン上に配置又は担持されていてもよい。概ね、第2ゾーンは第1ゾーンに部分的にのみ重なる。
【0095】
第1ゾーンと第2ゾーンとは、実質的に重ならないことが好ましい。第1ゾーンと第2ゾーンとが互いに接触していることが特に好ましい。すなわち、基材の入口端部から最も遠い第1ゾーンの端部が、基材の出口端部から最も遠い第2ゾーンの端部と接触していることが特に好ましい。
【0096】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、第1層が、入口端部と出口端部とを有する基材上に直接堆積され、第1ゾーンが、第1層上に直接堆積されて、基材の入口端部から第1層の軸方向長さ未満まで延び、第2ゾーンが、第1層上に直接堆積されて、基材の出口端部から第1層の軸方向長さ未満まで延びる。この配置を
図1に示し、そこでは、第1層3が基材4上に堆積され、第1ゾーン1が基材4の入口端部から延び、第2ゾーン2が基材の出口端部から延びる。第1ゾーン1と第2ゾーン2との両方が、第1層3上に直接堆積される。
【0097】
本発明のこの好ましい実施形態は、排気ガスが(1つ以上の白金族金属、NOx貯蔵材、及び第1の無機酸化物を含む)第1層と接触した後、排気ガスが触媒を出る直前に、排気ガスの(担体材料及び白金、パラジウム又は白金とパラジウムとの混合物若しくは合金を含む)第2ゾーンとの接触を促進するように配置された場合に、特にNOに対する有益な酸化活性を示し得る。このような配置では、排気ガスは第1層を通過した後、又はその上を通過した後、触媒の出口を最終的に通過する前に、第2ゾーン(すなわち、NOを酸化するゾーン)と接触する。
【0098】
ディーゼルエンジンからの排気ガスを処理するリーンNOxトラップ触媒を担持するための基材は、当該技術分野において公知である。ウォッシュコートを作製し、基材上にウォッシュコートを塗布する方法も当該技術分野において公知である(例えば、国際公開第99/47260号、国際公開第2007/077462号及び国際公開第2011/080525号を参照)。
【0099】
基材は、典型的には、(例えば、排気ガスが通過するための)複数のチャネルを有する。概して、基材はセラミック材料又は金属材料である。
【0100】
基材は、コーディエライト(SiO2-Al2O3-MgO)、炭化ケイ素(SiC)、Fe-Cr-Al合金、Ni-Cr-Al合金、又はステンレス鋼合金で作製又は構成されることが好ましい。
【0101】
典型的には、基材はモノリス(本明細書では、基材モノリスとも呼ばれる)である。このようなモノリスは、当該技術分野において周知である。基材モノリスは、フロースルーモノリスであってもフィルタリングモノリスであってもよい。
【0102】
典型的には、フロースルーモノリスは、それを貫通して延びる複数のチャネルを有するハニカムモノリス(例えば、金属又はセラミックのハニカムモノリス)を含み、それらのチャネルは両端部で開口する。
【0103】
フィルタリングモノリスは、概して、複数の入口チャネル及び複数の出口チャネルを含み、入口チャネルは、上流端部(すなわち、排気ガス入口側)で開き、下流端部(すなわち、排気ガス出口側)で塞がれ又は封じられ、出口チャネルは、上流端部で塞がれ又は封じられ、下流端部で開き、各入口チャネルは、多孔質構造によって出口チャネルから分かれている。
【0104】
モノリスがフィルタリングモノリスである場合、フィルタリングモノリスはウォールフローフィルタであることが好ましい。ウォールフローフィルタでは、各入口チャネルは、多孔質構造のウォールによって出口チャネルから交互に分離されており、逆もまた同様である。入口チャネル及び出口チャネルは、ハニカム配列で配置されることが好ましい。ハニカム配列が存在する場合、入口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは上流端部で塞がれていることが好ましく、逆もまた同様である(すなわち、出口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは、下流端部で塞がれる)。いずれかの端部から見たとき、チャネルの交互に塞がれ、開いている端部は、チェス盤の外観をとる。
【0105】
原則として、基材は、任意の形状又は大きさであってもよい。しかし、基材の形状及び大きさは、通常、触媒中の触媒活性材料の排気ガスへの暴露を最適化するように選択される。基材は、例えば、管状、繊維状、又は微粒子形態を有してもよい。好適な担持基材の例としては、モノリシックハニカムコーディエライト型の基材、モノリシックハニカムSiC型の基材、層状繊維又は編地型の基材、発泡体型の基材、クロスフロー型の基材、金属ワイヤメッシュ型の基材、金属多孔質体型の基材、及びセラミック粒子型の基材が挙げられる。
【0106】
基材は、電気的に加熱可能な基材であってもよい(すなわち、電気的に加熱可能な基材は、使用中に電気的に加熱する基材である)。基材が電気的に加熱可能な基材である場合、本発明の酸化触媒は、電力接続部、好ましくは少なくとも2つの電力接続部、より好ましくは2つだけの電力接続部を有する。各電力接続部は、電気的に加熱可能な基材及び電源に電気的に接続されてもよい。酸化触媒はジュール加熱によって加熱することができ、抵抗器を通る電流によって、電気エネルギーが熱エネルギーに変換される。
【0107】
電気的に加熱可能な基材を用いて、貯蔵されたすべてのNOxを第1ウォッシュコート領域から放出することができる。したがって、電気的に加熱可能な基材をオンに切り替えると、酸化触媒を加熱して、第1ウォッシュコート領域の温度をそのNOx放出温度まで上昇させることができる。好適な電気的に加熱可能な基材の例は、米国特許第4,300,956号、同第5,146,743号、及び同第6,513,324号に記載されている。
【0108】
概ね、電気的に加熱可能な基材は、金属を含む。金属は、電力接続部又は複数の電力接続部に電気的に接続されてもよい。
【0109】
典型的には、電気的に加熱可能な基材は、電気的に加熱可能なハニカム基材である。電気的に加熱可能な基材は、使用中に、電気的に加熱するハニカム基材であってもよい。
【0110】
電気的に加熱可能な基材は、電気的に加熱可能な基材モノリス(例えば、金属モノリス)を含んでもよい。モノリスは、波形金属シート又は箔を含んでもよい。波形金属シート又は箔は、ロール処理、巻き取り、又は積層されてもよい。波形金属シートがロール処理又は巻き取りされる場合、コイル、螺旋形状、又は同心パターンにロール処理又は巻き取りされてもよい。
【0111】
電気的に加熱可能な基材の金属、金属モノリス及び/又は波形金属シート若しくは箔は、アルミニウムフェライト鋼、例えばFecralloy(商標)を含んでもよい。
【0112】
あるいは、第1層及び/又は第2層を押し出して、フロースルー又はフィルタ基材を形成してもよい。
【0113】
本発明のリーンNOxトラップ触媒は、任意の好適な手段によって調製することができる。例えば、第1層は、1つ以上の白金族金属、NOx貯蔵材、及び第1の無機酸化物を任意の順序で混合することによって調製することができる。添加の方法及び順序は、特に重要であるとは見なされない。例えば、第1層の各成分を、任意の他の成分に若しくは複数の成分に同時に添加してもよく、又は任意の順序で順に添加してもよい。第1層の各成分を、含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、沈殿などによって、又は当該技術分野において一般に知られた任意の他の手段によって、第1層の任意の他の成分に添加してもよい。
【0114】
第1ゾーンは、1つ以上の貴金属、第2の無機酸化物、及びゼオライトを任意の順序で混合することによって調製することができる。添加の方法及び順序は、特に重要であるとは見なされない。例えば、第1ゾーンの各成分を、任意の他の成分に、若しくは複数の成分に同時に添加してもよく、又は任意の順序で順に添加してもよい。第1ゾーンの各成分を、含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、沈殿などによって、又は当該技術分野において一般に知られた任意の他の手段によって、第2層の任意の他の成分に添加してもよい。
【0115】
第2ゾーンは、担体材料と白金、パラジウム、又は白金とパラジウムとの混合物若しくは合金を任意の順序で混合することによって調製される。添加の方法及び順序は、特に重要であるとは見なされない。例えば、第2ゾーンの各成分を、任意の他の成分に又は複数の成分に同時に添加してもよく、又は任意の順序で順に添加してもよい。第2ゾーンの各成分を、含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、沈殿などによって、又は当該技術分野において一般に知られた任意の他の手段によって、第2層の任意の他の成分に添加してもよい。
【0116】
好ましくは、上記のリーンNOxトラップ触媒は、ウォッシュコート手順を用いて、リーンNOxトラップ触媒を基材上に堆積させることによって調製される。ウォッシュコート手順を用いてリーンNOxトラップ触媒を調製する代表的なプロセスを以下に記載する。以下のプロセスは、本発明の異なる実施形態に従って変更され得ることが理解されるであろう。
【0117】
好ましくは、ウォッシュコーティングは、先ず、適切な溶媒中、好ましくは水中に、上で定義されたリーンNOxトラップ触媒の成分の微細化粒子をスラリー化してスラリーを形成することによって行われる。スラリーは、好ましくは5~70重量%、より好ましくは10~50重量%の固形分を含有する。好ましくは、粒子は、スラリーを形成する前に、実質的に全ての固体粒子が平均直径で20μm未満の粒径を有することを確実にするために、ミル粉砕されるか、又は別の粉砕プロセスに供される。安定剤、バインダー、界面活性剤、又は促進剤(プロモータ)などの追加の成分も、水溶性又は水分散性化合物又は複合体の混合物としてスラリーに組み込まれてもよい。
【0118】
次いで、基材をスラリーで1回以上コーティングすることにより、リーンNOxトラップ触媒の所望の担持量を基材上に堆積させる。
【0119】
好ましくは、第1層を、直接、金属又はセラミック基材上に担持/堆積させる。「直接その上に」とは、第1層と金属又はセラミック基材との間に介在層又は下塗り層が存在しないことを意味する。
【0120】
好ましくは、第2層(すなわち、第1ゾーンと第2ゾーンと)を第1層上に堆積させる。特に好ましくは、第2層を、直接、第1層上に堆積させる。「直接その上に」とは、第2層と第1層との間に介在層又は下塗り層が存在しないことを意味する。
【0121】
したがって、本発明の好ましいリーンNOxトラップ触媒では、第1層が金属又はセラミック基材上に直接堆積され、第2層が第1層上に堆積される。
【0122】
上記の第1層及び第2層に加えて1つ以上の追加の層が存在してもよい。しかしながら、好ましくは追加の層は存在せず、すなわち、本発明のリーンNOxトラップ触媒は、好ましくは、上記の第1層、上記の第2層、及び上記の入口端部と出口端部とを有する基材からなる。
【0123】
好ましくは、本発明のリーンNOxトラップ触媒において、第1ゾーン中の1つ以上の貴金属のg/ft3での担持量の、第1層中の1つ以上の白金族金属のg/ft3での担持量に対する比は、約1:1.5~約4:1、好ましくは約1.5:1~約1:0.8、特に好ましくは約1.33:1~約1:1である。驚くべきことに、本発明の触媒中の触媒金属担持量の特定の比率によって、特に、第2ゾーン中の1つ以上の白金族金属よりも、第1ゾーン中の1つ以上の貴金属の担持量が大きい場合に、CO酸化性能が改善されることを見出した。この予想外の効果により、依然として許容できる触媒性能を維持しながら、本発明の触媒中の触媒金属の総担持量の低減、又は「節約」が可能なる。
【0124】
あるいは、酸化性能の改善を、第1ゾーン(すなわち、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)を酸化するゾーン)と第1層(すなわち、リーンな排気ガス条件下で窒素酸化物(NOx)を貯蔵し、リッチな排気ガス条件の際にNOxを放出及び/又は還元する層)の間で、同じ触媒金属の総担持量を用いて、但し、触媒金属の特定の比で、実現することができる。したがって、第1ゾーン中の1つ以上の貴金属のg/ft3での担持量の、第1層中の1つ以上の白金族金属のg/ft3での担持量に対する比が約1:1.5~約4:1、好ましくは約1.5:1~約1:0.8、特に好ましくは約1.33:1~約1:1である場合に、従来の触媒と比べて所与の触媒金属の総担持量で改善されたCO酸化性能が得られる。このようにリーンNOxトラップ触媒中に触媒金属を分配することによって、驚くべきことに、従来の触媒金属の分配と比べて触媒の触媒性能が改善されるという予想外の利点が得られることを見出した。あるいは、特に有益なことに、このように触媒金属を分配することによって、「節約」、すなわち、現在の排出制御基準を満たすために十分な触媒性能を維持しながら、存在する高価な触媒金属の総量を低減することが可能になる。
【0125】
本発明の更なる態様は、上で定義したリーンNOxトラップ触媒を含む、内燃機関からの燃焼排気ガス流を処理するための排出物処理システムである。好ましいシステムでは、内燃機関はディーゼルエンジン、好ましくは小型用ディーゼルエンジンである。リーンNOxトラップ触媒は、近接結合位置又は床下位置に配置される。
【0126】
典型的には、排出物処理システムは排出制御デバイスを更に含む。
【0127】
好ましくは、排出制御デバイスはリーンNOxトラップ触媒の下流に位置する。
【0128】
排出制御デバイスの例としては、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、リーンNOxトラップ(LNT)、リーンNOx触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒煤煙フィルタ(CSF)、受動的NOx吸蔵材(PNA)、ディーゼルコールドスタート触媒(dCSC(商標))、選択的接触還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)、コールドスタート触媒(dCSC(商標))及びそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。このような排出制御デバイスは、当該技術分野において周知である。
【0129】
上述の排出制御デバイスの一部は、フィルタリング基材を有する。フィルタリング基材を有する排出制御デバイスは、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、触媒煤煙フィルタ(CSF)、及び選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒からなる群から選択され得る。
【0130】
排出物処理システムは、リーンNOxトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、選択的接触還元(SCR)触媒、触媒煤煙フィルタ(CSF)、選択的接触還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される排出制御デバイスを含むことが好ましい。より好ましくは、排出制御デバイスは、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒煤煙フィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。更により好ましくは、排出制御デバイスは、選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒である。
【0131】
本発明の排出物処理システムがSCR触媒又はSCRF(商標)触媒を含む場合、排出物処理システムは、アンモニア、又はアンモニア前駆体、例えば尿素若しくはギ酸アンモニウム、好ましくは尿素などの窒素系還元剤を、リーンNOxトラップ触媒の下流、かつSCR触媒又はSCRF(商標)触媒の上流の排気ガス中に噴射するためのインジェクタを更に含んでもよい。
【0132】
このようなインジェクタは、窒素系還元剤前駆体の供給源(例えばタンク)に流体連結されてもよい。排気ガスへの前駆体のバルブ制御された投入は、排気ガスの組成をモニタリングするセンサによって提供される、好適にプログラム化されたエンジン管理手段及び閉ループ又は開ループフィードバックによって調節され得る。
【0133】
アンモニアはまた、カルバミン酸アンモニウム(固体)を加熱することによって生成することができ、生成されたアンモニアを排気ガス中に噴射することができる。
【0134】
インジェクタの代わりに又はそれに加えて、(例えば、SCR触媒又はSCRF(商標)触媒の上流に配置されたLNT、例えば、本発明のリーンNOxトラップ触媒のリッチ再生中に)インサイチュでアンモニアを生成することもできる。したがって、排出物処理システムは、排気ガスを炭化水素リッチにするエンジン制御手段を更に含んでもよい。
【0135】
SCR触媒又はSCRF(商標)触媒は、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタニド及び第VIII族遷移金属(例えばFe)のうちの少なくとも1つからなる群から選択される金属を含んでもよく、金属は、耐火性酸化物又はモレキュラーシーブ上に担持される。金属は、好ましくは、Ce、Fe、Cu、及びこれらのうちのいずれか2つ以上の組み合わせから選択され、より好ましくは、金属はFe又はCuである。
【0136】
SCR触媒又はSCRF(商標)触媒用の耐火性酸化物は、Al2O3、TiO2、CeO2、SiO2、ZrO2、及びこれらの2つ以上を含有する混合酸化物からなる群から選択され得る。非ゼオライト触媒はまた、酸化タングステン(例えば、V2O5/WO3/TiO2、WOx/CeZrO2、WOx/ZrO2又はFe/WOx/ZrO2)も含み得る。
【0137】
これは、SCR触媒、SCRF(商標)触媒、又はそのウォッシュコートが、アルミノケイ酸塩ゼオライト又はSAPOなどの少なくとも1つのモレキュラーシーブを含む場合に特に好ましい。少なくとも1つのモレキュラーシーブは、小、中、又は大細孔モレキュラーシーブであり得る。本明細書における「小細孔モレキュラーシーブ」とは、CHAなどの8の最大環サイズを含むモレキュラーシーブを意味し、本明細書における「中細孔モレキュラーシーブ」とは、ZSM-5などの10の最大環サイズを含むモレキュラーシーブを意味し、本明細書における「大細孔モレキュラーシーブ」とは、betaなどの12の最大環サイズを有するモレキュラーシーブを意味する。小細孔モレキュラーシーブは、SCR触媒での使用に場合により有利である。
【0138】
本発明の排出物処理システムにおいて、SCR触媒又はSCRF(商標)触媒に好ましいモレキュラーシーブは、AEI、ZSM-5、ZSM-20、ZSM-34を含むERI、モルデナイト、フェリエライト、ベータを含むBEA、Y、CHA、Nu-3を含むLEV、MCM-22及びEU-1からなる群から選択される合成アルミノケイ酸塩ゼオライトモレキュラーシーブであり、好ましくはAEI又はCHAであり、約10~約50、例えば約15~約40のシリカ対アルミナ比を有する。
【0139】
第1の排出物処理システムの実施形態では、排出物処理システムは、本発明のリーンNOxトラップ触媒と、触媒煤煙フィルタ(CSF)とを含む。典型的には、リーンNOxトラップ触媒の後に触媒煤煙フィルタ(CSF)が続く(例えば、リーンNOxトラップ触媒はCSFの上流にある)。したがって、例えば、リーンNOxトラップ触媒の出口は触媒煤煙フィルタの入口に接続される。
【0140】
第2の排出物処理システムの実施形態は、本発明のリーンNOxトラップ触媒と、触媒煤煙フィルタ(CSF)と、選択的接触還元(SCR)触媒とを含む、排出物処理システムに関する。
【0141】
典型的には、リーンNOxトラップ触媒の後に触媒煤煙フィルタ(CSF)が続く(例えば、リーンNOxトラップ触媒はCSFの上流にある)。触媒煤煙フィルタの後に、典型的には、選択的触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、触媒煤煙フィルタはSCR触媒の上流にある)。窒素系還元剤インジェクタは、触媒煤煙フィルタ(CSF)と選択的触媒還元(SCR)触媒との間に配置され得る。したがって、触媒煤煙フィルタ(CSF)の後に、窒素系還元剤インジェクタが続いてもよく(例えば、CSFは窒素系還元剤インジェクタの上流にある)、窒素系還元剤インジェクタの後に、選択的触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、窒素系還元剤インジェクタはSCR触媒の上流にある)。
【0142】
第3の排出物処理システムの実施形態では、排出物処理システムは、本発明のリーンNOxトラップ触媒と、選択的接触還元(SCR)触媒と、触媒煤煙フィルタ(CFR)又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)のいずれかと、を含む。
【0143】
第3の排出物処理システムの実施形態では、典型的には、本発明のリーンNOxトラップ触媒の後に選択的接触還元(SCR)触媒が続く(例えば、本発明のリーンNOxトラップ触媒はSCR触媒の上流にある)。窒素系還元剤インジェクタは、酸化触媒と選択的接触還元(SCR)触媒との間に配置される。したがって、触媒化されたモノリス基材の後に窒素系還元剤インジェクタが続き得(例えば、触媒化されたモノリス基材は窒素系還元剤インジェクタの上流にあり)、窒素系還元剤インジェクタの後に選択的接触還元(SCR)触媒が続き得る(例えば、窒素系還元剤インジェクタはSCR触媒の上流にある)。選択的接触還元(SCR)触媒の後に触媒煤煙フィルタ(CFR)又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)が続く(例えば、SCR触媒は、CFR又はDPFの上流にある)。
【0144】
第4の排出物処理システムの実施形態は、本発明のリーンNOxトラップ触媒と、選択的接触還元フィルタ(SCRF(商標))触媒とを含む。典型的には、本発明のリーンNOxトラップ触媒の後に選択的接触還元フィルタ(SCRF(商標))触媒が続く(例えば、本発明のリーンNOxトラップ触媒はSCRF(商標)触媒の上流にある)。
【0145】
窒素系還元剤インジェクタは、リーンNOxトラップ触媒と選択的接触還元フィルタ(SCRF(商標))触媒の間に配置される。したがって、リーンNOxトラップ触媒の後に窒素系還元剤インジェクタが続き得、窒素系還元剤インジェクタの後に選択的接触還元フィルタ(SCRF(商標))触媒が続き得る(例えば、リーンNOxトラップ触媒はSCRF(商標)触媒の上流にある)。
【0146】
排出物処理システムが、上記の第2~第4の排気システムの実施形態など、選択的接触還元(SCR)触媒若しくは選択的接触還元フィルタ(SCRF(商標))触媒を含む場合、ASCをSCR触媒若しくはSCRF(商標)触媒の下流に(例えば、別個のモノリス基材として)配置することができ、又は、より好ましくは、SCR触媒を含むモノリス基材の下流端部若しくは後端部上のゾーンをASCの担体として使用することができる。
【0147】
本発明の別の態様は車両に関する。車両は、内燃機関、好ましくはディーゼルエンジンを含む。内燃機関、好ましくは、ディーゼルエンジンは本発明の排出物処理システムに連結される。
【0148】
ディーゼルエンジンは、50ppm以下の硫黄、より好ましくは15ppm以下の硫黄、更により好ましくは5ppm以下の硫黄、例えば10ppm以下の硫黄を含む、燃料、好ましくはディーゼル燃料で作動するように構成又は適合されていることが好ましい。
【0149】
車両は、米国又は欧州法令で定義されるものなどの、小型ディーゼル車両(LDV)であってもよい。小型ディーゼル車両の重量は、典型的には、2840kg未満、より好ましくは2610kg未満である。米国では、小型ディーゼル車両(LDV)は、総重量が8,500ポンド(US lbs)以下のディーゼル車両を指す。欧州では、小型ディーゼル車両(LDV)という用語は、(i)運転席に加えて8席以下で、最大質量が5トン以下の乗用車、及び(ii)最大質量が12トン以下の物品輸送用の車両を指す。
【0150】
あるいは、車両は、米国法令で定義されるような、>8,500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車両などの大型ディーゼル車両(HDV)であり得る。
【0151】
本発明の更なる態様は、排気ガスを上記のリーンNOxトラップ触媒、又は上記の排出物処理システムと接触させることを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法である。好ましい方法では、排気ガスはリッチガス混合物である。更に好ましい方法では、排気ガスは、リッチガス混合物とリーンガス混合物との間で循環する。
【0152】
内燃機関からの排気ガスを処理するいくつかの好ましい方法では、排気ガスは、約150~300℃の温度である。
【実施例】
【0153】
これから、以下の非限定的な実施例によって本発明を例示する。
【0154】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0155】
全般調製1
903gのNd(NO3)3を3583gの脱塩水に溶解させた。1850gの高表面積CeO2を粉末の形態で加えて、混合物を60分間撹拌した。得られたスラリーを、向流モード(2液、噴水ノズル、入口温度300℃及び出口温度110℃に設定)で、噴霧乾燥機で噴霧乾燥させた。得られた粉末をサイクロンから回収した。粉末を静的オーブン中、650℃で1時間焼成した。
【0156】
以下の調製例に従って一連の触媒を調製した。入口上部DOCゾーン中のPGM(すなわち、白金及びパラジウム)の担持量を70g/ft3で一定に保ったまま、下層のNOx貯蔵層中のPGM(すなわち白金及びパラジウム)の担持量を変化させた。下層のNOx貯蔵層中のPGM担持量を下の表1に示す。
【0157】
NOx貯蔵層中のPt:Pd比は5:1で一定に保った。
【0158】
入口上部DOCゾーンのPt:Pd比は2:1で一定に保った。
【表1】
表1
【0159】
調製例(総PGM担持量:120g/ft3)
[Al2O3.CeO2.MgO.].Pt.Pd.CeO2Nd.Al2O3-下層の調製
1.24g/in3の[Al2O3.CeO2.MgO.](上の全般調製1に従って調製)を蒸留水でスラリーにして、次いで粉砕して平均粒径を小さくした(d90=13~15μm)。スラリーに、硝酸塩溶液として43.5g/ft3のPt及び硝酸塩溶液として9g/ft3のPdを加えて、均質になるまで撹拌した。Pt/Pdを担体上に1時間吸着させた。このスラリーに、3g/in3のCeO2Nd(上の全般調製1に従って調製)、続いて0.2g/in3のAl2O3バインダーと0.2重量%のヒドロキシエチルセルロースレオロジー改質剤とを加えた。次いで、得られたスラリーを均質になるまで撹拌して、ウォッシュコートを形成した。
【0160】
[Al2O3.SiO2).BaO.Pt.Pd.CeO2.Zeolite-入口上層の調製
1.2g/in3のAl2O3(95%)-SiO2(5%)粉末を脱イオン水と混合してスラリーにして、次いでそれを粉砕して平均粒径を小さくした(d50=4~6μm、d90=13~19μm)。次に、酢酸バリウムとして100g/ft3のBaをスラリーに添加し、続いて硝酸塩溶液として44g/ft3のPt及び硝酸塩溶液として22g/ft3のPdを加えて、均質になるまで撹拌した。次いで、混合物を30分間静置して、PGMを担体上に吸着させた。その後、0.3g/ft3のゼオライト-β(Si:Al比=40)を更なる蒸留水と共に加え、0.1重量%のヒドロキシエチルセルロースレオロジー改質剤を加えて、均質になるまで撹拌した。
【0161】
Al2O3.Pt.Pd-出口上層の調製
1.3g/in3のγ-Al2O3粉末を脱イオン水と混合してスラリーにして、次いでそれを粉砕して平均粒径を小さくした(d50=5~7μm、d90<16μm)。次に、このスラリーに、200g/ft3のクエン酸、続いて硝酸塩溶液として44g/ft3のPtを加えて撹拌し、次いで30分間静置して、担体上に吸着させた。次いで、得られたウォッシュコートのpHを、アンモニアを用いてpH6.5~7に調整した。次に、更なる蒸留水を加え、0.2重量パーセントのヒドロキシエチルセルロースレオロジー改質剤を加えて、均質になるまで撹拌した。
【0162】
実験結果
調製例に従って調製した触媒を、10%H
2O、20%O
2、及び残部のN
2からなるガス流中、800℃で16時間水熱エージングした。1.6Lのエンジンの過渡運転点火試験でCO変換性能を評価した。触媒を、様々なNSCの入口温度で5秒間のλ=0.95のリッチ事象でプレコンディショニングした(表2を参照)。触媒活性を、下層のNO
x貯蔵層のPGM含有量の関数としてCO T50で測定した。
【表2】
表2
【0163】
表2の結果から、当該技術分野における技術的先入観とは対照的に、CO酸化性能(CO T50で測定される)は、触媒のPGMの総担持量の増加と共には向上しないことが分かった。むしろ、複数のエージング条件において、触媒2及び3(それぞれ70及び52.6g/ft3の下層のNOx貯蔵層のPGM担持量を有する)は、90g/ft3の下層のPGM担持量を有する触媒1よりも優れたCO酸化性能を有する。
【0164】
したがって、驚くべきことに、本明細書に記載の触媒が、より高いNOx貯蔵層(及び総)PGM担持量を有する触媒と比較して、同等又は更に改善された触媒性能を実現できることを見出した。このPGMの「節約」は、高価なPGMの低いレベルの使用で同じ性能を実現できるため有益である。
【国際調査報告】