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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】炉心直上空間の超音波検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/11 20060101AFI20220413BHJP
   G01N 29/38 20060101ALI20220413BHJP
   G21C 17/003 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
G01N29/11
G01N29/38
G21C17/003 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529482
(86)(22)【出願日】2018-12-29
(85)【翻訳文提出日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 RU2018000913
(87)【国際公開番号】W WO2020111964
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】2018141726
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516219347
【氏名又は名称】ステート・アトミック・エナジー・コーポレーション・ロスアトム・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ロシアン・フェデレーション
【氏名又は名称原語表記】STATE ATOMIC ENERGY CORPORATION ‘ROSATOM’ ON BEHALF OF THE RUSSIAN FEDERATION
【住所又は居所原語表記】B. Ordynka st., 24 Moscow, 119017 Russia
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレベンキン ユーリィ ペトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ツリンスキー セルゲイ イヴァノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ネヴェロフ ヴィタリー アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフ ヴィクトル ミハイロヴィチ
【テーマコード(参考)】
2G047
2G075
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AC01
2G047AC04
2G047BA03
2G047BC03
2G047BC12
2G047EA11
2G047GG01
2G047GG28
2G075AA07
2G075BA16
2G075CA50
2G075FA15
2G075GA07
(57)【要約】
本発明は、原子力工学に関するものであり、液体金属冷却材を含む原子炉の炉心の上の空間の状態を監視するために使用することができる。液体金属材料が充填された原子炉の炉心直上空間を検査する超音波検査システムであって、超音波反射器と、密閉型の超音波変換機と、当該超音波変換機を支持する支持棒と、超音波変換器による音響軸が、制御・保護システムの離脱済み機器の下面と燃料集合体頭部の上面との検査対象の隙間に交差する水平面のうち一つと一致するように前記支持棒を駆動する駆動装置とを備え、前記超音波反射器が、環状に配置された少なくとも1列の垂直円筒ロッドが、リングに保持され、そのリングは炉心を包囲する、原子炉圧力容器に最も近い熱シールドの一つに固定されている一方、配列された円筒ロッドの間隔が燃料集合体の間隔より小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体金属材料が充填された原子炉の炉心直上空間を検査する超音波検査システムであって、
超音波反射器と、密閉型の超音波変換機と、当該超音波変換機を支持する支持棒と、超音波変換器による音響軸が、制御・保護システムの離脱済み機器の下面と燃料集合体頭部の上面との検査対象の隙間に交差する水平面のうち一つと一致するように前記支持棒を駆動する駆動装置と
を備え、
前記超音波反射器が、環状に配置された少なくとも1列の垂直円筒ロッドが、リングに保持され、そのリングは炉心を包囲する、原子炉圧力容器に最も近い熱シールドの一つに固定されている一方、配列された円筒ロッドの間隔が燃料集合体の間隔より小さいことを特徴とする超音波検査システム。
【請求項2】
後列の垂直円筒ロッドが前列の垂直円筒ロッド間の隙間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波検査システム。
【請求項3】
垂直円筒ロッドが上記のリングの中心から等距離に、かつその円周上に均等に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波検査システム。
【請求項4】
垂直円筒ロッドの1つが上記のリングの中心から特定の距離に位置することを特徴とする請求項1に記載の超音波検査システム。
【請求項5】
垂直円筒ロッドの側面が、例えば、クロスローレットのような模様で粗面化されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波検査システム。
【請求項6】
垂直円筒ロッドの側面において頂上における角度が直角になっている円錐形の凹みが少なくとも1つ形成されており、その先には貫通孔があるが、その貫通孔の軸が円錐形の凹みの軸及び超音波変換機の軸の方向に一致しており、垂直円筒ロッドの軸と直交していることを特徴とする請求項1に記載の超音波検査システム。
【請求項7】
超音波走査機構が回転プラグに開けている異なる貫通経路に設置される場合、垂直円筒ロッドの側面において頂上における角度が直角になっている円錐形の凹みが貫通経路数に応じて形成されており、その先には貫通孔があるが、その貫通経路の軸が円錐形の凹みの軸及びいずれかの貫通孔の軸の方向に一致している一方、その円錐形の凹みが検査対象の隙間の寸法に一致する円筒ロッドの高さで分配され、同一の標高を持つ円錐形の凹みの軸が同一の貫通経路の軸に向くことを特徴とする請求項1に記載の超音波検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力技術分野に関し、液体金属冷却炉の炉心直上空間の状態検査に利用できる。
【背景技術】
【0002】
超音波検査システムの動作原理は、燃料集合体頭部の上面と、不透明冷却材、例えば、液体ナトリウムに冷却される原子炉の回転プラグの下面との間の空間(検査される隙間)に存在する構造要素から反射される超音波信号の励起及び応答受信に基づく。このシステムの用途は検査対象の空間(検査対象の隙間)における燃料取替作業の際の回転プラグの回転障害物の検出である。
【0003】
超音波走査線が水平方向に伝播するシステムは、水平型音響映像システムに属する。このようなシステムの用途は、不透明液体金属冷却炉の炉心直上空間に位置する、または、位置するようになった物体の光学画像と同等な画像の取得である。
【0004】
光学的に不透明な炉心直上空間の検査は、液体冷却材中に伝播する超音波により実施できる。超音波信号は、このように光に対し不透明な冷却材(ナトリウムや鉛)を用いる原子炉への利用が可能で、高解像度の物体の光学画像と同等な画像を取得可能にする。
【0005】
構造要素の検出の信頼性を向上させるために、原子炉には専用超音波反射器を設置し、同機材からの信号の減少度で超音波ビームの経路の範囲内の物体の有無を判断する。
【0006】
炉心直上空間検査システムは、原則として個別の原子炉構造を考慮し開発され、個別の炉心直上空間の設計上の特徴へ適応させるための一定の改造なくして別の原子炉に移転できない。
【0007】
制御・保護システムの機器の下部と燃料集合体頭部との隙間を確認する水平音響映像システムが知られている(特許文献1)。
【0008】
当該装置は、ロッドに配置され、超音波発生装置及び増幅器経由での信号処理識別装置に接続する超音波変換機(トランスデューサー)、及び超音波反射器を備える。この装置では、超音波変換機が配されたロッドを一定の定角速度で回転させ、一回転後、高さ方向に沿って移動させる。一回転中に、超音波パルスを順次に発射させ、当該発射の間に反射されたパルスを受信する。
【0009】
この技術解決策の欠点は、物体から反射された超音波ビームが超音波変換機の受信平面に入らない場合、必ずしも炉心直上空間における物体の有無を確認できるとは限らないことである。
【0010】
また、パルス状の超音波信号の発射及び受信を実施する超音波変換機、センサーを所定の角度に回転させる装置、複数の平面を持ち、かつ走査方向に向ける主反射器材及び補反射器材、変換機電源装置、超音波信号表示装置を含む液体金属冷却炉の炉心直上空間における構造要素位置の超音波検査システム(特許文献2)が知られている。
【0011】
放出する超音波は、補反射器材、主反射器材、制御・保護システムの機器と燃料集合体頭部との隙間にある物体(ある場合)から順次に反射し、既に通過した経路に沿い超音波変換機に戻る。放出する超音波及び反射済み超音波のそれぞれの信号間の干渉を防止するために、反射器の反射平面は変換機から異なる距離で配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭58-34799号公報
【特許文献2】米国特許第4290849号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
既知の技術解決策では、検出済み障害物の位置として、超音波源から超音波反射器まで及び超音波反射器から超音波受信機までの超音波ビームのそれぞれの経路に対応する直線の2つのセグメントが記載されるが、障害物がどのセグメントにあるかについての答えは得られない。
【0014】
本技術解決策が解決しようとする課題は、検査対象の炉心直上空間における障害物の検出の信頼性向上及びその位置の確定である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する手段は、液体金属材料が充填された原子炉の炉心直上空間を検査する超音波検査システムであって、超音波反射器と、密閉型の超音波変換機と、当該超音波変換機を支持する支持棒と、超音波変換器による音響軸が、制御・保護システムの離脱済み機器の下面と燃料集合体頭部の上面との検査対象の隙間に交差する水平面のうち一つと一致するように前記支持棒を駆動する駆動装置とを備え、前記超音波反射器が、環状に配置された少なくとも1列の垂直円筒ロッドが、リングに保持され、そのリングは炉心を包囲する、原子炉圧力容器に最も近い熱シールドの一つに固定されている一方、配列された円筒ロッドの間隔が燃料集合体の間隔より小さいことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】回転プラグ外に配置された音響映像(サウンド・ビジョン)システム要素を有する原子炉の縦断面図である。
図2】回転プラグ外に配置された炉心直上空間の超音波検査システム要素を有する原子炉の水平断面図である。
図3】炉心直上空間の超音波検査システム要素を有する原子炉の水平断面図である。
図4】大型原子炉に需要な円筒ロッドの一つの態様を示す図である。
図5】大型原子炉に需要な円筒ロッドの側面における円錐形の凹みの一態様を示す図である。
図6】大型原子炉に需要な円筒ロッドの側面における円錐形の凹みの一態様を示す図である。
図7】大型原子炉に需要な円筒ロッドの側面における円錐形の凹みの別の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る超音波検査システムは、液体金属材料が充填された原子炉の炉心直上空間を検査する超音波検査システムであって、超音波反射器と、密閉型の超音波変換機と、当該超音波変換機を支持する支持棒と、超音波変換器による音響軸が、制御・保護システムの離脱済み機器の下面と燃料集合体頭部の上面との検査対象の隙間に交差する水平面のうち一つと一致するように前記支持棒を駆動する駆動装置とを備え、前記超音波反射器が、環状に配置された少なくとも1列の垂直円筒ロッドが、リングに保持され、そのリングは炉心を包囲する、原子炉圧力容器に最も近い熱シールドの一つに固定されている一方、配列された円筒ロッドの間隔が燃料集合体の間隔より小さくしている。
【0018】
原子炉圧力容器から最短距離にある熱シールドに超音波反射器(円筒ロッド付きリング)を配置することで、炉心直上空間の検査対象の全容積における標準構造物の位置検査及び回転プラグの回転障害物の検出が可能になる。
【0019】
円筒ロッドは、(超音波ビームで中央セルからの超音波の反射器材を走査するとき、反射済み信号レベルの自動検査の便宜上、)上記のリングの中心から等距離に、かつその円周上に一様に配列している。
【0020】
円筒ロッドの高さは、この円筒ロッドが燃料集合体頭部の上面と原子炉の回転プラグの下面と制御・保護システムの離脱済み機器の下面との間の全隙間をカバーするようになっており、検査対象の空間全体における層ごとの走査の実施を可能にする。
【0021】
円筒ロッド1本は、上記のリングの中心から特定の(他のロッドに対し短い又は長い)距離に位置し、超音波走査のときにエコーパルスの到着時間で一意的に確認される。走査中の超音波変換機の回転角のより正確な計算のために、超音波変換機の軸の上記の円筒ロッドへの転換を超音波変換機の回転角度読み取りの原点として使用すると便利である。
【0022】
円筒ロッドがリング上に配列する間隔は、燃料集合体の間隔より小さい。前者の間隔がより大きいと、超音波ビームによる超音波反射器の走査のときに円筒ロッド間の隙間にある浮上燃料集合体は検出されない。
【0023】
浮上燃料集合体が検査対象の隙間を遮断しきれず、超音波走査の1層分の高さで上部の狭い部分のみで上記の隙間に入った場合、頭部の影は円筒ロッド間の隙間に落ち、システムは浮上を検出しないことがあり得る。そのようなことを防止するために、後の列の円筒ロッドは前の列の円筒ロッド間の隙間に配列する。
【0024】
超音波変換機の回転角の読み取り開始の一意的な確認及び走査のときの回転角をよる正確な計算を可能にするために、円筒ロッド1本は、上記のリングの中心から特定の(他のロッドに対し短い又は長い)距離に位置する。
【0025】
円筒ロッドは、炉心中心部及び遠方燃料集合体頭部の中心部を通過する線の延長線上に配置するようにリングに固定される。
【0026】
円筒ロッドの側面は、例えば、クロスローレットのような模様で粗面化されており、これにより円筒ロッドの反射能力が向上し、検査のときの超音波変換機の位置(検査対象の空間の中心部又は周辺部)を問わず、超音波信号の超音波変換機への帰還を実施させる。
【0027】
原子炉の長期運転の場合、その要素の幾何学的寸法及び形状が変化し、特にロッドの円筒面の垂直からのずれが大きくなるため、エコー信号の振幅が大幅に縮小し、その結果、浮上遠方集合体の検出確率が低下する。粗面は浮上遠方集合体の検出確率を高める。
【0028】
大型炉の炉心直上空間の超音波検査システムを利用する場合、円筒ロッドの側面には、角形反射器材の音響軸と超音波走査線の軸の間に小さい角度があるにも関わらず、角形反射器材に放出する超音波ビームを逆方向に戻す特性を持つ角形反射器材の形成が合理的である。超音波反射器の形成のとき、縦型円筒ロッドを角形反射器材の軸がリングの中心部に向くようにリングに配置しなければならない。
【0029】
円筒ロッドの側面における角形反射器材としては、頂上における角度が直角になっている円錐形の凹みが少なくとも1つ形成されており、その先には貫通孔があるが、その貫通孔の軸が円錐形の凹みの軸及び超音波変換機の軸の方向に一致しており、円筒ロッドの軸と直交している。
【0030】
円筒ロッドは、外側の列のロッドがリングの中心部への方向に対し内側の列の隣接するロッドの間に位置するように、お互いにずれている2つ以上の円形の列に配置されてもよい。
【0031】
密閉型超音波変換機(超音波信号の発射機・受信機)付き支持棒を備える駆動装置付き超音波走査機構は、原子炉の小回転プラグの周辺に位置する燃料集合体取替経路の上にある空間、又は内蔵配管の原子炉からの取り出しにより生成し、かつループ経路等の放射装置の炉心中心部への配置に用いられる空間に配置される。
【0032】
円筒ロッドは、隣接するロッドへの方向間の空間における障害物の存在(例えば、浮上燃料集合体の存在)に関する情報信号損失を防止するために、順次の走査のときに隣接するロッドから反射され超音波変換機を達成した超音波信号が少なくとも約0.707のレベルで遮断されるように一定の間隔でリングに設置されている。
【0033】
円筒ロッドの間隔は、変換機構造、利用される超音波周波数、媒体における超音波伝播速度、超音波ビームを浴びる物体、つまり、隣接するロッドまでの距離により異なる約0.707のレベルで燃料集合体の間隔及び超音波ビーム直径に関連し、具体的に円筒ロッドの間隔が燃料集合体の間隔より小さく設定されており、隣接するロッドから反射された超音波ビームが超音波変換機の受け面で遮断されるように選択されている。
【0034】
これにより、障害物から超音波変換機までの距離及び障害物の表面の傾斜度を問わず、超音波ビームの経路上の障害物がある場合における情報信号(超音波遮断器材からの信号の弱化)の存在が確保される。
【0035】
具体的な炉心直上空間の超音波検査システムは、以下の図に示されている。
【0036】
図1は、回転プラグ外に配置された音響映像システム要素を持つ原子炉の縦断面図を示しており、その記号は以下のとおりである。
【0037】
1-大型回転プラグ、2-制御・保護システム機器付き小型回転プラグ、3-制御・保護システムのガイドパオプ、4-円筒ロッド、5-リング、6-熱シールド、7-燃料集合体、8-音響映像プローブ、9-液体金属冷却材、10-取替経路、11-原子炉圧力容器、12-超音波変換機
図2は、回転プラグ外に配置された炉心直上空間の超音波検査システム要素を持つ原子炉の水平断面図を示しており、その記号は以下のとおりである。
【0038】
4-円筒ロッド、5-リング、1-原子炉圧力容器、12、13-超音波変換機、А・B・V・G-当該超音波変換機の遠方にある回転プラグの回転障害物が確実に検出されるエリア
図3は、炉心直上空間の超音波検査システム要素を持つ原子炉の水平断面図を示しており、その記号は以下のとおりである。
【0039】
1-大型回転プラグ(図式的に示されている)、2-小型回転プラグ(図式的に示されている)、4-円筒ロッド、5-リング、11-原子炉圧力容器、14-中心経路、15-取替経路。超音波変換機12・13はそれぞれ経路14・15の中に設置されている。
【0040】
図4-7は、特に大型原子炉(炉心直径4-9m)に需要な円筒ロッドの側面における円錐形の凹みの様々なパターンを示している。
【0041】
システムの動作原理は以下のとおりである。
【0042】
超音波変換機12・13は、空間において超音波ビームの形で位置付けされた各超音波変換機の音響軸に沿い液体金属冷却材9経由で伝播する一連の超音波信号を液体金属冷却材9向けに発信し、順次に励起された超音波信号の時間間隔で、炉心直上空間、具体的に燃料集合体頭部の上面と回転プラグの下面(回転プラグに取り付けられている装置の下面)と間の検査対象の隙間に位置する構造要素から反射される応答超音波信号を受信する。
【0043】
円筒ロッド4からのエコー信号(いわゆるボトム信号)の振幅の減少度合いにより超音波ビームを遮る障害物の有無を判断する一方、発信済み信号とボトム信号との時間間隔に受信されたエコー信号の存在により超音波ビームのエネルギーの一部を逆方向に反射する表面を持つ障害物の存在について結論する。
【0044】
超音波変換機12を異なる高さに固定させながらプローブ8を回転させることにより超音波ビームで炉心直上空間を層ごとに走査する。
【0045】
音響映像プローブ8の原子炉への配置方法は以下のとおり2つある。
【0046】
・固定型(回転プラグ1・2より外側の特定のスペースへの設置)
・取り外し型(燃料取替サイクルのときに何らかの発信装置が収まっていた内蔵配管を原子炉の中心経路から取り外され、その場所に音響映像プローブ8を設置する)
音響映像プローブ8の原子炉への固定型配置例は、図1、2、取り外し型配置例は図3にそれぞれ示されている。
【0047】
炉心直上空間における構造要素位置の超音波検査システムは、回転プラグと炉心との間に機械的な接続がないことを確認するために、運転停止後の原子炉において炉心燃料集合体の取替開始前に始動される。
【0048】
音響映像プローブ8の原子炉への固定型配置の場合、超音波変換機12は、一連の超音波信号を液体金属冷却材9に向けて発信し、逆方向に届いた反射された信号(いずれかの円筒ロッド4からのエコー信号(ボトム信号)及び超音波ビームの経路に存在する物体(例えば、制御・保護システムの離脱していない機器、浮上済み又は沈下していない燃料集合体の頭部又は本体、パッケージごとの検査装置のベル、操作ツール、異物)からのエコー信号を受信する。
【0049】
エコー信号の伝播速度及び超音波変換機12の方位角により、超音波ビームの経路内にある物体の位置を決定する。この物体がバックグラウンドノイズバックグラウンドノイズから抽出できるエコー信号を発信しない場合、同物体はボトム信号の振幅の減少度合い度により検出され、その位置は超音波変換機12の方位角により算定される。
【0050】
超音波変換機13による炉心直上空間の走査のときにボトム信号の大幅な減少が検出される場合、確認済み方位角に相当する超音波ビームの交差点が上記の物体の最も確実な位置を示す。
【0051】
バックグラウンドノイズレベルを何倍も上回るボトム信号の振幅を確保するために、円筒ロッド4は、円錐形の凹みの軸が超音波変換機の軸に向く一方、当該円錐形の凹みの頂上における角度(頂角)が走査線の正反射を実施できるように直角にされている(図6)。
【0052】
エリアVに位置する円筒ロッド4の円錐形の凹みの軸は、交互に、すなわち、偶数番目の円筒ロッド4の凹みが、超音波変換機13に向けられ、奇数番目の円筒ロッド4の凹みが、超音波変換機12に向けられるように設定されている。
【0053】
エリアGに位置する円筒ロッド4の円錐形の凹みの軸は、超音波変換機13に向いている。エリアBに位置する円筒ロッド4の円錐形の凹みの軸は、偶数番目の円筒ロッド4の凹みが、超音波変換機13に向けられ、奇数番目の円筒ロッド4の凹みが、超音波変換機12に向けられるように設定されている。エリアAに位置する円筒ロッド4の円錐形の凹みの軸は、超音波変換機12に向いている。
【0054】
円筒ロッド4の非連続配列として形成された超音波反射器は、連続的な円筒シールドとして形成された連続型超音波反射器に比べより正確な超音波変換機の回転角の計算を確保する。
【0055】
炉心直上空間にある異物に関する信号漏洩の確率を最小限に抑えるために、円筒ロッド4の間隔は原子炉内の格子の間隔と同等にし、円筒ロッド4の直径を燃料集合体頭部の直径と同等にしなければならない。
【0056】
超音波ビームの大半のエネルギーが集中している焦点の直径は、円錐形の凹みの可視寸法と同等になるように選択することが合理的である。これは、超音波変換機の寸法、利用される超音波周波数、媒体における超音波伝播速度、円筒ロッドまでの距離により異なる。
【0057】
焦点に同時に覆われる円筒ロッドの最短許容間隔は、このような円筒ロッドからのエコー信号が識別可能だと見なされるピアソンのカイ二乗検定に相当する。
【0058】
影響要因の集合体が隣接する円筒ロッドからのエコー信号を識別困難なものにする場合、隣接する円筒ロッドの間隔を大きくし、第1列の円筒ロッドと同心円上に、直径のより大きな第2列の円形ロッドをリング状に配置し、第1列の円形ロッドの隙間に第2列の円形ロッドが位置するようにする。
【0059】
検査対象の炉心直上空間の高さに余地がある場合、円筒ロッドには、それぞれの超音波変換機に向く円錐形の凹みを2つ以上形成してもよい(図7)。
【0060】
音響映像プローブ8の原子炉への取り外し型配置の場合(図3)、超音波変換機12・13は、それぞれ中心経路14・取替経路15の中に設置される。
【0061】
図3に示すように、大型回転プラグ1及び小型回転プラグ2は図式的に示されている。
【0062】
円筒ロッド4は、中心経路14に向く円錐形の凹み及び滑面を持つもの又は、頂上における角度が直角になっている円錐形の凹みが形成されない側面に、例えば、クロスローレットのような模様の刻み目(図5-7)を形成して粗面化するようにしてもよい。
【0063】
円筒ロッドの側面に粗面を形成することにより、取替経路15や、音響映像プローブ8の設置に適切なその他の経路に配置された超音波変換機13にも正反射方法の適用を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】