(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】生体適合性組織を再活性化するための作製方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/02 20060101AFI20220413BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220413BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220413BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220413BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
A61F2/02
A61L27/18
A61L27/36 100
A61L27/36 420
A61L27/38 120
A61L27/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534937
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2020051947
(87)【国際公開番号】W WO2020178792
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】102019000003299
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513112452
【氏名又は名称】テレア バイオテク エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ポッツァート,ジャンアントニオ
(72)【発明者】
【氏名】マルツァーロ,マウリツィオ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB12
4C081AB15
4C081BA12
4C081CA17
4C081CD34
4C081DA03
4C081DB08
4C081EA01
4C097AA14
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC03
4C097DD15
4C097MM03
4C097MM07
(57)【要約】
生体適合性組織の再活性化のため、前記組織を作製する方法であって、この組織(6)は、実質管状の形状を有する。この方法は、主に、長手方向の延伸軸(Y)に沿って延伸する土台(2)を、組織(6)によって画定される空洞内部に挿入する動作と、組織(6)の外側および/または内側面において、組織(6)の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される複数の孔(61)を形成する孔開け動作と、を含む。この孔(61)は、組織(6)の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性組織の再活性化のため、生体適合性組織を作製する方法であって、前記組織(6)は、実質管状の形状を有し、前記方法は、
主に、長手方向の延伸軸(Y)に沿って延伸する土台(2)を、前記組織(6)によって画定される空洞内部に挿入する動作と、
前記組織(6)の外側および/または内側面において、前記組織(6)の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される一つまたはそれ以上の孔(61)を形成する孔開け動作と、を含み、
前記一つまたはそれ以上の孔(61)は、前記組織(6)の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記組織(6)は、無細胞組織である、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織(6)は、有機無細胞組織である、ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記一つまたはそれ以上の孔(61)は、一つまたはそれ以上の導電性針(31)によって形成され、前記導電性針(31)は、好ましくは、金属材料からなる、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記孔開け動作時、前記土台(2)を前記長手方向の延伸軸(Y)周りに回転させる、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記孔開け動作時、前記長手方向の延伸軸(Y)周りの、一連の慎重な動きによって、前記土台(2)を回転させ、
この回転動作は、所定の角度幅、好ましくは、1度の数分の一程度の角度幅ごとに行われる、ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)は、前記孔開け動作時、前記土台(2)の前記長手方向の延伸軸(Y)に略合致する回転軸周りに移動するよう構成される、ことを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)は、電力供給源(4)に接続され、
各針(31)の先端に電流を通すことで、前記一つまたはそれ以上の孔(61)を形成し、前記電流の強度および波形は、前記針(31)の先端付近にある前記組織(6)の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものであり、
前記一つまたはそれ以上の孔(61)のそれぞれは、前記電流を通すことで形成され、前記分子同士の結合を破壊することで形成された空間に、前記針(31)の先端が進入可能となる程度の大きさを有する、ことを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)には、4MHz以上の周波数、好ましくは、約4MHzの周波数を有する交流電源電圧が印加される、ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組織(6)は、有機組織、好ましくは、動物由来の有機組織である、ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組織(6)は、合成由来の組織である、ことを特徴とする、請求項1、2、または4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組織(6)の再活性化は、細胞および/または再生機能を有する生体物質を、前記組織(6)に再導入することにより行われ、
前記一つまたはそれ以上の孔(61)は、前記細胞および/または生体物質が再導入されると、それらを受容するようになっており、
前記細胞は、好ましくは、生細胞である、ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
生体適合性組織(6)を再活性化させるために、前記生体適合性組織(6)の表面に一つまたはそれ以上の孔(61)を形成する装置(1)であって、前記装置(1)は、
機械スタンド(3)に配置された一つまたはそれ以上の導電性針(31)と、
主に、長手方向の延伸軸(Y)に沿って延伸する土台(2)であって、実質管状の生体適合性組織(6)によって画定される空洞内部に挿入するよう構成された土台(2)と、を備え、
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)は、前記土台(2)の外側および/または内側面に向けられ、前記組織(6)の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される一つまたはそれ以上の孔(61)を形成し、
前記一つまたはそれ以上の孔(61)は、前記組織(6)の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって形成される、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項14】
前記導電性針(31)は、金属材料からなる、ことを特徴とする、請求項13に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記土台(2)は、前記長手方向の延伸軸(Y)周りに前記土台(2)を回転させるよう構成された回転手段(51)に接続され、
前記回転手段(51)は、好ましくは、回転シャフト(512)によって前記土台(2)に接続された電動モータ(511)を備える、ことを特徴とする、請求項13または14に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記回転手段(51)は、前記長手方向の延伸軸(Y)周りの、一連の慎重な動きによって、前記土台(2)を回転させるよう構成される、ことを特徴とする、請求項15に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記機械スタンド(3)は、前記土台(2)の前記長手方向の延伸軸(Y)に略合致する回転軸周りに移動するよう構成される、ことを特徴とする、請求項13~16のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)に接続される電力供給源(4)をさらに備え、前記電力供給源(4)は、各針(31)の先端に電流を供給し、前記電流の強度および波形は、前記針(31)の先端に接触する前記組織(6)の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものであり、
前記電力供給源(4)は、好ましくは、約4MHzの周波数を出力する電圧発生器からなる、ことを特徴とする、請求項13~17のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項19】
前記導電性針(31)は、前記導電性針(31)からなる少なくとも整った一列を形成するため、前記機械スタンド(3)に少なくとも複数個設けられ、
前記整った一列は、好ましくは、前記土台(Y)の前記長手方向の延伸軸(Y)と平行である、ことを特徴とする、請求項13~18のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項20】
前記組織(6)は、無細胞組織、好ましくは、有機無細胞組織である、ことを特徴とする、請求項13~19のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性組織を再活性化するための作製方法および前記方法を実現する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気管、腸、食道といった管状の臓器が理由により機能不全に陥った場合、その臓器を切除し、代替物を移植する必要性が発生する医学的ケースが存在する。
【0003】
こうした処置を実施するにあたり、最新の外科的アプローチでは、一般的に「スキャフォールド」と呼ばれる生体適合性組織を使用する。スキャフォールドは、同遺伝子型、異種遺伝子型、あるいは合成由来のマトリックスを脱細胞化したものから得た細胞外マトリックスからなる。こうしたスキャフォールドは、幹細胞または自家分化細胞とともに正確に再細胞化され、その後、ヒトの体内に移植することで、組織や損傷した臓器を再構築する誘起パターンとして機能する。
【0004】
一般的に、同遺伝子型または異種遺伝子型マトリックスを利用した組織技術では、細胞外マトリックスに、生体上、構造上、あるいは組成上の変化を生じさせることなく、物理的、酵素学的、あるいは化学的方法によって、生体組織から細胞を取り出す。これにより、手を加えていない、ただし、免疫原性組を有さないベース構造が設けられた、原組織特異性タンパク質スキャフォールドを得ることができる。
【0005】
次に、移植組織を受容した、対象者の細胞が、こうしたスキャフォールドに導入され、組織を再生および再形成させ、その後、血小板可溶化液、ヒアルロン酸、多血小板血漿、増殖因子、サイトカイン、羊膜等、迅速な組織再生を促進する目的で採用される、その他生体物質やヒトの体内に移植される。
【0006】
ドナーから採取した組織からスキャフォールドを得る技術が知られている。
【0007】
特に、本出願人による特許文献1は、有機組織の再細胞化を実施する上で、特に効果的な方法を開示している。
【0008】
この方法では、無細胞組織が平面に載置され、組織表面に、再移植する生細胞を受容するための複数の孔が形成される。
【0009】
特に、処置対象の有機組織が管状形状を有している場合、ペトリ皿等の底のような、平らな作業面上に開いて広げられるよう、主延伸方向に沿って切開する。
【0010】
そして、電力供給源に接続された一つまたはそれ以上の金属針によって、上記孔を切開して広げられた組織に形成する。電力供給源は、各針の先端に電流を通す機能を有しており、この電流の強度および波形は、有機組織の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものである。これにより、上記孔が形成される。
【0011】
ここで使用されるエネルギーは、電流を通すことで、分子同士の結合のみを限定的に破壊する程度の強度を有しているため、周囲の領域において、損傷、裂け目、壊死、厚さの増減、液体内容物の変容、凝固、その他変性効果といったものは、一切引き起こされない。
【0012】
次に、ホスト細胞が組織に植え付けられる。ここで、孔により、ホスト細胞は、深くまで入り込み、組織の孔壁に定着する。そして、有機組織全体を増殖させ、また、非常に速く再活性化させる。
【0013】
再活性化されると、有機組織は、専門の外科医により、縫合されることで、閉じられる。これにより、臓器の機能的管状形状が再形成され、有機組織が人体内で生着する。
【0014】
しかしながら、この方法には、いくつかの欠点がある。
【0015】
特に、無細胞組織が平面形状を有さない場合、無細胞組織を切開しなければならず、さらに、次に細胞を均一に植え付け、再成長させられるよう、表面に孔を開けなければならない。
【0016】
こうした作業は、いかなる汚染も回避できるよう、無菌環境下で、無菌器具を使用して実施する必要がある。
【0017】
さらに、植え付け後、切断組織縁の縫合が必要となるが、縫合糸で縫われる切断縁においては、最小限の余剰組織のみを利用しなければならない。これにより、孔を形成し得る、ひいては、細胞を植え付けることができる、組織の実際の表面が限られてしまう。
【0018】
さらに、変質を避けるため、縫合組織の処置・処理には、適切な配慮や注意、専門的な手先の熟練性が必要とされる。
【0019】
さらに不便なことに、縫合された組織の一部は、瘢痕組織であり、弾性繊維が少ないという点で、周辺組織とは異なるため、好ましくない硬化を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2164536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、上述した欠点を克服した、生体適合性組織を再活性化するための作製方法を実現することにある。
【0022】
より具体的には、本発明の目的は、従来技術のように組織を切開・縫合することなく、再活性化が可能な組織を作製する方法を実現することにある。
【0023】
さらに、本発明の目的は、ヒトに移植された組織において、瘢痕組織の生成を引き起こさない、組織再生化方法を実現することにある。
【0024】
また、本発明の目的は、組織を作製する方法を実現することにあり、細胞を導入することで組織を再活性化させ、組織の移植入を容易なものとする。
【0025】
さらに、本発明の目的は、上記方法によって、再生機能を有する生体物質が組織自体に容易に吸収されるような組織を作製することにある。
【0026】
さらに、本発明の目的は、上記方法を、再現性高く繰り返し実施することが可能な装置を実現することになる
【0027】
特に、本発明の目的は、作製方法を迅速に実施することが可能な装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的は、実質管状を有する生体適合性組織の再活性化を目的とした、生体適合性組織の作製方法によって、達成される。
【0029】
特に、本発明の方法では、請求項1に記載の通り、主に、長手方向に延伸する土台を、生体適合性を有する管状の組織によって画定される空洞内部に挿入することと、この組織の外側および/または内側面において、組織の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される一つまたはそれ以上の孔を、組織の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって形成することとが、行われる。
【0030】
本発明の目的はまた、請求項13に記載の通り、機械スタンドに配置された一つまたはそれ以上の導電性針と、長手方向に延伸した土台であって、実質管状の生体適合性組織によって画定される空洞に挿入される土台と、を備え、本発明の方法を実現するよう構成された装置によっても達成される。
【0031】
これら方法および装置のさらなる特徴は、従属項に記載される。
【0032】
非限定的例として、添付の図面を参照して示される本発明によるいくつかの好ましい実施形態の説明において、前述の目的を、以下の利点とあわせて、より強調する。添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る装置の軸測投影図を、模式的に表したものである。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1実施形態によれば、再活性化のため、生体適合性を有する実質管状の材料からなる組織を作製する方法が提供される。
【0035】
「生体適合性を有する」という表現は、Terminology for biorelated polymers and applications (IUPAC Recommendations 2012), (米), Pure Appl. Chem., 2012, Vol. 84, No. 2, pp.377-410で報告された通り、生体器官に接触させても、副作用を引き起こすことのない、材料の特性を表すものとする。
【0036】
好ましくは、こうした生体適合性組織は、有機組織であり、より好ましくは、動物由来の有機組織である。これにより、ヒト移植組織を想定した、動物組織の再生外科領域における研究に、有利に利用できる。
【0037】
より好ましくは、既知の組織であり、ヒトとブタの遺伝的類似性があることから、こうした動物組織は、ブタ由来の組織である。
【0038】
しかし、本発明の別の実施形態によれば、ヒト由来の有機組織を排除するものではない。
【0039】
また、生体適合性組織が、合成由来、例えば、非制限例においては、乳酸グリコール酸共重合体からなる組織である場合も、排除されない。
【0040】
本発明の第1実施形態によれば、生体適合性組織は、さらに、無細胞組織である。
【0041】
「細胞(の)」という用語は、組織、一般的には、スキャフォールドと呼ばれる有機組織を意味する。スキャフォールドは、細胞外マトリックスに、生体上、構造上、あるいは組成上の変化を生じさせることなく、細胞を有さない有機組織を得るため、従来、既知の物理的、酵素学的、あるいは化学的方法によって処理されていた。
【0042】
本発明の変形実施形態によれば、生体適合性組織が、細胞化組織、つまり、構造的に類似した細胞群を含んだ組織組織である場合も排除されない。
【0043】
図2~
図6に模式的に表す本発明の第1実施形態の方法によれば、土台2は、主に、長手方向の延伸軸Yに沿って延伸しており、
図2に示す通り、実質管状の組織6によって画定される空洞内に挿入される。
【0044】
土台2は、組織6を支持するよう構成されことが明示される。これにより、本発明に係る方法における以下の動作中、組織6が管状形状を有利に維持できる。
【0045】
好ましくは、土台2は、略円形断面を有する、実質筒状の土台である。
【0046】
さらに、管状土台2は、中空または柱状であることが明示される。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、土台は、管状組織の空洞内に挿入可能な形を有していればよく、土台が長手方向の延伸軸に沿って延伸し、八角形や六角形等の断面を有し、または、楕円体である場合も除外されない。
【0048】
本方法において、組織6を上記土台2上に配置すると、
図3に模式的に示す通り、組織6の外側および/または内側面において、一つまたはそれ以上の孔61を、組織6の厚さの少なくとも一部を占める深さ、好ましくは、組織6の厚さ全体にわたって形成する。
【0049】
この孔61は、組織6の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される。
【0050】
孔61は、上記組織の単一あるいは複数の母線上に展開できることが明示される。
【0051】
同じまたは異なる個数の孔61を、各母線上に展開してもよく、また、孔61は、規則的または不規則的に展開されていてもよい。
【0052】
有利な点として、本発明の方法によれば、既知の方法とは異なり、上記組織を切開することなく、再活性化する組織を作製することができる。
【0053】
したがって、組織の移植前に、管状三次元構造を有する組織を形成するために組織を縫合する必要性を、有利に回避することができる。
【0054】
さらに、有利な点として、複数の孔を形成することにより、組織の、前記組織上に植え付けた細胞に対する受容性を特に高めることができ、結合組織の繊維マトリックスの移植を促しつつ、細胞が組織に入り込みやすくする。これにより、再移植プロセスを早めることができる。
【0055】
さらに、複数の孔が存在することにより、再生機能を有する物質を、組織内に容易に取り込むことができる。
【0056】
本発明の第1実施形態の方法によれば、孔61は、一つまたはそれ以上の導電性針31、特に、導電性材料、好ましくは、金属材料からなる針によって、形成される。
【0057】
特に、孔61は、後ほど詳しく説明する装置1によって形成される。ここで、上記針31は、各針31の先端に電流を通す電力供給源4に接続されている。
【0058】
印加する電流の強度および波形は、針の先端にある組織の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものである。こうした電流が印加されることで、各孔が形成されるが、各孔は、分子同士の結合を破壊して形成した空間に、針の先端が進入可能となる程度の大きさを有する
【0059】
これにより、有利な点として、組織上に孔を形成しても、壊死、凝固、避け目等の、組織の変質、特に、孔周辺の結合組織の変質は引き起こされない。
【0060】
さらに有利な点として、タンパク質材料によって組織を形成した場合であっても、本発明による孔形成では、結合、壊死、または凝固は引き起こされない。上記孔の縁において、内腔および周辺マトリックス間の空洞、亀裂、漏損、または、元からある連通部がいくつか形成される。こうした空洞により、結合組織内で細胞が展開できる、孔および周辺結合組織間の複数の連通部を形成することができる。結果、組織内における三次元細胞培養が実現する。
【0061】
定性的に、導電性針31に、約4MHz以上の周波数を有する交流電源電圧が印加された場合に、最良の結果が得られる。
【0062】
この周波数により、周辺組織の質を低下させずに、組織分子同士の結合を破壊できるほどの通電が行われる。
【0063】
約4MHzの周波数が好ましい。
【0064】
本発明の別の実施形態によれば、管状組織6の上記孔61が、4MHz未満の周波数を有する電源電圧が印加された針によって形成される場合も除外されない。
【0065】
また、本発明の変形実施形態によれば、孔61の形成により、一般的な生体適合性組織において、孔周辺の組織の質を低下が起こらなければよく、記載したものと異なる方法により、孔61が形成される場合を除外しない。
【0066】
本発明の第1実施形態の方法によれば、
図4に示す通り、孔開け動作時、組織6を配置した土台2を、その長手方向の延伸軸Y周りに回転させる。
【0067】
好ましくは、組織6を配置した土台2は、軸Y周りの、一連の慎重な動きによって回転される。
【0068】
この回転動作は、所定の角度幅、好ましくは、1度の数分の一程度の角度幅ごとに行われる。これにより、孔開け動作を適切に規制・制御することができ、孔61を組織6上に展開できる。
【0069】
「所定の」という表現は、各回転動作の角度幅が、処理組織の特性および孔の分布目標に合わせて、本方法の実行者によって選択されていることを意味する。
【0070】
さらに、回転動作は、回転動作ごとに異なる、あるいは、同じ角度幅値を有してもよいことが明示される。
【0071】
したがって、操作としては、最初に、複数の孔61を土台2に支持された組織6の母線に沿って形成した後、
図4および
図5に示す通り、針31を組織6から離間させ、土台2をそれ自体の軸Yに沿って回転させる。
【0072】
図6に示す通り、土台2を回転させた後、針31を組織6に向かって再び近づけ、新たに複数の孔61を、先ほどの母線とは異なる、組織6の別の母線上に形成する。
【0073】
このような、土台を回転させる動作および組織に孔を開ける動作を、各組織母線に沿って複数の孔が形成されるまで、繰り返す。
【0074】
有利な点として、土台2、ひいては、その上に配置した管状組織6の回転により、組織表面に孔を確実に均一展開させつつ、その自然立体形状に合わせて、組織の全ての母線に沿って、素早く、かつ容易に、孔61を形成することができる。
【0075】
特に、同出願人らによって実施された実験によれば、孔開け動作時に、極めて小さい直径を有する針31を使用し、土台を回転させることで、組織1平方センチメートルあたり、1,000~1,600個の孔を形成することができる。
【0076】
本発明の第1実施形態の方法によれば、組織6の母線のうち、一本またはそれ以上の母線上において、孔開け動作を完了すると、前述の通り、組織6は、適切な手術用グリッパーによって、土台2から摘出され、ペトリ皿等の上に全体を載置される。こうした容器には、組織自体を再活性化させる、細胞、好ましくは、生細胞が導入される、および/または、再生機能を有するその他生体物質が導入される。
【0077】
組織の孔61により導入され、組織表面に均等に展開した細胞により、組織マトリックスへの移植が容易となり、組織自体の完全かつ均一な再活性化が確実となる。
【0078】
本発明の別の実施形態に係る方法によれば、孔開け動作後、孔が形成された管状組織6を、土台2から摘出せず、かわりに、土台2上で直接、細胞および/または上記物質での処理を行う場合も除外されない。例えば、土台2上の組織6を、土台が挿入された状態で、細胞増殖に適した培地に浸してもよい。これにより、植え付けおよび再活性化動作時であっても、管状組織の自然立体形状が保たれる。
【0079】
また、本発明の変形実施形態に係る方法によれば、孔が形成された管状組織6を、そのまま、動物や患者に移植する場合も除外されない。つまり、技師が、ホスト体内に移植する前に、孔が形成された管状組織6の細胞および/または生体物質での処理を行わない場合も除外されない。したがって、動物や患者の細胞が生体内原位置にすでにある状態で、移植管状組織に移植および再活化する。
【0080】
本発明の一部はまた、図示されないが、本発明の第2実施形態である。ここでは、本発明の第1実施形態で説明した、変形例を含む全ての特徴を備えるが、孔開け動作時、組織6の土台2は、上述とは異なり、回転せず、固定されている。
【0081】
第2実施形態によれば、本方法において、孔開け動作時、導電性針31は、土台2の長手方向の延伸軸Yに略合致する回転軸周りに動く。
【0082】
針31のこうした動きは、一連の慎重な動きによって有利に実行される。この動きにより、針31を土台2に支持された組織6の外側および/または内側面に沿って動かし、組織の、一本またはそれ以上の母線に沿って、上記複数の孔61を形成する。
【0083】
導電性針による孔開け動作と組み合わせた、この針31の動きにより、自然三次元管状形状を変更する必要なく、組織表面にわたって、孔を均等に展開することを確実としながらも、組織6の各母線に沿って孔61を形成することができる。
【0084】
本発明の一部は、本発明の第3実施形態に係る方法である。ここでは、本発明の第1実施形態で説明した、変形例を含む全ての特徴を備えるが、孔開け動作時、土台2の長手方向の延伸軸Yに略合致する回転軸周りに導電性針31を移動させることが提示されている。
【0085】
より具体的には、本発明の第3実施形態によれば、孔開け動作時、土台2は、好ましくは、一連の慎重な動きによって、長手方向の延伸軸Y周りの所定の角度幅で、回転する。さらに、導電性針31が、土台2に対して、軸Y、好ましくは、一連の慎重な動きで、軸Yに略合致する回転軸周りに、移動する。
【0086】
特に、土台2の回転動作と、導電性針31の回動動作が同期し、三次元構造を損なうことなく、組織6の各母線に均等になるよう、組織6に孔を開ける。
【0087】
本発明のさらなる特徴を、本発明の方法を実行するよう構成された装置の説明において、さらに強調していく。
【0088】
特に、
図1の、発明の第1実施形態に係る装置における非制限例では、本発明の第1実施形態で既述した方法を実行することができる。
【0089】
参照符号1を付した、第1実施形態に係る装置は、組織再活性化のため、生体適合性組織6の表面に一つまたはそれ以上の孔61を形成するように構成されている。
【0090】
装置1は、土台2を備える。土台2は、主に、長手方向の延伸軸Yに沿って延伸しており、実質管状の生体適合性組織6によって画定される空洞内に挿入される。
【0091】
土台2は、組織がその自然三次元管状形状を維持できるよう、組織6を支持する。
【0092】
本発明の方法によれば、管状生体適合性組織6は、有機または合成由来で有り得る。
【0093】
こうした組織6は、好ましくは、有機組織、より好ましくは、細胞有機組織である。
【0094】
本発明の第1実施形態に係る装置に戻って説明すると、土台2は、略円形断面を有する実質筒状の土台である。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、土台は、管状組織の空洞内に挿入可能な形を有していればよく、土台が長手方向の延伸軸に沿って延伸し、八角形や六角形等の断面を有し、または、楕円体である場合も除外されない。
【0096】
装置1は、さらに、機械スタンド3に配置された複数の導電性針31を備える。
【0097】
導電性針31は、好ましくは、金属材料からなる。
【0098】
好ましくは、導電性針31は、組織に再移植可能な細胞の直径より僅かに大きい、または、それと同等の直径を有する。
【0099】
図1に示す通り、こうした導電性針31は、好ましくは、機械スタンド3上に規則正しく配置される。好ましくは、土台2の長手方向の延伸軸Yに平行な、少なくとも整った一列で形成される。
【0100】
好ましくは、必須ではないが、針31は、上記のような列を形成するため、互いに均等な間隔を空けて配置される。
【0101】
しかし、本発明の別の実施形態によれば、複数の針31が、長手方向の延伸軸Yに平行な、整った一列として配置されず、例えば、円形、楕円形といった任意の幾何学形状、または、マトリックスに合わせて配置される場合、あるいは、装置1が、一つの針31しか備えていない場合も除外されない。
【0102】
さらに、上記針31は、土台2の外側面に向いており、これにより、上記組織6の母線のうち少なくとも一本の母線の上に、複数の孔61が展開される。
【0103】
機械スタンド3が、組織に近接・離間する針31の延伸方向Xに移動することで、複数の孔61が形成される。
【0104】
特に、本発明の方法の孔開け動作時、機械スタンド3を、組織6に近接する方向Xに移動させる。針の先端が組織表面に接触すると、機械スタンドは、一般的な組織において、孔自体の周辺組織の質を低下させることなく、組織6に孔を開けて孔61を形成することができる程度の速度で移動する。
【0105】
有利な点として、孔61が、組織6の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって、好ましくは、組織の厚さ全体にわたって形成されるよう、機械スタンド3の移動が調節できる。これにより、上述の利点が得られる。
【0106】
好ましくは、機械スタンド3は、土台2の長手方向の延伸軸Yによって定義される方向にも移動能である。これにより、機械スタンド3が、組織6の母線の一本上の各点に、有利に位置決めされ、組織の長辺にわたって孔61が形成可能となる。
【0107】
本発明の別の実施形態の装置によれば、組織6の内側面に沿って複数の孔61を形成するよう、針31が組織6に画定される空洞内に配置され、土台2の内側面に向いている場合も除外されない。この実施形態に係る装置において、土台2は、機械スタンド3を収容できる空洞を有している。さらに、この実施形態によれば、土台2は、その表面上に、一つまたはそれ以上の貫通孔を有している。この貫通孔は、針31を土台2に支持された組織6の内側面に到達させ、孔61が形成できるよう、構成されている。
【0108】
本発明の第1実施形態に係る装置に戻って説明すると、前記装置は、針31に接続され、各針31の先端に電流を印加する電力供給源4をさらに備える。この電流の強度および波形は、針31の先端が接触した組織6の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものである。
【0109】
電力供給源4によって供給される電力エネルギーは、好ましくは、変調されていない。しかし、本発明の変形実施形態によれば、この電力エネルギーが変調されている場合も除外されない。
【0110】
この電力供給源4は、好ましくは、電圧発生器からなり、好ましくは、4MHz以上、好ましくは、約4MHzの周波数で、1,500ボルトのピーク値、より好ましくは、30~500ボルトのピーク・ピーク値、さらにより好ましくは、200~230ボルトのピーク・ピーク値を有する。
【0111】
本発明の変形実施形態に係る装置によれば、周波数が4MHz以下である場合も除外されない。
【0112】
好ましくは、ただし、必須ではないが、ここでの波形は、歪正弦波であり、高調波を有する。
【0113】
高調波は、好ましくは、少なくとも、一次、二次、三次である。
【0114】
電圧発生器のパワーは、各針31の先端に印加する電流が、孔の形成に適したものになるよう、調節される。
【0115】
本発明の第1実施形態に係る装置によれば、土台2は、導電性材料からなる。これにより、前述のように、さらに、前述の利点を得られるように、組織6上に複数の孔61を形成するための電流が有利に流れる。
【0116】
好ましい導電性材料としては、寒天ゲルが挙げられる。この材料であれば、伝導体として有利に機能し、さらに、再活性化のために作製する、寒天ゲルが挿入される管状組織の空洞の大きさや形状に合わせて、その形を変えることができるためである。
【0117】
さらに、寒天ゲルは、市販されている、入手しやすい材料でもある。
【0118】
本発明の別の実施形態によれば、導電性材料が寒天ゲル以外の材料である場合も除外されず、また、土台2の材料が導電性材料ではない場合も除外されない。
【0119】
好ましくは、土台2は、金属材料からなる導電性要素好ましくは、金属棒を、その中にさらに備える。これにより、針61の先端から組織6の分子に電流を通し、組織に孔を形成することをさらに促進させる。
【0120】
第1実施形態に係る装置1によれば、土台2は、回転手段51に接続されている。回転手段51は、土台2を、土台2の長手方向の延伸軸Y周りに回転させるよう構成されている。
【0121】
好ましくは、回転手段51は、軸Y周りに、一連の慎重な動きで土台2を回転させるよう構成される。
【0122】
図1に示す通り、回転手段51は、土台2に、例えば、回転シャフト512によって接続されている電動モータ511、好ましくは、ステップ型のモータを備える。
【0123】
土台2の回転、ひいては、その上に配置されている組織6の回転と、機械スタンド3および針31の方向Xの動きが組み合わさることで、再活性化する組織6の厚さおよび表面にわたって、孔61を均等に展開することができる。
【0124】
本発明の異なる実施形態によれば、回転手段51および/または機械スタンド3が、電気制御部に制御され、これにより、最大精度に加え、土台2の回転、および/または、機械スタンド3の方向Xへの連続した移動が可能になる場合も除外されない。
【0125】
本発明の一部はまた、図示されないが、本発明の第2実施形態に係る装置であり、本発明の第2実施形態に係る方法を実行するよう構成された装置であって、第1実施形態に係る装置で説明した、変形例を含む全ての特徴を備える。しかし、回転手段51は含まれておらず、さらに、機械スタンド3は、土台2の長手方向の延伸軸Yに略一致する回転軸周りに移動するよう構成される。
【0126】
特に、第2実施形態に係る装置によれば、機械スタンド3には、移動手段が設けられている。この移動手段は、機械スタンド3を、土台2に対して、軸Yと略合致する回転軸周りに移動させ、さらに針31の延伸方向X、好ましくは、さらに、土台2の軸Yに定義される方向でスタンド3を移動させる。したがって、
土台2、ひいては、組織6周りの、スタンド3および針31の動きにより、一連の慎重な動きで、組織6の表面にわたって、針を動かすことができ、組織の一本またはそれ以上の母線に沿って、上記複数の孔61を形成することができる。
【0127】
本発明の一部はまた、図示されないが、発明の第3実施形態に係る装置であり、本発明の第3実施形態に係る方法を実行するよう構成された装置であって、第1実施形態に係る装置で説明した、変形例を含む全ての特徴を備える。さらに、機械スタンド3は、土台2の長手方向の延伸軸Yに略合致する回転軸周りに移動するよう構成される。
【0128】
特に、第3実施形態に係る装置によれば、機械スタンド3には、移動手段が設けられている。この移動手段は、機械スタンド3を、土台2に対して、軸Yに略合致する回転軸周りに移動させ、さらに、スタンド3を、針31の延伸方向Xで、好ましくは、土台2の軸Yに定義される方向で、移動させるよう構成されている。したがって、土台2、ひいては、組織6周りのスタンド3および針31の移動が、一連の慎重な動きにより実現される。
【0129】
有利な点として、発明の第3実施形態に係る装置によれば、前述した通り、土台2は、回転手段51によって、その長手方向の延伸軸Y周りに回転される。さらに、本発明の第3実施形態に係る方法における孔開け動作時、移動手段は、土台の長手方向の延伸軸Yに対応する上記回転軸周りに機械スタンド3を移動させる。
【0130】
したがって、上記に基づくと、本発明は、設定した全ての目的を達成したことになる。
【0131】
特に、管状の生体適合性組織を使用することで、切開する必要がなく、それゆえ、移植組織に先立って縫合する必要のない、組織再活性化のための作成方法を実行するという目的が果たされる。
【0132】
さらに、本発明による組織の再活性化のための作製方法は、移植組織における瘢痕組織の増殖を引き起こさない。
【0133】
また、本発明による組織の作製方法によって、再生作用を有する細胞および/または生体物質が、容易に組織に移植入できる組織スキャフォールドを実現できる。
【0134】
さらに、本発明の装置によれば、上記方法を繰り返し実行することができ、さらに前記方法を再現性高く、迅速に実行することができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性組織を再活性化するための作製方法および前記方法を実現する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気管、腸、食道といった管状の臓器が理由により機能不全に陥った場合、その臓器を切除し、代替物を移植する必要性が発生する医学的ケースが存在する。
【0003】
こうした処置を実施するにあたり、最新の外科的アプローチでは、一般的に「スキャフォールド」と呼ばれる生体適合性組織を使用する。スキャフォールドは、同遺伝子型、異種遺伝子型、あるいは合成由来のマトリックスを脱細胞化したものから得た細胞外マトリックスからなる。こうしたスキャフォールドは、幹細胞または自家分化細胞とともに正確に再細胞化され、その後、ヒトの体内に移植することで、組織や損傷した臓器を再構築する誘起パターンとして機能する。
【0004】
一般的に、同遺伝子型または異種遺伝子型マトリックスを利用した組織技術では、細胞外マトリックスに、生体上、構造上、あるいは組成上の変化を生じさせることなく、物理的、酵素学的、あるいは化学的方法によって、生体組織から細胞を取り出す。これにより、手を加えていない、ただし、免疫原性組を有さないベース構造が設けられた、原組織特異性タンパク質スキャフォールドを得ることができる。
【0005】
次に、移植組織を受容した、対象者の細胞が、こうしたスキャフォールドに導入され、組織を再生および再形成させ、その後、血小板可溶化液、ヒアルロン酸、多血小板血漿、増殖因子、サイトカイン、羊膜等、迅速な組織再生を促進する目的で採用される、その他生体物質やヒトの体内に移植される。
【0006】
ドナーから採取した組織からスキャフォールドを得る技術が知られている。
【0007】
特に、本出願人による特許文献1は、有機組織の再細胞化を実施する上で、特に効果的な方法を開示している。
【0008】
この方法では、無細胞組織が平面に載置され、組織表面に、再移植する生細胞を受容するための複数の孔が形成される。
【0009】
特に、処置対象の有機組織が管状形状を有している場合、ペトリ皿等の底のような、平らな作業面上に開いて広げられるよう、主延伸方向に沿って切開する。
【0010】
そして、電力供給源に接続された一つまたはそれ以上の金属針によって、上記孔を切開して広げられた組織に形成する。電力供給源は、各針の先端に電流を通す機能を有しており、この電流の強度および波形は、有機組織の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものである。これにより、上記孔が形成される。
【0011】
ここで使用されるエネルギーは、電流を通すことで、分子同士の結合のみを限定的に破壊する程度の強度を有しているため、周囲の領域において、損傷、裂け目、壊死、厚さの増減、液体内容物の変容、凝固、その他変性効果といったものは、一切引き起こされない。
【0012】
次に、ホスト細胞が組織に植え付けられる。ここで、孔により、ホスト細胞は、深くまで入り込み、組織の孔壁に定着する。そして、有機組織全体を増殖させ、また、非常に速く再活性化させる。
【0013】
再活性化されると、有機組織は、専門の外科医により、縫合されることで、閉じられる。これにより、臓器の機能的管状形状が再形成され、有機組織が人体内で生着する。
【0014】
しかしながら、この方法には、いくつかの欠点がある。
【0015】
特に、無細胞組織が平面形状を有さない場合、無細胞組織を切開しなければならず、さらに、次に細胞を均一に植え付け、再成長させられるよう、表面に孔を開けなければならない。
【0016】
こうした作業は、いかなる汚染も回避できるよう、無菌環境下で、無菌器具を使用して実施する必要がある。
【0017】
さらに、植え付け後、切断組織縁の縫合が必要となるが、縫合糸で縫われる切断縁においては、最小限の余剰組織のみを利用しなければならない。これにより、孔を形成し得る、ひいては、細胞を植え付けることができる、組織の実際の表面が限られてしまう。
【0018】
さらに、変質を避けるため、縫合組織の処置・処理には、適切な配慮や注意、専門的な手先の熟練性が必要とされる。
【0019】
さらに不便なことに、縫合された組織の一部は、瘢痕組織であり、弾性繊維が少ないという点で、周辺組織とは異なるため、好ましくない硬化を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2164536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、上述した欠点を克服した、生体適合性組織を再活性化するための作製方法を実現することにある。
【0022】
より具体的には、本発明の目的は、従来技術のように組織を切開・縫合することなく、再活性化が可能な組織を作製する方法を実現することにある。
【0023】
さらに、本発明の目的は、ヒトに移植された組織において、瘢痕組織の生成を引き起こさない、組織再生化方法を実現することにある。
【0024】
また、本発明の目的は、組織を作製する方法を実現することにあり、細胞を導入することで組織を再活性化させ、組織の移植入を容易なものとする。
【0025】
さらに、本発明の目的は、上記方法によって、再生機能を有する生体物質が組織自体に容易に吸収されるような組織を作製することにある。
【0026】
さらに、本発明の目的は、上記方法を、再現性高く繰り返し実施することが可能な装置を実現することになる
【0027】
特に、本発明の目的は、作製方法を迅速に実施することが可能な装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的は、実質管状を有する生体適合性組織の再活性化を目的とした、生体適合性組織の作製方法によって、達成される。
【0029】
特に、本発明の方法では、請求項1に記載の通り、主に、長手方向に延伸する土台を、管状の生体適合性組織によって画定される空洞内部に挿入することと、この組織の外側および/または内側面において、組織の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される一つまたはそれ以上の孔を、組織の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって形成することとが、行われる。
【0030】
本発明の目的はまた、請求項10に記載の通り、機械スタンドに配置された一つまたはそれ以上の導電性針と、長手方向に延伸した土台であって、実質管状の生体適合性組織によって画定される空洞に挿入される土台と、を備え、本発明の方法を実現するよう構成された装置によっても達成される。
【0031】
これら方法および装置のさらなる特徴は、従属項に記載される。
【0032】
非限定的例として、添付の図面を参照して示される本発明によるいくつかの好ましい実施形態の説明において、前述の目的を、以下の利点とあわせて、より強調する。添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る装置の軸測投影図を、模式的に表したものである。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態による、再活性化のための作製方法における一連の動作を、模式的に表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1実施形態によれば、再活性化のため、生体適合性を有する実質管状の材料からなる組織6を作製する方法が提供される。
【0035】
「生体適合性を有する」という表現は、Terminology for biorelated polymers and applications (IUPAC Recommendations 2012), (米), Pure Appl. Chem., 2012, Vol. 84, No. 2, pp.377-410で報告された通り、生体器官に接触させても、副作用を引き起こすことのない、材料の特性を表すものとする。
【0036】
好ましくは、こうした生体適合性組織6は、有機組織であり、より好ましくは、動物由来の有機組織である。これにより、ヒト移植組織を想定した、動物組織の再生外科領域における研究に、有利に利用できる。
【0037】
より好ましくは、既知の組織であり、ヒトとブタの遺伝的類似性があることから、こうした動物組織は、ブタ由来の組織である。
【0038】
しかし、本発明の別の実施形態によれば、ヒト由来の有機組織を排除するものではない。
【0039】
また、生体適合性組織6が、合成由来、例えば、非制限例においては、乳酸グリコール酸共重合体からなる組織である場合も、排除されない。
【0040】
本発明の第1実施形態によれば、生体適合性組織6は、さらに、無細胞組織である。
【0041】
「細胞(の)」という用語は、組織、一般的には、スキャフォールドと呼ばれる有機組織を意味する。スキャフォールドは、細胞外マトリックスに、生体上、構造上、あるいは組成上の変化を生じさせることなく、細胞を有さない有機組織を得るため、従来、既知の物理的、酵素学的、あるいは化学的方法によって処理されていた。
【0042】
本発明の変形実施形態によれば、生体適合性組織6が、細胞化組織、つまり、構造的に類似した細胞群を含んだ組織組織である場合も排除されない。
【0043】
図2~
図6に模式的に表す本発明の第1実施形態の方法によれば、土台2は、主に、長手方向の延伸軸Yに沿って延伸しており、
図2に示す通り、実質管状の組織6によって画定される空洞内に挿入される。
【0044】
土台2は、組織6を支持するよう構成されことが明示される。これにより、本発明に係る方法における以下の動作中、組織6が管状形状を有利に維持できる。
【0045】
好ましくは、土台2は、略円形断面を有する、実質筒状の土台である。
【0046】
さらに、管状土台2は、中空または柱状であることが明示される。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、土台は、管状組織6の空洞内に挿入可能な形を有していればよく、土台が長手方向の延伸軸に沿って延伸し、八角形や六角形等の断面を有し、または、楕円体である場合も除外されない。
【0048】
本方法において、組織6を上記土台2上に配置すると、
図3に模式的に示す通り、組織6の外側および/または内側面において、一つまたはそれ以上の孔61を、組織6の厚さの少なくとも一部を占める深さ、好ましくは、組織6の厚さ全体にわたって形成する。
【0049】
この孔61は、組織6の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される。
【0050】
孔61は、上記組織6の単一あるいは複数の母線上に展開できることが明示される。
【0051】
同じまたは異なる個数の孔61を、各母線上に展開してもよく、また、孔61は、規則的または不規則的に展開されていてもよい。
【0052】
有利な点として、本発明の方法によれば、既知の方法とは異なり、上記組織6を切開することなく、再活性化する組織を作製することができる。
【0053】
したがって、組織の移植前に、管状三次元構造を有する組織を形成するために組織を縫合する必要性を、有利に回避することができる。
【0054】
さらに、有利な点として、複数の孔を形成することにより、組織の、前記組織6上に植え付けた細胞に対する受容性を特に高めることができ、結合組織の繊維マトリックスの移植を促しつつ、細胞が組織に入り込みやすくする。これにより、再移植プロセスを早めることができる。
【0055】
さらに、複数の孔が存在することにより、再生機能を有する物質を、組織内に容易に取り込むことができる。
【0056】
本発明の第1実施形態の方法によれば、孔61は、一つまたはそれ以上の導電性針31、特に、導電性材料、好ましくは、金属材料からなる針によって、形成される。
【0057】
特に、孔61は、後ほど詳しく説明する装置1によって形成される。ここで、上記針31は、各針31の先端に電流を通す電力供給源4に接続されている。
【0058】
印加する電流の強度および波形は、針の先端にある組織の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものである。こうした電流が印加されることで、各孔が形成されるが、各孔は、分子同士の結合を破壊して形成した空間に、針の先端が進入可能となる程度の大きさを有する
【0059】
これにより、有利な点として、組織上に孔を形成しても、壊死、凝固、避け目等の、組織の変質、特に、孔周辺の結合組織の変質は引き起こされない。
【0060】
さらに有利な点として、タンパク質材料によって組織を形成した場合であっても、本発明による孔形成では、結合、壊死、または凝固は引き起こされない。上記孔の縁において、内腔および周辺マトリックス間の空洞、亀裂、漏損、または、元からある連通部がいくつか形成される。こうした空洞により、結合組織内で細胞が展開できる、孔および周辺結合組織間の複数の連通部を形成することができる。結果、組織内における三次元細胞培養が実現する。
【0061】
定性的に、導電性針31に、約4MHz以上の周波数を有する交流電源電圧が印加された場合に、最良の結果が得られる。
【0062】
この周波数により、周辺組織の質を低下させずに、組織分子同士の結合を破壊できるほどの通電が行われる。
【0063】
約4MHzの周波数が好ましい。
【0064】
本発明の別の実施形態によれば、管状組織6の上記孔61が、4MHz未満の周波数を有する電源電圧が印加された針によって形成される場合も除外されない。
【0065】
また、本発明の変形実施形態によれば、孔61の形成により、一般的な生体適合性組織において、孔周辺の組織の質を低下が起こらなければよく、記載したものと異なる方法により、孔61が形成される場合を除外しない。
【0066】
本発明の第1実施形態の方法によれば、
図4に示す通り、孔開け動作時、組織6を配置した土台2を、その長手方向の延伸軸Y周りに回転させる。
【0067】
好ましくは、組織6を配置した土台2は、軸Y周りの、一連の間欠的な動きによって回転される。
【0068】
この回転動作は、所定の角度幅、好ましくは、1度の数分の一程度の角度幅ごとに行われる。これにより、孔開け動作を適切に規制・制御することができ、孔61を組織6上に展開できる。
【0069】
「所定の」という表現は、各回転動作の角度幅が、処理組織の特性および孔の分布目標に合わせて、本方法の実行者によって選択されていることを意味する。
【0070】
さらに、回転動作は、回転動作ごとに異なる、あるいは、同じ角度幅値を有してもよいことが明示される。
【0071】
したがって、操作としては、最初に、複数の孔61を土台2に支持された組織6の母線に沿って形成した後、
図4および
図5に示す通り、針31を組織6から離間させ、土台2をそれ自体の軸Yに沿って回転させる。
【0072】
図6に示す通り、土台2を回転させた後、針31を組織6に向かって再び近づけ、新たに複数の孔61を、先ほどの母線とは異なる、組織6の別の母線上に形成する。
【0073】
このような、土台を回転させる動作および組織に孔を開ける動作を、各組織母線に沿って複数の孔が形成されるまで、繰り返す。
【0074】
有利な点として、土台2、ひいては、その上に配置した管状組織6の回転により、組織表面に孔を確実に均一展開させつつ、その自然立体形状に合わせて、組織の全ての母線に沿って、素早く、かつ容易に、孔61を形成することができる。
【0075】
特に、同出願人らによって実施された実験によれば、孔開け動作時に、極めて小さい直径を有する針31を使用し、土台を回転させることで、組織1平方センチメートルあたり、1,000~1,600個の孔を形成することができる。
【0076】
本発明の第1実施形態の方法によれば、組織6の母線のうち、一本またはそれ以上の母線上において、孔開け動作を完了すると、前述の通り、組織6は、適切な手術用グリッパーによって、土台2から摘出され、ペトリ皿等の上に全体を載置される。こうした容器には、組織自体を再活性化させる、細胞、好ましくは、生細胞が導入される、および/または、再生機能を有するその他生体物質が導入される。
【0077】
組織の孔61により導入され、組織表面に均等に展開した細胞により、組織マトリックスへの移植が容易となり、組織自体の完全かつ均一な再活性化が確実となる。
【0078】
本発明の別の実施形態に係る方法によれば、孔開け動作後、孔が形成された管状組織6を、土台2から摘出せず、かわりに、土台2上で直接、細胞および/または上記物質での処理を行う場合も除外されない。例えば、土台2上の組織6を、土台が挿入された状態で、細胞増殖に適した培地に浸してもよい。これにより、植え付けおよび再活性化動作時であっても、管状組織6の自然立体形状が保たれる。
【0079】
また、本発明の変形実施形態に係る方法によれば、孔が形成された管状組織6を、そのまま、動物や患者に移植する場合も除外されない。つまり、技師が、ホスト体内に移植する前に、孔が形成された管状組織6の細胞および/または生体物質での処理を行わない場合も除外されない。したがって、動物や患者の細胞が生体内原位置にすでにある状態で、移植管状組織6に移植および再活化する。
【0080】
本発明の一部はまた、図示されないが、本発明の第2実施形態である。ここでは、本発明の第1実施形態で説明した、変形例を含む全ての特徴を備えるが、孔開け動作時、組織6の土台2は、上述とは異なり、回転せず、固定されている。
【0081】
第2実施形態によれば、本方法において、孔開け動作時、導電性針31は、土台2の長手方向の延伸軸Yに略合致する回転軸周りに動く。
【0082】
針31のこうした動きは、一連の間欠的な動きによって有利に実行される。この動きにより、針31を土台2に支持された組織6の外側および/または内側面に沿って動かし、組織の、一本またはそれ以上の母線に沿って、上記複数の孔61を形成する。
【0083】
導電性針による孔開け動作と組み合わせた、この針31の動きにより、自然三次元管状形状を変更する必要なく、組織表面にわたって、孔を均等に展開することを確実としながらも、組織6の各母線に沿って孔61を形成することができる。
【0084】
本発明の一部は、本発明の第3実施形態に係る方法である。ここでは、本発明の第1実施形態で説明した、変形例を含む全ての特徴を備えるが、孔開け動作時、土台2の長手方向の延伸軸Yに略合致する回転軸周りに導電性針31を移動させることが提示されている。
【0085】
より具体的には、本発明の第3実施形態によれば、孔開け動作時、土台2は、好ましくは、一連の間欠的な動きによって、長手方向の延伸軸Y周りの所定の角度幅で、回転する。さらに、導電性針31が、土台2に対して、軸Y、好ましくは、一連の間欠的な動きで。軸Yに略合致する回転軸周りに、移動する。
【0086】
特に、土台2の回転動作と、導電性針31の回動動作が同期し、三次元構造を損なうことなく、組織6の各母線に均等になるよう、組織6に孔を開ける。
【0087】
本発明のさらなる特徴を、本発明の方法を実行するよう構成された装置の説明において、さらに強調していく。
【0088】
特に、
図1の、発明の第1実施形態に係る装置における非制限例では、本発明の第1実施形態で既述した方法を実行することができる。
【0089】
参照符号1を付した、第1実施形態に係る装置は、組織再活性化のため、生体適合性組織6の表面に一つまたはそれ以上の孔61を形成するように構成されている。
【0090】
装置1は、土台2を備える。土台2は、主に、長手方向の延伸軸Yに沿って延伸しており、実質管状の生体適合性組織6によって画定される空洞内に挿入される。
【0091】
土台2は、組織がその自然三次元管状形状を維持できるよう、組織6を支持する。
【0092】
本発明の方法によれば、管状生体適合性組織6は、有機または合成由来で有り得る。
【0093】
こうした組織6は、好ましくは、有機組織、より好ましくは、細胞有機組織である。
【0094】
本発明の第1実施形態に係る装置に戻って説明すると、土台2は、略円形断面を有する実質筒状の土台である。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、土台は、管状組織6の空洞内に挿入可能な形を有していればよく、土台が長手方向の延伸軸に沿って延伸し、八角形や六角形等の断面を有し、または、楕円体である場合も除外されない。
【0096】
装置1は、さらに、機械スタンド3に配置された複数の導電性針31を備える。
【0097】
導電性針31は、好ましくは、金属材料からなる。
【0098】
好ましくは、導電性針31は、組織に再移植可能な細胞の直径より僅かに大きい、または、それと同等の直径を有する。
【0099】
図1に示す通り、こうした導電性針31は、好ましくは、機械スタンド3上に規則正しく配置される。好ましくは、土台2の長手方向の延伸軸Yに平行な、少なくとも整った一列で形成される。
【0100】
好ましくは、必須ではないが、針31は、上記のような列を形成するため、互いに均等な間隔を空けて配置される。
【0101】
しかし、本発明の別の実施形態によれば、複数の針31が、長手方向の延伸軸Yに平行な、整った一列として配置されず、例えば、円形、楕円形といった任意の幾何学形状、または、マトリックスに合わせて配置される場合、あるいは、装置1が、一つの針31しか備えていない場合も除外されない。
【0102】
さらに、上記針31は、土台2の外側面に向いており、これにより、上記組織6の母線のうち少なくとも一本の母線の上に、複数の孔61が展開される。
【0103】
機械スタンド3が、組織に近接・離間する針31の延伸方向Xに移動することで、複数の孔61が形成される。
【0104】
特に、本発明の方法の孔開け動作時、機械スタンド3を、組織6に近接する方向Xに移動させる。針の先端が組織表面に接触すると、機械スタンドは、一般的な組織において、孔自体の周辺組織の質を低下させることなく、組織6に孔を開けて孔61を形成することができる程度の速度で移動する。
【0105】
有利な点として、孔61が、組織6の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって、好ましくは、組織の厚さ全体にわたって形成されるよう、機械スタンド3の移動が調節できる。これにより、上述の利点が得られる。
【0106】
好ましくは、機械スタンド3は、土台2の長手方向の延伸軸Yによって定義される方向にも移動能である。これにより、機械スタンド3が、組織6の母線の一本上の各点に、有利に位置決めされ、組織の長辺にわたって孔61が形成可能となる。
【0107】
本発明の別の実施形態の装置によれば、組織6の内側面に沿って複数の孔61を形成するよう、針31が組織6に画定される空洞内に配置され、土台2の内側面に向いている場合も除外されない。この実施形態に係る装置において、土台2は、機械スタンド3を収容できる空洞を有している。さらに、この実施形態によれば、土台2は、その表面上に、一つまたはそれ以上の貫通孔を有している。この貫通孔は、針31を土台2に支持された組織6の内側面に到達させ、孔61が形成できるよう、構成されている。
【0108】
本発明の第1実施形態に係る装置に戻って説明すると、前記装置は、針31に接続され、各針31の先端に電流を印加する電力供給源4をさらに備える。この電流の強度および波形は、針31の先端が接触した組織6の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものである。
【0109】
電力供給源4によって供給される電力エネルギーは、好ましくは、変調されていない。しかし、本発明の変形実施形態によれば、この電力エネルギーが変調されている場合も除外されない。
【0110】
この電力供給源4は、好ましくは、電圧発生器からなり、好ましくは、4MHz以上、好ましくは、約4MHzの周波数で、1,500ボルトのピーク値、より好ましくは、30~500ボルトのピーク・ピーク値、さらにより好ましくは、200~230ボルトのピーク・ピーク値を有する。
【0111】
本発明の変形実施形態に係る装置によれば、周波数が4MHz以下である場合も除外されない。
【0112】
好ましくは、ただし、必須ではないが、ここでの波形は、歪正弦波であり、高調波を有する。
【0113】
高調波は、好ましくは、少なくとも、一次、二次、三次である。
【0114】
電圧発生器のパワーは、各針31の先端に印加する電流が、孔の形成に適したものになるよう、調節される。
【0115】
本発明の第1実施形態に係る装置によれば、土台2は、導電性材料からなる。これにより、前述のように、さらに、前述の利点を得られるように、組織6上に複数の孔61を形成するための電流が有利に流れる。
【0116】
好ましい導電性材料としては、寒天ゲルが挙げられる。この材料であれば、伝導体として有利に機能し、さらに、再活性化のために作製する、寒天ゲルが挿入される管状組織6の空洞の大きさや形状に合わせて、その形を変えることができるためである。
【0117】
さらに、寒天ゲルは、市販されている、入手しやすい材料でもある。
【0118】
本発明の別の実施形態によれば、導電性材料が寒天ゲル以外の材料である場合も除外されず、また、土台2の材料が導電性材料ではない場合も除外されない。
【0119】
好ましくは、土台2は、金属材料からなる導電性要素好ましくは、金属棒を、その中にさらに備える。これにより、針61の先端から組織6の分子に電流を通し、組織に孔を形成することをさらに促進させる。
【0120】
第1実施形態に係る装置1によれば、土台2は、回転手段51に接続されている。回転手段51は、土台2を、土台2の長手方向の延伸軸Y周りに回転させるよう構成されている。
【0121】
好ましくは、回転手段51は、軸Y周りに、一連の間欠的な動きで土台2を回転させるよう構成される。
【0122】
図1に示す通り、回転手段51は、土台2に、例えば、回転シャフト512によって接続されている電動モータ511、好ましくは、ステップ型のモータを備える。
【0123】
土台2の回転、ひいては、その上に配置されている組織6の回転と、機械スタンド3および針31の方向Xの動きが組み合わさることで、再活性化する組織6の厚さおよび表面にわたって、孔61を均等に展開することができる。
【0124】
本発明の異なる実施形態によれば、回転手段51および/または機械スタンド3が、電気制御部に制御され、これにより、最大精度に加え、土台2の回転、および/または、機械スタンド3の方向Xへの連続した移動が可能になる場合も除外されない。
【0125】
本発明の一部はまた、図示されないが、本発明の第2実施形態に係る装置であり、本発明の第2実施形態に係る方法を実行するよう構成された装置であって、第1実施形態に係る装置で説明した、変形例を含む全ての特徴を備える。しかし、回転手段51は含まれていない。さらに、第2実施形態に係る装置によれば、機械スタンド3は、土台2の長手方向の延伸軸Yに略一致する回転軸周りに移動するよう構成される。
【0126】
特に、第2実施形態に係る装置によれば、機械スタンド3には、移動手段が設けられている。この移動手段は、機械スタンド3を、土台2に対して、軸Yと略合致する回転軸周りに移動させ、さらに針31の延伸方向X、好ましくは、さらに、土台2の軸Yに定義される方向でスタンド3を移動させる。したがって、
土台2、ひいては、組織6周りの、スタンド3および針31の動きにより、一連の間欠的な動きで、組織6の表面にわたって、針を動かすことができ、組織の一本またはそれ以上の母線に沿って、上記複数の孔61を形成することができる。
【0127】
本発明の一部はまた、図示されないが、発明の第3実施形態に係る装置であり、本発明の第3実施形態に係る方法を実行するよう構成された装置であって、第1実施形態に係る装置で説明した、変形例を含む全ての特徴を備える。さらに、機械スタンド3は、土台2の長手方向の延伸軸Yに略合致する回転軸周りに移動するよう構成される。
【0128】
特に、第3実施形態に係る装置によれば、機械スタンド3には、移動手段が設けられている。この移動手段は、機械スタンド3を、土台2に対して、軸Yに略合致する回転軸周りに移動させ、さらに、スタンド3を、針31の延伸方向Xで、好ましくは、土台2の軸Yに定義される方向で、移動させるよう構成されている。したがって、土台2、ひいては、組織6周りのスタンド3および針31の移動が、一連の間欠的な動きにより実現される。
【0129】
有利な点として、発明の第3実施形態に係る装置によれば、前述した通り、土台2は、回転手段51によって、その長手方向の延伸軸Y周りに回転される。さらに、本発明の第3実施形態に係る方法における孔開け動作時、移動手段は、土台の長手方向の延伸軸Yに対応する上記回転軸周りに機械スタンド3を移動させる。
【0130】
したがって、上記に基づくと、本発明は、設定した全ての目的を達成したことになる。
【0131】
特に、管状の生体適合性組織を使用することで、切開する必要がなく、それゆえ、移植組織に先立って縫合する必要のない、組織再活性化のための作成方法を実行するという目的が果たされる。
【0132】
さらに、本発明による組織の再活性化のための作製方法は、移植組織における瘢痕組織の増殖を引き起こさない。
【0133】
また、本発明による組織の作製方法によって、再生機能を有する細胞および/または生体物質が、容易に組織に移植入できる組織スキャフォールドを実現できる。
【0134】
さらに、本発明の装置によれば、上記方法を繰り返し実行することができ、さらに前記方法を再現性高く、迅速に実行することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性組織の再活性化のため、生体適合性組織
(6)を作製する方法であって、前記組織(6)は、実質管状の形状を有し、前記方法は、
主に、長手方向の延伸軸(Y)に沿って延伸する土台(2)を、前記組織(6)によって画定される空洞内部に挿入する動作と、
前記組織(6)の外側および/または内側面において、前記組織(6)の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される一つまたはそれ以上の孔(61)を形成する孔開け動作と、を含み、
前記一つまたはそれ以上の孔(61)は、前記組織(6)の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記組織(6)は、無細胞組織である、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織(6)は、有機無細胞組織である、ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記一つまたはそれ以上の孔(61)は、一つまたはそれ以上の導電性針(31)によって形成され、前記導電性針(31)は、好ましくは、金属材料からなる、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記孔開け動作時、前記土台(2)を前記長手方向の延伸軸(Y)周りに回転させる、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記孔開け動作時、前記長手方向の延伸軸(Y)周りの、一連の
間欠的な動きによって、前記土台(2)を回転させ、
この回転動作は、所定の角度幅、好ましくは、1度の数分の一程度の角度幅ごとに行われる、ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)は、前記孔開け動作時、前記土台(2)の前記長手方向の延伸軸(Y)に略合致する回転軸周りに移動するよう構成される、ことを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)は、電力供給源(4)に接続され、
各針(31)の先端に電流を通すことで、前記一つまたはそれ以上の孔(61)を形成し、前記電流の強度および波形は、前記針(31)の先端付近にある前記組織(6)の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものであり、
前記一つまたはそれ以上の孔(61)のそれぞれは、前記電流を通すことで形成され、前記分子同士の結合を破壊することで形成された空間に、前記針(31)の先端が進入可能となる程度の大きさを有する、ことを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)には、4MHz以上の周波数、好ましくは、約4MHzの周波数を有する交流電源電圧が印加される、ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組織(6)は、有機組織、好ましくは、動物由来の有機組織である、ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組織(6)は、合成由来の組織である、ことを特徴とする、請求項1、2、または4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組織(6)の再活性化は、細胞および/または再生機能を有する生体物質を、前記組織(6)に再導入することにより行われ、
前記一つまたはそれ以上の孔(61)は、前記細胞および/または生体物質が再導入されると、それらを受容するようになっており、
前記細胞は、好ましくは、生細胞である、ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
生体適合性組織(6)を再活性化させるために、前記生体適合性組織(6)の表面に一つまたはそれ以上の孔(61)を形成する装置(1)であって、前記装置(1)は、
機械スタンド(3)に配置された一つまたはそれ以上の導電性針(31)と、
主に、長手方向の延伸軸(Y)に沿って延伸する土台(2)であって、実質管状の生体適合性組織(6)によって画定される空洞内部に挿入するよう構成された土台(2)と、を備え、
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)は、前記土台(2)の外側および/または内側面に向けられ、前記組織(6)の母線のうち少なくとも一本の母線上に展開される一つまたはそれ以上の孔(61)を形成し、
前記一つまたはそれ以上の孔(61)は、前記組織(6)の厚さの少なくとも一部を占める深さをもって形成される、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項14】
前記導電性針(31)は、金属材料からなる、ことを特徴とする、請求項13に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記土台(2)は、前記長手方向の延伸軸(Y)周りに前記土台(2)を回転させるよう構成された回転手段(51)に接続され、
前記回転手段(51)は、好ましくは、回転シャフト(512)によって前記土台(2)に接続された電動モータ(511)を備える、ことを特徴とする、請求項13または14に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記回転手段(51)は、前記長手方向の延伸軸(Y)周りの、一連の
間欠的な動きによって、前記土台(2)を回転させるよう構成される、ことを特徴とする、請求項15に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記機械スタンド(3)は、前記土台(2)の前記長手方向の延伸軸(Y)に略合致する回転軸周りに移動するよう構成される、ことを特徴とする、請求項13~16のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記一つまたはそれ以上の導電性針(31)に接続される電力供給源(4)をさらに備え、前記電力供給源(4)は、各針(31)の先端に電流を供給し、前記電流の強度および波形は、前記針(31)の先端に接触する前記組織(6)の分子同士の結合を破壊するのに充分なエネルギーを供給できる程度のものであり、
前記電力供給源(4)は、好ましくは、約4MHzの周波数を出力する電圧発生器からなる、ことを特徴とする、請求項13~17のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項19】
前記導電性針(31)は、前記導電性針(31)からなる少なくとも整った一列を形成するため、前記機械スタンド(3)に少なくとも複数個設けられ、
前記整った一列は、好ましくは、前記土台(
2)の前記長手方向の延伸軸(Y)と平行である、ことを特徴とする、請求項13~18のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項20】
前記組織(6)は、無細胞組織、好ましくは、有機無細胞組織である、ことを特徴とする、請求項13~19のいずれか一項に記載の装置(1)。
【国際調査報告】