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特表2022-522618混合フレーム管腔内プロテーゼおよびその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】混合フレーム管腔内プロテーゼおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20220413BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544304
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 CN2019074080
(87)【国際公開番号】W WO2020155000
(87)【国際公開日】2020-08-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】イー,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ジーシウ
(72)【発明者】
【氏名】マ,ホーンリヤーン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097DD02
4C097DD10
4C097EE02
4C097EE06
4C097MM02
4C097MM04
(57)【要約】
少なくとも門脈圧亢進症を治療する管腔内プロテーゼ(100)およびその方法。管腔内プロテーゼ(100)は、主フレーム(110)および末端フレーム(120)の混合フレーム、ならびに少なくとも主フレーム(110)の上の管状グラフト(130)を含む。主フレーム(110)は、複数の環状部材(112)を含む。各環状部材(112)は、複数のダイヤモンド形セル(114)を含む。末端フレーム(120)は、編込み支柱(122)を含む。末端フレーム(120)は、主フレーム(110)の第1の端部(110a)または第2の端部(110b)にそれぞれ位置する第1の端部環状部材(112a)または第2の端部環状部材(112b)のうちの少なくとも1つに結合された結合端(124)を含む。管状グラフト(130)は、第1の端部環状部材(112a)から第2の端部環状部材(112b)へ延びる。管腔内プロテーゼ(100)は、管腔内プロテーゼ(100)を挿入するための挿入状態と、管腔内プロテーゼ(100)を使用するための拡張状態とを含む。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入状態および拡張状態を有する管腔内プロテーゼであって、
複数の環状部材を含む主フレームであり、各環状部材が複数のダイヤモンド形セルを含む、主フレームと、
編込み支柱を含む末端フレームであり、前記主フレームの第1の端部または第2の端部にそれぞれ位置する第1の端部環状部材または第2の端部環状部材のうちの少なくとも1つに結合された結合端を含む末端フレームと、
前記主フレームの上に位置する管状グラフトであり、前記第1の端部環状部材から前記第2の端部環状部材へ延びる管状グラフトとを備える管腔内プロテーゼ。
【請求項2】
請求項1に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記末端フレームが、前記結合端の反対の位置に非結合端部を含み、前記管腔内プロテーゼの前記拡張状態で、前記非結合端部の直径が前記主フレームの直径より大きい、管腔内プロテーゼ。
【請求項3】
請求項2に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記非結合端部が、前記編込み支柱を覆う奇数のタンタルキーを含み、放射線透過法による前記タンタルキーの識別を容易にするために、前記タンタルキーの幅が前記編込み支柱の幅より大きい、管腔内プロテーゼ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼであって、
各環状部材が、前記ダイヤモンド形セルを形成する複数の「S」字形支柱を含み、各「S」字形支柱が、2つの平行な弧および2つの多項式曲線によって囲まれた断面形状を含む、管腔内プロテーゼ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼであって、
任意の2つの隣接する環状部材が、前記2つの隣接する環状部材の上の前記管状グラフトによって提供される可撓性結合部のみによって、ともに結合される、管腔内プロテーゼ。
【請求項6】
請求項5に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記任意の2つの隣接する環状部材の周りの前記可撓性結合部により、前記管腔内プロテーゼが前記挿入状態にあるか、それとも前記拡張状態にあるかにかかわらず、前記管腔内プロテーゼが同じ長さを維持することが可能になる、管腔内プロテーゼ。
【請求項7】
請求項5または6に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記可撓性結合部が、前記任意の2つの隣接する環状部材の周りの前記主フレームに可撓性を与える、管腔内プロテーゼ。
【請求項8】
請求項7に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記管状グラフトが、前記主フレームの周りの組織の内方成長を防止し、それによって前記主フレームの前記可撓性を維持する、管腔内プロテーゼ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記管状グラフトが、高密度ポリエチレン(「HDPE」)または延伸ポリテトラフルオロエチレン(「ePTFE」)である、管腔内プロテーゼ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記主フレームおよび前記末端フレームがどちらもニチノールである、管腔内プロテーゼ。
【請求項11】
混合フレームを有する管腔内プロテーゼであって、
複数の物理的に別個の環状部材を含む前記混合フレームの主フレームであり、各環状部材が複数のダイヤモンド形セルを形成する複数の「S」字形支柱を含む、主フレームと、
編込み支柱を含む前記混合フレームの1対の末端フレームであり、各末端フレームが、前記主フレームの第1の端部または第2の端部にそれぞれ位置する第1の端部環状部材または第2の端部環状部材のうちの1つのみに結合された結合端を含む、1対の末端フレームと、
前記主フレームの上に位置する管状グラフトであり、前記第1の端部環状部材から前記第2の端部環状部材へ延びる管状グラフトとを備える管腔内プロテーゼ。
【請求項12】
請求項11に記載の管腔内プロテーゼであって、
各末端フレームが、前記結合端の反対の位置に非結合端部を含み、前記非結合端部が、前記編込み支柱を覆う奇数のタンタルキーを含み、放射線透過法による前記タンタルキーの識別を容易にするために、前記タンタルキーの幅が前記編込み支柱の幅より大きい、管腔内プロテーゼ。
【請求項13】
請求項11または12に記載の管腔内プロテーゼであって、
任意の2つの隣接する環状部材が、前記2つの隣接する環状部材の上の前記管状グラフトによって提供される可撓性結合部のみによって、ともに結合される、管腔内プロテーゼ。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記管状グラフトが、前記主フレームの周りの組織の内方成長を防止し、それによって前記環状部材の周りの前記主フレームの可撓性を維持するように構成された高密度ポリエチレン(「HDPE」)である、管腔内プロテーゼ。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼであって、
前記主フレームの長さLが、等式1
L=ML+(M-1)S(等式1)
によって実現され、上式で、Mが環状部材の数であり、Lが前記ダイヤモンド形セルの長尺寸法であり、Sが等式2
【数1】
に従って判定され、上式で、Lが、等式3
=πD/N(等式3)
に従って判定される前記ダイヤモンド形セルの短尺寸法であり、上式で、Dが、前記管腔内プロテーゼの挿入状態または拡張状態にある前記主フレームの直径であり、Nが、各環状部材内のダイヤモンド形セルの数である、管腔内プロテーゼ。
【請求項16】
混合フレーム管腔内プロテーゼのための方法であって、
複数の物理的に別個の環状部材を管状グラフトに固定して取り付けるステップによって、前記混合フレームの主フレームを形成するステップであり、各環状部材が複数のダイヤモンド形セルを形成する複数の「S」字形支柱を含む、形成するステップと、
前記主フレームの第1の端部で第1の組の支柱を第1の端部環状部材に編み込んで、第1の末端フレームを形成し、前記主フレームの第2の端部で第2の組の支柱を第2の端部環状部材に編み込んで、第2の末端フレームを形成するステップによって、前記混合フレームの1対の末端フレームを形成するステップと、
各組の支柱の端部を、放射線透過法によるその識別に好適なタンタルキーによってともに固定するステップとを含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記主フレームを形成するとき、各環状部材を前の環状部材に対して長手方向に配置してから、前記管状グラフトに取り付け、それによって前記管状グラフトによって提供される前記環状部材間の可撓性結合部の可撓性を保証するステップをさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の方法であって、
前記環状部材を前記管状グラフトに固定して取り付けるステップが、前記環状部材を前記管状グラフトに挿入してから、前記管状グラフトに取り付けるステップ、または前記管状グラフトと別の管状グラフトとの間に前記環状部材を挟んでから、いずれかの管状グラフトに取り付けるステップを含む、方法。
【請求項19】
請求項16~18いずれか一項に記載の方法であって、
各組の支柱の前記端部を前記タンタルキーによってともに固定するステップが、奇数のタンタルキーが得られるように、各組の支柱の前記端部をともに固定するステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記奇数のタンタルキーを実現するために、各組の支柱のあらゆる残りの端部を前記タンタルキーなしでともに固定するステップをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]健康な人の場合、胃、食道、または腸から流れる血液はまず、肝臓を通る。たとえば肝障害を患っている不健康な人の場合、血流を制限する障害物が存在する可能性があり、したがって血液が肝臓を容易に流れることができない。そのような状態は、門脈圧亢進症として知られている。門脈圧亢進症の一般的な原因には、アルコールの過剰摂取、肝臓から心臓へ流れる静脈中の血栓、肝臓内の過剰な鉄(たとえば、ヘモクロマトーシス)、B型肝炎、またはC型肝炎が含まれる。門脈圧亢進症が生じると、血流を制限する障害物により門脈内の圧力が上昇し、門脈の破裂および深刻な出血を引き起こす可能性がある。門脈圧亢進症の患者はまた、胃、食道、もしくは腸の静脈からの出血(たとえば、静脈瘤出血)、腹腔内の体液の貯留(たとえば、腹水)、または胸腔内の体液の貯留(たとえば、水胸)を有している可能性がある。少なくとも門脈圧亢進症を治療する管腔内プロテーゼおよびその方法が、本明細書に開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
[0002]挿入状態および拡張状態を有する管腔内プロテーゼが、本明細書に開示されており、管腔内プロテーゼは、いくつかの実施形態では、主フレーム、末端フレーム、および管状グラフトを含む。主フレームは、複数の環状部材を含む。各環状部材は、複数のダイヤモンド形セルを含む。末端フレームは、編込み支柱を含む。末端フレームは、主フレームの第1の端部または第2の端部にそれぞれ位置する第1の端部環状部材または第2の端部環状部材のうちの少なくとも1つに結合された結合端を含む。管状グラフトは、主フレームの上に位置する。管状グラフトは、第1の端部環状部材から第2の端部環状部材へ延びる。
【0003】
[0003]いくつかの実施形態では、末端フレームは、結合端の反対の位置に非結合端部を含む。管腔内プロテーゼの拡張状態で、非結合端部の直径は主フレームの直径より大きい。
【0004】
[0004]いくつかの実施形態では、非結合端部は、編込み支柱を覆う奇数のタンタルキーを含む。放射線透過法によるタンタルキーの識別を容易にするために、タンタルキーの幅は編込み支柱の幅より大きい。
【0005】
[0005]いくつかの実施形態では、各環状部材は、ダイヤモンド形セルを形成する複数の「S」字形支柱を含む。各「S」字形支柱は、2つの平行な弧および2つの多項式曲線によって囲まれた断面形状を含む。
【0006】
[0006]いくつかの実施形態では、任意の2つの隣接する環状部材が、2つの隣接する環状部材の上の管状グラフトによって提供される可撓性結合部のみによって、ともに結合される。
【0007】
[0007]いくつかの実施形態では、任意の2つの隣接する環状部材の周りの可撓性結合部により、管腔内プロテーゼが挿入状態にあるか、それとも拡張状態にあるかにかかわらず、管腔内プロテーゼが同じ長さを維持することが可能になる。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態では、可撓性結合部は、任意の2つの隣接する環状部材の周りの主フレームに可撓性を与える。
[0009]いくつかの実施形態では、管状グラフトは、主フレームの周りの組織の内方成長を防止し、それによって主フレームの可撓性を維持する。
【0009】
[0010]いくつかの実施形態では、管状グラフトは、高密度ポリエチレン(「HDPE」)または延伸ポリテトラフルオロエチレン(「ePTFE」)である。
[0011]いくつかの実施形態では、主フレームおよび末端フレームはどちらもニチノールである。
【0010】
[0012]また、いくつかの実施形態では、主フレームおよび1対の末端フレームの混合フレーム、ならびに管状グラフトを含む管腔内プロテーゼが、本明細書に開示される。主フレームは、複数の物理的に別個の環状部材を含む。各環状部材は、複数のダイヤモンド形セルを形成する複数の「S」字形支柱を含む。1対の末端フレームは、編込み支柱を含む。各末端フレームは、主フレームの第1の端部または第2の端部にそれぞれ位置する第1の端部環状部材または第2の端部環状部材のうちの1つのみに結合された結合端を含む。管状グラフトは、主フレームの上に位置する。管状グラフトは、第1の端部環状部材から第2の端部環状部材へ延びる。
【0011】
[0013]いくつかの実施形態では、各末端フレームは、結合端の反対の位置に非結合端部を含む。非結合端部は、編込み支柱を覆う奇数のタンタルキーを含む。放射線透過法によるタンタルキーの識別を容易にするために、タンタルキーの幅は編込み支柱の幅より大きい。
【0012】
[0014]いくつかの実施形態では、任意の2つの隣接する環状部材が、2つの隣接する環状部材の上の管状グラフトによって提供される可撓性結合部のみによって、ともに結合される。
【0013】
[0015]いくつかの実施形態では、管状グラフトは、主フレームの周りの組織の内方成長を防止し、それによって環状部材の周りの主フレームの可撓性を維持するように構成された高密度ポリエチレン(「HDPE」)である。
【0014】
[0016]いくつかの実施形態では、主フレームの長さLは、等式1
L=ML+(M-1)S(等式1)
によって実現され、上式で、Mは環状部材の数であり、Lはダイヤモンド形セルの長尺寸法であり、Sは等式2
【0015】
【数1】
【0016】
に従って判定され、上式で、Lは、等式3
=πD/N(等式3)
に従って判定されるダイヤモンド形セルの短尺寸法であり、上式で、Dは、管腔内プロテーゼの挿入状態または拡張状態にある主フレームの直径であり、Nは、各環状部材内のダイヤモンド形セルの数である。
【0017】
[0017]また、混合フレーム管腔内プロテーゼのための方法が本明細書に開示されており、この方法は、いくつかの実施形態では、複数の物理的に別個の環状部材を管状グラフトに固定して取り付けることによって、混合フレームの主フレームを形成することであり、各環状部材が、複数のダイヤモンド形セルを形成する複数の「S」字形支柱を含む、形成することと、主フレームの第1の端部で第1の組の支柱を第1の端部環状部材に編み込んで、第1の末端フレームを形成し、主フレームの第2の端部で第2の組の支柱を第2の端部環状部材に編み込んで、第2の末端フレームを形成することによって、混合フレームの1対の末端フレームを形成することと、各組の支柱の端部を、放射線透過法によるその識別に好適なタンタルキーによってともに固定することとを含む。
【0018】
[0018]いくつかの実施形態では、この方法は、主フレームを形成するとき、各環状部材を前の環状部材に対して長手方向に配置してから、管状グラフトに取り付け、それによって管状グラフトによって提供される環状部材間の可撓性結合部の可撓性を保証することをさらに含む。
【0019】
[0019]いくつかの実施形態では、環状部材を管状グラフトに固定して取り付けることは、環状部材を管状グラフトに挿入してから、管状グラフトに取り付けること、またはこの管状グラフトと別の管状グラフトとの間に環状部材を挟んでから、いずれかの管状グラフトに取り付けることを含む。
【0020】
[0020]いくつかの実施形態では、各組の支柱の端部をタンタルキーによってともに固定することは、奇数のタンタルキーが得られるように、各組の支柱の端部をともに固定することを含む。
【0021】
[0021]いくつかの実施形態では、この方法は、奇数のタンタルキーを実現するために、各組の支柱のあらゆる残りの端部をタンタルキーなしでともに固定することをさらに含む。
【0022】
[0022]本明細書に提供する概念の上記その他の特徴は、そのような概念の特定の実施形態をより詳細に開示する添付の図面および以下の説明を考慮すると、当業者にはより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】[0023]いくつかの実施形態による門脈内の管腔内プロテーゼを示す図である。
図2A】[0024]いくつかの実施形態による管腔内プロテーゼの側面図である。
図2B】[0025]管腔内プロテーゼの末端フレームと主フレームの環状部材との間の結合部の周りの図2Aの管腔内プロテーゼの拡張図である。
図3】[0026]いくつかの実施形態による管腔内プロテーゼの主フレームの環状部材を示す図である。
図4】[0027]いくつかの実施形態による管腔内プロテーゼの主フレームの環状部材のダイヤモンド形セルを示す図である。
図5】[0028]いくつかの実施形態による管腔内プロテーゼの主フレームの環状部材の支柱の断面図である。
図6A】[0029]従来技術の管腔内プロテーゼの環状部材における応力分布を示す図である。
図6B】[0030]いくつかの実施形態による管腔内プロテーゼの環状部材における応力分布を示す図である。
図7A】[0031]従来技術の環状部材におけるミーゼス応力のプロットを変位の関数として示す図である。
図7B】[0032]いくつかの実施形態による環状部材におけるミーゼス応力のプロットを変位の関数として示す図である。
図8A】[0033]従来技術の環状部材における応力分布および変位を示す図である。
図8B】[0034]いくつかの実施形態による環状部材における応力分布および変位を示す図である。
図9A】[0035]従来技術の環状部材に対する状態変数のプロットを変位の関数として示す図である。
図9B】[0036]いくつかの実施形態による環状部材に対する状態変数のプロットを変位の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0037]いくつかの特定の実施形態についてより詳細に開示する前に、本明細書に開示する特定の実施形態は、本明細書に提供する概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示する特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離することができ、任意選択で本明細書に開示する複数の他の実施形態のいずれかの特徴と組み合わせることができ、またはそのような特徴を置き換えることができる特徴を有することができることも理解されたい。
【0025】
[0038]本明細書に使用される用語に関して、これらの用語は、いくつかの特定の実施形態について説明することを目的とし、これらの用語は、本明細書に提供する概念の範囲を限定しないことも理解されたい。序数(たとえば、第1、第2、第3など)は、概して、1群の特徴またはステップ内の異なる特徴またはステップを区別または識別するために使用されており、順序または数値に関する限定を与えるものではない。たとえば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴またはステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴またはステップを含む特定の実施形態は、必ずしもこれら3つの特徴またはステップに限定される必要はない。「左」、「右」、「頂部」、「底部」、「前部」、「後部」などの標識は、便宜上使用されており、たとえば何らかの特定の固定の場所、向き、または方向を示唆することを意図したものではない。代わりに、そのようなラベルは、たとえば相対的な場所、向き、または方向を反映するために使用される。文脈上別途明白に指示しない限り、単数形の「a」、「an」、および「the」は、複数の参照も含む。
【0026】
[0039]たとえば本明細書に開示するカテーテルの「近位」、「近位部分」、または「近位端部」は、カテーテルが患者に使用されるときに臨床医付近に位置することが意図されたカテーテルの部分を含む。同様に、たとえばカテーテルの「近位長さ」は、カテーテルが患者に使用されるときに臨床医付近に位置することが意図されたカテーテルの長さを含む。たとえばカテーテルの「近位端」は、カテーテルが患者に使用されるときに臨床医付近に位置することが意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの近位部分、近位端部、または近位長さは、カテーテルの近位端を含むことができるが、カテーテルの近位部分、近位端部、または近位長さは、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、文脈上別途示唆しない限り、カテーテルの近位部分、近位端部、または近位長さは、カテーテルの末端部分または末端長さではない。
【0027】
[0040]たとえば本明細書に開示するカテーテルの「遠位」、「遠位部分」、または「遠位端部」は、カテーテルが患者に使用されるときに患者付近または患者内に位置することが意図されたカテーテルの部分を含む。同様に、たとえばカテーテルの「遠位長さ」は、カテーテルが患者に使用されるときに患者付近または患者内に位置することが意図されたカテーテルの長さを含む。たとえばカテーテルの「遠位端」は、カテーテルが患者に使用されるときに患者付近または患者内に位置することが意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの遠位部分、遠位端部、または遠位長さは、カテーテルの遠位端を含むことができるが、カテーテルの遠位部分、遠位端部、または遠位長さは、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈上別途示唆しない限り、カテーテルの遠位部分、遠位端部、または遠位長さは、カテーテルの末端部分または末端長さではない。
【0028】
[0041]別途定義しない限り、本明細書に使用されるすべての技術的および科学的な用語は、当業者であれば一般に理解されるものと同じ意味を有する。
[0042]健康な人の場合、胃、食道、または腸から流れる血液はまず、肝臓を通る。たとえば肝障害を患っている不健康な人の場合、血流を制限する障害物が存在する可能性があり、したがって血液が肝臓を容易に流れることができない。そのような状態は、門脈圧亢進症として知られている。門脈圧亢進症の一般的な原因には、アルコールの過剰摂取、肝臓から心臓へ流れる静脈中の血栓、肝臓内の過剰な鉄(たとえば、ヘモクロマトーシス)、B型肝炎、またはC型肝炎が含まれる。門脈圧亢進症が生じると、血流を制限する障害物により門脈内の圧力が上昇し、門脈の破裂および深刻な出血を引き起こす可能性がある。門脈圧亢進症の患者はまた、胃、食道、もしくは腸の静脈からの出血(たとえば、静脈瘤出血)、腹腔内の体液の貯留(たとえば、腹水)、または胸腔内の体液の貯留(たとえば、水胸)を有している可能性がある。少なくとも門脈圧亢進症を治療する管腔内プロテーゼおよびその方法が、本明細書に開示される。
【0029】
[0043]図1は、いくつかの実施形態による肝臓Lへ血液を運ぶ門脈PV内の管腔内プロテーゼ100または経頸静脈肝内門脈体循環シャント(「TIPS」)100を示す。経皮的カテーテル送達システムを用いた配置処置で臨床医が門脈PV内に配置することができる管腔内プロテーゼ100は、血液が血流を制限する障害物によって妨げられることなく肝臓を容易に流れることができるように、門脈PVの開存性を回復する。
【0030】
[0044]図2Aは、いくつかの実施形態による管腔内プロテーゼ100の側面図を示し、図2Bは、管腔内プロテーゼ100の末端フレーム120と主フレーム110の環状部材112との間の編込み結合部125の周りの管腔内プロテーゼ100の拡張図を示す。図3は、いくつかの実施形態による主フレーム110の環状部材112を示す。図4は、いくつかの実施形態による環状部材112のダイヤモンド形セル114を示す。図5は、いくつかの実施形態による環状部材112の支柱116の断面図を示す。
【0031】
[0045]図2Aおよび図2Bに示すように、管腔内プロテーゼ100は、本明細書にさらに詳細に各々説明する主フレーム110および末端フレーム120の混合フレーム、ならびに主フレーム110の上の管状グラフト130を含む。図2Aおよび図2Bには示されていないが、管腔内プロテーゼ100は、患者の血管構造を通って門脈PVへ管腔内プロテーゼ100を前進させるための挿入状態または圧縮状態を含む。管腔内プロテーゼ100はまた、門脈PV内に管腔内プロテーゼ100を配置するための拡張状態を含む。管腔内プロテーゼ100は、それ自体が挿入状態から拡張状態へ拡張することができることから、自己拡張性とすることができる。
【0032】
[0046]主フレーム110は、たとえば互いから長手方向に隔置されたニチノールの複数の環状部材112を含み、またはそのような複数の環状部材112から形成される。たとえば、第1の端部環状部材112aは、主フレーム110の第1の端部110aに位置し、第2の端部環状部材112bは、主フレーム110の第2の端部110bに位置する。
【0033】
[0047]各環状部材112は、複数のダイヤモンド形セル114を含み、ダイヤモンド形セル114のうちの1つが図4に示されている。ダイヤモンド形セル114は、長尺寸法Lおよび短尺寸法Lに関して変動することができる。図3に示す環状部材112で、ダイヤモンド形セル114は、短尺寸法Lに沿った頂点によってともに接合されて、環状部材112を形成する。主フレーム110内の環状部材112の長手方向の間隔は、一部には、どの寸法が管腔内プロテーゼ100に対して長手方向であるかに応じて、ダイヤモンド形セル114の長尺寸法Lまたは短尺寸法Lによって判定される。
【0034】
[0048]各環状部材112はまた、ダイヤモンド形セル114を形成する複数の「S」字形支柱116を含む。図5に示すように、各「S」字形支柱116は、2つの平行な弧R1およびR2ならびに2つの多項式曲線R3およびR4によって囲まれた断面形状を含む。各「S」字形支柱116に対して、平行な弧R2は凹状外面を提供し、平行な弧R1は凹状内面を提供する。「S」字形支柱116の凹状外面は、門脈PVの管腔内面に接触するための可能な限り大きい表面を提供する。
【0035】
[0049]ダイヤモンド形セル114を形成する「S」字形支柱116に対して、第1の「S」字形支柱116aが、それぞれ中間点および終端で第2の「S」字形支柱116bの先端および中間点に接合されて、これらの間にダイヤモンド形セル114を形成する。上記したように複数のそのような「S」字形支柱116を接合することで、図3の環状部材112に対して示す複数のダイヤモンド形セル114が得られる。この場合も、ダイヤモンド形セル114は、長尺寸法Lおよび短尺寸法Lとともに変動することができる。これは、「S」字形支柱116が圧縮されまたは細長くされる程度に従って変動する。たとえば、比較的圧縮された「S」字形支柱116は、図4のダイヤモンド形セル114を提供することができ、ダイヤモンド形セル114の長尺寸法Lは、ダイヤモンド形セル114の短尺寸法Lより大きい。
【0036】
[0050]末端フレーム120は、たとえばニチノールの編込み支柱122を含み、またはそのような編込み支柱122から形成される。末端フレーム120は、結合端124と、結合端124の反対の位置にある非結合端部126とを含み、これにより移動なく門脈PV内での管腔内プロテーゼ100の長期配置が可能になる。末端フレーム120の結合端124は、それぞれ主フレーム110の第1の端部110aまたは第2の端部110bにおいて、編込み結合部125内の第1の端部環状部材112aまたは第2の端部環状部材112bのうちの少なくとも1つに編込みによって結合される。編込み結合部125は、第1の端部環状部材112aまたは第2の端部環状部材112b内への編込み支柱122の延長であり、それにより管腔内プロテーゼ100の可撓性を維持しながら、管腔内プロテーゼ100に崩壊防止強度を提供する。図2Aに示すように、管腔内プロテーゼ100内に第2の末端フレーム120が存在するとき、1対の末端フレーム120のうちの第2の末端フレーム120が、第1の端部環状部材112aまたは第2の端部環状部材112bのうちの他方に編込みによって結合される。第2の末端フレーム120は、第1の末端フレーム120と同じとすることができ、またはたとえば軸方向の長さもしくはコニシティに関して異なることができる。ともかく、管状グラフト130のない2つの末端フレーム120を有することで、管腔内プロテーゼ100が門脈PVに配置されたとき、門脈PVを「覆う」ことが防止される。
【0037】
[0051]管腔内プロテーゼ100の挿入状態または拡張状態で、末端フレーム120の非結合端部126の直径は、主フレーム110および末端フレーム120の結合端124のどちらの直径よりも大きい。末端フレーム120の非結合端部126は、編込み支柱122または編込み支柱122の固定端をともに覆うタンタルキー128などの複数のX線不透過キー128を含むことができる。複数のタンタルキー128は、3つ、5つ、7つ、または9つのタンタルキー128などの集まりより大きい奇数のタンタルキー128とすることができる。各タンタルキー128の幅は、各タンタルキー128が覆う編込み支柱122のいずれか1つの幅より大きい。これにより、X線透視法などの放射線透過法によるタンタルキー128の識別が容易になる。図2Aに示すように、第2の末端フレーム120が管腔内プロテーゼ100内に存在するとき、1対の末端フレーム120のうちの第2の末端フレーム120は、タンタルキー128を同様に含むことができ、それによって臨床医が放射線透過法による管腔内プロテーゼ100の位置決めを改善することが可能になる。
【0038】
[0052]管状グラフト130は、主フレーム110の少なくとも大部分の上に位置し、主フレーム110の大部分の下に位置し、または主フレーム110の大部分が、1対の同心円状の管状グラフト130間に挟まれる。上述した管状グラフト130の任意の実施形態が、最高でダイヤモンド形セル114の頂点まで、最高で編込み結合部125まで、または編込み結合部125を越えて、最高で末端フレーム120の結合端124の一部分までなど、第1の端部環状部材112aから第2の端部環状部材112bへ延びることができる。
【0039】
[0053]任意の2つの隣接する環状部材112は、図2Aおよび図2Bに示すように、2つの隣接する環状部材112間に管状グラフト130によって提供される可撓性結合部115のみによって、ともに可撓的に結合される。しかし、管状グラフト130に固定して取り付けられたそのような隣接する環状部材112は、その他の場所は互いから物理的に別個であり、切り離されている。環状部材112間の複数の可撓性結合部115は、環状部材112の周りの主フレーム110に可撓性を与える。環状部材112の周りの可撓性結合部115により、管腔内プロテーゼ100が挿入状態にあるか、それとも拡張状態にあるかにかかわらず、管腔内プロテーゼ100が同じ長さを維持することが可能になる。比較的高い可撓度により、管腔内プロテーゼ100に対する疲労に基づく損傷、管腔内プロテーゼ100の恒久的な変形、または管腔内プロテーゼ100の断面積の変化をほとんどまたはまったく生じることなく、周辺の肝臓組織の動きに対応する。
【0040】
[0054]管状グラフト130は、高密度ポリエチレン(「HDPE」)または延伸ポリテトラフルオロエチレン(「ePTFE」)などの医学的に許容できるポリマーとすることができる。そのような管状グラフト130は、主フレーム110の周りの組織の内方成長を防止し、それによって主フレーム110の可撓性を維持する。
【0041】
[0055]上述した説明を考慮して主フレーム110に再び言及すると、主フレーム110の長さLは、等式1
L=ML+(M-1)S(等式1)
によって実現され、上式で、Mは環状部材112の数であり、Lはダイヤモンド形セル114の長尺寸法であり、Sは等式2
【0042】
【数2】
【0043】
に従って判定され、上式で、Lは、等式3
=πD/N(等式3)
に従って判定されるダイヤモンド形セル114の短尺寸法であり、上式で、Dは、管腔内プロテーゼ100の挿入状態または拡張状態にある主フレーム110の直径であり、Nは、各環状部材112内のダイヤモンド形セル114の数である。
【0044】
[0056]図6Aは、従来技術の管腔内プロテーゼの環状部材における応力分布を示し、図6Bは、いくつかの実施形態による管腔内プロテーゼ100の環状部材112における応力分布を示す。図示のように、各環状部材の直径を1mm低減させるために、径方向抵抗力が加えられたとき、従来技術の環状部材は、従来技術の環状部材全体にわたって、環状部材112より大きい応力を受ける。
【0045】
[0057]図7Aは、従来技術の環状部材におけるミーゼス応力のプロットを変位の関数として示し、図7Bは、いくつかの実施形態による環状部材112のミーゼス応力のプロットを変位の関数として示す。図示のように、従来技術の環状部材は、従来技術の環状部材の各端部で異なる応力を受け、環状部材112は、環状部材112の各端部で同じ応力を受ける。
【0046】
[0058]図8Aは、径方向負荷をかける従来技術の環状部材における応力分布および変位を示し、図8Bは、いくつかの実施形態による同じ径方向負荷を受ける環状部材112に対する応力分布および変位を示す。加えて、図9Aは、上述した径方向負荷を受ける従来技術の環状部材に対する状態変数p0のプロットを変位の関数として示し、図9Bは、いくつかの実施形態による上述した径方向負荷を受ける環状部材112に対する状態変数p0のプロットを変位の関数として示す。図示のように、従来技術の環状部材は、従来技術の環状部材の各端部で異なる径方向距離だけ進み、環状部材112は、環状部材112の各端部で類似の径方向距離だけ進む。
【0047】
[0059]混合フレーム管腔内プロテーゼ100を作製する方法は、物理的に別個の環状部材112を管状グラフト130に固定して取り付けることによって、混合フレームの主フレーム110を形成することと、主フレーム110の第1の端部110aで第1の組の支柱122を第1の端部環状部材112aに編み込んで、第1の末端フレーム120を形成し、主フレーム110の第2の端部110bで第2の組の支柱122を第2の端部環状部材112bに編み込んで、第2の末端フレーム120を形成することによって、図2Aおよび図2Bに示す混合フレームの1対の末端フレーム120を形成することと、各組の支柱122の端部をタンタルキー128によってともに固定することであり、それにより管腔内プロテーゼ100が放射線透過法による識別にとって好適になる、固定することとを含む。
【0048】
[0060]この方法は、主フレーム110を形成するとき、各環状部材112を前の環状部材112に対して長手方向に配置してから、管状グラフト130に取り付け、それによって管状グラフト130によって提供される環状部材112間の可撓性結合部115の可撓性を保証することをさらに含むことができる。
【0049】
[0061]環状部材112を管状グラフト130に固定して取り付けることは、環状部材112を管状グラフト130に挿入してから、管状グラフト130に取り付けること、またはこの管状グラフト130と別の管状グラフト130との間に環状部材112を挟んでから、いずれかの管状グラフト130に取り付けることを含む。
【0050】
[0062]各組の支柱122の端部をタンタルキー128によってともに固定することは、奇数のタンタルキー128が得られるように、各組の支柱122の端部をともに固定することを含む。
【0051】
[0063]この方法は、奇数のタンタルキー128を実現するために、各組の支柱122のあらゆる残りの端部をタンタルキー128なしでともに固定することをさらに含むことができる。
【0052】
[0064]いくつかの特定の実施形態について本明細書に開示し、特定の実施形態についてある程度詳細に開示したが、その意図は、特定の実施形態が本明細書に提供する概念の範囲を限定することではない。追加の適用形態および/または修正形態も、当業者であれば考えることができ、より広い態様では、これらの適用形態および/または修正形態も同様に包含される。したがって、本明細書に提供する概念の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示する特定の実施形態から逸脱することができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【国際調査報告】