(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】合成植物油及びこれを含む環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C10M 177/00 20060101AFI20220413BHJP
C10M 137/08 20060101ALI20220413BHJP
C10N 70/00 20060101ALN20220413BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220413BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20220413BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20220413BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20220413BHJP
【FI】
C10M177/00 ZAB
C10M137/08
C10N70:00
C10N30:06
C10N30:10
C10N30:08
C10N40:08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545291
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2021001135
(87)【国際公開番号】W WO2021154004
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0012105
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0071692
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521341499
【氏名又は名称】ハンバル インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】キム クァン スン
(72)【発明者】
【氏名】リー ドン チョオン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヨン ウク
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BH05C
4H104DA06R
4H104EB08
4H104EB09
4H104JA01
4H104LA03
4H104LA04
4H104LA05
4H104PA05
(57)【要約】
本発明は、合成植物油及びこれを含む環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物及びその製造方法に関し、無触媒及び無水洗工程である、グリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法、前記方法で取得した合成植物油であるグリセリン-エステル系潤滑油基油及び前記グリセリン-エステル系潤滑油基油を含む難燃性(自体消化機能を有する)及び潤滑性に優れ、鉱油系の潤滑油対比7~8%の電気消耗量の減少が可能な環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸を含む原料物質及びグリセリンを含む原料物質を反応器に投入するステップ、及び前記反応内で100℃~350℃の反応温度及び不活性ガスの雰囲気でグリセリン-エステルを合成するステップを含み、無触媒及び無水洗工程である、
グリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法。
【請求項2】
前記反応温度は、複数の温度区間を有し、前記不活性ガスの投入量は、合成量10000リットル基準で分当たり投入量が10リットル~1000リットルであり、
前記不活性ガスの投入量は、前記温度区間に応じて調節される、請求項1に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法。
【請求項3】
前記反応温度は、遊離脂肪酸含量(FFA)の50%減量時に50℃の温度に上昇し、
前記ガス投入量は、遊離脂肪酸含量(FFA)の50%減量時に50%以上に増量する、請求項1に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法。
【請求項4】
前記グリセリン-エステルを合成するステップは、遊離脂肪酸含量(FFA)が1.0以下又は0.5以下である場合に合成を終了する、請求項1に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法。
【請求項5】
前記反応温度は、100℃~180℃の第1温度区間、200℃~230℃の第2温度区間、及び250℃~350℃の第3温度区間のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法。
【請求項6】
前記脂肪酸を含む原料物質は、天然植物油から抽出され、炭素数10~22の脂肪酸のうち1種以上を含む、請求項1に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法。
【請求項7】
前記グリセリン-エステルは、下記の化式(1)に表示される、請求項1に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法。
【化1】
(ここで、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ炭素数8~20の飽和又は不飽和脂肪酸の残基である)
【請求項8】
天然植物油から抽出され、炭素数10~22の脂肪酸のうち1種以上の脂肪酸を含む原料物質と、グリセリンの反応で形成されたグリセリン-エステルを含む、グリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項9】
前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、100℃~350℃の反応温度及び不活性ガスの雰囲気で、前記脂肪酸を含む原料物質及び前記グリセリンを無触媒条件で反応させ、無水洗工程で取得されたものである、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項10】
前記脂肪酸を含む原料物質において第1脂肪酸対残りの脂肪酸の質量比は、99:1~1:99又は99:1~75:25である、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項11】
前記脂肪酸を含む原料物質は、動粘度が20mm
2/秒以下の低粘度グリセリン-エステル系原料の合成のためには、炭素数10~12の脂肪酸質量比が75重量%以上であり、動粘度が30mm
2/秒以上の高粘度グリセリン-エステル系原料の合成のための炭素数18~20の脂肪酸質量比が70重量%以上である、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項12】
前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、75重量%以上の一価不飽和脂肪酸を含む、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項13】
前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、20重量%以下の多価不飽和脂肪酸を含む、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項14】
前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、75重量%以上の炭素数18の一価不飽和脂肪酸を含むか、又は20重量%以下の炭素数18の多価不飽和脂肪酸を含む、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項15】
前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、遊離脂肪酸(FFA、%)の含量が1.0以下又は0.5以下である、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項16】
前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、動粘度(40℃)が10mm
2/sec~1000mm
2/secである、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【請求項17】
前記グリセリン-エステルは、下記の化式(1)に表示される、請求項8に記載のグリセリン-エステル系潤滑油基油。
【化2】
(ここで、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ炭素数8~20の飽和又は不飽和脂肪酸の残基である)
【請求項18】
グリセリン-エステル系潤滑油基油及び酸化防止剤と極圧及び耐摩耗性添加剤を含み、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、天然植物油から抽出され、炭素数10~22の脂肪酸のうち1種以上の脂肪酸を含む原料物質とグリセリンの反応で形成されたグリセリン-エステルを含む、環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物。
【請求項19】
前記耐荷重及び耐摩耗添加剤は、前記環境親和型-難燃性油圧作動油のうち、0.01重量%~7重量%として含まれ、前記耐荷重及び耐摩耗添加剤は、下記の化式(2)に表現されるリン酸エステルのアミン塩系化合物を含む、請求項18に記載の環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物。
【化3】
(前記化式(2)において、Rは、水素又は炭水1~10アルキル又はアリール型炭化水素化合物であり、Xは、水素又は炭水1~4の炭化水素であり、nは、1~10の整数である)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成植物油及びこれを含む環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業の発展過程において自然環境とヒトに対する親和性の強調とエネルギー低減対策及び装備の安定的な駆動の保障は必須条件であるため、このような条件により能動的に対処できる潤滑油の普及を要求している。しかし、石油精製物が多量用いられる(鉱油型の潤滑油)潤滑油産業(特に、油圧作動油)では極めて難しい課題である。その間に国内及び海外で発明された植物油を基盤とした潤滑油及びグリセリン-エステル(Glycerine-Ester)を用いた発明が報告されている。但し、これらの発明は、植物油そのものを用いたり(特許文献1:韓民国公開特許第1996-0029441号)、様々なアルコールと脂肪酸を使用し、触媒合成法後に水洗処理までつながる(特許文献2:米国特許第6551523号)。
【0003】
植物油そのものを用いた潤滑油で最も困難な事項は、植物油が有している高い不飽和炭化水素の含量による熱と酸化に対する安定度の欠陥を克服できず、不飽和炭化水素の含量を調整するとしても、従来におけるエステル合成法による触媒の使用及びアルカリ物質での水洗処理は、微量の残留物(触媒、アルカリ物質)が残るものが一般的であるため、加水分解の安定性欠陥と異質物形成の極めて大きい悪影響をもたらすため、植物油そのものを用いた環境にやさしい潤滑油の限界事項の発生により商用性が大きくない。
【0004】
これに対して、本発明は、植物油に由来するグリセリン(Glycerin)と脂肪酸(Fatty acid)を用いてグリセリン-エステル(Glycerin-Ester)を合成するが、既存の従来技術に比べて一層改善かつ発展させ、油圧作動油(潤滑油)の使用過程で発生する問題を画期的に改善するだけでなく、油圧作動油としての適用領域の拡大と同時に使用寿命の延長を保障し、工具寿命とエネルギー低減まで満足するための無触媒、無水洗工程によるグリセリンエステル及びこれを含む油圧作動油を提供するための製造工程に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓民国公開特許第1996-0029441号
【特許文献2】米国特許第6551523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題を解決するためのもので、植物由来の脂肪酸とグリセリンを用いて触媒を使用しないながらも、水洗工程も排除した合成工程であって、環境にやさしい植物性グリセリン-エステルを合成できる、グリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明は、本発明に係るグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法によって取得した環境にやさしい植物性グリセリン-エステルを用いて、環境親和型及び難燃性だけでなく、微生物による生分解が可能で人体に対する親和性が良く、設備の駆動においても省エネルギーの効果を有する、難燃性油圧作動油組成物の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明は、前記問題を解決するためのもので、植物由来の脂肪酸とグリセリンを用いて触媒を使用しないながらも、水洗工程も排除した合成工程で環境にやさしい合成植物油である、グリセリン-エステルを含むグリセリン-エステル系潤滑油基油を提供することにある。
【0009】
本発明は、本発明に係る環境にやさしい植物性グリセリン-エステルを用いて環境親和的で難燃性であるだけでなく、微生物による生分解が可能で人体に対する親和性が良く、物性も優秀で産業現場をはじめ設備の駆動においても省エネルギーの効果と、工具寿命の延長、装備駆動の効率性増加と装備消耗品の交換周期の減少は勿論、難燃性であるため火災の危険が少ないことから実質的なコスト低減に寄与することができ、炭素量の排出規制に対応できる環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物を提供することにある。
【0010】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及したものなどにより制限されず、言及されない他の課題は下記の記載によって当該の分野当業者に明らかに理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態により、脂肪酸を含む原料物質及びグリセリンを含む原料物質を反応器に投入するステップ、及び前記反応内で100℃~350℃の反応温度及び不活性ガスの雰囲気でグリセリン-エステルを合成するステップを含み、無触媒及び無水洗工程であるグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法に関する。
【0012】
本発明の一実施形態により、前記反応温度は、複数の温度区間を有し、前記不活性ガスの投入量は、合成量10000リットル基準で分当たり投入量が10リットル~1000リットルであり、前記温度区間に応じて調節されることができる。
【0013】
本発明の一実施形態により、前記反応温度は、遊離脂肪酸含量(FFA)の50%減量時に50℃の温度に上昇し、前記ガス投入量は、遊離脂肪酸含量(FFA)の50%減量時に50%以上に増量することができる。
【0014】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステルを合成するステップは、遊離脂肪酸含量(FFA)が1.0以下又は0.5以下である場合に合成を終了することができる。
【0015】
本発明の一実施形態により、前記反応温度は、100℃~180℃の第1温度区間、200℃~230℃の第2温度区間、及び250℃~350℃の第3温度区間のうち少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
本発明の一実施形態により、前記不活性ガスの投入量は、合成量10000リットルを基準として分当り10リットル~50リットルの第1投入量、50リットル~150リットルの第2投入量、及び150リットル~1000リットルの第3投入量のうち少なくとも1つを含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態により、前記合成工程を行うステップは、常圧(760mmHg)ないし減圧(360mmHg)の圧力で行われることができる。
【0018】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質は、天然植物油から抽出され、炭素数10~22の脂肪酸のうち1種以上を含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質で第1脂肪酸対残りの脂肪酸の質量比は、99:1~1:99又は99:1~75:25であってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、75重量%以上の不飽和脂肪酸を含むことができる。
【0021】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、20重量%以下の多価不飽和脂肪酸を含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、75重量%以上の炭素数18の不飽和脂肪酸を含むか、又は20重量%以下の炭素数18の多価不飽和脂肪酸を含むことができる。
【0023】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステルは、下記の化式(1)に表示されることができる。
【0024】
【0025】
(ここで、R1、R2及びR3は、それぞれ炭素数8~20の飽和又は不飽和脂肪酸の残基である)
本発明の一実施形態により、本発明に係るグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法を用いてグリセリン-エステルを合成するステップ、及び前記グリセリン-エステル及び難燃性添加剤を配合して油圧作動油の組成物を製造するステップを含む難燃性油圧作動油組成物の製造方法に関する。
【0026】
本発明の一実施形態により、前記難燃性添加剤は、前記難燃性油圧作動油のうち0.01重量%~10.0重量%として含まれることができる。
【0027】
本発明の一実施形態により、前記難燃性添加剤は、リン系又はハロゲン系の難燃性添加剤であり、前記リン系又はハロゲン系難燃性添加剤は、トリクレシルホスフェート(Tricresyl Phosphate)、トリブチルホスフェート(Tributyl Phosphate)、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート(Tris(β-chloroethyl)Phosphate)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(Tris(β-chloropropyl)Phosphate)、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート(Tris(dichloropropyl)Phosphate)、トリオクチルホスフェート(Trioctyl Phosphate)、トリフェニルホスフェート(Triphenyl Phosphate)、オクチルジフェニルホスフェート(Octyl diphenyl Phosphate)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(Tris(Isopropylphenyl)Phosphate)及びトリブトキシエチルホスフェート(Tributoxyethyl Phosphate)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0028】
本発明の一実施形態により、前記難燃性油圧作動油は、酸化防止剤、耐荷重及び耐摩耗向上剤、増粘剤、腐食防止剤及び消泡剤からなる群から製造された1種以上の機能性添加剤をさらに含み、前記添加剤はそれぞれ又は全体で前記難燃性油圧作動油のうち0.1重量%~10重量%として含まれてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態により、前記難燃性油圧作動油の動粘度(40℃)が10mm2/sec~200mm2/secであってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は2種以上を含み、2種以上を含んでいる場合に、1つのグリセリン-エステル系潤滑油基油対残りのグリセリン-エステル系潤滑油基油の質量比は、90:10~75:25又は90:10~50:50であってもよい。
【0031】
本発明の一実施形態により、天然植物油から抽出され、炭素数10~22の脂肪酸のうち1種以上の脂肪酸を含む原料物質とグリセリンの反応で形成されたグリセリン-エステルを含むグリセリン-エステル系潤滑油基油に関する。
【0032】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、100℃~350℃の反応温度及び不活性ガスの雰囲気で、前記脂肪酸を含む原料物質及び前記グリセリンを無触媒条件で反応させ、無水洗工程で取得されたものであってもよい。
【0033】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質において第1脂肪酸対残りの脂肪酸の質量比は、99:1~1:99又は99:1~75:25であってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質は、動粘度が20mm2/秒以下の低粘度グリセリン-エステル系原料の合成のためには、炭素数10~12の脂肪酸質量比が75重量%以上であり、動粘度が30mm2/秒以上の高粘度グリセリン-エステル系原料の合成のための炭素数18~20の脂肪酸質量比が70重量%以上であってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、75重量%以上の一価不飽和脂肪酸を含むことができる。
【0036】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、20重量%以下の多価不飽和脂肪酸を含むことができる。
【0037】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち、75重量%以上の炭素数18の一価不飽和脂肪酸を含むか、又は20重量%以下の炭素数18の多価不飽和脂肪酸を含むことができる。
【0038】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、遊離脂肪酸(FFA、%)の含量が1.0以下又は0.5以下であってもよい。
【0039】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、動粘度(40℃)が10mm2/sec~1000mm2/secであってもよい。
【0040】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステルは、下記の化式(1)に表示されることができる。
【0041】
【0042】
(ここで、R1、R2及びR3は、それぞれ炭素数8~20の飽和又は不飽和脂肪酸の残基である)
本発明の一実施形態により、グリセリン-エステル系潤滑油基油及び酸化防止剤と極圧及び耐摩耗性添加剤を含み、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、天然植物油から抽出され、炭素数10~22の脂肪酸のうち1種以上の脂肪酸を含む原料物質とグリセリンの反応で形成されたグリセリン-エステルを含む環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物に関する。
【0043】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、2種以上を含み、2種以上を含んでいる場合に、1つのグリセリン-エステル系潤滑油基油対残りのグリセリン-エステル系潤滑油基油の質量比は、90:10~75:25又は90:10~50:50であってもよい。
【0044】
本発明の一実施形態により、前記難燃性油圧作動油の組成物の動粘度(40℃)は、10mm2/sec~200mm2/secであってもよい。
【0045】
本発明の一実施形態により、前記難燃性添加剤は、前記難燃性油圧作動油の組成物のうち0.01重量%ないし10重量%として含まれてもよい。
【0046】
本発明の一実施形態により、前記難燃性添加剤は、リン系又はハロゲン系難燃性添加剤であり、前記リン系又はハロゲン系難燃性添加剤は、トリクレシルホスフェート(Tricresyl Phosphate)、トリブチルホスフェート(Tributyl Phosphate)、トリス(βクロロエチル)ホスフェート(Tris(βPhosphate)、トリス(βクロロプロピル)ホスフェート(Tris(βPhosphate)、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート(Tris(dichloropropyl)Phosphate)、トリオクチルホスフェート(Trioctyl Phosphate)、トリフェニルホスフェート(Triphenyl Phosphate)、オクチルジフェニルホスフェート(Octyl diphenyl Phosphate)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(Tris(Isopropylphenyl)Phosphate)及びトリブトキシエチルホスフェート(Tributoxyethyl Phosphate)からなる群から選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0047】
本発明の一実施形態により、酸化防止剤、耐荷重及び耐摩耗向上剤、増粘及び粘度指数向上剤、流動点降下剤及び腐食防止剤からなる群から選択された少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0048】
本発明の一実施形態により、前記酸化防止剤は、前記難燃性油圧作動油の組成物のうち0.1重量%~7重量%として含まれてもよい。
【0049】
本発明の一実施形態により、前記酸化防止剤は、フェニルナフチルアミン系化合物、アロマティックアミン系化合物、フェノール系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸エステルの金属塩及び硫黄系化合物からなる群から選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0050】
本発明の一実施形態により、前記増粘及び粘度指数向上剤は、前記難燃性油圧作動油の組成物のうち0.01重量%~5重量%として含まれ、前記増粘及び粘度指数向上剤は、オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート及びエチレンプロピレン共重合体からなる群から選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0051】
本発明の一実施形態により、前記増粘及び粘度指数向上剤の分子量(Mw)は300~10000であってもよい。
【0052】
本発明の一実施形態により、 前記耐荷重及び耐摩耗添加剤は、前記環境親和型-難燃性油圧作動油のうち、0.01重量%~7重量%として含まれ、前記耐荷重及び耐摩耗添加剤は、下記の化式(2)に表現されるリン酸エステルのアミン塩系化合物を含むことができる。
【0053】
【0054】
(前記化式(2)において、Rは、水素又は炭水1~10アルキル又はアリール型炭化水素化合物であり、Xは、水素又は炭水1~4の炭化水素であり、nは、1~10の整数である)
【発明の効果】
【0055】
本発明は、無触媒及び無水洗工程によるグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法を提供し、前記製造方法は、残留触媒や残留アルカリ物質が全くない合成系植物性油脂を合成し、環境にやさしい潤滑油基油及びこれを含む油圧作動油を提供することができる。さらに、本発明は、グリセリン-エステル系潤滑油基油を用いて難燃性(火災に対して危険性が少ない)、潤滑性、熱・酸化安定性及びその他の物性に優れる環境親和型の油圧作動油の組成物を提供することができる。
【0056】
本発明は、無触媒及び無水洗工程によって残留触媒や残留アルカリ物質が極少量又は全くない合成系植物性油脂を合成して環境にやさしい潤滑油基油を提供し、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油を用いて難燃性(火災に対して危険性が少ない)、潤滑性、熱・酸化安定性及びその他の物性に優れる環境親和型の油圧作動油の組成物を提供することができる。
【0057】
本発明は、装備に使用される油圧作動油が微生物による生分解可能で、人体に対する親和性が良く、装備が駆動している間に消耗する電気使用量に対して縮小可能であり、炭素の排出権に安定的に役に立つようサポートし、エネルギー低減によるコスト低減だけでなく、設備の駆動にも優れ、難燃性付与により火災の危険を画期的に低減させる難燃性油圧作動油の組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の一実施形態により、本発明の実施形態で製造された油圧作動油、鉱油系の油圧作動油及び市販の油圧作動油のSRV摩擦係数の測定結果を示しす。
【
図2】
図2Aは本発明の一実施形態により、本発明に係る実施形態で製造された油圧作動油組成物の噴霧火災試験による難燃性の比較結果を示す。
図2Bは本発明の一実施形態により、市販の鉱油系油圧作動油の噴霧火災試験による難燃性結果を示す。
【
図3】本発明の一実施形態により、本発明の実施形態で製造された油圧作動油の組成物と市販の鉱油系油圧作動油の使用による電気消耗量の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、添付する図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の説明において、関連する公知機能又は構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。また、本明細書で使用される用語は、本発明の好適な実施形態を適切に表現するために使用される用語として、これはユーザ、運用者の意図又は本発明が属する分野の慣例などによって変わり得る。従って、本用語に対する定義は、本明細書全般にわたった内容に基づいて下されなければならないのであろう。各図面にて提示された同じ参照符号は同じ部材を示す。
【0060】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0061】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0062】
本発明は、グリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法に関し、より具体的に、天然植物油から抽出した脂肪酸(Fatty Acid)とグリセリンを用いて無触媒及び無水洗工程による脂肪酸のグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法を提供することにある。
【0063】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法は、脂肪酸を含む原料物質及びグリセリンを含む原料物質を反応器に投入するステップ、及び前記反応内でグリセリン-エステルを合成するステップを含む。
【0064】
本発明の一実施形態により、前記グリセリンを含む原料物質でグリセリンは、本発明の技術分野で一般に知られている物質であり、例えば、バイオディーゼルの生産のように様々な工業的な工程で副産物として得られたり、化粧品及び医薬品に至るまで様々な分野に適用されてもよい。前記反応器に投入するステップにおいて、グリセリンは、優れた合成結果物のために95%以上の純度であってもよい。
【0065】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質で脂肪酸は、天然植物油から抽出されたものであり、炭素数10~22の脂肪酸のうち1種以上を含むことができる。前記脂肪酸は、飽和及び/又は不飽和(一価不飽和及び多価不飽和)脂肪酸を含み、前記不飽和脂肪酸は、シス及び/又はトランス不飽和脂肪酸を含んでもよい。
【0066】
より具体的に、前記脂肪酸のうち不飽和脂肪酸は、グリセリン-エステル系潤滑油基油を提供できるものでれば制限されることなく適用可能であり、例えば、ペンタデカン酸(Pentadecanoic acid)、アラキドン酸(Arachidonic acid)、ミリストレイン酸(Myristoleic acid)、パルミトレイン酸(Palmitoleic acid)、サピエン酸(Sapienic acid)、エライジン酸(Elaidic acid)、バクセン酸(Vaccenic acid);オレイン酸(Oleic acid、一価不飽和オメガ-9脂肪酸)、イコセン酸(Eicosenoic acid、一価不飽和オメガ-9脂肪酸)、エルカ酸(Erucic acid、一価不飽和オメガ-9脂肪酸)などのオメガ-9-脂肪酸(Omega-9 fatty acid);アラキドン酸(Arachidonic acid、多価不飽和オメガ-6)、エイコサトリエン酸(オメガ6脂肪酸、Eicosatrienoic acid、11、14、17-Eicosatrienoic acid)リノール酸(Linoleic acid、多価不飽和オメガ-6脂肪酸)、リノレイド酸(Linoelaidic acid、オメガ-6トランス脂肪酸)などのオメガ-6脂肪酸(Omega-6 fatty acid);及びオメガ-7脂肪酸(Omega-7fatty acid、不飽和)などを含んでもよい。
【0067】
前記脂肪酸を含む原料物質は、潤滑油基油として使用するために様々な動粘度(KinematicViscocity)等級を取得するために、炭素数10~炭素数22の脂肪酸の全てが単独又は混合して含むことができる。即ち、前記脂肪酸を含む原料物質及びグリセリンを含む原料物質は、潤滑油基油の所望する動粘度を取得するために、グリセリン及び脂肪酸の含量比及び/又は脂肪酸の種類及び/又は構成(例えば、単独又は混合)を調節して反応器内に投入される。
【0068】
例えば、前記脂肪酸を含む原料物質が2種以上の脂肪酸を含む場合、第1脂肪酸対残りの脂肪酸の質量比は、99:1~1:99;99:1~75:25;又は、90:10~80:20であってもよい。例えば、動粘度が20mm2/秒以下の低粘度グリセリン-エステル系原料の合成のためには、炭素数10~12の脂肪酸質量比が75重量%以上含んでもよく、動粘度が30mm2/秒以上の高粘度グリセリン-エステル系原料の合成のためには、炭素数18~20の脂肪酸質量比が70重量%以上含んでもよい。前記質量比を調節して熱及び酸化に対する安定性、潤滑油基油の品質及び製造費用などを改善させることができる。
【0069】
例えば、前記脂肪酸を含む原料物質は、熱と酸化に対する安定性を保持し、品質の優れた潤滑油基油を提供するために、前記脂肪酸を含む原料物質のうち75重量%以上又は75重量%~80重量%の一価不飽和脂肪酸を含んだり、又は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち20重量%以下又は15重量%以下の多価不飽和脂肪酸を含んでもよい。好ましくは、価格が安くて最も効率的な品質の潤滑油基油を取得するために、前記脂肪酸として炭素数18個の脂肪酸(Oleic acid及びLinoleic acid)を用いてもよい。ここで、炭素数18個の脂肪酸総量は、90%を上回るように調整するが、熱と酸化に対して安定性を保持するためにリノール酸(Linoleic acid)含量は15%以下であってもよい。
【0070】
前記グリセリン対前記脂肪酸を含む原料物質は、9.5:90.5~16.0:84の比率(質量比)で反応器内に投入されてもよい。
【0071】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステルを合成するステップは、反応器内にグリセリンを含む原料物質及び前記脂肪酸を含む原料物質を投入し、前記反応内で100℃~350℃の反応温度及び不活性ガス(Inert Gas)の雰囲気でグリセリン-エステルを合成するステップを行うことができる。
【0072】
前記不活性ガスとして、ヘリウム(He)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、及びキセノン(Xe)からなる群から選択された1種以上を含み、混合ガスの構成時に窒素対残りのガスは1:1~1:0.1の流れ速度(又は、投入量)に供給される。前記不活性ガスは、原料の投入以前に反応器内に満たされたり流れてもよく、合成中で継続的に反応器内に供給される。
【0073】
前記不活性ガスの投入量は、合成量10000リットル基準に分当り10リットル~1000リットルであり、下記に提示した温度区間に応じて調節される。
【0074】
前記グリセリン-エステルを合成するステップは、潤滑油基油の収率向上と合成時間を低減するために複数の温度区間を設定して合成を行い、前記複数の温度区間に応じて不活性ガスの投入量も調節できる。前記複数の温度上昇区間は、合成進行の程度を確認して決定し、前記合成進行の程度は、遊離脂肪酸含量(FFA)で決定してもよい。即ち、前記反応温度は、遊離脂肪酸含量(FFA)の50%の減量時に10℃以上、30℃以上、50℃以上、好ましくは、50℃の温度で上昇し、前記ガス投入量は、遊離脂肪酸含量(FFA)の50%の減量時に50%以上に増量する。前記グリセリン-エステルを合成するステップは、遊離脂肪酸含量(FFA)が1.0以下又は0.5以下である場合に合成が終了される。
【0075】
例えば、前記反応温度は、100℃~180℃の第1温度区間、200℃~230℃の第2温度区間、及び250℃~350℃の第3温度区間のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0076】
例えば、前記不活性ガスの投入量は、合成量10000リットル基準に分当り10リットル~50リットルの第1投入量、50リットル~150リットルの第2投入量及び150リットル~1000リットルの第3投入量のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0077】
前記合成工程を行うステップは、常圧(760mmHg)ないし減圧(350mmHg)の圧力で行われてもよい。
【0078】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油の遊離脂肪酸含量(FFA)は、1.0以下又は0.5以下であってもよく、動粘度は10mm2/sec以上又は10mm2/sec~200mm2/secであってもよい。
【0079】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、下記の化式(1)のように表示されるトリグリセリド(Triglyceride)形態のグリセリン-エステルを含むことができる。
【0080】
【0081】
ここで、R1、R2及びR3は、それぞれ炭素数8~20の飽和又は不飽和脂肪酸の残基である。
【0082】
本発明は、本発明に係るグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法又はグリセリン-エステル系潤滑油基油を用いて難燃性油圧作動油組成物の製造方法を提供することができる。即ち、前記難燃性油圧作動油組成物の製造方法は、微生物によって分解可能で、人と装備に対する親和性を強調した植物性油脂によるグリセリン-エステル系潤滑油基油、又は、無触媒及び無水洗工程によるグリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法を用いて環境親和型及び難燃性油圧作動油の組成物を提供することができる。
【0083】
本発明の一実施形態により、前記難燃性油圧作動油組成物の製造方法は、本発明に係るグリセリン-エステルを合成するステップ、及び前記グリセリン-エステル系潤滑油基油及び難燃性添加剤を配合して油圧作動油の組成物を製造するステップを含む。
【0084】
本発明の一実施形態により、前記油圧作動油の組成物を製造するステップにおいて、グリセリン-エステル系潤滑油基油は、単独又は2種以上の混合構成で含まれてもよく、前記2種以上を含む場合、1つのグリセリン-エステル系潤滑油基油対残りのグリセリン-エステル系潤滑油基油の質量比は、90:10~75:25又は90:10~50:50であってもよい。前記質量比の範囲内に含まれれば、難燃性油圧作動油の品質改善と生分解性を向上させ、より効率的な環境にやさしい難燃性油圧作動油を提供することができる。
【0085】
本発明の一実施形態により、前記難燃性添加剤は、前記難燃性添加剤は、前記難燃性油圧作動油のうち0.01重量%~10.0重量%として含まれてもよく、前記範囲内に含まれれば、難燃性の向上によりスムーズに火災の危険に対応することができるため、好ましい。
【0086】
前記難燃性添加剤は、リン系又はハロゲン系の難燃性添加剤であり、例えば、トリクレシルホスフェート(Tricresyl Phosphate)、トリブチルホスフェート(Tributyl Phosphate)、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート(Tris(β-chloroethyl)Phosphate)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(Tris(β-chloropropyl)Phosphate)、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート(Tris(dichloropropyl)Phosphate)、トリオクチルホスフェート(Trioctyl Phosphate)、トリフェニルホスフェート(Triphenyl Phosphate)、オクチルジフェニルホスフェート(Octyl diphenyl Phosphate)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(Tris(Isopropylphenyl)Phosphate)及びトリブトキシエチルホスフェート(Tributoxyethyl Phosphate)からなる群から選択された1種以上を含んでもよい。
【0087】
本発明の一実施形態により、油圧作動油を製造するステップにおいて、酸化防止剤、耐荷重及び耐摩耗向上剤、増粘剤、腐食防止剤、及び消泡剤からなる群から製造された1種以上の機能性添加剤をさらに添加してもよい。
【0088】
前記機能性添加剤は、それぞれ又は全体として前記難燃性油圧作動油のうち0.1重量%~10重量%として含まれてもよい。前記添加剤の含量は、グリセリン-エステル系潤滑油基油と適切な組合せと、添加剤による難燃性油圧作動油の品質低下、変色、生分解性の低下、粘度降下などのの発生を考慮して適切な含量で添加される。
【0089】
前記酸化防止剤は、フェニルナフチルアミン系、アルキル化ジフェニルアミンなどのアロマティックアミン系、フェノール系、リン酸エステル系、及びリン酸エステルの金属塩(Zn-DTP)及び硫黄系化合物からなる群から選択された1種以上を含むことができるが、これらに制限されることはない。好ましくは、フェニルナフチルアミン系であってもよい。
【0090】
前記酸化防止剤は、難燃性油圧作動油のうち0.01重量%~10.0重量%、好ましくは、0.3重量%~4.0重量%として含まれてもよい。前記範囲内に含まれれば、適切な酸化防止効果を取得し、添加量の増加による環境親和性(生分解性及び魚毒性)の阻害などの問題が生じることを防止又は低下することができる。
【0091】
前記増粘剤は、粘度向上剤及び粘度指数向上剤であり、スチレン-ブタジエン共重合体(Styrene-Butadien Co-polymer)、スチレンマレイン酸エステル共重合体などのスチレン-炭化水素ポリマー(Styrene Hydrocarbon polymer)などのオレフィン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン及びポリメタクリレート、ポリアクリレート、エチレンプロピレン共重合体からなる群から選択された1種以上を含むことができるが、これらに制限されることはない。
【0092】
前記増粘剤の分子量(Mw)は難燃性及び環境親和性などを考慮して、300~10000であってもよい。前記増粘剤は、前記難燃性油圧作動油のうち0.01重量%~10.0重量%として含まれてもよい。前記範囲内に含まれれば、適切な粘度の油圧作動油を提供することができる。
【0093】
前記耐摩耗添加剤は、リン酸エステルのアミン塩、アリールホスフェート系、リン酸エステルの金属塩、及び硫化物の添加剤のうち1種以上を含むことができるが、これらに制限されることはない。好ましくは、リン酸エステルのアミン塩であってもよい。
【0094】
前記耐摩耗添加剤は、前記難燃性油圧作動油のうち0.01重量%~7.0重量%又は0.1重量%~2.0重量%であってもよい。前記範囲内に含まれれば、油圧装備が可動する間にシリンダ、ポンプなどの過剰な摩耗を防止して装備の寿命を向上させ、摩耗による過熱発生を低下することができる。
【0095】
必要に応じて、腐食防止剤(Azole系の非鉄腐食防止剤、コハク酸エステル型(Succinic Ester type)の鉄系の腐食防止剤、スルホン酸塩(Metal-Sulfonate)系の腐食防止剤など)、消泡剤(シリコン型(Silicon type)、アルコール型(Alcohol type)、アミン型(Amine type)、ポリメタクリレートなどの消泡剤)及びその他の改質材などをさらに添加し、これらの含量は、本発明の目的を脱しなければ適切な含量及び各成分間の組み合わせを考慮して添加されることができる。
【0096】
本発明は、グリセリン-エステル系潤滑油基油に関し、本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、天然植物油から抽出した脂肪酸(Fatty Acid)とグリセリン(Glycerin)を用いて、無触媒及び無水洗工程を介して取得した脂肪酸のグリセリン-エステル系潤滑油基油である。
【0097】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法は、植物油から由来するグリセリンと脂肪酸を用いて、合成植物油としてグリセリン-エステル(Glycerin-Ester)を合成し、油圧作動油(潤滑油)の使用過程で発生する問題を画期的に改善するだけではなく、油圧作動油としての適用領域の拡大と同時に、使用寿命の延長を保障して工具寿命とエネルギー低減まで満足するための、無触媒及び無水洗工程によるグリセリンエステルを提供することができる。
【0098】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油の製造方法は、脂肪酸を含む原料物質及びグリセリンを含む原料物質を反応器に投入するステップ、及び前記反応内でグリセリン-エステルを合成するステップを含む。
【0099】
本発明の一実施形態により、前記グリセリンを含む原料物質でグリセリンは、本発明の技術分野で一般に知られた物質であり、例えば、バイオディーゼルの生産のように様々な工業的な工程で副産物として得られたり、化粧品及び医薬品に至るまで様々な分野に適用され得る。前記反応器に投入するステップにおいて、グリセリンは優れた合成結果物のために95%以上の純度であってもよい。
【0100】
本発明の一実施形態により、前記脂肪酸を含む原料物質で脂肪酸は、天然植物油から抽出されたものであり、炭素数10~22の脂肪酸のうち1種以上を含んでもよい。前記脂肪酸は、飽和及び/又は不飽和(一価不飽和及び多価不飽和)脂肪酸を含み、前記不飽和脂肪酸は、シス及び/又はトランス不飽和脂肪酸を含んでもよい。
【0101】
より具体的に、前記脂肪酸のうち不飽和脂肪酸は、グリセリン-エステル系潤滑油基油を提供できるものであれば制限されることなく適用され、例えば、ペンタデカン酸(Pentadecanoic acid)、アラキドン酸(Arachidonic acid)、ミリストレイン酸(Myristoleic acid)、パルミトレイン酸(Palmitoleic acid)、サピエン酸(Sapienic acid)、エライジン酸(Elaidic acid)、バクセン酸(Vaccenic acid);オレイン酸(Oleic acid、一価不飽和オメガ-9脂肪酸)、イコセン酸(Eicosenoic acid、一価不飽和オメガ-9脂肪酸)、エルカ酸(Erucic acid、一価不飽和オメガ-9脂肪酸)などのオメガ-9-脂肪酸(Omega-9 fatty acid);アラキドン酸(Arachidonic acid、多価不飽和オメガ-6)、エイコサトリエン酸(オメガ6脂肪酸、Eicosatrienoic acid、11、14、17-Eicosatrienoic acid)リノール酸(Linoleic acid、多価不飽和オメガ-6脂肪酸)、リノレイド酸(Linoelaidic acid、オメガ-6トランス脂肪酸)などのオメガ-6脂肪酸(Omega-6 fatty acid);及びオメガ-7脂肪酸(Omega-7 fatty acid、不飽和)などを含んでもよい。
【0102】
前記脂肪酸を含む原料物質は、潤滑油基油として使用するため、様々な動粘度(KinematicViscocity)等級を取得するために、炭素数10ないし炭素数22の脂肪酸の全て単独又は混合して含むことができる。即ち、前記脂肪酸を含む原料物質及びグリセリンを含む原料物質は、潤滑油基油の所望する動粘度を得るために、グリセリン及び脂肪酸の含量比及び/又は脂肪酸の種類及び/又は構成(例えば、単独又は混合)を調節して反応器内に投入される。
【0103】
例えば、前記脂肪酸を含む原料物質が2種以上の脂肪酸を含んでいる場合、第1脂肪酸対残りの脂肪酸の質量比は、99:1~1:99;99:1~75:25;又は、90:10~80:20であってもよい。例えば、動粘度が20mm2/秒以下の低粘度グリセリン-エステル系原料を合成するためには、炭素数10~12の脂肪酸質量比が75重量%以上含んでもよく、動粘度が30mm2/秒以上の高粘度グリセリン-エステル系原料を合成するためには、炭素数18~20の脂肪酸質量比が70重量%以上含むことができる。前記質量比を調節して熱及び酸化に対する安定性、潤滑油基油の品質及び製造費用などを改善させることができる。
【0104】
例えば、前記脂肪酸を含む原料物質は、熱と酸化に対する安定性を保持し、品質に優れた潤滑油基油を提供するため、前記脂肪酸を含む原料物質のうち75重量%以上又は75重量%~80重量%の一価不飽和脂肪酸を含むか、又は、前記脂肪酸を含む原料物質のうち20重量%以下又は15重量%以下の多価不飽和脂肪酸を含んでもよい。好ましくは、価格が安くて最も効率的な品質の潤滑油基油を得るために、前記脂肪酸として炭素数18個の脂肪酸(Oleic acid及びLinoleic acid)を用いてもよい。ここで、炭素数18個の脂肪酸総量は、90%を上回るように調整されるが、熱と酸化に対する安定性保持のためにリノール酸(Linoleic acid)含量は15%以下であってもよい。
【0105】
前記グリセリン対前記脂肪酸を含む原料物質は、9.5:90.5~16.0:84の比率(質量比)で反応器内に投入される。
【0106】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステルを合成するステップは、反応器内にグリセリンを含む原料物質及び前記脂肪酸を含む原料物質を投入し、前記反応内で100℃~350℃の反応温度及び不活性ガス(Inert Gas)雰囲気でグリセリン-エステルを合成するステップを行う。
【0107】
前記不活性ガスは、ヘリウム(He)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)及びキセノン(Xe)からなる群から選択された少なくとも1つ以上を含み、混合ガスの構成時に窒素対残りのガスは1:1~1:0.1の流れ速度(又は、投入量)で供給されてもよい。前記不活性ガスは、原料の投入以前に反応器内に満たされたり流れてもよく、合成中において継続的に反応器内に供給されてもよい。
【0108】
前記不活性ガスの投入量は、合成量10000リットル基準に分当り10リットル~1000リットルであり、下記に提示した温度区間に応じて調節される。
【0109】
前記グリセリン-エステルを合成するステップは、潤滑油基油の収率向上と合成時間を低減するために複数の温度区間を設定して合成を行い、前記複数の温度区間に応じて不活性ガスの投入量も調節することができる。前記複数の温度上昇区間は、合成進行の程度を確認して決定し、前記合成進行の程度は、遊離脂肪酸含量(FFA)として決定してもよい。即ち、前記反応温度は、遊離脂肪酸含量(FFA)の50%減量時に10℃以上;30℃以上;50℃以上;好ましくは、50℃の温度に上昇し、前記ガス投入量は、遊離脂肪酸含量(FFA)の50%減量時に50%以上に増量してもよい。前記グリセリン-エステルを合成するステップは、遊離脂肪酸含量(FFA、%)が1.0以下又は0.5以下である場合に合成を終了する。
【0110】
例えば前記反応温度は、100℃~180℃の第1温度区間、200℃~230℃の第2温度区間及び250℃~350℃の第3温度区間のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0111】
例えば、前記不活性ガスの投入量は、合成量10000リットル基準に分当り10リットル~50リットルの第1投入量、50リットル~150リットルの第2投入量及び150リットル~1000リットルの第3投入量のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0112】
前記合成工程を行うステップは、常圧(760mmHg)ないし減圧(350mmHg)圧力で行われてもよい。
【0113】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油の遊離脂肪酸含量(FFA、%)は、1.0以下又は0.5以下であってもよく、動粘度は10mm2/sec以上又は10mm2/sec~200mm2/secであってもよい。
【0114】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、下記の化式(1)に表示されるトリグリセリド(Triglyceride)形態のグリセリン-エステルを含んでもよい。
【0115】
【0116】
ここで、R1、R2及びR3は、それぞれ、炭素数8~20の飽和又は不飽和脂肪酸の残基である。
【0117】
本発明は、本発明に係るグリセリン-エステル系潤滑油基油を含む難燃性油圧作動油の組成物に関し、本発明の一実施形態により、前記難燃性油圧作動油の組成物は、環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物であり、微生物によって分解可能であり、人と装備に対する親和性を強調した植物性油脂によるグリセリン-エステル系潤滑油基油又は無触媒及び無水洗工程によるグリセリン-エステル系潤滑油基油を用いて、微生物による生分解が可能であり、人体に対する親和性が優れるだけではなく、物性も優秀で産業現場をはじめ、設備の駆動でも省エネルギーの効果と、工具寿命の延長、装備駆動の効率性の増加と装備消耗品の切り替え周期の減少は勿論、難燃性であるため火災の危険を低下させることができる。
【0118】
本発明の一実施形態により、前記難燃性油圧作動油の組成物は、グリセリン-エステル系潤滑油基油及び難燃性添加剤を含み、機能性添加剤をさらに含んでもよい。
【0119】
本発明の一実施形態により、前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、単独又は2種以上の混合構成として含まれてもよく、前記2種以上を含む場合に、1つのグリセリン-エステル系潤滑油基油対残りのグリセリン-エステル系潤滑油基油の質量比は、90:10~75:25又は90:10~50:50であってもよい。前記質量比の範囲内に含まれれば、難燃性油圧作動油の組成物の品質改善と生分解性を向上させ、より効率的な環境親和型-難燃性油圧作動油の組成物を提供することができる。
【0120】
前記グリセリン-エステル系潤滑油基油は、前記難燃性油圧作動油の組成物のうち50重量%以上;60重量%以上;80重量%以上;90重量%以上;又は、90重量%~100重量%未満として含むことができる。
【0121】
本発明の一実施形態により、前記難燃性添加剤は、前記難燃性油圧作動油の組成物のうち0.01重量%~10.0重量%として含まれてもよく、前記範囲内に含まれれば、難燃性の向上によりスムーズに火災の危険に対応することができるため、好ましい。
【0122】
前記難燃性添加剤は、リン系又はハロゲン系難燃性添加剤であり、前記リン系又はハロゲン系難燃性添加剤は、トリクレシルホスフェート(Tricresyl Phosphate)、トリブチルホスフェート(Tributyl Phosphate)、トリス(βクロロエチル)ホスフェート(Tris(βPhosphate)、トリス(βクロロプロピル)ホスフェート(Tris(βPhosphate)、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート(Tris(dichloropropyl)Phosphate)、トリオクチルホスフェート(Trioctyl Phosphate)、トリフェニルホスフェート(Triphenyl Phosphate)、オクチルジフェニルホスフェート(Octyl diphenyl Phosphate)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(Tris(Isopropylphenyl)Phosphate)及びトリブトキシエチルホスフェート(Tributoxyethyl Phosphate)からなる群から選択された少なくとも1つ以上を含んでもよいが、これらに制限されることはない。
【0123】
本発明の一実施形態により、前記機能性添加剤は、難燃性添加剤、酸化防止剤、耐荷重及び耐摩耗向上剤、増粘及び粘度指数向上剤、腐食防止剤、及びその他の改質剤からなる群から選択された少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0124】
前記機能性添加剤は、それぞれ又は全体として前記難燃性油圧作動油の組成物のうち0.1重量%~10重量%として含まれてもよい。前記添加剤の含量は、グリセリン-エステル系潤滑油基油と適切な組合せと添加剤による環境親和力(生分解性及び魚毒性)の低下、油圧作動油の品質低下、変色、粘度降下などの発生を考慮して適切な含量で添加されることができる。
【0125】
本発明の一実施形態により、前記酸化防止剤は、前記難燃性油圧作動油のうち0.1重量%~7.0重量%として含まれてもよい。一般に、0.5重量部未満では効果が小さく、7.0重量部を超過する場合に酸化防止の効果は期待できるものの、油剤の変色及び難燃性効果の低下などの問題が提起されることもある。前記範囲内に含まれれば、適切な酸化防止効果を取得し、添加量の増加による環境親和性(生分解性及び魚毒性)の阻害などの問題の発生を防止又は低下することができる。
【0126】
前記酸化防止剤の酸化防止力は、電子の共鳴混成構造(resonance hybrid)が多く形成されるほど、酸化防止力が優れることが試験結果で確認される。
【0127】
前記酸化防止剤は、フェニルナフチルアミン系、アルキル化ジフェニルアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-1、4-フェニレンジアミン(N-phenyl-N’-isopropyl-P-phenylenediamine)、N、N’-ジ-2-ナフチル-2-フェニレンジアミン(N、N’-Di-2-naphthyl-2-phenylenediamine)などのアロマティックアミン系;モノターシャリーブチルヒドロキノン(mono-tert-butylhydroquinone)などのヒドロキノン系;ビスフェノール2、2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-Tert-ブチルフェノール)(Bisphenol2、2’-Metylen-Bis-(4-methyl-6-Tert-Butylphenol))、4、4-ブチリデンビス(6-Tert-ブチル-3-メチルフェノール)(4、4-butylidenebis(6-tert-butyl-3-methylphenol)、BHT(3、5-di-tert-butyl-4-hydroxytoluene)などのフェノール系;トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、(Tris(nonylphenyl)phosphate)などのリン酸エステル系及びリン酸エステルの金属塩(Zn-DTP);及びジラウリルチオジプロピオネート(Dilauryl Thiodipropionate)、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール(2-mercaptomethyl benzimidazole)などの硫黄系からなる群から選択された少なくとも1つ以上を含んでもよいが、これらに制限されることはない。
【0128】
本発明の一実施形態により、前記増粘及び粘度指数向上剤は、前記難燃性油圧作動油のうち0.01重量%~5.0重量%として含まれてもよい。
【0129】
前記増粘及び粘度指数向上剤は、粘度向上剤及び粘度指数向上剤であり、スチレン-ブタジエン共重合体(Styrene-Butadien Co-polymer)、スチレンマレイン酸エステル共重合体などのスチレン-炭化水素ポリマー(Styrene Hydrocarbon polymer)などのオレフィン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン及びポリメタクリレート、ポリアクリレート、エチレンプロピレン共重合体からなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよいが、これらに制限されることはない。
【0130】
前記増粘及び粘度指数向上剤の分子量(Mw)は、難燃性及び環境親和性などを考慮して300~10000であってもよい。前記範囲内に含まれれば、適切な粘度の油圧作動油の組成物を提供することができる。
【0131】
本発明の一実施形態により、前記耐荷重及び耐摩耗添加剤は、前記難燃性油圧作動油の組成物のうち0.01重量%~7.0重量%として含まれてもよい。前記範囲内に含まれれば、油圧装備が可動する間にシリンダ、ポンプなどの過剰な摩耗を防止して装備の寿命を向上させ、摩耗による過熱発生を低下させることができる。
【0132】
前記耐荷重及び耐摩耗添加剤は、リン酸エステルのアミン塩、アリールホスフェート系、リン酸エステルの金属塩、及び硫化物の添加剤のうち少なくとも1つ以上を含んでもよいが、これらに制限されることはない。好ましくは、リン酸エステルのアミン塩であってもよい。
【0133】
例えば、前記耐荷重及び耐摩耗添加剤は、中和処理されたリン酸エステルのアミン塩系(化式(2))の効果が最も優れ、リン酸エステルの金属塩、アリル系リン酸エステル及び硫化物の添加剤を併用することができ、上昇効果を示すことができる。化式(2)の化合物は、全酸価(Total Acid Number、mgKOH/g、TAN、ASTM D664)50以上;100以上;又は、200以上であってもよい。
【0134】
【0135】
前記化式(2)において、Rは水素又は炭水1~10アルキル又はアリール型炭化水素化合物であり、Xは水素又は炭水1~4の炭化水素であり、nは1~10の整数である。
【0136】
必要に応じて、腐食防止剤(アゾ(Azole)系の非鉄腐食防止剤、コハク酸エステル型(Succinic Ester type)の鉄系の腐食防止剤、スルホン酸塩(Metal-Sulfonate)系の腐食防止剤など)、消泡剤(シリコン型(Silicon type))、アルコール型(Alcohol type)、アミン型(Amine type)、ポリメタクリレートなどの消泡剤)、流動点降下剤(ポリメタクリレートtypeの他)及びその他の改質材などをさらに添加してもよく、これらの含量は、本発明の目的を逸脱しなければ適切な含量及び各成分間の組み合わせを考慮して添加することができる。
【0137】
以下、実施形態及び比較例によって本発明をより詳しく説明する。但し、下記の実施形態は本発明の例示に過ぎず、本発明の内容が下記の実施形態に限定されることはない。
【0138】
実施形態1:グリセリン-エステル(Glycerin-Ester)系潤滑油基油の合成
実施形態1-1
表1により、グリセリン(16重量%)及び炭素数10の脂肪酸(84重量%)を不活性ガスで満たされた反応器内に投入し、100℃~260℃温度及び10リットル~400リットルの不活性ガスを投入しながら7時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、ヨウ素値及び色を測定して表1に示した。
【0139】
実施形態1-2
表1により、グリセリン(15重量%)及び炭素数10+炭素数12の脂肪酸(85重量%)を適用し、100℃~260℃温度及び10リットル~400リットルの不活性ガスを投入しながら7時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、ヨウ素値及び色を測定して表1に示した。
【0140】
実施形態1-3
表1により、グリセリン(10重量%)及び炭素数18+炭素数22の脂肪酸(90重量%)を適用し、100℃~350℃温度及び10リットル~500リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~10時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、ヨウ素値及び色を測定して表1に示した。
【0141】
実施形態1-4
表1により、グリセリン(9.5重量%)及び炭素数22の脂肪酸(90.5重量%)を適用し、100℃~350℃温度及び10~500リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~10時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、ヨウ素値及び色を測定して表1に示した。
【0142】
実施形態1-5
表1により、グリセリン(10.5重量%)及び炭素数10~22混合(89.5重量%)を適用し、100℃~350℃温度及び10~700リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、ヨウ素値及び色を測定して表1に示した。
【0143】
実施形態1-6
表1により、グリセリン(10.5重量%)及び炭素数10~22混合(89.5重量%)を適用し、100℃~350℃温度及び10リットル~1000リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~10時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、ヨウ素値及び色を測定して表1に示した。
【0144】
【0145】
注1:潤滑油基油のTotal Acid Numberであり、%asOleicと定義する。
【0146】
注2:ASTM D1500で規定する色の等級を意味する。
【0147】
実施形態2:環境にやさしい油圧作動油の製造
表2に提示すように、成分及び含量(単位:重量部)により、実施形態1で製造されたグリセリン-エステル系潤滑油基油、添加剤、及びその他の添加剤を配合して油圧作動油の組成物を製造した。製造された油圧作動油組成物の物性分及び性能を測定して表2に示した。
【0148】
【0149】
注)前記で潤滑油基油は、油圧作動油の粘度等級を考慮して選択し、それぞれの性能評価に使用された試験装備及び試験方法は下記のとおりである。
【0150】
注1)試験機:回転Bomb式の酸化安定度試験機、試験方法:ASTM D2272
注2)試験機:Shell式の4球試験機(1200rpm、40kg/cm2)、試験方法:ASTM D2266
注3)試験機:Shell式4球試験機(1760rpm、kg/cm2)、試験方法:ASTM2596
注4)試験機:SRV Test(1mm、200N、40℃、50Hz)
【0151】
(1)実施形態2の油圧作動油と鉱油系油圧作動油のSRV摩擦係数比較
図1に油圧作動油と鉱油系油圧作動油のSRV(1mm、200N、40℃、50Hz)摩擦係数を比較して示した。鉱油系及び合成系の油圧作動油は、一般市中で得られる耐摩耗性の油圧作動油である。即ち、油圧作動油は、API規格GroupIIの潤滑油基油で製造された国際粘度規格(ISOVG)46及び68に適切なものである。
【0152】
表2及び
図1を察すると、表2で本発明に係る植物系潤滑油基油を適用した油圧作動油は、引火点、粘度指数、及び酸化安定性に良好な結果を取得し、油圧作動油に対するSRV test(摩擦、摩耗、振動)で極めて優れた結果を取得し、
図1で提示した一般的な鉱油系の油圧作動油に比べて極めて優秀かつ安定的な結果である。本発明に係る環境にやさしい油圧作動油は、実際の産業装備に適用する時よりも安定的でエネルギーの低減効果を期待することができる。
【0153】
(2)生分解度(Biodegradable)測定
実施形態2の環境親和性を確認するために生分解度を測定し、その結果は表3に示した。
【0154】
【0155】
表3を察すると、本発明に係る植物性グリセリン-エステル系潤滑油基油の適用時に生分解性に優れ、環境にやさしい油圧作動油を提供する可能性があることを確認できる。
【0156】
本発明は、微生物による生分解が可能で、人体に対する親和性が優れるだけでなく、物性も優秀で産業現場にも勿論、設備の駆動でも省エネルギーの効果と、工具寿命の延長、装備駆動の効率性増加と装備消耗品の切り替え周期の減少はもちろん、難燃性であるため火災の危険が少ないことから、実質的なコストの低減に寄与することができ、炭素量の排出規制に対応できる油圧作動油(潤滑油)を提供することができる。
【0157】
2.合成例
次のように、合成植物油(グリセリン-エステル)を準備した。
【0158】
潤滑油基油A
グリセリン(16.0重量%)及び全体炭素数36(炭素数10ないし炭素数14)の混合脂肪酸(84重量%)を適用し、100℃~300℃温度及び10~700リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0159】
潤滑油基油B
グリセリン(15.0重量%)及び全体炭素数42(炭素数10ないし炭素数16)の混合脂肪酸(85重量%)を適用し、100℃~300℃温度及び10~700リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0160】
潤滑油基油C
グリセリン(14.5重量%)及び全体炭素数48(炭素数14ないし炭素数18)の混合脂肪酸(85.5重量%)を適用し、100℃~300℃温度及び10~700リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0161】
潤滑油基油D
グリセリン(13.5重量%)及び全体炭素数50(炭素数14ないし炭素数18)の混合脂肪酸(86.5重量%)を適用し、100℃~300℃温度及び10~700リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0162】
潤滑油基油E
グリセリン(13.5重量%)及び全体炭素数50(炭素数14ないし炭素数18)の混合脂肪酸(86.5重量%)を適用し、100℃~300℃温度及び10~700リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0163】
潤滑油基油F
グリセリン(12.5重量%)及び全体炭素数54(炭素数14ないし炭素数22)の混合脂肪酸(87.5重量%)を適用し、100℃~320℃温度及び10~700リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0164】
潤滑油基油G
グリセリン(12.0重量%)及び全体炭素数54(炭素数14ないし炭素数22)の混合脂肪酸(88.0重量%)を適用し、100℃~320℃温度及び10~700リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0165】
潤滑油基油H
グリセリン(11.0重量%)及び全体炭素数54(炭素数14ないし炭素数22)の混合脂肪酸(89.0重量%)を適用し、100℃~350℃温度及び10~1000リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0166】
潤滑油基油I
グリセリン(10.0重量%)及び全体炭素数60(炭素数16ないし炭素数22)の混合脂肪酸(90.0重量%)を適用し、100℃~350℃温度及び10~1000リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0167】
潤滑油基油J
グリセリン(9.5重量%)及び全体炭素数66(炭素数18ないし炭素数22)の混合脂肪酸(90.5重量%)を適用し、100℃~350℃温度及び10~1000リットルの不活性ガスを投入しながら6時間内~12時間の間に反応を行った。取得した生成物の遊離脂肪酸(FFA)、動粘度、及びヨウ素値を測定して表4に示した。
【0168】
【0169】
注1:潤滑油基油の未反応脂肪酸含量であり、「%as Oleic」として定義する。
【0170】
2.添加剤の準備
表5~表8にそれぞれ難燃性添加剤、酸化防止剤、耐荷重及び耐摩耗性添加剤を準備した。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
実施形態3-1ないし実施形態3-14
(1)難燃性油圧作動油の組成物の製造
表4の合成植物油(グリセリン-エステル)を潤滑油基油として使用し、難燃性添加剤(表5)、酸化防止剤(表6)及び耐荷重及び耐摩耗性添加剤(表7)を混合して難燃性油圧作動油の組成物を製造した。具体的な組成については表8~表9に示した。
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
(1)物性評価
表10のとおりに製造された難燃性油圧作動油の組成物の魚毒性、酸化安定性、難燃性及び潤滑性の試験条件により物性及び性能を測定し、その結果は表8~表9に示した。
【0179】
(2)噴霧火災試験結果
高圧噴霧点火試験-機械振興協力会技術研究所法(日本)により、噴霧火災試験を実施して
図2に示した。
図2には、実施形態3-7と石油系の市販製品をイメージで示した。
【0180】
(3)油圧作動油使用による電気消耗量の測定
実施形態3-14と鉱油系の市販製品として油圧作動油オイルを変更した後、電気消耗量の変化を測定して
図3に示した。
【0181】
試験装備:850トンのダイカスト
表9~表8を察すると、本発明に係る合成植物油(グリセリン-エステル)を潤滑油基油と難燃性添加剤、酸化防除紙、増粘及び粘度指数向上剤、耐荷重及び耐摩耗向上剤、腐食防止剤、流動点降下剤及びその他の改質剤を添加して製造した環境親和型-難燃性油圧作動油は、魚毒性(ミジンコ試験)の試験で優れた結果を取得し、抜群の難燃性成果を取得し、油圧作動油に対するSRVtest(摩擦、摩耗、振動)Shell 4-Ball testで極めて優れた結果を取得し、酸化防止性能についても良好な結果を取得した。
【0182】
図2の結果から、本発明に係る環境親和型-難燃性油圧作動油は燃焼されていないものの、鉱油系の油圧作動油は爆発的な火災発生を確認することができる。
【0183】
図3の結果から、本発明に係る環境親和型-難燃性油圧作動油は、石油系の油圧作動油に比べて電気消耗量の変化において平均7.12%節減したことが確認できた。これは、本発明に係る環境親和型-難燃性油圧作動油は、実際の産業装備に適用する時、安定的で省エネの効果を期待することができる。
【0184】
装備に用いられる油圧作動油に対する環境親和型とは、生分解性及び魚毒性に対する環境親和性の基準だけでなく、装備が駆動される間に消耗される電気使用量に対して減縮可能であるため、炭素の排出権取引の安定的なサポートが必要であるが、報告された油圧作動油で電気消耗量の減量に対する実質的な評価結果を報告した事例はなかった。しかし、本発明に係る合成植物油の油圧作動油を産業現場に適用した際に消耗される電力量と、従来における鉱油系の耐摩耗性油圧作動油(ISO-L-HM規定のISOVG46)とを比較すれば、平均7.12%程度の節減効果が得られ(
図3)、これは本発明に係る省エネ及び装備の安定的な駆動の保障に能動的に対処できる油圧作動油を提供できることを示す。
【0185】
本発明は、脂肪酸とグリセリンを用いて無触媒及び無水洗工程による合成植物油(グリセリン-エステル)を利用し、既存の従来技術に比べて一層改善かつ発展された潤滑添加剤、例えば、難燃性添加剤、酸化防止剤、耐荷重及び耐摩耗向上剤、増粘及び粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤及びその他の改質剤を配合して油圧作動油の組成物を提供することができる。前記油圧作動油の組成物は、油圧作動油(潤滑油)の使用過程で電力量消耗の減量により炭素排出量を低減させ、省エネによる実質的なコスト低減に寄与するだけでなく、油圧作動油としての適用領域の拡大と同時に、使用寿命の延長を保障し、難燃性の確認で火災の危険を画期的に減少させることができる。
【0186】
また、本発明は、産業の発展過程において求められる自然環境と人に対する親和性の強調と、エネルギー低減対策及び装備の安定的な駆動の保障に能動的に対処するだけでなく、難燃性を付与して火災の危険を低減することは勿論、鉱油系潤滑油と価格的に競争できることから、実質的なコスト削減にも寄与することができる。
【0187】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順序で実行されたり、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合されたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても適切な結果を達成することができる。
【0188】
従って、他の実現、他の実施形態及び特許請求の範囲と均等なものなどについても後述する請求範囲の範囲に属する。
【国際調査報告】