(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】異相ポリマー組成物を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20220413BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20220413BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20220413BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20220413BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20220413BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20220413BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/06
C08L23/08
C08L23/10
C08K5/01
C08K5/521
C08K5/09
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550234
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 US2020019219
(87)【国際公開番号】W WO2020176341
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス、フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、キース・エー.
(72)【発明者】
【氏名】バイナム、クリフォード・エス.
(72)【発明者】
【氏名】トレノア、スコット・アール.
(72)【発明者】
【氏名】スプリンクル、ジェイソン・ディー.
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB022
4J002BB054
4J002BB121
4J002BB143
4J002BB163
4J002EA006
4J002EG077
4J002EG097
4J002EW047
4J002FD147
4J002FD206
4J002FD207
4J002GM00
(57)【要約】
異相ポリマー組成物は、プロピレンポリマー相と、エチレンポリマー相と、フルベン部分を含む相溶化剤と、成核剤とを含む。異相ポリマー組成物を改質するための方法は、相溶化剤を用意する工程と、成核剤を用意する工程と、プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相とを含む異相ポリマー組成物を用意する工程と、相溶化剤、成核剤、および異相ポリマー組成物を混合する工程と、プロピレン相およびエチレン相においてフリーラジカルを生成する工程とを含む。すると、相溶化剤の少なくとも一部がプロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の両方のフリーラジカルと反応して、プロピレンポリマー相中のプロピレンポリマーとの結合およびエチレンポリマー相中のエチレンポリマーとの結合を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレンホモポリマー、ならびにプロピレンと50重量%以下のエチレンおよびC
4~C
10α-オレフィンモノマーからなる群から選択される1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相と;
(b)エチレンホモポリマー、およびエチレンと1種以上のC
3~C
10α-オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相と;
(c)フルベン部分を含む相溶化剤と;
(d)成核剤と
を含む、異相ポリマー組成物。
【請求項2】
前記相溶化剤が、式(EI)の構造に合致する部分を含む化合物、式(EIII)の構造に合致する部分を含む化合物、および式(EV)の構造に合致する化合物
【化1】
(式中、R
301、R
302、R
303、およびR
304は、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、ただし、隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は、組み合わされて前記部分の環に縮合した第2の環を形成することができ、かつ、R
301、R
302、R
303、およびR
304のうちの少なくとも1つは水素であり;R
305、R
306、R
307、およびR
308は、ハロゲンからなる群から独立して選択される)
からなる群から選択される、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項3】
前記相溶化剤が、式(EX)の化合物
【化2】
(式中、R
301、R
302、R
303、およびR
304は、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、ただし、隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は、組み合わされて前記部分の環に縮合した第2の環を形成することができ、かつ、R
301、R
302、R
303、およびR
304のうちの少なくとも1つは水素であり;R
311およびR
312は、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から独立して選択される個々の置換基であるか、R
311とR
312は一緒になって、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される単一の置換基を形成する)
である、請求項2に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項4】
R
301、R
302、R
303、およびR
304が、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から独立して選択される、請求項3に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項5】
R
301、R
302、R
303、およびR
304が、それぞれ水素である、請求項4に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項6】
R
311およびR
312が、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から独立して選択される、請求項3~5の何れか1項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項7】
R
311およびR
312が、それぞれフェニルである、請求項6に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項8】
前記成核剤が、式(I)のホスファートエステルアニオン
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、水素およびC
1~C
18アルキル基からなる群から独立して選択され、R
3は、アルカンジイル基である)
を含む、請求項1~7の何れか1項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項9】
前記成核剤が、芳香族カルボキシラートアニオンを含む、請求項1~8の何れか1項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項10】
前記成核剤が、式(X)および式(XX)からなる群から選択される脂環式ジカルボキシラートアニオン
【化4】
(式中、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、およびR
19は、水素、ハロゲン、C
1~C
9アルキル基、C
1~C
9アルコキシ基、およびC
1~C
9アルキルアミン基からなる群から独立して選択され;R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、およびR
29は、水素、ハロゲン、C
1~C
9アルキル基、C
1~C
9アルコキシ基、およびC
1~C
9アルキルアミン基からなる群から独立して選択される)
を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項11】
異相ポリマー組成物を改質するための方法であって、
(a)相溶化剤であって、フルベン部分を含む相溶化剤を用意する工程と;
(b)成核剤を用意する工程と;
(c)異相ポリマー組成物であって、プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相とを含む異相ポリマー組成物を用意する工程と;
(d)前記相溶化剤、前記成核剤、および前記異相ポリマー組成物を混合する工程と;
(e)前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相においてフリーラジカルを生成する工程とを含み、それにより前記相溶化剤の少なくとも一部が前記プロピレンポリマー相と前記エチレンポリマー相の両方のフリーラジカルと反応して、前記プロピレンポリマー相中のプロピレンポリマーとの結合および前記エチレンポリマー相中のエチレンポリマーとの結合を形成する、方法。
【請求項12】
前記相溶化剤が、式(EI)の構造に合致する部分を含む化合物、式(EIII)の構造に合致する部分を含む化合物、および式(EV)の構造に合致する化合物
【化5】
(式中、R
301、R
302、R
303、およびR
304は、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、ただし、隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は、組み合わされて前記部分の環に縮合した第2の環を形成することができ、かつ、R
301、R
302、R
303、およびR
304のうちの少なくとも1つは水素であり;R
305、R
306、R
307、およびR
308は、ハロゲンからなる群から独立して選択される)
からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記相溶化剤が、式(EX)の化合物
【化6】
(式中、R
301、R
302、R
303、およびR
304は、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、ただし、隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は、組み合わされて前記部分の環に縮合した第2の環を形成することができ、かつ、R
301、R
302、R
303、およびR
304のうちの少なくとも1つは水素であり;R
311およびR
312は、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から独立して選択される個々の置換基であるか、R
311とR
312は一緒になって、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される単一の置換基を形成する)
である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
R
301、R
302、R
303、およびR
304が、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から独立して選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
R
301、R
302、R
303、およびR
304が、それぞれ水素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
R
311およびR
312が、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から独立して選択される、請求項13~15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
R
311およびR
312が、それぞれフェニルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記成核剤が、式(I)のホスファートエステルアニオン
【化7】
(式中、R
1およびR
2は、水素およびC
1~C
18アルキル基からなる群から独立して選択され、R
3は、アルカンジイル基である)
を含む、請求項11~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記成核剤が、芳香族カルボキシラートアニオンを含む、請求項11~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記成核剤が、式(X)および式(XX)からなる群から選択される脂環式ジカルボン酸アニオン
【化8】
(式中、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、およびR
19は、水素、ハロゲン、C
1~C
9アルキル基、C
1~C
9アルコキシ基、およびC
1~C
9アルキルアミン基からなる群から独立して選択され;R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、およびR
29は、水素、ハロゲン、C
1~C
9アルキル基、C
1~C
9アルコキシ基、およびC
1~C
9アルキルアミン基からなる群から独立して選択される)
を含む、請求項11~19の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、メルトフローレートが上昇し、さらに衝撃強度が高い異相ポリオレフィン組成物、およびそのような組成物を作製するための方法に関する。特に興味深いのは、改質されたポリプロピレンインパクトコポリマーである。
背景
[0002]ポリマー樹脂のメルトフローレート(MFR)は、その分子量の関数である。一般に、メルトフローレートを上昇させると、樹脂をより低温で処理し、複雑な部品形状に充填することが可能となる。メルトフローレートを上昇させる様々な先行技術の方法は、押出機中で樹脂を、フリーラジカルを生成できる化合物、たとえば過酸化物と溶融ブレンドすることを伴う。これを行うと、ポリマーの重量平均分子量が減少し、MFRが上昇する。しかし、ポリオレフィンポリマーの分子量を低下させてメルトフローレートを上昇させることは、多くの場合、改質されたポリマーの強度に悪影響を及ぼすことがわかっている。たとえば、ポリマーの分子量を低下させると、ポリマーの耐衝撃性が著しく低下する可能性がある。そして、この耐衝撃性の低下は、ポリマーをある特定の用途での使用または最終使用に不適なものとする可能性がある。したがって、現存する技術を利用する場合、メルトフローレートを上昇させることと、ポリマーの耐衝撃性を望ましくないほど低下させることとの間で妥協点を見つける必要がある。この妥協点は、多くの場合、メルトフローレートが所望のレベルまで上昇しないことを意味し、それは、より高い処理温度が必要になる、および/またはスループットの低下を招く。
【0002】
[0003]したがって、ポリマーの耐衝撃性を維持、または改善さえしながら、高メルトフローが上昇したポリマー組成物を製造することができる添加剤および方法が依然として必要とされている。
発明の概要
[0004]第1の態様において、本発明は、
(a)ポリプロピレンホモポリマー、ならびにプロピレンと50重量%以下のエチレンおよびC4~C10α-オレフィンモノマーからなる群から選択される1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相と;
(b)エチレンホモポリマー、およびエチレンと1種以上のC3~C10α-オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相と;
(c)フルベン部分を含む相溶化剤と;
(d)成核剤と
を含む、異相ポリマー組成物を提供する。
【0003】
[0005]第2の態様において、本発明は、異相ポリマー組成物を改質するための方法であって、
(a)相溶化剤であって、フルベン部分を含む相溶化剤を用意する工程と;
(b)成核剤を用意する工程と;
(c)異相ポリマー組成物であって、プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相とを含む異相ポリマー組成物を用意する工程と;
(d)相溶化剤、成核剤、および異相ポリマー組成物を混合する工程と;
(e)プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相においてフリーラジカルを生成する工程とを含み、それにより相溶化剤の少なくとも一部がプロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の両方のフリーラジカルと反応して、プロピレンポリマー相中のプロピレンポリマーとの結合およびエチレンポリマー相中のエチレンポリマーとの結合を形成する、方法を提供する。
詳細な説明
[0006]下記の定義は、本願を通じて使用される用語のいくつかを定義するために提供される。
【0004】
[0007]ここで使用する場合、「ヒドロカルビル基」という用語は、炭化水素の炭素原子からの水素原子の除去によって炭化水素から誘導される1価の官能基を指す。
【0005】
[0008]ここで使用する場合、「置換ヒドロカルビル基」という用語は、置換炭化水素の炭素原子からの水素原子の除去によって置換炭化水素から誘導される1価の官能基を指す。この定義において、「置換炭化水素」という用語は、非環式、単環式および多環式の非分枝および分枝炭化水素から誘導される化合物を指し、(1)炭化水素の水素原子の1個以上が非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)もしくは非ヒドロカルビル官能基(たとえば、ヒドロキシ基もしくはヘテロアリール基)で置きかえられている、および/または(2)炭化水素の炭素-炭素鎖が、酸素原子(たとえば、エーテルの場合のように)、窒素原子(たとえば、アミンの場合のように)、もしくは硫黄原子(たとえば、硫化物の場合のように)によって中断されている。
【0006】
[0009]ここで使用する場合、「置換アルキル基」という用語は、アルカンの炭素原子からの水素原子の除去によって置換アルカンから誘導される1価の官能基を指す。この定義において、「置換アルカン」という用語は、非環式の非分枝および分枝炭化水素から誘導される化合物であって、(1)炭化水素の水素原子の1個以上が非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられている、および/または(2)炭化水素の炭素-炭素鎖が、酸素原子(エーテルの場合のように)、窒素原子(アミンの場合のように)、もしくは硫黄原子(硫化物の場合のように)によって中断されている炭化水素を指す。
【0007】
[0010]ここで使用する場合、「置換シクロアルキル基」という用語は、シクロアルカンの炭素原子からの水素原子の除去によって置換シクロアルカンから誘導される1価の官能基を指す。この定義において、「置換シクロアルカン」という用語は、飽和単環および多環式炭化水素(側鎖の有無は問わず)から誘導される化合物を指し、(1)炭化水素の水素原子の1個以上が非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられている、および/または(2)炭化水素の炭素-炭素鎖が酸素原子、窒素原子、もしくは硫黄原子によって中断されている。
【0008】
[0011]ここで使用する場合、「アルケニル基」という用語は、オレフィンの炭素原子からの水素原子の除去によって非環式の非分枝および分枝オレフィン(即ち、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素)から誘導される1価の官能基を指す。
【0009】
[0012]ここで使用する場合、「置換アルケニル基」という用語は、オレフィンの炭素原子からの水素原子の除去によって非環式の置換オレフィンから誘導される1価の官能基を指す。この定義において、「置換オレフィン」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非環式の非分枝および分枝炭化水素から誘導される化合物を指し、(1)炭化水素の水素原子の1個以上が非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基、アリール基、ヘテロアリール基)で置きかえられている、および/または(2)炭化水素の炭素-炭素鎖が酸素原子(エーテルの場合のように)もしくは硫黄原子(硫化物の場合のように)によって中断されている。
【0010】
[0013]ここで使用する場合、「置換シクロアルケニル基」という用語は、シクロアルケンの炭素原子からの水素原子の除去によって置換シクロアルケンから誘導される1価の官能基を指す。この定義において、「置換シクロアルケン」という用語は、単環および多環式オレフィン(即ち、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素)から誘導される化合物を指し、オレフィンの水素原子の1個以上が非水素原子(たとえばハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられている。
【0011】
[0014]ここで使用する場合、「置換アリール基」という用語は、環炭素原子からの水素原子の除去によって置換アレーンから誘導される1価の官能基を指す。この定義において、「置換アレーン」という用語は、単環および多環式芳香族炭化水素から誘導される化合物を指し、炭化水素の水素原子の1個以上が非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基)で置きかえられている。
【0012】
[0015]ここで使用する場合、「置換ヘテロアリール基」という用語は、環原子からの水素原子の除去によって置換ヘテロアレーンから誘導される1価の官能基を指す。この定義において、「置換ヘテロアレーン」という用語は、単環および多環式芳香族炭化水素から誘導される化合物を指し、(1)炭化水素の水素原子の1個以上が非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基)で置きかえられている、ならびに(2)炭化水素の少なくとも1つのメチン基(-C=)が3価のヘテロ原子により置きかえられている、および/または炭化水素の少なくとも1つのビニリデン基(-CH=CH-)が2価のヘテロ原子により置きかえられている。
【0013】
[0016]ここで使用する場合、「アルカンジイル基」という用語は、アルカンからの2個の水素原子の除去によってアルカンから誘導される2価の官能基を指す。これらの水素原子は、アルカン上の同じ炭素原子から(エタン-1,1-ジイルの場合のように)、または異なる炭素原子から(エタン-1,2-ジイルの場合のように)除去することができる。
【0014】
[0017]ここで使用する場合、「置換アルカンジイル基」という用語は、アルカンからの2個の水素原子の除去によって置換アルカンから誘導される2価の官能基を指す。これらの水素原子は、置換アルカン上の同じ炭素原子から(2-フルオロエタン-1,1-ジイルの場合のように)、または異なる炭素原子から(1-フルオロエタン-1,2-ジイルの場合のように)除去することができる。この定義において、「置換アルカン」という用語は、置換アルキル基の定義において先に記載したものと同じ意味を有する。
【0015】
[0018]ここで使用する場合、「シクロアルカンジイル基」という用語は、シクロアルカンからの2個の水素原子の除去によってシクロアルカン(単環および多環式)から誘導される2価の官能基を指す。これらの水素原子は、シクロアルカン上の同じ炭素原子から、または異なる炭素原子から除去することができる。
【0016】
[0019]ここで使用する場合、「置換シクロアルカンジイル基」という用語は、シクロアルカンからの2個の水素原子の除去によって置換シクロアルカンから誘導される2価の官能基を指す。この定義において、「置換シクロアルカン」という用語は、置換シクロアルキル基の定義において先に記載したものと同じ意味を有する。
【0017】
[0020]ここで使用する場合、「シクロアルケンジイル基」という用語は、シクロアルケンからの2個の水素原子の除去によってシクロアルケン(単環および多環式)から誘導される2価の官能基を指す。これらの水素原子は、シクロアルケン上の同じ炭素原子から、または異なる炭素原子から除去することができる。
【0018】
[0021]ここで使用する場合、「置換シクロアルケンジイル基」という用語は、シクロアルケンからの2個の水素原子の除去によって置換シクロアルケンから誘導される2価の官能基を指す。これらの水素原子は、シクロアルケン上の同じ炭素原子から、または異なる炭素原子から除去することができる。この定義において、「置換シクロアルケン」という用語は、置換シクロアルケン基の定義において先に記載したものと同じ意味を有する。
【0019】
[0022]ここで使用する場合、「アレーンジイル基」という用語は、環炭素原子からの2個の水素原子の除去によってアレーン(単環および多環式芳香族炭化水素)から誘導される2価の官能基を指す。
【0020】
[0023]ここで使用する場合、「置換アレーンジイル基」という用語は、環炭素原子からの2個の水素原子の除去によって置換アレーンから誘導される2価の官能基を指す。この定義において、「置換アレーン」という用語は、単環および多環式芳香族炭化水素から誘導される化合物を指し、炭化水素の水素原子の1個以上が非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基)で置きかえられている。
【0021】
[0024]ここで使用する場合、「ヘテロアレーンジイル基」という用語は、環原子からの2個の水素原子の除去によってヘテロアレーンから誘導される2価の官能基を指す。この定義において、「ヘテロアレーン」という用語は、単環および多環式芳香族炭化水素から誘導される化合物を指し、炭化水素の少なくとも1つのメチン基(-C=)が3価のヘテロ原子により置きかえられている、および/または炭化水素の少なくとも1つのビニリデン基(-CH=CH-)が2価のヘテロ原子により置きかえられている。
【0022】
[0025]ここで使用する場合、「置換ヘテロアレーンジイル基」という用語は、環原子からの2個の水素原子の除去によって置換ヘテロアレーンから誘導される2価の官能基を指す。この定義において、「置換ヘテロアレーン」という用語は、置換ヘテロアリール基の定義において先に記載したものと同じ意味を有する。
【0023】
[0026]別段の指示がない限り、条件は、25℃、1気圧、および50%相対湿度であり、濃度は重量によるものであり、分子量は、重量平均分子量に基づく。「ポリマー」という用語は、本願において使用される場合、少なくとも5,000の重量平均分子量(Mw)を有する材料を表す。「コポリマー」という用語は、2種以上の異なるモノマー単位を含有するポリマー、たとえばターポリマーを含むようにその広い意味で使用され、別段の指示がない限り、ランダム、ブロック、および統計的コポリマーを含む。特定の相、または異相組成物におけるエチレンまたはプロピレンの濃度は、任意の賦形剤または他の非ポリオレフィン添加剤を除く、相または異相組成物中のポリオレフィンポリマーの全重量に対する反応させたエチレン単位またはプロピレン単位の重量をそれぞれ基準とする。異種ポリマー組成物全体における各相の濃度は、任意の賦形剤または他の非ポリオレフィン添加剤もしくはポリマーを除く、異相組成物におけるポリオレフィンポリマーの全重量を基準とする。以下に記載する官能基の構造において、断ち切られた結合(即ち、波線によって断ち切られた結合)は、例示された基を含有する化合物の他の部分に対する結合を表す。
【0024】
[0027]第1の態様において、本発明は、(a)プロピレンポリマー相と、(b)エチレンポリマー相と、(c)フルベン部分を含む相溶化剤と、(d)成核剤とを含む、異相ポリマー組成物を提供する。
【0025】
[0028]第2の態様において、本発明は、異相ポリマー組成物を改質するための方法を提供する。方法は、(a)相溶化剤を用意する工程と、(b)成核剤を用意する工程と、(c)プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相とを含む異相ポリマー組成物を用意する工程と、(d)相溶化剤、成核剤、および異相ポリマー組成物を混合する工程と、(d)プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相においてフリーラジカルを生成する工程とを含む。すると、相溶化剤の少なくとも一部がプロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の両方のフリーラジカルと反応して、プロピレンポリマー相中のプロピレンポリマーとの結合およびエチレンポリマー相中のエチレンポリマーとの結合を形成する。
【0026】
[0029]組成物および方法に使用される相溶化剤は、フルベン部分またはフルベン由来部分を含む有機または有機金属化合物である。部分は、無置換または置換とすることができ、それは、部分における環上の水素および/または末端ビニル炭素原子を、非水素基で置きかえることができることを意味する。したがって、好ましい態様において、相溶化剤は、式(EI)の構造に合致する部分を含む化合物、式(EIII)の構造に合致する部分を含む化合物、および式(EV)の構造に合致する化合物
【0027】
【0028】
からなる群から選択される。式(EI)および式(EIII)の構造において、R301、R302、R303、およびR304は、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、ただし、隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は、組み合わされて部分の環に縮合した第2の環を形成することができる。さらに、R301、R302、R303、およびR304のうちの少なくとも1つは水素であり;好ましくは、R301、R302、R303、およびR304のうちの少なくとも2つは水素である。末端ビニル炭素原子(式(EI)と式(EIII)の両方における)および環の中の隣接する炭素原子(式(EIII)における)に結合している断ち切られた結合(即ち、波線によって断ち切られた結合)は、相溶化剤の他の部分に対する結合を表す。式(EV)の構造において、R305、R306、R307、およびR308は、ハロゲンからなる群から独立して選択される。
【0029】
[0030]好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から独立して選択される。好適なアルキル基としては、直鎖状および分枝C1~C18アルキル基が挙げられるが、これに限定されない。好適な置換アルキル基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される1つ以上の非水素基で置換されている、直鎖状および分枝C1~C18アルキル基が挙げられるが、これに限定されない。好適なアリール基としては、アリール基、たとえばフェニルおよびナフチルが挙げられるが、これに限定されない。好適な置換アリール基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から選択される1つ以上の非水素基で置換されている、単環および多環式アリール基が挙げられるが、これに限定されない。好適なヘテロアリール基としては、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、およびこのような基の芳香環化類似体、たとえばベンゾイミダゾリルが挙げられるが、これに限定されない。好適な置換ヘテロアリール基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から選択される1つ以上の非水素基で置換されている、直前に記載したヘテロアリール基が挙げられるが、これに限定されない。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素である。
【0030】
[0031]より具体的な態様において、相溶化剤は、以下の式(EX)の構造に合致する化合物
【0031】
【0032】
とすることができる。式(EX)の構造において、R301、R302、R303、およびR304は、式(EI)の構造に関して先に列挙した基から独立して選択され、R311およびR312は、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から独立して選択される個々の置換基であるか、R311とR312は一緒になって、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される単一の置換基を形成する。好ましくは、R311およびR312のうちの1つ以下を水素とすることができる。
【0033】
[0032]好ましい態様において、R311およびR312は、独立して式(F)、式(FX)、および式(FXV)からなる群から選択される構造
【0034】
【0035】
に合致する基である。式(F)の構造において、R400、R401、およびR402は、C(H)、C(R401)、および窒素原子からなる群から独立して選択される。変数fは、0~4の整数であるが、5-zに等しい値を超えず、ここで、zは、環中の窒素原子の数である。各R401は、アルキル基(たとえば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(たとえば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(たとえば、C6~C12アリール基)、置換アリール基(たとえば、C6~C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(たとえば、C4~C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(たとえば、C4~C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(たとえば、C1~C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(たとえば、C6~C12アリールオキシ基s)、アルケニル基(たとえば、C2~C10アルケニル基)、アルキニル基(たとえば、C2~C10アルキニル基)、アルキルエステル基(たとえば、C1~C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(たとえば、C6~C12アリールエステル基)からなる群から独立して選択される。さらに、2つの隣接するR401基は、結合して縮合環構造、たとえば多環式アリール基を形成することができる。式(FX)の構造において、R410は、酸素原子、硫黄原子、およびN(R415)からなる群から選択される。R415は、水素、アルキル基(たとえば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(たとえば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(たとえば、C6~C12アリール基)、および置換アリール基(たとえば、C6~C12置換アリール基)からなる群から選択される。R411は、C(H)、C(R112)、および窒素原子からなる群から選択される。R412は、アルキル基(たとえば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(たとえば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(たとえば、C6~C12アリール基)、置換アリール基(たとえば、C6~C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(たとえば、C4~C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(たとえば、C4~C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(たとえば、C1~C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(たとえば、C6~C12アリールオキシ基)、アルケニル基(たとえば、C1~C10アルケニル基)、アルキニル基(たとえば、C2~C10アルキニル基)、アルキルエステル基(たとえば、C2~C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(たとえば、C6~C12アリールエステル基)からなる群から選択される。さらに、2つの隣接するR412基は、結合して縮合環構造、たとえば多環式アリール基を形成することができる。変数gは、0~2の整数である。式(FXV)の構造において、R410およびR412は、式(FX)に関して先に記載したものと同じ基から選択され、変数hは、0~3の整数である。
【0036】
[0033]好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311およびR312は、それぞれフェニル基である。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311およびR312は、それぞれ4-クロロフェニル基である。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311およびR312は、それぞれ4-フルオロフェニル基である。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、メチル基であり、R312は、フェニルである。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、水素であり、R312は、2-チエニル基である。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、水素であり、R312は、3-チエニル基である。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、メチル基であり、R312は、2-フリル基である。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、水素であり、R312は、ジメチルアミノ基である。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311およびR312は、それぞれC1~C8アルキル基、好ましくはプロピル基である。別の好ましい態様において、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、水素であり、R312は、2-フェニルエテニル基である。
【0037】
[0034]相溶化剤は、複数のフルベン部分を含むことができる。たとえば、相溶化剤は、2つのフルベン部分を含み、以下の式(EXX)の構造:
【0038】
【0039】
に合致するものとすることができる。式(EXX)の構造において、各R301、R302、R303、およびR304は、式(EI)の構造において先に列挙した基から独立して選択され、各R311は、式(EX)の構造において先に列挙した基から独立して選択され、R321は、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択される。好ましい態様において、各R301、R302、R303、およびR304は、水素であり、各R311は、芳香族基であり、R321は、アレーンジイル基である。より具体的には、このような好ましい態様において、各R301、R302、R303、およびR304は、水素であり、各R311は、フェニル基であり、R321は、フェン-1,4-ジイル基である。別の好ましい態様において、各R301、R302、R303、R304、およびR311は、水素であり、R321は、アレーンジイル基、好ましくはフェン-1,4-ジイル基である。
【0040】
[0035]場合によっては、相溶化剤は、自己ディールス・アルダー反応を介して二量化またはオリゴマー化を受けることができる。そのような自己ディールス・アルダー反応において、相溶化剤の1分子中のシクロペンタジエニル部分がジエンとして作用し、相溶化剤の別の分子のシクロペンタジエニル部分中の二重結合がジエノフィルとして作用する。式(EI)の構造に合致するフルベン部分がディールス・アルダー反応におけるジエノフィルである場合、フルベン部分は、上記式(EIII)の構造に合致する部分に変換される。上記式(EIII)の構造において、環中の隣接する炭素原子に結合している断ち切られた結合は、ジエンとの反応から生じる環状部分の一部を形成する結合を表す。したがって、上記式(EIII)の構造に合致する部分を含む相溶化剤のより具体的な例において、相溶化剤は、以下の式(EIIIA)の構造
【0041】
【0042】
に合致する部分を含むことができる。式(EIIIA)の構造において、R301、R302、R303、およびR304は、先に列挙した基から選択され、R306は、少なくとも1つの二重結合を含む近接2価部分、たとえば2価の環状部分(たとえば、2価のシクロペンテニル部分)である。R306が2価の環状部分(たとえば、2価のシクロペンテニル部分)である場合、相溶化剤は、環状部分における隣接する炭素原子への結合によって形成された二環式部分を含む。
【0043】
[0036]上記式(EX)の構造に合致する相溶化剤の自己ディールス・アルダー反応から生じる二量体は、以下の式(EXA)の構造
【0044】
【0045】
に合致する。式(EXA)の構造において、R301、R302、R303、R304、R311、およびR312は、式(EX)の構造に合致する化合物に関して先に開示した基から選択される。二量体は、エンドまたはエキソ異性体の何れかとすることができる。さらに、式(EXA)の構造を有する二量体は、後続のジエンとのディールス・アルダー反応においてジエノフィルとして機能することができ、そのような後続の反応は、様々なオリゴマー種を生じさせる。何らかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、先に記載の二量体およびオリゴマーの種は、逆ディールス・アルダー反応を受けて、二量体およびオリゴマー種の元となるフルベン含有化合物を生じさせることができると考えられる。この逆ディールス・アルダー反応は、処理中に二量体またはオリゴマー種を含有するポリマー組成物を加熱する際、たとえばポリマー組成物を押し出す際に起こる加熱の際に起こる可能性があると考えられる。
【0046】
[0037]相溶化剤は、任意好適なモル質量を有することができる。当業者には理解されるように、化合物のモル質量は、他の要因と相まって、化合物の融点および沸点に影響を与える。したがって、化合物は一般に、モル質量が高いほど高い融点および沸点を有する。何らかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、相溶化剤の融点および沸点が、本発明の組成物中の相溶化剤の有効性に影響し得ることが考えられる。たとえば、比較的低いモル質量および低い沸点(たとえば、ポリマー組成物が押し出される温度よりも著しく低い沸点)を有する相溶化剤は、押し出しプロセス中に相当程度揮発し、それによってポリマー組成物の特性を改質するには不十分な相溶化剤しか残らない可能性があると考えられる。したがって、相溶化剤は、好ましくは、ポリマー組成物が押し出される温度よりも高い沸点を相溶化剤が呈するのに十分なモル質量を有する。一連の好ましい態様において、相溶化剤は、好ましくは約130g/mol以上、約140g/mol以上、約150g/mol以上、または約160g/mol以上のモル質量を有する。また、比較的高い融点(たとえば、ポリマー組成物が押し出される温度よりも高い融点)を有する相溶化剤は、押し出しプロセス中に溶融したポリマー中に十分に分散しないか、少なくとも押し出し温度より低い融点を有する相溶化剤と同様には分散しない可能性があると考えられる。そして、相溶化剤の分散が不十分であると、十分に分散した相溶化剤と比較して、達成できる物理的な特性の改善に負の影響を与えることになる。したがって、一連の好ましい態様において、相溶化剤は、約230℃以下、約220℃以下、約210℃以下、または約200℃以下の融点を有する。
【0047】
[0038]組成物中の相溶化剤の濃度は、最終使用者の目的を満たすために変化させることができる。たとえば、濃度は、ポリマーの強度、特に衝撃強度の低下を最小限にした(または、潜在的には上昇さえさせた)上で、ポリマー組成物のMFRの所望の上昇を達成するために変化させることができる。好ましい態様において、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量を基準として約10ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上、約150ppm以上、または約200ppm以上の量で存在することができる。別の好ましい態様において、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量を基準として約5重量%(50,000ppm)以下、約4重量%(40,000ppm)以下、約3重量%(30,000ppm)以下、約2重量%(20,000ppm)以下、約1重量%(10,000ppm)以下、または約0.5重量%(5,000ppm)以下の量で存在することができる。したがって、ある特定の好ましい態様において、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量を基準として約10~約50,000ppm、約100~約10,000ppm、または約200~約5,000ppmの量で存在することができる。
【0048】
[0039]化学的フリーラジカル発生剤を利用した場合(以下に検討するように)、ポリマー組成物中の相溶化剤の濃度は、これに加えて、またはこれに代えて、相溶化剤の量と化学的フリーラジカル発生剤の量との比で表すことができる。相溶化剤の分子量および化学的フリーラジカル発生剤中の過酸化物結合の数の違いに関してこの比を標準化するため、比は通常、組成物中に存在する相溶化剤のモル数対化学的フリーラジカル発生剤の添加から生じる過酸化物結合(O-O結合)のモル当量の比として表される。好ましくは、この比(即ち、相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量の比)は、約1:10以上、約1:5以上、約3:10以上、約2:5以上、約1:2以上、約3:5以上、約7:10以上、約4:5以上、約9:10以上、または約1:1以上である。別の好ましい態様において、この比は、約10:1以下、約5:1以下、約10:3以下、約5:2以下、約2:1以下、約5:3以下、約10:7以下、約5:4以下、約10:9以下、または約1:1以下である。したがって、一連の好ましい態様において、相溶化剤は、相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量が約1:10~約10:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約3:10~約10:3、約2:5~約5:2、または約1:2~約2:1の比で組成物中に存在することができる。
【0049】
[0040]組成物は、成核剤を含み、方法の1工程は、成核剤を用意することを伴う。ここで利用する場合、「成核剤」という用語は、熱可塑性ポリマーが溶融状態から固化する際にその中で核を形成するか、結晶の形成および/または成長のための部位を提供する物質を指す。好適な成核剤としては、核形成性賦形剤(たとえば、タルク)および核形成性顔料が挙げられる。
【0050】
[0041]本発明の組成物および方法における使用に好適な成核剤は、ホスファートエステルアニオンを含むことができる。好ましくは、ホスファートエステルアニオンは、以下の式(I)の構造
【0051】
【0052】
に合致する。式(I)の構造において、R1およびR2は、水素およびC1~C18アルキル基からなる群から独立して選択され、R3は、アルカンジイル基である。好ましい態様において、R1およびR2は、水素およびC1~C4アルキル基からなる群から選択される。より好ましくは、R1およびR2は、tert-ブチル基である。好ましい態様において、R3は、C1~C4アルカンジイル基である。より好ましくは、R3は、メタンジイル基である。特に好ましい態様において、成核剤は、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファートアニオン、たとえばナトリウム2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファートまたはアルミニウム2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファートを含む。
【0053】
[0042]本発明の組成物および方法における使用に好適な成核剤は、芳香族カルボキシラートアニオンを含むことができる。好適な芳香族カルボキシラートアニオンとしては、ベンゾアートアニオンおよび置換ベンゾアートアニオン(たとえば、4-tert-ブチルベンゾアートアニオン)が挙げられるが、これに限定されない。したがって、好ましい態様において、成核剤は、ナトリウムベンゾアートまたはアルミニウム4-tert-ブチルベンゾアートとすることができる。
【0054】
[0043]本発明の組成物および方法における使用に好適な成核剤は、脂環式ジカルボキシラートアニオンを含むことができる。好ましくは、脂環式ジカルボキシラートアニオンは、以下の式(X)および式(XX)からなる群から選択される構造に合致する。式(X)の構造は、
【0055】
【0056】
である。式(X)の構造において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、水素、ハロゲン、C1~C9アルキル基、C1~C9アルコキシ基、およびC1~C9アルキルアミン基からなる群から独立して選択される。好ましくは、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、それぞれ水素である。2つのカルボキシラート部分は、シスまたはトランス配置の何れかに配置することができる。好ましくは、2つのカルボキシラート部分は、シス配置に配置される。特定の好ましい態様において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、それぞれ水素であり、2つのカルボキシラート部分は、シス配置に配置される。式(XX)の構造は、
【0057】
【0058】
である。式(XX)の構造において、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、およびR29は、水素、ハロゲン、C1~C9アルキル基、C1~C9アルコキシ基、およびC1~C9アルキルアミン基からなる群から独立して選択される。好ましい態様において、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、およびR29は、それぞれ水素である。2つのカルボキシラート部分は、シスまたはトランス配置の何れかに配置することができる。好ましくは、2つのカルボキシラート部分は、シス配置に配置される。シス配置に配置される場合、2つのカルボキシラート部分は、化合物の二環式部分に対してエンドまたはエキソ配置の何れかに配置することができる。2つのカルボキシラート部分がシス配置に配置される場合、この部分は、好ましくはシス-エンド配置に配置される。好ましい態様において、成核剤は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシラートアニオン(たとえば、ジナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシラートおよびカルシウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシラート)、シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラートアニオン(たとえば、カルシウムシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、一塩基性アルミニウムシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジリチウムシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、およびストロンチウムシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート)、ならびにこれらの組合せを含む。上記のように、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシラート塩およびシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート塩は、シスまたはトランス配置の何れかに配置された2つのカルボキシラート部分を有することができるが、シス配置が好ましい。
【0059】
[0044]成核剤は、異相ポリマー組成物中に任意好適な量で存在することができる。当業者には理解されるように、組成物における使用に好適な成核剤の量は、いくつかの要因、たとえば成核剤の組成および異相ポリマー組成物の所望の特性に依存する。たとえば、成核剤は、異相ポリマー組成物中に、異相ポリマー組成物の全重量を基準として約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.075重量%以上、または約0.1重量%以上の量で存在することができる。成核剤は、異相ポリマー組成物中に、異相ポリマー組成物の全重量を基準として約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、または約0.3重量%以下の量で存在することができる。ある特定の可能な好ましい態様において、成核剤は、異相ポリマー組成物中に、異相ポリマー組成物の全重量を基準として約0.01~約1重量%、約0.05~約0.5重量%、約0.075~約0.4重量%、または約0.1~約0.3重量%の量で存在する。
【0060】
[0045]組成物は、異相ポリマー組成物を含み、方法の1工程は、異相ポリマー組成物を用意することを伴う。異相ポリマー組成物は、好ましくは異相ポリオレフィンポリマー組成物である。本発明の方法に従い有利に改質することができる対象の異相ポリオレフィンポリマーは、プロピレンポリマー相、およびエチレンポリマー相という、少なくとも2つの異なる相を特徴とする。プロピレンポリマー相は、好ましくは、ポリプロピレンホモポリマー、ならびにプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4~C10α-オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含む。エチレンポリマー相は、好ましくは、エチレンホモポリマー、およびエチレンとC3~C10α-オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含む。エチレンポリマー相のエチレン含有量は、好ましくは少なくとも8重量%である。エチレン相がエチレンとC3~C10α-オレフィンとのコポリマーである場合、エチレン相のエチレン含有量は、8~90重量%の範囲とすることができる。一態様において、エチレン相のエチレン含有量は、好ましくは少なくとも50重量%である。プロピレンポリマー相またはエチレンポリマー相の何れかは、組成物の連続相を形成することができ、他方は、組成物の離散または分散相を形成する。たとえば、エチレンポリマー相は、不連続相となることができ、ポリプロピレンポリマー相は、連続相となることができる。本発明の一態様において、プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、好ましくはエチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも多い。
【0061】
[0046]異相ポリマー組成物中のプロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の相対濃度は、広い範囲に亘って変化する可能性がある。例として、エチレンポリマー相は、組成物中のプロピレンポリマーとエチレンポリマーの全重量の5~80重量%を構成することができ、プロピレンポリマー相は、組成物中のプロピレンポリマーとエチレンポリマーの全重量の20~95重量%を構成することができる。
【0062】
[0047]本発明の様々な態様において、(i)エチレン含有量は、異相組成物中のプロピレンポリマーとエチレンポリマーの全含有量を基準として5~75重量%、さらには5~60重量%の範囲とすることができ、(ii)エチレンポリマー相は、エチレン-プロピレンもしくはエチレン-オクテンエラストマーとすることができ、および/または(iii)プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、80重量%以上とすることができる。
【0063】
[0048]本発明の方法は、ポリプロピレンインパクトコポリマーの改質に特に有用である。好適なインパクトコポリマーは、(i)ポリプロピレンホモポリマー、ならびにプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4~C10α-オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるポリプロピレンポリマーを含む連続相と、(ii)エチレンとC3~C10α-オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエラストマーエチレンポリマーを含む不連続相とを特徴とすることができる。好ましくは、エチレンポリマーは、8~90重量%のエチレン含有量を有する。
【0064】
[0049]プロピレンインパクトコポリマーに関する本発明の様々な態様において、(i)不連続相のエチレン含有量は、8~80重量%とすることができ、(ii)異相組成物のエチレン含有量は、組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーを基準として5~30重量%とすることができ;(iii)連続相のプロピレン含有量は、80重量%以上とすることができ、および/または(iv)不連続相は、組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの5~35重量%とすることができる。
【0065】
[0050]改質することができる異相ポリオレフィンポリマーの例は、比較的硬質のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(連続相)とエチレン-プロピレンゴム(EPR)粒子の微細分散相とを特徴とするインパクトコポリマーである。そのようなポリプロピレンインパクトコポリマーは、2段階プロセスで作製することができ、その場合、ポリプロピレンホモポリマーをまず重合させ、エチレン-プロピレンゴムを第2の段階で重合させる。あるいは、インパクトコポリマーは、当技術分野で公知のように、3以上の段階で作製することができる。好適な方法は、下記の参照文献に見出すことができる:米国特許第5,639,822号および米国特許第7,649,052B2号。ポリプロピレンインパクトコポリマーを作製するための好適な方法の例は、業界においてSpheripol(登録商標)、Unipol(登録商標)、Mitsui法、Novolen法、Spherizone(登録商標)、Catalloy(登録商標)、Chisso法、Innovene(登録商標)、Borstar(登録商標)、およびSinopec法の商用名により公知である。これらの方法は、不均一もしくは均一系チーグラー-ナッタ触媒またはメタロセン触媒を使用して重合を達成することもできる。
【0066】
[0051]異相ポリマー組成物は、2種以上のポリマー組成物を溶融混合することによって形成することができ、これは、固体状態の少なくとも2つの異なる相を形成する。例として、異相組成物は、3つの異なる相を含むことができる。異相ポリマー組成物は、溶融混合2種類以上のリサイクルポリマー組成物(たとえば、ポリオレフィンポリマー組成物)の溶融混合から生じさせることもできる。したがって、「異相ポリマー組成物を用意する工程」というフレーズは、ここで使用される場合、既に異相であるポリマー組成物を方法で利用することに加え、方法を行う際に2種以上のポリマー組成物を溶融混合し、2種以上のポリマー組成物が異相系を形成することも含む。たとえば、異相ポリマー組成物は、ポリプロピレンホモポリマーとエチレン/α-オレフィンコポリマー、たとえばエチレン/ブテンエラストマーとを溶融混合することによって作製することができる。好適なエチレン/α-オレフィンコポリマーの例は、Engage(商標)、Exact(登録商標)、Vistamaxx(登録商標)、Versify(商標)、INFUSE(商標)、Nordel(商標)、Vistalon(登録商標)、Exxelor(商標)、およびAffinity(商標)の名称で市販されている。さらに、理解できることであるが、異相ポリマー組成物を形成するポリマー成分の混和性は、組成物を系中の連続相の融点以上に加熱すると変化する可能性があるが、それでも系は、冷えて固化すると2つ以上の相を形成する。異相ポリマー組成物の例は、米国特許第8,207,272B2号および欧州特許第EP1391482B1号に見出すことができる。
【0067】
[0052]バルク異相ポリマー組成物のある特定の特性(相溶化剤での処理の前に測定されるような)は、相溶化剤の組み込みによって実現される物理的な特性の改善(たとえば、衝撃強度の上昇)に影響を与えることが発見されている。特に、異相ポリマー組成物のバルク特性に関しては、エチレンは、好ましくは異相ポリマー組成物の全重量の約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、または約9重量%以上を構成する。異相ポリマー組成物は、好ましくは約10重量%以上、約12重量%以上、約15重量%以上、または約16重量%以上のキシレン可溶分または非晶質含有量を含有する。さらに、異相ポリマー組成物中に存在するエチレンの約5モル%以上、約7モル%以上、約8モル%以上、または約9モル%以上は、好ましくはエチレントライアド(即ち連続して結合した3つのエチレンモノマー単位のグループ)に存在する。最後に、異相ポリマー組成物中のエチレンラン(連続して結合したエチレンモノマー単位)の数平均連鎖長は、好ましくは約3以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、または約4以上である。エチレントライアド中のエチレンのモル%およびエチレンランの数平均連鎖長は、両方とも当技術分野で公知の13C核磁気共鳴(NMR)技術を使用して測定することができる。異相ポリマー組成物は、この段落に記載した特性のうちの何れか1つを呈することができる。好ましくは、異相ポリマー組成物は、この段落に記載した特性のうちの2つ以上を呈する。最も好ましくは、異相ポリマー組成物は、この段落に記載した特性の全てを呈する。
【0068】
[0053]異相ポリマー組成物のエチレン相のある特定の特性(相溶化剤での処理の前に測定されるような)は、相溶化剤の組み込みによって実現される物理的な特性の改善(たとえば、衝撃強度の上昇)に影響を与えることが発見されている。組成物のエチレン相の特性は、任意好適な技術、たとえば昇温溶離分別(TREF)および得られた画分の13CNMR分析を使用して測定することができる。好ましい態様において、異相ポリマー組成物の60℃TREF画分中に存在するエチレンの約30モル%以上、約40モル%以上、または約50モル%以上は、エチレントライアドに存在する。別の好ましい態様において、異相ポリマー組成物の80℃TREF画分中に存在するエチレンの約30モル%以上、約40モル%以上、または約50モル%以上は、エチレントライアドに存在する。別の好ましい態様において、異相ポリマー組成物の100℃TREF画分中に存在するエチレンの約5モル%以上、約10モル%以上、約15モル%以上、または約20モル%以上は、エチレントライアドに存在する。異相ポリマー組成物の60℃TREF画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長は、好ましくは約3以上、約4以上、約5以上、または約6以上である。異相ポリマー組成物の80℃TREF画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長は、好ましくは約7以上、約8以上、約9以上、または約10以上である。異相ポリマー組成物の100℃TREF画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長は、好ましくは約10以上、約12以上、約15以上、または約16以上である。異相ポリマー組成物は、先に記載のTREF画分特性のうちの何れか1つ、または先に記載のTREF画分特性の任意好適な組合せを呈することができる。好ましい態様において、異相ポリマー組成物は、先に記載のTREF画分特性の全て(即ち、先に記載の60℃、80℃、および100℃TREF画分に関するエチレントライアドおよび数平均連鎖長特性)を呈する。
【0069】
[0054]先行する2段落に記載の特性を呈する異相ポリマー組成物は、これらの特性を呈さない異相ポリマー組成物よりも相溶化剤の添加に対してより好ましく応答することが観察されている。特に、これらの特性を呈する異相ポリマー組成物は、本発明の方法に従って処理すると、衝撃強度の著しい改善を示すが、これらの特性を呈さない異相ポリマー組成物は、同じ条件下で処理してもそのような著しい改善を示さない。この異なる反応および性能は、異なるポリマー組成物がほぼ同じ総エチレン含有量を有する(即ち、各ポリマー組成物中のエチレンの割合がほぼ同じ)場合でも観察されている。この結果は驚くべきものであり、予期されていなかった。
【0070】
[0055]本発明の一態様において、異相ポリマー組成物は、不飽和結合を有するポリオレフィン構成要素を何ら有していない。特に、プロピレン相中のプロピレンポリマーとエチレン相中のエチレンポリマーは、両方とも不飽和結合を含まない。
【0071】
[0056]本発明の別の態様において、プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー成分に加えて、異相ポリマー組成物は、エラストマー、たとえばエラストマーエチレンコポリマー、エラストマープロピレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、たとえばスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)およびスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、プラストマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、LLDPE、LDPE、VLDPE、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ならびに非晶質ポリオレフィンをさらに含むことができる。ゴムは、未使用であっても、リサイクルされたものであってもよい。
【0072】
[0057]上記のように、方法は、相溶化剤と異相ポリマー組成物とを混合する工程を伴う。相溶化剤と異相ポリマー組成物とは、任意好適な技術または装置を使用して混合することができる。本発明の一態様において、異相ポリマー組成物は、組成物中に生成されたフリーラジカルの存在下でポリマー組成物を相溶化剤と溶融混合することによって改質される。溶融混合工程は、組成物が組成物の主要なポリオレフィン成分の溶融温度を超える温度に加熱され、溶融状態にある間に混合されるような条件下で行われる。好適な溶融混合プロセスの例としては、たとえば押出機での溶融配合、射出成形、およびバンバリーミキサーまたは混練機での混合が挙げられる。例として、混合物は、160℃~300℃の温度で溶融混合することができる。特に、プロピレンインパクトコポリマーは、180℃~290℃の温度で溶融混合することができる。異相ポリマー組成物(プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相)、相溶化剤、および有機過酸化物は、押出機中、組成物中の全てのポリオレフィンポリマーの溶融温度を超える温度で溶融配合することができる。
【0073】
[0058]本発明の別の態様において、異相ポリマー組成物は、溶媒に溶解させることができ、相溶化剤は、結果として得られるポリマー溶液に添加することができ、フリーラジカルは、溶液中で生成することができる。本発明の別の態様において、Macromolecules、「Ester Functionalization of polypropylene via Controlled Decomposition of Benzoyl Peroxide during Solid-State Shear Pulverization」-vol.46、pp.7834-7844(2013)に記載されているように、相溶化剤は、固体状態の異相ポリマー組成物と組み合わせることができ、フリーラジカルは、固体状態せん断粉砕中に生成することができる。
【0074】
[0059]従来の処理設備を使用して、混合物に添加されるフリーラジカル、たとえば有機過酸化物、またはin-situで、たとえばせん断、UV光などによって生成されるフリーラジカルの何れかの存在下で、異相ポリマー組成物(たとえば、プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー)と相溶化剤とを共に単一の工程で混合してもよい。それにもかかわらず、ここに記載されているように、複数の工程において様々な順序で成分の様々な組合せを混合し、続いて相溶化剤がポリオレフィンポリマーと反応する条件下に混合物を置くことも可能である。
【0075】
[0060]たとえば、相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤(化合物を使用する場合)は、一組成物またはマスターバッチ組成物の形態でポリマーに添加することができる。好適なマスターバッチ組成物は、相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤を担体樹脂に含むことができる。相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤は、マスターバッチ組成物中に、組成物の全重量を基準として約1重量%~約80重量%の量で存在することができる。任意好適な担体樹脂、たとえば任意好適な熱可塑性ポリマーをマスターバッチ組成物に使用することができる。たとえば、マスターバッチ組成物用の担体樹脂は、ポリオレフィンポリマー、たとえばポリプロピレンインパクトコポリマー、ポリオレフィンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、直鎖状低密度ポリエチレンポリマー、ポリオレフィンワックス、またはこのようなポリマーの混合物とすることができる。担体樹脂はまた、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマーまたはエチレンポリマーと同じまたは類似のプロピレンポリマーまたはエチレンポリマーとすることができる。このようなマスターバッチ組成物は、最終使用者が異相ポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマー対エチレンポリマーの比を操作することを可能にする。これは、所望の一組の特性(たとえば、衝撃と剛性のバランス)を達成するために、最終使用者が商用樹脂グレードのプロピレン対エチレン比を改変する必要がある場合に好ましいことがある。
【0076】
[0061]方法は、結果として得られる相溶化剤と異相ポリマー組成物との混合物において、フリーラジカルを生成する工程をさらに含む。より具体的には、この工程は、異相ポリマー組成物のプロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相においてフリーラジカルを生成することを伴う。フリーラジカルは、異相ポリマー組成物中で任意好適な手段によって生成することができる。
【0077】
[0062]本発明では、異相ポリマー組成物における相溶化剤とプロピレンおよびエチレンポリマーとの反応を促進するのに十分なフリーラジカルを生成しながら、ポリマー鎖の切断を引き起こし、それによって異相ポリマー組成物のMFRに良い影響を与える(即ち、上昇させる)ために、フリーラジカル発生剤が利用される。フリーラジカル発生剤は、化合物、たとえば有機過酸化物またはビス-アゾ化合物とすることができ、あるいは、フリーラジカルは、相溶化剤と異相ポリマー組成物との混合物に、超音波、せん断、電子ビーム(たとえばβ線)、光(たとえばUV光)、熱および放射線(たとえばγ線およびX線)、または前述の組合せを施すことによって発生させてもよい。
【0078】
[0063]1つ以上のO-O官能基を有する有機過酸化物は、本発明の方法におけるフリーラジカル発生剤として特に有用である。このような有機過酸化物の例としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3,3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-(エチルアセタート)-1,2,4,5-テトラオキシシクロノナン、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、ジクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ-t-ブチルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルジペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド;t-ブチルヒドロキシエチルペルオキシド、ジ-t-アミルペルオキシドおよび2,5-ジメチルヘキセン-2,5-ジペルイソノナノアート、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、tert-アミルペルネオデカノアート、tert-ブチル-ペルネオデカノアート、tert-ブチルペルピバラート、tert-アミルペルピバラート、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノアート、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、tert-ブチルペルイソブチラート、tert-ブチルペルマレアート、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、tert-ブチルペルイソノナオアート、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジベンゾアート、tert-ブチルペルアセタート、tert-アミルペルベンゾアート、tert-ブチルペルベンゾアート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシド、3-tert-ブチルペルオキシ-3-フェニルフタリド、ジ-tert-アミルペルオキシド、α,α’-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,5-ジメチル-1,2-ジオキソラン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキシン2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、p-メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノ-α-ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、またはtert-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0079】
[0064]有機過酸化物は、ポリマー組成物中に任意好適な量で存在することができる。有機過酸化物の好適な量は、いくつかの要因、たとえば組成物に使用される特定のポリマー、異相ポリマー組成物の初期MFR、および異相ポリマー組成物のMFRの所望の変化に依存する。好ましい態様において、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量を基準として約10ppm以上、約50ppm以上、または約100ppm以上の量で存在することができる。別の好ましい態様において、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量を基準として約2重量%(20,000ppm)以下、約1重量%(10,000ppm)以下、約0.5重量%(5,000ppm)以下、約0.4重量%(4,000ppm)以下、約0.3重量%(3,000ppm)以下、約0.2重量%(2,000ppm)以下、または約0.1重量%(1,000ppm)以下の量で存在することができる。したがって、一連の好ましい態様において、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量を基準として約10~約20,000ppm、約50~約5,000ppm、約100~約2,000ppm、または約100~約1,000ppmの量で存在することができる。有機過酸化物の量はまた、先に記載したように、相溶化剤と過酸化物結合のモル比の点から表すことができる。
【0080】
[0065]好適なビスアゾ化合物も、フリーラジカル源として利用してもよい。このようなアゾ化合物としては、たとえば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチラート、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチル-プロパン)、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチラミジン)、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、および2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}が挙げられる。
【0081】
[0066]フリーラジカル発生剤として有用な他の化合物としては、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンおよび立体障害ヒドロキシルアミンエステルが挙げられる。先に記載した様々なフリーラジカル発生剤は、単独で利用しても、組み合わせて利用してもよい。
【0082】
[0067]先に一般的に記載したように、プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相中に生成させたフリーラジカルの少なくとも一部は、相溶化剤上に存在する反応性官能基と反応する。具体的には、フリーラジカルと反応性官能基は、ラジカル付加反応において反応し、それにより相溶化剤をポリマーに結合する。相溶化剤がプロピレンポリマー相中のフリーラジカルおよびエチレンポリマー相中のフリーラジカルと反応する場合、次いで相溶化剤は、この二相間の結合または架橋をもたらす。何らかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の間のこの結合または架橋が、本発明の方法に従い改質された異相ポリマー組成物で観察される強度の上昇の要因であると考えられる。
【0083】
[0068]本発明の異相ポリマー組成物は、安定剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、抗酸化剤、難燃剤、酸中和剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、傷防止剤、加工助剤、発泡剤、着色剤、乳白剤、清澄剤、および/または成核剤を含む、熱可塑性の組成物に従来から使用されている様々な種類の添加剤と相溶性である。さらなる例として、組成物は、賦形剤、たとえば炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、ガラス球、無機ウィスカ、たとえばMilliken Chemical、USAから入手可能なHyperform(登録商標)HPR-803i、オキシ硫酸マグネシウムウィスカ、硫酸カルシウムウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、雲母、珪灰石、クレイ、たとえばモンモリロナイト、および生物由来または天然の賦形剤を含むことができる。添加剤は、改質された異相ポリマー組成物中の全成分の75重量%以下を構成することができる。
【0084】
[0069]本発明の異相ポリマー組成物は、射出成形、薄肉射出成形、一軸配合、二軸配合、バンバリー混合、共混練機混合、2本ロール粉砕、シート押出、繊維押出、フィルム押し出し、パイプ押し出し、異形押出、押出コーティング、押出ブロー成形、射出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、圧縮成形、押出圧縮成形、圧縮ブロー成形、圧縮延伸ブロー成形、熱成形、および回転成形を含むがこれに限定されない従来のポリマー加工用途で使用することができる。本発明の異相ポリマー組成物を使用して作製される物品は、本発明の異相ポリマー組成物を含有する1つまたは任意好適な数の複数の層を含む、複数の層で構成されるものとすることができる。例として、典型的な最終使用製品としては、容器、包装、自動車部品、ボトル、膨張または発泡物品、家電部品、蓋、カップ、家具、家庭用品、バッテリーケース、枠箱、パレット、フィルム、シート、繊維、パイプ、および回転成形部品が挙げられる。
【0085】
[0070]下記の例は、先に記載の主題をさらに例示するが、当然ながら、いかなる形でもその範囲を限定するものとみなすべきではない。下記の方法は、言及されていない限り、下記の例に記載の特性を判定するために使用した。
【0086】
[0071]組成物のそれぞれは、約2100rpmのブレード速度で約2分間Henschel高強度ミキサーを使用するか、密閉容器中でおよそ1分間低強度混合して成分をブレンドすることによって配合した。
【0087】
[0072]組成物は、スクリュー直径18mmおよび長さ/直径比40:1のLeistritz ZSE-18共回転完全噛み合い型平行2軸押出機を使用して溶融配合した。押出機のバレル温度は、およそ165℃~およそ175℃の範囲とし、スクリュー速度はおよそ500rpmに設定し、供給量は5kg/時間であり、結果としておよそ192℃の溶融物温度となった。各ポリプロピレン組成物の押出物(ストランドの形態)を水浴で冷却し、続いてペレット化した。
【0088】
[0073]次いで、ペレット化した組成物を使用して、スクリュー直径25.4mmの40トンArburg射出成形機での射出成形によりプラークとバーを形成した。様々なサンプルを用い、バレル温度230℃、射出速度:2.4cc/秒、背圧:7bars、冷却:21℃、サイクル時間:27秒で50ミルのプラークを成形した。サンプルは、DSC分析に供した。
【0089】
[0074]ISOフレックスバーを、バレル温度210℃、射出速度:23.2cc/秒、背圧:7バール、冷却:40℃、サイクル時間:60.05秒で成形した。結果として得られたバーは、長さおよそ80mm、幅およそ10mm、厚さおよそ4.0mmであった。バーは、ISO法178に従って測定し、曲げ弾性率を判定した。
【0090】
[0075]バーのノッチ付きアイゾッド衝撃強度を、ISO法180/Aに従い測定した。ノッチ付きアイゾッド衝撃強度は、+23℃で状態調節したバーについて、+23℃で測定した。ある特定のサンプルについては、0℃でもノッチ付きアイゾッド衝撃強度を測定した。
【0091】
[0076]示差走査熱量測定を、ASTME794に従って遂行し、結晶化のピークTcとΔHを測定した。DSCを、Perkin Elmerの通気式の皿と蓋を備えたMettler Toledo DSC700を使用して測定した。簡単に説明すると、およそ2.1~2.2mgのサンプルを、220℃に到達するまで20℃/分で50℃~220℃に加熱する。次いで、サンプルを220℃に2分間保持し、確実に溶融を完了させてから、20℃/分で50℃に冷却する。サンプルと空の対照皿とのエネルギーの差を、加熱時と冷却時の両方で測定する。
【0092】
例1
[0077]下記の例は、本発明に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0093】
[0078]以下の表1および2に記載するように、12種の異相ポリマー組成物を製造した。
【0094】
【0095】
[0079]これらの例で使用したポリプロピレンコポリマーは、ゴム含有量がおよそ14.5%のPrime Polymer J707Pである。Irganox(登録商標)1010は、BASFから入手可能な第1の抗酸化剤である。Irgafos(登録商標)168は、BASFから入手可能な第2の抗酸化剤である。DHT-4Vは、Kisuma Chemicalsから入手可能なハイドロタルサイトである。Varox DBPHは、R.T.Vanderbilt Companyから入手可能な有機過酸化物である。これらのサンプルの作製に使用した成核剤は、安息香酸ナトリウム(N.A.1)、ナトリウム2,2’メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファート(N.A.2)、および安息香酸ナトリウムとアルミニウム2,2’メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファートの混合物を含有する成核剤(N.A.3)である。相溶化剤(C.A.1)は、R301、R302、R303、およびR304がそれぞれ水素であり、R311およびR312がそれぞれフェニルである、上記式(EX)の化合物である。
【0096】
[0080]表1および2に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、先に記載したように、衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0097】
【0098】
【0099】
[0081]表3のデータは、成核剤を樹脂に添加することが、剛性(弦モジュラス)の上昇をもたらすことを示している。剛性改善の程度は、使用した成核剤に依存し、弱い成核剤(N.A.1)では改善の程度が小さく、強い成核剤(たとえば、N.A.2またはN.A.3)では、改善の程度が大きかった。しかし、成核剤のみを含有するサンプルはいずれも、耐衝撃性の上昇を呈さなかった。実際、C.S.4およびC.S.5は、C.S.1Aと比較して耐衝撃性の低下を実際には示した。
【0100】
[0082]C.S.1AとC.S.1Bとの比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらす。上昇の程度は、およそ42%である。驚くべきことに、表3に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.2をサンプル2と、C.S.3をサンプル3と、C.S.4をサンプル4と、C.S.5をサンプル5と比較すると、衝撃強度はそれぞれ68%、120%、413%、および414%上昇している。加えて、サンプル4および5は、ここでは、C.S.4およびC.S.5と比較して、破壊メカニズムの脆性から延性への変化を示す、望ましい部分的な破壊を呈している。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。さらに、この相乗効果は、異なる成核剤を使用した場合でも観察される。
【0101】
例2
[0083]下記の例は、本発明に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0102】
[0084]6種の異相ポリマー組成物を製造した。これらのサンプルの一般的配合を、表4に記載する。
【0103】
【0104】
[0085]サンプルの作製に使用した成核剤は、2つの異なる商業的供給源から入手可能なアルミニウム2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファート(N.A.4およびN.A.5)であった。相溶化剤は、例1からのC.A.1であった。
【0105】
[0086]表4および5に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、先に記載したように衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0106】
【0107】
【0108】
[0087]C.S.6Aは、過酸化物を添加していない樹脂であり、最低のMFRと中程度の剛性を示す。過酸化物を添加する(C.S.6B)と、MFRが上昇し、剛性と耐衝撃性の両方が低下する。追加の過酸化物と共に相溶化剤(C.S.6C)を添加すると、耐衝撃性は上昇を示すが、剛性はさらにわずかに低下する。過酸化物と共に成核剤を添加する(C.S.7およびC.S.8)と、剛性は上昇を示すが、耐衝撃性は、未使用の樹脂(C.S.6A)より低いままである。
【0109】
[0088]C.S.6BとC.S.6Cとの比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらす。上昇の程度は、およそ31%である。驚くべきことに、表6に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.7をサンプル7と、C.S.8をとサンプル8と比較すると、衝撃強度は、それぞれ86%、および340%上昇している。加えて、サンプル8は、ここでは、C.S.8と比較して、破壊メカニズムの脆性から延性への変化を示す、望ましい部分的な破壊を呈している。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。さらに、この相乗効果は、異なる成核剤を使用した場合でも観察される。
【0110】
例3
[0089]下記の例は、本発明の方法に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0111】
[0090]12種の異相ポリマー組成物を製造した。これらのサンプルの一般的配合を、表7に記載する。
【0112】
【0113】
[0091]表7および8に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、先に記載したように衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0114】
[0092]サンプルの作製に使用した成核剤は、タルク(Imerysから入手可能なJetfine 3CA)(N.A.6)、アルミニウム4-tert-ブチルベンゾアート(N.A.7)、カルシウムcis-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラートを含有する成核剤(N.A.8)、ジナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシラートとナトリウム2,2’メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファートの混合物を含有する成核剤(N.A.9)、およびジナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシラート(N.A.10)であった。
【0115】
【0116】
【0117】
[0093]表9のデータは、成核剤を樹脂に添加することが、剛性(弦モジュラス)の上昇をもたらすことを示している。剛性改善の程度は、使用した成核剤に依存する。しかし、成核剤のみを含有するサンプルはいずれも、耐衝撃性の上昇を呈さなかった。実際、C.S.11およびC.S.12は、C.S.9Aと比較して耐衝撃性の低下を実際には示した。
【0118】
[0094]C.S.9AとC.S.9Bとの比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらす。上昇の程度は、およそ23%である。驚くべきことに、表9に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.10をサンプル10と、C.S.11をサンプル11と、C.S.12をサンプル12と、C.S.13をサンプル13と、C.S.14をサンプル14と比較すると、衝撃強度はそれぞれ80%、78%、118%、326%、および76%上昇した。加えて、サンプル13、は、ここでは、C.S.13と比較して、破壊メカニズムの脆性から延性への変化を示す、望ましい部分的な破壊を呈している。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。さらに、この相乗効果は、異なる成核剤を使用した場合でも観察される。
【0119】
例4
[0095]下記の例は、先の例で使用したものとは異なる種類の衝撃改質剤を使用し、本発明に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0120】
[0096]10種の異相ポリマー組成物を製造した。これらのサンプルの一般的配合を、表10に記載する。
【0121】
【0122】
[0097]表10および11に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、先に記載したように衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0123】
【0124】
【0125】
[0098]表12のデータは、ここでも、成核剤を添加すること(相溶化剤の非存在下で)が、耐衝撃性にほとんど、あるいはまったく影響を与えることなく剛性(弦モジュラス)の上昇をもたらすことを示している。C.S.15AとC.S.15Bとの比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらす。上昇の程度は、およそ48%である。驚くべきことに、表12に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.16をサンプル16と、C.S.17をサンプル17と、C.S.18をサンプル18と、C.S.19をサンプル19と比較すると、衝撃強度は、それぞれ129%、71%、99%、および106%上昇した。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。さらに、この相乗効果は、異なる成核剤を使用した場合でも観察される。
【0126】
例5
[0099]下記の例は、さらに別の衝撃改質剤を使用し、本発明の方法に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0127】
[0100]10種の異相ポリマー組成物を製造した。これらのサンプルの一般的配合を、表13に記載する。
【0128】
【0129】
[0101]表13および14に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、上記のように衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0130】
【0131】
【0132】
[0102]表15のデータは、成核剤を添加すること(相溶化剤の非存在下で)が、耐衝撃性にほとんど、あるいはまったく影響を与えることなく剛性(弦モジュラス)の上昇をもたらすことを示している。C.S.20AとC.S.20Bとの比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらす。上昇の程度は、およそ37%である。驚くべきことに、表15に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.21をサンプル21と、C.S.22をサンプル22と、C.S.23をサンプル23と、C.S.24をサンプル24と比較すると、衝撃強度は、それぞれ109%、45%、321%、および346%上昇した。加えて、サンプル23および24は、ここでは、C.S.23およびC.S.24と比較して、破壊メカニズムの脆性から延性への変化を示す、望ましい部分的な破壊を呈している。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。さらに、この相乗効果は、異なる成核剤を使用した場合でも観察される。
【0133】
例6
[0103]下記の例は、3種類の異なる衝撃改質剤を使用し、本発明に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0134】
[0104]12種の異相ポリマー組成物を製造した。これらのサンプルの一般的配合を、表16に記載する。
【0135】
【0136】
[0105]表16および17に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、先に記載したように衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0137】
【0138】
【0139】
[0106]表18のデータは、成核剤を添加すること(相溶化剤の非存在下で)が、耐衝撃性にほとんど、あるいはまったく影響を与えることなく剛性(弦モジュラス)の上昇をもたらすことを示している。C.S.25AとC.S.25B(Vistamaxx 6202を含む調合物)、C.S.27AとC.S.27B(Kraton G6142を含む調合物)、およびC.S.29AとC.S.29B(Infuse 9817を含む調合物)との比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらす。上昇の程度は、それぞれ約27%、39%、および47%である。驚くべきことに、表18に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.26をサンプル26と、C.S.28をサンプル28と、C.S.30をサンプル30と比較すると、衝撃強度は、それぞれ290%、256%、および362%上昇した。さらに、サンプル26、28、および30は、C.S.25、C.S.27、およびC.S.29と比較して、破壊メカニズムの脆性から延性への変化を示す、望ましい部分的な破壊を呈した。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。
【0140】
例7
[0107]下記の例は、異なる種類のポリプロピレンを使用し、追加の衝撃改質剤を添加せずに、本発明に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0141】
[0108]6種の異相ポリマー組成物を製造した。これらのサンプルの一般的配合を、表19に記載する。
【0142】
【0143】
[0109]表19および20に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、先に記載したように衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0144】
【0145】
【0146】
[0110]樹脂は、4g/10分の公称MFRを有する。過酸化物のみを添加すると、MFRはおよそ8g/10分に上昇した。相溶化剤と追加の過酸化物を添加すると、MFRはおよそ10g/10分に上昇し、剛性は本質的に変化しなかった。成核剤の添加(相溶化剤の非存在下)は、剛性の上昇をもたらしたが、耐衝撃性に影響はなかった。
【0147】
[0111]C.S.31AとC.S.31Bとの比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらす。上昇の程度は、約159%である。驚くべきことに、表21に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.32をサンプル32と、C.S.33をサンプル33と比較すると、衝撃強度は、それぞれ468%、および490%上昇した。加えて、サンプル32および33は、C.S.32およびC.S.33と比較して、破壊メカニズムの脆性から延性への変化を示す、望ましい部分的な破壊を呈した。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。さらに、この相乗効果は、異なる成核剤を使用した場合でも観察される。
【0148】
例8
[0112]下記の例は、本発明に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0149】
[0113]4種の異相ポリマー組成物を製造した。これらのサンプルの一般的配合を、表22に記載する。
【0150】
【0151】
[0114]表22および23に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、先に記載したように衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0152】
【0153】
【0154】
[0115]C.S.34AとC.S.34Bとの比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらす。上昇の程度は、およそ24%である。驚くべきことに、表24に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.35をサンプル35と比較すると、衝撃強度は、290%上昇している。加えて、サンプル35は、C.S.35と比較して、破壊メカニズムの脆性から延性への変化を示す、望ましい部分的な破壊を呈した。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。
【0155】
例9
[0116]下記の例は、本発明に従い達成される異相ポリオレフィン組成物の改質と、性能向上を実証する。
【0156】
[0117]4種の異相ポリマー組成物を製造した。これらのサンプルの一般的配合を、表25に記載する。
【0157】
【0158】
[0118]表22および23に列挙した組成物のそれぞれを、先に記載した手順に従い混合し、押し出し、射出成形した。結果として得られたペレットをメルトフローレート試験に供し、バーは、先に記載したように衝撃強度、曲げ弾性率および熱的特性について試験を行った。
【0159】
【0160】
【0161】
[0119]未使用の樹脂は、10g/10分の公称MFRを有する。過酸化物を添加すると、MFRはおよそ22g/10分に上昇した。相溶化剤と追加の過酸化物を添加すると、MFRはおよそ25g/10分に上昇し、剛性はわずかな低下を示した。成核剤の添加は、剛性(弦モジュラス)の上昇をもたらしたが、耐衝撃性への影響は最小限であった。
【0162】
[0120]室温と0℃の両方で試験を行った場合、C.S.36AとC.S.36Bとの比較によって示されるように、相溶化剤の添加は、衝撃強度の上昇をもたらした。上昇の程度は、室温で約51%であり、0℃で17%である。驚くべきことに、表27に示すように、相溶化剤と成核剤の両方を含有するサンプルは、衝撃強度のなおさらなる上昇を呈した。C.S.37をサンプル37と比較すると、衝撃強度は室温で355%、0℃で37%上昇した。加えて、サンプル37は、C.S.37と比較して、室温で、破壊メカニズムの脆性から延性への変化を示す、望ましい部分的な破壊を呈した。成核剤の添加は、典型的には耐衝撃性には影響しないか、耐衝撃性のわずかな低下にさえ繋がるため、サンプルの耐衝撃性のこれらの劇的な上昇は、予想外である。これらの結果は、相溶化剤と成核剤との組合せに起因する相乗効果を実証していると考えられる。
【0163】
[0121]ここに引用した刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別かつ具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体がここに記載された場合と同程度に参照によりここに組み込まれる。
【0164】
[0122]本願の主題を説明する文脈における(とりわけ下記の特許請求の範囲の文脈における)用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」および同様の指示対象の使用はここで別段の指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含するように解釈するべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」の意味)として解釈すべきである。ここでの値の範囲の列挙は、ここで別段の指示がない限り、範囲内にあるそれぞれ別の値を個別に参照する簡単な方法として役立つように単に意図されており、それぞれの別の値は、ここで個別に引用されたかのように本明細書に組み込まれる。ここで記載した方法は全て、ここで別段の指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、任意好適な順序で遂行することができる。ここで提供されるあらゆる例、または例示的な言い回し(たとえば、「たとえば(such as)」)の使用は、単に本出願の主題をよりよく解明するように意図されており、特に特許請求しない限り主題の範囲を限定するものではない。本明細書内の言語は、特許請求していない何らかの要素をここで記載されている主題の実施に不可欠なものとして示しているように解釈すべきでない。
【0165】
[0123]特許請求した主題を実施するために発明者らに公知の最良のモードを含む、本願の主題の好ましい態様がここに記載されている。それらの好ましい態様の変形は、前述の説明を読むことにより、当業者には明らかとなり得る。発明者らは、当業者がこのような変形を適宜使用することを期待し、また発明者らは、ここに具体的に記載されている以外の方法でここに記載されている主題が実施されることを意図している。したがって、この開示は、準拠法によって認められている限り、ここに添付された特許請求の範囲に列挙された主題の全ての変更および均等物を含む。さらに、その全ての可能な変形における前述の要素の組合せはいずれも、ここで別段の指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、本開示に包含される。
【国際調査報告】