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特表2022-522725アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20220413BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220413BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220413BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20220413BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220413BHJP
   C07K 14/765 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61K47/64
A61P19/08
A61P19/10
A61P35/00
A61K9/08
C07K14/47
C07K19/00
C07K14/765
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550273
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 KR2020002825
(87)【国際公開番号】W WO2020175935
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0023376
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOONG PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】35-14,Jeyakgongdan 4-gil,Hyangnam-eup,Hwaseong-si,Gyeonggi-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ゴ ジョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ギム ソンソブ
(72)【発明者】
【氏名】アン ギョンフン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB11
4C076CC09
4C076CC41
4C076EE59Q
4C076FF63
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA18
4C084CA53
4C084DC50
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA12
4C084ZA961
4C084ZA971
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA70
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む、骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記アルブミンは、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)である、請求項1に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記ヒト血清アルブミンは、前記Slit3タンパク質のLRRD2のN-末端に結合されている、請求項2に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記ヒト血清アルブミンは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記Slit3タンパク質のLRRD2は、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記アルブミンと前記Slit3タンパク質のLRRD2の間にリンカーをさらに含む、請求項1に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記リンカーは、(GGGGS)nであり、ここで、nは1~10の整数である、請求項6に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
注射剤として投与されている、請求項1に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記骨関連疾患は、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨折、骨損失、変形性関節症(osteoarthritis)、骨転移がん及びパジェット病(Paget’s disease)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項1に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Slitタンパク質は、神経系の発生過程の間にニューロンとエクソンの移動を調節するものとしてよく知られているタンパク質である。Slitタンパク質はRobo受容体と作用して生理学的活性を調節し得、心臓、肺、腎臓、乳房組織など様々な組織において様々な細胞内過程を調節する因子として役割を果たすことが知られており、最近、細胞の成長、付着能及び移動能の調節に重要な役割を果たすことが報告され、細胞の分化過程における移動及びがんの発生と転移過程においてSlitタンパク質が関与できることが報告されている。
【0003】
このような背景下で、本発明者らは、Slit3のLRRD2が細胞及び動物モデルにおいて骨形成を増加させ、骨吸収を減少させ、骨粗しょう症の発病率と負の相関関係を有しており、骨折または骨粗しょう症の予防または治療用組成物及び骨折または骨粗しょう症の発生リスクを予測するためのバイオマーカーとして有用に使用できることを明らかにした(大韓民国登録特許第10-1617497号)。LRRD2は、注射剤であって、患者が病院に来院して投与を受けなければならないが、生体内半減期が非常に短く、その薬効が発揮されるためには、投与周期が短くなるしかなく、これによる過度の薬剤の使用により効能が減少する問題が発生するものと予想される。
【0004】
そこで、本発明者らは、LRRD2の生体内半減期を増進することにより、その効能を改善させたHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)を開発し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、Slit3タンパク質のLRRD2の骨関連疾患の予防または治療効能を改善させた組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0007】
本発明の好適な一実施例によれば、前記アルブミンは、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)であってもよい。
【0008】
本発明の好適なさらに他の一実施例によれば、前記ヒト血清アルブミンは、Slit3タンパク質のLRRD2のN-末端に結合されたものであってもよい。
【0009】
本発明の好適なさらに他の一実施例によれば、前記ヒト血清アルブミンは、配列番号2のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0010】
本発明の好適な他の一実施例によれば、前記Slit3タンパク質のLRRD2は、配列番号3のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0011】
本発明の好適なさらに他の一実施例によれば、前記アルブミンとSlit3タンパク質のLRRD2間にリンカーをさらに含んでもよい。
【0012】
本発明の好適な他の一実施例によれば、前記リンカーは、(GGGGS)n(配列番号5)であり、ここで、nは、1~10の整数であってもよい。
【0013】
本発明の好適なさらに他の一実施例によれば、前記薬学組成物は、注射剤として投与されてもよい。
【0014】
本発明の好適な他の一実施例によれば、前記骨関連疾患は、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨折、骨損失、変形性関節症(osteoarthritis)、骨転移がん及びパジェット病(Paget’s disease)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2は、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と同じ細胞学的効能を示し、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と比較し、生体内半減期が著しく増加し、骨関連疾患をより効果的に予防または治療しうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のアルブミンがSlit3 LRRD2のN-末端に結合された融合タンパク質の構成及びそのアミノ酸配列を示す。
図2図2は、SPシスタチンS-HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を分離精製後、SDS-PAGEを行った結果を示したものである。
図3図3は、様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の受容体結合能をグラフで示したものである。
図4図4は、様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の処理による骨芽細胞の移動能を確認した結果を示したものである。
図5図5は、様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の処理による破骨細胞の分化能を確認した結果を示したものである。
図6図6は、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の処理による骨芽細胞の移動能(A)、骨芽細胞のβ-カテニン活性(B)及び破骨細胞分化能(C)を確認した結果を示したものである。
図7図7は、絶食させた雄ICRマウスにおいてSlit3 LRRD2(●、「Slit3」)とHSA-Slit3 LRRD2(■、「HSA-Slit3」)のIV投与後、Slit3 LRRD2の血漿濃度時間プロファイルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したように、Slit3タンパク質のLRRD2は、細胞及び動物モデルにおいて骨形成を増加させ、骨吸収を減少させることにより、骨折または骨粗しょう症の予防または治療に使用してもよいが、生体内半減期が非常に短く、その薬効が発揮されるためには、投与周期が短くなるしかなく、これによる過度の薬剤の使用により効能が減少する問題が発生するものと予想された。
【0018】
そこで、本発明者らは、LRRD2の生体内半減期を増進することにより、その効能を改善させたHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)を開発することにより、上述した問題の解決方案を模索した。本発明のアルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2は、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と同じ細胞学的効能を示し、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と比較して、生体内半減期が著しく増加して骨関連疾患をより効果的に予防または治療しうる。
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明は、アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0021】
本発明の薬学組成物にあって、「Slit3タンパク質のLRRD2」は、Slit3タンパク質内の2番目のロイシンリッチリピートドメイン(leucine rich repeat domain、LRRD2)をいう。
【0022】
本発明において、用語の「Slit3 LRRD2」とは、「Slit3タンパク質のLRRD2」を意味し、相互互換的に使用されてもよい。
【0023】
本発明の薬学組成物において、前記アルブミンは、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)、リーサス(rhesus)血清アルブミン(RhSA)、カニクイザル(cynomolgous monkey)血清アルブミン(CySA)、またはミューリン(murine)血清アルブミン(MuSA)であってもよく、好ましくは、ヒト血清アルブミンであってもよい。前記Slit3 LRRD2は、ヒト血清アルブミンの存在下のSlit3 LRRD2の生体内半減期は、ヒト血清アルブミンの不在下におけるSlit3 LRRD2の生体内半減期よりも少なくとも10倍以上さらに長い。
【0024】
本発明の具体的な一実施例において、ヒト血清アルブミンの存在下のSlit3 LRRD2の血清半減期は、ヒト血清アルブミンの不在下におけるSlit3 LRRD2より14倍さらに長い。
【0025】
本発明の薬学組成物において、ヒト血清アルブミンとSlit3 LRRD2は、ヒト血清アルブミン及びSlit3 LRRD2の順序で結合されるか、またはその逆であってもよい。好ましくは、ヒト血清アルブミン及びSlit3 LRRD2の順序で結合される。例えば、ヒト血清アルブミンがSlit3 LRRD2のN末端に結合する場合、Slit3 LRRD2の生体内半減期及びその骨関連疾患の治療効能が最も優れており、ヒト血清アルブミンがC末端に結合する場合、程度の差があり得るが、有効な効能を示すことができる。
【0026】
本発明の薬学組成物において、前記ヒト血清アルブミンは、609個のアミノ酸からなる全長またはその一部のアミノ酸配列を含む断片として使用されてもよい。ヒト血清アルブミンの全長アミノ酸配列は、NCBI GenBank:AAA98797.1に開示されたもので、本発明の具体的な一実施例では、609個のアミノ酸からなる全長のヒト血清アルブミンにおいて25番目~609番目のアミノ酸(585個のアミノ酸)からなる断片の形態を使用した。本発明の薬学組成物において、ヒト血清アルブミンは、下記配列番号2のアミノ酸配列からなる。
【0027】
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号2)。
【0028】
本発明の薬学組成物において、前記Slit3 LRRD2は、ヒト由来であり、1523個のアミノ酸からなるSlit3タンパク質内のLRRD2の全長またはその一部のアミノ酸配列を含む断片として使用されてもよい。Slit3タンパク質の全長アミノ酸配列は、NCBI GenBank:AAQ89243.1に開示されたもので、本発明の具体的な一実施例において、Slit3 LRRD2は、1523個のアミノ酸からなる全長のSlit3タンパク質において278番目~486番目のアミノ酸(209個のアミノ酸)からなる断片の形態を使用した。本発明の薬学組成物において、Slit3 LRRD2は、下記配列番号3のアミノ酸配列からなる。
【0029】
ISCPSPCTCSNNIVDCRGKGLMEIPANLPEGIVEIRLEQNSIKAIPAGAFTQYKKLKRIDISKNQISDIAPDAFQGLKSLTSLVLYGNKITEIAKGLFDGLVSLQLLLLNANKINCLRVNTFQDLQNLNLLSLYDNKLQTISKGLFAPLQSIQTLHLAQNPFVCDCHLKWLADYLQDNPIETSGARCSSPRRLANKRISQIKSKKFRCS(配列番号3)。
【0030】
本発明の薬学組成物において、「Slit3 LRRD2」は、配列番号3のアミノ酸配列との機能的同等物を含んでもよい。
【0031】
前記「機能的同等物」とは、タンパク質またはペプチドのアミノ酸付加、置換または欠失により、本発明の配列番号1~4のアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上の配列相同性を持つもので、配列番号1~4のアミノ酸配列から構成されたタンパク質またはペプチドと実質的に同質の生理活性を示すタンパク質またはペプチドをいう。
【0032】
具体的には、本発明の薬学組成物に含まれる融合タンパク質は、その野生型アミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドだけでなく、そのアミノ酸配列変異体も本発明の範囲に含まれてもよい。前記アミノ酸配列変異体とは、Slit3 LRRD2の野生型アミノ酸配列と1つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換またはこれらの組み合わせによって異なる配列を有するタンパク質またはペプチドを意味する。
【0033】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおいて、可能なアミノ酸の交換は、当該分野に公知されている(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York,1979)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アセチル化(acetylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などで修飾(modification)されてもよい。
【0034】
本発明のSlit3 LRRD2、またはその変異体は、天然から抽出したり、合成(Merrifleld,J.Amer.chem.Soc.85:2149-2156,1963)またはDNA配列を基本とする遺伝子組換え方法により製造されてもよい(Sambrook et al,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,2版,1989)。
【0035】
本発明の薬学組成物において、アルブミンとSlit3タンパク質のLRRD2の間には、リンカーがさらに含まれてもよい。好ましいリンカーの種類としては、(GGGGS)n(配列番号5)であってもよく、ここで、nは、1~10の整数であってもよく、好ましくは、nは、1~5の整数であってもよい。
【0036】
本発明のSlit3 LRRD2は、その生体内半減期を増進させるため、アルブミン融合以外にもIgGのFcタンパク質融合またはペギュレーション(PEGylation)などが行われてもよい。
【0037】
本発明の薬学組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。前記薬学組成物を剤形化する場合、1つ以上の緩衝剤(例えば、生理食塩水またはPBS)、抗酸化剤、静菌剤、キレート化剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、充填剤、増量剤、結合剤、アジュバント(例えば、アルミニウムハイドロオキサイド)、懸濁剤、濃厚剤、湿潤剤、崩解剤または界面活性剤、希釈剤または賦形剤を使用して調製されてもよい。
【0038】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれており、これらの固形剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉(トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉などを含む)、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチル-セルロースまたはゼラチンなどを混合して調剤される。例えば、活性成分を固体賦形剤と配合した後、これを粉砕し、適切な補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することにより、錠剤または糖衣錠剤が得られる。
【0039】
また、単純な賦形剤の他にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤またはシロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤または保存剤などが含まれてもよい。また、場合によっては、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはナトリウムアルギネートなどを崩解剤として添加してもよく、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0040】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤または坐剤などが含まれる。非水性溶剤及び懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてもよい。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用されてもよい。
【0041】
本発明の薬学組成物は、経口または非経口で投与されてもよく、非経口投与時に皮膚外用、腹腔内、直腸、静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内に注射する注射剤、経皮投与剤、または鼻腔吸入剤の形態で当業界で公知の方法により剤形化されてもよい。
【0042】
前記注射剤の場合には、必ず滅菌されなければならず、バクテリア及び真菌などの微生物の汚染から保護されるべきである。注射剤の場合、適切な担体の例としては、これに限定されるものではないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの混合物及び/又は植物油を含む溶媒または分散媒質であってもよい。より好ましくは、適切な担体としては、ハンクス液、リンゲル液、トリエタノールアミンが含有されたPBS(phosphate buffered saline)または注射用滅菌水、10%エタノール、40%プロピレングリコール及び5%デキストロースなどの等張溶液などが使用されてもよい。前記注射剤を微生物汚染から保護するためには、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤及び抗真菌剤をさらに含んでもよい。また、前記注射剤は、ほとんどの場合、糖またはナトリウムクロライドなどの等張化剤をさらに含んでもよい。
【0043】
経皮投与剤の場合、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、外用液剤、パスタ剤、リニメント剤、エアロール剤などの形態が含まれる。前記において経皮投与は、薬学組成物を局所的に皮膚に投与して薬学組成物に含有された有効な量の活性成分が皮膚内に伝達されることを意味する。
【0044】
吸入投与剤の場合、本発明によって使用される融合タンパク質は、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体を使用し、加圧パックまたは煙霧機からエアロゾルスプレーの形態で便利に伝達しうる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を伝達する弁を提供して決定してもよい。例えば、吸入器または吹込器に使用されるゼラチンカプセル及びカートリッジは、化合物及びラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末混合物を含有するように剤形化してもよい。非経口投与用剤形は、すべての製薬化学で一般的に公知の処方書である文献(Remington's Pharmaceutical Science,15th Edition,1975.Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0045】
本発明の薬学組成物は、薬剤学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬剤学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野でよく知られている要素に応じて決定されてもよい。本発明の薬学組成物は、個別治療剤として投与するか、または他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは、順次的又は同時に投与されてもよく、単一または多重投与されてもよい。すなわち、本発明の組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与されてもよく、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与されてもよい。前記要素をすべて考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定されてもよい。
【0046】
本発明の薬学組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度に応じて、その範囲が多様である。一日投与量としては、非経口投与時にHSA-Slit3 LRRD2を基準に一日に体重1kg当たり好ましくは、0.01~50mg、より好ましくは、0.1~30mgの量で投与されるように、そして、経口投与時には、本発明のHSA-Slit3 LRRD2を基準に一日に体重1kg当たり、好ましくは、0.01~100mg、より好ましくは、0.01~10mgの量で投与されるように1~数回に分けて投与してもよい。しかし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減されてもよいので、前記投与量がいかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
本発明の薬学組成物は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用してもよい。
【0048】
本発明の薬学組成物は、さらに外用剤の剤形として提供しうる。本発明の骨関連疾患の予防及び治療用薬学組成物を皮膚外用剤として使用する場合、さらに脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型乳化剤、非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤または脂質小胞などの皮膚外用剤に通常使用される任意の他の成分と同じ皮膚科学分野において通常使用される補助剤を含有してもよい。また、前記成分は、皮膚科学分野において一般的に使用される量で導入されてもよい。
【0049】
本発明の骨関連疾患の予防及び治療用薬学組成物が皮膚外用剤として提供される場合、これらに制限されるものではないが、軟膏、パッチ、ゲル、クリームまたは噴霧剤などの剤形であってもよい。
【0050】
本発明の骨関連疾患は、骨吸収の増加または骨形成の減少、例えば、骨形成が骨吸収より少なくなって骨量が減少して発生可能な疾患を意味し、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨折、骨損失、変形性関節症(osteoarthritis)、骨転移がん及びパジェット病(Paget’s disease)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明は、さらにアルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。本発明の健康機能食品の組成物に含まれる有効成分の構成及びその効果は、前述の薬学組成物に対するものと同じなので、その記載を省略する。
【0052】
本発明による健康機能食品組成物は、当業界で公知の通常の方法によって様々な形態で製造されてもよい。一般食品としては、これに限定されるものではないが、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例えば、果物缶詰、瓶詰、ジャム、マーマレードなど)、魚類、肉類及びその加工食品(例えば、ハム、ソーセージ、コンビーフなど)、パン類及び麺類(例えば、うどん、そば、ラーメン、スパゲッティ、マカロニなど)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例えば、バター、チーズなど)、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例えば、味噌、醤油、ソースなど)などに本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を添加して製造してもよい。また、栄養補助剤としては、これに限定されるものではないが、カプセル、タブレット、丸薬などに本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を添加して製造してもよい。また、健康機能食品としては、これに限定されるものではないが、例えば、本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質そのものをお茶、ジュース及びドリンクの形態で製造して飲用(健康飲料)できるように液状化、顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取してもよい。また、本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を食品添加剤の形態で使用するためには、粉末または濃縮液の形態で製造して使用してもよい。また、本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質と骨関連疾患の予防及び筋機能の改善効果があると知られている公知の活性成分とともに混合して組成物の形態で製造してもよい。
【0053】
本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を健康飲料として用いる場合、前記健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前述の天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖などのモノサッカライドと、マルトース、スクロースなどのジサッカライド、デキストリン、シクロデキストリンなどのポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを使用してもよい。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mL当たり、一般的に約0.01~0.04g、好ましくは、約0.02~0.03gである。
【0054】
また、本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質は、骨関連疾患の予防または改善用食品組成物の有効成分として含有されてもよいが、その量は、骨関連疾患の予防または改善効果を達成するのに有効な量で、特に限定されるものではないが、全組成物の総重量に対して、0.01~100重量%であることが好ましい。本発明の健康機能食品組成物は、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質とともに骨関連疾患に効果があることが知られている他の活性成分とともに混合して製造されてもよい。
【0055】
前記の他に本発明の健康機能食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコールまたは炭酸化剤などを含有してもよい。その他に本発明の健康食品は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、または野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は、独立してまたは混合して使用してもよい。これらの添加剤の割合は、それほど重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たり、0.01~0.1重量部の範囲で選ばれるのが一般的である。
【0056】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものと解釈されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0057】
下記実施例に使用された略語及びその意味は、以下の表1の通りである。
【0058】
【表1】
【実施例
【0059】
[実施例1]
HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2fusion protein)の製造
PC DNA 3.1ベクターSPシスタチンS-HSA-Slit3 LRR D2-FLAG DNA 1.6mg/mlをExpi293F懸濁液細胞にトランスフェクションさせて発現を行った。125mlの293F細胞懸濁液で細胞を4.5~5×10細胞/mlまで培養し、培地のみを新しく交換した後、エクスピフェタミン(Expifectamine)400μlとOpti-mem7.5ml(Aサンプル)を常温で5分間反応し、DNA150μg、Opti-mem7.5ml(Bサンプル)を常温で5分間反応後、AとBサンプルを互いに混合し、20分間常温で反応してトランスフェクションを行った。24時間後、エンハンサー1と2を混合して処理した後、7日間培養した。
【0060】
7日たった培養液を遠心分離器4℃8000rpmで20分間細胞を沈殿させた後、上澄み液をコーニング(corning)社の0.22μmフィルターでろ過して使用した。レジンは、シグマ(Sigma)社の抗-FLAGレジンを使用して行った。レジンをそれぞれ1.2mlずつ使用し、精製は、4℃1ml/分の速度で行った。TBS(Tris Glycine pH7.4)を用いたウォッシングバッファーをレジンの20倍で流し込んだ。溶出は、シグマ社のFLAGペプチド200μlとTBS9.8mlを混合して使用したが、分画(fraction)あたり500μlずつ8個を得て、タンパク質分画を集めてバッファーをDPBSに変えて濃縮した後、濃度を測定した。
【0061】
図2は、前記過程により融合タンパク質を分離精製後、SDS-PAGEを行った結果を示したものであり、本実施例で製造された図1に示された融合タンパク質のサイズが75KDaであることを確認した。
【0062】
[実施例2]
様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3LRRD2 fusion protein)の受容体結合能確認
2-1.様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質の製造
実施例1の製造方法に基づいて、下記表2に示すように12種の様々なHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を製造した。リンカーは、(GGGGS)(配列番号6)を使用した。
【0063】
【表2】
【0064】
前記12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質のアミノ酸配列は、表3に示した。
【0065】
【表3】
【0066】
前記表3において下線で表示された配列は、HSAとLRRD2を連結するGSリンカーであり、太字で表示された配列は、融合タンパク質を最終形態で発現させるため、C-末端に付加される配列を連結するGSリンカーである。
【0067】
2-2.様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の受容体結合能確認
骨細胞に対するSlit3 LRRD2の作用は、Robo1及びRobo2受容体を介して媒介される。したがって、本実施例では、実施例2-1で製造された12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質のRobo1受容体結合能を確認した。12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質と受容体の結合能は、ELISAシステムを使用して定量した。詳細条件は、次の通りである。
【0068】
12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質は、分子量を考慮してウェル当たり0、1、10、100、1000nMとなるように、4℃で18時間96-ウェルMaxisorp微量定量板(microtiter plates)(NUNC社)にコーティングした。コーティングされた物質は、0.05%Tween 20が含まれたPBS(PBST)を使用して3回洗浄した。非特異的なバインディングを遮断するため、1%BSAが添加されたPBSTで室温で2時間ブロッキングを行った。ブロッキングバッファーを除去するためにPBSTで3回洗浄した。洗浄後、骨芽細胞であるMC3T3-E1細胞株から得られたタンパク30μgを(溶解バッファー(lysis buffer):0.5%NP40、50mM Tris pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、0.2mM NaF、1mM NaVO、1mM DTT、1mM PMSF、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Proteinase inhibitor cocktail))室温で2時間付着させた。PBSTを使用して3回洗浄した後、0.1%BSAで1:1000希釈させたRobo1抗体(abcam:ab7279)を室温で2時間付着させた。PBSTを使用して3回洗浄した後、0.1%BSAで1:2000希釈させたHRP結合抗体(cell signaling:7074)を室温で2時間付着させた。PBSTを使用して5回洗浄した後、TMB溶液で37℃で30分間反応させた。前記反応を停止させるために100μlの1N HSOを使用し、450nmで吸光度を測定した。
【0069】
その結果、図3に示すように、LRRD2-3とLRRD2-6の受容体結合能が最も優れていることを確認した。
【0070】
[実施例3]
様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の細胞学的効能確認
本実施例では、実施例2-1で製造された12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質の処理による骨芽細胞移動能、及び破骨細胞分化能を観察することにより、その細胞学的効能を確認した。
【0071】
3-1.骨芽細胞移動能測定
細胞移動能測定のためにボイデンチャンバーシステム(transwell、8μm pores)を使用した。骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞株(1×10)を0.2%FBSが添加されたMEM-アルファ培地に希釈して内側チャンバー(inner chamber)に6時間付着させた後、外側チャンバー(outer chamber)に薬物を24時間処理した。侵入した(invaded)細胞は、固定液(fixing solution)が含まれたクリスタルバイオレット溶液を10分間処理した後、光学顕微鏡で細胞数を測定した。
【0072】
その結果、図4に示すように、LRRD2-3の骨芽細胞移動能が最も優れていることを確認した。
【0073】
3-2.破骨細胞分化能測定
6週齢のICRマウス大腿骨と脛骨から破骨前駆細胞を抽出した後、37℃培養器で18時間培養した。浮遊細胞だけを集めて30ng/ml M-CSFと30ng/mlRANKLを処理して破骨細胞に分化させた。4日後、TRAP染色溶液(Leukocyte acid phosphatase)で10分間反応させた後、光学顕微鏡でTRAP染色された核が3つ以上の多核細胞を破骨細胞とみなし、細胞数を測定した。
【0074】
その結果、図5に示すように、LRRD2-3とLRRD2-6の破骨細胞分化抑制能が残りの10種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質に比べて優れていることを確認した。
【0075】
[実施例4]
HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の細胞学的効能確認
本実施例では、実施例2と3の結果に基づいて、細胞における効能が最も優れたLRRD2-3を選定し、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2の骨芽細胞移動能、骨芽細胞のb-カテニン活性及び破骨細胞分化抑制能と比較観察した。
【0076】
4-1.骨芽細胞移動能の測定
細胞移動能測定のためにボイデンチャンバーシステム(transwell、8μm pores)を使用した。骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞株(1×10)を0.2%FBSが添加されたMEM-アルファ培地に希釈して内側チャンバー(inner chamber)に6時間付着させた後、外側チャンバー(outer chamber)に薬物を24時間処理した。侵入した(invaded)細胞は、固定液(fixing solution)が含まれたクリスタルバイオレット溶液を10分間処理した後、光学顕微鏡で細胞数を測定した。
【0077】
その結果、図6の(A)に示すように、LRRD2-3は、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2と同じ程度に骨芽細胞移動能を促進した。
【0078】
4-2.骨芽細胞のb-カテニン活性の測定
MC3T3-E1細胞株(2X10/ウェル)を24-ウェルプレートに18時間培養した後、100ngの8XSuperTOPFlashと10ngのレニラレポータープラスミド(Renilla reporter plasmid)を細胞に形質注入した。48時間後、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ(Dual luciferase reporter assay)キットを使用し、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0079】
その結果、図6の(B)に示すように、LRRD2-3は、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2と同じ程度に骨芽細胞のb-カテニンを活性化した。
【0080】
4-3.破骨細胞の分化能測定
6週齢のICRマウス大腿骨と脛骨から破骨前駆細胞を抽出した後、37℃培養器で18時間培養した。浮遊細胞だけを集めて30ng/ml M-CSFと30ng/ml RANKLを処理して破骨細胞に分化させた。4日後、TRAP染色溶液(Leukocyte acid phosphatase)で10分間反応させた後、光学顕微鏡でTRAP染色された核が3つ以上の多核細胞を破骨細胞とみなし、細胞数を測定した。
【0081】
その結果、図6の(C)に示すように、LRRD2-3は、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2と同じ程度に破骨細胞の分化を抑制した。
【0082】
[実施例5]
マウスにおいてSlit3 LRRD2及びHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質の薬物動態研究
薬物動態学の研究は、新薬開発過程の一部分で、時間による体内の薬物濃度の変化評価を通じて試験薬物の吸収、分布、代謝及び排泄に対する情報を得ることを目的とする。本実施例では、Slit3 LRRD2-3及びHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)の1回静脈内投与後、マウスにおいて薬物動態特性を確認した。
【0083】
5-1.化学物質及び溶媒
本実施例で使用されたカルバマゼピン(carbamazepine)は、Sigma Aldrichから購入し、アセトニトリルとメタノールは、HPLCグレードでJ.T.Bakerから購入した。
【0084】
5-2.動物及び投与条件
本実施例では、体重30~32.5g範囲のICR系雄性マウス(6週齢、(株)オリエントバイオ、城南、大韓民国)を使用した。マウスは、実験前に4時間絶食し、投与後4時間まで絶食を維持した。飼育場は、12時間ずつ明暗を与えて適正温度(20~25℃)及び湿度(40~60%)を維持した。
【0085】
【表4】
【0086】
Slit3 LRRD2を1mg/mLの容量でPBSに溶かして準備した。HSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)の場合、分子量を考慮して3.5mg/mLの容量(Slit3 LRRD2として1mg/mL)でPBSに溶かして準備した。投与容量は、両群とも10mL/kgで、左側の尾静脈を介して投与した。
【0087】
5-3.薬物動態試験
薬物動態試験の場合、絶食させたマウスにSlit3 LRRD2とHSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)をそれぞれ10mg/kg及び35mg/kgの容量で尾静脈を介してそれぞれ投与した。投与後、それぞれ0.05、0.12、0.33、1、3、7、10、24、48、及び72時間にマウスを手で固定した後、ヘパリンコーティングされた毛細管で右側の眼窩静脈叢から血液70μLを採血した。取られた血液は、5分間遠心分離した後、血漿を分離して分析前まで-20℃で冷凍保管した。
【0088】
5-4.分析方法
血漿試料のうち、Slit3 LRRD2の濃度は、HPLC/MS/MSシステムを用いて定量した。試料前処理の前、血漿試料は、Ni-NTAマグネティックビードを用いて精製した。精製されたSlit3 LRRD2及びHSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)に6Mの尿素と18mMのジチオトレイトール(DTT)を加えて変性させた後、225mMのヨードアセトアミドを用いてアルキル化を誘導した。以後、シグネチャーペプチド(signature peptide)を得るため、850ngの組換えブタトリプシン(V5117、Promega、Madison、WI、USA)を加えて24時間37℃に設定されたウォーターバス(water bath)で反応させた。反応後に生成されたトリプシン消化物70μLにMeOHに溶解した3%のギ酸50μLを加えた後、ボルテックスミキサー(vortex mixer)を用いて10分間混合試料を懸濁し、13,500rpmで10分間遠心分離して上澄み液160μLを取って分析容器に移し、そのうち5μLをHPLC/MS/MSシステムに注入して分析を行った。
【0089】
詳細な分析条件は、次の通りである。
【0090】
-HPLCシステム:Agilent 1100(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)
-カラム:ZORBAX(登録商標)C 3.5μm、2.1*50mm(Agilent)
-移動相(Mobile phase):
-流速:300μL/min
-温度:カラムで20℃、及び自動サンプル機トレイ(autosampler tray)で10℃
-ランタイム:5分
-検出:タンデム四重極型質量分析計(API 4000,QTRAP(登録商標),Applied Biosystems/MDS SCIEX,Foster City,CA,USA)
-カーテンガス(curtain gas):20psi
-イオンソースガス 1(ion source gas 1):50psi
-イオンソースガス 2(ion source gas 2):60psi
-イオンスプレー電圧(ionspray voltage):5500V
-温度:600℃
-多重反応モニタリング(multiple-reaction-monitoring、MRM)モード:陽性
【0091】
Silt3 LRRD2のシグネチャペプチド(P6)の分子イオンは、23Vの衝突エネルギー(collision energy)によって断片化され、衝突ガス(collision gas)は、装備において「medium(8psi)」に設定した。イオンの検出は、ESI陽性MRMモードで行い、P6は、m/z 587.97→491.50で定量した。検出ピークの積分は、Analyst software version 1.4.2(Applied Biosystems/MDS SCIEX)を用いて行った。血漿中においてSilt3 LRRD2の定量可能範囲は、1~100μg/mLであり、HSA-Silt3 LRRD2(LRRD2-3)の場合、3~100μg/mLであった。該当分析においてSlit3 LRRD2は、3.29分のピーク保持時間を示した。
【0092】
5-5.データ分析
時間による血漿中のCNC00000の濃度を前記実施例5-4に記載されたLC-MS/MS分析法を用いて求め、WinNonlin4.2(Pharsight Corp.,Cary,NC,USA)のソフトウェアのノンコンパートメント解析(non-compartmental analysis)で薬物動態的パラメータ(PK parameters)を計算した。最高濃度(Cmax)と最高濃度到達時間(Tmax)は、血中薬物濃度に対して時間による曲線から経時的に求め、消失速度定数(Ke)は、ログスケール(log scale)の最終段階(terminal phase)において線形回帰分析によって計算した。半減期(T1/2)は、LN2をKで除して求め、血中薬物濃度に対して時間曲線下面積(AUC0-∞)及び血中薬物モーメントに対して時間曲線下面積(AUMC0-∞)は、線形台形法(linear trapezoidal rule)と標準面積外挿法(standard area extrapolation method)により計算した。クリアランス(clearance、CL)と分布容積(steady state volume of distribution、Vss)は、次の[式1]~[式3]により計算した。
【0093】
【数1】
【0094】
【数2】
【0095】
【数3】
【0096】
5-6.結果
時間による血漿内のSlit3 LRRD2及びHSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)の濃度は、図7及び表5と6に示し、薬物動態パラメータは、表6に示した。これに関連したパラメータとすべての値は、個体毎に算出した後、平均で示した。時間による血中濃度パターンと動物実験記録紙を参考して異常のある個体群は、データの分析から排除し、データの解釈に使用された実験群は、少なくともn=3以上となるようにした。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
下記表7から確認されるように、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)は、Slit3 LRRD2に対して約14倍改善された半減期を示した。
【表7】
【0100】
[実施例6]
HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の生体効能確認
12週齢のSCIDマウスに4週間アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2またはHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)を処理した。各薬物は、1日1回、毎週5回静脈注射により投与し、Slit3 LRRD2は、毎日10mg、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)は、毎日37.13mg(Slit3 LRRD2は、毎日10mgに該当)注射した。投与前後に小動物用骨密度を測定してその変化幅を確認し、その結果を下記表8に示す。
【0101】
【表8】
【0102】
表8に示すように、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2は、BMD及びBMCが改善されたが、統計的に有意ではなく、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)は、BMD及びBMCを全て有意に改善させる効果を示した。これにより、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)は、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2よりさらに強力に骨関連疾患に対する治療効果を示すことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のアルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2は。アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と同じ細胞学的効能を示し、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と比較して、生体内半減期が著しく増加して骨関連疾患をより効果的に予防または治療しうる。
【0104】
本発明をサポートした国家研究開発事業は、下記の通りである。
(1)[この発明をサポートした国家研究開発事業]
[課題固有番号] 2017-1229(HI15C0377010017)
[省庁名] 保健福祉部
[研究管理専門機関] 韓国保健産業振興院
[研究事業名] 疾病中心仲介重点研究
[研究課題名] 骨形成促進作用を持つ巨核細胞分泌因子の発掘
[寄与率] 75/100
[主管機関] ソウル峨山病院
[研究期間] 2017.09.07~2018.09.06

(2)[この発明をサポートした国家研究開発事業]
[課題固有番号] 2013-2234(HI13C1634060018)
[省庁名] 保健福祉部
[研究管理専門機関] 韓国保健産業振興院
[研究事業名] 疾病中心仲介重点研究
[研究課題名] Slit3 LRRD2の薬物動態研究及びSlit3 TGマウスを用いたin vivo毒性の検証
[寄与率] 25/100
[主管機関] 忠南大学校産学協力団
[研究期間] 2013.11.01~2019.06.30
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022522725000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Slitタンパク質は、神経系の発生過程の間にニューロンとエクソンの移動を調節するものとしてよく知られているタンパク質である。Slitタンパク質はRobo受容体と作用して生理学的活性を調節し得、心臓、肺、腎臓、乳房組織など様々な組織において様々な細胞内過程を調節する因子として役割を果たすことが知られており、最近、細胞の成長、付着能及び移動能の調節に重要な役割を果たすことが報告され、細胞の分化過程における移動及びがんの発生と転移過程においてSlitタンパク質が関与できることが報告されている。
【0003】
このような背景下で、本発明者らは、Slit3のLRRD2が細胞及び動物モデルにおいて骨形成を増加させ、骨吸収を減少させ、骨粗しょう症の発病率と負の相関関係を有しており、骨折または骨粗しょう症の予防または治療用組成物及び骨折または骨粗しょう症の発生リスクを予測するためのバイオマーカーとして有用に使用できることを明らかにした(大韓民国登録特許第10-1617497号)。LRRD2は、注射剤であって、患者が病院に来院して投与を受けなければならないが、生体内半減期が非常に短く、その薬効が発揮されるためには、投与周期が短くなるしかなく、これによる過度の薬剤の使用により効能が減少する問題が発生するものと予想される。
【0004】
そこで、本発明者らは、LRRD2の生体内半減期を増進することにより、その効能を改善させたHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)を開発し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、Slit3タンパク質のLRRD2の骨関連疾患の予防または治療効能を改善させた組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0007】
本発明の好適な一実施例によれば、前記アルブミンは、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)であってもよい。
【0008】
本発明の好適なさらに他の一実施例によれば、前記ヒト血清アルブミンは、Slit3タンパク質のLRRD2のN-末端に結合されたものであってもよい。
【0009】
本発明の好適なさらに他の一実施例によれば、前記ヒト血清アルブミンは、配列番号2のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0010】
本発明の好適な他の一実施例によれば、前記Slit3タンパク質のLRRD2は、配列番号3のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0011】
本発明の好適なさらに他の一実施例によれば、前記アルブミンとSlit3タンパク質のLRRD2間にリンカーをさらに含んでもよい。
【0012】
本発明の好適な他の一実施例によれば、前記リンカーは、(GGGGS)n(配列番号5)であり、ここで、nは、1~10の整数であってもよい。
【0013】
本発明の好適なさらに他の一実施例によれば、前記薬学組成物は、注射剤として投与されてもよい。
【0014】
本発明の好適な他の一実施例によれば、前記骨関連疾患は、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨折、骨損失、変形性関節症(osteoarthritis)、骨転移がん及びパジェット病(Paget’s disease)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2は、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と同じ細胞学的効能を示し、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と比較し、生体内半減期が著しく増加し、骨関連疾患をより効果的に予防または治療しうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のアルブミンがSlit3 LRRD2のN-末端に結合された融合タンパク質の構成及びそのアミノ酸配列を示す。
図2図2は、SPシスタチンS-HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を分離精製後、SDS-PAGEを行った結果を示したものである。
図3図3は、様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の受容体結合能をグラフで示したものである。
図4図4は、様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の処理による骨芽細胞の移動能を確認した結果を示したものである。
図5図5は、様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の処理による破骨細胞の分化能を確認した結果を示したものである。
図6図6は、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の処理による骨芽細胞の移動能(A)、骨芽細胞のβ-カテニン活性(B)及び破骨細胞分化能(C)を確認した結果を示したものである。
図7図7は、絶食させた雄ICRマウスにおいてSlit3 LRRD2(●、「Slit3」)とHSA-Slit3 LRRD2(■、「HSA-Slit3」)のIV投与後、Slit3 LRRD2の血漿濃度時間プロファイルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したように、Slit3タンパク質のLRRD2は、細胞及び動物モデルにおいて骨形成を増加させ、骨吸収を減少させることにより、骨折または骨粗しょう症の予防または治療に使用してもよいが、生体内半減期が非常に短く、その薬効が発揮されるためには、投与周期が短くなるしかなく、これによる過度の薬剤の使用により効能が減少する問題が発生するものと予想された。
【0018】
そこで、本発明者らは、LRRD2の生体内半減期を増進することにより、その効能を改善させたHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)を開発することにより、上述した問題の解決方案を模索した。本発明のアルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2は、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と同じ細胞学的効能を示し、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と比較して、生体内半減期が著しく増加して骨関連疾患をより効果的に予防または治療しうる。
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明は、アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0021】
本発明の薬学組成物にあって、「Slit3タンパク質のLRRD2」は、Slit3タンパク質内の2番目のロイシンリッチリピートドメイン(leucine rich repeat domain、LRRD2)をいう。
【0022】
本発明において、用語の「Slit3 LRRD2」とは、「Slit3タンパク質のLRRD2」を意味し、相互互換的に使用されてもよい。
【0023】
本発明の薬学組成物において、前記アルブミンは、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)、リーサス(rhesus)血清アルブミン(RhSA)、カニクイザル(cynomolgous monkey)血清アルブミン(CySA)、またはミューリン(murine)血清アルブミン(MuSA)であってもよく、好ましくは、ヒト血清アルブミンであってもよい。前記Slit3 LRRD2は、ヒト血清アルブミンの存在下のSlit3 LRRD2の生体内半減期は、ヒト血清アルブミンの不在下におけるSlit3 LRRD2の生体内半減期よりも少なくとも10倍以上さらに長い。
【0024】
本発明の具体的な一実施例において、ヒト血清アルブミンの存在下のSlit3 LRRD2の血清半減期は、ヒト血清アルブミンの不在下におけるSlit3 LRRD2より14倍さらに長い。
【0025】
本発明の薬学組成物において、ヒト血清アルブミンとSlit3 LRRD2は、ヒト血清アルブミン及びSlit3 LRRD2の順序で結合されるか、またはその逆であってもよい。好ましくは、ヒト血清アルブミン及びSlit3 LRRD2の順序で結合される。例えば、ヒト血清アルブミンがSlit3 LRRD2のN末端に結合する場合、Slit3 LRRD2の生体内半減期及びその骨関連疾患の治療効能が最も優れており、ヒト血清アルブミンがC末端に結合する場合、程度の差があり得るが、有効な効能を示すことができる。
【0026】
本発明の薬学組成物において、前記ヒト血清アルブミンは、609個のアミノ酸からなる全長またはその一部のアミノ酸配列を含む断片として使用されてもよい。ヒト血清アルブミンの全長アミノ酸配列は、NCBI GenBank:AAA98797.1に開示されたもので、本発明の具体的な一実施例では、609個のアミノ酸からなる全長のヒト血清アルブミンにおいて25番目~609番目のアミノ酸(585個のアミノ酸)からなる断片の形態を使用した。本発明の薬学組成物において、ヒト血清アルブミンは、下記配列番号2のアミノ酸配列からなる。
【0027】
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号2)。
【0028】
本発明の薬学組成物において、前記Slit3 LRRD2は、ヒト由来であり、1523個のアミノ酸からなるSlit3タンパク質内のLRRD2の全長またはその一部のアミノ酸配列を含む断片として使用されてもよい。Slit3タンパク質の全長アミノ酸配列は、NCBI GenBank:AAQ89243.1に開示されたもので、本発明の具体的な一実施例において、Slit3 LRRD2は、1523個のアミノ酸からなる全長のSlit3タンパク質において278番目~486番目のアミノ酸(209個のアミノ酸)からなる断片の形態を使用した。本発明の薬学組成物において、Slit3 LRRD2は、下記配列番号3のアミノ酸配列からなる。
【0029】
ISCPSPCTCSNNIVDCRGKGLMEIPANLPEGIVEIRLEQNSIKAIPAGAFTQYKKLKRIDISKNQISDIAPDAFQGLKSLTSLVLYGNKITEIAKGLFDGLVSLQLLLLNANKINCLRVNTFQDLQNLNLLSLYDNKLQTISKGLFAPLQSIQTLHLAQNPFVCDCHLKWLADYLQDNPIETSGARCSSPRRLANKRISQIKSKKFRCS(配列番号3)。
【0030】
本発明の薬学組成物において、「Slit3 LRRD2」は、配列番号3のアミノ酸配列との機能的同等物を含んでもよい。
【0031】
前記「機能的同等物」とは、タンパク質またはペプチドのアミノ酸付加、置換または欠失により、本発明の配列番号1~4のアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上の配列相同性を持つもので、配列番号1~4のアミノ酸配列から構成されたタンパク質またはペプチドと実質的に同質の生理活性を示すタンパク質またはペプチドをいう。
【0032】
具体的には、本発明の薬学組成物に含まれる融合タンパク質は、その野生型アミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドだけでなく、そのアミノ酸配列変異体も本発明の範囲に含まれてもよい。前記アミノ酸配列変異体とは、Slit3 LRRD2の野生型アミノ酸配列と1つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換またはこれらの組み合わせによって異なる配列を有するタンパク質またはペプチドを意味する。
【0033】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおいて、可能なアミノ酸の交換は、当該分野に公知されている(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York,1979)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アセチル化(acetylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などで修飾(modification)されてもよい。
【0034】
本発明のSlit3 LRRD2、またはその変異体は、天然から抽出したり、合成(Merrifleld,J.Amer.chem.Soc.85:2149-2156,1963)またはDNA配列を基本とする遺伝子組換え方法により製造されてもよい(Sambrook et al,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,2版,1989)。
【0035】
本発明の薬学組成物において、アルブミンとSlit3タンパク質のLRRD2の間には、リンカーがさらに含まれてもよい。好ましいリンカーの種類としては、(GGGGS)n(配列番号5)であってもよく、ここで、nは、1~10の整数であってもよく、好ましくは、nは、1~5の整数であってもよい。
【0036】
本発明のSlit3 LRRD2は、その生体内半減期を増進させるため、アルブミン融合以外にもIgGのFcタンパク質融合またはペギュレーション(PEGylation)などが行われてもよい。
【0037】
本発明の薬学組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。前記薬学組成物を剤形化する場合、1つ以上の緩衝剤(例えば、生理食塩水またはPBS)、抗酸化剤、静菌剤、キレート化剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、充填剤、増量剤、結合剤、アジュバント(例えば、アルミニウムハイドロオキサイド)、懸濁剤、濃厚剤、湿潤剤、崩解剤または界面活性剤、希釈剤または賦形剤を使用して調製されてもよい。
【0038】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれており、これらの固形剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉(トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉などを含む)、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチル-セルロースまたはゼラチンなどを混合して調剤される。例えば、活性成分を固体賦形剤と配合した後、これを粉砕し、適切な補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することにより、錠剤または糖衣錠剤が得られる。
【0039】
また、単純な賦形剤の他にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤またはシロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤または保存剤などが含まれてもよい。また、場合によっては、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはナトリウムアルギネートなどを崩解剤として添加してもよく、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0040】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤または坐剤などが含まれる。非水性溶剤及び懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてもよい。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用されてもよい。
【0041】
本発明の薬学組成物は、経口または非経口で投与されてもよく、非経口投与時に皮膚外用、腹腔内、直腸、静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内に注射する注射剤、経皮投与剤、または鼻腔吸入剤の形態で当業界で公知の方法により剤形化されてもよい。
【0042】
前記注射剤の場合には、必ず滅菌されなければならず、バクテリア及び真菌などの微生物の汚染から保護されるべきである。注射剤の場合、適切な担体の例としては、これに限定されるものではないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの混合物及び/又は植物油を含む溶媒または分散媒質であってもよい。より好ましくは、適切な担体としては、ハンクス液、リンゲル液、トリエタノールアミンが含有されたPBS(phosphate buffered saline)または注射用滅菌水、10%エタノール、40%プロピレングリコール及び5%デキストロースなどの等張溶液などが使用されてもよい。前記注射剤を微生物汚染から保護するためには、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤及び抗真菌剤をさらに含んでもよい。また、前記注射剤は、ほとんどの場合、糖またはナトリウムクロライドなどの等張化剤をさらに含んでもよい。
【0043】
経皮投与剤の場合、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、外用液剤、パスタ剤、リニメント剤、エアロール剤などの形態が含まれる。前記において経皮投与は、薬学組成物を局所的に皮膚に投与して薬学組成物に含有された有効な量の活性成分が皮膚内に伝達されることを意味する。
【0044】
吸入投与剤の場合、本発明によって使用される融合タンパク質は、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体を使用し、加圧パックまたは煙霧機からエアロゾルスプレーの形態で便利に伝達しうる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を伝達する弁を提供して決定してもよい。例えば、吸入器または吹込器に使用されるゼラチンカプセル及びカートリッジは、化合物及びラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末混合物を含有するように剤形化してもよい。非経口投与用剤形は、すべての製薬化学で一般的に公知の処方書である文献(Remington's Pharmaceutical Science,15th Edition,1975.Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0045】
本発明の薬学組成物は、薬剤学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬剤学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野でよく知られている要素に応じて決定されてもよい。本発明の薬学組成物は、個別治療剤として投与するか、または他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは、順次的又は同時に投与されてもよく、単一または多重投与されてもよい。すなわち、本発明の組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与されてもよく、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与されてもよい。前記要素をすべて考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定されてもよい。
【0046】
本発明の薬学組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度に応じて、その範囲が多様である。一日投与量としては、非経口投与時にHSA-Slit3 LRRD2を基準に一日に体重1kg当たり好ましくは、0.01~50mg、より好ましくは、0.1~30mgの量で投与されるように、そして、経口投与時には、本発明のHSA-Slit3 LRRD2を基準に一日に体重1kg当たり、好ましくは、0.01~100mg、より好ましくは、0.01~10mgの量で投与されるように1~数回に分けて投与してもよい。しかし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減されてもよいので、前記投与量がいかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
本発明の薬学組成物は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用してもよい。
【0048】
本発明の薬学組成物は、さらに外用剤の剤形として提供しうる。本発明の骨関連疾患の予防及び治療用薬学組成物を皮膚外用剤として使用する場合、さらに脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型乳化剤、非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤または脂質小胞などの皮膚外用剤に通常使用される任意の他の成分と同じ皮膚科学分野において通常使用される補助剤を含有してもよい。また、前記成分は、皮膚科学分野において一般的に使用される量で導入されてもよい。
【0049】
本発明の骨関連疾患の予防及び治療用薬学組成物が皮膚外用剤として提供される場合、これらに制限されるものではないが、軟膏、パッチ、ゲル、クリームまたは噴霧剤などの剤形であってもよい。
【0050】
本発明の骨関連疾患は、骨吸収の増加または骨形成の減少、例えば、骨形成が骨吸収より少なくなって骨量が減少して発生可能な疾患を意味し、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨折、骨損失、変形性関節症(osteoarthritis)、骨転移がん及びパジェット病(Paget’s disease)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明は、さらにアルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む骨関連疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。本発明の健康機能食品の組成物に含まれる有効成分の構成及びその効果は、前述の薬学組成物に対するものと同じなので、その記載を省略する。
【0052】
本発明による健康機能食品組成物は、当業界で公知の通常の方法によって様々な形態で製造されてもよい。一般食品としては、これに限定されるものではないが、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例えば、果物缶詰、瓶詰、ジャム、マーマレードなど)、魚類、肉類及びその加工食品(例えば、ハム、ソーセージ、コンビーフなど)、パン類及び麺類(例えば、うどん、そば、ラーメン、スパゲッティ、マカロニなど)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例えば、バター、チーズなど)、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例えば、味噌、醤油、ソースなど)などに本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を添加して製造してもよい。また、栄養補助剤としては、これに限定されるものではないが、カプセル、タブレット、丸薬などに本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を添加して製造してもよい。また、健康機能食品としては、これに限定されるものではないが、例えば、本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質そのものをお茶、ジュース及びドリンクの形態で製造して飲用(健康飲料)できるように液状化、顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取してもよい。また、本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を食品添加剤の形態で使用するためには、粉末または濃縮液の形態で製造して使用してもよい。また、本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質と骨関連疾患の予防及び筋機能の改善効果があると知られている公知の活性成分とともに混合して組成物の形態で製造してもよい。
【0053】
本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を健康飲料として用いる場合、前記健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前述の天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖などのモノサッカライドと、マルトース、スクロースなどのジサッカライド、デキストリン、シクロデキストリンなどのポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを使用してもよい。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mL当たり、一般的に約0.01~0.04g、好ましくは、約0.02~0.03gである。
【0054】
また、本発明のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質は、骨関連疾患の予防または改善用食品組成物の有効成分として含有されてもよいが、その量は、骨関連疾患の予防または改善効果を達成するのに有効な量で、特に限定されるものではないが、全組成物の総重量に対して、0.01~100重量%であることが好ましい。本発明の健康機能食品組成物は、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質とともに骨関連疾患に効果があることが知られている他の活性成分とともに混合して製造されてもよい。
【0055】
前記の他に本発明の健康機能食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコールまたは炭酸化剤などを含有してもよい。その他に本発明の健康食品は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、または野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は、独立してまたは混合して使用してもよい。これらの添加剤の割合は、それほど重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たり、0.01~0.1重量部の範囲で選ばれるのが一般的である。
【0056】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものと解釈されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0057】
下記実施例に使用された略語及びその意味は、以下の表1の通りである。
【0058】
【表1】
【実施例
【0059】
[実施例1]
HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2fusion protein)の製造
PC DNA 3.1ベクターSPシスタチンS-HSA-Slit3 LRR D2-FLAG DNA 1.6mg/mlをExpi293F懸濁液細胞にトランスフェクションさせて発現を行った。125mlの293F細胞懸濁液で細胞を4.5~5×10細胞/mlまで培養し、培地のみを新しく交換した後、エクスピフェタミン(Expifectamine)400μlとOpti-mem7.5ml(Aサンプル)を常温で5分間反応し、DNA150μg、Opti-mem7.5ml(Bサンプル)を常温で5分間反応後、AとBサンプルを互いに混合し、20分間常温で反応してトランスフェクションを行った。24時間後、エンハンサー1と2を混合して処理した後、7日間培養した。
【0060】
7日たった培養液を遠心分離器4℃8000rpmで20分間細胞を沈殿させた後、上澄み液をコーニング(corning)社の0.22μmフィルターでろ過して使用した。レジンは、シグマ(Sigma)社の抗-FLAGレジンを使用して行った。レジンをそれぞれ1.2mlずつ使用し、精製は、4℃1ml/分の速度で行った。TBS(Tris Glycine pH7.4)を用いたウォッシングバッファーをレジンの20倍で流し込んだ。溶出は、シグマ社のFLAGペプチド200μlとTBS9.8mlを混合して使用したが、分画(fraction)あたり500μlずつ8個を得て、タンパク質分画を集めてバッファーをDPBSに変えて濃縮した後、濃度を測定した。
【0061】
図2は、前記過程により融合タンパク質を分離精製後、SDS-PAGEを行った結果を示したものであり、本実施例で製造された図1に示された融合タンパク質のサイズが75KDaであることを確認した。
【0062】
[実施例2]
様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3LRRD2 fusion protein)の受容体結合能確認
2-1.様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質の製造
実施例1の製造方法に基づいて、下記表2に示すように12種の様々なHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質を製造した。リンカーは、(GGGGS)(配列番号6)を使用した。
【0063】
【表2】
【0064】
前記12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質のアミノ酸配列は、表3に示した。
【0065】
【表3】
【0066】
前記表3において下線で表示された配列は、HSAとLRRD2を連結するGSリンカーであり、太字で表示された配列は、融合タンパク質を最終形態で発現させるため、C-末端に付加される配列を連結するGSリンカーである。
【0067】
2-2.様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の受容体結合能確認
骨細胞に対するSlit3 LRRD2の作用は、Robo1及びRobo2受容体を介して媒介される。したがって、本実施例では、実施例2-1で製造された12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質のRobo1受容体結合能を確認した。12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質と受容体の結合能は、ELISAシステムを使用して定量した。詳細条件は、次の通りである。
【0068】
12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質は、分子量を考慮してウェル当たり0、1、10、100、1000nMとなるように、4℃で18時間96-ウェルMaxisorp微量定量板(microtiter plates)(NUNC社)にコーティングした。コーティングされた物質は、0.05%Tween 20が含まれたPBS(PBST)を使用して3回洗浄した。非特異的なバインディングを遮断するため、1%BSAが添加されたPBSTで室温で2時間ブロッキングを行った。ブロッキングバッファーを除去するためにPBSTで3回洗浄した。洗浄後、骨芽細胞であるMC3T3-E1細胞株から得られたタンパク30μgを(溶解バッファー(lysis buffer):0.5%NP40、50mM Tris pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、0.2mM NaF、1mM NaVO、1mM DTT、1mM PMSF、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Proteinase inhibitor cocktail))室温で2時間付着させた。PBSTを使用して3回洗浄した後、0.1%BSAで1:1000希釈させたRobo1抗体(abcam:ab7279)を室温で2時間付着させた。PBSTを使用して3回洗浄した後、0.1%BSAで1:2000希釈させたHRP結合抗体(cell signaling:7074)を室温で2時間付着させた。PBSTを使用して5回洗浄した後、TMB溶液で37℃で30分間反応させた。前記反応を停止させるために100μlの1N HSOを使用し、450nmで吸光度を測定した。
【0069】
その結果、図3に示すように、LRRD2-3とLRRD2-6の受容体結合能が最も優れていることを確認した。
【0070】
[実施例3]
様々な形態のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の細胞学的効能確認
本実施例では、実施例2-1で製造された12種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質の処理による骨芽細胞移動能、及び破骨細胞分化能を観察することにより、その細胞学的効能を確認した。
【0071】
3-1.骨芽細胞移動能測定
細胞移動能測定のためにボイデンチャンバーシステム(transwell、8μm pores)を使用した。骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞株(1×10)を0.2%FBSが添加されたMEM-アルファ培地に希釈して内側チャンバー(inner chamber)に6時間付着させた後、外側チャンバー(outer chamber)に薬物を24時間処理した。侵入した(invaded)細胞は、固定液(fixing solution)が含まれたクリスタルバイオレット溶液を10分間処理した後、光学顕微鏡で細胞数を測定した。
【0072】
その結果、図4に示すように、LRRD2-3の骨芽細胞移動能が最も優れていることを確認した。
【0073】
3-2.破骨細胞分化能測定
6週齢のICRマウス大腿骨と脛骨から破骨前駆細胞を抽出した後、37℃培養器で18時間培養した。浮遊細胞だけを集めて30ng/ml M-CSFと30ng/mlRANKLを処理して破骨細胞に分化させた。4日後、TRAP染色溶液(Leukocyte acid phosphatase)で10分間反応させた後、光学顕微鏡でTRAP染色された核が3つ以上の多核細胞を破骨細胞とみなし、細胞数を測定した。
【0074】
その結果、図5に示すように、LRRD2-3とLRRD2-6の破骨細胞分化抑制能が残りの10種のHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質に比べて優れていることを確認した。
【0075】
[実施例4]
HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の細胞学的効能確認
本実施例では、実施例2と3の結果に基づいて、細胞における効能が最も優れたLRRD2-3を選定し、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2の骨芽細胞移動能、骨芽細胞のb-カテニン活性及び破骨細胞分化抑制能と比較観察した。
【0076】
4-1.骨芽細胞移動能の測定
細胞移動能測定のためにボイデンチャンバーシステム(transwell、8μm pores)を使用した。骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞株(1×10)を0.2%FBSが添加されたMEM-アルファ培地に希釈して内側チャンバー(inner chamber)に6時間付着させた後、外側チャンバー(outer chamber)に薬物を24時間処理した。侵入した(invaded)細胞は、固定液(fixing solution)が含まれたクリスタルバイオレット溶液を10分間処理した後、光学顕微鏡で細胞数を測定した。
【0077】
その結果、図6の(A)に示すように、LRRD2-3は、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2と同じ程度に骨芽細胞移動能を促進した。
【0078】
4-2.骨芽細胞のb-カテニン活性の測定
MC3T3-E1細胞株(2X10/ウェル)を24-ウェルプレートに18時間培養した後、100ngの8XSuperTOPFlashと10ngのレニラレポータープラスミド(Renilla reporter plasmid)を細胞に形質注入した。48時間後、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ(Dual luciferase reporter assay)キットを使用し、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0079】
その結果、図6の(B)に示すように、LRRD2-3は、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2と同じ程度に骨芽細胞のb-カテニンを活性化した。
【0080】
4-3.破骨細胞の分化能測定
6週齢のICRマウス大腿骨と脛骨から破骨前駆細胞を抽出した後、37℃培養器で18時間培養した。浮遊細胞だけを集めて30ng/ml M-CSFと30ng/ml RANKLを処理して破骨細胞に分化させた。4日後、TRAP染色溶液(Leukocyte acid phosphatase)で10分間反応させた後、光学顕微鏡でTRAP染色された核が3つ以上の多核細胞を破骨細胞とみなし、細胞数を測定した。
【0081】
その結果、図6の(C)に示すように、LRRD2-3は、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2と同じ程度に破骨細胞の分化を抑制した。
【0082】
[実施例5]
マウスにおいてSlit3 LRRD2及びHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質の薬物動態研究
薬物動態学の研究は、新薬開発過程の一部分で、時間による体内の薬物濃度の変化評価を通じて試験薬物の吸収、分布、代謝及び排泄に対する情報を得ることを目的とする。本実施例では、Slit3 LRRD2-3及びHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)の1回静脈内投与後、マウスにおいて薬物動態特性を確認した。
【0083】
5-1.化学物質及び溶媒
本実施例で使用されたカルバマゼピン(carbamazepine)は、Sigma Aldrichから購入し、アセトニトリルとメタノールは、HPLCグレードでJ.T.Bakerから購入した。
【0084】
5-2.動物及び投与条件
本実施例では、体重30~32.5g範囲のICR系雄性マウス(6週齢、(株)オリエントバイオ、城南、大韓民国)を使用した。マウスは、実験前に4時間絶食し、投与後4時間まで絶食を維持した。飼育場は、12時間ずつ明暗を与えて適正温度(20~25℃)及び湿度(40~60%)を維持した。
【0085】
【表4】
【0086】
Slit3 LRRD2を1mg/mLの容量でPBSに溶かして準備した。HSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)の場合、分子量を考慮して3.5mg/mLの容量(Slit3 LRRD2として1mg/mL)でPBSに溶かして準備した。投与容量は、両群とも10mL/kgで、左側の尾静脈を介して投与した。
【0087】
5-3.薬物動態試験
薬物動態試験の場合、絶食させたマウスにSlit3 LRRD2とHSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)をそれぞれ10mg/kg及び35mg/kgの容量で尾静脈を介してそれぞれ投与した。投与後、それぞれ0.05、0.12、0.33、1、3、7、10、24、48、及び72時間にマウスを手で固定した後、ヘパリンコーティングされた毛細管で右側の眼窩静脈叢から血液70μLを採血した。取られた血液は、5分間遠心分離した後、血漿を分離して分析前まで-20℃で冷凍保管した。
【0088】
5-4.分析方法
血漿試料のうち、Slit3 LRRD2の濃度は、HPLC/MS/MSシステムを用いて定量した。試料前処理の前、血漿試料は、Ni-NTAマグネティックビードを用いて精製した。精製されたSlit3 LRRD2及びHSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)に6Mの尿素と18mMのジチオトレイトール(DTT)を加えて変性させた後、225mMのヨードアセトアミドを用いてアルキル化を誘導した。以後、シグネチャーペプチド(signature peptide)を得るため、850ngの組換えブタトリプシン(V5117、Promega、Madison、WI、USA)を加えて24時間37℃に設定されたウォーターバス(water bath)で反応させた。反応後に生成されたトリプシン消化物70μLにMeOHに溶解した3%のギ酸50μLを加えた後、ボルテックスミキサー(vortex mixer)を用いて10分間混合試料を懸濁し、13,500rpmで10分間遠心分離して上澄み液160μLを取って分析容器に移し、そのうち5μLをHPLC/MS/MSシステムに注入して分析を行った。
【0089】
詳細な分析条件は、次の通りである。
【0090】
-HPLCシステム:Agilent 1100(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)
-カラム:ZORBAX(登録商標)C 3.5μm、2.1*50mm(Agilent)
-移動相(Mobile phase):
-流速:300μL/min
-温度:カラムで20℃、及び自動サンプル機トレイ(autosampler tray)で10℃
-ランタイム:5分
-検出:タンデム四重極型質量分析計(API 4000,QTRAP(登録商標),Applied Biosystems/MDS SCIEX,Foster City,CA,USA)
-カーテンガス(curtain gas):20psi
-イオンソースガス 1(ion source gas 1):50psi
-イオンソースガス 2(ion source gas 2):60psi
-イオンスプレー電圧(ionspray voltage):5500V
-温度:600℃
-多重反応モニタリング(multiple-reaction-monitoring、MRM)モード:陽性
【0091】
Slit3 LRRD2のシグネチャペプチド(P6)の分子イオンは、23Vの衝突エネルギー(collision energy)によって断片化され、衝突ガス(collision gas)は、装備において「medium(8psi)」に設定した。イオンの検出は、ESI陽性MRMモードで行い、P6は、m/z 587.97→491.50で定量した。検出ピークの積分は、Analyst software version 1.4.2(Applied Biosystems/MDS SCIEX)を用いて行った。血漿中においてSlit3 LRRD2の定量可能範囲は、1~100μg/mLであり、HSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)の場合、3~100μg/mLであった。該当分析においてSlit3 LRRD2は、3.29分のピーク保持時間を示した。
【0092】
5-5.データ分析
時間による血漿中のCNC00000の濃度を前記実施例5-4に記載されたLC-MS/MS分析法を用いて求め、WinNonlin4.2(Pharsight Corp.,Cary,NC,USA)のソフトウェアのノンコンパートメント解析(non-compartmental analysis)で薬物動態的パラメータ(PK parameters)を計算した。最高濃度(Cmax)と最高濃度到達時間(Tmax)は、血中薬物濃度に対して時間による曲線から経時的に求め、消失速度定数(Ke)は、ログスケール(log scale)の最終段階(terminal phase)において線形回帰分析によって計算した。半減期(T1/2)は、LN2をKで除して求め、血中薬物濃度に対して時間曲線下面積(AUC0-∞)及び血中薬物モーメントに対して時間曲線下面積(AUMC0-∞)は、線形台形法(linear trapezoidal rule)と標準面積外挿法(standard area extrapolation method)により計算した。クリアランス(clearance、CL)と分布容積(steady state volume of distribution、Vss)は、次の[式1]~[式3]により計算した。
【0093】
【数1】
【0094】
【数2】
【0095】
【数3】
【0096】
5-6.結果
時間による血漿内のSlit3 LRRD2及びHSA-Slit3 LRRD2(LRRD2-3)の濃度は、図7及び表5と6に示し、薬物動態パラメータは、表に示した。これに関連したパラメータとすべての値は、個体毎に算出した後、平均で示した。時間による血中濃度パターンと動物実験記録紙を参考して異常のある個体群は、データの分析から排除し、データの解釈に使用された実験群は、少なくともn=3以上となるようにした。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
下記表7から確認されるように、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)は、Slit3 LRRD2に対して約14倍改善された半減期を示した。
【表7】
【0100】
[実施例6]
HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(HSA-Slit3 LRRD2 fusion protein)の生体効能確認
12週齢のSCIDマウスに4週間アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2またはHSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)を処理した。各薬物は、1日1回、毎週5回静脈注射により投与し、Slit3 LRRD2は、毎日10mg、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)は、毎日37.13mg(Slit3 LRRD2は、毎日10mgに該当)注射した。投与前後に小動物用骨密度を測定してその変化幅を確認し、その結果を下記表8に示す。
【0101】
【表8】
【0102】
表8に示すように、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2は、BMD及びBMCが改善されたが、統計的に有意ではなく、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)は、BMD及びBMCを全て有意に改善させる効果を示した。これにより、HSA-Slit3 LRRD2融合タンパク質(LRRD2-3)は、アルブミンと結合しないSlit3 LRRD2よりさらに強力に骨関連疾患に対する治療効果を示すことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のアルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2は。アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と同じ細胞学的効能を示し、アルブミンと結合しないSlit3タンパク質のLRRD2と比較して、生体内半減期が著しく増加して骨関連疾患をより効果的に予防または治療しうる。
【0104】
本発明をサポートした国家研究開発事業は、下記の通りである。
(1)[この発明をサポートした国家研究開発事業]
[課題固有番号] 2017-1229(HI15C0377010017)
[省庁名] 保健福祉部
[研究管理専門機関] 韓国保健産業振興院
[研究事業名] 疾病中心仲介重点研究
[研究課題名] 骨形成促進作用を持つ巨核細胞分泌因子の発掘
[寄与率] 75/100
[主管機関] ソウル峨山病院
[研究期間] 2017.09.07~2018.09.06

(2)[この発明をサポートした国家研究開発事業]
[課題固有番号] 2013-2234(HI13C1634060018)
[省庁名] 保健福祉部
[研究管理専門機関] 韓国保健産業振興院
[研究事業名] 疾病中心仲介重点研究
[研究課題名] Slit3 LRRD2の薬物動態研究及びSlit3 TGマウスを用いたin vivo毒性の検証
[寄与率] 25/100
[主管機関] 忠南大学校産学協力団
[研究期間] 2013.11.01~2019.06.30
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2を含む、骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記アルブミンは、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)である、請求項1に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記ヒト血清アルブミンは、前記Slit3タンパク質のLRRD2のN-末端に結合されている、請求項2に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記ヒト血清アルブミンは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記Slit3タンパク質のLRRD2は、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記アルブミンと前記Slit3タンパク質のLRRD2の間にリンカーをさらに含む、請求項1に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記リンカーは、(GGGGS)nであり、ここで、nは1~10の整数である、請求項6に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
注射剤として投与されている、請求項1に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記骨関連疾患は、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨折、骨損失、変形性関節症(osteoarthritis)、骨転移がん及びパジェット病(Paget’s disease)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項1に記載の骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
骨関連疾患の予防または治療用薬剤を製造するための、アルブミンと結合したSlit3タンパク質のLRRD2の使用。
【請求項11】
前記アルブミンは、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記ヒト血清アルブミンは、前記Slit3タンパク質のLRRD2のN-末端に結合されている、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記ヒト血清アルブミンは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記Slit3タンパク質のLRRD2は、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記アルブミンと前記Slit3タンパク質のLRRD2の間にリンカーをさらに含む、請求項10に記載の使用。
【請求項16】
前記リンカーは、(GGGGS)nであり、ここで、nは1~10の整数である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記Slit3タンパク質のLRRD2は、注射剤として投与されている、請求項10に記載の使用。
【請求項18】
骨粗しょう症(osteoporosis)、骨折、骨損失、変形性関節症(osteoarthritis)、骨転移がん及びパジェット病(Paget’s disease)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項10に記載の使用。
【国際調査報告】