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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】ポリペプチド分子及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220413BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220413BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220413BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220413BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220413BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220413BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20220413BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220413BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220413BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220413BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220413BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20220413BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220413BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C07K19/00
C12N15/13
C07K16/18
C07K14/575
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/18
A61K38/22
A61P1/16
A61P3/04
A61P1/18
A61P3/10
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K47/68
A61K47/65
A61K39/395 Y
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551806
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(85)【翻訳文提出日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2020077750
(87)【国際公開番号】W WO2020177712
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】201910162060.6
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910758104.1
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515014990
【氏名又は名称】サンシャイン・レイク・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE LAKE PHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Northern Industrial Area,Songshan Lake,Dongguan,Guangdong 523000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャオ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】シュシャン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・リ
(72)【発明者】
【氏名】シャオピン・リ
(72)【発明者】
【氏名】シャオフェン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジア・リ
(72)【発明者】
【氏名】リャン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン・フ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076EE41
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084DB37
4C084DB54
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZC331
4C084ZC351
4C084ZC411
4C085AA33
4C085BB42
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZC33
4C087ZC35
4C087ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045EA27
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、以下の特性:安定な構造、長い半減期、低い免疫原性、高い生物学的活性、並びに増強したグルコース低下及び脂質低下活性の1つ又は複数を有するFGF21ポリペプチドを提供する。本出願はまた、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドを含む融合タンパク質又はイムノコンジュゲートを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、以下の位置:L98、S167、P171、R175及びR19におけるアミノ酸置換を含む、FGF21ポリペプチド。
【請求項2】
R135、A180、A31、及びG43からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換を更に含む、請求項1に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、
(1)L98、S167、P171、R175、R19及びR135、
(2)L98、S167、P171、R175、R19及びA180、
(3)L98、S167、P171、R175、R19、A31及びG43、並びに、
(4)L98、S167、P171、R175、R19、R135、A31及びG43
からなる群から選択されるアミノ酸残基におけるアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項4】
L98における前記アミノ酸置換がL98Rである、請求項1から3のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項5】
S167における前記アミノ酸置換がS167Hである、請求項1から4のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項6】
P171における前記アミノ酸置換が、P171A、P171G、及びP171Nからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項7】
R175における前記アミノ酸置換がR175Lである、請求項1から6のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項8】
R19における前記アミノ酸置換がR19Vである、請求項1から7のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項9】
R135V、A180E、A31C、及びG43Cからなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸置換を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項10】
配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、
(1)L98R、S167H、P171A、R175L及びR19V、
(2)L98R、S167H、P171G、R175L及びR19V、
(3)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、及びR135V、
(4)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V及びA180E、
(5)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びR135V、
(6)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、A31C及びG43C、
(7)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、A31C及びG43C、
(8)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43C、
(9)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43C、並びに、
(10)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びA180E
からなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項11】
以下の群:配列番号2~11のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチドを含む、融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項13】
免疫グロブリンFcドメインを更に含む、請求項12に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項14】
前記免疫グロブリンFcドメインが前記FGF21ポリペプチドのC末端に位置する、請求項13に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項15】
前記免疫グロブリンFcドメインがヒトIgGのFc又はその機能的バリアントである、請求項13又は14に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項16】
前記免疫グロブリンFcドメインが、以下の群:配列番号12~13のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項17】
前記融合タンパク質がリンカーを更に含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項18】
前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項17に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項19】
前記リンカーのN末端が免疫グロブリンFcドメインのC末端に接続されており、且つ前記リンカーのC末端が前記FGF21ポリペプチドのN末端に接続されている、請求項17又は18に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項20】
前記リンカーが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項21】
以下の群:配列番号17~26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項12から20のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項22】
GLP-1又はその機能的バリアントを更に含む、請求項12に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項23】
前記GLP-1又は前記その機能的バリアントが、以下の群:配列番号14~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項24】
免疫グロブリンFcドメインを更に含む、請求項22又は23に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項25】
前記免疫グロブリンFcドメインが前記FGF21ポリペプチドのC末端に位置する、請求項24に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項26】
前記免疫グロブリンFcドメインが前記GLP-1バリアントのN末端に位置する、請求項24又は25に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項27】
前記免疫グロブリンFcドメインがヒトIgGのFc又はその機能的バリアントである、請求項24から26のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項28】
免疫グロブリンFcドメインが、以下の群:配列番号12~13のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項22から27のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項29】
リンカーを更に含む、請求項22から28のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項30】
前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項29に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項31】
前記リンカーが第1のリンカーを含み、前記第1のリンカーのN末端が免疫グロブリンFcドメインのC末端に接続されており、且つ前記第1のリンカーのC末端が前記FGF21ポリペプチドのN末端に接続されている、請求項29又は30に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項32】
前記リンカーが第2のリンカーを含み、前記第2のリンカーのN末端が前記GLP-1又はそのバリアントのC末端に接続されており、且つ前記第2のリンカーのC末端が免疫グロブリンFcドメインのN末端に接続されている、請求項29から31のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項33】
第1のリンカー及び第2のリンカーのそれぞれが独立して、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項29から32のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項34】
以下の群:配列番号27~36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項22から33のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【請求項35】
請求項1から11のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド及び/又は請求項12から34のいずれか一項に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲートをコードする、単離された核酸分子。
【請求項36】
請求項35に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項37】
請求項1から11のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド、請求項12から34のいずれか一項に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、請求項35に記載の単離された核酸分子又は請求項36に記載のベクターを含む又は発現する、細胞。
【請求項38】
請求項1から11のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド、請求項12から34のいずれか一項に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、請求項35に記載の単離された核酸分子、請求項36に記載のベクター、又は請求項37に記載の細胞、及び任意選択的に薬学的に許容される佐剤を含む、医薬組成物。
【請求項39】
FGF21代謝障害により引き起こされる疾患の治療用の医薬の製造における、請求項1から11のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド、請求項12から34のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲートの使用。
【請求項40】
FGF21代謝障害により引き起こされる前記疾患が、糖尿病、脂肪肝、肥満症及び/又は膵炎を含む、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
FGF21代謝障害により引き起こされる疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1から11のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド、請求項12から34のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲートを患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項42】
FGF21代謝障害により引き起こされる疾患の治療における使用のための、請求項1から11のいずれか一項に記載のFGF21ポリペプチド、請求項12から34のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれ2019年3月5日及び2019年8月16日に国家知識産権局に出願された中国特許出願第201910162060.6号及び同第201910758104.1号の優先権及び利益を主張し、これらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本出願は、生物医学の分野、特に、ポリペプチド分子及びその適用に関する。
【背景技術】
【0003】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、腸L細胞により分泌されるインクレチンの一種である。それは、インスリンを分泌するように膵島β細胞を刺激して、患者においてインスリン均衡を維持させる。GLP-1はインスリンを通じて間接的に働き、2型糖尿病にのみ影響し、これはその適用及び効果の範囲を限定する。同時に、GLP-1は、甲状腺がんに対する潜在的なリスクを有することが報告されている。
【0004】
FGF21はFGF(線維芽細胞増殖因子、FGF)ファミリーのメンバーの1つに属する。FGF21は、脂肪細胞によるグルコースの吸収を促進し、インスリン感受性を増強することができる。同時に、インスリンと比較して、FGF21は低血糖症等の副作用を引き起こさず、有効にβ膵島細胞を保護し、膵島β細胞の再生及び修復を促進することができる。更に、それは、有糸分裂活性の欠如のため潜在的な腫瘍リスクに繋がらない。FGF21は、II型糖尿病の治療用の薬物となるための大きな潜在能力を有する。追加的に、FGF21はまた、良好な脂質低下効果を有し、有望な脂質低下薬物である。
【0005】
しかしながら、FGF21はまた、ドラッガビリティにおける極めて大きい課題に直面している。一態様では、FGF21は短い半減期を有する。その半減期は、マウスモデルにおいて約1時間に過ぎない(Xuら、2009)。別の態様では、in vivoでのFGF21の生物学的活性もまた限定されている。従って、FGF21を変換するための緊急の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第05/103081号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W. R. Pearson及びD.J. Lipman、「Improved Tools for Biological Sequence Comparison」、Proceedings of the National Academy of Sciences (Proc. Natl. Acad. Sci.) 85: 2444~2448頁、1988
【非特許文献2】D. J. Lipman及びW. R.「Fast and Sensitive Protein Similarity Search」、Pearson, Science, 227: 1435~1441頁、1989
【非特許文献3】W. Altschul、W. Gish、W. Miller、E. W. Myers及びD. Lipman、「A Basic Local Alignment Search Tool」、Journal of Molecular Biology、215: 403~410頁、1990
【非特許文献4】Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989
【非特許文献5】Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley-Interscience、New York NY、1993
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、以下の特性:(1)安定な構造、長い半減期、(2)低い免疫原性、(3)高い生物学的活性、並びに(4)増強したグルコース低下及び脂質低下活性の1つ又は複数を有するFGF21ポリペプチドを提供する。
【0009】
一態様では、本出願は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、以下の位置:L98、S167、P171、R175、及びR19におけるアミノ酸置換を含む、FGF21ポリペプチドを提供する。
【0010】
一部の実施形態では、FGF21ポリペプチドは、R135、A180、A31、及びG43からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換を更に含む。
【0011】
一部の実施形態では、FGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、(1)L98、S167、P171、R175及びR19、(2)L98、S167、P171、R175、R19、及びR135、(3)L98、S167、P171、R175、R19、及びA180、(4)L98、S167、P171、R175、R19、A31、及びG43、並びに(5)L98、S167、P171、R175、R19、R135、A31及びG43からなる群から選択されるアミノ酸残基におけるアミノ酸置換を含む。
【0012】
一部の実施形態では、L98におけるアミノ酸置換はL98Rである。
【0013】
一部の実施形態では、S167におけるアミノ酸置換はS167Hである。
【0014】
一部の実施形態では、P171におけるアミノ酸置換は、P171A、P171G、及びP171Nからなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、R175におけるアミノ酸置換はR175Lである。
【0016】
一部の実施形態では、R19におけるアミノ酸置換はR19Vである。
【0017】
一部の実施形態では、FGF21ポリペプチドは、R135V、A180E、A31C、及びG43Cからなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換を更に含む。
【0018】
一部の実施形態では、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、FGF21ポリペプチドは、(1)L98R、S167H、P171A、R175L及びR19V、(2)L98R、S167H、P171G、R175L及びR19V、(3)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V及びR135V、(4)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、及びA180E、(5)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、及びR135V、(6)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、A31C、及びG43C、(7)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、A31C及びG43C、(8)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43C、(9)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43C、並びに、(10)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びA180Eからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0019】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、以下の群:配列番号2~11のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドを含む融合タンパク質又はイムノコンジュゲートを提供する。
【0021】
一部の実施形態では、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートは免疫グロブリンFcドメインを更に含む。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインはFGF21ポリペプチドのC末端に位置する。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインはヒトIgGのFc又はその機能的バリアントである。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、以下の群:配列番号12~13のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、融合タンパク質はリンカーを更に含む。ある特定の実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。
【0023】
一部の実施形態では、リンカーのN末端は免疫グロブリンFcドメインのC末端に接続されており、且つリンカーのC末端はFGF21ポリペプチドのN末端に接続されている。
【0024】
一部の実施形態では、リンカーは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
一部の実施形態では、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートは、以下の群:配列番号17~26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
一部の実施形態では、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートはGLP-1又はその機能的バリアントを更に含む。一部の実施形態では、GLP-1又はその機能的バリアントは、以下の群:配列番号14~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
一部の実施形態では、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートは免疫グロブリンFcドメインを更に含む。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインはFGF21ポリペプチドのC末端に位置する。
【0028】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインはヒトIgGのFc又はその機能的バリアントである。免疫グロブリンFcドメインは、以下の群:配列番号12~13のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0029】
一部の実施形態では、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートはリンカーを更に含む。一部の実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。
【0030】
一部の実施形態では、リンカーは第1のリンカーを含む。第1のリンカーのN末端はFcドメインのC末端に接続されており、且つ第1のリンカーのC末端はFGF21ポリペプチドのN末端に接続されている。一部の実施形態では、リンカーは第2のリンカーを含む。第2のリンカーのN末端はGLP-1又はそのバリアントのC末端に接続されており、且つ第2のリンカーのC末端はFcドメインのN末端に接続されている。
【0031】
一部の実施形態では、第1のリンカー及び第2のリンカーのそれぞれは独立して、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0032】
一部の実施形態では、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートは、以下の群:配列番号27~36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21バリアント又は本明細書に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲートをコードする単離された核酸分子を提供する。
【0034】
別の態様では、本明細書に記載の単離された核酸分子を含むベクターが本明細書において提供される。
【0035】
別の態様では、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、本明細書に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、本明細書に記載の単離された核酸分子又は本明細書に記載のベクターを含む又は発現する細胞が本明細書において提供される。
【0036】
別の態様では、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、本明細書に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、本明細書に記載の単離された核酸分子、本明細書に記載のベクター、又は本明細書に記載の細胞、及び任意選択的に薬学的に許容される佐剤を含む、医薬組成物が本明細書において提供される。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、本明細書に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲートは、FGF21代謝障害により引き起こされる疾患の治療用の治療薬の製造において使用される。一部の実施形態では、本出願に記載の使用によれば、FGF21代謝障害により引き起こされる疾患は、糖尿病、脂肪肝、肥満症、及び/又は膵炎を含む。一部の実施形態では、FGF21代謝障害により引き起こされる疾患を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、本明細書に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲートを患者に投与する工程を含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、FGF21代謝障害により引き起こされる疾患の治療における使用のための、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、本明細書に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲートが本明細書において提供される。
【0038】
本開示の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになる。以下の詳細な説明において本開示の例示的な実施形態が示され、記載されるに過ぎない。当業者により認識されるように、本開示は、当業者が本発明の意図及び範囲から離れることなく開示される特有の実施形態に対して改変を行うことを可能にする。よって、本出願における図面及び明細書の記載は、限定的なものではなく、実例的なものに過ぎない。
【0039】
本出願における発明の特有の特徴は添付の特許請求の範囲において示される。本出願における発明の特徴及び利点は、以下に詳細に記載される例示的な実施形態及び図面を参照することによってより良好に理解され得る。図面の簡単な説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本明細書に記載のFGF21ペプチドのSDS-PAGE電気泳動検出の結果を示す。
図2図2は、本明細書に記載の融合タンパク質の構造ダイアグラムを示す。
図3A図3Aは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図3B図3Bは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図3C図3Cは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図3D図3Dは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図3E図3Eは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図3F図3Fは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図3G図3Gは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図3H図3Hは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図4A図4Aは、本明細書に記載の融合タンパク質のSDS-PAGE電気泳動検出の結果を示す。
図4B図4Bは、本明細書に記載の融合タンパク質のSDS-PAGE電気泳動検出の結果を示す。
図5A図5Aは、本明細書に記載の融合タンパク質のSDS-PAGE電気泳動検出の結果を示す。
図5B図5Bは、本明細書に記載の融合タンパク質のSDS-PAGE電気泳動検出の結果を示す。
図6図6は、db/dbマウスの血中グルコースに対する本明細書に記載の融合タンパク質の効果の比較結果を示す。
図7A図7Aは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図7B図7Bは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図7C図7Cは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図7D図7Dは、本明細書に記載の融合タンパク質の質量分析検出ダイアグラムを示す。
図8図8は、db/dbマウスの体重に対する本明細書に記載の融合タンパク質の効果の比較結果を示す。
図9図9は、db/dbマウスの血中グルコースに対する本明細書に記載の融合タンパク質の効果の比較結果を示す。
図10図10は、db/dbマウスの体重成長速度に対する本明細書に記載の融合タンパク質の効果の比較結果を示す。
図11図11は、db/dbマウスの摂食に対する本明細書に記載の融合タンパク質の効果の比較結果を示す。
図12図12は、db/dbマウスの総コレステロールに対する本明細書に記載の融合タンパク質の効果の比較結果を示す。
図13図13は、db/dbマウスの空腹時血中グルコースに対する本明細書に記載の融合タンパク質の効果の比較結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】

以下の例は、特定の例と共に本発明の実施態様を記載する。当業者は、本明細書に開示される内容から本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本出願は、以下の特性:安定な構造、長い半減期、低い免疫原性、高い生物学的活性、並びに増強したグルコース低下及び脂質低下活性の1つ又は複数を有するFGF21ポリペプチドを提供する。
【0042】
以下の例は、特定の例と共に本発明の実施態様を記載する。当業者は、本明細書に開示される内容から本出願の発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0043】
本出願において、「FGF21ポリペプチド」という用語は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21遺伝子、線維芽細胞増殖因子21)によりコードされるタンパク質を一般に指す。本出願において、FGF21ポリペプチドはヒト(ホモサピエンス)FGF21であってもよく、そのアミノ酸配列のNCBI参照配列番号はNP_061986.1である。FGF21遺伝子によりコードされるタンパク質は、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのメンバーであり、内分泌サブファミリーの1つである。FGF21は、補助受容体(co-receptor) FGF受容体1及びβ-KlothoからなるFGF21受容体の主な内因性アゴニストである。
【0044】
本出願において、「XnY」という表現は、配列中のアミノ酸残基の置換を記載する場合、配列中の位置nにおける残基Xが残基Yで置換されていることを指し示す。例えば、「R175L」のアミノ酸置換は、配列中の位置175における残基Rが残基Lで置換されていることを指し示す。本出願において、「R19」という用語は、天然FGF21のアミノ酸配列の位置19におけるアミノ酸残基Rを一般に指す。本出願において、天然FGF21はヒト野生型FGF21であり、そのアミノ酸配列のNCBI参照配列番号はNP_061986.1であり、成熟FGF21配列は、野生型FGF21と比較してリーダー配列を欠いており、181個のアミノ酸を含有する。本出願において、「ネイティブなFGF21配列」という用語は、配列番号1のアミノ酸配列を有する成熟ヒトFGF21配列を一般に指す。
【0045】
本出願において、「免疫グロブリンFcドメイン」という用語は、免疫グロブリン(例えば、抗体)のCH2及びCH3定常領域部分を含むドメインを一般に指す。例えば、免疫グロブリンFcドメインは、免疫グロブリン(例えば、抗体)のヒンジ領域、CH2、及びCH3定常領域部分からなるドメインであってもよい。例えば、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンであってもよい。例えば、免疫グロブリンはヒトIgG1であってもよい。
【0046】
本出願において、「機能的バリアント」という用語は、標的タンパク質(例えば、FGF21ポリペプチド、融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、免疫グロブリンFcドメイン、又はGLP-1)のアミノ酸配列に基づいて1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有するが、標的タンパク質の生物学的特徴の少なくとも1つを依然として保持するタンパク質又はポリペプチドを一般に指す。本出願において、「1つ又は複数」のアミノ酸置換の「複数」は、1つより多くのアミノ酸の置換を一般に指す。例えば、アミノ酸の1~30、1~20、1~10、1~5、又は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29若しくは30個の置換。例えば、機能的バリアントは、少なくとも1つ、例えば、1~30、1~20、若しくは1~10、又は例えば、1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入によりアミノ酸が変更されたタンパク質又はポリペプチドを含んでもよい。機能的バリアントは、変化(例えば、置換、欠失、又は付加)の前のタンパク質又はポリペプチドの生物学的特性を実質的に保持してもよい。例えば、機能的バリアントは、変化の前のタンパク質又はポリペプチドの生物学的活性の少なくとも60%、70%、80%、90%、又は100%を保持してもよい。例えば、置換は保存的置換であってもよい。
【0047】
本出願において、機能的バリアントはまた、標的タンパク質(例えば、FGF21ポリペプチド、融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、免疫グロブリンFcドメイン、又はGLP-1)のホモログであってもよい。本出願において、ホモログは、例えば、標的タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれより高い)の配列相同性を有するタンパク質又はポリペプチドであってもよい。
【0048】
本出願において、相同性は、2つ又はそれより多くの配列の間の類似性、又は関連性を一般に指す。「配列相同性パーセンテージ」は、比較ウインドウ中のアライメントされるべき2つの配列を比較して、同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同じアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が2つの配列中に存在する位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較ウインドウ中の位置の総数(即ち、ウインドウサイズ)で割り、結果に100を掛けて配列相同性パーセンテージを生成することにより算出することができる。配列相同性パーセンテージを決定するために、比較は、例えば、公開されているコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当該技術分野において公知の様々なやり方で実行することができる。当業者は、比較されている全長配列範囲内又は標的配列の領域内の最大アライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アライメント配列のための適切なパラメーターを決定することができる。相同性はまた、以下の方法:FASTA及びBLASTにより決定することができる。FASTAアルゴリズムの説明は、W. R. Pearson及びD.J. Lipman、「Improved Tools for Biological Sequence Comparison」、Proceedings of the National Academy of Sciences (Proc. Natl. Acad. Sci.) 85: 2444~2448頁、1988;並びにD. J. Lipman及びW. R.「Fast and Sensitive Protein Similarity Search」、Pearson, Science, 227: 1435~1441頁、1989に見ることができる。BLASTアルゴリズムの説明は、W. Altschul、W. Gish、W. Miller、E. W. Myers及びD. Lipman、「A Basic Local Alignment Search Tool」、Journal of Molecular Biology、215: 403~410頁、1990に見ることができる。
【0049】
本出願において、「融合タンパク質」という用語は、2つ又はそれより多くのタンパク質又はポリペプチドの融合により得られるタンパク質を一般に指す。本出願において、融合タンパク質はFGF21ポリペプチドを含んでもよい。2つ又はそれより多くのタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子又は核酸分子を接合して融合遺伝子又は融合核酸分子を形成させることができる。融合遺伝子又は融合核酸分子は融合タンパク質をコードすることができる。融合タンパク質は、生物学的研究又は療法のために組換えDNA技術により人工的に作出することができる。本出願において、融合タンパク質は、FGF21ポリペプチド以外のドメインを更に含んでもよい。本出願において、融合タンパク質は、FGF21ポリペプチド及びFGF21ポリペプチド以外のドメイン、及び/又は他のドメインを接続するリンカーを更に含んでもよい。
【0050】
本出願において、「リンカー」という用語は、ペプチド結合により2つ又はそれより多くのポリペプチドを連結することができる機能的な構造を一般に指す。本出願において、「コネクター」、「リンカー」及び「ジョイント」という用語は交換可能に使用される。本発明の融合タンパク質を形成させる場合、リンカー又はコネクターが使用されてもよい。リンカーは、ペプチド結合により連結して一緒になったアミノ酸から構成されてもよい。本明細書に記載のリンカーは、任意の長さ又は組成のリンカーであることができる。一部の実施形態では、リンカーは、ペプチド結合により連結した1~20個のアミノ酸からなる。例えば、1~20個のアミノ酸は20個の天然アミノ酸から選択される。一部の実施形態では、1~20個のアミノ酸は、グリシン、セリン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン及びリジンから選択される。一部の実施形態では、リンカーは、空間的に制約されない複数のアミノ酸からなる。例えば、空間的に制約されないアミノ酸はグリシン及びアラニンであることができる。リンカーはGリッチポリペプチドであってもよく、これは、例えば、(G)3-S、即ち、「GGGS」、(G)4-S、即ち、「GGGGS」及び(G)5-S、即ち、「GGGGGS」から選択されてもよい。一部の実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS又はGGGGSGGGGSGGGGSAを含む。他の好適なリンカーは、GGGGGSGGGSGGGGS、GGGKGGGG、GGGNGSGG、GGGCGGGG、及びGPNGG等を含む。本明細書に記載のリンカーはまた非ペプチドリンカーであってもよい。例えば、-NH-(CH2)S-C(O)-(式中、s=2~20)等のアルキルリンカーを使用することができる。これらのアルキルリンカーは、低級アルキル(例えば、C1~C6)、低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH2又はフェニルが挙げられるがこれらに限定されない任意の立体的に制約されていない基で更に置換されていてもよい。例示的な非ペプチド性リンカーはまた、100~5000kD、例えば、100~500kDの分子量を有するポリエチレングリコールリンカーであることができる。
【0051】
本出願において、「イムノコンジュゲート」という用語は、FGF21ポリペプチド、及びFGF21ポリペプチドにコンジュゲートした他の成分を含むコンジュゲートを一般に指す。イムノコンジュゲートは組換えポリペプチドであってもよい。本出願において、FGF21ポリペプチドにコンジュゲートした成分は、細胞毒、化学療法薬、免疫抑制剤及び/又は放射性同位体等を含んでもよい。例えば、コンジュゲートを形成するための好適な細胞傷害性及び化学療法剤の例は、国際公開第05/103081号に見出すことができる。本出願において、イムノコンジュゲートは、FGF21ポリペプチド及びFGF21ポリペプチドにコンジュゲートされる成分、及び/又は他のドメインを接続するリンカーを更に含んでもよい。
【0052】
本出願において、「GLP-1」という用語は、回腸内分泌細胞により分泌されるペプチドを一般に指す。本出願において、GLP-1はヒトGLP-1であってもよい。ヒトGLP-1のアミノ酸配列のUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号はPOC6A0.1である。GLP-1は、2型糖尿病薬の作用の標的として使用することができる。GLP-1は、膵島β細胞に作用し、インスリン遺伝子の転写、インスリンの合成及び分泌を促進し、膵島β細胞の増殖及び分化を刺激し、膵島β細胞アポトーシスを阻害し、膵島β細胞の数を増加させることができる。
【0053】
本出願において、「核酸分子」という用語は、その天然の環境から分離された又は人工的に合成された単離された形態の任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド又はそれらのアナログを一般に指す。本明細書に記載の核酸分子は単離され得る。例えば、それは、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅による、in vitroでの増幅、(ii)クローニング及び組換えによる製造、(iii)精製、例えば、酵素消化及びゲル電気泳動による分別、又は(iv)化学合成等による合成により製造又は合成することができる。一部の実施形態では、単離された核酸は、組換えDNA技術により調製された核酸分子である。本出願において、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸は、制限断片操作の使用又は合成オリゴヌクレオチドのオーバーラップ伸長PCRの使用が挙げられるがこれらに限定されない当該技術分野において公知の様々な方法により調製することができる。特定の操作について、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989;及びAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley-Interscience、New York NY、1993を参照されたい。
【0054】
本出願において、「細胞」という用語は、本出願のイムノコンジュゲート、本出願のプラスミド若しくは核酸分子のキャリアを含有することができ、若しくはそれを含有している、又は抗体若しくはその抗原結合断片を発現することができる、個々の細胞、細胞株又は細胞培養物を一般に指す。細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌(E.coli))又は真核細胞(例えば、酵母細胞、例えば、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、COS-1細胞、NS0細胞若しくは骨髄腫細胞)であることができる。一部の実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。例えば、哺乳動物細胞はHEK293細胞であってもよい。本出願において、「医薬組成物」という用語は、通常、組成物がin vivo又はin vitro又はex vivoのいずれかでの診断的又は治療的使用のために好適となるように、不活性又は活性の担体と組み合わせて活性物質を含む。
【0055】
本出願において、「代謝障害により引き起こされる疾患」という用語は、身体中の生化学的プロセスの障害に起因してある特定の代謝物質(例えば、糖、脂質、タンパク質、プリン等)の蓄積又は欠乏により引き起こされる疾患を一般に指す。本明細書に記載の代謝障害により引き起こされる疾患は、先天的な要因又は後天的な要因により引き起こされ得る。先天的な要因としては、先天的な遺伝的欠陥、例えば、粘液疾患(mucoid disease)を挙げることができる。後天的な要因としては、内臓の病理学的変化及び機能障害、例えば、腎不全、ネフローゼ症候群等;薬物及び食品を含む外的な要因、例えば、抗癲癇薬の長期投与により引き起こされる血液中の25のヒドロキシビタミンDの減少、それに続く血液中のカルシウム及びリンの減少、アルカリホスファターゼの増加;脂肪及び/又はコレステロールの含有量が多すぎる食品を食べることにより引き起こされる高リポタンパク質血症、動脈硬化症、及び胆石疾患を挙げることができる。本出願において、代謝障害により引き起こされる疾患としては、糖尿病、脂肪肝、肥満症、及び膵炎を挙げることができる。
【0056】
本出願において、「薬学的に許容される佐剤」という用語は、製剤の特徴を増強する薬学的に許容される製剤担体、溶液又は添加剤を指す。そのような添加剤は当業者に周知である。任意の薬学的に許容される希釈剤が好適であるが、非経口投与のための特に好ましい賦形剤は生理食塩水溶液である。例えば、塩化ナトリウム及びマンニトール等である。本出願において、「IgG定常領域ドメイン」という用語は、抗体重鎖定常領域、ヒンジ領域及び抗体軽鎖定常領域を含むポリペプチドドメイン又はポリペプチド断片を一般に指す。抗体は、IgG抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプの抗体であってもよい。本出願において、IgG定常領域ドメインの「断片」という用語は、IgG定常領域ドメインの部分であるが、その活性の少なくとも部分を依然として保持するものを一般に指す。例えば、断片は、CL、CH1、ヒンジ領域、CH2及びCH3の1つ又は複数のドメイン又は断片を含んでもよい。
【0057】
本出願において、「第1」及び「第2」は、記載を区別する目的のために過ぎず、他の意味を有しない。例えば、第1のリンカー及び第2のリンカー。
【0058】
本出願において、「含む」という用語は、指定された特徴を一般に指し、他の要素を除外しない。
【0059】
本出願において、「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は交換可能に使用され、それらの最も広い意味において、2つ又はそれより多くのアミノ酸、アミノ酸アナログ又はペプチド模倣物サブユニットからなる化合物を指す。2つ又はそれより多くのサブユニットは、ペプチド結合により連結され得る。一部の実施形態では、2つ又はそれより多くのサブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテル、及びアミノ基等により連結され得る。タンパク質又はポリペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質又はペプチド配列を構成できるアミノ酸の最大数に制限はない。本出願において、「アミノ酸」という用語は、天然及び/若しくは非天然又は合成アミノ酸を一般に指し、これには、アミノ酸(グリシン、そのD及びL光学異性体等)、アミノ酸アナログ並びにペプチド模倣体のD及びL光学異性体が含まれる。
【0060】
本出願において、「相同性」又は「同一性」又は「類似性」という用語は交換可能に使用され、2つのペプチド又はタンパク質の間又は2つの核酸分子の間の配列類似性を一般に指す。相同性は、比較目的のためにアライメントされ得る各配列中の位置を比較することにより決定することができる。比較された分子の配列中の位置が同じ塩基又はアミノ酸により占有される場合、これらの分子はその位置において相同的である。配列間の相同性の程度は、該配列により共有されるマッチ又は相同的な位置の数と共に変動する。「無関連」又は「非相同」の配列は、比較されている配列の間の同一性が40%又は25%未満であることを指し示す。
【0061】
本出願において、ポリペプチドのアミノ酸配列同一性を指す場合、「少なくとも80%の配列同一性」という用語は、各参照配列に対する少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を一般に指す。
【0062】
本出願において、数値との繋がりで使用される場合、「約」という用語は、指し示される値より5%小さい下限及び指し示される値より5%大きい上限を有する範囲内の数値を一般に含む。
【0063】
本出願において、「組成物」という用語は、2つ又はそれより多くの物質の組合せ、例えば、他の不活性又は活性化合物との活性物質の組合せを一般に指す。
【0064】
本出願において、「治療有効量」という用語は、対象において治療的な利益を生じさせるために要求される活性成分の最小用量を一般に指す。例えば、II型糖尿病、肥満症、若しくはメタボリックシンドロームを呈する若しくはそれに罹りやすい患者のために、又は疾患の開始を予防するために、「治療有効量」は、上記の障害と関連付けられる又は該障害により妨害される病的状態、疾患進行、又は生理学的状態を誘導し、寛解させ、又は引き起こすことができる用量を指す。
【0065】
本出願において、「対象」又は「患者」という用語はヒトであってもよいが、非ヒト動物であってもよく、より特には、伴侶動物(イヌ若しくはネコ等)、農用動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ若しくはウマ等)、又は実験動物(ラット、マウス、及びモルモット等)等であってもよい。
【0066】
FGF21ポリペプチド
一態様では、FGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、以下の位置:L98、S167、P171、R175、及びR19におけるアミノ酸置換を含む。本出願において、L98、S167、P171及びR175は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置98における残基L、位置167における残基S、位置171における残基P、及び位置175における残基Rをそれぞれ指すことができる。
【0067】
本出願において、FGF21ポリペプチドは、R135、A180、A31、及びG43からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換を更に含む。本出願において、R135、A180、A31及びG43は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置135における残基R、位置180における残基A、位置31における残基A、及び位置43における残基Gをそれぞれ指すことができる。
【0068】
本出願において、FGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、(1)L98、S167、P171、R175及びR19、(2)L98、S167、P171、R175、R19及びR135、(3)L98、S167、P171、R175、R19及びA180、(4)L98、S167、P171、R175、R19、及びQ173、(5)L98、S167、P171、R175、R19、A31、及びG43、(6)L98、S167、P171、R175、R19、R135、及びQ173、並びに、(7)L98、S167、P171、R175、R19、R135、A31、及びG43からなる群から選択されるアミノ酸残基におけるアミノ酸置換を含む。
【0069】
本出願において、L98におけるFGF21ポリペプチドのアミノ酸置換はL98Rであってもよい。
【0070】
本出願において、S167におけるFGF21ポリペプチドのアミノ酸置換はS167Hであってもよい。
【0071】
本出願において、P171におけるFGF21ポリペプチドのアミノ酸置換は、P171A、P171G及びP171Nであってもよい。
【0072】
本出願において、R175におけるFGF21ポリペプチドのアミノ酸置換はR175Lであってもよい。
【0073】
本出願において、R19におけるFGF21ポリペプチドのアミノ酸置換はR19Vであってもよい。
【0074】
本出願において、FGF21ポリペプチドは、R135V、A180E、A31C、及びG43Cからなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸置換を更に含む。本出願において、R135V、A180E、A31C及びG43Cは、位置135における残基Rが配列番号1に示されるアミノ酸配列の残基Vにより置換されていてもよく、位置180における残基Aが残基Eにより置換されていてもよく、位置31における残基Aが残基Cにより置換されていてもよく、位置43における残基Gが残基Cにより置換されていてもよいことをそれぞれ指すことができる。
【0075】
本出願において、FGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、(1)L98R、S167H、P171A、R175L及びR19V、(2)L98R、S167H、P171G、R175L及びR19V、(3)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V及びR135V、(4)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、及びA180E、(5)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、及びR135V、(6)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、A31C、及びG43C、(7)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、A31C及びG43C、(8)L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43C、(9)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43C、並びに、(10)L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びA180Eからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0076】
本出願において、FGF21ポリペプチドは、以下の群:配列番号2~11のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0077】
例えば、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171A、R175L、及びR19Vのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171A、R175L、及びR19Vのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-1であってもよく、その配列は配列番号2に示されるものであってもよい。
【0078】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171G、R175L、及びR19Vのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171G、R175L、及びR19Vのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-2であってもよく、その配列は配列番号3に示されるものであってもよい。
【0079】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171G、R175L、R19V及びR135Vのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171G、R175L、R19V及びR135Vのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-3であってもよく、その配列は配列番号4に示されるものであってもよい。
【0080】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171G、R175L、R19V及びA180Eのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171G、R175L、R19V及びA180Eのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-4であってもよく、その配列は配列番号5に示されるものであってもよい。
【0081】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171N、R175L、R19V及びQ173Tのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171N、R175L、R19V及びQ173Tのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-5であってもよい。
【0082】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びR135Vのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びR135Vのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-6であってもよく、その配列は配列番号6に示されるものであってもよい。
【0083】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びG43Cのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びG43Cのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-7であってもよく、その配列は配列番号7に示されるものであってもよい。
【0084】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171N、R175L、R19V、R135V及びQ173Tのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171N、R175L、R19V、R135V及びQ173Tのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-8であってもよい。
【0085】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、A31C及びG43Cのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、A31C及びG43Cのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-9であってもよく、その配列は配列番号8に示されるものであってもよい。
【0086】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43Cのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171G、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43Cのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-10であってもよく、その配列は配列番号9に示されるものであってもよい。
【0087】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43Cのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171A、R175L、R19V、R135V、A31C及びG43Cのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-11であってもよく、その配列は配列番号10に示されるものであってもよい。
【0088】
別の例として、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びA180Eのアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、L98R、S167H、P171A、R175L、R19V及びA180Eのアミノ酸置換を含むポリペプチドはFGF21-12であってもよく、その配列は配列番号11に示されるものであってもよい。
【0089】
融合タンパク質又はイムノコンジュゲート
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21ポリペプチドを含む融合タンパク質又はイムノコンジュゲートを提供する。
【0090】
a. Fc
本出願において、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートは免疫グロブリンFcドメインを更に含む。本出願において、免疫グロブリンFcドメインはFGF21ポリペプチドのC末端に位置する。
【0091】
本明細書に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲートにおいて、免疫グロブリンFcドメインはヒトIgGのFc又はその機能的バリアントである。例えば、免疫グロブリンFcドメインは、以下の群:配列番号12~13のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0092】
例えば、本明細書に記載の免疫グロブリンFcドメインはヒトIgGのFc(UniProt KB又はSwiss-Protにおけるアクセッション番号P01861.1を有するタンパク質を指す)であってもよい。ヒトIgGのFcは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0093】
本出願において、免疫グロブリンFcドメインはヒトIgGのFc又はその機能的バリアントである。例えば、ヒトIgGのFcの機能的バリアントは、ヒトIgG1のFcのアミノ酸配列に基づいて特定のアミノ酸残基を天然又は非天然アミノ酸で改変することにより得られるポリペプチド又はタンパク質であってもよい。例えば、改変は、特定の位置における1つ若しくは複数の保存的若しくは非保存的なアミノ酸の挿入、置換、若しくは欠失に基づいて生成されてもよく、又は特定の位置において非アミノ酸構造を導入する改変を含んでもよい。
【0094】
例えば、免疫グロブリンFcドメインの機能的バリアントはIgG-Fc-PAAKであってもよく、これは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。IgG-Fc-PAAKは、S228P、F234A、L235A、及びR409Kの変異、並びにK440の欠失を含んでもよい。例えば、配列番号12に示されるアミノ酸配列と比較して、IgG-Fc-PAAKの位置228における残基Sは残基Pにより置き換えられていてもよく、位置234における残基Fは残基Aにより置き換えられていてもよく、位置235における残基Lは残基Aにより置き換えられていてもよく、位置235における残基Lは残基Aにより置き換えられていてもよく、位置440における残基Kは欠失していてもよい。
【0095】
b.リンカー
本出願において、融合タンパク質はリンカーを更に含んでもよい。本出願において、リンカーはペプチドリンカーであってもよい。本出願において、リンカーのN末端は免疫グロブリンFcドメインのC末端に接続されており、且つリンカーのC末端はFGF21ポリペプチドのN末端に接続されている。本出願において、リンカーは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0096】
本出願において、リンカーは第1のリンカー及び第2のリンカーを含んでもよい。例えば、第1のリンカーのN末端は免疫グロブリンFcドメインのC末端に接続されており、且つ第1のリンカーのC末端はFGF21ポリペプチドのN末端に接続されている。別の例では、第2のリンカーのN末端はGLP-1又はそのバリアントのC末端に接続されており、且つ第2のリンカーのC末端は免疫グロブリンFcドメインのN末端に接続されている。本出願において、第1のリンカー及び/又は第2のリンカーは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0097】
c. GLP-1
本出願において、融合タンパク質はGLP-1又はその機能的バリアントを更に含んでもよい。本出願において、GLP-1又はその機能的バリアントは、以下の群:配列番号14~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0098】
本出願において、GLP-1又はその機能的バリアントはヒトGLP-1(そのアクセッション番号はUniProt KB又はSwiss-ProtにおいてPOC6A0.1である)であってもよい。GLP-1はまたヒトGLP-1の機能的バリアントであってもよい。
【0099】
例えば、ヒトGLP-1の機能的バリアントはGLP-1-GEGであってもよく、これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、GLP-1-GEGは、A8G、G22E、及びR36Gの変異を含んでもよい。例えば、配列番号14に示されるアミノ酸配列と比較して、GLP-1-GEGの位置8における残基Aは残基Gにより置き換えられていてもよく、位置22における残基Gは残基Eにより置き換えられていてもよく、位置36における残基Rは残基Gにより置き換えられていてもよい。
【0100】
d.融合タンパク質
単一標的融合タンパク質
本出願において、融合タンパク質は単一標的融合タンパク質(本出願において、単純に「単一標的」と称されることがある)であってもよく、即ち、融合タンパク質はFGF21ポリペプチドを含んでもよい。
【0101】
本出願において、単一標的融合タンパク質又はイムノコンジュゲートは免疫グロブリンFcドメインを更に含む。本出願において、免疫グロブリンFcドメインはFGF21ポリペプチドのC末端に位置する。本出願において、免疫グロブリンFcドメインはヒトIgGのFc又はその機能的バリアントである。本出願において、免疫グロブリンFcドメインは、以下の群:配列番号12~13のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0102】
本出願において、単一標的融合タンパク質又はイムノコンジュゲートはリンカーを更に含んでもよい。本出願において、リンカーはペプチドリンカーであってもよい。本出願において、リンカーのN末端は免疫グロブリンFcドメインのC末端に接続されており、且つリンカーのC末端はFGF21ポリペプチドのN末端に接続されている。本出願において、リンカーは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0103】
本出願において、単一標的融合タンパク質又はイムノコンジュゲートは、以下の群:配列番号17~26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0104】
本出願において、単一標的融合タンパク質は、N末端からC末端へそれぞれ、FGF21ポリペプチド、リンカー、及び免疫グロブリンFcドメインであってもよい。
【0105】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的1#(これは、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-1を含んでもよい。
【0106】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的2#(これは、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-2を含んでもよい。
【0107】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的3#(これは、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-3を含んでもよい。
【0108】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的4#(これは、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-4を含んでもよい。
【0109】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的5#であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-5を含んでもよい。
【0110】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的6#(これは、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-6を含んでもよい。
【0111】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的7#(これは、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-7を含んでもよい。
【0112】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的8#であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-8を含んでもよい。
【0113】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的9#(これは、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-9を含んでもよい。
【0114】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的10#(これは、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-10を含んでもよい。
【0115】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的11#(これは、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-11を含んでもよい。
【0116】
例えば、本明細書に記載の単一標的融合タンパク質は単一標的12#(これは、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよく、これはFGF21ポリペプチドFGF21-12を含んでもよい。
【0117】
本出願において、単一標的融合タンパク質は他の改変を更に含んでもよい。例えば、単一標的融合タンパク質が本出願のFGF21又はそのバリアントを依然として含有する限り、改変は、1つ又は複数のアミノ酸の置換、付加、又は欠失を含んでもよい。
【0118】
例えば、改変された単一標的融合タンパク質は、単一標的RGHLQQ(これは、配列番号45に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、単一標的RAHL(これは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、単一標的RGHL(これは、配列番号47に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、単一標的RGE(これは、配列番号48に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0119】
二重標的融合タンパク質
本出願において、融合タンパク質はまた二重標的融合タンパク質(本出願において、単純に「二重標的」と称されることがある)であってもよく、即ち、融合タンパク質は少なくとも2つ又はそれより多くのドメインを含有してもよい。例えば、それはFGF21ポリペプチドを含有し、GLP-1又はその機能的バリアントも含有することができる。本出願において、二重標的融合タンパク質は免疫グロブリンFcドメイン又はその機能的バリアントを更に含有してもよい。
【0120】
本出願において、二重標的融合タンパク質はリンカーを更に含んでもよい。本出願において、リンカーはペプチドリンカーであってもよい。本出願において、リンカーは第1のリンカー及び第2のリンカーを含んでもよい。例えば、第1のリンカーのN末端は免疫グロブリンFcドメインのC末端に接続されており、且つ第1のリンカーのC末端はFGF21ポリペプチドのN末端に接続されている。別の例では、第2のリンカーのN末端はGLP-1又はそのバリアントのC末端に接続されており、且つ第2のリンカーのC末端は免疫グロブリンFcドメインのN末端に接続されている。本出願において、第1のリンカー及び/又は第2のリンカーは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0121】
本出願において、二重標的融合タンパク質は、N末端からC末端へそれぞれ、FGF21ポリペプチド、第1のリンカー、免疫グロブリンFcドメイン、第2のリンカー、及びGLP-1又はその機能的バリアントであってもよい。FGF21ポリペプチドは、以下の群:配列番号2~11又はFGF21-1~FGF21-12のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含んでもよく、免疫グロブリンFcドメインは、以下の群:配列番号12~13のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含んでもよく、GLP-1又はその機能的バリアントは、以下の群:配列番号14~15のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含んでもよく、第1のリンカー及び/又は第2のリンカーは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0122】
例えば、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的1#であってもよく、これは、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-1(これは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0123】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的2#であってもよく、これは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-2(これは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0124】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的3#であってもよく、これは、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-3(これは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0125】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的4#であってもよく、これは、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-4(これは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0126】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的5#であってもよく、これは、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-5であってもよい。
【0127】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的6#であってもよく、これは、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-6(これは、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0128】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的7#であってもよく、これは、配列番号32に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-7(これは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0129】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的8#であってもよく、これは、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-8であってもよい。
【0130】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的9#であってもよく、これは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-9(これは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0131】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的10#であってもよく、これは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-10(これは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0132】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的11#であってもよく、これは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-11(これは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0133】
別の例では、本出願に記載の二重標的融合タンパク質は二重標的12#であってもよく、これは、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、N末端からC末端へそれぞれ、GLP-1-GEG(これは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、第1のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)、IgG-Fc-PAAK(これは、配列番号13に示されるアミノ酸を含んでもよい)、第2のリンカー(これは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)及びFGF21-12(これは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含んでもよい)であってもよい。
【0134】
本出願において、二重標的融合タンパク質はまた二重標的RAHLであってもよく、これは、配列番号41に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、本明細書に記載の二重標的融合タンパク質はまた二重標的RGHLであってもよく、これは、配列番号42に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、本明細書に記載の二重標的融合タンパク質はまた二重標的RGHLQQであってもよく、これは、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、本明細書に記載の二重標的融合タンパク質はまた二重標的RAHLQQであってもよく、これは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0135】
本出願において、標的タンパク質(例えば、FGF21ポリペプチド、融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、免疫グロブリンFcドメイン、又はGLP-1)は、機能的バリアント及び/又はそのホモログを含んでもよい。
【0136】
核酸分子、ベクター、細胞、医薬組成物
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド又は本明細書に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲートをコードする単離された核酸分子を提供する。例えば、それは、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅による、in vitroでの増幅、(ii)クローニング及び組換えによる製造、(iii)精製、例えば、酵素消化及びゲル電気泳動による分別、又は(iv)化学合成等による合成により製造又は合成することができる。本出願において、単離された核酸は、組換えDNA技術により調製された核酸分子である。
【0137】
別の態様では、本明細書に記載の単離された核酸分子を含むベクターが本明細書において提供される。追加的に、ベクターは、他の遺伝子、例えば、適切な条件下で適切な宿主細胞中でのベクターの選択を可能とするマーカー遺伝子を含有してもよい。追加的に、ベクターはまた、コーディング領域が適切な宿主中で適切に発現されることを可能とする発現制御エレメントを含有してもよい。そのような制御エレメントは当業者に周知であり、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、及び遺伝子転写又はmRNA翻訳を調節する他の制御エレメントを挙げることができる。本出願において、発現制御配列は調整可能なエレメントである。発現制御配列の特有の構造は、種又は細胞種の機能に従って変動し得るが、転写及び翻訳開始にそれぞれ関与する5'非転写配列並びに5'及び3'非翻訳配列、例えば、TATAボックス、Cap配列、CAAT配列等を通常含む。例えば、5'非転写発現制御配列はプロモーター領域を含んでもよく、プロモーター領域は、機能的に連結した核酸を転写的に制御するためのプロモーター配列を含んでもよい。本明細書に記載の1つ又は複数の核酸分子は、発現制御エレメントに作動可能に連結していてもよい。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、又は例えば遺伝子操作において一般的に使用される他のベクターを含んでもよい。例えば、ベクターは発現ベクターである。
【0138】
別の態様では、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、本明細書に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、本明細書に記載の単離された核酸分子又は本明細書に記載のベクターを含む又は発現する細胞が本明細書において提供される。それは、融合タンパク質、イムノコンジュゲート、核酸分子、又は担体を含有する。本出願において、各種類又は各細胞は、本明細書に記載の1つのベクター又は本明細書に記載のベクターの1つを含んでもよい。本出願において、各種類又は各細胞は、複数(例えば、2つ若しくはそれより多く)又は複数種(例えば、2つ若しくはそれより多く)の本明細書に記載のベクターを含んでもよい。例えば、本明細書に記載のベクターは、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)等の細胞に導入され得る。例えば、哺乳動物細胞はHEK293細胞であってもよい。本明細書に記載のベクターは、当該技術分野において公知の方法、例えば、エレクトロポレーション、リポフェクチントランスフェクション、及びリポフェクタミントランスフェクション等により細胞に導入され得る。
【0139】
医薬組成物及びその使用
別の態様では、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、本明細書に記載の融合タンパク質若しくはイムノコンジュゲート、本明細書に記載の単離された核酸分子、本明細書に記載のベクター、又は本明細書に記載の細胞、及び任意選択的に薬学的に許容される佐剤を含む、医薬組成物が本明細書において提供される。
【0140】
薬学的に許容される佐剤は、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、糖、キレーター、対イオン、金属錯体、及び/又は非イオン性界面活性剤等を含んでもよい。
【0141】
本出願において、医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位でのin situ投与、吸入、直腸投与、膣投与、経皮投与又は皮下デポーを介する投与のために調製することができる。
【0142】
別の態様では、FGF21代謝障害により引き起こされる疾患の治療用の医薬の製造における、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、本明細書に記載の融合タンパク質又はイムノコンジュゲートの使用が本明細書において提供される。
【0143】
例えば、本出願の医薬組成物は、疾患の発症若しくは進行を阻害し若しくは遅延させることができ、且つ/又は疾患状態を低減及び/若しくは安定化させることができる。
【0144】
本明細書に記載の医薬組成物は、治療有効量のFGF21ポリペプチド、融合タンパク質、又はイムノコンジュゲートを含んでもよい。治療有効量は、発症した又はそのリスクがある対象において疾患若しくは障害(FGF21の代謝障害により引き起こされるもの等)及び/又はその任意の合併症を予防及び/又は治療する(少なくとも部分的に治療する)ことができる用量である。
【0145】
別の態様では、本出願は、FGF21の代謝障害により引き起こされる疾患を治療する方法であって、本出願のFGF21ポリペプチド、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートを対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0146】
別の態様では、FGF21代謝障害により引き起こされる疾患の治療用の医薬の製造における、本明細書に記載のFGF21ポリペプチド、融合タンパク質又はイムノコンジュゲートが提供される。
【0147】
本出願において、FGF21の代謝障害により引き起こされる疾患は、糖尿病、脂肪肝、肥満症、及び膵炎を含んでもよい。
【0148】
いかなる理論によっても縛られることを意図せずに、以下の実施例は、本出願のキメラ抗原受容体、ベクター、細胞、及び組成物の作業方法を説明するためのものに過ぎず、本出願の発明の範囲を限定することは意図されない。
【実施例
【0149】
(実施例1)
FGF21ポリペプチドの調製
1.1 発現ベクタープラスミド-Xの構築
Suzhou GENEWIZ Biotechnology Co. Ltd.社により、FGF21-1(そのアミノ酸配列は配列番号2に示される)、FGF21-7(そのアミノ酸配列は配列番号7に示される)、及びFGF21-RHAL(配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して、L98におけるアミノ酸置換はL98Rであり、S167におけるアミノ酸置換はS167Hであり、P171におけるアミノ酸置換はP171Aであり、R175におけるアミノ酸置換はR175Lである)を含む標的遺伝子を合成した。標的遺伝子配列及びベクタープラスミドpXC17.4を37℃でエンドヌクレアーゼHindIII及びEcoRI(TAKARA社、Japan)を用いて消化した。製造者の使用説明書に従ってGel Extraction Kitを使用して消化産物を精製及び回収した。製造者の使用説明書に従ってDNA Ligation Kit Ver.2.1(TAKARA社、Japan)を使用して、精製された目的遺伝子をベクターにライゲートし、それを次に16℃で1時間インキュベートして組換え発現プラスミドを得た。
【0150】
上記の組換え発現プラスミドでコンピテント細胞DH5aを形質転換し、細菌をアンピシリンプレートにコーティングした。プレート上のモノクローナルを選び、1mlのLB培地(ペプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、塩化ナトリウム10g/L及び寒天2%、抗生物質の含有量100μg/mL)中で培養してプラスミドを抽出した。Suzhou GENEWIZ Biotechnology Co., Ltd.社によるシークエンシング及び検証後に、一連の検証された正しい発現ベクターをInvitrogen社Plasmid Kitを用いて抽出し、制限酵素PvuI(TAKARA社、Japan)を用いて消化した。直鎖化後に、エタノール沈殿法により生成物を精製及び回収し、将来の使用のために-20℃で貯蔵した。
【0151】
1.2 ベクターのトランスフェクション及び細胞中での発現
Cellvento CHO-200培地(Merck社)を用いてCHO宿主細胞を蘇生させた後に、細胞密度が約4.76×106細胞/mLになった時に細胞をトランスフェクションのために収集した。トランスフェクトされる細胞は約1×107個の細胞であり、プラスミドは約40μgであり、それを電気ショック(Bio-Rad社、gene pulser Xcell)によりトランスフェクトした。電気ショック後に細胞を20mLのCellvento CHO-200培地中で培養した。培養の2日目に、細胞を遠心分離により収集し、50μMの最終濃度までL-メチオニンスルホキシイミン(Sigma-aldrich)を加えた20mLのCellvento CHO-200培地に再懸濁した。細胞密度が約0.6×106細胞/mLとなった時に、得られた混合クローンをCellvento CHO-200培地を用いて継代し、継代細胞の密度は約0.2×106細胞/mLであった。細胞生存が約90%となった時に、細胞培養液を収集した。
【0152】
1.3 融合タンパク質の精製及び検出
細胞培養溶液を200gで10分間遠心分離した。次に上清を8000rpmで30分間遠心分離した。上清を収集した。Ni-charged MagBeads(L00295、Kingsray社)及びAm Mag MR magnetic frame(L00723、Kingsray社)を使用することにより遠心分離後の細胞培養溶液の上清をアフィニティー精製に供した。平衡溶液は20mMのPBS、0.5MのNaCl、pH 7.4であり、溶出液は20mMのPBS、0.5MのNaCl、0.5Mのイミダゾール緩衝剤、pH 7.4であった。標的吸収ピーク下のタンパク質溶出液試料を収集した。同時に、収集した試料を還元処理後に10%のSDS-PAGE電気泳動により検出した。SDS試験結果をTable 1(表1)及び図1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
(実施例2)
二重標的融合タンパク質の調製
本出願に記載の融合タンパク質としては単一標的融合タンパク質及び二重標的融合タンパク質が挙げられ、それらの構造を図2に示す。
【0155】
2.1 発現ベクタープラスミド-X2の構築
Suzhou GENEWIZ Biotechnology Co., Ltd.社により、二重標的1#(そのアミノ酸配列は配列番号27に示される)、二重標的2#(そのアミノ酸配列は配列番号28に示される)、二重標的3#(そのアミノ酸配列は配列番号29に示される)、二重標的4#(そのアミノ酸配列は配列番号30に示される)、二重標的5#、二重標的6#(そのアミノ酸配列は配列番号31に示される)、二重標的7#(そのアミノ酸配列は配列番号32に示される)、二重標的8#、二重標的9#(そのアミノ酸配列は配列番号33に示される)、二重標的10#(そのアミノ酸配列は配列番号34に示される)、二重標的11#(そのアミノ酸配列は配列番号35に示される)、及び二重標的12#(そのアミノ酸配列は配列番号36に示される)を含む標的遺伝子を合成した。
【0156】
目的遺伝子及びベクタープラスミドpXC17.4の配列をエンドヌクレアーゼHindIII及びEcoRI(TAKARA社、Japan)を用いて37℃で消化し、製造者の使用説明書に従ってGel Extraction Kitを使用することにより消化産物を精製及び回収した。製造者の使用説明書に従ってDNA Ligation Kit Ver.2.1(TAKARA社、Japan)を使用して、精製された目的遺伝子をベクターにライゲートし、16℃で1時間インキュベートして組換え発現プラスミドを得た。
【0157】
上記の組換え発現プラスミドでコンピテント細胞DH5aを形質転換し、細菌をアンピシリンプレートにコーティングした。プレート上のモノクローナルを選び、1mlのLB培地(ペプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、塩化ナトリウム10g/L及び寒天2%、抗生物質の含有量100μg/mL)中で培養してプラスミドを抽出した。Guangzhou IGE Biotechnology Co., Ltd.社によるシークエンシング及び検証後に、一連の検証された正しい発現ベクターをInvitrogen社Plasmid Kitを用いて抽出し、制限酵素PvuI(TAKARA社、Japan)を用いて消化した。直鎖化後に、エタノール沈殿法により生成物を精製及び回収し、将来の使用のために-20℃で貯蔵した。
【0158】
2.2 ベクターのトランスフェクション及び細胞中での発現
Cellvento CHO-200培地(Merck社)を用いてCHO宿主細胞を蘇生させた後に、細胞密度が約4.76×106細胞/mLになった時に細胞をトランスフェクションのために収集した。トランスフェクトされる細胞は約1×107個の細胞であり、プラスミドは約40μgであり、それを電気ショック(Bio-Rad社、gene pulser Xcell)によりトランスフェクトした。細胞を電気ショック後に20mLのCellvento CHO-200培地中で培養した。培養の2日目に、細胞を遠心分離により収集し、50μMの最終濃度までL-メチオニンスルホキシイミン(Sigma-aldrich)を加えた20mLのCellvento CHO-200培地に再懸濁した。細胞密度が約0.6×106細胞/mLとなった時に、得られた混合クローンをCellvento CHO-200培地を用いて継代した。継代細胞の密度は約0.2×106細胞/mLであった。細胞生存が約90%となった時に、細胞培養液を収集した。
【0159】
2.3 融合タンパク質の精製及び検出
細胞培養溶液を200gで10分間遠心分離した。上清を8000rpmで30分間遠心分離し、上清を収集した。収集された細胞培養上清をプロテインAクロマトグラフィー(EzFast Protein A Diamond、Bestchrom社)によるアフィニティー精製に供した。平衡化溶液は20mMのPBS、0.15MのNaCl、pH 7.4であった。溶出液はpH 3.2の0.1Mのグリシン緩衝液であった。タンパク質溶出液を標的吸収ピークにおいて収集し、pH 7.4の20mMのPBS緩衝液を用いて透析して質量分析用の試料の部分を得た。質量分析検出により検出された分子量は理論的な分子量と合致し、それらはホモ二量体形態であった。一部の試料の質量スペクトルの結果を図3A~3Hに示す。同時に、収集した試料を還元(図4Aに見られる)及び非還元処理(図4Bに見られる)後に10%のSDS-PAGE電気泳動により検出した。結果を図4A図4B、及びTable 2(表2)に示す。二重標的1#の質量分析結果を図3Aに示す。二重標的2#の質量分析結果を図3Bに示す。二重標的4#及び二重標的5#の質量分析結果を図3Cに示す。二重標的6#の質量分析結果を図3Dに示す。二重標的7#の質量分析結果を図3Eに示す。二重標的9#の質量分析結果を図3Fに示す。二重標的10#の質量分析結果を図3Gに示す。二重標的11#の質量スペクトルの結果を図3Hに示す。
【0160】
図4Aにおいて、試料は、1、対照:二重標的RAHL(そのアミノ酸配列は配列番号41に示される);2、マーカー;3、二重標的1#;4、二重標的2#;5、二重標的3#;6、二重標的4#;7、二重標的5#;8、二重標的6#;9、二重標的7#;10、二重標的8#;11、二重標的9# ;12、二重標的10#;13、二重標的11#;14、二重標的11#上清;15、二重標的11#上清である。試料14を除いて上記の試料は、20mMのDTTをそれぞれ含有した。
【0161】
図4Bにおいて、試料は、1、マーカー;2、二重標的1#;3、二重標的2#;4、二重標的3#;5、二重標的4#;6、二重標的5#;7、二重標的6#;8、二重標的7#;9、二重標的8#;10、二重標的9#;11、二重標的10#;12、二重標的11#;13、対照、二重標的RAHL;14、二重標的10#上清;15、二重標的10#であり、試料15は20mMのDTTを含有し、還元を用いて処理される試料である。
【0162】
二重標的RAHLは以下の方法に従って調製した。
【0163】
最初に、上流断片(GLP-1の部分を含む)及び下流断片(Fc-FGF21)をPCR増幅により得た。PCR増幅手順は以下の通りであった:98℃で5分間の予備変性;98℃で10sの変性;56℃で10sのアニーリング;72℃で5s又は10sの伸長;30サイクルの繰返し;及び72℃で8分間の伸長。PCR産物を次に1.0%のアガロースゲル電気泳動により検出し、OMEGA gel recovery kitを使用することにより上流及び下流断片を回収した。得られた上流断片及び下流断片をSOE PCRに供して全長配列を得た。SOE PCR増幅手順は以下の通りであった:98℃で5分間の予備変性;98℃で10sの変性;56℃で10sのアニーリング;72℃で15sの伸長;30サイクルの繰返し;及び72℃で8分間の伸長。次に全長標的遺伝子をGel Extraction Kitキット(OMEGA社、America)により回収した。
【0164】
全長標的遺伝子配列及びベクタープラスミドpcDNA3.4をエンドヌクレアーゼHindIII及びEcoRI(TAKARA社、Japan)を用いて37℃で消化し、製造者の使用説明書に従ってGel Extraction Kitを使用して消化産物を精製及び回収した。製造者の使用説明書に従ってDNA Ligation Kit Ver.2.1(TAKARA社、Japan)を使用して、精製された目的遺伝子をベクターにライゲートし、16℃で1時間インキュベートして組換え発現プラスミドを得た。
【0165】
上記の組換え発現プラスミドでコンピテント細胞DH5aを形質転換し、細菌をアンピシリンプレートにコーティングした。プレート上のモノクローナルを選び、1mlのLB培地(ペプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、塩化ナトリウム10g/L及び寒天2%、抗生物質の含有量100μg/mL)中で培養してプラスミドを抽出した。シークエンシング及び検証後に、一連の検証された正しい発現ベクターをInvitrogen社Plasmid Kitを用いて抽出し、制限酵素PvuI(TAKARA社、Japan)を用いて消化した。直鎖化後に、エタノール沈殿法により生成物を精製及び回収し、将来の使用のために-20℃で貯蔵した。
【0166】
実験において使用したプライマーは以下の通りである:上流断片(GLP-1部分を含む)増幅プライマーは、プライマーAUZ-F(配列番号37)、及びプライマーlfc1-R(配列番号38)を含む。下流断片(Fc-FGF21)増幅プライマーは、プライマーlfc1-F(配列番号39)、及びプライマーfgf21-R(配列番号40)を含む。SOE PCRプライマーは、プライマーAUZ-F(配列番号37)、プライマーfgf21-R(配列番号40)を含む。
【0167】
293 Expi Mediumを用いてHEK293F 宿主細胞(Invitrogen社、Freestyle 293F)を蘇生させた。細胞密度が約1×106細胞/mLとなった時に宿主細胞へのトランスフェクションを行った。約3×107個の細胞にトランスフェクションを行い、直鎖化発現ベクターは約30μgであった。Expi Fectamine293 Reagent Transfection Kitを用いて細胞へのトランスフェクションを行った。トランスフェクション後に、細胞を30mLの293 Expression Medium中で培養した。培養の2日目に、ジェネティシン(geneticin)G418(merck社)を用いて形質転換体のスクリーニングを開始した。細胞の増殖に依存して培地を3日毎に置き換えた。約14日後に、抵抗性クローンが出現し、拡大増殖させることができた。細胞継代密度は約0.5×106細胞/mLであった。得られた混合クローンを293 Expression Mediumを用いて継代培養した。細胞生存が約90%となった時に、細胞培養液を収集した。
【0168】
調製された細胞培養溶液を200gで10分間遠心分離し、上清を8000rpmで30分間遠心分離し、上清を収集した。収集された細胞培養上清をプロテインAクロマトグラフィー(EzFast Protein A Diamond、Bestchrom社)によるアフィニティー精製に供した。平衡化溶液は20mMのPBS、0.15MのNaCl、pH 7.4であった。溶出液はpH 3.2の0.1Mのグリシンであった。タンパク質溶出液を標的吸収ピークにおいて収集し、PBS緩衝液を用いて透析して質量分析用の試料の部分を得た。質量分析(Accurate-Mass Q-TOF LC/MS、Type G6530、Agilent Technologies)検出により検出された分子量は理論的な分子量と合致し、それらはホモ二量体形態であった。結果はTable 2(表2)に示される通りであった。
【0169】
同時に、収集した試料を10%のSDS-PAGE電気泳動により検出した。
【0170】
【表2】
【0171】
結果は、本出願に記載の融合タンパク質は、特定の部位とのアミノ酸変異の組合せを含有するFGF21ポリペプチドに起因してFGF21分解の問題を有効に回避できることを示す。本明細書に記載の融合タンパク質の完全なタンパク質のパーセンテージは全て83%より高く、それらのほとんどは92%より高くまで達することができる。
【0172】
(実施例3)
二重標的融合タンパク質及び単一標的融合タンパク質の調製
3.1 発現ベクタープラスミド-X2の構築
Suzhou Hongxun Biotechnology Co., Ltd.社により、二重標的RGHLQQ(そのアミノ酸配列は配列番号43に示される)、二重標的RAHLQQ(そのアミノ酸配列は配列番号44に示される)、単一標的RGHLQQ(そのアミノ酸配列は配列番号45に示される)、二重標的RAHL(その配列は配列番号41に示される)を含む二重標的融合タンパク質の標的遺伝子を合成した。目的遺伝子及びベクタープラスミドpXC17.4の配列をエンドヌクレアーゼHindIII及びEcoRI(TAKARA社、Japan)を用いて37℃で消化し、製造者の使用説明書に従ってGel Extraction Kitを使用することにより消化産物を精製及び回収した。製造者の使用説明書に従ってDNA Ligation Kit Ver.2.1(TAKARA社、Japan)を使用して、精製された目的遺伝子をベクターにライゲートし、16℃で1時間インキュベートして組換え発現プラスミドを得た。
【0173】
上記の組換え発現プラスミドでコンピテント細胞DH5aを形質転換し、細菌をアンピシリンプレートにコーティングした。プレート上のモノクローナルを選び、1mlのLB培地(ペプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、塩化ナトリウム10g/L及び寒天2%、抗生物質の含有量100μg/mL)中で培養してプラスミドを抽出した。Guangzhou IGE Biotechnology Co., Ltd.社によるシークエンシング及び検証後に、一連の検証された正しい発現ベクターをInvitrogen社Plasmid Kitを用いて抽出し、制限酵素PvuI(TAKARA社、Japan)を用いて消化した。直鎖化後に、エタノール沈殿法により生成物を精製及び回収し、将来の使用のために-20℃で貯蔵した。
【0174】
3.2 ベクターのトランスフェクション及び細胞中での発現
Cellvento CHO-200培地(Merck社)を用いてCHO宿主細胞を蘇生させた後に、細胞密度が約4.76×106細胞/mLになった時に細胞をトランスフェクションのために収集した。トランスフェクトされる細胞は約1×107であり、プラスミドは約40μgであり、それを電気ショック(Bio-Rad社、gene pulser Xcell)によりトランスフェクトした。細胞を電気ショック後に20mLのCellvento CHO-200培地中で培養した。培養の2日目に、細胞を遠心分離により収集し、50μMの最終濃度までL-メチオニンスルホキシイミン(Sigma-aldrich)を加えた20mLのCellvento CHO-200培地に再懸濁した。細胞密度が約0.6×106細胞/mLとなった時に、得られた混合クローンをCellvento CHO-200培地を用いて継代した。継代した細胞密度は約0.2×106細胞/mLであった。細胞生存が約90%となった時に、細胞培養液を収集した。
【0175】
3.3 融合タンパク質の精製及び検出
調製された細胞培養溶液を200gで10分間遠心分離し、上清を8000rpmで30分間遠心分離し、上清を収集した。収集された細胞培養上清をプロテインAクロマトグラフィー(EzFast Protein A Diamond、Bestchrom社)によるアフィニティー精製に供した。平衡化溶液は20mMのPBS、0.15MのNaCl、pH 7.4であった。溶出液はpH 3.2の0.1Mのグリシンであった。タンパク質溶出液を標的吸収ピークにおいて収集し、PBS緩衝液を用いて透析して質量分析用の試料の部分を得た。質量分析(Accurate-Mass Q-TOF LC/MS、Type G6530、Agilent Technologies社)検出により検出された分子量は理論的な分子量と合致し、それらはホモ二量体形態であった。結果をTable 3(表3)及び図7に示す。それらの中で、図7A1は二重標的RAHLQQの4日の発酵後の非還元質量分析の検出結果を示し、図7A2は二重標的RGHLQQの4日の発酵後の非還元質量分析の検出結果を示し、図7B1は二重標的RAHLQQの4日の発酵後の還元質量分析の検出結果を示し、図7B2は二重標的RGHLQQの4日の発酵後の還元質量分析の検出結果を示し、図7C1は二重標的RAHLQQの7日の発酵後の非還元質量分析の検出結果を示し、図7C2は二重標的RGHLQQの7日の発酵後の非還元質量分析の検出結果を示し、図7D1は二重標的RAHLQQの7日の発酵後の還元質量分析の検出結果を示し、図7D2は二重標的RGHLQQの7日の発酵後の還元質量分析の検出結果を示す。
【0176】
【表3】
【0177】
同時に、収集した試料を10%のSDS-PAGE電気泳動により検出した。結果をTable 4(表4)、図5A及び図5Bに示す。
【0178】
それらの中で、図5Aにおいて、1:二重標的RGHLQQ 上清-非還元;2:二重標的RAHLQQ 上清-非還元;3:RAHL 上清-非還元;4:二重標的RGHLQQ 上清-還元;5:二重標的RAHLQQ 上清-還元;6:RAHL 精製試料-還元;7:マーカー。図5Bにおいて、還元群1:二重標的RGHLQQ 精製試料;還元群2:二重標的RAHLQQ 精製試料;還元群3:RAHL上清;非還元群1:二重標的RGHLQQ 精製試料;非還元群2:二重標的RAHLQQ 精製試料;非還元群3:二重標的RAHL 精製試料。
【0179】
【表4】
【0180】
実施例2及び実施例3の結果は、位置19においてQに変異した二重標的融合タンパク質の標的バンドは約75%を占め、位置19においてVに変異した二重融合タンパク質の標的バンドは90%より多くを占めることを示す。これは、FGF21、そして更にはFGF21を含有する融合タンパク質の分解の予防においてFGF21ポリペプチドの位置19におけるVへの変異はQへの変異より有効であることを示す。
【0181】
(実施例4)
マウスモデルにおけるin vivoでの血中グルコース試験
6週齢SPFグレードdb/dbマウス(Jiangsu GemPharmatech Co, Ltd社から購入)を検出用の肥満II型糖尿病のモデル動物として選択した。マウスの皮下に10nmol/kgの用量を注射し、1回目の投与は0日目に実行し、2回目の投与は6日目に実行した。溶媒PBSを対照とし、実施例2において調製した二重標的1#、二重標的2#、二重標的3#、二重標的4#、二重標的7#、二重標的9#及び実施例3において調製した二重標的RAHLを検出のために投与した。試験方法では、マウスの尾の先端から血液を毎朝(投与前)採取し、Luokang Total Excellence血中グルコース計を使用して血中グルコースを検出した。動物を実験の最終日に終夜絶食させ、翌朝マウスの眼窩から血液を収集して血清を調製した。Roche社の自動生化学分析装置を使用して空腹時血中グルコースを検出した。
【0182】
図6は、ビヒクル対照群における血中グルコースは安定であり、高い血中グルコースレベル(>23.0mmol/L)であったことを示す。ブランクビヒクル群と比較して、各試料は血中グルコースを有意に低減させることができる。それらの中で、二重標的3#タンパク質は血中グルコースの低減が弱く、単回投与において24~48時間のみ維持させることができる。他の試料は血中グルコースを有意に低下させることができ、二重標的9#、二重標的1#、二重標的2#、二重標的4#、二重標的7#、二重標的3#のグルコース低下効果は特に顕著である。
【0183】
空腹時血中グルコースの試験結果は、二重標的1#及び二重標的4#等は、ブランクビヒクル群と比較して空腹時血中グルコースを有意に低減できることを示す。本明細書に記載の融合タンパク質は、本明細書に記載の特定の部位とのアミノ酸変異の組合せを含有するFGF21ポリペプチドに起因して空腹時血中グルコースを有意に低減できることが分かる。
【0184】
(実施例5)
マウスの体重検出
実施例4におけるマウスを投与後の体重検出のために採用した。投与は実施例4と同じ方式において行い、1日毎に体重変化を記録した。体重-時間曲線の結果を図8に示す。
【0185】
図8における結果は、二重標的1#、二重標的2#、二重標的4#、二重標的7#、及び二重標的9#は、ビヒクル対照群と比較して体重を連続的及び有意に低減できることを示す。二重標的RAHLは、投与の第1週(0~7日目)の間にのみ体重を低減させることができた。本明細書に記載の融合タンパク質は、本明細書に記載の特定の部位とのアミノ酸変異の組合せを含有するFGF21ポリペプチドに起因してマウスの体重を有意に低減できることが分かる。
【0186】
(実施例6)
db/dbマウスモデルにおける融合タンパク質二重標的RAHL、二重標的1#及び二重標的7#の低血糖及び脂質改善効果の研究
db/dbマウスモデル(Jiangsu GemPharmatech Co., Ltd.社)における融合タンパク質の有効性を研究した。実験方法は以下の通りであった:精製された融合タンパク質を10mMのPBSで希釈し、実験的要求を満たすdb/dbマウスを無作為に選択し、4つの群:対照ビヒクル群(10mMのPBS希釈)、二重標的RAHL群、二重標的1#群及び二重標的7#群に分けた。投薬量は、10nm/kgの融合タンパク質を各db/dbマウスに注射することにより算出した。投薬体積は10ml/kgであった。各融合タンパク質を8匹のマウスに注射し、週1回で2週間投与した。
【0187】
血中グルコース、体重、及び摂食の変化を投与後に臨床的に観察した。結果を図9~11に示し、図9は融合タンパク質の注射後のマウスにおける血中グルコースの変化を示し、図10はマウスにおける体重の成長速度の変化を示し、図11は融合タンパク質の注射後のマウスにおける摂食の変化を示す。
【0188】
【表5】
【0189】
図9~11及びTable 5(表5)における結果は、ビヒクル対照群と比較して、二重標的RAHL、二重標的1#、及び二重標的7#は血中グルコース、体重及び摂食を有意に低減させることができ、二重標的RAHL、二重標的1#、二重標的7#の治療効果はより良好であることを示す。
【0190】
投与の2週後に、マウスを殺した。総血中コレステロール(CHO)レベル及び空腹時血中グルコースを測定して血中脂質及び空腹時血中グルコースの改善を評価した(結果を図12~13に示し、図12は融合タンパク質の注射後のCHOレベルの変化を示し、図13は融合タンパク質の注射後の空腹時血中グルコースの変化を示す)。
【0191】
【表6】
【0192】
図12~13及びTable 6(表6)における結果は、ビヒクル対照群と比較して、二重標的1#は総コレステロールレベルを有意に低減させることができ(P<0.01)、二重標的RAHL及び二重標的7#もまた血中脂質の減少を示し、二重標的RAHL、二重標的1#、及び二重標的7#はいずれも空腹時血中グルコースを低減できることを示す。それらの中で、二重標的1#及び7#の効果は空腹時血中グルコースの低減においてより優れている。本明細書に記載の融合タンパク質は、本明細書に記載の特定の部位とのアミノ酸変異の組合せを含有するFGF21ポリペプチドに起因して、有意にグルコースを低減させ、血中脂質を改善できることが分かる。
【0193】
以上の詳細な説明は説明及び実例の目的で提供され、添付の請求項の範囲を限定することは意図されない。本出願において列挙される実施態様の方法における様々な変更は当業者に自明であり、そしてまた添付の請求項及びそれらの同等のスキームの範囲内である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2022522787000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
例えば、免疫グロブリンFcドメインの機能的バリアントはIgG-Fc-PAAKであってもよく、これは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。IgG-Fc-PAAKは、S228P、F234A、L235A、及びR409Kの変異、並びにK447の欠失を含んでもよい。例えば、配列番号12に示されるアミノ酸配列と比較して、IgG-Fc-PAAKの位置228における残基Sは残基Pにより置き換えられていてもよく、位置234における残基Fは残基Aにより置き換えられていてもよく、位置235における残基Lは残基Aにより置き換えられていてもよく、位置235における残基Lは残基Aにより置き換えられていてもよく、位置447における残基Kは欠失していてもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
本出願において、単一標的融合タンパク質は、N末端からC末端へそれぞれ、免疫グロブリンFcドメイン、リンカー、及びFGF21ポリペプチドであってもよい。
【国際調査報告】