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特表2022-522796シリコンフォトニクス外部共振器型同調可能レーザの波長制御のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】シリコンフォトニクス外部共振器型同調可能レーザの波長制御のための方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20220413BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
H01S5/14
G02B6/12 341
G02B6/12 301
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551846
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 US2020020495
(87)【国際公開番号】W WO2020180728
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/812,455
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500030666
【氏名又は名称】ネオフォトニクス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NeoPhotonics Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ヨンカン
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ジアン-チャン
【テーマコード(参考)】
2H147
5F173
【Fターム(参考)】
2H147AB16
2H147BA17
2H147BD03
2H147DA07
2H147DA15
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147FC02
5F173AA02
5F173AB44
5F173AB47
5F173AB49
5F173AF03
5F173AH12
5F173AL03
5F173AR04
5F173AR06
(57)【要約】
半導体ベースのゲインチップと、同調機能を備えるシリコンフォトニクスフィルタチップとを備える同調可能な固体レーザデバイスが述べられている。シリコンフォトニクスフィルタチップは、入出力シリコン導波路と、シリコン導波路と共に形成された少なくとも2つのリング共振器と、リング共振器とインターフェースする1つ又は複数の接続シリコン導波路と、各リング共振器に関連付けられた個別の加熱器と、チップの温度を測定するように構成された温度センサと、温度センサ及び個別の加熱器に接続され、同調された周波数を提供するためにフィルタ温度を維持するようにフィードバックループでプログラムされた制御装置とを備えることができる。1つ又は複数の接続シリコン導波路は、少なくとも2つのリング共振器それぞれと共振する光を入出力シリコン導波路を通って戻るように再指向するように構成される。レーザ周波数の制御のための対応する方法が述べられている。SiPhoマルチフィルタチップの改良された構造は、サニャック干渉計を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ベースのゲインチップと、
同調機能を備えたシリコンフォトニクスフィルタチップとを備える同調可能な固体レーザデバイスであって、前記シリコンフォトニクスフィルタチップが、入出力シリコン導波路と、前記シリコン導波路と共に形成された少なくとも2つのリング共振器と、前記リング共振器とインターフェースする1つ又は複数の接続シリコン導波路と、各リング共振器に関連付けられた個別の加熱器と、前記チップの温度を測定するように構成された温度センサと、前記温度センサ及び前記個別の加熱器に接続され、同調された周波数を提供するためにフィルタ温度を維持するようにフィードバックループでプログラムされた制御装置とを備え、前記1つ又は複数の接続シリコン導波路が、前記少なくとも2つのリング共振器のそれぞれと共振する光を、前記入出力シリコン導波路を通って戻るように再指向するように構成され、
前記シリコンフォトニクスフィルタチップの前記入出力シリコン導波路が、スポットサイズ変換器を備えた前記半導体ベースのゲインチップに結合されて、前記インターフェースによる損失を低減するためにモードサイズ整合を提供する、
同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項2】
前記シリコンフォトニクスフィルタチップが、各リング共振器に関連付けられた個別の抵抗温度センサをさらに備え、前記制御装置が、前記フィードバックループでの前記測定を考慮に入れるために、前記個別のリング温度センサから信号を受信するように接続される、請求項1に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項3】
前記シリコンフォトニクスフィルタチップが、前記入出力シリコン導波路に光学的に接続された光学スプリッタ-コンバイナを備え、前記1つ又は複数の接続シリコン導波路が、それぞれ光学スプリッタ-コンバイナの分割側に接続された、サニャック干渉計のループと共に配設された2つの分岐導波路を備え、前記リング共振器が、前記干渉計の前記ループを閉じてマルチフィルタ型サニャック干渉計を形成する、請求項1又は2に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも2つのリング共振器が2つのリング共振器であり、前記1つ又は複数の接続シリコン導波路が、前記2つのリング共振器を互いに光学的に接続するように構成された概してU字形のシリコン導波路をさらに備え、各リング共振器がそれぞれ前記スプリッタ-コンバイナの分岐部に結合され、前記スプリッタ-カプラから進む光が、両方の共振リングと適切に共振する場合に、前記スプリッタ-コンバイナから前記スプリッタ-カプラに向かって、第1のリング共振器に結合し、概してU字形のシリコン導波路に沿って、次いで他方のリング共振器に沿って、他方の分岐部に結合される構成を形成する、請求項3に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも2つのリング共振器が3つのリング共振器であり、各2つのリング共振器がそれぞれ前記スプリッタ-コンバイナの分岐部に結合され、第3のリング共振器が、他の2つのリング共振器の間に位置決めされて光学的に接続され、前記スプリッタ-カプラから進む光が、3つのリング共振器すべてと適切に共振する場合に、一方の分岐部から第1のリング共振器に結合し、第3のリング共振器に沿って、次いで他方の共振リングに沿って、他方の分岐部に結合されて、前記スプリッタ-カプラに向けられた光とのサニャック干渉計のループを完成させる構成を形成する、請求項3に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項6】
前記クラッドのトレンチが、前記加熱器の少なくとも一部を少なくとも2つのリング共振器から断熱する、請求項1~5のいずれか一項に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項7】
前記ゲインチップが、III-V族半導体層を備えるp-nダイオードを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項8】
前記制御装置が、前記リング共振器温度の比例-積分-微分閉ループ制御を行うようにプログラムされている、請求項1~7のいずれか一項に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項9】
前記ゲインチップの出力を受信し、増幅された光信号をさらに出力するように構成された半導体光増幅器をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項10】
前記ゲインチップの前記出力を受信し、増幅された光信号をさらに出力するように構成された半導体光増幅器と、構成要素を冷却するように構成された熱電冷却器とをさらに備え、シリコンフォトニクスフィルタチップが、前記入出力シリコン導波路に光学的に接続された光学スプリッタ-コンバイナを備え、前記1つ又は複数の接続シリコン導波路が、それぞれ前記光学スプリッタ-コンバイナの分割側に接続されたサニャック干渉計の2つの分岐部を備え、前記リング共振器が、前記干渉計の前記ループを閉じて、マルチフィルタ型サニャック干渉計を形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の同調可能な固体レーザデバイス。
【請求項11】
同調可能な外部共振器型レーザの出力を安定化する方法であって、前記同調可能な外部共振器型レーザが、スポットサイズ変換器によって互いに結合されて前記レーザキャビティを形成する半導体ベースのゲインチップとシリコンフォトニクスフィルタチップとを備え、前記シリコンフォトニクスフィルタチップが、任意の加熱要素から離してチップ温度を測定するように構成された抵抗温度センサと、個別の一体型抵抗加熱器を備えた複数のリング共振器とを備え、方法が、
前記抵抗温度センサから読取値を取得し、抵抗加熱器への電力を調整してレーザ周波数を公差内に維持するように構成された制御装置によって駆動される制御ループを使用するステップを含む、方法。
【請求項12】
前記制御ループが、前記抵抗加熱器の比例-積分-微分調整を行う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記同調可能な外部共振器型レーザが、デジタルプロセッサを備える制御装置をさらに備える、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザ周波数の前記公差が±0.5Ghzである、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
シリコンフォトニクスフィルタチップが、入力導波路と、2つの分岐導波路と、前記入力導波路及び前記2つの分岐導波路に接続されたスプリッタ-カプラと、前記2つの分岐導波路を橋渡しする少なくとも2つのリング共振器とを備え、前記リング共振器が干渉計のループを閉じて、マルチフィルタ型サニャック干渉計を形成する、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記同調可能な外部共振器型レーザが、前記ゲインチップからの出力を受信し、増幅された光を出力するように構成された半導体光増幅器をさらに備える、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記同調可能な外部共振器型レーザは、少なくとも約120mWの電力出力及び約60kHz以下の固有線幅を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
入力導波路と、
前記入力導波路に光学的に接続されたサニャック干渉計であって、
前記入力導波路に接続されたスプリッタ/カプラ、
前記スプリッタ-カプラに接続され、それぞれが端部で終端する2つの導波路分岐部、及び
それぞれが個別の導波路分岐部に結合され、介在する湾曲導波路によって互いに結合されて、それぞれのリング共振器の旋光の方向を反転させる2つのリング共振器であって、前記介在する湾曲導波路が、さらなるリング共振器を備えることも備えないこともある、2つのリング共振器、を備えるサニャック干渉計と、
各リング共振器に関連付けられた抵抗加熱器と、を備える光チップであって、
前記入力導波路への光が特定の導波路分岐部に分割され、前記光が2つのリング共振器及び任意の介在するリング共振器と共振する場合、次いで一方のリング共振器を介して、前記介在する湾曲導波路に沿って、さらに他方のリング共振器を介して、反対側の導波路分岐部に結合され、スプリッタ-カプラに戻る、
光チップ。
【請求項19】
前記導波路が、元素シリコン及びシリカクラッドを備える、請求項18に記載の光チップ。
【請求項20】
前記介在する湾曲導波路がU字形状であり、前記形状の両側の直線縁部がそれぞれのリング共振器とインターフェースされる、請求項19に記載の光チップ。
【請求項21】
前記抵抗加熱器からの温度勾配の有意な測定を伴わずにチップ温度を測定するように位置決めされた温度センサをさらに備える、請求項20に記載の光チップ。
【請求項22】
各リング共振器に関連付けられた温度センサをさらに備える、請求項21に記載の光チップ。
【請求項23】
前記リング共振器導波路及びクラッドの加熱される部分の少なくとも部分的な断熱を提供するトレンチをさらに備える、請求項22に記載の光チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用する2019年3月1日にGao他に付与された「Method For Wavelength Control Of Silicon Photonic External Cavity Tunable Laser」という名称の同時係属中の米国仮特許出願第62/812,455号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、III-V族半導体ダイオード構造などの半導体ゲインチップと、ゲインチップとインターフェースされて同調可能レーザキャビティを形成するシリコンフォトニクスベースの同調可能なフィルタチップとを備えたハイブリッド外部共振器型レーザに関する。本発明はさらに、所望の熱制御を備えた外部共振器型レーザ用のシリコンフォトニクスチップに関する。
【背景技術】
【0003】
コヒーレント光通信システムは、数百メートルから全世界までの距離でのインターネットワーキングの主要な方法として広く認識されている。需要の増加により光ファイバ容量が100Gbs/波長以上になるので、コヒーレント光システムがますます多く採用されている。コヒーレント同調可能レーザは、そのようなネットワークを実現可能にする重要な要素である。これらは単に「同調可能レーザ」と呼ばれることが多いが、これらのレーザに関する動作要件は、その単純な用語が示唆するよりもはるかに特定的である。これらのレーザの同調性は通常、波長の観点から述べられるが、光周波数の観点から挙動を表現するほうが明快であることがよくある。相関は、常に、周波数=光速/波長という単純な方程式によって定められる。したがって、1520nm~1570nm(典型的な範囲)の間でほぼ同調可能なレーザは、それに応じて、約197Thz~191THz(Thz=1012Hz)の間で同調可能である。そのような同調可能レーザが新興及び今後のコヒーレントシステムの要件を満たすためには、様々な要件のなかでもとりわけ、(A)ターゲットの1GHz以内の周波数設定(したがって波長)に応答する(すなわち、200,000分の1)、及び(B)500KHz未満、好ましくは100KHz未満の線幅(約1億分の1の比帯域)を示すべきである。
【0004】
これらの挙動を実現するために、同調可能レーザは、常に外部共振器型レーザ(ECL)として設計される。これは、ECL構造が、光増幅素子と、複合光共振器を形成する他の光学素子とを含むことを意味する。これは、増幅素子と光共振器とが本質的に同じ単一のダイ上にある標準的な半導体レーザダイオードとは対照的である。複合光キャビティ内の光フィルタは、所期の光周波数を選択し、所要の光線幅を保持するように調整される。単一の通過帯域を(約)6THzの同調範囲全体にわたって同調し、(約)200KHzの線幅を提供することもできる単一の光学フィルタは、現在実用的ではない(又はほぼ実用的でない)。したがって、この種の実用的なECL同調可能レーザは、複合共振器で2つの同調可能フィルタを利用する。各同調可能フィルタは、同調範囲全体にわたって櫛状の狭い通過帯域を提供し、各フィルタは、各フィルタの1つのライン間のみに重畳があるように個別に調整され、同調可能レーザはその重畳周波数で狭帯域の光を放出する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、半導体ベースのゲインチップと、同調機能を備えたシリコンフォトニクスフィルタチップとを備える同調可能な固体レーザデバイスに関する。一般に、シリコンフォトニクスフィルタチップが、入出力シリコン導波路と、シリコン導波路と共に形成された少なくとも2つのリング共振器と、リング共振器とインターフェースする1つ又は複数の接続シリコン導波路と、各リング共振器に関連付けられた個別の加熱器と、チップの温度を測定するように構成された温度センサと、温度センサ及び個別の加熱器に接続され、同調された周波数を提供するためにフィルタ温度を維持するようにフィードバックループでプログラムされた制御装置とを備える。シリコンフォトニクスチップ内で、1つ又は複数の接続シリコン導波路は、一般に、少なくとも2つのリング共振器それぞれと共振する光を入出力シリコン導波路を通って戻るように再指向するように構成される。いくつかの実施形態では、シリコンフォトニクスフィルタチップの入出力シリコン導波路が、スポットサイズ変換器を備えた半導体ベースのゲインチップに結合されて、インターフェースによる損失を低減するためにモードサイズ整合を提供する。
【0006】
さらなる態様では、本発明は、同調可能な外部共振器型レーザの出力を安定化する方法であって、同調可能な外部共振器型レーザが、スポットサイズ変換器によって互いに結合されてレーザキャビティを形成する半導体ベースのゲインチップとシリコンフォトニクスフィルタチップとを備える、方法に関する。いくつかの実施形態では、シリコンフォトニクスフィルタチップは、任意の加熱要素から離してチップ温度を測定するように構成された抵抗温度センサと、個別の一体型抵抗加熱器を備えた複数のリング共振器とを備える。この方法は、抵抗温度センサから読取値を取得し、抵抗加熱器への電力を調整してレーザ周波数を公差内に維持するように構成された制御装置によって駆動される制御ループを使用するステップを含むことができる。
【0007】
別の態様では、本発明は、
入力導波路と、
入力導波路に光学的に接続されたサニャック干渉計であって、
入力導波路に接続されたスプリッタ/カプラ、
スプリッタ-カプラに接続され、それぞれが端部で終端する2つの導波路分岐部、及び
それぞれが個別の導波路分岐部に結合され、介在する湾曲導波路によって互いに結合されて、それぞれのリング共振器の旋光の方向を反転させる2つのリング共振器であって、介在する湾曲導波路が、さらなるリング共振器を備えることも備えないこともある、2つのリング共振器、を備えるサニャック干渉計と、
各リング共振器に関連付けられた抵抗加熱器と、を備える光チップであって、
入力導波路への光が特定の導波路分岐部に分割され、光が2つのリング共振器及び任意の介在するリング共振器と共振する場合、次いで一方のリング共振器を介して、介在する湾曲導波路に沿って、さらに他方のリング共振器を介して、反対側の導波路分岐部に結合され、スプリッタ-カプラに戻る、光チップに関する。いくつかの実施形態では、光チップは、光チップをシリコンフォトニクスチップとみなすことができるように、シリコン導波路及びシリカクラッドと共に実装される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】様々な熱的クロストークレベルの関数として、現在市販のECLと比較した、シリコンフォトニクスベースの外部共振器型レーザ(ECL)の計算された余剰周波数誤差のプロットを示す図である。
図2】シリコンフォトニクスフィルタチップと半導体ベースのゲインチップとを含み、半導体光増幅器(SOA)に結合することができる、同調可能な固体レーザの実施形態の概略斜視図である。
図3】シリコンフォトニクスフィルタチップの一実施形態の一部の側断面図である。
図4】シリコンフォトニクスフィルタチップに結合することができる半導体ベースのゲインチップの実施形態の斜視図である。
図5】同調可能レーザシステムの一実施形態のブロック図である。
図6】リング共振器に対するリング温度センサ(RTD)対レーザ周波数誤差のプロットを示す図である。
図7】チップ加熱器電力対リング温度センサ(RTD)読取り変化率のプロットを示す図である。
図8】シリコンフォトニクスフィルタチップの別の実施形態の上面図であって、チップが、一対のリング共振器と、反射器で終端する導波路とを有する図である。
図9】シリコンフォトニクスフィルタチップのさらに別の実施形態の上面図であって、チップが、並べて配置された複数のリング共振器を有する、図である。
図10】チップが分岐導波路と複数の結合リング共振器とを有する、シリコンフォトニクスフィルタチップの別の実施形態の一実施形態を示す図である。
図11】リング共振器の周りに断熱トレンチを含むシリコンフォトニクスフィルタチップの実施形態の上面斜視図である。
図12図11のシリコンフォトニクスフィルタチップの実施形態の上面図である。
図13】リング共振器を部分的に取り囲むL字形の断熱トレンチを含むシリコンフォトニクスフィルタチップの別の実施形態の上面斜視図である。
図14】一対の断熱トレンチを含むシリコンフィルタチップのさらに別の実施形態の上面斜視図である。
図15】一対の断熱トレンチを有する図14のシリコンフィルタチップの実施形態の上面図である。
図16】1つのリング共振器に関連付けられた単一の加熱器を変化させて、プロトタイプECLを使用して、65nmの波長範囲にわたって同調された重ね合わされたレーザ発振スペクトルのプロットを示す図である。
図17】同調範囲全体にわたる、測定されたSMSR(ドットの上側プロット)及びファイバ結合出力電力(ドットの下側プロット)のプロットを示す図である。
図18】ゲインチップ電流を200mAに固定した、SOA電流の関数としてのファイバ結合出力電力を示す左側のプロット(図18A)と、SOA電流の関数として、測定されたレーザ固有線幅(上側のドット)及び相対強度雑音(RIN、下側のドット)を示す右側のプロット(図18B)とを示す図である。
図19図19Aは、プロトタイプデバイスを使用して、波長計(線)によって測定され、異なるSOA電流に関するRTD読取値(ドット)によって計算された周波数のプロットを示す図である。図19Bは、±0.2GHz内にある図19Aの結果からの測定誤差のプロットを示す図である。図19Cは、異なるリング加熱器温度設定に関して、波長計(線)によって測定され、RTD読取値(点)によって計算された周波数のプロットを示す図である。図19Dは、±0.2GHz内にある図19Cからの測定誤差のプロットを示す図である。
図20】抵抗加熱器を114℃の温度に設定した状態でのシリコン導波路の周りの温度勾配を示すモデルからの温度のプロットを示す図である。
図21】チップ温度センサが動作している場合及び動作していない場合にプロットされた異なる線を有する、デバイス温度ドリフトの関数としてのレーザ周波数ドリフトのプロットであって、チップ温度センサの使用により生じ得る温度ドリフトの低減を示すプロットを示す図である。
図22】時間の関数としての周波数ドリフトの下側フレームでのプロットであって、半導体光増幅器への電流が、上側フレームに示されるように500mAから700mAに2段階で増加され、周波数ドリフトが、チップ温度センサが動作している場合及び動作していない場合で示される、プロットを示す図である。
図23】左側フレームにおける、加熱器温度を調整することによって得られた周波数同調の精度のプロットであって、線がターゲット周波数のプロットであり、ドットが、プロトタイプデバイスに関する波長計からの測定された周波数のプロットであり、右側フレームが、左側プロットからの周波数誤差のプロットであり、加熱器電力のみを使用することによって誤差が±0.5GHz以内であることを示す、プロットを示す図である。
図24】左上のプロットにおける時間の関数としてのSOA電圧のプロット、及び左下フレームにおける、SOA電流変化による時間の関数としての周波数ドリフトのプロット(第1の線)を有し、これは、単一の参照RTD(第1の線に重なる第2の線)を使用することによって正確に追跡され、右側フレームには、時間の関数としての差がプロットされ、40分の時点で、制御コードが有効化され、わずか0.2GHzの誤差で周波数を元のスペクトル位置にシフトする、図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
外部共振器型同調可能レーザは、レーザ周波数のドリフトを小さくためにシリコンフォトニクスフィルタチップの温度の厳密な制御を使用する、レーザキャビティの一体型シリコンフォトニクス同調セクションを設けられる。外部共振器型レーザの周波数同調は、抵抗加熱器を使用して調整可能な光学フィルタを形成するシリコン導波路を備えたフォトニクスチップを使用して行われる。所望の範囲にわたる所望の周波数制御及び同調性を実現するために、フィルタは、個別に調整可能な少なくとも2つのリング共振器を備えることができる。レーザキャビティの利得部分は、一般に、III-V族半導体材料などの半導体導波路を使用して形成することができる。いくつかの実施形態では、レーザは、半導体光増幅器と直接インターフェースされてレーザ出力を増幅し、それにより、レーザキャビティ内の光出力をより低く維持して、より良いレーザ制御を提供することができる。シリコンフォトニクスチップは、サニャック干渉計構造を組み込むことができる(信号は、干渉計ループを閉じるために2つの導波路分岐部を接続する少なくとも2つの共振リング導波路を通過する)。リングを同調して、選択された波長を提供することができ、マルチフィルタ型サニャック干渉計は、周波数フィルタリングと共に安定性を改良する。本明細書で述べる構造は、現実的な設計を使用して効率的に商用化できるように、及び場合によっては既存の市販の構成要素を活用できるように設計されている。
【0010】
ビデオオンデマンドサービス、モバイルサービス、及びクラウドベースのサービスによって引き起こされるネットワークトラフィックの爆発的な増加により、長距離ネットワークからメトロ及びデータセンタ間ネットワークへと、大容量コヒーレント伝送システムの普及が加速している。これらの短距離ネットワークセグメントは、参照により本明細書に援用するN. Kaneda et al., “400Gb/s Single Carrier Transmission with Integrated Coherent Optics,” OFC, Th3F.4 (2016)に記載されているように、モジュールのコスト、サイズ、及び消費電力の影響を特に受けやすい。したがって、OSFP及びDD-QSFP標準フォームファクタなどのスモールフォームファクタコヒーレントモジュールでの低コストでコンパクトな同調可能レーザに高い需要がある。一方、光源と局所発振器との共有のためには、16dBm以上の高いレーザ出力電力が望ましい。また、高次変調フォーマットにおける厳しい位相雑音許容範囲を満たすには、100kHz未満の狭い線幅が好ましい。これらの商業的な要求は、参照により本明細書に援用するM.Seimetz et al.,“Laser Linewidth Limitations for Optical Systems with High-Order Modulation Beyond 16-QAM,”OFC,TH1B.1(2008)にさらに記載されている。
【0011】
本明細書では、電気通信及び他の用途のための高性能コヒーレントモジュールにおいてフォトニクス集積回路を使用する同調可能レーザの正確な周波数制御及びいくつかの実施形態では位相制御のための技法、構造、及び方法が開示される。同調可能レーザは、一般に、利得媒体としての化合物半導体材料と、同調可能な周波数フィルタとしてのシリコンフォトニクス集積回路とを備える。シリコンフォトニクス回路は、一般に、周波数選択要素としてシリコン導波路リング共振器を備える。シリコンフォトニクス回路は、シリコン導波路リング共振器のフィルタ周波数を正確に同調及び監視するために、複数の一体型加熱器、温度センサ、基準温度センサ、断熱トレンチ、及びそれらの様々な組合せをさらに含むことができる。周波数選択要素の特性、例えば共振周波数の正確な監視及び制御により、高精度及び長期安定性を有する同調可能レーザの周波数制御を保証することができる。いくつかの実施形態では、シリコンフォトニクスフィルタは、マルチフィルタ型サニャック干渉計を備え、2つ以上のリング共振器が、2つの導波路分岐部を接続して干渉計のループを形成し、共振周波数の反射を提供する。
【0012】
スモールフォームファクタでの外部共振器型同調可能レーザは、ますます高まる帯域幅の需要に対応するための大容量コヒーレント光通信システムを実現可能にする重要な構成要素の1つである。外部共振器型同調可能レーザは、2つの基本的な要素を含む。第1の要素は利得媒体であり、一般に、直接のエネルギーバンドギャップ及び光生成時の高い効率により、リン化インジウム(InP)やガリウムヒ素などのIII-V族化合物半導体を使用する。第2の要素は、周波数選択性の外部共振キャビティである。外部レーザキャビティは、レーザ位相雑音を抑制するためのかなり長い共振キャビティを保証し、これは高速コヒーレント通信システムにおいて非常に重要である。そのようなシステムは、振幅変調だけでなく光位相変調にも依拠するからである。
【0013】
シリコンフォトニクス技術を使用する外部共振器型レーザは、同調可能レーザのサイズ及びコストを低減するための有望な解決策である。シリコン集積回路は、過去数十年にわたってエレクトロニクス産業の焦点であり、シリコン集積回路の技術進歩により、相補型金属酸化物半導体CMOS回路のフィーチャサイズ、コスト、及び消費電力が大幅に低減されている。フォトニクス集積回路は、エレクトロニクス産業で発展してきた成熟したCMOS製造工場を使うことで、同様の低コストの大量生産を行える見込みがある。周波数選択要素、パワーモニタリングフォトダイオード、及び光学スプリッタなどの同調可能レーザのディスクリート光学構成要素のシングルチップ集積は、ディスクリート構成要素の数の低減及び組立ての複雑さの軽減により、同調可能レーザのコストを低減することができる。
【0014】
コヒーレント通信システムにおける同調可能レーザに関する基本的な特徴の1つは、高精度の周波数制御及び長期的な周波数安定性である。周波数選択要素のフィルタリング周波数は、それらに隣り合うマイクロメートルサイズの一体型加熱器によって熱光学効果を使用して同調することができる。しかし、シリコン材料の高い熱伝導率により、シリコン集積回路上の周波数選択要素の周波数は、例えば周囲温度変化、利得媒体の電流変動、及び他のオンチップ加熱器からの熱的クロストークによるチップ熱擾乱によって容易に干渉され得る。したがって、シリコンフォトニクス集積回路を使用して外部共振器型同調可能レーザのレーザ発振周波数を正確に制御するための改良された方法及び構造を実現することが望ましい。
【0015】
ダイオードレーザは、一般に、電子と正孔が結合して、エネルギー解放に対応する光子の解放をもたらすときに、p-n接合を使用して光を生成し、電流が、励起された電子状態を電子-正孔対によって送る。レーザキャビティは、後部反射器と、ダイオードから光が生成される前面にある部分反射器とによって形成される。レーザキャビティ内での光の反射により誘導放出が発生し、コヒーレントレーザ光を生成する。内部キャビティダイオードレーザの場合、レーザキャビティのサイズはダイオードサイズによって設定される。外部共振器型ダイオードレーザ(ECL)の場合には、後部ミラーはフォトニクス要素によって置き換えられ、利得領域を半導体ダイオード内に残したまま、レーザキャビティの調整による周波数同調を可能にすることができる。本明細書での改良された設計は、レーザキャビティ及びそれに対応してレーザ周波数の調整のためにシリコンベースのフォトニクスチップを使用する。
【0016】
構成要素の小型化を追求する絶え間ない努力において、そのような小型化を実現するために新たなECLアーキテクチャが評価されている。小型化に向けた重要な方針は、ECLの自由空間セクションを導波路集積で置き換えることである。特に、熱的に同調可能なシリコンフォトニクスリング共振器要素は、自由空間ECLでの熱的に同調可能なエタロンに対する妥当な直接の相当物である。したがって、適切に構成されたリング共振器を有するシリコンフォトニクス導波路チップは、例えばMelikyan(参照により本明細書に援用するMelikyan et.al.,“Wavelength Stabilized Silicon/III-V Hybrid Laser,”Proc.42nd ECOC 2016,pg 598)に記載されているように、従来のECLの自由空間セクションを適切に統合するものである。しかし、集積フォトニクスは、利点だけではなく課題も生じる。特に、シリコン導波路の熱感度は、自由空間エタロンでの光路よりも実質的に高い。それと同時に、共通の基板の熱伝導率がより高く、集積光学素子の離間距離がより近いことにより、光学素子全体にわたる熱勾配がはるかに大きくなる。熱勾配及び熱感度は、自由空間ECLの熱制御技術を使用してシリコンフォトニクスECLが一般に全ての性能要件を確実に満たすことができなくなる程度まで、自由空間ECLからの熱効果に関する弱い結合の仮定を損なう傾向がある。
【0017】
シリコンフォトニクスチップのECLキャビティの外側部分は、一般にシリコン導波路に2つ以上のリング共振器を備える。リング共振器は、適切な周波数を選択する光学フィルタとして機能する。フィルタは一般に温度感受性があり、典型的には、各フィルタ構成要素の温度を意図的に調整及び制御することによって同調される。これらの用途でフィルタの周波数透過を直接測定することは実質的に不可能であるが、フィルタ温度を監視し、数学的較正を適用することによって、透過率を十分に推測することができることが実証されている。フィルタを通る光路での温度を正確に知ることが望ましいだろう。しかし、加熱器と温度センサとの両方が光を吸収し、光路に近すぎないように位置決めされるべきであるので、熱の印加と温度の感知とは、光路から物理的にずらされ、光路の実際の温度は推測される。周囲温度の変化やフィルタ間の温度クロストークなど、温度の推測を乱すことがある他の熱変動がある。既存の市販のECLに関する主要なアーキテクチャである自由空間ベースのECLの場合、これらの結合は弱く、結果として生じる摂動は、熱的設計と較正の強化によって抑制することができる。エタロンベースのECLに関するより多くの情報は、例えば、参照により本明細書に援用する「thermal Control of Optical Filter With Local Silicon Frame」という名称のFinot他への米国特許第7,961,374号明細書で見ることができる。
【0018】
シリコンフォトニクス技術を使用する外部共振器型同調可能レーザは、これらの要件を満たす魅力的な解決策である。そのようなレーザ設計の一般的な概念は、G. Valicourt et al.,“Photonic Integrated Circuit Based on Hybrid III-V/Silicon Integration,”J.Lightwave Technol.36,265-273(2018)及びA. Verdier et al.,“Ultrawideband Wavelength-Tunable Hybrid External-Cavity Lasers,”J.Lightwave Technol.36,37-43(2018)に記載されており、どちらも参照により本明細書に援用する。それらのCMOS適合性の製造プロセス、及び様々な光学構成要素のオンチップ集積は、A.Novack et al.,“A Silicon Photonic Transceiver and Hybrid Tunable Laser for 64 Gbaud Coherent Communication,”OFC,Th4D.4(2018)及びC.Doerr et al.,“Silicon Photonics Coherent Transceiver in a Ball-Grid Array Package,”OFC,paper Th5D.5 (2017)(どちらも参照により本明細書に援用する)に全般的に記載されているように、同調可能レーザデバイスのコスト及びサイズを低減するためにかなり有望である。さらに、ブースタ半導体光増幅器(SOA)の集積は、シリコン導波路の比較的高い結合損失及び伝搬損失を補償するための明確な方針を提供する。外部共振器型レーザを用いたSOAの使用については、参照により本明細書に援用するK.Sato et al.,“High Output Power and Narrow Linewidth Silicon Photonic Hybrid Ring-Filter External Cavity Wavelength Tunable Lasers,”ECOC,PD2.3(2014)に記載されている。この組合せは、長い外部シリコンキャビティ設計を可能にして、高出力電力を依然として実現しながら、レーザスペクトル線幅を減少することができる。
【0019】
本研究において、本発明者らは、コヒーレント用途のためのハイブリッド集積シリコンフォトニクス同調可能レーザを実証した。ファイバ結合出力電力は、Cバンド全体にわたって140mW(21.5dBm)に達する。これは、本発明者らが知る限り、シリコンフォトニクス同調可能レーザについて報告されている最高の出力電力である。そのような高出力電力は、複雑な変調フォーマットを使用した大きなコヒーレント送受信機損失を補償するために望ましい。また、長い外部共振器の設計は、レーザ線幅を数十kHzレベルにまで減少し、これは、16又は64QAM変調に適している。さらに、シリコンフォトニクスチップ及び関連の制御ループのために開発された本発明者らの集積センサ技術は、波長ロッカを使用せずにグリッドレスで正確な周波数同調を可能にする。
【0020】
本明細書における外部共振器型レーザ(ECL)の設計は、よく開発された測温抵抗体(RTD)センサ技術及び関連の制御ループにより、正確な周波数同調及び制御が可能である。共通の集積光学基板上の複数のフィルタに関する熱的用途及び制御に関する特定の問題及び解決策は、参照により本明細書に援用する「Thermal Control of Optical Components」という名称のYan他への米国特許第7,447,393号明細書に記載されている本出願人の以前の研究に記載されている。そこで取り扱っている状況は、シリコンフォトニクス構成要素の場合とは実質的に異なるが、本明細書で述べる本発明者らの技術的知見は、類似の熱制御手法を革新的なシリコンフォトニクス構成と組み合わせて、コンパクトなECL同調可能レーザの光周波数制御を実質的に改良することができることを確証する。
【0021】
RTDを使用する理由は、パッケージ温度変化や利得電流変化などの外部熱擾乱に対してフィルタ温度を正確にロックするためである。しかし、1つの課題は、シリコンフォトニクス(SiPho)チップ上のRTDセンサは、結果として生じる大きな光学損失により、シリコン導波路フィルタと直接接触して作製することができないことである。その結果、RTDは一般に導波路フィルタから一定の距離(一般に約1~2ミクロン)で作製され、これは温度勾配を生じ、RTDはフィルタの温度変化を正確に測定することができない。この構成は、自由空間エタロン同調構造を備えた本出願人の現在市販のECLとは対照的であり、現在市販のECLでは、RTDは、エタロンに基づくフィルタと直接接触し、フィルタ温度変化をはるかに正確に測定することができる。図1は、現在市販の自由空間エタロンECLと比較した、2つのリングフィルタのそれぞれに関連付けられたRTDを使用するSiPhoベースのECLの計算されたさらなる周波数誤差である。オンチップで1:100の低い熱的クロストークがある場合でも、依然として、温度勾配によりSiPho ECLのさらなる0.5GHzの周波数誤差がある。
【0022】
間接的な温度測定の問題を軽減するために、シリコンフォトニクスチップは、SiPhoチップ上の追加の一体化された基準RTDと共に表され、それに従って加熱器電力及び/又は熱電冷却器(TEC)を調整して熱擾乱を打ち消す。チップ及び一般にレーザは、一般に熱電冷却器に配置することができ、これは、当技術分野でよく知られており、デバイス全体の温度の制御を助ける。SiPho ECLの3RTD制御手法は、現在市販のECLと同様の高い周波数精度を提供する。さらに、以下に示すように、テストデータは、ただ1つの基準RTDを用いて2つのフィルタ加熱器電力を較正及び同調することで、他の2つのRTDをフィルタに必要とせずに正確な波長同調を提供することができることを示す。しかし、いずれの場合にも、各リング共振器に関連付けられたRTDは、周波数の同調を提供することができる。いくつかの実施形態では、デバイスの完成後、周波数が選択され、TECと共に加熱器が較正されて、同調可能な範囲内で所望の周波数を設定及び維持することを可能にする。ここで、初期較正は、選択された周波数を使用中に維持するためのベースラインを提供することができる。さらに、トレンチを使用して熱的クロストークを低減することができ、それに対応して周波数誤差を減少させることができ、各リング共振器に関連する2つのRTDが熱変動をより正確に調整できるようにする、SiPhoチップの実施形態を述べる。
【0023】
以下、実証されたシリコンフォトニクスレーザの周波数安定性及び正確な周波数同調を示す。グリッドレス周波数同調は、2つのリング加熱器を制御することによって容易に行うことができるが、デバイス寿命全体にわたるドリフト及びモードホップに対する1GHz未満のレベルの正確な周波数制御は、シリコンフォトニクスレーザでは非常に困難である。これは主に、例えば、パッケージ温度変化又はゲインチップ/SOA電流変化からの熱擾乱に対するシリコン材料の感度が高いためである。この問題に対処するために、本発明者らは、作製されたシリコンフォトニクスチップ用によく開発された独自のセンサ技術を活用した。
【0024】
高性能ハイブリッド集積シリコンフォトニクス同調可能レーザ
本明細書で述べるように、図2を参照すると、シリコンフォトニクス同調可能レーザ100は、ゲインチップ104と、リング共振器ベースのシリコンフォトニクスフィルタチップ102とからなる。ブースタ半導体光増幅器(SOA)106を、出力ファイバの前での光増幅のためにレンズ結合によって一体化することができる。図2は、SOA106に関連するレーザデバイス100の概略レイアウトを示す。
【0025】
一実施形態では、光学デバイス100は、シリコンフォトニクスフィルタチップ102及びゲインチップ104を含む。レンズなどのスポットサイズ変換器116が、フィルタチップ102とゲインチップ104との光路を接続する。
【0026】
いくつかの実施形態では、シリコンフォトニクスフィルタチップ102及びゲインチップ104は、デバイス全体の温度の制御を助けるための熱電冷却器(TEC)113に載置され、TECはまた、以下に述べる制御装置によって制御されることがある。TEC構成要素は、当技術分野で知られている。便宜上、フィルタチップ102、ゲインチップ104、及びTEC(もしあれば)を備えるレーザデバイス100全体を、同調可能な外部共振器型レーザデバイスと呼ぶことができ、一般に、一体としてパッケージに組み立てられるだろう。
【0027】
一実施形態では、シリコンフォトニクスフィルタチップ102は、上側クラッド層108、シリコンデバイス層110、下側クラッド層112、及びシリコン基板114を備える多層デバイスである。上側クラッド層108は、フィルタチップ102の最上層を形成する。シリコンデバイス層110は、上側クラッド層108と下側クラッド層112との間に位置される。下側クラッド層112は、フィルタチップ102の底部を形成するシリコン基板114上に位置される。一実施形態では、上側クラッド層108及び下側クラッド層112は二酸化ケイ素を含むが、他の低屈折率光学材料を使用することもできる。さらに、「デバイス層」は、上側クラッド層108と下側クラッド層112との間に位置されることがあり、クラッド層108の一方又は両方によって取り囲まれることがある導波路及び共振器などの「デバイス」を含む層を指すことを理解されたい。
【0028】
シリコンフォトニクス(SiPh)チップは、一般に、上側クラッド層108(例えば二酸化ケイ素)と下側クラッド層112(例えば二酸化ケイ素)及び底部シリコン基板114との間に挟まれたシリコンデバイス層110を備える。リング共振器フィルタは、シリコンデバイス層110で作製される。一体型加熱器は、上側二酸化ケイ素クラッド層108によって分離されて、シリコンリング共振器の上に形成することができる。この配置の理由は、生じる大きな光伝搬損失により、加熱器をシリコンリング共振器に直接形成することができないからである。この構成は図3に示されている。
【0029】
シリコンフォトニクスチップは、場合によってはドーパントを含む元素シリコンのシリコン導波路を備え、このシリコン導波路は、一般に二酸化ケイ素(SiO、酸化ケイ素と呼ばれることもあるが、酸化ケイ素は、異なる酸化状態を有する亜酸化ケイ素でもあり得る)又は他の適切なクラッドに埋め込まれる。クラッドは、屈折率の違いにより、シリコン導波路に光を閉じ込める。シリコンフォトニクスチップのための導波路及び他の構造は、フォトリソグラフィ又は他の適切なパターニング技法を使用して形成することができる。酸化ケイ素クラッドを用いるとき、この処理は、マイクロエレクトロニクスからのシリコンオンインシュレータ処理によるプロセスを適応させることができる。シリコンの高い屈折率により、シリコン導波路は、約0.2ミクロン~約0.5ミクロンの厚さを有することができる。シリコン導波路の上下のクラッドの厚さは、一般に、約0.3ミクロン~約3ミクロンの範囲内でよい。湾曲したシリコン導波路である様々なリング共振器構造をフィルタとして使用して、レーザに関する周波数の選択を行うことができる。各リング共振器は、様々な高調波を安定して反射し、熱制御を使用して、リング共振器周波数の熱変動を制御することができる。わずかに異なるスペクトル領域を有する複数のリング共振器を使用することにより、複数のリングに共通の周波数を提供する高調波を選択することが可能になる。このとき、レーザは、共通の周波数でレーザ発振する。この選択プロセスは、Sato et al.にさらに述べられている。共振器リングは、リングによって導波路間で共振周波数が結合されるように、導波路に隣接して配置される。導波路は、望ましくない程の損失を生じることなく良好な光結合を得ることができるように、導波路の十分近くに配置される。各リングは加熱器に関連付けられており、周波数同調と、一定のリング共振器温度の維持との両方を行う。以下で説明するように、各リング共振器を、RTDでよい温度センサに関連付けることもでき、そのリングに関連付けられる温度を特定の温度感度内で測定する。いくつかの実施形態では、シリコン光チップは、RTDがチップ温度の変化を測定することができるように、リング共振器に関連付けられた加熱器から離間配置されたRTDを備えるように設計されている。チップレベルRTDセンサからの温度測定結果は、フィードバックループで使用される。
【0030】
シリコンフォトニクスフィルタチップ102は、一実施形態では、スポットサイズ変換器116、スプリッタ-コンバイナ118、第1の導波路部分120、第1のリング共振器122、結合導波路部分124、第2のリング共振器126、第2の導波路部分128、第1の加熱器130、第2の加熱器132、第1のリング温度センサ134、第2のリング温度センサ136、及びフィルタチップ温度センサ138を備える。
【0031】
スポットサイズ変換器116は、シリコンフォトニクスフィルタチップ102を半導体ベースのゲインチップ114に結合し、フィルタチップ102とゲインチップ104との間のインターフェースによる損失へのモードサイズ整合を提供する。追加又は代替の実施形態では、ゲインチップ104とシリコンフォトニクスフィルタチップ102との間に別個のスポットサイズ変換器を配置することができる。一般に、ゲインチップは、自由空間フィルタを有するECLで使用されるゲインチップでよい。適切なゲインチップは、「External Cavity Laser With Continuous Tuning of Grid Generator」という名称のDaiberへの米国特許第6,882,979B2号明細書及び「Small Package Tunable Laser With Beam Splitter」という名称のDaiberへの同第8,462,823B2号明細書に記載されており、どちらの特許も参照により本明細書に援用する。
【0032】
スプリッタ-コンバイナ118は、スポットサイズ変換器116と、第1の導波路アーム120及び第2の導波路アーム128とに結合される。スプリッタ/コンバイナ118、第1の導波路アーム120、及び第2の導波路アーム128が合わさって、マルチフィルタ型サニャック干渉計の一部を形成する。スプリッタ-コンバイナ118は、入射光信号を分割し、第1の部分を第1の導波路120に向け、第2の部分を導波路128に向けるように構成される。また、スプリッタ-コンバイナ128は、第1の導波路120及び第2の導波路128から受け取られた光を結合し、その光をスポットサイズ変換器116に向けて戻すように構成される。
【0033】
第1のリング共振器122、第2のリング共振器126、第1の導波路アーム120、結合導波路部分124、及び第2の導波路アーム128は、シリコンデバイス層110に作製される。上側クラッド層108は、リング共振器及び導波路の上及び周囲に形成され、下側クラッド層112は、リング共振器及び導波路の下及び場合によっては周囲に形成される。
【0034】
第1のリング共振器122及び第2のリング共振器126はそれぞれ、結合された光をリングに結合させ、次いでリングに沿って伝送させるように構成されたリング形状又は円形状の導波路を備える。寸法及び屈折率が、リング共振器に関連付けられる共振周波数及び高調波を決定する。リング共振器の加熱により、屈折率が変わり、それに対応して共振周波数が変わる。
【0035】
第1の導波路アーム120及び第2の導波路アーム128はそれぞれ、図示されるように、湾曲セクションによって接合された直線セクションを有する形状であり得る。他の実施形態では、第1の導波路部分120及び第2の導波路部分128は、直線部分及び湾曲部分を含む他の形状を画定することができる。一実施形態では、第1の導波路部分120は、ゲインチップ104に隣接するフォトニクスチップ102の第1の端部(前端部)140から、ゲインチップ104とは反対側のフォトニクスチップ102の第2の端部(後端部)142に向かって延びるフォトニクスチップ102の長手方向軸に関して第2の導波路部分128と対称である。サニャック干渉計のループ性により、第1の導波路部分120と第2の導波路部分128が対称であるか否かは、一般に重要でない。一実施形態では、図示されるように、第1の導波路部分120及び第2の導波路部分126はそれぞれ、第2の端部142に隣接して終端し、したがって、共振していない光は一般に放散する。
【0036】
結合導波路部分124は、一実施形態では、湾曲した中央セクションが一対の直線部分に隣接している「U」字形状を実質的に形成し、第1のリング共振器122と第2のリング共振器126との間に位置される。結合導波路部分124は、第1のリング共振器及び第2のリング共振器に十分に近接して位置決めされ、これらの要素が光学的に結合される。湾曲した中央セクションを有する「U」字形状として示されているが、結合導波路部分124は他の形状を画定することもあることを理解されたい。一実施形態では、結合導波路部分124の各端部は、第1のリング共振器122及び第2のリング共振器126を越えて軸方向に延在し、第2の端部142に隣接して終端する。
【0037】
一実施形態では、第1のリング共振器122は、第1の導波路部分120の直線部分と、結合導波路124の直線部分との間に形成され、光が第1のリング共振器122、導波路120、及び結合導波路124の間を進むことができるようにする。一実施形態では、第1のリング共振器122は、第1のリング共振器122と隣接する第1の導波路120との間の最短経路が、第1の導波路部分120の最後方の直線部分を二分する点に生じるように形成される。同様に、第2のリング共振器126は、結合導波路124と第2の導波路128との間に位置され、光が導波路124、第2のリング共振器126、及び第2の導波路部分128の間を進むことができるようにする。その結果、第1の導波路部分120と128との間の光経路又はチャネルは、光が第1のリング共振器122、結合導波路124、及び第2のリング共振器128を通って概して横方向又は径方向に進むように形成され、光を効果的に反射し、反対側のアームに沿った部分を除いて、光は両方のリング共振器と共振して、ゲインチップ104に向けて戻る。
【0038】
第1の加熱器130は、一実施形態では、フォトニクスチップ102の一体型加熱器である。第1の加熱器130は、第1のリング共振器122に近接して位置され、第1のリング共振器124に熱を伝送することができ、以下でさらに述べるように共振器122の共振周波数を「同調」することができる。一実施形態では、第1の加熱器130は、概して第1のリング共振器の上方に、いくつかの場合には真上に位置され、上側クラッド層108によって第1のリング共振器122から分離されることがある。他の実施形態では、第1の加熱器130は、第1のリング共振器122の上方で、第1のリング共振器122に対して平面内でわずかにシフトされて、完全に真上ではなく、上側クラッド層108の一部分が第1の加熱器130を第1のリング共振器122から分離する。同様に、一実施形態では、第2の加熱器132は、フォトニクスチップ102の一体型加熱器である。第2の加熱器132は、第2のリング共振器126に近接して位置され、第2のリング共振器126に熱を伝送することができる。一実施形態では、第2の加熱器132は、概して第2のリング共振器126の上方に、いくつかの場合には真上に位置され、上側クラッド層108によって第2のリング共振器126から分離されることがある。他の実施形態では、第2の加熱器132は、デバイス層110内の第2のリング共振器126の真上になく、上方でわずかにシフトされることがあり、上側クラッド層108の一部分が第2の加熱器132を第2のリング共振器126から分離する。
【0039】
ゲインチップとSOAとは、概して同様の半導体技術に基づく。ゲインチップとSOAとは特定の機能が異なり、したがって様々な最適化を念頭に置きながら設計することができる。具体的には、ゲインチップは、レーザキャビティの一部分を提供し、その前面は部分反射性があり、定在波を設定して、レーザ発振のためのコヒーレント誘導放出を誘起する。SOAは、レーザキャビティの一部ではなく、したがってSOAを通る光伝送に電力利得を単に提供するように設計することができる。ゲインチップとSOAとの構成は概して異なり、導波路の結合は、スポットサイズ変換器などを用いて、異なる導波路の寸法を考慮に入れることができる。
【0040】
図3を参照すると、第1のリング共振器122の真上に位置決めされた第1の加熱器130を有するフォトニクスチップ102の一部分が断面図で示されている。クラッド層108は、加熱器130をリング共振器122から分離する。代替として、加熱器134は、リング共振器122に近接してデバイス層110に位置されることがある。そのような一実施形態では、リング共振器122と加熱器130とは、クラッド層108及び/又は112によって分離されることがある。
【0041】
一実施形態では、加熱器130及び132は湾曲していてもよく、そのような一実施形態では、各加熱器は、一般に、それぞれリング共振器122及び126の曲率と実質的に同じ曲率を画定することがある。同一又は同様の曲率を有することで、加熱器の部分からリング共振器の隣接する部分までの距離が均一になる。さらに、一実施形態では、第1の加熱器130及び第2の加熱器132は、金属又はシリコン材料などの材料、例えば白金、窒化チタン、又はポリシリコンを含むことがある。
【0042】
一体型加熱器に電流が流れると、加熱器とその周囲の材料の温度が上昇し、熱光学効果によりリング共振器フィルタの屈折率が変化する。この屈折率変化は、シリコンリング共振器の共振周波数をシフトさせ、それによりレーザ周波数の制御を可能にする。この加熱器電流制御によってレーザ周波数を効果的に同調することができるが、加熱器での高い電流及び高い温度により、加熱器の材料が劣化することがある。これにより、デバイスの寿命中に加熱器の抵抗が変化し、レーザ周波数に誤差が生じることがある。したがって、シリコンリング共振器の共温度、したがって振周波数を正確に固定するために、加熱器電流の閉ループ制御が望ましい。加熱器からの加熱によるリング共振器の温度を変えることがある周囲温度変化を調整するためにも、閉ループ制御が望ましい。
【0043】
再び図3を参照すると、一実施形態では、第1のリング温度センサ134及び第2のリング温度センサ136はそれぞれ、測温抵抗体(RTD)などの抵抗温度センサを備えることができる。第1のリング温度センサ134及び第2のリング温度センサ136は、白金、ニッケル、銅、ドープシリコン、又は他のそのような材料などの材料を含むことがある。
【0044】
リング温度センサ134及び136は、一般に、それらそれぞれのリング共振器122及び126に近接して位置されて、それらそれぞれの共振器の温度を検出する。いくつかの実施形態では、第1のリング温度センサ134及び第2のリング温度センサ136は、リング共振器及びその導波路の温度をより正確に測定するために、それらそれぞれのリング共振器122及び126に直接作製される。しかし、温度センサ134及び136がそれぞれリング共振器122及び126に直接作製されるそのような実施形態では、温度センサ材料とリング共振器での光学モードとの重なりにより光伝搬損失が増加されることがある。
【0045】
したがって、いくつかの実施形態では、図2に示されるように、リング温度センサ134及び136は、それらそれぞれのリング共振器122及び126の近位に堆積されることがあるが、上側クラッド層108などの二酸化ケイ素材料によって分離されることがある。一実施形態では、第1のリング温度センサ134及び第2のリング温度センサ136は、上側クラッド層108において、それらそれぞれの第1のリング共振器122及び第2のリング共振器126の上方に(真上に、又は横方向に変位されて、又は上方及び横方向に変位されて)ある。図3は、一実施形態において、上側クラッド層108の上に形成され、横方向及び上方に変位され、クラッド層108の一部分によって第1のリング共振器122から分離された第1のリング温度センサ134を示す。そのような一実施形態では、リング共振器122又は126とそのそれぞれのリング温度センサ128又は130との間の上側クラッド層108は、厚さが約2μmである。図3に示される代替実施形態では、リング温度センサ134は、シリコンデバイス層内で横方向に変位され、これは、RTS134がドープシリコンから形成されている場合に特に適切であり得る。
【0046】
図2に示されるように、白金、ニッケル、銅、ドープシリコンなどの材料を使用したオンチップ集積測温抵抗体(RTD)又は温度センサをシリコンリング共振器のすぐ近位に作製することができる。それらの抵抗読取値は温度と共に変化し、閉ループ制御での信号フィードバックとして使用して、デバイスの寿命全体にわたってリング共振器を一定の温度に保つことができる。理想的には、RTDは、シリコン導波路の温度を正確に測定するために、シリコンリング共振器に直接作製すべきである。しかし、直接接触するそのような構成では、RTD材料とシリコンリング導波路での光学モードとの重なりにより、光伝搬損失が大幅に増加するだろう。その結果、RTDは、上側二酸化ケイ素クラッド層によって分離されてシリコンリング共振器の上に堆積された薄い金属膜を採用する、又はシリコンリング共振器の隣で同じシリコンデバイス層にドープシリコンを使用することができる。
【0047】
RTDを備えることもあるフィルタチップ温度センサ138は、リング加熱器128及び130から十分に遠いシリコンフォトニクスフィルタチップ102の部分に形成され、それにより、全体の又は全域的なチップ112の温度を感知して、チップ基準温度を提供するように構成される。一実施形態では、フィルタチップ温度センサ136は、SSC138を含むチップ112の端部にあるシリコンフォトニクスフィルタチップ102の角部に隣接して形成される。
【0048】
それ自体で又はECLのゲインチップ内で使用される半導体光増幅器は、一般に、適切な半導体材料を用いたp-n(又はp-i-n)接合を備える。一般には追加の層が存在し、追加の層は真性層(低ドーパント層)でよく、光導波路のためのクラッドを提供することができる。一般に様々な半導体材料を使用することができるが、光学用途の場合、III-V族半導体が望ましい性能を提供することができる。したがって、適切な半導体には、例えば、リン化インジウム、ガリウムヒ素、及びそれらの変形体が含まれる。以下に述べる具体的な実施形態で使用されるゲインチップは、InGaAsPをベースとする。リン化インジウムベースの光増幅器は、参照により本明細書に援用する「Optical Module and Optical Communication system」という名称のNakagawa他の米国特許出願公開第2005/0052726号明細書にさらに記載されている。様々なIII-V族半導体をベースとする半導体レーザは、参照により本明細書に援用する「Wavelength Stabilized Semiconductor Laser Source」という名称のBlauveltの米国特許出願公開第2019/0097385号明細書に記載されている。InP基板上にエピタキシャル堆積されたInGaAsP層を用いた5つの量子井戸レーザを有するリッジレーザが、参照により本明細書に援用する「Semiconductor Distributed Feedback (DB) Laser Array with Integrated Attenuation」という名称のPezeshki他の米国特許出願公開第2014/0140363号明細書に記載されている。
【0049】
ゲインチップ又はSOA(半導体光増幅器チップ)として使用するための半導体ベースの増幅器の基本設計が図4に示されている。図4を参照すると、半導体ベースの増幅器チップ104の実施形態が示されている。図示されるように、半導体ベースの増幅器チップ104は、基板160、底部電極162、レーザ素子164を備える。レーザ素子164は、nドープ層166、活性領域168、pドープ層170、及び駆動電極172を備える。任意選択の誘電体層174は、基板160の表面の上に、レーザ素子164によって覆われていない位置で配置することができる。誘電体層174は、図3に想像線で示されており、誘電体層174の高さは、所望の程度の表面隔離を提供するために、レーザ要素164の上部に揃えることができる。基板160は、所望の程度及び極性の電気伝導を提供するのに十分なドーピングを伴うドープ半導体を備えることができる。ゲインチップ104の端部は、反射コーティング176を備えることができ、反射コーティング176は、図4に示されているようにゲインチップ104であるデバイスの全面を覆うが、少なくとも発光層を覆う。図4での半導体ベース増幅器チップの反対側の端部は、レーザ素子164の発光端部である。
【0050】
ゲインチップの一方の端面をレーザ出力ポートとして劈開することができる。他方の端面は、反射防止コーティングを施すことができ、シリコンフォトニクスチップに突合せ結合される。ここでは、モードサイズ整合のためにゲインチップとシリコンフォトニクスチップとの両方にスポットサイズ変換器を設計することに留意することができる。2つのチップ間での測定された突合せ結合損失は、1dBのオーダーでよい。そのような低い結合損失は、シリコンフォトニクスデバイスにとって望ましい。ゲインチップからのレーザ出力は、増幅のためにブースタSOAを通過し、一般には次いで2つの結合レンズをそれぞれ通ってシングルモードファイバに結合される。レンズなどのスポットサイズ変換器は、光ファイバであり得る導波路ごとにビーム寸法を調整するように設計することができる。適切なレンズ位置合わせは、当技術分野で知られている。例えば、参照により本明細書に援用する「Optical Semiconductor Device and Method of Manufacturing Same」という名称のArayamaの米国特許出願公開第2005/0069261号明細書を参照されたい。マルチステージスポットサイズ変換器は、参照により本明細書に援用する「Multistage Spot Size Converter in Silicon Photonics」という名称のSodagar他の米国特許出願公開第2019/0170944号明細書に記載されている。
【0051】
本明細書で述べるように、ブースタSOAの使用にはいくつかの利点がある。第1に、SOA増幅は、シリコンフォトニクス導波路でのより低い光出力密度を可能にしながら、高い出力電力を与える。これは、T.Kita et al.,“Narrow Spectral Linewidth Silicon Photonic Wavelength Tunable Laser Diode for Digital Coherent Communication System,”IEEE JSTQE 22,1500612(2016)に記載されているように、シリコン非線形効果によるレーザ発振の不安定性を防止する。第2に、シリコンチップでの光出力の低減は、導波路結合及び伝播による絶対損失をより低くし、したがってデバイスの電力効率を向上させる。第3に、SOAはレーザキャビティの外部にあるので、レーザ出力制御を波長同調から分離し、したがってレーザ制御ループを単純化する。
【0052】
各リング共振器フィルタの透過スペクトルは、一体型の導波路加熱器によって同調させることができる。両方のリング共振器フィルタにある一体型加熱器電力を制御することによって、2つのリング共振器の2つの伝送ピークの重畳周波数で広いスペクトル領域にわたってレーザ発振モードを選択することができる。2つのカスケード接続されたリングフィルタを通過した光は、次いで、レーザ光フィードバックを提供するために利得媒体チップにループして戻される。
【0053】
図5を参照すると、デバイスの全体的な動作に関するさらなる洞察を行うために、同調可能レーザシステム190全体の概略図が示されている。図示されるように、同調可能レーザシステム190は、シリコンフォトニクスフィルタチップ102、ゲインチップ104、SOA106、及び制御装置192を備える。
【0054】
上述したように、シリコンフォトニクスフィルタチップ102は、コンバイナ-スプリッタ118に結合されたSSC(スポットサイズ変換器)118を備え、コンバイナ-スプリッタ118は、それぞれ第1の導波路部分120及び第2の導波路部分128を介して第1のリング共振器122及び第2のリング共振器126に結合される。SSC118は、シリコンフォトニクスフィルタチップ102の構成要素として述べるが、この説明は、シリコンフォトニクスフィルタチップ102とゲインチップ104との間に取り付けられた構成要素も含むことを理解されたい。第1のリング共振器122と第2のリング共振器126とは、結合導波路124によって結合される。その結果、SSC118、コンバイナ-スプリッタ118、第1のリング共振器122、及び第2のリング共振器126は、互いに光通信する。
【0055】
制御装置192は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、デジタルプロセッサなど、又はそれらの組合せと、当技術分野で知られている適切な種類のメモリと、他の制御電子回路とを備えることがある。また、図2に関して上述したように、フィルタチップ102は、第1の加熱器130及び第2の加熱器132と、関連する第1の抵抗温度センサ134及び第2の抵抗温度センサ136とを備える。制御装置192は、一般に、加熱器130及び132と適切に電気通信する。したがって、制御装置192は、加熱器によって生成される熱の量、したがって第1のリング共振器122及び第2のリング共振器126に伝送される熱の量を制御するように構成することができる。
【0056】
制御装置192は、一般に、第1のリング温度センサ134、第2のリング温度センサ136、及びフィルタチップ温度センサ138とも電気通信する。制御装置192は、第1のリング温度センサ134、第2のリング温度センサ136、及びフィルタチップ温度センサ138からの入力を受信し、受信された入力に基づいて加熱器130及び132を制御するように構成される。一実施形態では、制御装置192はまた、ゲインチップ104と電気通信し、ゲインチップ104の1つ又は複数の動作を制御するように構成される。いくつかの実施形態では、制御装置192は、適切な方向に温度を調整するために、加熱器に、小さな増分での単純な反復温度調整を行うことができる。しかし、以下でさらに論じる比例-積分-微分手法など、より複雑なフィードバックループを使用することもできる。
【0057】
図6のシミュレーション結果によって示されるように、RTDが2ミクロンの厚さの上側二酸化ケイ素クラッドによってシリコンリング共振器から分離されているとき、一体型加熱器が加熱されると、RTDの温度は17℃上昇し、リング共振器導波路は31℃上昇する。これは55%の温度感度に相当する。言い換えると、RTD温度は、シリコンリング共振器の温度の55%変化する。シリコンデバイス層内のドープシリコンベースのRTDも、温度勾配により、1005未満の相関を有する温度感度を有するだろう。100%未満の温度感度は、リング共振器導波路の温度の測定を不正確にする。これは、RTDがリング共振器からの局所的な温度変化とSiPhoチップからの全域的な温度変化とを区別することができないからである。局所的な温度変化は、RTDとリング共振器との間の距離に応じて、RTD-シリコン温度勾配と、100%未満の温度感度とを特徴とする。全域的な温度変化は、RTDがSiPhoチップに埋め込まれており、熱平衡状態でSiPhoチップと全く同じ温度変化を有するので、100%の温度感度を特徴とする。
【0058】
全域的なチップ温度の変化は、周囲温度の変化、利得媒体の温度変化、又は他のオンチップ集積加熱器からの熱的クロストークによって引き起こされることがある。したがって、RTD抵抗信号は、異なる温度感度を特徴とする局所的な熱源と全域的な熱源との両方からの全体的な影響である。これは、2つの熱源のそれぞれの寄与比率を知らなくても、シリコンリング共振器の温度読取り誤差を与えることができる。この温度読取り誤差は、以下のように計算することができる。
【数1】
ここで、TRTD_total=TRTD_local+TRTD_globalは、2つの熱源による合計のRTD温度変化であり、SRTD_local及びSRTD_globalはそれぞれ、2つの熱源に関するRTD温度感度である。図3は、±40℃の周囲温度変化からの±0.4℃の全域的なSiPhoチップ温度変化、及びリング共振器周波数の温度に対する周波数感度10GHz/℃を仮定して、計算されたリング共振周波数誤差を示す。SRTD_localが50%の場合、4GHzのレーザ発振周波数誤差があり得、これは、1GHzの周波数誤差仕様よりも高い。SRTD_localが80%の場合でも、すでに1GHzの周波数誤差があり、周波数許容誤差に達している。
【0059】
制限されたRTD温度感度によって引き起こされる周波数誤差に加えて、フォトニクス集積回路を使用する外部共振器型レーザに関する別の重要な課題は、同じシリコン基板上に作製されるときのリング共振器フィルタ間の大きな熱的クロストークである。一体型加熱器の1つが、1つの周波数選択要素の特性を制御するように同調されるとき、一体型加熱器からの熱的クロストークは、第2の周波数選択要素に影響を及ぼす。第2の周波数要素を一定の温度に保つために、第2の一体型加熱器をPID(比例-積分-微分)閉ループ制御で同調することができるが、これも逆に、第2の一体型加熱器からの熱的クロストークにより第1の周波数選択要素に影響を及ぼす。したがって、熱的クロストークに起因して複数の一体型加熱器をそのように反復的に同調することは、周波数選択要素の同調安定性、同調精度、及び同調時間に影響を及ぼすことがある。図7に示されるように、一体型加熱器2が60mWの加熱器電力で加熱されるとき、RTD2抵抗読取値は1.8%増加し、一方でRTD1読取値も約0.2%変化し、一体型加熱器2からの熱的クロストークを示す。
【0060】
周波数誤差及び熱的クロストークを修正する1つの手法は、図2のチップRTDによって示されるように、基準RTDを追加して全域的なチップ温度変化を測定することによるものである。その結果、2つの周波数選択要素の位置にあるRTD1及びRTD2は、局所リング共振器の寄与と全域的なチップ温度変化の寄与とを区別することができる。以下の具体的なプロトタイプの実施形態に関して述べるように、この基準チップRTDがない場合、レーザ発振周波数は、10℃~80℃の間の周囲温度変動と共に4GHzドリフトする。対照的に、基準チップRTD機能が有効化された状態では、周波数ドリフトを約1桁低減することができる。測定される周波数誤差は±0.5GHz以内になることがあり、これは、いくつかの実施形態では±1GHzの周波数誤差仕様よりも小さい。SOAからの電力が増加されるとき、これにより、SiPhoチップの温度が大幅に上昇する。この温度上昇は、500mAから600mA、次いで700mAのSOA電流を用いたプロトタイプの実施形態に関して以下に考察する。チップレベルRTDセンサが有効化された状態で、制御ループはレーザ周波数を仕様内に維持することができる。
【0061】
上述したように、各リング共振器は、個別のRTDセンサと共に適応させることもできる。さらに、本明細書で述べるように、チップレベルRTDセンサは、リング共振器温度のフィードバック制御を改良することができる。Sato et al.での構造と同様に構成されたリング共振器を備えるSiPhoチップの実施形態が、本明細書で述べる改良を実装するための変形を伴って、図8に示されている。図8を参照すると、フィルタチップ200は、フィルタチップ102に関して上述したのと同様に、ゲインチップ104に結合するように構成される。また、フィルタチップ102と同様に、フィルタチップ200は、上側クラッド層108、デバイス層110、下側クラッド層112、及び基板114を含む複数の層(図2を参照)を含む。しかし、ループ状の導波路光路を形成するのではなく、導波路及び共振器は、反射器と共に非ループの経路又は終端された経路を形成し、ここで、以下にさらに説明するように、入射光は、出射光と概して同じ経路をたどる。フィルタチップ200は、図2の構造に比べて、安定性を改善するため及びレーザキャビティでの光雑音に対する感度を低下させるために干渉計を提供しないという欠点を有する。
【0062】
図8に示される実施形態では、フィルタチップ200は、複数の層によって提供される構造内で、第1の導波路部分220、第1のリング共振器222、第2の導波路部分228、第2のリング共振器226、反射器部分250、第1の加熱器230、第2の加熱器232、第1のリング温度センサ234、第2のリング温度236、及びチップ温度センサ238を備える。フィルタチップ200は、第1の端部(前端部)240と、第2の端部(後端部)242とを画定する。第1の導波路部分220、第1のリング共振器222、第2の導波路部分228、第2のリング共振器226、及び反射器部分250は、光を透過するための光路を形成し、光路は反射器部分250で終端する。リング共振器と共振する光は、反射されて光路を通って戻るが、他の光は概して放散する。
【0063】
一実施形態では、第1の導波路部分220は、フィルタチップ200の前端部240に隣接し、ゲインチップ104との光通信のために構成された第1の概して直線の部分と、第1のリング共振器222に隣接する第2の概して直線の部分と、第1及び第2の直線部分を接合する湾曲部分とを有する弧形状を形成する。第2の導波路部分228は、一実施形態では、第1のリング共振器222と第2のリング共振器226との間で横方向に延びる概して真直な直線導波路でよい。反射器部分250は、第2のリング共振器226と連絡する反射器を含む。一実施形態では、反射器部分250は、導波路部分252及び反射器構造254を含むことがある。他の実施形態では、反射器部分250は、反射器として作用する導波路252のみ、又は反射器構造254のみを含むことがある。一実施形態では、反射器254は、金属化ミラー、ループ反射器、又は別の既知のタイプの光学反射器を備えることがある。
【0064】
第1の加熱器230及び第2の加熱器232は、フィルタチップ102の第1の実施形態で述べた加熱器130及び132と同様であり、制御装置192などの制御装置によって選択的に制御することができ、それらそれぞれのリング共振器222及び226を加熱し、それにより光周波数を変化させる、すなわちレーザ100を「同調」する。第1のリング温度センサ234及び第2のリング温度センサ236は、フィルタチップ102の第1の実施形態で述べたセンサ134及び136と同様であり、それらそれぞれの第1のリング共振器222及び第2のリング共振器226の温度を感知する。チップ温度センサ238は、フィルタチップ102のチップセンサ138と同様であり、加熱器130及び132の遠位にあるチップ102の部分でフィルタチップ200の全体的な又は全域的な温度を感知するように構成される。
【0065】
動作中、一般的には、両方の共振器リングと共振するゲインチップ104からの光は、フィルタチップ200内へ、第1の導波路部分220に沿って、第1のリング共振器222を介して、第2の導波路228を介して、第2のリング共振器226を介して、反射器250へと伝送される。反射器250は、光を反射して、ゲインチップ104(図2も参照)への出力のために、第2のリング共振器226、第2の導波路部分228、第1のリング共振器222、及び第1の導波路部分220の経路に沿って戻す。
【0066】
図9を参照すると、反射器で終端する非干渉計ベースの光路を有するフィルタチップ270の別の実施形態が示されている。フィルタチップ270は、チップ200と同様であるが、以下でさらに詳細に述べるように、導波路を介在させずに互いに結合された一連のリング共振器を含む。このフィルタ設計は、参照により本明細書に援用する「Method and Device for Hitless Tunable Optical Filtering」という名称のBolla他の米国特許出願公開第2010/0183312号明細書での透過光学フィルタ構造から適応される。
【0067】
一実施形態では、図9に示されるように、フィルタチップ270は、フィルタチップ102に関して上述した複数のチップ層、すなわち層108~114(図2を参照)、並びに第1の導波路220、最初又は第1のリング共振器222、最後のリング共振器226、反射器252、最初又は第1のリング加熱器230、最後のリング加熱器232、最初又は第1のリング温度センサ234、最後のリング温度センサ236、及びチップセンサ238を含む。第1の端部240と242との間に延びる軸が、長手方向軸を定義する。
【0068】
第1の導波路部分220は、図9に示されるように、チップ270に沿って軸方向に延びる真直な直線導波路を備え、フィルタチップ270の第1の端部240でゲインチップ104(図2を参照)と連絡するように構成される。第1の導波路部分220は直線として示されているが、第1の導波路220は、他の形状、限定はしないが例えば、フィルタチップ200の導波路220の湾曲形状、又はフィルタチップ102の導波路120の湾曲形状を画定することができることを理解されたい。
【0069】
フィルタチップ270は、第1のリング共振器222及び最後のリング共振器226を含む複数の2つ以上のリング共振器を含み、一連のリング共振器を形成することができる。点221は、追加のリング共振器(図示せず)が、任意選択で第1のリング共振器222と最終のリング共振器226との間に位置されることがあることを示す。追加のリング共振器がない場合、第1のリング共振器222と最後のリング共振器226とは、適切な光結合を提供するように互いに隣接して位置決めされるだろう。一実施形態では、リング共振器は、横方向又は径方向に分布され、リング共振器は、互いに隣接し、互いに光通信する。一実施形態では、リング共振器は、図8に示されるように、横方向で直線上に、すなわち一直線のラインとして位置合わせされる。他の実施形態では、いくつかのリング共振器は、軸方向で互いにオフセットされることがある。
【0070】
最後の導波路252は、軸方向に延在し、最後のリング共振器226に隣接して形成される。最後の導波路252は2つの端部を画定し、一方の端部はチップ端部240の近くにあり、他方の端部はチップ端部242の近くにある。一実施形態では、図示されるように、最後のリング共振器232が形成され、チップ端部242よりもチップ端部240の近くに位置決めされる。最後の導波路252は反射器として作用し、最後のリング共振器226から受け取った光を反射してリング共振器226に戻す。最後の導波路252は、部分ループ又は湾曲セクションなどの他の形状を備えることがあり、追加の反射要素を含むことがある。
【0071】
加熱器230及び240は、リング温度センサ234及び236と共に、フィルタチップ102の実施形態に関して上述したように固体レーザ100を制御及び同調するために利用することができる。
【0072】
図10を参照すると、シリコンフォトニクスフィルタチップ102の別の実施形態は、図2の実施形態のマルチフィルタ型サニャック干渉計機能を含む。図示される実施形態では、フィルタチップ102のこの実施形態は、スポットサイズ変換器116、スプリッタ-コンバイナ118、第1の導波路部分120、第1のリング共振器122、第2のリング共振器126、第3のリング共振器154、第2の導波路部分128、第1の加熱器130、第2の加熱器132、第3の加熱器150、第1のリング温度センサ134、第2のリング温度センサ136、第3のリング温度センサ152、及びフィルタチップ温度センサ138を備える。図2の実施形態と同様に、図10のフィルタチップ102は、第1の光部分が第1の導波路120に沿って第1のリング共振器122に向かって進み、第2の光部分が第2の導波路128に沿って第2のリング共振器126に向けて進むように、入射光信号を分割するスプリッタ-コンバイナ118を含む。しかし、この実施形態では、第1のリング共振器122と第2のリング共振器126とは、1つ又は複数のリング共振器によって、例えば第3のリング共振器154によって結合されている。基本的には、第3のリング共振器は反射光に制約を課すことができ、光は3つのリング共振器全てと適切に共振し、それによりサイドバンド抑圧が大きくなり得る。この設計に基づいて、スプリッタ-コンバイナから1つのアームに沿って進む光は、光が3つのリング共振器全てと共振する場合、1つのリング共振器に結合し、第3のリング共振器154に遷移し、次いで第3のリング共振器154に関して反対側のリング共振器に結合し、反対側のアームを下ってスプリッタ-コンバイナに向かうことができる。
【0073】
第2の提案される方法は、シリコンリング共振器、一体型加熱器、及び温度検知RTDが全てSiPho集積回路上の他の構成要素から実質的に断熱されるように、シリコン基板に断熱トレンチを作製することによるものである。これは、RTDの温度感度を実質的に高め、したがって周波数誤差を低減することができる。図10は、そのようなトレンチ構造の1つの概略図を示す。加熱器、RTD、及びシリコンリングを含む全ての構成要素は、断熱領域内にあるため、熱平衡状態でほぼ同じ温度を有し得る。言い換えると、局所リング共振器に対するRTD温度感度は100%に近くなる。
【0074】
図6に示されるように、局所リング共振器に対するRTD温度感度が95%まで上昇するとき、周波数誤差は約0.2GHzに降下し、1GHz周波数許容誤差の仕様を十分に下回る。この断熱トレンチを使用することによる第2の利益は、周波数選択要素間の熱的クロストークが大幅に低減されることである。これは、一体型加熱器が断熱領域内に閉じ込められ、領域からの発生した熱の漏れが非常に限られるからである。断熱トレンチは、図11~15について述べるようないくつかの異なる構造設計を有することができる。
【0075】
図11~15を参照すると、チップ内の断熱トレンチを画定するシリコンフォトニクスフィルタチップ102のいくつかの実施形態が示されている。図11~15で述べる特徴は、フィルタチップ102だけでなく、限定はしないがフィルタチップ200及び270を含めた本明細書で述べるフィルタチップの他の様々な実施形態によっても採用することができる。リング共振器、一体型加熱器、及び温度センサの周りでの断熱トレンチの使用は、これらの構成要素の断熱に寄与し、それにより温度センサの熱感度を大幅に高め、温度センサによって感知される温度は、より密接にリング共振器での温度に対応し、それにより周波数同調誤差を低減する。図11は、底面及び2つの側面で断熱領域300を取り囲む断熱トレンチ300を示しているが、図13及び14で示されるものなど、断面図で見た他の設計又は形状を使用することもできる。図11、13、及び14はそれぞれ、斜視図及び断面図で見たシリコンフォトニクスフィルタチップ102の一部を示す。例示目的で、各リング共振器122の一部のみが示されている。
【0076】
トレンチ設計は、例えば、図11に示されるように、加熱領域でのリング導波路の下のシリコンの完全なアンダーカットを含む。特に図11図12の断面図)及び図12(シリコンフォトニクスフィルタチップ102の一部分の上面図)を参照すると、断熱トレンチ300が示されている。上面図では、リング共振器122は構造表面にないので、それが隠れた構造であることを示すために破線で示されている。この実施形態では、加熱器130は、図示されるようにリング共振器122の真上に位置され、クラッド又は他の層に形成することができる。リング温度センサ134は、加熱器130と同じ層内で、加熱器130から横方向にオフセットされて位置決めされる。図示される実施形態では、加熱器130は、リング共振器122の十分且つ均一な加熱を保証するために、リング共振器122の横方向幅よりも大きい横方向幅を画定する。
【0077】
断熱トレンチ300は、第1の部分又は底部302、第2の部分又は内側部分304、及び第3の部分又は外側部分306を含む。断熱トレンチ300は、一般に、図示されるように断面で「U」字形状を形成することができ、弧形状を形成する。一実施形態では、トレンチ300は、リング共振器122の周りの基板114、下側クラッド層112、及び上側クラッド層108の部分を除去し、デバイス支持部分310を残すことによって形成される。
【0078】
断熱トレンチ300は、第1の側又は下側と、第2の側又は内側と、右側又は外側とで断熱領域310を取り囲む。一実施形態では、断熱領域310は、層114、112、及び108の一部分を備え、リング共振器122、加熱器130、及びリング温度センサ134の一部分がそこに埋め込まれている。断熱領域310は、チップ底部312から延び、弧形状を画定する。一実施形態では、断熱領域310の曲率は、リング共振器122の曲率と実質的に同じであり、底部312と底部312の反対側の別の底部との間にブリッジのような構造を形成する。
【0079】
一実施形態では、図11及び図12に示されているように、断熱トレンチ300は、共振器122、加熱器130、リング温度センサ134、及び断熱領域のための何らかの接続及び支持構造を提供するために、リング共振器122を円周方向で完全には取り囲まない。図11及び12の実施形態では、断熱トレンチ300は、円周方向に約60°延びる。他の実施形態では、断熱トレンチ300は、60°よりも大きく延びてさらなる断熱を提供し、これは、より大きな加熱器に有益であり得る。一実施形態では、断熱トレンチ300は、円周方向に30°~90°延びる。
【0080】
第2の断熱トレンチ設計は、図13に示されるように、リング導波路の片側にのみトレンチが作製される。リング導波路の反対側に他の構成要素があり、したがって図11に示されるようなトレンチエッチングが実用的でない場合、これは適切な設計となり得る。図13を参照すると、底部及び側部のみを含む代替の断熱トレンチ300が示されている。断熱トレンチ300は、この実施形態では、断熱領域310の下に延びる底部302と、断熱領域310に隣接して並んで延びる側部306とを含む。
【0081】
図14を参照すると、別の代替の断熱トレンチ300が示されている。この実施形態では、断熱領域310のシリコンの部分は何も施されず、リング共振器122を支持する。この実施形態では、断熱トレンチ300は、底部トレンチ部分302a及び302bと、内側トレンチ部分304と、外側トレンチ部分306とを含む。これは、図13の設計のように、下にあるシリコンを完全に除去するための長いシリコンエッチングプロセスが実用的でないとき、又は下にあるシリコン支持体がないと機械的安定性が懸念されるときに望ましいトレンチ設計となる。
【0082】
図15に示される実施形態などの他の実施形態では、断熱トレンチ300及び断熱領域310は、リング共振器122の周りに360°、又は他の実施形態では円周のほぼ全体にわたって、例えば図示されるように約340°にわたって延びることがあり、ほぼ完全なリングを形成するが、一実施形態では360°未満の弧長を有する。そのような実施形態は、断熱を最大化するのに有用であり得て、追加の加熱器130が使用される場合にも有用であり得る。さらに、図15に示されているように、それぞれが360°未満の弧長を画定し、360°未満の合計弧長を有する複数の断熱トレンチ300を使用することができる。
【0083】
シリコンフォトニクスチップに使用されるこのシリコンオンインシュレータタイプの導波路構造では、シリカクラッドを通してシリコン基板までエッチングすることによってアンダーエッチングを行うことができる。次いで、蒸気ベースのエッチングであるウェットエッチングをシリコンに向けることができ、エッチングが継続されるときにアンダーエッチングが行われる。この処理は、参照により本明細書に援用するDong et al.,“Thermally tunable silicon racetrack resonators with ultralow tuning power,”Optics Express 2010,Vol.18(19),20298-20304にさらに述べられている。
【0084】
本発明の適用に適した文脈でのSiPho ESLは、具体的なプロトタイプの実施形態を対象とする以下のセクションでより詳細に論じる。
【0085】
温度センサは、周波数同調及び熱安定性を提供することができる。SiPhoチップ熱センサが周波数の熱安定性を提供するのに十分であるか否かにかかわらず、周波数同調は、リング共振器での温度の調整を含む。最初は周波数がリング加熱器の特定の熱出力と相関されていることがあるが、時間的な変化により、レーザ出力周波数をさらに調整するために局所的な測定を行うことが有益となり得る。
【0086】
熱安定性を維持するために、閉ループフィードバック制御を使用することができる。チップレベル温度センサで測定された温度は、RTDで電圧を測定することによって評価することができ、これは次いで、アナログ分析又はデジタルプロセスで処理することができ、デジタルプロセスではアナログ電圧をアナログ-デジタル変換器で処理することができる。マイクロプロセッサを使用して、システムを制御することができる。PID(比例-積分-微分)閉ループ制御に基づく閉ループの実装は、一般的に知られている。制御関数は、1つの比例項、1つの積分項、及び導関数を含む1つの項を有する。全ての項を使用する必要はない。PID制御装置を使用して、加熱器に送達される電圧を調整し、チップ温度を所望の値に維持して、温度変動を調整することができる。閉フィードバックループ内の光学構成要素を調整するためのPID制御装置の使用は、参照により本明細書に援用する「System and Methods for Multiple-Input,Multiple-Output Controller in a Reconfigurable Optical Network」という名称のCollings他の米国特許出願公開第2008/0267631号明細書にも記載されている。市販の温度制御装置チップを使用することができ、PID実装制御装置はOmega Engineering,Inc.(米国コネチカット州スタンフォード)から入手することができる。
【0087】
具体的な実施形態の設計
図2は、シリコンフォトニクス集積回路を使用する外部共振器型同調可能レーザの概略図を有する。このレーザは、利得媒体チップと、シリコンフォトニクス(SiPh)光学フィルタチップとを含む。ゲインチップの利得部は、InGaAsPベースの複数の量子井戸からなる。ゲインチップの前端面は劈開され、レーザ出力ポートとして機能する。この空気及びIII-V界面は、光の32%を反射して、光フィードバックとしてゲインチップに戻す。次いで、ゲインチップのこの端面は、能動アライメント又は受動フリップチップボンディングプロセスでSiPhoフィルタチップに突合せ結合することができる。SiPho外部共振器は、透過スペクトルがわずかに異なる2つのカスケード接続されたリング共振器フィルタを含む。各リング共振器フィルタの透過スペクトルは、一体型の導波路加熱器によって同調させることができる。両方のリング共振器フィルタにある一体型加熱器電力を制御することによって、2つのリング共振器の2つの伝送ピークの重畳周波数で広いスペクトル領域にわたってレーザ発振モードを選択することができる。2つのカスケード接続されたリングフィルタを通過した光は、次いで、レーザ光フィードバックを提供するために利得媒体チップにループして戻される。例えば窒化ケイ素をベースとするスポットサイズ変換器(SSC)は、利得媒体チップ導波路とSiPhoチップ導波路との間のモードサイズ整合に使用することができる。
【0088】
本発明者らが設計したシリコンフォトニクスチップは、図2に示されるように、ループバック構成で、2つのカスケード接続されたリング共振器と位相制御セクションとから構成される。2つのリングは、それぞれ300GHz及び310GHzの公称自由スペクトル領域(FSR)を有することができる。熱的同調は、数十分の1パーセントの範囲にわたって各リングを個別に意図的に調整する。FSR及び動作波長は、リングの物理的なサイズを決定し、プロトタイプSiPhoチップに関して、リングは約120~130ミクロンの直径を有する。
【0089】
共通の共振周波数が195,300GHz(約1535ナノメートルの波長)に設定される場合、300GHzのリングは約651回共振し、GHzの310リングは約630回共振する。すなわち、300×651=310×630=195300である。ここで、リングはそれぞれ、上記のオーダーから±nのオーダーでも共振するが、上記のオーダーは、共通の周波数で強く重畳する唯一のオーダーである。共振ピークの典型的なFWHMは、約10GHzである。したがって、各リングのフィネスは、(310,300)/10≒30となる。概して、このフィネスの値は、典型的な共鳴光子が各リング内を平均30回循環してから先に進むことを意味する。これはまた、各リングの「Q」値(共振器の質)が約195300/10≒20,000であることも意味する。
【0090】
これら2つのリング共振器の自由スペクトル領域(FSR)はわずかに異なり、バーニア効果によって65nmの大きい同調範囲を提供する。リング共振器とバス導波路との結合比は、低い挿入損失及び狭いフィルタ通過帯域を有するように注意深く最適化した。これは、安定したシングルモードレーザ発振のために十分に大きいサイドモード抑圧比(SMSR)を実現可能にする。薄膜加熱器を各リング導波路及び位相制御セクションの上に作製し、両方のリング共振器に関する約50mWの2πパワーが測定された。本質的に既存のECL製品で使用されているような、高効率の高飽和パワーゲインチップ及びSOAを使用した。
【0091】
プロトタイプデバイスの性能をテストした。デバイスを一定の温度に保つために、組み立てられたシリコンフォトニクス同調可能レーザを熱電冷却器(TEC)に取り付けた。ゲインチップに注入される電流は、以下の全ての実験について200mAで一定に保った。SOAに関する注入電流は、レーザ出力電力を制御するために変えることができる。図16は、リング共振器の1つのみを加熱することによって65nmにわたって同調された27の波長チャネルの重ね合わされたスペクトルを示す。両方のリング共振器加熱器が制御される場合、同調範囲全体にわたってレーザ発振波長を連続的に同調することができる。この測定では、SOA電流を900mAに設定した。測定されたファイバ結合出力電力は、図17の下側の曲線のドットによって示されているように、Cバンド全体にわたって21.5~21.8dBmの範囲である。そのような高出力電力は、複雑な変調フォーマットを使用して送信機損失を補償するために有望である。図17の上側の曲線のドットによって示されているように、各波長チャネルで、50dBを超える大きなSMSR(サイドモード抑圧比)も得られた。
【0092】
プロトタイプを使用して、出力電力、スペクトル線幅、及び相対強度雑音(RIN)のSOA電流依存性を調べた。図18(a)は、SOA電流の関数としての、1547.0nmでのファイバ結合出力電力を示す。プロットは、出力電力が500mAのSOA電流で100mWに達することを示す。SOA電流がさらに700mAまで増加すると、ブースタSOAは徐々に飽和し始める。最大出力電力は、950mAのSOA電流で150mWという従来は得られなかった高レベルと考えられるものに達する。レーザスペクトル線幅及びRINも測定した。参照により本明細書に援用するV.Michaud-Belleau et al.,“Passive Coherent Discriminator Using Phase Diversity for The Simultaneous Measurement of Frequency Noise and Intensity Noise of A Continuous-Wave Laser,”Metrologia 53,1154(2016)で教示されているように、周波数弁別器手法を使用して、固有レーザ線幅を測定した。この手法は、コヒーレント遅延線干渉計を採用して、レーザ周波数雑音を強度変動に変換し、次いでこれを光検出器によって測定することができる。100~400MHzの周波数雑音ベースラインを使用して、固有ローレンツ線幅を推定し、低周波数での1/f熱的及び電子雑音からの影響を回避した。図18(b)の上側のドットは、1547.0nmでの測定された線幅を示す。SOA電流が900mAまで増加しても、明らかな線幅の劣化はないことに留意されたい。実際、200~900mAのSOA動作電流で、線幅は60kHzを十分に下回る。Cバンドの最初と最後での他の2つの波長の線幅もテストし、どちらも80kHzよりも狭い線幅が得られた(データはここには示さず)。そのような狭い線幅は16又は64QAM変調フォーマットに適しているが、必要に応じて、シリコンフォトニクスチップのレイアウトを最適化することで、さらなる改良を期待することができる。図18(b)の下側のドットのプロットは、レーザRINとSOA電流との関係を示す。測定された低いRINは、200~900mAの間のSOA電流に関して、-150dB/Hz(0.1~10GHzの平均)未満である。
【0093】
図19A及び19Cでの線は、SOA電流の変化又はTEC温度設定の変化による周波数ドリフトを示す。各ドットは、基準RTDによって推定された周波数を示し、これは、±0.2GHz以内の低い測定誤差を与える。対応する周波数誤差が、図19B及び19Dにプロットされている。これは、RTDが、SOA電流変化やパッケージ温度変化などの外部熱擾乱によるレーザ発振波長ドリフトを正確に追跡することができることを示す。
【0094】
プロトタイプデバイスに関して、導波路及び加熱器の周りでの温度勾配に関するシミュレーション結果が図20に示されている。図20のシミュレーション結果によって示されるように、RTDが2ミクロンの厚さの上側二酸化ケイ素クラッドによってシリコンリング共振器から分離されているとき、一体型加熱器が加熱されると、RTDの温度は17℃上昇し、リング共振器導波路は31℃上昇する。100%未満の温度感度の影響については、概して上で論じた。
【0095】
図21で丸いドットによって示されているように、この基準チップRTDがない場合、レーザ発振周波数は4GHzもドリフトし、周囲温度の変動は10℃~80℃の間である。対照的に、基準チップRTD機能が有効化された状態では、周波数ドリフトを約1桁低減することができる。測定された周波数誤差は±0.5GHz以内であり得て、図16に四角いドットでプロットされている±1GHzの周波数誤差仕様よりも小さい。図22に示されるように、SOA電流を500mAから600mAに、次いで700mAに増加すること(図の上側フレームに2つの矢印で示されている)によって、共通のシリコン基板に熱擾乱がもたらされることがある。そのようなSOA電流の変化は、レーザ出力電力同調に必要であるが、フォトニクス集積チップでの温度変化を引き起こす。図21の下側フレームに実線によって示されているように、集積チップRTD機能が無効化されている場合、レーザ発振周波数は7.3GHzドリフトし、次いでさらに7.0GHzドリフトし、いずれも、TECがオンにされてチップ温度を安定させる。図22の下側フレームに破線によって示されているように、制御ループでチップRTD機能が有効化されるとき、レーザ発振周波数を安定させて元のスペクトル位置に戻すことができる。集積チップRTDをオンにした状態での周波数誤差は、±1GHzの周波数誤差仕様を十分に下回る。観察された2つの周波数低下は、PID制御装置のオーバーシュートによるものであった。これは、制御装置パラメータをさらに最適化することによって修正することができる。温度変化に対するそのようなレーザ周波数安定性は、光スペクトル分析器(OSA)(H. Guan et al.,“Widely-tunable,narrow-linewidth III-V/silicon hybrid external-cavity laser for coherent communication,”Opt.Express 26,7920-7933(2018))又は外部の波長ロッカなどの外部機器を使用せずに、本発明者らの集積センサ技術によって得られたことに留意されたい。
【0096】
熱擾乱による周波数ドリフトを正確に追跡することができるので、それに応じてフィルタ加熱器電力を調整して、任意のターゲット周波数を正確に補償及び同調することができる。図23は、加熱器電力の同調後のターゲット周波数シフトと実際の周波数シフトとの関係を示す。-30~30GHzのターゲット周波数シフトの場合、周波数同調は、±0.5GHz未満の誤差を示す。これは、SiPho ECLに関する±1GHz周波数同調精度の仕様の範囲内である。
【0097】
図24は、単一の基準RTD及び2つのフィルタ加熱器を使用することによってこの制御手法の実現可能性を実証するための周波数安定化実験を示す。約9分と24分の時点で、SOA電流を600mA及び次いで750mAに変更した。これは、シリコンフォトニクスチップにいくらかの熱擾乱をもたらす。時間の関数としてのSOA電圧は、図24の右上のフレームにプロットされている。図24の右下のフレームを参照すると、SOA電圧の変化は、最大20GHzのレーザ発振周波数ドリフトをもたらす(第1の線)。そのような周波数ドリフトを、基準RTD(プロットの解像度では第1の線と区別できない第2の線)によって正確に追跡した。40分の時点で、制御コードが有効化され、わずか0.2GHzの誤差で周波数を元のスペクトル位置に同調して戻した。周波数誤差は、時間の関数として右側のフレームにプロットされている。これらの結果は、フィルタの局所的な温度の知識がなくても、加熱器電力のみを較正及び同調することによって、レーザ発振周波数を熱擾乱に対して安定させ、任意のターゲット周波数に正確に同調させることができることを示す。
【0098】
優れた性能に加えて、このシリコンフォトニクスレーザのほとんどのパッケージング及びテストプロセス、並びに制御電子機器及びゲインチップは、本発明者らの成熟した市販の製品から活用される。したがって、本発明者らは、任意選択でさらに適応させることで、このプロトタイプデバイスが大量生産に向けて大きな可能性を秘めていると考える。
【0099】
本研究において、本発明者らは、一体型の高飽和パワーブースタSOAを使用することによって、140mWを超える従来は得られなかった高いファイバ出力電力を有する高性能ハイブリッド集積シリコンフォトニクス同調可能レーザを実証した。高次変調に適した、80kHzよりも狭いスペクトル線幅と、-150dB/Hz未満のRINとが得られた。ブースタSOAの集積は、レーザスペクトル線幅及びRINの劣化を示さない。本発明者らが開発したシリコンフォトニクスチップ用の集積センサ技術は、1GHz未満の正確な周波数制御も可能にする。本発明者らは、コヒーレント用途のためのこのシリコンフォトニクス同調可能レーザの実現可能性をさらに実証した。
【0100】
上記の実施形態は、例示として意図されており、限定ではない。さらなる実施形態も、特許請求の範囲及び本発明の概念の範囲内にある。さらに、特定の実施形態を参照して本発明を述べてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の変更を行うことができることを当業者は理解されよう。上記の文献の参照による援用は、本明細書での明示的な開示に反する主題は援用されないように制限される。特定の構造、組成、及び/又はプロセスが、構成要素、要素、成分、又は他の区分と共に本明細書で述べられている限り、本明細書での開示は、特に明記しない限り、論述で示唆されるように、特定の実施形態、特定の構成要素、要素、成分、他の区分、又はそれらの組合せを含む実施形態、並びに、主題の基本的な性質を変えない追加の特徴を含むことができるそのような特定の構成要素、成分、又は他の区分、又はそれらの組合せから本質的になる実施形態を網羅する。本明細書における「約」という用語の使用は、特に明記しない限り、特定のパラメータに関する測定誤差を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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【国際調査報告】