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特表2022-522801エレベータ用の運行システム及びマルチカーエレベータ運行システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】エレベータ用の運行システム及びマルチカーエレベータ運行システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/02 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
B66B9/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551877
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2020078116
(87)【国際公開番号】W WO2020177758
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】201910172657.9
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911023262.9
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389653
【氏名又は名称】湖南大挙信息科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】周 立波
【テーマコード(参考)】
3F301
【Fターム(参考)】
3F301BA06
3F301BB09
3F301BC01
(57)【要約】
エレベータ用の運行システムであって、乗りかご(21)と、運行レール(1)と、駆動機構とを含み、乗りかご(21)が駆動機構によって運行レールを移動し、運行システムに巻上げ部を含まない。更にマルチカーエレベータ運行システムを開示し、複数の乗りかご(21)及び少なくとも2つの運行レール(1)が設けられ、運行レール(1)のそれぞれが乗りかご(21)の移動に用いられ、少なくとも1つの切替機構及び駆動機構が更に設けられ、乗りかご(21)が駆動機構によって運行レール(1)を移動し、異なる運行レール(1)が切替機構によって接続され、乗りかご(21)が切替機構によって異なる運行レール(1)に切り替えられる。上記構成によれば、エレベータ運行中の安全性を強化することができ、乗りかごの高速運行を実現でき、高層エレベータの速度要求を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、運行レールと、駆動機構とを含むエレベータ用の運行システムであって、前記乗りかごが駆動機構によって運行レールを移動し、巻上げ部を含まないことを特徴とするエレベータ用の運行システム。
【請求項2】
前記駆動機構と運行レールとの間には、乗りかごの駆動力である摩擦力が発生することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項3】
前記駆動機構には、運行レールに密着する乗上げモジュールが設けられ、前記乗りかごが乗上げモジュールによって運行レール上を運行することを特徴とする請求項2に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項4】
前記乗上げモジュールは、押圧アセンブリと、運行レール上を移動する少なくとも1組の付属アセンブリとを含み、前記付属アセンブリは、押圧アセンブリによって運行レールに押し付けられることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項5】
前記付属アセンブリと運行レールとの間には、乗りかごを運行させる摩擦力が発生することを特徴とする請求項4に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項6】
前記付属アセンブリは、運行レール上を転動することを特徴とする請求項5に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項7】
前記付属アセンブリとして、円形の転動体が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項8】
前記付属アセンブリとして、タイヤが設けられていることを特徴とする請求項7に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項9】
前記付属アセンブリとして、運行レール上を転動するための非円形体が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項10】
前記付属アセンブリとして、クローラが設けられていることを特徴とする請求項9に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項11】
前記付属アセンブリは、運行レール上を移動し、前記運行レールと付属アセンブリとの摩擦係数fは、0.4よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項12】
前記押圧アセンブリから付属アセンブリに与える圧力は、F/f以上であり、ここで、Fは、付属アセンブリと運行レールとの間の摩擦力であることを特徴とする請求項8に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項13】
前記乗りかごの移動を停止させ、又は、移動速度を低下させる制動機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項14】
運行レールと同一レールであるか、単独に設けられて且つ運行レールと交差しない制動レールが設けられていることを特徴とする請求項13に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項15】
前記制動機構には、乗りかごに取り付けられた少なくとも1組のブレーキ装置が設けられ、前記ブレーキ装置は、動作時に運行レールをクランプし、前記乗りかごの正常動作時に、ブレーキ装置は、制動レールに接しないことを特徴とする請求項13に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項16】
前記制動機構には、乗りかごに取り付けられた少なくとも1組のセルフロック装置が設けられ、前記ブレーキ装置が正常に動作しないか、又は乗りかごが移動しないとき、前記セルフロック装置は、制動レールをロックすることを特徴とする請求項15に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項17】
前記制動レールには、少なくとも1つのロック部材が設けられ、前記セルフロック装置は、使用時にロック部材と協働して連結することを特徴とする請求項16に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項18】
前記ブレーキ装置には挟持部が設けられ、前記乗りかごが正常に動作するとき、前記挟持部が制動レールを解放し、前記ブレーキ装置が動作するとき、前記挟持部が制動レールをクランプすることを特徴とする請求項15に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項19】
前記駆動機構には、乗りかごのバランスを調整するための姿勢調整アセンブリが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用の運行システム。
【請求項20】
マルチカーエレベータ運行システムであって、複数の乗りかご及び少なくとも2つの運行レールが設けられ、前記運行レールのそれぞれが乗りかごの移動に用いられ、少なくとも1つの切替機構及び請求項1~12のいずれか一項に記載の駆動機構が更に設けられ、前記乗りかごが駆動機構によって運行レールを移動し、異なる運行レールが切替機構によって接続され、前記乗りかごが切替機構によって異なる運行レールに切り替えられることを特徴とするマルチカーエレベータ運行システム。
【請求項21】
請求項13~18のいずれか一項に記載の制動機構が設けられていることを特徴とする請求項20に記載のマルチカーエレベータ運行システム。
【請求項22】
前記切替機構は、回転部と切替レールを含み、前記切替レールは、回転部の回転によって2つの運行レールと接続又は切り離されることを特徴とする請求項20に記載のマルチカーエレベータ運行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ構造の技術分野に関し、特にエレベータ用の運行システム及びマルチカーエレベータ運行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の社会・経済活動において、エレベータは、人やモノを垂直に輸送する手段として欠かせないものになっている。統計によると、中国のエレベータ需要の年平均成長率が20%以上であり、中国は、すでに全世界で最大のエレベータ市場となっているが、シェア面では、国内の70%前後の市場シェアをオティーズ、迅達、通力、ティセンクジャバー、三菱、日立などの外資ブランドが占めており、国内ブランドがごく一部のシェアしか占めていない。国内ブランドのエレベータは、技術レベル、アフターサービスなどの面で先進国に大幅に遅れており、海外メーカーによるいくつかのキーテクノロジーの封鎖も加わり、中国のエレベータ業界の発展は、難航している。エレベータ業界の技術水準の革新能力を強化し、国外メーカーの技術独占を打破し、国内ブランドのエレベータのシェアを高めることが当面の解決すべき問題となっている。
【0003】
1854年のエレベータ発明以来、エレベータの乗りかごは、通常は1つの昇降路内で1つの乗りかごのみを運行させることができる綱車巻上げ駆動方式で運行されてきた。単一乗りかご運行モードのエレベータは、低層の建築物や利用者の少ないフロアで利用ニーズに応えることができる。現代都市の急速な発展に伴い、大人口密度の高層建築物や超高層建築物が建てられ、単一乗りかご運行モードのエレベータは、待ち時間が長く、輸送効率が低いという欠点が拡大されている。このような従来の単一乗りかごエレベータ運行モードは、近代的な都市建築物の急速な発展のニーズに対応することが困難になっている。
【0004】
ワイヤロープによる巻上げ駆動の方式は、ビルの最上階に機械室、巻上げモータ及び減速装置を設置することにより、ワイヤロープを牽引して乗りかご及びカウンタウェイトを牽引して昇降路内のレール上を運行する。ワイヤロープによる巻上げ駆動のエレベータの制動は、巻上機の制動と安全クランプの機械的制動を合わせる方式を採用し、巻上機の制動が回路制御によって実現され、エレベータの過速度運行時には給電路を遮断して巻上機を停止させる。巻上機のブレーキが利かなくなると、その時点でエレベータが下降し、ガバナがワイヤロープに引っかかって安全クランプを作動させ、エレベータをガイドレール上に強制的に停止させる。
【0005】
エレベータの運行使用に伴い、以上のワイヤロープによる巻上げ形式の制動方式は、ワイヤロープの摩耗がひどく、スリップ及び断裂のリスクがあり、制動が頻繁になるほど、ワイヤロープに対する衝撃が大きくなり、その耐用年数も低くなり、また、ワイヤロープは定期的な潤滑メンテナンス及び交換が必要であり、そのコストも高い。ワイヤロープの摩耗が激しい場合、直ちに交換できなければ、ブレーキシステムが乗りかごを停止させることができないという問題がある。
【0006】
工事技術レベルの発展に伴い、油圧駆動式エレベータ、スクリュー駆動式エレベータが登場した。その中で油圧駆動式エレベータは、シリンダピストンの耐用年数が切れた後、摩耗あるいは破裂しやすく、油圧オイルが漏れ出し、汚染をもたらし、そのメンテナンス性も悪い。スクリュー駆動式エレベータは、自身の構造の制約から主に別荘建築に応用され、高層階環境では設置できず、また速度が遅く、騒音が大きいという欠点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術が有する技術的課題に対して、本発明がエレベータ用の運行システム及びマルチカーエレベータ運行システムを提供することにあり、エレベータ運行中の安全性を強化でき、乗りかごの高速運行を実現でき、高層エレベータの速度要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
乗りかごと、運行レールと、駆動機構とを含むエレベータ用の運行システムであって、前記乗りかごが駆動機構によって運行レールを移動し、巻上げ部を含まない。
【0009】
更に、上記技術手段において、前記駆動機構と運行レールとの間には、乗りかごの駆動力である摩擦力が発生する。
【0010】
前記駆動機構には、運行レールに密着する乗上げモジュールが設けられ、前記乗りかごが乗上げモジュールによって運行レール上を運行する。
【0011】
前記乗上げモジュールは、押圧アセンブリと、運行レール上を移動する少なくとも1組の付属アセンブリとを含み、前記付属アセンブリは、押圧アセンブリによって運行レールに押し付けられる。
【0012】
前記付属アセンブリと運行レールとの間には、乗りかごを運行させる摩擦力が発生する。
【0013】
前記付属アセンブリは、運行レール上を転動する。
【0014】
上記技術手段において、前記付属アセンブリと運行レールとの間の摩擦力Fは、下記式を満たす。
F=G+ma
ここで、Gは、乗りかごの重力であり、mは、乗りかごの質量であり、aは、乗りかごの加速度である。
【0015】
上記技術手段において、前記付属アセンブリは、運行レール上を移行し、前記運行レールと付属アセンブリとの摩擦係数fは、0.4よりも大きい。
【0016】
前記押圧アセンブリから付属アセンブリに与える圧力は、F/f以上であり、ここで、Fは、付属アセンブリと運行レールとの間の摩擦力である。
【0017】
上記技術手段において、前記付属アセンブリは、ゴムで作製され、ソリッドゴムであってもよい。
【0018】
前記付属アセンブリとして、円形の転動体が設けられてもよい。
【0019】
前記付属アセンブリとして、タイヤが用いられてもよい。
【0020】
別の手段において、前記付属アセンブリとして、運行レール上を転動するための非円形体が設けられてもよい。
【0021】
前記付属アセンブリとして、クローラが用いられてもよい。
【0022】
上記技術手段において、前記付属アセンブリは、駆動部材と少なくとも2つの運行部材を含み、前記運行部材が運行レールを移動し、前記駆動部材が回転軸を介して運行部材を動作させる。
【0023】
前記押圧アセンブリは、運行部材と運行レールとの間の転動摩擦力を回転軸によって変更させる。
【0024】
前記運行部材に規制部材が設けられている。
【0025】
前記運行レールは、少なくとも2つ設けられ、前記運行レールのそれぞれが1つの運行部材に対応し、前記運行部材が回転軸によって動作し、前記運行部材のそれぞれに1つの圧力部材が設けられ、前記運行部材は、運行レールとの間の圧力を圧力部材の伸張又は短縮によって増加又は減少させる。
【0026】
前記運行レールは、少なくとも2つ設けられ、前記運行レールのそれぞれが2つの運行部材に対応し、同一の運行レールの2つの運行部材が異なる回転軸によって動作し、同一の運行レールの2つの運行部材に1つの押圧アセンブリが対応して設けられている。
【0027】
上記技術手段において、前記運行システムには、前記乗りかごの移動を停止させ、又は、移動速度を低下させる制動機構が設けられている。
【0028】
上記技術手段において、前記運行システムには、運行レールと同一レールであるか、単独に設けられて且つ運行レールと交差しない制動レールが設けられている。
【0029】
上記技術手段において、前記制動機構には、乗りかごに取り付けられた少なくとも1組のブレーキ装置が設けられ、前記ブレーキ装置は、動作時に運行レールをクランプし、前記乗りかごの正常動作時に、ブレーキ装置は、制動レールに接しない。
【0030】
上記技術手段において、前記制動機構には、乗りかごに取り付けられた少なくとも1組のセルフロック装置が設けられ、前記ブレーキ装置が正常に動作しないか、又は乗りかごが移動しないとき、前記セルフロック装置は、制動レールをロックする。
【0031】
前記制動レールには、少なくとも1つのロック部材が設けられ、前記セルフロック装置は、使用時にロック部材と協働して連結する。
【0032】
前記ブレーキ装置には挟持部が設けられ、前記乗りかごが正常に動作するとき、前記挟持部が制動レールを解放し、前記ブレーキ装置が動作するとき、前記挟持部が制動レールをクランプする。
【0033】
上記技術手段において、前記駆動機構には、乗りかごのバランスを調整するための姿勢調整アセンブリが設けられている。
【0034】
本発明は、マルチカーエレベータ運行システムを更に提案し、複数の乗りかご及び少なくとも2つの運行レールが設けられ、前記運行レールのそれぞれが乗りかごの移動に用いられ、少なくとも1つの切替機構及び上記の駆動機構が更に設けられ、前記乗りかごが駆動機構によって運行レールを移動し、異なる運行レールが切替機構によって接続され、前記乗りかごが切替機構によって異なる運行レールに切り替えられる。
【0035】
上記技術手段において、前記運行システムには、上記制動機構が設けられている。
【0036】
上記技術手段において、前記切替機構は、回転部と切替レールを含み、前記切替レールは、回転部の回転によって2つの運行レールと接続又は切り離される。
【0037】
上記技術手段において、前記駆動機構に制御システムが更に設けられている。前記制御システムは、電気的に接続された監視モジュールと処理モジュールを含む。前記監視モジュールは、乗りかごの運行データを監視し、データを処理モジュールに伝送するために用いられる。前記処理モジュールは、監視モジュールによって監視したデータに基づいて、押圧アセンブリに命令を送信する。
【0038】
前記監視モジュールは、乗りかごの重量、速度及びバランスを監視するために用いられる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のエレベータ用の運行システム及びマルチカーエレベータ運行システムは、従来技術に比べ以下の利点を有する。
(1)本発明の運行システムは、全てのエレベータに適用可能であり、エレベータシステムに巻上げ部が設けられているか否かに限らず、適用範囲が広く、あらゆるエレベータシステムに適用可能であり、エレベータの昇降路内の予め配置された線形運行レールに適合した付属アセンブリをモータで駆動し、付属アセンブリと運行レールとの間の摩擦力によって乗りかごの昇降を実現する。
(2)本発明の駆動機構は、巻上式のエレベータ巻上ロープの破断リスクがないため、安全性能が高い。駆動機構は、運行騒音が低く、振動が小さい。
(3)本発明の駆動機構は、乗りかごの高速運行を実現でき、高層エレベータの速度要求を満たす。複数台の乗りかごが同時に1つの昇降路内で運行することを実現でき、従来のエレベータが通常1つの昇降路で1つの乗りかごしか運行できないという問題を解決する。
(4)本発明の制動機構は、乗りかごに巻上げ部を備えさせず、エレベータシステムの構成を少なくし、コストを低減するとともに、工事施工時間を低減することができる。
(5)本発明の制動機構は、ブレーキ装置の駆動が簡単で制御が容易であり、且つブレーキ性能が安定し、損壊しにくく、保守しやすい。セルフロック装置は、信頼性がよく、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明の駆動機構の構造を示す図である。
図2図2は、本発明の実施例1の構造を示す図である。
図3図3は、本発明の実施例2の構造を示す図である。
図4図4は、本発明の実施例3の構造を示す図である。
図5図5は、本発明の実施例4の構造を示す図である。
図6図6は、本発明の実施例5の構造を示す図である。
図7図7は、本発明の実施例6の制動機構の構造を示す図である。
図8図8は、本発明の実施例7の制動機構の構造を示す図である。
図9図9は、本発明の実施例7の運行時における制動機構の動作を示す図である。
図10図10は、本発明の実施例7の運行レールの構造を示す図である。
図11図11は、本発明のブレーキ装置の構造を示す図である。
図12図12は、本発明のセルフロック装置の構造を示す図である。
図13図13は、本発明のマルチカーの運行を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、ここに記載する具体的な実施形態は、単に本発明を説明して解釈するために用いられるものであり、本発明を制限するためのものではない。
【0042】
実施例1
図1及び図2は、エレベータ運行システムに用いられる本発明の1つの実施形態を示す。エレベータ運行システムは、乗りかご21と、運行レール1と、駆動機構とを含む。乗りかご21は、駆動機構によって運行レール上を上昇又は下降する。運行システムには、従来技術の巻上げ部を設けなくてもよく、即ちワイヤロープの巻上げによる駆動を設けなくてもよい。
【0043】
本実施例では、運行システムに昇降路が設けられ、運行レール1が昇降路内に取り付けられ、乗りかご21が昇降路内を上下する。乗りかご21は、箱体23と架台24を含む。箱体23は、架台24内に取り付けられる。駆動機構に乗上げモジュールが設けられている。乗上げモジュールは、押圧アセンブリと少なくとも1組の付属アセンブリを含む。付属アセンブリは、架台24に取り付けられる。箱体23は、乗客を積載するためのものである。付属アセンブリは、運行レール上を移動する。付属アセンブリは、押圧アセンブリによって運行レール1に押し付けられる。
【0044】
本実施例では、各昇降路に4つの運行レール1が設けられている。乗りかご21は、駆動機構によって運行レール1上を運行する。運行レール1は、鋼製である。付属アセンブリは、2組設けられ、各組の付属アセンブリは、1つの駆動部材と2つの運行部材5とを含む。運行部材5は、ソリッドゴムで作製され、本実施例ではゴムタイヤが採用されている。各タイヤは、1つの回転軸61を介して駆動部材に連結される。駆動部材は、モータ53である。付属アセンブリには、減速機54が更に設けられている。モータ53、減速機54は、ボルトによって架台24に固定されている。モータ53は、減速機54を介して2つの回転軸61を回転させてタイヤを回転させる。4つのタイヤのそれぞれは、昇降路に予め配置された4本の運行レール1に密着する。昇降路内の運行レール1は、壁に固定されている。
【0045】
本実施例では、押圧アセンブリは、2組設けられ、油圧アセンブリである。各組の押圧アセンブリは、1つの推力部材と2つの圧力部材を含む。推力部材に油圧ポンプ52が用いられ、圧力部材は、油圧シリンダ51と圧力ロッド55から構成される。圧力ロッド55は、回転軸61に連結される。圧力ロッド55と回転軸61との間には万能継ぎ手が設けられることによって、減速機54とモータ53が固定された状態で押圧アセンブリがタイヤに圧力を加えることができるようになり、タイヤは、運行レール1上を移動して乗りかごを上下に移動させるのに十分な摩擦力を有する。油圧ポンプ52の両端の油圧シリンダ51は、逆回転の2つの回転軸61に接続される。油圧ポンプ7は、油圧シリンダ51及び圧力ロッド55を伸長又は短縮させ、圧力ロッド55の伸長又は短縮により、回転軸61に圧力を増加又は縮小させ、乗りかごの安全運行を保証する。
【0046】
本実施例では、ソリッドタイヤは、ポリウレタン微孔性エラストマーからなる。合成微孔性エラストマーの出発材料としては、ポリオール、ジイソシアネート、鎖延長剤、触媒、発泡剤、泡安定剤及び他の添加剤が挙げられる。他の添加剤としては、難燃剤、酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。ポリウレタン微孔性エラストマーのソリッドタイヤには、非補強タイプと補強タイプの2種類があり、前者は、軽荷重タイプであり、後者は、重荷重タイプである。本実施例におけるソリッドタイヤは、重荷重タイプを採用しており、エラストマーと補強材とビードリングとから構成されている。タイヤ外面と運行レールとの積算貼り合わせ幅は、少なくとも145mmである。タイヤ表面には、滑り止め模様が設けられている。
【0047】
本実施例では、タイヤ内側面にリム6が設けられている。リム6は、運行レール1に密着し、運行レール1上でのタイヤの動きをガイドするとともに、乗りかごの横変位を規制している。
【0048】
ゴムと鉄鋼の乾式摩擦条件の摩擦係数は、以下の通りである。
静摩擦係数が0.8~0.9である。
【0049】
通常、人を乗せた乗りかごの重量は、約2tであり、乗りかごの最高加速度は、1m/sである。従来のエレベータ運行システムの設計では、昇降路の幅が2m*2mであり、運行レール1の幅が200mmであり、同一昇降路内の隣接運行レールのピッチが最低860mmであり、隣接昇降路の運行レール1のピッチが少なくとも1940mmであり、そのためタイヤの幅は、運行レール1の幅よりも小さく、摩擦力を確保するために構造強度に応じて安全性能の要求を満たす必要があり、タイヤ外面と運行レール1との積算貼り合わせ幅は、少なくとも145mmであり、タイヤ径は、300mmである。壁のタイヤに対する摩擦力(理論的には運行レール1とタイヤとの摩擦力)は、F=G+maである。ここで、
G=20000N
m=2000kg
a=1m/s
よって、F=22000N。
【0050】
摩擦力は、乗りかごの重力及び慣性力より大きい必要があり、摩擦係数0.8を例に計算すると、安全を保証する場合に圧力アセンブリから少なくともタイヤに加える必要のある圧力は、下記式である。
=22000÷0.8=27500N
【0051】
各タイヤは、6875Nの圧力を受けることになる。現在、従来技術で市販されている油圧部材は、この圧力要件を完全に満たすことができる。
【0052】
本実施例では、駆動機構には、更に姿勢調整アセンブリが設けられている。姿勢調整アセンブリは、4つの油圧部材56と1つのカウンタバランサ25とを備えて乗りかごのバランスを維持している。油圧部材56は、ストローク調整可能な油圧シリンダ51と油圧ポンプ52とから構成されている。
【0053】
本実施例では、運行システムに更に制動機構が設けられている。制動機構は、従来からエレベータシステムでよく用いられているブレーキを用いてもよいし、実施例4又は実施例5の制動機構を用いてもよい。
【0054】
従来技術のエレベータシステムでよく用いられているブレーキを採用する場合、ブレーキにはガイドレールブレーキ12が用いられる。架台24の底部には2対のガイドレールブレーキ12が設けられ、運行時に乗りかご21にガタが発生しないように拘束がかけられている。監視モジュールが乗りかご21に安全上の問題が発生したことを検出すると、例えば乗りかごの速度が定格速度より大きい場合や、乗りかごの加速器が定格加速度の1.2倍を超える場合には、ガイドレールブレーキ12が運行レール1をクランプし、乗りかごに対して緊急制動の役割を果たす。
【0055】
本実施例では、駆動機構に更に制御システムが設けられている。制御システムは、電気的に接続された監視モジュールと処理モジュールを含む。監視モジュールは、乗りかごの運行データを監視し、処理モジュールにデータを送信するために用いられる。処理モジュールは、監視モジュールによって監視されたデータに基づいて押圧アセンブリに命令を送信する。監視モジュールは、乗りかごの重量、速度及びバランスを監視するために用いられる。処理モジュールは、プロセッサ8である。監視モジュールは、乗りかごに取り付けられた重量センサ、速度センサ、及びカウンタバランサ25を含む。
【0056】
タイヤの駆動に速度差の問題があると、箱体23が水平方向にわずかに傾く可能性がある。カウンタバランサ25は、箱体23の傾斜角度を検出し、データをプロセッサ8に送信する。プロセッサ8は、姿勢調整アセンブリの4つの油圧部材56を制御し、油圧部材56の油圧シリンダを伸張又は圧縮させて架台24と箱体23との相対角度位置を調整し、乗りかごを常にスムーズに垂直に保つことができるようにし、エレベータの利用者の快適性を向上することができる。
【0057】
実施例2
図3は、エレベータ運行システムのための本発明の第2の実施形態を示す。本実施例と実施例1との違いは、主に1つの昇降路内の運行レール1が2本設けられ、タイヤが対応して2本配設され、それぞれが対応する運行レール1に密着している点である。各タイヤの両側にリム6が設けられ、各タイヤは、1つの駆動部材及び1組の押圧アセンブリを配設し、2組の押圧アセンブリは、同時に対応するタイヤに圧力を印加し、乗りかごの上昇又は下降させるのに十分な摩擦力を持たせる。
【0058】
実施例3
図4は、エレベータ運行システムのための本発明の第3の実施形態を示す。本実施例と実施例1との違いは、主に、1つの昇降路内の運行レール1が2本設けられ、タイヤが4個配設され、2つのタイヤが1つの運行レール1に密着し、2つの運行レール1がそれぞれ乗りかごの両側中間位置に位置している点である。押圧アセンブリは、2組設けられ、各組の押圧アセンブリは、それぞれ同側の2つのタイヤの回転軸61に接続されている。押圧アセンブリは、2つのゴムタイヤに十分な引張力を与える。駆動部材は、2つのタイヤを同時に向かい合わせに回転させて、乗りかごを上昇又は下降させる。運行レール1に対する2つのタイヤの作用力は、互いに相殺され、壁に対する作用力は、大幅に低減される。
【0059】
本実施例では、タイヤの内側にリム6が設けられ、運行レール1上でのタイヤの動きをガイドするとともに、乗りかごの横方向の変位を規制している。
【0060】
実施例4
図5は、エレベータ運行システムのための本発明の駆動機構の第4の実施形態を示す。本実施例と実施例1との相違点は、主に、本実施例の運行部材5がゴムクローラを採用している点である。ゴムクローラは、運行レール1に密着する。各組のゴムクローラは、十分な摩擦力によって乗りかごを上昇又は下降移動させることができるように、1組の押圧アセンブリを備えている。
【0061】
本発明によるエレベータ運行システムのための駆動機構は、従来の巻上式エレベータと比較して機械室を設ける必要のない新しいエレベータ駆動方式を提供する。また、単一の昇降路におけるマルチカーの同時運行モードを比較的容易に実現することができ、エレベータの運行効率を大幅に向上させることができる。また、昇降路内の運行レール1の数や、タイヤとの協働方式は、実際の使用に応じて変更することができ、また、押圧アセンブリは、モータを用いてタイロッドを駆動してタイヤに圧力を加えることもでき、又は電磁的にタイヤに圧力を加える。このような明白な変更は、昇降路内でのエレベータの運行に適応するためになされるべきであり、本特許の保護範囲内で行われる微調整及び変更である。
【0062】
実施例5
図6は、エレベータ運行システムのための本発明の駆動機構の第5の実施形態を示す。本実施例と実施例1との相違点は、本実施例の運行部材5がソリッドタイヤを採用し、且つ運行レールとしてシステム後側まで1本のレールを採用している点にある。ソリッドタイヤは、運行レール1に密着する。ソリッドタイヤは、乗りかごを十分な摩擦力で上昇又は下降させることができるように、1組の押圧アセンブリを備えている。
【0063】
本発明によるエレベータ運行システムのための駆動機構は、従来の巻上式エレベータと比較して機械室を設ける必要のない新しいエレベータ駆動方式を提供する。また、単一の昇降路におけるマルチカーの同時運行モードを比較的容易に実現することができ、エレベータの運行効率を大幅に向上させることができる。また、昇降路内の運行レール1の数や、タイヤとの協働方法は、実際の使用に応じて変更することができ、また、押圧アセンブリは、モータを用いてタイロッドを駆動してタイヤに圧力を加えることもでき、又はタイヤに電磁的に圧力を加えるか、又は弾性素子を用いて直接圧力を加えることができる。このような明白な変更は、昇降路内でのエレベータの運行に適応するためになされるべきであり、本発明の保護範囲内で行われる微調整及び変更である。
【0064】
実施例6
図7図11図12は、本発明の運行システムにおける制動機構の一実施形態を示す。運行システムに制動機構が設けられ、エレベータには、乗りかごシステム2と運行レール1が設けられ、乗りかご21が運行レール1上を上昇又は下降し、制動機構は、ブレーキ装置3と、セルフロック装置4を含み、ブレーキ装置3が少なくとも1組設けられている。本実施例では、制動レールは、剛性レールである2本のブレーキレール9と、乗りかご21の落下を防止する斜歯形レール13とからなり、全てのレールが昇降路内に取り付けられ、ブレーキレール9及び斜歯形レール13は、縦方向に配置された複数本の支持ビームに取り付けられ、ビームが昇降路内に固定されている。
【0065】
本実施例では、ブレーキ装置3は、乗りかご21に取り付けられる。ブレーキ装置3は、4組設けられ、それぞれ乗りかご21の四隅に位置し、2列に分けて配置される。それぞれのブレーキ装置3と乗りかご21の縁との最小距離は、同じであり、ブレーキ装置は、対称的に設けられている。ブレーキ装置の駆動部材は、電動シリンダ31であり、電動シリンダ31は、2つ設けられている。ブレーキ装置3には、挟持部33が設けられている。挟持部33は、取付座33-1と、2つの挟持片を含む。第1挟持片33-2は、電動シリンダ31のピストンロッドにヒンジ連結され、第2挟持片33-4は、取付座33-1に取り付けられている。
【0066】
本実施例では、挟持部3は、ガイドアセンブリを更に含む。ガイドアセンブリは、スライドアセンブリと、取付座に固定された2つのガイドベースとを含む。第2挟持片33-4には貫通孔が開設され、スライドアセンブリにはリンクアセンブリと2つのスライダが設けられ、スライダ33-6が第1ガイドベース33-8の溝に摺設されている。リンクアセンブリは、第1リンク33-5と第2リンク群とを含む。第1リンク33-5は、一端が第1挟持片33-2に固定接続され、他端が貫通孔を介して第2リンク群にヒンジ連結されている。第2リンク群には、2組の回転リンクが設けられ、各組の回転リンクには2つの第3リンク33-7が設けられ、「V」字形を呈する。1つの第3リンク33-7は、一端が第1リンクにヒンジ連結され、他端がスライダ33-6にヒンジ連結される。第2のガイドベース33-9には2つのガイド溝が設けられ、第2挟持片33-4は、第2ガイドベース33-9に固定され、第1挟持片33-2の両端には突起が設けられ、突起は、ガイド溝を摺動する。第1挟持片33-2と第2挟持片33-4との挟持片には摩擦ブロック33-3が設けられている。ブレーキ時には、第1挟持片33-2が電動シリンダ31の駆動により案内溝に沿って第2挟持片33-4に接近し、ブレーキレール9をクランプするとともに、2つのスライダ33-6が両側へ摺動し、2つの挟持片のクランプに対してロックの効果を奏する。第1挟持片33-2は、第2挟持片33-4から離間するには、電動シリンダ31によって駆動されなければならない。
【0067】
本実施例では、セルフロック装置4は、セルフロック部材41と、取付ブロックと、連行アセンブリを含む。取付ブロックは、2つ設けられ、乗りかご21と固定的に接続される。セルフロック部材と連行アセンブリは、異なる取付ブロックを介して乗りかごに取り付けられる。セルフロック部材41は、一端が取付ブロックにヒンジ連結され、他端にロックフックが設けられている。
【0068】
連行アセンブリは、プッシュロッド45と、移動ブロック43と、連結ロッド42を含む。移動ブロック43は、取付ブロックの溝内に摺設され、プッシュロッドの中部は、乗りかご21にヒンジ連結される。連結ロッドは、2つ設けられている。第1連結ロッド42は、一端がセルフロック部材41にヒンジ連結され、他端が移動ブロック43にヒンジ連結される。第2連結ロッド44は、一端が移動ブロック43にヒンジ連結され、他端がプッシュロッド45にヒンジ連結されている。
【0069】
本実施形態では、セルフロック装置は、規制ブロックと規制ピン46を更に含む。規制ブロックは、乗りかご21に固定されている。規制ピン46は、規制ブロック状の孔を貫通する。プッシュロッド45は、一端が第2連結ロッド44にヒンジ連結され、他端が規制ピン46に着脱可能に挿着されている。
【0070】
本実施例では、規制ピン46は、規制ブロックに固着されている。プッシュロッド45は、駆動部材によって駆動されて規制ピンから挿脱される。駆動部材は、電動シリンダ、エアシリンダなど、従来技術においてプッシュロッドの移動を可能にする動力源のいずれであってもよい。プッシュロッド45が規制ピン46から離れると、プッシュロッド45は、駆動部材によって駆動され、中間ヒンジ点の周りを回転し、移動ブロック43をスライドさせ、第1連結ロッド42によってセルフロック部材41を回転させる。
【0071】
本実施例では、ロック部材は、斜歯付きの斜歯形レール13である。
【0072】
ブレーキ装置3が故障すると、乗りかご21が落下し、このときプッシュロッド45が押されて、セルフロック部材41のロックフックが斜歯形レール13に係合する。即ち、フック歯が制動レール上の斜歯形レール13に係合し、乗りかごをレールにロックし、乗客の安全を保証する。
【0073】
実施例7
図8乃至図10は、本発明の運行システムにおける制動機構の第2の実施形態を示す。本実施例と実施例4との違いは、主に、本実施例では運行システムにガイドレール11が更に設けられ、ガイドレール11は、運行レール1と平行に独立して設けられていてもよいし、運行レール1と同一のレールであってもよい。ガイドレール11、ブレーキレール9及び斜歯形レール13は、縦方向に配置された複数本の支持ビームに取り付けられ、ビームが昇降路内に固定されている。
【0074】
本実施例では、乗りかごには4つの固定座が設けられ、固定座は、乗りかご21の四隅にそれぞれ位置するように乗りかごに固定されている。固定座には、3つの案内輪22が設けられ、それぞれが運行レール1上のガイドレール11の3つの面に押し当てられ、乗りかご21が常に脱線しないようにしている。
【0075】
本実施例の制動機構は、従来のエレベータ構造にも適用可能であり、マルチカーエレベータ構造にも適用可能である。
【0076】
運行レール1と制動レールとは、乗りかごの同じ側にあってもよいし、異なる側にあってもよい。運行レール1と制動レールとが乗りかごの異なる側に位置する場合、固定座は、運行レール1と同じ側に設けられる。
【0077】
実施例8
図13は、本発明のマルチカーエレベータ運行システムの一実施形態を示す。運行システムは、乗りかご21、運行レール1、駆動機構及び切替機構を含み、運行システムは、巻上げ部を含まず、切換機構は、複数の回転部と切換レール7とを含み、各昇降路内に1組の運行レール1が設けられている。乗りかご21、駆動機構及び運行レールの構成は、実施例1と同様である。
【0078】
本実施例では、回転部に渡り線71を採用し、各昇降路内に渡り線71を設け、切替レール7は、渡り線71の回転により両昇降路内の運行レール1と接続又は切り離される。渡り線の切換原理は、列車レールの切換原理と同様であり、列車レールの切換を可能とする従来技術の装置を本実施例の切換機構に用いることができる。
【0079】
本実施例では、エレベータシステムの複数の乗りかごが予め設定された運行レール1上に並行し、乗りかごが運行される前に他の乗りかごが減速又は停止すると、その乗りかごは、予め切換レール7に切り換えられて前進を続け、渡り線71と運行レール1の接触による案内によって乗りかごの前進を案内する。渡り線71とリム6とは協働して乗りかごの運行軌跡を強制的に変化させ、異なる運行レールに切り換える。レール切替を実現する原理は、列車と類似しており、ここではあまり説明しない。
【0080】
本実施例の運行システムは、乗りかごがレールを切り替える過程で、架台24が切換の過程に伴って徐に傾斜し、カウンタバランサ25が箱体23の傾斜角度を検出して、データをプロセッサ8に送信する。プロセッサ8は、姿勢調整アセンブリの油圧部材を制御し、油圧部材の油圧シリンダを伸張又は圧縮させて、乗りかごが常に水平に保たれるように架台24と箱体23との相対角度位置を調整する。
【0081】
本実施例では、運行システムに制動機構が更に設けられている。制動機構は、ガイドレールブレーキ12、実施例5の制動機構、又は実施例6の制動機構を用いることができ、このうち、制動機構は、架台24に取り付けられている。
【0082】
以上、本発明の具体的な実施例に過ぎず、本発明に対する形式上のいかなる制限でもない。好適の実施例によって本発明を上記のように開示したが、本発明を限定するためのものではない。従って、本発明の技術手段の内容から逸脱せずに、本発明の技術的な実質に基づいて以上の実施例に対して為したあらゆる簡単な修正、均等変更及び修飾は、いずれも本発明の技術手段による範囲内に含まれるべきである。
【0083】
(付記)
(付記1)
乗りかごと、運行レールと、駆動機構とを含むエレベータ用の運行システムであって、前記乗りかごが駆動機構によって運行レールを移動し、巻上げ部を含まないことを特徴とするエレベータ用の運行システム。
【0084】
(付記2)
前記駆動機構と運行レールとの間には、乗りかごの駆動力である摩擦力が発生することを特徴とする付記1に記載のエレベータ用の運行システム。
【0085】
(付記3)
前記駆動機構には、運行レールに密着する乗上げモジュールが設けられ、前記乗りかごが乗上げモジュールによって運行レール上を運行することを特徴とする付記2に記載のエレベータ用の運行システム。
【0086】
(付記4)
前記乗上げモジュールは、押圧アセンブリと、運行レール上を移動する少なくとも1組の付属アセンブリとを含み、前記付属アセンブリは、押圧アセンブリによって運行レールに押し付けられることを特徴とする付記3に記載のエレベータ用の運行システム。
【0087】
(付記5)
前記付属アセンブリと運行レールとの間には、乗りかごを運行させる摩擦力が発生することを特徴とする付記4に記載のエレベータ用の運行システム。
【0088】
(付記6)
前記付属アセンブリは、運行レール上を転動することを特徴とする付記5に記載のエレベータ用の運行システム。
【0089】
(付記7)
前記付属アセンブリとして、円形の転動体が設けられていることを特徴とする付記5に記載のエレベータ用の運行システム。
【0090】
(付記8)
前記付属アセンブリとして、タイヤが設けられていることを特徴とする付記7に記載のエレベータ用の運行システム。
【0091】
(付記9)
前記付属アセンブリとして、運行レール上を転動するための非円形体が設けられていることを特徴とする付記5に記載のエレベータ用の運行システム。
【0092】
(付記10)
前記付属アセンブリとして、クローラが設けられていることを特徴とする付記9に記載のエレベータ用の運行システム。
【0093】
(付記11)
前記付属アセンブリは、運行レール上を移動し、前記運行レールと付属アセンブリとの摩擦係数fは、0.4よりも大きいことを特徴とする付記5に記載のエレベータ用の運行システム。
【0094】
(付記12)
前記押圧アセンブリから付属アセンブリに与える圧力は、F/f以上であり、ここで、Fは、付属アセンブリと運行レールとの間の摩擦力であることを特徴とする付記8に記載のエレベータ用の運行システム。
【0095】
(付記13)
前記乗りかごの移動を停止させ、又は、移動速度を低下させる制動機構が設けられていることを特徴とする付記1に記載のエレベータ用の運行システム。
【0096】
(付記14)
運行レールと同一レールであるか、単独に設けられて且つ運行レールと交差しない制動レールが設けられていることを特徴とする付記13に記載のエレベータ用の運行システム。
【0097】
(付記15)
前記制動機構には、乗りかごに取り付けられた少なくとも1組のブレーキ装置が設けられ、前記ブレーキ装置は、動作時に運行レールをクランプし、前記乗りかごの正常動作時に、ブレーキ装置は、制動レールに接しないことを特徴とする付記13に記載のエレベータ用の運行システム。
【0098】
(付記16)
前記制動機構には、乗りかごに取り付けられた少なくとも1組のセルフロック装置が設けられ、前記ブレーキ装置が正常に動作しないか、又は乗りかごが移動しないとき、前記セルフロック装置は、制動レールをロックすることを特徴とする付記15に記載のエレベータ用の運行システム。
【0099】
(付記17)
前記制動レールには、少なくとも1つのロック部材が設けられ、前記セルフロック装置は、使用時にロック部材と協働して連結することを特徴とする付記16に記載のエレベータ用の運行システム。
【0100】
(付記18)
前記ブレーキ装置には挟持部が設けられ、前記乗りかごが正常に動作するとき、前記挟持部が制動レールを解放し、前記ブレーキ装置が動作するとき、前記挟持部が制動レールをクランプすることを特徴とする付記15に記載のエレベータ用の運行システム。
【0101】
(付記19)
前記駆動機構には、乗りかごのバランスを調整するための姿勢調整アセンブリが設けられていることを特徴とする付記1に記載のエレベータ用の運行システム。
【0102】
(付記20)
マルチカーエレベータ運行システムであって、複数の乗りかご及び少なくとも2つの運行レールが設けられ、前記運行レールのそれぞれが乗りかごの移動に用いられ、少なくとも1つの切替機構及び付記1~12のいずれか一つに記載の駆動機構が更に設けられ、前記乗りかごが駆動機構によって運行レールを移動し、異なる運行レールが切替機構によって接続され、前記乗りかごが切替機構によって異なる運行レールに切り替えられることを特徴とするマルチカーエレベータ運行システム。
【0103】
(付記21)
付記13~18のいずれか一つに記載の制動機構が設けられていることを特徴とする付記20に記載のマルチカーエレベータ運行システム。
【0104】
(付記22)
前記切替機構は、回転部と切替レールを含み、前記切替レールは、回転部の回転によって2つの運行レールと接続又は切り離されることを特徴とする付記20に記載のマルチカーエレベータ運行システム。
【符号の説明】
【0105】
1:運行レール、11:ガイドレール、12:ガイドレールブレーキ、13、斜歯形レール、2:乗りかごシステム、21:乗りかご、22:案内輪、23:箱体、24:架台、25:カウンタバランサ、3:ブレーキ装置、31:電動シリンダ、32:リンク、33:挟持部、33-1:取付座、33-2:第1挟持片、33-3:摩擦ブロック、33-4:第2挟持片、33-5:第1リンク、33-6:スライダ、33-7:第3リンク、33-8:第1ガイドベース、33-9:第2ガイドベース、4:セルフロック装置;41:セルフロック部材、42:第1連結ロッド、43:移動ブロック、44:第2連結ロッド、45:プッシュロッド、46:規制ピン、5:運行部材、51:油圧シリンダ、52:油圧ポンプ、53:モータ、54:減速機、55:圧力ロッド、56:油圧部材、6:リム、61:回転軸、7:切換レール、71:渡り線、8:プロセッサ、9:ブレーキレール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】