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特表2022-522823天然miRNAのゲノム編集による標的遺伝子発現の抑制
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】天然miRNAのゲノム編集による標的遺伝子発現の抑制
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220413BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220413BHJP
   A01H 6/82 20180101ALI20220413BHJP
   A01H 6/46 20180101ALI20220413BHJP
   A01H 6/20 20180101ALI20220413BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12N5/10
A01H6/82
A01H6/46
A01H6/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551967
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2020055028
(87)【国際公開番号】W WO2020178099
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/076722
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジュンタオ
(72)【発明者】
【氏名】シュ ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヤンフイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジチァン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シ
【テーマコード(参考)】
2B030
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD05
2B030CA19
2B030HA05
4B065AA88X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA41
(57)【要約】
本発明は、天然miRNAのゲノム編集によって標的遺伝子発現を低減又は抑制するための方法及び組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的遺伝子の発現を低減させる方法であって、
a)植物細胞中に、前記植物細胞の天然プレmiRNAをコードするゲノム部位における部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼを導入することと;
b)前記ゲノム部位において又は前記ゲノム部位の付近で少なくとも1つの二本鎖DNA切断を作ることと;
c)前記少なくとも1つの二本鎖切断が前記ゲノム部位を置き換える介在DNAで修復されている細胞を選択することと;
d)前記標的遺伝子の発現を低減させることと
を含み、ここで、前記介在DNAは、前記標的遺伝子に相補的なamiRNAコア配列を含む改変されたプレmiRNAをコードする、方法。
【請求項2】
前記標的遺伝子が、外因性標的遺伝子、より好ましくは、有害生物遺伝子、より好ましくは、ウイルス、菌又は微生物遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的遺伝子が、ブニヤウイルス(Bunyavirales)遺伝子、好ましくは、トスポウイルス(tospovirus)遺伝子、より好ましくは、トマト黄化えそウイルス(tomato spotted wilt virus)遺伝子である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記標的遺伝子が、内因性植物遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標的内因性植物遺伝子が、植物発育、生物的ストレス又は非生物的ストレスに関与する遺伝子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記植物細胞が、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリ細胞である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、トマト細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
天然プレmiRNAをコードする前記ゲノム部位が、天然トマトプレmiRNAをコードする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ゲノム部位が、配列番号6又は配列番号7を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記介在DNAが、配列番号1~5のいずれか1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、一倍体、二倍体、倍数体、又は六倍体のゲノムを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、前記改変されたプレmiRNAについてヘテロ接合性である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つ若しくは複数のガイド配列が、前記ヌクレアーゼと一緒に導入される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって得られる、植物細胞、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリ細胞、より好ましくは、トマト植物細胞。
【請求項16】
配列番号1~5のいずれか1つを含む、請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
配列番号8~17のいずれか1つを含む、請求項16に記載の細胞。
【請求項18】
植物の種子、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリの種子、より好ましくは、トマトの種子を生成する方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって得た植物細胞を含む植物を、それ自体と又は同じ作物の別の植物と交配することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
2019年2月26日に生成された、「81815_ST25.txt」と題される、37C.F.R.§1.821の下で提出された、47キロバイトのサイズのASCIIテキスト形式の配列表。この配列表は、その開示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、天然miRNAのゲノム編集によって標的遺伝子発現を低減又は抑制するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
不完全なヘアピンを含有するより長いRNA(プレmiRNA)から転写及びプロセシングされたマイクロRNA(miRNA)は、約20~24ヌクレオチドのRNAである。miRNAは、転写後様式でそのmRNA標的遺伝子の発現を正確に標的とし、低減させるか、若しくは抑制することができる(Yu et al.2017,New Phytol.Volume 216(4),pages 1002-1017;Gebert and MacRae 2019,Nature Reviews Molecular Cell Biology,volume 20,pages 21-37)。miRNAが媒介する遺伝子発現阻害は、短鎖干渉RNAによって誘発されるRNAiと比較して高度に特異的及び有効である。miRNAは、例えば、トランスジェニックアプローチによって病原体からの外因性RNAを標的とするために使用されてきた(例えば、国際公開第2010/123904号)が、それによって、人工miRNAは、異所的に過剰発現している。このアプローチは、効果的であり得る。しかし、植物の遺伝子形質転換に頼ることは、レシピエント植物の実用形質及び利点を保存する一方で、良好な発現レベルを示す事象を同定するのに多数の形質転換事象を必要とする。さらに、これらの事象は、遺伝子改変された生物(GMO)であると考えられ、これは商品化が禁止されているか、又は市場に到達するのにコストのかかる長期に亘る規制プロセスを経なければならない。
【発明の概要】
【0004】
結果的に、標的遺伝子発現をレギュレートするのにmiRNAの使用に頼る方法を改善することが必要とされている。
【0005】
本開示は、天然プレmiRNA中に埋め込まれた20~24ヌクレオチド長の天然miRNAコアを、標的遺伝子配列に由来し、且つ標的遺伝子配列に相補的であるように設計されたamiRNAコア配列で交換するゲノム編集を使用した新規な標的遺伝子サイレンシング方法を提供する。天然プレmiRNAの改変は、さらなる標的遺伝子転写物に特異的な代替の人工miRNAを生じさせ、それによって、新規な表現型、例えば、新規な有害生物、例えば、ウイルスに対する耐性を与える。
【0006】
本発明は、植物細胞中に、前記植物細胞の天然プレmiRNAをコードするゲノム部位における部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼを導入することと、前記ゲノム部位において又は前記ゲノム部位の付近で少なくとも1つの二本鎖切断を作ることと、前記少なくとも1つの二本鎖切断が前記ゲノム部位を置き換える介在DNAで修復されている細胞を選択することと、標的遺伝子の発現を低減させることとを含む、標的遺伝子の発現を低減させる方法を提供し、ここで、前記介在DNAは、前記標的遺伝子に相補的なamiRNAコア配列を含む改変されたプレmiRNAをコードする。
【0007】
他の利点の中で、異なる標的遺伝子に相補的となるように天然プレmiRNAを正確に及び特異的に再プログラムするゲノム編集技術に頼るこの方法は、方法を実行した後で植物ゲノム中に外来DNAが残存するのが限定的であるものから残存なしまでであるため、GMOフリーと見なすことができる植物の発生をもたらすことができる。
【0008】
この方法の別の利点は、同じ遺伝子座において1コピーの天然miRNA及び1コピーの改変/編集されたmiRNAを有する植物を生じさせる能力に頼っている。これは特に、ハイブリッド作物に関連し、これらは、天然mRNAのコピー及びその関連する生物学的機能を保持する一方で、目的の、異なる遺伝子を標的とする新たに改変されたmiRNAコピーを発現することができる。遺伝子形質転換に頼る従前のアプローチと比較したさらなる利点は、このように得られた編集された植物細胞が、1コピーの各miRNA(1コピーの天然miRNA及び1コピーのamiRNA)を担持し、一方、従来技術の方法によって得られる植物細胞が、2コピーのmiRNAの各バージョン(2コピーの天然miRNA及び2コピーのamiRNA)を担持するという事実にあり、これは、植物細胞代謝のためにより要求が厳しく、且つ植物の能力に潜在的に影響を与え得る。
【0009】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の方法に関し、ここで、標的遺伝子は、外因性標的遺伝子、より好ましくは、有害生物遺伝子、より好ましくは、ウイルス、菌(fungal)又は微生物遺伝子である。
【0010】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、標的遺伝子は、ブニヤウイルス(Bunyavirales)遺伝子、好ましくは、トスポウイルス(tospovirus)遺伝子、より好ましくは、トマト黄化えそウイルス(tomato spotted wilt virus)(TSWV)遺伝子である。
【0011】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、標的遺伝子は、内因性植物遺伝子である。
【0012】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、標的内因性植物遺伝子は、植物発育、生物的ストレス又は非生物的ストレスに関与する遺伝子である。
【0013】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記植物細胞は、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリ細胞である。さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記植物細胞は、トマト細胞である。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、天然プレmiRNAをコードする前記ゲノム部位は、天然トマトプレmiRNAをコードする。
【0015】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記ゲノム部位は、配列番号6又は配列番号7を含む。
【0016】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記介在DNAは、配列番号1~5のいずれか1つを含む。
【0017】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記細胞は、一倍体、二倍体、倍数体、又は六倍体のゲノムを有する。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記細胞は、改変されたプレmiRNAについてヘテロ接合性である。
【0020】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、1つ若しくは複数のガイド配列は、前記ヌクレアーゼと一緒に導入される。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明は、植物細胞、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリ細胞、より好ましくは、先行する実施形態のいずれか1つの方法によって得たトマト植物細胞に関する。
【0022】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の植物細胞に関し、ここで、前記細胞は、配列番号1~5のいずれか1つを含む。
【0023】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の植物細胞に関し、ここで、前記細胞は、配列番号8~17のいずれか1つを含む。
【0024】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法によって得た植物細胞を含む植物と、それ自体又は同じ作物の別の植物とを交配することを含む、植物の種子、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリの種子、より好ましくは、トマトの種子を生成する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】天然miRNAコアを、新規な標的遺伝子に相補的なamiRNAコアで交換することによる天然プレmiRNAの改変の図示を示す。
図2】異なる過剰発現されたウイルスamiRNAコア配列を有するベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物におけるTSWV耐性のレベルを示す。
図3】異なる過剰発現されたウイルスamiRNAコア配列を有するTSWV浸潤されたベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物の写真を示す。
図4】配列番号2のウイルスamiRNAコアで改変された異なる天然プレmiRNA配列を有するベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物におけるTSWV耐性のレベルを示す。
図5】ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物における過渡実験についてのバイナリーベクター17839(配列番号18)を示す。
図6】トマトSlmiR156b遺伝子(配列番号6)を変異させる、構成的prAtEF1aA1-02プロモーターによって駆動されるダイズコドン最適化Cas9、並びにprAtU6-01及びprSlU6によって駆動される2つの遺伝子特異的gRNAを伴うトマト形質転換のためのバイナリーベクター24598(配列番号19)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
配列番号1は、amiTSWV_N1w_PCのTSWV配列である(本発明の状況においてamiRNAコアとして使用される)。
配列番号2は、amiTSWV_N2_PCのTSWV配列である(本発明の状況においてamiRNAコアとして使用される)。
配列番号3は、amiTSWV_N2_PC_revのTSWV配列である(本発明の状況においてamiRNAコアとして使用される)。
配列番号4は、amiR159a_3p_N_GC35のTSWV配列である(本発明の状況においてamiRNAコアとして使用される)。
配列番号5は、amiR159a_3p_N_GC50のTSWV配列である(本発明の状況においてamiRNAコアとして使用される)。
配列番号6は、1kbのプロモーターを含む、miR156bのトマト配列である(本発明の状況においてプレmiRNAスキャフォールドとして使用される)。
配列番号7は、1kbのプロモーターを含む、miR1919bのトマト配列である(本発明の状況においてプレmiRNAスキャフォールドとして使用される)。
配列番号8~12は、配列番号6内に埋め込まれた、それぞれ、配列番号1、2、3、4又は5である。
配列番号13~17は、配列番号7内に埋め込まれた、それぞれ、配列番号1、2、3、4又は5である。
配列番号18は、バイナリーベクター17839のヌクレオチド配列である。
配列番号19は、バイナリーベクター24598のヌクレオチド配列である。
配列番号20及び21は、gRNA配列である。
配列番号22は、amiTSWV_N1w_PC_revのTSWV配列である(本発明の状況においてamiRNAコアとして使用される)。
配列番号23は、amiR159a_3p_N_GC35_revのTSWV配列である(本発明の状況においてamiRNAコアとして使用される)。
配列番号24は、amiR159a_3p_N_GC50のTSWV配列である(本発明の状況においてamiRNAコアとして使用される)。
【0027】
この説明は、本発明を実施することができる全ての異なる方法、又は本発明に追加することができる全ての特徴の詳細なカタログであることを意図するものではない。例えば、一実施形態に関連して示される特徴は、他の実施形態に組み込まれてもよく、特定の実施形態に関連して示される特徴は、その実施形態から削除されてもよい。加えて、本明細書で示唆される様々な実施形態に対する多数のバリエーション及び追加は、本開示に照らして当業者には明らかであり、本発明から逸脱するものではない。従って、以下の説明は、本発明のいくつかの特定の実施形態を例示することを意図しており、その全ての置換、組合せ、及びバリエーションを網羅的に特定することを意図していない。
【0028】
別途定義されない限り、本明細書に用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における本発明の説明において使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書に言及されている全ての出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0029】
以下の定義及び方法は、本発明をより良く定義し、本発明の実施において当業者を導くために提供される。特に断らない限り、本明細書で使用される用語は、関連技術における当業者による従来の使用に従って理解されるべきである。分子生物学における一般的用語の定義は、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,5th edition,Springer-Verlag:New York,1994にも見出すことができる。
【0030】
本発明の実施形態及び添付の特許請求の範囲の記載で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別段の明確な指示をしない限り、複数形も含むことが意図される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意の及び全ての可能な組合せを指し、包含する。
【0032】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、化合物の量、用量、時間、温度等の測定可能な値を指す場合、特定の量の20%、10%、5%、1%、0.5%、又はさらには0.1%の変動を包含することを意味する。
【0033】
「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、工程、操作、エレメント、及び/又は成分の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、エレメント、成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲が請求項に記載された特定の材料又は工程、並びに請求項に記載された発明の基本的且つ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを包含すると解釈されることを意味する。従って、用語「から本質的になる」は、本発明の請求項で使用される場合、「を含む」と同等であると解釈されることを意図しない。
【0035】
本明細書で使用される場合、「増幅された」という用語は、核酸分子の少なくとも1つを鋳型として使用する、核酸分子の複数のコピー又は核酸分子に相補的な複数のコピーの構築を意味する。例えば、Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications,D.H.Persing et al.,Ed.,American Society for Microbiology,Washington,D.C.(1993)を参照されたい。増幅の産物は、アンプリコンと呼ばれる。
【0036】
「コード配列」は、mRNA、rRNA、tRNA、snRNA、センスRNA又はアンチセンスRNA等のRNAに転写される核酸配列である。いくつかの実施形態では、RNAは、次いで、生物において翻訳されて、タンパク質を産生する。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語トランスジェニック「事象」は、異種DNA、例えば、1つ以上の目的の遺伝子(例えば、導入遺伝子)を含む発現カセットを有する単一の植物細胞の形質転換及び再生によって産生される組換え植物を指す。「事象」という用語は、異種DNAを含む形質転換体の元の形質転換体及び/又は子孫を指す。「事象」という用語はまた、形質転換体と別の系統との間の性的異系交配によって産生される子孫を指す。反復親に対して戻し交配を繰り返した後でも、挿入されたDNAと形質転換された親からの隣接するDNAは、同じ染色体上の位置で交配の子孫に存在する。通常、植物組織の形質転換は複数の事象を生じ、事象の各々は、植物細胞のゲノムの異なる位置へのDNA構築物の挿入を表している。導入遺伝子の発現又は他の望ましい特徴に基づいて、特定の事象が選択される。従って、本明細書で使用される「事象MIR604」、「MIR604」又は「MIR604事象」は、MIR604形質転換体の元のMIR604形質転換体及び/又は子孫を意味する(米国特許第7,361,813号明細書、第7,897,748号明細書、第8,354,519号明細書、及び第8,884,102号明細書、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0038】
本明細書で使用される「発現カセット」は、適切な宿主細胞における特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができる核酸分子を意味し、目的のヌクレオチド配列(典型的には、コード領域)に作動可能に連結されたプロモーターを含み、これは終結シグナルに作動可能に連結されている。発現カセットはまた、典型的には、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含む。コード領域は、通常、目的のタンパク質をコードするが、目的の機能性RNA、例えばアンチセンスRNA、又は翻訳されないRNAも、センス又はアンチセンス方向にコードしてもよい。発現カセットはまた、目的のヌクレオチド配列の直接発現に必要ではないが、発現ベクターからカセットを除去するための便利な制限部位のために存在する配列を含んでもよい。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであり得、これは、その成分の少なくとも1つが、その他の成分の少なくとも1つに関して異種であることを意味する。発現カセットはまた、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で得られたものであってもよい。しかしながら、典型的には、発現カセットは、宿主に対して異種であり、即ち、発現カセットの特定の核酸配列は、宿主細胞内に天然には存在せず、当技術方法で既知の形質転換プロセスによって宿主細胞又は宿主細胞の祖先に導入されていなければならない。発現カセット内のヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーターの制御下にあってもよいし、又は宿主細胞が何らかの特定の外部刺激にさらされたときにのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあってもよい。植物等の多細胞生物の場合、プロモーターはまた、特定の組織、又は器官、又は発育段階に特異的であり得る。発現カセット又はその断片はまた、植物に形質転換される場合、「挿入された配列」又は「挿入配列」と称され得る。
【0039】
「遺伝子」は、ゲノム内に位置し、前述のコード核酸配列に加えて、コード部分の発現、即ち転写及び翻訳の制御に関与する他の主に調節性の核酸配列を含む、規定された領域である。遺伝子は、コード領域及び非コード領域(例えば、イントロン、調節エレメント、プロモーター、エンハンサー、終結配列、並びに5’及び3’非翻訳領域)の両方を含み得る。遺伝子は、典型的には、mRNA、機能性RNA、又は調節配列を含む特定のタンパク質を発現する。遺伝子は、機能的タンパク質を産生するために使用され得るか、又はされ得ない。いくつかの実施形態では、遺伝子は、コード領域のみを指す。「天然遺伝子」という用語は、天然に見出されるような遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」という用語は、1)天然では、共存して見出されない調節配列及びコード配列を含むDNA配列、又は2)天然には隣接していないタンパク質の一部をコードする配列、又は3)天然には隣接していないプロモーターの一部を含む任意の遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列を含むか、又は同じ供給源に由来するが、天然に見出されるものとは異なる様式で配置される調節配列及びコード配列を含み得る。遺伝子は、「単離」されてもよく、これは天然の状態で核酸分子と関連して通常見出される成分を実質的に又は本質的に含まない核酸分子を意味する。このような成分としては、他の細胞材料、組換え産生由来の培養培地、及び/又は核酸分子を化学的に合成する際に使用される種々の化学物質が挙げられる。
【0040】
ポリヌクレオチドコード配列の「発現する」又は「発現」という用語は、配列が転写され、任意に翻訳されることを意味する。
【0041】
「目的の遺伝子」、「目的のヌクレオチド配列」、又は「目的の配列」は、植物に移入された場合に、抗生物質耐性、ウイルス耐性、昆虫耐性、疾病耐性、又は他の害虫に対する耐性、除草剤耐性、栄養価の改善、工業プロセスにおける性能の改善、又は生殖能力の変化等の所望の特徴を植物に付与する任意の遺伝子を指す。「目的の遺伝子」はまた、植物において商業的に価値のある酵素又は代謝産物を産生するために植物に移入されるものであってもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「外因性」は、それが導入される宿主細胞と天然に関連しない核酸分子又はヌクレオチド配列を指し、これは、別の種に由来するか、又は同じ種若しくは生物に由来するが、その元の形態又は細胞内で主に発現される形態から改変されている(天然に存在する核酸配列の天然に存在しない複数のコピーを含む)。従って、ヌクレオチド配列が導入される細胞のものとは異なる生物又は種に由来するヌクレオチド配列は、その細胞及び細胞の子孫に関して異種である。加えて、異種ヌクレオチド配列は、同じ天然の元の細胞型に由来し、挿入されるが、非天然の状態で存在する(例えば、異なるコピー数で存在する)、及び/又は核酸分子の天然の状態で見出されるものとは異なる調節配列の制御下に存在する、ヌクレオチド配列を含む。核酸配列はまた、例えば、発現ベクターのような核酸構築物において、それが関連し得る他の核酸配列に対して異種であり得る。非限定的な一例として、プロモーターは、その特定のプロモーターと関連して天然には存在しない、即ち、プロモーターに対して異種の1つ以上の調節エレメント及び/又はコード配列と組み合わせて、核酸構築物中に存在し得る。
【0043】
「相同」核酸配列は、それが導入される宿主細胞に天然に関連する核酸配列である。相同核酸配列はまた、例えば核酸構築物中に存在し得る他の核酸配列と天然に関連する核酸配列であり得る。非限定的な一例として、プロモーターは、その特定のプロモーターと関連して天然に存在する、即ち、プロモーターと相同の1つ以上の調節エレメント及び/又はコード配列と組み合わせて、核酸構築物中に存在し得る。
【0044】
「作動可能に連結された」は、一方の機能が他方の機能に影響を及ぼすような、単一の核酸配列上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列又は機能性RNAの発現に影響を及ぼすことができる場合(即ち、コード配列又は機能性RNAがプロモーターの転写制御下にある場合)、そのコード配列又は機能性RNAと作動可能に連結されている。センス又はアンチセンス配向におけるコード配列は、調節配列に作動可能に連結され得る。従って、ヌクレオチド配列と作動可能に関連する調節配列又は制御配列(例えば、プロモーター)は、ヌクレオチド配列の発現に影響を及ぼすことができる。例えば、GFPをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターは、そのGFPヌクレオチド配列の発現に影響を及ぼすことができる。
【0045】
制御配列は、それらがその発現を指示するように機能する限り、目的のヌクレオチド配列と連続している必要はない。従って、例えば、介在する非翻訳であるが転写された配列は、プロモーターとコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列は、依然としてコード配列に「作動可能に連結されている」と考えることができる。
【0046】
本明細書で使用される「プライマー」は、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的標的DNA鎖にアニールされて、プライマーと標的DNA鎖との間にハイブリッドを形成し、次いで、DNAポリメラーゼのようなポリメラーゼによって標的DNA鎖に沿って伸長される単離された核酸である。プライマー対又はセットは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は他の核酸増幅方法による核酸分子の増幅のために使用され得る。
【0047】
「プローブ」は、標的核酸分子の一部に相補的であり、典型的には、標的核酸分子を検出及び/又は定量するために使用される、単離された核酸分子である。従って、いくつかの実施形態では、プローブは、検出可能な部分又はレポーター分子(例えば、放射性同位体、リガンド、化学発光剤、蛍光剤又は酵素)が結合している単離された核酸分子であり得る。本発明によるプローブは、デオキシリボ核酸又はリボ核酸だけでなく、標的核酸配列に特異的に結合し、その標的核酸配列の存在を検出し及び/又はその量を定量するために使用することができるポリアミド及び他のプローブ材料も含むことができる。
【0048】
TaqManプローブは、特定のプライマーセットによって増幅されたDNA領域内でアニールするように設計される。Taqポリメラーゼがプライマーを伸長し、新生鎖を一本鎖鋳型から相補鎖の3’から5’を合成すると、ポリメラーゼの5’から3’のエキソヌクレアーゼは、プローブを介して新生鎖を伸長し、その結果、鋳型にアニールしたプローブを分解する。プローブの分解は、それからフルオロフォアを放出し、クエンチャーへの近接を破壊し、従って、クエンチング効果を軽減し、フルオロフォアの蛍光を可能にする。従って、定量的PCRサーマルサイクラーで検出される蛍光は、放出されるフルオロフォア及びPCRに存在するDNA鋳型の量に正比例する。
【0049】
プライマー及びプローブは、一般に、5~100ヌクレオチド又はそれを超える長さである。いくつかの実施形態では、プライマー及びプローブは、少なくとも20ヌクレオチド以上の長さ、又は少なくとも25ヌクレオチド以上、又は少なくとも30ヌクレオチド以上の長さであり得る。このようなプライマー及びプローブは、当技術分野で既知の最適なハイブリダイゼーション条件下で標的配列に特異的にハイブリダイズする。本発明によるプライマー及びプローブは、標的配列と完全な配列相補性を有し得るが、標的配列とは異なり、標的配列にハイブリダイズする能力を保持するプローブは、本発明による従来の方法によって設計され得る。
【0050】
プローブ及びプライマーを調製及び使用する方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,ed.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989に記載されている。PCR-プライマー対は、例えば、その目的のために意図されるコンピュータープログラムを使用することによって、既知の配列から誘導され得る。
【0051】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNAの特定の断片を「増幅」するための技術である。PCRを行うためには、複製されるDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部が既知でなければならない。一般に、増幅されるDNA(既知の配列)の各鎖の3’末端のヌクレオチド配列に相補的(例えば、実質的に相補的又は完全に相補的)なプライマー又は短いオリゴヌクレオチドが使用される。DNAサンプルを加熱してその鎖を分離し、プライマーと混合する。プライマーは、DNAサンプル中のそれらの相補的配列にハイブリダイズする。元のDNA鎖を鋳型として使用して合成が開始する(5’から3’方向)。反応混合物は、4つ全てのデオキシヌクレオチド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)及びDNAポリメラーゼを含有しなければならない。重合は、新たに合成された各鎖が他のプライマーによって認識される配列を含むのに十分に進行するまで続く。これが起こると、元の分子と同一である2つのDNA分子が生成される。これらの2つの分子は、それらの鎖を分離するために加熱され、このプロセスが繰り返される。各サイクルでDNA分子の数が2倍になる。自動化された装置を用いて、複製の各サイクルを5分未満で完了することができる。30サイクル後、DNAの単一分子として開始したものは、10億を超えるコピーに増幅されている(230=1.02×109)。
【0052】
オリゴヌクレオチドプライマー対のオリゴヌクレオチドは、反対のDNA鎖上に位置し、増幅されるべき領域に隣接するDNA配列に相補的である。アニーリングされたプライマーは、新たに合成されたDNA鎖にハイブリダイズする。最初の増幅サイクルは、その5’末端がオリゴヌクレオチドプライマーの位置によって固定されるが、その3’末端が可変である(不規則な(ragged)3’末端)2つの新しいDNA鎖を生じる。2つの新しい鎖は、次に、所望の長さの相補鎖の合成のための鋳型として働くことができる(5’末端はプライマーによって規定され、合成は、対向するプライマーの末端を越えて進行することができないため、3’末端は固定される)。数サイクル後、所望の固定長の産物が優勢になり始める。
【0053】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応とも称される定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)は、PCR反応からのDNA産物の蓄積をリアルタイムでモニターする。qPCRは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく分子生物学の実験室技術であり、標的DNA分子を増幅し、同時に定量するために使用される。特異的配列の1コピーでさえ、PCRにおいて増幅及び検出することができる。PCR反応は、DNA鋳型のコピーを指数関数的に生成する。これは、出発標的配列の量と任意の特定のサイクルで蓄積されたPCR産物の量との間の定量的関係を生じる。鋳型、試薬制限又はピロリン酸分子の蓄積で見出されるポリメラーゼ反応の阻害剤のために、PCR反応は、最終的に、指数関数的速度(即ち、プラトー相)で鋳型を生成するのを停止し、PCR産物の終点定量を信頼できないものにする。従って、重複反応は、可変量のPCR産物を生成し得る。PCR反応の指数関数相の間のみ、鋳型配列の開始量を決定するために外挿し戻すことが可能である。PCR産物が蓄積するときのPCR産物の測定(即ち、リアルタイム定量PCR)は、反応の指数関数相における定量を可能にし、従って、従来のPCRに関連する変動性を除去する。リアルタイムPCRアッセイにおいて、陽性反応は、蛍光シグナルの蓄積によって検出される。DNAサンプル中の1つ以上の特異的配列について、定量的PCRは、検出及び定量の両方を可能にする。この量は、コピーの絶対数、又はDNAインプットに対して正規化された場合の相対量、又はさらなる正規化遺伝子のいずれかであり得る。リアルタイムPCRの最初の記録以来、それは、mRNA発現研究、ゲノム又はウイルスDNAにおけるDNAコピー数測定、対立遺伝子識別アッセイ、遺伝子の特異的スプライスバリアントの発現分析、並びにパラフィン包埋組織及びレーザー捕獲顕微解剖細胞における遺伝子発現を含む、増大する及び多様な数の応用に使用されてきた。
【0054】
本明細書で使用される場合、「Ct値」という表現は、「閾値サイクル」を指し、これは、「増幅された標的の量が固定閾値に達する分数サイクル数」と定義される。いくつかの実施形態では、これは、増幅曲線と閾値線との交点を表す。増幅曲線は、典型的には、所与のサイクル(X軸)での各反応の相対蛍光(Y軸)の変化を示す「S」字形であり、これは、いくつかの実施形態では、リアルタイムPCR機器によってPCR中に記録される。閾値線は、いくつかの実施形態では、反応がバックグラウンドを超える蛍光強度に達する検出のレベルである。Livak & Schmittgen(2001)25 Methods 402-408を参照されたい。これは、PCRにおける標的の濃度の相対的尺度である。一般に、qPCRのような定量アッセイのための良好なCt値は、いくつかの実施形態では、所与の参照遺伝子について10~40の範囲である。Ctレベルは、サンプル中の標的核酸の量に反比例する(即ち、Ctレベルが低いほど、サンプル中の検出可能な標的核酸の量が多い)。加えて、qPCRのような定量アッセイについての良好なCt値は、標的gDNAの比例希釈で線形応答範囲を示す。
【0055】
いくつかの実施形態では、qPCRは、Ct値が定量分析のためにリアルタイムで収集され得る条件下で行われる。例えば、典型的なqPCR実験において、DNA増幅は、伸長段階の間のPCRの各サイクルでモニターされる。DNAが増幅の対数線形相にある場合、蛍光の量は、一般にバックグラウンドを超えて増加する。いくつかの実施形態では、Ct値は、この時点で収集される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「細胞」という用語は、任意の生細胞を指す。細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。細胞は、単離することができる。細胞は、生物に再生することができてもできなくてもよい。細胞は、組織、カルス、培養物、器官、又は部分の状態であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、植物細胞であってもよい。本発明の植物細胞は、単離された単一細胞の形態であり得るか、又は培養された細胞であり得るか、又は例えば植物組織若しくは植物器官のようなより高度に組織化された単位の一部であり得る。植物細胞は、被子植物若しくは裸子植物に由来し得るか、又はその一部であり得る。さらなる実施形態では、植物細胞は、単子葉植物細胞、双子葉植物細胞であってもよい。単子葉植物細胞は、例えば、トウモロコシ、イネ、モロコシ、サトウキビ、大麦、小麦、カラス麦、芝草、又は観賞用草細胞であり得る。双子葉植物細胞は、例えば、タバコ、コショウ、ナス、ヒマワリ、アブラナ科、アマ、ジャガイモ、綿、大豆、テンサイ、又はアブラナ細胞であってもよい。
【0057】
「植物部分」という用語は、限定されるものではないが、本明細書で使用される場合、胚、花粉、胚珠、種子、葉、茎、苗条、花、枝、果実、穀粒、穂(ear)、穂軸(cob)、殻、柄、根、根端、葯、植物細胞を含み、植物細胞は、植物及び/又は植物の一部、植物プロトプラスト、植物組織、植物細胞組織培養物、植物カルス、植物塊等において無傷である植物細胞を含む。本明細書で使用される場合、「苗条」は、葉及び茎を含む地上部分を指す。さらに、本明細書で使用される場合、「植物細胞」は、細胞壁を含み、プロトプラストとも称され得る、植物の構造的及び生理的単位を指す。
【0058】
細胞、原核細胞、細菌細胞、真核細胞、植物細胞、植物及び/又は植物部分の状況における「導入している」又は「導入する」という用語は、核酸分子が細胞、真核細胞、植物細胞、並びに/又は植物及び/若しくは植物部分の細胞の内部に接近するように、核酸分子を細胞、真核細胞、植物、植物部分及び/又は植物細胞と接触させることを意味する。2つ以上の核酸分子が導入される場合、これらの核酸分子は、単一のポリヌクレオチド若しくは核酸構築物の一部として、又は別個のポリヌクレオチド若しくは核酸構築物として組み立てられ得、同じ又は異なる核酸構築物上に位置し得る。従って、これらのポリヌクレオチドは、単一の形質転換事象において、別々の形質転換事象において、又は例えば従来の交配を介した繁殖プロトコルの一部として、植物細胞に導入され得る。
【0059】
「逆位」は、染色体のセグメントが端から端まで反転する染色体再配置である。逆位は、単一の染色体が破損を経て自己内で再配置されると起こる。染色体の「転座」は、非相同染色体間での部分の再配置である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「形質転換された」及び「遺伝子導入」という用語は、少なくとも1つの組換え(例えば、異種)ポリヌクレオチドの全部又は一部を含有する任意の細胞、原核細胞、真核細胞、植物、植物細胞、カルス、植物組織、又は植物部分を指す。いくつかの実施形態では、組換えポリヌクレオチドの全部又は一部は、染色体又は安定な染色体外エレメントに安定的に統合され、その結果、連続した世代に渡される。本発明の目的のために、「組換えポリヌクレオチド」という用語は、遺伝子工学によって変更され、再配置され、又は改変されたポリヌクレオチドを指す。例としては、異種配列に結合又は連結された任意のクローン化ポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドが挙げられる。「組換え」という用語は、自然発生的変異のような天然に存在する事象から、又は非自然発生的変異誘発に続く選択的繁殖から生じるポリヌクレオチドの変化を指すものではない。
【0061】
本明細書で使用される「形質転換」という用語は、異種核酸の細胞への導入を指す。細胞の形質転換は、安定的であっても一過性であってもよい。従って、本発明の遺伝子導入細胞、植物細胞、植物及び/又は植物部分は、安定的に形質転換され得るか、又は一過性に形質転換され得る。形質転換は、宿主細胞のゲノムへの核酸分子の転移を指し得、遺伝的に安定な継承をもたらす。いくつかの実施形態では、植物、植物部分及び/又は植物細胞への導入は、細菌媒介形質転換、粒子衝撃形質転換、リン酸カルシウム媒介形質転換、シクロデキストリン媒介形質転換、エレクトロポレーション、リポソーム媒介形質転換、ナノ粒子媒介形質転換、ポリマー媒介形質転換、ウイルス媒介核酸送達、ウィスカー媒介核酸送達、マイクロインジェクション、超音波処理、浸潤、ポリエチレングリコール媒介形質転換、プロトプラスト形質転換、又は植物、植物部分及び/若しくはその細胞への核酸の導入をもたらす任意の他の電気的、化学的、物理的及び/若しくは生物学的メカニズム、又はそれらの任意の組合せを介する。
【0062】
植物を形質転換するための手順は、当技術分野で周知且つ日常的であり、文献を通して記載される。植物の形質転換のための方法の非限定的な例としては、細菌媒介核酸送達(例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属からの細菌を介する)、ウイルス媒介核酸送達、炭化ケイ素又は核酸ウィスカー媒介核酸送達、リポソーム媒介核酸送達、マイクロインジェクション、マイクロ粒子衝撃、リン酸カルシウム媒介形質転換、シクロデキストリン媒介形質転換、エレクトロポレーション、ナノ粒子媒介形質転換、超音波処理、浸潤、PEG媒介核酸取り込み、並びに植物細胞への核酸の導入をもたらす任意の他の電気的、化学的、物理的(機械的)及び/又は生物学的メカニズム(これらの任意の組み合わせを含む)を介する形質転換が挙げられる。当技術分野で既知の種々の植物形質転換法への一般的なガイドとしては、Miki et al.(“Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants”in Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology,Glick,B.R.and Thompson,J.E.,Eds.(CRC Press,Inc.,Boca Raton,1993),pages 67-88)及びRakowoczy-Trojanowska(Cell Mol Biol Lett 7:849-858(2002))が挙げられる。
【0063】
アグロバクテリウム媒介形質転換は、形質転換の高い効率のため、及び多くの異なる種とのその広範な有用性のために、植物を形質転換するために一般に使用される方法である。アグロバクテリウム媒介形質転換は、典型的には、目的の外来DNAを担持するバイナリーベクターを、共存するTiプラスミド上又は染色体上のいずれかで宿主アグロバクテリウム(Agrobacterium)株によって担持されるvir遺伝子の補体に依存し得る適切なアグロバクテリウム(Agrobacterium)株に導入することを含む(Uknes et al.1993,Plant Cell 5:159-169)。組換えバイナリーベクターのアグロバクテリウム(Agrobacterium)への導入は、組換えバイナリーベクターを担持する大腸菌(Escherichia coli)、組換えバイナリーベクターを標的アグロバクテリウム(Agrobacterium)株に動員することができるプラスミドを担持するヘルパー大腸菌(E.coli)株を用いる三親交配手順によって達成することができる。或いは、組換えバイナリーベクターは、核酸形質転換によってアグロバクテリウム(Agrobacterium)に導入され得る(Hoefgen and Willmitzer 1988,Nucleic Acids Res 16:9877)。
【0064】
組換えアグロバクテリウム(Agrobacterium)による植物の形質転換は、通常、植物からの外植片とのアグロバクテリウム(Agrobacterium)の共培養を含み、当技術分野で周知の方法に従う。形質転換された組織は、典型的には、バイナリープラスミドT-DNA境界の間に抗生物質又は除草剤耐性マーカーを保有する選択培地上で再生される。トマト植物を形質転換するための例示的な方法は、Garcia D.,Narvaez-Vasquez J.,Orozco-Cardenas M.L.(2015)Tomato(Solanum lycopersicum).In:Wang K.(eds)Agrobacterium Protocols.Methods in Molecular Biology,vol 1223.Springer,New York,NYに開示されている。
【0065】
植物、植物部分及び植物細胞を形質転換するための別の方法は、植物組織及び細胞において不活性又は生物学的に活性な粒子を推進することを含む。例えば、米国特許第4,945,050号明細書、同第5,036,006号明細書及び同第5,100,792号明細書を参照されたい。一般に、この方法は、細胞の外表面に浸透し、その内部に組み込むのに有効な条件下で、植物細胞において不活性又は生物学的に活性な粒子を推進することを含む。不活性粒子が利用される場合、ベクターは、目的の核酸を含むベクターで粒子をコーティングすることによって、細胞に導入され得る。或いは、1つ以上の細胞をベクターによって取り囲むことができ、その結果、ベクターは、粒子の伴流によって細胞内に運ばれる。生物学的に活性な粒子(例えば、各々が導入されることが求められる1つ以上の核酸を含む、乾燥酵母細胞、乾燥細菌又はバクテリオファージ)もまた、植物組織中に推進され得る。
【0066】
ポリヌクレオチドの状況における「一過性形質転換」は、ポリヌクレオチドが細胞に導入され、細胞のゲノムに統合されないことを意味する。
【0067】
本明細書で使用される場合、細胞に導入されるポリヌクレオチドの状況において、「安定的に導入する」、「安定的に導入される」、「安定な形質転換」、又は「安定的に形質転換される」は、導入されたポリヌクレオチドが細胞のゲノムに安定的に統合され、従って、細胞がポリヌクレオチドで安定的に形質転換されていることを意味する。従って、統合されたポリヌクレオチドは、その子孫によって、より詳細には、複数の連続した世代の子孫によって遺伝され得る。本明細書で使用される「ゲノム」は、核及び/又は色素体ゲノムを含み、従って、例えば、葉緑体ゲノムへのポリヌクレオチドの統合を含む。本明細書で使用される安定な形質転換はまた、染色体外に維持されるポリヌクレオチド(例えば、ミニ染色体)を指す。
【0068】
一過性の形質転換は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又はウェスタンブロットによって検出され得、これは、生物に導入された1つ以上の核酸分子によってコードされるペプチド又はポリペプチドの存在を検出し得る。細胞の安定な形質転換は、例えば、生物(例えば、植物)に導入された核酸分子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列を用いた細胞のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出され得る。細胞の安定な形質転換は、例えば、植物又は他の生物に導入された核酸分子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列を用いた細胞のRNAのノーザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出することができる。細胞の安定な形質転換はまた、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は当技術分野で周知の他の増幅反応によって検出することができ、核酸分子の標的配列とハイブリダイズする特異的プライマー配列を使用し、標的配列の増幅をもたらし、これは、標準的な方法に従って検出され得る。形質転換はまた、当技術分野で周知の直接配列決定及び/又はハイブリダイゼーションプロトコルによって検出することができる。
【0069】
従って、本発明の特定の実施形態において、植物細胞は、当技術分野で既知の任意の方法によって、また本明細書に記載されるように、形質転換され得、無傷の植物は、種々の既知の技術のいずれかを使用して、これらの形質転換細胞から再生され得る。植物細胞、植物組織培養物及び/又は培養プロトプラストからの植物再生は、例えば、Evans et al.(Handbook of Plant Cell Cultures,Vol.1,MacMilan Publishing Co.New York(1983));及びVasil I.R.(ed.)(Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Acad.Press,Orlando,Vol.I(1984),and Vol.II(1986))に記載されている。形質転換された遺伝子導入植物、植物細胞、及び/又は植物組織培養物を選択する方法は、当技術分野で慣用的であり、本明細書に提供される本発明の方法において使用され得る。
【0070】
「形質転換及び再生プロセス」は、植物細胞に導入遺伝子を安定的に導入し、遺伝子導入植物細胞から植物を再生するプロセスを指す。本明細書で使用される場合、形質転換及び再生は、形質転換された細胞が選択剤の存在下で生存し、発達的に繁殖するように、導入遺伝子が選択マーカーを含み、形質転換された細胞が導入遺伝子を組み込んで発現する選択プロセスを含む。「再生」は、植物細胞、植物細胞の群、又は植物片、例えばプロトプラスト、カルス、又は組織部分から植物全体を成長させることを指す。
【0071】
「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸配列」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において、ヌクレオチドのヘテロポリマーを指すために互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば、化学的に合成された)DNA又はRNA、並びにRNA及びDNAのキメラを含むRNA及びDNAの両方を包含する。核酸分子という用語は、鎖の長さに関係なくヌクレオチドの鎖を指す。ヌクレオチドは、糖、リン酸、及びプリン又はピリミジンのいずれかである塩基を含む。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸分子は、センス鎖又はアンチセンス鎖であり得る。核酸分子は、オリゴヌクレオチド類似体又は誘導体(例えば、イノシン又はホスホロチオエートヌクレオチド)を用いて合成することができる。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、変化した塩基対合能力又はヌクレアーゼに対する増大した耐性を有する核酸分子を調製するために使用され得る。本明細書に提供される核酸配列は、左から右への5’から3’方向に提示され、米国配列規則、37 CFR§§1.821-1.825及び世界知的所有権機関(WIPO)規格ST.25に記載されているヌクレオチド文字を表すための標準コードを使用して表される。
【0072】
「核酸断片」は、所与の核酸分子の断片である。「RNA断片」は、所与のRNA分子の断片である。「DNA断片」は、所与のDNA分子の断片である。「核酸断片」は、所与の核酸分子の断片であり、分子から単離されていない。「RNA断片」は、所与のRNA分子の断片であり、分子から単離されていない。「DNA断片」は、所与のDNA分子の断片であり、分子から単離されていない。ポリヌクレオチドのセグメントは、任意の長さ、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、300又は500以上のヌクレオチド長であり得る。ガイド配列のセグメント又は部分は、ガイド配列の約50%、40%、30%、20%、10%、例えば、ガイド配列の3分の1以下、例えば、7、6、5、4、3、又は2ヌクレオチド長であり得る。
【0073】
分子の状況における「に由来する」という用語は、親分子又はその親分子からの情報を使用して単離又は作製された分子を指す。例えば、Cas9単一変異体ニッカーゼ及びCas9二重変異体ヌル-ヌクレアーゼは、各々、野生型Cas9タンパク質に由来する。
【0074】
高等植物において、デオキシリボ核酸(DNA)は遺伝物質であり、一方、リボ核酸(RNA)は、DNA内に含まれる情報のタンパク質への転移に関与する。「ゲノム」は、生物の各細胞に含まれる遺伝物質の全体である。他に示されない限り、本発明の特定の核酸配列はまた、その保存的に改変されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列並びに明示的に示される配列を暗黙に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換される配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。核酸分子という用語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に使用される。
【0075】
本明細書で使用される「配列同一性」は、成分(例えば、ヌクレオチド又はアミノ酸)のアライメントのウィンドウ全体にわたって、2つの最適に整列されたポリヌクレオチド又はペプチド配列が不変である程度を指す。「同一性」は、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.)Oxford University Press,New York(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,New York(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,New Jersey(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987);及びSequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.)Stockton Press,New York(1991)に記載されているものを含むがこれらに限定されない、既知の方法によって容易に計算することができる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「配列同一性パーセント」又は「同一性パーセント」という用語は、2つの配列が最適に整列される場合の試験(「対象」)ポリヌクレオチド分子(又はその相補鎖)と比較した、参照(「問い合わせ」)ポリヌクレオチド分子(又はその相補鎖)の線状ポリヌクレオチド配列中の同一ヌクレオチドの百分率を指す。いくつかの実施形態では、「同一性パーセント」は、アミノ酸配列中の同一アミノ酸の百分率を指すことができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「実質的に同一」という表現は、2つの核酸分子、ヌクレオチド配列又はタンパク質配列の状況において、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、又は目視検査によって測定して、最大対応について比較及び整列された場合に、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%のヌクレオチド又はアミノ酸残基の同一性を有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。本発明のいくつかの実施形態では、実質的な同一性は、長さが少なくとも約50残基~約150残基である配列の領域にわたって存在する。従って、本発明のいくつかの実施形態では、実質的な同一性は、長さが少なくとも約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140、約150、又はそれを超える残基である配列の領域にわたって存在する。いくつかの特定の実施形態では、配列は、少なくとも約150残基にわたって実質的に同一である。さらなる実施形態では、配列は、コード領域の全長にわたって実質的に同一である。さらに、代表的な実施形態では、実質的に同一のヌクレオチド又はタンパク質配列は、実質的に同じ機能を行う(例えば、特定のゲノム標的への誘導、特定のゲノム標的部位のエンドヌクレアーゼ切断)。
【0078】
配列比較のために、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブ配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0079】
比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアライメントは、当業者に周知であり、Smith及びWatermanの局所相同性アルゴリズム、Needleman及びWunschの相同性アライメントアルゴリズム、Pearson及びLipmanの類似性方法の検索等のツールによって、及び任意に、GCG(登録商標)Wisconsin Package(登録商標)(Accelrys Inc.、San Diego、CA)の一部として入手可能なGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA等のこれらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって、実施することができる。試験配列及び参照配列の整列されたセグメントについての「同一性分数」は、2つの整列された配列によって共有される同一の成分の数を、参照配列セグメント(即ち、参照配列全体又は参照配列のより小さい規定された部分)中の成分の総数で割ったものである。配列同一性パーセントは、同一性分数に100を掛けたものとして表される。1つ以上のポリヌクレオチド配列の比較は、全長ポリヌクレオチド配列若しくはその一部、又はより長いポリヌクレオチド配列に対するものであり得る。本発明の目的のために、「同一性パーセント」はまた、翻訳されたヌクレオチド配列については、BLASTXバージョン2.0を使用し、ポリヌクレオチド配列については、BLASTNバージョン2.0を使用して決定され得る。
【0080】
BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を同定することを含み、これは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列された場合に、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致するか、又は満たす。Tは、近傍ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.、1990)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するための種として作用する。次いで、ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加され得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(1対のマッチング残基に対する報酬スコア;常に>0)及びN(ミスマッチング残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの延長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下し、累積スコアが1つ以上の負のスコアリング残基アライメントの累積のためにゼロ以下になるか、又はいずれかの配列の末端に到達した場合に、停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、及びXは、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
【0081】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸配列は、試験ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との比較における最小合計確率が約0.1未満~約0.001未満である場合、参照配列に類似すると考えられる。従って、本発明のいくつかの実施形態では、試験ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との比較における最小合計確率は、約0.001未満である。
【0082】
2つのヌクレオチド配列はまた、2つの配列がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズする場合、実質的に同一であると考えられ得る。いくつかの代表的な実施形態では、実質的に同一であると考えられる2つのヌクレオチド配列は、高度にストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズする。
【0083】
核酸ハイブリダイゼーション実験、例えばサザン及びノーザンハイブリダイゼーションの状況における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」及び「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、異なる環境パラメーターの下で異なっている。核酸のハイブリダイゼーションの広範な指針は、Tijssen Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”Elsevier,New York(1993)に見出される。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、規定されたイオン強度及びpHにおける特異的配列についての熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。
【0084】
mとは、標的配列の50%が完全に一致するプローブとハイブリダイズする(規定のイオン強度及びpHの下での)温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブについてのTmに等しくなるように選択される。サザン又はノーザンブロットにおいてフィルター上に100を超える相補的残基を有する相補的ヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、42℃での50%ホルムアミドと1mgのヘパリンであり、ハイブリダイゼーションは、一晩行われる。高度にストリンジェントな洗浄条件の例は、72℃で約15分間、0.1 5M NaClである。ストリンジェントな洗浄条件の例は、65℃で15分間の0.2x SSC洗浄である(SSC緩衝液の記載については、下記のSambrookを参照されたい)。しばしば、バックグラウンドプローブシグナルを除去するために、高ストリンジェンシー洗浄の前に、低ストリンジェンシー洗浄が行われる。例えば、100ヌクレオチドを超える二重鎖についての中程度のストリンジェンシー洗浄の例は、45℃で15分間の1x SSCである。例えば、100ヌクレオチドを超える二重鎖についての低ストリンジェンシー洗浄の例は、40℃で15分間の4~6x SSCである。短いプローブ(例えば、約10~50ヌクレオチド)の場合、ストリンジェントな条件は、典型的には、約1.0M未満のNaイオンの塩濃度、典型的には、pH7.0~8.3で約0.01~1.0MのNaイオン濃度(又は他の塩)を含み、温度は、典型的には、少なくとも約30℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミド等の不安定化剤の添加によっても達成することができる。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて無関係なプローブについて観察されるものよりも2倍(又はそれよりも高い)のシグナル対ノイズ比は、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしないヌクレオチド配列は、それらがコードするタンパク質が実質的に同一である場合、なお実質的に同一である。これは、例えば、ヌクレオチド配列のコピーが遺伝暗号によって許容される最大コドン縮重を用いて作製される場合に起こり得る。
【0085】
以下は、本発明の参照ヌクレオチド配列と実質的に同一である相同ヌクレオチド配列をクローニングするために使用され得るハイブリダイゼーション/洗浄条件のセットの例である。一実施形態では、参照ヌクレオチド配列は、50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、50℃で2X SSC、0.1% SDS中で洗浄する。別の実施形態では、参照ヌクレオチド配列は、50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、50℃で1X SSC、0.1% SDS中で洗浄し、又は50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、50℃で0.5X SSC、0.1% SDS中で洗浄する。なおさらなる実施形態では、参照ヌクレオチド配列は、50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、50℃で0.1X SSC、0.1% SDS中で洗浄し、又は50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、65℃で0.1X SSC、0.1% SDS中で洗浄する。
【0086】
「単離された」核酸分子若しくはヌクレオチド配列又は「単離された」ポリペプチドは、ヒトの手によって、その天然の環境とは別に存在し、及び/又はその天然の環境におけるその機能と比較して異なる、改変された、調節された、及び/又は変更された機能を有し、従って天然の産物ではない、核酸分子、ヌクレオチド配列又はポリペプチドである。単離された核酸分子又は単離されたポリペプチドは、精製された形態で存在し得るか、又は非天然環境(例えば、組換え宿主細胞)において存在し得る。従って、例えば、ポリヌクレオチドに関して、単離されるという用語は、それが天然に存在する染色体及び/又は細胞から分離されることを意味する。ポリヌクレオチドはまた、それが天然に存在する染色体及び/又は細胞から分離され、次いで遺伝的状況、染色体、染色体位置、及び/又はそれが天然に存在しない細胞に挿入される場合、単離される。本発明の組換え核酸分子及びヌクレオチド配列は、上記で定義したように「単離された」と考えることができる。
【0087】
従って、「単離された核酸分子」又は「単離されたヌクレオチド配列」は、それが由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて、それが直接隣接している(5’末端に1つ、3’末端に1つ)ヌクレオチド配列に対して直接隣接していない核酸分子又はヌクレオチド配列である。従って、一実施形態では、単離された核酸は、コード配列に直接隣接する5’非コード(例えば、プロモーター)配列のいくつか又は全てを含む。従って、この用語は、例えば、ベクター、自律複製プラスミド若しくはウイルス、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれるか、又は他の配列とは無関係に別個の分子(例えば、PCR又は制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生されるcDNA又はゲノムDNA断片)として存在する組換え核酸を含む。それはまた、さらなるポリペプチド又はペプチド配列をコードするハイブリッド核酸分子の一部である組換え核酸を含む。「単離された核酸分子」又は「単離されたヌクレオチド配列」はまた、同じ天然の元の細胞型に由来し、挿入されるが、非天然の状態で存在する、例えば異なるコピー数で存在する、及び/又は核酸分子の天然の状態で見出されるものとは異なる調節配列の制御下で存在する、ヌクレオチド配列を含み得る。
【0088】
「単離された」という用語は、さらに、細胞物質、ウイルス物質、及び/又は培養培地を実質的に含まない核酸分子、ヌクレオチド配列、ポリペプチド、ペプチド、又は断片(例えば、組換えDNA技術によって生成された場合)、又は化学的前駆体若しくは他の化学物質(例えば、化学的に合成された場合)を指すことができる。さらに、「単離された断片」は、断片として天然には存在せず、そのようなものとして天然の状態では見出されない核酸分子、ヌクレオチド配列、又はポリペプチドの断片である。「単離された」は、調製物が技術的に純粋(均質)であることを必ずしも意味しないが、意図された目的のために使用することができる形態でポリペプチド又は核酸を提供するのに十分に純粋である。
【0089】
本発明の代表的な実施形態では、「単離された」核酸分子、ヌクレオチド配列、及び/又はポリペプチドは、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%(w/w)又はそれを超える純度である。他の実施形態では、「単離された」核酸、ヌクレオチド配列、及び/又はポリペプチドは、出発物質と比較して、核酸(w/w)の少なくとも約5倍、10倍、25倍、100倍、1000倍、10,000倍、100,000倍又はそれを超える濃縮が達成されていることを示す。
【0090】
「野生型」ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、天然に存在する(「天然」)又は内因性のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を指す。従って、例えば、「野生型mRNA」は、生物内に天然に存在する、又は生物に内因性のmRNAである。「相同」ヌクレオチド配列は、それが導入される宿主細胞に天然に関連するヌクレオチド配列である。
【0091】
「オープンリーディングフレーム」及び「ORF」という用語は、コード配列の翻訳開始コドンと終結コドンとの間にコードされるアミノ酸配列を指す。「開始コドン」及び「終結コドン」という用語は、各々、タンパク質合成(mRNA翻訳)の開始及び連鎖終結を指定するコード配列中の3つの隣接するヌクレオチド(「コドン」)の単位を指す。
【0092】
「プロモーター」は、通常そのコード配列の上流(5’)にあるヌクレオチド配列を指し、これはRNAポリメラーゼ及び適切な転写に必要な他の因子に対する認識を提供することによってコード配列の発現を制御する。「プロモーター調節配列」は、近位及びより遠位の上流エレメントから成る。プロモーター調節配列は、関連するコード配列の転写、RNAプロセシング又は安定性、又は翻訳に影響を及ぼす。調節配列には、エンハンサー、プロモーター、非翻訳リーダー配列、イントロン、及びポリアデニル化シグナル配列が含まれる。これらには、天然及び合成配列、並びに天然及び合成配列の組み合わせであり得る配列が含まれる。「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激し得るDNA配列であり、プロモーターの生得的エレメント、又はプロモーターのレベル若しくは組織特異性を高めるために挿入された異種エレメントであり得る。エンハンサーは、両方の配向(通常又は反転)で作動することができ、プロモーターから上流又は下流のいずれかに移動させても機能することができる。「プロモーター」という用語の意味は、「プロモーター調節配列」を含む。
【0093】
「一次形質転換体」及び「E0世代」は、最初に形質転換された(即ち、形質転換から減数分裂及び受精を経ていない)組織と同じ遺伝的世代である遺伝子導入植物を指す。「二次形質転換体」及び「E1、E2、E3等の世代」は、1つ以上の減数分裂及び受精サイクルを経て一次形質転換体に由来する遺伝子導入植物を指す。これらは、一次若しくは二次形質転換体の自家受精、又は一次若しくは二次形質転換体と他の形質転換された若しくは形質転換されていない植物との交配によって誘導され得る。
【0094】
「導入遺伝子」は、形質転換によってゲノムに導入され、安定的に維持されている核酸分子を指す。導入遺伝子は、少なくとも1つの発現カセットを含んでもよく、典型的には、少なくとも2つの発現カセットを含み、10以上の発現カセットを含んでもよい。導入遺伝子には、例えば、形質転換される特定の植物の遺伝子と異種又は同種の遺伝子が含まれ得る。さらに、導入遺伝子には、非天然生物に挿入された天然遺伝子、又はキメラ遺伝子が含まれ得る。「内因性遺伝子」という用語は、生物のゲノム中の天然位置にある天然遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物には通常見られないが、遺伝子導入によって生物に導入される遺伝子を指す。
【0095】
「イントロン」は、ほとんど真核生物の遺伝子内にのみ存在するが、遺伝子産物中のアミノ酸配列には翻訳されないDNAの介在区分を指す。イントロンは、スプライシングと呼ばれるプロセスを経て未熟なmRNAから除去され、スプライシングは、エキソンをそのままに残してmRNAを形成する。本発明の目的のために、「イントロン」という用語の定義は、標的遺伝子に由来するイントロンのヌクレオチド配列に対する改変を含むが、但し、改変されたイントロンは、その関連する5’調節配列の活性を有意に低下させないことを条件とする。
【0096】
「エキソン」は、タンパク質又はその一部のコード配列を有するDNAの部分を指す。エキソンは、介在する非コード配列(イントロン)によって分離されている。本発明の目的のために、「エキソン」という用語の定義は、標的遺伝子に由来するエキソンのヌクレオチド配列に対する改変を含むが、但し、改変されたエキソンは、その関連する5’調節配列の活性を有意に低下させないことを条件とする。
【0097】
「切断」又は「切断している」という用語は、ポリヌクレオチドのリボシルホスホジエステルバックボーンにおける共有結合ホスホジエステル結合の切断を意味する。「切断」又は「切断している」という用語は、一本鎖切断及び二本鎖切断の両方を包含する。二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として起こり得る。切断は、平滑末端又は互い違いの末端のいずれかの生成をもたらすことができる。「ヌクレアーゼ切断部位」又は「ゲノムヌクレアーゼ切断部位」は、特定のヌクレアーゼによって認識されるヌクレアーゼ切断配列を含むヌクレオチドの領域であり、これは、一方又は両方の鎖においてゲノムDNAのヌクレオチド配列を切断するように作用する。ヌクレアーゼ酵素によるこのような切断は、細胞内でDNA修復機構を開始させ、それが相同組換えを起こすための環境を確立する。
【0098】
「ドナー分子」、又は「ドナー配列」は、標的ポリヌクレオチド、典型的には標的ゲノム部位での挿入を意図したヌクレオチドポリマー又はオリゴマーである。ドナー配列は、1つ以上の導入遺伝子、発現カセット、又は目的のヌクレオチド配列であってよい。ドナー分子は、一本鎖、部分的二本鎖、又は二本鎖のいずれかのドナーDNA分子であり得る。ドナーポリヌクレオチドは、天然又は改変ポリヌクレオチド、RNA-DNAキメラ、又はDNA断片(一本鎖又は少なくとも部分的に二本鎖、又は完全に二本鎖のDNA分子のいずれか)、又はPGR増幅ssDNA又は少なくとも部分的にdsDNA断片であり得る。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、環状化DNA分子の一部である。dsDNA断片は一般にssDNAよりもヌクレアーゼ分解に対して耐性があるので、完全二本鎖ドナーDNAは、安定性の増加をもたらし得るため有利である。いくつかの実施形態では、ドナーポリヌクレオチド分子は、少なくとも約100、150、200、250、300、250、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、7500、10000、15,000又は20,000ヌクレオチドを含むことができる(本明細書に明示的に列挙されていないこの範囲内の任意の値を含む)。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、異種核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、少なくとも1つの発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、少なくとも1つの発現カセットを含む導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、標的ゲノムに対して天然である遺伝子の対立遺伝子改変を含む。対立遺伝子改変は、少なくとも1つのヌクレオチド挿入、少なくとも1つのヌクレオチド欠失、及び/又は少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み得る。いくつかの実施形態では、対立遺伝子改変は、INDELを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、標的ゲノム部位に対する相同アームを含む。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、ゲノム核酸配列と少なくとも90%同一である少なくとも100個の連続したヌクレオチドを含み、任意に導入遺伝子等の異種核酸配列をさらに含み得る。一部の実施形態では、「ドナーDNA分子」は、「介在DNA」である。
【0099】
本明細書で使用される場合、本発明の1つ以上のヌクレオチド配列に関連した用語「近位」又は「の近位」は、すぐ隣、又は約1塩基~約2000塩基(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、100、200、250、300、350、400、450、500、750、1000、1500、又は2000塩基)(この範囲内に含まれるが本明細書に明示的に列挙されない任意の値を含む)分離されていることを意味する。
【0100】
「マイクロRNA」(miRNAと略される)は、RNAサイレンシング及び遺伝子発現の転写後レギュレーションにおいて機能する、植物、動物及びいくつかのウイルスにおいて見出される小さな非コードRNA分子(約20~約24ヌクレオチド、一般に、約22ヌクレオチドを含有する)である。miRNA遺伝子は通常、RNAポリメラーゼII(PolII)によって転写される。ポリメラーゼは、プレmiRNAのヘアピンループとなるものをコードするDNA配列の近くで見出されるプロモーターに結合することが多い。このように得られた転写産物は、5’末端において特別に改変されたヌクレオチドでキャップされ、複数のアデノシン(ポリAテール)でポリアデニル化され、スプライスされる。
【0101】
「プレmiRNA」は、5’キャップ及び3’ポリAが除去されたステムループ構造を有するmiRNA前駆体である。それは、miRNAの産生を助ける天然の構造である。時々、この用語は、成熟miRNA(約20~約24ヌクレオチド、一般に、約22ヌクレオチド配列)と区別するために使用される。このように、これは最終の機能的な短い配列ではなく、構造を意味する。用語「miRNAスキャフォールド」又は「miRNA骨格」は、プレmiRNA構造を指すために本発明の状況において等しく使用される。
【0102】
本明細書において使用する場合、用語「amiRNA」(人工miRNA)は一般に、天然のmiRNAスキャフォールドを指し、そのコア配列(成熟miRNA配列及び対応するmiRNA*配列)が「amiRNAコア」配列で置換されており、ターゲティング(サイレンシング)を新規な遺伝子に向かって方向付け直す。用語「amiRNAコア」は、このアプローチの人工的な(設計された)部分である新規な標的遺伝子に相補的な約20~24ヌクレオチドの短い配列を指す。この文脈において、相補的という用語は、標的RNA分子を結合するamiRNAの能力を指す。一部の実施形態では、amiRNAコアは、新規な標的遺伝子分子に対して90%相補的であり、標的RNA分子を結合するその能力を保持する。
【0103】
本明細書で使用される場合、用語「ガイドRNA」又は「gRNA」は、一般に、Cas又はCpf1タンパク質のようなCRISPRシステムエフェクターに結合し、Cas又はCpf1タンパク質を標的ポリヌクレオチド(例えば、DNA)内の特定の位置に標的化することを補助し得るRNA分子(又は集合的にRNA分子の群)を指す。本発明のガイドRNAは、操作された単一RNA分子(sgRNA)であり得、ここで、例えば、sgRNAは、crRNAセグメント及び任意にtracrRNAセグメントを含む。本発明のガイドRNAはまた、デュアルガイドシステムであり得、ここで、crRNA及びtracrRNA分子は、物理的に異なる分子であり、次いで、相互作用して、Cas9のようなCRISPRシステムエフェクターの動員のため、及び標的ポリヌクレオチドへのそのタンパク質の標的化のための二重鎖を形成する。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「crRNA」又は「crRNAセグメント」は、ポリヌクレオチド標的化ガイド配列、タンパク質結合に関与するステム配列、及び任意に3’-オーバーハング配列を含むRNA分子又はRNA分子の部分を指す。ポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、標的DNA中の配列に相補的な核酸配列である。このポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、「プロトスペーサー」とも称される。換言すれば、本発明のcrRNA分子のポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、ハイブリダイゼーション(即ち、塩基対合)を介して配列特異的方法で標的DNAと相互作用する。従って、crRNA分子のポリヌクレオチド標的化ガイド配列のヌクレオチド配列は、様々であり、DNAガイドRNAと標的DNAが相互作用するであろう標的DNA内の位置を決定し得る。
【0105】
crRNA分子のポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、改変されて(例えば、遺伝子操作により)、標的DNA内の任意の所望の配列にハイブリダイズすることができる。本発明のcrRNA分子のポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、約12ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、約12ヌクレオチド(nt)~約80nt、約12nt~約50nt、約12nt~約40nt、約12nt~約30nt、約12nt~約25nt、約12nt~約20nt、又は約12nt~約19ntの長さを有し得る。例えば、本発明のcrRNAのDNA標的化セグメントは、約17nt~約27ntの長さを有し得る。例えば、crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、約19nt~約20nt、約19nt~約25nt、約19nt~約30nt、約19nt~約35nt、約19nt~約40nt、約19nt~約45nt、約19nt~約50nt、約19nt~約60nt、約19nt~約70nt、約19nt~約80nt、約19nt~約90nt、約19nt~約100nt、約20nt~約25nt、約20nt~約30nt、約20nt~約35nt、約20nt~約40nt、約20nt~約45nt、約20nt~約50nt、約20nt~約60nt、約20nt~約70nt、約20nt~約80nt、約20nt~約90nt、又は約20nt~約100ntの長さを有し得る。crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列のヌクレオチド配列は、少なくとも約12ntの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、19ヌクレオチド長である。
【0106】
本発明はまた、操作されたcrRNAを含むガイドRNAを提供し、ここで、crRNAは、ゲノム標的配列にハイブリダイズすることができるベイトRNAセグメントを含む。この操作されたcrRNAは、デュアルガイドシステムにおけるように、物理的に異なる分子であり得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「tracrRNA」又は「tracrRNAセグメント」は、タンパク質結合セグメントを含むRNA分子又はその部分を指す(例えば、タンパク質結合セグメントは、Cas9等のCRISPR関連タンパク質と相互作用することができる)。本発明はまた、操作されたtracrRNAを含むガイドRNAを提供し、ここで、tracrRNAは、ドナーDNA分子に結合することができるベイトRNAセグメントをさらに含む。操作されたtracrRNAは、デュアルガイドシステムにおけるように、物理的に異なる分子であってもよく、又はsgRNA分子のセグメントであってもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、sgRNAとして、又は2つ以上のRNA分子としてのいずれかで、いくつかのCRISPR関連ヌクレアーゼ、例えばCpf1(Cas12aとしても公知)が、そのRNA媒介エンドヌクレアーゼ活性のためにtracrRNAを必要としないことが当技術分野で公知であるように、tracrRNAを含まない(Qi et al.,2013,Cell,152:1173-1183;Zetsche et al.,2015,Cell 163:759-771)。本発明のこのようなガイドRNAは、crRNAを含み得、ベイトRNAがcrRNAの5’又は3’末端で作動可能に連結されている。Cpf1はまた、その同族プレcrRNAに対してRNase活性を有する(Fonfara et al.,2016,Nature,doi.org/10.1038/nature17945)。本発明のガイドRNAは、Cpf1が成熟crRNAに対してプロセシングする複数のcrRNAを含み得る。いくつかの実施形態では、これらのcrRNAの各々は、ベイトRNAに作動可能に連結される。他の実施形態では、これらのcrRNAの少なくとも1つは、ベイトRNAに作動可能に連結される。ベイトRNAは、目的の配列(SOI)に特異的であってもよく、又は、本明細書の実施例に記載されるように、標的ゲノム部位に特異的であってもよい。
【0109】
本発明はまた、本発明のガイドRNAをコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。この核酸分子は、DNA又はRNA分子であり得る。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、環状化されている。他の実施形態では、この核酸分子は、線状である。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、一本鎖、部分二本鎖、又は二本鎖である。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、少なくとも1つのポリペプチドと複合体化される。ポリペプチドは、核酸認識ドメイン又は核酸結合ドメインを有し得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、例えば、本発明のキメラRNA、ヌクレアーゼ、及び任意にドナー分子の送達を媒介するためのシャトルである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、Feldanシャトル(米国特許出願公開第20160298078号明細書、参照により本明細書に組み込まれる)である。核酸分子は、キメラRNAの発現を駆動することができる発現カセットを含み得る。核酸分子は、例えば、CRISPR関連ヌクレアーゼ等のヌクレアーゼを発現することができる追加の発現カセットをさらに含んでもよい。本発明はまた、本発明のキメラRNAをコードする核酸配列を含む発現カセットを提供する。
【0110】
「部位特異的改変ポリペプチド」は、標的DNA(例えば、標的DNAの切断又はメチル化)及び/又は標的DNAに関連するポリペプチド(例えば、ヒストン尾部のメチル化又はアセチル化)を改変する。部位特異的改変ポリペプチドは、本明細書では、「部位特異的ポリペプチド」又は「RNA結合部位特異的改変ポリペプチド」とも称される。部位特異的改変ポリペプチドは、単一RNA分子又は少なくとも2つのRNA分子のRNA二重鎖のいずれかであり、且つガイドRNAとの関係により、DNA配列(例えば、染色体配列又は染色体外配列、例えば、エピソーム配列、ミニサークル配列、ミトコンドリア配列、葉緑体配列等)に導かれるガイドRNAと相互作用する。
【0111】
いくつかの場合、部位特異的改変ポリペプチドは、天然に存在する改変ポリペプチドである。他の場合、部位特異的改変ポリペプチドは、天然に存在しないポリペプチド(例えば、キメラポリペプチド又は改変された、例えば、変異、削除、挿入された天然に存在するポリペプチド)である。例示的な天然に存在する部位特異的改変ポリペプチドは、当技術分野で既知である(例えば、Makarova et al.,2017,Cell 168:328-328.e1,及びShmakov et al.,2017,Nat Rev Microbiol 15(3):169-182参照、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。これらの天然に存在するポリペプチドは、DNA標的化RNAに結合し、それにより標的DNA内の特異的配列に誘導され、標的DNAを切断して二本鎖切断を生成する。
【0112】
部位特異的改変ポリペプチドは、2つの部分、RNA結合部分及び活性部分を含む。いくつかの実施形態では、部位特異的改変ポリペプチドは、以下を含む:(i)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部分、ここでDNA標的化RNAは、標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む;及び(ii)部位特異的酵素活性(例えば、DNAメチル化についての活性、DNA切断についての活性、ヒストンアセチル化についての活性、ヒストンメチル化についての活性等)を示す活性部分、ここで酵素活性の部位は、DNA標的化RNAによって決定される。他の実施形態では、部位特異的改変ポリペプチドは、以下を含む:(i)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部分、ここでDNA標的化RNAは、標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む;及び(ii)標的DNA内の転写を調節する(例えば、転写を増加又は低下させるために)活性部分、ここで標的DNA内の調節される転写の部位は、DNA標的化RNAによって決定される。
【0113】
いくつかの場合、部位特異的改変ポリペプチドは、標的DNAを改変する酵素活性(例えば、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性又はグリコシラーゼ活性)を有する。他の場合、部位特異的改変ポリペプチドは、標的DNAに関連したポリペプチド(例えば、ヒストン)を改変する酵素活性(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性又は脱ミリストイル化活性)を有する。
【0114】
場合によって、異なる部位特異的改変ポリペプチド、例えば、異なるCas9タンパク質(すなわち、様々な種からのCas9タンパク質)は、異なるCas9タンパク質の様々な酵素学的性質(例えば、異なるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列選好のため;増加若しくは減少した酵素活性のため;増加若しくは減少したレベルの細胞毒性のため;NHEJ、相同組換え修復、一本鎖切断、二本鎖切断の間のバランスを変化させるなど)を十分に利用するために本発明の様々な提供する方法において使用するのに有利であり得る。様々な種からのCas9タンパク質(例えば、Shmakov et al.,2017に開示されているもの、又はそれに由来するポリペプチド)は、標的DNAにおける異なるPAM配列を必要とし得る。従って、選択される特定のCas9酵素について、PAM配列の要件は、Cas9活性に必要であるとして既知の5’-N GG-3’配列(ここでNは、A、T、C、又はGのいずれかである)とは異なり得る。非常に様々な種からの多数のCas9オルソログが本明細書で特定されており、タンパク質は、僅かな同一のアミノ酸を共有する。特定された全Cas9オルソログは同じドメイン構造(architecture)を有し、中央HNHエンドヌクレアーゼドメイン及び分割RuvC/RNaseHドメインを有する。Cas9タンパク質は、保存された構造を有する4つの重要なモチーフを共有する;モチーフ1、2、及び4は、RuvC様モチーフである一方、モチーフ3はHNH-モチーフである。
【0115】
部位特異的改変ポリペプチドはまた、キメラ及び改変Cas9ヌクレアーゼであり得る。例えば、部位特異的改変ポリペプチドは、改変されたCas9「塩基エディタ」であり得る。塩基の編集により、DNA切断又はドナーDNA分子を必要とすることなく、プログラム可能な方法で、1つの標的DNA塩基を別の塩基に直接且つ不可逆的に変換することが可能となる。例えば、Komor et al(2016,Nature,533:420-424)は、Cas9-シチジンデアミナーゼ融合を教示し、ここでCas9も、不活性であり、二本鎖DNA切断を誘導しないように操作されている。加えて、Gaudelli et al(2017,Nature,doi:10.1038/nature24644)は、tRNAアデノシンデアミナーゼに融合した触媒的に障害されたCas9を教示し、これは標的DNA配列におけるA/TからG/Cへの変換を媒介し得る。本発明の方法及び組成物において部位特異的改変ポリペプチドとして作用し得る操作されたCas9ヌクレアーゼの別のクラスは、NG、GAA及びGATを含む幅広いPAM配列を認識できるバリアントである(Hu et al.,2018,Nature,doi:10.1038/nature26155)。
【0116】
天然に存在するもの、及び/又は天然に存在するCas9タンパク質から変異し若しくは改変されたものを含む任意のCas9タンパク質は、本発明の方法及び組成物において部位特異的改変ポリペプチドとして使用することができる。触媒的に活性なCas9ヌクレアーゼは、標的DNAを切断して二本鎖切断を生じる。これらの切断は、次いで、2つの方法:非相同末端連結及び相同組換え修復の1つで、細胞により修復される。
【0117】
非相同末端連結(NHEJ)では、二本鎖切断は、切断された末端を互いに直接連結することによって修復される。従って、新たな核酸材料は部位に挿入されないが、いくつかの核酸材料は損失し、欠失がもたらされる場合がある。相同組換え修復では、切断された標的DNA配列に対する相同性を有するドナーDNA分子又は介在DNAが、切断された標的DNA配列の修復のための鋳型として使用され、ドナーポリヌクレオチドから標的DNAへの遺伝情報の移動がもたらされる。従って、新たな核酸材料が部位内に挿入/コピーされ得る。いくつかの場合、標的DNAは、ドナー分子、例えばドナーDNA分子又は介在DNA分子と接触する。いくつかの場合、ドナーDNA分子又は介在DNA分子は、細胞内に導入される。いくつかの場合、少なくともドナーDNA分子又は介在DNA分子のセグメントが、細胞のゲノムに統合される。
【0118】
NHEJ及び/又は相同組換え修復による標的DNAの改変は、例えば、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、遺伝子変異等をもたらす。従って、部位特異的改変ポリペプチドによるDNAの切断を用いて、標的DNA配列を切断し、外因的に提供されるドナーポリヌクレオチドの非存在下で、細胞が配列を修復することを可能にすることによって、標的DNA配列から核酸材料を削除することができる(例えば、細胞を感染に感受性にする遺伝子(例えば、T細胞をHIV感染に感受性にするCCR5又はCXCR4遺伝子)を破壊するため、ニューロンにおける疾病の原因となるトリヌクレオチドリピート配列を除去するため、研究において疾病モデルとして遺伝子ノックアウト及び変異を作製するため、等)。従って、主題の方法を用いて、標的DNAにおける遺伝子をノックアウトし(転写又は変更された転写の完全な欠如をもたらす)又は遺伝子材料を選択された遺伝子座にノックインすることができる。或いは、DNA標的化RNA二重鎖及び部位特異的改変ポリペプチドが、標的DNA配列に対する相同性を有する少なくとも1つのセグメントを含むドナー分子を有する細胞に共投与された場合、主題の方法を用いて、核酸材料を標的DNA配列に追加、即ち挿入又は置換え(例えば、タンパク質をコードする核酸、siRNA、miRNA等を「ノックイン」するために)、タグ(例えば、6xHis、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質;黄色蛍光タンパク質等)、ヘマグルチニン(HA)、FLAG等)を追加し、制御配列を遺伝子(例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム進入配列(IRES)、2Aペプチド、開始コドン、終結コドン、スプライスシグナル、局在化シグナル等)に追加し、核酸配列を改変(例えば、変異を導入)、等することができる。従って、DNA標的化RNA二重鎖及び部位特異的改変ポリペプチドを含む複合体は、例えば、例えば疾病を処置するための遺伝子治療において使用される、又は抗ウイルス、抗病原、若しくは抗癌治療として使用される、農業における遺伝子改変された生物の生成、治療的、診断若しくは研究目的のための細胞によるタンパク質の大規模生産、iPS細胞の誘導、生物学的研究、削除又は置換のための病原体の遺伝子の標的化等において使用される、部位特異的な方法、即ち「標的化された」方法、例えば遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、遺伝子編集、遺伝子タグ付け等においてDNAを改変することが望ましい、任意のインビトロ又はインビボ適用に有用である。
【0119】
「CRISPR関連タンパク質」、「Casタンパク質」、「CRISPR関連ヌクレアーゼ」又は「Casヌクレアーゼ」という用語は、野生型Casタンパク質、その断片、又はその突然変異体若しくは変異体を指す。「Cas突然変異体」又は「Cas変異体」という用語は、野生型Casタンパク質のタンパク質又はポリペプチド誘導体、例えば、1つ以上の点変異、挿入、欠失、切断、融合タンパク質、又はそれらの組合せを有するタンパク質を指す。特定の実施形態では、Cas突然変異体又はCas変異体は、植物由来の核局在化シグナル(NLS)に作動可能に連結された本明細書に記載のCas9変異体等のCasタンパク質のヌクレアーゼ活性を実質的に保持する。特定の実施形態では、Casヌクレアーゼは、1つ又は両方のヌクレアーゼドメインが不活性であるように突然変異され、例えば、dCas9と称される触媒的に死んだCas9等であり、これは、依然として特定のゲノム位置を標的とすることができるが、エンドヌクレアーゼ活性を有さない(Qi et al.,2013,Cell,152:1173-1183、本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、その野生型対応物のヌクレアーゼ活性の一部又は全てを欠くように突然変異される。Casタンパク質は、Cas9、Cpf1(Zetsche et al.,2015,Cell,163:759-771、本明細書に組み込まれる)又は任意の別のCRISPR関連ヌクレアーゼであってもよい。
【0120】
細菌、例えば、高度好熱菌(Thermus thermophilus)からのアルゴノートタンパク質はまた、CRISPR/Cas9と同様の様式でゲノム編集として使用することができる。Cas9と同様に、アルゴノートタンパク質は、侵害的なゲノムを分解するガイドとしてオリゴヌクレオチドを使用すると考えられる。これらのガイド及び高度好熱菌(Thermus thermophilus)アルゴノートタンパク質の複合体は、高温(75摂氏温度)にて相補的DNA鎖を切断する。国際公開第2014/189628号は、この系をゲノム編集のために使用することができる1つの方法を記載している。さらなる例は、国際公開第2014/189628号、国際公開第2016/161375号、及び国際公開第2016/166268号を含む。
【0121】
本発明は、植物細胞中に、前記植物細胞の天然プレmiRNAをコードするゲノム部位における部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼを導入することと、前記ゲノム部位において又は前記ゲノム部位の付近で少なくとも1つの二本鎖切断を作ることと、前記少なくとも1つの二本鎖切断が前記ゲノム部位を置き換える介在DNAで修復されている細胞を選択することと、標的遺伝子の発現を低減させることとを含む、標的遺伝子の発現を低減させる方法を提供し、ここで、前記介在DNAは、前記標的遺伝子に相補的なamiRNAコア配列を含む改変されたプレmiRNAをコードする。
【0122】
ゲノム部位は、本発明の方法によって改変されている、植物細胞の天然プレmiRNAをコードする。介在DNAは、植物細胞の天然プレmiRNAをコードするゲノム部位と同一であるが、天然miRNAコア配列が新規な標的遺伝子に相補的なamiRNAコア配列で置き換えられている一片のDNAである。介在DNAは、植物細胞中にヌクレアーゼと一緒に導入される。
【0123】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれかの方法に関し、ここで、天然プレmiRNAをコードするゲノム部位における部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼは、前記ゲノム部位配列において1つの二本鎖切断を作る。
【0124】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の方法に関し、ここで、天然プレmiRNAをコードするゲノム部位における部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼは、前記ゲノム部位の付近で、好ましくは、前記ゲノム部位の上流又は下流の2kb以内で1つの二本鎖切断を作る。
【0125】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の方法に関し、ここで、天然プレmiRNAをコードするゲノム部位における部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼは、前記ゲノム部位の付近で、好ましくは、前記ゲノム部位の上流又は下流の500ヌクレオチド以内で1つの二本鎖切断を作る。
【0126】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の方法に関し、ここで、天然プレmiRNAをコードするゲノム部位における部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼは、前記ゲノム部位の上流又は下流の100ヌクレオチド以内で1つの二本鎖切断を作る。
【0127】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の方法に関し、ここで、前記植物細胞の天然プレmiRNAをコードするゲノム部位における部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼは、前記ゲノム部位において又は前記ゲノム部位の付近で少なくとも2つの二本鎖切断を作る。
【0128】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の方法に関し、ここで、標的遺伝子は、外因性標的遺伝子、より好ましくは、有害生物遺伝子、より好ましくは、ウイルス、菌又は微生物遺伝子である。
【0129】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれかの方法に関し、ここで、標的遺伝子は、害虫遺伝子又は線虫有害生物遺伝子である。
【0130】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、標的遺伝子は、ブニヤウイルス(Bunyavirales)遺伝子、好ましくは、トスポウイルス(tospovirus)遺伝子、より好ましくは、トマト黄化えそウイルス(tomato spotted wilt virus)(TSWV)遺伝子である。
【0131】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、標的遺伝子は、内因性植物遺伝子である。
【0132】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、標的内因性植物遺伝子は、植物発育、生物的ストレス又は非生物的ストレスに関与する遺伝子である。
【0133】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記植物細胞は、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリ細胞である。さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記植物細胞は、トマト細胞である。
【0134】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、天然プレmiRNAをコードする前記ゲノム部位は、天然トマトプレmiRNAをコードする。
【0135】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記ゲノム部位は、配列番号6又は配列番号7を含む。
【0136】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記ゲノム部位は、配列番号6又は配列番号7からなる。
【0137】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記ゲノム部位は、SlmiR156b又はSlmiR1919b遺伝子をコードする。
【0138】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、介在DNAは、配列番号1~5のいずれか1つを含む。
【0139】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、介在DNAは、配列番号22~24のいずれか1つを含む。
【0140】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、介在DNAは、配列番号8~17のいずれか1つを含む。
【0141】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される。
【0142】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記細胞は、一倍体、二倍体、倍数体、又は六倍体のゲノムを有する。
【0143】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記細胞は、改変されたプレmiRNAについてヘテロ接合性である。
【0144】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記細胞は、1コピーの改変されたプレmiRNA及び1コピーの天然プレmiRNAを有する。
【0145】
本発明の状況において、1コピーの改変されたプレmiRNAを含む一倍体植物細胞は、例えば、育成経過及び種子生産のための方法において有用性を有する。
【0146】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法によって得られる植物細胞を含む植物と、それ自体又は同じ作物の別の植物とを交配することを含む、植物の種子、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリの種子、より好ましくは、トマトの種子を生成する方法に関する。
【0147】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、前記方法は、1つ若しくは複数のガイド配列の使用をさらに含む。さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、1つ若しくは複数のガイド配列は、前記ヌクレアーゼと一緒に細胞中に導入される。さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法に関し、ここで、1つ若しくは複数のガイド配列は、標的ゲノム部位に由来する。
【0148】
さらなる実施形態では、先行する実施形態のいずれかの方法は、植物有害生物に耐性を与える。
【0149】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つの方法によって得られる植物細胞、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリ細胞、より好ましくは、トマト植物細胞に関する。
【0150】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の植物細胞に関し、ここで、前記細胞は、配列番号1~5のいずれか1つを含む。
【0151】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の植物細胞に関し、ここで、前記細胞は、配列番号22~24のいずれか1つを含む。
【0152】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態の植物細胞に関し、ここで、前記細胞は、配列番号8~17のいずれか1つを含む。
【0153】
さらなる実施形態では、本発明は、配列番号1~5のいずれか1つを含む植物細胞に関する。
【0154】
さらなる実施形態では、本発明は、配列番号22~24のいずれか1つを含む植物細胞に関する。
【0155】
さらなる実施形態では、本発明は、配列番号8~17のいずれか1つを含む植物細胞に関する。
【0156】
さらなる実施形態では、本発明は、1コピーの配列番号6及び1コピーの配列番号8~12のいずれか1つを含む二倍体植物細胞に関する。
【0157】
さらなる実施形態では、本発明は、1コピーの配列番号7及び1コピーの配列番号13~17のいずれか1つを含む二倍体植物細胞に関する。
【0158】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つによる植物細胞を含む植物と、それ自体又は同じ作物の別の植物とを交配することを含む、植物の種子、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリの種子、より好ましくは、トマトの種子を生成する方法に関する。
【0159】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれかによる植物細胞を含む植物に関する。さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれかによる植物細胞を含むトマト植物に関する。
【0160】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれかによる植物細胞を含む植物部分に関する。さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれかによる植物細胞を含むトマト植物部分に関する。さらなる実施形態では、植物部分は、植物の種子、好ましくは、トマト植物の種子である。
【0161】
さらなる実施形態では、先行する実施形態のいずれかによる植物又は植物部分は、有害生物耐性を実現する。さらなる実施形態では、先行する実施形態のいずれかによる植物又は植物部分は、トスポウイルス(tospoviruses)に対する有害生物耐性を実現する。さらなる実施形態では、先行する実施形態のいずれかによる植物又は植物部分は、TSWVに対する耐性を実現する。
【0162】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つによる植物と、それ自体又は同じ作物の別の植物とを交配することを含む、植物の種子、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリの種子、より好ましくは、トマトの種子を生成する方法に関する。
【0163】
さらなる実施形態では、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つによる植物と、それ自体又は同じ作物の別の植物とを交配し、本発明のamiRNAを含む子孫植物を生成することと、新規な表現型を示すこととを含む、植物、好ましくは、ナス科(Solanaceae)、トウモロコシ、イネ、キャノーラ、ダイズ又はヒマワリ植物、より好ましくは、トマト植物を生成する方法に関する。
【0164】
本発明の方法は、モデル作物であるトマト及びモデルウイルスであるトマト黄化えそウイルス(tomato spotted wilt virus)(TSWV)で実行し、例示してきた。本明細書において開示されている情報を有する当業者は、容易に知識を移行させ、異なる植物において及び異なる標的タイプで本発明の方法を行うことができる。
【実施例
【0165】
実施例1:amiRNAコアとして使用するのに適したTSWV配列の同定
公表されているTSWVゲノムを、収集(表1)し、整列させた。
【0166】
表1は、NCBIから収集したTSWVゲノムを列挙する(www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/においてワールドワイドウェブ上で見出される)。
【0167】
【表1】

【0168】
高い類似性を有する保存されているTSWV領域を選択した。トマト植物ゲノム内のGC含量、二次的構造、特定位置及びオフターゲットについて21nt配列を分析した(トマトゲノムに対するTSWV21nt配列)。30~60%のGC含量を有するTSWV配列、及びトマトゲノム上の3未満のミスマッチのヒットがないことが望ましかった。
【0169】
所与のamiRNAコアウイルス配列がウイルスの制御において有効であり得るかを試験するために、潜在的な標的を上記のようなTSWVウイルスゲノムにおいて同定し、過渡実験において試験した。シロイヌナズナ(Arabidopsis)天然プレmiRNA AtmiR159aを、スキャフォールドとして使用した。改変されたmiRNAは、天然AtmiR159aコア配列を、TSWV標的遺伝子に相補的な設計した21nt配列で置き換えることによって直接的に合成した。改変されたmiRNAを、構造及び安定性(MFE)について天然miRNAと比較し、最小の変化を伴うそれらのmiRNAを、過渡ウイルスアッセイにおいて実験的評価及び検証のために選択した。これらの過渡アッセイのために、バイナリーベクター17839(図5)を使用して、設計したamiRNAを発現させた。バイナリーベクター17839及び合成AtmiR159a-amiRNAフラグメントの両方をBamHI/NcoIによって切り離し、ゲル精製した。2つの断片を一緒に連結し、DH5アルファ細胞へと形質転換した。陽性クローンをBamHI/NcoI消化によって検証し、全ての接合部を配列決定した。
【0170】
表2は、AtmiR159aスキャフォールド内のamiRNAコアとして試験した全てのTSWV配列を列挙する。これらの5つ(配列番号1~5)は、過渡アッセイにおいてTSWVに対する高い耐性を実現するのに適していると同定されてきた(図2及び3)。
【0171】
【表2】
【0172】
リードET-23、ET-24、ET-26、ET-38及びET-39は、TSWVに対して高いレベルの耐性を実現する。従って、実施例1に記載するこのアプローチは、新規な標的遺伝子と相同な適切なamiRNAコア配列を同定することを可能とし、新規な表現型を得るために効果的に使用することができる。ET-24の逆相補配列であるET-26はまた、高いレベルの耐性を実現し、有効なamiRNAコア配列が同定されると、その逆相補配列はまた、本発明の方法を使用して首尾よく使用することができることを示すことは注目に値する。
【0173】
実施例2:適切な天然トマトプレmiRNA配列の同定
所与の天然トマトプレmiRNA配列を、ウイルスを制御するためのTSWV amiRNAコア配列のレセプタクルとして効果的に使用することができるかを試験するために、潜在的なプレmiRNAスキャフォールドを、トマトゲノムにおいて同定し、ET-24(配列番号2)をTSWV amiRNAコア配列(実施例1を参照されたい)として使用して試験した。
【0174】
公表されているトマトsRNA-配列データを収集し(表3)、天然miRNA発現をチェックした。
【0175】
表3は、NCBI SRAデータベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/sra/においてワールドワイドウェブ上で見出される)から収集したトマトsRNA-配列データセットを列挙する。
【0176】
【表3】
【0177】
成熟miRNA存在量を、これらのデータセットを通して分析し、miRBase(www.mirbase.org/においてワールドワイドウェブ上で見出される)上の公表データと比較した。下記の判断基準を使用して、複数のファミリーメンバーを伴うmiRNAを含めた改変のためのトマト天然miRNAを選択し、同一の成熟miRNA、特に、緑色組織における高い発現レベルを生じさせた。
【0178】
表3において列挙したいくつかの良好な候補を、さらなる実験のために選択した。amiRNAコア配列ET24(配列番号2)を最初に使用してこれらの候補を検証し、後で、新規な21nt配列もまた使用した。バイナリーベクター17839をKpn1/Nco1によって第一に消化し、5762bpの断片をゲル精製した。改変されたプレmiRNA(miRNAコア配列は同定されたamiRNAコア配列ET-24で置き換えられた)と一緒に1kbのプロモーター領域を直接的に合成し、Kpn1/Nco1によって切断した。2つの断片を一緒に連結し、DH5アルファ細胞へと形質転換した。陽性クローンをKpn1/Nco1消化によって検証し、全ての接合部を配列決定した。
【0179】
表4は、プレmiRNAスキャフォールドとして試験した全ての配列を列挙する。これらの2つ(配列番号9及び14)は、過渡アッセイにおいてTSWVに対して高い耐性を実現するのに適していると同定した(図4)。
【0180】
【表4】
【0181】
amiRNAコアTSWV配列ET-24を保持するトマトプレmiRNAスキャフォールドET-29及びET-35(それぞれ、配列番号9及び14)は、TSWVに対して良好なレベルの耐性を示し、本発明の方法において使用するためのそれらの適合性を示す。
【0182】
実施例3:amiRNAコア配列を置き換えることによって、トマトウイルス病原体遺伝子標的を標的とする天然トマトプレmiRNAを改変するようにゲノム編集構築物を設計する。
ウイルス遺伝子を標的とするようにトマト天然miRNAを編集することがそのウイルスに対するトマト耐性を与えることができるかについて試験するために、下記の構築物を設計して、天然トマトmiRNA SlmiR156bを編集した。試験した標的ウイルス遺伝子は、TSWVからのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)、糖タンパク質前駆体(Gn/Gc)、非構造移行タンパク質(NSm)、非構造サイレンシングサプレッサータンパク質(NS)及びヌクレオカプシドタンパク質(N)である。Cas9を2つのgRNAと共に使用し、トマト天然SlmiR156b遺伝子座の周囲に二本鎖切断を生じさせ、置換えのための改変されたamiRNAドナーを実現した。
【0183】
トマト形質転換のためのバイナリーベクター24598(図6)は、トマトSlmiR156b遺伝子を編集する、構成的prAtEF1aA1-02プロモーターによって駆動されるダイズコドン最適化Cas9、並びにprAtU6-01及びprSlU6によって駆動される2つの遺伝子特異的gRNAを含有する。この構築物は、天然SlmiR156bコア配列を、TSWVウイルスゲノムを標的とする人工的なコア配列で置き換える。1kbのプロモーター、人工的なコアを有するプレSlmiR156b、及び0.5kbのターミネーターを含有する1.5kbのドナー配列をまた含めた。prGmEF-01によって駆動されるcSpec-03を選択マーカーとして使用する。ドナーDNAフラグメント、並びにprAtU6-01-rsgRNASlmiR156b-A(配列番号20)及びprSlU6-rsgRNASlmiR156b-B(配列番号21)の2つのgRNAカセットを、Generalbiolによって合成した。このバイナリーベクターにおける4つのカセットの全ては、単一の導入遺伝子の部分であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022522823000001.app
【国際調査報告】