(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】ゲノム編集された鳥
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20220413BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20220413BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220413BHJP
A01K 67/027 20060101ALI20220413BHJP
C12N 5/073 20100101ALI20220413BHJP
C12N 15/873 20100101ALI20220413BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/54 ZNA
C12N15/55
A01K67/027
C12N5/073
C12N15/873 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552184
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 IL2020050242
(87)【国際公開番号】W WO2020178822
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509219903
【氏名又は名称】ザ ステイト オブ イスラエル ミニストリー オブ アグリカルチャー アンド ルーラル ディベロップメント アグリカルチュラル リサーチ オーガニゼイション (エー.アール.オー.) (ボルカニ センター)
【氏名又は名称原語表記】THE STATE OF ISRAEL, MINISTRY OF AGRICULTURE & RURAL DEVELOPMENT, AGRICULTURAL RESEARCH ORGANIZATION (ARO)(VOLCANI CENTER)
【住所又は居所原語表記】Volcani Center, P.O. Box 15159, Rishon-LeZion, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シナモン、ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】ベン-タル コーエン、エンバル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、キメラ鳥細胞およびキメラ鳥を生成するための外因性ポリヌクレオチドカセットを提供する。ポリヌクレオチドカセットは、雄鳥胚において条件付きで致死の表現型を生成するために使用され得る。一実施形態において、本開示は、雄のヒヨコ胚をin-ovoで破壊するための方法を提供する。
【選択図】
図26A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式5'-LHA-OIE-LIE-RHA-3'または式5'-LHA-LIE-OIE-RHA-3'を有するポリヌクレオチドカセットを含むDNA編集剤であって、
(i)前記LHAが、鳥の染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第1のヌクレオチド配列を含み、
(ii)前記OIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結した第1のプロモーターを含み、
(iii)前記LIEが、前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に動作可能に連結された致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列を含み、かつ
(iv)前記RHAが、鳥の染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第4のヌクレオチド配列を含む、DNA編集剤。
【請求項2】
前記第1の対応するヌクレオチド配列または前記第2の対応するヌクレオチド配列が、染色体Z上のオープンに転写された領域に位置する、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項3】
前記オープンに転写された領域が、鳥の染色体Z上のヒスチジントライアドヌクレオチド結合タンパク質1-Z遺伝子座に、またはその下流に位置する、請求項2に記載のDNA編集剤。
【請求項4】
(i)前記LHAが、配列番号105に記載のヌクレオチド配列もしくはその断片を含むか、
(ii)前記RHAが、配列番号106に記載のヌクレオチド配列もしくはその断片を含むか、または
(iii)(i)および(ii)の両方である、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項5】
前記第1のプロモーターが、pCAGG(配列番号100)、pGK(配列番号109)、pCMV(配列番号110)、phSyn(配列番号111)、およびpEF1-a(配列番号112)からなる群から選択される、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項6】
前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素が、CreリコンビナーゼまたはMagリコンビナーゼを含む、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項7】
前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素が、配列番号113、配列番号114、または配列番号65の配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる、請求項6に記載のDNA編集剤。
【請求項8】
前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の発現が、インデューサーによって誘導される、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項9】
前記インデューサーが、電磁エネルギーである、請求項8に記載のDNA編集剤。
【請求項10】
前記電磁エネルギーが、380~740nmの波長を有する可視光である、請求項9に記載のDNA編集剤。
【請求項11】
前記可視光が、450~485nmの波長を有する青色光である、請求項10に記載のDNA編集剤。
【請求項12】
前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素が、前記インデューサーの存在下で結合して活性インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素を形成する、前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の非機能的ペプチド断片を含む、請求項8に記載のDNA編集剤。
【請求項13】
前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素が、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素である、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項14】
前記RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素が、CRISPR関連タンパク質エンドヌクレアーゼである、請求項13に記載のDNA編集剤。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドカセットが、前記鳥の必須遺伝子を標的とするガイドRNAをコードする第5のヌクレオチド配列をさらに含み、前記第5のヌクレオチド配列が前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の前記活性に作動可能に連結されている、請求項13に記載のDNA編集剤。
【請求項16】
前記必須遺伝子が、骨形成タンパク質受容体IA型、骨形成タンパク質2、骨形成タンパク質4、および線維芽細胞成長因子受容体1(FGFR1)からなる群から選択される、請求項15に記載のDNA編集剤。
【請求項17】
前記致死促進タンパク質が、毒素、アポトーシス促進タンパク質、Wntシグナル伝達経路の阻害剤、BMPアンタゴニスト、FGFアンタゴニスト、野生型カスパーゼ3、構成的に活性なカスパーゼ3、Noggin、およびそれらの致死誘導断片からなる群から選択される、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項18】
致死誘導タンパク質が、配列番号93、配列番号95、配列番号97、または配列番号99のアミノ酸配列を有する、請求項17に記載のDNA編集剤。
【請求項19】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項20】
(i)前記LHAが、配列番号105の配列を含み、
(ii)前記OIEが、配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号102の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号101の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を含むか、または、前記OIEが、配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号108の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号107の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を含み、
(iii)前記LIEが、配列番号92、または配列番号94、または配列番号96、または配列番号98の配列を含み、かつ
(iv)前記RHAが、配列番号106の配列を含む、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項21】
鳥細胞の集団であって、前記鳥細胞が、請求項1に記載のDNA編集剤を含む、集団。
【請求項22】
前記鳥細胞が、始原生殖細胞または鳥の配偶子である、請求項21に記載の集団。
【請求項23】
前記始原生殖細胞が、生殖腺始原生殖細胞、血液始原生殖細胞、および生殖三日月環始原生殖細胞からなる群から選択される、請求項22に記載の集団。
【請求項24】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項21に記載の集団。
【請求項25】
請求項21に記載の鳥細胞の集団を含む、キメラ鳥。
【請求項26】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項25に記載のキメラ鳥。
【請求項27】
請求項1に記載のDNA編集剤を鳥細胞の集団に投与し、それによりゲノム編集された鳥細胞を生成するステップと、
前記ゲノム編集された鳥細胞をレシピエント鳥胚に移し、それによりキメラ鳥を生成するステップと、を含む、キメラ鳥を生成する方法。
【請求項28】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記鳥細胞の集団が、始原生殖細胞を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記PGCが、生殖腺PGC、血液PGC、および生殖三日月環PGCからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記鳥細胞が、in-ovoまたはex-ovo注射によって前記レシピエント鳥胚に移される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
鳥の雄胚において致死を誘導する方法であって、
請求項1に記載のDNA編集剤を鳥細胞の集団に投与し、それによりゲノム編集された鳥細胞を生成するステップと、
前記ゲノム編集された鳥細胞をレシピエント鳥胚に移すステップと、
前記胚を、前記DNA編集剤によってコードされる前記致死促進タンパク質の発現を誘発するインデューサーにさらし、それにより前記鳥の雄胚において致死を誘導するステップと、を含む、方法。
【請求項33】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記インデューサーが、450~485nmの波長を有する青色光である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記DNA編集剤が、
(i)配列番号105の配列を有するLHA、
(ii)配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号102の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号101の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を有するOIE、または、配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号108の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号107の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を有するOIE、
(iii)配列番号92、または配列番号94、または配列番号96、または配列番号98の配列を有するLIE、および
(iv)配列番号106の配列を有するRHAを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記OIEにおける前記第1のプロモーターの下流だが、前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする前記第2のヌクレオチド配列の上流に挿入されるセーフロック要素をさらに含み、前記セーフロック要素が、前記OIEによってコードされる前記インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の転写を防ぐSTOP要素を含む、請求項1に記載のDNA編集剤。
【請求項37】
前記STOP要素が、2つのFRT部位に隣接している、請求項36に記載のDNA編集剤。
【請求項38】
前記DNA編集剤が、配列番号120~127のうちの1つの配列を含む、請求項36に記載のDNA編集剤。
【請求項39】
鳥細胞の集団であって、前記鳥細胞が、請求項36に記載のDNA編集剤を含む、集団。
【請求項40】
前記鳥細胞が、始原生殖細胞または鳥の配偶子である、請求項39に記載の集団。
【請求項41】
前記始原生殖細胞が、生殖腺始原生殖細胞、血液始原生殖細胞、および生殖三日月環始原生殖細胞からなる群から選択される、請求項40に記載の集団。
【請求項42】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項39に記載の集団。
【請求項43】
請求項39に記載の鳥細胞の集団を含む、キメラ鳥。
【請求項44】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項43に記載のキメラ鳥。
【請求項45】
請求項36に記載のDNA編集剤を鳥細胞の集団に投与し、それによりゲノム編集された鳥細胞を生成するステップと、
前記ゲノム編集された鳥細胞をレシピエント鳥胚に移し、それによりキメラ鳥を生成するステップと、を含む、キメラ鳥を生成する方法。
【請求項46】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記鳥細胞の集団が、始原生殖細胞を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記始原生殖細胞が、生殖腺始原生殖細胞、血液始原生殖細胞、および生殖三日月環始原生殖細胞からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記鳥細胞が、in-ovo注射によって鳥胚に移される、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
鳥の雄胚において致死を誘導する方法であって、
請求項36に記載のDNA編集剤を鳥細胞の集団に投与し、それによりゲノム編集された鳥細胞を生成するステップと、
前記ゲノム編集された鳥細胞をレシピエント鳥胚に移すステップと、
前記胚を、前記DNA編集剤から前記STOP要素を除去する薬剤にさらし、それにより前記DNA編集剤によってコードされる前記致死促進タンパク質の発現を誘発し、前記鳥の雄胚において致死を誘導するステップと、を含む、方法。
【請求項51】
前記鳥が、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記DNA編集剤が、配列番号120~127のうちの1つの配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記薬剤が、FlpOタンパク質またはCreタンパク質をコードするヌクレオチド配列である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
雄胚において致死を誘導することが、前記胚を450~485nmの波長を有する青色光にさらすことをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(配列表の提示)
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2020年2月24日に作成されたASCIIコピーは、P-585110-PC_ST25.txtという名称で、355.8KBのサイズである。
【0002】
本開示は、DNA編集剤、およびDNA編集された細胞および鳥の準備におけるその使用に関する。本開示はさらに、DNA編集された鳥の卵における雄胚に条件付きで致死の表現型を与える方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ZW性決定システムは、鳥、一部の魚や甲殻類、一部の昆虫、一部の爬虫類において子孫の性別を決定する染色体システムである。文字ZおよびWは、このシステムをXY性決定システムと区別するために使用される。ZWシステムにおいて、卵子が子孫の性別を決定する。雄は同型配偶子性(ZZ)であり、雌は異型配偶子性(ZW)である。Z染色体は、XYシステムのX染色体のように、より大きく、より多くの遺伝子を持っている。
【0004】
早期の性別の識別および分離は、すべての鳥類の商業用途、特に食用卵産業の重要な態様である。ブロイラーおよびシチメンチョウの場合、性別の分離により、2つの性別の異なるニーズに応じたより適切な管理および給餌のスキームが可能になる。本質的にすべての商業用孵化場は、群れの性別分離を使用している。商業的価値の低い雄のニワトリは、孵化場で間引かれ、雌のニワトリは卵生産に使用される。
【0005】
現在、家禽の性別を決定するために利用可能な3つの方法がある。日齢のヒヨコの性別は、肛門/排泄腔識別、または羽毛分類法のいずれかによって決定できる。または、二次性徴が明らかになるまで雄および雌のヒヨコを一緒に飼育し、その後、ヒヨコを性別に基づいて分離することができる。肛門/排泄腔分類は、性別に関連する解剖学的構造の外観に依存している。羽毛分類は、雄および雌のヒヨコの間で異なる羽毛の特徴、例えば、綿毛の色模様、および翼の羽毛の速い/遅い成長速度に基づく。第3の方法は、例えば、雄においてとさかおよび肉垂が雌のものよりも大きくなる、自然な二次性徴の現れに依存する。
【0006】
日齢のヒヨコの肛門/排泄腔性別決定は、難しく、費用がかかる。鳥の性別を識別するには、高度に熟練した人員が必要である。実行するのはより容易であるが、羽毛分類は、鳥の特定の遺伝的交雑に限定されるという欠点がある。二次性徴による雌雄分類は実行するのに最も容易な方法であるが、孵化後の最初の数週間は両方の性別の鳥を一緒に飼育する必要があり、給餌コストおよび給餌切り替えのために、孵化場にとって肛門/排泄腔分類の費用に比べて対価がより高くなり得るという欠点を有する。
【0007】
最も重要なことは、米国とヨーロッパでのみ、毎年ほぼ10億羽の雄のヒヨコが様々な方法で殺されていることである。これは経済的な問題だけでなく、益々倫理的な問題になる。
【0008】
商業孵化場の分野において、好ましくは卵の段階でさえ、雄のヒヨコの産生を防ぎ、したがって生存可能な雄のヒヨコに関連する問題を回避するためのハイスループットの方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で提供されるのは、雄胚のヒヨコのin-ovo破壊のための組成物と方法を含む技術である。そのような組成物および方法は、農家などの鳥の繁殖の分野に熟練した人が、より商業的に有用な雌の子孫を選択して、雄および雌の子孫間の自然な1:1の比率を歪めることを可能にするので有益である。
【0010】
一実施形態において、本明細書で提供されるのは、式5'-LHA(左相同性アーム)-OIE(光遺伝学的誘導性要素)-LIE(致死誘導要素)-RHA(右相同性アーム)-3'または式5'-LHA-LIE-OIE-RHA-3'を有するポリヌクレオチドカセットを含むDNA編集剤であり、(i)LHAが、鳥の染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第1のヌクレオチド配列を含み、(ii)OIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結した第1のプロモーターを含み、(iii)LIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に動作可能に連結されている致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列を含み、かつ(iv)RHAが、鳥の染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第4のヌクレオチド配列を含む。
【0011】
特定の実施形態において、LHAおよびRHAの一方または両方は、鳥の染色体Z上のオープンに転写された領域に位置する対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である。例えば、オープンに転写された領域は、鳥の染色体Z上のヒスチジントライアドヌクレオチド結合タンパク質1-Z(HINT1Z)遺伝子座に、またはその下流に位置し得る。
【0012】
特定の実施形態において、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素は、Creリコンビナーゼ(Cre)(配列番号113)、またはMag(配列番号114および配列番号65)であり得る。特定の実施形態において、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の発現は、インデューサーによって誘導される。特定の実施形態において、インデューサーは、電磁エネルギーである。例えば、インデューサーは、450~485nmの波長を有する青色光であり得る。
【0013】
特定の実施形態において、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素は、インデューサーの存在下で結合して活性インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素を形成する、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼの非機能的ペプチド断片を含む。
【0014】
特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、毒素、アポトーシス促進タンパク質、ウィングレス/統合(Wnt)シグナル伝達経路の阻害剤、骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト、野生型カスパーゼ3、構成的に活性なカスパーゼ3、Noggin、または上記タンパク質のうちのいずれかの致死誘導断片であり得る。
【0015】
一実施形態において、本明細書に開示のDNA編集剤は、(i)配列番号105の配列を含むLHAと、(ii)配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号102の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号101の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を含むOIE、または配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号101の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号102の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を含むOIE、または配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号108の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号107の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を含むOIE、または配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号107の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号108の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を含むOIEと、(iii)配列番号92、または配列番号94、または配列番号96、または配列番号98の配列を含むLIEと、(iv)配列番号106の配列を含むRHAと、を含む。
【0016】
特定の実施形態において、本明細書に開示のポリヌクレオチドカセットは、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、またはダチョウなどの鳥に適用し得る。
【0017】
別の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のポリヌクレオチドカセットを含む鳥細胞をさらに提供する。別の実施形態において、本明細書に開示のポリヌクレオチドカセットを含む鳥細胞を含むキメラ鳥が、提供される。
【0018】
別の態様において、キメラ鳥を生成するために本明細書に開示のDNA編集剤を使用する方法が、さらに提供される。特定の実施形態において、方法は、鳥の細胞を本明細書に開示の外因性ポリヌクレオチドカセットと接触させ、それによりゲノム編集された鳥細胞を生成し、次いでこれらのゲノム編集された鳥細胞をレシピエント鳥胚に移すステップを含む。別の態様において、上記の方法から生成されたキメラ鳥がさらに提供される。
【0019】
別の態様において、鳥の雄胚において致死を誘導する方法がさらに提供され、本明細書に開示のDNA編集剤を鳥細胞の集団に投与し、それによりゲノム編集された鳥細胞を生成するステップ;これらのゲノム編集された鳥細胞をレシピエント鳥胚に移すステップ;および胚を、DNA編集剤によってコードされる致死促進タンパク質の発現を誘発するインデューサーにさらし、それにより鳥の雄胚において致死を誘導するステップを含む。
【0020】
別の実施形態において、本明細書に開示されるDNA編集剤は、OIEにおけるプロモーターの下流だが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼをコードする配列の上流に挿入されるセーフロック要素をさらに含む。セーフロック要素は、OIEによってコードされるインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼの転写を防ぐヌクレオチド配列(STOP要素)を含む。一実施形態において、STOP要素は、2つのFRT部位に隣接している。一実施形態において、配列番号120~127のうちの1つの配列を有するDNA編集剤のそれぞれは、セーフロック要素を含む。別の態様において、セーフロック要素を含むDNA編集剤を使用してキメラ鳥を生成する方法がさらに提供される。
【0021】
別の実施形態において、鳥の雄胚において致死を誘導するためのセーフロック要素を含むDNA編集剤を使用する方法が提供され、該方法は、そのようなDNA編集剤を鳥細胞の集団に投与し、それによりゲノム編集された鳥細胞を生成するステップ;これらのゲノム編集された鳥細胞をレシピエント鳥胚に移すステップ;および胚を、DNA編集剤からSTOP要素を除去する薬剤にさらし、それによりDNA編集剤によってコードされる致死促進タンパク質の発現を誘発し、鳥の雄胚における致死を誘導するステップを含む。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、態様または実施形態が係る当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を態様の実施形態の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および例は単なる例示であり、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書では、いくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して説明する。ここで図面を特に詳細に参照すると、示されている詳細は、例としてのものであり、特定の実施形態の例示的な考察の目的のためであることが強調されている。これに関して、図面とともに行われる説明は、実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【0024】
本明細書で提供されるとみなされる主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に主張されている。しかしながら、構成および作動方法の両方に関する実施形態は、その目的、特徴、および利点とともに、添付の図面とともに読まれる場合、以下の詳細な説明を参照することによって最良に理解され得る。
【0025】
【
図1】雌産卵鶏ヒヨコのみが孵化する光遺伝学的誘導性ニワトリ系統の生成の実施形態を示す図である。野生型の雄鶏(ZZ)を遺伝子改変雌鶏(ZW)と交配することにより、すべての雌の受精卵は野生型のZW染色体を担持する。すべての雄の受精卵は、遺伝子改変Zが遺伝子改変雌鶏のゲノムに由来するZZ染色体を担持する。受精卵への青色光照明時に、この遺伝子改変染色体の光遺伝学的システムは、活性になって、産卵直後に初期の雄胚死亡を引き起こす死亡機構を活性化する。青色光照明の影響を受けない雌は、孵化し、成体に成長し、食用の無精卵を産む。
【
図2】青色光照明によって遺伝子発現を制御する戦略の実施形態を示す。2つの融合タンパク質、すなわち、Creの非活性N末端を持つCry2(Cry2-CreN末端)およびCreの非活性C末端と融合するCIBN(CIBN-Cre-C末端)が作成される。青色光照明がないと、Creは不活性である。青色光照明時に、Cry2およびCIBNは複合体を形成し、Creの2つの部分が一緒になって活性Cre酵素を形成する。
【
図3】Z染色体上の相同性アームの実施形態を示す。HINT1Z遺伝子座の下流のゲノム領域が描かれている。5'および3'アームは、それぞれHA-1(左相同性アーム、LHA)およびHA-2(右相同性アーム、RHA)である。アームを増幅するためのプライマーは、白抜きの矢印で示されている(FWD HA5' P1およびREV HA3' P2)。相同性アームの間の両方のDNA鎖には、CRISPR-Cas9の配列がある(白抜きのボックス、CRISPRガイド1および3)。
図3の下部は、2つの相同性アーム間の領域を詳細に示す。LHA-CRISPR-RHA断片を含む、配列番号1に記載の配列を示している。
【
図4A】ターゲティングベクターまたはDNA編集剤の異なる実施形態を示し、3つの主要な要素を含むターゲティングベクターを示す。第1の要素は、外因性挿入カセット全体に隣接している、相同組換え(HR)のための5'および3'相同性アーム(HA)である。第2の要素は、光誘導システムであり、この場合はCry2-CreNおよびCIBN-Cre-Cである。第3の要素は、致死遺伝子カセットである。単一ターゲティングベクター戦略の一実施形態において、5'HAの後に、自己切断ペプチドP2Aによって分離されるCRY2-CreNおよびCIBN-Cre-C遺伝子の発現を駆動するpGKプロモーターが続く。この要素の後に、pGKプロモーターを含む外因性致死遺伝子カセットが続き、その後にLoxP-STOP-LoxP部位(LSL)が続き、その後に致死誘導遺伝子が続く。この外因性カセットの後に3'HAが続く。光誘導時に、CRY2-CreNおよびCIBN-Cre-Cが二量体化して、活性型のCreを形成する。その後、後者はLSL要素を切除し、したがって、致死誘導遺伝子の発現を可能にし、このベクターを担持するすべての胚の死亡に繋がる。
【
図4B】ターゲティングベクターまたはDNA編集剤の異なる実施形態における代替のアプローチを示す。LSL要素を使用することに代えて、Dio-lox反転戦略が使用される。Dio-lox部位間において、GFPの後にポリアデニル化部位#1(PA1)が続き、致死遺伝子の後に逆方向の異なるポリアデニル化部位#2(PA2)が続く。この場合、光活性化の前に、pGKプロモーターがGFPの発現を駆動する。光活性化時に、Dio-lox部位間のカセットが反転し、致死遺伝子はここで発現する正方向にある一方、GFPはここで逆方向になり、もはや活性ではなくなる。
【
図4C】ターゲティングベクターまたはDNA編集剤のさらに別の実施形態を示す。Creの活性化後に、LSLは除去され、Cas9および単一ガイドRNA(sgRNA)を発現する。これは、必須遺伝子のコーディング領域(sgRNAによって標的化される)におけるミスセンス変異の導入に繋がり、ゆえに、胚の致死を誘導する。
【
図5A】PGC株誘導および特性評価。PGCの培養。
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図5B】PGC株誘導および特性評価。左、異なる多能性マーカーおよび生殖細胞マーカーのmRNA発現。右、雌PGC(左、リボソームS18およびW染色体の2つのPCR産物)および雄PGC(右、リボソームS18のみ)の性別識別の代表的な特性評価。
【
図5C】PGC株誘導および特性評価。抗SSEA1抗体で染色するPGC。
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図5D】PGC株誘導および特性評価。Lipofectamine 2000試薬を使用したpCAGG-GFPプラスミドによるPGCのトランスフェクション。
【
図5E】PGC株誘導および特性評価。エレクトロポレーションを使用したpCAGG-GFPプラスミドによるPGCのトランスフェクション。
【
図5F】PGC株誘導および特性評価。胚の生殖腺(精巣)、GFP発現培養PGCの移植から10日後。
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図6A】CRISPR媒介ターゲティングのためのsgRNA部位の設計。潜在的なCRISPRターゲティング部位のZ染色体上のゲノム領域の例を示す。
【
図6B】CRISPR媒介ターゲティングのためのsgRNA部位の設計。上位12個のsgRNA配列を示す(ガイド#1~#12)。反対方向に部分的に重複するガイド#1および#3を、さらなる実験のために選択した。3ヌクレオチドのPAM配列は、ガイド配列の一部ではなく、PAM配列は、配列番号66~77に含まれていない。
【
図6C】CRISPR媒介ターゲティングのためのsgRNA部位の設計。ガイド#1についての潜在的なオフターゲットの検索の上位10個の結果を示す。配列番号78~87は、3ヌクレオチドのPAM配列を含んでいない。
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図7A】エンドヌクレアーゼアッセイを用いたCRISPR活性の検証。アニールされたWT 320bp PCR産物およびCRISPR1の予測切断部位での変異産物を示された比率で使用したエンドヌクレアーゼアッセイのポジティブコントロール。
【
図7B】エンドヌクレアーゼアッセイを用いたCRISPR活性の検証。CRISPR1プラスミドをトランスフェクションした12個のコロニーに関するエンドヌクレアーゼアッセイ。
【
図7C】エンドヌクレアーゼアッセイを用いたCRISPR活性の検証。CRISPR3プラスミドをトランスフェクションした12個のコロニーに関するエンドヌクレアーゼアッセイ。CRISPR1およびCRISPR3の2つの予測される切断部位の間には12bpの距離がある。
【
図8A】DNA配列決定を使用したCRISPR活性の検証。CRISPR1の予測される切断部位の野生型(WT)ゲノム領域のDNAクロマトグラムは、ネガティブコントロールとしての正常な配列を示している。
【
図8B】DNA配列決定を使用したCRISPR活性の検証。ポジティブコントロールとして、予測される切断部位の後にダブルピークの出現(矢じり)を示すWTおよび人工変異PCR産物の混合物の配列。
【
図8C】DNA配列決定を使用したCRISPR活性の検証。正常な配列を示す陰性コロニーの配列決定。
【
図8D】DNA配列決定を使用したCRISPR活性の検証。CRISPR1切断部位に続くダブルピークの出現を示す陽性コロニーの配列(矢じり)。
【
図9】(A)~(F)よりなる、Z染色体へのゲノム組み込みのためのターゲティングベクターの構築。(A)ゲノムDNAは、CRISPRサイトを含む領域に隣接する5'HAおよび3'HA領域(破線で区切られている)にあるプライマーP1およびP2を使用したPCR反応のテンプレートとして使用された。(B)HINT1Z遺伝子座の下流に位置する約3kbの産物をシャトルベクターpJet1.2に連結した。このプラスミドを、プライマーP3およびP4を用いたPCRについてのテンプレートとして使用した。これらのプライマーは、pCAGG-Neo-IRES-GFP断片の同等の領域に対応する延出オーバーハング配列(波括弧で区画されている)を有する。(C)ギブソン反応時にpCAGG-Neo-IRES-GFPカセットの末端に結合する配列が隣接する、CRISPR部位含有領域を除く2つの相同性アームを含む線状化された産物(ベクター)。(D)pCAGG-Neo-IRES-GFPプラスミドを、プライマーP5およびP6を用いたPCR反応についてのテンプレートとして使用した。これらのプライマーは、相同性アームの端にある同等の領域に対応する延出オーバーハング配列(波括弧で区画されている)を含む。(E)相同性アームの末端に結合する配列に隣接する線状化された挿入カセット。ベクターおよびインサートをギブソンアセンブリ反応によってつなぎ合わせ、(F)に示す最終的なターゲティングベクタープラスミドを作成した。
【
図10A】ターゲティングベクターおよびCRISPRプラスミドのPGCへのコトランスフェクション。CRISPR1およびHRターゲティングベクタープラスミドを用いたPGCへのリポフェクション媒介コトランスフェクション。
【
図10B】ターゲティングベクターおよびCRISPRプラスミドのPGCへのコトランスフェクション。G-418選択の2週間後、耐性PGCの>99%がGFPに対して陽性であった。
【
図10C】ターゲティングベクターおよびCRISPRプラスミドのPGCへのコトランスフェクション。宿主胚への標的化PGCの注入の10日後、多数の細胞が生殖腺(精巣)に局在していることがわかった。
【
図10D】ターゲティングベクターおよびCRISPRプラスミドのPGCへのコトランスフェクション。生殖腺を解剖し、抗GFP抗体で免疫染色し、共焦点顕微鏡(緑色のGFP抗体染色、青色の4'、6ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で対比染色した核)を使用してスキャンした。
【
図11A】FACS選別PGCにおけるHR組み込みの検証。G-418耐性PGCのFACS選別。FACSゲーティングは、96ウェルプレートでプールまたは個々の細胞として選別された特異(sin)GFP陽性細胞を選別するように設計された。
【
図11B】FACS選別PGCにおけるHR組み込みの検証。PCR分析に対して、5'組み込み部位(P7およびP8)および3'組み込み部位(P9およびP10)についての2セットのプライマーを設計した。
【
図11C】FACS選別PGCにおけるHR組み込みの検証。プールした細胞から抽出したゲノムDNAを、PCRおよびネガティブコントロールとして機能するWT DNAのためのテンプレートとして使用した。予測された1.6kbおよび1.8kbのバンドは、それぞれ5'および3'領域での適切なHR組み込みについて明らかであった。
【
図11D】FACS選別PGCにおけるHR組み込みの検証。単一細胞FACS選別PGCに由来する雄および雌細胞コロニーから抽出されたゲノムDNAを、PCRおよびネガティブコントロールとして機能するWT DNAのためのテンプレートとして使用した。予測された1.6kbおよび1.8kbのバンドは、それぞれ5'および3'領域での適切なHR組み込みについて明らかであった。
【
図12A】HR組み込みのサザンブロット解析。WT対立遺伝子、およびHR組み込みを受けた対立遺伝子についてのサザンブロット解析において予想されるBglII切断産物の模式図。5'、3'組み込み部位およびneoに使用されるプローブは、短いバーとしてマークされている。各DNAプローブについてBglII消化後の予測される産物サイズを示す。
【
図12B】HR組み込みのサザンブロット解析。PCRによるDig標識されたプローブの調製。標識プローブ(+)または未標識(-)をアガロースゲルで解析した。dig標識された産物は実際のサイズよりも高くシフトされて、dig標識されたヌクレオチドの組み込みが確認された。プローブを増幅するために使用されたプライマーのセットが示されている。
【
図12C】HR組み込みのサザンブロット解析。雄由来PGCのプールされ純粋なコロニーから抽出されたDNAの5'および3'プローブを用いたサザンブロット解析。ネガティブコントロールとして機能するHRの前の元の株から抽出されたWT DNA。
【
図12D】HR組み込みのサザンブロット解析。雌由来PGC上で5'およびNeoプローブを用いたサザンブロット解析。両方の場合に単一の7.5kbバンドが明らかであり、適切なHRが発生し、ターゲティングベクターの単一コピーのみが組み込まれたことが示された。
【
図13】in vitroでのHEK293細胞の光遺伝学的システムの検証。pmCherry-Cry2-CreN、pmCherry-CIBN-Cre-CおよびPB-RAGE-GFPプラスミドを用いたトリプルトランスフェクション。トランスフェクションの24時間後、コントロール細胞を暗所に保ちながら(上段)、実験群における細胞を15秒間の青色光照明にさらした。照明後(下段)、細胞をさらに24時間インキュベートした。これらの細胞では、GFP発現が明らかであり、青色光照明時のCre酵素の活性化が確認された。
【
図14】エレクトロポレーション前に54~60時間インキュベートされた、ヒヨコ胚におけるin-ovoでの光遺伝学的システムの検証。pmCherry-Cry2-CreN、pmCherry-CIBN-CreCおよびPB-RAGE-GFPプラスミドを用いたニワトリ胚へのトリプルエレクトロポレーション。エレクトロポレーションの12時間後、コントロール胚を暗所に保ちながら(上段)、実験群の胚を15秒間in-ovoで青色光照明にさらした。照明後(下段)、両方の群由来の胚をさらに12時間インキュベートした。インキュベーション後、GFP発現細胞は照明群で明確に現れ、したがって、in-ovoでのニワトリ胚における青色光照明時に光遺伝学的システムおよびCre酵素の活性化が確認された。
【
図15A】CAGGプロモーターの下での単一の光遺伝子発現ベクターの構築。光遺伝子プラスミドpmCherry-CIBN-CreCおよびpmCherry-Cry2-CreNをテンプレートとして使用して、それぞれP40~P41およびP42~P43プライマーを使用して光遺伝子融合タンパク質を増幅した。
【
図15B】CAGGプロモーターの下での単一の光遺伝子発現ベクターの構築。2つの産物は、プライマーP41およびP42において導入されたP2A部位で重複配列を共有する。
【
図15C】CAGGプロモーターの下での単一の光遺伝子発現ベクターの構築。1サイクルのオーバーハング延出PCRが可能になり、2つの断片(
図15B参照)を一つのピースに結合させて、pJet1.2シャトルベクターに連結することができた。
【
図15D】CAGGプロモーターの下での単一の光遺伝子発現ベクターの構築。それぞれSmaIおよびNheI制限部位を有するテールを含むプライマーP44およびP45を使用して、産物が生成された。
【
図15E】CAGGプロモーターの下での単一の光遺伝子発現ベクターの構築。
図15Dに示す産物を、適切な制限酵素を使用して消化し、同じ酵素で消化したpCAGG-IRES-GFPに連結した。
【
図15F】CAGGプロモーターの下での単一の光遺伝子発現ベクターの構築。得られたベクターを示す。
【
図16】HEK293細胞におけるpCAGG-Optogeneプラスミドの活性の検証。pCAGG-OptogeneおよびpB-RAGE-mCherryプラスミドを用いたコトランスフェクション。トランスフェクションの24時間後、ネガティブコントロール群を暗所に保ちながら(上段)、実験群の細胞を15秒間青色光照明にさらした(下段)。照明後(下段)、細胞をさらに24時間インキュベートした。これらの細胞では、mCherryの発現が明白であり(白色の矢印)、青色光照明時にpCAGG-OptogeneプラスミドによるCre酵素の活性化が確認された。
【
図17】in-ovoでのpCAGG-Optogeneプラスミドを使用した単一ベクター戦略の検証。ステージ14~16H&Hでのニワトリ胚を、pCAGG-OptogeneおよびpB-RAGE-mCherryプラスミドを用いてコエレクトロポレーションした。後者のプラスミドは、光遺伝学的システムの活性のためのレポーター遺伝子として機能する。エレクトロポレーションの12時間後、コントロール胚を暗所に保ったまま(上段)、実験群の胚(下段)をin-ovoで青色光照明に15秒間さらした。胚をさらに12時間インキュベートした。インキュベーション後、GFP発現細胞は両方の群で明らかであり、成功裏のエレクトロポレーションが示されたが、照明群のみにおいてはmCherry発現細胞が明らかであり、in-ovoでのニワトリ胚における青色光照明時に光遺伝学的システムおよびCre酵素の活性化が確認された。
【
図18】pGKプロモーターの下でのDTAの発現は、in-ovoでのタンパク質合成を阻害する。ステージ14~16H&H胚を、pGK-IRES-GFP(上段)またはpGK-DTA-IRES-GFP(下段)発現ベクターのどちらかを用いてエレクトロポレーションした。ネガティブコントロールの胚は、通常のタンパク質合成を示すGFP(上段、矢印)を広く発現する。DTA発現細胞はGFP発現を示さず(下段)、これらの胚でのタンパク質合成が阻害されることを示している。GFPのみ、明視野のみ、および明視野に重ねられたGFPの画像を表示している。
【
図19A】ターゲティングベクターの実施形態。これらのベクターでは、活性化酵素(Creなど)は致死遺伝子カセットから分離されている。活性化酵素を母雌鶏のゲノムに挿入し、不活性致死カセットを雄鶏のZ染色体に挿入し、ここで、Z染色体はこの対立遺伝子のホモ接合体である。この場合、雄胚における致死性の活性化は、光誘導を必要とせずに2つのトランスジェニック親を交配することにより行われる。すべての雄におけるCreは、母体Z染色体におけるLSLを除去し、これにより致死遺伝子を発現させることを可能にするが、雌胚は不活性な致死カセットを保持し、したがって、影響を受けない。
【
図19B】ターゲティングベクターの実施形態。これらのベクターでは、活性化酵素(Creなど)は致死遺伝子カセットから分離されている。母雌鶏のZ染色体は、正しい方向のFLPリコンビナーゼを、それに続いてCAGGプロモーターによって駆動される逆方向の致死遺伝子を含むDio-Loxフリッピングカセットにより標的化される。雄鶏、再度の、FRT部位が隣接するCAGG-Creカセットにより標的化されるZ染色体のホモ接合体。2つの交配時に、雄胚は父のZ染色体上に位置するCreを発現し、Dio-Loxカセットは反転し、致死遺伝子は活性になり、これによって雄胚の胚致死に繋がる。この交配による雌胚の接合体には、卵形成中に産生されたFLPリコンビナーゼ酵素の母体の寄与が含まれている。この母体タンパク質は、Z染色体からCAGG-Creカセットを除去し、Z染色体上にFRTの「瘢痕」のみにより雌胚を生きた状態にしておく。
【
図20】HINT1ZおよびポジティブコントロールとしてGAPDHのプライマー(GAPDHプライマー:順方向-(配列番号90)、逆方向-(配列番号91)、93bp)を用いた、産卵されたばかりの全胚盤葉(Bl)およびPGCからの全RNA抽出物からのcDNAのRT-PCR。153bpの予測サイズのバンドは、両方のサンプルで、Z染色体上にあるHINT1Zが転写されていることを示している。
【
図21】改変された光遺伝学的システムを含む2つのプラスミド(pCAGG-CIBN-Cre-C-P2A-Cry2-Cre-NおよびpCAGG-Cry2-Cre-N-P2A-CIBN-Cre-C)の模式図。
【
図22】培養HEK293細胞における光遺伝学的システムの検証。光遺伝学的プラスミドpCAGG-CIBN-CreC-IRES-Cry2-CreN-IRES-GFPをpB-RAGE-mCherryでコトランスフェクトした。上記のPB-RAGE-GFPベクターと同様に、pB-RAGE-mCherryは、mCherryコーディング領域の上流のLoxP部位に隣接する複数の停止コドン配列を含む。Cre活性化時に、停止コドンが除去され、したがって、mCherryを発現させることが可能になる。コトランスフェクションを行い、暗所に保ったHEK293細胞においては、mCherry陽性細胞が存在しない一方、青色光照明にさらされたコトランスフェクトされたHEK293細胞においては、多くの細胞が、mCherryを発現し、pCAGG-Optogeneの単一ベクター戦略がシステムの光遺伝学的特性を保持していることが確認された。
【
図23】ニワトリ胚におけるエレクトロポレーションによる光遺伝学的システムの検証。GFPもコードするpCAGG-CIBN-IRES-Cry2は、活性Creリコンビナーゼの存在下で赤色蛍光を発するPB-RAGE-mCherryとともにエレクトロポレーションされた。青色光で誘導されると、Cry2-CreNおよびCIBN-CreCは二量体化し、したがって、Cre活性を可能にする。白い円は、重複する蛍光の領域を示す。
【
図24A】DTAを用いたPGCにおける細胞死の誘導。PGCの細胞死に対するDTAの効果を示す。PGCにコントロール1 PGK-IRES-GFP、コントロール2 pCAGG-GFP、またはPGK-DTA-IRES-GFPおよびpCAGG-GFPのプラスミドをトランスフェクトし、24、48、72時間インキュベートした。細胞死は、GFPおよびPIについてフローサイトメトリーを使用して評価した。結果は、GFP+PI細胞とGFPのみの細胞との間の比率を示している。
【
図24B】カスパーゼ3を用いたPGCにおける細胞死の誘導。PGCの細胞死に対するCaspの効果を示す。PGCは、コントロールPGK-IRES-GFP、PGK-WTカスパーゼ3-IRES-GFPまたはPGK-CAカスパーゼ3-IRES-GFPのプラスミドをトランスフェクトし、
図24Aに示されるように分析の前に24、48、および72時間インキュベートした。
【
図25】すべての要素および青色光照明による致死誘導カセットの活性化が含むターゲティングベクターの模式図。
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図26A】実施例3において説明される「セーフロック」機構を含むターゲティングベクターの模式図。
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図26B】実施例3において説明される「セーフロック」機構を含むターゲティングベクターの模式図。
【
図27A】培養HEK293細胞におけるターゲティングベクターの検証。in-vitro検証のために、HEK293細胞をTV4のみでトランスフェクトした。
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図27B】培養HEK293細胞におけるターゲティングベクターの検証。in-vitro検証のために、HEK293細胞をpCAGG-Creでトランスフェクトした。
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図27C】培養HEK293細胞におけるターゲティングベクターの検証。in-vitro検証のために、HEK293細胞をpCAGG-FlpOプラスミドでトランスフェクトした。細胞を暗所に保った。
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図27D】培養HEK293細胞におけるターゲティングベクターの検証。in-vitro検証のために、HEK293細胞をpCAGG-FlpOプラスミドでトランスフェクトした。細胞をトランスフェクションの24時間後に青色光に15秒間さらした。照明後、細胞をさらに24時間インキュベートした。
【
図28A】ニワトリ胚におけるエレクトロポレーションによるターゲティングベクターの検証。ニワトリ胚は、プラスミドを神経管に注入され、本明細書に記載されているようにエレクトロポレーションされた。白い線は、配向の目的で、神経管および肢芽の背側正中線を示している。4つの処理群がテストされ、
図28Aは、TV4のみの発現を示す。
【
図28B】ニワトリ胚におけるエレクトロポレーションによるターゲティングベクターの検証。ニワトリ胚は、プラスミドを神経管に注入され、本明細書に記載されているようにエレクトロポレーションされた。白い線は、配向の目的で、神経管および肢芽の背側正中線を示している。4つの処理群がテストされ、
図28Bは、ポジティブコントロールとしてTV4およびpCAGG-Creのプラスミドのコエレクトロポレーションを示す。
【
図28C】ニワトリ胚におけるエレクトロポレーションによるターゲティングベクターの検証。ニワトリ胚は、プラスミドを神経管に注入され、本明細書に記載されているようにエレクトロポレーションされた。白い線は、配向の目的で、神経管および肢芽の背側正中線を示している。4つの処理群がテストされ、
図28Cは、TV4およびpCAGG-FlpOのプラスミドのコエレクトロポレーションを示す。細胞は暗所に保たれた。
【
図28D】ニワトリ胚におけるエレクトロポレーションによるターゲティングベクターの検証。ニワトリ胚は、プラスミドを神経管に注入され、本明細書に記載されているようにエレクトロポレーションされた。白い線は、配向の目的で、神経管および肢芽の背側正中線を示している。4つの処理群がテストされ、
図28Dは、TV4およびpCAGG-FlpOのプラスミドのコエレクトロポレーション後15秒間青色光にさらし、さらに12時間インキュベートした。
【
図29A】致死誘導遺伝子Nogginの光依存活性。ヒヨコ胚は、ターゲティングベクターTV1、pCAGG-FlpOおよびpCAGG-IRES-GFPのプラスミドを神経管にエレクトロポレーションされた。ターゲティングベクターTV1は、致死誘導要素としてNogginのコード配列を含む。光誘導なしの結果;上段、背面図;下段、右側面図を示す。
【
図29B】致死誘導遺伝子Nogginの光依存活性。ヒヨコ胚は、ターゲティングベクターTV1、pCAGG-FlpOおよびpCAGG-IRES-GFPのプラスミドを神経管にエレクトロポレーションされた。ターゲティングベクターTV1は、致死誘導要素としてNogginのコード配列を含む。青色光誘導での結果を示す。
【
図30A】Nogginは胚盤葉胚の段階で胚発育を止めることができる。胚盤葉は、Nogginの外因性源で処理された。プラスミドpCAGG-Noggin-IRES-GFPまたはpCAGG-IRES-GFP(ネガティブコントロールとして)をHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞から抽出された総タンパク質を、抗Noggin抗体および抗α-チューブリン-HRP抗体を用いたウエスタンブロットによって分析したことを示している。
【
図30B】Nogginは胚盤葉胚の段階で胚発育を止めることができる。胚盤葉は、Nogginの外因性源で処理された。プラスミドpCAGG-Noggin-IRES-GFPまたはpCAGG-IRES-GFP(ネガティブコントロールとして)をHEK293細胞にトランスフェクトした。コントロールおよびNoggin発現細胞からの馴化培地を、産卵されたばかりの受精卵に注入し、その後、24時間インキュベートした。
【
図30C】Nogginは胚盤葉胚の段階で胚発育を止めることができる。胚盤葉は、Nogginの外因性源で処理された。プラスミドpCAGG-Noggin-IRES-GFPまたはpCAGG-IRES-GFP(ネガティブコントロールとして)をHEK293細胞にトランスフェクトした。コントロールおよびNoggin発現細胞からの馴化培地を、産卵されたばかりの受精卵に注入し、その後、24時間インキュベートした。
【
図30D】Nogginは胚盤葉胚の段階で胚発育を止めることができる。胚盤葉は、Nogginの外因性源で処理された。プラスミドpCAGG-Noggin-IRES-GFPまたはpCAGG-IRES-GFP(ネガティブコントロールとして)をHEK293細胞にトランスフェクトした。コントロールおよびNoggin発現細胞からの馴化培地を、産卵されたばかりの受精卵に注入し、その後、54時間インキュベートした。
【
図30E】Nogginは胚盤葉胚の段階で胚発育を止めることができる。胚盤葉は、Nogginの外因性源で処理された。プラスミドpCAGG-Noggin-IRES-GFPまたはpCAGG-IRES-GFP(ネガティブコントロールとして)をHEK293細胞にトランスフェクトした。コントロールおよびNoggin発現細胞からの馴化培地を、産卵されたばかりの受精卵に注入し、その後、54時間インキュベートした。
【
図31A】TV1でZ染色体上にHRを受けたPGCは、ヒヨコ胚における生殖腺にコロニー形成することに成功した。
図31Aは、TV1でHRを受け、GFPを発現した純粋な雌PGC株を示す。
【
図31B】TV1でZ染色体上にHRを受けたPGCは、ヒヨコ胚における生殖腺にコロニー形成することに成功した。
図31Bは、PGC注入の5日後の胚の腹側の図を示す。PGCは、生殖腺の肛門である生殖隆起にコロニー形成した(
図31B、矢じり)。雌のヒヨコを、卵巣を分析するために孵化後10日目に犠死させた。
【
図31C】TV1でZ染色体上にHRを受けたPGCは、ヒヨコ胚における生殖腺にコロニー形成することに成功した。
図31Cは、多数のGFP陽性PGCを含む卵巣(線で示されている)を示す。
【0026】
実例を単純かつ明確にするために、図に示される要素は、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことが理解されるであろう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために他の要素に比較して誇張され得る。さらに、適切であると考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すために、参照番号が図の間で繰り返され得る。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明において、本明細書で提供される組成物および方法の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、本開示がこれらの特定の詳細なしで実行され得ることが、当業者によって理解されるであろう。他の事例において、本明細書で提供される組成物および方法を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細に説明されていない。
【0028】
本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において、以下の説明に記載されるかまたは実施例によって例示されている詳細に必ずしも限定されるものではないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態を包含するか、または様々な方法で実施または実行し得る。
【0029】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびそれらの同根語は、「含む(including)が限定されない」ことを包含する。
【0030】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の言及を含む。例えば、用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含む複数の化合物を含んでもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示される数または数の範囲から、0.0001~5%の偏差を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示される数または数の範囲から、1~10%の偏差を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示される数または数の範囲から、最大25%の偏差を指す。いくつかの実施形態において、「約」という用語は±10%を指す。
【0032】
本出願にわたって、様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔にするためのものであり、ある実施形態の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことが理解される必要がある。したがって、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、および、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5および6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわりなく適用される。
【0033】
本明細書で数値範囲が示される際は常に、示された範囲内に任意の引用された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1に示された数字と第2に示された数字との「間の範囲」は、および第1に示された数字「から」第2に示された数字「までの範囲」の表現は、本明細書では交換可能に使用され、第1の示された数字および第2に示された数字ならびにそれらの間の小数および整数のすべてを含むことを意味する。
【0034】
一実施形態において、本明細書で提供される技術、製品および方法は、雌産卵鶏のみが孵化し、雄胚は受精後すぐに発育を停止するニワトリの品種を生成する。したがって、雄のヒヨコを処分する必要性がなくなり、また、孵化場において貴重なインキュベーションスペースの50%が節約される。重要なことに、本明細書に開示する方法から得られた雌および卵の両方は、あらゆる面で、現在一般に消費されている産卵鶏雌鶏および食用卵と同一である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「鳥」または「鳥類種」という用語は、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、およびダチョウを含むが、これらに限定されない、あらゆる鳥類を指す。特定の実施形態において、鳥は、家禽である。特定の実施形態において、鳥は、Gallus gallusである。特定の実施形態において、鳥は、家畜化Gallus gallusである。特定の実施形態において、鳥は、Gallus gallus domesticusである。
【0036】
特定の実施形態において、鳥は、雌である。特定の実施形態において、鳥は、雄である。特定の実施形態において、鳥は、ブロイラーである。特定の実施形態において、鳥は、雌鶏である。特定の実施形態において、鳥は、産卵鶏雌鶏である。特定の実施形態において、鳥は、家禽である。特定の実施形態において、鳥は、Gallus gallus domesticusの家畜化産卵鶏雌鶏である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「卵」という用語は、生存可能なまたは生きている胚性鳥を含む鳥類の卵を指す。一実施形態において、「卵」という用語は、受精した鳥類の卵を指すことを意図している。一実施形態において、卵は、受精した鳥類の卵を、正常な胚形成を受けることができる鳥類の胚を含む卵である。
【0038】
ゲノム編集
【0039】
操作されたエンドヌクレアーゼを使用するゲノム編集は、ヌクレアーゼを使用して、ゲノムにおける望ましい場所(例えば、鳥のZ染色体上)で特異的二本鎖切断を切断および生成し、それらは、次いで、相同組換え修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)などの細胞内因性プロセスによって修復される遺伝的手法を指す。NHEJは、二本鎖切断でDNA端を直接連結する一方、HDRは、切断点で欠損DNA配列を再生するためのテンプレートとして相同配列を利用する。特異的ヌクレオチド修飾をゲノムDNAに導入するために、望ましい配列を含むDNA修復テンプレートは、HDR時に存在する必要がある。ほとんどの制限酵素はDNA上の少ない塩基対のみをそれらの標的として認識し、認識された塩基対の組み合わせがゲノム全体の多くの場所で見られ、望ましい場所に限定されない複数の切断をもたらすであろう可能性が非常に高いため、従来の制限エンドヌクレアーゼを使用してゲノム編集を実行することはできない。この課題を克服し、部位特異的な一本鎖または二本鎖切断を生成するために、現在までいくつかの別個のクラスのヌクレアーゼが発見され、バイオエンジニアリングされてきた。これらは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびCRISPR/Casシステムを含む。
【0040】
メガヌクレアーゼ-それらは一般に、LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CysボックスファミリーおよびHNHファミリーの4つのファミリーに分類される。これらのファミリーは、触媒活性および認識配列に影響を与える構造モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADGモチーフのコピーを1つまたは2つを有することによって特徴付けられる。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存されている構造要素、ひいてはDNA認識配列の特異性および触媒活性に関して互いに大きく分離されている。メガヌクレアーゼは一般に微生物種に見られ、かなり長い認識配列(>14bp)を有するというユニークな特性を有し、したがって、望ましい場所での切断のためにそれらを自然にかなり特異的にする。これを利用して、ゲノム編集で部位特異的二本鎖切断を行うことができる。当業者はこれらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、そのような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限られている。この課題を克服するために、変異誘発法およびハイスループットスクリーニング法を使用して、ユニークな配列を認識するメガヌクレアーゼ変異体を生成した。例えば、様々なメガヌクレアーゼが融合されて、新しい配列を認識するハイブリッド酵素が作成される。また、メガヌクレアーゼのアミノ酸と相互作用するDNAは、配列特異的メガヌクレアーゼを設計するために変更され得る(例えば、米国特許第8,021,867号)。メガヌクレアーゼは、例えば、Certo,MT et al.Nature Methods(2012)9:073-975、米国特許第8,304,222号、同第8,021,867号、同第8,119,381号、同第8,124,369号、同第8,129,134号、同第8,133,697号、同第8,143,015号、同第8,143,016号、同第8,148,098号、または同第8,163,514号に記載されている方法を使用して設計し得る。
【0041】
ZFNおよびTALEN-2つの別個の操作されたヌクレアーゼのクラス、すなわち、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は両方とも、標的化二本鎖切断の生成に効果的であることが証明されている。基本的に、ZFNおよびTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術は、特異的DNA結合ドメイン(それぞれ一連のジンクフィンガードメインまたはTALE反復配列)に連結された非特異的DNA切断酵素を利用する。典型的には、DNA認識部位および切断部位が互いに分離されている制限酵素が選択される。切断部分は分離され、次にDNA結合ドメインに連結され、それにより、望ましい配列に対してかなり高い特異性を有するエンドヌクレアーゼを得る。そのような特性を有する例示的な制限酵素はFoklである。さらに、Foklは、ヌクレアーゼ活性を持たせるために二量体化が必要であるという利点があり、これは、各ヌクレアーゼパートナーがユニークなDNA配列を認識するために特異性が飛躍的に増加することを意味する。この効果を高めるために、ヘテロ二量体としてのみ機能し、かつ触媒活性が高くなったFoklヌクレアーゼが操作された。ヘテロダイマー機能性ヌクレアーゼは、望ましくないホモダイマー活性の可能性を回避し、したがって、二本鎖切断の特異性を高める。
【0042】
したがって、例えば、ZFNおよびTALENは、対の各メンバーは標的化部位で隣接配列を結合するように設計されているヌクレアーゼ対として構築され得る。細胞における一過性発現時に、ヌクレアーゼはそれらの標的部位に結合し、FokIドメインヘテロ二量体化して二本鎖切断を生成する。非相同末端結合(NHEJ)経路を介したこれらの二本鎖切断の修復は、ほとんどの場合、小さい欠失または小さい配列挿入であるインデルをもたらす。NHEJによって行われる各修復は一意であるため、単一のヌクレアーゼの対を使用すると、標的部位において異なる欠失の範囲を有する対立遺伝子のシリーズが生成される。欠失は、典型的には、長さが数塩基対~数百塩基対の範囲であるが、2対のヌクレアーゼを同時に使用することによって細胞培養においてより大きい欠失を成功裏に生成した(例えばCarlson et al.,2012,Proc Natl Acad Sci USA.;109(43):17382-7、Lee et al.,2010,Trends Biotechnol.;28(9):445-6参照)。さらに、標的化領域に対する相同性を有するDNAの断片がヌクレアーゼ対と組み合わせて導入されるとき、二本鎖切断が相同組換え修復を介して修復されて、特定の修飾が生成され得る(例えば、Li et al.,2011,Nucleic Acids Res.39(1):359-72、Miller et al.,2010,Nat Struct Mol Biol.17(9):1144-51、Urnov et al.,2005,Nature 435(7042):646-51参照)。
【0043】
ZFNおよびTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似した特性を有するが、これらの操作されたヌクレアーゼの違いは、それらのDNA認識ペプチドにある。ZFNは、Cys2-His2ジンクフィンガーおよびTALE上のTALENに依存する。ペプチドドメインを認識するこれらのDNAの両方は、それらがタンパク質の組み合わせにおいて自然に見られるという特徴を有する。Cys2-His2ジンクフィンガーは、通常、3bp離れた反復配列において見られ、タンパク質と相互作用する様々な核酸の種々の組み合わせにおいて見られる。一方、TALEは、アミノ酸と認識されたヌクレオチド対との間に1対1の認識率を有する反復配列において見られる。ジンクフィンガーおよびTALEの両方は反復パターンで発生するため、様々な組み合わせを試して、様々な配列特異性を生成することができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作成するためのアプローチとして、例えば、特に、モジュラーアセンブリ(トリプレット配列と相関するジンクフィンガーが必要な配列をカバーするために一列に取り付けられる)、OPEN(ペプチドドメイン対トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択、続いてペプチドの組み合わせ対細菌システムの最終標的の高ストリンジェンシー選択)、およびジンクフィンガーライブラリーの細菌ワンハイブリッドスクリーニングが挙げられる。
【0044】
CRISPR-Casシステム-多くの細菌および古細菌は、侵入するファージおよびプラスミドの核酸を分解することができる内因性RNAベースの適応免疫システムを含んでいる。これらのシステムは、RNA成分を産生するクラスター化されて規則的に間隔を空けて配置された短い回文配列の反復(CRISPR)遺伝子、およびタンパク質成分をコードするCRISPR関連(Cas)遺伝子からなる。CRISPR(crRNA)は、特定のウイルスおよびプラスミドに対する相同性の短区間を含み、Casヌクレアーゼに対応する病原体の相補的核酸を分解させるためのガイドとして機能する。化膿レンサ球菌のII型CRISPR/Casシステムの研究は、3つの成分がRNA/タンパク質複合体を形成し、ともに、配列特異的ヌクレアーゼ活性、すなわち、Cas9ヌクレアーゼ、標的配列に対する相同性の20塩基対を含むcrRNA、およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)(Jinek et al.Science(2012)337:816-821)のために十分であることを示した。crRNAとtracrRNAの融合からなる合成キメラガイドRNA(gRNA)が、in vitroでcrRNAに対して相補的であるDNA標的を切断するようにCas9に指示できることが、さらに示された。また、合成gRNAと組み合わせたCas9の一過性発現を使用して、様々な異なる種において標的化二本鎖ブレーキを生成できることも示された(例えば、Cho et al.,2013,Nat Biotechnol.31(3):230-2、Cong et al.,2013,Science 339(6121):819-23、DiCarlo et al.,2013,Nucleic Acids Res.41(7):4336-43、Hwang et al.,2013,Nat Biotechnol.31(3):227-9、Jinek et al.,2013,Elife.2013 Jan 29;2:e00471、Mali et al.,2013,Nat Methods.10(10):957-63)。
【0045】
ゲノム編集用のCRIPSR/Casシステムは、2つの異なる成分、すなわち、ガイドRNA(gRNA)およびエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9を含むことが既知である。gRNAは、典型的には、単一キメラ転写物においてCas9ヌクレアーゼ(tracrRNA)にcrRNAを連結する標的相同配列(crRNA)および内因性細菌RNAの組み合わせをコードする20ヌクレオチド配列である。gRNA/Cas9複合体は、gRNA配列と相補的ゲノムDNAとの間の塩基対によって標的配列に対して補充される。Cas9の結合を成功させるためには、ゲノム標的配列はまた、標的配列の直後に適切なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列も含まれる必要がある。gRNA/Cas9複合体の結合は、Cas9が二本鎖切断を引き起こすDNAの両方の鎖を切断することができるように、ゲノム標的配列に対してCas9を局在化する。ZFNおよびTALENと同様に、CRISPR/Casによって生成される二本鎖切断は、相同組換えまたはNHEJを受けることができる。特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、単一ガイドRNA(sgRNA)およびCasタンパク質を含む。特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、単一ガイドRNA(sgRNA)およびCasタンパク質の複合体を含む。特定の実施形態において、CRISPR/CasシステムのCasは、単一ポリペプチドを含む。特定の実施形態において、CRISPR/CasシステムのCasは、エンドヌクレアーゼである。特定の実施形態において、CRISPR/Casは、CRISPR/Cas9である。
【0046】
Cas9ヌクレアーゼは、各々が異なるDNA鎖を切断する2つの機能的ドメイン、すなわち、RuvCおよびHNHを有する。両ドメインが活性な場合、Cas9はゲノムDNAにおける二本鎖切断を引き起こす。CRISPR/Casの大きな利点は、合成gRNAを簡単に作成する能力と結合されたこのシステムの高効率が、複数の遺伝子を同時に標的化できることである。gRNA配列およびゲノムDNA標的配列間の塩基対相互作用の明らかな柔軟性が、標的配列に対する不完全な一致がCas9によって切断されることを可能にする。
【0047】
単一不活性触媒ドメイン、すなわち、RuvC-またはHNH-のいずれかを含むCas9酵素の改変バージョンは、「ニッカーゼ」と呼ばれる。活性なヌクレアーゼドメインが1つしかないため、Cas9ニッカーゼは標的DNAの1つの鎖のみを切断し、一本鎖切断または「ニック」を作成する。一本鎖切断またはニックは、通常、完全な相補DNA鎖をテンプレートとして使用して、HDR経路を介して迅速に修復される。ただし、Cas9ニッカーゼによって導入された2つの近位の反対側のストランドニックは、「ダブルニック」CRISPRシステムとしばしば呼ばれる二重鎖切断として扱われる。ダブルニックは、遺伝子標的に対する望ましい効果に応じて、NHEJまたはHDRのいずれかによって修復され得る。したがって、特異性と低減されたオフターゲット効果が重要な場合、Cas9ニッカーゼを使用して、近接してかつゲノムDNAの反対側のストランド上に標的配列を有する2つのgRNAを設計することによってダブルニックを作成することにより、いずれかのgRNAを単独としてオフターゲット効果が低減し、ゲノムDNAを変更しないニックをもたらす。
【0048】
2つの不活性な触媒ドメイン(死亡Cas9またはdCas9)を含むCas9酵素の改変バージョンは、ヌクレアーゼ活性はないが、gRNAの特異性に基づいてDNAに結合することは依然として可能である。dCas9は、既知の調節ドメインに不活性な酵素を融合することにより、DNA転写調節因子のプラットフォームとして利用されて、遺伝子発現を活性化または抑制することができる。例えば、ゲノムDNAのターゲット配列へのdCas9単独の結合は、遺伝子転写を妨げ得る。特定の実施形態において、CRISPR/Casは、CRISPR/dCas9である。
【0049】
CRISPRシステムを使用するには、gRNAおよびCas9の両方を標的細胞において発現させる必要がある。挿入ベクターは、単一プラスミド上に両方のカセットを含み得るか、または、カセットは2つの別々のプラスミドから発現される。Addgeneのpx330プラスミドなどのCRISPRプラスミドは一般に入手可能である。さらに、Cas9およびgRNAをコードするmRNAは、標的細胞、およびgRNAと複合体をなす組換えCas9タンパク質に対して導入され得る(すなわち、RNP複合体を細胞に挿入し得る)。
【0050】
特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、クラス1 CRISPR/Casシステムである。特定の実施形態において、クラス1 CRISPR/Casシステムは、マルチサブユニットcrRNA-エフェクター複合体を含む。特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、I型CRISPR-Casシステムである。特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、III型CRISPR/Casシステムである。特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、IV型CRISPR-Casシステムである。
【0051】
特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、クラス2 CRISPR/Casシステムである。特定の実施形態において、クラス2CRISPR/Casシステムは、単一サブユニットcrRNAエフェクターモジュールを含む。特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、II型CRISPR-Casシステムである。特定の実施形態において、CRISPR/Casシステムは、V型CRISPR/Casシステムである。
【0052】
特定の実施形態において、クラス2CRISPR/CasシステムにおけるCasは、Cas9、Cpf1、C2c1、C2c2またはC2c3であり得る。当業者は、それが当該技術分野でよく知られているように、CRISPR/Casシステムの分類を理解するであろう(例えば、Nat Rev Microbiol.2017 March,15(3):169-182、Nat Rev Microbiol.2015 November,13(11):722-736)、そしてこの分類は時間とともに進化している(Mol Cell.2015 November 5,60(3):385-397)。いくつかの実施形態において、CRISPR/Casは、当該技術分野で知られている任意のCRISPR関連タンパク質(CAS)エンドヌクレアーゼである。
【0053】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を使用するゲノム編集は、生哺乳類細胞のゲノムにおけるDNA配列の挿入、欠失または置換を可能にするrAAVベクターに基づく。rAAVゲノムは、一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)分子であり、陽性または陰性のいずれかであり、約4.7kbの長さである。これらの一本鎖DNAウイルスベクターは、高い導入率を有し、ゲノムにおいて二本鎖DNA切断がない場合に内因性相同組換えを促進する特異な特性を有する。当業者は、所望のゲノム遺伝子座を標的とし、細胞内の粗大および/または微細内因性遺伝子変化の両方を行うためのrAAVベクターを設計することができる。rAAVゲノム編集は、一対立遺伝子を標的とし、オフターゲットゲノム変化をもたらさないという利点を有する。
【0054】
DNA編集剤
【0055】
本明細書に記載の技術は、特定の態様および実施形態において、DNA編集剤を提供する。DNA編集剤は、当業者に周知の組換えDNA技術を使用して構築されてもよい。
【0056】
一実施形態において、本明細書に開示されるDNA編集剤は、単一の核酸構築物に含まれ得るか、または核酸構築物の組み合わせに含まれ得る。一実施形態において、DNA編集剤は、以下に記載されるように、少なくとも2つの重要な要素を含む。
【0057】
第1の要素は、鳥のゲノムの特定の場所に安定して組み込まれるように定められているヌクレオチド配列カセットである。第1の要素は、鳥のゲノムに組み込まれると、鳥の遺伝子型を変更するが、特定の実施形態においておよび特定の条件下では、鳥の表現型も変更する。他の鳥の表現型と比較して、変化した鳥の表現型は、本明細書で提供される技術の目的である。本明細書で提供される実施形態によって簡潔に、そして詳細に説明されるように、変化した表現型は、雄胚からの生存可能な雄のヒヨコの発育の防止に有用である。この防止は、農家および孵化場に重大な経済的負担を軽減するだけでなく、生存可能な雄のヒヨコを犠死させる必要性を防ぐことができる。
【0058】
第2の要素は、第1の要素に隣接する第1および第2のヌクレオチド標的配列である。第2の要素は、第1の要素が安定して組み込まれる鳥のゲノム内の位置を決定する役割を果たす。外来DNAを任意の生物のゲノムにランダムに組み込むことは、それが基本的な細胞機能を担当する遺伝子に干渉する場合、有害だろう。あるいは、外来DNAがDNAの非活性セグメントに組み込まれる場合、ランダムな組み込みは重要ではない可能性がある。第2の要素は、鳥のDNAの定義された所定の領域への第1の要素の組み込みを指示する重要な機能を実行する。本開示の一実施形態において、第2の要素は、基本的な細胞機能に悪影響を与えることなく、鳥の染色体Zのオープンに転写された領域への第1の要素の組み込みを指示する。
【0059】
当業者は、「DNA編集剤」という用語が、一般に、鳥などの生物のゲノムの変化を促進するヌクレオチド配列または酵素などの任意の分子を指すことを理解するであろう。変化は、例えば、DNAに組み込まれている薬剤によるDNAへの付加、例えば、相同組換えによるDNAの配列の置換、またはDNAの欠失であり得る。
【0060】
一実施形態において、DNA編集剤は、ウイルスベクターにおいて(例えば、単一のベクターまたは複数のベクターを使用して)構築され得る。そのようなベクターは、一般に、遺伝子導入および遺伝子治療用途で使用される。異なるウイルスベクターシステムには、独自の長所と短所がある。特定の実施形態の第1のヌクレオチド配列を鳥のZ染色体に組み込むために使用され得るウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。
【0061】
レトロウイルス構築物などのウイルス構築物には、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサーもしくは遺伝子座定義要素、またはオルタナティブスプライシング、核RNA輸出、もしくはメッセンジャーの翻訳後修飾などの手段によって遺伝子発現を制御する他の要素を含む。そのようなベクター構築物には、パッケージングシグナル、長い末端反復配列(LTR)またはその一部、および、ウイルス構築物に既に存在しない限り、使用されるウイルスに適したプラスおよびマイナス鎖プライマー結合部位も含まれる。さらに、そのような構築物は、典型的には、それが配置されている宿主細胞からペプチドを分泌するためのシグナル配列を含む。特定の実施形態において、シグナル配列は、哺乳動物のシグナル配列であり得る。任意に、構築物は、ポリアデニル化を指示するシグナル、ならびに1つ以上の制限部位および翻訳終結配列も含んでもよい。例として、そのような構築物は、典型的には、5'LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第二鎖DNA合成の起源、および3'LTRまたはその一部を含む。カチオン性脂質、ポリリジン、またはデンドリマーなどの非ウイルス性である他のベクターを使用できる。
【0062】
一実施形態において、本明細書で提供されるのは、式5'-LHA(左相同性アーム)-OIE(光遺伝学的誘導性要素)-LIE(致死誘導要素)-RHA(右相同性アーム)-3 'または式5'-LHA-LIE-OIE-RHA-3'を有するポリヌクレオチドカセットを含むDNA編集剤であり、(i)LHAが、鳥の染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第1のヌクレオチド配列を含み、(ii)OIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結した第1のプロモーターを含み、(iii)LIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に動作可能に連結されている致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列を含み、かつ(iv)RHAが、鳥の染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第4のヌクレオチド配列を含む。
【0063】
当業者には明らかであるように、式5'-LHA-OIE-LIE-RHA-3'または式5'-LHA-LIE-OIE-RHA-3'は、同じDNA編集剤分子内の他のすべての要素に関連する任意の要素(例えば、LHAまたはOIEまたはLIEまたはRHA)のそれぞれの位置に関する。5'および3'の専門用語は広く受け入れられており、当業者に周知である。
【0064】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドカセットは、式5'-LHA-OIE-LIE-RHA-3'を含む。特定の実施形態において、OIEは、LIEの上流である。特定の実施形態において、OIEにおける第1のプロモーターは、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結され、致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列にさらに機能的に連結されない。
【0065】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドカセットは、式5'-LHA-LIE-OIE-RHA-3'を含む。特定の実施形態において、LIEは、OIEの上流である。特定の実施形態において、OIEにおける第1のプロモーターは、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結され、致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列にさらに機能的に連結されない。
【0066】
特定の実施形態において、DNA編集剤は、式5'-LHA-OIE-LIE-RHA-3'を含み、(i)LHAが、配列番号105に記載の配列を含むか、(ii)OIEが、配列番号101~103に記載の配列、もしくは配列番号107、配列番号103、および配列番号108に記載の配列を含むか、(iii)LIEが、配列番号92に記載の配列、もしくは、配列番号94に記載の配列、もしくは配列番号96に記載の配列、もしくは配列番号98に記載の配列を含むか、(iv)RHAが、配列番号106に記載の配列を含むか、または(v)(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の任意の組み合わせである。
【0067】
特定の実施形態において、OIEは、配列番号102に記載の配列に接続されている、配列番号103に記載の配列に接続されている、配列番号101に記載の配列を含む。特定の実施形態において、OIEは、配列番号101に記載の配列に接続されている、配列番号103に記載の配列に接続されている、配列番号102に記載の配列を含む。
【0068】
特定の実施形態において、OIEは、配列番号108に記載の配列に接続されている、配列番号103に記載の配列に接続されている、配列番号107に記載の配列を含む。特定の実施形態において、OIEは、配列番号107に記載の配列に接続されている、配列番号103に記載の配列に接続されている、配列番号108に記載の配列を含む。
【0069】
特定の実施形態において、(i)LHAは、配列番号105に記載の配列を含み、(ii)OIEは、配列番号116に記載の配列に接続されている、配列番号104に記載の配列に接続されている、配列番号102に記載の配列に接続されている、配列番号103に記載の配列に接続されている、配列番号101に記載の配列に接続されている、配列番号116に記載の配列に接続されている、配列番号100に記載の配列を含むか、またはOIEは、列番号116に記載の配列に接続されている、配列番号104に記載の配列に接続されている、配列番号101に記載の配列に接続されている、配列番号103に記載の配列に接続されている、配列番号102に記載の配列に接続されている、配列番号116に記載の配列に接続されている、配列番号100に記載の配列を含むか、またはOIEは、列番号116に記載の配列に接続されている、配列番号104に記載の配列に接続されている、配列番号108に記載の配列に接続されている、配列番号103に記載の配列に接続されている、配列番号107に記載の配列に接続されている、配列番号116に記載の配列に接続されている、配列番号100に記載の配列を含むか、OIEは、番号116に記載の配列に接続されている、配列番号104に記載の配列に接続されている、配列番号107に記載の配列に接続されている、配列番号103に記載の配列に接続されている、配列番号108に記載の配列に接続されている、配列番号116に記載の配列に接続されている、配列番号100に記載の配列を含み、(iii)LIEは、配列番号92に記載の配列を含むか、または配列番号104に記載の配列に接続されている、配列番号94に記載の配列もしくは配列番号96に記載の配列もしくは配列番号98に記載の配列を含み、かつ(iv)RHAは、配列番号106に記載の配列を含む。
【0070】
特定の実施形態において、DNA編集剤は、配列番号120~127のうちの1つの配列を含む。
【0071】
DNA編集剤は、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、ヒト成長ホルモン、およびその他の分泌型酵素レポーターを含むが、これらに限定されない、その存在または活性のいずれかによって容易に検出可能であるレポータータンパク質をコードする場合もある。一般に、レポーター遺伝子は、宿主細胞によって産生されないポリペプチドをコードし、細胞の分析、例えば、細胞の直接蛍光分析、放射性同位体分析または分光測光分析によって、通常はシグナル分析のために細胞を殺すことを必要とせずに、検出可能である。特定の実施形態において、レポーター遺伝子は、酵素をコードし、定性的、定量的、または半定量的機能または転写活性化によって検出可能である宿主細胞の蛍光特性における変化を生成する。例示的な酵素には、エステラーゼ、β-ラクタマーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ(組織プラスミノーゲンアクチベーターまたはウロキナーゼ)、および当業者に周知のまたは将来開発される適切な発色性または蛍光性基質によって機能が検出できる他の酵素が含まれる。レポーター遺伝子は、構築物のZ染色体への成功裏の組み込みについてレポートしてもよい。
【0072】
特定の実施形態において、DNA編集剤は、レポーターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。特定の実施形態において、レポーターポリペプチドは、緑色蛍光タンパク質(GFP)(配列番号115)、またはmCherry/RFP(配列番号119)であり得る。
【0073】
特定の実施形態において、DNA編集剤は、構築物との相同組換え事象を受けた形質転換細胞を効率的に選択するための陽性および/または陰性選択マーカーをさらに含む。陽性選択は、外来DNAを取り込んだクローンの集団を濃縮する手段を提供する。そのような陽性マーカーの非限定的な例には、グルタミンシンテターゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ならびにネオマイシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、およびブラストサイジンS耐性カセットなどの抗生物質耐性を付与するマーカーが含まれる。マーカー配列(例えば、陽性マーカー)のランダムな組み込みおよび/または脱離に対して陰性選択マーカーを選択する必要がある。このような陰性マーカーの非限定的な例には、ガンシクロビル(GCV)を細胞毒性ヌクレオシドアナログに変換する単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジフテリア毒素(DT)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(ARPT)が含まれる。
【0074】
特定の実施形態において、DNA編集剤のタンパク質をコードするコドンは、「最適化された」コドンであり、すなわち、コドンは、例えば、インフルエンザウイルスにおいて頻繁に使用されるコドンの代わりに、例えば、鳥類における高発現遺伝子において頻繁に現れるものである。そのようなコドン使用は、鳥類細胞におけるタンパク質の効率的な発現を提供する。コドンの使用パターンは、多くの種の高発現遺伝子についての文献で知られている(例えば、Nakamura et al.,1996,Nucleic Acids Res.24(1):214-5、McEwan et al.,1998,Biotechniques.24(1):131-6,138)。
【0075】
特定の実施形態において、DNA編集剤は、これらに限定されないがP2A、T2A、E2Aを含む2A(Wang et al.,Scientific Report 5,Article 16273(2015))、または内部リボソーム進入部位(IRES)配列などの自己切断ペプチドをさらに含み得る。
【0076】
左および右の相同性アーム
【0077】
HRについての相同性アームのサイズは、アーム間のインサートのサイズに比例する必要があることが概して認められている。当業者は、適切な長さの相同性アームを容易に決定し、構築するであろう。一実施形態において、相同性アームは、50塩基のような短さであり得る。特定の実施形態において、(i)LHAの長さは、約0.5~約5キロベース(kb)であるか、(ii)RHAの長さは、約0.5~約5kbであるか、または(iii)(i)および(ii)の任意の組み合わせである。特定の実施形態において、(i)LHAの長さは、約1.5kbであるか、(ii)RHAの長さは、約1.5kbであるか、または(iii)(i)および(ii)の任意の組み合わせである。特定の実施形態において、LHRおよび/またはRHAは、50塩基のような短さであり得る。
【0078】
特定の実施形態において、LHAの長さは、約0.5~約5キロベース(kb)である。特定の実施形態において、LHAの長さは、約0.5kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約1kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約1.5kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約2kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約2.5kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約3kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約3.5kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約4kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約4.5kbである。特定の実施形態において、LHAの長さは、約5kbである。特定の実施形態において、LHRは、50塩基まで短くし得る。
【0079】
特定の実施形態において、RHAの長さは、約0.5~約5キロベース(kb)である。特定の実施形態において、RHAの長さは約0.5kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約1kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約1.5kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約2kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約2.5kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約3kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約3.5kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約4kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約4.5kbである。特定の実施形態において、RHAの長さは、約5kbである。特定の実施形態において、RHAは、50塩基まで短くし得る。
【0080】
特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約0.5kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約1kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約1.5kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約2kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約2.5kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約3kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約3.5kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約4kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約4.5kbである。特定の実施形態において、LHAおよびRHAのそれぞれの長さは、約5kbである。特定の実施形態において、LHRおよびRHAは、50塩基まで短くし得る。
【0081】
特定の実施形態において、左および右の相同性アームのそれぞれの長さは、鳥の染色体DNAへの特異的組換えを可能にするのに十分である。一実施形態において、LHAおよび/またはRHAは、少なくとも500ヌクレオチド長であり、例えば、500~3000ヌクレオチド長である。典型的には、LHAおよび/またはRHA相同性アームの必要なサイズは、これらのアームに隣接するカセットの長さに依存する。カセットが小さければ小さいほど、短いアームを必要とし、逆もまた同様である。一実施形態において、相同性アームは、50塩基のような短さであり得る。
【0082】
特定の実施形態において、(i)LHAは、鳥の染色体Z上のオープンに転写された領域に位置する対応する第1のヌクレオチド配列と実質的に相同であるか、(ii)RHAは、鳥の染色体Z上のオープンに転写された領域に位置する対応する第2ヌクレオチド配列と実質的に相同であるか、または(iii)(i)および(ii)の両方である。
【0083】
当業者には明らかであるように、第1の配列および第2の配列が相同組換えによって互いに置き換え得る限り、第1の配列および第2の配列が、配列が類似または同一である場合、第1の配列は、第2の配列と「実質的に相同」である。相同組換えを試験および特定する方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0084】
特定の実施形態において、実質的に相同であるのは、少なくとも50%同一である。特定の実施形態において、実質的に相同であるのは、少なくとも60%同一である。特定の実施形態において、実質的に相同であるのは、少なくとも70%同一である。特定の実施形態において、実質的に相同であるのは、少なくとも80%同一である。特定の実施形態において、実質的に相同であるのは、少なくとも90%同一である。特定の実施形態において、実質的に相同であるのは、少なくとも95%同一である。特定の実施形態において、実質的に相同であるのは、少なくとも99%同一である。
【0085】
特定の実施形態において、LHAにおける第1のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と配列が50%~100%同一である。特定の実施形態において、LHAにおける第1のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と配列が80%~100%同一である。特定の実施形態において、LHAにおける第1のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と配列が85%~100%同一である。特定の実施形態において、LHAにおける第1のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と配列が90%~100%同一である。特定の実施形態において、LHAにおける第1のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と配列が95%~100%同一である。特定の実施形態において、LHAにおける第1のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と配列が99%~100%同一である。特定の実施形態において、LHAにおける第1のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と配列が100%同一である。
【0086】
特定の実施形態において、RHAにおける第4のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と配列が50%~100%同一である。特定の実施形態において、RHAにおける第4のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と配列が80%~100%同一である。特定の実施形態において、RHAにおける第4のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と配列が85%~100%同一である。特定の実施形態において、RHAにおける第4のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と配列が90%~100%同一である。特定の実施形態において、RHAにおける第4のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と配列が95%~100%同一である。特定の実施形態において、RHAにおける第4のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と配列が99%~100%同一である。特定の実施形態において、RHAにおける第4のヌクレオチド配列は、染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と配列が100%同一である。
【0087】
特定の実施形態において、LHAおよび/またはRHAは、組み込み部位として機能する鳥の染色体Z内の標的遺伝子座内の少なくとも1つのヌクレオチド配列と、相同であるか、または約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の相同性または同一性を示す。
【0088】
当業者は、「染色体におけるオープンに転写された領域」という用語は、概して、他の遺伝子も十分容易に転写されることを可能にするのに十分なレベルで転写される遺伝子を含む染色体の領域を指すことを理解するであろう。オープンに転写された領域の非限定的な例は、細胞または生物の一生の間で高度に転写されるハウスキーピング遺伝子に近接する領域である。オープンに転写された領域の他の非限定的な例は、遺伝子座の間の領域(例えば、クロマチン調節要素、非コードDNA、「ジャンクDNA」など)である。不十分に転写された領域の非限定的な例は、テロメアと呼ばれる各染色体の末端の領域であり、細胞または生物の一生の間で転写されない。特定の実施形態において、オープンに転写された領域は、鳥の染色体Z上のHint1Z遺伝子に、またはその下流に位置する。
【0089】
一実施形態において、LHAおよび/またはRHAは、鳥のZ染色体上に存在するゲノム配列に対応する。好ましくは、ゲノム配列は、転写活性のある遺伝子に、またはその下流(例えば、Hint1Z遺伝子(遺伝子ID:395424)に、またはその下流)に位置する。別の考えられる標的はIsl1(遺伝子ID369383)であり、これは、胚発生の初期段階から開始して発現する染色体Z上にもある。
図3は、Hint1Z遺伝子の下流にある染色体Z上の相同性アームの実施形態を示す。
【0090】
LHAおよび/またはRHA標的配列は、LHAおよび/またはRHA標的配列が、例えば自発的相同組換えまたは相同組換え修復(HDR)によって、細胞の任意の他の染色体ではなくZ染色体に特異的に組み込まれるように選択され得る。相同組換えは自然に発生し得る。さらに、LHAおよび/またはRHA標的配列は、第1の標的配列を染色体に組み込むためにどの方法に依存しているかによって選択され得る。ヌクレオチド配列を染色体に組み込む方法は、標的相同組換え、部位特異的リコンビナーゼ、および操作されたヌクレアーゼによるゲノム編集を含み、当該技術分野において周知である(例えば、Menke D.Genesis(2013)51:-618、Capecchi,Science(1989)244:1288-1292、Santiago et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2008)105:5809-5814、国際特許出願第WO2014/085593号、同第WO2009/071334号および同第WO2011/146121号、米国特許第8771945号、同第8586526号、同第6774279号および米国特許出願公開第2003/0232410号、同第2005/0026157号、同第2006/0014264号参照)。PBトランスポザーゼも考えられる。目的の遺伝子に核酸の変化を導入するための薬剤は、公的に利用可能なリソースによって設計され得る。
【0091】
特定の実施形態において、LHAの最初の5'ヌクレオチドは、染色体Z、位置44,914,961に対応する。特定の実施形態において、LHAの第1の対応するヌクレオチド配列は、染色体Z、位置44,914,961~位置44,916,456に位置する。
【0092】
特定の実施形態において、LHAの最初の5'ヌクレオチドは、Gallus gallus染色体Z、アセンブリGRCg6a、NC_006127.5、位置44,914,961に対応する。特定の実施形態において、LHAの第1の対応するヌクレオチド配列は、Gallus gallus染色体Z、アセンブリGRCg6a、NC_006127.5、位置44,914,961~位置44,916,456に位置する。
【0093】
特定の実施形態において、RHAの最初の5'ヌクレオチドは、染色体Z、位置44,916,480に対応する。特定の実施形態において、RHAの第2の対応するヌクレオチド配列は、染色体Z、位置44,916,480~位置44,918,043に位置する。
【0094】
特定の実施形態において、RHAの最初の5'ヌクレオチドは、Gallus gallus染色体Z、アセンブリGRCg6a、NC_006127.5、位置44,916,480に対応する。特定の実施形態において、RHAの第2の対応するヌクレオチド配列は、Gallus gallus染色体Z、アセンブリGRCg6a、NC_006127.5、位置44,916,480~位置44,918,043に位置する。
【0095】
特定の実施形態において、(i)LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列、もしくはその断片、例えば、配列番号105に記載のヌクレオチド配列の少なくとも50個、または少なくとも500個の連続するヌクレオチドを含むか、(ii)RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列、もしくはその断片、例えば、配列番号106に記載のヌクレオチド配列の少なくとも50個、または少なくとも500個の連続するヌクレオチドを含むか、または(iii)(i)および(ii)の両方である。特定の実施形態において、(i)LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列、もしくは配列番号105に記載のヌクレオチド配列の少なくとも1000個の連続するヌクレオチドの断片を含むか、(ii)RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列、もしくは配列番号106に記載のヌクレオチド配列の少なくとも1000個の連続するヌクレオチドの断片を含むか、または(iii)(i)および(ii)の両方である。
【0096】
特定の実施形態において、LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列からの少なくとも50個、または少なくとも500個の連続するヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列からの少なくとも1000個の連続するヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列からの500個の連続するヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列からの1000個の連続するヌクレオチドを含む。
【0097】
特定の実施形態において、RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列からの少なくとも50個、または少なくとも500個の連続したヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列からの少なくとも1000個の連続するヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列からの500個の連続するヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列からの1000個の連続するヌクレオチドを含む。
【0098】
特定の実施形態において、LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列、または配列番号105に記載のヌクレオチド配列の少なくとも50個、または少なくとも500個の連続するヌクレオチドの断片を含み、RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列、または配列番号106に記載のヌクレオチド配列の少なくとも50個、または少なくとも500個の連続するヌクレオチドの断片を含む。特定の実施形態において、LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列、または配列番号105に記載のヌクレオチド配列の少なくとも1000個の連続するヌクレオチドの断片を含み、RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列、または配列番号106に記載のヌクレオチド配列の少なくとも1000個の連続するヌクレオチドの断片を含む。特定の実施形態において、LHAは、配列番号105に記載のヌクレオチド配列を含み、RHAは、配列番号106に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0099】
光遺伝学的誘導性要素
【0100】
プロモーター
【0101】
当業者には明らかであるように、「ヌクレオチド配列に機能的に連結したプロモーター」は、プロモーターがヌクレオチド配列の転写において上流に位置し、それにシスで関与することを包含する。ヌクレオチド配列に機能的に連結したプロモーターの非限定的な例は、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードするOIEにおけるヌクレオチド配列の転写を駆動するOIEにおける第1のプロモーターである。
【0102】
特定の実施形態において、第1のプロモーターは、鳥における構成的プロモーターである。当業者には明らかであるように、「構成的プロモーター」は、その関連するヌクレオチド配列または遺伝子の継続的な転写を可能にするプロモーターを包含する。
【0103】
特定の実施形態において、第1のプロモーターは、鳥における誘導性プロモーターである。当業者には明らかであるように、「誘導性プロモーター」は、その関連するヌクレオチド配列または遺伝子の非継続的な転写を可能にするプロモーターを包含する。特定の実施形態において、非継続的な転写は、インデューサーによって調節される。特定の実施形態において、インデューサーは、鳥の細胞に対して外因性である。
【0104】
特定の実施形態において、第1のプロモーターは、pCAGG(配列番号100)、pGK(配列番号109)、pCMV(配列番号110)、phSyn(配列番号111)、またはpEF1-a(配列番号112)であり得る。
【0105】
インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ
【0106】
特定の実施形態において、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素は、Creリコンビナーゼ(Cre)(配列番号113)、またはMag(配列番号114および配列番号65)であり得る。
【0107】
特定の実施形態によれば、インデューサーは、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列の転写を開始または増加させる。他の実施形態において、インデューサーは、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼをコードするmRNAの翻訳を開始または増加させる。さらに他の実施形態において、インデューサーは、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性を開始または増加させる。特定の実施形態によれば、インデューサーは、部位特異的リコンビナーゼの非機能的断片を互いに複合体化することにより、機能的インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の形成を開始または増加させる。当業者には明らかであるように、酵素が自然においてポリペプチドとして見出される酵素の複数の非機能的断片(ペプチド)は、
図2に示されるように、各断片(ペプチド)が他の断片(ペプチド)に共有結合されていないにもかかわらず、相互作用して機能的酵素を形成し得る。特定の実施形態において、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ、インデューサーの存在下で結合して活性インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素を形成する、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼの非機能的ペプチド断片を含む。
【0108】
本明細書で使用される「誘導性」という用語は、関与する分子機構に拘わらず、スイッチのすべての側面を包含してもよい。したがって、スイッチは、抗生物質ベースの誘導システム、電磁エネルギーベースの誘導システム、小分子ベースの誘導システム、核受容体ベースの誘導システムおよびホルモンベースの誘導システムを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、スイッチは、光誘導システム、テトラサイクリン(Tet)/DOX誘導システム、アブシジン酸(ABA)誘導システム、クメートリプレッサー/オペレーターシステム、40HT/エストロゲン誘導システム、エクジソンベースの誘導システムまたはFKBP12/FRAP(FKBP12-ラパマイシン複合体)誘導システムである。インデューサーが孵化していない卵に投与される特定の例において、インデューサーは卵の殻に浸透することができる。特定の例において、インデューサーは、卵内の雌胚に対して毒性がなく、卵内の雌胚の発育を変化させない。
【0109】
本明細書で使用する場合、「スイッチ」という用語は、協調して作用して変化に影響を与える単一の成分または成分のセットを指し、その機能の活性化、抑制、促進または終了などの生物学的機能のすべての側面を包含する。一実施形態では、スイッチは、遺伝子調節に使用される誘導システムおよび/または抑制システムに関連する。一般に、遺伝子発現を可能にする何らかの分子またはエネルギー形態(インデューサーと呼ばれる)が存在しない限り、誘導システムはオフになる場合がある。この分子は「発現を誘導する」と言われている。これが起こる方法は、制御機構および細胞の種類の違いに依存する。抑制システムは、遺伝子発現を抑制する何らかの分子またはエネルギー形態(サプレッサーと呼ばれる)の存在下以外は「オフ」である。これが起こる方法は、制御機構および細胞の種類の違いに依存する。
【0110】
例示的な光遺伝学的スイッチを
図4A-4Cに示し、これらの各々は、Arabidopsis thaliana由来の感光性二量体化タンパク質ドメインであるクリプトクロム2(CRY2)およびCIB1、ならびにエフェクター分子としての部位特異的リコンビナーゼを利用する。CRY2はCreリコンビナーゼの一方の半分に対してインフレームで融合されるが、CIB1はCreリコンビナーゼの他方の半分、すなわちスプリットリコンビナーゼ酵素に対してインフレームで融合される。したがって、インデューサー(青色光)が提供されるとき、CRY2およびCIB1は、ヘテロ二量体化して、部位特異的組換えを実行できる機能的Creリコンビナーゼを産生する。
【0111】
特定の実施形態において、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の発現は、インデューサーによって誘導される。特定の実施形態において、インデューサーは、電磁エネルギーである。特定の実施形態において、電磁エネルギーは、380~740nmの波長の可視光、または可視光の成分である。特定の実施形態において、可視光の成分は、波長450~485nmの青色光である。
【0112】
一実施形態において、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼは、電磁エネルギーを使用して誘導される。可視光の成分は、450nm~700nmまたは450nm~500nmの範囲の波長、すなわち青色光を有してもよい。青色光は、少なくとも0.2mW/cm2または少なくとも4mW/cm2の強度を有してもよい。可視光の成分は、620nm~700nmの範囲の波長、すなわち赤色光を有してもよい。任意の順序および任意の組み合わせでの可視光の単一または複数の適用が考えられる。可視光は、単一もしくは複数の連続的な適用として、またはパルス(パルス送達)として送達されてもよい。
【0113】
そのような光遺伝学的スイッチの例は、Muller et al.,Biol Chem.2015 Feb,396(2):145-52.doi:10.1515/hsz-2014-0199、Motta Mena et al.,Nat Chem Biol.2014 Mar,10(3):196-202、およびWO2014/018423に記載されている。
【0114】
P1バクテリオファージ由来のCreリコンビナーゼおよび酵母Saccharomyces cerevisiae由来のFlpリコンビナーゼは、それぞれが特有の34塩基対DNA配列(それぞれ「Lox」および「FRT」と呼ばれる)を認識する部位特異的DNAリコンビナーゼである。Lox部位またはFRT部位のいずれかに隣接する配列は、それぞれCreまたはFlpリコンビナーゼの発現時に部位特異的組換えを介して容易に除去され得る。
【0115】
特定の実施形態において、リコンビナーゼ認識部位は、Lox511、Lox5171、Lox2272、m2、Lox71、Lox66、FRT、F1、F2、F3、F4、F5、FRT(LE)、FRT(RE)、attB、attP、attL、またはattRであり得る。
【0116】
例えば、Lox配列は、13塩基対逆方向反復配列が隣接する非対称の8塩基対スペーサー領域で構成されている。Creは、13塩基対の逆方向反復に結合し、スペーサー領域内で鎖の切断および再連結を触媒することにより、34塩基対のLox DNA配列を再結合する。スペーサー領域においてCreによって作られた千鳥状DNA切断は、6塩基対によって分離されて、同じ重複領域を有する組換え部位のみが再結合することを保証する相同性センサとして機能する重複領域を与える。
【0117】
特定の実施形態において、部位特異的リコンビナーゼシステムは、相同組換えの後、鳥の染色体から、DNA、例えば、選択カセットを除去するために使用される。注目すべきことに、CreおよびFlpリコンビナーゼは、34塩基対のLoxまたはFRTの「瘢痕」を残す。残っているLoxまたはFRT部位は通常、改変された遺伝子座のイントロンまたは3'UTRに取り残されていて、これらの部位は典型的には遺伝子機能を著しく妨害しない。このシステムはまた、一時的にまたは組織特異的に不活性化または活性化できる条件変更された対立遺伝子の生成を可能にする。
【0118】
したがって、Cre/LoxおよびFlp/FRT組換えは、対象の変異を含む3'および5'相同性アームを有するターゲティングベクター、2つのLoxまたはFRT配列、および典型的には2つのLoxまたはFRT配列間に配置される選択可能なカセットの導入を含み得る。陽性選択が適用され、標的化変異を含む相同組換えが特定される。陰性選択と組み合わせたCreまたはFlpの一時的な発現は、選択カセットの切除をもたらし、カセットが欠損した細胞を選択する。最終的な標的化対立遺伝子には、外因性配列のLoxまたはFRT瘢痕が含まれる。
【0119】
特定の実施形態において、インデューサーは、熱、超音波、電磁エネルギー、または化学物質である。特定の実施形態において、インデューサーは、産卵前の鳥の内部での卵生産の過程の間に卵に送達される。
【0120】
不要な雄胚は日光(または例として青色光)に自由にさらされ得るが、トランスジェニック細胞および生物は、本明細書で提供される光遺伝学的システムの望ましくない活性化を防ぐために特別な条件下に保たれる必要がある。また、雌鳥は緑色/赤色光の条件下で飼育すると生産性が高くなることが知られている。
【0121】
特定の実施形態において、本明細書で提供される方法は、緑色光の下で実行される。特定の実施形態において、本明細書で提供される細胞および生物は、緑色光の下に保たれる。特定の実施形態において、緑色光は、500~565nmの波長のものである。
【0122】
特定の実施形態において、本明細書で提供される方法は、赤色光の下で実行される。特定の実施形態において、本明細書で提供される細胞および生物は、赤色光の下に保たれる。特定の実施形態において、赤色光は、625~740nmの波長のものである。
【0123】
エネルギー活性化のいくつかの方法、例えば、同様の効果を有する電界エネルギーおよび/または超音波が企図される。必要に応じて、スイッチのタンパク質対形成は、別のエネルギー源による最大の効果のために変更および/または修正される。
【0124】
電界エネルギーは、in vivo条件下で約1ボルト/cm~約10キロボルト/cmの1つ以上の電気パルスを使用して、実質的に当技術分野で説明されているように投与され得る。パルスに代えて、またはパルスに加えて、電界が連続的に送達されてもよい。電気パルスは、1~500ミリ秒間、好ましくは1~100ミリ秒間印加し得る。電界は、約5分間連続的にまたはパルス状に印加されてもよい。本明細書で使用される場合、「電界エネルギー」は、細胞がさらされる電気エネルギーである。特定の実施形態において、電界は、in vivo条件下で約1ボルト/cm~約10キロボルト/cmまたはそれ以上の強度を有する(例えばWO97/49450参照)。
【0125】
本明細書で使用される場合、「電界」という用語は、可変容量および電圧で1つ以上のパルスを含み、指数関数的および/または方形波、および/または、変調波および/または変調方形波形態を含む。電界および電気への言及は、細胞の環境における電位差の存在への言及を含むようにとられるべきである。そのような環境は、当該技術分野で知られているように、静電気、交流(AC)、直流(DC)などによって設定されてもよい。電界は、均一、不均一、またはそうでなくてもよく、時間依存的に強度および/または方向が変化してもよい。
【0126】
電界の単一または複数の印加、および超音波の単一または複数の印加も、任意の順序および任意の組み合わせで可能である。超音波および/または電場は、単一または複数の連続的な印加として、またはパルス(パルス送達)として送達されてもよい。
【0127】
致死誘導要素
【0128】
当業者には明らかであるように、「第2のタンパク質の活性に作動可能に連結する第1のタンパク質」は、第2のタンパク質がトランスで第1のタンパク質の作動を制御することを包含する。第2のタンパク質の活性に作動可能に連結する第1のタンパク質の非限定的な例は、OIEにおいてコードされるインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性によって活性になる、LIEにおいてコードされる致死促進タンパク質である。「シスで」および「トランスで」という用語は、当業者に広く受け入れられ、理解されている。
【0129】
インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素が、トランスで致死促進タンパク質を活性化するので、同じ分子または異なる分子におけるOIEおよびLIEのそれぞれの位置は、異なる実施形態において異なり得る。特定の実施形態において、OIEおよびLIEは、同じ分子内にある。特定の実施形態において、OIEおよびLIEは、異なる分子内にある。
【0130】
特定の実施形態において、活性化酵素(例えば、Creなどのリコンビナーゼ酵素)は、致死遺伝子カセットから分離されている。この場合、活性化酵素は雄もしくは雌の鳥のどちらかのゲノムに挿入され、不活性な致死カセットは鳥の対応する性別のZ染色体に挿入される。この場合、雄の胚の致死性の活性化は、2つのトランスジェニック親を交配するだけで実行される。
図19A~19Bは、活性化酵素(例えば、Cre)が致死遺伝子カセットから分離されているターゲティングベクターの実施形態である。
【0131】
特定の実施形態において、LIEは、致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列に機能的に連結した第2のプロモーターをさらに含む。特定の実施形態において、第2のプロモーターは、鳥における構成的プロモーターである。特定の実施形態において、第2のプロモーターは、鳥における誘導性プロモーターである。特定の実施形態において、第2のプロモーターは、pCAGG(配列番号100)、pGK(配列番号109)、pCMV(配列番号110)、phSyn(配列番号111)、またはpEF1-a(配列番号112)であり得る。
【0132】
致死促進タンパク質
【0133】
本明細書で使用される場合、「致死タンパク質」という用語は、鳥類の胚(例えば、雄胚)に対して致死性であり、したがって、卵からの生きた雄の鳥の孵化を防止するタンパク質を指す。
【0134】
特定の実施形態において、N-カドヘリンなどの初期胚発生の基本段階を妨害し得る致死誘導タンパク質、および骨形成タンパク質(BMP)または線維芽細胞成長因子(FGF)によって媒介されるものなどの必須のシグナル伝達経路を妨害するタンパク質。
【0135】
特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、毒素、アポトーシス促進タンパク質、ウィングレス/統合(Wnt)シグナル伝達経路の阻害剤、骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニストまたはそれらの致死誘導断片であり得る。特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、毒素またはその致死誘導断片である。特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、アポトーシス促進性タンパク質またはその致死誘導断片である。特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、Wntシグナル伝達経路の阻害剤またはその致死誘導断片である。特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、BMPアンタゴニストまたはその致死誘導断片である。特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、FGFアンタゴニストまたはその致死誘導断片である。当業者には明らかであるように、分子の「致死誘導断片」は、致死を誘導するのに十分な分子の任意の断片である。
【0136】
特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、ジフテリア毒素A(DTA)(配列番号93)、野生型カスパーゼ3(配列番号95)、構成的に活性なカスパーゼ3(配列番号97)、またはNoggin(配列番号99)であり得る。特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、シュードモナス外毒素(GenBankアクセッション番号ABU63124)、ジフテリア毒素(GenBankアクセッション番号AAV70486)、またはリシン毒素(GenBankアクセッション番号EEF27734)であり得る。特定の実施形態において、致死誘導タンパク質は、インターロイキン2(GenBankアクセッション番号CAA00227)、CD3(GenBankアクセッション番号P07766)、CD16(GenBankアクセッション番号NP_000560.5)、インターロイキン4(GenBankアクセッション番号NP_000580.1)またはインターロイキン10(GenBankアクセッション番号P22301)であり得る。
【0137】
特定の実施形態において、致死は、RNA誘導DNAエンドヌクレアーゼ酵素によって媒介される。特定の実施形態において、DNA編集剤は、鳥の必須遺伝子を標的とするガイドRNAをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、該ヌクレオチド配列はインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に作動可能に連結されている。特定の実施形態において、必須遺伝子は、骨形成タンパク質受容体IA型(BMPR1A、遺伝子ID:396308)、骨形成タンパク質2(BMP2、遺伝子ID:378779)、骨形成タンパク質4(BMP4、遺伝子ID:396165)、または線維芽細胞成長因子受容体1(FGFR1、遺伝子ID:396516)であり得る。
【0138】
当業者には明らかであるように、「RNA誘導DNAエンドヌクレアーゼ酵素」は、DNAをほどき、ガイドRNA分子に相補的な部位を探すDNAエンドヌクレアーゼ酵素を包含する。特定の実施形態において、ガイドRNA分子は、配列番号66~77のうちの1つに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0139】
セーフロック要素
【0140】
一実施形態において、本明細書に開示のDNA編集剤は、セーフロック要素が除去されるまで光遺伝子致死機構が不活性であることを保証する「セーフロック」要素をさらに含み得る。この要素は基本的に、既定では光遺伝子致死システムを不活性の状態にする。光遺伝子致死システムは、ゲノム編集された細胞が、DNA編集剤に由来するセーフロック要素を削除できる薬剤にさらされた場合にのみ活性になる。この「セーフロック」機構は、光遺伝子システムは本質的に不活性であるため、製造プロセス全体を通じて、HRを受けた細胞を光から保護する必要がなくなることを保証する。
【0141】
一実施形態において、セーフロック要素は、OIEにおけるプロモーターの下流だが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼをコードする配列の上流に挿入される。セーフロック要素は、OIEによってコードされるインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼの転写を防ぐヌクレオチド配列(STOP要素)を含む(
図26A、不活性な「ロック」状態を参照)。一実施形態において、セーフロック要素は、タンパク質のコード配列とそれに続くポリアデニル化部位を含む。他の実施形態において、下流のコード配列の転写を妨げる任意の他の配列もまた、安全なロック要素として使用され得る。一実施形態において、セーフロック要素は、2つのFRT部位に隣接する。したがって、該セーフロック要素は、Flpリコンビナーゼの発現時に除去され得る。セーフロック要素が除去されると、OIEにおいてコードされた光遺伝子が転写され、光依存的方法で活性になり得る(
図26A、活性な「ロック解除」状態)。
【0142】
別の実施形態において、セーフロック要素およびインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼをコードする配列は、Lox配列に隣接している(
図26B、不活性な「ロック」状態)。Creリコンビナーゼを発現すると、セーフロック要素およびインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼをコードする配列を除去することができ、したがって、LIEにおいてコードされる致死促進タンパク質の発現が可能になる(
図26B、致死活性化状態)。
【0143】
キメラヒヨコ
【0144】
本明細書で使用される場合、「キメラの」、「キメラ」または「キメラヒヨコ」という用語は、本明細書に開示のDNA編集剤を含む鳥細胞、または本明細書に開示のDNA編集剤を含む細胞を有する鳥を指す。キメラ胚またはキメラ成鳥は「代理」と呼ばれ得、したがって、これらの用語は同じ意味で使用できることにも注意する必要がある。キメラ鳥細胞の代表的な例には、本明細書に開示のDNA編集剤を含む生殖腺PGC、血液PGC、生殖三日月環PGC、または配偶子などの鳥の原始生殖細胞(PGC)が挙げられるが、これらに限定されない。キメラ鳥の代表的な例には、本明細書に開示されるDNA編集剤を含む細胞を有するニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、またはダチョウが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
本明細書で使用する「方法」という用語は、化学、薬理学、生物学、生化学、医学の実務家により既知の、または、化学、薬理学、生物学、生化学、医学の実務家による既知の方法、手段、技術、および手順から容易に開発される方法、手段、技術、および手順を含むが、これらに限定されない、所定のタスクを達成するための方法、手段、技術、および手順を指す。
【0146】
一実施形態において、式5'-OIE-LIE-3'または式5'-LIE-OIE-3'を含む、本明細書に開示の外因性ポリヌクレオチドカセットを含む鳥細胞が提供され、(i)OIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結した第1のプロモーターを含む、光遺伝学的誘導性要素であり、(ii)LIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に機能的に連結した致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列を含む、致死誘導要素である。外因性ポリヌクレオチドカセットは、細胞のZ染色体に安定して組み込まれる。
【0147】
別の態様では、本明細書に開示されるような外因性ポリヌクレオチドカセットを含む鳥細胞を含む、鳥細胞集団がさらに提供される。ポリヌクレオチドカセットは、式5'-OIE-LIE-3'または式5'-LIE-OIE-3'を含み、(i)OIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結した第1のプロモーターを含む、光遺伝学的誘導性要素であり、(ii)LIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に機能的に連結した致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列を含む、致死誘導要素である。外因性ポリヌクレオチドカセットは、細胞のZ染色体に安定して組み込まれる。
【0148】
特定の実施形態において、鳥の細胞は、式5'-LHA-OIE-LIE-RHA-3'または式5'-LHA-LIE-OIE-RHA-3'を含む外因性ポリヌクレオチドカセットを含み、(i)LHAが、鳥の染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第1のヌクレオチド配列を含む、左相同性アームであり、(ii)OIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結した第1のプロモーターを含む、光遺伝学的誘導性要素であり、(iii)LIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に機能的に連結した致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列を含む、致死誘導要素であり、(iv)RHAが、鳥の染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第4のヌクレオチド配列を含む、右相同性アームである。
【0149】
特定の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドカセットを含む鳥の細胞は、鳥の始原生殖細胞(PGC)を含む。特定の実施形態において、鳥のPGCは、生殖腺PGC、血液PGC、または生殖三日月環PGCであり得る。
【0150】
本明細書で使用される場合、「始原生殖細胞」および「PGC」という用語は、初期胚に存在し、成鳥において半数体配偶子(すなわち、精子および卵子)に分化/発達させることができる二倍体細胞を指す。PGCは、胚盤葉からも発育の初期段階で入手し得る。
【0151】
当業者に知られているように、始原生殖細胞は、これらに限定されないが、生殖隆起、発育中の生殖腺、血液、および生殖三日月環などの発育中の鳥類胚における種々の発育段階および様々な部位から分離し得る(Chang et al.,Cell Biol Int 21:495-9,1997、Chang et al.,Cell Biol Int 19:143-9,1995、Allioli et al.,Dev Biol 165:30-7,1994、Swift,Am J Physiol 15:483-516、PCT国際公報第WO99/06533号)。生殖隆起は、当業者に周知の発育中の胚の部分である(Strelchenko,Theriogenology 45:130-141,1996、Lavoir,J Reprod Dev 37:413-424,1994)。典型的には、PGCは過ヨウ素酸シッフ(PAS)技術によって陽性に染色され得る。いくつかの種では、抗SSEA抗体を使用して、PGCを特定できる(SSEA抗原を表示しないPGCの1つの顕著な例外はシチメンチョウである)。フィコール密度勾配遠心分離を使用した血液からのPGCの濃縮を含むPGCの単離および精製のための様々な技術が当該技術分野で知られている(Yasuda et al.,J Reprod Fertil 96:521-528,1992)。
【0152】
PGCのin vitro培養は、ニワトリおよびウシ血清、馴化培地、フィーダー細胞、FGF2などの成長因子を含む培地を使用して可能である(van de Lavoir et al.2006,Nature 441:766-769.doi:10.1038/nature04831、Choi et al.2010,PLoS ONE 5:e12968.doi:10.1371/journal.pone.0012968、MacDonald et al.,2010.PLoS ONE 5:e15518.doi:10.1371/journal.pone.0015518)。FGF、インスリンおよびTGF-βシグナル伝達経路を活性化する成長因子を含むフィーダー代替培地を使用してPGCを増殖できることが示された(Whyte et al.2015,Stem Cell Rep 5:1171-1182.doi:10.1016/j.stemcr.2015.10.008)。
【0153】
原始生殖細胞(PGC)は、任意の適切な技術によって本開示の主題を実施するために提供および処方され、所望に応じて使用前に保存、凍結、培養などされ得る。例えば、原始生殖細胞は、適切な胚形成期にドナー胚から収集され得る。鳥類の発育の段階は、2つの技術的に認知されたステージ分類システム、すなわち、発育の前原始線条段階に言及するのにローマ数字を使用するEyal-Giladi & Kochavシステム(EG&K:Eyal-Giladi & Kochav,Dev Biol 49:321-327,1976)、および産卵後段階に言及するのにアラビア数字を使用するHamburger & Hamiltonステージ分類システム(H&H:Hamburger & Hamilton,J Morphol 88:49-92,1951)のうちの1つによって本明細書では記載している。特に明記しない限り、本明細書で記載している段階は、H&Hステージ分類システムによる段階である。特定の実施形態において、PGCは、ステージ14(H&H)胚から分離された血液に由来する。特定の実施形態において、PGCは、ステージ15(H&H)胚から分離された血液に由来する。特定の実施形態において、PGCは、ステージ16(H&H)胚から分離された血液に由来する。
【0154】
一実施形態において、PGCは、ステージ4で、または後期ステージにおいて血液、生殖隆起、もしくは生殖腺から収集される細胞を有するステージ30を介して、生殖三日月環ステージで分離され得る。始原生殖細胞は、概して、体細胞の二倍のサイズであり、サイズに基づいて体細胞から容易に区別および分離され得る。雄(または同型配偶子)の始原生殖細胞(ZZ)は、特定のドナーから生殖細胞を収集し、そのドナーから他の細胞をタイピングするなど、任意の適切な技術によって異型配偶子始原生殖細胞(Zw)と区別され得、収集された細胞はタイピングされた細胞と同じ染色体型である。
【0155】
PGCの使用に対する代替は、本明細書に開示されているDNA編集剤を使用した精子の直接トランスフェクションである(Cooper et al.,2016 Transgenic Res 26:331-347,doi:10.1007/s11248-016-0003-0)。
【0156】
一実施形態において、in vitroで編集されたPGCからキメラ鳥を生成するために、外因性編集細胞は、その内因性PGCが生殖隆起に移動する段階で、代理宿主胚に静脈注射される。「ドナー」PGCは、代理宿主胚と同じ種または異なる種を有してもよい。編集された「ドナー」PGCは、生存可能なままである必要があり、一実施形態において、それらが形成する生殖腺にコロニー形成し、編集された染色体を、生殖細胞系列を通じて伝達する場合、内因性PGCを打ち負かす。ドナーPGCに利点を提供するために、内因性PGCの数を化学的または遺伝的アブレーションによって減らすことができる(Smith et al.,2015,Andrology 3:1035-1049.doi:10.1111/andr.12107)。代理胚の胚盤葉を乳化ブスルファンにさらすと、ドナーPGCの生殖細胞系列伝達が90%超に増加することが示されているが、PGCを培養または凍結保存した場合、この率は大幅に低下する(Nakamura et al.,2008,Reprod Fertil Dev 20:900-907.doi:10.1071/RD08138、Naito et al.,2015,Anim Reprod Sci.153:50-61.doi:10.1016/j.anireprosci.2014.12.003)。天然PGCに対する編集されたPGCの比率を歪める他の方法は、米国特許出願第2006/0095980号に記載されている。
【0157】
特定の実施形態において、概して遺伝子的に改変されたPGCは、当該技術分野で知られている成体生殖腺に移植され得る(Trefil et al.,2017 Sci Rep,Oct 27;7(1)/:14246 doi:10.1038/s41598-017-14475-w)。
【0158】
遺伝的に改変された細胞(例えば、PGC)は、細胞を解離(例えば、機械的解離により)し、細胞を薬学的に許容可能な担体(リン酸緩衝食塩水など)と密接に混和することにより、他の鳥に投与するために処方され得る。一実施形態において、始原生殖細胞は、生殖腺始原生殖細胞、または血液始原生殖細胞である(「生殖腺」または「血液」は元の胚ドナーの起源の組織を指す)。投与される始原生殖細胞は、異型配偶子(Zw)または同型配偶子(ZZ)であり得る。一実施形態において、PGCは、生理学的に許容される担体で、約6~約8または8.5のpHで、所望の効果を達成するのに適した量で投与され得る(例えば、胚あたり100から30,000PGC)。PGCは、他の成分または細胞を含まずに投与され得、または他の細胞および成分は、PGCとともに投与され得る。
【0159】
始原生殖細胞のin-ovoでのレシピエント動物への投与は、PGCが発生中の生殖腺になおも移動し得ることができる任意の適切な時点で実施することができる。一実施形態において、投与は、Eyal-Giladi & Kochav(EG&K)ステージ分類システムによる約ステージIXから胚発生のHamburger & Hamiltonステージ分類システムによる約ステージ30まで行われるか、別の実施形態においては、ステージ15で行われる。したがって、ニワトリの場合、投与の時期は、胚発生の1、2、3、または4日目であり、例えば、2日目~2.5日目である。投与は、典型的には、羊膜(胚を含む)、卵黄嚢などによって規定される領域など、任意の適切な標的部位への注入によって行われる。一実施形態において、細胞は、胚自体(胚体壁を含む)に注入される。代替の実施形態において、胚への血管内または体腔内注射を使用し得る。他の実施形態では、注入は心臓に行われる。本明細書で開示の主題の方法は、in-ovoでレシピエント鳥の事前に滅菌して(例えば、ガンマ線またはX線照射によるブスルファンを使用する化学処理によって)実行され得る。本明細書で使用される場合、「滅菌」という用語は、内因性PGCに由来する配偶子を部分的にまたは完全に産生し得ないことを指す。ドナー配偶子がそのようなレシピエントから収集されるとき、それらはドナーおよびレシピエントの配偶子との混合物として収集され得る。この混合物を直接使用し得るか、この混合物をさらに処理して、その中のドナー配偶子の割合を高め得る。
【0160】
始原生殖細胞のin-ovo投与は、任意の適切な技術により、手動でまたは自動化された方法で実行され得る。一実施形態では、in-ovo投与は注入により行われる。in-ovo投与の機構は重要ではないが、処理が孵化率を過度に低下させないように、機構が胚の組織および器官またはそれを取り囲む胚体外膜を過度に損傷させてはならない。約18~26ゲージの針を取り付けた皮下注射器が目的に適している。直径約20~50ミクロンの開口部を備えたガラス製の先鋭的引き抜きピペットを使用してもよい。発生の正確なステージと胚の位置に応じて、1インチ針は、ヒヨコの上にある流体またはヒヨコ自体の中のいずれかで終端する。針の損傷または鈍化を防止するために、針を挿入する前に、シェルにパンチでまたはドリルで下穴を開けることができる。必要に応じて、卵をワックスなどの実質的に細菌不浸透性シーリング材料でシールして、その後の望ましくない細菌の侵入を防ぐことができる。鳥類の胚に対する高速注入システムは、本明細書で開示の主題を実施するのに適していると想定される。本明細書に開示の方法を実施するように適合されるそのような装置すべてが、本明細書に記載されている始原生殖細胞の製剤を含む注射器を含み、注射器は、装置によって担持された卵を注入するように位置決めされる。さらに、注射後に卵における穴をシールするために、注入装置に動作可能に接続されたシーリング装置が提供され得る。別の実施形態において、引かれたガラスマイクロピペットを使用して、PGCを卵内の適切な場所、例えば、直接血流内に、静脈もしくは動脈のいずれかに、または直接心臓内に、導入し得る。
【0161】
卵に改変されたPGCが注入されると、キメラ胚はインキュベートされて孵化する。一実施形態において、ヒヨコは、性的成熟まで飼育され、キメラ鳥はドナーPGCに由来する配偶子を産生する。
【0162】
特定の実施形態において、鳥の細胞は、鳥の配偶子を含む。次に、キメラ由来(または、本明細書での上記の記載のように直接遺伝子操作された材料由来)の配偶子(卵または精子)を使用して、ファウンダーニワトリ(F1)を飼育する。当該技術分野で既知の分子生物学の技術(例えば、PCRおよび/またはサザンブロット)を使用して、生殖細胞系列伝達を確認してもよい。F1ニワトリを戻し交配して、ホモ接合ZZキャリア雄とキャリア雌を生成し得る(F2)。次いで、ファウンダーニワトリ由来配偶子F2を使用して、繁殖コロニーを拡大し得る。コロニーは、通常、性的成熟まで成長される。これらの群れから得られる受精卵は、致死表現型を誘発するインデューサー(例えば、青色光)へさらすことによって、雄の初期胚死亡について試験され得る。誘導(例えば、青色光照明による)後、卵をインキュベートし(例えば、8日間)、スクリーニングして(例えば、ライトキャンドリングによって)、初期胚死亡を検出する。
【0163】
一実施形態において、鳥細胞集団に式5'-OIE-LIE-3'または式5'-LIE-OIE-3'を有する外因性ポリヌクレオチドカセットを投与することを含む、キメラ鳥を生成する方法が提供され、(i)OIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結した第1のプロモーターを含む、光遺伝学的誘導性要素であり、(ii)LIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に機能的に連結した致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列を含む、致死誘導要素である。外因性ポリヌクレオチドカセットは、細胞のZ染色体に安定して組み込まれる。次に、これらのゲノム編集された細胞は、レシピエント鳥胚に注入される。
【0164】
別の実施形態において、鳥細胞集団に式5'-LHA-OIE-LIE-RHA-3'または式5'-LHA-LIE-OIE-RHA-3'を有する外因性ポリヌクレオチドカセットを投与することを含む、キメラ鳥を生成する方法が提供され、(i)LHAが、鳥の染色体Z上の第1の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第1のヌクレオチド配列を含む、左相同性アームであり、(ii)OIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素をコードする第2のヌクレオチド配列に機能的に連結した第1のプロモーターを含む、光遺伝学的誘導性要素であり、(iii)LIEが、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ酵素の活性に機能的に連結した致死促進タンパク質をコードする第3のヌクレオチド配列を含む、致死誘導要素であり、(iv)RHAが、鳥の染色体Z上の第2の対応するヌクレオチド配列と実質的に相同である第4のヌクレオチド配列を含む、右相同性アームである。外因性ポリヌクレオチドカセットは、細胞のZ染色体に安定して組み込まれる。次に、これらのゲノム編集された細胞は、レシピエント鳥の胚に注入される。
【0165】
特定の実施形態において、方法は、孵化するまで、in-ovoでキメラ鳥胚をインキュベートすることをさらに含む。特定の実施形態において、方法は、キメラ鳥を性的成熟まで飼育することをさらに含み、キメラ鳥は投与された細胞に由来する配偶子を産生する。
【0166】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、in-ovo注射によって投与される。別の実施形態において、胚を卵殻から取り出し、「ex-ovo」で注入し、次に代理卵殻内に戻すことができる。特定の実施形態において、投与された細胞集団は、レシピエント鳥胚と同じ鳥類の種に由来する。特定の実施形態において、投与された細胞集団は、レシピエント鳥胚と異なる鳥類の種に由来する。
【0167】
別の実施形態において、キメラ鳥は、ゲノム編集されたPGCを胚盤葉に注入することによって生成し得る。概して、ゲノム編集されたPGCは、内因性PGCが配置されている場所に戻すか注入して戻し得る。一実施形態において、ゲノム編集されたPGCは、胚盤葉に戻し得る。あるいは、ゲノム編集されたPGCは、生殖三日月環、血液、胚生殖腺、さらには成体生殖腺に戻し得る。
【0168】
特定の実施形態において、ゲノム編集された鳥細胞集団は、レシピエント胚がEyal-Giladi & Kochavステージ分類システムによる約ステージIXであるときに投与される。特定の実施形態において、鳥細胞集団は、レシピエント胚がHamburger & Hamiltonステージ分類システムによる約ステージ30であるときに投与される。特定の実施形態において、細胞集団は、レシピエント胚がEyal-Giladi & Kochavステージ分類システムによる約ステージIX、およびHamburger & Hamiltonステージ分類システムによる約ステージ30であるときに投与される。特定の実施形態において、細胞集団は、レシピエント胚がHamburger & Hamiltonステージ分類システムによるステージ14の後にあるときに投与される。
【0169】
特定の実施形態において、ゲノム編集された鳥細胞集団は、胚の照射後に投与される。特定の実施形態において、照射は、γ線照射またはX線照射を含む。特定の実施形態において、照射は、600~800ラジアンのγ線照射を含む。特定の実施形態において、照射は、600~800ラジアンの照射を含む。特定の実施形態において、照射は、400~1000ラジアンの照射を含む。特定の実施形態において、照射は、200~1200ラジアンの照射を含む。
【0170】
別の態様において、上記の方法から得られるキメラ鳥がさらに提供される。
【0171】
使用方法
【0172】
一実施形態において、鳥の細胞を、本明細書に記載の式5'-OIE-LIE-3'または式5'-LIE-OIE-3'を有する外因性ポリヌクレオチドカセットと接触させるステップを含む、鳥の細胞を生成する方法が提供される。外因性ポリヌクレオチドカセットは、細胞のZ染色体に安定して組み込まれる。別の実施形態において、方法は、鳥の細胞を、式5'-LHA-OIE-LIE-RHA-3'または式5'-LHA-LIE-OIE-RHA-3'を有する外因性ポリヌクレオチドカセットと接触させるステップを含む。外因性ポリヌクレオチドカセットは、細胞のZ染色体に安定して組み込まれる。
【0173】
別の実施形態において、鳥の受精卵における雄胚における致死を誘導する方法が提供され、本明細書に開示のDNA編集剤を鳥細胞の集団に投与して、ゲノム編集された鳥細胞を生成するステップ;これらのゲノム編集された鳥細胞をレシピエントの鳥胚に移すステップ;および胚を、DNA編集剤によってコードされる致死促進タンパク質の発現を誘発するインデューサーにさらし、それにより鳥の雄胚において致死を誘導するステップを含む。光遺伝学的誘導性要素、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ、インデューサー、致死促進タンパク質などの、DNA編集剤の様々な要素が上で考察されてきた。
【0174】
一実施形態において、雄胚において致死を誘導する上記の方法において使用されるDNA編集剤は、(i)配列番号105の配列を含むLHA、(ii)配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号102の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号101の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を含むOIE、または配列番号116の配列に接続されている、配列番号104の配列に接続されている、配列番号108の配列に接続されている、配列番号103の配列に接続されている、配列番号107の配列に接続されている、配列番号116の配列に接続されている、配列番号100の配列を含むOIE、(iii)配列番号92、または配列番号94、または配列番号96、または配列番号98の配列を含むLIE、および(iv)配列番号106の配列を含むRHA、を含む。
【0175】
別の実施形態において、鳥の受精卵において雄胚に致死を誘導する方法が提供され、鳥細胞の集団に、本明細書に開示されるようなセーフロック要素を含むDNA編集剤を投与し、それにより、ゲノム編集された鳥細胞を生成するステップ;これらのゲノム編集された鳥細胞をレシピエント鳥胚に移すステップ;および胚を、STOP要素からSTOP要素を除去する薬剤にさらし、それにより、DNA編集剤によってコードされる致死促進タンパク質の発現を誘発し、鳥の受精卵において雄胚の致死を誘導するステップを含む。光遺伝学的誘導性要素、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼ、インデューサー、セーフロック要素、致死促進タンパク質などの、DNA編集剤の様々な要素が上で考察されてきた。一実施形態において、雄胚に致死を誘導する上記の方法で使用されるDNA編集剤は、配列番号120~127のうちの1つの配列を含む。
【0176】
一実施形態において、DNA編集剤からのSTOP要素の除去は、STOP要素が2つのFRT部位に隣接している場合にFlpの発現を必要とする(
図26A、不活性な「ロック」状態を参照)。一実施形態において、Flpの発現は、ゲノム編集された鳥類細胞を、Flpタンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号129または配列番号131)と接触させることによって達成され得る。Flpリコンビナーゼを発現すると、プロモーターと、OLEにおけるインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼをコードする配列との間に挿入されたSTOP要素が除去され、したがって、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼの発現が可能になる(
図26A、活性「ロック解除」状態)。インデューサー(例えば、青色光)にさらに曝露すると、インデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼが活性化され、その結果、OLEの除去、およびLIEにおいてコードされる致死促進タンパク質の発現がもたらされる(
図26A、致死活性化状態)。
【0177】
別の実施形態において、STOP要素の除去は、ゲノム編集された鳥細胞を、Creタンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号128または配列番号132)と接触させることによって達成され得る。一実施形態において、セーフロック要素およびインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼをコードする配列は、Lox配列に隣接している(
図26B、不活性な「ロック」状態)。Creリコンビナーゼを発現すると、セーフロック要素およびインデューサー活性化部位特異的リコンビナーゼをコードする配列が除去され、したがって、LIEにおいてコードされる致死促進タンパク質の発現が可能になる(
図26B、致死活性化状態)。
【0178】
本明細書で提供される技術の原理によれば、致死誘導のステップは、任意の発育段階、例えば産卵直後で行われ得る。死が誘導されるのが早ければ早いほど、胚は早く死ぬだろう。したがって、胚の死亡率は、その後達成される。毒素またはアポトーシス促進剤を使用して胚の死を誘導する場合、胚は、誘導後すぐに死ぬ。LIEがBMPなどの必須のシグナル伝達経路を破壊する遺伝子に基づいている場合、例えばBMP4アンタゴニストNogginを発現させることによって、経路が活性化して必要とされる発生時点で細胞死が誘導される。例えば、BMPは、胞胚形成、原腸形成、神経胚形成、器官形成を含む段階中、活性である。特定の実施形態において、致死は、産卵中に誘導され、胚はNogginへの曝露後約36時間以内に死ぬ。一例として、産卵直後に光遺伝学的システムが活性化されると(ステージX-XIII EG&K)、胚はそのステージで死ぬ。BMP4ノックアウトマウス胚は、ニワトリ胚発生における最初の30~36時間のインキュベーションに相当する、交尾後6.5日(dpc)~約8.5~9dpcに子宮内で死ぬ。特定の実施形態において、致死は、受精から孵化までの21日間の間に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精から孵化までの21日間に1回より多く誘導される。特定の実施形態において、致死は、ステージX-XIII EG&Kとして知られる初期の胞胚形成ステージ前の卵において誘導される(Eyal-Giladi and Kochav,1976)。
【0179】
特定の実施形態において、方法は、in-vivoで実行される。特定の実施形態において、方法は、ex-vivoで実行される。特定の実施形態において、方法は、in-ovoで実行される。特定の実施形態において、方法は、in-vitroで実行される。
【0180】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において説明されている特定の実施形態の特定の特徴もまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている特定の実施形態の様々な特徴はまた、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせで、または任意の他の記載の実施形態において適切として提供され得る。様々な実施形態についてのコンテキストで説明されている特定の特徴は、実施形態がそれらの要素を備えずに動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【0181】
上記に記載され、以下の特許請求の範囲で請求される様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的支持が見出される。
【実施例】
【0182】
ここで、上記の記載とともにいくつかの実施形態を非限定的な方法で示す以下の実施例を参照する。
【0183】
概して、本明細書で使用される命名法および利用される実験手順は、分子、生化学、微生物学および組換えDNA技術を含む。そのような技術は文献で十分に説明されている。例えば、"Molecular Cloning:A laboratory Manual"Sambrook et al.,(1989)、"Current Protocols in Molecular Biology"Volumes I-III Ausubel,R.M.ed.(1994)、Ausubel et al.,"Current Protocols in Molecular Biology",John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)、Perbal,"A Practical Guide to Molecular Cloning",John Wiley & Sons,New York(1988)、Watson et al.,"Recombinant DNA",Scientific American Books,New York、Birren et al.(eds)"Genome Analysis:A Laboratory Manual Series",Vols.1-4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998)、米国特許第4,666,828号、同第4,683,202号、同第4,801,531号、同第5,192,659号、および同第5,272,057号に記載されている方法、"Cell Biology:A Laboratory Handbook",Volumes I-III Cellis,J.E.,ed.(1994)、"Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique"by Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),Third Edition、"Current Protocols in Immunology"Volumes I-III Coligan J.E.,ed.(1994)、Stites et al.(eds),"Basic and Clinical Immunology"(8th Edition),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994)、Mishell and Shiigi(eds),"Selected Methods in Cellular Immunology",W.H.Freeman and Co.,New York(1980)を参照されたく、利用可能な免疫測定法については特許および科学文献に広範にわたって記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号、同第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,850,578号、同第3,853,987号、同第3,867,517号、同第3,879,262号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、同第4,098,876号、同第4,879,219号、同第5,011,771号、および同第5,281,521号、"Oligonucleotide Synthesis"Gait,M.J.,ed.(1984)、"Nucleic Acid Hybridization"Hames, B. D.,and Higgins S.J.,eds.(1985)、"Transcription and Translation"Hames,B.D.,and Higgins S.J.,eds.(1984)、"Animal Cell Culture"Freshney, R.I.,ed.(1986)、"Immobilized Cells and Enzymes"IRL Press,(1986)、"A Practical Guide to Molecular Cloning"Perbal,B.,(1984)、および"Methods in Enzymology"Vol.1-317,Academic Press、"PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications",Academic Press,San Diego,CA(1990)、Marshak et al.,"Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual"CSHL Press(1996)を参照されたく、これらのすべてが、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。他の一般的な参考文献は本明細書全体を通して提供されている。それらにおける手順は、当該技術分野で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供されている。それらに含まれるすべての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0184】
実施例1
【0185】
ゲノム改変ニワトリ系統の生成は多段階のプロセスである。最終製品は、産業界で今日使用されている産卵鶏と、ゲノムの内容に関して完全に同一の雌産卵鶏雌鶏系統である(
図1参照)。
【0186】
一実施形態において、ワークフローは、5つの主要なステップ:(1)ニワトリ始原生殖細胞(PGC)系統を生成し、培養すること;(2)培養PGCにおけるゲノム改変;(3)改変PGCの胚への移植、および生殖細胞系列伝達についてスクリーニングされたキメラニワトリを生産し、潜在的なファウンダー保因者を特定すること;(4)キメラから得られた遺伝物質からファウンダーニワトリを繁殖させること;(5)ファウンダーニワトリのコロニーをファウンダーの群れに拡大し、生殖細胞系列の伝達を再検証すること、を含む。
【0187】
材料および方法
【0188】
PGC培地:鳥類PGC培地は、水で250mOsmol/Lに希釈したDMEM(Gibco)カルシウムフリー培地で構成され、鳥類DMEM中、12.0mMグルコース、2.0mM GlutaMax(Gibco)、1.2mMピルベート(Gibco)、1倍MEMビタミン(Gibco)、1倍B-27サプリメント(Gibco)、1倍NEAA(Gibco)、0.1mMβ-メルカプトエタノール(Gibco)、1倍ヌクレオシド(Biological Industries)、0.2%オボアルブミン(Sigma)、0.1mg/mlヘパリンナトリウム(Sigma)、CaCl2 0.15mM(Sigma)、1倍MEMビタミン(Gibco)、1倍Pen/Strep(Biological Industries)、0.2%ニワトリ血清(Sigma)を含む。次の成長因子、ヒトアクチビンAを25ng/mL(Peprotech)、ヒトFGF2を4ng/mL(R&D Biosystems)、オボトランスフェリン(5μg/ml)(Sigma)を使用前に追加した。AkoDMEMは、グルコース、ピルベートおよびビタミンを含む希釈培地を指す。
【0189】
PGC株の誘導:PGC株は、ステージ14~16(H&H)胚から分離された約1.0~3.0μLの血液を48ウェルプレート内の300μLの培地に入れることによって誘導された。培地は2日ごとに交換された。総細胞数が1×105に達したとき、培地の総量を2日ごとに交換し、細胞を2~4×105細胞/ml培地で増殖させた。細胞を10%DMSOを含むPGC培地で凍結し、温度を徐々に-80℃まで下げて、1~3日間保存し、液体窒素に移した。
【0190】
性別判定およびPGC株の特徴付け:各PGC株は、性別、PGCマーカーのmRNA発現、および既知のPGCマーカーSSEA14のタンパク質発現について特徴付けられた。ドナー胚由来のDNAを分離し、将来の参照のために保管した。性別については、2~4×105PGC細胞由来のDNAを収集し、100μg/mlプロテイナーゼK(Sigma)を含むテールバッファー(102-T、Viagen)に再懸濁し、55℃で3時間インキュベートした。プロテイナーゼKは85℃で45分間不活性化された。コントロールとして雌染色体(P17、P18)およびリボソームS18(P19、P20)を標的とするW染色体に由来のプライマーを用いて、性別判定のためのPCRを実行した。遺伝子発現解析のために、TRIZOL試薬を使用してRNAを精製し、逆転写PCR反応(GoScript Reverse transcriptase、Promega)によるcDNAライブラリー生成のために、1μgのRNAを使用した。cDNAは、それぞれDazl、Sox2、cPouV、Nanog、Klf4、cVHプライマー、P21-P22、P23-P24、P25-P26、P27-P28、P29-P30、P31-P32をそれぞれ使用することにより、PCRのためのテンプレートとして機能した。
【0191】
抗SSEA1抗体を用いた免疫組織染色:細胞を収集し、4%PFAで固定し、PBS0.1%トリトン中の5%正常ヤギ血清でブロックし、ブロッキングバッファー中抗SSEA1抗体(DSHB、Hybridoma bank)の1:100希釈で一晩染色した。二次抗体が1時間加えられた(Alexa Fluor 488、分子プローブ)PBS0.1%トリトンで30分間細胞を洗浄した後、細胞をDAPI(Sigma)で対比染色し、封入剤(Histomount、electron microscopy sciences)で封入し、カバーした。
【0192】
PGCのトランスフェクション、選択およびFACS選別において、PGCのプラスミドトランスフェクションは、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを使用して行われた。リポフェクションについては、製造業者のプロトコルに従ってリポフェクタミン2000を使用した。3~5×105個の細胞を96ウェルプレートに、NEAA、ピルベート、ビタミン、CaCl2および成長因子(アクチビンA、hFGF、およびオボトランスフェリン)を含むAkoDMEMで播種した。100ngのプラスミドおよび0.25μlのLipofectamine 2000(invitrogen)を別々に20μlのOPTI-MEM mixで希釈し、20分間インキュベートし、細胞にピペッティングした。エレクトロポレーションについては、3×105個~1.5×106個の細胞をAkoDMEMで洗浄し、ネオンエレクトロポレーター(Invitrogen)において1000V、12ms、3パルスでエレクトロポレーションを行い、抗生物質を含まないPGC培地でそれぞれ96ウェルプレートまたは48ウェルプレートに即時に播種した。培地を1~3時間後に交換した。25~100μg/ml G418を用いた選択を、72時間後に2~4週間開始した。選択に続いて、細胞を個別に手動で、またはFACS選別により分離した。FACS選別については、穏やかな細胞のピペッティングを行い、細胞をPGC培地で選別した。陽性GFP細胞が、FACS Aria IIを用いて新しい96ウェルプレートにウェルごとに1つの細胞として選別され、またはプールされた。(BD FACS Aria IIフローサイトメーター(BD、USA)を使用して、FACS分析を行った。)
【0193】
プラスミド調製:
【0194】
CRISPRプラスミドのクローニング:CRISPR配列は、CRISPR設計ツール、Zhang lab,MITを使用して設計された。px330-GFPプラスミド(Addgeneプラスミド#42230から改変された)は、BbsI制限酵素を使用して切断され、CRISPR部位挿入のための骨格として機能し、sgRNAを形成した。記載されているように、sgRNA CRISPR部位のオリゴ-CRISPR1、CRISPR3(それぞれオリゴP34-P35およびP36-P37)を95℃で30秒間変性させ、ゆっくりアニールし、BbsI切断プラスミドに結合し、E.coliに形質転換し、精製し、配列検証した(Cong L,et al.,Science.2013 Jan 3.10.1126/science.1231143 PubMed 23287718)。
【0195】
pJet-HAsプラスミドのクローニング:5'HAおよび3'HAの両方を含むZ染色体上のHINT1Z遺伝子座に対して下流のゲノム領域を、PCR(Kapa、Roche)を使用して、P1およびP2プライマーでPGC DNAから増幅した。PCR産物を精製し、製造業者のプロトコルに従ってpJet1.2プラスミド(Invitrogen)に結合させた。
【0196】
ターゲティングベクターの構築:pCAGG-IRES-Neo-GFPプラスミドをPCRのためのテンプレートとして使用し、P5-P6プライマーを使用して、インサートpCAGG-IRES-Neo-GFPを増幅した。pJet-HAsプラスミドをPCRのためのテンプレートとして使用し、P3-P4プライマーを使用して、5'HAおよび3'HAを含むベクターを増幅した。ギブソン集合反応は、それぞれ0.03pm、0.06pmの線状化された産物を取る精製されたベクターおよびインサートPCR産物に対して行われた。ギブソンアセンブリ反応産物をプラスミド調製のためにE.coliに形質転換して、配列検証した。
【0197】
pCAGG-Optogeneベクターの構築:pCAGG-Optogeneベクターを生成するために、光遺伝子プラスミドpmCherry-CIBN-CreCおよびpmCherry-Cry2-CreN11をテンプレートとして使用し、P40-P41およびP42-P43プライマーを使用して光遺伝子を増幅し、それぞれ1.3kbおよび2.1kb産物を得た。2つの産物は、プライマーP41およびP42において導入されたP2A部位で重複配列を共有する。シングルサイクルオーバーハング延出PCRを使用して、2つの断片を結合させて、アガロースゲルから洗浄された単一の3.5kb産物にした。この産物を、それぞれSmaIおよびNheI制限部位を有する尾部を含むプライマーP44およびP45を使用して、PCRについてのテンプルとして使用されたpJet1.2シャトルベクターに連結させた。この産物を、適切な制限酵素を使用して消化し、ベクターとして機能するSmaIおよびNheI消化pCAGG-IRES-GFPプラスミドに連結させる連結のためのインサートとして使用した。連結産物を大腸菌に形質転換し、増殖したプラスミドを配列検証した。
【0198】
pGK-DTA-IRES-GFPベクターの構築:pGK-DTA-IRES-GFPを生成するために、発現ベクターpSK BS-PGK-DTAを、それぞれXmaIおよびNheI制限部位についての拡張配列を含むプライマーP46およびP47を用いたPCRのためのテンプレートとして使用した。0.65kb産物をそれぞれの酵素で消化し、連結のためのベクターとして機能するpGK-IRES-GFPプラスミドにおいてXmaI-NheI相補部位への連結のためのインサートとして使用された。連結産物を大腸菌に形質転換し、増殖したプラスミドを配列検証した。
【0199】
In-ovoエレクトロポレーション:In-ovoエレクトロポレーションは基本的に、前述のとおりに行われた。受精卵を37.8℃で56~60時間インキュベートし、卵殻に窓を開け、約2μg/μlの濃度のプラスミドDNAを、直径10~15μmの開口を有する鋭利なマイクロピペットを使用して神経管に注入した。ECM830方形波エレクトロポレーションシステム(BTX)を使用して、25V、30msの3つのパルスが送出された。エレクトロポレーション後、卵殻をパラフィルムでシールし、胚を分析までさらにインキュベートした。
【0200】
エンドヌクレアーゼアッセイ:Lipofectamine 2000試薬を使用して、PGCにCRISPR1またはCRISPR3プラスミドをトランスフェクトした。48時間後、個々のGFP陽性細胞を96ウェルプレートに分離し、培養して純粋なコロニーを形成した。DNAを回収し、CRISPR部位に隣接する350bp領域をP38-P39プライマーでPCR増幅した。PCR産物は95℃で変性し、ゆっくりアニールし、T7エンドヌクレアーゼを用いて37℃で1時間インキュベートした。較正目的で、かつポジティブコントロールとして、350bp PCR産物をpJet1.2にサブクローニングし、部位特異的変異誘発を使用してCRISPR部位を変異させた。導入された変異は、WT配列ATACCAGATAACGTgCCTTATTTGGCCGTT(配列番号2)をATACCAGATAACGTaatCCTTATTTGGCCGTT(配列番号3)に置き換えた。この人為的変異は、エンドヌクレアーゼアッセイ(
図7A)およびコントロール配列決定(
図8B)の両方に対するポジティブコントロールとして機能した。
【0201】
サザンブロットアッセイ:5'HA、3'HAおよびNeo遺伝子プローブのDigラベリングを、DIG DNAラベリングミックス(Roche)を使用して、それぞれプライマーP13-P14、P15-P16およびP11-P12用いたPCR増幅(Longamp、NEB)により調製した。15μgのゲノムDNAをBglII制限酵素を用いて37℃で一晩消化した。DNA断片を、0.8%(w/v)アガロースゲル(20V、12時間)での電気泳動により分離し、正に帯電したナイロン膜(GE Healthcare)に転写した。転写後、各側で254nmに設定されたUV光を3分間使用して湿潤膜を架橋し、次いで2XSSCでリンスした。DIG Easy-Hybハイブリダイゼーション溶液(Roche)を使用して、膜を42℃で2時間プレハイブリダイズさせた。プローブ(50ng/ml)を5分間で95℃まで加熱することによって変性させ、即座に氷に浸漬させた。変性されたプローブを、10mlの温かいDIG Easy-Hyb溶液に加えて、42℃で12時間ハイブリダイズさせた。膜を室温で0.1%SDSの2XSSC中で撹拌させながら10分間2回洗浄し、次いで0.1%SDSの0.2XSSC中で撹拌させながら65℃で30分間3回洗浄した。さらなる洗浄およびブロッキングが、DIG洗浄およびブロックバッファーセット(Roche)を用いて、かつそれらのプロトコルに従って行われた。DIGラベリングが、CDP-Star試薬(Roche)を使用する化学ルミネッセンス反応が後続する抗ジゴキシゲニン-AP抗体1:10000(Roche)を使用して検出された。G:BOX gel imaging system(Syngene)を使用して画像を撮影した。
【0202】
胚へのPGC注入およびホールマウント染色:産卵されたばかりの卵を、37.8℃、湿度55%で58~62時間、先端を上に向けた状態でインキュベートした。インキュベーション後、卵殻に4~8mmの窓を開け、約30~40μmの開口を有する鋭利なマイクロピペットを使用して、3000~8000のPGCを血流に注入した。窓を白い卵膜で覆い、さらにパラフィルム(Parafilm)またはLeukoplast(BSN medical GmbH)テープでシールした。胚を、孵化するまでインキュベートした。注入された胚のいくつかの生殖腺が分離され、ホールマウントGFP染色のために取られた。生殖腺を、4%PFA中に固定し、PBS1%Triton中5%正常ロバ血清でブロックしたPBSで2時間洗浄し、ブロッキングバッファー中マウス抗SSEA1抗体またはウサギ抗GFP抗体1:500(Abcam)の1:20希釈で一晩染色した。PBS1%tritonで2時間洗浄した後、二次ロバ抗マウスcy3抗体1:500(Jackson Immunoresearch laboratories)または二次alexa488抗ウサギ抗体1:500(Molecular Probes)をブロッキングバッファー中に3時間添加した。組織をDAPI(Sigma)で対比染色し、グリセロール中に取り付け、共焦点顕微鏡(Leica、TCS SPE、ヴェッツラー、ドイツ)で撮像した。
【0203】
プライマーP1~P32の配列は、配列番号4~35に記載されており、プライマーP34~P47の配列は配列番号36~49に記載されている。
【0204】
プラスミドの配列は以下に記載する。
【0205】
1.pX330-GFP(配列番号50)、2.CRISPR1(配列番号51)、3.CRISPR3(配列番号52)、4.pJet-Has(配列番号53)、5.pCAGG-Neo-IRES-GFP(配列番号54)、6.ターゲティングベクター(配列番号55)、7.pmCherry-Cry2-CreN(配列番号56)、8.pmCherry-CIBN-CreC(配列番号57)、9.pB-RAGE-GFP(配列番号58)、10.pCAGG-IRES-GFP(配列番号59)、11.pCAGG-Optogenes(配列番号60)、12.pB-RAGE-mCherry(配列番号61)、13.pSK BS-PGK-DTA(配列番号62)、14.pGK-IRES-GFP(配列番号63)、15.pGK-DTA-IRES-GFP(配列番号64)。
【0206】
結果
【0207】
PGC株の誘導および特性評価
【0208】
胚発生の初期段階時、産卵直後および原腸形成の開始前に、PGCは胚外中胚葉層の前部の胚の生殖三日月環領域に対して吻側に移動する。この移動は、体細胞がそうであるように、PGCを分化プロセスを経ることから「保護」すると考えられている。約2.5日間のインキュベーション(ステージ14~17H&H)の後、血管暗域(Area Opaca Vasculosa)、血液および心拍の形成まで、細胞が血流を介して胚に戻り、生殖腺を誘発する生殖隆起にコロニー形成することはない。これらの段階で、直径約40~60μmの開口を有するマイクロピペットを使用して、胚の血管系から1~3μlの血液を採取し、48ウェルプレート内のPGC培地に移した。PGC培地は、PGCの速い分裂(20~24時間の細胞周期)を可能にする一方、フィーダーのない条件下で未分化状態を維持する。2~3週間の培養後、血液細胞は分解して消失した。別のさらに1~2週間以内に、培養されたPGCはコンフルエントになった(
図5A)。これらの細胞は、遺伝子改変のためにさらに培養され得、または後者の改変のためにうまく凍結および解凍され得る。培養中のニワトリPGCは、形態学的特徴、タンパク質およびmRNA発現パターンを使用し、最終的にはステージが一致するレシピエント胚の血管系に注入されたときのそれらの生殖腺遊走の能力によって、文献で広く特徴付けられた。これらの特性は、生成されたPGC細胞培養物において調べられて、それらが良好に確立されたPGC機能を保持していることを示した。形態的には、PGCは、大きい核を含む直径約15~20μmの大きくて、わずかに粒状化した細胞である。PGCは全能性細胞であり、したがって、cPouV、SOX2、KLF4およびNanog、ならび2つのユニークな生殖細胞マーカー、すなわち、cVHおよびDAZLなどの多能性マーカーを発現する。各PGC株について、ポジティブコントロールとしてのリボソームS18についてのプライマー(P19~P20、256bpの産物サイズ)、および雌を特定するW染色体のプライマー(P17~P18、415bpの産物サイズ)を使用して、性別判定のためにDNAを抽出した(
図5B)。さらに、PGCは膜SSEA-1抗原4を発現する(
図5C)。
【0209】
PGCの10個の株が、産卵鶏およびブロイラー、雄および雌の株の両方から確立された。プラスミドのトランスフェクションは、負に帯電したDNAと相互作用するカチオン性脂質トランスフェクション試薬Lipofectamine 2000を使用して実行され、細胞への浸透を可能にする。GFPをコードするプラスミド(pCAGG-GFP)のトランスフェクションは、約15~20%のトランスフェクション効率をもたらした(
図5D)。さらに、エレクトロポレーションを使用したPGCのトランスフェクションは、最大90%のより高い効率をもたらした(
図5E)。培養されたPGCが生殖腺にうまく定着することを実証するために、GFP発現PGCをステージ14~16H&Hの血流に注入し、胚を10日間インキュベートした。胚を解剖し、GFP陽性細胞を生殖腺において特定した(
図5F)。
【0210】
Z染色体上のCRISPR-Cas9標的の設計
【0211】
一実施形態において、Z染色体へのDNA編集は、CRISPR-Cas9および相同組換えプロセスを使用して行われた。CRISPR-Cas9システムはZ染色体の特定の部位でDNAを直接切断するが、相同組換えプロセスを使用した内因性修復システムにより、正確な場所への所望のDNAの標的化挿入が可能になる。この目的のために、Z染色体上の挿入部位に対応する相同性アームを含むターゲティングベクタープラスミドの構築が必要である。コード遺伝子HINT1Zの下流のZ染色体におけるDNA挿入のための部位を選択した。CRISPRシステムの使用により、多くの研究で直接DNA挿入イベントを改善することが示された。その目的のために広く使用されているpx330プラスミドは、sgRNA部位およびCas9酵素を含む。sgRNA部位は、Cas9酵素を標的部位に向け、特定のゲノム標的化DSDBに繋がるユニークな配列が含まれている。CRISPR設計エンジンツールを使用して、
図6Aに示すようにsgRNAについて特有の配列を特定した。スコアに応じた上位12個のガイドを
図6Bに示す。ガイド1~12の配列は、配列番号66~77に記載されている。
【0212】
ガイド#1および#3は、従来の二次構造の類似性によって選択され、不一致の程度によりスコア化されたニワトリゲノム内の可能なオフターゲット部位をチェックするために使用された。ガイド#1についての潜在的なオフターゲットの検索の上位10個の結果を
図6Cおよび配列番号78~87に示す。特に、上位6個のオフターゲットには4つの不一致があり、このガイドの特異性が強調されている。
【0213】
Cas-9のc末端に融合したインフレームGFPを含む改変px330プラスミドを切断することにより、DNA配列挿入を行った。sgRNA配列を含むアニールされたプライマーは、上述のようにBbsI制限酵素に連結された(
図6B)。連結産物を大腸菌に形質転換し、プラスミドを精製し、sgRNAの挿入を配列決定によって検証した。
【0214】
CRISPR-Cas9システムの活性検証
【0215】
フィーダーのない培地でPGCを増殖させることにより、単一細胞に由来する純粋なコロニーが得られ、それによりCRISPR-Cas9システムの効率の特性化が可能になる。このため、PGCはpX330-GFP-CRISPR1およびpX330-GFP-CRISPR3プラスミドのいずれかがトランスフェクトされ、クローンコロニーが成長された。GFPを発現する単一細胞に由来するコロニーから全ゲノムDNAを抽出した。DNAをエンドヌクレアーゼアッセイにより分析し、配列決定した。エンドヌクレアーゼアッセイのために、ポジティブコントロールが設計された。このコントロールは、CRISPR-Cas9活性の予測部位に変異が挿入された320bp PCR産物であった。この産物を、それぞれ変異:WTの異なる比率1:15、1:7、1:1で類似の長さのWT産物と混合し、アニールした混合物をエンドヌクレアーゼ活性に供した(
図7A)。136bpおよび184bpの予測されたサイズでの2つの短いバンドは、1:7および1:1の比率で明確に見え、アッセイが適切に機能していることを示した。同様に、CRISPR1およびCRISPR3プラスミドのいずれかでトランスフェクトされた12個のコロニーから得られたゲノムDNAに対して同じアッセイを実行した(
図7B、7C)。12個のコロニーのうちの9個で、予測されたサイズの明確なダブレットが観察された。これは、CRISPR1およびCRISPR3プラスミドの両方が、予測された部位でDSDBを効率的に生成することを示している。
【0216】
配列解析については、エンドヌクレアーゼアッセイのために使用されたPCR産物(
図7A~7C)も配列決定された(
図8A~8D)。WTネガティブコントロールの配列決定により、CRISPR1の予測される切断部位が明らかになった(
図8A)。ポジティブコントロールとして、WTおよび人工的に変異された産物の混合物を配列決定することにより、予測される切断部位の直後のDNAクロマトグラムにおける二重ピークの出現が明らかになった(矢印、
図8B)。トランスフェクトされたコロニーの同じゲノム領域の同様の配列決定により、陰性コロニー(
図8C)および陽性コロニー(
図8Dの矢印)の両方が明らかになり、後者は事例の>70%であった。
【0217】
ゲノム組み込みのためのターゲティングベクターの構築
【0218】
HRを使用して、Z染色体への標的化ゲノム組み込みを実証するために、ターゲティングベクターを設計した(
図9)。ベクターには、pCAGGプロモーターに続いて、ネオマイシン選択遺伝子、内部リボソーム進入部位(IRES)、GFPおよびウサギベータグロビンポリアデニル化部位が含まれる。このカセットには、それぞれ5'末端および3'末端に約1.5kbの相同性アームが隣接していた。このベクターを生成するために、両方の相同性アームを含む約3kbのDNA断片を、プライマーP1およびP2を使用して増幅し、シャトルベクターpjet1.2に連結した。この断片の完全な配列決定は、ニワトリのゲノム配列と同一であることがわかった。このプラスミドpJet-HAsをテンプレートとして使用して、CRISPR sgRNA部位を間に含む23bp配列を除く2つの分離した相同性アームを含む線状化PCR産物を生成した。増幅は、pCAGG-Neo-IRES-GFPカセットの端に対応する5'末端に配列を含むP3およびP4プライマーを使用して行なわれた。この線状化PCR産物は「ベクター」と呼ばれる。pCAGG-Neo-IRES-GFPプラスミドを、テンプレートとして使用して線状化PCR産物を生成した。この断片は、それぞれ5'HAおよび3'HA末端の3'および5'末端に対応する配列を含むプライマーP5およびP6を使用して増幅された。この産物は「インサート」と呼ばれる。ベクターおよびインサートをギブソンアセンブリ反応を使用してつなぎ合わせ、最終的なターゲティングベクターを作成した。
【0219】
ターゲティングベクターおよびCRISPRプラスミドを使用したZ染色体への相同組換え
【0220】
単一の細胞から純粋なPGCコロニーを得る能力は、PCRおよびサザンブロットなどの方法を使用して、適切に挿入されたHRを受けた陽性コロニーの特定を可能にする。PGCトランスフェクションについては、5~10%(
図10A)のトランスフェクション効率を有するリポフェクションまたは>40%の効率を有するエレクトロポレーションを使用した。トランスフェクションを、2つのプラスミド、ターゲティングベクターおよび上記の2つのCRISPRの1つ(CRISPR1またはCRISPR3)を用いて実行した。トランスフェクション後、細胞を回収するために24時間放置し、選択のためにG-418含有培地に移した。選択した2週間後、G-418耐性細胞のみが生存し、そのうちの>99%がGFP陽性であった(
図10B)。細胞が生殖腺にコロニー形成する能力を保持していることを確認するために、
図1F(
図10C)で前述したように、その細胞を宿主胚に注入した。生殖腺を、抗GFP抗体で免疫染色し、生殖腺におけるGFP陽性PGC細胞のコロニー形成を共焦点顕微鏡を使用して検証した(
図10D)。
【0221】
G-418耐性のGFP陽性細胞は、潜在的に不均一な集団からなる。したがって、HR組み込みを検証し、純粋な均質集団を得るために、FACS選別を使用して、単一のGFP陽性細胞を96ウェルプレートへ分離した(
図11A)。純粋なコロニーを飼育し、PCRおよびサザンブロット解析のためにゲノムDNAを抽出した。並行して、プールされたGFP陽性細胞をFACS選別した。PCR解析のために、2セットのプライマーを設計した。第1には、5'HAに対して上流の順方向P7およびCAGGプロモーターからの逆方向P8(1.6kbの産物サイズ)、第2には、ウサギベータグロビンポリアデニル化部位からの順方向P9および3'HAに対して下流の逆方向P10(1.8kbの産物長、
図11B)である。プールされた細胞(
図11C)および純粋なコロニー(
図11D)における両方で、5'および3'について予想される産物が検出され、これらの細胞で適切なHR組み込みが生じたことを示した。
【0222】
適切なHR組み込みをさらに検証し、ターゲティングベクターの単一のコピーのみがゲノムに組み込まれていることを確認するために、サザンブロット解析を行った。雄および雌のドナーからの2つのPGC細胞株を解析した。注目すべきことに、雌の株はZ染色体の単一のコピーのみを有する。3つのジゴキシゲニン標識(dig標識)DNAプローブを設計した(
図12Aおよび
図12Bを参照)。それぞれ500bpの長さのプライマーP11-P12およびP13-P14を使用して増幅された最初の2つのプローブは、それぞれ5'および3'HAの上流および下流に位置する。704bpの長さのプライマーP15~P16を使用して増幅された3番目のプローブは、ターゲティングベクター内部のNeo遺伝子を検出するように設計されているため、ベクターの単一のコピーのみが組み込まれたことを確認できる。BglII制限酵素を使用して、解析のためにゲノムDNAを切断した。互いに約6.5kb離れた2つの制限部位は、それぞれ5'および3'プローブの上流および下流のWT染色体上に位置する。追加のBglII部位はターゲティングベクター内に位置し、予測される7.5kbおよび3.3kbの断片を得て、適切なHR組み込みを特定する。雄のPGC株から抽出されたゲノムDNAのサザンブロット解析の結果は、それぞれ5'および3'部位について、予測された大きさ、すなわち、WT対立遺伝子に対して6.5kbおよび正しいHR組み込みを受けた対立遺伝子に対して7.5kbおよび3.3kbの2つのバンドを明らかにした。これは、プールされた細胞からのDNAおよび純粋なコロニーの両方について確認された(
図12C)。雌のPGC細胞株についても同様の解析を行った。この場合、5'組み込み部位の予測されるサイズの7.5kbで単一のバンドが見つかった。雌ゲノムはZ染色体の単一のコピーのみを含むため、WT対立遺伝子(6.5kb)は検出されなかった。Neo遺伝子を厳密に調査すると、7.5kbの予測されるサイズの単一のバンドが明らかになり、ターゲティングベクターの単一コピーのみがゲノムに組み込まれていることが確認された(
図12D)。
【0223】
in vitroでのHEK293細胞、およびin-ovoでのニワトリ胚における光遺伝学的システムの検証。
【0224】
in vitroおよびin-ovoでのニワトリ胚における誘導システムの活性を検証するために、3つのプラスミド、pmCherry-Cry2-CreN、pmCherry-CIBN-CreCおよびレポーターPB-RAGE-GFPをHEK293細胞(
図13)およびヒヨコ胚(
図14)にトランスフェクトした。最初の2つの光遺伝学的プラスミドは、成功裏のトランスフェクションを確認するレポーター遺伝子mCherryをコードする。PB-RAGE-GFP抑制ベクターには、GFPコーディング領域の上流のLoxP部位に隣接する複数の停止コドン配列が含まれている。Cre活性化時に、STOPコドンが除去され、したがって、GFPを発現させることが可能になる。一方、トリプルトランスフェクションされ、暗所で保たれたネガティブコントロールHEK293細胞において、GFP陽性細胞は存在しなかった(
図13、上段)。トランスフェクションの24時間後に青色光照明にさらされた細胞において、多くの細胞がGFPを発現し(
図13、下段)、これらの細胞における光遺伝学的システムの活性化を確認した。
【0225】
in-ovoでの光遺伝学的システムの活性を検証するために、ステージ16H&Hでのニワトリ胚神経管へのエレクトロポレーションによりpmCherry-Cry2-CreN、pmCherry-CIBN-CreCおよびPB-RAGE-GFPプラスミドを用いたトリプルトランスフェクションを行った。エレクトロポレーションの12時間後、ネガティブコントロール胚を暗所に保ちながら、実験群の胚に15秒間の青色光照射を行った。胚をさらに12時間インキュベートし、蛍光ステレオスコープでGFP発現を確認した(
図14)。暗所に保たれた胚においては(
図14、上段)、mCherryのみが発現され、成功裏のエレクトロポレーションを確認したが、実験群の胚においては、GFP陽性細胞が明確に現れ(
図9、下段)、光誘導性Creが活性化されたことが確認された。
【0226】
光遺伝子プラスミドpmCherry-Cry2-CreNおよびpmCherry-CIBN-CreCは、ニワトリ細胞においては好ましくないCMVプロモーターを使用して遺伝子の発現を駆動する。これを克服し、2つを単一のベクターに結合するために、ニワトリ細胞において活性が高いCAGGプロモーターの下で、P2A自己切断ペプチドによって連結されたCIBN-CreCおよびCry2-CreN、続くIREG-GFPの発現を駆動するプラスミドベクターを設計した。pCAGG-CIBN-CreC-P2A-Cry2-CreN-IRES-GFPの合成は、Kennedy et al.,2010(Nat Methods.2010 December;7(12):973-975)に記載されている元の光遺伝子プラスミドの修飾に基づいた。これらのプラスミドの各々は、mCherryに続いて、CIBN-CreC(Cre酵素のC末端に融合したCIB1の切り取り形)またはCRY2-CreN(Cre酵素のN末端に融合したクリプトクロム2、
図15A)のいずれかを有するIRES配列をコードする。次のクローニングの目標は、CAGGプロモーターの下で、2つの融合光遺伝子を自己切断ペプチドP2Aを、続いてIRES-GFPを結合することであった。この目的ため、CIBN-CreCプラスミドをP40およびP41プライマーを用いたPCRについてのテンプレートとして使用し、CRY2-CreNプラスミドをP42およびP43プライマーを用いたPCRについてのテンプレートとして使用した(
図15A)。特に、P2A切断部位を含むプライマーP41およびP42は、1サイクルのオーバーハング延出PCRによって2つの産物をマージできるオーバーラップ配列を共有する(
図15B)。CIBN-CreC-P2A-CRY2-CreNを含むこの産物を、シャトルベクターpJet1.2に連結し、配列検証した(
図15C)。このプラスミドは、5'および3'末端にそれぞれSmaIおよびNheI制限部位を産物に付加したプライマーP44およびP45を用いたPCRについてのテンプレートとして機能した(
図15D)。この産物を制限酵素で消化し、同じ酵素を使用して切断もしたpCAGG-IRES-GFPプラスミドに連結した(
図15E)。この連結産物は、CAGGプロモーター、続いてCIBN-CreC、P2A自己切断ペプチド、CRY2-CreN、IRES、GFPおよびウサギベータグロビンポリアデニル化サイト(本明細書ではpCAGG-Optogeneと呼ばれる)を含み、配列検証された(
図15F)。
【0227】
in-vitroでpCAGG-Optogeneベクターの活性を検証するために、成功裏のトランスフェクションのためのレポーターとしてGFPを発現するプラスミドを、pB-RAGE-mCherryを用いてHEK293にコトランスフェクションを行った。上記のPB-RAGE-GFPベクター(
図13)と同様に、pB-RAGE-mCherryは、mCherryコーディング領域の上流のLoxP部位に隣接する複数の停止コドン配列を含む。Cre活性化時に、停止コドンが除去され、したがって、mCherryを発現させることが可能になる(
図16)。一方、コトランスフェクションされ、暗所で保たれた維持されたHEK293細胞においては、mCherry陽性細胞は存在しなかった(
図16、上段)。対照的に、青色光照明にさらされた細胞においては、多くの細胞がmCherryを発現しており(
図16、下段)、pCAGG-Optogenesの単一ベクター戦略がシステムの光遺伝的特性を維持していることを確認した。
【0228】
in-ovoの生きているヒヨコ胚におけるpCAGG-Optogeneベクターの活性を検証するために、pB-RAGE-mCherryと一緒にステージ14~16H&Hヒヨコ胚にエレクトロポレーションによってプラスミドにコトランスフェクションを行った。エレクトロポレーションの12時間後、ネガティブコントロール群の卵は暗所に保ち、一方、実験群の胚は15秒間青色光にさらした(
図17)。両方の群をさらに12時間インキュベートし、蛍光ステレオスコープで検査した。インキュベーション後、両群において高レベルのGFP発現が明らかになり、成功裏のエレクトロポレーションが示された。ただし、光にさらされた群においてのみ(
図17、下段)、mCherry陽性発現細胞が特定され、pCAGG-Optogeneの単一ベクター戦略を使用した光遺伝学的システムが光誘導可能な方法で活性化されたことが示された。
【0229】
ヒヨコ胚の致死性の誘導
【0230】
毒素を使用して死亡を引き起こす実現可能性を示すために、ネガティブ選択マーカーとして一般に使用されるDTA12のコーディング領域を、pGKプロモーターおよびそれに続くIRES-GFPを含む発現ベクター(pGK-IRES-GFP)にクローニングした。このプラスミドはネガティブコントロールとしても機能した。DTAコーディング領域は、細胞における発現時に細胞死に繋がるタンパク質合成を阻害するpGK-DTA-IRES-GFPを誘発するIRES配列の上流にクローニングされた。
【0231】
ニワトリ胚におけるDTA発現の影響を試験するために、ステージ14~16H&H胚を、ネガティブコントロールとしてのpGK-IRES-GFPまたはpGK-DTA-IRES-GFPを用いてエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの12時間後、胚を蛍光顕微鏡下でGFPの発現について解析した(
図18)。コントロール胚においてはGFPが神経管内で広範に発現しが(
図18)、DTAを発現する胚においてはGFP発現は検出されず、これらの細胞においてはタンパク質合成がブロックされたことが示された。
【0232】
実施例2
【0233】
本明細書に記載の実験の目的は、致死誘導カセットを、雄または雌由来のPGCのいずれかのZ染色体に導入することであった。最終的な目標は、Z染色体でのゲノム挿入を含む雌鶏を取得することであった。この染色体は次世代の雄胚にのみ分離し、青色光の誘導により致死誘導カセットを活性化し、したがって、雄胚は胚発生の初期段階で死ぬ。
【0234】
カセット別名ターゲティングベクター(TV)は、本明細書に記載されるように3つの要素を有する。第1の要素は、「相同性アーム」である。第2の要素は、「光遺伝学的誘導性要素」である。第3の要素は、「致死誘導カセット」である。一実施形態において、2つの約1.5kbの相同性アームが、TVの5'および3'末端の両方に配置されている。これは、相同組換え(HR)をZ染色体上にあるHINT1Z遺伝子座の下流に向けるように設計されている。HINT1Z遺伝子は、PGCおよび胚盤葉全体(これらは産卵されたばかりのヒヨコ胚)において転写されるため、HRについてこの部位が選択された。Z染色体上の他のすべてのオープンに転写された領域も、この目的のための潜在的に良い候補である。
【0235】
図20は、PGCおよび全胚盤葉由来のcDNAに対するFWDプライマー(配列番号88)およびREVプライマー(配列番号89)を使用するRT-PCRを示す。産物予測サイズ153bp。
【0236】
第2の要素は、「光遺伝学的誘導性要素」である。一実施形態において、光遺伝学的システムは、特定の光波長の下で励起され、それらが二量体化することを可能にするコンフォメーションに変化するタンパク質に基づく。2つの光遺伝学的タンパク質が二量体化した場合にのみ標的遺伝子の転写が行われるように、これらのタンパク質を追加のタンパク質と融合させることが可能である。例えば、第1のタンパク質がGal4-BD(Gal4結合ドメイン)などのDNA標的ドメインと融合し、第2のタンパク質がGal4-AD(Gal4活性化ドメイン)などの転写活性化因子と融合している場合、下流の遺伝子を活性化することが可能である。同様に、抑制ドメインを使用して遺伝子発現を抑制し得る。しかし、光遺伝子の問題は、それらがある程度の基本的な二量体化を有し、したがって、光の誘導に関係なく起こる遺伝子の活性化であるということである。誘導に対する感受性および基本的な二量体化の間の適切なバランスを見つけることは、それらの使用の鍵である。Kennedy,M.J.et al.(Rapid blue-light mediated induction of protein interactions in living cells.Nat.Methods 7,973-975,2010)において開発されたシステムの修正版が使用された。元の光遺伝子プラスミドは、ニワトリ細胞においては好ましくないCMVプロモーターを使用して遺伝子の発現を駆動するpmCherry-Cry2-CreNおよびpmCherry-CIBN-CreCである。これを克服し、2つを単一のベクターに結合するために、ニワトリ細胞において活性が高いCAGGプロモーターを使用して、IRES配列によって連結されたCIBN-CreCおよびCry2-CreN、それに続くIREG-GFPの発現を駆動するプラスミドベクターを設計した。pCAGG-CIBN-CreC-IRES-Cry2-CreN-IRES-GFPの合成は、Kennedy et al.,2010(Nat Methods.2010,7(12):973-975)に記載されている元の光遺伝子プラスミドの修飾に基づいた。クローニングの目標は、CAGGプロモーターの下で、2つの融合光遺伝子をIRESで結合し、続いてIRES-GFPを結合することであった。光遺伝子の順序、すなわちCry2-CreNにCIBN-CreCが続く同様のプラスミドの構築も成功裏に実行され、同様の結果が得られた。
図21は、上記のプラスミドの模式図を示す。
【0237】
in-vitroでpCAGG-Optogeneベクターの活性を検証するために、成功裏のトランスフェクションのためのレポーターとしてGFPを発現するプラスミドを、HEK293にpB-RAGE-mCherryとコトランスフェクションした。このプラスミドは、pCAGGプロモーターおよびmCherryレポーター遺伝子の間にLox-STOP-Lox(LSL、RAGE)要素を含む。したがって、光遺伝子プラスミドでコトランスフェクトされた場合、青色光照射およびCreの活性化により、LSLが除去され、mCherryが発現する。システムが不活性である暗所においては、
図22に示すように、光遺伝子プラスミドからのレポーターGFPのみが発現される。
【0238】
in-ovoで生きているヒヨコ胚における光遺伝学的システムの活性を検証するために、光遺伝学的プラスミドとレポーターpB-RAGE-mCherryプラスミドを56~60時間インキュベートしたヒヨコ胚の神経管にコエレクトロポレーションした。鋭利なマイクロピペットを使用してプラスミドDNA混合物を神経管の内腔に注入し、3~5mm離れた2つのタングステン電極(エレクトロポレーターBTX830)を使用してエレクトロポレーションを適用した。30V、45msの4つのパルスそれぞれが、各パルス間745msの間隔で送達された。エレクトロポレーション後、卵をシールし、12~18時間インキュベートした。次に、コントロール群の卵を暗所に保ち、実験群の卵を卵殻を通して1分間の青色光照明にさらした。両方の群は、分析前にさらに12~18時間インキュベーター内に戻された。
【0239】
図23に示されるように、すべての実験群において、レポーターGFPは、すべての胚において高くかつ広く発現され、プラスミドのエレクトロポレーションおよび発現の成功を示した。暗所に保たれた卵においてはmCherryの発現はなかった。対照的に、青色光で照らされた卵においては神経管でmCherryが発現していた。
【0240】
CIBN-Cry2の改良されたシステムは、Cry2を改変することによって作成し得る。この改変は、Nature Chemical Biology volume12,pages425-430(2016)に公開されているように、最初の535アミノ酸のみを含む切り捨てられたCry2遺伝子-Cry2-Δ535-L348FにおけるL348F変異の挿入を含む。
【0241】
CIBN-Cry2光遺伝学的システムの代替アプローチとして、別の概念的に類似したシステムを使用して、同じ目標を達成することができる。このシステムはMAGNETシステムに基づいており、2つの光遺伝学的タンパク質-正に帯電したP-Magと負に帯電したN-Magが青色光照射により二量体化する。これらのタンパク質はそれぞれ、Creリコンビナーゼ酵素の不活性部分に融合し、2つの光遺伝子が二量体化すると、Creの活性型が生成される(Nature Chemical Biology volume12,1059-1064 2016)。
【0242】
第3の要素は、「致死誘導カセット」である。一実施形態において、致死誘導カセットは、細胞死または胚発生の初期段階に必要な分子シグナル伝達経路(例えば、BMP4)への重度の介入によって初期胚死を駆動する遺伝子(例えば、毒素)を含む。例えば、これは、ジフテリア毒素A(DTA)などの毒素でプログラム細胞死(アポトーシス)を誘導すること、カスパーゼ3またはカスパーゼ3の変異した構成的に活性な変異した形態などのカスパーゼ遺伝子を発現させること、またはBMP4-Nogginの阻害剤タンパク質を発現させることによって達成され得る。DTAについてのヌクレオチド配列は、配列番号92に記載されている。DTAのアミノ酸配列は、配列番号93に示されている。
【0243】
一実施形態において、ニワトリCasp3 CDS(WT)についてのヌクレオチド配列は、配列番号94に記載されている。ニワトリCasp3 CDS(WT)についてのアミノ酸配列は、配列番号95に記載されている。
【0244】
一実施形態において、構成的に活性な(変異した)形態のニワトリCasp3についてのヌクレオチド配列は、配列番号96に記載されている。構成的に活性な(変異した)形態のニワトリCasp3タンパク質についてのアミノ酸配列は、配列番号97に記載されている。
【0245】
一実施形態において、Nogginについてのヌクレオチド配列は、配列番号98に記載されている。Nogginについてのアミノ酸配列は配列番号99に記載されている。
【0246】
特定の実施形態において、「致死誘導カセット」は、必須のシグナル伝達経路を破壊する遺伝子に基づく。死が誘導されるのが早ければ早いほど、胚は早く死ぬだろう。特定の実施形態において、必須のシグナル伝達経路は、骨形成タンパク質(BMP)を含む。特定の実施形態において、BMPは、BMP4である。特定の実施形態において、致死促進タンパク質は、BMP4のアンタゴニストである。特定の実施形態において、BMP4アンタゴニストは、Nogginである。特定の実施形態において、致死促進タンパク質Nogginの発現は、BMP経路が活性であり、必要とされる発育段階で誘導される。特定の実施形態において、BMP経路は、胞胚形成、原腸形成、神経胚形成、または器官形成の間に活性であるか、または誘導される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは産卵直後(ステージX~XIII EG&K)に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、ステージXで活性化され、致死促進タンパク質を誘導する。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、ステージXIで活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、ステージXIIで活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、ステージXIIIで活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、受精から孵化するまでの胚発生始動中の任意の時点で活性化される。特定の実施形態において、致死は、受精から孵化までの21日間の間に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の1日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の2日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の3日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の4日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の5日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の6日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の7日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の8日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の9日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の10日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の11日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の12日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の13日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の14日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の15日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の16日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の17日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の18日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の19日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の20日後に誘導される。特定の実施形態において、致死は、受精の21日後に誘導される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、最大30時間のインキュベーション後のニワトリ胚発生中に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、最大31時間のインキュベーション後のニワトリ胚発生中に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、最大32時間のインキュベーション後のニワトリ胚発生中に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、最大33時間のインキュベーション後のニワトリ胚発生中に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、最大34時間のインキュベーション後のニワトリ胚発生中に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、最大35時間のインキュベーション後のニワトリ胚発生中に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、最大36時間のインキュベーション後のニワトリ胚発生中に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、鳥の中で活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、胚を取り囲む卵殻の形成の前に活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、胚を取り囲む卵殻の形成の前に、鳥の中で活性化される。特定の実施形態において、光遺伝学的システムは、胚をインデューサーと直接接触させることによって活性化される。特定の実施形態において、インデューサーは、卵に挿入される。特定の実施形態において、最初に、卵殻が少なくとも部分的に開かれ、次にインデューサーが胚に直接投与される。
【0247】
ニワトリ細胞における細胞死の誘導を検証するために、DTAおよび2つの形態のカスパーゼ3を、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)またはCAGGプロモーター、それに続く、トランスフェクション効率を確認するために機能するIRES GFPを有する発現ベクターにクローニングした。PGKプロモーターは、ニワトリ胚性細胞におけるpCAGGよりも弱くて遅い。
【0248】
一実施形態において、作成されたベクターは、PGK-DTA-IRES-GFP、pCAGG-DTA-IRES-GFP、PGK-CASP3-IRES-GFP、pCAGG-CASP3-IRES-GFP、PGK-mCASP3-IRES-GFP、pCAGG-mCASP3-IRES-GFPであった。コントロールとして致死誘導遺伝子を含まない発現ベクターを使用した(PGK-IRES-GFPおよびpCAGG-IRES-GFP)。
【0249】
発現ベクターをエレクトロポレーションによってPGCにトランスフェクトし、細胞を24時間、48時間、および72時間インキュベートした後、フローサイトメトリーを使用して分析し、緑色蛍光タンパク質(GFP)によって陽性発現細胞を検出し、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用して死細胞を特定した。GFPをコードするヌクレオチド配列は、配列番号115に記載されている。
【0250】
図24A~24Bに示される結果は、全GFP陽性細胞のうちの死細胞の割合を示している。
【0251】
一実施形態において、上記の3つの要素を、Z染色体に組み込むことができる単一の活性ユニットに統合するターゲティングベクターを構築した。
図25に示されるように、ユニットは、5'および3'相同性アームに隣接している。プロモーター(pCAGG)は、IRES配列によって分離された光遺伝学的システムの2つのユニットの発現を駆動する。光遺伝学的システムに、ポリアデニル化配列(PA)が続く。光遺伝子カセットは、2つのLoxP部位に隣接している。光遺伝学的システムは、CIBN-Cry2、MAGNET、または上記のその他のシステムに基づくことができる。第2のLoxP部位に続くのは、致死誘導コード配列であり、第2のポリアデニル化配列が続く。この致死誘導コード配列はプロモーターを有しないため、光遺伝子の二量体化、およびLoxP部位間に隣接する光遺伝子カセットを除去するCre酵素の活性化をもたらす青色光照射が適用されるまでその配列は不活性である。この切除により、致死コード配列が、その発現を駆動するpCAGGプロモーターのすぐ下流に配置される。この戦略は、単一のプロモーターを含み、「STOP」配列を必要としないため、より短い設計の恩恵を受ける。
【0252】
一実施形態において、pCAGGプロモーターについてのヌクレオチド配列は、配列番号100に記載されている。pGKプロモーターについてのヌクレオチド配列は、配列番号109に記載されている。pCMVプロモーターについてのヌクレオチド配列は、配列番号110に記載されている。phSynプロモーターについてのヌクレオチド配列は、配列番号111に記載されている。pEF1-aプロモーターについてのヌクレオチド配列は、配列番号112に記載されている。
【0253】
一実施形態において、Optogen1-NLS-Cry2-Δ535-L348F-CreN(AA19-104)についてのヌクレオチド配列は、配列番号101に記載されている。Optogen2-CIBN(aa1-170)-NLS-Cre-C(aa106-343)についてのヌクレオチド配列は、配列番号102に記載されている。Creリコンビナーゼについてのヌクレオチド配列は、配列番号113に記載されている。CreN(AA19-104)についてのヌクレオチド配列は、配列番号117に記載されている。CreC(AA106~343)についてのヌクレオチド配列は、配列番号118に記載されている。
【0254】
一実施形態において、IRES配列についてのヌクレオチド配列は、配列番号103に記載されている。ポリアデニル化部位配列(ウサギベータグロビン)についてのヌクレオチド配列は、配列番号104に記載されている。5'相同性アーム(LHA)についてのヌクレオチド配列は、配列番号105に記載されている。3'相同性アーム(RHA)についてのヌクレオチド配列は、配列番号106に記載されている。
【0255】
一実施形態において、MAGNETシステムに関して、以下の配列は、Cry2-CIBNシステムの代わりに使用し得る代替のオプトゲン(optogens)である。例えば、CreN(aa18-59)_N-Mag_NLSについてのヌクレオチド配列は、配列番号107に記載されている。NLS_P-Mag_Cre-C(aa60-237)についてのヌクレオチド配列は、配列番号108に記載されている。
【0256】
一実施形態において、改変されたPGCの胚への移植、および生殖系列伝達および潜在的なファウンダー保因者についてスクリーニングされるキメラニワトリの作製は、以下のように実施された。ターゲティングベクターの生成に続いて、雌および雄の両方の胚に由来するPGC株は、px330-all-in-one CRISPR-Cas9-GFPをコードするプラスミドおよびターゲティングベクターのコエレクトロポレーションを受けた。CRISPRプラスミドは、染色体Zにおける設計された部位にDNA二本鎖切断を作成し、したがって、ターゲティングベクターの相同組換えを促進する。CRISPRプラスミドは、GFPとインフレームで融合したCas9をコードしており、したがってトランスフェクションの成功を確認できる。トランスフェクションの24~72時間後、陽性の単一細胞を96ウェルプレートに単一細胞でFACS選別し、増殖させて純粋なPGCコロニーを形成し、PCRおよびサザンブロットでスクリーニングして、適切な相同組換えを受けたコロニーを特定した。
【0257】
キメラニワトリは、次のように生成された。キメラニワトリは、遺伝子組換えされたPGCを機能的な配偶子に変換する手段である。キメラを生成するために、ステージ14~16H&H胚は、>3000個のPGC(通常は8000個~10000個まで)で血流(例えば、心臓)に注入された。これらの細胞は、内因性PGCと並んで胚生殖腺にコロニーを形成し、したがって、それらはキメラと呼ばれる。生殖細胞系伝達の効率、すなわち遺伝子組換えされたPGCを機能的PGCに変換する能力は、生殖腺内の内因性PGCおよび注入されたPGCの比率を含むいくつかの要因に依存する。内因性PGCの量を減らすために、産卵されたばかりの受精卵を600~800ラジアンのγ線照射をする。特定の実施形態において、照射は、600~800ラジアンの照射を含む。特定の実施形態において、照射は、400~1000ラジアンの照射を含む。特定の実施形態において、照射は、200~1200ラジアンの照射を含む。
【0258】
PGCは体細胞よりもγ線照射を受けやすいか、または照射後PGCは体細胞のように再生する能力が低いと考えられている。したがって、照射後、内因性PGCの総量は減少する。照射後、卵は、通常、PGC注射に適したステージ14-16H&Hに胚が達するまで培養された。照射効率の指標として、胚がステージ14~16H&Hに到達するのに必要なインキュベーション時間は、約10時間で増加し、照射された胚の70%が正常に発育せず、したがってPGCの注入は使用されない。種々のニワトリ株、卵殻の種類、厚さ、色で、異なる照射条件が必要になる場合があり、したがってエネルギー量はキャリブレーションを必要とする。注射後、卵をシールし、キメラヒヨコが孵化するまでインキュベーションする。その後、ヒヨコは性的に成熟するまで飼育され、雄においては、半定量的PCRまたはリアルタイムPCRを使用して生殖細胞系列の伝達を分析するために精子が収集される。
【0259】
実施例3
【0260】
本実施例は、付加要素、本明細書で「セーフロック」要素と呼ばれる要素を含むターゲティングベクターを提示する。この要素は、基本的に光遺伝子致死システムをロックし、既定ではシステムは不活性である。「セーフロック解除」株と交配することによってのみ、光遺伝子致死システムは活性になる。この要素は、活性化するために追加の「ロック解除」株を使用する必要があるため、品種をよりよく保護することによってシステム全体に利益をもたらす。これはまた、光遺伝子システムが本質的に不活性であるため、製造プロセス全体を通して、HRを受けた細胞を光から保護する必要がないことを保証する。
【0261】
本実施例は、8つの「オールインワン」ターゲティングベクターを開示し、それらが設計どおりに機能することをin-vitroおよびin-vivoの両方で示している。データはまた、MAGNET光遺伝子システムがニワトリ胚で機能しており、致死誘導メカニズムを活性化できることを示している。MAGNETシステムは、上述されている。さらに、データは、胚の致死誘導遺伝子としてのNogginが、産卵からの胚の発育を停止させること(産卵されたばかりの卵から)を示している。
【0262】
本明細書に開示される8つのターゲティングベクターは、2つの光遺伝子システム(MAGNETおよびCIBN-Cry2)および4つの致死誘導遺伝子(DTA、Noggin、caCASP3、および制御および検証プロセスに使用されるmCherry)の8つの組み合わせ選択肢をカバーする。明確にするために、mCherry自体は致死を誘導せず、他の要素の作用を確認するために使用された。
【0263】
上で考察されたように、本明細書に記載の実験の目的は、致死誘導カセットを、雄または雌由来のPGCのいずれかのZ染色体に導入することである。最終的な目標は、Z染色体でゲノム挿入を含む雌鶏を得ることである。この染色体は次世代の雄胚にのみ分離し、青色光の誘導により致死誘導カセットを活性化し、したがって、雄胚は胚発生の初期段階で死ぬ。したがって、性染色体分離により、雌の産卵鶏雌鶏は、雄鶏側からWT Z染色体を、母雌鶏側からWT W染色体を取得するため、改変された遺伝物質を獲得しない(
図1を参照)。この実施例では、ターゲティングベクターは、以下に説明するように4つの要素を含む(
図26の例を参照)。
【0264】
図26に示すように、第1の要素は「相同性アーム」である。一実施形態において、2つの約1.5kbの相同性アームが、ベクターの5'および3'末端の両方に位置している。これは、相同組換え(HR)をZ染色体上にあるHINT1Z遺伝子座の下流に向けるように設計されている。HINT1Z遺伝子は、PGCおよび胚盤葉全体(これらは産卵されたばかりのヒヨコ胚)において転写されるため、HRについてこの部位が選択された。Z染色体上の他のすべてのオープンに転写された領域も、この目的のための潜在的に良い候補である。
【0265】
第2の要素は、STOPカセットが取り外されるまで、光遺伝子致死メカニズムが不活性であることを保証する「セーフロック」メカニズムである。STOPカセットは2つのFRT部位に隣接し、pCAGGプロモーターおよび光遺伝子の間に位置しているため、光遺伝子の発現が妨げられる。以下に記載されるようにFlp発現株と交配すると、STOP要素が除去され、光遺伝子が転写され、光依存的方法で活性になることを可能にする(
図26A、活性「ロック解除」状態)。本実施例において、「セーフロック」要素は、GFPについてのコード配列、それに続くポリアデニル化部位を含む。下流の要素の転写を妨げる他の配列も「セーフロック」要素として使用し得る。
【0266】
第3の要素は「光遺伝学的誘導性要素」である。上で考察されたように、光遺伝学的システムは、特定の光波長の下で励起され、コンフォメーションを変化させて第2の特定のタンパク質と二量体化するタンパク質に基づいている。光遺伝学的システムの例は、上で考察されている。
【0267】
本実施例において、2つの代替光遺伝子システムがテストされ、使用された。第1は、MAGNETシステムで、2つの光遺伝学的タンパク質-正に帯電したP-Magおよび負に帯電したN-Magが青色光照射により二量体化する。部位特異的リコンビナーゼ酵素Magをコードする配列は、配列番号114および配列番号65に記載されている。これらのタンパク質はそれぞれ、Creリコンビナーゼ酵素の不活性部分に融合し、2つの光遺伝子が二量体化すると、Creの活性型が生成される(例えば、Nature Chemical Biology volume12,1059-1064 2016を参照)。この場合、自己切断ペプチドP2A(
図26の「Link」)の配列は、2つの光遺伝子の間に位置する。
【0268】
使用された第2の光遺伝子システムは、CIBN(CreC)-Cry2(CreN)の改良されたシステムである。この場合、改変は、最初の535アミノ酸のみを含む切り捨てられたCry2遺伝子へのL348F変異の挿入-Cry2-Δ535-L348Fを含む(Nature Chemical Biology 25 volume12,pages425-430(2016)を参照)。一実施形態において、2つの光遺伝子間のリンカーは、IRES配列(
図26の「Link」)である。
【0269】
第4の要素は「致死誘導カセット」である。一実施形態において、致死誘導カセットは、細胞死またはBMP4などの胚発生の初期段階に必要な分子シグナル伝達経路への重度の介入によって初期胚死を促進する遺伝子を含む。上で考察されたように、致死誘導遺伝子の例には、ジフテリア毒素A(DTA)などの毒素、カスパーゼ3またはカスパーゼ3の変異した構成的に活性な変異した形態などのカスパーゼ遺伝子、またはBMP4-Nogginの阻害剤タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0270】
次の表に、これら8つのターゲティングベクターの機能を示す。一実施形態において、これらのベクターは、pJet1.2シャトルベクタープラスミドにクローン化された。
【0271】
【0272】
ターゲティングベクター(TV)における要素の活性は、HEK293細胞ではin-vitroで評価され(
図27)、ニワトリ胚においてはin-ovoで評価された(
図28-29)。in-vitro検証のために、HEK293細胞をTV4のみ(
図27A)、pCAGG-Cre(配列番号128)(
図27B)、またはpCAGG-FlpO(配列番号129)プラスミドでトランスフェクトした。後者は2つの処理下で行われ、1つは暗所に保たれ(
図27C)、他方は、トランスフェクションの24時間後に青色光に15秒間さらされた。照明後、細胞をさらに24時間インキュベートした(
図27D)。
【0273】
単独で発現させた場合、TV4は他のすべてのTVと同様にGFPを発現し、したがって「セーフロック」状態の活動を示している(
図27A)。pCAGG-Creプラスミドと共発現させた場合、「セーフロック」カセットと光遺伝子カセットは完全に除去され(
図26B、
図27B)、これはGFPの発現の喪失およびmCherry発現(致死誘導遺伝子の代理として)の開始によって示された。この結果から、「セーフロック」要素と光遺伝子要素を切除すると、致死誘導要素がアクティブになることを確認する。TV4が、pCAGG-FlpOプラスミドと共発現された場合、GFPの発現の喪失によって示されるように「セーフロック」要素のみが除去され(
図26A、
図27C~D)、光遺伝子システムが光依存的方法で活性化された。細胞を暗所に保った場合、光遺伝子システムの活性化およびmCherryの発現はなく、致死カセットが発現されなかったことを示している(
図27C)。しかしながら、同じ条件下で、細胞が照されると、光遺伝子システムは、活性になり、致死要素を発現させるために切除された(
図26Aを参照)。これは、
図27Dに示されるようにmCherryの発現によって示される。
【0274】
in-vivoでのTV要素の活性を実証するために、ニワトリ胚はプラスミドを神経管に注入され、上記のようにエレクトロポレーションされた。
図28において、白い線は、配向の目的で、神経管および肢芽の背側正中線を示している。4つの処理群がテストされた:1.TV4のみの発現(
図28A)、2.ポジティブコントロールとしてのTV4およびpCAGG-Creプラスミドのコエレクトロポレーション(
図28B)、3.暗所に保たれた、TV4およびpCAGG-FlpOプラスミドのコエレクトロポレーションン(
図28C)、ならびに、4.TV4およびpCAGG-FlpOプラスミドのコエレクトロポレーション後15秒間、青色光への曝露、およびさらなる12時間のインキュベーション(
図28D)。
【0275】
単独でエレクトロポレーションした場合、TV4はGFPを発現し、既定の不活性な「セーフロック」状態を示し、mCherryは発現しなかった(
図28A)。pCAGG-Creプラスミドと共発現させた場合、「セーフロック」および光遺伝子カセットが除去され(
図26B、
図28B)、したがって、GFP発現はないが、mCherryは発現した。これは、致死誘導要素の活性化のためのポジティブコントロールとして機能する。TV4をpCAGG-FlpOプラスミドと共発現させることにより、FRTに隣接する「セーフロック」要素のみが除去され、したがって、GFP発現はなかったが(
図28C-28D)、光遺伝子システムは光依存的方法で活性化された。細胞を暗所に保った場合、GFP発現はなく、光遺伝子システムがその活性状態にあったが、mCherryは発現されなかった、すなわち致死カセットは不活性であったことを示した(
図28C)。しかし、エレクトロポレーションの12時間後に胚を照らすと、光遺伝子システムは、活性になり、致死要素を発現させるために切除された。これは、
図28Dに示されるようなmCherryの発現によって示される。
【0276】
光依存的方法における致死誘導遺伝子Nogginの活性を実証するために、致死誘導要素としてNogginのコード配列を含むTV1を、pCAGG-FlpOプラスミドと、36時間インキュベートされたヒヨコ胚の吻側神経管(中脳および後脳の軸レベル)にコエレクトロポレーションした。この段階で、神経堤細胞は、BMP4依存的方法で背側神経管から層間剥離する。したがって、背側神経管におけるNogginの異所性発現によってBMP4シグナル伝達経路を阻害すると、神経堤細胞の層間剥離が阻害されると予測される。神経堤細胞を可視化するために、神経堤マーカーHNK-1を染色するための抗HNK-1抗体を使用した。
【0277】
図29は、TV1(配列番号120)、pCAGG-FlpO(配列番号129)およびpCAGG-IRES-GFP(配列番号59)プラスミドを神経管にエレクトロポレーションした胚を示している。後者は、トランスフェクトされた細胞のモニタリングを可能にするためにポジティブコントロールとして追加された。トランスフェクションの24時間後、実験を通して暗所に保たれた胚において(
図29A、上段、背面図、下段、右側面図)、神経堤細胞が層間剥離し、背側神経管から正常に遊走した。HNK-1染色は、左右両方の神経褶(神経堤細胞の遊走を引き起こす神経管の最も背側の側面)、および神経堤細胞の遊走において、背側管における左右相称の発現パターンを明らかにした(
図29A、矢じり)。しかし、エレクトロポレーションの12時間後に光にさらされた胚においては、神経堤細胞が剥離してチューブから遊走することができず、HNK-1染色により、右神経褶、エレクトロポレーション側での発現の著しい低下が明らかになった(
図29B、矢印)。したがって、これらの結果は、TV1から「セーフロック」要素を削除すると、Nogginの発現および活性が、MAGNET光遺伝子システムによって光依存的方法で調節されることを示している。
【0278】
卵が産卵されるとすぐにNogginが胚発生を停止できることを実証するために、胚盤葉胚の段階において、胚盤葉をin-ovoで外因性のNoggin源で処理した(
図30)。この目的のために、pCAGG-Noggin-IRES-GFP(配列番号130)、またはネガティブコントロールとして、pCAGG-IRES-GFP(配列番号59)プラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞におけるNogginの発現を検証するために、トランスフェクトされた細胞から抽出された総タンパク質を、抗Noggin抗体(Abcam、ab16054、予測サイズ約24kDa)およびローディングコントロールとして抗α-チューブリン-HRP抗体(Abcam、ab40742、予測サイズ約55kDa)を用いたウエスタンブロットによって分析した。
図30Aは、ネガティブコントロールでトランスフェクトされた細胞(CON)においてはNogginの発現がなかったが、pCAGG-Noggin-IRES-GFPでトランスフェクトされた細胞(NOG)はNogginを産生したことを示す。染色済みのタンパク質ラダーが左側のレーンに表示された(Thermo Scientific、PageRuler#26617)。
図30B~Cおよび
図30D~Eにそれぞれ示されるように、コントロールおよびNoggin発現細胞からの馴化培地を、産卵されたばかりの受精卵に注入し、その後、24時間または54時間インキュベートした。
図30B~Cは、処理された胚の高解像度エピスコピック顕微鏡(HREM)3D再構成モデルを示す。原始線条(矢印で区切る)の形成によって示されるように、コントロール処理胚(
図30B)は正常に発育し続け、正常な原腸形成を受けたが、Noggin処理胚は原腸形成できず、明らかな原始線条がなく、胚発生のプロセスは本質的に停止したことを示している(
図30C)。54時間のインキュベーションで胚をさらに発育させた場合(
図30D~E)、コントロール処理した胚は正常に発育し、正常な神経胚形成プロセスを経て鼓動する心臓を形成した(
図30D)が、Noggin処理した胚は明白な特徴を持たない細胞の塊を形成した(
図30E、矢印)。
【0279】
まとめると、上記の結果は、
図26に示した、「セーフロック」要素および光依存的方法で致死誘導要素を活性化するMAGNET光遺伝子システムを含む、分子作用様式戦略が予測どおりに機能することを示している。さらに、産卵されたばかりの卵において胚盤葉をNogginで処理することによるBMPシグナル伝達経路の阻害は、胚発生の進行を停止させた。
【0280】
Z染色体上に組み込まれたターゲティングベクターを含むPGCの純粋な株の作成
【0281】
一実施形態において、Z染色体への標的化された組み込みを有するPGCを生成するために、CRISPR/Cas9を送達するためのリボヌクレオプロテイン(RNP)システムが使用された。RNPシステムの使用は、とりわけ、高効率、迅速なDNA切断、およびトランスフェクトされた細胞からのRNP複合体の迅速な除去の恩恵を受ける。RNP複合体は、組換えCas9またはハイフィデリティーCas9ヌクレアーゼ、およびcrRNA:tracrRNA複合体の混合物で構成されている。tracrRNAは市販されており(IDT)、crRNAは、標的ゲノムDNA上の所望の切断部位に対応する特定の20ヌクレオチド配列でカスタムメイドできる。一実施形態において、本明細書に開示される配列番号66および配列番号68を使用して、2つのcrRNAオリゴを合成した(
図8を参照)。
【0282】
PGC培地および株誘導は、上述されている。PGCをエレクトロポレーションするために、5×105個の細胞を、AkoDMEMで洗浄し、0.7μgのターゲティングベクタープラスミド(本実施例において、TV1)、1μM Alt-R(登録商標)cas9エレクトロポレーションエンハンサー(IDT)、ならびに、終濃度が1.5μMの組換えCas9またはハイフィデリティーCas9ヌクレアーゼ(それぞれAlt-R(登録商標)S.p.Cas9ヌクレアーゼまたはS.p.HiFi Cas9ヌクレアーゼV3、IDT)、および1.8μMのcrRNA:tracrRNA(sgRNA複合体、カスタムAlt-R(登録商標)CRISPR-Cas9 crRNAおよびAlt-R(登録商標)tracrRNA、IDT)を有するRNP複合体を含むバッファー「R」(Neonバッファー、Invitrogen)に移した。
【0283】
crRNA:tracrRNA複合体は、RNAオリゴを95℃で1分間加熱し、室温まで冷却することによって調製した。RNP複合体(Cas9タンパク質+crRNA:tracrRNA)混合物は、組換えCas9またはハイフィデリティーCas9ヌクレアーゼタンパク質をcrRNA:tracrRNA複合体に添加し、室温で10~20分間インキュベートすることによって調製した。ハイフィデリティーCas9は、オフターゲットを引き起こすことが少ないはずであると一般に考えられている。
【0284】
エレクトロポレーションについては、RNP複合体、エレクトロポレーションエンハンサー試薬、およびターゲティングベクタープラスミドを含む10μlのバッファー「R」をPGCペレットに添加し、混合物を、ネオンエレクトロポレーター(Invitrogen)を使用して、1000Vの3つのパルスでそれぞれ13msの持続時間で直ちにエレクトロポレーションした。続いて、細胞を、1μM SCR7-ピラジン(SML1546 sigma)を含むPGC培地で48ウェルプレートに直ちに播種した。1~4時間後に培地を交換し、トランスフェクトした細胞を7~10日間回復させた。SCR7-ピラジンは、エレクトロポレーション後48時間添加された。トランスフェクトされた細胞は、FACS選別によって個別に分離された。FACS選別については、穏やかな細胞のピペッティングを行い、細胞をPGC培地で選別した。単一のGFP陽性細胞をFACSソニーソーター(ソニー)でU字型96ウェルプレートに選別した。選別された細胞を2~3週間増殖させて純粋なコロニーを形成した。これらのコロニーから、分析のために全ゲノムDNAを抽出し、凍結保存し、陽性コロニーを代理宿主胚に注入した。ターゲティングベクターの正しい組み込みを検証するために使用されるPCRおよびサザンブロット分析は、上述されている(例えば
図15~16を参照)。代理キメラヒヨコを作成する方法も、上述されている。
【0285】
図31Aは、TV1でHRを受け、GFPを発現した純粋な雌PGC株を示す。このコロニー由来の細胞は、移植後5日間インキュベートされた代理宿主胚に注入された。
図31Bは、PGC注入の5日後の胚の腹側の図を示す。この段階で、PGCは、生殖腺の肛門である生殖隆起にコロニー形成した(
図31B、矢じり)。他の注入された胚を孵化するまで培養し、雌のヒヨコを孵化後10日目に卵巣を分析するために犠死させた。
図31Cは、多数のGFP陽性PGCを含む卵巣(線で示されている)を示す。これらの結果は、TV1でZ染色体上でHRを受けたPGCが生殖腺に成功裏にコロニーを形成することを示している。
【0286】
CreまたはFlpOを発現する「ロック解除」株の作成。
【0287】
ターゲティングベクターTV1~8を発現するトランスジェニックニワトリ株は、ゲノムに「セーフロック」要素を有し、したがって、光遺伝子-致死システムは不活性である。FRT部位に隣接する「セーフロック」要素を除去するために(
図26Aを参照)、これらの株をFlpOを発現するニワトリ株と交配する必要がある。この株を生成するために、FlpO酵素、それに続くIRES-GFPを含むターゲティングベクターを作成した(TV-FlpO-IRES-GFP、配列番号131)。ポジティブコントロールとして、および光に依存しない方法で致死誘導カセットを活性化する手段として、Cre発現品種を使用し得る。この場合、LoxP部位に隣接する「セーフロック」および光遺伝子要素が除去されて、致死誘導要素が活性化される(
図26Bを参照)。この株を生成するために、Cre酵素、それに続くP2A-GFPを含むターゲティングベクターを作成した(TV-Cre-P2A-GFP、配列番号132)。これらの2つのターゲティングベクターは、同じ5'および3'相同性アームおよびレポーター遺伝子GFPを共有し、TV1~8について前述したようにZ染色体に組み込まれるように設計されている。
【0288】
上記のターゲティングベクター(TV-FlpO-IRES-GFPおよびTV-Cre-P2A-GFP)を使用して、代理キメラ胚に注入されたPGCを生成した。PGCのトランスフェクション、FACS分析、HR組み込みの検証、胚注入などの方法は、上述されている。
【0289】
別の実施形態において、「セーフロック」要素を除去するために組換えCREまたはFlpOタンパク質を使用する選択肢が存在する。一実施形態において、組換えタンパク質をコードする配列は、細胞浸透ペプチドであるTATペプチドの配列、それに続く核局在化配列(NLS)、次に、CreまたはFlpO酵素のいずれかをコードする配列を含み、細胞または胚に適用し得る。これらの組換えタンパク質は、培養細胞に有効であり、市販されている。これらの組換えタンパク質は、胚または成体に注入することができ、Cre/Flpトランスジェニックニワトリを生成して交配する必要なしにシステムを活性化する可能性があると考えられている。卵殻の開口部を通じてヒヨコ胚へアクセスできるため、血流または胚の近くに直接注入できる。したがって、一実施形態において、上記の組換えタンパク質を胚に直接注入して、「セーフロック」要素を除去することができる。
【0290】
特定の実施形態をその具体的な実施形態と合わせて説明したが、多くの代替、修正、および変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内にあるそのような代替、修正、および変形のすべてを包含することが意図される。
【0291】
本明細書で言及されているすべての出版物、特許、および特許出願は、個々の出版物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されるのと同程度に、参照により全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または識別は、そのような参考文献が本開示の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクション見出しが使用されている限り、それらは必ず限定するものとして解釈されるべきではない。
【0292】
態様または実施形態の特定の特徴が本明細書に図示され、説明されてきたが、多くの修正、置換、変更、および同等物を直ちに、当業者は想起するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書で提供される態様または実施形態の真の趣旨内に収まるように、すべてのそのような修正および変更を網羅することを意図することを理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】