(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】細胞により分泌された生体分子を決定するための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6804 20180101AFI20220413BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220413BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20220413BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220413BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
C12Q1/6804 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/68
C12Q1/6876 Z
C12M1/34 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552491
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2020056975
(87)【国際公開番号】W WO2020183015
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521393915
【氏名又は名称】エヴォリオン ビーオテヒノロギース ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クライン-ブリュゲナイ, ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインガルテン, ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】ビューレン, ゼバスティアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029CC10
4B029DG08
4B029FA15
4B029GA03
4B029GB04
4B029GB09
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
(57)【要約】
本発明は、とりわけ、1つまたは複数の細胞放出生体分子を分析するための方法およびキットに関する。さらに、本発明は、異なる配列エレメントを含む複数の配列決定可能な産物に関する。記載の技術は、種々の適用、特に生体分子分析への適用、例えば、マトリックス内に提供される単一細胞の生体分子放出プロファイルを多重化様式で得るために有用である。本発明は、細胞放出生体分子の分析に関する。先行技術と比較して、本発明では、複数の目的の生体分子を時間依存的に分析することが可能になり、ここで、生体分子を放出する細胞は、ネイティブな細胞環境を模倣することができる環境中で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の細胞放出生体分子を分析するための方法であって、1つまたは複数の目的の生体分子を放出する少なくとも1つの細胞を含む細胞含有マトリックスを提供することを含み、
a)捕捉用マトリックスを提供するステップであって、前記捕捉用マトリックスが1つまたは複数の型の捕捉用分子を含み、捕捉用分子の各型が目的の生体分子に結合する、ステップと、
b)前記細胞含有マトリックスをインキュベートして、前記1つまたは複数の目的の生体分子を放出させ、前記1つまたは複数の目的の生体分子を前記捕捉用マトリックスの前記1つまたは複数の型の捕捉用分子に結合させるステップと、
c)1つまたは複数の型の検出用分子を添加するステップであって、検出用分子の各型が、目的の生体分子に特異的に結合し、検出用分子の各型が、前記検出用分子の特異性を示すバーコード配列(B
S)を含むバーコード標識を含む、ステップと、
d)少なくとも、
(i)前記バーコード配列(B
S)、および
(ii)時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、および/または
(iii)位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、および
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列
を含む配列決定可能な反応産物を生成するステップであって、
前記配列決定可能な反応産物の生成が、
- 前記少なくとも1つの型の検出用分子の前記バーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーの使用、または
- 前記少なくとも1つの型の検出用分子の前記バーコード標識とライゲーションする少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用を含む、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記配列決定可能な反応産物が、時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)を含み、ステップa)~c)および必要に応じてステップd)を異なる時点t
xにおいてnサイクル実施し、nが少なくとも2であり、xが前記異なる時点を示し、各サイクルで、バーコード配列B
Tが他の全ての実施されたサイクルのバーコード配列B
Tと異なる配列決定可能な反応産物が生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを複数の区画を含む細胞培養デバイス内に提供し、前記細胞培養デバイスの区画内に少なくとも1つの細胞含有マトリックスおよび少なくとも1つの捕捉用マトリックスを提供する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
捕捉用マトリックスを複数の区画から得、前記捕捉用マトリックスを複数の区画を含むデバイスに移行することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
異なる区画に含まれる複数の細胞含有マトリックスについてステップa)~d)を少なくとも1サイクル実施し、ステップd)において生成した配列決定可能な反応産物が、分析される細胞含有マトリックスの位置情報を示すためのバーコード配列B
Pを含み、区画内に含まれる細胞含有マトリックスについて、別の区画内に含まれる細胞含有マトリックスについて生成されるものとはバーコード配列B
Pが異なる配列決定可能な反応産物が生成される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記バーコード配列B
Pが、ステップd)で使用されるオリゴヌクレオチドを介して前記配列決定可能な反応産物に導入され、前記バーコード配列B
Pを含むオリゴヌクレオチドが、増幅反応に使用されるプライマーである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
異なる型の捕捉用分子および異なる型の検出用分子を使用してy種の異なる目的の生体分子を分析することを含み、yが少なくとも2であり、目的の生体分子に結合する検出用分子の各型のバーコード標識のバーコード配列B
Sが、異なる目的の生体分子に結合する他の全ての型の検出用分子のバーコード配列B
Sとは異なる、請求項1から6までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項8】
ステップd)が、プライマーまたはプライマーの組合せを使用して増幅反応を実施するステップを含み、必要に応じて、ステップd)が、前記バーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記バーコード標識を伸長させ、それによって、伸長したバーコード標識を前記増幅反応より前に提供するステップをさらに含む、請求項1から7までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項9】
e)前記生成した配列決定可能な反応産物の配列決定を行うステップを含み、必要に応じて、ステップd)において異なるサイクルから生成した、および/または異なる区画から生成した、配列決定可能な反応産物をプールし、前記得られたプールの配列決定を行うことを含む、請求項1から8までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項10】
ステップd)が、
(aa)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズさせ、前記ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記バーコード標識を伸長させ、それにより、鋳型として使用した前記ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの配列情報をさらに含む、前記検出用分子に付着した伸長したバーコード標識を得るステップを含み、
必要に応じて、ステップd)が、
(bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、前記伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用し、好ましくは前記伸長したバーコード標識を鋳型として使用して増幅反応を実施するステップをさらに含む、
請求項1から9までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項11】
ステップd)における前記配列決定可能な反応産物の生成が、
(i)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマー、および/または
(ii)プライマーの組合せ
の使用を含み、
前記少なくとも1つのオリゴヌクレオチドおよび/または前記プライマーの組合せが、
- 時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、
- 細胞含有マトリックスの位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、
- 固有の分子識別子(UMI)配列、必要に応じて、前記UMI配列の長さは最大40ヌクレオチド、好ましくは4~20ヌクレオチドである、および
- 配列決定用のアダプター配列(AS)
からなる群から選択される1つまたは複数の配列エレメントを含み、
前記1つまたは複数の配列エレメントB
T、B
P、UMIおよび/またはASが、含まれる場合、前記検出用分子またはその逆相補物のバーコード標識とハイブリダイズすることができる前記オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマーの配列領域の5’側に位置する、請求項1から10までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項12】
請求項9から11までに記載の方法に従って得られた検出用分子に付着したバーコード標識および/または伸長したバーコード標識が、
(i)前記検出用分子の特異性を示すバーコード配列(B
S);
(ii)1つまたは複数のプライマー標的配列;
(iii)必要に応じて、時間情報を示すバーコード配列(B
T);
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列;および
(v)必要に応じて、アダプター配列(1)
を含む、請求項1から11までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項13】
ステップd)が、
変形Aによると、
(aa)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドであって、前記バーコード標識にハイブリダイズすることができる領域の5’側に固有の分子識別子(UMI)配列を含む、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加し、前記ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記バーコード標識を伸長させ、それによって伸長したバーコード標識を得るステップを含み、
ステップd)が、(bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、前記伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施するステップをさらに含むことが好ましい;
または
変形Bによると、
(aa)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドであって、前記バーコード標識にハイブリダイズすることができる領域の5’側に、(i)位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)および(ii)好ましくは固有の分子識別子(UMI)配列を含む、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加し、前記ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記バーコード標識を伸長させ、それによって伸長したバーコード標識を得るステップを含み、
ステップd)が、(bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、前記伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施するステップをさらに含むことが好ましい;
または
変形Cによると、
(aa)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドであって、前記バーコード標識にハイブリダイズすることができる領域の5’側に、(i)時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、および/または(ii)固有の分子識別子(UMI)配列を含む、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加し、前記ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記バーコード標識を伸長させ、それによって伸長したバーコード標識を得るステップを含み、
ステップd)が、(bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、前記伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施するステップをさらに含むことが好ましい
請求項1から12までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項14】
ステップd)が、
(aa)前記検出用分子のバーコード標識のアダプター配列(1)と逆相補的であるアダプター配列(1)
Rを含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加するステップであって、
前記アダプターバーコードオリゴヌクレオチドが、
- 時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、
- 位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、
- 固有の分子識別子(UMI)配列、および
- プライマー標的配列
からなる群から選択される配列エレメントのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは全てをさらに含み、
これらの1つまたは複数の配列エレメントが、前記アダプター配列(1)
Rの5’側に位置する、ステップと、
前記ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記バーコード標識を伸長させ、それによって伸長したバーコード標識を得るステップを含む、
請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップd)が、
- 位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、
- 必要に応じて、配列決定用のアダプター配列(AS)、
- 必要に応じて、時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)
を含むプライマーまたはプライマーの組合せを用いて増幅反応を実施するステップであって、
前記1つまたは複数の配列エレメントB
P、AS、および/またはB
Tが、前記プライマーまたは前記プライマーの組合せのうちのプライマーに含まれる場合、前記必要に応じて伸長させたバーコード標識またはその逆相補物とハイブリダイズすることができる前記プライマーの配列領域の5’側に位置する、ステップを含む、請求項9から14までに記載の方法。
【請求項16】
デバイスの異なる区画に含まれる前記鋳型を異なる亜型の前記プライマーまたはプライマーの組合せと接触させ、前記異なる亜型の前記プライマーまたはプライマーの組合せが、個々の区画の位置情報を示すそれらのバーコード配列B
Pが異なり、前記プライマーまたはプライマーの組合せの亜型が、各亜型に対して固有のものであるバーコード配列B
P以外は同一であることが好ましい、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップd)における増幅を、デバイスの異なる区画に含まれる前記鋳型を異なるプライマーの組合せと接触させることによって実施し、前記プライマーの組合せのうちの1つのプライマーが、前記デバイスの異なる区画に含まれる全ての鋳型に対して同じものであり、前記プライマーの組合せのうちの他のプライマーが、個々の区画の位置情報を示すバーコード配列B
Pが異なるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記バーコード配列B
Tを前記バーコード標識または前記伸長したバーコード標識内に提供し、ステップd)が、増幅反応を実施する前に、異なる時点において提供され、区画内に異なるバーコード配列B
Tを含むバーコード標識または伸長したバーコード標識をプールするステップを含む、請求項1から17までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項19】
以下の特色
a.少なくとも1つの細胞を含む前記マトリックスが、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する:
(i)マトリックス材料が、ハイドロゲルによって提供される;
(ii)前記マトリックスが、3次元である;
(iii)前記マトリックスが、粒子、必要に応じて、半球粒子または好ましくは球状粒子である;
(iv)前記マトリックスの直径は、≦1000μm、例えば、≦800μm、≦600μm、もしくは≦400μmなど、好ましくは≦200μm、例えば、5μm~150μmなどである;および/または
(vi)前記マトリックスの体積が、≦200μl、例えば、≦100μl、≦50μl、≦10μl、≦1μl、≦0.5μl、≦300nl、≦200nl、≦100nl、≦50nlもしくは≦5nlなど、好ましくは0.05pl~2000plである;
b.前記1つまたは複数の型の捕捉用分子を含む前記捕捉用マトリックスが、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する:
(i)ポリマーマトリックスであり、必要に応じて、ポリアクリルアミド(PMA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキサゾリン(POx)、およびポリスチレン(PS)を含むもしくはそれからなる;
(ii)前記マトリックス材料が、ハイドロゲルによって提供される;
(iii)前記マトリックスが、3次元である;
(iv)前記マトリックスが、粒子、好ましくは球状粒子である;ならびに/または
(v)前記マトリックスの直径は、≦1000μm、例えば、≦800μm、≦600μmもしくは≦400μmなど、好ましくは≦200μm、例えば、5μm~150μmなどである;
ならびに/または
c.前記細胞含有マトリックスと前記捕捉用マトリックスをデバイスの区画内の近傍に提供する、または前記細胞含有マトリックスと前記捕捉用マトリックスを別々の区画内に提供し、前記別々の区画が、互いに流体連通しているまたは互いに流体連通させることができ、したがって、放出された目的の生体分子が前記捕捉用マトリックスと接触し得る
のうちの1つまたは複数を有する、請求項1から18までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞含有マトリックスのマトリックスが、以下の特徴:
a.前記ハイドロゲルが、同じ型または異なる型の架橋結合したハイドロゲル前駆体分子を含む;
b.前記ハイドロゲルが、ハイドロゲル前駆体分子として異なる構造を有する少なくとも2つの異なるポリマーで構成され、必要に応じて、少なくとも1つのポリマーが共重合体である;
c.前記ハイドロゲルが、直鎖構造を有する少なくとも1つのポリマーと多腕または星形構造を有する少なくとも1つのポリマーを使用して形成される;
d.前記ハイドロゲルが、少なくとも1つの式(P1)
【化4】
(式中、
Rは、独立に、水素原子、1~18個の炭素原子を有する炭化水素(好ましくはCH
3、-C
2H
5)、少なくとも1つのヒドロキシ基を有するC
1~C
25炭化水素、少なくとも1つのカルボキシ基を有するC
1~C
25炭化水素、(C
2~C
6)アルキルチオール、(C
2~C
6)アルキルアミン、保護された(C
2~C
6)アルキルアミン(好ましくは-(CH
2)
2~6-NH-CO-R(R=tert-ブチル、パーフルオロアルキル))、(C
2~C
6)アルキルアジド、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオキサゾリンから選択される、または、Rは、残基R
4である
Yは、少なくとも1つの残基R
4を含むグラフトを少なくとも1つ含有する部分である、
T
1は、終結部分であり、残基R
4を含有し得る、
T
2は、終結部分であり、残基R
4を含有する、
pは、1から10までの整数である、
nは、1よりも大きく、好ましくは500を下回る整数である、
mは、ゼロまたは少なくとも1、好ましくは1よりも大きく、好ましくは500を下回る整数である、
合計n+mは、10よりも大きい、
xは、独立に、1、2または3であり、好ましくは、xは、独立に、1または2であり、最も好ましくは、xは1である、
R
4は、独立に、
- 架橋結合のための、および/または
- 生物学的に活性な化合物との結合のための少なくとも1つの官能基を含み、
必要に応じて、結合性部位を有する前記官能基を式(P1)の構造のそれぞれの部分と接続する(好ましくは分解性)スペーサー部分を含む)
のポリマーを使用して形成され、
全てのm倍およびn倍の反復単位の全体が前記ポリマー鎖内に任意の順序で分布しており、必要に応じて、前記ポリマーが、ランダム共重合体またはブロック共重合体である
のうちの1つまたは複数を有するハイドロゲルである、請求項1から19までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項21】
微細加工された細胞培養デバイスであることが好ましい細胞培養デバイスであって、以下の特色:
i)少なくとも1つの捕捉用マトリックスおよび/もしくは少なくとも1つの細胞含有マトリックスを含むマトリックスを少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ収容するための少なくとも1つの区画;
ii)隔離された状態と開放された状態を切り換えることができる少なくとも1つの区画であって、前記隔離された状態が、前記区画内に存在する流体が前記区画内に存在しない流体と接触していない状態に対応し、前記開放された状態が、前記区画内に存在する流体が前記区画内に存在しない流体と接触している状態に対応する、少なくとも1つの区画;
iii)少なくとも1つのマトリックス、好ましくは2つのマトリックスを収容するための区画であって、前記少なくとも1つのマトリックスを位置付けるのに適した、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状が存在する、区画;
iv)区画のアレイによって提供されることが好ましい、少なくとも1つのマトリックスを収容するための複数の区画;
v)前記区画を開放された状態と閉鎖された状態とに切り換えることができる微細加工された弁;
vi)第1のチャネル、第2のチャネル、前記第1のチャネルと前記第2のチャネルを接続する接続チャネル、前記接続チャネル内に配置された弁部分を含む微細加工された弁であって、前記弁部分が、前記接続チャネルを選択的に開閉するように適合されている、弁;
vii)少なくとも3つの層を含む微細加工された弁であって、第1のチャネルが第1の層内に位置し、第2のチャネルが第3の層内に位置し、弁部分が第2の層内に位置し、前記第2の層が、前記第1の層と前記第3の層の間に配置されている、弁;
viii)微細加工された弁であって、
第1のチャネルが、少なくとも1つのマトリックスを前記第1のチャネルを通って流れる流体内に含有されるように位置付けるのに適した、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を含み、前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状が、前記第1のチャネル内に、前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によって流体の流れを減少させるように、具体的には、前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状により前記チャネルの横断面を狭くすることができるように配置されている;および/もしくは、
第2のチャネルが、粒子を前記第2のチャネルを通って流れる流体内に含有されるように位置付けるのに適した、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を含み、前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状が、前記第2のチャネル内に、前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によって流体の流れを減少させるように、具体的には、前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状により前記チャネルの横断面を狭くすることができるように配置されている、
弁;ならびに/または
ix)流体を前記区画に提供するための流体レザバーおよび流体チャネル
のうちの1つまたは複数を有する、デバイスを利用して実施される、請求項1から20までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項22】
微細加工された細胞培養デバイスであることが好ましい細胞培養デバイスであって、以下の特色:
i)少なくとも1つのマトリックスが、マトリックス固定化のために好ましく微細加工された幾何学的形状によって区画の内側に放出可能に位置付けられている;
ii)少なくとも1つのマトリックスが、マトリックス固定化のために好ましく微細加工された幾何学的形状によって区画の内側に放出可能に位置付けられており、前記マトリックス固定化のための幾何学的形状が、以下の特徴:
- 前記細胞含有マトリックスと前記捕捉用マトリックスを近傍に位置付けることができる;
- 少なくとも2つの細胞含有マトリックスと前記捕捉用マトリックスを近傍に位置付けることができる
のうちの1つもしくは複数を有する;
iii)少なくとも1つの細胞含有マトリックスおよび少なくとも1つの捕捉用マトリックスがマトリックス固定化のために好ましく微細加工された幾何学的形状によって区画の内側に位置付けられており、前記少なくとも1つの細胞含有マトリックスが収容されている区画と前記少なくとも1つの捕捉用マトリックスが収容されている区画が異なり、どちらの区画も、流体が他の流体と接触するように、もしくは流体が互いに接触しないように切り換えることができる;
ならびに/または
iv)マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を通過する流体を提供するように適合されている弁配置を含むトラッピング幾何学的形状であって、前記弁配置が、前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を通過する流体の方向を選択的に変化させるように適合されており、特に、第1の方向の流体により、前記少なくとも1つのマトリックスが前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状の中に推進され、第2の方向の流体により、前記少なくとも1つのマトリックスが前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状の外に推進され、特に、第2の方向の流体により、前記少なくとも1つのマトリックスが出口区域の方向に送達される、トラッピング幾何学的形状を含む
のうちの1つまたは複数を含むデバイスを利用して実施される、請求項1から21までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項23】
前記提供された細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスが、流体、好ましくは水と不混和性である流体と共に提供され、前記流体と共に提供される前記マトリックスが、微細加工された細胞培養デバイスであることが好ましい細胞培養デバイスを利用することによって、好ましくは、
(i)前記細胞含有マトリックスおよび前記捕捉用マトリックスをマトリックス固定化のために好ましく微細加工された幾何学的形状によって区画の内側に放出可能に位置付けるステップであって、前記区画が、第1の流体、好ましくは水性流体を含む、ステップと、
(ii)前記第1の流体を前記区画から取り除き、前記第1の流体を、前記流体を提供する第2の流体によって置き換えるステップであって、前記流体が、水と不混和性であることが好ましい、ステップと、ならびに
(iii)必要に応じて、前記第2の流体を前記区画から取り除き、前記第2の流体と不混和性であることが好ましい前記第1の流体または第3の流体によって置き換えるステップ
によって生成されることが好ましい、
請求項1から22までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項24】
ステップa)において前記捕捉用マトリックスを提供する前に、前記細胞含有マトリックスをインキュベートして1つまたは複数の目的の生体分子を放出させ、前記捕捉用マトリックスを提供した後、1つまたは複数の目的の生体分子に前記捕捉用マトリックスの前記1つまたは複数の型の捕捉用分子が特異的に結合し、
前記細胞含有マトリックスを、規定の体積の流体、好ましくは水と不混和性である流体中に提供し、前記捕捉用マトリックスを規定の体積の同じ型の流体中に提供し、前記細胞含有マトリックスと前記捕捉用マトリックスを接触させた後、同じ型の前記流体が統合して、前記細胞含有マトリックスと前記捕捉用マトリックスに共有される規定の体積の流体が提供されることが好ましい、
請求項1から23までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項25】
a)1つまたは複数の型の検出用分子であって、検出用分子の各型が、目的の生体分子に特異的に結合し、検出用分子の各型が、前記検出用分子の特異性を示すバーコード配列(B
S)を含むバーコード標識を含む、検出用分子と、
b)少なくとも1つの型の検出用分子の前記バーコード標識とハイブリダイズすることができることが好ましい少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーと
を含むキット。
【請求項26】
前記オリゴヌクレオチドが、
(i)時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、
(ii)位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、および
(iii)固有の分子識別子(UMI)配列
からなる群から選択される配列エレメントを少なくとも1つ含む、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
以下の特徴:
a.少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを含み、前記アダプターバーコードオリゴヌクレオチドが、前記バーコード標識にハイブリダイズすることができる領域の5’側に、(i)時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、および/もしくは(ii)固有の分子識別子(UMI)配列を含む;
b.アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを含み、前記アダプターバーコードオリゴヌクレオチドが、前記検出用分子のバーコード標識のアダプター配列(1)と逆相補的であるアダプター配列(1)
Rを含み、前記アダプターバーコードオリゴヌクレオチドが、
- 時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、
- 位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、
- 固有の分子識別子(UMI)配列、および
- プライマー標的配列
からなる群から選択される配列エレメントのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つもしくは全てをさらに含み、
これらの1つもしくは複数の配列エレメントが、前記アダプター配列(1)
Rの5’側に位置する;
c.
- 位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、
- 時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、
- 配列決定用のアダプター配列(AS)
のうちの1つもしくは複数を含むプライマーもしくはプライマーの組合せであって、
前記1つもしくは複数の配列エレメントB
P、AS、および/もしくはB
Tが、前記プライマーもしくは前記プライマーの組合せのうちのプライマーに含まれる場合、必要に応じて伸長させたバーコード標識もしくはその逆相補物とハイブリダイズすることができる前記プライマーの配列領域の5’側に位置する;
ならびに/または
d.前記1つもしくは複数の型の検出用分子の前記バーコード標識が、
(i)前記検出用分子の特異性を示すバーコード配列(B
S);
(ii)1つもしくは複数のプライマー標的配列;
(iii)必要に応じて、時間情報を示すバーコード配列(B
T);
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列;および
(v)必要に応じて、アダプター配列(1)を含む
のうちの1つもしくは複数を有する、請求項25もしくは26に記載のキット。
【請求項28】
以下の群:
a)以下を含むセット1:
a.以下を含む、前記検出用分子に付着したバーコード標識:
i.必要に応じて、切断可能なリンカー/スペーサー、
ii.必要に応じて、第1のプライマー結合性配列(1)、
iii.バーコード配列B
S、
iv.アダプター配列(1);
b.以下を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチド:
i.アダプター配列(1)
R、
ii.固有の分子識別子(UMI)配列、
iii.第2のプライマー結合性配列(2)
R、
c.以下を含むフォワードプライマー:
i.プライマー配列(1)、
ii.バーコード配列B
P、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
d.以下を含むリバースプライマー:
i.プライマー配列(2)
R、
ii.バーコード配列B
T、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
b)以下を含むセット2:
a.以下を含む、前記検出用分子に付着したバーコード標識:
i.必要に応じて、切断可能なリンカー/スペーサー、
ii.第1のプライマー結合性配列(1)、
iii.バーコード配列B
S、
iv.アダプター配列(1);
b.以下を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチド:
i.アダプター配列(1)
R、
ii.バーコード配列B
P、
iii.固有の分子識別子(UMI)配列、
iv.第2のプライマー結合性配列(2)
R;
c.以下を含むフォワードプライマー:
i.プライマー配列(1)、
ii.バーコード配列B
T、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
d.以下を含むリバースプライマー:
i.プライマー配列(2)
R、
ii.配列決定用のアダプター配列(AS);
c)以下を含むセット3:
a.以下を含む、前記検出用分子に付着したバーコード標識:
i.必要に応じて、切断可能なリンカー/スペーサー、
ii.第1のプライマー結合性配列(1)、
iii.バーコード配列B
S、
iv.アダプター配列(1);
b.以下を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチド:
i.アダプター配列(1)
R、
ii.バーコード配列B
T、
iii.固有の分子識別子(UMI)配列、
iv.第2のプライマー結合性配列(2)
R;
c.以下を含むフォワードプライマー:
i.プライマー配列(1)、
ii.バーコード配列B
P、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
d.以下を含むリバースプライマー:
i.プライマー配列(2)
R、
ii.配列決定用のアダプター配列(AS);
d)以下を含むセット4:
a.以下を含む、前記検出用分子に付着したバーコード標識:
i.必要に応じて、切断可能なリンカー/スペーサー、
ii.第1のプライマー結合性配列(1)、
iii.バーコード配列B
S、
iv.固有の分子識別子(UMI)配列、
v.バーコード配列B
T、
vi.第2のプライマー結合性配列(2);
b.以下を含むフォワードプライマー:
i.プライマー配列(1)、
ii.バーコード配列B
P、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
c.以下を含むリバースプライマー:
i.プライマー配列(2)
R、
ii.配列決定用のアダプター配列(AS)
から選択されるオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのセットを含む、請求項25から27までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項29】
a.1つもしくは複数の型の捕捉用分子であって、捕捉用分子の各型が、目的の生体分子に結合し、好ましくは、前記キットで提供される前記1つもしくは複数の型の捕捉用分子が、前記キットに含まれる前記1つもしくは複数の型の検出用分子と同じ目的の生体分子に結合する、1つもしくは複数の型の捕捉用分子;
b.細胞のためのマトリックスおよび/もしくは捕捉用マトリックスを提供するための1つもしくは複数のポリマーであって、ハイドロゲルを形成することができるものであることが好ましい、ポリマー;
c.捕捉用マトリックスを含有する組成物、好ましくは溶液;
d.ポリメラーゼおよび/もしくはdNTP;ならびに/または
e.洗浄溶液
のうちの少なくとも1つを含む、請求項25から28までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
複数の区画を有するデバイス、好ましくはマルチウェルプレートを含み、前記デバイスが、以下の特徴:
a.前記デバイスの区画が、請求項25から29までに記載のオリゴヌクレオチド、好ましくはアダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよび/もしくはプライマーもしくはプライマーの組合せを含む;
b.前記デバイスの区画が、請求項28に記載のセットの少なくとも1つを含む;
c.請求項25から29までのいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、好ましくはアダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよび/もしくはプライマーもしくはプライマーの組合せを含む区画が、伸長および/もしくは増幅反応を実施するための試薬をさらに含む;ならびに/または
d.前記デバイスが、96ウェルプレート、384ウェルプレートもしくは1536ウェルプレートから選択される
のうちの1つまたは複数を有する、請求項25から29までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項31】
複数の配列決定可能な産物であって、各配列決定可能な産物が、少なくとも
(i)特異性を示すためのバーコード配列(B
S)、および
(ii)時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、および/または
(iii)位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、および
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列
の配列エレメントを含む、複数の配列決定可能な産物。
【請求項32】
前記含まれる配列エレメント(i)~(iv)のうちの1つまたは複数が互いに異なる、請求項31に記載の複数の配列決定可能な産物。
【請求項33】
以下の特色:
a.異なる配列エレメントB
S、B
Tおよび/またはB
Pを含む配列決定可能な産物の数が少なくとも50、好ましくは少なくとも100である;
b.前記複数の配列決定可能な産物が異なるバーコード配列B
Sを少なくとも2つ含み、必要に応じて、異なるバーコード配列B
Sの数が、2~100、5~50、5~25、5~20または7~15の範囲に入り得る;
c.前記複数の配列決定可能な産物が、異なるバーコード配列B
Tを少なくとも2つ含み、必要に応じて、異なるバーコード配列B
Tの数が、2~200、5~50、5~25、5~20または7~15の範囲に入り得る;および
d.前記複数の配列決定可能な産物が、異なるバーコード配列B
Pを少なくとも2つ含み、必要に応じて、異なるバーコード配列B
Pの数が、2~1000、5~1000、10~500、20~250または50~200の範囲に入り得る;および/または
e.前記UMI配列の長さが最大40ヌクレオチド、好ましくは4~20ヌクレオチドである
のうちの1つまたは複数を有する、請求項31または32に記載の複数の配列決定可能な産物。
【請求項34】
前記細胞含有マトリックスが細胞培養プレートの区画内に、前記細胞含有マトリックスには影響を及ぼさずに前記細胞含有マトリックスを覆う液体を取り除くまたは交換することができるように提供され、前記細胞含有マトリックスが、細胞を1つよりも多く含み、必要に応じて楕円形状、好ましくはプラグまたは半球(semi-sphere)形状を少なくとも部分的に有する3次元ハイドロゲルマトリックスによって提供される、請求項1から20までの一項または複数項に記載の方法。
【請求項35】
1つまたは複数の捕捉用マトリックスがステップa)で提供され、前記方法が、以下の特徴:
- 前記細胞含有マトリックスをインキュベートして1つもしくは複数の目的の生体分子の放出を可能した後、前記提供された捕捉用マトリックス(1つもしくは複数)を前記細胞培養プレートの区画に添加して、前記1つもしくは複数の放出された目的の生体分子を前記捕捉用マトリックスの前記1つもしくは複数の型の捕捉用分子に結合させ、必要に応じて、インキュベートを1時間~72時間から選択されるインキュベーション期間にわたって実施する;および/または
- ステップb)において前記1つもしくは複数の目的の生体分子を前記捕捉用マトリックスの前記1つもしくは複数の型の捕捉用分子に結合させた後、前記捕捉用マトリックスを別の区画に移行する
のうちの一方または両方を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
生体分子を時間依存的に分析し、分析間の時間間隔が、≧10分間、≧20分間、≧30分間、≧1時間、≧2時間、≧3時間、≧4時間、5時間またはそれよりも長く、最大1日、2日または数日から選択される、好ましくは30~120分間の範囲から選択される、請求項1から20までまたは34から35までの一項または複数項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞は、遺伝学的に同一であるにもかかわらず表現型的に異なることが見いだされている。実際に、表面上は同じ細胞の細胞集団が、特定の分解能の検査では常に互いに異なる細胞を含有するように見える(Alterschule and Wu, 2010, Cell, 141(4), pages 559-563)。標準のアッセイでは、細胞の平均的な応答を決定することしかできず、それがその試料中の全細胞の応答と解釈される。ほぼ全ての細胞集団内に存在する特殊化された細胞(例えば、がん幹細胞)はそのようなバルクアッセイでは無視され、これらの細胞に関する有益な情報は失われる。それにもかかわらず、個々の細胞に関する知見は、例えばがん形成、老化および免疫応答に関与する分子機構を解明するために重要なものである。例えば治療目的で細胞間の差異を理解し、利用するために、細胞を単一細胞レベルで分析することが必要とされている。重要なことに、単一細胞レベルでは、十分に大きな細胞集団をスクリーニングするために多数の単一細胞の分析を可能にする方法および技法が必要である。さらに、これらの方法および技法は、細胞培養全体を通して複数の表現型形質の分析を可能にするものである必要がある。さらに、決定された表現型形質をゲノムデータと逐次的にカップリングすることが望ましい。
【0002】
単一細胞または小細胞集団の分子を分析するために、FluoroSpotアッセイと称されるイムノアッセイが開発された(Janetzki et al., 2014, Cells, 2, pages 1102-1115)。したがって、分子特異的捕捉抗体(例えば、サイトカインに対するもの)を、ウェルを有するアッセイプレートに添加する。その後、細胞をウェルに、懸濁液中に低希釈度で添加し、アッセイプレートをインキュベートして、細胞によるサイトカイン分泌を可能にする。分泌されたサイトカインをウェルの底部に固定化されたサイトカイン特異的捕捉抗体によって捕捉することができる。その後、細胞を取り出し、ウェルを洗浄し、分子特異的検出用抗体およびフルオロフォアコンジュゲートを添加することができる。最後に、分泌された分子(例えば、サイトカイン)の分泌フットプリント(またはスポット)を画像処理によって捕捉し、そのような画像を、複数の分析物を同定するため、分析物を分泌する細胞の数を計数するためなどに解析する。抗PD-1免疫療法に対する細胞の応答を単一細胞質量血球計算によって予測するために、単一細胞の別のエンドポイント分析が開発されている。したがって、細胞タンパク質に結合する金属標識された抗体を使用し、飛行時間質量分析によって分析する。逐次的なデータ解析により各細胞について検出されたシグナルを選別すると同時に、結合した標識された抗体の数により定量的分析が可能になる(Krieg et al., 2018, Nature Medicine, 24, pages 144-153)。
【0003】
培養全体を通して単一細胞によって分泌される複数の分子を分析し、分泌された分子に関する時間分解された情報を取得するために、Luらは、蛍光バーコーディング技法に基づく微細加工されたデバイスを開発した(Lu et al., 2015, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 112(7), pages E607-E615):統計学的に分布した、主に単一細胞を小さなPDMS区画に捕捉し、次いでそれを、抗体をコーティングしたアレイで覆う。バーコードと同様に、抗体をアレイ上に細かい線として置き、ここで、1つの線が特定の分子(ここではサイトカイン)に対して特異的な抗体の1つの型に対応する。培養全体を通して、単一細胞によりサイトカインが分泌され、次いでそれを特異的抗体によって捕捉する。培養時間(例えば、24時間)後、アレイを取り出し、サンドイッチアッセイを実施する。このアッセイでは、結合した標的サイトカインの異なるエピトープに結合する蛍光標識された検出用抗体を染色(最大3色)のためにアレイに適用する。その後、画像処理を行うことができ、それにより、分泌されたサイトカインの場合には着色したスポットが明らかになるが、一方、サイトカインが検出されない場合には色を検出することができない。この技術の利点は、統計学的に分布した単一細胞の多重化分析である。さらに、微細加工されたデバイス1つに12,000に至るまでのPDMS区画を存在させることができ、これにより、高度多重化分析が可能になる(Xue et al., 2017, Journal for ImmunoTherapy of Cancer, 5(1):85)。それにもかかわらず、単一細胞によって分泌される複数の分子の分析を改善する方法が必要とされている。
【0004】
さらに、2つまたはそれよりも多くの細胞または細胞型の相互作用を規定された様式で試験することが望ましい。例えば、ある特定のがん細胞に対して免疫細胞を予備刺激することが、がん伝播の阻害に関して有効な戦略であることが証明されており、がん処置の次のステップとしてがん免疫療法の形態で構想されている(Steer et al., 2010, Oncogene, 29, pages 6301-6313)。したがって、閉鎖された区画内で規定数の(異なる)細胞を互いに隣に位置付ける事を可能にする方法および技法が必要である。さらに、細胞の相互作用を試験するために、分泌された分子を多重化分析するための方法の組込みを可能にするインターフェースが存在すべきである。注目すべきことに、単一細胞または細胞の相互作用の分析により、得られた洞察をin vivo条件に移行することが可能になるべきである。これには、細胞が体内で遭遇する条件を模倣する、細胞に関する環境を確立することが必要である。
【0005】
本発明は、先行技術による方法の欠点を回避することを目的とする。特に、少なくとも1つの細胞、一部の場合ではちょうど1つの細胞によって分泌される生体分子を多重様式で分析することが目的である。単一細胞によって分泌される複数の分子を時間依存的に分析することも目的である。分子事象とカップリングした表現型事象と特定の細胞の基礎をなす遺伝子型の相互接続の理解を増すことができる、生きている単一細胞および小さな細胞集団の動的試験を実施することが別の目的である。細胞がin vivoで遭遇する条件を模倣する微小環境を細胞に提供することも別の目的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Alterschule and Wu, 2010, Cell, 141(4), pages 559-563
【非特許文献2】Janetzki et al., 2014, Cells, 2, pages 1102-1115
【非特許文献3】Krieg et al., 2018, Nature Medicine, 24, pages 144-153
【非特許文献4】Lu et al., 2015, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 112(7), pages E607-E615
【非特許文献5】Xue et al., 2017, Journal for ImmunoTherapy of Cancer, 5(1):85
【非特許文献6】Steer et al., 2010, Oncogene, 29, pages 6301-6313
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細胞放出生体分子の分析に関する。先行技術と比較して、本発明では、複数の目的の生体分子を時間依存的に分析することが可能になり、ここで、生体分子を放出する細胞は、ネイティブな細胞環境を模倣することができる環境中で提供される。
【0008】
第1の態様によると、本開示は、1つまたは複数の、細胞放出生体分子を分析するための方法であって、1つまたは複数の目的の生体分子を放出する少なくとも1つの細胞を含む細胞含有マトリックスを提供することを含み、
a)捕捉用マトリックスを提供するステップであって、捕捉用マトリックスが1つまたは複数の型の捕捉用分子を含み、捕捉用分子の各型が目的の生体分子に結合する、ステップと、
b)細胞含有マトリックスをインキュベートして、1つまたは複数の目的の生体分子を放出させ、1つまたは複数の目的の生体分子を捕捉用マトリックスの1つまたは複数の型の捕捉用分子に結合させるステップと、
c)1つまたは複数の型の検出用分子を添加するステップであって、検出用分子の各型が、目的の生体分子に特異的に結合し、検出用分子の各型が、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含むバーコード標識を含む、ステップと、
d)少なくとも、
(i)バーコード配列(BS)、および
(ii)時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、および/または
(iii)位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、および
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列
を含む配列決定可能な反応産物を生成するステップであって、
配列決定可能な反応産物の生成が、
- 少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマー(好ましい)の使用、または
- 少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とライゲーションする少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用を含む、ステップと
を含む方法を提供する。
【0009】
方法は、e)生成された反応産物の配列決定を行うステップをさらに含み得る。
【0010】
第2の態様によると、本開示は、
a)1つまたは複数の型の検出用分子であって、検出用分子の各型が、目的の生体分子に特異的に結合し、検出用分子の各型が、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含むバーコード標識を含む、検出用分子と、
b)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができることが好ましい少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーと
を含むキットを提供する。
【0011】
キットは、第1の態様による方法を実施するために使用することができる。
【0012】
第3の態様によると、本開示は、複数の配列決定可能な産物であって、各配列決定可能な産物が、少なくとも以下の配列エレメント
(i)特異性を示すためのバーコード配列(BS)、および
(ii)時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、および/または
(iii)位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、および
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列
を含む、複数の配列決定可能な産物を提供する。
【0013】
本発明によると、少なくとも1つの細胞が負荷されたか(細胞含有マトリックスに対応する)または1つまたは複数の型の捕捉用分子が負荷された(捕捉用マトリックスに対応する)異なる型のマトリックスが適用される。マトリックスには、細胞をマトリックスの内側において生理的条件下で培養できることを含め、複数の利点がある。他方では、捕捉用マトリックスに含まれる捕捉用分子を、付着のために表面積を増大させたマトリックス(例えば、付着のために表面しか利用可能でない固体粒子と比較して)に柔軟に付着させることができる。次いで、各マトリックス型を、好ましくは区画の内側に、有利に互いに接触させるまたは近傍にすることができる。そのような区画は、好ましくは微細加工された細胞培養デバイスによって提供することができ、それにより、マトリックスが区画内におよび区画から離れて(および所望であれば同様に微細加工された細胞培養デバイスから離れて別のフォーマット(例えばウェルプレート)の中に)輸送されることが可能になる。さらに、微細加工された細胞培養デバイスは、培養全体を通して区画を開放された状態と隔離された状態に切り換えるための手段を含むことが好ましい。例えば、隔離された区画では、インキュベーション全体を通して少なくとも1つの細胞によって放出される目的の生体分子は、放出された後、細胞含有マトリックスの外に拡散し得る。その後、目的の生体分子は、捕捉用マトリックスまで拡散し得、ここで、捕捉用分子が目的の生体分子に結合することができ、一方で、区画が隔離された状態であることに起因して、生体分子は失われない(例えば、灌流または洗浄に起因して)。捕捉用分子の各型が異なる目的の生体分子に結合することが好ましい。したがって、目的の生体分子を捕捉用マトリックス、それぞれ1つまたは複数の型の捕捉用分子によって捕捉することができることが有利である。その後、検出用分子を添加し、ここで、検出用分子の各型は異なる目的の生体分子に結合することが好ましく、検出用分子の各型の分子は、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含むバーコード標識を含む。これには、バーコード標識により、例えば配列決定によるその後の弁別が可能になるので、複数の目的の生体分子を多重化様式で分析することができるという利点がある。さらに、当該方法では、バーコード配列(BS)に加えて、時間情報を示すためのバーコード配列(BT)および/または位置情報を示すためのバーコード配列(BP)を含む配列決定可能な反応産物が生成される。したがって、目的の生体分子を捕捉し、多重化分析のために、生成した配列決定可能な産物に基づいてだけでなく、インキュベーションプロセスの異なる時点および/または異なる位置(例えば、異なる条件下でインキュベートされた異なる細胞(1つまたは複数)を含み得る位置)に基づいても逐次的に弁別することができる。この点において、配列決定可能な反応産物の生成により、その後複数の反応産物を配列決定のためにプールすることが有利に可能になり、これは、これらの反応産物を、含まれる配列エレメント/バーコードに基づいて弁別し、明白に割り当てることができるからである。そのような弁別は、生成された反応産物の配列決定を行うステップの後に行われることが好ましい。したがって、提供される技術により、細胞放出生体分子の、ハイスループットを有する非常に効率的で多重化された分析が実現される。生成した配列決定可能な反応産物は、必要に応じて、結合した分子を高度に定量的な様式で分析することを可能にする固有の分子識別子(UMI)配列を含み得、これは、目的の生体分子の絶対的な分析に有利である。
【0014】
本出願の他の目的、特色、利点および態様は以下の説明および添付の特許請求の範囲から当業者には明らかになるであろう。しかし、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および特定の実施例は、適用の好ましい実施形態を示す一方で、単に例示として示されていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、複数の区画(例えば、観察チャンバー32)を有するマイクロ流体アレイ30を示す図である。m2n2位にある区画32m2n2などのそれぞれに、灌流培養下で(単一の)細胞含有マトリックスをローディングする。行nおよび列mのアレイならびに対応する区画が示されている。行および列を示す線は、本明細書に記載の共通のグループコマンドを提供するための例示的な圧力線である。円は、個々の区画を例示する。各区画は、規定された特徴を有し得る細胞含有マトリックスを少なくとも1つ含み得る。少なくとも1つの細胞を含有するマトリックスは、規定された特徴(例えば、弾性、固定化されたECMタンパク質および/またはペプチド、特にRGD部位、フィブロネクチン、YIGSRペプチド、コラーゲン、LDVペプチド、ラミニン)を有するハイドロゲルによって提供することができる。マトリックスは、球状形態を有することが好ましく、少なくとも1つの細胞(例えば、免疫細胞、がん細胞、幹細胞)を含有するハイドロゲルビーズによって提供することができる。
【
図2A】
図2Aは、本発明の方法の一実施形態による中心ステップを例示する図である: Aに例示されている通り、ハイドロゲルビーズであることが好ましい細胞含有マトリックス(1)、およびハイドロゲルビーズであることが好ましい捕捉用マトリックス(2)を、好ましい実施形態によると微細加工された細胞培養デバイスであるデバイスのX|Y位の隔離された区画内に極めて近傍に位置付ける。細胞含有マトリックスは、例示されている実施形態では、2つの目的の生体分子(4aおよび4b)を分泌する単一の細胞(3)を含む。捕捉用マトリックス(2)は、例示されている実施形態では、目的の生体分子(4aおよび4b)に特異的に結合する2つの異なる型の捕捉用分子(5aおよび5b)を含む。異なる型の捕捉用分子は、例示されている実施形態では、分泌される目的の生体分子に対して異なる特異性を有する抗体によって提供される。捕捉用マトリックスは、目的の生体分子の効率的な捕捉を確実にするために、同じ型の捕捉用分子を複数含むことが好ましい。捕捉用分子を分泌される目的の生体分子の予測数よりも過剰に提供することができる。 Bでは、細胞含有マトリックス(1)をインキュベートして、目的の生体分子を十分に分泌させ、それが細胞含有マトリックス(1)から捕捉用マトリックス(2)に拡散し、そこで、目的の生体分子にマッチする型の捕捉用分子が結合する(相互作用対4a/5aおよび4b/5bを参照されたい)。結合しなかった分子を洗い流すことができる。 Cでは、1つまたは複数の型の検出用分子、ここでは2つの型の検出用分子(6aおよび6b)を添加し、検出用分子の各型が目的の生体分子に特異的に結合する。重要なことに、検出用分子の各型は、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(B
S)を含むバーコード標識(7)を含む。したがって、捕捉用分子の特異性をバーコード標識に基づいて決定することができる。バーコード標識は、リンカーを介して検出用分子に付着させることができるオリゴヌクレオチド配列によって提供することができる。ある実施形態では、リンカーは、光切断可能なスペーサーによって提供される。例示されている実施形態では、異なる型の検出用分子は、目的の生体分子の、捕捉に使用される抗体とは異なるエピトープに結合する抗体によって提供される。それにより、捕捉用分子、目的の生体分子および検出用分子を含む複合体が形成される(複合体4a/5a/6aおよび4b/5b/6bを参照されたい)。 Dでは、少なくとも(i)バーコード配列(B
S)、ならびに細胞含有マトリックスの(ii)時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)および/または(iii)位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、ならびに(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列を含む配列決定可能な反応産物を生成する。配列決定可能な反応産物の生成は、一実施形態では少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるプライマーである少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用を含む。本明細書に記載されており、その後の図にも例示されている通り、ステップDは、移行ステップを含むいくつかのステップを含み得る。
図2に概略的に例示されているステップDの一実施形態は、ステップ(aa)を含み、これは、本明細書に記載の通り必要に応じたものであるが、一部の実施形態では、好ましいステップである。ステップ(aa)は、オリゴヌクレオチド(8)を検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズさせ、前記バーコード標識をハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してポリメラーゼ反応によって伸長させ、それによって、検出用分子に付着したままの伸長したバーコード標識を得ることを含む。伸長したバーコード標識は、鋳型として使用したハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの配列情報をさらに含む。オリゴヌクレオチド(複数の実施形態では、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドとも称される)は、複数の実施形態では、下でさらに詳細に説明されている時間情報(すなわち、オリゴヌクレオチドが付加された現在の時点)を示すためのバーコード配列(B
T)および/または固有の分子識別子(UMI)配列を含み得る。オリゴヌクレオチドを鋳型として使用したポリメラーゼによるバーコード標識の伸長により、時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)および/またはUMI情報がオリゴヌクレオチドから伸長したバーコード標識に移行する。
図2に例示されている通り、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドも伸長し得、それによって、二本鎖分子(9)が生成する。しかし、ポリメラーゼによって伸長させることができないブロッキングされた3-OH末端を含むオリゴヌクレオチドの使用も本発明の範囲内に入る。 必要に応じて上記の通りステップD(aa)で伸長させたバーコード標識を含む検出用分子を有する捕捉用マトリックスを区画から得ることができ、異なるデバイスの所定のウェルなどの所定の区画に移行することができる。移行は、本明細書の他の箇所に記載されているRFCP機構を使用して行うことができる。(必要に応じて伸長させた)バーコード標識を有する捕捉用マトリックスを、例えば、96ウェルプレートなどの別のフォーマットのウェルに移行することができる。複数の実施形態では、捕捉用マトリックスの移行をステップDの前、例えば、ステップBにおける目的の生体分子の捕獲後かつ/またはステップCにおける検出用分子の結合後に行う。捕捉用分子、目的の生体分子および検出用分子を含む複合体を含む捕捉用マトリックスを区画から取り出すことにより、細胞含有マトリックスが区画内に残る。Fに例示されている通り、「新鮮な」捕捉用マトリックスを区画内に添加/ローディングすることができ、異なる時点で新しいサイクルを実施することができる。ステップをいくつかの時点で繰り返すことができる。 Dは、プライマーまたはプライマーの組合せを使用して増幅反応を実施することを含むことが好ましい。例示されている実施形態では、そのような増幅反応を、ステップD(aa)の実施後に実施する。増幅反応は
図2にD(bb)として示されており、プライマーまたはプライマーの組合せを用い、伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施することを含む。伸長したバーコード標識を鋳型として使用することが好ましい(伸長ステップの間にバーコード標識および/またはオリゴヌクレオチドの逆相補物を含む二本鎖分子が形成される場合には、その逆相補物を本明細書の他の箇所に記載の通り除去することができ、伸長反応でバーコード標識の逆相補鎖が形成されることを防止するために、ブロッキングされた3’-OH末端を使用することができる)。単一のプライマーを使用する場合、いくつかの増幅サイクルを実施することによって線形増幅を実施することができる。プライマー対などのプライマーの組合せの使用により、PCR反応を実施することが可能になる。プライマーまたはプライマーの組合せならびに増幅反応を実施するために必要な追加的な構成成分(例えば、ポリメラーゼ、dNTP、緩衝剤など)を、移行した捕捉用マトリックスを含む区画(例えば、ウェル)に添加することもでき、前もって提供することもできる。プライマーまたはプライマーの組合せは、位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)および必要に応じて、配列決定用のアダプター配列(AS)、例えば、配列決定プラットフォーム用の標準のアダプターを含み得る。さらなる実施形態がその後の図に例示されている。プライマーまたはプライマーの組合せを必要に応じて伸長させたバーコード標識またはその逆相補物とハイブリダイズさせることができる。本明細書に記載の通り、例えば光切断可能なリンカーを使用する場合、必要に応じて伸長させたバーコード標識を増幅反応より前に検出用分子から放出させることができる。 次いで、ステップEにおいて増幅産物の配列決定を行うことができる。本明細書に記載の通り、本発明による方法は、複数のプール選択肢を提供し、それにより、配列決定を費用的にも時間的にも非常に効率的に行うことが可能になる。
【
図2B】
図2Bは、増幅反応を実施するために捕捉用マトリックスを移行することができるウェルプレート内のウェルの位置の例を例示する図である。本明細書に記載の通り、最初の細胞培養デバイスは、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを受け入れるためのいくつかの区画を含み得る。細胞培養デバイスが、例えば100区画(異なる細胞含有マトリックスのための培養位置)を含み、10種の異なる型の捕捉用分子を10種の異なる型の対応する検出用分子と組み合わせて使用して、10の異なる時点で目的の生体分子を捕捉および検出する場合、100ウェルが必要である。
図2Bにおいて示されている通り、例えば、同じ隔離された区画から時点1~10で得られた捕捉用マトリックス(または検出用分子から脱離させた必要に応じて伸長させたバーコード標識)を単一のウェル内にプールした後に増幅反応を実施することは本発明の範囲内に入る。これにより、異なる時点1~10で得られた必要に応じて伸長させたバーコード標識を単一の増幅反応で増幅することが可能になる。これは、時間的にも費用的にも効率的である。さらに、本明細書に記載の通り、本方法により、バーコード配列B
Pを配列決定可能な反応産物に導入することが可能になる。したがって、異なる時点で得られた配列決定可能な反応産物は全て、個々の区画に含まれる同じ細胞含有マトリックスを起源とするので、同じバーコード配列B
Pを含む。それにより、バーコード配列B
Pにより、得られた配列決定可能な反応産物を元の区画、それぞれ含まれる細胞含有マトリックスと相関させることが可能になる。例えば、細胞培養デバイスの区画からデバイスのウェルに捕捉用マトリックスを移行し、バーコード配列B
Pを細胞培養デバイス内の元の区画と相関させることが可能になるように増幅を実施することができる。配列決定可能な反応産物が全て同じ区画を起源とし、それぞれ同じ細胞含有マトリックスが同じバーコード配列B
Pを含むので、それらの起源をバーコード配列B
Pに基づいて決定することができる。これにより、異なるウェルにおける増幅反応後に得られた全ての反応産物を単一のプール/ライブラリーにプールし、次いで、それをその後、好ましくはNGS配列決定によって配列決定することが可能になる。したがって、全てのウェルからの反応産物をプールし、配列決定のために送付することができる。
【
図2C】
図2Cは、
図2Aに例示されている方法の有利な変形形態を例示する図である。示されている実施形態では、捕捉用マトリックスの移行は、ステップCの後(すなわち、ステップBにおける目的の生体分子の捕獲後、かつステップCにおける検出用分子の結合後)、かつステップDの前に行う。区画内に含まれる少なくとも1つの細胞含有マトリックス由来の目的の生体分子を捕捉した少なくとも1つの捕捉用マトリックスをマルチウェルプレート(例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレートまたは1536ウェルプレート)などの別のデバイスの区画に移行する。一実施形態によると、正確に1つの捕捉用マトリックスを移行する。さらなる捕捉用マトリックス処理をこのウェル内で実施することができる。UMI配列を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを使用して前記ウェル内にUMI配列を導入することができる。したがって、ただ1つの捕捉用マトリックス(または区画内に含まれる同じ細胞含有マトリックスから放出された目的の生体分子を含む少なくとも2つの捕捉用マトリックス)が1つの処理/収集ウェル内に位置するので、異なるUMI(UMIライブラリーサイズに対応する)の必要数が有意に減少し、捕捉用マトリックス内に位置し得る検出用分子の最大数に限定される。この数は、使用される捕捉用マトリックスの最大結合能に対応する。大きなUMIライブラリーの生成には費用がかかるので、UMIライブラリーサイズの縮小の結果、有意な費用の低減がもたらされる。一実施形態によると、さらなる処理を、開示され、
図8aにおいて例示されている通り実施する。さらに好ましい実施形態によると、UMI配列はアダプターバーコードオリゴヌクレオチドに含まれるが、一方、バーコード配列B
Tおよびバーコード配列B
Pは増幅の間にプライマーまたはプライマーの組合せを使用して導入され、一方のプライマーがバーコード配列B
Tを含み、一方、他方のプライマーがバーコード配列B
Pを含むプライマーの組合せを使用することが好ましい。この実施形態は、捕捉用マトリックスを移行するデバイスの区画(例えば、ウェル)内に予めローディングされた(例えば、凍結乾燥した形態で)試薬、特にアダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよびプライマーまたはプライマーの組合せを提供することが可能になるので、有利である。移行は、細胞培養デバイスに含まれる細胞含有マトリックスとの位置情報の維持/相関と同時になされ、したがって、最終的に得られた結果を細胞含有マトリックス、それぞれその中に含まれる1つまたは複数の細胞に割り当てることができる。
【
図2D】
図2Dは、Cの後に捕捉用マトリックスを移行する、
図2Cの図に従ったウェルプレート内のウェルの位置の例を例示する図である。各ウェルはただ1つの捕捉用マトリックス(または同じ細胞含有マトリックス由来の捕捉された目的の生体分子を有する少なくとも2つの捕捉用マトリックスまたは同じ培養区画内に含まれる2つもしくはそれよりも多くの細胞含有マトリックス)を含有するので、必要なウェルの数はn×m×kであり、nは細胞培養デバイスの列でありmは行であり、kは目的の生体分子が捕捉された異なる時点の数である。例えば、微細加工された細胞培養デバイスが96の細胞培養チャンバーを含有し、分泌プロファイルを16の時点または16の時間間隔で測定する場合、捕捉用マトリックス処理を実施するために例示的な1536プレートを使用することができる。
【
図3】
図3は、ステップd)において生成した配列決定可能な反応産物の中心エレメントを概略的に例示する図である。 A:中心エレメントの概略的な足場構造を例示する。配列決定可能な反応産物は、以下を含む: (i)検出用分子の特異性を示すためのバーコード配列(B
S)(特異性情報);および (ii)ある特定の目的の生体分子が分泌/検出された時間情報(例えば、時点)を示すためのバーコード配列(B
T)(時間情報);および/または (iii)位置情報を示すためのバーコード配列(B
P);および (iv)必要に応じて、目的の生体分子と結合した検出用分子の数を数量化するための固有の分子識別子(UMI)配列(数量に関する情報);および (v)必要に応じて、配列決定用のアダプター配列(AS)。 例示されている実施形態からも明らかである通り、配列決定可能な反応産物のバーコード配列の順序は変動させることができる。さらに、追加的な配列のひと続き(白枠によって例示されている)が異なるバーコード配列/配列エレメント間に存在してもよく存在しなくてもよい。 B:示されている配列決定可能な反応産物は、
図5に示されている方法によって得ることができる。C:示されている配列決定可能な反応産物は、
図6に示されている方法によって得ることができる。D:示されている配列決定可能な反応産物は、
図7に示されている方法によって得ることができる。E:示されている配列決定可能な反応産物は、
図8aに示されている方法によって得ることができる。F:示されている配列決定可能な反応産物は、
図9に示されている方法によって得ることができる。G:示されている配列決定可能な反応産物は、
図8bに示されている方法によって得ることができる。
【
図4】
図4は、本方法により、異なる細胞含有マトリックス(1位および2位、ここで、1位/細胞含有マトリックス1はバーコード配列B
P1によって示され、2位/細胞含有マトリックス2はバーコード配列B
P2によって示される)、異なる目的の生体分子(抗原Xおよび抗原Y、ここで、抗原Xに対する特異性はバーコード配列B
S1によって示され、抗原Yに対する特異性はバーコード配列B
S2によって示される)について、2つの異なる時点(時点1および時点2、ここで、時点1はバーコード配列B
T1によって示され、時点2はバーコード配列B
T2によって示される)において得られた配列決定可能な反応産物のプールされたライブラリーを提供することが可能になることを例示する図である。この概念を多数の追加的な位置、目的の生体分子および時点に拡張することができる。例示されている実施形態では、単一の検出用分子のバーコード標識を起源とする配列決定可能な反応産物はそれぞれ固有のUMI配列(UMI1~8参照)を含み、それにより、得られた情報を数量化することが可能になる。UMI配列の使用は、例えば、当分野または配列決定において公知であり、したがって、本明細書において詳細に記載する必要はない。配列決定可能な反応産物の情報は、異なる位置、時点および目的の生体分子に明白に割り当てられる含まれるバーコード配列に起因し得るので、配列決定可能な反応産物の全てを1つのライブラリーにプールすることが可能である。次いで、ライブラリーについてNGS(次世代配列決定)などの現行の配列決定技法を使用して配列決定を行うことができ、したがって、配列決定結果を解析することによって情報を評価することができる。例えば、蛍光に基づく方法と比較した利点が上に詳細に記載された。
【
図5】
図5は、検出用分子(例示されている実施形態では、抗体)に付着させたバーコード標識が、 - 検出用分子の特異性を示すためのバーコード配列(B
S)、 - 時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、および - 固有の分子識別子(UMI)配列を含む本発明の実施形態を例示する図である。 これらの配列エレメントの例示されている順序は限定的なものではなく、したがって、異なってよい(例えば、B
T、B
S、UMIまたはUMI、B
S、B
Tなど)。バーコード標識は、光切断可能なスペーサーなどのリンカーを介して付着させることができる。配列エレメントB
S、B
TおよびUMIは、例示されている実施形態では、増幅プライマーの標的配列を提供するプライマー配列(1)と(2)に挟まれている。バーコード標識は、検出用分子を捕捉用マトリックスと接触させる前に検出用分子に付着させることができる(「オフチップ」)。検出用分子は、
図2と併せて説明されている通り、それが特異的に結合する捕捉された目的の生体分子に結合する。検出用分子を添加する一方で捕捉用マトリックスをなお細胞含有マトリックスと接触させておくこともでき、捕捉された目的の生体分子(複数可)を伴う捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスから分離した後に捕捉用マトリックスを検出用分子と接触させることもできる。
図5に例示されている実施形態により、処理ステップの数を減少させることができる。したがって、目的の生体分子の放出(例えば、分泌)および捕捉ならびにその後の洗浄のために捕捉用マトリックスおよび細胞含有マトリックス(またはマトリックス)をインキュベートした後、捕捉用マトリックスを、例示されている実施形態に示されている通り、特異性、数量および時間情報をすでに含むバーコード標識が付随する1つまたは複数の型の検出用分子を含有する溶液と接触させる、例えば、それを灌流する(例えば、本明細書に開示される微細加工されたデバイスを使用する場合)ことができる。次いで、検出用分子を結合させた捕捉用マトリックスを、増幅反応を実施するために収集位置(例えば、96ウェルデバイスの収集ウェル)に移行することができる。プライマーまたはプライマーの組合せ、ならびに増幅反応を実施するために必要な試薬(例えば、ポリメラーゼ、dNTP、緩衝剤)を添加する。位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)を配列決定可能な増幅産物にプライマーまたはプライマーの組合せを介して導入する。例示されている実施形態では、プライマーの組合せをプライマー対の形態で使用し、ここで、リバースプライマーは、検出用分子に付着したバーコード標識、例示されている実施形態ではバーコード標識のプライマー配列(2)にハイブリダイズする。フォワードプライマーは、リバースプライマーを伸長させた場合に生成するバーコード標識のリバース鎖にハイブリダイズすることができる。例示されている実施形態では、バーコード配列B
Pはフォワードプライマーに含まれる。あるいは、バーコード配列B
Pはリバースプライマーに含まれてもよい。さらに、フォワードプライマーおよびリバースプライマーは、
図5に例示されている通り、5’末端にアダプター配列ASを含むことが好ましく、それにより、配列決定可能な産物に、配列決定プラットフォームにおいて一般に使用される配列決定プライマー用のアダプター配列(SおよびP7が例示的な非限定的な実施形態として示されている)が導入される。
図5は、プライマー対を使用する実施形態を例示する。あるいは、単一のリバースプライマーを線形増幅反応に使用し(例えば、プライマーを用いて2~20回または5~15回の伸長サイクルを実施することによって)、それにより、バーコード標識のリバース鎖のいくつかのコピーを作製することができる。そのような実施形態では、バーコード配列B
P、好ましくは、アダプター配列AS(例えば、
図5に示されているS)を5’末端に含むリバースプライマーを使用することができる。対応するアダプター配列ASをリバース鎖の他方の末端に導入するために、マッチするアダプター配列ASをバーコード標識の5’領域(すなわち、配列エレメントB
S、UMIおよびB
Pに対して5’側)に組み入れ、したがって、この情報が、リバースプライマーが伸長した際にバーコード標識のリバース鎖に組み入れられることが本開示の範囲内に入る。そのような実施形態では、プライマー配列(1)は必要ない。どちらの実施形態(単一のプライマーの使用およびプライマーの組合せの使用)によっても、
図5Cに例示されている配列決定可能な反応産物を提供することが可能になる。上記の説明から明らかである通り、請求項1で言及される少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じて、プライマーは、この実施形態では、単独でまたはプライマーの組合せのいずれかで使用されるプライマーに対応する。
【
図6】
図6は、
図5に例示されている実施形態の変形形態を示す図である。検出用分子に付着したバーコード標識は、例示されている実施形態では、 - バーコード配列(B
S)、および - 固有の分子識別子(UMI)配列を含む。 さらに、検出用分子に付着したバーコード標識は、プライマー配列(1)および(2)を含む。バーコード標識を検出用分子に再度付着させた後、捕捉用マトリックスを検出用分子と接触させることができる。上で説明した通り、検出用分子は、捕捉用マトリックスに捕捉された目的の生体分子に結合する。捕捉された目的の生体分子を含む捕捉用マトリックス、ならびに、検出用分子の特異性に関する情報を示すバーコード標識(バーコードB
S)ならびに数量情報を示すバーコード標識(ここではUMI配列の形態)を含む結合した検出用分子を、一実施形態では、増幅反応を実施するために、本明細書では収集位置(例えば、収集ウェル)とも称される異なるデバイスの区画(例えば、ウェル)に移行することができる。その後、 - 位置情報を示すためのバーコード配列B
P、および - 時間情報を示すためのバーコード配列B
Tを含むプライマーまたはプライマーの組合せを使用して増幅を実施することができる。プライマーの組合せをプライマー対の形態で増幅に使用することができ、ここで、フォワードプライマーがバーコード配列B
Pを含み、リバースプライマーがバーコード配列B
Tを含むか、または逆に、フォワードプライマーがバーコード配列B
Tを含み、リバースプライマーがバーコード配列B
Pを含む。したがって、時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)および位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)を収集位置(例えば、ウェル)内に添加することができる、すなわち、捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスから分離した後に添加することができる。使用されるプライマーは、
図5に示されている通り、アダプター配列ASを5’末端にさらに含み得る。さらに、両方のバーコード配列B
PおよびB
Tを単一のプライマー(フォワードまたはリバースプライマー)に含め、他方のプライマーはただ単に追加的なアダプター配列を含み、したがって、それを配列決定可能な反応産物に導入することが本発明の範囲内に入る。さらに、
図5と併せて説明されている通り、単一のプライマーを数回の伸長サイクルの実施に使用することができ、ここで、前記プライマーは、バーコード配列B
TおよびB
P、好ましくはアダプター配列AS(例えば、
図6に示されているS)を含む。バーコード配列B
SおよびUMI配列に対して5’側に位置付けられたバーコード標識に対応するアダプター配列を組み入れることにより、配列決定可能な反応産物の逆末端に対応するアダプター配列を提供することができる。上で説明した通り、プライマー配列(1)は、そのような実施形態では使われない。これらの実施形態は全て、
図6Cに示されている配列決定可能な反応産物を提供することを可能にするものである。上記の説明から明らかである通り、請求項1で言及される少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーは、この実施形態では、単独でまたはプライマーの組合せのいずれかで使用されるプライマーに対応する。 数量情報(UMI配列)を検出用分子に付随するバーコード付けされた標識の一部として組み入れること(
図5および6に例示されている通り)は、それにより、UMI配列を導入するためにバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用する中間のバーコード標識伸長ステップが使われなくなるので、有利である(例えば、
図8および9に例示されている通り)。これは、安全な取扱いステップが望まれる場合に有利である。
【
図7】
図7~9は、ステップd)が少なくとも以下のステップを含む種々の実施形態を例示する図である。 (aa)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記バーコード標識を伸長させ、それにより、鋳型として使用したハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの配列情報をさらに含む、検出用分子に付着した伸長したバーコード標識を得るステップ、および (bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施するステップ。 請求項1で言及される少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、これらの実施形態では、バーコード標識とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド(アダプターバーコードオリゴヌクレオチドとも称される)に対応し得る。
図7:検出用分子に付着したバーコード標識は、例示されている実施形態では、 - バーコード配列(B
S)、および - 固有の分子識別子(UMI)配列、 - 3’末端のアダプター配列(1)、および - 好ましくはバーコード標識の5’領域内のプライマー配列(1)を含む。 上で説明した通り、バーコード配列B’SおよびUMI配列の順序は変動させることができる。しかし、アダプター配列(1)はこれらの配列エレメントに対して3’側に提供される。検出用分子に光切断可能なリンカーを介して付着させることができるオリゴヌクレオチド配列によって提供されることが好ましいバーコード標識を検出用分子に付着させた後、捕捉用マトリックスを検出用分子と接触させることができる。示されている実施形態では、ステップd)は、検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加する第1のステップ(aa)を含む。例示されている実施形態では、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、検出用分子のバーコード標識のアダプター配列(1)と逆相補的であり、それによって、バーコード標識とハイブリダイズするアダプター配列(1)
Rを含む。アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、
図7に例示されている通り、バーコード配列B
Tおよびプライマー配列(2)
Rをさらに含み得、プライマー配列(2)
Rはバーコード配列B
Tに対して5’側に位置する。時間情報B
Tを含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを細胞含有マトリックスと、捕捉された目的の生体分子を含む捕捉用マトリックスとを含む区画(例えば、微細加工された細胞培養デバイスの)に添加することができる。しかし、捕捉された目的の生体分子を伴う捕捉用マトリックスを取り出した後に、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加することも本開示の範囲内に入る(「オフチップ」)。ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの配列情報を含む伸長したバーコード標識を提供する。伸長反応を実施するために必要な試薬(例えば、ポリメラーゼ、dNTP、緩衝剤)を添加し、条件を提供してバーコード標識を伸長させる。一実施形態では、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの3’末端をポリメラーゼによって伸長させ、それによって、伸長したバーコード標識のリバース鎖を含む二本鎖分子を形成させる。あるいは、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの3’末端をポリメラーゼによって伸長することができないようにブロッキングする。 この場合、ハイブリダイゼーションおよびバーコード標識の伸長の際に短い二本鎖領域のみが提供され、これは、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよび対応するバーコード標識の伸長した領域を含む。得られた伸長したバーコード標識は、示されている実施形態では、以下の配列エレメントを含む:プライマー配列(1)、B
S、UMI、アダプター配列(1)、B
Tおよびプライマー配列(2)。伸長したバーコード標識の逆相補物が伸長の際に提供された場合、ステップ(bb)で実施される増幅ステップの前に除去することができ(
図7C参照)、それによって、一本鎖の伸長したバーコード標識を含む検出用分子が提供される。さらに、この段階でバーコード標識の逆相補物が形成されることを防止する、3’末端がブロッキングされたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを使用することができる。オリゴヌクレオチドは、増幅ステップ(bb)に使用されるプライマーまたはプライマーの組合せの結合を可能にする配列を含まない。さらに、例えば、著しく短いアダプターバーコードオリゴヌクレオチド(およびプライマー)は除去される一方で、相当に長い増幅産物は精製されるカットオフを有するサイズ選択的な精製方法により増幅産物を精製することにより、オリゴヌクレオチドを増幅反応から容易に除去することができる(
図7D参照)。ステップd)(aa)の実施後、(bb)で増幅反応を実施する。バーコード配列B
Pを含むプライマーまたはプライマーの組合せを使用することができ、それにより、バーコード配列B
Pが増幅産物に導入される。さらに、プライマーまたはプライマーの組合せは、アダプター配列(AS)を含み得る。例示されている実施形態では、プライマー対を使用し、ここで、フォワードプライマーは、伸長したバーコード標識の逆相補物に結合するプライマー配列に対して5’側にバーコード配列B
Pを含む。このプライマーは、バーコード配列B
Pに対して5’側にアダプター配列(AS)(ここでは、P7)をさらに含み、それにより、アダプター配列(AS)(ここでは、P7)が増幅産物の一方の末端に導入される。前記対のリバースプライマーは、例示されている実施形態では、伸長したバーコード標識のプライマー配列(2)とハイブリダイズすることができるプライマー配列(2)
Rを含み、アダプター配列(AS)(ここでは、S)を5’末端に含み、それにより、増幅産物の他方の末端に導入される。あるいは、バーコード配列B
Pをリバースプライマー内に提供することができる。単一のプライマーをいくつかのサイクルのプライマー伸長を実施することによる増幅のために使用する場合、それなら、前記プライマーは、バーコード標識B
Pを含む。例えば、
図7に示されているリバースプライマーを使用することができ、ここで、バーコード標識B
Pは、プライマー配列(2)
Rとアダプター配列(AS)(ここでは、S)の間に位置付けられる。第2のアダプター配列(AS)を有する得られた増幅産物を提供するために、そのような配列が検出用分子に付着したバーコード標識にすでに組み入れられており、それにより、増幅産物に組み入れられるようにすることができる。単一のプライマーのみを増幅に使用する場合、いくつかのサイクルのプライマー伸長を実施することにより、バーコード標識内にプライマー配列(1)を提供する必要はない。その代わりに、上で説明した通り、配列決定用のアダプター配列ASをプライマー配列(1)の代わりに含めることができる。これらの実施形態は全て、
図7Dに例示されている配列決定可能な反応産物を提供することを可能にするものである。上記の開示から、配列エレメントB
P、B
S、UMIおよびB
Tの配置は使用される実施形態に応じて変動させることができることになる。例えば、バーコード配列B
Pはプライマー配列(2)とアダプター配列Sの間に位置してよく、バーコード配列B
SとUMI配列の順序が逆であってもよく、また、増幅に単一のプライマーのみを使用する場合には、プライマー配列(1)がなくてもよい。
【
図8A】
図8a:
図7に示されている実施形態の変形形態が例示されている。示されている有利な実施形態では、バーコード標識は、バーコード配列B
Sを含み、UMI配列はアダプターオリゴヌクレオチド配列を介して導入される。UMI配列を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを含む区画(例えば、微細加工された細胞培養デバイスの)に添加することができる、または捕捉された目的の生体分子を伴う捕捉用マトリックスを取り出した後に、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加する(「オフチップ」)。UMIライブラリーサイズは、捕捉用マトリックスの結合能の範囲内に入り得る。例えば、捕捉用マトリックスに1×10
6個の分子が結合することができる場合、捕捉された目的の生体分子のそれぞれが特定のUMIで標識されることを確実にするために、UMIライブラリーは1×10
6種の異なるUMI配列を含み得る。対照的に、UMIライブラリーが標識バーコードに組み入れられ、複数の細胞含有マトリックスおよび対応する捕捉用マトリックスが異なる区画内で処理される場合(多重化)、UMIライブラリーは、1つよりも多くの捕捉用マトリックスを標識するために十分な分子を含まなければならない。したがって、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを介してUMIライブラリーを付加することにより、UMIライブラリーサイズを処理される捕捉用マトリックスの最大結合能まで縮小することが可能になる。伸長したバーコード標識の逆相補物が伸長の際に提供された場合、ステップ(bb)で実施される増幅ステップの前に除去することができる(
図8aCを参照)。伸長したバーコード標識の逆相補物の除去は、非特異的ハイブリダイゼーションに起因してポリメラーゼにより伸長した産物の処理を防止するために有益である。それにより、一本鎖の伸長したバーコード標識を含む検出用分子が提供される。あるいは、ポリメラーゼによって伸長することができないブロッキングされた3’末端を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを使用することができ、したがって、除去は必要ない。
図7と併せて説明されている通り、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してポリメラーゼ伸長反応を実施し、それによって、オリゴヌクレオチドの情報を含む伸長したバーコード標識が提供される。アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを3’末端においてさらに伸長させることもでき、3’末端をブロッキングしてポリメラーゼによる伸長を防止することもできる。ステップd)のステップaa)の後、(bb)で増幅ステップを実施し、ここで、バーコード配列B
Tおよびバーコード配列B
Pを含むプライマーまたはプライマーの組合せを使用する。細胞含有マトリックスを含まない区画内で増幅反応を実施することが好ましい。検出用マトリックスの種々の移行選択肢は、本明細書において他の箇所に記載されている。示されている実施形態に関しては、1つまたは複数の捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスの近傍から取り出し、区画(例えば、ウェル)内に移行した後、結合のために検出用分子を添加することが好ましい(
図2Cを参照されたい)。
図8aに例示されている通りプライマー対を使用する場合、バーコード配列B
Tがリバースプライマー上に位置してよく、バーコード配列B
Pがフォワードプライマー上に位置してよいか、または逆に、バーコード配列B
Pがリバースプライマー上に位置してよく、バーコード配列B
Tがフォワードプライマー上に位置してよい。さらに、プライマーは、
図8aに示されている通り、アダプター配列(AS)を含み得る(「S」および「P7」を参照されたい)。両方のバーコード配列B
PおよびB
Tを単一のプライマー上(フォワードまたはリバース)に提供することもでき、前記プライマーは、配列決定用のアダプター配列(AS)を5’末端に含むことが好ましい。次いで、第2のプライマーが、増幅を支持し、第2の配列決定用のアダプター配列(AS)を逆末端に導入する目的にかない得る。さらに、再度、伸長したバーコード標識とハイブリダイズし、好ましくは5’末端のアダプター配列に加えてバーコード配列B
TおよびB
Pを含む単一のリバースプライマーを使用することが可能である。第2のアダプター配列を検出用分子に付着したバーコード標識の5’領域内に提供することができ、したがって、第2のアダプター配列が得られた増幅産物にも組み入れられる。上記の通り、増幅のために単一のプライマーを使用していくつかのプライマー伸長サイクルを実施する場合には、バーコード標識内のプライマー配列(1)は必要なく、プライマー配列(1)をアダプター配列ASで置き換えることができる。これらの実施形態は全て、
図8aDに例示されている配列決定可能な反応産物を提供することを可能にするものである。再度、上記の開示から、配列エレメントB
P、B
S、UMIおよびB
Tの配置/順序は使用される実施形態に応じて変動させることができるということになる。
【
図8B】
図8b:
図7に示されている実施形態の変形形態が例示されている。示されている実施形態では、バーコード標識は、バーコード配列B
Sを含み、UMI配列ならびにバーコード配列B
Pがアダプターオリゴヌクレオチド配列を介して導入される。
図8bに例示されている通り、UMI配列を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよびバーコード配列B
Pを、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを含む区画(例えば、微細加工された細胞培養デバイスまたは収集ウェルの)に添加することができる、または捕捉された目的の生体分子を伴う捕捉用マトリックスを取り出した後に、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加する(「オフチップ」)。捕捉用マトリックスを取り出した後にバーコード配列B
PおよびUMI配列を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加する、例示されている実施形態(
図2Cを参照されたい)が有利である。これにより、UMIとバーコードB
Pの組合せに起因して必要なUMIライブラリーサイズが縮小する。同じUMIを異なる区画/収集ウェルに使用することができ、これらの異なる区画/収集ウェルは、バーコードB
Pに基づいて明白に区別することができ、同定可能である。アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの延長に起因して、伸長したバーコード標識の逆相補物が伸長の際に提供された場合、それをステップ(bb)で実施される増幅ステップの前に除去することができる(
図8bCを参照)。伸長したバーコード標識の逆相補物の除去は、誤ってハイブリダイズした延長産物の数を減少させるために有益である。
図7と併せて説明されている通り、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してポリメラーゼ伸長反応を実施し、それによって、オリゴヌクレオチドの情報を含む伸長したバーコード標識が提供される。アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを3’末端においてさらに伸長させることもでき、3’末端をブロッキングしてポリメラーゼによる伸長を防止することもできる。ステップaa)の後、(bb)で増幅ステップを実施し、ここで、バーコード配列B
Tを含むプライマーまたはプライマーの組合せを使用する。細胞含有マトリックスを含まない区画内で増幅反応を実施することが好ましい(移行選択肢が本明細書に記載されている)。
図8bに例示されている通りプライマー対を使用する場合、バーコード配列B
Tはフォワードプライマー上に位置してもよく、あるいはリバースプライマー上に位置してもよい。さらに、プライマーは、
図8bに示されている通りアダプター配列(AS)を含み得る(「S」および「P7」を参照されたい)。さらに、再度、伸長したバーコード標識とハイブリダイズし、好ましくは5’末端のアダプター配列に加えてバーコード配列B
Tを含む単一のリバースプライマーを使用することが可能である。第2のアダプター配列を検出用分子に付着したバーコード標識の5’領域内に提供することができ、したがって、第2のアダプター配列が得られた増幅産物にも組み入れられる。上記の通り、増幅のために単一のプライマーを使用していくつかのプライマー伸長サイクルを実施する場合には、バーコード標識内のプライマー配列(1)は必要なく、プライマー配列(1)をアダプター配列ASで置き換えることができる。これらの実施形態は全て、
図8bDに例示されている配列決定可能な反応産物を提供することを可能にするものである。再度、上記の開示から、配列エレメントB
P、B
S、UMIおよびB
Tの配置/順序は使用される実施形態に応じて変動させることができるということになる。
【
図9】
図9:
図7に示されている実施形態のさらなる変形形態が例示されている。バーコード標識はバーコード配列B
Sのみを含み、UMI配列およびバーコード配列B
Tはアダプターオリゴヌクレオチド配列を介して導入される。これらの2つの配列エレメントは、3’側のアダプター配列(1)
Rと5’側のプライマー配列(2)
Rで挟まれている。B
TとUMIの順序はアダプターバーコードオリゴヌクレオチド内で逆転させることができる。UMI配列を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよびバーコード配列B
Tを、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを含む区画(例えば、微細加工された細胞培養デバイスの)に添加することもでき(「オンチップ」、すなわち、この実施形態では、時間情報および数量情報(UMI)を、捕捉用マトリックスおよび細胞含有ハイドロゲルマトリックスを含有する微細加工された区画内に添加することができる)、捕捉された目的の生体分子を伴う捕捉用マトリックスを取り出した後にアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加することもできる(「オフチップ」)。
図7と併せて説明されている通り、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してポリメラーゼ伸長反応を実施し、それによって、オリゴヌクレオチドの配列情報を含む伸長したバーコード標識を提供する。アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを3’末端においてさらに伸長させることもでき、3’末端をブロッキングしてポリメラーゼによる伸長を防止することもできる。 ステップaa)の後、(bb)で増幅ステップを実施し、ここで、バーコード配列B
Pを含むプライマーまたはプライマーの組合せを使用する。細胞含有マトリックスを含まない区画内で増幅反応を実施することが好ましい。
図9に例示されている通りプライマー対を使用する場合、バーコード配列B
Pはフォワードプライマー上に位置してもよく、あるいはリバースプライマー上に位置してもよい。さらに、プライマーは、
図9に示されている通りアダプター配列(AS)を含み得る(「S」および「P7」を参照されたい)。さらに、再度、伸長したバーコード標識とハイブリダイズし、好ましくは5’末端のアダプター配列に加えてバーコード配列B
Pを含む単一のリバースプライマーを使用することが可能である。第2のアダプター配列を検出用分子に付着したバーコード標識の5’領域内に提供することができ、したがって、第2のアダプター配列が得られた増幅産物にも組み入れられる。上記の通り、増幅のために単一のプライマーを使用していくつかのプライマー伸長サイクルを実施する場合には、バーコード標識内のプライマー配列(1)は必要なく、プライマー配列(1)をアダプター配列ASで置き換えることができる。これらの実施形態は全て、
図9Dに例示されている配列決定可能な反応産物を提供することを可能にするものである。再度、上記の開示から、配列エレメントB
P、B
S、UMIおよびB
Tの配置/順序は使用される実施形態に応じて変動させることができるということになる。
【
図10】
図10は、単一の粒子、ここでは単一の細胞を封入するための粒子トラップ17の図である。トラップ17は、微細加工されたエラストマー弁部分14の上に位置する。 -
図10A:まず、頂部の微細加工された層23に、粒子懸濁液36、すなわち、ここでは細胞懸濁液を灌流する。単一の細胞20を微細加工された弁部分14の上に位置する流体力学的トラップ17内にトラップし、固定化する。その後の微細加工された弁部分14の開口により、頂部の層23/第2のチャネル12から、不混和性の(第2のチャネル内の流体に対して)第2の流体37、特に油性流体を満たした底部の層21/第1のチャネル11への流体の流れが生じる。それにより、トラップされた細胞20が形成された液滴31に移行し、ここで、細胞懸濁液36の流体が捕捉された細胞20を囲んでいる。細胞懸濁液36の流体および粒子が液滴31を構成する。 -
図10B:
図10Aの粒子トラップ17の上面の図である。一般的な単一の粒子トラップ17は、微細加工されたエラストマー弁部分14の上に/それに隣接して位置する。トラップ17は、流体開口部がトラップされる粒子20よりも小さいボトルネックセクション16を含む。トラップに達した第1の粒子(細胞)はトラップによって捕捉される。その後トラップに達したさらなる粒子(細胞)は全て、バイパスセクション18に沿って進む。38は必要に応じたインピーダンス測定デバイスを例示し、39は必要に応じた高周波適用デバイスを例示する。 -
図10C:微細加工された弁部分14の上の2つの別々の近隣のトラップ17nに位置する2つの粒子20、特に細胞を固定化するための修正されたトラップ群の図である。弁部分14の開口により、2つのトラップされた細胞20の1つの液滴31への共封入が生じ得、これは、弁部分14が両方のトラップ17nから両方のトラップ17nの下の同じ第1のチャネル11内まで通じているからである。この実施形態を使用して、2つの異なる細胞20を1つの単一の液滴31内に封入することができる。 -
図10Dは、トラップ群を概略図で示す。近隣のトラップ17nのそれぞれに別々のチャネル12’、12’’からローディングし、同じ圧力p2を流体に適用して、同じサイズの液滴を実現する。まず、トラップ17nにローディングする;全てのトラップ17nにローディングしたら、洗浄用流体を適用してトラップされた細胞をきれいにすることができる。その後、弁部分14を開口して、1つの弁セクション14を通じて細胞20を1つの液滴31内に同時に含める。2つの近隣のトラップ17nを有する複数のそのようなトラップ群を1つの試験デバイス内に配置することができる。
【
図11】
図11は、捕捉用マトリックスおよび/または細胞含有ハイドロゲルマトリックスなどの粒子の制御された取り出しおよび出口部分への移行のための微細加工された幾何学的形状の流体力学的抵抗性の図である。さらに、その微細加工された幾何学的形状をアレイ内に配置し、それにより、何百から何千もの粒子の位置付けおよび取り出しを可能にすることができる。前記微細加工された幾何学的形状は、1つの区画32内、ここでは、例として列m2および行n2の位置の区画32m2n2に流体力学的抵抗性R0、R1、R2、R3、R4を含む。R0はマトリックストラップ33における流体力学的抵抗性を示し、R1~R4は区画32内の異なる行路の流体力学的抵抗性を示し、R1、R4>R2、R3である。P1は区画32を通ってP2によって示される出口までの主要な流体の流れの入口を示す。主要な給送チャネル41はここでは必要に応じたものである。 -
図11A:通常操作中、流動はより小さな抵抗性R2、R3を通る「近道」を取るので、主要な流体流動は上から下まで移動する(流れ51の第1の行路に沿ったまたは必要に応じて主要な給送チャネル41に沿った流れS1の第1の方向)。抵抗性R1、R4の行路を通る流体の流れの一部は無視できるものにすぎない。ここでは、全ての誘発コマンドCm2、Cn2をゼロに設定する。 -
図11B:R2の行路においてコマンドCm2=1によって弁Vm2の引き金を引くことにより、この行路の抵抗性R2が有意に増大する。そこで主要な流体が抵抗性R4およびR3の行路で、流れ53の第3の行路に沿ってP1からP2まで移動する。そこでR0における流れは止まるが逆流はしない。 -
図11C:R3の行路においてコマンドCn2=1で弁Vn2の引き金を引くことにより、この行路の抵抗性R3が有意に増大する。そこで主要な流体は抵抗性R2およびR1の行路で流れ54の第4の行路に沿ってP1からP2まで移動する。そこでR0における流れは止まるが逆流はしない。 -
図11D:コマンドCm2およびCn2を1に設定することにより弁Vm2およびVn2の引き金を引くことによってR2の行路の抵抗性とR3の行路の抵抗性の両方が増大した時のみ、マトリックストラップ33内のR0位における流れが逆流する。そこで主要な流体が抵抗性R4、R0およびR1の行路で流れ54の第4の行路に沿ってP1からP2まで移動する。その後、マトリックストラップ33内のR0に位置するマトリックス31がトラップ位置から取り出される。両方の弁Vm2、Vn2の群はここでは例示的に観察チャンバー32m2n2の弁配置40m2n2と称される。 提示されている微細加工された幾何学的形状は、例えば、開示されている方法を実現するために使用することができる。特に、微細加工された幾何学的形状は、例えば、単一細胞含有ハイドロゲルマトリックスおよび捕捉用マトリックスを1つの区画内で近傍に位置付けるために使用することができる。さらに、前記微細加工された幾何学的形状により、捕捉用マトリックスを取り出す一方で細胞含有マトリックスはその位置に残すことが可能になる。提示されている微細加工された幾何学的形状の1つの利点は、アレイ配置との適合性である。したがって、複数の微細加工された幾何学的形状を接続して、少なくとも1つの細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスをアレイの各(n|m)位に含有するアドレス可能なn×mアレイを生成することができ、それでもなお規定された位置に位置する捕捉および/または細胞含有マトリックスを移行することができる。捕捉用マトリックスまたは細胞含有マトリックスなどのマトリックスを水性流体と不混和性の流体内に位置する液滴内の微細加工された幾何学的形状に送達することができる。前記流体は、フッ素化油(例えば、HFE-7500)などの油であってよい。マトリックスを液滴内に提供する際、マトリックス形成はまだ開始されていなくてもよく、進行中であってもよく、完成していてもよい(液滴が完全に重合した/ゲル化したマトリックスを含有する)。さらに、水相内に位置する完全に重合した/ゲル化したマトリックスを微細加工された幾何学的形状に送達することができる。例えば、捕捉用マトリックスを形成した後に細胞培養デバイスに添加し、それにより、種々の特徴付け方法を使用して捕捉用マトリックスの詳細な品質管理を可能にすることができる。
【
図12】
図12は、一般的な微細加工された細胞培養デバイスを用いてマトリックス、特に球状ハイドロゲルマトリックス(例えば、細胞含有マトリックス、捕捉用マトリックス)を特定の位置32にトラップするためのシミュレーションを示す図である。さらに
図11の回路図も参照して記載する。 -
図11Aおよび12A:通常操作。微細加工された弁はいずれも閉じていない;したがって、流体線502および503における抵抗性R2およびR3は流体線501および504における抵抗性R1およびR4よりもはるかに小さい。流体の流れがトラップ幾何学的形状33をS1方向に上から下まで灌流する。したがって、粒子(細胞)がトラッピング構造33内に固定化される。 -
図11Bおよび12B:抵抗性R3で表される左下の微細加工された弁が閉じている。主要な流体は上のチャネルを通って流動する。 -
図11Cおよび12C:主要な流体は下のチャネルを通って流動する。粒子がトラップ内に押される。 -
図11Dおよび12D:抵抗性R2およびR3で表される両方の微細加工された弁が閉じている時のみ、S2方向の流体の逆向きの流れにより粒子がトラッピング構造33から取り出される。 本開示に関して、一般的なトラッピング構造33は、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスなどの少なくとも2つの粒子を位置付けるように適合されている。そのようなポジショナーの詳細な説明は
図13~17に示されている。一般的な微細加工された細胞培養を、流体のS1方向への灌流および流体のS2方向への灌流を含めたいくつかの状態で作動させることができる。流体のS1方向への灌流により、分析物の結合後の捕捉用マトリックスの効率的な洗浄、およびその後の検出用分子を用いた洗浄が可能になる。さらに、一般的な微細加工された区画を閉じ、それにより、規定された反応体積を有する閉鎖的な反応区画の生成を可能にすることができる。これは、分析物と捕捉用分子の結合を可能にするために分泌された分析物が捕捉用マトリックスと同じ反応区画内に残らなければならないので、極めて重要である。流体のS1方向への灌流により、例えば、検出用分子の添加後の捕捉用マトリックスの取り出し、およびその後の別のデバイスへの移行が可能になる。捕捉用マトリックスの別のデバイスの所定の位置への制御された移行は、捕捉用マトリックスを(n|m)位に細胞含有マトリックスの近くに位置付け、情報を失わずに捕捉用マトリックスをさらに処理することができるので、重大なステップである。この情報は、捕捉用マトリックスを分析することによって生成したデータ(プロファイルされた分泌)の、分析された分子を分泌した対応する細胞(複数可)への固有の割り当てを行うために必要である。
【
図13】
図13~15は、マトリックス、例えば、捕捉用マトリックスを逆流チェリーピッキング(RFCP)によって取り出すための実施形態を例示する図である。
図13Aは、極めて近傍に位置する2つのマトリックス、例えば、捕捉用マトリックス(31C)と細胞含有マトリックス(31A)を示す。逆流により、捕捉用マトリックス2(31C)に作用する力F2および細胞含有マトリックス1(31A)に作用する力F1が生じ、F2はF1よりも大きい。したがって、ある特定の流速では、捕捉用マトリックス2(31C)のみが取り出され、一方、細胞含有マトリックス1(31A)は区画内に残る。
図13Bは、2つの異なる前記マトリックスに作用する力を生成するための対応する流体力学的抵抗性を示す。
【
図14】
図14は、異なる逆流速を使用することによりRFCP機構の枠内で提供される、位置付け手段内に位置する粒子、特にマトリックス(31C、31A)の取り出しを示す。逆流速の増大により、第1の捕捉用マトリックス31Cの取り出しをもたらすことができ、一方、異なる(微細加工された)区画内に位置する全てのマトリックスはそれらの位置内に残すことができる。流速のさらなる増大により、同じ区画からの第2のマトリックス(例えば、細胞含有マトリックス31A)の取り出しをもたらすことができ、他の区画内に位置するマトリックスは取り出されない。これは、まず捕捉用マトリックスをその後の処理および分析のために移行することができるので、有利である。その後、細胞含有マトリックスも同様に、確立された方法を使用して前記細胞(複数可)をさらに特徴付けるために収集することができる。特に、収集された細胞(複数可)をそれらの遺伝子型に関して特徴付け(例えば、RT-PCRまたは(単一細胞)RNA-seqを使用することによって)、それにより、遺伝子型の情報を表現型の情報(例えば、本開示に提示される1つまたは複数の目的の生体分子の生成された分泌プロファイルなど)に割り当てることができる。
【
図15】
図15は、ポジショナーを使用して近傍に位置付けられた3つの粒子、特にマトリックスまたは液滴(液滴31-A-C)のRFCPによる逐次的な取り出しを示す。一実施形態では、マトリックス31Aは、1型の細胞(複数可)を含有する細胞含有マトリックスであってよく、マトリックス31Bは、2型の細胞(複数可)を含有する細胞含有マトリックスであってよく、一方、1型の細胞(複数可)と2型の細胞(複数可)は同じであってもよく、異なってもよく、マトリックス31Cは捕捉用マトリックスであってよい。逆流により、マトリックス31Cに作用する力F3、マトリックス(マトリックス31C)に作用する力F2およびマトリックス31Aに作用する力F1が生じ、F3は、F1よりも大きいF2よりも大きい。したがって、ある特定の流速では、マトリックス(マトリックス31C)のみが取り出される。逆流速を増大させることにより、他のマトリックスの逐次的な取り出しがもたらされる。B)3つの異なる前記マトリックスに作用する力を生成するための対応する流体力学的抵抗性。例示的な実施形態が
図16にも示されている。マトリックス31Aおよび31Bの取り出しを伴わない捕捉用マトリックス(31C)の取り出しにより、捕捉用分子に分析物が結合していない「新鮮な」捕捉用マトリックスを繰り返し位置付けることが可能になり、それにより、異なる時間間隔内で分泌された分析物の検出が可能になる。一実施形態では、マトリックス31Aおよび31Bならびに捕捉用マトリックス31Cを、水性流体と不混和性の流体内に位置する液滴内に位置させる。ポジショナー内で、マトリックス31A~Cを含有する液滴は互いに調和する。特に、マトリックス31A~Cを含有する液滴は、互いに統合し、それによりマトリックス31A~Cを含有する1つの液滴を形成し、それにより、反応体積がほぼ3つのマトリックス31A~Cの体積まで縮小し、それにより分析物の濃度、したがって感度が増大する。これは、2つの液滴/マトリックス、1つの細胞含有マトリックスと1つの捕捉用マトリックスを用いて行うこともできる。さらに、RFCP機構を使用してマトリックス31Cを共通の液滴から取り出すことができ、液滴の分裂を実施することができる。捕捉用マトリックスを含有する新鮮な液滴をマトリックス31Aおよび31Bを含有する残りの液滴に送達することができる。別の有利な実施形態では、マトリックス31Aと31Bをまず1つの共通の液滴内でインキュベートすることができる。その後、液滴内に位置する捕捉用マトリックスを、マトリックス31Aおよび31Bを含有する共通の液滴と共に位置付け、それと統合することができる。これには、分泌された分子をまず共通の液滴内に蓄積させ、それにより、パラ分泌および自己分泌シグナル伝達を可能にし、その後、捕捉用マトリックスを添加することによって捕捉することができるという利点がある。粒子を3つの代わりに2つだけ位置付けるためのポジショナーを使用して同じ手順を実施することができる。
【
図16】
図16Bは、
図16Aに詳細が示されている一般的な場所を示す。場所は、ポジショナー33の群を迂回する2つのバイパスセクション35を含む。ここでは、それぞれがポジショナー33A、33B、33Cを規定する3つのボトルネックセクション34A、34B、34Cが順に提供される。場所へのローディング中、ポジショナー33に到達する第1の粒子、特に液滴/マトリックスは第1のポジショナー33Aまで移動し、第1のポジショナー33A内に保持される。その後に到達する第2の液滴/マトリックスは、第1のポジショナー33Aの上流の第2のポジショナー33Bまで移動し、第2のポジショナー33B内に保持される。その後に到達する第3の液滴/マトリックスは第2のポジショナー33Bの上流の第3のポジショナー33Cまで移動し、第3のポジショナー33C内に保持される。任意の数のボトルネックセクション34/ポジショナー33を提供して、所定の数の一列の液滴/マトリックス31を可能にすることが可能である。ポジショナーの全てが占有されたら、さらなる液滴/マトリックスはバイパスセクション35をたどり、S1方向の第1の流体に沿って下流の位置にある場所に接近する。トラップが外れるように流体が逆向きになると、上流(第1の流体をS1方向に見た場合)の第3のボトルネックセクション34C内の第1の液滴/マトリックスにおける液滴/マトリックスのトラップが外れる。液滴/マトリックストラップの水力設計に起因して、上流のポジショナー33Cに保持されている液滴/マトリックスが、下流のポジショナー33A、33Bに保持されている液滴/マトリックスと比較した水圧の上昇を受ける。したがって、流体の方向が逆転してS2方向の第2の流体になると、最も上流のポジショナー33C内の第1の液滴/マトリックスのトラップが外れ、出口区域、例えば、P2に送達され得る(
図21参照)。次に、P1とP2の間の流体の圧力が増大し、したがって、その後、より下流のポジショナー33A、33Bに保持されている液滴/マトリックスのトラップも外れ、同様にP2にある出口に送達される。適切な水力設計はCFDシミュレーションによって得ることができる。
【
図17】
図17は、他の区画内に位置するマトリックス(例えば、細胞培養デバイス、好ましくは微細加工された細胞培養デバイスに由来するもの)には影響を及ぼさずに、それぞれ第1の(下流の)マトリックス31A、第2のマトリックス31Bおよび第3の(上流)マトリックス31Cにより3つのボトルネックセクションを有するトラップ内の3つのマトリックスを逐次的に取り出すことを示す図である。 - 第1のトラップ外し期間Iの間、低圧または流速p1を流体を通じて適用し、したがって、全てのマトリックスがトラップされたままになる。 - 第2の期間IIの間、増大させた圧力または流速p2を流体を通じて適用し、これは、単に上流のマトリックス31Cを取り出すために十分に強力である; 他のマトリックス31B、31Aはトラップされたままになる。 - 第3の期間IIIの間、さらに増大させた圧力または流速p3を流体を通じて適用し、これは、第2のマトリックス31Bを取り出すために十分に強力である;下流のマトリックス31Aはトラップされたままになる。 - 第4の期間IVの間、さらに増大させた圧力または流速p4を流体を通じて適用し、これは、第3の上流のマトリックス31Aを取り出すために十分に強力である。圧力はインプットP1を通じて適用することができる(
図6参照)。
図13および14は、
図15および16を参照して説明されているものと同じ概念を示すが、単に2つのボトルネックセクション34A、34Cを有する1つのマトリックストラップ内に保持される2つのマトリックス31A、31Cを使用するためのものである。
【
図18】
図18は、1つまたは複数の目的の生体分子の経時的プロファイルを生成するためのワークフローの図である。この目的のために、第1のステップにおいて、少なくとも2つのマトリックス(細胞含有マトリックス31A、および捕捉用マトリックス31B)を区画(32)内に位置するトラップ(33A、33B)内に位置付ける。これは、例示的な実施形態が
図13および14にも示されている通り、トラップされたマトリックスを選択的に取り出すためのトラップであり得る。細胞含有マトリックス(31A)は、少なくとも1つの細胞(20)を含有する。さらに、前記細胞含有マトリックス(31A)を規定された期間にわたって動かさずに保持することができる。捕捉用マトリックス(31B)を細胞含有マトリックス(31A)の隣に位置付ける。捕捉用マトリックスは、細胞含有マトリックス内に提供される細胞(20)によって分泌される1つまたは複数の目的の生体分子を捕捉するための1つまたは複数の型の捕捉用分子を含み得る。特定の実施形態では、次のステップにおいて、トラップされたマトリックス周囲の流体を油性流体に置き換えることができる。したがって、反応体積がほぼ両方のマトリックス(31A、31B)の体積まで低下する。これには、反応体積が規定の体積に固定され、分泌された目的の生体分子の濃度が上昇し、それにより、潜在的な検出機構の測定感度が増大するという利点がある。次のステップにおいて、両方のマトリックス(31A、31B)を規定された期間にわたって動かさずに保持することができ、その期間中に、分泌された目的の生体分子が細胞から放出され得、捕捉用マトリックス31Bに拡散し、そこで、提供された捕捉用分子と結合する。その後、前記マトリックス周囲の流体を再度交換し、トラップされたマトリックスの洗浄、および本明細書に記載のバーコード標識で標識された検出用分子の添加を可能にすることができる。次いで、捕捉用マトリックス(31B)を開示されている通り逆流を適用することによって取り出し、ウェルプレートなどの別のフォーマットの別のデバイス、例えばウェル(「収集位置」)の区画内に収集することができ、一方、細胞含有マトリックス31Aは動かずに保持される。その後、新しい第2の(捕捉)マトリックス(31B)を提供し、再度33Bに位置付け、プロセスを繰り返す。この方法には、分泌された目的の生体分子を経時的に捕捉し、区画(32)内で、または前記マトリックス(31B)を異なるデバイス内に収集した後に分析することができるという利点がある。分泌される分子はサイトカイン、増殖因子などであり得る。
【
図19】
図19は、記載の経時的サイトカインプロファイリング技法を使用して生成することができるデータの図である。本明細書に記載の通りさらにプールすることができる、配列決定可能な反応産物内に提供される異なるバーコード配列B
S、B
Tおよび/またはB
Pを使用する本発明による方法には、配列手法を使用してデータを時間的にも費用的にも効率的な様式で生成することができるという利点がある。さらに、前記データを細胞含有マトリックス内に位置する細胞(複数可)に関する追加的な情報(例えば、免疫染色などの方法を用いて得られた表現型のデータ、RT-PCR、RNA-seqなどの方法を用いて得られた遺伝子型データ)とカップリングすることができる。 参照により本明細書に組み込まれる対応する図の説明を含む以下のPCT/EP2018/074526の図がさらに参照される: -
図2は、マイクロ流体アレイを示す。前記アレイを、開示されている方法を用いて何百から何千もの細胞含有マトリックスを培養し、分析するため、および対応する捕捉用マトリックスの取扱い(位置付けおよび移行/取り出し)のために使用することができる。 -
図22、A、BおよびCは、RFCPによって制御される区画のアレイを示す。 -
図31は、マトリックス内の細胞の要望に応じた多ステップ刺激のワークフローを示す。 -
図35は、マトリックスを固定化するための微細加工された幾何学的形状のある実施形態を概略的に示す。前記微細加工された幾何学的形状を固定化のために調整することができる。
【
図20】
図20は、細胞含有マトリックスを含有する区画とは別の区画内に位置する捕捉用マトリックスの処理(例えば、検出用分子と接触させること)を可能にする微細加工された細胞培養デバイスの構造の図である。これには、捕捉用マトリックス処理を細胞の培養と分離することができるという利点がある。それにより、細胞含有ハイドロゲルマトリックス内に位置する細胞(複数可)は捕捉用マトリックスの処理による影響を受けない。さらに、前のインキュベーション期間に結合した分析物を含む捕捉用マトリックスの処理中に分泌された分析物を、最初に(送達中に)分析物が結合していない「新鮮な」捕捉用マトリックスを使用して再度捕捉し、それにより、捕捉用マトリックスの処理中に分泌されたあらゆる分子の喪失を減少させることができる。捕捉用マトリックス処理の培養プロセスからの分離を可能にするために、捕捉用マトリックスの処理用のさらに別の区画(処理チャンバー)をデバイスに追加する。少なくとも1つの捕捉用マトリックスを受け入れるために、1つまたは複数の細胞含有マトリックス(マイクロ流体細胞培養区画)を含有する区画を処理チャンバーに接続する。両方の区画(少なくとも1つの捕捉用マトリックス用の処理チャンバーならびに少なくとも1つの細胞含有マトリックス用の対応するマイクロ流体細胞培養チャンバー)を
図11~17に例示されている通り構造化することができる。2つのプロセスの分離は、マイクロ流体細胞培養チャンバーの出口部分p2と処理チャンバーの給送ライン41を接続することによって行うことができる。さらに、マイクロ流体細胞培養チャンバーの出口部分を少なくとも1つの第2のマイクロ流体チャンバーの出口部分(共通の出口部分)に接続することができる。少なくとも1つの弁を使用して、処理チャンバーの給送ラインと共通の出口部分を切り換えることができる。したがって、マイクロ流体細胞培養チャンバーから取り出されるマトリックスを、処理チャンバーまたは共通の出口部分のいずれかに方向付けることができる。例えば、マイクロ流体細胞培養チャンバー1,2内に位置する捕捉用マトリックスを処理チャンバー1,1の給送ラインに方向付けることができ、捕捉用マトリックスを前記処理チャンバー内に位置付けることができる。いかなる処理も伴わずに直接収集するために、細胞含有マトリックスを共通の出口部分に方向付けることができる。処理チャンバーの出口部分p2を少なくとも1つの第2の処理チャンバーの出口部分と接続する。したがって、捕捉用マトリックスの処理を行った後、捕捉用マトリックスを処理チャンバーから取り出し、デバイスの別のフォーマットに移行することができる。さらに、処理チャンバーを連続して接続し、マイクロ流体細胞培養チャンバーへの灌流を伴わずに灌流することができる。これは、全ての処理チャンバーが共通の給送ラインを共有するので行うことができる。さらに、全てのマイクロ流体細胞培養チャンバーが、処理チャンバー用の給送ラインとは異なる共通の給送ラインを共有する。処理チャンバーおよびマイクロ流体細胞培養チャンバーをアドレス可能なn×mアレイに配置することができ、その場合、
図11に示されている通り、共通のグループコマンドを提供することによってn|m位の流れを逆転させることができる。
【
図21】
図21は、細胞含有マトリックスを細胞培養プレートの区画内でインキュベートする実施形態を例示する図である。少なくとも1つの細胞(43;ここでは複数の細胞)を含む細胞含有マトリックス(42)を細胞培養プレートの区画(44)、例えばウェル内に提供する。
図21は、そのような細胞培養プレートの区画(ウェル)のみを示す。細胞含有マトリックス(42)を液体(45)、例えば、細胞培養培地で覆う。細胞含有マトリックス(42)をインキュベートした後、少なくとも1つの捕捉用マトリックス(46)を、液体(45)および細胞含有マトリックス(42)を含有する区画(44)に添加する。例示されている実施形態では、捕捉用マトリックスを複数の捕捉ビーズによって提供する。添加された捕捉用マトリックス(46)は、本明細書に開示される1つまたは複数の目的の生体分子(47)の結合を可能にする1つまたは複数の型の捕捉用分子を含む。放出された目的の生体分子(複数可)が捕捉用マトリックス(示されている実施形態では、複数の捕捉ビーズ)に結合した後、目的の生体分子(47)が結合した捕捉用マトリックスを、例えば、異なる区画(例えば、細胞培養プレートの異なるウェル)などの別の位置に移行することができる。次いで、細胞含有マトリックス(43)のインキュベーションおよび捕捉用マトリックス(46)の添加の1回または複数回のさらなるサイクルを実施することができる(矢印参照)。その後、本開示による方法のステップc)およびd)および必要に応じてステップe)を実施する(図には示されていない)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
開示される技術をここでさらに詳細に説明する。
【0017】
第1の態様による方法
第1の態様によると、本開示は、1つまたは複数の細胞放出生体分子を分析するための方法であって、1つまたは複数の目的の生体分子を放出する、例えば分泌する少なくとも1つの細胞を含む細胞含有マトリックスを提供することを含み、
a)捕捉用マトリックスを提供するステップであって、捕捉用マトリックスが1つまたは複数の型の捕捉用分子を含み、捕捉用分子の各型が目的の生体分子に結合する、ステップと、
b)細胞含有マトリックスをインキュベートして、1つまたは複数の目的の生体分子を放出させ、1つまたは複数の目的の生体分子を捕捉用マトリックスの1つまたは複数の型の捕捉用分子に結合させるステップと、
c)1つまたは複数の型の検出用分子を添加するステップであって、検出用分子の各型が、目的の生体分子に特異的に結合し、検出用分子の各型が、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含むバーコード標識を含む、ステップと、
d)少なくとも、
(i)バーコード配列(BS)、および
(ii)時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、および/または
(iii)位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、および
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列
を含む配列決定可能な反応産物を生成するステップであって、
配列決定可能な反応産物の生成が、少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーの使用を含む、ステップと、
e)好ましくは生成された反応産物の配列決定を行うステップと
を含む方法を提供する。
【0018】
好ましさが劣る代替では、d)における配列決定可能な産物の生成は、少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とライゲーションする少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用を含む。
【0019】
本開示の第1の態様によると、1つまたは複数の細胞放出生体分子を分析するための方法であって、細胞が細胞含有マトリックスによって提供される、方法が提供される。細胞含有マトリックスは、1つまたは複数の目的の生体分子を例えば分泌によって放出することができる少なくとも1つの細胞を含む。一実施形態によると、細胞含有マトリックスは、ハイドロゲルを含み、マトリックス材料は、ハイドロゲルによって提供されることが好ましい。好ましい実施形態によると、少なくとも1つの細胞は、マトリックスの内側に封入されている。マトリックスにより、少なくとも1つの細胞を有利に囲むことができる3次元マトリックスが提供されることが好ましい。これにより、細胞が天然に遭遇する環境を模倣する環境が細胞に有利に提供され、したがって、より生理的な環境を確立することができる。例えば、細胞が天然で遭遇することになる生化学的環境、機械的環境および構造的環境を模倣するマトリックスを提供することができる。特定の実施形態では、ヒト細胞またはヒト由来細胞は、細胞が致命的なまたは疾患にかかっている状態の体内で遭遇することになるものを含めた特定の3次元環境を細胞に提供するように有利に適合され得るハイドロゲルマトリックスに封入することができる。少なくとも1つの細胞についての適切な実施形態は、本明細書においてさらに下で第1の態様の方法のさらなる実施形態全体を通して記載され、参照される。下でさらに開示されている実施形態を第1の態様による方法に有利に適用することができる。
【0020】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスは、少なくとも1つの細胞を含む。細胞含有マトリックスは、所定の細胞組成物を有利に含み得る。そのような所定の細胞組成物は、単一細胞、複数の細胞、細胞コロニー、小型組織、小型器官、組織試料、およびこれらの組合せで構成される群から選択することができる。他の細胞組成物(すなわち、細胞含有マトリックスの形態で提供される細胞(1つまたは複数))がさらに下に記載され、同じく本発明に適用される。所定の細胞組成物により、所定の細胞組成物から分泌された分子のプロファイリング(配置)が有利に可能になる。そのような実施形態の1つの結果は、目的の細胞からのセクレトーム(例えば、放出された目的の生体分子の合計)のみが数量化されるというものであり得る。当該実施形態では、実験を、高いデータ完全性を維持しながら費用効果が大きい様式にカスタマイズすることが有利に可能になる。
【0021】
本開示による放出された目的の生体分子は、いくつかの異なる種類/型の生体分子であり得る。本発明の範囲内で分析することができる種々の生体分子は下の第1の態様の方法のさらなる実施形態が開示されている節で開示され、これらの実施形態も同じく本発明に適用される。特定の目的の生体分子は、分泌プロセスの範囲内で少なくとも1つの細胞によって放出され得るタンパク質である。例示的なタンパク質は、細胞によって分泌されるサイトカインであり得、それらを分析することにより、細胞の相互作用をサイトカインによる細胞間コミュニケーションを考慮して研究することが可能になる。そのような分析は、細胞プロセスを理解する上で重要であり、また、例えば、免疫療法を改善するためのがんと免疫細胞の相互作用の研究に寄与し得る。本開示の種々の他の適用が実行可能であり、本開示全体を通して明らかである。
【0022】
さらに、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを含む本明細書に開示されるマトリックスは、ハイドロゲルを含むことが好ましく、これは、単量体、プレポリマー、前駆体、ポリマーおよび/または構成単位のゲル化/重合/硬化で形成することができる。特定の単量体、プレポリマー、前駆体、ポリマーおよび/または構成単位は下で第1の態様の方法のさらなる実施形態において開示され、本開示のマトリックスを形成するために有利に適用することができる。適切な実施形態は本明細書に記載されている。
【0023】
さらに、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを含む本明細書に開示されるマトリックスは、種々の形状を有し得る。好ましい実施形態では、マトリックスを、液滴マイクロフルイディクスを使用して形成する。例えば、球状形状を有する高度に単分散性の液滴を生成するために、流れを集束させる幾何学的形状を使用することができる。液滴の直径が、ハイドロゲル形成が起こるマイクロ流体チャネルの幅/高さよりも大きい場合、形成されるマトリックスはプラグ様形状を有する。さらに、マトリックスは、従来のピペット操作によって形成することができる。したがって、ゲル化/重合/硬化反応用の単量体、プレポリマー、前駆体、ポリマーおよび/または構成単位を含むマトリックス溶液を2D表面上にピペットで垂らし、その結果、球状セグメントの形状および/または半球形状を有する液滴が形成される。形状は、液滴と周囲の表面との間の表面張力に依存し、表面の特徴を変化させることによって調整することができる。別の実施形態では、ゲル化/重合/硬化反応用の単量体、プレポリマー、前駆体、ポリマーおよび/または構成単位を含むマトリックス溶液を、所定の形状を有する幾何学的形状(例えば、円柱状幾何学的形状)にピペットで垂らすことができる。したがって、マトリックスは、マトリックス形成の間、マトリックス溶液を含有する容器の形状をとり得る。
【0024】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを含む本明細書に開示されるマトリックスの体積は、マトリックス形成のために使用される方法に応じて変動し得る。好ましい実施形態では、50fl~50nlの範囲内、特に200plから400plの間の体積を有するマトリックスを、本開示に記載の液滴マイクロフルイディクスを使用して形成する。一実施形態では、0.5μl~500μl、例えば、1μl~200μlまたは2μl~100μlなどの体積を有するマトリックスを従来のピペット操作などの方法によって形成することができる。一実施形態では、マトリックスの体積は、≦200μl、例えば、≦100μl、≦50μl、≦10μl、≦1μl、≦0.5μl、≦300nl、≦200nl、≦100nl、≦50nlまたは≦5nlなど、好ましくは0.05pl~2000plである。
【0025】
微細加工された細胞培養デバイスは、本明細書で使用される場合、特に、サイズ寸法が1000μmよりも小さい幾何学的形状/構造を有すると同時に細胞のインキュベーションに適合するデバイスを指す。前記幾何学的形状は、従来の微細加工技法、例えば、リソグラフィー、ソフトリソグラフィー、レプリカ成形または3D印刷、CNCフライス加工もしくは射出成形などの技法を使用して製作することができる。
【0026】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスのマトリックス(および/または捕捉用マトリックス)は、以下の特徴:
a)ハイドロゲルが、同じ型または異なる型の架橋結合したハイドロゲル前駆体分子を含む;
b)ハイドロゲルが、ハイドロゲル前駆体分子として異なる構造を有する少なくとも2つの異なるポリマーで構成され、必要に応じて、少なくとも1つのポリマーが共重合体である;
c)ハイドロゲルが、直鎖構造を有する少なくとも1つのポリマーと多腕または星形構造を有する少なくとも1つのポリマーを使用して形成される;
d)ハイドロゲルが、少なくとも1つの式(P1)
【化1】
(式中、
Rは、独立に、水素原子、1~18個の炭素原子を有する炭化水素(好ましくはCH
3、-C
2H
5)、少なくとも1つのヒドロキシ基を有するC
1~C
25炭化水素、少なくとも1つのカルボキシ基を有するC
1~C
25炭化水素、(C
2~C
6)アルキルチオール、(C
2~C
6)アルキルアミン、保護された(C
2~C
6)アルキルアミン(好ましくは-(CH
2)
2~6-NH-CO-R(R=tert-ブチル、パーフルオロアルキル))、(C
2~C
6)アルキルアジド、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオキサゾリンから選択される、またはRは、残基R
4であり
Yは、残基R
4を少なくとも1つ含むグラフトを少なくとも1つ含有する部分であり、
T
1は、終結部分であり、残基R
4を含有し得、
T
2は、終結部分であり、残基R
4を含有し得、
pは、1から10までの整数であり、
nは、1よりも大きく、好ましくは500を下回る整数であり、
mは、ゼロまたは少なくとも1、好ましくは1よりも大きく、好ましくは500を下回る整数であり、
合計n+mは、10よりも大きく、
xは、独立に、1、2または3であり、好ましくは、xは、独立に、1または2であり、最も好ましくは、xは1であり、
R
4は、独立に、
- 架橋結合のための、および/または
- 生物学的に活性な化合物との結合のための少なくとも1つの官能基を含み、ならびに
必要に応じて、結合性部位を有する前記官能基を式(P1)の構造のそれぞれの部分と接続する(好ましくは分解性)スペーサー部分を含む)
のポリマーを使用して形成され、
全てのm倍およびn倍の反復単位の全体がポリマー鎖内に任意の順序で分布しており、必要に応じて、ポリマーがランダム共重合体またはブロック共重合体である
のうちの1つまたは複数を有するハイドロゲルである。
【0027】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスのマトリックスおよび/または捕捉用マトリックスは、粒子、好ましくは球状粒子である。一実施形態によると、本明細書に開示されるマトリックスは、球状である、例えば、球状ハイドロゲルマトリックスであることが好ましいが、他の形態を適用することもできる。適用可能なマトリックスの形状/形態(例えば、半球またはプラーク様形状など)がさらに下に記載され、同じく本発明に適用される。一実施形態によると、マトリックスの直径は、≦1000μm、例えば、≦800μm、≦600μmもしくは≦400μmなど、好ましくは≦200μm、例えば、5μm~150μmなどである。他の適用可能なマトリックスの直径は、下で第1の態様の方法のさらなる実施形態が開示される際に記載される。特定の実施形態によると、細胞含有マトリックスは、少なくとも1つの細胞に3次元環境を提供するハイドロゲルマトリックスであり得、マトリックスの直径は少なくとも5μmかつ≦200μmであることが好ましい。
【0028】
第1の態様による方法の個々のステップを以下にさらに説明する。本開示の第1の態様による方法の例示的な実施形態を概略的に例示する
図2も参照する。
【0029】
ステップa)およびb)
当該方法では、細胞含有マトリックスを提供する。ステップa)では、捕捉用マトリックスを提供し、ここで、捕捉用マトリックスは、1つまたは複数の型の捕捉用分子を含み、捕捉用分子の各型は、目的の生体分子に結合する。細胞含有マトリックスは、本明細書に開示される方法を使用して提供、例えば、調製することができる。
【0030】
ステップb)によると、細胞含有マトリックスをインキュベートして1つまたは複数の目的の生体分子を放出させる。本明細書に開示される通り、細胞含有マトリックスをインキュベートして目的の生体分子を放出(例えば、分泌)させることは、放出された目的の生体分子の捕捉用マトリックスによる捕捉を可能にするために捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスの近傍に提供する前の期間にわたってすでに行うことができる。しかし、捕捉用マトリックスがインキュベーションプロセス全体の間存在していてもよい。1つまたは複数の目的の生体分子は細胞含有マトリックスから捕捉用マトリックスまで拡散し得、そこで、1つまたは複数の目的の生体分子は1つまたは複数の型の捕捉用分子と特異的に結合する。
【0031】
提供された捕捉用マトリックスは、ハイドロゲルを含むことが好ましく、マトリックス材料はハイドロゲルによって提供されることが好ましい。一実施形態によると、マトリックスは3次元である。好ましい実施形態によると、捕捉用マトリックスは3次元ハイドロゲルを含む。1つまたは複数の型の捕捉用分子を含む捕捉用マトリックスを提供することにより、捕捉用分子を付着させるための高表面積が提供され、それにより、少なくとも1つの型の捕捉用分子を多数(例えば、捕捉用分子の付着のためにただ単に粒子の表面だけが提供される固体粒子と比較して)提供することが有利に可能になる。細胞含有マトリックスに関して上に開示されている通り、捕捉用マトリックスは、単量体、プレポリマー、前駆体、ポリマーおよび/または構成単位のゲル化/重合/硬化で形成することができ、これは下で第1の態様の方法のさらなる実施形態において開示され、本開示のマトリックスを形成するために有利に適用することができる。捕捉用マトリックスは、当業者には先行技術から分かる架橋結合した単量体、プレポリマー、前駆体、ポリマーおよび/または構成単位を含み得る。ポリアクリルアミド(PMA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキサゾリン(POx)、およびポリスチレン(PS)を含む非限定的な一覧から選択される先行技術の典型的なポリマーを適用することができる。捕捉用マトリックスは、同じ単量体、プレポリマー、前駆体、ポリマーおよび/もしくは構成単位、または異なる単量体、プレポリマー、前駆体、ポリマーおよび/もしくは構成単位の反応で形成することができる。好ましい実施形態によると、捕捉用マトリックスは、放出された目的の生体分子の少なくとも一部分がマトリックス内に拡散することが可能になる孔径を含む。これにより、目的の生体分子が、1つまたは複数の型の捕捉用分子との結合のために表面だけでなく内側に接近することが有利に可能になる。
【0032】
一実施形態によると、マトリックスは、粒子、好ましくはビーズなどの球状粒子である。一実施形態によると、捕捉用マトリックスをハイドロゲルマトリックス、好ましくは球状ハイドロゲルマトリックスの形態で提供する。しかし、捕捉用マトリックスの形態/形状は球状形状に限定されず、他の形状(例えば、半球またはプラーク様形状など)も可能であり、下に記載されている。一実施形態によると、マトリックスの直径は、≦1000μm、例えば、≦800μm、≦600μmもしくは≦400μmなど、好ましくは≦200μm、例えば、5μm~150μmなどである。他の適用可能なマトリックスの直径は下に記載されており、同じく本発明に適用される。
【0033】
一実施形態によると、捕捉用分子を捕捉用マトリックスに、目的の生体分子と結合することができるようにし、それにより、自由に移動/輸送することができる形態で(例えば、捕捉用マトリックスは、細胞含有マトリックスから自由に離して移行することができる)目的の生体分子を捕捉するために付着させる。有利な実施形態によると、捕捉用マトリックスは、少なくとも1つの型の捕捉用分子を含み、これは、例示的な実施形態では、目的の生体分子に対して規定された特異性を有する少なくとも1つの型の抗体であり得る。少なくとも1つの細胞によって放出される目的の生体分子を本開示の捕捉用マトリックス内に固定化することができ、それにより、捕捉用分子は細胞含有マトリックスから引き出される/放出される目的の生体分子に特異的に結合するので、高度にカスタマイズ可能な様式で1つの実験に単一および多重化することが可能になる。適用可能な捕捉用分子は、下でも第1の態様による方法のさらなる実施形態と併せて開示される。例示的な捕捉用分子としては、これだけに限定されないが、抗体、抗体断片、アプタマーなどが挙げられる。1つの好ましい捕捉用分子は、抗体に由来する捕捉用分子であり得る。好ましい実施形態によると、1つの型の捕捉用分子は、複数の同じ型の捕捉用分子を含む。したがって、例えば、定量的分析を実施するために、有利に複数の同じ型の目的の生体分子を捕捉することができる。
【0034】
一実施形態によると、1つまたは複数の型の捕捉用分子を含む捕捉用マトリックスを、所定の培養/刺激期間後に位置付ける。捕捉用マトリックスは、細胞含有マトリックスと一緒に、または直後に、一部の実施形態では、細胞含有マトリックスの前にでも提供することもできる。ある実施形態では、異なるマトリックスを互いの直後に提供する、好ましくは第1の細胞含有マトリックスを提供し、次いで捕捉用マトリックスを提供し、したがって、放出された目的の生体分子と捕捉用マトリックスの1つまたは複数の型の捕捉用分子が直接結合し得る。したがって、目的の生体分子がまず少なくとも1つの細胞から放出され(例えば、インキュベーション期間にわたって)、細胞含有マトリックスの外に捕捉用マトリックスまで拡散する。したがって、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスのマトリックス材料は、目的の生体分子がマトリックスを通じて拡散し得、好ましくはマトリックス材料と非特異的に相互作用/結合せず、その結果、1つまたは複数の型の捕捉用分子によって目的の生体分子を効率的に捕捉することができるように選択されることが好ましい。したがって、目的の生体分子の結合を捕捉用分子との特異的結合に限定することが有利である(ある特定の程度の非特異的結合が生じてよいが、好ましくない)。細胞含有マトリックスを出た後、目的の生体分子は拡散し、好ましくは捕捉用マトリックス内に拡散し、そこで、1つまたは複数の目的の生体分子と1つまたは複数の型の捕捉用分子が特異的に結合する。捕捉用マトリックスは、1つまたは複数の目的の生体分子がマトリックス内に拡散し得、マトリックス材料と全く(または有意には)非特異的に相互作用/結合しないように調整することが好ましい。1つまたは複数の目的の生体分子が捕捉用分子と特異的に相互作用することが好ましい。
【0035】
放出された目的の生体分子が少なくとも1つの型の捕捉用分子と結合するには、まず細胞含有マトリックスの外に拡散し、次いで捕捉用マトリックス内に拡散する必要があるので、インキュベーション全体を通して人為的な「捕捉効果」を本方法により回避することができる。一般には、生体分子が捕捉用マトリックス上/内に拡散する前に周囲の流体の一部を通って拡散する必要もある。したがって、目的の生体分子は、細胞含有マトリックス、したがって、細胞からゆっくりと取り出される。対照的に、目的の生体分子を分析するための先行技術方法は、主に、細胞(複数可)を取り囲むマトリックスを含まず、したがって、目的の生体分子は直接かつ迅速に捕捉される。これにより、例えば、細胞内または細胞間に、例えば、分析される2つの細胞間で生理的な細胞応答が妨害される恐れがある。したがって、本発明に従って使用される少なくとも2つのマトリックスにより、動的な細胞間相互作用および自己分泌シグナル伝達を確立するために生理的環境(生理的細胞シグナル伝達を含む)を提供することが可能になる。その後の分泌された生体分子の数量化により、捕捉効果を有利に防ぐことができる。
【0036】
細胞培養デバイス
好ましい実施形態によると、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスの提供を、細胞培養デバイスを利用して実施する。細胞培養デバイスは、微細加工された細胞培養デバイスであることが好ましい。一実施形態によると、細胞培養デバイスは、少なくとも1つの区画、好ましくは区画のアレイを含み、アレイは、順序づけられた複数の区画に対応する。好ましくは、複数の区画の順序は、x座標およびy座標の位置を含む(例えば、n×mアレイ)。例示的な複数の区画(アレイとも称される)が
図1に示されており、それが参照される。区画の順序なし(例えば、ランダムな順序)を含めた他の順序も本開示の範囲内に入る。
【0037】
一般には、少なくとも1つの区画をチャネルに接続し、それを通じて輸送を実施することができる。好ましい実施形態によると、デバイスは、流体を少なくとも1つの区画に提供するための流体レザバーおよび流体チャネルを含む。例えば、流体を、チャネルを通じて区画内に輸送することができ、次いで、さらに区画から出してその後の区画(例えば、複数の区画のうちの次の区画)または廃棄物もしくはレザバーまで輸送することができる。流体を、細胞培養デバイスの他の位置(例えば、貯蔵位置など)に輸送することもできる。流体(細胞培養培地などの水性流体、またはフッ素化油などの非水性流体であり得る)に加えて、他の構成成分をチャネルを通じて輸送することができる(例えば、流体の内側)。好ましい実施形態によると、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを含むマトリックスをチャネルを通じて輸送することができる。さらに、架橋結合することができるまたは架橋結合している細胞懸濁液および溶液をチャネルを通じて輸送することができる。したがって、少なくとも1つの(微細加工された)区画に異なる溶液を制御された様式で灌流することができ、それにより、例えば、マトリックスの洗浄および細胞培地の灌流が可能になる。例えば、洗浄は、除去しなければ偽陽性の結果を生じさせることになる結合していない分子を除去するために、第1の態様の方法の範囲内で有益であり得る。一実施形態によると、アレイ内に複数の区画を提供し、区画は、共通の入口(例えば、給送ライン)を有利に共有することができ、それにより、1つの給送ラインを使用してマトリックス(例えば、捕捉用マトリックス)を位置付けることが可能になる。これにより、開示されている方法のスピードが有利に増大する。
【0038】
一実施形態によると、少なくとも1つの細胞を、まず、細胞培養デバイスを利用することによって1つの液滴中に封入し、これが液滴生成後にマトリックスを形成する。捕捉用マトリックスは、細胞培養デバイスを利用して液滴を生成し、その後、液滴のマトリックスを生成することによって形成することもできる。次いで、形成された細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスを、チャネルを通じて区画に輸送することができ、そこで、マトリックスを互いに近傍に位置付けることができる(収容とも称される)。一実施形態によると、デバイスは、少なくとも1つの捕捉用マトリックスおよび/または少なくとも1つの細胞含有マトリックスを含むマトリックスを少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ収容するための少なくとも1つの区画を含む。一実施形態によると、デバイスは、少なくとも1つのマトリックス、好ましくは2つのマトリックスを収容するための区画であって、少なくとも1つのマトリックスを位置付けるのに適した、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状が存在する、区画を含む。一実施形態によると、好ましくは区画のアレイによって、少なくとも1つのマトリックスを収容するための複数の区画が細胞培養デバイスに含まれる。
【0039】
好ましい実施形態によると、複数の細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを複数の区画を含む細胞培養デバイス内に提供し、細胞培養デバイスの区画内に少なくとも1つの細胞含有マトリックスおよび少なくとも1つの捕捉用マトリックスを提供する。好ましい実施形態によると、細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスをデバイスの区画内の近傍に提供する。あるいは、細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを別々の区画内に提供し、別々の区画は、互いに流体連通しているまたは互いに流体連通させることができ(例えば、弁を操作することによって)、したがって、放出された目的の生体分子を捕捉のために捕捉用マトリックスと接触させることができる。好ましい実施形態によると、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを、規定された位置(例えば、微細加工された区画のn×mアレイの(n|m)位の1つの区画内、特に微細加工された区画内)で近傍、好ましくは極めて近傍に位置させる。これは、前記マトリックス間が近いことにより、前記マトリックス間を目的の生体分子が拡散することが可能になる(例えば、細胞含有マトリックス内に位置する単一または複数の細胞に由来する放出された目的の生体分子がマトリックスを通って近隣の捕捉用マトリックスに拡散し得る)ので、特に有利である。したがって、2つのマトリックス間の拡散距離が短いことに起因して、放出された目的の生体分子の高い捕捉効率を実現することが可能である。さらに、反応体積の理論的な減少により、濃度が上昇することによって(例えば、局所的な濃度、したがって、捕捉効率が上昇することによって)感度が増大し得る。特定の実施形態によると、マトリックス(特に細胞含有マトリックス)を囲んでいる可能性がある水相を水と不混和性の相(例えば、油相)に置き換えて、前記水と不混和性の相の殻を含むマトリックスを生成すること(例えば、交互二相性区画の生成)により、反応体積をさらに減少させることができる。それにより、有利に、前記殻により、目的の生体分子がマトリックスから出て拡散することが妨げられるので、反応体積を減少させて目的の生体分子の濃度を局所的に上昇させることができる。さらに、捕捉用マトリックスを極めて近傍に(例えば、細胞含有マトリックスと直接接触させて)提供して、細胞含有マトリックスからの拡散を可能にすることができる。したがって、感度が高い検出機構を実施することができる。別の実施形態によると、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを距離および/または時間で互いから分離することができる(例えば、捕捉用マトリックスおよび細胞含有マトリックスを異なる区画内に提供することによって)。したがって、少なくとも1つの細胞含有マトリックスおよび少なくとも1つの捕捉用マトリックスを、好ましくはマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によって区画の内側に位置付け、ここで、少なくとも1つの細胞含有マトリックスが収容されている区画と少なくとも1つの捕捉用マトリックスが収容されている区画は異なり、どちらの区画も、流体が互いに接触するように、または流体が互いに接触しないように切り替えることができる。それでもなお目的の生体分子の捕捉を可能にするために、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを、選択的に互いに流体接触させることができる(例えば、弁、好ましくは微細加工された弁によって)近隣の区画内に提供することができる。それにより、有利に、生理的条件下での細胞培養がさらなる反応(例えば、ステップc)および/またはd))から分離される。さらに、捕捉効果を回避し、それにより、生理的環境(シグナル伝達の改善のために)を確実にすることができる。
【0040】
さらに、マトリックスを区画から選択的に取り出すことができる(例えば、捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスとは独立に区画内外に輸送することができる)。一実施形態によると、方法は、捕捉用マトリックスを複数の区画から得、捕捉用マトリックスを、複数の区画を含むデバイスに移行することを含む。例えば、捕捉用マトリックスを区画から取り出し、一方で細胞含有マトリックスを区画の内側に留めることができ、その結果、捕捉用マトリックスを貯蔵位置(細胞含有マトリックスを含む区画ではないデバイスの区画とも称される)に輸送することができる。次いで、所望であれば別の捕捉用マトリックスを追加することができる。さらに、アレイ内に位置する区画内の捕捉用マトリックスを、区画のアレイの他の区画内に位置する捕捉用マトリックスは取り出さずに取り出すことができる。それにより、捕捉用マトリックスを制御された様式で得ることができ、位置情報が有利に保存される(例えば、特定の区画の捕捉用マトリックスを選択的に得、捕捉用マトリックスをウェルプレートの別々のウェルに移行することによって)。複数の捕捉用マトリックスが得られる場合、各捕捉用マトリックスを貯蔵位置に移し、異なる区画からのマトリックスの貯蔵位置は異なることが好ましい。貯蔵位置は、細胞培養デバイス(最初に提供された)上の位置または細胞培養デバイスの外側の位置(例えば、マトリックスを細胞培養デバイスの外に、ウェルプレートのウェル、例えば収集ウェルなどの別のフォーマットに輸送することによって)を含めた、マトリックスを貯蔵することができる任意の位置であり得る。捕捉用マトリックスを、捕捉用マトリックスを灌流することができる貯蔵位置に細胞含有マトリックスとは独立に移行することには、捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックス(1つまたは複数)には影響を及ぼさずに洗浄/処理することができるという利点がある。したがって、細胞挙動、それぞれ細胞含有マトリックスは捕捉用マトリックスの処理による影響を受けない。
【0041】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスを含む区画から捕捉用マトリックスを得た後、1つまたは複数の型の捕捉用分子を含む(しかし目的の生体分子が結合していないことが好ましい)別の捕捉用マトリックスを提供し、前記区画に移行することができる。流体および他の構成成分(例えば、マトリックス)の位置付けおよび移行は、トラッピング幾何学的形状を含む区画を含む細胞培養デバイスを利用して実施することができる。好ましい実施形態によると、デバイスは、少なくとも1つのマトリックスを放出可能に位置付けるための、区画の内側へのマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を含む。
【0042】
一実施形態によると、デバイスは、区画の内側へのマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を含み、マトリックス固定化のための幾何学的形状は、以下の特徴:
- 細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを近傍に位置付けることができる;
- 少なくとも2つの細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを近傍に位置付けることができる;
- 細胞含有マトリックスと少なくとも2つの捕捉用マトリックスを近傍に位置付けることができる;または
- 少なくとも2つの細胞含有マトリックスと少なくとも2つの捕捉用マトリックスを近傍に位置付けることができる
のうちの1つまたは複数を有する。
【0043】
トラッピング幾何学的形状(ポジショナーまたは位置付け手段とも称され得る)により、単一または複数のマトリックス(2つ、3つ、4つまたはそれよりも多くのマトリックス、好ましくは2つまたは3つのマトリックスを含む)を所定の/制御された様式で固定化することが可能になる。そのような立体配置により、捕捉用マトリックスおよび細胞含有ハイドロゲルマトリックスを非常に制御された様式で同じ区画内に位置付けることが有利に可能になり、それにより、放出された目的の生体分子の捕捉が可能になる。一実施形態によると、複数の細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを、トラッピング幾何学的形状によって区画の内側に提供し、位置付け(少なくとも1つの各マトリックス種が好ましい)、複数のそのような区画を提供する(すなわち、アレイ中に)。そのような実施形態では、細胞含有マトリックスによって提供された所定の細胞組成物から放出された目的の生体分子を高度に多重化された様式で同時に/並行して数量化することが有利に可能になる。
【0044】
トラッピング幾何学的形状は、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を通過する流体を提供するように適合されている弁配置を含み得る。一実施形態では、デバイスは、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を通過する流体を提供するように適合されている弁配置を含むトラッピング幾何学的形状を含み、弁配置は、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を通過する流体の方向を選択的に変化させるように適合されており、特に、第1の方向の流体により、少なくとも1つのマトリックスがマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状の中に推進され(urging)、第2の方向の流体により、少なくとも1つのマトリックスがマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状の外に推進され、特に、第2の方向の流体により、少なくとも1つのマトリックスが出口区域の方向に送達される。そのような立体配置により、1つまたは複数のマトリックスを区画の内側に有利に移行することができる。そのような立体配置を、区画から1つまたは複数のマトリックスを得るためにさらに有利に利用することができる。そのような立体配置の機構は、逆流チェリーピッキング(RFCP)機構に依拠し得る、またはそうとも称され得る。そのような弁配置により、個々のマトリックスを含み得る流体を区画からおよび区画内に移行することが可能になる。したがって、捕捉用マトリックスを所定の期間後に別のフォーマットに移行することができ、一方、位置情報は維持され、それにより、目的の生体分子の放出プロファイルと対応する細胞(複数可)を相関させることが可能になる。
【0045】
好ましい実施形態によると、弁配置は、微細加工された弁に基づく。これらは下に開示され、同じく本発明に適用される。微細加工された弁により、区画を開放された状態と閉鎖された状態とに切り換えることができる。一実施形態によると、微細加工された弁は、第1のチャネル、第2のチャネル、第1のチャネルと第2のチャネルを接続する接続チャネル、接続チャネル内に配置された弁部分を含み、弁部分は、接続チャネルを選択的に開閉するように適合されている。一実施形態によると、微細加工された弁は、少なくとも3つの層を含み、第1のチャネルが第1の層内に位置し、第2のチャネルが第3の層内に位置し、弁部分が第2の層内に位置し、第2の層が第1の層と第3の層の間に配置されている。デバイスは、微細加工された弁を含み得、第1のチャネルが、少なくとも1つのマトリックスを第1のチャネルを通って流れる流体内に含有されるように位置付けるのに適した、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を含み、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状が、第1のチャネル内に、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によって流体の流れを減少させるように、具体的には、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によりチャネルの横断面を狭くすることができるように配置されている;かつ/または、第2のチャネルが、粒子を第2のチャネルを通って流れる流体内に含有されるように位置付けるのに適した、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を含み、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状が、第2のチャネル内に、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によって流体の流れを減少させるように、具体的には、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によりチャネルの横断面を狭くすることができるように配置されている。
【0046】
細胞含有マトリックスに(したがって、少なくとも1つの細胞に)栄養を連続的に提供するために、細胞含有マトリックスが収容される区画を開放された状態に切り換えて、流体を区画に提供することができる。あるいは、区画を閉鎖された状態(隔離された状態とも称される)に切り換えて隔離された区画を提供することができ、これには、分泌された目的の生体分子が流されないという利点がある。さらに、隔離された区画は、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスの両方を区画の内側に保持することができ(例えば、規定の体積、すなわち、閉鎖された反応体積で)、放出された目的の生体分子は流体の除去または交換に起因して失われない。したがって、隔離された区画をステップb)全体を通して提供し、それにより1つまたは複数の目的の生体分子の喪失を防ぐことが好ましい。それにもかかわらず、例えば、流速が十分に低く維持されるまたは流れが提供されず、目的の生体分子が細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスの近傍に残ることが可能になる場合、開放された状態の区画も適用可能であるので、方法は隔離された区画に限定されなくてよい。好ましい実施形態によると、放出された目的の生体分子は隔離された区画内で拡散し、さらなる分析/処理のために区画内に有利に捕捉することができる。一実施形態によると、デバイスは、隔離された状態と開放された状態を切り換えることができる少なくとも1つの区画であって、隔離された状態が、区画内に存在する流体が区画内に存在しない流体と接触していない状態に対応し、開放された状態が、区画内に存在する流体が区画内に存在しない流体と接触している状態に対応する、少なくとも1つの区画を含む。
【0047】
細胞含有マトリックスをインキュベートして1つまたは複数の目的の生体分子を放出させることが好ましい。インキュベーションは、規定された期間にわたって行うことができる。インキュベーションは、微細加工された細胞培養デバイスであることが好ましい細胞培養デバイスを利用することによって実施することが好ましい。細胞含有マトリックス、特に、少なくとも1つの細胞を細胞培養デバイスの区画の内側でインキュベートすることができる。したがって、これだけに限定されないが、適切な温度(例えば、ヒト細胞に関しては37℃)、CO2レベル(例えば、ヒト細胞に関してはおよそ5%)および湿度のうちの1つまたは複数の供給を含めた、インキュベート/培養に適した条件を適用することが好ましい。本明細書に開示される通り、そのようなインキュベーションは、放出された目的の生体分子(複数可)を結合させるための捕捉用マトリックスを添加する前に行うこともできる。
【0048】
一実施形態によると、提供された細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスは、流体、好ましくは水と不混和性である流体と共に提供され、前記流体と共に提供される前記マトリックスは、微細加工された細胞培養デバイスであることが好ましい細胞培養デバイスを利用することによって、好ましくは、
(i)細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスをマトリックス固定化のために好ましく微細加工された幾何学的形状によって区画の内側に放出可能に位置付けるステップであって、区画が、第1の流体、好ましくは水性流体を含む、ステップと、
(ii)第1の流体を区画から取り除き、第1の流体を、前記流体を提供する第2の流体によって置き換えるステップであって、前記流体が、水と不混和性であることが好ましい、ステップと、
(iii)必要に応じて、第2の流体を区画から取り除き、第2の流体と不混和性であることが好ましい第1の流体または第3の流体によって置き換えるステップ
によって生成されることが好ましい。
【0049】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスの体積を、マトリックスを有利に位置付けることができる区画の体積よりも小さく制限することができる(例えば、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によって)。そのような体積の減少を、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを、マトリックスに含まれる流体(第1の流体と称される、例えば、水性流体)と不混和性である流体内(第2の流体または請求項23および24を参照する場合には「前記流体」と称することができる)に提供することによって実現することが好ましい場合がある。それにより、放出された目的の生体分子が拡散のために到達可能な利用可能な体積をマトリックスの体積(それぞれ第1のマトリックスに含まれる流体)および必要に応じて、マトリックスをなお囲む第1の流体の体積(例えば、殻、例えば水の殻または水性殻の形態で)まで減少させる。これにより、希釈効果を回避し、放出された目的の生体分子の局所的な濃度を上昇させることが有利に可能になる。第2の流体により、目的の生体分子の拡散のために利用可能な体積を有利に減少させ、したがって、微細加工された細胞培養デバイスが有し得る分解能の限界(例えば、構成の分解能)を迂回することができる。細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスは、細胞培養デバイスの区画の内側に位置付けることができることが好ましく、これらのマトリックスは、極めて近傍にあること、より好ましくは直接接触していることが好ましい。区画は、第1の流体(例えば、細胞培養培地)を最初に含み得る。その後、第1の流体を除去し、第1の流体と不混和性である第2の流体(例えば、フッ素化油)で置き換えることができる。次のステップでは、必要に応じて、第2の流体を除去し、第1の流体または第3の流体で置き換えることができ、第3の流体は第2の流体と不混和性であることが好ましい。一実施形態によると、第1の流体および/または第3の流体は、好ましくは細胞の重度のアポトーシスを引き起こすことなく(所望でない限り)、細胞含有マトリックスと接触させることができる水溶液を含めた水性流体から選択することができる。そのような実施形態では、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスは、マトリックスに共有される第2の流体の体積内に存在することが好ましく、細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスは、目的の生体分子の直接拡散を可能にするために互いに直接接触していることが好ましい。
【0050】
一実施形態によると、ステップ(a)において捕捉用マトリックスを提供する前に細胞含有マトリックスをインキュベートして1つまたは複数の目的の生体分子を放出(例えば、分泌)させる。捕捉用マトリックスを提供した後、1つまたは複数の目的の生体分子に捕捉用マトリックスの1つまたは複数の型の捕捉用分子が特異的に結合する。細胞含有マトリックスを規定の体積の流体、好ましくは水と不混和性である流体中に提供することが好ましく、捕捉用マトリックスを規定の体積の同じ型の流体中に提供し、細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを接触させた後、同じ型の前記流体が統合して、細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスに共有される規定の体積の流体が提供される。本明細書に開示される通り、そのようなインキュベーションの前、その間、またはその後に、捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスと接触した状態に位置付けることができる。
【0051】
一実施形態によると、ステップ(a)において捕捉用マトリックスを提供する前に細胞含有マトリックスをインキュベートする。そのようなインキュベーションステップは、細胞培養デバイス、好ましくは微細加工された細胞培養デバイスを利用することによって実施することができる。インキュベーションは本明細書に記載の通り行うことができる。好ましい実施形態によると、細胞含有マトリックスを規定の体積の流体中(第2の流体とも称される)に提供し、前記流体は、第1の流体と不混和性であり、第1の流体は、細胞含有マトリックス内に存在する流体であり、好ましくは水性流体(例えば、細胞培養培地)である。第2の流体は水と不混和性であることが好ましい。それにより、放出された目的の生体分子が拡散のために到達可能な利用可能な体積をマトリックスの体積(それぞれ第1のマトリックスに含まれる流体)および必要に応じて、マトリックスをなお囲む第1の流体の体積(例えば、殻、例えば水の殻または水性殻の形態で)まで減少させる。一実施形態によると、提供された細胞含有マトリックスを規定の体積の流体(例えば、第2の流体)中でインキュベートした後にステップa)で捕捉用マトリックスを提供する。インキュベーションは、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状を含む細胞培養デバイスを利用することによって実施することができ、細胞含有マトリックスは固定化されており、第2の流体の内側に提供されることが好ましい。細胞含有マトリックスをインキュベートした後、捕捉用マトリックスを規定の体積の同じ型の流体中に提供することができることが好ましい。この場合、同じ型の流体は、細胞含有マトリックスがその中に/それと共に提供された流体の型に対応する。マトリックスがその中に/それと共に提供される流体(例えば、第2の流体)の規定の体積は、流体の体積が少なくとも部分的にマトリックスを囲むことができるものである限りは任意の流体の体積であってよい。好ましい実施形態では、流体の体積は、完全にマトリックスを囲むことができるものである。捕捉用マトリックスを提供した後、規定の体積の同じ型の流体中に前記捕捉用マトリックスを提供し、それぞれ規定の体積の同じ型の流体中に提供された捕捉用マトリックスを規定の体積の流体(例えば、第2の流体)中に提供された細胞含有マトリックスと接触させる。マトリックスが互いに接触すると、それぞれ提供された同じ型の流体(例えば、第2の流体)、流体が統合して(合体とも称され得る)細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスに共有される規定の体積の流体が提供される。共有される体積は、前記マトリックスを少なくとも部分的に、好ましくは完全に囲むことができる限りは任意の体積であってよい。共有される体積は、提供される規定の体積の合計に対応する場合もあり、合計より少ないまたは合計よりも多い場合もある。捕捉用マトリックスは、細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスが極めて近傍になるように提供することができる。細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスが互いに直接接触し、それにより、目的の生体分子の細胞含有マトリックスから捕捉用マトリックスへの直接拡散が有利に可能になることが好ましい。細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスの直接接触は、区画の内側へのマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によって確立することができる。例えば、区画の内側へのマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状により、細胞含有マトリックスを捕捉用マトリックスのすぐ隣に位置付けることができる。捕捉用マトリックスを遅れて提供することには、目的の生体分子は第1の流体と不混和性である(例えば、水と不混和性である)第2の流体への可溶性が低い可能性があるので、放出された目的の生体分子がまず規定の体積の第2の流体中に提供された細胞含有マトリックス内に蓄積し得る(例えば、生体分子は、第1の流体とも称され得る、細胞含有マトリックス内に存在する水性流体および必要に応じて周囲の水性殻に蓄積する)という利点がある。特定の実施形態では、1つよりも多くの細胞含有マトリックスを規定の体積の流体(例えば、第2の流体)中に提供する。これらの細胞含有マトリックスを、好ましくは極めて近傍にし、より好ましくは互いに直接接触させて、細胞含有マトリックス間の目的の生体分子の直接拡散を可能にすることができる。例えば、2つの細胞含有マトリックスまたは3つの細胞含有マトリックスを提供することができ、ここで、各細胞含有マトリックスの少なくとも1つの細胞は同じ型であっても異なる型であってもよい。特定の例では、細胞は、それらの相互作用を研究するために、異なるものであり得る。規定の体積の流体(例えば、第2の流体)中に提供される細胞含有マトリックスの提供により、細胞のパラ分泌および自己分泌シグナル伝達が可能になり、それにより、捕捉効果が回避される(目的の生体分子が直接捕捉された場合に生じ得る;捕捉効果に関するさらなる詳細については上の開示を参照されたい)。捕捉用マトリックスを1つまたは複数の細胞含有マトリックスと極めて近傍に、好ましくは直接接触させて提供し、位置付けた場合にのみ、放出された目的の生体分子が1つまたは複数の型の捕捉用分子に結合する。
【0052】
一実施形態では、細胞培養デバイスは、従来の細胞培養フラスコまたは細胞培養プレート、例えば、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレートなどである。
【0053】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスを、細胞培養フラスコまたは細胞培養プレート、例えば、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレートなどから選択される細胞培養デバイス内に提供する。一実施形態では、細胞含有マトリックスを細胞培養プレートの区画、例えばウェル内に提供する。区画ごとに、1つまたは複数の細胞含有マトリックス(例えば、1つ、2つ、3つまたはそれよりも多く、必要に応じて、1つ)を提供することができる。細胞含有マトリックスを細胞培養プレートの区画内に、細胞含有マトリックスを囲み得る液体を細胞含有マトリックスには影響を及ぼさずに、例えば、細胞含有マトリックスに接触またはそれを破壊せずに交換することができるように位置付けることができる。例えば、細胞含有マトリックスを細胞培養プレートの区画の内側に提供し、外側の縁は、例えばピペットにより、細胞含有マトリックスには影響を及ぼさずに液体を接近させることを可能にする。細胞含有マトリックスを必要に応じて捕捉用マトリックスとの流体接触前にインキュベートする。例えば、捕捉用マトリックスを別々の区画または格納容器(例えば、管)に入れることができる。細胞含有マトリックスをインキュベートして目的の生体分子(複数可)を放出させた後、放出された目的の生体分子(複数可)を結合させるための捕捉用マトリックスを添加することができる。放出された目的の生体分子(複数可)と捕捉用マトリックスと接触させる前にまず細胞含有マトリックスをインキュベートすることにより、放出された目的の生体分子(複数可)が細胞培養プレートの区画内にまず蓄積した後、捕捉用マトリックスの1つまたは複数の型の捕捉用分子に結合し得ることが可能になる。しかし、捕捉用マトリックスと細胞含有マトリックスの異なる接触順序が可能であり、本明細書に開示される開示の範囲内に入る。
【0054】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスを、インキュベーション全体を通して光学分析によって分析し、光学分析のための方法およびデバイスは、当技術分野で周知である。例示的な光学分析は、顕微鏡レベルの分析であり得る。好ましい実施形態では、光学分析を細胞培養デバイスと組み合わせて有利に実施することができる(例えば、細胞含有マトリックスが細胞培養デバイス内に存在する場合、好ましくは細胞培養デバイスの区画内に存在する場合に、細胞含有マトリックスを顕微鏡によって光学的に分析することができる)。
【0055】
細胞培養デバイス、チャネル、微細加工された弁、および弁配置を含めた本明細書に記載の主題のさらなる詳細は下で第1の態様の方法のさらなる実施形態においてさらに開示され、同じく本発明に適用されるそれぞれの開示が本明細書で参照される。
【0056】
ステップc)
第1の態様の方法のステップc)によると、1つまたは複数の型の検出用分子を添加し、検出用分子の各型は、目的の生体分子に特異的に結合するものであり、検出用分子の各型は、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含むバーコード標識を含む。
【0057】
本開示による1つまたは複数の型の検出用分子は、目的の生体分子に特異的に結合する。1つまたは複数の型の検出用分子は、捕捉用マトリックスによって前に捕捉された目的の生体分子に結合し得ることが好ましい(
図2も参照されたい)。一実施形態では、ある種の検出用分子は、同じ目的の生体分子に結合する対応する型の捕捉用分子とは異なる領域(例えば、認識部位、化学的部分など)においてその目的の生体分子に結合する。例えば、ステップa)およびb)において第1の型の捕捉用分子が特定の目的の生体分子(例えば、抗原分子X)に結合する。次いで、ステップc)において、第1の型の検出用分子が、特定の目的の生体分子であるが、目的の生体分子の異なる領域(例えば、抗原Xの異なるエピトープ)に結合する。この点に関しては、そのような結合を概略的に例示する
図2Aをさらに参照する(特に
図2A、ステップC)。ステップc)に適用可能な検出用分子の例および好ましい実施形態は下にさらに詳細に記載されており、同じく本発明に適用される。
【0058】
好ましい実施形態によると、1つの型の検出用分子は、複数の同じ型の検出用分子を含む。一実施形態では、目的の生体分子と結合していない検出用分子が捕捉用分子にも結合するなどの場合、1つまたは複数の型の検出用分子は、1つまたは複数の型の捕捉用分子に直接は結合しない。
【0059】
1つまたは複数の型の検出用分子の添加は、一実施形態では、微細加工された培養デバイスであることが好ましい培養デバイスを利用することによって実施する。1つまたは複数の型の検出用分子を培養デバイスに、特に1つまたは複数の細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスが収容されている区画に導入することができる。これには、検出用分子の添加前に捕捉用マトリックスを移行する必要なく(しかし、これはひとつの選択肢である)、1つまたは複数の型の検出用分子が捕捉用マトリックスに直接提供されるという利点がある。さらに、細胞培養デバイスの区画およびチャネルは標準の細胞培養ディッシュと比べて比較的小さいので、1つまたは複数の型の検出用分子を直接導入することで、必要な液体の体積がほんの小さくなり得る。したがって、材料が節約される。検出用分子をそのような様式で導入することには、多重化が可能になるという別の利点があり、2つまたはそれよりも多くの型の検出用分子を多重化様式で導入することができる-さらなる液体取扱いプロセスを実施する必要性を伴わない。しかし、捕捉用マトリックスをまず貯蔵位置に移行し、その上で、1つまたは複数の型の検出用分子を添加することも本開示の範囲内に入り得る。そのような実施形態では、1つまたは複数の型の検出用分子と細胞含有マトリックスの直接接触を回避することができる。
【0060】
一実施形態によると、1つまたは複数のマトリックス(好ましくは、少なくとも1つの細胞含有マトリックスおよび少なくとも1つの捕捉用マトリックス)を含む区画を、洗浄溶液を用いた灌流によって洗浄して、結合しなかった化合物を除去する。マトリックスを含まない区画を洗浄することもできる(例えば、予備灌流の形態で)。特定の実施形態によると、細胞含有マトリックスの近傍にある捕捉用マトリックスを、所定のインキュベーション時間後に1つまたは複数の型の検出用分子を含む溶液で洗浄する。結果として、目的の生体分子の結合平衡が洗浄と同時に実現され、追加的なインキュベーション時間が必要にならず(外部アッセイなどの先行技術方法と比較して)、それにより、時間効率がより良くなり得る。
【0061】
検出用分子の型の数は、捕捉用分子の型の数と同じであり得るまたは異なり得る。捕捉された目的の生体分子の効率的な定量的結合を可能にするために、検出用分子を過剰に使用することが好ましい。
【0062】
バーコード標識
検出用分子は、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含むバーコード標識を含む。バーコード標識は検出用分子に有利に付着させる。検出用分子へのバーコード標識の付着の特定の実施形態は、下で第1の態様の方法のさらなる実施形態と併せて詳述されている。バーコード標識は、オリゴヌクレオチドを含むことが好ましい。一実施形態では、1つまたは複数の型の検出用分子に付着させるバーコード標識は、DNA、RNA、PNA、LNAまたはこれらの組合せを含む。バーコード標識は、DNA配列を含むことが好ましい。検出用分子とバーコード標識の付着は、共有結合性であり得、切断可能(例えば、光切断可能)であることが好ましい。そのような実施形態には、捕捉用分子からバーコード標識を容易に分離することができ、したがって、さらなる分析または処理のために迅速に利用できるという利点がある。したがって、バーコード標識を検出用分子に切断可能なリンカーなどのリンカー部分を介して付着させることができる。そのような実施形態には、その後の増幅プロセス(例えば、PCR反応)で直接増幅することができるという利点がある。例えば、バーコード標識とハイブリダイズさせ、それにより、ポリメラーゼ反応のための鋳型を提供するために、プライマーまたはプライマーの組合せを提供することができる。
【0063】
検出用分子を、特異性をコードするバーコード標識BSで標識する。これによりバーコード配列BSを含むバーコード標識をさらなる分析において大きな感度で検出することができるので、高い分析感度が可能になる。さらに、バーコード配列BSは検出用分子の各型に対して有利に特異的であり、したがって、標的とされた目的の生体分子に対して特異的であるので、バーコード配列BSの使用により、複数の目的の生体分子を並行して分析すること(多重化)が可能になる。したがって、バーコード配列BSにより、どの目的の生体分子が細胞によって放出され、捕捉用マトリックスによって捕捉され、その後、検出用分子が結合したかを後で同定することが可能になる(例えば、配列決定に基づいて)。
【0064】
異なる型の検出用分子を異なるバーコード配列BSで標識する。有利に、これにより、異なる型の検出用分子(したがって、放出された目的の生体分子)をバーコード配列BSに基づいて弁別することが可能になる。
【0065】
一実施形態によると、第1の態様による方法は、少なくとも2種(例えば、2~100種、5~50種、5~25種、5~20種または7~15種)の異なる目的の生体分子を異なる型の捕捉用分子および異なる型の検出用分子を使用して分析することを含み、目的の生体分子に結合する検出用分子の各型のバーコード標識のバーコード配列BSは、異なる目的の生体分子に結合する他の全ての型の検出用分子のバーコード配列BSとは異なる。これにより、下記のその後のステップd)において、異なるバーコード配列BSを含む異なる配列決定可能な反応産物を生成することが有利に可能になり、それにより、結合した目的の生体分子を特異的に同定することが可能になる。一実施形態によると、検出用分子のバーコード標識、したがって、同じくバーコード配列BSも商業的なNGSアッセイと有利に適合性であり、一般的なNGSプラットフォームを使用して容易に処理することができる。したがって、バーコード配列BSを含むバーコード標識にコードされた情報を、生成された反応産物の配列決定を行うことによって迅速に読み取って、どのバーコード配列BSが存在するか、したがって、どの検出用分子およびそれぞれの結合した目的の生体分子が存在するかを同定することができる。そのような情報(すなわち、バーコード配列BS)に基づいて、バーコード標識により、どの目的の生体分子が捕捉用マトリックスに結合したか、したがって、どの目的の生体分子がインキュベーション期間中に少なくとも1つの細胞によって放出されたかを同定することが可能になる。さらに、標的特異性を示すための固有のバーコード配列BSを有するバーコード標識を含む2つまたはそれよりも多くの型の検出用分子の使用により、多重化が可能になり、複数の目的の生体分子を、2つまたはそれよりも多くの型の捕捉用分子を含有する1つの捕捉用マトリックスを用いて(例えば、TNF-α、IL-6、IL-10、IL-1などの複数のサイトカインのスクリーニング)、または、各捕捉用マトリックスが単一の型の捕捉用分子を含む少なくとも2つの捕捉用マトリックスを用いて検出することができる。収集された捕捉用マトリックスを、検出用分子(例えば、抗体)に付随するバーコード付けされた標識(例えば、オリゴヌクレオチド)を検出することによって結合した目的の生体分子を数量化するために使用することもできる。これは、例えば、qPCRまたはデジタルPCRによって行うことができる。別の可能性は、そのようなオリゴヌクレオチドを増幅し、次いで、増幅産物の配列決定を行う(例えば、ナノポア配列決定または同様の技法)ことであり得る。数量化のための頑強な方法は、本明細書の他の箇所に記載のUMIバーコード配列の使用を伴う。
【0066】
バーコード配列BSを含むバーコード標識を検出用分子に付加、好ましくは付着させる。2つまたはそれよりも多くの型の検出用分子を使用する場合、少なくとも、1つよりも多くの型の検出用分子を混合する前にバーコード標識をその検出用分子に付着させる。バーコード配列は、検出用分子の作製中またはその後に(例えば、市販の抗体)付加することができる。バーコード標識付けは、当技術分野において利用可能であり、下の第1の態様の方法のさらなる実施形態に記載されている方法によって容易に実施することができる。標識付けを多重化のために高収率で実現することができる。各検出用分子に、バーコード配列BSを含む1つのバーコード標識のみで標識付けすることが好ましい。ちょうど1つの分子を用いた標識付けは、目的の生体分子の絶対的な数量化が望まれる場合に有利であり得る(これは、一般には、下にさらに記載されているUMI配列の使用と併せて実現されるが、ちょうど1つのバーコード配列BSを含むバーコード標識を用いた標識付け、および、例えばq-PCRによるさらなる処理によって実現することもできる)。しかし、検出用分子を検出用分子当たり1つ未満のバーコード標識または複数のバーコード標識で標識することも本開示の範囲内に入り得る。例えば、検出可能なシグナルを増強するために、検出用分子を2つまたはそれよりも多くのバーコード標識で標識することができる(例えば、その後の配列決定のためのより多くの配列決定可能な材料を有する)。
【0067】
ステップc)の実施後、捕捉用マトリックスと結合した/それに付随する、バーコード標識を含む検出用分子の量は、捕捉用マトリックスに付着させた捕捉用分子と結合した目的の生体分子の量に比例し得、比例することが好ましい。有利に、バーコード標識を含む検出用分子は、捕捉用分子と結合した目的の生体分子との結合によって捕捉用マトリックスに付随したままになる。これにより、目的の生体分子を間接的に数量化すること(例えば、結合した検出用分子を介して)が有利に可能になる。
【0068】
一実施形態によると、検出用分子に付着したバーコード標識は、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含む。さらに、バーコード標識は、以下の配列エレメントのうちの1つまたは複数を含み得る:
【0069】
1つまたは複数のプライマー標的配列(例えば、プライマー配列(1)または(2)またはプライマー配列(1)およびプライマー配列(2))。プライマー配列は、その後の増幅反応(例えば、PCR反応)における増幅を単純化するまたは可能にするためにバーコード標識に有利に組み入れることができる。適切な実施形態は図に例示されている。
【0070】
時間情報を示すバーコード配列(BT)。バーコード配列BTは、目的の生体分子が捕捉された特定の時点(例えば、インキュベーション期間tx1後)を示すために有利に適用することができる。異なる時点またはインキュベーション期間に対して異なるバーコード配列BTを使用する。これにより、放出された目的の生体分子を異なる時点または期間にわたって分析することが可能になる。例えば、同定可能な情報(配列決定によって同定可能)を含むBT配列を適用することができる。したがって、バーコード配列BTを含むバーコード標識は、分析時点(例えば、インキュベーション時間tx1)に特異的である。バーコード配列BTにより、バーコード標識を時点/インキュベーション期間に従って弁別することが可能になるので、異なる時点/インキュベーション期間に対して異なるBT配列を適用することにより、さらなる複合処理のために複数の時点のバーコード標識を有利には一緒に収集することができる(例えば、1つの収集位置において)。
【0071】
固有の分子識別子(UMI)配列(例えば、
図5および6を参照されたい)。1つの「反応組成物」中の各検出用分子、それぞれバーコード標識は、固有のUMI配列を含み、それにより、各結合した検出用分子をUMI配列に基づいて同定することが可能になることが好ましい。それらの特異性のためのバーコード配列を有するコンジュゲートした検出用分子は市販されており(例えば、Biogenから)、UMI配列を含むように容易に改変することができる。オリゴヌクレオチドの変性合成を、UMI合成、ならびにセミランダム配列決定手法のために使用することができる。例えば、完全にランダムなヌクレオチド(例えば、NNNNNNNなど)、部分的に変性したヌクレオチド(例えば、NNNRNYNなど)、または規定されたヌクレオチドのひと続きとして設計することができる。一実施形態によると、UMIは、(Xmer)nからなるセミランダム配列によって提供され、ここで、nは2~8の整数である。そのような手法は、UMIバーコード配列が単一の鋳型分子の同定および数量化のために広範に使用される次世代シーケンシング適用から周知である。UMIを検出用分子のバーコード標識に直接組み入れることにより、UMI配列をバーコード標識に組み入れるためのハイブリダイゼーションおよびその後のポリメラーゼ伸長反応によってさらなる情報をUMI配列の形態で付加するためのアダプターバーコードオリゴヌクレオチドの必要がなくなる。したがって、UMIをバーコード標識に直接組み入れることにより、処理時間が減少する。含まれるUMI配列はそれぞれが各検出用分子に対して異なり、それにより、結合した検出用分子、したがって、目的の生体分子を特異的に同定することが可能になることが好ましい。異なる検出用分子(分子レベルで)は異なるUMI配列を含む。弁別のために1つまたは複数のさらなる配列エレメントが提供される場合(本明細書に開示される通り)、さらなる配列エレメント(複数可)(例えば、B
T)を通じて弁別を実現することができるので、UMI配列がすべての分子に対して異なる必要はない。しかし、配列エレメントの等しいセットを有する複数のバーコード標識分子に関しては、UMI配列が各分子に対して異なることが好ましい。本開示に関しては、UMI配列を、1つまたは複数の型の検出用分子が結合した目的の生体分子の絶対数を直接数量化するために有利に適用することができる。したがって、UMI配列をバーコード標識内に提供し、それにより、目的の生体分子に結合した検出用分子の数を数量化し、したがって、目的の生体分子の数を数量化することを可能にすることができる。UMI配列は、バーコード配列B
Sの隣のバーコード標識に存在し得、例えば、バーコード配列B
Sの3’側に存在し得る。しかし、バーコード標識の正確な順序は限定しなくてよく、例えば、UMI配列はバーコード配列B
Sの5’側にあってもよい。
【0072】
図6にも概略的に例示されている一実施形態によると、バーコード標識は、バーコード配列B
Sおよび2つのプライマー配列(例えば、5’末端のプライマー配列(1)および3’末端のプライマー配列(2))、ならびにバーコード配列B
Sの3’側に位置する固有の分子識別子(UMI)配列を含む。
【0073】
図5にも概略的に例示されている一実施形態によると、バーコード標識は、バーコード配列B
Sおよび2つのプライマー配列(例えば、5’末端のプライマー配列(1)および3’末端のプライマー配列(2))、ならびにバーコード配列B
Sの3’側にある固有の分子識別子(UMI)配列を含む。当該実施形態は配列エレメントの正確な配置に限定されず、他の順序も本開示の範囲内に入る(例えば、UMI配列がバーコード配列B
Sの5’側にあってもバーコード配列B
Tの3’側にあってもよい、またはバーコード配列B
Tがバーコード配列B
Sの5’側にあってよいなど)。そのような実施形態では上記の利点が組み合わされる。例えば、そのようなバーコードには、その後の増幅プロセス(例えば、PCR反応)で直接増幅することができるという利点がある。例えば、バーコード標識とハイブリダイズさせ(例えば、1つまたは複数のプライマー配列において)、それにより、ポリメラーゼ反応のための鋳型を生成するために、プライマーまたはプライマーの組合せを提供することができる。さらに、UMI配列の存在により、目的の生体分子の数量化が可能になる。バーコード配列B
Tと組み合わせると、異なるB
T配列(異なる時間情報を示す)は必ずしも異なるUMI配列を必要としないので(例えば、B
T1と一緒になったUMI配列1はそれでもB
T2と一緒になったUMI配列1と弁別することができる)、必要なUMI配列の数をさらに減少させることができる。したがって、同じUMI配列を異なるバーコード配列B
Tに適用することができる。
【0074】
一実施形態によると、バーコード標識は、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドと有利にハイブリダイズすることができるアダプター配列を含む。アダプター配列には、さらなる情報を配列の形態でバーコード標識に付加するために、オリゴヌクレオチドなどの望ましい配列とハイブリダイズすることができるという利点がある。アダプター配列は、バーコード標識の3’末端にあり得ることが好ましい。図にも概略的に例示されている一実施形態によると、バーコード標識は、必要に応じて、バーコード配列B
Sおよび1つのプライマー配列(例えば、5’側のプライマー配列(1))、ならびにバーコード配列B
Sの3’側にあるアダプター配列(本発明ではアダプター配列(1))を含み得る。そのような実施形態には、アダプター配列(1)を介して、ハイブリダイゼーション反応(および必要に応じた部分配列ポリメラーゼ伸長反応)を介してバーコード標識に移行することができる情報を含有し得るオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることができるという利点がある。
図7にも概略的に例示されている一実施形態によると、バーコード標識は、バーコード配列B
S、および必要に応じて、少なくとも1つのプライマー配列(例えば、5’側のプライマー配列(1))、ならびに3’末端に位置し得るアダプター配列(本発明ではアダプター配列(1))を含む。さらに、UMI配列がバーコード配列B
Sの3’側または5’側に存在してよい。重ねて、バーコード標識の正確な順序は限定されない。そのような実施形態では上記の利点が組み合わされる、すなわち、UMI配列を介して検出用分子(したがって、結合した目的の生体分子)を直接数量化することが可能になると同時に、アダプター配列のハイブリダイゼーションによって他の情報をバーコード標識に付加することもできる。
【0075】
一実施形態によると、1つまたは複数の型の検出用分子のバーコード標識は全てが同じアダプター配列を含む。これにより、いくつかのまたは好ましくは全ての型の検出用分子に対して単一の型のアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを使用することが可能になる。一実施形態によると、1つまたは複数の型の検出用化合物のバーコード標識は、同じ1つまたは複数のプライマー配列をさらに含む。一実施形態によると、1つまたは複数の型の検出用分子のバーコード標識は、異なる型の検出用分子の特異性を示すバーコード配列BS以外は全て同じである。
【0076】
一実施形態によると、バーコード標識は、配列決定用のアダプター配列ASを含む。そのようなアダプター配列ASは、Illumina(登録商標)シーケンシングなどの一般的な配列決定プラットフォームにたびたび使用される市販の配列決定用アダプターに対応し得る。図と併せて開示される通り、配列決定用アダプターは、バーコード標識の5’領域内に位置し得る。これにより、例えば、その後の増幅反応における線形増幅が可能になり、その場合、マッチする配列決定用アダプターを含む単一のプライマーを使用する一方でそれでもなお両末端に一般的な市販の配列決定プラットフォームに必要とされることも多い配列アダプター配列を含む配列決定可能な反応産物が提供される。
【0077】
ステップd)
本方法のステップd)では、少なくとも、
(i)バーコード配列(BS)、および
(ii)時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、および/または
(iii)位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、および
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列
を含む配列決定可能な反応産物を生成する。
【0078】
本明細書に開示される通り、ステップd)は、いくつかのステップを含み得る。配列決定可能な反応産物の生成は、少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーの使用を含み得る。この実施形態は好ましいものであり、多数の適切な実施形態が本明細書に開示される。好ましさが劣る代替では、ステップd)における配列決定可能な産物の生成は、それによってバーコード標識を伸長するところの、少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とライゲーションする少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用を含む。これは、それによって伸長したバーコード標識に、例えばバーコード配列(BT)および/またはバーコード配列(BP)および/またはUMI配列などのさらなる配列エレメントを導入するための選択肢である。これにより、標準のワークフローを妨げることなく、例えばIllumina(登録商標)TruSight配列決定プラットフォームとの適合が可能になる。ライブラリー調製の間、元のライブラリー調製キットからのアダプターを本開示のアダプターで置き換えることができる。
【0079】
すでに記載した通り、バーコード標識は、バーコード配列BSを含む。バーコード標識は、配列決定可能な反応産物を生成するための鋳型として使用することができる。バーコード標識にすでに存在していない場合、時間情報を示すためのバーコード配列(BT)および/または位置情報を示すためのバーコード配列(BP)を、配列決定可能な反応産物に含まれるように、付加しなければならない。本明細書に開示される通り、生成した配列決定可能な反応産物は、固有の分子識別子(UMI)をさらに含むことが好ましい。
【0080】
配列決定可能な反応産物の生成は、少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用を含むことが好ましい。このオリゴヌクレオチドは、例えば、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドであり得る、または配列決定可能な産物を生成および/または増幅するための増幅反応に使用されるプライマーであり得る。多数の適切な実施形態が本明細書に記載されている。
【0081】
一実施形態によると、ステップd)は、プライマーまたはプライマーの組合せを使用して増幅反応を実施するステップを含む。適切な実施形態は本明細書および図に記載されている。
【0082】
アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの使用
ステップd)は、バーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して検出用分子のバーコード標識を伸長し、それによって、伸長したバーコード標識を増幅反応より前に提供するステップをさらに含み得る。適用されるバーコード標識に応じて、配列決定可能な反応産物の生成には、そのようなアダプターバーコードオリゴヌクレオチドの使用が必要になり得る。バーコード標識の伸長の後にポリメラーゼ伸長反応を行うことができ、その結果、バーコード標識を、例えばポリメラーゼによって、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して伸長させると、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの情報が伸長したバーコード標識に移行する/組み入れられる。そのようなバーコード標識ハイブリダイゼーションおよび伸長ステップは、本明細書ではステップd)のステップ(aa)と称され得る(
図2A、ステップD(aa)のそのようなステップの概略図も参照されたい)。
【0083】
好ましい実施形態によると、例えば、バーコード配列BT、バーコード配列BPおよび/またはUMI配列を含み得るアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを、結合しなかった分析物(例えば、他の非結合生体分子、結合しなかった検出用分子など)を除去するために、洗浄ステップの後に捕捉用マトリックス(検出用分子が結合した捕捉された目的の生体分子を含む)に添加することが好ましい。これにより、例えば目的の生体分子の絶対的な数量化を考慮して、偽陽性エラーを回避することが有利に可能になる。複数の実施形態では、増幅および/またはバーコード標識伸長の前にバーコード標識を検出用分子から放出させることもできる。
【0084】
一実施形態によると、ステップ(aa)は、1つの特定の位置で行う、すなわち、ハイブリダイゼーションと伸長は同じ位置で行うことができる、または異なる位置で行うことができる、すなわち、ハイブリダイゼーションを1つの位置で行うことができ、伸長を別の位置で行うことができる。例えば、オリゴヌクレオチドとバーコード標識のハイブリダイゼーションを、捕捉用マトリックスを含む区画内で、必要に応じて細胞含有マトリックスの存在下で行い、その後、結合しなかったオリゴヌクレオチドの必要に応じた洗浄を行い、その後、必要な反応の構成成分(例えば、ポリメラーゼ、dNTPなど)を区画内に導入することによってポリメラーゼ伸長反応を行うことができる。オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを、細胞含有マトリックスの存在下または非存在下で、例えば、バーコード標識をアダプターバーコードオリゴヌクレオチドと接触させる前またはその後に捕捉用マトリックスを区画から出して別の位置(例えば、ウェルプレートなどの別のフォーマットの細胞培養デバイスの収集位置)に移行することによって実施することができる。他の位置において、ポリメラーゼ伸長反応を必要な構成成分(例えば、ポリメラーゼ、dNTPなど)の存在下で実施することができる。そのような実施形態には、細胞がポリメラーゼ反応および必要な構成成分による影響を受けないという利点がある。一実施形態では、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを、細胞含有マトリックスの非存在下で、捕捉用マトリックスを別の位置に輸送し(例えば、上を参照されたい)、次いで、捕捉用マトリックスとオリゴヌクレオチドを組み合わせ、その後、ポリメラーゼ伸長反応を行うことによって行うことができる。
【0085】
アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、バーコード標識によって提供されるアダプター配列と逆相補的なアダプター配列を含み得る。そのようなアダプター配列は、配列がバーコード標識のアダプター配列(1)と逆相補的であることを示すアダプター配列(1)Rと称することができる。アダプター配列は、バーコード標識3’末端アダプター配列とのハイブリダイズのためにアダプターバーコードオリゴヌクレオチドの3’末端に位置することが好ましい。しかし、本開示の範囲内で他の立体配置を適用することもできる。
【0086】
アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、伸長したバーコード標識に、その後の増幅反応に使用することができるプライマー配列を組み入れるために、少なくとも1つのプライマー配列(例えば、プライマー配列(2))を含み得る。例えば、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、プライマー配列が逆相補的であることを示すプライマー配列(2)Rを含み得、したがって、プライマー配列(2)が、ポリメラーゼ伸長反応後に、増幅反応の間にプライマーが結合し得るバーコード標識に組み入れられる(図の考察も参照されたい)。一実施形態によると、アダプター配列(1)Rを好ましくは3’末端に含み、プライマー配列(2)Rを好ましくは5’末端に含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、アダプター配列(1)を3’末端に含むバーコード標識とハイブリダイズすることができる。その後、バーコード標識を伸長させ、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドによって提供される情報を伸長したバーコード標識に組み入れるために、ポリメラーゼ伸長反応を実施することができる。それで、伸長したバーコード標識は、アダプターバーコードオリゴヌクレオチド突出(例えば、プライマー配列(2)、バーコード配列BT、バーコード配列BP、および/またはUMI配列など)によって提供される相補配列を有利に含む。アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの立体配置の特定の実施形態は下にさらに記載されている。
【0087】
アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、さらなる化学的部分を含み得る。例えば、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、遮断性部分を含み得る。一実施形態によると、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、バーコード標識の伸長の間、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの伸長を遮断する遮断性部分を3’末端に含む。例えば、遮断性部分は、ポリメラーゼ酵素によりアダプターバーコードオリゴヌクレオチドがハイブリダイズし得る相補鎖(例えば、バーコード標識)が重合することを遮断し得る。したがって、有利に、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドの3’末端におけるハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド(例えば、バーコード標識)の重合を防止することができる。バーコード標識の3’末端は遮断性部分を含まず、したがって、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを使用した場合のポリメラーゼ伸長反応で伸長させることができる。一実施形態によると、伸長したバーコード標識とアダプターバーコードオリゴヌクレオチドのハイブリッドをその後、伸長したバーコード標識のみを用いて、または(好ましくは伸長した)アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを用いて第1の態様の方法をさらに継続するために、一緒に処理するかまたは互いから分離することができる。
【0088】
好ましい実施形態によると、伸長したバーコード標識のみをさらに処理する。
【0089】
アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション、およびアダプターバーコード標識を鋳型として使用したバーコード伸長により、伸長したバーコード標識に移行する/組み入れることができる1つまたは複数の配列エレメントを有利に含み得る。そのような情報は、時間情報を示すバーコード配列B
T、UMI配列、位置情報を示すバーコード配列B
P、およびプライマー配列(例えば、プライマー配列(2))のうちの1つまたは複数を含み得る。ハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸長反応によってアダプターバーコードオリゴヌクレオチドからバーコード標識に移行することができる情報の特定の実施形態は
図7、8A、8Bおよび9に概略的に例示されている。それにもかかわらず、本開示は、特定の実施形態に限定されない場合があり、バーコード標識および/もしくはアダプターバーコード配列のさらなる配列エレメントならびに/またはバーコード標識および/もしくはアダプターバーコード配列の異なる配置を含めた他の実施形態を適用することができる。
【0090】
一実施形態によると、ステップd)は、(例えば、ステップ(aa)において)、検出用分子のバーコード標識のアダプター配列(1)と逆相補的であるアダプター配列(1)
Rを含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加することを含み、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、位置情報を示すためのバーコード配列B
P、固有の分子識別子(UMI)配列、およびプライマー標的配列からなる群から選択される配列エレメントのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは全てをさらに含む。これらの1つまたは複数の配列エレメントはアダプター配列(1)
Rの5’側に位置し、ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してバーコード標識を伸長させ、それによって伸長したバーコード標識を得る。そのような実施形態は
図7、8A、8b、および9に概略的に例示されている。
【0091】
好ましい実施形態によると、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、3’末端に位置することが好ましいアダプター配列(1)
R、UMI配列、および5’末端に配置されることが好ましいプライマー配列(2)
Rを含み得る。他の配置も本開示の範囲内に入り得、1つまたは複数のさらなる配列エレメントをそのようなアダプターバーコードオリゴヌクレオチドに含めることができる。前記配列を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、3’末端のバーコード標識と、バーコード標識に含まれるアダプター配列(1)(好ましくはバーコード標識の3’末端にある)のハイブリダイゼーションを通じて有利にハイブリダイズすることができる。バーコード標識は、有利に、バーコード配列B
Sおよび5’末端のプライマー配列(1)をさらに含み得、5’末端におけるリンカー部分(例えば、光切断可能なスペーサー部分を含む)を介して検出用分子に付着させることができる。そのような実施形態は
図8aに概略的に例示されている。ハイブリダイゼーション後、プライマー配列(1)、バーコード配列B
S、アダプター配列(1)、UMI配列、およびプライマー配列(2)を含む伸長したバーコード標識を取得するために、バーコード標識および必要に応じてアダプターバーコード配列を、例えば、ポリメラーゼ反応によって伸長させることができる。ハイブリダイゼーション反応および/またはポリメラーゼ伸長反応は、細胞含有マトリックスが位置する区画内または異なる位置(例えば、上記の貯蔵位置)において実施することができる。
図8aに例示されている特定の実施形態によると、ハイブリダイゼーション反応およびポリメラーゼ伸長反応の両方を異なる位置で行う(「オフチップ」とも称される。例えば、ウェルプレートのウェル)。これにより、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよび/またはポリメラーゼ伸長反応の構成成分と細胞含有マトリックスの間の望ましくない反応が有利に防止される。
図9に示されている別の実施形態によると、バーコード配列B
Tをさらに含むアダプターバーコード配列を提供することができる。特定の実施形態によると、バーコード配列B
TはUMI配列の3’側にあるが、UMI配列の5’側にあってもよい。したがって、ハイブリダイゼーションおよび部分配列ポリメラーゼ伸長反応では、ポリメラーゼ伸長後に、伸長したバーコード標識にUMI配列およびプライマー配列(2)だけでなくバーコード配列B
Tも存在する。そのような実施形態によると、ハイブリダイゼーション反応および必要に応じてポリメラーゼ伸長反応を、細胞含有マトリックスが位置付けられているのと同じ区画内で行うことができる(「オンチップ」であると示される);しかし、これらを細胞培養デバイスの異なる位置(同じく「オンチップ」と称される)および/または異なるフォーマットで(例えば、捕捉用マトリックスを異なるフォーマットに輸送することによって)行うこともできる。
【0092】
さらに別の実施形態によると、アダプターバーコード配列は、好ましくは3’末端にアダプター配列(1)
R、バーコード配列B
T、および好ましくは5’末端にプライマー配列(2)
Rを含み得る。ハイブリダイズするバーコード標識は、好ましくは5’末端にプライマー配列(1)、バーコード配列B
S、UMI配列、および好ましくは3’末端にアダプター配列(1)を含み得ることが好ましい。そのような実施形態は
図7に例示されている。したがって、ハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸長により、バーコード配列B
Tおよびプライマー配列(2)が伸長したバーコード標識に移行する/組み入れられる。さらに、アダプターバーコード配列はポリメラーゼ反応によって伸長し、バーコード標識の配列エレメントをさらに含み得る。特定の実施形態によると、UMI配列、バーコード配列B
Sおよびプライマー配列(1)
Rが組み入れられ得る。あるいは、アダプターバーコード配列の3’末端が遮断されている場合、アダプターバーコード配列はポリメラーゼ延長反応によって延長されない。ハイブリダイゼーション反応は、細胞含有マトリックスの存在下で(例えば、細胞培養デバイスの区画内で)実施することができることが好ましく、一方、ポリメラーゼ伸長反応は、異なる位置(例えば、別のフォーマットのウェルなどの収集位置)で実施することができる。それにより、有利に、細胞含有マトリックスはポリメラーゼ伸長反応化合物(例えば、ポリメラーゼ、dNTPなど)と接触しない。
【0093】
別の実施形態によると、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、位置情報を示すバーコード配列BPをさらに含み得る。そのようなバーコード配列BPは、細胞含有マトリックス/捕捉用マトリックス、それぞれ各マトリックスの少なくとも1つが存在する区画の特定の位置に関する情報を提供するために、本発明の範囲内で有利に適用することができる。バーコード配列BPは、伸長したバーコード標識に位置情報を組み入れるために有利に適用することができ、それにより、その後、異なる位置の伸長したバーコード標識(それぞれ伸長したバーコード標識を出発材料として生成された、生成した配列決定可能な反応産物)を一緒に1つのバッチ内にプールし、それらの配列決定を行うことが可能になる。その後、バーコード配列BPに起因して、配列決定されたシグナルを弁別することができ、それにより、高度多重化分析が可能になる。異なる位置における(および必要に応じて、異なる時点における)分泌された目的の生体分子のプロファイルを取得するために、バーコード配列BSおよび必要に応じてバーコード配列BTと組み合わせて、高度多重化分析を実施することができる。好ましい実施形態によると、バーコード標識は、バーコード配列BSおよび5’末端のプライマー配列(1)を含み、5’末端のリンカー部分(例えば、切断可能なスペーサー部分を含む)を介して検出用分子に付着させることができる。ハイブリダイゼーション後、プライマー配列(1)、バーコード配列BS、アダプター配列(1)、バーコード配列BP、好ましくはUMI配列、およびプライマー配列(2)を含む伸長したバーコード標識を提供するために、バーコード標識および必要に応じてアダプターバーコード配列を、例えば、ポリメラーゼ反応によって伸長させることができる。ハイブリダイゼーション反応および/またはポリメラーゼ伸長反応は、細胞含有マトリックスとは異なる位置(例えば、別のフォーマット(例えば、ウェルプレートのウェル)の)において実施することができることが好ましい。例えば、捕捉用マトリックス(1つまたは複数の型の捕捉用分子、結合した目的の生体分子、それに結合した、上記のバーコード標識を含む1つまたは複数の型の検出用分子を含む)をウェルプレートのウェルなどの異なる収集位置に輸送することができ、そこで、捕捉用マトリックスが前記アダプターバーコードオリゴヌクレオチドと接触する。これにより、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよび/またはポリメラーゼ伸長反応の構成成分と細胞含有マトリックスの間の望ましくない反応が有利に防止される。特定の実施形態によると、捕捉用マトリックスを別の区画に輸送することができ、そこには、バーコード配列BPを含むことが好ましいアダプターバーコードオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーション反応のために放出されるように固定化されている。固定化および放出は、当技術分野で公知の方法によって実施することができる。さらに、UMI配列は1つの型のバーコード配列BPに対して異なることだけが必要であるので、バーコード配列BPとUMI配列の好ましい組合せにより、必要なUMI配列の数が有利に減少する。バーコード配列BTに関して上に記載されているのと同様に、UMI配列は、異なる位置(すなわち、バーコード配列BP)に対して等しい場合もある。例えば、異なるバーコード配列BPによりそれでもシグナルの弁別が可能になるので、バーコード配列BP1をUMI1と組み合わせる場合、バーコード配列BP2もUMI1と組み合わせることができる。一実施形態によると、ステップd)は、(aa)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドであって、バーコード標識にハイブリダイズすることができる領域の5’側に、(i)位置情報を示すためのバーコード配列(BP)および(ii)好ましくは固有の分子識別子(UMI)配列を含む、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加し、ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してバーコード標識を伸長させ、それによって伸長したバーコード標識を得るステップを含み、ステップd)は、(bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施することをさらに含むことが好ましい。
【0094】
別の好ましい実施形態によると、アダプター配列(1)R、バーコード配列BP、バーコード配列BT、UMI配列、およびプライマー配列(2)Rを含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを提供することができる。これらの配列エレメントの特定の配置を変化させることができる。アダプター配列(1)Rは3’末端にあり、プライマー配列(2)Rは5’末端にあることが好ましい。そのような実施形態によると、ハイブリダイゼーションおよびその後のポリメラーゼ伸長によって時間、位置およびUMIに関する情報をバーコード標識に移行することができ、それにより、異なる目的の生体分子の多重化分析(すなわち、異なるバーコード配列BSによる)、異なる培養時点の多重化分析(すなわち、異なるバーコード配列BTによる)、および異なる位置の多重化分析(すなわち、異なるバーコード配列BPによる)が可能になる。さらに、UMI配列により、シグナルを直接数量化し、したがって、少なくとも1つの細胞によって分泌された生体分子に関する位置依存性情報、時間依存性情報、および生体分子依存性情報を取得することが可能になる。さらに、有利に、異なるバーコード配列BPおよびBTを含むバーコード標識に対して等しいUMI配列を適用することができるので、必要なUMI配列の数が減少する。さらに、その後の増幅反応では実験セットアップに特有の配列エレメント(バーコード配列BT、バーコード配列BP、UMI)は必要ない可能性があり、それにより、必要なプライマーまたはプライマーの組合せがより単純なものになる。
【0095】
一実施形態によると、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドのハイブリダイズおよびポリメラーゼ伸長反応(またはオリゴヌクレオチドとバーコード標識のライゲーション)によって得られた伸長したバーコード標識は、(i)検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)、(ii)1つまたは複数のプライマー標的配列、(iii)必要に応じて、時間情報を示すバーコード配列(BT)、および(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列を含む。アダプターバーコードオリゴヌクレオチドとバーコード標識のハイブリダイゼーションを可能にするために、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションを可能にするために、(v)対応する検出用分子のバーコード標識のアダプター配列(1)と逆相補的なアダプター配列(1)Rをさらに含む。
【0096】
一実施形態によると、バーコード配列BTをバーコード標識または伸長したバーコード標識内に提供し、ステップd)は、増幅反応を実施する前に、異なる時点において提供され、区画内に異なるバーコード配列BTを含むバーコード標識または伸長したバーコード標識をプールするステップを含む。そのような実施形態の利点は、バーコード標識または伸長したバーコード標識を含む複数の捕捉用マトリックスを、同じ区画内(例えば、ウェルプレートのウェル)で処理、すなわち、増幅することができるので、スループットがより高く、費用効果が大きいことである。例えば、その後に異なる時点において(バーコード配列BTによって示される)収集された同じ位置の複数の捕捉用マトリックスを得、次いで、一緒に増幅反応によって処理することができる。
【0097】
好ましくはPCRによる増幅
オリゴヌクレオチド(アダプターバーコードオリゴヌクレオチドとも称される)を用いてバーコード標識を伸長させる上記の開示される反応とは別個にまたはそれに加えて、増幅反応を行うことができる。オリゴヌクレオチドを使用した事前のバーコード標識の伸長を伴わずに増幅反応を実施する場合には、捕捉用マトリックスは、ステップc)の後、細胞含有マトリックスを含まない収集位置に輸送されることが好ましい。そのような実施形態では、少なくとも1つの細胞を、増幅反応による影響を受けずに維持することが可能になる。収集位置は、増幅反応を行うことができる任意の位置であってよい。例示的な位置は、細胞培養デバイスの別の位置、別の細胞培養デバイス、またはウェルプレート(例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレート、1536ウェルプレートなど)もしくは他の反応槽(例えば、Eppendorfチューブなど)などの別のフォーマットを含み得る。
【0098】
一実施形態によると、増幅反応を行って、配列決定可能な反応産物を生成する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅反応を、プライマーの組合せ(例えば、プライマー対)を使用して実施することができる、または、増幅のために、単一のプライマーを用いたいくつかのサイクルのプライマー伸長を実施することができる。バーコード標識を増幅前に検出用分子から遊離させることができる。捕捉用マトリックス(および/または放出された必要に応じて伸長させたバーコード標識)を移行するための適切かつ好ましい選択肢は本明細書において詳細に記載されている。
【0099】
必要に応じて伸長させたバーコード標識を、プライマーまたはプライマーの組合せ(一般にはフォワードおよびリバースプライマーを含む)、ならびに、ポリメラーゼ、dNTPなどの、増幅反応を実施するために必要な試薬と接触させる。一実施形態によると、増幅反応を、結合した検出用分子を含む捕捉用マトリックスの存在下で実施する。あるいは、バーコード標識/伸長したバーコード標識を、バーコード標識/伸長したバーコード標識を検出用分子に付着させているリンカーを切断することにより、1つまたは複数の型の検出用分子から除去することができる。例えば、適切な波長の光を照射することによって光切断可能なリンカーを切断することができ、その結果、バーコード標識/伸長したバーコード標識が切断され、溶液中に残る。伸長したバーコード標識の場合、一本鎖として遊離することが好ましい。アダプターバーコードオリゴヌクレオチドが、相補鎖が提供されるように伸長されたものである場合、この鎖を増幅前に除去することができる。捕捉用マトリックスを取り出すこともでき、バーコード標識/伸長したバーコード標識を含む溶液を別の位置に移すこともでき、そこで増幅反応を実施することができる。
【0100】
一実施形態によると、バーコード標識/伸長したバーコード標識を、好ましくはPCRによって増幅する。一実施形態によると、PCRを、バーコード標識/伸長したバーコード標識とアニーリングする1つまたは複数のプライマーを用いて実施する。それぞれの増幅ステップは先行技術において周知であり、したがって、本明細書ではいかなる詳細な説明も必要ない。
【0101】
プライマー(複数可)
一実施形態によると、プライマーまたはプライマーの組合せは、バーコード標識(または、上記の通り実施した事前の伸長重合に応じて、伸長したバーコード標識)の一部とハイブリダイズする。1つのプライマーを適用する場合、プライマーは、バーコード標識/伸長したバーコード標識の3’末端にハイブリダイズし得ることが好ましい。したがって、有利にバーコード標識は、3’末端にプライマーと相補的なプライマー配列を含む。一実施形態によると、バーコード標識/伸長したバーコード標識の3’末端のプライマー配列はプライマー配列(2)と称され、プライマーは前記プライマー配列(2)と逆相補的であり、したがって、プライマー配列(2)Rとも称される。増幅反応のために単一のプライマーをバーコード標識/伸長したバーコード標識に付加する場合、線形増幅を実施し(例えば、プライマーを用いて2~20または5~15回の伸長サイクルを実施することによって)、それにより、バーコード標識のリバース鎖のいくつかのコピーを作製することができる。
【0102】
別の実施形態によると、指数関数的な増幅反応を実施するために、プライマーの組合せを使用することができる。プライマーの組合せは、線形増幅反応のための上記のリバースプライマー、およびさらにフォワードプライマーを有利に含み得る。フォワードプライマーは、増幅したリバース鎖と相補的であり、したがって、それに有利にハイブリダイズし、伸長することができる。好ましい実施形態によると、フォワードプライマーは、プライマー配列を含むリバース鎖の3’末端と相補的である。したがって、フォワードプライマーは、バーコード標識によって有利に提供することができるプライマー配列と同一であるプライマー配列を含む。好ましい実施形態によると、バーコード標識は、5’末端にプライマー配列(1)と称されるプライマー配列を含み(バーコード標識と併せて上にも記載されている)、フォワードプライマーは、プライマー配列(1)と同一であるプライマー配列を含む。したがって、好ましい実施形態によると、リバースプライマーは、バーコード標識/伸長したバーコード標識とハイブリダイズして相補鎖を生成することができ、その結果、形成された相補/リバース鎖(プライマー配列(1)Rを含む)とハイブリダイズしたフォワードプライマーの増幅反応を脱ハイブリダイゼーションおよび再ハイブリダイゼーションサイクルで実施することができる。したがって、次の重合反応においてフォワード鎖が重合する。
【0103】
一実施形態によると、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを上に開示されているポリメラーゼ伸長によって伸長させる。伸長したアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを増幅させる場合、線形増幅を実施するために上記のフォワードプライマーを提供すること、または、指数関数的な増幅のために前記フォワードプライマーとリバースプライマーのプライマーの組合せを提供することが十分であり得る。上に開示されている相補的な考察をそのような実施形態に適用することができる。
【0104】
好ましい実施形態によると、1つまたは複数のプライマーは、1つまたは複数の配列エレメントを含み、それを、生成した配列決定可能な反応産物に組み入れられるように増幅反応において増幅させることができる。一般には、プライマーまたはプライマーの組合せは、バーコード標識/伸長したバーコード標識とハイブリダイズすることができる相補的なプライマー配列とは別個に、バーコード標識/伸長したバーコード標識には存在しない1つまたは複数のさらなる配列エレメントを含む。例えば、バーコード標識は、バーコード配列BSを含み、したがって、1つまたは複数のプライマーはバーコード配列BSを含まないことが好ましい。バーコード標識/伸長したバーコード標識がバーコード配列BTおよび/またはBPを含む場合に同様の考察を適用することができ、それで、プライマーまたはプライマーの組合せはそのような配列エレメントを必要としない。それにもかかわらず、必要な場合には重複性を提供し、したがって、1つまたは複数の配列エレメントを1回よりも多く提供すること(例えば、バーコード標識/伸長したバーコード標識およびプライマーまたはプライマーの組合せで)も本発明の範囲内である。そのような配列重複性を使用してシグナル強度を改善することができる。
【0105】
好ましい実施形態によると、プライマー配列は、バーコード標識/伸長したバーコード標識によってすでに提供されていないそのようなさらなる配列のみを含む(鋳型とハイブリダイズし、増幅反応を実施するために存在する必要があるプライマー配列とは別個に)。例えば、バーコード標識/伸長したバーコード標識が、バーコード配列BSおよびバーコード配列BTを含む場合、バーコード配列BPをバーコード標識/伸長したバーコード標識に1つまたは複数のプライマーを介して付加することが有利であり得る。別の実施例によると、バーコード標識/伸長したバーコード標識がバーコード配列BSおよびバーコード配列BPを含む場合、バーコード配列BTをバーコード標識/伸長したバーコード標識に1つまたは複数のプライマーを介して付加することが有利であり得る。UMI配列は各検出用分子に対して一意的であることが好ましく、したがって、増幅反応においてより低い特異性でコピーされるので、UMI配列を1つまたは複数のプライマーを介して付加することは望ましくない可能性がある。しかし、一部の場合では、UMI配列が1つまたは複数のプライマーにも存在し得ることが本開示で必要になり得、また、排除されない。
【0106】
好ましい実施形態によると、生成した配列決定可能な反応産物は、配列決定反応に利用可能になるように、配列決定用アダプター配列(AS)を3’末端および5’末端に含む。アダプター配列は当技術分野で周知であり、本開示は、特定の配列決定用アダプターに限定されなくてよい。例示的なアダプター配列は、「P7」および「S」であり得る。それにもかかわらず、本開示を考慮して、そのようなアダプター配列は、その後、生成した配列決定可能な反応産物に当技術分野で公知の方法によって付着することもできるので、そのようなアダプター配列を含める必要はない。好ましい実施形態によると、時間および費用を効率的に配列決定することができる産物を生成するために、そのようなアダプター配列を配列決定可能な反応産物内に提供する。アダプター配列は、バーコード標識内に、アダプターバーコード配列内(伸長したバーコード標識の形態でバーコード標識に移行するために)に含めることができる、または配列決定可能な反応産物にプライマーまたはプライマーの組合せを介して付加することができる。プライマーの組合せを適用する場合、各プライマーが5’末端にアダプター配列を含むことが好ましい。1つのプライマーを線形増幅のために適用する場合、そのプライマーは、1つのアダプター配列を5’末端に含み得、一方、バーコード標識/伸長したバーコード標識は、第2のアダプター配列を5’末端に含むことが好ましい。
【0107】
好ましい実施形態によると、バーコード標識または伸長したバーコード標識を増幅反応で増幅することによって配列決定可能な反応産物を生成する。したがって、1つまたは複数のプライマー(例えば、線形増幅のための1つのプライマーまたは指数関数的な増幅のためのプライマーの組合せ)を適用することができる。単一のプライマーを適用する場合、プライマーは、必要に応じて伸長させたバーコード標識の3’末端と逆相補的であり得ることが好ましい(すなわち、バーコード標識は、相補的なプライマー配列を3’末端に含む)。例えば、必要に応じて伸長させたバーコード標識は、プライマー配列(2)Rを含む、プライマーと逆相補的であるプライマー配列(2)を3’末端に含み得る。したがって、増幅反応において、プライマーはバーコード標識とハイブリダイズして、ポリメラーゼの鋳型を形成することができ、次いでそれにより、相補/リバース鎖が有利に形成される。プライマーは、後の配列決定に利用されるアダプター配列(例えば、「S」)を5’末端にさらに含むことが好ましい。そのような場合では、バーコード標識の5’末端は、後の配列決定のための別のアダプター配列を5’末端に含むことが好ましい。
【0108】
好ましい実施形態によると、前記リバースプライマーに加えて、バーコード標識と同一の配列(好ましくはバーコード標識の5’末端の同一の配列)を含むフォワードプライマーを含むプライマーの組合せを使用する。例えば、バーコード標識は、プライマー配列(1)を5’末端に含み得、フォワードプライマーもプライマー配列(1)を含む。増幅反応のフレームで、リバースプライマーによりまずバーコード標識のリバース鎖が増幅する。第2の増幅反応において、次いで、フォワードプライマーが、リバース鎖と、特にプライマー配列(1)Rとハイブリダイズし、次いで、ポリメラーゼ反応のための鋳型としての機能を果たす。フォワードプライマーは、アダプター配列の付着を必要とせずに直接配列決定することができる配列決定可能な反応産物を生成するために、5’末端にアダプター配列を含むことが好ましい。例えば、フォワードプライマーは、アダプター配列P7を含み得る。したがって、とりわけプライマーの組合せによって生成した配列決定可能な反応産物は、5’末端および3’末端アダプター配列を有利に含み、指数関数的に増幅して配列決定可能な反応産物の複数コピーを提供する。
【0109】
特定のプライマーの実施形態
必要に応じて伸長させたバーコード標識は、それぞれプライマーまたはプライマーの組合せのうちのプライマーがハイブリダイズして増幅反応を開始することができるプライマー配列または2つのプライマー配列を含む。
【0110】
図5にも概略的に例示されている特定の実施形態によると、バーコード配列B
Pをステップd)で使用されるオリゴヌクレオチドを介して配列決定可能な反応産物に導入し、ここで、バーコード配列B
Pを含むオリゴヌクレオチドは、増幅反応に使用されるプライマーである。例えば、(必要に応じて伸長させた)バーコード標識は、5’末端のプライマー配列(1)、3’末端のプライマー配列(2)、ならびにバーコード配列B
S、UMI配列およびバーコード配列B
Tを含み得る(5’から3’へ)。プライマーの組合せは、好ましくは3’末端のプライマー配列(2)
R、5’末端の配列決定用アダプター配列(ここでは「S」)を含むリバースプライマーと、3’末端のプライマー配列(1)、5’末端のアダプター配列(ここでは「P」)およびバーコード配列B
Pを含むフォワードプライマーとを含み得る。増幅反応の間、生成した配列決定可能な反応産物に配列決定用アダプター配列およびバーコード配列B
Pが移行し/組み入れられ、その後、生成した配列決定可能な反応産物は、アダプター配列(3’末端および5’末端に)、バーコード配列B
P、プライマー配列(1)、バーコード配列B
S、UMI配列、バーコード配列B
T、およびプライマー配列(2)を含む(
図3Bも参照されたい)。そのような実施形態は、配列エレメントをアダプターバーコードオリゴヌクレオチドからバーコード配列に移行するための重合伸長ステップを必要としないが、必要な情報はバーコード標識およびプライマーの組合せに存在するので、有利であり得る。増幅反応は、細胞含有マトリックスの少なくとも1つの細胞に影響を及ぼさないように、細胞含有マトリックスを含まない位置で実施できることが好ましい。したがって、増幅反応は、収集位置(例えば、ウェルプレートのウェル)で実施できることが好ましい。配列決定可能な反応産物にバーコード配列B
Pを組み入れるために、そのような増幅反応を異なる位置で実施することがさらに有利であり得る。特定の実施形態の他の構成も本開示の範囲内で適用可能である。例えば、配列エレメント(ここではB
S、UMIおよびB
T)の配置が異なってよい。さらに、バーコード配列B
Tを1つまたは複数のプライマーによって提供することができる。
【0111】
一実施形態によると、ステップd)は、
- 位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、
- 必要に応じて、配列決定用のアダプター配列(AS)、
- 必要に応じて、時間情報を示すためのバーコード配列(BT)
を含むプライマーまたはプライマーの組合せを用いて増幅反応を実施するステップを含む。
【0112】
1つまたは複数の配列エレメントB
P、AS、および/またはB
Tは、プライマーまたはプライマーの組合せに含まれる場合、必要に応じて伸長させたバーコード標識またはその逆相補物とハイブリダイズすることができるプライマーの配列領域の5’側に位置する。バーコード(B
T)がバーコード標識(または必要に応じて伸長させたバーコード標識)に含まれない場合、バーコード配列B
Tは、特にプライマーの組合せのうちのプライマーによって提供される。特定の実施形態が
図6に概略的に例示されている。その特定の実施例では、バーコード標識は、プライマー配列(1)、バーコード配列B
S、UMI配列、およびプライマー配列(2)を含む(5’から3’へ)。そのような実施形態では、生成した配列決定可能な反応産物にバーコード配列B
Tおよび/またはバーコード配列B
Pを付加するプライマーの組合せを有利に適用することができる。好ましい実施形態によると、両方のバーコード配列(B
PおよびB
T)を配列決定可能な反応産物にプライマーの組合せによって付加する。特定の実施形態では、プライマーの組合せを有利に適用することができ、ここで、一方のプライマー、好ましくはリバースプライマーは、3’末端のプライマー配列(2)
R、バーコード配列B
Tおよび5’末端のアダプター配列(例えば、「S」)を含み、他方のプライマー、好ましくはフォワードプライマーは、3’末端のプライマー配列(1)、バーコード配列B
Pおよび5’末端のアダプター配列(例えば、「P7」)を含む。例えば、両方のバーコード配列B
TおよびB
Pを含むリバースプライマーまたはフォワードプライマーなどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーの他の構成を実施形態の範囲内で適用することができ、またはバーコード配列B
PとB
Tを交換することができる(例えば、バーコード配列B
Tをフォワードプライマーで提供することができ、バーコード配列B
Pをリバース鎖で提供することができる)。
【0113】
一実施形態によると、配列決定可能な反応産物の生成は、少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーの使用を含む。一実施形態によると、ステップd)は、(aa)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記バーコード標識を伸長させ、それにより、鋳型として使用したハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの配列情報をさらに含む、検出用分子に付着した伸長したバーコード標識を得るステップを含み、必要に応じて、ステップd)は、(bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用し、好ましくは伸長したバーコード標識を鋳型として使用して増幅反応を実施するステップをさらに含む。
【0114】
一実施形態によると、ステップd)のステップ(aa)において少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して伸長させ、それにより、鋳型として使用したハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の配列エレメントをさらに含む、検出用分子に付着した伸長したバーコード標識を得る場合、ステップd)のステップ(bb)を、プライマーまたはプライマーの組合せを用い、伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施することによって実施することができる。請求項1で言及される少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、これらの実施形態では、バーコード標識とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド(アダプターバーコードオリゴヌクレオチドとも称される)に対応し得る。第1の態様の方法でアダプターバーコード配列とも称されるオリゴヌクレオチドを使用する場合では、伸長したバーコード標識が生成されることが好ましい。そのような伸長したバーコード標識は、上に詳細に記載されており、同じく本発明に適用される。伸長したバーコード標識は、1つまたは2つのプライマー配列を含むことが好ましく、これは、元のバーコード標識(伸長していない)に、好ましくは5’末端に(例えば、プライマー配列(1)として)提供することができ、かつ/または、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドのプライマー配列の相補配列(例えば、プライマー配列(2)R)を介して、好ましくは3’末端に導入することができる。伸長したバーコード配列は、5’末端のプライマー配列(1)および3’末端のプライマー配列(2)を含むことが好ましい。
【0115】
一実施形態によると、ステップd)は、(aa)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドであって、バーコード標識にハイブリダイズすることができる領域の5’側に固有の分子識別子(UMI)配列を含む、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加し、ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してバーコード標識を伸長させ、それによって伸長したバーコード標識を得るステップを含む。ステップd)は、(bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施するステップをさらに含むことが好ましい。
【0116】
一実施形態によると、ステップd)は、(aa)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドであって、バーコード標識にハイブリダイズすることができる領域の5’側に、(i)時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、および/または(ii)固有の分子識別子(UMI)配列を含む、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを添加し、ハイブリダイズしたアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してバーコード標識を伸長させ、それによって伸長したバーコード標識を得るステップを含み、ステップd)は、(bb)プライマーまたはプライマーの組合せを用い、伸長したバーコード標識および/またはその逆相補物を鋳型として使用して増幅反応を実施するステップをさらに含むことが好ましい。例示的な実施形態が
図7、8Aおよび9に概略的に例示されており、本明細書で参照される(図の説明を含む)。
【0117】
特定の実施形態によると、伸長したバーコード標識は、プライマー配列(1)、バーコード配列B
S、UMI配列、アダプター配列(1)、バーコード配列B
Tおよびプライマー配列(2)を含み得る(好ましくは5’から3’へ)。伸長したバーコード標識は上に記載されており、さらなる詳細について参照される。その特定の実施形態のステップ(bb)、すなわち、増幅ステップでは、単一のプライマーまたはプライマーの組合せを適用することができる。生成した配列決定可能な反応産物の3’末端および5’末端にバーコード配列B
Pおよびアダプター配列をさらに提供するプライマーの組合せを適用できることが好ましい。特定の実施形態では、リバースプライマーは、伸長したバーコード標識の3’末端に提供されることが好ましい、プライマー配列(2)と逆相補的であるプライマー配列(2)
Rを含み得る。さらに、リバースプライマーにより、5’末端の配列決定用アダプター配列(例えば、「S」)が有利に提供され得る。フォワードプライマーは、伸長したバーコード標識によって提供されるプライマー配列(1)(好ましくは5’末端)と同一の配列を含む3’末端のプライマー配列(1)を含み得る。さらに、フォワードプライマーは、バーコード配列B
Pおよび5’末端のアダプター配列(例えば、「P7」)を含み得る。増幅後、例えば、前記プライマーの組合せを用いた伸長したバーコード標識のPCR反応において、
図3Dに概略的に例示されている配列決定可能な反応産物が生成し得る。適用されるプライマー(複数可)は違うように構成することができ、特定の配置に限定されるべきでない(例えば、リバースプライマーがバーコード配列B
Pを含んでもよい)。単一のプライマーを適用する場合には、プライマーは、3’末端のプライマー配列(2)
Rおよびバーコード配列B
P、ならびにアダプター配列(例えば、「S」または「P7」)を含むことが好ましい。そのような実施形態では、伸長したバーコード標識は、配列決定に直接適用することができる配列決定可能な反応産物を生成するために、5’末端のアダプター配列を含むことが好ましい。単一のプライマーのみを増幅に使用する場合、いくつかのサイクルのプライマー伸長を実施することにより、バーコード標識内にプライマー配列(1)を提供する必要はない。本明細書に記載の通り、単一のプライマーを適用する場合、線形増幅反応を実施することができる。上記の開示から、配列エレメントB
P、B
S、UMIおよびB
Tの配置が使用される実施形態に応じて変動させることができることになる。例えば、バーコード配列B
Pはプライマー配列(2)とアダプター配列(例えば、「S」)の間に位置してもよく、バーコード配列B
SとUMI配列の順序が逆であってもよく、また、増幅に単一のプライマーのみを使用する場合には、プライマー配列(1)がなくてもよい。
【0118】
特定の実施形態によると、伸長したバーコード標識は、プライマー配列(1)、バーコード配列B
S、アダプター配列(1)、UMI配列、およびプライマー配列(2)を含み得る(好ましくは5’から3’へ)。伸長したバーコード標識を、対応する検出用分子にリンカー部分(好ましくは光切断可能なリンカー)を介して付着させることができる。伸長したバーコード標識は上に記載されており、さらなる詳細について参照される。その特定の実施形態のステップ(bb)、すなわち、増幅ステップでは、単一のプライマーまたはプライマーの組合せを適用することができる。生成した配列決定可能な反応産物の3’末端および5’末端にバーコード配列B
Pおよび/またはバーコード配列B
T(好ましくは両方のバーコード配列)およびアダプター配列をさらに提供するプライマーの組合せを適用できることが好ましい。特定の実施形態では、リバースプライマーは、伸長したバーコード標識の3’末端に提供されることが好ましい、プライマー配列(2)と逆相補的であるプライマー配列(2)
Rを含み得る。さらにリバースプライマーにより、バーコード配列B
Tおよび5’末端のアダプター配列(例えば、「S」)が有利に提供され得る。フォワードプライマーは、伸長したバーコード標識によって提供されるプライマー配列(1)(好ましくは5’末端)と同一の配列を含む3’末端のプライマー配列(1)を含み得る。さらに、フォワードプライマーは、バーコード配列B
Pおよび5’末端のアダプター配列(例えば、「P7」)を含み得る。増幅後、例えば、前記プライマーの組合せを用いた伸長したバーコード標識のPCR反応において、
図3Eに概略的に例示されている配列決定可能な反応産物が生成し得る。適用されるプライマー(複数可)は違うように構成することができ、特定の配置に限定されるべきでない(例えば、リバースプライマーがバーコード配列B
Pを含んでもよく、フォワードプライマーがバーコード配列B
Tを含んでもよく、プライマーのうちの一方が両方のバーコード配列B
TおよびB
Pを含んでもよい)。単一のプライマーのみを適用する場合には、プライマーは、3’末端のプライマー配列(2)
Rおよびバーコード配列B
Pおよびバーコード配列B
T、ならびにアダプター配列(例えば、「S」または「P7」)を含むことが好ましい。そのような実施形態では、伸長したバーコード標識は、配列決定に直接適用することができる配列決定可能な反応産物を生成するために、5’末端のアダプター配列を含むことが好ましい。本明細書に記載の通り、単一のプライマーのみを増幅に使用する場合、いくつかのサイクルのプライマー伸長を実施することにより、バーコード標識内にプライマー配列(1)を提供する必要はない。上記の開示から、配列エレメントB
P、B
S、UMIおよびB
Tは使用される実施形態に応じて変動させることができることになる。例えば、バーコード配列B
Pはプライマー配列(2)とアダプター配列(例えば、「S」)の間に位置してもよく、バーコード配列B
SとUMI配列の順序が逆であってもよく、また、増幅に単一のプライマーのみを使用する場合には、プライマー配列(1)がなくてもよい。
【0119】
特定の実施形態によると、伸長したバーコード標識は、プライマー配列(1)、バーコード配列B
S、アダプター配列(1)、バーコード配列B
T、UMI配列およびプライマー配列(2)を含み得る(好ましくは5’から3’へ)。伸長したバーコード標識を、対応する検出用分子にリンカー部分(好ましくは光切断可能なリンカー)を介して付着させることができる。伸長したバーコード標識は上で検討されており、さらなる詳細について参照される。その特定の実施形態のステップ(bb)、すなわち、増幅ステップでは、単一のプライマーまたはプライマーの組合せを適用することができる。生成した配列決定可能な反応産物の3’末端および5’末端にバーコード配列B
Pおよびアダプター配列をさらに提供するプライマーの組合せを適用できることが好ましい。特定の実施形態では、リバースプライマーは、伸長したバーコード標識の3’末端に提供されることが好ましい、プライマー配列(2)と逆相補的であるプライマー配列(2)
Rを含み得る。さらにリバースプライマーにより、5’末端のアダプター配列(例えば、「S」)が有利に提供され得る。フォワードプライマーは、伸長したバーコード標識によって提供されるプライマー配列(1)(好ましくは5’末端)と同一の配列を含む3’末端のプライマー配列(1)を含み得る。さらに、フォワードプライマーは、バーコード配列B
Pおよび5’末端のアダプター配列(例えば、「P7」)を含み得る。増幅後、例えば、前記プライマーの組合せを用いた伸長したバーコード標識のPCR反応において、
図3Fに概略的に例示されている配列決定可能な反応産物が生成し得る。適用されるプライマーは違うように構成することができ、特定の配置に限定されるべきでない(例えば、リバースプライマーがバーコード配列B
Pを含んでもよい)。単一のプライマーのみを適用する場合には、プライマーは、3’末端のプライマー配列(2)
Rおよびバーコード配列B
P、ならびにアダプター配列(例えば、「S」または「P7」)を含むことが好ましい。そのような実施形態では、伸長したバーコード標識は、配列決定に直接適用することができる配列決定可能な反応産物を生成するために、5’末端のアダプター配列を含むことが好ましい。重ねて、本明細書に記載の通り、いくつかのサイクルのプライマー伸長を実施することにより、増幅に単一のプライマーのみを使用することができる。配列エレメントB
P、B
S、UMIおよびB
Tの配置は使用される実施形態に応じて変動させることができる。例えば、バーコード配列B
Pはプライマー配列(2)とアダプター配列(例えば、「S」)の間に位置してもよく、バーコード配列B
SとUMI配列の順序が逆であってもよく、また、増幅に単一のプライマーのみを使用する場合には、プライマー配列(1)がなくてもよい。
【0120】
好ましい実施形態によると、ステップd)における配列決定可能な反応産物の生成は、(i)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマー、および/または(ii)プライマーの組合せの使用を含み、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドおよび/またはプライマーの組合せは、
- 時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、
- 細胞含有マトリックスの位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、
- 固有の分子識別子(UMI)配列、および
- 配列決定用のアダプター配列(AS)、
からなる群から選択される1つまたは複数の配列エレメントを含み、
1つまたは複数の配列エレメントBT、BP、UMIおよび/またはASは、含まれる場合、検出用分子またはその逆相補物のバーコード標識とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドおよび/またはプライマーの配列領域の5’側に位置する。
【0121】
一実施形態によると、対であることが好ましいプライマーの組合せのうちの少なくとも1つのプライマーは、デバイスの異なる区画に含まれる全ての伸長産物について同じである。
【0122】
配列決定可能な産物内に提供されるUMIバーコードの長さは、最長40ヌクレオチド、好ましくは4~20ヌクレオチドであり得る。40塩基対の長さは、例えば、最大1モルの検出用分子、したがって、最大1モルの捕捉された目的の生体分子を標識するために十分である。UMIバーコードの増幅前に、各UMIバーコードは各捕捉用マトリックスに1つしか存在しない。
【0123】
区画および細胞培養デバイス
好ましい実施形態によると、ステップa)~c)およびステップd)は、完全にまたは部分的に、上に記載されており、下の第1の態様の方法のさらなる実施形態でさらに開示され、同じく本発明に適用される細胞培養デバイス(例えば、微細加工されたデバイス)を利用して実施される。例えば、ステップa)~d)を完全に細胞培養デバイスを利用して実施することができ、ステップd)において、(i)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマー、および/または(ii)プライマーの組合せの使用を、細胞含有マトリックスをインキュベートする区画とは異なる区画において、必要に応じて捕捉用マトリックスの存在下で行うことができる。一実施形態によると、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドであり得る少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用を、細胞培養デバイスのインキュベーションと同じ区画内で実施し、それから、捕捉用マトリックスを貯蔵位置に移行するか、または細胞含有マトリックスを含む区画内でポリメラーゼ反応を実施してバーコード標識を伸長させる(例えば、伸長したバーコード標識を生成する)ことができる。そのような実施形態には、プロセスを細胞培養デバイスに対して多重化様式で実施することができるという利点がある。あるいは、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを使用し、前記オリゴヌクレオチドをバーコード標識とハイブリダイズさせた後、捕捉用マトリックスを貯蔵位置/収集位置に移行することができる。上記の通り、貯蔵位置は、1つまたは複数の捕捉用マトリックスを貯蔵/保持することができる任意の位置であってよい(例えば、ウェルプレートのウェル、または、細胞含有マトリックスを含まない細胞培養デバイスの、別の区画を含む)。貯蔵位置において、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたバーコード標識をポリメラーゼ反応によって伸長させることができる。それに加えてまたはその代わりに、配列決定可能な反応産物を生成するために単一のプライマーまたはプライマーの組合せを使用することができる。
【0124】
一実施形態によると、
- 時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、
- 細胞含有マトリックスの位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、
- 固有の分子識別子(UMI)配列、および
- 配列決定用のアダプター配列(AS)
からなる群から選択される配列エレメントの付加を、捕捉用マトリックスを得、捕捉用マトリックスを貯蔵位置に移行した後に実施する。特定の例では、捕捉用マトリックスをステップc)の後に得、ウェルプレートのウェルに移行することができ、ステップd)を、好ましくはポリメラーゼ伸長および/または増幅反応を使用することによって実施する。そのような実施例では、位置情報を単一のプライマーもしくはプライマーの組合せによって、またはアダプターバーコードオリゴヌクレオチドによって組み入れることができる。したがって、ステップc)の後に、例えば、異なる時点であるが同じ位置から複数の捕捉用マトリックスを得、同じ貯蔵位置(例えば、同じウェルプレートのウェル)内に前記捕捉用マトリックスを移行することもそのような実施例の範囲内で適用可能である。したがって、有利に、費用効果が大きい配列決定可能な反応産物の生成(例えば、プライマー、試薬、酵素などの節約による)のためにPCR反応物をプールすることができる。
【0125】
一実施形態によると、捕捉用マトリックスをステップb)の後に貯蔵位置に移行することもでき、さらなるステップc)およびd)を実施することができる。捕捉用マトリックスを多重化様式で処理するために、少なくともステップc)を細胞培養デバイスまたは同様のデバイス内で実施することが好ましい場合がある。
【0126】
一実施形態によると、異なる区画に含まれる複数の細胞含有マトリックスについてステップa)~d)を少なくとも1サイクル実施し、ステップd)において生成した配列決定可能な反応産物は、分析される細胞含有マトリックスの位置情報を示すためのバーコード配列BPを含み、区画内に含まれる細胞含有マトリックスについて、別の区画内に含まれる細胞含有マトリックスについて生成されるものとはバーコード配列BPが異なる配列決定可能な反応産物が生成される。
【0127】
一実施形態によると、デバイスの異なる区画に含まれる鋳型を異なる亜型のプライマーまたはプライマーの組合せと接触させ、ここで、異なる亜型のプライマーまたはプライマーの組合せは、個々の区画の位置情報を示すそれらのバーコード配列BPが異なり、プライマーまたはプライマーの組合せの亜型は、各亜型に対して固有のものであるバーコード配列BP以外は同一であることが好ましい。
【0128】
一実施形態によると、ステップd)における増幅を、デバイスの異なる区画に含まれる鋳型を異なるプライマーの組合せと接触させることによって実施し、ここで、プライマーの組合せのうちの1つのプライマーは、デバイスの異なる区画に含まれる全ての鋳型に対して同じものであり、プライマーの組合せのうちの他のプライマーは、個々の区画の位置情報を示すバーコード配列BPが異なるものである。異なる区画内に提供されるプライマーの組合せは、各区画(すなわち、亜型)に対して固有のものであるバーコード配列BP以外は同一であることが好ましい。
【0129】
さらに、そのような実施形態では、捕捉用マトリックスが、異なる位置(例えば、異なる区画)の捕捉用マトリックスに対して異なる特定の貯蔵位置に貯蔵されるので、バーコード配列BPを提供することが必要ない場合さえある。そのような実施形態では、異なる位置の捕捉用マトリックスから生成した配列決定可能な反応産物のプールを実施しなくてよく、配列決定可能な反応産物を別々に配列決定することができる。そのような場合では、有利に、単一のプライマー配列またはプライマーの組合せはバーコード配列BPを含む必要はない。別の実施形態によると、レプリカとも称され得る、同じ反応条件(例えば、同じ細胞型、同じ反応条件、同じインキュベーション時間)の複数の捕捉用マトリックスを分析のために得る場合、生成した配列決定可能な反応産物に組み入れられるバーコード配列BPを提供する必要がない場合がある。そのような場合では、分析される目的の生体分子(例えば、配列決定可能な反応産物の配列決定を通じて)平均値(例えば、分子数、濃度)を得ることができる。そのような実施形態は、開示されている方法のスループットを増大させるために有用であり得る。
【0130】
一実施形態によると、配列決定可能な反応産物は、時間情報を示すためのバーコード配列(BT)を含み、ステップa)~c)および必要に応じてステップd)を異なる時点txにおいてnサイクル実施し、nは少なくとも2であり、xは異なる時点を示し、各サイクルで、バーコード配列BTが他の全ての実施されたサイクルのバーコード配列BTと異なる配列決定可能な反応産物が生成する。そのような実施形態は、1つよりも多くの捕捉用マトリックスを同じ区画から繰り返し得ることを有利に含む。特に、捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスと一緒に特定の時間間隔にわたってインキュベートすることができる。t1時点で、区画から捕捉用マトリックスを得(例えば、少なくともステップc)を実施し、必要に応じてさらにステップd)を一部実施した後)、貯蔵位置に移行する一方で細胞含有マトリックスは区画の内側に残すことができる。さらに別の捕捉用マトリックス(新しい捕捉用マトリックスまたは「新鮮な」捕捉用マトリックスとも称される)を区画の内側に残っている細胞含有マトリックスの隣に位置付けることができる。放出された生体分子を捕捉用マトリックスの捕捉用分子に繰り返し結合させることができ、これにより、目的の生体分子のプロファイリングされた経時的分泌を取得することが有利に可能になる。一実施形態によると、ステップa)~c)を1回よりも多く実施する。したがって、ステップc)において、捕捉用マトリックスを、本発明で下にさらに開示され、同じく適用される規定された時間間隔後に貯蔵位置に移行し、「新鮮な」捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスを含む区画に移行することが好ましい。したがって、開示される逆流チェリーピッキングを有利に適用することができる。ステップを1回よりも多く、好ましくは≧2回、≧3回、≧4回、より好ましくは≧5回実施することができる。一実施形態によると、ステップd)をステップc)の後、特に、1サイクルよりも多くの捕捉用マトリックスまたは複数の捕捉用マトリックスの移行を収集した後に繰り返し実施し、ステップd)を移行した捕捉用マトリックス全てに対して実施する。アダプター配列オリゴヌクレオチドをステップd)に適用する場合、捕捉用マトリックスを、上にさらに開示されており、前記開示も同じく本発明に適用されるハイブリダイゼーションおよび重合(ステップd)のステップ(aa)と称される)の後にまとめて収集することができる。その後、異なるサイクルの捕捉用マトリックスを組み合わせて、ステップd)、特にステップd)のステップ(bb)を実施することができる。
【0131】
本明細書に開示される時間情報を示すための異なるバーコード配列(BT)を含む配列決定可能な反応産物を、細胞培養プレート、例えば、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレートなどである細胞培養デバイスを使用して得ることもできる。そのような実施形態は、1つよりも多くの捕捉用マトリックスを同じ細胞培養プレートの区画、例えばウェルから得ることを有利に含む。一致して、t1時点で、捕捉用マトリックスを細胞培養プレートの区画、例えばウェルから得、必要に応じて移行し、一方で細胞含有マトリックスは区画の内側に残すことができる。さらに、新鮮な捕捉用マトリックスを、細胞培養プレートの区画の内側に残っている細胞含有マトリックスに付加することができる。放出された生体分子を捕捉用マトリックスの捕捉用分子に繰り返し結合させることができ、これにより、目的の生体分子のプロファイリングされた経時的分泌を取得することが有利に可能になる。細胞培養プレートの区画内での細胞含有マトリックスのインキュベーションを≧10分間、≧20分間、≧30分間、≧1時間、≧2時間、≧3時間、≧4時間、5時間またはそれよりも長く、最大1日、2日または数日から選択される時間間隔にわたって行うことができる。一実施形態によると、時間間隔は、30~120分間の範囲から選択される。繰り返しインキュベーションおよび結合を複数回、例えば、≧2回、≧3回、≧4回、より好ましくは≧5回実施することができる。
【0132】
ステップe)
好ましい実施形態によると、生成した配列決定可能な反応産物の配列決定を行うことを含むステップe)を実施する。
【0133】
方法は、ステップd)において異なるサイクルから生成した、および/または異なる区画から生成した、配列決定可能な反応産物をプールし、得られたプールの配列決定を行うことを含み得る。一実施形態によると、バーコード配列BS、バーコード配列BTおよび/またはバーコード配列BP、および必要に応じて、数量情報(UMI)、ならびに必要に応じて、配列決定用のアダプター配列を含有する異なるバーコード標識(例えば、オリゴヌクレオチド)のライブラリーを含む、複数の配列決定可能な反応産物(例えば、オリゴヌクレオチドライブラリー)を生成する。そのような場合では、配列決定可能な反応産物は、配列決定結果をそれぞれの少なくとも1つの細胞(バーコード配列BP)、時点(バーコード配列BT)、目的の生体分子(バーコード配列BS)および目的の生体分子の数量(UMI配列)と相関させるために必要な情報を有利にコードし得る。そのような場合では、生成した配列決定可能な反応産物をプールし(例えば、生成した配列決定可能な反応産物それぞれから規定された流体体積を取得し、例えば1つの反応管に一緒に入れる)、配列決定を行う/配列決定のために送付することができる。したがって、配列決定のために少数またはさらには単一のNGS試料を得ることができ、これは、配列決定用構成成分(例えば、プライマー、試薬、酵素など)の必要量を節約することができるので、費用効果が大きい。さらなる実施形態が本明細書に記載されている。
【0134】
配列決定前に、増幅反応を実施して、必要に応じて伸長させたバーコード標識の複数コピーを取得することが有利である。UMI配列を使用すれば正確な数量化がなお可能である。
【0135】
第1の態様による方法を使用して提供することができる複数の配列決定可能な反応産物の詳細は、本発明の第3の態様と併せても開示されている。
【0136】
プールできることが好ましい生成した配列決定可能な反応産物(複数可)について、任意の配列決定方法を使用して配列決定を行うことができる。配列決定可能な反応産物を、特定の配列決定技術によって配列決定可能なものにするために修飾する(例えば、特定のアダプターを付加することによって)さらなるステップが必要な場合には、これらのステップは、本開示の方法のステップd)全体を通して実施することができるか、または、その後、適用される配列決定技術の配列決定プロトコールの枠の中で実施することができる。開示されている方法は、具体的に適用される配列決定技術に限定されなくてよい。
【0137】
配列決定を次世代シーケンシング(NGS)によって実施することが好ましい。先行技術の次世代配列決定手法は、例えば、全て参照により本明細書に組み込まれる、Goodwin et al., Nature Reviews, June 2016, Vol. 17: pp. 333 - 351 "Coming of age: ten years of next-generation sequencing technologies"、Yohe et al., Arch Pathol Lab Med, November 2017, Vol. 141: pp. 1544 - 1557 "Review of Clinical Next-Generation Sequencing"およびMasoudi-Nejad, Chapter 2 "Emergence of Next-Generation Sequencing in "Next Generation Sequencing and Sequence Assembly" SpringerBriefs in Systems Biology, 2013に概説されている。合成による配列決定(SBS)およびライゲーションによる配列決定(SBL)などの、広く使用されており、本発明に適用可能な配列決定手法が言及されている。SBSとしては、以下の非限定的な配列決定技術:循環可逆的終結(例えば、Illumina、QIAGEN)および一塩基付加(IonTorrent)が挙げられる。SBLとしては、以下の非限定的な配列決定技術:SOLiDおよび完全Genomicsが挙げられる。非限定的なさらなる適用可能な配列決定技術としては、DNAマイクロアレイ、Nanostring、qPCR、光学マッピング、単一分子リアルタイム(SMRT)配列決定(例えば、Pacific Biosciences)、Oxford Nanopore技術が挙げられる。
【0138】
ステップf)、得られた配列決定データの解析
方法は、得られた配列決定データを評価することを含むステップf)をさらに含み得る。配列決定データの解析を有利に実施して、得られた配列決定データを1つまたは複数の目的の生体分子に関する情報と相関させることができる。
【0139】
特に、得られた配列決定データの、本明細書に記載の中心配列エレメントに基づく解析により、得られた配列決定データを、放出された目的の生体分子の型と相関させることが可能になる(例えば、BS配列エレメントから得られた配列決定データによって)。さらに、放出された目的の生体分子の数に対して(例えば、UMI配列エレメントから得られた配列決定データによって)、捕捉用マトリックスを得た培養時点に対して(例えば、BT配列エレメントから得られた配列決定データによって)、ならびに/または区画の位置、それぞれ細胞含有マトリックスおよび/もしくは捕捉用マトリックスの位置に対して(例えば、BP配列エレメントから得られた配列決定データによって)さらなる相関を引き出すことができる。引き出すことができるさらなる相関の数は、生成した配列決定可能な反応産物に組み入れられた配列エレメントに依存する。結果をダイアグラムの形態で、例えば、1つまたは複数の目的の生体分子の数量を経時的に異なる位置/細胞含有マトリックスについて、プロットすることができる。
【0140】
本明細書に開示される通り、配列決定のためのプールされた配列決定可能な反応産物を生成するために、生成した配列決定可能な反応産物をプールすることができる。プールに含まれる配列決定反応産物の個々の配列決定反応産物への弁別を、個々の配列決定反応産物の配列決定可能な反応産物に組み入れられる配列エレメントに基づいて実施することができる。したがって、有利に、配列決定データに基づいて、配列決定情報を抽出するため、およびそれに基づいて目的の生体分子の濃度/数を決定するために、解析アルゴリズムを使用することができる。解析方法(解析アルゴリズムとも称され得る)は、生成した配列決定可能な反応産物に組み入れられる提供される配列エレメントに応じて、および生成されたプールに応じて変動させることができる。理想的には、解析方法は、個別に捕捉された目的の生体分子を(プールされた)配列決定可能な反応産物の配列決定情報によって弁別することができるものであるべきである。
【0141】
一実施形態によると、解析アルゴリズムにより、まず、存在する場合、バーコード配列BP、次いでバーコード配列BT、次いでバーコード配列BS、次いでUMI配列を同定し、カテゴリーに分ける。したがって、有利に、方法を実施する際に前記データが配列決定可能な産物に組み入れられていれば、区画の位置、培養時点、目的の生体分子および目的の生体分子の数を決定することができる。
【0142】
同定およびカテゴリー化のための解析アルゴリズムの特定の順序は変動させることができる(例えば、第1のバーコード配列BT、次いでバーコード配列BP、次いでバーコード配列BS、次いでUMI配列;またはバーコード配列BS、次いでバーコード配列BT、次いでバーコード配列BP、次いでUMI配列;または第1のバーコード配列BP、次いでバーコード配列BS、次いでバーコード配列BT、次いでUMI配列;または第1のUMI配列、次いでバーコード配列BS、次いでバーコード配列BT、次いでバーコード配列BP)。一実施形態によると、解析アルゴリズムを複数回繰り返すことができる。一実施形態によると、アルゴリズムを、その時点についてその位置について目的の生体分子の濃度/数が決定されるまで、好ましくは全ての時点について全ての位置について全ての目的の生体分子の濃度/数が決定されるまで、必要に応じて何度も繰り返すことができる。
【0143】
他の処理ステップも本方法の枠の中で実施することができる。そのようなプロセスとしては、これだけに限定されないが、洗浄、精製、抽出、分離、遠心分離、沈降などが挙げられる。一実施形態によると、ステップc)またはd)の後に、1つまたは複数の細胞を追加的なステップで抽出することができ、細胞を、ゲノムまたは選択された遺伝子のNGS配列決定を含めた逐次的な解析手段によって解析することができる。
【0144】
第1の態様の方法のさらなる実施形態
第1の態様による方法のさらなる実施形態を以下に記載する:
【0145】
細胞含有マトリックス
マトリックス
一実施形態によると、細胞含有マトリックスは、1つまたは複数の細胞、ならびに水およびネットワークを含み、ネットワークは、水溶液に少なくとも部分的に可溶性である分子を含む。好ましい実施形態によると、マトリックスは、ハイドロゲルを含む。これには、水が豊富な環境が細胞に提供され、細胞が天然に遭遇する条件が模倣されるという利点がある。さらに、ハイドロゲルは、自由に改変することができる特定の環境が細胞に提供されるようにその特性を調整することができる。例えば、ハイドロゲルのメッシュサイズを、独立に調整し、組み合わせることができる、ハイドロゲル前駆体分子の濃度および/またはハイドロゲル前駆体分子の分子量によって調整することができる。調整可能なメッシュサイズにより、細胞含有マトリックスが、本開示の方法のための異なる接着性リガンド、生物活性化合物および機能的生体分子、例えば、抗体および核酸などの拡散に完全に適するものになる。特に、調整可能なメッシュサイズには、1つまたは複数の目的の生体分子を細胞含有マトリックスの外に拡散させることを可能にするという利点がある。一実施形態によると、1つまたは複数の目的の生体分子は、細胞含有ハイドロゲルの外に、細胞培養デバイスの区画、好ましくは隔離された区画中に拡散し得る。
【0146】
一実施形態では、少なくとも1つの細胞を含む細胞含有マトリックスは、球状粒子、好ましくは球状ハイドロゲル粒子である。好ましい実施形態では、マトリックスは、ポリアクリルアミド、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、PLAとPGAの共重合体(PLGA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)-co-ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロキサマー、メロキサポール)、ポロキサミン、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリ(ヒドロキシル酸)、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリアミノカーボネート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、例えば、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなど、および天然ポリマー、例えば、核酸、ポリペプチド、多糖、キトサンまたはポリスクロースなどの炭水化物、ヒアルロン酸、デキストランおよび同様のその誘導体、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、またはアルギン酸塩、およびこれだけに限定することなく、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、またはオボアルブミンを含むタンパク質、またはその共重合体、もしくは混和物で構成される群から選択されるポリマーまたはプレポリマーである、ハイドロゲルを含む。特に好ましい実施形態では、単量体は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリオキサゾリン(POx)から選択することができる。
【0147】
特にハイドロゲル形成のための構成単位として使用するために特に好ましいポリマーは、式(P1)
【化2】
(式中、
Rは、独立に、水素原子、1~18個の炭素原子を有する炭化水素(好ましくはCH
3、-C
2H
5)、少なくとも1つのヒドロキシ基を有するC
1~C
25炭化水素、少なくとも1つのカルボキシ基を有するC
1~C
25炭化水素、(C
2~C
6)アルキルチオール、(C
2~C
6)アルキルアミン、保護された(C
2~C
6)アルキルアミン(好ましくは-(CH
2)
2~6-NH-CO-R(R=tert-ブチル、パーフルオロアルキル))、(C
2~C
6)アルキルアジド、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオキサゾリンから選択される、または、Rは、残基R
4であり
Yは、残基R
4を少なくとも1つ含むグラフトを少なくとも1つ含有する部分であり、
T
1は、終結部分であり、残基R
4を含有し得、
T
2は、終結部分であり、残基R
4を含有し、
pは、1から10までの整数であり、
nは、1よりも大きく、好ましくは500を下回る整数であり、
mは、ゼロまたは少なくとも1、好ましくは1よりも大きく、好ましくは500を下回る整数であり、
合計n+mは、10よりも大きい、
xは、独立に、1、2または3であり、好ましくは、xは、独立に、1または2であり、最も好ましくは、xは1であり、
R
4は、独立に、
- 架橋結合のための、および/または
- 生物学的に活性な化合物との結合のための
少なくとも1つの官能基を含み、
必要に応じて、結合性部位を有する前記官能基を式(P1)の構造のそれぞれの部分と接続する(好ましくは分解性)スペーサー部分を含む)
ポリマーであり、
全てのm倍およびn倍の反復単位の全体がポリマー鎖内に任意の順序で分布しており、必要に応じて、ポリマーはランダム共重合体またはブロック共重合体である。
【0148】
式(P1)のm倍およびn倍の反復単位の全体は、ポリマー鎖を表す。前記ポリマー鎖内の前記反復単位の分布は、前記ポリマー鎖内の前記反復単位のあらゆる可能性のある配置で生じる。少なくとも2つの区別可能な反復単位が前記ポリマー鎖内に存在し(例えば、ポリマーは、異なる置換基Rを有する単位を含む、またはmはゼロとは異なる)、ポリマーはランダム共重合体またはブロック共重合体であり得る。
【0149】
mが1よりも大きい整数である場合には、n倍反復単位の部分から選択される1つの反復単位とm倍反復単位の部分から選択される単位が直接接続している、反復単位の交互の順序が特に好ましい。前記交互配置により、式(P1-1)
【化3】
(式中、oは、1よりも大きい整数であり、
T
1、T
2、x、RおよびYは式(P1)に従って定義される)
による、式(P1)のポリマーの特に好ましい実施形態が導かれる。
【0150】
式(P1)および(P1-1)によるポリマーは、p(1~10)の量の前記ポリマー鎖を含む。式(P1)または(P1-1)の構造によると、T1は、pの値に依存して、p=1に関して末端単位(末端キャップ)として、またはある量のpポリマー鎖を接続する中心もしくは分枝点部分として(p=2~10)のいずれかで機能する終結部分であると明白に定義される。式(P1)によると、T2は、末端残基(末端キャップ)であると明白に定義される。
【0151】
好ましい式(P1)のポリマーは、Rが、水素原子またはC1~C18アルキル基(好ましくは水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、iso-ペンチル、ネオペンチル、sec-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル)であり、mが1よりも大きい整数であることを特徴とする。
【0152】
別の好ましい実施形態では、ポリマー、特にハイドロゲル形成のための構成単位としてのポリマーは、Rが、水素原子、1~18個の炭素原子を有する炭化水素(好ましくはCH3、-C2H5)であり、Yが、生物学的に活性な化合物との結合のための少なくとも1つのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルを式(P1)の構造のそれぞれの部分と接続する少なくとも1つの分解性スペーサー部分を含む少なくとも1つのグラフトを含有する部分であり、T1が、必要に応じてペプチド核酸(PNA)配列を含む終結部分であり、T2が、必要に応じてペプチド核酸(PNA)配列を含む終結部分であり、nが、1よりも大きい整数であり、mが、1よりも大きい整数であり、合計n+mが、10よりも大きくかつ500よりも小さく、xが1であることを特徴とし、ここで、全てのm倍およびn倍の反復単位の全体がポリマー鎖内に任意の順序で分布しており、必要に応じて、ポリマーはランダム共重合体またはブロック共重合体である。
式(P1)および(P1-1)によるポリマーの特に好ましい第1の実施形態は、
T1が、第1のXNA残基(XNA1)および必要に応じてEDTS部分を含む終結部分であり、
T2が、第2のXNA残基(XNA2)および必要に応じてEDTS部分を含む終結部分であり、
pが、1または2と等しい、好ましくは1と等しく、
EDTSが、ポリマーの部位特異的分解のための酵素分解性標的部位、好ましくはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)標的部位であり、
XNAが、核酸または核酸類似体、好ましくはペプチド核酸(PNA)配列である
ことを特徴とする。
【0153】
式(P1)または(P1-1)によるパラメータの残りは、上記の通り定義される(上を参照されたい)。この第1の実施形態のポリマーは直鎖状ポリマーである。
【0154】
式(P1)および(P1-1)によるポリマーの特に好ましい第2の実施形態は、
T1が、残基R4を含まない終結部分であり、
T2が、必要に応じてEDTS部分と連結したXNA残基を含む終結部分であり、
pが、3~10、好ましくは3~10、好ましくは3~8、最も好ましくは3~6の整数であり、
EDTSが、ポリマーの部位特異的分解のための酵素分解性標的部位、好ましくはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)標的部位であり、
XNAが、核酸または核酸類似体、好ましくはペプチド核酸(PNA)配列である
ことを特徴とする。
【0155】
式(P1)または(P1-1)によるパラメータの残りは、上記の通り定義される(上を参照されたい)。この第2の実施形態のポリマーは星形ポリマーである。
【0156】
前記第2の実施形態の好ましいポリマーは、mがゼロであり、Y部分がポリマーに含まれないことを特徴とする。
【0157】
式(P1)および(P1-1)によるポリマーの特に好ましい第3の実施形態は、
T1が、XNA残基とは異なる残基R4を含む終結部分であって、R4が、必要に応じてEDTS部分と連結している、終結部分であり、
T2が、XNA残基とは異なる残基R4を含む終結部分であって、R4が、必要に応じてEDTS部分と連結している、終結部分であり、
pが、1または2と等しい、好ましくは1と等しく、
EDTSが、ポリマーの部位特異的分解のための酵素分解性標的部位、好ましくはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)標的部位であり、
XNAが、核酸または核酸類似体、好ましくはペプチド核酸(PNA)配列である
ことを特徴とする。
【0158】
式(P1)または(P1-1)によるパラメータの残りは、上記の通り定義される(上を参照されたい)。この第3の実施形態のポリマーは直鎖状ポリマーである。
【0159】
前記第3の実施形態の好ましいポリマーは、mがゼロであり、Y部分がポリマーに含まれないことを特徴とする。
【0160】
式(P1)および(P1-1)によるポリマーの特に好ましい第4の実施形態は、
T1が、残基R4を含まない終結部分であり、
T2が、XNA残基とは異なる残基R4を含む終結部分であって、R4が、必要に応じてEDTS部分と連結している、終結部分であり、
pが、3~10、好ましくは3~10、好ましくは3~8、最も好ましくは3~6の整数であり、
EDTSが、ポリマーの部位特異的分解のための酵素分解性標的部位、好ましくはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)標的部位であり、
XNAが、核酸または核酸類似体、好ましくはペプチド核酸(PNA)配列である
ことを特徴とする。
【0161】
式(P1)または(P1-1)によるパラメータの残りは、上記の通り定義される(上を参照されたい)。この第2の実施形態のポリマーは星形ポリマーである。
【0162】
前記第4の実施形態の好ましいポリマーは、mがゼロであり、Y部分がポリマーに含まれないことを特徴とする。
【0163】
式(P1)、(P1-1)およびそれらの4つの好ましい実施形態による好ましいポリマーは、EDTS部分、好ましくはMMP部分を含むポリマーであることを特徴とする。
【0164】
式(P1)、(P1-1)による、およびそれらの4つの好ましい実施形態による好ましいポリマーは、少なくとも2つの異なるR部分を含むことを特徴とする。
【0165】
式(P1)、(P1-1)による、およびそれらの4つの好ましい実施形態による好ましいポリマーは、pが、3~10、好ましくは3~10、好ましくは3~8、最も好ましくは3~6の整数であることを特徴とする。
【0166】
マトリックスは、参照により本明細書に組み込まれる、好ましくは主に架橋結合した形態の、PCT/EP2018/074527に開示されているポリマーおよび/または前駆体分子、特に、請求項101から155に開示されているポリマーおよび/または前駆体分子を含み得る。
【0167】
好ましい実施形態では、マトリックスは、ハイドロゲルを含む。ハイドロゲルは、参照により本明細書に組み込まれる、PCT/EP2018/074527に開示されているハイドロゲル、特に、請求項1から51および72に開示されているハイドロゲルであり得る。PCT/EP2018/074527において請求項52から71にはハイドロゲルを作製するための方法がさらに開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。さらに、ハイドロゲルを作製するためのキットがPCT/EP2018/074527において請求項99および100に開示されており、これらも参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
好ましい実施形態によると、マトリックスは3次元である。一実施形態によると、3次元とは、空間的に検知することができる環境を提供することと理解することができる。例えば、細胞は、平面マトリックスの場合の細胞の一方の側面だけでなく、自身の周りの3次元マトリックスを検知することができる。しかし、本開示の一実施形態によると、3次元とは、細胞が、例えば3次元マトリックスの縁にあり、細胞が、一方の側面では平面または曲面に遭遇し、他方の側面では3次元マトリックスに遭遇する準平面環境を細胞に提供することと理解することもできる。
【0169】
別の実施形態によると、3次元マトリックスによって、例えば、トポグラフィー、機械的ひずみ、およびずり応力などのさらなる構造的特色(時には当技術分野では4次元と記載されるが、本発明では「3次元」という用語に包含される)をマトリックスに付加することによって、さらなる特色を提供することができる。さらに、マトリックスは、時間応答性またはシグナル応答性であり得、これは、当技術分野では別の次元と理解することができる。一実施形態によると、マトリックスを分解するために、分解性分子を付加する。例えば、マトリックスが水素架橋を形成する(相補的な)分子ハイブリダイゼーション(例えば、DNA-DNAハイブリダイゼーション;PNA-PNAハイブリダイゼーション;PNA-DNAハイブリダイゼーションなど)によって架橋結合している場合、ハイブリダイゼーション架橋結合を妨害する分解性分子を付加することができる。それにより、架橋結合を遊離させることができ、その結果、マトリックスを、1つまたは複数の細胞を放出することができるように分解することができる。
【0170】
放出された細胞を、そのゲノムおよび/またはトランスクリプトームに関して2分子技法によってさらに分析することができる。ハイドロゲルの分解および細胞の回収により、細胞の表現型と基礎をなす遺伝子型が結び付けられる可能性がもたらされる。一実施形態によると、PCT/EP2018/074527、特に請求項84から96までに記載されているハイドロゲルマトリックスを分解するための方法が本開示と併せて適用可能であり、参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態によると、周囲のマトリックスをリモデリングするために、封入された細胞から分解性分子を分泌させる。例えば、マトリックスがマトリックスメタロプロテイナーゼ標的部位を含む場合、細胞により分泌されたマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)により、架橋結合したマトリックスが分解される。分解性酵素の分泌により、細胞の細胞運動性および走化性が可能になり得る。
【0171】
一実施形態によると、マトリックスは、粒子、好ましくは球状粒子である。マトリックスは、楕円形、ビーズ、球状、液滴、細長い形、棒状、長方形、および四角形から選択される形状を有する粒子であることが好ましい。マトリックスは、等尺性の粒子または主に等尺性の粒子に対応する規則的な形状を有し得る。別の実施形態によると、マトリックスは、不等形状に対応する不規則な形状を有し得る。
【0172】
一実施形態によると、マトリックスの直径は、≦1000μm、例えば、≦800μm、≦600μmもしくは≦400μmなど、好ましくは≦200μmであり得る。マトリックスの直径は、5μm~1000μm、および10μm~500μmの範囲から選択され得る、好ましくは、10μm~200μm、20~150μm、および50~100μmの範囲から選択され得る。一実施形態によると、マトリックスの直径は80μmである。好ましい実施形態によると、マトリックスの直径を区画のサイズに調整し、それにより、区画の内外への移行が可能になる。さらに、1つまたは複数のマトリックスを固定化するために、マトリックスの直径を微細加工された幾何学的形状のサイズに調整することができる。直径はマトリックスの最長軸とみなすことができる。
【0173】
1つまたは複数の細胞
本開示によると、細胞含有マトリックスは、少なくとも1つの細胞を含む。少なくとも1つの細胞は、原核細胞および/または真核細胞から選択することができる。少なくとも1つの細胞は、細菌、古細菌、植物、動物、真菌、粘菌、原生動物、および藻類からなる群から選択することができる。好ましい実施形態によると、1つまたは複数の細胞は、動物細胞、好ましくはヒト細胞から選択することができる。一実施形態によると、少なくとも1つの細胞は、細胞培養細胞株から選択することができる。別の実施形態によると、1つまたは複数の細胞は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、およびがん細胞からなる群から選択することができる。別の実施形態によると、少なくとも1つの細胞は、神経系、免疫系、泌尿器系、呼吸器系、肝膵-胆管系、胃腸系、皮膚系、心臓血管系、発生生物学(幹細胞を含む)、小児科、オルガノイド、およびモデル生物体の細胞に由来するものであり得る。別の実施形態によると、少なくとも1つの細胞は、赤血球、巨核球、血小板、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、破骨細胞(骨における)、樹状細胞、ミクログリア細胞、好中球顆粒球、好酸球顆粒球、好塩基球顆粒球、ハイブリドーマ細胞、肥満細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、網状赤血球、造血幹細胞、および血液および免疫系の委任前駆細胞を含めた、血液および免疫系細胞のうちの1つまたは複数に由来するものであり得る。一実施形態によると、少なくとも1つの細胞は、骨髄由来サプレッサー細胞M型(M-MDSC、腫瘍を支持するM2マクロファージ、CAR-T細胞、CAF(シクロホスファミド、ドキソルビシン、およびフルオロウラシル)で処置されたがん細胞、残留する腫瘍由来のがん細胞、再発した腫瘍由来のがん細胞、生検によって単離された細胞、腫瘍開始細胞(TIC)およびがん幹細胞、ならびに腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)のうちの1つまたは複数に由来するものであり得る。
【0174】
細胞含有マトリックスは、1つの細胞を含み得る。細胞含有マトリックスは、1つよりも多くの細胞を含み得る。別の実施形態によると、細胞含有マトリックスは、細胞のコロニーを含む。細胞のコロニーは3次元マトリックスの内側に位置し得ることが好ましい。別の実施形態によると、細胞数は方法の実施全体を通して変化する。例えば、細胞数は培養の経過にわたって増加する、培養の経過にわたって減少する、または培養の経過にわたって一定のままである。細胞のコロニーは、1つまたは複数の細胞の増殖によって形成することができ、細胞を3次元マトリックスの内側で増殖させることが好ましい。別の実施形態では、細胞含有マトリックスは、相互作用する少なくとも2つの異なる型の細胞を含む。特に、細胞含有マトリックスは、相互作用する2つの異なる型の細胞を含み得る。あるいは、細胞含有マトリックスは、相互作用する3つの異なる型の細胞、または相互作用する4つの異なる型の細胞、または相互作用する5つの異なる型の細胞、または相互作用する5つよりも多くの異なる型の細胞を含み得る。
【0175】
別の実施形態によると、1つよりも多くの細胞含有マトリックスを提供する。そのような実施形態によると、互いに相互作用する少なくとも2つの細胞が分析され、各細胞が3次元マトリックスの内側に位置するように、細胞含有マトリックスを提供することができる。次いで、細胞含有マトリックスを互いに極めて近傍に位置させることが好ましい。1つよりも多くの細胞含有マトリックスを提供する実施形態によると、細胞含有マトリックスは、1つまたは複数の細胞を含み得、提供される細胞含有マトリックス間で細胞数は同じであってもよく、異なってもよい。細胞数は、本開示の方法の実施全体を通して変化させることができる。例えば、細胞数を本開示の方法の実施全体を通して増加させ、増加は、異なる提供された細胞含有マトリックスについて等しい場合もあり、異なる場合もある。1つよりも多くの細胞含有マトリックスを提供する場合、細胞含有マトリックスごとに存在する細胞の型は同じであってもよく、異なってもよい。例えば、1つの細胞含有マトリックス内に免疫細胞を提供し、別の細胞含有マトリックス内にがん細胞を提供することができ、これにより、両方の型の細胞の相互作用を試験することが可能になる。
【0176】
一実施形態によると、分泌されたケモカインに関して細胞間の遊走を試験して、表現型機能を有する分泌された生体分子に関する情報と組み合わせることができる(例えば、T細胞のがん細胞へのマトリックスを通じた遊走(t細胞が対応するサイトカインを検出することを確証する)およびその後のがん細胞の死滅(上首尾のTCR結合ならびに効率的ながん細胞の死滅を確証する))。さらに、マトリックスは、効率的なT細胞によって実施されるマトリックスリモデリングを確証するためのMMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)部位を含有し得る。
【0177】
一実施形態によると、方法は、近傍、好ましくは極めて近傍にある単一の細胞(または細胞コロニー)の放出された分子の分析に有用であるだけでなく、異なる細胞型(例えば、免疫細胞とがん細胞)間の化学誘引物質に基づく細胞間相互作用の分析にも有用である。この目的のために、2つの別々の細胞含有マトリックス内に位置付けられた細胞間の化学誘引、遊走および表現型の相互作用を試験し、放出された目的の生体分子(例えば、分泌されたケモカイン)と結び付けることができる。これにより、分泌された目的の生体分子と別個の表現型機能の規定された組合せを同定することが可能になる。例えば、T細胞の異なる細胞マトリックス内に位置するがん細胞へのマトリックスを通じた上首尾の遊走により、T細胞ががん細胞由来のサイトカインおよび/またはケモカインを検出し、その後、TCR認識によってがん細胞を死滅させることが確証される。
【0178】
一実施形態によると、方法は、化学誘引物質に基づく細胞間相互作用の分析に有用であるだけでなく、直接の細胞間相互作用の分析にも有用である。この目的のために、同じまたは異なる型の細胞を1つの細胞含有マトリックス(例えば、ハイドロゲルマトリックス)内に共封入し、必要に応じて、(PCT/EP2018/074526)に開示されている細胞中心化法によって直接接触させることができる。その後、経時的な分泌プロファイルを本開示に従ってモニタリングすることができる。例えば、免疫細胞とがん細胞を1つの細胞含有マトリックス(例えば、ハイドロゲルマトリックス)内に共封入することができ、その後、経時的分泌プロファイルを本開示に従ってモニタリングすることができる。
【0179】
一実施形態では、特定の細胞型の単一の細胞を1つマトリックス内に封入し、その後、少なくとも1つの位置付け手段を含む(微細加工された)区画内に位置付ける。放出された目的の生体分子の分析を、開示されている通り、捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスに対して極めて近傍に位置付けることによって実施する。これには、不均一な細胞集団の特徴付けおよびがん幹細胞などの独特かつ臨床的に意義のある機能を有する細胞の同定のために特に重要である、単離された単一の細胞の分泌プロファイルを生成することができるという利点がある。好ましい実施形態によると、少なくとも1つの細胞を封入するための方法を、参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2018/074527において請求項73から83に記載されている通り実施する。
【0180】
一実施形態では、細胞型が異なる2つの細胞を同じマトリックス内に封入し、その後、(微細加工された)区画内に位置付ける。共封入は、DEPに基づく選別手順などの対応する選別機構を含む確立された技法を使用した液滴形成によって実施することができる(例えば、PCT/EP2018/074526;Mazutis et al., 2013, Nature Protocols, 8, pages 870 to 891;Kleine-Bruggeney et al., 2019, Small, 15(5):e1804576に開示されている)。その後、マトリックス(すなわち、捕捉用マトリックス)を同じ(微細加工された)区画内の細胞含有マトリックスの隣または近傍に位置付ける。これには、2つの異なる細胞型の切り離された相互作用を分析することができるという利点がある。例えば、1つの細胞は、近隣の細胞に影響を及ぼす生体分子を分泌し、それにより、ある特定の細胞応答が誘導され得る。これは、がん免疫療法の分野で特に有利である。例えば、単一のがん幹細胞と単一の免疫細胞および対応する分泌された生体分子の相互作用により、細胞挙動および機能に関する重要な洞察がもたらされ得る。2つの細胞型を1つのマトリックスに封入することにより、2つの細胞型間の距離を最小化し、それにより、細胞が直接接触する機会を増加させることができる。これは、所望の細胞応答を誘導するために細胞間接触が必要なプロセスにおいて特に有利である。
【0181】
一実施形態では、細胞型が異なる2つの細胞を2つの別々のマトリックス内に封入する。その後、捕捉用マトリックスを同じ(微細加工された)区画内の細胞含有マトリックスの隣または極めて近傍に位置付ける。これには、2つの細胞型を制御された様式で空間的に分離することができるという利点がある。したがって、別々のマトリックス(例えば、ハイドロゲルマトリックス)内に提供された2つの単一の細胞間のパラ分泌シグナル伝達を調査することが可能である。
【0182】
一実施形態では、細胞型が異なる2つまたはそれよりも多くの細胞を別々のマトリックス内に封入し、その後、(微細加工された)区画内で互いに近傍に位置付ける。その後、捕捉用マトリックスを同じ(微細加工された)区画内の細胞含有マトリックスの隣または近傍に位置付ける。これには、複数の細胞型間の相互作用およびシグナル伝達を試験することができるという利点がある。
【0183】
1つの例示的な実施形態では、細胞傷害性T細胞、マクロファージおよび腫瘍細胞を別々のマトリックス(好ましくはハイドロゲルマトリックス)内に封入し、その後、(微細加工された)区画内で互いに近傍に位置付ける。その後、捕捉用マトリックスを同じ(微細加工された)区画内で細胞含有マトリックスの近傍に位置付ける。この実施形態の枠の中で、T細胞の異なる細胞マトリックス内に位置するがん細胞へのマトリックスを通じた遊走により、がん細胞由来のサイトカインおよび/またはケモカインのT細胞による検出、マトリックス分解能およびTCR認識によってがん細胞を死滅させる能力が確証される。
【0184】
一実施形態によると、放出される目的の生体分子は、1つの細胞によって放出される。別の実施形態によると、放出される目的の生体分子は、1つよりも多くの細胞によって放出される。さらに、目的の生体分子を放出する細胞の数は、本開示による方法の実施全体を通して変化させることができる。あるいは、細胞の数は、他の方法または手順を実施する場合に変化させることができる。放出の方式は本開示に従って限定されなくてよい。細胞は、分泌小胞を介して目的の生体分子を放出し得る。細胞は、エキソサイトーシスを介して目的の生体分子を放出し得る。
【0185】
目的の生体分子
本開示によると、細胞は、1つまたは複数の目的の生体分子を放出し得る。一実施形態によると、第1の態様による方法により、放出された目的の生体分子のプロファイルを決定することが可能になる。放出された目的の生体分子のプロファイルとは、放出され、かつ/または捕捉用分子が結合した目的の生体分子の絶対量または相対量の時間依存的な測定値と理解することができる。1つまたは複数の生体分子は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質(例えば、メタロプロテアーゼなどの酵素)およびこれらの組合せで構成される群から選択されることが好ましい。他の目的の生体分子も、本開示による方法によって放出させ、分析することができる。例えば、炭水化物、核酸、小有機分子または脂質、グリコペプチドおよびこれらの組合せを放出させ(例えば、分泌を介して)、分析することができる。
【0186】
一実施形態によると、1つまたは複数の型の目的の生体分子を放出させる。一実施形態によると、少なくとも1種、少なくとも2種、または少なくとも3種の異なる型の目的の生体分子を放出させ、好ましくは少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、または少なくとも9種の異なる型の目的の生体分子、より好ましくは10種またはそれよりも多くの異なる型の目的の生体分子を放出させ、分析する。一実施形態によると、1つの型の生体分子を放出させ、分析する。
【0187】
好ましい実施形態によると、1つまたは複数の目的の生体分子の放出は、生体分子の分泌によって起こる。特定の実施形態によると、全ての目的の生体分子が分泌によって放出される。
【0188】
好ましい実施形態によると、目的の生体分子は、サイトカインから選択することができる。さらに、1つまたは複数の目的の生体分子は、サイトカイン、ケモカイン、インターフェロン(INF)、インターロイキン(IL)、リンフォカイン、および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択することができる。別の実施形態によると、1つまたは複数の目的の生体分子は、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、IL-36β、IL-36γ、IL-37、IL-1Ra、IL-36RaおよびIL-38を含めたインターロイキン(IL);I型IFN(例えば、IFN-α(IFN-α1、IFN-α2、IFN-α4、IFN-α5、IFN-α6、IFN-α7、IFN-α8、IFN-α10、IFN-α13、IFN-α14、IFN-α16、IFN-α17およびIFN-α21などの13種の異なる亜型にさらに分類される)、およびIFN-β、IFN-δ、IFN-ε、IFN-ζ、IFN-κ、IFN-ν、IFN-τ、IFN-ω)、II型IFN(例えば、IFN-γなど)およびIII型IFN(例えば、IFN-λ1およびIFN-λ2/3など)を含めたインターフェロン(INF);TNF-α、TNF-β、CD40リガンド(CD40L)、Fasリガンド(FasL)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、およびLIGHTなどの腫瘍壊死因子(TNF);CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/CCL10、CCL11、CCL12、CL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、XCL1、XCL2、CX3C、およびCX3CL1を含めたケモカイン;パーフォリン、グランザイム、MCP-1、MCP-2、MCP-3、ランテス、IP-10、オステオポンチン、MIP-1a、MIP-1b、MIP-2、MIP-3a、MIP-5、VEGF、IGF、G-CSF、GM-CSF、エオタキシン、PDGF、レプチン、およびFlt-3などの他のサイトカイン;ならびに/またはこれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0189】
一実施形態によると、1つまたは複数の目的の生体分子は、各時点に対して独立に選択される。例えば、実験の始めにEGFおよびVEGFなどの増殖因子を分析し、実験の半ばにCCL2およびCCL5などのケモカインを分析し、実験の最後にIL-6およびIL-10などのインターロイキンを分析する。
【0190】
捕捉用マトリックス
マトリックス
一実施形態によると、捕捉用マトリックスは、ハイドロゲルによって提供することができ、ここで、ハイドロゲルは、ハイドロゲルによって提供される細胞含有マトリックスと併せて上に記載されている特色のうちの1つまたは複数を有し得る。さらに、捕捉用マトリックスは、水溶液に少なくとも部分的に可溶性であり、ハイドロゲルによって提供される細胞含有マトリックスと併せて上に記載されている分子のうちの1つまたは複数に由来し得る分子を含むハイドロゲルによって提供することができる。別の実施形態によると、捕捉用マトリックスは、特に上記の構築物としてまたはハイドロゲル形成のための1つまたは複数のポリマーを含むハイドロゲルによって提供することができる。
【0191】
好ましい実施形態では、捕捉用マトリックスは、ハイドロゲルを含み、ハイドロゲルは球状形状を有することが好ましい。マトリックスがハイドロゲルを含む好ましい実施形態では、ポリマーまたはプレポリマーは、当技術分野の当業者により、細胞含有マトリックスと併せて上に記載されているポリマー、プレポリマーまたは前駆体のうちの少なくとも1つから選択される。捕捉用マトリックスは、参照により本明細書に組み込まれる、PCT/EP2018/074527に開示されているポリマーおよび/または前駆体分子、特に、請求項101から155に開示されているポリマーおよび/または前駆体分子を含み得る。好ましい実施形態では、捕捉用マトリックスは、ハイドロゲルを含む。ハイドロゲルは、参照により本明細書に組み込まれる、PCT/EP2018/074527に開示されているハイドロゲル、特に、請求項1から51および72に開示されているハイドロゲルであり得る。PCT/EP2018/074527において請求項52から71には、ハイドロゲルを作製するための方法がさらに開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。さらに、ハイドロゲルを作製するためのキットがPCT/EP2018/074527において請求項99および100に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0192】
好ましい実施形態では、マトリックスは、ハイドロゲルを含み、ハイドロゲルは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、PLAとPGAの共重合体(PLGA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)-co-ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロキサマー、メロキサポール)、ポロキサミン、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリ(ヒドロキシル酸)、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリアミノカーボネート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、例えば、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなど、および天然ポリマー、例えば、核酸、ポリペプチド、多糖またはポリスクロースなどの炭水化物、ヒアルロン酸、デキストランおよび同様のその誘導体、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、またはアルギン酸塩、およびこれだけに限定することなく、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、またはオボアルブミンを含むタンパク質、またはその共重合体、もしくは混和物で構成される群から選択されるポリマーまたはプレポリマー(好ましくは主に架橋結合した状態)を含む。特に好ましい実施形態では、単量体は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキサゾリン(POx)およびポリアクリルアミド(PAM)から選択することができる。
【0193】
好ましい実施形態によると、捕捉用マトリックスは、3次元であり得る。上記の通り、他の特色も捕捉用マトリックスに組み入れることができ、本開示を考慮して適用可能であり得る。
【0194】
さらに、捕捉用マトリックスは、粒子、好ましくは球状粒子であり得る。細胞含有マトリックスと併せて上に記載されているものを含めた他の形状も捕捉用マトリックスに適用可能である。
【0195】
捕捉用マトリックスの直径は、5μm~1000μm、例えば10μm~500μmなどの範囲から選択され得、10μm~200μm、20~150μm、および50~100μmの範囲から選択されることが好ましい。直径に関するさらなる特徴は細胞含有マトリックスについて上に記載されており、捕捉用マトリックスにも適用可能であり得る。
【0196】
一実施形態では、異なる型の捕捉用分子(例えば、抗体)を含む少なくとも2つの捕捉用マトリックスを、その後、同じ(微細加工された)区画内の細胞含有マトリックス(1つまたは複数)の隣または近傍に位置付ける。
【0197】
別の実施形態では、捕捉用マトリックスは、1つまたは複数の型の捕捉用分子、特に抗体を含む。捕捉用マトリックスは、ポリマー粒子(例えば、ビーズ)、磁気粒子、ハイドロゲル球体/マトリックス/ビーズ、または樹脂またはこれらの組合せから選択することができる。
【0198】
別の実施形態では、少なくとも1つの捕捉粒子をマトリックス、好ましくはハイドロゲルマトリックス内に封入する。少なくとも1つの捕捉粒子は、1つまたは複数の型の捕捉用分子を含み、ポリマー粒子(例えば、ポリスチレンビーズ)、磁気粒子、ハイドロゲル球体/マトリックス/ビーズ、樹脂または捕捉用マトリックスまたはこれらの組合せからなる群から当業者が選択することができる。粒子の直径は、≦200μm、例えば、≦100μmまたは≦80μm、好ましくは≦30μmなどであり得る。少なくとも1つの捕捉粒子の直径は、0.1μm~100μm、および1μm~50μmの範囲から選択され得、0.1μm~80μm、0.5~50μm、および1~30μmの範囲から選択されることが好ましい。捕捉粒子の直径は、前記少なくとも1つの捕捉粒子が封入されているマトリックスよりも小さいことが好ましい。ハイドロゲルマトリックスのためのポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリオキサゾリン(POx)、ポリアクリルアミド(PMA)およびアガロースから選択することができる。
【0199】
本明細書に開示される通り、捕捉用マトリックスを、放出された1つまたは複数の目的の生体分子と結合させるために、細胞含有マトリックスと異なる順序で接触させることができる。
【0200】
捕捉用分子
好ましい実施形態によると、捕捉用マトリックスは、1つまたは複数の型の捕捉用分子を含む。特に、1つまたは複数の型の捕捉用分子を捕捉用マトリックスに結合させることができる。1つまたは複数の型の捕捉用分子を、捕捉用分子が目的の生体分子と結合することができるように、例えば、目的の生体分子の捕捉用マトリックスへの拡散を可能にする捕捉用マトリックスを捕捉用分子に提供することによって、捕捉用分子の目的の生体分子との結合が妨げられないように捕捉用分子を結合させることによって、結合させる。例示的な実施形態では、1つまたは複数の型の捕捉用分子を、
- 以下からなる群から選択される共有結合形成:
〇酵素的触媒反応
■トランスグルタミナーゼ第XIII因子a
〇非酵素的触媒
■クリックケミストリー
■光触媒
〇非触媒反応
■銅フリーの高度に選択的なクリックケミストリー
■マイケル型付加
■ディールス・アルダーコンジュゲーション
- 非共有結合形成:
〇以下によって形成される水素結合:
■核酸
〇疎水性相互作用
〇ファンデルワールス
〇静電相互作用
に基づく反応(複数可)によって組み入れることができる。
【0201】
一実施形態によると、1つまたは複数の型の捕捉用分子の前記捕捉用マトリックス(例えば、オキサゾリンに基づくハイドロゲルマトリックス)への組み入れをペプチド核酸によって実施する。ハイドロゲル前駆体分子由来のNHS-エステルとPNAオリゴマーの第一級アミンの間のアミド結合形成によってPNAオリゴマーを組み入れることができる。捕捉用分子を相補的なPNAオリゴマーと融合することができる。次いで、融合産物を2つのPNAオリゴマー間の水素結合形成によって固定化することができる。モル過剰の相補的なPNAオリゴマーを添加することによって捕捉用分子を取り出すことができる。相補的なPNAオリゴマーは、PNA/捕捉融合産物と競合し得る。あるいは、1つまたは複数の型の捕捉用分子を相補的な修飾PNAオリゴマーと融合することができる。修飾は、2つのPNA分子間の光切断可能なリンカーを含み得る。2つのPNAオリゴマー間の水素結合形成後、捕捉用分子をUV照射によって容易に取り出すことができる。どちらの場合でも、捕捉用分子は、抗体、小分子、抗原、タンパク質結合性ドメイン、核酸、多糖またはアプタマーを含み得る、またはそれからなり得る。
【0202】
捕捉用分子、特に捕捉抗体の捕捉用マトリックスへの付着は、これだけに限定されないが、ディールズ・アルダー反応、マイケル付加、シュタウディンガーライゲーション、アフィニティタグ、ビオチン-アビジンおよびネイティブな化学的ライゲーションなどのライゲーション化学を含めた、当業者に周知の任意の反応によって実施することができる。
【0203】
好ましい実施形態によると、1つまたは複数の型の捕捉用分子を、捕捉用分子がステップa)~c)、好ましくはステップa)~d)全体を通して放出されないように、捕捉用マトリックスに付着させる。1つまたは複数の型の捕捉用分子をPNAのハイブリダイゼーションによって付着させる特定の実施形態では、PNA配列ハイブリダイゼーションを、ステップa)~c)およびステップd)(aa)のいずれにわたっても脱ハイブリダイゼーションが生じないように調整し、増幅(例えば、ステップd)(bb))前に、伸長したバーコードオリゴヌクレオチドを1つまたは複数の型の検出用分子から放出させ、捕捉用マトリックスを取り出すことが好ましい。
【0204】
一実施形態によると、1つまたは複数の型の捕捉用分子は、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、ポリマー、および小有機分子からなる群から選択される。一実施形態によると、1つまたは複数の型の捕捉用分子は、抗体、抗体断片、ハイブリッド抗体、組換え抗体、単一ドメイン抗体(ナノボディ)、抗体の少なくとも一部分を含む組換えタンパク質、キメラ抗体、ヒト化抗体、多パラトピック抗体、多重特異性抗体、融合タンパク質、アプタマー、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチドアプタマー、受容体、受容体断片、分子認識部分を含む非抗体タンパク質足場-DARPin(設計アンキリンリピートタンパク質)、リピボディ(Repebody)、アンチカリン、フィブロネクチン、アフィボディ(affibody)、工学的に操作されたクニッツドメインを含む-アファーマータンパク質、アディロンタンパク質、リポカリン、脂質誘導体、リン脂質、脂肪酸、トリグリセリド、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、ポリ(エチレン)グリコール、スペルミン、スペルミン誘導体または類似体、ポリ-リシン、ポリ-リシン誘導体または類似体、ポリエチレンイミン、ジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストラン、コレステロール、ステロール部分、カチオン性分子、疎水性分子および両親媒性分子からなる群から選択され、抗体、抗体断片、およびアプタマーからなる群から選択されることが好ましい。好ましい実施形態によると、1つまたは複数の型の捕捉用分子は、抗体またはその抗原結合性断片である。一実施形態によると、抗体を捕捉用分子の一種として使用し、抗体は、第1の目的の生体分子の第1のエピトープに特異的に結合するものである。この概念をさらに別の目的の生体分子にも使用することができる。
【0205】
本開示によると、捕捉用マトリックスは、1つまたは複数の型の捕捉用分子を含み得、捕捉用分子の各型が目的の生体分子に特異的に結合することができる。一実施形態によると、捕捉用マトリックスは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、または少なくとも10種の異なる型の捕捉用分子を含み、各捕捉用分子が目的の生体分子に特異的に結合することができ、捕捉用分子の各型が異なる型の生体分子に結合することができる。同じ型の目的の生体分子(例えば、同じエピトープまたは異なるエピトープ)に結合する異なる種類の捕捉用分子(例えば、抗体および抗体断片)によって捕捉用分子の一種が提供されることは本開示の範囲内に入る。好ましい実施形態によると、1つの型の捕捉用分子は、複数の同一の捕捉用分子を含む。各型の複数の捕捉用分子を捕捉用マトリックスに結合させることが好ましい。これにより、放出された目的の生体分子の効率的な捕捉が確実になる。
【0206】
一実施形態では、自己分泌およびパラ分泌シグナル伝達などの、細胞の天然の表現型を改善するために、捕捉用分子(例えば、固定化された検出用抗体)を含む捕捉用マトリックスを遅延様式で提供することができる(例えば、位置付けられた捕捉用マトリックスを区画内に位置付けることによって)。種々のサイトカインの放出は、互いに依存し得る(例えば、IL-2とIL-5)。例えば捕捉用分子への結合による捕捉に起因してIL-2が減少すると、IL-5は分泌されず、それにより、偽陰性の結果が生じる。そのような影響は、細胞を捕捉用分子の存在を伴わずに長期間培養し、その後、捕捉用マトリックスに捕捉用分子を添加するによって回避することができる。捕捉用マトリックスの位置付けの間の目的の生体分子の喪失を防止するために、二相性区画生成(例えば、PCT/EP2018/074526に開示されている通り)を使用することができる。したがって、水相内に位置する細胞含有マトリックスをまず細胞培養デバイス(好ましくは微細加工された細胞培養デバイス)の区画内に位置付ける。その後、水相を油相(例えば、フッ素化油(例えば、HFE-7500)など)と交換し、細胞含有マトリックスを規定された期間にわたってインキュベートする。次いで、水性液滴内に位置する捕捉用マトリックスを油相を介して細胞含有マトリックスの位置に送達する。これには、分泌された分子が、捕捉用マトリックスが細胞含有マトリックスの隣に位置付けられてすぐに洗い流されることがないという利点がある。
【0207】
検出用分子
一実施形態によると、1つまたは複数の型の検出用分子は、細胞含有マトリックスの少なくとも1つの細胞によって分泌された1つまたは複数の目的の生体分子に結合することができる。好ましい実施形態によると、1つまたは複数の型の検出用分子は、1つまたは複数の目的の生体分子の、1つまたは複数の型の捕捉用分子が結合する領域とは異なる領域に結合する。したがって、本開示の好ましい実施形態によると、捕捉用分子と検出用分子は、目的の生体分子の異なる領域を認識する分子認識部分を含む。そのような実施形態の利点は、2つの分子が目的の生体分子との結合について競合しないが、どちらも同じ生体分子に結合できることである。
【0208】
検出用分子は、結合性分子と、検出用分子の特異性を示すバーコード配列BSを含むバーコード標識(核酸オリゴマーであり得る)との融合分子であり得る。一実施形態によると、検出用分子は、小分子、抗原、抗体、タンパク質結合性ドメイン、核酸、多糖またはアプタマーを含む(適切な選択肢は捕捉用分子と併せても記載されており、それぞれの開示が参照される)。検出用分子は、目的の生体分子に結合する抗体または抗体断片を含むことが好ましい。捕捉用分子の結合パートナー(目的の生体分子)をハイドロゲルマトリックス内で直接分析することもでき、分離後に分析することもできる。この手順により、単一の細胞または小さなコロニーの目的の生体分子の多重化様式での経時プロファイリングが可能になる。
【0209】
好ましい実施形態によると、1つまたは複数の型の検出用分子をステップc)において添加する。検出用分子の型と捕捉用分子の型を同じ数で提供することも好ましい場合がある。そのような有利な実施形態により、異なる型のものであり得る1つまたは複数の目的の生体分子をまず捕捉し、捕捉された生体分子を対応する型の検出用分子と逐次的に結合させることが可能になる。したがって、目的の生体分子をまず捕捉し、その後、バーコード標識を含む検出用分子を結合させて、目的の生体分子を直接または逐次的に標識し、その結果、目的の生体分子を逐次的に検出および/または分析することができる。したがって、検出される目的の生体分子それぞれが、対応する型の捕捉用分子および対応する型の検出用分子を有する。したがって、第1の目的の生体分子としてサイトカイン1に対して、サイトカイン1に特異的に結合する、マッチする型の捕捉用分子ならびにサイトカイン1に特異的に結合する、マッチする型の検出用分子が存在する。第2の目的の生体分子としてサイトカイン2に対して、サイトカイン2に特異的に結合する、マッチする型の捕捉用分子ならびにサイトカイン2に特異的に結合する、マッチする型の検出用分子が存在する。さらに別の目的の生体分子に対して同じ概念を使用することができる。型の検出用分子の好ましい数は、捕捉用分子の型の数と併せて上に記載されており、本明細書ではこれらの数を参照し、これは、検出用分子の型の数にも適用される。
【0210】
別の実施形態によると、型の数が異なる検出用分子および捕捉用分子を適用することができる。そのような実施形態は、捕捉用分子の一種が、1つよりも多くの型の目的の生体分子に結合することができる(例えば、目的の生体分子が同様のまたは等しい認識部分を有する)場合に有用であることが見いだされ得る。その後、検出のために、目的の生体分子間を弁別し、したがって、捕捉用分子の型の数よりも多い型の検出用分子を提供することが有用であり得る。逆もまた同じであり、検出用分子よりも多い型の捕捉用分子を提供することも有用であり得る(例えば、検出用分子がいくつかの同様の目的の生体分子に結合し、異なる型の生体分子(例えば、生体分子型の亜種)間の弁別が必要ないおよび/または所望でない場合)。
【0211】
一実施形態では、バーコード標識とそれぞれの検出用分子の付着部は、リンカーであり得る。リンカーは、これだけに限定されないが、光切断可能なリンカー、加水分解性リンカー、酸化還元により切断可能なリンカー、リン酸に基づいて切断可能なリンカー、酸により切断可能なリンカー、エステルに基づいて切断可能なリンカー、ペプチドに基づいて切断可能なリンカー、光切断可能なリンカー、およびこれらの任意の組合せを含む切断可能なスペーサーであることが好ましい。リンカーは、光によって切断することができるものであることが好ましい。
【0212】
一実施形態では、検出用分子のバーコード標識を、蛍光有機分子(例えば、FITC)、ピレン、アットまたは量子ドットなどの蛍光マーカーで標識する。1つまたは複数の型の捕捉用分子と結合する目的の生体分子の量は、蛍光標識された検出用分子(例えば、抗体)の蛍光強度を測定することによって決定することができる。検出用分子の蛍光強度は捕捉用マトリックス内に位置する検出用分子の量に比例し、その検出用分子の量が今度は結合した目的の生体分子に比例するので、結合した目的の生体分子の間接的な数量化が可能である。捕捉用マトリックスの蛍光強度は、落射蛍光顕微鏡、共焦点レーザー走査顕微鏡、高含有量スクリーニングシステムまたは超分解能顕微鏡、蛍光活性化細胞スキャニング(FACS)または任意の他の光学的セットアップなどの光学的セットアップを使用して分析することができる。IL-6などの個々のサイトカインの蛍光シグナルを、オリゴヌクレオチド伸長反応による高度に多重化されたサイトカイン数量化のトリガーとして使用することができる。したがって、少数のサイトカインの蛍光シグナルを、サイトカインプロファイル全体を数量化すべきか否かを決定するための基礎として使用することができる。検出用分子を、異なる励起および放出波長を有する異なる蛍光分子または量子ドットで標識することができ、それにより、対応する光学的セットアップを使用して、規定された特異性を有する検出用分子を読み取ることが可能になる(多重化)。蛍光標識された検出用分子の使用は、当技術分野において、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)などの他の技法から十分にわかる。
【0213】
細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを含むデバイス
好ましい実施形態によると、細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを、デバイスの隔離された区画内に互いに近傍に提供する。別の実施形態によると、複数の細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを、複数の区画、特に、互いから隔離することができる隔離された区画(1つまたは複数)を含む細胞培養デバイス内に提供し、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを、細胞培養デバイスの区画、特に隔離された区画内に提供する。好ましい実施形態によると、本開示の方法を実施するために利用することができるデバイスは、PCT/EP2018/074526において請求項40から73に開示されているデバイスに対応し、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。他のデバイスも本明細書の他の箇所および実施例に記載されている。
【0214】
好ましい実施形態によると、方法を、細胞培養デバイス、好ましくは微細加工された細胞培養デバイスを利用して実施する。デバイスは、1つまたは複数の細胞含有マトリックスを収容するための区画を含み得る。デバイスは、細胞含有マトリックスを収容するための区画のアレイを含むことが好ましい。さらに、デバイスは、流体を区画に供給するための流体レザバーおよび流体チャネルを含み得る。デバイスは、区画を閉鎖された状態と開放された状態の間で切り換えるための手段をさらに含むことが好ましく、閉鎖された状態は、区画内に存在する流体が区画内に存在しない流体と接触していない状態に対応し、開放された状態は、区画内に存在する流体が区画内に存在しない流体と接触している状態に対応する。閉鎖された状態の区画は、隔離された区画に対応し得、少なくとも部分的に閉鎖系を提供することができる。
【0215】
デバイスは、1つまたは複数の微細加工された弁を含み得、1つまたは複数の微細加工された弁は、区画を開放された状態と閉鎖された状態の間で切り換えることができることが好ましい。好ましい実施形態によると、微細加工された弁は、第1のチャネル、第2のチャネル、第1のチャネルと第2のチャネルを接続する接続チャネル、接続チャネル内に配置された弁部分を含み、弁部分は、接続チャネルを選択的に開閉するように適合されている。さらに、微細加工された弁は、少なくとも3つの層を含み得、第1のチャネルは第1の層内に位置し、第2のチャネルは第3の層内に位置し、弁部分は第2の層内に位置し、第2の層は第1の層と第3の層の間に配置されている。
【0216】
デバイスは、微細加工された幾何学的形状および粒子、特にハイドロゲルマトリックスの取り扱いおよび処理のための手段を含み得る。前記取扱いおよび処理としては、例えば、粒子を所定の場所に位置付けるための幾何学的形状および手段、前記粒子のその位置での所定の期間にわたる貯蔵、位置付けられた粒子の制御された回収、および回収された粒子の別の所定の場所への移行が挙げられる。
【0217】
さらに、デバイスは、微細加工された弁を含み得、第1のチャネルは、1つまたは複数の細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスを第1のチャネルを通って流れる流体内に含有されるように位置付けるのに適した位置付け手段を含み、位置付け手段は、第1のチャネル内に、位置付け手段によって流体の流れを減少させる、具体的には、位置付け手段によりチャネルの横断面を狭くすることができるように配置される。一実施形態によると、デバイスは、1つまたは複数の細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスが第2のチャネルを通って流れる流体内に含有されるように位置付けるのに適した位置付け手段を含む第2のチャネルを含み、位置付け手段は、第2のチャネル内に、位置付け手段によって流体の流れを減少させる、具体的には、位置付け手段によりチャネルの横断面を狭くすることができるように配置される。好ましい実施形態によると、デバイスは、1つまたは複数の細胞含有マトリックスを収容するための1つまたは複数の区画および/または捕捉用マトリックスを含み、1つまたは複数の細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスを区画の内側に位置付けるのに適した位置付け手段が存在する。
【0218】
マトリックスの位置付けおよび取り出し
第1の利点は、規定された特徴(例えば、サイズ、組成(例えば、化合物または細胞の固定化)など)を有するマトリックスを細胞培養デバイスの前記アレイにプログラム可能な様式で位置付けることができることである。例えば、前記アレイがn×mの微細加工された個別化可能な区画(nは行の数を表し、mは列の数を表す)を有する場合、規定数の、規定された特徴を有する粒子、特に球状ハイドロゲルマトリックスを、n×mの微細加工された区画のそれぞれに位置付けることができる。したがって、1つの微細加工された区画は、同じ型のもしくは異なる型の細胞を含有しないか、または同じ型のもしくは異なる型の単一のもしくは複数の細胞を含有し得る、または、捕捉用分子を含有し得る、1つまたは複数のマトリックスを含有し得る。例えば、細胞型1の1つの単一の細胞を含有する第1のマトリックスを、1つの微細加工された区画内に1つまたは複数の型の捕捉用分子を含有するマトリックスの隣に位置付けることができる。
【0219】
先行技術と比較した第2の利点は、前記固定化されたマトリックスを、前記アレイから任意の時点でおよび任意の位置から規定された方法で取り出すことができ、前記取り出されたマトリックスを、その後、ウェルプレートなどの別のフォーマットまたは同様のフォーマットに移行することができることである。さらに、前記マトリックスの取り出しは、マトリックス完全性(例えば、ハイドロゲル完全性)には影響を及ぼさず、したがって、より高い細胞生存率ならびにマトリックスに関連し得るあらゆる情報(例えば、結合した分子など)の維持がもたらされることである。例えば、第1のマトリックスが、微細加工された区画内の(n、m)位に位置し、第2のマトリックスが、第1のマトリックスの極めて近傍に位置するまたは第1のマトリックスと直接接触している場合、第2のマトリックスをまず取り出し、一方で第1のマトリックスは微細加工された区画内に留めることができる。その後、第1のマトリックスを第2のステップで取り出すことができる。これは2つよりも多くのマトリックスに対しても行うことができる。
【0220】
本開示の別の利点は、異なる微細加工された区画内に位置するマトリックスを同時に取り出すことができることである。例えば、微細加工された区画(n1、m1)内に位置する第1のマトリックスを、微細加工された区画(n2、m2)内に位置する第2のマトリックスを取り出すのと同時に取り出すことができる。これは、2つよりも多くの異なる位置に位置する2つよりも多くのマトリックスに対しても行うことができる。したがって、利点は、前記マトリックスを取り出し、それらを対応する下流の分析に適した別のフォーマットに移行するために必要な時間の有意な短縮である。
【0221】
制御可能な流体灌流
細胞培養デバイスの別の利点は、微細加工された区画に、流体を個別に灌流できることである。例えば、前記細胞培養デバイスのアレイ内に位置付けられたマトリックス(すなわち、細胞含有マトリックス)内に位置する細胞に新鮮な培養培地を連続的にまたは段階的に灌流し、その結果、細胞老廃物の除去および新鮮な栄養分の供給をもたらすことができる。したがって、新しい栄養分が連続的に供給され、一方で、全ての微細加工された区画が同じ培養条件を有し得るので、細胞をn×mの微細加工された区画内で長期間にわたって培養することができる。
【0222】
さらに、前記微細加工された区画に対する個々の灌流により、前記微細加工された区画内に位置するマトリックスに、洗浄、分子(例えば、結合性分子、検出用分子、オリゴヌクレオチドなど)の送達、他の分子(例えば、結合性分子、捕捉用分子、オリゴヌクレオチド)の前記マトリックス内への固定化などのマトリックスの処理に必要な流体を個別に灌流することができるという利点がもたらされる。
【0223】
細胞培養デバイスの別の利点は、微細加工された区画に、同じ型または異なる型の、組成が異なる流体を逐次的に灌流できることである。例えば、とりわけ細胞を含有する固定化されたマトリックスを有する微細加工された区画にまず、特定の生体分子に対する第1の分子を含有する溶液を灌流することができる。その後、前記細胞培養デバイスに第1の分子を除去する溶液を灌流することができる。その後、前記アレイに第2の分子を灌流することができる。このプロセスを何度も繰り返し、その結果、n×mの微細加工された区画内に位置する細胞に複数の分子を添加することができる。
【0224】
微細加工された弁
一実施形態によると、本開示は、微細加工された(エラストマー)弁を使用して前記細胞培養デバイス内の流体の流れを制御する微細加工された構造および方法に関する。好ましい実施形態によると、細胞培養デバイスは、参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2018/074526において請求項1から39に開示されている微細加工された弁を含む。前記微細加工された弁の主要な利点の1つは、マイクロ流体デバイスにおいて、ならびに微小滴マイクロフルイディクスの分野において、特に、開示されるアレイの生成のための最も重大で重要なプロセスの実施および改善のために使用できることである。特に、これらのプロセスは、流体の流れの制御、マイクロ流体デバイス内への流体ポンピングおよび流体混合、ならびに、微小滴に基づくマイクロフルイディクスの点から、液滴の形成、封入の形成、特に単一の細胞封入、共封入、液滴混合、(ハイドロゲル)マトリックスの形成および液滴解乳化を含む。前記微細加工されたエラストマー弁の主要な利点は、作動に必要な作動圧力が低いこと(<100mbar)ならびに公称直径が大きなマトリックスの輸送に適することである。エラストマー弁の別の利点は、標準の多層リソグラフィー法を使用して費用効果が大きくかつ単純な様式で製作できることである。第1の実施形態では、流れを制御するための前記微細加工された構造は、「第1のフローチャネル」と定義される第1の微細加工されたチャネルを含む凹所を有する第1の微細加工された層と、第1の微細加工されたチャネルを第2の微細加工されたチャネルの上の空間と接続する凹所を有する第2の微細加工された層とを含む。この凹所は、「接続チャネル」と定義される。接続チャネルは、第2の微細加工された層の第2の凹所により、厚さが1μmから80μmの間の薄いエラストマー膜によって分離されている。第1のフローチャネルは、第1の流体を含有し得、第2の微細加工された層の上の空間は、同じ型または異なる型の第2の流体を含有し得る。接続チャネルからエラストマー膜によって分離された第2の微細加工された層内の凹所は本明細書では「作動チャネル」と定義される。
【0225】
チャネル
「チャネル」という用語は、少なくとも、流体の収容に適合する任意の腔を必要とする。ある実施形態では、チャネルは、流体の流動を伝導するための伝導の一部を構成し得る。チャネルは、流体伝導によって形成することができる;チャネルは、レザバーによって形成することができる。そのようなレザバーは、雰囲気に関連して閉じたものであり得るまたは開いたものであり得る。ある実施形態では、チャネルは、レザバーであり得る。例えば、このレザバーは、別のチャネルと接続する開口以外は閉じたものであり得る。あるいは、レザバーは、開いたものであり得る、例えば、上端が開いたものであり得る。一実施形態では、第2のチャネルは、レザバー、特に開いたレザバーである。
【0226】
弁の作用
弁の開閉。一実施形態では、作動チャネルは、空気またはフッ素化油(例えば、HFE-7500(Novec))などの流体を含有する。前記作動チャネル内の圧力が上昇すると、接続チャネルと作動チャネルの間の圧力差が生じる。したがって、接続チャネルと作動チャネルを分離しているエラストマー膜に対して作動力が作用する。この作動力により、膜が曲がり、接続チャネルが閉じ、それにより、第1のフローチャネルが第2の微細加工された層の上の空間から分離される。前記圧力が取り除かれた後、使用された膜のエラストマー特徴に起因して接続チャネルが再度開口する。特定の実施形態では、膜の偏向距離は1μm~100μmの範囲内に入り得る。別の実施形態では、接続チャネルは完全には閉まらず、したがって、適用される圧力、したがって、膜に作用する作動力を変化させることによって接続チャネルの流体力学的抵抗性を規定された様式で制御することができる。一実施形態では、圧力を0mbarから4000mbarの間(絶対的圧力)で1mbarずつ変動させて、接続チャネルの流体力学的抵抗性を調整することができる。特定の実施形態では、以下の型の流体(以下、制御流体または作動流体とも称される)を使用することによって作動力を適用することができる:
- 空気、窒素およびアルゴンなどの気体
- 水、ケイ素油、フッ素化油および他の油などの液体
- ポリエチレングリコールまたはグリセロールなどの塩および/またはポリマーを含有する溶液
- 強磁性流体
- 刺激を適用すると膨潤収縮することができるハイドロゲル。
例えば、前記刺激は、以下の型:温度、イオン強度、電場強度、磁場強度、pH値のうちの1つであり得る。
【0227】
圧力に基づく作動系による作動力の適用に加えて、以下の型:静電気、磁気、電解または電気運動のものであり得る他の作動系によって弁の作動を実施することができる。
【0228】
弁は、気体(例えば、空気、窒素、およびアルゴン)、液体(例えば、水、ケイ素油および他の油)、塩および/またはポリマー(これだけに限定されないが、ポリエチレングリコール、グリセロールおよび炭水化物を含む)を含有する溶液などを制御チャネルに注入することによって作動させることができ、これは、制御チャネルに「加圧すること」よりも好ましいプロセスである。圧力に基づく作動系によって作動するエラストマー弁に加えて、エラストマー構成成分と静電気、磁気、電解および電気運動作動系を有する一体式の弁を使用することができる。例えば、US20020109114;US20020127736、およびUS6,767,706を参照されたい。
【0229】
特定の実施形態では、弁(上記の寸法を有する弁を含む)は、フローチャネル内腔を完全には遮断せず、膜は、30psi、32psi、34psi、35psi、38psiまたは40psiの制御チャネル圧によって完全に作動する。
【0230】
流体注入。別の有利な実施形態では、第2の微細加工された層の上の空間は「第2のフローチャネル」と定義される第3の微細加工された層内の凹所で構成される。第2のフローチャネルは2型の流体を含有し得、第1のフローチャネルは1型の流体を含有し得、2型の流体と1型の流体は混和性である。第1のフロー層内の流体力学的圧力よりも大きな流体力学的圧力を第2のフローチャネル内に適用することによって、および前記エラストマー弁を規定された時間にわたって(例えば、0.1ミリ秒~500ミリ秒)開口することにより、規定された量の2型の流体を1型の流体に注入することができる。流体の注入に前記微細加工されたエラストマー弁を使用することの主要な利点は、作動圧力が低いことにより非常に速い弁の操作がもたらされることに起因して、必要な開閉時間が短いことである。開口時間は、例えば、1ミリ秒、2ミリ秒、3ミリ秒、4ミリ秒、5ミリ秒、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、または1分、2分、3分、4分、5分であり得る。流体の注入方法は、PCT/EP2018/074526において液滴を創出するための方法に関する請求項74から77および95から98と併せて記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。液滴は、ハイドロゲル粒子、ハイドロゲルマトリックス、ハイドロゲルビーズ、硬化および/もしくはゲル化および/もしくは重合したハイドロゲル、または、粒子を一緒に維持し、蓄積した粒子を環境、特に粒子周囲の流体と区切る、特に互いに化学的にまたは物理的に(例えば、表面張力によって)結合した任意の他の蓄積した粒子を含み得る。好ましい実施形態によると、液滴は、注入される際に、液体を含む、またはそれからなる。液滴が液体を含む場合、液滴は、主に液体からなるが、例えば懸濁液(例えば、マイクロ粒子懸濁液またはナノ粒子懸濁液)のように、さらに別の構成成分も存在し得る。液滴注入後、主に液体の液滴中に存在する1つまたは複数の化合物が反応してマトリックスを形成することが好ましい。マトリックスを形成するために適用することができる化合物は、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスと併せて上に記載されており、それらの化合物が本明細書において参照される。液滴形成後にマトリックスを生成するために、例えば、ポリマー、プレポリマー、構成単位、前駆体、単量体などのうちの1つまたは複数を適用することができる。特定の一実施例では、前駆体を溶解させ、次いで、注入して液滴を形成する。液滴の輸送の経過にわたって、前駆体が例えば重合によって反応してマトリックスを形成し得る。種々の方式のマトリックス形成が本開示の範囲内で適用可能であり得、例えば、PCT/EP2018/074527に記載されている。
【0231】
並行作動。別の有利な実施形態では、複数の微細加工されたエラストマー弁を同時に作動させることができ、それにより、並列化によってプロセススピードが増大する。この目的のために、複数の微細加工された弁を同じ作動チャネル内に位置させる。前記作動チャネル内に作動力が適用されると、微細加工された弁が全て同時に閉じる。微細加工された弁それぞれが上記の第1のフローチャネルおよび第2のフローチャネルを含み、これらは他の微細加工された弁の第1のフローチャネルおよび第2のフローチャネルとは分離されている。したがって、第2のフローチャネル内に位置する異なる流体を第1のフローチャネル内に位置する異なる流体に同時に注入することができる。別の実施形態では、微細加工された弁は全て同じ第2のフローチャネルに接続されている。
【0232】
層
特に好ましい実施形態では、微細加工された弁は、少なくとも3つの層を含み、第1のチャネルが第1の層内に位置し、第2のチャネルが第3の層内に位置し、弁部分が第2の層内に位置し、第2の層が第1の層と第3の層の間に配置されている。
【0233】
3つの層の使用により、膨大な数の異なる微細加工された弁を製造することが可能になる。これにより、設計の多様性が増大し、異なる流体の混合などの微細加工された弁を異なるプロセス要件に応じて設計することが可能になる。
【0234】
さらに、この実施形態により、膨大な数の可能性のある弁設計が提供され、微細加工された弁を所望の適用に応じて構成することが可能になる。
【0235】
微細加工された区画
マトリックスの固定化および取り出しのための微細加工された区画。別の態様では、本開示は、微細加工された区画内のマトリックスの制御された位置付けおよび逐次的な取り出しのための微細加工された構造および方法に関する。好ましい実施形態によると、PCT/EP2018/074526において請求項78から98に開示されている方法を本開示の範囲内で利用することができる。したがって、前記開示、特に請求項78から98は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0236】
第1の有利な実施形態では、前記アレイ内に位置する微細加工された区画は、少なくとも1つの入口および1つの出口を有し得る。(1,1)位の第1の微細加工された区画を第2の微細加工された区画(2,1)と接続することができる。この目的のために、微細加工された区画(1,1)の出口は、微細加工された区画(2,1)の入口として作用する。(2,1)位の微細加工された区画を第3の微細加工された区画(3,1)と接続することができる。したがって、1つのカラムnからの微細加工された区画は全て、微細加工された区画(n-1,1)が微細加工された区画(n,1)と接続するように接続することができる。さらに、(n,1)に位置付けられた微細加工された区画を微細加工された区画(1,2)と接続することができ、微細加工された区画(1,2)を(2,2)に位置付けられた微細加工された区画と接続することができる。これを繰り返すことができ、したがって、微細加工された区画の全てに同じ流体を同時に灌流することができる。微細加工された区画(1,1)の入口は、異なる流体を供給するためのレザバーと接続することができる。微細加工された区画(n、m)の出口は収集レザバーと接続することができる。したがって、接続した微細加工された区画の全てに同じ流体を灌流することができる。例えば、前記灌流流体は、栄養分を含有する水相または1つまたは複数のマトリックスを含有する懸濁液であり得る。前記微細加工された区画の入口および出口は、本開示内に記載されているエラストマー弁を使用して閉じることができる。微細加工された区画にまず流体をローディングし、次いで、前記弁を閉じることによって互いに隔離することができる。したがって、微細加工された区画(1,1)内に位置する流体体積は別の微細加工された区画(n,m)内に位置する流体体積と混合することができない。これには、異なる微細加工された区画内に位置する細胞間の細胞間コミュニケーションを防止することができるという利点があり、これは、第1の微細加工された区画内に位置する細胞から分泌されたあらゆる分子が第2の微細加工された区画内に位置する細胞の細胞応答に影響を及ぼす可能性があるので、重要である。
【0237】
チップへの位置付け
逐次的な位置付け。別の実施形態では、前記接続した微細加工された区画に、1つまたは複数の粒子、特にハイドロゲルマトリックスを含有する溶液を灌流することができる。前記微細加工された区画は、マトリックスを位置付けるため、特にマトリックスを流体力学的にトラップするための微細加工された幾何学的形状を含有し得る。第1の微細加工された区画が、いかなるマトリックスも含有しない場合、前記微細加工された区画に進入する第1のマトリックスは微細加工されたトラッピング幾何学的形状内に位置付けられる可能性が高い。前記第1のマトリックスが位置付けられることにより、微細加工された区画の流体力学的抵抗性が変化する可能性があり、したがって、前記微細加工された区画に入る第2のマトリックスはバイパスチャネル内に移動し、その後、第2の微細加工された区画に進入する。前記第2のマトリックスは第2の微細加工された区画内に固定化され得る。次いで、第3のマトリックスは第1の微細加工された区画および第2の微細加工された区画をバイパスし、第3の微細加工された区画に進入し得る。したがって、マトリックスは接続した微細加工された区画内に逐次的に位置付けられ得る-第1の入ってくるマトリックスは第1の微細加工された区画内に位置付けられ得、第2の入ってくるマトリックスは第2の微細加工された区画に位置付けられ得る、など。
【0238】
異なる組成を有するマトリックスの規定された位置付け。別の実施形態では、前記アレイの微細加工された区画内に位置するマトリックスは、異なる組成を有し得る。例えば、第1の1型のマトリックスを、先行技術に記載されているように、いくつかの液滴を1つのより大きな液滴に要望に応じて形成および融合すること、ならびにその後の細胞/粒子中心化、ハイドロゲル形成および解乳化のための前記液滴の位置付けによって生成することができる。マトリックスは、第1の微細加工された区画と接続したマイクロ流体チャネル内に位置し得る。したがって、マトリックスが前記微細加工された区画に進入し、前記1型のマトリックスを前記第1の微細加工された区画内に位置付けることができるように、圧力を適用することができる。前記プロセスを、2型のマトリックスを生成するために繰り返すことができ、2型のマトリックスはその後、前記第1の微細加工された区画の隣に位置する第2の微細加工された区画内に位置付けられる。マトリックスの生成および固定化で構成されるこのプロセスを、微細加工された区画全てが1つのマトリックスを含有するまで繰り返すことができる。
【0239】
1つの微細加工された区画内への2つのマトリックスの位置付け。別の実施形態では、前記微細加工された区画は、同じ型または異なる型の2つのマトリックスを接触した状態でまたは極めて近傍に位置付けるための微細加工された幾何学的形状を有し得る。この目的のために、第1の微細加工された区画は、トラッピング幾何学的形状ならびにバイパスチャネルを有し得る。第1のマトリックスが前記第1の微細加工された区画に進入すると、主要な体積流れが前記トラッピング幾何学的形状を通過するので、マトリックスがトラッピング幾何学的形状内に移動する。バイパスチャネルの流体力学的抵抗性はマトリックスを1つ含有するトラッピング幾何学的形状の流体力学的抵抗性よりも大きいので、前記第1の微細加工された幾何学的形状に進入する第2のマトリックスは、同じトラッピング幾何学的形状に進入し得る。2つのマトリックスのトラップ後、前記微細加工されたトラッピング幾何学的形状の流体力学的抵抗性が増大し、第3のマトリックスはバイパスチャネル内に移動し、その後、第2の微細加工された区画に移動する。
【0240】
1つの微細加工された区画内への3つのマトリックスの位置付け。別の実施形態では、前記微細加工された区画は、同じ型または異なる型の3つのマトリックスを接触した状態または極めて近傍に位置付けるための微細加工された幾何学的形状を有し得る。この目的のために、第1の微細加工された区画は、トラッピング幾何学的形状ならびにバイパスチャネルを有し得る。第1のマトリックスが前記第1の微細加工された区画に進入すると、主要な体積流れが前記トラッピング幾何学的形状を通過するので、マトリックスはトラッピング幾何学的形状内に移動する。バイパスチャネルの流体力学的抵抗性はマトリックスを1つ含有するトラッピング幾何学的形状の流体力学的抵抗性よりも大きいので、前記第1の微細加工された幾何学的形状に進入する第2のマトリックスは、同じトラッピング幾何学的形状に進入し得る。これは、前記第1の微細加工された区画に進入する第3のマトリックスにも当てはまる。3つのマトリックスのトラップ後、前記微細加工されたトラッピング幾何学的形状の流体力学的抵抗性が増大し、第4のマトリックスはバイパスチャネル内に移動し、その後、第2の微細加工された区画に移動する。
【0241】
1つの区画内に3つよりも多くのマトリックスを位置付けることができるまたは2つまたはそれよりも多くのマトリックスを位置付けることができるさらに別の構成も本開示を考慮して適用可能である。
【0242】
逆流チェリーピッキング(RFCP)
一実施形態によると、細胞含有マトリックスは、3次元マトリックスの内側に位置することが好ましく、位置付け手段によって区画の内側に放出可能に固定されている。さらに、細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスを位置付け手段によって区画の内側、特に同じ区画内に放出可能に固定することができる。一実施形態によると、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを位置付け手段によって区画の内側に固定し、位置付け手段は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する:
- 細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを隣同士に固定することができ、必要に応じて、細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを互いに直接接触させる、もしくは両方のマトリックス間の距離100μm未満、50μm未満、30μm未満、10μm未満、5μm未満、もしくは1μm未満で位置付けることができる;細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスは単一もしくは複数の点で互いに接触していてよく、特に、これらは、同じ接触表面を共有し得る。
- 少なくとも1つの細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを隣同士に固定することができる;
- 1つよりも多くの細胞含有マトリックスであって、3次元マトリックスの内側に位置する単一の細胞および/もしくはコロニーのいずれかを含む細胞含有マトリックスを固定化し、1つよりも多くの細胞含有マトリックスの隣に捕捉用マトリックスを固定することができる;かつ/または
- それぞれ3次元マトリックスの内側に位置する2つの細胞含有マトリックスと捕捉用マトリックスを隣同士に固定することができる。
- 少なくとも1つの細胞含有マトリックスと少なくとも1つの捕捉用マトリックスを互いに固定することができる。
【0243】
一実施形態によると、細胞含有マトリックスおよび捕捉用マトリックスを位置付け手段によって区画の内側に固定することができ、細胞含有マトリックスが収容される区画は捕捉用マトリックスが収容される区画とは異なり、両方の区画を互いに流体接触するかまたは互いに流体接触しないように切り換えることができる。
【0244】
一実施形態によると、区画は、位置付け手段を通過する流体を提供するように適合されている弁配置を有し得、弁配置は、場所を通過する流体の方向を選択的に変化させるように適合されており、特に、流体は、細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスが位置付け手段の中に推進されるように方向付けられ、第2の方向の流体により、細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスが位置付け手段の外に推進され、特に、第2の方向の流体により、細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスが出口区域の方向に送達される。それにより、細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスを区画の固定された位置内に輸送すること、ならびに固定された位置の外に出口区域に向かって輸送できることが好ましい。細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスの貯蔵および処理のために細胞含有マトリックスおよび/または捕捉用マトリックスを他の区画にさらに輸送することができる。好ましい実施形態によると、分泌された目的の生体分子を調整可能な時間量にわたって捕捉するために、捕捉用マトリックスを区画内に導入することおよび区画から取り出すことができる。調整された時間量が経過した後、捕捉用マトリックスを区画から取り出し、別の捕捉用マトリックスを添加することができる。
【0245】
一実施形態によると、検出マトリックスを(隔離された)区画から得、複数の区画を含む別々のデバイスに移行することができ、各検出マトリックスをデバイスの隔離された区画に移行する。
【0246】
好ましい実施形態では、前記デバイスは、96ウェルプレート、384ウェルプレート、1536ウェルプレートである。
【0247】
RFCPのさらなる実施形態
(n,m)位からのマトリックスの取り出し。1つの有利な実施形態では、マトリックスは、微細加工されたチャンバー内の、マトリックスの空間的な固定化ならびに所望の時点における前記マトリックスの96ウェルプレートなどの別のフォーマットへの移行を可能にする前記n×mアレイ内の(n,m)位に位置し得る。
【0248】
この目的のために、前記微細加工された区画は、マトリックスを固定化するための微細加工された幾何学的形状を含み得る。さらに、前記微細加工された区画は、少なくとも2つの入口および2つの出口-第1の入口および第1の出口ならびに第2の入口および第2の出口を含有し得る。第1の入口および第1の出口は、前に記載されている通り、第1の微細加工された弁を使用することによって閉じることができる。さらに、第2の入口および第2の出口は、同じく前に記載されている通り第2の微細加工された弁を使用して閉じることができる。マトリックスを固定化するために、前記微細加工された区画に、単一または複数のマトリックスを含有する流体を第1の入口から第1の出口まで灌流し、一方、第2の入口および第2の出口は閉じておく。その後、第1の入口および第1の出口を閉じ、微細加工された区画に灌流流体を第2の入口から第2の出口まで灌流することができる。
【0249】
前記トラッピング幾何学的形状の実施形態を本開示の以下の節に記載する。前記トラッピング幾何学的形状は、規定された流体力学的抵抗性を有する少なくとも4つのマイクロ流体チャネル、それぞれ流体力学的抵抗性R
2およびR
3を有する第1のマイクロ流体チャネルおよび第2のマイクロ流体チャネル、ならびにそれぞれ流体力学的抵抗性R
4およびR
1を有する第3のマイクロ流体チャネルおよび第4のマイクロ流体チャネルと接続している(
図11)。第1のマイクロ流体チャネルおよび第2のマイクロ流体チャネルの流体力学的抵抗性(R
2およびR
3)は、流体力学的抵抗性R
2を制御するための第1のマイクロ流体弁v
1(Vm2)および流体力学的抵抗性R
3を制御するための第2のマイクロ流体弁v
2(Vn2)を有する、前に記載されているものなどの微細加工された弁(エラストマー弁)を使用することによって増大させることができる。マトリックスを固定化するための微細加工された幾何学的形状を含む微細加工された構造は、抵抗性R
0を有し得る。第1のマイクロ流体チャネルは、一方の側面で第4のマイクロ流体チャネルならびにマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状と接続することができ(本明細書ではノードN
012と定義される)、他方の側面で第3のマイクロ流体チャネルと接続することができる(本明細書ではノードN
24と定義される)。さらに、第3のマイクロ流体チャネルは、他方の側面でマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状ならびに第2のマイクロ流体チャネルと接続することができる(本明細書ではノードN
034と定義される)。第2のマイクロ流体チャネルは、他方の側面で、第1のマイクロ流体チャネルおよびマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状と接続することができる(ノードN
012)第4のマイクロ流体チャネルと接続することができる(本明細書ではノードN
13と定義される)(
図11)。第1のマイクロ流体チャネルと第3のマイクロ流体チャネルの交点(ノードN
24)における流体力学的圧力p
1は、第2のマイクロ流体チャネルと第4のマイクロ流体チャネルの交点(ノードN
13)における流体力学的圧力p
2よりも高い可能性がある。記載されている流体力学的抵抗性、圧力および接続は、電子回路から分かる不均衡なホイートストンブリッジに類似している。前記抵抗性および特徴を有する微細加工された幾何学的形状は、本明細書では「逆流チェリーピッキング(RFCP)」幾何学的形状とみなされる。マトリックスを、前記マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状内に固定化することができる。固定化のためにノードN
012からノードN
034までの流体の体積流れを微細加工された幾何学的形状に還流することができ、固定化されたマトリックスをその位置に留めることができる。ノードN
034からノードN
012までの流体の体積流れの結果、体積流れが逆であるので(この条件は本明細書では「逆流」条件と定義される)、前記マトリックスをその位置から取り出すことができる。固定化されたマトリックスは、取り出されるための臨界流速Q
critを有する逆流を必要とし得る。したがって、流速Q
reverseがQ
critを下回る(Q
reverse<Q
crit)逆流では、前記マトリックスの取り出しをもたらすことができない。対照的に、流速Q
reverseがQ
critよりも大きいまたはそれと等しい逆流により、前記固定化されたマトリックスをその固定化位置から取り出すことができる。微細加工された弁v
1(Vm2)およびv
2(Vn2)の作動に応じて、4つの異なる条件を区別することができる:
1.どちらの弁も作動しない:この条件に関して、流体力学的抵抗性R
2およびR
3は流体力学的抵抗性R
4およびR
1よりも小さい。マトリックスを固定化するための微細加工された幾何学的形状はノードN
012からノードN
034まで主に灌流される。したがって、体積流れは逆向きではないので、固定化されたマトリックスはその位置に留まる。
2.弁v
1(Vm2)だけが作動し、一方v
2(Vn2)は作動しない:この条件に関して、抵抗性R
2が増大し、主要な体積流れはノードN
24からノードN
034まで、およびノードN
034からノードN
13まで進む。微細加工された弁v
1(Vm2)が完全には閉じていない場合、トラップ位置における体積流れはN
012からN
034まで進み得、体積流れは逆向きではない。固定化されたマトリックスはその位置に残る。微細加工された弁v
1(Vm2)が完全に閉じている場合、小さな体積流れがN
034からN
012まで進み得、Q
reverseはQ
critよりも小さい。したがって、固定化されたマトリックスはその位置に残る。
3.弁v
2(Vn2)だけが作動し、一方、v
1(Vm2)は作動しない:この条件に関して、抵抗性R
3が増大し、主要な体積流れはノードN
24からノードN
012まで、およびノードN
012からノードN
13まで進む。微細加工された弁v
2(Vn2)が完全には閉じていない場合、トラップ位置における体積流れはN
012からN
034まで進み得、体積流れは逆向きではない。固定化されたマトリックスはその位置に残る。微細加工された弁v
1(Vm2)が完全に閉じている場合、小さな体積流れがN
034からN
012まで進み得、Q
reverseはQ
critよりも小さい。したがって、固定化されたマトリックスはその位置に残る。
4.両方の弁v
1(Vm2)およびv
2(Vn2)が作動する:この条件に関して、抵抗性R
2ならびに抵抗性R
3が増大し、主要な体積流れはノードN
24からノードN
034まで、ノードN
034からノードN
012まで、およびノードN
012からノードN
13まで進む。したがって、トラップ位置において逆流が生じ、その流速Q
reverseはQ
critよりも大きい可能性もある。したがって、固定化されたマトリックスがその位置から取り出され、ノードN
012を介してノードN
13に移動する。
【0250】
別の実施形態では、種々の型の目的物を本開示に開示されている通りRFCP-幾何学的形状内に位置付け、回収することができる。特定の実施形態では、前記目的物は、原核細胞および/または真核細胞などの生物学的細胞、特に免疫系の細胞、異なる型のがんに関連する細胞、神経系の細胞、幹細胞であり得る。別の有利な実施形態では、前記目的物は、細胞凝集体、特に胚体および/または異なる細胞型で構成されるスフェロイドであり得る。細胞をRFCP-幾何学的形状内に位置付けることの主要な利点の1つは、細胞をまずRFCP-幾何学的形状内に固定化された時に特徴付け、その後、逆流の生成によって表される開示される回収機構を使用して選別できることである。
【0251】
別の実施形態では、細胞を含有するマトリックスをRFCP-幾何学的形状内に位置付けることの利点は、単一のおよび/または複数の細胞をマトリックスによって提供される高度に規定された微小環境において長期間にわたって培養し、観察できることである。別の実施形態では、マトリックスは、生物学的な化合物、特にタンパク質、特に抗体、抗体-DNAコンジュゲート、細胞外マトリックスタンパク質、増殖因子、核酸、特にDNA、RNA、PNA、LNA、脂質、サイトカイン、ケモカイン、アプタマーならびに代謝的な化合物、化学化合物、特に小分子、特に薬物、光切断可能なスペーサー/リンカーを介して連結した分子、ナノ構造、特に金ナノ粒子、成長促進物質、無機物質、同位元素、化学元素を含み得る。
【0252】
RFCP幾何学的形状の利点は、対応する弁位置を制御することにより、固定化されたマトリックスをトラップし、可逆的に取り出すことができることである。さらに、取り出しプロセスは逆流に基づくので、取り出しプロセスは細胞適合性であり、他の方法(例えば、泡を生成するため、または前記マトリックスを分解するための高温の使用など)と比較して非常に穏やかなものであり、これは、単一の細胞または小さな細胞集団の取扱いに極めて重要である。さらに、取り出しプロセスでは、固定化されたマトリックスの完全性が維持され、これは、前記マトリックスに、後の段階でアクセスする可能性がある任意の情報(例えば、前記マトリックス内に固定化されたプローブと結合した分泌された分析物)を保管する場合に極めて重要である。
【0253】
マトリックスのn、m位からの取り出し。別の有利な実施形態では、複数のRFCP幾何学的形状をn×mアレイ内に配置することができ、一方で、(n,m)位に位置するマトリックスを前期アレイから特異的に取り出すことができ、前記マトリックスを取り出すために必要な作動器の数が劇的に減少する。この目的のために、行nに位置する全てのRFCP幾何学的形状由来の微細加工された弁v1を第1の作動器Anによって作動させることができ、列mに位置するRFCP幾何学的形状由来の微細加工された弁v2を第2の作動器Amによって作動させることができる(前記作動器は、含気性ソレノイド弁であり得る)。したがって、作動器Anならびに作動器Amが作動すると、(n,m)位においてのみ、RFCP幾何学的形状由来の微細加工された弁v1およびv2の両方が閉じる/作動し、その結果、前に記載されている通り、この位置に固定化されたマトリックスが取り出される。RFCP幾何学的形状を有する複数の微細加工された区画をノードN24において全ての微細加工されたチャンバーに同じ流体力学的圧力p1が適用されるように接続することにより、前記微細加工された区画に同じ流体を灌流することができる。さらに、前記微細加工されたチャンバーからの全てのノードN13を接続することができ、したがって、微細加工された区画の全てがノードN13において同じ流体力学的圧力p2を有する。したがって、前記RFCP幾何学的形状を使用して取り出されるマトリックスは、収集チャネルと定義することができる共通の微細加工されたチャネルに移動し得る。前記収集チャネルを共通の出口に接続することができ、それにより、取り出されたマトリックスの別のフォーマットへの移行が可能になる。これには、n×mの位置を有する前記アレイ内の任意の位置(n,m)を、n×mの作動器の代わりにn+mのみの作動器を使用することによって扱うことができるという利点がある。
【0254】
複数のマトリックスの同時取り出し。別の有利な実施形態では、前記n×mアレイ内の複数の位置を同時に扱うことができる。例えば、第1の作動器An1、第2の作動器An2および第3の作動器Am1を同時に作動させることができる。これにより、(n1,m1)位および(n2,m1)位に位置するマトリックスの同時取り出しが導かれる。固定化されたマトリックスの同時取り出しには、前記マトリックスを取り出すために必要な時間が劇的に除去されるという利点がある。
【0255】
2つのマトリックスの固定化および取り出し。別の有利な実施形態では、RFCP幾何学的形状の一部である微細加工された区画内のある特定の位置(n,m)に位置する同じ型または異なる型の2つのマトリックスを逐次的に取り出すことができる(
図13および14)。この目的のために、2つのマトリックスを微細加工された区画内に極めて近傍にまたは接触させて位置付ける。前記微細加工された区画は、流体力学的抵抗性R
バイパス=2×R
5を有するバイパスチャネルならびに抵抗性R
トラッピング幾何学的形状=R
3+(R
4
-1+R
4
-1+(R
1+R
2)
-1)
-1を有する2つのマトリックスを固定化するための微細加工された幾何学的形状を有し得る(
図13)。マトリックスの固定化の間、R
トラッピング幾何学的形状はバイパスチャネルR
バイパスの抵抗性よりも小さい可能性があるので、主要な体積流れは、ノードN3からN0まで、流体力学的抵抗性R
トラッピング幾何学的形状を通って流れ得る。まずトラッピング幾何学的形状に進入すると、流体力学的抵抗性R
トラッピング幾何学的形状は増大するが、バイパスチャネルの抵抗性よりも小さなままである。したがって、前記微細加工されたトラッピング幾何学的形状に進入する第2のマトリックスがトラッピング幾何学的形状に進入し、前記トラッピング幾何学的形状の流体力学的抵抗性が増大し、したがって、R
トラッピング幾何学的形状>>R
バイパスになる。第3のマトリックスはバイパスチャネルに進入し、次の微細加工された区画に移動し得る。記載されている流体力学的抵抗性に起因して、逆流の適用により、トラップされたマトリックスに作用する力が生じ、力F
1はノードN
1に位置付けられたマトリックス1(31A)に作用し、力F
2はノードN
2に位置付けられたマトリックス2(31C)に作用し、F
1<F
2である。微細加工された区画内のn位に位置するマトリックスnを取り出すためには臨界力F
crit,nが必要であり得る。例えば、F
crit,1は、1位に位置するマトリックスを取り出すために必要な力であり、F
crit,2は、2位に位置するマトリックスを取り出すために必要な力である。前記マトリックスに作用する力は、適用されるノードN
3とN
4の間の圧力差に依存する。微細加工されたトラッピング幾何学的形状から取り出されるために全てのマトリックスが同じ力F
critを受けなければならない場合、F
2がF
critと等しくなるまで、マトリックス2を取り出すための逆流速を増大させることができる。マトリックス1および2に作用する力はそれぞれF
1およびF
2であり、F
1<F
2かつF
1<F
critである。したがって、マトリックス2のみが取り出され、一方マトリックス1はその位置に留まる。流速、したがって圧力差のさらなる増大により、F
critと等しい、マトリックス1に作用する力F
1をもたらすことができ、それにより、マトリックス1の取り出しが導かれる。
【0256】
固定化されたマトリックスを逐次的に取り出すことができることが主要な利点である。例えば、2位に位置するマトリックスを取り出し、96ウェルプレートまたは別のフォーマットの第1のウェル内に収集することができる。その後、1位に位置するマトリックスを取り出し、第2のウェル内に収集することができる。1つのマトリックスを種々の第2のマトリックスと逐次的に対にできることが別の利点である。例えば、1型のマトリックスをまず2型のマトリックスの隣に位置付けることができる。2型のマトリックスをある特定の期間後に取り出し、新しいマトリックスを1型のマトリックスの隣に位置付けることができる。このプロセスを数回繰り返すことができる。
【0257】
3つのマトリックスの固定化および取り出し。別の有利な実施形態では、RFCP幾何学的形状の一部である微細加工された区画内のある特定の位置(n,m)に位置する同じ型または異なる型の3つのマトリックスを逐次的に取り出すことができる。この目的のために、マトリックスをまず前に記載されている通り固定化することができる(
図15、
図16および
図17)。逆流の適用により、トラップされたマトリックスに作用する力が生じ、力F1はノードN1に位置付けられたマトリックス1(31A)に作用し、力F2はノードN2に位置付けられたマトリックス2(31B)に作用し、F1<F2である。逆流の適用により、トラップされたマトリックスに作用する力が生じ、力F1はノードN1に位置付けられたマトリックス1に作用し、力F2はノードN2に位置付けられたマトリックス2に作用し、力F3はノードN3に位置付けられたマトリックス3(31C)に作用し、F1<F2<F3である。逆流の適用により、トラップされたマトリックスに作用する力が生じ、力F1はノードN1に位置付けられたマトリックス1に作用し、力F2はノードN2に位置付けられたマトリックス2に作用し、力FnはノードNnに位置付けられたマトリックスnに作用し、F1<F2<…<Fnである。微細加工された区画内のn位に位置するマトリックスnを取り出すためには臨界力Fcrit,nが必要である。前記マトリックスに作用する力は、適用される圧力差に依存する。微細加工されたトラッピング幾何学的形状から取り出されるために全てのマトリックスが同じ力Fcritを受けなければならない場合、F3がFcritと等しくなるまで、マトリックス3を取り出すための逆流速を増大させることができる。マトリックス1および2に作用する力はそれぞれF1およびF2であり、F1<F2<F3およびF1<F2<Fcritである。したがって、マトリックス3のみが取り出され、一方マトリックス1およびマトリックス2はそれらの位置に留まる。流速のさらなる増大により、Fcritと等しい、マトリックス2に作用する力F2をもたらすことができ、それにより、マトリックス2の取り出しが導かれ、一方マトリックス1は定位置に留まる。最後に、流速のさらなる増大により、Fcritと等しい、マトリックス1に作用する力F1をもたらすことができる。したがって、マトリックス1が取り出される。これには、固定化されたマトリックスを逐次的に取り出すことができるという主要な利点がある。例えば、3位に位置するマトリックスを取り出し、96ウェルプレートまたは別のフォーマットの第1のウェル内に収集することができる。その後、2位に位置するマトリックスを取り出し、第2のウェル内に収集することができる。
【0258】
3つよりも多くのマトリックスの固定化および取り出し。別の有利な実施形態では、RFCP幾何学的形状の一部である微細加工された区画内のある特定の位置(n,m)に位置する同じ型または異なる型の3つよりも多くのマトリックスを逐次的に取り出すことができる。この目的のために、マトリックスをまず、前に記載されている通り、複数のマトリックスを配列内に位置付けることができるように固定化することができる。前記マトリックスを、各マトリックスがトラップ位置に応じて異なる力を受ける微細加工されたトラッピング幾何学的形状内に位置させることができる。逆流の適用により、トラップされたマトリックスに作用する力が生じ、力F1はノードN1に位置付けられたマトリックス1に作用し、力F2はノードN2に位置付けられたマトリックス2に作用し、力FkはノードNkに位置付けられたマトリックスkに作用し、F1<F2<…<Fkである。微細加工された区画内のk位に位置するマトリックスkを取り出すためには臨界力Fcrit,kが必要であり得る。前記マトリックスに作用する力は、適用される圧力差に依存する。微細加工されたトラッピング幾何学的形状から取り出されるために全てのマトリックスが同じ力Fcritを受けなければならない場合、FkがFcritと等しくなるまで、マトリックスkを取り出すための逆流速を増大させることができる。マトリックス1、2…kに作用する力は、それぞれF1、F2…Fkであり、F1<F2<…<FnかつF1<F2<…<Fcritである。したがって、マトリックスkのみが取り出され、一方、マトリックス1、2…k-1は全てそれらの位置に留まる。流速のさらなる増大により、Fcritと等しい、マトリックスk-1に作用する力Fk-1をもたらすことができ、その結果、マトリックスk-1が取り出されるが、一方マトリックスk-2は定位置に留まる。最後に、このプロセスを、全てのマトリックスが取り出されるまで繰り返すことができる。これには、複数の固定化されたマトリックスを逐次的に取り出し、96ウェルプレートまたは別のフォーマットに移行することができるという主要な利点がある。
【0259】
固定化されたマトリックス内に位置する細胞の抽出およびその後の別のフォーマットへの移行-RFCPを使用した高度に制御された細胞移行。別の有利な実施形態では、前記アレイを使用して、前記アレイ内に位置付けられたマトリックス内に位置する単一または複数の細胞を96ウェルプレート、384ウェルプレート、1536ウェルプレートまたはマイクロウェルプレートなどの別のフォーマットに移行することができ、一方で、ちょうど1つの単一の細胞を前記確立されたフォーマットまたは同様のフォーマットそれぞれの所定のウェルに移行することができる。例えば、マトリックスは、最初に1つの単一の細胞を含有し得る。ある特定の期間(例えば、3日間)培養した後、前記単一の細胞を分裂および増殖させることができ、1つよりも多くからなるスフェロイドを形成することができる。その後、封入された細胞を互いに分離し、別のフォーマットに移行することができるが、一方で、前記フォーマットの各ウェルは、前記マトリックスに由来する1つの単一の細胞のみを含有する。例えば、前記抽出プロセスを以下のステップで実施することができる:
1.細胞含有マトリックスの固定化。単一または複数の細胞を含有するマトリックスの、前に言及したRFCP機構を使用して流れを逆向きにすることができるポジショナー、特にトラッピング構造内への固定化。
2.必要に応じて:マトリックス内での細胞培養。長期間にわたる細胞の培養(例えば、細胞を、1日、2日、または3日よりも長く、最大数週間にわたって培養することができる)。
3.事象により誘発される固定化されたマトリックスの取り出し。ある特定の事象が生じたらすぐに、前記細胞を含有するマトリックスを前記RFCP機構によってトラップから取り出し、マトリックスを定位置に保持し、より小さなマトリックスは通過させるフィルター構造を含有する灌流区画に移行する。例えば、前記事象は、培養された細胞のある特定の蛍光強度(例えば、培養された細胞は、蛍光レポータータンパク質を発現する可能性がある)、細胞サイズの増大、ある特定のサイズの細胞スフェロイドの形成などのある特定の細胞形態、またはある特定の表面プロファイルであり得る。
4.単一の細胞のマトリックスからの抽出。次いで、フィルター構造において定位置に保持されている細胞含有マトリックスに、細胞間接触または細胞-マトリックス接触に起因して付着し得る凝集した細胞の分離を可能にする溶液を灌流する。前記溶液は、例えば、細胞間接触ならびに細胞間接着および細胞-マトリックス接着を媒介する表面タンパク質を消化するためのプロテアーゼ(例えば、トリプシン)を含有し得る。その後、今や分離している細胞を含有するマトリックスを溶解させる。特に、これは、消化のためにメタロプロテアーゼによって切断することができる分解部位を含有するものに対しては、メタロプロテアーゼを灌流することによって行うことができる。
5.単一の細胞のリフォーカス。マトリックス取り出しに起因してマトリックスから放出された細胞を、リフォーカシング幾何学的形状を使用することによって、または複数のリフォーカシング幾何学的形状を順に使用することによって互いとさらに分離する。
6.RFCP幾何学的形状内へのトラップ。リフォーカスされた細胞をRFCP幾何学的形状内に位置する単一の細胞トラップにトラップすることができる。複数のRFCPトラップを順に位置付け、互いに接続することができる。
7.トラップされた単一の細胞の標準のフォーマットへの移行。その後、前記RFCP幾何学的形状に位置する単一の細胞を、前に記載されている通り対応する弁を作動させることにより、ウェルなどの標準のフォーマットに移行することができる。
【0260】
これには、1つの単一の細胞に由来する細胞を分離し、細胞培養の間に記録された培養細胞に関する経時情報を失うことなく、RT-PCRまたは単一の細胞配列決定などの従来の方法を用いてさらに分析することができるという利点がある。例えば、この経時情報は、とりわけ、成長データ、蛍光データまたは遊走データであり得る。
【0261】
細胞培養プレートの使用
一実施形態によると、細胞培養プレート内に細胞含有マトリックスを提供する。細胞培養プレート(例えば、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレートなど)および細胞含有マトリックスの詳細は、本明細書において他の箇所に記載されている。特に、マトリックスは、ハイドロゲルによって提供することができる。マトリックスは、3次元であり、例えば、少なくとも部分的に楕円形、好ましくはプラグまたは半球(semi-sphere)形状であり得る。一実施形態では、細胞培養デバイスの区画(例えば、ウェル)ごとに少なくとも1つの細胞を含む細胞含有マトリックスを提供する。細胞含有マトリックスは、1つよりも多くの細胞を含み得る。例は、本明細書に開示される細胞コロニーまたは1つまたは複数の異なる細胞型である。一実施形態では、細胞含有マトリックスを囲み得る液体を細胞含有マトリックスには影響を及ぼさずに取り除くまたは交換することができるように、細胞含有マトリックスを区画内に提供する。
【0262】
特に、1つよりも多くの細胞を含む3次元ハイドロゲルによって細胞含有マトリックスを提供し、ここで、細胞含有マトリックスを囲み得る液体を細胞含有マトリックスには影響を及ぼさずに取り除くまたは交換することができるように、細胞含有マトリックスを区画内に提供する。単一の細胞含有マトリックスを、細胞含有マトリックスを含む区画ごとに提供することができる。細胞含有マトリックスは、例えば、マトリックス材料および少なくとも1つの細胞を含む溶液を細胞培養プレートの区画内に移行することによって調製することができる。移行後、溶液が細胞含有マトリックスを生成するマトリックスを形成する。
【0263】
一実施形態では、細胞含有マトリックスを前記細胞培養プレートの区画、例えば、ウェルプレートのウェル内でインキュベートする。細胞培養プレートの区画内の細胞含有マトリックスを液体によって少なくとも部分的に囲むことができる。液体はインキュベーションの間存在していてよい。マトリックスの乾燥を回避するために、液体がインキュベーションの間、細胞含有マトリックスを完全に覆っていることが好ましい。細胞含有マトリックスのインキュベーションに適した液体は本明細書に記載されており、それが参照される。特定の実施形態では、区画内の細胞含有マトリックスを細胞培養培地で覆う。
【0264】
細胞含有マトリックスのインキュベーションは、必要に応じて、捕捉用マトリックスとの流体接触前に行う。したがって、放出された1つまたは複数の目的の生体分子は区画内、特に区画に含まれる液体中に蓄積し得る。
【0265】
適切なインキュベーション期間は、細胞含有マトリックスに含まれる細胞型に特に依存し、使用される細胞および目的の生体分子(複数可)との関連で当業者が決定することができる。適切なインキュベーション期間は、複数の実施形態では、1時間から72時間まで、例えば、4時間~72時間などの範囲から選択され得る。微生物学的適用に関しては、より短いインキュベーション期間(例えば、1時間~24時間)を選択することができる。例えば、本明細書に開示される細胞含有マトリックスに含まれ得る細菌細胞などの原核細胞に対してより短いインキュベーション期間を選択することができる。他の適用に関しては、より長いインキュベーション期間(例えば、4時間~72時間)を選択することができる。例えば、細胞含有マトリックスに含めることができる動物細胞などの真核細胞に対してより長いインキュベーション期間を選択することができる。
【0266】
インキュベーション後、放出された目的の生体分子(複数可)を結合させるために、捕捉用マトリックスを区画に添加することができる。他の接触順序も本明細書に記載の本開示の範囲内に入る。さらに、1つまたは複数の目的の生体分子を含む区画内の液体を得、捕捉用マトリックスに添加することができる。そのような実施形態では、捕捉用マトリックスは異なる区画内に存在し得る。一実施形態では、1つよりも多くの捕捉用マトリックスを提供し、1つまたは複数の細胞含有マトリックス、それぞれ放出された目的の生体分子(複数可)と接触させる。捕捉用マトリックスは本明細書の他の箇所に記載されており、それぞれの開示が参照される。1つまたは複数の目的の生体分子の結合後、捕捉用マトリックスを必要に応じて細胞培養プレートの区画などの別の区画に移行する。捕捉用マトリックスを本明細書に記載の微細加工された細胞培養デバイスに導入することもできる。
【0267】
その後、細胞培養プレートの区画の内側に残っている細胞含有マトリックスを再度インキュベートすることができ、新鮮な捕捉用マトリックスを添加することができる。これにより、本明細書に開示される通り目的の生体分子のプロファイリングされた経時的分泌を取得することが有利に可能になる。測定のための適切な時間間隔は本明細書に開示されており、それが参照される。
【0268】
次いで、本開示による方法のステップc)およびd)および必要に応じてステップe)を本明細書の他の箇所に記載の通り実施する。ステップc)の後、結合しなかった遊離の検出用分子を洗浄によって除去することができる。
【0269】
捕捉用マトリックスの移行
本発明の態様に従って、方法は、以下の特色を含む:
・数量および特異性情報を検出用分子作製の間またはその後(例えば、市販の抗体)に付加する
・インキュベーションおよび1つまたは複数の目的の生体分子の結合後、捕捉用マトリックスを第2の区画(例えば、微細加工された細胞培養デバイスの)に移す。したがって、捕捉用マトリックスの処理は細胞培養とは分離される。
・位置情報は収集位置(例えば、収集ウェル内)で付加する。
・捕捉用マトリックスの試料調製および取扱いを細胞培養デバイス、例えば、微細加工された細胞培養デバイスを利用して実施する。前記細胞培養デバイスにより、配列決定することができる1つのバーコード標識内に全ての異なる情報をまとめることが可能になる。
【0270】
別の有利な実施形態では、捕捉用マトリックスの処理を細胞含有マトリックスとは分離し、それにより、前記細胞含有マトリックス内に位置する細胞(複数可)に対するあらゆる(副)作用を防止する。この目的のために、前に記載されている通り捕捉用マトリックスおよび少なくとも1つの細胞含有マトリックスを第1の閉鎖された区画内でインキュベートする。規定されたインキュベーション時間(例えば、1時間、2時間またはそれよりも長く)後、例えば1つまたは複数の微細加工された弁を使用することによって第1の区画を選択的に開口し、好ましくは場所を通過する流体の方向を選択的に変化させるように適合されている弁配置(例えば、RFCP幾何学的形状)を含むデバイスによって捕捉用マトリックスを第2の区画に移行する。第2の区画は、捕捉用マトリックスのトラップおよびその後の別のフォーマットへの制御された移行のための区画内に位置する位置付け手段(例えば、流体力学的トラップ)を含有する。したがって、
図20に例示されている通り、1つの例示的な実施形態では、第1の区画の出口部分は第2の区画の給送チャネルと接続している。その後、単一または複数の細胞含有マトリックスをまだ含有する第1の区画に影響を及ぼすことなく第2の区画に種々の溶液を灌流することができる。したがって、1つまたは複数の型の捕捉用分子およびそれに結合した目的の生体分子を含有する捕捉用マトリックスをまず第2の区画に移行し、次いでそこで、捕捉用マトリックスに、例えば、PBS、遮断溶液、バーコード標識を含む検出用分子を含有する溶液、例えば現時点に関するバーコード/UMI配列を含む1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含有する溶液、重合伸長反応を実施するための溶液などの種々の溶液を灌流する。
【0271】
捕捉用マトリックスの処理と細胞含有マトリックスの位置を分離することにより、いくつかの有利な点がもたらされる。第1に、細胞含有マトリックスが、細胞挙動に影響を及ぼす可能性があるいかなる溶液または緩衝剤とも接触しない。第2に、細胞(複数可)が前記マトリックス内に位置する場合、前記インキュベーション時間後も生体分子が放出し続け、区画に種々の溶液を灌流し、それにより、あらゆるさらに放出された生体分子を洗い流さなければならないので、捕捉用マトリックスの処理の間に前記生体分子を数量化することができない。第3に、目的の生体分子が結合した捕捉用マトリックスを取り出したらすぐに、いかなる目的の生体分子も結合していない新しい捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスの隣に位置付けることができる。
【0272】
さらなる実施形態
さらなる一般的な特徴および実施形態を以下に開示する。
【0273】
別の実施形態によると、方法を、微細加工された細胞培養デバイスおよび/または、収集ウェル(例えば、ウェルプレートの)であることが好ましい収集位置を利用して実施することができる。また、例えば、方法のステップを、微細加工された細胞培養デバイスで一部実施し、収集位置で一部実施することによって両方の混合物を利用することができる。
【0274】
一実施形態によると、第1の態様による方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有し得る:
i)方法により、少なくとも1つの細胞によって分泌された生体分子を測定し、必要に応じて、数量化する;
ii)分子の捕捉を少なくとも1つの細胞の培養/インキュベーションの間に実施する;捕捉された分子の分析を培養/インキュベーションの間かもしくはその後に実施する
iii)分泌された生体分子の時間依存的分析を実施し、方法により、複数の生体分子を複数の時点で分析することが可能になる;
iv)生体分子を時間依存的に分析し、時点は、1~100もしくはそれよりも多く、好ましくは2~90、3~80、4~70、5~60、もしくは5~50、より好ましくは6~40、7~30、もしくは8~20から選択される;
v)生体分子を時間依存的に分析し、分析間の時間間隔は、≧10分間、≧20分間、≧30分間、≧1時間、≧2時間、≧3時間、≧4時間、5時間もしくはそれよりも長く、最大1日、2日もしくは数日から選択される;
vi)捕捉用マトリックスおよび細胞含有マトリックスを同じ区画内でインキュベートする
vii)細胞含有マトリックスを所定の期間にわたってインキュベートした後、捕捉用マトリックスを区画に添加し、細胞含有マトリックスは、水に不混和性の流体層で囲まれている;
viii)目的の生体分子を捕獲した後、1つもしくは複数の型の捕捉用分子に結合していない分子を除去する。これは、区画を流体で洗い流すことによって行うことができる;
ix)少なくともステップa)~(cを1回よりも多く、好ましくは≧2回、≧3回、≧4回、≧5回、≧6回、≧7回、≧8回実施する;かつ/または
x)方法を自動的に実施する。
【0275】
表現型情報と遺伝子型情報のカップリング
前記開示の別の利点は、細胞をn×mの位置で長期間にわたって培養できることである。培養期間中、放出された分子を捕捉し、処理し、その後、分析および数量化することができる。さらに、細胞を任意の時点で、および規定された要件が満たされたらすぐに、n×m位から取り出すことができる。その後、取り出された細胞をqRT-PCRまたは配列決定などの従来の方法で分析することができる。したがって、さらに別の極めて重要な利点は、以下を含めた種々の細胞特異的なデータのカップリングである:
-表現型のデータ、例えば:
〇例えば、蛍光レポーター分子を発現する細胞を使用することによって、または生細胞膜染色などの蛍光プローブを使用することによって得られた蛍光データなどの微速度顕微鏡データ。さらに、細胞形状、細胞遊走および細胞生存率(例えば、アポトーシス小体の形成)、葉状仮足の形成などのデータを微速度顕微鏡データから引き出して、細胞表現型に関するより多くの情報を取得することができる。
〇開示されている通り得た経時的分泌プロファイル
〇表面マーカープロファイル
〇免疫染色などの技法を使用して得た細胞内表現型データ
-例えば、qRT-PCRまたは配列決定などの技法で得た遺伝子型データ
【0276】
例えば、細胞含有マトリックス内の(n,m)位に位置する単一の細胞は、特定のプロモーターとカップリングした蛍光タンパク質を発現し得る。単一の細胞は、増殖を開始し得、その結果、小さな細胞コロニーが生じる。さらに、細胞培養の間、細胞は、本開示を使用して分析することができる種々の分子を放出し得る(例えば、分泌によって)。前記コロニーの蛍光シグナルがある特定の値に達したらすぐに、前記コロニーを含有する(n,m)位に位置するマトリックスを取り出し、qRT-PCRまたはNGSで分析することができる。したがって、本開示は、種々の経時表現型のデータと基礎をなす遺伝子型を単一の細胞レベルで組み合わせ、何百から何千もの細胞に同時に適用可能であるという独特の利点を提供する。
【0277】
別の実施形態では、以前に記載された方法を、微細加工された細胞培養デバイスによって提供される区画のアレイ内で実施することができる。これにより、何百から何千もの区画に位置する(単一の)細胞(複数可)の経時的分泌プロファイルを同時に決定することが可能になる。
【0278】
インキュベーションおよび検出ビーズ処理のための1つの区画。この目的のために、PCT/EP2018/074527に開示されている通り、複数の区画(細胞培養デバイス、好ましくは微細加工された細胞培養デバイスに含まれる)を連続して接続し、捕捉用マトリックスおよび細胞含有マトリックスの送達に使用される共通の給送ラインを共有させる。さらに、灌流ラインを使用することにより、他の区画に影響を及ぼすことなく各区画に対して個別に灌流を行うことができる。例示的な実施形態は、本開示に記載されている。以下のPCT/EP2018/074526の図が、対応する図の説明を含め、さらに参照され、これらはどちらも参照により本明細書に組み込まれる:
-
図2.この図は、捕捉用マトリックスおよび細胞含有マトリックスの取扱い(例えば、位置付け、インキュベーションおよび取り出し)のために使用することができる一般的なアレイの構造を例示する(RFCP幾何学的形状のアレイ)
【0279】
したがって、複数の区画への細胞含有マトリックス、ならびに捕捉用マトリックスの最初のローディングに給送ラインを使用する。その後、隔離された区画、したがって、規定された反応体積を生成するために区画を選択的に閉じる。捕捉用マトリックスの処理を、灌流ラインを使用して実施することができる。したがって、必要な種々の溶液(例えば、検出用分子溶液、洗浄溶液など)を、灌流ラインまたは給送ラインを使用して送達することができる。
【0280】
規定された位置に位置する捕捉用マトリックスの取り出しを、PCT/EP2018/074527に開示されている通り、対応する行および列の弁を扱うことにより、場所を通過する流体の方向を選択的に変化させるように適合されている弁配置(例えば、RFCP機構)を使用して実施することができる。いかなる目的の生体分子も結合していない捕捉用マトリックスを給送ラインによって再度送達することができる(例えば、全ての区画に、いかなる目的の生体分子も結合していない捕捉用マトリックスを含有する溶液を灌流する)。
【0281】
インキュベーション用の1つと捕捉用マトリックス処理用の1つの2つの区画。
捕捉用マトリックス処理を細胞含有マトリックスが位置付けられている場所と空間的に分離する場合、2つのRFCP幾何学的形状を接続し、アレイ内に配置することができる。1つは捕捉用マトリックスの処理用(処理チャンバー)であり、1つは細胞培養および目的の生体分子の結合用である(例えば、マイクロ流体細胞培養区画)別々のRFCP幾何学的形状を含有するアレイの構造の図表が
図20に示されている。捕捉用マトリックス処理を、細胞含有マトリックス(1つまたは複数)を含有する区画から分離することは、捕捉用マトリックスの処理が細胞含有マトリックス内に位置する細胞(複数可)に影響を及ぼすことが防止されるので、有利である。
【0282】
細胞封入および目的の生体分子捕捉のためのマトリックスは、同じまたは異なるサイズを有し得、同じ材料または異なる材料で構成され得る。
【0283】
一実施形態では、両方のマトリックスが直径80μmの球状形状を有し得る。
【0284】
本発明の別の態様では、複数の目的の生体分子、特に、単一の細胞から分泌されるタンパク質を検出するための方法が開示される。
【0285】
第2の態様によるキット
第2の態様によると、本開示は、
a)1つまたは複数の型の検出用分子であって、検出用分子の各型が、目的の生体分子に特異的に結合し、検出用分子の各型が、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含むバーコード標識を含む、検出用分子と、
b)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズできることが好ましい少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーと
を含むキットを提供する。
【0286】
そのようなキットは、例えば、第1の態様による方法に使用することができる。1つまたは複数の型の検出用分子および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは上に第1の態様の方法に関して詳細に開示されており、それぞれの開示が本明細書で参照され、同じく本発明に適用される。さらなる配列エレメント、アダプターバーコードオリゴヌクレオチド、プライマーおよびプライマーの組合せ、バーコード標識、オリゴヌクレオチドのセット、マトリックス、および他の必要に応じたキット構成成分に関して同じことが当てはまる。
【0287】
キットは、少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含むことが好ましい。例は、本明細書に開示されるプライマーおよびさらにアダプターバーコードオリゴヌクレオチドである。あるいは、キットは、検出用分子のバーコード標識とライゲーションして伸長したバーコード標識を提供することができるオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0288】
一実施形態によると、前記キットのオリゴヌクレオチドは、
(i)時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、
(ii)位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、および
(iii)固有の分子識別子(UMI)配列
からなる群から選択される配列エレメントを少なくとも1つ含む。
【0289】
キットは、以下の特色のうちの1つまたは複数をさらに有し得る:
a)少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができるアダプターバーコードオリゴヌクレオチドを含み、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、バーコード標識にハイブリダイズすることができる領域に対して5’側に、(i)時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、および/または(ii)固有の分子識別子(UMI)配列を含む;
b)アダプターバーコードオリゴヌクレオチドを含み、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、検出用分子のバーコード標識のアダプター配列(1)と逆相補的であるアダプター配列(1)Rを含み、アダプターバーコードオリゴヌクレオチドは、
- 時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、
- 位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、
- 固有の分子識別子(UMI)配列、および
- プライマー標的配列、
からなる群から選択される配列エレメントのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは全てをさらに含み、
これらの1つまたは複数の配列エレメントは、アダプター配列(1)Rに対して5’側に位置する;
c)
- 位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、
- 時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、
- 配列決定用のアダプター配列(AS)、
のうちの1つまたは複数を含むプライマーまたはプライマーの組合せであって、
1つまたは複数の配列エレメントBP、AS、および/またはBTが、プライマーまたはプライマーの組合せのうちのプライマーに含まれる場合、必要に応じて伸長させたバーコード標識またはその逆相補物とハイブリダイズすることができるプライマーの配列領域に対して5’側に位置する、プライマーまたはプライマーの組合せ;
d)
(i)検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS);
(ii)1つまたは複数のプライマー標的配列;
(iii)必要に応じて、時間情報を示すバーコード配列(BT);
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列;および
(v)必要に応じて、アダプター配列(1)
を含む1つまたは複数の型の検出用分子のバーコード標識。
【0290】
一実施形態によると、キットは、以下の群から選択されるオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのセットを含む:
a)以下を含むセット1:
a.以下を含む、検出用分子に付着したバーコード標識:
i.必要に応じて、切断可能なリンカー/スペーサー、
ii.必要に応じて、第1のプライマー結合性配列(1)、
iii.バーコード配列BS、
iv.アダプター配列(1);
b.以下を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチド:
i.アダプター配列(1)R、
ii.固有の分子識別子(UMI)配列、
iii.第2のプライマー結合性配列(2)R、
c.以下を含むフォワードプライマー:
i.プライマー配列(1)、
ii.バーコード配列BP、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
d.以下を含むリバースプライマー:
i.プライマー配列(2)R、
ii.バーコード配列BT、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
b)以下を含むセット2:
a.以下を含む、検出用分子に付着したバーコード標識:
i.必要に応じて、切断可能なリンカー/スペーサー、
ii.第1のプライマー結合性配列(1)、
iii.バーコード配列BS、
iv.アダプター配列(1);
b.以下を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチド:
i.アダプター配列(1)R、
ii.バーコード配列BP、
iii.固有の分子識別子(UMI)配列、
iv.第2のプライマー結合性配列(2)R;
c.以下を含むフォワードプライマー:
i.プライマー配列(1)、
ii.バーコード配列BT、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
d.以下を含むリバースプライマー:
i.プライマー配列(2)R、
ii.配列決定用のアダプター配列(AS);
c)以下を含むセット3:
a.以下を含む、検出用分子に付着したバーコード標識:
i.必要に応じて、切断可能なリンカー/スペーサー、
ii.第1のプライマー結合性配列(1)、
iii.バーコード配列BS、
iv.アダプター配列(1);
b.以下を含むアダプターバーコードオリゴヌクレオチド:
i.アダプター配列(1)R、
ii.バーコード配列BT、
iii.固有の分子識別子(UMI)配列、
iv.第2のプライマー結合性配列(2)R;
c.以下を含むフォワードプライマー:
i.プライマー配列(1)、
ii.バーコード配列BP、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
d.以下を含むリバースプライマー:
i.プライマー配列(2)R、
ii.配列決定用のアダプター配列(AS);
d)以下を含むセット4:
a.以下を含む、検出用分子に付着したバーコード標識:
i.必要に応じて、切断可能なリンカー/スペーサー、
ii.第1のプライマー結合性配列(1)、
iii.バーコード配列BS、
iv.固有の分子識別子(UMI)配列、
v.バーコード配列BT、
vi.第2のプライマー結合性配列(2);
b.以下を含むフォワードプライマー:
i.プライマー配列(1)、
ii.バーコード配列BP、
iii.配列決定用のアダプター配列(AS);
c.以下を含むリバースプライマー:
i.プライマー配列(2)R、
ii.配列決定用のアダプター配列(AS)。
【0291】
キットは、そのようなセットのうちの2つまたはそれよりも多くをさらに含み得る。
【0292】
キットは、
a)1つまたは複数の型の捕捉用分子であって、捕捉用分子の各型が、目的の生体分子に結合し、キットで提供される1つまたは複数の型の捕捉用分子が、キットに含まれる1つまたは複数の型の検出用分子と同じ目的の生体分子に結合することが好ましい、1つまたは複数の型の捕捉用分子;
b)細胞のためのマトリックスおよび/または捕捉用マトリックスを提供するための1つまたは複数のポリマーであって、ハイドロゲルを形成することができるものであることが好ましい、ポリマー;
c)捕捉用マトリックスを含有する組成物、好ましくは溶液;
d)ポリメラーゼおよび/またはdNTP;および/または
e)洗浄溶液
をさらに含み得る。
【0293】
一実施形態によると、溶液であることが好ましい捕捉用マトリックスを含有する組成物は、所定のサイズ(例えば、80+-5μm)および濃度(例えば、50マトリックス/μL)を有する単分散捕捉用マトリックスを含有し得る。前記捕捉用マトリックスは、固定化された捕捉用分子(例えば、1つまたは複数の型の捕捉用分子)の所定の混合物を含有する。さらに、前記捕捉用マトリックスは、分布させる前に品質管理を通過したものであり得る。捕捉用マトリックスは、品質管理の間に、以下のうちの1つまたは複数のパラメータに関して確証されたものであり得る:分析物、それぞれ目的の生体分子に対する結合能(例えば、捕捉用マトリックス当たり1×106個の分析物)、弾性、ダイナミックレンジ、検出感度、多重化能および異なる分析物との交点反応性。適用に応じて異なる捕捉用マトリックス溶液を提供することができる。例えば、免疫細胞と腫瘍細胞の相互作用を試験するために、IL-6に対する捕捉用分子およびIL-10に対する捕捉用分子を有する捕捉用マトリックスを前記溶液に含めることができる。別の適用では、化学誘引物質の影響を試験するために、CCL-2に特異的な捕捉用マトリックスおよびCCL-5に特異的な捕捉用マトリックスを提供することができる。
【0294】
検出用分子を溶液などの組成物中に含めることができる。組成物は、バーコード標識を含む少なくとも1つの型の検出用分子を含み得る。実施形態が本明細書に開示される。組成物は、2つまたはそれよりも多くの目的の生体分子を検出するための多重分析を実施するための1つよりも多くの型の検出用分子を含み得る。したがって、前記溶液は、型が異なる検出用分子を規定された濃度で含み得る。
【0295】
結合しなかった分析物および検出用分子を除去するための、洗浄緩衝剤などの洗浄溶液を使用することができる。
【0296】
一実施形態によると、キットは、複数の区画を有するデバイス、好ましくはマルチウェルプレート(例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレートまたは1536ウェルプレート)を含む。デバイスの区画は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、好ましくはアダプターバーコードオリゴヌクレオチド、および/またはプライマーまたはプライマーの組合せを含み得る。適切なアダプターバーコードオリゴヌクレオチド、プライマーおよびプライマーの組合せならびに適切なセットの詳細は、本明細書において他の箇所に記載されており、それぞれの開示が参照される。区画は、伸長および/または増幅反応を実施するための試薬をさらに含み得る。
【0297】
キットは、複数の区画を有するデバイス、好ましくはマルチウェルプレートを含み得、前記デバイスは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する。デバイスに、プライマー伸長および/または増幅ステップを実施するために必要な試薬を予めローディングすることができる。そのようなデバイスは、配列エレメントUMI、BPおよび/またはBTの導入を細胞培養デバイスに含まれる細胞含有マトリックスとは分離して行う場合に特に有利である。バーコード標識の伸長および/または増幅反応の実施のために必要な試薬を予めローディングしたデバイスの区画に検出用分子を結合させた捕捉用マトリックスを移行することだけが必要である。一実施形態では、デバイスの区画は、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド、好ましくはアダプターバーコードオリゴヌクレオチドおよび/またはプライマーまたはプライマーの組合せを含む。具体的には、デバイスの区画は、本明細書に開示されるセット1~4から選択される少なくとも1つのセットを含み得る。区画は、逆転写酵素(例えば、M-MuLVもしくはAMVなど)および/またはポリメラーゼ(例えば、Taq DNAポリメラーゼなど)を含む酵素混合物および必要に応じてdNTPなどの、伸長および/または増幅反応を実施するための試薬をさらに含み得る。試薬は、凍結乾燥した形態でウェルの区画内に提供することができる。デバイスは、例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレートまたは1536ウェルプレートから選択することができる。キットは、凍結乾燥した試薬を再構成するための溶液をさらに含み得る。キットはまた、1つまたは複数の反応緩衝剤およびヌクレアーゼを含まない水も含み得る。
【0298】
第3の態様による複数の配列決定可能な産物
第3の態様によると、複数の配列決定可能な産物が提供され、各配列決定可能な産物は、少なくとも以下の配列エレメント
(i)特異性を示すためのバーコード配列(BS)、および
(ii)時間情報を示すためのバーコード配列(BT)、および/または
(iii)位置情報を示すためのバーコード配列(BP)、および
(iv)必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列
を含む。
【0299】
そのような複数の配列決定可能な産物は第1の態様による方法によって提供することができる。
【0300】
一実施形態によると、複数の配列決定可能な産物のうちの配列決定可能な産物は、含まれる配列エレメント(i)~(iv)のうちの1つまたは複数が互いに異なる。
【0301】
異なる配列エレメントBS、BTおよび/またはBPを含む配列決定可能な産物の数は、少なくとも50、好ましくは少なくとも100である。本明細書に開示される通り、配列決定可能な産物は、固有のUMI配列をさらに含み得る。
【0302】
複数の配列決定可能な産物は、異なるバーコード配列BSを少なくとも2つ含み得、必要に応じて、異なるバーコード配列BSの数は、2~100、5~50、5~25、5~20または7~15の範囲に入り得る。これにより、複数の異なる目的の生体分子を並行して分析することが有利に可能になる。
【0303】
複数の配列決定可能な産物は、異なるバーコード配列BTを少なくとも2つ含み得、必要に応じて、異なるバーコード配列BTの数は、2~200、5~50、5~25、5~20または7~15の範囲に入り得る。本明細書に開示される通り、方法を異なる時点/時間間隔で実施することができ、それにより、目的の生体分子の経時的プロファイルを生成することが可能になる。
【0304】
複数の配列決定可能な産物は、異なるバーコード配列BPを少なくとも2つ含み得、必要に応じて、異なるバーコード配列BPの数は、2~1000、5~1000、10~500、20~250または50~200の範囲に入り得る。上に開示されている通り、細胞含有マトリックスを含む複数の異なる区画(位置)を含む細胞培養デバイスを使用し、それによって、それぞれ異なる位置に位置する細胞含有マトリックスである異なる細胞の多重分析を可能にすることが可能である。異なる細胞は、位置情報を示すバーコード標識BPに基づいて区別することができ、したがって、結果を区画内に含まれる特定の細胞含有マトリックスと相関させることが可能になる。
【0305】
本明細書に開示される通り、UMI配列の長さは、最大40ヌクレオチド、好ましくは4~20ヌクレオチドであり得る。
【0306】
そのような複数の配列決定可能な産物は、第1の態様による方法を使用して生成し、分析することができる。配列エレメントは上に第1の態様の方法に関して詳細に開示されており、それぞれの開示が本明細書で参照され、同じく本発明に適用される。複数の配列決定可能な産物の必要に応じた特色に関して同じことが当てはまる。
【0307】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」および「からなる(consisting of)」の両方を包含するものと解釈されるべきであり、どちらの意味も具体的に意図されており、したがって、個別に開示される本発明による実施形態である。
【0308】
本発明は本明細書に開示される典型的な方法に限定されず、本明細書に記載のものと同様または同等である任意の方法、使用、システムおよび材料を、本発明の実施形態の実施または試験に使用することができる。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。本明細書に提示される表題は、本明細書全体を参照することによって読み取ることができる本発明の種々の態様または実施形態に限定するものではない。
【0309】
主題の明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈により明確に別段の規定がなされない限り、複数の態様を含む。「本開示」および「本発明」などへの言及は、本明細書に教示されている単一または複数の態様を含むなどである。本明細書に教示されている態様は「発明」という用語に包含される。
【0310】
本明細書に記載の好ましい実施形態を選択し、組み合わせることが好ましく、好ましい実施形態のそれぞれの組合せから生じる特定の主題も本開示に属する。
【実施例】
【0311】
以下の実施例では、本発明の材料および方法を提示する。これらの実施例は例示するためだけのものであり、本発明をいかなる様式にも限定するものとは解釈されないことが理解されるべきである。
【0312】
I.一般的な方法のステップ
細胞封入およびマトリックスの位置付け
単一の細胞または複数の細胞をマトリックス内に封入して、細胞含有マトリックスを提供する。マトリックス材料はハイドロゲルによって提供されることが好ましい。マトリックスへの封入は、対応する選別機構を伴う流れを集束させる幾何学的形状または液滴オンデマンドシステムを使用した液滴形成、その後の液滴内に位置する細胞含有ハイドロゲルマトリックスのハイドロゲル形成および解乳化などの技法を使用して行うことができる。粒子、ここでは少なくとも1つの細胞の適切な封入方法は、参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2018/074526に詳細に記載されている。当該記載の方法により、とりわけ、細胞をハイドロゲルビーズ内の中央に置き、それにより、細胞含有マトリックスを提供することが可能になる。液滴およびハイドロゲルマトリックスサイズは、複数の実施形態では、1μm~1000μm、好ましくは5μm~500μm、より好ましくは30μm~200μmの範囲から選択することができる。適切な範囲は本明細書の他の箇所にも記載されている。
【0313】
次いで、提供された細胞含有マトリックスを細胞培養デバイスの区画内に位置付ける。細胞含有マトリックスを含む細胞培養デバイスの区画は、以下のうちの1つまたは複数の特徴を有し得る:
i.それぞれPCT/US2000/017740もしくは好ましくはPCT/EP2018/074526に記載されているQuake弁もしくは垂直方向の膜弁などの微細加工された弁を使用して選択的に開閉することができる;
ii.マトリックス(例えば、細胞含有マトリックスおよび/もしくは捕捉用マトリックス)を位置付けるもしくは固定化するための、微細加工された幾何学的形状であり得る位置付け手段を含む;かつ/または
iii.1つもしくは複数のマトリックスを取り出し、一方、1つもしくは複数の他のマトリックスはそれらの位置に残すための微細加工された幾何学的形状を含む。これは、位置付け手段を通過する流体を提供するように適合されている弁配置(例えば、上で検討されており、PCT/EP2018/074526に開示されているRFCP幾何学的形状)によって実現することができる。
【0314】
規定された目的の生体分子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、TNFまたはインターロイキンなどの標的分析物)に対する特異性を有する捕捉用分子(例えば、固定化された抗体)を含む捕捉用マトリックスを提供し、細胞含有マトリックスの隣または極めて近傍に位置付け(例えば、好ましくは同じ細胞培養デバイスの区画内、好ましくは微細加工された細胞培養デバイスの区画内)、したがって、少なくとも1つの細胞から放出される、例えば分泌される目的の生体分子を捕捉用マトリックスに向かって拡散させることができ、したがって、捕捉用マトリックスの捕捉用分子と結合させ、したがって、目的の生体分子を捕捉することができる。微細加工された区画はそれぞれ、所定の数のマトリックスを含有する。特定の実施形態では、微細加工された区画は、ちょうど1つの細胞含有マトリックスおよび1つの捕捉用マトリックスを含む。捕捉用マトリックスと細胞含有マトリックスの間の距離は、0μm(ハイドロゲルマトリックスが直接接触している)から100μmまたはそれよりも長い距離の間であり得る。所定の数の異なるマトリックスの位置付けは、流体力学的トラッピング構造、好ましくはマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状などの位置付け手段を使用して実現することができる(本明細書および参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2018/074526に開示されている通り)。
【0315】
区画の生成
規定の体積を有する隔離された区画を、例えば、対応する微細加工された弁を作動させることおよび/または第1の流体(例えば、水相)を第2の流体(油相、好ましくはフッ素化油などの、水と不混和性の相であり得る;PCT/EP2018/074526およびPCT/EP2018/074527に記載されている通り二相性区画生成とも称される)と交換し、それによって、反応体積を減少させることにより区画を選択的に閉じる/隔離することによって創出することができる。このステップでは、捕捉用マトリックスおよび細胞含有マトリックスは同じ親水性反応体積内に位置する。反応体積を弁の作動によって閉じることができ、それによって、隔離された区画が生成する。特定の実施形態では、隔離され閉鎖された微細加工された区画の体積は、1nL~500nL、好ましくは10nL~50nLの範囲である。
【0316】
別の有利な実施形態では、本開示に記載の交互二相性区画の生成を使用することにより、反応体積をさらに減少させることができる。したがって、一実施形態では、位置付けられたハイドロゲルマトリックス周囲の水相をフッ素化油(例えば、HFE-7500)などの不混和性流体と交換し、それにより、区画の体積をトラップされたマトリックスの体積にほぼ対応する体積まで減少させることができる。一実施形態では、ハイドロゲルマトリックスを含有する水相の減少した体積は、0.05nL~10nL、好ましくは0.4nL~0.6nLの範囲内に入り得る。
【0317】
細胞含有マトリックスのインキュベーション
細胞含有マトリックスを規定された期間にわたってインキュベートする(例えば、1時間、2時間またはそれよりも長く)。区画内の細胞含有マトリックスを周囲/マトリックス内に位置する細胞(複数可)が1つまたは複数の目的の生体分子を放出し得る、例えば、分泌し得る条件下で提供する。目的の生体分子が近隣の捕捉用マトリックスに拡散し、そこで、放出された目的の生体分子に対して対応する特異性を有する固定化された捕捉用分子と結合する。交互二相区画を生成した場合、目的の生体分子は細胞含有マトリックスに含まれる水相内に残り得、ここで、提供された捕捉用マトリックスも水相を含み、目的の生体分子の拡散のために利用可能になり得る。
【0318】
洗浄ステップなどの中間ステップ
本開示による方法全体を通して任意の時点で洗浄ステップを実施することができる。
【0319】
固定されたマトリックスを必要に応じてPBSなどの洗浄緩衝剤で洗浄して、結合しなかった目的の生体分子を細胞培養デバイスの区画への灌流によって除去することができる。
【0320】
一実施形態によると、隔離された区画を再度開口させる(例えば、微細加工された弁を作動させることによって)。マトリックス周囲の水相が油相(例えば、HFE-7500)に置き換えられている場合、油相を再度水相に置き換えることができる。これは、微細加工されたシステムにPBSなどの水相を灌流させることによって行う。この手順は、全ての区画に同じ緩衝剤を灌流させることができるので、非常に効率的である。
【0321】
1つまたは複数の型の検出用分子を添加するステップ
次いで、捕捉用マトリックスを1つまたは複数の型の検出用分子と接触させる。一実施形態では、捕捉用マトリックスを含む区画に、1つまたは複数の型の検出用分子を含有する溶液(例えば、濃度が調整可能である)を規定された期間にわたって灌流させることができる。検出用分子がそれらの捕捉された目的の生体分子に結合する。検出用分子には、検出用分子の目的の生体分子に対する特異性を示すバーコード配列(BS)を少なくとも含むバーコード標識が付随する。それらの特異性に関するバーコード配列を含むコンジュゲートした検出用分子は市販されており(例えば、Biogenから)、本発明と併せて使用することができる。
【0322】
1つまたは複数の型の検出用分子を捕捉用マトリックスに添加し、インキュベートした後、洗浄ステップを実施して(例えば、PBSを用いて)結合しなかった検出用分子を除去することができる。
【0323】
目的の生体分子が結合した捕捉用マトリックスを別のデバイスに移行した後に検出用分子を添加することもできる。
【0324】
1つまたは複数の配列エレメントを、バーコード配列BT、数量化のためのUMI配列、および/またはバーコード配列BP、および/または配列決定プラットフォーム用のアダプター配列(AS)などのバーコード標識に付加することができる。本明細書に開示される通り、これらの配列エレメントを導入するため、および、それにより、これらの追加的な配列エレメントの1つまたは複数を含む配列決定可能な反応産物を生成するための多数の実施形態が存在する。
【0325】
必要に応じて、オリゴヌクレオチドを付加すること
例えば上記の図と併せて詳細に記載されている通り、1つまたは複数の型の検出用分子を添加し、必要に応じて捕捉用マトリックスを洗浄した後、オリゴヌクレオチドを付加してバーコード標識を伸長させることができる。オリゴヌクレオチドの適切な実施形態は本明細書の他の箇所に詳細に記載されている。そのようなオリゴヌクレオチドは、例えば、バーコード配列BT、UMI配列および/またはバーコード配列BPを含み得る。
【0326】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドをバーコード標識とハイブリダイズすることができる(本明細書ではアダプターバーコードオリゴヌクレオチドとも称される)。プライマー伸長を可能にするために、必要な試薬(例えば、ポリメラーゼ、dNTPなど)を、オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせた後に添加することもでき、本明細書に記載の微細加工されたデバイスを使用する場合には、試薬をオリゴヌクレオチドと一緒に添加する、例えば、区画に灌流させることもできる。オリゴヌクレオチドを鋳型として使用してバーコード標識を伸長し、それによって、伸長したバーコード標識を得ることを可能にする条件を提供する。ポリメラーゼ伸長反応は、区画内で行うことができる。あるいは、捕捉用マトリックスを細胞培養デバイスの別の位置(区画)、または異なるデバイスに輸送した後、ポリメラーゼ伸長反応を実施することができる。
【0327】
代替になるが好ましさが劣る実施形態では、オリゴヌクレオチドをバーコード標識とライゲーションして、伸長したバーコード標識を提供することができる。適切な反応条件を提供して(例えば、リガーゼ、リガーゼ緩衝剤)ライゲーションを可能にする。
【0328】
捕捉用マトリックスの移行および収集
1つまたは複数の型の捕捉用分子、1つまたは複数の結合した目的の生体分子、および結合した検出用分子の結合複合体を含む捕捉用マトリックス(細胞培養デバイスの特定の位置、例えば、位置のアレイの特定の位置に存在し、所定の時点txで移行される)を取り出し、異なる区画に移行することができる((m,n)位は捕捉用マトリックス(および対応する細胞含有マトリックス)がインキュベートされた(好ましくは微細加工された)区画の位置であり、txは捕捉用マトリックスが(微細加工された)区画から取り出され、例えば、別のフォーマット内に移行した時点である)。したがって、参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2018/074526の開示に記載されている逆流チェリーピッキング機構を使用して、捕捉用マトリックスを所定の時点txで所定の収集位置に移行することができる(位置情報(例えば、区画位置(m,n))を特定の収集位置によって維持することができ、異なる区画位置(m,n)についての収集位置は異なり得る)。収集位置は、例えば、1536ウェルプレートなどの、別のフォーマットのウェルであり得る。細胞含有マトリックスは、その元の位置(例えば、微細加工された区画の内側)に残すことができる。特定の実施例によると、細胞含有マトリックスをその元の位置にマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状によってトラップすることができる。捕捉用マトリックスもそのような前記微細加工された幾何学的形状によってトラップすることができる。捕捉用マトリックスの取り出しは、弁配置(RFCP機構とも称される)によって流体の方向および量を選択的に変化させることによって有利に実現することができる。そのような弁配置は上に記載されており、その開示がここにも当てはまる。さらにそのような弁配置は、参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2018/074526に開示されている。そのような手順は、本開示に従って、特に好ましい微細加工された細胞培養デバイスと併せて有利に実施することができる。
【0329】
捕捉用マトリックスを細胞含有マトリックスの近傍から取り出した後(例えば、マトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状からの捕捉用マトリックスの取り出し)、別の捕捉用マトリックスを添加することができる(例えば、細胞含有マトリックスの隣のマトリックス固定化のために微細加工された幾何学的形状の空いている位置に)。これは、上に開示されている弁配置(RFCP機構とも称される)によって有利に実現することができる。捕捉用マトリックスを直接添加することもでき、所定の時間間隔後に添加することもできる。したがって、マトリックスを細胞含有マトリックスの近傍に位置付けることから始まる上記のステップを1回または複数回繰り返すことができる。それにより、異なる時点で放出された目的の生体分子に関する情報を収集し、配列決定可能な反応産物の形態で提供する。方法により、時間分解された放出された目的の生体分子のプロファイルを生成することが可能になる。
【0330】
増幅反応
所望の数の捕捉用マトリックスを1つもしくは複数の時点または1つの時点および多数の位置から収集した後、増幅反応を実施して、必要に応じて伸長させたバーコード標識の複数コピーを生成することが好ましい。本明細書に記載の通り、バーコード配列BP、バーコード配列BT、および/または配列決定プラットフォーム用のアダプター配列(AS)などの1つまたは複数の配列エレメントを、増幅に使用されるプライマーまたはプライマーの組合せに付加することができる。UMI配列を数量化のために使用する場合、増幅の前に導入する。一実施形態によると、フォワードプライマー(例えば、オリゴヌクレオチドP-fwd)およびリバースプライマー(例えば、オリゴヌクレオチドT-rev)を使用する。本明細書に開示される通り、そのようなプライマー対のプライマーの一方または両方は、配列エレメントBP、BT、および/またはASの1つまたは複数を含み得る。
【0331】
増幅は、単一のプライマーを用いたポリメラーゼ伸長反応であってもよく(プライマー伸長の繰り返しサイクルを実施する)、プライマー対を使用したPCR反応であってもよい。
【0332】
1つまたは複数の(必要に応じて伸長した)バーコード標識を鋳型として使用した増幅反応をウェルプレートなどのデバイスの収集ウェル内で実施することが好ましい。例えば、LifeScienceのLightCycler(登録商標)1536 Multiwell PlateおよびLightCycler(登録商標)1536 Instrumentを使用することができる。本明細書に開示される通り、増幅反応を、例えば、単一の収集ウェル内で、以下に由来する(必要に応じて伸長した)バーコード標識を鋳型として使用して実施することができる
- 単一の時点で単一の区画内に位置する少なくとも1つの細胞含有マトリックスから得た捕捉用マトリックス;
- 2つまたはそれよりも多くの時点で単一の区画内に位置する少なくとも1つの細胞含有マトリックスから得た複数の捕捉用マトリックス。この場合、増幅反応を実施する前にバーコードBTを(必要に応じて伸長した)バーコード標識に導入することが好ましい;
- 複数の異なる区画内に位置する複数の細胞含有マトリックスから1つまたは複数の時点で得た複数の捕捉用マトリックス。この場合、増幅反応を実施する前にバーコードBPを(必要に応じて伸長した)バーコード標識に導入することが好ましい。捕捉用マトリックスを2つまたはそれよりも多くの時点で得る場合、増幅反応を実施する前にバーコードBTも(必要に応じて伸長した)バーコード標識に導入することがさらに好ましい。
【0333】
プールおよび配列決定
各収集位置内での増幅反応後、生成した配列決定可能な反応産物の一定分量を各収集位置(例えば、ウェル)から取得することができ、種々の一定分量を反応管内にプールすることができる。配列決定可能な反応産物に含まれる配列エレメントにより、配列決定された反応産物それぞれを同定し、例えば、元の細胞含有マトリックスおよび/または時点と相関させることが可能になるので、プールが可能になる。プールされた試料の濃度を決定し(例えば、UV-Vis分光光度計を使用することによって)、現行の配列決定手順に適合するように調整することができる。その後、適合され、プールした試料の配列決定を行うことができる(例えば、NGSによって)。
【0334】
配列決定解析
配列決定プロセスにより、生成した配列決定可能な反応産物内の各バーコード標識についての配列決定データが提供される(例えば、バーコードライブラリー)。全ての収集位置からプールされた一定分量を含有する試料は、特異性情報、ならびに、例えば、時間情報、位置情報(n|m)、ならびに固有の分子識別子によって示される数量情報を含む異なるバーコード標識を含有する。したがって、配列決定データに基づいて、言及した情報を抽出するため、および目的の生体分子の濃度を決定するために、解析アルゴリズムを使用することができる。一実施形態では、以下のアルゴリズムを使用する:
1.区画の位置((n,m)位)に関する情報を示す全てのバーコード配列を同定する
2.ステップ1の前記バーコード配列から、時間情報(例えば、異なる時点t1、t2、…tx)を示すバーコード配列を含む全てのバーコード配列を同定する
3.ステップ2の前に同定されたバーコード配列から、検出用分子の特異性、したがって、分析される目的の生体分子(例えば、TNF-アルファまたはIL-6)を示すバーコード配列(BS1、BS2、…BSz)を含む全てのバーコード配列を同定する
4.ステップ3の同定されたバーコード配列から、存在するUMIの数を計数する。この数は、ある特定の時点で検出された検出用分子の最終濃度(すなわち、数)を表す。使用された検出用分子の結合親和性は、この数が捕捉用分子と結合した結合した目的の生体分子の数と等しくなるようなものであることが仮定される。したがって、ステップ4では、ある特定の時点(ある特定の位置)での目的の生体分子の濃度を決定することができる。
【0335】
必要であれば、全ての時点について、全ての位置についての全ての目的の生体分子の濃度が決定されるまでステップ1~4を繰り返すことができる。開示されている方法を用いて得られた対応するデータの図がより一般的な形態で
図4に示されている。
【0336】
II.
(実施例1)
実施例1によると、マトリックス、好ましくは3次元ハイドロゲルマトリックス内に提供された単一または複数の細胞によって放出された1つまたは複数の目的の生体分子の時間分解されたプロファイルを取得するための方法が提供される。実施例1のプロセスのステップの概要は
図8に例示されている。当該方法の配列決定可能な反応産物は、
図3Eに示されているものであり得る。
【0337】
実施例1によると、以下の配列エレメントを含むバーコード標識を含む1つまたは複数の型の検出用分子が提供される:
・特異性情報(BS)、
・プライマー配列(1)、
・アダプター配列(1)、および
・検出用分子の作製中または作製後(例えば、市販の抗体)に結び付ける切断可能なリンカー。
【0338】
さらに、数量情報、時間情報および位置情報に関するバーコード配列を収集位置(例えば収集ウェル)内に添加することができる。捕捉用マトリックスの試料調製および取扱いは細胞培養デバイス、好ましくは微細加工された細胞培養デバイス上で実施する。前記微細加工された細胞培養デバイスは、異なる配列エレメントを配列決定することができる1つのオリゴヌクレオチド内に合併することを可能にするので、本開示に重要なものである。
【0339】
実施例1による方法は、上で一般的な方法ステップに関する節に記載されているステップを含む。実施例1は、一般的な方法ステップと比較して、以下のステップが異なる:
【0340】
1つまたは複数の型の検出用分子を添加するステップ
上記の1つまたは複数の型の検出用分子を添加し、ここで、検出用分子は、以下のエレメントを含むバーコード標識を含む:
- 光切断可能なリンカー;
- ポリメラーゼ連鎖反応を実施するためのプライマー配列(1);
- 検出用分子の特異性を示すバーコード配列BS;
- アダプター配列(1)。
【0341】
必要に応じて、オリゴヌクレオチドを区画内の捕捉用マトリックスに添加するステップ
このステップは実施例1では実施しない。
【0342】
バーコード標識に情報を付加するステップ
1つもしくは複数の時点または1つの時点および位置から所望の数の捕捉用マトリックスを収集した後、数量情報(UMI)、時間情報および位置情報を収集された検出用分子、特にバーコード標識に付加することができる:
【0343】
UMI配列を含有するオリゴヌクレオチドを、検出用分子の特異性をコードするバーコード標識に、当業者に周知の分子生物学の確立された方法を使用することによって付加する。例えば、重合伸長反応またはライゲーション反応を使用して、オリゴヌクレオチドの情報をバーコード標識に移行することができる。その後、時間情報を示すバーコード配列および位置情報を示すバーコード配列を、PCR反応を使用することによって付加することができる。プロセスの図が
図8aに記載されている。収集位置(例えば、ウェル)内での数量情報(UMI)の付加には、検出用分子を標識するために必要な異なるUMI配列の数を有意に減らすことができるという利点がある。例えば、1つの捕捉用マトリックスを総数100万種の検出用分子で占有することができる場合、UMIの長さは10bpよりも大きい必要はない(これは、総数1048576=410種の異なるUMI配列に対応する)。
【0344】
各収集位置内でのポリメラーゼ伸長/延長および/または増幅反応(例えば、LifeScienceのLightCycler(登録商標)1536 Multiwell PlateおよびLightCycler(登録商標)1536 Instrumentを使用する)を実施して、
a.検出用分子によって提供されるバーコード配列(上記を参照されたい)
b.固有の分子識別子(UMI)
c.時間情報を示すバーコード(BT)
d.区画の位置情報を示すバーコード(BP)
e.必要に応じて、10×Genomics、Oxford Nanopore、Pacific Biosciences、QIAGEN、Agilent TechnologiesおよびIlluminaなどの配列決定会社からの市販の配列決定プライマーおよびアダプターと相補的な2つの配列
を含む例示的なバーコード標識(例えば、オリゴ-P-Ab-U-T)を生成し、ここで、フォワードプライマー(オリゴヌクレオチドP-fwd)は位置情報を示すバーコード配列(Bp)を含有し、リバースプライマー(例えば、オリゴヌクレオチドT-rev)は時間情報(BT)を表すバーコード配列を含有する、または逆に、フォワードプライマー(オリゴヌクレオチドP-fwd)は時間情報(BT)を表すバーコード配列を含有し、リバースプライマー(例えば、オリゴヌクレオチドT-rev)は位置情報を示すバーコード配列(Bp)を含有する、ステップ。
【0345】
一実施形態では、例示的な1536ウェルプレートの各ウェルは、1つの固有のプライマーの組合せ(例えば、リバースプライマーとフォワードプライマーの対)を含有する。例えば、ウェルA1は、時点t1についてのバーコード配列BT1を含むリバースプライマーおよび捕捉用マトリックスが放出された区画の位置((m,n)1位)を示すためのバーコード配列BP1(位置情報)を含むフォワードプライマーを含有する。ウェルA2は、時点t2についてのバーコード配列BT2を含むリバースプライマーおよび(m,n)1位を同定するためのバーコード配列BP1を含むフォワードプライマーを含有し得る。ウェルB1は、時点t1についてのバーコード配列BT1を含むリバースプライマーおよび(m,n)2位を示すためのバーコード配列BP2を含むフォワードプライマーを含有し得る。したがって、l位およびx時点について、異なるプライマーの必要数は、nプライマー=l*xである。この数は、必要なウェルの数nウェル=nプライマーに対応する。1つの有利な実施形態では、ウェルに、PCRを実施する(例えば、ホットスタートPCRを使用することによって)ために必要な凍結乾燥した構成成分を、捕捉用マトリックスの添加前に予めローディングする。
【0346】
上記の実施形態には、いくつかの有利な点がある:第1に、3D微小環境内に位置する単一の細胞、細胞対および/または小さな細胞コロニーから放出された生体分子を動的な経時様式で分析することを可能にするものである。第2に、結合した目的の生体分子を含有する捕捉用マトリックスの取り出しに起因して、検出システムのダイナミックレンジが大きい。例えば、培養時間全体にわたって1つの捕捉用マトリックスのみを使用する場合、捕捉用分子は、数分~数時間以内に放出された目的の生体分子で飽和し得、その結果、測定のダイナミックレンジが限定される。規定された期間内に放出された目的の生体分子のみを捕捉する複数の捕捉用マトリックスを使用することにより、ダイナミックレンジが増大する。第3に、反応体積の減少により、小さな体積減少に起因して目的の生体分子の濃度が高くなるので、検出機構の感度が有意に増大する。検出用分子(好ましくは抗体)とコンジュゲートしたバーコード標識により、ほぼ無制限の分子標的の数が可能になるので、分析多重化能がほぼ無制限になる。
【0347】
さらに、開示されている方法では、以下の利点がもたらされる:
- 当該方法は、対応する結合性分子(すなわち、検出用分子)、例えば抗体などが入手可能な任意の目的の生体分子、特にタンパク質を検出するように適合され得る
- 当該方法により、理論的に単一分子の検出を可能にするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはポリメラーゼ伸長反応の使用に起因して指数関数的なシグナル増幅が提供される
- 検出限界が非常に低い(pg~fg)
- 小さな試料体積、特に単一の細胞の取扱いに適している
- 複合試料と適合する
- ELISAよりもインキュベーションステップが少なく、アッセイの再現性が改善される
- 全セクレトームプロファイルの結果までの時間が迅速である
- ELISAよりもダイナミックレンジが広い
- 高度に多重化可能である
【0348】
III.
(実施例2)
実施例2のプロセスのステップの概要は
図6に例示されている。当該方法の配列決定可能な反応産物は、
図3Cに示されているものであり得る。
【0349】
実施例2によると、以下の情報を含むバーコード標識を含む1つまたは複数の型の検出用分子が提供される:
・バーコード配列(BS)、
・数量情報に関するバーコード配列(UMI)、
・および抗体産生の間に付加される切断可能なリンカー(市販)
【0350】
時間情報および位置情報に関するオリゴヌクレオチド配列は収集ウェル内で付加する。抗原結合、洗浄および捕捉用マトリックスの取扱いを微細加工された細胞培養デバイス上で実施する。前記微細加工された細胞培養デバイスは、全ての異なる情報を1つのオリゴヌクレオチドに合併することを可能にするので有利である。
【0351】
実施例2による方法は、上で一般的な方法ステップに関する節に記載されているステップを含む。実施例2は、一般的な方法ステップと比較して、以下のステップが異なる:
【0352】
1つまたは複数の型の検出用分子を添加するステップ
上記の1つまたは複数の型の検出用分子を添加し、ここで、検出用分子は、以下のエレメントを含むバーコード標識を含む:
- 光切断可能なリンカー;
- ポリメラーゼ連鎖反応を実施するためのプライマー配列(1);
- 検出用分子の特異性を示すバーコード配列BS;
- 数量情報に関するバーコード配列(UMI);および
- ポリメラーゼ連鎖反応を実施するためのプライマー配列(2)。
【0353】
実施例2によると、数量情報(UMI配列)は、1つまたは複数の型の検出用分子に結合したバーコード標識の一部である。この目的のために、1つまたは複数の型の捕捉用分子、結合した目的の生体分子、および検出用分子の特異性をコードするバーコード標識ならびにUMI配列で標識した1つまたは複数の型の検出用分子を含有する捕捉用マトリックスを収集位置(例えば、ウェル)内に移行する。
【0354】
それらの特異性のためのバーコード配列を有するコンジュゲートした検出用分子は、市販されており(例えば、Biogenから)、当技術分野の当業者がUMI配列で容易に修飾して、言及したエレメントを付加することができる。オリゴヌクレオチドの変性合成をUMI合成のために使用することができる。
【0355】
必要に応じて、オリゴヌクレオチドを区画内の捕捉用マトリックスに添加するステップ
このステップは実施例2では実施しない。
【0356】
バーコード標識に情報を付加するステップ
プライマーの組合せを使用した各収集ウェル内でのPCR反応(例えば、LifeScienceのLightCycler(登録商標)1536 Multiwell PlateおよびLightCycler(登録商標)1536 Instrumentを使用する)を実施して、
a)1つまたは複数の型の検出用分子(例えば、オリゴ-Ab-U)によって提供されるバーコード標識、
b)時点特異的ヌクレオチド配列(BT)、
c)位置特異的ヌクレオチド配列(BP)、
d)アダプター配列(例えば、市販の配列決定プライマーおよび10×Genomics、Oxford Nanopore、Pacific Biosciences、QIAGEN、Agilent TechnologiesおよびIlluminaなどの配列決定会社からのアダプターと相補的な2つの配列
を含む例示的な配列決定可能な反応産物(例えば、オリゴ-P-Ab-U-T)を生成し、ここで、フォワードプライマー(オリゴヌクレオチドP-fwd)は位置情報(Bp)を表すバーコード配列を含有し、リバースプライマー(オリゴヌクレオチドT-rev)は時間情報(BT)を表すバーコード配列を含有する、または逆に、フォワードプライマー(オリゴヌクレオチドP-fwd)は時間情報(BT)を表すバーコード配列を含有し、リバースプライマー(オリゴヌクレオチドT-rev)は位置情報(Bp)を表すバーコード配列を含有する。
【0357】
バーコード標識とコンジュゲートした検出用分子にUMIを直接組み入れることにより、逆転写酵素反応によるプライマー延長の必要性が排除される。
【0358】
IV.
(実施例3)
実施例3のプロセスのステップの概要は
図7に例示されている。当該方法の配列決定可能な反応産物は、
図3Dに示されているものであり得る。
【0359】
実施例3によると、以下の情報を含むバーコード標識を含む1つまたは複数の型の検出用分子が提供される:
・バーコード配列(BS)、
・数量情報に関するバーコード配列(UMI)、
【0360】
時間情報は、捕捉用マトリックスおよび細胞含有マトリックスを含有する細胞培養デバイスの区画内で付加する。位置情報は収集ウェル内で付加する。捕捉用マトリックスの試料調製および取扱いは微細加工された細胞培養デバイスを利用して実施する。前記微細加工された細胞培養デバイスは、異なる情報の全てを、配列決定することができる1つのオリゴヌクレオチド内に合併することを可能にするので、有利である。
【0361】
実施例3による方法は、上で一般的な方法ステップに関する節に記載されているステップを含む。実施例3は、一般的な方法ステップと比較して、以下のステップが異なる
【0362】
1つまたは複数の型の検出用分子を添加するステップ
1つまたは複数の型の検出用分子の添加を実施例2に記載の通り実施する。
【0363】
必要に応じて、オリゴヌクレオチドを区画内の捕捉用マトリックスに添加するステップ
時間情報の付加は、1つまたは複数の型の検出用分子に結合したバーコード標識の伸長を細胞培養デバイスの区画内で実施することによって行う。インキュベーションステップおよび目的の生体分子の結合の後、捕捉用マトリックスならびに細胞含有マトリックスを含有する区画に、以下のエレメントを有するオリゴヌクレオチドを含有する溶液を灌流する:
a.時間情報を示すバーコード配列BT(例えば、時点特異的配列)
b.バーコード標識との結合のためのアダプター配列(1)
c.リバースプライマー結合性配列(2)R
【0364】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドを含有する溶液は、ハイブリダイゼーション緩衝剤であり得る。ハイブリダイゼーション溶液の灌流に起因して、オリゴヌクレオチドはバーコード標識(1つまたは複数の型の検出用分子とカップリングしている)にアダプター配列(1)を介して結合する。その後、洗浄緩衝剤(例えば、PBS)を灌流することにより、結合しなかったオリゴヌクレオチドを洗い流す。次のステップでは、マトリックスに、IsoPol(商標)DNA Polymerase(ArcticZymes)などのDNAポリメラーゼを含有する溶液を灌流する。したがって、オリゴヌクレオチドが伸長し、配列がバーコード標識に付加される(伸長したバーコード標識の生成)。ここで、伸長したバーコード標識は以下のエレメントを含有する:
a)光切断可能なリンカー、
b)ポリメラーゼ連鎖反応のためのプライマー(プライマー配列(1))、
c)検出用分子の特異性を示すバーコード配列BS(例えば、抗原特異的配列(Bs))、
d)固有の分子識別子(UMI)、
e)アダプター配列(1)、
f)時間情報を示すバーコード配列BT(例えば、時点特異的配列)、および
g)プライマー配列(2)。
【0365】
バーコード標識に情報を付加するステップ
捕捉用マトリックスを、1つまたは複数の型の捕捉用分子、結合した目的の生体分子およびバーコード付けされた1つまたは複数の型の検出用分子を含有する区画((m,n)位)から1536ウェルプレートなどの別のフォーマットの所定のウェル((m,n)位に対応するウェル)に移行する。好ましい実施形態では、これを、開示されている逆流チェリーピッキング機構を使用して行う。このステップ時に、検出用分子は、数量情報、特異性情報ならびに時間情報を含有する伸長したバーコード標識とカップリングしている。細胞(複数可)を含有するマトリックスはその位置内に残る。捕捉用マトリックスがなお前記細胞培養デバイスの区画内に位置付けられている場合には時間情報が付加されるので、配列決定可能な反応産物を生成するために必要なウェルの数はnウェル=l*×からnウェル=lまで減少する。
【0366】
異なる時点および位置からの全ての検出ビーズを収集した後、1つまたは複数の型の検出用分子とカップリングした収集された伸長したバーコード標識に位置情報を付加する。例えば、これは、各収集ウェル内でのPCR反応を実施することによって行うことができ、フォワードプライマーおよび/またはリバースプライマー(ここではプライマーの組合せ)は位置情報を表すバーコードを含有し得る。
【0367】
V.
(実施例4)
実施例4のプロセスのステップの概要は
図9に例示されている。当該方法の配列決定可能な反応産物は、
図3Fに示されているものであり得る。
【0368】
実施例4によると、以下の情報を含むバーコード標識を含む1つまたは複数の型の検出用分子が提供される:
抗原特異性情報(BS)。
時間情報および数量情報(UMI)は増幅マトリックスおよび細胞含有マトリックスを含有する細胞培養デバイスの区画内で付加する。
【0369】
別の有利な実施形態では、時間情報ならびに数量情報を1つまたは複数の型の検出用分子に結合したバーコード標識に区画内で付加する。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、時間情報を示すバーコード配列BTならびに数量情報(UMI)を含有する。利点は、UMIとBTの組合せに起因してUMIライブラリーサイズが縮小することである。
【0370】
上の差異は別として、実施例4による方法は、上で一般的な方法ステップに関する節に記載されているステップを含む。
【0371】
VI.
(実施例5)
実施例5のプロセスのステップの概要は
図5に例示されている。当該方法の配列決定可能な反応産物は、
図3Bに示されているものであり得る。
【0372】
実施例5によると、以下の情報を含むバーコード標識を含む1つまたは複数の型の検出用分子が提供される:
・抗原特異性情報(BS)/時間情報(BT)/数量情報(UMI)は抗体産生の間に付加する
【0373】
別の有利な実施形態では、1つまたは複数の型の検出用分子に結合したバーコード標識は、特異性情報、数量情報および時間情報を含有し、それにより、処理ステップの数が減少する。したがって、捕捉用マトリックスおよび細胞含有マトリックス(1つまたは複数)のインキュベートおよびその後の洗浄の後、捕捉用マトリックスに、特異性情報、数量情報および時間情報を含有するバーコード標識で標識された1つまたは複数の型の検出用分子を含有する溶液を灌流する。捕捉用マトリックスを最終的に収集ウェルに移行し、そこで位置情報を例えばPCRを使用することによって付加する。
【0374】
上の差異は別として、実施例5による方法は、上で一般的な方法ステップに関する節に記載されているステップを含む。
【0375】
VII.
(実施例6)
実施例6の中心的なプロセスのステップは
図21に例示されている。細胞含有マトリックスを、デバイスとして細胞培養プレート内でインキュベートする。方法は、細胞含有マトリックスを、細胞培養プレート、例えば、96ウェルプレートの区画(例えば、ウェル)内に位置するように提供(例えば、生成)することを含む。細胞含有マトリックスを、区画内で、細胞含有マトリックスには影響を及ぼさずに周囲の液体(複数可)を交換することができるように位置付ける。従来のピペット操作を使用して細胞をハイドロゲルプラグまたは半球に封入して、ウェルプレート内に位置付けられた細胞を提供することができる。その後、以下の方法ステップを実施する:
- 捕捉用マトリックスを提供するステップであって、捕捉用マトリックスが1つまたは複数の型の捕捉用分子を含み、捕捉用分子の各型が目的の生体分子に結合する、ステップ(例えば、本明細書に開示される通り調製するまたは得ることによって);
- 細胞含有マトリックスをインキュベートして、1つまたは複数の目的の生体分子を放出させるステップ。本明細書の他の箇所で開示されている通り、捕捉用マトリックスを放出された目的の生体分子(複数可)と接触させるための異なる選択肢が存在する。捕捉用マトリックスは、例えば、目的の生体分子(複数可)を放出させるためのインキュベーションの前またはその間に存在してもよく、捕捉用マトリックスをインキュベーション後に添加することもできる。インキュベーション(例えば、所定の期間にわたる)後に捕捉用マトリックスを添加することにより、放出された目的の生体分子(複数可)が周囲の液体中に蓄積する。一実施形態によると、捕捉用マトリックス(例えば、
図21に示されている複数の捕捉ビーズなど)をインキュベーション期間後に細胞含有マトリックスを含む区画および周囲の液体に添加する。1つまたは複数の目的の生体分子を捕捉用マトリックスの1つまたは複数の型の捕捉用分子に結合させる;
〇必要に応じて、方法は、捕捉用マトリックスをさらなる処理のために別の場所、例えば、同じ細胞培養プレートの異なるウェルまたは異なる細胞培養プレートに移行することを含む;
- 1つまたは複数の型の検出用分子を捕捉用マトリックスに添加するステップであって、検出用分子の各型が目的の生体分子に特異的に結合し、検出用分子の各型が、検出用分子の特異性を示すバーコード配列(BS)を含むバーコード標識を含む、ステップ(ステップc)参照);
〇結合しなかった検出用分子を例えば活発な洗浄によって完全に除去することが好ましい;
- 少なくとも、
〇バーコード配列(B
S)、および
〇時間情報を示すためのバーコード配列(B
T)、および/または
〇位置情報を示すためのバーコード配列(B
P)、および
〇必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)配列
を含む配列決定可能な反応産物を生成するステップ(ステップd)参照)であって、
配列決定可能な反応産物の生成が、少なくとも1つの型の検出用分子のバーコード標識とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、必要に応じてプライマーの使用を含むことが好ましい、ステップ;および
- 好ましくは、生成された反応産物の配列決定を行うステップ(ステップe)参照)。
【0376】
インキュベーション期間は、当業者が、細胞含有マトリックスに含まれる細胞および目的の生体分子(複数可)を考慮して選択することができることに留意する。複数の実施形態では、インキュベーション期間は、1時間~72時間、例えば、4時間~72時間などの範囲から選択される。微生物学的適用に関しては、短いインキュベーション期間(例えば、1時間~24時間)を選択することができる。例えば、本明細書に開示される細胞含有マトリックスに含めることができる細菌細胞などの原核細胞に対して短いインキュベーション期間を選択することができる。他の適用に関して長いインキュベーション期間(例えば、4時間~72時間)を選択することができる。例えば、細胞含有マトリックスに含めることができる動物細胞などの真核細胞に対して長いインキュベーション期間を選択することができる。
【0377】
方法は、細胞含有マトリックスをインキュベートして、1つまたは複数の目的の生体分子を放出させる1つまたは複数のサイクル、および上記の通り各サイクルにおける捕捉用マトリックスの添加も含み得る。インキュベーションおよび結合を複数回、例えば、≧2回、≧3回、≧4回、または≧5回繰り返し実施することができる。サイクル間の適切な時間間隔は当業者が選択することができる。複数の実施形態では、サイクル間の時間間隔は、≧10分間、≧20分間、≧30分間、≧1時間、≧2時間、≧3時間、≧4時間、5時間またはそれよりも長く、最大1日、2日または数日から選択され、好ましくは30~130分間の範囲から選択される。
【国際調査報告】