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特表2022-522875関節リウマチを予防又は処置するための新規ワクチン戦略
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  • 特表-関節リウマチを予防又は処置するための新規ワクチン戦略 図1
  • 特表-関節リウマチを予防又は処置するための新規ワクチン戦略 図2
  • 特表-関節リウマチを予防又は処置するための新規ワクチン戦略 図3
  • 特表-関節リウマチを予防又は処置するための新規ワクチン戦略 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】関節リウマチを予防又は処置するための新規ワクチン戦略
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20220413BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20220413BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220413BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
C12N15/55
C07K14/47 ZNA
C12N5/0783
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61K38/16
A61K38/04
A61K39/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552528
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2020056015
(87)【国際公開番号】W WO2020178426
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】19305265.1
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F-13284 Marseille cedex 07, France
(71)【出願人】
【識別番号】509196062
【氏名又は名称】アシスタンス・ピュブリク・オピトー・ドゥ・マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE HOPITAUX DE MARSEILLE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ルーディエ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】オージェ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】バランドロー,ナタリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084MA17
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB151
4C084ZB152
4C085AA03
4C085BA01
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE06
4C085EE07
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA40
4H045DA86
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA33
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、関節リウマチの処置の分野に関する。本発明者らは、アルギニンをシトルリンへと変換する酵素の1つであるPAD4が、ACPAの産生を補助するT細胞の標的抗原であると提唱する。本発明者らは最近、ペプチジルアルギニルデイミナーゼによる免疫化が、通常のマウスにおいて抗シトルリン化フィブリノーゲン抗体産生をトリガーすることを実証した。ここで、本発明者らは、12個のHLA-DRB1遺伝子型のそれぞれと関連した関節リウマチを発症するリスク(OR)は、各遺伝子型によってコードされる2つのHLA-DR分子が、PAD4に由来する少なくとも1つのランダムなペプチドに結合する確率には相関するが、シトルリン化フィブリノーゲン又は天然フィブリノーゲンに由来するペプチドに結合する確率とは相関しないことを実証する。関節リウマチ患者、乾癬性関節炎患者、及び対照に由来する末梢血リンパ球はPAD4に対して増殖し、そしてそれらは、特に、関節リウマチ患者及び数人の乾癬性関節炎患者由来のT細胞を刺激する、PAD4由来のペプチドであるp8(配列番号6)を同定する。p8に対する増殖応答は、関節リウマチ、共有エピトープ陽性であるHLA-DR対立遺伝子、及びPAD4に対する抗体に関連している。したがって、本発明は、PAD4タンパク質に由来するペプチド、並びに関節リウマチの処置及び予防におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のPAD4タンパク質に由来するペプチド。
【請求項2】
ペプチドが、表1に記載されている、請求項に記載のペプチド。
【請求項3】
ペプチドが、HLA-DRB1*0101、HLA-DRB1*0401、HLA-DRB1*0404、HLA-DRB1*0402又はHLA-DRB1*0701の分子に結合する、請求項1記載のペプチド。
【請求項4】
ペプチドが、配列番号2のアミノ酸61~100のアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項1記載のペプチド。
【請求項5】
ペプチドが、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項4記載のペプチド。
【請求項6】
ペプチドが、配列番号5:DPGVEVTLTMK-Xaa12-ASGSTGDQ(ここでのXaa12は、アラニン(Ala又はA)又はバリン(Val又はV)である)のアミノ酸配列又はその機能の保存された変異体を含むか又はからなる、請求項1記載のペプチド。
【請求項7】
ペプチドが、配列番号6若しくは配列番号7のアミノ酸配列又はその機能の保存された変異体を有する、請求項6記載のペプチド。
【請求項8】
ペプチドが、配列番号8のアミノ酸配列又はその機能の保存された変異体を有する、請求項1記載のペプチド。
【請求項9】
請求項1~8に記載のPAD4タンパク質に由来するペプチドをコードしている核酸配列。
【請求項10】
医薬品として使用するための、請求項1~8記載のPAD4タンパク質に由来するペプチド、又は請求項9記載の核酸配列。
【請求項11】
関節リウマチ又は乾癬性関節炎の処置を必要とする対象において、関節リウマチ又は乾癬性関節炎の処置に使用するための、請求項1~8記載のPAD4タンパク質に由来するペプチド、又は請求項9記載の核酸配列。
【請求項12】
関節リウマチ又は乾癬性関節炎の処置又は予防を必要とする対象に請求項1~8記載のペプチド又は請求項9記載の核酸配列を投与することによる、関節リウマチ又は乾癬性関節炎を処置又は予防するための方法。
【請求項13】
請求項1~8記載のPAD4タンパク質に由来するペプチド又は請求項9記載の核酸配列を含むワクチン組成物。
【請求項14】
関節リウマチ又は乾癬性関節炎の予防又は処置を必要とする対象において、関節リウマチ又は乾癬性関節炎の予防又は治療に使用するための、請求項1~8記載のPAD4タンパク質に由来するペプチド又は請求項9記載の核酸配列を含むワクチン組成物。
【請求項15】
請求項1~8記載のペプチドを特異的に認識するTリンパ球。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
したがって、本発明は、PAD4タンパク質に由来するペプチド、並びに関節リウマチの処置及び予防におけるその使用に関する。
【0002】
発明の背景:
関節リウマチの発症に対するHLA-DRB1遺伝子の影響は、1976年以来知られ、関節リウマチ患者のリンパ球は、混合リンパ球培養液中で互いに刺激しないことが観察されている(1)。
【0003】
その時以来、HLA-DRB1遺伝子及びそれらの産物が特徴付けられ、それらの機能であるCD4T細胞へのペプチドの提示が同定されている。HLA-DRB1の多形が記載され、そして、関節リウマチに関連するHLA-DRB1対立遺伝子が、それらのβ1鎖の第3超可変領域において類似したモチーフを共有していることが示されている。「共有エピトープ」と呼ばれるこのモチーフは、関節リウマチに関連したあらゆるHLA-DRB1対立遺伝子に存在している(2)。個体において発現されているどちらのHLA-DRB1対立遺伝子も、関節リウマチ発症リスクに影響を及ぼす。2013年に南フランスにおいて、本発明者らは、3000人の被験者に対してHLA-DRB1遺伝子型の関節リウマチとの関連研究を行ない、136個の最もありふれたHLA-DRB1遺伝子型の中の106個について関節リウマチを発症する、0.2から30の範囲のオッズ比を示す二項目の表を公開した(3)。
【0004】
同様に、関節リウマチの定義は、定期的な診断基準の改訂と共に改善され続けた。2010年の米国リウマチ学会の基準は、関節リウマチに特徴的な抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)の存在を含む(4)。ACPAは、多くの異なるタンパク質上のシトルリン残基を認識する(5~8)。シトルリンは、脱イミン化と呼ばれ、ペプチジルアルギニルデイミナーゼ(PAD)と呼ばれる酵素によって行なわれる、翻訳後修飾後に得られる修飾形のアルギニンである(9)。ACPAは、関節リウマチ患者のおよそ3分の2に存在している。それらは関節リウマチに先行することが多い。しかしながら、共有エピトープ陽性のHLA-DRB1遺伝子が、どのようにして関節リウマチの発症に寄与するかは、依然として不明である。
【0005】
簡単な説明である「共有エピトープは、シトルリン化ペプチドに結合する」という仮説(SECIT)は、HLA-DR拘束性T細胞が、ACPAによって認識される多くの異なるシトルリン化タンパク質に対する抗体応答を補助し得ることを示唆する。このモデルでは、関節リウマチに関連したHLA-DRB1対立遺伝子が、シトルリン化ペプチドに結合し、それらをヘルパーT細胞に提示すると考えられている。この仮説は、あるビメンチンペプチドに関する非常に少ない結合データによって支持され(10)、天然形及びシトルリン化形の、数百個のフィブリノーゲン、ビメンチン、II型コラーゲン、及びエプシュタインバーウイルスのペプチドに関する広範囲におよぶ結合データによって否定される(11~13)。それに加えて、ACPAの数多くのシトルリン化標的タンパク質に特異的なヘルパーT細胞はつかみどころがない。端的に言えば、ACPAの産生を補助するT細胞及びそれらの標的抗原(群)は依然として同定されていない。
【0006】
発明の要約:
ここで、本発明者らは、アルギニンをシトルリンへと変換する酵素の1つであるPAD4が、ACPAの産生を補助するT細胞の標的抗原であると提唱する。本発明者らは近年、PADに対する免疫化が、正常なマウスにおいて抗シトルリン化フィブリノーゲン抗体の産生をトリガーすることを実証した。ここで、本発明者らは、12個の各々のHLA-DRB1遺伝子型と関連した関節リウマチを発症するリスク(オッズ比)は、各遺伝子型によってコードされる2つのHLA-DR分子がPAD4に由来する少なくとも1つのランダムなペプチドに結合する確率には相関するが、シトルリン化フィブリノーゲン又は天然フィブリノーゲンに由来するペプチドに結合する確率とは相関しないことを実証する。関節リウマチ患者、乾癬性関節炎患者、及び対照に由来する末梢血リンパ球がPAD4に対して増殖し、そして本発明者らは、特に、関節リウマチ患者及び数人の乾癬性関節炎患者由来のT細胞を刺激する、PAD4由来のペプチドであるp8(配列番号6)を同定する。p8に対する増殖応答は、関節リウマチ、共有エピトープ陽性のHLA-DR対立遺伝子、及びPAD4に対する抗体に関連している。
【0007】
したがって、本発明は、関節リウマチの処置及び予防に使用するための、PAD4タンパク質由来のペプチド及びその使用に関する。特に、本発明はその特許請求の範囲によって定義される。
【0008】
発明の詳細な説明:
本発明のペプチド
本発明の第一の態様は、配列番号2のPAD4タンパク質に由来するペプチドに関する。
【0009】
本明細書において使用する「ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4」に対する「PAD4」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、アルギニン残基をシトルリンへと変換するCa2+依存性酵素を示す。PAD4は、関節リウマチ疾患の発症及び進行において原因となる役割を果たすと広く信じられている。なぜなら、PAD4遺伝子内の関節リウマチに関連した突然変異が多種多様な集団において同定され(A. Suzuki et al., Nat. Genet., 2003, 34: 395-402; T. Iwamoto et al., Rheumatology, 2006, 45: 804-807;及びY.H. Lee et al., Rheumatol. Int., 2007, 27: 827-233)、関節リウマチ患者は、シトルリン含有タンパク質を認識する自己抗体を産生するからである。PAD4は、幾人かの関節リウマチ患者においてコンフォメーション依存的な自己抗原であることがすでに示されている(Y. Takizawa et al., Scand. J. Rheumatol., 2005, 3: 212-215)。ヒトでは、PAD4タンパク質は、663アミノ酸残基(GenBankアクセッション番号:NP_036519.1)を含有し、配列番号1に定義された核酸配列及び配列番号2に定義されたアミノ酸配列を有する。
【0010】
PAD4の核酸配列(配列番号1):
【化1】
【0011】
PAD4のアミノ酸配列(配列番号2):
【化2】
【0012】
特定の実施態様では、PAD4タンパク質に由来するペプチドは、HLA-DRB1*0101、HLA-DRB1*0401、HLA-DRB1*0404、HLA-DRB1*0402又はHLA-DRB1*0701の分子に結合するペプチドである。特に、PAD4タンパク質に由来するペプチドは、HLA-DRB1*0401又はHLA-DRB1*0404の分子に結合する。
【0013】
別の特定の実施態様では、PAD4タンパク質に由来するペプチドは、表1に記載のペプチドである。
【0014】
したがって、特定の実施態様では、PAD4タンパク質に由来するペプチドは、配列番号6、配列番号8、又は配列番号10~72からなる群より選択されたアミノ酸配列からなる。
【0015】
特定の実施態様では、PAD4タンパク質に由来するペプチドは、15~25アミノ酸のペプチドである。特定の実施態様では、PAD4タンパク質に由来するペプチドは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25アミノ酸のペプチドである。
【0016】
別の特定の実施態様では、PAD4タンパク質に由来するペプチドは、配列番号2のアミノ酸61~100のアミノ酸配列を含むか又はからなるペプチドである。
【0017】
別の特定の実施態様では、PAD4タンパク質に由来するペプチドは、配列番号2のアミノ酸61~100のアミノ酸配列を含むか又はからなるアミノ酸配列を有するペプチドである。特に、本発明のペプチドは、配列番号2のアミノ酸61~100に位置するPAD4タンパク質に由来するペプチドに対して60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一率を有し、かつ依然として抗原提示細胞によって効率的に提示されることができる。
【0018】
特定の実施態様では、本発明は、配列番号3又は4のアミノ酸配列に対して60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一率を有するPAD4タンパク質に由来するペプチドに関する。
【0019】
特定の実施態様では、PAD4由来のペプチドは、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列を含むか又はからなる。
【0020】
【化3】
【0021】
別の特定の実施態様では、PAD4タンパク質由来のペプチドは、配列番号5:DPGVEVTLTMK-Xaa12-ASGSTGDQ(ここでのXaa12は、アラニン(Ala又はA)又はバリン(Val又はV)である)のアミノ酸配列又はその機能の保存された変異体を含むか又はからなる。
【0022】
特定の実施態様では、PAD4タンパク質由来のペプチドは、アミノ酸配列DPGVEVTLTMKAASGSTGDQ(配列番号6、ペプチドp8)又はDPGVEVTLTMKVASGSTGDQ(配列番号7、ペプチドp8に由来)又はその機能の保存された変異体を含むか又はからなる。
【0023】
特定の実施態様では、PAD4タンパク質由来のペプチドは、アミノ酸配列VRVFQATRGKLSSKCSVVLG(配列番号8、ペプチドp22)又はその機能の保存された変異体を含むか又はからなる。
【0024】
1つの実施態様では、本発明のペプチドは、本発明に記載の配列番号6(p8)、配列番号7(p8に由来)又は8(p22)のペプチドに対して少なくとも60%、さらにより特定すると少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一率を含み、依然として抗原提示細胞によって効率的に提示されることができる。
【0025】
本明細書において使用する「機能の保存された変異体」という用語は、タンパク質又は酵素内の所与のアミノ酸残基が、該ポリペプチドの全体的なコンフォメーション及び機能を変化させることなく、変更(挿入、欠失、又は置換)されているものを指す。このような変異体は、欠失、挿入、及び/又は置換などの、アミノ酸の改変を有するタンパク質を含む。「欠失」は、タンパク質内に1つ以上のアミノ酸が存在しないことを指す。「挿入」は、タンパク質内における1つ以上のアミノ酸の付加を指す。「置換」は、タンパク質内の1つ以上のアミノ酸を、別のアミノ酸残基によって置換することを指す。典型的には、所与のアミノ酸は、類似した特性(例えば、極性度、水素結合能、酸性、塩基性、疎水性、芳香族性など)を有するアミノ酸によって置換されている。保存されていると示されているもの以外のアミノ酸は、タンパク質内で異なっていてもよく、よって類似の機能を有する任意の2つのタンパク質間のタンパク質配列又はアミノ酸配列の類似率は変動し得、例えば、Cluster法などによるアラインメントスキームに従って決定したところ、70%から99%であり得、ここでの類似率は、MEGALIGNアルゴリズムに基づく。「機能の保存された変異体」はまた、BLAST又はFASTAアルゴリズムによって決定したところ少なくとも60%、特に少なくとも75%、より特定すると少なくとも85%、さらに特定すると少なくとも90%、さらにより特定すると少なくとも95%のアミノ酸同一率を有し、かつ、それが比較される天然タンパク質又は親タンパク質と同じ又は実質的に類似した特性又は機能を有する、ポリペプチドも含む。2つのアミノ酸配列は、80%超、特に85%超、特に90%超のアミノ酸が同一であるか、又は約90%超、特に95%超が、短い方の配列の全長に対して類似している(機能的に同一である)場合に、「実質的に相同」又は「実質的に類似」している。特に、類似した又は相同な配列は、例えばGCG(遺伝子コンピューターグループ、GCGパッケージ用のプログラムマニュアル、バージョン7、マジソン、ウィスコンシン州)パイルアッププログラム、又はBLAST、FASTAなどの配列比較アルゴリズムのいずれかを使用したアラインメントによって同定される。
【0026】
特定の実施態様では、本発明のペプチドは、それらのC末端部分及びN末端部分に1つ又は2つ余分のアミノ酸を含有していてもよい。
【0027】
本発明によると、本発明のペプチドは、当技術分野において公知であるペプチド合成法に従って、ペプチドを合成することによって得ることができる。
【0028】
典型的には、本発明は、表1のペプチド又は配列番号3、配列番号4、配列番号6(p8)、配列番号7(p8に由来)、若しくは配列番号8(p22)のペプチドに対して実質的に同一であるペプチドを包含し、ここでの1つ以上の残基は、機能的に類似した残基で保存的に置換され、これらは上記のペプチドの機能的態様を示し、すなわち、依然として、所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同じように、抗原提示細胞によって効率的に提示されることができる。
【0029】
保存的置換の例としては、1つの非極性(疎水性)残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシン、若しくはメチオニンを別の残基で置換、1つの極性(親水性)残基を、別の残基で置換、例えばアルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、グリシンとセリンとの間で置換、1つの塩基性残基、例えばリジン、アルギニン、若しくはヒスチジンを別の残基で置換、又は、1つの酸性残基、例えばアスパラギン酸若しくはグルタミン酸を別の残基で置換などが挙げられる。
【0030】
「保存的置換」という用語はまた、誘導体化されていない残基の代わりに、化学的に誘導体化された残基の使用を含む。「化学的誘導体」は、側鎖官能基の反応によって化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有する患者のペプチドを指す。このような誘導体化された分子の例としては、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンズオキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、又はホルミル基を形成した分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は、誘導体化されることにより、塩、メチルエステル及びエチルエステル、又は他の種類のエステル若しくはヒドラジドを形成し得る。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化されることにより、O-アシル又はO-アルキル誘導体を形成し得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導体化されることにより、N-イム-ベンジルヒスチジン(N-im-benzylhistidine)を形成し得る。化学的誘導体としては、20個の標準的なアミノ酸の1つ以上の天然に存在するアミノ酸の誘導体を含有しているペプチドが挙げられる。例えば:4-ヒドロキシプロリンを、プロリンに代えて置換してもよく;5-ヒドロキシリジンを、リジンに代えて置換してもよく;3-メチルヒスチジンをヒスチジンに代えて置換してもよく;ホモセリンを、セリンに代えて置換してもよく;オルニチンを、リジンに代えて置換してもよい。
【0031】
いくつかの実施態様では、本発明のペプチドは、異種ポリペプチドと融合している。いくつかの実施態様では、異種ポリペプチドは、細胞透過性ペプチド、転写トランス活性化因子(TAT)細胞透過性配列、細胞透過性ペプチド又は膜透過性配列である。
【0032】
「細胞透過性ペプチド」という用語は当技術分野において周知であり、細胞透過性配列又は膜透過性配列、例えば、ペネトラチン、TATミトコンドリア透過性配列、並びにBechara and Sagan, 2013; Jones and Sayers, 2012; Khafagy el and Morishita, 2012;及びMalhi and Murthy, 2012に記載の化合物を指す。
【0033】
特定の実施態様では、異種ポリペプチドは、細胞透過性HIVtatペプチドに元来由来する、転写トランス活性化因子(TAT)細胞透過性配列(GRKKRRQRRRPQ;配列番号9)である。
【0034】
核酸、ベクター、組換え宿主細胞、及びその使用
本発明の別の目的は、本発明に記載のPAD4タンパク質に由来するペプチドをコードしている核酸配列に関する。
【0035】
特定の発明では、本発明は、配列番号6(p8)、配列番号7(p8に由来)又は配列番号8(p22)のペプチドをコードしている核酸配列又は本発明に記載のその機能の保存された変異体に関する。
【0036】
本発明の別の目的は、本発明に記載のPAD4タンパク質に由来するペプチドをコードしている核酸配列を含んでいる発現ベクターに関する。
【0037】
さらに別の目的では、本発明は、配列番号6(p8)、配列番号7(p8に由来)若しくは配列番号8(p22)のペプチドをコードしている核酸配列、又は本発明に記載のその機能の保存された変異体を含んでいる発現ベクターに関する。
【0038】
本発明によると、本発明に使用するのに適した発現ベクターは、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つの発現制御配列を含み得る。発現制御配列は、ベクター内に、核酸配列の発現を制御及び調節するために挿入される。発現制御配列の例としては、λファージのlacシステム、オペレーター領域及びプロモーター領域、酵母プロモーター、及びポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス若しくはシミアンウイルス40由来のプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。さらなる好ましい又は必要とされる作動配列としては、リーダー配列、終結コドン、ポリアデニル化シグナル、並びに宿主系における核酸配列の適切な転写及び続く翻訳に必要とされるか又は好ましい任意の他の配列が挙げられるがこれらに限定されない。必要とされるか又は好ましい発現制御配列の正しい組合せは、選択された宿主系に依存するであろうことが当業者によって理解されるだろう。発現ベクターは、宿主系において核酸配列を含有している発現ベクターの導入及びその後の複製に必要な追加の配列を含有しているはずであることがさらに理解されるだろう。このような配列の例としては、複製起点及び選択マーカーが挙げられるがこれらに限定されない。このようなベクターは、従来の方法を使用して容易に作製されるか又は市販されていることが当業者によってさらに理解されるだろう。
【0039】
本発明の別の目的は、ここで上記されているような発現ベクターを含んでいる宿主細胞である。
【0040】
本発明によると、使用され得る宿主細胞の例は、真核細胞、例えば動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、及び酵母細胞、並びに原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)である。遺伝子を保有しているベクターを細胞内に導入し得る手段としては、マイクロインジェクション法、電気穿孔法、形質導入法、又はDEAE-デキストランを使用したトランスフェクション、リポフェクション、リン酸カルシウム法、又は当業者には公知である他の手順が挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
好ましい実施態様では、真核細胞において機能する真核細胞発現ベクターが使用される。このようなベクターの例としては、ウイルスベクター、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、レンチウイルス、細菌発現ベクター、プラスミド、例えばpcDNA3、又はバキュロウイルス導入ベクターが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい真核細胞株としては、COS細胞、CHO細胞、HeLa細胞、NIH/3T3細胞、293細胞(ATCC番号CRL1573)、T2細胞、樹状細胞、又は単球が挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
治療的使用
本発明の第二の目的は、医薬品として使用するためのここで上記されているような、PAD4タンパク質に由来するペプチド、核酸配列、ベクター、又は宿主細胞に関する。
【0043】
特定の実施態様では、本発明は、医薬品として使用するための、本発明に記載の、配列番号6(p8)、配列番号7(p8に由来)若しくは配列番号8(p22)のペプチド、又はその機能の保存された変異体に関する。
【0044】
別の特定の実施態様では、本発明は、医薬品として使用するための、HLA-DRB1*0101、HLA-DRB1*0401、HLA-DRB1*0404、HLA-DRB1*0402又はHLA-DRB1*0701の分子に結合する、PAD4タンパク質由来のペプチドに関する。
【0045】
特定の実施態様では、本発明は、ワクチンとして使用するための、ここで上記されているようなペプチド、核酸配列、ベクター、又は宿主細胞に関する。
【0046】
1つの実施態様では、ここで上記されているようなPAD4タンパク質由来のペプチド、核酸配列、ベクター、又は宿主細胞は、それを必要とする対象における、関節リウマチ又は乾癬性関節炎の処置に使用され得る。
【0047】
したがって、別の実施態様では、本発明は、それを必要とする対象における、関節リウマチ又は乾癬性関節炎の処置に使用するための、ここで上記されているようなPAD4タンパク質由来のペプチド、核酸配列、ベクター、又は宿主細胞に関する。
【0048】
特定の実施態様では、本発明は、それを必要とする対象における、関節リウマチ又は乾癬性関節炎の処置に使用するための、本発明に記載の、配列番号6(p8)、配列番号7(p8に由来)若しくは配列番号8(p22)のペプチド、又はその機能の保存された変異体に関する。
【0049】
本明細書において使用する「対象」という用語は、哺乳動物、例えばげっ歯類、ネコ、イヌ、及び霊長類を示す。特に、本発明に記載の対象はヒトである。
【0050】
特に、それを必要とする対象は、HLA-DRB1*0101、HLA-DRB1*0401、HLA-DRB1*0404、HLA-DRB1*0402、HLA-DRB1*0701を有する対象である。特に、該対象は、HLA-DRB1*0401、HLA-DRB1*0404を有する。
【0051】
本明細書において使用する「処置」又は「処置する」という用語は、疾患に罹患するリスクがあるか又は疾患に罹患していることが疑われる対象、並びに病気であるか又は疾患若しくは医学的状態を患っていると診断された対象の処置を含む、予防的処置又は防止的処置並びに治癒的処置又は疾患修飾処置の両方を指し、これは臨床的再発の抑制も含む。処置は、医学的障害を有するか又は最終的に障害を獲得する可能性がある対象に、障害又は再発している障害の1つ以上の症状を予防、治癒、その発症を遅延、その重症度を低減、又は寛解するために、あるいはこのような処置を行なわなかった場合に予想される生存期間を超えて対象の生存期間を延長するために投与され得る。「治療処方計画」は病気の処置のパターン、例えば療法中に使用される投薬パターンを意味する。治療処方計画は、導入処方計画及び維持処方計画を含み得る。「導入処方計画」又は「導入期間」という語句は、疾患の初期処置のために使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。導入処方計画の一般的な目標は、処置処方計画の初期期間中に高いレベルの薬物を対象に提供することである。導入処方計画は、医師が維持処方計画中に使用するであろう用量よりも高い用量の薬物を投与すること、医師が維持処方計画中に薬物を投与するであろう頻度よりも高い頻度で薬物を投与すること、又はその両方を含み得る、「負荷処方計画」を(部分的に又は全体的に)使用し得る。「維持処方計画」又は「維持期間」という語句は、病気の処置中の対象の維持のために、例えば対象を長い期間にわたり(数か月間又は数年間)寛解状態に保つために使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。維持処方計画は、連続療法(例えば、薬物を規則的な間隔で、例えば週1回、月1回、年1回などで投与)又は間欠的な療法(例えば断続的な処置、間欠的な処置、再発時の処置、又は特定の予め決定された基準[例えば、疾患の徴候など]の達成時における処置)を使用し得る。
【0052】
本明細書において使用する「治療有効量」は、患者に治療利点を与えるに必要な活性物質の最小量を意味する。例えば、患者への「活性物質の治療有効量」は、病理症状、疾患の進行、又は患者の罹患している疾患に関連した身体的状態の改善を誘発する、寛解する、又は引き起こす、活性物質の量である。
【0053】
特定の実施態様では、本発明は、ここで上記されているようなペプチド、核酸配列、ベクター、又は宿主細胞をそれを必要とする対象に投与することによって、関節リウマチ又は乾癬性関節炎を処置又は予防するための方法に関する。
【0054】
ワクチン組成物及びその使用
PAD4は、ペプチドのシトルリン化に関与し、これによりプロセスの終了時にBリンパ球によるシトルリン化ペプチドに対する自己抗体の産生が起こり、よって疾患に至る。
【0055】
本発明者らによって得られた結果のお蔭で(結果の部を参照)、本発明者らはここで、Bリンパ球が自己抗体を産生するのを補助するTリンパ球の活性を不活化又は低減させ、よって、これらの自己抗体の産生を減少又は消失させることによって該疾患を予防及び/又は処置するために、本発明のペプチドを使用することを提案した。本発明者らは、これらのペプチド(特にp8及びp22)が、特定のHLA-DRによって提示され、この中のいくつかは、該疾患の出現及び/又は進行において重要な役割を果たしていることを示す。よって、本発明のペプチドを、それを必要とする対象を寛容化するためのワクチン組成物に使用することができる。
【0056】
したがって、本発明の第三の態様は、ここで上記されているようなPAD4タンパク質由来のペプチド、核酸配列、ベクター、又は宿主細胞を含んでいる、ワクチン組成物に関する。
【0057】
特定の実施態様では、前記ワクチン組成物は、配列番号6(p8)、配列番号7(p8に由来)若しくは配列番号8(p22)のペプチド、又は本発明に記載のその機能の保存された変異体を含む。
【0058】
1つの実施態様では、前記ワクチン組成物は、それを必要とする対象における関節リウマチ又は乾癬性関節炎を予防又は処置するのに有用である。
【0059】
特定の実施態様では、前記ワクチン組成物は、それを必要とする対象を寛容化するのに有用であり得る。
【0060】
1つの実施態様では、前記ワクチン組成物は、シトルリン化ペプチドに対する自己抗体の産生を減少又は消失させるのに有用である。
【0061】
本明細書において使用する「寛容化する」又は「寛容化」という用語は、特定のサプレッサーTリンパ球の形成の刺激によって、寛容を誘導する事実を示す。このプロセスのお蔭で、本発明のペプチドを使用すると、これらのペプチドに対する寛容が誘導され、抗シトルリン化ペプチドに対する抗体は全く発生しないか又はより少ない抗体が発生するだろう。実際に、PAD特異的な寛容化は、PADワクチン接種とは反対の立場にあり、PADに対する免疫応答を増強しようとするものではなく、それらを減少させるか又は完全に消失させようとするものである。これは、PAD自己反応性T細胞の枯渇、不活化、若しくは死滅を通して、又は制御性T細胞の増殖を通して起こり得る。
【0062】
本発明のワクチン組成物の予防投与は、哺乳動物における関節リウマチ又は乾癬性関節炎のような疾患を予防又は減弱化するように作用するはずである。特定の実施態様では、関節リウマチ又は乾癬性関節炎のリスクの高い、哺乳動物、特にヒトは、本発明のワクチン組成物を用いて予防的に処置される。このような動物の例としては、関節リウマチ又は乾癬性関節炎の家族歴を有するヒトが挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
したがって、1つの実施態様では、前記ワクチン組成物は、治療用ワクチンとして使用されても、又は予防用ワクチンとして使用されてもよい。
【0064】
本発明の1つの実施態様では、本発明のペプチドは、リポタンパク質とコンジュゲートさせても、又はリポソーム形で若しくはアジュバントと共に投与されてもよい。
【0065】
本明細書において使用するような、本明細書において使用する「アジュバント」という用語は、宿主に単独で投与された場合には非免疫原性であり得るが、抗原と一緒に投与された場合にはその抗原に対する宿主の免疫応答を増大させる、化合物又は混合物を指す。
【0066】
1つの実施態様では、前記ワクチン組成物は医薬組成物である。
【0067】
このような実施態様では、ヒトに使用するための、前記ワクチン組成物は、ここで上記されているような少なくとも1つの抗原ペプチド、又はここで上記されているような少なくとも1つの抗体を、1つ以上の薬学的に許容される担体及び場合により他の治療成分と一緒に含む。担体(群)は、組成物の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに対して有害ではないという意味において「許容可能」でなければならない。該ワクチン組成物は、簡便には単位投与剤形で提示され得、製薬分野において周知の任意の方法によって調製され得る。
【0068】
静脈内、皮内、筋肉内、皮下、又は腹腔内投与用に適したワクチン組成物は簡便には、活性物質の無菌水溶液を、レシピエントの血液と特に等張である溶液と共に含む。このような組成物は簡便には、固形の活性成分を、生理学的に適合性の物質、例えば塩化ナトリウム(例えば0.1~2.0M)、グリシンなどを含有し、かつ水溶液を生成するために生理的条件と適合した緩衝化されたpHを有し、かつ該溶液を無菌とした、水中に溶かすことによって調製され得る。これらは、単位投与量の容器又は複数回投与量の容器に、例えば密封されたアンプル中又はバイアル中に存在し得る。
【0069】
本発明のワクチン組成物は、安定化剤を取り込んでいてもよい。例示的な安定化剤は、ポリエチレングリコール、タンパク質、多糖、アミノ酸、無機酸、及び有機酸であり、これらは単独で使用されても、又は混和剤として使用されてもよい。これらの安定化剤は特に、活性物質の1重量部あたり、0.11~10,000重量部の量で取り込まれる。2つ以上の安定化剤を使用しようとする場合、それらの総量は特に、上記に明記された範囲内である。これらの安定化剤は、水溶液中で適切な濃度及びpHで使用される。このような水溶液の具体的な浸透圧は一般的に、0.1~3.0オスモルの範囲内、特に0.8~1.2の範囲内である。水溶液のpHは、5.0~9.0の範囲内、特に6~8の範囲内になるように調整される。
【0070】
追加の薬学的方法を使用して、作用の持続時間を制御してもよい。放出制御製剤は、ポリマーを使用して、本発明のペプチドと複合体を形成するか又は吸着することを通して、成し遂げられ得る。制御された送達は、放出を制御するために、適切な巨大分子(例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、酢酸エチレンビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又は硫酸プロタミン)、及び巨大分子の濃度、並びに、取り込み法を選択することによって行なわれ得る。放出制御製剤による作用持続時間を制御する別の可能な方法は、本発明の抗原ペプチドを、ポリマー材料、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)、又はエチレン酢酸ビニルコポリマーの粒子に取り込むことである。あるいは、これらの物質をポリマー粒子に取り込む代わりに、これらの材料を、例えば、コアセルベーション技術によって若しくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンのマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、又はコロイド状薬物送達システム、例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセルに、又はマクロエマルションに捕捉することが可能である。
【0071】
経口製剤が望ましい場合、前記組成物を、典型的な担体、例えばラクトース、ショ糖、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、又はとりわけアラビアゴムと配合してもよい。
【0072】
本発明のワクチン組成物を用いた患者のワクチン接種は、慣用的な方法によって、例えば、慣用的なアジュバントの存在下において行なわれ得る。慣用的なアジュバントの例としては、金属塩、水中油滴型エマルション、Toll様受容体アゴニスト、サポニン、リピドA、アルキルグルコサミニドホスフェート、フロイントアジュバント、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、マンナン、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)、ミョウバン、サイトカイン、例えばIL-1、IL-2、マクロファージコロニー刺激因子、及び腫瘍壊死因子、並びに免疫刺激剤として作用する他の物質、例えばムラミルペプチド又は細菌細胞壁成分、毒素、トキソイド、及びTLRリガンドが挙げられるがこれらに限定されない。
【0073】
前記ワクチン組成物は、任意の適切な経路、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内などによって投与され得る。免疫化組成物は、有意な免疫応答(例えば、ワクチン接種後に、使用されるワクチンペプチドに特異的なCD4及びCD8Tリンパ球の出現)が得られるまで、一回又は定期的な間隔で投与され得る。
【0074】
免疫化しようとする患者がすでに、関節リウマチ又は乾癬性関節炎に罹患している場合、本発明のワクチン組成物は、他の治療処置と組み合わせて投与されてもよい。他の治療処置の例としては、養子T細胞免疫療法、サイトカイン又は関節リウマチ若しくは乾癬性関節炎用の他の治療薬、例えばメトトレキサート、抗TNFα抗体、CTLA4IgG(アバタセプト)、抗CD20抗体、抗IL6抗体、又は抗IL-6受容体抗体との共投与が挙げられるがこれらに限定されない。
【0075】
患者に投与される予定の本発明のペプチドの用量は、例えば、処置される予定の疾患、該患者の年齢及び体重に応じて適宜調整され得る。投与され得る本発明の抗原ペプチドの範囲は、患者1人あたり約0.001~約100mgであり、好ましい用量は、患者1人あたり約0.01~約10mgである。
【0076】
本発明のワクチン組成物はまず、動物モデルにおいて、最初にげっ歯類において、及びヒト以外の霊長類において、最後にヒトにおいて評価され得る。免疫化手順の安全性は、免疫化された動物の全般的な健康状態(体重の変化、発熱、食欲、行動など)に対する免疫化の効果を調べることによって、及び解剖時の病的変化を調べることによって決定される。最初に動物で試験した後、がん患者を試験することができる。慣用的な方法を使用して、患者の免疫応答を評価することにより、免疫化組成物の有効性が決定されるだろう。
【0077】
Tリンパ球及びその使用
本発明の別の目的は、本発明のペプチドを特異的に認識するTリンパ球に関する。
【0078】
本発明の1つの実施態様では、前記Tリンパ球は、CD4Tリンパ球、CD8Tリンパ球、又はヘルパーTリンパ球である。
【0079】
本発明の別の実施態様では、前記Tリンパ球はT細胞クローンである。
【0080】
別の実施態様では、前記Tリンパ球は、本発明のペプチドを特異的に認識するT細胞受容体を発現している、遺伝子的に改変されたTリンパ球である。
【0081】
本発明の別の目的は、本発明のペプチドを特異的に認識する、ここで上記されているような前記Tリンパ球を含んでいる、養子療法用の組成物である。
【0082】
特に、Tリンパ球を使用して、それを必要とする対象における関節リウマチ又は乾癬性関節炎を予防及び処置することができる。
【0083】
特定の実施態様では、T細胞は、それらを安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、培養培地などに含有される。投与は、例えば静脈内において成し遂げられ得る。
【0084】
どこでTリンパ球を単離することができるかの例としては、末梢血リンパ球(PBL)、リンパ節、又は腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
このようなリンパ球は、当技術分野において公知である方法によって処置される予定の個体の末梢血から単離され、インビトロで培養され得る。リンパ球を、RPMI又はRPMI 1640などの培地中で2~5週間、特に2~3週間培養する。生存率は、トリパンブルー色素排除アッセイによって評価される。リンパ球は、全ての培養期間中、本発明の抗原ペプチドに曝される。
【0086】
好ましい実施態様では、前記リンパ球は、リンパ球全培養期間中、約1から約10マイクログラム(μg)/mlの濃度の本発明のペプチドに曝される。IL-2などのサイトカインを、リンパ球培養液に加えてもよい。
【0087】
本発明のペプチドは、抗原提示細胞、例えば樹状細胞又は同種異系の放射線照射されたがん細胞株の細胞の存在下において培養液に添加されてもよい。
【0088】
特に、本発明のペプチドを、免疫抑制分子の存在下で培養液に加えて、制御性T細胞を得てもよい。
【0089】
前記ペプチドに感作させた後、Tリンパ球を、このような処置を必要とする患者に投与する。
【0090】
どのようにしてこれらの感作させたT細胞を哺乳動物に投与することができるかの例としては、静脈内、腹腔内、又は病巣内が挙げられるがこれらに限定されない。これらの感作したTリンパ球の有効性を決定するために評価され得るパラメーターとしては、処置される患者における免疫細胞の産生、又は腫瘍退縮が挙げられるがこれらに限定されない。慣用的な方法を使用して、これらのパラメーターを評価する。このような処置は、サイトカイン又は遺伝子改変細胞と組み合わせて投与されてもよい(Rosenberg, S.A. et al. (1992) Human Gene Therapy, 3: 75-90; Rosenberg, S.A. et al. (1992) Human Gene Therapy, 3: 57-73)。
【0091】
本発明の別の目的は、本発明のペプチドを特異的に認識するTリンパ球を産生する方法であり、該方法は、
(a)患者から得られた末梢血単核細胞(PBMC)又は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、本発明の少なくとも1つのペプチドを用いて刺激する工程、
(b)(a)で使用されるペプチドに特異的なTリンパ球集団を濃縮する工程、
(c)場合により、(a)で使用されたペプチドに特異的な該Tリンパ球集団をクローニングする工程
を含んでいる。
【0092】
濃縮及び/又はクローニングは、ここで上記されているようなMHC/ペプチド多量体を使用することによって行なわれ得る。クローニングも、慣用的な方法によって行なわれてもよい。
【0093】
PBMCの刺激は、本発明の少なくとも1つのペプチドのみを用いて行なわれても、又は樹状細胞若しくは同種異系の放射線照射されたがん細胞株の細胞などの抗原提示細胞によって提示された本発明の少なくとも1つのペプチドを用いて行なわれてもよい。典型的には、IL-2などのサイトカインも培養液に添加してもよい。
【0094】
本発明の別の目的は、関節リウマチ又は乾癬性関節炎のような疾患の予防又は処置のための、それを必要とする患者における、本発明のペプチドを特異的に認識するリンパ球を含む養子療法用の組成物であり、該Tリンパ球は、患者に再投与されるものである。
【0095】
本発明はさらに、以下の図面及び実施例によって説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いずれにしても本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】41人の関節リウマチ患者、25人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照における、ヒトPAD4に対する増殖応答。41人の関節リウマチ患者、25人の乾癬性関節炎患者、及び11人の正常な対照を、PAD4、天然フィブリノーゲン及びシトルリン化フィブリノーゲンに対する増殖応答について試験した。各タンパク質について、ブロモデオキシウリジンの取り込みが4回繰り返して試験された。陽性率は、細胞とタンパク質とを含むウェルの吸光度と、細胞は含むがタンパク質は含まないウェルの吸光度との比が2より高い(吸光度比が2より高い)ことによって定義された。吸光度比の平均値は赤色で示されている。
図2】22人の関節リウマチ患者、16人の乾癬性関節炎患者、及び11人の正常な対照における、PAD4由来ペプチドに対する増殖応答。22人の関節リウマチ患者、16人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照を、PAD4ペプチドに対する増殖応答について試験した。各ペプチドについて、ブロモデオキシウリジンの取り込みが4回繰り返して試験された。陽性率は、細胞とペプチドとを含むウェルの吸光度と、細胞は含むがペプチドは含まないウェルの吸光度との比が2より高い(吸光度の比が2より高い)ことによって定義された。吸光度比の平均値は赤色で示されている。
図3】41人の関節リウマチ患者、25人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照における、ヒトPAD4に対する抗体応答。41人のACPA陽性関節リウマチ患者、25人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照を、PAD4に対するIgM及びIgGについてELISAによって試験した。各抗体アッセイは二度繰り返して行なわれた。陽性率は、血清とPAD4タンパク質とを含むウェルの吸光度と、血清は含むがPAD4タンパク質は含まないウェルの吸光度との比が、IgGについては2より高く(吸光度比が2より高い)、IgMについては3より高いことによって定義された。吸光度比の平均値は赤色で示されている。
図4】41人の関節リウマチ患者、25人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照における、PAD4に対する抗体応答及び増殖応答。41人のACPA陽性関節リウマチ患者、25人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照を、PAD4に対するT細胞増殖応答及び抗体応答について試験し、結果に従って4つの群に分類した。SE:共有エピトープ。
【0097】
【表1】


【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
実施例:
材料及び方法
ヒトPAD4及びヒトフィブリノーゲンに由来する合成ペプチド
ペプチドを、固相システムを使用して合成し、精製した(70%超)(ネオシステム社、ストラスブール、フランス)。本発明者らは、野生型PAD4の残基1~663(遺伝子座NM_012387上の残基S55、A82、及びA112)を包含し、かつ10アミノ酸重複している、65個の20アミノ酸長を合成した。それぞれペプチド5~6、8~9、及び11~12上の残基S55、A82、及びA112(これらは多形である可能性もある)は、それらの天然の突然変異していない形で検出された。本発明者らは、ヒトフィブリノーゲンのA鎖及びB鎖(遺伝子座NP_000499、遺伝子座NP_005132)から167個の15アミノ酸長(71個の天然ペプチド、71個のシトルリン化ペプチド、及びアルギニンもシトルリンも含有していない25個のペプチド)を合成した。本発明者らが、ペプチド上のR残基の位置が、P4ポケットとの相互作用に影響を及ぼす可能性があると考えた場合にはいつでも、本発明者らは、余分な重複しているペプチドを合成した(11)。
【0102】
リンパ芽球細胞株からのHLA-DRB1分子の精製
HLAホモ接合型リンパ芽球細胞株であるJESTHOM(HLA-DRB1*01:01)、SAVC(HLA-DRB1*04:01)、YAR(HLA-DRB1*04:02)、PEYSSON(HLA-DRB1*04:04)、MOU(HLA-DRB1*07:01)を、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640中で培養した。2×10個の細胞を、10mMトリスpH8、10mM NaCl、10mM MgCl、1%トリトンX100、0.05mg/mlのデオキシリボヌクレアーゼ、及びプロテアーゼ阻害剤に溶解した。これらのホモ接合型細胞株を選択したのは、それらが、3つの共有エピトープ陽性対立遺伝子であるHAL-DRB1*01:01、*04:01、*04:04、並びに、関節リウマチに関連していない2つの共有エピトープ陰性対立遺伝子であるDRB1*04:02及びDRB1*07:01を発現しているからである。全タンパク質抽出物を、臭化シアン活性化セファロース4B(シグマアルドリッチ社、サン・カンタン・ファラヴィエ、フランス)上に共有結合させた抗HLA-DR LB3.1抗体によって免疫沈降させた。洗浄後、HLA-DR分子を、0.5%のn-オクチルグルコシドを含むpH2のPBS中で溶出し、1Mトリスで中和し、そして定量した(11)。
【0103】
HLA-DRペプチド結合アッセイ
ELISAプレートを、1ウェルあたり10μgのPAD4又はフィブリノーゲンペプチドでコーティングし、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングした。1μgの精製HLA-DR分子を、プレートに加えた。洗浄後、結合したHLA-DRを、ビオチニル化抗HLA-DR抗体B8122(イムノテック社、マルセイユ、フランス)によって検出し、続いて、ペルオキシダーゼに結合させたアビジンで検出した。ペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた抗マウスIgG及びペルオキシダーゼにコンジュゲートさせたアビジンは、シグマアルドリッチ社(サン・カンタン・ファラヴィエ、フランス)によって供給された。405nmにおける吸光度を解読した。各々の精製されたHLA-DR対立遺伝子の結合を、PAD4又はフィブリノーゲンに由来するペプチドでコーティングされたELISAプレート上でアッセイし(各々、2つ複製したウェルで)、対照として、2つのウェルを、古典的な陽性結合物質であるインフルエンザヘマグルチニン(HA)ペプチド(PKYVKQNTLKLAT)でコーティングした。陽性結合は、HAペプチドの吸光度と等しい吸光度の数値として定義された。
【0104】
特定のHLA-DRB1遺伝子型について、所与のタンパク質に由来する少なくとも1つのペプチドに結合する確率の計算
簡潔に言えば、本発明者らは、特定のHLA-DRB1対立遺伝子が、所与のタンパク質に由来する所与の(未知な)ペプチドに結合する確率は、結合したペプチドの数と、このタンパク質に由来するペプチドの総数との間の比であると考えた。この比は、該タンパク質を網羅する1セットのペプチドの結合を研究することによって評価され得る。その後、所与の対立遺伝子が、同タンパク質に由来するペプチドに結合しない確率は、1-(マイナス)ペプチドに結合する確率である。遺伝子型によってコードされている2つのHLA-DRB1対立遺伝子が、同タンパク質に由来するどのペプチドにも結合しない確率は、2つの確立の積である:(対立遺伝子1に結合しない確率)×(対立遺伝子2に結合しない確率)。最後に、所与のHLA-DRB1遺伝子型の産物が、タンパク質に由来する少なくとも1つのペプチドに結合する確率は、1-(マイナス)((対立遺伝子1に結合しない確率)×(対立遺伝子2に結合しない確率))である(表2)。
【0105】
患者
本発明者らは、フランス、マルセイユのサントマルグリット病院のリウマチ科の41人の関節リウマチ(RA)患者、25人の乾癬性関節炎(PsA)患者、並びに研究室及びリウマチ病棟のスタッフからの11人の健常な対照を試験した。関節リウマチ患者は、2010年の米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会の基準を満たし、正常値上限の3倍を超えるACPA抗体力価を示した(4)。乾癬性関節炎患者は、乾癬性関節炎の分類基準(CASPAR)という基準を満たした(26)。HLA-DRB1型判定は、あらゆる患者及び対照におけるPCR/配列特異的オリゴヌクレオチド分析によって行なわれた(3)。抗環状シトルリン化ペプチドIgG抗体は、第二世代ELISA(Immunoscan RA Mark 2、Eurodiagnostica社、マルメ、スウェーデン)によって検出された。リウマチ因子は、Orgentec社のキット(マインツ、ドイツ)を使用してELISAによって検出された。患者のベースラインの特徴が表3及び表4に提示されている。
【0106】
タンパク質
ヒトPAD4タンパク質は、バキュロウイルス発現系において産生され、精製された(プロテオジェニックス社、シルティカイム、フランス)。活性及び自己シトルリン化状態を、T細胞増殖アッセイ前に試験した。ヒトフィブリノーゲン(メルクミリポア社、ダルムシュタット、ドイツ)を、1Mトリス塩酸塩(pH7.4)、100mM CaCl、50mMジチオトレイトール緩衝液中、ウサギPAD2タンパク質(シグマアルドリッチ社、サン・タンカン・ファラヴィエ、フランス)1mg/mlの濃度でインキュベートした。シトルリン化は、37℃で2時間行なわれた。シトルリン化されていなフィブリノーゲンは、PADの代わりに水を加えた以外は、同様に処理された。
【0107】
T細胞増殖アッセイ
患者の単核細胞を、20mlのヘパリン処理された血液から、フィコール-ヒストパック(シグマアルドリッチ社、サン・タンカン・ファラヴィエ、フランス)を通した遠心分離によって単離した。細胞を、1μg/mlのヒトPAD4若しくはヒトフィブリノーゲン若しくはPHA(フィトヘマグルチニン)又は5μg/mlのPAD4ペプチドの存在下で、10%自己血清を含むRPMI1640中、10個の細胞/mlの密度で培養した。37℃で6日間培養した後、タンパク質に対する増殖応答を、比色定量ブロモデオキシウリジンキット(ロシュダイアグノスティックス社、メラン、フランス)を使用して評価した。陽性T細胞応答は、タンパク質又はペプチドを伴わずに培養された細胞についての吸光度の2倍を超える吸光度(OD)によって定義された。
【0108】
抗PAD4抗体の検出
プレートを、0.5μgのヒトPAD4でコーティングし、2%BSA(ウシ血清アルブミン)を用いてブロッキングした。1:100に希釈された血清を、プレート上でインキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた抗ヒトIgG又はIgMを加えた。405nmにおける吸光度(OD)を解読した。バックグラウンドの吸光度は、各血清を、タンパク質を含まないウェルに加えることによって得られた。陽性の血清は、IgGではバックグラウンド吸光度の2倍を超える吸光度の数値、IgMではバックグラウンド吸光度の3倍を超える吸光度の数値によって定義された。
【0109】
統計
関節リウマチを発症するHLA-DRB1遺伝子型のオッズ比と、所与の遺伝子型について少なくとも1つのPAD4又はフィブリノーゲンペプチドに結合する確率との間の相関は、ピアソンの相関検定によって評価された。T細胞及び抗体アッセイについての群間の比較は、フィッシャー検定を使用して行なわれた。グラフパッドプリズム5.02(グラフパッドソフトウェア)を、全ての統計分析のために使用した。
【0110】
結果
5つの異なるHLA-DR分子に対するPAD4及びフィブリノーゲンペプチドへの結合
5つの精製されたHLA-DR分子に対する、PAD4由来の65個のペプチド、フィブリノーゲンに由来する96個のシトルリン化ペプチド又はアルギニン非含有ペプチド、及びそれらの96個のシトルリン化されていない対応物の結合を試験した(表1、及びデータは示されていない)。各々の精製されたHLA-DRB1分子は、65個のPAD4ペプチドの中の2~9個に結合し、96個のフィブリノーゲンペプチドの中の12~23個に結合し、96個のシトルリン化フィブリノーゲンペプチドの中の11~23個に結合した。
【0111】
12個の異なるHLA-DRB1遺伝子型の各々について、PAD4ペプチドに結合する確率
本発明者らが関節リウマチを発症するリスクを計算しておいた12個の遺伝子型が、少なくとも1つのPAD4ペプチド、1つの天然フィブリノーゲンペプチド、及び1つのシトルリン化フィブリノーゲンペプチドに結合する確率を計算した(表2)。
【0112】
関節リウマチを発症するオッズ比と、12個のHLA-DRB1遺伝子型について少なくとも1つのPAD4ペプチド又はフィブリノーゲンペプチドに結合する確率との間の相関
各々のHLA-DRB1遺伝子型によって保有される関節リウマチを発症するリスクと、その2つのコードされているHLA-DRB1分子が少なくとも1つのPAD4ペプチドに結合する確率との間には強力な相関がある(p=0.042ピアソンの検定)(データは示されていない)。逆に、各々のHLA-DRB1遺伝子型の有する関節リウマチを発症するリスクと、その2つのコードされているHLA-DRB1分子が、天然又はシトルリン化されたフィブリノーゲンに由来する少なくとも1つのペプチドに結合する確率との間には相関は全くない(データは示されていない)。
【0113】
ヒトPAD4に対するT細胞増殖応答は、関節リウマチ患者、乾癬性関節炎患者、及び正常な対照において共通している
41人のACPA陽性関節リウマチ患者、25人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照に由来する末梢血リンパ球を、ヒトPAD4、ヒト天然フィブリノーゲン及びシトルリン化フィブリノーゲンに対するT細胞増殖応答について、ブロモデオキシウリジンの取り込みによって試験した(表3、図1)。
【0114】
41人中19人(46%)の関節リウマチ患者、25人中8人(32%)の乾癬性関節炎患者、11人中4人(36%)の対照において、PAD4に対してT細胞は増殖した(関節リウマチ対その他、p=0.035 フィッシャー検定、有意差なし)。
【0115】
1人(2.4%)の関節リウマチ患者が、シトルリン化フィブリノーゲンに対する増殖応答を示し、乾癬性関節炎患者又は健常な対照は誰も示さなかった。PAD4と共に培養された末梢血リンパ球において観察された増殖応答が、T細胞に起因することを確認するために、本発明者らは、さらに10人の関節リウマチ患者及び7人の対照においてフローサイトメトリー分析を行なった。この分析において、CD4T細胞は、PAD4を用いて刺激された全血試料中において、T細胞の初期活性化マーカーであるCD154の増加した発現、及びTNFαの増加した産生を示した(データは示されていない)。
【0116】
22人の関節リウマチ患者、16人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照における、PAD4由来のペプチドに対するT細胞増殖応答
PAD4上のどのエピトープ(群)がT細胞によって認識されたかを同定するために、本発明者らは、22人の関節リウマチ患者、16人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照において、本発明者らがHLA-DRB1*04:01、*04:04、*01:01、*04:02又は*07:01の良好な結合物質であることを発見していた、PAD4由来の11個の20アミノ酸長に対する増殖応答を研究した(表4、図2)。
【0117】
ペプチド22(p22、配列:VRVFQATRGKLSSKCSVVLG;配列番号8、HLA-DRB1*04:01のみに結合することが判明したペプチド)に対する増殖応答が、22人中2人(9%)の関節リウマチ患者、16人中2人(12.5%)の乾癬性関節炎患者に観察されたが、11人の対照には誰にも観察されなかった(関節リウマチ対その他、フィッシャー検定、有意差なし)。
【0118】
ペプチド8(p8、配列:DPGVEVTLTMKAASGSTGDQ、配列番号6、5つ全ての試験されたHLA-DRB1対立遺伝子に結合したペプチド)に対する増殖応答は、関節リウマチに関連し;実際に、22人中9人(41%)の関節リウマチ患者、16人中3人(19%)の乾癬性関節炎患者、及び11人中0人の対照が、p8に対して増殖した(関節リウマチ対その他、p=0.02、フィッシャー検定)。
【0119】
ペプチド8に対する増殖応答は、共有エピトープに関連していた:応答者において75%(12人中9人)、これに対して非応答者においては40%(37人中15人)(応答者対非応答者、p=0.05、フィッシャー検定)。
【0120】
ペプチド8に対する増殖応答は、抗PAD4抗体に関連していた(全ての被験者がペプチド8に対して増殖し、これに対し、全ての被験者が抗PAD4抗体を有していた、p=005、フィッシャー検定)。
【0121】
41人の関節リウマチ患者、25人の乾癬性関節炎患者、及び11人の正常な対照における、ヒトPAD4に対する抗体応答
PAD4に対するIgG抗体が、41人中11人(27%)の関節リウマチ患者、25人中1人(4%)の乾癬性関節炎患者、及び11人中0人の健常な対照において検出された(関節リウマチ対その他、フィッシャー検定、p=0.004)(図3)。
【0122】
ヒトPAD4に対するIgM抗体は、41人中14人(34%)の関節リウマチ患者に検出され、これに対して、25人中3人(12%)の乾癬性関節炎患者に検出され、11人の健常な対照には誰にも検出されなかった(関節リウマチ対その他、フィッシャー検定、p=0.01)(図3)。
【0123】
関節リウマチ患者におけるPAD4に対するIgM陽性応答は、ELISAに使用されたペルオキシダーゼで標識された抗IgM抗体による、PAD4に対するIgG抗体に結合したIgMリウマチ因子の認識によって引き起こされた確率が最も高い。実際に、PAD4に対するIgMが陽性と判定された、14人中11人の関節リウマチ患者は、IgMリウマチ因子についても陽性と判定された。それ故、本発明者らが関節リウマチ患者において検出したPAD4に対するIgM抗体は、これらの患者におけるPAD4に対するIgG抗体の存在を高い確率で示す。したがって、本発明者らは、PAD4に対するIgM及びIgG抗体をプールし、それらを「抗PAD4抗体」と呼んだ。
【0124】
PAD4に対する抗体は、41人中21人(51%)の関節リウマチ患者、25人中4人(16%)の乾癬性関節炎患者、及び11人中0人の健常な対照において存在する(関節リウマチ対その他、p=0.0002、フィッシャー検定)。
【0125】
PAD4に対する抗体を有し、PAD4に対するT細胞増殖を示す、14人中13人の患者が関節リウマチを有する
試験された77人の被験者の中で、PAD4に対するT細胞増殖及び抗体応答により、本発明者らは、4つの亜群を定義することができた(図4):
【0126】
77人中35人の被験者が、PAD4に対する抗体及び増殖の両方について陰性であった。それらは、41人中14人(34%)の関節リウマチ患者、25人中14人(56%)の乾癬性関節炎患者、及び11人中7人(64%)の健常な対照を含んでいた。関節リウマチ患者は、この群において少数しか存在しなかった(関節リウマチ対その他、p=0.04、フィッシャー検定)。
【0127】
77人中17人の被験者が、PAD4に対する抗体については陰性、PAD4に対するT細胞増殖については陽性であった。それらは、41人中6人(15%)の関節リウマチ患者、25人中7人(28%)の乾癬性関節炎患者、及び11人中4人(36%)の健常な対照を含んでいた(関節リウマチ対その他、p=0.1、有意差なし)。
【0128】
77人中11人の被験者が、PAD4に対する抗体については陽性、PAD4に対するT細胞増殖については陰性であった。それらは、41人中8人(19.5%)の関節リウマチ患者、25人中3人(12%)の乾癬性関節炎患者、及び11人中0人の健常な対照を含んでいた(関節リウマチ対その他、p=0.2、有意差なし)。
【0129】
77人中14人の被験者が、PAD4に対する抗体及びT細胞増殖の両方について陽性であった。それらは、41人中13人(32%)の関節リウマチ患者、25人中1人(4%)の乾癬性関節炎患者、及び11人中0人の健常な対照を含んでいた(関節リウマチ対その他、p=0.0009、フィッシャー検定)(図4)。
【0130】
この「二重陽性」群では、71%(14人中10人)の患者が、共有エピトープを発現し、これに対してその他の群では41%であった(フィッシャー検定、p=0.07)。
【0131】
さらに、25人が、PAD4に対する抗体を有し、その中の16人が共有エピトープ陽性のHLA-DR対立遺伝子を発現し、52人が、抗PAD4抗体に対して陰性であり、その中の20人が、共有エピトープ陽性のHLA-DR対立遺伝子を発現していた(フィッシャー検定、p=0.051)(図4)。
【0132】
31人の被験者は、PAD4に対する増殖応答を示し、その中の15人が、共有エピトープ陽性のHLADR対立遺伝子を発現し、46人が、PAD4に対する増殖応答を全く示さず、その中の21人が共有エピトープ陽性のHLA-DR対立遺伝子を発現した(p=0.8、フィッシャー検定)(図4)。
【0133】
したがって、HLA-DRの共有エピトープは、抗PAD4抗体と関連しているが、抗PAD4増殖応答とは関連していない。
【0134】
結論:
本発明者らは、「共有エピトープはシトルリン化ペプチドに結合する」という仮説の代案を開発した。実際に、関節リウマチの発症には、PAD4(ペプチジルアルギニルデイミナーゼ、シトルリン化酵素)に対するIgGの抗体の出現が先行する(17~21)。このことは、関節リウマチ患者におけるPAD4に特異的なヘルパーT細胞の存在を示唆する。PAD4は、複数のタンパク質に結合しシトルリン化するので、PAD4に結合しシトルリン化されるどのタンパク質も、古典的なハプテン担体機序による補助から利点が得られる可能性がある。実際に、PAD4に結合したタンパク質上のシトルリン化残基に特異的なB細胞は、内部移行して、PAD4/シトルリン化タンパク質複合体を処理し、PAD4ペプチドをヘルパーT細胞に提示することができた。これにより、複数のシトルリン化タンパク質に対するIgG抗体が産生されるだろう。この点を証明するために、本発明者らは近年、ヒト及び/又はマウスのPADを用いて正常な自己免疫のないマウスを免疫化し、マウスの20%が、シトルリン化フィブリノーゲンに対するT細胞応答が全く存在しない下で、抗シトルリン化フィブリノーゲン抗体を発生したことを発見した(22)。
【0135】
ここで、PAD4又はフィブリノーゲンに由来するどのペプチド(群)が、T細胞応答を刺激するのに重要であるかが分からないので、本発明者らは、12個のHLA-DRB1遺伝子型のそれぞれによってコードされる2つのHLA-DR分子が、PAD4タンパク質に由来する65個のペプチドの中の少なくとも1つ、及びヒトフィブリノーゲンに由来する96個の天然ペプチド若しくは96個のシトルリン化ペプチドの中の1つに結合する確率を評価した。そうするために、本発明者らは、5つの異なるHLA-DR対立遺伝子に対する、PAD4及び天然又はシトルリン化フィブリノーゲンに由来する重複しているペプチドの結合を研究した。この分析の目標は、ヘルパーT細胞によって見られる、PAD4又はフィブリノーゲンに由来する実際のペプチド(群)を同定することではなく、所与の遺伝子型によってコードされる2つのHLA-DR分子が、PAD4又はフィブリノーゲンに由来する未知の関連性のあるペプチドに結合する確率を定量することであった。663アミノ酸タンパク質であるPAD4に関して、それは、約6500個の関連したペプチド(653個の10アミノ酸長、652個の11アミノ酸長・・・642個の20アミノ酸長)を生じることができ、本発明者らは、その中の65個のみの試料を使用して結合する確率を評価した。したがって、この分析は、本発明者らに、一対のHLA-DR分子が、所与のタンパク質に由来するペプチドに結合できることを示唆することができるが、関連するT細胞エピトープを同定したという確信をもたらすことはできない。
【0136】
本発明者らは、各々のHLA-DRB1遺伝子型によってコードされる2つのHLA-DRB1分子の中の少なくとも1つが、PAD4に由来する少なくとも1つのペプチドに結合することのできる確率と、この遺伝子型に関連した関節リウマチを発症するオッズ比との間の相関を発見した。このことは、フィブリノーゲンに由来する天然又はシトルリン化ペプチドには観察されなかった。
【0137】
本発明者らは、その後、関節リウマチ患者、乾癬性関節炎患者、及び健常な対照の末梢血リンパ球におけるPAD4に対するT細胞応答を調べた。本発明者らは、41人中19人の関節リウマチ患者、25人中8人の乾癬性関節炎患者、及び11人中4人の健常な対照が、PAD4に対する増殖応答を示したことを発見した。41人中13人の関節リウマチ患者は、PAD4に対する増殖応答及び該患者の血清中の抗PAD4抗体の両方を有し、これは、その他の全てと異なっていた(p=0.0009、フィッシャー検定)。このことは、これらの13人の患者では、PAD4特異的T細胞が、PAD4特異的B細胞を補助し得ることを示唆した。したがって、PAD4に対する増殖応答は、健常な被験者においてさえも共通している。しかしながら、それが抗PAD4抗体に関する場合には、それはACPA陽性関節リウマチに特徴的である。PAD4に対して増殖応答を示す31人の被験者(19人の関節リウマチ、8人の乾癬性関節炎、及び4人の対照)の中で、共有エピトープHLA-DRB1対立遺伝子は、抗PAD4抗体と関連していた(フィッシャー検定、p=0.03)。このことは、共有エピトープ陽性HLA-DRB1対立遺伝子が、PAD4特異的T細胞に、おそらく特異的ペプチド(群)の結合を通して、抗PAD4抗体の産生を補助することを可能とさせ得ることを示唆した。
【0138】
PAD4に対して増殖するT細胞によって認識されるPAD4由来のペプチドを同定するために、本発明者らは、22人の関節リウマチ患者、16人の乾癬性関節炎患者、及び11人の健常な対照において、共有エピトープ陽性HLA-DRB1対立遺伝子に結合すると予測された、PAD4に由来する11個のペプチドを用いた増殖試験を行なった。本発明者らは、22人中9人の関節リウマチ患者、16人中3人の乾癬性関節炎患者によって認識され、健常な対照によって全く認識されなかった、PAD4由来の1つの特定のペプチド、すなわちペプチド8(p8)を同定した。p8に対する増殖応答は、関節リウマチ(p=0.02、フィッシャー検定)、HLA-DRB1共有エピトープ(p=0.05、フィッシャー検定)、及びPAD4に対する抗体(p=0.05、フィッシャー検定)に関連していた。これらの関連についての最も簡単な説明は、p8がヘルパーT細胞を活性化させている可能性があるというものである。しかしながら、p8は、共有エピトープに特異的な結合物質ではなく、それはHLA-DRB1*04:01、04:04、01:01、07:01、04:02に結合する。p8についての本発明者らの結合データと一致して、p8に対する増殖応答を示す13人中12人の患者は、これらの5つの対立遺伝子の中の少なくとも1つを発現している。共有エピトープ陽性HLA-DRB1対立遺伝子によるp8の提示は、共有エピトープ陰性対立遺伝子よりもより効率的であり得、それにより、ヘルパーT細胞の活性化を可能とし得ると考えられる。同様に、p8は、HAL-DRB1*04:01についてすでに公知であるように、共有エピトープ陰性のHLA-DRB1対立遺伝子よりも、共有エピトープ陽性のHLA-DRB1対立遺伝子を発現している被験者において、PAD4からより良好にプロセシングされることが可能である(23)。
【0139】
したがって、本発明者らのデータは、ACPAの発生モデルを示唆し、ここでは、PAD4に特異的なT細胞が、予想通り、PAD4に特異的なB細胞を補助し、これにより、PAD4に対するIgG抗体が産生され、同時に、シトルリン化された抗原に特異的であるB細胞が産生され、これは、内部移行し、PAD4/シトルリン化抗原複合体をプロセシングし、PAD4ペプチドを提示する。これらの結果は、関節リウマチに至る免疫学的対立の中心にPAD4を置く。それらは本発明者らに、PAD4をコードしている遺伝子が、アジア及びいくつかの欧州の集団において関節リウマチに関連していることを思い起こさせる(24)。最後に、抗シトルリン化タンパク質に対する免疫が、複数のタンパク質に由来するシトルリン化ペプチド(群)ではなく、1つのタンパク質であるPAD4に由来するペプチド(群)に特異的なヘルパーT細胞の影響下で発達する場合、個体のHLA-DRB1遺伝子型によって同定されるリスクの高い個体における、PAD4ワクチン接種による、関節リウマチの予防の見通しを改善させる。
【0140】
これに関して、PAD4に由来するペプチド8(及び本発明の他のペプチド)の同定は、ペプチドによる寛容化にとって有用であろう。
【0141】
参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が属する技術分野の最先端技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照によりここに組み入れられる。
【0142】
【表5】


図1
図2
図3
図4
【配列表】
2022522875000001.app
【国際調査報告】