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特表2022-522877被処理造形材料の温度制御装置を備えた3Dプリント装置
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  • 特表-被処理造形材料の温度制御装置を備えた3Dプリント装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】被処理造形材料の温度制御装置を備えた3Dプリント装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/364 20170101AFI20220413BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20220413BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220413BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20220413BHJP
   B22F 12/53 20210101ALI20220413BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20220413BHJP
   B29C 64/188 20170101ALI20220413BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220413BHJP
【FI】
B29C64/364
B29C64/295
B33Y30/00
B22F10/64
B22F12/53
B29C64/118
B29C64/188
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552531
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020055691
(87)【国際公開番号】W WO2020178335
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】102019202942.6
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511125043
【氏名又は名称】ブローゼ・ファールツォイクタイレ・エスエー・ウント・コンパニ・コマンディットゲゼルシャフト・ヴュルツブルク
(71)【出願人】
【識別番号】520001095
【氏名又は名称】アイム3デー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AIM3D GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ベーツ・ステファン
(72)【発明者】
【氏名】リーバーヴィルト・クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】モリソン・ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AP05
4F213AQ01
4F213AR06
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL52
4F213WL67
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】造形材料の昇温と冷却を行える3Dプリント装置を提供する。
【解決手段】3Dプリント装置1は、造形対象部品の製造用に用意された造形材料50,51を、層毎に配設方向Rに沿って配設する少なくとも1つの造形ノズル10と、造形ノズル10の領域にある配設済みの造形材料50,51に対し、冷却と昇温の両方を行うように構成されて且つ設けられた温度制御装置4、とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形対象部品の製造用に用意された造形材料(50,51)を、層毎に配設方向(R)に沿って配設する少なくとも1つの造形ノズル(10)を備えた、3Dプリント装置において、
当該3Dプリント装置(1)は、
前記造形ノズル(10)の領域にある配設済みの造形材料(50,51)に対し、冷却と昇温の両方を行うように構成されて且つ設けられた温度制御装置(4)、
を備えることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)が、前記造形ノズル(10)に造形材料を新たに配設させることによって、前記配設方向(R)に敷かれた配設済みの造形材料(50)の昇温を行うように構成されて且つ設けられていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)が、前記造形ノズルから配設された造形材料(51)の冷却を、当該造形ノズル(10)からこの造形材料(51)が配設された後に行うように構成されて且つ設けられていることを特徴とする、3Dプリント措置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の3Dプリント装置において、配設済みの造形材料(50,51)の昇温及び/又は冷却を行う目的で、前記温度制御装置(4)により、昇温流体又は冷却流体を含んだ少なくとも1つの流体流が生成されることが可能であることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項5】
請求項4に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)が、前記流体の少なくとも1つの流出口(41a~41e,42a~42e,43a~43e)を有する少なくとも1つの支持体(41,42,43)を具備していることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項6】
請求項5に記載の3Dプリント装置において、前記少なくとも1つの支持体(41,42,43)に、前記造形材料(50)を昇温させるように設定された流体流を発生させる少なくとも1つの第1の流出口(41a~41e)、および前記造形材料(50)を冷却するように設定された流体流を発生させる少なくとも1つの第2の流出口(41a~41e)が存在していることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)が、2つ以上の支持体(41,42,43)を具備していることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項8】
請求項7に記載の3Dプリント装置において、当該3Dプリント装置に、相異なる流体流を発生させる且つ/或いは相異なる流体用の、相異なる支持体(41,42,43)が設けられていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか一項に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)が、相異なる流体の流入を制御する且つ/或いは相異なる流路による流体の流入を制御する、少なくとも1つのバルブ(400)を具備していることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項10】
請求項9に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)が、冷却流体の流入と異なる流路による昇温流体の流入を前記少なくとも1つのバルブ(400)で制御するように構成されて且つ設けられていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)が、配設済みの造形材料(50)の昇温を行う少なくとも1つの照射器(41a~41e,42a~42e,43a~43e)を具備していることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)は、前記造形ノズル(10)が移動する前記配設方向(R)に応じて昇温又は冷却を制御するように構成された電子制御システム(40)を具備していることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項13】
造形対象部品の製造用に用意された造形材料(50,51)を、層毎に配設方向(R)に沿って配設する少なくとも1つの造形ノズル(10)を備えた、3Dプリント装置において、
当該3Dプリント装置は、
配設済みの造形材料(50,51)の冷却を行うように設けられた複数の温度制御エレメント(41a~41e;42a~42e;43a~43e)および/または配設済みの造形材料(50,51)の昇温を行うように設けられた複数の温度制御エレメント(41a~41e;42a~42e;43a~43e)を具備する温度制御装置(4)、
を備え、前記温度制御エレメント(41a~41e;42a~42e;43a~43e)が、前記温度制御装置(4)の支持体(41,42,43)のうちの、前記造形ノズル(10)周りに少なくとも部分的に延在する一部に設けられていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項14】
請求項13に記載の3Dプリント装置において、前記温度制御装置(4)は、前記造形ノズル(10)が移動する配設方向(R)に応じて、使用する温度制御エレメント(41a~41e;42a~42e;43a~43e)を異ならせるように構成された電子制御システム(40)を具備していることを特徴とする、3Dプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本提案の解決手段は、造形対象部品の製造用に用意された造形材料(Druckmaterial)を層毎に配設する少なくとも1つの造形ノズル(Druckduese)を備えた、3Dプリント装置(3D-Druckvorrichtung)に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリント(3D-Druck)では、通常、1種以上の材料で3D部品が積層構築される。これに用いられる材料は、例えば、プラスチックおよび/または樹脂および/またはセラミックスおよび/または金属である。この関連で、例えば、いわゆる熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling:略して「FDM」)が知られている。ここでは、融解性プラスチックや溶融材料から部品やワークピースが積層構築される。
【0003】
各部品を積層作製するには、例えばいわゆる3Dプリンター形態の3Dプリント装置の少なくとも1つの造形ノズルから、造形材料(Druckmaterial)が造形プレートへとある配設方向(場合によっては、複数の配設方向)に配設される。つまり、各部品は、造形ノズルから出た造形材料によってコンピュータで積層構築される。
【0004】
これに関しては、配設方向に敷かれた第1層の配設済み造形材料を予熱してから、さらなる第2層の造形材料を造形ノズルから配設するという技術が、例えばWO 2018/039261 A1(特許文献1)から知られている。配設済みの造形材料層に対して相応の予熱を実行するここでの理由は、新たに配設される造形材料の、その既存の層に対する付着性を向上させるためである。ここで、WO 2018/039261 A1には、例えば、配設方向に敷かれた予め配設済みの造形材料を、レーザや高温ガス流を用いて昇温させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/039261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の背景に鑑みて、本提案の解決手段の目的は、3Dプリント装置をさらに改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、請求項1に記載の3Dプリント装置と請求項13に記載の3Dプリント装置の双方によって達成される。
【0008】
本件で提案する解決手段は、第1の態様において、前記3Dプリント装置を、前記造形ノズルの領域にある配設済みの造形材料(aufgebrachte Druckmaterial)に対し、冷却と昇温の両方を行うように構成されて且つ設けられた温度制御装置を備えるものとする。これにより、前記造形ノズルの周囲部分に存在する造形材料、つまり、例えば前記造形ノズル下方に局在する造形材料を、温度制御装置で適宜冷却又は昇温(gekuehlt oder erwaermt werden)させることが可能となる。
【0009】
具体的に述べると、本件で提案する解決手段には、例えば、配設方向に敷かれた造形材料を昇温させることによって、その後に配設する造形材料の付着性を向上させるという実施形態が含まれる。これに関しては、例えば、配設済みの造形材料を、接合に適した温度にまで確実に上げることが可能となり、かつ/あるいは、ガラス繊維が添加された材料の場合に特にそうなるが、配設済みの造形材料を、造形ノズルから当該配設済みの造形材料上へと新たに配設した造形材料が当該配設済みの造形材料中に入り込むことが可能な温度にまで確実に再昇温させることが可能となる。
また、本提案の温度制御装置により、同じ3Dプリント装置による例えば別の造形材料を用いた別の製造過程等の別の時間や、造形対象部品の中でも特定の薄肉部分を形成する際や、造形材料を昇温させるのと同時で、造形ノズルからまさに配設されたばかりの造形材料の冷却を行うことができる。このような冷却は、例えば、配設された造形材料が流れ出したり溶け出したりしないように当該造形材料を硬化させるためのものである。また、最新の造形材料層の構築時間に応じて、かつ/あるいは、製造対象部品のうちの例えばブリッジ、オーバーハング等の箇所に応じて、前記造形ノズルの前記領域の冷却と昇温を切り替えることが可能となる。
【0010】
このように、原則として、造形対象の3D部品を製造する際の自在性を、本提案の3Dプリント装置によって向上させることができる。
【0011】
前記温度制御装置は、前記造形ノズルに造形材料を新たに配設させることによって、前記配設方向に敷かれた配設済みの造形材料の昇温を行うように構成されて且つ設けられたもの(eingerichtet und vorgesehen sein)とされ得る。つまり、このときの温度制御装置は、前記造形ノズルから造形材料を配設済みの造形材料上に新たに配設することによって、当該配設済みの造形材料の昇温を行うように構成されて且つ設けられたものである。
【0012】
また、前記温度制御装置は、前記造形ノズルから配設された造形材料の冷却を、当該造形材料が前記造形ノズルから配設されてから行うように構成されて且つ設けられたものであり得る。つまり、前記温度制御装置による造形材料の冷却は、前記ノズルから当該造形材料が配設された後に行われ得て、場合によっては、前記造形ノズルを前記配設方向にさらに進めて造形材料層を新規配設しているのと同時に行われ得る。つまり、一実施形態では、前記造形ノズルから配設されたばかりの造形材料の方向に、前記温度制御装置によって例えば冷却流体流が生成され得る。このときの冷却流体は、前記造形ノズルから配設されたばかりの造形材料の方向に前記温度制御装置から吹き出す。
【0013】
原則として、配設済みの造形材料の昇温及び/又は冷却を行う目的で、前記温度制御装置により、昇温流体又は冷却流体を含んだ少なくとも1つの流体流が生成され得る。具体的に述べると、流体流として前記温度制御装置が昇温流体及び冷却流体をどちらも利用することができて例えばこの目的のために相異なる流体貯留部が存在し得るか、あるいは、吹き出す流体を選択的に昇温又は冷却するために少なくとも1つの昇温エレメント及び/又は冷却エレメントを前記温度制御装置が具備し得る。
【0014】
考えられ得る一改良形態では、前記温度制御装置が、前記流体の少なくとも1つの流出口を有する少なくとも1つの支持体を具備している。つまり、対応する支持体は、当該支持体の前記少なくとも1つの流出口から冷却又は昇温対象の造形材料の方向へと流体流が向かうように当該流体流を生成する流路を形成している。よって、前記少なくとも1つの支持体は、前記少なくとも1つの流出口から吹き出した流体が前記造形ノズル直近の周囲部分にある配設済みの造形材料に当たるように、少なくとも部分的に前記造形ノズルの領域に設けられ得る。
【0015】
一実施形態では、例えば、前記少なくとも1つの支持体に、前記造形材料を昇温させるように設定された流体流を発生させる少なくとも1つの第1の流出口、および前記造形材料を冷却するように設定された流体流を発生させる少なくとも1つの第2の流出口が存在している。つまり、これに関しては、用途に応じて昇温流体及び冷却流体のいずれかが運ばれる各種流出口が、前記少なくとも1つの支持体に存在し得る。当然ながら、支持体の1つ以上の流出口は、様々な流体および/または様々な温度の流体が流出するのを可能にするように構成されて且つ設けられたものとされてもよい。
【0016】
これに代えて又はこれに加えて、2つ以上の支持体が、前記温度制御装置の一部とされてもよい。よって、前記3Dプリント装置に、相異なる流体流を発生させる且つ/或いは相異なる流体用の、相異なる支持体が設けられ得る。選択的に流出させたい流体流の種類(温度および/または流出口)や流体の種類(特には、ガスの種類)に応じて、例えば、一つ又はそれ以外の支持体を利用することが可能となる。
【0017】
一実施形態では、前記温度制御装置が、相異なる流体の流入を制御する且つ/或いは相異なる流路による流体の流入を制御する、少なくとも1つのバルブ(特には、マルチポートバルブ)を具備している。直前の実施形態であれば、様々な流路の利用が前記温度制御装置によって可能となり、例えば、昇温流体は第1の流路に流すが冷却流体は第2の流路に流すようにし、最終的に、後者を配設済みの造形材料の方向へ届けるといったことができるようになる。つまり、前記少なくとも1つのバルブで流入の制御を相応に実施することにより、当該バルブの位置に応じて例えば所与の流路を使用不可とすると同時に別の流路を使用可能とすることができるようになる。
【0018】
具体的に述べると、前記温度制御装置は、冷却流体の流入と異なる流路による昇温流体の流入を前記少なくとも1つのバルブで制御するように構成されて且つ設けられたものとされ得る。よって、例えば、どの支持体に又は複数の相異なる支持体のうちのどの支持体に且つ/或いは支持体のどの流出口に流体が流れるのかを、前記少なくとも1つのバルブで制御することが可能となる。このとき、具体的に述べると、どの支持体及び/又はどの流出口もしくは流出口群に流体が供給されるのかは、どの流体が使用されようとしているのか及び/又はその流体が昇温目的用なのか冷却目的用なのかで決まり得る。
【0019】
流体流を生成するのに代えて又は流体流を生成するのに加えて、前記温度制御装置は、配設済みの造形材料の昇温を行う少なくとも1つの照射器(Emitter)を具備し得る。このような照射器には、前記造形ノズルの領域にある造形材料を照射熱によって局所的に昇温させることが可能な、例えばレーザ、LED、赤外線放射器等が含まれる。
【0020】
原則として、前記温度制御装置は、昇温対象又は冷却対象の造形材料の温度を示す少なくとも1つのセンサ信号に応じて昇温度又は冷却度(つまり、例えば、使用する流体の温度や、照射器が設けられている場合には当該照射器から放射される照射熱の量)を電子的に(つまり、少なくとも半自動的又は全自動的に)制御するように少なくとも1つのセンサ装置に電子的に接続されたものであり得る。よって、本実施形態では、造形材料の温度に応じた所定値までにエネルギー投入又は冷却作用をそれぞれ規制するためのフィードバックループが設けられる。
【0021】
このときの前記少なくとも1つのセンサ装置は、例えば、少なくとも1つの熱画像カメラを具備し得て、当該熱画像カメラの画像データがコンピュータで評価されることで造形材料の温度が算出されたり、当該画像データを用いてセンサ信号が生成されたりする。これに代えて又はこれに加えて、可動式の少なくとも1つのセンサが、電子制御によって移動可能に造形ヘッドに直接設けられていてもよい。これに代えて又はこれに加えて、電子制御によって調節することのできる可動に取り付けられたミラーを利用することで配設済みの造形材料の温度を検出することが可能な、固定式のセンサ又はごく僅かに移動可能なセンサが前記造形ヘッドの領域に設けられていてもよい。
【0022】
一実施形態において、前記温度制御装置は、前記造形ノズルが移動する前記配設方向に応じて昇温又は冷却を制御するように構成された電子制御システムを具備している。つまり、このような実施形態では、造形プラットフォームに対して前記造形ノズルが移動する複数の考えられ得る配設方向のなかのどの配設方向であるかに応じて、前記造形ノズルの周囲部分にある前記造形材料に対して昇温及び冷却のどちらを行うのか且つ/或いは前記温度制御装置の一部だけで昇温又は冷却を行うのか否か(そして、さらに言えば、前記温度制御装置のどの部分で昇温又は冷却を行うのか)が変化する。前記温度制御装置が例えば複数の支持体および複数の流出口を具備している場合には、前記電子制御システムが、例えば、造形材料を昇温させる流体流を前記造形ノズル前方で前記配設方向へと発生させることが可能な支持体にのみ(したがって、そのような流出口にのみ)、あるいは、造形材料を冷却する流体流を前記造形ノズル後方で前記配設方向とは逆方向へと発生させることが可能な支持体にのみ(したがって、そのような流出口にのみ)流体を供給するように構成される。
【0023】
一実施形態において、前記電子制御装置は、例えば、調節可能な支持体(例えば、環状ノズル)を当該電子制御装置で前記配設方向(したがって、造形経路)に対して選択的に回転させることにより、前記配設方向に応じて昇温又は冷却を制御するように構成されている。これにより、冷却ジェットを造形材料へと常に向けて(すなわち、前記配設方向に対して常に後方に向けて)、配設されたばかりの造形材料の冷却を行うことができる。これと同時に、熱源を造形材料よりも先行させることで(つまり、前記配設方向に向けることで)、所与の領域を造形材料が配設される少し前に昇温させることができる。
【0024】
本提案の解決手段の他の態様は、3Dプリント装置であって、配設済みの造形材料の冷却を行うように設けられた複数の温度制御エレメントおよび/または配設済みの造形材料の昇温を行うように設けられた複数の温度制御エレメントを具備する温度制御装置を備え、前記温度制御エレメントが、前記温度制御装置の支持体のうちの、前記造形ノズル周りに少なくとも部分的に延在する一部に設けられている3Dプリント装置に関する。
【0025】
前記温度制御エレメントは、例えば、配設済みの造形材料の昇温を行う照射器であり得て、つまり、例えばレーザおよび/またはLEDおよび/または赤外線放射器である。ただし、昇温(特には、加熱)流体又は冷却流体を含んだ流体流の流出口も温度制御エレメントであると理解されたい。
【0026】
2番目の態様で提案した3Dプリント装置では、対応する温度制御エレメントが、前記支持体のうちの、前記造形ノズル周りに部分的に延在する(つまり、前記造形ノズルの外周に沿った所定の領域を占める)一部に位置し、造形材料の局所的な昇温又は冷却を行う。前記支持体は、例えば、前記造形ノズル周りに円弧状に又は円環状に延在するように形成されたものであり得る。すると、前記支持体のうち、前記温度制御エレメントを具備し前記造形ノズル周りに少なくとも部分的に延在している部分は、前記造形ノズル周りに円状の線軌道を描くことになり得る。
【0027】
一実施形態において、前記温度制御装置は、前記造形ノズルが移動する配設方向に応じて、使用する温度制御エレメントを異ならせるように構成された電子制御システムを具備している。これには、例えば、前記電子制御システムを、前記配設方向に応じて前記複数の温度制御エレメントのうちの一つのみ又は一部のみで例えば前記配設方向を基準として前記造形ノズル前方又は前記造形ノズル後方に配設された造形材料を選択的に昇温又は冷却させるように構成することが含まれる。
【0028】
また、このときの前記温度制御エレメントは、例えば流体流生成体(例えば、前記造形ノズル周りの環状ノズル)を同時に構成している各種支持体に設置され得る。
【0029】
当然ながら、前述した3Dプリント装置の2種類の態様は、同一の3Dプリント装置で実現することも可能である。
【0030】
添付の図面は、本提案の解決手段の考えられ得る実施形態を例示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本提案の3Dプリント装置の第1の実施形態を示す詳細図であり、造形ノズルに、配設済みの造形材料の冷却又は昇温を適宜行う複数の温度制御エレメントを具備した円環体の形態の囲繞支持体が設けられている様子が描かれている。
図2】本提案の3Dプリント装置のさらなる実施形態を示す図であり、同心状の2つの円環体形状の支持体を備えると共に、流出口として形成された温度制御エレメント用のバルブ制御システムが当該支持体に任意で設けられている様子が描かれている。
図3】本提案の3Dプリント装置のさらなる実施形態を示す、図1図2に対応する図であり、3つの円環体形状の各支持体が互いに同心状に配置されている様子が描かれている。
図4図1図2又は図3の造形ノズルを装備することが可能な3Dプリント装置を示す概略詳細図であり、対応する温度制御装置に接続されたセンサシステムが概略図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図4に、造形ノズル10を備えた3Dプリント装置1を概略的に示す。造形ノズル10からは、部品又はワークをそれぞれ積層構築するための造形材料が造形プラットフォーム2へと配設されることが可能である。つまり、造形ノズル10は、一例として配設方向Rに移動する。
【0033】
図4に示す実施形態では、前記造形プラットフォーム上に造形材料50層が既に存在しており、この造形材料50層に第2の造形材料51層が造形ノズル10から配設される。よって、前記3Dプリント装置は、例えば、熱溶解積層法(「FDM」)に従って動作するものである。配設済みの造形材料50の温度低下は、当該造形材料50が初めに造形プラットフォーム2へと配設されると同時に始まる。3Dプリント装置1の造形ノズル10付き造形ヘッドが元の場所に戻った際には、配設済みの造形材料50の温度が、新たに配設されようとしている造形材料51の温度よりも大幅に低くなっている。このことは、それら2つの線条体同士の接合、さらには、それによって生じる部品の強度にも悪影響を及ぼし得る。
【0034】
上記の背景に鑑みて、図4の実施形態では、配設済みの層50の、配設方向Rに敷かれた造形材料50を、レーザ4aで局所的に昇温させる。レーザ4a(あるいは、赤外線放射器などの別の照射器や、昇温流体を含んだ流体流)を用いたこの局所的な昇温と造形材料50への対応するエネルギー投入により、上部にまさにこれから造形材料50が新たに配設されようとしている配設済みの造形材料50の領域の温度が上昇する。結果として、新たに配設する造形材料51の、配設済みの造形材料50に対する付着性を向上させることができる。また、上記の構成により、金属粉末を含有したプラスチック材料をプリントするというハイブリッド造形プロセスも実施可能となる。ここでは、熱を選択的に印加する結果、プリントされた前記金属粉末を後から融解させて例えば少なくとも1つの帯状導体などの形態の金属構造体をプリントされたプラスチック内部に形成することが可能となる。
【0035】
配設済みの造形材料50へのエネルギー投入は、レーザ4aを具備した温度制御装置4
(Temperaturregulationseinrichtung)と接続されている、少なくとも1つのセンサ装置を具備したセンサシステム3により、造形材料50の測定温度に応じて制御される。このときのセンサシステム3は、例えば、光学式の測定装置および/または少なくとも1つの温度センサを具備するものとされる。センサシステム3は、温度センサに代えて又は温度センサに加えて例えば少なくとも1つの熱画像カメラを具備しているものとされ、造形ノズル10の領域にある造形材料50の温度をコンピュータで算出すると共に、コンピュータで求められたこの温度に応じてレーザ4aを駆動するように構成される。
【0036】
図1の実施形態では、造形ノズル10の領域に、円環体形状の囲繞支持体41が設けられている。この円環体形状の支持体41は、前のサイクルで配設された第1の造形材料50層を選択的に昇温させて且つ/或いは前者の層上に配設されたばかりの後続の造形材料51層を選択的に冷却することが可能な温度制御装置4の一部である。
【0037】
支持体41には複数の温度制御エレメント41a~41eが互いに離設されており(特には、互いに等間隔に離設されており)、これら複数の温度制御エレメント41a~41eは、円環体形状の支持体41の外周上に分散して設けられている。ここでの各温度制御エレメント41a~41eは、照射熱を生成する照射器または流体の流出口で形成され得る。具体的に述べると、支持体41が、照射リングまたは環状ノズルとして形成され得る。造形材料50,51の冷却を行いたいのかそれとも昇温を行いたいのかや、造形ノズル10を移動させて造形材料51を層毎に新たに配設するための配設方向Rに応じて、温度制御エレメント41a~41eの一つのみ又は一部のみが機能しうる。
【0038】
複数の流出口41a~41eが例えば前記円環体形状の支持体の外周上に分散して設けられている場合には、後続の層用として造形ノズル10から配設される造形材料51が既存の造形材料50と接触する前に、造形ノズル10の前方下方に敷かれているその既存の造形材料50層を局所的に昇温させる(特には、予熱する)ように、例えば配設方向Rに位置した流出口41d,41eから昇温流体が流出させられ得る。これに代えて又はこれに加えて、配設されたばかりの造形材料51の方向に冷却流体流を発生させることで、この造形材料51が溶け出すのを阻止するように、配設方向Rとは逆方向に位置した流出口41a,41bから冷却流が流出させられ得る。これにより、図示の温度制御装置4により、配設済みの造形材料50,51を選択的に昇温(あるいは、積極的に加熱)又は冷却させることが可能となる。よって、現時点の層の構築時間および/または製造対象部品の箇所に応じて、昇温及び冷却のいずれを行うのか、特には、どの方向に且つ造形ノズル10の外周に沿ったどの箇所/箇所群で流体流を生成したいのかを選択的に制御することが可能となる。
【0039】
温度制御装置4は、処理を自動実行する電子制御システム40を具備している。この電子制御システム40は、例えば、対応する造形材料50,51の温度に応じて昇温度及び/又は冷却度を制御するようにセンサシステム3と接続されたものであり得る。
【0040】
代替的な一実施形態において、電子制御システム40は、造形ノズル10d周りに回転可能に取り付けられて前記配設方向(したがって、造形経路)に対して当該電子制御システムによって選択的に回転させられることが可能な支持体41により、前記配設方向に応じて昇温又は冷却を制御するように構成されている。これにより、記配設方向を基準として冷却ジェットを常に後方に向けて、配設されたばかりの造形材料の冷却を行うことができる。これと同時に、前記配設方向に熱を向けることで、間もなく造形材料が配設される領域を昇温させることができる。これに代えて又はこれに加えて、流出口41a~41
eを電子制御によってバルブ(特には、圧電式バルブ)を用いて個別又は集団で選択的に開閉させることにより、冷却及び/又は昇温の向きを特には造形材料の最新の配設方向(したがって、造形経路)に応じて選択的に決めることが可能とされ得る。
【0041】
図2の代替的な実施形態では、温度制御装置4の支持体として、単一の支持体41に代えて互いに同心状に造形ノズル10を囲繞する2つの円環体形状の支持体41,42が設けられている。これにより、造形材料50の昇温のみを行うように設定された流体流が、例えば、内側に位置した支持体41及び支持体41の流出口41a~41eから発生する。逆に、冷却流体を含んだ各流体流が、外側に位置した支持体42の流出口42a~42eから発生する。例えば、いずれの場合の流体も、同じ流体(例えば、空気)とされる。このときの当該空気は、当該空気が昇温目的に利用されるのかそれとも冷却目的に利用されるのかとか、どちらの支持体41,42から当該空気が吹き出すのかに応じて、昇温されてから支持体41へ運搬され得るか又は昇温されないままもしくは冷却を加えた状態で他方の支持体42へ運搬され得る。当該空気は、例えば、圧縮空気接続部を介して供給される。
【0042】
任意で、少なくとも1つの(マルチポート)バルブ[(Mehrwege‐)ventil)]400を具備したバルブ制御システムが、支持体41,42への流入を制御するために存在していてもよい。そして、このバルブ400も、温度制御装置4の電子制御システム40によって制御される。
【0043】
図3の実施形態では、造形ノズル10を同心状に囲繞する3つの円環体形状の支持体41,42,43が設けられている。例えば、昇温空気や低温空気に加えて他種のプロセスガスが、流出口43a~43eを有する外側の円環体形状のさらなる支持体43から適宜流出させられ得る。冷却目的及び/又は昇温目的に用いられるこのようなプロセスガスは、例えば、空気による冷却や昇温では不所望に酸化してしまう反応性造形材料(例えば、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック、特定の金属粉末や結合材等)をプリントする場合に利用することが可能である。
【0044】
図1図2及び図3に示す各実施形態では、温度制御装置4が、使用する各流体を適宜昇温するための適切な昇温エレメントおよび/または適宜冷却するための適切な冷却エレメントを具備し得る。また、当然ながら、昇温流体流又は冷却流体流を生成するための前記流体に空気を使用することは、一例に過ぎないと理解されたい。つまり、例えば、図1図2の代替的な実施形態においても、プロセスガス(特には、不活性プロセスガス)を使用することが可能である。
【0045】
図示の各実施形態により、例えば、PA66 GF35を用いた熱溶解積層モデルプロセスを効果的に実施することが容易に可能となる。その際、製造対象の設計固有又は材料固有の要件に応じて配設済みの造形材料50を昇温空気(温度:約150℃)で積極的に加熱することで良好な付着性を達成することができる一方、例えば部品の一部の断面及び/又は壁圧が薄い場合等には、配設されたばかりの造形材料51の冷却を行ってこの造形材料51が流れ出したり溶け出したりするのを阻止する必要もある。本件では、温度制御装置4により(例えば、図2の代替的実施形態では、複数の流出口41a~41e,42a~42eをそれぞれ有し造形ノズル10を囲繞している円環体形状の複数の支持体41,42,43により)、造形ノズル10の領域での(つまり、3Dプリント装置の造形ヘッドでの)対応する部品加熱及び冷却が一体的に行われるようになっている。
【符号の説明】
【0046】
1 3Dプリント装置
10 造形ノズル
2 造形プラットフォーム
3 センサシステム
4 温度制御装置
40 電子制御システム
41,42,43 支持体
41a~41e 流出口/照射器(温度制御エレメント)
42a~42e 流出口/照射器(温度制御エレメント)
43a~43e 流出口/照射器(温度制御エレメント)
4a レーザ
400 マルチポートバルブ
50,51 造形材料
R 配設方向
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】