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特表2022-5228783Dプリント装置および3Dプリント方法
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  • 特表-3Dプリント装置および3Dプリント方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】3Dプリント装置および3Dプリント方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20220413BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220413BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220413BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20220413BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220413BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20220413BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20220413BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/336
B33Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552532
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020055688
(87)【国際公開番号】W WO2020178333
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】102019202941.8
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511125043
【氏名又は名称】ブローゼ・ファールツォイクタイレ・エスエー・ウント・コンパニ・コマンディットゲゼルシャフト・ヴュルツブルク
(71)【出願人】
【識別番号】520001095
【氏名又は名称】アイム3デー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AIM3D GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ベーツ・ステファン
(72)【発明者】
【氏名】リーバーヴィルト・クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】モリソン・ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP13
4F213AP19
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】造形材料の水分を測定管理する3Dプリント装置及び3Dプリント方法を提供する。
【解決手段】3Dプリント装置Vは、造形対象部品の製造用に用意された造形材料を配する少なくとも1つの造形ノズル10と、少なくとも1つの造形ノズル10の方向に運搬された前記造形材料の水分量に応じて信号s5,s5aを生成するように構成された少なくとも1つの水分センサ5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形対象部品の製造用に用意された造形材料を配する少なくとも1つの造形ノズル(10)を備えた、3Dプリント装置において、
当該3Dプリント装置(V)は、
前記少なくとも1つの造形ノズル(10)の方向に運搬された前記造形材料の水分量に応じて信号(s5,s5a)を生成するように構成された、少なくとも1つの水分センサ
(5)を備えることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3Dプリント装置において、前記少なくとも1つの水分センサ(5)は、前記少なくとも1つの造形ノズル(10)の方向に運搬された前記造形材料の水分量が所定の閾値を上回ると信号(s5,s5a)を生成するように構成されていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の3Dプリント装置において、当該3Dプリント装置(V)が、
前記少なくとも1つの造形ノズル(10)の方向に運搬される造形材料の水分量を調節する調整装置(2)、
を備え、前記調整装置(2)は、前記少なくとも1つの水分センサ(5)で生成された前記信号(s5)に応答して、前記少なくとも1つの造形ノズル(10)の方向に運搬される前記造形材料の水分量を変化させるように構成されていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の3Dプリント装置において、前記少なくとも1つの水分センサ(5)で生成された前記信号(s5a)は、当該3Dプリント装置のアラーム装置(6)で処理されてアラームを発生するかおよび/または当該3Dプリント装置(V)の電子的な動作ログへの入力を生じさせることが可能であることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項5】
造形対象部品の製造用に用意された造形材料を配する少なくとも1つの造形ノズル(10)を備えた3Dプリント装置、特には請求項1から4のいずれか一項に記載の3Dプリント装置において、
当該3Dプリント装置(V)は、
前記少なくとも1つの造形ノズル(10)へ運搬される造形材料の水分量を調節する調整装置(2)、
を備え、前記調整装置(2)は、当該調整装置(2)から調整された造形材料を前記造形ノズル(10)へ運搬するように少なくとも1つの材料ライン(11)で前記造形ノズル(10)と接続されていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項6】
請求項3または5に記載の3Dプリント装置において、当該3Dプリント装置は、
信号(s4)を生成するように構成された少なくとも1つの充填レベルセンサ(4;210,220,230,240)、
を備え、前記信号(s4)に応答して前記調整装置(2)から又は前記調整装置(2)へと追加の造形材料が運搬されることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項7】
請求項3、5または6に記載の3Dプリント装置において、前記調整装置(2)が、2つ以上または3つ以上の別々の調整器(21~24)を含むことを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項8】
請求項7に記載の3Dプリント装置において、前記別々の調整器(21~24)が、別々の種類の造形材料用に設けられていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の3Dプリント装置において、当該3Dプリント装置は、2つ以上の造形ノズル(10)を備えていることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項10】
請求項7または8に従属する場合の請求項9に記載の3Dプリント装置において、複数の前記2つ以上の調整器(21~24)は、当該複数の調整器(21~24)から調整済み造形材料を単一の造形ノズル(10)へ運搬するように前記2つ以上の造形ノズル(10)のうちの一つだけに振り当てることが可能であることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項11】
請求項7または8に従属する場合の請求項9または10に記載の3Dプリント装置において、前記2つ以上の調整器(21~24)のうちの所与の調整器(21~24)を、その一つの調整器(21~24)から調湿済み造形材料を選択的に又は同時に複数の造形ノズル(10)へ運搬するように複数の造形ノズル(10)に振り当てることが可能であることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項12】
請求項3、または請求項5から11のいずれか一項に記載の3Dプリント装置において、当該3Dプリント装置(V)は、
前記調整装置(2)と接続された少なくとも1つの原材料貯留部(3)、
を備え、前記原材料貯留部(3)から造形材料が前記調整装置(2)へ自動的に運搬されて調整を行うことが可能であることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項13】
造形対象部品の製造用に用意された造形材料が少なくとも1つの造形ノズル(10)により配される3Dプリント方法において、
前記少なくとも1つの造形ノズル(10)の方向に運搬された前記造形材料の水分量がセンサで測定され、測定された前記水分量に応じて、前記少なくとも1つの造形ノズル(10)の方向に運搬される前記造形材料の水分量が調整装置(2)で変化させられることを特徴とする、3Dプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本提案の解決手段は、造形対象部品の製造用に用意された造形材料を配する少なくとも1つの造形ノズル(Druckduese)を備えた、3Dプリント装置(3D-Druckvorrichtung)に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリント(3D-Druck)では、通常、1種以上の材料から立体部品が層ごとに構築される。ここで用いられる材料には、例えば、プラスチックおよび/または樹脂および/またはセラミックスおよび/または金属が含まれる。この背景で、例えば、いわゆる熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling、略してFDM)が知られている。ここでは、溶融性プラスチックや溶融材料から部品やワークピースが積層構築される。
【0003】
各部品を積層作製するには、例えばいわゆる3Dプリンター形態の3Dプリント装置の少なくとも1つの造形ノズルから、造形材料(Druckmaterial)が造形プレートへと配される。各部品は、造形ノズルから出た造形材料によってコンピュータで積層構築される。この文脈では、例えばWO 2018/039261 A1(特許文献1)から、対応する3Dプリント装置が知られている。
【0004】
実際には、造形材料を層毎に配して立体部品を製造するように特に意図された3Dプリント装置として、様々なプラスチックを使っての動作が可能な3Dプリント装置も各種知られている。実際のところ、製造したい部品に応じて、造形対象の同部品の試作品の材料特性や部品特性が要求どおりになるまで、様々な造形材料が試しに使われることが多い。各造形材料は、1社以上の材料メーカーから典型的に調達され、3Dプリント装置でバッチ状に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/039261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これを起点として、本提案の解決手段は、3Dプリント装置及び3Dプリント方法をさらに向上させるという課題に基づいたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1又は請求項5の3Dプリント装置と請求項13の3Dプリント方法の双方によって達成される。
【0008】
第1の態様では、3Dプリント装置であって、当該3Dプリント装置の少なくとも1つの造形ノズルの方向に運搬された造形材料の水分量に応じて(電子)信号を生成するように構成された少なくとも1つの水分センサ(Feuchtigkeitssensor)を備える3Dプリント装置が提案される。
【0009】
本提案の解決手段は、3D造形部品の造形結果の品質が、造形に用いられた造形材料の水分量に特に左右されるという知見に基づいている。そこで、少なくとも1つの水分センサで電子信号を生成することが可能な3Dプリント装置を提供することにより、使用する造形材料について前記水分センサで検出した水分量に応じて造形結果の品質をより選択的に制御することが可能となり、適宜これをより簡単に自動実行することも可能となる。
【0010】
つまり、電子制御によって造形材料の乾燥を行うことが可能とされている。そのため、同乾燥は、前記3Dプリント装置で実施される3Dプリント方法の枠組み内の処理に組み込まれている。ここでも、立体部品を造形する造形材料、特にはこの目的に用いられるPA6などの対応するプラスチック材料の水分量しだいで製造対象部品の品質が向上する、具体的に述べると、インクジェット造形材料の水分量を確実に低くすることで結合強度を大幅に向上させることができるという知見から利点を奏するに至っている。
【0011】
例えば、前記3Dプリント装置の前記少なくとも1つの水分センサは、少なくとも1つの造形ノズル、特には前記少なくとも1つの造形ノズルの方向に運搬された前記造形材料の水分量が所定の閾値を上回ると信号を生成するように構成されたものであり得る。例えば、PA6などのプラスチック材料が用いられた場合、当該プラスチック材料の水分量が0.1%を上回った場合に前記水分センサが信号を生成し得る。例えば水分量を0.1%以下にすることにより、3D造形プロセス時の蒸気泡の形成の多く又は全てが確実に排除されるので、造形対象の立体部品の空孔度を抑えることができる。
【0012】
本ケースでは、原則として、材料中水分の測定対象をなす造形材料の水分量が、同造形材料から水分を除いた質量に対する同造形材料に含まれた水分の質量の比であるとする。
【0013】
一設計例において、前記3Dプリント装置は、少なくとも1つの造形ノズルの方向に運搬される造形材料の水分量を調節する調整装置(Konditioniereinrichtung)を備える。この調整装置は、少なくとも1つの水分センサで生成された前記信号に応答して、少なくとも1つの造形ノズルの方向に運搬される前記造形材料の水分量を変化させるように構成されている。対応する調整装置は、例えば、前記水分センサからの信号に応じて、つまり、前記水分センサの信号量によって前記水分量を適宜選択的に低下させる、ドライヤーなどの形態の少なくとも1つの調整器を含む。このように、対応する3Dプリント装置は、前記水分量を自動的に調節する調整装置を特に組み込んだものなので、少なくとも1つの水分センサで当該調整装置を自動的に駆動させることにより、常に水分量が所定の閾値未満である造形材料を前記3Dプリント装置の少なくとも1つの造形ノズルに供給することができる。よって、具体的に述べると、前記水分センサから生成された前記(電子)信号は、調整装置の制御電子部への制御信号であり得る。
【0014】
これに代えて又はこれに加えて、前記少なくとも1つの水分センサで生成された前記信号は、前記3Dプリント装置の報知装置で処理されて報知および/または前記3Dプリント装置の電子的な動作ログへの入力を生じさせることが可能であり得る。つまり、例えば、前記造形ノズルへ運搬された造形材料が水分量の閾値を上回ると、前記水分センサが反応して前記報知装置へ対応する(報知)信号を発信する。そして、例えば、この報知装置が、現在使用中の造形材料の水分量が危機的である可能性を知らせる光信号及び/又は音響信号を発生させる。これに代えて又はこれに加えて、品質保証のために、処理中の造形材料の水分量が閾値を上回ったことを記録したり、これがどの過程で、特には、どの時点で起こったのかを記録したりすることが可能とされる。
【0015】
本提案の解決手段の第2の態様は、3Dプリント装置であって、当該3Dプリント装置の少なくとも1つの造形ノズルの方向に運搬される造形材料の水分量を調節する調整装置を備えた、3Dプリント装置に関する。前記調整装置は、当該調整装置から調湿済み造形材料を前記造形ノズルへ運搬するように少なくとも1つの材料ラインで前記造形ノズルと、すなわち、例えば前記造形ノズルを具備した造形ヘッドと接続されている。
【0016】
つまり、第2の態様で提案する3Dプリント装置には、前記調整装置を当該3Dプリント装置の前記少なくとも1つの造形ノズルと接続して水分量が調整された造形材料を供給する少なくとも1つの材料ラインが存在している。このように、調整済み造形材料を、電子制御によって、つまり、任意で自動的に、前記造形ノズルへ運搬することができる。これにより、例えば、適宜低い水分量にまで乾燥した造形材料を、電子制御によって前記造形ノズルへ運搬することが可能となる。よって、結果的に、本例によれば、造形材料を予め別に調湿してから3Dプリント装置に手動で充填せずに済む。逆に、本提案の3Dプリント装置には適切な調整装置が既に組み込まれているので、当該調整装置に原材料を供給することで、記憶された仕様に応じた調湿済み造形材料を自動的に前記少なくとも1つの造形ノズルの方向に運搬することができる。
【0017】
当然ながら、調整装置と材料ラインとを備えた第2の態様の3Dプリント装置は、先述した本提案の解決手段の第1の態様と同じく少なくとも1つの水分センサを備えたものとされてもよい。これにより、例えば、前記3Dプリント装置に組み込まれた前記調整装置を前記水分センサからの少なくとも1つの信号に応じて制御することが可能となると共に、直に適宜変化させられた調整済み造形材料を前記少なくとも1つの材料ラインによって前記造形ノズルに運搬することが可能となる。
【0018】
一設計例において、調整装置が設けられた前記3Dプリント装置は、信号を生成するように構成された少なくとも1つの充填度センサ(Fuellstandssensor)を備え、当該信号に応答して前記調整装置から又は前記調整装置へと追加の造形材料が運搬される。つまり、例えば、前記少なくとも1つの充填度センサからの前記(電子)信号に応答して、前記調整装置から造形材料を前記少なくとも1つの造形ノズルの方向に、このとき、場合によっては、前記造形ノズルの上流側に接続された中間容器に運搬することが可能となる。これに代えて又はこれに加えて、前記少なくとも1つの充填度センサからの前記電子信号に応答して、原材料貯留部から追加の造形材料が前記調整装置へ運搬されるようにしてもよい。このように、少なくとも1つの充填度センサを使用した結果として、調湿済み及び/又は未調湿の造形材料の流入を、特には途切れなく電子制御することが可能となる。
【0019】
一設計例において、前記3Dプリント装置の調整装置は、2つ以上、場合によっては3つ以上の別々の調湿器(Konditionierer)を含む。このとき、当該別々の調湿器は、例えば、別々の種類の造形材料用に設けられたものであり得る。このように、前記3Dプリント装置に複数の調湿器が設けられている場合、様々な調湿器で調湿された様々な造形材料からなる部品を一回又は複数回の運転中に提供できるようになる。例えば、一設計例では、調整装置の3つの別々の調湿器に3種類の別々の造形材料が設けられて、前記3Dプリント装置の少なくとも1つの造形ノズルを介した複数の造形材料から、構築対象の立体部品が自動的に造形される。
【0020】
また、これに代えて又はこれに加えて、調整装置の調湿器は、前記造形ノズルの方向に運搬する調湿済み造形材料の量を必要に応じて増やす目的で複数設けられ得る。また、3Dプリント装置は、複数の(2つ以上の)造形ノズルを(任意で、当該3Dプリント装置の相異なる造形ヘッドに)備えることにより、複数の調湿器から造形ノズルへの調湿済み造形材料の送込みを高速化したり可変的に行ったりすることが可能とされ得る。
【0021】
一設計例では、例えば、複数の調湿器を、当該複数の調湿器から調湿済み造形材料を単一の造形ノズルへ運搬するように複数の造形ノズルのうちの一つだけに振り当てることが可能である。これにより、例えば、必要に応じて1つの調湿器又は複数の調湿器からの調湿済み造形材料を、特には電子制御によって前記少なくとも1つの造形ノズルへと運搬することが可能となる。よって、例えば、前記3Dプリント装置を、第1のワークの造形時には対応する第1の調湿器からの造形材料のみを使用する一方で、別の種類の第2のワーク又は前記第1のワークにおける特定の部分の作製時には別の調湿器からの造形材料を同じ造形ノズルに供給するか又は複数の調湿器から造形材料を供給することで例えば当該立体ワークの積層構築時の構築速度の高速化に応えるように構成することができる。このとき、前記3Dプリント装置の1つ又は複数の造形ノズルに別の調湿器を振り当てる機能は、可変的に、特には電子的に切替え可能とされる。
【0022】
具体的に述べると、調整装置の複数の別々の調湿器のうちの1つ以上を、別の調湿器に故障の恐れがある場合や当該故障が生じた場合および/または同じ製造サイクルで追加の造形材料が必要となった場合のみに前記3Dプリント装置の1つ又は複数の造形ノズルの方向に造形材料を届ける予備の調湿器として確保しておくことも可能である。
【0023】
同様に、1つの調湿器又は2つ以上の調湿器を、所与の調湿器から調湿済み造形材料を選択的に又は同時に複数の造形ノズルへ運搬するように複数の造形ノズルに振り当てることが可能とされ得る。つまり、適切な調湿器により、前記3Dプリント装置をわざわざ改造せずとも、当該3Dプリント装置で製造したい部品やこの目的に使用可能な造形材料や造形ノズルの自在性を高めることが可能となり得る。
【0024】
原則として、調整装置の各調湿器が、前記3Dプリント装置の(1つ又は複数の造形ヘッドの)複数の造形ノズルのうちの一つだけに振り当てられたものとすることも可能である。
【0025】
一設計例において、前記3Dプリント装置は、当該3Dプリント装置の調整装置と接続された少なくとも1つの原材料貯留部を備え、前記原材料貯留部により造形材料が追加で前記調整装置へ自動的に運搬されて調湿を行うことが可能とされる。したがって、このときの3Dプリント装置は、(典型的には未だ調湿されていない)造形材料を前記調整装置へ自動的に運搬する少なくとも1つの(原材料)運搬装置を備えている。具体的に述べると、このときの対応する(原材料)運搬装置は、前記調整装置から調湿済み造形材料を前記3Dプリント装置の1つ又は複数の造形ノズルへ自動的に運搬する運搬装置に加えて設けられたものとされ得る。原則として、(未調湿の又は調湿済みの造形材料の)運搬装置は、例えばスクリューコンベアからなり得る。
【0026】
本提案の解決手段の他の態様は、造形対象部品の製造用に用意された造形材料が少なくとも1つの造形ノズルを用いて(造形プラットフォームへと)配される3Dプリント方法に関する。ここでは、前記少なくとも1つの造形ノズルの方向に運搬された前記造形材料の水分量を、センサを用いて測定し、測定された前記水分量に応じて、前記少なくとも1つの造形ノズルの方向に運搬される前記造形材料の水分量を調整装置で変化させることが提案される。
【0027】
つまり、具体的に述べると、本提案の3Dプリント方法の基本的思想は、前記水分量に応じて造形材料を自動的に調湿し、水分量が閾値を上回らない造形材料を3Dプリント装置の少なくとも1つの造形ノズルへ供給するということを、電子・センサ制御によって実行することである。
【0028】
ここでは、本提案の3Dプリント装置の設計例により、本提案の3Dプリント方法の設計例が実施され得る。よって、3Dプリント装置について前述した利点や特徴および3Dプリント装置について後述する利点や特徴は本提案の3Dプリント方法の設計例にも当てはまり、その逆も然りである。
【0029】
添付の図面は、本提案の解決手段の考えられ得る設計例を例示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本提案の3Dプリント方法の一設計例を実施することが可能な、本提案の3Dプリント装置の一設計例の構造を示す概略図である。
図2】本提案の3Dプリント装置の一設計例、例えば、図1に対応する設計例での各種構成要素の相互作用を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に、本提案の3Dプリント装置Vの考えられ得る一設計例を示す。この3Dプリント装置Vは、立体部品の造形用の造形材料を造形プラットフォーム(Druckplattform)へと層毎に配することが可能な造形ヘッド(Druckkopf)1を備え、任意で、複数のさらなる造形ヘッド1a,1bも備えている。前記造形材料を吐出するために、各造形ヘッド1,1a,1bは少なくとも1つの造形ノズル(Druckduese)10を具備している。例えば、前記3Dプリント装置は、熱溶解積層法(略して「FDM」)を実施するように構成され、及び設けられたものである。
【0032】
3Dプリント装置Vの図示の設計例において、造形ヘッド1は調整装置2と接続されている。調整装置2からは、特定の調整が施された造形材料を造形ヘッド1へと(あるいは、さらなる造形ヘッド1a,1bに)運搬することが可能である。例えば、図1に図示しない運搬装置が、(モータによる)運搬用に設けられている。このような運搬装置は、例えば、スクリューコンベアからなる。調整装置2で調湿される、特にはここで乾燥が行われる前記造形材料は、例えば、PA6などのプラスチック材料からなり得て且つ/或いは顆粒の形態で存在し得る。
【0033】
3Dプリント装置Vの造形ヘッド1は、例えば、(主)供給ライン11で調整装置2と接続されている。これにより、調整装置2で調整された造形材料を当該造形ヘッド1及び当該造形ヘッド1の造形ノズル10へと運搬することが可能となっている。調整装置2からは、別の供給ライン11a,11bを介して、任意で設けられるさらなる造形ヘッド1a,1bへと造形材料が供給される。このように、図示の3Dプリント装置Vは、使用する造形材料を適切に調湿することが可能、特にはここで乾燥させることが可能な調整装置2を組み込んだものである。これにより、3Dプリント装置V内で前記造形材料を所定の水分量にまで乾燥させることができ、つまり、処理に組み込むことが可能となる。
【0034】
調整装置2及び調整装置2の少なくとも1つの調湿器、特にはドライヤー21~24の自動制御のために、調整装置2は制御電子部20を具備している。この制御電子部20は、3Dプリント装置Vの水分センサ5から(制御)信号s5を受信し得る。この信号s5は、調整装置2から造形ヘッド1へ運搬された調湿済み造形材料の水分量が所定の閾値を上回ることで水分センサ5により生成される。そして、調整装置2の少なくとも1つのドライヤー21~24が当該調整装置2の制御電子部20によって水分センサ5からの信号s5に応じて駆動されることにより、当該調整装置2内で調製されている前記造形材料の乾燥度が変化する。このように、調整装置2により供給される前記造形材料の水分量を、水分センサ5からの信号s5に応答して適切に変化させること、特には自動的に変化させることが可能となっている。
【0035】
逆に、これに代えて又はこれに加えて、水分センサ5で生成された信号が、例えば、3Dプリント装置Vのアラーム/ロギング装置(Alarmierungs/Protokollierungseinrichtung)6への(アラーム)信号s5aとして発信されてもよい。つまり、造形ヘッド1へ運搬される調湿済み造形材料が水分量用として記憶された閾値を上回ったとの判断が水分センサ5を用いて下された場合に、視覚及び/又は光によって知覚可能なアラーム信号および/または3Dプリント装置Vの電子的な動作ログへの入力を、前記アラーム/ロギング装置に生じさせることが可能となる。例えば、適切な報知信号s5Aにより、3Dプリント装置Vのユーザに対し、造形ノズル10への造形材料の充填に問題がある可能性を知らせることができる。また、品質保証の過程においては、電子的な動作ログにより、どの程度まで3D造形部品が前記記憶された閾値を上回った水分量の造形材料で少なくとも部分的に造形されている可能性があるのかを再検査することができる。
【0036】
図示の設計例では、水分センサ5が一例として造形ヘッド1に設けられている。ただし、これは当然ながら必須でない。例えば、水分センサ5及び/又は追加の水分センサが、供給ライン11に設けられてもよい。
【0037】
図1に示す設計例では、調整装置2が、複数の、本例では3つ以上の、調湿器21~24を含む。本例ではドライヤー21~24の形態であるこれら別々の調湿器を用いた調湿により、別々の種類の造形材料、特には調節すべき水分量又は材料の種類が互いに異なる造形材料を適宜調湿して造形ヘッド1及び/又は造形ヘッド1a及び/又は造形ヘッド1bへと運搬することが可能である。このように、3Dプリント装置Vに複数の調湿器21~24が組み込まれていることにより、大規模な改造を行わずとも、3Dプリント装置Vの自在性や3Dプリント装置Vで製造される部品の数を大幅に向上させることができる。
【0038】
あるいは、調整装置2のドライヤー24を、例えば、造形材料のスループット増加に対処する且つ/或いは他のドライヤー21,22,23の故障を補償する、予備のドライヤーとして確保しておくことも可能である。
【0039】
図1に描写した一改良形態では、調整装置2の調湿器/ドライヤー21が調湿済み造形材料を中間容器2Aへ運搬し得て、中間容器2Aから供給ライン11を介して当該調湿済み造形材料が一つの造形ヘッド1及び/又はさらなる造形ヘッド1a,1bへ運搬される。
【0040】
この中間容器2Aには、例えば、充填レベルセンサ4が設けられ得る。中間容器2Aの充填度が所定の充填度閾値を下回ると、(充填度)信号s4が調整装置2の制御電子部20に発信される。そして、この信号s4に応答して、例えば調湿器/ドライヤー21から造形材料が中間容器2Aの方向に運搬され得る。あるいは、中間容器2Aの上流側に接続された調湿器/ドライヤー21への新たな又は追加の充填が指令され得る。
【0041】
また、図1に示す設計例では、造形ノズル10の造形材料用の造形ヘッド貯留部が造形ヘッド2に確保されている場合に特に、充填度センサ4が上記に代えて又は上記に加えて造形ヘッド1に設けられてもよい。このとき、造形ヘッド1内に貯まっている前記造形材料が充填度閾値を下回ると、調整装置2からの新たな造形材料の運搬を(充填度)信号s4によって電子的に実行させることが可能となる。
【0042】
図示の例では、3Dプリント装置Vが、さらに、原材料貯留部3を備えている。この原材料貯留部3から、運搬ライン30及び対応する供給ライン31~34を介して、調整装置2の調湿器21~24へと造形材料が運搬され得る。具体的に述べると、調整装置2の調湿器21~24における未調湿の造形材料の充填度を電子的に且つ少なくとも半自動的に十分確保できるようになるので、少なくとも1つの造形ヘッド1,1a,1bの造形ノズル10への調湿済み造形材料の流量も十分確保できるようになる。
【0043】
乾燥が別に必要でない原材料を必要に応じて供給することも可能となるように、少なくとも1つのバイパスラインが設けられてもよい。図1では一例で供給ライン31,34に対するバイパスライン31b,34bとして描かれているこのようなバイパスラインにより、原材料貯留部3からの原材料を、調湿器21~24を飛ばして造形ヘッド1,1a,1bへと導くことが可能となる。
【0044】
調整装置2の調湿器21~24の充填度を常に十分確保するために、各調湿器21~24には、充填度センサ210,220,230,240が備え付けられている。充填度センサ210,220,230,240からの(充填度)信号に応答して、原材料貯留部3からの原材料の自動的な運搬が電子的に実行され得る。
【0045】
図示の3Dプリント装置V、特には3Dプリント装置Vに組み込まれた調整装置2と少なくとも1つの水分センサ5により、3Dプリント装置Vの造形ノズル10へと特には別々の造形材料や調湿が異なる造形材料を自由自在に充填することができるだけでなく、ノズル10へ運搬される造形材料の調湿過程を水分センサ5からの(制御)信号s5で制御するという制御ロジックが例えば設けられているように、3D造形プロセスを広範囲にわたって自動化することが可能となる。
【0046】
図2を用いて、図1の3Dプリント装置V内での基本的な動作関係を、ここでもあくまでも一例として説明する。
【0047】
ここでは、まず、原材料貯留部3から調整装置2への材料流、そして、任意で設けられる中間容器2A経由による調整装置2から造形ヘッド1への任意の材料流が、矢印を用いて描かれている。そして、さらなる矢印により、調整装置2からの制御信号s2および水分センサ5からの制御信号s5を確認することができる。ここでは、調整装置2が、調湿器側の制御信号s2により、原材料貯留部2から当該調整装置2への原材料、すなわち、未調湿の造形材料の運搬を要求することができる。さらに、造形ヘッド1は、当該造形ヘッド1に運搬される造形材料の調湿に対し、造形材料の水分度が当該造形ヘッド1の造形ノズル10でのさらなる処理用に記憶された閾値を確実に下回るよう水分センサ5からの制御信号s5で影響を与えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b 造形ヘッド
10 造形ノズル
11 (主)供給ライン
11a,11b 供給ライン
2 調整装置
20 制御電子部
21,22,23,24 ドライヤー/調整器
210,220,230,240 充填度センサ
2A 中間容器
3 原材料貯留部
30 運搬ライン
31,32,33,34 供給ライン
31b,34b バイパスライン
4 充填度センサ
5 水分センサ
6 報知/ロギング装置
s2,s4,s5,s5a 信号
V 3Dプリント装置
図1
図2
【国際調査報告】