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特表2022-522883ターボ分子真空ポンプおよびそのパージ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】ターボ分子真空ポンプおよびそのパージ方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
F04D19/04 D
F04D19/04 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552554
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2020054556
(87)【国際公開番号】W WO2020178042
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】1902208
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ヴァレンヌ
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ デングレヴィル
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA03
3H131BA05
3H131CA37
(57)【要約】
本発明の主題は、ステータ(2)に設けられ、ロータ(3)とステータ(2)との間に開口する少なくとも1つの細孔(20)を含む、パージガス注入装置(21)を含むターボ分子真空ポンプ(1)に関するものである。前記ロータ(3)の少なくとも1つのブレードステージ(9)の下流において、ポンプ搬送されるガスの経路内にパージガスを注入するために、パージガス注入装置(21)を備えている。このパージガス注入装置(21)は、注入されるパージガスの流量が決定された閾値を下回るように構成されており、前記パージガスを注入しない場合と前記パージガスを注入する場合の吸入側(6)における圧力差は、0.066Pa未満である。本発明はまた、ターボ分子真空ポンプ(1)のパージ方法にも関係する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入側(6)から吐出側(8)にポンプ搬送されるガスを駆動するように構成されたターボ分子真空ポンプ(1)であって、
1つのステータ(2)と、1つのロータ(3)と、1つのホルウェックスリーブ(13)とを備え、
前記ステータ(2)は、少なくとも1段のベーンステージ(10)と螺旋状溝(14)が設けられた1つのホルウェックステータ(15)を有し、
前記ロータ(3)は、少なくとも2段のブレードステージ(9)を有しており、前記ターボ分子真空ポンプ(1)のターボ分子ステージ(4)において前記ブレードステージ(9)と前記ベーンステージ(10)は、前記ロータ(3)の回転軸(I-I)に沿って軸方向に連続して交互に設けられており、
前記ホルウェックスリーブ(13)は、前記ターボ分子真空ポンプ(1)の分子ステージ(5)で、前記ステータ(2)の前記螺旋状溝(14)を通過して回転するように構成され、前記分子ステージ(5)は、前記ポンプで搬送されるガスの循環方向(F1)において前記ターボ分子ステージ(4)の下流に位置しており、
前記ターボ分子真空ポンプ(1)は、さらに
前記ステータ(2)に設けられたパージガス注入装置(21)を備え、前記パージガス注入装置は、前記ロータ(3)と前記ステータ(2)との間に開口する少なくとも1つの細孔(20)を有し、前記ロータ(3)の少なくとも1つの前記ブレードステージ(9)の下流において、前記ポンプで搬送されるガスが流れる経路にパージガスを注入するものであり、注入される前記パージガスの流量は決定された閾値を下回り、前記パージガスを注入しない場合と前記パージガスを注入した場合の前記吸入側(6)における圧力差が、0.066Pa未満になるように構成されていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1において、
前記少なくとも1つの細孔(20)が、前記分子ステージ(5)で開口していることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかにおいて、
前記細孔(20)の軸は、前記ターボ分子ステージ(4)から前記ホルウェックステータ(15)の高さの4分の1よりも短い距離(d)において、前記ホルウェックステータ(15)で開口していることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
注入される前記パージガスの流量は、0.1689 Pa.m/s以上であることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記ホルウェックスリーブ(13)の下に位置する前記ターボ分子真空ポンプ(1)の軸受(18)に、追加のパージガスを注入するように構成された追加のパージガス注入装置(22)を備えていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項5において、
前記追加のパージガス注入装置(22)は、前記ロータ(3)の回転を駆動する軸(12)の一端を収容する空洞(24)内に前記追加のパージガスを注入するように構成された1つまたは複数の入口(23)を備えていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項5または6のいずれか1項において、
前記追加のパージガスの流量は、前記パージガス注入装置(21)の前記パージガスの流量以下であることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項8】
請求項6または7のいずれか1項において、
前記入口(23)と前記細孔(20)との共通パイプを備えていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
前記ロータ(3)は、4段以上の前記ブレードステージ(9)で構成されていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項において、
前記少なくとも1つの細孔(20)が前記ターボ分子ステージ(4)に開口していることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項11】
請求項9または10のいずれか1項において、
前記細孔(20)は、前記ポンプで搬送される前記ガスの循環方向(F1)にある最後の3段の前記ブレードステージ(9)の1つに開口していることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のターボ分子真空ポンプ(1)をパージするためのパージ方法であって、
前記ロータ(3)の前記少なくとも1つのブレードステージ(9)の下流の前記ポンプ搬送されるガスの経路内に、決定された閾値未満の流量の、前記パージガスを注入し、
前記パージガスを注入しない場合と前記パージガスを注入する場合の前記吸入側(6)における圧力差が0.066Pa未満になることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)のパージ方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記パージガスは窒素であることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)のパージ方法。
【請求項14】
請求項12または13において、
注入される前記パージガスの流量の前記決定された閾値は0.76Pa.m/sであることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)のパージ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ分子真空ポンプ、およびこのターボ分子真空ポンプをパージする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空チャンバー内で高真空を生成するには、ステータ内でロータが高速回転、例えば毎分2万回転を超える回転速度で駆動されるように構成された、ターボ分子真空ポンプを使用する必要がある。
【0003】
半導体やLEDの製造方法等、ターボ分子真空ポンプが使用される特定の製造方法では、真空ポンプ内に堆積物の層が形成されることがある。この堆積物は、ステータとロータの間のクリアランスを狭くし、それによりロータが停止する可能性がある。この堆積物の層との摩擦によってロータが加熱され、これによりロータがクリープし、このロータに亀裂が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反応生成物が真空ポンプ内に凝縮するのを防ぐために、ステータを加熱することはよく知られている。しかし、ロータの機械的な完全性を維持するために、ステータを加熱する温度は、一般に90℃、さらには120℃を超えることはできない。ステータをこれらの温度に加熱すると、真空ポンプ内の堆積物の生成を効果的に減らすことはできる。しかし、特にAlCl等の、特定の化学物質を伴う場合、これを完全に回避することはできない。従って、真空ポンプを頻繁に清掃するために、定期的なメンテナンスの作業を計画する必要がある。
【0005】
本発明の目的の1つは、上記先行技術の少なくとも1つの欠点に対して少なくとも部分的に対処できる、ターボ分子真空ポンプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明の1つの主題は、吸入側から吐出側にポンプ搬送されるガスを駆動するように構成されたターボ分子真空ポンプにおいて、このターボ分子真空ポンプが、1つのステータと、1つのロータと、1つのホルウェックスリーブとを備え、
前記ステータは、少なくとも1つのベーンステージと、螺旋状溝が形成された1つのホルウェックステータとを有しており、
前記ロータは、少なくとも2段のブレードステージを有しており、前記ターボ分子真空ポンプのターボ分子ステージにおいて、前記ブレードステージと前記ベーンステージとが、前記ロータの回転軸に沿って軸方向に交互に連続して設けられており、
前記ホルウェックスリーブは、前記ターボ分子真空ポンプの分子ステージのステータにおいて、前記ステータの前記螺旋状溝を通過して回転するように構成され、前記分子ステージは、前記ポンプで搬送されるガスの循環方向において前記ターボ分子ステージの下流に位置しており、
前記ターボ分子真空ポンプは、さらに、前記ステータに設けられ、少なくとも1つの穴を介して前記ロータと前記ステータとの間に開口する少なくとも1つの細孔を含むパージガス注入装置を備えており、
前記パージガス注入装置は、前記ロータの少なくとも1つの前記ブレードステージの下流において、前記ポンプで搬送されるガスが流れる経路にパージガスを注入し、注入される前記パージガスの流量は決定された閾値を下回り、前記パージガスを注入しない場合と前記パージガスを注入した場合の前記吸入側における圧力差が、0.066Pa未満になるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
前記ポンプ搬送されるガスは、前記ターボ分子真空ポンプの前記吸入側でのポンプ搬送性能に変化がないか殆ど変化することなく、希釈される。
また、凝縮性ガスの分圧を下げて、前記凝縮性ガスの分圧を凝縮値未満に保つことができる。これにより、ターボ分子真空ポンプ内の堆積物の生成のリスクを制限し、2回のメンテナンス操作間の時間を長くすることができる。
また、少なくとも1つのブレードステージの下流にパージガスを注入することにより、排気されるチャンバへのパージガスの逆流を回避することも可能になる。
【0008】
本発明の別の重要な利点は、ターボ分子真空ポンプに堆積しやすいガスの分圧を下げることにより、同じ設定値のステータ加熱温度で、ポンプ搬送されるガスの流量を増やすことができることである。ガスの分圧を下げることにより、さらなる堆積物の生成のリスクなしに、またロータの機械的リスクなしに、ポンプ搬送されるガスの流量を増加させることが可能になる。
【0009】
本発明の前記ターボ分子真空ポンプは、単独でまたは組み合わせて、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。
前記少なくとも1つの細孔が、例えば、前記分子ステージにおいて、例えば、少なくとも1つの穴を介して開口している。
例えば、前記分子ステージの入口で、前記細孔がホルウェックステータの上部に開口するように構成されている。前記細孔の軸は、例えば、前記ターボ分子ステージから、例えば前記ホルウェックステータの高さの4分の1よりも短い距離において、前記ホルウェックステータで開口している。従って、前記分子ステージは、ほぼ完全にパージされる。
前記細孔はまた、前記分子ステージの出口において、例えば、ホルウェックステータの高さの半分よりも長く前記ターボ分子ステージから離れた距離において、前記ホルウェックステータの下部に開口していてもよい。これは、特に、前記ホルウェックステータの下半分に堆積物の生成が見られる用途に適している。
注入されるパージガスの流量は、例えば0.1689Pa.m/s(または100sccm)以上である。
【0010】
本発明の前記ターボ分子真空ポンプは、さらに、ホルウェックスリーブの下に位置するターボ分子真空ポンプの軸受に、追加のパージガスを注入するように構成された追加のパージガス注入装置を備えていてもよい。この追加のパージガス注入装置により、モータを冷却し、かつ、ターボ分子真空ポンプのピボット要素、特に軸受、電気コネクタ、溶接部、およびバックアップ転がり軸受において、ガスを掃引することができる。これらの要素上で追加のパージガスを掃引することで、攻撃的なガスがポンプ搬送される可能性を防ぐことができる。
【0011】
例えば、追加のパージガス注入装置は、ロータの回転を駆動する軸の一端を収容する空洞内に追加のパージガスを注入するように構成された1つまたは複数の入口を備えていてもよい。
この追加のパージガス流量は、例えば、前記パージガス注入装置による前記パージガス流量よりも少なく、例えば、0.08446Pa.m/s(または50sccm)以下である。
【0012】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、前記ターボ分子真空ポンプは、追加のパージガス注入装置の入口と前記パージガス注入装置の細孔との共通のパイプを備えている。これにより、ターボ分子真空ポンプのパージガス源への接続数を制限することができる。
前記ロータは、例えば4~8段のように、4段以上のブレードステージを有している。
少なくとも1つの細孔が、例えば、少なくとも1つの穴を介して、ターボ分子ステージに通じている。
前記細孔は、例えば、ポンプ搬送されるガスの循環方向にある最後の3段のブレードステージの1つに通じている。これにより、ターボ分子ステージの最後の圧縮段において堆積物が発生する可能性が回避される。
【0013】
本発明の他の主題は、前記ターボ分子真空ポンプをパージするための方法であって、前記ロータの少なくとも1つのブレードステージの下流で、ポンプ搬送されるガスの経路内に注入されるパージガスの流量が、決定された閾値未満であり、これにより、パージガスを注入しない場合とパージガスを注入する場合の吸入側における圧力差は0.066Pa(約0.5mTorr)未満になることを特徴とする。
前記パージガスは、例えば、窒素である。
注入されるパージガスの流量に対して決定された前記閾値は、例えば、0.76Pa.m/s(つまり約450sccm)である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施例によるターボ分子真空ポンプの概略図である。
図2図1のターボ分子真空ポンプの軸方向断面図である。
図3図2のターボ分子真空ポンプの、ホルウェックステータの部分を示す図である。
図4】本発明の第2の実施例によるターボ分子真空ポンプの、図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のさらなる利点および特徴は、本発明の1つの特定の、しかし非限定的な実施形態についての以下の説明を読み、および以下の図面を検討することで明らかになると思う。これらの図面では、同一の要素に同じ符号と名称が付してある。
この実施形態は例である。説明は1つまたは複数の実施形態についてのみ言及しているが、それは必ずしも各符号が同じ実施形態に関連すること、または特徴が単一の実施形態にのみに適用されることを意味するわけではない。様々な実施形態の個々の特徴は、他の実施形態を形成するために等しく組み合わせたり、または交換することもできる。
本発明において、「上流」とは、ポンプ搬送されるガスの循環する方向に関して、他の要素の前方に配置された要素を意味する。対照的に、「下流」とは、ガスの循環方向に関して、後方に位置する要素であり、上流に位置する要素は、下流に位置する要素よりも圧力が低い。
【0016】
図1および図2は、本発明のターボ分子真空ポンプ1の、第1の実施形態の例を示している。
このターボ分子真空ポンプ1は、ステータ2を備えており、このステータ内でロータ3が軸の回転により高速で、例えば毎分2万回転以上で、回転するように構成されている。
ターボ分子真空ポンプ1は、ターボ分子ステージ4と、分子ステージ5とを備えている。この分子ステージ5は、ターボ分子真空ポンプ1の吸入側6から流入しポンプ搬送されるガスの循環方向(図2に矢印F1で表示)に沿って、ターボ分子ステージ4の下流側に位置している。吸入側6から流入しポンプ搬送されるガスは、最初にターボ分子ステージ4を通過し、次に分子ステージ5を通過し、さらにターボ分子真空ポンプ1の吐出側8から排出される。この吐出側8は、一次ポンプに接続されている。
【0017】
真空ポンプ1を減圧する必要のある1つのチャンバに接続するために、環状入口フランジ7が、吸入側6を取り囲んで設けられている。
ターボ分子ステージ4において、ロータ3は少なくとも2段のブレードステージ9を備え、ステータ2は少なくとも1段のベーンステージ10を備えている。ブレードステージ9およびベーンステージ10は、ターボ分子ステージ4のロータ3の回転軸I-Iに沿って軸方向に互いに連続して設けられている。
ロータ3は、例えば、4段以上のブレードステージ9、例えば、4~8段(図2に示した例では6段)のブレードステージ9を備えている。
【0018】
ロータ3の各ブレードステージ9は、それぞれ、ターボ分子真空ポンプ1の軸12に固定されたロータ3のハブ11から実質的に半径方向へ伸びる複数の傾斜ブレードを備えている。これら複数のブレードは、ハブ11の周囲に均一に配置されている。
ステータ2の各ベーンステージ10は、それぞれ1つのリングを備え、このリングの内周の周りに均等に分布して配置され、実質的に半径方向に伸びる、複数の傾斜ベーンを備えている。ステータ2のベーンステージ10の1つの段の複数のベーンは、各々、ロータ3のブレードステージ9の連続する2つの段のブレード間に位置している。ロータ3のブレードおよびステータ2のベーンは、ポンプ搬送されるガス分子を分子ステージ5に向けてガイドするために、傾斜している。
【0019】
分子ステージ5において、ロータ3は、滑らかなシリンダーで形成されたホルウェックスリーブ13を有しており、このホルウェックスリーブは、ステータ2のホルウェックステータ15の螺旋状溝14(図3参照)を通過して回転する。ステータ2の螺旋状溝14は、移送されるガスが圧縮され、吐出側8に向かって導かれることを可能にする(図2参照)。
ロータ3は、単一の部品(モノブロック)として製造されてもよく、または複数の部品の集合体であってもよい。ロータは例えばアルミニウム製であり、ターボ分子真空ポンプ1の内部のモータ16によってステータ2内で回転駆動される軸12に固定されている。モータ16は、例えば、ステータ2のベルハウジング17の下に配置され、このベルハウジング自体は、ロータ3のホルウェックスリーブ13の下に配置されている。ロータ3は、磁気的軸受または機械的軸受18によって横方向および軸方向に案内される。真空ポンプ1はまた、バックアップ転動軸受19を備えている。
【0020】
ステータ2は、例えばアルミニウム製であり、複数の部品を組み立てることによって製造されている。
ターボ分子真空ポンプ1はまた、ステータ2を設定点温度、特に120℃未満(90℃等)に加熱するために、ステータ2の温度を制御する手段を備えている。
【0021】
ターボ分子真空ポンプ1は、さらに、パージガス注入装置21を備えている。このパージガス注入装置はステータ2に設けられ、ロータ3とステータ2との間に開口する少なくとも1つの細孔20を有しており、少なくとも1つのブレードステージ9の下流において、吸入側6からのポンプ搬送されるガスの経路内にパージガスを注入する(図2図3参照)。
従って、凝縮性ガスの分圧を下げることより、この凝縮性ガスの分圧を凝縮値未満に保つことができる。これにより、ターボ分子真空ポンプ1における堆積物の発生のリスクを制限し、2回のメンテナンス操作間の時間間隔を長くすることができる。
また、少なくとも1つのブレードステージ9の下流にパージガスを注入することにより、排気されるチャンバへのパージガスの逆流を回避することができる。
【0022】
別の重要な利点は、ターボ分子真空ポンプ1に堆積しやすい前記ガスの分圧を下げることにより、ステータ2が加熱されるのと同じ設定値温度で、ポンプ搬送されるガスの流量を増加させることが可能になることである。ガスの分圧の低下の結果として、堆積物の発生のリスクなしに、またロータ3の機械的リスクなしに、ポンプ搬送されるガスの流量を増加させることが可能である。
【0023】
パージガスは、例えば、空気または窒素である。注入されるパージガスの流量は、例えば、0.1689Pa.m/s(または100sccm)以上である。
パージガス注入装置21は、注入されるパージガスの流量が決定された閾値を下回り、その結果、動作中、パージガスを注入しない場合とパージガスを注入した場合の、ターボ分子真空ポンプ1の吸入側6における圧力の差が、0.066Pa(約0.5mTorr)未満となるように構成されている。従って、ポンプ搬送されるガスの経路内にパージガスを注入することは、ターボ分子真空ポンプ1の吸入側6のポンプ性能に全くまたは殆ど変化をもたらさない。
【0024】
窒素等の中間重量のポンプガスの場合、注入されるパージガスの流量の決定された閾値は、例えば0.76 Pa.ms(つまり約450sccm)である。
アルゴン等のより重いガスをポンプ搬送する場合、注入されるパージガスの流量の決定された閾値は、例えば1.3512 Pa.m/s(つまり約800sccm)である。
ヘリウム等の軽いガスをポンプ搬送する場合、注入されるパージガスの流量の決定された閾値は、例えば0.06756 Pa.m/s(つまり約40sccm)である。
従って、注入されるパージガスの流量についての決定された閾値は、ターボ分子真空ポンプ1の吸入側6のポンプ性能を変更しないことを可能にする。
【0025】
ステータ2には、1つまたは複数の穴、例えば円形の穴を介してロータ3の周りに開口する、複数の細孔20が設けられている。
パージガス注入装置21は、少なくとも1つの細孔20を外部パージガス源に接続するために、さらに、少なくとも細孔20の入口およびステータ2の外側に設けられた、少なくとも1つのコネクタ25を備えていてもよい。また、パージガス注入装置21は、パージガスの流量を調整するためのノズル(または較正されたオリフィス)、または流量調整器を備えていてもよい。
【0026】
図1図3に示される第1の実施形態によれば、細孔20は、分子ステージ5に開口している。
例えば、細孔20が分子ステージ5の入口でホルウェックステータ15の上部に開口するように構成されている(図3参照)。例えば、細孔20の軸が、ホルウェックステータ15の高さの4分の1未満、すなわち、ターボ分子ステージ4から距離dの位置で、細孔はホルウェックステータ15に開口している(図2参照)。
従って、分子ステージ5は、ほぼ完全にパージできる。
【0027】
また、ターボ分子真空ポンプ1は、ホルウェックスリーブ13の下に位置するターボ分子真空ポンプ1の軸受18に、追加のパージガスを注入するように構成された追加のパージガス注入装置22を備えていてもよい。
1つの実施形態の例によれば、この追加のパージガス注入装置22は、ロータ3の回転を駆動する軸12の一端を収容する空洞24に追加のパージガスを注入するように構成された、1つまたは複数の入口23を備えている。パージガスは、軸12に沿って流れ、必要に応じてバックアップ転動軸受19、軸受18、モータ16を通過し、ステータ2のベルハウジング17から出て、ベルハウジング17とホルウェックスリーブ13との間を経て、ホルウェックスリーブ13の下の吐出側8まで循環する(図2の矢印F2参照)。
【0028】
追加のパージガス注入装置22は、モータを冷却し、ターボ分子真空ポンプ1のピボット要素、特に軸受18、電気コネクタ、溶接部、およびバックアップ転動軸受19を、ガスで掃引することを可能にする。追加のパージガスでこれらの要素を掃引することにより、攻撃的なガスがポンプ搬送される可能性を無くし、これらの要素を保護することができる。追加のパージガスの流量は少ない。
追加のパージガスの流量は、パージガス注入装置21のパージガスの流量以下であり、例えば、0.08448 Pa.m/s(または50sccm)である。この追加のパージガス注入装置22は、さらに、パージガスの流量を調整するためのノズルまたは流量調整器を備えていてもよい。
【0029】
1つの実施形態によれば、ターボ分子真空ポンプ1は、追加のパージガス注入装置22の入口23、およびパージガス注入装置21の細孔20のための、共通のパイプを備えている。これにより、ターボ分子真空ポンプ1のパージガスへ源の接続の数を制限できる。入口23および/または細孔20に配置された、1つまたは複数のノズルおよび/または1つまたは複数の弁は、パージ流量を追加のパージ流量から区別することを可能にする。
動作中、パージガスは、ポンプ搬送されるガスの経路内および軸受18において、連続的に注入することができる。
それらは独立して注入することもできる。具体的には、パージガス注入装置21は、パージガスの注入を停止/許容するための弁を備えていてもよい。例えば、ポンプ搬送されるガスがターボ分子真空ポンプ1に対してリスクを伴わない場合、ポンプ搬送されるガスの経路内へのパージガスの注入を遮断すると同時に、追加のパージガス注入装置22による軸受18へのパージガスの注入を可能にして、軸受を保護することもできる。
【0030】
図4は、本発明の第2の実施形態の例を示している。
この例では、細孔20は、少なくとも1つのブレードステージ9の下流のターボ分子ステージ4で開口している。
ロータ3が4段を超えるブレードステージ9を有している場合、細孔20は、例えば、ポンプ搬送されるガスの循環方向F1における最後の3段のブレードステージ9のうちの1つに開口している。例えば、図4に示したように、細孔20は、ターボ分子ステージ4のロータ3の5段目のブレードステージ9に面するステータ2、すなわち、6段のブレードステージ9の最後から2段目のブレードステージ9の領域に開口している。
この構成により、ターボ分子ステージ4の最後の圧縮段における堆積物の発生の可能性も回避される。
【符号の説明】
【0031】
1 ターボ分子真空ポンプ
2 ステータ
3 ロータ
4 ターボ分子ステージ
5 分子ステージ
6 ターボ分子真空ポンプの吸入側
7 環状入口フランジ
8 ターボ分子真空ポンプの吐出側
9 ブレードステージ
10 ベーンステージ
11 ロータのハブ
12 ターボ分子真空ポンプの軸
13 ホルウェックスリーブ
14 ステータの螺旋状溝
15 ホルウェックステータ
16 モータ
17 ベルハウジング
18 軸受
19 バックアップ転動軸受
20 細孔
21 パージガス注入装置
22 追加のパージガス注入装置
23 入口
24 空洞
25 コネクタ
d 距離
F1 ポンプ搬送されるガスの循環方向
F2 パージガスの循環方向
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入側(6)から吐出側(8)にポンプ搬送されるガスを駆動するように構成されたターボ分子真空ポンプ(1)であって、
1つのステータ(2)と、1つのロータ(3)と、1つのホルウェックスリーブ(13)とを備え、
前記ステータ(2)は、少なくとも1段のベーンステージ(10)と螺旋状溝(14)が設けられた1つのホルウェックステータ(15)を有し、
前記ロータ(3)は、少なくとも2段のブレードステージ(9)を有しており、前記ターボ分子真空ポンプ(1)のターボ分子ステージ(4)において前記ブレードステージ(9)と前記ベーンステージ(10)は、前記ロータ(3)の回転軸(I-I)に沿って軸方向に連続して交互に設けられており、
前記ホルウェックスリーブ(13)は、前記ターボ分子真空ポンプ(1)の分子ステージ(5)で、前記ステータ(2)の前記螺旋状溝(14)を通過して回転するように構成され、前記分子ステージ(5)は、前記ポンプで搬送されるガスの循環方向(F1)において前記ターボ分子ステージ(4)の下流に位置しており、
前記ターボ分子真空ポンプ(1)は、さらに
前記ステータ(2)に設けられたパージガス注入装置(21)を備え、前記パージガス注入装置は、前記ロータ(3)と前記ステータ(2)との間に開口する少なくとも1つの細孔(20)を有し、前記ロータ(3)の少なくとも1つの前記ブレードステージ(9)の下流において、前記ポンプで搬送されるガスが流れる経路にパージガスを注入するものであり、注入される前記パージガスの流量は決定された閾値を下回り、前記パージガスを注入しない場合と前記パージガスを注入した場合の前記吸入側(6)における圧力差が、0.066Pa未満になるように構成されており、
前記ホルウェックスリーブ(13)の下に位置する前記ターボ分子真空ポンプ(1)の軸受(18)に、追加のパージガスを注入するように構成された追加のパージガス注入装置(22)を備えていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1において、
前記少なくとも1つの細孔(20)が、前記分子ステージ(5)で開口していることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかにおいて、
前記細孔(20)の軸は、前記ターボ分子ステージ(4)から前記ホルウェックステータ(15)の高さの4分の1よりも短い距離(d)において、前記ホルウェックステータ(15)で開口していることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
注入される前記パージガスの流量は、0.1689 Pa.m/s以上であることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記追加のパージガス注入装置(22)は、前記ロータ(3)の回転を駆動する軸(12)の一端を収容する空洞(24)内に前記追加のパージガスを注入するように構成された1つまたは複数の入口(23)を備えていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項4または5のいずれか1項において、
前記追加のパージガスの流量は、前記パージガス注入装置(21)の前記パージガスの流量以下であることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項5または6のいずれか1項において、
前記入口(23)と前記細孔(20)との共通パイプを備えていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、
前記ロータ(3)は、4段以上の前記ブレードステージ(9)で構成されていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
前記少なくとも1つの細孔(20)が前記ターボ分子ステージ(4)に開口していることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項10】
請求項8または9のいずれか1項において、
前記細孔(20)は、前記ポンプで搬送される前記ガスの循環方向(F1)にある最後の3段の前記ブレードステージ(9)の1つに開口していることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のターボ分子真空ポンプ(1)をパージするためのパージ方法であって、
前記ロータ(3)の前記少なくとも1つのブレードステージ(9)の下流の前記ポンプ搬送されるガスの経路内に、決定された閾値未満の流量の、前記パージガスを注入し、
前記パージガスを注入しない場合と前記パージガスを注入する場合の前記吸入側(6)における圧力差が0.066Pa未満になることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)のパージ方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記パージガスは窒素であることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)のパージ方法。
【請求項13】
請求項11または12において、
注入される前記パージガスの流量の前記決定された閾値は0.76Pa.m/sであることを特徴とするターボ分子真空ポンプ(1)のパージ方法。
【国際調査報告】