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▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

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  • 特表-分子の細胞内標的化 図1A
  • 特表-分子の細胞内標的化 図1B
  • 特表-分子の細胞内標的化 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】分子の細胞内標的化
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20220413BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220413BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20220413BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20220413BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K31/712
A61P27/02
C12N15/10 Z
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552630
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020055480
(87)【国際公開番号】W WO2020178258
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/813,833
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤゴパール,アスワス
(72)【発明者】
【氏名】キルクリスト,キャメロン・ファオ
(72)【発明者】
【氏名】ヌスバウマー,マルティン・ゲー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB24
4C076CC10
4C076CC41
4C076EE59
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZA33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA54
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA50
(57)【要約】
本発明は、式(I):

を有する、小分子標的化リガンドとカーゴ分子とを含むコンジュゲートに関し、式中、Aは、(II):

からなる群から選択され、Bは、-C(O)-O-または-C(O)-N-であり、nは、0または1~6から選択され、rは、0または1~6から選択され、mは、1~6から選択され、Rは、カーゴ分子である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化11】

[式中、Aは、
【化12】

からなる群から選択され、
Bは、-C(O)-O-または-C(O)-N-であり、
nは、0または1~6から選択され、
rは、0または1~6から選択され、
mは、1~6から選択され、
Rは、カーゴ分子である]
を有する、小分子標的化リガンドとカーゴ分子とを含むコンジュゲート。
【請求項2】
前記カーゴ分子が、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチドの群から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記カーゴ分子が、抗体またはオリゴヌクレオチドである、請求項1または2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記カーゴ分子が、LNAオリゴヌクレオチドである、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記小分子標的化リガンドが、前記オリゴヌクレオチドの3′末端または5′末端において、好ましくは前記オリゴヌクレオチドの5′末端において前記オリゴヌクレオチドに連結されている、請求項3または4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
Bが-C(O)-N-である、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
r=0およびn=6である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
mが1~4から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
Aが、
【化13】

である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
式II:
【化14】

を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のコンジュゲートと、薬学的に許容され得る担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項12】
眼の症状のための局所組成物である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
眼の症状を有する個体を処置する方法であって、前記個体の前記眼に、有効量の、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは請求項11もしくは12に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内に送達されるべき小分子リガンドおよびカーゴ分子を含むコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
生体高分子は、核酸、アミノ酸、核酸の合成誘導体、またはアミノ酸の合成誘導体の天然または合成ヘテロポリマーである。バイオポリマーの例としては、タンパク質、抗体、ゲノムDNA(gDNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)およびロックド核酸(LNA)が挙げられる。
【0003】
LNAアンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNAと、例えば、2′-O,4′-C-メチレン架橋で修飾されたRNAとの混合物からなる合成オリゴヌクレオチドである。LNAは、mRNAスプライシングを調節するために、エクソンスキッピングを行うために、RNAse-Hに媒介mRNA分解を行うために、および相補的塩基対合によってタンパク質へのmRNAの翻訳を減少させるために使用することができる。
【0004】
生体高分子は、その生物活性または酵素活性のための鋳型もしくは基質としての使用のために医薬品として魅力的であるが、細胞内空間へのアクセスが制限されているために薬物動態が不十分であることによって、このクラスの治療の開発は制限されている。
【0005】
ウイルス、ポリマー、脂質、ウイルスおよび小分子標的化リガンドなどの細胞内治療としての生体高分子の生物活性を改善するために、多数のアプローチが使用されてきた。
【0006】
小分子標的化リガンドは、それらの容易な化学合成およびモジュール構造のために、特に魅力的なアプローチである。調査されてきたいくつかの標的化リガンドには、フォラート、N-アセチルガラクトサミンなどが含まれ、これらは生体高分子-リガンド複合体を細胞受容体に結合させ、場合によっては内部移行を引き起こす。このアプローチは、小分子リガンドと受容体の間の親和性が低いため、有用性が制限され得る。リガンド受容体親和性の改善は、結合活性効果を利用することによって親和性を改善するための小分子リガンドへの変更または多価リガンドの改変操作から生じ得る。
【0007】
したがって、治療活性分子の細胞内への輸送を可能にする送達システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は、式I:
【化1】

[式中、Aは、
【化2】

からなる群から選択され、
Bは、-C(O)-O-または-C(O)-N-であり、
nは、0または1~6から選択され、
rは、0または1~6から選択され、
mは、1~6から選択され、
Rは、カーゴ分子である]
を有する、小分子標的化リガンドとカーゴ分子とを含むコンジュゲートに関する。
【0009】
本発明の特定の実施形態では、カーゴ分子は、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチドの群から選択される。
【0010】
本発明の特定の実施形態では、カーゴ分子は抗体またはオリゴヌクレオチドである。
【0011】
本発明の特定の実施形態では、カーゴ分子はLNAオリゴヌクレオチドである。
【0012】
本発明の特定の実施形態では、小分子標的化リガンドは、オリゴヌクレオチドの3′末端または5′末端において、好ましくはその5′末端においてオリゴヌクレオチドに連結される。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、Bは-C(O)-N-である。
【0014】
本発明の特定の実施形態では、r=0およびn=6である。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、mは1~4から選択される。
【0016】
本発明の特定の実施形態では、Aは、
【化3】

である。
【0017】
本発明の特定の実施形態では、Aは、
【化4】

からなる群から選択される。
【0018】
本発明の特定の実施形態では、Aは、
【化5】

からなる群から選択される。
【0019】
本発明の特定の実施形態では、Aは、
【化6】

からなる群から選択される。
【0020】
本発明の特定の実施形態では、Aは、
【化7】

である。
【0021】
本発明の特定の実施形態では、コンジュゲートは、式II:
【化8】

に与えられた構造を有する。
【0022】
第2の態様では、本発明は、本発明のコンジュゲートと、薬学的に許容され得る担体と、を含む、医薬組成物に関する。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、医薬製剤は眼の症状のための局所組成物である。
【0024】
第3の態様では、本発明は、眼の症状を有する個体を処置する方法であって、前記個体の眼に、有効量の、本発明のコンジュゲートまたは本発明の医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】1,2-ジチオラン-4-カルボン酸によるLNA修飾は、蛍光顕微鏡法によって定量化される細胞取り込みを増強する。フルオレセインイソチオシアナート(FITC)で標識されたLNAは、修飾されずに使用されるか、またはAspAにコンジュゲートされて使用された。「細胞取り込み法」に従って、表記されている用量で細胞を処理し、洗浄した。図1A)画像の蛍光を定量し、プロットした。x軸は、ナノモル濃度でLNAの用量を示し、y軸は、フレーム当たりの核の数で割った全細胞蛍光を示す。AspA修飾されたLNAが左の曲線として青色でプロットされており、非修飾LNAが右曲線として赤色でプロットされている。非修飾LNAに対するAspA修飾されたLNAの左方向へのシフトは、AspA標的化がこれらの条件下で細胞の取り込みおよび保持を増強することを示す。図1B)本実験からの代表的な画像;AspA修飾されたLNAは200nMで投与し、一方、非修飾LNAは170nMで投与した。青色はDAPIによる核染色を表し、緑色は内部移行したLNAを表す。
図1B】1,2-ジチオラン-4-カルボン酸によるLNA修飾は、蛍光顕微鏡法によって定量化される細胞取り込みを増強する。フルオレセインイソチオシアナート(FITC)で標識されたLNAは、修飾されずに使用されるか、またはAspAにコンジュゲートされて使用された。「細胞取り込み法」に従って、表記されている用量で細胞を処理し、洗浄した。図1A)画像の蛍光を定量し、プロットした。x軸は、ナノモル濃度でLNAの用量を示し、y軸は、フレーム当たりの核の数で割った全細胞蛍光を示す。AspA修飾されたLNAが左の曲線として青色でプロットされており、非修飾LNAが右曲線として赤色でプロットされている。非修飾LNAに対するAspA修飾されたLNAの左方向へのシフトは、AspA標的化がこれらの条件下で細胞の取り込みおよび保持を増強することを示す。図1B)本実験からの代表的な画像;AspA修飾されたLNAは200nMで投与し、一方、非修飾LNAは170nMで投与した。青色はDAPIによる核染色を表し、緑色は内部移行したLNAを表す。
図2】AspAによるMALAT1標的化LNAの修飾は、qPCRによって測定される生物活性を増強する。
【0026】
定義
用語「抗体」は、本明細書では最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0027】
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原を結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab′、Fab′-SH、F(ab′)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFvおよびscFab);単一ドメイン抗体(dAbs);および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の総説としては、Holliger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照。
【0028】
用語「キメラ」抗体とは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残りが異なる源または種に由来する抗体を指す。
【0029】
抗体の「クラス」とは、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体の5種類の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けられ得る。特定の態様では、抗体はIgG1アイソタイプのものである。特定の態様では、抗体は、Fc領域エフェクター機能を低下させるためP329G、L234AおよびL235A変異を有するIgG1アイソタイプのものである。他の態様では、抗体は、IgG2アイソタイプのものである。特定の態様では、抗体は、IgG4抗体の安定性を改善するためにヒンジ領域中にS228P変異を有するIgG4アイソタイプのものである。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの種類の1つに割り当てられてもよい。
【0030】
「フレームワーク」または「FR」は、相補性決定領域(CDR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1、FR2、FR3およびFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、CDRおよびFR配列は、一般に、VH(またはVL)において、以下の順序:FR1-CDR-H1(CDR-L1)-FR2-CDR-H2(CDR-L2)-FR3-CDR-H3(CDR-L3)-FR4で出現する。
【0031】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」および「全抗体」とは、本明細書では相互に交換可能に使用され、天然抗体構造と実質的に類似の構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0032】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、同義で使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、かかる細胞の後代を含む。宿主細胞は、「形質転換体」および「形質転換された細胞」を含み、これらは、継代数にかかわらず、初代の形質転換された細胞と、初代の形質転換された細胞から誘導された後代を含む。後代は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくてもよいが、突然変異を含有していてもよい。元の形質転換された細胞についてスクリーニングされたまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有する突然変異型の後代が本発明に含まれる。
【0033】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体のまたはヒト抗体レパートリーもしくはその他のヒト抗体コード配列を使用する非ヒト源由来の抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0034】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基に相当するフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242、Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるようなサブグループである。一態様において、VLの場合、サブグループは、Kabatら、上記におけるように、サブグループカッパIである。一態様において、VHの場合、サブグループは、Kabatら、上記におけるように、サブグループカッパIIIである。[[本発明のVH/VLの実際のサブグループを表すために必要に応じて変更する]]
【0035】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトCDRからのアミノ酸残基とヒトFRからのアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。特定の態様において、ヒト化抗体は、CDRの全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のCDRに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、必要に応じて、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。ある抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「超可変領域」または「HVR」とは、配列内で超可変性であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)のそれぞれを意味する。
【0037】
一般に、抗体は6つのCDRを含み、3つがVH中にあり(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、3つがVL中にある(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)。本明細書における例示的なCDRとしては、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)および95~102(H3)に存在するCDR(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)および93~101(H3)において生じる抗原接触(MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732-745(1996))が挙げられる。
【0038】
特に指示がない限り、CDRは、上記のKabatらに従い決定される。当業者は、CDRの表記が、上記のChotia、上記のMcCallum、または任意の他の科学的に許容される命名システムに従って決定することもできることを理解するであろう。[[特許請求された抗体が(a)、(b)または(c)によって定義されるCDR(Kabat(b)が好ましい定義である)を有することを抗体工学で確認する。CDRが標準的な定義に適合しなければ、特許請求されたCDR残基を含むようにCDRの定義を修正する。]]
【0039】
「免疫コンジュゲート」は、細胞傷害性薬剤を含むが、これに限定されない1つまたは複数の異種分子にコンジュゲートされた抗体である。
【0040】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜化された動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の態様では、個体または対象は、ヒトである。
【0041】
「単離された」抗体は、その自然環境の構成成分から分離された抗体である。いくつかの態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)法によって決定される場合、純度が95%より大きく、または99%より大きくなるまで精製される。抗体純度を評価する方法の総説については、例えば、Flatmanら、J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照されたい。
【0042】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質を含む。それぞれのヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基またはピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)またはウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボースまたはリボース)、およびリン酸基で構成される。多くの場合、核酸分子は、塩基の配列によって記述され、前記塩基は、核酸分子の一次構造(直鎖構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5′から3′へと表される。本明細書において、核酸分子という用語は、例えば、相補性DNA(cDNA)およびゲノムDNAを含むデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、特に、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNAまたはRNAの合成形態、ならびにこれらの分子の2つまたはそれより多くを含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、直鎖または環状であり得る。これに加え、核酸分子という用語は、センス鎖およびアンチセンス鎖、ならびに一本鎖形態および二本鎖形態の両方を含む。さらに、本明細書で記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチドまたは天然に存在しないヌクレオチドを含有することができる。天然に存在しないヌクレオチドの例として、誘導体化された糖またはホスフェート骨格結合または化学修飾された残基を有する修飾されたヌクレオチド塩基が挙げられる。核酸分子は、インビトロで、および/またはインビボで、例えば、宿主もしくは患者中で、本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして適したDNA分子およびRNA分子も包含する。このようなDNA(例えば、cDNA)ベクターまたはRNA(例えば、mRNA)ベクターは、改変されていなくてもよく、または改変されていてもよい。例えば、インビボで抗体を産生するために対象中にmRNAを注入することができるように、mRNAは、RNAベクターの安定性および/またはコードされた分子の発現を高めるように化学修飾されてもよい(例えば、Stadlerら、Nature Medicine 2017、2017年6月12日にオンラインで公開、doi:10.1038/nm.4356または欧州特許第2 101 823 B1号を参照)。
【0043】
「単離された」核酸とは、その自然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、元々その核酸分子を含有する細胞中に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外に存在するか、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0044】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指す。すなわち、例えば、天然に存在する変異またはモノクローナル抗体調製物の製造中に生じる変異を含む、一般的に、少量存在する可能なバリアント抗体を除いて、集合を構成する個々の抗体は同一であるおよび/または同じエピトープを結合する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾詞「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、本発明に従うモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない様々な技術によって作製することができ、このような方法および本明細書に記載されているモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は本明細書に記載されている。
【0045】
「裸の抗体」は、異種性部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。裸の抗体は、医薬組成物中に存在し得る。
【0046】
「天然抗体」とは、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重ドメインまたは重鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VH)を有し、それに続いて3つの定常重ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は可変を有する。
【0047】
「医薬組成物」または「医薬製剤」という用語は、調製物の中に含有される有効成分の生物活性が有効になるような形態であり、医薬組成物が投与されるであろう対象にとって許容され得ないほど有毒である追加の成分を何ら含有しない、調製物を指す。
【0048】
「薬学的に許容され得る担体」は、有効成分以外の医薬組成物または医薬製剤中の成分であって、対象にとって非毒性である成分を指す。薬学的に許容され得る担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、または防腐剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」(およびその文法的な変化形、例えば、「治療する(treat)」または「処置すること(treating)」)は、処置されている個体において疾患の本来の経過を変える試みでの臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の経過の間に行うことができる。処置の所望の効果としては、疾患の発症または再発を予防すること、症候の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行の速度を減少させること、病状の寛解または緩和、および回復または改良された予後が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、疾患の発症を遅延させるために、または疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0050】
小分子リガンドのカーゴ分子へのコンジュゲーションは、様々な化学リンカーを使用して実施され得る。例えば、カーゴ分子が、ポリペプチド、特に抗体である場合には、小分子リガンドおよびポリペプチド、特に抗体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トルエン2,6-ジイソシアナートなど)、および二活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの種々の二官能性タンパク質カップリング剤を使用してコンジュゲートされ得る。リンカーは、脳への送達時にエフェクター実体の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chariら、Cancer Res.52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0051】
共有結合的コンジュゲーションは、直接的であり得、またはリンカーを介し得る。ある特定の実施形態では、直接的コンジュゲーションは、小分子リガンドの2つの部分のうちの1つの上にある反応性基と、カーゴ分子上の対応する基またはアクセプターとの間の共有結合の形成によるものである。ある特定の実施形態では、直接的コンジュゲーションは、コンジュゲートされるべき2つの分子のうちの一方を、適切な条件下でコンジュゲートされるべき他方の分子への共有結合を形成する反応性基(非限定的な例として、スルフヒドリル基またはカルボキシル基)を含むように改変(すなわち、遺伝子改変)することによるものである。核酸のタンパク質への共有結合的コンジュゲーションの方法も当技術分野で公知である(すなわち、光架橋、例えば、Zatsepinら、Russ.Chem.Rev.74:77-95(2005)参照)。コンジュゲーションはまた、様々なリンカーを使用して実施され得る。例えば、一価結合実体およびエフェクター実体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トルエン2,6-ジイソシアナートなど)および二活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの多様な二官能性タンパク質カップリング剤を使用してコンジュゲートされ得る。ペプチド結合によって結合された1~20個のアミノ酸で構成されるペプチドリンカーも使用され得る。特定のこのような実施形態では、アミノ酸は、20個の天然に存在するアミノ酸から選択される。ある特定の他のこのような実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミンおよびリジンから選択される。リンカーは、脳への送達時にエフェクター実体の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chariら、Cancer Res.52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0052】
医薬組成物
さらなる態様において、例えば、以下の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供されるコンジュゲートのいずれかを含む、医薬組成物が提供される。一態様では、医薬組成物は、本明細書で提供されるコンジュゲートのいずれかと、薬学的に許容され得る担体とを含む。別の態様では、医薬組成物は、本明細書で提供されるコンジュゲートのいずれかと、少なくとも1つのさらなる治療剤、例えば、以下に記載するものとを含む。
【0053】
本明細書に記載されているコンジュゲートの医薬組成物は、所望の純度を有するかかるコンジュゲートを1つまたは複数の必要に応じて存在する薬学的に許容され得る担体(Remington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と、凍結乾燥された組成物または水溶液の形態で混合することによって調製される。薬学的に許容され得る担体は、一般的に、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、ヒスチジン、ホスファート、シトラート、アセタートおよび他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容され得る担体には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Halozyme、Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの間質性(interstitial)薬物分散剤がさらに含まれる。 rHuPH20を含む特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載される。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数のさらなるグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0054】
本明細書における医薬組成物は、処置されている特定の適応症に必要な2つ以上の有効成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する有効成分も含み得る。このような有効成分は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わされて存在する。
【0055】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中のまたはマクロエマルジョン中のヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセル中に封入され得る。かかる技術は、Remington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0056】
徐放性医薬組成物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例としては、コンジュゲートを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成型物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。
【0057】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、当業者に一般的に理解されているように、2つまたはそれを超える共有結合したヌクレオシドを含む分子として定義される。このような共有結合したヌクレオシドは、核酸分子またはオリゴマーとも称され得る。オリゴヌクレオチドは、通常、研究室内で、固相化学合成と、その後の精製によって作製される。オリゴヌクレオチドの配列に言及する場合、共有結合したヌクレオチドまたはヌクレオシドの、核酸塩基部分の配列もしくは順序、またはその修飾に対して言及される。本発明のオリゴヌクレオチドは、人工であり、化学的に合成され、典型的には精製または単離される。本発明のオリゴヌクレオチドは、1つまたはそれを超える修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含んでよい。
【0058】
本明細書で使用される「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、標的核酸、特に標的核酸上の連続配列(サブ配列)にハイブリダイズすることによって標的遺伝子の発現を調節することができるオリゴヌクレオチドとして定義される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは本質的に二本鎖ではなく、したがってsiRNAではない。好ましくは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは一本鎖である。
【0059】
LNAアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのLNAヌクレオシドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、LNAアンチセンスオリゴヌクレオチドは、LNAギャップマーオリゴヌクレオチドである。
【0060】
用語「連続ヌクレオチド配列」は、標的核酸に相補的なオリゴヌクレオチドの領域を指す。この用語は、本明細書で用語「連続核酸塩基配列」および用語「オリゴヌクレオチドモチーフ配列」と互換的に使用される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチドが、連続ヌクレオチド配列を構成する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、連続ヌクレオチド配列を含み、さらなるヌクレオチド、例えば、官能基を連続ヌクレオチド配列に結合するのに使用され得るヌクレオチドリンカー領域を必要に応じて含んでいてもよい。ヌクレオチドリンカー領域は、標的核酸に相補的であってもよく、または相補的でなくてもよい。
【0061】
ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの構成要素であり、本発明においては、天然に存在するヌクレオチドおよび天然に存在しないヌクレオチドの両方を含む。天然では、DNAヌクレオチドおよびRNAヌクレオチドなどのヌクレオチドは、リボース糖部分、核酸塩基部分、および1つまたは複数のリン酸基(ヌクレオシドには存在しない)を含む。ヌクレオシドおよびヌクレオチドはまた、「単位」または「モノマー」と互換的に称され得る。
【0062】
本明細書で使用される用語「修飾ヌクレオシド」または「ヌクレオシド修飾」は、等価のDNAヌクレオシドまたはRNAヌクレオシドと比較して、糖部分または(核酸)塩基部分の1つまたは複数の修飾の導入によって修飾されたヌクレオシドを指す。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは修飾された糖部分を含む。修飾ヌクレオシドという用語はまた、本明細書において、用語「ヌクレオシド類似体」または修飾された「単位」または修飾された「モノマー」と互換的に使用されてもよい。
【0063】
用語「修飾ヌクレオシド間結合」は、当業者に一般的に理解されるように、2つのヌクレオシドを互いに共有結合する、ホスホジエステル(PO)結合以外の結合として定義される。修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオチドは、「修飾ヌクレオチド」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合と比較して、オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を増大させる。天然に存在するオリゴヌクレオチドの場合、ヌクレオシド間結合は、隣接するヌクレオシド間でホスホジエステル結合を形成するリン酸基を含む。修飾ヌクレオシド間結合は、インビボ使用のためのオリゴヌクレオチドの安定化に特に有用であり、本発明のオリゴヌクレオチド中のDNAまたはRNAヌクレオシドの領域、例えば、ギャップマーオリゴヌクレオチドのギャップ領域内および修飾ヌクレオシドの領域中のヌクレアーゼ切断から保護する役割を果たし得る。
【0064】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、天然のホスホジエステルから例えば、ヌクレアーゼ攻撃に対して耐性がより高い結合へと修飾された1つまたは複数のヌクレオシド間結合を含む。ヌクレアーゼ耐性は、オリゴヌクレオチドを血清中でインキュベートすることにより、またはヌクレアーゼ耐性アッセイ(例えば、ヘビ毒ホスホジエステラーゼ(SVPD))を用いることにより決定することができ、これらは両方とも当技術分野で周知である。オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を増強することができるヌクレオシド間結合は、ヌクレアーゼ耐性ヌクレオシド間結合と呼ばれる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列中のヌクレオシド間結合の少なくとも50%が修飾されており、例えば、オリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列中のヌクレオシド間結合の、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80、または例えば、少なくとも90%が修飾されている。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列のヌクレオシド間結合の全部が修飾されている。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドを非ヌクレオチド官能基、例えば、コンジュゲートに結合するヌクレオシドは、ホスホジエステルであり得ることが認識されるであろう。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド、またはその連続ヌクレオチド配列のヌクレオシド間結合は全て、ヌクレアーゼ耐性ヌクレオシド間結合である。
【0065】
修飾ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオアート、ジホスホロチオアートおよびボラノホスファートを含む群より選択され得る。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシド間結合、例えば、ホスホロチオアート、ジホスホロチオアートまたはボラノホスファートは、本発明のオリゴヌクレオチドのRNaseH動員(recruitment)と適合する。
【0066】
いくつかの実施形態では、ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオアートヌクレオシド間結合など硫黄(S)を含む。
【0067】
ホスホロチオアートヌクレオシド間結合は、ヌクレアーゼ耐性、有益な薬物動態および製造の容易さのため特に有用である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列中のヌクレオシド間結合の少なくとも50%がホスホロチオアートであり、例えば、オリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列中のヌクレオシド間結合の少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80、または例えば少なくとも90%が、ホスホロチオアートである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列のヌクレオシド間結合の全てが、ホスホロチオアートである。
【0068】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の中性ヌクレオシド間結合、特にホスホトリエステル、メチルホスホナート、MMI、アミド-3、ホルムアセタールまたはチオホルムアセタールから選択されるヌクレオシド間結合を含む。
【0069】
さらなるヌクレオシド間結合は国際公開第2009/124238号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。一実施形態では、ヌクレオシド間結合は、国際公開第2007/031091号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるリンカーから選択される。特に、ヌクレオシド間結合は、-O-P(O)-O-、-O-P(O,S)-O-、-O-P(S)-O-、-S-P(O)-O-、-S-P(O,S)-O-、-S-P(S)-O-、-O-P(O)-S-、-O-P(O,S)-S-、-S-P(O)-S-、-O-PO(RH)-O-、O-PO(OCH)-O-、-O-PO(NRH)-O-、-O-PO(OCHCHS-R)-O-、-O-PO(BH)-O-、-O-PO(NHRH)-O-、-O-P(O)-NRH-、-NRH-P(O)-O-、-NRH-CO-O-、-NRH-CO-NRH-から選択されてもよく、および/またはヌクレオシド間リンカーは、-O-CO-O-、-O-CO-NRH-、-NRH-CO-CH-、-O-CH-CO-NRH-、-O-CH-CH-NRH-、-CO-NRH-CH-、-CH-NRHCO-、-O-CH-CH-S-、-S-CH-CH-O-、-S-CH-CH-S-、-CH-SO-CH-、-CH-CO-NRH-、-O-CH-CH-NRH-CO-、-CH-NCH-O-CH-からなる群から選択されてもよく、式中、RHは水素およびC1~4-アルキルから選択される。
【0070】
ホスホロチオアート(phosphotioate)結合などのヌクレアーゼ耐性結合は、標的核酸と二重鎖を形成するときにヌクレアーゼを動員することができるオリゴヌクレオチド領域、例えばギャップマーの領域Gまたはヘッドマー(headmer)およびテールマー(tailmer)の非修飾ヌクレオシド領域において特に有用である。しかしながら、ホスホロチオアート結合は、非ヌクレアーゼ動員領域および/または親和性増強領域、例えばギャップマーの領域FおよびF′またはヘッドマーおよびテールマーの修飾ヌクレオシド領域においても有用であり得る。
【0071】
しかしながら、設計領域のそれぞれは、特にLNAなどの修飾ヌクレオシドが結合をヌクレアーゼ分解から保護する領域において、ホスホジエステル結合などのホスホロチオアート以外のヌクレオシド間結合を含み得る。特に修飾ヌクレオシド単位間にまたは修飾ヌクレオシド単位に隣接して(典型的には非ヌクレアーゼ動員領域内に)ホスホジエステル結合、例えば1個または2個の結合を含めることにより、オリゴヌクレオチドのバイオアベイラビリティおよび/または生体内分布を改変することができる-参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/113832号を参照されたい。
【0072】
一実施形態では、オリゴヌクレオチド中の全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオアート結合および/またはボラノホスファート結合である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド中の全ヌクレオシド間結合がホスホロチオアート結合である。
【0073】
「核酸塩基」という用語は、ヌクレオシドおよびヌクレオチド中に存在するプリン(例えば、アデニンおよびグアニン)およびピリミジン(例えば、ウラシル、チミンおよびシトシン)部分を含み、これらは核酸ハイブリダイゼーションにおいて水素結合を形成する。本発明の文脈において、核酸塩基という用語は、天然に存在する核酸塩基とは異なり得るが、核酸ハイブリダイゼーションの際に機能的である修飾された核酸塩基も包含する。この文脈において、「核酸塩基」は、天然に存在する核酸塩基、例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、ウラシル、キサンチンおよびヒポキサンチンと、天然に存在しない変異体との両方を指す。このような変異体は、例えば、Hiraoら(2012)Accounts of Chemical Research vol 45 page 2055およびBergstrom(2009)Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry Suppl.37 1.4.1に記載されている。
【0074】
いくつかの実施形態では、核酸塩基部分は、プリンまたはピリミジンを修飾されたプリンまたはピリミジン、例えば、置換されたプリンまたは置換されたピリミジン、例えば、イソシトシン、シュードイソシトシン、5-メチルシトシン、5-チアゾロ-シトシン、5-プロピニル-シトシン、5-プロピニル-ウラシル、5-ブロモウラシル5-チアゾロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、2′チオ-チミン、イノシン、ジアミノプリン、6-アミノプリン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリンおよび2-クロロ-6-アミノプリンから選択される核酸塩基(nucleobased)に変えることにより修飾される。
【0075】
核酸塩基部分は、各々の対応する核酸塩基の文字コード、例えば、A、T、G、CまたはUにより示すことができ、各文字は、等価の機能の修飾された核酸塩基を必要に応じて含み得る。例えば、例示的オリゴヌクレオチドにおいて、核酸塩基部分は、A、T、G、Cおよび5-メチルシトシンから選択される。必要に応じて、LNAギャップマーについて、5-メチルシトシンLNAヌクレオシドが使用され得る。
【0076】
修飾オリゴヌクレオチドという用語は、1つまたは複数の糖修飾ヌクレオシドおよび/または修飾ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドを表す。キメラ」オリゴヌクレオチドという用語は、修飾ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを表すために文献で使用されている用語である。
【0077】
用語「相補性」は、ヌクレオシド/ヌクレオチドのWatson-Crick塩基対形成の能力を表す。Watson-Crick塩基対は、グアニン(G)-シトシン(C)およびアデニン(A)-チミン(T)/ウラシル(U)である。オリゴヌクレオチドは修飾された核酸塩基を有するヌクレオシドを含んでいてもよく、例えば、5-メチルシトシンは、シトシンの代わりに使用されることが多く、したがって、相補性という用語は、非修飾核酸塩基と修飾された核酸塩基との間のワトソン・クリック塩基対形成を包含することが理解されよう(例えば、Hiraoら、(2012)Accounts of Chemical Research vol 45 page 2055およびBergstrom(2009)Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry Suppl.37 1.4.1を参照されたい)。
【0078】
本明細書で使用される用語「%相補的」は、所定の位置において、別個の核酸分子(例えば、標的核酸)の所定の位置において、連続ヌクレオチド配列に相補的な(すなわち、Watson Crick塩基対を形成する)、核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)中の連続ヌクレオチド配列のパーセントで表したヌクレオチドの数を指す。百分率は、2つの配列間で対を形成する整列された塩基の数を数え、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドの総数で除して100を乗じることによって計算される。このような比較において、整列しない(塩基対を形成しない)核酸塩基/ヌクレオチドは、ミスマッチと称される。
【0079】
「完全に相補的な」という用語は、100%の相補性を指す。
【0080】
本明細書で使用される用語「同一性」は、所定の位置において、別個の核酸分子(例えば、標的核酸)の所定の位置における連続ヌクレオチド配列と同一である(すなわち、相補的なヌクレオシドとWatson Crick塩基対を形成する核酸分子の能力において)、核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)中の連続ヌクレオチド配列のパーセントで表したオリゴヌクレオチドの数を指す。百分率は、ギャップを含めて、2つの配列間で同一である整列された塩基の数を数え、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドの総数で除して100を乗じることによって計算される。パーセント同一性=(マッチ×100)/整列された領域(ギャップを含む)の長さ。
【0081】
本明細書で使用される用語「ハイブリダイズしている」または「ハイブリダイズする」は、2つの核酸鎖(例えば、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸)が対向する鎖上の塩基対との間で水素結合を形成することにより二重鎖を形成することとして理解するべきである。2つの核酸鎖の間の結合の親和性は、ハイブリダイゼーションの強度である。これは、しばしば、オリゴヌクレオチドの半分が標的核酸と二重鎖を形成する温度として定義される、融解温度(Tm)の観点から記載される。生理学的条件では、Tmは、親和性に厳密には比例しない(Mergny and Lacroix,2003,Oligonucleotides 13:515-537)。標準状態ギブス自由エネルギーΔG°は、結合親和性をより正確に表し、ΔG°=-RTln(Kd)によって反応の解離定数(Kd)に関連付けられ、ここでRは気体定数であり、Tは絶対温度である。したがって、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の反応の非常に低いΔG°は、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の強いハイブリダイゼーションを反映している。ΔG°は、水性濃度が1M、pHが7、温度が37℃である反応に関連したエネルギーである。標的核酸へのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、自発的反応であり、自発的反応の場合のΔG°は、ゼロ未満である。ΔG°は、例えば、Hansenら,1965,Chem.Comm.36-38およびHoldgateら,2005,Drug Discov Todayに説明されているような等温滴定熱量測定(ITC)法の使用により、実験的に測定することができる。当業者は、ΔG°測定のために市販の装置が入手可能であることを知っているであろう。ΔG°は、Sugimotoら,1995,Biochemistry 34:11211-11216およびMcTigueら,2004,Biochemistry 43:5388-5405によって記載されている適切に得られた熱力学パラメータを使用して、SantaLucia,1998,Proc Natl Acad Sci USA.95:1460-1465によって記載されている最近傍モデル(nearest neighbor model)を用いることにより数値的に概算することもできる。その意図した核酸標的をハイブリダイゼーションによって調節する可能性があるために、本発明のオリゴヌクレオチドは、10~30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドについては-10kcal未満の概算ΔG°値で標的核酸にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションの程度または強度は、標準状態でのギブスの自由エネルギーΔG°により測定される。オリゴヌクレオチドは、8~30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドについては、-10kcalの範囲未満、例えば-15kcal未満、例えば-20kcal未満、および例えば-25kcal未満の概算ΔG°値で標的核酸にハイブリダイズし得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、-10~-60kcal、例えば-12~-40、例えば-15~-30kcal、または-16~-27kcal、例えば-18~-25kcalの概算ΔG°値で標的核酸にハイブリダイズする。
【0082】
本明細書で使用される用語「標的配列」は、本発明のオリゴヌクレオチドに相補的な核酸塩基配列を含む、標的核酸中に存在するヌクレオチドの配列を指す。いくつかの実施形態では、標的配列は、標的核酸上の、本発明のオリゴヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列に相補的な領域からなる。いくつかの実施形態では、標的配列は、単一のオリゴヌクレオチドの相補的配列よりも長く、例えば、本発明のいくつかのオリゴヌクレオチドにより標的とされ得る標的核酸の好ましい領域を表し得る。
【0083】
標的配列は、標的核酸のサブ配列であり得る。
【0084】
オリゴヌクレオチドは、標的核酸に相補的であるまたは標的核酸にハイブリダイズする連続ヌクレオチド配列、例えば標的核酸のサブ配列、例えば本明細書で記載される標的配列を含む。
【0085】
オリゴヌクレオチドは、標的核酸分子中に存在する標的配列に相補的であるまたはハイブリダイズする少なくとも8ヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列を含む。連続ヌクレオチド配列(およびそれ故、標的配列)は、少なくとも8個の連続ヌクレオチド、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の連続ヌクレオチド、例えば、12~25個、例えば、14~18個の連続ヌクレオチドを含む。
【0086】
本明細書で使用される用語「標的細胞」は、標的核酸を発現している細胞を指す。いくつかの実施形態では、標的細胞は、インビボまたはインビトロであり得る。いくつかの実施形態では、標的細胞は、哺乳動物細胞、例えば、げっ歯類細胞、例えば、マウス細胞もしくはラット細胞、または霊長類細胞、例えば、サル細胞もしくはヒト細胞である。
【0087】
用語「発現の調節」は、本明細書で使用される場合、オリゴヌクレオチドの投与前の標的遺伝子発現の量と比較した場合に、標的遺伝子発現の量を変更するオリゴヌクレオチドの能力の総称として理解されるべきである。あるいは、発現の調節は、対照実験を参照することによって決定され得る。対照は、生理食塩水組成物で処置された個体もしくは標的細胞、または非標的化オリゴヌクレオチド(モック)で処置された個体もしくは標的細胞であると一般的に理解されている。しかしながら、対照は、標準的な治療で処置された個体であってもよい。
【0088】
調節の1つのタイプは、例えばmRNAの分解または転写の遮断による、NF-κB2の発現を阻害、下方制御、低減、抑制、除去、停止、遮断、防止、減少、低下、回避または終了するオリゴヌクレオチドの能力である。
【0089】
高親和性修飾ヌクレオシドは、オリゴヌクレオチド中に組み込まれた場合に、例えば、融解温度(Tm)によって測定された、その相補的標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性を高める修飾ヌクレオチドである。本発明の高親和性修飾ヌクレオシドは、好ましくは、修飾ヌクレオシドあたり+0.5~+12℃、より好ましくは+1.5~+10℃、最も好ましくは+3~+8℃の融解温度の上昇をもたらす。多数の高親和性修飾ヌクレオシドが当技術分野において公知であり、例えば、多くの2′置換ヌクレオシドおよびロックド核酸(LNA)が含まれる(例えば、Freier&Altmann;Nucl.Acid Res.,1997,25,4429-4443およびUhlmann;Curr.Opinion in Drug Development,2000,3(2),293-213を参照されたい)。
【0090】
本発明のオリゴマーは、修飾された糖部分、すなわち、DNAおよびRNA中に見られるリボース糖部分と比較したときに糖部分の修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含み得る。
【0091】
リボース糖部分の修飾を有する多数のヌクレオシドが、親和性および/またはヌクレアーゼ耐性などのオリゴヌクレオチドの特定の特性を改善することを主に目的として作製されている。
【0092】
そのような修飾には、例えば、ヘキソース環(HNA)、または典型的には、リボース環上のC2とC4炭素の間にバイラジカル(biradicle)架橋を有する(LNA)二環式環、または典型的にはC2とC3炭素の間の結合を欠く非結合リボース環(例えば、UNA)で置き換えることにより、リボース環構造が修飾されているものが含まれる。その他の糖修飾ヌクレオシドには、例えば、ビシクロヘキソース核酸(国際公開第2011/017521号)または三環式核酸(国際公開第2013/154798号)が含まれる。修飾ヌクレオシドには、例えば、ペプチド核酸(PNA)またはモルホリノ核酸の場合には、糖部分が非糖部分と置き換えられたヌクレオシドも含まれる。
【0093】
糖修飾には、リボース環上の置換基を水素以外の基に変化させること、またはDNAおよびRNAヌクレオシド内に天然に存在する2′-OH基を変化させることを介して行われる修飾も含まれる。置換基は、例えば2′、3′、4′または5′位において導入され得る。修飾された糖部分を有するヌクレオシドには、2′置換されたヌクレオシドなどの2′修飾されたヌクレオシドも含まれる。実際、2′置換されたヌクレオシドの開発には多くの注目が集まっており、多くの2′置換されたヌクレオシドが、オリゴヌクレオチド中に組み込まれた場合に、増強されたヌクレオシド耐性および増強された親和性などの有益な特性を有することが見出されている。
【0094】
LNAヌクレオシドは、ヌクレオチドのリボース糖環のC2′とC4′との間にリンカー基(バイラジカル(biradicle)または架橋と呼ばれる)を含む修飾ヌクレオシドである。これらのヌクレオシドは、文献中では架橋された核酸または二環式核酸(BNA)とも称されている。例示的なLNAヌクレオシドは、国際公開第99/014226号、国際公開第00/66604号、国際公開第98/039352号、国際公開第2004/046160号、国際公開第00/047599号、国際公開第10036698号、国際公開第07090071号、国際公開第2010/036698号および国際公開第11156202号に開示されている。
【0095】
ヌクレアーゼ媒介性分解は、相補的なヌクレオチド配列と二重鎖を形成するときに、そのような配列の分解を媒介することができるオリゴヌクレオチドを指す。
【0096】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、標的核酸のヌクレアーゼ媒介性分解を介して機能し得、本発明のオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ、特にエンドヌクレアーゼ、好ましくはRNase Hなどのエンドリボヌクレアーゼ(RNase)を動員することができる。ヌクレアーゼ媒介機構を介して機能するオリゴヌクレオチド設計の例は、少なくとも5または6のDNAヌクレオシドの領域を通常含み、親和性増強ヌクレオシド、例えばギャップマー、ヘッドマーおよびテールマーが片側または両側に隣接するオリゴヌクレオチドである。
【0097】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのRNase H活性とは、相補的RNA分子との二重鎖の状態にある場合にRNaseHを動員する、その能力を指す。国際公開第01/23613号は、RNaseH活性を決定するためのインビトロ方法を提供しており、これはRNaseHを動員する能力を決定するために使用され得る。典型的には、オリゴヌクレオチドが、相補的標的核酸配列が提供された場合に、試験されている修飾オリゴヌクレオチドと同じ塩基配列を有するが、オリゴヌクレオチド中の全てのモノマー間にホスホロチオアート結合を有するDNAモノマーのみを含有するオリゴヌクレオチドを使用し、国際公開第01/23613号(参照により本明細書に組み込まれる)の実施例91~95により提供される方法論を使用したときに決定された初期速度の少なくとも5%、例えば、少なくとも10%または20%超のpmol/l/分で測定された初期速度を有する場合に、このオリゴヌクレオチドはRNase Hを動員することができると見なされる。
【0098】
本明細書で使用されるギャップマーという用語は、1つまたは複数の親和性増強修飾ヌクレオシド(側腹部(flank)またはウィング)を含む領域が5′および3′に隣接するRNase H動員オリゴヌクレオチドの領域(ギャップ)を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。様々なギャップマー設計が本明細書に記載されている。ヘッドマーおよびテールマーは、側腹部の1つが欠損している、すなわちオリゴヌクレオチドの末端の1つのみが親和性増強修飾ヌクレオシドを含む、RNase Hを動員することができるオリゴヌクレオチドである。ヘッドマーの場合、3′側腹部が欠損しており(すなわち、5′側腹部が、親和性増強修飾ヌクレオシドを含む)、テールマーの場合、5′側腹部が欠損している(すなわち、3′側腹部が、親和性増強修飾ヌクレオシドを含む)。
【0099】
LNAギャップマーという用語は、親和性増強修飾ヌクレオシドの少なくとも1つがLNAヌクレオシドであるギャップマーオリゴヌクレオチドである。
【0100】
混合ウィングギャップマーまたは混合側腹部ギャップマーという用語は、側腹部領域の少なくとも1つが、少なくとも1つのLNAヌクレオシドおよび少なくとも1つの非LNA修飾ヌクレオシド、例えば、少なくとも1つの2′置換された修飾ヌクレオシド、例えば、2′-O-アルキル-RNA、2′-O-メチル-RNA、2′-アルコキシ-RNA、2′-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2′-アミノ-DNA、2′-フルオロ-RNAおよび2′-F-ANAヌクレオシドを含むLNAギャップマーを指す。いくつかの実施形態では、混合ウィングギャップマーは、LNAヌクレオシド(例えば、5′または3′)のみを含む一方の側腹部を有し、他方の側腹部(それぞれ(respectfully)3′または5′)は、2′置換された修飾ヌクレオシドおよび必要に応じてLNAヌクレオシドを含む。
【実施例
【0101】
生体高分子は、多様な生化学的活性および比類のない特異性を有し、したがって魅力的な薬物である。細胞外生体高分子療法、特に組換えタンパク質および治療用抗体は、複数の医学分野に革命をもたらしたが、細胞内作用機序を有する市販製品としてのこれらのモダリティの使用は、6つのオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド類似体(ホミビルセン(fomiversen)、ミポメルセン、イノテルセン、パチシラン、ヌシネルセンおよびエテプリルセン)ならびにインサイチュで投与されるウイルスモダリティであるアリポジーン・チパルボベックおよびボレチジーン・ネパルボベック(1,7,8)に限定されたままである。
【0102】
細胞内作用機序を有する生体高分子の使用は、主に2つの要因、すなわち全身薬物動態およびエンドリソソーム系による細胞内隔離によって制限される。エンドサイトーシスに続いて、新生エンドソームは、プロテアーゼ、ヌクレアーゼおよび還元酵素の次第に酸性化する環境を通って移動する。
【0103】
本発明は、生体高分子を細胞表面につなぎ留めるために遊離の細胞表面チオールを結合させて、局所薬物動態を増強し、これらの膜貫通タンパク質の自然のリサイクルを利用することによって、これらのバリアの両方を克服する。
【0104】
LNAは、相補的配列特異的にmRNAに結合し、RNAse H基質として機能することによって標的分解を誘導し、またはmRNAのリボソーム翻訳を遮断することによってタンパク質レベルを低下させることによって、細胞内のmRNA転写物レベルを低下させるように機能する。
【0105】
本発明者らは、EDC/NHS化学を使用してホスホロチオアート化ギャップマーLNAからの5′アミノヘキシルペンダントにAspAを化学的にコンジュゲートさせ、HPLCによってこれらの分子を精製した。細胞取り込み研究のために、親LNAは、蛍光顕微鏡法によってこの分子が細胞内に存在することを特定することを可能にした蛍光性のフルオレセインイソチオシアネート部分を含んでいた。
【0106】
細胞取り込み試験では、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識されたLNAは未修飾で使用され、またはAspAにコンジュゲートされた。HCE-T細胞を、表記用量の原液LNAの希釈系列で処理し、「細胞取り込み法」に従って洗浄した。これらの画像を定量化すると、LNAコンジュゲーションは細胞取り込みを増強し、図1Aに示す非修飾LNA用量の約10倍高い細胞内蛍光と同等の細胞内蛍光を生成することが明らかとなった。AspA修飾されたLNAが左の曲線として青色でプロットされており、非修飾LNAが右曲線として赤色でプロットされている。非修飾LNAに対するAspA修飾LNAの左方向へのシフトは、AspA標的化がこれらの条件下で細胞の取り込みおよび保持を増強することを示す。この実験からの代表的な画像が図1Bに示されている。AspA修飾LNAを200nMで投与し、非修飾LNAを170nMで投与した。青色はDAPIによる核染色を表し、緑色は内部移行されたLNAを表す。これらの結果は、AspAが非修飾LNAと比較してLNAの増強された細胞内取り込み、蓄積および保持を誘導することを示す。
【0107】
AspA LNAコンジュゲートの活性を試験するために、AspA修飾を有するもしくは有さない混ぜ合わされた非標的化配列、またはAspA標的化を有するもしくは有さないMALAT1転写物を標的化する強力なLNAのいずれかからなる緩衝液または40nM LNAでHCE-T細胞を処理した、図4。標的化対照配列と非標的化対照配列(「scr」)はいずれも、統計学的に有意ではなかったMALAT1転写物の穏やかなオフターゲット効果を示す。MALAT1 mRNAを標的とする非修飾LNAで処理された細胞は、MALAT1転写物レベルのわずかな増加を示したが、MALAT1を標的とするAspA LNAは、統計学的に有意なMALAT1の低下を誘導した。これらの結果は、LNAのAspA修飾が、MALAT1転写物を標的とするLNA分子に対して増強された生物活性を誘導することを示している。qPCRはmRNAの相対的存在を特異的に測定するので、これらの結果は、AspA修飾LNAが強いRNAse H活性を保持していることを示し、さらに、AspAによって、LNAがリソソーム内捕捉から逃れ、RNAse Hが局在する核への輸送が可能になることを示す。
【0108】
総合すると、これらのデータは、LNAへのAspAコンジュゲーションが、LNAの細胞内蓄積を増強することによってLNAの生物活性を増強し、LNAの核への送達を可能にし、核において、RNAse H活性が特異的かつ強力な様式で標的配列(本事例では、MALAT1)を分解することを示す。
【0109】
方法:
1.標的化リガンド1,2-ジチオラン-4-カルボン酸、AspAの構造
【化9】

2.ヘキシルアミノ修飾されたLNAへの1,2-ジチオラン-4-カルボン酸の化学的コンジュゲーションのための反応スキーム
【化10】
【0110】
ホスホロチオアート化されたLNAを標準的なホスホロアミダイト化学によって合成し、5′ヘキシルアミノリンカーで終結させた。SML 1,2-ジチオラン-4-カルボン酸(アスパラガス酸、AspA)を、EDC/NHSカップリングを介してLNAアミンにコンジュゲートし、2-プロパノール沈殿およびHPLCによって精製した。LNA-AspAコンジュゲートをARPE-19およびHCE-T細胞にPBS中で30分間適用し、次いで、完全血清培地で洗浄し、点眼剤による滴下および涙液タンパク質による曝露をシミュレートした。
【0111】
HCE-T細胞培養
HCE-T細胞は、Vanderbilt Universityとの材料移転契約に基づいてRoche Non-Clinical Biorepositoryから得た。10% v/vのFBSを補充したHEPES(カタログ番号31330)を含み、抗生物質を含まない「増殖培地」Gibco DMEM/F12中で細胞を増殖させた。全ての細胞操作は、コラーゲンで被覆された培養器具を使用して行った。PureCol Collagen I Solution(Advanced BioMatrix、カタログ番号5005)をPBS中で100μg/mLに希釈し、室温で1~2時間インキュベートし、リン酸緩衝生理食塩水で1回すすいだ。次いで、プレートを直ちに使用するか、または後の使用のために滅菌条件下で風乾した。
【0112】
ロックド核酸(LNA)
完全にホスホロチオアート化されたLNAギャップマーは、ヘキシルアミノリンカーを有するQiagen Sciences(Maryland,USA)から購入した。いくつかのLNAは、細胞取り込み研究のためにフルオレセイン修飾をさらに有していた。小分子標的化リガンド1,2-ジチオラン-4-カルボン酸(MedChemExpress、カタログ番号 カタログ番号:HY-50730)を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC、Sigma品目03449-1G)/N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(s-NHS、シグマ品目番号56485-1G)化学9を用いて安定なアミド結合を介して結合させた。反応混合物を超純水で希釈し、製造業者の指示に従って公称分子量カットオフ10000g/molを有するAmicon Ultra-0.5mL遠心フィルターを使用して、2ラウンドの遠心濃縮により緩衝液を超純水に交換した。濃縮した緩衝液交換された反応混合物を、1.0M原液(Sigma Aldrich 90358-100ML)から調製された0.1モル濃度の酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液中に希釈した。精製を行い、調整可能なフォトダイオードアレイおよび単一四重極質量検出器を備えたWaters HPLCシステムを使用してオリゴを分析した。固定相は、Waters XBridge Oligonucleotide BEH C18カラムであり、移動相は、水中の、A、400mM 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)および15mM トリエチルアミン(TEA);B:水中の、200mM HFIP、7.5mM TEAおよび50% v/vメタノール(MeOH)であった。グラジエントは、17分で62%~45%A、残りはBであり、続いて初期条件で13分間平衡化した。精製された画分を凍結乾燥し、次いで、無菌の無RNAse水中で再構成し、最終使用まで-20℃で保存した。
【0113】
遺伝子下方制御研究
96ウェルプレート中に10,000細胞/ウェルでHCE-T細胞を播種し、増殖培地中で集密状態になるまで増殖させた。集密状態に達した時点で、培地を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで、LNAを表記の濃度で2時間適用し、次いで吸引した。細胞を増殖培地で一回洗浄した後、増殖培地中でさらに48時間インキュベートした。48時間後に、製造者の説明書に従ってRoche MagNA Pure 96機器を使用して、細胞可溶化液からmRNAを精製した。iScript cDNA Synthesis Kit(Bio-Rad、Hercules、California、USA)を使用してcDNA合成について正規化されたUV吸光度および濃度によって、精製されたRNAを定量した。TaqMan Fast Advanced Master Mix(ThermoFisher Scientific)および長いモデル非コードRNA MALAT1を標的とするTaqManプライマーを使用し、製造者の説明書に従ってACTBを参照遺伝子として使用して、定量的PCRを行った。
【0114】
細胞取り込み研究
Corning 96-Well Half Area High Content Imaging Glass Bottom Microplate(Corningカタログ番号4580)中に1000細胞/ウェルでHCE-T細胞を播種し、増殖培地中で集密状態になるまで増殖させた。集密状態に達した時点で、培地を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで、蛍光性LNAを表記の濃度で2時間適用し、次いで吸引した。細胞を増殖培地で1回洗浄した。培地を、10%FBS、15mM HEPES緩衝液およびHoechst 33342を補充したFluoroBrite DMEM(ThermoFisher Scientific)と交換した。適切な励起フィルターおよび発光フィルターを備えたNikon A1共焦点顕微鏡で細胞を画像化した。MATLAB(登録商標)アルゴリズムを使用して全細胞蛍光を測定し、核の数に対して正規化した。
【0115】
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図1A
図1B
図2
【国際調査報告】