(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/145 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
A61B5/145
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021573138
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020019953
(87)【国際公開番号】W WO2020176658
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521375140
【氏名又は名称】デジタル ブラッド コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】DIGITAL BLOOD CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】カザール,パヴェル
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK00
4C038KK04
4C038KK05
4C038KK08
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX02
(57)【要約】
ユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステムは、ユーザの血液中のO2およびCO2の分圧、ユーザの体温、およびユーザの血液中のヘモグロビン含有量を測定するよう動作可能に構成される少なくとも4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4)、外部電子表示ユニット(11)、および、通信インターフェース(12)を備え外部電子表示ユニット(11)および少なくとも4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4)に通信可能に連結された演算ユニット(9)を備え、演算ユニット(9)は、その上に常駐してヘモグロビンバッファの方程式の数学的表現に基づいてユーザの内部環境のモデルを用いる数学的ソフトウェアアプリケーションを使用して、かつ、少なくとも4つのユーザ入力センサからのデータを利用して、ユーザの血液環境パラメータを外部電子表示ユニット(11)に表示させるように動作可能に構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステムであって、
ユーザの血液中のO2の分圧を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(1)、前記ユーザの血液中のCO2の分圧を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(2)、前記ユーザの体温を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(3)、および前記ユーザの血液中のヘモグロビン含有量を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(4)をそれぞれ含む、少なくとも4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4);
外部電子表示ユニット(11);および
通信インターフェース(12)を備え、複数のアナログおよびデジタル入力(5、6、7、8)の少なくとも1つを介して前記外部電子表示ユニット(11)および前記少なくとも4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4)に通信可能に連結された、演算ユニット(9)
を備え、
前記演算ユニット(9)は、その上に常駐してヘモグロビンバッファの方程式または「ヘンダーソン・ハッセルバルヒ」の式の数学的表現に基づいて前記ユーザの内部環境のモデルを用いる数学的ソフトウェアアプリケーションを使用して、かつ、前記少なくとも4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4)から受け取った前記ユーザの血液中のO2の分圧、前記ユーザの血液中のCO2の分圧、前記ユーザの体温、および前記ユーザの血液中のヘモグロビン含有量を利用して、ユーザの血液環境パラメータを前記外部電子表示ユニット(11)に表示させるように動作可能に構成される
システム。
【請求項2】
前記演算ユニット(9)が、前記外部表示ユニット(11)または記録ユニットへの出力(13)および前記通信インターフェース(12)への出力(14)を含み、インターネットへの直接およびリモートの両方のアクセスを可能にすることを特徴とする、請求項1に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項3】
前記ユーザの内部環境のモデルのための数学的表現がさらに、
ユーザの内部環境のそれぞれのモデル、すなわち、呼吸器系および消化器系コンポーネントが、いわゆる電子血液の概念で患者の内部環境のサイバネティックスの基本的なフィードバックを構成する場合に、いわゆるボーア効果に関与するプロセスをシミュレートするヘモグロビンバッファについてのホールデン効果を用いることを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項4】
前記ユーザの内部環境のモデルのための数学的表現がさらに、
3kPa~18kPaまたはmmolの値のCO2の分圧で与えられる新しいパラメータ、Δph
2を決定する、前記ユーザの内部環境のモデルにおける呼吸器系および消化器系コンポーネントの正確な指数
を含み、
Δph
2は、血液pHを計算する式のコンポーネントとなり、
pH=6.1+Δph1+Δph2、pH=血液pH、Δph1=ボーアシフト、Δph2=ホールデン効果のシフト
であることを特徴とする、請求項1に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項5】
前記ユーザの内部環境の数学的モデルが、患者の血液内部環境のいわゆる消化器系モデルによって数学的にモデル化される、塩素およびナトリウム値の決定の基礎をなすことを特徴とする、請求項4に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項6】
前記ユーザの内部環境の数学的モデルが、糖、尿素含有量、および、以下の式:
浸透圧=2Na+尿素+糖/血糖/
によって提供される血液浸透圧を含む前記ユーザの血液の他のパラメータの決定の基礎をなすことを特徴とする、請求項4に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年2月26日に出願された継続中の米国仮特許出願第62/810,927号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ユーザ(本明細書において「患者」とも称される)の血液環境パラメータの医学的検査に関し、血液環境の酸塩基およびイオン平衡並びにそれらに由来するパラメータの非侵襲的測定を可能にする医療行為に適用可能な器具および方法を説明する。
【背景技術】
【0003】
血液環境のパラメータ、特に血液ガスの酸塩基およびイオン平衡のいくつかのパラメータ並びにそれらに由来するパラメータを検査し継続的にモニタリングする現在の医療技術は、患者から採取した血液サンプルにおける、イオンの酸塩基平衡の検査のような、内部環境パラメータの値を測定するいわゆる「血液」法に基づいている。
【0004】
実際には、このような検査は、検査される患者の血液サンプルを分析する様々な装置を用いて行われる。しかしながら、この血液サンプルは、侵襲的な方法で採取する必要がある。一般的に使用されている分析装置では、限られた数の血液パラメータの値が提供されることが大部分である。血液ガスのモニタリング、血液画像の分析、または血液内部環境の他のパラメータについていくつかの分析装置の設計が特許文献から知られているが、血液環境パラメータの非侵襲的検査は医療現場ではあまり使われていない。
【0005】
いわゆる「血液」法を採用した一般的な分析装置としては、例えば、血液ガスをモニタリングするための光学系を説明する特許文献1に記載されている分析装置がある。血液ガスは、数スクープ(scoop)のヘモクロムおよびこれらのスクープ内の固定化ヘモクロムを含む統一プローブによってモニタリングされ、それによってヘモクロムが血液ガスの影響を受ける。ヘモクロムスクープに接続された光ファイバおよび導波路によって、光が、吸着または自発的なヘモクロムの発光により、ヘモクロムおよび光としての光源から導かれ、光の検出器に戻ることが可能となる。戻った光の強度、位相シフトまたは他のメカニズムは、それぞれの血液ガスの分圧の基準となる。このタイプの分析装置を用いる際には、プローブを血流に挿入する必要がある。
【0006】
「血液」法の別の既知の解決法は、特許文献2に記載されている血液像の分析装置によって説明され、特許文献2には、試料の血液像を撮像するユニット、血液像に基づいて試料を分析する分析部、試料に割り当てられた試料からの識別情報を読み取る識別情報読取部、試料を識別情報読取部および撮像ユニットに移動させる移動部、移動部によって移動された試料の経路上の第1の検出位置で試料を検出する第1の検出器、表示部、および、第1の検出器による検出結果に基づいて第1の識別情報表示領域を含む画面を表示するように表示部を制御する制御ユニットを備える血液像分析装置が記載され、第1の識別情報表示領域は、第1の検出位置にある試料の識別情報を表示する。このタイプの分析装置を用いる際には、血液サンプルを患者から採取する必要がある。
【0007】
血液環境のパラメータを検査する現在の方法または技術の欠点は、特に、患者の体から血液を採取している間の「血液」検査自体にある。このため、血液凝固や溶血による測定値の歪みが生じる可能性があり、血液を採取する人によって血液試料が汚染されたり、サンプルの採取中に患者の血液によって人が汚染にさらされたりしうる。
【0008】
さらに、患者の血液を採取することに依存する内部環境のパラメータを分析する現在の方法は、特定の患者、すなわち未熟児または高度の熱傷を負った患者に適用する場合には疑問が残る。このような場合、血液の採取は事実上不可能である。
【0009】
内部環境パラメータの分析の非侵襲的解決法は、様々なサイバネティック数学モデルを使用する。サイバネティックス(cybernetics)とは、生物の情報を制御および伝達する一般的な原理を扱う科学である。プロセスの記述には、主に数学モデルを使用する。サイバネティックスは、生物のプロセスは、技術的な装置のアナログ的なプロセスと同様に、数学的な方程式で記述できるという知識に基づいている。このアプローチの基礎を築いたのは、1948年に「Cybernetics: Or Control and Communication in the Animals and the Machines」という本を出版したアメリカの数学者であるNorbert Wienerである。
【0010】
患者の血液内部環境を測定する既知の非侵襲的解決法の1つは、血液内部環境のパラメータを特定するための用途を記載する特許文献3に従った解決法である。この装置は、酸素の分圧をスキャンする電極、二酸化炭素の分圧をスキャンする電極を含む。これらの電極は、計測アンプを介して分析および制御複合体に接続され、患者のデータベースを含むメモリユニットに出力される。分析および制御複合体は、撮像装置、記録装置、およびインターネットにアクセスするための追加の装置に接続されている。さらに、分析および制御装置は、呼吸ガスを呼吸ガスの出力とおよび/または制御された投与装置を輸液セットと混合する装置に取り付けられる。本発明に従った器具によって、経皮電極に基づいて内部血液環境を測定することができ、酸塩基の結果、すなわち血液ガスの値は、90%の精度で設定され、イオンバランスの値は、内部環境の数学的モデルに基づいて再計算される。しかしながら、これらの値は、特に患者の特定のケースでは、必要な採血とそれに続く化学分析装置による処理を伴う古典的な方法で得られた実際の値と実質的に異なりうる。特に、患者がその時点で高温を有するまたは血液中のヘモグロビンの値が高い場合、したがって患者が重篤な状態にある場合には、この解決法では正確な測定ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,854,321号明細書
【特許文献2】米国特許第7,826,978号明細書
【特許文献3】スロバキア国特許第288359号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、非侵襲的な経皮的方法によって実施される、血液環境パラメータ、特に血液ガスの酸塩基およびイオン平衡のいくつかのパラメータおよびそれらに由来するパラメータの、高速、単純、かつ最大精度の検査を可能にする器具、酸塩基分析装置である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図1~2に示されているように、入力センサ、演算ユニットブロック、外部表示ユニット、および通信インターフェースを含む、血液環境の非侵襲的検査のための器具の原理は、患者の血液中のO2の分圧を測定するための少なくとも1つのセンサ、患者の血液中のCO2の分圧のセンサ、患者の体温のセンサ、および患者の血液中のヘモグロビン含有量のセンサを含むという事実に基づいており、これらのセンサは、アナログおよび/またはデジタル入力を介して、演算ユニットブロックに接続されており、演算ユニットブロックは、いわゆるホールデン効果(Haldane Effect)によって用いられるヘモグロビンバッファについての方程式、いわゆるヘンダーソン・ハッセルバルヒの式の数学的表現に基づいて患者の内部環境のモデルで動作し、いわゆるボーア効果(Bohr Effect)に関与するプロセスをシミュレートする、数学的ソフトウェアを含む。
【0014】
空気と食物は、人体の中で常に進行するプロセスの燃料である。上述の解決法は、我々の体が、内部システム全体に影響を与える2つの入力を使用しているという事実に基づいている。第1の入力は、肺が酸素を受け取り血液ガスを生成するときの呼吸であり、第2の入力は、元素を生成する食事である。これは、呼吸器回路と消化器回路の2つの回路に対応している。本発明によるこの解決法では、数学的ソフトウェアはこれらの回路で動作する。
【0015】
元素および血液ガスは血液によって運ばれ、これらの2つの回路の間には常に連絡があり、これらの回路は互いに影響し合う。この複雑なシステムを安全かつ正確にモニタリングするためには、4つのセンサを患者の体に設置する必要があり、これらのセンサは、患者の血液中のO2の分圧を測定するセンサ、患者の血液中のCO2の分圧を測定するセンサ、患者の体温のセンサ、および患者の血液中のヘモグロビン含有量のセンサであり、処理ユニットのブロックの入力である値を常にモニタリングし取得する。これらの測定値は、数学的ソフトウェアによってリアルタイムに処理され、外部の表示ユニットに表示されるまたは通信インターフェースを介してさらなる処理のために送信される。
【0016】
個々のセンサからの測定値は、数学的アルゴリズムで内部的に相互接続され、したがって、各センサで独立して変化しうる1つの測定入力値が変化するたびに、表示されるすべての値に影響を与え、血液ガスおよび測定元素(イオン)の値に最大の精度が与えられる。
【0017】
既存の解決法と比較して、血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのこのアドバイスには、2つの追加センサ、すなわち、患者の体温のセンサおよび患者の血液中のヘモグロビン含有量のセンサが追加された。現在の医療現場では、温度による血液環境への影響は最小限に抑えられている。しかしながら、体温の変化が10分の2度であっても、人体は自己防衛を開始することが明らかである;開始されるプロセスは、外部には明示されず患者によって感知されず、医師も患者の状態の変化を認識できない。したがって、人体の体温が少しでも変化すると、血液ガスの値、並びに測定元素(イオン)の値およびその精度に大きな影響が与えられる。その結果、患者の温度センサから得られる値は、血液ガスおよび測定要素の追加値を計算する数学的アルゴリズムに決定的な影響を与える。
【0018】
最近まで、ヘモグロビンの値を非侵襲的かつ継続的な態様で取得することは不可能であった。ヘモグロビンの値は侵襲的な方法で取得する必要があり、得られた結果は参考的性質のもので、通常は数時間前のものであり値を正確に計算することは不可能であった。今日では、非侵襲的かつ連続的な測定のためのヘモグロビンセンサが利用可能である。これにより、絶対的な精度での測定が可能である。
【0019】
血液内部環境の複雑性および変動性は、以下の実施例で示すことができる。血液pHの最適値は、7.35~7.45の範囲内にある。この範囲は非常に狭いが、非常に重要であり、血液pHが0.40変化しただけで、それが増加したか減少したかにかかわらず、患者の生命に決定的でありうる。上記の範囲は、人体の通常の体温である36.6℃に当てはまる。この温度では、ヘモグロビンの値は以下である:
男性 135~170
女性 120~160
子供 120~180
pO2値 9.9~14.4
pCO2値 4.7~7。
【0020】
体温、またおそらく他の入力特性の変化は、他の特性の値およびその後の計算に影響を与える。
【0021】
実際には、患者の内部環境のモデルで動作する付属の数学的ソフトウェアにより、患者の血液中のO2の分圧を測定するセンサ、患者の血液中のCO2の分圧を測定するセンサ、患者の体温のセンサ、および患者の血液中のヘモグロビン含有量のセンサから、4つの値が得られる。これらの値に基づいて、患者の血液内部環境を特徴付ける追加の15の値が特定される。全体として、この数学的ソフトウェアは、19の特性を測定または計算する;それぞれの特性は変動し、異なる値に達することができるため、処理された特性は千の組合せになりうる。数学的ソフトウェアを設計する際には、古典的な侵襲的方法、すなわち、生まれたばかりの子供から死にかけている患者までさまざまな年齢層の患者の血液分析に標準的な化学分析装置が使用された方法、による血液測定で得られた経験がソフトウェアに適用された。患者の内部血液環境の特性の評価は、完全に自動化されている。
【0022】
前述のタイプの患者の内部環境の数学的モデル、すなわち呼吸器系および消化器系のコンポーネントは、患者の内部環境のサイバネティックスの基本的なフィードバックを構成しており、これによって、この演算ユニットのブロックが、外部表示ユニットまたは記録ユニットへの出力およびインターネットへのアクセスを可能にする通信インターフェースへの出力によって少なくとも提供される場合、コンピュータによって患者の内部環境のサイバネティックスプロセスをシミュレートすることが可能となる。
【0023】
アナログ入力センサの場合、演算ユニットのブロックは、付属の数学的ソフトウェアを用いてアナログ信号を同時にデジタル化する。次いで、数学的ソフトウェアは、演算ユニットのソフトウェアに格納されているモデルから患者の内部環境の適切なモデルを実行し、患者の血液内部環境のパラメータを計算する。適切なモデルの選択へのアクセスは、演算ユニットのブロックへの入力を通じて、操作者にも与えられる。人は、特定の患者に適合する患者の内部環境のモデルを選択することができる。患者の内部環境の選択されたモデルに従って演算ユニットのブロックによって計算された結果は、標準的な有線伝達要素および無線接続の両方で接続することができる付属のイメージングコンポーネントによって表示することができる。内部環境の血液ガス(酸塩基)を計算するためには、ホールデン効果を特徴づける方程式、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式などが必要である。これらの方程式はアルゴリズムに変換され、これによって、センサからの値に基づいて血液ガスの実際の結果を得ることが可能となる。これらは、イオン元素の計算のためのアルゴリズムにも影響を与える。したがって、患者の体温を測定するセンサおよび患者の血液中のヘモグロビン含有量を測定するセンサの2つの追加センサを用いて、装置を完成させる必要があった。
【0024】
同時に、患者の内部環境のモデルにおける呼吸器系および消化器系コンポーネントの正確な指数が、3~18kPaまたはmmolの値のCO2の分圧で与えられる新しいパラメータ、いわゆるホールデン効果のシフトを決定する。患者の内部環境のモデルでは、O2の分圧とHbO2の飽和度との関係は、いわゆるヒルの式およびその平衡定数によって与えられる。患者の内部環境のモデルの他のパラメータ、炭酸水素塩の標準的な量、および総O2は、新しいパラメータ「Δph2」を利用したヘンダーソン・ハッセルバルヒの式の修正によって決定される。「Δph2」として示される新たに定義されたパラメータ「ホールデン効果のシフト」は、血液pHを計算する式のコンポーネントである。
pH=6.1+Δph1+Δph2
ここで、
pH=血液pH
Δph1=ボーアシフト
Δph2=ホールデン効果のシフト
ここで、ボーア効果またはボーア効果のシフトは、正確に組織化された生物学系としての外部環境-患者の肺-患者の血液内部環境のサイバネティックスの関係の基本的なフィードバックのアルゴリズムのコンポーネントでもある。パラメータおよび結合(bond)を計算するプロセスは、患者の血液中の酸塩基平衡およびイオン平衡の関係を決定するための数学的ソフトウェアを含む演算ユニットのブロックで行われる。
【0025】
患者の血液中に含まれる個々のイオン、すなわち患者の血液pHの現在の値に対するCa、MgおよびKの酸塩基およびイオン平衡の関係は、患者の内部環境のモデルにおけるフィードバックを構成する。このモデルに基づいて、ClおよびNa、すなわち消化管から血液循環に入る元素の値を決定することができるが、これらの関係は、患者の血液内部環境のいわゆる消化器系モデルによってモデル化される。血液中の糖および尿素含有量および浸透圧などの他のパラメータは、次の式を変形して与えられる
浸透圧=2Na+尿素+糖/血糖/。
【0026】
演算ユニットブロックに格納されたソフトウェアを備えた器具は、患者の血液内部環境の記述を含む人間の生物学的能力を技術的に表現するためのサイバネティックスを利用する新世代の分析装置を表し、これは同時に、輸液療法や酸素療法などの患者の治療を自動的に制御することを可能にする。
【0027】
本発明に基づく器具は、血液環境のパラメータ、特に血液ガスの酸塩基およびイオン平衡のいくつかのパラメータおよびそれらに由来するパラメータを、血液凝固の影響や溶血を伴わずに非侵襲的な方法で、迅速、簡単、かつ最大の精度で検査することを可能にする。
【0028】
本発明に基づく器具の基本バージョンでは、頻繁にかつ非侵襲的に酸塩基およびイオンをモニタリングし、その結果、患者の血液内部環境の生化学的パラメータを計算および評価し、この方法を適用することによって、検査された患者の血液に含有される全ての化学元素もリアルタイムで評価することができる。
【0029】
したがって、本発明の解決法の利点は、患者のベッドで非侵襲的かつ連続的に検査することにある。血液内部環境のパラメータ値は、外部コンピュータの表示装置上で医師が直接モニタリングし、医師は、測定値に応じて、直ちに患者の健康状態に対応し改善することができる。この解決法のもう一つの利点は、測定中に検査員が患者の血液に触れることがないという事実にあり、測定結果が歪むことがなく、血液によって感染する患者の病気の場合に検査員が汚染にさらされることがない。
【0030】
本発明に従った血液環境パラメータの非侵襲的検査のための器具が、図面を用いてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】器具の個々の構成要素と、個々の測定パラメータの入力および表示装置への出力、およびその他の要素との接続を示すブロック図
【
図2】患者の内部環境の4つの入力特性のスキーム、および、本発明の一実施形態による血液環境のパラメータの非侵襲的な検査のための器具によって得られかつ表示される患者の内部環境の19の特性の概要の両方を表す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
血液環境パラメータの非侵襲的検査のための器具は、患者の血液中のO2の分圧を測定するためのセンサ1、患者の血液中のCO2の分圧を測定するセンサ2、患者の体温を取得するセンサ3、および患者の血液中のヘモグロビン含有量を測定するセンサ4、患者の内部環境のモデルで動作する数学的ソフトウェアを含む演算ユニットのブロック9、少なくとも4つのユーザ入力センサ1、2、3および4を演算ユニット9のブロック9相互接続するためのアナログおよび/またはデジタル入力5、6、7および8(例えば、動作可能に連結されたローカルまたはリモートの非一時的メモリを備えた1つまたは複数のプロセッサ-演算ユニット9はまた、電子コントローラを含む可能性がある)を備え、外部電子表示ユニット11(例えば、携帯電話のユーザインターフェースまたは他の電子デバイスインターフェース)および/または記録ユニット(例えば、非一時的メモリ)への出力13、通信インターフェース12への出力14を行い、出力15によってインターネットへのアクセスを可能にする。別の言い方をすると、一実施形態では、第1のセンサ1は、ユーザの血液中のO2の分圧を測定するように動作可能に構成され、第2のセンサ2は、ユーザの血液中のCO2の分圧を測定するように動作可能に構成され、第3のセンサ3は、ユーザの体温を測定するように動作可能に構成され、第4のセンサ4は、ユーザの血液中のヘモグロビン含有量を測定するように動作可能に構成されている。これを実現するために、演算ユニット9は、複数のアナログおよびデジタル入力(5、6、7、8)のうちの少なくとも1つを介して、外部電子表示ユニット11および少なくとも4つのユーザ入力センサ1、2、3、4と通信可能に連結される。この通信は、当業者であれば理解できるように、有線または無線の手段によって行われてもよい。演算ユニット9は、その上に常駐してヘモグロビンバッファの方程式または「ヘンダーソン・ハッセルバルヒ」の式の数学的表現に基づいて患者の内部環境のモデルを用いる数学的ソフトウェアアプリケーションを使用して、かつ、本明細書でさらに説明および例示されているように、少なくとも4つのユーザ入力センサ1、2、3、4から受け取ったユーザの血液中のO2の分圧、ユーザの血液中のCO2の分圧、ユーザの体温、およびユーザの血液中のヘモグロビン含有量を利用して、ユーザの血液環境パラメータを外部電子表示ユニット11に表示させるように動作可能に構成される。
【0033】
医療現場では、血液中のO2の分圧を測定するセンサ1、血液中のCO2の分圧を測定するセンサ2、体温を取得するセンサ3、および血液中のヘモグロビン含有量を測定するセンサ4によって、患者の検査が行われている。これらのセンサは、センサ生産業者の推奨に従って、患者の皮膚上に配置される。例えば、ヘモグロビン含有量を測定するセンサは、クリップの形をしており、人体の血流の良い部分、例えば、指に固定することができる。測定値のインパルスは、データ認識装置に転送され、信号が数学的な形式に調整された後、さらに演算ユニットのブロック9に転送されて処理され、数学的アルゴリズムによる処理の後、これらの入力1、2、3、4が個々の患者の内部環境のサイバネティックスの現在の値を決定する。
【0034】
演算ユニットのブロック9で分析が処理された後、内部環境のサイバネティック・パラメータは、酸塩基平衡、イオン平衡、浸透圧などの形で外部PCの表示ユニットに連続的に表示される。そのため、主治医は、病理学的プロセスのダイナミクス、患者の健康状態の改善または悪化を継続的にモニタリングすることができる。
【0035】
本発明による血液環境パラメータの非侵襲的検査のための器具によって実行される電子分析に基づいて、以下の個々の必要とされる酸塩基のパラメータおよび元素のパラメータ、すなわち、血液pH、現在のHCO-3、標準HCO-3、総CO2、塩基過剰の値、酸素の飽和度、並びに、酸素および二酸化炭素の分圧の値を評価することができる。同時に、本発明による器具は、測定されたパラメータから、ナトリウム、カリウム、塩化物、イオン化マグネシウム、イオン化カルシウム、並びに、血糖値、尿素のレベルおよび浸透圧のレベル、水和、およびその他の患者の血液内部環境のパラメータを新たに分析する。
【0036】
例えば、ユーザの血液環境におけるマグネシウム、Mgの含有量は、以下の関係式を用いて計算することができる:
Mg=CO1-(CO2x(CO3-pH))、ここで、CO1、CO2およびCO3は、例示的な係数値である。
【0037】
マグネシウム、Mgについての係数CO1はユーザから受け取った体温入力から得られ、係数CO2は標準容認pH範囲(上述)から得られ、係数CO3は中央pH値から得られることに留意すべきである。別の実施例では、カルシウム、Caの含有量は、以下の関係式を用いて計算することができる:
Ca=(Mg+CO1)/CO2、ここで、CO1およびCO2は、例示的な係数値である。
【0038】
カルシウム、Caについての係数CO1はユーザの血液中のpHから得られ、CO2はヘモグロビンから得られることに留意すべきである。したがって、本発明に基づく血液環境パラメータの非侵襲的検査のための器具は、患者の表面からのpO2およびpCO2、体温、および血液中のヘモグロビンの含有量を連続的にモニタリングし、その後に他のパラメータの評価を電子化して外部PCのモニターに結果を表示することができる。
【0039】
本発明の器具は、いわゆるホールデン効果によって用いられるヘモグロビンバッファについての方程式、いわゆるヘンダーソン・ハッセルバルヒの式の数学的表現に基づいて患者の内部環境のモデルで動作し、いわゆるボーア効果に関与するプロセスをシミュレートする、演算ユニットのブロックに格納された数学的ソフトウェアを使用し、これにより、患者の内部環境のモデルにおける呼吸器系および消化器系コンポーネントの正確な指数が、所定の値のCO2の分圧で与えられる新しいパラメータ、いわゆるホールデン効果のシフトを決定する。患者の内部環境のモデルでは、O2の分圧とHbO2の飽和度との関係は、いわゆるヒルの式およびその平衡定数によって与えられる。患者の内部環境のモデルの他のパラメータ、炭酸水素塩の標準的な量、および総O2は、新しいパラメータ「Δph2」を利用した「ヘンダーソン・ハッセルバルヒ」の式の修正によって決定される。「Δph2」として示される新たに定義されたパラメータ「ホールデン効果のシフト」は、血液pHを計算する式のコンポーネントである。
pH=6.1+Δph1+Δph2
ここで、
pH=血液pH
Δph1=ボーアシフト
Δph2=ホールデン効果のシフト
ここで、ボーア効果またはボーア効果のシフトもまた、正確に組織化された生物学系としての患者の血液内部環境のモデルで動作するアルゴリズムに組み込まれる。パラメータおよび結合を計算するプロセスは、この酸塩基イオン分析装置のソフトウェアを含む演算ユニットのブロックで行われる。
【0040】
患者の血液中に含まれる個々のイオン、すなわち患者の血液pHの現在の値に対するCa、MgおよびKの酸塩基およびイオン平衡の関係は、患者の内部環境のモデルにおける別のフィードバックを構成する。このモデルに基づいて、ClおよびNaの値を決定することができるが、これらの関係は、患者の血液内部環境のいわゆる消化器系モデルによってモデル化される。血液中の糖および尿素含有量および浸透圧などの他のパラメータは、次の式を変形して与えられる
浸透圧=2Na+尿素+糖/血糖/。
【0041】
したがって、本発明に基づく血液環境パラメータの非侵襲的検査のための器具、システム、アセンブリ、および方法は、患者の表面からのpO2およびpCO2、体温、および血液中のヘモグロビンの含有量を連続的にモニタリングし、その後に他のパラメータの評価を電子化して、酸塩基平衡、イオン平衡、浸透圧などの形で外部PCのモニターに結果を表示することができる。そのため、主治医は、病理学的プロセスのダイナミクス、患者の健康状態の改善または悪化を継続的にモニタリングすることができる。
【0042】
血液ガスおよびそれに由来するパラメータを非侵襲的にモニタリングできることは、例えば集中治療部門にとって大きな利点である、なぜならば、測定が行われた直後に、測定されたパラメータの結果が装置から提供されるため、医師は迅速に対応することができ、それによって、治療中に起こりうるすべての合併症や、集中治療室での入院期間の長さを低減することができるからである。この技術が病院に経済的利益をもたらすことは疑いの余地がない。
【0043】
本発明による血液環境パラメータの非侵襲的検査のための器具は、患者に不足している物質や治療薬を投与するための電磁投与システムなど、他の装置またはシステムによって拡張することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明による血液環境パラメータの非侵襲的な検査のためのアプリケーションは、病院の大部分の部門、特に集中治療室、麻酔科、および集中治療医学、並びに医師の診察室で役に立つ。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステムであって、
ユーザの血液中のO2の分圧を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(1)、前記ユーザの血液中のCO2の分圧を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(2)、前記ユーザの体温を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(3)、および前記ユーザの血液中のヘモグロビン含有量を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(4)
からなる4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4);
外部電子表示ユニット(11);および
通信インターフェース(12)を備え、複数のアナログおよびデジタル入力(5、6、7、8)の少なくとも1つを介して前記外部電子表示ユニット(11)および前記
4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4)に通信可能に連結された、演算ユニット(9)
を備え、
前記演算ユニット(9)は、その上に常駐してヘモグロビンバッファの方程式または「ヘンダーソン・ハッセルバルヒ」の式の数学的表現に基づいて前記ユーザの内部環境のモデルを用いる数学的ソフトウェアアプリケーションを使用して、かつ、前記
4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4)から受け取った前記ユーザの血液中のO2の分圧、前記ユーザの血液中のCO2の分圧、前記ユーザの体温、および前記ユーザの血液中のヘモグロビン含有量を利用して、ユーザの血液環境パラメータを前記外部電子表示ユニット(11)に表示させるように動作可能に構成される
システム。
【請求項2】
前記演算ユニット(9)が、前記外部表示ユニット(11)または記録ユニットへの出力(13)および前記通信インターフェース(12)への出力(14)を含み、インターネットへの直接およびリモートの両方のアクセスを可能にすることを特徴とする、請求項1に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項3】
前記ユーザの内部環境のモデルのための数学的表現がさらに、
ユーザの内部環境のそれぞれのモデル、すなわち、呼吸器系および消化器系コンポーネントが、いわゆる電子血液の概念で患者の内部環境のサイバネティックスの基本的なフィードバックを構成する場合に、いわゆるボーア効果に関与するプロセスをシミュレートするヘモグロビンバッファについてのホールデン効果を用いることを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項4】
前記ユーザの内部環境のモデルのための数学的表現がさらに、
3kPa~18kPaまたはmmolの値のCO2の分圧で与えられる新しいパラメータ、Δph
2を決定する、前記ユーザの内部環境のモデルにおける呼吸器系および消化器系コンポーネントの正確な指数
を含み、
Δph
2は、血液pHを計算する式のコンポーネントとなり、
pH=6.1+Δph1+Δph2、pH=血液pH、Δph1=ボーアシフト、Δph2=ホールデン効果のシフト
であることを特徴とする、請求項1に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項5】
前記ユーザの内部環境の数学的モデルが、患者の血液内部環境のいわゆる消化器系モデルによって数学的にモデル化される、塩素およびナトリウム値の決定の基礎をなすことを特徴とする、請求項4に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項6】
前記ユーザの内部環境の数学的モデルが、糖、尿素含有量、および、以下の式:
浸透圧=2Na+尿素+糖/血糖/
によって提供される血液浸透圧を含む前記ユーザの血液の他のパラメータの決定の基礎をなすことを特徴とする、請求項4に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【請求項7】
センサと共に経皮電極を用いて、前記ユーザの血液中のO2の分圧を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(1)、および、センサと共に経皮電極を用いて、前記ユーザの血液中のCO2の分圧を測定するよう動作可能に構成されるセンサ(2)から実質的になる前記4つのユーザ入力センサ(1、2、3、4)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のユーザの血液環境パラメータの非侵襲的検査のためのシステム。
【国際調査報告】