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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】医学的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220414BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220414BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K35/17
A61P31/22
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021510533
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(85)【翻訳文提出日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2019061122
(87)【国際公開番号】W WO2019211310
(87)【国際公開日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】1807050.8
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】520423976
【氏名又は名称】エックスエヌケイ・セラピューティクス・アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】XNK Therapeutics AB
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ハレト・ナヒ
(72)【発明者】
【氏名】カール・アルノルド・イェスタ・ガートン
(72)【発明者】
【氏名】エヴレン・アリシ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-グスタフ・エイナル・ユングレン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB271
4C084ZB331
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087NA14
4C087ZB27
4C087ZB33
(57)【要約】
本発明は、一般に、患者におけるヘルペスウイルス再活性化の防止における使用のための抗ウイルス剤に関し、患者は、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けている。加えて、本発明は、患者における悪性疾患の治療における使用のためのNK細胞および/またはNK様T細胞に関し、使用は、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に抗ウイルス剤を投与するステップを含む。本発明はまた、薬学的組成物およびキットに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるヘルペスウイルス再活性化の防止における使用のための抗ウイルス剤であって、前記患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、前記使用が、前記抗ウイルス剤を、前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている前記患者に投与するステップを含む、使用のための抗ウイルス剤。
【請求項2】
患者におけるヘルペスウイルス再活性化を防止するための医薬品の製造における抗ウイルス剤の使用であって、前記患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、前記抗ウイルス剤が、前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている前記患者に投与される、使用。
【請求項3】
患者におけるヘルペスウイルス再活性化を防止するための方法であって、前記患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、前記方法が、前記抗ウイルス剤を、前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている前記患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項4】
前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法が、ヘルペスウイルス再活性化を誘導および/または増加させる、請求項1に記載の使用のための抗ウイルス剤、請求項2に記載の使用、または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、悪性疾患を有する、請求項1~4のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項6】
前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法が、悪性疾患の治療における使用のためのものである、請求項1~5のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項7】
前記悪性疾患が、血液癌である、請求項5または6に記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項8】
前記血液癌が、骨髄腫、リンパ腫、白血病、および/または慢性骨髄増殖性疾患からなる群から選択されるものである、請求項7に記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項9】
前記NK細胞が、表現型CD3CD56を有し、および/または前記NK様T細胞が、表現型CD3CD56を有する、請求項1~8のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項10】
前記NK細胞および/またはNK様T細胞が、エクスビボで増殖されている、請求項1~9のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項11】
前記抗ウイルス剤が、前記患者が前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける前および/またはそれと同時におよび/またはその後に投与される、請求項1~10のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項12】
前記患者が、前記抗ウイルス剤を、前記患者が前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける少なくとも1日前、例えば、前記患者が前記NK細胞および/もしくはNK様T細胞療法を受ける少なくとも2日前、または少なくとも3日前、または少なくとも4日前、または少なくとも5日前、または少なくとも6日前、または少なくとも7日前、または少なくとも8日前、または少なくとも9日前、または少なくとも10日前、または少なくとも20日前、または少なくとも30日前、または少なくとも1か月前に投与される、請求項1~11のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項13】
前記抗ウイルス剤が、前記患者が前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けた少なくとも1日後、例えば、前記患者が前記NK細胞および/もしくはNK様T細胞療法を受けた少なくとも2日後、または少なくとも3日後、または少なくとも4日後に投与される、請求項1~12のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項14】
500~1500mgの前記抗ウイルス剤が、24時間以内に前記患者に投与される、請求項1~13のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項15】
前記抗ウイルス剤が、1回以上の用量で前記患者に投与される、請求項1~14のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項16】
前記抗ウイルス剤が、24時間に250~750mgの2回の用量で前記患者に投与され、好ましくは前記抗ウイルス剤が、24時間に500mgの2回の用量で前記患者に投与される、請求項1~15のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項17】
前記抗ウイルス剤が、少なくとも1か月、例えば、少なくとも2か月、または少なくとも3か月、または少なくとも4か月、または少なくとも5か月、または少なくとも6か月、または少なくとも7か月の期間にわたって前記患者に投与される、請求項1~16のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項18】
前記患者が、高用量療法(HDT)および/または自家幹細胞移植(ASCT)後にNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける、請求項1~17のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項19】
前記患者が、ASCTの3か月~7か月後、例えば、ASCTの3か月後、またはASCTの4か月後、またはASCTの5か月後、またはASCTの6か月後、またはASCTの7か月後にNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける、請求項18に記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項20】
前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法が、1回、または2回、または3回、または4回、または5回以上のNK細胞および/またはNK様T細胞の投与を含む、請求項1~19のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項21】
前記NK細胞および/またはNK様T細胞が、前記患者の体重1kgあたり少なくとも5×10細胞、または前記患者の体重1kgあたり少なくとも50×10細胞、または前記患者の体重1kgあたり少なくとも100×10細胞の投与量で投与される、請求項1~20のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項22】
前記抗ウイルス剤が、バラシクロビル、アシクロビル、ファムシクロビル、および/もしくはペンシクロビルからなる群から選択されるものなどのヌクレオシド類似体、またはそのようなヌクレオシド類似体の活性代謝物、プロドラッグ、塩、溶媒和物、もしくは水和物を含む、請求項1~21のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項23】
前記抗ウイルス剤が、経口、静脈内、皮下、および/または筋肉内投与される、請求項1~22のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項24】
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、および/またはサイトメガロウイルス(CMV)を含む群から選択されるヘルペスウイルスが、前記患者に存在する、請求項1~23のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項25】
前記ヘルペスウイルス再活性化が、前記患者における帯状疱疹を引き起こす、請求項1~24のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項26】
前記患者が、リンパ球枯渇していない、請求項1~25のいずれかに記載の使用のための抗ウイルス剤、方法、または使用。
【請求項27】
患者における悪性疾患の治療における使用のためのナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞であって、前記使用が、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている前記患者に抗ウイルス剤を投与するステップを含む、使用のためのNK細胞および/またはNK様T細胞。
【請求項28】
患者における悪性疾患を治療するための医薬品の製造におけるナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞の使用であって、前記患者に、前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法と共に抗ウイルス剤が投与される、使用。
【請求項29】
患者における悪性疾患を治療するための方法であって、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を投与するステップを含み、前記NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている前記患者に抗ウイルス剤を投与するステップをさらに含む、方法。
【請求項30】
前記悪性疾患が、骨髄腫、リンパ腫、白血病、および/または慢性骨髄増殖性疾患からなる群から選択されるものなどの血液癌である、請求項27~29のいずれかに記載の使用のためのナチュラルキラー(NK)細胞および/もしくはNK様T細胞、使用、または方法。
【請求項31】
前記抗ウイルス剤が、患者におけるヘルペスウイルス再活性化を防止する、請求項27~30のいずれかに記載の使用のためのナチュラルキラー(NK)細胞および/もしくはNK様T細胞、使用、または方法。
【請求項32】
前記ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞療法が、ヘルペスウイルス再活性化を誘導および/または増加させる、請求項27~31のいずれかに記載の使用のためのNK細胞および/もしくはNK様T細胞、使用、または方法。
【請求項33】
前記ヘルペスウイルス再活性化が、前記患者における帯状疱疹を引き起こす、請求項31~32のいずれかに記載の使用のためのナチュラルキラー(NK)細胞および/もしくはNK様T細胞、使用、または方法。
【請求項34】
前記患者が、高用量療法(HDT)および/または自家幹細胞移植(ASCT)後にナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける、請求項27~32のいずれかに記載の使用のためのNK細胞および/もしくはNK様T細胞、使用、または方法。
【請求項35】
前記抗ウイルス剤が、請求項1~34のいずれかにおいて定義される通りである、請求項27~34のいずれかに記載の使用のためのナチュラルキラー(NK)細胞および/もしくはNK様T細胞、方法、または使用。
【請求項36】
前記ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞療法が、請求項1~35のいずれかにおいて定義される通りである、請求項27~35のいずれかに記載の使用のためのNK細胞および/もしくはNK様T細胞、方法、または使用。
【請求項37】
請求項1~36のいずれかにおいて定義されるナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞と、請求項1~36のいずれかにおいて定義される抗ウイルス剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項38】
(i)ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む組成物であって、前記NK細胞および/またはNK様T細胞が、請求項1~37のいずれかにおいて定義される通りである、組成物と、
(ii)請求項1~37のいずれかにおいて定義される抗ウイルス剤と、を含む、キットオブパーツ。
【請求項39】
薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤をさらに含む、請求項37に記載の薬学的組成物、または請求項38に記載のキット。
【請求項40】
添付の特許請求の範囲および実施例を参照して本明細書に実質的に記載される、使用のための抗ウイルス剤、使用、方法、薬学的組成物、またはキットオブパーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者におけるヘルペスウイルス再活性化の防止における使用のための抗ウイルス剤に関し、患者は、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けている。加えて、本発明は、患者における悪性疾患の治療における使用のためのNK細胞および/またはNK様T細胞に関し、使用は、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に抗ウイルス剤を投与するステップを含む。本発明はまた、薬学的組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄における形質細胞のクローン増殖(proliferation)を特徴とする悪性新生物である。MMは、潜在的に治療後に残るMM細胞によるものである、微小残存病変(MRD)の持続のために依然として不治であると考えられる(Alici E,Bjorkstrand B,Treschow A,Aints A,Smith CI,Gahrton G,Dilber MS.Long-term follow-up of gene-marked CD34+ cells after autologous stem cell transplantation for multiple myeloma.Cancer Gene Ther.2007;14(3):227-32)。
【0003】
癌に対する細胞免疫療法の使用は、1980年代半ばにおけるリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の導入以来調査されてきた(Grimm EA.et al.,1982;Rosenberg S.,1985)。移植片対腫瘍効果を誘導するための腫瘍細胞殺滅の潜在性を有する細胞毒性エフェクター細胞の養子移入は、癌に対する魅力的なアプローチである。ナチュラルキラー(NK)およびNK様T細胞は、潜在的な抗腫瘍効果を有する他のエフェクター細胞集団の中で比較的高い細胞毒性能力を構成する(3)。しかしながら、末梢血単核細胞(PBMC)およびLAK細胞などのエフェクター細胞調製物中のこれらの細胞の低い割合は、臨床試験におけるそれらの使用および癌療法としての使用の障壁を表す。
【0004】
本発明者らの以前の研究は、MM患者からの自家NK細胞の長期エクスビボ増殖(expansion)および活性化が、短期活性化自家NK細胞と比較した場合、自家腫瘍細胞に対する有意に優れた細胞毒性活性を提供することができることを示した(Alici E,Sutlu T,Bjorkstrand B,Gilljam M,Stellan B,Nahi H,et al.Autologous antitumor activity by NK cells expanded from myeloma patients using GMP-compliant components.Blood.2008;111(6):3155-62およびSutlu T,Stellan B,Gilljam M,Quezada HC,Nahi H,Gahrton G,et al.Clinical-grade,large-scale,feeder-free expansion of highly active human natural killer cells for adoptive immunotherapy using an automated bioreactor.Cytotherapy.2010;12(8):1044-55)。本発明者らはまた、動物モデルにおけるMM発症の効率的なNK細胞ベースの治療を報告した(Alici E,Konstantinidis KV,Sutlu T,Aints A,Gahrton G,Ljunggren HG,et al.Anti-myeloma activity of endogenous and adoptively transferred activated natural killer cells in experimental multiple myeloma model.Exp Hematol.2007;35(12):1839-46.)。臨床グレードの適正製造基準(GMP)に準拠した成分を使用する閉鎖された自動バイオリアクターにおけるNK細胞増殖のための手順を開発した後、発明者らは、スウェーデン医療製品庁(EudraCT:2010-022330-83)および倫理委員会(EPN:2013/490-32)からヒト初回投与I/II相臨床試験を開始する承認が与えられた(Sutlu T,Stellan B,Gilljam M,Quezada HC,Nahi H,Gahrton G,et al.Clinical-grade,large-scale,feeder-free expansion of highly active human natural killer cells for adoptive immunotherapy using an automated bioreactor.Cytotherapy.2010;12(8):1044-55およびSutlu T,Alici E.Ex vivo expansion of natural killer cells:a question of function.Cytotherapy.2011)。
【0005】
非常に驚くべきことに、臨床試験中、本発明者らは、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けた患者において、ヘルペスウイルス(特に、帯状疱疹として現れた、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV))の再活性化を観察した。周知のように、ヘルペスウイルス再活性化および/または感染によって引き起こされる帯状疱疹および他の状態は、不快な状態であり、現在の文脈において、既に深刻な体調不良であり、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者の生活の質を大幅に低減する。
【0006】
本発明者らの驚くべき発見は、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を使用および管理するための新しいアプローチを示す。
【0007】
したがって、第1の態様では、患者におけるヘルペスウイルス再活性化の防止における使用のための抗ウイルス剤であって、患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、使用が、抗ウイルス剤を、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与するステップを含む、使用のための抗ウイルス剤を提供する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、患者におけるヘルペスウイルス再活性化を防止するための医薬品の製造における抗ウイルス剤の使用であって、患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、抗ウイルス剤が、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与される、使用を提供する。
【0009】
第3の態様では、患者におけるヘルペスウイルス再活性化を防止するための方法であって、患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、方法が、抗ウイルス剤を、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
「ヘルペスウイルス」によって、我々は、ヘルペスウイルス科(またはヘルペスウイルス)として知られるDNAウイルスの大きなファミリーを含む。ヒトに感染することが知られる9つのヘルペスウイルスのタイプ:単純ヘルペスウイルス1および2(HSV-1およびHSV-2)、(ヒトヘルペスウイルス1(HHV-1)およびHHV2としても知られる)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZVまたはHHV-3)、エプスタインバーウイルス(EBVまたはHHV-4)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMVまたはHHV-5)、ヒトヘルペスウイルス6Aおよび6B(HHV-6AおよびHHV-6B)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)、ならびにカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8としても知られる)が存在する。合計で、130を超えるヘルペスウイルスが存在する(Whitley RJ.Herpesviruses.In:Baron S,editor.Medical Microbiology.4th edition.Galveston(TX):University of Texas Medical Branch at Galveston;1996.Chapter 68.)。
【0011】
少なくとも5種のヘルペスウイルス、すなわち、HSV-1およびHSV-2(そのどちらも口唇ヘルペスおよび性器ヘルペスを引き起こし得る)、水痘帯状疱疹ウイルス(水痘および帯状疱疹の原因)、エプスタインバーウイルス(単核球症およびいくつかの癌を含む、いくつかの疾患に関与する)、ならびにサイトメガロウイルスは、ヒトの間で極めて広範に拡散している。成人の90%超はこれらのうちの少なくとも1つに感染しており、潜伏形態のウイルスはほとんどの人々に残っている。
【0012】
「水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)」という用語は、水痘(varicella、chickenpox)および帯状ヘルペス(帯状疱疹)を引き起こすウイルスを表すために使用される。水痘は、ウイルスでの一次感染に起因し、帯状ヘルペスは、同じウイルスによる、または多くの場合、何年も潜伏していた可能性のある感染の再活性化による二次侵入に起因する。
【0013】
上記および付随する実施例で議論されるように、本発明者らは、驚くべきことに、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けている患者におけるVZVの再活性化を同定した。VZVは、二本鎖DNAウイルスであり、単純ヘルペスウイルスと形態学的に同一である。これは水痘および帯状ヘルペス(帯状疱疹)の両方の原因物質であり、影響を受けた感覚神経を伴う後方神経根および神経節の炎症反応を特徴とする。水痘は、ウイルスへの初期曝露に続き、典型的には、特徴的な発疹を伴う比較的軽度の自己限定的な小児疾患であるが、免疫無防備な小児において蔓延し得る。水痘の臨床症状が回復した場合でも、VZVは、三叉神経節および後根神経節において、感染者の神経系において休眠状態のままである(ウイルス潜伏とも呼ばれる)。
【0014】
後年のVZV再活性化は、帯状ヘルペスまたは帯状疱疹として知られる疾患を引き起こす。帯状疱疹の重篤な合併症は、ヘルペス後神経痛(PHN)、多発性帯状疱疹、脊髄炎、眼部帯状ヘルペス、または無疱疹性帯状疱疹を含む。帯状疱疹の一般的な合併症は、数か月またはさらに数年持続し得る慢性の、しばしば消耗性の疼痛状態である、ヘルペス後神経痛(PHN)である。帯状疱疹を有する患者におけるPHNのリスクは、10%~18%である。
【0015】
痛みおよび知覚異常は、典型的には、VZV感染の最初の症状である。特徴的な水疱性発疹が発生するまで、診断は難しい場合がある。症状が異なり得る前駆期が一般的である。疼痛、かゆみ、および知覚異常が一般的な症状である。
【0016】
急性疾患の間、患者は、以下:疼痛、無力感およびうつ病、ならびに/またはインフルエンザ様症状を経験し得る。最も一般的な症状は、帯状疱疹の小水疱性発疹であり、これは最も一般的には胸神経皮膚分節に影響を及ぼし、疼痛および知覚異常の前駆症状後、紅斑性斑点および丘疹が発生し、24時間以内に小水疱に進行する。小水疱は、最終的に固くなり、消失する。疼痛および感覚喪失は、通常の症状であり、運動麻痺も発生し、検査で頻繁に見落とされる。重症例では、VZV腕神経叢神経炎による実際の単麻痺が報告されている(Prevention of herpes zoster:recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP).MMWR Recomm Rep.2008;57(05):1-30)。
【0017】
「単純ヘルペスウイルス」(HSV)という用語は、単純ヘルペス感染の原因ウイルス物質である、HSV1およびHSV2を表すために使用される。
【0018】
HSV1および2は、約50パーセントのゲノム相同性を有するが、ほとんどの他の特徴を共有する。単純ヘルペスウイルス感染の症状としては、歯肉口内炎、性器ヘルペス、ヘルペス性角膜炎、および皮膚ひょう疽が挙げられる。新生児単純ヘルペスウイルス感染および単純ヘルペスウイルス脳炎も発生する。
【0019】
ウイルスは、最初に上皮細胞において複製し、紅斑性基部で特徴的な小水疱を産生する。それは次いで感覚神経を後根神経節まで上行し、初期複製期間後、潜伏を確立する。再活性化された感染の間、ウイルスは、遠位に神経節から広がって、新しい皮膚および/または粘膜病変を開始する。HSV1伝染は主に経口であり、単純ヘルペスウイルス2は主に性器である。伝染には密接な接触が必要である(Whitley RJ.Herpesviruses.In:Baron S,editor.Medical Microbiology.4th edition.Galveston(TX):University of Texas Medical Branch at Galveston;1996.Chapter 68.)。
【0020】
「エプスタインバーウイルス(EBV)」という用語は、バーキットリンパ腫の細胞培養において見られるヘルペスウイルスを表すために使用される。EBVは、伝染性単核球症、およびEBV関連リンパ腫を含む、多くの他の関連する状態/疾患状態における原因物質である。エプスタインバーウイルスは、古典的な単核球症を引き起こす。免疫無防備な宿主では、ウイルスは、リンパ増殖性症候群を引き起こす。いくつかのファミリーでは、エプスタインバーウイルスは、ダンカン症候群を引き起こす。
【0021】
エプスタインバーウイルスは、中咽頭の上皮細胞において、およびβリンパ球において複製する。エプスタインバーウイルスは、特に唾液の交換を介して、密接な接触によって伝染する(Whitley RJ.Herpesviruses.In:Baron S,editor.Medical Microbiology.4th edition.Galveston(TX):University of Texas Medical Branch at Galveston;1996.Chapter 68.)。
【0022】
「サイトメガロウイルス(CMV)」という用語は、典型的には健康な人々では気づかれないが、HIV感染者、臓器移植レシピエント、または新生児などの免疫無防備状態には生命を脅かし得る感染を表すために使用される。それは人口のかなりの割合で見られる。EBVと同様に、血清陽性は、年齢と共に増加する。全てのヒトヘルペスウイルスの複製を阻害するガンシクロビルは、通常、CMVを治療するため、特に網膜炎を治療するために使用される。ホスカルネットも米国では承認されている。サイトメガロウイルスは、3つの臨床症候群を引き起こす:(1)先天性サイトメガロウイルス感染(症候性の場合)は、肝脾腫、網膜炎、発疹、および中枢神経系の関与を引き起こし、(2)年長の小児および成人の約10パーセントにおいて、一次サイトメガロウイルス感染は、発熱、倦怠感、非定型リンパ球増加症、および咽頭炎を伴う単核球症症候群を引き起こし、(3)免疫無防備宿主(移植レシピエントおよびヒト免疫不全ウイルス[HIV]感染個体)は、肺、胃腸管、肝臓、網膜、および中枢神経系に関わる生命を脅かす播種性疾患を発症し得る。
【0023】
サイトメガロウイルスは、主に唾液腺および腎臓において複製し、唾液および尿で排出される。複製は遅く、ウイルスは核内封入体を有する特徴的な巨細胞を誘導する。感染は、感染した分泌物との密接な接触を介する。サイトメガロウイルス感染は、世界で最も蔓延しているウイルス感染の中の1つである(Whitley RJ.Herpesviruses.In:Baron S,editor.Medical Microbiology.4th edition.Galveston(TX):University of Texas Medical Branch at Galveston;1996.Chapter 68.)。
【0024】
周知のように、ウイルスでの感染は、ウイルス粒子が細胞表面上に特定のタイプの受容体分子を有する細胞と接触するときに開始される。ウイルスエンベロープ糖タンパク質の細胞膜受容体への結合後、ビリオンは、内在化および分解され、ウイルスDNAが細胞核に移動することを可能にする。核内では、ウイルスDNAの複製およびウイルス遺伝子の転写が起こる。症候性感染の間、感染した細胞は、溶菌ウイルス遺伝子を転写する。
【0025】
ヘルペスウイルスは、宿主において潜伏していることが知られており、それらは、感染の任意の明らかな兆候なしに何年も存在し得る。そのような細胞では、潜伏関連転写物(LAT)と呼ばれる少数のウイルス遺伝子が蓄積する。この潜伏溶原サイクルの間、ウイルスは、脊髄に隣接する神経節(後根神経節と呼ばれる)および/または頭蓋底の三叉神経節において無症状で休眠(または潜伏)したままであり得る。休眠状態(潜伏/または非活性)のままでいることによって、ウイルスは、細胞(およびよって宿主)において無期限に存続することができる。一次感染は、しばしば自己限定的な期間の臨床疾患を伴うが、長期潜伏は、無症状である。
【0026】
「ヘルペスウイルス再活性化」によって、我々は、ヘルペスウイルス感染につながり得る患者における潜伏および/または休眠および/または不活性および/または内因性ヘルペスウイルスの再活性化などの非一次感染の意味を含む。これは、患者における潜伏ヘルペスウイルス感染に関連する状態または疾患(帯状疱疹など)の発症を含むことができる。我々は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型、エプスタインバーウイルス(EBV)、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)を含む群から選択されるヘルペスウイルスを含む。好ましい実施形態では、ヘルペスウイルスは、VZVである。
【0027】
潜伏ウイルスの再活性化は、多くの疾患(例えば、帯状疱疹およびバラ色粃糠疹)に関与している。再活性化後、ウイルス遺伝子の転写は、潜伏関連LATから複数の溶菌遺伝子に移行し、これらは、向上した複製およびウイルス産生につながる。多くの場合、溶菌活性化は、細胞死につながる。臨床的には、溶菌活性化は、多くの場合、微熱、頭痛、喉の痛み、倦怠感、および発疹などの非特異性症状、ならびに腫れまたは圧痛のあるリンパ節などの臨床症状の出現を伴う。
【0028】
「患者」によって、我々は、医学的治療および/もしくは予防を受けているか、もしくは受けることが意図される対象、またはヘルペスウイルス再活性化の治療および/もしくは防止を必要とする対象の意味を含む。患者は、脊椎動物、例えば、脊椎哺乳動物、例えば、ヒト、または非ヒト哺乳動物、例えば、飼育動物(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、または他の齧歯類)であり得る。好ましくは、患者は、ヒトである。
【0029】
「抗ウイルス剤」によって、我々は、患者におけるヘルペスウイルスの再活性化を防止することができる合成または天然分子または化合物を含む。そのような薬剤は、例えば、細胞外ウイルス粒子を不活性化すること、ならびに/またはウイルス付着および/もしくは細胞侵入を防止すること、ならびに/またはウイルスゲノムの複製を防止すること、ならびに/または特定のウイルスタンパク質(複数可)の合成を防止すること、ならびに/または新しい感染性ビリオンのアセンブリおよび/もしくは放出を防止することによって、抗ウイルス効果を発揮し得る。既知の抗ウイルス剤の例としては、それらの三リン酸形態へのリン酸化後のヌクレオシド類似体ならびにホスホノギ酸およびホスホノ酢酸ならびにそれらの類似体が挙げられる。
【0030】
抗ウイルス剤は、患者におけるヘルペスウイルス再活性化の防止における使用のためであることが理解されるであろう。
【0031】
一実施形態では、抗ウイルス剤は、ワクチンである。
【0032】
代替の実施形態では、抗ウイルス剤は、ワクチンではない。
【0033】
「ヘルペスウイルス再活性化を防止する」によって、我々は、ヘルペスウイルス感染および/または患者における潜在性ヘルペスウイルス感染に関連する状態もしくは疾患(帯状疱疹など)の再活性化を完全または部分的に防止、抑制、および/または低減することを含む。再活性化の防止は、神経組織において休眠状態であるヘルペスの再活性化の防止、および/あるいは感染患者における症状の発生の防止、および/あるいはウイルス再活性化の症状、または患者におけるウイルス再活性化によって引き起こされる状態もしくは疾患の重症度または頻度の低下を含み得る。
【0034】
一実施形態では、患者は、ヘルペスウイルスを再活性化しやすい。さらなる実施形態では、患者は、帯状疱疹を発症しやすい。
【0035】
ヘルペスウイルス再活性化が完全に防止される場合、患者は、ウイルス感染について無症状であろう。いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤は、潜伏ウイルスリザーバーの一部を根絶し、再活性化可能なウイルスの割合の低減をもたらし、したがってヘルペスウイルス再活性化を防止、抑制、および/または低減し得る。ヘルペスウイルス再活性化が低減および/または抑制されると、臨床症状(例えば、頭痛、患部における皮膚の灼熱、うずき、しびれ、またはかゆみ、全体的な体調不良感、高温(発熱)、およびかゆみを伴う水疱に発展し得る発疹など)の期間が短縮され得る。
【0036】
「NK細胞および/またはNK様T細胞療法」によって、我々は、治療目的での患者へのNK細胞および/またはNK様T細胞の投与を含む。患者は、血液癌、固形腫瘍、もしくは慢性ウイルス感染などの悪性疾患を有するか、またはそのような療法を必要とする別の患者であり得る。
【0037】
「NK細胞および/またはNK様T細胞療法」という用語は、治療有効量のNK細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を指すことが理解されるであろう。
【0038】
NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、養子細胞移入(ACT)の一形態、すなわち、患者への細胞の移入であり、2つの用語は、本明細書では交換可能に使用され得ることが理解されるであろう。好ましい実施形態では、細胞は、患者に由来する(自家)。代替の実施形態では、細胞は、別の個体に由来する(異種)。「NK細胞および/またはNK様T細胞療法」および「CellProtect」という用語は、本明細書では交換可能に使用され得る。CellProtectを作製するためのプロトコルを以下に説明し、図5に示す。
【0039】
好ましい実施形態では、NK細胞および/またはNK様T細胞は、エクスビボで増殖および活性化されており、それを必要とする患者に投与される。NK細胞および/またはNK様T細胞の調製は、参照によって本明細書に組み込まれる、以前の刊行物WO 2010/110734に記載される。
【0040】
一実施形態では、NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、少なくとも10%の表現型CD3-CD56+を有するNK細胞を含む。一実施形態では、NK細胞の少なくとも30%は、活性化されたNK細胞である。
【0041】
NK細胞および/またはNK様T細胞は、中枢神経系(CNS)に到達させるために、例えば、中心静脈カテーテルを通して、または静脈内に(IV)、または脳脊髄液に、注入によって投与することができる。投与は、例えば、腫瘍腔への、腫瘍内(すなわち、腫瘍への直接注射)であり得る。
【0042】
好ましい実施形態では、患者は、リンパ球枯渇していない。「患者はリンパ球枯渇していない」によって、我々は、リンパ球枯渇を受けていない患者の意味を含む。リンパ球枯渇は、T細胞、例えば、調節性T細胞などのリンパ球を枯渇させる(すなわち、排除する)非選択的方法である。リンパ球枯渇は、全身照射、化学療法を含む当該技術分野で知られる任意の手段によって、または白血病もしくはHIV/AIDSなどの疾患プロセスの結果として達成することができる。あるいは、リンパ球枯渇は、リンパ球に特異的に結合する抗体を投与することによって達成することができる。リンパ球減少およびリンパ球枯渇は、低減したリンパ球数の状態を説明するために交換可能に使用される。特定の実施形態では、リンパ球枯渇剤の投与後に、患者におけるリンパ球の数が少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、70%、80%、または90%減少した場合、患者は、リンパ球枯渇している。
【0043】
「NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に抗ウイルス剤を投与する」によって、我々は、患者がNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける前、それと同時、またはその後に抗ウイルス剤を投与することを含む。一実施形態では、抗ウイルス剤は、NK細胞および/またはNK様T細胞療法と同時に患者に投与される。
【0044】
好ましい実施形態では、NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、ヘルペスウイルス感染を誘導および/または増加させる。
【0045】
「NK細胞および/またはNK様T細胞療法はヘルペスウイルス再活性化を誘導および/または増加させる」によって、我々は、NK細胞および/またはNK様T細胞療法が、患者におけるヘルペスウイルスの再活性化の完全もしくは部分的な原因であるか、または患者におけるヘルペスウイルスの再活性化を増加させる完全もしくは部分的な原因であるという意味を含む。例えば、NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、ヘルペスウイルス再活性化を、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けていない患者におけるよりも、少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも50倍以上に誘導および/または増加させ得る。
【0046】
ウイルス再活性化を測定するための方法は、当該技術分野で周知であり、ウイルスのコピー数を測定することを含む。加えて、ヘルペスウイルスに対する抗体の定量化は、ヘルペスウイルス再活性化の間接的な尺度として一般的に使用される。加えて、臨床症状は、ヘルペスウイルス再活性化を示すために使用することができる。
【0047】
添付の実施例に記載されるように、臨床試験中、本発明者らは、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けた多くの患者において、VZVの再活性化および帯状疱疹の症状を観察した。理論によって縛られることを望むことなく、本発明者らは、活性化されたNK細胞および/またはNK様T細胞が、養子細胞移入時に、ヘルペスウイルスのリザーバー細胞を攻撃し得、それはひいては、誘導されたストレスにより、ウイルス再活性化を引き起こし得ると考える。
【0048】
したがって、一実施形態では、ヘルペスウイルスは、後根神経節において休眠状態(潜伏性)である。
【0049】
本発明の一実施形態では、患者は、悪性疾患を有する。「悪性疾患」によって我々は、癌を含むがこれに限定されない疾患を含み、進行は、急速であり、一般に、短時間で死亡するおそれがあるか、または死亡する。我々は、固形腫瘍、ウイルス性癌、ならびに直腸結腸癌、脳癌(髄芽腫および膠芽腫など)、神経芽細胞腫、骨癌、上皮細胞由来新生物(上皮癌腫)、基底細胞癌腫、腺癌、消化器癌、口唇癌、口腔癌、食道癌、小腸癌、胃癌、結腸癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、乳癌、皮膚癌(黒色腫など)、扁平上皮癌および基底細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌腫、および肉腫(軟部肉腫など)を含むか、またはそれらからなる群から選択される癌などの悪性腫瘍の意味を含む。
【0050】
本発明の一実施形態では、NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、悪性疾患の治療における使用のためのものである。
【0051】
好ましい実施形態では、悪性疾患は、血液癌である。「血液癌」によって、我々は、骨髄腫、リンパ腫、白血病、および慢性骨髄増殖性疾患を含むか、またはそれらからなる群から選択されるものなどの、血液、骨髄、およびリンパ節に影響を与える癌のタイプを含む。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、血液癌は、骨髄腫、リンパ腫、白血病、および/または慢性骨髄増殖性疾患からなる群から選択されるものである。
【0053】
好ましい実施形態では、血液癌は、多発性骨髄腫(MM)である。
【0054】
一実施形態では、NK細胞は、表現型CD3CD56を有し、および/またはNK様T細胞は、表現型CD3CD56を有する。
【0055】
好ましくは、NK細胞およびNK様T細胞は、エクスビボで増殖されている。例えば、培養は、自動化されたバイオリアクターシステム内の細胞培養バッグ内などの閉鎖された増殖システムにおいて行うことができた(実施例1および図5を参照されたい)。あまり好ましくないが、NK細胞およびNK様T細胞は、組織培養フラスコにおいて増殖されている。そのような方法は、WO 2010/110734(“1:Ex vivo expansion of NK cells and NK-like T cells from peripheral blood”を参照されたい)およびAlici E,et al.,Blood.2008;111(6):3155-62において発明者らによって以前に記載されている。
【0056】
増殖は、好ましくは、細胞の総数が少なくとも約10倍に増殖するまで、または増殖した細胞集団の少なくとも約50%がそれぞれ活性化されたNK細胞およびNK様T細胞を含むまで行われる。例えば、増殖した細胞集団の少なくとも約50%は、表現型CD3CD56を有するNK細胞を含む。
【0057】
一実施形態では、NKおよびNK様T細胞は、エクスビボで活性化され、細胞毒性になっている。一実施形態では、NK細胞およびNK様T細胞は、エクスビボで同時に増殖および活性化されている。「活性化された」とは、NK細胞および/またはNK様T細胞が活性化シグナルを受け取ったことを意味する。活性化されたNK細胞は、MHCクラスI発現の欠損を有する特定の標的細胞を殺滅することができる。NK細胞は、様々な形態で現れ得る活性化シグナルを受け取らなければならず、その中でも最も重要なものは、サイトカイン、Fc受容体、または他の活性化受容体である。細胞はまた、サイトカインおよびケモカインを産生するために活性化することができる。
【0058】
活性化されたNK細胞およびNK様T細胞は、インビトロ細胞毒性試験によって決定されるように増加した細胞毒性を示す。当業者は、当該技術分野で知られる方法を使用して細胞毒性を決定することができる。
【0059】
細胞が増加した細胞毒性を示すかを決定する1つの方法は、標準的な4時間の51Cr放出アッセイを使用して、K562細胞に対する細胞媒介性細胞毒性のインビトロ分析を使用することである。簡潔には、クロム-51を、ヒト癌細胞と37℃で1時間インキュベートし、3回洗浄し、3つのE:T比(20:1、6.66:1、2.22:1)でNK細胞と共培養する。5%Triton-X 100を使用して、全細胞溶解を達成することができる。4時間後、上清を採取し、自動ガンマカウンターにおいて分析する。特異的51Cr溶解を、以下の式:特異的溶解=100×(試験放出-自発的放出)/(最大放出-自発的放出)を用いて計算する。
【0060】
あるいは、脱顆粒アッセイを使用することができる。例えば、K562細胞に対する脱顆粒アッセイ、続いて各リンパ球亜集団における脱顆粒細胞のパーセンテージを測定する。これらのアッセイの両方は、WO 2010/110734に記載される(“3.Evaluation of cell mediated cytotoxicity”を参照されたい)。他のインビトロ細胞毒性試験は、当該技術分野で知られている。
【0061】
一実施形態では、抗ウイルス剤は、患者がNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける前および/またはそれと同時におよび/またはその後に投与される。休眠中のヘルペス感染の再活性化が感知されるか、または疑われる前、すなわち、前駆段階に、抗ウイルス剤の投与を開始することが望ましいことは、理解されるであろう。したがって、好ましくは、抗ウイルス剤は、NK細胞注入の前および/またはそれと同時に投与される。
【0062】
「前に投与される」によって、我々は、患者がNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける前に、抗ウイルス剤が最初に投与されるという意味を含む。「同時に投与される」によって、我々は、患者がNK細胞および/またはNK様T細胞療法と同時に、抗ウイルス剤が最初に投与されるという意味を含む。別の実施形態では、抗ウイルス剤は、NK細胞および/またはNK様T細胞療法の後に投与される。「後に投与される」によって、我々は、患者がNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けた後に、抗ウイルス剤が最初に投与されるという意味を含む。
【0063】
好ましくは、抗ウイルス剤は、患者におけるウイルス感染の第1の症状の出現前に投与される。
【0064】
本発明の一実施形態では、患者は、抗ウイルス剤を、患者がNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける少なくとも1日前、例えば、少なくとも2日前、または少なくとも3日前、または少なくとも4日前、または少なくとも5日前、または少なくとも6日前、または少なくとも7日前、または少なくとも8日前、または少なくとも9日前、または少なくとも10日前、または少なくとも20日前、または少なくとも30日前、または患者がNK細胞および/もしくはNK様T細胞療法を受ける少なくとも1か月前に投与される。
【0065】
一実施形態では、患者は、患者がNK細胞および/またはNK細胞療法を受ける1日前に抗ウイルス剤を投与される。
【0066】
好ましくは、抗ウイルス剤は、患者がNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けた少なくとも1日後、例えば、少なくとも2日後、または少なくとも3日後、または患者がNK細胞および/もしくはNK様T細胞療法を受けた少なくとも4日後に投与される。
【0067】
一実施形態では、抗ウイルス剤は、患者がNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けた少なくとも1日後、例えば、少なくとも2日後、または少なくとも3日後、または少なくとも4日後、または少なくとも5日後、または少なくとも6日後、または少なくとも1週間後、または少なくとも2週間後、または少なくとも3週間後、または患者がNK細胞および/もしくはNK様T細胞療法を受けた少なくとも1か月後に投与される。
【0068】
患者に投与される抗ウイルス剤の用量または量は、意図される目的、すなわち、防止および/もしくは予防のための治療有効量、ならびに/またはウイルスを殺滅もしくは不活化するために有効な量であるべきである。
【0069】
一実施形態では、抗ウイルス剤は、1日体重1kgあたり約1~約100mgの範囲、好ましくは約2~50mg/kg/日の範囲内、最も好ましくは3~20mg/kg/日の範囲の適切な用量で投与される。所望の用量は、便利に、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば、1日あたり2、3、4回以上の部分用量として提示され得る。一実施形態では、500~1500mgの抗ウイルス剤が24時間以内に患者に投与される。言い換えれば、任意の日に、患者は、500~1500mgの抗ウイルス剤を受けるであろう。
【0070】
特定の患者のための特定の治療有効用量は、治療される障害および障害の重症度を含む様々な因子;使用される特定の薬剤(複数可)の活性;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食事;投与時間;投与経路;使用される特定の薬剤(複数可)の排泄率;治療期間;使用される特定の薬剤(複数可)と組み合わせて、または同時に使用される薬物、および医学分野で周知の同様の因子に依存するであろう。例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで薬剤の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、十分に当業者の技術の範囲内である。必要に応じて、有効な1日用量は、投与の目的で複数回の用量に分割され得る。結果として、単回用量組成物は、1日用量を構成するためにそのような量または約数を含有し得る。
【0071】
したがって、一実施形態では、抗ウイルス剤は、1回以上の用量で患者に投与される。一実施形態では、抗ウイルス剤は、1、2、3、4、5、または6回の用量で患者に投与される。好ましい実施形態では、抗ウイルス剤は、2回の用量で患者に投与される。言い換えれば、患者は、抗ウイルス剤を1日2回受ける。
【0072】
好ましくは、抗ウイルス剤は、24時間に250~1500mg、例えば、24時間に250mg、または24時間に300mg、または24時間に400mg、または24時間に500mg、または24時間に600mg、または24時間に700mg、または24時間に800mg、または24時間に900mg、または24時間に1000mg、または24時間に1100mg、または24時間に1200mg、または24時間に1300mg、または24時間に1400mg、または24時間に1500mgの用量で患者に投与される。
【0073】
好ましくは、抗ウイルス剤は、24時間に250~750mgの2回の用量で患者に投与され、好ましくは抗ウイルス剤は、24時間に500mgの2回の用量で患者に投与される。
【0074】
抗ウイルス剤の投与は、単一の事象として、または治療の時間経過にわたって起こり得ることが理解されるであろう。例えば、1つ以上の抗ウイルス剤を、毎時間(例えば、1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎など)、毎日、毎日2回、毎週、隔週、または毎月投与することができる。特定の条件は、予防を数日から数週間まで延長し得る。例えば、予防は、1週間、2週間、または3週間にわたって延長し得るか、または予防は、数週間~数か月まで延長し得る。
【0075】
したがって、一実施形態では、抗ウイルス剤は、少なくとも1か月、例えば、少なくとも2か月、または少なくとも3か月、または少なくとも4か月、または少なくとも5か月、または少なくとも6か月、または少なくとも7か月の期間にわたって患者に投与される。さらなる実施形態では、抗ウイルス剤は、最大100日の期間にわたって患者に投与される。好ましい実施形態では、抗ウイルス剤は、最大7か月、例えば、6か月の期間にわたって患者に投与される。さらに好ましい実施形態では、500mgの抗ウイルス剤は、24時間に2回、6か月の期間にわたって患者に投与される。
【0076】
いくつかの場合において、抗ウイルス剤は、7か月超、例えば、8か月または9か月の期間にわたって投与されることが理解されるであろう。
【0077】
一実施形態では、患者は、高用量療法(HDT)および/または自家幹細胞移植(ASCT)後にNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける。
【0078】
「高用量療法(HDT)」によって、我々は、「集中療法」とも呼ばれる高用量化学療法を含む。多発性骨髄腫を有する患者では、HDTは、メルファラン(商品名:Alkeran)、シクロホスファミド(商品名:Cytoxan)、ドキソルビシン(商品名:Adriamycin)、リポソームドキソルビシン(商品名:Doxil)、および/またはパノビノスタット(商品名:Farydak)での化学療法を含む。HDTは、複数回の化学療法を含み得る。
【0079】
「自家幹細胞移植(ASCT)」によって、我々は、患者自身の血液または骨髄から得られる幹細胞を含む移植を含む。
【0080】
代替の実施形態では、幹細胞移植は、同種異系移植であり、幹細胞または骨髄は、一致する組織型を有するドナー(例えば、近親者)から得られる。代替の実施形態では、幹細胞移植は、同系移植であり、幹細胞または骨髄は、一卵性双生児から得られる。
【0081】
好ましくは、幹細胞移植は、自家(ASCT)である(Gertz,M.A., & Dingli,D.(2014).How we manage autologous stem cell transplantation for patients with multiple myeloma.Blood,124(6),882-890.Accessed March 25,2018)。
【0082】
高用量化学療法、続いて自家末梢血幹細胞移植(ASCT)は、現在、65歳以下の多発性骨髄腫を有する患者のための標準的な治療アプローチである。
【0083】
さらなる実施形態では、患者は、ASCTの3~7か月後、例えば、ASCTの3か月、4か月、5か月、6か月、または7か月後にNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける。好ましくは、患者は、ASCTの6か月後にNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける。
【0084】
一実施形態では、NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、NK細胞および/またはNK様Tの1回、または2回、または3回、または4回、または5回の投与を含む。好ましくは、患者は、NK細胞および/またはNK様T細胞の3回の投与を受ける。
【0085】
さらなる実施形態では、NK細胞および/またはNK様T細胞は、患者の体重1kgあたり5×10~100×10細胞の投与量で、例えば、患者の体重1kgあたり少なくとも5x10細胞、または患者の体重1kgあたり少なくとも50×10細胞、または患者の体重1kgあたり少なくとも100×10細胞で投与される。好ましい実施形態では、患者は、1週間の間隔内で、体重1kgあたり5×10、50×10、および最大100×10細胞の漸増用量で、NK細胞および/またはNK様T細胞の3回の投与を受ける。
【0086】
上記で議論されるように、本発明の文脈において適用可能である抗ウイルス剤は、宿主細胞への付着、ウイルス遺伝子および/または酵素の宿主細胞への放出、宿主細胞機構を使用するウイルス成分の複製、ウイルス成分の完全なウイルス粒子へのアセンブリ、ならびに新たな宿主細胞に感染するウイルス粒子の放出のうちの1つ以上から選択される、ウイルスのライフサイクルの段階のいずれかを標的とするものである。
【0087】
ヘルペスウイルスに対して使用される典型的な抗ウイルス薬は、ウイルス複製に干渉し、ウイルスの複製速度を効果的に減速し、免疫反応が介入するより多くの機会を提供することによって機能する。
【0088】
抗ウイルス剤は、ウイルスDNAポリメラーゼに作用する薬剤、例えば、それらの三リン酸形態へのリン酸化後のヌクレオシド類似体ならびにホスホノギ酸およびホスホノ酢酸ならびにそれらの類似体を含む群から選択することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤は、ステアリン酸バロマシクロビル(EPB-348)、オクタデシルオキシエチル-シドフォビル(ODE-CDV、CMX-001)、ヘキサデシルオキシプロピル-シドフォビル(HDP-CDV)、アバカビル、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アザナビル、アトリプラ、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、侵入阻害剤、抗レトロウイルス、フォミビルセン、ホスアンプレナビル、融合阻害剤、ガーダシル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロピナビル、ロビリド、MK-0518、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサビル、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、相乗的エンハンサー、テノフォビル、テノフォビルディスプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、トルバダ、バラビブロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、A-5021([1’S,2’R)-9[[1’2’-ビス(ヒドロキシメチル)シクロプロプ-1’-イル]-メチル]グアニン])、シクロプロパビル(CPV、ZSM-l-62)、2,4-ジアミノ-6-R43-ヒドロキシ-2(ホスホノメトキシ)プロポキシ]-ピリミジン(HPMPO-DaPy)、N-(4-クロロベンジル)-1-メチル-6-(4-モルホリニルメチル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(PNU-183792)、2-ブロモ-5,6-ジクロロ-1-(ベータ-D-リボフラノシル)ベンズイミダゾール(BDCRB)、1-(ベータ-L-リボフラノシル)-2-イソプロピルアミノ-5,6-ジクロロベンズイミダゾール(マリバビル、1263W94)、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-N[4-{[(5-ジメチルアミノ)-1-ナフチル-スルホニル}-アミノ)フェニル}プロパミド(BAY 38-4766)、4-(2-アミノ-4-チアゾリル)フェニル誘導体(BILS 179BS)、N45-(アミノスルホニル)-4-メチル-1,3-チアゾール-2-イル]-N-メチル-2-{4-(2-ピリジニル)フェニル}アセトアミド(BAY 57-1293)、2H-3-(4-クロロフェニル)-3,4-ジヒドロ-1,4-ベンゾ-チアジン-2-カルボニトリル-1-オキシドまたは1,1-ジオキシド、および2-クロロ-3-ピリジン-3-イル-5,6,7,8-テトラヒドロニンドリジン-1-カルボキサミド(CMV423)を含む群から選択される抗ウイルス剤である。
【0090】
したがって、一実施形態では、抗ウイルス剤は、バラシクロビル、アシクロビル、ファムシクロビル、および/もしくはペンシクロビルからなる群から選択されるものなどのヌクレオシド類似体、またはそのようなヌクレオシド類似体の活性代謝物、プロドラッグ、塩、溶媒和物、もしくは水和物を含む。抗ウイルス活性を有する他のヌクレオシド類似体は、当該技術分野で知られる標準的な方法によって同定され得る。一実施形態では、抗ウイルス剤は、バラシクロビルまたはそのプロドラッグもしくは塩、アシクロビルまたはそのプロドラッグもしくは塩、ファムシクロビルまたはそのプロドラッグもしくは塩、および/あるいはペンシクロビルまたはそのプロドラッグもしくは塩を含む群から選択される。
【0091】
本発明の抗ウイルス剤は、1つ以上の抗ウイルス剤の混合物を含み得ることが理解されるであろう。好ましい実施形態では、500mgのバラシクロビルは、NK細胞および/またはNK様T細胞療法の前およびその間に、24時間以内に2回の用量で6か月の期間にわたって患者に投与される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、開示される化合物または化合物の薬学的に許容される形態を得るためにインビボで変換される化合物を指す。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、生理学的条件下で、または本明細書に記載されるような生物学的に活性な化合物への加溶媒分解によって、変換され得る化合物である。よって、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される生物学的に活性な化合物の前駆体を指す。プロドラッグは、患者に投与される場合に不活性であり得るが、次いで、例えば、加水分解(例えば、血液または組織における加水分解)によって、インビボで活性化合物に変換される。特定の場合において、プロドラッグは、プロドラッグが由来する親化合物に対して物理および/または送達特性を改善している。プロドラッグは、多くの場合、哺乳動物生物における可溶性、組織適合性、または遅延放出の利点を提供する。
【0093】
アシクロビルおよびペンシクロビルは両方、ウイルスDNAポリメラーゼの基質として作用することによって、ウイルス複製を阻害するグアノシン類似体である。バラシクロビルは、プロドラッグであり、より高い経口バイオアベイラビリティを有するアシクロビルのエステル化バージョンである。ファムシクロビルは、改善された経口バイオアベイラビリティを有するペンシクロビルのプロドラッグ形態である。以下の抗ウイルス剤は、全て非環式グアノシンの類似体であり、市販されている:Zovirax(登録商標)(アシクロビル)、Valtrex(登録商標)(バラシクロビル)、Denavir(登録商標)(ペンシクロビル)、およびFamvir(登録商標)(ファムシクロビル)。
【0094】
抗ウイルス活性を有する他のヌクレオシド類似体は、当該技術分野で知られており、本発明の文脈で使用され得る。例えば、ブロモビニルデオキシウリジン(ブリブジン)は、HSV-1およびVZVに対する選択的な活性を有する非常に強力なチミジンヌクレオシド類似体である。二環式ピリミジンヌクレオシド類似体(BCNA)は、抗ウイルス活性を有することが理解されている。
【0095】
本発明の文脈における使用のための抗ウイルス剤は、ワクチンも含む。Zostavax(登録商標)は、帯状疱疹および帯状疱疹に続く長期持続性神経痛である帯状疱疹関連のヘルペス後神経痛(PHN)を予防するために使用される、生、弱毒化水痘帯状疱疹ワクチンである。ワクチンは、皮下(SC)または筋肉内(IM)に注射することができる。Shingrix(登録商標)は、帯状疱疹(shingles、zoster)を予防し、PHNの全体的な発生率を低減するために使用される、非生、組換えサブユニット水痘帯状疱疹ワクチンである。それは、抗原、糖タンパク質E、およびアジュバントシステムを組み合わせる。ワクチンは、筋肉内(IM)に注射することができる。
【0096】
本発明の抗ウイルス剤はまた、その薬学的に許容される塩または溶媒和物の形態で利用され得ることが当業者によって理解されるであろう。抗ウイルス剤の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機酸または塩基から形成される従来の塩、および第四級アンモニウム塩を含む。好適な酸性塩のより具体的な例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、パルモ酸、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、ステロ酸、タンニン酸などが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それ自体は薬学的に許容されないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩を得ることにおいて中間体として有用な塩の調製において有用であり得る。好適な塩基性塩のより具体的な例としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、およびプロカイン塩が挙げられる。
【0097】
抗ウイルス剤は、非経口投与によって投与され得る。非経口投与によって、我々は、体内に直接注射し、皮膚および粘膜をバイパスすることなど、任意の非経口投与手段を含む。一般的な非経口経路は、筋肉内(IM)、皮下(SC)、および静脈内(IV)である。
【0098】
本発明の一実施形態では、抗ウイルス剤は、経口、静脈内、皮下、静脈内、および/または筋肉内投与される。
【0099】
一実施形態では、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、および/またはサイトメガロウイルス(CMV)を含む群から選択されるヘルペスウイルスが患者に存在する。一実施形態では、ヘルペスウイルスは、休眠状態(潜伏性)である。この患者は、「血清陽性」と呼ばれ得ることが理解されるであろう。
【0100】
「血清陽性」によって、我々は、特定の生物、抗原、またはウイルスへの以前の曝露を示す、患者からの血清中の抗体または他の免疫マーカーの存在を含む。患者は、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受ける前に水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、およびサイトメガロウイルス(CMV)を含む群から選択されるヘルペスウイルスのうちの1つ以上について血清陽性であり得ることが理解されるであろう。患者における潜伏ウイルスの存在を決定するための方法は、当該技術分野で知られており、例えば、RT-PCRなどのPCRである。
【0101】
一実施形態では、ヘルペスウイルス感染は、帯状疱疹を引き起こす。
【0102】
抗ウイルス剤は、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けている患者における帯状疱疹を予防するために使用することができることが理解されるであろう。抗ウイルス剤はまた、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けている患者において、帯状疱疹関連のヘルペス後神経痛(PHN)、多発性帯状疱疹、脊髄炎、眼部帯状ヘルペス、または無疱疹性帯状疱疹などの帯状疱疹の重篤な合併症を予防するために使用することができることが理解されるであろう。
【0103】
第4の態様では、本発明は、患者における悪性疾患の治療における使用のためのナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞であって、使用が、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に抗ウイルス剤を投与するステップを含む、使用のためのNK細胞および/またはNK様T細胞を提供する。
【0104】
第5の態様では、本発明は、患者における悪性疾患を治療するための医薬品の製造におけるナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞の使用であって、患者が、NK細胞および/またはNK様T細胞療法と共に抗ウイルス剤を受ける、使用を提供する。
【0105】
第6の態様では、本発明は、患者における悪性疾患を治療するための方法であって、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を投与するステップを含み、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に抗ウイルス剤を投与するステップをさらに含む、方法を提供する。
【0106】
本発明の一実施形態では、抗ウイルス剤は、患者におけるヘルペスウイルス感染を予防する。本発明の一実施形態では、ヘルペスウイルス感染は、ヘルペスウイルスの再活性化を含む。ヘルペスウイルスは、本発明の第1、第2、および第3の態様に関連して上述されるものを含み得ることが理解されるであろう。
【0107】
本発明の一実施形態では、NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、ヘルペスウイルス再活性化を誘導および/または増加させる。NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、本発明の第1、第2、および第3の態様に関連して上述されるものを含むことが理解されるであろう。
【0108】
本発明の一実施形態では、患者は、高用量療法(HDT)および/または自家幹細胞移植(ASCT)後にNK細胞および/またはNK様T細胞療法を受ける。
【0109】
本発明の一実施形態では、抗ウイルス剤は、本発明の第1、第2、および第3の態様の文脈において上記で定義される通りである。
【0110】
第7の態様では、本発明は、NK細胞および/またはNK様T細胞と、本発明の第1、第2、および第3の態様の文脈において上記で定義される抗ウイルス剤と、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0111】
一実施形態では、薬学的組成物は、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤をさらに含む。「薬学的に許容される」とは、組成物または製剤が無菌でパイロジェンフリーであることを含む。適切な薬学的担体、希釈剤、および賦形剤は、薬学の分野で周知である。担体(複数可)は、阻害剤と相溶性であり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容され」なければならない。典型的には、担体は、水または生理食塩水であり、無菌でパイロジェンフリーであるが、他の許容される担体が使用され得る。
【0112】
薬学的組成物は、意図される目的、すなわち、防止もしくは予防のための治療有効量の抗ウイルス剤、および/またはウイルスを殺滅もしくは不活化するために有効な量で含むことが理解されるであろう。
【0113】
本発明の一実施形態では、薬学的組成物は、患者におけるヘルペスウイルス感染の予防における使用のためのものであり、患者は、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、使用は、薬学的組成物を、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与するステップを含む。
【0114】
さらなる実施形態では、本発明は、患者におけるヘルペスウイルス感染を予防するための医薬品の製造における薬学的組成物の使用であって、患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、薬学的組成物が、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与される、使用を提供する。
【0115】
一実施形態では、本発明は、患者におけるヘルペスウイルス感染を予防するための方法であって、患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、方法が、薬学的組成物を、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0116】
以下は、有効成分が本明細書で定義される抗ウイルス剤である、本発明による薬学的製剤および/または組成物である。
【0117】
製剤または組成物は、経口および非経口(例えば、注射による、またはデポ錠剤による皮下、皮内、髄腔内、例えば、デポによる筋肉内、および静脈内を含む)投与に適したものを含むが、最も好適な経路は、例えば、レシピエントの状態、年齢、および障害、ならびに治療されているウイルス感染または疾患に依存し得る。
【0118】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物または製剤は、非経口投与用であり、より具体的には、静脈内または皮下投与用である。好ましい実施形態では、薬学的組成物は、例えば、注射による、患者への静脈内または皮下投与に適している。
【0119】
非経口投与に適した製剤または組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性および非水性滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液を含む。
【0120】
好ましくは、製剤は、有効成分の、1日用量または単位、1日部分用量またはその適切な画分を含有する単位投与量である。
【0121】
薬剤または有効成分は、経口または任意の非経口経路によって、有効成分を含む薬学的製剤の形態で、任意に非毒性有機、または無機、酸、または塩基、付加塩の形態で、薬学的に許容される剤形で投与され得る。治療される障害および患者、ならびに投与経路に応じて、組成物は、様々な用量で投与され得る。
【0122】
ヒト療法において、薬剤または有効成分は、一般に、意図された投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択される好適な薬学的賦形剤、希釈剤、または担体と混合して投与されるであろう。
【0123】
例えば、薬剤または有効成分は、錠剤、カプセル、オブール、エリキシル、溶液、または懸濁液の形態で経口、口腔、または舌下投与され得、これは、即時、遅延、または制御放出適用のために、香味剤または着色剤を含有し得る。有効成分はまた、陰茎海綿体内注射を介して投与され得る。
【0124】
好適な錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、およびグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ、またはタピオカデンプン)、デンプングリコレール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、および特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、およびアカシアなどの造粒結合剤を含有し得る。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、およびタルクなどの潤滑剤が含まれ得る。
【0125】
同様のタイプの固体組成物はまた、ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。この点に関して好ましい賦形剤は、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、または高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液および/またはエリキシル剤について、本発明の化合物は、様々な甘味料または香味料、色素または染料、乳化剤および/または懸濁剤、ならびに水、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの希釈剤、ならびにそれらの組み合わせと組み合わされ得る。
【0126】
薬剤または有効成分はまた、非経口、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、または皮下投与することができ、あるいはそれらは注入技法によって投与され得る。それらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするために十分な塩またはグルコースを含み得る滅菌水溶液の形態で最もよく使用される。水溶液は、必要に応じて好適に(好ましくはpH3~9に)緩衝されるべきである。滅菌条件下の好適な非経口用製剤の調製は、当業者には周知の標準的な薬学的技術によって容易に達成される。
【0127】
製剤は、単位用量または複数用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアル内に提示されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時注射液および懸濁液は、以前に記載した種類の滅菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製され得る。
【0128】
ヒト患者への経口および非経口投与について、薬剤、抗体、または化合物の1日投与量レベルは、通常、単回または分割投与される、成人1人あたり1~1,000mg(すなわち、約0.015~15mg/kg)であろう。
【0129】
よって、例えば、薬剤または有効成分の錠剤またはカプセルは、必要に応じて、一度に単回または2回以上の投与のために、1mg~1,000mgの薬剤または活性薬剤を含有し得る。いずれにしても、医師は個々の患者に最も好適であろう実際の投与量を決定し、それは特定の患者の年齢、体重、および反応によって変動するであろう。上述の投与量は平均的な場合の例示である。当然ながら、より高いかまたはより低い投与量範囲が妥当である個々の症例があり得、それらも本発明の範囲内に含まれる。
【0130】
薬剤または有効成分は、鼻腔内にまたは吸入によっても投与することができ、便利に、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロ-エタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A3もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素、または他の好適なガスの使用と共に、加圧容器、ポンプ、スプレー、またはネブライザーからの乾燥粉末吸入器またはエアロゾルスプレー提示の形態で送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するための弁を備えることによって決定されてもよい。加圧容器、ポンプ、スプレー、またはネブライザーは、例えば、エタノールと、溶媒としての噴射剤との混合物を使用して、有効成分の溶液または懸濁液を含有し得、これはさらに、滑沢剤、例えば、トリオレイン酸ソルビタンを含有し得る。吸入器または注入器における使用のためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチン製)は、有効成分とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有するように製剤化され得る。そのような製剤は、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胸膜肺芽腫、またはカルチノイド腫瘍などの肺の固形腫瘍を治療するために特に有用であり得る。
【0131】
エアロゾルまたは乾燥粉末製剤は、好ましくは、各計量された用量または「一吹き」が、患者への送達のために少なくとも1mgの阻害剤を含有するように調整される。エアロゾルを用いた全体的な1日用量は患者ごとに異なり、単回用量で、より一般的には、1日を通して分割された用量で投与され得ることを理解されたい。
【0132】
あるいは、薬剤または有効成分は、特に結腸、直腸、または前立腺腫瘍を治療または標的化するために、坐剤またはペッサリーの形態で投与することができる。
【0133】
一実施形態では、薬剤または有効成分は、注射可能な持続放出薬物送達システムを使用して送達され得る。これらは、注射の頻度を低減するために特に設計される。そのようなシステムの例は、生分解性ミクロスフェアに組換えヒト成長ホルモン(rhGH)をカプセル化するニュートロピンデポであり、注射されると、持続期間にわたってゆっくりとrhGHを放出する。
【0134】
薬剤または有効成分は、必要な部位に、例えば、眼腫瘍を治療するために眼内に薬物を直接放出する外科的に埋め込まれたデバイスによって投与することができる。疾患の部位へのそのような直接適用は、重篤な全身性副作用なしに効果的な療法を達成する。
【0135】
薬剤または有効成分の送達のための代替方法は、感熱性であるRegel注射システムである。体温未満では、Regelは、注射可能な液体であるが、体温ですぐにゲルリザーバーを形成し、ゆっくりと腐食し、既知の安全な生分解性ポリマーに溶解する。生体高分子が溶解するにつれて、活性薬物が経時的に送達される。
【0136】
ポリペプチド薬剤は、経口投与することもできる。プロセスは、タンパク質およびペプチドを同時送達する体内のビタミンB12の経口摂取のための天然プロセスを使用する。ビタミンB12摂取システムに乗ることによって、タンパク質またはペプチドは、腸壁を通って移動することができる。複合体は、ビタミンB12類似体と薬物との間で合成され、複合体のビタミンB12部分の内因子(IF)についての有意な親和性および複合体の薬物部分の有意な生物活性の両方を保持する。
【0137】
ポリヌクレオチドは、以下に記載されるように好適な遺伝子構築物として投与され、それが発現する患者に送達され得る。典型的には、遺伝子構築物中のポリヌクレオチドは、細胞において化合物を発現することができるプロモーターに作動可能に連結している。本発明の遺伝子構築物は、当該技術分野、例えば、Sambrook et al(2001)で周知の方法を使用して調製することができる。
【0138】
ポリヌクレオチドの送達のための遺伝子構築物は、DNAまたはRNAであり得るが、それらがDNAである場合が好ましい。
【0139】
好ましくは、遺伝子構築物は、ヒト細胞への送達に適合される。遺伝子構築物を細胞に導入する手段および法は、当該技術分野で知られ、免疫リポソーム、リポソーム、ウイルスベクター(ワクシニア、改変ワクシニア、レンチウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを含む)の使用、ならびに例えば、遺伝子銃およびエレクトロポレーションを使用する、DNAの直接送達によるものを含む。さらに、治療のために患者の標的組織にポリヌクレオチドを送達する方法もまた、当該技術分野で周知である。代替の方法では、DNA高分子を細胞に運搬するために受容体媒介性エンドサイトーシスを使用する高効率核酸送達システムが使用される。これは、鉄輸送タンパク質トランスフェリンを、核酸に結合するポリカチオンにコンジュゲートすることによって達成される。Cotten et al(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,6094-6098の方法によって産生される欠損または化学的に不活性化されたアデノウイルス粒子のエンドソーム破壊活性を使用する、本発明のDNA構築物または他の遺伝子構築物の高効率受容体媒介性送達も使用され得る。「裸のDNA」およびカチオン性および中性脂質と複合体を形成したDNAもまた、治療される個体の細胞に本発明のDNAを導入するのに有用であり得ることが理解されるであろう。遺伝子療法への非ウイルス的アプローチは、Ledley(1995,Human Gene Therapy 6,1129-1144)に記載される。
【0140】
癌/特定の組織の腫瘍について、ポリヌクレオチド阻害剤をコードするベクターにおいて組織特異的プロモーターを使用することが有用であり得るが、癌/腫瘍以外の場所での体内の有効成分の発現のリスクが、癌/腫瘍に罹患している患者への治療上の利益と比較して、許容できると予想されるため、これは必須ではない。細胞におけるポリヌクレオチド阻害剤の発現を一時的に調節することができることは、所望であり得るが、これも必須ではない。
【0141】
本発明の薬剤または有効成分(すなわち、抗ウイルス剤)は、保存のために凍結乾燥され、使用前に好適な担体中で再構成され得る。任意の好適な凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーキ乾燥)、および/または再構成技法を用いてもよい。凍結乾燥および再構成は、様々な程度のタンパク質活性損失をもたらし得、使用レベルを上方調節して補う必要があり得ることが、当業者によって理解されるであろう。一実施形態では、凍結乾燥(フリーズドライ)有効成分は、再水和されるとき、(凍結乾燥前の)その活性のうちの約20%以下、または約25%以下、または約30%以下、または約35%以下、または約40%以下、または約45%以下、または約50%以下を損失する。
【0142】
予防における使用のために必要な抗ウイルス剤の量は、治療される状態の性質ならびに患者の年齢および状態によって異なり、最終的には主治医の裁量によることが理解されるであろう。しかしながら、一般に、成人治療に使用される用量は、典型的には、1日あたり0.02~5000mg、好ましくは1日あたり100~1500mgの範囲であろう。所望の用量は、便利に、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば、1日あたり2、3、4回以上の部分用量として提示され得る。本発明による製剤は、0.1~99%の有効成分、便利に、錠剤およびカプセルについて30~95%、液体製剤について3~50%を含有し得る。
【0143】
もちろん、当業者は、本発明の組成物を不安定にするか、またはそれらの治療活性を損なうことなく、特定の投与経路のための多数の製剤を提供するために、本明細書の教示内で製剤を改変し得る。患者への最大限の有益な効果について本化合物の薬物動態を管理するために、特定の化合物の投与経路および投与量レジメンを改変することも、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0144】
第8の態様では、本発明は、
(i)NK細胞および/またはNK様T細胞を含む組成物であって、NK細胞および/またはNK様T細胞が、本明細書において定義される通りである、組成物と、
(ii)本明細書において定義される抗ウイルス剤と、を含む、キットオブパーツを提供する。
【0145】
一実施形態では、キットは、薬学的組成物の文脈において上述されるものなどの、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤をさらに含む。さらなる実施形態では、キットは、NK細胞および/もしくはNK様T細胞ならびに/または抗ウイルス剤を患者に投与するための説明書をさらに含む。
【0146】
一実施形態では、本発明の第1、第2、および第3の態様の文脈において上述されるように、抗ウイルス剤は、患者におけるヘルペスウイルス再活性化の防止における使用のためのものである。
【0147】
好ましい実施形態では、本発明の第1、第2、および第3の態様の文脈において上述されるように、ヘルペスウイルス感染は、ヘルペスウイルスの再活性化を含む。
【0148】
一実施形態では、本発明の第1、第2、および第3の態様の文脈において上述されるように、NK細胞および/またはNK様T細胞療法は、ヘルペスウイルス再活性化を誘導および/または増加させる。
【0149】
本発明の一実施形態では、キットオブパーツは、患者におけるヘルペスウイルス感染の予防における使用のためのものであり、患者は、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、使用は、キットオブパーツの成分を、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与するステップを含む。
【0150】
さらなる実施形態では、本発明は、患者におけるヘルペスウイルス感染を予防するための医薬品の製造におけるキットオブパーツの使用であって、患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、キットオブパーツの成分が、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与される、使用を提供する。
【0151】
一実施形態では、本発明は、患者におけるヘルペスウイルス感染を予防するための方法であって、患者が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはNK様T細胞を含む療法を受けており、方法が、キットオブパーツの成分を、NK細胞および/またはNK様T細胞療法を受けている患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0152】
本発明の第4、第5、第6、第7、および第8の態様の特徴は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通りであり得ることが理解されるであろう。
【0153】
本明細書で参照される全ての文献は、参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0154】
本明細書における明らかに先に公表された文献のリストまたは議論は、文献が最新技術の一部であるか、または共通の一般知識であることを認めるものと必ずしも解釈されるべきではない。
【0155】
ここで、以下の図面および実施例を参照して本発明を説明する。
【0156】
本発明の特定の態様を具体化する好ましい非限定的な実施例を、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0157】
図1】「CellProtect」安全性試験概略図:多発性骨髄腫(ACP-001)を有する患者における、自家エクスビボ増殖および活性化されたNK細胞製品である「CellProtect」の安全性試験。
図2】「CellProtect」治療の臨床有効性6人の患者は、3用量の「CellProtect」(矢印で示される)が注入された。2人の患者は、注入時に測定可能なM成分を有した。これらの患者は両方とも、血清M成分(腫瘍負荷のバイオマーカー)の少なくとも50%低減で奏効した。この低減は、臨床「奏効」(Pt 103)および(Pt 105)とみなされる。注入の5か月後、これらの患者のうちの1人は再発した(Pt 105)。検出可能なM成分を有する1人の患者は、CellProtect注入後に改善された奏効を示した(Pt 107)。他の3人の患者は、注入前にいかなる量のM成分も示さなかった(図示せず)。完全寛解(CR)の患者は、治療および臨床フォローアップの経過中に全く再発しなかった。
図3】「CellProtect」注入および再活性化タイムライン最初の4人の患者の、以前のASCTの文脈における注入および再活性化タイムラインの要約。「患者1」は患者103、「患者2」は患者105、「患者3」は患者106、「患者4」は患者107である。
図4】ASCTからNK細胞注入までの時間とNK細胞注入からHZの発症までの時間との間の相関ASCTからNK細胞注入までの時間とNK細胞注入からHZの発症までの時間との間の相関を示すグラフ。「患者3」は患者103、「患者4」は患者105、「患者5」は患者106、「患者6」は患者107である。
図5】「CellProtect」原薬(DS)および製剤(DP)の製造プロセスCellProtectの製造プロセスを示すフローチャート。
【0158】
実施例1-多発性骨髄腫(MM)を有する患者における自家エクスビボ増殖NK細胞注入後の帯状疱疹症状:抗ウイルス予防の必要性
概論
多発性骨髄腫(MM)の治療のための新薬の開発は、生存率を以前の約3年から現在の5年超まで大幅に改善させた。しかしながら、この劇的な改善にもかかわらず、同種幹細胞移植(AlloSCT)で治療された若い患者の一部の考えられる例外を除き、治癒は実際には得られない。したがって、新しいアプローチが重要である。
【0159】
MMは、骨髄(BM)における形質細胞のクローン増殖を特徴とする悪性新生物である。新規および集中治療の両方にもかかわらず、微小残存病変が持続するため、不治であると考えられる(1)。我々は、MM患者からの長期エクスビボ増殖および活性化された自家NK細胞が、インビトロで自家骨髄腫細胞に対する細胞毒性活性を提供し、短期活性化された自家NK細胞よりも優れていることを以前に示した(2)。我々はまた、このような細胞を実験動物におけるMMの効率的な治療として使用することができることを示した(3)。
【0160】
最近、我々は、臨床グレードのGMPに準拠した成分を使用する閉鎖自動バイオリアクターにおけるNK細胞増殖のための手順を最適化し(4)、全ての前臨床要件を確定し、スウェーデン医療製品庁(EudraCT:2010-022330-83)および倫理委員会(EPN:2013/490-32)から承認を得て、ヒト初回投与第I/II相臨床試験を開始した。増殖細胞は、新しいEU ATMP指令に完全に準拠している。
【0161】
自家幹細胞移植(ASCT)で前もって治療された患者の現在の第I/II相試験の目的は、主に、増殖活性化された自家NK細胞の安全性を調査すること、次に、ASCTに対して奏効する患者のNK細胞治療後のモノクローナル免疫グロブリン、International Myeloma Working Group(IMWG)基準による奏効、および微小残存病変などの有効性パラメータを分析することであった。
【0162】
先端医療医薬品(ATMP)CellProtectは、回復した細胞毒性活性を有するエクスビボ増殖ポリクローナルNK細胞をベースにした細胞懸濁液である。製品は、個別に調製され、治療は、自家である。
【0163】
新たに診断された多発性骨髄腫を有する患者におけるCellProtectでのヒト初回投与第I/II相治療探索的臨床試験は、2014年にDepartment of Hematology Karolinska University Hospital,Huddinge(EudraCT No 2010-022330-83)で開始された(図1)。主要な患者選定基準は、Greipp PR,San Miguel J,Durie BG,et al.(2005)に従って診断され、高用量化学療法およびASCTを受ける意思があり、それらに適格である、MM、ならびにEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス0-2である。
【0164】
臨床試験は、ASCT後のMMを有する患者におけるCellProtectの安全性および忍容性を主に調査するための、オープン、シングルアーム、トリプル漸増用量/患者試験である。二次的な目的は、奏効、すなわち、完全寛解を達成しなかったか、または完全寛解を達成する患者においてより少ない微小残存病変(MRD)を達成する患者におけるMタンパク質のさらなる減少を深めるために、CellProtectの効果を調査することである。
【0165】
結果
6人の患者は、評価および最後の注入後6か月のフォローアップを含む試験を完了した(図1)。臨床結果のプロトコルに従った中間分析は、安全性データが十分であると判断されるので、試験を終了する選択肢で確定されており、あるいは継続し、追加の6人の患者を選定する。
【0166】
試験に選定された後、試験患者は、まずCellProtectの製造のために献血する。出発材料は、定期的な献血を通して収集され、完成品CellProtectが製造される製造施設に移される。CellProtectは、治験責任医師からの照会によって要求されるまで、患者に合わせた用量で-150℃で凍結保存される。該当するバッグ(複数可)は、製造業者によって液体窒素上でクリニックまで輸送され、そこで注入の直前に解凍される。
【0167】
有効物質の貯蔵寿命は、CellProtectの検証バッチからの継続的な安定性監視プログラムに基づく。これらのデータに基づいて、CellProtect製剤(DP)は、-150℃で最大48か月間安定であると結論付けられる。さらなるデータが収集され、完成品の貯蔵寿命を延長することができることが予想される。有効物質の使用時安定性は、少なくとも60分であると決定されている。
【0168】
献血の後、患者は、現在の臨床慣行に従って、誘導として3~4サイクルのCyber-D(シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン)、続いて高用量治療(メルファラン200mg/m2)および幹細胞注入で治療される。
【0169】
試験治療は、患者がASCTから回復している場合、ただしASCTから6か月以内に開始される。患者は、1週間の間隔で、体重1kgあたり5x10、50x10、および最大100×10細胞の漸増用量でCellProtectの3回の注入を受けた。用量漸増は、各患者内である。CellProtect治療は、最後の注入後6か月のフォローアップ期間中に評価した。このフォローアップ期間中、第3のCellProtect注入から約1か月後、研究訪問7で治療の効果がより深く評価された。訪問7では、この時点でのCellProtect治療に対する特定の免疫原性奏効の探索的分析のために、別々の血液試料および骨髄材料が収集された。これらの試料は、Cell Protect治験用医薬品(IMP)の作用機序を具体的に評価および調査するために設計された方法で分析されるであろう。
【0170】
臨床結果
臨床試験の状態
6人の患者は、プロトコルに従って有効なCellProtect治療を完了し、プロトコルに従って要求された累積数の活性化されたNK細胞を3回注入した。これらの6人の患者は、訪問7で評価され、その後6か月のフォローアップを完了した。
【0171】
試験された患者集団
患者は、診断時に臨床試験に含まれ、患者の人口統計データは、表1に示される。5人の患者はIgG骨髄腫(103、105、106、107、111)を有し、1人はIgA骨髄腫(110)を有した。ASCT後およびNK細胞注入前の奏効状態は、3人の患者(103、105、107)において非常に良好な部分奏効(VGPR)であり、3人の患者(106、110、111)において完全奏効(CR)であった。CellProtectの製造のための出発材料は、任意のMM治療の開始前に、第1の試験訪問時に献血によって収集される。
【表1】
【0172】
高用量化学療法およびASCTに対する奏効
第2の試験訪問は、ASCT後、CellProtectの注入前の検査訪問である。この訪問の目的は、MM奏効基準、表2に従って患者の分類を確立すること、患者が依然として適格であり、治療を試験し続けるために十分であることを確認するために、患者の健康状態についての情報を収集することである。骨髄試料は、患者からの同意を得て、この訪問時に採取されるべきであり、CellProtect治療の評価のためのベースラインBMサンプリングを構成する。訪問3での用量前の患者の状態は、ほとんどの他の評価のベースラインとして機能する。
【表2】
【0173】
予備的臨床結果
患者103は、ASCT治療に対する非常に良好な部分奏効(VGPR)に分類され、移植の6~8週間後、CellProtectの3回の完全用量が注入された。M成分血清レベルの低減は、CellProtect注入後に以前の8g/Lから1g/L(>80%低減)まで、試験期間にわたって低いままであった。
【0174】
患者105は、ASCT治療に対する非常に良好な部分奏効(VGPR)に分類され、移植の12~14週間後、CellProtectの3回の完全用量が注入された。M成分血清レベルの低減は、CellProtect注入後に5g/Lから2g/L(約60%)まで測定され、4か月間低いままであった。患者は、CellProtect注入後の5か月後に再発した。患者105は、同意しなかったため、訪問2では骨髄サンプリングを行わなかった。
【0175】
患者106は、ASCT治療に対する完全奏効(CR)に分類され、移植の15~17週間後、CellProtectの3回の用量が注入された。第3の用量は、IMPの不足のため、低減した。患者は、臨床フォローアップにわたって、完全寛解(CR)のままであった。
【0176】
患者107は、ASCT治療に対して、まず非常に良好な部分奏効(VGPR)に、その後確認された完全寛解(CR)に分類された。患者107は、CellProtect注入時に検出可能なレベルのM成分を有し、移植の15~30週間後、CellProtectの3回の完全用量が注入された。CellProtectの第3の、最も高い用量は、患者における帯状ヘルペスの活性化および帯状疱疹の症状のために遅延された。患者107は、CellProtect注入後に改善された奏効を示した。M成分血清レベルの低減は、1g/Lから0g/Lまで測定された。この患者(スクリーニング時736)における遊離軽鎖(FLC)割り当ては、CellProtect注入中および注入後に1.6から0.8まで低減した。患者は、臨床フォローアップにわたって、完全寛解(CR)のままであった。
【0177】
患者110は、ASCT治療に対する完全奏効(CR)に分類され、移植の14~16週間後、CellProtectの3回の用量が注入された。第3の用量は、IMPの不足のため、低減した。患者は、臨床フォローアップにわたって、完全寛解(CR)のままであった。
【0178】
患者111は、ASCT治療に対する完全奏効(CR)に分類され、移植の17~19週間後、CellProtectの3回の完全用量が注入された。患者は、臨床フォローアップにわたって、完全寛解(CR)のままであった。
【表3】
【0179】
有効性
CellProtect治療の臨床的有効性の兆候は、これまで疾患の確立されたバイオマーカーである、血清免疫グロブリンレベルを測定することによって監視された(図2)。血清免疫グロブリンレベルの低減は、残存する測定可能な疾患を有する全て(3人)の患者においてCellProtectの投与後に測定され、ASCT後に安定な部分奏効(VGPR)または(VGPR)であった。6人の患者のうちの3人は、完全寛解(CR)であり、CellProtect治療時に測定可能なレベルの血清免疫グロブリンを有さなかった。免疫グロブリンレベルの増加は、これまでCellProtectで治療された6人の患者のうちの1人において測定された(図2)。
【0180】
興味深いことに、この臨床試験では、帯状ヘルペスの活性化および帯状疱疹の症状は、CellProtectが投与された最初の4人の患者(103、105、106、および107)において観察された。患者110および111は、ウイルス活性化を防止したCellProtect注入の前に高用量予防で治療された。CellProtect製品のこの副作用は、細胞調製物のインビボ生物活性をさらに確認する。
【0181】
安全性
深刻な副作用は見られなかった。しかしながら、最初の4人の患者(103、105、106、および107)は、ASCTの18~32週間後、および第1のNK細胞注入の3~25週間後に帯状ヘルペス(HZ、帯状疱疹)を発症した(図3)。これらの患者は、臨床慣行に従ったウイルス再活性化の予防として、ASCT後14週間にわたって毎日バラシクロビル250mgx2を受けた。薬物は次いで中止され、よってNK細胞注入後にHZが発症した時期をカバーしなかった。
【0182】
HZの発症は、最初の4人の患者においてNK細胞注入と明らかに関連していたため、最後の2人の患者(110および111)は、注入後6か月にわたって1日2回500mgの高用量バラシクロビルで治療された。これらの2人の患者は、予防処置後12か月以内にHZ活性化のいかなる兆候も示さなかった
【0183】
最初の4人の患者の、以前のASCTの文脈における注入および再活性化タイムラインは、図3に要約される。
【0184】
考察
我々の結果は、自家増殖および活性化されたNK細胞は安全であるが、抗ウイルス薬が予防のために使用されない限り、HZ再活性化を誘導することを示す。
【0185】
NK細胞注入がHZ発症の原因であることは、明らかであると思われる。HZは、常にNK細胞注入後に現れ、図4に示されるように、ASCTからNK細胞注入までの時間とNK細胞注入からHZの発症までの時間との間には逆相関があった。
【0186】
HZ発症の考えられるメカニズムは、養子活性化されたNK細胞移入時の免疫学的カスケード応答の誘導である。養子細胞移入時の活性化されたNK細胞は、HZVのリザーバー細胞を攻撃し、それがひいては、誘導されたストレスのために、ウイルス再活性化を引き起こし得ると考えられる。
【0187】
ASCTおよびNK細胞注入の時間にそれぞれ関連するHZV発症の時間を考慮すると、ASCT自体がHZV活性化の原因である可能性は低い。また、最近の報告は、抗ウイルス予防なしでASCT治療されたMM患者における1.0~14.4%のみのHZV感染を示し(8、9)、これは我々の試験のように4人の連続した患者のうちの4人(100%)がASCTのために帯状疱疹を発症するという見込みからは遠く及ばない。
【0188】
我々の結論は、NK細胞ベースの免疫療法がMMで実行可能であるということであるが、それは常に予防的抗ウイルス治療と組み合わされるべきである。
【0189】
材料および方法
CellProtectの製造
CellProtect製剤は、MMを有する患者からのエクスビボ増殖NK細胞をベースにした細胞懸濁液である。治療は、自家である。
【0190】
CellProtectを作製するためのプロトコルを以下に説明し、図5に示す。
【0191】
MMを有する患者からの末梢血は、献血を通して収集される。収集方法に従って、全血1単位(約450ml)を滅菌ポリ塩化ビニル(PVC)プラスチックトランスファーバッグに収集する。(TerumoまたはFenwal採血容器)。収集した血液を室温(15~25℃)で保存し、製造プロセスを6時間以内に開始する。
【0192】
リンパ球を、Ficoll-Paqueを使用した密度ベースの勾配によって分離する。PBSでの最終洗浄ステップ後、細胞が計測され、以下の材料:500IU/mLのインターロイキン2(IL-2、NK細胞を活性化するサイトカイン)、10ng/mLのオルソクローンOKT3(ムロモナブ-CD3、T細胞の成長を刺激するCD-3抗体)、5%(体積/体積)ヒト血清(成長促進)、および0.1%(体積/体積)プルロニックF68(発泡を低減する洗浄剤)が補足された、800~1000mLの細胞培養培地において0.5~1.0×10細胞/mLに調整される。細胞をバイオリアクターに播種し、培養を開始する。
【0193】
末梢血リンパ球は、温度を37℃および5%CO2に制御する閉鎖されたウェーブバイオリアクターシステム(System 2/10 GE Healthcare)を使用して増殖される。細胞は使い捨てセルバッグ2L(培養体積1L)において成長させる。細胞接触表面は、エチレン酢酸ビニル(EVA)/低密度ポリエチレンコポリマーである。外層は、並外れた強度および極めて低いガス透過性を提供する独自の複合物で作製される。
【0194】
細胞密度が3×10細胞/mLに達する場合、灌流は、上述される材料が補足されたが、オルソクローンOKT3を含まない細胞培地での培養物を供給することによって開始した。灌流は、500IU/mLのIL-2、5%ヒト血清、および0.1%プルロニックF68を含む50mL細胞培養培地のショットで制御される。細胞濃度は、ショットの体積を決定する。
【0195】
NK細胞増殖期は、灌流が始まると開始され、14~16日間継続する。
【0196】
細胞数および生存率は、培養期間中、定期的に監視される。フローサイトメトリー分析は、NK細胞のパーセンテージを決定するために行われる。活性化されたNK細胞は、K562細胞株で誘導した後、細胞毒性CD107aの代理マーカーの発現によって分析される。滅菌性、エンドトキシン、およびマイコプラズマ試験も、CellProtect DPの製造中、増殖後に採取された試料に対して行われる。
【0197】
CellProtect治験用医薬品(IMP)の仕様
以下の表4および5は、CellProtect製品の仕様を概説する。
【表4】
【表5】
【0198】
臨床バッチの組成
CellProtectの臨床バッチの組成を表6に示す。
【表6】
【0199】
実施例1 参考文献:
1.Alici E,Bjorkstrand B,Treschow A,Aints A,Smith CI,Gahrton G,et al.Long-term follow-up of gene-marked CD34+ cells after autologous stem cell transplantation for multiple myeloma.Cancer Gene Ther.2007;14(3):227-32.
2.Alici E,Sutlu T,Bjorkstrand B,Gilljam M,Stellan B,Nahi H,et al.Autologous antitumor activity by NK cells expanded from myeloma patients using GMP-compliant components.Blood.2008;111(6):3155-62.
3.Alici E,Konstantinidis KV,Sutlu T,Aints A,Gahrton G,Ljunggren HG,et al.Anti-myeloma activity of endogenous and adoptively transferred activated natural killer cells in experimental multiple myeloma model.Exp Hematol.2007;35(12):1839-46.
4.Sutlu T,Stellan B,Gilljam M,Quezada HC,Nahi H,Gahrton G,et al.Clinical-grade,large-scale,feeder-free expansion of highly active human natural killer cells for adoptive immunotherapy using an automated bioreactor.Cytotherapy.2010;12(8):1044-55.
5.Backstrom E,Chambers BJ,Ho EL,Naidenko OV,Mariotti R,Fremont DH,et al.Natural killer cell-mediated lysis of dorsal root ganglia neurons via RAE1/NKG2D interactions.European journal of immunology.2003;33(1):92-100.
6.Backstrom E,Chambers BJ,Kristensson K,Ljunggren HG.Direct NK cell-mediated lysis of syngenic dorsal root ganglia neurons in vitro.Journal of immunology.2000;165(9):4895-900.
7.Hickey WF,Ueno K,Hiserodt JC,Schmidt RE.Exogenously-induced,natural killer cell-mediated neuronal killing:a novel pathogenetic mechanism.The Journal of experimental medicine.1992;176(3):811-7.
8.Park H,Youk J,Kim HR,Koh Y,Kwon JH,Yoon SS,et al.Infectious complications in multiple myeloma receiving autologous stem cell transplantation in the past 10 years.International journal of hematology.2017;106(6):801-10.
9.Park S,Jung CW,Jang JH,Kim SJ,Kim WS,Kim K.Incidence of infection according to intravenous immunoglobulin use in autologous hematopoietic stem cell transplant recipients with multiple myeloma.Transpl Infect Dis.2015;17(5):679-87.
【0200】
実施例2:薬学的製剤
以下の実施例は、有効成分が抗ウイルス剤である本発明による薬学的製剤を示す。
【0201】
実施例A:錠剤
【表7】
錠剤は、湿式造粒、続いて圧縮によって、前述の成分から調製される。
【0202】
実施例B:点眼液
【表8】
【0203】
実施例C:錠剤製剤
以下の製剤AおよびBは、ポビドンの溶液での成分の湿式造粒、続いてステアリン酸マグネシウムの添加および圧縮によって調製される。
【表9】
【表10】
【表11】
【0204】
以下の製剤、DおよびEは、混合された成分の直接圧縮によって調製される。製剤Eで使用されるラクトースは、方向圧縮タイプである。
【表12】
【表13】
【0205】
製剤F(制御放出製剤)
製剤は、ポビドンの溶液での成分(以下)の湿式造粒、続いてステアリン酸マグネシウムの添加および圧縮によって調製される。
【表14】
【0206】
薬物放出は、約6~8時間の期間にわたって起こり、12時間後に完了した。
【0207】
実施例D:カプセル製剤
製剤A
カプセル製剤は、上記の実施例Cにおける製剤Dの成分を混合し、2パート硬質ゼラチンカプセルに充填することによって調製される。製剤B(下記)は、同様の方法で調製される。
【表15】

【表16】
【0208】
カプセルは、マクロゴール4000 BPを溶融し、有効成分を溶融物に分散させ、溶融物を2パート硬質ゼラチンカプセルに充填することによって調製される。
【表17】
【0209】
カプセルは、有効成分をレシチンおよび落花生油に分散させ、分散液を軟質弾性ゼラチンカプセルに充填することによって調製される。
【0210】
製剤E(制御放出カプセル)
以下の制御放出カプセル製剤は、押出機を使用して成分a、b、およびcを押し出し、続いて押出物を球状化し、乾燥させることによって調製される。次いで、乾燥ペレットを放出制御膜(d)でコーティングし、2ピース硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【表18】
【0211】
実施例E:注射可能な製剤
有効成分 0.200g
滅菌、パイロジェンフリーリン酸緩衝液(pH7.0)~10ml
有効成分を、ほとんどのリン酸緩衝液(35~40℃)に溶解し、次いで体積を調整し、滅菌マイクロポアフィルターを通して滅菌10mlアンバーガラスバイアル(タイプ1)に濾過し、滅菌閉鎖およびオーバーシールで密封する。
【0212】
実施例F:筋肉内注射
【表19】
有効成分をグリコフロールに溶解する。次いでベンジルアルコールを添加して溶解し、水を3mlに添加する。次いで混合物を滅菌マイクロポアフィルターを通して濾過し、滅菌3mlガラスバイアル(タイプ1)に密封する。
【0213】
実施例G:シロップ懸濁液
【表20】
安息香酸ナトリウムを精製水の一部分に溶解し、ソルビトール溶液を添加する。有効成分を添加し、分散させる。グリセロールには、増粘剤(分散性セルロース)を分散させる。2つの分散物を混合し、精製水で必要な体積に調整する。必要に応じて、懸濁液の追加のせん断によって、さらなる増粘を達成する。
【0214】
実施例H:坐剤
【表21】
ウイテプゾールH15の5分の1は、蒸気ジャケット付きの鍋において最大45℃で溶融する。有効成分を200μmのふるいにかけ、カッティングヘッドを取り付けたシルバーソンを使用して、滑らかな分散物が得られるまで、混合しながら溶融ベースに添加する。混合物を45℃に維持しながら、残りのウイテプゾールH15を懸濁液に添加し、撹拌して、均一な混合物を確保する。懸濁液全体を250μmステンレス鋼スクリーンに通過させ、継続的に撹拌しながら、40℃まで冷却させる。38℃~40℃の温度で、2.02gの混合物を適切なプラスチック型に充填する。坐剤を室温まで冷却させる。
【0215】
実施例I:ペッサリー
【表22】
上記の成分は直接混合され、ペッサリーは得られた混合物の直接圧縮によって調製される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】