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特表2022-522923加速溶媒抽出器を使用する炭化水素サンプル中の画分の分離
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  • 特表-加速溶媒抽出器を使用する炭化水素サンプル中の画分の分離 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】加速溶媒抽出器を使用する炭化水素サンプル中の画分の分離
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20220414BHJP
   G01N 1/40 20060101ALI20220414BHJP
   B01D 15/20 20060101ALI20220414BHJP
   B01D 15/42 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G01N1/10 C
G01N1/40
B01D15/20
B01D15/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021532461
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020021380
(87)【国際公開番号】W WO2020181187
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】16/294,308
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・エム・アダム
(72)【発明者】
【氏名】ザーラ・エヌ・アルミスバー
(72)【発明者】
【氏名】マンスール・エス・アルザエル
(72)【発明者】
【氏名】ファイサル・アルラシード
【テーマコード(参考)】
2G052
4D017
【Fターム(参考)】
2G052AA08
2G052AB12
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052ED01
2G052ED06
2G052GA17
2G052GA24
2G052GA27
2G052HC22
2G052HC25
2G052JA07
4D017AA04
4D017AA05
4D017BA05
4D017CA03
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA03
4D017DB03
4D017EA05
(57)【要約】
加速溶媒抽出器を使用して液体炭化水素サンプル全体を分離および回収するための方法およびシステムが開示される。この方法では、フィルタは、加速溶媒抽出器の抽出セルの底部部分に挿入される。吸着剤は、炉中での加熱を介して活性化され、次いで冷却される。次いで、吸着剤の少なくとも一部が抽出セルに挿入され、液体炭化水素サンプルが吸着剤の上部の抽出セルに導入される。サンプルを含む抽出セルは、加速溶媒抽出器のセルトレイに配置され、サンプルの飽和、芳香族、および樹脂画分は、それぞれ第1、第2、および第3の溶媒を使用して順次抽出される。この方法の結果として、液体炭化水素サンプル全体が抽出される。
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速溶媒抽出器を使用して液体炭化水素サンプル全体を分離および回収する方法であって、
前記加速溶媒抽出器の抽出セルの底部部分にフィルタを挿入する工程と、
少なくとも吸着剤を前記抽出セルに挿入する工程であって、前記吸着剤が前記抽出セルの体積の実質的な部分を占める工程と、
前記抽出セル内の前記吸着剤の上部に前記炭化水素サンプルを導入する工程と、
前記炭化水素サンプルを含む前記抽出セルを前記加速溶媒抽出器のセルトレイに配置する工程と、
第1の溶媒を使用して前記炭化水素サンプルの飽和画分を抽出する工程であって、前記飽和画分が第1の収集バイアルに収集される工程と、
第2の溶媒を使用して前記炭化水素サンプルの芳香族画分を抽出する工程であって、前記芳香族画分が第2の収集バイアルに収集される工程と、
第3の溶媒を使用して前記炭化水素サンプルの樹脂画分を抽出する工程であって、前記樹脂画分が第3の収集バイアルに収集される工程と、
を含み、
前記液体炭化水素サンプル全体が抽出される、方法。
【請求項2】
前記抽出セルに前記吸着剤を挿入する工程の前に、前記加速溶媒抽出器内での加熱によって前記吸着剤を活性化する工程と、活性化吸着剤を冷却する工程とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出セルに挿入する工程の前に、前記冷却された活性化吸着剤を溶媒で湿潤させる工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
シリカ酸化物、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却された活性化シリカ酸化物吸着剤を湿潤させるための前記溶媒が、ヘキサンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカ酸化物吸着剤が、活性化工程中に約4時間、オーブン内で約400℃の温度で加熱される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
その後、前記オーブンを150℃に冷却して、前記シリカ酸化物吸着剤を冷却する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1、前記第2、および前記第3の収集バイアルを窒素ガス下に置き、前記収集された飽和、芳香族、および樹脂画分からそれぞれ前記第1、前記第2、および前記第3の溶媒を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記飽和、芳香族、および樹脂画分が、前記液体炭化水素サンプルから順次に抽出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出された画分を定性的に分析して、それぞれの画分の組成を決定することをさらに含み、前記抽出された画分が、質量分析、NMR分光法、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、および超臨界クロマトグラフィーからなる群から選択される分析技術によって分析される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の溶媒が、ヘキサンを含み、前記第2の溶媒が、トルエンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記飽和画分の前記抽出が、前記芳香族画分および前記樹脂画分の抽出とは異なる温度および圧力で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記液体炭化水素サンプルが、ディーゼル燃料サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記液体炭化水素サンプルが、原油サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記飽和画分を抽出する工程が、前記第1の溶媒を前記抽出セルに導入することを含み、それにより、前記第1の溶媒が、前記液体炭化水素サンプルと相互作用し、前記飽和画分が前記フィルタを通過して前記第1の収集バイアルに入り、
前記芳香族画分を抽出する工程が、前記第2の溶媒を前記抽出セルに導入することを含み、それにより、前記第2の溶媒が、前記液体炭化水素サンプルと相互作用し、前記芳香族画分が前記フィルタを通過して前記第2の収集バイアルに入り、かつ
前記樹脂画分を抽出する工程が、前記第3の溶媒を前記抽出セルに導入することを含み、それにより、前記第3の溶媒が、前記液体炭化水素サンプルと相互作用し、前記樹脂画分が前記フィルタを通過して前記第3の収集バイアルに入る、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記それぞれの画分の前記抽出が、異なるそれぞれの温度および圧力で実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記収集された飽和画分における芳香族種の重複(overlap)が、最大15%である、請求項1に記載の方法
【請求項18】
前記第1の溶媒が、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、およびイソオクタンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の溶媒が、トルエン、またはトルエンとシクロヘキサンとの95:5のブレンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の溶媒が、アセトン、クロロホルム、メタノール、およびトルエンとメタノールとの1:4のブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記飽和画分、前記芳香族画分、および前記樹脂画分のそれぞれの前記抽出の間に、前記抽出セルを窒素ガスでフラッシュする工程をさらに含み、前記窒素ガスが、前の抽出工程から存在する前記抽出セルの前記溶媒をフラッシュする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記吸着剤が、前記抽出セルの体積の97~99%を占め、前記炭化水素サンプルが、前記抽出セルの体積の3%未満を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
加速溶媒抽出器を使用して液体炭化水素サンプルを分離および回収する方法であって、
底部端にフィルタが充填された管状本体および前記フィルタの上部に配置された吸着剤物質を含む抽出セルを調製する工程であって、前記吸着剤材料が、前記管状本体の少なくとも90体積%を占める工程と、
前記抽出セル内の前記吸着剤材料の上部に前記炭化水素サンプルを導入する工程と、
前記炭化水素サンプルを含む前記抽出セルを前記加速溶媒抽出器のセルトレイに配置する工程と、
少なくとも1つの溶媒を使用して少なくとも1回の抽出を実行し、その結果、1つ以上の画分が、個別に抽出および収集される工程と、
を含む、方法。
【請求項24】
前記吸着剤材料が、前記管状本体の少なくとも95体積%を占める、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記吸着剤材料が、前記管状本体の少なくとも98体積%を占める、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記炭化水素サンプルを導入する工程が、前記炭化水素サンプルが前記吸着剤材料の上部10体積%以内に含有されることをもたらす、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月6日に米国特許商標庁に提出された「SEPARATION OF FRACTIONS IN HYDROCARBON SAMPLES USING AN ACCELERATED SOLVENT EXTRACTOR」と題される米国特許出願第16/294,308号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、炭化水素サンプルを分離するためのシステムおよび方法に関する。特に、本開示は、加速溶媒抽出器を使用して炭化水素サンプル中の画分を分離するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭化水素系組成物の分画プロセスおよび定性分析は、それらの組成物が燃料産業での使用などの下流の操作に有用であるかどうかを決定するために不可欠である。例えば、重量分析カラムクロマトグラフィーを使用して、供給物が、飽和、芳香族、樹脂、およびアスファルテン画分に分離される(SARA分画)炭化水素供給物(例えば、原油)の分画および定量方法を実行することができる。重量分析カラムクロマトグラフィーを使用するSARA分画法は、一般に、分離された画分間の極性の違いに基づいている。
【0004】
重量分析カラムクロマトグラフィーは、SARA分画を実行するための効果的な手法であるが、それは、大量の溶媒および吸着剤材料を消費するだけでなく、時間もかかる一般に1日がかりの実験が必要である。そのため、これらの実験は、それらの時間を消費し、かつ資源を消費する性質のため、非常に費用がかかる可能性がある。さらに、これらの方法は、それらの持続時間のために、実験者を長期間有毒な化学物質に曝露させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、より資源効率が高く、費用効率が高く、かつ従来の方法よりも速く実現できる分画および定量化方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つ以上の実施形態によれば、加速溶媒抽出器を使用して液体炭化水素サンプル全体を分離および回収する方法およびシステムが提供される。
【0007】
本方法のための第1の態様では、フィルタは、加速溶媒抽出器の抽出セルの底部部分に挿入される。次いで、吸着剤は、吸着剤が抽出セルの体積の実質的な部分を占めるように、抽出セルに挿入される。次いで、液体炭化水素サンプルが抽出セル中の吸着剤の上部に導入される。炭化水素サンプルを含む抽出セルは、加速溶媒抽出器のセルトレイに配置される。炭化水素サンプルの飽和画分は、第1の溶媒を使用して抽出され、飽和画分は、第1の収集バイアルに収集される。炭化水素サンプルの芳香族画分は、第2の溶媒を使用して抽出され、芳香族画分は、第2の収集バイアルに収集される。炭化水素サンプルの樹脂画分は、第3の溶媒を使用して抽出され、樹脂画分は、第3の収集バイアルに収集される。この方法では、液体炭化水素サンプル全体が抽出される。
【0008】
別の態様では、吸着剤は、加速溶媒抽出器内での加熱を介して活性化され、次いで、抽出セルに挿入される前に冷却される。さらなる態様では、冷却された活性化吸着剤を、抽出セルに挿入される前に溶媒で湿潤させる。さらなる態様では、吸着剤材料は、シリカ酸化物を含む。さらなる態様では、冷却された活性化シリカ酸化物吸着剤を湿潤させるための溶媒は、ヘキサンである。別の態様では、シリカ酸化物吸着剤は、活性化の間、オーブン中で約400℃の温度で約4時間加熱される。さらなる態様では、オーブンは、その後、150℃に冷却されて、シリカ酸化物吸着剤を冷却する。
【0009】
別の態様では、第1、第2、および第3の収集バイアルを窒素ガス下に配置して、収集された飽和、芳香族、および樹脂画分からそれぞれ第1、第2、および第3の溶媒を除去する。さらなる態様では、飽和、芳香族、および樹脂画分は、液体炭化水素サンプルから順次に抽出される。
【0010】
別の態様では、抽出された画分を定性的に分析して、それぞれの画分の組成を決定する。抽出された画分は、質量分析、NMR分光法、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、および超臨界クロマトグラフィーからなる群から選択された分析技術を介して分析される。
【0011】
別の態様では、第1の溶媒は、ヘキサンを含み、第2の溶媒は、トルエンを含む。
【0012】
別の態様では、飽和画分の抽出は、芳香族画分および樹脂画分の抽出とは異なる温度および圧力で実行される。
【0013】
別の態様では、液体炭化水素サンプルは、ディーゼル燃料サンプルである。さらに別の態様では、液体炭化水素サンプルは、原油サンプルである。
【0014】
別の態様では、飽和画分は、第1の溶媒が液体炭化水素サンプルと相互作用し、飽和画分がフィルタを通過して第1の収集バイアルに入るように、第1の溶媒を抽出セルに導入することによって抽出される。同様に、芳香族画分は、第2の溶媒が液体炭化水素サンプルと相互作用し、芳香族画分がフィルタを通過して第2の収集バイアルに入るように、第2の溶媒を抽出セルに導入することによって抽出される。樹脂画分は、第3の溶媒が液体炭化水素サンプルと相互作用し、樹脂画分がフィルタを通過して第3の収集バイアルに入るように、第3の溶媒を抽出セルに導入することによって抽出される。さらなる態様では、それぞれの画分の抽出は、異なるそれぞれの温度および圧力で実行される。
【0015】
別の態様では、収集された飽和画分における芳香族種(aromatics)の最大重複は、15%である。別の態様では、第1の溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、およびイソオクタンからなる群から選択される。別の態様では、第2の溶媒は、トルエンまたはトルエンとシクロヘキサンとの95:5ブレンドである。別の態様では、第3の溶媒は、アセトン、クロロホルム、メタノール、およびトルエンとメタノールとの1:4ブレンドからなる群から選択される。
【0016】
別の態様では、抽出セルは、飽和画分、芳香族画分、および樹脂画分のそれぞれの抽出の間に窒素ガスでフラッシュされる。窒素ガスは、前の抽出工程で存在した抽出セルの溶媒をフラッシュする。別の態様では、吸着剤は、抽出セルの体積の97~99%を占め、炭化水素サンプルは、抽出セルの体積の3%未満を占める。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、加速溶媒抽出器を使用して液体炭化水素サンプルを分離および回収する方法が提供される。この方法では、吸着剤材料が管状本体の少なくとも90体積%を占めるように、底部端にフィルタが充填された管状本体およびフィルタの上部に配設された吸着剤材料を含む抽出セルが調製される。炭化水素サンプルは、抽出セル中の吸着剤材料の上部に導入される。炭化水素サンプルを含む抽出セルは、加速溶媒抽出器のセルトレイに配置される。次いで、少なくとも1つの溶媒を使用して少なくとも1回の抽出が実行され、その結果、1つ以上の画分が個別に抽出および収集される。さらなる態様では、吸着剤材料は、管状本体の少なくとも95体積%を占める。別の態様では、吸着剤材料は、管状本体の少なくとも98体積%を占める。別の態様では、炭化水素サンプルを導入する工程は、炭化水素サンプルが吸着剤材料の上部10体積%以内に含有されることをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】1つ以上の実施形態による例示的な加速溶媒抽出器を表示する。
図1B】左側は1つ以上の実施形態による加速溶媒抽出器の例示的な抽出セルの斜視図である。右側は、左側の抽出セルの断面図である。
図2】1つ以上の実施形態による加速溶媒抽出器を使用して炭化水素サンプルから飽和画分と芳香族画分とを分離するための例示的な方法パラメータの表を表示する。
図3A】1つ以上の実施形態による例示的なディーゼル燃料サンプルのクロマトグラムを表示する。
図3B】1つ以上の実施形態による例示的なディーゼル燃料サンプルの分離された飽和画分のクロマトグラムを表示する。
図3C】1つ以上の実施形態による例示的なディーゼル燃料サンプルの分離された芳香族画分のクロマトグラムを表示する。
図4】1つ以上の実施形態による屈折率検出器(HPLC-RI)を備えた高速液体クロマトグラフィーを介した分析から得られた、例示的な原油サンプルのクロマトグラムを表示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願は、液体炭化水素サンプル全体を分離および回収するためのシステムおよび方法を説明する。言い換えれば、炭化水素サンプルを構成する化学成分のそれぞれが分離され、回収される。本システムおよび方法は、加速溶媒抽出器を利用する。従来、加速溶媒抽出器は、溶媒抽出ツールとして厳密に使用される。知られているように、加速溶媒抽出(ASE)は、元来、固体および半固体サンプルの抽出に使用されている。ASEは、抽出プロセス中に溶媒を液相に維持するために高圧下で操作され、医薬品、栄養補助食品、食品分析、化学用途などが含まれるが、これらに限定されない広範な様々な用途で使用され得る。
【0020】
ASEは、吸着剤(複数可)などの収着材料の使用を含むことができる。知られているように、吸着剤は、液体または気体(例えば、本発明の炭化水素液体サンプル)から溶質分子を収集するために使用される固体物質である。吸着は、活性炭またはシリカゲルなどの吸着剤に付着させることにより、化学汚染物質などの種を抽出するためによく使用される。言い換えれば、吸着剤は、毛細管および細孔を含む、表面上が液体でコーティングされた不溶性材料である。
【0021】
ASEシステムの従来の使用とは対照的に、本出願のシステムおよび方法は、炭化水素サンプルの様々な画分(fractions)を分離するための一種の分離カラムとして加速溶媒抽出器を利用する。言い換えれば、本システムおよび方法は、液体サンプルの画分を分離するためのカラムクロマトグラフィー(フラッシュクロマトグラフィー)法の実行を可能にする。このプロセスは、液体サンプル全体がその画分に分離されるまで実行される。
【0022】
本システムおよび方法では、フィルタは、加速溶媒抽出器の抽出セルに挿入される。吸着剤は、加速溶媒抽出器の炉内での加熱を介して活性化され、冷却され、次いで、抽出セルに挿入される。次いで、液体炭化水素サンプルなどの液体サンプルが、吸着剤の上部の抽出セルに導入され、抽出セルは、加速溶媒抽出器のセルトレイに配置される。次いで、炭化水素サンプルの第1の画分(例えば、飽和画分)が、第1の溶媒を使用してサンプルから抽出され、収集バイアルに収集される。次いで、炭化水素サンプルの1つ以上のその後の化合物(画分)(例えば、芳香族および樹脂画分)は、液体炭化水素サンプル全体が抽出されるように、1つ以上の追加の溶媒を使用して抽出される。本明細書では「抽出」という用語を使用するが、出願人は、本発明が選択された溶媒を使用して、炭化水素サンプルから標的化合物クラスを効果的に単離および除去することによってサンプルを構成する化合物クラスを分離することを一般に伝えるためにこの用語を使用している。液体炭化水素サンプルを抽出セルに導入する前に、アスファルテン(存在する場合)を、脱アスファルト工程を介して液体炭化水素サンプルから除去することができる。
【0023】
したがって、本出願の方法は、液体供給物の画分を急速に分離するための分離カラムとして加速溶媒抽出器を効果的に利用する。本方法はまた、サンプルサイズが小さく、加速溶媒抽出器を使用しているため、分画を完了するために使用される溶媒の総量を制限する。したがって、本方法を完了することができる速度および使用される溶媒の量が制限されるため、本方法は、この方法に関連する潜在的に有害な溶媒へのユーザの曝露を制限する。
【0024】
液体炭化水素サンプル全体を分離および回収するための参照のシステムおよび方法を、添付の図面を参照してより完全に説明し、システムおよび方法の1つ以上の例証された実施形態および/または構成を示す。本出願のシステムおよび方法は、例示された実施形態および/または装置に何ら限定されるものではない。添付の図面に示されるようなシステムおよび方法は、本出願のシステムおよび方法の単なる例示であり、これは、当業者によって理解されるように様々な形態で具体化され得ることが理解されるべきである。本明細書に開示されるいずれの構造および機能の詳細も、システムおよび方法を限定するものとして解釈されるべきではなく、当業者に、システムおよび方法を実装するための1つ以上の手法を教示するための代表的な実施形態および/または構成として提供されることを理解されたい。
【0025】
図1Aは、1つ以上の実施形態による例示的な加速溶媒抽出器(ASE)100を表示する。ASEの様々なモデルは、1つ以上の実施形態に従って使用することができる。例えば、少なくとも1つの実施形態では、ASEは、ASE(登録商標)200加速溶媒抽出器であり得る。ASEは、ASE(登録商標)200加速溶媒抽出器操作マニュアルおよびASE(登録商標)溶媒コントローラのインストール手順に例示されているように、多数の部品および設定(例えば、溶媒コントローラ)を有することができ、これらの両方は、本明細書に記載されているかのように、それらのそれぞれの全体において参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、図1Aに示すように、ASE100は、セルトレイ105および少なくとも1つの抽出セル110を備えることができ、セルトレイ105は、複数の抽出セル110を確実に保持するように構成される。ASE100は、バイアルトレイ115および少なくとも1つの収集バイアル120をさらに備え、バイアルトレイ115は、複数の収集バイアル120を確実に保持するように構成される。バイアルトレイ115はまた、1つ以上のすすぎバイアルを保持するようにも構成することができる。セルトレイ105は、1つ以上の抽出セル110が1つ以上の収集バイアル120と流体連絡するように選択的に構成されるように、バイアルトレイ115の上に位置付けられる。具体的には、セルトレイ105およびバイアルトレイ115は両方とも、抽出セル110が異なる時間に異なる収集バイアル120と流体連絡することができるように回る(共通の軸の周りを回転する)ように構成される。マスターコントローラを使用して、セルトレイ105およびバイアルトレイ115の標的場所への回転を制御できることは容易に理解されよう。1つ以上の抽出セル110は、針機構125を介して1つ以上の収集バイアル120と選択的に連絡することができる。針機構125を使用して、選択された抽出セル110は、流体を選択された収集バイアル120に移送することができる。具体的には、針機構125は、流体(抽出物)が選択された抽出セル110から選択された収集バイアル120に流れるように、選択された収集バイアル120の隔壁を貫通する。
【0026】
ASE100は、溶媒ボトル135を保持するように構成された溶媒貯蔵区画130をさらに含むことができる。1つ以上の実装形態では、1つ以上の溶媒ボトル135は、プロセス中に多数の溶媒を使用することができるように、ASE100に動作可能に接続された溶媒コントローラ(例えば、ASE(登録商標)溶媒コントローラ)に保持することができる。具体的には、溶媒コントローラは、抽出間に抽出セル110に流体的に接続されている溶媒ボトルを変更するように構成することができる。これにより、異なる溶媒を使用して、液体サンプルの異なる画分を連続して抽出(分離)可能にする。溶媒コントローラは、特定の抽出に使用する特定の溶媒を選択したり、または2つ以上の溶媒を一緒に混合したりするなどの他のアクションを実行するように構成することもできる。ASE100は、トレイ105、115、針、ポンプ、および他のハードウェアなどの制御などの所与の命令セットを遂行するために、ソフトウェアの形態のコードで構成されたプロセッサまたはマイクロプロセッサを含む電子機器140をさらに備える。電子機器140は、プロセッサまたはマイクロプロセッサが所与の命令セットを遂行するときに、プロセッサがASE100の他の構成要素にそれらのそれぞれの機能を選択的に実行させることができるように、ASEの他の構成要素に動作可能に接続される。ASE100は、スクリーンおよび電源スイッチなどの1つ以上のアクチュエータ(例えば、ボタン)を備えることができるディスプレイ145をさらに備える。ディスプレイ145で、ユーザは、ASE100をオンおよびオフにし、アクチュエータおよび/または画面を介して設定/指示を入力することができ、設定/指示により、電子機器140は、以下でさらに詳しく説明するように、それらのそれぞれの機能を実行するように様々な構成要素を構成する。ASEは、1つ以上の実施形態による抽出セルを加熱するためのオーブン(炉)150を含むことができる。所与の分離方法のためのオーブンの温度は、ディスプレイ145を介してユーザが決定することができる。ASE100はまた、空気源および/もしくは窒素ガス源または供給源(例えば、窒素ガスタンク)への1つ以上の接続を含むことができる。
【0027】
図1Bは、1つ以上の実施形態による加速溶媒抽出器の例示的な抽出セル110を表示する。1つ以上の実施形態では、本出願の方法を開始するために、フィルタ111が抽出セル110の底部部分に挿入される。知られているように、従来の抽出セル110は、管状本体103と、管状本体を閉鎖する第1のエンドキャップ114および第2のエンドキャップ116とを含む。管状本体は、金属管であり得る。第1のエンドキャップ114は、ねじ山などが含まれるが、これに限定されない任意の数の従来の技術を使用して管状本体の上部に取り付けられ、同様に、第2のエンドキャップ116は、管状本体の底部に取り付けられる。第1のエンドキャップ114は、入口端を表し、分離される流体が抽出セル110に導入される1つ以上の開口部117を含む。第2のエンドキャップ116は、出口端を表し、分離された流体がそこを通って出る1つ以上の開口部119を含む。フリット101は、第2のエンドキャップ116のくぼんだ領域内に配設される。フリット101は、開口部(複数可)119を覆っているが、流体は、そこを通って流れて、抽出された画分の排出を可能にすることができる。
【0028】
1つ以上の実施形態では、フィルタ111は、セルロースフィルタであり得るが、少なくとも1つの実施形態によれば、他のタイプのフィルタを使用することができる。次いで、抽出セル110を充填するために使用される収着(吸着)材料112は、オーブン(炉)150中での加熱を介して活性化される。1つ以上の実施形態では、吸着剤材料は、シリカ酸化物(例えば、60Å、70~230メッシュ)を含む。1つ以上の実施形態では、吸着剤は、活性化工程において約4時間、オーブン内で約400℃の温度で加熱される。示されるように、吸着剤112は、フィルタ111の上部の管状本体103に充填される。
【0029】
例えば、少なくとも1つの実施形態では、シリカ酸化物吸着剤は、炉(オーブン)150内で約400℃で約4時間加熱することによって活性化される。吸着剤112が加熱を介して活性化されると、吸着剤は、冷却される。例えば、吸着剤がシリカ酸化物吸着剤である少なくとも1つの実施形態では、炉150の温度を150℃に下げて、それがASEでの使用が必要になるまでシリカ酸化物吸着剤を活性化したままにする。吸着剤材料の活性化は、吸着剤材料から水分を除去し、抽出セルに挿入する前に材料を乾燥したままにする。吸着剤の加熱時間、炉内の吸着剤の加熱温度、および吸着剤が「冷却」される温度は、吸着剤のタイプ、および抽出セルに導入される液体サンプルのタイプによって変動する可能性があることに留意すべきである。
【0030】
冷却後、吸着剤112の少なくとも一部または全量が、抽出セル110のフィルタ111の上部に挿入される。1つ以上の実施形態では、吸着剤112の一部は、抽出セル110に挿入する前に溶媒で湿潤されていてよい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、冷却されたシリカ酸化物吸着剤112を、抽出セル110に挿入する前に、ヘキサン溶媒で湿潤させることができる。
【0031】
抽出セル110に挿入されると、吸着剤は、抽出セル110の体積の実質的な部分を占める。この場合に使用される場合、「実質的」は、抽出セルの体積のかなりの、重要な、および/または大部分を指す。例えば、吸着剤112は、挿入時に抽出セルの体積の75%超を占めることができる。少なくとも1つの実施形態では、吸着剤材料112が抽出セル110に挿入されると、吸着剤材料112は、抽出セル110の体積の97~99%を占める。少なくとも1つの実施形態では、吸着剤材料112は、抽出セル100の少なくとも95体積%(すなわち、抽出セル100の管状本体の95%)を占める。少なくとも1つの実施形態では、吸着剤材料112は、抽出セル100の少なくとも98体積%を占める。抽出セル110の残りの体積は、液体炭化水素サンプル113およびフィルタ111によって満たされている。したがって、従来のASE抽出セル調製とは異なり、本発明の抽出セル110は、実質的に吸着剤112からなる。これは、サンプル自体が抽出セルの中空内部のかなりの体積を占める従来のASE抽出セルとは対照的である。本発明では、サンプル自体は、管状本体内の非常に小さな体積(空間)を占める。結果として、本明細書に記載されるように、サンプルサイズが小さいと、サンプルは、主に吸着剤材料112の上面に沿って限定された領域に含有され、(サンプルのタイプに応じて)サンプルの吸着剤材料112の最上層への移動がいくらか制限される可能性がある。
【0032】
液体炭化水素サンプル113を抽出セルに導入する前に、アスファルテン(炭化水素サンプル中に存在する場合)は、脱アスファルト工程を介してサンプル113から除去される。アスファルテンは、ヘプタンに溶解しない炭化水素サンプル113の部分である。アスファルテンは、典型的には、原油だけでなく、真空軽油などの原油の重質留分、および真空残留留分にも存在する。このようにして、サンプルは、セル110に導入される前に前処理される。
【0033】
吸着剤材料112を抽出セル110に挿入した後、分離される液体炭化水素サンプル113が抽出セル110に導入される。炭化水素サンプル113は、抽出セル中の吸着剤材料112の上部に導入される。抽出セル110に導入されると、サンプル113は、セル110の上部にある吸着剤材料112の最初の数ミリメートル(例えば、初期の5ミリメートル)に急速に広がり、そこに残る。1つ以上の実施形態では、炭化水素サンプル113は、吸着剤材料112の上部10体積%以内に含有される。1つ以上の実施形態では、液体炭化水素サンプル113は、ディーゼル燃料サンプル、原油サンプル、または真空軽油(VGO)サンプルであり得る。原油などのより粘性の高いサンプルは、ディーゼル燃料などのより多くの液体サンプルよりも吸着剤材料112に浸透する傾向がある。いずれにせよ、サンプルサイズが小さい結果として、サンプルは、抽出プロセスが始まる前に、吸着剤材料112の上側の区域(例えば、吸着剤材料112の上側の10%の面積)に残ることができる。
【0034】
1つ以上の実施形態では、比較的少量の炭化水素サンプルが抽出セル110に導入される。元来のASE処理とは異なり、本発明で抽出されるサンプルは、サンプルが、典型的には、1グラム未満(例えば、0.1グラム)であるという点で、抽出セルのごくわずかな画分しか占めないが、セルの大部分を占める吸着剤材料は、はるかに大きい体積および重量を有する。例えば、ディーゼル燃料または原油の0.1グラムのサンプルを吸着剤材料の上部にある抽出セルに導入することができる。1つ以上の実施形態では、吸着剤材料の質量は、約3グラム~約20グラムの範囲にある。少なくとも1つの実施形態では、吸着剤材料の質量は、約15.5グラム(例えば、15.5グラムのシリカ酸化物)であり得る。1つ以上の実施形態では、炭化水素サンプル113は、抽出セル110の体積の3%未満を占めることができる。特定の実施形態では、炭化水素サンプル113は、抽出セル110の体積の2%未満を占めることができる。少なくとも1つの実施形態では、炭化水素サンプル113は、抽出セル110の体積の1%未満を占めることができる。炭化水素サンプル113は、ピペット(例えば、ガラスピペット)を使用して抽出セル110に導入することができ、サンプル113は、初期に、吸着剤材料112の上部露出面に送達される。1つ以上の実施形態では、吸着剤は、抽出セルの体積(例えば、抽出セルの管状本体の体積)の97%~99%を占めることができる少なくとも1つの実施形態では、吸着剤材料は、抽出セル100の管状本体の少なくとも90体積%を占めることができる。
【0035】
サンプル113を抽出セル110に導入した後、満たされた抽出セル110は、閉じられ(エンドキャップ114が管状本体に取り付けられる)、ASE100のセルトレイ105に配置される。セルトレイ105での抽出セルの配置では、抽出セル110は、炭化水素サンプルの導入中のようなサンプル位置-サンプル113が吸着剤材料112の上部にある上向きの位置に保持される。
【0036】
再び図1Aを参照すると、炭化水素サンプルが装填された抽出セルがセルトレイ105に装填されると、ASE100の操作によって炭化水素サンプルの画分への分離が開始する。1つ以上の実施形態では、空の注射器すすぎバイアルがバイアルトレイ115に配置され、フラッシングに使用される溶媒などの廃溶媒を収集するために使用される。さらに、1つ以上の実施形態では、分離プロセスで使用される1つ以上の溶媒ボトル135は、それぞれ、少なくとも200mLのそれらのそれぞれの溶媒を有する。
【0037】
液体炭化水素サンプル113のそれぞれの画分は、順次抽出される。例えば、1つ以上の実施形態では、炭化水素サンプル113の飽和画分(第1の画分)は、第1の溶媒を使用して最初に抽出される。言い換えれば、第1の溶媒が抽出セル110に導入され、その溶媒は、抽出される画分が、フィルタを通過し、針機構125を介して収集バイアル120に入るように、液体炭化水素サンプルと相互作用する(例えば、第1の画分が第1の溶媒に溶解する)。言い換えれば、サンプル113は、溶媒によって吸着剤材料112(充填材料)を通して押し出される。溶媒がセルの上部に導入されると、それは、サンプル112と相互作用し、サンプルの標的化画分を溶解し、次いで溶媒の継続的な導入により、溶解した画分および溶媒が吸着剤材料112および最終的にはフィルタ111を通して洗浄される。吸着剤(充填)材料112に対する化合物の親和性の違い、および本明細書に記載されるような異なる画分を抽出するために使用される異なる溶媒によって、各溶媒が、異なるクラスの化合物をセルから押し出して、全てのクラスの化合物がセルから除去されるようにすることができる。
【0038】
プロセス全体は、サンプル、吸着剤材料、および使用される溶媒の間の相互作用に関する完成に依存している。例えば、第1の溶媒(例えば、ヘキサン)が飽和画分の抽出に使用される第1の抽出工程では、飽和画分は、優先的に吸着剤材料から第1の溶媒相(例えば、ヘキサン相)に移動するが、芳香族および樹脂画分は、吸着剤材料に残る。飽和物とともに貸し出されたヘキサンが第1のバイアルに収集された後、第2の溶媒が、抽出セルに導入される。次いで、芳香族は、第2の溶媒に対するそれらの親和性が吸着剤材料に対するそれらの親和性よりも大きいので、吸着剤材料から第2の溶媒に移送される。樹脂画分は、第3の溶媒を使用して同様に除去される。
【0039】
各溶媒は、抽出されることが意図された画分を標的とし、その後に分画される他の画分を残すように選択される。1つ以上の実施形態では、飽和画分を抽出するための溶媒は、ヘキサンであり得るが、他の好適な溶媒も同等に使用することができる。少なくとも1つの実施形態では、ヘキサンは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)グレードのヘキサンである。1つ以上の実施形態では、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、または他の軽質アルカンが含まれるが、これらに限定されない、他の溶媒を飽和画分の抽出に使用することができる。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、炭化水素サンプル113の芳香族画分は、抽出される第2の画分である。芳香族画分は、飽和画分を抽出するために使用される溶媒(第1の溶媒)とは一般に異なる第2の溶媒を使用して抽出される。具体的には、第1の画分の抽出に続いて、第2の溶媒が、1つの溶媒ボトル135からのように抽出セル110に導入される。次いで、第2の溶媒は、芳香族画分がフィルタを通過するように、液体サンプルの残りの部分(すなわち、元の液体サンプルから飽和画分を引いたもの)と相互作用する。第2の溶媒を抽出セル110に導入する前に、セルトレイ105(またはバイアルトレイ)は、抽出セルが針機構125を介して異なる収集バイアル120と流体接続して配置されるように、シフトする(例えば、回る)ことができる。したがって、芳香族画分が抽出セル110中のフィルタを通過するとき、それは、飽和画分が導入されたものとは異なる収集バイアル120に導入され得る。1つ以上の実施形態では、第2の溶媒は、トルエンである。少なくとも1つの実施形態では、トルエンは、米国化学会(ACS)グレードのトルエンである。1つ以上の実施形態では、トルエンとシクロヘキサンとのブレンド(例えば、95トルエン/5シクロヘキサン)などの他の溶媒を第2の溶媒として使用することができる。少なくとも1つの実施形態では、炭化水素サンプル113中の1つ以上の硫黄化合物は、第2の溶媒を使用して芳香族画分で抽出される。特定の実施形態では、硫黄化合物は、芳香族および樹脂画分の両方で抽出することができる。芳香族および樹脂画分で抽出された硫黄化合物の化学的構成は、所与の溶媒におけるそれらのそれぞれの溶解度に基づく。
【0041】
少なくとも1つの実施形態では、1つ以上の他の画分を炭化水素サンプルから抽出することができる。例えば、特定の炭化水素サンプルでは、樹脂画分が抽出される第3の画分であり、それは、ASEの指定された溶媒および指定された操作パラメータを使用して抽出することができる。炭化水素サンプルからの樹脂画分の抽出に使用できる溶媒には、アセトン、クロロホルム、メタノール、およびトルエンとメタノールとのブレンド(例えば、1:4のトルエン対メタノール)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、少なくとも1つの実施形態では、炭化水素サンプル中の1つ以上の窒素化合物は、樹脂抽出に使用される溶媒中の窒素化合物および樹脂画分の同様の溶解度のために、樹脂画分で抽出される。飽和、芳香族、および/または樹脂画分が炭化水素サンプルから抽出される実施形態では、それぞれの画分は、ASEについてのそれぞれの操作パラメータを使用して、別々の段階で順次に抽出される。本方法の1つ以上の実施形態では、液体炭化水素サンプル全体は、様々な画分が除去された後、炭化水素サンプルの一部がセル中に本質的に残らないように抽出される。
【0042】
炭化水素サンプルの様々な画分は、使用される異なる溶媒に基づいて順次抽出されるため、ASEの操作パラメータを、順次の抽出間で変動させることができる。1つ以上の実施形態では、フラッシング工程は、様々な画分の抽出の間にも実行される。この工程では、窒素ガスを使用して、次の溶媒を導入する前に、針および/または抽出セルの前の抽出工程からの前の溶媒をフラッシュする。
【0043】
本出願の分離および回収プロセスは、元の液体サンプルが完全に分画され、画分が抽出セル110内に残らなくなるまで実行される。例えば、それぞれの抽出工程の間で変動させることができる他の操作パラメータには、セルを通してフラッシュされる溶媒の量(フラッシュパーセンテージ)、静的溶媒抽出時間、抽出工程中のセル内の流体圧力量、セルが加熱される温度、予熱時間、窒素ガスがセルをパージする時間量(パージ時間)、およびそれぞれの抽出のためのサイクル数が含まれる。図2は、飽和画分および芳香族画分が順次に抽出される本方法の実施形態におけるASEの例示的なパラメータの表を示している。図2において、段階1は、例示的な炭化水素サンプルから飽和画分を抽出するためのASEのための例示的なパラメータを表し、一方、段階2は、芳香族画分を抽出するための例示的なパラメータを表す。図2の例では、フラッシュパーセンテージ、静的溶媒抽出時間、セル内の流体圧力量、セルの温度、および溶媒のタイプは、段階1(飽和物の抽出)と段階2(芳香族の抽出)との間で変動する。対照的に、予熱時間、パージ時間、およびサイクル数は、両方の段階で同じままである。炭化水素サンプルのタイプおよび抽出される画分のタイプに応じて、上記の操作パラメータのそれぞれは、それぞれの抽出段階の間で変動するか、または同じであり得ることを理解されたい。
【0044】
サンプルの化学的構成の結果として、サンプル全体を別々の化合物クラスに分離することができ、分画プロセスの完了時に、元のサンプルは、サンプルの少なくとも一部がセル中に残る従来のASEプロセスとは対照的であるセルから除去される。
【0045】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加速溶媒抽出器を使用して液体炭化水素サンプルを分離および回収する方法は、以下の方法で実行することができる。吸着剤材料が管状本体の少なくとも90体積%を占めるように、底部端にフィルタが充填された管状本体およびフィルタの上部に配設された吸着剤材料を含む抽出セルが調製される。次いで、炭化水素サンプルは、抽出セル中の吸着剤材料の上部に導入される。炭化水素サンプルを含む抽出セルは、加速溶媒抽出器のセルトレイに配置される。次いで、少なくとも1つの溶媒を使用して少なくとも1回の抽出が実行され、その結果、1つ以上の画分が個別に抽出および収集される。特定の実装形態では、吸着剤材料は、管状本体の少なくとも95体積%を占める。少なくとも1つの実装形態では、吸着剤材料は、管状本体の少なくとも98体積%を占める。1つ以上の実装形態では、炭化水素サンプルを導入する工程は、炭化水素サンプルが吸着剤材料の上部10体積%以内に含有されることをもたらす。
【0046】
再び図1Aを参照すると、炭化水素サンプルから抽出されたそれぞれの画分のそれぞれは、それらをさらに分析することができるように、別々の収集バイアル120に収集することができる。順次抽出が完了すると、それぞれの画分を含有する収集バイアル120は、それぞれ、ドラフト中の(窒素ガス源を介して)窒素ガス下に配置され、それぞれの溶媒を除去する。1つ以上の実施形態では、ASE100の窒素ガス源は、99.9%以上(例えば、99.95%)などの高純度パーセンテージを有する窒素ガスを含むことができる。それぞれの溶媒が窒素ガスを介して収集バイアルから除去された後、それぞれの画分をさらに分析することができる。例えば、1つ以上の実施形態では、それぞれの画分は、分析技術(例えば、クロマトグラフィー)を介して定性的に分析されて、それぞれの画分の組成を決定することができる。1つ以上の実施形態では、分析技術は、質量分析、NMR分光法、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、および超臨界クロマトグラフィーから選択することができる。
【0047】
ディーゼルサンプルを分離するための本方法の有効性は、図3A~3Cの例に示されている。図3A~3Cは、1つ以上の実施形態による開示された分離方法を受けた例示的なディーゼル燃料サンプルの例示的なクロマトグラムを表示する。具体的には、図3Aは、参照として完全ディーゼル燃料サンプルのクロマトグラムを表示し、図3Bおよび3Cは、ディーゼル燃料サンプルが本分離方法を受けた後の、分離された飽和および芳香族画分のクロマトグラムをそれぞれ表示する。図3A~3Cのクロマトグラムを作成するために、完全ディーゼル燃料サンプルならびに得られた飽和および芳香族画分を、ディーゼル画分用の水素炎イオン化検出器を具備した包括的な2次元ガスクロマトグラフィーにかけた。図3Bおよび3Cに示すように、高品質の分離の指標である2つの画分間には微量の重複しかなかったため(すなわち、図3Bの飽和クロマトグラムに示されている微量のモノ芳香族種)、本方法を使用した飽和画分と芳香族画分との分離は成功した。
【0048】
原油留分を分離するための本方法の有効性を図4の例に示す。図4は、1つ以上の実施形態による開示された分離方法を受けた例示的な原油サンプル(脱アスファルト原油)の例示的なクロマトグラムを表示する。この例では、原油サンプルから分離された飽和および芳香族画分を、屈折率検出器(HPLC-RI)を具備した高速液体クロマトグラフィーを使用して分析した。図4は、完全原油サンプルのクロマトグラムを、得られた飽和および芳香族画分のクロマトグラムと比較している。図4に示すように、飽和クロマトグラムには微量のモノ芳香族しか見られないが、芳香族クロマトグラムは、飽和ピークを示さない。したがって、図4のクロマトグラムは、2つの画分間に微量の重複しかないことを示しており、これは、2つの画分の分離が効果的であったことを示している。
【0049】
上記の例では、飽和画分と芳香族画分との間の重複は、15%以下の値に維持されており、これは、本発明の分離方法が有効であったことを示している。
【0050】
これらの例に示されるように、本開示は、液体炭化水素サンプルを画分に分離するための新規な方法を提供する。本方法では、ASEは、溶媒抽出器としてではなく、一種の分離カラムとして機能する。さらに、本方法では、炭化水素サンプルの一部がASEの抽出セル中に本質的に残るように、液体炭化水素サンプル全体を分離または抽出することができる。これは、部分的には、異なるクラスの化合物の様々な溶媒に対する親和性が変動するため、各溶媒がサンプル中の異なるクラスの化合物を抽出セルから別々の収集バイアルに押し出すように、順次溶媒を使用することによって実現される。本方法は、抽出セルが抽出されるサンプルならびに分散剤(例えば、砂、珪藻土)で満たされるASEの従来の使用(例えば、溶媒抽出法)とは対照的である。このように、ASEの従来の使用法では、分散剤とブレンドされたサンプルの少なくとも一部がセル中に残り、抽出することができないため、抽出セルの内容物全体を抽出することはできない。
【0051】
本方法は、カラムクロマトグラフィーを使用する重量分析法などの従来の分離および定量法よりも高速で効率的な方法を提供する。本方法はまた、化学物質へのより長い曝露時間を伴う終日実験を必要とする重量定量化方法に対して、有害な化学物質へのユーザの曝露も制限する。さらに、本方法は、従来の方法に対して、著しく少ない量の溶媒および吸着剤材料を使用する。
【0052】
本方法から集められた結果(例えば、炭化水素サンプルおよび分離された画分の組成分析)は、生産性および石油評価の点から石油貯留層のモデリングおよび評価などの上流の操作にも有益に使用することができる。さらに、物理的および精製情報を提供することに加えて、液体炭化水素サンプルの組成分析は、石油貯留層の区画化の流量計算および特性評価もサポートすることができる。炭化水素サンプルの画分を正確に分離する本方法の能力はまた、分子レベルで分離された画分のさらなる下流分析を可能にする。
【0053】
上記の説明の多くは、液体炭化水素サンプルを分離および回収するためのシステムおよび方法を対象としてきたが、本明細書に開示されたシステムおよび方法は、参照されたシナリオをはるかに超えたシナリオ、状況、および設定で、同様に展開および/または実装することができる。例えば、炭化水素サンプル以外の他のタイプの液体サンプルは、本システムおよび方法で利用することもできる。このような実装形態および/または展開のいずれも、本明細書に記載のシステムおよび方法の範囲内であることをさらに理解されたい。
【0054】
図面中の類似の数字が、いくつかの図を通して類似の要素を表すこと、ならびに図に関連して説明および図示された構成要素および/または工程の全てが、全ての実施形態または構成に必要とされるわけではないことをさらに理解されたい。さらに、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別のことを示している場合を除き、複数形も含むものと意図する。本明細書における「including(含む)」、「comprising(備える)」または「having(有する)」、「containing(含有する)」、「involving(含む)」という用語およびそれらの変形は、本明細書で使用する際、述べた特徴、整数、工程、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。
【0055】
特許請求の範囲の要素を修飾するための特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」などの順序を示す用語の使用は、それ自体では、別のものに関して1つの特許請求の範囲の要素の優先順位、先行、または順序、あるいは方法の動作が実行される時間的な順序を暗示するものではなくて、特定の名前を有する1つの特許請求の範囲の要素を同じ名前を有する別の要素と区別するための(ただし、順序を示す用語を使用するための)ラベルとしてのみ使用され、特許請求の範囲の要素を区別することに留意されたい。
【0056】
上述の主題は、単に例示として提供されており、限定されるものと解釈されるべきではない。例解され、記載された例示的な実施形態および用途に従うことなく、かつ、以降の特許請求の範囲に記載されている本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更が、本明細書に記載された主題に対して行われ得る。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
【国際調査報告】