(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】スクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6886 20180101AFI20220414BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541204
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 US2020013623
(87)【国際公開番号】W WO2020150311
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514099053
【氏名又は名称】フリンダーズ ユニバーシティ オブ サウス オーストラリア
【氏名又は名称原語表記】Flinders University of South Australia
【住所又は居所原語表記】Sturt Road, Bedford Park, South Australia 5042,Australia
(71)【出願人】
【識別番号】508346033
【氏名又は名称】クリニカル ジェノミクス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,グレイアム,ポール
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,エリン
(72)【発明者】
【氏名】ラポワント,ローレンス,シー
(72)【発明者】
【氏名】ペダーセン,スザンヌ,カーティン
(72)【発明者】
【氏名】ハッセー,ダミアン,ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX01
(57)【要約】
本願は、個体の食道または胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングするか、又は個体の食道または胃の新生物をモニタリングする方法に関し、前記方法は、前記個体の生物学的サンプルにおいて、選択されたDNA領域のメチル化状態を評価することを含み、対照レベルと比較して、DNA領域の少なくとも1つのメチル化のより高いレベルが食道または胃の新生物を示すか、食道または胃の新生物の発症の素因を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の食道又は胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングする方法又は個体の食道もしく胃の新生物をモニタリングする方法であって、前記方法は、前記個体の生物学的サンプルにおいて、
(i)Hg19座標
(1)chrl2:24962958..25102393;及び/又は
(2)chr7:50344378...50472798
によって定義される、転写開始部位の2kb上流を含む領域:又は
(ii)(1)BCAT1及び又は(2)IKZF1のいずれか2つ以上の2kb上流を含む遺伝子領域:
から選択されるDNA領域のメチル化状態を評価することを含む方法であって、メチル化レベルが対照レベルよりも高いとき、対照レベルと比較してグループ(i)及び/又は(ii)のDNA領域の少なくとも1つのより高いレベルのメチル化が、食道もしくは胃の新生物または食道もしくは胃の新生物の発症の素因を示し、及び任意選択で、結腸鏡検査、悪性組織の外科的除去、及び/又は放射線、化学療法、又は免疫療法を受けるように前記個体に示すか、ガイドするか又は助言する。
【請求項2】
個体の食道又は胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングする方法又は個体の食道もしく胃の新生物をモニタリングする方法であって、前記方法は、前記個体の生物学的サンプルにおいて、
(i)Hg19座標
(1)chrl2:24962958..25102393;及び/又は
(2)chr7:50344378...50472798
によって定義される、転写開始部位の2kb上流を含む領域:又は
(ii)(1)BCAT1及び又は(2)IKZF1の2kb上流を含む遺伝子領域:
から選択されるDNA領域の発現レベルを評価することを含む方法であって、
メチル化レベルが対照レベルよりも低いとき、対照レベルと比較してグループ(i)及び/又は(ii)のDNA領域の少なくとも1つのより低いレベルの発現が、食道または胃の新生物もしくは新生物の発症の素因を示し、及び任意選択で、結腸鏡検査、悪性組織の外科的除去、及び/又は放射線、化学療法、又は免疫療法を受けるように前記個体に示すか、ガイドするか又は助言する。
【請求項3】
前記方法が、前記生物学的サンプル中のBCAT1又はIKZF1のどちらか一方をスクリーニングすることを対象とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記生物学的サンプル中のBCAT1又はIKZF1の両方をスクリーニングすることを対象とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記BCAT1及びIKZF1のうちの一方のみが、調節されたメチル化又は発現を示す請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記BCAT1及びIKZF1の両方が、調節されたメチル化又は発現を示す請求項4に記載の方法。
【請求項7】
新生物が悪性である請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記悪性新生物が腺癌である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記新生物が悪性ではない請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記非悪性新生物が腺腫である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対照レベルが非腫瘍性レベルである請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対照レベルが、前記個体から以前にスクリーニングされた生物学的サンプルのレベルである請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対照レベルと比較したメチル化のレベルの減少、または前記対照レベルと比較したDNA発現のレベルの増加が、新生物の除去を示す請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記新生物が胃の新生物である請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記新生物が食道の新生物である請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的サンプルが、外科的切除、組織生検、唾液、尿又は血液サンプルである請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記血液サンプルが、全血、血清、血漿、エクソソーム、又はバフィーコートである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
DNAメチル化スクリーニングが無細胞DNAを対象とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記無細胞DNAが循環腫瘍DNAである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記メチル化が、
(1)BCAT1サブ領域chrl2:25101992-25102093(配列番号9又は対応するマイナス鎖)及びchrl2:25101909-25101995(配列番号16又は対応するマイナス鎖);
(2)IKZF1サブ領域:chr7:50343867-50343961(配列番号2又は対応するマイナス鎖)及びchr7:50343804-5033895(配列番号24又は対応するマイナス鎖):
から選択される1つまたは複数の染色体サブ領域で評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、
chr7:50343869 chr7:50343872 chr7:50343883
chr7:50343889 chr7:50343890 chr7:50343897
chr7:50343907 chr7:50343909 chr7:50343914
chr7:50343934 chr7:50343939 chr7:50343950
chr7:50343959 chr7:50343805 chr7:50343822
chr7:50343824 chr7:50343826 chr7:50343829
chr7:50343831 chr7:50343833 chr7:50343838
chr7:50343847 chr7:50343850 chr7:50343858
chr7:50343864 chr7:50343869 chr7:50343872
chr7:50343890
又は反対側のDNA鎖の位置n+1にある対応するシトシン
から選択される1つ又は複数のシトシン残基のメチル化を評価することを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記発現レベルが、mRNA発現又はタンパク質発現である請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳動物がヒトである請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、食道または胃の新生物の発症、発症の素因及び/又は進行をスクリーニングする方法に関する。より具体的には、いくつかの実施形態は、選択された遺伝子のパネルのメチル化レベル又はメチル化のパターンの変化をスクリーニングすることによる、食道又は胃の新生物の発症、発症の素因及び/又は進行をスクリーニングする方法に関する。本明細書に記載の実施形態は、食道腺癌又は胃腺癌などの食道又は胃の新生物の診断及び/又はモニタリングに関連するものを含むが、これらに限定されない一連の用途において有用である。
【背景技術】
【0002】
胃腸癌とは、胃腸管(GI管)及び食道、胃、胆道系、膵臓、小腸、大腸、直腸、肛門を含む消化の付属器官の悪性状態を指す。症状は影響を受ける臓器に関連しており、閉塞(嚥下困難又は排便困難につながる)、異常な出血、又はその他の関連する問題が含まれる場合がある。全体として、GI管と消化の付属器官(膵臓、肝臓、胆嚢)は、体内の他のどのシステムよりも多くの癌と癌による死亡の原因となっている。
【0003】
GI管の器官は、すべてが消化過程に何らかの形で寄与するという点で共通の機能を共有しているという事実にもかかわらず、組織の構造と機能の両方の点で、それぞれは完全に別個のユニークな器官である。したがって、さまざまな胃腸癌の発生率、原因、病因及び予後には大きなばらつきがあり、それらの器官は非胃腸がんに関して共有しているというよりも病因に関して共通点はない。
【0004】
GI管の一部を形成する臓器の壁内に限定されている浸潤がん(例:TNMステージIおよびII)は通常、手術で治癒する。未治療の場合、それらは局所リンパ節に広がり(例:TNMステージIII)、手術と化学療法の組み合わせによって治癒する可能性がある。遠隔部位に転移するがん(例:TNMステージIV)は、通常治癒の可能性はないが、化学療法で生存期間を延長できる可能性があり、まれに、手術と化学療法を併用することで患者が治癒することがある。
【0005】
食道癌と胃癌はどちらもよくみられる疾患であり、一般的に予後不良である。これは主に、重大な疾患の進行が起こった後に最も頻繁に発症し、したがって生存率が低いためである。食道癌は世界で6番目に多い癌であり、その発生率は増加しており、女性1人に対して3~5人の男性が罹患している。食道癌は、通常、初期症状がない限り、後期に発見されることがよくある。それでも、癌がすぐに発見されれば、患者の5年生存率は90%以上になる可能性がある。しかし、食道癌が通常検出される頃には、癌は食道壁を越えて広がり、それゆえ生存率は大幅に低下する。中国では、進行食道がんの5年生存率は約20%であり、米国でのその数値は約15%である。胃癌は、世界で4番目に多い種類の癌であり、癌による死亡の2番目に多い原因である。最も一般的なタイプの胃癌は腺癌である。食道癌と同様に、診断はしばしばかなり遅れるが、必ずしも初期症状がないためではなく、症状の多くが他の疾患でも発生する可能性があるため、疾患が進行するまで、その症状によって胃癌であるとの決定的な診断ができないことがあるからである。
【0006】
食道癌は、喉と胃の間を走る長い筋肉の管である食道から発生する癌である。後期の症状には、嚥下困難や体重減少などがある。その他の症状には、嚥下時の痛み、嗄声、鎖骨周囲のリンパ節腫脹、乾いた咳、場合によっては咳や吐血などがある。この疾患の2つの主要なサブタイプは、発展途上国でより一般的な食道扁平上皮癌(ESCC)と、先進国でより一般的な食道腺癌(EAC)である。あまり一般的ではないタイプもいくらか発生する。扁平上皮癌は、食道の内側を覆う上皮細胞から発生する。腺癌は、通常、扁平上皮細胞が腺細胞に変化したとき(バレット食道として知られる状態)、食道の下3分の1に存在する腺細胞から発生する傾向がある。この変化の原因は部分的にしか理解されていないが、胃食道逆流症(GERD)又は胆汁逆流症の長期的なびらん性効果はこのタイプの癌と強く関連している。長年のGERDは、その扁平上皮の侵食に応答して、食道の下部に細胞型の変化を引き起こす可能性がある。この現象は、おそらくホルモンの要因により、男性よりも女性の方が約20年遅れて現れるようである。
【0007】
胃癌は一般的に胃の内壁に発生する。初期の症状には、消化不良、上腹部の痛み、吐き気および食欲不振などがある。その後の兆候や症状には、体重減少、皮膚や白目が黄色くなる、嘔吐、嚥下困難、血便などがある。これらはすべて、多くの原因に起因する非常に一般的な症状である。
【0008】
胃癌の特に一般的な原因は、症例の60%以上を占めるヘリコバクターピロリ菌による感染症である。症例の約10%は家族で発生し、症例の1%から3%は、遺伝性びまん性胃がんなど、両親から受け継いだ遺伝性症候群が原因である。胃癌は、何年にもわたって段階的に発症する傾向がある。
【0009】
食道癌の予後と治療計画は、診断を下し、臨床段階を確立する能力に依存している。バリウムを飲み込む検査はしばしば行われている。それは、後の内視鏡検査のための癌の疑いと腫瘍の局在化を提供する。ただし、診断をするには食道鏡検査が必要である。バレット食道と腫瘍の直接的な視覚化と評価が可能であり、生検による組織診断を提供できる。この診断での疑わしい病変の単一生検は93%正確である。複数の生検(7回)とブラッシングを追加すると、精度が100%に向上する。従来の内視鏡検査(内視鏡超音波)と組み合わせた超音波プローブは、米国癌合同委員会によって確立された腫瘍-リンパ節転移基準による病期の最も正確な推定を提供する。超音波検査は、食道壁の5つの層を85%の精度で評価し、異常な縦隔リンパ節転移を約80%の精度で検出することによって行われる。EUSガイド下細針吸引はこの精度を高める。
【0010】
胃癌の診断とスクリーニングの明確な方法は重要である。なぜなら、その症状は他の病気のプロセスを模倣することが多く、病気が治癒する可能性のある時期はごくわずかだからである。それぞれの異なる診断方法には、長所と短所がある。侵襲的で費用がかかるが、内視鏡検査は現在、開腹術以外に確定診断を得るための最も具体的で感度の高い方法であり、生検能力のためにバリウム造影X線写真に取って代わった。これにより、病変を直接視覚化し、組織サンプルを取得する機会が得られる。胃潰瘍の縁と基部の7つの生検による内視鏡検査は、初期の胃癌でわずか14%の感度であるバリウム検査と比較して、すべての段階の胃癌を診断するために98%の感度を持っている。バリウムは、内視鏡検査では識別が難しい、びまん性胃癌であるスキルスの診断において引き続き主要な役割を果たしている。ブラシ生検は、出血のリスクがある領域で行われる。
【0011】
人口動態の変動と最近の発病率の変化により、食道癌と胃癌の両方の危険因子の研究に多くの重点が置かれている。しかし、これらの病気についての理解が深まっているにもかかわらず、低い生存率が続いている。食道癌と胃癌は発症するまでに何年もかかる可能性があり、これらの癌の早期発見は予後を大幅に改善する。しかし、症状がないか又は非常に非特異的な症状であることと、信頼できる侵襲的で高価な診断技術のみが主流であることの組み合わせによって、実際の診断は非常に遅い段階で行われる傾向がある。初期段階のスクリーニング方法を実施するためのささやかな努力でさえ、癌による死亡の減少をもたらす。ただし、単純で非侵襲的で費用効果の高いスクリーニング方法がないことが、これを妨げている。より感度の高い検査のほとんどは非常に侵襲的で費用がかかるため、患者による採用は少ない。したがって、より侵襲的または高価な診断方法を、癌腫を発症した可能性が高い人々に向けることを可能にする、より単純でより有益な診断プロトコル又は診断支援を継続的に開発する必要がある。シンプルで正確なスクリーニングテストにより、はるかに広く適用可能なスクリーニングシステムを提示することができる。
【0012】
本発明に至るまでの研究において、BCAT1及び/又はIKZF1遺伝子のメチル化への変化は、癌腫などの食道および胃の新生物の発生を示していることが確定された。さらに、高メチル化される特異的ゲノムDNAシトシンヌクレオチドの特定により、診断の文脈で日常的に使用するための非常に単純で特異的な増幅反応の開発が可能になった。したがって、診断は、これらの2つの異なるメチル化遺伝子の一方または両方のスクリーニングに基づいて行うことができる。BCAT1とIKZF1が結腸直腸腫瘍で高メチル化されることが知られているが、これらは汎癌マーカーではなく、食道組織および胃組織と同じ組織学的特徴のいくつかを示す新生物組織では変化しないことが明確に示されていることを考えると、これらのデータは、驚くべきことである。例えば、胃、乳房、前立腺の各組織は、本質的に腺である。これら3つの組織のそれぞれの腺細胞は腺癌を引き起こすことが示されているが、乳房および前立腺の腺癌はBCAT1およびIKZF1のメチル化に変化を示さないことが繰り返し示されている。食道組織と胃組織の間のように、これらの臓器は完全に異なるため、腫瘍性マーカーの発現の類似性は予想されず、完全に偶然である。それらの非類似性の程度は、それらの組織学の違いだけでなく、さらに、ヘリコバクターピロリ感染がGERDと胃がんの危険因子の共通の原因にも関わらず、食道腺癌の危険因子ではなく、保護的であるように見えるという事実などの機能の違いによって証明される。実際、この感染症は、食道腺癌のリスクが50%も低下することに関連している。したがって、本発明者らは、新形成の診断及び/又は食道および胃の新形成によって特徴づけられる状態のモニタリングを容易にする2つの遺伝子を特定した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書および以下の特許請求の範囲を通じて、文脈が他を要求しなければ、「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変形は、決められた整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を包含するが、他の任意の整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を排除しないことを意味する。
【0014】
本明細書で使用されるように、用語「に由来する」とは、特定の整数又は整数の群が明示されたている種に由来しているが、必ずしも明示された供給源から直接入手したわけではないことを示していると解釈する。さらに、本明細書で使用されるように、単数形の「1つ(a)」、「1つ(and)」及び「それ(the)」は、文脈が他の方法で明確に指示していなければ、複数の参照対象を含む。
【0015】
他の方法で定義されていなければ、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0016】
主題の明細書は、プログラムPatentInバージョン3.5を使用して準備されたヌクレオチド配列情報を含有しており、本明細書の文献目録の後に提示されている。それぞれのヌクレオチド配列は、数字指標<210>とそれに続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2、等)により配列表において特定される。配列ごとの長さ、配列の種類(DNA、等)及び供給源生物は、それぞれ数字指標分野<211>、<212>及び<213>で提供される情報により示される。明細書において言及されるヌクレオチド配列は、指標配列番号とそれに続く配列識別子(例えば、配列番号1、配列番号2、等)により特定される。明細書において言及される配列識別子は、配列表中の数字指標分野<400>とそれに続く配列識別子(例えば、<400>1、<400>2、等)で提供される情報と関連している。すなわち、明細書において詳述されている配列番号1は配列表中の<400>1として示される配列に関連している。
【0017】
本発明の一態様は、個体の食道又は胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングする方法又は個体の食道もしくは胃の新生物をモニタリングする方法に関し、前記方法は前記個体の生物学的サンプルにおいて、
(i)Hg19座標
(1)chrl2:24962958..25102393;及び/又は
(2)chr7:50344378 ...50472798;
によって定義される、転写開始部位の2kb上流を含む領域:又は
(ii)(1)BCAT1;及び/又は(2)IKZF1の2kb上流を含む遺伝子領域から選択されるDNA領域のメチル化状態を評価することを含む方法であって、対照レベルと比較して、グループ(i)及び/又は(ii)のDNA領域の少なくとも1つのメチル化のより高いレベルが食道もしく胃の新生物又は食道もしくは胃の腫瘍性状態の発症の素因を示す。
【0018】
一実施形態では、前記方法は、生物学的サンプル中のBCAT1又はIKZF1のどちらか一方をスクリーニングすることを対象としている。
【0019】
別の実施形態では、前記方法は、生物学的サンプル中のBCAT1及びIKZF1の両方をスクリーニングすることを対象としている。
【0020】
さらに別の実施形態では、前記方法は、BCAT1及びIKZF1の両方をスクリーニングすることを対象とするが、前記遺伝子のうちの1つのみがより高いレベルのメチル化を示す。
【0021】
さらに別の実施形態では、前記方法は、BCAT1及びIKZF1の両方をスクリーニングすることを対象とするが、前記遺伝子の両方がより高いレベルのメチル化を示す。
【0022】
さらに別の実施形態では、前記対照レベルは非腫瘍性レベルである。
【0023】
さらに別の実施形態では、前記対照レベルは、前記個体から以前にスクリーニングされた生物学的サンプルのレベルである。
【0024】
さらに別の実施形態では、新生物は、癌腫のように悪性である。
【0025】
さらなる実施形態において、新生物は、腺腫のように非悪性である。
【0026】
さらに別のさらなる実施形態では、前記新生物は、食道もしくは胃の腺腫又は腺癌である。
【0027】
特定の有用性を示すと決定されたサブ領域は次のとおりである。
(1)BCAT1サブ領域chrl2:25101992-25102093(配列番号1又は対応するマイナス鎖)及びchrl2:25101909-25101995(配列番号2又は対応するマイナス鎖);及び
(2)IKZF1サブ領域:chr7:50343867-50343961(配列番号3又は対応するマイナス鎖)及びchr7:50343804-5033895(配列番号4又は対応するマイナス鎖)
【0028】
本発明をいかなる1つの理論又は作用様式に限定せずに、当業者は、各遺伝子マーカーについて1つ又は複数のサブ領域をスクリーニングすることができる。
【0029】
一実施形態では、試験されるメチル化マーカーサブ領域は、以下の通りである。
(1)配列番号1又は配列番号2又は対応するマイナス鎖によって定義されるBCAT1サブ領域及び
(2)配列番号3又は配列番号4又は対応するマイナス鎖によって定義されるIKZF1サブ領域。
【0030】
本発明の方法がIKZF1を分析することを含む場合には、
chr7:50343869 chr7:50343872 chr7:50343883
chr7:50343889 chr7:50343890 chr7:50343897
chr7:50343907 chr7:50343909 chr7:50343914
chr7:50343934 chr7:50343939 chr7:50343950
chr7:50343959 chr7:50343805 chr7:50343822
chr7:50343824 chr7:50343826 chr7:50343829
chr7:50343831 chr7:50343833 chr7:50343838
chr7:50343847 chr7:50343850 chr7:50343858
chr7:50343864 chr7:50343869 chr7:50343872
chr7:50343890
又は反対側のDNA鎖の位置n+1にある対応するシトシンの中の1つ又は複数のメチル化を評価することができる。
【0031】
別の実施形態では、前記サンプルは、外科的切除、組織生検、唾液、尿又は血液サンプル(例えば、全血、血清、血漿、エクソソーム、又はバフィーコート)である。
【0032】
さらにより好ましくは、前記方法は、循環腫瘍DNAのような血漿由来の無細胞DNAのメチル化をスクリーニングすることを対象としている。
【0033】
本発明の別の態様は、個体の食道又は胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングする方法又は個体の食道又は胃の新生物をモニタリングする方法に関し、前記方法は前記個体の生物学的サンプルにおいて、
(i)Hg19座標
(1)chrl2:24962958..25102393;及び/又は
(2)chr7:50344378 ...50472798;
によって定義される、転写開始部位の2kb上流を含む領域:又は
(ii)(1)BCAT1;及び/又は(2)IKZF1の2kb上流を含む遺伝子領域から選択されるDNA領域の発現レベルを評価することを含む方法であって、対照レベルと比較して、グループ(i)及び/又は(ii)のDNA領域の少なくとも1つの発現のより低いレベルが食道又は胃の新生物もしくは腫瘍性状態の発症の素因を示す。
【0034】
本発明の関連する態様は分子アレイを提供し、このアレイは、
【0035】
(i)前記の腫瘍性マーカーDNAのいずれか2つ以上に対応するヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも80%の同一性を示す配列を含む核酸分子又は前記核酸分子の機能的誘導体、断片、変異体もしくは相同体を含む核酸分子;又は
【0036】
(ii)中程度のストリンジェンシー条件下で(i)の配列のいずれか1つ又は複数にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含む核酸分子又は前記核酸分子の機能的誘導体、断片、変異体もしくは相同体を含む核酸分子;又は
【0037】
(iii)中程度のストリンジェンシー条件下で(i)の配列のいずれか2つ以上にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含む核酸プローブ又はオリゴヌクレオチド又は前記核酸分子の機能的誘導体、断片、変異体もしくは相同体を含む核酸プローブ又はオリゴヌクレオチド
;又は
【0038】
(iv)(i)の核酸分子もしくはその誘導体、断片、もしくは相同体によってコード化される任意の2つ以上のタンパク質に結合することができるプローブ
の複数を含み、
【0039】
ここで、(i)~(iii)の前記マーカー遺伝子又は(iv)のタンパク質の発現レベルは、食道又は胃に由来する細胞もしくは細胞亜集団の腫瘍性状態を示す。
【0040】
したがって、本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、以下の番号を付した代替案によって記載される。
【0041】
1.個体の食道又は胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングする方法又は個体の食道もしく胃の新生物をモニタリングする方法に関し、前記方法は、前記個体の生物学的サンプルにおいて、
(i)Hg19座標
(1)chrl2:24962958..25102393;及び/又は
(2)chr7:50344378...50472798
によって定義される、転写開始部位の2kb上流を含む領域:又は
(ii)(1)BCAT1及び又は(2)IKZF1のいずれか2つ以上の2kb上流を含む遺伝子領域:
から選択されるDNA領域のメチル化状態を評価することを含む方法であって、メチル化レベルが対照レベルよりも高いとき、対照レベルと比較してグループ(i)及び/又は(ii)のDNA領域の少なくとも1つのメチル化のより高いレベルが、食道もしくは胃の新生物又は食道もしくは胃の新生物の発症の素因を示し、及び任意選択で、結腸内視鏡検査、悪性組織の外科的除去、及び/又は放射線、化学療法、もしくは免疫療法を受けるように前記個体に提供するか、ガイドするか又は助言する。
【0042】
2.個体の食道もしく胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングする方法又は個体の食道もしく胃の新生物をモニタリングする方法であって、前記方法は、前記個体の生物学的サンプルにおいて、
(i)Hg19座標
(1)chrl2:24962958..25102393;及び/又は
(2)chr7:50344378...50472798
によって定義される、転写開始部位の2kb上流を含む領域:又は
(ii)(1)BCAT1及び又は(2)IKZF1の2kb上流を含む遺伝子領域:
から選択されるDNA領域の発現レベルを評価することを含む方法であって、
メチル化レベルが対照レベルよりも低いとき、対照レベルと比較してグループ(i)及び/又は(ii)のDNA領域の少なくとも1つの発現のより低いレベルが、食道又は胃の新生物もしくは新生物の発症の素因を示し、及び任意選択で、結腸鏡検査、悪性組織の外科的除去、及び/又は放射線、化学療法、もしくは免疫療法を受けるように前記個体に示すか、ガイドするか又は助言する。
【0043】
3.前記方法が、前記生物学的サンプル中のBCAT1又はIKZF1のどちらか一方をスクリーニングすることを対象とする前記1又は2の方法。
【0044】
4.前記方法は、前記生物学的サンプル中のBCAT1及びIKZF1の両方をスクリーニングすることを対象とする前記1又は2の方法。
【0045】
5.前記BCAT1及びIKZF1のうちの一方のみが、調節されたメチル化または発現を示す前記4に記載の方法。
【0046】
6.前記BCAT1及びIKZF1の両方が、調節されたメチル化または発現を示す前記4に記載の方法。
【0047】
7.新生物が悪性である前記1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
8.前記悪性新生物が腺癌である前記7に記載の方法。
【0049】
9.前記新生物が悪性でない前記1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
10.前記悪性でない新生物が腺腫である前記9に記載の方法。
【0051】
11.前記対照レベルが非腫瘍性レベルである前記1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
12.前記対照レベルが、前記個体から以前にスクリーニングされた生物学的サンプルのレベルである前記1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
13.前記対照レベルと比較したメチル化のレベルの減少又は前記対照レベルと比較したDNA発現のレベルの増加が新生物の除去を示す前記12に記載の方法。
【0054】
14.前記新生物が胃の新生物である前記1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
15.前記新生物が食道の新生物である前記1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
16.前記生物学的サンプルが外科的切除、組織生検、唾液、尿又は血液サンプルである前記1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
17.前記血液サンプルが全血、血清、血漿、エクソソーム又はバフィーコートである前記16に記載の方法。
【0058】
18.DNAメチル化スクリーニングが無細胞DNAを対象とする前記17に記載の方法。
【0059】
19.前記無細胞DNAが循環腫瘍DNAである前記18に記載の方法。
【0060】
20.前記メチル化が、
(1)BCAT1サブ領域chrl2:25101992-25102093(配列番号11又は対応するマイナス鎖)及びchrl2:25101909-25101995(配列番号16又は対応するマイナス鎖)
(2)IKZF1サブ領域:chr7:50343867-50343961(配列番号2又は対応するマイナス鎖)及びchr7:50343804-5033895(配列番号24又は対応するマイナス鎖)
から選択される1つ又は複数の染色体サブ領域で評価される、前記1に記載の方法。
【0061】
21.前記方法が、
(IKZF1)
chr7:50343869 chr7:50343872 chr7:50343883
chr7:50343889 chr7:50343890 chr7:50343897
chr7:50343907 chr7:50343909 chr7:50343914
chr7:50343934 chr7:50343939 chr7:50343950
chr7:50343959 chr7:50343805 chr7:50343822
chr7:50343824 chr7:50343826 chr7:50343829
chr7:50343831 chr7:50343833 chr7:50343838
chr7:50343847 chr7:50343850 chr7:50343858
chr7:50343864 chr7:50343869 chr7:50343872
chr7:50343890
又は反対側のDNA鎖の位置n+1にある対応するシトシン
から選択される1つ又は複数のシトシン残基のメチル化を評価することを含む前記20に記載の方法。
【0062】
22.前記発現レベルが、mRNA発現又はタンパク質発現である前記2に記載の方法。
【0063】
23.前記哺乳動物がヒトである前記1から22のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0064】
本発明の前記利点、他の利点及び特徴を得ることができる方法を説明するために、添付の図面に示されている特定の実施形態を参照することによって、より具体的な説明を行う。これらの図面は典型的な実施形態のみを記載しており、したがってその範囲を限定すると見なされるべきではないことを理解すべきであって、本発明は、添付の図面を使用することにより、追加の明確な詳細とともに記載され、説明される。
【0065】
【
図1】
図1は、腫瘍性および非腫瘍性の結腸直腸組織、食道組織、前立腺組織、及び乳房組織におけるBCAT1およびIKZF1のメチル化レベル(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で参照されるすべての特許、出願、公開された出願及び他の刊行物は、特に明記しない限り、その全体が参照により明示的に組み込まれる。本明細書の用語に複数の定義がある場合、特に明記しない限り、このセクションの定義が優先する。
【0067】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ又は1つより多くのもの(例えば、少なくとも1つ)を指すために使用される。例えば、「1つの要素(an element)」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0068】
本明細書で使用される「約(about)」又は「およそ(around)」という用語は、対照とする量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、額、重量又は長さに対して、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は0.5%だけ変化する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、額、重量又は長さを指すために使用される。
【0069】
本明細書を通じて、文脈が他を要求しなければ、「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という語は、決められたステップもしくは要素又はステップもしくは要素の群を包含するが、他の任意のステップもしくは要素又はステップもしくは要素の群を排除しないことを意味する。
【0070】
「からなる(consisting of)」は、「からなる(consisting of)」という句に続くものを含み、これに限定されることを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」という句は、リストされた要素が必要とされるか又は必須であり、他の要素が存在しないことを示す。「本質的にからなる(consisting essentially of)」は、その句の後にリストされた要素を含むことを意味し、リストされた要素のために開示で特定された活性又は作用と干渉しないか又はその活性または作用に寄与する他の要素に限定される。したがって、「本質的にからなる(consisting essentially of)」は、リストされた要素が必要とされるか又は必須であり、他の要素は任意であって、リストされた要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼすか否かによって、含まれることもあれば、含まれないこともある。
【0071】
本願の開示の実施は、特に反対であることが示されない限り、分子生物学の従来の方法及び組換えDNA技術を使用し、それらの多くは、例示の目的で以下に記載される。そのような技術は、当業者によって知られており、一般的に使用されている。
【0072】
本願の開示は、患者内の癌又は腫瘍の広がりの進行を決定するための癌又は腫瘍の病期分類に言及している。固形腫瘍の分類で一般的に認識されている基準はTNM分類標準であり、腫瘍のサイズ(T)、リンパ節への広がりの程度(N)、及び転移(M)に基づいて腫瘍を区別する。これらの分類はさらにステージに分類され、ステージ0の増殖は非悪性新生物であり、ステージI及びIIの腫瘍は局所的に封じ込められ、ステージIIIの腫瘍は近くのリンパ節に広がり、ステージIVの腫瘍は転移している。TNM標準は広く使用されている分類方法であるが、特定のがんの種類の習性を示す代替又は修正された標準も使用できる。したがって、これらの標準は進行を決定するのに有用であるが、癌又は腫瘍の初期又は後期の予後は特定の分類から独立している。
【0073】
本発明は、部分的に、食道及び胃の新生物を特徴付けるDNAメチル化状態の解明に基づいている。この発見により、対照レベルと比較した、ある遺伝子のメチル化の増加に基づいて、食道及び胃の新生物の発症又は発症の素因をスクリーニングするか又は食道及び胃の新生物をモニタリングするための日常的なアプローチの開発が容易になった。本発明によれば、遺伝子BCAT1及び/又はIKZF1は、問題の細胞が腫瘍性であるか否かに応じて、メチル化への差示的な変化に関して変更され得ることが決定される。問題の遺伝子は、それらの名前及びそれらの染色体座標の両方への言及によって本明細書に記載されていることを理解すべきである。遺伝子名に対応する染色体座標が記載されている限り、これらは、2009年2月に公開されたヒトゲノムデータベースバージョンHg19(以下「Hg19座標」という)と一致している。また、BCAT1及びIKZF1は、本明細書ではマーカーの「パネル」とも呼ばれることも理解すきである。
【0074】
したがって、本発明の一態様は、個体の食道又は胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングする方法又は個体の食道もしくは胃の新生物をモニタリングする方法に関し、当該方法は、前記個体の生物学的サンプルにおいて、
(i)Hg19座標
(1)chrl2:24962958..25102393;及び/又は
(2)chr7:50344378...50472798;
によって定義される、転写開始部位の2kb上流を含む領域:又は
(ii)(1)BCAT1:及び/又は(2)IKZF1
の2kb上流を含む遺伝子領域
から選択されるDNA領域のメチル化状態を評価することを含む方法であって、
対照レベルと比較して、グループ(i)及び/又は(ii)のDNA領域の少なくとも1つのメチル化のより高いレベルが食道もしくは胃の新生物又は食道もしくは胃の腫瘍性状態の発症の素因を示す。
【0075】
本発明が、DNA領域(マーカー)の「1つ」がより高いレベルのメチル化を示す方法の実施形態を対象とする限り、これらの実施形態は、パネル内のマーカーのいずれか1つが高メチル化されていることに基づく結果を達成するように設計される。各サンプルで高メチル化されているのは同じマーカーである必要はないことが理解されるべきである。むしろ、パネルの一部を形成するマーカーの1つが高メチル化されているだけである。一部のサンプルに関しては、パネルのマーカーの両方が高メチル化される可能性があることも理解されるべきである。
【0076】
一般に食物のパイプ又は咽喉(消化管)として知られている「食道」への言及は、食物が咽頭から胃に通過する器官への言及として理解されるべきである。本発明をいかなる1つの理論または作用様式に限定せずに、食道は、気管および心臓の後ろを移動し、横隔膜を通過して、胃の最上部領域に至る、成人では約25cmの長さの線維性筋性の管である。食道は消化器系の上部の1つである。口の奥から始まる上部に味蕾がある。食道は、上部食道括約筋と下部食道括約筋としてそれぞれ知られている2つの筋肉リングによって上部と下部が囲まれている。それでも、本発明をいかなる方法でも限定することなく、これらの括約筋は、食物が飲み込まれていないときに食道を閉じるように作用する。上部食道括約筋は食道の上部を取り囲み、骨格筋で構成されているが、随意の制御下にはない。下部食道括約筋又は胃食道括約筋は、食道と胃の間の接合部で食道の下部を囲んでいる。それは、心臓括約筋又は心臓食道括約筋とも呼ばれる。胃食道接合部(食道胃接合部としても知られている)は、食道の下端にある、食道と胃の間の接合部である。食道粘膜から胃粘膜への移行は、不規則なジグザグ線のように見ることができ、これは、しばしばZ線と呼ばれる。組織学的検査により、食道の重層鱗状上皮と胃の単層円柱上皮との間の突然の移行が明らかにされる。通常、胃の噴門はZ線の遠位近くにあり、Z線は噴門の胃のひだの上限と一致する。ただし、バレット食道で粘膜の解剖学的構造が歪んでいる場合、胃食道接合部は、粘膜の移行ではなく、胃のひだの上限によって識別できる。下部食道括約筋の機能的位置は、一般に、Z線の約3cm下方にある。内腔外側から食道への壁は、粘膜、粘膜下組織(結合組織)、線維組織の層の間の筋線維の層、および結合組織の外層からなる。粘膜は、約3層の鱗状細胞の重層鱗状上皮であり、胃の円柱細胞の単層とは対照的である。横紋筋は上部の3分の1を占めているが、ほとんどの筋肉は平滑筋である。したがって、「食道」への言及は、前記の構造の任意の部分への言及として理解されるべきである。
【0077】
「胃(gastric)」への言及は、胃(stomack)への言及として理解されるべきであり、これは胃腸の経路にある筋肉の中空器官である。胃は拡張した構造を示し、重要な消化器官として機能する。胃は、腹腔の左上部の食道と小腸の間にある。胃は、消化酵素と胃酸を分泌し、食物の消化を助ける。幽門括約筋は、部分的に消化された食物(半流動体の塊)の胃から十二指腸への通過を制御し、それから、ぜん動が引き継いでこれを腸の残りへ移動させる。人間の場合、胃は食道と十二指腸の間にある。大網と呼ばれる内臓腹膜の大きな二重のひだが、胃の大彎から垂れ下がっている。2つの括約筋が胃の内容物を封じ込める。食道と胃の接合部にある下部食道括約筋(心臓領域に見られる)と、胃と十二指腸の接合部にある幽門括約筋である。
【0078】
人間の胃は噴門から始まる4つのセクションに分かれており、それぞれが異なる細胞と機能を有する。
【0079】
噴門は、食道の内容物が胃の中に注がれる場所である。
【0080】
底部は上部が湾曲するように形成されている。
【0081】
胃は体の主要な中央領域にある。
【0082】
幽門は、胃の内容物を十二指腸に排出する胃の下部にある。
【0083】
噴門は、胃食道接合部の「Z線」に続く領域として定義され、上皮が重層鱗状から円柱状に変化するポイントである。噴門の近くには下部食道括約筋がある。本発明をいかなる方法でも限定せずに、噴門は、解剖学的に胃の別個の領域ではなく、食道内層の領域である。
【0084】
人間の胃壁は、外側の粘膜、内側の粘膜下組織、外筋層、および漿膜からなる。胃の粘膜は、上皮と粘膜固有層(緩い結合組織で構成されている)からなり、粘膜筋板と呼ばれる平滑筋の薄層が胃の粘膜を下の粘膜下組織から分離している。粘膜下組織は粘膜の下にあり、線維性結合組織からなり、粘膜を次の層から分離する。マイスナー神経叢はこの層で発生する。外筋層は粘膜下組織の下にあり、胃腸管の他の器官ではみられない、次の3つの層からなる。
【0085】
内側の斜めの層:この層は、食べ物をかき回して物理的に分解する動作を作り出す役割を果たす。これは、消化器系の他の部分には見られない3つの層の中の唯一の層である。幽門洞はその壁に厚い皮膚細胞があり、底部よりも強力な収縮を行う。
【0086】
中間の円形層:この層では、幽門は厚い円形の筋肉壁で囲まれている。この筋肉壁は通常、持続的に収縮し、機能的な幽門括約筋を形成し、部分的に消化された食物の半流動体の塊の十二指腸への移動を制御する。
【0087】
アウアーバッハ神経叢(腸管筋神経叢)は、外側の縦方向の層と中央の円形の層の間にあり、両方の神経支配に関与している。
【0088】
外側の縦方向の層は、筋肉の短縮を通じて胃の幽門に向かってボーラスを移動させる役割を果たす。
【0089】
胃はまた、腹膜に続く結合組織の層からなる漿膜を有している。人間では、胃腺のさまざまな層にさまざまな種類の細胞が見られる。3種類の腺はすべて、胃粘膜内の胃小窩の下にある。噴門腺は胃の噴門にあり、食道が胃につながる開口部を囲んでいる。ここには噴門腺だけがあり、噴門腺は主に粘液を分泌する。噴門腺は他の胃腺よりも数が少なく、粘膜のより浅い位置にある。胃底腺は胃底と胃の本体にあり、幽門腺は幽門の洞にある。幽門腺はそれらのG細胞によって生成されたガストリンを分泌する。「胃(gastric)」への言及は、前記の領域のいずれかへの言及として理解されるべきである。
【0090】
「新生物」への言及は、病変、腫瘍、または他の被包性の塊もしく非被包性のる塊、又は腫瘍性細胞を含む他の形態の成長への言及であると理解されるべきである。「腫瘍性細胞」は、異常な成長を示す細胞への言及であると理解されるべきである。「成長」という用語は、その最も広い意味で理解されるべきであり、増殖への言及を含む。この点で、異常な細胞成長の例は、制御されていない細胞の増殖である。別の例は、細胞のアポトーシスの失敗であり、したがってその通常の寿命を延ばす。腫瘍性細胞は、良性細胞又は悪性細胞であり得る。良性新生物への言及には、非悪性新生物、前癌性新生物又は他の前癌性状態が含まれる。好ましい実施形態では、被検者の新生物は腺腫又は腺癌である。明示的に規定されていない限り、「腺腫」への言及は形成異常も指すと理解されるべきである。本発明をいかなる一つの理論または作用様式に限定せずに、腺腫は一般に、上皮組織に由来するか、又は明確に定義された上皮構造を示す、上皮起源の良性腫瘍である。これらの構造は腺の外観を呈することがあり、通常、組織学的に形成異常を特徴とする。それは、良性腺腫または良性腫瘍性物の悪性腺癌への進行とともに起こるような、腺腫内の悪性細胞集団を含み得る。
【0091】
好ましくは、前記腫瘍性細胞は、腺腫、形成異常もしくは腺癌であり、さらにより好ましくは、食道又は胃の腺腫、形成異常もしくは腺癌である。
【0092】
「DNA領域」への言及は、ゲノムDNAの特定のセクションへの言及であると理解されるべきである。これらのDNA領域は、遺伝子名又は染色体座標のセットを参照することによって特定される。遺伝子名及び染色体座標の両方は、当業者によく知られており、理解されている。前記したように、染色体座標はゲノムのHG19バージョンに対応している。一般に、遺伝子は、その配列と染色体位置の両方を日常的に取得できる名前を参照することによって、又は遺伝子名とその配列の両方を日常的に取得できる染色体座標を参照することによって、日常的に識別できる。
【0093】
前記した遺伝子/DNA領域のそれぞれへの言及は、これらの分子のすべての形態及びその断片またはその変異体への言及であると理解されるべきである。当業者によって理解されるように、いくつかの遺伝子は、個体間の対立遺伝子変異又はヌクレオチド多型性を示すことが知られている。SNPsには、さまざまなサイズの挿入と削除、およびジヌクレオチドやトリヌクレオチドの繰り返しのような単純な配列の繰り返しが含まれる。変異体には、少なくとも90%、95%、98%又99%の配列の同一性を共有する同じ領域からの核酸配列を含む。すなわち、変異体は、本明細書に記載のDNA領域に対して1つ又は複数の欠失、付加、置換、逆配列などを有している。したがって、本発明は、実際の核酸配列間のわずかな遺伝的変異が個体間に存在し得るという事実にもかかわらず、本診断用途に関して同じ結果を達成するそのような変異体にまで及ぶと理解されるべきである。したがって、本発明は、他の突然変異、多型又は対立遺伝子変異から生じるすべての形態のDNAに及ぶと理解されるべきである。
【0094】
試験の被検者となる「個体」は、任意のヒトまたは非ヒト哺乳動物であることが理解されるべきである。ヒト以外の哺乳動物の例には、霊長類、家畜(例えば、馬、牛、羊、豚、又はロバ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又はモルモット)、コンパニオンアニマル(例えば、犬、又は猫)又は飼育下の野生動物(例えば、鹿、又はキツネ)が含まれる。
【0095】
好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0096】
これらの態様および実施形態によれば、さらに別の実施形態では、前記対照レベルは非腫瘍性レベルである。
【0097】
一実施形態では、前記方法は、生物学的サンプル中のBCAT1又はIKZF1のどちらか一方をスクリーニングすることを対象とする。
【0098】
別の実施形態では、前記方法は、生物学的サンプル中のBCAT1及びIKZF1の両方をスクリーニングすることを対象とする。
【0099】
さらに別の実施形態では、前記方法は、BCAT1及びIKZF1の両方をスクリーニングすることを対象としているが、前記遺伝子の一つのみが高レベルのメチル化を示す。
【0100】
さらに別の実施形態では、前記方法は、BCAT1及びIKZF1の両方をスクリーニングすることを対象としているが、前記遺伝子の両方が高レベルのメチル化を示す。
【0101】
さらに別の実施形態では、新生物は、腺癌などの悪性である。
【0102】
さらなる実施形態において、新生物は、腺腫又は形成異常などの非悪性である。
【0103】
これらの遺伝子領域のメチル化のスクリーニングに関して、アッセイは、本明細書に記載の特定の領域(遺伝子の「プラス」鎖に対応する)又は相補的な「マイナス」鎖のどちらか一方をスクリーニングするように設計できることが理解されるべきである。本明細書で提供される染色体座標に基づいて、どの鎖を分析し、どの鎖を標的とするかを選択することは、当業者の技術の範囲内である。状況によっては、両方の鎖をスクリーニングするためのアッセイが確立される場合がある。
【0104】
マーカーの特定のパネルを排他的にスクリーニングするか、又は他のDNA高メチル化マーカー、他のRNA発現レベルマーカーもしくは他のタンパク質マーカーなどの他のマーカーをさらにスクリーニングすることを選択できることを理解すべきである。これらの他のマーカーは、例えば、問題の患者の健康状態に関連する追加情報を提供し得る。
【0105】
本発明をいかなる一つの理論または作用様式に限定せずに、これらのDNA領域にわたるメチル化レベルを測定することで食道又は胃の腫瘍性状態を診断するが、これらのサブ領域は、食道癌や胃癌などの食道腫瘍や胃腫瘍でしばしば高メチル化される、高濃度のCpGジヌクレオチドを含むので、別個のサブ領域がこの点で特に有用であることが決定された。この発見は、これらのサブ領域を分析の特に有用な標的にする。というのは、分析が必要なDNAの短く、より明確に定義された領域によってスクリーニングプロセスが簡素化されるとともに、さらに、これらの領域からの結果が、DNA領域全体で分析を行った場合に得られるよりも、高メチル化の有無に関して十分により明確な結果を提供するからである。したがって、この発見は、スクリーニングプロセスを簡素化するとともに、新生物診断の感度と明確性を高める。
【0106】
特定の有用性を示すと決定されたサブ領域は、それらが見出される遺伝子及び染色体領域を参照して以下にリストされている。
【0107】
(1)BCAT1サブ領域chrl2:25101992-25102093(配列番号1又は対応するマイナス鎖)及びchrl2:25101909-25101995(配列番号2又は対応するマイナス鎖);及び
【0108】
(2)IKZF1サブ領域:chr7:50343867-50343961(配列番号3又は対応するマイナス鎖)およびchr7:50343804-5033895(配列番号4又は対応するマイナス鎖)。
【0109】
本発明をいかなる一つの理論または作用様式に限定せずに、当業者は、各遺伝子マーカーについて1つ又は複数のサブ領域をスクリーニングすることができる。
【0110】
一実施形態では、選択された各遺伝子マーカーについて試験されるメチル化マーカーサブ領域は、
【0111】
(1)配列番号1又は配列番号2又は対応するマイナス鎖によって定義されるBCAT1サブ領域;および
【0112】
(2)配列番号3又は配列番号4又は対応するマイナス鎖によって定義されるIKZF1サブ領域である。
【0113】
本発明をいかなる一つの理論または作用様式に限定せずに、DNAメチル化は細菌、植物、及び動物で普遍的である。DNAメチル化は、細胞分裂の繰り返しを通して安定しているDNAの一種の化学修飾であるが、生物の根底にあるDNA配列の変化を伴わない。クロマチン及びDNA修飾はエピジェネティクスにおける2つの重要な特長であり、細胞分化の過程で役割を果たしており、細胞が同じゲノム材料を含有しているにもかかわらず異なる特徴を安定的に維持することを可能にしている。真核生物では、DNAメチル化はシトシンピリミジン環の番号5炭素でのみ起こる。哺乳動物では、DNAメチル化は大半がCpGジヌクレオチドのシトシンの番号5炭素で起こる。CpGジヌクレオチドはヒトゲノムのおおよそ1%を占める。
【0114】
全CpGsの70~80%はメチル化されている。CpGsは、多くの遺伝子の5’調節領域に存在しており、しばしばメチル化されていない「CpGアイランド」と呼ばれるクラスターでグループ化されていることがある。がんなどの多くの疾患過程では、遺伝子プロモーター及び/又はCpGアイランドは異常な過剰メチル化を獲得し、これは遺伝性転写サイレンシングと関連している。DNAメチル化は2つの方法で遺伝子の転写に影響することがある。第1に、DNAのメチル化それ自体が転写タンパク質の遺伝子への結合を物理的に妨害し、こうして転写を遮断することがある。第2に、メチル化されたDNAにはメチル-CpG-結合ドメインタンパク質(MBD)として知られるタンパク質が結合できる。次に、MBDタンパク質は、ヒストンデアセチラーゼ及びヒストンを修飾することが可能な他のクロマチンリモデリングタンパク質などの追加のタンパク質を遺伝子座に動員し、それによってサイレントクロマチンと名付けられた緻密で不活性なクロマチンを形成する。DNAメチル化とクロマチン構造の間のこの関連は非常に重要である。特に、メチル-CpG-結合タンパク質2(MeCP2)の消失はレット症候群と関連付けられており、メチル-CpG-結合ドメインタンパク質2(MBD2)はがんにおいて過剰メチル化遺伝子の転写サイレンシングを媒介する。
【0115】
ヒトでは、DNAメチル化の過程は3つの酵素、DNAメチルトランスフェラーゼ1、3a及び3b(DNMT1、DNMT3a、DNMT3b)により実行される。DNMT3a及びDNMT3bは発生初期におけるDNAメチル化パターンを樹立する新規のメチルトランスフェラーゼだと考えられている。DNMT1は、DNA複製中にDNAメチル化パターンを娘鎖にコピーする原因である提唱されているメンテナンスメチルトランスフェラーゼである。DNMT3Lは、その他のDNMT3と相同であるが触媒活性がないタンパク質である。代わりに、DNMT3Lは、新規のメチルトランスフェラーゼを、DNAに結合するその能力を増加させその活性を刺激することにより支援する。最後に、DNMT2は「謎の」DNAメチルトランスフェラーゼ相同体として同定されており、すべてのDNAメチルトランスフェラーゼに共通の10の配列モチーフすべてを含有しているが、DNMT2はDNAをメチル化することはなく、代わりに小型RNAをメチル化することが明らかにされている。
【0116】
したがって、「メチル化状態」は、DNA領域内の特定のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドにおけるメチル化の存在、不在及び/又は量もしくはレベルへの言及として理解されるべきである。特定のDNA配列(例えば、本明細書に記載のDNA領域)のメチル化状態は、配列内のすべての塩基のメチル化状態を示すことができ、又は配列内の塩基対のサブセットのメチル化状態(例えば、シトシンまたは1つもしくは複数の特定の制限酵素認識配列のメチル化状態)を示すことができ、また配列内のどこでメチル化が発生するかについての正確な情報を提供せずに、配列内の局所的なメチル化密度に関する情報を示すことができる。メチル化状態は、任意選択で「メチル化値」で表すか、又は示すことができる。メチル化値は、例えば、メチル化依存性制限酵素による制限消化後に存在する完全なDNAの量を定量化することによって生成できる。この例では、定量PCRを使用してDNAの特定の配列を定量化した場合、模擬処理された対照とほぼ等しい量のテンプレートDNAは、その配列が高度にメチル化されていないことを示すが、模擬処理されたサンプルで発生する量よりも実質的に少ない量のテンプレートは配列にメチル化されたDNAが存在することを示す。したがって、前記の例からの値、例えばメチル化値はメチル化状態を表し、したがって、メチル化値はメチル化状態の定量的指標として使用することができる。これは、サンプル内の配列のメチル化状態をしきい値と比較することが望ましい場合に特に役立つ。
【0117】
本発明の方法は、生物学的サンプルの特定のDNA領域のメチル化レベルとこれらのDNA領域の対照メチル化レベルとの比較に基づいている。「対照レベル」は、「正常レベル」であり得る。これは、腫瘍性ではないか、又はアッセイのためにDNAが単離され得る別の生物学的サンプルにおける、対応する胃又は食道の細胞もしくは細胞集団のDNA領域のメチル化のレベルである。
【0118】
正常な(または「非腫瘍性」)メチル化レベルは、試験の被検者である同じ個体に由来する非腫瘍性組織を使用して決定することができる。しかしながら、これは関係する個体にとって非常に侵襲的である可能性があり、したがって、問題の患者以外の個体から得られた個体又は集団の結果を反映する標準結果と比較して試験結果を分析することがより好都合である可能性が高いことが分かる。この後者の形式の分析は、対象の試験サンプルである単一の生物学的サンプルの収集と分析を必要とするキットの設計を可能にするため、実際に好ましい分析方法である。通常のメチル化レベルを提供する標準的な結果は、当業者によく知られている任意の適切な手段によって計算することができる。例えば、正常組織の集団を本発明の遺伝子のメチル化のレベルに関して評価することができ、それにより、将来のすべての試験サンプルが分析される標準値または標準値の範囲を提供する。正常レベルは特定の集団の被検者から決定され、その集団に由来する試験サンプルに関して使用されることも理解されるべきである。したがって、年齢、性別、民族性又は健康状態などの特性に関して異なる集団に対応するいくつかの標準値又は標準値の範囲が決定され得る。前記「正常レベル」は、離散レベル又はレベルの範囲であり得る。正常レベルと比較した被検者の遺伝子のメチル化レベルの増加は、組織が腫瘍性であることを示す。
【0119】
「メチル化」という用語は、DNAメチルトランスフェラーゼ酵素の作用によって、拡散、例えばゲノムDNAの領域の1つ又は複数のシトシン塩基に付加されたメチル基の存在を意味すると解釈されるべきである。本明細書に記載されるように、核酸のメチル化のレベル又は程度を決定するために当業者に知られているいくつかの方法が存在する。
【0120】
「より高いレベル」とは、診断された被検者のメチル化CpGジヌクレオチドの数が対照サンプルよりも多いこと、つまり、特定のCpG部位でメチル化されたDNA分子の割合が高いか、又は被検者でメチル化された別々のCpG部位の数が多いことを意味する。「強化された」及び「増加した」という用語は、「より高い」という用語と交換可能に使用されることが理解されるべきである。診断された被検者におけるメチル化CpGジヌクレオチドの数が多い場合は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、200%、300%、400%もしくは500%または前記のパーセンテージのいずれ2つで特定される範囲内の任意の数値が対照サンプルよりも多い場合である。
【0121】
「より高いレベル」のメチル化の検出に関連して、状況によっては、正常レベルは実際には検出可能なメチル化の不存在に対応し、腫瘍性レベルはそれ自体がメチル化の存在に対応していることが理解されるべきである。この状況では、必然的に定量化を測定することになる、メチル化の対照レベルと比較してメチル化レベルを評価するのではなく、メチル化の単なる存在をスクリーニングするだけでよいため(例えば、定性的評価のみ)、その診断方法は比較的簡単である。本発明をいかなる方法でも限定せずに、例えば、いくつかのマーカーの文脈において、新形成の発症時のそのマーカーのメチル化の変化は、検出不可能なレベルのメチル化から検出可能なメチル化の存在へのシフトであることが血液由来のサンプルにおいて観察される。これらの状況では、メチル化の有無を判断するために試験サンプルをスクリーニングするだけでよい比較的単純な定性的評価が可能になる。本明細書で提供される定義の文脈において、「より高いレベル」への言及は、マーカーのメチル化のレベルの相対的な増加、または以前は何も明らかでなかったメチル化の開始の両方を含む。前記したように、対照レベルは、各患者について新たに評価され得るか、又はすべての試験サンプルが評価されるための標準的な結果があり得る。対象のマーカーにメチル化が存在しないことがわかっている場合、対照レベルはメチル化が存在しないことであり、「より高いレベル」は任意の量のメチル化が存在することであるため、メチル化の有無をスクリーニングするだけで済む。
【0122】
対照レベルは、同じように試験された個体または別の個体(例えば、健康な被検者又は癌を有する被検者)から以前に試験された生物学的サンプルのメチル化のレベルであり得ることも理解されるべきである。以下でより詳細に議論されるように、これは、再発、治療効果などについて患者を監視する文脈において特に有用である。
【0123】
本発明は、患者のサンプル間でいくらかの変動が生じるため、被検者の新形成の診断であると考えられるメチル化残基の正確な数によって限定されるべきではない。本発明はまた、メチル化された残基の配置によって限定されない。
【0124】
それにもかかわらず、これらのサブ領域内で高メチル化を受けるいくつかの特異的のシトシン残基も特定される。したがって、別の実施形態では、スクリーニング方法を使用することができ、これは、これらの残基の1つ又は複数のメチル化状態、又は反対側のDNA鎖の位置n+1にある対応するシトシンのメチル化状態を評価することを特に対象とする。
【0125】
前記の特定のサブ領域の番号付けにも対応し、各サブ領域の座標番号付けが配列リストで提供される対応するサブ領域配列に適用されるときにさらに識別され得る、Hgl9を参照することによって、これらの個々の残基は番号付けされることを当業者は理解すべきである。これらの残基は、サブ領域DNAの文脈で識別されることが理解されるべきである。しかし、サブ領域自体の外側であるが、サブ領域が由来する、より大きなDNA領域内で高メチル化される他の残基がある。したがって、これらの特定の残基は、本明細書に開示されるDNA領域およびサブ領域の文脈内で高メチル化を受ける個々のシトシン残基の特に有用なサブセットを表す。これらの個々の残基は、それらが発生するDNA領域に従って以下にグループ化される。これらのDNA領域は、Hg19染色体座標と遺伝子領域名の両方を参照することによって識別される。
【0126】
本発明の方法がIKZF1の分析を含む場合には、被検者の残基は、
chr7:50343869 chr7:50343872 chr7:50343883
chr7:50343889 chr7:50343890 chr7:50343897
chr7:50343907 chr7:50343909 chr7:50343914
chr7:50343934 chr7:50343939 chr7:50343950
chr7:50343959 chr7:50343805 chr7:50343822
chr7:50343824 chr7:50343826 chr7:50343829
chr7:50343831 chr7:50343833 chr7:50343838
chr7:50343847 chr7:50343850 chr7:50343858
chr7:50343864 chr7:50343869 chr7:50343872
chr7:50343890
または反対側のDNA鎖の位置n+1にある対応するシトシンである。
【0127】
本発明の検出方法は、任意の適切な生物学的サンプルに対して実施することができる。この目的のために、「生物学的サンプル」への言及は、細胞材料、生体液(例えば、血液)、組織生検標本、唾液、尿、手術標本、又は動物の体内に導入されて、その後除去される流体のようなものを含むが、限定されない動物に由来する生物学的材料の任意のサンプルへの言及であると理解されるべきである。本発明の方法に従って試験される生物学的サンプルは、直接試験され得るか、又は試験前に何らかの形態の治療を必要としてもよい。例えば、生検又は外科的サンプルは、試験前に均質化を必要とする場合があり、又は個々の遺伝子の定性的発現レベルの本来の部位における試験のために切片化を必要とする場合がある。あるいは、細胞サンプルは、試験の前に透過処理を必要とする場合がある。さらに、生物学的サンプルが液体の形態でない場合には(そのような形態が試験に必要な場合)、サンプルをかき集めるために、緩衝液などの試薬の添加が必要となる場合がある。
【0128】
対象のDNA領域が生物学的サンプルに存在する限り、生物学的サンプルを直接試験することができ、さもなければ、生物学的サンプルに存在する核酸の全部又は一部を試験前に単離することができる。さらに別の例では、サンプルは、分析の前に部分的に精製されるか、さもなければ濃縮され得る。例えば、生物学的サンプルが非常に多様な細胞集団を含む場合には、特定の対象のサブ集団を濃縮することが望ましい場合がある。標的細胞集団又はそれに由来する分子を、例えば、生ウイルスの不活化を試験する前に処理することは、本発明の範囲内である。生物学的サンプルは、新たに採取されてもよく、試験前に(例えば凍結によって)保存されていてもよく、又は試験前に(培養などによって)処理されていてもよいことも理解されるべきである。
【0129】
本明細書に開示された方法に従って試験するのに最も適したサンプルのタイプの選択は、状況の特徴に依存する。好ましくは、前記サンプルは、外科的切除、組織生検、又は血液サンプル(例えば、全血、血清、血漿、エクソソーム、又はバフィーコート)である。「バフィーコート」への言及は、血液の密度勾配遠心分離後の白血球と血小板のほとんどを含む抗凝固処理された血液サンプルの画分への言及であると理解されるべきである。
【0130】
本明細書で使用される「エクソソーム」への言及は、原形質膜と、管腔内小胞を含むエンドソーム多小胞体との融合中に細胞から放出される約10~100nmの膜結合細胞外小胞であると理解されるべきである。これらのエクソソームは、脂質、タンパク質、RNA、DNA、コレステロール、スフィンゴ脂質、セラミド、脂肪酸、リン脂質、表面マーカー、抗原提示タンパク質、主要な組織適合性複合体、アドヘシン、免疫抑制タンパク質、細胞骨格タンパク質、輸送タンパク質、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、長い非コードRNA(lncRNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、エクソソームDNA、メチル化DNA、又はそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない生物学的分子を運ぶ。これらは元となる細胞のサイトゾルを源とするものであり、これらの成分を介して他の細胞にダウンストリーム効果を引き起こす可能性がある。エクソソームは、近くの組織への浸潤、転移前のニッチの確立、移動、転移、免疫調節、及び新脈管形成など、多くの癌増殖プロセスに関与している。正常細胞と罹患細胞の両方からのエクソソームは、血液、尿、リンパ液、及び脳脊髄液などの体液に見られる。その結果、エクソソームを使用した非侵襲的または低侵襲的診断は、癌などの疾患の発症又は発症の素因を決定するのに役立つ。エキソソームは、遠心分離、超遠心分離、密度勾配超遠心分離、濾過、限外濾過、クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、沈殿、マイクロ流体又はそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない当技術分野で知られている技術を使用して、前記体液又はインビトロ細胞培養培地から精製することができる。精製されたエキソソームは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的PCR(qPCR)、逆転写PCR(rtPCR)、質量分光法、クロマトグラフィー、電気泳動、塩基配列決定、又は他のインビボもしくはインビトロ生物学的システムに追加して効果をもたらすものを含むがこれらに限定されない後続の分析のために構成脂質、タンパク質、RNAまたはDNAを抽出するなど、当技術分野で知られている技術を使用して処理することができる。
【0131】
より好ましくは、前記生物学的サンプルは、血液サンプル又は生検サンプルである。
【0132】
さらにより好ましくは、前記方法は、循環腫瘍DNAなどの血漿由来の無細胞DNAのメチル化をスクリーニングすることを対象としている。
【0133】
前記のように、本発明は、食道又は胃に位置する腫瘍性細胞または腫瘍性細胞集団をスクリーニングするように設計されている。したがって、「細胞又は細胞集団」への言及は、個々の細胞または細胞の群への言及であると理解されるべきである。前記細胞群は、細胞のびまん性集団、細胞懸濁液、被包性の細胞集団、又は組織の形態をとる細胞集団である。
【0134】
腺腫又は腺癌などの新生物の「発症」への言及は、形成異常を示すその個体の1つ又は複数の細胞への言及であると理解されるべきである。これに関して、腺腫又は腺癌は、形成異常細胞の塊が発達したという点で十分に発達している可能性がある。あるいは、腺腫または腺癌は、診断時に発生する異常な細胞分裂が比較的少ないという点で、非常に初期の段階にある可能性がある。いくつかの実施形態では、形成異常は、化生又は他の形成異常前段階が先行する。いくつかの実施形態では、食道形成異常は、バレットの円柱状に並んだ食道粘膜の発達が先行する可能性があり、これはさらに進行して腸化生に類似する可能性がある。いくつかの実施形態において、これらの形成異常前段階の細胞は、変化したメチル化レベルを示し得る。本発明はまた、腺腫又は腺癌などの新形成の発生に対する個体の素因の評価にまで及ぶ。いかなる方法でも本発明を限定することなく、対照と比較して、変化したメチル化レベルは、腺腫もしくは腺癌又は別の腺腫もしくは腺癌の将来の発症などの新生物を発症するその個体の素因を示し得る。
【0135】
好ましい方法は、新形成の発生又は発生の素因を診断する目的でメチル化レベルを評価することであるが、例えば、腺腫又は腺癌の発生などの腫瘍性状態の調節を目的として治療的又は予防的治療の有効性を監視するために、特定の状況下で、前記メチル化レベルの逆の変化の検出が望まれる場合がある。例えば、メチル化レベルの上昇が、個体が腺腫又は腺癌の発生を特徴とする状態を発症したことを示す場合、治療計画の開始後のメチル化レベルの減少をスクリーニングすることは、腫瘍性細胞をうまく除去したことを示すのに利用することができる。別の例では、この方法を使用して、腫瘍の縁全体が除去されたかどうかを判断するために、腫瘍切除の縁で組織を試験することができる。
【0136】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、診断、予後、分類、疾患リスクの予測、疾患の再発の検出、治療の選択、又はいくつかのタイプの前形成異常、形成異常、前新形成、及び新形成をモニタリングすることに使用することができる。いくつかの実施形態では、進行の任意の段階の癌を検出することができ、これには、前形成異常癌、形成異常癌、前腫瘍癌、腫瘍性癌、非腫瘍性癌、原発性癌、転移性癌又は再発性の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)が食道又は胃の新形成を有するかどうかを決定するための方法、哺乳動物から採取された生物学的サンプルが腫瘍性細胞又は腫瘍性細胞に由来するDNAを含むかどうかを決定するための方法、哺乳動物が新生物を発生する危険性又は可能性を評価する方法、抗がん治療の有効性をモニタリングする方法、又は癌のある哺乳動物において適切な抗がん治療を選択する方法を提供する。そのような方法は、腫瘍性細胞が、本明細書に記載のDNA領域において正常細胞とは異なるメチル化状態を有するという決定に基づいている。したがって、本明細書に記載のように、細胞がDNA領域に差次的にメチル化された配列を含むかどうかを決定することにより、細胞が腫瘍性であると決定することが可能である。
【0138】
本発明の方法は、新形成を有することが知られている、もしくは新形成を有することが疑われている個体を評価するために使用することができ、又は、例えば、必ずしも新形成を有するとは疑われていない個体において、日常的な臨床試験として使用することができる。内視鏡検査など、個体の新生物の種類と状態を確認するために、さらに診断アッセイ又は検査を実行することができる。
【0139】
さらに、本発明の法は、一連の治療の有効性を評価するために使用することができる。例えば、抗癌治療の有効性は、癌を有する哺乳動物において、本明細書に記載の配列のDNAメチル化を経時的にモニタリングすることによって評価することができる。例えば、治療前又は治療の初期に哺乳動物から採取されたサンプルのレベルと比較して、治療後に哺乳動物から採取された生物学的サンプルにおける本発明の診断配列のいずれかにおけるメチル化の減少または不存在は、効果的な治療であることを示す。
【0140】
したがって、本発明の方法は、一回限りの試験として、又は新形成発生のリスクがあると考えられるそれらの個体の進行中のモニターとして、又は新形成の発生を抑制するかもしくは遅らせる治療もしく予防的治療計画の有効性のモニターとして有用である。これらの状況では、生物学的サンプルの任意の1つ又は複数のクラスのメチル化レベルの転形をマッピングすることは、個体の状態又は現在実施されている治療又は予防的治療計画の有効性の貴重な指標である。したがって、本発明の方法は、(前記のように)正常レベルと比較した、個体のメチル化レベルの増加又は減少をモニタリングすることにまで及ぶと理解すべできであり、又は前記個体の生物学的サンプルから決定された1つもしくは複数の以前のメチル化レベルと比較した、個体のメチル化レベルの増加又は減少をモニタリングすることにまで及ぶと理解されるべきである。
【0141】
新形成を検出するための方法は、1つ又は複数の他の癌関連ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の検出を含み得る。したがって、本発明の方法によるメチル化の検出は、単独で、又は新形成の診断もしくは予後のための他のスクリーニング方法と組み合わせて使用することができる。
【0142】
DNAメチル化を検出するための任意の方法を、本明細書に記載の方法で使用することができる。一次組織サンプル又は血液、尿、糞便、唾液などの患者サンプルの特定の位置にある差次的にメチル化されたDNAを検出するために、多くの方法が利用できる(Kristensen and Hansen Clin. Chem.55:1471-83,2009;Ammerpholら Biochim Biopys Acta.1790:847-62,2009;Shamesら Cancer Lett.251:187-98,2007;Clarkら Nat Protoc.1:2353-64,2006参照)。標的遺伝子のDNAメチル化の割合又は程度を分析するために、DNAは通常、亜硫酸水素ナトリウムで処理され、DNAのメチル化状態とは独立して増幅するプライマーとPCR条件を使用して対象の領域が増幅される。次に、アンプリコン全体又は個々のCpG部位のメチル化は、パイロシークエンシング、制限酵素消化(COBRA)を含むシークエンシング、又は融解曲線分析によって評価できる。あるいは、特定のCpG部位でのメチル化を分析するためのライゲーションベースの方法を使用することもできる。腫瘍から体液に放出された異常にメチル化されたDNAの検出は、癌診断の手段として開発されている。ここで、高メチル化配列の場合、メチル化されていない正常な細胞DNAのバックグラウンドからメチル化されたDNA配列を選択的に増幅できる高感度の方法を使用する必要がある。例えば、亜硫酸水素塩処理されたDNAに基づくそのような方法は、例えば、メチル化選択的PCR(MSP)、ヘビーメチルPCR、ヘッドループPCR又はヘルパー依存連鎖反応(PCT/AU2008/001475)を含む。
【0143】
簡単に言えば、いくつかの実施形態において、メチル化を検出するための方法は、ゲノムDNAをランダムに剪断するか又はランダムに断片化し、メチル化依存性又はメチル化感受性制限酵素でDNAを切断し、続いて切断または非切断DNAを選択的に同定及び/又は分析することを含む。選択的同定には、例えば、切断されたDNAと切断されていないDNAを(例えば、サイズによって)分離し、切断された、あるいは切断されなかった対象の配列を定量化することが含まれ得る。例えば、米国特許第7,186,512号を参照されたい。あるいは、この方法は、制限酵素消化後に無傷のDNAを増幅することを含み、それにより、増幅された領域において制限酵素によって切断されなかったDNAのみを増幅する。例えば、米国特許出願10/971,986号;11/071,013号;および10/971,339号を参照されたい。いくつかの実施形態において、増幅は、遺伝子特異的であるプライマーを使用して実行することができる。あるいは、ランダムに断片化されたDNAの末端にアダプターを追加し、メチル化依存性又はメチル化感受性の制限酵素でそのDNAを消化し、アダプター配列にハイブリダイズするプライマーを使用して無傷のDNAを増幅することができる。この場合、増幅されたDNAのプール内の特定の遺伝子の存在、不在、又は量を決定するために、第2のステップを実行できる。いくつかの実施形態において、DNAは、リアルタイムの定量的PCRを使用して増幅される。
【0144】
いくつかの実施形態において、方法は、ゲノムDNAの集団内の標的配列における平均メチル化密度を定量化することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、その位置において潜在的制限酵素の切断サイトの少なくともいくつかのコピーが切断されないままで、その位置の無傷のコピーを定量化し、増幅された産物の量を対照DNAのメチル化の量を表す対照値と比較し、それによって、対照DNAのメチル化密度と比較したその位置の平均メチル化密度を定量化するという条件下で、ゲノムDNAをメチル化依存性制限酵素又はメチル化感受性制限酵素と接触させることを含む。
【0145】
DNAの遺伝子座のメチル化の量は、その遺伝子座を含むゲノムDNAのサンプルを提供し、メチル化感受性又はメチル化依存性のいずれかである制限酵素でそのDNAを切断し、それから無傷のDNAの量を定量化するか、対象のDNA遺伝子座で切断されたDNAの量を定量化することによって決定できる。無傷又は切断されたDNAの量は、その遺伝子座を含むゲノムDNAの初期量、その遺伝子座のメチル化の量、及びゲノムDNAでメチル化されている、その遺伝子座のヌクレオチドの数(たとえば、画分)に依存する。DNA遺伝子座のメチル化の量は、無傷のDNA又は切断されたDNAの量を、同様に処理されたDNAサンプル中の無傷のDNA又は切断されたDNAの量を表す対照値と比較することによって決定できる。対照値は、メチル化ヌクレオチドの既知の数又は予測された数を表すことができる。あるいは、対照値は、別の(例えば、正常で罹患していない)細胞の同じ遺伝子座又は第2の遺伝子座の無傷のDNAもしくは切断されたDNAの量を表すことができる。
【0146】
遺伝子座内の潜在的な制限酵素切断部位の少なくともいくつかのコピーが切断されないままになることを可能にする条件下で少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素又はメチル化依存性制限酵素を使用し、続いて残りの無傷のコピーを定量化し、その量を対照と比較することによって、遺伝子座の平均メチル化密度を決定することができる。メチル化感受性酵素は、認識配列がメチル化されていない場合にDNAを切断し、メチル化依存性酵素は、認識配列がメチル化されている場合にDNAを切断する酵素である。遺伝子座内の潜在的な制限酵素切断部位の少なくともいくつかのコピーが切断されないままになることを可能にする条件下で、メチル化感受性制限酵素がDNA遺伝子座のコピーに接触すると、残存する無傷のDNAはメチル化密度に正比例する。したがって、サンプル内の遺伝子座の相対的なメチル化密度を決定するために、対照と比較することができる。同様に、遺伝子座内の潜在的な制限酵素切断部位の少なくともいくつかのコピーが切断されないままになることを可能にする条件下で、メチル化依存性制限酵素がDNA遺伝子座のコピーに接触すると、残存する無傷のDNAはメチル化密度に逆比例する。したがって、サンプル内の遺伝子座の相対的なメチル化密度を決定するために、対照と比較することができる。そのようなアッセイは、例えば、米国特許出願第10/971,986号に開示されている。
【0147】
前記の方法のためのキットは、例えば、1つ以上のメチル化依存性制限酵素、メチル化感受性制限酵素、増幅(例えば、PCR)試薬、プローブ及び/又はプライマーを含み得る。
【0148】
定量的増幅法(例えば、定量的PCR又は定量的線形増幅)を使用して、制限消化後の増幅プライマーに隣接している遺伝子座内の無傷のDNAの量を定量化することができる。定量的増幅方法は、例えば、米国特許第6,180,349号、6,033,854号、5,972,602号、ならびに、例えば、Gibsonら、Genome Research 6:995-1001(1996);DeGravesら、Biotechniques 34(1):106-10,112-5(2003);Deiman Bら、Mol.Biotechnol.20(2):163-79(2002)に開示されている。増幅は「リアルタイム」でモニターすることができる。
【0149】
DNAメチル化を検出するための追加の方法には、DNAを亜硫酸水素塩で処理する前後のゲノム配列が含まれる。例えば、Frommerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1827-1831(1992)参照。亜硫酸水素ナトリウムがDNAに接触すると、メチル化されていないシトシンはウラシルに変換されるが、メチル化されたシトシンは修飾されない。
【0150】
いくつかの実施形態において、亜硫酸水素塩で変換されたDNAから増幅されたPCR産物の制限酵素消化は、DNAメチル化を検出するために使用される。 例えば、Sadri & Hornsby,Nucl.Acids Res.24:5058-5059(1996);Xiong & Laird,Nucleic Acids Res.25:2532-2534(1997)参照。
【0151】
いくつかの実施形態において、メチル化特異的PCR(MSP)反応は、DNAメチル化を検出するために、単独で、又は他の方法と組み合わせて使用される。MSPアッセイには、亜硫酸水素ナトリウムによるDNAの初期修飾、すべての非メチル化シトシン、すなわちメチル化されていないシトシンのウラシルへの変換、及びメチル化されたDNAとメチル化されていないDNAに対する特異的なプライマーによる増幅が伴われる。Hermannら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9821-9826(1996);米国特許第5,786,146号参照。
【0152】
いくつかの実施形態において、メチライト(MethyLight)アッセイは、DNAメチル化を検出するために、単独で、又は他の方法と組み合わせて使用される(Eadsら、Cancer Res.59:2302-2306(1999)参照).要するに、メチライト(MethyLight)プロセスでは、ゲノムDNAが亜硫酸水素ナトリウム反応で変換される(亜硫酸水素塩プロセスは、メチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換する)。次に、CpGジヌクレオチドにハイブリダイズするPCRプライマーを使用して、対象のDNA配列の増幅が実行される。メチル化DNAの亜硫酸水素塩変換から生じる配列にのみハイブリダイズするプライマーを使用することにより(又は代わりに非メチル化配列に対して)、増幅は、プライマーがハイブリダイズする配列のメチル化状態を示すことができる。さらに、増幅産物は、メチル化されていないDNAの硫酸水素塩処理から生じる配列に特異的に結合するプローブで検出することができる。必要に応じて、プライマーとプローブの両方を使用してメチル化状態を検出できる。したがって、メチライト(MethyLight)で使用するキットには、亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸水素塩で処理されたメチル化DNAと非メチル化DNAを区別するプライマー又は検出可能な標識プローブ(Taqman又は分子信号プローブを含むがこれらに限定されない)を含むことができる。他のキット構成要素は、例えば、PCR緩衝液、デオキシヌクレオチドおよび熱安定性ポリメラーゼを含むがこれらに限定されない、DNAの増幅に必要な試薬を含むことができる。
【0153】
いくつかの実施形態において、Ms-SNuPE(メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長)反応は、DNAメチル化を検出するために、単独で、又は他の方法と組み合わせて使用される(Gonzales & Jones、Nucleic Acids Res.25:2529-2531(1997)参照)。Ms-SNuPE技術は、DNAの亜硫酸水素塩処理とそれに続く単一ヌクレオチドプライマー伸長に基づいて、特定のCpG部位でのメチル化の違いを評価するための定量的方法である(Gonzalgo & Jones、前記)。要するに、ゲノムDNAを亜硫酸水素ナトリウムと反応させて、非メチル化シトシンをウラシルに変換し、5-メチルシトシンは変化させずにおく。次に、亜硫酸水素塩変換されたDNAに特異的なPCRプライマーを使用して、所望の標的の配列の増幅を実行し、得られた産物を単離して、対象のCpG部位(複数可)でのメチル化分析のテンプレートとして使用する。
【0154】
Ms-SNuPE分析用の典型的な試薬(例えば、典型的なMs-SNuPEベースのキットに見られる)には、特定の遺伝子のためのPCRプライマー(メチル変性DNA配列又はCpGアイランド);最適化されたPCR緩衝液、デオキシヌクレオチド;ゲル抽出キット;正対照プライマー;特定の遺伝子のためのMs-SNuPEプライマー;反応緩衝液(Ms-SNuPE反応用);又は検出可能に標識されたヌクレオチド又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。さらに、亜硫酸水素塩変換試薬には、DNA変性緩衝液;スルホン化緩衝液;DNA回収試薬又はキット(例:沈殿、限外ろ過、アフィニティーカラム);脱スルホン化緩衝液;またはDNA回収成分が含まれる。
【0155】
追加のメチル化検出方法には、メチル化されたCpGアイランド増幅(Toyotaら、Cancer Res.59:2307-12(1999)参照)、米国特許出願第2005/0069879号、Reinら、Nucleic Acids Res.26(10):2255-64(1998);Olekら、Nat.Genet.17(3):275-6(1997)及び国際公開WO00/70090に記載されたものを含むが、これらに限定されない。
【0156】
これらの一般的に記載されている方法のいくつかに関連するより詳細な情報を以下に示す。
(a)プローブもしくはプライマーの設計及び/又は製造
【0157】
新形成の診断のために本明細書に記載されるいくつかの方法は、1つもしくは複数のプローブ及び/又はプライマーを使用する。例えば、PCR又はハイブリダイゼーションで使用するためのプローブ及び/又はプライマーを設計するための方法は、当該技術分野で知られており、例えば、DieffenBach及びDveksler(Eds)(In;PCR Primer:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,NY,1995)に記載されている。さらに、さまざまなアッセイに最適なプローブ及び/又はプライマーを設計するいくつかのソフトウェアパッケージが入手可能であり、例えば、米国マサチューセッツ州ケンブリッジのゲノム研究センター(The Center for Genome Research, Cambridge, Mass., USA)から入手可能なプライマー3が公開されている。
【0158】
明らかに、プローブ又はプライマーの潜在的な使用は、その設計時に考慮されるべきである。例えば、プローブ又はプライマーがメチル化特異的PCR又はリガーゼ連鎖反応(LCR)アッセイで使用するために生成される場合、3'末端(又はLCRの場合は5'末端)のヌクレオチドは、核酸中のメチル化ヌクレオチドに対応することが好ましい。
【0159】
新形成に関連する配列の検出に有用なプローブ及び/又はプライマーは、例えば、ヘアピン、セルフプライムを形成しないもの又はプライマーダイマーを形成するものを決定するために評価される(例えば、検出アッセイで使用される別のプローブ又はプライマーとともに)。さらに、プローブ又はプライマー(又はその配列)は、それが標的核酸から変性する温度(例えば、プローブ又はプライマーの融解温度、またはTm)を決定するためにしばしば評価される。Tmを推定するための方法は当該技術分野で知られており、例えば、Santa Lucia,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:1460-1465、1995またはBresslauerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.83:3746-3750,1986に記載されている。
【0160】
本発明のプローブまたはプライマーを製造/合成するための方法は、当該技術分野で知られている。例えば、オリゴヌクレオチド合成は、Gait(Ed)(In:Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL PRESS,Oxford、1984)に記載されている。例えば、プローブまたはプライマーは、生物学的合成(例えば、制限エンドヌクレアーゼによる核酸の消化によって)または化学合成によって得ることができる。短い配列(最大100ヌクレオチドまたは約100ヌクレオチド)のために化学合成が好ましい。
【0161】
より長い配列のために、例えば、Messing,Methods Enzymol、101,20-78,1983に記載されているように、一本鎖DNAにM13を使用するなど、分子生物学で採用されている標準的な複製方法が有用である。オリゴヌクレオチド合成の他の方法には、例えば、ホスホトリエステル及びホスホジエステル法(Narangら、Meth.Enzymol 68:90,1979)及び支持体上での合成(Beaucageら、Tetrahedron Letters 22:1859-1862,1981)、並びにホスホルアミデート技術,Caruthers、M.H.ら、Methods in Enzymology,Vol.154,pp.287-314(1988)及び「Synthesis and Applications of DNA and RNA」S.A.Narang,editor,Academic Press,New York、1987に記載されたもの、及びそこに引用されている参考文献に記載されているものが含まれる。ロックされた核酸(LNA)を含むプローブは、例えば、Nielsenら、J.Chem.Soc.Perkin Trans.,1-3423、1997;Singh and Wengel,Chem,Chem.Commun.1247、1987に記載されているように合成される。一方、ペプチド核酸(PNA)を含むプローブは、例えば、Egholmら、Am.Chem.Soc.,114:1895,1992;Egholmら、Nature,365-566,1993及びOrumら、Nucl.Acids Res.,21;5332,1993に記載されているように合成される。
【0162】
本明細書に記載のプライマー、プローブ、または他の核酸は、核酸塩基を含む。一次、標準、天然、又は未修飾の塩基は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、及びウラシル(U)である。いくつかの実施形態では、例えば、特定の核酸、核酸対立遺伝子の集団、又は亜硫酸塩処理核酸及び未処理の核酸の集団へのプライマー又はプローブのアニーリングを増加させるために、特定の位置(縮重塩基)に複数の可能な代替核酸塩基を有するプライマー、プローブ、又は他の核酸を設計することが好ましい場合がある。縮重塩基は、国際純正応用化学連合(IUPAC)規格に従って表される。これらの表記には、W(A及びT)、S(C及びG)、M(A及びC)、K(G及びT)、R(A及びG)、Y(C及びT)、B(C、G及びT)、D(A、G及びT)、H(A、C及びT)、V(A、C及びG)、又はN(A、C、G及びT)を含むが、これらに限定されない。他の「非標準」核酸塩基には、プリン、ピリミジン、修飾核酸塩基、5-メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、2,6-ジアミノプリン、イノシン、7-メチルグアノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、5,6-ジヒドロウラシル、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ブロモウラシル、イソグアニン、イソシトシン、アミノアリル塩基、色素標識塩基、蛍光塩基、又はビオチン標識塩基が含まれるが、これらに限定されない。
(b)DNAのメチル化感受性エンドヌクレアーゼ消化
【0163】
一実施例では、サンプル中で増加したメチル化は、核酸が消化されるのに十分な条件下で核酸をある量のメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ酵素と接触させ、次いで生成された断片を検出することを含むプロセスを使用して決定される。例示的なメチル化感受性エンドヌクレアーゼには、例えば、HhaI又はHpaIIが含まれる。好ましくは、アッセイは、使用されるメチル化感受性酵素と同じ特異性を有するメチル化非感受性酵素で消化される内部対照を含む。例えば、メチル化非感受性酵素MspIは、メチル化感受性酵素HpaIIのイソシゾマーである。
ハイブリダイゼーションアッセイフォーマット
【0164】
一実施例では、核酸の消化は、未消化の核酸へのプローブ又はプライマーの選択的ハイブリダイゼーションによって検出される。あるいは、プローブは、消化された核酸と消化されていない核酸の両方に選択的にハイブリダイズするが、例えば電気泳動によって、両方の形態の間の分化を容易にする。ハイブリダイゼーションプローブへの選択的ハイブリダイゼーションを達成するための適切な検出方法には、例えば、サザンまたは他の核酸ハイブリダイゼーションが含まれる(Kawaiら、Mol.Cell.Biol.14:7421-7427,1994:Gonzalgoら、CanCer Res.57:594-599,1997)。
【0165】
適切なハイブリダイゼーション条件は、プローブを含む核酸二本鎖の融解温度(Tm)に基づいて決定される。いくつかの一般原則を適用することができるが、当業者は、最適なハイブリダイゼーション反応条件は、各プローブについて経験的に決定されるべきであることを知っている。好ましくは、短いオリゴヌクレオチドプローブを使用するハイブリダイゼーションは、低ストリンジェンシーから中ストリンジェンシーで実施される。GCリッチなプローブ又はプライマー、あるいはより長いプローブ又はプライマーの場合、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄が好ましい。高ストリンジェンシーは、本明細書では、0.1×SSC緩衝液又は約0.1×SSC緩衝液及び/又は0.1重量体積%(w/v)SDS又は約0.1重量体積%(w/v)SDS、又はより低い塩濃度、及び/又は少なくとも65℃の温度、又は同等の条件で実施されるハイブリダイゼーション及び/又は洗浄であると定義される。本明細書における特定のレベルのストリンジェンシーへの言及は、当業者に知られているSSC以外の洗浄/ハイブリダイゼーション溶液を使用する同等の条件を包含する。
【0166】
実施例によれば、試験サンプルと陰性対照サンプルについて生成された断片の違いは、被検者が新形成を有することを示している。同様に、対照サンプルが腫瘍、癌組織又は癌細胞又は前癌細胞からのデータを含む場合、試験サンプルと対照サンプルとの間において必ずしも絶対的な同一性はないかもしれないが、陽性の診断(例えば、癌)を示す。サンプルが対照とは異なるメチル化レベルを有すると決定されると、被検者は、得られた診断結果に適応する療法又は治療手順を受けるように示されるか、ガイドされるか、又は助言される(例えば、結腸鏡検査、悪性組織の外科的除去、及び/又は放射線療法、化学療法、又は免疫療法)。
増幅アッセイフォーマット
【0167】
別の方法として、制限酵素によって生成される断片は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、逆ポリメラーゼ連鎖反応(iPCR)、インサイチュー(in situ)PCR(Singer-Samら、Nucl.Acids Res.18:687,1990)、ストランド変位増幅(SDA)又はサイクリングプローブ技術などの増幅システムを使用して検出される。
【0168】
PCRの方法は当該技術分野で知られており、例えば、McPhersonら、PCR:A Practical Approach.(series eds,D.Rickwood and B.D.Hames),IRL Press Limited,Oxford.pp1-253,1991 and by Diffenbach(ed) and Dveksler(ed)(In:PCR Primer:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratories, NY,1995)に記載されており、これらの内容はそれぞれ参照によって本明細書に完全に組み込まれる。一般に、PCRの場合、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24,25、26、27、28、29、30、31、32,33、34、35、36,37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50ヌクレオチドを含む2つの非相補的核酸プライマー分子は、それぞれのアニーリング部位で核酸テンプレート分子の異なる鎖にハイブリダイズされ、アニーリング部位に介在するテンプレートの特異的核酸分子のコピーが酵素的に増幅される。いくつかの実施形態において、2つの非相補的核酸プライマー分子は、少なくとも18ヌクレオチド又は少なくとも約18ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態において、2つの非相補的核酸プライマー分子は、少なくとも20~30ヌクレオチド又は少なくとも約20~30ヌクレオチドの長さである。増幅産物は、例えば、電気泳動及び核酸を結合する検出可能なマーカーによる検出を使用して検出することができる。あるいは、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドは、検出可能なマーカー(例えば、フルオロフォア)で標識され、増幅産物は、例えば、ライトサイクラー(Perkin Elmer,Wellesley,Mass.,USA,Roche Applied Sciience,Indianapolis,IN,USA)を使用して検出される。
【0169】
鎖置換増幅(SDA)は、オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、及び制限エンドヌクレアーゼを利用して、標的配列を増幅する。オリゴヌクレオチドは標的核酸にハイブリダイズされ、ポリメラーゼはプライマーアニーリング部位の間にある領域のコピーを生成するために使用される。次に、コピーされた核酸と標的核酸の二本鎖は、コピーされた核酸の最初の配列を特異的に認識するエンドヌクレアーゼでニックを入れられる。DNAポリメラーゼは、ニックの入ったDNAを認識し、以前に生成された核酸を置換すると同時に標的領域の別のコピーを生成する。SDAの利点は、等温形式で起こるため、ハイスループットの自動分析が容易になることである。
【0170】
サイクリングプローブテクノロジー(Cycling Probe Technology)は、標的配列にハイブリダイズできるDNA-RNA-DNAを含むキメラ合成プライマーを使用する。標的配列へのハイブリダイゼーション時に、形成されたRNA-DNA二本鎖はRNaseHの標的であり、それによってプライマーを切断する。次に、切断されたプライマーは、例えば、質量分光法又は電気泳動を使用して検出される。
【0171】
メチル化感受性エンドヌクレアーゼ認識部位の側面に位置するか、又は隣接するプライマーの場合、診断用増幅産物が確実に生成されるように、そのようなプライマーは新形成で高メチル化される部位のみに隣接することが好ましい。これに関して、増幅産物は、制限部位が切断されていない場合、すなわちそれがメチル化されている場合にのみ生成されるであろう。したがって、増幅産物の検出は、対象のCpGジヌクレオチド(複数可)がメチル化されていることを示す。
【0172】
当業者に知られているように、増幅産物の正確な長さは、プライマー間の距離に応じて変化する。明らかに、この形式の分析は、各ジヌクレオチドがメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ部位内にあるという条件で、複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定するために使用することができる。これらの方法において、1つ又は複数のプライマーは、増幅された核酸、例えば、蛍光標識(例えば、Cy5又はCy3)又は放射性同位元素(例えば、32P)の迅速な検出を容易にするために、検出可能なマーカーで標識され得る。
【0173】
増幅された核酸は、一般に、例えば、非変性アガロースゲル電気泳動、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、質量分光法、液体クロマトグラフィー(例えば、HPLC又はdHPLC)、又は毛細管電気泳動を使用して分析される。例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、質量分光法(タンデム質量分光法、例えばLC MS/MSを含む)、バイオセンサー技術、エバネセント光ファイバー技術又はDNAチップ技術(例えば、WO98/49557;WO96/17958;Fordorら、Science767-773,1991:米国特許第5,143,854号;および米国特許第5,837,832号の内容はすべて参照によって本明細書に組み込まれる)のようなハイスループットの検出方法は、本明細書に記載のすべてのアッセイフォーマットに特に好ましい。あるいは、核酸の増幅は、本明細書及び/又は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第6,174,670号に記載されている融解曲線分析法を使用して連続的にモニタリングされる。
(c)その他のアッセイフォーマット
【0174】
別の例では、サンプル中のメチル化の増加は、核酸を消化するのに十分な条件下で、核酸を含むクロマチンをある量のDNaseIで処理し、次に生成された断片を検出することを含むプロセスを実行することによって決定される。このアッセイマットは、メチル化DNA、例えば高メチル化DNAを含むクロマチンは、非高メチル化DNAよりも緊密に閉じたコンフォメーションを持ち、その結果、DNaseIによるエンドヌクレアーゼ消化の影響を受けにくいという理解に基づいている。
【0175】
この方法によれば、異なる長さのDNA断片は、メチル化されていないDNAと比較されるメチル化されたDNAのDNaseI消化によって生成される。そのような異なるDNA断片は、例えば、前記のアッセイを使用して検出される。あるいは、DNA断片は、例えば、Gregory and Feil,Nucleic Acids Res.,27,e32i-e32iv,1999に記載されているように、本質的にPCR-SSCPを使用して検出される。PCR-SSCPを本発明に適合させる際に、新形成サンプルにおけるDNaseI消化に耐性があるが、健康/正常対照又は健康/正常試験サンプルにおけるDNaseI消化に耐性がない核酸中の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドを含むか又は隣接している増幅プライマーは、DNaseIで生成された断片を増幅するために使用される。この場合、DNAが効率的に分解されないため、DNaseIを使用する特異的核酸断片の生成は新形成の診断になる。対照的に、健康/正常な被検者サンプルからのテンプレートDNAはDNaseIの作用によって分解され、その結果、増幅は個別の増幅産物を生成できない。例えば、PCR-dHPLCなどのPCR-SSCPの代替方法も当該技術分野で知られており、本発明によって考慮されている。
(d)非メチル化DNAの選択的突然変異誘発
【0176】
別の方法では、サンプル中のメチル化の増加は、突然変異誘発を誘発するのに十分な条件下で、CpGジヌクレオチド内の非メチル化シトシン残基を選択的に突然変異させる量の化合物と核酸を接触させることを含むプロセスを使用して決定される。
【0177】
好ましい化合物は、例えば、亜硫酸水素塩、例えば、亜硫酸水素ナトリウムまたは亜硫酸水素カリウムなどの化合物であって、シトシンをウラシルまたはチミジンに突然変異させる(Frommerら、1992、前記)。DNAの亜硫酸水素塩処理は、メチル化によって保護されないシトシン残基(CpGジヌクレオチド内に存在しないシトシン残基とメチル化されないCpGジヌクレオチド内に存在するシトシン残基を含む)を突然変異させることにより、メチル化シトシン残基と非メチル化シトシン残基を区別することが知られている。
シークエンスベースの検出
【0178】
一実施例では、1つ又は複数の突然変異ヌクレオチドの存在又は突然変異配列の数は、突然変異DNAを塩基配列決定することによって決定される。分析の一形態は、本明細書に記載の増幅反応、例えば、PCRを使用して突然変異核酸を増幅することを含む。次に、増幅された産物が直接塩基配列決定されるか又はクローン化され、クローン化された産物が塩基配列決定される。DNAを塩基配列決定するための方法は当該技術分野で知られており、例えば、ジデオキシ鎖伸長停止法又はマキサム-ギルバート法(Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd Ed.,CSHP,New York1989)またはZyskindら、Recombinant DNA Laboratory Mannual,(Acad.Press,1998)参照)を含む。
【0179】
核酸と、例えば亜硫酸水素塩などの化合物との接触により、非メチル化シトシンがウラシル(したがって増幅プロセス後のチミジン)に突然変異するため、配列の分析により、メチル化ヌクレオチドの有無が決定される。例えば、対照サンプル又は亜硫酸水素塩で処理されていないサンプルを使用して得られた配列、又は対象の領域の既知のヌクレオチド配列を接触したサンプルと比較することにより、ヌクレオチド配列の違いの検出が容易になる。対照サンプル又は未処理のサンプルと比較して、接触したサンプルのシトシンの部位で検出されたチミン残基は、亜硫酸水素塩接触の結果としての突然変異によって引き起こされたと見なすことができる。亜硫酸水素塩処理された核酸の塩基配列決定を使用してメチル化を検出するための適切な方法は、例えば、前記のFrommerら、1992,またはClarkら、Nucl.Acids Res.22:2990-2997,1994に記載されている。
【0180】
別の方法では、亜硫酸水素塩処理サンプル中の突然変異又は非突然変異ヌクレオチドの存在は、例えば、Uhlmannら、Electrophoresis、23:4072-4079,2002に記載されているようなパイロシークエンシングを使用して検出される。本質的に、この方法は、メチル化されたシトシンの部位に隣接又は近接する部位にハイブリダイズするプライマーを使用するリアルタイム塩基配列決定の形式である。DNAポリメラーゼの存在下でのプライマーとテンプレートのハイブリダイゼーションに続いて、4つの修飾されたデオキシヌクレオチド三リン酸のそれぞれが、所定の分配順序に従って別々に添加される。亜硫酸水素塩処理されたサンプルに相補的な追加のヌクレオチドのみが組み込まれ、無機ピロリン酸塩(PPi)が遊離する。次に、PPiは反応を促進し、検出可能なレベルの光を生成する。そのような方法は、プライマーのハイブリダイゼーションの部位に隣接する特異的ヌクレオチドの同一性の決定を可能にする。
【0181】
固相パイロシークエンシングの方法は当該技術分野で知られており、例えば、Landegrenら、Genome Res.,8(8):769-1998で概説されている。このような方法により、多数のCpGジヌクレオチドのメチル化のハイスループットの検出が可能になる。
【0182】
亜硫酸水素塩に接触したヌクレオチドの配列を決定するための関連する方法は、メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長(Me-SnuPE)又はSnaPmethである。適切な方法は、例えば、前記のGonzalgo and Jones,1997又はUhlmannら、Electrophoresis、23:4072-4079,2002に記載されている。メチル化されているシトシンの部位に隣接する核酸の領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが使用される。次に、このオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼと、亜硫酸水素塩処理後にこの部位で発生する可能性のあるいずれかの塩基(すなわち、チミン又はシトシン)に対応する遊離ヌクレオチド二リン酸またはジデオキシヌクレオチド三リン酸を用いたプライマー伸長プロトコルで使用される。好ましくは、ヌクレオチド二リン酸は、検出可能なマーカー(例えば、フルオロフォア)で標識されている。プライマー伸長に続いて、サイズ排除クロマトグラフィーもしくは電気泳動、又は例えばアルカリホスファターゼを使用して加水分解することによって、結合していない標識ヌクレオチド二リン酸が除去される。そして、オリゴヌクレオチドへの標識ヌクレオチドの取り込みが検出され、その部位に存在する塩基を示す。
【0183】
他のハイスループットのシークエンシング方法は、本発明に含まれる。そのような方法には、例えば、固相ミニシークエンシング(例えば、Southernら、Genomics,13:1008-1017、1992に記載されている)、またはFRETを用いたミニシークエンシング(例えば、Chen and Kwok,Nucleic Acids Res.25:347-353,1997に記載されている)が含まれる。
制限エンドヌクレアーゼベースのアッセイフォーマット
【0184】
1つの方法において、突然変異していない配列の存在は、本質的に前記のXiong and Laird,2001に記載されているように、複合亜硫酸水素塩制限分析(COBRA)を使用して検出される。この方法は、非メチル化シトシン残基、例えば亜硫酸水素塩を選択的に突然変異させる化合物と接触した後のメチル化核酸と非メチル化核酸の間の制限酵素認識部位の違いを利用する。
【0185】
亜硫酸水素塩処理に続いて、メチル化され、制限エンドヌクレアーゼ認識配列に含まれる1つ又は複数のCpGジヌクレオチドを含む対象の領域が、本明細書に記載の増幅反応、例えば、PCRを使用して増幅される。次に、増幅された産物は、切断が起こるのに十分な時間及び条件下でCpGジヌクレオチドの部位で切断する制限酵素と接触される。メチル化の有無を示すために制限部位を選択することができる。例えば、制限エンドヌクレアーゼTaqIは、非メチル化核酸の亜硫酸水素塩処理に続いて、配列TCGAを切断し、その結果、配列は、TTGAとなり、切断されない。次に、消化された核酸及び/又は消化されていない核酸は、例えば、電気泳動及び/又は質量分光法などの当該技術分野で知られている検出手段を使用して検出される。核酸の切断または非切断は、被検者における癌を示す。明らかに、この方法は、癌の診断のための陽性の読み出しシステム又は陰性の読み出しシステムのどちらかで使用され得る。
陽性の読み出しアッセイフォーマット
【0186】
一実施形態では、アッセイフォーマットは、例えば、亜硫酸水素塩で処理されたサンプルからのDNAが陽性シグナルとして検出される陽性読み出しシステムを含む。好ましくは、健康又は正常な対照の被検者の高メチル化されていないDNAは、検出されないか、又はわずかしか検出されない。
【0187】
好ましい実施形態では、被検者サンプルにおけるメチル化の増加は、
【0188】
(i)突然変異誘発を誘導するのに十分な条件下で非メチル化シトシン残基を選択的に突然変異させる量の化合物と核酸とを接触させ、それにより突然変異した核酸を生成し、
【0189】
(ii)非突然変異核酸への選択的ハイブリダイゼーションが起こるような条件下で、メチル化シトシン残基を含む配列に相補的なヌクレオチド配列を含むプローブまたはプライマーに核酸をハイブリダイズさせ、
【0190】
(iii)選択的ハイブリダイゼーションを検出することを
含むプロセスを使用して決定される。
【0191】
この文脈において、「選択的ハイブリダイゼーション」という用語は、突然変異していない核酸へのプローブ又はプライマーのハイブリダイゼーションが、対応する突然変異した配列に対して、同じプローブ又はプライマーのハイブリダイゼーションよりも高い頻度又は高い速度で起こるか、又はより高い最大反応速度を有することを意味する。好ましくは、プローブまたはプライマーは、使用される反応条件下で突然変異(複数可)を伝える非メチル化配列にハイブリダイズしない。
ハイブリダイゼーションベースのアッセイフォーマット
【0192】
一実施形態では、ハイブリダイゼーションは、サザン、ドットブロット、スロットブロット、又は他の核酸ハイブリダイゼーション手段を使用して検出される(前記のKawaiら、1994;前記のGonzaloら、1997)。適切なプローブ選択を条件として、そのようなアッセイフォーマットは、一般に、前記のように本明細書に記載され、現在記載されている選択的突然変異誘発アプローチに準用する。
【0193】
好ましくは、リガーゼ連鎖反応フォーマットを使用して、突然変異した核酸と突然変異していない核酸とを区別する。リガーゼ連鎖反応(欧州特許第320,308号および米国特許第4,883,750号に記載されている)は、標的核酸上に並置されるように標的核酸にアニーリングする少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを使用する。リガーゼ連鎖反応アッセイにおいて、標的核酸は、標的配列の診断部分に相補的である第1のプローブ(診断プローブ)、例えば、1つ又は複数のメチル化されたCpGジヌクレオチド(複数可)を含む核酸に、診断プローブが実質的に標的核酸にのみ結合したままである条件下で、診断部分に隣接するヌクレオチド配列に相補的である第2のプローブ(隣接プローブ)を用いて、ハイブリダイズされる。診断プローブ及び隣接プローブは、異なる長さおよび/または異なる融解温度を有することができ、その結果、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを調整して、標的へのそれらの選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、より高い融解温度を有するプローブは、より高いストリンジェンシーでハイブリダイズされ、非結合及び/又は非選択的に結合したプローブを除去するための洗浄に続いて、より低い融解温度を有する他のプローブは、より低いストリンジェンシーでハイブリダイズされる。次に、診断プローブ及び隣接プローブは、例えば、T4DNAリガーゼを使用するなどして共有結合で結紮され、それにより、標的配列に相補的である、より大きな標的プローブを生成し、結紮されていないプローブは、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーを修飾することによって除去される。この点で、結紮されていないプローブは、結紮されたプローブよりも低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で選択的にハイブリダイズする。したがって、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、より長いプローブをハイブリダイズするために使用されるストリンジェンシーと少なくとも同じくらい高いストリンジェンシーに、好ましくは結紮後のより短いプローブによってもたらされる増加した長さのために、より高いストリンジェンシーに増加することが可能である。
【0194】
別の実施例では、プローブの一方又は両方は、標的-プローブ二重鎖を融解し、解離したプローブを溶出し、そして標識(複数可)を試験することによって標的配列の存在又は不在を試験できるように標識される。両方のプローブが標識されている場合、異なるリガンドを使用して、結紮されたプローブと結紮されていないプローブを区別できる。この場合、同じ溶出画分に両方のラベルが存在することで、ライゲーション(結紮)が確認できる。サザンハイブリダイゼーション、スロットブロット、ドットブロット又はマイクロチップアッセイ形式などで、標的核酸が固体マトリックスに結合している場合、診断プローブと隣接プローブの両方の存在を直接決定することができる。
【0195】
メチル化特異的マイクロアレイ(MSO)も使用できる。適切な方法は、例えば、Adorjanら、Nucl.Acids Res.,30:e21,2002に記載されている。MSOは、突然変異型と非突然変異型の両方の核酸を増幅する増幅反応のテンプレートとして、非メチル化シトシン残基(例えば、亜硫酸水素塩)を選択的に突然変異させる化合物と接触させた核酸を使用する。増幅は、例えば、フルオロフォア、例えば、Cy3またはCy5などを検出可能な標識を含む少なくとも1つのプライマーを用いて実施される。
【0196】
突然変異した核酸オリゴヌクレオチドを検出するためのマイクロアレイを作製するために、例えば、好ましくは、ある程度冗長なガラススライド上に点々と配置される(例えば、Golubら、Science,286:531-537,1999に記載されているように)。好ましくは、分析される各CpGジヌクレオチドについて、2つの異なるオリゴヌクレオチドが使用される。各オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドのメチル化状態又は非メチル化状態を反映する配列N2-16CGN2-16もしくはN2-16TGN2-16(ここで、Nは対象のCpGジヌクレオチドに隣接するか又は並置されるヌクレオチドの数である)を含む。
【0197】
次に、標識された増幅産物は、単一ヌクレオチドの違いの検出を可能にする条件下で、マイクロアレイ上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。未結合の増幅産物を除去するために洗浄した後、例えばマイクロアレイスキャナーを使用してハイブリダイゼーションが検出される。この方法は、多数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態の決定を可能にするだけでなく、半定量的でもあり、分析された各CpGジヌクレオチドでのメチル化の程度の決定を可能にする。単一のサンプルにはある程度のメチル化の不均一性があるため、このような定量化は癌の診断に役立つ。
増幅ベースのアッセイフォーマット
【0198】
別の実施例では、ハイブリダイゼーションは、増幅システムを使用して検出される。メチル化特異的PCRフォーマット(MSP;Hermanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9821-9826、1992)では、ハイブリダイゼーションは、亜硫酸水素塩処理されたDNAを増幅することを含むプロセスを使用して検出される。したがって、中程度のストリンジェンシー及び/又は高ストリンジェンシーの条件下で突然変異していない配列に特異的にアニーリングする1つまたは複数のプローブまたはプライマーを使用することにより、メチル化ヌクレオチドを含むサンプルを使用して増幅産物のみが生成される。亜硫酸水素塩処理されたDNAの混合物からのメチル化成分又は非メチル化成分のいずれかの選択的増幅を提供する代替アッセイは、Cottrellら、Nucl.Acids Res.32:e10,2003(HeavyMethyl PCR),Randら、Nucl.Acids Res.33:e127,2005(Headloop PCR),Randら、Epigenetics 1:94-100,2006;(Bisulfite Differential Denaturation PCR)及びPCT/AU07/000389(End-specific PCR)によって提供される。
【0199】
本明細書に記載した増幅アッセイフォーマットは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、逆ポリメラーゼ連鎖反応(iPCR)、インサイチュー(in situ) PCR(Singer-Samら、1990,前記)、鎖置換増幅、又はサイクリングプローブ技術のために使用することができる。遺伝子突然変異の検出(Kuppuswamyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1143-1147,1991)及び対立遺伝子特異的発現の定量化(Szabo and Mann,Genes Dev.9:3097-3108、1995;Singer-Samら、PCR Methods Appl.1:160-163,1992)のためのPCR技術が開発されている。このような技術では、PCRで生成されたテンプレートにアニーリングし、アッセイされる単一ヌクレオチドの5'ですぐに終了する内部プライマーを使用する。このようなフォーマットは、本明細書で前記したように、リガーゼ連鎖反応と容易に組み合わせることができる。リアルタイムの定量的アッセイフォーマットの使用も有用である。適切なプライマーの選択を条件として、そのようなアッセイフォーマットは、一般に、前記のように本明細書に記載され、現在記載されている選択的突然変異誘発アプローチに準用する。
【0200】
メチル化固有の融解曲線分析(基本的にWormら、Clin.Chem.,47:1183-1189,2001に記載されている)も本発明によって考察されている。このプロセスは、亜硫酸水素塩処理されたメチル化核酸又は非メチル化核酸を使用して生成された増幅産物の融解温度の違いを利用している。本質的に、亜硫酸水素塩処理サンプルの無差別増幅は、二本鎖DNAに特異的に結合する蛍光色素の存在下で実行される(例えば、SYBR Green I)。蛍光をモニターしながら増幅産物の温度を上げることにより、融解特性、したがって増幅産物の配列が決定される。蛍光の減少は、増幅産物の少なくともドメインの融解を反映している。蛍光が減少する温度は、増幅された核酸のヌクレオチド配列を示し、それにより、1つ又は複数のCpGジヌクレオチドの部位のヌクレオチドを決定することができる。
【0201】
本発明の態様はまた、例えば、TaqMan(Hollandら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:7276-7280,1991;Leeら、Nucleic Acid Res.21:3761-3766,1993)のPCRのリアルタイム定量的形態を使用してこの実施形態を実施することを含む。例えば、Eadsら、Nucl.Acid Res.28:E32,2000のメチライト(MethyLight)法は、修飾されたTaqManアッセイを使用して、CpGジヌクレオチドのメチル化を検出する。本質的に、この方法は、核酸サンプルを亜硫酸水素塩で処理し、例えば、PCRによる増幅反応を使用して、腫瘍細胞ではメチル化され、対照サンプルではメチル化されていない1つまたは複数のCpGジヌクレオチドを含む核酸を増幅することを含む。増幅反応は、3つのオリゴヌクレオチド、対象の領域に隣接するフォワードおよびリバースプライマー、及び2つのプライマー間で1つ又は複数のメチル化CpGジヌクレオチドの部位にハイブリダイズするプローブの存在下で実行される。プローブは、5'蛍光レポーターと3'クエンチャー(またはその逆)で二重標識されている。プローブが無傷の場合、クエンチャー色素はレポーターが近接しているため、レポーターの蛍光を吸収する。PCR産物へのアニーリングに続いて、プローブは、例えば、TaqDNAポリメラーゼの5'から3'のエキソヌクレアーゼ活性によって切断される。この切断により、レポーターがクエンチャーから放出され、その結果、初期テンプレートのメチル化レベルを推定するために使用できる蛍光シグナルが増加する。突然変異していない核酸(例えば、メチル化された核酸)に選択的にハイブリダイズするプローブ又はプライマーを使用することにより、メチル化のレベルは、例えば、標準曲線を使用して決定される。
【0202】
核酸を標識するための蛍光レポーターには、フルオレセイン、6-フルオレセインホスホルアミダイト(6-FAM)、5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA)、6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン(6-JOE)、Cy3、Cy5、Cy5.5、テトラクロロフルオレセイン(TET)、Yakima Yellow(登録商標)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、Texus Red(登録商標)、TEX615、ローダミン、ATTO色素、Alexa Fluor(登録商標)色素、又はIRDyes(登録商標)、又はそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。核酸を標識するための蛍光クエンチャーには、Iowa Black(登録商標)FQ(3’IABkFQ)、Iowa Black(登録商標)RQ、Black Hole Quencher(登録商標)(BHQ)、Dabcyl、Qxl、又はZEN、又はそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0203】
代わりに、切断を必要とする標識されたプローブを使用するのではなく、例えば、分子ビーコンなどのプローブが使用される(例えば、Mhlanga and Malmberg, Methods 25:463~471、2001参照)。分子ビーコンは、ステム-ループ構造を有する一本鎖核酸分子である。ループ構造は新生物試料においてはメチル化されているが対照試料ではメチル化されていない1つ又は複数のCpGジヌクレオチドを囲む領域に相補的である。ステム構造は、プローブ(ループ)のどちら側にもある互いに相補的な2つの「アーム」をアニールすることにより形成される。蛍光部分は1つのアームに結合しており、分子ビーコンが標的配列に結合していないときはいかなる検出可能な蛍光をも抑制するクエンチング部分はもう一方のアームに結合している。ループ領域がその標的核酸に結合すると、アームは分離されて蛍光が検出可能になる。しかし、わずか1つの塩基ミスマッチでもあれば試料中で検出される蛍光のレベルを著しく変えてしまう。したがって、特定の塩基の存在又は非存在は検出される蛍光のレベルによって決定される。そのようなアッセイは核酸中での1つ又は複数の突然変異していない部位(すなわち、メチル化されたヌクレオチド)の検出を促進する。
【0204】
蛍光的に標識されたロックド核酸(LNA)分子又は蛍光的に標識されたタンパク質核酸(PNA)分子はヌクレオチド違いの検出に有用である(例えば、Simeonov and Nikiforov、Nucleic Acids Research、30(17):1~5、2002に記載されている)。LNA及びPNA分子は、核酸、特に、DNAに高親和性で結合する。LNA又はPNAプローブにコンジュゲートされたフルオロフォア(特に、ローダミン又はヘキサクロロフルオレセイン)は、プローブが標的核酸にハイブリダイズすると著しく大きなレベルで蛍光を発する。しかし、蛍光の増加のレベルは、わずか1つのヌクレオチドミスマッチがあるときには同じレベルにまで増強されない。したがって、試料中で検出される蛍光の程度が、CpGジヌクレオチド中でのメチル化されたシトシンの存在下でなどの、LNA又はPNAプローブと標的核酸の間のミスマッチの存在を示す。蛍光的に標識されたLNA又はPNA技術を使用して、例えば、当技術分野で公知の及び/又は本明細書に記載される増幅法を使用して予め増幅されている核酸中での少なくとも単一塩基変化を検出することが好ましい。
【0205】
当業者には明らかになるように、LNA又はPNA検出技術は、Orumら、Clin.Chem.45:1898~1905、1999に記載されている通りに、LNA又はPNAプローブを固相支持体に固定化することによる1つ又は複数のマーカーのハイスループットな検出に適している。
【0206】
あるいは、例えば、いわゆるヘビーメチルアッセイ(Cottrellら、2003前記)などのリアルタイムアッセイを使用して、試験サンプル中の核酸のメチル化の存在又はレベルを決定する。本質的に、この方法は、メチル化特異的な方法で亜硫酸水素塩処理された核酸に結合する1つ又は複数の非伸長性核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)ブロッカーを使用する(例えば、ブロッカー(複数可)は、中程度から高いストリンジェンシー条件下で突然変異していないDNAに特異的に結合する)。増幅反応は、任意選択でメチル化特異的であり得るが、1つ又は複数のブロッカーに隣接する1つ又は複数のプライマーを使用して実施される。非メチル化核酸(例えば、非突然変異DNA)の存在下では、ブロッカー(複数可)が結合し、PCR産物は生成されない。本質的に前記のようにTaqManアッセイを使用して、サンプル中の核酸のメチル化のレベルが決定される。
【0207】
非メチル化シトシン残基を選択的に突然変異させる化合物で処理した後のメチル化核酸を検出するための他の増幅ベースの方法には、例えば、メチル化特異的一本鎖コンフォメーション分析(MS-SSCA)(Biancoら、Hum.Mutat.,14:289-293,1999)、メチル化特異的変性勾配ゲル電気泳動(MS-DGGE)(Abrams and Stanton,Methods Enzymol.,212:71-74,1992)及びメチル化特異的変性高性能液体クロマトグラフィー(MS-DPHLC)(Dengら、Chin.J.Cancer Res.,12:171-191,2000)が含まれる。これらの方法のそれぞれは、ヌクレオチド配列及び/又は二次構造の違いに基づいて、増幅産物中の核酸の違いを検出するために異なる技術を使用する。そのような方法は、本明細書で明確に考察されている。
【0208】
他の増幅ベースのアッセイフォーマットと同様に、増幅産物は、ゲル電気泳動、ゲルろ過、質量分光法を含むさまざまなプロセスを使用して分析され、標識プライマーの場合は、増幅産物の標識を特定することによって分析される。別の実施形態では、亜硫酸水素塩変換されたDNAから増幅されたPCR産物の制限酵素消化は、本質的に、形成された産物を分析するために、Sadri and Hornsby,Nucl.Acids Res.24:5058-5059,1996;およびXiong and Laird,Nucl.Acids Res.25:2532-2534,1997に記載されているように実行される。
【0209】
例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、質量分光法(タンデム質量分光法、例えば、LC MS/MSを含む)、バイオセンサー技術、エバネセント光ファイバー技術又はDNAチップ技術のようなハイスループット検出方法を使用することができる。
【0210】
ハイブリダイゼーション及び/又は増幅検出システムを利用する本明細書に記載の他のアッセイフォーマットと同様に、本明細書に記載のようなプロセスの組み合わせは、本発明の選択的突然変異誘発に基づくアッセイフォーマットによって特に考察される。一実施例では、メチル化の増加は、
【0211】
(i)突然変異誘発を誘導するのに十分な条件下で、CpGジヌクレオチド内の非メチル化シトシン残基を選択的に突然変異させる量の化合物と核酸を接触させ、それによって突然変異した核酸を生成し、
【0212】
(ii)非突然変異核酸へのハイブリダイゼーションが起こるような条件下で、メチル化シトシン残基を含むDNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を、それぞれが含む2つの非重複及び非相補的プライマーに核酸をハイブリダイズし、
【0213】
(iii)ハイブリダイズしたプライマーに介在する核酸を増幅し、それにより、プライマー配列を含む配列からなるDNA断片を生成し、
【0214】
(iv)突然変異していない核酸へのハイブリダイゼーションが起こるような条件下で、メチル化シトシン残基を含む配列に対応するか又は相補的なヌクレオチド配列を含むプローブに、増幅されたDNA断片をハイブリダイズし、そして、ハイブリダイゼーションを検出すること
を含むプロセスを実行することによって検出される。
陰性読み出しアッセイ
【0215】
別の実施例では、アッセイフォーマットは、健康/正常な対照サンプルのDNAのメチル化の低下が陽性シグナルとして検出され、好ましくは、腫瘍性サンプルのメチル化DNAが検出されないか、又はわずかしか検出されない陰性読み出しシステムを含む。
【0216】
好ましい実施形態において、減少されたメチル化は、
【0217】
(i)突然変異誘発を誘導するのに十分な条件下で、CpGアイランド内の非メチル化シトシン残基を選択的に突然変異させる量の化合物と核酸を接触させ、それによって突然変異した核酸を生成し、
【0218】
(ii)突然変異した核酸への選択的ハイブリダイゼーションが起こるような条件下で、突然変異したシトシン残基を含む配列に相補的なヌクレオチド配列を含むプローブ又はプライマーに核酸をハイブリダイズし、および
【0219】
(iii)選択的ハイブリダイゼーションを検出すること
を含むプロセスを使用して決定される。
【0220】
この文脈において、「選択的ハイブリダイゼーション」という用語は、突然変異した核酸へのプローブ又はプライマーのハイブリダイゼーションが、対応する非突然変異配列への同じプローブ又はプライマーのハイブリダイゼーションよりも高い頻度又は高い速度で起こるか、又はより高い最大反応速度を有することを意味する。好ましくは、プローブまたはプライマーは、使用される反応条件下でメチル化配列(または非突然変異配列)にハイブリダイズしない。
ハイブリダイゼーションベースのアッセイフォーマット
【0221】
一実施形態では、ハイブリダイゼーションは、サザン、ドットブロット、スロットブロット、又は他の核酸ハイブリダイゼーション手段を使用して検出される(前記のKawaiら、1994;前記のGonzaloら、1997)。適切なプローブ選択を条件として、そのようなアッセイフォーマットは、一般に、前記のように本明細書に記載され、現在記載されている選択的突然変異誘発アプローチに準用する。好ましくは、リガーゼ連鎖反応フォーマットを使用して、突然変異していない核酸と突然変異した核酸とを区別する。この点で、アッセイの要件及び条件は、陽性読み出しアッセイについて本明細書に記載した通りであり、本フォーマットに準用する。ただし、プローブの選択は異なる。陰性読み出しアッセイでは、突然変異していない配列ではなく、突然変異した配列に選択的にハイブリダイズする1つ又は複数のプローブが選択される。
【0222】
好ましくは、リガーゼ連鎖反応プローブ(複数可)は、健康な対照サンプルではメチル化されていないが、癌では高メチル化されているCpGジヌクレオチドを含む3'末端及び/又は5'末端配列を有し、その結果、診断プローブ及び隣接するプローブは、CpGジヌクレオチドのシトシンがチミジンに突然変異している場合にのみ、例えば、メチル化されていないシトシン残基の場合、結紮されることが可能である。
【0223】
当業者に明らかなように、前記のMSO法は、陽性及び/又は陰性の読み出しアッセイのいずれかまたは両方に適している。これは、前記のアッセイが突然変異配列と非突然変異配列の両方を検出し、それによってメチル化のレベルの決定を容易にするためである。しかしながら、メチル化配列又は非メチル化配列のみを検出するアッセイが本明細書で考察されている。
増幅ベースのアッセイフォーマット
【0224】
別の実施例では、ハイブリダイゼーションは、プライマー(および該当する場合はプローブ)を使用して突然変異核酸に選択的にハイブリダイズするが、陽性読み出しアッセイのために本明細書に記載のいずれかの増幅アッセイフォーマットを使用する増幅システムを使用して検出される。
【0225】
前記のヘビーメチルアッセイを陰性読み出しフォーマットに適合させる際に、メチル化特異的に亜硫酸酸水素塩処理された核酸に結合するブロッカーは、中程度から高いストリンジェンシー条件下で突然変異DNAに特異的に結合する。増幅反応は、任意選択でメチル化特異的(例えば、突然変異した核酸にのみ結合する)であるが、1つ又は複数のブロッカーに隣接する1つ又は複数のプライマーを使用して実行される。メチル化された核酸(例えば、突然変異したDNA)の存在下では、ブロッカー(複数可)が結合し、PCR産物は生成されない。
【0226】
一実施例では、正常/健康な対照被検者におけるメチル化の減少は、
【0227】
(i)突然変異誘発を誘導するのに十分な条件下で非メチル化シトシン残基を選択的に突然変異させる量の化合物と核酸を接触させ、それにより突然変異した核酸を生成し、
【0228】
(ii)突然変異した核酸へのハイブリダイゼーションが起こるような条件下で、突然変異したシトシン残基を含むDNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を、それぞれが含む2つの非重複および非相補的プライマーに核酸をハイブリダイズし、
【0229】
(iii)ハイブリダイズしたプライマーに介在する核酸を増幅し、それにより、プライマー配列を含む配列からなるDNA断片を生成し、
【0230】
(iv)突然変異した核酸へのハイブリダイゼーションが起こるような条件下で、突然変異したシトシン残基を含む配列に対応するかまたは相補的なヌクレオチド配列を含むプローブに増幅されたDNA断片をハイブリダイズし、および
【0231】
(v)ハイブリダイゼーションを検出すること
を含むプロセスを実行することによって検出される。
【0232】
当業者に明らかなように、陰性読み出しアッセイは、好ましくは、陰性の結果が反応の失敗ではなくメチル化された核酸によって引き起こされることを確実にするための適切な対照サンプルを含む。
【0233】
本発明はまた、本発明の診断配列の検出及び/又は定量化、又は本明細書に記載の方法を使用する、その発現又はメチル化のためのキットを提供する。
【0234】
メチル化を検出するためのキットの場合、本発明のキットは、本発明の診断配列の少なくとも1つにハイブリダイズする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及び遺伝子メチル化を検出するための少なくとも1つの試薬を含むことができる。メチル化を検出するための試薬には、例えば、亜硫酸水素ナトリウムと、バイオマーカー配列がメチル化されていない場合(例えば、少なくとも1つのC→U変換を含む)、本発明のバイオマーカー配列の産物である配列にハイブリダイズするように設計されたポリヌクレオチドと、及び/又はメチル化感受性もしくはメチル化依存性制限酵素とが含まれる。キットには、メチル化または非メチル化形態の配列を表す、対照の天然又は合成DNA配列も含むことができる。キットは、アッセイでの使用に適合したアッセイ装置の形である固体支持体を提供することができる。キットは、キット内に、ポリヌクレオチドに任意選択で連結された検出可能な標識、例えば、プローブをさらに含むことができる。試験管、トランスファーピペットなどを含む、アッセイの実施に有用な他の材料もキットに含めることができる。キットはまた、本明細書に記載のアッセイのいずれかにおいてこれらの試薬の1つ又は複数を使用するための書面による説明書を含むことができる。
【0235】
前記のように、高メチル化は転写サイレンシングに関連している。したがって、食道又は胃の新生物の発症の素因もしくは発症をスクリーニングするための基礎を提供する、これらの遺伝子のメチル化レベルの増加に加えて、これらの遺伝子の発現レベルのダウンレギュレーションも診断的に価値がある。本発明のこの態様によれば、遺伝子「発現産物」または「遺伝子の発現」への言及は、転写産物(一次RNA又はmRNAなど)又はタンパク質などの翻訳産物のいずれかへの言及である。この点に関して、生成される発現産物(例えば、RNA又はタンパク質)のレベルの変化、遺伝子が関連するクロマチンタンパク質の変化、例えば、アミノ酸位置番号9又は27のリジンでメチル化されたヒストンH3の存在(抑制的修飾)、又はDNAのメチル化の変化など、発現をダウンレギュレートするように作用するDNA自体の変化のいずれかをスクリーニングすることによって、遺伝子の発現レベルの変化を評価することができる。これらの遺伝子及びそれらの遺伝子発現産物は、それらがRNA転写物であろうと、発現をダウンレギュレートするように作用するDNAへの変化であろうと、またはコード化されたタンパク質であろうと、まとめて「腫瘍性マーカー」と呼ばれる。
【0236】
したがって、本発明の別の態様は、個体の食道又は胃の新生物の発症もしくは発症の素因をスクリーニングする方法又は個体の食道もしくは胃の新生物をモニタリングする方法に関し、前記方法は、前記個体の生物学的サンプルにおいて、
【0237】
(i)Hg19座標
【0238】
(1)chrl2:24962958..25102393;及び/又は
【0239】
(2)chr7:50344378...50472798;o
によって定義される、転写開始部位の2kb上流を含む領域:
【0240】
(ii)以下の2kb上流を含む遺伝子領域:
【0241】
(1)BCAT1;及び/又は(2)IKZF1
から選択されるDNA領域の発現レベルを評価することを含む方法であって、
【0242】
対照レベルと比較して、グループ(i)及び/又は(ii)のDNA領域の少なくとも1つの発現のより低いレベルが、食道又は胃の新生物を示すか又は腫瘍性状態の発症の素因を示す。
【0243】
一実施形態では、前記対照レベルは非腫瘍性レベルである。
【0244】
別の実施形態では、前記方法は、生物学的サンプルにおけるBCAT1またはIKZF1発現のどちらか一方をスクリーニングすることを対象とする。
【0245】
さらに別の実施形態では、前記方法は、生物学的サンプルにおけるBCAT1及びIKZF1の両方の発現についてスクリーニングすることを対象とする。
【0246】
さらに別の実施形態では、前記方法は、BCAT1及びIKZF1発現の両方をスクリーニングすることを対象とするが、前記遺伝子のうちの1つのみがより低いレベルの発現を示す。
【0247】
さらなる実施形態において、前記方法は、BCAT1及びIKZF1発現の両方についてスクリーニングすることを対象とするが、前記遺伝子の両方が、より低いレベルの発現を示す。
【0248】
さらに別の実施形態では、新生物は、腺癌のように悪性である。
【0249】
さらなる実施形態において、新生物は、腺腫または形成異常のように非悪性である。
【0250】
本発明のこの態様の方法は、生物学的サンプルの腫瘍性マーカーのレベルとこれらのマーカーの対照レベルとの比較に基づいている。「対照レベル」は、腫瘍性ではない対応する食道又は胃の細胞もしくは細胞集団によって発現されるマーカーのレベルである「正常レベル」、又は、モニタリングの文脈で発生するような以前に分析されたサンプルのマーカー発現のレベルのどちらか一方である。
【0251】
前記のように、正常な(または「非腫瘍性」)レベルは、試験の被検者である同じ個体に由来する組織を使用して決定することができる。しかしながら、これは関係する個体にとって非常に侵襲的である可能性があり、したがって、問題の患者以外の個体から得られた個体又は集団の結果を反映する標準結果と比較して試験結果を分析することがより好都合である可能性が高い。
【0252】
前記のように、本発明は、食道又は胃に位置する腫瘍性の細胞もしくは細胞集団をスクリーニングするように設計されている。したがって、「細胞または細胞集団」への言及は、個々の細胞または細胞の群への言及として理解されるべきである。前記細胞群は、細胞のびまん性集団、細胞懸濁液、細胞の被包性集団、又は組織の形態をとる細胞集団であり得る。
【0253】
「発現」への言及は、核酸分子の転写及び/又は翻訳への言及であると理解されるべきである。「RNA」への言及は、一次RNA又はmRNA又は非翻訳RNA(例えば、miRNAなど)などの任意の形態のRNAへの言及を含んでいると理解されるべきである。本発明をいかなる方法でも限定せずに、RNA合成の増加又は減少をもたらす遺伝子転写の調節はまた、タンパク質産物を産生するためのこれらのRNA転写物(mRNAなど)のいくつかの翻訳と相関し得る。したがって、本発明はまた、細胞又は細胞集団の腫瘍性状態の指標としての腫瘍性マーカータンパク質産物の調節されたレベル又はパターンのスクリーニングを対象とする検出方法にも及ぶ。1つの方法は、mRNA転写物及び/又は対応するタンパク質産物をスクリーニングすることであるが、本発明は、この点に関して限定されず、例えば、一次RNA転写物のような腫瘍性マーカー発現産物の他の形態のスクリーニングにまで及ぶことが理解されるべきである。
【0254】
「核酸分子」への言及は、デオキシリボ核酸分子及びリボ核酸分子及びそれらの断片への言及であると理解されるべきである。したがって、本発明は、生物学的サンプル中のmRNAレベルの直接スクリーニング、又は対象のmRNA集団から逆転写された相補的cDNAのスクリーニングの両方に及ぶ。DNA又はRNAのどちらか一方のスクリーニングに向けられた方法を設計することは、当業者の技能の範囲内である。前記したように、本発明の方法はまた、被検者のmRNA又はゲノムDNA自体から翻訳されたタンパク質産物のスクリーニングにまで及ぶ。
【0255】
1つの好ましい実施形態において、遺伝子発現のレベルは、タンパク質産物をコード化する遺伝子を参照することによって測定され、より具体的には、前記発現のレベルは、タンパク質レベルで測定される。
【0256】
本発明は、1つ又は複数の生物学的サンプル中のタンパク質及び/又は核酸分子の両方を特定することに基づく検出方法を含んでいると理解されるべきである。これは、対象の腫瘍性マーカーのいくつかが、タンパク質産物をコード化しない遺伝子又は遺伝子断片に対応し得る場合には、特に重要である。したがって、これが発生する場合には、タンパク質を試験することは不可能であり、被検者のマーカーは、転写発現プロフィール又はゲノムDNAへの変化に基づいて評価されなければならない。
【0257】
「タンパク質」という用語は、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質(タンパク質断片を含む)を含んでいると理解されるべきである。タンパク質はグリコシル化又は非グリコシル化され、及び/又はアミノ酸、脂質、炭水化物又は他のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のようなタンパク質に融合、連結、結合、又は他の方法で関連するようにされる一連の他の分子を含み得る。本明細書での「タンパク質」への言及は、アミノ酸の配列を含むタンパク質、並びにアミノ酸、脂質、炭水化物又は他のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のように他の分子と関連するタンパク質を含む。
【0258】
本発明の腫瘍性マーカーによってコード化されるタンパク質は、2つ以上の分子が一緒に結合していることを意味する多量体形態であり得る。同じタンパク質分子が一緒に関連付けられている場合、複合体はホモマルチマーである。ホモマルチマーの例はホモダイマーである。少なくとも1つのマーカータンパク質が少なくとも1つの非マーカータンパク質と関連している場合、複合体は、ヘテロダイマーのようなヘテロマルチマーである。
【0259】
生物学的サンプルにおいて被検者が発現した新生物マーカーを評価する手段は、当業者によく知られている任意の適切な方法によって達成することができる。この目的のために、均一な細胞集団(腫瘍生検または不均一な開始集団から濃縮された細胞集団など)又は組織切片のどちらか一方を検査する場合には、対象の1つ又は複数のマーカーの発現レベルの欠如又はダウンレギュレーションを検出するためのインサイチュー(in situ)ハイブリダイゼーション、マイクロアッセイによる発現プロフィールの評価、免疫学的検定法など(より詳細に後記する)などの広範囲の技術を利用できることが理解される。しかしながら、血液サンプルのような不均一な細胞集団又は細胞の不均一な集団が見られる体液をスクリーニングする場合には、特定のマーカーの発現レベルの欠如又は低下は、サンプル中に存在する非腫瘍性細胞によるマーカーの固有の発現により検出できない可能性がある。すなわち、細胞のサブグループの発現レベルの低下は検出できない可能性がある。この状況において、本発明の1つ又は複数のマーカーの発現レベルの腫瘍性亜集団の減少を検出するためのより適切なメカニズムは、エピジェネティックな変化の検出のように間接的な手段による。
【0260】
遺伝子発現レベルの変化を検出する方法には(前記メチル化分析に加えて、詳細に後記)、特に被検者の生物学的サンプルが多数の非腫瘍性細胞で汚染されていない場合、以下が含まれるが、これらに限定されない。
(i)インビボ検出
【0261】
分子イメージングは、腸組織におけるマーカーの発現の変化を明らかにすることができるイメージングプローブ又は試薬の投与後に使用することができる。
【0262】
分子イメージング(Mooreら、BBA,1402:239―249,1988;Weisslederら、Nature Medicine 6:351-355,2000)は、X線、コンピューター断層撮影(CT)、MRI、ポジトロン放射断層撮影(PET)、または内視鏡検査のような古典的な画像診断技術を使用する視覚化された技術に関連する、分子発現のインビボ(in vivo)イメージングである。
(ii)蛍光原位置(in situ)による細胞内のRNA発現のダウンレギュレーションの検出
【0263】
ハイブリダイゼーション(FISH)、又は定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(QRTPCR)又は競合RT-PCR産物のフローサイトメトリ検定(Wedemeyerら、Clinical Chemistry 48:9 1398-1405,2002)のような技術による細胞からの抽出物。
(iii)例えばアレイ技術によるRNAの発現プロフィールの評価(Alonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA:96:6745-6750,June 1999)。
【0264】
「マイクロアレイ」は、固体支持体の表面上に形成された、それぞれが特定の領域を有する、好ましくは別々の領域の線形又は多次元アレイである。マイクロアレイ上の別々の領域の密度は、単一の固相支持体の表面で検出される標的ポリヌクレオチドの総数によって決定される。本明細書で使用される場合、DNAマイクロアレイは、標的ポリヌクレオチドを増幅又はクローン化するために使用されるチップ又は他の表面上に配置されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイである。アレイ内のプローブの各特定のグループの位置がわかっているので、標的ポリヌクレオチドの同一性は、マイクロアレイ内の特定の位置へのそれらの結合に基づいて決定することができる。
【0265】
DNAマイクロアレイ技術により、単一の固相支持体上で複数の標的核酸分子の大規模アッセイを実施することが可能になる。米国特許第5,837,832号(Cheeら)及び関連する特許出願は、サンプル中の特定の核酸配列のハイブリダイゼーション及び検出のためのオリゴヌクレオチドプローブのアレイを固定化することを記載している。対象の組織から単離された対象の標的ポリヌクレオチドは、DNAチップ及び標的ポリヌクレオチドの優先度と別々のプローブ位置でのハイブリダイゼーションの程度に基づいて検出された特定の配列にハイブリダイズされる。アレイの重要な用途の1つは、差次的遺伝子発現の分析である。ここでは、異なる細胞または組織、しばしば、対象の組織及び対照組織での遺伝子発現のプロフィールが比較され、それぞれの組織間の遺伝子発現の違いが明らかにされる。このような情報は、特定の組織タイプで発現する遺伝子のタイプの識別及び発現プロフィールに基づく状態の診断に役立つ。
(iv)例えば、免疫学的検定法による細胞抽出物中の変化した腫瘍性マーカータンパク質レベルの測定。
【0266】
生物学的サンプル中のタンパク性腫瘍性マーカー発現産物の試験は、当業者によく知られているいくつかの適切な方法のいずれかによって実施することができる。適切な方法の例には、組織切片、生検標本、又は体液サンプルの抗体スクリーニングが含まれるが、これらに限定されない。診断方法に基づく抗体が使用される場合、マーカータンパク質の存在は、ウエスタンブロッティング、ELISA又はフローサイトメトリー手順などの多くの方法で決定することができる。 もちろん、これらには、非競合型のシングルサイトアッセイ及び2サイトアッセイ又は「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合結合アッセイが含まれる。これらのアッセイには、標的への標識抗体の直接結合も含まれる。
(v)例えば、免疫組織化学による、細胞表面上のタンパク質腫瘍性マーカーの変化した発現の決定。
(vi)前記のポイント(iv)および(v)に詳述されているものに加えて、適切な機能テスト、酵素テスト、又は免疫学的テストに基づく、変化したタンパク質発現の決定。
【0267】
当業者は、日常的な手順の問題として、所与の方法を特定のタイプの生物学的サンプルに適用することの適切性を決定することができる。
【0268】
本発明に関連する態様は、分子アレイを提供し、このアレイは、
【0269】
(i)前述の腫瘍性マーカーDNAの任意の2つ以上に対応するヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも80%の同一性を示す配列、又は前記核酸分子の機能的誘導体、断片、変異体もしくは相同体を含む核酸分子;又は
【0270】
(ii)中程度のストリンジェンシー条件下で(i)の配列のいずれか1つ又は複数にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列又は前記核酸分子の機能的誘導体、フラグメント、変異体もしくは相同体を含む核酸分子;または
【0271】
(iii)中程度のストリンジェンシー条件下で(i)の配列のいずれか2つ以上にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列又は前記核酸分子の機能的誘導体、断片、変異体もしくは相同体を含む核酸プローブ又はオリゴヌクレオチド;又は
【0272】
(iv)(i)の核酸分子又はその誘導体、断片、もしくは相同体によってコード化される任意の2つ以上のタンパク質に結合することができるプローブ
の複数を含むアレイであって、
【0273】
(i)~(iii)の前記マーカー遺伝子又は(iv)のタンパク質の発現レベルは、食道または胃に由来する細胞もしくは細胞亜集団の腫瘍性状態を示す。
【0274】
好ましくは、前記パーセント同一性は、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。
【0275】
「ハイブリダイゼーション」は、核酸鎖が塩基対形成を介して相補鎖と結合するプロセスを指す。ハイブリダイゼーション反応は高感度かつ選択的であるため、低濃度で存在するサンプルでも特定の対象の配列を特定できる。ストリンジェントな条件は、例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション溶液中の塩又はホルムアミドの濃度によって、又はハイブリダイゼーション温度によって定義することができ、当該技術分野でよく知られている。例えば、ストリンジェンシーは、以下で詳細に説明するように、塩の濃度を下げること、ホルムアミドの濃度を上げること、又はハイブリダイゼーション温度を上げること、ハイブリダイゼーションの時間を変えることによって増加させることができる。代替の態様では、本発明の核酸は、本明細書に記載されるように、様々なストリンジェンシー条件下(例えば、高、中、及び低)でハイブリダイズするそれらの能力によって定義される。
【0276】
本明細書での低ストリンジェンシーへの言及は、少なくとも0%もしくは少なくとも約0%から少なくとも15%もしくは少なくとも約15体積%のホルムアミド、及び少なくとも1モルもしくは少なくとも約1モルから少なくとも2モルもしくは少なくとも約2モルのハイブリダイゼーション用の塩、および少なくとも1モルもしくは少なくとも約1モルから少なくとも2モルもしくは少なくとも約2モルの洗浄条件用の塩を含む。一般に、低ストリンジェンシーは、25~30℃もしくは約25~30℃から42℃もしくは約42℃である。ホルムアミドの代わりに、及び/又は代替のストリンジェンシー条件を与えるために、温度を変更し、より高い温度を使用することができる。必要に応じて、中程度のストリンジェンシーなどの代替ストリンジェンシー条件を適用することができる。そのストリンジェンシーは、少なくとも16体積%もしくは少なくとも約16体積%から少なくとも30体積%もしくは少なくとも約30体積%のホルムアミド、及び少なくとも0.5モルもしくは少なくとも約0.5モルから少なくとも0.9モルもしくは少なくとも約0.9モルのハイブリダイゼーション用の塩、及び少なくとも0.5モルもしくは少なくとも約0.5モルから少なくとも0.9モルもしくは少なくとも約0.9モルの洗浄条件用の塩を含む。また、高ストリンジェンシーは、少なくとも31体積%もしくは少なくとも約31体積%から少なくとも50体積%もしくは少なくとも約50体積%のホルムアミド、及び少なくとも0.01モルもしくは少なくとも約0.01モルから少なくとも0.15モルもしくは少なくとも約0.15モルのハイブリダイゼーション用の塩、及び少なくとも0.01モルもしくは少なくとも約0.01モルから少なくとも0.15モルもしくは少なくとも約0.15モルの洗浄条件用の塩を含む。一般に、洗浄はTm=69.3+0.41(G+C)%で行われる(Marmur and Doty,J.Mol.Biol.5:109,1962)。ただし、二本鎖DNAのTmは、ミスマッチの塩基対の数が1%増加するごとに、1℃ずつ減少する(Bonner and Laskey,Eur.J.Biochem.46:83,1974)。これらのハイブリダイゼーション条件では、ホルムアミドは任意選択である。したがって、ストリンジェンシーの特に好ましいレベルは次のように定義される。低ストリンジェンシーは25~42℃で、6×SSC緩衝液、0.1重量体積%(w/v)SDS、中程度のストリンジェンシーは、20~65℃で、2×SSC緩衝液、0.1重量体積%(w/v)SDS、高ストリンジェンシーは、少なくとも65℃で、0.1×SSC緩衝液、0.1重量体積%(w/v)SDSである。
【0277】
本発明の核酸が高ストリンジェンシー下でハイブリダイズする能力によって定義される場合、これらの条件は、37℃もしくは約37℃から42℃もしくは約42℃で、50%もしくは約50%のホルムアミドを含む。一態様では、本発明の核酸は、30℃もしくは約30℃から35℃もしくは約35℃で、35%もしくは約35%から25%もしくは約25%のホルムアミドの条件を含む低減されたストリンジェンシー下でハイブリダイズする能力によって定義される。あるいは、本発明の核酸は、50%ホルムアミド、5XSSPE、0.3%SDS、及びcot-1又は鮭の精子のDNA(例えば、200n/mlの剪断及び変性鮭精子DNA)のような反復配列遮断核酸中の42℃での条件を含む高ストリンジェンシー下でハイブリダイズする能力によって定義される。一態様では、本発明の核酸は、35℃の低温で35%のホルムアミドを含む低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする能力によって定義される。
【0278】
好ましくは、被検者のプローブは、それらが向けられている核酸又はタンパク質に、非特異的反応性の発生を最小限にする特異性のレベルで結合するように設計されている。しかしながら、すべての潜在的な交差反応性又は非特異的反応性を排除することは不可能であり、これは、プローブベースのシステムの固有の制限であることが理解される。
【0279】
被検者のタンパク質を検出するために使用されるプローブに関して、それらは、抗体及びアプタマー(aptamers)を含む任意の適切な形態をとることができる。
【0280】
核酸又はタンパク質プローブのライブラリーもしくはアレイは、豊富で非常に価値のある情報を提供する。さらに、そのような配列の2つ以上のアレイ又はプロフィール(アレイの使用から得られる情報)は、結果の試験セットを別のサンプル又は保存されたキャリブレータなどの参照と比較するための有用なツールである。アレイを使用する場合、個々のプローブは通常、別々の場所に固定され、結合反応のために反応することができる。組み立てられたマーカーのセットに関連するプライマーは、配列のライブラリーを準備するか、他の生物学的サンプルからマーカーを直接検出するのに役立つ。
【0281】
遺伝子マーカーのライブラリー(又はライブラリー内の少なくともいくつかの配列に対応する物理的に分離された核酸を指す場合はアレイ)は、非常に望ましい特性を示す。これらのプロパティは特定の条件に関連付けられており、規制プロフィールとして特徴付けられる場合がある。ここで、プロフィールは、マーカーが最初に派生した組織の診断情報を提供するメンバーのセットを指す。多くの場合、プロフィールは、堆積された配列から作成されたアレイ上の一連のスポットを含む。
【0282】
特徴的な患者プロフィールは、通常、アレイを使用して作成される。アレイプロフィールは、1つ又は複数の他のアレイプロフィール又は他の参照プロフィールと比較することができる。比較結果は、病状、発達状態、治療に対する受容性、および患者に関するその他の情報に関する豊富な情報を提供することができる。
【0283】
本発明の別の態様は、1つ又は複数の腫瘍性マーカーを検出するための1つ又は複数の薬剤及び前記薬剤による検出を容易にするのに有用な試薬を含む生物学的サンプルをアッセイするための診断キットを提供する。例えば、生物学的サンプルを受け入れるためのさらなる手段も含まれる。薬剤は、任意の適切な検出分子である。
【0284】
本発明は、一般に、多数の実施形態を説明するために肯定的な言葉を使用して本明細書に開示される。本発明はまた、物質又は材料、方法のステップ及び条件、プロトコル、又は手順などの主題が完全に又は部分的に除外される実施形態を含む。
【0285】
本発明は、以下の非限定的な例を参照することによってさらに説明される。当業者は、本明細書及び特許請求の範囲に記載されているように、他の多くの実施形態も本発明の範囲内にあることを理解する。
【実施例】
【0286】
実施例1:食道がんの分析
研究コホート
【0287】
原発性癌の治療又は切除の前に、前立腺(n=94)、乳房(32)、食道(49)または結腸/直腸(211)の浸潤性腺癌の患者と、以前または現在、腺癌がないと臨床的に評価された253の対照から、血液を収集する観察研究が実施された。表1。さらに、生検は、治療前又は手術時に、前立腺癌(n=9)、乳癌(26)、食道癌(6)、及び結腸/直腸癌(15)の患者の癌および隣接する非腫瘍性組織から収集された。
方法
【0288】
DNAは4mLのK3EDTA血漿と10-20mgの組織から抽出され、亜硫酸水素塩変換された。すべてのDNAサンプルは、リアルタイムマルチプレックスPCRアッセイを使用して、メチル化されたBCAT1およびIKZF1DNAについてアッセイされた。合計5ngの亜硫酸水素塩変換組織DNAを、BCAT1およびIKZF1のメチル化についてアッセイし、発現レベルを総入力のパーセンテージとして表した(ACTBで決定)。いずれかの遺伝子のメチル化率が非腫瘍性組織レベルの75%を超えている場合、組織サンプルは陽性と見なされた。血液サンプルは、いずれかのメチル化マーカーの検出可能なシグナルで陽性と見なさた。リアルタイムPCRは、表5に記載されているプロトコルに従って実行された。BCAT1およびIKZF1 PCRに使用されているプローブとプライマーを表6に示す。
結果
組織
【0289】
結腸直腸癌(CRC)および食道癌組織は、BCAT1及びIKZF1の両方で、つり合う非腫瘍性組織と比較して、メチル化レベルが有意に高かった。
図1(上部パネル)
【0290】
前立腺癌(BCAT1,0.3%; IKZF1,0.1%)及び乳癌(0%)の癌組織におけるメチル化レベルの中央値(又は四分位範囲、IQR)は、CRCで測定されたレベル(60.4%;70.7%)及び食道癌組織で測定されたレベル(31.0%;63.7%)より2~3ポイント低かった。表1および
図1(下部パネル)。
【0291】
非腫瘍性組織で測定された75%を陽性カットオフとして使用すると、癌組織の陽性率は次のとおりであった。CRC、14/15、93.3%(95%CI:68.1-99.8);食道癌、6/6、100%(54.1-100);前立腺癌、4/9、44.4%(13.7-78.8);乳癌、11/26、42.3%(23.4-63.1)。
血液
【0292】
循環腫瘍DNA(ctDNA)陽性率は、対照(16/253、6.3%、3.7-10.1;p<0.01)と比べて、CRC(126/211、59.7%、95%CI:52.8-66.4)及び食道癌(26/49、53.1%、38.3-67.5)の症例のみで有意に高かった。
【0293】
ctDNAは末期がんで陽性である可能性が高かった(表2)。他の癌及び陽性状態と患者の人口統計又は腫瘍の特徴との有意な関連はなかった(p>0.05)。
結論
【0294】
結腸直腸癌及び食道癌の患者のみが、対照と比較して有意に高いctDNA陽性率(メチル化BCAT1/IKZF1を使用)を示した。これは、癌組織のメチル化を示す症例の割合が高いことにも反映されていた。
【0295】
メチル化されたBCAT1/IKZF1血液検査は、食道がんのスクリーニング及び監視ツールとして、並びにCRCの既存の使用法とともにさらに調査すべきである。
表1:研究コホート
表2:早期癌と末期癌の血液陽性数
前立腺癌は、ステージに分類されなかった。
実施例2:胃がんの分析
癌及び非癌組織標本におけるBCAT1及びIKZF1のメチル化
【0296】
すべての癌組織は、隣接する非腫瘍組織よりも有意に高いメチル化レベルを示した(Chi
2試験、p<0.05)。胃癌組織の癌組織陽性率は高かった(9/12、75.0%)(表3)。
表3
血液サンプル中のBCAT1及びIKZF1のメチル化
【0297】
メチル化バイオマーカーの血液サンプルの高い陽性率が胃癌患者で観察された(表4)。
表4:腺癌におけるメチル化BCAT1およびIKZF1の血液陽性数
実施例3:実施例1及び2の詳細な方法
方法
【0298】
参加者から静脈血(18ml)をK3EDTAバキュエット採血管(Greiner Bio-One,Frickenhausen,Germany)に採取した。血漿処理の前に、採血管を4℃に保った(採血から44時間経過していない)。血漿は、1500gで10分間、4℃で遠心分離(最低の速度に設定)した後、血漿画分を回収し、遠心分離を繰り返した。得られた血漿を-80℃で保存した。凍結血漿サンプルはドライアイスでClinical GenomicsTechnologies(オーストラリア、シドニー)に送られ、テストまで-80℃で保管された。
【0299】
血液DNAのメチル化試験
少なくとも3.9mlのすべての血漿サンプルは、メチル化されたBCAT1及びIKZF1DNAの存在について、Clinical Genomics Technologiesで分析された。Pedersen S,Symonds E,Baker Rらに記載されているように、サンプルは22サンプルと2つの対照プロセスのバッチで処理および分析された。(結腸直腸腫瘍の検出のための血漿中のメチル化BCAT1及びIKZF1の分析の評価。BMCCancer 2015:15:654)。ただし、次の変更がされた。亜硫酸水素塩変換のセットアップとその後の精製は、QIAcube HT機器(Qiagen,Hilden,Germany)で自動化され、メチル化特異的PCRアッセイのIKZF1成分は、部分的にメチル化されたIKZF1標的領域(表5)の検出を可能にするように修飾された。各血漿サンプルから亜硫酸水素塩変換されたDNAは、Light Cycler 480II機器(Roche Diagnostics,IN,USA)で実行されたリアルタイムPCRで3回分析された。少なくとも1つのPCR複製がBCAT1又はIKZF1DNAメチル化のどちらか一方に対して陽性であった場合、サンプルは定性的に陽性とみなされた。
【0300】
統計分析
主な結果指標は、診断による陽性率であった。95%信頼区間(95%CI)の計算では、二項分布が仮定された。対である陽性率と一致分析の違いはマクネマー検定を使用して分析されたが、対になっていない比率の違いはχ2検定を使用した(両側;有意水準、0.05)。潜在的な交絡共変数(年齢、性別)は、多重ロジスティック回帰分析によって分析された。テスト感度の推定値は、真陽性と偽陰性の合計に対する真陽性の比率として表された。特異性は、CRCがない場合の1-陽性率として推定された。糞便免疫化学検査(FIT)は定量的であり、陽性のカットオフを変えることができるので、受信者動作特性曲線分析を実施し、血液DNA試験と同等の特異度で相対的な真陽性率(したがって感度)を推定することにより、試験結果の比較が容易になった。前記の統計分析には、GraphPadオンライン科学ソフトウェアツールを使用した。0.05未満のP値は統計的に有意であるとみなされた。
プライマーとプローブ
【0301】
BCAT1 PCR標的アンプリコンの野生型DNA配列は、12番染色体のマイナス(-)鎖に位置する。;25,101,992 ⇒ 25,102,093(GRCh37/hgl9)
gtcttcctgc tgatgcaatc cgctaggtcg cgagtctccg ccgcgagagg gccggtctgc aatccagccc gccacgtgta ctcgccgccg cctcgggcac tg(配列番号1)
【0302】
IKZF1 PCR標的アンプリコンの野生型DNA配列は、7番染色体のマイナス(-)鎖に位置する。;50,343,867 ⇒ 50,343,961(GRCh37/hgl9)
gacgacgcac cctctccgtg tcccgctctg cgcccttctg cgcgccccgc tccctgtacc ggagcagcga tccgggaggc ggccgagagg tgcgc(配列番号2)
検体のIKZF1及びBCAT1を横切るメチル化レベルを測定するために使用されるPCRプロトコル
表5:リアルタイムPCRプロトコルBCAT1およびIKZF1
【表6-1】
【表6-2】
【0303】
参加者から静脈血(18ml)をK3EDTAバキュエット採血管(Greiner Bio-One,Frickenhausen,Germany)に採取した。血漿処理の前に、採血管を4℃に保った(採血から44時間経過していない)。血漿は、1500gで10分間、4℃で遠心分離(最低の速度に設定)した後、血漿画分を回収し、遠心分離を繰り返した。得られた血漿を-80℃で保存した。凍結血漿サンプルはドライアイスでClinical GenomicsTechnologies(オーストラリア、シドニー)に送られ、テストまで-80℃で保管された。
実施例4:エクソソームサンプルについての分析
【0304】
血清は、ステージ4の食道癌(ステージIV OEC)のある被検者と、癌のない対照被検者から収集された。エクソソームは血清サンプルから分離された。単離されたエクソソームサンプルを、実施例3に記載の方法に従って分析して、BCAT1およびIKZF1のメチル化レベルを決定した。メチル化バイオマーカーのエクソソームサンプルで高い陽性率が癌患者で観察されたが、対照被検者では観察されなかった(表7)。
表7:メチル化BCAT1およびIKZF1のエクソソーム陽性
【0305】
前記の実施形態の少なくともいくつかにおいて、これらの実施形態において使用された1つ又は複数の構成要素は、その入れ替えが技術的に不可能な場合を除き、別の実施形態の構成要素と入れ替えて使用することができる。請求項に記載された主題の範囲から逸脱することなく、前記の方法及び構造に前記以外の様々な省略、付加及び改変を行ってもよいことは、当業者であれば容易に理解できるであろう。このような改変や変更はいずれも、添付の請求項で定義されている本発明の主題の範囲内にあると見なされる。
【0306】
本明細書で使用されている実質的に複数形及び/又は単数形の用語は、当業者であれば、本明細書の記載及び/又は用途に適するように、複数形の用語を単数のものとして、かつ/又は単数形の用語を複数のものとして解釈することができる。本発明を明確なものとするために、様々な単数形/複数形の用語が意図的に使い分けられている。
【0307】
当業者であれば、本明細書に記載の用語、特に添付の請求項(例えば添付の請求項の本体部)に記載の用語は、通常、「オープンエンドな」用語であることを理解できるであろう(例えば、「含んでいる(including)」という用語は、「含んでいるが、これらに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(include)」という用語は「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである)。さらに、特定の数が請求項に記載されている場合、前記のような意図も請求項に明確に記載されており、特定の数が記載されていない場合はそのような意図も存在しないことも、当業者であれば理解できるであろう。具体的に説明をすれば、例えば、後記の特許請求の範囲では、請求項を定義するために、「少なくとも1つ」や「1つ以上」といった前置きが記載されている場合がある。しかしながら、このような前置きが記載されているからといって、不定冠詞「1つ(aまたはan)」を使用して構成要素が記載された請求項を、1つのみの構成要素を含む実施形態に限定すべきではなく、たとえ同じ請求項内に「1つ以上」または「少なくとも1つ」といった前置きと「1つ(aまたはan)」といった不定冠詞とが含まれていたとしても、1つのみの構成要素を含む実施形態に限定すべきではない(例えば、「1つ(aおよび/またはan)」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈すべきである)。これは、定冠詞を使用して記載された請求項でも同じである。また、請求項に特定の数が明確に記載されていたとしても、「少なくとも」記載されたその数であるということを当業者であれば理解するであろう(例えば、修飾語を伴わない「2つ」という記載は、「少なくとも2つ」または「2つ以上」を意味する)。さらに、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」といった慣用語句が使用されている場合、通常、そのような語句は、当業者がその語句を通常理解する意味で記載されている(例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。また、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」といった慣用語句が使用されている場合、通常、そのような語句は、当業者がその語句を通常理解する意味で記載されている(例えば、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、並びに/又はA、B及びCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。さらに、2つ以上の選択肢を表すための選言的用語及び/又は選言的語句は、明細書、特許請求の範囲または図面のいずれにおいても、記載された用語のうちの1つ、記載された用語のいずれか、又は記載された用語の両方を含む場合があると当業者であれば理解するであろう。例えば、「A又はB」という表現は、「A」又は「B」又は「A及びB」である可能性があることは理解できるであろう。
【0308】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式で記載されている場合、当業者であれば、マーカッシュ形式で記載された各メンバー又はそれらからなるサブグループについても記載されていると理解できるであろう。
【0309】
詳細な説明の提供などの何らかの目的で本明細書に開示された範囲はいずれも、あらゆる可能な部分範囲およびその組み合わせも包含することを、当業者であれば理解できるであろう。本明細書に記載の範囲はいずれも、同じ範囲を少なくとも等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割したものも十分に記載されており、このような分割された範囲で本発明を実施可能であることを容易に理解できるであろう。例えば、本明細書に記載の範囲はいずれも、容易に、低域、中域、高域といった3等分などにすることができるが、これに限定されない。また、「以下」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「未満」といった用語はいずれも、記載された数値を含むとともに、前述したように、部分範囲に分割可能な範囲も指すことを当業者であれば理解できるであろう。さらに、当業者であれば、本明細書に記載の範囲は各メンバーを含むことを理解できるであろう。したがって、例えば、1~3つのメンバーからなる群は、1つのメンバーからなる群、2つのメンバーからなる群又は3つのメンバーからなる群を指す。同様に、1~5つのメンバーからなる群は、1つのメンバーからなる群、2つのメンバーからなる群、3つのメンバーからなる群、4つのメンバーからなる群、又は5つのメンバーからなる群などを指す。
【0310】
本明細書において様々な態様および実施形態を述べてきたが、当業者であればその他の態様および実施形態も容易に理解できるであろう。本明細書において開示された様々な態様および実施形態は本発明を説明することを目的としたものであり、本発明をなんら限定するものではなく、本発明の範囲および要旨は以下の請求項によって示される。
【0311】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、説明のみを目的としたものである。これらの実施例及び実施形態を様々に改変したり変更したりできることが当業者に示唆されており、これらの改変及び変更は、本願の要旨及び範囲ならびに添付の請求項の範囲に含まれる。本明細書に引用された刊行物、特許および特許出願は、いずれも参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0312】
本開示で引用されたあらゆる論文、特許、特許出願およびその他の刊行物は、いずれも引用によりその全体が本明細書に援用される。
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