(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/40 20060101AFI20220414BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220414BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220414BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220414BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220414BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220414BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220414BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20220414BHJP
【FI】
A61K47/40
A61K47/42
A61K45/00
A61P31/04
A61P7/04
A61P9/00
A61P31/00
A61K47/69
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541608
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 CN2020072261
(87)【国際公開番号】W WO2020147754
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】201910045633.7
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513299225
【氏名又は名称】上海 インスティテュート オブ マテリア メディカ、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】555 Zuchongzhi Road, Zhangjiang, Pudong, Shanghai 201203 China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ヤーピン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,リー
(72)【発明者】
【氏名】スン,シーアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076BB11
4C076BB13
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC31
4C076CC47
4C076EE39A
4C076EE41A
4C076FF03
4C084AA17
4C084MA43
4C084MA44
4C084NA10
4C084ZA362
4C084ZA532
4C084ZB322
4C084ZB352
(57)【要約】
立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)およびその製造方法。具体的に、シクロデキストリン骨格-RGD組成物は、立方体形状の構造を有するシクロデキストリン骨格(COF)およびRGDを含み、マクロファージの貪食と排除を避け、損傷血管に対する遷移性と粘着性を増強させ、効率的に損傷血管部位の活性化血小板を標的として集合し、制御不能な出血、アテローム性動脈硬化や脳卒中などの血管関連疾患の標的治療への応用に大いに将来性がある。シクロデキストリン-金属有機骨格(CD-MOF)のサイズが制御可能という優勢を利用してナノオーダーの静脈注射用またはミクロンオーダーの局所外用が可能な立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン骨格-RGD組成物であって、
シクロデキストリン骨格とRGDの質量比が、1:0.001~1:1、好ましくは1:0.005~1:0.5であり、
前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径が、10 nm~50 μm、好ましくは50 nm~50 μm、より好ましくは100~500 nmまたは1~5 μmである
ことを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
前記組成物が、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の製造方法であって、
(1)立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格(CD-MOF)を提供する工程と、
(2)工程(1)における立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格を架橋させ、シクロデキストリン骨格(COF)を得る架橋工程と、
(3)工程(2)における前記のシクロデキストリン骨格にRGDで修飾し、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を得るRGD修飾工程と
を含むことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項4】
前記架橋工程が、以下のサブ工程:
(2a)立方体形状のシクロデキストリン-金属有機骨格を有機溶媒Aに分散させ、分散液2aを得る分散工程;
(2b)架橋反応温度Tの条件において分散液2aに架橋剤および触媒Aを入れ、反応時間t1後、分散液2bを得る架橋剤および触媒の添加工程;
(2c)任意に、分散液2bを冷却し、冷却された分散液2bを得る冷却工程;
(2d)任意に、冷却された分散液2bに、反応停止剤を入れ、分散液2dを得る反応停止工程;
(2e)任意に、分散液2dを遠心し、結晶2eを得る遠心工程;
(2f)任意に、結晶2eを洗浄し、洗浄された結晶2fを得る洗浄工程;
(2g)任意に、洗浄された結晶2fを乾燥処理する乾燥工程;
(2h)立方体形状のシクロデキストリン骨格(COF)を得る、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記RGD修飾工程が、以下のサブ工程:
(3a)立方体形状のシクロデキストリン骨格(COF)およびRGDを有機溶媒Bに分散させ、分散液3aを得る分散工程;
(3b)分散液3aに触媒Bを入れ、立方体形状のシクロデキストリン骨格とRGDをカップリングさせ、反応時間がt2であるカップリング工程;
(3c)任意に、遠心工程;
(3d)任意に、洗浄工程;
(3f)任意に、乾燥工程;
(3g)立方体形状のシクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を得る、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記の架橋剤が、過酸化物、ポリイソシアネート、グリシジルエーテル、二塩基または多塩基酸類、二価または多価アルデヒド類、カルボキシ基含有化合物、エポキシド類、アクリル酸エステル類、塩化アシル類、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記の触媒Aが、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、好ましくはトリエチルアミンであり、
前記の有機溶媒Aが、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタンからなる群から選ばれる
ことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記の触媒Bが、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、N-ヒドロキシスクシンイミド、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、
前記の有機溶媒Bが、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる
ことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項9】
薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物であって、
前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は請求項1または2に記載の組成物、または請求項3に記載の方法によって製造されたものであり、
前記の薬物は、抗菌薬物、止血薬物、抗血栓薬物、抗感染薬物、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる
ことを特徴とする、前記組成物。
【請求項10】
活性成分の使用であって、
前記活性成分は、
(i)請求項1または2に記載のシクロデキストリン骨格-RGD組成物、
(ii)請求項3に記載の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物、
(iii)シクロデキストリン骨格(COF)、
(iv)上記(i)、(ii)または(iii)の組み合わせ
からなる群から選ばれ、
前記活性成分は、
(a)薬物担持材料の製造、
(b)治療および/または診断試薬またはキットの製造、
(c)止血薬物および/または材料の製造、
(d)抗感染薬物および/または材料の製造、
(e)抗菌薬物および/または材料の製造、
(f)傷口癒合を促進する薬物および/または材料の製造、
(g)血栓を予防および/または治療する薬物または材料の製造
に使用される
ことを特徴とする、前記使用。
【請求項11】
(1)請求項1または2に記載のシクロデキストリン骨格-RGD組成物または請求項9に記載の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物である、活性成分と、
(2)薬学的に許容される担体と
を含むことを特徴とする、薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物材料の分野に関し、より具体的に、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管関連疾患、たとえば心筋梗塞や脳卒中は、発病率と死亡率が世界のどちらでも高い。非標的製剤、たとえばウロキナーゼなどの血栓溶解薬はいずれも出血の副作用、広いシステム露出などの問題が存在する。血液循環系の複雑な血流動態学および通常の担体の速いクリアランスのため、治療薬や造影剤の血管損傷部位への標的送達は大きな挑戦に直面している。担体の物理・化学的性質、たとえば形状は、ナノ担体の体内における行方および生物的機能に影響する。近年の研究では、非球形の薬物担体は生体のクリアランス機序から逃れ、循環時間を延ばし、そして血管表面に対する付着性を増加させることがわかった。形態が制御可能で、標的性を有する非球形の形態の担体の研究は、血管関連疾患の標的診断および効率的な治療に新たな希望をもたらす。
【0003】
制御不能な出血による死亡率は病院でも戦場でも高い。重傷の場合、正常の生理止血過程は全然足りず、たとえば車事故や戦争の創傷では、有効かつ快速に止血して出血時間を減らすのは患者の死亡率を低下させる重要な処置である。現在、臨床でよく使用される止血材、たとえば止血ガーゼ、止血繊維、止血包帯はいずれも限界があり、これらの止血材は外出血のみで、かつ止血時間が長く、傷に粘着しやすくて交換が困難で、傷への感染や化膿に無効である。内出血は臓器の破裂によるものが多く、外用止血薬が使用できないため、傷が生じると「すぐに」止血することがほぼ不可能である。組み換えヒト血液凝固因子VII(rFVII)は全身用止血薬の代表であるが、rFVIIは高価で、失活しやすく、保存しにくいといった欠点があり、その臨床への応用が大いに制限されている。血小板製品は免疫原性や保存しにくい、失活しやすいといった欠点のため、救急治療における応用が制限されている。そのため、内出血の治療用の静脈注射が可能な止血材は臨床において大きな需要がある。上記のように、止血速度がより速く、効果がより良く、かつ内出血に使用可能な止血材の開発が切望されている。
【0004】
RGD配列と活性化血小板の表面におけるGPIIb/IIIa受容体の特異的結合は凝血塊の形成の最終の経路で、同時にRGD配列は出血部位の活性化された血小板のみと結合し、正常の血液循環における休止血小板の表面にGPIIb/IIIa受容体がないため、循環の血小板に影響しない。近年、研修者が高分子材料でRGDポリペプチドを載せた人工血小板は止血材の新たな研究方向になっている。Lavikのチームは、PLGA-PLLを高分子担体として使用し、GRGDSペンタペプチドをPLGA-PLL-PEGに連結し、合成血小板を構築した。当該人工血小板は、静脈から投与することにより、活性化血小板を標的とし、血小板の凝集を促進し、さらに血液凝集機序を触発し、ラットの大腿動脈損傷モデルにおいて出血時間を45%低下させた。しかし、当該人工血小板は複雑な合成方法などの欠点がある。Anirban Sen Guptaのチームは環状RGDでナノリポソームを修飾し、構築された人工血小板を尾静脈から注射すると、マウス断尾損傷モデルにおいて出血時間を約50%低下させた。MitragotriのチームはGRGDSで修飾したPAH-BSAナノ粒子を使用して血小板の形態およびレオロジー性をシミュレートし、合成された人工血小板はマウス断尾損傷の出血時間を45%低下させた。張建祥のチームはコール酸およびポリエチレンイミンで合成された正電荷ナノ粒子を尾静脈から注射すると、ラットの大腿動脈損傷モデルにおいて出血時間を40%程度低下させた。檀英霞らはPLGA-PEGナノ粒子でRGDを担持する人工血小板PLGA-PEG-RGDを発明した。PLGA-PEG-RGDは規則正しい球形で、静脈用ナノ止血材として使用可能であるが、粒子径の大きさが不均一である。しかし、ラット肝臓損傷モデルにおける止血効果が限られ、止血時間を30%程度しか低下させられない。
【0005】
人工血小板の止血効率は、ナノ粒子の表面の生物学的機能および物理力学的性質、たとえばサイズや形状に大きく左右される。ナノ担体の形態は血管壁への動態遷移過程のみならず、活性化血小板との粘着および凝集の相互作用に影響する。球形の粒子と比べ、異方性の形状を有する担体(たとえば楕円体や棒状)は高い血管壁への遷移能力を有し、生理に関連する流動環境において強い粘着性を持つ。また、担体の幾何形状は体内における循環やクリアランスなどの過程にも影響する。そのため、担体の形状の制御は生理的障壁を克服し、止血効率を向上させるのに新たな希望をもたらす。
【0006】
しかしながら、多くの研究は主に球形の担体に集中しており、現在、立方形態の担体を出血の標的治療に使用する試みはまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)およびその製造方法と使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の側面では、シクロデキストリン骨格-RGD組成物であって、シクロデキストリン骨格とRGDの質量比が1:0.001~1:1、好ましくは1:0.005~1:0.5で、
前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径が10 nm~50 μm、好ましくは50 nm~50 μm、より好ましくは100~500 nmまたは1~5 μmである組成物を提供する。
もう一つの好適な例において、前記組成物は立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物である。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物では、シクロデキストリン骨格とRGDの質量比は1:0.001~1:1、好ましくは1:0.005~1:0.5、より好ましくは1:0.04~1:0.5である。
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物では、シクロデキストリン骨格とRGDの質量比は1:0.005~1:0.1、好ましくは1:0.05である。
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物では、シクロデキストリン骨格とRGDの質量比は1:0.05である。
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物では、シクロデキストリン骨格とRGDの質量比は1:0.049、1:0.08、1:0.005、1:0.015、1:0.05、1:0.016、1:0.065、または1:0.046である。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は50 nm~50 μmである。
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は100~500 nmである。
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は100~300 nm、好ましくは150~200 nmである。
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は1~50 μm、好ましくは30~50 μm、より好ましくは10~30 μmである。
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は1~5 μmである。
もう一つの好適な例において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は200~500 nm、100~300 nm、200~400 nm、200~500 nm、1~10 μm、1~5 μm、30~50 μm、または10~30 μmである。
【0011】
もう一つの好ましい例において、前記RGDは線状RGDおよび環状RGDを含む。
もう一つの好ましい例において、前記RGDは線状RGDである。
もう一つの好ましい例において、前記RGDはRGD、GRGD、RGDS、RGDV、RGDF、GRGDV、GRGDF、GRGDS、RGDDSP、RGDDAP、ほかのRGD配列含有ポリペプチド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記線状RGDは、線状RGD、線状GRGD、線状RGDS、線状GRGDS、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記環状RGDは、環状RGD、環状GRGD、環状RGDS、環状RGDV、環状RGDF、環状GRGDV、環状GRGDF、環状GRGDS、環状RGDDSP、環状RGDDAP、ほかの環状RGD配列含有ポリペプチド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記のシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン(アルファシクロデキストリン)、β-シクロデキストリン(ベータシクロデキストリン)、γ-シクロデキストリン(ガンマシクロデキストリン)、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンからなる群から選ばれ、さらに好ましくはγ-シクロデキストリンである。
もう一つの好適な例において、前記のシクロデキストリンはγ-シクロデキストリンである。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物は、凝血塊形成時間を30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%以上低下させる。
もう一つの好適な例において、前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物は、出血時間を50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%以上短縮させる。
もう一つの好適な例において、前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物は、失血量を50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%以上減少させる。
【0014】
本発明の第二の側面では、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の製造方法であって、
(1)立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格(CD-MOF)を提供する工程と、
(2)工程(1)における立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格を架橋させ、シクロデキストリン骨格(COF)を得る架橋工程と、
(3)工程(2)における前記のシクロデキストリン骨格にRGDで修飾し、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を得るRGD修飾工程と
を含む方法を提供する。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記工程(2)では、前記架橋は架橋剤で前記立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格におけるヒドロキシ基(-OH)を架橋させることである。
もう一つの好適な例において、前記工程(2)では、前記シクロデキストリン骨格は水相系において安定するシクロデキストリン骨格である。
もう一つの好適な例において、前記工程(3)では、工程(2)における前記のシクロデキストリン骨格の表面にRGDで修飾し、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物を得る。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記工程(2)は、さらに、
(2a)任意に、COFの立方形態を維持する工程、
(2b)任意に、金属イオンを除去する工程
を含む。
もう一つの好適な例において、前記架橋工程は、以下のサブ工程を含む:
(2a)立方体形状のシクロデキストリン-金属有機骨格を有機溶媒Aに分散させ、分散液2aを得る分散工程;
(2b)架橋反応温度Tの条件において分散液2aに架橋剤および触媒Aを入れ、反応時間t1後、分散液2bを得る架橋剤および触媒の添加工程;
(2c)任意に、分散液2bを冷却し、冷却された分散液2bを得る冷却工程;
(2d)任意に、冷却された分散液2bに、反応停止剤を入れ、分散液2dを得る反応停止工程;
(2e)任意に、分散液2dを遠心し、結晶2eを得る遠心工程;
(2f)任意に、結晶2eを洗浄し、洗浄された結晶2fを得る洗浄工程;
(2g)任意に、洗浄された結晶2fを乾燥処理する乾燥工程;
(2h)立方体形状のシクロデキストリン骨格(COF)を得る。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記分散液2aは混合懸濁液、乳濁液、懸濁液、またはコロイドである。
もう一つの好適な例において、前記分散液2bは混合懸濁液、乳濁液、懸濁液、またはコロイドである。
もう一つの好適な例において、前記分散液2dは混合懸濁液、乳濁液、懸濁液、またはコロイドである。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記架橋反応の温度Tは30~110℃、好ましくは40~100℃、より好ましくは60~90℃、最も好ましくは70~80℃である。
もう一つの好適な例において、前記架橋反応の温度Tは80℃、40℃、100℃、50℃、70℃、または60℃である。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記工程(2a)におけるシクロデキストリン-金属有機骨格と工程(2b)における架橋剤のモル比は1:1~1:20、好ましくは1:2~1:10、より好ましくは1:4~1:8である。
もう一つの好適な例において、前記工程(2a)におけるシクロデキストリン-金属有機骨格と工程(2b)における架橋剤のモル比は1:6、1:2、1:5、1:10、1:20、1:8、1:15、または1:4である。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記工程(2b)では、架橋剤および触媒を撹拌しながら入れ、撹拌速度は200~1000 rpm、好ましくは300~800 rpm、より好ましくは400~600 rpmである。
もう一つの好適な例において、前記工程(2b)では、架橋剤および触媒を撹拌しながら入れ、撹拌速度は600 rpm、200 rpm、1000 rpm、900 rpm、700 rpm、400 rpm、500 rpm、または700 rpmである。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記工程(2b)では、シクロデキストリン-金属有機骨格におけるヒドロキシ基は共役結合を介して架橋する。
もう一つの好適な例において、前記工程(2b)では、反応時間t1は4~48 h、好ましくは8~24 h、より好ましくは12~16 hである。
もう一つの好適な例において、前記工程(2b)では、反応時間t1は24 h、48 h、4 h、12 h、8 h、または16 hである。
もう一つの好適な例において、前記工程(2c)では、冷却は室温までの冷却である。
【0022】
もう一つの好適な例において、前述工程(2d)では、反応停止剤はエタノールである。
もう一つの好適な例において、前述工程(2d)では、反応停止剤は95~100%エタノールまたは70~90%エタノールである。
もう一つの好適な例において、前記工程(2e)では、遠心は3000~4500 rpmで3~15 min、好ましくは4000 rpmで5 min遠心することである。
もう一つの好適な例において、前記工程(2f)では、前記洗浄はエタノール、純水および/またはアセトンによる洗浄である。
【0023】
もう一つの好適な例において、前記COFは立方体の形態である。
もう一つの好適な例において、前記COFの粒子径は50 nm~50 μm、好ましくは50~500 nmまたは1~50 μmである。
もう一つの好適な例において、前記COFの粒子径は100~500 nmである。
もう一つの好適な例において、前記COFの粒子径は100~300 nm、好ましくは150~200 nmである。
もう一つの好適な例において、前記COFの粒子径は1~50 μm、好ましくは30~50 μm、より好ましくは10~30 μmである。
もう一つの好適な例において、前記COFの粒子径は1~5 μmである。
もう一つの好適な例において、前記COFの粒子径は200~500 nm、100~300 nm、200~400 nm、200~500 nm、1~10 μm、1~5 μm、30~50 μm、または10~30 μmである。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記RGD修飾工程は、以下のサブ工程を含む:
(3a)立方体形状のシクロデキストリン骨格(COF)およびRGDを有機溶媒Bに分散させ、分散液3aを得る分散工程;
(3b)分散液3aに触媒Bを入れ、立方体形状のシクロデキストリン骨格とRGDをカップリングさせ、反応時間がt2であるカップリング工程;
(3c)任意に、遠心工程;
(3d)任意に、洗浄工程;
(3f)任意に、乾燥工程;
(2h)立方体形状のシクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を得る。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記工程(3b)では、カップリングは立方体形状のシクロデキストリン骨格の表面のヒドロキシ基とRGDのカルボキシ基のカップリングである。
もう一つの好適な例において、前記分散液3aは均一に混合した分散液である。
もう一つの好適な例において、前記分散液3aは混合懸濁液、乳濁液、懸濁液、またはコロイドである。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記カップリング工程は加熱しながら撹拌する条件において行われる。
もう一つの好適な例において、前記撹拌の過程で、マグネチックスターラーの回転数は200~1000 rpmである。
もう一つの好適な例において、前記撹拌の過程で、マグネチックスターラーの回転数は200 rpm、400 rpm、500 rpm、600 rpm、700 rpm、900 rpm、1000 rpmである。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記加熱の温度は20~40℃、好ましくは37~38℃である。
もう一つの好適な例において、前記加熱の温度は20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、40℃である。
もう一つの好適な例において、前記反応時間t2は4~48 h、好ましくは8~24 h、より好ましくは12~20 hである。
もう一つの好適な例において、前記反応時間t2は4 h、6 h、8 h、12 h、18 h、24 h、48 hである。
【0028】
もう一つの好適な例において、前記工程(3a)では、COFとRGDのモル比は1:0.1~1:10、好ましくは1:0.2~1:5、より好ましくは1:1である。
もう一つの好適な例において、前記工程(3a)では、COFとRGDのモル比は1:1、1:2、5:1、4:1、2:1、1:3または1:5である。
もう一つの好適な例において、工程(3g)では、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)の粒子径は200~500 nm、100~300 nm、200~400 nm、200~500 nm、1~10 μm、1~5 μm、30~50 μm、または10~30 μmである。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記の架橋剤は、過酸化物、ポリイソシアネート、グリシジルエーテル、二塩基または多塩基酸類、二価または多価アルデヒド類、カルボキシ基含有化合物、エポキシド類、アクリル酸エステル類、塩化アシル類、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記過酸化物は、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、ジ-t-ブチルペルオキシド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0030】
もう一つの好適な例において、前記ポリイソシアネートは、イソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記グリシジルエーテルは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記二塩基または多塩基酸類は、クエン酸、マロン酸、コハク酸、o-フタル酸、イソフタル酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記二価または多価アルデヒド類は、グリオキサール、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記カルボキシ基含有化合物は、炭酸ジフェニル、N,N'-カルボニルジイミダゾール、N,N'-ジメチルイミダゾリン、ジシクロへキシルカルボジイミド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記エポキシドは、エピクロルヒドリン、酸化プロピレン、1,4-ジオキサン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記アクリル酸エステル類は、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記塩化アシル類は、塩化スクシニル、テトライソシアネート、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の架橋剤は炭酸ジフェニルである。
もう一つの好適な例において、前記の架橋剤はエピクロルヒドリンである。
もう一つの好適な例において、前記の触媒Aは、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、好ましくはトリエチルアミンで、
【0034】
前記の有機溶媒Aは、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタンからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の有機溶媒Aは、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0035】
もう一つの好適な例において、前記の有機溶媒Aはジメチルホルムアミドである。
もう一つの好適な例において、前記の触媒Aは、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の触媒Aはトリエチルアミンである。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記の有機溶媒Bは、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の有機溶媒Bはジメチルホルムアミドである。
もう一つの好適な例において、前記の触媒Bは、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、N-ヒドロキシスクシンイミド、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の触媒Bは4-ジメチルアミノピリジンである。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記の触媒Aは、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記の触媒Bは、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、N-ヒドロキシスクシンイミド、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の有機溶媒Aは、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、
【0038】
前記の有機溶媒Bは、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の触媒Bは、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、N-ヒドロキシスクシンイミド、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、
【0039】
前記の有機溶媒Bは、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の有機溶媒Bはジメチルホルムアミドである。
もう一つの好適な例において、前記の触媒Bは4-ジメチルアミノピリジンである。
もう一つの好適な例において、前記RGD配列は線状のRGD、GRGD、RGDS、GRGDS、環状のRGD、GRGD、RGDS、GRGDSを含み、好ましくは線状のRGD配列で、GRGD、RGDS、GRGDSを含む。
【0040】
本発明の第三の側面では、薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物であって、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は本発明の第一の側面に記載の組成物、または本発明の第二の側面に記載の方法によって製造されたもので、前記の薬物は、抗菌薬物、止血薬物、抗血栓薬物、抗感染薬物、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる組成物を提供する。
もう一つの好適な例において、前記抗菌薬物は、ナノ銀、ペニシリン、セファロチン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、リンコマイシン、バンコマイシン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記止血薬物は、トラネキサム酸、アミノヘキサン酸、ビタミンK1、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記抗血栓薬物は、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジン、シロスタゾール、チロフィバン、オザグレル、リバーロキサバン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0042】
もう一つの好適な例において、前記抗感染薬物は、スルファジアジン、セフトリアキソン、アモキシシリン、レボフロキサシン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は静脈注射(ナノオーダー)および局所投与(ミクロンオーダー)に使用可能である。
【0043】
もう一つの好適な例において、前記組成物は、さらに、以下の1つまたは複数の特徴を有する:
(1) 前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は50 nm~50 μm、好ましくは100~500 nmまたは1~5 μmである;
(2) 前記組成物の薬物担持量は1%~20%、好ましくは5%~10%である。
もう一つの好適な例において、前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は100~500 nmであるか、あるいは前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径は1~5 μmである。
もう一つの好適な例において、前記組成物の薬物担持量は2.1%~13.5%である。
もう一つの好適な例において、前記組成物の薬物担持量はより好ましくは2.7%~8.6%である。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物は粉体の様態である。
もう一つの好適な例において、前記のシクロデキストリン骨格-RGD組成物は顆粒の様態である。
もう一つの好適な例において、前記の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は、凝血塊形成時間を30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%以上低下させる。
もう一つの好適な例において、前記の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は、出血時間を50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%以上短縮させる。
もう一つの好適な例において、前記の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は、失血量を50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%以上減少させる。
【0045】
本発明の第四の側面では、活性成分の使用であって、前記活性成分は、
(i)本発明の第一の側面に記載のシクロデキストリン骨格-RGD組成物、
(ii)本発明の第三の側面に記載の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物、
(iii)シクロデキストリン骨格(COF)、
(iv)上記(i)、(ii)または(iii)の組み合わせ
からなる群から選ばれ、
前記活性成分は、
(a)薬物担持材料の製造、
(b)治療および/または診断試薬またはキットの製造、
(c)止血薬物および/または材料の製造、
(d)抗感染薬物および/または材料の製造、
(e)抗菌薬物および/または材料の製造、
(f)傷口癒合を促進する薬物および/または材料の製造、
(g)血栓を予防および/または治療する薬物または材料の製造
に使用される使用を提供する。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記治療および/または診断試薬またはキットは疾患の治療および/または診断に使用される。
もう一つの好適な例において、前記疾患は、血栓、アテローム性動脈硬化、脳卒中、腫瘍、出血、炎症、感染からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記診断試薬またはキットは医学CT造影に使用される。
もう一つの好適な例において、前記治療および/または診断試薬またはキットは抗腫瘍、止血、抗炎症、抗感染に使用される。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記の止血薬物および/または材料は、凝血塊形成時間を30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%以上低下させる。
もう一つの好適な例において、前記の止血薬物および/または材料は、出血時間を50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%以上短縮させる。
もう一つの好適な例において、前記の止血薬物および/または材料は、失血量を50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%以上減少させる。
【0048】
本発明の第五の側面では、
(1)本発明の第一の側面に記載のシクロデキストリン骨格-RGD組成物または本発明の第三の側面に記載の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物である、活性成分と
(2)薬学的に許容される担体と
を含む薬物組成物を提供する。
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物はカプセル剤、錠剤、顆粒剤である。
もう一つの好適な例において、前記の担体は、希釈剤、賦形剤、充填剤、バインダー、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、潤滑剤、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0049】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は固体剤形または液体剤形に調製され、好ましくは経口投与に適し、より好ましくは注射による投与に適する。
もう一つの好適な例において、固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を含む。
もう一つの好適な例において、液体剤形は、薬学的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップまたはチンキ剤を含む。
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物はカプセル剤、錠剤、顆粒剤、注射剤である。
【0050】
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物は、さらに、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよび2種以上の混合物からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、凝血塊形成時間を30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%以上低下させる。
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、出血時間を50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%以上短縮させる。
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、失血量を50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%以上減少させる。
【0051】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、実施例1におけるナノCD-MOFの走査電子顕微鏡画像である。
【
図2】
図2は、実施例1におけるナノCOFの走査電子顕微鏡画像である。
【
図3】
図3は、実施例1におけるナノRGD-COFの走査電子顕微鏡画像である。
【
図4】
図4は、実施例1におけるナノRGD-COFの動的光散乱粒子径分布図である。
【
図5】
図5は、実施例1におけるナノRGD-COFの物理的安定性である。■:純水、●:生理食塩水、▲:PBS pH 7.4、◆:ラット血漿。
【
図6】
図6は、実施例1におけるナノRGD-COFの細胞毒性の結果である。
【
図7】
図7は、実施例6におけるミクロンCD-MOFの走査電子顕微鏡画像である。
【
図8】
図8は、実施例6におけるミクロンCOFの走査電子顕微鏡画像である。
【
図9】
図9は、実施例6におけるミクロンRGD-COFの走査電子顕微鏡画像である。
【
図10】
図10は、実施例9における球形RGD-NSの走査電子顕微鏡画像である。
【
図11】
図11は、実施例10におけるRGD-COFの体外凝血塊形成時間の結果である。
【
図12】
図12は、実施例11においてRGD-COFは顕著にマウス断尾モデルの体内出血時間を短縮させることを示す。
【
図13】
図13は、実施例11においてRGD-COFは顕著にマウス断尾モデルの体内失血量を減少させることを示す。
【
図14】
図14は、実施例12における銀担持RGD-COFなどの時間-抗菌曲線を示す。
【
図15】
図15は、実施例12における銀担持RGD-COFなどのラットの傷口に対する癒合効果を示す。
【
図16】
図16は、実施例16においてRGD-COFは体内の腸間膜の血栓を標的し、血栓部位の活性化血小板と高度に共局在することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
具体的な実施形態
本発明者は、幅広く深く研究したところ、初めて、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)およびその製造方法を開発した。本発明の立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は、立方体形状の構造を有するシクロデキストリン骨格およびRGDを含み、マクロファージの貪食と排除を避け、損傷血管に対する遷移性と粘着性を増強させ、効率的に血管損傷部位の活性化血小板を標的として集合し、血管関連疾患(たとえば出血、血栓)の標的治療を実現させることができる。CD-MOFのサイズが制御可能という優勢を利用し、ナノオーダーおよびミクロンオーダーのCD-MOFを基礎材料とし、架橋工程およびRGD修飾工程を経て、静脈注射用(ナノオーダー)または外用(ミクロンオーダー)の新型の効率的な担体材料を得た。具体的に、本発明に係るナノオーダーの立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は静脈注射によってマウス断尾損傷モデルにおいて出血時間および失血量のいずれも90%低下させることができる。ミクロンオーダーのシクロデキストリン骨格-RGD組成物は局所の外用により、ラットの大腿動脈損傷モデルにおいて出血時間を60%短縮させ、止血効率を大幅に向上させることができる。これに基づき、本発明を完成させた。
【0054】
用語
金属有機骨格材料
金属有機骨格(metal organic frameworks、MOF)は金属(金属イオン、金属イオンクラスターまたは金属鎖)および有機架橋配位子から温和な条件において配位結合の形態で自己組織化によって形成される無機・有機ハイブリッド材料である。MOFは、非常に高い孔隙率および巨大な比表面積、ならびに無機および有機などの様々な成分の組み合わせのため、構造および組成が多様で、気体の保存、吸着および分離、触媒、薬物送達などの分野への応用に新たな研究方向を提供する。
【0055】
シクロデキストリン
シクロデキストリン(CD)はアミロースからグルコシル転移酵素の作用下で生成する一連の環状オリゴ糖の総称で、通常、6~12個のD-グルコピラン単位を含有する。中では、多く研究され、かつ重要な実際の意義があるのは、6、7、8個のグルコース単位を含有する分子で、それぞれα、βおよびγ-シクロデキストリンと呼ばれる。シクロデキストリンは今まで発見された酵素に類似する理想の宿主分子で、かつ自身が酵素モデルの特性を有する。
【0056】
シクロデキストリン-金属有機骨格
本明細書で用いられるように、用語「シクロデキストリン-金属有機骨格」、「CD-MOF」は入れ替えて使用することが可能で、シクロデキストリンを有機配位子とし、金属イオンを無機金属中心として形成される新型の安全性が高い、薬用可能な立方体形状のシクロデキストリン-金属有機骨格、すなわち、CD-MOFである。
典型的に、前記シクロデキストリン-金属有機骨格はシクロデキストリンとアルカリ金属塩からなる骨格材料で、アルカリ金属はLi+、K+、Rb+、Cs+、Na+、Mg2+、Cd2+、Sn2+、Ag+、Yb+、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Pb2+、La3+を含むが、これらに限定されず、K+が好ましい。
典型的に、前記シクロデキストリン-金属有機骨格材料の平均粒子径は50 nm~50 μm、好ましくは100~500 nm(ナノオーダー)または1~5 μm(ミクロンオーダー)である。
【0057】
典型的に、シクロデキストリン-金属有機骨格(CD-MOF)を製造する方法(特許201610125456.Xを参照する)は、金属塩溶液とシクロデキストリン水溶液を混合した後、予め一部の有機溶媒を入れ、所定の温度において、溶媒蒸気拡散方法により、所定の時間で反応させ、さらにサイズ調整剤を入れることで、前記シクロデキストリンに基づいた金属有機骨格材料を得ること、あるいは金属塩溶液とシクロデキストリン水溶液を混合し、予め一部の有機溶媒を入れ、溶媒熱/マイクロ波/超音波による反応媒体の振動により、反応物を快速に反応させ、所定の時間で反応させることで、前記シクロデキストリンに基づいた金属有機骨格材料を得ることを含む。
【0058】
典型的に、前記金属塩溶液における金属塩の濃度は0.05~0.4 M、好ましくは0.2 Mである。
典型的に、前記シクロデキストリン水溶液におけるシクロデキストリンの濃度は0.013~0.05 M、好ましくは0.025 Mである。
典型的に、前記のシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
本発明の一つの好適な実施形態において、前記のシクロデキストリンはγ-シクロデキストリンである。
本発明の一つの好適な実施形態において、前記シクロデキストリン-金属有機骨格は立方体形状である。
【0059】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記のシクロデキストリン-金属有機骨格の製造は、
(1a) 金属イオンおよびシクロデキストリンを含有する溶液である、第一混合溶液を提供する工程、
(2a) 前記の第一混合溶液に第一有機溶媒を入れ、第二混合溶液を得、
ここで、前記第一有機溶媒と前記第一混合溶液の体積比が(0.01-0.5):1、好ましくは(0.03-0.3):1、最も好ましくは(0.05-0.2):1である工程、
(3a) 前記第二混合溶液を前処理し、前処理された第一混合物を得、ここで、前記の前処理は、からなる群から選ばれる工程、
(3a1)溶媒熱揮発処理、
(3b1)溶媒熱揮発処理と、溶媒熱処理、マイクロ波処理、超音波処理、またはこれらの組み合わせを含むA群から選ばれるいずれかの処理手段との組み合わせ
(4a) 第一混合物に析出したシクロデキストリン-金属有機骨格材料が含まれる場合、前記第一混合物から分離して析出したシクロデキストリン-金属有機骨格材料を得るか、
あるいは、前記第一混合物から一部または全部の溶液を分離し、第三混合溶液とし、そして前記第三混合溶液に第二有機溶媒および/またはサイズ調整剤を入れることで、シクロデキストリン-金属有機骨格材料を析出させる工程、ならびに
(5a) 任意に、工程(4a)で析出したシクロデキストリン-金属有機骨格材料を分離および/または乾燥する工程
を含む。
【0060】
もう一つの好適な例において、工程(3a)では、前記の溶媒熱揮発処理は、
(i)混合溶液を開口容器Iに置く工程、
(ii)有機溶媒が入った開口容器IIを提供し、前記開口容器Iおよび開口容器IIを共に閉鎖系内に置く工程、ならびに
(iii)前記開口容器IIにおける有機溶媒を加熱/保温処理し、前記有機溶媒が蒸発して混合溶液に拡散するようにさせる工程
を含む。
【0061】
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、前記閉鎖系に対して全体加熱処理を行うことにより、前記開口容器IIにおける有機溶媒を加熱する。
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、前記加熱処理は水浴加熱、および油浴加熱を含む。
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、前記加熱処理の温度は25~100℃、好ましくは30~80℃、より好ましくは40~60℃である。
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、前記加熱処理の時間は4~48 h、好ましくは6~24 hである。
【0062】
シクロデキストリン骨格材料
用語「シクロデキストリン骨格材料」、「シクロデキストリン骨格」、「立方体形状のシクロデキストリン骨格」、「立方体形状シクロデキストリン骨格」、「COF」は入れ替えて使用することが可能である。
【0063】
CD-MOFにK+が含まれ、直接の静脈注射ができず、かつ水性の環境において迅速に崩壊し、標的部位に到達するまで多孔結晶構造の安定を維持することができない。CD-MOFの水中における安定性を増加させるため、今まで3つの策略のみが報告された。Furukawaらは、エチレングリコールジグリシジルエーテルでγ-CD-MOFを架橋させることによってγ-CD-MOFヒドロゲルを生成させた。しかしながら、このような架橋反応は時間がかかり、65℃で3日以上必要で、かつ未反応の不純物を除去するのに多くの工程が必要である。Liらは、γ-CD-MOFの水安定性を向上させるため、フラーレン(C60)をγ-CDの疎水キャビティに配合した。しかしながら、配位子-シクロデキストリンの弱い相互作用のため、超分子集合系は短時間内でしか構造の完全性が維持できず、水の中では24 h後に分解する。また、C60のγ-CDキャビティに対する占有もγ-CD-MOFの薬物を担持する能力を低下させることがある。上記のように、安定した多孔性CD-MOF材料の合成は未だに大きな挑戦である。
【0064】
そのため、本発明では、炭酸ジフェニル、エピクロルヒドリンなどを架橋剤として使用し、CD-MOFにおける規則正しく組織化したCDを架橋させ、水中で安定するシクロデキストリン骨格(COF)の製造に成功し、まだCD-MOFの立方体の形態を維持し、そして配位したK+を除去することができ、ナノオーダーのCD-MOFに基づいて架橋させたCOFは静脈注射用の新型ナノ担体として有用である。
【0065】
本発明の一つの好適な実施形態において、発明者は炭酸ジフェニル、エピクロルヒドリンなどを架橋剤として使用してCD-MOFにおけるCDの架橋に成功した。トリエチルアミン、ピリジンなどを触媒として使用し、簡便な合成ルートを発明し、4 h内で水中安定性が優れたCOFを合成することができる。
【0066】
本発明の一つの実施形態において、前記シクロデキストリン骨格(COF)の製造方法は以下の通りである。適量に製造されたCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、所定の体積の有機溶媒を入れ、加熱撹拌の条件において、さらに所定量の架橋剤および触媒を入れ、所定時間で反応させ、CD-MOFにおけるヒドロキシ基(-OH)を共役結合で架橋させた後、室温に冷却し、95%エタノールで反応を停止させた後、遠心して沈殿を得、50%エタノール、純水およびアセトンでそれぞれ2回洗浄した後、真空乾燥し、水中で安定するシクロデキストリン骨格(COF)を得る。
【0067】
RGD
RGD配列は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(Arg-Gly-Asp)配列である。内因性RGD配列は多くの接着タンパク質(たとえばフィブリノゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、フォン・ヴィレブランド因子)に存在し、多くの生物学的機能を発揮する。フィブリノゲンにおけるAα鎖のRGD配列と活性化血小板表面の膜糖タンパク質GPIIb/IIIa受容体の特異的結合は、血小板集合および血栓塊形成の共通経路である。RGD配列は、フィブリノゲンにおける特定の配列として、フィブリノゲンと活性化されたGPIIb/IIIa受容体が結合する活性部位である。
【0068】
本発明に係るRGD配列は、線状RGD、線状GRGD、線状RGDS、線状RGDV、線状RGDF、線状GRGDV、線状GRGDF、線状GRGDS、線状RGDDSP、線状RGDDAP、環状RGD、環状GRGD、環状RGDS、環状RGDV、環状RGDF、環状GRGDV、環状GRGDF、環状GRGDS、環状RGDDSP、環状RGDDAPを含む。
典型的に、本発明に係るRGD配列は、線状RGD配列が好ましく、線状GRGD、線状RGDS、線状RGDF、線状GRGDSを含む。
【0069】
立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物
本明細書で用いられるように、用語「立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物」、「RGDで修飾されたCOF」、「RGD-COF」、「立方体形状シクロデキストリン骨格-RGDポリペプチド組成物」は入れ替えて使用することが可能で、本発明の第一の側面に記載の立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物のことである。
【0070】
典型的に、本発明によって提供される立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の構造の特徴は、立方体結晶構造を有するシクロデキストリン-金属有機骨格材料におけるヒドロキシ基(-OH)が適切な架橋剤で共役結合され、水中で安定する立方体構造のシクロデキストリン骨格が形成し、外部は活性化剤で表面のヒドロキシ基(-OH)とRGDのカルボキシ基(-COOH)を共役結合させ、シクロデキストリン骨格に生物学的修飾を行う。立方体形状シクロデキストリン骨格を人工血小板の担体とし、RGDを標的頭部とし、活性化血小板表面のGPIIb/IIIa受容体と特異的に結合し、血管損傷部位の活性化された血小板を標的とする。RGDで修飾されたシクロデキストリン骨格材料は新型の効率的な人工血小板として、その特徴により、人工血小板の損傷血管への遷移能力が向上し、出血部位に対する標的性が向上し、そして活性化血小板との結合が促進される。
【0071】
具体的に、本発明は、COFおよびRGDからなる立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物であって、内部が立方体結晶構造を有するシクロデキストリン骨格で、表面がRGDで生物学的修飾された組成物を提供する。立方体形状シクロデキストリン骨格を担体とし、RGDを標的頭部とし、血管損傷部位の活性化された血小板の表面のGPIIb/IIIa受容体を標的とする。RGDで修飾されたCOFは新型の効率的な機能材料として、その特徴により、損傷血管への遷移能力が向上し、損傷部位に対する標的性が向上し、そして活性化血小板との結合と集合が促進される。
【0072】
本発明に係る立方体形状シクロデキストリン-RGD組成物は、既存の人工血小板の報告と異なり、Anirban Sen GuptaのチームはRGDおよびコラーゲン結合ペプチドで球形のリポソームを修飾し、構築された人工血小板を尾静脈から注射すると、マウス断尾モデルにおいてある程度の止血効果があるが、標的性および止血効果に向上の余地がある。檀英霞らはPLGA-PEGナノ粒子でRGDを担持する人工血小板PLGA-PEG-RGDを発明した。PLGA-PEG-RGDは規則正しい球形で、静脈用全身性ナノ止血材として使用可能であるが、ラット肝臓損傷モデルにおける止血効果が限られ、出血時間を30%程度しか低下させられない。
【0073】
本発明に係るナノオーダーの立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は静脈注射によってマウス断尾損傷モデルにおいて出血時間および失血量のいずれも90%低下させることができる。ミクロンオーダーのシクロデキストリン骨格-RGD組成物は局所の外用により、ラットの大腿動脈損傷モデルにおいて出血時間を60%短縮させ、止血効率を大幅に向上させることができる。
【0074】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)の製造方法は以下の通りである。適量にCOFおよびRGDを丸底フラスコに秤量し、所定の体積の有機溶媒Bを入れ、均一に混合した後、さらに適量の触媒Bおよび活性化剤を入れ、マグネチックスターラーにセットして適切な時間で加熱して撹拌し、COF表面のヒドロキシ基(-OH)とRGDのカルボキシ基(-COOH)を十分にカップリングさせる。反応完了後、それぞれ等体積の無水DMFおよび純水で2回洗浄し、凍結乾燥して立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(産物がRGD-COFと略される)を得、-20℃で凍結保存して使用に備えた。
【0075】
本発明によって提供される立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)は、効率的な標的性能を有し、静脈注射して全身性失血および血栓に使用可能で、局所投与して外傷を治療することもでき、複雑な戦争創傷、事故創傷、外科手術出血、脳卒中および腫瘍関連疾患の処置に多くの選択を提供し、応用の将来性が幅広い。
【0076】
立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の製造方法
本発明は、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の製造方法を提供する。
本発明の一つの好適な実施形態において、薬用可能なシクロデキストリンを有機連結体とし、K+を無機金属中心とし、立方体形態で、粒子径が均一のCD-MOFを製造し、架橋剤でCD-MOFのCD架橋させ、水相で安定するCOFを製造し、RGD配列のカルボキシ基(-COOH)をエステル結合の様態でCOF表面に結合し、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を形成する。本発明に係るCD-MOFは、シクロデキストリン-金属有機骨格材料を製造する方法(201610125456.X)に基づいたもので、当該方法は快速で、簡便で、サイズが調節可能で、収率が高い。
【0077】
本発明のもう一つの好適な実施形態において、前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)の製造方法は、以下の工程を含む:
(1)立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格(CD-MOF)を製造する;
(2)架橋剤で前記の立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格(CD-MOF)を架橋させ、金属イオンを除去し、立方体形態を残し、シクロデキストリン骨格(COF)を得る;
好ましくは、具体的な架橋反応の過程は、立方体形状のシクロデキストリン-金属有機骨格を有機溶媒Aに分散させ、所定の温度で撹拌する条件において架橋剤および触媒Aを入れて反応させ、シクロデキストリン-金属有機骨格におけるヒドロキシ基を共役結合で架橋させ、冷却し、エタノールで反応を停止させ、遠心、洗浄および乾燥を経て、立方体形状のシクロデキストリン骨格(COF)を得る;
(3)前記の立方体形状シクロデキストリン骨格の表面をRGDで修飾し、前記の立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を得る;好ましくは、具体的なRGD修飾過程は、立方体形状シクロデキストリン骨格およびRGDを所定の比率で有機溶媒Bに入れ、均一に混合した後、触媒Bを入れて加熱して撹拌し、立方体形状シクロデキストリン骨格の表面のヒドロキシ基とRGDのカルボキシ基を十分にカップリングさせ、反応完了後、洗浄して乾燥し、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を得る。
【0078】
薬学的に許容される担体
「薬学的に許容される担体」とは、ヒトに適用でき、かつ十分な純度および充分に低い毒性を持たなければならない、1つまたは複数の相溶性固体または液体フィラーまたはゲル物質をいう。「相溶性」とは、組成物における各成分が本発明の化合物と、またその同士の間で配合することができ、化合物の効果を顕著に低下させないことを指す。薬学的に許容される担体の例の一部として、セルロースおよびその誘導体(たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、セルロースアセテートなど)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(たとえばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(たとえば大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブオイルなど)、多価アルコール(たとえばプロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(たとえばツイーン(登録商標))、湿潤剤(たとえばドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水などがある。
【0079】
本発明の主な利点は以下の通りである。
本発明は、静脈注射用(ナノオーダー)または局所投与(ミクロンオーダー)が可能な立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)およびその製造方法を提供するが、その安全性が高く、生物的適合性が良い。血管関連疾患の標的治療に使用することができ、創傷失血、深部出血、アテローム性動脈硬化、脳卒中、血栓および腫瘍などの疾患を含み、以下の技術的利点がある。
【0080】
(1)本発明のRGD-COFは規則正しい立方体形態を有し、従来の担体の球形形態の制限を突破し、有効にマクロファージの貪食と排除を避け、損傷血管の遷移性と粘着性を増強させ、標的性および治療効率を向上させる。
(2)本発明では、RGD配列で修飾すると、立方体形状のRGD-COFは効率的に血管損傷部位の活性化血小板を標的として集合し、血管関連疾患の標的治療を実現させ、正常の血液循環系に対する影響および副作用を減少させる。
(3)本発明は十分にCD-MOFのサイズが制御可能という優勢を発揮し、ナノオーダーおよびミクロンオーダーのCD-MOFを基礎材料とし、架橋工程およびRGD修飾工程を経て、静脈注射用および/または外用が可能な新型の効率的な担体材料を得る。静脈注射による投与は複雑な条件における創傷措置に適し、全身性失血の制御および血栓類疾患に適する。ミクロンオーダーのRGD-COFは車事故、手術などの外部損傷の止血、抗炎症および抗感染の治療に有用である。
【0081】
(4)本発明におけるRGD-COFは良い安定性を有し、凍結乾燥粉末にして使用することができ、保存に有利で、野外の条件における使用に適し、たとえば装備部隊では、複雑な戦争創傷の処置能力を向上させる。
(5)本発明の製造方法は、簡単で制御可能で、高価な設備が必要ではなく、大規模生産が可能で、免疫原性を有さず、伝染性疾患が広がらない。
(6)本発明の製造方法は、簡単で、安全性が高く、生物的適応性が良く、創傷失血、臓器内出血、深部出血などの制御不能な出血および血栓類疾患の標的診断および治療に有用である。
【0082】
以下の具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookおよびRussellら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(Molecular Cloning-A Laboratory Manual)(第三版)(2001) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に断らない限り、%と部は、重量で計算された。以下、実施例で使用された実験材料および試薬は、特に説明しない限り、いずれも市販品として得られる。
【0083】
実施例1
ナノオーダーのCD-MOFの製造:溶媒熱の手段を使用し、直接γ-CDとKOH水溶液と一部の有機溶媒の混合系を加熱した。163.0 mgのγ-CDおよび56.0 mgのKOHの混合物(γ-CDとKOHのモル比が1:8である)を秤量して5 m Lの水に溶解させ、予め3 mLのメタノールを混合溶液に入れ、50℃の水浴で20 min加熱した後、溶液を取り出し、等体積のメタノールを入れ、さらに64 mgのPEG 20000を入れ、1 h静置した後、4000 rpmで5 min遠心し、それぞれエタノール(10 mL×2)、ジクロロメタン(10 mL×2)で洗浄し、得られた結晶を50℃で12 h真空乾燥し、ナノオーダーのCD-MOF結晶(CD-MOF-Nano)を得たが、得られたCD-MOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が200~500 nmであった(
図1)。
【0084】
ナノオーダーのCOFの製造:778.3 mgのナノオーダーのCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、10 mLのジメチルホルムアミドを入れ、80℃で加熱し、600 rpmで撹拌する条件において、771 mgの架橋剤である炭酸ジフェニル(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:6である)および450 μLの触媒であるトリエチルアミドを入れ、24 h反応させた後、室温に冷却し、20 mLの95%エタノールで反応を停止させた後、4000 rpmで5 min遠心し、それぞれ50%エタノール(10 mL×2)、純水(10 mL×2)およびアセトン(10 mL×2)で洗浄し、得られた結晶を50℃で12 h真空乾燥し、水中で安定するナノCOFを得たが、収率が61%で、得られたCOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が200~500 nmであった(
図2)。
【0085】
ナノオーダーのシクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)の製造:230 mgのナノオーダーのCOFおよび10 mgの線状GRGDSペンタペプチド(COFとGRGDSのモル比は1:1である)を丸底フラスコに置き、5 mLのジメチルホルムアミドを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgの4-ジメチルアミノピリジンおよび6 mgの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を入れ、マグネチックスターラーにセットして37℃、600 rpmで12 h撹拌し、COFとGRGDSポリペプチドを十分にカップリングさせた。反応完了後、4000 rpmで5 min遠心し、それぞれジメチルホルムアミド(10 mL×2)および純水(10 mL×2)で洗浄し、-50℃で12 h凍結乾燥してGRGDSで修飾されたCOFを得たが、SEM(
図3)およびDLS(
図4)の結果から、得られたRGD-COFは規則正しい立方体形態で、粒子径が200~500 nmであったことが示され、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.049であった。
【0086】
製造されたRGD-COFは純水、リン酸塩緩衝溶液(PBS、pH = 7.4)、生理食塩水およびラット血漿のいずれにおいても優れた物理的安定性があった(
図5)。MTTの結果から、RGD-COFは細胞毒性がなく、優れた生物的適応性および安全性を有することが示された(
図6)。
【0087】
実施例2
実施例1と同様にナノオーダーのCD-MOFを製造した。
ナノオーダーのCOFの製造:778.3 mgのナノオーダーのCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、10 mLのアセトニトリルを入れ、40℃で加熱し、200 rpmで撹拌する条件において、194.6 mgの架橋剤であるN,N'-カルボニルジイミダゾール(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:2である)および450 μLの触媒であるピリジンを入れ、48 h反応させた以外、実施例1と同様で、得られたCOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が100~300 nmであった。
【0088】
ナノオーダーのRGD-COFの製造:230 mgのナノオーダーのCOFおよび14 mgの線状RGD(COFとRGDのモル比は1:2である)を丸底フラスコに置き、5 mLのアセトニトリルを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgの炭酸N,N'-ジスクシンイミジルおよび6 mgの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を入れ、マグネチックスターラーにセットして20℃、200 rpmで48 h撹拌した以外、実施例1と同様で、得られたRGD-COFは規則正しい立方体形態で、粒子径が100~300 nmで、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格とRGDの質量比が1:0.08であった。
【0089】
実施例3
実施例1と同様にナノオーダーのCD-MOFを製造した。
ナノオーダーのCOFの製造:778.3 mgのナノオーダーのCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、10 mLのテトラヒドロフランを入れ、100℃で加熱し、1000 rpmで撹拌する条件において、0.5 mLの架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテル(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:5である)および5 mgの触媒であるN-ヒドロキシスクシンイミドを入れ、4 h反応させた以外、実施例1と同様で、SEMおよびDLSの結果から、得られたCOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が200~400 nmであったことが示された。
【0090】
ナノオーダーのRGD-COFの製造:230 mgのナノオーダーのCOFおよび3 mgの環状GRGDポリペプチド(COFと環状GRGDのモル比は5:1である)を丸底フラスコに置き、5 mLのメタノールを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgのN-ヒドロキシスクシンイミドおよび6 mgの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を入れ、マグネチックスターラーにセットして40℃、1000 rpmで4 h撹拌した以外、実施例1と同様で、SEMおよびDLSの結果から、得られたRGD-COFは規則正しい立方体形態で、粒子径が200~400 nmであったことが示され、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.005であった。
【0091】
実施例4
実施例1と同様にナノオーダーのCD-MOFを製造した。
ナノオーダーのCOFの製造:778.3 mgのナノオーダーのCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、10 mLのアセトンを入れ、50℃で加熱し、900 rpmで撹拌する条件において、0.6 mLの架橋剤であるグルタルアルデヒド(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:10である)および5 mgの触媒であるピリジンを入れ、12 h反応させた以外、実施例1と同様で、SEMおよびDLSの結果から、得られたCOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が200~500 nmであったことが示された。
【0092】
ナノオーダーのRGD-COFの製造:200 mgのナノオーダーのCOFおよび3 mgの環状RGDS(COFと環状RGDSのモル比は4:1である)を丸底フラスコに置き、5 mLのアセトンを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgのN-ヒドロキシスクシンイミドおよび6 mgの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を入れ、マグネチックスターラーにセットして40℃、900 rpmで6 h撹拌した以外、実施例1と同様で、得られたRGD-COFは規則正しい立方体形態で、サイズが200~500 nmで、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.015であった。
【0093】
実施例5
ミクロンオーダーのCD-MOFの製造:溶媒熱の手段を使用し、直接γ-CDとKOH水溶液と一部の有機溶媒の混合系を加熱した。163.0 mgのγ-CDおよび56.0 mgのKOHの混合物(γ-CDとKOHのモル比が1:8である)を秤量して5 m Lの水に溶解させ、予め3 mLのメタノールを混合溶液に入れ、50℃の水浴で20 min加熱した後、溶液を取り出し、さらに64 mgのPEG 2000を入れ、半時間静置した後、4000 rpmで5 min遠心し、それぞれエタノール(10 mL×2)、ジクロロメタン(10 mL×2)で洗浄し、得られた結晶を50℃で12 h真空乾燥し、ミクロンオーダーのCD-MOF結晶を得たが、SEMおよびDLSの結果から、得られたCD-MOFは規則正しい立方体形態で、サイズが1~10 μmであったことが示された。
【0094】
ミクロンオーダーのCOFの製造:778.3 mgのミクロンオーダーのCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、10 mLの酢酸エチルを入れ、70℃で加熱し、700 rpmで撹拌する条件において、0.9 mLの架橋剤であるエピクロルヒドリン(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:20である)および5 mgの触媒である4-ジメチルアミノピリジンを入れ、16 h反応させた以外、実施例1と同様で、得られたCOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が1~10 μmであった。
【0095】
ミクロンオーダーのRGD-COFの製造:230 mgのミクロンオーダーのCOFおよび4 mgのRGDS(COFとRGDSのモル比は2:1である)を丸底フラスコに置き、6 mLのn-ヘキサンを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgの4-ジメチルアミノピリジンおよび0.2 mLのトリエチルアミンを入れ、マグネチックスターラーにセットして25℃、700 rpmで24 h撹拌した以外、実施例1と同様で、ミクロンオーダーの立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物RGD-COFを得たが、SEMおよびDLSの結果から、得られたRGD-COFは規則正しい立方体形態で、サイズが1~10 μmであっとことが示され、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.05であった。
【0096】
実施例6
実施例5と同様にミクロンオーダーのCD-MOFを製造したが、粒子径が1~5 μmであった(
図7)。
ミクロンオーダーのCOFの製造:778.3 mgのミクロンオーダーのCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、10 mLのアセトンを入れ、50℃で加熱し、400 rpmで撹拌する条件において、0.7 mLの架橋剤であるトリレンジイソシアネート(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:8である)および450 μLの触媒である1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドを入れ、8 h反応させた以外、実施例1と同様で、得られたCOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が1~5 μmであった(
図8)。
【0097】
ミクロンオーダーのRGD-COFの製造:230 mgのミクロンオーダーのCOFおよび18.5 mgの環状RGDポリペプチド(COFと環状RGDSのモル比は1:2である)を丸底フラスコに置き、6 mLのイソプロパノールを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgの4-ジメチルアミノピリジンおよび6 mgのN-ヒドロキシスクシンイミドを入れ、マグネチックスターラーにセットして35℃、400 rpmで8 h撹拌した以外、実施例1と同様で、得られたRGD-COFは規則正しい立方体形態で、サイズが1~5 μmで(
図9)、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.016であった。
【0098】
実施例7
実施例5と同様にミクロンオーダーのCD-MOFを製造した。
ミクロンオーダーのCOFの製造:778.3 mgのミクロンオーダーのCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、10 mLのイソプロパノールを入れ、60℃で加熱し、500 rpmで撹拌する条件において、1729 mgの架橋剤であるクエン酸(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:15である)および450 μLの触媒であるピリジンを入れ、16 h反応させた以外、実施例1と同様で、得られたCOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が30~50 μmであった。
【0099】
ミクロンオーダーのRGD-COFの製造:230 mgのミクロンオーダーのCOFおよび30 mgのGRGDSペンタペプチド(COFと環状GRGDSのモル比は1:3である)を丸底フラスコに置き、6 mLのn-ヘキサンを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgの4-ジメチルアミノピリジンおよび6 mgの炭酸N,N'-ジスクシンイミジルを入れ、マグネチックスターラーにセットして30℃、500 rpmで24 h撹拌した以外、実施例1と同様で、得られたRGD-COFは規則正しい立方体形態で、サイズが30~50 μmで、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.065であった。
【0100】
実施例8
実施例5と同様にミクロンオーダーのCD-MOFを製造した。
ミクロンオーダーのCOFの製造:778.3 mgのミクロンオーダーのCD-MOF粉末を丸底フラスコに秤量し、マグネチックスターラーに固定し、10 mLのクロロホルムを入れ、70℃で加熱し、700 rpmで撹拌する条件において、403 mgの架橋剤である塩化スクシニル(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:4である)および450 μLの触媒であるピリジンを入れ、16 h反応させた以外、実施例1と同様で、得られたCOFは規則正しい立方体形態で、粒子径が10~30 μmであった。
【0101】
ミクロンオーダーのRGD-COFの製造:230 mgのミクロンオーダーのCOFおよび25 mgの環状GRGD(COFと環状GRGDのモル比は1:5である)を丸底フラスコに置き、6 mLのクロロホルムを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgの4-ジメチルアミノピリジンおよび6 mgのN-ヒドロキシスクシンイミドを入れ、マグネチックスターラーにセットして37℃、700 rpmで18 h撹拌した以外、実施例1と同様で、SEMおよびDLSの結果から、得られたRGD-COFは規則正しい立方体形態で、粒子径が10~30 μmであったことが示され、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.46であった。
【0102】
実施例9
GRGDSで修飾された球形のシクロデキストリンナノスポンジ(RGD-NS)の製造(比較実施例)
(1)球形のシクロデキストリンナノスポンジの製造:3.891 gのγ-CD (3.000 mmol)を超音波で20 mLの0.1 M水酸化カリウム水溶液に溶解させ、0.8 μmろ膜でろ過し、水相を得て使用に備えた。1.297 g (8.00 mmol)のN,N'-カルボニルジイミダゾールを20 mLのジクロロメタンに溶解させ、有機相を得た。連続して磁気で撹拌しながら(600 rpm)、γ-CD水酸化カリウム水溶液を有機相に滴下した。30 min反応させた後、それぞれ脱イオン水および無水エタノールで沈殿物をそれぞれ2回洗浄し、毎回4000 rpmで5min遠心し、沈殿を収集した。凍結乾燥し、球形のシクロデキストリンナノスポンジ(CD-NS)を得たが、得られたCD-NSは球形で、粒子径が200~500 nmであった。
【0103】
(2)GRGDSによるシクロデキストリンナノスポンジの修飾:230 mgの球形のCD-NSおよび10 mgのGRGDSペンタペプチド(CD-NSとGRGDSのモル比は1:1である)を丸底フラスコに置き、5 mLのジメチルホルムアミドを入れ、均一に撹拌した後、さらに5 mgの4-ジメチルアミノピリジンおよび6 mgの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を入れ、マグネチックスターラーにセットして37℃、600 rpmで24 h撹拌し、CD-NSとGRGDSポリペプチドを十分にカップリングさせた。反応完了後、4000 rpmで5 min遠心し、それぞれジメチルホルムアミド(10 mL×2)および純水(10 mL×2)で洗浄し、-50℃で12 h凍結乾燥してGRGDSで修飾されたCD-NS(産物はRGD-NSと略される)を得たが、SEMおよびDLSの結果から、得られたGS5-NSは球形で、粒子径が200~500 nmであったことが示され(
図10)、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.052であった。
【0104】
実施例10
RGD-COFの体外凝血性能の検出
体外凝血塊形成時間を測定することにより、止血材料の体外凝血性能を評価することができる。健康なラットの3.2%クエン酸ナトリウムで抗凝集された新鮮な全血を適量にきれいな試験管に取り、80 μLのCaCl2(0.1 M)を入れてCa2+の最終濃度が10 mMになるようにした後、サンプル溶液または生理食塩水を入れ、反応系の最終体積を800 μLとし、500 rpm/minで10 sボルテックスした。それぞれ生理食塩水対照群(ブランク対照)、RGD-COF群(20、50、100 μg/mL)、COF群(100 μg/mL)およびRGD-NS群(100 μg/mL)を設けた。すぐに60 μLの上記処理された全血を96ウェルプレートに移し、各サンプルはそれぞれ12ウェルに接種した。30 sおきに、生理食塩水でサンプルウェルを洗浄し、洗浄液が無色になるまで、可溶性の血液成分を除去し、当該ウェルの凝血反応を阻止したが、可溶性の血液成分が既に徹底的に排除されたことが示された。凝血塊がウェルの底部全体を覆い、かつ後で洗浄時に凝血塊の大きさが変わらなかった場合、既に安定した凝血塊が形成したと見なし、当該時間が体外凝血塊形成時間となる。
【0105】
体外凝血塊形成時間の結果は
図11に示すように、RGD-COFは顕著にラット全血の体外における凝血時間を短縮させ、かつ投与量依存性がある。健康なラットの全血の体外における凝血塊形成時間は平均で5.5 minで、実施例1で製造されたCOFのブランク担体群の平均凝血塊形成時間は5.4 minで、COF担体自身は凝血過程に影響がないことが示された。実施例1で製造された立方体形状RGD-COFの低(20 μg/mL)、中(50 μg/mL)、高投与量群(100 μg/mL)では、それぞれ凝血塊形成時間が39%、52%および68%低下したが、実施例9で製造された球形RGD-NSは凝血塊形成時間が29%しか低下せず、体外止血作用が立方体形状のRGD-COFに到底及ばない。
【0106】
実施例2で製造されたRGD-COFの低、中、高投与量群では、それぞれ凝血塊形成時間が32%、49%および61%低下した。
実施例3で製造されたRGD-COFの低、中、高投与量群では、それぞれ凝血塊形成時間が36%、55%および69%低下した。
実施例6で製造されたRGD-COFの低、中、高投与量群では、それぞれ凝血塊形成時間が37%、48%および65%低下した。
【0107】
実施例11
RGD-COFの体内止血効果の評価:ナノオーダーの静脈注射用RGD-COF止血薬は、生理食塩水で分散させてから静脈注射する必要があり、静脈注射用ナノオーダーのRGD-COF止血薬の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)実施例1、実施例2、実施例3および実施例4の方法に従って立方体形状RGD-COFナノ顆粒を、実施例9に従って球形のRGD-NSナノ顆粒を製造した。
(2)ナノ顆粒の分散:生理食塩水でナノ顆粒を懸濁させ(1~10 mg/mL、好ましくは2 mg/mL)、ナノ顆粒分散液を得た。
【0108】
マウス断尾モデルでRGD-COFナノ顆粒の体内止血能力を評価した。健康な昆明マウスを50匹取り、ランダムに5つの群に10匹ずつ分けた。それぞれブランク対照群(断尾損傷処理のみで、
図12および
図13における「損傷処理」に該当する)、生理食塩水群、COF群、RGD-NS群、RGD-COF低投与量群(20 mg/kg、すなわち、
図12および
図13における20 mg/kg)およびRGD-COF高投与量群(40 mg/kg、すなわち、
図12および
図13における40 mg/kg)を設けた。投与形態は尾静脈注射で、単回の投与で、投与量は20~40 mg/kg体重で、投与体積は10 mL/kgであった。投与後5 minで、鋭い鋏で小鼠の尾先端から0. 5 cmで快速に切断し、血液が自ら出ると計時を始め、切断箇所から血液が出ない(血が見えなくなる)まで、20 sおきに吸水紙で尾部の切断箇所に軽く触れ、その時間を出血時間と記録した。Image Pro Plusソフトによって吸水紙における血滴面積を計算し、それでマウスの失血量を推算した。
【0109】
体内止血実験の結果から、RGD-COFは顕著にマウスの出血時間を短縮させ、そして大幅にマウスの出血量を減らし、優れた体内止血効果を有することが示された。
図12および
図13に示すように、生理食塩水群またはCOF担体群と比べ、実施例1で製造されたRGD-COFの低投与量群(20 mg/kg)は出血時間が400 sから150 sに、62.5%短縮し、失血量が2 mL/kgから0.6 mL/kgに、70%減少した。実施例1で製造されたRGD-COFの高投与量群(40 mg/kg)は出血時間が400 sから40 sに、90%短縮し、失血量が0.2 mL/kgに、90%減少した。
【0110】
実施例2で製造されたRGD-COFの低投与量群(20 mg/kg)は出血時間が400 sから155 sに、61%短縮し、失血量が2 mL/kgから0.8 mL/kgに、60%減少した。実施例2で製造されたRGD-COFの高投与量群(40 mg/kg)は出血時間が400 sから50 sに、87.5%短縮し、失血量が0.12 mL/kgに、94%減少した。しかし、実施例9で製造された球形RGD-NSは出血時間が23%だけ短縮し、そして失血量が低下しなかった。そのため、立方体形状のRGD-COFは球形のRGD-NSよりも効率的な体内止血効果を有する。
実施例3で製造されたRGD-COFの高投与量群は出血時間が400 sから52 sに、87%短縮し、失血量が0.15 mL/kgに、92.5%減少した。
実施例4で製造されたRGD-COFの高投与量群は出血時間が400 sから47 sに、88.2%短縮し、失血量が0.17 mL/kgに、91.5%減少した。
【0111】
実施例12
実施例6と同様にミクロンオーダーのCD-MOFを製造した。
CD-MOFの銀担持:169 mgの硝酸銀を秤量し、アセトニトリルで100 mLメスフラスコ内において容量を一定にし、10 mmol/Lの硝酸銀溶液を調製した。ミクロンオーダーのCD-MOFをEPチューブに600 mg秤量し、1.5 mLのアセトニトリルを入れて混合した後、超音波で10 min処理し、さらに5 mLの10mmol/Lの硝酸銀溶液を入れ、光を避けた所に72 h置いた後、アセトニトリル(10 mL)で3回洗浄し、4000 rpmで5 min遠心し、真空乾燥機に入れて40℃で12 h乾燥した。
【0112】
ナノオーダーの銀担持COF:80℃で真空乾燥されたミクロンオーダーの銀担持CD-MOF粉末を丸底フラスコに1 g秤量し、マグネチックスターラーに固定し、12.85 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを入れ、80℃で加熱し、500 rpmで撹拌し、反応液の温度が60℃に達すると、0.99 gの架橋剤である炭酸ジフェニル(CD-MOFと架橋剤のモル比は1:6である)および0.5 mLの触媒であるトリエチルアミドを入れ、24 h反応させた後、4000 rpmで5 min遠心し、それぞれエタノール(10 mL)、純水(10 mL)、アセトン(10 mL)で2回洗浄し、真空乾燥機において60℃で6 h乾燥した。得られたミクロンオーダーの銀担持COFは規則正しい立方体形態で、粒子径が1~5 μmであった。
【0113】
銀担持RGD-COF:1 gのミクロンオーダーの銀担持COFおよび21.7 mgの4-ジメチルアミノピリジンを秤量して丸底フラスコに置き、21.7 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを入れ、均一に撹拌した後、21.7 mgの線状GRGDS、13.36 mgのカルボジイミドおよび86.95 μLのトリエチルアミドを入れ、マグネチックスターラーにセットして37℃、500 rpmで24 h撹拌し、4000 rpmで5 min遠心し、それぞれN,N-ジメチルホルムアミド(10 mL)、エタノール(10 mL)、純水(10 mL)、アセトン(10 mL)で1回洗浄し、得られた結晶を60℃で6 h乾燥した。得られた銀担持RGD-COFは規則正しい立方体形態で、粒子径が1~5 μmで、HPLC法によって測定されたシクロデキストリン骨格材料とRGDの質量比が1:0.015であった。
【0114】
抗菌効果:銀担持CD-MOF、銀担持COF、銀担持RGD-COFの大腸菌CMCC(B)44102に対するMIC値はいずれも16 μg/mLで、市販製剤(BANGERJIE(登録商標))と比べ、抗菌効果がいずれも市販製剤(128 μg/mL)より良かった。時間-殺菌曲線(
図14)からわかるように、Agの濃度が4 μg/mL~16 μg/mLの場合、ナノ銀の大腸菌CMCC(B)44102に対する殺菌作用が弱く、Ag濃度が16 μg/mLを超えて高くなると殺菌作用が明らかに増強し、1.0 MBC(32 μg/mL)のナノ銀は6~8 h内で好適に菌の生長を抑制するができる。銀担持CD-MOF、銀担持COF、銀担持RGD-COFの黄色ブドウ球菌CMCC(B)26112に対するMIC値はいずれも128 μg/mLで、抗菌効果が市販製剤(128 μg/mL)に相当する。
【0115】
傷口癒合効果(
図15):市販ナノ銀製剤(対照群)と比べ、銀担持RGD-COFは顕著にラット表皮の傷口癒合の速度を加速させ、同時に銀担持CD-MOFは銀担持COF群と比べ、銀担持RGD-COFのほうがラット表皮の傷口に対する癒合効果が良かった。
【0116】
実施例13
RGD-COFの抗血栓薬の担持:それぞれ適量のアスピリン、塩酸チクロピジン、シロスタゾール、硫酸水素クロピドグレルII型、リバーロキサバン、塩酸オザグレル、塩酸チロフィバンといった7つの抗血栓薬物を秤量し、30 mLの無水エタノールを入れて超音波で10 min溶解させた後、それぞれ500 mgの実施例1で製造されたRGD-COFを入れ、薬物とRGD-COFのモル比は2:1で、室温において300 rpmで24 h撹拌し、インキュベートして薬物を担持させた。薬物の担持が完了した後、400 rpmで5 min遠心し、下層薬物担持RGD-COFを得たが、HPLC法によって測定された薬物担持量を表1に示す。
【0117】
【0118】
実施例14
RGD-COFの止血薬の担持:それぞれ適量のトラネキサム酸、アミノヘキサン酸、ビタミンK1といった3つの止血薬物を秤量し、30 mLの無水エタノールを入れて超音波で10 min溶解させた後、それぞれ500 mgの実施例1で製造されたRGD-COFを入れ、薬物とRGD-COFのモル比は2:1で、37℃において400 rpmで12 h撹拌し、インキュベートして薬物を担持させた。薬物の担持が完了した後、400 rpmで5 min遠心し、下層薬物担持RGD-COFを得たが、HPLC法によって測定された薬物担持量はそれぞれ13.5%、4.3%および2.1%であった。
【0119】
実施例15
RGD-COFの抗感染薬の担持:それぞれ適量のスルファジアジン、セフトリアキソン、アモキシシリン、レボフロキサシンといった4つの抗感染薬物を秤量し、30 mLの無水エタノールを入れて超音波で10 min溶解させた後、それぞれ500 mgの実施例1で製造されたRGD-COFを入れ、薬物とRGD-COFのモル比は1:1で、室温において200 rpmで48 h撹拌し、インキュベートして薬物を担持させた。薬物の担持が完了した後、400 rpmで5 min遠心し、下層薬物担持RGD-COFを得たが、HPLC法によって測定された薬物担持量はそれぞれ3.8%、3.3%、4.6%および6.7%であった。
【0120】
実施例16
RGD-COFの体内血栓へのターゲティング:FeCl
3でマウス腸間膜血栓を誘導し、そして予め注射されたローダミンBで血栓部位の活性化血小板を標識し、血栓が形成すると、尾静脈から赤色Cy5蛍光で標識された実施例3で製造されたRGD-COF (40 mg/kg)を注射し、蛍光顕微鏡において、赤色Cy5蛍光で標識されたRGD-COFは腸間膜血栓を標的として集合させたことが観察され、RGD-COFナノ粒子と血栓における活性化血小板の共局在係数が0.65と高く、未修飾のCOFおよび球形RGD-NS群よりも遥かに高く(
図16)、立方体形状のRGD-COFは高度に体内血栓をターゲティングすることができることが示された。
【0121】
実施例17
RGD-COFの体内出血部位へのターゲティング:マウス断尾モデルで実施例2で製造されたRGD-COFの体内出血部位に対する標的性を評価した。昆明マウスに尾静脈からCy5蛍光で標識されたCOF、RGD-NSおよびRGD-COFナノ粒子(40 mg/kg)を注射して5 min後、鋭い鋏で小鼠の尾先端から0. 5 cmで快速に切断し、マウス断尾モデルを構築した。断尾損傷から10 min後、断尾箇所の出血が止まると、1回目の切口から1 cmの箇所でマウスの尻尾を切断し、長さ1 cmのマウス尻尾サンプルを取り、小動物生体イメージング装置によって断尾箇所に集合したRGD-COFの蛍光信号を測定した。RGD-COFが出血部位に集合する活性化血小板を標的とするため、RGD-COF群では、断尾箇所の蛍光信号はCOF群の4倍で、RGD-NS群の3倍で、立方体形状RGD-COFは高度に断尾出血部位をターゲティングして集合することができ、球形RGD-NSよりも優れた体内標的性を有することが示された。
【0122】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン骨格-RGD組成物であって、
シクロデキストリン骨格とRGDの質量比が、1:0.001~1:1、好ましくは1:0.005~1:0.5であり、
前記シクロデキストリン骨格-RGD組成物の粒子径が、10 nm~50 μm、好ましくは50 nm~50 μm、より好ましくは100~500 nmまたは1~5 μmである
ことを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
前記組成物が、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シクロデキストリン骨格-RGD組成物におけるシクロデキストリン骨格とRGDの質量比が、1:0.001~1:1、好ましくは1:0.005~1:0.5、より好ましくは1:0.04~1:0.5である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記RGDが、RGD、GRGD、RGDS、RGDV、RGDF、GRGDV、GRGDF、GRGDS、RGDDSP、RGDDAP、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記シクロデキストリンが、α-シクロデキストリン(アルファシクロデキストリン)、β-シクロデキストリン(ベータシクロデキストリン)、γ-シクロデキストリン(ガンマシクロデキストリン)、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物の製造方法であって、
(1)立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格(CD-MOF)を提供する工程と、
(2)工程(1)における立方体形状シクロデキストリン-金属有機骨格を架橋させ、シクロデキストリン骨格(COF)を得る架橋工程と、
(3)工程(2)における前記シクロデキストリン骨格にRGDで修飾し、立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を得るRGD修飾工程と
を含むことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項7】
前記架橋工程が、以下のサブ工程:
(2a)立方体形状のシクロデキストリン-金属有機骨格を有機溶媒Aに分散させ、分散液2aを得る分散工程;
(2b)架橋反応温度Tの条件において分散液2aに架橋剤および触媒Aを入れ、反応時間t1後、分散液2bを得る架橋剤および触媒の添加工程;
(2c)任意に、分散液2bを冷却し、冷却された分散液2bを得る冷却工程;
(2d)任意に、冷却された分散液2bに、反応停止剤を入れ、分散液2dを得る反応停止工程;
(2e)任意に、分散液2dを遠心し、結晶2eを得る遠心工程;
(2f)任意に、結晶2eを洗浄し、洗浄された結晶2fを得る洗浄工程;
(2g)任意に、洗浄された結晶2fを乾燥処理する乾燥工程;
(2h)立方体形状のシクロデキストリン骨格(COF)を得る、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記RGD修飾工程が、以下のサブ工程:
(3a)立方体形状のシクロデキストリン骨格(COF)およびRGDを有機溶媒Bに分散させ、分散液3aを得る分散工程;
(3b)分散液3aに触媒Bを入れ、立方体形状のシクロデキストリン骨格とRGDをカップリングさせ、反応時間がt2であるカップリング工程;
(3c)任意に、遠心工程;
(3d)任意に、洗浄工程;
(3f)任意に、乾燥工程;
(3g)立方体形状のシクロデキストリン骨格-RGD組成物(RGD-COF)を得る、
を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記架橋剤が、過酸化物、ポリイソシアネート、グリシジルエーテル、二塩基または多塩基酸類、二価または多価アルデヒド類、カルボキシ基含有化合物、エポキシド類、アクリル酸エステル類、塩化アシル類、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記触媒Aが、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、好ましくはトリエチルアミンであり、
前記有機溶媒Aが、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタンからなる群から選ばれる
ことを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒Bが、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドまたはその塩、N-ヒドロキシスクシンイミド、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル、ピリジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、
前記有機溶媒Bが、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、クロロホルム、n-ヘキサン、エタノール、ジクロロメタン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる
ことを特徴とする、請求項6~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物であって、
前記立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物は請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物、または請求項6に記載の製造方法によって製造されたものであり、
前記薬物は、抗菌薬物、止血薬物、抗血栓薬物、抗感染薬物、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる
ことを特徴とする、前記組成物。
【請求項13】
静脈注射(ナノオーダー)および局所投与(ミクロンオーダー)に用いるための、請求項12に記載の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物。
【請求項14】
活性成分の使用であって、
前記活性成分は、
(i)請求項1~5のいずれか一項に記載のシクロデキストリン骨格-RGD組成物、
(ii)請求項12に記載の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物、
(iii)シクロデキストリン骨格(COF)、
(iv)上記(i)、(ii)または(iii)の組み合わせ
からなる群から選ばれ、
前記活性成分は、
(a)薬物担持材料の製造、
(b)治療および/または診断試薬またはキットの製造、
(c)止血薬物および/または材料の製造、
(d)抗感染薬物および/または材料の製造、
(e)抗菌薬物および/または材料の製造、
(f)傷口癒合を促進する薬物および/または材料の製造、
(g)血栓を予防および/または治療する薬物または材料の製造
に使用される
ことを特徴とする、前記使用。
【請求項15】
(1)請求項1~5のいずれか一項に記載のシクロデキストリン骨格-RGD組成物または請求項12に記載の薬物を担持する立方体形状シクロデキストリン骨格-RGD組成物である、活性成分と、
(2)薬学的に許容される担体と
を含むことを特徴とする、薬物組成物。
【国際調査報告】