(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】ガラスセラミック物品、組成物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 10/14 20060101AFI20220414BHJP
C03C 10/04 20060101ALI20220414BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C03C10/14
C03C10/04
H05K1/03 610D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542418
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 US2020014553
(87)【国際公開番号】W WO2020159766
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コンテ,マリー ジャクリーヌ モニーク
(72)【発明者】
【氏名】デュッタ,インドラジット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジエン-ジー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB01
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD01
4G062DD02
4G062DD03
4G062DE02
4G062DE03
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB01
4G062EC01
4G062ED03
4G062ED04
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
4G062EG01
4G062EG02
4G062EG03
4G062FA01
4G062FB03
4G062FC03
4G062FD01
4G062FE01
4G062FE02
4G062FE03
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FK01
4G062FK02
4G062FK03
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062GE02
4G062GE03
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ04
4G062JJ05
4G062JJ06
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM27
4G062MM28
4G062NN01
4G062NN29
4G062NN33
4G062QQ02
4G062QQ20
(57)【要約】
ガラスセラミック組成物を有する物品を含むガラスセラミック物品であって、該組成物は、約45%~約65%のSiO2、約14%~約28%のAl2O3、約2%~約4%のTiO2、約3%~約4.5%のZrO2、約4.5%~約12%のMgO、及び約0.1~約4%のZnOを含む(酸化物の重量による)。該物品は、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、約20×10-7K-1から約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を含みうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミック物品であって、
ガラスセラミック組成物を有する物品を含み、前記組成物が、
約45%~約65%のSiO
2、
約14%~約28%のAl
2O
3、
約2%~約4%のTiO
2、
約3%~約4.5%のZrO
2、
約4.5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含み(酸化物の重量による)、
前記物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、約20×10
-7K
-1~約160×10
-7K
-1の熱膨張係数(CTE)を含む、
ガラスセラミック物品。
【請求項2】
前記物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端と上端との間の中間値を含む、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によって特徴づけられ、さらに、前記下端が約20×10
-7K
-1~約30×10
-7K
-1であり、前記上端が約55×10
-7K
-1~約160×10
-7K
-1である、請求項1に記載のガラスセラミック物品。
【請求項3】
前記物品が、
約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率;及び
約80GPa~約140GPaの弾性率
のうちの少なくとも一方をさらに含む、請求項1又は2に記載のガラスセラミック物品。
【請求項4】
前記組成物が、SnO
2、CaO、BaO、P
2O
5、B
2O
3、及びアルカリ金属酸化物からなる群より選択された1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1又は2に記載のガラスセラミック物品。
【請求項5】
前記物品が、β-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方によってさらに特徴づけられる、請求項1に記載のガラスセラミック物品。
【請求項6】
前記物品が、約0.3:1の下端及び約74:0の上端によって規定される、前記α-石英結晶相の前記β-石英結晶相に対する比の範囲によって特徴づけられる、請求項5に記載のガラスセラミック物品。
【請求項7】
前記物品が、スピネル結晶相及び亜鉛スピネル結晶相のうちの少なくとも一方を含む少なくとも1つの追加の結晶相によってさらに特徴づけられ、さらに、前記少なくとも1つの追加の結晶相が、約8%~約21%(酸化物の重量による)存在する、請求項5又は6に記載のガラスセラミック物品。
【請求項8】
前記β-石英結晶相及びα-石英結晶相の各々が、アルミニウムのケイ素に対する比を含み、前記β-石英結晶相における比が前記α-石英結晶相における比より大きい、請求項5又は6に記載のガラスセラミック物品。
【請求項9】
前記組成物が実質的にアルカリ金属を含まない、請求項1又は2に記載のガラスセラミック物品。
【請求項10】
電子機器であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品を含む基板
を備えた、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2019年1月28日出願の米国仮特許出願第62/797,590号に対する優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ガラスセラミック物品、組成物、及びその製造方法に関し、特に、調整可能な熱膨張係数(CTE)を有する半導体デバイス用のガラスセラミック基板及びキャリアに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体パッケージ産業は、処理工程及び所望される最終製品の特性に応じて、チップ製造プロセス中にさまざまな材料を利用する。チップは、例えば、金属接続、エポキシ成形用コンパウンド、及びはんだ付けを施すための熱機械的工程及びリソグラフィ工程を含む処理工程のために、キャリア基板上に配置されうる。ポリマー材料は、一部のパッケージングプロセス用のキャリア基板として使用することができるが、高温での一部のポリマー材料の構造的不安定性により、より高い処理温度を必要とするパッケージングプロセスでのポリマー材料の使用が制限される。
【0004】
ガラスセラミック材料は、高温を必要とするプロセスを含む多くのチップパッケージングプロセスに適した熱膨張係数(CTE)を伴って形成することができる。しかしながら、パッケージングプロセスのパラメータの変動により、結果的に、特定のCTE要件を満たすためにカスタマイズされたガラスセラミック材料が必要となる。例えば、パッケージング中の工程内応力及び反りを低減するために、最小のCTEが必要となる場合がある。CTEの要件に加えて、ガラスセラミック材料は、弾性率、基板の厚さ、及び透明度に関連する要件も満たす必要があり、これらの要件は、製品及びパッケージングプロセスによって異なりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、これらの課題に対処することができるガラスセラミック物品及び組成物、並びにこれらの物品及び組成物を製造する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、ガラスセラミック物品は、ガラスセラミック組成物を有する物品を含み、該組成物は、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約4.5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含む(酸化物の重量による)。該物品は、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を含みうる。
【0007】
本開示の別の態様によれば、ガラスセラミック物品は、ガラスセラミック組成物を有する物品を含み、該組成物は、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約4.5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含む(酸化物の重量による)。該物品は、β-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方をさらに含みうる。
【0008】
本開示の別の態様によれば、ガラスセラミック物品を製造する方法が提供される。該方法は、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約4.5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含む(酸化物の重量による)組成を有するガラスセラミック前駆体を形成する工程を含む。該方法は、ガラスセラミック前駆体を加熱してガラスセラミック物品を形成する工程をさらに含む。該物品は、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を含みうる。
【0009】
本開示の別の態様によれば、ガラスセラミック物品を製造する方法が提供される。該方法は、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約4.5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含む(酸化物の重量による)組成を有するガラスセラミック前駆体を形成する工程を含む。該方法は、ガラスセラミック前駆体を加熱してガラスセラミック物品を形成する工程をさらに含む。該物品は、β-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方を含みうる。
【0010】
追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者に容易に明らかとなり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含めた本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されよう。
【0011】
前述の概要及び後述する詳細な説明はいずれも、単なる例示であり、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を例証しており、その説明とともに、さまざまな実施形態の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一態様による、ガラスセラミック物品を形成する方法を示すフローチャート
【
図2】本開示の態様による、4つのガラスセラミック物品についての熱処理時間に対する熱膨張係数(CTE)値のプロット
【
図3】本開示の態様による、加熱プロセスの熱処理段階で異なる期間処理されたガラスセラミック物品の温度に対するガラスセラミック物品の長さの変化のプロット
【
図4】処理されていない未焼成ガラス試料と、本開示の態様による、本開示の加熱プロセスに従って処理されたガラスセラミック物品との透明性を示す一連の写真
【
図5】本開示の態様による、ガラスセラミック物品の電磁放射の波長に対するパーセント透過率のプロット
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより、その例が添付の図面に例証されている、本発明の好ましい実施形態について、詳細に参照する。本発明の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、説明から当業者には明らかであるか、あるいは特許請求の範囲及び添付の図面とともに以下の説明に記載される本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0014】
本明細書で使用する「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙において用いられる場合、列挙された項目のいずれか1つを単独で使用できること、若しくは、列挙された項目の2つ以上の任意の組合せを使用できることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含むと記載されている場合、組成物は、Aのみ;Bのみ;Cのみ;AとBの組合せ;AとCの組合せ;BとCの組合せ;又はA、B、及びCの組合せを含むことができる。
【0015】
本開示の変更は、当業者及び本開示を製造又は使用する者に想起されるであろう。したがって、図面に示され、上記説明された実施形態は、単に例示を目的とするものであり、均等論を含めて、特許法の原則に従って解釈されるように、以下の特許請求の範囲によって定められる本開示の範囲を限定することは意図されていないものと理解される。
【0016】
記載された開示の構成及び他の構成要素は、特定の材料に限定されないことが当業者に理解されるであろう。本明細書に開示される本開示の他の例示的な実施形態は、本明細書に別段の記載がない限り、多種多様な材料から形成することができる。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の量及び特性が正確ではなく、かつ、正確である必要はなく、許容誤差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、並びに当業者に知られている他の要因を反映して、必要に応じて近似及び/又はより大きく又はより小さくてもよいことを意味する。範囲の値又は端点を説明する際に「約」という用語が用いられる場合、本開示は、言及される特定の値又は端点を含むと理解されるべきである。明細書の範囲の数値又は端点が「約」を記載しているかどうかにかかわらず、範囲の数値又は端点は、「約」によって修飾されたものと、修飾されていないもの2つの実施形態を含むことが意図されている。さらには、範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、及び他の端点とは独立してのいずれにおいても重要であることが理解されよう。
【0018】
本開示の目的では、「バルク」、「バルク組成物」、及び/又は「全体的な組成物」という用語は、物品全体の全体的な組成物を含むことを意図しており、これは、結晶相及び/又はセラミック相の形成に起因してバルク組成物とは異なりうる「局所組成物」又は「局所化された組成物」と区別されうる。
【0019】
「~から形成」という用語は、~を含む、~から実質的になる、又は~からなる、のうちの1つ以上を意味しうる。例えば、特定の材料から形成される成分は、その特定の材料を含んでも、その特定の材料から実質的になっても、又はその特定の材料からなっていてもよい。
【0020】
特に明記しない限り、本明細書に記載されるいずれの方法も、その工程が特定の順序で実行されることを必要とすること、若しくは、装置には特定の向きが必要であると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームが、その工程が従うべき順序を実際に記載していない場合、若しくは装置クレームが個々の構成要素に対する順序又は向きを実際に記載していない場合、あるいは、工程が特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲又は明細書に別段に明確に述べられていない場合、若しくは装置の構成要素に対する特定の順序又は向きが記載されていない場合には、いかなる意味においても、順序又は方向が推測されることは決して意図していない。これには、次のような解釈のためのあらゆる非明示的根拠が当てはまる:工程の配置、動作フロー、構成要素の順序、又は構成要素の方向に関する論理的事項;文法上の編成又は句読点から派生した平明な意味;及び、明細書に記載される実施形態の数又はタイプ。
【0021】
また、本明細書で用いられる場合、「物品」、「ガラス物品」、「セラミック物品」、「ガラスセラミック」、「ガラス要素」、「ガラスセラミック物品(article)」、及び「ガラスセラミック物品(articles)」という用語は、互換的に使用することができ、最も広い意味では、全体的又は部分的にガラス及び/又はガラスセラミック材料で作られた物体を含む。
【0022】
本明細書で用いられる場合、「ガラス状態」とは、結晶化することなく剛性状態へと冷却された溶融生成物である、本開示の物品内の無機非晶質相材料を指す。本明細書で用いられる場合、「ガラスセラミック状態」とは、本明細書に記載のガラス状態と本明細書に記載される「結晶相」及び/又は「結晶沈殿物」の両方を含む、本開示の物品内の無機材料を指す。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「透過率」、「透過度」、「光透過率」、及び「全透過率」は、本開示において交換可能に用いられ、吸収、散乱、及び反射を考慮に入れた外部透過率又は透過度を指す。フレネル反射は、本明細書で報告されている透過率及び透過度の値から差し引いていない。加えて、特定の波長範囲にわたって参照される任意の全透過率値は、指定された波長範囲にわたって測定された全透過率値の平均として与えられる。
【0024】
「熱膨張係数」又はCTEという用語は、特定の温度範囲にわたる平均のCTEである。
【0025】
基板の弾性率(ヤング率とも呼ばれる)は、ギガパスカル(GPa)単位で提供される。基板の弾性率は、基板のバルク試料の共鳴超音波分光法によって決定される。
【0026】
構成成分の濃度は、特に指定のない限り、酸化物基準の質量パーセント(質量%)で指定される。
【0027】
本開示の態様は、熱処理プロセスのパラメータに基づいて所定の範囲のCTE値内で調整可能な熱膨張係数(CTE)を有するガラスセラミック物品に関する。このように、単一のガラス組成物を利用して、ある範囲の調整可能なCTE値を有するガラスセラミック物品を提供することができる。本開示の態様はまた、熱処理プロセスのパラメータに基づいて調整可能なα-石英及び/又はβ-石英結晶相を有するガラスセラミック物品に関連しうる。
【0028】
本明細書に記載される材料及び方法は、加熱プロセスに従って処理して、パッケージングプロセスの要件に応じて及び/又は形成された物品の使用目的に応じてカスタマイズされたある特定の特性を有するガラスセラミックを形成することができる、ガラスセラミック前駆体組成物を提供する。このように、所望の特性を有する材料を提供するために各組成物をカスタマイズするのではなく、単一の組成物を、形成された物品の特性を所望の要件を満たすように調整する処理プロセスに供するために利用することができる。本開示の組成物は、加熱の前後に、あるCTE範囲を有しており、これは、広範囲のパッケージングプロセスの要件を満たすために、加熱中にCTEを中間値へと調整することができる有用なウィンドウを提供するのに十分に大きい。本開示の組成物は、特定の組成物に対して広範囲のカスタマイズされたCTEの選択肢を可能にするために、処理プロセスに基づいて、低い値と高い値、並びにその間の中間値との間で調整することができるCTE範囲を有する。要件の各セットを満たすように独自の組成を設計するのではなく、ある範囲のCTE値要件を満たすように処理することができる単一の組成物を利用することにより、製造業者に経済的利益及びロジスティック上の利益を提供することができる。
【0029】
本開示のガラスセラミック前駆体組成物は、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、MgO、及びZnOを含む。任意選択的に、ガラス組成物は、追加の成分を含むことができ、それらの限定的な例には、CaO、BaO、P2O5、B2O3、La2O3、及びアルカリ金属酸化物が含まれる。本開示の一態様によれば、ガラス組成物は、実質的にアルカリ金属を含まない。アルカリ金属に関して本明細書で用いられる場合、実質的に含まないという句は、汚染に起因して少量のアルカリ金属が存在する可能性があるが、アルカリ金属が組成物に添加されないことを意味すると定義される。他の態様では、ガラス組成物は、1つ以上のアルカリ金属を含みうる。任意選択的に、ガラス組成物は清澄剤を含むことができ、その一例にはSnO2が含まれる。
【0030】
ガラスセラミック前駆体組成物は、SiO2を約45質量%(質量による%)~約65質量%の量で含みうる。幾つかの態様では、SiO2の量は、約45質量%~約60質量%、約45質量%~約55質量%、約45質量%~約50質量%、約50質量%~約55質量%、約50質量%~約60質量%、約50質量%~約65質量%、約55質量%~約60質量%、約55質量%~約65質量%、又は約60質量%~約65質量%の範囲でありうる。幾つかの態様では、SiO2の量は、約45質量%、約50質量%、約55質量%、約60質量%、又は約65質量%である。さらなる実装形態では、SiO2含有量は、約60質量%、約61質量%、約62質量%、約63質量%、又は約65質量%の量でありうる。例えば約40質量%未満など、SiO2の量が少なすぎると、失透が促進される可能性があり、適切な耐衝撃性を有する結晶化ガラスを得ることが困難になる可能性がある。例えば約70質量%超など、SiO2の量が多すぎると、所望される結晶集合体を得ることが困難になりうる。加えて、SiO2の量が多すぎると、ガラスの溶融能力が低下し、粘度が上昇し、したがってガラスの形成が困難になる可能性がある。
【0031】
ガラスセラミック前駆体組成物は、Al2O3を約14質量%~約28質量%の量で含みうる。幾つかの態様では、Al2O3の量は、約14質量%~約18質量%、約14質量%~約22質量%、約14質量%~約24質量%、約14質量%~約26質量%、約16質量%~約20質量%、約16質量%~約24質量%、約16質量%~約28質量%、約18質量%~約22質量%、約18質量%~約26質量%、約18質量%~約28質量%、約20質量%~約24質量%、約20質量%~約28質量%、又は約24質量%~約28質量%の範囲でありうる。幾つかの態様では、Al2O3の量は、約14質量%、約16質量%、約18質量%、約20質量%、約22質量%、約24質量%、又は約28質量%の範囲でありうる。さらなる実装形態では、Al2O3の量は、約18質量%、約19質量%、約20質量%、又は約21質量%でありうる。例えば約10質量%未満など、Al2O3の量が少なすぎると、失透が促進されうる;例えば約30質量%超など、Al2O3の量が多すぎると、所望の結晶集合体を得ることが困難になりうる。Al2O3はまた、ガラスの軟化点を増加させ、それによってガラスの成形性を低下させる可能性がある。
【0032】
ガラスセラミック前駆体組成物は、TiO2及びZrO2を核形成剤として含みうる。TiO2は、約2質量%~約4質量%の量で存在しうる。幾つかの態様では、TiO2は、約2質量%~約3.5質量%、約2質量%~約3質量%、約2質量%~約2.5質量%、約2.5質量%~約3質量%、約2.5質量%~約3.5質量%、約2.5質量%~約4質量%、約3質量%~約3.5質量%、約3質量%~約4質量%、又は約3.5質量%~約4質量%の量で存在しうる。さらなる実装形態では、TiO2は、約2質量%、約2.5質量%、約3質量%、約3.5質量%、又は約4質量%の量で存在しうる。他の態様では、TiO2は、約2.3質量%、約2.4質量%、約2.5質量%、約2.6質量%、約2.7質量%、約2.8質量%、約2.9質量%、約3.0質量%、約3.1質量%、約3.2質量%、約3.3質量%、約3.4質量%、約3.5質量%、約3.6質量%、又は約3.7質量%の量で存在しうる。
【0033】
ZrO2は、約1質量%~約4.5質量%の量で存在しうる。幾つかの態様では、ZrO2は、約1質量%~約4質量%、約1質量%~約3.5質量%、約1質量%~約3質量%、約1質量%~約2.5質量%、約1質量%~約2質量%、約1質量%~約1.5質量%、約1.5質量%~約2質量%、約1.5質量%~約2.5質量%、約1.5質量%~約3質量%、約1.5質量%~約3.5質量%、約1.5質量%~約4質量%、約1.5質量%~約4.5質量%、約2質量%~約2.5質量%、約2質量%~約3質量%、約2質量%~約3.5質量%、約2質量%~約4質量%、約2質量%~約4.5質量%、約2.5質量%~約3質量%、約2.5質量%~約3.5質量%、約2.5質量%~約4質量%、約2.5質量%~約4.5質量%、約3質量%~約3.5質量%、約3質量%~約4質量%、約3質量%~約4.5質量%、約3.5質量%~約4質量%、約3.5質量%~約4.5質量%、又は約4質量%~約4.5質量%の量で存在する。幾つかの態様では、ZrO2は、約1質量%、約1.5質量%、約2質量%、約2.5質量%、約3質量%、約3.5質量%、約4質量%、又は約4.5質量%の量で存在する。さらなる実装形態では、ZrO2は、約2.1質量%、約2.2質量%、約2.3質量%、約2.4質量%、約2.5質量%、約3.5質量%、約3.6質量%、約3.7質量%、約3.8質量%、約3.9質量%、又は約4質量%の量で存在する。核形成剤としての役割に加えて、ZrO2は化学的攻撃に対するガラスセラミック物品の耐性を増加させることもできる。ZrO2の量が多すぎると、液相温度が上昇し、それによってガラス組成物の溶融がより困難になる可能性がある。さらには、ZrO2の含有量が多すぎると、材料がガラス組成物に溶解しない可能性があり、それによってガラス組成物中に欠陥が生じる可能性があり、また、弾性率が上昇する可能性もある。ZrO2の量が少なすぎると、核形成が不十分になる。IRでの透過率が高い乳白色の材料の取得は、高いZrO2レベル(>3.5質量%)によって支援される。
【0034】
本開示の幾つかの態様では、前駆体組成物中に存在するTiO2+ZrO2の全合計量は、約4.5質量%より大きい。本開示の幾つかの態様では、前駆体組成物中に存在するTiO2+ZrO2の全合計量は、約5質量%より大きい。幾つかの実装形態では、TiO2及びZrO2の全合計量は、約6質量%超、約7質量%超、又は約8質量%超である。幾つかの態様では、TiO2及びZrO2の全合計量は、約5質量%~約8.5質量%、約5質量%~約8質量%、約5質量%~約7質量%、約5質量%~約6質量%、約6質量%~約7質量%、約6質量%~約8質量%、約6質量%~約8.5質量%、約7質量%~約8質量%、約7質量%~約8.5質量%、又は約8質量%~約8.5質量%の範囲である。幾つかの態様では、TiO2及びZrO2の全合計量は、約5質量%、約5.5質量%、約6質量%、約6.5質量%、約7質量%、約7.5質量%、約8質量%、又は約8.5質量%である。幾つかの態様では、TiO2及びZrO2の全合計量は、約5.8質量%、約5.9質量%、約6.0質量%、約6.1質量%、約6.2質量%、約6.3質量%、約6.4質量%、又は約6.5質量%である。TiO2+ZrO2の量が少なすぎると(例えば、4.5質量%未満)、核形成が不十分になる。
【0035】
ガラスセラミック前駆体組成物はさらに、MgOを約4.5質量%~約12質量%、任意選択的に約5質量%~約12質量%の量で含む。幾つかの態様では、MgOは、約4.5質量%~約10質量%、約4.5質量%~約8質量%、約4.5質量%~約7質量%、約4.5質量%~約6質量%、約4.5質量%~約6.5質量%、又は約4.5質量%~約5質量%の量で存在しうる。幾つかの態様では、MgOは、約4.5質量%、約5質量%、約5.5質量%、約6質量%、又は約6.5質量%の量で存在しうる。MgOは、β-石英及びスピネル結晶相の形成に寄与することができ、したがって、場合によっては、少なくとも約5質量%であることが好ましい。MgO含有量が高すぎると、形成されたガラスセラミック物品の透明性が低下する可能性がある。
【0036】
ガラスセラミック前駆体組成物はまた、ZnOも約0.1質量%~約4質量%の量で含む。幾つかの態様では、ZnOの量は、約0.1質量%~4質量%未満、約0.1質量%~約1質量%、約0.1質量%~約2質量%、約0.1質量%~約3質量%、約0.1質量%~約3.5質量%、約1質量%~約2質量%、約1質量%~約3質量%、約1質量%~約3.5質量%、約1質量%~約4質量%、約2質量%~約3質量%、約2質量%~約3.5質量%、約2質量%~約4質量%、又は約3質量%~約4質量%の範囲である。さらなる実装形態では、ZnOの量は、約1質量%、約1.5質量%、約2質量%、約2.5質量%、約3質量%、又は約3.5質量%である。ZnOの量が多すぎると、亜鉛スピネル結晶相の形成は、β-石英結晶相よりも有利になり、これは、本明細書に提示される理由のため、望ましくない。以下により詳細に論じられるように、本開示による組成物は、加熱プロセスのパラメータに基づいて調整可能なβ-石英結晶相を有するガラスセラミック物品を形成する能力を有している。加えて、ZnOは、ガラスセラミック物品の耐薬品性にも寄与しうる。
【0037】
追加の成分CaO、P2O5、B2O3、及びLa2O3は、存在する場合には、概して、約5質量%未満の量で存在する。幾つかの態様では、CaOは存在しない。さらなる実装形態では、CaOは、0.1質量%超~約5質量%未満、約0.1質量%~約4質量%、約0.1質量%~約3質量%、約0.1質量%~約2質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の量で存在する。幾つかの態様では、P2O5は存在しない。さらなる実装形態では、P2O5は、0.1質量%超~約5質量%未満、約0.1質量%~約4質量%、約0.1質量%~約3質量%、約0.1質量%~約2質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の量で存在する。幾つかの態様では、B2O3は存在しない。さらなる実装形態では、B2O3は、0.1質量%超~約5質量%未満、約0.1質量%~約4質量%、約0.1質量%~約3質量%、約0.1質量%~約2質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の量で存在する。幾つかの態様では、La2O3は存在しない。さらなる実装形態では、La2O3は、0.1質量%超~約5質量%未満、約0.1質量%~約4質量%、約0.1質量%~約3質量%、約0.1質量%~約2質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の量で存在する。ガラスセラミック物品が形成される組成物中のホウ素濃度は、粘度-温度曲線を緩やかにし、曲線全体を下げるために追加することができ、それによってガラスの成形性を改善し、ガラスを軟化させる、フラックスである。
【0038】
本開示の別の態様によれば、ガラスセラミック前駆体組成物はBaOを含みうる。BaOは、任意選択的に、0超かつ約8質量%未満の量で存在しうる。幾つかの態様では、BaOは、約0.1質量%~約8質量%、約1質量%~約8質量%、約1質量%~約6質量%、約1質量%~約4質量%、約1質量%~約3質量%、約2質量%~約8質量%、約2質量%~約6質量%、約2質量%~約4質量%、又は約2質量%~約3質量%の量で存在する。幾つかの実装形態では、BaOは、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、又は約8質量%の量で存在する。BaOは、ガラスセラミック物品の透明性に寄与しうる。
【0039】
ガラスセラミック前駆体組成物は、非限定的な例として、SnO2、Sb2O3、As2O3、F-、及び/又はCl-(NaClなどに由来)などの1つ以上の清澄剤を任意選択的に含みうる。清澄剤がガラス組成物中に存在する場合、清澄剤は約2質量%未満の量で存在しうる。幾つかの態様では、清澄剤は、約0.1質量%~約2質量%、約0.1質量%~約1質量%、約0.1質量%~約0.5質量%、又は約1質量%~約2質量%の量で存在する。清澄剤の含有量が多すぎると、清澄剤がガラス構造に入り、さまざまなガラス特性に影響を与える可能性がある。しかしながら、清澄剤の含有量が少なすぎると、ガラスが形成しにくくなる可能性がある。本開示の一態様によれば、SnO2は、0超かつ約2質量%未満の量で、清澄剤として含まれる。
【0040】
一態様によれば、ガラスセラミック前駆体組成物は、添加されたアルカリ金属酸化物を含まず、したがって、実質的にアルカリ金属を含まない。キャリア又は基板内のアルカリ金属は、半導体チップの処理及び/又は保管中に移動し、チップを汚染する可能性を有している。
【0041】
任意選択的に、ガラスセラミック前駆体組成物は、1つ以上のアルカリ金属酸化物を含みうる。アルカリ酸化物は、ガラス組成物の溶融を促進することができ、200ポアズ温度を低下させることができ、及び/又はガラスの軟化点を低下させることができる。幾つかの態様では、アルカリ金属酸化物は、ガラス組成物中のより高濃度のSiO2及び/又はAl2O3で生じうる軟化点の上昇を相殺することができる。Li2O、Na2O、及びK2Oなどのアルカリ金属酸化物は、存在する場合には、概して、約5質量%未満の量で存在する。存在する場合には、1つ以上のアルカリ土類酸化物は、約5質量%未満の量で存在しうる。幾つかの態様では、1つ以上のアルカリ土類酸化物は、0.1質量%超~約5質量%未満、約0.1質量%~約4質量%、約0.1質量%~約3質量%、約0.1質量%~約2質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の量で存在する。
【0042】
別の態様によれば、ガラスセラミック前駆体は、1600℃で200ポアズ(P)の粘度を有する。200ポアズ温度は、ガラスが200ポアズの粘度を有する最低温度であり、十分に溶融したガラスの最低温度を示す。幾つかの態様では、前駆体は、約1000℃~約1600℃、約1000℃~約1500℃、約1000℃~約1400℃、約1000℃~約1300℃、約1000℃~約1200℃、約1000℃~約1100℃、約1100℃~約1600℃、約1200℃~約1600℃、約1300℃~約1600℃、約1400℃~約1600℃、又は約1500℃~約1600℃の範囲の200ポアズ温度を有する。ガラスセラミック前駆体は、約1425℃~約1444℃の範囲の液相温度を有していてよく、これは、約1200P~約1400Pの範囲の液相線での粘度に対応する。幾つかの態様では、液相温度は、約1000℃~約1500℃、約1000℃~約1400℃、約1000℃~約1300℃、約1000℃~約1200℃、約1000℃~約1100℃、約1200℃~約1500℃、約1300℃~約1500℃、約1400℃~約1500℃、又は約1400℃~約1450℃の範囲である。幾つかの態様では、失透の主要相はジルコンでありうる。
【0043】
本開示による各ガラスセラミック前駆体組成物は、中間のCTE値を含めて、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1、約20×10-7K-1~約150×10-7K-1、又は約20×10-7K-1~約135×10-7K-1の範囲内の異なる熱膨張係数(CTE)値を有するガラスセラミック物品を形成するために用いることができる。半導体製造業者及び製造プロセスで半導体を利用する業者は、多くの場合、パッケージングプラットフォーム及び製品ラインによって変化する、並びに製造場所及び異なる製造業者によって変化するCTE要件を有しうる。本開示のガラスセラミック前駆体組成物は、CTE値の範囲内で加熱プロセス中にカスタマイズ又は「調整」することができるCTE値を有するガラスセラミック物品を提供することができる。本開示の物品のCTE値の範囲は、概して、半導体パッケージング及び関連産業で通常必要とされるCTE値と重複する。本開示によれば、単一のガラスセラミック前駆体組成物を利用して、調整可能なCTE値を有するガラスセラミック物品を提供することができ、ここで、所与の前駆体組成物から製造された各ガラスセラミック物品は、前駆体組成物が処理される方法に基づいて、異なるCTE値を有する。このように、製造業者が有しうる各CTE要件を満たすようにカスタマイズされた組成物を調製するのではなく、単一の前駆体組成物を利用することができ、かつ、さまざまな製造要件を満たすために異なるCTE値を有する物品を提供するように処理プロセスを調整することができる。
【0044】
任意選択的に、ガラスセラミック物品は、約20×10-7K-1~約30×10-7K-1の下端から約55×10-7K-1~約160×10-7K-1、約55×10-7K-1~約150×10-7K-1、又は約55×10-7K-1~約135×10-7K-1の上端まで規定されるCTE範囲を有する。下端及び上端の範囲は、加熱プロセス中のガラスセラミック前駆体の処理に基づいて、ガラスセラミック物品のCTEを調整することができる有用なウィンドウを規定する。このCTEウィンドウが半導体製造業者から要求されるCTE値の範囲と重複する場合には、単一のガラスセラミック前駆体組成物を利用して、複数の処理又は製品の要件を満たすことができる。本開示の各ガラスセラミック前駆体組成物は、各ガラスセラミック前駆体組成物から形成されたガラスセラミック物品のCTEをカスタマイズ又は調整するように処理することができる。例えば、半導体製造業者は、各製品ラインが、例えば、チップ処理パラメータ、下流処理要件、及び/又はチップの最終用途要件に基づいて異なるCTE要件を有する、2つの異なる半導体チップ製品ラインを有することができる。本開示のガラスセラミック前駆体組成物は、各製品ラインで別々の前駆体バッチを混合するのではなく、単一のバッチを調製することを可能にし、ガラスセラミック前駆体の加熱プロセスを変化させることによって、両方の製品ラインのCTE要件を満たすガラスセラミック物品をこの単一のバッチから形成することができる。単一の組成物、及び任意選択的に単一のガラスセラミック前駆体バッチを利用して、異なるCTE値を有するガラスセラミック物品を製造することにより、製造プロセスを簡素化することができ、それにより、時間及びコストの利益をもたらすことができる。例えば、同じガラス前駆体組成物を複数の製品ラインで使用すると、製品ラインごとに固有の組成物を必要とする場合と比較して、購入、保管、及び調製を簡素化することができる。
【0045】
ガラスセラミック物品はまた、好ましくは80ギガパスカル(GPa)を超える、任意選択的に約80GPa~約100GPaの範囲内、さらには任意選択的に100GPaを超える高い弾性率を有しうる。一態様では、弾性率は、約80GPa~約140GPa、約80GPa~約130GPa、約80GPa~約120GPa、約80GPa~約110GPa、約80GPa~約100GPa、約80GPa~約90GPa、約90GPa~約100GPa、約90GPa~約110GPa、約90GPa~約120GPa、約90GPa~約130GPa、約90GPa~約140GPa、約100GPa~約110GPa、約100GPa~約120GPa、約100GPa~約130GPa、又は約100GPa~約140GPaである。幾つかの実装形態では、弾性率は、約80GPa、約90GPa、約100GPa、約110GPa、約120GPa、約130GPa、又は約140GPaである。高い弾性率は、処理中の反り又は屈曲の可能性を低減することができ、これにより、物品が電子機器のキャリア基板として使用される場合など、物品に取り付けられた機器への損傷の可能性を最小限に抑えることができる。
【0046】
本開示のガラスセラミック物品はまた、近赤外範囲内の波長を有する光に対して少なくとも部分的に透明でありうる。一態様では、ガラスセラミック物品は、約1mm未満の厚さを有する物品について1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率を有しうる。一態様によれば、直接透過率及び拡散透過率の両方を含む全光透過率は、少なくとも75%である。幾つかの態様では、全光透過率は、約1060nm~約2300nm、約1060nm~約2000nm、約1060nm~約1700nm、約1060nm~約1400nm、又は約1060nm~約1200nmの間の波長において、少なくとも75%である。幾つかの態様では、約1060nm~2300nmの間の波長における全光透過率は、約50%~約90%、約50%~約80%、約50%~約70%、約50%~約60%、約60%~約90%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約80%、約70%~約90%、又は約80%~約90%である。電磁スペクトルの近赤外領域での光の透過を可能にするガラスセラミック物品は、レーザを利用して基板を剥離する半導体プロセスに有用でありうる。任意選択的に、ガラスセラミックは、可視光に対して少なくとも部分的に透明でありうる。
【0047】
本開示のガラスセラミック物品は、加熱プロセス中の処理パラメータに基づいて、主相としてのβ-石英と主相としてのα-石英との間で調整可能な結晶微細構造を有することによってさらに特徴づけることができる。幾つかの態様では、ガラスセラミック物品は、α-石英相の不存在下でβ-石英相を有し、β-石英相の不存在下でα-石英相を有する条件と、α-石英相とその間のβ-石英との中間比との間で調整可能な結晶微細構造を有することができる。別の態様によれば、本開示のガラスセラミック物品は、α-石英結晶相のβ-石英結晶相に対する比の範囲によって規定され、好ましくは約0.3:1の下端及び約74:0の上端の範囲によって規定される。幾つかの実装形態では、結晶微細構造は、約0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、16:1、又はそれ以上のα-石英結晶相のβ-石英結晶相に対する比と、その間の中間比との間で調整可能である。別の態様では、β-石英結晶相は、α-石英内に存在するアルミニウムのケイ素に対する比より大きい、アルミニウムのケイ素に対する比を含む。
【0048】
任意選択的に、ガラスセラミック物品は、スピネル及び/又は亜鉛スピネル結晶相などの少なくとも1つの追加の結晶相を含みうる。(一又は複数の)追加の結晶相は、約8質量%~約21質量%の範囲で存在しうる。幾つかの態様では、追加の結晶相は、約0.1質量%~約21質量%、約0.1質量%~約15質量%、約0.1質量%~約10質量%、約0.1質量%~約8質量%、又は約0.1質量%~約6質量%の範囲で存在する。(一又は複数の)追加の結晶相の量及び特性は、加熱プロセス中のパラメータに基づいて調整可能でありうる。幾つかの実装形態では、ガラスセラミック物品は、他の結晶相を含むことができ、その例には、スリランカイト及びクリストバライトが含まれる。
【0049】
本開示によるガラスセラミック物品を製造するための例示的なガラスセラミック前駆体組成物が下記表1に示されている。表1は、本開示による、範囲内の材料の組合せ及びそれらのそれぞれの量を特定している。表1のガラスセラミック前駆体組成物は、本明細書に記載される本開示の一態様による追加の成分を含みうる。
【0050】
【0051】
幾つかの態様では、本開示の態様による表1のガラスセラミック前駆体組成物から製造されたガラスセラミック物品は、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1、約20×10-7K-1~約150×10-7K-1、又は約20×10-7K-1~約135×10-7K-1のCTE、任意選択的に約20×10-7K-1~約30×10-7K-1の下端から約55×10-7K-1~約160×10-7K-1、約55×10-7K-1~約150×10-7K-1、又は約55×10-7K-1~約135×10-7K-1の上端まで規定されるCTE範囲を、80GPa超、任意選択的に約80GPa~約100GPaの範囲内、さらには任意選択的に約80GPa~約140GPaの範囲内の弾性率と組み合わせて有する。
【0052】
表1のガラスセラミック前駆体組成物を使用して、本開示によるガラスセラミック物品を形成することができ、該ガラスセラミック物品は、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1、約20×10-7K-1~約150×10-7K-1、又は約20×10-7K-1~約135×10-7K-1のCTE、任意選択的に約20×10-7K-1~約30×10-7K-1の下端から約55×10-7K-1~約160×10-7K-1、約55×10-7K-1~約150×10-7K-1、又は約55×10-7K-1~約135×10-7K-1の上端まで規定されるCTE範囲を、80GPa超、任意選択的に約80GPa~約100GPaの範囲内、さらには任意選択的に約80GPa~約140GPaの範囲内の弾性率と組み合わせて、さらに、約1mm未満の厚さを有する物品について1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率と組み合わせて有する。
【0053】
幾つかの態様では、本開示の態様による表1のガラスセラミック前駆体組成物から製造されたガラスセラミック物品は、α-石英結晶及び/又はβ-石英結晶相、任意選択的にα-石英結晶相のβ-石英結晶相に対する比の範囲によって規定された、好ましくは約0.3:1の下端及び約74:0の上端によって規定された範囲によって規定されたα-石英及びβ-石英結晶相を、次の特徴:約20×10-7K-1~約160×10-7K-1、約20×10-7K-1~約150×10-7K-1、又は約20×10-7K-1~約135×10-7K-1のCTE;約20×10-7K-1~約30×10-7K-1の下端から約55×10-7K-1~約160×10-7K-1、約55×10-7K-1~約150×10-7K-1、又は約55×10-7K-1~約135×10-7K-1の上端まで規定されるCTE範囲;80GPaを超える弾性率;約80GPa~約100GPaの範囲内の弾性率;約100GPaを超える弾性率;及び/又は約1mm未満の厚さを有する物品について1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率のうちの少なくとも1つと組み合わせて含む。
【0054】
本開示のガラスセラミック物品によって提供されるCTE値の範囲は、半導体、ディスプレイ、及びセンサなどのさまざまな異なる電子機器、並びにこれらの機器を製造するためのプロセスにおけるそれらの使用を容易にする。一態様では、本開示のガラスセラミック物品は、電子機器のキャリア基板として利用することができる。キャリア基板は、電子機器の製造中に用いられる一時的な基板であるが、これは、最終的には除去され、最終製品の一部を形成しない。例えば、本開示のガラスセラミック物品は、半導体パッケージングプロセスにおける半導体チップのためのキャリア基板として利用することができる。別の態様では、本開示のガラスセラミック物品は、最終製品の一部のまま維持される、電子機器の基板として利用することができる。例えば、本開示のガラスセラミック物品は、半導体パッケージングプロセスにおける半導体チップのための基板として利用することができる。本開示は、ガラスセラミック物品が最終製品の一部として残らないキャリア基板として利用される電子機器を形成するためのプロセスと、ガラスセラミック物品が最終製品の一部を形成する基板として利用されるプロセスの両方において有用である、調整可能な範囲のCTE値を有するガラスセラミック物品を提供する。
【0055】
これより
図1を参照すると、本開示によるガラスセラミック物品を形成するための方法10が示されている。本開示の態様は、さまざまな電子機器で使用することができる調整可能なCTEを有するガラスセラミック物品を形成するための方法を含み、その非限定的な例には、半導体、ディスプレイ、及びセンサが含まれる。本開示の方法は、概して、組成物の成分を変更することなく、加熱プロセスのパラメータを調整することによって、ガラスセラミック物品のCTEを値の範囲内でカスタマイズすることに関する。
【0056】
方法10は、ガラスセラミック前駆体を形成する工程12を含みうる。ガラスセラミック前駆体を形成する工程は、少なくとも酸化物SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、MgO、及びZnOを含む原材料を合わせること、並びに当技術分野で知られているガラス溶融プロセスに従って材料を溶融することを含む。ガラスの品質を改善し、コードの形成を制限するためには、ガラスの二重溶融を行うことが効率的であることが見出された:最初の溶融後、ガラスを水に注ぐ。その後、得られたカレットを再溶融する。ガラスは、圧延、プレス、又は鋳造と、それに続く任意選択的なアニーリングプロセスによって形成することができる。
【0057】
このように形成されたガラスセラミック前駆体は、次に、加熱プロセス14に供されて、結晶化を誘発し、ガラスセラミック物品を形成することができる。加熱プロセス14は、2つの段階、すなわち、第1の加熱段階16及び第2の加熱段階18を含むと見なすことができる。一態様では、加熱プロセス14は、第1の加熱段階16が核形成段階であり、第2の加熱段階18が熱処理段階である、セラミック化プロセスでありうる。
【0058】
第1の加熱段階16中、ガラスセラミック前駆体は、第1の所定の温度に加熱され、その温度で所定の第1の期間、保持されうる。第1の加熱段階16中の加熱は、内部核形成を誘発しうる。第1の所定の温度は、約600℃~約900℃、約600℃~約800℃、約700℃~約900℃、約700℃~約800℃、約800℃~約900℃、又は約800℃の範囲でありうる。第1の期間は、約60分~約240分、約60分~約180分、約60分~約120分、約120分~約240分、約120分~約180分、約120分、又は約240分の範囲でありうる。第1の加熱段階16に続いて、ガラスセラミック前駆体は、第2の加熱段階18に従って処理されうる。
【0059】
第2の加熱段階18中、ガラスセラミック前駆体は、第2の温度に加熱され、該第2の温度で第2の期間、保持されうる。第2の加熱段階18中の温度及び/又は第2の期間の持続時間は、ガラスセラミック物品の最終製品のCTEを調整するために変化させることができる。概して、温度を上昇させること、及び/又は第2の加熱段階18中の第2の期間を長くすることにより、形成されたガラスセラミック物品のCTEは上昇する。本開示の一態様によれば、第2の加熱段階18中の第2の温度は、第1の加熱段階16中の第1の温度より高い。一例では、第2の加熱段階18中の第2の温度は、950℃超、1000℃超、1100℃超、約950℃~約1200℃の範囲、約950℃~約1100℃の範囲、又は約950℃~約1000℃の範囲、約1000℃~約1200℃の範囲、又は約1000℃~約1100℃の範囲である。別の態様では、第2の加熱段階18中の第2の期間は、45分超、60分超、約45分~300分の範囲内、約45分~約240分の範囲内、約60分~約300分の範囲内、又は約60分~約240分の範囲内である。
【0060】
加熱プロセス14の完了後に所望のCTE値をもたらすために、第1の加熱段階16の温度及び時間のパラメータを、第2の加熱段階18の温度及び時間のパラメータと組み合わせて選択することができる。前駆体が第1及び第2の加熱段階16及び18の各々において加熱される温度及び/又は期間を含めた加熱プロセス14のパラメータは、同じガラスセラミック前駆体組成物を利用して、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の範囲内、任意選択的に約20×10-7K-1~約30×10-7K-1の下端から約55×10-7K-1~約160×10-7K-1の上端までのさまざまな異なるCTE値を有するガラスセラミック物品をもたらすように選択することができる。加熱プロセス14のパラメータはまた、同じガラス前駆体組成物を利用して、ある範囲のα-石英結晶及び/又はβ-石英結晶微細構造の含有量を有するガラスセラミック物品を提供するように選択することができる。
【0061】
任意選択的に、加熱プロセス14は、個々のウェハではなくブロック上で行われ、その後、該ウェハは、ワイヤソーなどによってブロックから切断される。個々のウェハの代わりにブロックを加熱することにより、表面結晶化とバルク結晶化との差に起因して発生しうる反りの可能性を低減することができる。
【0062】
方法10は、加熱プロセス14に続いて冷却段階20を含みうる。一態様では、冷却段階20は、熱エネルギーがもはや試料に印加されず、試料を周囲温度と平衡にさせる受動的プロセスでありうる。別の態様によれば、冷却段階20は、試料を冷却媒体に曝露するなど、試料からの熱エネルギーの伝達を容易にする能動的プロセスでありうる。任意選択的に、冷却段階20は、β-石英結晶相からα-石英結晶相への均一な変態を促進するように制御される。不均一な相変態は、試料の破損及び反りを引き起こしうる高い残留応力を試料に誘起する可能性がある。一態様によれば、β-石英結晶相からα-石英結晶相への均一な変態は、変態が起こる温度領域内の遅い冷却速度又は温度保持を利用することによって、冷却段階20の間に促進することができる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本開示によって提供されるさまざまな特徴及び利点を説明するものであって、本発明及び添付の特許請求の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0064】
ガラスセラミック前駆体の調製
例示的実施例及び比較例のガラスセラミック前駆体を、以下に記載される方法と同じ方法で調製した。原材料を混合し、1kgの前駆体ガラスのバッチを製造した。混合物を、溶融及び精製するために白金るつぼに入れた;混合物を1650℃で4時間溶融した。溶融後、ガラスを6mmの厚さに圧延し、760℃で1時間アニールした。次に、調製した前駆体試料を以下に記載するように処理した。
【0065】
実施例1
下記表2は、本開示による例示的な組成物1を示している。
【0066】
【0067】
組成物1を使用して、上記のようにガラスセラミック前駆体試料を形成し、その後、これらを、以下の表3に示す加熱プロセスパラメータに従って処理した。試料A~Hを表3に示すように加熱プロセスに供した。この例では、これはセラミック化プロセスと見なすことができる。セラミック化プロセスは、2つの加熱段階:第1の加熱段階及び第2の加熱段階を含んでおり、この例では、これらは、核形成段階及び熱処理段階と見なすことができる。核形成段階の間、試料を第1の温度に加熱し、示された期間、第1の温度で保持した。その後の熱処理段階の間、試料を示された温度に加熱し、示された期間、示された温度で保持した。セラミック化中の加熱速度は10℃/分であり、冷却は加熱炉が冷却する速度で行った。試料をセラミック化プロセスに続いて冷却した後、試料A~HのCTEを、膨張計を使用して測定し、これらを25℃~260℃及び25℃~300℃の2つの異なる温度範囲にわたる平均として提示している。
【0068】
【0069】
再び表3を参照すると、試料Aは、核形成又は熱処理段階に従って加熱されていない未焼成のガラス試料である。試料B及びCは、示された時間の間、核形成段階の熱処理に供したが、その後の熱処理段階には供しなかった。表3に示されるように、試料A、B、及びCのCTEは、核形成段階の時間の長さを増加させても変化しなかった。
【0070】
試料DからLは、試料のCTEに対する熱処理段階の温度及び持続時間の影響を示している。試料DからLは、すべて同じ核形成段階パラメータに従って処理したが、その後の熱処理段階中に各試料を異なる温度及び/又は時間で処理した。試料Dは、950℃未満の温度での熱処理プロセス中の4時間の長い加熱期間でも、CTEはわずかな増加しか示さないことを示している。
【0071】
試料EからLのCTEは、熱処理段階の持続時間の増加に基づいて、及び/又は熱処理段階中の1000℃以上への温度の上昇に基づいて、広範囲にわたって漸進的な増加を示している。
図2は、試料EからHの1000℃での熱処理の持続時間の影響を示している。試料EからHは、1000℃での熱処理段階の持続時間が徐々に増加するにつれて、27×10
-7K
-1から100×10
-7K
-1までの幅広い範囲で、CTE値が徐々に増加することを示している。試料IからLは、熱処理段階中の温度が1000℃を超えて増加すると、CTE値がさらなる増分で増加することを示している。試料AからLは、セラミック化プロセス中の熱処理段階のパラメータに基づいて、中間値を含めた幅広い範囲にわたって調整することができるCTEを有するガラスセラミック物品を形成する組成物1の能力を示している。組成物1によって示される、中間値を含む27×10
-7K
-1~135×10
-7K
-1の例示的な範囲は、半導体パッケージングプロセスで通常必要とされるCTE値の範囲と重複し、したがって、ある範囲の処理及び製品要件を満たすようにカスタマイズすることができる単一のガラスセラミック物品組成物を提供する。
【0072】
実施例2
実施例1の例示的な組成物1の試料E、G、及びHにXRD解析を行い、結果を下記表4に示している。Bragg-Brentanoの構成を使用して、セラミック化後に研磨された試料にXRD解析を行った。リートベルト解析を行って、結晶相のそれぞれの量と、α-石英及びβ-石英結晶相のAl/Si比を決定した。残留ガラスの量は測定していない。
【0073】
【0074】
表4のデータは、1000℃での熱処理時間の長さが増加するにつれて、α-石英結晶相の量が増加し、β-石英結晶相の量が減少することを示している。データはまた、1000℃での熱処理時間の長さが増加するにつれて、スピネル及び/又は亜鉛スピネル結晶相の量が同時に増加することも示している。1000℃で1時間熱処理した試料Eは、少量のα-石英、スピネル/亜鉛スピネル、及びスリランカイト相とともに、β-石英結晶主相を示している。1000℃での熱処理の持続時間を増加すると、結果的に、β-石英の量が減少し、α-石英及びスピネル/亜鉛スピネル相の量が増加する。データはまた、α-石英結晶相中のAl/Siの比が、β-石英結晶相(すなわち、詰め込みの量が多い)中のAl/Siと比較して、低い(すなわち、「詰め込み(stuffing)」の量が少ない)ことを示している。
【0075】
表3及び4に提示されるデータは、1000℃での熱処理の持続時間が増加するにつれて、試料の観察されたCTEが増加することと、それに伴う試料中に存在するβ-石英結晶相の減少及びα-石英結晶相の増加との関係を示している。理論に縛られはしないが、試料中のα-石英形成の機構は、組成物の成分及び熱処理のパラメータを含めた幾つかの要因に基づいていると考えられる。TiO2及びZrO2は、β-石英固溶体の結晶化を優先する核形成剤として作用すると考えられる。結晶相は詰め込まれており(stuffed)、これは、β-石英がケイ素の代わりにかなりの量のアルミニウムを含んでいることを意味する。電荷バランスを維持するために、マグネシウムは格子間の空孔を満たす。大量の「詰め込み」は、セラミック化プロセス後の冷却中に通常発生するであろうβ-石英からα-石英への反転を抑制する。試料Eは、概して、この結晶化状態に対応しており、これは、少量のスリランカイト及び亜鉛スピネルも含む。概して、主相としてのβ-石英は、結果的に、約30×10-7K-1のCTEをもたらす。熱処理段階の温度及び/又は持続時間が増加するにつれて、スピネル(MgAl2O4)が形成され、β-石英結晶は純粋なシリカへと移行し、アルミニウム及びマグネシウムが枯渇する。シリカが豊富なβ-石英結晶は、冷却中にα-石英へと変化する。純粋なα-石英のCTEは、約150×10-7K-1である。したがって、温度の上昇及び/又は熱処理段階の持続時間の増加の結果として生じるβ-石英からα-石英への漸進的な反転は、少なくとも一部には、CTEの漸進的増加及び増分増加の原因であると理論づけられている。
【0076】
次に
図3を参照すると、試料EからHの長さの変化が、温度の関数として示されている。300℃付近での各曲線の傾きの変化は、α-石英からβ-石英への相転移に関連していると理論づけられている。
【0077】
実施例4
本開示のガラスセラミック試料はまた、可視光に対して少なくとも部分的な透明性を示す。透過率の測定を、1.3mmの厚さの研磨した試料で行った。
図4は、試料A(未焼成ガラス)、並びに実施例1の例示的な組成物1の試料E、G、及びHの透明性を示している。各列の下の画像は下から照らされており、1000℃での熱処理段階の持続時間が試料Eから試料Hへと増加するにつれて不透明度が増加することを示している。
【0078】
実施例5
本開示のガラスセラミック試料はまた、赤外波長光の透過も示す。透過率の測定は、約300nm~約2500nmの波長を有する光の直接透過率と拡散透過率の両方の測定を可能にする積分球を備えた分光光度計を使用して、厚さ1.3mmの研磨された試料で行った。
図5は、熱処理プロセス中に1000℃で4時間加熱された試料Hの光透過率を示している。試料Hは、約1060nm以上の波長で少なくとも75%の全透明度(拡散及び直接の両方)を示している。実施例4の
図4に示されるように、試料Hは試料EからGの中で最も不透明であり、したがって、試料EからGは、それ以上ではないにしても、同様の光透過率を示すことが予想されるであろう。スペクトルの赤外線部分、特に近赤外線範囲の電磁放射に対する高い透過性は、レーザを利用して基板を剥離する半導体パッケージングプロセスにおいて有用でありうる。約1060nmの波長で少なくとも約75%の透明度は、概ね、レーザ剥離プロセスの要件を満たすであろう。
【0079】
実施例6
組成物1から形成されたガラスセラミック前駆体の液相温度を、約0.5cm3の体積を有する試料片を使用して測定した。試料片を次のように処理した:1550℃に予熱した加熱炉に試料を導入する;試料を1550℃で30分加熱する;加熱炉の温度を10℃/分の速度で試験温度まで低下させる;加熱炉を試験温度で17時間維持する;及び、試料を空気急冷する。
【0080】
結晶の存在を、光学顕微鏡を使用して調査した。温度範囲及び関連する粘度範囲は液体として与えられる。最高温度は、結晶が観察されなかった試験の最低温度に対応し;最低温度は、結晶が観察された試験の最高温度に対応する。液相温度で失透する結晶相の性質も決定した。
【0081】
組成物1のガラスセラミック前駆体は、1600℃で200Pの粘度を示し、約1425℃~約1444℃の範囲の液相温度を有しており、これは、約1200P~約1400Pの範囲の液相線での粘度に対応する。組成1のガラスセラミック前駆体の主要相はジルコンである。
【0082】
実施例7
下記表5は、本開示による追加の例示的な組成物2、3、及び4を示している。組成物1と組成物2~4との違いが、説明の目的で示されている。組成物2、3、及び4を使用して、組成物1に関して上記実施例1に記載された方法と同様の方法で、ガラスセラミック前駆体試料及びガラスセラミック物品を製造した。組成物2~4を使用して形成されたガラスセラミック物品のCTEを、上記実施例1に記載されたように決定した。組成物2~4で形成された物品の結晶微細構造及び光透過特性は、それぞれ、上記実施例3及び4に記載されたように決定した。
【0083】
表5に示される核形成段階とそれに続く熱処理段階の間、800℃で2時間加熱する工程を含むセラミック化プロセスに従い、例示的な組成物1から5の各々から物品を形成した。
【0084】
【0085】
組成物2は、TiO2の量が増加し、ZrO2の量が減少するという点で組成物1とは異なっており、一方、TiO2及びZrO2の全合計量は5質量%を超えたままであった。組成物2は不透明なガラスセラミック物品を生成したが、CTEは高く、特定のCTE要件を満たすように(例えば、熱処理プロセス工程を調整することによって)CTEを調整することができる範囲が広いことを示している。したがって、組成物2は、広いCTE範囲が要求され、透明性が要求されないプロセスで使用することができる。
【0086】
組成物3は、ZnO含有量を約0.1質量%~約4質量%の好ましい範囲内に維持しつつ、組成物1と比較してMgOの量を低減させる効果を示している。組成物3は、不透明であり、かつ組成物1と比較して低いCTE値を有するガラスセラミック物品を生成した。しかしながら、組成物3は依然として、処理要件に基づいてガラスセラミック物品をカスタマイズすることができる範囲のCTE値をもたらしている。
【0087】
組成物4は、組成物に希土類酸化物を添加する効果を示している。組成物4におけるLa2O3の存在は、不透明であり、かつ組成物1と比較して比較的低いCTE値を有するガラスセラミック物品を生成する。しかしながら、組成物4のガラスセラミック物品は、組成物1によって示される範囲よりも狭い範囲ではあるが、ある範囲のCTE値を示す。したがって、組成物4を使用して、最大で約58×10-7K-1までのより小さい範囲で十分なプロセスにおいて、カスタマイズ可能なCTEを提供することができる。
【0088】
組成物4は、同様に処理された組成物1と比較して、1000℃で4時間の熱処理後の主結晶相においてα-石英及びβ-石英の両方を示し、これは、β-相の不存在下で、主結晶相としてのα-石英と、少量相としてのスピネルとを示す。組成物1と比較して組成物4によって示されるより小さいCTE範囲は、一部には、より長い熱処理の後でさえ組成物4に残留しているβ-石英相の存在に関連していると理論づけられている。組成物4の試料を1050℃で4時間処理した場合、CTE値のさらなる増加が得られた(143×10-7K-1)。この高温処理で、組成物4の試料は、クリストバライト結晶相の存在に加えて、α-石英含有量のさらなる増加及びβ-石英含有量の減少を示した。
【0089】
組成物5は、比較的低レベルのTiO2+ZrO2を示している。それは、1050℃の温度で熱処理した後に、比較的高いCTE(90×10-7K-1)を有する不透明なガラスセラミックを生成する。
【0090】
幾つかの実施形態では、組成物1は、1650℃でより大量に(例えば、68Kgのバッチ量で)溶融され、次いで、740℃でアニールされる。得られたガラス片は、下記表に示すように、異なる条件で熱処理される。加熱は10℃/分で行った。XRD及びCTEの測定はセラミック化後に行い、結果が下記表6に示されている。
【0091】
【0092】
結果は、核形成温度がガラスセラミックの結晶化に強い影響を及ぼし、約770℃~約800℃の温度範囲内で起こる核形成が改善されることを示している。820℃での核形成(実施例C’)は、残留ガラスの量が非常に多い(結晶化の量が少ない)材料をもたらす。
【0093】
実施例A’及びC’の比較は、核形成温度(770~800℃の範囲)が結晶化の速度に影響を与えることを示している。800℃で核形成された実施例A’は、76×10-7K-1のCTEを示し、これは、ガラスセラミックがすでにかなりの量のα-石英を含んでいるのに対し、770℃で核形成された実施例C’は主結晶相としてβ-石英固溶体を含んでいる(低CTEに関連)ことを示唆している。この最後の事例では、高温での保持時間が長くなると、α-石英への変換が高くなり、CTEが増加する(実施例D’)。
【0094】
組成物1から得られたガラスを機械的試験にも使用した。直径32mm、厚さ3mmの研磨試料を準備し、次のサイクルで熱処理した:800℃で2時間+1000℃で1.5時間(加熱速度:10℃/分、冷却速度:1℃/分)。ガラスセラミックの機械的性能を、リングオンリング試験によって測定した。この試験では、二軸曲げ強度を評価する。2つの系統の試料:(1)製造時の試料、及び(2)表面を除去するために熱処理後に再研磨された試料を破壊した。各条件について、少なくとも10個の試料を破壊した。結果が次の表に与えられている。破壊時の強度に対応するワイブル係数及びスケールパラメータが報告されている。ワイブル係数は、破壊確率の63.2%に対応する。
【0095】
【0096】
「製造時」の試料は、再研磨された試料よりもはるかに高いワイブル係数を示している。理論に拘束されはしないが、本発明者らは、表面とバルクとの間に結晶化の違いが存在し、表面が、バルクよりもβ-石英固溶体に富み、よりα-石英に変換されると考えている。その結果、CTEは表面で低くなり、これが表面に圧縮応力を誘起し、ワイブル係数の増加をもたらす。
【0097】
実施例8
下記表8は、比較ガラスセラミック物品組成物である比較例1から4を示している。例示的な組成物1と比較例1から4との違いが、考察の目的で示されている。ガラスセラミック前駆体試料及びガラスセラミック物品は、例示的な組成物1に関して実施例1で上述した方法と同様の方法で形成した。比較例1から4を使用して形成されたガラスセラミック物品のCTEを、上記実施例1に記載されたように決定した。比較例1から4で形成された物品の結晶微細構造及び光透過特性は、それぞれ上記実施例3及び4で説明したように決定した。
【0098】
核形成段階の間に800℃で2時間加熱し、続いて表8に示される熱処理段階を行うことを含むセラミック化プロセスに従って、各組成物から物品を形成した。
【0099】
【0100】
比較例1は、形成されたガラスセラミック製品の特性に対するZnOの量の増加の影響を示している。ZnOの量は、例示的な組成物1中に存在する量と比較してほぼ2倍であり、約0.1質量%~約4質量%の好ましい範囲外であった。比較例1のガラスセラミック物品のCTEは、同様の熱処理プロセスに供された場合の例示的な組成物1の100×10-7K-1のCTE値と比較して、わずか36×10-7K-1であった。比較例1の低いCTE値は、広範囲のCTEプロセス要件を満たすために広範囲のカスタマイズ可能なCTE値を提供するための適切なウィンドウをもたらさない。
【0101】
比較例2は、例示的な組成物1と比較して、ZrO2の量を過度に増加させた影響を示している。比較例2は、不十分なZrO2溶解を示し、CTE値を得ることができなかった。
【0102】
比較例3におけるY2O3の存在は、不透明であり、かつ非常に低いCTE値を有するガラスセラミック物品を生成する。例示的な組成物1と比較して比較例3によって示される低いCTE値は、組成物をカスタマイズにとって有用にするものではない。比較例3は、β相の不存在下で、α-石英の主結晶相及びスピネルの少量相によって特徴づけられる、同様に処理された組成物1と比較して、主相としてβ-石英を示している。組成物1と比較して比較例3で示される低いCTE値は、一部には、より長い熱処理の後でも比較例3に残留しているβ-石英結晶主相の存在に関連するものであると理論づけられる。比較例3の試料をさらに高温の1050℃で4時間加熱すると、35×10-7K-1のCTE値を有する試料が生成されたが、これは、比較例3の試料を1000℃で加熱した場合と比較して、ごくわずかな増加である。対照的に、組成物1から製造された試料は、熱処理温度が1000℃から1050℃に上昇すると、CTE値の36×10-7K-1の増加を示す。
【0103】
比較例4は、ガラスセラミック物品の特性に対する、TiO2の不存在及びP2O5の添加の影響を示している。比較例4は、乳白色であり、非常に低いCTE値を有するガラスセラミック物品を生成する。比較例4はまた、ガラス状の微細構造も示している。
【0104】
次の非限定的な態様は、本開示に包含される:
本開示の第1の態様によれば、ガラスセラミック物品は、ガラスセラミック組成物を有する物品を含み、該組成物は、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約4.5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含み(重量による)、
該物品は、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を含む。
【0105】
TiO2及びZrO2の総量が約5質量%を超える、第1の態様によるガラスセラミック物品。
【0106】
第1の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端と上端との間の中間値を含む、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によって特徴づけることができ、さらに、下端は約20×10-7K-1~約30×10-7K-1であり、上端は約55×10-7K-1~約160×10-7K-1である。
【0107】
第1の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率をさらに含みうる。
【0108】
物品が約80GPa~約140GPaの弾性率をさらに含む、第1の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品。
【0109】
第1の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、0%超~約8%のBaO(重量による)をさらに含みうる。
【0110】
第1の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、0%超~約2%のSnO2(重量による)をさらに含みうる。
【0111】
第1の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、SnO2、CaO、BaO、P2O5、B2O3、及びアルカリ金属酸化物からなる群より選択された1つ以上の添加剤をさらに含みうる。任意選択的に、1つ以上の添加剤は、組成物中に約5%以下(重量による)で存在する。
【0112】
組成物が実質的にアルカリ金属を含まない、第1の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品。
【0113】
第2の態様によれば、電子機器は、基板であって、第1の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品を含む基板を備える。
【0114】
本開示の第3の態様によれば、ガラスセラミック物品は、ガラスセラミック組成物を有する物品を含み、該組成物は、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約4.5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含み(重量による)、
該物品は、β-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方をさらに含む。
【0115】
TiO2及びZrO2の総量が約5質量%を超える、第3の態様によるガラスセラミック物品。
【0116】
第3の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、α-石英結晶相のβ-石英結晶相に対する比の範囲によって特徴づけることができ、該比の範囲は、約0.3:1の下端及び約74:0の上端によって規定される。
【0117】
第3の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、スピネル結晶相及び亜鉛スピネル結晶相のうちの少なくとも一方を含む少なくとも1つの追加の結晶相によってさらに特徴づけることができ、さらに、少なくとも1つの追加の結晶相は約8%~約21%(重量による)存在する。
【0118】
第3の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によってさらに特徴づけることができ、さらに、下端は約20×10-7K-1~約30×10-7K-1であり、上端は約55×10-7K-1~約160×10-7K-1である。
【0119】
第3の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品は、約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率をさらに含みうる。
【0120】
組成物が、SnO2、CaO、BaO、P2O5、B2O3、及びアルカリ金属酸化物からなる群より選択された1つ以上の添加剤をさらに含む、第3の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品。任意選択的に、1つ以上の添加剤は、組成物中に約5%以下(重量による)で存在しうる。
【0121】
組成物が実質的にアルカリ金属を含まない、第3の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品。
【0122】
第4の態様によれば、電子機器は基板を含み、該基板は、第3の態様又は任意の介在する態様によるガラスセラミック物品を含む。
【0123】
第5の態様によれば、ガラスセラミック物品を製造する方法は、ガラスセラミック前駆体を形成する工程であって、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含む組成(重量による)を有するガラスセラミック前駆体を形成する工程;並びに
ガラスセラミック前駆体を加熱してガラスセラミック物品を形成する工程であって、該物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を含む、工程
を含む。
【0124】
TiO2及びZrO2の総量が約5質量%を超える、第5の態様によるガラスセラミック物品。
【0125】
物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によってさらに特徴づけられ、さらに、下端が約20×10-7K-1~約30×10-7K-1であり、上端が約55×10-7K-1~約160×10-7K-1である、第5の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0126】
ガラスセラミック前駆体を加熱する工程が、ガラスセラミック前駆体を第1の温度で第1の期間加熱し、続いてガラスセラミック前駆体を第2の温度で第2の期間加熱することを含む、第5の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0127】
第2の期間が、少なくとも一部には、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を有するガラスセラミック物品を形成することに基づいている、第5の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0128】
第2の温度が第1の温度より高い、第5の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0129】
第2の温度が約950℃~約1200℃である、第5の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0130】
第2の期間が約45分~約300分である、第5の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0131】
物品が、約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率を含む、第5の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0132】
物品が約80GPa~約140GPaの弾性率を含む、第5の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0133】
本開示の第6の態様によれば、ガラスセラミック物品を製造する方法は、ガラスセラミック前駆体を形成する工程であって、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含む組成(重量による)を有するガラスセラミック前駆体を形成する工程;並びに
ガラスセラミック前駆体を加熱してガラスセラミック物品を形成する工程であって、該物品がβ-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方を含む、工程
を含む。
【0134】
TiO2及びZrO2の総量が約5質量%を超える、第6の態様による方法。
【0135】
物品が、α-石英結晶相のβ-石英結晶相に対する比の範囲によってさらに特徴づけられ、該比の範囲が、約0.3:1の下端及び約74:0の上端によって規定される、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0136】
物品が、スピネル結晶相及び亜鉛スピネル結晶相のうちの少なくとも一方を含む少なくとも1つの追加の結晶相によって特徴づけられ、さらに、少なくとも1つの追加の結晶相が約8%~約21%(重量による)存在する、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0137】
物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によってさらに特徴づけられ、さらに、下端が約20×10-7K-1~約30×10-7K-1であり、上端が約55×10-7K-1~約160×10-7K-1である、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0138】
ガラスセラミック前駆体を加熱する工程が、ガラスセラミック前駆体を第1の温度で第1の期間加熱し、続いてガラスセラミック前駆体を第2の温度で第2の期間加熱することを含む、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。任意選択的に、第2の期間は、少なくとも一部には、ガラスセラミック物品をβ-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方を用いて形成することに基づいている。
【0139】
第2の温度が第1の温度より高い、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0140】
第2の温度が約950℃~約1200℃である、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0141】
第2の期間が約45分~約300分である、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0142】
物品が、約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率を含む、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0143】
物品が約80GPa~約140GPaの弾性率を含む、第6の態様又は任意の介在する態様による方法。
【0144】
本開示の精神及びさまざまな原理から実質的に逸脱することなく、本開示の上記の実施形態に対して多くの変形及び修正を行うことができる。このようなすべての修正及び変更は、本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【0145】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0146】
実施形態1
ガラスセラミック物品であって、
ガラスセラミック組成物を有する物品を含み、前記組成物が、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約4.5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含み(酸化物の重量による)、
前記物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を含む、
ガラスセラミック物品。
【0147】
実施形態2
前記物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端と上端との間の中間値を含む、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によって特徴づけられ、さらに、前記下端が約20×10-7K-1~約30×10-7K-1であり、前記上端が約55×10-7K-1~約160×10-7K-1である、実施形態1に記載のガラスセラミック物品。
【0148】
実施形態3
前記物品が、約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率をさらに含む、実施形態1又は2に記載のガラスセラミック物品。
【0149】
実施形態4
前記物品が、約80GPa~約140GPaの弾性率をさらに含む、実施形態1から3のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0150】
実施形態5
前記組成物が、0%超~約8%のBaO(酸化物の重量による)をさらに含む、実施形態1から4のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0151】
実施形態6
前記組成物が、0%超~約2%のSnO2(酸化物の重量による)をさらに含む、実施形態1から5のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0152】
実施形態7
前記組成物が、SnO2、CaO、BaO、P2O5、B2O3、及びアルカリ金属酸化物からなる群より選択された1つ以上の添加剤をさらに含む、実施形態1から6のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0153】
実施形態8
前記1つ以上の添加剤が、約5%以下(酸化物の重量による)で前記組成物中に存在する、実施形態7に記載のガラスセラミック物品。
【0154】
実施形態9
前記組成物が実質的にアルカリ金属を含まない、実施形態1から6のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0155】
実施形態10
基板を含む電子機器であって、前記基板が実施形態1から9のいずれかに記載のガラスセラミック物品を含む、電子機器。
【0156】
実施形態11
ガラスセラミック物品であって、
ガラスセラミック組成物を有する物品を含み、前記組成物が、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含み(酸化物の重量による)、
前記物品が、β-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方をさらに含む、
ガラスセラミック物品。
【0157】
実施形態12
前記物品が、前記α-石英結晶相の前記β-石英結晶相に対する比の範囲によって特徴づけられ、前記比の範囲が、約0.3:1の下端及び約74:0の上端によって規定される、実施形態11に記載のガラスセラミック物品。
【0158】
実施形態13
前記物品が、スピネル結晶相及び亜鉛スピネル結晶相のうちの少なくとも一方を含む少なくとも1つの追加の結晶相によってさらに特徴づけられ、さらに、前記少なくとも1つの追加の結晶相が、約8%~約21%(酸化物の重量による)存在する、実施形態11又は12に記載のガラスセラミック物品。
【0159】
実施形態14
前記物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によってさらに特徴づけられ、さらに、前記下端が約20×10-7K-1~約30×10-7K-1であり、前記上端が約55×10-7K-1~約160×10-7K-1である、実施形態11から13のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0160】
実施形態15
前記物品が、約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率をさらに含む、実施形態11から14のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0161】
実施形態16
前記物品が、約80GPa~約140GPaの弾性率をさらに含む、実施形態11から15のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0162】
実施形態17
前記組成物が、0%超~約8%のBaO(酸化物の重量による)をさらに含む、実施形態11から16のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0163】
実施形態18
前記組成物が、0%超~約2%のSnO2(酸化物の重量による)をさらに含む、実施形態11から17のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0164】
実施形態19
前記組成物が、SnO2、CaO、BaO、P2O5、B2O3、及びアルカリ金属酸化物からなる群より選択された1つ以上の添加剤をさらに含む、実施形態11から18のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0165】
実施形態20
前記1つ以上の添加剤が、約5%以下(酸化物の重量による)で前記組成物中に存在する、実施形態11から19のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0166】
実施形態21
前記β-石英結晶相及びα-石英結晶相の各々が、アルミニウムのケイ素に対する比を含み、前記β-石英結晶相における比が前記α-石英結晶相における比より大きい、実施形態11から20のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0167】
実施形態22
前記組成物が実質的にアルカリ金属を含まない、実施形態11から18のいずれかに記載のガラスセラミック物品。
【0168】
実施形態23
電子機器であって、
実施形態11から22のいずれかに記載のガラスセラミック物品を含む基板
を備えた、電子機器。
【0169】
実施形態24
ガラスセラミック物品を製造する方法において
ガラスセラミック前駆体を形成する工程であって、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含む組成物(酸化物の重量による)を有するガラスセラミック前駆体を形成する工程;並びに
前記ガラスセラミック前駆体を加熱してガラスセラミック物品を形成する工程
を含み、
前記物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を含む、
方法。
【0170】
実施形態25
前記物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によってさらに特徴づけられ、さらに、前記下端が約20×10-7K-1~約30×10-7K-1であり、前記上端が約55×10-7K-1~約160×10-7K-1である、実施形態24に記載の方法。
【0171】
実施形態26
前記ガラスセラミック前駆体を加熱する工程が、前記ガラスセラミック前駆体を第1の温度で第1の期間加熱し、続いて前記ガラスセラミック前駆体を第2の温度で第2の期間加熱することを含む、実施形態24又は25に記載の方法。
【0172】
実施形態27
前記第2の期間が、少なくとも一部には、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して約20×10-7K-1~約160×10-7K-1の熱膨張係数(CTE)を有する前記ガラスセラミック物品を形成することに基づいている、実施形態26に記載の方法。
【0173】
実施形態28
前記第2の温度が前記第1の温度より高い、実施形態26又は27に記載の方法。
【0174】
実施形態29
前記第2の温度が約950℃~約1200℃である、実施形態26から28のいずれかに記載の方法。
【0175】
実施形態30
前記第2の期間が約45分~約300分である、実施形態26から29のいずれかに記載の方法。
【0176】
実施形態31
前記物品が、約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率を含む、実施形態24から30のいずれかに記載の方法。
【0177】
実施形態32
前記物品が約80GPa~約140GPaの弾性率を含む、実施形態24から31のいずれかに記載の方法。
【0178】
実施形態33
ガラスセラミック物品を製造する方法において、
ガラスセラミック前駆体を形成する工程であって、
約45%~約65%のSiO2、
約14%~約28%のAl2O3、
約2%~約4%のTiO2、
約3%~約4.5%のZrO2、
約5%~約12%のMgO、及び
約0.1~約4%のZnO
を含む組成物(酸化物の重量による)を有するガラスセラミック前駆体を形成する工程;並びに
前記ガラスセラミック前駆体を加熱してガラスセラミック物品を形成する工程
を含み、
前記物品が、β-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方を含む、
方法。
【0179】
実施形態34
前記物品が、前記α-石英結晶相の前記β-石英結晶相に対する比の範囲によってさらに特徴づけられ、前記比の範囲が約0.3:1の下端及び約74:0の上端によって規定される、実施形態33に記載の方法。
【0180】
実施形態35
前記物品が、スピネル結晶相及び亜鉛スピネル結晶相のうちの少なくとも一方を含む少なくとも1つの追加の結晶相によって特徴づけられ、さらに、前記少なくとも1つの追加の結晶相が約8%~約21%(酸化物の重量による)存在する、実施形態33又は34に記載の方法。
【0181】
実施形態36
前記物品が、25℃~300℃の温度範囲にわたって測定して、下端から上端まで規定された熱膨張係数(CTE)範囲によってさらに特徴づけられ、さらに、前記下端が約20×10-7K-1~約30×10-7K-1であり、前記上端が約55×10-7K-1~約160×10-7K-1である、実施形態33から35のいずれかに記載の方法。
【0182】
実施形態37
前記ガラスセラミック前駆体を加熱する工程が、前記ガラスセラミック前駆体を第1の温度で第1の期間加熱し、続いて前記ガラスセラミック前駆体を第2の温度で第2の期間加熱することを含む、実施形態33から36のいずれかに記載の方法。
【0183】
実施形態38
前記第2の期間が、少なくとも一部には、前記β-石英結晶相及びα-石英結晶相のうちの少なくとも一方を用いて前記ガラスセラミック物品を形成することに基づいている、実施形態37に記載の方法。
【0184】
実施形態39
前記第2の温度が前記第1の温度より高い、実施形態37又は38に記載の方法。
【0185】
実施形態40
前記第2の温度が約950℃~約1200℃である、実施形態37から39のいずれかに記載の方法。
【0186】
実施形態41
前記第2の期間が約45分~約300分である、実施形態37から40のいずれかに記載の方法。
【0187】
実施形態42
前記物品が、約1mm以下の厚さを有する試料を通して測定して、1060nmの波長で少なくとも約75%の光透過率を含む、実施形態33から41のいずれかに記載の方法。
【0188】
実施形態43
前記物品が約80GPa~約140GPaの弾性率を含む、実施形態33から42のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】